(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(54)【発明の名称】自己潤滑コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/03 20060101AFI20230511BHJP
H01R 13/10 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H01R13/03 Z
H01R13/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557098
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 IB2021052216
(87)【国際公開番号】W WO2021191743
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518345815
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ソリューソンズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ,マージョリー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ネイサン フィリップ
(57)【要約】
コンタクト(40、140、240、340)が設けられるコンタクト受け空洞部(18、118、218、318)を有するハウジング(12、112、212、312)を有する自己潤滑コネクタ(10、110、210、310)。潤滑装置(20、120、220、320)が、コンタクト(40、140、240、340)に近接してハウジング(12、112、212、312)に配置される。潤滑装置(20、120、220、320)は、コンタクト受け空洞部(18、118、218、318)内へと延び、潤滑剤が設けられる。コンタクト(40、140、240、340)が第1の位置と第2の位置との間で移動されることに伴い、潤滑装置(20、120、220、320)からの潤滑剤がコンタクト(40、140、240、340)の外面(44、144、244、344)に堆積されることで、コンタクト(40、140、240、340)が第1の位置と第2の位置との間で移動されることに伴うコンタクト(40、140、240、340)の摩耗が低減される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクト(16、116、216、316)が設けられているコンタクト受け空洞部(18、118、218、318)を有するハウジング(12、112、212、312)と、
前記コンタクト(16、116、216、316)に近接して前記ハウジング(12、112、212、312)に配置されている潤滑装置(20、120、220、320)であって、前記コンタクト受け空洞部(18、118、218、318)内へと延び、潤滑剤が設けられている潤滑装置(20、120、220、320)と
を備える自己潤滑コネクタ(10、110、210、310)であって、
それにより、相手側コンタクト(40、140、240、340)が第1の位置と第2の位置との間で移動されることに伴い、前記潤滑装置(20、120、220、320)からの前記潤滑剤が前記相手側コンタクト(40、140、240、340)の外面(44、144、244、344)に堆積されることで、前記相手側コンタクト(40、140、240、340)が前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動されることに伴う前記相手側コンタクト(40、140、240、340)の摩耗が低減される、
自己潤滑コネクタ(10、110、210、310)。
【請求項2】
弾性部材(122、222、322)が、前記潤滑装置(20、120、220、320)に取り付けられ、前記弾性部材(122、222、322)は、前記コンタクト(40、140、240、340)が前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動されるときに、前記潤滑装置(20、120、220、320)が前記相手側コンタクト(40、140、240、340)の前記外面(44、144、244、344)と接触した状態に留まることを可能とするように構成されている、請求項1に記載の自己潤滑コネクタ(10、110、210、310)。
【請求項3】
前記弾性部材(122、222、322)および前記潤滑装置(20、120、220、320)は、前記ハウジング(12、112、212、312)における凹部(126、326)に配置され、前記弾性部材(122、222、322)および前記潤滑装置(20、120、220、320)は、前記相手側コンタクト(40、140、240、340)に対して所定位置に保持されている、請求項3に記載の自己潤滑コネクタ(10、110、210、310)。
【請求項4】
1つよりも多くの潤滑装置(20、120、220、320)が、前記コンタクト受け空洞部(18、118、218、318)の周りに配置され、前記1つよりも多くの潤滑装置(20、120、220、320)は、前記相手側コンタクト(40、140、240、340)の前記外面(44、144、244、344)に潤滑を提供する、請求項1に記載の自己潤滑コネクタ(10、110、210、310)。
【請求項5】
前記潤滑装置(20、120、220、320)は、前記相手側コンタクト(40、140、240、340)が前記コンタクト(16、116、216、316)に挿入されているときに、前記相手側コンタクト(40、140、240、340)の第1の電圧を測定し、前記コンタクト(16、116、216、316)は、前記コンタクト(16、116、216、316)の背部の点における前記相手側コンタクト(40、140、240、340)の第2の電圧を測定し、前記第1の電圧および前記第2の電圧の比較により電圧降下がわかる、請求項1に記載の自己潤滑コネクタ(10、110、210、310)。
