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特表2023-520656ブデソニド21-ホスファート塩及びそれを含有する医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ブデソニド21-ホスファート塩及びそれを含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07J 71/00 20060101AFI20230511BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 31/27 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 31/538 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C07J71/00 CSP
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/58
A61K31/137
A61K31/27
A61K31/4704
A61K31/538
A61K9/14
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/72
A61P29/00
A61P11/06
A61P11/00
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557815
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2021057780
(87)【国際公開番号】W WO2021191366
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】102020000006442
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522374434
【氏名又は名称】ジェネティック ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャリエンド、ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】シリーノ、ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】フィオリーノ、フェルディナンド
(72)【発明者】
【氏名】フレチェンテーゼ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ムスカラ、マルセロ、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ペリスッティ、エリーザ
(72)【発明者】
【氏名】ペッティ、アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ロヴィエッツォ、フィオレンティーナ
(72)【発明者】
【氏名】サンタガーダ、ヴィンチェンツォ
(72)【発明者】
【氏名】セヴェリーノ、ベアトリーチェ
(72)【発明者】
【氏名】マーリ、エリーザ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C091
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB27
4C076CC04
4C076CC15
4C076CC26
4C084AA19
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA55
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB11
4C084ZB21
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC27
4C086BC74
4C086DA12
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZC75
4C091AA01
4C091BB03
4C091BB05
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE07
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK12
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA02
4C091PA05
4C091PB02
4C091QQ07
4C091SS01
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA08
4C206FA14
4C206HA24
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA43
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA75
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB11
4C206ZB21
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、ブデソニド21-ホスファートと、β2アドレナリン作動薬、好ましくはホルモテロールとの塩、それを含有する医薬組成物、並びに呼吸器炎症性病態、閉塞性病態及びアレルゲン誘発性気道機能不全の治療におけるその使用に関する。本発明は更に、当該塩を調製するプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブデソニド21-ホスファートとβ2アドレナリン作動薬との塩。
【請求項2】
前記β2アドレナリン作動薬が、短時間作用型β2作動薬、長時間作用型β2作動薬又は超長時間作用型β2作動薬から選択される、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
前記β2アドレナリン作動薬が、フェノテロール、オルシプレナリン、サルブタモール、テルブタリン、バンブテロール、クレンブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、インダカテロール及びオロダテロールを含む群から選択され、好ましくは前記β2アドレナリン作動薬がホルモテロールである、請求項1又は2に記載の塩。
【請求項4】
CuKα線を使用することによって得られ、゜2θ角で表されるX線粉末回折スペクトルによって特性決定される結晶形態IVの請求項3に記載のブデソニド21-ホスファートのホルモテロール塩であって、約5.82、8.21、11.67、13.02、13.54、14.17、14.87、16.40、16.92、18.39、19.69、20.15、20.65、21.41、22.28、23.41、23.69、24.16、24.77、25.27、26.41、27.38、27.84、28.58、30.15、31.69、33.58、34.41、35.47、36.02、37.59、38.63 2シータ±0.20度に特徴的なピークが存在する、ブデソニド21-ホスファートのホルモテロール塩。
【請求項5】
図8に表されるX線粉末回折スペクトルによって特性決定される、結晶形態IVの請求項3に記載のブデソニド21-ホスファートのホルモテロール塩。
【請求項6】
i)ブデソニド21-ホスファートを有機溶媒に溶解又は懸濁させる工程と、
ii)撹拌下でβ2アドレナリン作動薬、好ましくはホルモテロールを添加する工程と、
iii)前記ブデソニド21-ホスファートと、前記β2アドレナリン作動薬との塩、好ましくは前記ブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩を単離する工程と、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の塩を調製するプロセス。
【請求項7】
前記有機溶媒が、C-C脂肪族アルコール、C-C脂肪族ケトン、C-C脂肪族エーテル、C-C環状エーテル、C-C脂肪族エステル、C-C炭化水素、C-C塩素化炭化水素、脂肪族C-Cニトリル又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジtertブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、アセトニトリル又はそれらの混合物、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、酢酸エチル又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
ブデソニド21-ホスファートと前記有機溶媒との間のmmol/mL比が1:20~1:40、好ましくは1:30である、請求項6~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
ブデソニド21-ホスファートと前記β2アドレナリン作動薬、好ましくはホルモテロールとのモル比が1:1~1:1.5である、請求項6~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記単離工程iii)が、C-C脂肪族直鎖炭化水素、好ましくはヘキサン、C-C環状エーテル、好ましくはジエチルエーテル又はそれらの混合物から選択される逆溶剤を添加することによって行われる、請求項6~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記有機溶媒と前記逆溶剤との体積比が、2:1~1:2、好ましくは1:1の体積比である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記単離工程iii)が、好ましくはn-ヘキサンからの結晶化によって行われる、請求項6~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
30~80℃、好ましくは40~50℃の範囲の温度での乾燥工程を更に含む、請求項6~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
少なくとも1つの生理学的に許容される賦形剤と組み合わせた、請求項1~5のいずれか一項に記載のブデソニド21-ホスファートとβ2アドレナリン作動薬との塩を含む医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物が粉末、懸濁液又は溶液の形態であり、好ましくは前記組成物が吸入又は経口経路による投与に適している、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
