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特表2023-520644植物保護剤、植物成長剤、化粧品、及びパーソナルケア用品における、変性デンプンに基づく、生体適合性を有する担持体組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(54)【発明の名称】植物保護剤、植物成長剤、化粧品、及びパーソナルケア用品における、変性デンプンに基づく、生体適合性を有する担持体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 3/04 20060101AFI20230511BHJP
   A01N 47/14 20060101ALI20230511BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20230511BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230511BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20230511BHJP
   A01N 43/84 20060101ALI20230511BHJP
   A01N 33/22 20060101ALI20230511BHJP
   A01N 43/707 20060101ALI20230511BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20230511BHJP
   A01N 37/46 20060101ALI20230511BHJP
   A01N 43/50 20060101ALI20230511BHJP
   A01N 37/36 20060101ALI20230511BHJP
   A01N 47/12 20060101ALI20230511BHJP
   A01N 43/54 20060101ALI20230511BHJP
   A01N 43/653 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 8/23 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 9/02 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 3/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230511BHJP
   A01C 1/06 20060101ALI20230511BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20230511BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20230511BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20230511BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230511BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20230511BHJP
   C09K 17/32 20060101ALI20230511BHJP
   C09K 17/50 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C08L3/04
A01N47/14 C
A01N59/16 Z
A01P3/00
A01N43/40 101J
A01N43/84 101
A01N33/22 101
A01N43/707
A01P13/00
A01N37/46
A01N43/50 M
A01N37/36
A01N47/12 Z
A01N43/54 A
A01N43/40 101C
A01N43/653 G
A61K8/73
A61K8/23
A61K8/24
A61K8/36
A61Q19/00
A61Q5/02
A61Q9/02
A61Q5/00
A61Q5/06
A61Q17/04
A61Q1/04
A61Q19/10
A61Q5/12
A61Q5/04
A61Q1/00
A61Q3/00
A61Q11/00
A01C1/06 Z
C08K3/08
C08K3/32
C08K3/30
C08K5/09
C09K17/02 H
C09K17/32 H
C09K17/50 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556638
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2021057470
(87)【国際公開番号】W WO2021191224
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】20165089.2
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522369810
【氏名又は名称】アミノヴァ ポリマーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】amynova polymers GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト ザック
(72)【発明者】
【氏名】ステフェン ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ケーリング
【テーマコード(参考)】
2B051
4C083
4H011
4H026
4J002
【Fターム(参考)】
2B051AA02
2B051AB01
2B051BA15
2B051BB14
2B051CD13
4C083AA111
4C083AB051
4C083AB281
4C083AB351
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD531
4C083CC05
4C083CC11
4C083CC13
4C083CC19
4C083CC21
4C083CC23
4C083CC28
4C083CC33
4C083CC38
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD11
4C083DD12
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE17
4C083EE21
4C083EE28
4C083FF01
4H011AA01
4H011AB01
4H011AB03
4H011AC01
4H011AC04
4H011BA01
4H011BB04
4H011BB06
4H011BB09
4H011BB10
4H011BB13
4H011BB18
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA14
4H011DH10
4H026AA01
4H026AA07
4H026AA10
4H026AB04
4J002AB041
4J002DA116
4J002DG046
4J002DH026
4J002EF036
4J002FD206
4J002GA00
4J002GC00
(57)【要約】
農業等の分野において、植物保護剤等としてのフィルム状物を形成することによって、植物の生産効率を高め、又は種子コーティング及び畜産における、土壌の結合及び粉塵形成による侵食等を低減する。
そのため、デンプンの全体量(100重量%)に対し、少なくともアミロース含有量が30重量%であり、重量平均モル質量が1×105~1×108g/molであるヒドロキシアルキルデンプンと、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩と、水とを含む、水性組成物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアミロース含有量が、30重量%以上であって、重量平均モル質量が、1×105g/mol~1×108g/molの範囲内の値である、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分と、
アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選択される少なくとも一つの塩と、
水と、
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシアルキルデンプン又は前記ヒドロキシアルキルデンプン画分の含有量が、5重量%~25重量%の範囲内の値であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記塩の含有量が、0.01重量%~10重量%の範囲内の値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシアルキルデンプン又は前記ヒドロキシアルキルデンプン画分が、0.05~0.8の範囲内のモル置換度を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシアルキルデンプン又は前記ヒドロキシアルキルデンプン画分が、非粒状の非晶質構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシアルキルデンプン又は前記ヒドロキシアルキルデンプン画分が、水に溶解していることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記塩が、アニオンを含むカルコゲン又はプニクトゲンを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
前記アニオンが、リン酸塩、リン酸水素、硫酸塩、硫酸水素又は酢酸塩から成る群から選択される少なくとも一つに由来するイオンであることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
テルペン類、フミン質、農薬、生物刺激剤、植物強化剤及び保存物質からなる群から選択される少なくとも一つの成分を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヒドロキシアルキルデンプン又は前記ヒドロキシアルキルデンプン画分が、0.025~0.6の範囲内の置換度を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項11】
少なくともアミロース含有量が30重量%以上であって、重量平均モル質量が、1×105g/mol~1×108g/molの範囲内の値である、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分と、
アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩から選択される少なくとも一つの塩と、
を含むフィルム状物、又は、請求項1又は2に記載の組成物を、少なくとも一部乾燥させることにより得られてなるフィルム状物。
【請求項12】
請求項11に記載のフィルム状物を形成するための製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とするフィルム状物の製造方法。
-請求項1又は2に記載の組成物を基材上に塗布する工程
-前記組成物を少なくとも部分的に乾燥させてフィルム状物を形成する工程
【請求項13】
種子、土壌、植物、植物の一部、又は動物飼料に対するコーティングであって、
アミロース含有量が少なくとも30重量%以上であり、重量平均モル質量が、1×105g/mol~1×108g/molの範囲内の値であるヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分と、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩からなる群より選択される塩と、含むコーティング、
又は、請求項1又は2に記載の組成物に由来した、少なくとも部分的に乾燥されてなるコーティング、
又は、請求項11に記載のフィルム状物であるコーティングのいずれか一つであることを特徴とするコーティング。
【請求項14】
種子、土壌、植物、植物の一部、又は動物飼料に対するコーティングが、農薬、生物刺激剤、又は植物強化剤からなる群から選択される少なくとも一つの成分を含み、当該成分が、コーティング中に含まれるか、又は、付着していることを特徴とするコーティング。
【請求項15】
種子、土壌、植物、若しくは植物の一部、又は動物飼料のコーティング方法であって、以下の工程を含むことを特徴とするコーティング方法。
-請求項1又は2に記載の組成物を種子、土壌、植物、若しくは植物の一部、又は動物飼料上に塗布する工程
-前記組成物を少なくとも部分的に乾燥させて、種子、土壌、植物、又は植物の一部、又は動物飼料上にコーティングを形成する工程
【請求項16】
種子、土壌、成長培地、植物、若しくは植物の一部、又は動物飼料をコーティングする組成物の使用方法であって、請求項1若しくは2に記載の組成物の使用方法、又は、請求項11に記載のフィルムへの組成物の使用方法のいずれかであることを特徴とする組成物の使用方法。
【請求項17】
請求項1若しくは2に記載の組成物の使用方法、又は請求項11に記載のフィルム状物への組成物の使用方法であって、以下に示す用途に対することを特徴とする組成物の使用方法。
-農薬、生物刺激剤又は植物強化剤から選択される成分のための担体マトリックス
-生物刺激剤
-粉塵結着剤
-粉塵防止剤
-収量増加剤
-水の利用効果を高めるための薬剤
【請求項18】
化粧品又はパーソナルケア用品への組成物の使用方法であって、請求項1又は2に記載の組成物を化粧品又はパーソナルケア用品に対する使用方法、又は、請求項11に記載のフィルム状物への組成物の使用方法であることを特徴とする組成物の使用方法。
【請求項19】
前記組成物が、増粘剤、フィルム形成剤、保湿剤、バリア形成剤、湿潤剤、固着剤、ゲル化剤、保護バリア剤及び/又はレオロジー添加剤として使用されることを特徴とする、請求項18に記載の組成物の使用方法。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の組成物の使用方法、又は、請求項11に記載の組成物に由来したフィルム状物の使用方法であって、化粧品又はパーソナルケア用品に対する適用であることを特徴とする組成物の使用方法。
【請求項21】
請求項1又は2に記載の組成物の使用方法であって、乳化剤又は共乳化剤としての使用方法であることを特徴とする組成物の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物保護剤、植物成長剤、化粧品、及びパーソナルケア用品における、変性デンプンに基づく、生体適合性を有する担持体組成物であって、水性組成物、組成物の使用方法、組成物に由来したフィルム状物、及び組成物を含む化粧品等に関する。
