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特表2023-520787反応性ガスを用いてウイルスを無力化する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-19
(54)【発明の名称】反応性ガスを用いてウイルスを無力化する方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/14 20060101AFI20230512BHJP
   C12Q 1/22 20060101ALI20230512BHJP
   C12M 1/12 20060101ALN20230512BHJP
【FI】
A61L2/14
C12Q1/22
C12M1/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559960
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 US2021023941
(87)【国際公開番号】W WO2021202201
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】17/017,517
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/005,094
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518132260
【氏名又は名称】ナノガード テクノロジーズ, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】NANOGUARD TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ホックウォルト マーク エー.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4C058
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB13
4B029CC01
4B029DG10
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB10
4B063QA01
4B063QQ10
4B063QR75
4B063QR79
4B063QS40
4B063QX01
4C058AA01
4C058BB06
4C058DD12
4C058KK06
4C058KK22
4C058KK32
(57)【要約】
ウイルスに汚染された又はウイルスによる汚染が疑われる表面を消毒する方法であって、20kV~150kVの電圧で誘電体バリア放電(DBD)システムを用いて、作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって、反応性ガスを生成するステップと;HVCPから少なくとも1メートル離れたところに反応性ガスを輸送するステップと;それに続いて表面を反応性ガスと接触させるステップと;を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスによる汚染が疑われる表面を消毒する方法であって、
20kV~150kVの電圧で誘電体バリア放電(DBD)システムを用いて、作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって、反応性ガスを生成するステップと、
前記HVCPから少なくとも1メートル離れたところに前記反応性ガスを輸送するステップと、それに続いて、
前記表面を前記反応性ガスと接触させ、前記表面を消毒するステップと
を含み、
前記ウイルスに感染した宿主が前記表面に接触したことがあった、前記方法。
【請求項2】
ウイルスに汚染された表面を消毒する方法であって、
20kV~150kVの電圧でDBDシステムを用いて、作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって、反応性ガスを生成するステップと、
前記HVCPから少なくとも1メートル離れたところに前記反応性ガスを輸送するステップと、それに続いて、
前記表面を前記反応性ガスと接触させ、前記表面を消毒するステップと
を含み、
前記ウイルスに感染した宿主が前記表面に接触したことがあった、前記方法。
【請求項3】
ウイルスに汚染された表面を消毒する方法であって、
(I)20kV~150kVの電圧でDBDシステムを用いて、作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって、反応性ガスを生成するステップと、
(II)前記HVCPから少なくとも1メートル離れたところに前記反応性ガスを輸送するステップと、
(III)それに続いて、前記表面を前記反応性ガスに接触させ、前記表面を消毒するステップと、
(IV)前記接触後に前記表面からウイルス試料を取得するステップと、
(V)前記反応性ガスへの暴露後に残存するウイルスの量を決定するステップと
を含み、
前記接触によって前記表面が消毒されない場合には、前記表面が消毒されるまで(I)、(II)及び(III)を繰り返す、前記方法。
【請求項4】
表面が人工構造物の内面である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
宿主がヒト又は動物である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
宿主が植物である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
人工構造物が部屋又は通路を含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
人工構造物が乗り物を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
接触が少なくとも8立方メートルの容積を有する部屋の中で行われる、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
部屋が病室である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
部屋がクルーズ船の船室である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
表面が医療機器の表面である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
接触が1秒間~24時間である、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
接触が30分間~2時間である、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
接触が少なくとも90分間である、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
反応性ガスが、オゾン以外の少なくとも1種の反応種又は励起種を含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ウイルスがRNAウイルスである、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ウイルスが、ロトウイルス、ライノウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、ハンタウイルス、ノロウイルス、麻疹ウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス、トリウイルス、ジカウイルス、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、及び重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)からなる群から選択される、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
ウイルスが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)である、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
作動ガスがMA65を含む、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
ウイルスがDNAウイルスである、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ウイルスがアフリカ豚コレラウイルスである、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
表面の接触が、MS2ファージアッセイ試験により少なくとも2-log10の減少をもたらすのに十分である、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
表面の接触が、MS2ファージアッセイ試験により少なくとも3-log10の減少をもたらすのに十分である、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
表面の接触が、MS2ファージアッセイ試験により少なくとも4-log10の減少をもたらすのに十分である、請求項1~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
表面の接触が、MS2ファージアッセイ試験により少なくとも5-log10の減少をもたらすのに十分である、請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
表面の接触が、MS2ファージアッセイ試験により少なくとも6-log10の減少をもたらすのに十分である、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
決定が、MS2ファージプラークアッセイ試験を使用する、請求項1~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
決定が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)試験を使用してウイルスの量を決定する、請求項1~28のいずれかに記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生物学的な除染及び滅菌は、医療器具及びデバイスの滅菌、食品の製造及び保存、並びに消費財の調製を含む、幅広い用途を有する。滅菌には化学薬品、熱、高エネルギー電子線、並びにX線若しくはガンマ線照射システムが現在使用されている。これらのシステムはそれぞれ、コスト、効率、不動性、電力設備、有害廃棄物、人体への危険性、滅菌又は除染に要する時間によるトレードオフを有する。
【0002】
プラズマが除染及び滅菌に用いられてきた。ガス、液体、及び固体と区別される物質の第4の状態であるプラズマは、放電、例えばガスを介した放電によって生成されうる。全てのプラズマが電子、イオン及び中性種を含んでいるが、プラズマを調製するために使用されるガスの組成、並びにプラズマを生成するために使用されるデバイスの電気的及び構造的な構成に応じて、それらは異なる特性を有するであろう。
【0003】
プラズマの1つのタイプは、高電圧低温プラズマ(HVCP,high-voltage cold plasma)であり、これは、誘電体バリア放電(DBD,dielectric barrier discharge)システムを使用して調製されうる。HVCPは、好ましくは30kV~500kVの電圧を使用して、典型的には50又は60Hzの周波数において、DBDシステムを用いたガスの非平衡崩壊によって調製されうる。HVCPは、熱プラズマ又はRFプラズマなどの他のタイプのプラズマほどには研究されていない。その結果、現在、これらのプラズマの特性を説明する理論も、そのようなプラズマにおいて生成される様々な励起種及び反応種も存在していない。過去10年間、このプラズマを研究するためにHVCPの実験的な調査が実施されてきた。
【0004】
HVCPへの材料の直接的な暴露が研究されてきた。特に関連するものは、生物学的製品がパッケージ内に密封され、パッケージ内でHVCPが生成されるという、生物学的製品と汚染物質をHVCPに暴露する研究である。そのような研究では、農産物などのパッケージされた食品及びその他の材料が短時間のうちに殺菌された。パッケージ内の製品は、プラズマに直接触れる。パッケージは密閉されているため、プラズマで生成された反応性ガスは、それらが崩壊して初期状態に戻るまで製品と接触したままとなり、希釈又は分散は生じず、パッケージされた製品は再汚染から保護されて、果物及び野菜などの製品の貯蔵寿命が劇的に延長される。例えば、いずれもKeener et al.による、米国特許出願公開第2013/0189156号明細書及び第2014/0044595号明細書を参照されたい。
【0005】
オゾンガスは消毒剤として認識されており、煙臭などの臭気を除去するために表面を処理するためにオゾンが使用されてきた。オゾンはウイルスを殺すことができる。例えば、オゾン処理は、多くの水及び廃水処理施設の不可欠な部分となっている(Wolf, C., et al., "Proxies to monitor the inactivation of viruses by ozone in surface water and wastewater effluent", Water Research, Volume 166 (2019))。また、オゾンは果物などの製品の処理にも使用されている(Brie, A., et al., "Inactivation of murine norovirus and hepatitis A virus on fresh raspberries by gaseous ozone treatment", Food Microbiol., vol. 70, pg. 1-6 (2018))。これらの処理は、水と製品を消費のために安全なものとする。
