IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エービー サンドビック コロマントの特許一覧

<>
  • 特表-金属スレッドを切削するための方法 図1
  • 特表-金属スレッドを切削するための方法 図2
  • 特表-金属スレッドを切削するための方法 図3
  • 特表-金属スレッドを切削するための方法 図4
  • 特表-金属スレッドを切削するための方法 図5
  • 特表-金属スレッドを切削するための方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(54)【発明の名称】金属スレッドを切削するための方法
(51)【国際特許分類】
   B23G 1/02 20060101AFI20230511BHJP
   B23B 1/00 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
B23G1/02 A
B23B1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561547
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2021056704
(87)【国際公開番号】W WO2021204501
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】20168755.5
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン, オケ
(72)【発明者】
【氏名】ロイッカネン, ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】オー, ロジャー
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045AA01
(57)【要約】
CNC旋盤のための、予め定められたスレッド(3)をワークピース(2)に形成するための加工方法であって、金属ワークピース(2)を提供することと、スレッディングツール(1)を提供することと、ここで、スレッディングツール(1)は、第1の切削エッジ(11)と第2の切削エッジ(12)とを含み、金属ワークピース(2)を、その回転軸(A1)を中心に回転させることと、スレッディングツール(1)を縦(Z)方向に、1セットのパス(P1からP6)を通して移動させることと、ここで、縦(Z)方向は、回転軸(A1)と並列又は一致して、第1のパス(P1)中、スレッディングツール(1)を半径(X)方向に第1の振動数にて揺動させて、スレッディングツール(1)が第1の半径方向の距離(D1)と第2の半径方向の距離(D2)との間を移動するようにすることと、ここで、第1の半径方向の距離(D1)は第2の半径方向の距離(D2)より長く(D1とD2との間の前方への運動、D2とD1との間の後方への運動)、第2のパス(P2)中、スレッディングツール(1)を半径(X)方向に第2の振動数にて揺動させて、スレッディングツール(1)が第3の半径方向の距離(D3)と第4の半径方向の距離(D4)との間を移動するようにすることと、ここで、第3の半径方向の距離(D3)は第4の半径方向の距離(D4)より長くて第1の半径方向の距離(D1)より短く、第4の半径方向の距離(D4)は第2の半径方向の距離(D2)より短く、最後のパス(P4、P6)中、ツールを揺動なく半径(X)方向に移動させることと、を含む加工方法であって、この方法は、第2の振動数を第1の振動数とは異ならせて設定することと、第3の半径方向の距離(D3)を第2の半径方向の距離(D2)より長く設定することと、第2のパス(P2)をアレンジして、第2のパス(P2)の各揺動に対して、第2のパス(P2)の軌跡が第1のパス(P1)の軌跡と2回以上交差するようにすることと、をさらに含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNC旋盤のための、予め定められたスレッド(3)をワークピース(2)に形成するための加工方法であって、
金属ワークピース(2)を提供することと、
第1の切削エッジ(11)と第2の切削エッジ(12)とを含むスレッディングツール(1)を提供することと、
前記金属ワークピース(2)を、その回転軸(A1)を中心に回転させることと、
前記スレッディングツール(1)を縦(Z)方向に、1セットのパス(P1からP6)を通して移動させることであって、前記縦(Z)方向は、前記回転軸(A1)と並列又は一致している、前記スレッディングツール(1)を移動させることと、
第1のパス(P1)中、前記スレッディングツール(1)が第1の半径方向の距離(D1)と第2の半径方向の距離(D2)との間を移動するように、前記スレッディングツール(1)を半径(X)方向に第1の振動数にて揺動させることであって、前記第1の半径方向の距離(D1)は前記第2の半径方向の距離(D2)より長い、前記スレッディングツール(1)を半径(X)方向に第1の振動数にて揺動させることと、
第2のパス(P2)中、前記スレッディングツール(1)が第3の半径方向の距離(D3)と第4の半径方向の距離(D4)との間を移動するように、前記スレッディングツール(1)を前記半径(X)方向に第2の振動数にて揺動させることであって、前記第3の半径方向の距離(D3)は前記第4の半径方向の距離(D4)より長く、前記第1の半径方向の距離(D1)より短く、前記第4の半径方向の距離(D4)は前記第2の半径方向の距離(D2)より短く、前記第3の半径方向の距離(D3)は前記第2の半径方向の距離(D2)より長い、前記スレッディングツール(1)を前記半径(X)方向に第2の振動数にて揺動させることと、
最後のパス(P4、P6)中、前記ツールを揺動なく前記半径(X)方向に移動させることと、
を含む加工方法であって、
前記方法は、
前記第2の振動数を前記第1の振動数とは異ならせて設定することと、
前記第2のパス(P2)をアレンジして、前記第2のパス(P2)の各揺動に対して、前記第2のパス(P2)の軌跡が前記第1のパス(P1)の軌跡と2回以上交差するようにすることと、
をさらに含むことを特徴とする加工方法。
【請求項2】
前記第2の振動数を、前記第1の振動数より2倍又は実質的に2倍大きく設定することをさらに含む、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記第2のパス(P2)中の前記揺動の位相を、前記第4の半径方向の距離又は複数の距離(D4)が、前記第1及び第2の半径方向の距離(D1、D2)と、Z軸に沿って一致するように設定することをさらに含む、請求項1又は2に記載の加工方法。
【請求項4】
第3のパス(P3)中、前記スレッディングツール(1)が第5の半径方向の距離(D5)と第6の半径方向の距離(D6)との間を移動するように、前記スレッディングツール(1)を半径(X)方向に第3の振動数にて揺動させることであって、前記第5の半径方向の距離(D5)は前記第6の半径方向の距離(D6)より長く、前記第3の半径方向の距離(D3)より短く、前記第6の半径方向の距離(D6)は前記第4の半径方向の距離(D4)より短い、前記スレッディングツール(1)を半径(X)方向に第3の振動数にて揺動させることと、
前記第3の振動数を前記第2の振動数とは異ならせて設定することと、
前記第5の半径方向の距離(D5)を前記第4の半径方向の距離(D4)より長く設定することと、
前記第3のパス(P3)をアレンジして、前記第3のパス(P3)の各揺動に対して、前記第3のパス(P3)の軌跡が前記第2のパス(P2)の軌跡と2回以上交差するようにすることと、
前記第3のパス(P3)の振動数を、第2のパス(P2)の振動数より少なく、又は、前記第1のパス(P1)の振動数より少なく設定することと、
をさらに含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項5】