【請求項6】
前記潤滑装置(20、120、220、320)は、前記ハウジング(12、112、212、312)のカバー(60)に配置されている、請求項1に記載の自己潤滑コネクタ(10、110、210、310)。
【請求項7】
前記潤滑装置(20、120、220、320)は、前記相手側コンタクト(40、140、240、340)が前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動されることに伴い、潤滑剤受け領域と係合する、請求項2に記載の自己潤滑コネクタ(10、110、210、310)。
【請求項8】
前記潤滑装置(20、120、220、320)は固体潤滑剤を有する、請求項1に記載の自己潤滑コネクタ(10、110、210、310)。
【請求項9】
前記潤滑剤はグラファイトである、請求項8に記載の自己潤滑コネクタ(10、110、210、310)。
【請求項10】
1つまたは複数のコンタクトアーム(417)と、
前記1つまたは複数のコンタクトアーム(417)の嵌合端部(415)に配置されている潤滑装置(420)であって、潤滑剤が設けられている潤滑装置(420)と、
を備える潤滑コンタクト(416)であって、
それにより、相手側コンタクト(420)が前記コンタクトアーム(417)と電気的かつ機械的に係合するように移動されることに伴い、前記潤滑装置(420)からの前記潤滑剤が前記相手側コンタクト(420)の外面(444)に堆積されることで、前記相手側コンタクト(420)および前記コンタクト(416)が係合および係脱するように移動されることに伴う前記相手側コンタクト(420)および前記コンタクトアーム(417)の摩耗が低減される、
潤滑コンタクト(416)。
【請求項11】
潤滑装置(520)を有するコンタクト(540)を備える自己潤滑コネクタであって、前記潤滑装置(520)は、前記コンタクト(540)の嵌合端部(534)に近接して配置され、前記潤滑装置(520)には、潤滑剤が設けられ、
それにより、前記コンタクト(540)が相手側コネクタ(510)と嵌合することに伴い、前記潤滑剤が前記コンタクト(540)の表面に移着することで、前記コンタクト(540)が第1の位置と第2の位置との間で移動されることに伴う前記コンタクト(540)の摩耗が低減される、自己潤滑コネクタ。
【請求項12】
前記相手側コネクタ(510)は、前記コンタクト(540)が前記相手側コネクタ(510)に嵌合することに伴い、前記コンタクト(540)に法線力を及ぼすばねコンタクト(516)を有し、前記コンタクト(540)が前記相手側コネクタ(510)に嵌合することに伴い、前記ばねコンタクト(516)は、前記潤滑装置(520)からの前記潤滑剤を前記コンタクト(540)の表面(531)に移着させる、請求項11に記載の自己潤滑コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトが第1の位置と第2の位置との間で移動されることに伴ってコンタクトの外面に潤滑を施すことで、コンタクトが第1の位置と第2の位置との間で移動されることに伴うコンタクトの摩耗を低減する潤滑装置を有する潤滑コネクタを対象とする。
【背景技術】
【0002】
電気接続部の耐久性および挿入力性能は、限定されるものではないが高出力モータ、ハイブリッドおよび電気モビリティソリューション、機器、産業および通信などの用途で用いられる構成要素の耐用寿命を制限し得る技術的課題である。これらの用途は、安定した電気的および機械的なコンタクト性能、ならびに場合によってはより多数のコンタクトピンを必要とする。
【0003】
そのような接続部の性能を向上させるべく、嵌合界面の摩擦および摩耗を低減し、嵌合サイクル性能を高めるために、潤滑剤が用いられる場合がある。特に、貴金属めっきコネクタに関して、効果的な潤滑剤は、嵌合および分離の間における貴金属の摩耗の可能性を低減する。潤滑剤は、腐食による劣化を軽減するためにも用いられ得る。潤滑剤は、摩耗を低減し、かつ/または耐久性能を証明し、かつ/または環境への曝露から保護することにより、安定なコンタクト性能を向上させるために用いられ得る。
【0004】
一般に、潤滑剤は、コンタクトの製造時に予め塗布される。コネクタが嵌合および分離(unmated、非嵌合)されることに伴って、予め塗布された潤滑剤が取り除かれ、または他の形で劣化し、性能向上を提供するその能力が小さくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決すべき課題は、コンタクトが第1の位置と第2の位置との間で移動されることに伴うコネクタのコンタクトの摩耗を低減する潤滑装置を有する潤滑システムおよびコネクタを提供することである。特に、コンタクトが第1の位置と第2の位置との間で移動されることに伴ってコンタクトの外面に潤滑を施すまたは堆積させる自己潤滑コネクタを提供することが有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、コンタクトが設けられるコンタクト受け空洞部を有するハウジングを有する自己潤滑コネクタにより解決される。潤滑装置が、コンタクトに近接してハウジングに配置される。潤滑装置は、コンタクト受け空洞部内へと延び、潤滑剤が設けられる。コンタクトが第1の位置と第2の位置との間で移動されることに伴い、潤滑装置からの潤滑剤がコンタクトの外面に堆積されることで、コンタクトが第1の位置と第2の位置との間で移動されることに伴うコンタクトの摩耗が低減される。
【0007】
ここで、添付の図面を参照して、本発明を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る、嵌合する電気コンタクトを潤滑するための潤滑システムの第1の例示的実施形態の断面図であり、本実施形態は、非嵌合状態(unmated condition、分離状態)の電気コネクタを例示しており、コネクタに配置された潤滑装置が、第1の位置において示されている。
