(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(54)【発明の名称】新型コロナウイルス感染の治療におけるTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質の併用の応用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20230511BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230511BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230511BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230511BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230511BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230511BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230511BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230511BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20230511BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230511BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20230511BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230511BHJP
C07K 14/555 20060101ALI20230511BHJP
C07K 14/46 20060101ALI20230511BHJP
C12N 15/20 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P31/14
A61P11/00
A61P9/00
A61P31/04
A61P7/04
A61P29/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P21/00
A61P1/12
A61P43/00 121
C07K14/555 ZNA
C07K14/46
C12N15/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559919
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2020082195
(87)【国際公開番号】W WO2021195883
(87)【国際公開日】2021-10-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522385108
【氏名又は名称】山東睿鷹制薬集團有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG RUIYING PIONEER PHARMACEUTICAL CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 建 青
(72)【発明者】
【氏名】張 曉 燕
(72)【発明者】
【氏名】傅 衛 輝
(72)【発明者】
【氏名】袁 松 華
(72)【発明者】
【氏名】何 涌 泉
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA22
4C084BA23
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZB33
4C084ZC751
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA15
4H045EA29
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質を併用することで、新型コロナウイルス感染を治療する。(a) IFN-κタンパク質;(b) TFF2タンパク質;および(c) 任意的な薬学的に許容されるキャリアを含む製品を提供する。さらに、新型コロナウイルス感染およびその関連疾患を治療する製品の調製におけるIFN-κタンパク質とTFF2タンパク質の応用、および上記の製品により新型コロナウイルス感染およびその関連疾患を治療する方法を提供する。本開示の組合せ、応用および方法は、新型コロナウイルス感染に対して優れた治療効果を有し、大きな適用の見通しおよび社会的利益を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) TFF2タンパク質;
(b) IFN-κタンパク質;および
(c) 任意的な薬学的に許容されるキャリア
を含む製品。
【請求項2】
上記の製品は、薬物組成物、製剤の組み合わせ又はキットであることを特徴とする請求項1に記載された製品。
【請求項3】
上記のTFF2タンパク質は、ヒトTFF2タンパク質又はマウスTFF2タンパク質、例えば配列SEQ ID NO:1又は2に示されたポリペプチド、又はSEQ ID NO:3-6のいずれか一つに示された核酸分子にコードされるポリペプチドから選べられる;
上記のIFN-κタンパク質は、ヒトIFN-κタンパク質又はマウスIFN-κタンパク質、例えば配列SEQ ID NO:7又は8に示されたタンパク質、又はSEQ ID NO:9-12のいずれか一つに示された核酸分子にコードされるポリペプチドから選べられる
ことを特徴とする請求項1に記載された製品。
【請求項4】
上記のTFF2タンパク質の量は、0.1~100mg、0.5~50mg、1~40mg、5~30mgである;
上記のIFN-κタンパク質の量は、0.01~100mg、0.05~80mg、0.1~70mg、0.5~50mgであることを特徴とする請求項2に記載された製品。
【請求項5】
TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質の質量比は、1:100~100:1、1:50~50:1、1:10~10:1、1:5~5:1、1:2~2.5:1、1:1~2:1であることを特徴とする請求項1に記載された製品。
【請求項6】
上記の製品の形態は、エアゾール吸入、点鼻、スプレー、静脈内投与、標的組織内投与または経口投与から選択される同一または異なる経路によるTFF2タンパク質およびIFN-κタンパク質の投与に適することを特徴とする請求項1に記載された製品。
【請求項7】
上記の製品の形態は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質の同時、逐次または間隔投与に適することを特徴とする請求項1に記載された製品。
【請求項8】
上記の製品は、対象の新型コロナウイルス感染およびその関連疾患の治療に用いられることを特徴とする請求項1-7のいずれか一つに記載された製品の調製におけるTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質の応用。
【請求項9】
新型コロナウイルス感染およびその関連疾患は、
新型コロナウイルス肺炎;以下の群から選べられる新型コロナウイルス感染に関連する一つ又は複数の疾患:呼吸困難、低酸素血症、急性呼吸窮迫症候群、敗血症性ショック、代謝性アシドーシス、凝固障害、多臓器不全、肺線維症、長期発症を伴う慢性炎症、発熱、空咳、倦怠感、鼻づまり、鼻水、のどの痛み、筋肉痛、下痢;から選べられることを特徴とする請求項8に記載された応用。
【請求項10】
上記の対象は、ヒトであることを特徴とする請求項8に記載された応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生物技術と医学分野に属する。具体的に、本開示は、TFF2タンパク質とIFN-κとの組み合わせ、新型コロナウイルス感染およびその関連疾患を治療するための製品の調製におけるその応用、および当該製品により新型コロナウイルス感染およびその関連疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
新型コロナウイルス肺炎(Corona Virus Disease 2019、COVID-19)、通称「新型コロナウイルス肺炎」とは、2019年の新型コロナウイルス感染による肺炎のことを指す。新型コロナウイルス肺炎の臨床症状は、主に発熱、空咳、倦怠感であり、少数の患者は鼻づまり、鼻水、のどの痛み、筋肉痛、下痢などの症状を伴いている。重症患者は発症後1週間で呼吸困難や低酸素血症を発症することが多く、重症化すると急性呼吸窮迫症候群、敗血症性ショック、矯正困難な代謝性アシドーシス、凝固障害、多臓器不全などへと急速に進行する。注意すべくのは、重度・重篤な患者は、病気の経過中に中等度の微熱があるか、明らかな熱がないことさえある。
