(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-19
(54)【発明の名称】第二相のサイズと濃度が最適な急速に焼結された正極、およびその形成方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20230512BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230512BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230512BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230512BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230512BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559976
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021024317
(87)【国際公開番号】W WO2021202268
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】デ,スミタヴァ
(72)【発明者】
【氏名】タナー,キャメロン ウェイン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB03
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA13
5H050EA22
5H050FA09
5H050FA13
5H050FA14
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA09
5H050HA17
(57)【要約】
電池の焼結電極は、集電体に面するように位置付けられた第一面、および電解質層に面するように位置付けられた第二面を有し、この焼結電極は第一相および第二相を含み、この第一相はリチウム化合物を有し、この第二相は、多孔質構造または固体Liイオン導体の少なくとも一方を有し、第一面と第二面との間の焼結電極の厚さは、10μmと200μmの間に及ぶ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体に面するように位置付けられた第一面、および電解質層に面するように位置付けられた第二面を有する電池の焼結電極であって、該焼結電極は、
第一相および第二相を含み、
該第一相はリチウム化合物を含み、
該第二相は、多孔質構造または固体Liイオン導体の少なくとも一方を含み、
前記第一面と前記第二面との間の前記焼結電極の厚さは、10μmと200μmの間に及ぶ、焼結電極。
【請求項2】
前記第二相は前記多孔質構造を含み、
前記焼結電極は5%から35%の範囲の開放気孔率を有し、
前記多孔質構造は、前記第一相内で連続している、請求項1記載の焼結電極。
【請求項3】
前記多孔質構造の細孔が、平均して、前記焼結電極の前記第一面と前記第二面に対する垂直の25°以内に揃えられている、請求項1記載の焼結電極。
【請求項4】
前記多孔質構造に液体電解質が浸透している、請求項1から3いずれか1項記載の焼結電極。
【請求項5】
前記第二相が、前記焼結電極の5体積%から35体積%の範囲で存在する固体Liイオン導体を含む、請求項1から3いずれか1項記載の焼結電極。
【請求項6】
前記固体Liイオン導体が、10
-4S/cmを超えるリチウムイオン伝導率を有する、請求項5記載の焼結電極。
【請求項7】
前記リチウム化合物が、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC)、スピネル型マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA)、鉄マンガン酸リチウム(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸コバルトリチウム、マンガン酸ニッケルリチウム、リチウムチタン硫化物、またはその組合せの内の少なくとも1つを含む、請求項1から3いずれか1項記載の焼結電極。
【請求項8】
前記焼結電極が、前記電池の自立型基体である、請求項1から3いずれか1項記載の焼結電極。
【請求項9】
前記電池が、不活性基体を含まない、請求項1から3いずれか1項記載の焼結電極。
【請求項10】
前記第一相と前記第二相との間の外周対表面積比が、少なくとも0.4μm
-1である、請求項1から3いずれか1項記載の焼結電極。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2020年4月2日に出願された米国仮特許出願第63/004136号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、第二相のサイズと濃度が最適な急速に焼結された正極に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン(Liイオン)電池のエネルギー密度を増やす努力が、リチウム(Li)金属負極を有する全固体(SS)電池構造を使用して続けられている。Li金属の理論電荷容量は、従来のLiイオン電池に使用されている黒鉛状炭素よりも約10倍大きい。SS Li電池を開発するための現行の努力は、急速充放電を目的として内部セル抵抗を最小にするために、伝導率の高いLiイオンを有する材料の開発に焦点を当ててきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現行の正極材料におけるLiイオンの伝導速度が遅いために、有効容量が限られ、充電速度と持続出力を供給する能力が限定され、絶対容量の目標がある電池の製造が煩雑になり、高くついてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願では、Liイオン電池用途のための改良された正極およびその形成方法が維持されている。
【0006】
いくつかの実施の形態において、電池の焼結電極は、集電体に面するように位置付けられた第一面、および電解質層に面するように位置付けられた第二面を有し、この焼結電極は第一相および第二相を含み、この第一相はリチウム化合物を含み、この第二相は、多孔質構造または固体Liイオン導体の少なくとも一方を含み、第一面と第二面との間の焼結電極の厚さは、10μmと200μmの間に及ぶ。
【0007】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、第二相は多孔質構造を含み、焼結電極は5%から35%の範囲の開放気孔率を有し、多孔質構造は、第一相内で連続している。
【0008】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、多孔質構造の細孔は、平均して、焼結電極の第一面と第二面に対する垂直の25°以内に揃えられている。
【0009】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、多孔質構造に液体電解質が浸透している。
【0010】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、液体電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ビスオキサラトホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウム(LiDFOB)、リチウムトリフルオロスルホニルイミド(LiTFSI)、またはその組合せの内の少なくとも1つを含む。
【0011】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、第二相は、焼結電極の5体積%から35体積%の範囲で存在する固体Liイオン導体を含む。
【0012】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、固体Liイオン導体は、10-4S/cmを超えるリチウムイオン伝導率を有する。
【0013】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、固体Liイオン導体は、リチウムガーネット(LLZO)、ホウ酸リチウム(LBO)、チタン酸ランタンリチウム(LTO)、リン酸チタンアルミリチウム(LATP)、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(LAGP)、Li11AlP2S12、リチウムホスホスルフィド(LPS)、その組合せ、またはそのドープされたものの内の少なくとも1つである。
