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特表2023-520639フェノールフォーム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(54)【発明の名称】フェノールフォーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022555917
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2021057158
(87)【国際公開番号】W WO2021186072
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】2016897.7
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2004006.9
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507193412
【氏名又は名称】キングスパン・ホールディングス・(アイアールエル)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】コポック,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ゼッヘラール,リュート
(72)【発明者】
【氏名】フェルホーフェン,アルノ
(72)【発明者】
【氏名】マーキー,ダイアン
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA59
4F074AC04
4F074AC26
4F074AD11
4F074AD13
4F074AG02
4F074AG10
4F074BA38
4F074BA39
4F074BA42
4F074BA53
4F074BA95
4F074BB06
4F074BC04
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA07
4F074DA08
4F074DA12
4F074DA18
4F074DA24
4F074DA32
(57)【要約】
【解決手段】フェノールフォーム及びその製造方法が記載されている。フェノールフォームは、少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィン、少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィン、及び少なくとも1種の炭化水素からなる。このフェノールフォームは、優れた断熱性能と優れた防火性能を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性フェノール樹脂組成物と発泡剤とから形成されたフェノールフォームであって、
前記フェノールフォームの重量に基づいて1~5重量%の赤リンからなり、10kg/mから100kg/mの密度を有し、規格ASTM D6226に従って測定して少なくとも85%の独立気泡含有率を有し、欧州規格EN13823に従って測定して120W/s以下のFIGRA0.2MJを有し、欧州規格EN13166:2012に従って10°Cで0.023W/m.K以下の熱伝導率を有するフェノールフォーム。
【請求項2】
前記フェノールフォームの重量に基づいて2~5重量%の赤リンからなる請求項1に記載のフェノールフォーム。
【請求項3】
前記発泡剤が、少なくとも1種の飽和または不飽和C-C炭化水素と、1つまたは2つ以上のフッ素及び塩素によって少なくとも1度置換された、例えばイソプロピルクロリドである少なくとも1種の飽和または不飽和C-C炭化水素の、少なくとも1つからなる請求項1又は2に記載のフェノールフォーム。
【請求項4】
前記発泡剤が、イソプロピルクロリド、または、例えばイソペンタンであるペンタンなどの飽和C-C炭化水素の、少なくとも1つからなる請求項1~3のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項5】
前記発泡剤が、イソプロピルクロリドと、例えばイソペンタンであるペンタン等の飽和C-C炭化水素との混合物からなる請求項1~4のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項6】
前記フェノールフォームが、欧州規格EN13823に従って測定して110W/s以下、例えば100W/s以下、例えば90W/s以下のFIGRA0.2MJを有する請求項1~5のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項7】
前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンまたは塩素化ハイドロフルオロオレフィンの少なくとも1つからなる請求項1~6のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項8】
前記発泡剤が更に、少なくとも1種の飽和または不飽和C-C炭化水素と、1つまたは2つ以上のフッ素及び塩素原子によって少なくとも1度置換された、例えばイソプロピルクロリドである少なくとも1種の飽和または不飽和C3-C6化合物の、少なくとも1つからなる請求項7に記載のフェノールフォーム。
【請求項9】
前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンまたは塩素化ハイドロフルオロオレフィンの少なくとも1つと、例えばイソペンタンであるペンタン等のC-C炭化水素との混合物からなる請求項7または8に記載のフェノールフォーム。
【請求項10】
前記フェノールフォームが、欧州規格EN13823に従って測定したとき100W/s以下、例えば90W/s以下、又は80W/s以下、又は70W/s以下のFIGRA0.2MJを有する請求項1~9のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項11】
少なくとも95kPaの圧縮強さを有する請求項1~10のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項12】
前記赤リンが微粉状である請求項1~11のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項13】
前記赤リンが、数平均粒子径が0.1μmから25μmの範囲、例えば0.25μmから15μm、例えば0.5μmから10μmの範囲にある粒子状である請求項1~12のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項14】
前記フェノールフォームが、欧州規格EN13823に従って測定したときに7.5MJ以下、例えば7.0MJ以下、又は6.5MJ以下、又は6.25MJ以下、又は6.0MJ以下、又は5.75MJ以下、又は5.5MJ以下、又は5.25MJ以下、又は5.15MJ以下、又は5.0MJ以下、又は4.8MJ以下、又は4.6MJ以下、又は4.4MJ以下の総熱発生率を有する請求項1~13のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項15】
前記フェノールフォームの独立気泡含有率が、規格ASTM D6226に従って測定したときに90%以上、例えば95%以上、好ましくは98%以上である請求項1~14のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項16】
前記フェノールフォームの前記気泡の平均気泡径が50~250μmの範囲、好適には80~180μmの範囲である請求項1~15のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項17】
前記フェノールフォームの熱伝導率が、欧州規格EN13166:2012に従って10°Cの平均温度で測定したとき0.020W/m.K以下、好適には0.018W/m.K以下、好ましくは、0.0175W/m.K以下、又は0.0170W/m.K以下、又は0.0165W/m.K以下、又は0.0162W/m.K以下である請求項1~16のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項18】
前記フェノールフォームが、規格ISO 4589-2に従って測定して34%以上、任意には35%以上、好適には36%以上、例えば37%以上の限界酸素指数を有する請求項1~17のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項19】
前記フェノールフォームが、欧州規格EN1249:1998に従って(23±2)℃の温度及び(50±5)%の相対湿度で測定して3重量%から8重量%、例えば3重量%から5重量%の安定含水率を有する請求項1~18のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項20】
前記少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィンが、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)と1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)から選択される請求項7~19のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項21】
前記少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィンが1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)からなる請求項7~20のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項22】
前記炭化水素が、少なくとも1種の、好適にはイソブタンであるブタン、及び/又は少なくとも1種の、例えばイソペンタンであるペンタンからなる請求項1~21のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項23】
発泡性フェノール樹脂組成物を発泡させかつ硬化させることによって形成されるフェノールフォームであって、前記発泡性フェノール樹脂組成物がフェノール樹脂、界面活性剤、酸触媒、発泡剤、及び前記フェノールフォームの重量に基づいて1~5重量%の赤リンからなり、
前記フェノールフォームが、10kg/mから100kg/mの密度、規格ASTM D6226に従って測定して少なくとも85%の独立気泡含有率を有し、前記フェノールフォームが、欧州規格EN13823に従って測定したとき120W/s以下(例えば110W/s以下、又は100W/s以下、又は95W/s以下、又は90W/s以下、又は85W/s以下)のFIGRA0.2MJを有し、前記フェノールフォームが、欧州規格EN13166:2012に従って10°Cで0.023W/m.K以下の熱伝導率を有するフェノールフォーム。
【請求項24】
前記発泡剤が、少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィン及び少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなり、前記発泡剤が更に少なくとも1種のC-C炭化水素からなる請求項23に記載のフェノールフォーム。
【請求項25】
前記少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィンが、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)と1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)から選択される請求項24に記載のフェノールフォーム。
【請求項26】