特に、本発明は、変性デンプンであるヒドロキシアルキルデンプン等を含む水性組成物等であって、当該水性組成物に由来してなるフィルム状物、農業及び化粧品等に対する組成物の使用方法、並びに、当該水性組成物を含む化粧品等に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デンプンは、原産地、顆粒の構造、付随する物質、アミロース/アミロペクチンの比及びモル質量分布に依存する、非常に多用途の天然多糖類である。
従って、天然デンプン及び変性デンプンは、食品、飲料、飼料、発酵プロセス、紙や段ボールの生産、化粧品や製薬産業などにおいて使用されている。
【0003】
そして、変性デンプンの特性を決定する上で重要なパラメータの一つは、アミロースの含有量である。
例えば、果物、植物、野菜を含むデンプンの大部分は、デンプンの全体量(100重量%)に対して、30重量%未満のアミロースを含んでいる。
なお、高アミロースデンプン(HAS)という用語は明確に定義されていないため、本明細書中では、アミロース含有量が、デンプンの全体量(100重量%)に対して、固形分換算で、30重量%以上の場合を、高アミロースデンプンと定義することとする。
【0004】
又、変性HASは、ゲル形成能、凍結融解安定性及び増粘特性を改善するための食品添加物として知られている(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0005】
又、近年、農業に使用されている高分子のほとんどは、合成物由来又は天然物由来である(非特許文献3)。
これらのポリマーの中には、グアーガム、アルギン酸、ペクチン、キトサン、ポリヒドロキシブチレート(PHB)などの、天然物由来のものもあるが、限られた量かつ複雑なプロセスでしか単離できないため、得られる製品の入手容易性が制限され、価格が比較的高くなる。
より効率的で持続可能な農業は、世界的な課題であるため、最適化されたデンプン由来の製品は、世界中の植物生産に大きな利益をもたらす可能性がある。
一方、デンプンは貯蔵多糖として多くの植物、野菜及び果物に多量に含まれており、他方、その抽出は標準的なプロセスで行われ、2018年における年間生産量は8800万トンである(非特許文献4)。
これはデンプンの価格が比較的安いことを意味しており、デンプンは、さまざまな製品開発のための魅力的なバイオポリマーとなる可能性がある。
更に、デンプンは、生分解性及び生体適合性を有している特徴もある。
【0006】
(葉の被覆処理)
雨や灌漑や他の手段によって、農薬又は肥料が早い段階で葉から洗い落とされると、その効率が大幅に低下し、土壌における複雑な環境問題や地下水への化学物質の不必要な移動につながる。
植物保護剤に含まれる有効成分のほとんどは、ごく微量である、又は、水に溶けないというと特性がある。
そのため、これらの組成物の主成分は、噴霧可能な水性分散液を作るための、乳化剤や界面活性剤である。
一方、これらの薬剤は、降雨時や灌水時に、葉を洗い落とす効果を高めるという問題がある。
【0007】
又、一般的に使用される固着剤は、界面活性剤やミネラルオイルをベースとしており、表面張力を低下させ、葉や土壌への拡がりや油膜の形成をより容易にする。
その結果、葉にある天然のクチクラワックス層が取り除かれたり、部分的に溶けたりして、植物にストレスを与える可能性があった。
本来、葉のワックス層は、脱水や表面の濡れから植物を保護している。
もし、この層が化学物質の影響を受けると、植物は、最初に葉がしおれ、長期的には成長が遅くなり、作物の収量が減少するという反応を示す。
【0008】
又、米国特許第2003/0109384号には、生理活性物質、付加的な界面活性剤、補助剤と共に、分散性デンプンの固体配合物が記載されている。
この米国特許には、水中に分散可能な固体配合物が記載されており、例えば、エステル又はエーテル等の変性デンプン、例えば、除草剤、殺虫剤、殺菌剤などの生理活性農業材料、及び任意の界面活性剤、又は補助剤から構成されている。
【0009】
(土壌の被覆処理)
又、農業景観における土壌の侵食の防止は、作物栽培における主要な課題の一つである。
風や水によって有機物、種子又は肥料などの物質が失われると、土壌の肥沃度や作物の収量がかなりの程度まで低下する。
そこで、土壌の変位、ドリフト及び浸出を防止するための一つの解決策は、天然物由来のポリマー物質又は合成物由来のポリマー物質によって、土壌表面を被覆処理することが好ましい。
すなわち、被覆処理されて、結着した土壌粒子は、雨、流水及び風などの機械的衝撃に対してより多くの耐性がある。
又、米国特許第9,771,516号において、マルチと、ベントナイト粘土を含む被覆組成物と、セルロース由来の水分散性ポリマー又はデンプンと、を含む混合物が開示されている。
【0010】
又、米国特許5,125,770号には、ゼラチン化される前のデンプンと界面活性剤との混合物を、かなりの量使用することで、土壌が安定し、浸食を低減できることが記載されている。
【0011】
又、米国特許2,957,834号を参照すると、さらなる添加剤として、尿素、メラミン、フェノール類、ジシアノジアミド及びアセトンを添加することで合成樹脂を形成することができる。
そして、それらに対して、ホルムアルデヒドを架橋剤として含む、冷水膨潤性デンプン溶液を土壌表層に散布し、安定化させることが望ましいと開示されている。
【0012】
(種子の被覆処理)
又、機械的又は乾燥ストレス、細菌又は真菌による損傷、及び昆虫、鳥類及び齧歯類からの保護のために、種子は、しばしば、被覆材料でもってコーティングされ、又は、ペレット化されている。
又、種子コーティングのもう一つの重要な側面は、農薬、肥料及び生物活性剤を含むコーティングにより、発芽時や成長の初期段階の間において、種子を保護することである。
特に、殺菌剤、殺虫剤、殺菌剤を使用した場合、種皮を削除するための殻取やもみすり等のソーイング工程(sawing process)の間において、種子コーティングが摩耗し、深刻な環境汚染を誘発する可能性があった。
従って、種子コーティングにおける主要な課題の一つは、種皮に起因した粉塵の発生を抑えることである。
よって、種子のソーイング工程の前、あるいはその間に、最終コーティング又は中間コーティングとして、被覆ポリマーを適用することは合理的であると思われる。
理想的には、この種の被覆ポリマーは、良好な生分解性を有しており、更には、所望の保護効果又は成長促進効果の少なくとも一つを有するべきである。
【0013】
又、国際公開99/57959号には、例えば、多糖類などのデンプンに由来する、水分散性又は水溶性ポリマーでもって、種子に対して、被覆コーティングを施し、それによって形成されたフィルム状物で、周囲が被覆されてなる種子が開示されている。
又、デンプンをジェットクッキング(jet cooking)することによって、多糖類ポリマーが製造されることが好適である旨が記載されている。
又、被覆コーティングには、例えば、接着剤又は結合剤;可塑剤;着色剤又は染料;疎水性及び/又は親水性材料;殺虫剤、殺菌剤又は除草剤;細菌接種材料;栄養素;及び植物成長剤のみを含む一つ以上の有益な添加物を含有させることができる旨が記載されている。
又、スラリー処理によれば、典型的には、約0.1~0.5重量%の配合濃度となるように種子に対して添加し、フィルムコーティングによれば、典型的には、約0.5~2重量%の配合濃度となるように、種子に添加することによって行われる旨も記載されている。
【0014】
又、米国特許出願公開第2019/0150354号には、架橋したアミロース又はアミロペクチンから形成されたポリマーブレンドからなる種子に対するコーティング組成物が開示されている。
それによると、第2のバインダーである、他の成分は、合成ポリマー又は変性グアーガムである。但し、アミロースの単離工程は、非常に特殊かつ困難であることは言うまでもない。
【0015】
又、国際公開99/51210号の特許請求の範囲には、変性デンプンと、可塑剤とを含むコーティング剤が記載されている。
【0016】
又、デンプンの別の実施形態として、高吸水性肥料及び微量栄養素としての使用方法が開示されている。
【0017】
例えば、米国特許第7,423,106号には、農業用途に使用するための高吸収性ポリマー製品(粒子)が開示されており、このポリマー製品は、以下の工程によって製造されている。
-グラフト反応物及びデンプンを準備する工程;
-グラフト反応物をデンプン上でグラフト重合し、デンプングラフトコポリマーを形成する工程;
-形成したデンプングラフトコポリマーをけん化する工程;
-けん化したデンプングラフトコポリマーを沈殿させる工程;及び
-沈殿したデンプングラフトコポリマーを造粒して、約30ポンド/立法フィート~約35ポンド/立法フィートの範囲の密度を有する粒子を形成する工程
【0018】
しかしながら、このようなデンプン由来のポリマー製品(粒子)は、デンプン分散液、又はデンプン溶液と比較して、土壌への浸透能力に限界があった。
更に、デンプン骨格上にグラフト化される合成コポリマーは、生分解性を低下させ、デンプン分解後に、有毒作用を発揮する可能性もあった。
【0019】
(根の被覆処理)
又、米国特許第7,607,259号には、露出した根の貯蔵、輸送又は植え付けを改善するための「根の被覆処理材」として、高吸収性ポリマーハイドロゲルが開示されている。
主成分である、アクリルアミド又はカリウム塩として配合されたアクリル酸でグラフトされた架橋デンプン系コポリマーは、単独のコーティング剤として、あるいは、肥料、農薬、除草剤、殺菌剤及び成長調整剤のような、少なくとも一つの農業添加物と組み合わせて使用することができる。
但し、グラフト化のために、合成アクリルアミド/アクリル酸を使用するため、デンプン配合物は、環境的に問題があり、生分解性と生体適合性とが制限されていた。
【0020】
(粉塵の抑制処理)
又、浮遊粉塵は、地球規模の現象であり、鉱山施設、農業、交通、工業及び建設などにおいて深刻な環境、健康及び安全問題を引き起こす可能性がある。
すなわち、粉塵粒子が、細菌やウイルスのような微小動物を数千キロにわたって運ぶことができるのに対して、粉塵の広がりは、主に粒子の大きさに依存する。
従って、効果的かつ環境に優しい方法で微細な浮遊粉塵粒子を結着させることが、要求されている。
【0021】
そこで、カナダ国特許出願2868855号では、スチレン又は変性スチレン、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメタアクリロニトリル、エチレン性不飽和モノマー及び、原料デンプン、変性デンプン、又は、分解変性デンプンに基づく、乳化重合によるポリマー分散液を開示している。
又、生分解性は、合成モノマーの配合に依存して影響を受けることが推測される。
【0022】
又、米国特許6,090,875号において、デンプンアクリロニトリルグラフトコポリマー、部分的に中和されたデンプン-アクリル酸又はデンプン-ポリビニルアルコールグラフトコポリマーの加水分解物を含む、類似のポリマー組成物が開示されている。
【0023】
(化粧品及びパーソナルケア用品)
又、従来の所定ポリマーは、化粧品やパーソナルケア用品の用途において広く使用されている。すなわち、所定ポリマーの用途及び種類の範囲は、多岐にわたっている。
又、通常、増粘剤、乳化剤、バリア形成剤、フィルム形成剤、湿潤剤として、及び、美容上の理由で、合成又はケイ素由来のポリマーが適用される。
特に、ポリアクリレート、好ましくはカルボン酸含有ポリマーに由来したマイクロプラスチックや可溶性プラスチックは、化粧品において頻繁に使用されており、環境汚染上の理由から問題視されている。
従って、化粧品及びパーソナルケア用品において、天然成分に由来し、容易に生分解性し、生体適合性のある、合成又は石油化学由来のポリマーの代替品には、高い需要が存在すると言える。
【0024】
又、欧州特許1389459号において、化粧品及び皮膚科学の調剤における活性物質の利用可能性を改善するための、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸由来の親水コロイド組成物が記載されている。
すなわち、かかるヒドロキシプロピルデンプンは、リン酸塩によって架橋されており、0.1~10重量%の範囲で含まれている。
このコロイド組成物は、単独で又は他の親水コロイドと組み合わせて使用することができ、スキンケア用途に特に適していると記載されている。
【0025】
又、米国特許第7,361,363号の特許請求の範囲において、同様に、高いグリセリン含有量を有するリン酸ブリッジによって架橋されたヒドロキシプロピルデンプンと、潜在的に脂肪アルコール及び付加的な界面活性剤と、を含有する組成物が、「絹のような感覚」の化粧品用の組成物として記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第20030109384号
【特許文献2】米国特許第9771516号
【特許文献3】米国特許5125770号
【特許文献4】米国特許2957834号
【特許文献5】国際公開9957959号
【特許文献6】米国特許出願公開第20190150354号
【特許文献7】国際公開9951210号
【特許文献8】米国特許第7423106号
【特許文献9】米国特許第7607259号
【特許文献10】米国特許6090875号
【特許文献11】欧州特許1389459号
【特許文献12】米国特許第7361363号
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】W.ヴォルヴェルク(W.Vorwerg)、J.ダイクスターハウス(J.Dijksterhuis)、J.ボルグイス(J.Borghuis)、S.ラドスタ(S.Radosta)及びA.クレーガー(A.Kroeger)著、「デンプン」2004年、第56巻、297-306頁
【非特許文献2】I.A.ウルフ(I.A.Wolff)、H.A.デイヴィス(H.A.Davis)、J.E.クラスキー(E.Cluskey)、L.J.ガンドラム(J,L.J.Gundrum)及びC.E.リスト(C.E.Rist著)、「工業及び工学化学(Industrial&Engineering Chemistry)」1951年、第43巻、915-919頁
【非特許文献3】F.プオチ(F.Puoci)、F.レンマ(F.lemma)、U.G.スピッツィーリ(U.G.Spizzirri)、G.チリージョ(G.Cirillo)、M.クルチョ(M.Curcio)及びN.ピッチ(N.Picci)著、「米国農業及び生物科学誌(Journal of Agricultural and Biological Sciences)」2008年、第3巻、299-314頁
【非特許文献4】IMARC“生デンプン市場:世界の産業の動向、シェア、規模、成長、機会、予測2021-2026年(Native Starch Market:Global Industry Trends,Share,Size,Growth,Opportunity and Forecast 2021-2026)”,[online],[2020年3月24日検索]、インターネット <URL:https://www.imarcgroup.com/native-starch-market>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
よって、要約すると、本発明によれば、例えば、被覆コーティングを目的とし、変性デンプンによる、更に優れた加工処理のために、高度に溶解されたデンプン又はデンプン製品が有益的に提供できるということである。
【0029】
そして、溶解デンプンと呼ばれるデンプンは、しばしば、高度に膨潤したデンプン顆粒片、並びにマイクロゲル及び部分的に溶解したデンプン多糖類から構成されており、ゼラチン化デンプンである。又、溶解デンプンの多糖類は、多かれ少なかれ微量画分として存在し得る。
