IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特表2023-520808有効弾性係数が小さい医療用接着剤物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-19
(54)【発明の名称】有効弾性係数が小さい医療用接着剤物品
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/58 20060101AFI20230512BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20230512BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20230512BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20230512BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20230512BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20230512BHJP
   A61M 25/02 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
A61L15/58 100
A61L15/24 100
A61L15/26 100
A61L15/42 310
C09J7/22
A61F13/02 310J
A61F13/02 310M
A61F13/02 370
A61F13/02 A
A61F13/02 310D
A61M25/02 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562005
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 IB2021052591
(87)【国際公開番号】W WO2021209846
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】63/009,075
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.iPhone
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】シェルマン,オードリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ローソン,デル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ゴールド,アン シー.エフ.
(72)【発明者】
【氏名】グットマン,シルヴィア ジー.ビー.
(72)【発明者】
【氏名】コリガン,トーマス アール.ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】セドロック,カロレ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォエルカー,コレイ ディー.
【テーマコード(参考)】
4C081
4C267
4J004
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081AA12
4C081BB04
4C081BB07
4C081CA021
4C081CA161
4C081CA181
4C081CA211
4C081CB011
4C081DA05
4C081DA06
4C081DB03
4C081DC04
4C081EA02
4C267AA01
4C267BB06
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB19
4C267BB24
4C267CC01
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG08
4C267HH08
4J004AA10
4J004AA11
4J004AB01
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC06
4J004CE01
4J004FA09
(57)【要約】
医療用接着剤物品は、接着剤の層と改変された基材層とを含み、層は、ランダムであり得るパターンで配列された複数の切れ目を有し、又は、パターンを少なくとも1つの軸に沿って配列することができる。切れ目は間隙であるが、接着剤物品が応力を受けていない状態にあるとき、間隙は肉眼で見えず、接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、切れ目の少なくとも一部が、肉眼で見える間隙になり、開口を形成する。接着剤物品は、医療デバイスを皮膚に接着するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤物品であって、
第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の連続層と、
第1の主面及び第2の主面を有する基材層と、を含み、
前記基材層の前記第1の主面は接着剤層の前記第2の主面と接触しており、
前記基材層は複数の切れ目を含み、
前記複数の切れ目はパターンで配列され、前記切れ目は間隙であるが、
前記接着剤物品が応力を受けていない状態にあるとき、前記間隙は肉眼では見えず、
前記切れ目の少なくともいくつかは、前記接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、肉眼で見える間隙になる、接着剤物品。
【請求項2】
前記接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、肉眼で見ることができる前記間隙のうちの少なくとも一部が前記接着剤物品を通して見ることができる開口を提供する、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項3】
前記複数の切れ目が、1つの軸に沿って、又は2つ以上の軸に沿って、パターンで配列されている、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項4】
前記接着剤がゲル接着剤又は感圧接着剤を含む、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項5】
前記基材層が、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、又はポリエーテルブロックアミドの熱可塑性フィルムを含む、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項6】
前記応力を受けている状態が、延び、曲げ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項7】
前記接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、前記接着剤物品が前記応力を受けていない状態にあるときの前記接着剤物品の光学特性とは異なる光学特性を有する、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項8】
前記基材層が、前記複数の切れ目を有していない同一の基材層よりも低い、少なくとも1つの軸における有効弾性係数を有する、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項9】
前記基材層の前記第2の主面に取り付けられているデバイスを更に含む、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項10】
肉眼が、裸眼である肉眼を含む光学システム又は光学デバイスを含む、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項11】
医療用構造体であって、