【0006】
昨今における様々なウイルス性疾患の出現は、有効な治療法が限られていることと組み合わさって、これらのウイルス性疾患に対処できる強力な消毒アプローチと治療法の開発に対する需要を生じさせている。ワクチン接種を通した環境及びヒトのウイルス病原体の制御における進歩にもかかわらず、これらの新たな公衆衛生上の脅威を駆除するには、新たなアプローチが必要である。そのような技術は、食品、空気、表面、及び水に媒介されるウイルスを無力化し、よって、コミュニティ間の感染及び蔓延を防ぐのに適したものである必要がある。
【0007】
一部のウイルスは、接触、大きな呼吸飛沫、及び小さな粒子の飛沫核(エアロゾル)を通して、またさらには汚染された表面から蔓延しうる。実験的な研究は、インフルエンザウイルスが小粒子のエアロゾル中でも感染力を維持することができ、部屋を越えて移行できることを実証している(Cowling BJ, et al., "Aerosol transmission is an important mode of influenza A virus spread." Nat Commun., 4, 1935 (2013))。コロナウイルス及びロタウイルスは、汚染された表面との接触によって蔓延しうる。麻疹も同様に伝染性である。
【0008】
表面に存在しうるウイルスを無害化するための現在の技術は、存在する可能性のあるウイルスを無害化するために液体消毒剤を噴霧することを含む。消毒剤の噴霧を担当する者は、感染又は汚染から自らの身を守るために防護服を着用しなければならない。
【0009】
オゾンは、ウイルス除染剤として使用されてきた(Hudson JB, et al., "Development of a Practical Method for Using Ozone Gas as a Virus Decontaminating Agent" Ozone: Science & Engineering, 31, 216 (2009))。ウイルスを除去するための様々な表面の処理が、20~25ppmのオゾンガスを使用して実行された。ある程度の除染が周囲条件下で達成されたが、オゾンガスが90%の相対湿度を超えるまで加湿された場合に、はるかに大きな効果が達成された。8個のコロナ放電ユニット、循環ファン、及び処理後にオゾンを酸素に変換して戻す触媒コンバーターを含むプロトタイプデバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0189156号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0044595号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Wolf, C., et al., "Proxies to monitor the inactivation of viruses by ozone in surface water and wastewater effluent", Water Research, Volume 166 (2019)
【非特許文献2】Brie, A., et al., "Inactivation of murine norovirus and hepatitis A virus on fresh raspberries by gaseous ozone treatment", Food Microbiol., vol. 70, pg. 1-6 (2018)
【非特許文献3】Cowling BJ, et al., "Aerosol transmission is an important mode of influenza A virus spread." Nat Commun., 4, 1935 (2013)
【非特許文献4】Hudson JB, et al., "Development of a Practical Method for Using Ozone Gas as a Virus Decontaminating Agent" Ozone: Science & Engineering, 31, 216 (2009)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、ウイルスによる汚染が疑われる表面を消毒する方法であって、20kV~150kVの電圧で誘電体バリア放電(DBD)システムを用いて、作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって、反応性ガスを生成するステップと;HVCPから少なくとも1メートル離れたところに反応性ガスを輸送するステップと;それに続いて、表面を消毒するために、表面を反応性ガスと接触させるステップとを含む、方法である。ウイルスに感染した宿主が、表面に接触したことがあった。
【0013】
第2の態様では、本発明は、ウイルスに汚染された表面を消毒する方法であって、20kV~150kVの電圧で誘電体バリア放電(DBD)システムを用いて、作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって、反応性ガスを生成するステップと;HVCPから少なくとも1メートル離れたところに反応性ガスを輸送するステップと;それに続いて、表面を反応性ガスと接触させ、表面を消毒するステップと;を含む、方法である。ウイルスに感染した宿主が、表面に接触したことがあった。
【0014】
定義
本明細書に記載されている全ての電位は、ボルト(V)及びキロボルト(kV)の二乗平均平方根(RMS)として特定され、電力は交流に由来する。パーセント(%)ガス組成は、体積パーセントである。
【0015】
低温プラズマとは、プラズマを調製するために使用されるガス(つまり、作動ガス)の温度よりも最大で40℃高い温度、より好ましくはプラズマを調製するために使用されるガスの温度よりも最大で20℃高い温度のプラズマを指す。
【0016】
高電圧低温プラズマ(HVCP)とは、誘電体バリア放電(DBD)システムを使用して、最大500kVの電圧を最大5000Hzの周波数で用いて調製され、760Torr(大気圧)などといった10~50000Torrの圧力を有するガスから調製される低温プラズマを意味する。HVCPは熱プラズマでも、マイクロ波プラズマでも、高周波(RF,radio frequency)プラズマでもない。HVCPプラズマは、非平衡破壊条件下で生成される。
【0017】
反応性ガスとは、HVCPによって生成され、励起された化学的に反応性の種を含むが、0.2秒以内に消散する種は含まないガスを意味する。反応性ガスの組成は、励起種が消散し、反応性ガス内で化学反応が起こるにつれて、時間の経過とともに変化するであろう。反応性ガスは、HVCPを生成しているDBDシステムから離れて移されうるガスである。反応種又は励起種は、分光法を使用して検出可能な場合、反応性ガス中に存在するとみなされる。
【0018】
誘電体バリア放電(DBD)又はDBDシステムとは、誘電体バリアによって分離された少なくとも2つの電極を有するシステムを意味し、より多くの電極を有していてもよく、各電極の間に、放電によってガス中に発生する電荷が電極に到達するのを防ぐための誘電体バリアが存在する。DBDシステムにおける隣接する電極間の最短距離は、好ましくは最大30cm(又は12インチ)であり、好ましくは少なくとも0.5cm(又は0.25インチ)である。好ましくは、DBDシステムは、HVCPを生成する条件下で稼働するように構成されている。DBDシステムの例が、図1A、1B、1C、1D、1E及び1Fに示されており;好ましくは、図1A、1B、1C及び1Fに示されているように、電極は、電極の間に直に存在するギャップ又はプレナムによって間隔を置いて離されている。
【0019】
作動ガス及び作動ガス混合物とは、プラズマを形成するために使用されるガスを指す。
【0020】
パッケージとは、最大6ガロン(又は22.7リットル)の容量を有する容器を意味する。
【0021】
密閉又は実質的に密閉されているとは、パッケージ又は容器内のガスが、乱されずに放置された場合、少なくとも24時間、パッケージ又は容器の内部に留まり、流出又は拡散しないことを意味する。
【0022】
「消毒する」という用語は、ウイルスが破壊されたこと、及び/又は存在するウイルスがもはや病気を引き起こすことができないことを意味する。
【0023】
「宿主」とは、ウイルスが病気を引き起こすヒト、動物、若しくは植物を意味し、又は細菌においては、ウイルスは細菌の溶菌を引き起こす。
【0024】
「ウイルスに汚染された表面」という表現は、ウイルスが表面に存在することを意味する。
【0025】
「汚染が疑われる表面」という表現は、ウイルスに感染した宿主が表面に接触したことを意味する。
【0026】
「表面に接触した」という表現は、物理的な接触、並びに大きな呼吸飛沫、小さな粒子の飛沫核(エアロゾル)、若しくはウイルスの他の脱落に表面を暴露することを含む。
【0027】
表面を消毒するための処理の有効性を判断するために、以下のプロトコルが使用されうる。本プロトコルは、「MS2ファージプラークアッセイ試験」と呼ばれることがある。このプロトコルは、他のウイルスの代理としてMS2ファージ試料を提供し、試料を処理して、処理に起因するMS2ファージの減少量を測定することによって、ウイルスの量を減らすための処理の有効性を検証するために使用されうる。本プロトコルは、処理済みのMS2ファージ試料を、対照として使用する未処理のMS2ファージ試料と比較することを含む。最初に、MS2ファージを含む溶液を、いくつかの無菌濾紙の表面にスポットする。濾紙を乾燥させ、実験処理の前に4℃の清潔な容器に入れる。次に、処理された濾紙を反応性ガス(又は他の消毒処理)で処理する。未処理の濾紙は貯蔵し、対照として使用するために処理には暴露しない。処理後、処理済みの濾紙を滅菌プラスチック容器に入れ、冷却したクーラーに入れて検査室に運び、SMバッファーを用いて抽出する(具体的なSMバッファーの組成については、以下の表7を参照されたい)。抽出のために、処理済み及び未処理の紙を無菌的に幅0.5cmのストリップにスライスし、これを積み重ねてから50mlの滅菌チューブに入れる。各チューブにSMバッファー(5mL)を加え、10分間かけてファージの抽出を行う。バッファーを加えた直後と、10分の間に2分おきに、各試料を穏やかに15秒間パルスボルテックスする。その後、チューブを5000rpm、4℃で遠心分離する。次いで、残留したファージを含む上清を0.22μMのナイロンシリンジフィルターを通して濾過し、15mlの無菌チューブに入れる。この上清を宿主の大腸菌(E. coli)の培養に加える。処理済み及び未処理の濾紙抽出物を数倍に希釈し、回収されたファージの濃度をTSB上層寒天プレート及び下層寒天プレートを使用したプラークアッセイによって決定する。適切な数のプラークを生成するファージ濃度を得るためには、より多くの希釈を行う必要がありうる。3時間培養した細菌培養0.15mlをTSBで1:5に希釈し、ウォーターバスで42~45℃に維持した融解トップ/軟寒天3mlに加え、その後、希釈したMS2ファージ抽出物15μlを添加する。次に、混合物を穏やかにボルテックスし、下層寒天プレートに注ぎ、固化させる。次に、プレートを上下逆さまにして、37℃のインキュベーターで一晩インキュベートする。翌日、プレート上に形成されたプラーク(透明な領域)を数え、結果を表にまとめる。大腸菌培養は、10mlのTSBブロスに100μlの大腸菌懸濁液を播種し、細菌培養を37℃のインキュベーターで一晩増殖させることで開始される。翌日、一晩培養したものを使用して、別の新鮮な大腸菌培養を開始する。一晩培養物1mlを新鮮なTSB培地9mlに添加し(一晩培養物の1:10希釈)、同じ条件で3時間増殖させる。次に、この新鮮な培養物をTSB培地で1:5に希釈し、細菌宿主として使用する。
【0028】
2-log10減少とは、処理後に表面に存在する活性ウイルスの量が、処理前に存在していた活性ウイルスの量の1/100となることを意味し、MS2プラークアッセイ試験によって決定される;この試験は、所望のウイルスが処理前に実際に存在することを要求しないが、処理のウイルス殺傷能力の尺度となる。同様に、Xが3、4、5、又は6であるX-log10減少は、処理後に表面に存在する活性ウイルスの量がそれぞれ、処理前に存在していたウイルスの量の1/1000、1/10,000、1/100,000、1/1,000,000となることを意味する。
【0029】
以下の図は、本願の製品、デバイス、及び方法を説明するために提供されているが、他のバリエーションや構成も可能である。図は縮尺通りではなく、わかりやすくするために一部のパーツのサイズが拡大又は縮小されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】~
図1F図1A図1B図1C図1D図1E、及び図1Fは、様々なDBDシステムの概略図である。
図2図2は、製品又は表面を反応性ガスで連続的に処理するための反応性ガス処理システムの概略図である。
図3図3は、製品又は表面を反応性ガスでバッチ処理するための反応性ガス処理システムの概略図である。
図4図4は、密閉空間を有する器具及び/又は表面を処理するための反応性ガス処理システムの概略図である。
図5図5は、対照の大腸菌と比較した、様々なデータセットの大腸菌増殖速度に対するMS2ファージの効果を示すグラフである。
図6図6は、対照の大腸菌と比較した、様々なデータセットの大腸菌増殖速度に対するMS2ファージの効果を示すグラフである。
図7図7は、様々なデータセットの大腸菌増殖速度に対するMS2ファージの効果を、対照の大腸菌と比較して示すグラフである。
図8図8は、陰性対照、陽性対照、及びRGS処理ジカウイルスの濾紙抽出物に暴露した後の宿主細胞数のグラフである。
図9図9は、未処理(陽性対照、T=0)及びRGS処理したジカウイルスからの濾紙抽出物に暴露したVero細胞の各3ウェルの一連の顕微鏡写真画像である。写真上のドットは、ジカウイルスの細胞変性効果により変化したVero細胞である。
図10図10は、RGSを用いたバクテリオファージSBA1781の失活を示すグラフである。
図11図11は、RGSに1時間暴露した後のMS2ファージの不活性化を、未処理(T=0)のMS2ファージと比較して示すグラフである。
