(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-19
(54)【発明の名称】エンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル及びその医薬用途
(51)【国際特許分類】
C07F 9/24 20060101AFI20230512BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20230512BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
C07F9/24 F
A61P31/20
A61K31/675
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562102
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 CN2021084958
(87)【国際公開番号】W WO2021204059
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】202010273139.9
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522396388
【氏名又は名称】北京君科華元医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】仲伯華
(72)【発明者】
【氏名】李宏武
(72)【発明者】
【氏名】王暁再
【テーマコード(参考)】
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA38
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZB33
4H050AA01
4H050AB20
4H050WA15
4H050WA27
(57)【要約】
本発明は、式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩を提供し、そのうち、XはH、ハロゲン、R又は-ORであり、RはC
1-3アルキル基又は置換されたC
1-3アルキル基である。前記エンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩の、抗B型肝炎ウイルス薬の製造における使用を、更に提供する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩であって、
【化1】
そのうち、XはH、ハロゲン、R又は-ORであり、RはC
1-3アルキル基又は置換されたC
1-3アルキル基である、
式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩。
【請求項2】
前記置換されたC
1-3アルキル基は、ヒドロキシ基又はハロゲンで置換されたC
1-3アルキル基である、請求項1に記載のエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩。
【請求項3】
ハロゲンはF、Cl、Br又はIであり、好ましくはF、Cl又はBrである、請求項1又は2に記載のエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩。
【請求項4】
Rはメチル基、エチル基又はプロピル基である、請求項1~3の何れか1項に記載のエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩。
【請求項5】
XはH、F、Cl、Br、メチル基又はメトキシ基である、請求項1~4の何れか1項に記載のエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩。
【請求項6】
Xはパラ位炭素原子にある、請求項1~5の何れか1項に記載のエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩。
【請求項7】
前記エンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体は、下記表の化合物から選ばれる、請求項1~6の何れか1項に記載のエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩。
【化2】
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩を活性成分として含む、医薬組成物。
【請求項9】
カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、懸濁剤、液剤又は外用錠剤である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載のエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩、或いは請求項8~9の何れか1項に記載の医薬組成物の、抗B型肝炎ウイルス薬の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年4月8日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202010273139.9であり、発明名称が「エンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル及びその医薬用途」である先行出願の優先権を主張する。前記先行出願の全体は、引用により本願に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、医薬技術分野に属し、具体的には、新規なエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体及びその薬学的に許容される非有毒な塩、並びにその抗B型肝炎ウイルス薬の製造における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ウイルス性肝炎は人間の健康を脅かす重大疾患である。エンテカビル(Entecavir)は現時点で最も効果的なB型肝炎治療薬である。ところが、エンテカビルはラミブジンとある程度の交差耐性を有し、ラミブジン耐性を有する患者に対して効果が比較的に小さい。なお、その他のヌクレオシド類抗B型肝炎ウイルス薬と似たように、エンテカビルによる治療を停止したら、リバウンド現象が起こりやすい。また、動物実験の評価結果によれば、エンテカビルはある程度の発がん性を有する。
【0004】
ヌクレオシド類似体として、エンテカビルは、インビボでエンテカビルモノホスフェート(Entecavir Monophosphate)にリン酸化する。エンテカビルモノホスフェートは、エンテカビルトリホスフェート(Entecavir Triphosphate)の活性形態に更に変換し、HBVの複製を阻害して、抗HBV作用を発揮する。
【0005】
【0006】
中国特許出願CN103804417Aには、一連のエンテカビルホスファミド/フェノールエステル誘導体が開示され、最も優れる活性を有する化合物I-5-B(実施例7)がアヒルB型肝炎のインビボで優れる抗ウィルス作用を有することが発現された。化合物I-5-Bはインビボで酵素性分解によりエンテカビルモノホスフェートを生成する。エンテカビルモノホスフェートは、エンテカビルトリホスフェートに更に変換する。
【0007】
ところが、発明者は、その後の研究開発において、ヒト代謝の特性により似ているビーグルのインビボで、I-5-Bが活性形態に完全に変換することなく、血漿にプロドラッグプロトタイプがより高い濃度で残留するため、予期せぬ毒性又は副作用が生じる可能性があること、を発現した。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩を提供し、
【化2】
式IIにおいて、XはH、ハロゲン、R又は-ORであり、RはC
1-3アルキル基又は置換されたC
1-3アルキル基である。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記置換されたC1-3アルキル基は、ヒドロキシ基又はハロゲンで置換されたC1-3アルキル基である。
【0010】
幾つかの実施形態において、ハロゲンは、F、Cl、Br又はIであり、好ましくはF、Cl又はBrである。
【0011】
幾つかの実施形態において、Rはメチル基、エチル基又はプロピル基である。
【0012】
幾つかの実施形態において、XはH、F、Cl、Br、メチル基又はメトキシ基である。
【0013】
幾つかの実施形態において、Xはパラ位炭素原子にある。例えば、パラ位にあるF、Cl、Br、メチル基又はメトキシ基である。
【0014】
幾つかの実施形態において、式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体は、下記表の化合物から選ばれる。
【化3】
【0015】
本発明は、上記式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩を活性成分として含む、医薬組成物を更に提供する。
【0016】
幾つかの実施形態において、前記医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、懸濁剤、液剤又は外用錠剤である。
【0017】
本発明は、上記式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩、或いは上記式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩を活性成分として含む医薬組成物の、抗B型肝炎ウイルス薬の製造における使用、を更に提供する。
【0018】
本発明は、下記ステップ、即ち、上記式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩、或いは上記式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩を活性成分として含む医薬組成物を、必要とする被験者に治療有効量で投与するステップ、を含む、B型肝炎ウイルスによる疾患の治療方法を更に提供する。
【0019】
本発明は、B型肝炎ウイルス感染による疾患の治療に利用される、上記式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩、或いは上記式IIに示されるエンテカビルモノホスフェートアラニンアミドフェノールエステル誘導体又はその薬学的に許容される非有毒な塩を活性成分として含む医薬組成物、を更に提供する。