哺乳類の皮膚を含む表面と、
前記哺乳類の皮膚を含む表面に取り付けられた接着剤物品であって、
第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の連続層と、
第1の主面及び第2の主面を有する基材層と、を含む接着剤物品と、を含み、
前記基材層の前記第1の主面が接着剤層の前記第2の主面と接触しており、前記基材層が複数の切れ目を含み、前記複数の切れ目がパターンで配列され、前記切れ目が間隙であるが、前記間隙のうちの少なくとも一部は、前記接着剤物品が第1の状態にあるとき、肉眼で見えず、前記第1の状態にあるとき肉眼では見えない前記間隙のうちの少なくとも一部は、前記接着剤物品が第2の状態にあるとき、肉眼で見える間隙になり、前記第2の状態が、より高い応力を受けている、曲げ、延び、又はそれらの組み合わせの状態であり、接着剤層の前記第1の主面が前記哺乳類の皮膚を含む表面と接触している、
医療用構造体。
【請求項12】
前記複数の切れ目が、1つの軸に沿って、又は2つ以上の軸に沿って、パターンで配列されている、請求項11に記載の医療用構造体。
【請求項13】
前記接着剤がゲル接着剤又は感圧接着剤を含む、請求項11に記載の医療用構造体。
【請求項14】
前記基材層が、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、又はポリエーテルブロックアミドの熱可塑性フィルムを含む、請求項11に記載の医療用構造体。
【請求項15】
前記基材層の前記第2の主面に取り付けられているデバイスを更に含む、請求項11に記載の医療用構造体。
【請求項16】
前記デバイスがセンサ又はモニタを備える、請求項15に記載の医療用構造体。
【請求項17】
接着剤物品の調製方法であって、
第1の主面と第2の主面とを有する基材層を提供することと、
前記基材層から材料を除去することなく、前記基材層に複数の切れ目を入れることによって、前記基材層を改変することであって、応力を受けていない状態で前記切れ目は間隙であるが、前記間隙は肉眼で見えず、しかし、応力を受けている状態で前記間隙のうちの少なくとも一部が肉眼で見えるようになるように、改変することと、
接着剤を提供することと、
前記基材層の前記第1の主面上に接着剤の連続層を形成することと、を含む、方法。
【請求項18】
前記基材層に複数の切れ目を入れることによって、前記基材層を改変することが、ナイフ、ブレード、ウォータージェット、又はレーザー光で、カットすることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記基材層の前記第1の主面上の接着剤の前記連続層が、前記基材層を改変する前に形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の切れ目が前記接着剤層にも存在する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有効弾性係数が小さい、長期着用に好適な医療用接着剤物品に関する。
【背景技術】
【0002】
広範囲の接着剤物品が医療用途に使用される。これらの接着剤物品としては、電極及び他の感知デバイスを患者の皮膚に取り付けるために使用されるゲル、医療デバイスを患者に取り付けるための広範囲のテープ、並びに創傷を被覆及び保護するために使用される接着ドレッシング材が挙げられる。
【0003】
接着剤物品の多くは、感圧接着剤を使用する。感圧接着剤は、室温で、(1)強力かつ持続的な粘着力、(2)指圧以下の圧力による接着、(3)被着体上に保持するのに十分な能力、及び(4)被着体からきれいに除去するのに十分な凝集力、を含む特定の特性を有することが当業者に周知である。感圧接着剤として十分に機能を果たすことがわかっている材料は、粘着力、剥離接着力、及び剪断強度の所望のバランスをもたらすのに必要な粘弾性特性を示すように設計され、配合されたポリマーである。
【0004】
感圧接着剤の調製に最も一般的に用いられるポリマーは、天然ゴム、合成ゴム(例えば、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)及びスチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロックコポリマー)、種々の(メタ)アクリレート(例えば、アクリレート及びメタクリレート)コポリマー、及びシリコーンである。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、有効弾性係数が小さい、長期着用に好適な医療用接着剤物品、並びにこれらの医療用接着剤物品を調製するための方法に関する。医療用接着剤物品を使用して調製された医療用構造体も開示される。
【0006】
いくつかの実施形態では、医療用接着剤物品は、第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の連続層と、第1の主面及び第2の主面を有する基材層と、を含み、基材層の第1の主面は接着剤層の第2の主面と接触している。基材層は複数の切れ目を含み、複数の切れ目はパターンで配列されている。パターンはランダムであってもよく、少なくとも1つの軸に沿って配列されていてもよい。切れ目は間隙であるが、接着剤物品が応力を受けていない状態にあるとき、間隙は肉眼で見えず、接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、切れ目の少なくとも一部が、肉眼で見える間隙になる。
【0007】
これらの接着剤物品を調製するための方法も開示される。いくつかの実施形態では、方法は、第1の主面及び第2の主面を有する基材層を提供することと、基材層から材料を除去することなく、基材層に複数の切れ目を入れることによって、基材層を改変することであって、応力を受けていない状態で切れ目は間隙であるが、間隙は肉眼で見えず、しかし、応力を受けている状態で、間隙のうちの少なくとも一部が、肉眼で見えるようになるように、改変することと、接着剤を提供することと、基材層の第1の主面上に接着剤の連続層を形成することと、を含む。いくつかの実施形態では、接着剤層は、基材層の改変前に基材層上に形成される。
【0008】
医療用構造体も開示される。いくつかの実施形態では、医療用構造体は、哺乳類の皮膚を含む表面と、哺乳類の皮膚を含む表面に取り付けられた接着剤物品と、を含み、接着剤物品は上記記載されている。接着剤物品は、医療デバイスを更に含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本出願は、添付の図面と共に、本開示の様々な実施形態についての以下の詳細な説明を考慮することにより、より完全に理解され得る。
図1A】実施例1に記載されるように、応力を受けていない状態及び2つの応力を受けている状態にあるときの、本開示の実施形態である物品の上面写真を示す。
図1B】比較例C1に記載されるように、応力を受けていない状態及び2つの応力を受けている状態にあるときの、本開示に対する比較である物品の上面写真を示す。
図1C】比較例C2に記載されるように、応力を受けていない状態及び2つの応力を受けている状態にあるときの、本開示に対する比較である物品の上面写真を示す。
図2A】実施例1に記載されているように、図1Aの物品のヒストグラムデータを示す。
図2B】比較例C1に記載されているように、図1Bの物品のヒストグラムデータを示す。
図2C】比較例C2に記載されているように、図1Cの物品のヒストグラムデータを示す。
【0010】
以下の例示された実施形態の説明においては、本開示を実施することが可能な様々な実施形態を実例として示す添付の図面を参照する。本開示の範囲から逸脱することなく実施形態を利用することが可能であり、構造上の変更が行われ得る点は理解されるべきである。これらの図は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図面で使用されている同様の番号は同様の構成要素を示す。しかし、所与の図内で構成要素を示すための番号の使用は、同じ番号で示されている別の図内の構成要素を限定することを意図していないことが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