図12図12は、RGSに3時間暴露した後のMS2ファージの不活性化を、未処理(T=0)のMS2ファージと比較して示すグラフである。
図13図13は、B.アトロファエウス(B. atrophaeus)芽胞の暴露時間に対する減少を示すグラフである。
図14図14は、高流量システム(オレンジ)と標準流量システム(青)について、暴露時間に対するB.アトロファエウス芽胞の減少を示すグラフである。
図15図15は、高流量システム(オレンジ)と標準流量システム(青)について、暴露時間に対する芽胞の対数減少を示すグラフである。
図16図16は、高流量システム(オレンジ)と標準流量システム(青)について、暴露時間に対するB.アトロファエウス芽胞数を示すグラフである。
図17図17は、空気による減少(オレンジ)と反応性ガス種による減少(青)について、暴露時間に対するS.エンテリカ(S. enterica)細胞の減少を示すグラフである。
図18図18は、空気による減少(オレンジ)と反応性ガス種による減少(青)について、暴露時間に対するS.エンテリカ細胞の減少を示すグラフである。
図19図19は、様々な初期細菌数に対する大腸菌細菌数の対数減少を示すグラフである。
図20図20は、様々な初期細菌数に対する大腸菌細菌数の減少を、初期細菌数と最終細菌数の比として示すグラフである。
図21図21は、増加する大腸菌の集団密度の減少を示すグラフである。
図22図22は、増加する大腸菌の集団密度の対数減少を示すグラフである。
図23図23は、実験条件の計数可能な範囲内で過酸化物効果を有する4つの細菌数について、総反応性ガス種減少と残留過酸化物による減少を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、HVCPによって生成される反応性ガスを利用する。反応性ガスは、プラズマが生成されるDBDシステムからかなりの距離、例えば、3~30メートル(又は10~100フィート)離れた場所に運ばれた場合でも、表面を消毒することができる。さらに、反応性ガスはウイルスを無力化することができる。パッケージ内で生成されるHVCPとは異なり、製品がHVCPに直接暴露されることはなく、反応性ガスと製品との接触時間は、例えば1秒間、1分間、30分間、又は1時間に制限されているため、これは非常に驚くべきことである。好ましくは、プラズマは表面と接触しない。さらに、反応性ガスは、HVCPが生成されるDBDシステムから離れて輸送されるため、周囲のガスへの拡散と、周囲のガス及び/又は作動ガスとの混合の両方によって希釈される。反応性ガスはDBDシステムから離れて輸送されるため、より大きな表面が処理されうる。さらに、乗り物又は部屋の消毒など、大規模な消毒も実施されうる。さらに、反応性ガスの有効性は、オゾン含有量のみから予想されるものよりも大きいと予想される。
【0032】
環境保護庁(EPA)及び疾病対策予防センター(CDC)は、ウイルスが消毒剤に対するそれらの耐性に関してランク付けされうることを認識している(EPA, "Guidance to Registrants: Process For Making Claims Against Emerging Viral Pathogens Not on EPA-Registered Disinfectant Labels", published on August 19, 2016)。このアプローチでは、ウイルスは、小型ノンエンベロープウイルス、大型ノンエンベロープウイルス、及びエンベロープウイルスという3つのサブグループに分類される。この階層によれば、ある消毒剤が小型ノンエンベロープウイルスを殺すことができる場合には、大型ノンエンベロープウイルス及びエンベロープウイルスも殺すことができるはずである。同様に、大型ノンエンベロープウイルスを殺すことができる消毒剤は、エンベロープウイルスも殺すことができる。本願の反応性ガスは、実施例1及び4によって示されるように、MS2ファージウイルスを殺す。MS2ファージは、小型ノンエンベロープウイルスである。このウイルスを殺すことは最も困難であるため、反応性ガスは他のサブグループのウイルスも殺すと予想される。この予想は、それぞれ実施例2及び3に示されるように、ジカウイルス及びサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)バクテリオファージの殺傷によって裏付けられる。同様に、コロナウイルスはエンベロープウイルスとして分類されるため、反応性ガスで処理する前にコロナウイルスが存在していた場合、反応性ガスはコロナウイルスを殺し、表面を消毒すると予想されるであろう。
【0033】
反応性ガスが表面に接触すると、ウイルスが存在する場合、表面が消毒される。減少は、ウイルスの活性の少なくとも2-log10減少、3-log10減少、4-log10減少、5-log10減少、又は6-log10減少でありうる。MS2ファージプラークアッセイ試験は、消毒の有効性を決定するために使用されうる。この試験は、所望のウイルスが処理前に実際に存在することを要求しないが、処理のウイルス殺傷能力の尺度となる。ウイルス量の検出は、ELISA又は顕微鏡測定などの古典的な分析試験技術を使用して行ってもよい。活性ウイルスの量をさらに減少させるために、反応性ガスとの接触時間を長くしてもよい。ウイルスの活性をさらに減少させるために、表面と反応性ガスとの接触を繰り返してもよい。
【0034】
ウイルスは、DNAウイルス又はRNAウイルスでありうる。DNA又はRNAウイルスは、一本鎖(ss)、二本鎖(ds)、線状及び/又は環状としてさらに分類されうる。ウイルスゲノム全体は、1つの核酸分子(モノパートゲノム)又はいくつかの核酸セグメント(マルチパートゲノム)のいずれかを占めうる。異なるタイプのゲノムは、異なる複製戦略を必要とする。
【0035】
ウイルスは、一般的なウイルス名又はウイルスによって引き起こされる疾患によって識別されうる。ウイルスはまた、ウイルスが由来する生物又はウイルスが風土病である生物によっても同定されうる。本明細書において同定される一般的なウイルス名は、一般的なウイルス名に関連するウイルスと同様の特徴を有するか、又は遺伝的に関連するウイルスの様々な株を指しうることが理解される。
【0036】
ウイルスは、アスファウィルス科(アフリカ豚コレラウイルス(ASF)など);アデノウイルス科(アデノウイルス及び感染性イヌ肝炎ウイルスなど);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオマウイルス科、サル空胞化ウイルスなど);パルボウイルス科(パルボウイルスB19及びイヌパルボウイルスなど);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス(水痘ウイルスとしても知られる)、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルスなど);ポックスウイルス科(天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、羊痘ウイルス、オルフウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルスなど);アネロウイルス科(トルクテノウイルスなど);又はプレオリポウイルス科(HHPV1、HRPV1、HGPV1、及びHis2Vなど)のDNAウイルス科由来のウイルスなどのDNAウイルスでありうる。
【0037】
ウイルスは、レオウイルス科(レオウイルス及びロタウイルス(ロトウイルスとも呼ばれる)など);ピコルナウイルス科(エンテロウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルス、カルジオウイルス、アフトウイルス、ポリオウイルス、パレコウイルス、エルボウイルス、コブウイルス、テスコウイルス、コクサッキーなど);カリシウイルス科(ノロウイルスなど);トガウイルス科(風疹ウイルス及びアルファウイルスなど);アレナウイルス科(リンパ性脈絡膜髄膜炎ウイルスなど);フラビウイルス科(デングウイルス、C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、ジカウイルスなど);オルトミクソウイルス科(インフルエンザウイルス、イサウイルス、ソゴトウイルスなど);パラミクソウイルス科(麻疹ウイルス、おたふくかぜウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、牛疫ウイルス、犬ジステンパーウイルスなど);ブニヤウイルス科(カリフォルニア脳炎ウイルス及びハンタウイルスなど);ラブドウイルス科(狂犬病ウイルスなど);フィロウイルス科(エボラウイルス及びマールブルグウイルスなど);コロナウイルス科(コロナウイルスなど);アストロウイルス科(アストロウイルスなど);ボルナウイルス科(ボルナ病ウイルスなど);アルテリウイルス科(アルテリウイルス及びウマ動脈炎ウイルスなど);又はヘペウイルス科(E型肝炎ウイルスなど)のRNAウイルス科由来のウイルスなどのRNAウイルスであってもよい。
【0038】
ロタウイルスの例は、A、B、C、D、E、F、G、H、I、又はJロタウイルスを含む。コロナウイルスの例は、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS,Middle East respiratory syndrome)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS,severe acute respiratory syndrome)、COVID-19ウイルス、及び風邪の原因となるコロナウイルスを含む。COVID-19を引き起こすウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2,severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)としても知られている。アルテリウイルスの例は、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV,porcine reproductive and respiratory syndrome virus)である。
【0039】
インフルエンザウイルスの例は、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、及びC型インフルエンザウイルスを含む。インフルエンザウイルスのバリアントは時として、その株が常在しているか、又は適応している種(宿主)によって命名される。例えば、インフルエンザウイルスは、鳥インフルエンザ(bird flu)(「avian flu」としても知られる)、豚インフルエンザ、ヒトインフルエンザ、馬インフルエンザ、及び犬インフルエンザとして知られていてもよい。A型インフルエンザウイルスは、ヘマグルチニン又は「H」タンパク質とノイラミニダーゼ又は「N」タンパク質の2つのグループのタンパク質の組み合わせによってさらに分類されうる("Influenza Type A Viruses". Centers for Disease Control and Prevention. https://www.cdc.gov/flu/avianflu/influenza-a-virus-subtypes.htm. Last reviewed April 19, 2017, visited on March 12, 2020)。A型インフルエンザウイルスの異なる血清型の例は、H1N1、H1N2、H2N2、H3N1、H3N2、H3N8、H5N1、H5N2、H5N3、H5N8、H5N9、H7N1、H7N2、H7N3、H7N4、H7N7、H7N9、H9N2、H10N7を含む。
【0040】
ウイルスは、レトロウイルス科(ヒト免疫不全ウイルス(HIV,human immunodeficiency virus)など);カリモウイルス科(カリモウイルス及びカカオ膨梢ウイルスなど);又はヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルスなど)のウイルス科に由来する逆転写ウイルスでありうる。
【0041】
ウイルスは、製品又は表面に存在していても、空気中に存在していてもよい。反応性ガスは、エアロゾル液滴又はより大きな液滴で空気中に存在するウイルスを無力化しうる。反応性ガスは、人工構造物の内面と接触しうる。人工構造物は、飛行機、電車、又は自動車などの乗り物であってもよい。人工構造物は、部屋又は通路であってもよい。部屋は、病院の中の部屋又はクルーズ船の船室であってもよい。部屋は、ホテルの部屋であってもよい。部屋は、オフィス又は会議スペースであってもよい。部屋は、劇場又はスポーツアリーナであってもよい。
【0042】
図1A、1B、1C、1D、1E及び1Fは、反応性ガスを生成するHVCPを生成するために使用されうる様々なDBDシステムの概略図である。DBDシステムは、交流電流を生成する接地を有する高電圧源10と、第1の電極20と、第2の電極30と、介在する誘電体40を含む。1又は2以上の追加の介在誘電体60も、第1電極と第2電極との間に存在しうる。いくつかの構成では、誘電体は、第1及び/又は第2の電極を取り囲んでいてもよい。いくつかの構成では、電圧波形と組み合わせて使用される電極上の電荷蓄積が、DBDシステムの電力消費を推定するために使用されてもよく、従来的なコンデンサ又は他のセンサ70の間に生じた電圧を決定することによって測定されうる。好ましくは、プレナム50が存在し、これは、図1A、1B、1C及び1Fに示されるように、HVCP及び反応性ガスが生成される電極間の空間を画定する。しかしながら、HVCP及び反応性ガスは、図1D及び1Eに示されるように、DBDシステム内に明白なプレナムが存在しない場合でも、誘電体の近くにおいて生成されうる。いくつかの構成では、図1Fに示されているものなどのように、3~21の電極、11~15、4~8の電極、又は5~7の電極などの複数の電極が、隣接する電極の各対の間に介在する1つ又は2つ以上の誘電体とともに使用され、複数のプレナムを形成していてもよい(フレーム80を使用して各電極-誘電体アセンブリ(40、20、及び40など)を保持し、各プレナム(50)が画定されてもよい);そのような構成は、電極間の適切な距離を維持して、システムをコンパクトに保ちつつ、より多くのHVCPの生成、したがって反応性ガスの生成を可能にする。DBDシステムの構成は、電極間に形成されるフィラメント放電の電流の制限をもたらし、高電流アークの形成が防止される。好ましい構成では、第1の電極は誘電体で完全に囲まれ、第2の電極は接地される。