【0003】
2019年12月から2020年3月30日までに、中国で合計82,451例の新型コロナウイルス肺炎が診断され、海外で合計638,946例が診断され、世界中で合計 33,953 人が死亡し、世界180以上の国と地域で新型コロナウイルスの感染が確認されており、世界的な流行は現在も進行中である。2020年3月11日、COVID-19の発生は世界保健機関によってパンデミック(pandemic)と宣言された。2020年3月25日、国連は「グローバルCOVID-19人道支援計画」を開始し、この計画は、世界で最も脆弱な国々がパンデミックと戦い、何百万人もの命を守り、ウイルスが各国に広がり続けるのを防ぐことを目的とする。
【0004】
これらのデータは、新型コロナウイルス感染が、深刻な世界的流行を引き起こしたことを十分に示し、その社会的、さらには世界的な被害は甚大であり、大きな注意を払う必要がある。
【0005】
新型コロナウイルス肺炎を引き起こす新型コロナウイルス(2019-nCoV)は、エンベロープを持つベータコロナウイルスであり、人に感染することが知られている7番目のコロナウイルスであり、残りの6種は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群を引き起こす)、MERS-CoV(中東呼吸器症候群を引き起こす)である。
【0006】
どちらもコロナウイルスに属するが、新型コロナウイルスは、他のコロナウイルスとは多くの異なる性質や症状を持っている。たとえば、新型コロナウイルス感染とSARSウイルス感染の違いには、次のようなものがある:(a)遺伝的特徴に関して、新型コロナウイルスの遺伝的特徴は SARS-CoV (および MERS-CoV) とは大きく異なり、コウモリの SARS 様コロナウイルスとの相同性は 85% 以上である;(b) 臨床症状に関しては、SARS-CoV は重度の急性呼吸器症候群を引き起こす可能性があり、主な症状は発熱、咳、頭痛、筋肉痛、気道感染症の症状であるが、新型コロナウイルスは発症が遅く、症状は比較的軽度で、隠蔽性がより強い;(c) 感染力に関して、SARSウイルスは感染後、発熱や肺炎などの症状が出て感染力が強く、新型コロナウイルスは潜伏期間が約10日以上あり、潜伏期間中に感染性を有する。したがって、新型コロナウイルス感染症の予防と治療には、さらに調査と研究が必要である。
【0007】
「新型コロナウイルス肺炎の診断と治療プロトコル(試行版7)」によると、中国の現在の新型コロナウイルス肺炎の薬物治療は、主に以下を含む:例えばα-インターフェロン、ロピナビル/リトナビル、リバビリン、リン酸クロロキン、アルビドールなどの抗ウイルス薬を採用する抗ウイルス療法;トシリズマブなどを採用する免疫療法;霍香正気カプセル、金花清感顆粒、連花清瘟カプセル、清瘟解毒カプセルなどの漢方薬および清肺排毒湯などの処方を採用する漢方治療。これらの薬の中で、クロロキンと連花清瘟カプセルが特に効果的である(3月25日の中国ヨーロッパ反伝染病交流会議で院士鍾南山によって共有された経験とデータによる)。また、臨床薬物研究によると、ヒドロキシクロロキン(ヒドロクロロキンとも呼ばれ)は解毒時間を短縮することができ、毒性はリン酸クロロキンよりも低く、新型コロナウイルス肺炎の治療薬として現在推奨されている薬である。
【0008】
しかし、現在の抗ウイルス療法は、人体に特定の毒性や副作用をもたらす可能性があり、薬剤耐性ウイルス株の出現につながる可能性がある。ただし、漢方治療は、その活性物質とメカニズムが不明確であるため、世界中のさまざまな国で受け入れレベルが異なる場合がある。
【0009】
そのため、初期のSARSなどのウイルスとの闘いの過程や、新型コロナウイルス肺炎との数か月にわたる闘いの過程で、ある程度の予防策や一定の経験は得られたが、すべての人類の健康と安全を維持するために、新型コロナウイルス感染のさらなる発症と拡大を抑えるように、より効果的な治療薬を開発することが依然として急務である。
【0010】
併用療法の効果は予測できない
特定の疾患を予防または治療するために、2つ以上の薬を組み合わせて使用すると、多くの潜在的な問題が発生する可能性がある。2 つの薬物間の in vivo 相互作用は複雑である。任意な単一の薬物の効果は、その吸収、分布、および排泄に関連している。2つの薬物が体内に導入されると、いずれか一つの薬物は、もう一つの薬物の吸収、分布、および排泄に影響を与えるため、もう一つの薬物の効果を変化させる。例えば、一つの薬物は、もう一つの薬物の排泄の代謝経路に関与する酵素の産生を阻害、活性化、または誘導する。例を挙げると、ナタリズマブとインターフェロン β1-a の組み合わせは、予期しない副作用のリスクを高めることが報告された(Rudickら New England Journal of Medicine, 354, 911-923, 2006; Kleinschmidt-DeMasters, New England Journal of Medicine, 353, 369-379, 2005; Langer-Gould, New England Journal of Medicine, 353, 369-379, 2005)。類似する例は、併用療法の開発において数多くある。
【0011】
したがって、同じ疾患を治療するために2つ又はそれ以上の薬物を投与する場合、各薬物が対象体内の他の薬物の治療効果を補完するか、効果がないか、または干渉するかを予測することは困難である。2つの薬物間の相互作用は、各薬物の意図した治療効果に影響を与えるだけでなく、毒性代謝物のレベルも上昇させる。この相互作用により、各薬剤の副作用も増減する。疾患を治療するために2つの薬物を投与する場合、各薬の悪影響がどのように変化するかを予測することは困難である。また、2つの薬物間の相互作用の影響がいつ現れるかを正確に予測することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、出願時に当分野の状況は、2つの特定の薬剤の併用療法の効果は、併用試験の結果が得られるまで予測できない。
【0013】
つまり、当技術分野では、新型コロナウイルス感染およびその関連疾患を効果的に治療できる薬物を開発することは、緊急の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の内容
本開示は、新型コロナウイルス感染およびその関連症状を効果的に治療できる製品または組み合わせを提供する。
【0015】
本開示の一態様では、以下を含む製品を提供する:
(a) TFF2タンパク質;
(b) IFN-κタンパク質;および
(c) 任意的な薬学的に許容されるキャリア。
【0016】
一部の実施形態において、上記の製品は、薬物組成物、製剤の組み合わせ又はキットである。
【0017】
一部の実施形態において、上記のTFF2タンパク質は、以下から選べられる:配列SEQ ID NO:1又は2を含むポリペプチド、又はSEQ ID NO:3-6のいずれか一つに示された核酸分子にコードされる配列を含むポリペプチド、又は前記のポリペプチドと少なくとも80%の相同性(例えば少なくとも85%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%相同性)を有しかつ炎症調節活性を有するポリペプチド、或いは前記のポリペプチドから誘導されかつ炎症調節活性を有するポリペプチド;上記のIFN-κタンパク質は、以下から選べられる:ヒトIFN-κタンパク質又はマウスIFN-κタンパク質、例えば配列SEQ ID NO:7又は8に示されたタンパク質、又はSEQ ID NO:9-12のいずれか一つに示された核酸分子にコードされるポリペプチド。
【0018】
一部の実施形態において、上記のTFF2タンパク質は、ヒトTFF2タンパク質又はマウスTFF2タンパク質から選べられる。一部の実施形態において、上記のTFF2タンパク質は、配列SEQ ID NO:1又は2に示されたポリペプチド、又はSEQ ID NO:3-6のいずれか一つに示された核酸分子にコードされるポリペプチドから選べられる。
【0019】
一部の実施形態において、上記のIFN-κタンパク質は、以下から選べられる:配列SEQ ID NO:7又は8を含むポリペプチド、又はSEQ ID NO:9~12のいずれか一つに示された核酸分子にコードされる配列を含むポリペプチド、又は前記のポリペプチドと少なくとも80%の相同性(例えば少なくとも85%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%相同性)を有しかつ抗ウイルス活性(例えば新型コロナウイルスのようなウイルスの複製を阻害する)を有するポリペプチド、或いは前記のポリペプチドから誘導されかつ抗ウイルス活性(例えば新型コロナウイルスのようなウイルスの複製を阻害する)を有するポリペプチド。
【0020】
一部の実施形態において、上記のIFN-κタンパク質は、ヒトIFN-κタンパク質又はマウスIFN-κタンパク質から選べられる。一部の実施形態において、上記のIFN-κタンパク質は、配列SEQ ID NO:7又は8に示されたタンパク質、又はSEQ ID NO:9-12のいずれか一つに示された核酸分子にコードされるポリペプチドから選べられる。