【0014】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、リチウム化合物は、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC)、スピネル型マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA)、鉄マンガン酸リチウム(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸コバルトリチウム、マンガン酸ニッケルリチウム、リチウムチタン硫化物、またはその組合せの内の少なくとも1つを含む。
【0015】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、焼結電極は、電池の自立型基体である。
【0016】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、電池は、不活性基体を含まない。
【0017】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、第一相と第二相との間の外周対表面積比は、少なくとも0.4μm-1である。
【0018】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、焼結電極の断面積は、少なくとも3cm2である。
【0019】
いくつかの実施の形態において、電池の正極は、第一相と第二相、および第一面と第二面を備え、第一面と第二面との間の厚さは、10μmと200μmの間であり、この正極は、5%から35%の範囲の開放気孔率、10-4S/cmを超えるリチウムイオン伝導率、および少なくとも0.4μm-1の第一相と第二相との間の外周対表面積比を有する。
【0020】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、焼結正極の断面積は、少なくとも3cm2である。
【0021】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、電池は、ここに記載された任意の実施の形態の正極と、正極の多孔質領域に浸透する電解質材料とを備え、正極は電池の基体である。
【0022】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ビスオキサラトホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウム(LiDFOB)、リチウムトリフルオロスルホニルイミド(LiTFSI)、またはその組合せ;リチウムガーネット(LLZO)、ホウ酸リチウム(LBO)、チタン酸ランタンリチウム(LTO)、リン酸チタンアルミリチウム(LATP)、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(LAGP)、Li11AlP2S12、リチウムホスホスルフィド(LPS)、その組合せ、またはそのドープされたものから選択される。
【0023】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、電池は、不活性基体を含まない。
【0024】
他の態様または実施の形態のいずれとも組み合わせられる、1つの態様において、この電池の体積は、不活性基体上に配置された正極を備えた電池の体積より小さい。
【0025】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、例示に過ぎず、請求項の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する意図があることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
添付図面は、さらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施の形態を示しており、説明と共に、様々な実施の形態の原理および作動を説明する働きをする。
【
図1】LiPON電解質(1μm)およびLLZO電解質(20μm)に関するLCO正極厚の関数としての体積エネルギー密度および最大充電速度能力を示すグラフ
【
図2】いくつかの実施の形態による、焼結正極を有するLiイオン電池を示す概略断面図
【
図4】
図3の電池の電荷容量と比べた
図2の電池の電荷容量のグラフ
【
図5】いくつかの実施の形態による、試料E1の研磨断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像
【
図6】いくつかの実施の形態による、試料E2の研磨断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像
【
図7】いくつかの実施の形態による、試料E3の研磨断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像
【
図8】いくつかの実施の形態による、試料E4の研磨断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像
【
図9】いくつかの実施の形態による、試料E1~E4に関する充電速度の関数としての充電容量のグラフ
【
図10】いくつかの実施の形態による、試料E1~E4に関する名目上一定の気孔率での外周対表面積比の関数としての1C速度での充電容量のグラフ
【
図11】有機炭酸エステル溶液中の1MのLiPF
6の伝導率を有する伝導性第二相の濃度の関数としての67μm厚のLCO電極の1C速度でのモデル化容量を示すグラフ
【
図12】いくつかの実施の形態による、第二相のリチウムイオン伝導率の関数としての焼結LCO正極の1C速度でのモデル化容量を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、添付図面に示された例示の実施の形態を詳しく参照する。できるときはいつでも、図面に亘り、同じまたは同様の部分を称するために、同じ参照番号が使用される。図面における構成要素は、必ずしも、一定の縮尺で描かれておらず、代わりに、例示の実施の形態の原理を説明する上で、強調されている。本出願は、説明に述べられた、もしくは図面に示された詳細または方法論に限定されないことを理解すべきである。専門用語は、説明目的のためだけであり、限定するものと解釈されるべきではないことも理解すべきである。
【0028】
それに加え、本明細書に述べられたどの例も、実例であるが、限定するものではなく、請求項に記載された発明の多くの可能な実施の形態の内のいくつかを述べているに過ぎない。当該技術分野で通常遭遇し、当業者に明白に思われるであろう様々な条件およびパラメータの他の適切な改変および適用が、本開示の精神および範囲に含まれる。
【0029】
先に述べたように、SS Liイオン電池を開発するための現行の努力は、急速充放電を目的として内部セル抵抗を最小にするために、伝導率の高いLiイオンを有するセラミック電解質材料の開発に焦点を当ててきた。立方晶リチウムガーネット(LLZO)、アルミニウムがドープされたリン酸チタンリチウム(LATP)などは、10-4S/cmを超えるバルクLiイオン伝導率を有し、50μm未満の厚さを有する場合、50Ω・cm2未満の単位面積当たりの電池抵抗に寄与し、この単位面積当たりの抵抗は、リチウムイオン伝導率で除算された電解質領域の厚さと定義される。比較として、従来より使用されているオキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)の伝導率は、たった2×10-6S/cmである。
【0030】
正極材料におけるリチウム輸送速度は、電解質中よりも遅い傾向にある。表1には、原型のリチウム電池の正極材料の輸送パラメータが記載されている。
【0031】
【0032】
LCO、LMO、およびLFPのLiイオン伝導率は、LLZOおよびLATP(>10-4S/cm)のようなセラミック電解質よりも著しく低い。遅い電子伝導の制限を要因として考慮した後の、LCOおよびLFPにおけるLiイオン伝導率は、LiPONより低い。表1における中では、LMOのみが、Liイオン伝導率において、LiPONに匹敵する。それゆえ、遅いLiイオン伝導速度の結果として、正極材料は、有効容量、充電速度、および持続出力を供給する能力に制限があり、それによって、絶対容量の目標がある電池の製造が煩雑になり、高くついてしまう。
【0033】