【
図2】相手側コネクタの相手側電気コンタクトがコネクタの電気コンタクトと係合している嵌合状態において示される
図1の潤滑システムの断面図であり、潤滑装置は、第2の位置において示されている。
【
図3】本発明に係る、嵌合する電気コンタクトを潤滑するための潤滑システムの第2の例示的実施形態の断面図であり、本実施形態は、非嵌合状態の電気コネクタおよび相手側電気コネクタを例示しており、第2の代替的な潤滑装置がコネクタに配置されている。
【
図4】相手側コネクタがコネクタに部分的に挿入されている
図3の潤滑システムの断面図である。
【
図5】相手側コネクタがコネクタに完全に挿入されている
図3の潤滑システムの断面図である。
【
図6】
図3の線6-6に沿った潤滑装置の断面図である。
【
図7】本発明に係る、嵌合する電気コンタクトを潤滑するための潤滑システムの第3の例示的実施形態の断面図であり、本実施形態は、電気コネクタおよび相手側電気コネクタを例示しており、相手側コネクタに配置された第3の代替的な潤滑装置が示され、コネクタおよび相手側コネクタは、非嵌合状態において示されている。
【
図8】相手側コネクタがコネクタに部分的に挿入されている
図7の潤滑システムの断面図である。
【
図9】相手側コネクタがコネクタに完全に挿入されている
図7の潤滑システムの断面図である。
【
図10】本発明に係る、嵌合する電気コンタクトを潤滑するための潤滑システムの第4の例示的実施形態の断面図であり、本実施形態は、電気コネクタおよび相手側電気コネクタを例示しており、相手側コネクタに配置された第4の代替的な潤滑装置が示され、コネクタおよび相手側コネクタは、非嵌合状態において示されている。
【
図11】相手側コネクタがコネクタに部分的に挿入されている
図10の潤滑システムの断面図である。
【
図12】相手側コネクタがコネクタに完全に挿入されている
図10の潤滑システムの断面図である。
【
図13】本発明に係る、嵌合する電気コンタクトを潤滑するための潤滑システムの第5の例示的実施形態の断面図であり、本実施形態は、非嵌合状態の電気コンタクトおよび相手側電気コンタクトを例示しており、第5の代替的な潤滑装置がコンタクトに配置されている。
【
図14】相手側コンタクトがコンタクトに完全に挿入されている
図13の潤滑システムの断面図である。
【
図15】潤滑装置が配置された電気コンタクトを有する潤滑システムの第6の例示的実施形態の斜視図である。
【
図16】
図15の電気コンタクトを有する潤滑システムの第6の例示的実施形態の断面図であり、電気コンタクトおよびコネクタは、非嵌合状態において示されている。
【
図17】相手側コネクタがコネクタに部分的に挿入されている
図16の潤滑システムの断面図である。
【
図18】電気コンタクトがコネクタに完全に挿入されている
図16の潤滑システムの断面図である。
【
図19】潤滑システムの第7の例示的実施形態の断面図であり、電気コンタクトおよびコネクタは、非嵌合状態において示されている。
【
図20】相手側コネクタがコネクタに部分的に挿入されている
図19の潤滑システムの断面図である。
【
図21】電気コンタクトがコネクタに完全に挿入されている
図19の潤滑システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1および
図2に示す実施形態において、
図1に示すカバー60は、キャップ64が取り付けられたハウジング62を有する。1つまたは複数の潤滑剤受け凹部66が、ハウジング62およびキャップ64を通して延びる。潤滑剤受け凹部66には、潤滑装置(lubricating device、潤滑デバイス)68が設けられる。この例示的実施形態において、潤滑装置は、固体潤滑剤を含む。固体潤滑剤は、それが塗布された表面を保護する潤滑性を提供する任意の潤滑剤であってよい。例えば、グラファイトなどの固体潤滑剤が用いられてよい。代替的に、用途に応じて液体潤滑剤が用いられてもよい。
【0010】
1つまたは複数のばね70が、潤滑剤受け凹部66に配置される。ばね70は、キャップ64の端壁72と潤滑装置68との間で延びる。潤滑受け領域74が、端壁72とは反対側の潤滑剤受け凹部66の端部においてハウジング62に取り付けられる。潤滑受け領域74は、潤滑装置68から潤滑剤を受けるように構成される。潤滑受け領域74は、限定されるものではないがフェルトパッドであってよい。
【0011】
潤滑装置68は、
図1に示す第1の位置と
図2に示す第2の位置との間で潤滑剤受け凹部66において移動可能である。第1の位置において、潤滑装置68の突起76は、ハウジング62の肩部78と係合している。この位置において、潤滑装置68が端壁72から離れるようにさらに移動することが防止される。この位置において、潤滑装置68は、潤滑受け領域74と係合する。ばね70の力は、より大きい力が印加されるまで、潤滑装置68を第1の位置に維持する。
【0012】
使用中、カバー60は、電気コネクタ10と係合するように移動される。電気コネクタ10は、1つまたは複数の相手側コンタクト受け開口部14を有するハウジング12を有する。ハウジング12は、1つまたは複数の電気コンタクト受け空洞部18に配置される1つまたは複数の電気コンタクト16を有する。コンタクトは、限定されるものではないが貴金属を含む、適切な導電性を有する材料から作製されてよい。図示の実施形態において、コンタクト16はピンであるが、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて他のコンタクトが用いられてもよい。
【0013】
カバー60および電気コネクタ10が共に移動されることに伴い、コンタクト16が潤滑装置68と係合する。潤滑装置68に対するコンタクトの挿入力がばね70のばね力よりも大きいので、ばね70が圧縮させられ、それにより、潤滑装置68が第2の位置に向かって潤滑受け領域74に対して移動することが可能となる。これが生じることに伴い、潤滑装置68からの潤滑剤が、ワイピング作用等により潤滑受け領域74に移着(transferred、転移)、堆積または塗布される。コンタクト16をカバー60へと移動させ続けることにより、コンタクト16が潤滑受け領域74と係合するように移動する。これが生じることに伴い、
