(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(54)【発明の名称】IL-4Rアンタゴニストを投与することによりアトピー性皮膚炎を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230511BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20230511BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230511BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230511BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230511BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P17/04
A61P37/08
A61P43/00 111
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558017
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 US2021024419
(87)【国際公開番号】W WO2021195530
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アシッシュ・バンサル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・デイヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・エッケルト
(72)【発明者】
【氏名】モハメド・カマル
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
小児対象における中等度から重度のアトピー性皮膚炎を処置するための方法が提供される。一態様では、本方法は、抗IL-4R抗体またはその抗原結合性フラグメントなどのインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストの1回またはそれ以上の用量を対象に投与することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてアトピー性皮膚炎(AD)を処置する、またはAD関連パラメータを改善する方法であって、
(a)外用AD治療薬によって十分に制御されていない中等度から重度のまたは重度のADを有する対象を選択することであって、その際、対象が6カ月以上6歳未満の年齢であること;および
(b)対象に1回またはそれ以上の用量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを投与することであって、その際、IL-4Rアンタゴニストは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む抗IL-4R抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、ここで、HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み、LCDR3が配列番号8のアミノ酸配列を含むこと
を含んでなる前記方法。
【請求項2】
対象が重度のADを有する対象である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象が中等度またはそれより高い効力の外用コルチコステロイド(TCS)による処置に対して不十分な反応性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
対象が以前に全身性AD治療薬を投与されていた、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
対象が年齢6カ月以上2歳未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
対象が年齢2歳以上6歳未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
対象が、
(i)ベースラインの治験責任医師による全般的評価(IGA)スコア=4を有する;
(ii)ベースラインの湿疹面積および重症度指数(EASI)スコア≧21を有する;かつ/または
(iii)ベースラインのADに罹患した体表面積(BSA)≧15%を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
IL-4Rアンタゴニストが、3mg/kgの用量で皮下投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
IL-4Rアンタゴニストが、少なくとも6mg/kgの用量で皮下投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
IL-4Rアンタゴニストが、6mg/kgの用量で皮下投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
IL-4Rアンタゴニストが、対象におけるIL-4Rアンタゴニストの総曝露量が少なくとも130日・mg/Lとなる量で皮下投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
複数回用量のIL-4Rアンタゴニストを対象に投与することを含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
対象におけるIL-4Rアンタゴニストの総曝露量が、少なくとも2週間の期間、少なくとも130日・mg/Lとなる量で、IL-4Rアンタゴニストが、皮下投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
IL-4Rアンタゴニストが週に1回または2週間に1回対象に投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
対象が、アレルギー性鼻炎、喘息、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、じんましん、慢性鼻副鼻腔炎、鼻ポリープ、および好酸球性食道炎からなる群から選択される同時発生的なアトピーまたはアレルギー状態を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
対象が食物アレルギーを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
IL-4Rアンタゴニストが、外用AD治療薬と組み合わせて投与される、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
外用AD治療薬が、中程度の効力のTCSまたは低い効力のTCSである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
IL-4Rアンタゴニストによる処置が、対象における1つまたはそれ以上の2型炎症バイオマーカーのレベルにおいてベースライン値と比較して減少をもたらす、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
IL-4Rアンタゴニストによる処置が、対象における血清TARCおよび/または血清総IgEのレベルにおいてベースライン値と比較して減少をもたらす、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
IL-4Rアンタゴニストによる処置が、以下:
(i)IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後4週目までに0または1のIGAスコアを達成するための、IGAスコアにおけるベースラインからの減少;
(ii)IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後3週目までに、EASIスコア(EASI-50)におけるベースラインから少なくとも50%の減少;
(iii)IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後3週目までに、EASIスコア(EASI-75)におけるベースラインから少なくとも75%の減少;
(iv)IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後3週目までに、ADに罹患したBSAのパーセンテージにおける40%未満のBSAへの減少;および
(v)IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後3週目までに、ADに罹患したBSAにおけるベースラインからの35%の減少;
から選択される、1つまたはそれ以上のAD関連パラメータの改善をもたらす、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
AD関連パラメータが、介護者報告評価に基づいて決定される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
IL-4Rアンタゴニストによる処置が、介護者報告ピークそう痒数値評価スケール(NRS)スコアにおける改善をもたらす、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
IL-4Rアンタゴニストによる処置が、痒みにおける改善をもたらす、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
痒みにおける改善が、介護者報告ピークそう痒NRSスコアによって評価される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
抗IL-4R抗体またはその抗原結合性フラグメントが、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含み、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
抗IL-4R抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
IL-4Rアンタゴニストがデュピルマブまたはその生物学的同等物である、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
IL-4Rアンタゴニストが、ガラスバイアル、注射器、プレフィルドシリンジ、ペン型送達デバイス、および自己注射器からなる群から選択される容器中に含まれる、請求項1~28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
IL-4Rアンタゴニストがプレフィルドシリンジ中に含まれる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
プレフィルドシリンジが単回用量のプレフィルドシリンジである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
IL-4Rアンタゴニストが自己注射器中に含まれる、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
IL-4Rアンタゴニストがペン型送達デバイス中に含まれる、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、PCT国際特許出願として2021年3月26日に出願され、2020年3月27日に出願された米国仮特許出願第63/001,224号および2021年1月28日に出願された欧州特許出願第21315010.5号の優先権を主張し、これらの各々の内容は参照により本書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、アトピー性皮膚炎を処置するためのインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
アトピー性皮膚炎(AD)は、乳児および小児における最も一般的な皮膚疾患の1つであり、全症例の45%が6カ月未満の年齢で、60%が1歳未満の年齢で、89%が最初の5年以内に発症する(非特許文献1;非特許文献2)。有病率は、米国では年齢5歳未満の小児で15~38%(非特許文献3)、ドイツでは年齢2歳未満で21.5%と推定されている(非特許文献4)。
【0004】
ADは、小児およびその家族の両方の生活の質(QoL)に著しい影響を与える。ある研究では、重度のADを有する小児の3分の2近くが、中程度から高度に損なわれたQoLを有した(非特許文献5)。乳児では、ADの最大の影響として、痒み、睡眠不足、気分および行動の変化が挙げられる。小児では、ADは睡眠を妨げ、経済的コスト、親の疲労および怒りっぽさを高め、日常活動を損ない、余暇および家族の時間、ならびに心理的および感情的な幸福を減少させる。例えば、非特許文献6を参照のこと。
【0005】
より若年の小児の一部におけるいわゆる「アトピーマーチ」は、ADおよび食物アレルギーの既往歴を有する小児における喘息および/またはアレルギー性鼻炎の発症リスクの増加のためであり、ADがその後のアレルギー疾患に対する「入口」となりうることを示唆している。重度のADを有する乳児および幼児の60%、軽度のADを有する30%が喘息を発症すると推定されている(非特許文献7)。すべてのアトピー性疾患に共通する免疫調節障害にもかかわらず、標準治療処置は、皮膚には異なる外用製品、喘息には吸入治療薬、鼻炎には点鼻薬、痒みには経口抗ヒスタミン剤の長期使用に重点を置いている。これらの関連する状態は、しばしば管理がばらばらになっている。従って、併存する疾患を効果的なやり方で同時に処置する療法に対する必要性が高い。
【0006】
小児におけるADの薬理学的管理は、主に外用コルチコステロイド(TCS)に限定される。臨床的に関連する副作用は珍しいが、より若年の小児は、その発育状態および体重に対する体表面積(BSA)の高い比率のために、潜在的な成長遅延および視床下部下垂体軸の抑制を伴う全身吸収の最も高いリスクを有している。ADにおける慢性的なTCS曝露を最小限に抑えるために、外用カルシニューリン阻害剤(TCI)タクロリムスおよびピメクロリムスなどの非コルチコステロイド代替薬が使用されているが、これらの治療薬の利用は、2歳を超える年齢の小児に対する添付文書に基づき、保険者によってしばしば制限されている。シクロスポリン、メトトレキサート、アザチオプリン、およびミコフェノール酸モフェチルなどの他の全身性免疫抑制剤は、有意に潜在的な副作用(例:小児の成長遅延、クッシング症候群、高血圧、耐糖能障害、筋障害、骨壊死、緑内障および白内障)にもかかわらず適用外で使用されてきたが、ADでは全身性コルチコステロイドの使用が強く阻止されている。例えば、非特許文献8を参照のこと。また、全身性免疫抑制剤の使用は、処置休止後に疾患の症状が著しく悪化するリバウンド現象のリスクも伴う。このように、ADを有する小児においては、迅速な疾患改善を導くことができる良好なリスク-ベネフィットプロファイルを有する治療法に対する要求が全く満たされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Mortzら,Allergy 2015,70:836-845
【非特許文献2】Kayら,J Am Acad Dermatol 1994,30:35-39
【非特許文献3】Al-Naqeebら,J Am Board Fam Med 2019,32:191-200
【非特許文献4】Iliら,J Allergy Clin Immunol 2004,113:925-931
【非特許文献5】Ricciら,Pediatr Allergy Immunol 2007,18:245-249
【非特許文献6】Ramirezら,JAMA Dermatol,2019,155:556-563
【非特許文献7】Ricciら,J Am Acad Dermatol 2006,55:765-771
【非特許文献8】Lebwohlら,2019,J Drugs Dermatol,18:122-129
【発明の概要】
【0008】
一態様において、アトピー性皮膚炎(AD)を処置するための方法または対象におけるAD関連パラメータを改善するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、外用AD治療薬によって十分に制御されていない中等度から重度のまたは重度のADを有する小児の対象に、1回またはそれ以上の用量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを投与することを含み、その際、対象は6カ月以上6歳未満の年齢である。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、抗IL-4R抗体、またはその抗原結合性フラグメントである。
【0009】
いくつかの実施形態では、本方法は、
(a)外用AD治療薬によって十分に制御されていない中等度から重度のまたは重度のADを有する対象を選択することであって、その際、対象が6カ月以上6歳未満の年齢であること;および
(b)対象に1回またはそれ以上の用量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを投与することであって、その際、IL-4Rアンタゴニストは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む、抗IL-4R抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、ここで、HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含むこと
を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、対象は、重度のADを有する対象である。いくつかの実施形態では、対象は、中程度またはより高い効力の外用コルチコステロイド(TCS)による処置に対する反応が不十分である。いくつかの実施形態では、対象は、以前に全身性AD治療薬を投与されていた。
【0011】
いくつかの実施形態では、処置の開始時に、対象は、年齢6カ月以上2歳未満である。いくつかの実施形態では、処置の開始時に、対象は、年齢2歳以上6歳未満である。
【0012】
いくつかの実施形態では、対象は、
(i)ベースラインの治験責任医師による全般的評価(Investigator’s Global Assessment)(IGA)スコア=4を有する;
