(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-19
(54)【発明の名称】望ましくない成分をヘリウム流から分離するための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
F25J 3/08 20060101AFI20230512BHJP
F25J 3/06 20060101ALI20230512BHJP
C01B 23/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
F25J3/08
F25J3/06
C01B23/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561635
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2021025121
(87)【国際公開番号】W WO2021204422
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522394373
【氏名又は名称】リンデ クライオテヒニク アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム、ハンスペーター
(72)【発明者】
【氏名】マイ、エリアス
(72)【発明者】
【氏名】サンダー、フランク
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA03
4D047AB03
4D047BB01
4D047BB03
4D047DA01
4D047EA00
(57)【要約】
本発明は、浄化対象のヘリウム流(1A)から望ましくない成分を分離するための、デバイス(100)及び方法に関する。ヘリウム流は最初に、第1の冷却媒体を使用する第1の冷却ステップにおいて、望ましくない成分の凝固点のうちの最も高い凝固点を上回る温度まで冷却されることにより、1種以上の望ましくない成分が凝縮され、次いで、そのヘリウム流は、第2の冷却媒体を使用する第2の冷却ステップにおいて、更に冷却される。必要に応じて、浄化されたヘリウム流(1B)の一部は、第2の冷却ステップに対して使用された後、その浄化されたヘリウム流が第1の冷却ステップに提供されないように、制御可能若しくは調節可能方式で分岐され、かつ/又は、浄化されたヘリウム流(1B)は、第2の冷却ステップ用の追加的な冷却媒体として使用された後、かつ第1の冷却ステップ用の追加的な冷却媒体として使用される前に、より温かいヘリウムを制御可能若しくは調節可能な方式で供給され、かつ/又は、第1の冷却媒体は、より温かい冷却媒体を、第1の冷却ステップのために、制御可能若しくは調節可能な方式で供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
望ましくない成分、例えば、窒素、酸素、水素及び/又はネオンを、望ましくない成分を含有する浄化対象のヘリウム流(1A)から分離するための方法であって、前記流れが最初に、第1の冷却ステップにおいて、第1の冷却媒体に対して凝固点よりも高い温度まで冷却されることにより、又は、複数種の望ましくない成分の場合、前記望ましくない成分の凝固点のうちの最も高い凝固点よりも高い温度まで冷却されることにより、1種以上の望ましくない成分が凝縮し、前記プロセスで凝縮された前記望ましくない成分が、前記浄化対象のヘリウム流(1A)から分離され、その後、前記ヘリウム流が、第2の冷却ステップにおいて、第2の冷却媒体に対して更に冷却されることにより、前記望ましくない成分が凍結され、前記第1の冷却ステップ及び前記第2の冷却ステップに関して使用される前記冷却媒体の量及び/又は組成が、制御可能若しくは調節可能であり、
このようにして浄化された前記ヘリウム流(1B)が、最初に、前記第2の冷却ステップ用の更なる冷却媒体として使用され、その後、少なくとも部分的に、前記第1の冷却ステップ用の更なる冷却媒体として使用される、方法において、必要に応じて、前記浄化されたヘリウム流(1B)の一部が、前記第1の冷却ステップに提供されないように、制御可能若しくは調節可能な方式で分岐されることを特徴とする、かつ/又は、前記浄化されたヘリウム流(1B)が、前記第2の冷却ステップ用の更なる冷却媒体として使用された後、かつ前記第1の冷却ステップ用の更なる冷却媒体として使用される前に、より温かいヘリウムを制御可能若しくは調節可能な方式で供給されることを特徴とする、かつ/又は、前記第1の冷却媒体が、より温かい冷却媒体を、前記第1の冷却ステップのために、制御可能若しくは調節可能な方式で供給されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記浄化対象のヘリウム流(1A)が、前記第2の冷却ステップの後に、水素及び/又はネオンを分離する役割を果たす吸着プロセスに供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸着プロセスに供給される、前記浄化対象のヘリウム流(1A)の温度が、10~35Kである、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
