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特表2023-520858コーティングされた印刷基材及びその調製プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】コーティングされた印刷基材及びその調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20230515BHJP
   C09D 11/106 20140101ALI20230515BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20230515BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230515BHJP
   C09D 191/06 20060101ALI20230515BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230515BHJP
【FI】
B32B27/40
C09D11/106
C09D11/52
C09D175/04
C09D191/06
C09D7/63
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557877
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 US2021020221
(87)【国際公開番号】W WO2021206825
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/006,763
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】カサルビアス、フアン カルロス
(72)【発明者】
【氏名】カミネロ ゴメス、ジョルジ
(72)【発明者】
【氏名】カルドソ マッツォーラ、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】シプロ、マテウス
(72)【発明者】
【氏名】ウー、チエ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4F100AJ11B
4F100AK03B
4F100AK04A
4F100AK51C
4F100AK71A
4F100AT00A
4F100CA13B
4F100CA17B
4F100CA30B
4F100EH46C
4F100HB31B
4F100JG01B
4J038BA212
4J038DG051
4J038DG261
4J038JA57
4J039AD01
4J039EA24
(57)【要約】
コーティングされた印刷基材を製造するためのプロセスであって、(a)印刷基材を提供することであって、基材が、インクの層の1つ以上の領域に存在する表面を含む、提供することと、(b)成分A及び成分Bを一緒にして、ウレタンコーティング組成物を形成することであって、成分AがポリイソシアネートプレポリマーA1を含み、ポリイソシアネートプレポリマーA1が、ポリイソシアネートモノマーA1aとイソシアネートポリ反応性化合物A1bとの反応生成物であり、成分Bが1つ以上のポリオールB1を含み、ウレタンコーティング組成物が0.9超のイソシアネート指数を有する、形成することと、(c)ウレタンコーティング組成物の層を表面に塗布することと、を含む、プロセス。かかる方法によって作製されたコーティングされた印刷基材も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた印刷基材を製造するためのプロセスであって、
(a)印刷基材を提供することであって、前記基材が、インクの層の1つ以上の領域に存在する表面を含み、前記インクが、
(i)1つ以上のオレフィンコポリマーと、
(ii)1つ以上の顔料、1つ以上の染料、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の外観添加剤と、
(iii)1つ以上の導電性添加剤と、を含む、提供することと、
(b)成分A及び成分Bを一緒にして、ウレタンコーティング組成物を形成することであって、
成分AがポリイソシアネートプレポリマーA1を含み、前記ポリイソシアネートプレポリマーA1が、ポリイソシアネートモノマーA1aとイソシアネートポリ反応性化合物A1bとの反応生成物であり、
成分Bが1つ以上のポリオールB1を含み、
前記ウレタンコーティング組成物が0.9超のイソシアネート指数を有する、形成することと、
(c)前記ウレタンコーティング組成物の層を前記表面に塗布することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記ポリオールB1が1つ以上のポリウレタンポリオールB1PUを含み、ポリオールB1PUが、ポリイソシアネートモノマーB1PUaとポリオールB1PUbとの反応生成物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記オレフィンコポリマーが、エチレン/アクリルコポリマー、エチレン/エステルコポリマー、エチレンカルボニルコポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
成分Aが1つ以上の脂肪トリグリセリドを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
成分Aが1つ以上のワックスエステルを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
成分Bが1つ以上のブロッキング防止剤を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