医療産業における接着剤製品の使用は、長年普及しており、増加している。しかし、接着剤及び接着剤物品は、それ自体が医療用途に非常に有用であることが示されている一方、接着剤及び接着剤物品の使用において問題もある。多くの医療用接着剤物品は、創傷領域に直接適用されているが、テープ及びドレープなどの広範囲の医療用物品は、創傷領域自体に適用されず、むしろ、吸収性材料又は、医療デバイスを皮膚上の所定の位置に保持するなどの処置に対して支持的な役割を果たす。テープを用いて所定の位置に保持される医療デバイスの例としては、チューブ、カテーテル、オストミー器具、及びセンサなどが挙げられる。
【0012】
医療用接着剤は、幅広い所望の特性を有する。これらの特性の中でも、典型的な接着剤には、十分な剥離接着力及び剪断保持力、並びに身体と共に屈曲するような可撓性、高い水蒸気透過率(MVTR)及び低い医療用接着剤関連皮膚損傷(MARSI)が必須である。
【0013】
MVTRは、水蒸気が物質又はバリアを通過する尺度である。発汗が皮膚上で自然に生じるため、材料又は接着剤系のMVTRが低い場合、これは、皮膚と接着剤との間の水分蓄積をもたらし、接着剤を「浮かせる」又は剥離させる可能性があり、又は細菌増殖及び皮膚刺激などの他の有害な影響を助長させる可能性もある。したがって、多くの取り組みは、高いMVTRを有する接着剤系の開発に焦点を当ててきた。
【0014】
医療用接着剤関連皮膚損傷(Medical adhesive-related skin injury、MARSI)は、患者の安全に大きな悪影響を及ぼす。医療用接着剤の使用に関連した皮膚損傷は、全てのケア環境及び全ての年齢群にわたって発生する、高頻度にあるが見過ごされやすい合併症である。更に、皮膚の損傷の治療は、サービスの提供、時間、並びに追加の治療及び供給の点で費用がかかる。
【0015】
皮膚の損傷は、皮膚の表面層が医療用接着剤製品と一緒に除去される際に発生し、これは、皮膚の完全性に影響を与えるだけでなく、痛み及び感染のリスクを引き起こし、創傷の大きさを増大させ、治癒を遅らせる可能性があり、その全てが患者の生活の質を低下させる。
【0016】
医療用接着テープは、感圧接着剤及び接着剤のキャリアとして機能するバッキングとして単純に定義することができる。米国食品医薬品局は、医療用接着テープ又は絆創膏を、「片側が接着剤でコーティングされた、布地材料又はプラスチック片からなる医療目的のために意図されたデバイスであって、これには消毒剤を含まない外科用ドレッシング材パッドが含まれ得る。このデバイスは、創傷を被覆し保護するために、創傷の皮膚縁部を一緒に保持するために、身体の負傷部分を支えるために、又は物体を皮膚に固定するために使用される。
【0017】
MARSIの病態生理は、部分的にしか理解されていない。接着剤の皮膚への付着が皮膚細胞の皮膚細胞への付着よりも強い場合に、皮膚損傷が起こる。接着強度が皮膚細胞の皮膚細胞相互作用に対する強度を超えると、皮膚細胞層内で凝集破壊が生じる。
【0018】
現在の医療用接着剤系は、皮膚と接着剤との間の機械的特性の差、すなわち、皮膚と接着剤系との間に存在する応力/ひずみの差に対処していないことから、長期間皮膚に残っていることが困難である。皮膚は、典型的には、1.0のひずみに対して0.05MPa又は0.4のひずみに対して0.02MPaとして近似され得る低い応力ひずみ関係を有する。皮膚は粘弾性であり、現在の接着剤系は、典型的には高度に弾性である。皮膚と現在の接着剤系との間の機械的な不一致から、現在の接着剤系が皮膚上の所定の位置にあり、皮膚が移動するとき(延び/張力及び圧縮/圧縮力)、これらの接着剤系は、皮膚と同じ程度には移動しないため、接着剤系材料と皮膚との間の応力/ひずみの不一致になる。この不一致により、接着剤系接着剤層とそれが接着される皮膚との間の界面に、高い剪断力がもたらされる。これらの剪断力の結果として、現在の接着剤系は端部剥離をもたらし、最終的に接着剤系全体から剥れる。
【0019】
したがって、接着剤系は、望ましくは、(1)皮膚と接着剤系との間に存在する機械的特性の不一致に対処するように、及び(2)高いMVTRを有するように設計される。従来の接着剤系は、強い接着剤、すなわち皮膚に対する高い接着性を有する接着剤を使用することによって、機械的特性の不一致及びもたらされる端部剥離の問題に対処しようとしてきた。接着剤の強さは、その初期結合強度及びその持続的接着強度によって定義される。しかし、これらの強い接着剤は、皮膚と接着剤との間に生じるひずみ不一致及び高い剪断力の主要な問題に対処していない。したがって、これらの試みは、皮膚と同じ程度には伸縮しない系をもたらし、皮膚に強く付着して残り、使用者に痛みをもたらす非常に高い剪断力をもたらし、最終的には縁部剥離及び剥れをもたらす。更に、強い接着剤を使用することは、着用者が接着剤系を除去することを望むときに、皮膚から除去することが非常に困難であり、痛みを伴う。しかし、満足するほど強くない接着剤は、皮膚が伸縮するときに皮膚への付着を維持せず、縁部剥離及び剥れをもたらす。
【0020】
皮膚と接着剤物品との間の不一致の問題を解決する最近の試みは、国際出願PCT/国際公開第2018/125739号に記載されている。この公報は、頂部及び底部周囲を有する底部を有する第1の層材料を有する第1の層と、皮膚に取り付けるための底部上の第1の層接着剤と、を有し、第1の層が固有弾性係数を有する、接着剤系を記載している。接着剤系はまた、底部周囲のみに沿った第2の接着剤を含み、第1の層は、第1の層の固有弾性係数よりも低い有効弾性係数を有する第1の層をもたらす複数の改変を含む。第1の層における複数の改変は、穿孔である。
【0021】
本開示では、接着剤層の改変又は複数の接着剤層の使用を利用することを伴わない、また接着剤物品のバッキング層を穿孔することを伴わない、接着剤物品が記載される。むしろ、本開示の接着剤物品は、第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の連続層と、第1の主面及び第2の主面を有する基材層と、を含み、基材層の第1の主面は接着剤層の第2の主面と接触している。基材層は複数の切れ目を含み、複数の切れ目はパターンで配列されている。いくつかの実施形態では、パターンはランダムであってもよく、他の実施形態では、パターンは少なくとも1つの軸に沿って配列されていてもよい。切れ目は、基材層から材料を除去することによって形成されるものではないことから、穿孔ではなく、むしろ間隙である切れ目であるが、接着剤物品が応力を受けていない状態にあるとき、間隙は肉眼で見えないが、接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、間隙のうちの少なくとも一部が肉眼で見える。
【0022】
穿孔ではなく切れ目の使用は、様々な利点を有する。利点の中でもとりわけ、切れ目により、基材層から材料を除去することなく、有効弾性率を低くすることが可能である。切れ目の配列も改善されたMVTRを提供する。穿孔の代わりに切れ目を使用する利点は、切れ目の配列が、接着剤物品への応力の適用の視覚的指標を提供する間隙を形成することである。上述のように、切れ目は、接着剤物品が応力を受けていない状態にあるとき、肉眼では見えない間隙であるが、応力を適用すると、間隙のうちの少なくとも一部が肉眼で見えるようになる。このようにして、基材自体が、応力が接着剤物品に適用されたときを示すことが可能である。したがって、切れ目は、接着剤物品への応力の影響を軽減するための方法だけでなく、応力が接着剤物品に適用されるときを目視検出するための方法も提供する。これらの接着剤物品を調製するための方法も開示される。
【0023】
医療用構造体も本明細書に開示される。医療用構造体は、哺乳類の皮膚を含む表面と、哺乳類の皮膚を含む表面に取り付けられた接着剤物品と、を含む。接着剤物品は上記記載されており、第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の連続層と、第1の主面及び第2の主面を有する基材層と、を含み、基材層の第1の主面は接着剤層の第2の主面と接触している。基材層は複数の切れ目を含み、複数の切れ目はパターンで配列され、いくつかの実施形態では、パターンはランダムであり、他の実施形態では、パターンは少なくとも1つの軸に沿って配列されている。接着剤物品はまた、基材層の第2の主面に接着されたセンサ又は他のデバイスを更に含み得る。