最後の揺動パス(P3、P5)を、すべての以前の揺動パス(P1からP2、P1からP4)より多い振動数を有するように設定することをさらに含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項6】
前記第1のパス(P1)に続くすべての揺動パス(P2からP3、P2からP5)に対する振動数を、前記第1のパス(P1)の振動数の4倍以下に設定することをさらに含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項7】
最後から2番目のパス(P3、P5)中、前記スレッディングツール(1)を、前記最後のパス(P6)から外側の半径方向の距離(D5、D9)と内側の半径方向の距離(D6、D10)との間で揺動させることをさらに含み、ここで、前記内側の半径方向の距離(D6、10)は、ゼロ、又は、前記第1の半径方向の距離(D1)と前記第2の半径方向の距離(D2)との間の差の半分未満である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項8】
前記最後から2番目のパス(P3、P5)に対する振動数を、前記第1のパス(P1)の振動数より多く、そして、前記第2のパス(P2)の振動数より多く設定することをさらに含む、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項9】
前記第1の半径方向の距離(D1)と前記第2の半径方向の距離(D2)との間の差は、前記第3の半径方向の距離(D3)と前記第4の半径方向の距離(D4)との間の差とは異なる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項10】
前記第1の半径方向の距離(D1)と前記第3の半径方向の距離(D3)との間の差は、前記第3の半径方向の距離(D3)と前記第2の半径方向の距離(D2)との間の差より小さい、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項11】
第3の振動数は、前記第1の振動数と同じ又は実質的に同じである、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項12】
第2の半径方向の距離(D2)と第6の半径方向の距離(D6)とは、前記縦(Z)方向に一致又は実質的に一致する、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項13】
すべてのパス(P1からP6)に対して、前記スレッディングツール(1)は、前記縦(Z)方向に、0.5~3.0mm/回転となる縦方向の送り速度にて動かされる、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項14】
前記スレッディングツール(1)は、スレッディングインサート(2)とインサートシート(6)とを含み、
前記スレッディングインサート(2)は、上面(3)と底面(4)とを含み、
前記上面(3)と前記底面(4)とは、側面(5)により接続されており、
前記第1の切削エッジ(11)と前記第2の切削エッジ(12)とは、前記上面(3)と前記側面(5)との間の境界に形成されており、
前記底面(4)は、前記インサートシート(6)において形成された、対応する構造(8)との接触のためのかみ合い手段(7)を含む、
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項15】
CNC旋盤により実行されると、前記CNC旋盤に、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のステップを行わせる命令を有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削の技術分野に関する。より具体的には、本発明は、スレッディングとして知られる旋削作業の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、請求項1のプリアンブルに係る方法に関する。換言すると、本発明は、CNC旋盤のための、予め定められたスレッドをワークピースに形成するための加工方法に関する。この方法は、金属ワークピースを提供することと、第1の切削エッジと第2の切削エッジとを含むスレッディングツールを提供することと、金属ワークピースを、その回転軸を中心に回転させることと、スレッディングツールを縦方向に、1セットのパスを通して移動させることと、ここで、縦方向は、回転軸と並列又は一致して、第1のパス中、スレッディングツールを半径方向に第1の振動数にて揺動させて、スレッディングツールが第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間を移動するようにすることと、ここで、第1の半径方向の距離は第2の半径方向の距離より長く、第2のパス中、スレッディングツールを半径方向に第2の振動数にて揺動させて、スレッディングツールが第3の半径方向の距離と第4の半径方向の距離との間を移動するようにすることと、ここで、第3の半径方向の距離は第4の半径方向の距離より長くて第1の半径方向の距離より短く、第4の半径方向の距離は第2の半径方向の距離より短く、第3の半径方向の距離は第2の半径方向の距離より長く、最後のパス中、ツールを揺動なく半径方向に移動させることと、を含む。
【0003】
スレッディングでは、スレッドが形成される。スレッディングは、旋削作業において行われてよい。金属ワークピースが回転する。スレッディングツールが、回転しているワークピースに対して縦方向に動かされる。スレッドが、1セット又は多数のパスを通して徐々に形成される。
【0004】
EP3241637A1は、ワークピースをスレッド加工する方法を開示する。ここでは、スレッディングツールが半径方向又はX方向に揺動する。この方法は、長い切り屑ストリップの問題を減らすものと考えられる。
【0005】
スレッディングのためのさらに改善された方法の必要性があることを、本発明者達は見いだした。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、切り屑のブレイキング又は切り屑の制御を改善して、ツール寿命を改善することである。
【0007】
これらの目的の少なくとも1つは、始めに画定した方法により達成される。この方法は、第2の振動数を第1の振動数とは異ならせて設定することと、第2のパスをアレンジして、第2のパスの各揺動に対して、第2のパスの軌跡が第1のパスの軌跡と2回以上交差するようにすることと、をさらに含む。
【0008】
そのような方法により、切り屑を短くすることができる。切り屑は少なくとも、第2のパス中に、第2のパスの軌跡が第1のパスの軌跡と交差するとともに分離する。換言すると、切り屑は、スレッディングインサートが切削を終えると分離する。各揺動に対して、切り屑は、切削を終える際に中断する。
【0009】
切り屑のブレイキングは、第2のパスに対して、さらに改善される。なぜなら、第1のスレッドフランクを切削するよう配置された第1の切削エッジ又はリーディングエッジと、第2のスレッドフランクを切削するよう配置された第2の切削エッジ又はトレーリングエッジと、が選択的に切削にあるからである。より正確には、切削中、例えば、凸状の切削エッジの形態であってよい接続切削エッジと第1の切削エッジとが切削にある、又は、接続切削エッジと第2の切削エッジとが切削にある。接続切削エッジは、スレッドのルートを形成する切削エッジの一部と理解されるべきである。これは、切り屑の断面のおかげで、より好ましい形状を有する切り屑をもたらす。すべてのパスが同じ揺動振動数を有する方法は、断面がV形状として一般的に説明できる形状を有する切り屑をもたらすこととなる。換言すると、第1及び第2の切削エッジの双方と、同様に、接続切削エッジと、が、同時に切削にある切り屑をもたらすこととなる。この説明の形状は、Vプロファイルの55度若しくは60度のスレッド、又は、メトリック若しくはUN60度のスレッドなどの一般的なスレッドプロファイルに特に適する。そのようなV形状の切り屑は、形状としてはあまり好ましくなく、低品質の切り屑の制御をもたらす。さらに、V形状の切り屑は、インサートのすくい面上において、エッジに蓄積するリスクが上がり、結果として、ツール寿命を短くする。そのようなV形状の切り屑は、EP3241637A1において図3に示す揺動パス番号2についてもたらされる。
