(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-19
(54)【発明の名称】新規の抗マラリア薬
(51)【国際特許分類】
C07D 401/04 20060101AFI20230512BHJP
A61K 31/4725 20060101ALI20230512BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230512BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230512BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20230512BHJP
A61K 31/4706 20060101ALI20230512BHJP
A61K 31/49 20060101ALI20230512BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20230512BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20230512BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
A61K31/4725
A61K31/506
A61K45/00
A61K31/357
A61K31/4706
A61K31/49
A61K31/4709
A61K31/122
A61P33/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562063
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2021059196
(87)【国際公開番号】W WO2021204952
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514015743
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ケンタッキー リサーチ ファウンデイション
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF KENTUCKY RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】201 Gillis Building, Lexington, Kentucky 40506-0033, U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】522246832
【氏名又は名称】エムエムヴイ・メディシン・フォー・マラリア・ベンチャー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロドニー・キプリン・ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャレッド・ティー・ハミル
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・フロイド
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・バロウズ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ブランド
【テーマコード(参考)】
4C063
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC15
4C063CC29
4C063DD12
4C063DD15
4C063EE01
4C063EE05
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB381
4C084ZB382
4C084ZC751
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4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC28
4C086BC30
4C086BC42
4C086CA01
4C086CB17
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB38
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA04
4C206CB28
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA17
4C206NA05
4C206ZB38
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、マラリアを予防又は治療するための医薬の製造における新規誘導体に関する。詳細には、本発明は、マラリア原虫増殖の阻害のための医薬製剤の調製に有用なジヒドロイソキノリン誘導体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、Xは、N及びCHから選択され、XがCHである場合、Rは、-CF
3、-CHF
2、-O-シクロプロピル、-O-イソプロピル、-OCHF
2、-CN、-OCH
2CF
3及び-NH(C=O)CH
3から選択され、XがNである場合、Rは-CF
3である)
の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形体、ラセミ混合物、光学活性体及び薬学的に活性な誘導体。
【請求項2】
XがCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XがNである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rが-CF
3である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
RがO-シクロプロピルである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
Rが-O-イソプロピルである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
Rが-OCHF
2である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項8】
Rが-CNである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項9】
Rが-OCH
2CF
3である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項10】
Rが-NH(C=O)CH
3である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項11】
N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-イソプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-シアノピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-3-(6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;3-(6-アセトアミドピリジン-3-イル)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド及びN-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミドの群から選択される請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形体、ラセミ混合物、光学活性体及び薬学的に活性な誘導体。
【請求項12】
医薬としての使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
マラリアの予防又は治療における使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物と、その薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含有する、医薬製剤。
【請求項15】
抗マラリア助剤を更に含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記助剤が、アルテミシニン又はアルテミシニン及びその誘導体、例えばアルテメテル、アルテスネート又はジヒドロアルテミシニン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、キニーネ、キニジン、メフロキン、アモジアキン、アトバコン/プログアニル、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、ルメファントリン、ピペラキン、ピロナリジン、ハロファントリン、ピリメタミン-スルファドキシン、プリマキン、キナクリン、フェロキン、タフェノキン、アルテロラン、スピロ[3H-インドール-3,1'-[1H]ピリド[3,4-b]インドール]-2(1H)-オン、5,7'-ジクロロ-6'-フルオロ-2',3',4',9'-テトラヒドロ-3'-メチル-,(1'R,3'S)-](シパルガミン、KAE609、CAS登録番号:1193314-23-6)、2-(1,1-ジフルオロエチル)-5-メチル-N-[4-(ペンタフルオロ-λ
6-スルファニル)フェニル]-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(DSM265、CAS登録番号:1282041-94-4)、モルホリン、4-[2-(4-cis-ジスピロ[シクロヘキサン-1,3'-[1,2,4]トリオキソラン-5',2"-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イルフェノキシ)エチル]-](アルテフェノメル、OZ439、CAS登録番号:1029939-86-3)、4-キノリンカルボキサミド、6-フルオロ-2-[4-(4-モルホリニルメチル)フェニル]-N-[2-(1-ピロリジニル)エチル]-(DDD107498、CAS登録番号:1469439-69-7)、エタノン、2-アミノ-1-[2-(4-フルオロフェニル)-3-[(4-フルオロフェニル)アミノ]-5,6-ジヒドロ-8,8-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-7(8H)-イル]-(ガナプラシド、KAF-156、CAS登録番号1261113-96-5)、5-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-6'-(トリフルオロメチル)[3,3'-ビピリジン]-2-アミン(MMV390048、CAS登録番号:1314883-11-8)、4(1H)-キノリノン、6-クロロ-7-メトキシ-2-メチル-3-[4-[4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ]フェニル]-(ELQ-300、CAS登録番号:1354745-52-0)から選択される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
式(III)の化合物を調製する方法であって、前記方法が、イソクロマン-1,3-ジオンの存在下で、式(II)の中間体化合物を式(III)の中間体化合物に変換する工程
【化2】
(式中、R及びXは請求項1~16のいずれか一項に定義されている通りである)
を含む、方法。
【請求項18】
式(I)の化合物を調製する方法であって、前記方法が、置換されてもよいフェニルアミン、例えば3-シアノ,4-フルオロアニリンの存在下で、式(III)の化合物を式(I)の化合物に変換する工程
【化3】
(式中、R及びXは本明細書で定義されている通りである)
を含む、方法。
【請求項19】
式(I)の化合物の鏡像異性体の立体選択的調製の方法であって、前記方法が、1~2当量のキラル的に純粋なアミン、例えば(1S,2S)-(+)-trans-1-アミノ-2-インダノールを用いる立体選択的塩再結晶化による式(III)の鏡像異性体の分離の工程、及び、置換されてもよいフェニルアミン、例えば3-シアノ,4-フルオロアニリンの存在下で、式(III)の特定の鏡像異性体を式(I)の対応する鏡像異性体に変換する工程を含む、方法。
【化4】
【請求項20】
式(III)
【化5】
(式中、R及びXは請求項1~19のいずれか一項に定義されている通りである)
の中間体。
【請求項21】
3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-1)、3-(6-メトキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-2)、1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-3)、1-オキソ-3-(6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-4)、3-(6-アセトアミドピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-5)、3-(6-シアノピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-6)、3-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-7)、3-(6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-8)、1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-9)の群から選択される、請求項20に記載の中間体。
【請求項22】
式(IV-2)の中間体
【化6】
、N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-メトキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド。
【請求項23】
式(V-2)の中間体
【化7】
、N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-ヒドロキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド。
【請求項24】
式(III)の中間体を立体選択的に調製する調製の方法であって、前記方法が、1~2当量のキラル的に純粋なアミン、例えば(1S,2S)-(+)-trans-1-アミノ-2-インダノールを用いて式(III)の化合物を立体選択的塩再結晶化することによって、式(III)の鏡像異性体を分離する工程を含む、方法。
【化8】
【請求項25】
対象のマラリアを予防及び/又は治療する方法であって、前記方法が、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又はその薬学的に活性な誘導体を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、新規の抗マラリア薬に関する。特に、本発明は、マラリアを予防又は治療するための医薬製剤の調製に有用な薬剤、並びにそれらの使用方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
マラリアは、赤血球に感染して破壊するプラスモジウム属(genus Plasmodium)の寄生原虫によって発症し、発熱、重度の貧血、脳マラリアを引き起こし、治療しなければ死に至る。熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)はサハラ以南のアフリカで優勢な種であり、毎年ほぼ50万人の死因になっている。疾患の負荷は、5歳未満のアフリカの子供と妊婦で最も重い。三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)は、特に南アジアと東南アジア、中南米で、世界のマラリア負荷の25~40%を引き起こしている。人間に感染することが知られている他の3つの主要な種は、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)及び二日熱マラリア原虫(Plasmodium knowlesi)である。
【0003】
マラリアは多くの発展途上国で流行している疾患である。世界の人口の約40%がマラリアが風土性のものである国に居住し、毎年約2億人がこの疾患に罹患している。
【0004】
過去20年間、マラリアの治療と予防のために様々な化学薬品が開発されてきた(Malaria medicines:a glass half full? Wells T.N.ら、2015、Nature Reviews Drug Discovery 14:424-442)。しかし、これらの医薬の多くは高価であり、一部は人間に重大な毒性と望ましくない副作用を示している。マラリアの治療に使用される薬物には、アルテミシニン及びその誘導体(例えばアルテメテル、アルテスネート又はジヒドロアルテミシニン)、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、キニーネ、キニジン、メフロキン、アモジアキン、アトバコン/プログアニル、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、ルメファントリン、ピペラキン、ピロナリジン、ハロファントリン、ピリメタミン-スルファドキシン、プリマキン、キナクリン、フェロキン、タフェノキン、アルテロラン、スピロ[3H-インドール-3,1'-[1H]ピリド[3,4-b]インドール]-2(1H)-オン、5,7'-ジクロロ-6'-フルオロ-2',3',4',9'-テトラヒドロ-3'-メチル-(1'R,3'S)-](シパルガミン、KAE609、CAS登録番号:1193314-23-6)、2-(1,1-ジフルオロエチル)-5-メチル-N-[4-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)フェニル]-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(DSM265、CAS登録番号:1282041-94-4)、モルホリン、4-[2-(4-cis-ジスピロ[シクロヘキサン-1,3'-[1,2,4]トリオキソラン-5',2"-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イルフェノキシ)エチル]-](アルテフェノメル、OZ439、CAS登録番号:1029939-86-3)、4-キノリンカルボキサミド、6-フルオロ-2-[4-(4-モルホリニルメチル)フェニル]-N-[2-(1-ピロリジニル)エチル]-(DDD107498、CAS登録番号:1469439-69-7)、エタノン、2-アミノ-1-[2-(4-フルオロフェニル)-3-[(4-フルオロフェニル)アミノ]-5,6-ジヒドロ-8,8-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-7(8H)-イル]-(ガナプラシド、KAF-156、CAS登録番号1261113-96-5)、5-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-6'-(トリフルオロメチル)[3,3'-ビピリジン]-2-アミン(MMV390048、CAS登録番号:1314883-11-8)、4(1H)-キノリノン、6-クロロ-7-メトキシ-2-メチル-3-[4-[4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ]フェニル]-(ELQ-300、CAS登録番号:1354745-52-0)、4-イソキノリンカルボキサミド、N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-オキソ-3-(3-ピリジニル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-、(3S,4S)-(SJ-733、CAS登録番号1424799-20-1)が挙げられる。
【0005】
マラリアは、制御と最終的な撲滅のための国際的な取り組みが高まっているにもかかわらず、依然として主要な健康問題である。現在、アルテミシニンベースの併用療法が、サハラ以南のアフリカで高い有効性を示している合併症のないマラリアの標準治療である。ただし、3日間にわたる投与は、治療アドヒアランスの重要な問題と関連しており、実際の設定での有効性の著しい低下が生じている。更に、アルテメシンとパートナー薬に対する耐性が出現している。したがって、風土病国におけるマラリア寄生虫の薬剤耐性の広範な出現を考慮すると、新しい化学療法アプローチが引き続き必要とされている。
【0006】
治療コンプライアンスと使いやすさの理由から、単回投与後に治癒する効力を有するマラリアの治療のための新薬を開発することが好ましく、世界保健機関のマラリア政策諮問委員会(MPAC)も推奨している(Single dose treatment of malaria -current status and perspectives。Mischlinger J.ら、2016、Expert Rev. Anti. Infect. Ther.、14:669-678)。Medicines for Malaria Venture(MMV)は更に、治癒を提供する用量(すなわち、寄生虫血症の約1012分の1への減少)が、70Kgのヒトに対して理想的には100mg未満であることを推奨している(New developments in anti-malarial target candidate and product profiles。Burrows, J.N.ら、2017、Malaria J、16:26)。
【0007】
熱帯熱マラリア原虫に対する表現型スクリーニングにより、ナトリウムイオントランスポーターである寄生虫ATP-4'aseの阻害を介してマラリアの赤血球内段階に対して大きな効力を示すジヒドロイソキノリン系列の化合物が確認された。この系列の最適化により、マラリアの臨床開発に進んだ最終的に(+)-SJ000557733(以下、(+)SJ-733という)が生じた。(+)SJ-733及び同じジヒドロイソキノリン系列の他の58例は、国際公開第2013/027196号で抗マラリア薬として請求されている(A New In Vivo Screening Paradigm to Accelerate Antimalarial Drug Discovery。Jimenez-Diaz M.B.ら、2013、PLoS ONE 8(6):e66967)。
【0008】