【0020】
本発明によれば、B型肝炎ウイルス感染による疾患はB型急性肝炎とB型慢性肝炎を含む。
【実施例】
【0021】
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明により請求される請求範囲内に含まれる。
【0022】
特に明記しない限り、下記の実施例で使用される原材料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0023】
本発明の化合物は下記の合成経路で製造される。
【化4】
【0024】
文献(Ross BS, et al. Synthesis of Diastereomerically Pure Nucleotide Phosphoramidates. J Org Chem, 2011, 76: 8311-8319.)により報道される方法を参照して、ジクロロりん酸フェニル(i)を原料として、アラニンメチルと反応させて、ホスファミドフェノールエステル中間体(ii)を得た。(ii)をペンタフルオロフェノールと縮合させて、重要なキラル中間体である(S)-2-[(S)-(2-ペンタフルオロフェノキシ)-フェノキシ-ホスホリルアミノ]プロピオン酸メチル(iii)を製造した。(iii)をエンテカビルと反応させて、目標化合物IIを得た。
【0025】
反応式において、XはH、ハロゲン、R又は-ORであり、RはC1-3アルキル基又は置換されたC1-3アルキル基である。発明の概要に定義される通りである。
【0026】
〔参考実施例1 2-アミノ-1,9-ジヒドロ-9-[(1S,3R,4S)-4-ヒドロキシ-3-((S)-((S)-1-イソプロポキシカルボニルエチルアミノ-フェノキシ-ホスホリル)-オキシメチル)-2-メチレンシクロペンチル]-6H-プリン-6-オン(I-5-B)の製造〕
【化5】
【0027】
無水エンテカビル4 gをDMF 80 mLに溶解し、-5 ℃に冷却し、10分間攪拌した。その後、0.47 mol/L t-ブチルマグネシウムブロミド40 mLを反応系に滴下し、-5 ℃で30分間攪拌した。(S)-2-[-(S)-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノキシ)-フェノキシ-ホスファミド]-プロピオン酸イソプロピル(iii-0、蘇州科源医薬科技有限公司製品)7.8 gをTHF 40 mLに溶解した溶液を反応系に滴下した。添加完了後に徐々に室温に昇温し、引き続き16時間攪拌した。その後、ジクロロメタン200 mLを反応液に加えて、分液ロートに置き、飽和食塩水(2×200 mL)で洗浄し、有機層を分離した。有機層を無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮してから、シリカゲルと混合し、シリカゲルクロマトグラフィーカラムにかけて、ジクロロメタンとメタノールとアンモニア水(10:1:0.1)の混合溶媒で溶離し、必要な成分を収集し、合併してから、減圧下で蒸発乾燥して、I-5-B 0.7 gを得た。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400 MHz):1.13-1.18(6H, m), 1.24(3H, d), 2.04-2.09(1H, m), 2.26-2.33(1H, m), 2.74(1H, s, br), 3.79-3.84(1H, m), 4.06-4.10(1H, m), 4.21-4.27(2H, m), 4.61(1H, s, br), 4.84-4.92(1H, m), 5.07(1H, d), 5.16(1H, s, br), 5.41(1H, m), 6.03-6.08(1H, m), 6.45(2H, s, br), 7.16-7.24(3H, m), 7.36-7.40(2H, m), 7.66(1H, s), 10.57(1H, s, br)。
【0028】
〔実施例1 2-アミノ-1,9-ジヒドロ-9-[(1S,3R,4S)-4-ヒドロキシ-3-((S)-((S)-1-メトキシカルボニルエチルアミノ-フェノキシ-ホスホリル)-オキシメチル)-2-メチレンシクロペンチル]-6H-プリン-6-オン(II-1)〕
【化6】
【0029】
ステップ1.1 (S)-2-[-(S)-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノキシ)-フェノキシ-ホスファミド]-プロピオン酸メチル(iii-1)の製造