【0010】
そのような方法により、切削エッジに沿う1つを超えるポイントが、第2のパス中にワークピースに出入りすることを、本発明者は見いだした。これは、切削エッジに沿う1つのポイントがワークピースに出入りすることが報告される方法と比較して好適である。この出入りするポイントは、より摩耗し易いことを、本発明者は見いだした。
【0011】
第2のパス中、第1及び第2の切削エッジは選択的にアクティブとなり、これにより、切削エッジに沿う摩耗を比較的均一に広げ、これは、ツール寿命に関して好適である。
【0012】
加工方法は、金属切削方法である。CNC旋盤は、旋削に適する、いずれのコンピュータ又はコンピュータによる数値制御加工ツールである。スレッド又はスクリュスレッドは、らせん構造である。スレッドは、スレッドスタートとスレッドエンドとの間を伸長する。スレッドは、一定又は実質的に一定のピッチ、つまり、スレッドが1回転毎に進む回転軸に沿う距離、つまり、単位長さ毎のスレッド数を有する。スレッドは、直線状、つまり、円筒状、又は、テーパ状、つまり、円錐状とすることができる。スレッドは、外部又は内部であってよい。スレッドは、右巻き又は左巻きであってよい。スレッドの断面形状は、スレッドフォームと呼ばれる。スレッドフォーム又はスレッドプロファイルは、例えば、ISO、台形、UNCなどの各種の形状を有してよい。スレッドフォームは好ましくは、第1のスレッドフランクと、第2のスレッドフランクと、クレストと、ルートと、を含む。
【0013】
スレッドは好ましくは、単一スタートスレッドである。金属ワークピースは、例えば、スチール製である。金属ワークピースは好ましくは、少なくとも部分的に円筒状又は実質的に円筒状である。スレッディングツールは好ましくは、ツールボディとスレッディングインサートとを含む。スレッディングインサートは好ましくは、少なくとも部分的に、例えば、焼結炭化物などの耐摩耗材料製である。スレッディングツール、好ましくはスレッディングインサートは、切削エッジを含む。
【0014】
切削エッジは、第1の切削エッジと第2の切削エッジとを含む。これらの第1及び第2の切削エッジは好ましくは、接続切削エッジにより接続されている。接続切削エッジは好ましくは、スレッドルートを切削するよう配置されている。接続エッジは、上面図において凸状であってよい。接続エッジは、上面図において円弧である形状を有してよい。第1の切削エッジは好ましくは、第1のスレッドフランクを切削するよう配置されている。第2の切削エッジは好ましくは、第2のスレッドフランクを切削するよう配置されている。
【0015】
切削エッジの形状は好ましくは、スレッドフォームに対応又は実質的に対応する。
【0016】
スレッディングツール、好ましくはスレッディングインサートは好ましくは、1つ又はそれ以上の歯を含む。
【0017】
金属ワークピースは、1方向にその回転軸を中心に回転する。ここでは、回転軸は好ましくは、金属ワークピースの縦方向の対称軸と一致する。
【0018】
この方法は、スレッディングツールを縦方向に、1セット又は1連のパスにおいて移動させることを含む。スレッドは、1セットのパスを通して形成される。パスの数は好ましくは、3から25、さらにより好ましくは、4から20である。各パスに対して、金属ワークピースから材料が除去される。最後のパスは、スレッドの最終形状、つまり、予め定められたスレッドを生成する。
【0019】
この方法は、ラジアルインフィードやフランクインフィードに、又は、交互のフランクインフィードを用いて使用することができる。
【0020】
縦方向は、金属ワークピースの回転軸と並列している。各パスに対して、スレッディングツールは縦方向に1方向に移動して、金属ワークピースから金属切削を通して金属を除去する。各パスの終わりに、スレッディングツールを引き込むことにより、つまり、スレッディングツールを1方向に、金属ワークピースから離して移動させることにより、スレッディングツールは切削を終える。後続のパスの前に、スレッディングツールは縦方向に、その1方向とは反対の方向に、切削をすることなく移動する。
【0021】
各パスにおいて、スレッディングツールは、スレッドスタートからスレッドエンドまで、又は、スレッドスタート付近の位置からスレッドエンド付近の位置まで移動する。換言すると、スレッディングツールは、スレッドスタート付近で切削に入り、スレッドエンド付近で切削を終える。このコンテキストにおける付近とは、スレッドスタートから1回転以内と理解される。
【0022】
スレッドが外部スレッドであれば、これらのパスは、回転軸に徐々に近づく。換言すると、第1のパス中、スレッディングツールは平均して、第2のパス中のそれと比較して、回転軸からより長い半径方向の距離にある。最後のパス中、スレッディングツールは平均して、最後から2番目のパス中のそれと比較して、回転軸からより短い半径方向の距離にある。
【0023】
スレッディングツールを縦方向に、つまり、Z軸に沿って移動させることは、縦方向のフィードと呼ばれる。縦方向のフィードは好ましくは、すべてのパス中、平均して一定である、つまり、同じ平均値を有する。この平均値は好ましくは、スレッドのピッチと等しい。最後のパス中の縦方向のフィードは一定である、つまり、一定値を有する。
【0024】
第1のパス中、スレッディングツールは、半径方向に第1の振動数にて揺動する。この揺動は好ましくは、周期的な揺動であり、周期的な波形、例えば、三角波又は正弦波などを有する。この波形は、山と谷を含む。スレッディングツールのこの揺動は、山と谷の間を揺動する。スレッドが外部スレッドであれば、これらの山は半径方向に外側にあり、これらの谷は半径方向に内側にある。
【0025】
第1のパス中、スレッディングツールは、第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の前方への運動と、第2の半径方向の距離と第1の半径方向の距離との間の後方への運動と、を行う。この前方への運動は、スレッドが外部スレッドであれば、回転軸に向かう。一方で、この前方への運動は、スレッドが内部スレッドであれば、回転軸から離れる。
【0026】
第1の振動数は好ましくは、一定である。振動数は、単位時間又は時間の単位毎の1回の揺動を意味する。例えば、1回の揺動が2s、つまり、2秒を要するのであれば、振動数は0.5s-1である。
【0027】
好ましくは、第1のパス中、スレッディングツールは、金属ワークピースの1回転毎に1回、つまり、1周期と、金属ワークピースの4回転毎に1回と、の間で揺動する。
【0028】
さらにより好ましくは、第1のパス中、スレッディングツールは、金属ワークピースの2回転毎に1回、つまり、1周期揺動する。1周期は、第1の半径方向の距離にて開始して、第2の半径方向の距離まで移動して、第1の半径方向の距離まで戻るものと理解される。
【0029】
その回転軸を中心とする金属ワークピースの1回転に対する時間は好ましくは、1回の揺動に対する時間と等しい、若しくは、その倍数、又は、整数により除算される1回の揺動に対する時間と等しい。
【0030】
