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特表2023-520836キュベットを通る光路長を判定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】キュベットを通る光路長を判定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3577 20140101AFI20230515BHJP
【FI】
G01N21/3577
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543437
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 IB2020059690
(87)【国際公開番号】W WO2021144630
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】PA202000051
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513134993
【氏名又は名称】フォス アナリティカル アグシャセルスガーッブ
【氏名又は名称原語表記】FOSS ANALYTICAL A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クラウセン,イェッペ サンドビック
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB05
2G059CC09
2G059CC14
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE12
2G059HH01
2G059JJ01
2G059LL01
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM14
2G059MM17
2G059NN07
(57)【要約】
分光測定装置のキュベットの光路長(L)を判定するための方法は、液体ゼロ材料が吸収する少なくとも第1のエネルギー領域における液体ゼロ材料の単一ビームスペクトル(SBZ)を取得すること(720)と、少なくとも第1のエネルギー領域において第2の液体の単一ビームスペクトル(SB2)を取得すること(740)であって、第2の液体は、液体ゼロ材料を除いた組成を有し、かつ第1のエネルギー領域において吸光を有さない、ことと、取得された2つの単一ビームスペクトル(SBZ;SB2)から、少なくとも第1のエネルギー領域において第2の液体に対する液体ゼロ材料のデュアルビームスペクトル(DBZ)を判定すること(760)と、判定されたデュアルビームスペクトル(DBZ)の第1のエネルギー領域から取得されたスペクトル情報に依存して、キュベットを通る光路長(L)を計算すること(780)と、を含む。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光測定装置(100)のキュベット(620)の光路長(L)を判定するための方法であって、前記分光測定装置(100)は分光計(300)を含み、それに関連するコンピューティング装置(510)を有し、前記方法は、前記分光計(300)を用いて、液体ゼロ材料が吸収する少なくとも第1のエネルギー領域において前記キュベット(620)に保持された前記液体ゼロ材料の単一ビームスペクトル(SB)を前記コンピューティング装置(510)に取得する(720)ことと、前記分光計(300)を用いて、少なくとも前記第1のエネルギー領域において第2の液体の単一ビームスペクトル(SB)を前記コンピューティング装置(510)に取得する(740)ことであって、前記第2の液体は、前記キュベット(620)内の前記液体ゼロ材料を置き換え、前記液体ゼロ材料を除いた組成を有し、かつ前記第1のエネルギー領域において吸光を有さない、ことと、前記コンピューティング装置(510)において、前記取得された2つの単一ビームスペクトル(SB;SB)から、少なくとも前記第1のエネルギー領域において前記第2の液体に対する前記液体ゼロ材料のデュアルビームスペクトル(DB)を判定する(760)ことと、前記コンピュータ装置(510)において、前記判定されたデュアルビームスペクトル(DB)の前記第1のエネルギー領域から取得されたスペクトル情報に依存して、前記キュベット(620)を通る光路長(L)を計算する(780)ことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記光路長(L)は、前記コンピュータ装置(510)において、前記判定されたデュアルビームスペクトル(DB)の前記第1のエネルギー領域から得られた前記スペクトル情報に数学的モデルを適用することによって計算され、前記数学的モデルは、前記スペクトル情報の特徴