(ii)ベースラインの湿疹面積および重症度指数(EASI)スコア≧21を有する;かつ/または
(iii)ベースラインのADに罹患した体表面積(BSA)≧15%を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの同時発生的なアトピーまたはアレルギー状態を有する。いくつかの実施形態では、対象は、アレルギー性鼻炎、喘息、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、じんましん、慢性鼻副鼻腔炎、鼻ポリープ、および好酸球性食道炎からなる群から選択される同時発生的なアトピーまたはアレルギー状態を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、3mg/kgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、6mg/kgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、IL-4Rアンタゴニストの複数回の用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、週に1回または2週間に1回投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、対象は、外用治療薬(例えば、外用コルチコステロイド(TCS)または外用非ステロイド性治療薬)と組み合わせてIL-4Rアンタゴニストを投与される。いくつかの実施形態では、対象は、TCSと組み合わせてIL-4Rアンタゴニストを投与される。いくつかの実施形態では、TCSは、中程度の効力のTCSである。いくつかの実施形態では、TCSは、低い効力のTCSである。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、ベースラインと比較して対象に投与されるTCSの量を減少させる。
【0016】
いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、対象における1つまたはそれ以上の2型炎症バイオマーカーのレベルを、ベースライン値に対して減少させる結果をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、対象における血清TARCおよび/または血清総IgEのレベルにおいてベースライン値に対する減少、例えば、ベースライン値に対して少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上の減少をもたらす。
【0017】
いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置の結果、
(i)IL-4Rアンタゴニストの最初の用量の投与後4週目までにIGAスコアにおけるベースラインから減少して0または1のIGAスコアの達成;
(ii)IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後3週目までに、EASIスコア(EASI-50)におけるベースラインから少なくとも50%の減少;
(iii)IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後3週目までに、EASIスコア(EASI-75)におけるベースラインから少なくとも75%の減少;
(iv)IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後3週目までに、ADに罹患したBSAのパーセンテージにおける40%未満への減少;および
(v)IL-4Rアンタゴニストの最初用量の投与後3週目までに、ADの影響を受けたBSAにおけるベースラインからの35%の減少
から選択されるAD関連パラメータが改善される。
【0018】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のAD関連パラメータは、介護者によって評価される。いくつかの実施形態では、1つまたは以上のAD関連パラメータの改善は、介護者が報告した評価に基づく。いくつかの実施形態では、介護者が報告した評価は、介護者報告ピークそう痒数値評価スケール(Peak Pruritus numerical rating scale)(NRS)である。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、介護者報告ピークそう痒感NRSスコアの改善をもたらす。
【0019】
いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、(例えば、NRSスコアの変化によって、またはSCORADスコアもしくはその構成要素の変化によって測定されるような)痒みにおける改善をもたらす。いくつかの実施形態では、痒みのベースラインレベルおよび/または痒みにおける改善は、介護者によって評価される。いくつかの実施形態では、痒みにおける改善は、介護者報告ピークそう痒NRSスコアによって評価される。
【0020】
いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rを特異的に結合する抗IL-4R抗体、またはその抗原結合性フラグメントである。いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む。いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、デュピルマブまたはその生物学的同等物である。
【0021】
いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、本明細書に開示された抗IL-4R抗体、またはその抗原結合性フラグメント)は、ガラスバイアル、シリンジ、プレフィルドシリンジ、ペン型送達デバイス、および自己注射器からなる群から選択される容器中に含まれる。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、プレフィルドシリンジ中に含まれる。いくつかの実施形態では、プレフィルドシリンジは、単回用量のプレフィルドシリンジである。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、自己注射器中に含まれる。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、ペン型送達デバイス(例えば、プレフィルドペン)中に含まれる。
【0022】
他の実施形態は、続く発明の詳細な説明の検討から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】2つの年齢コホート(6カ月以上2歳未満および2歳以上6歳未満)における単回用量のデュピルマブの経時的な薬物動態を示す図である。(1A)対数線形スケールにおける用量群および名目時間による平均(SD)濃度。LLoQより下のサンプルはLLoQ/2に設定した。年長のコホートでは、3mg/kg用量を投与された1名の患者において、デュピルマブがすべての時点で検出不可であった。この患者はすべての概要図および記述統計から除外した。(1B)線形スケールにおける用量群および名目時間による平均(SD)濃度。LLoQより下のサンプルは、0に設定した。年長のコホートでは、3mg/kg用量を投与された1名の患者においてすべての時点でデュピルマブが検出不可であった。この患者はすべての概要図および記述統計から除外された。LLoQ、定量下限値;n=患者数;SD、標準偏差。
【
図1B】2つの年齢コホート(6カ月以上2歳未満および2歳以上6歳未満)における単回用量のデュピルマブの経時的な薬物動態を示す図である。(1A)対数線形スケールにおける用量群および名目時間による平均(SD)濃度。LLoQより下のサンプルはLLoQ/2に設定した。年長のコホートでは、3mg/kg用量を投与された1名の患者において、デュピルマブがすべての時点で検出不可であった。この患者はすべての概要図および記述統計から除外した。(1B)線形スケールにおける用量群および名目時間による平均(SD)濃度。LLoQより下のサンプルは、0に設定した。年長のコホートでは、3mg/kg用量を投与された1名の患者においてすべての時点でデュピルマブが検出不可であった。この患者はすべての概要図および記述統計から除外された。LLoQ、定量下限値;n=患者数;SD、標準偏差。
【
図2A】2つの年齢コホート(6カ月以上2歳未満および2歳以上6歳未満)における有効性の結果を示す図である。(2A)EASIにおけるベースラインから4週目までの平均パーセンテージ変化;(2B)SCORADスコアにおけるベースラインから4週目までの平均変化率;(2C)EASI-50の患者の割合;(2D)EASI-75の患者の割合;(2E)介護者報告ピークそう痒NRSにおける、ベースラインから4週目までの平均パーセンテージ変化。EASI,湿疹面積および重症度指数(Eczema Area and Severity Index);EASI-50/-75,EASIにおけるベースラインからの50%以上/75%以上の改善;NRS,数値評価スケール;SCORAD,アトピー性皮膚炎スコア評価(SCORing Atopic Dermatitis);SD,標準偏差。
【
図2B】2つの年齢コホート(6カ月以上2歳未満および2歳以上6歳未満)における有効性の結果を示す図である。(2A)EASIにおけるベースラインから4週目までの平均パーセンテージ変化;(2B)SCORADスコアにおけるベースラインから4週目までの平均変化率;(2C)EASI-50の患者の割合;(2D)EASI-75の患者の割合;(2E)介護者報告ピークそう痒NRSにおける、ベースラインから4週目までの平均パーセンテージ変化。EASI,湿疹面積および重症度指数(Eczema Area and Severity Index);EASI-50/-75,EASIにおけるベースラインからの50%以上/75%以上の改善;NRS,数値評価スケール;SCORAD,アトピー性皮膚炎スコア評価(SCORing Atopic Dermatitis);SD,標準偏差。
【
図2C】2つの年齢コホート(6カ月以上2歳未満および2歳以上6歳未満)における有効性の結果を示す図である。(2A)EASIにおけるベースラインから4週目までの平均パーセンテージ変化;(2B)SCORADスコアにおけるベースラインから4週目までの平均変化率;(2C)EASI-50の患者の割合;(2D)EASI-75の患者の割合;(2E)介護者報告ピークそう痒NRSにおける、ベースラインから4週目までの平均パーセンテージ変化。EASI,湿疹面積および重症度指数(Eczema Area and Severity Index);EASI-50/-75,EASIにおけるベースラインからの50%以上/75%以上の改善;NRS,数値評価スケール;SCORAD,アトピー性皮膚炎スコア評価(SCORing Atopic Dermatitis);SD,標準偏差。
【
図2D】2つの年齢コホート(6カ月以上2歳未満および2歳以上6歳未満)における有効性の結果を示す図である。(2A)EASIにおけるベースラインから4週目までの平均パーセンテージ変化;(2B)SCORADスコアにおけるベースラインから4週目までの平均変化率;(2C)EASI-50の患者の割合;(2D)EASI-75の患者の割合;(2E)介護者報告ピークそう痒NRSにおける、ベースラインから4週目までの平均パーセンテージ変化。EASI,湿疹面積および重症度指数(Eczema Area and Severity Index);EASI-50/-75,EASIにおけるベースラインからの50%以上/75%以上の改善;NRS,数値評価スケール;SCORAD,アトピー性皮膚炎スコア評価(SCORing Atopic Dermatitis);SD,標準偏差。
【
図2E】2つの年齢コホート(6カ月以上2歳未満および2歳以上6歳未満)における有効性の結果を示す図である。(2A)EASIにおけるベースラインから4週目までの平均パーセンテージ変化;(2B)SCORADスコアにおけるベースラインから4週目までの平均変化率;(2C)EASI-50の患者の割合;(2D)EASI-75の患者の割合;(2E)介護者報告ピークそう痒NRSにおける、ベースラインから4週目までの平均パーセンテージ変化。EASI,湿疹面積および重症度指数(Eczema Area and Severity Index);EASI-50/-75,EASIにおけるベースラインからの50%以上/75%以上の改善;NRS,数値評価スケール;SCORAD,アトピー性皮膚炎スコア評価(SCORing Atopic Dermatitis);SD,標準偏差。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明を説明する前に、本発明は、記載された特定の方法および実験条件に限定されることなく、そのような方法および条件は変わり得ることが理解されるであろう。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、限定することを意図していないことを理解されたい。
【0025】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、特定の記載された数値に関連して使用される場合、その値が記載された値から1%を超えずに変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現は、99および101、ならびにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4等)を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置すること」などは、症状を緩和すること、一時的にもしくは永久的に症状の原因を取り除くこと、または名前の付いた障害もしくは状態の症状の出現を防止するもしくは遅らせることを意味する。
【0028】
「アトピー性皮膚炎」または「AD」は、本明細書で使用する場合、激しいそう痒感(例えば、重度の痒み)および鱗状で乾燥した湿疹性病変を特徴とする炎症性皮膚疾患を意味する。用語「アトピー性皮膚炎」は、表皮バリア機能不全、アレルギー(例えば、特定の食品、花粉、カビ、ダニ、動物等に対するアレルギー)、放射線被曝、および/または喘息によって引き起こされるかまたはそれに関連するADを含むが、それらに限定されない。本開示は、中等度から重度のまたは重度のADを有する患者を処置する方法を包含する。本明細書で使用する場合、「中等度から重度のAD」は、持続的な細菌、ウイルスまたは真菌感染によってしばしば併発される、強い痒みを伴う広範囲の皮膚病変を特徴とする。中等度から重度のADには、患者における慢性ADも含まれる。多くの場合、慢性病変には肥厚性プラーク、苔癬化、および線維性丘疹が含まれる。中等度から重度のADにかかった患者では、一般に、目、手および体のしわの病変に加えて、体の皮膚の20%超、または皮膚の10%が罹患する。また、中等度から重度のADは、外用コルチコステロイドによる頻繁な処置を必要とする患者に見られると考えられている。また、患者が外用コルチコステロイドまたはカルシニューリン阻害剤のいずれかによる処置に対して抵抗性または難治性である場合、患者は中等度から重度のADを有すると言うこともありうる。本明細書で使用される場合、「重度のAD」は、広範囲の皮膚病変、絶え間ない痒み、または患者の生活の質を著しく損なう身体的もしくは精神的な障害の存在を特徴とする。いくつかの実施形態では、重度のADを有する患者は、すり傷、皮膚の切除、広範囲の皮膚の肥厚、皮膚の出血、毛細血管性出血、および/または亀裂、ならびに色素沈着の変化などの1つまたは複数の症状も示す。いくつかの実施形態では、重度のADは、外用療法(例えば、外用コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、またはクリサボロール)による処置に対して難治性である。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「それを必要とする対象」は、AD(例えば、中等度から重度のADまたは重度のAD)を有するヒトまたは非ヒト動物を指す。いくつかの実施形態では、用語「それを必要とする対象」は、中等度から重度のまたは重度のADを有する患者を指し、患者は、6カ月以上6歳未満の年齢であり、例えば、6カ月以上2歳未満の年齢である対象または2歳以上6歳未満の年齢である対象である。用語「対象」および「患者」は、本明細書において互換的に使用される。
【0030】
いくつかの実施形態において、用語「それを必要とする対象」は、6カ月以上6歳未満の年齢であり、全身療法による以前の処置を受けたことがある中等度から重度のまたは重度のADの患者を含む。本明細書で使用される場合、用語「全身療法」は、全身的に投与される治療剤(例えば、経口投与されるコルチコステロイド)を指す。この用語は、全身性免疫抑制剤または免疫調節剤を含む。本開示の文脈において、用語「全身性免疫抑制剤」は、シクロスポリンA、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、全身性または経口コルチコステロイド、およびインターフェロン-ガンマを含むが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態では、この用語は、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)阻害剤(例えば、インフリキシマブなどの抗TNFα抗体)、CD11a阻害剤(例えば、エファリズマブなどの抗CD11a抗体)、IgE阻害剤(例えば、オマリズマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブ)などの免疫生物学的製剤も含む。全身性免疫抑制剤を含む全身療法は、紅斑の短期処置のためまたは疾患を抑制するための一時的な手段として使用することができるが、その使用は重大な副作用、例えば小児における成長遅延、クッシング症候群、高血圧、耐糖能障害、ミオパチー、骨壊死、緑内障および白内障によって制限されている。全身性免疫抑制剤の使用は、処置の停止後に疾患の症状が著しく悪化しうるリバウンド現象のリスクも伴う。特定の実施形態では、用語「全身療法」、「全身性治療剤」および「全身性免疫抑制剤」は、本開示全体を通して互換的に使用される。
【0031】