医薬品として使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の塩又は請求項15若しくは16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
抗炎症剤として又は抗喘息剤として使用するための、
式IIIの化合物:
【化1】

又は、少なくとも1つの生理学的に許容される賦形剤と組み合わせた式IIIの化合物を含む医薬組成物。
【請求項19】
喘息、COPD及び肺線維症等の呼吸器炎症性病態、閉塞性病態、アレルゲン誘発性気道機能不全の治療における、請求項17に記載の使用のための塩若しくは使用のための医薬組成物又は請求項18に記載の使用のための化合物若しくは使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブデソニド21-ホスファートと、β2アドレナリン作動薬、好ましくはホルモテロールとの塩、それを含有する医薬組成物、並びに呼吸器炎症性病態、閉塞性病態及びアレルゲン誘発性気道機能不全の治療におけるその使用に関する。本発明は更に、当該塩を調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ブデソニド(Bud)(化学名11β,21-ジヒドロキシ-16α,17α-(ブチリデンビス(オキシ))プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン)は、式Iによって表される、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、非感染性鼻炎及びクローン病を治療するためのグルココルチコイドステロイドである。
【化1】
【0003】
ブデソニドのlogPは3.2であり、その結果、腸管領域の生理学的pHでは水(28μg/mL)に実質的に不溶性である[1]。吸入コルチコステロイド(ICS)は、これまでのところ喘息の治療に使用される最も効果的な治療ツールを表し、非常に低用量であっても、喘息気道の炎症を誘発するのに関連する多くの遺伝子を抑制及び活性化することができる化合物のクラスに属する。
【0004】
β2(ベータ2)アドレナリン受容体作動薬は、β2アドレナリン受容体に作用する薬物のクラスである。β2アドレナリン作動薬は、気管支組織の平滑筋拡張、筋肉及び肝臓の血管拡張、子宮筋の弛緩、及びインスリンの放出を引き起こす。それらは、主に喘息及びCOPD等の他の肺障害を治療するために使用される。
【0005】
それらは、短時間作用型、長時間作用型及び超長時間作用型のβ2アドレナリン受容体作動薬に分けることができる。
【0006】
ICSは、一般に、長時間作用型β2作動薬(LABA)と組み合わせて投与される。ブデソニドは、通常、式IIで表されるホルモテロール(化学名N-[2-ヒドロキシ-5-[1-ヒドロキシ-2[[2-(p-メトキシフェニル)-2-プロピル]-アミノ]-エチル]-フェニル]-ホルムアミド)に会合される。
【化2】
【0007】
喘息の制御において組み合わせて使用されることの多い吸入β2作動薬及びコルチコステロイドは、重要な分子相互作用を示す[2]。特に、コルチコステロイドはβ2受容体の遺伝子転写を増加させ、長期投与後のそれらの下方制御から保護する[3]。更に、コルチコステロイドはまた、β2受容体のGタンパク質へのカップリングを改善するβ2作動薬効果を増強し得る[4]。これらの効果は、これらの2つのクラスの薬物の組み合わせの治療上の利点を更に維持する。
【0008】
International Journal of Pharmaceutics 416(2011),pages 493-498は、実験的抗原誘発性関節炎(AIA)中の視床下部-下垂体-副腎(HPA)系の関節炎症及び活性に対するリポソーム製剤及び遊離グルココルチコイド製剤の効果を開示している。リポソーム送達は、より低い有効投与を可能にすることによってグルココルチコイドの安全性を改善する。リポソームグルココルチコイドの安全性は、プレドニゾロンホスファートではなくブデソニドホスファートをカプセル化することによって更に改善され得る。
【0009】
国際公開第99/64014号は、喘息の急性状態の予防又は治療のための、ホルモテロール及びブデソニドを含む組成物の使用を開示している。
【0010】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記及び他の科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することを意図している。場合によっては、一般的に理解される意味を有する用語は、明確にするため及び/又は容易に参照するために本明細書で定義され、したがって、本明細書におけるそのような定義の包含は、当技術分野で一般的に理解されているものに対する実質的な差異を表すと解釈されるべきではない。
【0011】
本明細書における「生理学的に許容される賦形剤」という用語は、それ自体の薬理学的効果がなく、哺乳動物、好ましくはヒトに投与した場合に有害反応を生じない物質を指す。生理学的に許容される賦形剤は、当技術分野で周知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれるHandbook of Pharmaceutical Excipients,sixth edition 2009に開示されている。
【0012】
本明細書における「短時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬」又は「短時間作用型β2作動薬」又は「SABA」という用語は、約4~6時間の作用持続時間を有するβ2アドレナリン受容体作動薬を指す。本発明で使用され得るSABAの好ましい例は、フェノテロール、オルシプレナリン、サルブタモール及びテルブタリンである。
【0013】
用語「長時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬」又は「長時間作用型β2作動薬」又は「LABA」は、本明細書では、12時間までの作用持続時間を有するβ2アドレナリン受容体作動薬を指す。本発明で使用され得るLABAの好ましい例は、バンブテロール、クレンブテロール、ホルモテロール及びサルメテロールである。
【0014】
本明細書における「超長時間作用型β2アドレナリン受容体作動薬」又は「超長時間作用型β2作動薬」又は「超LABA」という用語は、24時間の持続時間を有し、1日1回の投与を可能にするβ2アドレナリン受容体作動薬を指す。本発明で使用され得るUltra-LABAの好ましい例は、インダカテロール及びオロダテロールである。
【0015】
本明細書における「ホルモテロール」という用語は、ホルモテロール遊離塩基を指す。
【0016】
本明細書における「およそ」及び「約」という用語は、測定において生じ得る実験誤差の範囲を指す。
【0017】
「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」という用語は、非限定的な用語(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)と解釈されるべきであり、「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consist of)」又は「からなる(consisting of)」という用語の支援も提供すると見なされるべきである。
【0018】
「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、半閉鎖的な用語として解釈されるべきであり、本発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼす他の成分が含まれないことを意味する(したがって、任意の賦形剤が含まれてもよい)。
【0019】
「からなる(consists of)」、「からなる(consisting of)」という用語は、閉じた用語として解釈されるべきである。
【発明の概要】
【0020】
ブデソニドは実質的に水に不溶性であるが、アルコールに容易に溶解する。このため、通常、水溶性アルコール等の可溶化剤に適量の活性物質を溶解させた水アルコール溶液が調製される。しかし、このように調製された溶液は、大量のブデソニドが短時間で分解されるため、安定性が低い。更に、ブデソニド製剤は、固相が容器の底部に時間と共に堆積する傾向がある水性懸濁液の形態で調製されてきており、したがって化学添加剤又は激しい撹拌を必要とする。これらは、ブデソニドを電気ネブライザによる送達に適さなくする理由である。
【0021】
いくつかのコルチコステロイドの21-ホスファート一級エステルが調製され、いくつかの医薬組成物の活性成分として主に使用されている。これらの分子は、親ステロイドが有さない価値のある特性を有し、第1に、それらは水溶性であり、したがって水溶液中での投与を可能にする。
【0022】
ブデソニド21-ホスファート(以下、Bud-21P又はBとも呼ばれる)(式III)は、抗体-薬物コンジュゲートの標的化送達のためのリンカーとして記載されているいくつかの研究で使用されている[5-8]。
【化3】
【0023】
本発明において、式IIIの化合物は、抗炎症特性及び抗喘息特性を有するより水溶性の化合物として記載される。
【0024】
最近、炎症性気道疾患の治療のために承認された多数の医薬品は、相乗的な治療効果を目指して、ベクロメタゾン/ホルモテロール、フロ酸フルチカゾン/ビランテロール、ブデソニド/ホルモテロール、インダカテロール/グリコピロニウム等の分子と異なる作用機序との組み合わせを特徴としている。
【0025】
本発明の目的は、相乗的な治療効果を有する新規なブデソニド21-ホスファート塩を提供することである。
【0026】
第1の態様によれば、本発明は、ブデソニド21-ホスファートとβ2アドレナリン作動薬との塩に関する。
【0027】
本発明者等は、驚くべきことに、本発明の塩がアレルゲン誘発性気道機能不全の制御において相乗効果を示すことを見出した。
【0028】
本発明の第2の態様は、ブデソニド21-ホスファート塩の調製プロセスである。
【0029】
本発明の第3の態様は、少なくとも1つの生理学的に許容される賦形剤と組み合わせてブデソニド21-ホスファート塩を含む医薬組成物である。
【0030】
本発明の第4の態様は、医薬品として使用するための上記ブデソニド21-ホスファート塩及び医薬組成物である。
【0031】
本発明の第5の態様は、抗炎症剤として、又は抗喘息剤として使用するための少なくとも1つの生理学的に許容される賦形剤を含むブデソニド21-ホスファート又はその医薬組成物である。
【0032】