【0021】
一部の実施形態において、上記のTFF2タンパク質の量は、0.1~100mg、0.5~50mg、1~40mg、5~30mgである。
【0022】
一部の実施形態において、上記のIFN-κタンパク質の量は、0.01~100mg、0.05~80mg、0.1~70mg、0.5~50mgである。或いは、上記のIFN-κタンパク質の量は、1x104~1x108活性単位、5x104~5x107活性単位、1x105~1x107活性単位、5x105~5x106活性単位である。
【0023】
一部の実施形態において、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との質量比は、1:100~100:1、1:50~50:1、1:10~10:1、1:5~5:1、1:2~2.5:1、1:1~2:1である。
【0024】
一部の実施形態において、上記の製品の形態は、以下からなる群から選択される同一または異なる経路によるTFF2タンパク質およびIFN-κタンパク質の投与に適する:エアゾール吸入、点鼻、スプレー、静脈内投与、標的組織内投与または経口投与。
【0025】
一部の実施形態において、上記の製品の形態は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質の同時、逐次または間隔投与に適する。
【0026】
一部の実施形態において、上記の製品は、さらに以下を含む:TFF2タンパク質とIFN-タンパク質を収容する一つ又は複数の容器、例えば単位用量のTFF2タンパク質とIFN-タンパク質を収容する一つ又は複数の容器;投与するための器具;使用をガイドする説明書など。
【0027】
本開示の一態様では、本開示の製品の調製におけるTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質の応用を提供し、ただし、上記の製品は、対象の新型コロナウイルス感染およびその関連疾患の治療に用いられる。
【0028】
一部の実施形態において、新型コロナウイルス感染およびその関連疾患は、以下を含む:新型コロナウイルス肺炎;以下の群から選べられる新型コロナウイルス感染に関連する一つ又は複数の疾患:呼吸困難、低酸素血症、急性呼吸窮迫症候群、敗血症性ショック、代謝性アシドーシス、凝固障害、多臓器不全、肺線維症、長期発症を伴う慢性炎症、発熱、空咳、倦怠感、鼻づまり、鼻水、のどの痛み、筋肉痛、下痢。
【0029】
一部の実施の形態において、上記の対象は、ヒトである。
本開示のもう一つの様態では、対象の新型コロナウイルス感染およびその関連疾患を治療する方法を提供し、上記の方法は、必要が有る対象へ治療有効量のTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との組み合わせを投与することを含む。この態様に含まれる特徴は、前述のとおりである。
【0030】
本開示のもう一つの様態では、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との組み合わせを提供し、それは、対象の新型コロナウイルス感染およびその関連疾患の治療に用いられる。この態様に含まれる特徴は、前述のとおりである。
【0031】
当業者は、本開示の本開示の概念および保護範囲から逸脱することなく、前述の技術的解決策および技術的特徴を任意に組み合わせることができる。本開示の他の内容に基づき、当業者にとって、本発明の他の面は自明なものである。
【0032】
本開示は、添付の図面を参照して以下でさらに説明される。これらの図面は、本開示の実施形態を例示することのみを意図し、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】図 1Aは、TFF2 タンパク質のSDS-PAGE エレクトロフェログラムを示す。
【
図1B】
図1Bは、TFF2 タンパク質の機能活性試験:インビトロでのMCF7細胞のTFFタンパク質刺激による増殖のOD450ロジスティック適合曲線を示す。
【
図2A】
図2Aは、IFN-κタンパク質のSDS-PAGE エレクトロフェログラムを示す。
【
図2B】
図2Bは、IFN-κタンパク質のインビトロでの機能活性アッセイ:IFN-κタンパク質が、A549細胞株におけるインフルエンザウイルスPR8の複製を阻害することを示す。
【
図3】
図3は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用によって臨床的に改善された新型コロナウイルス患者の百分比を示す。
【
図4】
図4は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用による新型コロナウイルス患者の核酸陰性化割合を示す。
【
図5】
図5は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用による新型コロナウイルス患者のCT画像を改善するのに必要な日数を示す。
【
図6】
図6は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用による新型コロナウイルス患者の咳をなくすのに必要な日数を示す。
【
図7】
図7は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用による新規コロナウイルス患者の入院日数に対する影響を示す。
【
図8】
図8は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用による新規コロナウイルス患者の白血球カウントに対する影響を示す。
【
図9】
図9は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用による新規コロナウイルス患者のリンパ球カウントに対する影響を示す。
【
図10】
図10は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用による新規コロナウイルス患者のC反応性タンパク質(CRP)に対する影響を示す。
【
図11】
図11は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用による新規コロナウイルス患者のヘモグロビンに対する影響を示す。
【
図12】
図12は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用による新規コロナウイルス患者の血小板カウントに対する影響を示す。
【
図13】
図13は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用での治療と、ヒドロキシクロロキンでの治療による新型コロナウイルス患者のCTを改善するのに必要な日数を示す。
【
図14】
図14は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用での治療と、ヒドロキシクロロキンでの治療による新規コロナウイルス患者の入院日数に対する影響を示す。
【
図15】
図15は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用での治療と、ヒドロキシクロロキンでの治療による新型コロナウイルス患者の咳をなくすのに必要な日数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
各図において、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001を意味し、NCは従来治療対照を意味する。
【0035】
具体的な実施形態
出願人が、長期にわたる綿密な研究により、TFF2タンパク質製剤とIFN-κ タンパク質製剤を開発し、予想外に、これら2つの薬物の併用が、新型コロナウイルス感染および関連疾患の治療において顕著な治療効果をもたらし、その効果は現在推奨されている薬物であるヒドロキシクロロキンよりもさらに優れていることを発見した;また、この2つのタンパク質は人体に存在するタンパク質であり、人体に対する毒性が低いことも臨床試験の結果で証明されているため、併用薬の安全性も高い。関連研究に基づいて、本開示は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との組み合わせ、新型コロナウイルス感染およびその関連疾患を治療する薬物の調製におけるその応用、ならびに対応する治療方法を提供する。
【0036】
ここで提供されるすべての数値範囲は、範囲の端点とその間の数値範囲の間にあるすべての数値を明示的に含むことを意図する。本開示で言及される特徴または実施例で言及される特徴は、組み合わせることができる。本明細書に開示されるすべての特徴は、任意の構成形態と組み合わせて使用することができ、明細書に開示されている各特徴は、同じ、等しい、または同様の目的を提供できる任意の代替機能に置き換えることができる。したがって、特に明記されていない限り、開示されている特徴は、同等または類似の機能の一般的な例にすぎない。
【0037】