図2に示す領域46により示すように、潤滑受け領域74からの潤滑剤が、ワイピング作用等によりコンタクト16に移着、堆積または塗布される。
【0014】
コネクタ10およびコンタクト16がカバー60から取り外されることに伴い、ばね70がその非応力位置に向かって戻り、それにより潤滑装置68が第1の位置に戻る。潤滑装置68が第1の位置に向かって移動することに伴い、潤滑装置68からの潤滑剤が、再びワイピング作用等により潤滑受け領域74に移着、堆積または塗布される。
【0015】
潤滑受け領域74およびコンタクト16に潤滑剤を移着させることにより、コンタクト16が相手側コンタクトと嵌合したときのコンタクト16の摩耗が最小限となり、それにより、コンタクト16を多数のサイクルにわたって使用することが可能となる。
【0016】
カバー60は、コンタクト16に潤滑剤を移着、堆積または塗布するために、多数のサイクルにわたって使用することができる。加えて、潤滑剤装置68は、潤滑剤装置68にアクセスして潤滑剤装置68を交換するために、キャップ64をハウジング62から取り外すことにより必要に応じて交換されてよい。
【0017】
図3~
図5に示す実施形態において、電気コネクタ110は、1つまたは複数の相手側コンタクト受け開口部114を有するハウジング112を有する。ハウジング112は、1つまたは複数の電気コンタクト受け空洞部118に配置される1つまたは複数の電気コンタクト116を有する。図示の実施形態において、コンタクト116はばねコンタクトであるが、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて他のコンタクトが用いられてもよい。
【0018】
相手側コンタクト受け開口部114と電気コンタクト116との間には、1つまたは複数の潤滑装置120が配置される。この例示的実施形態において、潤滑装置は、固体潤滑剤を含む。固体潤滑剤は、それが塗布された表面を保護し、コネクタ110の長期間にわたる嵌合および分離において円滑な動作を提供する潤滑性を提供する任意の潤滑剤であってよい。例えば、グラファイトなどの固体潤滑剤が用いられてよい。代替的に、用途に応じて液体潤滑剤が用いられてもよい。
【0019】
図3~
図5に示す実施形態において、1つまたは複数の潤滑装置120は、1つまたは複数の弾性部材またはばね部材122の端部から延びる。ばね部材122を受け取って相手側コンタクト受け開口部114および電気コンタクト116に対して所定位置に維持することで、ばね部材122がハウジング112の長手軸128に平行な方向に移動することを防止しつつ、ばね部材122がハウジング112の長手軸128に実質的に垂直な方向に弾性変形することを可能とするばね受け凹部126を形成するために、壁または突起124がハウジング112に設けられる。ばね部材122は、摩擦または他の既知の手段により、ばね受け凹部126に保持されてよい。
【0020】
図6に示すように、潤滑装置120は、コンタクト受け空洞部118の周囲の様々な位置に配置されてよい。潤滑装置120は、コンタクト受け空洞部118内へと延びる。潤滑装置120の数および配置は、コネクタ110が使用されることになる特定の用途および環境に応じて変動してよい。図示の実施形態においては、潤滑装置120と相手側コンタクトとの間に8つの接触点を設けるために、8つの潤滑装置120が設けられる。ただし、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、他の数の潤滑装置120が用いられてもよい。
【0021】
使用中、1つまたは複数の相手側コンタクト140は、コネクタハウジング112に挿入され、1つまたは複数のコンタクト116と電気的接続を形成する。相手側コンタクト140は、不図示の相手側コネクタに収容されていてよい。図示の実施形態において、相手側コンタクト140はピンであるが、他の構成の相手側コンタクトが用いられてもよい。
【0022】
図4に示すように、相手側コンタクト140が相手側コンタクト受け開口部114に挿入される。これが生じることに伴い、相手側コンタクト140が潤滑装置120と係合する。
図6に示す潤滑装置120間の開口部142は、
図3に示す相手側コンタクト140の直径D2よりも小さい寸法の直径D1を有する。したがって、相手側コンタクト140が開口部142を通して挿入されることに伴い、潤滑装置120が変位し、それによりばね部材122が弾性変形する。これが生じることに伴い、相手側コンタクト140をコンタクト116に向かって挿入し続けることにより、潤滑装置120が相手側コンタクト140の外面144と係合し、外面144に力を及ぼす。
相手側コンタクト140の挿入を続けることで、結果として、
図5に示す相手側コンタクト140の領域146により示すように、潤滑装置120からの潤滑剤が相手側コンタクト140の外面144に堆積または塗布される。それにより、潤滑剤被膜146が塗布された相手側コンタクト140が、コンタクト116と嵌合する。
【0023】
加えて、相手側コンタクト140がコンタクト116およびハウジング112から取り外されることに伴い、相手側コンタクト140が再び潤滑装置120と係合する。これが生じることに伴い、相手側コンタクト140をコンタクト116から取り外すことにより、潤滑装置が相手側コンタクト140の外面144と係合し、外面144に力を及ぼす。相手側コンタクト140の取り外しを続けることで、結果として、上述と同様の領域において、潤滑装置120からの潤滑剤が相手側コンタクト140の外面144に堆積または塗布される。
【0024】