ヘリウム及び/又はヘリウムに富む画分が、前記第1の冷却ステップ及び/又は前記第2の冷却ステップ用の、前記第1の冷却媒体及び/又は前記第2の冷却媒体として使用される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1の冷却媒体及び/又は前記第2の冷却媒体が、浄化されたヘリウム流と混合される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の冷却媒体と前記第2の冷却媒体とが同じであることにより、好ましくは、前記第2の冷却媒体が、前記第2の冷却ステップに対して使用された後に、前記第1の冷却ステップ用の第1の冷却媒体として使用される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第2の冷却媒体が、前記第2の冷却媒体として使用された後、かつ前記第1の冷却媒体として使用される前に、更なる冷却媒体を制御可能又は調節可能な方式で供給される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記浄化対象のヘリウム流(1A)が、前記第1の冷却ステップにおいて、前記凝固点よりも最大で8K高い温度まで冷却され、又は、複数種の望ましくない成分の場合、前記望ましくない成分の凝固点のうちの前記最も高い凝固点よりも最大で8K高い温度まで冷却される、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の方法を実行するためのデバイス(100)であって、浄化対象のヘリウム流(1A)を、それ自体に対して、かつ第1の冷却媒体及び第2の冷却媒体に対して、向流で冷却するように設計されている、第1の熱交換器(10)及び第2の熱交換器(11)を備え、前記第1の熱交換器(10)が、前記第1の冷却ステップを実行するように設計されており、前記第2の熱交換器(11)が、前記第2の冷却ステップを実行するように設計されており、
前記浄化されたヘリウムの前記向流が、ガイド(16)を介して、前記第2の熱交換器(11)の前記向流用の出口(111)から、前記第1の熱交換器(10)の前記向流用の入口(101)へと案内され、前記ガイド(16)が分岐点(18)を有することにより、必要に応じて、前記浄化されたヘリウム流(1B)の一部を、前記第1の冷却ステップに提供されないように、制御可能若しくは調節可能な方式で分岐させることができ、かつ/又は、
前記浄化されたヘリウム(1B)の前記向流が、前記第2の熱交換器(11)の前記向流用の出口(111)から、前記第1の熱交換器(10)の前記向流用の入口(101)へと案内され、前記ガイドが、供給手段を含むことにより、前記第2の冷却ステップ用の前記冷却媒体として使用された後、かつ前記第1の冷却ステップ用の前記冷却媒体として使用される前に、前記浄化されたヘリウム流(1B)に、より温かいヘリウムを制御可能若しくは調節可能な方式で供給することができ、かつ/又は、
前記第1の熱交換器(10)における前記第1の冷却媒体用の第2の入口(33)が、前記第1の冷却媒体に対する制御可能若しくは調節可能な供給手段(3)と、前記第1の冷却媒体に対しての、より温かい冷却媒体に対する更なる制御可能若しくは調節可能な供給手段(6)との、接続部を有することにより、より温かい冷却媒体を、前記第1の冷却ステップ用の前記第1の冷却媒体に供給することができる、デバイス。
【請求項10】
