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特表2023-520633放射線治療計画のためのコンピュータ実装方法、コンピュータプログラム製品およびその方法を行うためのコンピュータシステム
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  • 特表-放射線治療計画のためのコンピュータ実装方法、コンピュータプログラム製品およびその方法を行うためのコンピュータシステム 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(54)【発明の名称】放射線治療計画のためのコンピュータ実装方法、コンピュータプログラム製品およびその方法を行うためのコンピュータシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61N5/10 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555141
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2021057259
(87)【国際公開番号】W WO2021197895
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】20167803.4
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ブジョーン
(72)【発明者】
【氏名】エングウォル,エリック
(72)【発明者】
【氏名】フレドリックソン,アルビン
(72)【発明者】
【氏名】エリックソン,クジェル
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AE01
4C082AE05
4C082AJ08
4C082AJ11
4C082AJ14
4C082AN02
(57)【要約】
患者のための放射線治療計画を最適化するコンピュータベースの方法であって、異なる放射線セットによって送達される先に送達された線量を考慮に入れて1つの放射線セットによって提供される治療計画を最適化する方法を提案する。放射線セットの一方は外部ビーム放射線療法であり、他方は近接照射療法である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の放射線セットを用いて患者に放射線療法を送達するための放射線治療計画を最適化するコンピュータベースの方法であって、
a)患者の少なくとも第1の医用画像に基づいて第1の放射線セットを用いて先に前記患者に送達された線量を決定する工程と、
b)総線量のための線量基準セットおよび前記先に送達された線量に依存して第2の放射線セットから得られる線量分布を最適化するように設計された最適化関数を含む第1の最適化問題を得る工程であって、前記総線量は前記第2の放射線セットおよび前記先に送達された放射線セットから得られる線量である工程と、
c)前記最適化問題を用いて前記第2の放射線セットによって放射線療法を送達するための治療計画を最適化する工程であって、前記最適化関数は目的関数または制約であり、かつ前記第1および第2の放射線セットのうちの一方は近接照射療法であり、他方は外部ビーム放射線療法である工程と、
を含む、コンピュータベースの方法。
【請求項2】
前記最適化関数は、所望の総線量分布と前記先に送達された線量との差を一致させるために前記第2の放射線セットから得られる線量分布を最適化するように設計されている、請求項1に記載のコンピュータベースの方法。
【請求項3】
前記線量基準は前記第1の放射線セットの送達前に撮影された少なくともより早期の医用画像に基づいて設定されている、請求項1または2に記載のコンピュータベースの方法。
【請求項4】
工程a)の前に、以下の:
d)前記第1の放射線セットによって提供される第1の線量分布と前記第2の放射線セットによって提供される第2の線量分布との組み合わせとして前記総線量分布を最適化するように設計された目的関数を含む初期の最適化問題を得る工程と、
e)前記初期の最適化問題を用いて前記第1および第2の放射線セットの組み合わせとしての治療計画を最適化する工程と、
をさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のコンピュータベースの方法。
【請求項5】
前記第1の最適化問題は第2の医用画像に基づいて得られる、先行する請求項のいずれか1項に記載のコンピュータベースの方法。