相手側コンタクト140が嵌合および分離されることに伴って潤滑剤を移着させることにより、相手側コンタクト140およびコンタクト116の摩耗が最小限となり、相手側コンタクト140およびコンタクト116を多数のサイクルにわたって使用することが可能となる。
【0025】
図7~
図9に示す実施形態において、電気コネクタ210は、1つまたは複数の相手側コンタクト受け開口部214を有するハウジング212を有する。ハウジング212は、1つまたは複数の電気コンタクト受け空洞部218に配置される1つまたは複数の電気コンタクト216を有する。図示の実施形態において、コンタクト216はばねコンタクトであるが、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて他のコンタクトが用いられてもよい。
【0026】
1つまたは複数の相手側コンタクト240が、ハウジングまたはパネル250に装着される。相手側コンタクト240は、コネクタハウジング212に挿入され、1つまたは複数のコンタクト216と電気的接続を形成する。図示の実施形態において、相手側コンタクト240はピンであるが、他の構成の相手側コンタクトが用いられてもよい。
【0027】
相手側コンタクト240の嵌合端部254に近接して、1つまたは複数の潤滑装置220が配置される。この例示的実施形態において、潤滑装置220は、固体潤滑剤を含む。固体潤滑剤は、それが塗布された表面を保護し、相手側コンタクト240のコネクタ210との長期間にわたる嵌合および分離において円滑な動作を提供する潤滑性を提供する任意の潤滑剤であってよい。例えば、グラファイトなどの固体潤滑剤が用いられてよい。代替的に、用途に応じて液体潤滑剤が用いられてもよい。
【0028】
図7~
図9に示す実施形態において、1つまたは複数の潤滑装置220は、1つまたは複数のばね部材222の端部から延びる。ばね部材222および相手側コンタクト240は、パネル250に保持され、それにより、ばね部材222がコネクタ210の長手軸228に沿った方向に弾性変形することが可能となる。絶縁体スリーブ252が、ばね部材222とコンタクト240との間で延びる。ばね部材222は、ハウジング212の長手軸228に平行な方向に弾性変形または圧縮するように構成される。
【0029】
図3~
図6に示す実施形態と同様に、潤滑装置220の数および配置は、コネクタ250が使用されることになる特定の用途および環境に応じて変動してよい。
【0030】
図8に示すように、相手側コンタクト240が相手側コンタクト受け開口部214に挿入される。これが生じることに伴い、相手側コンタクト240が潤滑装置220と係合する。
図7に示す潤滑装置220間の開口部242は、相手側コンタクト240の直径D4よりも小さい寸法の直径D3を有する。したがって、相手側コンタクト240が開口部242を通して挿入されることに伴い、潤滑装置220が変位し、それによりばね部材222が弾性変形する。これが生じることに伴い、相手側コンタクト240をコンタクト216に向かって挿入し続けることにより、潤滑装置が相手側コンタクト240の外面244と係合し、外面244に力を及ぼす。
相手側コンタクト240の挿入を続けることで、結果として、
図9に示す相手側コンタクト240の領域246により示すように、潤滑装置220からの潤滑剤が相手側コンタクト240の外面244に堆積または塗布される。それにより、潤滑剤被膜246が塗布された相手側コンタクト240が、コンタクト216と嵌合する。
【0031】
加えて、相手側コンタクト240がコンタクト216から取り外されることに伴い、相手側コンタクト240が再び潤滑装置220と係合する。これが生じることに伴い、相手側コンタクト240をコンタクト216から取り外すことにより、潤滑装置が相手側コンタクト240の外面244と係合し、外面244に力を及ぼす。相手側コンタクト240の取り外しを続けることで、結果として、上述と同様の領域において、潤滑装置220からの潤滑剤が相手側コンタクト240の外面244に堆積または塗布される。
【0032】
相手側コンタクト240が嵌合および分離されることに伴って潤滑剤を移着させることにより、相手側コンタクト240およびコンタクト216の摩耗が最小限となり、相手側コンタクト240およびコンタクト216を多数のサイクルにわたって使用することが可能となる。
【0033】
図10~
図12に示す実施形態において、電気コネクタ310は、1つまたは複数の相手側コンタクト受け開口部314を有するハウジング312を有する。ハウジング312は、1つまたは複数の電気コンタクト受け空洞部318に配置される1つまたは複数の電気コンタクト316を有する。図示の実施形態において、コンタクト316はばねコンタクトであるが、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて他のコンタクトが用いられてもよい。
【0034】
相手側電気コネクタ350は、1つまたは複数のコンタクト開口部354を有するハウジング352を有する。ハウジング352は、コネクタハウジング312に挿入され、1つまたは複数のコンタクト316と電気的接続を形成する1つまたは複数の相手側コンタクト340を有する。図示の実施形態において、相手側コンタクト340はピンであるが、他の構成の相手側コンタクトが用いられてもよい。
【0035】
相手側コンタクト開口部354と電気コンタクト340との間には、1つまたは複数の潤滑装置320が配置される。この例示的実施形態において、潤滑装置は、固体潤滑剤を含む。固体潤滑剤は、それが塗布された表面を保護し、コネクタ310および相手側コネクタ350の長期間にわたる嵌合および分離において円滑な動作を提供する潤滑性を提供する任意の潤滑剤であってよい。例えば、グラファイトなどの固体潤滑剤が用いられてよい。代替的に、用途に応じて液体潤滑剤が用いられてもよい。
【0036】
図10~