前記浄化対象のヘリウム流(1A)を、前記第2の冷却ステップの後に、水素及び/又はネオンを分離する役割を果たす吸着プロセスに供するように設計されている、吸着器(12)を備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記向流が、前記第2の熱交換器内に入る前に分岐点(19)を有することにより、前記デバイスの再生中に、ヘリウムを制御可能又は調節可能な方式で分岐させることができる、請求項9又は10のいずれかに記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、望ましくない成分をヘリウム流から分離するための方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばヘリウム凍結プロセスとして既知の、一般的方法が実施されている。分離される望ましくない成分は通常、窒素、酸素、及びアルゴンである。当該のタイプの方法は、例えば、独国公開特許第102008053846号に開示されている。
【0003】
本明細書で特許請求される手順において、望ましくない成分を含有するヘリウム流は、最初に、凝縮器と称される第1の冷却ステップに供給される。このステップにおいて、浄化対象のヘリウム流は、好適な冷却媒体、例えばヘリウム流又はヘリウムに富む流れに対して、その望ましくない成分の凝固点よりも最大で8K高い温度まで冷却されるか、又は、複数種の望ましくない成分の場合には、これらの望ましくない成分の凝固点のうちの最も高い凝固点よりも最大で8K高い温度まで冷却される。ここで、それら望ましくない不純物は、ある濃度及び温度までは、凝縮器の熱交換器内で凝縮する。凝縮した成分は、ヘリウム流から取り除かれて、廃棄される。この目的のために、凝縮物回収容器が一般に設けられている。その中に回収された凝縮物は、廃棄することが可能であり、かつ/又は、ヘリウム液化プロセスを冷却するために使用することも可能である。凍結として既知の、第2の冷却ステップにおいて、浄化対象の予備冷却されたヘリウム流は、その後、残留している望ましくない成分が凍結する程度まで冷却される。しかしながら、それらの成分の凍結は、時間の経過と共に、凍結デバイスを閉塞させる。それゆえ、熱交換器を時々加熱する必要があり、その結果、凍結されていた成分が融解する。この場合、これらもまた回収され、そのプロセスから除去される。その後、この方法を再び動作可能とする前に、熱交換器を稼働温度まで新たに冷却することが必要とされる。このようにして浄化されたヘリウム流は、その後、液化などの、その更なる使用へと供給される。上述の2つの冷却ステップに対して必要とされる冷却媒体は、冷却されるヘリウム流に対して向流で導かれる。独国公開特許第102008053846号の教示によれば、第1の冷却ステップ及び/又は第2の冷却ステップに対して使用される冷却媒体の量及び/又は組成は、ヘリウム流の組成、温度、圧力などの、それぞれの場合における現在の条件に適合させることができるように、制御可能又は調節可能である。このことにより、2つの冷却ステップの個別制御が可能となる。それゆえ、浄化対象のヘリウム流の温度及び/又は組成に応じて、第1の冷却ステップ及び/又は第2の冷却ステップに対して使用される冷却媒体の量及び/又は組成を、最適に調整することができる。冷却媒体を節約するために、浄化されたヘリウム流は、第2の冷却ステップのための、向流の更なる冷却媒体として使用され、その後、第1の冷却ステップのために使用される。
【0004】
そのような方法の文脈において、独国公開特許第102013012656(A1)号は、第2の冷却ステップの後に、ヘリウム流からの水素及び/又はネオンの分離を確実にする、吸着器を開示している。
【0005】
空気成分が、第1の冷却ステップの間に第1の熱交換器内で凝縮し、第2の冷却ステップの間に第2の熱交換器内で凍結することが重要である。空気成分が、それらがまた凍結もする同じ熱交換器内で凝縮する場合には、液体をきれいに分離することができず、むしろ、その冷たい熱交換器内に残留する。液体は更に冷却されて、凍結し、熱交換器の流路を閉塞させる。このことを防止するために、第1の冷却ステップに対して使用される冷却媒体の量は、供給弁を介して、より多くの冷却媒体を第1の熱交換器に供給することができるように制御可能又は調節可能であり、それにより、高汚染に対して温度を下方に補正することができる。
【0006】
極めて低い汚染の場合、特に1体積%未満の汚染の場合、2つの冷却ステップ間の温度は、第1の熱交換器に供給される冷却媒体用の供給弁が閉鎖されているにも関わらず、浄化されたヘリウムの向流により、62Kよりも低くなる場合があり得る。これは、空気成分が第1の熱交換器内で既に凍結していることを意味する。その結果、凝縮物を回収することができない。第1の熱交換器が閉塞することになり、このヘリウム浄化デバイスの機能が損なわれる。
【0007】
そのような望ましくない温度低下はまた、ヘリウム浄化デバイスの連続動作中、特に、例えば4週間以上にわたる連続動作中にも発生し得る。デバイス全体が、連続動作によって継続的に冷却される。