本明細書で使用される用語「TCS」は、I群、II群、III群およびIV群の外用コルチコステロイドを含む。世界保健機関の解剖治療分類法(Anatomical Therapeutic Classification System)によれば、コルチコステロイドは、ヒドロコルチゾンと比較した活性に基づいて、弱い(weak)(I群)、中等度の効力(moderately potent)(II群)および強力(potent)(III群)および非常に強力(very potent)(IV群)に分類される。IV群のTCS(非常に強力)は、ヒドロコルチゾンの最大600倍の効力があり、プロピオン酸クロベタゾールおよびハルシノニドが含まれる。III群のTCS(強力)は、ヒドロコルチゾンの50から100倍の効力があり、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ジフルコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、フロ酸モメタゾン、およびアセポン酸メチルプレドニゾロンが含まれるが、それらに限定されるものではない。II群のTCS(中等度(moderately)の効力;本明細書では互換的に「中程度(medium)の効力」ともいう)は、ヒドロコルチゾンの2から25倍の効力があり、酪酸クロベタゾン、およびトリアムシノロンアセトニドを含むが、それらに限定されるものではない。I群のTCS(軽度(mild);本明細書では互換的に「低い効力(low potency)」とも呼ばれる)は、ヒドロコルチゾンを含む。
【0032】
本明細書に記載されたものと類似のまたは同等のあらゆる方法および材料を、本開示の実施に使用することができるが、典型的な方法および材料をここに記載する。本明細書に記載された全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
治療方法
一態様において、アトピー性皮膚炎(AD)を処置するための方法、または対象におけるAD関連パラメータを改善するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、中等度から重度のまたは重度のADを有する、6カ月以上6歳未満の年齢である対象に、インターロイキン4受容体(IL-4R)アンタゴニストの1回またはそれ以上の用量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、外用コルチコステロイド(TCS)または外用非ステロイド治療薬(例えば、カルシニューリン阻害剤またはクリサボロール)などのADの外用療法と併用して投与される。いくつかの実施形態では、対象は、6カ月以上1歳未満の年齢である。いくつかの実施形態では、対象は、6カ月以上2歳未満の年齢である。いくつかの実施形態では、対象は、1歳以上2歳未満の年齢である。いくつかの実施形態では、対象は、2歳以上4歳未満の年齢である。いくつかの実施形態では、対象は、4歳以上6歳未満の年齢である。いくつかの実施形態では、対象は、3歳以上6歳未満の年齢である。いくつかの実施形態では、対象は、2歳以上6歳未満の年齢である。いくつかの実施形態では、対象は、1歳以上6歳未満の年齢である。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法に従って処置される対象は、外用療法(例えば、外用カルシニューリン阻害剤(TCI)と共にまたはなしでTCS)への反応が不十分である、重度のADを有する、6カ月以上6歳未満の年齢の対象(例えば、6カ月以上6歳未満の年齢の対象、または2歳以上6歳未満の年齢の対象)、または外用療法が(例えば、副作用または安全性リスクのために)勧められない、重度のADを有する対象である。いくつかの実施形態では、対象は、外用AD治療薬による外来処置の十分な経過に対して不十分な反応の実証された既往歴を有する。本明細書で使用される場合、「不十分な反応」とは、外用療法(例えば、中程度から高い効力のTCSのレジメン、±必要に応じてTCI)による少なくとも28日間の処置にもかかわらず、寛解または低い疾患活動状態(治験責任医師による全般的評価[IGA]0=消失から2=軽度)の達成および維持ができなかったことを意味する。いくつかの実施形態では、患者がADのための実証された全身処置を受けた場合、対象は「不十分な反応」を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、そう痒(すなわち、痒み)、乾皮症(皮膚の乾燥)、湿疹性病変、紅斑、丘疹形成、浮腫、滲出/痂皮、表皮剥離、苔癬化、睡眠障害、不安およびうつを含むが、それらに限定されない、対象におけるADの1つまたはそれ以上の症状を改善、緩和または低減する。
【0036】
いくつかの実施形態において、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、対象における1つまたはそれ以上のAD関連パラメータを改善する。AD関連パラメータの例としては、以下:(a)治験責任医師による全般的評価(Investigators Global Assessment)(IGA);(b)アトピー性皮膚炎の病変体表面積(Body Surface Area Involvement of Atopic Dermatitis)(BSA);(c)湿疹面積および重症度指数(Eczema Area and Severity Index)(EASI);(d)SCORAD;(e)5-Dそう痒スケール(5-D Pruritus Scale);および(f)そう痒数値評価スケール(Pruritus Numeric Rating Scale)(NRS)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。「AD関連パラメータにおける改善」とは、IGA、BSA、EASI、SCORAD、5-Dそう痒スケール、NRS/最悪の痒みスコア(worst itch score)、患者の疾患の全体的な印象、患者の変化の全体的な印象、小児アトピー性皮膚炎QOL評価尺度(Children’s Dermatology Life Quality Index)(CDLQI)、患者向け湿疹測定(Patient Oriented Eczema Measure)(POEM)、皮膚炎の家族指数(Dermatitis Family Index)(DFI)スコア、または患者報告アウトカム測定情報システム(Patient-Reported Outcomes Measurement Information System)(PROMIS)の不安および/またはうつ病スコアの1つまたはそれ以上の、ベースラインからの減少を意味する。AD関連パラメータに関して使用される「ベースライン」という用語は、本明細書に開示される医薬組成物の投与前または投与時の、対象に関するAD関連パラメータの数値を意味する。
【0037】
AD関連パラメータが「改善」したかどうかを判定するために、パラメータは、ベースラインおよび本開示の医薬組成物の投与後の1つまたはそれ以上の時点において定量化される。例えば、AD関連パラメータは、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、14日目、15日目、22日目、25日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目、85日目に、または本開示の医薬組成物による初回処置後、1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、20週目、21週目、22週目、23週目、24週、またはそれ以上の期間の終わりに測定してもよい。処置開始後の特定の時点におけるパラメータの値とベースラインにおけるパラメータの値との間の差は、AD関連パラメータに「改善」(例えば、減少)があったかどうかを確定するために使用される。AD関連パラメータは、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開番号第US2014/0072583号に記載されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、AD関連パラメータは、介護者により評価される。いくつかの実施形態では、パラメータは、AD関連パラメータの介護者の評価に基づき、ベースラインおよび医薬組成物の投与後の1つまたはそれ以上の時点において、定量化される。いくつかの実施形態では、介護者が報告した評価は、6カ月以上6歳未満の年齢の患者、例えば、6カ月以上4歳未満の年齢の患者、または6カ月以上2歳未満の年齢の患者におけるAD関連パラメータを評価するために使用される。いくつかの実施形態では、介護者報告評価は、ピークそう痒NRSスコア、患者の疾患の全体的な印象、患者の変化の全体的な印象、小児アトピー性皮膚炎QOL評価尺度(CDLQI)、患者向け湿疹測定(POEM)、皮膚炎の家族指数(DFI)スコア、または患者報告アウトカム測定情報システム(PROMIS)不安および/またはうつ病スコアにおける改善を評価するために使用する。いくつかの実施形態では、痒みの改善は、介護者が報告した評価に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、痒みの改善は、介護者報告ピークそう痒NRSスコアによって評価される。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によるIL-4Rアンタゴニストによる処置は、ベースラインに対する対象のIGAスコアの改善をもたらす。対象についてIGAスコアを決定するための方法は、以下の実施例のセクションに記載されている。いくつかの実施形態では、処置される対象は、ベースラインIGAスコア≧3(例えば、IGAスコア3またはIGAスコア4)を有する。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後、3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までに少なくとも1ポイントのIGAスコアのベースラインからの減少(例えば、ベースラインIGAスコア≧3またはベースラインIGAスコア=4からの)をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後、3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までに、ベースラインから(例えば、IGAスコア≧3またはIGAスコア=4から)IGAスコア0または1への減少をもたらす。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によるIL-4Rアンタゴニストによる処置は、ベースラインに対する対象のEASIスコアの改善をもたらす。対象についてEASIスコアを決定するための方法は、以下の実施例のセクションに記載されている。いくつかの実施形態では、処置される対象は、ベースラインEASIスコア≧21(例えば、EASIスコア≧30)を有する。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後、3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までに、EASIスコアがベースラインから少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも90%の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置により、対象は、IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後、3週目、第4週目、8週目、12週目、または16週目までにEASI-75反応(すなわち、ベースラインから≧75%の改善)の達成をもたらす。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置により、対象は、IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後、3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までにEASI-50反応(すなわち、ベースラインからの≧50%の改善)の達成をもたらす。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によるIL-4Rアンタゴニストによる処置は、ベースラインに対する対象のBSAスコアの改善をもたらす。対象についてBSAスコアを決定する方法は、以下の実施例のセクションに記載されている。いくつかの実施形態では、処置される対象は、≧15%以上(例えば、≧20%、≧30%、≧40%、≧50%、≧75%、または≧90%)のベースラインBSAスコアを有する。いくつかの実施形態では、処置される対象は、≧50%のベースラインBSAスコアを有する。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後、3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までに、ADに罹患したBSAのパーセントにおいてベースラインから少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、またはそれ以上の減少をもたらす。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によるIL-4Rアンタゴニストによる処置は、ベースラインに対する対象の「最悪の痒みスケール」スコア(本明細書ではピークそう痒数値評価スケール(NRS)スコアとも呼ばれる)などのそう痒スコアの改善をもたらす。そう痒スコアを決定するための方法は、以下の実施例のセクションに記載されている。いくつかの実施形態では、処置される対象は、≧4(例えば、≧7)である、最大痒み強度のベースラインの最悪の痒みスコアの週平均スコアを有する。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後、3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までに、毎日のそう痒スコア(例えば、最悪の痒みスコア)の週間平均においてベースラインからの≧3ポイント(例えば、≧4ポイント)の減少をもたらす。
【0043】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によるIL-4Rアンタゴニストによる処置は、ベースラインに対する対象のSCORADスコアの改善をもたらす。対象についてSCORADスコアを決定するための方法は、以下の実施例のセクションに記載されている。いくつかの実施形態では、処置される対象は、ベースラインのSCORADスコア≧40(例えば、SCORADスコア≧50、≧60、または≧70)を有する。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、IL-4Rアンタゴニストの初回用量の投与後、3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までに、ベースラインから少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも90%のSCORADスコアにおける減少をもたらす。
【0044】
いくつかの実施形態において、IL-4Rアンタゴニストによる処置は、ADのための外用療法の有効性および/または安全性を高める。本明細書で使用する場合、外用療法(例えば、TCS)レジメンは、以下の結果または現象の1つまたはそれ以上が対象において観察または達成される場合に「増強される」:(1)併用投与される外用剤(例えば、TCS)の量が減少する、(2)外用剤(例えば、TCS)が併用投与される日数が減少する、(3)患者がより低い効力の外用剤を投与される(例えば、患者が中程度の効力のTCSから低い効力のTCSに切り替えられる)、(4)外用剤(例えば、TCS)による1つまたは副作用の減少または排除がある、または(5)外用剤(例えば、TCS)による毒性における減少がある。いくつかの実施形態では、対象に併用投与される外用剤(例えば、TCS)の量は、対象のベースライン値と比較して、またはIL-4R阻害剤を投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上減少される。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる処置により、外用剤(例えば、TCS)との併用処置を漸減または中止することができる。
【0045】
インターロイキン-4受容体アンタゴニスト
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、それを必要とする対象(例えば、6カ月以上6歳未満の年齢の中等度から重度のADを有する対象、例えば6カ月以上2歳未満の年齢の対象または2歳以上6歳未満の年齢の対象)にインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストまたはIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を投与することを含む。本明細書で使用する場合、「IL-4Rアンタゴニスト」(本明細書では「IL-4R阻害剤」、「IL-4Rブロッカー」または「IL-4Rαアンタゴニスト」とも呼ばれる)は、IL-4RαまたはIL-4Rリガンドに結合または相互作用し、1型および/または2型IL-4受容体の通常の生物学的シグナル伝達機能を阻害または減衰するあらゆる薬剤である。ヒトIL-4Rαは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。1型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびaγc鎖を含む二量体受容体である。2型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびIL-13Rα1鎖を含む二量体受容体である。1型IL-4受容体はIL-4と相互作用し、IL-4によって刺激されるのに対して、2型IL-4受容体はIL-4およびIL-13の両方と相互作用し、IL-13によって刺激される。したがって、本開示の方法で使用できるIL-4Rアンタゴニストは、IL-4媒介シグナル伝達、IL-13媒介シグナル伝達、またはIL-4-およびIL-13媒介シグナル伝達の両方をブロックすることによって機能し得る。したがって、本開示のIL-4Rアンタゴニストは、IL-4および/またはIL-13と1型または2型受容体との相互作用を防止することができる。
【0046】
IL-4Rアンタゴニストのカテゴリーの非限定的な例としては、小分子IL-4R阻害剤、抗IL-4Rアプタマー、ペプチドベースのIL-4R阻害剤(例えば、「ペプチボディ」分子)、「受容体ボディ」(例えば、IL-4R成分のリガンド結合ドメインを含む改変分子)、およびヒトIL-4Rαに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントが含まれる。本明細書で使用される場合、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4および/またはIL-13と特異的に結合する抗原結合タンパク質も含む。