図12に示す実施形態において、1つまたは複数の潤滑装置320は、1つまたは複数のばね部材322の端部から延びる。ばね部材322を受けてコンタクト開口部314および電気コンタクト340に対して所定位置に維持することで、ばね部材322がハウジング352の長手軸328に平行な方向に移動することを防止しつつ、ばね部材322がハウジング352の長手軸328に実質的に垂直な方向に弾性変形することを可能とするばね受け凹部326を形成するために、壁または突起324がハウジング312に設けられる。ばね部材322は、摩擦または他の既知の手段により、ばね受け凹部326に保持されてよい。
【0037】
図3~
図5に示す実施形態と同様に、潤滑装置320の数および配置は、コネクタ350が使用されることになる特定の用途および環境に応じて変動してよい。
【0038】
使用中、
図11に示すように、1つまたは複数の相手側コンタクト316がコネクタハウジング352に挿入される。次いで、
図12に示すように、相手側コンタクト340が相手側コンタクト受け開口部314に挿入される。これが生じることに伴い、相手側コンタクト340が潤滑装置320と係合する。
図10に示す潤滑装置320間の開口部342は、相手側コンタクト340の直径D6よりも小さい寸法の直径D5を有する。したがって、相手側コンタクト340が開口部342を通して挿入されることに伴い、潤滑装置320が変位し、それによりばね部材322が弾性変形する。これが生じることに伴い、相手側コンタクト340をコンタクト316に向かって挿入し続けることにより、潤滑装置が相手側コンタクト340の外面344と係合し、外面344に力を及ぼす。
相手側コンタクト340の挿入を続けることで、結果として、
図12に示す相手側コンタクト340の領域356により示すように、潤滑装置320からの潤滑剤が相手側コンタクト340の外面344に堆積または塗布される。それにより、潤滑剤被膜356が塗布された相手側コンタクト340が、コンタクト316と嵌合する。
【0039】
加えて、相手側コンタクト340がコンタクト316から取り外されることに伴い、相手側コンタクト340が再び潤滑装置320と係合する。これが生じることに伴い、相手側コンタクト340をコンタクト316から取り外すことにより、潤滑装置が相手側コンタクト340の外面344と係合し、外面344に力を及ぼす。相手側コンタクト340の取り外しを続けることで、結果として、上述と同様の領域において、潤滑装置320からの潤滑剤が相手側コンタクト340の外面344に堆積または塗布される。
【0040】
相手側コンタクト340が嵌合および分離されることに伴って潤滑剤を移着させることにより、相手側コンタクト340およびコンタクト316の摩耗が最小限となり、相手側コンタクト340およびコンタクト316を多数のサイクルにわたって使用することが可能となる。
【0041】
図13および
図14に示す例示的実施形態において、潤滑装置420は、電気コンタクト416のコンタクトアーム417の嵌合端部415に配置される。
【0042】
使用中、1つまたは複数の相手側コンタクト440は、1つまたは複数のコンタクト416に挿入され、1つまたは複数のコンタクト416と電気的接続および機械的接続を形成する。図示の実施形態において、相手側コンタクト440はピンであるが、他の構成の相手側コンタクトが用いられてもよい。
【0043】
相手側コンタクト440は、コンタクト416の間に挿入される。これが生じることに伴い、相手側コンタクト440が潤滑装置420と係合する。潤滑装置420は、
図13に示す相手側コンタクト440の直径D8よりも小さい寸法の距離D7だけ離隔している。したがって、相手側コンタクト440がコンタクト416の間に挿入されることに伴い、潤滑装置420が変位し、それによりコンタクト416のコンタクトアーム417が弾性変形する。これが生じることに伴い、相手側コンタクト440の挿入を続けることにより、潤滑装置420が相手側コンタクト440の外面444と係合し、外面444に力を及ぼす。
相手側コンタクト440の挿入を続けることで、結果として、
図14に示す相手側コンタクト440の領域446により示すように、潤滑装置420からの潤滑剤が相手側コンタクト440の外面444に堆積または塗布される。それにより、潤滑剤被膜446が塗布された相手側コンタクト440が、コンタクト416と嵌合する。
【0044】
加えて、相手側コンタクト440がコンタクト416から取り外されることに伴い、相手側コンタクト440が再び潤滑装置420と係合する。これが生じることに伴い、相手側コンタクト440をコンタクト416から取り外すことにより、潤滑装置420が相手側コンタクト440の外面444と係合し、外面444に力を及ぼす。相手側コンタクト440の取り外しを続けることで、結果として、上述と同様の領域において、潤滑装置420からの潤滑剤が相手側コンタクト440の外面444に堆積または塗布される。
【0045】
相手側コンタクト440が嵌合および分離されることに伴って潤滑剤を移着させることにより、相手側コンタクト440およびコンタクト416の摩耗が最小限となり、相手側コンタクト440およびコンタクト416を多数のサイクルにわたって使用することが可能となる。
【0046】
図3~
図12に示す実施形態は、適度な潤滑を提供することに加えて、電圧降下を測定することもできる。潤滑装置120、220、320、420が相手側コンタクト140、240、340、440と係合することに伴い、潤滑装置120、220、320、420を、相手側コンタクト140、240、340、440の第1の電圧を測定するための第1の電圧引出し点(voltage pick off point、電圧ピックオフポイント、電圧降下点)として用いることができる。コンタクト116、216、316、416の背部の点190、290、390、490を、コンタクト116、216、316、416の背部における第2の電圧を測定するための第2の電圧引出し点として用いることができる。各点における電圧を測定し、測定した電圧を既知の装置で比較することにより、電圧降下を特定することができる。
【0047】
図15~