成分Bが1つ以上の湿潤剤を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記基材がポリエチレンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記イソシアネートポリ反応性化合物A1bが、1つ以上のポリエーテルポリオール、1つ以上のポリエステルポリオール、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ウレタンコーティング組成物が0.9~1.6のイソシアネート指数を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項1に記載のプロセスによって作製された、コーティングされた印刷基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多くの場合、プラスチック表面上に画像を作成するために印刷用インクを使用することが望ましい。その後、通常、印刷表面を保護することが望ましい。保護なしでは、画像は、例えば、輸送中又は取り扱い中に起こり得るスクラッチングによって、及び/又は例えばシーリング操作中に印刷表面が加熱されたときの歪みによって損傷を受けやすい。昔は、通常積層により被覆透明プラスチックフィルムを印刷表面に貼り付けることによって、印刷画像を保護することが一般的であった。かかる積層体は、多くの場合、製造プロセスにおける複雑さを増大させる又はコストを増大させるという望ましくない特徴のうちの1つ以上を有する。
【0002】
国際公開第2016/196168号は、フィルムがポリエチレンを含み、コーティングがポリウレタンを含む、コーティングされたフィルムを記載している。
【0003】
良好な外観、良好な耐摩耗性、良好な耐高温性、及び/又は良好な耐薬品性という利点のうちの1つ以上を有するコーティングされた印刷基材を作成する方法を提供することが望ましい。好ましくは、コーティングされた印刷基材は、被覆プラスチック層をコーティングされた表面に貼り付ける必要がない十分な程度までこれらの利点のうちの1つ以上を有する。
【0004】
以下は、本発明の記述である。
【0005】
本発明の第1の態様は、コーティングされた印刷基材を製造するためのプロセスであって、
(a)印刷基材を提供することであって、基材が、インクの層の1つ以上の領域に存在する表面を含み、インクが、
(i)1つ以上のオレフィンコポリマーと、
(ii)1つ以上の顔料、1つ以上の染料、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の外観添加剤と、
(iii)1つ以上の導電性添加剤と、を含む、提供することと、
(b)成分A及び成分Bを一緒にして、ウレタンコーティング組成物を形成することであって、
成分AがポリイソシアネートプレポリマーA1を含み、ポリイソシアネートプレポリマーA1が、ポリイソシアネートモノマーA1aとイソシアネートポリ反応性化合物A1bとの反応生成物であり、
成分Bが1つ以上のポリオールB1を含み、
ウレタンコーティング組成物が0.9超のイソシアネート指数を有する、形成することと、
(c)ウレタンコーティング組成物の層を表面に塗布することと、を含む、プロセスである。
【0006】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の方法によって作製された、コーティングされた印刷基材である。
【0007】
以下は、本発明の詳細な説明である。
【0008】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、文脈が別途明確に示さない限り、指定された定義を有する。
【0009】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」及び「プラスチック」は同義である。ポリマーは、多くの繰り返し単位で作製された分子である。2種類以上の繰り返し単位が存在し得、すなわち、ポリマーは、ホモポリマー(正確に1種類の繰り返し単位)又はコポリマー(2種類以上の繰り返し単位)であり得る。ポリマーは、5,000以上の分子量を有する。ポリマーは、直鎖状、分岐状、架橋状、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0010】
ポリオレフィンは、ポリマーの重量に基づいて75重量%以上の繰り返し単位が以下の構造Iを有するポリマーであり、
【化1】
式中、R、R、R、及びRが各々独立して、水素又はオレフィン基である。R、R、R、及びRのうちのいずれか1つは、他のR、R、R、及びRのうちのいずれかと同じであり得るか、又はそれとは異なり得る。R、R、R、及びRのうちのいずれか2つ以上が一緒に結合されて、環状構造を形成してもよい。
【0011】
ポリエチレンは、ポリマーの重量に基づいて75重量%以上の繰り返し単位が以下の構造IIを有するポリマーである。
【化2】
【0012】
本明細書で使用される場合、オレフィンコポリマーは、構造Iの繰り返し単位を有し、かつ1つ以上の酸素原子を含有する繰り返し単位も有するポリマーである。好適な酸素含有繰り返し単位には、例えば、アクリル単位(構造III)、エステル単位(構造IV)、及びカルボニル単位(構造V)が挙げられる。
【化3】
は、メチル又は水素であり、Rは、水素又は置換若しくは非置換アルキル基である。R及びRは各々互いに独立して、置換又は非置換アルキル基である。好適な置換基には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、窒素含有基、炭素-炭素二重結合含有基、他の置換基、及びそれらの組み合わせが挙げられる。オレフィンコポリマーでは、構造Iの繰り返し単位及び1つ以上の酸素含有繰り返し単位は、例えば、ランダム、交互、ブロック、分岐、又はそれらの任意の組み合わせを含む任意の順序でコポリマーに配置され得る。オレフィンコポリマーでは、ポリマーの重量に基づいて75重量%以上の繰り返し単位は、構造I又は酸素含有繰り返し単位のいずれかである。
【0013】
本明細書で使用される場合、イソシアネート反応性基は、イソシアネート基と反応してイソシアネート基とイソシアネート反応性基との間に共有結合を形成することができる化学基である。インタクトなイソシアネート基は、イソシアネート反応性基と反応していないイソシアネート基である。インタクトなイソシアネート反応性基は、イソシアネート基と反応していないイソシアネート反応性基である。