【0047】
抗IL-4Rα抗体およびその抗原結合性フラグメント
本開示のある例示的な実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性フラグメントである。本明細書で使用される用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む。典型的な抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略記する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略記する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域と、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域にさらに細分化することが可能である。VHおよびVLはそれぞれ3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖細胞系列配列と同一である。いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体(またはその抗原結合部分)の1つまたはそれ以上のFRは、自然にまたは人為的に改変されている。
【0048】
本明細書で使用される用語「抗体」は、完全な抗体分子の抗原結合性フラグメントも含む。本明細書で使用する用語、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合性フラグメント」等は、抗原と特異的に結合して複合体を形成するあらゆる天然由来の、酵素的に得られる、合成の、または遺伝子操作された、ポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性フラグメントは、例えば完全な抗体分子から、タンパク質分解消化のようななんらかの適切な標準技術、または抗体の可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む組換え遺伝子工学技術を使用して誘導され得る。このようなDNAは知られており、かつ/または、例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であり、または合成することができる。DNAは、例えば、1つまたはそれ以上の可変ドメインおよび/または定常ドメインを適切な構成に配置するため、またはコドンを導入し、システイン残基を作成し、アミノ酸を修飾、付加もしくは削除する、などのために、化学的または分子生物学技術を使用して配列決定および操作され得る。
【0049】
抗原結合性フラグメントの非限定的な例としては、以下:(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;および(vii)抗体の超可変領域を模したアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドのような孤立した相補性決定領域(CDR))、または拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチドが含まれる。他の改変分子、例えば、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失型抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール免疫医薬品(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインも、本明細書で使用される「抗原結合性フラグメント」という用語に包含される。
【0050】
抗体の抗原結合性フラグメントは、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むことになる。可変ドメインは、あらゆるサイズまたはアミノ酸組成であってよく、一般に、1つもしくはそれ以上のフレームワーク配列に隣接するかまたはフレーム内にある少なくとも1つのCDRを含むことになる。VLドメインと関連するVHドメインを有する抗原結合性フラグメントにおいて、VHおよびVLドメインは、なんらかの適切な配置で互いに対して位置しうる。例えば、可変領域は二量体であってもよく、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含んでもよい。あるいは、抗体の抗原結合性フラグメントは、単量体のVHまたはVLドメインを含んでもよい。
【0051】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合性フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含んでもよい。本開示の抗体の抗原結合性フラグメント内に見出されうる可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的で例示的な構成には、以下:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLが含まれる。上に挙げた例示的な構成のいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインの任意の構成において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結されてもよいし、または完全なもしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって連結されてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメインの間の可動性または半可動性の連結をもたらす少なくとも2(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上)のアミノ酸から構成されてもよい。さらに、本開示の抗体の抗原結合性フラグメントは、互いに非共有結合により、かつ/または1つもしくはそれ以上の単量体VHもしくはVLドメインにより(例えば、ジスルフィド結合によって)、上記に挙げた可変ドメインおよび定常ドメインの構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含んでもよい。
【0052】
抗体の定常領域は、補体を固定し、細胞依存性細胞毒性を媒介する抗体の能力において重要である。したがって、いくつかの実施形態では、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞毒性を媒介することが望ましいかどうかに基づいて選択され得る。
【0053】
本明細書で使用する用語「抗体」は、多特異性(例えば、二重特異性)抗体も含む。多特異性の抗体または抗体の抗原結合性フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別々の抗原にまたは同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することが可能となる。あらゆる多特異性抗体フォーマットは、当技術分野で利用可能な常用技術を使用して、本開示の抗体または抗体の抗原結合性フラグメントの文脈で使用するために適合されうる。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の方法は、免疫グロブリンの一方の腕がIL-4Rαまたはそのフラグメントに特異的であり、免疫グロブリンの他方の腕が第2の治療標的に特異的であるかまたは治療部位にコンジュゲートされる二重特異性抗体の使用を含む。本開示の文脈において使用することができる例示的な二重特異性形式には、限定されないが、例えば、scFvベースまたはダイアボディ二重特異性形式、IgG-scFv融合、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、knobs-into-holes、共通の軽鎖(例えば、knobs-into-holesを有する共通の軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ(Duobody)、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、およびMab2二重特異性形式(例えば、前述の形式のレビューについては、Kleinら、2012、mAbs 4:6、1~11、およびそこに引用される文献を参照)。また、二重特異性抗体は、ペプチド/核酸コンジュゲーションを用いて構築することもでき、例えば、直交する化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成し、次いで、規定された組成、価数および形状を有する多量体複合体に自己組織化される。(例えば、Kazaneら、J.Am.Chem.Soc.[Epub:Dec.4,2012]を参照のこと)。
【0054】
いくつかの実施形態において、本開示の方法で使用される抗体は、ヒト抗体である。本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むものとする。それにもかかわらず、本開示のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3において、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはin vivoでの体細胞変異によって導入された変異)を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳類種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことは意図していない。
【0055】
本開示の方法において使用される抗体は、組換えヒト抗体であってもよい。本明細書で使用される用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって調製、発現、作成または単離された全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトした組換え発現ベクターを使用して発現された抗体(以下にさらに記載)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(以下にさらに記載)から単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含むなんらかの他の手段によって調製、発現、作成もしくは単離された抗体である。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかしながら、特定の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、in vitro変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を使用する場合、in vivo体細胞変異)にかけられるため、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞VHおよびVL配列に由来し関連しながら、in vivoでのヒト抗体生細胞レパートリー内に自然に存在しない可能性がある配列である。
【0056】
「単離された抗体」とは、同定され、その自然環境の少なくとも1つの構成要素から分離および/または回収された抗体のことである。例えば、生物の少なくとも1つの構成要素から、または抗体が天然に存在するかもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から分離または除去された抗体は、「単離された抗体」である。単離された抗体には、組換え細胞内の原位置の抗体も含まれる。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離工程にかけられた抗体である。特定の実施形態によれば、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まないことがありうる。
【0057】
特定の実施形態によれば、本開示の方法において使用される抗体は、IL-4Rαと特異的に結合する。本明細書で使用される用語「特異的に結合する」は、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、生理的条件下で比較的安定である、抗原との複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定する方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。いくつかの実施形態では、IL-4Rαと「特異的に結合する」抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば.BIAcore(商標)、Biacore Life Sciences division of GE Healthcare,Piscataway,NJ)において測定した場合、IL-4Rαまたはその一部と、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、約0.1nM未満、または約0.05nM未満の平衡解離定数(KD)で結合する。いくつかの実施形態では、標的抗原(例えば、IL-4Rα)に特異的に結合する抗体は、別の抗原、例えば、標的抗原のオルソログに特異的に結合することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、ヒトIL-4Rαと特異的に結合する単離された抗体は、他の(ヒト以外の)種からのIL-4Rα分子などの他の抗原に対する交差反応性を示す。
【0058】
いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、参照により本明細書に組み込まれた米国特許第7,608,693号に記載された抗IL-4R抗体のいずれかのアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む、抗IL-4Rα抗体、またはその抗原結合性フラグメントである。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性フラグメントである。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、ここでHCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体またはその抗原結合性フラグメントは、それぞれ配列番号3、4、5、6、7、および8のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、さらに、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するHCVRおよび配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1を含むHCVRおよび配列番号2を含むLCVRを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗IL-4R抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0061】
配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む例示的な抗体は、デュピルマブとして知られている完全ヒト抗IL-4R抗体である。特定の例示的な実施形態によれば、本開示の方法は、デュピルマブの使用を含む。本明細書で使用される場合、「デュピルマブ」は、デュピルマブの生物学的同等物も含む。デュピルマブに関して本明細書で使用される用語「生物学的同等物」は、単一用量または複数用量のいずれかの同様の実験条件下で同じモル用量で投与したときに、吸収の速度および/または程度がデュピルマブのそれと有意差を示さない、医薬同等物または医薬代用品である抗IL-4R抗体またはIL-4R結合タンパク質もしくはそのフラグメントを指す。いくつかの実施形態では、安全性、純度および/または効力においてデュピルマブと臨床的に意味のある差異を有しないIL-4Rに結合する抗原結合性タンパク質を指す。
【0062】
本開示の方法の文脈において使用することができる他の抗IL-4Rα抗体には、例えば、AMG317(Correnら、2010、Am J Respir Crit Care Med,181(8):788-796)、もしくはMEDI 9314と呼ばれ、当技術分野で知られている抗体、または米国特許第7,186,809号、米国特許第7,605,237号、米国特許第7,638,606号、米国特許第8,092,804号、米国特許第8,679,487号、米国特許第8,877,189号、米国特許第10,774,141号、または国際特許公開第WO2020/096381号に記載された抗IL-4Rα抗体のいずれかが含まれ、これらの各々の内容は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0063】