理論で束縛されるものではないが、電解質との界面からの閾値距離を超える正極の材料は、利用可能ではない-すなわち、Liイオン伝導速度は、その閾値距離に依存し、それ自体は、正極の厚さの関数である。言い換えると、より厚い正極は、正極中の材料が、正極と電解質との界面からの閾値を超えると、Liイオン伝導速度が減少する傾向を増加させる。他方では、正極が薄すぎると、不活性材料(正極の下にある基体など)によっても、エネルギー密度が制限されることがある。
図1は、厚さの関数としてのLCO正極の体積エネルギー密度および最大充電速度(C-速度)能力を示す。電解質がLiPON(1μm)またはLLZO(20μm)であるか否かにかかわらず、類似の傾向が観察される:正極の厚さが増加するにつれて、最大C-速度は減少し、体積エネルギー密度は増加する。
図1において試験した電池構造について、集電体は銅(Cu)とアルミニウム(Al)であり、各々の厚さは10μmであり;全電荷移動抵抗は、LiPON電解質含有電池およびLLZO電解質含有電池の両方において同一(20Ω・cm
2)であり;最大C-速度は、1Vの電位降下を生じるオーム電流密度から推測される。
【0034】
多くの電子デバイスについて、長くとも1時間の目標充電時間が、正極の能力および属性の意欲的な目標となる。
図1から、この1時間の充電時間の要件を満たすために、LCO正極の厚さは、10μm未満の厚さに維持する必要があるであろう。10μm未満の厚さの正極を備えた電池(例えば、
図3)の容量は、空間の大部分が不活性集電体および電解質材料に充てられいるので、この材料セットの最大電位の容量(517mAhr/cm
3)の半分未満である。
【0035】
正極材料を通るLi輸送の速度が遅いことでも、絶対容量の目標がある電池の製造費が増してしまう。電池の電極を製造するのに一般に使用される製造過程(例えば、テープキャスティングおよびカレンダー加工など)の速度は、面積によって制御される。これらの過程の速度は、電極の厚さとは関係ない。(i)電池の容量を構築するために必要な積層の数を最小にし、(ii)電池の不活性材料の量を減少させ、(iii)工程設備の資本投資を減少させるために、より厚い電極が望ましい。電池の積層の数が減少するにつれて、収率も大きくなると予測される。
【0036】
ここに記載されているように、リチウム電池用の、急速焼結され(1時間未満)、自立型の焼結正極が開示されており、この正極は、電池構造における不活性構成要素の割合を減少させるために最適化された厚さ(例えば、10μmと200μmの間の焼成されたままの厚さ)、5%から35%の第二相、および高い貯蔵容量および速い充放電速度のために最適化された第二相に対する活性正極材料の割合(例えば、0.4μm-1より大きい、活性正極材料と第二相との間の外周対表面積比)を有する。この外周対表面積比は、全断面積Aで除算された、活性正極材料(例えば、LCO)と、(1)第二相または(2)第二相を含有する領域との間の外周の全長PT(例えば、研磨断面の画像解析で測定した気孔率)と定義される。活性正極材料としては、コバルト酸リチウム(LCO);ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC)(例えば、111型(Li(NiMnCo)1/3O2)および811型(LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2));ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA);鉄マンガン酸リチウム(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、またはその組合せが挙げられるであろう。第二相には、(1)液体電解質が浸透した多孔質構造、または(2)10-4S/cmを超えるリチウムイオン伝導率を有する固体Liイオン導体(例えば、リチウムガーネット(LLZO)、ホウ酸リチウム(LBO)、ペロブスカイト構造材料(例えば、チタン酸ランタンリチウム(LTO))、ドープされたLISICON構造材料(例えば、リン酸チタンアルミリチウム(LATP)、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(LAGP))、チオ-LISICON(例えば、Li11AlP2S12)、リチウムホスホスルフィド(LPS)、その組合せ、またはそのドープされたもの)があるであろう。いくつかの例において、第二相は、(3)10-10cm2/sより大きいリチウム拡散率を有する混合導体(例えば、Nb2O5とWO3または他のタングステン酸塩の固溶体)を含むことがある。第二相の細孔または粒子の平均サイズにより、距離を短くして、活性正極材料におけるLiイオン輸送を向上させることができる。
【0037】
広く図面を参照すると、
図3は、従来の固体薄膜Liイオン電池100の概略断面図を示す。電池100は、不活性機械的支持体106上に堆積された正極集電体102および負極集電体104を備える。正極108(例えば、LCOまたはLMO)が、正極集電体102上に形成され、固体電解質110(例えば、LiPON)に取り囲まれている。負極112が、電解質110上と、負極集電体104上に堆積されている。正極108、電解質110、および負極112を保護するために、コーティング114が設けられている。従来の電池設計において、機械的支持体106は、電池100の製造中の取扱いのために利用され、正極108と電解質110の層を堆積するためのプラットフォームである。機械的支持体106の厚さは、典型的に、50μmから100μmである。機械的支持体106および保護コーティング114は、最終パッケージに剛性も与え、損傷を防ぐのに役立つ。
【0038】
これらの従来の電池100において、正極108は、典型的に、RFスパッタリングまたはパルスレーザ堆積などの過程によって、所望の厚さまで成長させられる。これらの堆積技術は、従来の電池100が機械的支持体106を使用する必要がある理由の1つである。そのような従来の方法により、10μm/時未満の速度で正極材料が生成され、このため、これらの従来の正極材料の達成可能な厚さに実際的かつ商業的な制限が生じる。結果として、スマートカード、医療移植片、RFIDタグ、および無線センシングのような小型電源が必要とされる場合でしか、薄膜マイクロ電池は応用されていない。
【0039】
図2は、いくつかの実施の形態による、焼結正極を有するLiイオン電池を示す概略断面図である。リチウムイオン電池10は、焼結正極12、電解質層または領域14、および負極16を備える。実施の形態において、焼結正極12の厚さは10μmから200μmである。焼結正極12が不活性機械的(例えば、ジルコニア)支持体上に担持されないように、焼結正極12がリチウムイオン電池10を機械的に支持することが都合よい。この構成の利点の1つは、不活性構成要素が電池構造から実質的に排除されていることである。すなわち、焼結正極12は、機械的支持体の機能を与えつつ、それでも活性構成要素であり、電池の容量に寄与する。したがって、正極で支持される設計は、より薄い形状因子(すなわち、例えば、
図3の従来の電池よりも厚さが減少している)で同じ全体容量を与える、または従来の電池における厚さと類似の厚さを維持するが、より高い正味容量を有することができる。
【0040】
さらに、焼結正極12は、固体および液体電解質両方のリチウムイオン電池に使用することができる。具体的に、固体電池において、電解質層14は、LiPON、リチウムガーネット(例えば、LLZO)、リチウムホスホスルフィド、またはリチウム超イオン伝導体(LISICON)などの固体電解質を含む。より具体的には、固体電池において、電解質層14は固体電解質を含み、その固体電解質は、単位面積当たりの抵抗が約50Ω・cm2未満であるような、リチウムイオン伝導率(例えば、>10-4S/cm)および厚さ(例えば、<50μm)の組合せを有する。詳しくは、LiPONの利点の1つは、樹枝状結晶の形成に抵抗することである。液体電解質電池において、電解質層14は、液体電解質(例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)またはその混合物などの炭酸エステル溶媒中の、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ビスオキサラトホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウム(LiDFOB)、リチウムトリフルオロスルホニルイミド(LiTFSI)、またはその組合せ)、および正極12と負極16を分離するためのポリマーまたはセラミックセパレータを含む。いずれの場合でも、焼結正極12は、従来のリチウムイオン電池を上回って電荷容量を増加させる。
【0041】