フェーズ1a臨床試験では、SJ-733のヒト薬物動態試験は、不活性N-オキシド代謝産物の著しい形成を示した。ヒトボランティアを対象としたフェーズ1bマラリア感染研究でのその後の調査では、600ミリグラムの単回投与後に寄生虫学的治癒が達成されず、複数回の投与レジメンが必要になることが示された(Gaurら、2020、Lancet Infect Dis.、20:30611-5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Malaria medicines:a glass half full? Wells T.N.ら、2015、Nature Reviews Drug Discovery 14:424-442
【非特許文献2】Single dose treatment of malaria -current status and perspectives。Mischlinger J.ら、2016、Expert Rev. Anti. Infect. Idler.、14:669-678
【非特許文献3】New developments in anti-malarial target candidate and product profiles。Burrows, J.N.ら、2017、Malaria J、16:26
【非特許文献4】A New In Vivo Screening Paradigm to Accelerate Antimalarial Drug Discovery。Jimenez-Diaz M.B.ら、2013、PLoS ONE 8(6):e66967
【非特許文献5】Gaurら、2020、Lancet Infect Dis.、20:30611-5
【発明の概要】
【0011】
本発明の概要
本発明は、マラリアの治療及び/又は防止に有用である新規のテトラヒドロイソキノリン誘導体、医薬製剤、その使用及び製造を対象とする。これらの化合物は、現在の臨床候補(+)SJ-733に比べて予想外にいくつかの利点を占めることが見出された。特に、類似又は改善されたインビトロ効力を有する本発明の新規化合物は、(+)SJ-733と比較して著しく改善された代謝安定性を提示し、ヒトにおける予測される効果的な単回用量がかなり低くなるという確信を与えることが見出され(すなわち70kgのヒトで<500mg)、そのため錠剤数の負担の減少によってコンプライアンスの改善という追加の利点を有している。
【0012】
本発明の第一の態様は、本発明による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、医薬としての使用のための、本発明による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの薬学的に活性な誘導体に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、マラリアの予防及び/又は治療における使用のための、本発明による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの薬学的に活性な誘導体に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、マラリアの予防及び/又は治療のための医薬組成物の調製について、本発明による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの薬学的に活性な誘導体の使用に関する。
【0016】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの本発明による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの薬学的に活性な誘導体と、それらの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含む、医薬製剤に帰属する。
【0017】
本発明の別の態様は、対象のマラリアを予防及び/又は治療する方法に帰属する。この方法は、本発明による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又はそれらの薬学的に活性な誘導体をそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0018】
本発明の別の態様は、本発明及びその中間体による化合物又は本発明によるその薬学的に許容される塩若しくはそれらの薬学的に活性な誘導体を調製する方法を提供する。
【0019】
本発明の別の態様は、式(I)の化合物を調製する方法を提供する。
【0020】
本発明の別の態様は、本発明による式(III)又は式(IV-2)又は式(V-2)の中間体を提供する。
【0021】
本発明の別の態様は、本発明による式(III)の中間体を調製する方法を提供する。
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】マラリアのマウスSCIDモデルにおける本発明の化合物の有効性を、実施例3に記載されるように、参照化合物(+)SJ-733と比較して示す図である。全ての化合物は、1mg/kgの用量で、1日2回、4日間経口投与した(矢印)。
【
図2】マラリアのマウスSCIDモデルで評価した本発明の化合物の薬物動態プロファイルを、実施例3に記載されるように、参照化合物(+)SJ-733と比較して示す図である。
【
図3】マウス、ラット及びイヌ種における化合物laの経口薬物動態プロファイルを、参照化合物(+)SJ-733と比較して示す図である。
【
図4】実施例7に記載されるように、本発明の化合物(1a)及び(9a)による処置後の熱帯熱マラリア原虫3D7株の細胞質[Na+]に対する化合物の効果を、実施例7に記載されるように、正対照(シパルガミン、KAE609)及び負対照(DMSO)と比較して示す図である。
【
図5】実施例8に記載されるように、蚊の中腸内のオーシストの数(IC
50=323nM)によって決定される、感染血液からA・ステフェンシ(A.Stefensi)蚊への熱帯熱マラリア原虫の伝達に対する化合物(1a)の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の段落は、本発明による化合物を構成する様々な化学的部分の定義を提供し、別段の明示的に定められた定義がより広い定義を提供しない限り、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して一様に適用されることを意図している。
【0025】
用語「C1~C6アルキル」は、単独で又は他の用語と組み合わせて使用される場合、直鎖又は分枝C1~C6アルキルを含み、1~6個の炭素原子を有する一価のアルキル基を指す。この用語は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル等のような基によって例示される。
【0026】
用語「C2~C6アルケニル」は、単独で又は他の用語と組み合わせて使用される場合、直鎖又は分枝C2~C6アルケニルを含む。特に、それは、2~6個の炭素原子を有し、少なくとも1又は2個のアルケニル不飽和部位を有する基を指す。それは、あらゆる利用可能な位置にあらゆる数の二重結合を有してもよく、二重結合の立体配置は(E)又は(Z)配置であってもよい。この用語は、例えばビニル、アリル、イソプロペニル、1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル等のような基が挙げられる。とりわけ、ビニル又はエテニル(-CH=CH2)、n-2-プロペニル(アリル、-CH2CH=CH2)、イソプロペニル、1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル及び3-メチル-2-ブテニル等が挙げられる。
【0027】
用語「C2~C6アルキニル」は、単独で又は他の用語と組み合わせて使用される場合、直鎖又は分枝C2~C6アルキニルを含む。それは、あらゆる利用可能な位置にあらゆる利用可能な数の三重結合を有してもよい。この用語は、2~6個の炭素数、及び任意に二重結合を有してもよいアルキニル基等によって例示され、例えばエチニル(-C≡CH)、1-プロピニル、2-プロピニル(プロパルギル:-CH2C≡CH)、2-ブチニル、2-ペンテン-4-イニルである。
【0028】
用語「ヘテロアルキル」は、C1~C12アルキル、好ましくはC1~C6アルキルを指し、ここで、少なくとも1つの炭素は、O、N又はSから選択されるヘテロ原子によって置換され、2-メトキシエチル等を含む。
【0029】
用語「単環アリール」は、単環を有する6~14個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環式基(例えばフェニル)を指す。
【0030】
用語「C1~C6アルキルアリール」は、C1~C6アルキル置換基を有するアリール基を指し、メチルフェニル、エチルフェニル等を含む。
【0031】
用語「アリールC1~C6アルキル」は、アリール置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、3-フェニルプロパニル、ベンジル等を含む。
【0032】
用語「ヘテロアリール」は、単環式複素芳香族、又は二環式若しくは三環式縮合環複素芳香族基を指す。複素芳香族基の特定の例としては、置換されていてもよいピリジル、ピロリル、ピリミジニル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,3,4-トリアジニル、1,2,3-トリアジニル、ベンゾフリル、[2,3-ジヒドロ]ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、イソベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、イソキノリニル、3H-インドリル、ベンゾイミダゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリジニル、キナゾリニル、プタラジニル、キノキサリニル、シンノリニル、ナプチリジニル、ピリド[3,4-b]ピリジル、ピリド[3,2-b]ピリジル、ピリド[4,3-b]ピリジル、キノリル、イソキノリル、テトラゾリル、5,6,7,8-テトラヒドロキノリル、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、キサンテニル又はベンゾキノリルが挙げられる。
【0033】
用語「5員複素環」は、5員ヘテロアリール又は5員ヘテロシクロアルキルを指す。それらの例としては、トリアゾール、ピラゾール、トリアゾール、イミダゾール及びイソオキサゾールが挙げられる。
【0034】
用語「C1~C6アルキルヘテロアリール」は、C1~C6アルキル置換基を有するヘテロアリール基を指し、メチルフリル等を含む。
【0035】
用語「ヘテロアリールC1~C6アルキル」は、ヘテロアリール置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、フリルメチル等を含む。
【0036】
用語「C2~C6アルケニルアリール」は、C2~C6アルケニル置換基を有するアリール基を指し、ビニルフェニル等を含む。
【0037】
用語「アリールC2~C6アルケニル」は、アリール置換基を有するC2~C6アルケニル基を指し、フェニルビニル等を含む。
【0038】
用語「C2~C6アルケニルヘテロアリール」は、C2~C6アルケニル置換基を有するヘテロアリール基を指し、ビニルピリジニル等を含む。
【0039】
用語「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」は、ヘテロアリール置換基を有するC2~C6アルケニル基を指し、ピリジニルビニル等を含む。
【0040】
用語「C3~C8シクロアルキル」は、単環(例えばシクロヘキシル)又は複数の縮合環(例えばノルボミル)を有する3~8個の炭素原子の飽和炭素環式基を指す。C3~C8シクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル等を含む。
【0041】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、上記の定義によるC3~C8シクロアルキル基を指し、その中で、最大3個の炭素原子が、水素又はメチルとして定義されるO、S、NR、Rからなる群から選択されるヘテロ原子によって置換される。ヘテロシクロアルキルとして、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル等が挙げられる。
【0042】
用語「C1~C6アルキルC3~C8シクロアルキル」は、C1~C6アルキル置換基を有するC3~C8シクロアルキル基を指し、メチルシクロペンチル等を含む。
【0043】
用語「C1~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」は、C3~C8シクロアルキル置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、3-シクロペンチルプロピル等を含む。
【0044】
用語「C1~C6アルキルヘテロシクロアルキル」は、C1~C6アルキル置換基を有するヘテロシクロアルキル基を指し、4-メチルピペリジニル等を含む。
【0045】
用語「ヘテロアリールC1~C6アルキル」は、ヘテロシクロアルキル置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、(1-メチルピペリジン-4-イル)メチル等を含む。
【0046】
用語「カルボキシ」は、-C(O)OH基を指す。
【0047】
用語「カルボキシC1~C6アルキル」は、カルボキシ置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、2-カルボキシエチル等を含む。
【0048】
用語「アシル」は、RがH、「C1~C6アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「C3~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」又は「ヘテロシクロアルキルC1~C6アルキル」を含む-C(O)R基を指し、アセチル等を含む。
【0049】
用語「アシルC1~C6アルキル」は、アシル置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、2-アセチルエチル等を含む。
【0050】
用語「アシルアリール」は、アシル置換基を有するアリール基を指し、2-アセチルフェニル等を含む。
【0051】
「アシルオキシ」という用語は、RがH、「C1~C6アルキル」、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「アリールC2~C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」、「アリールC2~C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」又は「ヘテロシクロC1~C6アルキル」を含む-OC(O)R基を指し、アセチルオキシ等を含む。
【0052】
用語「アシルオキシC1~C6アルキル」は、アシルオキシ置換基を有するアルキル基を指し、2-(エチルカルボニルオキシ)エチル等を含む。
【0053】
用語「アルコキシ」は、-O-R基を指し、ここでRは、置換されていてもよい「C1~C6アルキル」、置換されていてもよい「アリール」、置換されていてもよい「ヘテロアリール」、置換されていてもよい「アリールC1~C6アルキル」又は置換されていてもよい「ヘテロアリールC1~C6アルキル」を含む。
【0054】
用語「アルコキシC1~C6アルキル」は、アルコキシ置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、メトキシエチル等を含む。
【0055】
用語「アルコキシカルボニル」は、-C(O)OR基を指し、ここでRは「C1~C6アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」又は「ヘテロアルキル」を含む。
【0056】
「アルコキシカルボニルC1~C6アルキル」は、アルコキシカルボニル置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、2-(ベンジルオキシカルボニル)エチル等を含む。
【0057】
用語「アミノカルボニル」は、-C(O)NRR'基を指し、R及びR'は独立してH、C1~C6アルキル、アリール、ヘテロアリール、「アリールC1~C6アルキル」又は「ヘテロアリールC1~C6アルキル」を指し、N-フェニルカルボニル等を含む。
【0058】
用語「アミノカルボニルC1~C6アルキル」は、アミノカルボニル置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、2-(ジメチルアミノカルボニル)エチル、N-エチルアセトアミジル、N,N-ジエチル-アセトアミジル等を含む。
【0059】
「アシルアミノ」という用語は、-NRC(O)R'基を指し、R及びR'は独立して、H、「C1~C6アルキル」、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「アリールC2~C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」、「アリールC2~C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」又は「ヘテロシクロC1~C6アルキル」であり、アセチルアミノ等を含む。
【0060】
用語「アシルアミノC1~C6アルキル」は、アシルオキシ置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、2-(プロピオニルアミノ)エチル等を含む。
【0061】
「ウレイド」という用語は、-NRC(O)NR'R"基を指し、R、R及びR"は独立して、H、「C1~C6アルキル」、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「アリールC2~C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」、「アリールC2~C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキルC2~C6アルキル」又は「ヘテロシクロC1~C6アルキル」であり、R'及びR"は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、任意に3~8員のヘテロシクロアルキル環を形成することができる。
【0062】
用語「ウレイドC1~C6アルキル」は、ウレイド置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、2-(N'-メチルウレイド)エチル等を含む。
【0063】
「カルバメート」という用語は、-NRC(O)OR'基を指し、R及びR'は独立して、「C1~C6アルキル」、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「C1~C6アルキルアリール」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「アリールC2~C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」、「アリールC2~C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」又は「ヘテロシクロアルキルC1~C6アルキル」であり、任意にRは水素であってもよい。
【0064】
用語「アミノ」は、-NRR'基を指し、R及びR'は独立してH、「C1~C6アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「C1~C6アルキルアリール」、「C1~C6アルキルヘテロアリール」、「C3~C8シクロアルキル」、又は「ヘテロシクロアルキル」であり、R及びR'は、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、任意に3~8員のヘテロシクロアルキル環を形成することができる。
【0065】
用語「アミノC1~C6アルキル」は、アミノ置換基を有するアルキル基を指し、2-(1-ピロリジニル)エチル等を含む。
【0066】
用語「アンモニウム」は、正荷電した-N+RR'R"基を指し、R、R'及びR"は独立して「C1~C6アルキル」、「C1~C6アルキルアリール」、「C1~C6アルキルヘテロアリール」、「C3~C8シクロアルキル」、又は「ヘテロシクロアルキル」であり、ここでR及びR'は、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、任意に3~8員ヘテロシクロアルキル環を形成することができる。
【0067】
用語「アンモニウムC1~C6アルキル」は、アンモニウム置換基を有するアルキル基を指し、1-エチルピロリジニウム等を含む。
【0068】
用語「ハロゲン」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を指す。
【0069】
用語「スルホニルオキシ」は、-OSO2-R基を指し、Rは「C1~C6アルキル」、ハロゲンで置換された「C1~C6アルキル」、例えば、-OSO2-CF3基、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「アリールC2~C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」、「アリール C2~C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」又は「ヘテロシクロアルキルC1~C6アルキル」から選択される。
【0070】
「スルファメート」という用語は、-OSO2-NRR'基を指し、R及びR'は独立してH、「C1~C6アルキル」、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「アリールC2~C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」、「アリールC2~C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」又は「ヘテロシクロアルキルC1~C6アルキル」等から選択される。
【0071】
用語「スルホニルオキシC1~C6アルキル」は、スルホニルオキシ置換基を有するアルキル基を指し、2-(メチルスルホニルオキシ)エチル等を含む。
【0072】
用語「スルホニル」は「-SO2-R」基を指し、Rは「アリール」、「ヘテロアリール」、「C1~C6アルキル」、ハロゲンで置換された「C1~C6アルキル」、例えば、-SO2-CF3基、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「アリールC2~C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」、「アリールC2~C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」又は「ヘテロシクロアルキルC1~C6アルキル」から選択される。
【0073】
用語「スルホニルC1~C6アルキル」は、スルホニル置換基を有するアルキル基を指し、2-(メチルスルホニル)エチル等を含む。
【0074】
