(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-19
(54)【発明の名称】液化及び過冷却システム並びに方法
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20230512BHJP
F17C 7/04 20060101ALI20230512BHJP
F25J 1/00 20060101ALI20230512BHJP
F25J 5/00 20060101ALI20230512BHJP
F28F 9/00 20060101ALI20230512BHJP
F28D 7/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
F17C7/04
F25J1/00 B
F25J5/00
F28F9/00 B
F28D7/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557871
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2021025117
(87)【国際公開番号】W WO2021204420
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599067318
【氏名又は名称】クライオスター・ソシエテ・パール・アクシオンス・サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルクッチーリ、フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ブラナー、ニコラス
【テーマコード(参考)】
3E172
3L103
4D047
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB03
3E172AB04
3E172BA06
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3L103AA35
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4D047AA09
4D047AA10
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4D047CA11
4D047CA16
4D047CA17
4D047DA17
4D047EA00
(57)【要約】
所与の圧力で異なる飽和温度を有する異なる第1及び第2のガスを液化するための、特にボイルオフガス管理システムのための液化及び過冷却システムが提供される。システムは、第1及び第2のガスの異なる液化温度に対応する第1及び第2の低温で冷媒流体を選択的に提供するように動作可能な冷却装置(10)と、過冷却設備(50)であって、冷媒流体が低温で過冷却設備に供給されるように、冷却装置に結合されており、液化及び/又は過冷却されるガスと冷媒流体との間で熱交換するための第1の過冷却器(70)及び第2の過冷却器(72)を有する、過冷却設備と、を備え、液化及び/又は過冷却されるガスが第1のガスである場合、冷却装置は、第1の低温で冷媒流体を提供するように構成されており、過冷却設備は、第1の過冷却器(70)を通して冷媒流体及びガスを案内するように構成されており、液化及び/又は過冷却されるガスが第2のガスである場合、冷却装置は、第2の低温で冷媒流体を提供するように構成されており、過冷却設備は、第2の過冷却器(72)を通して冷媒流体及びガスを案内するように構成されている。対応する方法及びボイルオフガス管理システムが、更に提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の圧力で異なる飽和温度を有する異なる第1及び第2のガスを液化及び/又は過冷却するための、特にボイルオフガス管理システムのための液化及び過冷却システムであって、
前記第1及び第2のガスの異なる液化温度に対応する第1及び第2の低温で冷媒流体を選択的に提供するように動作可能な冷却装置(10)と、
過冷却設備(50)であって、前記冷媒流体が低温で前記過冷却設備に供給されるように、前記冷却装置に結合されており、液化及び/又は過冷却されるガスと前記冷媒流体との間で熱交換するための第1の過冷却器(70)及び第2の過冷却器(72)を有する、過冷却設備と、
を備え、