いくつかの実施形態において、本開示の方法において使用するための抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下の表7に記載された1つまたはそれ以上のCDR、HCVR、および/またはLCVR配列を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗IL-4Rα抗体は、(i)配列番号:32(SCB-VH-59)、配列番号33(SCB-VH-60)、配列番号34(SCB-VH-61)、配列番号35(SCB-VH-62)、配列番号36(SCB-VH-63)、配列番号37(SCB-VH-64)、配列番号38(SCB-VH-65)、配列番号39(SCB-VH-66)、配列番号40(SCB-VH-67)、配列番号41(SCB-VH-68)、配列番号42(SCB-VH-69)、配列番号43(SCB-VH-70)、配列番号44(SCB-VH-71)、配列番号45(SCB-VH-72)、配列番号46(SCB-VH-73)、配列番号47(SCB-VH-74)、配列番号48(SCB-VH-75)、配列番号49(SCB-VH-76)、配列番号50(SCB-VH-77)、配列番号51(SCB-VH-78)、配列番号52(SCB-VH-79)、配列番号53(SCB-VH-80)、配列番号54(SCB-VH-81)、配列番号55(SCB-VH-82)、配列番号56(SCB-VH-83)、配列番号57(SCB-VH-84)、配列番号58(SCB-VH-85)、配列番号59(SCB-VH-86)、配列番号60(SCB-VH-87)、配列番号61(SCB-VH-88)、配列番号62(SCB-VH-89)、配列番号63(SCB-VH-90)、配列番号64(SCB-VH-91)、配列番号65(SCB-VH-92)、または配列番号66(SCB-VH-93)のアミノ酸配列を含むHCVR;および(ii)配列番号12(SCB-VL-39)、配列番号13(SCB-VL-40)、配列番号14(SCB-VL-41)、配列番号15(SCB-VL-42)、配列番号16(SCB-VL-43)、配列番号17(SCB-VL-44)、配列番号18(SCB-VL-45)、配列番号19(SCB-VL-46)、配列番号20(SCB-VL-47)、配列番号21(SCB-VL-48)、配列番号22(SCB-VL-49)、配列番号23(SCB-VL-50)、配列番号24(SCB-VL-51)、配列番号25(SCB-VL-52)、配列番号26(SCB-VL-53)、配列番号27(SCB-VL-54)、配列番号28(SCB-VL-55)、配列番号29(SCB-VL-56)、配列番号30(SCB-VL-57)、または配列番号31(SCB-VL-58)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態において、抗IL-4Rα抗体は、配列番号64(SCB-VH-91)のアミノ酸配列を含むHCVRおよび配列番号17(SCB-VL-44)、配列番号27(SCB-VL-54)、または配列番号28(SCB-VL-55)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、抗IL-4Rα抗体は、配列番号67/68(MEDI-1-VH/MEDI-1-VL);配列番号69/70(MEDI-2-VH/MEDI-2-VL);配列番号71/72(MEDI-3-VH/MEDI-3-VL);配列番号73/74(MEDI-4-VH/MEDI-4-VL);配列番号75/76(MEDI-5-VH/MEDI-5-VL);配列番号77/78(MEDI-6-VH/MEDI-6/VL);配列番号79/80(MEDI-7-VH/MEDI-7-VL);配列番号81/82(MEDI-8-VH/MEDI-8-VL);配列番号83/84(MEDI-9-VH/MEDI-9-VL);配列番号85/86(MEDI-10-VH/MEDI-10-VL);配列番号87/88(MEDI-11-VH/MEDI-11/VL);配列番号89/90(MEDI-12-VH/MEDI-12-VL);配列番号91/92(MEDI-13-VH/MEDI-13-VL);配列番号93/94(MEDI-14-VH/MEDI-14-VL);配列番号95/96(MEDI-15-VH/MEDI-15-VL);配列番号97/98(MEDI-16-VH/MEDI-16/VL);配列番号99/100(MEDI-17-VH/MEDI-17-VL);配列番号101/102(MEDI-18-VH/MEDI-18-VL);配列番号103/104(MEDI-19-VH/MEDI-19-VL);配列番号105/106(MEDI-20-VH/MEDI-20-VL);配列番号107/108(MEDI-21-VH/MEDI-21-VL);配列番号109/110(MEDI-22-VH/MEDI-22-VL);配列番号111/112(MEDI-23-VH/MEDI-23-VL);配列番号113/114(MEDI-24-VH/MEDI-24-VL);配列番号115/116(MEDI-25-VH/MEDI-25-VL);配列番号117/118(MEDI-26-VH/MEDI-26-VL);配列番号119/120(MEDI-27-VH/MEDI-27-VL);配列番号121/122(MEDI-28-VH/MEDI-28-VL);配列番号123/124(MEDI-29-VH/MEDI-29-VL);配列番号125/126(MEDI-30-VH/MEDI-30-VL);配列番号127/128(MEDI-31-VH/MEDI-31-VL);配列番号129/130(MEDI-32-VH/MEDI-32-VL);配列番号131/132(MEDI-33-VH/MEDI-33-VL);配列番号133/134(MEDI-34-VH/MEDI-34-VL);配列番号135/136(MEDI-35-VH/MEDI-35-VL);配列番号137/138(MEDI-36-VH/MEDI-36-VL);配列番号139/140(MEDI-37-VH/MEDI-37-VL);配列番号141/142(MEDI-38-VH/MEDI-38-VL);配列番号143/144(MEDI-39-VH/MEDI-39-VL);配列番号145/146(MEDI-40-VH/MEDI-40-VL);配列番号147/148(MEDI-41-VH/MEDI-41-VL);配列番号149/150(MEDI-42-VH/MEDI-42-VL);および配列番号151/152(MEDI-37GL-VH/MEDI-37GL-VL)からなる群から選択されるアミノ酸配列対を含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、抗IL-4Rα抗体は、(i)配列番号153(AJOU-1-VH)、配列番号154(AJOU-2-VH)、配列番号155(AJOU-3-VH)、配列番号156(AJOU-4-VH)、配列番号157(AJOU-5-VH)、配列番号158(AJOU-6-VH)、配列番号159(AJOU-7-VH)、配列番号160(AJOU-8-VH)、配列番号161(AJOU-9-VH)、配列番号162(AJOU-10-VH)、配列番号163(AJOU-69-VH)、配列番号164(AJOU-70-VH)、配列番号165(AJOU-71-VH)、配列番号166(AJOU-72-VH)、または配列番号167(AJOU-83-VH)のアミノ酸配列を含むHCVR; および(ii)配列番号168(AJOU-33-VL)、配列番号169(AJOU-34-VL)、配列番号170(AJOU-35-VL)、配列番号171(AJOU-36-VL)、配列番号172(AJOU-37-VL)、配列番号173(AJOU-38-VL)、配列番号174(AJOU-39-VL)、配列番号175(AJOU-40-VL)、配列番号176(AJOU-41-VL)、配列番号177(AJOU-42-VL)、配列番号178(AJOU-77-VL)、配列番号179(AJOU-78-VL)、配列番号180(AJOU-79-VL)、配列番号181(AJOU-80-VL)、配列番号182(AJOU-86-VL)、配列番号183(AJOU-87-VL)、配列番号184(AJOU-88-VL)、配列番号185(AJOU-89-VL)、配列番号186(AJOU-90-VL)、または配列番号187(AJOU-91-VL)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、抗IL-4Rα抗体は、(i)配列番号188(REGN-VH-3)、配列番号189(REGN-VH-19)、配列番号190(REGN-VH-35)、配列番号191(REGN-VH-51)、配列番号192(REGN-VH-67)、配列番号193(REGN-VH-83)、配列番号194(REGN-VH-99)、配列番号195(REGN-VH-115)、配列番号196(REGN-VH-147)、または配列番号197(REGN-VH-163)のアミノ酸配列を含むHCVR;および(ii)配列番号198(REGN-VL-11)、配列番号199(REGN-VL-27)、配列番号200(REGN-VL-43)、配列番号201(REGN-VL-59)、配列番号202(REGN-VL-75)、配列番号203(REGN-VL-91)、配列番号204(REGN-VL-107)、配列番号205(REGN-VL-123)、配列番号206(REGN-VL-155)、または配列番号207(REGN-VL-171)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む
【0068】
いくつかの実施形態では、本開示の方法で使用される抗IL-4Rα抗体は、pH依存性の結合特性を有し得る。例えば、本明細書に開示されるような使用のための抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して酸性pHでIL-4Rαへの結合の減少を示すことがある。あるいは、本明細書に開示されるような使用のための抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して酸性pHでその抗原への結合の増強を示すことがある。「酸性pH」という表現は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ未満のpH値を含む。本明細書で使用される場合、「中性pH」という表現は、約7.0から約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
【0069】
特定の実施態様において、「中性pHと比較して酸性pHでIL-4Rαへの結合の減少」とは、中性pHでIL-4Rαに結合する抗体のKD値に対する酸性pHでIL-4Rαに結合する抗体のKD値の比率(またはその逆)によって表現される。例えば、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、その抗体または抗原結合性フラグメントが約3.0またはそれ以上の酸性/中性KD比を示す場合、本開示の目的のために「中性pHと比較して酸性pHでIL-4Rαへの結合の減少」を示すと見なしうる。特定の例示的な実施形態では、本開示の抗体または抗原結合性フラグメントの酸性/中性KD比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0またはそれ以上であることができる。
【0070】
pH依存性の結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHで特定の抗原に対する結合の減少(または増強)について抗体集団をスクリーニングすることによって得ることができる。さらに、抗原結合ドメインをアミノ酸レベルで改変することで、pH依存的な特性を有する抗体を得てもよい。例えば、抗原結合ドメイン(例えば、CDR内)の1つまたはそれ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することにより、中性pHと比較して酸性pHで抗原結合が減少する抗体を得てもよい。
【0071】
ヒト抗体の調製
トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成する方法は、当技術分野において知られている。いずれかのこのような既知の方法は、ヒトIL-4Rに特異的に結合するヒト抗体を作製するために、本開示の文脈において使用することができる。
【0072】
VELOCIMMUNE(商標)技術(例えば、US6,596,541,Regeneron Pharmaceuticalsを参照)またはモノクローナル抗体を生成するための他のいずれかの知られている方法を用いて、IL-4Rに対する高親和性キメラ抗体が、最初にヒト可変領域およびマウス定常領域を有して単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが抗原刺激に応答してヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内因性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結したヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスを生成することを含む。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒトの重鎖および軽鎖の定常領域をコードするDNAに作動可能に連結する。次いで、そのDNAが、完全ヒト抗体を発現することができる細胞中で発現される。
【0073】
一般に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに目的の抗原を投与し、抗体を発現するリンパ細胞(例えば、B細胞)をマウスから回収する。このリンパ細胞を骨髄腫細胞株と融合させて不死ハイブリドーマ細胞株を調製し、このようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニングして、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を特定しうる。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプの定常領域に連結してもよい。このような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞で産生してもよい。あるいは、抗原特異的キメラ抗体、または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAを、抗原特異的リンパ球から直接単離してもよい。
【0074】
最初に、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を単離する。この抗体を、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特性について、当業者に知られている標準的な手順を用いて特性評価し、選択する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域で置換して、本開示の完全ヒト抗体、例えば野生型または改変型IgG1またはIgG4を生成する。選択される定常領域は特定の用途に応じて変化し得るが、高親和性抗原結合特性および標的特異性の特性は可変領域に存在する。
【0075】
一般に、本開示の方法で使用できる抗体は、固相上または溶液相中のいずれかに固定化された抗原への結合によって測定したときに、上記のような高い親和性を有する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域と置換して、本開示の完全ヒト抗体を生成する。選択される定常領域は、特定の用途に応じて変化し得るが、高親和性抗原結合特性および標的特異性の特性は、可変領域に存在する。
【0076】
一実施形態では、IL-4Rを特異的に結合し、本明細書に開示された方法で使用することができるヒト抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)内に含まれる3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)内に含まれる3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2およびLCVR3)を含む。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技術は、当該技術分野において周知であり、本明細書に開示される特定されたHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するために使用することができる。CDRの境界を特定するために使用できる例示的な規約には、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が含まれる。一般的には、Kabat定義は配列の可変性に基づき、Chothia定義は構造ループ領域の位置に基づき、AbM定義はKabat手法とChothia手法との間の折衷案である。例えば、Kabat,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Al-Lazikaniら,J.Mol.Biol.273:927-948(1997);およびMartinら、Proc.Natl.Acad.Sci.米国 86:9268-9272(1989)に記載されている。抗体内のCDR配列を同定するために、公的データベースも利用可能である。
【0077】
医薬組成物
1つの態様において、本開示は、対象にIL-4Rアンタゴニストを投与することを含む方法を提供し、ここで、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)は、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される媒体、担体、および/または賦形剤を含む医薬組成物の中に含まれる。様々な薬学的に許容される担体および賦形剤は、当技術分野でよく知られている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAを参照のこと。いくつかの実施形態では、担体は、静脈内、筋肉内、経口、腹腔内、髄腔内、経皮、外用、または皮下投与に適している。
【0078】
投与の方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、いずれか都合のよい経路、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜の裏層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通る吸収によって投与されてもよく、他の生物学的活性剤とともに投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるような医薬組成物は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるような薬学的組成物は、皮下投与される。
【0079】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射のための剤形のような注射用製剤、点滴などを含む。これらの注射用製剤は、知られている方法によって調製されうる。例えば、注射用製剤は、例えば、上記抗体またはその塩を、注射のために慣用的に用いられている滅菌水性媒体または油性媒体に溶解、懸濁または乳化させることによって調製されうる。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖および他の補助剤を含む等張液などがあり、これらを適当な可溶化剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水添ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などと組み合わせて使用してもよい。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油等が用いられ、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用することができる。このようにして調製された注射剤は、適当なアンプルに充填することができる。