【0024】
別途指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いる特徴部寸法、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解するものとする。したがって、特に反対の指示がない限り、上記明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本明細書で開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。端点による数値範囲の記載には、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)及びその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【0025】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が別途明示していない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。例えば、「層」についての言及は、1つ、2つ、又はそれ以上の層を有する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、用語「又は」は、内容が別途明示していない限り、「及び/又は」を含む意味で全般的に用いられる。
【0026】
本明細書において使用される場合、「接着剤」という用語は、2つの被着体を一緒に接着するのに有用なポリマー組成物を指す。接着剤の例は、感圧接着剤及びゲル接着剤である。
【0027】
感圧接着剤組成物は、以下:(1)強力粘着性及び持続的粘着性、(2)指圧以下の圧力による接着、(3)被着体を繋ぎ止める十分な能力、並びに(4)被着体からきれいに取り外すのに十分な凝集力を含む特性を保有することが、当業者には周知である。感圧接着剤として十分に機能することがわかっている材料は、所望のバランスの粘着力、剥離接着力、及び剪断保持力をもたらすのに必要な粘弾性特性を示すように設計かつ配合されたポリマーである。特性の適正なバランスを得ることは、単純なプロセスではない。
【0028】
本明細書で使用するとき、「ゲル接着剤」という用語は、1つ以上の基材に接着することができる液体又は流体を含有する、粘着性の半固体架橋マトリックスを指す。ゲル接着剤は、感圧接着剤と共通していくつかの特性を有し得るが、感圧接着剤ではない。「ヒドロゲル接着剤」は、架橋マトリックス内に含まれる流体として水を有するゲル接着剤である。
【0029】
本明細書で使用するとき、「切れ目」という用語は、カットツールの貫通によって基材に作製された、それによって、材料がカットプロセスにより基材から除去されることはない、狭い開口部を指す。「切れ目」及び「スリット」という用語は、互換的に用いられる。
【0030】
用語「(メタ)アクリレート」は、アルコールの、モノマーアクリル又はメタクリルのエステルを指す。アクリレート及びメタクリレートモノマー又はオリゴマーは、本明細書で「(メタ)アクリレート」と総称される。「(メタ)アクリレート官能性」と呼ばれる材料は、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含有する材料である。
【0031】
本明細書で用いられる用語「シロキサン系」は、シロキサン単位を含有するポリマー又はポリマーの単位を指す。用語シリコーン又はシロキサンは、区別なく用いられ、ジアルキル又はジアリールシロキサン(-SiRO-)繰り返し単位を有する単位を指す。
【0032】
用語「室温」と「周囲温度」とは、区別なく使用され、20℃~25℃の範囲の温度を意味する。
【0033】
用語「Tg」及び「ガラス転移温度」は、互換的に使用される。測定する場合、Tg値は、別途指示がない限り、10℃/分の走査速度で示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。典型的には、コポリマーのTg値は測定されないが、当業者に理解されるように、モノマー供給業者によって提供されるホモポリマーTg値を使った周知のFox式を用いて計算される。
【0034】
2つの層を指すとき、本明細書で使用する場合、用語「隣接する」は、2つの層が互いに近接しており、それらの間に介在する開放空間がないことを意味する。これらは、互いに直接接触していてもよい(例えば、一緒に積層されてもよい)、又は介在層が存在してもよい。
【0035】
本明細書で使用するとき、「パターン」という用語は、複数の切れ目を指し、複数の切れ目は配列を形成し、配列が、「ランダムパターン」であり得るパターンになり、これは、配列内に容易に識別可能な繰り返し単位がないことを意味し、又は配列が少なくとも1つの軸に沿って整列され得る。いくつかの実施形態では、配列は、一つの軸に沿って整列され、他の実施形態では、配列は、2つ以上の軸に沿って整列されている。
【0036】
用語「ポリマー」及び「高分子」は、本明細書において、化学における一般的な使用法と一致して使用される。ポリマー及び高分子は、多くの繰り返しサブユニットから構成される。本明細書で使用する場合、用語「高分子」は、複数の繰り返し単位を有するモノマーに結合した基を説明するために使用される。用語「ポリマー」は、重合反応から形成された得られた材料を説明するために使用される。
【0037】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンの基である一価の基を意味する。アルキルは、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであってもよく、典型的には、1個~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1個~18個、1個~12個、1個~10個、1個~8個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
用語「アリール」は、芳香族及び炭素環である一価の基を指す。アリールは、芳香環に接続している又は縮合している、1個~5個の環を有し得る。その他の環構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
用語「アルキレン」は、アルカンの基である二価の基を指す。アルキレンは、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであってもよい。アルキレンは、多くの場合、1個~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、1個~18個、1個~12個、1個~10個、1個~8個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一の炭素原子上にあってもよく(すなわち、アルキリデン)、又は異なる炭素原子上にあってもよい。
【0040】
用語「フリーラジカル重合可能」及び「エチレン性不飽和」は、互換的に使用され、フリーラジカル重合機構を介して重合できる炭素-炭素二重結合を含有する反応性基を指す。
【0041】
本明細書で使用するとき、「間隙」という用語は、基材の厚さ全体を通過する基材内の空隙空間を指す。間隙は、カット、スリット加工、ボーリング加工などによって調製することができる。本開示では、間隙は、基材が応力を受けていない状態にあるとき、肉眼では見えないものとして記載され、また間隙は、応力を受けている状態にあるとき、肉眼で見えるものとして、かつ「開口」を形成するものとして記載される。本明細書で使用するとき、「開口」という用語は、典型的な定義に従って使用され、光が通過する空間である。本明細書で使用するとき、「穴」という用語は、応力を受けていない状態及び応力を受けている状態で、肉眼で見える基材の表面の空隙を指し、これは応力を受けていない状態及び応力を受けている状態の両方にて開口である。