文献(Ross BS, et al. Synthesis of Diastereomerically Pure Nucleotide Phosphoramidates. J Org Chem, 2011, 76: 8311-8319.)により報道される方法を参照して、L-アラニンメチル塩酸塩6.6 g(0.047 mol)を無水ジクロロメタン50 mLに溶解し、-70 ℃に冷却し、トリエチルアミン13.8 mLを滴下した。その後、更にジクロロりん酸フェニル10 gを無水ジクロロメタン40 mLに溶解して、得られた溶液を反応系に滴下した。反応系を2時間以内で0 ℃に昇温し、引き続き1時間攪拌した。ペンタフルオロフェノール8.7 gとトリエチルアミン7.3 mLを無水ジクロロメタン30 mLに溶解して、得られた溶液を20分間以内で反応混合物に加えた。反応混合物を0 ℃で引き続き4時間攪拌し、白色固体を濾過により除去して、濾過ケーキをジクロロメタン20 mLでリンスした。濾液を減圧下で蒸発乾燥し、残量物をn-ヘキサンと酢酸エチル(4:1)の混合溶媒で2回再結晶し、iii-1の白色固体3.8 gを得て、de値は98.6%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400 MHz):1.28(3H, d), 3.61(3H, s), 3.96-4.06(1H, m), 6.91-6.97(1H, m), 7.23-7.28(3H, m), 7.40-7.45(2H, m)。
【0030】
ステップ1.2 化合物II-1の製造
参考実施例の方法を参照して、(S)-2-[-(S)-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノキシ)-フェノキシ-ホスファミド]-プロピオン酸イソプロピル(iii-0)の代わりに、iii-1を無水エンテカビルと反応し、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、化合物II-1を得て、収率は15%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400 MHz):1.24(3H, d), 2.04-2.09(1H, m), 2.26-2.33(1H, m), 2.75(1H, s, br), 3.61(3H, s), 3.85-3.91(1H, m), 4.07-4.11(1H, m), 4.21-4.27(2H, m), 4.61(1H, s, br), 5.03(1H, d), 5.16(1H, s, br), 5.36(1H, m), 6.01-6.07(1H, m), 6.39(2H, s, br), 7.16-7.24(3H, m), 7.36-7.40(2H, m), 7.66(1H, s), 10.55(1H, s)。
【0031】
〔実施例2 2-アミノ-1,9-ジヒドロ-9-[(1S,3R,4S)-4-ヒドロキシ-3-((S)-((S)-1-メトキシカルボニルエチルアミノ-(4-フルオロフェニル)オキシ-ホスホリル)-オキシメチル)-2-メチレンシクロペンチル]-6H-プリン-6-オン(II-2)〕
【化7】
【0032】
実施例1のステップ1.1の方法を参照して、ジクロロりん酸フェニルの代わりに、ジクロロりん酸-(p-フルオロベンゼン)エステルをL-アラニンメチル塩酸塩とペンタフルオロフェノールと次々と反応し、(S)-2-[-(S)-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノキシ)-(p-フルオロフェノキシ)-ホスファミド]-プロピオン酸メチル(iii-2)を得て、収率は25%であり、de値は98.2%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400 MHz):1.28(3H, d), 3.61(3H, s), 3.96-4.06(1H, m), 6.91-6.97(1H, m), 7.20 (2H, dd), 7.27(2H, dd)。
【0033】
参考実施例の方法を参照して、iii-0の代わりに、iii-2を無水エンテカビルと反応し、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、化合物II-2を得て、収率は13%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400MHz):1.24(3H, d), 2.04-2.09(1H, m), 2.26-2.33(1H, m), 2.75(1H, s, br), 3.61(3H, s), 3.85-3.91(1H, m), 4.07-4.11(1H, m), 4.21-4.27(2H, m), 4.61(1H, s, br), 5.03(1H, d), 5.16(1H, s, br), 5.36(1H, m), 6.01-6.07(1H, m), 6.39(2H, s, br), 7.20(2H, dd), 7.23(2H, dd), 7.66(1H, s), 10.55(1H, s)。
【0034】
〔実施例3 2-アミノ-1,9-ジヒドロ-9-[(1S,3R,4S)-4-ヒドロキシ-3-((S)-((S)-1-メトキシカルボニルエチルアミノ-(4-クロロベンゼン)オキシ-ホスホリル)-オキシメチル)-2-メチレンシクロペンチル]-6H-プリン-6-オン(II-3)〕
【化8】
【0035】
実施例1のステップ1.1の方法を参照して、ジクロロりん酸フェニルの代わりに、ジクロロりん酸-(p-クロロベンゼン)エステルをL-アラニンメチル塩酸塩とペンタフルオロフェノールと次々と反応し、(S)-2-[-(S)-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノキシ)-(p-クロロフェノキシ)-ホスファミド]-プロピオン酸メチル(iii-3)を得て、収率は36%であり、de値は98.3%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400 MHz):1.28(3H, d), 3.61(3H, s), 3.96-4.06(1H, m), 6.91-6.97 (1H, m), 7.23(2H, dd), 7.37(2H, dd)。