電池10は、焼結正極12の第一面上に配置された第1の集電体18も備える。図示された実施の形態において、第2の集電体20が負極16上に配置されている;しかしながら、実施の形態において、負極は金属(例えば、リチウム金属またはマグネシウム金属)であることがあり、その場合には、集電体は排除してもよい。いくつかの実施の形態において、焼結負極16は、チタン酸リチウムまたはニオブタングステン酸リチウム(lithium niobium tungstate)の少なくとも一方を含むことがある。さらに、図示された実施の形態において、電池10は、保護コーティング22内に被包されている。実施の形態において、第1の集電体18は銅であり、第2の集電体20(使用される場合)はアルミニウムである。保護コーティング22は、例えば、パリレンであることがある。
【0042】
図示された実施の形態は、焼結正極12のみを備えているが、負極16も、本開示による焼結電極であってよい。リチウムイオン電池について、焼結正極12のいくつかの実施の形態は、コバルト酸リチウム、スピネル型マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸コバルトリチウム、マンガン酸ニッケルリチウム、リチウムチタン硫化物、またはその組合せの内の少なくとも1つを含むことがある。
【0043】
いくつかのリチウムイオン電池において、正極12は、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC)、スピネル型マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA)、鉄マンガン酸リチウム(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸コバルトリチウム、マンガン酸ニッケルリチウム、またはリチウムチタン硫化物、もしくはその組合せから選択される活性材料、および(1)液体電解質が浸透した多孔質構造、または(2)10-4S/cmを超えるリチウムイオン伝導率を有する固体Liイオン導体(例えば、リチウムガーネット(LLZO)、ホウ酸リチウム(LBO)、ペロブスカイト構造材料(例えば、チタン酸ランタンリチウム(LTO))、ドープされたLISICON構造材料(例えば、リン酸チタンアルミリチウム(LATP)、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(LAGP))、チオ-LISICON(例えば、Li11AlP2S12)、リチウムホスホスルフィド(LPS)、その組合せ、またはそのドープされたもの)から選択される第二相を含む、急速に焼結された自立型焼結正極であることがある。第二相の細孔-(1)におけるような-または粒子-(2)におけるような-の平均サイズにより、距離を短くして、活性正極材料中のLiイオン輸送を向上させることができる。いくつかの例において、第二相は、(3)10-10cm2/sより大きいリチウム拡散率を有する混合導体(例えば、Nb2O5とWO3または他のタングステン酸塩の固溶体)を含むことがある。
【0044】
重要なことに、焼結正極12は、(A)電池構造における不活性構成要素の割合を減少させるために最適化された厚さ(例えば、10μmと200μmの間の焼成されたままの厚さ)、(B)5%から25%の第二相、(C)高い貯蔵容量および高い充放電速度のために最適化された第二相に対する活性正極材料の割合(例えば、0.4μm-1より大きい、活性正極材料と第二相との間の外周対表面積比)、および(D)少なくとも3cm2の断面積の内の少なくとも1つを有する。この断面積は、固体電解質セパレータまたは多孔質セパレータと接触する面の面積と定義される。
【0045】
それに加え、リチウムイオン電池が図示されているが、電池は、そうではなく、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、またはマグネシウムイオンの化学的構造に基づくものであり得る。ナトリウムイオン電池について、(焼結)正極12は、NaMnO2、Na2/3Mn1-yMgyO2(0<y<1)、またはNaVPO4Fの内の少なくとも1つを含むことがあり、(焼結)負極16は、Na2Li2Ti5O12またはNa2Ti3O7の少なくとも一方を含むことがある。マグネシウムイオン電池について、(焼結)正極12は、MgCr2O4またはMgMn2O4の少なくとも一方を含むことがあり、(焼結)負極16は、マグネシウム金属(集電体20の機能を果たすこともである)であることがある。上述した電池の化学的構造のいずれも、溶媒(例えば、DMC)およびインターカラントイオンと一致する陽イオンを有する塩を含む液体電解質を利用することがある。それに加え、ナトリウムイオン電池について、固体電解質として、ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)を使用してもよい。
【0046】
本開示による
図2の電池10の電荷容量および
図3の従来の電池100の電荷容量の比較が、
図4に示されている。この比較は、80μmの名目上同一の厚さで行われている。具体的に、比較は、(1)厚さが50μmのジルコニアの機械的支持体106および厚さが5μmの正極を有する従来の電池100と、(2)厚さが35μmの正極12を有する現在開示されている電池10との間で行われている。特に、現在開示されている電池10の正極12の厚さは、従来の電池100の機械的支持体106の厚さより小さく、空間を負極16でのリチウム金属に取っておくことができる。
図4から分かるように、焼結正極12の余分な厚さおよび機械的支持体106の除去により、絶対項と体積項で7倍高い容量を提供し、質量基準では、容量は10倍大きい。
【0047】
焼結電極およびその形成方法の概要
焼結電極の様々な実施の形態は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または遷移金属の内の少なくとも1つを含むことがある。焼結電極は、(A)電池構造における不活性構成要素の割合を減少させるために最適化された厚さ(例えば、10μmと200μmの間の焼成されたままの厚さ)、(B)5%から35%の第二相、(C)高い貯蔵容量および高い充放電速度のために最適化された第二相に対する活性電極材料の割合(例えば、0.4μm-1より大きい、活性電極材料と第二相との間の外周対表面積比)、および(D)少なくとも3cm2の断面積の内の少なくとも1つを有する。焼結電極は、従来の電極材料と比べて、典型的な薄膜に形成された電極よりも、ずっと大きく、自立型に製造することができ、他の焼結電極とは対照的に、研削や研磨などの追加の仕上げ技術のいずれも必要とせずに使用できる。
【0048】
ここに開示された焼結電極は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、およびマグネシウムイオン電池を含む様々な電池の化学的構造、並びに固体または液体電解質を使用するものに適していると想定される。焼結電極、製造過程、およびリチウムイオン電池の様々な実施の形態が、ここに開示されている。そのような実施の形態は、制限としてではなく、例として提供される。
【0049】
先に述べたように、焼結電極の様々な実施の形態は、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなど)、または遷移金属(例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、ニオブ、タンタル、バナジウム、チタン、銅、クロム、タングステン、モリブデン、スズ、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス、鉄など)の内の少なくとも1つを含む。いくつかの実施の形態において、焼結電極は、酸化物、硫化物、セレン化物、またはフッ化物の化合物を含むことがある。
【0050】
いくつかの実施の形態において、焼結電極は、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC)、スピネル型マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA)、鉄マンガン酸リチウム(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸コバルトリチウム、マンガン酸ニッケルリチウム、リチウムチタン硫化物(LiTiS2)、チタン酸リチウム、ニオブタングステン酸リチウム、またはその組合せを含むことがある。いくつかの実施の形態において、焼結電極は、NaVPO4F、NaMnO2、Na2/3Mn1-yMgyO2(0<y<1)、Na2Li2Ti5O12、Na2Ti3O7、またはその組合せを含むことがある。いくつかの実施の形態において、焼結電極は、クロム苦土鉱(MgCr2O4)、MgMn2O4、またはその組合せを含むことがある。