【0014】
1つ以上のイソシアネート反応性基を有する化合物は、1分子当たりのイソシアネート反応性基の数である官能価によって特徴付けられる。1分子当たり1つ以上のイソシアネート反応性基を各々有する化合物の混合物では、混合物の官能価は、数平均官能価である。同様に、1つ以上のイソシアネート基を有する化合物は、1分子当たりのイソシアネート基の数である官能価によって特徴付けられる。1分子当たり1つ以上のイソシアネート基を各々有する化合物の混合物では、混合物の官能価は、数平均官能価である。
【0015】
イソシアネート反応性基を有し、かつ2以上の官能価を有する化合物は、本明細書では「イソシアネートポリ反応性」化合物として知られている。
【0016】
ポリオールは、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物である。2つ以上のエーテル結合を有するポリオールは、ポリエーテルポリオールである。2つ以上のエステル結合を有するポリオールは、ポリエステルポリオールである。2つ以上のウレタン結合を有するポリオールは、ポリウレタンポリオールである。2つ以上のカーボネート結合を有するポリオールは、ポリカーボネートポリオールである。イプシロン-カプロラクトンの開環重合反応の2つ以上の残基を有するポリオールは、ポリカプロラクトンポリオールである。ポリオールは、試験ASTM D4274-16(American Society of Testing and Materials、Conshohocken,PA,USA)によって決定される、「OH価」によって特徴付けられ得る。低分子量ポリオールは、300以下の分子量を有する。
【0017】
インタクトなイソシアネート基を含む組成物は、組成物中の全てのインタクトなイソシアネート基の数の、組成物中の全てのインタクトなイソシアネート反応性基の数に対する比率である「イソシアネート指数」によって特徴付けられ得る。インタクトなイソシアネート基を含む組成物は、試験ASTM D2572-19(American Society of Testing and Materials、Conshohocken,PA,USA)によって決定される、組成物の重量に基づくイソシアネート基の重量パーセントである「NCO含有量」によっても特徴付けられ得る。組成物が溶媒を含む場合、NCO含有量は、「溶媒あり」として報告され得、これは、NCO含有率が全組成物の重量に基づくことを意味し、又はNCO含有量は、「溶媒なし」として報告され得、これは、NCO含有率が組成物の非溶媒部分の重量に基づくことを意味する。
【0018】
1分子当たり1つ以上のイソシアネート基を含む化合物は、イソシアネートである。1分子当たり2つ以上のイソシアネート基を含む化合物は、ポリイソシアネートである。1つ以上の芳香族環を有するイソシアネートは、芳香族イソシアネートである。分子中に芳香族環を有しないイソシアネートは、脂肪族イソシアネートである。ポリイソシアネートモノマーは、700以下の分子量を有するポリイソシアネートである。
【0019】
本明細書で使用される場合、溶媒は、10℃~30℃の範囲を含む温度範囲にわたって液体であり、かつイソシアネート基とイソシアネート反応性基との間の化学反応に関与しない化合物である。溶媒は、200℃以下の沸点を有する。
【0020】
本明細書で使用される場合、脂肪化合物は、ラインで互いに結合した8個以上の炭素原子を有する直鎖状炭化水素基を含む化合物である。カルボキシル基又はカルボキシレートアニオンを含む脂肪化合物は、脂肪酸である。ヒドロキシル基を含む脂肪化合物は、脂肪アルコールである。
【0021】
本明細書で使用される場合、脂肪トリグリセリドは、3つの脂肪酸を有するグリセロールのトリエステルの構造を有する化合物である。それらの脂肪酸のうちの1つに由来したであろう脂肪トリグリセリドの部分(脂肪トリグリセリドが脂肪酸とグリセロールとの間のエステル化反応によって形成された場合)は、脂肪酸残基として知られている。本明細書で使用される場合、天然油ポリオールは、2つ以上のヒドロキシル基を有する脂肪トリグリセリドである。
【0022】
本明細書で使用される場合、ワックスエステルは、脂肪酸及び脂肪アルコールのエステルの構造を有し、かつ10℃~40℃の範囲を含む温度範囲にわたって固体である化合物である。ワックスエステルの混合物も本明細書ではワックスエステルと称される。「ワックスエステル」という用語には、成分の80重量%以上が1つ以上のワックスエステルからなり、残りの20重量%以下がワックスエステルではない物質からなる混合物も含まれる。
【0023】
本明細書で使用される場合、印刷表面は、印刷用インクの1つ以上の領域に存在する表面である。印刷表面上では、印刷用インクは乾燥しており、これは、印刷用インクが、印刷用インクの重量に基づいて10%以下の120℃以下の沸点を有する全ての化合物を含むことを意味する。印刷用インクは、印刷用インクの重量に基づいて15重量%以上の1つ以上のオレフィンコポリマーを含む。印刷用インクは、1つ以上の顔料、1つ以上の染料、又はそれらの混合物も含む。デジタル印刷用インクは、1つ以上の導電性添加剤も含む。導電性添加剤は、電荷ディレクタ又は画像化剤としても知られている。導電性添加剤は、インクの導電率を増加させる。
【0024】
本明細書で使用される場合、表面の湿潤性とは、表面上に配置されて、丸みを帯びた局所的なビーズを形成するのではなく、薄い伸長した層を形成する液体の傾向を指す。本明細書では、かかる液体が丸みを帯びた局所的なビーズではなく薄い伸長した層を形成する傾向が大きいほど、湿潤性がより良好であると考えられる。具体的には、本明細書では、湿潤性を評価するために使用される液体のクラスは、50重量%以上の1つ以上の炭化水素化合物を含み、かつ(i)1つ以上のエチレンコポリマー、(ii)1つ以上の顔料、1つ以上の染料、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の外観添加剤、並びに(iii)1つ以上の画像化剤も含む液体のクラスである。
【0025】