前記少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィンが1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)である請求項24又は25に記載のフェノールフォーム。
【請求項27】
前記少なくとも1種のC-C炭化水素が、少なくとも1種の、好適にはイソブタンであるブタン、及び/又は少なくとも1種の、任意にはイソペンタンであるペンタンからなる請求項24~26のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項28】
前記発泡剤が、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及び/又は1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンとからなる請求項1~27のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項29】
前記フェノール樹脂組成物が、約700から約2000の重量平均分子量を有するフェノール樹脂からなり、かつ/又は、前記フェノール樹脂の数平均分子量が約330から約800、例えば約350から約700である請求項1~28のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項30】
前記フェノール樹脂のフェノール基のアルデヒド基に対するモル比が約1:1から約1:3、好適には約1:1.5から約1:2.3の範囲にある請求項1~29のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項31】
前記発泡性フェノール樹脂組成物の含水率が、前記発泡性フェノール樹脂組成物の総重量に基づいて約5wt%から12wt%、例えば6wt%から10wt%の範囲にある請求項1~30のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項32】
前記フェノール樹脂の含水率が、前記フェノール樹脂の重量に基づいて約7.5wt%から約14wt%、例えば約10wt%から約14wt%の範囲にある請求項1~31のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項33】
前記フェノール樹脂の粘度が、25℃で測定したときに約2500mPa・sから約18000mPa・s、例えば25℃で測定したときに約2500mPa・sから約16000mPa・s、例えば25℃で測定したときに約4000mPa・sから約8000mPa・sである請求項1~32のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項34】
前記発泡剤が、前記フェノール樹脂の100重量部当たり約1重量部から約20重量部の量で存在する請求項1~33のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項35】
欧州規格EN826に従って測定して約95kPaから約200kPaの範囲の圧縮強さを有する請求項1~34のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項36】
約15kg/mから約60kg/m、例えば約20kg/mから約50kg/m、好適には約24kg/mから約48kg/mの密度を有する請求項1~35のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【請求項37】
前記フェノールフォームが、34.5kg/mから40kg/m、例えば35kg/mから39kg/m、例えば36kg/mから38kg/mの密度を有する請求項1~36のいずれかに記載のフェノールフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノールフォーム及びその製造方法に関する。本発明のフェノールフォームは、優れた断熱性能と組み合わせた、火災に対する優れた反応及び抵抗性能を有する。
【背景技術】
【0002】
パリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命以前のレベルから2℃以上高くないレベルに抑えることを目標としている。この目標を達成するためには、エネルギー消費量の削減が不可欠である。エネルギー効率の高い建物の建設や、既存の建物をエネルギー効率の高いものに改修することは、そのような建物を維持するのに必要なエネルギーを減少させるために必要である。断熱材料は、建物のエネルギー消費要件を削減するための鍵となる。
【0003】
屋根システム、建物パネル、建物ファサード、床システム及び冷蔵の用途を含む無数の用途のために、多種多様な断熱材が市販されている。 所定の用途に最も適当なタイプの断熱製品の選択には、多数の基準、例えば、断熱特性(即ち熱伝導率)、圧縮強さ、寸法安定性、耐水性、防火性能、断熱製品の厚さ、及び断熱製品の予想寿命の評価が含まれる。例えば、真空断熱パネルは、優れた断熱性能と、約20年に及ぶ長い寿命を有する。しかしながら、一般的に言えば、真空断熱パネルはあまり頑丈ではなく、外皮に穴が開いていると、断熱性能が著しく低下する。従って、冷蔵庫等の冷蔵用途で使用されるとき、冷凍機用ライナーで穴あきを防いでいる。中空壁のように、施工時及び/又は使用時に、穴あきの危険性が大きい他の用途では、真空断熱パネルの使用は一般的でない。
【0004】
建築物を建築外皮で包むこと又はファサードは、建築物を自然力から保護し、建築物を断熱する効率的な方法であり、このような建築方法論によって、デザイン表現の範囲が大きくなっている。
【0005】
従って、優れた防火性能を有する断熱材料を使用することは、建物ファサードにおいて非常に得策である。望ましくは、建物ファサードにおける断熱製品は、優れた断熱性能に優れた防火性能を組み合わせるべきである。
【0006】
エアロゲルは、良好な防火性能に優れた断熱性が組み合わされた材料である。しかしながら、これらの製品は、現在はコストが比較的高く、従って、特に建築用途におけるエアロゲルの広範な使用は、現在のところ商業的に実現可能ではない。
【0007】
人工ミネラルウール(MMMW)断熱材料は優れた防火性能を有するが、独立気泡ポリマーフォームは上質の断熱性能を有する。その結果、所定のU値を達成するために、MMMW断熱材料の厚さは、通常独立気泡ポリマーフォームの厚さより著しく大きくなる。
【0008】
ポリウレタン/ポリイソシアヌレート(PUR/PIR)、押出ポリスチレン(XPS)及びフェノールフォーム(PF)のような独立気泡断熱材料は、MMMWと比較して優れた断熱値を提供する。独立気泡ポリマーフォームは、一般に熱伝導率の低い発泡剤を、高分子樹脂又は反応して高分子樹脂を形成するプレポリマー反応物中で膨張させることによって形成される。気泡セルは発泡剤を含んでおり、その低熱伝導性がフォームに優れた断熱性能を付与する。フォームの独立気泡構造が、これらのガスが製品から漏れないことを確実にしている。
【0009】
フェノールフォームの典型的な独立気泡構造の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0010】
歴史的に、フェノール樹脂は、低毒性、低発煙性及び火災状況における自己消火能力が要求される発泡断熱材に使用することが好ましい熱硬化性樹脂である。フェノールフォームは、毒性の点で有害であり得る難燃剤添加物を必要とすることなく、商業的に可能な原価で、優れた防火性能に高い断熱値が組み合わされることが知られている。対照的に、PIRやXPS等のフォームは、防火性能が劣り、そのことが所定の用途におけるそれらの使用を妨げており、他の用途で防火性能の最低基準に適合するためには、有意なレベルの難燃剤の使用が要求される。
【0011】
難燃剤(FR)を使用することによって防火性能の向上を実現できるが、難燃剤の使用は好ましくない場合がある。これは、様々な事柄によるものである。主要な懸念の1つは、難燃剤がフォームに他の望ましくない影響を及ぼし得ることである。
【0012】
例えば、いくつかの難燃剤(FR)、特に液体難燃剤は、フォーム気泡を可塑化させ得る。フォーム気泡を可塑化させることは、特に周囲温度が高いとフォームの圧縮強度を低下させる可能性がある。フォーム気泡を可塑化させることは、フォーム気泡内の低熱伝導率の発泡剤がフォーム気泡から放散し、従ってフォームの熱伝導率に悪影響を及ぼす可能性がある。このような影響は、フェノールフォームと液体難燃剤で経験される。
【0013】
いくつかの固体難燃剤、特に微粒状の難燃剤は、時間の経過とともにフォームの熱伝導率に悪影響を与える傾向がある。これは、特定の難燃剤の化学的性質、および発泡性組成物に添加される難燃剤の量に依存する。
【0014】
いくつかの難燃剤の毒性についても懸念がある。
【0015】
従って、難燃剤を断熱フォームに添加するとき、これは防火性能の改善との間での妥協案として行われるが、防火性能の改善を達成することは断熱性能への悪影響を伴うことを受け入れることであり、また難燃剤の存在のために毒性の懸念があることを受け入れることである。
【0016】
難燃剤の最も重要な化学ファミリーは、臭素、塩素、リン、窒素、アンチモン、特定の金属塩、及び無機水酸化物の水和物をベースとするものである。
【0017】
難燃剤は、燃焼プロセスを抑制し又は鎮圧しさえする。難燃剤は、固相、液相又は気相で化学的及び/又は物理的に作用し得る。それらは、燃焼プロセスの特定の段階の間、例えば材料の加熱、着火、火炎伝播、又は分解中、燃焼を妨害する。
【0018】
発泡剤(可燃性であり得る)は、発泡剤の沸点温度よりも高い温度、例えば100℃以上で、気泡セルから放出されることがあるので、難燃剤はこの温度付近でも機能する必要がある。いくつかの難燃剤、例えばアルミニウム三水和物は、その含有する水和水を放出する分解温度が高く、従って可燃性の発泡剤が、難燃剤の難燃効果が発揮され得る前に放出されることになる。このため、このような難燃剤は、火炎の伝播及び火災への反応を低減させる効果が限定的なものに過ぎない。
【0019】
一般的な難燃剤の多くは臭化化合物である。いくつかの臭素系製品は、環境及び健康に悪影響を及ぼし、現在は世界中の様々な環境への取り組みによって廃止されつつある。従って、このような臭素系難燃剤の使用を必要としない、優れた断熱性能と防火性能を有する代替断熱製品が望ましい。
【0020】
図2は、実際の火災状況における時間の関数としての熱発生の過程を示している。熱発生が燃料制御されている初期の領域が拡大し得る場合、火災における死傷者のリスクを低減することができる。ファサードからなる建築物の場合、ファサードの構造とそこに使用される材料は、火災の成長に大きく影響し得る。
【0021】
断熱材料の防火性能を決定するために、広範な火災試験が開発されている。これらの試験の主な問題は、これらの火災試験の多くにおける材料の性能と、実際の火災における材料の実際の防火性能との相関関係が限定されていることである。その主な理由は、より小規模で熱の強さをシミュレーションすることが非常に困難なことである。標準化された小規模の火災試験の例には、EN13823、ISO 13785-1、ISO 21367、及びPN-B-02867の各規格が含まれる。標準化された大規模の火災試験には、DIN 4102-20,ISO 9705,SP105,BS8414-1,MSZ 14800-6,LePIR-II,JIS A 1310,NFPA 285の各規格が含まれる。
【0022】
独立気泡断熱材料の火災挙動は、2つのカテゴリー、即ち「火災への反応」と「火災に対する抵抗」に分類することができる。第1のカテゴリーは、材料が熱源によって着火した後に火災が伝播する速度の指標である。第2のカテゴリーは、発泡断熱材料を通る火災の伝播に対する抵抗力を示す。
【0023】
独立気泡発泡体が熱源に暴露されると、フォーム気泡内部のガスの温度が上昇することになる。この温度が上昇すると、前記ガスの体積が増加して、気泡内の圧力が上昇し、最終的には、気泡ガスの放出で気泡壁が破裂することになる。
【0024】
気泡ガス中の発泡剤が可燃性であるとき、製品から放出された前記ガスが着火して熱を発生することになる。この効果が火災の伝播を加速し、最初の着火と火災の盛期の間の時間が短縮される。