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記で概説された問題を防止することである。
【0009】
この目的は、独立請求項に記載の、浄化対象のヘリウム流から望ましくない成分を分離するための方法、及び、この方法を実行するためのデバイスによって達成される。従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、望ましくない成分、例えば、窒素、酸素、水素及び/又はネオンを、望ましくない成分を含有する浄化対象のヘリウム流から分離するための方法であって、この流れが最初に、第1の冷却ステップにおいて、冷却媒体に対して凝固点よりも高い温度まで冷却されることにより、又は、複数種の望ましくない成分の場合、それら望ましくない成分の凝固点のうちの最も高い凝固点よりも高い温度まで冷却されることにより、1種以上の望ましくない成分が凝縮し、このプロセスで凝縮された望ましくない成分が、浄化対象のヘリウム流から分離され、その後、そのヘリウム流が、第2の冷却ステップにおいて、第2の冷却媒体に対して更に冷却されることにより、望ましくない成分が凍結し、第1の冷却ステップ及び第2の冷却ステップに関して使用される冷却媒体の量及び/又は組成が、制御可能若しくは調節可能であり、浄化されたヘリウム流が、最初に、第2の冷却ステップ用の更なる冷却媒体として使用され、その後、少なくとも部分的に、第1の冷却ステップのために使用される方法であって、必要に応じて、浄化されたヘリウム流の一部が、第1の冷却ステップに提供されないように、制御可能若しくは調節可能な方式で分岐される、かつ/又は、浄化されたヘリウム流が、第2の冷却ステップ用の冷却媒体として使用された後、第1の冷却ステップ用の更なる冷却媒体として使用される前に、より暖かいヘリウムを制御可能若しくは調節可能な方式で供給される、かつ/又は、冷却媒体に、より暖かい冷却媒体が、第1の冷却ステップのために、制御可能若しくは調節可能な方式で供給される、方法が提案される。
【0011】
第1の熱交換器の直前の分岐点は、第2の冷却ステップを損なうことなく、第1の冷却ステップから目標とする方式で冷却能力を引き出すための、単純な方式を作り出すものである。
【0012】
浄化されたヘリウム流の一部を制御可能又は調節可能に分岐させること、並びに/又は、より温かいヘリウム及び/若しくはより温かい冷却媒体を供給することの結果として、第1の熱交換器の温度を、目標とする方式で上昇させることができる。このようにして、浄化対象のヘリウム流を、第1の冷却ステップにおいて62K未満まで冷却することを防止することが可能であり、またそれゆえ、第1の冷却ステップの間の凍結を防止することが可能である。
【0013】
特に好ましい実施形態では、ヘリウム流は、第2の冷却ステップの後に、水素及び/又はネオンを分離する役割を果たす吸着プロセスに供される。有利には、吸着プロセスに供給される浄化対象のヘリウム流の温度は、10~35Kである。水素及び/又はネオンを分離する役割を果たす吸着プロセスは、この場合、望ましくない成分のネオン及び水素を確実に分離することを可能にするものであり、達成可能な温度安定性により、これらの成分の望ましくない脱着を防止することが可能となる。吸着プロセスによって保持された水素及びネオンの成分は、再生の開始時に意図的に脱着され、好ましくは大気に向けて吹き出される。このようにして、回収システム内での、これらの成分の蓄積が防止される。原則として、システムから排出された水素及びネオンの成分は、調製プロセスに供給することができる。
【0014】
このことにより、ヘリウム液化器の主回路内に水素及び/又はネオンが導入されることが、効果的かつ無理なく防止される。結果的に、水素及び/又はネオンの、液体ヘリウムのデュワー内への移動が防止され、またそれゆえ消費者への移動も防止される。同時に、これは費用対効果の高い解決策である。
【0015】
特に、ヘリウム及び/又はヘリウムに富む画分が、第1の冷却ステップ及び/又は第2の冷却ステップ用の、第1の冷却媒体及び/又は第2の冷却媒体として使用される。このことは、冷却媒体としてヘリウムを使用して、必要とされる低い温度を効果的に達成することができるため、有利である。
【0016】
第1の冷却媒体及び/又は第2の冷却媒体として使用されるヘリウム流に、浄化されたヘリウム流を混合することもまた可能であろう。このことが有利であるのは、この方式では、第1の冷却ステップ及び第2の冷却ステップに対して使用するために必要な向流が、1つのみであるためである。