用語「スルフィニル」は、「-S(O)-R」基を指し、Rは「C1~C6アルキル」、ハロゲンで置換された「C1~C6アルキル」、例えば-SO-CF3基、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「アリールC2~C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」、「アリールC2~C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」又は「ヘテロシクロアルキルC1~C6アルキル」から選択される。
【0075】
用語「スルフィニルC1~C6アルキル」は、スルフィニル置換基を有するアルキル基を指し、2-(メチルスルフィニル)エチル等を含む。
【0076】
用語「スルファニル」は、-S-R基を意味し、RはH、ハロゲン、例えば-SF5基であり、置換されていてもよい「C1~C6アルキル」、特にハロゲンで置換された「C1~C6アルキル」、例えば-S-CF3基、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「アリールC2~C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」、「アリールC2~C6アルキニル」、「アルキニルヘテロアリール」、「C3~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」又は「ヘテロシクロアルキルC1~C6アルキル」を含む。
【0077】
用語「スルファニルC1~C6アルキル」は、スルファニル置換基を有するC1~C5アルキル基を指し、2-(エチルスルファニル)エチル等を含む。
【0078】
用語「スルホニルアミノ」は、-NRSO2-R'基を指し、R及びR"は独立してH、「C1~C6アルキル」、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「アリールC2~C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」、「アリールC2~C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」又は「ヘテロシクロアルキルC1~C6アルキル」である。
【0079】
用語「スルホニルアミノC1~C6アルキル」は、スルホニルアミノ置換基を有するアルキル基を指し、2-(エチルスルホニルアミノ)エチル等を含む。
【0080】
用語「アミノスルホニル」は、-SO2-NRR'基を指し、R及びR'は独立して、H、「C1~C6アルキル」、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「アリールC1~C6アルキル」、「ヘテロアリールC1~C6アルキル」、「アリールC2~C6アルケニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルケニル」、「アリールC2~C6アルキニル」、「ヘテロアリールC2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキルC1~C6アルキル」又は「ヘテロシクロアルキルC1~C6アルキル」であり、R及びR'は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、任意に3~8員のヘテロシクロアルキル環を形成することができる。アミノスルホニル基は、シクロヘキシルアミノスルホニル、ピペリジニルスルホニル等を含む。
【0081】
用語「アミノスルホニルC1~C6アルキル」は、アミノスルホニル置換基を有するC1~C6アルキル基を指し、2-(シクロヘキシルアミノスルホニル)エチル等を含む。
【0082】
個々の置換基の定義によって制約されない限り、用語「置換された」は、「C1~C6アルキル」、「C2~C6アルケニル」、「C2~C6アルキニル」、「C3~C8シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「C1~C6アルキルアリール」、「C1~C6アルキルヘテロアリール」、「C1~C6アルキルC3~C8シクロアルキル」、「C1~C6アルキルヘテロシクロアルキル」、「アシル」、「アミノ」、「アミド」、「アミノスルホニル」、「アンモニウム」、「アシルアミノ」、「アミノカルボニル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「スルフィニル」、「スルホニル」、「スルホンアミド」、「アルコキシ」、「アルコキシカルボニル」、「カルバメート」、「スルファニル」、「ハロゲン」、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ等からなる群から選択される1~5個の置換基で置換された基を指す。
【0083】
用語「薬学的に許容される塩又は錯体」は、本発明による化合物の塩又は錯体を指す。このような塩の例は、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等)で形成される酸付加塩、並びに有機酸で形成される塩、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルモイン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びポリガラクツロン酸から形成される。
【0084】
「薬学的に活性な誘導体」は、レシピエントへの投与時に、本明細書に開示される活性を直接的又は間接的に提供することができるあらゆる化合物を指す。用語「間接的に」は、内因性酵素又は代謝を介して薬物の活性型に変換され得るプロドラッグも包含する。プロドラッグは、本発明による化合物の誘導体であり、化学的又は代謝的に分解可能な基を有する抗マラリア活性を示し、生理学的条件下で加溶媒分解することによってインビボで本発明による薬学的に活性な化合物に変換され得る化合物である。プロドラッグは、生体内の生理的条件下で、例えば、それぞれ酵素的に行われる、酸化、還元、加水分解等により、酵素、胃酸等との反応により本発明による化合物に変換される。これらの化合物は、周知の方法に従って本発明の化合物から製造することができる。
【0085】
用語「間接的に」は、本発明による化合物の代謝産物も包含する。
【0086】
用語「代謝産物」は、細胞又は生物、好ましくは哺乳動物の本発明による化合物のいずれかに由来する全ての分子を指す。
【0087】
本発明の文脈では、本発明の化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、又は多形体及び薬学的に活性な誘導体が包含される。
【0088】
「マラリア」という用語は、マラリア寄生虫による感染に関連する疾患及び状態を含む。
【0089】
本明細書において、「治療」及び「治療する」等は、一般に、所望の薬理学的及び生理学的効果を得ることを意味する。その効果は、疾患、その症状又は状態を予防又は部分的に予防するという点で防止的であり得、及び/又は疾患、疾患に起因する状態、症状又は有害作用の部分的又は完全な治癒に関して治療的であり得る。本明細書で使用される用語「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療を包含し、(a)疾患の素因があり得るが、まだそれを有すると診断されていない対象において疾患が発生するのを防ぐこと、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること、又は疾患を緩和すること、すなわち、疾患及び/又はその症状又は状態の退行を引き起こすことを含む。
【0090】
用語「有効量」とは、「防止有効量」及び「治療有効量」を含む。
【0091】
「防止有効量」という用語は、感染前、すなわちマラリア寄生虫への曝露期間の前、最中及び/又はわずかに後に投与された場合に、マラリア寄生虫による疾患の可能性の抑制、減少、又はマラリア感染の予防若しくはマラリア寄生虫による疾患の遅延発症の予防に有効な本発明の化合物の濃度を指す。
【0092】
用語「防止」は、原因的防止、すなわち寄生虫の前赤血球発生を予防することを含む抗マラリア活性、抑制的防止、すなわち血液ステージ感染の発生を抑制することを含む抗マラリア活性、及び末期防止、すなわち肝内ステージ感染の発生を抑制することを含む抗マラリア活性を含む。この用語には、抗マラリア化合物がマラリア寄生虫への曝露期間の前、最中、及び/又は後に投与される一次防止(すなわち、初期感染の予防)及び抗マラリア化合物がマラリア寄生虫への曝露期間の終わりに向かって及び/又はわずかに後であるが、臨床症状の前に投与される場合の末期防止(すなわち、マラリアの臨床症状の再発又は遅延した発症を防ぐため)が含まれる。典型的には、熱帯熱マラリア原虫感染症に対しては抑制的予防が使用されるが、三日熱マラリア原虫又は熱帯熱マラリア原虫と三日熱マラリア原虫の組み合わせに対しては、末期防止が使用される。
【0093】
同様に、「治療有効量」という用語は、マラリア感染の治療に有効であり、例えば感染が起こった後に投与された場合に顕微鏡検査後の血液中の寄生虫数の減少をもたらす化合物の濃度を指す。
【0094】
本明細書において使用される用語「対象」は、哺乳動物を指す。例えば、本発明によって企図される哺乳動物には、ヒト等が含まれる。
【0095】
化合物
一実施形態によれば、式(I):
【化1】
(式中、Xは、N及びCHから選択され、XがCHである場合、Rは、-CF
3、-CHF
2、-O-シクロプロピル、-O-イソプロピル、-OCHF
2、-CN、-OCH
2CF
3及び-NH(C=O)CH
3から選択され、XがNである場合、Rは-CF
3である)
の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形体、ラセミ混合物、光学活性体及び薬学的に活性な誘導体が提供される。
【0096】
特定の実施形態では、本発明は、XがCHである本発明による化合物を提供する。
【0097】
特定の実施形態では、本発明は、XがNである本発明による化合物を提供する。
【0098】
別の特定の実施形態では、本発明は、Rが-CF3である本発明による化合物を提供する。
【0099】
別の特定の実施形態では、本発明は、RがO-シクロプロピルである本発明による化合物を提供する。
【0100】
別の特定の実施形態では、本発明は、Rが-O-イソプロピルである本発明による化合物を提供する。
【0101】
別の特定の実施形態では、本発明は、Rが-OCHF2である本発明による化合物を提供する。
【0102】
別の特定の実施形態では、本発明は、Rが-CNである本発明による化合物を提供する。
【0103】
別の特定の実施形態では、本発明は、Rが-OCH2CF3である本発明による化合物を提供する。
【0104】
別の特定の実施形態では、本発明は、Rが-NH(C=O)CH3である本発明による化合物を提供する。
【0105】
特定の実施形態では、N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-イソプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-シアノピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-3-(6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;3-(6-アセトアミドピリジン-3-イル)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド及びN-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミドの群から選択される化合物、並びにその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形体、ラセミ混合物、光学活性体及び薬学的に活性な誘導体が提供される。
【0106】
更なる特定の実施形態では、本発明の化合物は、(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;rac-(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-イソプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-シアノピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-3-(6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド;(3S,4S)-3-(6-アセトアミドピリジン-3-イル)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド及び(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミドの群、並びにこれらの薬学的に許容される塩から選択される。
【0107】
更なる特定の実施形態では、トランス配置されている本発明による化合物のジアステレオ異性体が提供される。
【0108】
更なる特定の実施形態では、3S,4S配置にある本発明による化合物の鏡像異性体が提供される。
【0109】
本発明の化合物は、マラリアの予防又は治療のための医薬の製造に有用であり、マラリア寄生虫の複製を死滅及び/又は阻害することができる。
【0110】
組成物
本発明は、マラリアの防止又は治療に有用な医薬組成物を提供する。本発明は更に、マラリアに罹患している哺乳動物の患者、最も好ましくはヒト患者を治療する方法を提供する。
【0111】
別の特定の実施形態では、本発明による少なくとも1つの誘導体及びその薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含有する医薬製剤が提供される。
【0112】
別の特定の実施形態では、式(I)の化合物及び詳細な説明に定義される更なる抗マラリア剤を含む医薬製剤が提供される。
【0113】
別の特定の実施形態では、式(I)の化合物と、アルテミシニン及びその誘導体、例えばアルテミシニン及びその誘導体(例えばアルテメテル、アルテスネート又はジヒドロアルテミシニン)、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、キニーネ、キニジン、メフロキン、アモジアキン、アトバコン/プログアニル、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、ルメファントリン、ピペラキン、ピロナリジン、ハロファントリン、ピリメタミン-スルファドキシン、プリマキン、キナクリン、フェロキン、タフェノキン、アルテロラン、スピロ[3H-インドール-3,1'-[1H]ピリド[3,4-b]インドール]-2(1H)-オン、5,7'-ジクロロ-6'-フルオロ-2',3',4',9'-テトラヒドロ-3'-メチル-,(1'R,3'S)-](シパルガミン、KAE609、CAS登録番号:1193314-23-6)、2-(1,1-ジフルオロエチル)-5-メチル-N-[4-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)フェニル]-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(DSM265、CAS登録番号:1282041-94-4)、モルホリン、4-[2-(4-cis-ジスピロ[シクロヘキサン-1,3'-[1,2,4]トリオキソラン-5',2"-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イルフェノキシ)エチル]-](アルテフェノメル、OZ439、CAS登録番号:1029939-86-3)、4-キノリンカルボキサミド、6-フルオロ-2-[4-(4-モルホリニルメチル)フェニル]-N-[2-(1-ピロリジニル)エチル]-(DDD107498、CAS登録番号:1469439-69-7)、エタノン、2-アミノ-1-[2-(4-フルオロフェニル)-3-[(4-フルオロフェニル)アミノ]-5,6-ジヒドロ-8,8-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-7(8H)-イル]-(ガナプラシド、KAF-156、CAS登録番号1261113-96-5)、5-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-6'-(トリフルオロメチル)[3,3'-ビピリジン]-2-アミン(MMV390048、CAS登録番号:1314883-11-8)、4(1H)-キノリノン、6-クロロ-7-メトキシ-2-メチル-3-[4-[4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ]フェニル]-(ELQ-300、CAS登録番号:1354745-52-0)から選択される少なくとも1種の更なる抗マラリア薬とを含む医薬製剤が提供される。
【0114】
本発明の医薬組成物は、本明細書に記載のあらゆる形態で本発明の1種以上の化合物を含有することができる。本発明の組成物は、1種以上の薬学的に許容される追加の成分、例えばミョウバン、安定剤、抗菌剤、緩衝剤、着色剤、香味剤、アジュバント等を更に含んでいてもよい。
【0115】
本発明の化合物は、従来用いられているアジュバント、担体、希釈剤又は賦形剤と共に、医薬組成物及びその単位投与量の形態に入れてもよく、そのような形態で、錠剤又は充填カプセル等の固体、又は液体、例えば溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル剤、又はこれを充填したカプセルとして使用することができ、全て経口使用のため、又は非経口(皮下を含む)使用のための滅菌注射可能な溶液の形態である。このような医薬組成物及びその単位剤形は、追加の活性化合物又は原理の有無にかかわらず、従来の割合で成分を含んでもよく、そのような単位剤形は、使用される意図された投与量範囲に見合った任意の適切な有効量の活性成分を含有してもよい。本発明による組成物は、好ましくは経口である。
【0116】
本発明の組成物は、限定するものではないが、水性又は油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ及びエリキシル剤を含む液体製剤であってもよい。経口投与に適した液体形態は、緩衝剤、懸濁剤及び調剤剤、着色剤、香料等を有する適切な水性又は非水性ビヒクルを含んでいてもよい。組成物はまた、使用前に水又は他の適切なビヒクルで再構成するための乾燥製品として製剤化してもよい。このような液体製剤は、懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクル及び防腐剤を含むがこれらに限定されない添加剤を含有していてもよい。懸濁剤には、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル及び水素化食用脂肪が含まれるが、これらに限定されない。乳化剤としては、限定するものではないが、レシチン、ソルビタンモノオレート及びアカシアが挙げられる。非水性ビヒクルとしては、限定するものではないが、食用油、アーモンド油、分留ヤシ油、油性エステル、プロピレングリコール及びエチルアルコールが挙げられる。防腐剤としては、限定するものではないが、パラオキシ安息香酸メチル又はプロピル及びソルビン酸が挙げられる。更なる材料並びに加工技術等は、Remingtonの「The Science and Practice of Pharmacy」、第22版、2012、University of the Sciences in Philadelphia、Lippincott Williams & Wilkinsのパート5に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。本発明の固体組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤又はトローチ剤の形態であってよい。例えば、経口投与用の錠剤及びカプセルは、限定するものではないが、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤及び湿潤剤を含む従来の賦形剤を含有してもよい。結合剤としては、限定するものではないが、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、デンプンの粘液及びポリビニルピロリドンが挙げられる。充填剤としては、限定するものではないが、ラクトース、糖、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム及びソルビトールが挙げられる。滑沢剤としては、限定するものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール及びシリカが挙げられる。崩壊剤としては、限定するものではないが、ジャガイモデンプン及びデンプングリコール酸ナトリウムが挙げられる。湿潤剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。錠剤は、当該技術分野で周知の方法に従ってコーティングされてもよい。
【0117】
注射可能な組成物は、典型的には、注射可能な滅菌生理食塩水若しくはリン酸緩衝生理食塩水、又は当技術分野で周知の他の注射可能な担体に基づく。
【0118】
本発明の組成物はまた、坐剤として製剤化されてもよく、限定するものではないが、カカオ脂又はグリセリドを含む坐剤基剤を含有し得る。本発明の組成物はまた、吸入用に製剤化されてもよく、これは、限定するものではないが、乾燥粉末として投与され得る溶液、懸濁液又はエマルジョンを含む形態であってもよく、又は噴射剤を使用するエアロゾルの形態、例えばジクロロジフルオロメタン又はトリクロロフルオロメタンであってもよい。本発明の組成物はまた、限定するものではないが、クリーム、軟膏、ローション、ペースト、薬用プラスター、パッチ又は膜を含む水性又は非水性ビヒクルを含む経皮製剤に製剤化することができる。
【0119】
本発明の組成物はまた、注射又は持続注入によるものを含むがこれらに限定されない非経口投与のために製剤化され得る。注射用の製剤は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンの形態であってもよく、懸濁剤、安定化剤及び分散剤を含むがこれらに限定されない製剤剤を含有してもよい。組成物はまた、限定するものではないが、滅菌されたパイロジェンフリー水を含む適切なビヒクルで再構成するための粉末形態で提供されてもよい。
【0120】
本発明の組成物はまた、移植によって又は筋肉内注射によって投与されてもよいデポー調製物として製剤化されてもよい。組成物は、適切なポリマー又は疎水性材料(許容される油中のエマルジョンとして等)、イオン交換樹脂又は難溶性誘導体として(難溶性塩として等)と共に製剤化されてもよい。
【0121】
本発明の組成物は、リポソーム調製物として製剤化することもできる。リポソーム調製物は、目的の細胞又は角質層を貫通し、細胞膜と融合するリポソームを含んでいてもよく、結果としてリポソームの内容物を細胞に送達する。他の適切な製剤は、ニオソームを使用することができる。ニオソームは、リポソームに類似する脂質小胞であり、膜は主に非イオン性脂質で構成されており、そのいくつかの形態は角質層を横切って化合物を輸送するのに効果的である。