【0025】
前記気泡壁の破裂は、約100℃を超える温度で起こり始めて、化学フォームマトリックスから可燃性分解ガスの形成を生じさせ得る。
【0026】
可燃性発泡剤の放出、及びそれに続く燃焼は、フォームマトリックスの温度を上昇させ、その分解を加速させる。この結果、火災の伝播速度が増加することになる。
【0027】
ポリウレタン、ポリイソシアヌレート及びフェノール積層フォームは一般に、フェイサーと呼ばれる表面保護層とともに製造される。耐火性フェーサーは、火災の極めて初期段階における気泡ガスの放出を遅らせ得る。フォームコアに付着される気密フェイサーは、火災の中でフォームコアを保護するのに特に有効である。気密フェイサーの例には、(無孔の)アルミニウム箔及び鋼板のフェイサーがある。
【0028】
例えばポリイソシアヌレートフォームの場合、断熱製品の防火性能を向上させるために、厚さ約30μm(場合によっては200μmまで)のアルミニウム箔を、ポリイソシアヌレートフォームコア上のフェイサーとして使用することができる。
【0029】
しかしながら、フェノール樹脂フォームの場合、これらの気密フェイサーは一般に製造工程で使用されないが、その理由は、フェノール樹脂の縮合重合過程で発生する水分を除去して、フォームマトリックス中の空隙(ボイド)の形成を防止することが必要だからである。フォーム製造時に付着される気密フェイサーは、このような水分の除去を妨げることになる。気密フェーサーは、製造過程で水分を除去した後、2次ボンディングによってフェノールフォームに付着させることができる。しかし、これはコスト非効率である。
【0030】
多くの防火性能標準試験方法において、製品は、フェイサーを除去することなく試験される。しかしながら、フェイサーの使用は、限定された熱源/着火源の場合、例えば火が着いているごみ箱の場合に、火災の伝播を防止するのに役立つだけである。より大きくなった火災の伝播を妨げたり止めたりするフェイサーの能力は、限定されている。耐火性に関して、フェイサーは、アルミニウム箔がほんの数秒で燃え尽きることになるので、保護は得られない。
【0031】
ポリマーフォーム上のフェーサーの存在は、小規模な火災試験におけるフォームの性能の結果を、大規模な試験におけるフォームの性能には反映されない程度に、歪めることがある。従って、実際の火災におけるフォーム断熱製品の性能をシミュレーションする最も現実的な方法は、フェイサーを含む完全な断熱製品ではなく、フォームコアを試験することである。フェイサーを含む断熱製品の性能の現実的な評価を得る最も信頼性の高い方法は、おそらく大規模な火災試験を実施することである。これら大規模な火災試験の不利益は、非常に高価であること、及びそのような試験の実施は時間がかかることである。更に、このような試験を実施するための適切な試験リグは、入手可能性が限定されている。
【0032】
実際の防火性能をシミュレーションするために、小規模から大規模まで多種多様な火災試験が用いられている。
【0033】
実験室火災試験の例には、“Cone Calorimeter Heat Release test”(ISO 5660-1)、“Limiting Oxygen Index”(LOI)試験(ISO 4589-2)、“Heat of Combustion”試験(ISO 1716)、及び“Ignitability of Products Subjected to Direct Impingement of Flame test”(ISO 11925-2)がある。
【0034】
これらの実験室規模のほとんどの火災試験に関する問題は、そのような実験室試験で試験される材料の防火性能との相関関係が、大規模火災試験における又は実際に本当の火災状況における実際の防火性能に対して、非常に限定されていることである。第一に、これらの実験のいくつかでは、製品は炎に暴露されず、別の熱源に暴露される。第二に、熱源の出力が実際の火災状況と比べて非常に低いことである。
【0035】
例えば、規格EN ISO 11925-2、”Reaction to fire tests - Ignitability of building products subjected to direct impingement of flame - Part 2: Single-flame source test”の試験方法では、試験される製品が、タバコライターの火炎に匹敵する小さな火炎に暴露される。断熱製品のフォーム、フェーサー及びエッジ部分は、この炎に15~30秒間暴露される。炎の高さは150mm以下にする。この試験では小さな炎が使用されるため、実際の火災状況における製品の性能との対応は限定されている。
【0036】
規格ISO 4589-2の限界酸素指数試験(LOI)では、小さな試験サンプルを垂直なガラスカラムに支持し、該ガラスカラムに既知の組成の酸素/窒素混合物の遅い流れを導入する。前記試験サンプルの上端に点火し、試料を燃焼している間中、観察して、試料の燃焼長を記録する。酸素と窒素の較正された混合物を変化させ、燃焼を正しく維持する最少酸素濃度(パーセントとして)が判明するまで、前記試験を追加の試料で継続する。LOIが高いほど、燃焼性は低い。空気はおおよそ21%の酸素を含んでおり、従ってLOIが21%未満の材料は、おそらく屋外の状況で燃焼を維持する。
【0037】
LOI値は材料の基本的な特性であるが、開放雰囲気での燃焼に対して材料が実際にどのように反応するかについて十分な情報は提供されない。LOI試験は、材料が発火する実際の火災と直接的な関係は無い。LOI試験は、酸素が豊富な(または不十分な)窒素との混合ガス中での消火挙動を研究するだけである。
【0038】
上記に拘わらず、大規模火災試験及び規格EN13823、ISO13785-1、ISO21367及びPN-B-02867のようないくつかの小規模火災試験によって、実際の火災状況における製品の防火性能に関して、より信頼性のある情報が提供される。
【0039】
本当の火災状況における断熱材料の防火性能を評価する特に有用な評価方法は、単一燃焼アイテム(Single Burning Item)(SBI)試験(規格EN13823)である。この試験方法は、火炎伝播長、平均熱発生率(HRRav)、「t」秒後の総熱発生量(THR)、火炎滴下の発生傾向及び煙生成率(SPR)を測定することを含む。この試験手順は、小部屋の壁及び天井に固定された断熱製品の性能をシミュレーションするもので、該小部屋のコーナーにある単一の燃焼着火源は、公称30kWの熱出力である。このバーナーは、部屋のコーナーで燃えている紙屑かごに匹敵する。従って、規格EN13823は、本当の火災状況をシミュレーションして、本当の火災状況における断熱材料の防火性能に関する非常に有益な情報を提供する試験方法である。
【0040】
試料の性能は、20分の暴露時間で評価される。この試験中、熱発生率(HRR)は、酸素消費カロリメトリーを用いて測定される。煙生成率(SPR)は、光の減衰に基づいて排気ダクト内で測定される。試料を熱に暴露する最初の600秒間、火炎滴下又は粒子の落下を目視で観察する。横方向の火炎伝播も測定される。
【0041】
材料の防火性能は、規格EN13823において、平均熱発生率、総熱発生率、平均煙生成率、総煙生成率の閾値が仕様書に定義された基準値を超えた後、火災の成長率及び煙生成率を監視することによって評価される。
【0042】
SBI試験の防火性能分類パラメーターは、火災成長率指数(FIGRA)、横方向火炎伝播(LFS)、及び600秒での総熱発生率(THR600s)である。追加の分類パラメーターは、煙生成について煙成長率指数(SMOGRA)及び600秒における総煙生成率(TSP600s)として、火炎滴下及び粒子について前記試験の最初の600秒間におけるそれらの発生に従って定義される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
SBI試験における独立気泡断熱フォームの性能は特に、試験されているフォーム樹脂の化学的タイプ、フォームに保持されている発泡剤のタイプ、及び難燃剤の有無によって相当異なる。
【0044】
建築材料の防火性能の評価のためのユーロクラスシステムは、建築材料の、その火災に対する反応特性に基づいた7つのクラスへの分類が含まれる。このクラスは、次の通り、即ちA1、A2、B、C、D、E及びFである。前記ユーロクラスシステムは、材料の防火性能を、規格EN ISO 11925-2;EN13823;EN ISO 1716及びEN ISO 1182を含むいくつかの標準試験方法でのそれらの性能に基づいて分類している。ユーロクラス「A」の製品には、有機物をほとんど又は全く含まない無機物及びセラミック製品が含まれる。ユーロクラス「B」の製品の例には、薄いフェーシング材料を使用した石膏ボードが含まれる。独立気泡断熱製品の分類は、それからフォームが形成される有機ポリマー樹脂の性質、発泡剤のタイプ、難燃剤の有無によって変化する。上述したように、フェノールフォームのフェノール樹脂マトリックスは本質的に、燃焼性がポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォームの樹脂マトリックスよりも低い。熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から形成される独立気泡フォームについてユーロクラス「A」分類を達成することは可能でないとしても、ユーロクラス「B」又は最低限でもユーロクラス「C」分類を達成し、優れた断熱性能をも実現する独立気泡フォームを提供することが望ましい。本発明によれば、このような及び他の要望が解決される。
【0045】
この点において、「火災への反応」(燃焼挙動)と「火災への耐性」との間には明確な相違があることに注意することが重要である。特に、良好な「火災反応」特性を備えた材料が、必ずしも良好な「耐火性」を備えているとは限らず、逆もまた同様である。
【0046】
ここで、特定の標準試験について説明するが、両者の相違点は次のように簡単な概念的用語で考えることができる。
【0047】
「耐火性」とは、火災が断熱材料を焼き尽くすのに必要な時間の尺度である。この火災の側面は、火災が室内であり、次の部屋に到達する時間が重要な場合に重要である。 フェノールフォームで断熱された壁で区切られた2つの部屋の例を考える。最初の部屋は燃えており、2番目の部屋に人が居る。壁構造の耐火性によって、壁構造が消滅するまでの時間が決定される。この時間は、人が被害を受けることなく建物を離れる時間を提供することになるので、着目される。
【0048】
しかしながら、「火災への反応」(燃焼挙動)は、火災が広がる速さを示す別の尺度である。火災のこの側面は、火災が伝播する速度である。そこで、ゴミ箱に火が着いて部屋が火災になる例を考える。この部屋に人が居るとき、火の伝播速度を遅くすることは、人に部屋を離れる時間を与えることになるので、重要です。フォーム断熱材に関して、燃焼挙動は非常に重要な特性である。
【0049】
一般的な例として、PIRフォームの耐火性は、製品が非常に緊密な炭化層を形成するので、非常に良好である。しかしながら、燃焼挙動は比較的貧弱である。このため、PIRフォームは例えばファサードには適していないが、燃焼挙動がそれほど重要ではない他の用途、例えば平坦な屋根の用途では、比較的良好な解決手段である。
【0050】
従って、燃焼挙動試験における特性、例えば予防的かつ制限的な特性が改善されたフォーム断熱材を提供することが依然として必要である。本願において、燃焼挙動特性は、SBI特にFIGRA試験によって測定される。
【課題を解決するための手段】
【0051】
或る側面において、本発明によれば、発泡性フェノール樹脂組成物と発泡剤とから形成されたフェノールフォームであって、
前記フェノールフォームの重量に基づいて1~5重量%の赤リンからなり、10kg/mから100kg/mの密度を有し、規格ASTM D6226に従って測定して少なくとも85%の独立気泡含有率を有し、欧州規格EN13823に従って測定して120W/s以下のFIGRA0.2MJを有し、欧州規格EN13166:2012に従って10°Cで0.023W/m.K以下の熱伝導率を有するフェノールフォームが提供される。望ましくは、前記フェノールフォームは、EN 13166:2012に従って、10℃で0.20W/m.K以下の熱伝導率を有する。