図18に示す実施形態において、電気コネクタ510は、1つまたは複数の相手側コンタクト受け開口部514を有するハウジング512を有する。ハウジング512は、1つまたは複数の電気コンタクト受け空洞部518に配置される1つまたは複数の電気コンタクト516を有する。図示の実施形態において、コンタクト516はばねコンタクトであるが、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて他のコンタクトが用いられてもよい。
【0048】
相手側コネクタ(不図示)に収容され得る相手側コンタクト540の各々は、コンタクト部分530、潤滑部分532、および引込み部分534を含む。コンタクト部分530は、限定されるものではないが銀めっき銅などの導電性材料から作製される。引込み部分534は、限定されるものではないがプラスチックなどの非導電性材料から作製される。
【0049】
相手側コンタクト540の自由端に近接して設けられる潤滑剤部分532は、1つまたは複数の潤滑装置520を含む。この例示的実施形態において、潤滑装置は、コンタクト部分530の外面531と同一線上に配置される固体潤滑剤を含む。固体潤滑剤は、それが塗布された表面を保護し、相手側コンタクト540の長期間にわたる嵌合および分離において円滑な動作を提供する潤滑性を提供する任意の潤滑剤であってよい。固体潤滑剤は、限定されるものではないがグラファイトであってよい。代替的に、用途に応じて液体潤滑剤が用いられてもよい。潤滑装置520は、均質な外面522を有していてもよく、または外面522の周囲の様々な位置に配置される突起(不図示)を有していてもよい。
【0050】
使用中、1つまたは複数の相手側コンタクト540は、コネクタハウジング512に挿入され、1つまたは複数のコンタクト516と電気的接続を形成する。図示の実施形態において、相手側コンタクト540はピンであるが、他の構成の相手側コンタクトが用いられてもよい。
【0051】
図16に示すように、相手側コンタクト540が、ハウジング512の相手側コンタクト受け開口部514に挿入される。これが生じることに伴い、相手側コンタクト540の引込み部分534がコンタクト516の端部536と係合し、それにより、端部536どうしが離れ、コンタクト516が非応力位置(
図16)から応力位置(
図17および
図18)へと弾性移動する。挿入を続けることにより、コンタクト516のコンタクト部538が相手側コンタクト540と係合するように移動する。コンタクト516が応力位置にあることに伴い、コンタクト部538が相手側コンタクト540に法線力(normal force、法線方向の力)を及ぼし、それにより、コンタクト部538が相手側コンタクト540と機械的に係合した状態に留まることが確実になる。
【0052】
相手側コンタクト540の挿入を続けることにより、コンタクト部538が相手側コンタクト540の潤滑部分532の潤滑装置520にわたって移動される。コンタクト部538が潤滑装置520に法線力を及ぼすことに伴い、相手側コンタクト540の挿入を続けることで、結果として、潤滑装置520からの潤滑剤がコンタクト516のコンタクト部538に堆積または塗布され、それにより、コンタクト部538が潤滑剤で被覆される。
【0053】
挿入を続けることに伴い、潤滑装置520がコンタクト部538を通過するように移動し、コンタクト部分530がコンタクト部538と係合するように移動する。挿入を続けることにより、被覆されたコンタクト部538がコンタクト部分530の外面531にわたって摺動する。コンタクト部538がコンタクト部分530の外面531に法線力を及ぼし続けることに伴い、
図18に示す領域546により示すように、潤滑剤の一部がコンタクト部538からコンタクト部分530の外面531に移着する。
【0054】
相手側コンタクト540がコンタクト516およびハウジング512から取り外されることに伴い、相手側コンタクト540のハウジング512からの取り外しを容易にするように、被覆されたコンタクト部538が移着領域546にわたって摺動する。加えて、相手側コンタクト540の取り外しの間、コンタクト部538が潤滑装置520と再び係合し、その結果、上述と同様の領域において潤滑装置520からの潤滑剤がコンタクト部538に堆積または塗布され、それによりコンタクト部538をさらに嵌合させるための準備が整う。
【0055】
相手側コンタクト540が嵌合および分離されることに伴って潤滑剤を移着させることにより、相手側コンタクト540およびコンタクト516の摩耗が最小限となり、相手側コンタクト540およびコンタクト516を多数のサイクルにわたって使用することが可能となる。
【0056】
図19~
図21に示す実施形態において、電気コネクタ610は、1つまたは複数の相手側コンタクト受け開口部614を有するハウジング612を有する。ハウジング612は、1つまたは複数の電気コンタクト受け空洞部618に配置される1つまたは複数の電気コンタクト616を有する。図示の実施形態において、コンタクト616はばねコンタクトであるが、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて他のコンタクトが用いられてもよい。ハウジング612はまた、コンタクト受け空洞部618に配置される1つまたは複数の移着機構680を収容する。
【0057】
各移着機構680は、移着機構680の周囲に配置される一連のコンタクトばね682を有する。コンタクトばね682は、コンタクト受け空洞部618内へと延びるコンタクト部684を有する。コンタクト部684間の直径D3は、
図19に示すように、相手側コンタクト640の直径D5よりも小さい寸法である。
【0058】
相手側コネクタ(不図示)に収容され得る相手側コンタクト640の各々は、コンタクト部分630、潤滑部分632、および引込み部分634を含む。コンタクト部分630は、限定されるものではないが銀めっき銅などの導電性材料から作製される。引込み部分634は、限定されるものではないがプラスチックなどの非導電性材料から作製される。
【0059】