【0043】
電極は、金属などの任意の導電性材料から形成されうる。誘電体は、様々な組成の複数の層を含む、セラミックス、ガラス、有機材料、又はプラスチックなどの任意の絶縁材料(誘電材料)から形成されうる。誘電体の厚さ、又は誘電体の異なる層は、電極間に形成されうるフィラメント放電の電流を制限するように選択すべきである。誘電体層の材料の選択は、反応性ガスの組成に影響を与えうる。
【0044】
電極が平行である場合の隣接する電極間の距離、又は電極が平行でない場合の隣接する電極間の最短距離は、好ましくは最大30cm(又は12インチ)、そして好ましくは少なくとも0.5cm(又は0.25インチ)であり、例えば2、3、4、5、6、7、8及び9cmを含む1~10cm又は2.5~6cm(又は1~2インチ)である。高電圧源は、最大で5000Hz、より好ましくは10~100Hz、例えば50~60Hzの周波数を有する30、40、50、60、70、80、90、95、100、110、120、130及び140kVを含む、最大500kV、より好ましくは20kV~150kVの電圧を生成する。また、時変(つまり、パルス)DC電源も使用されうる。周波数は主に利便性のために選択されるが(例えば、50又は60HzのAC電力が自治体の電力網から利用可能)、電圧はHVCPの生成を保証するように選択される。
【0045】
電極システム及び/又は誘電体バリア放電システムの構造は、米国特許出願第16/442,380号に記載されているシステムでありうる。
【0046】
作動ガス及び作動ガス混合物の異なる選択は、HVCPによって生成される反応性ガス中に存在する種に影響を与えるであろう。HVCPを調製するために使用されうるガスの例は、酸素(O);窒素(N);水蒸気(HO);ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、及び六フッ化硫黄(SF)などの不活性及び希ガス;水素(H);二酸化炭素(CO)及び一酸化炭素(CO);フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、及びシアン((CN))などのハロゲン及び疑似ハロゲン;硫化水素(HS)、フッ化水素(HF)、塩化水素(HCl)、及び硫化カルボニル(COS)などの酸性ガス;アンモニア(NH);ヒドラジン(H);三フッ化窒素(NF);二酸化塩素(ClO);メタン(CH)、エタン(C)、及びアセチレン(H)などの炭化水素;メタノール(CHOH)及びエタノール(COH)などのアルコール;並びにそれらの混合物を含む。好ましいガスは、空気及びMA65(65%のO、30%のCO、及び5%のNの混合物)を含む。ガス中の水蒸気の量を増加させることは、反応性ガス中に存在するオゾンを減少させるために使用されうる。ヘリウムなどの希ガスの量を増やすことは、HVCPの生成に必要な電圧を下げるために使用されうる。HVCPを調製するために使用されるガスの圧力は、周囲圧又は大気圧として好都合に選択されるが、10~50000Torr、より好ましくは100~1000Torr、例えば760Torr(大気圧)などの他の圧力を使用してもよい。
【0047】
反応性ガスは、様々な反応種及び励起種を含み、反応性ガスは、作動ガス中には存在しない少なくとも1つ(典型的には2つ以上)の反応種及び/又は励起種を常に含む。作動ガスが酸素(例えば、O、CO及び/又はHO)を含む場合、オゾンが発生しうる;しかしながら、反応性ガスの特性と反応は、オゾンの存在だけでは説明されず、反応性ガスは、オゾン(反応性ガス中に存在する場合と存在しない場合がある)に加えて、常に他の反応種及び励起種を含んでいる。オゾンに加えて、反応性ガス中に存在しうる他の反応種及び励起種は、一重項酸素()及び他の励起分子種(O、H、N、CO、CO、HO、He、Ne、Ar、Kr、Xeなどの振動励起分子と電子励起原子及び/若しくは分子の両方)、ヒドロキシルラジカル(HO・)、窒素酸化物(NO、NO、NO、NO、N、N、Nなど)、過酸化水素(H)、ヒドロペルオキシル(HO)、HNO種(HNO、HNO及びHNOなど)、原子ラジカル(O、F、Cl、N及びHなど)、及び分子ラジカル(酸素、窒素、フッ素及び塩素のうちの1又は2以上を含んでいてもよい炭化水素ラジカルなど)を含む。好ましくは、反応性ガスは、オゾン及びNO(又はN)(存在しても、しなくてもよい)に加えて、少なくとも1つの追加の反応種及び/又は励起種を有する。HVCPとは異なり、反応性ガスはプラズマではなく、自由電子を含まない。好ましくは、反応性ガスは、上に挙げた2~10又は3~8又は4~6の異なる反応種及び/又は励起種を含む、上に挙げた少なくとも2つの異なる反応種及び/又は励起種、より好ましくは上に挙げた少なくとも3つの異なる反応種及び/又は励起種、さらにより好ましくは上に挙げた少なくとも4つの異なる反応種及び/又は励起種、そして最も好ましくは上に挙げた少なくとも5つの異なる反応及び/又は励起種を含む。
【0048】
後で使用するために反応性ガスを容器に捕捉して貯蔵することも可能である。好ましくは、貯蔵された反応性ガスは、生成後24時間以内、より好ましくは12時間以内、最も好ましくは6時間以内、さらにより好ましくは3時間以内に製品又は表面を処理するために使用される。
【0049】
反応性ガスはまた、例えば冷却剤として液体窒素を使用するか、又は冷却剤として液体ヘリウムを使用して、極端に低い温度に冷却することによって捕捉及び貯蔵してもよい。そのような低温で捕捉及び貯蔵した場合、反応性ガスは、長期間、例えば、1日~6週間、場合によってはそれ以上貯蔵されうる。他の液化又は固化ガスを貯蔵するために使用されるガラス又は金属容器などの容器を使用してもよい。
【0050】
反応性ガス処理システムは、DBDシステム又は貯蔵した反応性ガスのいずれか、及び処理チャンバを含む。反応性ガス処理システムは、(HVCPを生成し、次いで反応性ガスを生成する)DBDシステムから、又は反応性ガスを貯蔵した容器から反応性ガスを処理チャンバの内部又は全体に移動させるデバイス、機構又は構成も含む;これは、DBDシステムと処理チャンバの間の流体接続であってもよい。好ましくは、処理チャンバは密閉されていない;そのような密閉されていないチャンバは、ガス出口を備えた処理チャンバを含むであろう。好ましくは、処理チャンバは、少なくとも28リットル(又は1立方フィート)の容積、より好ましくは少なくとも1立方メートルの容積、さらにより好ましくは少なくとも8立方メートルの容積を有する。処理チャンバの例は、部屋、ビン、穀物乾燥機、サイロ、タンク、及び輸送用コンテナを含む。
【0051】
反応性ガスシステムは、反応性ガスを(貯蔵された反応性ガスから、又はDBDシステムを使用してHVCPを生成することによって)供給し、反応性ガスを処理チャンバの内部又は全体に分配することによって、製品及び/又は表面を処理する方法を実行するために使用されうる。反応性ガスを移動させるためのデバイス、機構、又は構成の例は、対流、ガス経路若しくはガスライン、ファン、及び流動若しくは加圧された作動ガスをDBDシステムに供給することを含む。好ましくは、反応性ガスによって処理された製品又は表面は、処理の方法によって40℃超で加熱されず、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下、最も好ましくは5℃以下であり、例えば、製品又は表面は加熱されない(すなわち、その温度を上昇させない)。反応性ガスによる処理は、非熱処理法である。好ましくは、製品又は表面は、方法中にHVCPによって生成される放射線(UV光など)に暴露されない。空気、作動ガス、又は別のガス(希ガス又は窒素など)を使用して、反応性ガスを処理チャンバから洗い流すか、又は処理チャンバを排気してもよい。本方法は、製品又は表面に複数の処理を提供するために、1回、2回、3回又はそれ以上繰り返されてもよい。反応性ガスで処理した後に製品を容器に密封し、及び/又は冷蔵してもよい。好ましくは、処理される製品は、処理中、最大10ガロン又は最大6ガロンの容量を有する容器などの密閉又は実質的に密閉された容器中に封入されない。好ましくは、HVCPは、最大10ガロン又は最大6ガロンの容積を有する容器などの密閉容器内で生成されない。
【0052】
HVCPによって生成された反応性ガスは、拡散又はガス移動によって、HVCPの生成場所から(製品又は表面がHVCPに直接暴露されるのを避けるために)輸送される。好ましくは、プラズマと処理される製品又は表面との間の距離は、少なくとも5cm、例えば少なくとも10cm、少なくとも50cm、少なくとも1m(又は3.28フィート)、より好ましくは少なくとも3m、例えば5、10、20、30、40及び50mを含む3~300mの距離である。ほとんどの構成では、反応性ガスは、処理される製品又は表面と接触している間に流動できるようにされるが、反応性ガスを生成し、それを製品又は表面を処理する場所に移動させ、一定期間ガスを処理の場所に閉じ込めることもできる。反応性ガスを製品又は表面と接触させる場所に移送する流量の例は、10~3000m/分、30~2500m/分、1000~2000m/分、例えば、50、100、200、300、400、500、750、及び1500m/分を含む。反応性ガスは、少なくとも1秒、例えば少なくとも2秒、少なくとも10秒、少なくとも30秒、少なくとも1分、少なくとも10分、少なくとも30分、少なくとも35分、少なくとも1時間、少なくとも6時間、又は少なくとも12時間、製品又は表面と接触させられる。接触時間の例は、5秒、15秒、2分、5分、20分、35分、40分、2時間、3時間、4時間、5時間を含む、1秒~12時間、10秒~1時間、1分~35分を含む。
【0053】
図2は、製品又は表面を反応性ガスで連続的に処理するための反応性ガス処理システム200の概略図である。本システムは、HVCPを発生させて反応性ガス210を生成するためのDBDシステム206を含む。反応性ガスは、ガス経路208に沿って流れ、処理チャンバ216に入り、次にガス出口222から出る。処理される、又は処理される表面を有する製品214は、ホッパー212に貯蔵されてもよく、製品が処理チャンバ内及びコンベヤ218上に供給されると、コンベヤは製品を、処理チャンバを通して、反応性ガスと接触した後の製品を保持するための受入ビン220へと移動させる。また、HVCPが形成される作動ガスを提供するガスタンクなどのガス源202と、DBDシステムに作動ガスを供給するガスライン204も示されている。反応性ガスは、システムを通って流れるときに、追加の作動ガスで希釈されてもよい。DBDシステムから処理チャンバへの反応性ガスの輸送は、DBDシステム(作動ガスの導入による高圧)と処理チャンバ(ガス出口による低圧)との間の圧力差による。ガス出口は、第2のガスラインによってDBDシステムに戻るように接続されていてもよく、これは、作動ガスと残留した反応性ガスのリサイクルを可能にする。DBDシステムは、処理チャンバ内に配置されていてもよく、これは、ガス経路の必要性を回避する。バリエーションでは、作動ガスは空気であってもよく、反応性ガスの輸送は、ガス経路に配置されたファン(反応性ガスを処理チャンバ内に吹き込む)又はDBDシステムの背面に配置されたファン(DBDシステムを通して空気を吹き込む)によって引き起こされてもよい。コンベヤはスクリーン上で製品を輸送して、反応性ガスが製品の全ての表面に確実に接触するようにしてもよい。さらに、製品は、製品が第1コンベヤから第2コンベヤに移動する際に製品が位置を変えるように、複数のコンベヤ上の処理チャンバを通して移動させてもよく、これは、反応性ガスが製品の全ての表面と接触することを保証する。別のバリエーションでは、貯蔵された反応性ガスをガス源として使用し、反応性ガスを処理チャンバに直接輸送することによって、DBDシステムを排除してもよい。透過性ベルトコンベヤ、スクリュー、トンネル乾燥機、穀物乾燥機、流動床乾燥機、又は円筒形乾燥機など、様々な異なるコンベヤが使用されうる。
【0054】
図3は、製品又は表面を反応性ガスでバッチ処理するための反応性ガス処理システム300の概略図である。本システムは、HVCPを発生させて反応性ガスを生成するためのDBDシステム306を含む。反応性ガスは、ガス経路308及び312に沿って流れ、処理チャンバ302に入り、次にガス経路316を通り、任意選択で製品回収トラップ318を通り、ガス経路320に沿って流れ、ガス出口324から外に出る。反応性ガス及び作動ガスの一部又は全ては、任意選択のガス経路304を介して、DBDシステムに戻してリサイクルされてもよい。反応性ガスと作動ガスのシステム内の推進は、ファン310及び322によって行われる。処理される、又は処理される表面を有する製品314は、処理チャンバ内に存在する;図示されているように、反応性ガスは処理チャンバの底部から供給され、反応性ガスと製品の流動床を生成して、製品の全ての表面の処理を保証する。製品回収トラップが、処理チャンバを出てガス経路に入る製品を捕捉し、処理チャンバに戻すために使用されうる。処理チャンバは、図示されているシステム内のサイロであってもよい;他の処理チャンバは、流動床、機械的流動床、及びビンを含む。反応性ガスは、システムを通って流れるときに、追加の作動ガスで希釈されてもよい。図示されているように、作動ガスは空気であってもよいが、ガス経路304は、作動ガスをDBDシステムに供給するためのガス源に接続されてもよい。別のバリエーションでは、DBDシステムを省略し、貯蔵した反応性ガスで置き換えてもよい。
【0055】
製品の例は、生鮮食品(果物、野菜、穀物、豆、種子、肉、乳製品、卵、香辛料又は調味料など)、魚介類(魚及び貝、及びその部分)、調理済み食品、冷凍食品、パッケージ前の加工食品(水、飲料、離乳食、液卵、果汁、小麦粉、油、栄養製品、ビタミン、栄養補助食品、及び焼き菓子)、パッケージされた製品(パッケージの外装処理用)、動物の飼料、缶、ボトル、プラスチック容器、食品容器、調理道具及び家庭用品;錠剤、カプセル剤、単位剤形及び散剤;使用前及び使用後の医療機器及び医療器具;実験用ガラス及びプラスチック製品;セラミック製品;金属製品;並びに皮革製品及び木製品を含む。