【0042】
広範囲の医療的使用に好適な接着剤物品が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、接着剤物品は、第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の連続層と、第1の主面及び第2の主面を有する基材層と、を含み、基材層の第1の主面は接着剤層の第2の主面と接触している。基材層は複数の切れ目を含み、複数の切れ目はパターンで配列されている。いくつかの実施形態では、パターンはランダムであってもよく、他の実施形態では、パターンは少なくとも1つの軸に沿って配列されていてもよい。切れ目は間隙であるが、接着剤物品が応力を受けていない状態にあるとき、これらの間隙は肉眼で見えず、しかし、接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、間隙のうちの少なくとも一部が、肉眼で見えるようになる。
【0043】
幅広い接着剤が、本開示の接着剤物品の接着剤層における使用に好適である。いくつかの実施形態では、接着剤は感圧接着剤を含み、他の実施形態では、接着剤はゲル接着剤を含む。好適な感圧接着剤としては、(メタ)アクリレート系感圧接着剤及びシロキサン系感圧接着剤が挙げられる。
【0044】
1つの好適な部類の(メタ)アクリレート系感圧接着剤としては、(A)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和アルキル(メタ)アクリレートモノマー(すなわち、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートモノマー)、及び(B)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和フリーラジカル共重合性補強モノマー(reinforcing monomer)から誘導されるコポリマーが挙げられる。補強モノマーは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーよりも高いホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有し、結果として得られるコポリマーのガラス転移温度及び凝集力を向上するものである。本明細書では、「コポリマー」は2種以上の異なったモノマーを含有する、ターポリマー、テトラポリマー等を含めたポリマーを指す。
【0045】
モノエチレン性不飽和アルキルアクリレート又はメタクリレート(すなわち、(メタ)アクリル酸エステル)であるモノマーAは、コポリマーの可撓性及び粘着性に寄与する。概して、モノマーAは、約0℃以下のホモポリマーTgを有する。典型的には、(メタ)アクリレートのアルキル基は、平均で約4~約20個の炭素原子、又は平均で約4~約14個の炭素原子を有する。アルキル基は任意選択で鎖内に酸素原子を含有してもよく、これにより例えばエーテル又はアルコキシエーテルを形成する。モノマーAの例としては、2-メチルブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、及びイソノニルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。その他の例としては、CARBOWAX(Union Carbideから市販されている)及びNKエステルAM90G(新中村化学工業から市販されている)のアクリレート等のポリエトキシル化又はポリプロポキシル化メトキシ(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。モノマーAとして使用することができる好適なモノエチレン性不飽和(メタ)アクリレートとしては、イソオクチルアクリレート、2-エチル-ヘキシルアクリレート、及びn-ブチルアクリレートが挙げられる。Aモノマーとして分類される各種モノマーの組み合わせを、コポリマーを製造するために使用することができる。
【0046】
モノエチレン性不飽和フリーラジカル共重合性補強モノマーであるモノマーBは、コポリマーのガラス転移温度及び凝集力を向上する。概して、モノマーBは、少なくとも約10℃のホモポリマーTgを有する。典型的には、モノマーBは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、又は(メタ)アクリレートを含めた補強(メタ)アクリルモノマー(reinforcing(meth)acrylic monomer)である。モノマーBの例としては、これらに限定されるものではないが、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチル-N-アミノエチルアクリルアミド、N-エチル-N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N-ジヒドロキシエチルアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、及びN-オクチルアクリルアミド等のアクリルアミドが挙げられる。モノマーBのその他の例としては、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、2,2-(ジエトキシ)エチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレート、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、2-(フェノキシ)エチルアクリレート又はメタクリレート、ビフェニリルアクリレート、t-ブチルフェニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジメチルアダマンチルアクリレート、2-ナフチルアクリレート、フェニルアクリレート、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、及びN-ビニルカプロラクタムが挙げられる。モノマーBとして使用することができる特に好適な補強アクリルモノマー(reinforcing acrylic monomers)としては、アクリル酸及びアクリルアミドが挙げられる。Bモノマーに分類される各種補強モノエチレン性不飽和モノマー(reinforcing monoethylenically unsaturated monomers)の組み合わせを、コポリマーを製造するために使用することができる。
【0047】
概して、(メタ)アクリレートコポリマーは、結果として約0℃未満、より典型的には約-10℃未満のTgを有するように処方される。このような(メタ)アクリレートコポリマーは、概して、百分率で約60部~約98部の少なくとも1種のモノマーA及び百分率で約2部~約40部の少なくとも1種のモノマーBを含む。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートコポリマーは、百分率で約85部~約98部の少なくとも1種のモノマーA及び約2部~約15部の少なくとも1種のモノマーBを有する。
【0048】
皮膚に適用することができる好適な(メタ)アクリレート系感圧接着剤の例は、米国特許第RE24,906号に記載されている。いくつかの実施形態では、米国特許第4,737,410号に記載されるように、97:3のイソオクチルアクリレート:アクリルアミドコポリマー接着剤、又は70:15:15のイソオクチルアクリレート:エチレンオキシドアクリレート:アクリル酸ターポリマーを使用することができる。他の有用な接着剤は、米国特許第3,389,827号、同第4,112,213号、同第4,310,509号、及び同第4,323,557号に記載されている。
【0049】