【0122】
本発明の化合物はまた、徐放性形態で、又は徐放性薬物送達システムから投与することもできる。代表的な徐放性材料の説明は、Remington's Pharmaceutical Sciencesに組み込まれている材料にも見出すことができる。
【0123】
投与モード
本発明の組成物は、これらに限定されないが、経口的、非経口的、舌下、経皮的、膣内、直腸的、経粘膜的、局所的、吸入経由、頬内又は鼻腔内投与を介して、又はそれらの組み合わせを含むあらゆる様式で投与されてもよい。非経口投与には、限定するものではないが、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、髄腔内及び関節内が含まれる。本発明の組成物はまた、インプラントの形態で投与されてもよく、これは、組成物の徐放並びに緩慢に制御された静脈内注入を可能にする。好ましい実施形態において、本発明による化合物は経口投与される。
【0124】
本発明は、本発明の範囲を何ら限定することを意図しない以下の実施例によって更に説明される。
【0125】
単回又は複数回の用量として個体に投与される投与量は、薬物動態特性、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、サイズ)、症状の程度、併用療法、治療の頻度及び所望の効果を含む様々な要因に応じて変化する。
【0126】
併用
本発明によれば、本発明の化合物及びその医薬製剤は、単独で、又はマラリアの治療に有用な助剤、例えばマラリアの治療及び/又は予防に有用な物質、アルテミシニン及びその誘導体、例えば、アルテメテル、アルテスネート、ジヒドロアルテミシニン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、キニーネ、メフロキン、アモジアキン、アトバコン/プログアニル、ドキシサイクリン、クリンダマイシン、ハロファントリン、ルメファントリン、ピロナリジン、ピリメタミン-スルファドキシン、フェロキン、タフェノキン、ピペラキン及びプリマキンを含むがこれらに限定されない助剤と組み合わせて投与することができる。
【0127】
本発明の化合物と組み合わせて有用な更なる助剤は、スピロ[3H-インドール-3,1'-[1H]ピリド[3,4-b]インドール]-2(1H)-オン、5,7'-ジクロロ-6'-フルオロ-2',3',4',9'-テトラヒドロ-3'-メチル-,(1'R,3'S)-](シパルガミン、CAS登録番号:1193314-23-6)、2-(1,1-ジフルオロエチル)-5-メチル-N-[4-(ペンタフルオロ-λ6-スルファニル)フェニル]-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミン(DSM265、CAS登録番号:1282041-94-4)、モルホリン、4-[2-(4-cis-ジスピロ[シクロヘキサン-1,3'-[1,2,4]トリオキソラン-5',2"-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イルフェノキシ)エチル]-](アルテフェノメル、OZ439、CAS登録番号:1029939-86-3)、4-キノリンカルボキサミド、6-フルオロ-2-[4-(4-モルホリニルメチル)フェニル]-N-[2-(1-ピロリジニル)エチル]-(DDD107498、CAS登録番号:1469439-69-7)、エタノン、2-アミノ-1-[2-(4-フルオロフェニル)-3-[(4-フルオロフェニル)アミノ]-5,6-ジヒドロ-8,8-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピラジン-7(8H)-イル]-(ガナプラシド、KAF-156、CAS登録番号1261113-96-5)、5-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-6'-(トリフルオロメチル)[3,3'-ビピリジン]-2-アミン(MMV390048、CAS登録番号:1314883-11-8)、4(1H)-キノリノン、6-クロロ-7-メトキシ-2-メチル-3-[4-[4-(トリフルオロメトキシ)フェノキシ]フェニル]-(ELQ-300、CAS登録番号:1354745-52-0)、4-イソキノリンカルボキサミド、N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-オキソ-3-(3-ピリジニル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-、(3S,4S)-(SJ-733、CAS登録番号1424799-20-1)、(R)-N2-(4-シクロプロピル-5-フルオロ-6-メチルピリジン-2-イル)-N4-(1,5-ジメチル-1H-ピラゾール-3-イル)-5-(3,4-ジメチルピペラジン-1-イル)ピリミジン-2,4-ジアミン(CAS登録番号1821293-40-6、4-(1,1-ジメチルエチル)-2-[[(1,1-ジメチルエチル)アミノ]メチル]-6-[5-フルオロ-6-(トリフルオロメチル)-3-ピリジニル]フェノール(JPC3210、CAS登録番号 1609655-35-7、[(3R)-3-(4-フルオロフェニル)-1-ピロリジニル][4-[(2R)-2-ヒドロキシ-3-(2H-テトラゾール-2-イル)プロポキシ]フェニル]-メタノン(GSK701, CAS 登録番号 2366983-10-8)から選択される。
【0128】
本発明は、本発明による化合物又はその医薬製剤の投与を包含し、本発明の化合物又はその医薬製剤は、マラリアの治療に有用な他の治療レジメン又は助剤(例えば複数の薬物レジメン)の前、同時又は連続して、有効量で個体に投与される。この助剤と同時に投与される本発明の化合物又はその医薬製剤は、同一又は異なる組成物で、同一又は異なる投与経路で投与することができる。
【0129】
患者
実施形態では、本発明による患者は、マラリアに罹患している患者である。
【0130】
別の実施形態では、本発明による患者は、マラリア寄生虫に感染するリスクが高い患者である。
【0131】
別の実施形態では、本発明による患者は、熱帯熱マラリア原虫に感染するリスクが高い患者である。
【0132】
別の実施形態では、本発明による患者は、三日熱マラリア原虫に感染するリスクが高い患者である。
【0133】
別の実施形態では、本発明による患者は、卵形マラリア原虫に感染するリスクが高い患者である。
【0134】
別の実施形態では、本発明による患者は、四日熱マラリア原虫に感染するリスクが高い患者である。
【0135】
別の実施形態では、本発明による患者は、二日熱マラリア原虫に感染するリスクが高い患者である。
【0136】
本発明による使用
一実施形態では、本発明は、マラリアの治療又は防止のための式(I)の化合物、並びにその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、又は多形体及びその薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0137】
別の実施形態では、本発明は、対象のマラリアを予防及び/又は治療する方法を提供する。この方法は、本発明による化合物、又はその薬学的に許容される塩、又はその薬学的に活性な誘導体又はその医薬製剤の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0138】
別の実施形態では、本発明は、本発明による化合物の使用又は方法を提供し、化合物は、マラリアの治療に有用な助剤と組み合わせて投与される。
【0139】
別の実施形態では、本発明は、マラリアの治療に有用な助剤と組み合わせて本発明による化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0140】
別の実施形態では、本発明は、本発明による化合物を調製する方法を提供し、この方法は、下記のスキーム1に記載のイソクロマン-1,3-ジオンの存在下で、式(II)の化合物を式(III)の化合物に変換する工程を含む:
【化2】
(式中、R及びXは本明細書で定義されている通りである)。
【0141】
別の実施形態では、本発明は、本発明による化合物を調製する方法を提供し、この方法は、置換されていてもよいフェニルアミン、例えば、上記に例示した3-シアノ,4-フルオロアニリンの存在下で、式(III)の化合物を式(I)の化合物に変換する工程を含む。
【0142】
別の更なる実施形態では、本発明は、例えば下記のスキーム1bに例示されるように、式(IIa)のアルデヒドの中間体を式(IIb)の対応するシアノ誘導体から調製する方法を提供する。
【化3】
【0143】
特定の実施形態によれば、中間体(IIb)、例えば中間体(viii)の使用は、改善された収率をもたらし、より安価な試薬の使用及び中間体(IIa)、特に中間体(IIa-1)のより容易な精製をもたらす。
【0144】
別の実施形態では、本発明は、本発明による化合物を調製する方法を提供し、この方法は、1~2当量のキラル的に純粋なアミン、例えば(1S,2S)-(+)-trans-1-アミノ-2-インダノールを使用する立体選択的塩再結晶化によって、式(III)の鏡像異性体を分離する工程を含む。次いで、式(III)の特定の鏡像異性体は、置換されていてもよいフェニルアミン、例えば3-シアノ,4-フルオロアニリンの存在下で、式(I)の対応する鏡像異性体に変換される。
【化4】
【0145】
別の更なる実施形態では、本発明は、本明細書に定義される式(III)の中間体、特に以下の化合物:3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-1)、3-(6-メトキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-2)、1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-3)、1-オキソ-3-(6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-4)、3-(6-アセトアミドピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-5)、3-(6-シアノピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-6)、3-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸III-7)、3-(6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-8)、1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-9)を提供する。
【0146】
別の更なる実施形態では、本発明は、本明細書に定義される式(IV)の中間体、特に以下の化合物:N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-メトキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(IV-2)を提供する。
【0147】
別の更なる実施形態では、本発明は、本明細書に定義される式(V)の中間体、特に以下の化合物:N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-ヒドロキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(V-2)を提供する。
【0148】
本明細書において引用される参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、特定の実施形態は、本発明の個々の態様の単一の例示として意図され、機能的に等価な方法及び構成要素は本発明の範囲内である。以下に本発明をいくつかの実施例によって例示するものとするが、これらは本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0149】
以下の略語は、それぞれ以下の定義を示す。
【0150】
HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、DCM(ジクロロメタン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、(LCMS(液体クロマトグラフィー質量分析)、NADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の還元型)、NEAA(非必須アミノ酸)、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、RPMI(ロズウェルパーク記念研究所)、SBFI(ナトリウム結合ベンゾフランイソフタル酸)、TLC(薄層クロマトグラフィー)。
【0151】
本発明の化合物は、プログラムChemDraw(PerkinElmer社、バージョン16.0.1.4)で使用されるIUPAC標準に従って命名されている。
【0152】
全ての試薬及び出発材料は、Angene社、Sigma-Aldrich社、Enamine社、Apollo Scientific社又はFluorochem社から入手した。
【0153】
(実施例1)
本発明による化合物の合成
本発明の化合物は、当業者に周知の方法及び手順を用いて容易に入手可能な出発物質から調製することができる。典型的又は好ましい実験条件(すなわち反応温度、時間、試薬のモル数、溶媒等)が与えられる場合、特に明記しない限り、他の実験条件も使用することができることを理解されたい。最適な反応条件は、使用される特定の反応物又は溶媒によって変化し得るが、そのような条件は、当業者が日常的な最適化手順を用いて決定することができる。
【0154】
本発明の化合物1~9は、本明細書に記載の一般的な合成経路に記載されるように合成される。特に、式(I)の化合物は、下記のスキーム2に従って合成される。明確さと一貫性のために、以下の命名法が使用される:化合物はそれらの化合物番号で表され、(3S、4S)配置の単離トランス単一鏡像異性体が記述される場合、これは「a」を有するこの数に対応する。(3R,4R)配置の単離トランス単一鏡像異性体が記述される場合、これは「b」を有するこの数に対応する。
【0155】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(1a)の合成
【化5】
【0156】
6-シクロプロポキシニコチン酸メチル(式(ii)の中間体)
【化6】
【0157】
窒素下0℃で、THF(10mL)中シクロプロパノール(1.2mL、19.3mmol)の攪拌溶液に、水素化ナトリウム(0.6g、25.8mmol)を少量ずつ加え、反応混合物を同じ温度で30分間攪拌した。反応混合物に、6-フルオロニコチン酸メチルエステル(1)(2g、12.9mmol)(i)のTHF溶液(10mL)を0℃で滴下し、反応混合物を窒素下で2時間かけて室温まで昇温した。出発物質を完全に消費した後(TLC及びLCMSによってモニターした)、余剰なNaHを、飽和塩化アンモニウム水溶液(1mL)を添加することによってクエンチした。次いで、反応混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈し、水(10mL)及び飽和食塩水(10mL)で順次洗浄した。次いで、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させて、粗化合物を粘性油状物として得、次いでシリカゲルでカラムクロマトグラフィー(100~200メッシュ、ヘキサン中溶離液10~20%の酢酸エチル)で精製し、無色油状物として6-シクロプロポキシニコチン酸メチル(ii)を得た(1.4g、7.25mmol、56%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.87 (d, J= 2.0 Hz, 1H), 8.16 (dd, J= 8.6 Hz, 2.2 Hz, 1H), 6.78 (d, J= 8.7 Hz, 1H), 4.29-4.26 (m, 1H), 3.90 (s, 3H), 0.83-0.78 (m, 4H). LCMS (NH4OAc:CH3CN): m/z: MH+ 194, Rt=3.13分.
【0158】
(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)メタノール(式(iii)の中間体)
【化7】
【0159】
窒素下0℃で、THF(50mL)中6-シクロプロポキシニコチン酸メチル(ii)(1.83g、9.5mmol)の攪拌溶液に、水素化アルミニウムリチウム(THF中1M溶液)(14mL、14.2mmol)を加え、反応混合物を0℃で1時間攪拌した。出発物質を完全に消費した後(TLC及びLCMSによってモニターした)、飽和硫酸ナトリウム水溶液(1mL)を添加して、余剰なLiAlH4をクエンチした。反応混合物をセライトの床上で濾過し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、濾過し、濾液を真空濃縮して、表題化合物(iii)(1.3g、7.9mmol、83%)を無色液体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.19 (s, 1H), 7.63 (dd, J= 8.4 Hz, 2.0 Hz, 1H), 6.78 (d, J= 8.4 Hz, 1H), 4.63 (d, J= 5.2 Hz, 2H), 4.19-4.16 (m, 1H), 1.64 (t, J= 5.5 Hz, 1H), 0.80-0.76 (m, 4H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 166, Rt=1.33.
【0160】
6-シクロプロポキシニコチンアルデヒド(式(IIa-1)の中間体)
【化8】
【0161】
窒素下0℃で、ジクロロメタン(15mL)中(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)メタノール(iii)(500mg、3.03mmol)の攪拌溶液に、デス・マーチンペルヨージナン(2.5g、6.06mmol)を加え、反応混合物を室温まで昇温し、更に1時間攪拌した。出発物質を完全に消費した後(TLC及びLCMSによりモニターした)、反応混合物をセライトの床上で濾過し、濾液を真空濃縮し、得られた油状物をシリカゲルでカラムクロマトグラフィー(100~200メッシュ、ヘキサン中溶離液5%の酢酸エチル)で精製し、表題化合物(IIa-1)(400mg、2.45mmol、81%)を無色油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.96 (s, 1H), 8.68 (d, J=2.08 Hz, 1H), 8.07 (dd, J= 22.4 Hz, 2.2 Hz, 1H), 6.84 (d, J= 8.6 Hz, 1H), 4.37-4.32 (m, 1H), 0.88-0.78 (m, 4H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 164, Rt=1.55分.
【0162】
MnO2を使用した代替方法:窒素下室温で、トルエン(30mL)中(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)メタノール(iii)(1.2g、7.3mmol)の十分に攪拌された溶液を、新たに活性化した微細化された酸化マンガン(IV)(1.89g、21.8mmol、3.0当量)で少量ずつ処理し、TLCによる連続モニタリングを行いながらスラリーを80℃に加熱した。3時間後、混合物を室温まで放冷し、セライト濾過し、濾液を真空濃縮して粗油状物を得、カラムクロマトグラフィー(SiO2、10:1のヘキサン:酢酸エチル)に供し、表題化合物(IIa-1)を白色粉末として得た(1.06g、6.5mmol、89%)。
【0163】
式(IIa-1)の中間体化合物を合成する代替方法は、以下の通りである:
【0164】
6-シクロプロポキシニコチノニトリル(式(viii)の中間体)
【化9】
【0165】
THF(50mL)中シクロプロパノール(43.9ml、692mmol)の溶液を、窒素下0℃で、THF(1.2L)中の水素化ナトリウム(27.7g、692mmol、60%w/w鉱油状物中)の十分に攪拌された懸濁液にゆっくりと加えた。10分後、6-クロロピリジン-3-カルボニトリル(80.0g、577.4mmol、1.0当量)を連続攪拌しながら5分かけて滴下した。TLC及びLCMSによって決定されるようにニトリルを消費した後、反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液(250mL)の添加によりクエンチし、続いて酢酸エチル(250mL)で希釈した。有機相を分離し、ブライン(3×100mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮して6-シクロプロポキシニコチノニトリル(viii)を無色油状物(92.1g、575.01mmol、収率99%)として得、これを更に精製せずに次の工程で使用した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.72 (d, J= 2.1 Hz, 1H), 8.18 (dd, J= 2.3, 8.8 Hz, 1H), 7.05 (d, J= 8.7 Hz, 1H), 4.35-4.26 (m, 1H), 0.85-0.78 (m, 2H), 0.78-0.70 (m, 2H).
LCMS (NH4OAc:CH3CN): m/z: MH+ 161, Rt=1.70分.
【0166】
6-シクロプロポキシニコチンアルデヒド(式(IIa-1)の中間体)
【化10】
【0167】
水(180mL)中の次亜リン酸ナトリウム一水和物(192.1g、1.81mol)の溶液を、AcOH/ピリジン(2:1、540mL)中の6-シクロプロポキシニコチノニトリル(58.0g、362.5mmol)(viii)の攪拌溶液に室温で加えた。次いで、Raney-Ni(12.0g)を少量ずつ注意深く加え、得られた懸濁液を攪拌しながら80℃で60分間加熱した。次いで、混合物をセライト(500g)の床で濾過し、セライトをEtOAc(500mL)で洗浄し、合わされた濾液を更にEtOAc(1L)で希釈し、次いで水(4×300mL)、飽和重炭酸塩水溶液(100mL)及びブライン(100mL)で洗浄した。有機相を乾燥し(MgSO4)、真空濃縮し、表題化合物(IIa-1)(54.0g、330.94mmol、91%)を無色油状物として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.97 (s, 1H), 8.78 (d, J= 2.0 Hz, 1H), 8.14 (dd, J= 2.0, 8.6 Hz, 1H), 7.02 (d, J= 8.6 Hz, 1H), 4.40-4.25 (m, 1H), 0.90-0.78 (m, 2H), 0.78-0.65 (m, 2H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 164, Rt=1.55分.