【0080】
本開示の方法により対象に投与される抗体の用量は、対象の年齢および大きさ、症状、状態、投与経路などに応じて変化し得る。用量は、典型的には、体重または体表面積に従って計算される。症状の重症度に応じて、処置の頻度および期間を調整することができる。抗IL-4R抗体を含む医薬組成物を投与するための有効な用量およびスケジュールは、経験的に決定してもよく、例えば、定期的な評価により対象の進捗をモニターすることができ、それに応じて用量が調整された。さらに、用量の種間スケーリングは、当技術分野において周知の方法を用いて行うことができる(例えば、Mordentiら、1991、Pharmaceut.Res.8:1351)。本開示の文脈において使用することができる、抗IL4R抗体の特定の例示的な投与量、およびそれを含む投与レジメンは、本明細書の他の箇所に開示されている。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示のIL-4Rアンタゴニストまたは医薬組成物は、容器内に含まれる。したがって、別の態様では、本明細書に開示されるIL-4Rアンタゴニストまたは医薬組成物を含む容器が提供される。例えば、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ガラスバイアル、注射器、ペン型送達デバイス、および自己注射器からなる群から選択される容器内に含まれる。
【0082】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、標準的な針および注射器を用いて、例えば、皮下または静脈内に送達される。いくつかの実施形態では、注射器は、プレフィルドシリンジである。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物を送達するために、ペン型送達デバイスまたは自己注射器が使用される(例えば、皮下送達のために)。ペン型送達デバイスは、再利用可能または使い捨てであってもよい。典型的には、再利用可能なペン型送達デバイスは、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物が投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジは容易に廃棄され、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換することができる。次いで、ペン型送達デバイスを再利用することができる。使い捨てペン型送達デバイスでは、交換可能なカートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバに保持された医薬組成物で予め充填されている。一旦リザーバの医薬組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0083】
適切なペンおよび自己注射器送達デバイスの例としては、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,英国)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems,Bergdorf,スイス)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co,インディアナポリス,IN)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk,コペンハーゲン、デンマーク)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,コペンハーゲン,デンマーク)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson,フランクリンレイクス,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)およびOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis,フランクフルト,ドイツ)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本開示の医薬組成物の皮下送達における用途を有する使い捨てペン型送達デバイスの例としては、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier,Stuttgart,ドイツ)、EPIPEN(Dey.L.P.)、およびHUMIRA(商標)Pen(Abbott Labs,Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0084】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、制御放出システムを用いて送達される。一実施形態では、ポンプを使用してもよい(Langer,前出;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照のこと)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(編),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照のこと。さらに別の実施形態では、制御放出システムは、組成物の標的の近傍に配置することができ、したがって、全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson,1984,Medical Applications of Controlled Release,前出、第115~138頁を参照のこと)。他の制御放出システムは、Langer,1990,Science 249:1527-1533による総説において議論されている。他の送達システム、例えば、リポソームへのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシスが知られており、医薬組成物を投与するために使用することができる(例えば、Wuら,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照のこと)。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に適合するのに適した単位用量の剤形に調製される。このような単位用量における剤形は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などを含む。
【0086】
本開示の文脈において使用することができる抗IL-4R抗体を含む例示的な医薬組成物は、例えば、米国特許第8,945,559号に開示されている。
【0087】
用量および投与
いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)は、治療上有効な量で本開示の方法に従って対象(例えば、6カ月以上6歳未満の年齢の対象)に投与される。IL-4Rアンタゴニストに関して本明細書で使用する場合、「治療上有効な量」とは、(a)1つまたはそれ以上のAD関連パラメータ(本明細書の他の箇所で言及)の改善、および/または(b)1つまたはそれ以上のアトピー性皮膚炎の症状または徴候における検出可能な改善、の1つまたはそれ以上をもたらすIL-4Rアンタゴニストの量を意味する。
【0088】
抗IL-4R抗体の場合、治療的有効量は、約0.05mgから約600mgまで、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、590mgまたは約600mgの抗IL-4R抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、治療上有効な量は、約50mgから約600mgまで、または約100mgから約600mgまで、または約200mgから約600mgまでである。特定の実施形態では、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、または300mgの抗IL-4R抗体が対象に投与される。
【0089】
個々の用量内に含まれるIL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)の量は、対象体重1キログラム当たりの抗体のミリグラム(すなわち、mg/kg)で表し得る。例えば、IL-4Rアンタゴニストは、対象体重の約0.0001から約10mg/kgの用量で、例えば、約1mg/kgから約10mg/kgの用量で、約2mg/kgから約9mg/kgの用量で、または約3mg/kgから約8mg/kgの用量で対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、約1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、または10mg/kgの用量で対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、約3mg/kgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、約6mg/kgの用量で対象者に投与される。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、5mg/kgから10mg/kgである用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、少なくとも約5mg/kg、例えば、少なくとも6mg/kgである用量で対象に投与される。
【0090】
いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)は、少なくとも20mg/L、例えば少なくとも25mg/L、30mg/L、少なくとも35mg/L、少なくとも40mg/L、または少なくとも45mg/Lの、対象におけるIL-4Rアンタゴニストの最大血清濃度(すなわち、Cmax)となる量で対象に投与(例えば、皮下)される。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)は、対象におけるIL-4Rアンタゴニストへの総曝露量(すなわち、AUC)が少なくとも120日・mg/L、例えば、少なくとも125日・mg/L、少なくとも130日・mg/L、少なくとも150日・mg/L、少なくとも200日・mg/L、少なくとも250日・mg/L、少なくとも300日・mg/L、少なくとも350日・mg/L、少なくとも400日・mg/L、少なくとも450日・mg/L、少なくとも500日・mg/L、少なくとも550日・mg/L、少なくとも600日・mg/L、または少なくとも650日・mg/Lの、対象におけるIL-4Rアンタゴニストの総曝露量となる量で、皮下投与される。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された方法は、治療反応が達成される限り、週に約4回、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週に1回、5週間に1回、6週間に1回、8週間に1回、12週間に1回の投与頻度で、またはそれより少ない投与頻度でIL-4Rアンタゴニストを対象に投与することを含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、IL-4Rアンタゴニストの複数回用量は、対象が定められた期間(例えば、少なくとも4週間の期間にわたって、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12カ月もしくはそれより長い期間にわたって)にわたって、少なくとも25mg/L、例えば、少なくとも30mg/L、少なくとも35mg/L、少なくとも40mg/L、または少なくとも45mg/LのIL-4Rアンタゴニストの血清濃度を維持するようになる投与頻度で、対象に(例えば、皮下的に)投与される。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストの複数回用量は、対象が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間またはそれより長い間(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12カ月またはそれより長い期間)、少なくとも130日・mg/L(例えば、少なくとも150日・mg/L、少なくとも200日・mg/L、少なくとも250日・mg/L、少なくとも300日・mg/L、少なくとも350日・mg/L、少なくとも400日・mg/L、少なくとも450日・mg/L、少なくとも500日・mg/L、少なくとも550日・mg/L、少なくとも600日・mg/L、または少なくとも650日・mg/L)のIL-4Rアンタゴニストへの総曝露量を維持するようになる投与頻度で(例えば、皮下に)投与される。
【0093】
いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストの複数回用量が、定められた時間経過にわたって対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、複数回用量のIL-4Rアンタゴニストを対象に逐次投与することを含む。本明細書で使用される場合、「逐次投与する」とは、IL-4Rアンタゴニストの各用量が、異なる時点、例えば、所定の間隔(例えば、時間、日、週または月)によって隔てられた異なる日に、対象に投与されることを意味する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、患者に、IL-4Rアンタゴニストの単一の初回用量、それに続くIL-4Rアンタゴニストの1回またはそれ以上の二次用量、および場合によりそれに続くIL-4Rアンタゴニストの1回またはそれ以上の三次用量を逐次投与することを含む。
【0094】
用語「初回用量」、「二次用量」、および「三次用量」は、IL-4Rアンタゴニストの投与の時間的順序を意味する。したがって、「初回投与」は、処置レジメンの最初に投与される用量(「負荷用量」とも呼ばれる)であり、「二次用量」は、初回用量の後に投与される用量であり、「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初回用量、二次用量、および三次用量は、全て同じ量のIL-4Rアンタゴニストを含んでもよいが、一般に、投与頻度に関して互いに異なってもよい。しかしながら、特定の実施形態では、初回用量、二次用量および/または三次用量に含まれるIL-4Rアンタゴニストの量は、処置の経過中に互いに異なる(例えば、必要に応じて上または下に調節される)。特定の実施形態では、1回またはそれ以上(例えば、1、2、3、4、または5回)の用量が、「負荷用量」として処置レジメンの開始時に投与され、その後、より少ない頻度で投与される後続の用量(例えば、「維持用量」)が投与される。いくつかの実施形態では、初回用量および1回またはそれ以上の二次用量は、それぞれ同じ量のIL-4Rアンタゴニストを含む。他の実施形態では、初回用量は、第1の量のIL-4Rアンタゴニストを含み、1回またはそれ以上の二次用量は、それぞれ第2の量のIL-4Rアンタゴニストを含む。例えば、IL-4Rアンタゴニストの第1の量は、IL-4Rアンタゴニストの第2の量よりも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、もしくは5倍またはそれ以上であることができる。いくつかの実施形態では、IL-4Rアンタゴニストの1回またはそれ以上の維持用量は、負荷用量なしで投与される。
【0095】
いくつかの実施形態では、負荷用量は、別々の日に投与される2回またはそれ以上の用量(例えば、2、3、4、または5用量)として投与される「分割用量」である。いくつかの実施形態では、負荷用量は、2回またはそれ以上の用量が少なくとも約1週間離れて投与される分割用量として投与される。いくつかの実施形態では、負荷用量は、2回またはそれ以上の用量が、約1週間、2週間、3週間、または4週間離れて投与される分割用量として投与される。いくつかの実施形態では、負荷用量は、2回またはそれ以上の用量にわたって均等に分割される(例えば、負荷用量の半分が第1の部分として投与され、負荷用量の半分が第2の部分として投与される)。いくつかの実施形態では、負荷用量は、2回またはそれ以上の用量にわたって不均一に分割される(例えば、負荷用量の半分超が第1の部分として投与され、負荷用量の半分未満が第2の部分として投与される)。
【0096】
いくつかの実施形態では、各二次および/または三次用量は、直前の用量の1から14(例えば、1、11/2、2、21/2、3、31/2、4、41/2、5、51/2、6、61/2、7、71/2、8、81/2、9、91/2、10、101/2、11、111/2、12、121/2、13、131/2、14、141/2、またはそれ以上)週後に投与される。本明細書で使用される語句「直前の投与」は、連続した複数回の用量において、順序において介在する用量がなく、すぐ次の用量の投与前に患者に投与されるIL-4Rアンタゴニストの用量を意味する。
【0097】
本開示の方法は、任意の数の二次および/または三次用量のIL-4Rアンタゴニストを患者に投与することを含んでよい。例えば、特定の実施形態では、単一の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回またはそれ以上(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、またはそれ以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、特定の実施形態では、単一の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回またはそれ以上(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、またはそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
【0098】