前記液化及び/又は過冷却されるガスが前記第1のガスである場合、前記冷却装置(10)が、前記第1の低温で前記冷媒流体を提供するように構成されており、前記過冷却設備(50)が、前記第1の過冷却器(70)を通して前記冷媒流体並びに前記液化及び/又は過冷却されるガスを案内するように構成されており、
前記液化及び/又は過冷却されるガスが前記第2のガスである場合、前記冷却装置(10)が、前記第2の低温で前記冷媒流体を提供するように構成されており、前記過冷却設備(50)が、前記第2の過冷却器(72)を通して前記冷媒流体並びに前記液化及び/又は過冷却されるガスを案内するように構成されている、
液化及び過冷却システム。
【請求項2】
マルチストリーム熱交換器(100)であって、前記マルチストリーム熱交換器(100)内に、前記冷却装置(10)の熱交換器が形成されており、かつ前記第1の過冷却器(70)及び前記第2の過冷却器(72)が別個の導管によって形成されている、マルチストリーム熱交換器(100)を備える、請求項1に記載の液化及び過冷却システム。
【請求項3】
前記過冷却設備(50)が、熱交換器によって形成された複合過冷却器(202)を含み、前記第1及び第2の過冷却器が、前記熱交換器内に別個の導管によって形成されている、請求項1に記載の液化及び過冷却システム。
【請求項4】
前記第1の過冷却器(70)及び前記第2の過冷却器(72)が、別個の熱交換器(302、304)によって形成されている、請求項1に記載の液化及び過冷却システム。
【請求項5】
前記第1の過冷却器(70)及び/又は前記第2の過冷却器(72)が、プレートフィン熱交換器によって形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の液化及び過冷却システム。
【請求項6】
前記冷媒流体が、ヘリウム、窒素、メタン、エタン、ネオン、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の液化及び過冷却システム。
【請求項7】
前記第1の低温と前記第2の低温との間の差が、30℃~100℃の範囲、より好ましくは40℃~80℃の範囲、最も好ましくは50℃~70℃の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液化及び過冷却システム。
【請求項8】
前記第1の低温が、-120℃~-85℃の範囲、好ましくは-115℃であり、前記第2の低温が、-183℃~-155℃の範囲、好ましくは-178℃である、請求項1~7のいずれか一項に記載の液化及び過冷却システム。
【請求項9】
前記第1のガスが、エタンであり、前記第2のガスが、天然ガスである、請求項1~8のいずれか一項に記載の液化及び過冷却システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の液化及び過冷却システム(412)を備えるボイルオフガス管理システム(400)であって、前記液化及び過冷却システムが、ボイルオフガスを再液化するように構成されている、ボイルオフガス管理システム(400)。
【請求項11】
所与の圧力で異なる飽和温度を有する異なる第1及び第2のガスを液化及び過冷却する方法であって、
前記第1及び第2のガスの異なる液化温度に対応する第1及び第2の低温で冷媒流体を選択的に提供するように動作可能な冷却装置(10)を用意することと、
前記液化及び/又は過冷却されるガスが前記第1のガスである場合、前記冷却装置(10)を動作させて前記第1の低温で前記冷媒流体を提供すること、かつ前記液化及び/又は過冷却されるガスを第1の過冷却器(70)を通して案内して前記冷媒流体と熱交換することと、
前記液化及び/又は過冷却されるガスが前記第2のガスである場合、前記冷却装置(10)を動作させて前記第2の低温で前記冷媒流体を提供すること、かつ前記液化及び/又は過冷却されるガスを第2の過冷却器(72)を通して案内して前記冷媒流体と熱交換することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスの貯蔵及び輸送に関する。具体的には、本発明は、同じ施設で選択的に貯蔵及び/又は輸送される異なる液化ガスのボイルオフガスの管理並びに再液化及び過冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