【請求項6】
前記第2の放射線セットは近接照射療法であり、前記第2の医用画像は、前記患者に施用されている近接照射療法機器を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の医用画像は、前記第1の放射線セットの送達後に撮影された前記患者の少なくとも1つの画像を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の画像は、前記第1の放射線セットの送達後の患者の幾何学的形状の推測に基づく少なくとも1つのシミュレートされた画像を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の放射線セットの線量を前記第1の医用画像の幾何学的形状に変形させること、および生物学的モデルを用いて前記線量を蓄積させることをさらに含み、前記目的関数は、前記第2の放射線セットからの前記蓄積線量および前記放射線セット特有の線量に対するペナルティのセットである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記近接照射療法送達、前記EBRT送達および/または決定された送達線量における不確実性を考慮に入れるためにロバストな計画を使用する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
コンピュータにおいて走らされるときに、前記コンピュータに先行する請求項のいずれか1項に記載の方法を実行させるように構成されているコンピュータ可読コード手段を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項12】
プロセッサおよび少なくとも1つのプログラムメモリを備えるコンピュータシステムであって、前記プログラムメモリは請求項11に記載のコンピュータプログラム製品を保持していることを特徴とするコンピュータシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療計画のためのコンピュータ実装方法、コンピュータプログラム製品およびそのような方法を行うための装置に関する。特に本発明は、同じ患者のために外部ビーム放射線療法および近接照射療法の両方を行う放射線療法のための治療計画に関する。
【背景技術】
【0002】
大部分の放射線治療は、外部ビーム放射線療法(すなわちEBRT)として知られている外部放射線源から患者に送達される外部放射線として与えられる。これは通常、多くのフラクション、例えば15回、30回またはそれ以上の数のフラクションで送達される。あるいは、放射線は患者の体内に配置された放射線源から送達されることがある。これは近接照射療法として知られており、1本以上の針または他の種類の機器を患者の体内の標的内に配置してそれを内部からの放射線に曝露させることを必要とする。これは通常、より少ない数のフラクション、例えば1回または3回で行われる。
【0003】
EBRT治療の場合、その計画は現在のところ主として最適化治療計画装置において逆方向治療計画プロセスとして行われている。この目的は通常、標的全体にわたって最小の線量または一様な線量を達成することである。近接照射療法(すなわちBT)計画は身体または仮想環境のいずれかにおいて標的内に放射線を与えるための機器の配置を必要とし、その線量は通常、当該機器の位置およびそこから生じる線量が決定される順方向計画プロセスにおいて開発される。低線量率BTでは、シードとして知られている1つ以上の放射線源を標的に埋め込み、通常は暫くの間そこに留置する。他方、高線量率BTおよびパルス線量率BTでは、例えば針、カテーテルおよびアプリケータからなる埋め込まれた機器の中空チャネルを通って移動する放射線源によって放射線が送達される。通常、BT線量分布は均一ではないが代わりに、埋め込まれた機器の周りに集中する。
【0004】
当該技術分野では、同じ患者においてEBRTと近接照射療法とを組み合わせることが知られている。典型的には、EBRTフラクションを最初に送達し、次いで近接照射療法を送達するが、逆の順序も可能である。通常、最初の治療中に患者の幾何学的形状が変化する。また近接照射療法のために患者の体内に挿入されている機器が、標的および周囲組織の形状を変化させる。これらの両方の理由のために、2種類のモダリティは患者の異なる幾何学的形状に送達される。同じ患者に対して近接照射療法および外部放射線治療の両方が使用される場合、従来では、1つが当該治療のEBRT部分のためのものであり、1つが当該治療の近接照射療法部分のためのものである2つの別個の治療計画が開発される。これらは典型的に、総線量および異なる種類の治療間での線量の予め定められた分割に基づいている。例えば80Gyの総線量を設定してもよく、ここではEBRT治療は60Gyを与えるためのものであり、近接照射療法は残りの20Gyを与えるためのものである。