【0056】
反応性ガスによる処理によって消毒が達成されない場合、連続処理が行われうる。例えば、1回~10回の処理が行われてもよいし、3回、4回、5回、6回、7回又は8回の処理を含む2回~9回の処理が行われてもよい。同様に、処置時間も延長されうる。
【0057】
図4は、部屋、輸送コンテナ、トレーラー又は冷蔵トラックなどの密閉空間を有する器具及び/又は表面を処理するための反応性ガス処理システムの概略図である。ここでは閉鎖空間である処理チャンバ400内には、HVCPを発生させて反応性ガス408を生成するためのDBDシステム406がある。ファン410が、閉鎖空間全体に反応性ガスを分配するために使用される。また、閉鎖空間の壁又は内面、医療器具(例えば、手術器具、マスク、補助呼吸器具、及びバイタルサインモニタ)などの任意選択の器具414、及び/又は反応性ガスで処理される手術台などの任意選択の表面412を含む、処理される製品又は表面も図示されている。支持体402を使用してDBDシステムを閉鎖空間の上部又は側面に取り付けるか、又はDBDシステムを閉鎖空間の床に配置してもよい。ガス供給源(図示せず)に接続されたガスライン404によって、作動ガス供給源を供給してもよい。或いは、閉鎖空間を作動ガスで満たすことができるであろう。別の構成では、DBDシステムを貯蔵した反応性ガスで置き換えることができるであろう。
[実施例]
【0058】
以下の例は、反応性ガスの効果と特性を示すための試験システムであり、反応性ガスを生成するためにHVCPが使用された。典型的なシステムでは、商業的に意味のある量の製品の処理を達成するために規模が拡大されるであろう。HVCPは全て、60Hzの電力を使用して生成した。
【実施例1】
【0059】
実施例1:ウイルス活性及び不活化に対する反応性ガスの影響:抗ウイルス剤としての反応性ガスの有効性をスクリーニングするためのMS2バクテリオファージモデルの使用
この例では、ウイルスの死滅に及ぼす効果に関して、21フィート(640cm)輸送した反応性ガスのMS2バクテリオファージに対する使用を説明する。MS2バクテリオファージは、大腸菌(Escherichia coli)(E. coli)及び腸内細菌科の他の細菌メンバーに感染するRNAウイルスである。ほとんどのヒトのウイルス病原体はRNAウイルスであるため、MS2バクテリオファージ(非ヒト病原体)をウイルス不活化のモデル系として選択した。MS2バクテリオファージは、ヒトのウイルスのモデルとして一般に使用されている(Kuzmanovic, D.A., et al., "Bacteriophage MS2: Molecular Weight and Spatial Distribution of the Protein and RNA Components by Small-Angle Neutron Scattering and Virus Counting", Structure, Vol. 11, 1339-1348 (2003))。
【0060】
宿主細菌培養の増殖:
この試験で使用したMS2バクテリオファージ宿主細菌は、大腸菌(E. coli、K-12株、ATCC 15597)であった。オリジナルのバイアルに入った大腸菌(ATCC 15597)は、American Type Culture Collection(ATCC)(Manassas、VA)から購入し、1mlの新鮮なブロス培地(脱イオン水中の1%トリプトン、0.1%酵母抽出物、0.8%NaCl)を加えて再構成した。再構成した培養(100μl)をバイアルから取り出して、培養フラスコ中の同じブロス培地30mlに播種するのに使用し、熱インキュベーター中、37℃で一晩増殖させた。次いで、得られた大腸菌培養を、MS2バクテリオファージの増殖及びスクリーニングアッセイに使用した。
【0061】
MS2バクテリオファージの増殖
バクテリオファージMS2(ATCC 15597-B1)は、ソフト/トップアガーオーバーレイを使用せずに、ATCCの手順に従って、その細菌宿主細胞である大腸菌(K-12株、ATCC 15597)中で増殖させた。宿主細菌培養細胞を、上記のように、37℃のブロスで一晩増殖させた。続いて、1.0mlの宿主細菌細胞懸濁液を寒天プレートの表面に加え、穏やかに傾けて、宿主細菌細胞で表面全体を確実に覆った。次いで、過剰な液体を寒天プレートから吸引し、プレートを乾燥させた。ブロス中のMS2ファージ懸濁液の様々な希釈溶液を寒天プレートの表面にスポットし、37℃で一晩インキュベートした。一晩増殖させた後、5mlのSMバッファーを各寒天プレートに加え、定期的に穏やかに振盪しながら4℃で3時間保存した。SMバッファー懸濁液を回収し、50mlのポリプロピレンチューブに移し、新鮮なSMバッファー(1プレートあたり5ml)を各プレートに添加した後、定期的に懸濁しながら4℃で15分間さらにインキュベートした。バッファーを回収し、前のバッファーと一緒に50mlチューブにプールし、プレートを廃棄した。プールしたSMバッファー-MS2ファージ懸濁液を5000×gで15分間、4℃で遠心分離し、細胞破片と寒天片を沈降させ、上清を回収した。得られた上清を0.22μMのミリポアフィルターに通して宿主細菌細胞を除去し、回収されたMS2ファージを含む濾液を実験で使用するために4℃で保存した。
【0062】
MS2ファージの反応性ガス不活化
MS2ウイルスを反応性ガスで不活化するために、1mlの濾過済みMS2ファージ上清を、General Electric社(GE Healthcare Life Sciences社、Pittsburgh、PA)から購入した円形のWhatman濾紙(直径90mm)にスポットした。次いで、濾紙を蒸発により乾燥させ、次いで、76kVの電圧でDBDシステムを用いて生成され、21フィート(640cm)輸送された反応性ガスに30~90分間暴露させた。プラズマを生成するデバイスの電極の隙間は1.5インチであった。反応性ガス処理後、紙をスライスして15mlの滅菌チューブに入れ、1チューブあたり5mlのSMバッファーで抽出することにより、スライスした濾紙片からMS2ウイルスを回収した。紙抽出物中のウイルス活性は、透明な96ウェル平底プレート(Midwest Scientific(MidSci)社、St. Louis、MOから購入)と宿主細菌培養(大腸菌)を使用したハイスループットスクリーニングによって決定した。簡単に言うと、一晩増殖させた大腸菌培養を、栄養ブロスで1000細胞/ml懸濁液の細胞密度に希釈し;96ウェルプレート(275μl/ウェル)に分注した。この直後に、25μlのMS2ファージ紙抽出物を添加した。次に、播種した96ウェルプレートを37℃で一晩インキュベートし、大腸菌の増殖速度を一晩24時間モニターした。24時間の終わりに、660nmでの光学密度(OD,optical density)の読み取り値を取得し、反応性ガスで不活化されたMS2ウイルスによる細菌増殖の反転を計算するために使用した。陰性対照(培地ブロスのみ)及び陽性対照(細菌培養のみ)も同じプレートで実施し、MS2ファージによる細菌増殖阻害の計算に順に使用した。反応性ガス未処理及び処理MS2ファージの両方を陽性対照ウェルと比較し、大腸菌の増殖率を全てのプラズマ処理ウイルスについて計算した。
【0063】
対照濾紙抽出物(反応性ガス未処理)及び反応性ガス暴露MS2ファージ紙抽出物から回収されたMS2ファージによる細菌増殖パーセント阻害は、それらのそれぞれの細菌増殖を陽性対照ウェル(MS2ファージ暴露を行っていないウェル)のものと比較することによって決定した。この試験の結果を以下に示す。
【0064】
結果:
ここに示されている集計データは、異なる日に実施された2つの独立した実験から得られたものである。これらの結果により示されるように、反応性ガスへのMS2ファージの暴露は、ウイルスを有意に不活化し、試験した全ての暴露時間でその細菌宿主である大腸菌に対するその溶解活性を反転させた。図5、6及び7のグラフに示されているように、未処理のMS2ファージは細菌の増殖を50%減少させた。ウイルスを反応性ガスにそれぞれ30、60、及び90分間暴露させると、反応性ガスへのウイルスの暴露時間に比例して、この増殖阻害が反転した。これは、MS2ファージが反応性ガスによって有意に減少又は不活化され、その宿主細菌である大腸菌が(ウイルスによって溶解されることなく)正常に増殖可能とされることを示唆している。実験1(a)では、データは24時間のエンドポイントで取得した。
【0065】
1(a).実験1
【0066】
【表1】
【0067】
まとめ:
【0068】
【表2】
【0069】
MS2陰性、MS2陽性、及びMS2-RGS処理の大腸菌(宿主細胞)の数。実験1の結果。
【0070】
【表3】
【0071】
2(a).実験2
【0072】
【表4】
【0073】
まとめ:
【0074】
【表5】
【0075】
MS2陰性、MS2陽性、及びMS2-RGS処理の大腸菌(宿主細胞)の数。実験2の結果。
【0076】
【表6】
【0077】
実施例1の宿主細菌及びMS2ファージ用の培地及び試薬
大腸菌属培地の調製:
(I)寒天プレート
【0078】
【表7】
【0079】
1リットルの培地容量の場合は950mlの脱イオン水を、500mlの場合は475mlを加えた。培地を121℃でオートクレーブし、オートクレーブ及び冷却後に無菌的に溶液Bを培地に添加した(すなわち、1リットル容量に対して50ml又は500ml容量に対して25ml)。固化する前に培地を100mmペトリプレートに注いだ(1プレートあたり10ml)。寒天プレートを4℃で保存し、必要に応じて使用した。
【0080】
(II)溶液B:50ml又は500ml
溶液BはATCCの推奨に従って調製した。
【0081】
【表8】
【0082】
得られた溶液を0.22μMのフィルターで濾過することにより滅菌した。
【0083】
(III)栄養ブロス
【0084】
【表9】
【0085】
寒天平板培地の場合と同様に、ブロス成分を秤量した後、1リットル又は500mlの培地に対して、950ml又は475mlの脱イオン水を添加した。ブロスを121℃でオートクレーブし、オートクレーブして冷却した後、溶液Bを無菌的に添加した(1リットル容量に対して50ml又は500mlブロスに対して25ml)。ブロス培地を無菌ガラスフラスコに分注し、将来の使用のために室温で保存した。
【0086】
(IV)トップアガー栄養素
【0087】
【表10】
【0088】
ソフト/トップアガーはプレート寒天培地と同じ方法で調製した。寒天量の半分を秤量してトップアガー培地に入れた(通常、寒天プレート培地は15gの寒天(1.5%w/v)を含み、トップアガーは5~7.5gの寒天(0.5~0.75%w/v)を含む)。オートクレーブ処理、冷却、及び溶液Bの添加後、軟培地を無菌ガラスチューブ(1チューブあたり4ml)に分注し、必要に応じた将来の使用のために室温で保存した。
【0089】
(V)MS2ファージ懸濁バッファー(SMバッファー):SMバッファー(1リットル)
【0090】
【表11】
【実施例2】
【0091】
実施例2:ジカウイルス(ZIKV,Zika Virus)を用いた抗ウイルス剤としての反応性ガス(RGS,Reactive Gas)の有効性の評価。
この例では、ウイルスの死滅に及ぼす効果に関して、21フィート(640cm)輸送した反応性ガスのジカウイルスに対する使用を説明する。この試験では、ジカウイルスの感染性を不活化するRGSの有効性を決定することが試みられた。このウイルスは、小頭症などの先天性異常の原因となる新興の世界的な病原体の1つである。ほとんどの新しいクラスのウイルスと同様に、ジカウイルスには承認された治療法又はワクチンがなく、その活性に対して阻害効果を持つ抗ウイルス剤は、その感染を防ぐための有用なツールとなるであろう。この予備的な試験では、RGSがジカウイルス不活化のための抗ウイルス剤として適しているかどうかをテストした。
【0092】
材料及び方法
宿主細胞、ジカウイルス、及び試薬
ジカウイルスの増殖及び感染に使用されるVero細胞(ATCC CCL-81)は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)から購入した。ジカウイルス(ATCC VR-1843PQ、PRVABC59株)もATCCから購入した。細胞は、高グルコースのダルベッコ改変イーグルス培地(DMEM、ATCCから入手)で増殖させ、10%熱不活化牛胎児血清(FBS)、4mMのL-グルタミン、100μg/mlストレプトマイシン、100ユニット/mlペニシリン、1mMピルビン酸ナトリウム、及び非必須アミノ酸を補った。細胞を培養し、5%COの加湿インキュベーター中で37℃に維持した。全ての組織培養グレードの試薬と化学物質は、ATCC又はMillipore-Sigma社(St. Louis、MO)及びThermo Fisher Scientific社(Waltham、MA)から入手した。
【0093】
ジカウイルスの増殖
この試験で使用したジカウイルス(PR VABC59株)は、感染倍率をそれぞれ0.01及び0.025としてT75組織培養フラスコ中の70%コンフルエントのVero細胞に播種し、FBSを含まない3mlのDMEM培地で2時間増殖させた。次に、10%のFBSを含む20mlの新鮮なDMEM培地を加え、細胞を37℃での5%CO加湿チャンバ内でインキュベートした。ジカウイルスによって殺された宿主細胞の尺度として使用される細胞変性効果(CPE,cytopathic effect)は、光学顕微鏡下での観察によってモニターした。Vero細胞がCPEにより70%以上の細胞死又は剥離を示した時点でウイルスを回収した。使用済み培地を除去し、3000rpmで5分間遠心分離した。得られた上清を0.22μMのミリポアフィルターに通して、宿主細胞の残留物と混入している細菌を除去した。ジカウイルスを含む濾液を分注し、将来の実験のために-20℃で保存した。
【0094】
ジカウイルスのRGS不活化