【0017】
便宜上、第1の冷却媒体と第2の冷却媒体とが同じであることにより、好ましくは、第2の冷却媒体は、第2の冷却ステップに対して使用された後に、第1の冷却ステップ用の第1の冷却媒体として使用される。このことは、冷却媒体の有効な使用を表すものである。第2の冷却ステップに対しては、第1の冷却ステップに対してよりもより低温の冷却媒体が必要である。それゆえ、冷却媒体は、第2の冷却ステップに対して使用された後も、第1の冷却ステップの使用に対して依然として好適である。
【0018】
特に、第2の冷却媒体として使用された後、第1の冷却媒体として使用される前に、更なる冷却媒体が、第2の冷却媒体に、制御可能又は調節可能な方式で供給される。このことが有利であるのは、この方式では、例えば浄化対象のヘリウム流中の不純物の比率が、より大きいものとなる場合に、浄化対象のヘリウムの温度を、第1の冷却ステップの後に、制御可能又は調節可能な方法で低下させることができるためである。
【0019】
好ましくは、浄化対象のヘリウム流は、第1の冷却ステップにおいて、凝固点よりも最大で8K高い温度まで冷却され、又は、複数種の望ましくない成分の場合、それら望ましくない成分の凝固点のうちの最も高い凝固点よりも最大で8K高い温度まで冷却される。その温度が、望ましくない成分の凝固点のうちの最も高い凝固点よりも僅かに高いものに過ぎないとすれば、最大量の望ましくない成分を、凍結が生じることなく凝縮させることができる。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、第1の態様による方法を実行するためのデバイスであって、浄化対象のヘリウム流を、それ自体に対して、かつ第1の冷却媒体及び第2の冷却媒体に対して、向流で冷却するように設計されている、第1の熱交換器及び第2の熱交換器を備え、第1の熱交換器が、第1の冷却ステップを実行するように設計されており、第2の熱交換器が、第2の冷却ステップを実行するように設計されており、浄化されたヘリウムの向流が、例えばライン又は熱交換器を含むラインとすることが可能なガイドを介して、第2の熱交換器の向流用の出口から、第1の熱交換器の向流用の入口へと案内され、このガイドが分岐点を有し、かつ/又は、
浄化されたヘリウムの向流が、第2の熱交換器の向流用の出口から、第1の熱交換器の向流用の入口へと導かれ、上述のガイドが、供給手段を含むことにより、第2の冷却ステップ用の冷却媒体として使用された後、かつ第1の冷却ステップ用の冷却媒体として使用される前に、浄化されたヘリウム流に、より温かいヘリウムを制御可能若しくは調節可能な方式で供給することができ、かつ/又は、
第1の熱交換器における第1の冷却媒体用の第2の入口が、第1の冷却媒体に対する制御可能若しくは調節可能な供給手段と、上述の第1の冷却媒体に対して、より温かい冷却媒体への更なる制御可能若しくは調節可能な供給手段との、接続部を有することにより、より温かい冷却媒体を、第1の冷却ステップ用の第1の冷却媒体に供給することができる、デバイスが提案される。
【0021】
本発明による方法の目的は、これらの分岐点及び/又は供給手段によって、特に単純な方式で達成することができる。
【0022】
このデバイスは、好ましくは、浄化対象のヘリウム流を、第2の冷却ステップの後に、水素及び/又はネオンを分離する役割を果たす吸着プロセスに供するように設計されている、吸着器を有する。このようにして、吸着方法のステップを実現することができる。
【0023】
便宜上、向流は、第2の熱交換器内に入る前に分岐点(19)を有することにより、デバイスの再生中に、ヘリウムを制御可能又は調節可能な方式で分岐させることができる。このことは、問題のない再生を確実にするために有利である。
【0024】
本発明の更なる利点及び実施形態を、説明及び添付の図面において見出すことができる。
【0025】
上述の特徴、及び以下で説明される特徴は、それぞれの場合に指定されている組み合わせだけではなく、他の組み合わせでも、又は単独でも、本発明の範囲から逸脱することなく使用することができる点を理解されたい。
【0026】
本発明は、いくつかの実施形態を参照して図面に概略的に示されており、それらの図面を参照して以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明によるデバイスの好ましい実施形態の概略図である。
【
図2】本発明によるデバイスの代替的な好ましい実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1では、本発明によるデバイスの好ましい実施形態が概略的に示され、全体として100で示されている。