本明細書で使用される「単位用量」および「単位剤形」は、単一の薬物投与実体を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、数値または範囲の前後の「約」は、列挙されたまたは特許請求された数値または範囲の±10%を意味する。
【0039】
理解すべきのは、パラメータ範囲が提供される場合、本発明は範囲内のすべての整数およびその小数点以下1桁も提供する。たとえば、「0.1~2.5mg/日」には、0.1mg/日、0.2mg/日、0.3mg/日など、最大2.5mg/日までが含まれる。同じことが比率範囲にも当てはまる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「含む」、「含有する」、「有する」という用語は、「含む」、「主に~構成する」、「実質的に~からなる」および「からなる」を含む;「主に~構成する」、「実質的に~からなる」および「からなる」は、「含む」、「含有する」、「有する」の従属概念である。
【0041】
Trefoil Factor 2タンパク質(TFF2タンパク質)
Trefoil Factor 2 タンパク質 (TFF2タンパク質)は、1982年に Jorgensen らによってブタの膵臓から分離され、さまざまな種で高度に保存される。ヒトTrefoil Factor 2 (hTFF2) とマウスTrefoil Factor 2 (mTFF2) は同じ数のアミノ酸を含み、アミノ酸配列の相同性は 82% に達する。成熟したTFF2タンパク質は106個のアミノ酸で構成され、分子量は約7~12kDで、4つのエクソンと2つの対称Trefoilドメインを含むので、その構造は非常に安定し、酸、熱、およびプロテアーゼによる加水分解に耐性があり、主に胃粘膜の頸部の杯細胞に発現している。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「Trefoil Factor 2タンパク質」、「TFF2タンパク質」と「TFF2ポリペプチド」は、交換可能に使用され、SEQ ID NO:1(ヒト由来)又はSEQ ID NO:2(マウス由来)に示されるアミノ酸配列、またはその相同配列を有するポリペプチドのクラスを指す。この用語には、様々な哺乳動物由来のTFF2ポリペプチド、例えば、ヒト、マウス、ラットなどに由来するTFF2ポリペプチドを含んでも良い。TFF2タンパク質間の相同性は、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97% 以上、98% 以上、99% 以上、または 100%であっても良い。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「TFF2をコードする核酸分子」、「TFF2をコードする配列」又は「TFF2遺伝子」は、交換可能に使用され、本開示に記載されたTFF2タンパク質又はポリペプチドをコードする配列を指す。上記の核酸分子は、例えば:SEQ ID NO:3の配列(ヒト全長配列)、SEQ ID NO: 4の配列(ヒトcDNA配列)、SEQ ID NO: 5(マウス全長配列)、SEQ ID NO: 6の配列(マウスcDNA配列)、ストリンジェントな条件下でこれらの配列とハイブリダイズする分子、又は上記の分子と相同性の高いファミリー遺伝子分子から選べられてもよく、上記の遺伝子の発現が、炎症の発生と影響に対して一定の調節効果をもたらす。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「ストリンジェントな条件」とは、(1)より低いイオン強度とより高い温度でのハイブリダイゼーションと溶出、例えば0.2×SSC、0.1%SDS、60℃;又は(2)ハイブリダイゼーション中に変性剤の添加、例えば50%(v/v)ホルムアミド、0.1%子牛血清/0.1%Ficoll、42℃ばど;又は(3)ハイブリダイゼーションは、2つの配列が少なくとも50%、好ましくは55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上又は90%以上、より好ましくは95%同一である場合にのみ発生すること;を指す。例えば、上記の配列は、(a)で定義された配列の相補配列であっても良い。
【0045】
本開示のTFF2遺伝子の全長ヌクレオチド配列またはそのフラグメントは、通常、PCR増幅法、組換え法または人工合成法によって得ることができる。例えば、PCR増幅法に対して、例えば本文又は他のデータベースに開示されたヌクレオチド配列、特にオープンリーディングフレーム配列に従ってプライマーを設計し、市販のcDNAライブラリー又は本分野の当業者が既知の一般的な方法で作成するcDNAライブラリーをテンプレートとし、増幅で関連する配列を得られる。配列が長い場合、2回又はそれ以上のPCR増幅を実行し、各回で増幅されたフラグメントを正しい順序でつなぎ合わせることがよくある。
【0046】
理解すべきのは、本開示のTFF2をコードする核酸は、ヒトから得ることができ、ヒトTFF2遺伝子と高度に相同である(例えば70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、 99% の配列同一性を有する)他の動物から得られた他の遺伝子もまた、本開示によって意図される均等性の範囲内である。配列同一性をアラインメントさせるためのBLASTなどの方法およびツールもまた、当技術分野でよく知られている。
【0047】
本開示のTFF2タンパク質は、前文に記載されたコード核酸分子(例えばSEQ ID NO:3-6のコード核酸分子)にコードされるタンパク質、又は抗炎症効果を有するこれらのタンパク質の相同配列(例えば、TFF2の相同配列は、当技術分野で知られているデータベースまたはアラインメントソフトウェアを通じて得ることができる)、バリアント、または修飾された形態であり得る。例えば、上記のTFF2タンパク質は、(a)SEQ ID NO:1又はSEQ ID NO: 2に示されたアミノ酸配列;又は(b)(a)のアミノ酸配列に、一つ又は複数のアミノ酸を置換、欠失又は付加し、かつ抗炎症活性を有する、(a)から誘導されるタンパク質又はポリペプチド;から選べられる。
【0048】
本開示のタンパク質又はポリペプチドの変異形式は、一つ又は複数(一般的に、1-50個、好ましいのは、1-30個、より好ましいのは、1-20個、最も好ましいのは、1-10個、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のアミノ酸的欠失、插入及び/又は置換、及びC末端及び/又はN末端に一つ又は複数(一般的に、20個以下、好ましいのは、10個以下、より好ましいのは、5個以下)のアミノ酸の付加を含むが、これらに限定されない。例えば、本分野中、類似の特性のアミノ酸による置換は、一般に、タンパク質またはポリペプチドの機能を変化させない。なお、C末端及び/又はN末端に一つ又は複数のアミノ酸の付加は、一般的に、タンパク質又はポリペプチドの機能を変化させなく、例えば、本開示のTFF2タンパク質又はポリペプチド、最初のメチオニン残基を含み得る場合も含まない場合もあり、それでも炎症調節活性を有する。
【0049】
組換え生産プロトコルで使用される宿主に応じて、本開示のタンパク質またはポリペプチドは、グリコシル化され得るか、または非グリコシル化され得る。この用語には、TFF2タンパク質の活性フラグメントおよび活性誘導体も含む。
【0050】
ポリペプチドの変異形式には、相同配列、保存的変異体、対立遺伝子変異体、天然突然変異体、誘導突然変異体、および高ストリンジェンシーまたは低ストリンジェンシー条件下でTFF2タンパク質をコードする配列にハイブリダイズできる配列によってコードされるタンパク質、およびTFF2タンパク質に対する抗血清を使用して得られたポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0051】
インターフェロン-κタンパク質(IFN-κタンパク質)
IFN-κは、207アミノ酸で構成され、分子量約25kDNで、N末端に27アミノ酸のシグナルペプチドを含む。それが、IFN-αやIFN-βとともにI型インターフェロンファミリーに属し、より保存的で古いI型インターフェロンであり、IFN-κは、主に上皮角化細胞で発現し、IFNAR1およびIFNAR2を介して、下流のシグナルを伝達し、ISGを活性化し、抗ウイルス効果を発揮する。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「インターフェロン-κタンパク質」、「IFN-κポリペプチド」と「IFN-κタンパク質」は、交換可能に使用され、SEQ ID NO:7(ヒト由来)又はSEQ ID NO:2(マウス由来)に示されるアミノ酸配列、またはその相同配列を有するポリペプチドのクラスを指す。この用語には、様々な哺乳動物由来のIFN-κポリペプチド、例えば、ヒト、マウス、ラットなどに由来するIFN-κポリペプチドを含んでも良い。IFN-κタンパク質間の相同性は、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97% 以上、98% 以上、99% 以上、または 100%であっても良い。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「IFN-κをコードする核酸分子」、「IFN-κをコードする配列」又は「IFN-κ遺伝子」は、交換可能に使用され、本開示に記載されたIFN-κタンパク質又はポリペプチドをコードする配列を指す。上記の核酸分子は、例えば:SEQ ID NO:9の配列(ヒト全長配列)、SEQ ID NO: 10の配列(ヒトcDNA配列)、SEQ ID NO: 11(マウス全長配列)、SEQ ID NO: 12の配列(マウスcDNA配列)、ストリンジェントな条件下(例えば、上記のストリンジェントな条件)でこれらの配列とハイブリダイズする分子、又は上記の分子と相同性の高いファミリー遺伝子分子から選べられてもよく、上記の遺伝子の発現はISGを活性化し、抗ウイルス効果を発揮することができる。