別の部類の好適な感圧接着剤は、シロキサン系接着剤である。シロキサン系感圧接着剤としては、例えば、米国特許第5,527,578号及び同第5,858,545号、並びに国際出願PCT/国際公開第00/02966号に記載されているものが挙げられる。具体例としては、米国特許第6,007,914号に記載されているような、ポリジオルガノシロキサンポリ尿素コポリマー及びそれらのブレンド、並びにポリシロキサン-ポリアルキレンブロックコポリマーが挙げられる。シロキサン感圧接着剤の他の例としては、シラノール、水素化シリコーン、シロキサン、エポキシド、及び(メタ)アクリレートから形成されたものが挙げられる。シロキサン感圧接着剤を(メタ)アクリレート官能性シロキサンから調製するとき、接着剤をシロキサン(メタ)アクリレートと称する場合がある。
【0050】
シロキサン系接着剤組成物は、少なくとも1種のシロキサンエラストマー性ポリマーを含み、粘着付与樹脂等の他の成分を含有してもよい。エラストマー性ポリマーには、例えば、尿素系シロキサンコポリマー、オキシアミド系シロキサンコポリマー、アミド系シロキサンコポリマー、ウレタン系シロキサンコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
有用なシロキサンポリウレアブロックコポリマーについては、例えば米国特許第5,512,650号、同第5,214,119号、同第5,461,134号、及び同第7,153,924号、並びに国際出願PCT/国際公開第96/35458号、同第98/17726号、同第96/34028号、同第96/34030号及び同第97/40103号に開示されている。
【0052】
別の有用な部類のシロキサンエラストマー性ポリマーは、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマー等のオキサミド系ポリマーである。ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーの例は、例えば米国特許出願公開第2007-0148475号に提示されている。
【0053】
別の有用な部類のシロキサンエラストマー性ポリマーは、アミド系シロキサンポリマーである。このようなポリマーは、ウレア結合(-N(D)-C(O)-N(D)-)の代わりにアミド結合(-N(D)-C(O)-)を含有するウレア系ポリマーに類似している(式中、C(O)は、カルボニル基を表し、Dは、水素又はアルキル基である)。
【0054】
別の有用な部類のシロキサンエラストマー性ポリマーは、シロキサンポリウレア-ウレタンブロックコポリマーなどのウレタン系シロキサンポリマーである。シロキサンポリウレア-ウレタンブロックコポリマーは、ポリジオルガノシロキサンジアミン(シロキサンジアミンとも呼ばれる)と、ジイソシアネートと、有機ポリオールとの反応生成物を含む。このような材料は、構造上、-N(D)-B-N(D)-結合が-O-B-O-結合で置き換えられているという点を除き、式Iの構造と非常に類似している。このようなポリマーの例は、例えば米国特許第5,214,119号に提示されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、シロキサン系感圧接着剤は、シロキサン粘着付与樹脂を更に含む。シロキサン粘着付与樹脂は、以前は「シリケート」粘着付与樹脂と呼ばれてきたが、その専門用語は「シロキサン粘着付与樹脂」という用語に置き換えられている。シロキサン粘着付与樹脂は、所望の粘着性及び接着レベルを達成するのに十分な量で添加される。いくつかの実施形態では、複数のシロキサン粘着付与樹脂を使用して、所望の性能を達成することができる。
【0056】
好適なシロキサン粘着付与樹脂は、Dow Corning(例えば、DC 2-7066)、Momentive Performance Materials(例えば、SR545及びSR1000)、及びWacker Chemie AG(例えば、BELSIL TMS-803)等の供給元から市販されている。
【0057】
医療用途で使用される別の部類の接着剤は、シリコーンゲルである。本明細書で使用するとき、「シロキサン」及び「シリコーン」という用語は、互換的に使用される。シロキサンという用語は、一般的な用法ではシリコーンに取って代わるものであるが、両方の用語が当該技術分野において使用される。シリコーンゲル(架橋ポリジメチルシロキサン(poly dimethylsiloxane「PDMS」))材料は誘電性充填剤、振動ダンパー、及び、瘢痕組織治癒を促進するための医療療法に使用されてきた。軽度架橋シリコーンゲルは、比較的高濃度の流体(液体)を含む軟質で粘着性の弾性材料である。シリコーンゲルは、典型的には、シリコーン感圧接着剤よりも軟質であり、皮膚に接着させととき、不快感が低下する。皮膚上での妥当な接着剤保持力と、除去するときの皮膚外傷性が低いこととが組み合わさって、シリコーンゲルが皮膚に優しい接着剤用途に好適なものとなる。
【0058】
シリコーンゲル接着剤は、穏やかな除去力で皮膚に良好な接着性を提供し、再位置合わせする能力を有する。市販のシリコーンゲル接着剤系の例としては、商品名Dow Corning MG 7-9850、WACKER 2130、BLUESTAR 4317及び4320、並びにNUSIL 6345及び6350で市販されている製品が挙げられる。これらの皮膚に優しい接着剤は、ヒドロシリル化触媒(例えば、プラチナ錯体)の存在下で、ビニル末端PDMSと水素末端PDMSとの間の付加硬化反応によって形成される。ビニル末端PDMS鎖及び水素末端PDMS鎖は、それらの特定の化学部分のため、「官能化」シリコーンと呼ばれる。個別には、このような官能性シリコーンは、一般に反応性ではないが、これらは一緒になって反応性シリコーン系を形成する。更に、シリコーン樹脂(「シリケート樹脂」と呼ばれることもある粘着付与剤)及び複数の水素官能基を有するPDMS(架橋剤)を配合して、ゲルの接着特性を改変することができる。
【0059】
基材層は、典型的には薄いフィルム材料である。フィルム材料は、接着剤物品に支持を提供するのに十分な剛性である。基材層は、カットによって改変され、それが解剖学的表面に適合可能であるのに十分な柔軟性を有する。したがって、ドレッシング材が組織表面に適用された場合、表面が動いた場合であっても、表面に適合し伸張及び収縮することができる。本開示の改変プロセスは、そうでなければ解剖学的表面に適合しない、広範囲の材料フィルムを使用することを可能にする。好適な材料の部類の中でもとりわけ、熱可塑性樹脂、エラトマー、及び不織布がある。基材層は、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルブロックアミド、又は天然繊維系材料をはじめとする広範囲の材料から調製され得る。1つの特に好適な基材は、Sontara America製のSontara不織布材料であり、これは、医療用バリア及びドレープ用途における使用に好適な穴を有していない厳密に噛み合った不織布フィルムである。
【0060】
基材層は、広範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態では、厚さは少なくとも10マイクロメートル、最大254マイクロメートル(10ミル)となり、いくつかの実施形態では、厚さは25マイクロメートル(1ミル)~最大178マイクロメートル(7ミル)の厚さとなる。広範な中間の厚さもまた、好適である。
【0061】
上述のように、基材層は、パターンで配列された複数の切れ目を含み、いくつかの実施形態では、パターンはランダムであり得、他の実施形態では、パターンは少なくとも1つの軸に沿って配列されている。基材層の二次元表面は、2つの主要な直交軸を有すると見なすことができ、これは多くの場合x軸及びy軸と呼ばれる。フィルムを作製する方法から、多くの場合x軸は「機械方向」すなわちMDと記載され、直交するy軸は「交差方向」すなわちCDと記載される。典型的には、複数の切れ目は、機械方向に沿ってパターンで配列されている。これは、複数の切れ目の長さが基材層の機械方向に沿って整列されていることを意味する。
【0062】