【0005】
本発明の目的は、EBRTおよび近接照射療法の両方を含む放射線治療のための改良された計画方法を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、
a)患者の少なくとも第1の医用画像に基づいて第1の放射線セットを用いて先に患者に送達された線量を決定する工程と、
b)総線量のための線量基準セットおよび先に送達された線量に依存して第2の放射線セットから得られる線量分布を最適化するように設計された最適化関数を含む第1の最適化問題を得る工程であって、総線量は第2の放射線セットから得られる線量および先に送達された線量である工程と、
c)第1の最適化問題を用いて第2の放射線セットによって放射線療法を送達するための治療計画を最適化する工程であって、最適化関数は目的関数または制約であり、かつ第1および第2の放射線セットのうちの一方は近接照射療法であり、他方は外部ビーム放射線療法である工程と、
を含む、患者のための放射線治療計画を最適化するコンピュータベースの方法に関する。
【0007】
これは、第1の放射線セットによって既に送達された治療を考慮に入れることにより第2の放射線セットによって送達される治療の計画を改良する。先に送達された線量は任意の好適な方法を用いて推定または計算してもよい。
【0008】
好ましい実施形態では、第1の最適化問題は、線量基準によって表される所望の総線量分布と先に送達された線量との差を一致させるために、第2の放射線セットから得られる線量分布を最適化するように設計された最適化関数を含む。これは、所望の総線量分布のための良好な一致である両方の放射線セットによって送達される組み合わせられた線量から得られる実際の総線量を提供する。
【0009】
線量基準は好ましくは、第1の放射線セットの送達前に撮影された少なくともより早期の医用画像に基づいている。
【0010】
好ましい実施形態によれば、本方法は、工程a)の前に、以下の:
d)第1の放射線セットによって提供される第1の線量分布と第2の放射線セットによって提供される第2の線量分布との組み合わせとして総線量分布を最適化するように設計された最適化関数を含む初期の最適化問題を得る工程と、
e)初期の最適化問題を用いて第1および第2の放射線セットの組み合わせとしての治療計画を最適化する工程と、
をさらに含む。
【0011】
これは、第1の放射線セットによって送達される線量を計画するときに既に両方の放射線セットを考慮することにより当該計画をさらに改良する。
【0012】
少なくとも1つの第1の医用画像は、第1の部分の送達後に撮影された患者の少なくとも1つの画像を含んでもよい。これは実際の患者の幾何学的形状に関する最も正確な情報を提供する。
【0013】
代わりまたは追加として、少なくとも1つの第1の医用画像は当該部分の送達後の患者の幾何学的形状の推測に基づく少なくとも1つのシミュレートされた画像を含んでもよい。これは何らかの理由で、当該部分の送達後、または近接照射療法機器が挿入された状態で患者の新しい画像を撮影することが実行可能でない場合に好適である。
【0014】
好ましい実施形態では、本方法は、第1および第2の放射線セットによって送達される線量の少なくとも一方をそれぞれ変形させて治療部分のために共通の幾何学的形状を得ること、および生物学的モデルを用いてそれらを蓄積させることを含み、最適化関数は第2の放射線セットからの蓄積線量および放射線セット特有の線量に対するペナルティのセットである。通常は第2の放射線セットの線量を第1の医用画像に対して変形させる。
【0015】
好ましくは、近接照射療法機器の配置、EBRT送達および/または決定された送達線量における不確実性を考慮に入れるためにロバストな計画を使用する。ロバストな計画を実行するための方法は当該技術分野で知られている。
【0016】
本発明は、コンピュータにおいて走らされるときに、コンピュータに上記実施形態のいずれかに係る方法を実行させるように構成されたコンピュータ可読コード手段を含むコンピュータプログラム製品にも関する。コンピュータプログラム製品は任意の好適な種類の非一時的記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0017】