液化エタン又は液化天然ガス(liquefied natural gas;LNG)などの液化ガスは、典型的には、浮遊輸送船などの液化ガス運搬装置によって輸送されているときに、飽和状態で大気タンクに貯蔵される。タンク内で、液化ガスは、避けられないタンクの不完全な断熱に起因して蒸発する。この蒸発ガスは、ボイルオフガス(boil off gas;BOG)として知られている。ガス運搬装置のエンジンに電力を供給するためにBOGの一部を使用することが可能であるが、通常は、全てのBOGをこの方法で利用することができるわけではない。したがって、液化ガス運搬装置は、タンク内の圧力の蓄積又は大気中へのBOGの放出を回避するために、BOGを再液化するためのBOG管理システムを有する。そのようなBOG管理システムは既知である。例えば、米国特許出願公開第20140102133(A1)号を参照されたい。
【0003】
異なるガスでは、大気タンク内に飽和状態で貯蔵された液化ガスの温度に大きな差がある。例えば、液化エタン用のタンク内の温度レベルは、約-90℃であるが、LNG用のタンク内の温度レベルは、約-160℃である。既知のBOG管理システムは、一般に、大気圧での飽和温度に大きな差を有し、かつ再液化に使用される冷媒流体の低温に大きな差を必要とする、異なるガスを再液化することができない。
【0004】
現在、最大180,000m3を輸送することができる大型ガス運搬装置を構築することが計画されている。例えば、米国のシェールガスからの副生成物である余剰エタンは、北米からヨーロッパまでそのような運搬装置によって輸送される。しかしながら、特に不確かな市況に備え、より高い柔軟性を提供するために、その構築に大きな投資を必要とするエタン運搬装置はまた、LNGも輸送できることが望ましい。
【0005】
したがって、本発明の目的は、異なる温度レベルで効率的に機能することができる液化及び過冷却システムを提供することであり、特に、この液化及び過冷却システムは、ボイルオフガスを再液化及び過冷却するためのボイルオフガス管理システムでの使用に適しているべきである。
【発明の概要】
【0006】
独立請求項による、所与の圧力で異なる飽和温度を有する異なる第1及び第2のガスを液化及び過冷却するための液化及び過冷却システム、ボイルオフガス管理システム、並びに所与の圧力で異なる飽和温度を有する異なる第1及び第2のガスを液化及び過冷却する方法が提供される。従属請求項及び以下の説明は、好ましい実施形態に関する。
【0007】
所与の圧力で異なる飽和温度を有する異なる第1及び第2のガスを液化するための液化及び過冷却システムは、第1及び第2のガスの異なる液化温度に対応する第1及び第2の低温で冷媒流体を選択的に提供するように動作可能な冷却装置と、過冷却設備であって、冷媒流体が低温で過冷却設備に供給されるように、冷却装置に結合されており、液化及び/又は過冷却されるガスと冷媒流体との間で熱交換するための第1及び第2の過冷却器を有する、過冷却設備と、を備え、液化及び/又は過冷却されるガスが第1のガスである場合、冷却装置は、第1の低温で冷媒流体を提供するように構成されており、過冷却設備は、冷媒流体並びに液化及び/又は過冷却されるガスを第1の過冷却器を通して案内するように構成されており、液化及び/又は過冷却されるガスが第2のガスである場合、冷却装置は、第2の低温で冷媒流体を提供するように構成されており、過冷却設備は、冷媒流体並びに液化及び/又は過冷却されるガスを第2の過冷却器を通して案内するように構成されている。「液化温度」という用語は、所与の圧力でガスを液化するために必要な極低温度を示すために本明細書で使用される。液化後(又は既に事前の圧縮段階後)、ガスの液体状態が得られ、これは、液化温度を下回って更に冷却することができる、すなわち、過冷却することができる。したがって、一般に、プロセスは、液化及び/又は過冷却を含む。簡単にするために、「液化及び/又は過冷却されるガス」という表現は、この表現の過冷却部分が(再)液化ガスに関するという意味で使用され、すなわち、この表現における「過冷却されるガス」の部分は、(液体状態にある)(再)液化ガスが過冷却される(液化温度を下回って冷却される、凝縮温度を下回って冷却される)ことを意味する。
【0008】
液化及び過冷却システムは、特に、大気温での液体ガス用の貯蔵又は輸送装置のボイルオフガス(BOG)管理システム、すなわち液体ガス用のタンクのBOG管理システムで使用することができる。BOG管理システムでは、ガスは、「再液化」されるが、簡潔にするために、並びに、ガスの以前の状態は本発明を実施するために必須ではないために、「液化される」、「液化する」、及び「液化」という用語が、本出願全体を通して使用される。