【0029】
デバイス100は、この場合は2つの部分的熱交換器で構成されている、凝縮器とも称することが可能な第1の熱交換器10を備える。このデバイスは更に、凍結デバイスとも称される第2の熱交換器11を備える。このデバイスは、浄化対象のヘリウム流1Aを、それ自体に対して、かつ第1の冷却媒体及び第2の冷却媒体に対して、向流で冷却するように設計されている。浄化対象のヘリウム流1Aは、ヘリウム供給手段から、又はライン1を介して供給される。
【0030】
第1の熱交換器10は、第1の冷却ステップを実行するように設計されている。第1の冷却ステップにおいて、浄化対象のヘリウム流1Aは、最初に、ヘリウム流1A中の望ましくない成分の凝固点のうちの最も高い凝固点よりも高い温度まで冷却される。特に、この温度は、最も高い凝固点よりも僅かに、例えば8K高いものに過ぎない。このようにして、望ましくない成分が凝縮して、浄化対象のヘリウム流1Aから分離される。ここで、凝縮された成分は、液体流1Cとして、浄化対象のヘリウム流1A用のラインを介して、又は別個のラインを介してのいずれかで、第2の熱交換器に輸送することができる。この場合、浄化対象のヘリウム流1Aの温度は、第1の熱交換器10内で、望ましくない成分の凝固点のうちの最も高い凝固点を下回るべきではないが、これは、その凝固点を下回る場合には、ラインの閉塞を排除することができないためである。第1の熱交換器を通過した後の、浄化対象のヘリウム流1Aの端部温度が、望ましくない成分の凝固点のうちの最も高い凝固点よりも8K高いのではなく、好ましくは2~7K高いのであれば、更に有利である。このことにより、第1の熱交換器10内での凍結が防止されることが確実となり、かつ、それにも関わらず最大限の量の望ましくない成分が凝縮されることにより、第2の熱交換器11内で凍結されることになる望ましくない成分の量が低減される。それゆえ、この温度は、特に浄化対象のヘリウム流1A中の不純物の画分が変動する場合、調節されるべきである。特に、第1の熱交換器10を通過した後の、浄化対象のヘリウム流の初期温度を、63Kに調整することが有利である。このことが行われる方式は、以下でより詳細に説明される。ここでの圧力は、特に25バールに調整することができる。
【0031】
第2の熱交換器11は、第2の冷却ステップを実行するように設計されている。第2の冷却ステップにおいて、望ましくない成分が凍結する。特に、窒素が、ここで凍結する。凍結した窒素は、第2の熱交換器内の伝熱面上に残留する。例えばシステムを再生し、加熱するために、プロセスが中断される場合には、この窒素が融解して、110で示されるような容器内に回収される。この方法の間、第1の熱交換器内で凝縮されて第2の熱交換器11に液体流1Cとして輸送された望ましくない成分もまた、容器110内に回収される。第2の熱交換器11を通過した後の、浄化対象のヘリウム流の温度は、特に32Kに調整することができる。ここでの圧力は、好ましくは24.8バールとすることができる。
【0032】
更には、デバイス100は、浄化対象のヘリウム流1Aを、第2の冷却ステップの後に、水素及び/又はネオンを分離する役割を果たす吸着プロセスに供するように設計されている、吸着器12を備える。
【0033】
吸着器12を通過した後、ここでは説明を容易にするために浄化されたヘリウム流1Bと称される、ヘリウム流が、この実施形態では、第1の調製用熱交換器13を通過するように導かれる。この第1の調製用熱交換器13内には、冷却媒体源3から、第2の低温媒体弁31を介して、冷却媒体が並流方向で供給される。このようにして、その冷却媒体の温度と、浄化されたヘリウム流1Bの温度とを、互いに一致させることができる。有利な実施形態では、第1の調製用熱交換器13はまた、向流で動作させることもできる。この方法が中断され、システムが再生される場合には、浄化されたヘリウム流1Bの一部は、第1の調製用熱交換器13を通過した後、第2の熱交換器内に再び入る前に、第1の分岐弁17を介して分岐させることができ、第1のヘリウム貯留器5、特に低圧コールドボックスに供給することができる。次いで、冷却媒体及び浄化されたヘリウム流1Bの双方が、第2の熱交換器11内で、第2の冷却ステップのために向流で使用されるが、互いに混合されない。この第2の冷却ステップにおいて、冷却媒体及び浄化されたヘリウム流1Bは加熱されるが、その後に第1の冷却ステップに対して使用するために、依然として十分に低温である。
【0034】