本発明の第6の態様は、呼吸器炎症性病態、閉塞性病態、アレルゲン誘発性気道機能不全の治療に使用するための上記ブデソニド21-ホスファート塩、ブデソニド21-ホスファート及びそれらの医薬組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】CDOD-d4中のブデソニド21-ホスファートの31P NMRを示す図である。
図2】ブデソニド21-ホスファートのX線粉末回折を示す図である。
図3】ブデソニド21-ホスファートのFT-IRスペクトルを示す図である。
図4】CDOD-d4中のブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩のH NMRを示す図である。
図5】CDOD-d4中のブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩の13C NMRを示す図である。
図6】ブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩(下線のデータ)、ブデソニド21-ホスファート及びホルモテロール(下線なしのデータ)のH-NMR比較スペクトルを示す図である。
図7】ブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩(下線のデータ)、ブデソニド21-ホスファート及びホルモテロール(下線なしデータ)の13C-NMR比較スペクトルを示す図である。
図8】ブデソニド21-ホスファート(B)、ホルモテロール(F)及びブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩(FB)のX線粉末回折の重合わせを示す図である。
図9】ブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩のFT-IRスペクトルを示す図である。
図10】OVA感作マウスにおける気管支反応性及び血漿IgEレベルに対するFB、F及びBの効果を示す図である。各データ点は、n=6動物/群の平均±SEMを表す。パネルA:ビヒクル対OVA p<0.001;F対OVA ***P<0.001;FB対OVA p<0.001。パネルB:ビヒクル対OVA p<0.001;FB対OVA p<0.001。データを二元ANOVA、引き続いてボンフェローニ検定によって分析する。パネルC:ビヒクル対OVA p<0.01;B対OVA p<0.01;FB対OVA p<0.01。データを一元ANOVAによって分析する。
図11A】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウスにおけるPenh測定に対するFB、F及びBの効果を示す図である。
図11B】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウスにおけるPenh測定に対するFB、F及びBの効果を示す図である。気管支収縮は、無拘束動物を吸入生理食塩水(パネルB)又は増加する濃度の吸入メタコリン(MCh;パネルA)に曝露した後に測定されたエンハンスドポーズ(enhanced pause)(Penh)によって評価した。FB、F又はBを、OVAチャレンジの常に60分前(週に2回)の2週間の時間枠の間、毎日投与した。各データ点は、Sham群(n=5)を除いて、n=6動物/群の平均±SEMを表す。パネルA:MCh用量対応答曲線;パネルC:ピークPenh応答(Emax);パネルD:Penh対MCh用量曲線下面積(AUC)。**P<0.01対Sham;P<0.05、##P<0.01及び###P<0.001対未処置OVA群。データを一元ANOVA、引き続いてDunnett検定によって分析する。
図12A】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウスからのBAL液中の総白血球数及び白血球分画数に対するFB、F及びBの効果を示す図である。
図12B】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウスからのBAL液中の総白血球数及び白血球分画数に対するFB、F及びBの効果を示す図である。
図12C】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウスからのBAL液中の総白血球数及び白血球分画数に対するFB、F及びBの効果を示す図である。未処置のSham及びOVA誘発性アレルギー動物からBAL液を回収した。FB、F又はBを2週間の時間枠の間毎日投与し、OVAチャレンジの60分前に常に投与した(週に2回)。各バーは、Sham群(n=5)を除いて、n=6動物/群の平均±SEMを表す。パネルA:総BAL白血球;パネルB:BAL好酸球;パネルC:BAL好中球;パネルD:BALマクロファージ;パネルE:BALリンパ球。*P<0.05、**P<0.01及び*** P<0.001対Sham;##P<0.01及び###P<0.001対未処置OVA群。データを一元ANOVA、引き続いてDunnett検定によって分析する。
図13A】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウスからの総白血球数及び循環白血球分画数に対するFB、F及びBの効果を示す図である。
図13B】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウスからの総白血球数及び循環白血球分画数に対するFB、F及びBの効果を示す図である。
図13C】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウスからの総白血球数及び循環白血球分画数に対するFB、F及びBの効果を示す図である。未処置のSham及びOVA誘発性アレルギー動物から血液試料を回収した。FB、F又はBを2週間の時間枠の間毎日投与し、OVAチャレンジの60分前に常に投与した(週に2回)。各バーは、Sham群(n=5)を除いて、n=6動物/群の平均±SEMを表す。パネルA:総血中白血球;パネルB:血中好酸球;パネルC:血中好中球;パネルD:血液マクロファージ;パネルE:血液リンパ球。**P<0.01及び***P<0.001対Sham;P<0.05、##P<0.01及び###P<0.001対未処置OVA群。データを一元ANOVA、引き続いてダネット検定によって分析する。
図14A】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウスにおける気管支収縮に対するブデソニド(Bud)及びその21ホスファート(Bud-21P)の比較効果の図である。
図14B】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウスにおける気管支収縮に対するブデソニド(Bud)及びその21ホスファート(Bud-21P)の比較効果の図である。
図14C】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウスにおける気管支収縮に対するブデソニド(Bud)及びその21ホスファート(Bud-21P)の比較効果の図である。化合物を4週間にわたって毎日投与した後(最初のOVAチャレンジ後)、無拘束動物を、漸増濃度(パネルA及びB)の吸入メタコリンに曝露した後、エンハンスドポーズ(enhanced pause)応答(Penh)を測定した。各データ点は、n=5~6動物/群の平均±SEMを表す。パネルC:基礎Penh測定(すなわち、メタコリン曝露なし);パネルE:Penh対MCh用量曲線下面積(AUC);パネルD:ピークPenh応答(Emax)。データを、一元ANOVA、続いて多重平均比較のためのフィッシャーのLSD検定によって分析した。*P<0.05対Sham;P<0.05、##P<0.01及び###P<0.001対未処置OVA群。
図15A】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウス由来のBAL液中のブデソニド(Bud)及びその21ホスファート(Bud-21P)の総白血球数及び白血球分画の比較効果の図である。
図15B】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウス由来のBAL液中のブデソニド(Bud)及びその21ホスファート(Bud-21P)の総白血球数及び白血球分画の比較効果の図である。
図15C】OVA誘発性アレルギー性喘息を有するマウス由来のBAL液中のブデソニド(Bud)及びその21ホスファート(Bud-21P)の総白血球数及び白血球分画の比較効果の図である。4週間の間(最初のOVAチャレンジ後)、化合物を毎日投与した後、未処置Sham及びOVA誘発性アレルギー動物からBAL液を回収した。バーは、n=5~6動物/群の平均±SEMを表す。パネルA:総BAL白血球;パネルB:BAL好酸球;パネルC:BAL好中球;パネルD:BALリンパ球;パネルE:BALマクロファージ。データを、一元ANOVA、続いて多重平均比較のためのフィッシャーのLSD検定によって分析した。*P<0.05、**P<0.01及び*** P<0.001対Sham;P<0.05、##P<0.01及び###P<0.001対未処置OVA群。
図16】血漿溢出を、浮腫誘発剤のi.d.注射30分後にエバンスブルー法によって評価した図である。等モル投与量のコルチコステロイドで、浮腫誘発の60分前に動物を前処置した(i.p.)。パネルAは、各試験化合物2.32μmol/kg(1.0mg/kgのBud及び1.2mg/kgのBud21-Pに相当)で処置した後に得られた結果を示す。パネルBは、0.70μmol/kgの各試験化合物(0.30mg/kgのBud及び0.36mg/kgのBud21-Pに相当)で処置した後に得られた結果を示す。**P<0.01及び***P<0.001対タイロード;一元ANOVA、引き続いてフィッシャー検定によって分析した場合、#P<0.05及び##P<0.01対ビヒクル処置群。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、ブデソニド21-ホスファートとβ2アドレナリン作動薬との塩に関する。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、β2アドレナリン作動薬は、短時間作用型β2作動薬、長時間作用型β2作動薬又は超長時間作用型β2作動薬から選択される。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態では、β2アドレナリン作動薬は、フェノテロール、オルシプレナリン、サルブタモール、テルブタリン、バンブテロール、クレンブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、インダカテロール及びオロダテロールを含む群から選択される。
【0037】