を光路長(L)に連携するために構築された、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記数学的モデルは、各々が複数の異なる既知の参照光路長(LRef)で判定された、前記第2の液体に対する前記液体ゼロ材料の複数のデュアルビームスペクトルから取得されたスペクトル情報のケモメトリックス分析を使用して構築された数学的モデルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のデュアルビームスペクトルは、1つ以上の環境条件の複数の異なる既知の値の下でも取得される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の液体は前記液体ゼロ材料と非混和性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体ゼロ材料は水であり、前記第2の液体は疎水性液体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記疎水性液体は植物油である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記疎水性液体はシロキサンベースである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記疎水性液体はシリコーン油である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記疎水性液体は鉱物油である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
分光測定装置(100)の出力の振幅変化を補正する方法であって、前記分光測定装置(100)は、液体サンプル(610)を保持するためのキュベット(620)と分光計(300)とを含み、関連するコンピューティング装置(510)を有し、前記方法は、前記コンピューティング装置(510)によって、前記分光測定装置(100)の前記出力の振幅変化を補正するために、液体ゼロ材料に対する前記液体サンプルのデュアルビームスペクトル(DB)に数学的変換(Icorr)を適用することを含み、数学的変換(Icorr)は、前記判定されたデュアルビームスペクトル(DB)の前記振幅値の所望の振幅値への変換を表し、前記数学的変換(Icorr)は、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法に従って計算された前記キュベット(620)の光路長(L)に依存する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光測定装置のキュベットを通る光路長を判定する方法、およびそのような装置の出力における光路長に依存する振幅変化を補正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分光測定装置は、典型的には、分析のためにサンプルが配置される光路の両端を区切る発光体および光検出器を含む。液体または他の流動性サンプル用のサンプルキュベットを含むようなサンプルホルダは、光路内に配置され、その中にサンプルを繰り返し配置するために使用される。モノクロメータや干渉計などの分光計も光路に配置され、発光体からの光を、強度に依存する狭いスペクトル帯域に分離し、光検出器による検出のために光を出力し、発光体から光検出器への光の移動方向においてサンプルホルダの前または後に配置できる。
【0003】
サンプルホルダは、内部サンプル受容体積を有し、表面、通常は対向する表面を備えており、その少なくとも一部は、光路を通過する光に対して透明である。これらの透明な部分の間の分離は、サンプルホルダを通り、したがってサンプルホルダのサンプル受容体積に保持されているサンプルを通る光路長を判定する。
【0004】
分光測定装置で必要なスペクトルデータを取得する通常の方法は、サンプルの透過率(または吸光度)スペクトルを生成することである。これを行うために、サンプルおよびそれを生成するために使用される装置の構成要素に関連するスペクトルデータを含む、いわゆる単一ビームスペクトル(SB)が取得される。サンプルのみに関連するスペクトルデータを分離するために、同様の単一ビームスペクトル(SB)は典型的には、例えば、測定対象のサンプルが液体の場合、水や水ベースの材料、または例えば、測定対象のサンプルが固体の場合、空気などのいわゆるゼロ材料で測定される。このような単一ビームスペクトル(SB)は、サンプルスペクトル(SB)が行うのと同じ装置の構成要素に関連する効果を含むが、サンプルによる効果は存在しない。次に、ゼロ材料スペクトルを使用して、スペクトルデータが収集されるスペクトル領域全体に波長依存のゼロレベルを提供する。
【0005】