【0036】
参考実施例の方法を参照して、iii-0の代わりに、iii-3を無水エンテカビルと反応し、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、化合物II-3を得て、収率は16%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400 MHz):1.24(3H, d), 2.04-2.09(1H, m), 2.26-2.33(1H, m), 2.75(1H, s, br), 3.61(3H, s), 3.85-3.91(1H, m), 4.07-4.11(1H, m), 4.21-4.27(2H, m), 4.61(1H, s, br), 5.03(1H, d), 5.16(1H, s, br), 5.36(1H, m), 6.01-6.07(1H, m), 6.39(2H, s, br), 7.23(2H, dd), 7.42(2H, dd), 7.66(1H, s), 10.55(1H, s)。
【0037】
〔実施例4 2-アミノ-1,9-ジヒドロ-9-[(1S,3R,4S)-4-ヒドロキシ-3-((S)-((S)-1-メトキシカルボニルエチルアミノ-(4-ブロモベンゼン)オキシ-ホスホリル)-オキシメチル)-2-メチレンシクロペンチル]-6H-プリン-6-オン(II-4)〕
【化9】
【0038】
実施例1のステップ1.1の方法を参照して、ジクロロりん酸フェニルの代わりに、ジクロロりん酸-(p-ブロモベンゼン)エステルをL-アラニンメチル塩酸塩とペンタフルオロフェノールと次々と反応し、(S)-2-[-(S)-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノキシ)-(p-ブロモフェノキシ)-ホスファミド]-プロピオン酸メチル(iii-4)を得て、収率は41%であり、de値は98.0%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400MHz):1.28(3H, d), 3.61(3H, s), 3.96-4.06(1H, m), 6.91-6.97 (1H, m), 7.23(2H, dd), 7.41(2H, dd)。
【0039】
参考実施例の方法を参照して、iii-0の代わりに、iii-4を無水エンテカビルと反応し、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、化合物II-4を得て、収率は21%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400 MHz):1.24(3H, d), 2.04-2.09(1H, m), 2.26-2.33(1H, m), 2.75(1H, s, br), 3.61(3H, s), 3.85-3.91(1H, m), 4.07-4.11(1H, m), 4.21-4.27 (2H, m), 4.61(1H, s, br), 5.03(1H, d), 5.16(1H, s, br), 5.36(1H, m), 6.01-6.07(1H, m), 6.39(2H, s, br), 7.21(2H, dd), 7.48(2H, dd), 7.66(1H, s), 10.55(1H, s )。
【0040】
〔実施例5 2-アミノ-1,9-ジヒドロ-9-[(1S,3R,4S)-4-ヒドロキシ-3-((S)-((S)-1-メトキシカルボニルエチルアミノ-(4-メトキシ-ベンゼン)オキシ-ホスホリル)-オキシメチル)-2-メチレンシクロペンチル]-6H-プリン-6-オン(II-5)〕
【化10】
【0041】
実施例1のステップ1.1の方法を参照して、ジクロロりん酸フェニルの代わりに、ジクロロりん酸-(p-メトキシ-ベンゼン)エステルをL-アラニンメチル塩酸塩とペンタフルオロフェノールと次々と反応し、(S)-2-[-(S)-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノキシ)-(p-メトキシ-フェノキシ)-ホスファミド]-プロピオン酸メチル(iii-5)を得て、収率は31%であり、de値は98.2%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400 MHz ):1.28(3H, d), 3.61(3H, s), 3.96-4.06(1H, m), 6.91-6.97 (1H, m), 7.13(2H, dd), 7.17(2H, dd)。
【0042】