【0168】
(E)-1-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)メタンイミン(式(II-1)の中間体)
【化11】
【0169】
窒素下0℃で、アセトニトリル(40mL)中6-シクロプロポキシニコチンアルデヒド(IIa-1)(1g、6.1mmol)の攪拌溶液に、2,2,2-トリフルオロエチルアミン(3.0g、24.4mmol)を加えた。反応物を室温まで昇温させ、次いで48時間攪拌し、その間に出発材料は完全に消費された(1H NMRによりモニターした)。反応物を真空濃縮して1.2gの粗油状物(II-1)を得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0170】
cis/trans-(+,-)-3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(式(III-1)の中間体)
【化12】
【0171】
窒素下室温で、ジクロロメタン(15mL)中(E)-1-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)メタンイミン(II-1)(1.2g、4.9mmol)の攪拌溶液に、無水ホモフタル酸(0.8g、4.9mmol)を加え、反応混合物を16時間攪拌した。粗反応物を真空濃縮し、シス異性体とトランス異性体の(1:1)混合物として、1.85gの3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-l)を含む粗油状物を得た。粗材料は、更に精製せずに次の工程に使用した。LCMS(ギ酸:CH3CN):m/z:MH+407、Rt=1.53及び1.55分。
【0172】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(1a)(XはCHであり、Rは-O-シクロプロピルである式(I)の化合物)
【化13】
【0173】
窒素下で、ピリジン(30.0mL)中シス及びトランス異性体の混合物(1:1)としての3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-1)の攪拌溶液(1.55g、3.82mmol)に、無水プロピルホスホン酸(酢酸エチル中50%溶液、24.3mL、38.2mmol)を加えた。次いで、混合物を5-アミノ-2-フルオロベンゾニトリル(0.68g、4.96mmol)で処理し、反応物を60℃で16時間加熱した。次いで、反応物を室温に冷却し、酢酸エチル(100mL)で希釈し、CuSO4溶液(3×10mL)で洗浄し、有機相を乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空濃縮した。得られた粗油状物をMeOH(30mL)で希釈し、K2CO3(1.0g)で室温で4時間攪拌して、トランス異性体への完全なエピマー化を誘導した。次いで、反応混合物をセライト濾過し、真空濃縮し、得られた油状物をシリカゲルでカラムクロマトグラフィー(100~200メッシュ;3:7酢酸エチル:ヘキサン)で精製し、表題化合物(1)(1.3g、2.48mmol、65%)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.79 (s, 1H), 8.05-7.98 (m, 3H), 7.84-7.82 (m, 1H), 7.56-7.46 (m, 4H), 7.30 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 6.79 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 5.39 (s, 1H), 4.66-4.58 (m, 1H), 4.24 (s, 1H), 4.11 (bs, 1H), 4.04-3.96 (m, 1H), 0.70 (s, 2H), 0.59 (s, 2H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 525, Rt=1.68分.所望の(3S,4S)トランス鏡像異性体(1a)は、鏡像異性体の分取キラルHPLC分離によって単離することができた(粒径5μmを有するChiralpak ICの20×250mmカラム、18mL/分の流速を用いて、周囲温度で85/15/0.1ヘキサン/EtOH/i-プロピルアミンで溶出した。化合物は220nmの波長で検出された。[α]D
25=+111.80°(c=0.5、ジクロロメタン)。
【0174】
或いは、化合物(1a)は、式(III-1)の中間体から、以下のように単離された鏡像異性体を通じて合成することができる:
【0175】
a)シス/トランス、ラセミ3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(式III-1のトランス、ラセミ中間体)のエピマー化
【化14】
【0176】
氷酢酸(1.0L)中3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-1)(230.0g、566.4mmol)のシス/トランスラセミ混合物の攪拌溶液を100℃で10時間加熱し、その間、混合物はLCMSによって決定されたトランス-ラセミ体に完全に変換した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(2.0L)で希釈し、水(3×500mL)、続いてブライン(3×100mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、真空濃縮して無色のガムを得、次いでこれを飽和重曹水溶液(250mL)に溶解し、ジクロロメタン(3×100mL)で洗浄した。攪拌した水相を次いで0℃に冷却し、濃塩酸を滴下することによってpH1まで酸性にし、生じた白色固体を濾取し、乾燥させた。追加の材料を水性濾液から単離し、これを酢酸エチル(2×200mL)で抽出し、有機相をブライン(2×100mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、真空濃縮して灰白色固体を得、これを濾取された固体と合わせ、トランス-ラセミ体として式(III-I')の中間体を得た(152.0g、374.1mmol、66%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.12 (br s, 1H), 7.97 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.89 (s, 1H), 7.54-7.41 (m, 2H), 7.33 (d, J= 6.7 Hz, 1H), 7.28 (d, J= 7.8 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 5.49 (s, 1H), 4.75-4.60 (m, 1H), 4.23 (s, 1H), 4.15-4.05 (m, 1H), 4.05-3.85 (m, 1H), 0.80-0.65 (m, 2H), 0.65-0.50 (m, 2H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ = 407, Rt= 4.3分.
【0177】
b)(+,-)trans-3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(式III-Iの中間体)の溶解
【化15】
【0178】
室温で、トルエン及びTHF(トルエン:THF 4:1、900mL)中、式III-I'の中間体のトランスラセミ体(30.0g、73.8mmol)の溶液に、(1S,2S)-(+)-trans-1-アミノ-2-インダノール(22.03g、147.6mmol、2.0当量)を加え、スラリーを窒素で10分間パージした後、90℃に昇温して均一な溶液を得た。溶液を室温までゆっくりと放冷し、その後5℃に冷却した。48時間後、生じた結晶を濾取し、残渣をトルエンとTHFの氷冷混合物(トルエン:THF 4:1、2×30mL)で注意深く洗浄し、固体を乾燥させて、NMRにより2:1比の(1S,2S)-(+)-trans-1-アミノ-2-インダノール:トランス酸(III-I")(21.1g、酸III-1の単一の鏡像異性体に対して81%収率、95%e.e.)からなる塩を得た。この材料を全てトルエンとTHF(トルエン:THF 4:1、440mL)から再結晶し、酸III-1(18.8g、26.7mmol、72%、>99%e.e.[α]D
25=+82.8°(c=0.5、ジクロロメタン))に対して更に光学純度を高めた混合塩を得た。次いで、この材料をDCM(200mL)及び塩酸(1M、300mL)に溶解し、攪拌溶液に室温で添加した。有機相を分離し、水相をDCM(5×50mL)で洗浄し、有機抽出物を合わせ、乾燥させ(MgSO4)、真空濃縮して、中間体(III-I')の(+)-右旋性-(S,S)-酸を単一の鏡像異性体として(9.67g、23.8mmol、>99%e.e.、単一鏡像異性体の回収に基づいて65%収率)白色粉末として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.08 (br s, 1H), 7.97 (d, J= 7.2 Hz, 1H), 7.89 (s, 1H), 7.54-7.41 (m, 2H), 7.33 (d, J= 8.8 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 6.73 (d, J= 8.6 Hz, 1H), 5.49 (s, 1H), 4.75-4.60 (m, 1H), 4.23 (s, 1H), 4.15-4.05 (m, 1H), 4.05-3.85 (m, 1H), 0.80-0.65 (m, 2H), 0.65-0.50 (m, 2H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ = 407, Rt = 3.51分.キラルHPLC:Daicel Chiralpak IG、n-ヘキサン/i-PrOH/TFA(70/30/0.1)、流速=1mL/分、UV=210nm、Rt=9.6分(マイナー)及びRt=11.8分(メジャー)。[α]D
25=+75.30°(c=0.51、ジクロロメタン)。
【0179】
c)鏡像異性体(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(1a)のtrans-III-I'の(+)鏡像異性体からの合成(XがCHであり、Rが-O-シクロプロピルである式(I)の化合物)
【化16】
【0180】
塩化ホスホリル(2.36mL、25.3mmol)を、DCM(100mL)中の(3S,4S)-3-(6-シクロプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(5.14g、12.65mmol、>99%e.e.)、5-アミノ-2-フルオロベンゾニトリル(3.44g、25.3mmol)、DIPEA(4.0mL、38.0mmol)及びDMF(1.0mL)の十分に攪拌された溶液に0℃で滴下し、その後、反応物を室温まで昇温させた。12時間後、1M塩酸(25mL)を添加することによって反応物をクエンチし、次いで飽和NaHCO3水溶液(2×50mL)、次いでブライン(2×50mL)で洗浄し、有機相を乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空濃縮してEtOAcから粉砕した白色粉末を得、濾取、乾燥して白色粉末として化合物(1a)を得た(5.17g、9.87mmol、>99%e.e.、78%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.78 (s, 1H), 8.10-7.95 (m, 3H), 7.86-7.80 (m, 1H), 7.58-7.42 (m, 4H), 7.30 (d, J= 8.6 Hz, 1H), 6.80 (d, J= 8.6 Hz, 1H), 5.39 (s, 1H), 4.68-4.56 (m, 1H), 4.24 (s, 1H), 4.14-4.07 (m, 1H), 4.06-3.92 (m, 1H), 0.75-0.65 (m, 2H), 0.65-0.55 (m, 2H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 525, Rt=1.68分. [α]D
25= +101.21°(c = 0.55, ジクロロメタン) .
【0181】
(+/-)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-イソプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド)(2)(E)-1-(6-メトキシニリジン-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)メタンイミン(式(II-2)の中間体)の合成
【化17】
【0182】
窒素下0℃で、アセトニトリル(15ml)中6-メトキシニコチンアルデヒド(IIa-2)(2.0g、14.6mmol)の攪拌溶液に、2,2,2-トリフルオロエタンアミン塩酸塩(6g、43.8mmol)を加え、続いてトリエチルアミン(6.0ml、43.8mmol)を加え、反応混合物を室温で48時間攪拌した。NMRに従って出発材料を完全に消費した後、反応物を真空濃縮し、残留油状物をジエチルエーテル(50mL)で希釈し、乾燥させ(MgSO4)、濾過した。濾液を真空濃縮して、粗油状物として表題化合物(II-2)を得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0183】
Cis/trans-(+,-)-3-(6-メトキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(式(III-2)の中間体)
【化18】
【0184】
窒素下、トリフルオロトルエン(10mL)中、粗(E)-1-(6-メトキシピリジン-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)メタンイミン(1g、6.17mmol)(II-2)の攪拌溶液を、無水ホモフタル酸(1.3g、6.18mmol)で処理し、反応混合物を130℃で16時間攪拌しながら加熱した。次いで、反応混合物を真空濃縮して、DCM/n-ペンタンから粉砕した粗油状物を得て、シス異性体とトランス異性体(1:1)の混合物として表題化合物(III-2)を得、更に精製せずに次の工程に使用した。LCMS(ギ酸:CH3CN):m/z:MH+376、Rt=1.53及び1.44分。
【0185】
(+,-)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-メトキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(式(IV-2)の中間体)
【化19】
【0186】
アルゴン下、0℃で、アセトニトリル(10mL)中、粗(E)-1-(6-メトキシピリジン-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)メタンイミン(II-2)(400mg、1.02mmol)及び5-アミノ-2-フルオロベンゾニトリル(193mg、1.42mmol)の攪拌溶液を、POCl3(0.11ml、1.15mmol)で処理し、反応混合物を2時間加熱還流した。反応混合物を真空濃縮し、酢酸エチル(25mL)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(10mL)で処理し、有機相を分離し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濾液を真空濃縮して、粗油状物を得た。粗化合物をMeOH(10mL)で希釈し、K2CO3(700mg、5mmol)を加え、反応混合物を室温で4時間攪拌し、その間、化合物はトランス異性体に完全にエピマー化した。反応混合物をセライト床を通じて濾過し、濾液を真空濃縮して油状物を得、これをカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン中50~70%酢酸エチル~DCM中の5%MeOH)に供し、ラセミ化合物(IV-2)を灰白色固体として得た(200mg、0.4mmol、40%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.78 (s, 1H), 8.05-8.03 (m, 1H),8.01 (d, J= 7.12 Hz, 1H), 7.91 (s, 1H), 7.85-7.81 (m, 1H), 7.56-7.44 (m, 4H), 7.3 (d, J= 8.08 Hz, 1H), 6.77 (d, J= 8.68 Hz, 1H), 5.38 (s, 1H), 4.64-4.58 (m, 1H), 4.22 (s, 1H), 4.03-3.99 (m, 1H), 3.76 (s, 3H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 499, Rt=1.62分.
【0187】
(+,-)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-ヒドロキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド)(式(V-2)の中間体)
【化20】
【0188】
DMF(6mL)中(rac)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-メトキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(III-2)(180mg、0.36mmol)の溶液を加え、LiCl(76.6mg、1.81mmol)で処理し、次いでパラトルエンスルホン酸(311mg、1.81mmol)で処理し、反応混合物をマイクロ波中120℃で1時間攪拌しながら加熱した。冷却した反応混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、水(10mL)で洗浄し、有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮して粗油状物を得、カラムクロマトグラフィー(SiO2、7:3の酢酸エチル:ヘキサンで溶出)で精製して、表題化合物(V-2)(100mg、0.2mmol、57%)を灰白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.47 (s, 1H), 10.75 (s, 1H), 8.03-7.98 (m, 2H), 7.83-7.80 (m, 1H), 7.56-7.48 (m, 3H), 7.35 (d, J= 7.24 Hz, 1H), 7.23 (dd, J= 9.24 Hz, 2 Hz, 1H), 7.00 (bs,1 H), 6.27 (d, J= 9.56 Hz, 1H), 5.13 (s, 1H), 4.62-4.56 (m, 1H), 4.16 (s, 1H), 3.98-3.95 (m, 1H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 499, Rt=1.76分.
【0189】
(+,-)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-イソプロポキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(2)(XはCHであり、RはO-イソプロピルである式(I)の化合物)
【化21】
【0190】
DMF(2mL)中、(rac)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-ヒドロキシピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(V-2)(100mg、0.2mmol)、2-ヨードプロパン(0.1mL)及びCsF(94mg、0.6mmol)の溶液を室温で16時間攪拌した。次いで、反応混合物を酢酸エチル(25mL)で希釈し、水(10mL)及びブライン(10mL)で洗浄し、次いで有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空濃縮して粗油状物を得、これを逆相分取HPLCクロマトグラフィーに供し、表題化合物(2)(25mg、0.16mmol、45%)を灰白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.79 (s, 1H), 8.04-8.00 (m, 2H), 7.92 (s, 1H), 7.84-7.82 (m, 1H), 7.56-7.46 (m, 3H), 7.40 (d, J= 9.92 Hz, 1H), 7.30 (d, 7= 7.16 Hz, 1H), 5.36 (s, 1H), 5.14-5.11 (m, 1H), 4.65- 4.59 (m, 1H), 4.22 (s, 1H), 4.00-3.94 (m, 1H), 1.22 (s, 6H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z:MH+ 527, Rt=1.70分.