パターンで配列された複数の切れ目は間隙であるが、これらの間隙は、基材層が応力を受けていない状態にあるとき、本質的に肉眼で見えない。接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、間隙のうちの少なくとも一部は、肉眼で見える。本明細書で使用するとき、「応力を受けている状態」という用語は、延び、曲げ、又はそれらの組み合わせを含む。切れ目が、応力を受けていない状態で非常に薄い(すなわち、本質的に幅がない)ことから、それらは、典型的にはそれらの長さ及び深さによって記載される。概して、切れ目は基材層の全厚を通って延びているため、深さは基材層の厚さと同じである。切れ目の長さの幅に対する関係を記述することができる1つのパラメータは、アスペクト比である。「アスペクト比」という用語は、典型的には粒子を記載するために使用されるが、本明細書で使用するとき、材料が存在しない穴サイズ又は空隙領域を記載するために使用される。いくつかの実施形態では、切れ目のアスペクト比(長さの幅に対する比)は、1000よりも大きい。応力を適用すると、切れ目のアスペクト比が減少する。好適な切れ目の例は、長さ1センチメートル及び幅5マイクロメートルのものである。
【0063】
切れ目は、上記の単純な線形形状よりも複雑であり得る。切れ目は、応力を受けていない状態で、肉眼で見えない限り、交差、アスタリスク、山形、文字、及び数字などの様々な二次元形状を有し得、接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、切れ目の少なくとも一部は、肉眼で見える間隙になる。更に、物品に応力を適用すると間隙が肉眼で見えるようになるだけでなく、間隙は、光が通過することができる開口にもなる。このようにして、応力を適用すると、形成された開口は、基材層を通して見ることを可能にする。
【0064】
いくつかの実施形態では、切れ目は、基材の機械方向に沿ってパターンで配列されている。多くの場合、切れ目は、「スキップスリット加工」と呼ばれるプロセスによって形成される。このプロセスでは、一連の不連続スリットが基材内に直線状に形成される。スリットに遭遇する基材表面に沿ってスリットの線をたどる場合、スリットは終了し、スリット加工されていない領域があり、その後、新しいスリットに遭遇し、スリットは終了し、そのスリットは、スリット加工されていない領域に遭遇し、以下同様である。このタイプのパターンは、国際出願PCT/国際公開第19/043621号に記載されている。これらのパターンでは、1つのスリットの端部と次のスリットの開始部との間の領域は、架橋領域と呼ばれる。幅広いパターンが好適であるが、いくつかの実施形態では、パターンは50%のオフセットを有する。これは、2つの線形配列が機械方向に存在する場合、交差方向に観察すると、第1の配列の架橋領域が第2の配列のスリットに対応し、逆も同様であることを意味する。
【0065】
いくつかの実施形態では、複数の切れ目は、2つ以上の軸に沿ったパターンで配列されている。これは、切れ目の少なくとも一部が、基材層の機械方向と整列していないが最大90°の角度で整列からオフセットされている長さを有することを意味する。基材層のMDと90°で位置合わせからオフセットされている長さは、交差方向に整列される。
【0066】
複数の切れ目は、方法が基材層から材料を除去することを伴わない限り、いくつかの異なる方法で作製することができ、切れ目は、応力を受けていない状態で、肉眼で本質的に見えない間隙を形成し、間隙のうちの少なくとも一部は、接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、肉眼で見えるようになる。この方法の中でもとりわけ、層が例えば押出、成形、及び機械加工などによって形成されるとき、切れ目が基材層に導入されるものである。他の方法は、ナイフ、線形ブレード、回転ダイブレード、ウォータージェット、又はレーザー光などの切断ツールを使用してカットすることによって、又はスタンピングツールを使用してスタンピングすることによって、基材層が形成された後に、切れ目が基材層に導入されるものである。いくつかの実施形態では、切れ目は、ダイが基材層全体にわたってカットし切れ目パターンを形成するように、基材層を回転ダイブレード及びアンビルを含むニップに供給することによって作製される。
【0067】
いくつかの実施形態では、基材層は、接着剤層がそれに適用されて物品を形成し、次いで、切れ目が基材層に形成されるまで、改変されない。以下に記載するように、いくつかの実施形態では、切れ目は基材層にのみ存在する。他の実施形態では、切れ目は、基材層及び接着剤層に存在する。
【0068】
本物品の基材層は、複数の切れ目を有していない同一の基材層よりも低い、少なくとも1つの軸における有効弾性係数を有する。言い換えれば、複数の切れ目で基材層を改変することにより、有効弾性係数が小さくなる。弾性率(弾性係数とも呼ばれる)は、応力が適用されたとき、弾性的に(すなわち、非恒久的に)変形する物体又は物質の抵抗を測定する量である。対象の弾性率は弾性変形領域内の応力-ひずみ曲線の勾配として定義される。有効弾性率は、当該技術分野では、平均応力の平均ひずみに対する比として定義され、これにより、その外部境界上で純粋な剪断又は純粋な圧縮に供されるときに主部をもたらす。本開示では、有効弾性率は、基材層がカットによって改変された後の、基材層又は基材層を含む接着剤物品の弾性率である。
【0069】
基材層の穿孔は有効弾性係数を小さくするために等しく好適な方法であると思われる場合があるが、穿孔の使用は弾性率の同じ低減を提供しないことが見出された。この文脈で、「穿孔」という用語は、その一般的に使用される定義に従って使用され、基材から材料を除去する方法によって調製された基材を通る穴を指す。本開示の切れ目とは異なり、穿孔は、応力を受けていない状態にあるか応力を受けている状態にあるかにかかわらず、肉眼で容易に見える。
【0070】
本開示の接着剤物品は、望ましい光学特性を有する。望ましい光学特性の中でもとりわけ、接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、接着剤物品は、応力を受けていない状態にあるときの接着剤物品の光学特性とは異なる光学特性を有するという特性である。光学特性の差は、パターンで配列された複数の切れ目が、基材層が応力を受けていない状態にあるとき、間隙が肉眼では見えない間隙であり、接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、間隙のうちの少なくとも一部が肉眼で見えるようになる、接着剤物品の特性に関連している。例えば、応力を適用することによって基材層内で見えるようになる間隙は、基材層の部分が不透明から光透過性になって変化することで証明される。このようにして、応力を受けている接着剤物品が適用される表面は見えるようになり得る。切れ目が接着剤層中にも存在しない場合、接着剤物品に応力を適用することにより、接着剤層の部分を見えるようにすることができる。
【0071】
光学特性の変化の検出は、典型的には肉眼で検出可能である。上述のように、基材層における切れ目は肉眼で見えないが、接着剤物品に応力を適用することにより、切れ目を肉眼で見えるようにする。本開示では、「肉眼」は、裸眼である肉眼を含む光学システム又は光学デバイスを含む。光学デバイスの例としては、光学特性の変化を検出するように調整された光学感知デバイスが挙げられる。いくつかの実施形態では、光学デバイスは、一連の写真をとるように設計されたカメラを備え得、それにより、写真の比較が接着剤物品の光学特性の変化の指標を提供する。
【0072】
接着剤物品に応力を適用する際の光学特性の変化は、様々な理由のために有用である。例えば、患者に適用するときの接着剤物品への応力の適用は、傷害による腫脹により、又は創傷によってもたらされた滲出液から生じ得る。いくつかの実施形態では、接着剤物品に適用される応力の可視表示は、接着剤物品を着用する患者による単純な運動、曲げ、ねじれなどから生じる場合があり、したがって、運動、曲げ、ねじれなどが過剰であることを示す。
【0073】