【0009】
本発明による液化及び過冷却システムは、特に異なるボイルオフガスの管理のために、有利に、異なるガスの液化に共通の単一の低温生成システム(冷却装置)の使用を可能にする。具体的には、回転機械は、共通であり、冷媒は、共通であり、異なるガス間の切り替えは、オン/オフ弁の単純なセットによって行うことができる。
【0010】
この解決策によれば、2つの異なる過冷却器を提供することにより、異なるガスを液化することを可能にする。液化及び過冷却システムは、2つの状態間で簡単に切り替えることができる。これは、各ガス用の異なる再液化及びBOG管理システムを提供する必要なしに、(例えば、ガス運搬船上の)液体ガス用のタンク施設を異なるガスに使用することができ、過冷却設備のみを変更する必要があることを意味する。
【0011】
好ましくは、第1の過冷却器は、液化及び/又は過冷却される第1のガスと第1の低温にある冷媒流体との間で熱交換するように構成されており、第2の過冷却器は、液化及び/又は過冷却される第2のガスと第2の低温にある冷媒流体との間で熱交換するように構成されている。具体的には、過冷却器は、各ガスに対する個別の温度レベルで大きな熱交換を可能にするように選択又は設計されている。これにより、異なる温度レベルでの動作によって過冷却器(熱交換器)に課せられる機械的制約を克服することができ、すなわち、特定の温度で動作するように設計された熱交換器が、異なる温度で効果的に動作するのに適していない場合があるという問題を克服することができる。第1及び第2の過冷却器は、選択的に使用される。第1及び第2の過冷却器は、実質的に熱交換器であり、以下の、シェルアンドチューブ熱交換器、プレートインシェル熱交換器、又はプレートフィン熱交換器のうちの1つのタイプであってもよく、好ましくは、プレートフィン熱交換器が使用される。
【0012】
一実施形態によれば、液化及び過冷却システムは、マルチストリーム熱交換器を備えることができ、マルチストリーム熱交換器内に、冷却装置の熱交換器が形成されており、かつ第1及び第2の過冷却器が別個の導管によって形成されている。
【0013】
一実施形態によれば、過冷却設備は、熱交換器によって形成された複合過冷却器を含むことができ、第1及び第2の過冷却器が、熱交換器内に別個の導管によって形成されている。
【0014】
一実施形態によれば、第1及び第2の過冷却器は、別個の熱交換器であってもよい。好ましくは、2つの別個の熱交換器は、以下の、シェルアンドチューブ熱交換器、プレートインシェル熱交換器、及びプレートフィン熱交換器のタイプから選択される2つの異なるタイプのものである。
【0015】
一実施形態によれば、第1及び/又は第2の過冷却器は、プレートフィン熱交換器によって形成することができる。
【0016】
一実施形態によれば、冷媒流体は、ヘリウム、窒素、メタン、エタン、ネオン、又はそれらの組み合わせから選択することができる。一実施形態によれば、第1の低温は、-120℃~-85℃の範囲、好ましくは-115℃であってもよく、第2の低温は、-183℃~-155℃の範囲、好ましくは-178℃であってもよい。好ましくは、第1の低温と第2の低温との間の差は、少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃、最も好ましくは少なくとも50℃である。好ましくは、第1の低温と第2の低温との間の差は、30℃~100℃の範囲、より好ましくは40℃~80℃の範囲、最も好ましくは50℃~70℃の範囲である。
【0017】
一実施形態によれば、第1のガスは、エタンであってもよく、第2のガスは、天然ガスであってもよい。同じ原理をアンモニア運搬装置又はLPC運搬装置に適用することができる。
【0018】
ボイルオフガス管理システムは、前述の液化及び過冷却システムのうちの1つを備え、液化及び過冷却システムは、ボイルオフガスを再液化及び/又は過冷却するように構成されている。
【0019】