より好ましくは、β2アドレナリン作動薬はホルモテロールである。
【0038】
ブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩(式IV)は、異なる作用機序によって作用する2つの薬物の同時存在に由来する相乗作用とより良好な溶解特性をコンジュゲートさせるために設計された、治療可能性を高めることができる薬学的に許容される塩を表す。
【化4】
【0039】
塩は、固体状態であり得、全ての結晶性、多形性及び偽型多形性塩を含む。
【0040】
本発明による実施形態では、結晶形態IVのブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩は、CuKα線を使用することによって得られ、゜2θ角で表されるX線粉末回折パターンによって特性決定され、約5.82、8.21、11.67、13.02、13.54、14.17、14.87、16.40、16.92、18.39、19.69、20.15、20.65、21.41、22.28、23.41、23.69、24.16、24.77、25.27、26.41、27.38、27.84、28.58、30.15、31.69、33.58、34.41、35.47、36.02、37.59、38.63 2シータ±0.20度に特徴的なピークが存在する。
【0041】
本発明による実施形態では、結晶形態IVのブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩は、以下のような作動条件を有する自動回折計によって得られるX線粉末回折パターンによって特性決定される。CuKα線、4゜~40゜の範囲の゜2θ角、ステップ当たりの時間120秒当量。
【0042】
特徴的なピークを表1に列挙する。
【表1】
【0043】
本発明による別の実施形態では、結晶形態IVのブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩は、図8に表されるX線粉末回折スペクトルによって特性決定される。
【0044】
実験セクションに示すように、ブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩(FB)を前臨床試験を実施して評価した。研究は、アレルギー性喘息の2つのモデルを使用して行われた。
【0045】
第1セットの実験によって得られたデータは、1mg/Kgの用量のFBの腹腔内投与で処置した感作動物における気管支過敏性の有意な減少を実証した。
【0046】
したがって、FBは、同じ用量で親化合物であるホルモテロール(F)又はブデソニド21-ホスファート(B)と比較した場合、気道機能不全の維持において有意な有効性を示した。
【0047】
第2セットの実験によって得られたデータは、親化合物F及びBの用量の10分の1よりも低い用量で投与した場合の、アレルギーマウスにおいてMChによって誘導された気管支収縮に対するFBの効果を実証した。
【0048】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの生理学的に許容される賦形剤と組み合わせたβアドレナリン作動薬と共にブデソニド21-ホスファート塩を有効成分として含む医薬組成物に関する。
【0049】
好ましくは、当該組成物は、粉末、懸濁液又は溶液の形態であり、より好ましくは、当該組成物は、吸入又は経口経路によって投与される。
【0050】
組成物は、粘膜を介した吸入のために使用されてもよく、又はエアロゾル療法のための溶液からなる。吸入による投与の場合、本発明の化合物は、加圧パック中のエアロゾルスプレーの形態で、又はネブライザの使用によって送達され得る。更に、製剤はまた、吸入装置の吹送によって吸入される粉末として送達されてもよい。吸入のための好ましい送達システムは、吸入可能な医薬製剤に適した噴射剤中の成分の懸濁液又は溶液として製剤化された定量噴霧式吸入エアロゾルである。
【0051】
経口使用に適した医薬組成物は、錠剤、カプセル又はシロップの形態で投与することができる。
【0052】
本発明の別の態様は、医薬品として使用するための本発明によるブデソニド21-ホスファート塩又はそれらの医薬組成物に関する。
【0053】
本発明の好ましい実施形態によれば、ブデソニド21-ホスファート塩又はそれらの医薬組成物は、喘息、COPD及び肺線維症等の呼吸器炎症性病態、閉塞性病態、アレルゲン誘発性気道機能不全の治療に有用である。
【0054】
有利には、本発明のブデソニド21-ホスファート塩は、単一薬物よりも低い用量で投与された場合であっても、アレルゲン誘発性気道機能不全を有意に減少させる。
【0055】
特に、試験した最低FB用量がB又はF単独のものと同等又は更に優れた有意な有益な効果(呼吸機能並びに循環白血球の数及び肺への細胞動員の両方に関して)を示したことを考慮すると、本発明者等は、FBとして投与した場合、喘息様特徴の制御において、FとBとの間に正の相乗作用が生じることを示唆する。
【0056】
本発明の別の態様は、本発明によるブデソニド21-ホスファート塩の調製プロセスであって、
i)ブデソニド21-ホスファートを有機溶媒に溶解又は懸濁させる工程と、
ii)撹拌下でβ2アドレナリン作動薬、好ましくはホルモテロールを添加する工程と、
iii)ブデソニド21-ホスファートと、β2アドレナリン作動薬との塩、好ましくはブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩を単離する工程と、
を含む調製プロセスに関する。
【0057】
塩形成に有用な溶媒には、C-C脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール)、C-C脂肪族ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン)、C-C脂肪族エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジtertブチルエーテル)、C-C環状エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン)、C-C脂肪族エステル(酢酸エチル)、C5-C8炭化水素(トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン)、C-C塩素化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン)、脂肪族C-Cニトリル(アセトニトリル)又はそれらの混合物が含まれる。
【0058】
塩形成のための好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、酢酸エチル又はそれらの混合物である。
【0059】
好ましくは、本発明によるプロセスにおいて、ブデソニド21-ホスファートと有機溶媒との間のmmol/mL比は、1:20~1:40、好ましくは1:30である。
【0060】
好ましくは、本発明によるプロセスにおいて、ブデソニド21-ホスファートとβ2アドレナリン作動薬、好ましくはホルモテロールとのモル比は、1:1~1:1.5である。
【0061】
本発明のプロセスの好ましい実施形態によれば、単離工程iii)は、C-C脂肪族直鎖炭化水素、好ましくはヘキサン、C-Cエーテル、好ましくはジエチルエーテル又はそれらの混合物から選択される逆溶剤を添加することによって実施される。
【0062】
好ましくは、有機溶媒と逆溶剤との体積比は、2:1~1:2、好ましくは1:1の体積比である。
【0063】
代替では、単離工程iii)は結晶化によって実施される。
【0064】
結晶化に有用な溶媒は、塩形成について上記で報告したものと同じであり、好ましくはn-ヘキサンである。
【0065】
本発明による実施形態では、本プロセスは、30~80℃、好ましくは40~50℃の範囲の温度での乾燥工程を更に含む。好ましくは、乾燥工程はオーブン内で行われる。
【0066】
本発明の別の態様は、抗炎症剤又は抗喘息剤として使用するための、少なくとも1つの生理学的に許容される賦形剤と組み合わせたブデソニド21-ホスファート又はその医薬組成物に関する。
【0067】
有利には、本発明者等は、式IIIの化合物(以下、B又はBud-21Pとも呼ばれる)が、抗炎症特性及び抗喘息特性を示すブデソニドのより水溶性の誘導体であることを見出した。21-ホスファートブデソニドは、試験した用量で、全身投与した場合に気管支過敏性を阻害し、血漿IgEレベルを低下させる。一方、鼻腔内投与された場合、肺において有意な抗炎症効果を示す。
【0068】
更に、21-ホスファートブデソニドは、親ブデソニドよりも強力であり、OVA誘発性アレルギー性喘息及び皮膚誘発浮腫を有するマウスにおいてそれらの有益な効果を発揮する。
【0069】
本発明の好ましい実施形態によれば、ブデソニド21-ホスファート又はその医薬組成物は、喘息、COPD及び肺線維症等の呼吸器炎症性病態、閉塞性病態、アレルゲン誘発性気道機能不全の治療に有用である。
【0070】
実験セクション
材料及び方法
a)化学的性質
1.材料及び方法
他の全ての市販製品は、Merck-Sigma Aldrichから購入した。H(500MHz)及び13C(125MHz)NMRスペクトルをAgilent INOVA分光計で記録し、化学シフトは、残留溶媒シグナル(CDOD:δ=3.31、δ=49.0)を基準とした。等核H結合性をCOSY実験によって決定した。8Hzの2,3Jに対して最適化された勾配2D HMBC実験によって、2及び3結合H-13C結合度を決定した。X線粉末回折(XRPD)は、Panalytical X’pert PRO回折計を使用して行った。強度プロファイルは、40kV及び30mA、ステップサイズ0.02゜、120秒/ステップの走査時間でNiフィルタCuKα線(λ=1.5406Å)を使用して4~40゜の2θ範囲で回収した。回折パターンは、Highscore Plusスイートを使用して処理した。IRスペクトルは、Thermo Nicolet5700FT-IR分光計で記録した。
【0071】
2.ブデソニド21-ホスファート(III)の合成
-40℃のブデソニド(10g、0.023mol)の無水THF(35mL)中撹拌溶液に、塩化ジホスホリル(8.0mL、0.058mol)を加え、得られた混合物を-40℃で20分間撹拌した。反応物を水でクエンチし、混合物を室温で1時間撹拌しながら約pH8になるまで飽和重炭酸ナトリウム溶液で処理した。溶液を酢酸エチルで抽出し、水相を1NのHCl溶液を用いて酸性にし、酢酸エチルで数回抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、ブデソニド21-ホスファート(10.1g、86%)を得た。M.P.219-221℃ LRMS(ES)(M+H):calcd,510.5;found,511.2.