【0054】
本開示のIFN-κ遺伝子の全長ヌクレオチド配列またはそのフラグメントは、通常、PCR増幅法、組換え法または人工合成法によって得ることができる。例えば、PCR増幅法に対して、例えば本文又は他のデータベースに開示されたヌクレオチド配列、特にオープンリーディングフレーム配列に従ってプライマーを設計し、市販のcDNAライブラリー又は本分野の当業者が既知の一般的な方法で作成するcDNAライブラリーをテンプレートとし、増幅で関連する配列を得られる。配列が長い場合、2回又はそれ以上のPCR増幅を実行し、各回で増幅されたフラグメントを正しい順序でつなぎ合わせることがよくある。
【0055】
理解すべきのは、本開示のIFN-κをコードする核酸は、ヒトから得ることができ、ヒトIFN-κ遺伝子と高度に相同である(例えば70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、 99% の配列同一性を有する)他の動物から得られた他の遺伝子もまた、本開示によって意図される均等性の範囲内である。配列同一性をアラインメントさせるためのBLASTなどの方法およびツールもまた、当技術分野でよく知られている。
【0056】
本開示のIFN-κタンパク質は、前文に記載されたコード核酸分子(例えばSEQ ID NO:9-12のコード核酸分子)にコードされるタンパク質、又は抗炎症効果を有するこれらのタンパク質の相同配列(例えば、IFN-κの相同配列は、当技術分野で知られているデータベースまたはアラインメントソフトウェアを通じて得ることができる)、バリアント、または修飾された形態であり得る。例えば、上記のIFN-κタンパク質は、(a)SEQ ID NO:7又はSEQ ID NO: 8に示されたアミノ酸配列;又は(b)(a)のアミノ酸配列に、一つ又は複数のアミノ酸を置換、欠失又は付加し、かつ抗炎症活性を有する、(a)から誘導されるタンパク質又はポリペプチド;から選べられる。
【0057】
本開示のタンパク質又はポリペプチドの変異形式は、一つ又は複数(一般的に、1-50個、好ましいのは、1-30個、より好ましいのは、1-20個、最も好ましいのは、1-10個、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のアミノ酸的欠失、插入及び/又は置換、及びC末端及び/又はN末端に一つ又は複数(一般的に、20個以下、好ましいのは、10個以下、より好ましいのは、5個以下)のアミノ酸の付加を含むが、これらに限定されない。例えば、本分野中、類似の特性のアミノ酸による置換は、一般に、タンパク質またはポリペプチドの機能を変化させない。なお、C末端及び/又はN末端に一つ又は複数のアミノ酸の付加は、一般的に、タンパク質又はポリペプチドの機能を変化させなく、例えば、本開示のIFN-κタンパク質又はポリペプチド、最初のメチオニン残基を含み得る場合も含まない場合もあり、それでも炎症因子抑制活性を有する。
【0058】
組換え生産プロトコルで使用される宿主に応じて、本開示のタンパク質またはポリペプチドは、グリコシル化され得るか、または非グリコシル化され得る。この用語には、IFN-κタンパク質の活性フラグメントおよび活性誘導体も含む。
【0059】
ポリペプチドの変異形式には、相同配列、保存的変異体、対立遺伝子変異体、天然突然変異体、誘導突然変異体、および高ストリンジェンシーまたは低ストリンジェンシー条件下でIFN-κタンパク質をコードする配列にハイブリダイズできる配列によってコードされるタンパク質、およびIFN-κタンパク質に対する抗血清を使用して得られたポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0060】
抗新型コロナウイルス感染の応用
本明細書で使用される場合、用語「治療」は、(1)病気、疾患又は症状に罹患している可能性がある、または病気、疾患又は症状にかかりやすいが、病気、疾患又は症状の臨床症状または不顕性症状をまだ経験していない、または示していない動物(特に哺乳類、特にヒト)における前記病気、疾患又は症状の臨床症状の発症を予防または遅延させること;(2)当該病気、疾患又は症状を抑制する(例えば、疾患の進行または再発(維持療法の場合)またはその臨床症状もしくは不顕性症状の少なくとも1つを停止、緩和または遅延させる)こと;および/または(3)症状を緩和する(すなわち、病気、疾患又は症状またはその臨床症状もしくは不顕性症状のうちの少なくとも1つの退行を引き起こす)こと;を含む。治療を受ける患者への利益は、統計的に有意であるか、または患者または医師によって少なくとも認識可能である。
【0061】
一部の実施形態において、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質とを含む組み合わせは、効果的に新型コロナウイルス感染およびその関連疾患、例えば新型コロナウイルス肺炎およびその症状を軽減することができる。一つの実施形態において、症状は、呼吸困難、低酸素血症、急性呼吸窮迫症候群、敗血症性ショック、代謝性アシドーシス、凝固障害、多臓器不全、肺線維症、長期発症を伴う慢性炎症、発熱、空咳、倦怠感、鼻づまり、鼻水、のどの痛み、筋肉痛、下痢である。
【0062】
一部の実施形態において、本開示のTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との組み合わせによって、各臨床分類、たとえば、軽度、一般的、重度、重篤の新型コロナウイルス肺炎を治療しても良い。
【0063】
TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との組み合わせおよび製品
本開示は、治療有効量のTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質、および任意的な薬学的に許容されるキャリアを含む組み合わせを提供する。本開示の一部の実施形態において、上記の組み合わせは、新型コロナウイルス感染およびその関連疾患の治療に用いられる。本開示の一部の実施形態において、上記の組み合わせは、薬物組成物、製剤の組み合わせ、キット、又は使用中の組み合わせであっても良い。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「薬物組成物」とは、同時にTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質とを含む薬物組み合わせを指す。本明細書で使用される場合、用語「組み合わせ製剤」又は「キット」とは、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質は、独立して投与でき、別々の形態で、または独立した量の有効成分を有する異なる固定の組み合わせで投与できる。組み合わせにおいて、TFF2タンパク質の量に対する投与されるIFN-κタンパク質の量の比は、治療される対象のサブグループの需要または個々の対象の需要を満たすように変えることができ、これらの需要は、対象の年齢、性別、体重などによって異なる。キットの各部分は、同時に投与することも、時系列にずらして投与することもでき、例えば、キットの任意の部分について、異なる時点で、同じまたは異なる時間間隔で投与することができる。したがって、本開示は、同時使用、個別使用、または順番使用されるTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との組み合わせ、例えば組み合わせの製剤または薬物組成物に関する。
【0065】
当該組み合わせは、アドオン療法としても使用できる。本明細書で使用される場合、「アドオン」又は「アドオン療法」とは、療法に用いられる薬剤の集合を指し、この治療を受けている対象は、1つまたは複数の薬剤の第一レジメンの開始後に、第一レジメンに加えて、1つまたは複数の異なる薬剤の第二レジメンを開始し、したがって、当該療法に使用されるすべての薬剤が同時に開始されるわけではない。たとえば、すでに TFF2 タンパク質療法を受けた患者に、IFN-κ タンパク質療法をアドオンしたり、又はその逆を行ったりする。
【0066】