スレッディングツールの揺動は半径方向のものであり、スレッディングツールが第1のパス中、最後のパスからの第1の半径方向の距離と、最後のパスからの第2の半径方向の距離と、の間を移動するようになっている。この第1の半径方向の距離は山に対応して、この第2の半径方向の距離は谷に対応する。これらの距離は、最後のパスからのものである。第1のパス中の揺動の山と山の間の振幅は、第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の差と等しい。スレッドが直線状又はテーパ状であるかに関わらず、これらの半径方向の距離は、金属ワークピースの回転軸に鉛直する方向にある。各揺動パス中の揺動は、スレッディングツールが繰り返し金属ワークピースとかみ合い、そしてそのかみ合いから外れ、切り屑を作り出すようになっている。
【0031】
第1のパス中の揺動は、切削の深さ又はインフィードが第1のパス中に変化することを意味する。スレッディングツールの切削エッジのアクティブな部分が、第1のパス中に変化する。
【0032】
好ましくは、スレッドが外部スレッドであれば、第1の半径方向の距離は、金属ワークピースの半径より長い。換言すると、好ましくは、第1のパスの軌跡が、金属ワークピースの周面又は外面と交差する。
【0033】
したがって、第1のパスは好ましくは、断続する切削である、つまり、切削エッジが、断続してアクティブである、つまり、金属を断続して切削する。この効果は、第1のパス中、切り屑をより短くすることができることである。
【0034】
第1のパス中のスレッディングツールの運動はしたがって、2つの成分を含む。1つの縦方向の成分は、スレッディングツールが縦方向のZ軸に沿って又はこれと並列に1方向に移動するものであり、1つの半径方向の成分は、スレッディングツールが半径方向に、回転軸に鉛直して揺動するものである。
【0035】
第1のパス後、スレッディングツールは切削をすることなく、第1のパスとは縦方向に反対に、縦方向に1方向に移動する。
【0036】
第2のパス中、スレッディングツールは半径方向に第2の振動数にて揺動して、この第2の振動数は、この第1の振動数とは異なり、さらにより好ましくは、この第1の振動数より高く、これにより、第2のパス中の切り屑の長さをさらに短くする。第2の振動数は好ましくは、第1の振動数の倍数である。
【0037】
好ましくは、第2のパス中、スレッディングツールは、金属ワークピースの1回転毎に1回、つまり、1周期揺動する。
【0038】
スレッディングツールの揺動は、スレッディングツールが、最後のパスからの第3の半径方向の距離と第4の半径方向の距離との間を移動するようになっている。第2のパス中、スレッディングツールは縦方向に、第1のパスに対するものと同じ方向であるZ軸に沿う方向に移動する。
【0039】
第3の半径方向の距離は、第4の半径方向の距離より長い。第3の半径方向の距離は好ましくは、スレッドが外部スレッドであれば、金属ワークピースの外面又は周面より短い。
【0040】
第1の半径方向の距離は第3の半径方向の距離より長く、第2の半径方向の距離は第4の半径方向の距離より長い。換言すると、第2のパスは、スレッドが外部スレッドであれば、平均して、第1のパスのそれよりも小さい直径にある。
【0041】
第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の差、つまり、半径方向の距離は好ましくは、第3の半径方向の距離と第4の半径方向の距離との間の差とは異なる。
【0042】
第2のパスの軌跡は、第1のパスの軌跡と交差する。好ましくは、第2のパスの各期間に対して、つまり、第2のパスの各揺動に対して、第2のパスの軌跡は第1のパスの軌跡と2回交差する。そのような場合では、第2のパスの軌跡は、各切削を終えて切削に入るシーケンスが、第1のパス中のスレッディングツールの後方への運動又は第1のパス中のスレッディングツールの前方への運動に対応するようになっている。換言すると、交差それぞれの隣接するペアのそれぞれは双方とも、第2の半径方向の距離に対応するZ軸に沿う最も近い又は隣接するポイントとの関連で、縦又はZ軸に沿う同じ側にある。
【0043】
第2のパスの軌跡は好ましくは、前方への運動中に1回、そして後方への運動中に1回交差する。ここでは、後方及び前方はそれぞれ、回転軸との関連で反対の方向である。1つの交差は、切削の終了又は切削の開始を表す。
【0044】
好ましくは、第2のパスの軌跡が第1のパスの軌跡の半径方向に下にある時間又は距離は、スレッドが外部スレッドであれば、第2のパスの軌跡が第1のパスの軌跡の半径方向に上にある時間又は距離より長い。外部スレッドについて、半径方向に上とは、半径方向に外向き、又は、半径方向の距離が長いことを意味し、半径方向に下とは、半径方向に内向き、又は、半径方向の距離が短いことを意味する。
【0045】
最後のパス中、スレッディングツールは直線的に、つまり、揺動なく半径方向に移動する。この直線運動は、スレッドが円筒状スレッドであれば、回転軸と並列する。最後のパス中の縦方向のフィードは、スレッドのピッチと等しい。最後のパスは、スレッドの最終形状を形成する。
【0046】
1つの実施形態によると、この方法は、第2の振動数を第1の振動数より2倍又は実質的に2倍大きく設定することをさらに含む。
【0047】
換言すると、第2の振動数は第1の振動数の2倍である。
【0048】
これは、第2のパス中により短い切り屑をもたらす。なぜなら、切り屑の長さは、振動数が増えると短くなるからである。切り屑は、インサートが切削を完全に終える度に中断する。第2のパス中、インサートは揺動毎に、1回切削を終え、1回切削に入る。換言すると、第2のパスの軌跡は、第1のパスの軌跡と揺動毎に2回交差する。これは、第2のパス中に短い切り屑をもたらす。なぜなら、切り屑の長さは、各揺動に対して切り屑が中断するのであれば、振動数が増えるほど短くなるからである。
【0049】
1つの実施形態によると、この方法は、第2のパス中の揺動の位相を、第4の半径方向の距離又は複数の距離が、第1及び第2の半径方向の距離と、Z軸に沿って一致するように設定することをさらに含む。
【0050】
そのような方法により、インサートの摩耗が、第2のパス中に第1及び第2の切削エッジの双方に対して、より均等に分散されて、これにより、ツール寿命が伸びる。
【0051】
このコンテキストにおける一致は、Z軸に沿う一致、つまり、縦方向の一致と理解することができる。換言すると、第2のパスの、第3の半径方向の距離により画定される山は、第1のパスの隣接する山と谷との間の縦方向の途中にある一方で、第1のパスの山は第1の半径方向の距離により画定されて、第1のパスの谷は第2の半径方向の距離により画定される。
【0052】
1つの実施形態によると、この方法は、第3のパス中、スレッディングツールを半径方向に第3の振動数にて揺動させて、スレッディングツールが第5の半径方向の距離と第6の半径方向の距離との間を移動するようにすることと、ここで、第5の半径方向の距離は第6の半径方向の距離より長くて第3の半径方向の距離より短く、第6の半径方向の距離は第4の半径方向の距離より短く、第3の振動数を第2の振動数とは異ならせて設定することと、第5の半径方向の距離を第4の半径方向の距離より長く設定することと、第3のパスをアレンジして、第3のパスの各揺動に対して、第3のパスの軌跡が第2のパスの軌跡と2回以上交差するようにすることと、第3のパスの振動数を、第2のパスの振動数より少なく、又は、第1のパスの振動数より少なく設定することと、をさらに含む。
【0053】
そのような方法により、揺動の振動数を、振動数が連続して増える方法と比較して、相対的に少なく設定することができ、これにより、CNCマシンの高振動数制御及び/又はメカニクスに関するマシンの制限又は問題を回避する。
【0054】
そのような方法により、切り屑を第3のパス中に中断させることができる。
【0055】
第3のパス中、スレッディングツールは半径方向に第3の振動数にて揺動する。この第3の振動数は好ましくは、第2の振動数とは異なる。好ましくは、第3の振動数は、第1の振動数と等しい又は実質的に等しい。好ましくは、第3の振動数は第2の振動数より少ない。第3の振動数は好ましくは、第2の振動数の半分である。スレッディングツールの揺動は、スレッディングツールが、最後のパスから第5の半径方向の距離と第6の半径方向の距離との間を移動するようになっている。第3のパスは、最後から2番目のパスであってもよいし、そうでなくともよい。