【0051】
実施の形態において、焼結電極は、第一相と混ざった、第二相、第三相、第四相などの多相を含むことがある。いくつかの実施の形態において、追加の相は、追加の機能性を与えるために選択される。一例において、リチウム電極について、第二(例えば、リチウムガーネット)相は、電極の有効リチウム伝導率を向上させることがある。いくつかの実施の形態において、第二相は電子伝導率を向上させる。追加の相は、焼結前に加えることができるか、または焼結電極は、追加の相が浸透すねことのある開放気孔率を有することがある。いくつかの実施の形態において、第二相は、追加の電子伝導率を与えるスピネルである。
【0052】
いくつかの実施の形態において、焼結電極は、薄膜技術を使用して製造された電極などの、電池の従来の電極よりも大きく作ることができる。例えば、焼結電極の厚さは、10μmから200μm、または20μmから175μm、または50μmから150μm、または75μmから125μm、または10μmから75μm、または15μmから65μm、または20μmから50μm、または25μmから40μm、または125μmから200μm、または140μmから180μm、または150μmから175μmの範囲、もしくはここに開示された任意の値または範囲にあることがある。いくつかの例において、焼結電極は、1%から50%、または2%から40%、または5%から35%、または10%から30%、または5%から40%、または5%から30%、または5%から25%、または10%から40%、または25%から40%の範囲、もしくはここに開示された任意の値または範囲で存在する第二相を含むことがある。いくつかの例において、焼結電極は、0.4μm-1超、または1μm-1超、または2μm-1超、または3μm-1超、または4μm-1超、または6μm-1超、もしくはここに開示された任意の値または範囲の、活性電極材料と第二相との間の外周対表面積比を有することがある。
【0053】
焼結電極は、薄膜電極より厚いことに加え、相対的に大きい断面積を有するように製造することもできる。いくつかの例において、焼結電極は、少なくとも3cm2、または少なくとも5cm2、または少なくとも10cm2、または少なくとも25cm2、または少なくとも50cm2、または少なくとも100cm2、または少なくとも250cm2、または少なくとも500cm2、または少なくとも750cm2、または少なくとも1000cm2、もしくはここに開示された任意の値または範囲の断面積を有する。いくつかの例において、焼結電極は、3cm2から25cm2、また25はcm2から100cm2、または100cm2から500cm2、または500cm2から1000cm2の範囲、もしくはここに開示された任意の値または範囲の断面積を有する。断面積は、固体電解質セパレータまたは多孔質セパレータと接触する面の面積と定義される。
【0054】
開示された焼結電極は、加工速度が電極の厚さとは関係ない、「中くらい」の厚さの電極材料のずっと速い製造速度を可能にするテープ製造過程により、これらの利点を達成することができる。すなわち、電極は、薄膜技術によって製造された従来の電極より厚く、かつ利用できるサイズまで削る必要のある他の焼結電極よりも薄く作ることができる。さらに、電極は、電極材料を製造するために現在使用されているよりも経済的な過程で急速に焼結することができる。実際に、従来の過程では、典型的に、ずっと遅く(例えば、少なくとも15時間)、厚い層を作り上げるのがより難しい薄膜技術が利用される。このようにして、本開示の相対的に厚い焼結電極は、機械的支持体などの不活性構成要素を排除するだけでなく、電池の電荷容量を増加させる。さらに、電極の厚さおよびテープキャスティング製造過程により、電極材料をロール・ツー・ロール形式で製造することができる。
【0055】
焼結電極は、急速に焼結される、テープキャストまたは押出未加工テープから形成されるので、従来の薄膜電極より大きく作ることができる。未加工テープを形成するために、粉末成分、結合剤、および溶媒からスラリー(またはペースト)を調製する。粉末成分は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または遷移金属の内の少なくとも1つを含む粉末成分を含む。例えば、粉末成分は、Li2O、Li2CO3、LiOH、LiNO3、酢酸リチウム(CH3COOLi)、クエン酸リチウム(Li3C6H5O7)、MnO2、Mn2O3、Co2O3、CoO、NiO、Ni2O3、Fe2O3、Fe3O4、FeO、TiO2、Nb2O5、V2O5、VO2、Ta2O5、WO3、またはその組合せの内の少なくとも1つを含むことがある。いくつかの例において、スラリーまたはペーストの粉末成分は、スラリー(またはペースト)の質量の、40質量%から75質量%、または45質量%から70質量%、または50質量%から65質量%、または40質量%から60質量%、または50質量%から70質量%、もしくはここに開示された任意の値または範囲を構成する。
【0056】
このスラリーまたはペーストの結合剤成分は、焼結前に、未加工テープの形態で粉末成分を一緒に保持するために提供される。結合剤は、ポリビニルブチラール(PVB)(例えば、Eastman Chemical Companyから入手できるButvar(登録商標)PVB樹脂)、アクリルポリマー(例えば、Lucite Internationalから入手できるElvacite(登録商標)アクリル樹脂)、またはポリビニルアルコール、もしくはその組合せの内の少なくとも1つであることがある。スラリー(またはペースト)に、粉末成分と結合剤がその中に分散される溶媒(例えば、1-メトキシ-2-プロパニルアセテート(MPA)、エタノールとブタノールの混合物など)も与えられる。いくつかの例において、溶媒は、20℃での誘電率が、20未満、または10未満、または5未満、もしくはここに開示された任意の値または範囲にあり、非極性である。
【0057】
いくつかの例において、結合剤の化学的性質は、MPAなどの非極性溶媒と機能するように調節されることがある。例えば、「Butvar」B-79は、ポリビニルアルコールからのヒドロキシル基を低濃度(11~13質量%)で有し、他のPVB結合剤と比べて、分子量が低い市販のPVBである。これにより、溶解が容易になり、粘度を制御し、固形物の高添加を可能にする高溶解度が得られる。
【0058】
いくつかの例において、スラリー(またはペースト)は、加工に役立つ他の添加剤を含有することがある。例えば、添加剤は、0.1質量%から5質量%の分散剤(例えば、魚油分散剤)および/または可塑剤(例えば、フタル酸ジブチル)を含むことがある。他の随意的な添加剤としては、フェノールなどの酸化防止剤(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)またはアルキル化ジフェニルアミン)、または無機炭酸塩および水酸化物などの吸熱分解する材料が挙げられる。
【0059】
スラリー(またはペースト)は、所望の厚さの焼結電極を有する、テープキャストであるか、または未加工テープに押し出される。実施の形態において、未加工テープは、溶媒のかなりの割合を除去するために乾燥させられ、主に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および/または遷移金属の化合物および結合剤が残る。乾燥は、必要に応じて、循環空気環境下において、周囲温度で、または60℃から80℃のわずかに高い温度で、行われる(または周囲温度で始まり、高温に移行する)。
【0060】
乾燥後に残る有機材料の量は、乾燥した未加工テープの10質量%以下である。未加工テープは、乾燥された際に、脱結合され、焼結される。脱結合は、未加工テープが、高分子結合剤および任意の他の有機化合物が燃え尽きる温度(例えば、175℃から350℃)に加熱された場合に生じる。その後、乾燥され、脱結合された未加工テープは、連続して焼結される。焼結は、一般に、60分未満、または55分未満、または50分未満、または45分未満、または40分未満、または35分未満、または30分未満、または25分未満、または20分未満、または15分未満の範囲、もしくはここに開示された任意の値または範囲の期間に亘り500℃から1350℃の温度範囲で行われる。
【0061】
実施の形態において、焼結の結果として、焼結電極は、平均で、10nmから50μm、50nmから25μm、100nmから10μm、1μmから5μm、またはここに開示された任意の値または範囲の粒径を有する。いくつかの例において、焼結電極は、その焼結電極の第一面から他方の第二面に流体連通が設けられるように、開放気孔率(気孔率は、第二相が固体の第一相内の連続相であるような第二相である)を有する。