【0052】
本発明によれば、ユーロクラス「B」を達成し得る、又は同様に優れた断熱性能を提供する最小限のユーロクラス「C」分類として独立気泡フォームが提供される。これは、防火性能の向上はしばしば上述した断熱性能の喪失を伴うことから、実質的な前進である。
【0053】
赤リンは、難燃剤として機能するだけでなく、ホルムアルデヒド捕捉材としても機能し得る。例えば、本発明のフェノールフォームにおいて、該フォームからのホルムアルデヒドの放出は、同じフェノールフォームで赤リン粒子が該フォーム中に存在しない対照フォームと比較して、最大50%まで低下し得る。このような放出は、欧州規格EN16516.2017に従って試験される。
【0054】
フェノールフォームの製造における発泡剤の使用は、一般に燃焼挙動に関して否定的な要素である。本発明は、非常に有効な難燃剤を含むフェノールフォームに対して、この問題を克服するものである。これは、特定の密度及び/又は特定の含水率との組合せで特にそうである。このようなフォームの燃焼挙動は特に良好である。
【0055】
前記フェノールフォームは、好適には約15kg/mから約60kg/m、例えば約20kg/mから約50kg/m、好適には約24kg/mから約48kg/mの密度を有する。特に、例えば34.5g/mから40kg/m、例えば35kg/mから39kg/m、例えば36kg/mから38kg/mの密度を有するフォームによって、例えば燃焼挙動に関して望ましい防火性能が得られることが分かった。このような密度によって、望ましい防火性能、例えば欧州規格EN13823に従って測定したとき120W/s以下のFIGRA0.2MJが得られる。
【0056】
前記フェノールフォームは、好適には約15kg/mから約60kg/m、例えば約20kg/mから約50kg/m、好適には約24kg/mから約48kg/mの密度を有する。特に、例えば34.5g/mから40kg/m、例えば35kg/mから39kg/m、例えば36kg/mから38kg/mの密度を有するフォームによって、例えば燃焼挙動に関して望ましい防火性能が得られることが分かった。このような密度によって、望ましい防火性能、例えば欧州規格EN13823に従って測定したとき120W/s以下のFIGRA0.2MJが得られる。
【0057】
本発明のフェノールフォームは、硬化したフェノールフォームの100重量部に基づいて2~5重量部の赤リンを含み得る。例えば、硬化したフェノールフォームの100重量部に基づいて3~4重量部の赤リンを含むことができる。
【0058】
前記発泡剤は、少なくとも1種の飽和または不飽和C-C炭化水素と、1つまたは2つ以上のフッ素及び塩素によって少なくとも1度置換された、例えばイソプロピルクロリドである少なくとも1種の飽和または不飽和C-C炭化水素の、少なくとも1つを含み得る。
【0059】
望ましくは、前記発泡剤が、イソプロピルクロリド、または、例えばイソペンタンであるペンタンなどの飽和C-C炭化水素の、少なくとも1つからなる。
【0060】
本発明のフェノールフォームは、欧州規格EN13823に従って測定したとき110W/s以下、例えば100W/s以下、例えば90W/s以下のFIGRA0.2MJを有する。
【0061】
本発明のフェノールフォームは、該フェノールフォームの100重量部に基づいて2~4重量部の赤リンを含み得る。フェノールフォームと言及することは全て、そうでないと記載されていない限り、硬化した最終製品に言及したものである。
【0062】
望ましくは、前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィンまたは塩素化ハイドロフルオロオレフィンの少なくとも1つを含む。
【0063】
前記発泡剤は、少なくとも1種の飽和または不飽和C-C炭化水素と、1つまたは2つ以上のフッ素及び塩素によって少なくとも1度置換された、例えばイソプロピルクロリドである少なくとも1種の飽和または不飽和C-C化合物の、少なくとも1つを含み得る。
【0064】
例えば、前記発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンまたは塩素化ハイドロフルオロオレフィンの少なくとも1つと、例えばイソペンタンであるペンタン等のC-C炭化水素との混合物を含み得る。
【0065】
本発明のフェノールフォームは、欧州規格EN13823に従って測定したとき100W/s以下、例えば90W/s以下、又は80W/s以下、又は70W/s以下のFIGRA0.2MJを有し得る。
【0066】
本発明のフェノールフォームは、少なくとも95kPaの圧縮強さを有することが望ましい。
【0067】
本発明のフォームにおいて、前記赤リンが粒子状、例えば微粉状であることが望ましい。例えば、前記赤リンは、例えば走査型電子顕微鏡で観察すると数平均粒子径が0.5μmから10μmの範囲にある粒子状であってよい。フェノールフォームの、赤リンがその中に分散し、上述した数平均粒子径を有し、上述した量で存在する代表SEM画像である図5を参照。
【0068】
望ましくは、前記少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィン及び前記少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィンのそれぞれが、10°Cで0.0135W/m.K以下の熱伝導率を有する。
【0069】
本発明によれば、大きな毒性の懸念がない難燃剤を組み入れ、フォームの防火性能を改善しかつ断熱性能を妥協しないフォームが提供される。赤リンは、気相及び凝縮相の両方で同時に機能することができる。
【0070】
驚くことに、界面活性剤、酸触媒及び発泡剤の添加前にフェノール樹脂に事前に分散させた粒径0.5~10μmの、2~5重量%の赤リンの存在が、フォームの安定した熱伝導率を維持しつつ、火災成長率(FIGRA)を減少させることが分かった。赤リンは、経口毒性が比較的低く、ラットでのLD50が15,000mg/kgである。
【0071】
前記赤リンは、その表面にコーティング層があって良い。前記赤リンは、金属酸化物及び/又は金属水酸化物及び/又は樹脂からなるコーティング層を有し得る。好適には、前記コーティングは、フェノールホルムアルデヒド樹脂のようなフェノール樹脂を含み得る。好適には、前記コーティングは、水酸化アルミニウムを含み得る。望ましくは、前記赤リンは、フェノールホルムアルデヒド及び/又は水酸化アルミニウムからなるコーティング層を有する。本発明において、使用される赤リンは、様々なコーティングを有し得るが、好ましいコーティングは、以下の実施例の赤リン上にあるものを含めて、フェノールホルムアルデヒド及び/又は水酸化アルミニウムである。
【0072】
好適には、前記少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィン及び前記少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィンのそれぞれが、0.0125W/m.K以下の熱伝導率を有する。例えば、前記少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィン及び前記少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィンのそれぞれが、25°Cで0.0125W/m.K以下の熱伝導率を有する。
【0073】
前記フェノールフォームは、欧州規格EN13823に従って測定したときに7.5MJ以下、例えば7.0MJ以下、又は6.5MJ以下、又は6.25MJ以下、又は6.0MJ以下、又は5.75MJ以下、又は5.5MJ以下、又は5.25MJ以下、又は5.15MJ以下、又は5.0MJ以下、又は4.8MJ以下、又は4.6MJ以下、又は4.4MJ以下の総熱発生率を有し得る。
【0074】
前記フェノールフォームは、望ましくは、規格ASTM D6226に従って測定したときに90%以上、例えば95%以上、好ましくは98%以上である独立気泡含有率を有する。
【0075】
前記フェノールフォームの前記気泡は、平均気泡径が50~250μmの範囲、好適には80~180μmの範囲であって良い。
【0076】
好適には、前記フェノールフォームの熱伝導率が、欧州規格EN13166:2012に従って10°Cの平均温度で測定したとき0.020W/m.K以下、好適には0.018W/m.K以下、望ましくは、0.0175W/m.K以下、又は0.0170W/m.K以下、又は0.0165W/m.K以下、又は0.0162W/m.K以下である。
【0077】
前記フェノールフォームは、規格ISO 4589-2に従って測定して34%以上、好ましくは35%以上、好適には36%以上、例えば37%以上の限界酸素指数を有し得る。
【0078】
好適には、前記フェノールフォームが、規格ISO 4589-2-"Thermal insulating products for building applications: conditioning to moisture equilibrium under specified temperature and humidity conditions"に従って測定して34%以上、任意には35%以上、好適には36%以上、例えば37%以上の限界酸素指数を有する。
【0079】
安定含水率が5%を超える場合には、フォームの熱伝導率が適用の経時と共に増加する危険がある。安定含水率が3%未満である場合、FIGRAは増加し得る。従って、フェノールフォームの最適な安定含水率は、その断熱用途において長期間に亘って低熱伝導率を妥協することなく低いFIGRAが得られる補助となり得る。
【0080】
前記少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィンは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)と1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)から選択され得る。
【0081】
前記HCFO-1233zdは、E異性体若しくはZ異性体、又はそれらの混合物であって良く、即ち前記HCFO-1233zdは、HCFO-1233zd(E)、HFCO-1233zd(Z)又はそれらの混合物であって良い。例えば、前記HCFO-1233zdは、90重量%以上(例えば、95重量%以上)のHCFO-1233zd(E)からなり得、又は前記HCFO-1233zdは、90重量%以上(例えば、95重量%以上)のHFCO-1233zd(Z)からなり得る。望ましくは、前記HCFO-1233zdは、95重量%以上のHCFO-1233zd(E)からなる。
【0082】
前記HCFO-1224ydは、E異性体若しくはZ異性体、又はそれらの混合物であって良く、即ち前記HCFO-1224ydは、HCFO-1224yd(E)、HFCO-1224zd(Z)又はそれらの混合物であって良い。例えば、前記HCFO-1224ydは、90重量%以上(例えば、95重量%以上)のHCFO-1224yd(E)からなり得、又は前記HCFO-1224ydは、90重量%以上(例えば、95重量%以上)のHFCO-1224yd(Z)からなり得る。望ましくは、前記HCFO-1224ydは、95重量%以上のHFCO-1224yd(Z)からなる。
【0083】
前記少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィンは、望ましくは1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)からなる。前記HFO-1336mzzは、E異性体若しくはZ異性体、又はそれらの混合物であって良く、即ち前記HFO-1336mzzは、HFO-1336mzz(E)、HFO-1336mzz(Z)又はそれらの混合物であって良い。例えば、前記HFO-1336mzzは、90重量%以上(例えば、95重量%以上)のHFO-1336mzz(E)からなり得、又は前記HFO-1336mzzは、90重量%以上(例えば、95重量%以上)のHFO-1336mzz(Z)からなり得る。望ましくは、前記HFO-1336mzzは、95重量%以上のHFO-1336mzz(Z)からなる。前記少なくとも1種のハロゲン化アルキルは、例えばイソプロピルクロリドからなり得る。