本発明は、プロセッサおよび少なくとも1つのプログラムメモリを備えるコンピュータシステムであって、プログラムメモリは上に定義されているコンピュータプログラムを保持していることを特徴とするコンピュータシステムにも関する。
【0018】
好ましい実施形態では、本発明は、いくつかの他のモダリティによって患者に既に送達された蓄積線量も考慮に入れて近接照射療法計画を計画することを含む。これは、標的への計画された線量からの偏差を補償することができ、それに応じて近接照射療法治療計画を変えることにより、リスク臓器への高過ぎる線量を補償することもできることを意味する。
【0019】
本発明は、例として、かつ添付の図面を参照して、以下により詳細に説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1a】患者の医用画像の断面である。
図1b】患者の医用画像の断面である。
図1c】患者の医用画像の断面である。
図2】本方法の一般的な実施形態のフローチャートである。
図3】EBRT後にBTを含む本方法のより具体的な実施形態のフローチャートである。
図4】BT後にEBRTを含む本方法の第2のより具体的な実施形態のフローチャートである。
図5】本発明の実施形態を実行することができるコンピュータシステムの概略的大要である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
外部ビーム放射線治療(すなわちEBRT)では、外部から送達されるビームの形態で患者に放射線を与える。当該放射線は、光子、電子、陽子または他のイオンなどの任意の種類の放射線であってもよい。近接照射療法(すなわちBT)では、いくつかの種類の機器を患者の体内の標的に挿入し、前記機器を使用して標的内の1つ以上の点から放射線を与える。この機器は、多くの小さい針および/またはカテーテル、1つ以上のより大きいアプリケータ、1つ以上のシードまたは異なる種類の機器の任意の組み合わせを含んでもよい。当該装置の数およびサイズに応じて、標的ならびに周囲の患者の幾何学的形状が変形される。
【0022】
2つの放射線セットの異なる性質により、EBRTおよびBTの計画は異なる治療パラメータを使用する。EBRT治療のための治療パラメータとしては、ビームおよびビーム制限装置構成が挙げられる。BT治療のための治療パラメータとしては、機器位置および留置時間などの変数が挙げられる。各放射線セットは典型的に、1回以上のフラクション、典型的であって必ずしもではないが1回の単一フラクションで送達することさえもできるBTの場合よりも、EBRTの場合により大きい数で送達される放射線を必要とする。
【0023】
上で考察されているように、EBRT計画の場合に最適化問題を用いる逆方向治療計画が一般的であるが、これは近接照射療法のためには従来から使用されてない。線量分布EBRTは、
【数1】
として表すことができ、近接照射療法のための線量分布は、
【数2】
(式中、xEBRT、xBTはそれぞれの治療形態のための治療パラメータである)
として表すことができる。
【0024】
本発明は、EBRT治療およびBT治療のための治療パラメータの同時最適化に関する。これは、最適化問題を方程式(3):
【数3】
(式中、xEBRTは当該治療のEBRT小部分のための治療パラメータであり、xBTは当該治療のBT小部分のための治療パラメータである。dEBRTおよびdBTはそれぞれEBRT小部分およびBT小部分のための線量である。線量dの代わりに、それぞれの小部分に関するいくつかの他のパラメータを使用してもよい)
として表すことができることを意味している。
【0025】
典型的には、最適化は線量を共通の幾何学的形状に変形させること、および生物学的モデルを用いてそれらを蓄積させることを含み、目的関数は、蓄積線量および放射線セット特有の線量に対するペナルティのセットである。
【0026】
図1a、図1bおよび図1cは、図2に関連させて以下でより詳細に考察するように、本発明の手順における異なる時点で撮影された医用画像の単純化された例である。図1aは、本発明の実施形態に係る治療計画のために使用される、標的13およびリスク臓器15に目を向けさせる患者の腹部の概念的な医用画像の断面11である。図1bは第1の種類の治療後の同じ患者の医用画像の対応する断面11’であり、この治療により患者の幾何学的形状に生じ得る変化を概略的に示している。当然のことながら、標的13は当該治療により縮小しており、通常これが所望の結果である。図1cは、患者に近接照射療法を与えるために針が標的に挿入された状態の同じ患者の医用画像の対応する断面11’’である。これらの針は標的内に小さい点17として示されている。図に示すように、これは標的13’’の幾何学的形状および標的を取り囲む患者の領域も変化させる。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態に係る方法全体のフローチャートである。