【0062】
それに加え、焼結電極テープの細孔は、イオン輸送を促進するために実質的に揃えられることがある-すなわち、細孔は、第一面と第二面に垂直な軸に沿って揃えられている。例えば、各細孔は、細孔の任意の他の断面寸法よりも長い断面寸法を有することがあり、長い方の断面寸法は、電極の第一面と第二面に実質的に垂直に、例えば、平均で、垂直の25°以内に揃えられている。
【0063】
ここに記載された焼結過程は、他の焼結電極とは対照的に、電池構造に組み込む前に、機械的研削または研磨などのさらなる仕上げを必要としない焼結電極を製造する。具体的に、以前の焼結電極は、ずっと大きい厚さ、例えば、500μmから1mmの大型ディスクから形成され、使用できる寸法にさいの目に切断し、使用できる厚さになるまで削らなければならなかった。そのような研削は、約130μmの厚さを達成するためにしかできないと報告されており、これが、従来の焼結過程により製造される電極の実用限界である。現在記載されている電極をテープキャスティングすることによって、その過程をより経済的(例えば、研削/研磨工程がなく、ロール・ツー・ロール製造を利用する能力がある)にするだけでなく、所望の厚さの電極材料を達成できる。
【実施例】
【0064】
実施例1-テープキャスティング過程
正極材料における遅い輸送の問題および二次伝導相の恩恵を示す、厚さが45μmから85μmである自立型LCO正極リボンを、テープの迅速焼結によって調製した。テープを製造するためのLCO粉末は、Shandong Gelon Lib Co.,Ltd.(P1)およびAmerican Elements(P2)から購入した。その両方とも、LiCoO2である。組成は、名目上同じであるが、各試料の形態および最終的な粒径は、異なる。形態および粒径は、微細構造をうまく扱うための-焼結条件の調節以外の-手段として選択した。受け取ったままの状態の粉末P2の平均粒径はP1よりも粗いが、より迅速に研削することができる。例えば、P2粒子の平均粒径(0.76μm)は、直径2mmのミル媒体によるエタノール中での5時間に亘るアトリションミル後に、P1粒子の平均粒径(1.36μm)のおよそ半分である。
【0065】
テープキャスティング用のスリップ(すなわち、「スラリー」;テープキャスティング過程への投入物)の配合が、下記の表2に示されている。
【0066】
【0067】
スリップの成分を同時に混合し、同等の操作環境下で、アトリションミルに施した。P1およびP2の平均粒径は、上述したように、直径2mmのミル媒体によるエタノール中で5時間に亘り行ったアトリションミル研究と一致すると予測される-P1について、およそ1.36μmであり、P2について、およそ0.76μmである。約50.8mmの幅を有する重力送りスロットダイを使用して、スリップをキャスティングした。ゲート高さ(テープキャスティング中にスリップが流れる空間を規定する、担体とゲート上部との間の距離)は、8ミル(約0.20mm)と12ミル(約0.30mm)の間に及ぶように設定した。キャスティングは、Mylar担体上に行った。これらのスリップとテープの重要な特徴は、不揮発性有機化合物の濃度が、テープの可燃性を阻害するほど低いことである。
【0068】
長さが約200mmの小片を、乾燥テープのロールから切断し、焼結炉を2.5インチ/分(約63.5mm/分)または4インチ/分(約102mm/分)の速度で連続的に引っ張った。この焼結炉は、11インチ(約28.4cm)の長さの結合剤焼き切り区域(結合剤の除去のための)、および1000℃から1200℃の焼成温度で作動する、40mmの長さの単一通過管型炉を含む。有機結合剤は、300℃までに、質量基準で、80%超で熱分解され、800℃までに、ほぼ完全に除去される(99%)。この連続焼結過程(テープの加熱、均熱、および冷却を含む)の合計時間は、全ての場合で、30分未満である。均熱時間は、焼結設定点温度で経過した期間である。迅速に焼成されたLCOリボンの加工属性、特性および記号表示が、下記の表3に示されている。
【0069】
【0070】
実施例2-属性の特徴付け
直径が12.3mmのディスク3枚をE1~E4のLCOリボンの各々(合計で12の試料)からレーザ切断した。その内の2つを、コイン電池中の正極として評価し(8つの試料)、1つを、走査型電子顕微鏡法(SEM)解析のために選んだ(4つの試料)。(1)厚さ、(2)気孔率、および(3)正極構造の全面積に対するLCOと細孔の界面の外周長さの比の属性を、それぞれ、
図5~8におけるように、E1~E4に関する研磨断面の高解像度SEM画像の解析によって決定した。(1)~(3)に関する
図5~8の定量化が、上記の表3に与えられている。
【0071】
CR2032コイン電池を、負極としての直径14mmのリチウムチップおよびセパレータとしてのWhatmanからの直径17mmの多孔質ガラス繊維フィルタにより組み立てた。液体電解質は、炭酸エチレンと炭酸ジメチルの1:1の混合溶液中の1MのLiPF6であった。137mA・hr/gであるLCOの理論容量に基づいて電流を選択して、0.1、0.3、0.5、0.8、および1のC-速度で、充放電サイクルを3回行った。充電は定電流条件下で行い、次に、3.0Vと4.3Vの間の定電圧条件下で行った。電流がC-速度値の10%に到達したら、充電を停止し、放電を開始した。放電には、定電流条件を使用した。
【0072】
図9は、いくつかの実施の形態による、試料E1~E4に関する充電速度の関数としての充電容量を示す。活性正極材料中の遅いリチウム輸送の問題は、E1リボンからのディスクで作られた電池の容量で直ちに明白である。0.1のC-速度でさえも、容量は、20mA・hr/gを超えるのがやっとであり、理論値である137mA・hr/gの15%未満である。E1リボンの気孔率は低く(2%未満)、
図5のSEM画像は、その細孔が完全に閉じられている(広範囲に亘って散乱した黒色の空隙)ことを示す。液体電解質は、E1リボン構造に浸透できない。
【0073】
E2~E4リボンからのディスクで作られた電池の容量は、微細構造の最適化によって、劇的に増加した。これらのディスクの全ては、約20~22%に及ぶ気孔率を有し、それによって、細孔は、開放されており、液体電解質が浸透することができる。液体電解質は、正極構造中へ、またはそれから(すなわち、それを通る)リチウムイオン伝導のためのより速い経路を提供する。0.1C-速度で充電した、改良E2~E4リボン微細構造を備えた電池の容量は、E1リボンからのLCOを備えた電池よりも7倍高く、その全ては、150mA・hr/gから160mA・hr/gに及ぶ。4.3Vでの充電が、理論値より数パーセント高い容量をもたらすことに留意されたい。それに加え、E2~E4は、E1よりも厚い。電極の面積容量は、その厚さと共に増加し、その結果、所定のC-速度で充電するために、比例して大きい電流密度が必要である。E2~E4の厚さは、この影響を限定するように作製した。E1は第二相の必要性を示す;E2~E4よりも薄いにもかかわらず、全てのC-速度で、E1の容量は低い。それゆえ、第二相の量は、いくつかの実施の形態において、正極の厚さよりも重要である。
【0074】
E2~E4リボンから作られたLCOディスクを充電するための容量は、充電速度が増加するにつれて、微細構造に強い傾向を示す。
図10は、いくつかの実施の形態による、試料E2~E4に関する名目上一定の気孔率での、外周対表面積比の関数としての1C速度での充電容量を示す。具体的に、1C速度での容量は、正極構造の総面積に対する活性LCOと細孔との間の外周長さの比の関数として定量化される。
【0075】
外周対表面積比は、全断面積Aで除算された、活性正極材料(例えば、LCO)と、(1)第二相または(2)第二相を含有する領域との間の外周の全長P
T(例えば、研磨断面の画像解析で測定した気孔率)と定義される。外周対表面積比は、表面積対体積比の代わりであり、それに直接的に比例する。それゆえ、外周対表面積比に観察されるどの傾向も、表面積対体積比に等しく適用できる。外周対表面積比が高くなると(同様に、表面積対体積比が高くなると)高まる能力の傾向は、活性正極材料に出入りするリチウムイオンの輸送のための局所距離が、固定された気孔率について表面積対体積比が増加するにつれて、減少するからであろう。表面積対体積比が増加するにつれて、正極中の電荷移動反応の面積が大きくなる。E1~E4の中で最高の外周対表面積比を有するE2リボンも、
図10において最高の容量を示すように、データで理論が確認される。
【0076】
E2~E4の微細構造は、約10~25%の最適量の第二相を有するのと同時に、0.4μm
