(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】ピラゾリルプロパンアミド化合物およびその前立腺がんを処置するための使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/415 20060101AFI20230515BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20230515BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20230515BHJP
A61K 31/422 20060101ALI20230515BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230515BHJP
A61K 31/4192 20060101ALI20230515BHJP
A61K 31/4155 20060101ALI20230515BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230515BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A61K31/415
A61K31/4439
A61K31/517
A61K31/422
A61K31/506
A61K31/4192
A61K31/4155
A61P35/00
A61P13/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559381
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 US2021025468
(87)【国際公開番号】W WO2021202936
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504326686
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ テネシー リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン, ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, デュアン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒー, ヤーリー
(72)【発明者】
【氏名】ポンヌサミ, タマライ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン, ドン-ジン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086BC42
4C086BC46
4C086BC60
4C086BC69
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、ピラゾリルプロパンアミド化合物、ならびに前立腺がん、進行性前立腺がん、難治性前立腺がん、AR過剰発現前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、去勢感受性前立腺がん、AR-V7発現前立腺がん、またはd567ES発現前立腺がん、ダロルタミド抵抗性前立腺がん、エンザルタミド抵抗性前立腺がん、アパルタミド抵抗性前立腺がん、またはアビラテロン抵抗性前立腺がんを処置するためのその使用に関する。一部の実施形態では、前立腺がんは、進行性前立腺がん、難治性前立腺がん、AR過剰発現前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、去勢感受性前立腺がん、AR-V7発現前立腺がん、またはd567ES発現前立腺がんである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象の前立腺がんを処置する方法であって、式I
【化53】
の構造[式中、
TはOHであり、
R
1はCH
3であり、
YはH、CF
3、F、I、Br、Cl、またはCNであり、
ZはH、NO
2、CN、ハロゲン、COOR、COR、NHCOR、またはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5から8員縮合環を形成し、
XおよびDは、それぞれCHまたはNであり、
Bは結合またはCHであり、Bが結合であるとき、D=B-XはD-Xによって表され、
RはH、アルキル、ハロアルキル、アルキル-OH、アリール、F、Cl、Br、I、またはOHであり、
Aは、直鎖状または分岐状アルキル、ハロアルキル、CF
3、アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、OR、ベンジル、アルキニル、SO
2N(R)
2、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、またはCORからそれぞれ独立して選択される、Q
1、Q
2、Q
3、およびQ
4のうちの少なくとも1つで必要に応じて置換された、少なくとも1個の窒素原子を有する5員不飽和ヘテロアリールであり、前記アルキル、アルキニル、およびアリールは、ハロゲン、CN、またはOHでそれぞれ必要に応じて置換されている]
もしくはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物、またはそれらの任意の組合せによって表される化合物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記化合物が、式IIAまたは式IIBの化合物
【化54】
によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、式IIIの化合物
【化55】
[式中、
TはOHであり、
R
1はCH
3であり、
YはH、CF
3、F、I、Br、Cl、またはCNであり、
ZはH、NO
2、CN、ハロゲン、COOR、COR、NHCOR、またはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5から8員縮合環を形成し、