参考実施例の方法を参照して、iii-0の代わりに、iii-5を無水エンテカビルと反応し、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、化合物II-5を得て、収率は12%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400MHz):1.24(3H, d), 2.04-2.09(1H, m), 2.26-2.33(1H, m), 2.75 (1H, s, br), 3.61(3H, s), 3.70(3H, s), 3.85-3.91(1H, m), 4.07-4.11(1H, m), 4.21-4.27(2H, m), 4.61(1H, s, br), 5.03(1H, d), 5.16(1H, s, br), 5.36(1H, m), 6.01-6.07(1H, m), 6.39(2H, s, br), 7.10(2H, dd), 7.12(2H, dd), 7.66(1H, s), 10.55(1H, s)。
【0043】
〔実施例6 2-アミノ-1,9-ジヒドロ-9-[(1S,3R,4S)-4-ヒドロキシ-3-((S)-((S)-1-メトキシカルボニルエチルアミノ-(4-メチル-ベンゼン)オキシ-ホスホリル)-オキシメチル)-2-メチレンシクロペンチル]-6H-プリン-6-オン(II-6)〕
【化11】
【0044】
実施例1のステップ1.1の方法を参照して、ジクロロりん酸フェニルの代わりに、ジクロロりん酸-(p-メチル-ベンゼン)エステルをL-アラニンメチル塩酸塩とペンタフルオロフェノールと次々と反応し、(S)-2-[-(S)-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノキシ)-(p-メチルフェノキシ)-ホスファミド]-プロピオン酸メチル(iii-6)を得て、収率は38%であり、de値は98.7%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400 MHz):1.28(3H, d), 2.28(3H, s), 3.61(3H, s), 3.96-4.06(1H, m), 6.91-6.97(1H, m), 7.12(2H, dd), 7.20(2H, dd)。
【0045】
参考実施例の方法を参照して、iii-0の代わりに、iii-6を無水エンテカビルと反応し、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、化合物II-6を得て、収率は19%であった。プロトン核磁気共鳴δ (ppm, DMSO-d6, 400 MHz):1.24(3H,d), 2.04-2.09(1H, m), 2.26-2.31(4H, m), 2.75 (1H, s, br), 3.61(3H, s), 3.85-3.91(1H, m), 4.07-4.11(1H, m), 4.21-4.27(2H, m), 4.61(1H, s, br), 5.03(1H, d), 5.16(1H, s, br), 5.36(1H, m), 6.01-6.07(1H, m), 6.39(2H, s, br), 7.06-7.21(4H, m), 7.36-7.40(2H, m), 7.66(1H, s), 10.55(1H, s)。
【0046】
〔実施例7 ヒト血漿及びヒト肝臓ミクロソーム代謝安定性の評価〕
実施例7.1 ヒト血漿安定性の評価
5 mM MgCl2を含むヒト血漿1 mLに、50 mM測定待ち化合物のDMSO溶液2 μLを加えて、37 ℃で保温した。異なる時点で100 μLサンプリングし、メタノール200 μLを加えて、4 ℃、14000 rpmで30 min遠心分離した。上澄100 μLを取り、メタノール100 μLを加え、-20 ℃で冷凍して、使用に備えた。
【0047】
実施例7.2 ヒト肝臓ミクロソーム代謝安定性の評価
5 mM MgCl2と50 mM K2HPO4(pH 7.4)を含む緩衝液1 mLに、50 mM測定待ち化合物のDMSO溶液2 μLを加えてから、4 mg/mLとなるようにヒト肝臓S9成分を加えて、37 ℃で保温した。異なる時点で100 μLサンプリングし、メタノール300 μLを加えて、4 ℃、14000 rpmで30 min遠心分離した。上澄100 μLを取り、メタノール100 μLを加え、-20 ℃で冷凍して、使用に備えた。
【0048】
LC-MS/MSで血漿又は肝臓ミクロソームにおける測定待ち化合物の含有量を測定して、半減期を算出した。装置:Shimadzu社Prominence 20 A液体クロマトグラフィー、Applied Biosystems社API 4000 Q-TRAP質量分析計。マススペクトル条件:ESI陰イオン検出。カラム:Diamonsil C
18(100×4.6 mm、5 μm)カラム。カラム温度:40 ℃。流速:0.5 mL/min。移動相A:メタノール。移動相B:5%メタノール水溶液(2 mMギ酸アンモニウムを含む)、流速0.5 mL/min、勾配溶離は下記表に示される通りである。
【表1】
【0049】
【0050】
上記結果によれば、目標化合物は、血漿及び肝臓ミクロソームにおける安定性が何れもI-5-Bより低く、I-5-Bと似たように、血漿安定性が何れも肝臓ミクロソームにおける安定性より顕著に高い。目標化合物は代謝変換速度がI-5-Bより高く、その同時に似たような肝臓ターゲティングを有する。
【0051】
〔実施例8 ラット薬物動態評価〕