従って、これらの水性デンプン分散液は、相分離の欠点を有し、ゲル形成による劣化さえ示した。
すなわち、デンプンの最良の溶解状態は、120℃を超える温度、又は、12を超えるpHでのジェットクッキング又は化学修飾によって得ることができる。
【0030】
但し、既知の化学的に修飾されたデンプンは、水溶性に乏しく、可塑剤を用いない場合、適切なフィルム状物の形成という有益な特性を発揮せず、生分解性にも限界があった。
更に、使用現場での、追加の装置を用いてなる、水性分散液の調製工程も必要であった。
よって、従来の水性分散液は、種々の植物保護剤や刺激物質と混合することができるものの、塗布及び貯蔵時間が、厳格に制限されるという問題があった。
【0031】
その上、市販の水性植物保護分散液、及び、成長促進分散液中の合成ポリマーの代替は、追加装置による分散調製や、労力及び貯蔵安定性の制限による使用リスクを伴うという問題も見られた。
【0032】
そこで、本発明の目的は、特に、葉、種子、根、若しくは土壌、又は他の物質のコーティングのための、フィルム状物の形成、並びに、化粧品の特性の改変に適した、長期安定性に優れた水性組成物の開発に基づき、それらの効率的な提供をすることである。
そして、本発明の当該水性組成物は、生分解性であることが好ましく、そのような特性を発揮する水性組成物、その所定用途及びその使用方法の提供も目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明によれば、デンプンの全体量(100重量%)に対して、少なくともアミロース含有量が30重量%以上であり、重量平均モル質量が、1×105g/mol~1×108g/molの範囲内の値、好ましくは、1×105g/mol~4×107g/molの範囲の値である、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分等を含むことを特徴とする組成物(以下、水性組成物、デンプン組成物、配合物等と称する場合がある。)を構成し、それを提供することができる。
その上、かかる組成物は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩から選択される少なくとも一つの塩と、水と、を更に含むことを特徴とする。
【0034】
当該組成物は、その一般的な実施形態又は一つ以上の特定の実施形態において、以下の利点の一つ以上を有することが好ましい。
-生分解性である。
-使用可能性が高い(そのまま使用することができる。)。
-取り扱いが容易である。
-高モル質量を有する変性デンプン由来である。
-主に中性置換基を有する。
-水系における多種多様な植物保護化合物及び化粧品成分との適合性を有する。
-水性の粘弾性組成物(配合物)として調製できる。
-数週間以上の長期安定性を有する。
-増粘性、粘度調整性、フィルム形成性、保湿性、バリア形成性、保湿性、固着性、添加された化学及び生物学的化合物の遅延輸送性などの機能特性のうち、少なくとも一つ以上を有する。
【0035】
更に、当該組成物は、その一般的な実施形態又は一つ以上の特定の実施形態において、以下の利点(効果)の一つ以上を有することが好ましい。
-ヒドロキシアルキル化が、HASの適用性を向上させることができる。
-ヒドロキシアルキル化の置換度及び置換基の分布に応じて、後述するような量の、好ましくは25℃の水に可溶な水溶性デンプンと、高分子デンプン製品を提供することができる。
-ヒドロキシアルキル化が、顕著な分子劣化を伴わずに起こることを確認することができる。
【0036】
又、先行技術の従来のデンプンコーティング組成物において、かかる組成物は、膨潤したデンプン粒子をかなりの部分含んでいる。
この膨潤したデンプン粒子の配合は、相分離及び粘度の変化をもたらす可能性がある。
もう一つの重要な問題は、劣化による水性デンプン分散液の加工性である。
本発明は、好ましくは、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分を主に溶液で提供することで、これらの問題を克服することができる。
【0037】
本発明は、高分子変性デンプンの水性組成物にも向けられるが、それだけではなく、2つの主要な応用分野において特に有益である。
すなわち、第1の分野は、農業、果樹園、種子処理、菜園、観葉植物、芝生、景観の形成と保護、森林栽培、飼料などに主に関連している。
次いで、第2の分野は、化粧品やパーソナルケア用品の成分として使用することに重点を置いている。
【0038】
本発明の変性デンプンは、様々な化学的及び生物学的化合物に対して相溶性又は混和性を示し、これらを様々な濃度で配合したり、添加したりすることができる。
従って、本発明の変性デンプンを含む液体デンプン組成物は、使用現場において、すぐに使用することができ、取り扱いが容易であり、更に、長期的に安定した粘度、共乳化、結合及び接着特性を得ることができる。
しかも、本発明の液体デンプン組成物は、可塑剤を使用する必要性に乏しく、脱水又は乾燥によるフィルム状物の形成も容易であることからも特徴づけられる。
【0039】
又、本発明の当該水性の液体組成物は、例えば、種子、土壌、植物若しくは植物の一部、又は動物飼料へのコーティング(被覆処理)、並びに、担持体(キャリアマトリックス)、ダスト結着剤、更には、ダスト形成防止剤の使用において、所定効果を発揮することができる。
更に、かかる本発明の変性デンプン組成物及びそれを含む液体組成物は、生体適合性成分であり、植物保護、肥料及び化粧品又はパーソナルケア用品における合成添加物の代替物として好適である。
【0040】
又、本発明の組成物は、増粘性、粘度調整性、結合性、接着性、及び共乳化性が良好であるばかりか、可塑剤を用いなくともフィルム状物の形成が容易かつ可能であって、しかも、多くの化学的及び生物学的物質との間で、良好な相溶性を有するという利点がある。
すなわち、大部分が均一に修飾された、変性デンプン高分子、及び高アミロースデンプンエーテルに基づく、長期安定性を有する、水性非劣化性粘性組成物について開示するものである。
【0041】
本発明の組成物は、所定デンプンに由来しているので、再生可能な起源を持ち、安価であり、容易に生分解され、生体適合性を有するという利点がある。
より具体的には、当該組成物を、1~2Uhaの低濃度で植物部分及び土壌に散布した場合であっても、農業用途において驚くべき効果を示すことができる。
又、水性デンプンエーテル配合物と、有害な植物保護剤製品(PPP)の混合物として、植物を処理した場合、かかる植物は、有意に減少したストレス反応を示すことができる。
又、得られたデンプンのフィルム状物(デンプンフィルム)は、降雨及び灌漑の間における洗い落としを減少させ、再び濡れたときに、PPP又はデンプンフィルムに含まれる刺激物質をゆっくりと放出することが可能となる。
従って、PPPをより効率的に使用することができ、土壌や地下水の汚染を回避又は低減することができる。
そして、長期的な効果として、植物はより健康的であり、より高い作物収量をもたらし、一般的にストレス要因に対してより強い回復力を示すことができる。
更に、当該組成物は、風、降雨、灌漑による浸食を軽減するための表土層の結着剤としての、土壌への散布にも適している。
すなわち、親水性ポリマーとして、所定デンプンは、土壌の保水力を高め、その結果、高い水利用性と乾燥ストレスの改善とをもたらし、根による栄養素の吸収が改善され、土壌中の微生物の活性が高まることになる。
更に、所定デンプンは、細菌及び真菌の栄養として作用でき、従って、マイクロバイオームの生物学的活性を向上させ、植物の成長を改善し、土壌に散布される合成化学物質の生分解を促進することができる。
又、本発明の実施態様において、水性デンプンエーテル組成物は、肥料、成長調整剤、生物刺激剤及び植物強化剤のための担体マトリックスとして使用することができる。
又、さらなる本発明の用途は、園芸における植物の成長促進や景観保全、果樹園又は畜産における粉塵の抑制に関するものである。
変性デンプンの先行技術に対する一つの大きな違いとして、本発明において提示された水性高アミロースデンプンエーテル配合物は、粘弾性、キャスタブル特性(塗布特性)、及びそれらがすぐに使用可能であり、扱いやすい特徴を維持しながら、最大24ヶ月間、安定的に貯蔵できることが挙げられる。
従って、農業、園芸、景観保全における幅広い用途や実施態様に加えて、本発明の変性HASデンプンは、化粧品とパーソナルケア用品の分野における特別な要件を満たすこともできる。
【0042】
すなわち、本発明の組成物は、増粘性、粘度調整性、共乳化性、保湿性、フィルム形成性、並びに、多くの化粧品やパーソナルケア用品における配合成分との適合性により、石油化学や合成物由来のポリマー(マイクロプラスチック、可溶性プラスチック)の代替品としても適している。
【0043】
又、本発明は、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分を生分解性ポリマーの原料として使用することにより、例えば、低い農薬及び肥料効率、環境汚染、及び増大する農地の需要などの、農業における周知の問題に対する解決策の一つになり得る。
すなわち、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分は、安価に製造することができ、生体適合性及び生分解性を有しているという利点がある。
従って、これらのポリマーは、大きな可能性を秘めており、農業におけるこれらの使用は、大幅に増加する可能性がある。
【0044】
又、葉面コーティング、土壌コーティング、種子コーティング、根のコーティング、粉塵の抑制、パーソナルケア、化粧品等の用途において、本発明のアミロース含量のデンプンがフィルム形成能力のために有益であることが判明している。
【0045】
又、本発明の組成物中のヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分は、非粒状及び/又は非アルファ化デンプン(画分)であることが好ましい。
この基準では、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分は、水分散性/膨潤性だけでなく、より良好な水混和性又は高度な可溶性を発揮することができる。
【0046】
又、本発明の組成物中のヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分は、均一な混合組成物を作成することができるので、フィルム形成が著しく改善されると言う効果も発揮できる。
【0047】
又、本発明の組成物は、植物、根又は土壌上に均質な層を形成するために、例えば、軟化剤や、高価な天然ポリマー(例えば、グアーガム)や、ポリ酢酸ビニル、若しくはポリビニルアルコールのような合成ポリマーなどの、添加剤又は追加のポリマーは、基本的に必要ではなく、それらを省略できると言える。
そこで、本発明の組成物においては、逆に、そのような添加剤又は追加のポリマーを事実上含まないことが好ましいとも言える。
【0048】
又、本発明におけるヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分は、非グルコースモノマーと更にグラフト化されていないことが好ましい。
【0049】
又、本発明のヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分は、ラジカル重合によって、例えば、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリロニトリルなどの合成モノマーと更にグラフト化されていないことが好ましい。
すなわち、このような合成高分子により、生体適合性や生分解性が低下する場合があるためである。
【0050】
又、本発明は、良好なキャスタブル性(コーティング性)、粘弾性における長期的な適用性、均質な混合物及び/又は貯蔵安定組成物を提供することができる。
【0051】
又、変性デンプンの特性は、アミロース/アミロペクチン含有量、平均分子量、架橋、追加の置換基(エーテル及びエステルなど)及び置換度によって更に調整することができる。
【0052】
従って、化粧品等の分野では、デンプン配合物である変性デンプンの長期的な粘弾性特性が、特に高い重要性を発揮すると言える。
【0053】
又、本発明の実施態様の一つは、植物保護剤を含有するフィルム状物を形成するポリマー分散液の塗布を可能にする水溶液組成物である。
これにより、生物学的又は化学的薬剤の洗い落としを低減し、それらのゆっくりとした放出(徐放性)というさらなる利点を発揮する、葉面上に、フィルム状物の所定層を形成する水溶液組成物である。
従って、本発明の水溶液組成物に由来してなる植物保護剤は、より効率的に使用することができ、化学的な保護剤の場合には必要量を減らすことができ、ひいては、環境汚染を減らすことができる。
【0054】
又、本発明の水溶液組成物の適用可能性は、極めて広いと言える。
特に、農薬や生物学的物質において、担持体として使用するために、種子、土壌、植物又は植物部分のコーティングのための適合性、及び、化粧品及びパーソナルケア用品の成分への適合性に関しても良好である。
従って、実施例等において、所定用途に焦点を当てているとしても、かかる実施例等の記載に基づき、特に理由なく、水溶液組成物の適用分野や構成を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、多角度光散乱検出器SEC-MALLSによる、本発明の組成物が含有するデンプンの重量平均モル質量(モル質量)の決定方法を説明するために供する図である。
図2図2は、D20中の高分解能13C‐NMRによる置換度(DS)及びモル置換度(MS)の決定方法を説明するために供する図である。
図3図3aは、1日後及び6ヵ月後のデンプン系組成物(配合物、本発明)の流動曲線を示すために供する図であり、図3bは、1日後及び6ヵ月後の別のデンプン系組成物(配合物、本発明)の流動曲線を示すために供する図である。
図4図4は、デンプン配合物の周波数掃引を示すために供する図である。
図5図5は、D20中の高分解能13C‐NMRによる置換度(DS)の決定方法を説明するために供する図である。
図6図6(a)は、本発明のデンプン配合物と、アジュバント配合物とを併用した、又は、殺菌剤単独で、マンゼブを含む配合物を噴霧散布した後の、非公開状況において2009年(以下、同様である。)に実施した、散布6日後、降雨量27mmにおける葉に残るマンゼブ残量を示した棒グラフであり、図6(b)は、本発明のデンプン配合物と、アジュバント配合物とを併用した、又は、殺菌剤単独で、マンゼブを含む配合物を噴霧散布した後の、非公開状況において2010年に実施した、、散布4日後、降雨量24mmにおける葉に残るマンゼブ残量を示した棒グラフである。
図7図7(a)は、本発明のデンプン配合物と、アジュバント配合物とを併用した、又は、殺菌剤単独で、フルアジナムを含む配合物を噴霧散布した後の、非公開状況において2009年に実施した、散布6日後、降雨量27mmにおける葉に残るフルアジナム残量を示した棒グラフであり、図7(b)は、本発明のデンプン配合物と、アジュバント配合物とを併用した、又は、殺菌剤単独で、フルアジナムを含む配合物を噴霧散布した後の、非公開状況において2010年(以下、同様である。)に実施した、散布4日後、降雨量24mmにおける葉に残るフルアジナム残量を示した棒グラフである。