【0056】
第3のパス中、スレッディングツールは縦方向に、第1及び第2のパスに対するものと同じ方向であるZ軸に沿う方向に移動する。
【0057】
第5の半径方向の距離は、第6の半径方向の距離より長い。
【0058】
第5の半径方向の距離は、第3の半径方向の距離未満である。
【0059】
第6の半径方向の距離は、第4の半径方向の距離未満である。
【0060】
第3のパスの軌跡は、第2のパスの軌跡と交差する。好ましくは、第3のパスの各期間に対して、第3のパスの軌跡は第2のパスの軌跡と2回交差する。好ましくは、第3のパスの軌跡が第2のパスの軌跡の下にある時間又は距離は、第3のパスの軌跡が第2のパスの軌跡の上にある時間又は距離より長い。
【0061】
スレッディングツールは、第5の半径方向の距離と第6の半径方向の距離との間の前方への運動と、第6の半径方向の距離と第5の半径方向の距離との間の後方への運動と、を行う。
【0062】
1つの実施形態によると、この方法は、最後の揺動パスを、すべての以前の揺動パスのそれらより多い振動数を有するように設定することをさらに含む。
【0063】
そのような方法により、スレッドのルート付近の切り屑を短くすることができる。これは好適である。なぜなら、切り屑の問題が生じる可能性は、ルート付近でより高くなるからである。
【0064】
最後の揺動パスは、最後から2番目のパスである。最後から2番目のパス中、スレッディングツールは半径方向に、最後のパスから外側の半径方向の距離と内側の半径方向の距離との間を揺動する。ここで、この内側の半径方向の距離は、ゼロ、又は、第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の差の半分未満である。
【0065】
換言すると、最後から2番目のパス中、スレッディングツールは半径方向に、最後のパスから2つの半径方向の距離の間を揺動する。ここで、最後のパスに半径方向に最も近い上記半径方向の距離の半径方向の距離は、ゼロである、つまり、最後のパスと交差する、又は、第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の差の半分未満である。好ましくは、この半径方向の距離は、0.10mm未満、さらにより好ましくは、0.06mm未満である。
【0066】
換言すると、好ましくは、最後から2番目のパス中、スレッディングツールは半径方向に揺動して、最後から2番目のパスの軌跡が、最後のパスの軌跡と交差又は実質的に交差するようになる。実質的にとは、このコンテキストでは、0.10mm内、さらにより好ましくは、0.06mm内と理解されるべきである。
【0067】
これにより、切り屑の制御を、最後から2番目のパスと最後のパスとの双方に対して、さらに改善することができる。
【0068】
最後から2番目のパスは、第3のパスであってよい。代替的に、最後から2番目のパスは、第4のパス、第5のパス、又は、さらに上のパスであってよい。最後から2番目のパスは、最後のパスの直前のパスである。
【0069】
好ましくは、第2の半径方向の距離は、第5の半径方向の距離より長い。
【0070】
好ましくは、最後から2番目のパス中の揺動の振動数は、第1のパス中の揺動の振動数の8倍以下である。さらにより好ましくは、最後から2番目のパス中の揺動の振動数は、第1のパス中の揺動の振動数の5倍未満である。これは特に、揺動パス数が多い場合、例えば、3回以上又は5回以上の揺動パスの場合に好適である。特に、幾何学級数的に増える振動数と比較した場合に好適である。そのように、この方法は、より多くのタイプのCNCマシンに使用されてよい。なぜなら、CNCマシンのすべてが、多振動数の半径方向の揺動が可能なわけではないからである。振動数を相対的に少なく維持すれば、CNC旋盤の可動部品が損傷するリスクが減ることを、本発明者達は認識している。
【0071】
すべての揺動パスに対する山と山の間の振幅は好ましくは、1.0mm未満である。換言すると、第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の差は好ましくは、1.0mm未満である。好ましくは、すべての揺動パスは、最後のパスを除くすべてのパスである。
【0072】
山と山の間の振幅が相対的に低ければ、CNC旋盤の可動部品が損傷するリスクが減ることを、本発明者は認識している。
【0073】
1つの実施形態によると、この方法は、第1のパスに続くすべての揺動パスに対する振動数を、第1のパスの振動数の4倍以下に設定することをさらに含む。
【0074】
そのような方法により、最大振動数を相対的に少なく設定することができ、これにより、CNC旋盤の可動部品が損傷するリスクが減る。
【0075】
1つの実施形態によると、この方法は、最後から2番目のパス中、スレッディングツールを、最後のパスから外側の半径方向の距離と内側の半径方向の距離との間で揺動させることをさらに含み、ここで、この内側の半径方向の距離は、ゼロ、又は、第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の差の半分未満である。
【0076】
そのような方法により、最後のパス中の切り屑の制御が改善される。
【0077】
最後から2番目のパスは、第3のパス又はさらに上の順位のパスであってよい。第5の半径方向の距離は第6の半径方向の距離より長く、第5の半径方向の距離は第3の半径方向の距離未満であり、第6の半径方向の距離は第4の半径方向の距離未満である。
【0078】
1つの実施形態によると、この方法は、最後から2番目のパスに対する振動数を、第1のパスの振動数より多く、そして、第2のパスの振動数より多く設定することをさらに含む。
【0079】
そのような方法により、最後から2番目のパス中の切り屑がより短くなる。これは好適である。なぜなら、切り屑の問題が生じる可能性は、スレッドのルート付近でより高くなるからである。
【0080】
1つの実施形態によると、第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の差は、第3の半径方向の距離と第4の半径方向の距離との間の差とは異なる。
【0081】
そのような方法により、切り屑のブレイキング又は切り屑の制御及び/又はツール寿命がさらに改善される。
【0082】
換言すると、第1及び第2のパス中の揺動の振幅が異なる。好ましくは、第1のパス中の揺動の振幅は、第2のパス中のそれより長い。これは、第1のパス中のすべての揺動中にワークピースを退出する機会を増やすために好適である。外面は、その直径が不均一であってよい。
【0083】
換言すると、第1のパス中の揺動の山と山の間の振幅は、第2のパス中の揺動の山と山の間の振幅とは異なる。好ましくは、第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の差は、第3の半径方向の距離と第4の半径方向の距離との間の差より小さい。換言すると、好ましくは、第1のパス中の揺動の山と山の間の振幅は、第2のパス中の揺動の山と山の間の振幅より小さい。
【0084】
好ましくは、第5の半径方向の距離と第4の半径方向の距離との間の差は、第3の半径方向の距離と第5の半径方向の距離との間の差より小さい。
【0085】
1つの実施形態によると、第1の半径方向の距離と第3の半径方向の距離との間の差は、第3の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の差より小さい。
【0086】
そのような方法により、切り屑のブレイキング又は切り屑の制御及び/又はツール寿命がさらに改善される。
【0087】
1つの実施形態によると、第3の振動数は、第1の振動数と同じ又は実質的に同じである。