【0028】
第1の工程S21では、図1a~図1cに関連させて考察されているような患者の関連部分の画像を得る。工程S22では、EBRTおよび近接照射療法の両方を含む組み合わせられた計画として送達される総線量分布のための線量基準を決定する。
【0029】
工程S23では、1つ以上の画像および所望の総線量のための線量基準に基づいて最適化問題を定める。線量基準は当該技術分野において一般的なものとして設定する。それらは典型的には、標的の全てのボクセルのための最小線量と多くの場合に1つ以上のリスク臓器のための最大線量とを含む。例えば線量基準は、各標的ボクセルにおいて少なくとも60Gyの総線量を指定し、かつリスク臓器の最大30%を40Gy超の総線量に供することを指定してもよい。線量基準は部分的もしくは完全な線量分布も含んでいてもよい。S24では最適化問題を用いて治療計画を最適化する。最適化問題は上記関数(3)などの目的関数を含む。
【0030】
工程S25では、治療計画の一部を患者に送達し、工程S26では治療計画のその一部から患者に送達された蓄積線量を推定する。蓄積線量は任意の好適な方法で決定してもよい。これを行う方法は当該技術分野でよく知られており、典型的には少なくとも1つの医用画像、例えば治療計画の第1の部分の送達の間中撮影される多くのフラクション画像に基づいている。
【0031】
工程S27では、工程S25における部分的送達後の患者の新しい幾何学的形状を確認するために、患者の同じ部分の新しい画像を得る。適用可能であれば、近接照射療法機器の挿入などの他の修正を行ってもよく、得られる幾何学的形状を反映する画像を撮影してもよい。新しい画像は、この段階で撮影された患者の画像または患者の新しい幾何学的形状の推定に基づく合成の画像であってもよい。
【0032】
工程S28では、治療計画の残りを逆方向治療計画方法を用い、かつ以下でより詳細に考察される最適化関数に基づいて再度最適化する。当該計画は、先に行われた部分的送達の蓄積線量を考慮に入れる。その際に最適化問題は、以下に係る目的関数を含んでいなければならない:
【数4】
(式中、
【数5】
は、工程S26において決定された第1の放射線セットから送達された線量であり、
【数6】
は、第2の放射線セットによって送達される線量である。
【0033】
式中、gは別の目的関数であり、これはfに等しくても等しくなくてもよく、全てのフラクションにわたる第1の放射線セットから送達される線量(測定または推定される)は、第2の放射線セットのための計画のために固定されたバックグラウンド線量として使用する。
【0034】
工程S28では、当該計画の再最適化された残りを患者に送達する。
【0035】
図3は本発明の方法の一実施形態のフローチャートであり、ここでは全体的治療計画は最初にEBRT治療、次いでBT治療を含む。この計画への入力データS31は、患者の現在の医用画像、所望の線量分布のための線量基準、およびEBRT治療後の患者の幾何学的形状の予測モデルを含む。予測モデルは調整されているか合成の医用画像であってもよい。入力データは、EB機器が含まれている状態のEBRT治療後の患者の幾何学的形状の予測モデルも含んでいてもよい。医用画像はCT画像または、MRもしくは超音波画像などの任意の他の好適なモダリティ画像であってもよい。
【0036】
方法工程S32では、線量基準および入力データに基づいて最適化問題を得る。最適化問題は、当該治療のEBRTおよびBT小部分の両方の総線量ならびに任意に各放射線セットのために送達される線量に基づく方程式(3)に係る目的関数を含む。これは典型的には、線量dEBRTおよびdBTのうちの少なくとも1つを共通の幾何学的形状に変形させること、および好適な生物学的モデルを用いてそれらを蓄積することを含む。これは、蓄積線量および特定の線量に対するペナルティの組み合わせを設定することを含んでもよい。典型的には画像の非剛体レジストレーションを含む共通の幾何学的形状を確立するためのモデルが知られている。蓄積線量を決定するためのモデルも当業者に知られている。例えば生物学的概念のEQD2を適用して総実効線量の推測を与えてもよい。
【0037】