図8図8(a)は、本発明のデンプン配合物と、アジュバント配合物とを併用した、又は、殺菌剤単独で、ジメトモルフを含む配合物を噴霧散布した後の、非公開状況において2009年に実施した、散布6日後、降雨量27mmにおける葉に残るジメトモルフ残量を示した棒グラフであり、図8(b)は、本発明のデンプン配合物と、アジュバント配合物とを併用した、又は、殺菌剤単独で、ジメトモルフを含む配合物を噴霧散布した後の、非公開状況において2010年に実施した、散布4日後、降雨量24mmにおける葉に残るジメトモルフ残量を示した棒グラフである。
図9図9は、非公開状況において2018年(以下、同様である。)に実施した、高温乾燥条件下での殺菌剤散布によるストレス軽減に対するデンプン由来配合物の影響を示すために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本明細書において、数値又は用語に、「約」という語句で示されている場合、基本的に、これは正確な数値、又は、少なくとも正確な数値を示す用語を包含するものである。
例えば、「約1」という表示は、正確に1を包含し、更には「約1」の用語は、「1」を包含する広い意味である。
【0057】
又、本明細書において、ヒドロキシアルキルデンプンのみが記載されている場合、この用語は、特に断らない限り、ヒドロキシアルキルデンプン画分をも包含する。
又、この場合、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分と表記する場合もある。
【0058】
又、本発明の組成物は、水性組成物(水性配合物)であることが特徴であると共に、好適な特性である。
【0059】
又、本発明の組成物に含有される塩は、少なくとも部分的に、あるいは、完全に、水に溶解している状態であることが好ましい。
【0060】
又、アミロース含有量は、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分の総重量(総質量)に関連するが、乾燥物基準(固形分基準)であることが好ましい。
【0061】
又、アミロース含有量は、原料デンプン又は原料デンプン画分、すなわちヒドロキシアルキル基で官能化する前のデンプン又はデンプン画分において測定されることがより好ましく、乾燥物基準であることが更に好ましい。
しかしながら、この値は、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分の総質量に関連する、好ましくは乾燥物基準の、アミロース含有量と相違がないことが判明している。
【0062】
又、重量平均モル質量は、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分、すなわちヒドロキシアルキル基で官能化した後のデンプン又はデンプン画分に関するものである。
【0063】
又、アミロース含有量の上限については、全体量に対して、99重量%であることが好ましく、95重量%であることがより好ましく、90重量%であることが更に好ましい。
【0064】
又、重量平均モル質量は、アミロース含有量に依存していることが好ましい。
すなわち、例えば、99重量%などと、アミロース含有量が高い場合は、物質は、アミロースを主成分とするデンプン画分である。
アミロース含有量が高いほど、モル質量が低いことが好ましく、重量平均モル質量の下限は約105g/molであり、これは、純粋な又は単離されたヒドロキシアルキル化アミロースの重量平均モル質量であることが好ましい。
【0065】
アミロペクチン含有量が増加すると、重量平均モル質量も増加させることが好ましく、1×108g/mol又は4×107g/molの上限に達するまで増加させることが好ましい。
このとき、デンプンは、ヒドロキシアルキル化された高アミロースデンプンとなる。
【0066】
デンプンの全体量(100重量%)に対して、少なくとも30重量%以上のアミロース含有量を有するデンプンは、従来技術から知られており、市販されている。
少なくとも30重量%以上のアミロース含有量を有する、利用可能なすべてのデンプンであれば、アミロース含有量、顆粒の構造及び付随する物質のばらつきのために、デンプンの種類に依存した特定のエーテル化プロセスの最適化に適していると言える。
【0067】
又、重量平均モル質量の別の上限は、示された下限のいずれかと組み合わせることができるが、5×107g/molである。
【0068】
本発明の組成物中には、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分が主として溶解されて、存在していることも好ましい。
溶解とは、好ましくは分子的に、均一に分散していることを意味する。
従って、好ましくは、本発明の組成物中のヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分の総質量に対して、より好ましくはデンプン/画分の乾燥物に対して、50重量%以上、あるいは50重量%を超えるヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分が溶解していることが好ましい。
更に言えば、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分が、組成物の全体量に対して、少なくとも60重量%以上、少なくとも70重量%以上、少なくとも80重量%以上、少なくとも90重量%以上、又は、少なくとも95重量%以上が溶解していることが更に好ましい。
又、本発明の当該組成物において、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分の一部は、完全に溶解していないデンプン又はデンプン画分の残りであってもよく、コロイド形態(マイクロゲルなど)及び/又は膨潤粒子形態が好ましいが、より好ましくはコロイド形態で存在することである。
【0069】
本発明の当該組成物は、液体組成物であって、以下、液体配合物や、単に、配合物という場合がある。従って、液体組成物は、任意の割合で完全に水と混和することができる。
【0070】
又、塩は、更に、液体肥料若しくはpH緩衝物質又はその両方として作用し得る。
【0071】
又、本発明の液体組成物は、部分的に乾燥した後に、フィルム状物を形成することが可能である。
この本発明の当該組成物により得られた、又は得ることができるフィルム状物及び生成物は、優れたフィルム形成特性を発揮することが見出されている。
【0072】
又、本発明の当該組成物及び組成物から得られる形成されたフィルム状物は、非生分解性の化学添加剤又は可塑剤を、実質的に含まないことが好ましい。
【0073】
又、本発明の当該組成物及び組成物から得られる形成されたフィルム状物は、部分的な生分解性であっても良いが、完全に生分解性であることがより好ましい。
【0074】
又、本発明の当該組成物は、共乳化特性を有することが好ましい。
従って、界面活性剤を添加しない脂肪酸では、少なくとも水性組成物の15容量%まで相溶性を得ることができる。そして、このような脂肪酸の化学組成は、水性組成物との混和性に影響を与えることが判明している。
【0075】
又、本発明の当該組成物である液体組成物は、化粧品及び植物ケア製品と同様に、植物、植物の部分、種子又は土壌に適用され得る活性物質(有効成分とも呼ばれる)と混合して使用することが好ましい。
【0076】
又、液体組成物は、活性物質と共に、すなわち活性物質が組成物中に含まれる状態において、使用されることが好ましい。
【0077】
又、液体組成物は、農業(植物生産、芝生、果樹園、農園、特殊栽培、花など)、林業、温室、家庭菜園、種苗場、屋内農業、畜産、化粧品、及びパーソナルケアの分野において使用されることが好ましい。
【0078】
この液体組成物は、植物保護剤や植物成長剤の担持体及び単体の生物刺激剤としての、種子コーティング、種子ペレット化、土壌コーティング、粉塵の低減(例示的な用途は、飼料、飼育場、オーキッド(orchids)、鉱業)、耐浸漬防止剤(anti-leaching)、植物のコーティング、葉面のコーティング、根のコーティング、果物のコーティング、野菜のコーティングの用途において、特に好適である。
一般に、かかる液体組成物は、コーティングや造粒が必要なもの、すべての工程や組成に適用することができる。
【0079】
好ましい意味において、種子ペレット化とは、小さい又は不規則な形状の種子を不活性物質でコーティングし、丸く均一にするプロセスを意味する。
好ましい意味において、種子コーティングとは、種子のより厚いコーティング形態を意味し、不活性担体及びポリマー外殻と同様に、肥料、成長促進剤及び/又は種子処理を含むことができる。
【0080】
本発明では、ベースとなるデンプンが高アミロースデンプン群から誘導され、当該アミロース含有量が、デンプンの全体量(100重量%)に対し、30重量%以上、好ましくは少なくとも50重量%以上である場合に、有利な結果を得ることができる。
すなわち、非常に低い割合の難溶解性成分が、ヒドロキシアルキル化によって得られ、好ましくは温和な条件下で得られる。
【0081】
ヒドロキシアルキル化の後、デンプン誘導体は、非晶質、非分解、分子状及び/又はコロイド状に分散した状態で得られることが好ましい。
【0082】
本発明の組成物は、粘弾性挙動を示す水性組成物として得ることができる。
かかる組成物は、長期安定性を有することが好ましく、一方で、組成物中のデンプンは、分解されず、優れた長期持続性の溶液状態を示す。
又、当該組成物は、スプレー、拡散及びキャストのような公知のプロセスによって更に処理することができる。
【0083】
本発明の液体組成物は、任意の割合で、すなわち相分離することなく、容易に水と混合することができる。
言い換えれば、本発明の液体組成物は、任意の割合で完全に、又は、ほぼ完全に水溶性である。
【0084】
本発明の液体組成物の粘度は、変性デンプンの濃度及び成分含有量に依存し、水分量が多いほど低下する傾向がある。
すなわち、動的粘度は、通常、25℃、せん断速度30秒の測定条件下において、0.1~2.5Pa・sの範囲内の値にある。
なお、動的粘度の測定方法については、実施例の項において、詳細に記載されている。
【0085】
又、液体組成物は、例えば、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール又はグルコースのような可塑剤を事実上添加しなくても、優れたフィルム状物の形成特性を発揮することができる。
従って、本発明の液体組成物は、混合物において水性成分として使用することができ、又は非混合物として、単独使用することもできる。
【0086】
本発明の組成物は、可逆的な水溶性(reverse water soluble)を示すことができる。
すなわち、水溶液を調製する目的で、組成物を乾燥し、再水和させることも好ましい。
【0087】
又、当該組成物は、遅延放出マトリックスとして作用することができる。
すなわち、組成物中には、農薬若しくは植物強化剤又は化粧品成分のような活性物質が含まれた場合、徐放性として、所定時間をかけて、徐々に放出することができる。
【0088】
又、液体組成物は、特に低い塩含有量で、化粧品及びパーソナルケア用品に使用することが好ましい。
本発明の組成物、又は組成物から得られるフィルム状物は、化粧品又はパーソナルケア用品として、又はそのために使用することができ、増粘剤、共乳化剤、フィルム形成剤、湿潤剤、粘着剤、保護バリア剤及び粘度調整剤の少なくとも一つとして使用することが好ましい。
【0089】
又、エーテル化は、本発明の好ましいデンプン変性法である。
基礎的な方法は、所定文献としてのRutenberg,M.,W.及びSolarek,D.の「デンプン誘導体、製造及び使用」、書籍「デンプン:化学及びテクノロジー」(Whister,L.編)343~349頁(1984年)及びRoth,W.B.,Mehltretter,C.L.の出版物である「ヒドロキシプロピル化されたアミロマイズデンプンフィルムのいくつかの特性」Food Technol.21号、72~74頁(1967年)に記載されている。
これらの方法によって調製され、ヒドロキシアルキル化された、より好ましくはヒドロキシプロピル化されたデンプンは、室温又はジェットクッキングによって水中に分散させることができる。
【0090】
又、本発明の組成物中の水に溶解した未分解のヒドロキシアルキル化デンプンのフィルム特性は、アミロース含有量及び使用されるデンプンの種類に影響されると言える。
一方、高い数値は、より柔軟なフィルムと高い機械的強度とを与えることから好ましいと言える。
良好なフィルム形成と、長期的な粘度の安定とに関与する別の付加的な要因は、置換基の種類、最適なMS値、並びに炭水化物骨格に沿った置換基の分布であり、ここで高い均一性は、より良いフィルム形成とより長い安定性をもたらす。
従って、本発明では、アミロース含有量が低い場合のように、フィルム形成を支援するために、あるいは脆性が低下したフィルム形成を支援するために、可塑剤、その他の合成又はバイオポリマー添加物を使用する必要は、必ずしもない。
【0091】
又、本発明によれば、未変性デンプンの問題点を克服するものである。
すなわち、フィルム形成の場合、未変性デンプンは、110℃より高い温度での加圧クッキングによるデンプンの完全溶解と、劣化による比較的高い温度でのデンプン溶液の処理という前提条件でのみ適用可能であることが判明した。
すなわち、デンプンを水中で、高温処理することによって得られる、ゼラチン化デンプンは、デンプンが部分的にしか溶解しておらず、超分子構造の割合が相対的に高い不均一な水性分散液である。
【0092】
本発明は、直鎖多糖鎖並びに分岐多糖の外側の側鎖において、置換基のほぼ均一な分布をもつ、置換度を可能にする。
この化学構造は、変性デンプン生成物の水系における劣化と相分離とを防止し、長期的に安定な粘性を得るために有益である。
かかる置換度は、デンプンの種類やアミロースの含有量によって、調整することができる。
この意味で、レオロジー特性の長期安定性を有する水性変性デンプン組成物における主成分を開発することが可能である。
具体的な決定方法については、実施例の項において、詳細に記載する。
従って、本発明は、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分が、ほぼ均一に置換された、所定組成物を提供する。
【0093】
又、アミロース含有量を電流測定法により測定した。
具体的な方法は、実施例の項において、詳細に記載する。
【0094】
又、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分中のアルキル部分は、メチル基、エチル基、プロピル(n-プロピル又はイソプロピル)基、ブチル(n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル)基から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
非常に好適なヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分は、ヒドロキシプロピルデンプン又はヒドロキシプロピルデンプン画分であり、ここでプロピル基は、より好ましくはn-プロピル基である。
【0095】
又、本発明の組成物の一実施形態において、組成物中のヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分の含有量が、組成物の全体量(100重量%)に対して、約5~約25重量%の範囲内の値であることが好ましい。