【0088】
好ましくは、第1及び第3のパスは同位相にある、つまり、位相シフトがない。
【0089】
1つの実施形態によると、第2の半径方向の距離と第6の半径方向の距離とは、縦方向に一致又は実質的に一致する。
【0090】
そのような方法により、切り屑のブレイキング又は切り屑の制御及び/又はツール寿命がさらに改善される。
【0091】
換言すると、第1のパス中の揺動の谷は、第1のパスの谷と縦方向に一致する。
【0092】
好ましくは、第1のパスと第3のパスとは、同じ又は実質的に同じ振動数を有する。好ましくは、第1のパスと第3のパスとの間には位相シフトがない、つまり、位相シフトがゼロ又は実質的にゼロである。縦方向はZ方向である。
【0093】
1つの実施形態によると、すべてのパスに対して、スレッディングツールは、縦方向に、0.5から3.0mm/回転である縦方向の送り速度にて動かされる。
【0094】
そのような方法により、0.5から3.0mmのピッチを有するスレッドを、より効率的に加工することができる。
【0095】
好ましくは、すべてのパスに対して、縦方向の送り速度は同じである。換言すると、好ましくは、縦方向の送り速度は、すべてのパスに対して同じである一定値を有する。この値は、スレッドのピッチと等しい。縦方向は、Z軸に沿う、又はこれと並列する。
【0096】
1つの実施形態によると、スレッディングツールは、スレッディングインサートとインサートシートとを含み、ここで、スレッディングインサートは、上面と底面とを含み、上面と底面とは、側面により接続されており、第1の切削エッジと第2の切削エッジとは、上面と側面との間の境界に形成されており、底面は、インサートシートにおいて形成された、対応する構造との接触のためのかみ合い手段を含む。
【0097】
そのような方法により、加工した表面の表面品質に顕著な改善が見られる。そのような方法により、インサートが動くリスクが減る。第1のパスを除くすべての揺動パスに対して、第1及び第2の切削エッジが選択的に切削にあり、切削力の方向における変動をもたらす。これは、インサートが動くリスクと、表面品質が低品質となるリスクと、を増やす。インサートの底面におけるかみ合い手段は、このリスクを減らす。側面などの他のかみ合い面があってよい。底面が平らである、及び/又は、接触面が側面にのみ位置するスレッディングインサートは、ここに説明するこの方法を使用する際に、スレッドの表面品質が低品質となるリスクを増やすことが顕著に見い出された。
【0098】
スレッディングインサートは好ましくは、少なくとも部分的に、例えば、焼結炭化物などの耐摩耗材料製である。スレッディングインサートは、切削エッジを含む。切削エッジの形状は好ましくは、スレッドフォームに対応又は実質的に対応する。上面は、すくい面を含む。切削エッジは、上面と側面との間の境界において形成される。側面は、逃げ面を含む。上面は、好ましくは、1つ又はそれ以上の突起及び/又は凹みの形態の切り屑ブレイキング手段又は切り屑形成手段を、好ましくは含む。
【0099】
スレッディングインサートの底面は、インサートポケットとしても知られる、インサートシートにおいて形成された、対応するかみ合い手段、つまり、対応する構造と接触又は協働するための、かみ合い手段を含む。このかみ合い手段は、インサートシートに載置された際のスレッディングインサートの動き、特に回転を防止する。
【0100】
スレッディングインサートは好ましくは、例えば、スクリュ、ボルト、又はトップクランプなどのクランピング部材を用いてインサートシートに載置可能である。スレッディングインサートは好ましくは、スクリュ又はボルトのための貫通孔を含んでよい。ここで、この貫通孔は、スレッディングインサートの上面と底面との間を伸長する。
【0101】
スレッディングインサートの底面において形成されたかみ合い手段は、例えば、1つ又はそれ以上の溝などの1つ又はそれ以上のキャビティの形態であってよい。代替的に、このかみ合い手段は、1つ又はそれ以上の突起の形態であってよい。代替的に、このかみ合い手段は、1つ又はそれ以上の傾斜面の形態であってよい。
【0102】
スレッディングインサートの底面において形成されたかみ合い手段が、溝などのキャビティの形態であれば、インサートシートにおいて形成された、対応するかみ合い手段は好ましくは、リッジなどの突起の形態である。
【0103】
スレッディングツール、特にスレッディングインサートの底と、インサートシートと、は、好ましくは、ここに援用して組み込むEP1935539A1に示して説明するものにしたがって配置されてよい。
【0104】
本発明の1つの態様によると、CNC旋盤により実行されると、このCNC旋盤に、先の方法のいずれかに係るステップを行わせる命令を有するコンピュータプログラムが提供される。
【0105】
このコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム製品は、CAMソフトウェア製品、つまり、コンピュータの支援による製造用のソフトウェアに含まれてよい。このコンピュータプログラムは、USBスティック、CD-ROM、又はデータストリームなどのコンピュータ可読媒体の形態であってよい。
【0106】
この方法は、上述する数より多いパスを含むことができる。例えば、1つの実施形態によると、第4のパス中、スレッディングツールは半径方向に第4の振動数にて揺動して、スレッディングツールが、最後のパスから第7の半径方向の距離と第8の半径方向の距離との間を移動するようになっており、ここで、第7の半径方向の距離は第8の半径方向の距離より長く、第7の半径方向の距離は第5の半径方向の距離未満であり、第8の半径方向の距離は第6の半径方向の距離未満である。
【0107】
そのような方法により、切り屑のブレイキング又は切り屑の制御及び/又はツール寿命がさらに改善される。そのような方法により、より広い断面を有するスレッドを、よりリスクが少ない、及び/又は、より経済的な様式にて加工することができる。
【0108】
好ましくは、第7の半径方向の距離と第8の半径方向の距離との間の差は、第3の半径方向の距離と第4の半径方向の距離との間の半径方向の距離より小さい。換言すると、好ましくは、第4のパスの山と山の間の振幅は、第2のパスの山と山の間の振幅より小さい。好ましくは、第7の半径方向の距離と第8の半径方向の距離との間の差は、第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の差より小さい。換言すると、好ましくは、第4のパスの山と山の間の振幅は、第1のパスの山と山の間の振幅より小さい。好ましくは、第7の半径方向の距離と第8の半径方向の距離との間の差は、第5の半径方向の距離と第6の半径方向の距離との間の差より大きい。換言すると、好ましくは、第4のパスの山と山の間の振幅は、第3のパスの山と山の間の振幅より大きい。好ましくは、第4の振動数は、第2の振動数と同じ又は実質的に同じである。好ましくは、第2のパス中の揺動と第4のパス中の揺動との間には位相シフトがない。
【0109】
好ましくは、第7の半径方向の距離は、第6の半径方向の距離より長い。好ましくは、第4のパスの軌跡は、第3のパスの軌跡と交差する。
【0110】
この方法は、さらに多くのパスを含んでよい。1つの実施形態によると、第5のパス中、スレッディングツールは半径方向に第5の振動数にて揺動して、スレッディングツールが、最後のパスから第9の半径方向の距離と第10の半径方向の距離との間を移動するようになっており、ここで、第9の半径方向の距離は第10の半径方向の距離より長く、第10の半径方向の距離は第8の半径方向の距離未満である。
【0111】
そのような方法により、切り屑のブレイキング又は切り屑の制御及び/又はツール寿命がさらに改善される。そのような方法により、より広い断面を有するスレッドを、よりリスクが少ない、及び/又は、より経済的な様式にて加工することができる。
【0112】