所与の圧力で異なる飽和温度を有する異なる第1及び第2のガスを液化する方法は、第1及び第2のガスの異なる液化温度に対応する第1及び第2の低温で冷媒流体を選択的に提供するように動作可能な冷却装置を用意することと、液化及び/又は過冷却されるガスが第1のガスである場合、冷却装置を動作させて第1の低温で冷媒流体を提供するようこと、かつ液化及び/又は過冷却されるガスを第1の過冷却器を通して案内して冷媒流体と熱交換することと、液化及び/又は過冷却されるガスが第2のガスである場合、冷却装置を動作させて第2の低温で冷媒流体を提供すること、かつ液化及び/又は過冷却されるガスを第2の過冷却器を通して案内して冷媒流体と熱交換することと、を含む。
【0020】
液化及び過冷却システムに関連して上述した任意の特徴は、本発明による方法にも適用されることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、添付の図面を参照する以降の説明によってより完全に理解することができる。
【
図1】本発明による液化及び過冷却システムの一実施形態の構造及び動作を示す概略図である。
【
図2】本発明による液化及び過冷却システムの別の実施形態の構造及び動作を示す概略図である。
【
図3】本発明による液化及び過冷却システムの更に別の実施形態の構造及び動作を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるボイルオフガス管理システムの概略図である。
【
図5】本発明による液化の方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1では、本発明の第1の実施形態による液化及び過冷却システムの概略図が示されている。液化及び過冷却システムは、(液化及び過冷却システムの冷却サブシステムを形成する)冷却装置10と、(液化及び過冷却システムの熱交換サブシステムを形成する)過冷却設備50と、を備える。冷却装置は、少なくとも2つの異なる温度のそれぞれ、すなわち、第1の低温及び第2の低温で冷媒流体を提供するように動作可能である。一般に、冷却装置は、冷却装置の構造又はタイプ、すなわち、冷媒流体を特定の低温に冷却する冷却装置の能力に依存する、温度範囲内の任意の温度で冷媒流体が提供されるように動作させることができ得る。第1の低温は、第1のガス(例えば、エタン)を液化するために使用される温度に対応し、第2の低温は、第2のガス(例えば、LNG)を液化するために使用される温度に対応する。ガスを液化するために使用される温度はまた、本明細書では液化温度として示される。
【0023】
冷却装置内には、冷媒流体の運転回路12が形成されている。運転回路12は、圧縮セクション、膨張セクション、及び熱交換器セクションを備える。圧縮セクションは、例えば、駆動シャフトを介してモータ20、22、24によって駆動される3つの圧縮機14、16、18によって形成されている。より一般的には、任意の数の圧縮機が使用されてもよく、すなわち、圧縮セクションは、一般に、任意の数の圧縮段階を備えてもよい。圧縮機14、16、18は、遠心圧縮タイプのものであってもよい。圧縮機14、16、18の各々の後に、各圧縮段階の後に冷媒流体を周囲温度に冷却するために、冷却器26、28、30が運転回路12に含まれている。冷却器26、28、30には、矢印32、34、36によって示されるように、導管を介して冷却流体が供給される。例えば、空気、水、又は、海運船舶上では海水を冷却流体として使用することができる。
【0024】
膨張セクションは、膨張タービン38によって形成されており、膨張タービン38は求心膨張タイプであってもよい。より一般的には、膨張セクションが2つ以上の膨張タービンによって形成されることが可能である。膨張タービン38は、モータ24によって駆動され、これは、例えば、
図1に示される実施形態では、圧縮機18を駆動するのと同じモータ24である。膨張タービン38及び圧縮機18は両方とも、効率的な理由から共通の駆動シャフトを介して駆動される。冷媒流体は、運転回路12の一部である出口導管40で膨張タービン38を出る。この時点で(膨張タービン38での膨張の直後に)、冷媒流体は、その最低温度に達している、すなわち、低温に達している。言い換えれば、冷媒流体は、冷却装置によって低温で出口導管40内に提供される。
【0025】
冷却装置10の熱交換器セクションは、熱交換器42によって形成されており、熱交換器42において、圧縮セクションの下流かつ膨張セクションの上流の圧縮された冷媒流体と、膨張セクションの下流かつ圧縮セクションの上流の膨張した冷媒流体との間で熱が交換される。このようにして、冷却器30によって実質的に周囲温度に冷却される圧縮された冷媒流体は、熱交換器42を通って案内される前に、膨張セクション(膨張タービン38)の下流の最低温度にある冷媒流体と熱交換することによって、低温(極低温)に冷却される。異なる実施形態の理解を容易にするために、熱が交換される導管の周りに楕円形の線が描かれており、参照符号がその線に添えられて、対応する熱交換器を示している。これは、冷却装置の熱交換器42、並びに以下に導入される第1の過冷却器70及び第2の過冷却器72の場合である。