又、かかる組成物中のヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分の含有量を、約5~20重量%の範囲内の値、7~15重量%の範囲内の値、更には、8~12重量%の範囲内の値のいずれかとすることが更に好ましい。
【0096】
又、本発明の組成物の一実施形態において、塩の含有量は、組成物の全体量(100重量%)に対して、0.01~約10重量%の範囲内の値であることが好ましい。
又、かかる組成物中の塩の含有量を、0.02~約10重量%の範囲内の値、0.05~約10重量%の範囲内の値、或いは、0.05~8重量%の範囲内の値のいずれかとすることがより好ましい。
【0097】
かかる本発明の組成物が、農業分野で使用される場合には、塩の含有量を約2~10重量%の範囲内の値とすることが好ましく、5~9重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、6~8重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0098】
又、本発明の組成物が、化粧品及びパーソナルケア用途に使用される場合に用いられる場合には、塩の含有量を、約0.01~10重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.01~5重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.01~2重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0099】
又、本発明の組成物の一実施形態において、変性デンプンは、0.05~約0.8の範囲のモル置換度(MS)を有することが好ましく、約0.2~約0.7の範囲のモル置換度(MS)を有することがより好ましく、0.3~0.6の範囲のモル置換度(MS)を有することが更に好ましい。
このモル置換度(MS)の値は、原料デンプン又は画分のアミロース含有量によって、調整することが好ましい。なお、具体的な測定方法は、実施例の項において、詳細に記載する。
又、MSは、すべての置換可能なヒドロキシ基、特にアンヒドログルコース単位のC2、C3及びC6位に関するものであり、更に置換基に含まれるヒドロキシ基に関するものである。
従って、MSは、官能基のヒドロキシ基(これは、アンヒドログルコース単位のC2、C3、又はC6に結合している)に結合している一つ又は複数のさらなるアルキレンオキシド部位を包含する。
すなわち、MSは、アンヒドログルコース単位に直接及び間接的に結合したアルキレンオキシドの平均モル数を反映する。
【0100】
又、置換度(DS)は、アンヒドログルコース単位のC2、C3又はC6位に導入したエーテル基にのみに関連している。
かかるDSは、アンヒドログルコース単位中の置換されたヒドロキシ基の数平均を反映する。従って、DSは、MSと比較して、間接的に結合したアルキレンオキシド部分を含まないと言える。
【0101】
又、デンプンが均一に置換された場合、決定された置換度DSに従って、アンヒドログルコース単位は、統計値の置換基を有することになる。
例えば、DS=1の場合、すべてのアンヒドログルコース単位は、一つの置換基を有することになる。
又、DS=0.5の場合、2つのグルコース単位ごとに、一つの置換基を有する、すなわち、ピラノース環の50%が置換され、50%が置換されていないことになる。
更に又、不均一な置換の場合、ピラノース環の中には、(二置換、三置換の)一つ以上の置換基を有するものがある。
すなわち、デンプンポリマーの完全加水分解後にDS=0.5の場合、50%(非常に均一な置換)又は50%以上(値が大きいほど、置換が不均質である)の非置換グルコースが、付加的な特徴として見出される。
【0102】
又、置換度(DS)の値は、モル置換度(MS)の値の20~90%の範囲内であることが好ましい。
そして、かかるDSは、過剰なアルキレンオキシド、pH値、温度、デンプン濃度、反応時間などの合成条件によって決定されることが好ましい。
従って、DSは、約0.01~約0.72の範囲内の値、約0.04~約0.63の範囲内の値、約0.06~約0.54の範囲内の値、約0.025~約0.6の範囲内の値、約0.1~約0.5の範囲内の値、約0.15~約0.4の範囲内の値、又は約0.1~約0.5の範囲内の値のいずれかであることが好ましい。
【0103】
又、本発明の組成物における、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分の非置換グルコース単位の割合は、1-DSであることが好ましい。
従って、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分における非置換グルコース単位の割合は、0.4~0.975の範囲内の値が好ましく、0.5~0.9の範囲内の値がより好ましく、0.6~0.85の範囲内の値が更に好ましい。
これらの値は、百分率で表すことができ、又、100を掛けることによってMS及びDSで表すこともできる。
【0104】
本発明の組成物の一実施形態において、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分は、主として非粒状の非晶質構造を有することが好ましい。
「主として」という用語は、本発明の組成物中のヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分の総質量に関連する、好ましくはデンプン/画分の乾燥物に基づいた、デンプン又はデンプン画分の少なくとも95重量%が、非粒状の非晶質構造を有することを意味する。
【0105】
又、本発明の組成物の一実施形態において、塩は、アニオンを含むカルコゲン又はプニクトゲンを有することが好ましい。
【0106】
又、本発明の組成物の一実施形態において、アニオンは、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、又は酢酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0107】
又、本発明の組成物の一実施形態において、塩は、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カリウム、硫酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0108】
又、本発明の組成物の一実施形態において、組成物は、テルペン類、フミン質、農薬、生物刺激剤、植物強化剤、又は保存物質からなる群から選択される少なくとも一つの成分を更に含み、微生物及び真菌の活性を回避する能力を有する保存物質を更に含むことが好ましい。
【0109】
又、本発明の組成物中の所定成分の含有量は、液体組成物の全体量(100重量%)に対して、0.001~10重量%の範囲内の値であることが好ましい。
そして、所定成分の含有量につき、0.001~5重量%の範囲内の値、0.001~2重量%の範囲内の値、0.001~1重量%の範囲内の値、更には0.001~0.1重量%の範囲内の値のいずれかであることが更に好ましい。
【0110】
又、本発明において、農薬は、肥料、植物保護剤、植物生長調整剤から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0111】
又、植物保護製品は、農薬、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、殺菌薬、殺ダニ剤、殺線虫剤又は軟体動物駆除剤の少なくとも一つを含有することも好ましい。
【0112】
又、本発明に適した植物保護製品、特に単一の有効成分又は複合有効成分は、特に理由なく、特定量に限定されるものではないが、以下に列挙された成分であることが好ましく、そのリスト全体を参照する場合には、本発明に援用できるものとする。
ドイツ連邦共和国消費者保護食品安全局による「廃止された認可に関する情報付きのドイツにおける認可植物防疫製品のリスト」(日付:2020年1月)
当該リストは、www.bvl.bund.de/infoppp(2020年02月28日の英語版の頁で、「植物保護製品の簡潔なリスト(2020年1月)」というリンクを選択)又は、www.bvl.bundde/infopsm (2020年02月28日のドイツ版の頁で、「ドイツにおける認可済み植物保護製品の概要リストと認可終了の情報(2020年1月)」というリンクを選択)から電子的に入手できる。
【0113】
本発明の植物保護製品として、特に適切な除草剤を、以下の表に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
又、植物保護製品は、天然物由来の植物保護製品であることも好ましい。
【0118】
又、肥料は、合成肥料であることが好ましく、有機物由来の肥料であることも好ましい。
【0119】
又、テルペン類を含む組成物は、微生物の活性を回避する能力を発揮できることが好ましい。
かかるテルペン類は、好ましくはモノテルペノイドであり、より好ましくはゲラニオールである。
そして、テルペン類の含有量は、組成物の全体量に対して、約0.05~0.2重量%の範囲内の値とすることが好ましく、約0.05~0.15重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0120】
又、生体刺激剤は、アミノ酸、ペプチド、酸化防止剤、又は、微生物発酵及び藻類からの生成物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であることが好ましい。
【0121】
又、本発明の組成物を、場合によっては、水性溶媒で更に希釈することも好ましい。
更に、本発明の組成物を、テルペン類、フミン質、農薬、生物刺激剤又は植物強化剤から選択される少なくとも一つの化合物と共に希釈することも好ましい。
【0122】
又、本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、可塑剤を実質的に含有しないことも好ましい。
【0123】
又、本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、非生分解性添加剤を実質的に含まないことも好ましい。
【0124】
又、本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、生分解性であることが好ましく、しかも、完全(100%)な生分解性であることがより好ましい。
【0125】
又、本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、微生物及び真菌の活性を回避する能力を有する保存物質を含むことが好ましい。
当該保存物質は、中鎖又は長鎖カルボン酸及びカルボン酸塩、植物油、精油、ソルビン酸及びソルビン酸塩、安息香酸及び安息香酸塩、キトサン、イソチアゾリノン及びベンズイソチアゾリノンの群からなる少なくとも一つであることが好ましい。
又、その含有量は、組成物の全体量に対して、約0.01~0.3重量%の範囲内の値とすることが好ましく、約0.01~0.15重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0126】
又、本発明の一実施形態でおいて、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分は、架橋されていることが好ましい。
かかる架橋は、粘度を調節するために使用することができ、化粧品の分野における使用において、特に適している。
そして、有用な架橋剤は、以下の化合物等である。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、ピルビン酸などの低分子量のアルデヒド、ジアルデヒド、ケトン、ジケトン、酸化剤;例えば、ピルビン酸、グルタル酸、クエン酸、アジピン酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機多塩基酸塩化物及びその誘導体;無機架橋試薬、無機多塩基酸、アルカリ-次亜塩素酸(塩基性媒体中の塩素を含む)、ホスゲン、オキシ塩化リン、ポリリン酸、アルカリ-トリメタリン酸、多官能性シラン;例えば、エピクロルヒドリン、エピクロルヒドリンの誘導体、単官能及び多官能グリシジルエーテル、エポキシハライド、置換エポキシド、ポリエポキシドなどのエポキシ化合物とその誘導体、その反応性オリゴマー及びポリマー;例えば、ジエチレングリコールジクロリド、トリエチレングリコールジクロリドなどの脂肪族ジハライド、置換ポリエチレングリコール、;例えば、アクリル酸の誘導体、置換アクリレート、ビニル基含有化合物、アルデヒド-アミド-縮合物、N,N,-ジメチロール-イミドゾリドン-2(DMEU)、塩化シアヌル、ビフェニル化合物、酸化モノ、ジ及びオリゴ糖、任意の種類のボロン酸エステル架橋などの、例えば、ラジカル媒介架橋、二重結合の重合など、更に反応して架橋できるグラフト化試薬の少なくとも一つである。
そして、物理的に誘導された架橋のさらなるバリエーションは、溶融を含む熱プロセス(水なし)、水熱プロセス(熱水処理)、複合化、凍結融解-プロセスによるものであることが好ましい。
しかしながら、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分については、本発明の一般的な目的のために、架橋されている必要性は、必ずしもない。
【0127】
又、本発明の一実施形態において、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分は、少なくとも一種類のさらなる置換基又は変性を有することが好ましい。
これは、ヒドロキシアルキル基以外の置換基、又はヒドロキシアルキル化以外の変性を意味する。
追加の置換基は、粘度、フィルム形成特性、水溶性、ゲル化特性、保水性、イオン結合性、導入電荷、疎水性、親水性の場合、農業用途や化粧品での特性を調整することができる。
有用な置換基/変性は、任意の種類のエステル、エーテル、例えば、カルボン酸アルキル、カルボン酸アルキル塩、アルキルエステル、アルキルエーテル、ヒドロキシアルキルなどの炭素鎖にさらなる官能基又はヘテロ原子(硫黄、酸素、窒素、リン、ホウ素)を有するエーテルとしてデンプンに結合したアルキル基、カルバモイルアルキル、デンプン酸化物、デンプンの還元物、アルキルアミン、第四級アミン、第四級アルキルアミン、アルキルアミド、アルキルニトリル、カルバメート、炭酸塩、アルキルチオール、例えば、リン酸塩、硫酸塩のようなあらゆる種類の無機基、シラン、シラノール、シロキサン、シリルエーテル、ニトロ基、チオン、スルフィド、スルホキシド、キサンテートチオカルバメート、アルデヒド、チオアルデヒド、尿素、グアニジニウム基、カルボニル、アルキルカルボニル、ハロゲン化アルキル、例えば、アクリル酸誘導体、置換アクリル酸塩、ビニル基を含む化合物、アルデヒド-アミド縮合物のようなあらゆる種類のグラフト化剤、例えば、ラジカルグラフト化剤の少なくとも一つである。
しかしながら、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分は、本発明の一般的な目的のために、さらなる種類の置換基を有する必要は、必ずしもない。
【0128】