本明細書で使用される場合、TDIは、トルエンジイソシアネートであり、MDIは、ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0026】
本発明は、成分A及び成分Bを一緒にすることによって形成されるコーティング組成物を含む。
【0027】
成分Aは、1つ以上のポリイソシアネートを含む。成分Aは、好ましくは、1つ以上のポリイソシアネートモノマーA1aと1つ以上のイソシアネートポリ反応性化合物A1bとの反応生成物である1つ以上のプレポリマーA1を含む。プレポリマーA1は、ポリイソシアネートである。ポリイソシアネートモノマーA1aは、好ましくは、1つ以上の芳香族ポリイソシアネートモノマー、又は1つ以上の脂肪族ポリイソシアネートモノマー、又はそれらのブレンドを含む。より好ましくは、ポリイソシアネートモノマーA1aは、1つ以上の芳香族ポリイソシアネートモノマーを含む。より好ましくは、ポリイソシアネートモノマーA1aは、2,6-TDI、2,4-TDI、2,4’-MDI、4,4’-MDI、及びそれらの混合物から選択される1つ以上のモノマーを含む。
【0028】
イソシアネートポリ反応性化合物A1bは、好ましくは、1つ以上のポリオールを含む。イソシアネートポリ反応性化合物A1bに好適なポリオールには、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、天然油ポリオール、及びそれらのブレンドが挙げられる。イソシアネートポリ反応性化合物A1bに好ましいポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びそれらのブレンドである。ポリエーテルポリオール、低分子量ポリオール、及びそれらのブレンドがより好ましい。好適な低分子量ポリオールには、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン、及びそれらのブレンドが挙げられる。
【0029】
好ましくは、イソシアネートポリ反応性化合物A1bは、2以上の官能価を有する1つ以上のイソシアネートポリ反応性化合物を含む。好ましくは、イソシアネートポリ反応性化合物A1bは、6以下、より好ましくは5以下、より好ましくは4以下の官能価を有する1つ以上のイソシアネートポリ反応性化合物を含む。
【0030】
イソシアネートポリ反応性化合物A1bが1つ以上のポリオールを含む場合、好ましくは、ポリオールは、50以上の分子量を有し、より好ましくは100以上である。イソシアネートポリ反応性化合物A1bが1つ以上のポリオールを含む場合、好ましくは、ポリオールは、4000以下の分子量を有し、より好ましくは2000以下である。
【0031】
成分Aは、溶媒を含んでも含まなくてもよい。好適な溶媒の例は、酢酸エチル、酢酸プロピル、シクロヘキサン、酢酸メチル、メチルエーテルケトン、トルエン、及びそれらの混合物である。好ましい溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、シクロヘキサン、メチルエーテルケトン、及びそれらの混合物であり、酢酸エチル、酢酸プロピル、シクロヘキサン、及びそれらの混合物がより好ましい。
【0032】
溶媒が成分A中に存在する場合、好ましくは、成分Aの全ての成分が溶媒に溶解する。好ましくは、成分A中の溶媒の量は、成分Aの重量に基づいて20重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。好ましくは、成分A中の溶媒の量は、成分Aの重量に基づいて70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0033】
好ましくは、溶媒を含む成分AのNCO含有量は、5%以上、より好ましくは7%以上である。好ましくは、溶媒を含む成分AのNCO含有量は、15%以下、より好ましくは13%以下である。好ましくは、溶媒を含まない成分AのNCO含有量は、8%以上、より好ましくは12%以上である。好ましくは、溶媒を含まない成分AのNCO含有量は、25%以下、より好ましくは22%以下である。
【0034】
好ましくは、成分Aは、1つ以上の脂肪トリグリセリドを含む。1つ以上の脂肪酸残基が12個以上の炭素原子、より好ましくは16個以上の炭素原子を有する脂肪トリグリセリドが好ましい。1つ以上の脂肪酸残基が1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する脂肪トリグリセリドが好ましい。
【0035】
好ましくは、成分A中の脂肪トリグリセリドの量は、成分Aの重量に基づいて0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上である。好ましくは、成分Aは、1つ以上の脂肪トリグリセリドを含む。好ましくは、成分A中の脂肪トリグリセリドの量は、成分Aの重量に基づいて10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
【0036】
好ましくは、成分Aは、1つ以上のワックスエステルを含む。好適なワックスエステルの例には、パルミチン酸セチル、ステアリン酸パルミチル、ステアリン酸ステアリル、水素化獣脂、カルナウバワックス、蜜ろう、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。パルミチン酸セチル、ステアリン酸パルミチル、ステアリン酸ステアリル、水素化獣脂、及びそれらの混合物が好ましい。パルミチン酸セチル、ステアリン酸パルミチル、ステアリン酸ステアリル、及び水素化獣脂の混合物がより好ましい。
【0037】
好ましくは、成分A中のワックスエステルの量は、成分Aの重量に基づいて0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上である。好ましくは、成分A中のワックスエステルの量は、成分Aの重量に基づいて10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
【0038】