好ましくは、第9の半径方向の距離と第10の半径方向の距離との間の差は、第3の半径方向の距離と第4の半径方向の距離との間の差より小さい。好ましくは、第9の距離と第10の距離との間の差は、第1の半径方向の距離と第2の半径方向の距離との間の差より小さい。好ましくは、第9の半径方向の距離と第10の半径方向の距離との間の差は、第5の半径方向の距離と第6の半径方向の距離との間の差より大きい。好ましくは、第9の半径方向の距離と第10の半径方向の距離との間の差は、第7の半径方向の距離と第8の半径方向の距離との間の差より大きい。
【0113】
第5の振動数は好ましくは、第4の振動数とは異なる。
【0114】
第5のパスが最後から2番目のパスであれば、第5の振動数は好ましくは、第1の振動数より多い。第5のパスが最後から2番目のパスであれば、第5の振動数は好ましくは、第2の振動数より多い。
【0115】
第5のパスが最後から2番目のパスでなければ、第5の振動数は好ましくは、第1の振動数と等しい又は実質的に等しい。
【0116】
本発明の実施形態、及び、添付の図面を参照して、本発明を、以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0117】
図1】金属ワークピースとクランピングジョーとの透視図であり、X軸とZ軸とを示す。
図2】スレッディング方法の側面図であり、4つのパスを示す。
図3図2におけるスレッディングツールの斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態の模式図であり、Z軸方向に見てスレッディングツールがトレースするパスを示す。
図5】本発明の第1の実施形態においてワークピースとの関連でスレッディングツールの位置を示す模式図である。
図6】本発明の第2の実施形態においてワークピースとの関連でスレッディングツールの位置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0118】
図1を参照する。これは、クランピングジョーの形態のクランピング手段22によりCNC旋盤(図示せず)のスピンドル(図示せず)に接続されている金属ワークピース19を示す。クランピング手段22はスピンドルに接続されており、金属ワークピース19の周面21と接触している。スピンドルの回転は、金属ワークピース19の回転を引き起こす。クランピング手段22は、他の構成のものであってよい。金属ワークピース19はこの場合では、円筒状である。しかし、金属ワークピース19は、他の形状を有してよい。X軸とZ軸とが示されている。バーフィーダー機器が構成されているCNC旋盤など、CNC旋盤のタイプによって、金属ワークピース19は、Z軸に移動可能であってよい。他のCNC旋盤については、金属ワークピース19は、Z方向に移動可能でなくともよい。
【0119】
ここで図2を参照する。スレッディングツール1と金属ワークピース19とが示されている。スレッディングツール1は、スレッディングインサート2とツールボディ9とを含む。スレッディングインサート2は、切削エッジ10を含む。金属ワークピース19は1方向20に、その回転軸A1を中心に回転する。CNC旋盤(図示せず)は、スピンドル(図示せず)を含む。金属ワークピース19は、クランピングジョーの形態のクランピング手段22においてクランプされる。らせんスレッドが、金属ワークピース19の周面又は外面21において形成される。図2では、周面21は半径方向に外向きの面である。換言すると、スレッドは雄スレッドである。代替的に、スレッドは雌スレッドであってよい。スレッドフォームは、第1のスレッドフランク15と、第2のスレッドフランク16と、クレスト又はスレッドクレスト17と、ルート又はスレッドルート18と、を含む。
【0120】
スレッドは、複数のパスP1からP4を通して形成される。パスの数は異なってよい。この場合では、第4のパスP4が最後のパスである。各パスP1からP4中、切削エッジ10は金属切削により、金属ワークピース19から金属を除去する。スレッディングツール1は、すべてのパスP1からP4中に同じ縦方向に動かされる。換言すると、スレッディングツール1は、回転軸A1に沿って、及び/又は、Z軸に沿って動かされる。スレッディングツール1は好ましくは、すべてのパス中、同じ又は実質的に同じ縦方向の送り速度、つまり、Z軸に沿って動かされる。この送り速度は、スレッドのピッチと等しい。最後のパスP4を除くすべてのパス中、スレッディングツール1はX軸に沿って揺動する。最後のパスP4中、スレッディングツール1は揺動しない。パスとパスとの間には、スレッディングツール1は、スタート位置、つまり、スレッドが始まる、回転軸A1に沿う位置に引き込まれる。パスP1からP3に対する図2における矢印は、水平である。しかし、詳しくは、これらの矢印は水平ではなく、やや波形状となっている。これらの波形状を、図5及び図6に説明する。
【0121】
CNC旋盤(図示せず)は、コンピュータプログラムにより制御される。このコンピュータプログラムは、読み取り可能で実行可能なコードを含む。このコードは、金属ワークピース19との関連で、及び、金属ワークピース19のその回転軸A1を中心とする回転との関連で、スレッディングツール1の相対運動に関する情報を含む。換言すると、このコンピュータプログラムは、例えば、パス数、半径方向の揺動、縦方向の送り速度、及びワークピースの回転などについての命令を含む。
【0122】
図3は、図2におけるスレッディングツール1を示す。スレッディングツール1は、ツールボディ9とスレッディングインサート2とを含む。インサートシート6が、ツールボディ9において形成されている。スレッディングインサート2は、3つの歯を含む。1つの歯のみが、アクティブな状態に載置されている、つまり、その歯がスレッドを切削できるよう載置されている。スレッディングインサート2は、インサートシート6にスクリュ14を用いてクランプされている。スレッディングインサート2はインデックス状にすることが可能であり、120°又は240°回転させて、次の歯をアクティブな位置に設定できるようになっている。各歯は、切削エッジを含む。各切削エッジは、接続切削エッジ13により接続されている第1の切削エッジ11と第2の切削エッジ12とを含む。接続切削エッジ13は、スレッドルートを切削するよう配置されている。
【0123】
スレッディングインサートの底面は、溝7の形態のかみ合い手段を含む。インサートシートは、リッジ8を含む。1つの溝7の形状は、このリッジ8の形状に対応又は実質的に対応する。
【0124】
図4は、Z軸方向に見て、ワークピース19上の、スレッディングツール1がトレースするパスP1からP4を示す模式図である。切削条件は、スレッディングツール1の揺動数が、第1及び第3のパスP1、P3に対するスピンドルの2回転に対して1回、及び、第2のパス2に対するスピンドルの1回転に対して1回、であるよう適合されている。1回の揺動は、D1からD2へ、そしてD1に戻る第1のパスP1に対するものである。1回の揺動は、D3からD4へ、そしてD3に戻る第2のパスP2に対するものである。1回の揺動は、D5からD6へ、そしてD5に戻る第3のパスP3に対するものである。第4のパスP4は揺動しない。第2のパスP2後、金属ワークピースは、断面において、つまり、Z軸方向に観察して、楕円に近い形状であり、より正確には、切り取られた箇所が2つある楕円として形成されている。
【0125】
第1のパスP1及び第3のパスP3中、金属ワークピース19の各2回転毎に1回のエアカットがある。エアカットは、スレッディングツールが切削を終えてから、スレッディングツールが切削に入るまでである。第1のパスP1の軌跡、つまり、第1のパスP1中にスレッディングツール1がトレースする進路は、金属ワークピース19の周面21と交差する。
【0126】