ジカウイルス(ZIKV PRVABC59)のRGSによる不活化は、確立されたプロトコル(Muller JA, Harms M, Schubert A, Jansen S, Michael D, Mertens T, Schmidt-Chanasit J, Munch J, (2016). Inactivation and Environmental Stability of Zika virus. Emerg Infect Dis 22: 1685-1687)に従って実施した。簡単に説明すると、Whatman円形濾紙(直径90mm)に600μlのジカウイルス使用済み培地を播種し、すぐにRGSに暴露させた。対照実験用の濾紙には、ウイルス増殖に使用されるダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中の宿主細胞のみを播種した(陰性対照)。播種した濾紙2セットを80kVのRGSで45分間及び90分間処理(試験)し(表4)、その後、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS,phosphate buffered saline、1×)でウイルスを抽出した。RGSで処理していない1セットの播種済み濾紙は、陽性対照として機能し、直ちにウイルス抽出のために処理した。実験は二度行った。したがって、2セットの陰性対照濾紙(DMEMのみ)、2セットのジカ播種未処理濾紙(陽性対照、T=0分)、2セットのRGSで45分間処理したジカ播種フィルター(テスト、T=45分)及び2セットのRGSで90分間処理したジカウイルス播種フィルター(テスト、T=90分)が存在した。
【0095】
未処理(陽性対照)及びRGS処理(テスト)濾紙からのジカウイルスの抽出
未処理(T=0)及びRGSで処理した濾紙(T=45及びT=90分)を別々にPBS(1×)で抽出した。暴露の前と後の濾紙を小片に切り、抽出のために50mlの無菌コニカルチューブに移した。ウイルスの抽出は、標準的な確立されたプロトコルに従って実施した(Butot S, Putallaz T, and Sanchez, G (2007). Procedure for Rapid Concentration and Detection of Entric Viruses from Berries and Vegetables. Appl Environ Microbiol 73 (1): 186-192)。簡単に言うと、10mlの無菌PBSを、カットした濾紙を含む50mlコニカルチューブの各々に加え、激しくボルテックスした。チューブを室温(RT)で15分間、3分ごとに断続的にボルテックスしながらインキュベートした。次に、チューブを5000rpmで5分間遠心分離して濾紙の破片をペレット化し、得られた上清を0.22ミクロンのフィルターで濾過した。濾液は、3-[4.5-ジメチル-2-チアゾリル]-2-5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロマイド(MTT)細胞毒性バイオアッセイを用いたジカウイルス活性分析のために4℃で保存した。
【0096】
MTTバイオアッセイ又は(3-[4.5-ジメチル-2-チアゾリル]-2-5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロマイド細胞毒性バイオアッセイ
MTTアッセイは、細胞代謝活性を評価するための比色アッセイである。NAD(P)H依存性細胞酸化還元酵素は、定義された条件下において、存在する生存細胞の数を反映しうる。これらの酵素は、テトラゾリウム色素MTT、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイドを、紫色をした不溶性のホルマザンに還元することができる。
【0097】
未処理及びRGSで処理したジカウイルスの濾液を、最終容量200μlのDMEM中、Vero細胞を含む96ウェル組織培養プレートに1ウェルあたり6×10細胞の播種密度でプレーティングした。T=0の濾液を含むウェルが70%の細胞死(CPE)を示すまで、培養を5%CO一定の加湿チャンバ内において37℃でインキュベートした。次いで、20μlの無菌MTT(PBS中5mg/ml)溶液を各ウェルに添加し、プレートを37℃で3時間さらにインキュベートした。使用済みのDMEM培地を取り除いて廃棄し、プレートを拭き取って乾燥させた。次いで、付着したVero細胞から得られたホルマザン結晶を、ジメチルスルホキシド(DMSO,dimethyl sulfoxide)とエタノールの1:2混合液100μlを添加することによって溶解した。得られたホルマザン結晶溶液の吸収を、490nmでの光学密度(OD)を読み取り、650nmの読み取り値に補正することによって決定した(Molecular Device Instruments社のSpectra Max 340 PCプレートリーダー)。陰性ジカウイルス対照(ウイルス無しのウェル)及びジカウイルスを含む(濾紙濾液)のMTT溶液吸収の読み取り値から、T=45及びT=90分間のRGS処理に対する宿主細胞の増殖を計算した。結果を以下にまとめる。
【0098】
結果及び考察
ジカウイルス試験の結果
陰性対照ウェル(ウイルスを含まないVero細胞)の細胞生存率を、T=0、45及び90分の時点からのジカウイルスの濾紙抽出物に暴露した細胞のものと比較した。観察されたように、未処理ウイルス抽出物(T=0)は、Vero細胞に感染する活性のあるウイルスに起因する細胞変性効果(CPE)により、約50%の細胞死(毒性)を引き起こした(表4)。RGSで処理したジカ濾紙からのウイルス抽出物は、RGS処理によるジカウイルスの不活化のために、より少ないVero細胞の死滅を引き起こした。陰性対照(ジカなし)、陽性対照(RGSで処理していないジカ)、及び2つのRGSで処理したジカに対応する宿主細胞数を図8及び表1に示す。陽性対照(RGSで処理していないジカウイルス)と比較して、45分及び90分のRGS処理はジカを有意に不活化した(表4)。
【0099】
宿主細胞の死滅率は、T=45処理(20.14%)と比較して、T=90処理(9.45%)の方がはるかに少ない(表1)。これは、予想された通り、45分間の処理と比較して、90分間の処理では、より多くのジカが不活化されることを意味する。陰性対照における宿主細胞死滅率に対する宿主細胞死滅率の正規化は、45分及び90分のRGS処理からのジカウイルスの、それぞれ56.34%及び79.51%の不活化を示唆している(表1)。予想通り、陽性対照のジカウイルス抽出物(T=0)に暴露されたVero細胞は、RGS処理された2つのジカウイルスからの濾紙抽出物(T=45及びT=90)と比較して、最大のVero細胞死を示した。
【0100】
【表12】
【0101】
図9は、陽性対照(T=0)及びRGS処理ジカウイルス濾紙抽出物に暴露されたVero細胞(三連)のウェルの顕微鏡写真画像を示す。図8に示されている細胞死の結果は、顕微鏡画像(図9)と一致している。
【0102】
結論
この試験の結果は、RGS処理がジカウイルスを有意に不活化することを示している。90分間のRGS処理は、ジカウイルスを約80%減少させる。したがって、RGS処理は、表面、空間、食品、飼料、医療器具などにおける病原性ウイルスを効果的に不活化できるであろう。RGS技術は、環境、医療、及び食品由来のウイルスに対する効果的な抗ウイルス処理である。
【実施例3】
【0103】
実施例3:反応性ガス(RGS)を用いたサルモネラ・エンテリカ(ニューポート)バクテリオファージの不活化:抗ウイルス剤としてのRGSの有効性を決定するためのSBA 1781バクテリオファージモデルの使用
この試験では、サルモネラ・エンテリカバクテリオファージ(SBA 1781ファージウイルス)を使用して、ウイルスの不活化におけるRGSの有効性を評価した。
【0104】
材料及び方法
宿主細菌:American Type Culture Collection(ATCC)、Manassas、VA から購入したサルモネラ・エンテリカ(ニューポート株、ATCC 6962)。バクテリオファージSBA 1781:ATCCの呼称PTA-5282もATCCから購入した。
【0105】
サルモネラ・エンテリカ培養(宿主細菌)の増殖
サルモネラ・エンテリカ(ATCC 6962)は、バクテリオファージSBA 1781の天然の細菌宿主である。ATCCから購入したサルモネラ・エンテリカ菌(バイアル中)を、1mlの新鮮なブロス培地(蒸留HO中の1%トリプトン、0.1%酵母エキス、及び0.8%NaCl)を加えることにより再構成した。再構成した細菌培養(100μl)をバイアルから取り出して、緩いキャップの付いた培養ガラスチューブ中の同じブロス培地10mlを播種するために使用した。播種したブロスを、温度制御インキュベーター内において37℃で一晩(18~20時間)増殖させた。次いで、得られたサルモネラ・エンテリカの一晩培養をバクテリオファージSBA 1781の増殖に使用した。
【0106】
SBA 1781バクテリオファージの増殖
バクテリオファージSBA 1781は、ATCCが推奨する手順を使用して、その天然の宿主細胞であるサルモネラ・エンテリカ培養中で増殖させた。簡単に言うと、宿主細菌の培養細胞を、上記のようにブロス中において37℃で一晩増殖させた。その後、1.0mlの細菌培養細胞懸濁液を寒天プレートの表面に加え、穏やかに傾けて宿主細菌細胞で表面全体を確実に覆った。その後、寒天プレートから余分な液体を吸引し、プレートを湿潤乾燥させた。サルモネラ(Salmonella)ファージ(SBA 1781)のブロス中での様々な希釈の懸濁液を寒天プレートの表面にスポットし、37℃で一晩インキュベートした。翌日、バクテリオファージを、プレートあたり5mlの新鮮なブロス培地を添加することによって回収し、定期的に穏やかに振盪しながら4℃で1時間インキュベートした。各プレートからの抽出物(懸濁液)を回収し、50ml滅菌ポリプロピレンチューブに移し、別の5mlの新鮮な培地を各プレートに追加して、4℃で定期的に穏やかに振盪しながら2回目の抽出(20分)を行った。各プレートからの2つの抽出物を50mlコニカルチューブにプールし、プレートは廃棄した。プールした懸濁液を5000×gで15分間、4℃で遠心分離して、細胞及び寒天の破片をペレット化した。次に、上清を回収し、0.22μMのミリポアフィルターに通して宿主細菌細胞を除去した。回収されたバクテリオファージを含む得られた濾液は、将来の実験での使用のために4℃で保存した。
【0107】
RGS不活化SBA 1781バクテリオファージ
サルモネラバクテリオファージをRGSで不活化するために、1mlの濾過したファージ上清をGeneral Electric社(GE Healthcare Life Sciences社、Pittsburgh、PA)から購入した円形Whatman濾紙(直径90mm)にスポットした。次いで濾紙を風乾させ、1セットの濾紙を陽性対照[RGSで処理しない、又は未処理(T=0)]として割り当て、ファージ抽出のために処理した。残りの濾紙を3セットに分け、各セットを80kVでそれぞれ30、60、及び90分間、RGSを使用してRGS処理した。RGS処理後、濾紙の各セットを別々に小片にスライスし、無菌の50mlチューブに入れた。濾紙からのバクテリオファージを1チューブあたり5mlの無菌PBS(1×)で抽出した。回収された濾紙抽出物中のウイルス活性は、宿主細胞(サルモネラ・エンテリカ)の一晩細菌培養物を播種した透明な96ウェル平底プレート(Midwest Scientific(MidSci)社、St. Louis、MOから購入)を用いて、ハイスループットスクリーニングにより決定した。新たに増殖させたサルモネラ・エンテリカ培養物を栄養ブロスで細胞密度1000細胞/ml懸濁液に希釈し、96ウェルプレートにプレーティングした(170μl/ウェル)。この直後に、バクテリオファージ抽出物(懸濁液)の様々な希釈液30μlを1ウェルあたり200μlの最終容量になるように添加した。播種した96ウェルプレートを37℃で一晩の培養増殖(18~20時間)のためにインキュベートした。次に、Spectra-Vmax PC340プレートリーダー(Molecular Devise社)を使用して、一晩培養の光学密度(OD)を660nmで読み取った。得られた吸光度の読み取り値は、RGSによるSBA 1781ウイルスファージの不活化による増殖反転の尺度として、細菌の増殖を計算するために使用した。陰性対照(培地ブロスのみ)と陽性対照(細菌培養のみ)も同じプレートで培養し、バクテリオファージによる細菌増殖阻害の評価に順番に使用した。未処理(陽性対照)とRGS処理ファージの両方を陰性対照ウェル(ファージなしのウェル)と比較し、全ての処理群についてサルモネラ・エンテリカの増殖率(生存率)を計算した。
【0108】
SBA 1781の不活化におけるRGSの有効性は、RGS処理及び未処理(陽性対照)のバクテリオファージの抽出物で観察された細菌(サルモネラ・エンテリカ)増殖の差(%生存率)を比較することによって決定した。
【0109】
結果及び考察
サルモネラ・エンテリカバクテリオファージ(SBA 1781)のRGS処理は、その標的宿主細胞(サルモネラ・エンテリカ)に対する感染性を有意に低下させ、宿主細胞の増殖を可能にした(表2)。未処理のSBA 1781ファージ(陽性対照)は、その細菌宿主細胞に感染し、溶解/死滅を引き起こし、63%の死滅率又は37%の生存率(残存率)をもたらすことができた(表2及び図10)。ファージをRGSに30、60、及び90分間暴露すると、宿主細胞の増殖阻害が劇的に逆転し、観察されたそれぞれ86%、87%、及び89%の生存率により実証された(表2)。ファージをRGSに30、60、及び90分間暴露すると、宿主細胞の増殖阻害が劇的に逆転し、観察されたそれぞれ86%、87%、及び89%の生存率により実証された(表2)。
【0110】
【表13】
【0111】
【表14】
【0112】
陽性対照と比較して、RGS処理ファージの宿主細胞の死滅率は、はるかに低い(表3)。これは、RGS処理によって、より多くのファージが不活化されることを意味する。陰性対照における宿主細胞死滅率に対する宿主細胞死滅率の正規化は、30分、60分、90分のRGS処理からのファージの、それぞれ77.78%、79.37%、82.54%の不活化を示唆している(表3)。予想通り、陽性対照のファージ抽出物(T=0)に暴露された宿主細胞は、RGS処理した3つのバクテリオファージからの濾紙抽出物(T=30、T=60、T=90)と比較して、最大の宿主細胞死を示した。