【0026】
冷却装置10の特定の構造は、本発明を実施するために必須ではないことに留意されたい。重要な点は、冷媒流体を異なる低温で提供することができるように、冷却装置を動作させることができることである。これは、
図1に示される例示的な実施形態では、適切に、すなわち異なる速度及び電力で圧縮機14、16、18及び膨張タービン38を駆動することによって達成することができる。
【0027】
加えて、冷媒流体が導管を介して熱交換器42をバイパスすることを可能にするバイパス弁44を提供することができる。
【0028】
過冷却設備50では、液化及び/又は過冷却されるガスの流れは、入口52に提供され、冷却するために過冷却設備を通過し、好ましくは流体状態で出口54から過冷却設備を出る。過冷却設備50は、液化及び/又は過冷却されるガス用の2つの異なる流路、第1の流路56及び第2の流路58を有する。液化及び/又は過冷却されるガスが取る流路は、弁をそれに応じて切り替えることによって選択することができる。具体的には、液化及び/又は過冷却されるガスは、弁60、62が開いており、かつ弁64及び66が閉じられているときには、第1の流路56を通って流れる。液化及び/又は過冷却されるガスは、弁64、66が開いており、かつ弁60、62が閉じられているときには、第2の流路58を通って流れる。
【0029】
液化及び/又は過冷却されるガスは、典型的には圧縮形態で提供され、少なくとも部分的に液体状態にあってもよい。具体的には、BOGは、通常、BOG管理システムによって入口52に供給される前に、圧縮段階を通して案内される。
【0030】
第1の流路56では、第1の過冷却器70が提供され、第2の流路58では、第2の過冷却器72が提供される。第1の過冷却器70は、液化及び/又は過冷却される第1のガスと第1の低温にある冷媒流体との間で効率的に熱交換するように構成されている。第2の過冷却器70は、液化及び/又は過冷却される第2のガスと第2の低温にある冷媒流体との間で効率的に熱交換するように構成されている。第1の過冷却器70及び第2の過冷却器72は、熱交換器、好ましくはプレートフィン熱交換器である。
【0031】
図1に示される実施形態に特有であるのは、冷却装置の熱交換器42、第1の過冷却器70、及び第2の過冷却器72が、異なる導管を有する単一のマルチストリーム熱交換器100内に形成されていることである。マルチストリーム熱交換器100は、膨張セクション(膨張タービン38)の下流に設けられており、低温にある冷媒流体が出口導管40によって供給される。マルチストリーム熱交換器100は、2つの導管102、104、冷却装置の熱交換器42を通して冷媒流体を案内する1つの導管102、並びに第1の過冷却器70及び第2の過冷却器72を通して冷媒流体を案内する別の導管104を有する。第1の過冷却器70及び第2の過冷却器72は、マルチストリーム熱交換器100内の異なる導管によって形成されている。マルチストリーム熱交換器100の導管102、104を通る冷媒流体の流れを制御する弁106、108、110、112が設けられている。
【0032】
液化及び/又は過冷却されるガスが第1のガスである場合、冷媒流体は、第1の低温で提供され、ガスは、第1の過冷却器70を形成する、マルチストリーム熱交換器100内の導管を含む第1の流路56を通って案内される。液化及び/又は過冷却されるガスが第2のガスである場合、冷媒流体は、第2の低温で提供され、ガスは、マルチストリーム熱交換器100内の第2の、過冷却器72を形成する導管を含む第2の流路58を通って案内される。両方の場合において、弁108は、開放されているべきであり、この弁108は、第1及び第2の過冷却器72を通って案内される導管104への冷媒流体の流れを制御する。
【0033】
加えて、入口52を出口54と直接接続することを可能にするバイパス弁68を提供することができ、これは、例えば、マルチストリーム熱交換器100のメンテナンスを実行するときに役立つ。
【0034】
明らかに、サージ弁、流量計、圧力センサなどの更なる構造若しくは要素を、運転回路12並びに/又は第1の流路56及び第2の流路58に含めることができる。