さらなる実施態様において、本発明は、デンプンの全体量(100重量%)に対し、アミロース含有量が少なくとも30重量%で、重量平均モル質量が1×105g/mol~1×108g/molの範囲内、好ましくは1×105g/mol~4×107g/molの範囲内にあるヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分と、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩から選択される少なくとも一つの塩とを含むフィルム状物を提供する。
このようなフィルム状物は、本発明の組成物を少なくとも部分的に乾燥することによって得ることができる。
すなわち、本発明の組成物に由来したフィルム状物は、完全に又は実質的に乾燥されることが好ましい。
【0129】
本発明は又、上記のフィルム状物の製造方法を提供し、当該方法は、本発明の組成物を基材上に塗布し、当該組成物を少なくとも部分的に乾燥させてフィルムを形成することを含む。
【0130】
そして、フィルム状物は、通常、基材上に形成されることが好ましい。
かかる形成方法は、基材からフィルムを分離することを更に含むことができる。
分離は、例えば、剥離、切断、又は引き剥がしによって行うことができる。
【0131】
又、一実施形態において、本発明の組成物の塗布は、噴霧、散布、浸漬又はキャスティングによって行うことができる。
【0132】
又、基材は、フィルムが存在又は形成されている物質、又はコーティングが存在又は形成されている物質として本願に開示されている任意の物質であることが好ましく、コーティングはフィルムであることが好ましい。
又、一実施形態において、基材は、種子、土壌、植物、又は植物の一部、成長培地、又は動物飼料から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
本発明は又、フィルムと基材とを含む製品を提供することができる。
このような製品において、フィルムは、基材上に形成され、又は配置される。
又、乾燥又は部分乾燥は、本発明の組成物に含まれる水を(部分的に)蒸発させることによって行うことができる。
【0133】
又、本発明の一実施形態において、乾燥は、任意の気体雰囲気中で行うことができる。
又、任意の適切な気体又は気体混合物を使用することが好ましい。更に、乾燥は、特に大気中で行うことが好ましい。更に言えば、かかる乾燥は、周囲の大気の対流の有無にかかわらず行うことが好ましい。
【0134】
又、本発明の一実施形態において、乾燥は、2~60℃、2~50℃、2~40℃、又は2~30℃のいずれかの温度範囲で行うことが好ましい。
なお、上記の上限のいずれかと組み合わせることができるその他の下限は、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、又は10℃のいずれか一つであることが好ましい。
【0135】
又、本発明の一実施形態において、乾燥は、大気圧で行うことが好ましい。
すなわち、一実施形態において、乾燥は、0.4bar~1.070bar(0.4×105Pa~1.070×105Pa)の範囲の圧力で行うことが好ましい。
【0136】
ここで、「実質的に乾燥した」とは、フィルムの乾燥組成物の重量に対する含水率が約15重量%以下、又は含水率が5重量%以下、より好ましくは3重量%以下を意味する。
又、含水率は、気温25℃、相対湿度50%で測定することが好ましい。
【0137】
以下に述べるフィルム又はコーティングの成分については、上記の組成物の開示を参照する。組成と同じ成分をフィルムやコーティングに含有させることができる。
【0138】
更に別の態様として、本発明は、被覆処理(コーティング)を施した、種子、土壌、植物、又は植物の一部、又は動物飼料である。
すなわち、当該被覆処理は、デンプンの全体量(100重量%)に対し、少なくとも30重量%以上のアミロース含有量を有し、重量平均モル質量が、約1×105g/mol~約1×108g/molの範囲内の値、好ましくは約1×105g/mol~約4×107g/molの範囲内の値であるヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分と、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩から選択される少なくとも一つの塩とを含む組成物に依拠している。
よって、それを用いた被覆処理としてのコーティングは、上述したような組成物から得られるものであることが好ましく、当該組成物は、少なくとも部分的に乾燥されていることが好ましく、コーティングが前述のようにフィルム状物であることが好ましい。
【0139】
本発明は、種子、土壌、植物、植物の一部、又は動物飼料をコーティングする方法を提供し、当該方法は、以下の工程を含むことが好ましい。
-種子、土壌、植物、若しくは植物の一部、又は動物の飼料に、本発明の所定組成物を塗布する工程
-少なくとも部分的に当該組成物を乾燥させ、種子、土壌、植物、植物の一部、又は動物の飼料にコーティングを形成する工程
【0140】
又、本発明の一実施形態において、本発明の組成物の塗布は、噴霧、散布、浸漬又はキャスティングによって行うことが好ましい。
【0141】
又、乾燥又は部分乾燥は、本発明の組成物に含まれる水を(部分的に)蒸発させることによって行うことが好ましい。
【0142】
又、本発明の一実施形態において、乾燥は、任意の気体雰囲気中で行うことが好ましい。
そして、任意の適切な気体又は気体混合物を使用することが好ましい。
又、乾燥は、特に大気中で行うことが好ましい。
そして、かかる乾燥は、周囲の大気の対流の有無にかかわらず行うことが好ましい。
【0143】
又、本発明の一実施形態において、乾燥は、2~60℃、2~50℃、2~40℃、又は2~30℃の温度範囲のいずれかで、それぞれ行うことが好ましい。
そして、上記の上限のいずれかと組み合わせることができるその他の下限は、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、又は10℃のいずれかである。
【0144】
又、本発明の一実施形態において、本発明の組成物に関する乾燥は、大気圧で行うことが好ましい。
すなわち、かかる乾燥を0.4bar~1.070bar(0.4×105Pa~1.070×105Pa)の範囲内の圧力で行うことが好ましい。
【0145】
又、コーティング(被膜処理)してなる被覆物は、上述したようなフィルム状物であることが好ましい。
そして、かかるコーティングは、デンプンの全体量(100重量%)に対し、アミロース含有量が少なくとも30重量%で、重量平均モル質量が約1×105g/mol~約1×108g/molの範囲、好ましくは約1×105g/mol~約4×10g/molの範囲であるヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分を含む組成物につき行うが、それに由来して形成されたフィルム状物を意味する場合もある。
又、かかるコーティングは、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも一つの上記塩を含む組成物について、行うことが好ましい。
【0146】
又、本発明の一実施形態において、コーティングは、農薬、生物刺激剤、又は植物強化剤から選択された成分を含み、当該成分は、コーティング中に含まれ、特にカプセル化され、又は被膜処理してなる被覆物であるコーティングに付着していることが好ましい。
このようなコーティングによるフィルム状物は、当該所定成分を含む本発明の組成物から得ることができる。
【0147】
さらなる実施態様において、本発明は、種子、土壌、成長培地、植物、又は植物の一部のコーティング、特に植物若しくは植物の一部の表面のコーティング又は動物飼料のコーティングのための、本発明の組成物、又は本発明の組成物に由来したフィルム状物の使用方法に向けられている。
すなわち、本発明の組成物又はフィルムを種子、土壌、成長培地、植物、若しくは植物の一部に、特に植物若しくは植物の一部の表面に、又は動物の飼料に塗布する、本発明の組成物又は、それに由来したフィルム状物への使用方法を提供する。
【0148】
ここで、コーティングとは、本発明の組成物によるコーティング、本発明の組成物を部分的もしくは完全に乾燥させた状態のコーティング、あるいは、本発明のフィルム状物によるコーティングしてなる被覆物を意味する場合がある。
コーティングが、本発明のフィルム状物である場合、そのようなコーティングは、コーティングされるべき表面又は物品への塗布後に、少なくとも部分的に乾燥された本発明の組成物に由来したものが好ましい。
又、コーティング、特に種子に対するコーティングは、活性物質で処理した後に行うことが好ましく、農薬などの活性物質を塗布する際に併せて行うことが好ましい。
【0149】
又、本発明の組成物、又は、それに由来してなるフィルム状物は、フィルム状物にするためのフィルム形成バインダーとして種子に塗布することが好ましい。
種子をコーティングする他の目的としては、皮膜で覆うこと、結着のためのペレット化、農薬、接種剤、生体刺激剤から選択された物質の種子表面への固定、又は発芽の改善などがある。
本発明の組成物、又は、それに由来してなるフィルム状物は、コーティングする前に物質、特に農薬で処理された種子を被覆するために使用することが好ましい。
このことは、本発明の種子にも同様に適用される。
【0150】
又、フィルムコーティング、皮殻で覆う及びペレット化の用途などのあらゆる形態の種子コーティングにおいて、形成されたデンプンフィルムは、種子表面への農薬、特に殺虫剤、肥料、又は生物刺激剤などの塗布される活性物質の固定及び結着を改善し得る。
このような物質の環境中での粉塵形成、摩耗及び拡散は、本発明の組成物又はフィルムによって低減することができる。
【0151】
又、本発明の組成物、又は液体組成物を用いて、種子をコーティングすると、更に活性物質又は所定成分を含まない場合でも、保水性及び発芽を改善することができる。
【0152】
又、本発明の組成物、又は、それに由来したフィルム状物は、特に風食の低減又は防止、あるいは有機物(好ましくは腐植土)、粘土シルト(silt)又は砂の浸出を低減するために、土壌コーティングに使用することが好ましい。
当該物質は、本発明の組成物、又は本発明の組成物に由来したフィルム状物によって、土壌に結着又は固定されていることが好ましい。
又、土壌のコーティングは、農薬で処理する前に行うことが好ましい。
本発明の組成物、又は、それに由来してなるフィルム状物は、土壌の結着に用いることが好ましい。
すなわち、例えば、農薬、特に土壌、より具体的には表土からの肥料又は殺虫剤などの活性物質の溶出を防止するために使用することが好ましい。
又、土壌の保水性を向上させるために、本発明の組成物、又は、それに由来してなるフィルム状物による土壌コーティングを行うことが好ましい。
土壌に塗布される、本発明の組成物、又は、それに由来してなるフィルム状物が農薬を含む場合、塗布された農薬、特に塗布された殺虫剤は、表土層に長く残り、微生物の生分解に有利となり、地下水の汚染を低減することができる。
このことは、本発明の土壌にも同様に適用される。
【0153】
又、砂質土壌に対しては、組成物の一部として、例えばフミン酸、フルボ酸、フミン酸塩のようなフミン質を添加すると、植物の根による栄養及びミネラルの利用可能性及び取り込み、並びに保水性が向上することから好ましいと言える(参照文献:A. Noroozisharaf, M. Kaviani, Physiol Mol Biol Plants 24, 423-431 (2018))。
【0154】
又、植物の一部は、例えば、葉、果実の花、花、茎、果実、根、穂、ノギ、穀物、トウモロコシの実、又は根の少なくとも一つから選択されることが好ましい。
【0155】
又、植物は、作物植物、穀物、野菜、果物、木の実、例えば綿などの繊維作物、スパイス植物、草、芝、木材用植物、医療用植物、観葉植物、低木、園芸植物の少なくとも一つから選択されることが好ましい。
【0156】
又、植物は、具体的には、小麦、大麦、ライ麦、オート麦、トウモロコシ、米、大豆、カノーラ、サトウキビ、ジャガイモ、テンサイ、マニオク、スイカ、バナナ、サツマイモ、キビ、玉葱、キュウリ、レタス、トマト、人参、キャベツ、芽キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、ケール、コールラビ、キャベツ、中国ブロッコリー、コラードグリーン、カブ、白菜(Chinese cabbage)、ハクサイ(napa cabbage)、チンゲンサイ、ラディッシュ、ダイコン、種芋類、パースニップ、ビート、テンサイ(sea beet)、スイスチャード、テンサイ(sugar beet)、マメ、ナス、カボチャ(pumpki)、カボチャ(squash)、マロー、ズッキーニ、ヒョウタン、ニンニク、ホウレン草、ヤムイモ、キャッサバ、リンゴ、ナシ、チェリー、オレンジ、レモン、パイナップル、コーヒー、紅茶、カカオ、タバコ、ピーナッツ、クルミ、オリーブなど、ライグラス、アルファルファなど、レンズ豆など、バラやその他すべての花などから、少なくとも一つから選択されることが好ましい。
【0157】
そして、本発明に適した特定の植物は、以下の記事に記載されており、これらを参照することにより、本発明に組み込むことができる。
https://de.wikipedia.org/wiki/Liste_von_Nutzpfianzen(2020年1月14日版); https://en.wikipedia.orq/wiki/List of domesticated plants (2020年1月14日版); https://en.wikipediaorq/wiki/List of culinarv fruits (2020年1月14日版);https://de.wikipedia.org/wiki/Liste der Obstarten (2020年1月14日版); https://de wikipediaorq/wiki/Liste der Gemuese (2020年1月14日版); https://en.wikipediaorq/wiki/List of vegetables (2020年1月14日版) grasses, shrubs, trees/forestry, ornamentals, garden plants
【0158】
又、本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、農薬、特に殺虫剤又は肥料、好ましくは葉面肥料のような活性物質からの洗い落としを低減するための葉面コーティングとして使用することが好ましい。
例えば、本発明の水性組成物を、活性物質(例えば、殺菌剤、殺虫剤、殺菌剤及び除草剤のような植物保護剤、又は肥料、好ましくは葉面肥料など)と混合し、共に葉に塗布することによって、デンプンフィルムを形成することが好ましい。
すなわち、乾燥後に形成されるデンプンフィルムにより、洗い落としが減少し、不要な洗い落としが減少して活性物質(活性成分ともいう)がその作用場所に残り、土壌の早期の汚染を回避できる。
従って、本発明の水性組成物によれば、植物、特に葉に塗布された活性物質、特に殺虫剤又は肥料の洗い落としによる不要な土壌及び地下水の汚染を低減することができる。
【0159】
又、根のコーティングは、水の利用可能性、水の利用効率及び水の取り込みを含む保湿性を向上させる効果を有し、又はそのために行うことが好ましい。