一部の実施形態において、本開示の組み合わせ又は製品における活性物質は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質を含む。一部の実施形態において、本開示の組み合わせ又は製品における活性物質は、実質的にTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質からなり、又はTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質からなる。
【0067】
本明細書で使用されるように、用語「含む」または「有する」は、「含む」、「実質的に~からなる」および「からなる」を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」成分は、ヒト及び/又は動物に適用され、過度の不良な副作用(例えば毒性、刺激とアレルギー反応)がないもので、すなわち合理な利益/リスク比がある物質である。本明細書で使用されるように、用語「有効量」とは、人及び/又は動物に、機能できる又は活性を有する、かつ人及び/又は動物に許容される量である。
【0068】
本開示の組み合わせ又は製品における活性物質は、薬物又は組成物の総重量の0.01~100重量%を占め、残りは薬学的に許容されるキャリアおよびその他の添加物およびその他の物質である。例えば、上記の薬物又は組成物は、活性タンパク質を含む溶液である場合、活性タンパク質は、総重量の0.01~100重量%を占めても良い;上記の薬物又は組成物は、粉末である場合、それは、実質的に又は完全に活性タンパク質からなっても良い。
【0069】
一部の実施形態において、本開示の組み合わせ又は製品における活性成分は、優れたまたは相乗的な治療効果を生み出す量で存在する。上記の優れた治療効果は、以下を含むが、これらに限定されない:ヒドロキシクロロキンの治療有効量(例えば、経口で1日1回で100mgの投与量)による治療と比較して、画像が改善するまでの時間、咳が治るまでの時間、および/または患者の入院時間など、病状が寛解するまでの時間の大幅な短縮。
【0070】
一部の実施形態において、本開示の組み合わせ又は製品におけるTFF2タンパク質の量の範囲は、0.1~100mg、0.5~50mg、1~40mg、5~30mgである。一部の実施形態において、本開示の組み合わせにおけるIFN-κタンパク質の量は、0.01~100mg、0.05~80mg、0.1~70mg、0.5~50mgである。一部の実施形態において、上記のIFN-κタンパク質の量は、1x104~1x108活性単位、5x104~5x107活性単位、1x105~1x107活性単位、5x105~5x106活性単位である。
【0071】
一部の実施形態において、本開示の組み合わせ又は製品におけるTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との質量比は、1:100~100:1、1:50~50:1、1:10~10:1、1:5~5:1、1:2~2.5:1、1:1~2:1である。
【0072】
本明細書で使用される場合、上記の「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、治療剤の投薬に用いられるキャリアを指し、各種な賦形剤と希釈剤を含む。当該用語が、それ自体が必須の有効成分ではないが、投与後に過度に毒性がないいくつかの医薬品キャリアを指す。適当なキャリアは、当業者に熟知される。Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co.、N.J. 1991)には、薬学的に許容される賦形剤に関する十分な検討を見つけられる。
【0073】
製剤の組み合わせ、薬物組成物又はキットには、薬学的に許容されるキャリアが、液体、例えば水、塩水、グリセロールとエタノールを含んでも良い。さらに、これらのキャリアはまた、補助物質、例えば充填剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、発泡剤、湿潤剤または乳化剤、香味料、pH緩衝物質などを含んでも良い。一般に、これらの材料は、非毒性で、不活性で、薬学的に許容される水性キャリア媒体中で、通常、約5~8のpH、好ましくは約6~8のpHで処方することができる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「単位剤形」という用語は、投与を容易にするために単回投与に必要な剤形への本開示の組成物の調製を指し、さまざまな固体剤(粉末など)、液体剤、エアロゾル、カプセル、および徐放剤を含むが、これらに限定されない。
【0075】
本開示のもう一つ好ましい実施形態において、上記の組成物は、単位剤形又は多剤形であり、かつその中、TFF2タンパク質の量の範囲は、0.1~100mg/剤、0.5~50mg/剤、1~40mg/剤、5~30mg/剤である;IFN-κタンパク質の量は、0.01~100mg/剤、0.05~80mg/剤、0.1~70mg/剤、0.5~50mg/剤である。或いは、上記のIFN-κタンパク質の量は、1x104~1x108活性単位/剤、5x104~5x107活性単位/剤、1x105~1x107活性単位/剤、5x105~5x106活性単位/剤である。
【0076】
本開示の一部の実施形態において、必要に応じて、対象へ本開示の活性物質を投与することができ、例えば、本開示の製品の1~6剤、1~3剤、または1剤が、毎日、2日ごと、3日ごと、毎週投与される。
【0077】
理解すべきのは、使用される活性物質の有効用量は、投与または治療される対象の重症度に応じて、変化し得る。特定の状況は、熟練した医師の判断の範囲内である、対象の個々の状態(例えば、対象の体重、年齢、体調、および所望の効果)に従って決定される。
【0078】
本開示の薬物又は薬物組成物又はキットの投与経路は、以下の一つ又は複数を含むが、これらに限定されない:エアゾール吸入、点鼻、局所投与、標的組織投与、注射、経口投与など。TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質、または上記のタンパク質を含む製剤もしくは組成物は、同じまたは異なる方法で同時にまたは別々に投与することができる。
【0079】
TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質を含む組み合わせの投与は、単一の活性物質のみを使用する単剤療法と比較して、有益な、例えば、相乗的な治療効果、または他の予想外の有益な効果(例えば、既存の薬よりも大幅に優れた有効性、少ないおよび/または軽い副作用など)をもたらす。
【0080】
TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質を含む組み合わせは、有効量以下(subeffective 用量)のTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質を含むが、いずれか単一の化合物の有効用量と同じ効果を達成することができる。IFN-κ タンパク質または TFF2 タンパク質のみを使用する単剤療法と比較して、より低用量の TFF2 タンパク質および IFN-κ タンパク質を使用できる。たとえば、使用する用量を減らすだけでなく、使用頻度を減らすこともできる。さらに、副作用の発生を減らすことができ、および/またはIFN-κタンパク質またはTFF2タンパク質ベースの治療に対する反応率を高めることができる。すべてが、治療を受ける患者の期待と要求に一致している。
【0081】
いくつかの実施形態では、既知の臨床分類方法および指標を使用し、本願の組合せの治療効果を判断することができ、例えば、「新型コロナウイルス肺炎の診断と治療プロトコル(試行版7)」を参照することができる。 .いくつかの実施形態では、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との組み合わせは、疾患または症状の発生率、重症度を低下させ、治療過程を短縮する。
【実施例】
【0082】
以下、具体的な実施例を参照して、本開示をさらに説明する。これらの実施例は、本開示の範囲を限定するものではなく、本開示の単なる例示であることが理解されるべく。当業者は、本開示に対して適切な修正および変形を行うことができ、これらの修正および変形はすべて、本開示の範囲内である。
【0083】
以下の例で特定の条件を指定しない実験方法については、例えば《分子クローニング実験ガイド》を(第3版、ニューヨーク、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)参照するか、供給業者が提案する条件に従うなど、現場での従来の方法を使用することができる。DNAシーケンス法は、当技術分野では一般的な方法であり、試験は商業会社によって提供することもできる。
【0084】
特に断らない限り、百分率および部は重量を指す。別途に定義しない限り、本明細書で使用される全ての専門的および科学的用語は当業者に公知された意味と一致する。さらに、記載された内容と類似または同等の任意の方法および材料を本開示の方法に適用することができる。本明細書に記載される好ましい実施の形態および材料は、例示のみのためである。
【0085】
実施例1. TFF2タンパク質の発現と精製
ステップ1:組換えヒトTFF2タンパク質の調製スキームの最適化