【0191】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(3a)(E)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メタンイミン(式(II-3)の中間体)の合成
【化22】
【0192】
窒素下0℃で、アセトニトリル(100ml)中2-(トリフルオロメチル)ピリジン-5-カルボキシアルデヒド(IIa-3)(3.0g、17.1mmol)の攪拌溶液に、2,2,2-トリフルオロエタンアミン塩酸塩(6.9g、51.4mmol)を加え、続いてトリエチルアミン(7.2mL、51.4mmol)を加え、反応混合物を室温で48時間攪拌した。その後、反応物を真空濃縮して、粗油状物として3.5gの表題化合物(II-3)を得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0193】
1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン)-3-イル)-1,2,3,4,-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸((II-3)の中間体)
【化23】
【0194】
窒素下、トリフルオロトルエン(15mL)中、粗(E)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メタンイミン(II-3)(3.0g、11.7mmol)と無水ホモフタル酸(1.9g、11.7mmol)の攪拌溶液を、130℃で16時間加熱した。その後、反応物を真空濃縮して、シス異性体及びトランス異性体の約1:1混合物として5.0gの粗表題化合物(III-3)を得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0195】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(6-トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(3a)(XはCHであり、RはCF3である式(I)の化合物)
【0196】
窒素下、室温で、ピリジン(30ml)中、(rac)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-3)(2.0g、4.78mmol)の攪拌溶液に、無水プロピルホスホン酸(酢酸エチル中50%溶液、28.0ml、47.8mmol)を加え、続いて5-アミノ-2-フルオロベンゾニトリル(0.7g、5.23mmol)を加え、反応物を50℃で16時間加熱した。その後、反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(50mL)で希釈し、CuSO
4溶液(3×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、濾液を真空濃縮した。
【化24】
【0197】
得られた油状物をMeOH(20mL)で希釈し、K2CO3(3.3g、24.0mmol)で4時間攪拌し、その間、NMRに従ってトランスエピマーのみを形成した。次いで、懸濁液をセライトの床で濾過し、真空濃縮し、得られた油状物をクロマトグラフィー(SiO2、3:7の酢酸エチル:ヘキサン)に供し、ラセミ体として表題化合物(3)を得た(1.0g、1.86mmol、39%)。(+)-鏡像異性体は、分取キラルHPLCによって得られ(カラム:Chiralpak IA、21×250mm、5μmの粒径、周囲温度及び21ml/分の流速で動作。波長:222nm、実行時間20分。移動相:ヘキサン/ジクロロメタン/EtOH:70/15/15)、続いて凍結乾燥を行い、200mgの表題化合物(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(3a)を得た>99%e.e.。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.88 (s, 1H), 8.72 (s, 1H), 8.06-8.00 (m, 2H), 7.87-7.82 (m, 2H), 7.74 (d, J = 7.12 Hz, 1H), 7.57-7.47 (m, 3H), 7.29 (d, J = 6.28 Hz, 1H), 5.64 (s, 1H), 4.66-4.58 (m, 1H), 4.35 (s, 1H), 4.20-4.09 (m, 1H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 537, Rt=1.68. [α]D
25 = +59.07°(c= 0.536, クロロホルム).
【0198】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-3-(6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(4a)
(E)-1-(6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)メタンイミン(式(II-4)の中間体)の合成
【化25】
【0199】
窒素下、0℃で、アセトニトリル(50mL)中2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-カルバルデヒド(IIa-4)(2.0g, 9.8mmol)の攪拌溶液に、2,2,2-トリフルオロエチルアミン(6.5g、39.2mmol)を加え、反応混合物を室温で48時間攪拌した。その後、反応混合物を真空濃縮して、無色油状物として2.7gの粗表題化合物(II-4)を得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0200】
1-オキソ-3-(6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(式(III-4)の中間体)
【化26】
【0201】
窒素下、ジクロロメタン(25mL)中、粗(E)-1-(6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)メタンイミン(II-4)(1.8g、6.28mmol)の攪拌溶液に、無水ホモフタル酸(1.12g、6.9mmol)を加え、反応混合物を室温で16時間攪拌した。その後、反応混合物を真空濃縮し、2.0gの粗表題化合物(III-4)を無色油状物として、シス及びトランス異性体の約1:1の混合物として得、更に精製せずに次の工程に使用した。LCMS(ギ酸:CH3CN):m/z:MH+449、Rt=1.83分。
【0202】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-3-(6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(4a)(XはCHであり、RはOCH
2CF
3である式(I)の化合物)
【化27】
【0203】
室温で、ピリジン(10.0ml)中、1-オキソ-3-(6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-4)(1g、2.23mmol)の攪拌溶液に、無水プロピルホスホン酸(酢酸エチル中50%の溶液、13ml、22.3mmol)を加えた。次いで、混合物に5-アミノ-2-フルオロベンゾニトリル(0.42g、3.12mmol)を加え、反応混合物を16時間攪拌し続けながら、50℃で加熱した。その後、反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(50mL)で希釈し、CuSO4溶液(3x10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濾液を真空濃縮した。得られた油状物をMeOH(20mL)で希釈し、K2CO3(1.5g、10.9mmol)で4時間攪拌し、その間、NMRに従ってトランスエピマーのみを形成した。次いで、懸濁液をセライトの床で濾過し、真空濃縮し、得られた油状物をクロマトグラフィー(SiO2、3:7の酢酸エチル:ヘキサン)に供し、ラセミ体として表題化合物(4)を得た(700mg、1.33mmol、55%)。(+)-鏡像異性体は、分取キラルHPLCによって得られ(カラム:Chiralpak IA、21×250mm、5μmの粒径、周囲温度及び21ml/分の流速で動作。波長:222nm、実行時間20分。移動相:ヘキサン/ジクロロメタン/EtOH:70/15/15)、続いて凍結乾燥し、250mgの表題化合物(4a)を得た>99%e.e.。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.81 (s, 1H), 8.06-7.94 (m, 3H), 7.85-7.80 (m, 1H), 7.60-7.44 (m, 4H), 7.30 (d, J = 6.72 Hz, 1H),6.95 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 5.43 (s, 1H), 4.94-4.87 (m, 2H), 4.63-4.57 (m,1H), 4.23 (s, 1H), 4.09-4.03 (m, 1H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 567, Rt=1.75分. [α]D25 = +69.12°(c= 0.37, ジクロロメタン) .
【0204】
(3S,4S)-3-(6-アセトアミドピリジン-3-イル)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(5a)(E)-N-(5-(((2,2,2-トリフルオロエチル)イミノ)メチル)ピリジン-2-イル)アセトアミド(式(II-5)の中間体)の合成
【化28】
【0205】
窒素下0℃で、アセトニトリル(2ml)中N-(5-ホルミルピリジン-2-イル)アセトアミド(IIa-5)(50mg、0.3mmol)の攪拌溶液に、2,2,2-トリフルオロエタンアミン塩酸塩(123mg、0.9mmol)を加え、続いてトリエチルアミン(127μL、0.9mmol)を加え、反応混合物を室温で48時間攪拌した。その後、反応物を真空濃縮し、得られたスラリーをジエチルエーテル(20mL)で希釈し、濾過し、次いで真空濃縮して、表題化合物(II-5)を粗無色油状物として得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0206】
3-(6-アセトアミドピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(式(III-5)の中間体)
【化29】
【0207】
窒素下、トリフルオロトルエン(5mL)中、粗(E)-N-(5-(((2,2,2-トリフルオロエチル)イミノ)メチル)ピリジン-2-イル)アセトアミド(II-5)(50mg、0.2mmol)の攪拌溶液に、無水ホモフタル酸(33mg、0.2mmol)を加え、反応混合物を16時間100℃に加熱した。次いで、反応混合物を真空濃縮してスラリーを得、これをn-ペンタン/DCMで粉砕し、濾過して表題化合物(III-5)を約1:1のシス異性体とトランス異性体の混合物として得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0208】
(3S,4S)-3-(6-アセトアミドピリジン-3-イル)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(5a)(XはCHであり、RはNHC(=O)CH
3である式(I)の化合物)
【化30】
【0209】
窒素下、ピリジン(5mL)中、3-(6-アセトアミドピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(95mg、0.22mmol)の攪拌溶液に、無水プロピルホスホン酸(0.7ml、2.2mmol)を加え、続いて5-アミノ-2-フルオロベンゾニトリル(48ml、0.35mmol)を加え、反応混合物を16時間50℃に加熱した。その後、反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(50mL)で希釈し、CuSO4溶液(3×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濾液を真空濃縮した。得られた油状物をMeOH(5mL)で希釈し、K2CO3(152mg、1.1mmol)で4時間攪拌し、その間、NMRに従ってトランスエピマーのみを形成した。次いで、懸濁液をセライトの床で濾過し、真空濃縮し、得られた油状物をクロマトグラフィー(SiO2、3:7の酢酸エチル:ヘキサン)に供し、ラセミ体として表題化合物(5)を得た(20mg、0.04mmol、12%)。(+)-鏡像異性体は、分取キラルHPLCによって得られ(カラム:Chiralpak IA、21×250 mm、5μの粒径、周囲温度及び21ml/分の流速で動作。波長:222nm、実行時間20分。移動相:ヘキサン/ジクロロメタン/EtOH :70/15/15)、続いて凍結乾燥し、淡黄色固体として、8mgの表題化合物(5a)を得た>99%e.e.。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.80 (s, 1H), 10.46 (s, 1H), 8.10 (s, 1H), 8.06-8.04 (m, 1H),8.01 (d, J = 8.28 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 8.72 Hz, 1H), 7.85-7.81 (m, 1H), 7.56-7.44 (m, 4H), 7.28 (d, J = 6.68 Hz, 1H), 5.41 (s, 1H), 4.65-20 4.56 (m, 1H), 4.26 (s, 1H), 4.07-4.01 (m, 1H), 2.03 (s, 3H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 526, Rt=1.55分. [α]D25 = +137.5°(c= 0.28, EtOAc).
【0210】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-シアノピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(6a)(E)-5-(((2,2,2-トリフルオロエチル)イミノ)メチル)ピコリノニトリル(式(II-6)の中間体)の合成
【化31】
【0211】
窒素下0℃で、メタノール(6mL)中5-ホルミル-2-ピリジンカルボニトリル(IIa-6)(200mg、1.5mmol)の攪拌溶液に、2,2,2-トリフルオロエタンアミン塩酸塩(818mg、6mmol)を加え、続いてトリエチルアミン(1.26mL、9mmol)を加え、反応混合物を室温で48時間攪拌した。その後、反応物を真空濃縮し、得られたスラリーをジエチルエーテル(20mL)で希釈し、濾過し、次いで真空濃縮して、表題化合物(II-6)を粗無色油状物として得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0212】
3-(6-シアノピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(式(III-6)の中間体)
【化32】
【0213】
窒素下、ジクロロメタン(5mL)中、(E)-5-(((2,2,2-トリフルオロエチル)イミノ)メチル)ピコリノニトリル(II-6)(70mg、0.33mmol)の攪拌溶液に、無水ホモフタル酸(74mg、0.46mmol)を加え、反応混合物を16時間室温で攪拌した。次いで、反応物を真空濃縮してスラリーを得、これをn-ペンタン/DCMで粉砕し、濾過して表題化合物(III-6)を約1:1のシス異性体とトランス異性体の混合物として得、更に精製せずに次の工程に使用した。LCMS(ギ酸:CH3CN):m/z:MH+376、Rt=1.44分。
【0214】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-シアノピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(6a)(XはCHであり、RはCNである式(I)の化合物)
【化33】
【0215】
窒素下、ピリジン(2ml)中、粗3-(6-シアノピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-6)(140mg、0.37mmol)の攪拌溶液に、無水プロピルホスホン酸(酢酸エチル中50%溶液、1.1mL、3.77mmol)を加え、続いて5-アミノ-2-フルオロベンゾニトリル(61mg、0.45mmol)を加え、反応物を16時間50℃に加熱した。その後、反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(50mL)で希釈し、CuSO4溶液(3×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濾液を真空濃縮した。得られた油状物をMeOH(4mL)で希釈し、K2CO3(255mg、1.85mmol)で4時間攪拌し、その間、NMRに従ってトランスエピマーのみを形成した。次いで、懸濁液をセライトの床で濾過し、真空濃縮し、得られた油状物をクロマトグラフィー(SiO2、3:7の酢酸エチル:ヘキサン)に供し、ラセミ体として表題化合物(6)を得た(82mg、0.16mmol、45%)。(+)-鏡像異性体は、分取キラルHPLCによって得られ(カラム:Chiralpak IA、21×250mm、5μmの粒径、周囲温度及び21ml/分の流速で動作。波長:222nm、実行時間20分。移動相:ヘキサン/ジクロロメタン/EtOH:70/15/15)、続いて凍結乾燥を行い、灰白色の固体として27mgの表題化合物(6a)を得た>99%e.e.。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.84 (s, 1H), 8.73 (s, 1H), 8.05-7.96 (m, 3H), 7.84-7.82 (m, 1H), 7.68 (d, J = 6.48 Hz, 1H), 7.57-7.45 (m, 3H), 7.29 (d, J = 6.04 Hz, 1H), 5.63 (s, 1H), 4.65-4.59 (m, 1H), 4.32 (s, 1H), 4.17-4.11 (m, 1H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 492, Rt=1.74分. [α]D25 = +108.5°(c= 0.25, DMSO).
【0216】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(7a)6-(ジフルオロメトキシ)ニコチンアルデヒド(式(IIa-7)の中間体)の合成
【化34】
【0217】
窒素下室温で、アセトニトリル(60mL)中6-ヒドロキシニコチンアルデヒド(iv)(2.0g、16.2mmol)の攪拌溶液に、クロロジフルオロ酢酸ナトリウム(3.7g、24.4mmol)を加えた。反応混合物を85℃で72時間加熱した後、蒸留水(10mL)を加えることによって反応物をクエンチし、混合物を酢酸エチル(3×20mL)で抽出し、合わせた抽出物を乾燥させ(Na2SO4)、濾過して真空濃縮し、得られた白色ガムをカラムクロマトグラフィー(SiO2、1:5酢酸エチル:ヘキサン)に供し、表題化合物(IIa-7)(1.8g、10.4mmol、64%)を灰白色固体として得た。1H MR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.06 (s, 1H), 8.84 (s, 1H), 8.34 (dd, J= 8.52, Hz, 2.16 Hz, 1H), 8.01-7.65 (m, 1H), 7.28 (d, J = 8.56 Hz, 1H).
【0218】
(E)-1-[6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)メタンアミン(式(II-7)の中間体)
【化35】
【0219】
窒素下0℃で、アセトニトリル(20ml)中、6-(ジフルオロメトキシ)ニコチンアルデヒド(IIa-7)(500mg、2.89mmol)の攪拌溶液に、2,2,2-トリフルオロエタンアミン塩酸塩(1.5g、11.5mmol)を加え、続いてトリエチルアミン(2.4ml、17.3mmol)を加え、反応混合物を室温で48時間攪拌した。反応物を真空濃縮して、粗油状物として表題化合物(II-7)を得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0220】
3-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(式(III-7)の中間体)
【0221】
窒素下室温で、ジクロロメタン(20mL)中(E)-1-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)メタンイミン(II-7)(1.1g、4.3mmol)の攪拌溶液に、無水ホモフタル酸(0.7g、4.3mmol)を加え、反応混合物を16時間攪拌した。混合物を真空濃縮し、2gの粗材料(III-7)を得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【化36】
【0222】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(7a)(XはCHでありRはOCHF
2である式(I)の化合物)
【化37】
【0223】
窒素下、室温で、ピリジン(30mL)中、粗3-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-7)(2g、4.8mmol)の攪拌溶液に、無水プロピルホスホン酸(酢酸エチル中50%溶液、30.0ml、48.1mmol)を加え、続いて5-アミノ-2-フルオロベンゾニトリル(0.78g、5.8mmol)を加え、反応物を50℃で16時間加熱した。その後、反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(50mL)で希釈し、CuSO4溶液(3×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濾液を真空濃縮した。得られた油状物をMeOH(50mL)で希釈し、K2CO3(1.0g、7.25mmol)で4時間攪拌し、その間、NMRに従ってトランスエピマーのみを形成した。次いで、懸濁液をセライトの床で濾過し、真空濃縮し、得られた油状物をクロマトグラフィー(SiO2、3:7の酢酸エチル:ヘキサン)に供し、ラセミ体として表題化合物(7)を得た(1.1g、2.06mmol、42%)。(+)-鏡像異性体は、分取キラルHPLCによって得られ(カラム:Chiralpak IA、21×250mm、5μの粒径、周囲温度及び21ml/分の流速で動作。波長:222nm、実行時間20分。移動相:ヘキサン/ジクロロメタン/EtOH:70/15/15)、続いて凍結乾燥を行い、灰白色の固体として205mgの表題化合物(7a)を得た>99%e.e.。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.82 (s, 1H), 8.06-8.00 (m, 3H), 7.84-7.82 (m, 1H), 7.70-7.45 (m, 4H), 7.31 (d, J= 6.92 Hz, 1H),7.06 (d, J= 8.52 Hz, 1H), 5.49 (s, 1H), 4.64-4.58 (m, 1H), 4.26 (s, 1H), 4.11-4.05 (m, 1H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 536, Rt=1.68分.