【0084】
前記少なくとも1種の(飽和)C-C炭化水素は、例えばイソブタンであるブタン、及び/又は、望ましくはイソペンタンであるペンタンからなり得る。
【0085】
前記少なくとも1種の(不飽和)C-C炭化水素は、ブテン及び/又はペンテンからなり得る。
【0086】
好適には、使用される各発泡剤が、25℃で0.0125W/m.K以下の熱伝導率を有する。発泡剤の混合物を使用する場合には、該混合物中の1つまたは2つ以上の発泡剤が、25℃で0.0125W/m.K以下の熱伝導率を有しないことがあり得る。そのような場合、使用される前記混合物の熱伝導率が、25℃で0.0125W/m.K以下であることが望ましい。
【0087】
好適には、それぞれが25℃で0.0125W//m.K以下の熱伝導率を有する前記少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィン若しくは少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィン又は前記少なくとも1種のハロゲン化アルキル又は前記少なくとも1種の塩素化アルケンと、前記少なくとも1種のC-C炭化水素が混合される。例えば、前記発泡剤の構成成分、即ち前記少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィン、前記少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィン、前記少なくとも1種のハロゲン化アルキル、又は前記少なくとも1種の塩素化アルケンと、前記少なくとも1種のC-C炭化水素とは、前記フェノール樹脂と混合する前にブレンドすることができる。
【0088】
また、本発明によれば、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡させかつ硬化させることによって形成されるフェノールフォームであって、前記発泡性フェノール樹脂組成物がフェノール樹脂、界面活性剤、酸触媒、発泡剤、及び前記フェノールフォームの重量に基づいて2~5重量%の赤リンからなり、前記フェノールフォームが、10kg/mから100kg/mの密度、規格ASTM D6226に従って測定して少なくとも85%の独立気泡含有率を有し、前記フェノールフォームが、欧州規格EN13823に従って測定したとき120W/s以下(例えば110W/s以下、又は100W/s以下、又は95W/s以下、又は90W/s以下、又は85W/s以下)のFIGRA0.2MJを有し、前記フェノールフォームが、欧州規格EN13166:2012に従って10°Cで0.023W/m.K以下の熱伝導率を有するフェノールフォームが提供される。
【0089】
前記発泡剤は、少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィン及び少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなり得、前記発泡剤は更に少なくとも1種のC-C炭化水素からなり得る。
【0090】
前記少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィンは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)及び/又は1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)からなる得る。
【0091】
前記少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィンは、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)からなり得る。
【0092】
前記少なくとも1種のC-C炭化水素は、好ましくはイソブタンであるブタン、及び/又は、好ましくはイソペンタンであるペンタンからなり得る。
【0093】
好適には、前記発泡剤が、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及び/又は1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンと1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンとからなる。
【0094】
前記フェノール樹脂は好適には、約700から約2000の重量平均分子量を有し、かつ/又は、前記フェノール樹脂の数平均分子量が約330から約800、例えば約350から約700である。
【0095】
好適には、前記フェノール樹脂のフェノール基のアルデヒド基に対するモル比が約1:1から約1:3、好適には約1:1.5から約1:2.3の範囲にある。前記フェノールは、クレゾールのような置換フェノールであって良い。天然に存在するフェノール高分子を含めて天然に存在するフェノール類を用いることができる。グリオキサールのようなジアルデヒド類を含めて他のアルデヒド類を用いることができる。上記モル比は、アルデヒド官能性を考慮して調整することができる。
【0096】
前記フェノール樹脂発泡性組成物の含水率は、前記フェノール樹脂発泡性組成物の総重量に基づいて約5wt%から12wt%、例えば5wt%から10wt%、例えば7~10wt%の範囲にすることができる。
【0097】
本発明の前記フェノール樹脂発泡性組成物を形成するのに使用する前記フェノール樹脂は、即ちその未硬化状態において、含水率が約7.5wt%から約14wt%の範囲にあって良い。
【0098】
前記フェノール樹脂の粘度は、25℃で測定したときに約2500mPa・sから約18000mPa・s、例えば25℃で測定したときに約3500mPa・sから約16000mPa・s、例えば25℃で測定したときに約4000mPa・sから約8000mPa・sとすることができる。
【0099】
前記発泡剤は、好適には、前記フェノール樹脂の100重量部当たり約5~約20重量部の量で存在する。
【0100】
本発明のフェノールフォームは、更に無機質フィラーを含むことができる。例えば、炭酸カルシウムを、フィラーとしてかつ/又はpHを高めるべく、追加することができる。前記フェノールフォームの高いpH値は、例えば前記フェノールフォームに接触する金属材料の腐食の危険が減少するという利益と併せて、残留酸を確実に少なくする。炭酸カルシウムは、本発明のフェノールフォームを形成する発泡性組成物に添加することができる。
【0101】
本発明は、硬化したフェノールフォームの100重量部に存在する2~5重量部の微粉化した(粒径0.5μm~10μm)赤リン難燃剤を含み、それが、優れた耐火特性と、FIGRA (0.2MJ threshold) <150W/sとSMOGRA<20m/sで定義される低発煙量、安定な断熱性能(<0.023W/m.K)、及び高い独立気泡含有率(>85%)とを有するフォーム断熱製品をもたらすフェノールフォームに関する。本発明の別の側面は、前記フェノールフォームの100重量部に存在する2~5重量部の微粉化した(粒径0.5μm~10μm)赤リン難燃剤の存在が、フェノールフォーム品からのホルムアルデヒドの放散が規格EN717-1/EN16516/ISO16000-11によって測定して30~60%減少するフェノールフォーム断熱製品をもたらすことである。
【0102】
前記フェノールフォームの圧縮強さは、欧州規格EN826に従って測定して約95kPaから約200kPaの範囲であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1図1は、独立気泡フェノールフォームの走査電子顕微鏡写真を示す。
図2図2は、実際の火災の状況で時間の関数として熱発生の進行を示す。
図3図3は、欧州規格EN13823のSBI試験のセットアップを示す概略図である。
図4図4は、3つの異なる重量比の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)とイソペンタンとの混合物でブローしたフェノールフォームの熱伝導率(ラムダ値)への温度の影響を示す。
図5図5は、フェノールフォームの、赤リンがその中に分散し、上述した数平均粒子径を有し、上述した量で存在する代表SEM画像である。このフェノールフォームは以下の実施例3と同じものである。1-
【発明を実施するための形態】
【0104】
[定義]
「A、B、C及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のX」の表現は、Xが、「少なくとも1種のA」又は「少なくとも1種のB」又は「少なくとも1種のC」を含み、又は「少なくとも1種のBと組み合わせた少なくとも1種のA」、又は「少なくとも1種のCと組み合わせた少なくとも1種のA」、又は「少なくとも1種のCと組み合わせた少なくとも1種のB」、又は「少なくとも1種のB及び少なくとも1種のCと組み合わせた少なくとも1種のA」を含むように定義される。
【0105】
「YはA、B、C及びそれらの組み合わせから選択し得る」の表現は、YがA、又はB、又はC、又はA+B、又はA+C、又はB+C、又はA+B+Cであり得ることを含む。
【0106】
「発泡剤」の用語は、フォームを形成するための発泡性組成物をブローするのに使用される推進剤として定義される。例えば、発泡剤は、樹脂をブロー/膨張させてフォームを形成するのに使用することができる。
【0107】
[特性]
フェノールフォームの物理的特性を測定するための適当な試験方法を以下に説明する。
(i)フォーム密度
これは、欧州規格BS EN 1602:2013-“Thermal insulating products for building applications - Determination of the apparent density”に従って測定した。
(ii)フォームの熱伝導率
長さ300mm、幅300mmのフォーム試験片を熱伝導率試験装置(Inventech Benelux BV社製、LaserComp Type FOX314/ASF)内に、20℃の高温プレートと0℃の低温プレートとの間に配置した。前記試験片の熱伝導率(TC)を欧州規格EN 12667:“Thermal performance of building materials and products - Determination of thermal resistance by means of guarded hot plate and heat flow meter methods, Products of high and medium thermal resistance”に従って測定した。
(iii)加速エージング(老化)後のフォームの熱伝導率
これは、欧州規格BS EN 13166:2012-“Thermal insulation products for buildings - Factory made products of phenolic foam (PF)”-Specification Annex C section 4.2.3を用いて測定した。熱伝導率は、フォームサンプルを25週間70℃に曝露し、かつ23℃、相対湿度50%で一定重量への安定化後に測定する。この熱エージングは、環境温度で25年の期間に亘る推定熱伝導率を提供する役割を果たす。これに代えて、経時熱伝導率は、フォームサンプルを2週間110℃に曝露し、かつ23℃、相対湿度50%で一定重量への安定化後に測定することができる。
(iv)pH
pHは、欧州規格BS EN13468に従って測定した。
(v)独立気泡含有率
独立気泡含有率は、ガスピクノメトリーを用いて測定することができる。好適には、独立気泡含有率は、規格ASTM D6226の試験方法に従って測定することができる。
(vi)フォームの脆弱性
脆弱性は、規格ASTM C421-08(2014)の試験方法に従って測定する。
(vii)フォームの画像化