-1より大きい高い表面積対体積(外周対表面積)比を有する。
図11は、有機炭酸エステル溶液中の1MのLiPF
6の伝導率を有する伝導性第二相の濃度の関数としての67μm厚のLCO電極の1C速度でのモデル化容量を示す。LCOを含む構成要素のモデルパラメータの値は、科学文献から収集した。上述したような同じ定電流および定電圧の条件下において1C速度で、2つの細孔直径の1μmと3μmについて、67μm厚の正極構造について、容量を計算した。正極に気孔率が導入されたときに、充電に利用できる容量が急上昇する;LCOを通るリチウム輸送の局所距離は短くなり、電荷移動の面積が増加する。利用できる容量がピークに到達し、気孔率の転換点濃度の後に、気孔率をより大きくすることには、正極構造中のLCOの量を臨界閾値を超えて減少させる働きしかないので、その後、減少する。二次伝導性液相の最適体積百分率は、約10%と25%のほぼ間にあり、
図11において強調された灰色である。この強調された領域における容量は、最大であり、第二相の体積百分率の関数として、比較的徐々に変化する。さらに、強調された領域における容量は、電池性能および微細構造を制御する過程にとって理想的である。
図11は、細孔のサイズ、あるいは、二次リチウムイオン伝導相の領域のサイズを減少させることによって、表面積対体積比を増加させる有益な影響も示している。E1~E4の試料について先に実験的に示されたように、このモデルにより、より高い表面積対体積比にとって、充電容量はより大きいことが確認される。
【0077】
図11は、伝導性二次相が多孔性である場合をモデル化しているが、この手法は、全固体電池用の固体であるリチウムイオン伝導性二次相を含むように拡張することもできる。
図12は、第二相のリチウムイオン伝導率の関数としての焼結LCO正極に関する1C速度でのモデル化容量を示す。具体的に、1C速度での充電容量を、第二相のリチウムイオン伝導率の関数として、15体積%の二次相リチウムイオン導体を有する67μm厚のLCO正極についてモデル化した。この二次リチウムイオン導体は、伝導率が約10
-4S/cmを超えて上昇した場合、正極構造を通るリチウムの迅速輸送を可能にする。
【0078】
上記実施例における最適な微細構造は、粒径、粒子の充填および焼結条件を調整することによって、実現した。微細構造におけるさらなる改善は、より長い期間に亘り研削してより微細なサイズの正極粒子を利用することにより、または必然的に小さい(例えば、300nm未満の)火炎熱分解のような過程からの正極材料を使用することにより、表面積対体積比を増加させることによって、
図11にしたがって、実現することができる。
【0079】
ここに開示されたものなどの構造を開発する上での難点の1つは、第二相の連続性を特定の濃度閾値より低く維持することである。この難題に対処する1つの方法は、固体二次リチウムイオン伝導相の平均粒径を、活性正極材料の平均粒径より小さいことを確実にすることであろう。より小さいサイズの二次粒子は、結合し、連続網状組織を形成できる、正極粒子間の隙間で蓄積する傾向にある。正極材料の粒径は、液体が浸透するための多孔性の連続性を維持するためにも使用されることがある。かなりの割合の微細粒子(例えば、d10<200nm)を有する粒径分布が有益である。何故ならば、充填密度が増加するであろうし、連続細孔網状組織を維持しつつ、微細成分が焼結し、より大きい粒子を共に結合することになるからである。
【0080】
開示された電極は、全固体電池の性能およびそれらを以下の様式で製造する過程にとって有益である:(A)活性正極材料および第二相の割合を最適化して、20μmより厚い厚さの正極構造において、速い充放電速度1Cの両方にとって高い貯蔵容量を与える;(B)第二相の細孔または粒子の所定の平均サイズが、活性正極材料中のリチウムの輸送の距離を短くする;(C)電解質と活性正極材料との間の内部表面積が、電池の全内部抵抗への電荷輸送の寄与が減少するように、平面電極と電解質との界面に対して増加している;(D)より厚い正極構造が、電池中の不活性構成要素の割合を減少させ、正極は、10μm以下の厚さまでの薄膜堆積、吹付け塗り、および注型により、薄型固体電解質(例えば、LLZOまたはLiPON)の堆積のための自立型基体としても機能できる;(E)電池の絶対容量の目標を、より小さいセル面積、すなわち、パウチ型セルまたは円筒形セルにおける、それぞれ、数少ない層または屈曲で達成できる;(F)より厚い正極は、構造的に脆くなく、より容易に製造され、取り扱い、電池に組み込まれる;および(G)先に説明したように、活性正極材料およびリチウムイオン伝導性第二相を同時に焼成するための急速な連続焼結過程により、望ましくない反応が少なくなる。
【0081】
(D)に特有に、焼結電極は自立型であるので、焼結電極は、追加の層を堆積するための基体として使用できる。例えば、焼結電極の表面上に金属層(例えば、15μmまで)を堆積させて、電池の集電体の機能を果たすことができる。それに加え、いくつかの例において、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)、リチウムガーネット(例えば、ガーネットLLZO(Li7La3Zr2O12))、またはリチウムホスホスルフィドなどの固体電解質を焼結電極上にRF-スパッタリングで堆積させることができる。あるいは、LiPON固体電解質の薄層を、Li3PO4またはLiPO3の薄層のアンモノリシスにより、または反応焼結により、施すことができる。そのような過程は、固体電解質の従来の堆積技法よりも、速く、かつ潜在的にそれほど大きい資本を必要としないと想像される。同様に、リチウムガーネット(例えば、LLZO)の固体電解質は、ゾルゲル、直接焼結、および反応焼結によって施すことができる。
【0082】
さらに、焼結電極は、自立型層として、液体電解質を使用するリチウム電池の進歩した製造手法の基礎を提供することができる。言い換えると、正極(すなわち、焼結電極)は、電池の基体である。具体的に、焼結電極は、連続過程で製造でき、バッチ加工またはロール・ツー・ロール加工のいずれかで、被覆のための基体として使用できる。そのような加工により、例えば、金属化焼結電極を形成するために、スパッタリングおよび/または電解析出によって、焼結電極の金属化が可能になる。このようにして、従来のリチウム電池用の電極の集電体金属缶の厚さを、10~15μmの典型的な厚さから、5μm未満、1μm未満、またさらには100nm未満に減少させることができる。さらに、金属化焼結電極は、電池製造業者に、独立型の構成要素として、個別またはロール形態で供給することができる。そのような金属化焼結電極は、典型的に集電体にあてがわれるセルの体積を減少させ、より活性な電極材料またはより高い容量を可能にできることが都合よい。
【0083】
より大型の電極を単に可能にすること以外に、開示された焼結正極12は、従来の正極を上回って電荷容量を増加させる構造上の利点も提供する。カレンダー加工された正極108において、活性正極粒子は点接触する。接触の断面積は小さく、よって、リチウムイオンおよび電子の動きに対して高いインピーダンスを有する。このインピーダンスの問題を克服するために、電極に導電経路として炭素が加えられて、活性粒子に出入りする電子の輸送を促進させる。このように炭素を使用すると、電池の容量と電荷/充電速度性能との間にトレードオフが作られる。活性正極粒子間の点接触に関する他の問題に、それらが脆弱であり、よって、活性粒子と炭素を共に結合させて、加工中に構造強度を与えるためにポリフッ化ビニル(PVF)が使用されることがある。対照的に、図示された焼結正極12中の粒子は、互いに結合されており、よって、電子導電性炭素および結合剤は、焼結後に除外されることがある。このようにして、リチウムイオンの移動のために多孔性にあてがわれる空間の割合を減少させることができ、より多くの空間を焼結正極の活性材料に与えることができる。本出願の発明者らは、所定の正極材料について、等しい正極厚さに基づいて、凝集体における容量を、約30%高めることができると推定している。あるいは、よりコンパクトな電池について、容量を同じに維持しつつ、正極の厚さを20~25%だけ減少させることができる。先に述べたように、焼結正極12中の細孔は、空間利用をさらに改善するように、または出力密度を増加させるように、負極に出入りするイオンの輸送方向に揃えることができる。
【0084】
ここに用いられているように、「気孔率(porosity)」という用語は、体積パーセント(例えば、少なくとも10体積%、または少なくとも30体積%)と記載され、ここで、「気孔率」は、無機材料で占められていない焼結物品の体積の割合を称する。