[α]D
25 = +56.38°(c= 0.418, ジクロロメタン).
【0224】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(8a)5-ブロモ-2-(ジフルオロメチル)ピリジン(式(vi)の中間体)の合成
【化38】
【0225】
窒素下-78℃で、ジクロロメタン(100mL)中5-ブロモ-2-ホルミルピリジン(v)(10.0g、53.8mmol)の攪拌溶液に、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(DAST)(15.6ml、118.3mmol)を加えた。反応混合物をゆっくりと室温まで昇温させ、次いで更に6時間攪拌した。次いで、反応混合物をジクロロメタン(100mL)で希釈し、飽和重曹水溶液(3x50mL)及びブライン(2×50mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空濃縮して、得られた油状物をクロマトグラフィー(SiO2、1:5 酢酸エチル:ヘキサン)に供し、無色油状物として表題化合物(vi)(5.6g、27.2mmol、50%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.71 (s, 1H), 7.97 (d, J= 8.36 Hz, 1H), 7.53 (d, J= 8.28 Hz, 1H), 6.73-6.45 (m, 1H).
【0226】
6-(ジフルオロメチル)ニコチン酸メチル(式(ii-8)の中間体)
【化39】
【0227】
一酸化炭素雰囲気下、MeOH(50mL)中の5-ブロモ-2-(ジフルオロメチル)ピリジン(v)(5g、24.03mmol)の溶液をトリエチルアミン(10mL、72mmol)で処理した後、1,1'-ビス-(ジフェニルホスフィノ)-フェロセンジクロロパラジウム(II)(1.7g、2.4mmol)で処理し、オートクレーブで80℃、60PSIで6時間加熱した。次いで、反応混合物を放冷し、セライトの床で濾過し、濾液を真空濃縮してスラリーを得、これをクロマトグラフィー(SiO2、1:5 酢酸エチル:ヘキサン)に供し、褐色ガムとして表題化合物(ii-8)(2.9g、15.5mmol、64%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.23 (s, 1H), 8.44 (d, J= 8.08 Hz, 1H), 7.72 (d, J= 8.12 Hz, 1H), 6.80-6.53 (m, 1H), 3.97 (s, 1H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 188, Rt=1.43分.
【0228】
(6-(ジフルオロメチル)ピリジン)-3-イル)メタノール(式(iii-8)の中間体)
【化40】
【0229】
窒素下0℃で、THF(25mL)中6-(ジフルオロメチル)ニコチン酸メチル(ii-8)(2.0g、10.7mmol)の攪拌溶液に、THF中リチウムアルミニウムヒドリド(21.0ml、21.0mmol)の1M溶液を徐々に加えた。0℃で2時間後、出発材料は完全に消費され、5mLの飽和硫酸ナトリウム水溶液をゆっくりと添加することで反応物をクエンチした。次いで、粗反応混合物をセライトの床で濾過し、濾液を真空濃縮し、得られた残渣をクロマトグラフィーに供し(SiO2、1:1 酢酸エチル:ヘキサン)、表題化合物(iii-8)(1.6g、10.0mmol、94%)を白色ワックス状固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.60 (s, 1H), 7.85 (d, J= 7.68 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 7.96 Hz, 1H), 6.76-6.48 (m, 1H), 4.78 (s, 2H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 160, Rt=1.19分.
【0230】
6-(ジフルオロメチル)ニコチンアルデヒド(式(IIa-8)の中間体)
【化41】
【0231】
窒素下0℃で、ジクロロメタン(50mL)中(6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メタノール(iii-8)(1.5g、9.5mmol)の攪拌溶液に、デス・マーチンペルヨージナン(8.0g、19.0mmol)を加え、反応混合物を徐々に2時間かけて室温まで昇温した。次いで、反応混合物をセライトの床で濾過し、濾液を真空濃縮し、得られた油状物をクロマトグラフィー(SiO2、1:5 酢酸エチル:ヘキサン)に供し、無色液体として表題化合物(IIa-8)(700mg、4.45mmol)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.17 (s, 1H), 9.17 (s, 1H), 8.45 (d, J= 8.04 Hz, 1H), 7.92 (d, J= 8.00 Hz, 1H), 7.21-6.94 (m, 1H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 158, Rt=1.17分.
【0232】
(E)-1-(6-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)メタンイミン(式(II-8)の中間体)
【化42】
【0233】
窒素下0℃で、アセトニトリル(20ml)中、6-(ジフルオロメチル)ニコチンアルデヒド(IIa-8)(500mg、3.18mmol)の攪拌溶液に、トリエチルアミン(0.5mL)中の2,2,2-トリフルオロエチルアミン塩酸塩(1.7g、12.7mmol)を加え、反応混合物を室温まで昇温し、更に48時間攪拌した。その後、反応混合物を真空濃縮して、粗油状物として1.2gの表題化合物(II-8)を得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0234】
3-(6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(式(III-8)の中間体)
【化43】
【0235】
窒素下室温で、ジクロロメタン(15mL)中、粗(E)-1-(6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)メタンイミン(II-8)(1.2g、5.2mmol)の攪拌溶液に、無水ホモフタル酸(0.87g、5.2mmol)を加え、反応混合物を室温で16時間攪拌した。次いで、反応混合物を真空濃縮し、2.1gの粗表題化合物(III-8)を約1:1のシス異性体とトランス異性体の混合物として得、更に精製せずに次の工程に使用した。LCMS(ギ酸:CH3CN):m/z:MH+401、Rt=1.52分。
【0236】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-3-(6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(8a)(XはCHであり、RはCHF2である式(I)の化合物)
【0237】
窒素下、室温で、ピリジン(10mL)中、粗3-(6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-8)(1.0g、2.5mmol)の攪拌溶液に、無水プロピルホスホン酸(酢酸エチル中50%溶液、15.0ml、25.0mmol)を加え、続いて5-アミノ-2-フルオロベンゾニトリル(0.45g、3.25mmol)を加え、反応物を50℃で16時間加熱した。その後、反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(50mL)で希釈し、CuSO
4溶液(3×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、濾液を真空濃縮した。
【化44】
【0238】
得られた油状物をMeOH(50mL)で希釈し、K2CO3(2.0g、14.5mmol)で4時間攪拌し、その間、NMRに従ってトランスエピマーのみを形成した。次いで、懸濁液をセライトの床で濾過し、真空濃縮し、得られた油状物をクロマトグラフィー(SiO2、3:7の酢酸エチル:ヘキサン)に供し、ラセミ体として表題化合物(8)を得た(400mg、0.77mmol、31%)。(+)-鏡像異性体は、分取キラルHPLCによって得られ(カラム:Chiralpak IA、21×250mm、5μの粒径、周囲温度及び21ml/分の流速で動作。波長:222nm、実行時間20分。移動相:ヘキサン/ジクロロメタン/EtOH:70/15/15)、続いて凍結乾燥を行い、灰白色の固体として197mgの表題化合物(8a)を得た>99%e.e.。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.84 (s, 1H), 8.61 (s, 1H), 8.06-8.00 (m, 2H), 7.85-7.83 (m, 1H), 7.68-7.46 (m, 5H), 7.28 (d, J = 7.48 Hz, 1H), 7.03-6.75 (m, 1H), 5.59 (s, 1H), 4.65-4.59 (m, 1H), 4.32 (s, 1H), 4.17-4.10 (m, 1H). LCMS (酢酸アンモニウム: CH3CN): m/z: MH+ 519, Rt= 5分操作のうち2.66分. [α]D25 = +49.28°(c= 0.303, ジクロロメタン).
【0239】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド)(9a)(E)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)メタンイミン(式(IIa-9)の中間体)の合成
【化45】
【0240】
窒素下、0℃で、アセトニトリル(20mL)中2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-カルバルデヒド(IIa-9)(1.0g、5.7mmol)の攪拌溶液に、トリエチルアミン(0.5mL)中の2,2,2-トリフルオロエチルアミン塩酸塩(2.25g、22.7mmol)を加えた。反応混合物を室温まで昇温させ、次いで更に48時間攪拌した。その後、反応混合物を真空濃縮して、1.46gの粗表題化合物(II-9)を得、更に精製せずに次の工程に使用した。
【0241】
1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(式(III-9)の中間体)
【化46】
【0242】
窒素下室温で、ジクロロメタン(15mL)中、粗(E)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)メタンイミン(II-9)(1.46g、4.3mmol)の攪拌溶液に、無水ホモフタル酸(920mg、5.67mmol)を加えた。16時間後、反応物を真空濃縮し、2.3gの粗表題化合物(III-9)を約1 :1のシス異性体とトランス異性体の混合物として得、更に精製せずに次の工程に使用した。LCMS(ギ酸:CH3CN):m/z:MH+420、Rt=1.68分。
【0243】
(3S,4S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-5-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボキサミド(9a)(XはNでありRはCF
3である式(I)の化合物)
【化47】
【0244】
室温で、ピリジン(30.0ml)中、粗1-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-3-(2-(トリフルオロメチル)ピリジン-5-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-カルボン酸(III-9)(1.95g、4.65mmol)の攪拌溶液に、無水プロピルホスホン酸(酢酸エチル中50%溶液、29.6ml、46.5mmol)を加え、続いて5-アミノ-2-フルオロベンゾニトリル(0.8g、6.05mmol)を加え、反応物を50℃で16時間加熱した。その後、反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(50mL)で希釈し、CuSO4溶液(3×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濾液を真空濃縮した。得られた油状物をMeOH(20mL)で希釈し、K2CO3(1.0g、7.3mmol)で4時間攪拌し、その間、NMRに従ってトランスエピマーのみを形成した。次いで、懸濁液をセライトの床で濾過し、真空濃縮し、得られた油状物をクロマトグラフィー(SiO2、3:7の酢酸エチル:ヘキサン)に供し、ラセミ体として表題化合物(9)を得た(1.2g、2.23mmol、48%)。(+)-鏡像異性体は、分取キラルHPLCによって得られ(カラム:Chiralpak IA、21×250mm、5μの粒径、周囲温度及び21ml/分の流速で動作。波長:222nm、実行時間20分。移動相:ヘキサン/ジクロロメタン/EtOH:70/15/15)、続いて凍結乾燥を行い、灰白色の固体として410mgの表題化合物(9a)を得た>99%e.e.。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.84 (s, 1H), 8.86 (s, 2H), 8.05-8.01 (m, 2H), 7.84-7.82 (m, 1H), 7.57-7.47 (m, 3H), 7.33 (d, J = 6.88 Hz, 1H), 5.69 (s, 1H), 4.73-4.65 (m, 1H), 4.41 (s, 1H), 4.18-4.07 (m, 1H). LCMS (ギ酸:CH3CN): m/z: MH+ 536, Rt=1.84分. [α]D25 = +27.12°(c= 0.47, ジクロロメタン) .