複数回の二次用量を含むいくつかの実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与される。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~2週間後に患者に投与してもよい。同様に、複数の三次用量を含むいくつかの実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与される。例えば、各三次用量は、直前の投与の2~4週間後に患者に投与されてもよい。あるいは、二次用量および/または三次用量が患者に投与される頻度は、処置レジメンの経過にわたって変化することがある。また、投与の頻度は、臨床検査後に、個々の患者の必要性に応じて、医師による処置の経過中に調整されうる。
【0099】
併用療法
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、対象(例えば、6カ月以上6歳未満の年齢の対象)に、1つまたはそれ以上の追加の治療剤と組み合わせて本開示によるIL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、外用治療剤、例えば、TCS、またはTCIもしくはクリサボロールなどの外用非ステロイド性治療薬である。本明細書で使用される場合、表現「と組み合わせて」は、外用治療剤(例えば、TCS)がIL-4R阻害剤の前、後、または同時に投与されることを意味する。また、用語「と組み合わせて」は、IL-4R阻害剤および外用療法(例えば、TCS)を逐次的にまたは同時に投与することを含む。
【0100】
例えば、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の「前に」投与する場合、追加の治療剤は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分または約10分前に投与してもよい。IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の「後」に投与する場合、追加の治療剤は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の約10分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間または約72時間後に投与してもよい。IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物と「同時」に投与する、またはそれと一緒に投与することは、追加の治療剤が、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の5分未満(前、後、または同時)に別個の剤形で対象に投与されるか、または追加の治療剤およびIL-4Rアンタゴニストの両方を含む単一の合剤として対象に投与されることを意味する。
【0101】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、TCSである。いくつかの実施形態では、TCSは、中程度の効力のTCSである。いくつかの実施形態では、TCSは、低い効力のTCSである。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、TCIである。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、クリサボロールである。
【0102】
実施例
以下の実施例は、当業者に本開示の方法および組成物をどのように製造し、使用するかの完全な開示および説明を提供するように提示されており、本発明者らが発明とみなす範囲を限定することを意図するものではない。使用する数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するように努めているが、若干の実験誤差および偏差を考慮すべきである。特に明記しない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気またはその付近である。
【0103】
実施例1:重症の制御不能なアトピー性皮膚炎を有する年齢6カ月から6歳未満の小児におけるデュピルマブの薬物動態、有効性および安全性を検討する臨床試験
試験デザインおよび目的
これは、皮下デュピルマブのPK、安全性および有効性を検討する非盲検、多施設、第2相、逐次、2年齢コホート、2用量レベル試験(LIBERTY AD PRE-SCHOOL;NCT03346434)であった。デュピルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖、配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列ペア、配列番号3~8を含む重および軽鎖CDR配列を含む完全ヒト抗IL-4R抗体である。年長の患者(年齢2歳以上6歳未満)を最初に登録し、次いで年少のコホート(年齢6カ月以上2歳未満)を登録した。各コホートの10人の患者のサブグループを、体重ベースでより低い用量(3mg/kg)で処置し、続いて、別のサブグループをより高い用量(6mg/kg)で処置した。各年齢コホート内の患者の十分な分布を確保するために、所定の用量レベルで登録された患者の最大数は、各サブグループ:年長のコホートでは2歳から4歳未満および4歳から6歳未満、ならびに年少のコホートでは6カ月から1歳未満および1歳から2歳未満において7人の患者に制限した。
【0104】
試験は、スクリーニング期間(-35日目から-1日目)、ベースライン来院(1日目)および1日目の単回用量処置、それに続く4週間のPKサンプリング期間から構成された。その後、患者には、非盲検延長(OLE)試験R668-AD-1434(LIBERTY AD PED-OLE,NCT02612454)に登録する機会を提供した。OLEへの参加を辞退した者または参加不適格者は、更に4週間追跡した。
【0105】
本試験は、ヘルシンキ宣言(Declaration of Helsinki)、医薬品規制調和国際会議の医薬品の臨床試験の実施基準(International Conference on Harmonization Good Clinical Practices guideline)の規定、および適用される規制要件に従って実施した。プロトコルは、すべての施設の施設内審査委員会/倫理委員会により審査され、承認された。すべての患者について、親または法定後見人から書面によるインフォームドコンセントを取得した。
【0106】
患者集団
本試験では、重度のADを有し、外用AD治療薬に対する不十分な反応の最近の既往歴が記録されている小児患者(スクリーニング時に6カ月以上6歳満の男子または女子)を登録した。
【0107】
組み入れ基準:患者は、本試験に参加するために、以下の基準を満たす必要があった。(1)男子または女子、スクリーニング来院時に6カ月以上から6歳未満、(2)スクリーニング来院時に米国皮膚科学会合意基準(Eichenfield 2003)によるADの診断、(3)最近の(スクリーニング来院前6カ月以内の)外用AD治療薬に対する不十分な反応の既往歴の記録、(4)スクリーニング来院時およびベースライン時のIGA=4、(5)スクリーニングおよびベースライン来院時にEASI≧21;(6)スクリーニングおよびベースライン来院時にBSA≧15%;(7)ベースライン来院直前の少なくとも連続7日間、安定用量の外用エモリエント(保湿剤)を1日2回塗っている(試験のパートBのみ);(8)適宜、親または法定保護者が試験要件および試験関連アンケートを理解し記入可能であること。
【0108】
注:中等度からより高い効力のTCS(必要に応じて±TCI)を毎日投与する処置を、28日以上使用、または製品の処方情報により推奨される最大期間のいずれか短い方で、適用したにもかかわらず、寛解および低い疾患活動性(IGAスコア3未満)を達成および/または維持できない患者は、この試験の目的の不十分な反応の定義に合致するものとする。過去6カ月以内にADの全身処置が記録された患者も、外用処置に対する不十分な反応とみなされ、適切なウォッシュアウト後にデュピルマブによる処置に適格となる可能性がある。許容される文書には、外用治療薬の処方箋と処置結果を記録した同時性のカルテ、または患者の処置をする担当医とのコミュニケーションに基づく治験責任医師の文書が含まれる。文書が不十分な場合、潜在的な患者には、スクリーニング期間中に少なくとも28日間、または製品の処方情報で推奨されている最大期間のいずれか短い方で、中等度またはより高い効力のTCS(必要に応じて±TCI)を毎日投与する処置コースを提供してもよい。この期間中に不十分な反応を示した患者は、本試験への参加に適格となるであろう。
【0109】
除外基準:以下を本試験の除外基準とした:(1)以前のデュピルマブ臨床試験への参加;(2)治験責任医師または患者を処置する医師が評価した、中程度の効力の外用コルチコステロイドの重要な副作用の既往歴(例えば、処置に対する不耐性、過敏反応、著しい皮膚萎縮、全身性作用など);(3)全病変表面の30%以上がベースライン時に中程度のTCSで安全に処置できない薄い皮膚の部位(例えば:顔、首、間擦部、生殖器部、皮膚移植の領域)にある(本試験のパートBにのみ適用可能);(4)ベースライン来院前のいずれかの時点で治験薬による処置;(5)ベースライン来院前の2週間以内にTCIによる処置(本試験のパートBにのみ適用可能);(6)ベースライン来院前の4週間以内、またはベースライン来院前に薬剤の半減期の5倍に等しい期間内の、いずれか長い方で、以下の処置:(a)免疫抑制薬/免疫調節薬(例えば、全身性コルチコステロイド、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロンガンマ、ヤヌスキナーゼ阻害剤、アザチオプリン、メトトレキサートなど);(b)ADに対する光線療法のいずれかを受けたことがある;(7)以下のような生物製剤による処置:(a)リツキシマブを含むがこれに限定されないあらゆる細胞除去剤:ベースライン来院前の6カ月以内、またはリンパ球およびCD19+リンパ球数が正常に戻るまでのいずれか長い方;(b)その他の生物製剤:5半減期以内(知られている場合)またはベースライン来院前の16週間以内のいずれか長い方;(8)ベースライン来院前の2週間以内のクリサボロールによる処置;(9)ベースライン来院前4週間以内の生(弱毒化)ワクチンによる処置[注:試験期間中に(国の予防接種スケジュール/地域のガイドラインに基づいて)弱毒生ワクチンの接種が予定されている患者については、小児科医と相談した後、患者の健康を損なうことなく、ワクチンの投与を試験終了後まで延期することができるか、または試験開始前まで前倒しすることができるかを決定する:
(a)生(弱毒)ワクチンの投与を安全に延期できる患者は、本試験への登録に適格であるであると考えられる。(b)ワクチン接種を前倒しした患者は、ワクチン投与後に4週間の間隔をあけた後にしか、本試験に参加することができない。](10)試験処置中に、いずれかの禁止されている治療薬および処置の使用が予定または予想されている。(11)スクリーニング期間中に、処方された保湿剤またはセラミド、ヒアルロン酸、尿素、フィラグリン分解物等の添加物を含む保湿剤によるAD処置の開始(スクリーニング来院前に開始した場合、患者は安定量のこのような保湿剤の使用を継続してもよい)(試験のパートBについてのみ);(12)ベースライン来院前の2週間以内に、全身性抗生物質、抗ウイルス剤、抗原虫剤、または抗真菌剤による処置を必要とする活動性の慢性または急性の感染症[注:感染症がおさまった後、患者を再スクリーニングしてもよい。軽度の局所的な表在性の感染症を有する患者は、治験責任医師の裁量に基づいて、本試験に含めることができる]。(13)原発性免疫不全障害(重症複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、ディジョージ症候群、X連鎖無ガマグロブリン血症、分類不能型免疫不全症など)、または続発性免疫不全症の確定された診断。臨床症状から免疫不全が疑われる患者(治験責任医師によって判断されるような、結核、ヒストプラスマ症、リステリア症、コクシジオイデス真菌症、ニューモシスチス症、慢性粘膜皮膚カンジダ症などの侵襲性日和見感染症の既往歴)も、本試験から除外されることになる。(14)ネザートン症候群、高IgE症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群等の遺伝性皮膚疾患症候群の一部である湿疹;(15)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の知られている既往歴、またはスクリーニング来院時にHIV血清陽性;(16)スクリーニング時にB型肝炎ウイルス感染の確定診断が、またはスクリーニング時にB型肝炎表面抗原(HBsAg)もしくはB型肝炎コア抗体(HBcAb)陽性である[注:HBsAg陰性かつHBsAb陽性である患者は、自然感染が消失した後に免疫があるとみなされるか、またはB型肝炎ワクチン接種されている。したがって、本試験へ受け入れ可能である。これらの患者は、本試験への登録は可能となるが、通常の臨床検査および肝機能検査を用いて追跡されることになる]。(17)スクリーニング時にC型肝炎ウイルス感染の診断が確定された、またはスクリーニング来院時にC型肝炎抗体が陽性である;(18)過去または現在の結核またはその他のマイコバクテリア感染の既往歴;(19)既知の肝疾患を有するか、または急性もしくは慢性肝炎、肝硬変、もしくは肝不全を含むがこれらに限定されない肝疾患のために現在処置中であるか、またはスクリーニング期間中に正常上限(ULN)の>3倍で持続的に(≧2週間あけた繰り返し検査により確認された)上昇したトランスアミナーゼ(アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST])によって示されるような肝疾患の証拠を有する;(20)スクリーニング時の臨床検査結果において、以下の異常:(i)血小板≦100×103/μL;(ii)1歳未満の患者については、好中球≦1.0×103/μL;1歳から6歳未満の患者については、好中球≦1.5×103/μL;(iii)好酸球≧5000/μL;(iv)クレアチンホスホキナーゼ(CPK)>5×ULN;(v)血清クレアチニン>1.5×ULN;[注:スクリーニング時に異常値が検出された場合は、繰り返し検査を実施し、異常を確認すること。繰り返し検査により異常が確認された場合、スクリーン失敗として分類される]のいずれか1つまたはそれ以上を有する;(21)疥癬、脂漏性皮膚炎、皮膚T細胞リンパ腫、乾癬などを含むがこれらに限定されない、試験評価に支障をきたす可能性のある皮膚の共存症の存在;(22)ベースライン来院前に悪性腫瘍の既往歴;(23)活動性内部寄生感染症の診断;内部寄生感染症が疑われるか、またはそのリスクが高い、ただし、無作為化前に臨床評価および(必要に応じて)検査評価によって活動性の感染症が除外された場合は除く;(24)治験責任医師の判断における、患者の試験参加に悪影響を与える重篤な併発疾患。例えば、余命の短い患者、重大な先天性奇形を持つ患者、心血管状態(例えば、臨床的に重大な先天性心血管異常)、重篤な腎臓状態、肝胆状態(例えば、チャイルドピュー分類BまたはC)、活動性の重大な自己免疫疾患(例えば、ループス、炎症性腸疾患等)、その他の重篤な内分泌、胃腸、代謝性、肺、神経学的またはリンパ性疾患を持つ患者が含まれるが、これらに限定されない。この基準で除外された患者の具体的な正当性は、試験文書(カルテノート、症例報告書[CRF]など)に記載される。(25)治験責任医師の見解により、新たな、かつ/または十分に理解されていない疾患が示唆される、スクリーニング時の関連する検査異常を含む、なんらかの他の医学的または心理学的状態のため、本臨床試験への参加により試験患者に不当なリスクを与える可能性があるか、患者の参加を信頼できなくする可能性があるか、または試験評価に干渉する可能性がある;(26)本試験に患者が参加している間に大きな外科的処置を予定している;(27)患者またはその近親者がデュピルマブの研究チームの一員である。
【0110】
試験処置
6mg/kg用量は、成人患者におけるデュピルマブ300mgの単回用量に匹敵する薬物曝露をもたらすと予想された。6mg/kg用量に移行する前に安全性評価を行うため、各年齢群において3mg/kg用量を最初に評価した。この第2相試験の結果は、TCSと併用して16週間にわたり投与された複数用量のデュピルマブの有効性、安全性、および免疫原性を評価する重要な無作為化二重盲検並行群間プラセボ対照第3相試験(LIBERTY AD INFANT)の用量選択の情報提供が行われることになる。標準化された低い~中程度の効力のTCSとTCIの併用または非併用は認められ、高い効力のTCS、全身性非ステロイド性免疫抑制剤、全身性コルチコステロイドは救命処置としてのみ使用可能であった。クリサボロールの使用も、ベースラインの来院までの2週間を除き、現地国のガイドラインおよび製品の処方情報に合わせて許可された。処方された保湿剤およびセラミド、ヒアルロン酸、尿素、またはフィラグリン分解生成物などの添加物を含む保湿剤の使用は、このような保湿剤の使用が、スクリーニング来院前にすでに開始されている場合に限り、許可された。試験中にこのような保湿剤によるADの処置を開始することは許されない。糖尿病、高血圧および喘息などの慢性疾患の処置に使用される治療薬も許可された。
【0111】
評価された結果
主要評価項目は、血清中の機能性デュピルマブの経時的な濃度およびPKパラメータ(薬物濃度およびPKパラメータの要約統計量)、試験期間中の処置下で発現した有害事象(TEAE)の発生率および重症度であった。
【0112】
副次的評価項目は、4週目までの重篤な有害事象(SAE)および重度のTEAEの発生率;ベースラインから4週目までのEASI(0~72のスケール)およびアトピー性皮膚炎スコア評価(SCORing Atopic Dermatitis)(SCORAD)スコア(スケール0~103)におけるパーセンテージ変化;4週目にIGAスコア0または1(5点スケールにおいて)を有する患者の割合であった。
【0113】
他の評価項目は、以下:4週目にEASIにおけるベースラインから≧75%の改善(EASI-75)またはEASIにおけるベースラインから≧50%の改善(EASI-50)を有する患者の割合;ベースラインから4週目までの介護者報告ピークそう痒数値評価スケール(NRS)(スケール0-10)のパーセンテージ変化;ベースラインから4週目までに影響を受けたBSAの変化である。プロトコル毎に、3週目の試験来院は、18日目±3日と定義し、4週目は29日目±3日と定義した。
【0114】