TFF2配列に従って遺伝子をクローニングし、組換えpSV1.0‐TFF2プラスミドを293T細胞にトランスフェクトしたあと、TFF2タンパク質の真核発現をWBで検出し、さまざまな濃度勾配のイミダゾールを使用してニッケルカラムから溶出し、目的のタンパク質を回収した後、濾過と洗浄を行い、高純度のTFF2 タンパク質を取得し、具体的な手順は次のとおりであった:
H9N2 感染マウス肺組織から抽出した RNA の逆転写によって生成された cDNA をテンプレートとして使用し、PCR増幅を実行した:
上流プライマー(SEQ ID NO:13):
5'-CGCTCTAGAATGCGACCTCGAGGTGCCCC-3'、
下流プライマー(SEQ ID NO:14):
5'-CCTGGATCCTCAGTAGTGACAATCTTCCA-3'。
【0086】
増幅プログラム:95℃で2分間の予備変性;95℃で15秒間の変性;55℃で30秒間のアニーリング;72℃で30秒間の伸長;72℃で10分間の最終伸長;サイクル数は30。増幅完了後、標的遺伝子を1%アガロースゲルで分離し、SanprepカラムDNAゲル回収キットを用い、増幅産物TFF2を回収した。TFF2回収物およびベクターpSV1.0の両方を、エンドヌクレアーゼBamHI、XbaIによる二重消化によって回収した。37℃のウォーターバスで7時間酵素消化後、1%アガロースゲルで電気泳動し、SanprepカラムDNAゲル回収キットを用いて、そのフラグメントを回収した。標的フラグメントTFF2をベクターpSV1.0と4℃で一晩ライゲーションして、組換えプラスミドpSV1.0-TFF2を形成した。組換えプラスミドを大腸菌E.coliTOP10に形質転換し、コロニーPCRおよび二重消化(BamHI,XbaI)により陽性クローンを同定し、シーケンスにより、標的配列が完全に正しいことが確認され、変異は発生しなかった。
【0087】
正しくシーケンスされた組換えプラスミドpSV1.0-TFF2を293FT細胞にトランスフェクトし、TurboFectをトランスフェクション試薬として、DMEM 完全培地 (10% FBS および 1% P.S.) を培地として、37℃のインキュベーターで72時間培養後、細胞を取り出し、予冷したEPチューブに回収し、RIPA溶解バッファーで細胞を溶解し、上清に5×SDS ローディングバッファーを加え、沸騰水浴中で10分間加熱してタンパク質を変性させ、短時間の遠心分離の後、上清をスポッティングサンプルとして使用した。その後、タンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分離し、分離ゲル濃度は15%であった。電気泳動の電圧は70Vで、時間は30~40分間で(markerが分離し始まる時点をマークとする)、ブロモフェノールブルーが移動して濃縮ゲルから出た後に、電圧を110Vに調整し、1時間30分後に電源を切り、メンブレンに転写し、電流 は定電流 200mAで、時間は1.5時間であった。メンブレンに転写した後、PVDF フロント メンブレン (ゲルと接触する側) に印を付け、5% 脱脂粉乳に入れ、室温で 1 時間ブロッキングした。次に、適切な希釈比(TFF2:1:400またはβ-アクチン:1:1000)で一次抗体を加え、5%脱脂粉乳で希釈し、シェーカーで4℃で一晩インキュベートした。メンブレンを0.05% PBST で洗浄した後、二次抗体として、TFF2-ヤギ抗ウサギ(1:3000);β-アクチン-ヤギ抗マウス (1:3000)を加え、5% 脱脂粉乳で希釈し、シェーカーで室温で1時間インキュベートした後、メンブレンを洗浄し、メンブレンは発色させ、フィルムは定量分析器で2分間露光し、発色結果を記録して分析した。
【0088】
その結果、細胞は大量のTFF2タンパク質を発現し、細胞上清に分泌され、濃縮後、濾過された廃液にはTFF2タンパク質は含まれていないことが示された。TFF2の濃度を定量するために、USCN社から購入したTFF2用のSEA748MU ELISAキットを用いてTFF2の標準曲線を作成し、標準の光学密度(OD)値に従って、TFF2の濃度を定量した。
【0089】
ステップ2:組み換えヒトTFF2タンパク質の調製
ステップ1に基づいて、増幅調製を行い、HEK293細胞へのトランスフェクションから5日後に、細胞を回収し、SDS-PAGEによりタンパク質発現状況を検出した;
分泌上清を回収し、疎水性カラム、イオンカラム精製ステップによって精製し、適格なタンパク質製品を取得した。適格なタンパク質製品は、次の品質基準を満たしている:タンパク質濃度≧0.5mg/ml、タンパク質純度>95%、エンドトキシン<100Eu/mg、タンパク質保存液:PBS、pH 7.4;
増幅調製プロセス全体は、GMP基準に従って行われた。
【0090】
SDS-PAGE電気泳動とクーマシーブリリアントブルー染色による同定した後、調製されたTFF2タンパク質は95%を超える純度を有し、凍結乾燥粉末の形態で低温で適所に輸送された。インビトロ細胞株を使用し、それが、MCF7細胞の増殖を刺激できることを確認し、有効用量の半分は11 ng/mL でした(
図1を参照)。
【0091】
TFF2タンパク質アミノ酸配列
得られたTFF2タンパク質のアミノ酸配列は、以下に示された(SEQ ID NO:1):
EKPSPCQCSRLSPHNRTNCGFPGITSDQCFDNGCCFDSSVTGVPWCFHPLPKQESDQCVMEVSDRRNCGYPGISPEECASRKCCFSNFIFEVPWCFFPKSVEDCHY
実施例2. IFN-κタンパク質の発現と精製
ステップ1:組換えヒトIFN-κタンパク質の調製スキームの最適化
IFN-κはヒトゲノムからクローニングされ、そのコード遺伝子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:1に示され、全長アミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に示され、上記のIFN-κはI型インターフェロン ファミリーに属し、IFN-α および IFN-β と 30% の相同性しかない。
【0092】
IFN-κの真核発現ベクターを構築し、成熟分泌タンパク質をインビトロで真核細胞系で発現させた。真核発現ベクター pSV1.0 を使用し、以下のようにIFN-κ 真核発現プラスミドを構築した:A549細胞から抽出したRNAの逆転写によって生成されたcDNA をテンプレートとして使用し、対応するプライマーを用いてPCR増幅を実行した。
【0093】
上流プライマー(SEQ ID NO:15):
5'- CGCTCTAGA ATGAGCACCAAACCTG-3'、
下流プライマー(SEQ ID NO:16):
5'-TCTGGATCCTTATTTCCTCCTGAA-3'。
【0094】
PCR 反応プログラム:95℃、2分間;35サイクル:95℃、15秒間;55℃、30秒間;72℃、30秒間;72℃、10分間;4℃、30分間。
【0095】
増幅完了後、標的遺伝子を1%アガロースゲルで分離し、ゲルを切り取り回収し、SanprepカラムDNAゲル回収キットを用い、PCRフラグメントを回収し、IFN-κ回収産物とpSV1.0 ベクターの両方を、エンドヌクレアーゼ BamHI と XbaI で二重消化した後、フラグメントとベクターをT4 DNA リガーゼで 4℃ で一晩ライゲーションし、2日目にライゲーション産物を大腸菌E.coliTOP10に形質転換し、カナマイシン含有プレートで一晩増殖させた。3日目に、PCR同定のために単一コロニーを無作為に採取し、その後、二重酵素消化同定のために陽性クローンを選択した。IFN-κ遺伝子は、配列全体が正しいことを確認するために配列決定と変異部位の修正を行った後、成功にクローニングされた。pSV1.0-IFN-κプラスミドをトランスフェクトした細胞と上清を回収し、ウェスタンブロッティング(WB)で同定したところ、細胞と上清の両方で IFN-κ が発現していることがわかった。
【0096】
ステップ2:組み換えヒトIFN-κタンパク質の調製
ステップ1に基づいて、増幅調製を行い、SDS-PAGEによりタンパク質発現状況を検出した;
封入体は再生のために回収され、疎水性カラム、イオンカラムなどの精製ステップによって精製され、適格な再生タンパク質産物が得られた;
適格なタンパク質製品は、次の品質基準を満たしている:タンパク質濃度≧1mg/ml、タンパク質純度>95%、エンドトキシン<100Eu/mg、タンパク質保存液:PBS、pH 7.4;
増幅調製プロセス全体は、GMP基準に従って行われた。
【0097】
SDS-PAGE電気泳動とクーマシーブリリアントブルー染色による同定した後、上記の方法で得られたものは95%を超える純度を有し、凍結乾燥粉末の形態で低温で適所に輸送された。WISH-VSV法による活性検出した後、その比活性は1.16x10
6U/mgであり、精製したIFN-κタンパク質が、A549細胞株におけるインフルエンザウイルスPR8の複製を阻害できることをさらに検証した(
図2を参照)。
【0098】
IFN-κタンパク質アミノ酸配列
得られたIFN-κタンパク質のアミノ酸配列は、以下に示された(SEQ ID NO:7):