1H NMR(500 MHz,CDOD)δ 7.45(d,J=10.1 Hz,1H),6.25(d,J=10.1 Hz,1H),6.01(s,1H),5.21(t,J=4.9 Hz,0.5H),5.14(d,J=7.2 Hz,0.5H),5.01-4.83(m,2H),4.77-4.59(m,2H),4.47-4.37(m,1H),2.65(td,J=13.4,5.3 Hz,1H),2.37(d,J=9.6 Hz,1H),2.28-2.07(m,3H),2.01-1.92(m,1H),1.87-1.79(m,1.5H),1.77-1.67(m,1.5H),1.64-1.56(m,3H),1.54-1.45(m,4H),1.03-0.88(m,7H).
13C NMR(126 MHz,CDOD)δ 206.14,204.88,190.12,175.51,160.99,133.16,129.17,123.87,110.73,106.88,101.11,100.26,85.59,84.37,71.71,58.41,55.43,52.57,48.30,47.18,42.53,39.49,37.38,36.76,35.60,34.27,33.68,32.95,22.83,19.68,19.32,19.21,18.93,15.63,15.55.
【0072】
ブデソニド21-ホスファート(式III)の31P NMRを図1に報告する。
【0073】
化合物の非晶質パターンを示すXRPD分析を図2に報告する。図3は、ブデソニド21-ホスファートのFT-IRスペクトルを示す。
【0074】
3.ブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩(IV)の合成
3.1.例1
ブデソニド21-ホスファート(1g、2.0mmol)を60mLの酢酸エチルに溶解した。ホルモテロール(0.69g、2.0mmol)を添加し、溶液を激しく撹拌した。1時間後、60mLのn-ヘキサンを添加し、混合物を更に12時間撹拌した。このようにして形成された固体を濾別し、n-ヘキサン(2x10mL)で洗浄し、オーブン(50℃、12時間)で乾燥させた。収率1.44g(85%)。M.P.170.0±172.5℃.
H NMR(CDOD-d4)δ 8.31(s,1H),8.10(s,1H),7.46(d,1H),7.17(d,2H),7.09(t,1H),6.89(d,3H),6.24(t,1H),6.00(s,1H),5.19(t,0.5H),5.12(t,0.5H),4.97-4.80(m,3H),4.73-4.65(m,2H),4.60(m,1H),4.41-4.39(m,1H),3.77(s,3H),3.57-3.47(m,1H),3.18(dd,2H),2.66(ddd,1H),2.37-2.35(m,1H),2.20-2.09(m,3H),1.93-1.89(m,1H),1.70-1.66(m,2H),1.63-1.56(m,4H),1.48(s,3H),1.23(d,3H),1.00-0.87(m,7H).
13C NMR(CDOD-d4)δ 208.21,206.87,190.37,175.49,163.31,161.61,161.16,149.80,134.54,132.68,130.55,129.13,128.14,125.07,123.83,121.59,117.42,116.54,110.64,106.74,101.21,100.32,96.72,85.31,84.20,71.80,71.31,58.46,58.30,56.96,53.66,52.60,48.23,47.22,42.79,42.44,40.74,39.54,39.05,37.42,36.78,36.63,35.59,35.08,34.29,33.69,32.98,22.84,19.67,19.30,19.20,18.93,16.83,15.67,15.55.
【0075】
3.2.例2
ブデソニド21-ホスファート(500mg)及びホルモテロール(350mg)をアセトニトリル(30mL)に懸濁した。激しく撹拌しながら沸点で4時間後、混合物を冷却し、沈殿物を濾過によって回収した。粉末をアセトニトリルで洗浄した。ジエチルエーテルからの再結晶化により、所望の化合物を得た。収率58%。
【0076】
3.3.例3
ブデソニド21-ホスファート(500mg)をエタノール(50mL)及び水(25mL)に溶解した。ホルモテロール(350mg)を添加し、混合物を4時間激しく撹拌し続けた。次いで、溶媒を凍結乾燥によって除去し、得られた固体をn-ヘキサンから再結晶化させ、オーブン内で乾燥させた(50℃、12時間)。収率65%。
【0077】
例1に記載の手順に従って得られた塩を、特定の化学的特性決定のために更に分析した。図4及び図5に、塩のH及び13C NMRスペクトルを報告する。
【0078】
更に、有機酸及び塩基で表される2成分間の特異的相互作用を検証するために、一次元及び二次元NMR解析を行った。特に、ブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩のH NMRスペクトルは、先に分析したブデソニド21-ホスファート及びホルモテロールと比較した化学シフト値の差を示した。特に、化学シフト値の最も顕著な変動は、以下の図6に報告されるように、ホルモテロール二級アミンに近い化学領域の炭素原子に結合したプロトンに関連するものである。
【0079】
ブデソニド21-ホスファートプロトンの化学シフト値には、より少ない変動が記録されている。しかし、この場合、δシフト(遊離酸中の0.99ppmから塩中の1.76ppm)は非常に重要である。
【0080】
13C NMR分析により、H NMRで得られた結果が確認され、親化合物及び塩を比較した場合の同じ化学領域における化学シフトの変動が強調された(図7)。
【0081】
3つの化合物ブデソニド21-ホスファート(赤色)、ホルモテロール(青色)及びブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩(黒色)のXRPD分析を図8に報告し、図9はブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩のFT-IRスペクトルを示す。
【0082】
b)薬理学
1.動物
1.1.プロトコル-1
雌Balb/c(8週齢、Charles River、Calco、Italy)を、制御された環境(温度21±2℃及び湿度60±10%)でイタリアのDepartment of Pharmacy of the University of Naplesの動物ケア施設に収容し、標準的なげっ歯類の餌及び水を提供した。全ての動物を実験前に4日間順応させ、12時間明-12時間暗スケジュールにさらした。実験は、明相の間に行った。実験手順は、国際及び国家の法律及び方針に従ってイタリアの省によって承認された(動物実験についてはEU指令2010/63/EU及びイタリアDL26/2014)。
【0083】
1.2.プロトコル-2及び3
雄Balb/c SPFマウス(25±2g、6週齢)をサンパウロ薬科大学(Federal University of Sao Paulo,Brazil)の動物収容施設から購入した。それらを22℃の温度制御された部屋に12/12時間の明暗サイクルでグループ収容し、食物及び水への自由なアクセスを可能にした。この研究は、Brazilian College for Animal Experimentation(COBEA)によって確立された動物実験のための倫理的方針(Ethical Principles for Animal Research)と一致している。実験室内部の規則によれば、実験中に発生した試験薬剤に関連する重度の苦痛の場合、安楽死を行う。