本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、根に塗布することにより、保水性、根の成長、貯蔵安定性、栄養吸収の改善及び/又は塗布した農薬、塗布した生物刺激剤、塗布した微生物及び/又は塗布した根用成長促進物質の根表面への固定や結着を改善することができる。
【0160】
果実や野菜のコーティングは、降雨時の浸透圧破裂(フードクラッキング)を回避する効果を有するか、又はそのために行うことが好ましい。
従って、本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、降雨時に浸透圧が上昇することによる果実や野菜の破裂(フードクラッキング)を低減するための保護フィルムとして使用することができる。
【0161】
本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、特にイネ科などの単子葉植物や、好ましくは激しい種子飛散をする他の多くの植物において、穂やトウモロコシの実のコーティングとして使用することができる。
これは、風雨の影響による、収穫前の種子の損失が低減又は回避され得るという効果を発揮することができるためである。
【0162】
この点において、本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、穂、トウモロコシの実及び種子のバインダーとして使用することができる。
【0163】
又、本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、バインダーとして動物用飼料に塗布することが好ましい。
かかるバインダーは、天然物であり、無害であり、食用であることが好ましい。
ここで、本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、耐摩耗性の向上、ひいては粉塵を低減するために使用することが好ましい。
動物飼料産業で使用される製品のほとんどが粉末状であるため、本発明は、動物飼料の原料由来の粉塵への曝露を低減することができる。
それらの多くは化学物質あり、生物学的薬剤は、例えば皮膚及び呼吸器感作性のような急性及び長期の毒性作用の両方を有する。
【0164】
さらなる態様において、本発明の組成物、又は、本発明の組成物に由来したフィルム状物の、農薬、生物刺激剤、植物強化剤の担持体としての使用方法、又は生物刺激剤としての使用方法に向けられる。
すなわち、本発明によれば、農薬、生物強化剤及び/又は植物強化剤を、これらの1種以上の担持体を形成する組成物に投入することを特徴とする組成物の使用方法、又は、本発明の組成物、又は、それに由来したフィルム自体を、生物刺激剤としての使用方法をも提供するものである。
【0165】
本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、活性物質、例えば、農薬、特に駆除剤、殺菌剤、殺虫剤、殺細菌剤、除草剤などの植物保護製品又は肥料のための担持体として使用することができる。
又、このような活性物質は、組成物中、又は少なくとも部分的に乾燥した組成物中、又は本発明のフィルム中に埋め込むことができる。
すなわち、本発明の組成物、少なくとも部分的に乾燥した組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、徐放性マトリックスとして作用する。
又、本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、農薬又は植物強化剤のような活性物質を含み、放出することができる。
又、本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、遅延輸送、遅延拡散、制御された放出、及び徐放を可能にする。
この結果、活性物質又は植物保護剤を含む共配合物によって引き起こされる植物のストレスが低減される。
例えば、徐放及び長期活性によるより高い殺虫剤の効率は、植物のストレスを低減することができる。
これは、本発明の組成物又はフィルムがコーティングとして使用される本発明の実施形態にも適用される。
【0166】
本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、さらなる添加物として、生物刺激剤を含んでいることが好ましく、又は本発明の組成物、又は本発明の組成物に由来したフィルム状物自体が、生物刺激剤であることが好ましい。
本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、乾燥、太陽照射、霜、降雨などの外部ストレスの影響を低減するための植物の生物刺激剤として使用することができる。
又、本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、微生物活性の刺激を確実にするために、土壌に散布することができる。
これは、特に、本発明の組成物、又は本発明の組成物に由来したフィルム状物を、土壌に対する被覆処理剤(コーティング)として使用する場合に好適である。
本発明の組成物、又は本発明に由来したフィルム状物は、乾燥、太陽照射、霜、降雨のような外部ストレスの影響を低減するため、及び土壌中の微生物活性の刺激のために、葉上に生物刺激剤フィルムを形成するために使用することが好ましい。
【0167】
さらなる実施態様において、本発明の組成物、又は本発明に由来したフィルム状物は、粉塵結着剤又は粉塵防止剤としての使用に好適である。
すなわち、本発明は、粉塵を低減するための本発明の組成物又は本発明に由来したフィルム状物の使用方法を提供する。
本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、特に動物生産施設における粉塵を低減するために使用することが好ましく、動物生産施設は、飼料場、放牧地、厩舎、牛舎及び競馬場であることが好ましい。
本発明の組成物、又はそれに由来したフィルム状物は、例えば、噴霧によって、表面上又は物体上に塗布されることが好ましく、又は環境中に、直接的に持ち込まれることが好ましい。
【0168】
さらなる実施態様において、本発明は、特に、本発明の組成物、又は本発明の組成物に由来したフィルム状物が種子、土壌、植物、又は植物の一部に塗布される場合の、収量増加剤としての本発明の組成物、又は本発明の組成物に由来したフィルム状物の使用に向けられている。
この用途において、組成物は、農薬、生物刺激剤、又は植物強化剤を含んでいることが好ましい。
【0169】
さらなる本発明の実施態様において、特に、本発明の組成物、又は本発明の組成物に由来したフィルム状物が、種子、土壌、植物、又は植物の一部に塗布される場合の、水の利用効果を高めるための薬剤としての使用や用途に向けられている。
この用途において、組成物は、農薬、生物刺激剤、又は植物強化剤を含んでいることも好ましい。
【0170】
又、本発明の使用又は本発明の使用方法において、組成物は、例えば、種子、土壌、植物、又は植物の一部、又は動物飼料上に塗布され、少なくとも部分的に乾燥され、実質的に乾燥されていることが好ましい。
これにより、本発明のフィルムを形成することができる。
ここで、「実質的に乾燥」とは、フィルム状物の乾燥組成物の重量に対して、約15重量%以下、又は5重量%以下、より好ましくは3重量%以下の水分含有率を意味する。
なお、含水率は、空気温度25℃、相対湿度50%において測定されることが好ましい。
【0171】
さらなる態様において、本発明は、上述した組成物又は本発明に記載されたフィルムの、化粧品又はパーソナルケアとしての、又は、化粧品又はパーソナルケアのための、又は、化粧品又はパーソナルケアにおける使用に関する。
この組成物は、特に、増粘剤、フィルム形成剤、保湿剤、バリア形成剤、湿潤剤、固着剤、ゲル化剤、保護バリア剤及び/又はレオロジー添加剤として使用することができる。
【0172】
本発明によれば、すなわち、上述したような組成物、又はそれに由来したフィルム状物を、化粧品に提供することが好ましい。
【0173】
本発明によれば、すなわち、上述したような組成物、又はそれに由来したフィルム状物を、上述したようなフィルム状物を含むパーソナルケア用品を提供することが好ましい。
【0174】
本発明によれば、以下のものを含む、化粧品の構成を開示する。
-デンプンの全体量(100重量%)に対し、アミロース含有量が30重量%以上で、重量平均モル質量が、約1×105g/mol~約1×108g/molの範囲、好ましくは約1×105g/mol~約4×107g/molの範囲内の値である、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分。
-アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩から選択される少なくとも一つの塩。
【0175】
従って、かかる化粧品は、化粧品の全体量(100重量%)を基準として、0.001~10重量%の範囲内の値であるヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分を含んでいてもよく、0.001~5重量%の範囲内の値、0.001~2重量%の範囲内の値、又は、0.001~1重量%の範囲内の値の、ヒドロキシアルキルデンプン又はヒドロキシアルキルデンプン画分を含んでいることがより好ましい。
【0176】
又、化粧品は、化粧品の全体量(100重量%)を基準として、0.001~1重量%の範囲内の値である塩を含んでいることが好ましい。
そして、塩の含有量を、0.001~0.5重量%の範囲内の値、0.001~0.2重量%の範囲内の値、又は0.001~0.1重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0177】
又、化粧品は、例えばバルク中で均一に分布している状態であることが好ましく、又は、ある場所に集中して存在する状態で、本発明の組成物を含んでいることが好ましい。
【0178】
又、化粧品は、本発明のフィルム状物を、コーティング材料や被覆材として含んでいることが好ましい。
【0179】
好ましい化粧品又はパーソナルケア用品は、クリーム、スプレー、ローション、シャンプー、シェービングクリーム、シェービングジェル、ヘアケア及びヘアスタイリング製品、スキンケア及びカラー化粧品、サンスクリーン、リップスティック、リップバーム、石鹸、ローション、ヘアコンディショナー、縮毛矯正剤、メイクアップ製品、ネイルケア製品、歯磨き粉、口腔衛生及びケア用品から選択される少なくとも一つである。
【0180】
又、粘弾性特性により、液体組成物は、化粧品やパーソナルケア用品の粘度を上げたり、油性エマルジョンの安定性を向上させたりするために使用することが好ましい。
又、最終製品における液体組成物の粘度は、使用するデンプンの含有量、置換度、使用するデンプンの平均分子量を含む影響因子(パラメータ)によって調整することができる。
さらなる実施形態として、フィルム形成特性により、液体組成物はヘアスタイリング、スキンケア製品及びカラー化粧品などの化粧品及びパーソナルケア用品におけるフィルム形成剤として適用することができる。
フィルム形成物質、主にアクリレートは、皮膚の脱水を避けるため、外部からの影響に対する保護として、又ヘア製品におけるスタイリングホルダーとして、皮膚上に経皮フィルムを形成するものである。
但し、現在、アクリレートのような環境問題のある合成物質に対する代替物が求められている。
更に、液体デンプン組成物の保水力を利用して、スキンケア製品における保湿効果や湿潤効果を付与することも好ましい。
【0181】
さらなる実施態様において、本発明の組成物は、より具体的には限定されないものの、乳化剤又は共乳化剤として、化粧品又はパーソナルケア用品で使用することが好ましい。
【実施例
【0182】
[測定方法]
デンプンポリマーの重量平均モル質量は、以下のように、多角度光散乱検出器(SEC-MALLS)を用いて決定した。
すなわち、高性能多角度光散乱検出器であるHPSECシステムは、600MSポンプモジュール、717自動注入器、カラム区画、Rl検出器410、及びMALLS検出器Dawn-F-DSPレーザー光度計(Wyatt Technology社製、サンタバーバラ州)から構成されている。
又、使用した3本のカラムは、PSS社のシュプレマであって、重量平均モル質量の対象は、それぞれ1×108~1×106g/mol、2×106~5×104g/mol、及び1×103~1×105g/molであった。
又、3本のカラムの寸法は、それぞれ300×7.8mmであった。
又、試料の溶出は、0.05MのNaNOを含むH2Oを用い、40℃、流速0.735mL・min-1の条件で実施した。
又、濃度は、予想されるモル質量に対応させて、1~5mg・mL-1の範囲とした。
更に、MALLS検出器を、屈折率検出器(DRI)と直列に接続した。
【0183】
又、置換度(DS)及びモル置換度(MS)は、全加水分解後のヒドロキシプロピルデンプンの13C-NMR分光により決定した。
DS値は、C1位の信号に対するC2位、C3位及びC6位の信号の平均値から、所定文献(J.Kunze,A.Ebert,H.-P.Fink,Cellul.Chem.Technol.2000,34,21-34.)の記載に基づき決定した。
【0184】
又、全加水分解後のヒドロキシプロピルデンプンの13C-NMR分光により、置換度(DS)及びモル置換度(MS)を決定した。
上記文献(J.Kunze,A.Ebert,H.-P.Fink,Cellul.Chem.Technol.2000,34,21-34.)に記載されているように、DS値は、C2位、C3位及びC6位に直接結合したヒドロキシプロピル基のメチル基シグナルの積算によって決定される。
又、MS測定については、C1位のシグナルと関係する、ヒドロキシプロピル置換基の鎖中のヒドロキシ基に結合した追加のヒドロキシプロピル基の積算によって決定した。
【0185】
又、アミロース含有量は、所定文献(Richter,Augustat and Schierbaum(Ausgewaehlte Methoden der Staerkechemie.Wiss.Verlagsgesellschaft mbH. Stuttgart(1968).111)に記載された方法を参照して、電流測定により決定した。
【0186】
又、形態学的分析(例えば、非晶質、結晶質、粒子など)は、偏光を用いた光学顕微鏡によって実施した。
【0187】
又、全てのレオロジー測定は、測定装置であるフィジカレオラボMC100(Physica Rheolab MC 100)を使用して、25℃の一定温度で実施した。
【0188】
[実施例1]
農業、園芸、林業、及び畜産業に対する液体組成物の製造手順を検討した。
すなわち、デンプン全体(100重量%)に対して、68重量%のアミロースを含む高アミロースデンプンを、アルカリ性条件下(pH=12~14)で、膨潤抑制剤を用いず、ゼラチン状にし、デンプン顆粒が完全に破壊され分散(透明分散)されるまで、20~60℃の温度範囲で2~8時間、連続的に攪拌した。
次いで、デンプンペーストをプロピレンオキサイドで0.1~0.8の範囲のMSになるようにヒドロキシプロピル化した。
その結果、誘導体の置換度DSは、0.17となり、モル置換度MSは、0.35となった。
又、溶液につき、pHを6.2に調整し、更にフミン酸とゲラニオールとを加えた。
その結果、水性組成物中の成分の最終濃度は、水性組成物全体(100重量%)に対して、デンプン10重量%、リン酸カリウム8重量%、フミン酸0.01重量%、ゲラニオール0.1重量%であった。
【0189】
[実施例2]