続いて、サンプルの単一ビームスペクトル(SB)を、それぞれのスペクトル全体で同じ波長のゼロ材料(SB)の単一ビームスペクトルで除算して、実質的にゼロ材料に対するサンプルの透過率スペクトルであり、サンプルの透過特性にのみに実質的に関係するサンプルのいわゆるデュアルビームスペクトル(DB)を取得する。よく知られているように、これの負のlog10を取ると、サンプルの吸光度スペクトルが得られる。これらの動作は、分光測定装置に関連付けられ、装置と一体または別個であるが、例えば適切にプログラムされたパーソナルコンピュータの形態で装置に動作可能な接続で提供されるコンピューティング装置の算術ユニットで実行される。
【0006】
時間の経過とともに、分光測定装置の出力は変化する傾向がある。この変動の態様は、振幅変化として説明することができ、その結果、2つの他の点では類似した分光測定装置で同じサンプルの同じ波長で、または異なる時間に同じ分光測定装置を2回実行して異なる振幅が測定される。これは通常、サンプルホルダの摩耗により、対向する透明部分間の間隔が変化し、したがってサンプルホルダを通る光路長が変化するために発生する。知られているように、ランベルトベールの法則によれば、特定のエネルギー(波長または波数)でのサンプルによる光の吸光度は、サンプルを通過する光路長に比例する。したがって、サンプルホルダが摩耗し、光路長が変化すると、分光測定装置の出力の振幅が変化し、一定の間隔で補正する必要がある。
【0007】
サンプルホルダの摩耗による分光測定装置の出力の振幅変化を補償するために、例えば、米国特許第5,933,792号から、いわゆる標準化液体(しばしば「同等化液体(equalization liquid)」と称される)に対するデュアルビーム分光測定を採用することが知られている。この標準化液体は、正確に制御された化学組成を有する液体であり、分光計によって記録された光学スペクトルをもたらし、所定の周波数範囲で特徴的な強度を有する特徴的なパターンを示す。米国特許第5,933,792号に記載されている標準化液体は、水中のプロパノールである。パターンに関連する強度情報は、算術ユニットで、標準化液体からの所望の標準応答として以前に定義された参照パターンに関連する対応する強度情報と比較される。次に、比較に基づいて、算術ユニットは、分光測定装置によって記録された光学スペクトルのパターンの強度の、所望の標準応答の参照パターンの強度への変換を記述する数学的変換を生成する。この数学的変換は、サンプルホルダの摩耗による振幅変化が補償される光学スペクトルを生成するために、分光測定装置によって後で記録される未知のサンプルの光学スペクトルに適用するために、算術ユニットによってアクセスするために保存される。この既知の補償方法の問題は、標準化液体の組成を正確に制御する必要があることである。
【0008】
特別に構成された標準化液体を使用せずに分光測定装置の出力の振幅変化を補償する方法は、米国特許第9,874,515号から知られている。ここでは、別の標準化液体の代わりに、通常は水であり、困難な製造を必要としない液体ゼロ材料が使用される。ゼロ材料(SB)、通常は水の単一ビームスペクトルは、分光測定装置によって記録されたスペクトルからサンプルホルダの摩耗の影響を受けないスペクトルへの変換を表す数学的変換を決定する際に使用される。残念ながら、そのように記録されたゼロビーム吸収スペクトル(SB)には、キュベット内のゼロ物質に関する情報だけでなく、大気中の要素や光学構成要素に関連する要素など、ゼロ材料とは無関係であるが、光の強度に影響を与える発光体と光検出器との間の光路内の要素に関するバックグラウンド情報も含まれてる。このバックグラウンド情報を削除するために、米国特許第9,874,515号によって提案された1つの解決策は、空気の単一ビーム吸収スペクトル(SB)を判定することであり、これは次いで、水のゼロビーム吸収スペクトル(SB)のものと同じバックグラウンド情報を収容するが、当然ながら、水からの寄与はない。したがって、本質的に空気に対するゼロ材料の透過率スペクトルであるゼロ材料のデュアルビームスペクトル(DB)は、実質的にゼロ材料の透過特性にのみ関連する。ただし、典型的なキュベットの対向する透明なウィンドウの間の間隔は約50μmである。これにより、このようなバックグラウンド測定中にすべてのサンプルが除去され、キュベット内に空気のみが存在することを確認することが困難になる。補正測定ごとにキュベットを分解して完全に乾燥させることは実用的ではなく、補正測定ごとにサンプルキュベットを乾燥したものと交換することも同様である。また、キュベットのウィンドウからの複数の反射のために、キュベットに空気が導入されると発生する、記録されたスペクトルの干渉縞は、分析をさらに複雑にする。
【0009】