成分Bは、1つ以上のイソシアネートポリ反応性化合物B1を含む。好ましくは、イソシアネートポリ反応性化合物B1は、1つ以上のポリオールを含む。イソシアネートポリ反応性化合物B1への包含に好適なポリオールには、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、天然油ポリオール、及びそれらのブレンドが挙げられる。
【0039】
好ましくは、イソシアネートポリ反応性化合物B1は、1つ以上のポリウレタンポリオールを含む。イソシアネートポリ反応性化合物B1における使用に好適なポリウレタンポリオールは、好ましくは、1つ以上のポリイソシアネートモノマーB1aと1つ以上のポリオールB1bとの反応生成物である。ポリイソシアネートモノマーB1aは、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、又はそれらのブレンドであり得る。好ましくは、ポリイソシアネートモノマーB1aは、1つ以上の芳香族ポリイソシアネートモノマーを含む。B1a中の好ましいポリイソシアネートモノマーは、2,6-TDI、2,4-TDI、2,2’-MDI、2,4’-MDI、4,4’-MDI、及びそれらの混合物である。好ましくは、ポリイソシアネートモノマーB1aは、2以上の官能価を有する1つ以上のポリイソシアネートモノマーを含む。
【0040】
ポリオールB1bへの包含に好適なポリオールには、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、天然油ポリオール、及びそれらのブレンドが挙げられる。ポリオールB1bに好ましいポリオールは、ポリエーテルポリオール、低分子量ポリオール、及びそれらのブレンドである。好適な低分子量ポリオールには、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン、及びそれらのブレンドが挙げられる。
【0041】
好ましくは、成分B中のポリウレタンポリオールB1PUの量は、成分Bの重量に基づいて20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より好ましくは49重量%以上である。好ましくは、成分B中のポリウレタンポリマーB1PUの量は、成分Bの重量に基づいて95重量%以下、より好ましくは85重量%以下、より好ましくは75重量%以下である。好ましくは、ポリオールB1bに含まれる1つ以上のポリオールは、イソシアネート化合物と反応せず、成分B中に存在する。
【0042】
好ましくは、成分Bは、1つ以上のブロッキング防止剤を含む。ブロッキング防止剤は、ポリマーフィルム及び他のプラスチック物品の表面でのブロッキングを減少させて、フィルムの容易な加工及び取り扱いを可能にする。ブロッキング防止剤は、無機であっても有機であってもよい。無機ブロッキング防止剤の例には、タルク及びシリカが挙げられるが、これらに限定されない。有機ブロッキング防止剤の例には、酢酸酪酸セルロースが挙げられるが、これらに限定されない。ブロッキング防止剤の混合物も好適である。
【0043】
好ましくは、成分B中のブロッキング防止剤の量は、成分Bの重量に基づいて0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上である。好ましくは、成分B中のブロッキング防止剤の量は、成分Bの重量に基づいて10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
【0044】
好ましくは、成分Bは、1つ又は湿潤剤を含む。湿潤剤は、液体の流動及びレベリングを改善し、液体が表面上に層として塗布される場合、液体がピンホール、フィッシュアイ、クレーター、斑状表面(「オレンジの皮」と呼ばれる)、又はそれらの任意の組み合わせを形成せざるを得ない傾向を低減する。好適な湿潤剤の例には、アクリルポリマー、シロキサン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
好ましくは、成分B中の湿潤剤の量は、成分Bの重量に基づいて0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上である。好ましくは、成分B中の湿潤剤の量は、成分Bの重量に基づいて10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
【0046】
成分Bは、溶媒を含んでも含まなくてもよい。好適な溶媒の例は、酢酸エチル、酢酸プロピル、シクロヘキサン、酢酸メチル、メチルエーテルケトン、トルエン、及びそれらの混合物である。好ましい溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、シクロヘキサン、メチルエーテルケトン、及びそれらの混合物であり、酢酸エチル、酢酸プロピル、シクロヘキサン、及びそれらの混合物がより好ましい。
【0047】
溶媒が成分B中に存在する場合、好ましくは、成分Bの全ての成分が溶媒に溶解する。好ましくは、成分B中の溶媒の量は、成分Bの重量に基づいて5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。好ましくは、成分B中の溶媒の量は、成分Bの重量に基づいて80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
【0048】
本発明の実施に際して、成分A及び成分Bが一緒にされ、結果として得られた混合物はウレタンコーティング組成物である。好ましくは、その後、成分A及び成分Bが完全に混合される。基材に塗布されたコーティング組成物の層。成分A中のイソシアネート基が成分B中のイソシアネート反応性基と反応するであろうことが予想される。好ましくは、コーティング組成物の層は、成分A中のイソシアネート基の50モル%以下が成分B中のイソシアネート反応性基と反応した時点で基材に塗布される。
【0049】
成分Aと成分Bとの間でいずれの化学反応も起こる前に、それらの混合物を企図することが有用である。その混合物のイソシアネート指数は、0.9以上、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上である。その混合物のイソシアネート指数は、好ましくは2以下、より好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下である。