フォーム片を一方のコーティング面から他方のコーティング面に向けておおよそ20mm×10mmを計ってざっと切り出した。このフォーム片から表面をカミソリ刃でおおよそ8mm平方までトリムした。次に、前記フォームを鋭くスナップしてきれいな面を出現させ、前記サンプルのほとんどを取り除いて薄い(~1mm)断片を残した。この断片を、両面導電性粘着タブを用いてアルミニウムのサンプルスタブ上に固定した。
前記サンプルは次に、イオンスパッタ装置Bio-Rad SC500を用いて、薄い(~2.5オングストローム(0.25nm))金/パラジウムの導電被膜を付与した。前記サンプルをコーティングする理由は、(a)導電面を付加して電荷を取り除くこと、及び(b)密度を高めて画像をより鋭くすることである。この研究に係る拡大率では、前記コーティングの影響は無視できる。
前記サンプルは、次の条件、即ち加速電圧10kV、作動距離~10mm、スポットサイズ4で走査電子顕微鏡FEI XL30 ESEM FEGと二次電子検出器とを用いて画像化した。画像は、次の拡大率、即ち×350、×1200、及び×5000で保存し、.tiffファイルとしてディスクに保存した。拡大率x350での画像によって、気泡の一般的なサイズ分布が示され、より高い拡大率×1200及び×5000によって、気泡表面の性状が示される。
両サンプルについて拡大率×350で獲得される画像は、一般に~100から200μmのサイズ範囲で示される。電子顕微鏡による評価のためのフォームサンプルの調製において、フォームサンプルの手作業でのスナッピング(パキッと折る)-検査する表面を形成する-は、気泡壁にいくらかの損傷を与える場合がある。
拡大率×1200及び×5000で集められた画像は、実質的に欠陥や穴が無い。
(viii)平均気泡直径
フォームの平坦な部分は、フォームボードの上面及び下面と平行をなす方向にフォームボードの厚さの中間部分を薄く切ることによって得られる。フォームの切断断面で50倍に拡大したコピー写真が得られる。前記コピー写真上に長さ9mmの直線を4本引く。規格JIS K6402の試験方法に従って、各直線上に存在する気泡の数を数えて気泡数の平均数を決定する。この平均数で割って、平均気泡直径は1800μmとされる。
(ix)樹脂の粘度
本発明のフォームの製造で使用される樹脂の粘度は、当業者に公知の方法で、例えば温度制御水槽を備えたブルックフィールド型粘度計(モデルDV-II+Pro)を用いて、サンプル温度を25℃に維持し、20rpmで回転するスピンドル番号S29又は適切な回転速度とスピンドルタイプ又は適当な試験温度で、粘度の読取精度において 許容される中間トルクを維持して、測定した。
(x)フェノール樹脂の%含水率
無水エタノール(Honeywell Speciality Chemicals社による製造)に、前記フェノール樹脂を25質量%から75質量%の範囲で溶解させた。この溶液について測定した水分量から、前記フェノール樹脂の含水率を計算した。測定に使用した器具は、Metrohm 870 KF Titrino Plusであった。前記水分量の測定のために、Honeywell Speciality Chemicals社により製造されたHydranal(登録商標)Composite 5をカールフィッシャー試薬として、Honeywell Speciality Chemicals社により製造されたHydranal(登録商標)Methanol Rapidをカールフィッシャー滴定に用いた。カールフィッシャー試薬の滴定量の測定のために、Honeywell Speciality Chemicals社により製造されたHydranal(登録商標)Water Standard 10.0を用いた。測定した前記水分量は、前記装置に設定された方法のTiter IPolによって決定した。
(xi)フェノールフォーム中のリン濃度
フェノールフォーム中のリンの濃度は、あらゆる適当な分析方法によって測定することができる。フェノールフォーム中のリンの濃度を測定する1つの方法は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP-OES)の使用である。ICP-OESによってリンの濃度を測定する手順は次のとおりである。
使用前に、全てのガラス製品及びプラスチック製品を1.5Mの塩酸で一晩酸洗浄し、その後にMilliQ(登録商標)(1級脱イオン水)でリンスした。全試薬は、Primar Plus Trace Metal Grade(Fisher Scientific社)であった。断片化したフォームサンプルをオーブン内で1時間70℃で乾燥させた後、乾燥器内で冷却した。フォームを0.1g(±0.01g)計って55mlのテフロン(登録商標)高周波分解チューブに入れた。前記チューブには、4.5mlの68%硝酸、1mlの37%塩酸及び0.5mlの30%過酸化水素を加えて、前記サンプルを10分間反応させ、発泡を収まらせた。前記サンプルのレプリカと上記試薬を含むがフォームを含まない操作ブランク(procedural blank)を並行して処理した。前記チューブはPTFE圧力シールで封をし、栓をして、サンプルカルーセルを備えたCEM Mars 5高周波分解システムに移した。高周波分解装置を10分間で190℃に加熱し、更に15分間190℃に維持した後、室温まで冷却した。分解したサンプルを15mlの遠心管に移し、その後1mlのアリコートを4mlのMilliQ水で希釈して、酸濃度20%の溶液にする。次に、この溶液のアリコートを酸性度2%に希釈し、0.45μmの界面活性剤フリーのセルロースアセテートフィルターを通して濾過した。濾過したサンプルは、リンについてThermo ICAP Duo ICP 6300 ICP-OES元素分析装置で処理した。この機器は、7点較正を用いて0.5-20mg/Lの範囲で較正した。
機器の精度は、同じサンプルの3回注入によって測定し、相対標準は平均値の0.244%となることが分かった。全サンプルをブランク補正し、その結果は次のとおりであった。
【0108】
【表A】
【0109】
(xii)フォームの防火性能
規格EN13823のSBI試験のセットアップ(設備)の概略を図3に示す。試験サンプルは、垂直な90°のコーナーを形成するように据え付けられた2つの壁部(試験されるべき材料で形成)から構成される。前記壁部の寸法は次の通りである。
短壁-高さ1.5m×長さ0.5m
長壁-高さ1.5m×長さ1.0m
【0110】
プロパンバーナーを前記見本によって形成された前記コーナーの土台部に、前記バーナーの縁と前記見本の下縁との間を水平方向に40mm離して配置する。
【0111】
空気流抽出の速度を0.6m/sに設定する。サンプリングプローブを抽出ダクト内に取り付けて、通過する燃焼放出ガスのCO及びOの濃度を測定する。熱発生率は、酸素消費法によって連続的に計算する。排気ダクトを通過する燃焼排出物中の煙によって引き起こされる光のオブスキュレーションを、白色光ランプ及び光電池システムによって測定する。
【0112】
試験手順の当初に、基準データ(例えば、前記試験セットアップの様々な位置での温度)を3分間記録する。次に前記バーナーを着火し、30kWの火炎を前記試験見本に21分間当てる。前記見本の性能は、20分の時間に亘って評価する。
【0113】
火災成長速度(FIGRA)指数は、時間の関数としての平均熱発生の商の最大値として定義される。
【数1】
FIGRAは、1秒当たりワット数での火災成長速度指数。
HRRav(t)は、キロワット数での熱発生率HRR(t)の平均値。
HRR(t)は、時間tにおけるキロワット数での見本の熱発生率。
Max.[a(t)]は、所定の期間内でa(t)の最大値。
注記:その結果、総試験時間の間に3kW以下のHRRav値又は総試験時間に亘って0.2MJ以下のTHR値を有する見本は、FIGRA0.2MJが0(ゼロ)に等しい。総試験時間の間3kW以下のHRRav値又は総試験時間に亘って0.4MJ以下のTHR値を有する見本は、FIGRA0.4MJがゼロに等しい。
【0114】
前記商は、HRRav及びTHRの閾値を超えている前記暴露時間の部分についてのみ計算される。前記暴露時間の間、FIGRA指数の一方又は両方の閾値を超えられない場合、そのFIGRA指数はゼロに等しい。FIGRA0.2MJとFIGRA0.4MJとなる2つの異なるTHR閾値が使用される。前記閾値を超えられる時(時機)は、次のように定義される。
(a)HRRav>3kWであるt=300s後の第1の時
(b)THR>0.2MJかつ/又はTHR>0.4MJであるt=300s後の第1の時
【0115】
総熱発生(THR)は、前記バーナーの着火後、最初の10分間(THR600s)測定される。
【0116】
規格EN13823は、煙成長速度指数(SMOGRA)を時間の関数として平均煙生成速度の商の最大値として定義している。前記商は、平均煙生成速度SPRav及び総煙生成速度TSPの閾値を超えている前記暴露時間の部分についてのみ計算される。SMOGRAは、前記暴露時間の間、一方又は両方の閾値を超えられない場合、ゼロに等しい。
【数2】
SMOGRAは、1秒当たり平方メートル数での煙成長速度指数。
SPRav(t)は、1秒当たり平方メートル数での見本の平均煙生成速度SPR(t)。
SPR(t)は、1秒当たり平方メートル数での見本の煙生成速度。
max.[a(t)]は、所定の期間内でa(t)の最大値。
TSP(t)は、300s≦t≦900s内の前記暴露時間の最初の600sにおける見本の総煙生成量 (m2)
注記:その結果、総試験時間の間0.1m/s以下のSPRav値又は総試験時間に亘って6m以下のTHR値を有する見本は、SMOGRA値が0(ゼロ)に等しい。
【0117】
前記閾値を超えられる時(時機)は、次のように定義される。
(a)SPRav>0.1m/sであるt=300s後の第1の時
(b)「t」が300sから1500sの間にあるとき、TSP(t)>6m
【0118】
SMOGRA指数は、前記試験の全期間の間に測定される。総煙生成量TSP600は、バーナー着火後最初の10分間(即ち、300秒から900秒の間)に亘って測定される。
【0119】
以上説明したように、前記SBI試験は、部屋のコーナーで紙くずかごに発生する火災に匹敵する。
【0120】
規格EN13823に従って試験された様々な市販のフォーム断熱材料の防火性能の例を表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
フォームコアについての試験の前に、前記フォームサンプルは、欧州規格EN13823に従って23℃相対湿度50%で条件付けし、次にフォーム表面からフェーサーをできる限り注意深く剥ぎ取った。非常に細かい研磨紙で研磨することによって残存する全てのフェーサーを注意深く取り除く。
【0123】
フェノールフォームは、一般にあらゆるフォーム断熱製品の中で最高の耐火度(等級)を有する。フォームの難燃性は、該フォームを膨張させるのに使用されかつフォームの気泡内に留まっている発泡剤の性質に影響されるものである。上述したように、フォームの断熱性能もまた、発泡剤及びその熱伝導率に大きく依存する。クロロフルオロカーボン類(CFC類)及びハイドロフルオロカーボン類(HFC類)は、低熱伝導率と優れた防火性能との非常に望ましい組合せを有する等級の発泡剤を代表している。しかしながら、このような発泡剤の使用は、否定的な環境影響を有する、特にそのオゾン層破壊係数が高くかつ地球温暖化係数が高いために、行われなくなりつつある。炭化水素発泡剤は、その環境影響が低く、CFC類及びHFC類に代替の発泡剤として使用されているが、炭化水素類は本質的に熱伝導率がCFC類及びHFC類よりも高い。最近10年に亘って、ハイドロフルオロオレフィン類及び塩素化ハイドロフルオロオレフィン類が、低熱伝導率と良好な防火性能と低い環境影響とが組み合わされた等級の発泡剤として出現している。
【0124】
ハイドロフルオロオレフィン類(HFO類)とハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFC類)は、不飽和の短鎖ハロオレフィン類であり、その超低GWP(地球温暖化係数)とゼロODP(オゾン層破壊係数)によって、フォーム発泡剤としての飽和ハイドロフルオロカーボン類(HFC類)の代替物として導入されている。