米国特許第9,874,515号で提案されている別の解決策は、バックグラウンド情報の数学的推定を行うことである。ただし、このような見積もりは、特定の状況および特定のアプリケーションでは不十分な精度であることが示されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、既知の方法の少なくとも1つに関連する問題の1つ以上を軽減することである。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、方法が提供され、分光測定装置のキュベットの光路長を判定するための方法であって、分光測定装置は分光計を含み、それに関連するコンピューティング装置を有し、方法は、分光計を用いて、液体ゼロ材料が吸収する少なくとも第1のエネルギー領域においてキュベットに保持された液体ゼロ材料の単一ビームスペクトルをコンピューティング装置に取得することと、分光計を用いて、少なくとも第1のエネルギー領域において第2の液体の単一ビームスペクトルをコンピューティング装置に取得することであって、第2の液体は、キュベット内の液体ゼロ材料を置き換え、液体ゼロ材料を除いた組成を有し、かつ第1のエネルギー領域において吸光を有さない、ことと、コンピューティング装置において、取得された2つの単一ビームスペクトルから、少なくとも第1のエネルギー領域において第2の液体に対する液体ゼロ材料のデュアルビームスペクトルを判定することと、コンピュータ装置において、判定されたデュアルビームスペクトルの第1のエネルギー領域から取得されたスペクトル情報に依存して、キュベットを通る光路長を計算することと、を含む、方法が提供される。使用されるエネルギー領域は、第2の液体が感知できるほどの吸光を示さない領域であるため、特徴的な吸光を生じさせる第2の液体の成分の量が制御されることは重要ではない。
【0012】
いくつかの実施形態では、液体ゼロ材料は水である。これには、化学成分の正確な混合などの特別な準備が不要であるという利点がある。
【0013】
いくつかの実施形態では、第2の液体および液体ゼロ材料は非混和性であり(少なくとも、他方の液体中の一方の液体の存在が、他方の液体について記録された単一ビームスペクトルを検出可能に変更しない量である程度まで)、例えば、第2の液体は、液体ゼロ材料が水である場合、植物油、シロキサンベースの油(例えば、シリコーン油)または鉱物油などの疎水性液体である。これは、第2の液体と液体ゼロ材料とがそれぞれの単一ビームスペクトルの測定のために完全に交換できるようにするのに役立つ。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、分光測定装置の出力の振幅変化を補正する方法であって、分光測定装置は、液体サンプルを保持するためのキュベットと分光計とを含み、関連するコンピューティング装置を有し、方法は、キュベット内の未知の液体サンプルを複数のエネルギーにおける電磁放射に曝露することと、分光計を使用してコンピューティング装置に、未知の液体サンプルの単一ビームスペクトルを取得することと、液体ゼロ材料に対する未知の液体サンプルのデュアルビームスペクトルをコンピューティング装置において判定することと、コンピュータ装置によって、分光測定装置の出力の振幅変化を補正するために、デュアルビームスペクトルに数学的変換を適用することと、を含み、数学的変換は、判定されたデュアルビームスペクトルの振幅値の所望の振幅値への変換を表し、数学的変換は、本発明の第1の態様による方法によって計算されたキュベットの光路長に依存する、方法が提供される。
【0015】
当業者によって理解されるように、分光測定装置で使用および/または検出される電磁放射のエネルギーは、記載および特許請求された本発明の範囲内に留まりながら、波数、波長、周波数、またはチャネル数などの相互に関連するいくつかの単位を使用して表すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明に関連する前述のおよび他の利点は、添付の図を参照して行われる、本発明の非限定的な例示的な実施形態の態様の以下の説明の考察から明らかになるであろう。
図1】本発明の方法によって動作する分光測定装置の実施形態を概略的に示す。
図2図1に示すサンプルホルダの概略断面上面図を示す。
図3】本発明による光路長および補正係数を決定する方法を示すブロック図である。
図4】水の単一ビームスペクトルと植物油の単一ビームスペクトルとを示す。
図5】植物油に対する水のデュアルビームスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、分光測定装置100の実施形態を、吸収分光法の文脈で図1および図2を参照して説明する。装置100は、放射装置200、本実施形態では干渉計装置である分光計300、検出器400、測定装置500、および分析されるサンプルを保持するためのサンプルホルダ600である。
【0018】