その後の方法工程S33では、共通の幾何学的形状および蓄積線量に基づいて最適化する。最適化問題は上記方程式(3)に係る目的関数を含む。当然のことながら、目的関数は治療パラメータに依存するように拡張させることができ、最適化問題は線量もしくは治療パラメータに応じて制約も含んでいてもよい。最適化工程S33からの出力S34は各放射線セットのための1つの小部分、すなわち1つのEBRT小部分および1つのBT小部分を含む全体的治療計画である。各小部分は、対応する放射線セットによって送達される線量の一部およびそれを送達するためのフラクションの数を含む。
【0038】
次いで工程S35では、治療計画のEBRT小部分を患者に送達し、工程S36ではこの送達から実際の送達線量を決定または推定する。好ましくは、EBRT送達後の状況を評価および使用して、以下の工程において概説されている治療計画のBT小部分を改良する。
【0039】
工程S37では、EBRT治療後の患者の更新画像を得る。これらは、EBRT治療中に生じた幾何学的変化を補償するための患者の新しい画像を含む。BT機器は機器の種類に応じて標的および周囲の患者の幾何学的形状のいくらかの変形を引き起こすので、その画像はBT機器が挿入されている状態の患者の画像も含む。
【0040】
その後の工程S38では、工程S35からの送達線量および工程S37において得られた新しい画像を考慮に入れて、当該治療のBT小部分を再最適化する。最適化問題はこの場合に、以下の方程式(2):
【数7】
(式中、
【数8】
は、工程S35において決定された送達線量である)
として表される目的関数を含む。
【0041】
工程S38からの出力は新しい最適化されたBT治療計画S39であり、これは好ましくは患者に送達される。
【0042】
図2について考察されているように、工程S36~S39は先行する工程を最初に行わずに行ってもよく、すなわちその2つの初期の組み合わせられた計画が存在しない場合であっても、BT計画は先のEBRT治療を考慮に入れてもよい。
【0043】
図4は、送達される第1の放射線セットがBTである方法のフローチャートである。この計画への入力データS41は、患者の現在の医用画像、およびBT機器が挿入された状態の患者の医用画像、および所望の線量分布のための線量基準を含む。好ましくは、この入力データは、BT治療後の患者の幾何学的形状の予測モデルも含む。医用画像はCT画像またはMRもしくは超音波画像などのあらゆる他の好適なモダリティ画像であってもよい。
【0044】
方法工程S42では、工程S32と同様の方法で最適化問題を定める。最初にBT線量部分が送達されるときに、BT機器が挿入された状態の患者の画像は入力として既に利用可能である。これらの画像を非剛体レジストレーションして、治療幾何学的形状間の幾何学的対応を提供することができる。工程S32と同様に、線量dEBRTおよびdBTを共通の幾何学的形状に変形させて、好適な生物学的モデルを用いて蓄積させる。これは、蓄積線量および特定の線量に対するペナルティの組み合わせを設定することを含んでもよい。典型的には画像の非剛体レジストレーションを含む、共通の幾何学的形状を確立するためのモデルが知られている。蓄積線量を決定するためのモデルも当業者に知られている。
【0045】
その後の方法工程S43では、共通の幾何学的形状および蓄積線量に基づいて最適化を行う。最適化問題は、上記方程式(3)に係る目的関数を含む。当然のことながら、最適化問題は治療パラメータに依存するように拡張させることができ、他の目的関数および/または制約も含む。最適化工程S43からの出力S44は、各放射線セットのための1つの小部分、すなわち1つのBT小部分および1つのEBRT小部分を含む全体的治療計画である。
【0046】
次いで工程S45では、当該治療計画のBT小部分を患者に送達し、工程S46ではこの送達から実際の送達線量を決定または推定する。好ましくは、以下の工程に概説されているようにBT送達後の状況を評価および使用して、当該治療計画のEBRT小部分を改良する。
【0047】
工程S47では、BT治療中に生じた幾何学的変化を補償するためにBT治療後の患者の更新画像を得る。
【0048】
その後の工程S48では、工程S45からの送達線量および工程S47において得られた新しい画像を考慮に入れて、当該治療のEBRT小部分を再最適化する。最適化問題はこの場合では、以下の方程式(2):
【数9】
(式中、
【数10】
は、工程S45において決定された送達線量である)
として表される目的関数を含む。
【0049】
工程S48からの出力は新しい最適化されたEBRT治療計画S49であり、これが好ましくは患者に送達される。