【0125】
HFO類(ハイドロフルオロオレフィン類)及びハイドロクロロフルオロオレフィン類(HCFO類)の導入によって、今では或る範囲の発泡剤が防火性能を改善するのに利用可能である。これら特定の発泡剤の主要な利点は、その気相での低熱伝導率と好ましい環境性能とである。
【0126】
HCFO類はまた、その気相での低熱伝導率、及びフェノール樹脂に対応する溶解性によって、発泡剤として好ましい。
【0127】
HFO類は、気相での熱伝導率値がHCFO類よりも僅かに高い傾向がある。
【0128】
以下の表2は、本発明において言及される主な発泡剤の大要を説明している。
【0129】
【表2】
【0130】
フォームを製造するときにどの発泡剤を使用するかを考える際、フォームの最終用途を考慮しなければならず、一般に、発泡剤の特性を最終用途に合わせなければならない。与えられた発泡剤の、選択の課程で考慮し得る特性には、気相での熱伝導率、沸点、化学マトリックスとの適合性、燃焼性、毒性、及び価格が含まれる。
【0131】
最も重要な基準の1つが、各発泡剤成分(comp)の熱伝導率(即ち、ラムダ)である。成分Aと成分Bとを含む二成分混合ガスの断熱数値を評価する簡単なモデルを次に示す。
【数3】
ここで、
λmixは、発泡剤成分A及びBの混合物の熱伝導率である。
λcomp Aは、発泡剤成分Aの熱伝導率である。
λcomp Bは、発泡剤成分Bの熱伝導率である。
comp Aは、発泡剤混合物中の成分Aの重量分率である。
comp Bは、発泡剤混合物中の成分Bの重量分率である。
【0132】
このモデルはまた、最初に発泡剤の混合物中の2成分の熱伝導率を計算し、次に2成分混合物のλmixを、前記2成分混合物の第3の発泡剤との混合物についてのラムダ入力値として使用することによって、より複合的な発泡剤混合物の熱伝導率を評価することにも用いることができる。
【0133】
フォーム気泡内部の気泡ガスは、フォームの温度が発泡剤の沸点又はそれより低いとき、凝縮し始める場合がある。欧州規格EN 12667に従ったフォームのラムダ測定のための基準平均温度(Tmean)は、例えば10℃である。熱流量計内で、前記プレートの温度設定は、このTmeanより10℃高い温度及び低い温度である。気泡ガスが凝縮し始める温度点は、製品の熱伝導率に重要な影響を与えることになる。
【0134】
図4は、3つの異なる重量比の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)とイソペンタンとの混合物でブローしたフェノールフォームの熱伝導率への温度の影響を示している。
【0135】
発泡剤は一般に、使用時のフォームの気泡内での凝縮を防止するために、10℃より高い温度での凝縮を回避することを図って選択される。凝縮は、絶縁性能の低下を生じさせる。
【0136】
発泡剤はまた、燃焼性の点から分類することもできる。規格ISO817は、発泡剤を燃焼性の点から分類している。
【0137】
【表3】
【0138】
発泡剤の燃焼性のレベル(1,2L,2,及び3)を特徴付ける主なパラメーターがいくつかあり、それには、燃焼速度(BV)、可燃上限界並びに可燃下限界(UFL並びにLFL)、最小着火エネルギー(MIE)、及び燃焼熱(HOC)が含まれる。
1)BV、燃焼速度:火炎が伝播する速度である。
2)LFL、可燃下限界:ガス又は蒸気と空気の均質な混合物内で火炎を伝播させ得る当該ガス又は蒸気の最小濃度である。
3)UFL、可燃上限界:ガス又は蒸気と空気の均質な混合物内で火炎を伝播させ得る当該ガス又は蒸気の最大濃度である。
4)MIE、最小着火エネルギー:ガス又は蒸気の着火を開始させるのに着火源(例えば、火花又は裸火)にエネルギーがどれくらい必要かを示す。
5)HOC、燃焼熱:特定量の物質が標準状態で完全燃焼するとき、熱として放出されるエネルギーである。
【0139】
クラス3発泡剤は、クラス2L発泡剤よりも有意に低いLFLと有意に高いBVとを有するものである。従って、HCFO類及びHFO類のフェノール樹脂における発泡剤としての使用は、優れた防火性能を有する絶縁製品の製造を容易にするはずである。本願発明者らは、驚くべきことに事実はそうでないことを見出した。
【0140】
本願発明者らは、赤リンを発泡性フェノール樹脂混合物中に事前分散させたフェノールフォーム内の様々な発泡剤を準備しかつその防火性能と熱伝導率とを調査し、驚くほど優れた熱伝導率値及び防火性能を有する断熱フェノールフォームを形成するのに使用し得る特定の発泡剤を見出した。この効果は、本明細書中に記載される様々な発泡剤について及び特に本明細書中に記載される発泡剤の三元混合物に関連して認められる。
【0141】
樹脂の調製
樹脂Aの調製
反応槽に、重量基準(pbw=重量部)で、20℃で50.0pbwのフェノール、1~4pbwの水、及び0.9±0.2pbwの50%水酸化カリウムを加えた。温度を70~76℃に上げ、35±2pbwの91%パラホルムアルデヒドをゆっくりと1~3時間掛けて加えて、反応発熱線の熱を放散させた。次に温度を82~85℃の範囲に上げ、その温度範囲に、樹脂の粘度が7500mPa・s±1500mPa・sに至るまで維持した。0.3pbwの90%蟻酸を加えてpHを中和させつつ、冷却を開始した。温度を60℃未満まで低下させると、次の品目、即ち2~6pbwのポリエステルポリオール可塑剤、及び3~6pbwの尿素を順次加えた。尿素が溶解すると、次に2~5pbwのエトキシル化ひまし油(界面活性剤)を30~40℃で加えた。得られたフェノール樹脂組成物は、10~13wt%の水分、4wt%未満の遊離フェノール、及び1wt%未満の遊離ホルムアルデヒドを含んでいた。
樹脂Pの調製
反応槽に、重量基準(pbw=重量部)で、20℃で50.0pbwのフェノール、1~4pbwの水、及び0.9±0.2pbwの50%水酸化カリウムを加えた。温度を70~76℃に上げ、35±2pbwの91%パラホルムアルデヒドをゆっくりと1~3時間掛けて加えて、反応発熱線の熱を放散させた。次に温度を82~85℃の範囲に上げ、その温度範囲に、樹脂の粘度が7500mPa・s±1500mPa・sに至るまで維持した。0.3pbwの90%蟻酸を加えてpHを中和させつつ、冷却を開始した。温度が70±3℃になると、カールフィッシャー分析により測定して含水率が7.9~8.4%になるまで水分を減圧蒸留した。温度が60℃未満のとき、次の品目、即ち2~6pbwのポリエステルポリオール可塑剤、及び3~6pbwの尿素を順次加えた。尿素が溶解すると、次に赤リンの50%±2%水溶液を7.6±1.5部加えて、均一に分散するまで混合する。次に2~5pbwのエトキシル化ひまし油(界面活性剤)を30~40℃で混合する。得られたフェノール樹脂組成物、樹脂Pは、10~13wt%の水分、4wt%未満の遊離フェノール、及び1wt%未満の遊離ホルムアルデヒドを含んでいる。
【0142】
フェノールフォームの調製
フェノールフォームボードの製造のための一般的な手順を以下の比較例(CE)1で説明する。
比較例1(CE1)-発泡剤(BA)はイソプロピルクロリド:イソペンタン(iPC:iP 重量比80+/-5:20+/-5)である。
【0143】
15℃~19℃の110+/-5pbwの樹脂Aに、5+/-2pbwの炭酸カルシウム粉末を加え、炭酸カルシウムが均一に分散するまで300+/-100rpmで混合する。混合した前記樹脂混合物を高速混合機にポンプで送り込み、そこで1~3℃で9+/-3pbwのiPC:iP発泡剤と8~15℃で20+/-3pbwの2:1重量比のトルエンスルホン酸:キシレンスルホン酸触媒を素早く前記樹脂混合物に混合する。1000~4000rpmでの高速混合を用いて、発泡性組成物が生成されるように均質混合を実現する。次に、前記発泡性組成物を予め決められた発泡性樹脂流量で不織ガラスマットのような適当なフェーシングに注出し、20~150mmなどの所望のフォーム厚さで、例えば35kg/mの所望の最終フォーム硬化密度を得る。次に、前記発泡性混合物を水平移動のコンベアベルトによって、従来のスラット型ダブルコンベアフォームラミネーションマシンに搬送する。炉(オーブン)は、70℃のような均一温度にすることができ、又はいくつかの異なる温度帯を含むことができる。前記フォームラミネーションマシンに入る直前に、上部フェーシングを発泡樹脂組成物上に導入する。移動中のフォーム材料は、加熱したオーブンプレス機(oven press)の中を通過し、膨張するフォームを一定のギャップで40~50kPaで加圧して、所望のフォームボード厚さを得る。オーブンプレス機内でのフォームの膨張及び初期硬化は4分間から15分間である。前記ラミネーションマシンを出る部分的に硬化したフォームは、必要な長さに切断する。次に前記フォームボードを、完全に硬化するまで、二次炉内で70℃~90℃に置く。表4は、このような方法を用いて製造したフォームボードの詳細を示している。
【0144】
比較例6(CE6)-発泡剤(BA)は樹脂「P/2」として識別される、実施例Ex1~Ex6の樹脂Pに使用された量の半分の赤リンを含むイソプロピルクロリド:イソペンタン(iPC:iP 重量比80+/-5:20+/-5)である。
【0145】
【表4】
【0146】
比較例2(CE2)-発泡剤はHCFO-1233zd(E)
ここで、発泡剤を1~3℃で14.8重量部のHCFO-1233zd(E)発泡剤に変更した点を除いて、比較例1で概説したのと同じ手順を用いた。製造されたフォームボードの密度は35.6kg/mであった。
【0147】
比較例3(CE3)-発泡剤はHCFO-1233zd(E):IP(70:30)
発泡剤が8.47pbwのHCFO-1233zd(E)と3.63pbwのイソペンタンとである点を除いて、CE2と同一。
【0148】
比較例4(CE4)-発泡剤はHCFO-1233zd(E):HFO-1336mzz(Z)(95:5)
発泡剤が13.18pbwのHCFO-1233zd(E)と0.76pbwのHFO-1336mzz(Z)とである点を除いて、CE2と同一。
【0149】
比較例5(CE5)-発泡剤はHCFO-1233zd(E):HFO-1336mzz(Z):イソペンタン(65:5:30)
発泡剤が7.5pbwのHCFO-1233zd(E)、0.58pbwのHFO-1336mzz(Z)及び3.47pbwのイソペンタンである点を除いて、CE2と同一。
【0150】
【表5】
【0151】
実施例1(Ex1)-発泡剤はHCFO-1233zd(E):IP(95:5)重量比
使用した樹脂が樹脂Pでありかつ発泡剤が13.8部のHCFO-1233zd(E)と0.73部のイソペンタンである点を除いて、CE2と同一。
【0152】
実施例2(Ex2)-発泡剤はHCFO-1233zd(E):IP(95:5)重量比
SBI火災試験の再現性を評価することでEx1と同一。従って、発泡剤は13.8pbwのHCFO-1233zd(E)と0.73pbwのイソペンタンである。
【0153】
実施例3(Ex3)-発泡剤はイソプロピルクロリド、iPC:IP(80:20)重量比
発泡剤が6.8pbwのイソプロピルクロリドと1.7pbwのイソペンタンである点を除いて、Ex1と同一。
【0154】
実施例4(Ex4)-発泡剤はイソプロピルクロリド、iPC:IP(80:20)重量比
発泡剤が6.8pbwのイソプロピルクロリドと1.7pbwのイソペンタンである点を除いて、Ex1と同一。
【0155】
実施例5(Ex5)-発泡剤はイソプロピルクロリド、iPC:IP(80:20)重量比
発泡剤が6.8pbwのイソプロピルクロリドと1.7pbwのイソペンタンである点を除いて、Ex1と同一。
【0156】
実施例6(Ex6)-発泡剤はイソプロピルクロリド、iPC:IP(80:20)重量比
発泡剤が7.9pbwのイソプロピルクロリドと2.0pbwのイソペンタンである点を除いて、Ex1と同一。
【0157】
【表6】
【0158】
比較例と実施例の検討
比較例及び実施例のフォームの物理的特性及び防火性能を表4,5及び6に示す。
【0159】