【0050】
本発明の実施に際して、ウレタンコーティング組成物の層は、印刷基材の表面に塗布される。好ましくは、インクが基材に塗布された後であるが、ウレタンコーティング組成物の層が基材に塗布される前に、基材の表面が表面処理に供される。好適な表面処理は、基材の表面の湿潤性を改善する方法で基材の表面エネルギーを変化させる。好適な表面処理の例には、例えば、コロナ処理及びプラズマ処理が挙げられる。
【0051】
好ましくは、ウレタンコーティング組成物が、硬化プロセス前に、ウレタンコーティング組成物が基材に塗布される温度で液体である場合。好ましくは、液体ウレタンコーティング組成物は、基材の印刷表面に塗布された場合、印刷用インクによって被覆された基材の領域及び液体ウレタンコーティング組成物と直接接触する基材(存在する場合)の領域の両方において良好な湿潤を示す。すなわち、液体ウレタンコーティング組成物は、好ましくは、ギャップなしで、基材の被覆された部分全体にわたって滑らかな壊れていない層を形成する。かかるギャップは、液体コーティング組成物が、通常、表面張力のため、基材表面の一部から撤退して、「ビーズ」又は「フィッシュアイ」のような構造を形成したときに観察されることがある。
【0052】
ウレタンコーティング組成物の層が基材に塗布された後、イソシアネート基のうちのいくつか又は全てがイソシアネート反応性基のうちのいくつか又は全てと反応し、それ故に、硬化ポリウレタン層を形成することが予想される。この反応を促進するために、ウレタンコーティング組成物の層が加熱される場合がある。イソシアネート基の80モル%以上が反応したときに、本明細書では、ウレタンコーティング組成物の層が硬化ポリウレタン層になったと考えられる。ウレタンコーティング組成物が1つ以上の溶媒を含む場合、好ましくは、ウレタンコーティング組成物の層が基材に塗布された後、溶媒は、コーティング組成物から蒸発することを強いられる又は許容される。ウレタンコーティング組成物の層が加熱されると、基材上のウレタンコーティング組成物の層を加熱する行為が溶媒の蒸発を促進し、硬化反応も促進するのに役立つであろうことが企図される。
【0053】
好ましくは、硬化ポリウレタン層の平均厚さは、0.5マイクロメートル以上、より好ましくは1マイクロメートル以上である。好ましくは、硬化ポリウレタン層の平均厚さは、10マイクロメートル以下、より好ましくは7.5マイクロメートル以下、より好ましくは5マイクロメートル以下である。
【0054】
基材は、印刷表面である。好ましくは、ウレタンコーティング組成物の層によって覆われている基材の領域内で、インクによって覆われている基材の部分は、10%以上、より好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上である。好ましくは、ウレタンコーティング組成物の層によって覆われている基材の領域内で、インクによって覆われている基材の部分は、100%以下である。
【0055】
印刷表面上で、インクは、乾燥している。インク中のオレフィンコポリマーの量は、インクの重量に基づいて1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。インク中のエチレン-アクリルコポリマーの量は、インクの重量に基づいて99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
【0056】
インクは、1つ以上の導電性添加剤を含む。インク中の導電性添加剤の量は、乾燥インクの重量に基づいて好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上である。インク中の導電性添加剤の量は、乾燥インクの重量に基づいて好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量の水を有する。
【0057】
基材は、好ましくは、20~200マイクロメートルの厚さを有する。基材は、好ましくは、1つ以上のポリマーを含み、好ましくは、基材中のポリマーの量は、50%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上である。基材は、単一のポリマー層であってもよく、又は基材は、複数のポリマー層で作製されていてもよい。基材が複数の層を有する場合、いずれか1つの層が他の層のうちの1つ以上と同じ組成を有してもよく、又はその1つの層が他の層の全てとは異なる組成を有してもよい。いずれか1つの層は、任意選択的に、1つ以上の耐衝撃性改質剤又は他の添加剤を含み得る。化合物は、任意選択的に、例えば、結合層及び/又は障壁層として作用するために、層間に存在し得る。
【0058】
印刷用インク及び本発明のウレタンコーティング組成物と接触している基材の層は、本明細書では基材の「上」層として知られている。好ましくは、基材の上層は、1つ以上のポリオレフィン又は1つ以上のポリエステル又はそれらの組み合わせを含む。好ましくは、基材の上層中のポリオレフィンの量は、50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。好適なポリオレフィンには、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレンの好適な形態は、例えば、直鎖状ポリエチレンホモポリマー(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレンホモポリマー、中密度直鎖状ポリエチレンホモポリマー、低密度ポリエチレンホモポリマー、及びそれらの2つ以上のブレンドである。好適なポリエステルには、例えば、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0059】
硬化ポリウレタン層には耐久性があることが予想される。すなわち、硬化ポリウレタン層が、スクラッチング、強力な化学物質への曝露、揉みくた(crumpling)、及び熱というストレス要因のうちの1つ以上に起因する劣化に抵抗するであろうことが予想される。