【0113】
結論
この試験から得られた予備的な結果は、サルモネラ・エンテリカバクテリオファージSBA 1781の活性に対するRGSの阻害効果を明確に示している。抗ウイルス剤としてのRGSの有効性は、未処理の対照(陽性対照)とRGS処理したサルモネラ・エンテリカ培養におけるバクテリオファージの細菌培養増殖を比較することによって評価した。データが示すように、この技術は様々なグループのウイルスの蔓延を防止するためのツールとなる。
【実施例4】
【0114】
実施例4:RGSを使用したMS2バクテリオファージウイルスの消毒:スケールアップしたパイロット版の生成システム
RGSパイロットジェネレータを使用して、90mmのWhatman 5濾紙の表面にスポットされ、そこから回収された一本鎖RNAウイルスであるMS2バクテリオファージを消毒した。MS2バクテリオファージは、大腸菌(E. coli)及び腸内細菌科の他の細菌メンバーに感染して溶解するRNAウイルスである。ほとんどのヒトウイルス病原体はRNAウイルスであるため、ウイルスの消毒と不活化に対するRGS処理の有効性を判断するために最適なモデルとして、MS2バクテリオファージ(非ヒト病原体)を選択した。
【0115】
パイロット版システムは、1kWのプロトタイプ技術システムからスケーリングして工業的に強化した8kWの生成システムである。改善されたパイロット版システムは、10個の1.5インチ電極ギャップ間の誘電体バリア放電(DBD)を介して、より大量の反応性ガス種(RGS,reactive gas species)を生成する機能を備えた、大幅に大きな処理チャンバ容量を有している。この試験では、システムは84kVの電圧において毎分590立方フィート(cfm)で運転され、試料が処理される容器の中央における測定で、30±2ppmのオゾンが形成された。ガスはプラズマ生成器を通過し、空気圧搬送システムを介して約250フィート運ばれ、次に4インチのPVCフレキシブルチューブを通って、処理チャンバとして機能する20フィートの標準出荷コンテナに運ばれた。生成システムに供給される空気の相対湿度(RH,relative humidity)と周囲温度は、それぞれ50%と70°Fであった。この試験から得られた予備的な結果とデータは、MS2ウイルス粒子が2-log10減少したことを示しており、これは、ウイルスを消毒するためのツールとしてのRGSの適用可能性を指し示している。
【0116】
材料
宿主細菌:大腸菌(E. coli、K-12株、ATCC 15597)は、American Type Culture Collection(ATCC)、Manassas、VAから購入した。MS2ファージ:ATCC 15597-B1もATCCから購入した。一般的な実験用消耗品、試薬、補充品は以下を含む:TSB培養ブロス、寒天プレート、トップアガー、ピペッター、血清学的チューブ及びピペット、SMファージバッファー、シリンジ、0.22μMのナイロンシリンジフィルター、黒色プラスチックSNAP PAK(登録商標)容器、ピンセット、止血剤、はさみなど。
【0117】
培地は以下を含む:TSBブロス、ボトムアガープレート(100mmプレート)、及びトップアガー(3ml/チューブ)。ボトムアガーは以下を含む:TSBブロス中の1.5%寒天(1リットルあたり15g又は500mlあたり7.5g)。トップアガーは以下を含む:TSBブロス中の0.7%寒天(1リットルあたり7.5g又は500mlあたり3.75g)。
【0118】
【表15】
【0119】
SMバッファー溶液は、使用前にオートクレーブサイクルで滅菌した。
【0120】
方法
MS2増殖のための宿主細菌培養の増殖
この試験で使用したMS2バクテリオファージ宿主細菌は、大腸菌(E. coli、K-12株、ATCC 15597)であった。オリジナルのバイアルに入った大腸菌(ATCC 15597)は、ATCCから購入し、1mlの新鮮なブロス培地(脱イオン(DI,de-ionized)水中の1%トリプトン、0.1%酵母エキス、0.8%NaCl)を加えて再構成した。再構成した培養液(100μl)をバイアルから取り出し、ガラス培養チューブの同じブロス培地10mlに播種するのに使用し、37℃の熱インキュベーター中で一晩増殖させた。次いで、得られた大腸菌培養を、処理のためのMS2バクテリオファージの増殖、及びその後の未処理/処理試料から回収されたウイルスの滴定プラークアッセイのために使用した。
【0121】
MS2バクテリオファージの増殖
バクテリオファージMS2(ATCC 15597-B1)は、ソフト/トップアガーオーバーレイを使用せずに、ATCCの手順に従って、その細菌宿主細胞である大腸菌(K-12株、ATCC 15597)中で増殖させた。宿主細菌培養細胞を、上記のように、37℃のブロスで一晩増殖させた。続いて、1.0mlの宿主細菌細胞懸濁液を各寒天プレートの表面に加え、穏やかに傾けて宿主細菌細胞で表面全体を確実に覆った。次いで、過剰な液体を寒天プレートから吸引し、プレートを乾燥させた。ブロス中のMS2ファージ懸濁液の様々な希釈の溶液を寒天プレートの表面にスポットし、37℃で一晩インキュベートした。
【0122】
一晩増殖させた後、MS2ファージによる有意な宿主細菌の溶解を示すプレートを、バクテリオファージ安定化バッファー(SM)を用いたファージウイルス抽出のために処理した。SM安定化バッファー(5ml)を各寒天プレートに加え、定期的に穏やかに振盪しながら4℃で3時間保存した。SMバッファー懸濁液を回収し、50mlのポリプロピレンチューブに移した。新鮮なSMバッファーの第2の分注(1プレートあたり5ml)を各プレートに加え、続いて、4℃で15分間、定期的に穏やかに振盪しながらさらにインキュベートした。プレートを廃棄する前に、バッファーを回収し、以前に除去したバッファーと一緒に50mlチューブにプールした。プールしたSMバッファー-MS2ファージ懸濁液を5000×gで15分間、4℃で遠心分離し、粒子を含まないウイルスを含む上清を回収する前に、細胞破片と寒天片を沈降させた。得られた上清を0.22μMナイロンシリンジフィルターに通して宿主細菌細胞を除去し、回収されたMS2ファージを含む濾液を実験で使用するために4℃で保存した。
【0123】
RGSによるMS2ウイルスの処理と残留ウイルスの抽出
プレートから得られ、増殖したウイルス粒子を含むMS2バクテリオファージ上清(1ml)を、いくつかの90mm無菌Whatman 5濾紙の表面にスポットした。次いで、濾紙をヒュームフード内で乾燥させ、実験処理まで4℃で保存するために清潔な容器に入れた。処理の直前に、ウイルスを含んだ濾紙を冷蔵庫から取り出し、氷嚢を詰めたクーラーに入れて処理容器に移した。濾紙を保存容器から無菌的に取り出し、綿糸を通したバインダークリップで留め、8フィート×8フィート×20フィート(縦×横×深さ)のスチールコンテナの各所にあるマグネットフックに吊り下げた。コンテナは両開きドアであった。右側のドアは完全に開いて邪魔にならず、開いたドアの代わりに、2×4フレームに取り付けられた厚さ1/2インチの合板隔壁パネルをコンテナに挿入した。合板パネルの右上隅に公称4インチの穴が開けられており、4インチの金属ダクトが穴からコンテナに挿入され、ダクトはコンテナが支えられているコンテナの中間点が終端となっていた。長さ10フィートの隆起ダクトは、4インチのPVCフレキシブルチューブに接続していた。ガスが逃げるための出口を設けるため、左側のドアは割られて(1.5インチ)開いていた。
【0124】
濾紙試料の各処理後、プラズマ生成器を停止させたが、容器から残留反応性ガスをパージするために送風機をさらに10分間作動させたままにした。次に、試料を個々の滅菌プラスチック容器に移し、SMバッファーを使用して残留ウイルスを抽出するために、冷蔵クーラー中で実験室に運んだ。抽出のために、RGS処理した紙と未処理の紙を無菌的に0.5cm幅のストリップにスライスし、これを積み重ねてから50mlの滅菌チューブに入れた。各チューブにSMバッファー(5ml)を加え、10分間かけて抽出を行った。バッファーを加えた直後と、10分の間に2分おきに、各試料を穏やかに15秒間パルスボルテックスした。その後、チューブを5000rpm、4℃で遠心分離した。次いで、MS2プラークアッセイを用いてウイルス濃度を決定するために、0.22μMのナイロンシリンジフィルターを通して、残留ウイルスを含む上清を15ml滅菌チューブ中に濾過した。
【0125】
MS2バクテリオファージのプレーティング及び滴定
大腸菌の培養は、10mlのTSBブロスに上記と同じ培地中の100μlの大腸菌懸濁液を播種し、37℃のインキュベーターで一晩培養することで開始させた。翌日、一晩培養したものを使用して、別の新鮮な大腸菌培養を開始させた。一晩培養物1mlを新鮮なTSB培地9mlに添加し(一晩培養物の1:10希釈)、同じ条件で3時間増殖させた。次に、この新鮮な培養液をTSB培地で1:5に希釈し、MS2プラークアッセイの細菌宿主として使用した。未処理及び処理済みの濾紙抽出物を数倍に希釈し、回収されたMS2ウイルスの濃度をTSBトップアガープレート及びボトムアガープレートを使用したプラークアッセイによって決定した。
【0126】
簡単に言うと、3時間培養した細菌培養0.15mlをTSBで1:5に希釈し、ウォーターバスで42~45℃に維持した融解トップ/ソフトアガー3mlに加え、その後、希釈したMS2ファージ抽出物15μlを添加した。次に、混合物を穏やかにボルテックスし、ボトムアガープレートに注ぎ、固化させた。次に、プレートを上下逆さまにして、37℃のインキュベーターで一晩インキュベートした。翌日、プレート上に形成されたプラーク(透明な領域)を数え、結果を以下に指し示されるように集計した。
【0127】
結果
実験1:MS2バクテリオファージ上清の不活化
濾紙#13Aは未処理の対照試料(T=0)であり、一方、濾紙#9(試料容器へのガス導入口の前に設置)には84kV、590立方フィート/分(CFM)で1時間RGS処理した。
【0128】
【表16】
【0129】
上記表の5列目における1mLあたりのMS2濃度の値は、プラーク数を0.015ml(3時間の大腸菌の1:5希釈液0.15mlとトップアガー3mlを含む15mlのバイアルに加えたMS2抽出物の体積)で割り、MS2希釈係数を考慮することによって得られる。
【0130】
実験2:MS2バクテリオファージ上清の不活化
濾紙#9は、未処理の対照試料(T=0)であった。濾紙#1(試料容器のガス導入口前に配置)と濾紙#3(試料容器の左後ろの角に配置)を84kV、590CFMで3時間RGS処理した。
【0131】
【表17】
【0132】
上記表の5列目におけるMS2濃度(PFU/ml)の値は、プラーク数を0.015ml(3時間の大腸菌の1:5希釈0.15mlを含む15mlバイアル及び3mlのトップアガーに添加したMS2抽出物の体積)で割り、MS2希釈係数を考慮することによって得られる。
【0133】
上に示されている集計データは、異なる日に実施された2つの独立した実験から得られたものである。これら2つの予備試験から得られた結果は、RGS処理がMS2バクテリオファージウイルスを消毒することを実証している。結果が示すように、MS2ファージをRGSに暴露すると、ウイルス量が1時間の処理で約2-log10減少し、3時間の処理で3-log10減少した(表5及び6)。
【0134】
実験1では、1枚の未処理の紙(試料13A)を、ガス入口の直前の処理容器に吊るした1枚の処理紙(試料9)と比較した。実験1は、6.00×1011PFU/ml~7.47×10PFU/mlの98.8%の生存ウイルスの減少を指し示した。実験2では、1枚の未処理紙(試料9)を2枚の処理済みの紙と比較した。第1の処理紙(試料1)はガス入口の直前の処理容器に吊るし、第2の処理紙(試料3)はガス入口から約14フィート離れた左後ろの角に吊るした。試料3の位置は、試料1より乱気流が大幅に少ない可能性が高いが、ウイルスの減少率がわずかに悪いという点から重要である。実験2は、試料1と試料3でそれぞれ2.67×1010PFU/ml~2.53×10及び6.40×10PFU/mlの99.9%及び99.8%の生存ウイルスの減少を指し示した。
【0135】
この細菌細胞ベースのプラークアッセイで抽出したMS2バクテリオファージウイルスを宿主大腸菌細胞にプレーティングすると、ウイルスの回復及び減少を定量化するための比較的簡単な方法が得られる。活性のあるMS2ファージは宿主細胞に感染し、それらを溶解(死滅)させ、プレート上の透明な領域によって特徴付けられるプラークの形成を導く。各透明領域(プラーク)は単一のウイルス粒子を表すため、プラークの定量化は、対照試料と実験試料の両方におけるウイルス力価を決定することを可能とする。図11及び12に示される結果で観察されるように、各T=0未処理試料の抽出物は、T=1時間及びT=3時間処理試料と比較して、より多くのプラークを示した。これらの結果は、MS2ウイルスをRGSに暴露すると、対応する未処理試料の抽出物と比較してPFUが最大3-log10減少することを指し示している。
【0136】
結論
この試験から得られた結果は、RGS処理によるMS2バクテリオファージの生存率の低下を明確に実証している。2つの独立した実験が、パイロットスケールでRGSが表面のRNAウイルスを不活化することを指し示した。
【実施例5】
【0137】
実施例5:標準流量、60、120、及び180分でのバチルス・アトロファエウス(Bacillus atrophaeus)芽胞に対する60kVで生成された反応性ガスの効果
B.アトロファエウスの芽胞は、殺すのが最も難しい微生物の1つと考えられている。以下の実験は、ウイルスを含むあらゆる微生物を殺す反応性ガスの能力を実証する。追加の実験が細菌の死滅を示しているが、これは、ウイルスと細菌の組成が似ているため、反応性ガスがウイルスを殺す能力を持っていることも示している。
【0138】
B.アトロファエウス芽胞を播種した紙片(Mesa Labs社、Lakewood、CO)を反応性ガス(RGS)に60、120、及び180分間暴露させた。RGSは、修正されたワンパスバルブの向きで、60kVで生成させた。生成されるオゾンの量は、一定の電圧で生成されるRGSの総量に比例し、利用可能な器具で簡単に定量化できるため、オゾンがRGSの濃度の変化を追跡するために使用される。