CE1の発泡剤は、イソプロピルクロリドとイソペンタンとの重量比80:20での混合物である。CE1は、望ましい初期及び経時熱伝導率値を示しており、防火性能は、CE1のフォームをユーロクラスC製品と分類している。CE6は、発泡性フェノール樹脂内に導入された赤リンの重量がEx1乃至Ex6と比較して半分である点を除いて、CE1と同じ化学組成である。この結果、硬化したフォーム中の赤リンの重量は半分である。前記硬化したフォームでは、ユーロクラスBの防火等級を達成するには十分でないが、FIGRA 0.2MJ値が実質的に減少している。
【0160】
CE2の発泡剤は、全体的にHCFO-1233zd(規格ISO817に則った不燃性のクラス1発泡剤)である。CE2の初期及び経時熱伝導率は優れている。しかしながら、CE2の防火性能の結果は、不燃性発泡剤を用いたときに期待されるものより劣っている。CE2のフォームボードを規格BS EN13823で評価したとき、高いFIGRA 0.2MJ値及びFIGRA 0.4MJ値が認められた。従って、不燃性発泡剤の使用にも拘わらず、CE2の防火性能は、可燃性のイソペンタンと可燃性のイソプロピルクロリドからなるCE1のそれよりも悪い。CE2は、クラス「C2」の発煙性とドリッピングが観察されない「d0」が付いたユーロクラスDの火災成長率製品に分類されている。
【0161】
CE3は、HCFO-1233zdとイソペンタンとの発泡剤混合物からなり、初期及び経時熱伝導率値について望ましい性能と、CE2に比較して防火性能の改善を示している。しかしながら、この改善にも拘わらず、CE3は、ユーロクラスBではなくユーロクラスC製品に分類されている。
【0162】
CE4は、HCFO-1233zdとHFO-1336mzzとの発泡剤混合物からなる。HFO-1336mzzはまた、規格ISO817に従って不燃性のクラス1発泡剤と分類されている。CE4の初期及び経時熱伝導率値は、優れている。2つの難燃性発泡剤を有するにも拘わらず、FIGRA 0.2MJ値及びFIGRA 0.4MJ値は、
可燃性のイソペンタンを含むCE3について認められるそれらよりも驚くほど大きい。
【0163】
CE5は、HCFO-1233zd、HFO-1336mzz及びイソペンタンの三元発泡剤混合物からなる。高い燃焼性のイソペンタンが含まれるにも拘わらず、所望の低い初期及び経時熱伝導率値は略一定を維持しているが、FIGRA 0.2MJ値が150W/s超を維持している(ユーロクラスC)にも拘わらず、はっきりと、防火性能に劇的な改善がある。
【0164】
対照的に、E1乃至E6は、塩素化ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロオレフィン及び炭化水素からなる特定の三元混合物をフェノール発泡性化学混合物に、硬化したフェノールフォームの100重量部に基づいて2~5重量部の微粒状(粒径0.5~10μm)の赤リンと共に用いたとき、150W/s未満のFIGRA 0.2MJ値を達成し得ることを証明しており、それは優れた耐火性能と、FIGRA(0.2MJ閾値)<150W/sとSMOGRA<20m/sで定義される低発煙性とを有するフォーム断熱製品をもたらす。実際、E1乃至E6はそれぞれ、120W/s未満のFIGRA 0.2MJ値を示しており、従って望ましいユーロクラスBの防火性能等級を有するものとして分類されている。これは、フォームの低熱伝導率に有害な影響を与えることなく達成されている。本発明は、安定な断熱性能(<0.023W/m・K)と高い独立気泡含有率(>85%)に関するものである。
【0165】
本発明のフェノールフォームを形成するのに使用される発泡剤は、少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィン、又は少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィン若しくは少なくとも1種のハロゲン化アルキル若しくは存在する少なくとも1種の塩素化アルケン及び少なくとも1種のC-C炭化水素、及びそれらの組合せからなる。前記少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィン又は前記少なくとも1種のハロゲン化アルキル又は前記少なくとも1種の塩素化アルケン又はそれらの組合せは、望ましくは前記発泡剤の総重量に基づいて約62wt%から95wt%の量で存在する。前記ハイドロフルオロオレフィンは、望ましくは前記発泡剤の総重量に基づいて約5~15wt%の量で存在する。前記少なくとも1種のC-C炭化水素は、前記発泡剤の総重量に基づいて4~25wt%の量で存在する。
【0166】
フォーム中に赤リンを有しないCE1を、「樹脂P」中に存在する最適量の半分を有するCE6と比較することによって明示されるように、フェノールフォーム中に存在する高燃焼性のイソプロピルクロリド及びイソペンタンの存在にも拘わらずCE6について得られるFIGRA 0.2MJ値は実質的に改善されている。しかしながら、このフォーム中に存在する赤リンの量の減少によっても、ユーロクラスCが達成されるだけである。ユーロクラスBを達成するには、フォーム中の赤リン重量を、「樹脂P」から得られる実施例1乃至6で使用される範囲にする必要がある。硬化したフォームの100重量部中の赤リンが5重量部を超える過度な量の赤リンを加えた場合には、SMOGRA値が上昇することになり、低い安定した熱伝導率を時間と共に妥協することになる危険がある。提案した範囲の赤リンの量、硬化したフェノールフォームの100重量部に粒径0.5~10μmで2~5重量部と前記粒径によって、安定な断熱性及び耐火性能の改善への必要条件が保証される。前記発泡性樹脂混合物に多過ぎる赤リンを加えた場合には、混合時に過度に高い化学混合物の粘度によるフォーム製造上の問題を生じる可能性がある。歴史的にフォームの耐火性の改善は、フォーム中の有機又は無機リン化合物の存在によって達成されている。単位重量当たりのリンの濃度は、他の有機又は無機リン化合物中の赤リンよりも高い。フェノールフォーム100重量部当たり2~5重量部のリンを得ることは、これら他のリン化合物のローディングをより高めることが要求される。そのように高い量の添加は、前記有機リン化合物が液体の場合には、フォームの気泡を可塑化し、又は前記有機リン化合物が固体の場合には、機械的なフォームの混合過程においてフォームの気泡を損傷する虞がある。断熱フォームへの有害な影響は、熱伝導率が望ましくないほど高いことである。
【0167】
例えば、未硬化のフェノール樹脂100部当たり5部のポリリン酸アンモニウム粒子は、フォームの初期及び経時ラムダを上昇させる。以下の表7は、元素状リンの単位重量がリンを主成分とする他の化合物よりも高く、硬化したフォームで必要な難燃剤を少なくすることを可能にし、従って断熱性を妥協しないことを示している。
【0168】
【表7】
【0169】
一般に、硬化したフェノールフォーム100重量部当たり2~5重量部の赤リンが、適当な発泡剤と界面活性剤のタイプでユーロクラスBのフォーム断熱製品を得るのに必要である。
【0170】
しかしながら、炭化水素の量が発泡剤組成物の約25重量%を超える場合には、フォームの防火性能に否定的な影響があり得、ユーロクラスBフォームの達成は不可能である。更に、CE2及びCE4によって明示されるように、約5重量%より少ない炭化水素が存在する場合、防火性能も有害な影響を受ける。
【0171】
約3wt%未満のハイドロフルオロオレフィンが存在する場合、製品の防火性能が低下し、約20wt%超のハイドロフルオロオレフィンが存在する場合、フォーム製品の熱伝導率が増加する。
【0172】
従って、発泡剤が上述した三元混合物からなるとき、最適の断熱性能と防火性能が達成される。
【0173】
本発明のフォームでは、%脆弱性が、試験方法ASTM C421-08(2014)に従って測定して30%未満、例えば25%未満である。
【0174】
本発明の更に望ましい側面は、硬化したフェノールフォームの100重量部に存在する2~5重量%の微粒状(粒径0.5~10μm)赤リンの難燃剤の存在が、フェノールフォーム品からのホルムアルデヒドの放散が規格EN717-1/EN16516/ISO16000-11によって測定して30~60%減少したフェノールフォーム断熱製品をもたらすことである。以下の表8は、発泡剤のタイプに拘わらずフェノールフォームに存在する赤リンのホルムアルデヒドスキャベンジング効果を示している。
【0175】
【表8】
【0176】
上述したように、前記少なくとも1種の塩素化ハイドロフルオロオレフィンは、本発明のフェノールフォームを形成するのに使用される発泡剤の総重量に基づいて約65wt%から約92wt%の量で存在する。好ましくは、前記塩素化ハイドロフルオロオレフィンが、前記発泡剤の総重量に基づいて約72wt%から約92wt%の量で存在する。より好ましくは、前記塩素化ハイドロフルオロオレフィンが、前記発泡剤の総重量に基づいて約72wt%から約88wt%の量で存在し、更に好ましくは、前記塩素化ハイドロフルオロオレフィンが、前記発泡剤の総重量に基づいて約72wt%から約82wt%の量で存在する。
【0177】
前記少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィンは、本発明のフェノールフォームを形成するのに使用される発泡剤の総重量に基づいて約5wt%から約20wt%の量で存在する。好ましくは、前記ハイドロフルオロオレフィンは、前記発泡剤の総重量に基づいて約8wt%から約14wt%のように、約5wt%から約15wt%の量で存在する。
【0178】
前記C-C炭化水素は、本発明のフェノールフォームを形成するのに使用される発泡剤の総重量に基づいて約4wt%から約25wt%の量で存在する。好ましくは、前記C-C炭化水素は、前記発泡剤の総重量に基づいて、約8wt%から約18wt%のように、約5wt%から約20wt%の量で存在する。
【0179】
好適には、前記塩素化ハイドロフルオロオレフィンは、HCFO-1233zdとHCFO-1224ydとから選択される。
【0180】
前記塩素化ハイドロフルオロオレフィンは、HCFO-1233zd-(E)及び/又はHCFO-1233zd-(Z)とすることができる。例えば、前記HCFO-1233zdは、少なくとも90wt%のE-異性体(HCFO-1233zd-(E))、例えば少なくとも95wt%のE-異性体(HCFO-1233zd-(E))とすることができる。
【0181】
前記ハイドロフルオロオレフィンは、好適にはHFO-1336mzzである。前記HFO-1336mzzは、HFO-1336mzz-(Z)及び/又はHFO-1336mzz-(E)であって良い。例えば、前記HFO-1336mzzは、少なくとも90wt%のZ-異性体(HFO-1336mzz-(Z))、例えば少なくとも95wt%のZ-異性体(HFO-1336mzz-(Z))とすることができる。
【0182】
好適には、前記C-C炭化水素は、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン又はそれらの異性体である。より好適には、前記C-C炭化水素は、ブタン及び/又はペンタンからなる。好ましくは、前記ブタンはイソブタンからなる。好ましくは、前記ペンタンはイソペンタンからなる。
【0183】
有利なことに、実施例1乃至6のフォームはそれぞれ、長時間及び温度への暴露に対する安定な低熱伝導率と、優れた防火性能とを発揮している。実施例1乃至6のフォームはそれぞれユーロクラスB製品である。
【0184】
本明細書中、本願発明に関連して使用される用語「からなる/備える」(comprises/comprising)及び用語「有する/含む」(having/including)は、明記した特徴、整数(integers)、ステップ(過程)又は構成要素の存在を特定するのに使用されるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素又はその組の存在又は追加を排除するものではない。
【0185】
本発明の所定の特徴で、明確にするために、別々の実施形態の中に記載されているものでも、組み合わせて1つの実施形態に備え得ることが分かる。逆に言えば、本発明の様々な特徴で、簡単のために、1つの実施形態の中に記載されているものでも、別々に又は任意で適当に部分的に組み合せて備えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】