第2の熱交換器11を通過した後、第2の熱交換器11からの冷却媒体に、第1の冷却媒体弁32を介して、更なる冷却媒体を供給することができる。次いで、この冷却媒体は、第1の熱交換器10内での第1の冷却ステップのために、第2の熱交換器からの浄化されたヘリウム流1Bと共に、向流で使用される。この場合、浄化されたヘリウム流1B用の分岐点18が設けられており、この分岐点を介して、精製されたヘリウム流1Bの一部を、第2の分岐弁15によって分岐させて、第1のヘリウム貯留器5に供給することができる。この分岐点は、必要に応じて、浄化されたヘリウム流1Bの一部を、第1の冷却ステップに提供されないように、制御可能又は調節可能な方式で分岐させるために使用される。このことは、特に、第1の低温媒体弁が予め完全に閉鎖されており、浄化対象のヘリウム流1Aが、最初から非常に純粋であることにより、第1の熱交換器を通過した後の端部温度が、窒素の凝固点を下回る危険性がある場合に、有利である。分岐点18において、浄化されたヘリウム流1Bの一部を引き出す又は分岐させることによって、冷却能力を低下させることができ、またそれゆえ、第1の熱交換器内の温度を上昇させることができ、それにより、第1の熱交換器内での、浄化対象のヘリウム流1Aの、窒素又は他の望ましくない成分の凍結を防止することができる。
【0035】
第1の熱交換器10を通過した後、浄化されたヘリウム流1Bは、第2のヘリウム貯留器4又は低圧コールドボックスに供給される。
【0036】
例えば、浄化対象のヘリウム流の入口での汚染が、極めて低いか又は無視できる程度である場合、すなわち、浄化対象のヘリウム流1Aが、有意な不純物を含まない場合には、制御又は調節を、有利には以下のように行うことができる:第2の冷却媒体弁32を、完全に閉鎖することができる。第2の熱交換器11からの浄化されたヘリウム流1Bの一部を分岐させるために、第2の分岐弁15を、例えば10~30%開放することができる。第1の冷却媒体弁31によって、第2の熱交換器11の温度を、第2の分岐弁15及び第2の冷却媒体弁32の制御値によって実質的に影響を受けない方式で制御することができる。
【0037】
浄化対象のヘリウム流の入口での汚染が、例えば5体積%である場合、すなわち、浄化対象のヘリウム流1Aが、約5体積%の画分の望ましくない成分を含有している場合には、第2の分岐弁15を完全に閉鎖することができる。第2の冷却媒体弁32は、有利には、第1の熱交換器10内の温度を低下させるために、5~15%開放することができる。この場合も同様に、第2の熱交換器11の温度は、第2の分岐弁15及び第2の冷却媒体弁32の制御値によって実質的に影響を受けない方式で、第1の冷却媒体弁31によって制御又は調整することができる。
【0038】
図2は、ここでは200で示される、本発明によるデバイスの代替的実施形態を示す。同じ参照符号及び構成要素は、以下では改めて論じないものとする。
【0039】
図2のデバイス200は、分岐点18及び分岐弁15が設けられていない点で、
図1のデバイス100とは異なる。しかしながら、この実施形態においても、そのような分岐点を対応する弁と共に設けることは、本発明の範囲内である点に留意されたい。この目的のために、第2の調製用熱交換器14が設けられている。第2の熱交換器11を通過した後、冷却媒体源3に由来する冷却媒体が、更なる冷却媒体と混合され、第2の調製用熱交換器14に供給される。それと並行して、浄化されたヘリウム流1Bが、第2の熱交換器を通過した後に、第2の調製用熱交換器14に供給されることにより、それらの温度は、互い接近し得る。更なる冷却媒体に加えて、より温かい冷却媒体用の供給手段6が設けられており、このより温かい冷却媒体も同様に、熱供給弁61を介して、第2の調製用熱交換器14の上流の冷却媒体に供給することができる。より温かい冷却媒体は、例えば、65K~283Kの、又はそれよりも温かい、より温かいヘリウムとすることができるが、これに限定されるものではない。第1の熱交換器10の冷却能力もまた、より温かい冷却媒体の、制御可能又は調節可能な供給によって低減することができる。第2の調製用熱交換器は、必ずしも必要ではないが、この実施形態に対しては、極めて異なる温度の媒体が、第1の熱交換器10に向流で到達することを防ぐために有利である。
【0040】
第3の実施形態(図示せず)によれば、第1の熱交換器10内に入る前の浄化されたヘリウム流1Bに、より温かいヘリウムが供給される。この方策はまた、第1の実施形態及び/又は第2の実施形態の方策と組み合わせることもできる。
【0041】
3つの実施形態の全てが、第1の熱交換器10を通過した後の、浄化対象のヘリウム流1Aの最終温度を、上方及び下方に補正することを可能にする。
【国際調査報告】