【0084】
1.3.プロトコル-4
雄C57Bl/6 SPFマウス(25±2g、6週齢)をサンパウロ薬科大学(Federal University of Sao Paulo,Brazil)の動物収容施設から購入した。それらは、12時間/12時間の明暗サイクルで22℃の温度制御された部屋にグループで収容され、食物及び水への自由なアクセスを有し、実験手順の開始前に1週間、本発明者等の現地施設に順応させた。この研究は、Brazilian College for Animal Experimentation(COBEA)によって確立された動物実験のための倫理的方針(Ethical Principles for Animal Research)と一致している。実験室内部の規則によれば、実験中に発生した試験薬剤に関連する重度の苦痛の場合、安楽死を行う。
【0085】
2.試験物質及び試薬
試験化合物ブデソニド21-ホスファートホルモテロール塩(FB)並びに対照化合物ブデソニド21-ホスファート(B)及びホルモテロール(F)を1mg/Kgの用量で各OVAチャレンジの30分前に腹腔内投与した。別の一連の実験では、FB(それぞれ0.3、1.0及び3.0nmol/動物に相当する0.26、0.85及び2.56μg/動物の用量で)、B及びF(1.53及び1.03μg/動物のそれぞれの用量で、両方とも3nmol/動物に相当する)を鼻腔内投与した。化合物を、動物当たりの決定された用量が100μlの溶液(1:10DMSO)の腹腔内投与及び10μl/動物(5μl/鼻孔)の溶液の鼻腔内(i.n.)投与から生じる濃度でDMSO(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)に溶解した。
【0086】
プロトコル3では、試験化合物ブデソニド(Bud;MW:430,53g/mol)及びブデソニド21-ホスファート遊離酸(Bud-21 P;MW:510,51g/mol)を、それぞれ1.3、4.3及び12.9μg/動物/日のBud、1.5、5.1及び15.3μg/動物/日のBud-21 Pに相当する3、10及び30nmol/動物/日の等モル用量で投与した。化合物を、10%滅菌生理食塩水+90%DMSO(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)に、動物当たりの上記用量が鼻腔内(i.n.)各溶液10μl/動物(5μl/鼻孔)の投与から生じる濃度で溶解した。
【0087】
ニワトリ卵アルブミン(OVA;grade V,cat.A5503,Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)を滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液(250μg/ml)に溶解し、Al(OH)を添加した(13mg/ml)。この混合物を使用して、皮下注射によって動物のアレルギー感作を誘導した。OVAを滅菌PBS溶液に1%で溶解し、この溶液を噴霧した(免疫学的チャレンジとして)。
【0088】
プロトコル4では、Bud(1.0及び0.30mg/kgの用量)及びBud21-P(1.2及び0.36mg/kgの用量)をモルベースで投与し、これらの用量はそれぞれ各化合物0.70及び2.32μmol/kgに相当した。化合物を溶解するためのビヒクルは、12.5%DMSO(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)を含有する滅菌生理食塩水(0.9%NaCl)であった。化合物溶液は、体重1kg当たりの投与量が各溶液10ml/kgの腹腔内(i.p.)投与から生じるような濃度で調製した。酢酸ブラジキニン(BK;cat.B3259,Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)及び化合物48/80(C48/80;cat.C2313,Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)を、それぞれ60μM及び200μg/mlの濃度で滅菌タイロード溶液に溶解した(このようにして、50μlの各薬剤のi.d.注射は、それぞれ注射部位当たり3nmol及び10μgの用量をもたらした)。
【0089】
3.実験群I
以下の表は、評価のための群を示す。
【表2】
【0090】
3.1喘息のマウスモデル
雌Balb/cマウス(8週間;Charles River)を、0日目及び8日目に卵アルブミン(400μlのAl(OH) 13.5mg/mlに溶解したOVA100μg)の皮下投与によって感作させ、21日目にマウスをOVAのエアロゾル投与(3%を20分間)によって刺激した。マウスを48時間後に屠殺し、気管支をカルバコール及びサルブタモールでの気管支反応性の評価に使用した。アレルゲンへの各曝露の前に、薬物を腹腔内投与した。全ての化合物を1mg/kgの用量で投与した。IgEの血漿レベルを感作の指標として測定した。
【0091】
3.2気管支過敏性
主気管支を迅速に切開し、脂肪及び結合組織から除去した。長さ1~2mmのリングを切断し、37℃、酸素化(95%O及び5%CO)のクレブス溶液を含有する2.5ml臓器浴に取り付け、Powerlab 800(AD Instruments)に関連する等尺力変換器(type 7006,Ugo Basile,Comerio,Italy)に接続した。リングを最初に0.5gの静止張力まで伸ばし、少なくとも30分間平衡化させた。各実験では、再現性のある応答曲線が得られるまで、気管支リングにアセチルコリン(10-6M)を事前にチャレンジした。続いて、組織洗浄後、カルバコール(10-9-3x10-6M)に対する累積濃度応答曲線を行った。カルバコールで予め収縮させたリングについて、サルブタモールに対する濃度曲線を行った。結果を組織1mg当たりのダインとして表した。
【0092】
3.3血漿IgEレベル
抗凝固剤としてシトラートを用いて心臓内穿刺により血液を採取した。次いで、800xg、4℃で10分間の遠心分離によって血漿を得、直ちに-80℃で凍結した。一致した抗体対(BD Biosciences Pharmingen San Jose,CA)を使用してELISAによって総IgEレベルを測定した。
【0093】
4.実験群II
以下の表は、評価のための群を示す。
【表3】
【0094】
実験群III
以下の表は、評価のための群を示す。
【表4】
【0095】
4.1気道過敏の誘導及び処置
マウスを、0.4mlのOVA/Al(OH)の2回の皮下注射で7日間の間隔を置いて感作させた(Sham動物は、OVAを含まないPBS中のAl(OH)懸濁液を受けた)。2回目の感作の7日後(すなわち、3週目)、動物を1%OVA溶液で週に2回(Sham及び未処置OVA群をPBSで噴霧した)、次の2週間に20分間噴霧した。チャレンジの60分前(OVA噴霧)及び次の4週間にわたって毎日、マウスをそれぞれの化合物/ビヒクルで鼻腔内処置した(5μl/鼻孔として10μl/動物)。
【0096】
4.2肺の過剰反応性/Penh機能
意識下で自発的に呼吸している動物における気道反応性を、先に記載されたように[9]、全身プレチスモグラフィによる最後のOVA/PBSチャレンジの24時間後の第4週(すなわち、2週間のOVAチャレンジ+処置後)の終わりに測定した(Buxco Europe Ltd,Winchester,UK)。実験は、処置の性質を知らない調査員によって静かな部屋で行われた。エアロゾル化生理食塩水(60秒間に50μl/マウス)、次いで、増加する濃度(PBS中3.12、6.25、12.5及び25.0mg/ml)のムスカリン作動薬メタコリン(MCh)を主チャンバの入口からそれぞれ3分間噴霧して、気管支収縮を誘発し、読取り値を取得し、各噴霧後6分間を平均化した。20分後、ベースライン値は通常、この期間の終わりに戻った。気管支収縮及びその結果としての気道抵抗の増加の指標としてエンハンスドポーズ(enhanced pause)(Penh)を測定した。Penh=[(呼息時間/弛緩時間)-1]/(最大呼息流量/最大吸気流量)