【0035】
図2は、本発明の別の実施形態による液化及び過冷却システムを示す。繰り返しを避けるために、
図1に示される実施形態と共通の構造の説明は、以下で繰り返されず、共通の要素は、同じ参照符号で示されている。したがって、特に指示がない限り、
図1の説明は、これらの要素に適用され、差は以下に指摘される。
【0036】
図1の実施形態と
図2の実施形態との間の差は、熱交換器、特に過冷却設備50、具体的には、冷却装置10の熱交換器42並びに過冷却設備50の第1の過冷却器70及び第2の過冷却器72の異なる配置にある。
【0037】
冷却装置の熱交換器42は、通常の対向流熱交換器200によって形成されている。過冷却設備50の第1の過冷却器70及び第2の過冷却器72は、複合過冷却器(複合熱交換器)202として形成されている。複合過冷却器202は、基本的に、第1の過冷却器70及び第2の過冷却器72を構成する熱交換器を組み合わせた熱交換器である。複合過冷却器202は、対向流熱交換器200とは別個であり、すなわち、複合過冷却器202は、過冷却専用である。複合過冷却器202及び対向流熱交換器200への、及びそれらからの冷媒流体の流れを制御するために、いくつかの弁204、206、208が運転回路12内に配置されている。
【0038】
複合過冷却器202は、冷却装置10の膨張セクションと熱交換器セクションとの間、すなわち、膨張タービン38の下流かつ対向流熱交換器200の上流で、運転回路12内に設けられている。冷媒流体は、膨張セクションの出口導管40から弁204を通って、複合過冷却器202の冷媒流体用の単一の入口210に案内される。第1の過冷却器70及び第2の過冷却器72は、複合過冷却器202内の2つの別個の導管によって形成されている。これらの2つの別個の導管は、別の導管によって複合過冷却器202を通って案内される冷媒流体と熱交換するように構成されている。2つの別個の導管は、第1の流路56及び第2の流路58それぞれの一部を形成する。
【0039】
液化及び/又は過冷却されるガスが第1のガスである場合、冷媒流体は、第1の低温で提供され、液化及び/又は過冷却されるガスは、複合過冷却器202内の、第1の過冷却器70を形成する導管を含む第1の流路56を通って案内される。液化及び/又は過冷却されるガスが第2のガスである場合、冷媒流体は、第2の低温で提供され、液化及び/又は過冷却されるガスは、複合過冷却器202内の、第2の過冷却器72を形成する導管を含む第2の流路58を通って案内される。両方の場合において、弁204は、開放されているべきであり、この弁204は、複合過冷却器202の冷媒流体用の入口210への冷媒流体の流れを制御する。
【0040】
図3は、本発明の更に別の実施形態による液化及び過冷却システムを示す。
図2に関連して既に述べたように、繰り返しを避けるために、
図1に示される実施形態と共通の構造の説明は、以下で繰り返されず、共通の要素は、同じ参照符号で示されている。したがって、特に指示がない限り、
図1の説明は、これらの要素に適用され、差は以下に指摘される。
【0041】
図1の実施形態と
図3の実施形態との間の差は、熱交換器、特に過冷却設備50、具体的には、冷却装置10の熱交換器42並びに過冷却設備50の第1の過冷却器70及び第2の過冷却器72の異なる配置にある。
【0042】
冷却装置の熱交換器42は、通常の対向流熱交換器300によって形成されている。過冷却設備の第1の過冷却器70及び第2の過冷却器72は、対向流熱交換器300とも別個の2つの別個の過冷却器(熱交換器)として形成されている。すなわち、第1の過冷却器70は、第1の熱交換器302によって形成されており、第2の過冷却器72は、第2の熱交換器304によって形成されており、第2の熱交換器304は、第1の熱交換器302とは別個である。第1の熱交換器302及び第2の熱交換器304並びに対向流熱交換器300への、及びそれらからの冷媒流体の流れを制御するために、いくつかの弁306、308、310、312、314が運転回路12内に配置されている。
【0043】
第1の熱交換器302及び第2の熱交換器304は、冷却装置10の膨張セクションと熱交換器セクションとの間、すなわち、膨張タービン38の下流かつ対向流熱交換器300の上流で、運転回路12内に並列に設けられている。弁306は、第1の熱交換器302への冷媒流体の流れを制御し、別の弁308は、第2の熱交換器304への冷媒流体の流れを制御する。