【0060】
いかようにも(例えば、耐久性のあるコーティング又は追加の積層層によって)保護されていない場合、印刷基材が上述のストレス要因のうちのいずれかの影響を非常に受けやすいことが企図される。特に、印刷用インクがこれらのストレス要因のうちのいずれかに曝露されたときに、外観及び/又は基材への接着の劣化を被るであろう。昔は、印刷表面を保護するために、追加のポリマー層を印刷表面の上部に貼り付ける(すなわち、追加のポリマー層を印刷表面上に積層する)ことが一般的であった。一般的な追加のポリマーは、ポリエチレンテレフタレート及び二軸配向ポリプロピレンであった。一般的に、追加のポリマーの層の厚さは、8~25マイクロメートルであった。
【0061】
追加のポリマー層を積層する以前の実施とは対照的に、本発明の実施に際して、硬化ポリウレタン層は耐久性のある表面を提供し、追加のポリマー層の積層は必要とされない。好ましくは、印刷表面が本発明の実施によってコーティングされた後、ポリマーの追加の層はコーティングされた印刷表面に積層されない。
【0062】
本発明のコーティングされた印刷表面を有する物体は、任意の目的のために使用され得る。好適な目的には、例えば、本発明のコーティングされた印刷表面を有する物体を、例えば、食品を収容するためのパウチ又は他のパッケージの一部として使用することが挙げられる。他の目的には、例えば、家庭用及びパーソナルケア製品パッケージ、保護フィルム、印刷ライナー、並びにラベルが挙げられる。好ましくは、本発明のコーティングされた印刷表面を有する物体が任意の目的のために使用される場合、追加のポリマー層は、コーティングされた印刷表面に積層されない。
【0063】
以下は、本発明の実施例である。特に記載のない限り、室温(約23℃)で操作を実行した。
【0064】
以下の試験方法を使用した。(ASTMとは、the American Society of Testing and Materials(Conshohocken,PA,USA)を指す)。
【0065】
印刷基材上の液体コーティング組成物の湿潤を視覚的に評価した。液体コーティング組成物の層が滑らかで均一であるほど、より良好な湿潤性が評定された。隆起及び窪みを、液体コーティング組成物の層における均一性の欠如の証拠とみなした。
【0066】
耐スクラッチ性をASTM D7027-05によって評価した。耐温度性をASTM 1921によって試験した。光沢をASTM D2457によって評価した。
【0067】
耐薬品性を以下の試験で評価した。1mLの模擬液体を、印刷フィルム上のコーティングされたインクの上に直接置いた。0.5時間、4時間、及び24時間時点で、印刷フィルムを5サイクルの揉みくたに供し、手で平らにした。その後、フィルムを以下のように評定した。
良い:インク及びコーティングが変化せずに表面上に残った
並み程度:インク及びワニスの一部がフィルム表面からランダムに剥がれた
悪い:インク及びコーティングが変色し、フィルム表面から完全に剥がれた
【0068】
耐温度性をASTM 1921及びASTM D2457に基づく方法によって評価した。試験結果は、試料が、例えば、劇的な収縮又はフィルム燃焼などの明らかな損傷を示し始める最低温度である。
【0069】
様々な印刷用インクを使用して、マルチカラー印刷画像を形成した。乾燥前のインクのおよその組成は、以下のとおりであると考えられる(印刷用インクの重量に基づく重量パーセンテージ)。
80重量%未満の石油炭化水素
15重量%未満のオレフィンコポリマー
およそ2.5重量%の導電性添加剤
およそ3.5重量%の染料及び顔料
【0070】
試験に使用した基材は以下のとおりである。「μm」という記号は、マイクロメートルを指す。パーセンテージは、層の重量に基づく重量パーセンテージである。「PA」は、ポリアミド(polyamide)である。ポリアミドは、ポリエチレン及び/又は無水マレイン酸変性ポリエチレンと共押出され得る。I2は、10分当たりのグラム単位で報告される、2.16kgを使用して90℃で測定されるメルトインデックスである。Dは、グラム/立方センチメートル単位の密度である。
【表1】
【0071】
本発明の以下のコーティング組成物実施例を使用した。
【0072】
実施例1の成分A
【表2】
【0073】
実施例1の組成物Aを調製するために、ワックスエステル及びトリメチロールプロパンを反応器に装填し、その後、酢酸エチルを装填した。TDIを反応器に真空装填し、その後、すすぎ液として残りの酢酸エチルを真空装填した。バッチを70℃で3時間保持した。その後、バッチを55℃に冷却した。バッチの粘度を測定した。粘度が380mPa*s(380cP)未満であった場合、トリメチロールプロパンを添加してバッチの粘度を380mPa*s(380cP)に調整した。粘度が380mPa*s(380cP)超であった場合、又は追加のトリメチロールプロパンを添加した後、反応器を55℃に冷却した。コーン油を反応器に真空装填した。その後、シクロヘキサンを反応器に添加し、内容物を45℃で保持し、内容物が透明になるまで45分間撹拌した。その後、塩化ベンゾイルを反応器に真空装填し、内容物を15分間撹拌した。その後、反応組成物Aを使用のためにパッケージした。
【0074】
実施例2の成分A
【表3】
【0075】
実施例2の組成物Aを調製するために、ワックスエステル及びトリメチロールプロパンを反応器に装填し、その後、酢酸エチルを装填した。MDIを反応器に真空装填し、その後、すすぎ液として残りの酢酸エチルを真空装填した。バッチを70℃で3時間保持した。その後、バッチを55℃に冷却した。コーン油を反応器に真空装填した。その後、シクロヘキサンを反応器に添加し、内容物を45℃で保持し、内容物が透明になるまで45分間撹拌した。その後、塩化ベンゾイルを反応器に真空装填し、内容物を15分間撹拌した。その後、反応組成物Aを使用のためにパッケージした。
【0076】
実施例1の成分B
【表4】
【0077】