【0139】
プラズマ生成を開始した後、オゾンの量が350ppmになるまでRGSを蓄積させた。この時点で、排気バルブのシールをわずかに開けて、少量のガスを逃がし、プラズマ生成器のハウジングのドアの継ぎ目から引き込まれる可能性が高い周囲の空気に置き換えた。これは、25~28立方フィート/分(cfm)への流量の増加と、わずかな変動で250ppmにおいて安定するオゾンの減少をもたらした。試料コンタクタへのバルブを閉じることによって試料を除去し、同時にRGS生成がシステム内を循環し続けられるようにした。オゾンは、短い試料除去中(1~2分間)350ppm付近のピークに達したが、試料コンタクタへの流れを再開した後、すぐに250ppmに安定した。
【0140】
Mesa Labs社は、各ストリップに1.8×10個の芽胞が含まれていると見積もっている。Mesa Labs社が推奨する手順で処理した実験用対照では、平均1.0×10芽胞/ストリップが測定された。全ての時点で、標準的な48時間後に測定された最終カウントは0コロニー形成単位(cfu)であった。観察のためにプレートを保持した。3日目に、RGSに60分間暴露した試料はわずかな芽胞集団を有していた。より長時間暴露した試料には変化がなかった。最終的な結果が図13及び以下の表7にある。
【0141】
【表18】
【実施例6】
【0142】
実施例6:標準流量及び高流量、15、30、45、及び60分でのバチルス・アトロファエウス芽胞に対する60kVで生成された反応性ガスの効果
B.アトロファエウス芽胞を播種した紙片(Mesa Labs社、Lakewood、CO)を、15、30、45、及び60分間、反応性ガス(RGS)に暴露させた。RGSは、実施例5と同じ条件下で生成させた。2セットの紙片が同じ処理条件と時間であるが、フローシステム内の異なる場所で処理を受けた。1つのセット、「標準流量」は、試料コンタクタの上部(最も広い)部分に配置されたワイヤーラックから吊り下げられたS字カラビナにループされたバインダークリップで吊り下げられた。第2のセット、「高流量」は、試料コンタクタの流出側90°スチールエルボの接合部の間に配置された。結果が図14と以下の表8にまとめられている。
【0143】
【表19】
【0144】
実施例5及び6のデータの編纂
図15及び16、表9及び10にまとめた実施例5及び6のデータポイントは、高流量と標準流量の両方の条件で調査した全ての時点に対する減少曲線を示している。個々の要約と集計された要約の間のデータポイントには、わずかな違いが見られうる。重複する時点のリプリケートは平均化した。データセットは、対数減少と細菌数の変化の両方として表示されているが、これらは、同じ傾向を表す単純な逆関数である。
【0145】
標準流量条件では細菌数が徐々に減少し、60分でおよそ2.5logの減少に達した。120分及び180分の暴露は、E+06の細菌数の完全な減少をもたらした。これらの実験条件下では、1~2時間の暴露で、一般的に遭遇する汚染レベルに匹敵する芽胞集団レベルを効果的に除去することができた。
【0146】
高流量条件は、標準流量よりも高い減少率をもたらした。高流量条件では、同じ細菌数を約半分の時間で減らすことができた。これは、30分の高流量の最終細菌数(N=1.72E+04)を60分の標準流量(N=1.82E+04)と比較した場合に実証される。高流量条件では、45分間の暴露後に芽胞集団全体が除去されたが、標準流量条件では、1~2時間の間のどこかになるまで完全な除去には達しなかった。外挿により、E+06細菌数の標準流量下でのRGS暴露による完全な減少は、約90分で生じると予想される。
【0147】
標準流量は80.2フィート/分の速度であると計算され、一方、高流量は2281フィート/分の速度であると計算された。どちらの例でも、温度は25~40℃、露点は5.3~6.7℃、相対湿度は39.3~40.8であった。注:「E+」は科学的なE表記法であり、「mE+n」という表現はm×10の値を指し示す。
【0148】
【表20】
【0149】
【表21】
【実施例7】
【0150】
実施例7:濾紙上のサルモネラ・エンテリカに対する80kVで生成された反応性ガスの効果
10mmのWhatman濾紙10枚に2.27E+6個のS・エンテリカ細胞を播種し、3点のタイムコースにわたって反応性ガス(RGS)に暴露させた。各試料は、80kVで生成されたRGSで0、5、15、又は30分間同時に処理された10枚の濾紙のバッチを含んでいた。比較のため、それぞれの時点で3セットのフィルターは空気のみで処理した。全ての対照及び実験試料は、処理チャンバに配置する直前に播種し、処理後すぐに抽出バッファーに入れた。RGS処理と空気処理の両方に対する減少値は、経時的な細菌数の変化の対数[Log10(N/N)]として表され、図17及び下記の表11に示されている。
【0151】
【表22】
【実施例8】
【0152】
実施例8:濾紙上の大腸菌に対する80kVで生成された反応性ガスの効果
実施例8は、実施例7と同様な条件下で実施した。10mmのWhatman濾紙10枚に8.08E+6個の大腸菌細胞を播種し、3点のタイムコースにわたって反応性ガス種(RGS)に暴露させた。各試料は、80kVで生成されたRGSで0、1、5、又は15分間同時に処理された10枚の濾紙のバッチを含んでいた。比較のため、それぞれの時点で3セットのフィルターは空気のみで処理した。全ての対照及び実験試料は、処理チャンバに配置する直前に播種し、処理後すぐに抽出バッファーに入れた。RGS処理と空気処理の両方に対する減少値は、経時的な細菌数の変化の対数[Log10(N/N)]として表され、図18及び下記の表12に示されている。
【0153】
【表23】
【実施例9】
【0154】
実施例9:トリプトン大豆寒天(TSA,Tryptone Soya Agar)上の大腸菌に対する80kVで生成された反応性ガスの効果
大腸菌播種材料を625nmのO.D.が0.550になるように調製した。この密度は1.8E+9個の細胞と推定され、実験的にも6.95E+9個の細胞であることが確認される。一連の7つの1:10段階希釈を播種材料から作成し、これは、E+9個の細胞~E+2個の細胞の一連の細胞懸濁液をもたらした。E+8、E+7及びE+6個の細胞の3セットの初期細菌数レベルをTSA上に播種し、反応性ガス(RGS)で15、30及び45分間処理した。全ての対照及び実験試料は、処理チャンバに配置する直前に播種し、処理後すぐに抽出バッファーに入れた。結果は、対数減少及び初期細菌数と最終細菌数の比率の両方で報告され、図19及び図20に示されている。E+2以下の細胞数の検出限界は、30及び45分間処理されたE+6試料と、30及び45分間処理されたE+7試料を正確に区別することを妨げた。
【実施例10】
【0155】
実施例10:トリプトン大豆寒天(TSA)上の大腸菌に対する80kVで生成された反応性ガスの効果
24時間培養した大腸菌細胞を1.5E+10の開始密度まで濃縮し、7つの一連の1:10希釈で希釈した。TSAプレート8枚の1セットに各細菌数希釈0.1mLを播種し、25分間の反応性ガス(RGS)暴露前に1.51E+9~1.51E+2の細胞数を有する一連のプレートを得た。プレートの第2のセットを25分間のRGS暴露にさらし、処理後、第1の組のプレートと同じ方法で細胞を播種した。播種前のセットの減少値は、付随する全ての実験的要因による全体的な減少を指し示す。播種後のプレートの減少値は、過酸化物ラジカルの形成と寒天培地内での酸性化による正味の減少を指し示す(注:ほとんどの寒天は95%以上が水である)。結果は、初期(N)対最終(N)細菌数曲線(図21)及び対数減少の大きさ(図22)の両方として表示されている。図21において、「」は細胞が多すぎて数えられないことを指し示し、希釈スキームにより細胞数が推定されている。図21において、「**」はN=0であり、log値の実数を取得するために1の値を用いたことを指し示している。
【0156】
図23は、実験条件の計数可能な範囲内で過酸化物効果を有する4つの細菌数について、総減少量と残留過酸化物による減少量を比較したものである。(注:「E+」は科学的なE表記法であり、「mE+n」という表現はm×10の値を指し示す。)
【実施例11】
【0157】
実施例11(予言的)
ウイルスで汚染された表面が、反応性ガスによる処理によって消毒されたことを検証することが望ましい。表面が消毒されていることを決定するために、反応性ガスで処理する前に、表面から第1のウイルス試料を採取する。このウイルス試料は、テストの準備が整うまで、低温の無菌容器に保管される。次いで、表面を反応性ガスと接触させる。反応性ガスは、20kV~150kVの電圧で誘電体バリア放電(DBD)システムを使用して作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって生成され、反応性ガスはHVCPから少なくとも1メートル離れて輸送される。表面を処理した後、第2のウイルス試料を表面から採取する。第1のウイルス試料及び第2のウイルス試料に対してプラークアッセイ試験を行う。各試料のプラーク数をカウントする。各ウイルス試料の体積あたりのプラーク形成単位(PFU/mL)を比較する。処理済みの紙と未処理の紙のPFU/mlを比較することにより、ウイルスのlog10減少を決定する。処理済みの紙のウイルス濃度が1.0×10PFU/mlで、未処理の紙のウイルス濃度が1.0×10PFU/mlの場合、処理は2-log10減少を達成したことになる。第2の試料のPFU/mlの数が多すぎる場合は、反応性ガスの2回目の投与を施してもよい。
【0158】
或いは、反応性ガスがウイルスで汚染された表面を消毒するかどうかを決定するために、濾紙片を使用して均一なウイルス試料を提供してもよい。ウイルス、好ましくはMS2ファージを含む溶液を用いて2枚の濾紙片をブロッティングしてもよい。濾紙片(RGS処理済み)の1枚が、処理すべき表面を有するチャンバ内に配置されうる。濾紙を含むチャンバ内の表面が反応性ガスと接触される。反応性ガスは、20kV~150kVの電圧で誘電体バリア放電(DBD)システムを使用して作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって生成され、反応性ガスはHVCPから少なくとも1メートル離れて輸送される。もう1枚の濾紙片(未処理)は、テストの準備が整うまで、低温の無菌容器に保管される。反応性ガス処理を行った後、RGS処理濾紙及び未処理濾紙に対してプラークアッセイ試験を行う。
【0159】
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図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【手続補正書】
【提出日】2022-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスによる汚染が疑われる表面を消毒する方法であって、
電体バリア放電(DBD)システムを用いて、作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって、反応性ガスを生成するステップと、
前記HVCPから少なくとも1メートル離れたところに前記反応性ガスを輸送するステップと、それに続いて、
前記表面を前記反応性ガスと接触させ、前記表面を消毒するステップと
を含み、
前記ウイルスに感染した宿主が前記表面に接触したことがあり、かつ
前記反応性ガスが、オゾン以外の少なくとも1種の反応種又は励起種を含む、前記方法。
【請求項2】
ウイルスに汚染された表面を消毒する方法であって、
誘電体バリア放電(DBDシステムを用いて、作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって、反応性ガスを生成するステップと、
前記HVCPから少なくとも1メートル離れたところに前記反応性ガスを輸送するステップと、それに続いて、
前記表面を前記反応性ガスと接触させ、前記表面を消毒するステップと
を含み、
前記ウイルスに感染した宿主が前記表面に接触したことがあり、かつ
前記反応性ガスが、オゾン以外の少なくとも1種の反応種又は励起種を含む、前記方法。
【請求項3】
ウイルスに汚染された表面を消毒する、請求項2に記載の方法であって、
触後に前記表面からウイルス試料を取得するステップと、
応性ガスへの暴露後に残存するウイルスの量を決定するステップとをさらに含み、
前記接触によって前記表面が消毒されない場合には、前記表面が消毒されるまで前記反応性ガスと前記表面とを接触させることを繰り返す、前記方法。
【請求項4】
ウイルスによる汚染が疑われる表面を消毒するためのデバイスであって、
前記デバイスは、
誘電体バリア放電(DBD)システムを用いて、作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって、反応性ガスを生成すること、
前記HVCPから少なくとも1メートル離れたところに前記反応性ガスを輸送すること、及び、それに続いて、
前記表面を前記反応性ガスと接触させ、前記表面を消毒すること
ができ、
前記ウイルスに感染した宿主が前記表面に接触したことがあり、かつ
前記反応性ガスが、オゾン以外の少なくとも1種の反応種又は励起種を含む前記デバイス。
【請求項5】
ウイルスに汚染された表面を消毒するためのデバイスであって、
前記デバイスは、
誘電体バリア放電(DBD)システムを用いて、作動ガスから高電圧低温プラズマ(HVCP)を形成することによって、反応性ガスを生成すること、
前記HVCPから少なくとも1メートル離れたところに前記反応性ガスを輸送すること、及び、それに続いて、
前記表面を前記反応性ガスと接触させ、前記表面を消毒すること
ができ、
前記ウイルスに感染した宿主が前記表面に接触したことがあり、かつ
前記反応性ガスが、オゾン以外の少なくとも1種の反応種又は励起種を含む前記デバイス。
【請求項6】
接触後にウイルスに汚染された表面からウイルス試料を取得すること、及び、
反応性ガスへの暴露後に残存するウイルスの量を決定すること
がさらにできる、請求項5に記載のデバイスであって、
前記接触によって前記表面が消毒されない場合には、前記表面が消毒されるまで前記反応性ガスと前記表面とを接触させることを繰り返すことができる、前記デバイス。
【国際調査報告】