化粧品及びパーソナルケア用品に対する液体組成物の製造手順を検討した。
すなわち、デンプン全体(100重量%)に対して、68重量%のアミロースを含む高アミロースデンプンを、アルカリ性条件下(pH=12~14)で、膨潤抑制剤を用いず、ゼラチン状にし、デンプン顆粒が完全に破壊され分散(透明分散)されるまで、20~60℃の温度範囲で2~8時間、連続的に攪拌した。
次いで、デンプンペーストをプロピレンオキサイドで0.1~0.8の範囲のMSになるようにヒドロキシプロピル化した。
又、水溶液については、pHを6.2に調整し、必要に応じて、導電率が1500pS/cmの値に達するまで脱塩した。
その結果、水性組成物中のデンプン成分の最終濃度は、水性組成物全体(100重量%)に対して、10重量%であった。
【0190】
[実施例3]
デンプン由来の組成物の分析データを評価した。
すなわち、図1に、分子量の決定方法について示した。
又、図2にD20中の13C-NMRによるDS及びMSの決定について示した。
又、より高い分解能を得るために、デンプン含有組成物(本発明)を、最初にトリフルオロ酢酸を用い加水分解した。
又、図3に、本発明の流動曲線を示した。
その結果として、デンプン組成物は、長期的に安定した粘性を示していることが判明した。
【0191】
又、図4に本発明の周波数掃引を示した。
【0192】
損失弾性率及び貯蔵弾性率は、粘弾性領域の変形時の周波数に強く依存し、0.1~10Hzの周波数領域において、G’’>G’であり、液体状態を示している。
【0193】
表4に、電流測定によるアミロースの測定結果を示した。
【0194】
【表4】
【0195】
[実施例4]
デンプン由来の組成物の置換基分布を決定した。
すなわち、変性ヒドロキシプロピルデンプンの置換度(DS)は、上述したようにデンプンエーテルの全加水分解後に、13C-NMR分光法によって決定した。
検出されたDS値は0.30であった(図5)。
又、同じ完全加水分解試料から、グルコース標準物質による校正を用いて、HPAE-PADにより非置換グルコースユニットの割合を決定した。その結果、0.75であった。
所定文献(Spurlin (H.M. Spurlin Journal of the American Chemical Society 1939, 61, 2222-2227))によると、3つのヒドロキシ基の反応速度が同じと仮定すると、DSの値が0.30で、未置換のグルコースユニットの割合は0.73である。
よって、実験的に決定された値と、理論的に計算された値との差が小さいことから、生成物がほとんど均質に置換されていることが理解される。
【0196】
[実施例5]
降雨後の葉面上の有効成分の残存率を評価した。
すなわち、本発明によるマンゼブ、フルアジナム及びジメトモルフの葉上における雨に対する堅牢度の改善について、葉面上の有効成分の残存率として、図6図7及び図8にそれぞれ示した。
【0197】
[実施例6]
除草剤有効成分の減少性を評価した。
すなわち、GEP-試験(適正実験実施)において3年連続で検査された、補助剤なしの標準除草剤散布と、デンプン由来の組成物(本発明)と組み合わせて50%減量した除草剤散布との有効性の比較を、除草剤有効成分の減少から評価し、表5~10に示した。
【0198】
表5に示す、以下の除草剤を使用した
【0199】
【表5】
【0200】
表6に、非公開状況において2014年に実施した、散布から24日後の、標準散布量及び減量散布量における、除草剤とデンプン由来配合物との混合物からなる本発明の塗布の除草効果について示した。
【0201】
【表6】
【0202】
表7に、非公開状況において2014年に実施した、散布から54日後の、標準散布量及び減量散布量における、除草剤とデンプン由来配合物との混合物からなる本発明の塗布の除草効果について示した。
【0203】
【表7】
【0204】
表8に、非公開状況において2014年に実施した、散布から67日後の、標準散布量及び減量散布量における、除草剤とデンプン由来配合物(本発明)との混合物からなる本発明の塗布の除草効果について示した。
【0205】
【表8】
【0206】
表9に、非公開状況において2015年に実施した、散布から24日後の、標準散布量及び減量散布量における、除草剤とデンプン由来配合物(本発明)との混合物からなる本発明の塗布の除草効果について示した。
【0207】
【表9】
【0208】
表10に、非公開状況において2016年に実施した、散布から18日後の、標準散布量及び減量散布量における、除草剤とデンプン由来配合物(本発明)との混合物からなる本発明の塗布の除草効果について示した。
【0209】
【表10】
【0210】
[実施例7]
ストレス軽減性を評価した。
すなわち、表11に示すように、デンプン由来の組成物(本発明)との併用及び非併用の両方における、標準の殺菌剤散布と50%減量殺菌剤散布との、有効性の比較が、GEP-試験において行われた。
その結果、ジャガイモにおけるフィトフトラ・インフェスタン(Phytophthora infestans(PHYTIN))の寄生率は、いずれの処理においても、非常に乾燥した高温の気象条件のため低かった(1%未満)。
又、殺菌剤処理によって引き起こされるストレスに対するデンプン由来の組成物(本発明)の添加の影響を評価した。
又、殺菌剤-ストレスの軽減により、ジャガイモの収量に正の効果があることが示された。
すなわち、以下の殺菌剤処理を評価した。
【0211】
【表11】
【0212】
又、デンプン由来の組成物のストレス軽減に対する効果を図9に示した。
【0213】
[実施例8]
水中油型エマルジョンの調製を評価した。
ここで、水性組成物は、連続相を示し、分散相は、異なる供給源からの油である。
予備調査において、異なる濃度における本発明の水性組成物中における、油のいくつかの部分の分散性について予想外の効果が得られた。
すなわち、ヒドロキシアルキルデンプンが、高分子構造中に疎水性基又は親油性基を含まず、油-水エマルジョンの調製に界面活性剤を使用しなかったにもかかわらず、相分離は見られなかった。又、エマルジョンは、少なくとも24時間、好ましくは、一週間以上にわたって安定していた。
【0214】
[手順の例]
実施例2による本発明の液体組成物として、237.5g、225g又は212.5gを準備し、それぞれをビーカーに入れ、12.5g、25g及び37.5gの菜種油(菜種油は、予め0.005%スダンIIIで赤色に着色されていた)を更に混合し、ハンドブレンダー(12.500rpm)を用いて、2分間攪拌し、均質化した。
次いで、5、10及び15重量%の菜種油をそれぞれ添加してなるエマルジョンを、室温で24時間静置した。
その結果、少なくとも24時間、エマルジョンにおいて、相分離がほとんど観測されず、又は、全く起こさず、安定であることが示された。
【0215】
[実施例9]
アミロフォール(amylofol)(登録商標)を農薬処理に添加することによる作物の収量増加の評価を行った。
又、本実施例及び以下の実施例では、出願人の商標であるアミロフォールを使用して、本発明の組成物とした。
【0216】
又、実施例1の組成物であるアミロフォールの徐放機構は、作物に対する非生物的ストレスを低減することを可能にし、高収率をもたらすと言える。
このことを証明するために、発明者は、数年にわたって、GEPと農場研究(On Farm Research )(OFR)の試験を様々な作物で評価した。
【0217】
(A)殺菌剤散布にアミロフォールを添加することによる加工用ジャガイモにおける収量増加の評価
【0218】
表12に、非公開状況において、2015年にドイツで実施した、GEP試験(フィールド研究)の結果を示した。
又、試験で使用したジャガイモの品種は、イノベーターであった。
【0219】
【表12】
【0220】
本発明の組成物と共に、表13に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0221】
【表13】
【0222】
表14に、非公開状況において、2016年にドイツで実施した、GEP試験(フィールド研究)の結果を示した。
又、試験で使用したジャガイモの品種は、オーウェルであった。
【0223】
【表14】
【0224】
表15に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0225】
【表15】
【0226】
表16に、非公開状況において、2017年にドイツで実施した、GEP試験(フィールド研究)の結果を示した。
又、試験で使用したジャガイモの品種は、イノベーターであった。
【0227】
【表16】
【0228】
表17に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0229】
【表17】
【0230】
[実施例1~3の結果]
3年間の試験で、アミロフォールを農場用の殺菌剤散布に添加すると、農場用の散布に比べて加工用ジャガイモにおける収量が平均8.9%増加させることができた。
加工用ジャガイモに重要な、55mmを超えるサイズのクラスは、農場用殺菌剤散布にアミロフォールを添加することによって、平均42.9%増加した。
【0231】
(B)殺菌剤散布にアミロフォールを添加することによるデンプンポテトにおける収量増加の評価
【0232】
表18に、非公開状況において、2016年にドイツのLWKニーダザクセン州で実施した、GEP試験の結果を示した。
又、試験で使用したジャガイモの品種は、スターガであった。
【0233】
【表18】
【0234】
表19に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0235】
【表19】
【0236】
表20に、非公開状況において、2017年にドイツのLWKニーダザクセン州で実施した、GEP試験の結果を示した。
又、試験で使用したジャガイモの品種は、スターガであった。
【0237】
【表20】
【0238】
表21に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0239】
【表21】
【0240】
[実施例4~5の結果]
2年連続で、農場用殺菌剤処理へのアミロフォールの添加は、平均3.6%の収量増加をもたらした。又、アミロフォールの添加により、デンプン含有量が平均3%増加した。
【0241】
(C)殺菌剤散布にアミロフォールを添加することによる小麦における収量の増加評価
【0242】
表22に、非公開状況において、2019年にドイツのスムルルフルグで実施した、GEP試験の結果を示した。
【0243】
【表22】
【0244】
表23に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0245】
【表23】
【0246】
[結果]
殺菌剤処理に対して、アミロフォールを添加することにより、アミロフォールを添加しない殺菌剤処理と比較して、小麦の収量が3.3%増加した。
【0247】
(D)殺菌剤処理にアミロフォールを添加することによるテンサイにおける収量の増加評価
【0248】
表24に、非公開状況において、2017年にドイツで実施した、GEP試験(フィールド研究)の結果を示した。
【0249】
【表24】
【0250】
表25に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0251】
【表25】
【0252】
[結果]
殺菌剤処理に、アミロフォールを添加することにより、アミロフォールを添加しない殺菌剤処理と比較して、テンサイの収量が2.2%、糖含量が0.3%増加した。
【0253】
(E)殺菌剤散布にアミロフォールを添加することによる大豆における収量の増加評価
【0254】
表26に、非公開状況において、2020年にアメリカのアグリノヴァ社で実施した、試験GEP試験の結果を示した。
表中のCSTは、市販の種子処理を示す。
【0255】
【表26】
【0256】
表27に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0257】
【表27】
【0258】
[結果]
2020年にアメリカで行われた最初の大豆の試験では、市販の種子処理にアミロフォールを添加するだけで、発芽、出芽及び植物の活力が向上し、二箇所の試験地で収量が増加した。
【0259】
[実施例10]
農業システムにおけるアミロフォールを用いた水利用効力の改善評価を行った。
すなわち、2018年以降、非公開状況において、灌漑を含む様々な試験が、主にジャガイモを対象に行われた。
その結果、農薬処理の補助剤としてアミロフォールを含んだすべての試験で、灌漑水生産性(WPirrig)で表される水利用効率(WUE)が増加した。
【0260】
(A)灌漑でのジャガイモの試験における水利用効率の評価
【0261】
表28に、非公開状況において、2018年にオランダで実施した、OFP試験の結果を示した。
【0262】
【表28】
【0263】
表29に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0264】
【表29】
【0265】
[結果]
アミロフォールの添加により、標準処理と比較して、収量/ha/mmで表される水利用効率(WUE)が13%高くなった。
【0266】
表30に、非公開状況において、2019年にミラーリサーチ社で実施した、GEP試験の結果を示した。
表中のIFは、溝内への散布を示す。
【0267】
【表30】
【0268】
表31に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0269】
【表31】
【0270】
[結果]
2019年では、非公開状況において、アミロフォールを葉面散布プログラムに添加した結果、アミロフォールを用いない葉面散布プログラムに比べて、水利用効率(WUE)が9%高くなった。
又、クアドリス(Quadris)の溝内の散布は1回のみであった。
そして、アミロフォールの添加により、灌漑ジャガイモのWUEが4%高くなった。
【0271】
表32に、非公開状況において、2020年にミラーリサーチ社で実施した、GEP試験の結果を示した。
【0272】
【表32】
【0273】
表33に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0274】
【表33】
【0275】
[結果]
2020年において、非公開状況において、アミロフォールを葉面散布液(プログラム)に添加すると、アミロフォールを用いない葉面散布液に比べて、水利用効率(WUE)が4%高くなった。
又、米国で行われたジャガイモの灌漑試験では、2年連続でアミロフォールを農薬処理に添加することにより水利用効率が向上することが示された。
灌漑試験全体では、アミロフォールを農薬処理に添加した場合、水利用効率は平均7.5%高くなった。その結果、すべての処理で市場用の収穫量が高くなった。
【0276】
(B)灌漑がないジャガイモの試験における水利用効率の評価
【0277】
表34に、非公開状況において、2018年にオランダで実施した、農場試験の結果を示した。
【0278】
【表34】
【0279】
表35に示す、以下の殺菌剤を使用した。
【0280】
【表35】
【0281】
[結果]
非灌漑条件下において、収量/ha/mmで表される水利用効率(WUE)は、農場用殺菌剤処理液を用いた際に、アミロフォールを添加することにより20%増加した。すなわち、WUEの増加は高収率をもたらした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】