実施例1の反応組成物Bを調製するために、TIPAを溶融した。Voranol 220-260を反応器に真空装填した。溶融したTIPAを反応器に真空装填し、その後、VORANOL 220-110Nを真空装填した。真空ラインを酢酸エチルですすぎ、反応器の内容物を75RPMで撹拌した。酢酸エチルを反応器に真空装填した。冷却ジャケットを介して反応器の内容物を冷却した。冷却後、TDIを反応器に装填し、真空ラインを酢酸エチルですすいだ。反応が発熱性であるため、反応器の内容物を75℃の温度に冷却した。反応器内の温度を4時間撹拌しながら75℃で維持した。その後、反応器の内容物を60℃に冷却し、消泡剤と残りの酢酸エチルとの混合物を反応器に真空装填した。その後、内容物を30分間撹拌した。その後、反応器を50℃に冷却し、反応組成物Bを使用のためにパッケージした。
【0078】
実施例2の成分B
【表5】
【0079】
実施例2の反応組成物Bを調製するために、TIPAを溶融した。Voranol 220-260を反応器に真空装填した。溶融したTIPAを反応器に真空装填し、その後、VORANOL 220-110Nを真空装填した。真空ラインを酢酸エチルですすぎ、反応器の内容物を75RPMで撹拌した。酢酸エチルを反応器に真空装填した。冷却ジャケットを介して反応器の内容物を冷却した。冷却後、TDIを反応器に装填し、真空ラインを酢酸エチルですすいだ。反応が発熱性であるため、反応器の内容物を75℃の温度に冷却した。反応器内の温度を4時間撹拌しながら75℃で維持した。その後、反応器の内容物を60℃に冷却し、消泡剤と、酢酸酪酸セルロースと、Modaflowと、残りの酢酸エチルとの混合物を反応器に真空装填した。その後、内容物を60℃で60分間撹拌した。その後、反応器を50℃に冷却し、反応組成物Bを使用のためにパッケージした。
【0080】
以下の比較例を使用した。
【表6】
【0081】
耐スクラッチ試験では、基材領域を単一色の印刷用インクの均一なブロックで印刷し、その印刷領域を試験した。結果は、試料の表面が何らかの目に見える損傷を示す前に行ったスクラッチサイクルの数である。最良の試料が50サイクル時点で損傷を示さなかったが、試験を50サイクルで停止した。結果は、以下のとおりであった:
【表7】
本発明の実施例は、全ての比較例よりも良好な耐スクラッチ性を示した。
【0082】
耐薬品性試験では、3つの異なる化学試薬を使用した。
「塩素」=液体塩素含有消毒剤溶液
「塩素/洗剤」=洗剤を添加した「塩素」と同じ溶液
「液体」=市販の液体多目的家庭用洗浄溶液
3つの異なる耐薬品時間(standing time):0.5時間、4時間、及び24時間を使用した。
結果は、以下のとおりであった:
【表8】
0.5時間時点で、全ての実施例が良好な性能を示した。4時間時点及び24時間時点で、本発明の実施例は、全ての比較例よりも良好な耐薬品性を示した。
【0083】
耐温度性試験を上記のように行った。結果は、以下のとおりであった:
【表9】
本発明の実施例は、全ての比較例よりも良好な耐温度性を示した。コーティングされていないフィルムが75℃で損傷を示し、比較例C3、C4、及びC5が125℃~155℃で損傷を示したが、本発明の実施例は175℃まで損傷を示さなかった。
【0084】
光沢試験では、結果は、60度の角度で観察した光沢である。結果は、以下のとおりであった:
【表10】
【0085】
本発明の実施例は、全ての比較例よりも良好な光沢を示した。

【手続補正書】
【提出日】2022-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた印刷基材を製造するためのプロセスであって、
(a)印刷基材を提供することであって、前記基材が、インクの層の1つ以上の領域に存在する表面を含み、前記インクが、
(i)1つ以上のオレフィンコポリマーと、
(ii)1つ以上の顔料、1つ以上の染料、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の外観添加剤と、
(iii)1つ以上の導電性添加剤と、を含む、提供することと、
(b)成分A及び成分Bを一緒にして、ウレタンコーティング組成物を形成することであって、
成分AがポリイソシアネートプレポリマーA1を含み、前記ポリイソシアネートプレポリマーA1が、ポリイソシアネートモノマーA1aとイソシアネートポリ反応性化合物A1bとの反応生成物であり、
成分Bが1つ以上のポリオールB1を含み、
前記ウレタンコーティング組成物が0.9超のイソシアネート指数を有する、形成することと、
(c)前記ウレタンコーティング組成物の層を前記表面に塗布することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記ポリオールB1が1つ以上のポリウレタンポリオールB1PUを含み、ポリオールB1PUが、ポリイソシアネートモノマーB1PUaとポリオールB1PUbとの反応生成物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記オレフィンコポリマーが、エチレン/アクリルコポリマー、エチレン/エステルコポリマー、エチレンカルボニルコポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
成分Aが1つ以上の脂肪トリグリセリドを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
成分Aが1つ以上のワックスエステルを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
成分Bが1つ以上のブロッキング防止剤を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
成分Bが1つ以上の湿潤剤を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記基材がポリエチレンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ウレタンコーティング組成物が0.9~1.6のイソシアネート指数を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
請求項1に記載のプロセスによって作製された、コーティングされた印刷基材。

【国際調査報告】