放射装置200は、図1および図2の文字Rによって示される方向の電磁スペクトルの紫外線から赤外線のエネルギー範囲の一部またはすべてから多色放射を放射するように配置された放射源210を備える。本実施形態では、単なる例として、放射源210は、赤外線エネルギー範囲内からのみ放射するように構成される。エネルギー範囲は、装置100によって測定される液体サンプルのタイプの予想される吸収特性に応じて選択されるべきであり、典型的には、電磁スペクトルの紫外線と赤外線エネルギー範囲の間のエネルギー領域(複数可)内から拡張してもよいことを理解されたい。
【0019】
本実施形態の分光計300は、当業者によく知られているように、フーリエ変換分光法を実施するために必要な装置を含む。例えば、分光計300は、赤外線放射をコリメートするコリメータと、干渉計に含まれる追加の機器、例えば、可動および静的ミラー、ビームスプリッタおよびレンズなどの光学構成要素を備える。当技術分野で知られている他のタイプの光学分光計を実施するための他の装置を、他の実施形態で使用することができる。
【0020】
検出器400は、サンプルホルダ600を透過して入ってくる赤外線放射を検出するように構成され、以下をさらに参照されたい。
【0021】
測定装置500は、検出された赤外線放射に関する未処理のデータを収集するために検出器400に接続され、それを関連するコンピューティング装置510に送信する。コンピューティング装置510は、有線または無線であり得る接続によって、測定装置500に接続され、いくつかの実施形態では、測定装置500と一体である。測定装置500は、このコンピューティング装置510によって、波数軸に沿って等距離に配置された離散数のチャネルの透過率を決定するように構成される。コンピューティング装置510は、収集されたデータを処理するためのプロセッサ、適切なコンピューティングソフトウェア、ならびに当業者に周知の追加の機器を備える。さらに、コンピューティング装置510は、収集されたデータおよび処理されたデータを関連するメモリに記憶するように構成される。本実施形態によれば、フーリエ変換アルゴリズムを使用するルーチンは、検出器400からの未処理のデータを波数の関数として強度に関するデータに変換するために使用される。さらに、コンピューティング装置510は、2次元プロットの観点でデータをグラフィカルに提示するように動作するように構成され得、以下の図4および図5を参照されたい。
【0022】
さらに以下に、この分光測定装置100の強度逸脱(「振幅変化」とも称される)を補正するための方法を説明する。
【0023】
サンプルホルダ600は、本実施形態では、分光計300を形成する干渉計装置と検出器400との間に配置される。さらに、サンプルホルダ600は、本明細書では、それを透過する赤外線放射を監視し、そこから単一ビームスペクトルSBを生成することによってスペクトル分析される液体サンプル610を保持するように構成される。本実施形態では、水サンプル610は、参照またはいわゆる「ゼロ」流体として使用されて、本発明による方式でキュベット光路長の判定と、それに依存する分光計によって記録された信号の振幅の補正を実行し、以下をさらに参照されたい。水サンプル610は、サンプルホルダ600のキュベット620に配置され、キュベット620は、部分的にフッ化カルシウムから作られている。キュベット620の外面は、矩形の平行六面体として成形されている。キュベット620は、内側壁630と、ウィンドウ要素640と、スペーサ650と、空洞660と、液体サンプル610を保持するためのサンプル空間622とを有しており、図2の断面上面図を参照されたい。内側壁630およびウィンドウ要素640は、放射源210によって放射され、液体サンプル610を通じて送られる赤外線放射に対して透明である。スペーサ650は透明である必要はないことに留意されたい。例えば、スペーサ650は、プラスチックから構成され得る。サンプル空間622の容積は、スペーサ650の延在範囲を変化させることにより、変化させてもよい。さらに、液体サンプル610をサンプル空間622に導入するための入口670と、液体サンプル610を空間622から除去するための出口680とが存在する。本実施形態によれば、液体サンプル610は、計測の際には、図2の矢印によって示されているように、サンプル空間622を介して、入口670から出口680まで流れることにより、運動状態において維持されている。しかしながら、他の実施形態では、液体サンプル610は、測定の際に、サンプル空間622内で静止状態に維持され、この実施形態では、入口670および出口680は省略され得る。
【0024】
サンプル空間622において赤外線放射によってカバーされている距離は、光路長Lと称される。本実施形態では、放射は、液体サンプル610を図1および図2の方向Rにおいてキュベット620の側部エッジとの関係において直角に透過することから、光路長Lは、ウィンドウ要素640の間において、キュベット620の内側長さの延在範囲と一致している。キュベット620が摩耗すると、光路長Lは変化(増大)する。
【0025】