【0097】
4.3BAL液及び血液試料の回収
Penh評価後、マウスを吸入イソフルオラン(O中5%v/v)で麻酔し、下行腹部大動脈から血液試料を回収した。次いで、マウスを放血によって安楽死させ(血液試料を白血球細胞計数のために各動物から採取した)、シリンジに接続したポリエチレンチューブ(外径1mm)で気管を露出させ、カニューレを挿入することによって気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。ヘパリン含有PBS溶液300μL(20UI/mL)をフラッシングすることによって肺を洗浄した。回収したBAL洗浄の一定分量を得、同じ手順を更に4回繰り返した。試料を遠心分離(1000gで10分間)に供し、細胞ペレットを200μLのPBS溶液に再懸濁した。Neubauerチャンバを使用して総細胞数を決定し、メイ-グリュンバルド色素で染色したサイトスピン(Fanem Mod 2400;Sao Paulo,Brazil)調製物で分画計数を行った。白血球を正常な形態学的基準に基づいて分類した。
【0098】
5.実験群IV
以下の表は、評価のための実験群を示す。
【表5】

【表6】
【0099】
5.1皮膚浮腫の誘導及び処置
皮膚浮腫を、Costa et al.(2006)[10]及びYshii et al.(2009)[11]によって以前に記載された方法に従ってマウスにおいて評価した。マウスをウレタン(25%w/v、10ml/kg、i.p.)で麻酔し、背部皮膚を剃毛し、その後、ビヒクル/試験化合物でi.p.処置した。55分後、一定量の100μLのエバンスブルー色素溶液(滅菌生理食塩水中0.25%)を、尾静脈を介して静脈内(i.v.)注射した。5分後、BK及びC48/80を無作為化スキームを使用して50μlの固定体積で背部皮膚に皮内(i.d.)注射した。同じ体積のタイロード溶液50μlを対照として注射した。30分後、心臓穿刺によって1mlの血液試料を得、ウレタン過剰投与とそれに続く頸椎脱臼によってマウスを屠殺した。血液試料を6,000gで4分間遠心分離して血漿を得た。背側の皮膚を除去し、直径8mmのコルクボーラを用いて注射部位を打ち抜いた。注射部位から離れた非注射皮膚部位も打ち抜き、ブランクとした。ホルムアミドを用いて皮膚及び血漿(100μl)試料のそれぞれから色素を抽出し、得られた溶液の吸光度を620nmで測定した。各薬剤による血漿溢出(μl/部位で表される)を、ブランク値によって補正された各それぞれの皮膚片の吸光度と希釈係数によって適切に調整された血漿試料溶液との比として計算した[10]。異なる動物群の変動性(群間変動)に起因してデータを均質化するために、浮腫データを、各実験の平均タイロード(対照)応答に対する倍数変化応答として表す。
【0100】
6.統計解析
データを、n匹の個々の動物からの算術平均±SEMとして表す。ソフトウェアGraphPad Prism v5.01を用いて、データの統計分析を行った。結果は、一元ANOVAを使用して分析し、続いてDunnettの多重比較検定を使用して分析し、P<0.05の値を有する群平均間の差を有意と見なした。
【0101】
結果
1.実験群I
ビヒクル群と比較した場合、カルバコールに対する単離気管支の応答の増加によって評価されるように、OVA誘発性感作は、気管支反応性を有意に増加させた。F又はFBのいずれかの腹腔内投与で処置したアレルギー動物では、気管支過敏性の有意な減少が観察された(図10A)。逆に、1mg/Kgの用量のBは、カルバコールの応答増加に有意に影響しなかった(図10A)。OVA噴霧はまた、サルブタモールに対する気管支弛緩の有意な減少を誘導する。F又はBによる前処置は、サルブタモールに対する気管支反応の欠如を改善しなかったが、FBは気管支弛緩を有意に増加させた(図10B)。血液を心臓内穿刺によって回収し、血漿IgEレベルを測定した。パネルCで明らかなように、B及びFBによる両方の処置は、OVA誘発性のIgE血漿レベルの増加を有意に減少させた。
【0102】
2.実験群II
2.1肺の過敏反応性/Penh機能
OVA誘発性アレルギーは、基礎条件下でのPenh測定によって評価されるように、気道反応性を有意に増加させた(PBS溶液の吸入;図11B、パネルB)。いずれの処置も基礎応答の低下をもたらさなかった。吸入されるメタコリン(MCh)の濃度の増加は、Penh機能の用量依存的増加をもたらした。OVA誘発性アレルギー状態では、i)最大応答の増加(Emax図11A、パネルC)、ii)Penhメタコリン濃度曲線下面積(AUC;図11B、パネルD)によって証明されるように、この気道反応性は有意に増大した(図11A、パネルA)。試験した全ての用量でF又はFBのいずれかで処置したアレルギー動物において、最大応答Emaxの有意な減少が観察された(図11A、パネルC)。試験した全ての用量のFB化合物のみが、試験した全てのMCh用量でPenhを有意に減少させた(図11B、パネルD)(すなわち、MChチャレンジ予防プロトコルの前に)。
【0103】
2.2BAL液細胞数
図12A、12B及び12Cは、OVA誘発性アレルギーが、回収されたBAL液中の総白血球数を有意に増加させたことを示す(パネルA)。この応答は、FB(0.3及び3nmol/動物用量)又はB(3nmol/動物)を投与された動物において有意に減少した。パネルBは、全ての処置がBAL試料中の好酸球の数を減少させたことを示す。FB又はB(3nmol/動物)のいずれかによる処置は、BALマクロファージのOVA誘発性増加を無効にした(パネルD)。一方、実験群間で好中球及びリンパ球の両方に関して統計学的に有意な差はなかった(パネルC及びEのそれぞれ)。
【0104】
2.3循環白血球細胞数
図13A、13B及び13Cは、OVA誘発性アレルギーが、採取した血液試料中の総白血球数を有意に増加させたことを示す(パネルA)。この応答は、FBを投与した動物(3nmol/動物用量)でのみ有意に低下したが、他の処置では低下しなかった。同様に、リンパ球に関して、3nmol/日のFBで処置した動物のみが、未処置のアレルギー動物よりも少ない循環細胞数を示した(パネルD)。図13Bは、全ての処置が循環好酸球の数を減少させたことを示す。B又はFB(全ての試験用量)のいずれかでの処置はマクロファージの数を有意に減少させたが、FB(全ての試験用量)のみがこれらの細胞の数を対照動物で観察された値よりも低い値に減少させた(パネルD)。一方、実験群間で循環好中球に関して統計学的に有意な差はなかった(パネルC)。
【0105】
3.実験群III
3.1肺の過敏反応性/Penh機能
OVA誘発性アレルギーは、Penhメタコリン濃度曲線下面積の増加(AUC;パネルE)及び最大応答(Emax;パネルD)によって証明されるように、漸増濃度の吸入メタコリンへの曝露後(図14A図14B及び図14C、パネルA及びBに示すプロファイル)のPenh測定によって評価されるように、気道応答性を有意に増加させた。基礎Penh(すなわち、メタコリン曝露なしの場合)は群間で有意差はなかった。
【0106】
両方のPenhパラメータ(AUC及びEmax)は、試験した全ての用量(3、10及び30nmol/動物/日)でブデソニド21-ホスファート(Bud-21P)によって有意に減少したが、親化合物Budによる処置は、ちょうど最高用量(30nmol/動物/日)でこの応答の有意な減少をもたらした。