有効性を評価するための手順(例えば、EASI、SCORAD、IGA、BSA、NRS、または他の評価方法を用いる)は、以下に記載され、WO2018/057776にも記載されており、参照により本明細書に組み込まれている。
【0115】
治験責任医師による全般的評価:IGAは、0(消失)から4(重度)までの5段階評価に基づいて、ADの重症度を全般的に評価するために臨床試験で使用される評価手段である。IGAスコアは、スクリーニング時、ベースライン時、ならびに処置中および/または処置後の特定の日に評価することができる。
【0116】
湿疹面積および重症度指数:EASIは、ADの重症度および範囲を評価するために臨床業務および臨床治験で使用される有効な尺度である(Hanifinら 2001,Exp.Dermatol.10:11-18)。EASIは、0から72までのスコアを有する複合指標である。4つのAD疾患の特徴(紅斑、厚さ[硬結、丘疹、浮腫]、掻破[切除]、苔癬化)はそれぞれ、治験担当医または被指名人によって、「0」(なし)から「3」(重度)のスケールで重症度が評価される。また、頭部、体幹、上肢および下肢の体部位別にAD病変の面積をパーセンテージで評価し、0~6点のスコアに変換する。各体部位において、面積を、0、1(1%~9%)、2(10%~29%)、3(30%~49%)、4(50%~69%)、5(70%~89%)、または6(90%~100%)で表す。EASIスコアは、スクリーニング時、ベースライン時、ならびに処置中および/または処置後の特定の日に評価することができる。
【0117】
アトピー性皮膚炎スコア評価:アトピー性皮膚炎スコア評価(SCORAD)は、ADの程度および重症度の評価を標準化するために開発された、臨床研究および臨床で使用される有効なツールである(European Task Force on Atopic Dermatitis 1993,Dermatol.186:23-31)。評価には3つの要素がある。A=範囲または罹患したBSA、B=重症度、およびC=自覚症状。ADの程度は、定義された各身体領域のとしてパーセンテージとして評価され、すべての領域の合計として報告され、最高スコアは100%である(SCORADの総合計算では「A」として割り当てられる)。ADの6つの症状(発赤、腫脹、滲出/痂皮、擦過傷、皮膚の肥厚/苔癬化、乾燥)の重症度を、以下のスケール:なし(0)、軽度(1)、中等度(2)、重度(3)を用いて評価する(最大合計18点では、SCORADの全体計算ではBとして割り当てられる)。痒みおよび不眠の主観的評価は、患者または親族によってそれぞれの症状について視覚的アナログスケール(Visual Analogue Scale)で記録され、0が痒み(または不眠)なし、10が想像できる最悪の痒み(または不眠)で、可能な最高得点は20である。このパラメータは、SCORAD全体の計算では「C」として割り当てられる。SCORADは、A/5+7B/2+Cとして計算され、ここで、最大は103である。SCORADスコアは、スクリーニング時、ベースライン時、ならびに処置中および/または処置後の特定の日に評価することができる。
【0118】
アトピー性皮膚炎の病変体表面積:ADに罹患した体表面積(BSA)、9の法則を用いて身体の各部位について評価し(各部位について考えられる最高得点は:頭頸部[9%]、前体幹[18%]、背部[18%]、上肢[18%]、下肢[36%]および生殖器[1%])、すべての主要身体部位を合わせたパーセンテージとして報告する。BSAは、スクリーニング時、ベースライン時、ならびに処置中および/または処置後の特定の日に評価することができる。
【0119】
ピークそう痒数値評価スケール:ピークそう痒数値評価スケール(NRS)は、最悪の痒み強度を評価するための検証済みの患者報告型スケールである(Yosipovitchら、Br J Dermatol,2019,181:761-769)。これは、11点スケール(0~10)であり、0が痒みなしを示すのに対して、10が最悪の痒みを示し、患者(または介護者)は、過去24時間のピーク(最悪の)痒み(痒み)の強さを評価する。
【0120】
薬物動態解析
血清中の機能性デュピルマブ濃度は、以前に記載したように、検証された酵素結合免疫吸着法(ELISA)を使用して分析した。希釈していないヒト血清中のデュピルマブの定量下限(LLoQ)は、0.0780mg/Lである。PK分析のための血清は、ベースライン時(デュピルマブ注射前)および試験3日目、8日目、18日目、および29日目に採取した。
【0121】
最大濃度(Cmax)、用量正規化Cmax(Cmax/用量)、最大濃度までの時間(tmax)、最終観察濃度(Clast)、最終観察濃度までの時間(tlast)、時間ゼロから最終観察濃度までの曲線下面積(AUC)、用量正規化AUClast(AUClast/用量)等のPKパラメータは非区画法(non-compartmental method)および実際のサンプリング時刻を用いて決定した。平均濃度-時間プロファイルは、名目上のサンプリング時間を使用して表示される。
【0122】
バイオマーカー分析
CCL17/TARCの測定については、有効な市販ELISA(ヒトCCL17/TARC Quantikine ELISA Kit #SDN00,R&D Systems Inc,ミネアポリス,MN,米国)を用いて製造者の指示に従って、総IgEについてはBN II装置で免疫比濁法の方法論を用いて、血清試料を検定した。血中好酸球数は、Coulter LH 750 Hematology Analyzer装置を使用し、体積、導電率および散乱(VSC)フローテクノロジー(Volume,conductivity and scatter(VCS)flow technology)を使用して測定した。
【0123】
統計解析
主要な目的は安全性およびPKを評価することであったため、有効性の評価項目に基づく正式な検出力の計算は行わなかった。各用量群における合計10人の患者は、安全性およびPKプロファイルを特徴付けるのに十分であるとみなした。用量による各時点での機能的デュピルマブ血清濃度の記述統計量は、PK解析セット(いずれかの試験薬を投与され、投与後の機能的デュピルマブ測定を1回以上欠測しなかったすべての処置患者)から報告した。安全性および有効性は、デュピルマブの1用量以上を投与されたすべての処置患者からなる安全性解析セットで評価した。有効性の解析は、打ち切りを行わず、観察的手法で行った。小さなコホートのため、推測統計解析は報告せず、すべての有効性結果は記述統計でまとめた。すべての解析はSAS Version 9.4(Cary,NC,米国)またはそれ以降で行った。
【0124】
結果
40名の患者(年齢2歳以上6歳未満20名、年齢6カ月以上から2歳未満20名;年齢コホート内の各用量レベルで10名)をスクリーニングし、登録した。患者のスクリーニングは、米国、英国、およびドイツで開始された30施設のうち21施設で行った。年長のコホートでは、すべての患者が試験を完了し、OLE試験に移行した。年少のコホートでは、1名の患者が安全性追跡期間中に同意を取り下げ、早期に試験を中止し、2名の患者は試験を完了したが、OLEに継続しなかった。すべての患者が安全性解析セットに含まれた。
【0125】
全試験患者のうち、10名は4歳以上6歳未満であり、10名は年齢2歳以上4歳未満であり、14名は1歳以上2歳未満であり、6名は6カ月以上1歳未満であった。ベースラインの人口統計学的特徴および特性は、一般的に、各年齢コホート内の処置群間で同等であった。全体として、疾患の特徴は重度のADと一致していた(表1)。年長のコホートでは、40%が全身性AD治療薬を使用したことがあり、そのうち25%がコルチコステロイド、20%が非ステロイド性免疫抑制剤を使用したことがあった。すべての患者がベースライン時に1つ以上の同時発生的なアトピー/アレルギー共存症を有しており、半数超が食物アレルギーまたはアレルギー性鼻炎を有していた。年少のコホートでは、40%の患者が過去にADのために全身性治療薬を使用したことがあり、そのうち35%がコルチコステロイド、5%が非ステロイド性免疫抑制剤を使用したことがあった(表1)。ほとんどの患者は、ベースライン時に1つ以上の同時発生的なアトピー/アレルギー共存症を有しており、そのうちの半数超が食物アレルギーを有していた(表1)。
【0126】
【0127】
デュピルマブ薬物動態
各年齢コホート内において、より高い6mg/kgのデュピルマブ用量は、より低い3mg/kg用量よりもより長い期間持続する高い血清中濃度をもたらした。血清中のデュピルマブの最大濃度は、各用量レベルの年齢コホート間で類似しており、ほとんどの患者において注射2日後に観察された(
図1A)。年長のコホートの3mg/kgおよび6mg/kg用量群の平均C
maxはそれぞれ25.2mg/Lおよび49.8mg/Lであり、年少のコホートではそれぞれ20.1mg/Lおよび46.1mg/Lであった(表2)。デュピルマブの総曝露量は、各年齢コホート内の用量レベル間で用量に比例するよりも大きく増加し、各用量レベルにおいて年長のコホートでわずかにより高かった。平均AUC
lastは、年長のコホートでは3mg/kg用量の215日・mg/Lから6mg/kg用量の670日・mg/Lに、年少のコホートでは3mg/kg用量の133日・mg/Lから6mg/kg用量の519日・mg/Lに増加した(表2、
図1B)。血清中のデュピルマブの平均濃度は、3mg/kg用量群では4週目までにLLoQよりも低くなったが、6mg/kg用量群では測定可能を維持した。
【0128】
【0129】
有効性
年長のコホートにおいて、デュピルマブの両用量は、平均EASI、総SCORAD、SCORAD視覚的アナログスケール(Visual Analog Scale)(VAS)痒みスコア(表3、
図2A~2B)および病変BSAの範囲におけるベースラインからの減少によって評価されるように、3週目に臨床AD兆候および症状における改善につながった。SCORAD VAS睡眠スコアも3週目に、6mg/kg用量のみであるが改善した。3mg/kg用量での明らかな反応の欠如は、異常値を有する1名の患者によって生じたものである(表3)。EASIスコアは3mg/kg用量で44.6%、6mg/kg用量で49.7%減少した(表3)。AD徴候における改善は、それぞれ3mg/kgおよび6mg/kgの単回用量後の3週目におけるEASI-50(50%および50%)およびEASI-75(30%および20%)の患者の割合によっても示された(表3;
図2C~2D)。また、痒みは、3mg/kgおよび6mg/kgの用量についてそれぞれ3週目におけるベースラインからの22.9%および44.7%の介護者報告ピークそう痒NRSにおける平均の減少によって示されるように、改善された(表3、
図2E)。
【0130】
AD臨床徴候は、年少のコホートの両用量群において改善された。EASIスコアは、3mg/kgおよび6mg/kgの用量で、それぞれ3週目に平均42.7%および38.8%減少した(表3、
図2A)。総SCORADスコア、ならびに睡眠および痒みのSCORAD VASスコア、および罹患したBSAの割合も、3週目においてデュピルマブの両用量で減少した(表3、
図2B)。EASI-50を有する患者の割合は、3mg/kgおよび6mg/kg用量後の3週目においてそれぞれ50%および40%であり、EASI-75を有する患者の割合は20%および0%であり、介護者報告ピークそう痒NRSスコアは平均11.1%および18.2%で減少した(表3、
図2C~2E)。
【0131】
4週目において、EASI、SCORAD、および介護者報告ピークそう痒NRSスコアなどの有効性の結果における減少は逆転し始めたが、両方の年齢群において、高い方の用量群ではより良好に持続した。すべての有効性の結果は、ベースラインと比較して全体的に改善され(表3、
図2A~2E)、一般に6mg/kg群において数値的に高かった(表3)。
【0132】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0133】
安全性
年長のコホートにおいて、3mg/kg群では5例、6mg/kg群では3例のTEAEが報告された。TEAEの発生率は処置群間で類似しており(表4)、全てのTEAEの重症度は軽度または中等度であった。ピーナッツに対するアナフィラキシーの既往歴があり、卵、ピーナッツ、乳製品、および大豆の食物アレルギーが記録されている患者において、ナッツを含むと思われる食事の直後にデュピルマブ3mg/kgによる1例のSAE(アナフィラキシー反応)が報告された。このSAEは、食物アレルギーおよびアナフィラキシーの既往、および投与後の発症時間に基づいて、処置に関連したものとみなされなかった。処置群あたり1例を超えるAEは報告されず、処置に関連したものとみなされなかった。結膜炎もしくは表在性眼疾患、ヘルペスウイルス感染症、または注射部位反応は報告されなかった。
【0134】
TEAEの数は、年少のコホートでより多かった(各用量群で11件;表4)。ほとんどが軽度から中等度であった。6mg/kg用量群の2名の患者が試験薬物に関連したAE(下痢および注射部位紅斑)を有したが、いずれも重度または重篤ではなかった。3mg/kg用量群の1名の患者は、重篤なTEAE、アナフィラキシー反応を有し、カニ食直後かつ投与後2週間以上のため、デュピルマブとは無関係とみなした。鼻咽頭炎以外には、いずれの処置群でも1名以上の患者においてAEは報告されていない(表3)。結膜炎もしくは表在性眼疾患またはヘルペスウイルス感染症は報告されていない。また、試験期間中の死亡例はなかった。
【0135】
【0136】
バイオマーカー解析
年長および年少の両患者において、デュピルマブは、両用量で血清TARCおよび総IgEを顕著に抑制した(表5)。4週目の血中好酸球数は、3mg/kg群では年長の患者でわずかに増加したが、年少の患者では減少した;年長および年少のコホートにおいて、デュピルマブ6mg/kg後は変化しないままであった(表5)。
【0137】
【0138】
ADに対するTCSの併用
年少のコホート(3mg/kgおよび6mg/kgでそれぞれ80%および60%)および年長のコホート(3mg/kgおよび6mg/kgでそれぞれ90%および80%)の両方の患者の大多数が、試験中にADのための併用TCSを使用した(表6)。併用されたTCSのほとんどは中等度の効力(II群)であり、試験中に非常に強力な効力(IV群)のTCSを使用した患者はいなかった(表6)。
【0139】
【0140】
考察
両年齢コホートの両用量群とも、3週目にEASI、総SCORAD、睡眠および痒みのSCORAD VAS、および介護者報告ピークそう痒NRSスコアによって測定されるAD徴候および症状における改善を経験した。しかし、特に6mg/kg用量群を比較したとき、年少のコホートに対して年長のコホートにおいてやや良好な反応に向かう傾向があった。4週目には、いずれの年齢層でもすべての効果が持続するわけではなく、有効性の喪失はより低い用量群でより顕著であった。これらの知見は、反復投与による潜在的な有用性を示唆している。
【0141】
デュピルマブは、中等度から重度のADを有する成人および青年患者において以前に特徴づけられ、本試験で観察されたAUCの用量比例を超える増加によって裏付けられたように、非線形で標的を介するPKを示す。本試験では、同じmg/kgの用量レベルで、年少の患者では年長の患者よりもわずかに低い曝露が観察された。一般にモノクローナル抗体、特にデュピルマブについては、薬物用量のクリアランスが体重に比例しないことが以前から記載されている。これは、より小柄な人における総体重1kgあたりのより速いクリアランスとして現れる。したがって、小児集団において、幅広い体重範囲にわたって同じmg/kgの用量レジメンを使用すると、体重の影響に対して用量が過度に補正され、年少の患者における曝露が低くなる。
【0142】
デュピルマブのような拮抗抗体の十分な濃度を維持することは、意図した処置期間中、標的経路を遮断するために重要である。同様の複数回投与の計画で投与するときは、総体重1kg当たりの排泄が速いため、年少の集団では、同様のトラフ濃度を維持するために、より大きな体重で正規化された用量が必要となりうる。このことは、体重60kg以上の成人では5mg/kg以下に相当する、成人におけるデュピルマブ300mgの単回用量が、本試験で使用した6mg/kg用量と同様の曝露をもたらすという事実によって裏付けられている。成人よりも小児の非病変性AD皮膚におけるIL-13遺伝子発現レベルが高いなどの他の機構も、幼児における受容体媒介経路による薬物のより迅速な除去に寄与しうる。
【0143】
全体として、単回用量デュピルマブ処置は、青年および成人における所見と一致して、血清2型炎症バイオマーカーTARCおよび総IgEを抑制し、メディエータとしてインターロイキン-4およびインターロイキン-13を含む炎症の共通の基礎メカニズムを示唆している。実際、最近発症した2歳未満の小児AD患者でさえ、Th2偏重の強い免疫反応を示している。血中好酸球数におけるデュピルマブ単回用量による明確な効果はなかった。
【0144】
6カ月以上6歳未満の小児におけるデュピルマブの安全性プロファイルは、成人、青年および6歳超の小児で認められたものに匹敵した。重篤な感染症または全身性過敏症のデュピルマブ関連の事象はなかった。
【0145】
年少のコホートにおける多数の有害事象は、特定の事象に起因するものではないようであり、大部分の事象はデュピルマブとは無関係であるとみなされた。また、幼児への免疫調節処置の使用に関する理論的な関連を考慮すると、許容可能な安全性プロファイルは安心できるものであった。複数回用量処置後の安全性データの裏付けにより、デュピルマブのような標的免疫調節薬の使用は、現在幼児に適応外で使用されている幅広い免疫抑制薬と区別されるであろう。
【0146】
結論
重症ADを有する6カ月以上6歳未満の小児におけるデュピルマブの単回皮下用量は、ADの徴候および症状の減少において実質的な臨床利益をもたらしたが、3週目には明確な用量反応は観察されなかった。しかし、4週目には、特により低い用量群において、ほとんどの有効性反応の改善が逆転し始めた。また、年少の年齢群(6カ月以上2歳未満)に対して年長(2歳以上6歳未満)では、曝露および有効性がわずかに高くなる傾向があった。デュピルマブは、一般に小児集団において忍容性が良好であり、その安全性プロファイルは成人、青年および6歳超の小児におけるものと同様であった。
【0147】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【表7-8】
【表7-9】
【表7-10】
【表7-11】
【表7-12】
【表7-13】
【表7-14】
【表7-15】
【表7-16】
【0148】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な変更が、前述の記載および添付の図から当業者には明らかになるであろう。このような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。
【配列表】
【国際調査報告】