XはCHまたはNであり、
RはH、アルキル、ハロアルキル、アルキル-OH、CF
3、CH
2Cl、CH
2CH
2Cl、アリール、F、Cl、Br、I、またはOHであり、
Aは、直鎖状または分岐状アルキル、ハロアルキル、CF
3、アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、OR、ベンジル、アルキニル、SO
2N(R)
2、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、またはCORからそれぞれ独立して選択される、Q
1、Q
2、Q
3、およびQ
4のうちの少なくとも1つでそれぞれ必要に応じて置換されたピロール、ピラゾール、トリアゾール、またはイミダゾールであり、前記アルキル、アルキニル、およびアリールは、ハロゲン、CN、またはOHでそれぞれ必要に応じて置換されている]
もしくはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物、またはそれらの任意の組合せ
によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が、式IIIAまたは式IIIB
【化56】
の構造によって表される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、式IVAまたは式IVB
【化57】
の構造によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、式V
【化58】
の構造[式中、
Q
2、Q
3、およびQ
4は、それぞれ独立して、直鎖状または分岐状アルキル、ハロアルキル、CF
3、アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、OR、ベンジル、アルキニル、SO
2N(R)
2、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、またはCORから選択され、前記アルキル、アルキニル、およびアリールは、ハロゲン、CN、またはOHでそれぞれ必要に応じて置換されている]
もしくはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物、またはそれらの任意の組合せ
によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、式VAまたは式VB
【化59】
の構造によって表される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Q
1、Q
2、Q
3、およびQ
4が、CN、NO
2、CF
3、F、Cl、Br、I、アルキニル、SO
2N(R)
2、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、COR、またはフェニルであり、前記フェニルが、ハロゲン、CN、またはOHで必要に応じて置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、下記の化合物
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
【化65】
のいずれか1つによって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、下記の化合物
【化66】
【化67】
のいずれか1つによって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が、化合物26a
【化68】
によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記前立腺がんが、進行性前立腺がん、難治性前立腺がん、AR過剰発現前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、去勢感受性前立腺がん、AR-V7発現前立腺がん、またはd567ES発現前立腺がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記去勢抵抗性前立腺がんが、AR過剰発現去勢抵抗性前立腺がん、F876L変異発現去勢抵抗性前立腺がん、F876L_T877A二重変異発現去勢抵抗性前立腺がん、AR-V7発現去勢抵抗性前立腺がん、d567ES発現去勢抵抗性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢抵抗性前立腺がんである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記去勢感受性前立腺がんが、F876L変異発現去勢感受性前立腺がん、F876L_T877A二重変異去勢感受性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢感受性前立腺がんである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記去勢感受性前立腺がんを処置することが、非去勢状況で、または単独治療として、または去勢感受性前立腺がん腫瘍がエンザルタミド、アパルタミド、および/またはアビラテロンに対して抵抗性があるときに実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)が、転移性CRPC(mCRPC)、非転移性CRPC(nmCRPC)、または高リスクnmCRPCである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