また、本明細書では、接着剤層及び基材層を含むだけでなく、基材層の第2の主面に取り付けられているデバイスも更に含む、接着剤物品も開示される。センサ又はモニタなどの広範なデバイスが好適である。本開示の接着剤物品の利点は、柔軟性により、上記記載の問題なしに、接着剤物品を長期間着用することが可能になることである。したがって、本開示の接着剤物品は、長期間、例えば数日、数週間、又は更により長期間にわたって着用され得る。これは、患者が長期間着用することを意味する、デバイスを含む接着剤物品で特に重要であり得る。本開示の改変基材を含む接着剤物品の更なる利点は、小さくなった有効弾性係数が、柔軟性である皮膚と概して剛性であるデバイスとの間に柔軟な減衰層を提供することである。この柔軟性減衰層により、デバイス上、又はデバイスと皮膚との間の接続部上に応力を引き起こすことなく、デバイスの着用者による動きの増加が可能になる。
【0074】
医療用構造体も本明細書に開示される。医療用構造体は、哺乳類の皮膚を含む表面と、哺乳類の皮膚を含む表面に取り付けられた上記記載のものなどの接着剤物品と、を含む。これらの接着剤物品は、第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の連続層と、第1の主面及び第2の主面を有する基材層と、を含み、基材層の第1の主面は接着剤層の第2の主面と接触している。基材層は複数の切れ目を含み、複数の切れ目はパターンで配列され、いくつかの実施形態では、パターンはランダムであり、他の実施形態では、パターンは少なくとも1つの軸に沿って配列され、切れ目は、接着剤物品が応力を受けていない状態にあるとき、肉眼で見えない間隙であり、間隙のうちの少なくとも一部は、接着剤物品が応力を受けている状態にあるとき、肉眼で見えるようになる間隙である。接着剤層の第1の主面は、哺乳類の皮膚を含む表面と接触して接着結合されている。上記記載のように、接着剤物品は、基材層の第2の主面に取り付けられているデバイスを更に含み得る。
【0075】
接着剤物品を調製する方法もまた、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、方法は、第1の主面及び第2の主面を有する基材層を提供することと、基材層から材料を除去することなく、基材層に複数の切れ目を入れることによって、基材層を改変することであって、応力を受けていない状態で、切れ目は、肉眼で見えない間隙であり、応力を受けている状態で、間隙のうちの少なくとも一部が、肉眼で見えるようになるように、改変することと、接着剤を提供することと、基材層の第1の主面上に接着剤の連続層を形成することと、を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、基材層を改変することは、ナイフ、ブレード、ウォータージェット、又はレーザー光で、複数の切れ目を基材層にカットすることを含む。多種多様な技術が、基材層を改変するのに好適である。改変の例としては、ナイフ、線形ブレード、回転ダイブレード、ウォータージェット、若しくはレーザー光などの切断ツールを使用してカットすること、又はスタンピングツールを使用してスタンピングすることが挙げられる。いくつかの実施形態では、切れ目は、ダイが基材層全体にわたってカットし切れ目パターンを形成するように、基材層を回転ダイブレード及びアンビルを含むニップに供給することによって作製される。
【0077】
多くの実施形態では、基材層は、基材層の第1の主面上に接着剤の連続層を形成する前に改変される。このようにして、基材層は、接着剤物品の形成とは異なる場所に又は異なる時間で改変され得る。いくつかの実施形態では、基材層の第1の主面上の接着剤の連続層は、基材層を改変する前に形成される。基材層の改変は、基材層の単なる改変を伴い得、又は基材層の改変は、基材層及び接着剤層の両方の改変を伴い得る。これらの実施形態では、基材層に存在する複数の切れ目は、接着剤層にも存在する。
【0078】
上記記載のように、接着剤物品を形成する方法は、基材層の第2の主面にデバイスを取り付けることを更に含む。好適なデバイスは、上記記載されている。
【0079】
本開示の物品は、以下の実施例の節でより完全に説明される図によってより完全に理解され得る。図1Aは、本開示の物品を示し、切れ目の配列によって形成された間隙が本質的に応力を受けていない状態で見えず、物品が取り付けられた下にある基材を引っ張ることによって物品に応力を適用すると、間隙が見えるようになり、下にある基材を、間隙を通して明確に見ることができる。更に、下にある基材が延びると、物品が伸長し、物品が伸長することを可能にする弾性係数が示される。図1B及び図1Cは、穿孔を有する比較基材を示す。見られるように、穿孔は、応力を受けている状態及び応力を受けていない状態の両方で見える。また、物品が取り付けられている下にある基材への応力の適用により、穿孔基材を伸長することがなく、これは物品の弾性係数が物品の伸長を可能にしないことを示している。
【実施例
【0080】
これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。以下の略語を使用する:mm=ミリメートル、kHz=キロヘルツ。
【0081】
試験片の調製及び測定
Sonata不織布材料(Sonata America,Inc.,Candler,NC)のストリップを、医療グレードの接着剤でコーティングした。パターンを、スリット(実施例1)及び2つの直径の丸穴(比較例C1及びC2)を含むコーティングされたSontara材料でレーザーカット(レーザー設定は13%の出力、75kHz、1000mm/秒、2パス)した。次いで、パターン形成されコーティングされたSontaraをハンドローラでスパンデックス型布に積層することによって、未積層スパンデックス布を試料の頂部及び底部で露出させた。試験片を、試験片の中央を中心としたSontara材料の2インチ×5インチ(約51×127mm)片、及び各末端で露出した約12mmのスパンデックス型布で切り取った。試験片を頂部で露出したスパンデックスによって測定グリッドに固定し、底部で露出したスパンデックス型の布を把持して、試験片を延ばした。試験片の形状及びカットパターンは、図1A(実施例1)、図1B(比較例C1)、及び図1C(比較例C2)に見ることができる。
【0082】
取り付けられたiPhone Xカメラを使用して試験片を画像化し、ヒストグラムを計算した。次いで、各試験片を約12mm延ばし、画像を記録し、ヒストグラムを計算した。最後に、試料を最大量まで延ばし、画像化及びヒストグラム計算を繰り返した。画像を図1A~Cに示す。ヒストグラムを、ImageJ(imagej.netで入手可能な画像処理プログラム)を使用して計算し、図2A~Cに示す。
【0083】
結果の考察
Sonata布は、延び及び変形に抵抗する。スキップスリット加工により、試験片の最大延びを大きくすることが可能になり、得られたヒストグラムは、暗所の下にあるスパンデックス材料の、開いたスリットを通る露出によって変化した。これは、図1Aに示すように、スキップスリットパターンが変形を可能にする能力によるものである。図2Aは、それぞれ緩和(延びていない)状態におけるスキップスリット試験片のヒストグラムを提供し、約12mm延び、左から右に最大限に延びている。
【0084】
丸い穿孔を有する試験片は、延びを促進しなかったが、形状は楕円形に変形した。この変形によると、有意により多くのスパンデックス材料を露出させることがなく、ヒストグラムは有意な変化を示さなかった。12mmの穿孔を有する試験片(図2B、左、中央、右)によると、わずかに大きい伸長率が可能になったが、ヒストグラム間に有意差をもたらさなかった。2mmの穿孔を有する試験片によるとまた、楕円形に有意に変形しなかった(図2C、左、中央)。
【0085】
見える変化は、異なる光学応答を有するSonata及びスパンデックス布の層に基づくものである。光学性能は、緩和状態及び延びている状態にあるときの穿孔/スリット領域のヒストグラム比較によって捕捉される。延びたスリット試料は、有孔のものと比較して、グレースケール値の平均、モード、及び標準偏差の有意な変化を示した。値の変化の兆候は、頂部及び底部のコントラストの選択に関連している。変化の大きさは、下にある材料を露出させるパターンの能力及び延びの大きさに関連している。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
【国際調査報告】