相手側コンタクト640の自由端に近接して設けられる潤滑剤部分632は、1つまたは複数の潤滑装置620を含む。この例示的実施形態において、潤滑装置は、コンタクト部分630の外面631と同一線上に配置される固体潤滑剤を含む。固体潤滑剤は、それが塗布された表面を保護し、相手側コンタクト640の長期間にわたる嵌合および分離において円滑な動作を提供する潤滑性を提供する任意の潤滑剤であってよい。固体潤滑剤は、限定されるものではないがグラファイトであってよい。代替的に、用途に応じて液体潤滑剤が用いられてもよい。潤滑装置620は、均質な外面622を有していてもよく、または外面622の周囲の様々な位置に配置される突起(不図示)を有していてもよい。
【0060】
使用中、1つまたは複数の相手側コンタクト640は、コネクタハウジング612に挿入され、1つまたは複数のコンタクト616と電気的接続を形成する。図示の実施形態において、相手側コンタクト640はピンであるが、他の構成の相手側コンタクトが用いられてもよい。
【0061】
図19に示すように、相手側コンタクト640が、ハウジング612の相手側コンタクト受け開口部614に挿入される。これが生じることに伴い、相手側コンタクト640の引込み部分634が移着機構680のコンタクトばね682のコンタクト部684と係合し、それにより、コンタクト部684どうしが離れ、コンタクトばね682が非応力位置(
図19)から応力位置(
図20)へと弾性移動する。コンタクトばね682が応力位置にあることに伴い、コンタクト部684が相手側コンタクト640に法線力を及ぼし、それにより、コンタクト部684が相手側コンタクト640と機械的に係合した状態に留まることが確実になる。
【0062】
相手側コンタクト640の挿入を続けることにより、コンタクト部684が相手側コンタクト640の潤滑部分632の潤滑装置620にわたって移動される。コンタクト部684が潤滑装置620に法線力を及ぼすことに伴い、相手側コンタクト640の挿入を続けることで、結果として、潤滑装置620からの潤滑剤がコンタクトばね682のコンタクト部684に堆積または塗布され、それにより、コンタクト部684が潤滑剤で被覆される。
【0063】
挿入を続けることに伴い、潤滑装置620がコンタクト部684を通過するように移動し、コンタクト部分630がコンタクト部684と係合するように移動する。挿入を続けることにより、被覆されたコンタクト部684がコンタクト部分630の外面631にわたって摺動する。コンタクト部684がコンタクト部分630の外面631に法線力を及ぼし続けることに伴い、
図21に示す領域646により示すように、潤滑剤の一部がコンタクト部684からコンタクト部分630の外面631に移着する。
【0064】
挿入を続けることに伴い、相手側コンタクト640の引込み部分634がコンタクト616の端部636と係合し、それにより、端部636どうしが離れ、コンタクト616が非応力位置(
図20)から応力位置(
図21)へと弾性移動する。挿入を続けることにより、コンタクト616のコンタクト部638が相手側コンタクト640と係合するように移動する。コンタクト616が応力位置にあることに伴い、コンタクト部638が相手側コンタクト640に法線力を及ぼし、それにより、コンタクト部638が相手側コンタクト640と機械的に係合した状態に留まることが確実になる。
【0065】
相手側コンタクト640の挿入を続けることにより、コンタクト部638が相手側コンタクト640の潤滑部分632の潤滑装置620にわたって移動される。コンタクト部638が潤滑装置640に法線力を及ぼすことに伴い、相手側コンタクト640の挿入を続けることで、結果として、潤滑装置620からの潤滑剤がコンタクト616のコンタクト部638に堆積または塗布され、それにより、コンタクト部638が潤滑剤で被覆される。
【0066】
挿入を続けることに伴い、潤滑装置620がコンタクト部638を通過するように移動し、コンタクト部分630がコンタクト部638と係合するように移動する。挿入を続けることにより、被覆されたコンタクト部638がコンタクト部分630の外面631にわたって摺動する。コンタクト部638がコンタクト部分630の外面631に法線力を及ぼし続けることに伴い、
図21に示す領域647により示すように、潤滑剤の一部がコンタクト部638からコンタクト部分630の外面631に移着する。
【0067】
相手側コンタクト640がコンタクト616およびハウジング612から取り外されることに伴い、相手側コンタクト640のハウジング612からの取り外しを容易にするように、被覆されたコンタクト部684および被覆されたコンタクト部638が移着領域646および647にわたって摺動する。加えて、相手側コンタクト640の取り外しの間、コンタクト部684およびコンタクト部638が潤滑装置620と再び係合し、その結果、上述と同様の領域において潤滑装置620からの潤滑剤がコンタクト部684およびコンタクト部638に堆積または塗布され、それによりコンタクト部684およびコンタクト部638をさらに嵌合させるための準備が整う。
【0068】
相手側コンタクト640が嵌合および分離されることに伴って潤滑剤を移着させることにより、相手側コンタクト640およびコンタクト616の摩耗が最小限となり、相手側コンタクト640およびコンタクト616を多数のサイクルにわたって使用することが可能となる。
【0069】
例示的実施形態においては、移着機構680がばねコンタクト616と組み合わせて用いられるが、移着機構の使用は、多数の異なるタイプのコンタクトと共に用いられてよい。
【0070】
本発明は、雌雄同形コンタクトを含む任意の相手側コンタクトに適用可能である。潤滑装置を設けることにより、コネクタおよび/またはコンタクトを自己潤滑性にすることができ、それにより、コネクタのコンタクトが嵌合または分離された場合に、潤滑装置からの潤滑剤をコンタクトに移着、堆積または塗布することができ、それにより、コンタクトの摩耗が低減され、コンタクトおよびコネクタの嵌合サイクルおよび耐用寿命が向上する。
【国際調査報告】