図5は、スレッドが、例えば図2にあるように、4つのパスP1からP4を通して形成される方法における切削ツールの位置を示すグラフィックを示す。図2における縦軸は、CNC旋盤のX軸、つまり、半径方向である。図2における横軸は、CNC旋盤のZ軸である。横軸はまた、時間と理解することができる。ここに見ることができるように、最後のパスP4を除くすべてのパスP1からP3が、波状に形成されている又は波形状である。パスP1からP4中のスレッディングツールの縦方向の運動、つまり、Z軸に沿う運動が、パスP1からP4を表す線に対する横軸に沿うエクステンションにより表されている。パスP1からP4中の半径方向、つまり、X軸方向のスレッディングツールの揺動が、図5における縦軸、つまり、CNC旋盤のX軸に沿うエクステンションにより表されている。周面21は線として示されている。周面から最後のパスP4までの半径方向の距離はD11として示されている。この半径方向の距離D11は、スレッドルートと周面21との間の半径方向の距離と理解することができる。
【0127】
第1のパスP1中、スレッディングツールは半径方向に、最後のパスP4から第1の半径方向の距離D1と第2の半径方向の距離D2との間を揺動する。これらの第1及び第2の半径方向の距離D1、D2の間の差又は半径方向の距離は、第1のパスP1中の揺動の山と山の間の振幅である。この揺動は第1の振動数F1である。第1のパスP1の周期又は期間がB1であることが示されている。第1のパスP1中、スレッディングツールが揺動毎に1回、切削を終えて切削に入ることが示されている。換言すると、第1のパスP1の軌跡が金属ワークピースの周面21と、各揺動に対して2回、つまり、期間毎に2回交差する。第1のパスP1を表す線が周面21を表す線の上にある時間は、切削エッジが第1のパスP1中にアクティブでない時間、つまり、エアタイムである。
【0128】
第2のパスP2中、スレッディングツールは半径方向に、最後のパスP4から第3の半径方向の距離D3と第4の半径方向の距離D4との間を揺動する。第3の半径方向の距離D3と第4の半径方向の距離D4との間の差又は半径方向の距離は、第2のパスP2中の揺動の山と山の間の振幅である。第2のパスP2の周期又は期間はB2である。周期B2は金属ワークピースの1回転を表す。周期B2は周期B1とは異なる。より具体的には、周期B2は周期B1より短い。換言すると、第2のパスP2中の揺動の振動数は、第1のパスP1中の揺動の振動数より多い。第2のパスP2の軌跡は、第1のパスのそれと各周期に対して2回交差する。第2のパスP2の軌跡、つまり、第2のパスP2中にスレッディングツール1がトレースする進路は、金属ワークピース19の周面21と交差しない。第2のパスP2を表す線が、第1のパスP1を表す線の上にある時間は、切削エッジが第2のパスP2中にアクティブでない時間、つまり、エアタイムである。換言すると、第2のパスP2中、金属ワークピース19の各1回転毎に1回のエアカットがある。第3のパスP3である最後から2番目のパス中、スレッディングツールは半径方向に、最後のパスP4から第5の半径方向の距離D5と第6の半径方向の距離D6との間を揺動する。第6の半径方向の距離D6は、ゼロ、又は、第1の半径方向の距離D1と第2の半径方向の距離D2との間の差の半分未満であり、好ましくは、0.10mm未満である。ゼロ又はゼロ近くまで到達する切削の深さは、後続の最後のパス中、つまり、第4のパスP4中に切り屑が短くなる可能性を改善する。第5の半径方向の距離D5と第6の半径方向の距離D6との間の差又は半径方向の距離は、第3のパスP3中の揺動の山と山の間の振幅である。第3のパスP3の周期又は期間はB3である。周期B3は周期B2とは異なる。より具体的には、周期B3は周期B2より長い。換言すると、第2のパスP2中の揺動の振動数は、第3のパスP3中の揺動の振動数より多い。周期B3は、周期B1と同じ又は実質的に同じである。第3のパスP3の軌跡は、第2のパスP2の軌跡と各周期に対して2回交差する。第3のパスP3を表す線が、第2のパスP2を表す線の上にある時間は、切削エッジが第3のパスP3中にアクティブでない時間、つまり、エアタイムである。図5では、第3の半径方向の距離D3は第4の半径方向の距離D4より長く、第1の半径方向の距離D1は第3の半径方向の距離D3より長く、第2の半径方向の距離は第4の半径方向の距離D4より長く、第5の半径方向の距離D5は第6の半径方向の距離D6より長く、第5の半径方向の距離D5は第3の半径方向の距離D3未満であり、第6の半径方向の距離D6は第4の半径方向の距離D4未満であることを見ることができる。第1のパスP1中、第1及び第2の切削エッジは同時に切削にあり、断面がV形状の切り屑をもたらす。第2のパスP2中、送り方向が右から左であれば、第1の切削エッジが、第2のパスP2の最も低いポイントから、その最も低いポイントの左まで、切削を終えるまで切削にある。切削に入る際には、第2の切削エッジが切削にあり、第2のパスが、D4に対応する、その最も低いポイントに到達するまで切削にあり、ここで、第1の切削エッジが切削に入る。したがって、旋削ツールが第2のパスP2中に切削にある限りは、第1及び第2の切削エッジが選択的にアクティブにある又は切削にある。第3のパスP3中、第1の切削エッジは、D6に対応する右のポイントから、第2のパスP2の軌跡の右の山に垂直に一致する第3のパスP3の軌跡に沿うポイントまで切削にあり、ここで、第2の切削エッジが切削に入る。その後、旋削ツールは切削を終える。切削に入る際には、第1の切削エッジはアクティブであり、第2のパスP2の軌跡の左の山に垂直に一致する第3のパスP3の軌跡に沿うポイントまでアクティブであり、ここで、第2の切削エッジが切削に入る。
【0129】
ここで図6を参照する。図6は、図6におけるそれらを除いて、図5におけるものと同様のグラフィックを表すものを示し、図5では4つのパスのみが示されている一方で、ここでは、6つのパスP1からP6がある。最初の3つのパスP1からP3は、図5におけるそれらと実質的に同じである。第4のパスP4中、スレッディングツールは、第7の半径方向の距離D7と第8の半径方向の距離D8との間を揺動して、これらの半径方向の距離は、最後のパス、これは第6のパスP6である、からの半径方向の距離である。第7の半径方向の距離D7と第8の半径方向の距離D8との間の半径方向の距離は、第4のパスP4中の揺動の山と山の間の振幅である。第4のパスP4の軌跡は、第3のパスP3の軌跡と各周期に対して2回交差する。第4のパスP4の周期はB4であり、これは、第3のパスP3の周期B3とは異なる。第4のパスP4の周期B4は、第2のパスP2の周期B2と等しい又は実質的に等しい。第5のパスP5である最後から2番目のパス中、スレッディングツールは半径方向に、最後のパスP6から第9の半径方向の距離D9と第10の半径方向の距離D10との間を揺動する。第10の半径方向の距離D10は、ゼロ、又は、第1の半径方向の距離D1と第2の半径方向の距離D2との間の差の半分未満であり、好ましくは、0.10mm未満である。最後から2番目のパス、つまり、第5のパスP5中にゼロ又はゼロ近くまで到達する切削の深さは、後続の最後のパス中、つまり、第6のパスP6中に切り屑が短くなる可能性を改善する。第9の半径方向の距離D9と第10の半径方向の距離D10との間の差又は半径方向の距離は、第5のパスP5中の揺動の山と山の間の振幅である。第5のパスP5の周期又は期間はB5である。周期B5は周期B4とは異なる。より具体的には、周期B5は周期B4より短い。換言すると、第5のパスP5中の揺動の振動数は、第4のパスP4中の揺動の振動数より多い。第5のパスP5の軌跡は、第4のパスP4の軌跡と各周期に対して2回交差する。第5のパスP5を表す線が、第4のパスP4を表す線の上にある時間は、切削エッジが第5のパスP5中にアクティブでない時間、つまり、エアタイムである。
【0130】
第6のパスP6である最後のパス中、スレッディングツールは、揺動なく半径方向、つまり、X方向に動かされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】