他の実施形態では、分光計で測定される光放射は、サンプル空間622内の液体サンプル610を複数回横断した(例えば、ウィンドウ要素640の1つからの反射後)放射であり得る。そのような実施形態では、光路長Lは、キュベット620の内側長さの延長と一致しないが、既知の方法で、システムの検出形状に応じて、これのいくらかの倍数になる。しかしながら、光路長Lは依然として内部長さの延長に依存するため、この内側長さの延長へのいかなる変化も、検出器400によって検出される光放射の振幅の変化として現れることが理解されよう。
【0026】
実際に、水サンプル610と接触するウィンドウ要素640がフッ化カルシウムから製造されている場合には、これらのウィンドウ要素640は、時間とともに分解されることになる。また、その耐用期間において、キュベット620は、その他の化学物質によっても劣化し得る。例えば、ウィンドウ要素640の厚さT(図2を参照されたい)は、時間に伴って相対的に小さくなる。結果として、ウィンドウ640間の分離は、時間とともに増加し、光路長Lの変化を引き起こす。さらに、同じタイプ100の異なる装置に配置されたキュベット620は、異なる光路長Lを有し得る。例えば、異なる光路長Lは、キュベット620がある時点で実質的に類似していたとしても、キュベット620のウィンドウ要素640をさまざまな程度に分解させた結果として生じ得る。さらには、スペーサ650の延在範囲も、異なるキュベット620の間において変化し、これにより、変化する光路長をもたらし得る。したがって、同じタイプ100の異なる装置の特性をより類似させ、同じ装置100の特性を経時的により安定させるために、光路長Lを判定し、変化を補正する必要がある。
【0027】
キュベット620の光路長Lを判定するための方法700は、図3の流れ図を参照して説明される。説明は、図1および図2に示される分光計100に関して例示され、その検出器400は、図1および図2の方向Rにおいて、キュベット620の側部エッジとの関係において直角に光路長Lの光路に沿ってサンプルホルダ600を透過する入射赤外線放射を検出するように配置され、これは、次いで、ウィンドウ要素640の間で、キュベット620の内側長さの延在範囲と一致する。
【0028】
本実施例によれば、この方法は、液体ゼロ材料サンプルの単一ビームスペクトルSBを利用し、これは、キュベット620を通る光路長Lを検出するための、本明細書では名目上純粋な水サンプルである(水サンプルは、測定された単一ビームスペクトルSBに影響を与えない約0.01%体積洗浄剤などの少量の他の成分を含み得る)。分光測定装置100は、水サンプルの測定値を使用して補正された後、当該分野で既知の方式で、これらのサンプル中の対象成分の定量的判定を行うために、ミルクまたはワインなどの他の液体サンプルの測定に使用することができる。
【0029】
ステップ720で、液体ゼロ材料がサンプル空間622に導入され、ゼロ液体サンプルSBの単一ビームスペクトルが、分光計300を使用してコンピューティング装置510に取得される。このようなスペクトルAを図4に示し、これは、波数に対してインデックスが付けられ、少なくとも第1のエネルギー領域(図において「関連領域」として識別される)で収集された、検出された放射(ここでは電磁スペクトルの赤外線部分)の強度のプロットを示し、第1のエネルギー領域では、ゼロ液体材料が、放射源210によって放射される入射光放射の少なくとも一部を吸収する。
【0030】
ステップ740で、キュベット620内の液体ゼロ材料サンプル610は、液体ゼロ材料を除いた組成を有し、第1のエネルギー領域において吸光を有さないことを特徴とする第2の液体サンプルと交換される。第2の液体サンプルSBの単一ビームスペクトルは、再び分光計300を使用して、コンピューティング装置510に取得される。このようなスペクトルBの例は、ここでは例えばコーン油であり、少なくとも第1のエネルギー領域で収集される植物油についても図4に示されている。
【0031】
一般に、第2の液体はゼロ液体と非混和性であることが好ましい。これは、ここでは例としてゼロ液体である、キュベット620内にすでにある液体610が、ここでは例として第2の液体である他の液体によって完全に置き換えられることを確実にするのに役立つ。ゼロ液体が測定のためにキュベット620内の第2の液体と置き換わるように、ステップ720および740を実行する順序を逆にすることができることが理解されよう。液体ゼロ材料が水である本例では、疎水性の第2の液体は、例えば、ヒマワリ、オリーブ、トウモロコシまたはブドウ油などの植物油、シリコーン油などのシロキサンベースの油、および鉱物油から選択される液体であり得る。
【0032】
ステップ760において、コンピューティング装置510は、少なくとも第1のエネルギー領域において、第2の材料DBに対するゼロ材料のデュアルビームスペクトル、およびそれからの吸光度スペクトルを判定するように動作する。このようなデュアルビーム吸光度スペクトルを図5に示す。