【0107】
3.2BAL液細胞数
図15A図15B及び図15Cは、Sham群と比較して、アレルギー性喘息を有する動物が気管支肺胞空間に動員された総白血球数がより多く、全ての処置がこれらの数の有意な減少をもたらしたが、3nmol/動物/日の用量でBudで処置した動物で観察された応答は、Shamマウスで観察された応答よりも依然として有意に高かったことを示す(パネルA)。肺へのより顕著な好酸球移動がアレルギー未処置動物で観察され、全ての処置(3nmol/動物/日のBudを除く)が有意にこの細胞動員を減少させた(パネルB)。気管支肺胞空間へのマクロファージ動員もまた、アレルギー未処置動物において増強され、この応答は全ての処置によって有意に減少したが、3又は10nmol/動物/日のいずれかでBudで処置した動物の応答は、Sham群で観察された応答よりも依然として有意に高かった(パネルE)。未処置のアレルギー動物は、BAL液中の有意な好中球(パネルC)又はリンパ球(パネルD)の増加を示さなかったが、処置の一部は、気管支肺胞空間へのこれらの細胞の遊走を減少させることができるか、又は消失させることさえできた。
【0108】
4.実験群IV
4.1皮膚浮腫
図16(パネルA及びB)に示されるように、BK及びC48/80の両方が、注射の30分後に測定される有意な血漿溢出を誘導した。パネルAに示されるように、浮腫誘発剤のi.d.注射の60分前に投与された等モル(2.32μmol/kg)用量の2つの化合物(1.0mg/kgのBud及び1.2mg/kgのBud21-Pのいずれかに相当)は、同様の効果、すなわちBK誘発応答の消失又は約50%のC48/80誘発血漿溢出の減少を示した。しかし、パネルBに示すように、試験化合物を0.30mg/kgのBud又は0.36mg/kgのBud21-Pに相当するより低い等モル投与量0.70μmol/kgで投与した場合、BudはBK又はC48/80のいずれにも効果がなかった。逆に、Bud21-Pは、BK応答を有意に低下させ、C48/80誘導性浮腫を有意に阻害した。
【0109】
結論
研究は、アレルギー性喘息の2つのモデルを使用して行われた。このアプローチは、全てのヒト喘息の特徴を再現する単一の動物モデルが存在しないため、新しい薬物の薬理学的プロファイルをよりよく定義するために使用されている。実際、各単一モデルは、薬理活性プロファイルの定義に寄与するいくつかのわずかに異なる情報を与える。第1セットの実験によって得られたデータは、1mg/Kgの用量のF又はFBのいずれかの腹腔内投与で処置した感作動物における気管支過敏性の有意な減少を実証した。逆に、同じ用量のBは、アレルゲン誘発性気道過敏性に対してより低い効果を有した。更に、アレルゲン噴霧は、サルブタモールに対する気管支弛緩の有意な減少も誘導した。FBは、気管支弛緩を有意に改善し、サルブタモールに対する薬理学的応答を回復させた。他の場合では、F又はBによる前処置は、サルブタモールに対する気管支応答の欠如を予防しなかった。したがって、FBは、同じ用量の親化合物F又はBと比較した場合、気道機能不全の維持において有意な有効性を示した。血液を心臓内穿刺によって回収し、血漿IgEレベルを測定した。明らかなように、B及びFBによる両方の処置は、OVA誘発性のIgE血漿レベルの増加を有意に減少させ、Fと組み合わせた場合にも、BがIgE媒介性免疫応答を予防する有効性を確認した。
【0110】
第2の実験セットでは、本発明者等はFBの鼻腔内有効性を試験した。
【0111】
OVA誘発性アレルギー性喘息は、Penh測定によって評価されるように気道反応性の増加をもたらし、これは、Emax又はAUCのいずれかとして分析した場合、0.3、1又は3nmol/動物/日のFBで処置した動物では無効であった。比較のために、3nmol/動物で投与した場合、最大応答EmaxのみがFによって部分的に減少したが、この等モル用量では、Bは効果を示さなかった。親化合物F及びBに比べて、10分の1より低い用量で投与した場合のアレルギーマウスにおけるMChによって誘発された気管支収縮に対するFBの効果を考慮すると、塩FBが親化合物を超える利点を提供することは明らかである。
【0112】
予想されるように、このアレルギー状態はまた、気管支肺胞空間に動員される好酸球の数の増加を特徴とし、これは、全ての用量でのFBによる処置(明確な用量応答パターンを示す)、並びにB及びFによる処置によって有意に制御された。更に、3nmol/動物用量でのFB及びBの両方もまた、OVAによって誘導されるマクロファージの数の増加を無効にするのに有効であった。
【0113】
OVA誘発性アレルギー性喘息はまた、循環白血球数の増加をもたらし、これは3nmol/動物用量のFBによってのみほぼ無効になった。未処置アレルギー性マウスにおける増加した循環好酸球もまた、試験した全ての用量でFB処置によって減少し、用量依存的パターンを示した(最高用量では、循環好酸球の数は、対照Sham動物よりも更に少なかった)。これは循環マクロファージの場合も同様であり、この強力な低下効果は0.3nmol/動物用量でも観察されたが、Bは3nmol/動物用量で循環マクロファージの軽度の減少を引き起こしただけであり、Fは何の効果もなかった。
【0114】
マウスにおける卵アルブミン誘発性喘息の本発明者等のモデルを使用して、以前に公開された結果に基づいて化合物用量を計算したことに言及する価値がある。ホルモテロールに関して、用量は0.5~3.8μg/動物の範囲であるが、ブデソニド吸入の通常の用量は8~75μg/動物の範囲である。このように、本研究で使用したF用量(1.03μg/動物に相当の3nmol/動物)が治療範囲の最低値の範囲内であり、ブデソニドの同じモル用量(1.53μg/動物に相当)は治療用量範囲の十分外側及び下であることは明らかである。F及びBがモル比1:1であることを考慮して、本発明者等は、Fの用量に基づいて使用するFB用量を決定した(他の場合では、モル用量がBに通常使用されるものに基づいて考慮された場合、Fによる、全身、主に心臓の効果が現れるはずである)。
【0115】
このようにして、試験した最低FB用量がB又はF単独のものと同等又は更に優れた有意な有益な効果を示した(呼吸機能及び循環白血球の数及び肺への細胞動員の両方に関して)ことを考慮すると、本発明者等は、FとBとの間の正の相乗作用がOVA誘発性アレルギー性喘息の本発明者等のマウスモデルにおける化合物FBの有益な効果を説明することを示唆する。
【0116】
(Penh関数によって評価した)メタコリンに対する気管支収縮反応を考慮すると、実験群IIIの結果は、最低用量の21-ホスファートブデソニド(3nmol/動物/日)で観察された有益な治療効果が、ブデソニドを更に高いモル用量(すなわち、3及び10nmol/動物/日)で投与した場合には存在しなかったことを示している。同様の状況が、気管支肺胞空間(洗浄によって評価される)、特に好酸球(アレルギー応答に関与する主な白血球型である)、並びにマクロファージ又は全白血球への白血球動員に関して観察された。
【0117】
皮膚浮腫を考慮すると、実験群IVの結果は、BudがBK又はC48/80のいずれにも無効であったことを示している。逆に、Bud21-Pは、BK応答を有意に低下させ、C48/80誘導性浮腫を有意に阻害した。
【0118】
結論として、これらの事実は、21-ホスファートブデソニドが親ブデソニドよりも強力であり、OVA誘発性アレルギー性喘息及び皮膚誘発浮腫を有するマウスにおいて、それらの有益な効果を発揮することを明確に証明している。
【0119】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図16
【国際調査報告】