【0245】
(実施例2)
熱帯熱マラリア原虫(3D7株)に対するインビトロ効力
広く使用されているクロロキン感受性熱帯熱マラリア原虫(3D7)のマラリア参照株の培養物を、0.5%Albumax II(Gibco Life Technologies社、カリフォルニア州、サンディエゴ)、12mMの重炭酸ナトリウム、0.2mMのヒポキサンチン、及び20mg/Lのゲンタマイシンを添加したRPMI 1640培地(pH7.3)に培養されたヒト赤血球の1.25%懸濁液に37℃、窒素のバランスを有する1%のO
2、3%のCO
2の雰囲気下で維持した(連続培地のヒトマラリア原虫。Trager W.ら、1976、Science、193:673-675)。増殖阻害は、SYBR Greenの二本鎖DNAへの結合を利用する蛍光アッセイを用いて定量化して(Novel, rapid, and inexpensive cell-based quantification of antimalarial drug efficacy。Bennett T.N.ら、2004、Antimicrob. Agents Chemother.、48:1807-1810)、485nmで励起した後、528nmで蛍光シグナルを発する。メフロキンは、アッセイの品質を監視するための薬物対照として使用された(Z'=0.6~0.8、Z'はスクリーンプレート上の陽性対照と陰性対照の識別の尺度である)。ヒットは、最低3回の独立した実験から決定された用量反応曲線による完全効力曲線によって確認された。化合物の生理活性は、50%のマラリア寄生虫の死を引き起こす化合物の有効濃度であるEC
50として表した。全てのデータはIDBS ActivityBaseを使用して処理された。生データは、高阻害対照を100%、阻害なし対照を0%に設定することにより、線形回帰によってパーセント阻害に変換された。合格プレートの品質管理基準は、z'>0.5、S:B>3、%CV
(阻害対照なし)<15であった。z'の計算に使用された式は以下である:
【数1】
【0246】
カーブフィッティングは、以下の4つのパラメトリック方程式を使用して実行した:
【数2】
A=下の%阻害、B=上の%阻害、C=EC
50、D=勾配、x=阻害剤の濃度、y=%阻害。曲線の定義が不十分な場合、Bは100に固定された。データを以下の表1に示す:
【表1】
【0247】
これらのデータは、本発明の化合物が、参照化合物(+)SJ-733の半最大濃度よりも有意に低い半最大濃度(すなわちIC50)で、熱帯熱マラリア原虫の無性赤血球内段階の成長を阻害できることを示している。更に、効力は主に右旋性、すなわち(+)鏡像異性体と関連している。
【0248】
(実施例3)
NSG SCIDマウスにおける本発明による化合物の抗マラリアインビボ有効性
インビボ有効性は、熱帯熱マラリア原虫Pf3D70087/N9に対して測定され(A Murine Model of falciparum-Malaria by In Vivo Selection of Competent Strains in Non-Myelodepleted Mice Engrafted with Human Erythrocytes。Angulo-Barturen I.ら、2008、Plos One.、3(5):e2252)、ヒト赤血球の最低40%のヒト赤血球を有するように生着された雌のNOD-scid IL-2Rynullマウス(NSG)(フランスのCharles River社から購入)(Improved Murine Model of Malaria Using Plasmodium falciparum Competent Strains and Non-Myelodepleted NOD-scid IICRynull Mice Engrafted with Human Erythrocytes。Jimenez-Diaz M.B.ら、2009、Antimicrob Agents Chemother.、53(10):4533 4536)(Basque Center of Transfusion and Human Tissues, Galdakao、Centro de Transfusiones de la Comunidad de Castilla y Leon、バリャドリッド、スペイン及びSpain and Bank of Blood and Tissues、バルセロナ、スペイン)、及び薬物治療開始の72時間前に静脈内感染寄生ヒト赤血球に対して測定された。処置は、マウスが約1%(P0)の平均寄生虫血症に達した研究の1日目に開始された。化合物は、1%のヒドロキシプロピル-シクロデキストリン、40%のPEG-400、10%のプロピレングリコール、10%のエタノール、40%のPBS、10mL/kg体重の製剤として、10mg/kg体重の単回投与又は1mg/kg体重の1日用量で4日間経口投与された。末梢血中の寄生虫血症は、フローサイトメトリー(Attune NxT Acoustic Focusing Flow Cytometer(InvitroGen社))によって24時間ごとに評価され、マウス赤血球のマーカーとしてTER-119-フィコエリスリンモノクローナル抗体及び前述のように赤血球内寄生虫を検出するためのSYTO-16、非選択的蛍光核酸色素を使用した(Quantitative measurement of Plasmodium-infected erythrocytes in murine models of malaria by flow cytometry using bidimensional assessment of SYTO-16 fluorescence。Jimenez-Diaz M.B.ら、2009、Cytometry A.、75(3):225-35)。治療効果は、寄生虫複製の1サイクル(3日目の%阻害)又は2サイクル(5日目の%阻害)後の未処置マウスと比較した成長阻害の割合として推定された。データ解析は、GraphPad Prism 7.0(GraphPad Software社)を用いて行った。末梢血(25μl)の試料は、最初の投与後の研究中に継続的に採取され、25μlのH2O MilliQと混合され、分析まで直ちに-80℃で保存された。薬物は、標準的な液-液抽出法を用いて血液試料のタンパク質沈殿によって得られた10μlの溶解物から抽出された。試料は、Waters Micromass UPLC-TQD(Waters社、マンチェスター、英国)で定量するためにLC-MS/MSによって分析される。血中濃度対時間は、Phoenix WinNonlin vers.7.0(Certara社)又はR又はExcel(Microsoft社)を用いた非コンパートメント分析(NCA)によって分析され、そこから曝露関連値(tmax、Cmax及びAUC0-t)が推定された。標準フローサイトメトリーによる検出限界に達した処置マウス(全循環赤血球から<0.01%)は、全循環赤血球の>50%のキメラ現象による試験の60日目まで保持された。フォローアップ期間中、末梢血中の寄生虫血症を2~3日ごとに評価し、0.01%の定量限界を有するフローサイトメトリーで分析した。再発日(DoR)は、P0上昇前日の%寄生虫血症とP0到達翌日の%寄生虫血症の線形補間により推定した。マウスは、試験の60日目までに0.01%の定量限界でフローサイトメトリーによって末梢血中に検出可能な寄生虫がいない場合に治癒したとみなした。DoRは、最初の感染に匹敵する血液中の成長動態を示す寄生虫についてのみ計算された。
【0249】
全体として、これらのデータは、本発明の化合物が経口経路を介してマラリア薬に必要とされる曝露を明確に有し、抗マラリア有効性が参照化合物(+)SJ-733と比較して有意に改善されることを支持している。
【0250】
(実施例4)
哺乳類HepG2細胞に対するインビトロ毒性の決定
活発に増殖しているHepG2ヒト細胞(85011430、European Collection of Authenticated Cell Cultures)をトリプシンで培養表面から剥離し、Cellometer(Nexcelom社)を使用してカウントした。次に、10%のウシ胎児血清(10106-169、Gibco Life Technologies社)及び1%のNEAA溶液(11140-035、Gibco Life Technologies社)を添加されたMinimum Essential Medium(41090、Gibco Life Technologies社)を使用して1mlあたり細胞1.0×105個の密度で、必要とされたプレートにつき12mlの培地を調製した。細胞を、WellMateディスペンサー(Thermo Scientific社)を使用して、事前にスタンプされた化合物及び対照(DMSO及びドキソルビシン50μM)(ウェルあたり125nl)を有する384ウェルプレート(781098、Greiner社)に播種した(ウェルあたり25μl)。細胞を加湿インキュベーターに37℃及び5%のCO2で48時間インキュベートした。インキュベーション後、ウェルあたり5μlのレサズリン(R7017、Sigma社)(最終濃度45μM)を加え、プレートを37℃で3.5~4時間保持した。次いで、プレートをPherastar LSプレートリーダー(BMG社)で読み取り、各試験化合物の阻害率を式:%阻害=100-(((試験化合物-ブランク)/(DMSO対照-ブランク))×100)を使用して計算した。毒性IC50'は、ActivityBaseテンプレートを使用して計算された。
【0251】
(実施例5)
ミクロソーム内因性クリアランス(Clint)及び肝内因性クリアランス(Clint)の決定
本発明の化合物(1μM)を、複数のドナー(>10)からプールされたヒト(ラット又はマウス)肝ミクロソームを有する懸濁液にインキュベートし、45分間の実験の過程で5つの時点で試料を採取し、LC MS/MSによって分析した。ミクロソーム(最終タンパク質濃度0.5mg/mL)、0.1Mのリン酸緩衝液pH7.4、及び試験化合物(最終基質濃度1μM、最終DMSO濃度0.25%)を、NADPH(最終濃度1mM)を添加する前に37℃でプレインキュベートして反応を開始した。NADPHの代わりに0.1Mのリン酸緩衝液pH7.4を添加した各試験化合物について、マイナス補因子対照インキュベーションを含めた(マイナスNADPH)。全てのインキュベーションを各試験化合物について2回に分けて行い、結果を平均化した。各化合物を0、5、15、30及び45分間インキュベートする。対照(マイナスNADPH)は、45分間だけインキュベートした。インキュベートを適切な時点でアセトニトリルに1:3の比で移すことによって、反応を停止した。終止プレートを3,000rpmで4℃で20分間遠心分離し、タンパク質を沈殿させた。タンパク質沈殿後、試料の上清を最大4つの化合物のカセットに組み合わせ、内部標準を加え、試料をLC-MS/MSで分析した。時間に対するInピーク面積比(複合ピーク面積/内部標準ピーク面積)のプロットから、線の勾配が決定される。続いて、半減期(t1/2)と内因性クリアランス(CLint)を以下の式を使用して計算する。
脱離速度定数(k)=(-勾配)
半減期(t1/2)(min)=0.693/k
内因性クリアランス(すなわちCLint)(μL/分/mgタンパク質)=V×0.693/t1/2
V=インキュベーション容量(μL)/ミクロソームタンパク質(mg)
【0252】
ベラパミルとデキストロメトルファンを対照としてアッセイに含め、これらの化合物の値が指定された限界値にない場合、結果は拒否され、実験は繰り返された。
【0253】
肝内因性クリアランス(Clint)の決定
本発明の化合物(3μM)を、複数のドナー(>10)からプールされた凍結保存されたヒト(ラット又はマウス)肝細胞を有する懸濁液にインキュベートし、60分間の実験の過程で6つの時点で試料を採取し、LC MS/MSによって分析した。2mMのL-グルタミン及び25mMのHEPESを添加したWilliams E培地と試験化合物(最終基質濃度3μM、最終DMSO濃度0.25%)を37℃でプレインキュベートした後、凍結保存された肝細胞の懸濁液(2mMのLグルタミン及び25mMのHEPESを添加したWilliams E培地中の最終細胞密度0.5×106の生細胞/mL)を添加して反応を開始した。最終インキュベーション容量は500μLである。インキュベートのアリコートを適切な時点でアセトニトリルに1:2の比で移すことによって、反応を停止する。終止プレートを3,000rpmで4℃で20分間遠心分離し、タンパク質を沈殿させる。タンパク質の沈殿後、試料の上清を最大4つの化合物のカセットに組み合わせ、内部標準を加え、LC MS/MSで分析した。時間に対するInピーク面積比(複合ピーク面積/内部標準ピーク面積)のプロットから、線の勾配が決定された。続いて、半減期(t1/2)と内因性クリアランス(CLint)を以下の式を使用して計算した。
脱離速度定数(k)=(-勾配)
半減期(t1/2)(min)=0.693/k
内因性クリアランス(すなわちCLint)(μL/分/百万個細胞)=V×0.693/t1/2
V=インキュベーション容量(μL)/細胞数
【0254】
ベラパミルとウンベリフェロンを対照としてアッセイに含め、これらの化合物の値が指定された限界値になかった場合、結果は拒否され、実験は繰り返された。インビトロ及びインビボの薬物動態パラメータを以下の表2に示す。
【表2】
【0255】
まとめると、これらのデータは、本発明の化合物が経口経路を介したマラリア薬に必要な曝露を明確に有していることを支持している。更に、インビトロ代謝安定性は、参照化合物(+)SJ-733と比較して改善されている。更に、マウス及びラット種におけるインビボ半減期は、参照化合物(+)SJ-733と比較して有意に改善されており、ミクロソーム及び肝細胞のインキュベーションにおける改善されたインビトロ安定性と一致している。更に、実施例の化合物(1a)は、参照化合物と比較してイヌ種において改善された薬物動態プロファイルを有し、すなわち(+)SJ-733(IV用量、3mg/kg、Cl=3mL/分/Kg、t1/2=10h)と比較して、化合物(1a):(1mg/kgでのIV、Cl=0.26mL/分/Kg、t1/2=41時間)。
【0256】
(実施例6)
マウス/ラットにおけるPKパラメータの決定。
Swiss Albino雄マウス又はSprague Dawleyラット(TCGLS社、インド)を、12/12時間の明暗サイクル、温度22±2℃、50±20%RHで飼育し、食物と水を自由に摂取させた。マウスを無作為に/体重/年齢に基づいて選択し、投薬前4時間及び投薬後2時間絶食させた。投与経路につき3匹のマウスを使用した。IV決定(1mg/kg、用量5ml/kg)の場合、外側尾静脈に注射することによって投与した(ラットは3%v/vのイソフルラン:酸素混合物を使用して麻酔される)。PO決定(3mg/kg、用量10ml/kg)の場合、用量は意識のある動物に経口栄養によって投与された。血液試料を伏在静脈(意識制限された動物)から一定の時点で採取し(マウス50μL、ラット100μL)、ヘパリン毛細管チューブに回収し、0.5mLのマイクロ遠心チューブに移した。試料は、収集から30分以内に+4℃で10分間、1640gで遠心分離によって処理され、生体分析まで-20℃で保存された。全ての試料を内部標準を含む氷冷アセトニトリルと混合し、4000rpmで15℃で15分間遠心分離した。次に、上清を水に半分希釈し、LCMS/MS分析で分析して、分析物のピーク面積/ISピーク面積(比)を決定した。本発明の化合物の濃度(血漿)は、検量線を参照して決定した。薬物動態パラメータ(Cmax、Tmax、AUC、t1/2、CL、Vd、BA)は、WinNonLinを用いて、非コンパートメント分析(Phoenix社、バージョン6.3)を用いて計算した。表2に示される化合物についての薬物動態パラメータは、本発明の化合物が経口経路を介したマラリアの治療に関連する薬物動態特性を有し、化合物が参照化合物よりも実質的に長い半減期を有することを示唆している。
【0257】
(実施例7)
サポニン単離熱帯熱マラリア原虫(Dd2株)における細胞質ゾル[Na+]に対する本発明の化合物の効果の決定。
寄生虫細胞質ゾルナトリウム濃度を調節するNa+/H+-ATPaseの阻害剤として機能する本発明の化合物の能力は、以下のアッセイで試験された。細胞質ゾルナトリウムに対するそれらの効果は、ナトリウムフラックスアッセイを使用して測定することができる(Biochemical characterization and chemical inhibition of PfATP
4-associated Na
+-ATPase activity in Plasmodium falciparum membranes。Rosling J.E.O.ら、2018、J.Biol.Chem.、293:13397)。サポニン単離寄生虫を密度1.4~1.8×10
8細胞/mLで、20 mMのD-グルコース、0.2mMのヒポキサンチン、25mMのHEPES及び25mg/L硫酸ゲンタマイシン(pH7.10)を添加した重炭酸塩を含まないRPMI1640に懸濁し、次いでナトリウム結合ベンゾフランイソフタル酸アセトキシメチルエステル(5.5mM)及びプルロニックF-127(0.01%w/v)で37℃で20分間処理した。色素を負荷した細胞を重炭酸塩を含まないRPMIで2回(12,000g、0.5分)洗浄し、次いで37℃で更に20分間インキュベートして色素を完全に脱エステル化した後、標準生理食塩水中の最終細胞濃度1.5~2.5×10
7細胞/mLで再懸濁した。試験化合物(5mM)又はビヒクルコントロール(0.1%v/vのDMSO)で処理した直後、色素を負荷した細胞を340nm及び380nmで励起し、蛍光測定値を490nmで15~45秒ごとに記録した。[Na+]を、前述のように340/380nmの蛍光比の検量線を参照して決定した(In situ calibration and [H+] sensitivity of the fluorescent Na+ indicator SBFI。Diarra A.ら、2001、Am. J. Physiol. Cell Physiol.、280:1623)。
図4は、1μM濃度の化合物(1a)及び(9a)で処理した後、標準生理食塩水に懸濁したSBFI負荷3D7寄生虫の細胞内[Na
+]に対する効果を、50nMシパルガミン及びDMSO対照と比較して示す。データは、化合物による処置後の細胞質ゾルナトリウム濃度の増加がNa
+ATPase(すなわち、PfATP-4)の阻害と一致することを示している。
【0258】
全体として、これらのデータは、マウス、ラット及びヒトミクロソーム並びにヒト肝細胞における本発明の化合物の熱帯熱マラリア原虫に対する効力の改善、並びに代謝安定性の増強を支持し、これはマウス及びラットにおける半減期を長くし、したがってマウスマラリアモデルにおける有効性を高めることを意味する。これらのパラメータの増加の複合効果は、(+)SJ-733と比較して、予測されるヒト単回用量の有意な減少であると予想される。
【0259】
(実施例8)
標準的な膜供給アッセイを用いた伝播阻止効力の決定
標準的な膜供給アッセイ(SMFA)は、hsp70プロモーター由来のホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現する熱帯熱マラリア原虫トランスジェニックレポーター株NF54-HGLを用いて実施された(Vosら、2015、Scientific Reports、5)。ステージV生殖母細胞は、蚊を与える前に試験化合物でプレインキュベートされた。試験化合物をDMSOに溶解して10mMのストック溶液を達成し、DMSOに段階希釈して最終試験濃度の1000倍以上の濃度を達成する。続いて、DMSO中の10μlの希釈化合物を、367mMのヒポキサンチン、25mMのHEPES及び25mMのNaHCO
3を添加した990μlの予熱されたRPMI1640培地(「不完全培地」)に加える。この中間希釈液の40μlを360μlの寄生虫培養液に加え、エッペンドルフチューブで37℃で48時間インキュベートし、最終DMSO濃度を0.1%にする。その後、300μlの生殖母細胞培養物/化合物ミックスを180μlの充填赤血球に加え、10,000×gで20秒間遠心分離する。上清を注意深く吸引した後、次いで200μlのヒト血清A型をペレットに添加する。最後に、300μlのこの混合物を直ちに個々の膜で覆われたミニフィーダーに注入し、そこで50匹の雌の A・ステフェンシ(A. stephensi)蚊に10分間給餌する。その後、給餌後4時間以内に、給餌されていない蚊と部分的に給餌された蚊をケージから取り出し、給餌された蚊を26℃、湿度80%に維持する。蚊は、前述のように相対的なオーシスト強度を決定するために発光測定のために処理される(Stoneら、2014、Journal of Infectious Diseases、5、16)。データは、
図5に示すように、最尤法を用いて最良適合を見つけるための4パラメータロジスティック回帰モデル(Decheringら、2017、Scientific Reports、7、1)を適合することによって分析される。これらのデータは、化合物(1a)が伝播阻止能力(すなわち、ヒトから蚊へのマラリア寄生虫の移動)を有することを示している。
【国際調査報告】