【0033】
ステップ780で、キュベット620を通る光路長Lが、コンピューティング装置510において計算される。いくつかの実施形態では、これは、水のモル吸光率の知識を使用して、ステップ760で判定される第1のエネルギー領域の吸光度スペクトルへのランベルトベールの法則の適用から行われる。いくつかの実施形態では、この光路長Lは、吸光度スペクトルの特徴をキュベット620を介して光路長Lに連携するPLSモデルなどのケモメトリックスモデルの適用から判定される。このモデルは、異なる既知の参照光路長Lrefを有するキュベット620を使用して得られた油(または一般に「第2の液体」)と比較して、水(または一般に「液体ゼロ材料」)の複数のデュアルビーム吸光度スペクトルの部分最小二乗(PLS)分析などの多変量データ分析からケモメトリックスの分野でよく知られている方法で生成される。
【0034】
状況によっては、多変量解析に1つ以上の追加の変数を組み込むことが適切な場合がある。分光測定装置100によって収集される吸光度スペクトルに影響を及ぼし得るそのような他の変数の例は、温度である。この場合、モデルの生成に使用するために収集されるスペクトルは、異なる既知の温度で、好ましくは通常の動作中に装置100が経験すると予想される温度にまたがる温度範囲にわたって収集される。それにより、1つ以上の他の変数の変動は、最終的に計算された光路長Lにおいて補償され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、そのように計算された光路長Lは、コンピューティング装置510において、プリセット値および判定された差ΔLと比較され得る。次に、コンピューティング装置510は、差ΔLがプリセット値以上である場合に、キュベット620が過度に摩耗し、交換が必要であることを示す警告を生成するようにプログラムされ得る。
【0036】
ステップ780で判定される実際の光路長Lの知識は、いくつかの実施形態において、分光測定装置100によって測定される放射の強度に対する光路長の変化の影響を補正する際に使用するための補正係数Icorrのコンピューティング装置510での計算において使用され得る。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、補正係数Icorrが、判定された光路長Lに対する公称光路長Lの比に依存するものとしてコンピューティング装置510において決定される追加のステップ800が提供される。
【0038】
いくつかの実施形態では、ステップ820が提供され、続いて取得されたスペクトルは、この補正係数Icorrを使用して補正される。
【0039】
このステップ820で、例えば、以下の関係を適用することによって、測定された強度Aを公称光路長Lで期待されるもの(Anom)に補正するために、Icorrをコンピューティング装置510で使用することができる。
nom=Icorr・A
【0040】
いくつかの実施形態では、このステップ820で、補正係数Icorrをコンピューティング装置510で使用して、この補正係数Icorrに依存する制御信号を生成することができ、それによって、検出器400の利得段410を、入射放射線の測定された強度の振幅を、公称光路長Lで予想されるものに補正するように設定することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、分光測定装置100の分光計300を使用して収集された単一ビームスペクトルのx軸(または波数スケール)は、y軸(振幅)補正が実行される前に(すなわち、補正係数Icorrが適用される前に)標準化される。これは、変換測定データがx軸に沿って標準化される単一ビームスペクトルに数学的変換を適用することによって、当技術分野でよく知られている方式で達成することができる。いくつかの実施形態では、x軸の標準化は、以下に説明するように、赤外線範囲の空気のCOピークに基づく。
【0042】
知られているように、このx軸標準化は、装置100によって記録された光学スペクトルを提供し、装置100内の光路内の大気の成分に由来するスペクトルパターンを含むことによって、装置100によって記録された光学スペクトルの波数スケールを標準化することと、装置100内の大気の成分、ここでは空気中のCOに由来するスペクトルパターンを選択することと、選択されたスペクトルパターンに関連する1つ以上の波数に依存する位置値を決定することと、決定された値(複数可)と選択されたスペクトルパターンの対応する参照値(複数可)との間の差に基づいて数学的変換を構築することと、波数スケールを標準化するために装置100によって続いて記録される光学スペクトルに数学的変換を適用することと、を含み得る。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】