【0044】
液化及び/又は過冷却されるガスが第1のガスである場合、冷媒流体は、第1の低温で提供され、液化及び/又は過冷却されるガスは、第1の過冷却器70を形成する、第1の熱交換器302を含む第1の流路56を通って案内される。液化及び/又は過冷却されるガスが第2のガスである場合、冷媒流体は、第2の低温で提供され、液化及び/又は過冷却されるガスは、第2の過冷却器72を形成する第2の熱交換器304を含む第2の流路58を通って案内される。第1の場合(液化及び/又は過冷却される第1のガス)では、第1の熱交換器302への冷媒流体の流れを制御する弁306は、開いており、一方で、第2の熱交換器304への冷媒流体の流れを制御する弁308は、閉じられており、第2の場合(液化及び/又は過冷却される第2のガス)では、その逆である。
【0045】
図4は、液化ガス404のタンク402用の例示的なボイルオフガス(BOG)管理システム400を示す。タンク402では、BOG408は、タンク内に貯蔵された液化ガス404の表面406の上に発生する。BOGは、本発明による液化及び過冷却システム412の入口52に導管を介して送られ、液化及び過冷却システム412は、例えば、
図1~
図3に示される液化及び過冷却システムのうちのいずれか1つであってもよい。液化後、(再)液化及び過冷却されたBOGは、液化及び過冷却システム412の出口54から送り返され、液体形態でタンク402内に再導入される。タンク402と液化及び過冷却システム412の入口52との間に、(再)液化される前にBOGを圧縮する圧縮機410が導管内に(例えば、
図4に示されるように)含まれてもよい。
【0046】
図5は、一実施形態による液化の方法のフローチャートを示す。この方法は、第1及び第2のガスの異なる液化温度に対応する第1及び第2の低温で冷媒流体を選択的に提供するように動作可能な冷却装置を用意するステップ510を含む。冷却装置が第1及び第2の低温で動作することができるため、冷却装置が動作する低温は、どのガスが液化されるかに応じて選択することができる。この選択は、第1又は第2のガスのどちらを液化するかを選択するステップ520で行われる。液化及び/又は過冷却されるガスが第1のガスである場合、方法は、冷却装置を動作させて第1の低温で冷媒流体を提供するステップ530と、液化及び/又は過冷却されるガスを第1の過冷却器を通して案内して冷媒流体と熱交換するステップ540とに続く。一方、液化及び/又は過冷却されるガスが第2のガスである場合、方法は、冷却装置を動作させて第2の低温で冷媒流体を提供するステップ550と、液化及び/又は過冷却されるガスを第2の過冷却器を通して案内して冷媒流体と熱交換するステップ560とに続く。この方法の実施形態では、本発明による方法に適宜適用される、本発明によるシステムの実施形態を参照する。
【0047】
本発明は、前述の明細書の実施形態及び実施例に関して説明されてきたが、本発明の範囲は、本明細書の特定の実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。明示的に述べられていない場合でも、異なる実施形態の要素を組み合わせることができることに留意されたい。
【0048】
参照符号の説明
10 冷却装置
12 運転回路
14 圧縮機
16 圧縮機
18 圧縮機
20 モータ
22 モータ
24 モータ
26 冷却器
28 冷却器
30 冷却器
32 冷却流体の供給
34 冷却流体の供給
36 冷却流体の供給
38 膨張タービン
40 出口導管
42 熱交換器
44 バイパス弁
50 過冷却設備
52 入口
54 出口
56 第1の流路
58 第2の流路
60 弁
62 弁
64 弁
66 弁
68 バイパス弁
70 第1の過冷却器
72 第2の過冷却器
100 マルチストリーム熱交換器
102 導管
104 導管
106 弁
108 弁
110 弁
112 弁
200 冷却装置の対向流熱交換器
202 過冷却設備の複合過冷却器
204 弁
206 弁
208 弁
210 冷媒流体用の入口
300 冷却装置の対向流熱交換器
302 第1の熱交換器
304 第2の熱交換器
306 弁
308 弁
310 弁
312 弁
314 弁
400 ボイルオフガス管理システム
402 タンク
404 液化ガス
406 液化ガスの表面
408 ボイルオフガス
410 圧縮機
412 液化及び過冷却システム
【国際調査報告】