【0050】
図2および図3について考察されているように、工程S46~S49は先行する工程を最初に行わずに行ってもよく、すなわちこれら2つの初期の組み合わせられた計画が存在しない場合であっても、EBRT計画は先に送達されたBT治療を考慮に入れてもよい。
【0051】
BTおよびEBRTフラクションが2つの連続する小部分として与えられず、代わりにBTフラクションがEBRTフラクション間に分配される計画を作成することも可能である。この種の治療では、まだ送達されていない治療の1つ以上の小部分を送達線量を考慮に入れて再最適化することができる。当該治療の送達される小部分および送達されない小部分の両方は、典型的にはBTとEBRTとの組み合わせである。最適化はこの場合に、以下の方程式(7):
【数11】
として表される目的関数を含む。
【0052】
上記方法の全てにおいて、各放射線セットの個々の線量がそれのみでなお満足なものであることを保証するために、同時最適化はいくらかの注意を払って行わなければならない。同時最適化の1つの可能な悪影響は、後にBT線量によって満たされる標的においてEBRT線量がコールドスポットを有することである。これは、例えば機器の位置決めの不確実性および当該機器の変形効果に対してロバスト性を当該モデルに組み込むことにより緩和することができる。治療特有の目的関数も(現在のビームセット特有の目的関数と同様に)可能である。
【0053】
あらゆる放射線治療計画と同様に、患者の配置、BT機器の位置決めおよび推定された送達線量などの不確実性の原因が存在する。これを補償するためにロバストな計画を使用してもよい。特に画像間の変形により概算の蓄積線量が得られ、その品質は非剛体レジストレーションの正確性によって決まる。実際に送達される線量とは異なる蓄積線量に対する過剰最適化を回避するために、不確実性の表示を上回るロバストな計画のための方法を用いることができる。様々な程度の改良を使用することができ、例えば、
・予測される画像全体にわたるITVとしてのマージンまたは治療される領域の単なるスメアリングを適用することができる。
・放射線セットのそれぞれのために独立して、患者の幾何学的形状の剛体シフトとして生成されたシナリオを用いるロバストな計画を適用してもよい。
・複数の非剛体レジストレーションによって生成されたシナリオを用いるロバストな計画を適用することができる。BT部分線量の前にEBRT部分線量が送達される場合、これは複数の予測を利用することを必要とする。EBRT部分線量の前にBT部分線量が送達される場合、これは、取得された画像間のレジストレーションの摂動を使用することを必要とする。これらの変形はEBRT中の解剖学的変形、例えば腫瘍収縮から生じる可能性もある。
【0054】
また本発明の実施形態に係る方法を多基準最適化と組み合わせてもよい。この場合、総線量または個々の治療線量のどちらかの一方をターゲットにするいくつかのトレードオフ目的により、いくつかの面でナビゲーションを行うことができる。
【0055】
図5は、本発明の方法を実行することができるコンピュータシステムの概略図である。コンピュータ31は、第1および第2のデータメモリ34、35に接続されたプロセッサ33とプログラムメモリ36とを備える。好ましくはキーボード、マウス、ジョイスティック、音声認識手段またはあらゆる他の利用可能なユーザ入力手段の形態の1つ以上のユーザ入力手段38、39も存在する。またユーザ入力手段は外部メモリユニットからデータを受信するように構成されていてもよい。
【0056】
第1のデータメモリ34は、必要な画像などの本方法を行うために必要なデータを含む。第2のデータメモリ35は、治療計画を開発すべき対象である1人以上の現在の患者に関するデータを保持している。例えば図2図3および図4のいずれかに関連させて考察されているように、プログラムメモリ36はコンピュータに本方法工程を実行させるように構成されたコンピュータプログラムを保持している。
【0057】
当然のことながら、データメモリ34、35ならびにプログラムメモリ36は概略的に図示および考察されている。それぞれが1つ以上の異なる種類のデータを保持するいくつかのデータメモリユニットが存在してもよく、あるいは好適に構造化された方法で全てのデータを保持する1つのデータメモリが存在してもよく、これはプログラムメモリを保持している。当該構成要素が互いに通信できる限り、当該構成要素の1つ以上がクラウド環境に存在してもよい。

図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】