【0085】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを要求していると見做されことは決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程がしたがうべき順序を実際に列挙していない場合、もしくは請求項または説明において、工程が特定の順序に限定されるべきであることが他に具体的に述べられていない場合、どの特定の順序も暗示されていることは、決して意図されていない。
【0086】
ここに用いられているように、「およそ」、「約」、「実質的に」という用語、および類似の用語は、本開示の主題が関連する技術分野の当業者に共通し、受け入れられる使途と一致する広い意味を有するものと考えられる。これらの用語は、説明され、請求項に使用された特定の特徴を、これらの特徴の範囲を、与えられた正確な数値範囲に限定せずに、説明できるように意図されていることが、本開示を検討した当業者により理解されるべきである。したがって、これらの用語は、説明され、請求項に記載された主題の非実質的なまたは取るに足らない改変または変更が、付随の特許請求の範囲に列挙されたように本発明の範囲内にあると考えられることを示すものと解釈されるべきである。
【0087】
ここに用いられているように、「随意的な」、「随意的に」などは、その後に記載された事象または状況が起こり得るまたは起こり得ないこと、およびその説明が、その事象または状況が起こる例、および起こらない例を含むことを意味する意図がある。ここに用いられている名詞は、特に明記のない限り、少なくとも1つ、または1つ以上の対象を含む。要素の位置に対するここでの言及(例えば、「上部」、「下部」、「上」、「下」など)は、図面の様々な要素の向きを記載するために使用されているに過ぎない。様々な要素の向きは、他の例示の実施の形態にしたがって異なることがあり、そのようなバリエーションは、本開示により包含される意図があることに留意すべきである。
【0088】
ここでの実質的に任意の複数および/または単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または用途に適合するように、複数から単数におよび/または単数から複数に置き換えられる。様々な単数/複数の置換は、明瞭さのためにここに明白に述べられることがある。
【0089】
開示された実施の形態の精神または範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。実施の形態の精神および実体を含む開示された実施の形態の改変、組合せ、部分的組合せおよびバリエーションが当業者に想起されるであろうから、開示された実施の形態は、付随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に全てを含むものと考えられるべきである。
【0090】
以下、本発明の好ましい実施の形態を項分け記載する。
【0091】
実施形態1
集電体に面するように位置付けられた第一面、および電解質層に面するように位置付けられた第二面を有する電池の焼結電極であって、該焼結電極は、
第一相および第二相を含み、
該第一相はリチウム化合物を含み、
該第二相は、多孔質構造または固体Liイオン導体の少なくとも一方を含み、
前記第一面と前記第二面との間の前記焼結電極の厚さは、10μmと200μmの間に及ぶ、焼結電極。
【0092】
実施形態2
前記第二相は前記多孔質構造を含み、
前記焼結電極は5%から35%の範囲の開放気孔率を有し、
前記多孔質構造は、前記第一相内で連続している、実施形態1に記載の焼結電極。
【0093】
実施形態3
前記多孔質構造の細孔が、平均して、前記焼結電極の前記第一面と前記第二面に対する垂直の25°以内に揃えられている、実施形態1または2に記載の焼結電極。
【0094】
実施形態4
前記多孔質構造に液体電解質が浸透している、実施形態1から3いずれか1つに記載の焼結電極。
【0095】
実施形態5
前記液体電解質が、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ビスオキサラトホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウム(LiDFOB)、リチウムトリフルオロスルホニルイミド(LiTFSI)、またはその組合せの内の少なくとも1つを含む、実施形態4に記載の焼結電極。
【0096】
実施形態6
前記第二相が、前記焼結電極の5体積%から35体積%の範囲で存在する固体Liイオン導体を含む、実施形態1から5いずれか1つに記載の焼結電極。
【0097】
実施形態7
前記固体Liイオン導体が、10-4S/cmを超えるリチウムイオン伝導率を有する、実施形態6に記載の焼結電極。
【0098】
実施形態8
前記固体Liイオン導体が、リチウムガーネット(LLZO)、ホウ酸リチウム(LBO)、チタン酸ランタンリチウム(LTO)、リン酸チタンアルミリチウム(LATP)、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(LAGP)、Li11AlP2S12、リチウムホスホスルフィド(LPS)、その組合せ、またはそのドープされたものの内の少なくとも1つである、実施形態6に記載の焼結電極。
【0099】
実施形態9
前記リチウム化合物が、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC)、スピネル型マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA)、鉄マンガン酸リチウム(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸コバルトリチウム、マンガン酸ニッケルリチウム、リチウムチタン硫化物、またはその組合せの内の少なくとも1つを含む、実施形態1から8いずれか1つに記載の焼結電極。
【0100】
実施形態10
前記焼結電極が、前記電池の自立型基体である、実施形態1から9いずれか1つに記載の焼結電極。
【0101】
実施形態11
前記電池が、不活性基体を含まない、実施形態1から10いずれか1つに記載の焼結電極。
【0102】
実施形態12
前記第一相と前記第二相との間の外周対表面積比が、少なくとも0.4μm-1である、実施形態1から11いずれか1つに記載の焼結電極。
【0103】
実施形態13
前記焼結電極の断面積が、少なくとも3cm2である、実施形態1から12いずれか1つに記載の焼結電極。
【0104】
実施形態14
電池の正極であって、
第一相と第二相、および
第一面と第二面、
を備え、
前記第一面と前記第二面との間の厚さは、10μmと200μmの間であり、
前記正極は、
5%から35%の範囲の開放気孔率、
10-4S/cmを超えるリチウムイオン伝導率、および
少なくとも0.4μm-1の前記第一相と前記第二相との間の外周対表面積比、
の内の少なくとも1つを有する、正極。
【0105】
実施形態15
前記焼結正極の断面積が、少なくとも3cm2である、実施形態14に記載の正極。
【0106】
実施形態16
電池であって、
実施形態14または15に記載の正極と、
前記正極の多孔質領域に浸透する電解質材料と、
を備え、
前記正極は前記電池の基体である、電池。
【0107】
実施形態17
前記電解質が、
ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ビスオキサラトホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウム(LiDFOB)、リチウムトリフルオロスルホニルイミド(LiTFSI)、またはその組合せ;
リチウムガーネット(LLZO)、ホウ酸リチウム(LBO)、チタン酸ランタンリチウム(LTO)、リン酸チタンアルミリチウム(LATP)、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(LAGP)、Li11AlP2S12、リチウムホスホスルフィド(LPS)、その組合せ、またはそのドープされたもの、
から選択される、実施形態16に記載の電池。
【0108】
実施形態18
不活性基体を含まない、実施形態16または17に記載の電池。
【0109】
実施形態19
前記電池の体積が、前記不活性基体上に配置された正極を備えた電池の体積より小さい、実施形態18に記載の電池。
【符号の説明】
【0110】
10 リチウムイオン電池
12 焼結正極
14 電解質層または領域
16、112 負極
18 第1の集電体
20 第2の集電体
22 保護コーティング
100 従来の電池
102 正極集電体
104 負極集電体
106 機械的支持体
108 正極
110 固体電解質
114 コーティング
【国際調査報告】