MLDCNLLNVHLRRVTWQNLRHLSSMSNSFPVECLRENIAFELPQEFLQYTQPMKRDIKKAFYEMSLQAFNIFSQHTFKYWKERHLKQIQIGLDQQAEYLNQCLEEDKNENEDMKEMKENEMKPSEARVPQLSSLELRRYFHRIDNFLKEKKYSDCAWEIVRVEIRRCLYYFYKFTALFRRK
実施例3. TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との製剤の調製
実施例1および実施例2のGMP基準に従って製造されたTFF2タンパク質およびIFN-κタンパク質を新たに調製し、注射用滅菌水を使用し、5mgのTFF2タンパク質と2mgのIFN-κタンパク質を混合するか、5mgのTFF2タンパク質と1mgのIFN-κタンパク質を混合するか、2mgのTFF2タンパク質と1mgのIFN-κタンパク質を混合するか、5mL溶液を配合し、滅菌試薬ボトルに入れ、4℃で保存し、使用直前に調製した。
【0099】
実施例4. 新型コロナウイルス患者の治療におけるTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用の有効性と安全性の研究
この臨床研究は、倫理審査のために上海公衆衛生臨床センターの倫理委員会によって承認され、登録された患者は、上海公衆衛生臨床センターによって募集され、すべてがインフォームドコンセントに署名した。
【0100】
患者の選択基準
1. 年齢は18歳から70歳まで、性別は問わない;
2. 臨床診断によって、ウイルス性肺炎に合致する:発熱;血小板減少症の有無にかかわらず白血球正常または低下;胸部画像に浸潤影がある;
3. 病因的に新型コロナウイルスが陽性である者;
4.患者はエアロゾル吸入投与を受けることができる;
5.研究開始前に書面によるインフォームドレターに署名することに同意した。
【0101】
患者の除外基準
1. 新型コロナウイルスが原因ではない肺炎の他の証拠がある;
2. 細菌感染の明らかな証拠がある;
3.スクリーニング前の1週間以内に抗ウイルス薬を使用し、および研究中に別の抗ウイルス治療が必要になる可能性のある被験者;
4. 肺結核、肺水腫、肺塞栓症などの重篤な非感染性肺基礎疾患がある;
5.重度の肝臓および腎臓の機能障害;
6.投与前30日以内に他の臨床試験に参加したまたは参加している;
7. インターフェロンに対するアレルギーの既往歴のある者;
8.妊娠中(尿または血清妊娠検査が陽性)または授乳中の女性;
9.その他、研究者に本試験の参加を不適当と判断された者、または研究者に被験者のリスクを高めたり、臨床試験を妨害したりする条件が存在する可能性があると判断された者。
【0102】
研究対象の基本情報と治療方法
研究対象に関する情報:
【0103】
【0104】
具体の投与方法
対照群:ヒドロキシクロロキン(すなわち、硫酸ヒドロキシクロロキン錠剤)、連花清瘟カプセル、および「新型コロナウイルス肺炎の診断と治療プロトコル(試行版6)」で推奨されているその他の治療薬と方法を含む標準的な治療が行われた。
【0105】
実験群:患者が登録された後、従来の薬物治療の上、2、4、6日目に5mgのTFF2タンパク質と1mgのIFN-κタンパク質のエアロゾル吸入治療を受けた。実施例3で調製した5:1製剤をアトマイザーカップに注ぎ、粒子サイズが5μm未満のアトマイザーを使用し、患者に20~30分間エアロゾルを吸入させた。
【0106】
【0107】
臨床試験結果
有効性研究の結果を
図3-12に示す。結果は、COVID-19 患者の治療において、IFN-k+TFF2タンパク質の組み合わせをエアロゾル吸入で投与すると、明らかな臨床的利益をもたらし、患者の臨床症状を改善し、核酸陰性化時間を短縮し、肺機能をより迅速に回復し、肺CTを大幅に改善し、入院日数を短縮し、咳の消失時間を短縮し、白血球を迅速に増加させることができ、 CRP応答が減少し(これは、炎症性ストレスタンパク質の産生の減少を示唆している)、一定の臨床効果を有することを示す。
【0108】
さらに、試験結果は、エアロゾル治療群のALTとASTのレベルが、標準治療群のレベルよりも低いことを示し、エアロゾル吸入が肝臓に損傷を与えなかったことを示し、血球、血小板、およびヘモグロビンのレベルは同等であり、エアロゾル吸入薬物も血液機能に対して安全であることを示している。
【0109】
研究の結論
臨床実験の結果は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質の併用治療が臨床患者の症状を改善し、核酸陰性化と肺CTの改善を加速し、患者の入院時間と咳時間を減らし、白血球を迅速に増加させることができ、 CRP応答が減少する(これは、炎症性ストレスタンパク質の産生の減少を示唆している)ことができることを示す。当該薬物併用による効果は、新型コロナウイルス肺炎の従来の薬物治療よりもはるかに優れている。
【0110】
さらに、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用治療は、血液中の白血球数を大幅に増加させることができ、リンパ球、血小板、およびヘムには影響を与えず、AST、ALT、CRP、およびTBiLのレベルを生理学的範囲内である程度に低下させることができ、肝臓、血球、血小板に明らかな毒性がないことを示す。
【0111】
結論として、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との組み合わせは、新型コロナウイルス感染の治療に効果的かつ安全に使用できる。
【0112】
実施例5. 新型コロナウイルス患者に対するTFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用の有効性と、ヒドロキシクロロキンのそれとの比較
登録された対象
COVID-19 の一般的な患者。
【0113】
投与計画
(1)対照群:標準治療(ヒドロキシクロロキンの投与を除く)、すなわちNC群;
(2)ヒドロキシクロロキン群:標準治療の上、1日1回100mgのヒドロキシクロロキンを経口投与し、つまり、「標準治療+ヒドロキシクロロキン」である;
(3)TFF2+IFN-κ群:標準治療の上、5mgTFF2 タンパク質+1mg IFN-κタンパク質の組み合わせ製剤をエアロゾル吸入し、つまり、「標準治療+タンパク質組み合わせエアロゾル」である;
(4)総合治療群:標準治療の上、ヒドロキシクロロキン100mgを1日1回経口投与し、かつTFF2蛋白5mg+IFN-κ蛋白1mgの組み合わせ製剤をエアロゾル吸入し、つまり、「標準治療+ヒドロキシクロロキン+(TFF2タンパク質+IFN-κ タンパク質)」である。
【0114】
試行結果と検討
試験結果を
図13-15に示す。結果は次のとおりであった:
対照群と比較して、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用、およびヒドロキシクロロキン治療は、いずれも新型コロナウイルス患者の症状の軽減と回復を加速させることができ、投与群において、CT画像の改善時間、入院時間、および咳の消失時間は短縮されるが、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用はより明白であった。
【0115】
さらに、ヒドロキシクロロキン治療と比較して、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用は、入院時間を大幅に短縮し、咳の症状を大幅に緩和し、肺CT画像を安定して改善した。
【0116】
また、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用に基づくヒドロキシクロロキンとのさらなる組み合わせは、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用と比較すると、治療効果を改善しなく、これは、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用の治療効果をさらに実証した。
【0117】
上記の結果は、TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質との併用が、新型コロナウイルス肺炎の治療に効果的に使用できることを示し、その効果は、臨床的に推奨されている薬であるヒドロキシクロロキンよりもはるかに優れる。TFF2タンパク質とIFN-κタンパク質はどちらも内因性タンパク質であることと、上に示した安全性とを合わせて考慮すると、これら2つのタンパク質の組み合わせは、新型コロナウイルス感染の治療に適した薬剤になると期待されている。
【0118】
【0119】
本開示に言及されている全ての参考文献は、参照として単独に引用されるように、本出願に引用されて、参照になる。理解すべきのは、本開示の上記の開示に基づき、当業者は、本開示を様々な変更または修正を行っても良い、これらの同等の形態も本出願に添付された請求の範囲に規定される範囲内に含まれる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】