SDラットは、体重が180~220 gであり、1群あたりに6匹であり、雌と雄が半々であり、投与前に12時間絶食させた。測定待ち化合物を0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液に加え、均一に混合して、胃内投与した(投与量100 μmol/kg)。投与前及び投与後の0.25 h、0.5 h、1 h、2 h、3 h、4 h、5 h、6 h、8 h、10 h、12 h、24 hに、0.3 mL/回で頸静脈から採血し、ヘパリンナトリウムで凝固を阻止し、血漿を遠心分離し、-80 ℃で保存して、測定に備えた。
【0052】
薬物を含む血漿50 μLを取り、メタノール50 μLと内部標準アセトアミノフェンメタノール溶液100 μLを加え、1 minボルテックスし、4 ℃、12000 rpmで10 min遠心分離し、上澄を内挿管に取り、LC-MS/MS定量分析を行った(方法が実施例7と同じ)。薬物動態解析ソフトウェアであるWinNonlin 6.3を利用し、ノンコンパートメントモデルモーメント解析法を選択して、血中エンテカビルの薬物動態パラメータを算出した。結果は表2に示す。
【表3】
【0053】
上記結果によれば、化合物II-1とII-6をラットに胃内投与した場合、エンテカビルはI-5-Bよりバイオアベイラビリティが明らかに高い。
【0054】
〔実施例9 ビーグル薬物動態評価〕
雄ビーグル(7~8月齢、体重7~10 kg)をランダムに群分けして、1群あたりに2匹で体重を量った。投与前に12時間絶食させた。所定濃度の測定待ちサンプルを研磨して、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液に懸濁し、II-1(5 mg/kg)、II-6(5.13 mg/kg)又はI-5-B(5.27 mg/kg)を胃内投与した。投与前及び投与後の0.5 h、1 h、2 h、4 h、6 h、8 h、10 h、24 hに、0.5 mL/回で前足の橈側皮静脈から採血し、ヘパリンナトリウムで凝固を阻止し、血漿を遠心分離し、-80 ℃で保存して、測定に備えた。
【0055】
薬物を含む血漿50 μLを取り、メタノール50 μLと内部標準アセトアミノフェンメタノール溶液100 μLを加え、1 minボルテックスし、4 ℃、12000 rpmで10 min遠心分離し、上澄を内挿管に取り、LC-MS/MS定量分析を行った(方法が実施例7と同じ)。薬物動態解析ソフトウェアであるWinNonlin 6.3を利用し、ノンコンパートメントモデルモーメント解析法を選択して、目標化合物投与後の血中エンテカビル又はプロドラッグプロトタイプの薬物動態パラメータを算出した。最大血中薬物濃度は表3に示す。
【表4】
【0056】
上記結果によれば、化合物II-1をビーグルに胃内投与した場合、プロドラッグプロトタイプの血中薬物濃度がI-5-Bより明らかに低く、エンテカビルの血中薬物濃度がI-5-Bより明らかに高いため、II-1投与後の代謝変換がより十分である。
【0057】
〔実施例10 ビーグル組織分布評価〕
雄ビーグル(7~8月齢、体重7~10 kg)をランダムに群分けして、1群あたりに4匹で体重を量った。所定濃度の測定待ちサンプルを研磨して、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液に懸濁し、II-1(用量:5 mg/kg)又はI-5-B(用量:5.27 mg/kg)のカルボキシメチルセルロースナトリウム懸濁液を、1日1回で連続4日胃内投与した。最終回の投与後に、水を制限せずに4時間絶食させ、ペントバルビタールで動物を麻酔し、臓器を取り出して、食塩氷水で洗浄してから、液体窒素で冷凍し、使用に備えた。
【0058】
冷凍組織を取り、冷凍した70%メタノール(20 mM EDTA/EGTAを含む)を3倍の量で加え、ホモジネートを製造して、4 ℃、12000 rpmで10 min遠心分離し、上澄を内挿管に取り、LC-MS/MS定量分析を行い、各組織におけるエンテカビルトリホスフェートの含有量を測定した。装置:アメリカFinnigan社 TSQ Quantum型液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS/MS)であり、Finnigan Surveyor LCポンプ、Surveyor ASオートサンプルインジェクター、エレクトロスプレーイオン化イオン源(ESI)及び3段階タンデム質量分析から構成される。制御ソフトウェアはXcalibur 1.4であり、質量分析はLcquan 2.0データ処理システムを採用する。カラム:Discovery ODSカラム(250 mm×4.6 mm、5 μm)、C18保護カラム(4 mm×3.0 mm)。移動相:メタノール-水-ギ酸(10~30:90~70:0.5、V/V/V)。流速:0.7 mL/min。サンプル量:20 μL。カラム温度:室温。
【0059】
【0060】
上記結果によれば、化合物II-1をビーグルに胃内投与した場合、肝臓における活性形態のエンテカビルトリホスフェートの含有量がI-5-Bより明らかに高く、より優れた肝臓ターゲティングを有する。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明した。ところが、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の要旨及び原則を逸脱しない範囲で何れかの修正、同等の取替え、改良などを行っても、本発明の請求範囲内に含まれる。
【国際調査報告】