アンドロゲン遮断療法(ADT)を施用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記前立腺がんが、アンドロゲン受容体アンタゴニストによる処置に抵抗性がある、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記アンドロゲン受容体アンタゴニストが、ダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、ビカルタミド、アビラテロン、EPI-001、EPI-506、AZD-3514、ガレテロン、ASC-J9、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、またはスピロノラクトンのうちの少なくとも1種である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記前立腺がんが、ダロルタミド抵抗性前立腺がん、エンザルタミド抵抗性前立腺がん、アパルタミド抵抗性前立腺がん、またはアビラテロン抵抗性前立腺がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記前立腺がんが、ダロルタミド抵抗性前立腺がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記前立腺がんが、エンザルタミド抵抗性前立腺がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記前立腺がんが、アパルタミド抵抗性前立腺がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記前立腺がんが、アビラテロン抵抗性前立腺がんである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ピラゾリルプロパンアミド化合物、ならびに前立腺がん、進行性前立腺がん、難治性前立腺がん、AR過剰発現前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、去勢感受性前立腺がん、AR-V7発現前立腺がん、またはd567ES発現前立腺がん、ダロルタミド抵抗性前立腺がん、エンザルタミド抵抗性前立腺がん、アパルタミド抵抗性前立腺がん、またはアビラテロン抵抗性前立腺がんを処置するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
前立腺がん(PC)は、アメリカ人の男性で、肺がんに次いでがん関連死の2番目に多い原因である。前立腺がんは、その発症、進行、成長、および生存のために、アンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達の活性化に依存する。
【0003】
放射線および根治的前立腺摘除で処置したPC患者の約20~40%は、腫瘍再発を経験することになる。腫瘍再発後は、アンドロゲン除去治療またはアンドロゲン遮断療法(ADT)がほとんどの患者の標準治療である。ADTは、外科的去勢(精巣摘除)または化学的去勢(ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストまたはアンタゴニストの注射)を通して実現され、これらは共に、精巣によるテストステロン生合成の低減を引き起こすものである。ADTに加え、二次ホルモン抑制が、フルタミド(1)、ビカルタミド(2)、ニルタミド(3)、エンザルタミド(4)、アパルタミド(5)、もしくはダロルタミド(6)などの抗アンドロゲンと呼ばれる直接競合リガンド結合ドメイン(LBD)指向型ARアンタゴニスト、または酢酸アビラテロン(7)などのアンドロゲン合成阻害、加えてプレドニゾンによって、提供される。二次ホルモン抑制(即ちADTに加えられる)は、去勢感受性PC(CSPC)または去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)を処置することが承認されており、疾患の進行をさらに効果的に遅延させるため、疾患の自然病歴におけるその早期使用に向けた承認傾向にある。
【0004】
ADTは、進行性PCの初期には有効であるが、抗アンドロゲンと組み合わせた持続的ADT処置は、PCが難治性になる前の2~3年にわたり疾患をしばしば安定化させるだけであり、その結果、より侵襲的なCRPC腫瘍表現型がもたらされ、腫瘍は(進行中のADTおよび)二次ホルモン治療に抵抗性を持つようになる。ビカルタミド(2)、エンザルタミド(4)、アパルタミド(5)、または酢酸アビラテロン(7)のいずれか1つに対する抵抗性は、開始後わずか数カ月で出現する可能性があり、研究は、ダロルタミド(6)がCPRC集団において同様に振る舞う可能性があることを示唆している(ダロルタミド(6)はmCSPC用に承認された)。直接的(1~6)であろうと間接的(7)であろうとCRPCにおける二次ホルモン治療に対する抵抗性に関わらず、ARシグナル伝達は腫瘍成長および疾患進行の基礎であり続ける。これに対応して、AR軸を阻害する新規なメカニズムが、ホルモン抵抗性PCで求められている。
【0005】
CRPC進行の正確なメカニズムは、臨床上常に公知でもなくまたはそれらは相互に排他的でもないが、前臨床および臨床研究は、CRPCの出現に対する数多くの寄与因子を実証し、これらには、(i)腫瘍内アンドロゲン(例えば、副腎前駆体から合成されたDHT)の補償的生成、(ii)AR遺伝子増幅および過剰発現、(iii)AR LBD点変異、(iv)同時調節タンパク質の発現の変更、(v)ARのリガンド非依存性活性化、(vi)構成的に活性な短縮型ARスプライス変異体(AR SV)、および(vii)イントラクリンアンドロゲン代謝酵素の誘発が含まれる。直接および間接的抗アンドロゲン治療は全て、LBDでのARを標的とし、最終的には、上述の抵抗メカニズムにより失敗に終わる。ビカルタミド(2)、エンザルタミド(4)、アパルタミド(5)、および酢酸アビラテロン(7)(4および5に対する7の交差抵抗性が一般的であり;フルタミド(1)およびニルタミド(3)は稀に使用される)、またはダロルタミド(6)(2019年に承認され;6に対する抵抗性のパターンが依然として出現している)に対して抵抗性を持つ患者を永続的に処置することが可能な新規な作用機序によるCRPCに向けたARアンタゴニストの開発が、緊急に求められている。
【0006】
CRPCのための臨床上の利益を得るためにまたはCRPCの出現を回避するために、次世代のAR標的治療は理想的に、ARの新規なおよび/または多数のドメインに結合できるべきであり、かつ重度に予備治療されたCPRC集団に存在するおよび出現する広範なAR配列全体にわたる広範なAR機能を阻害できるべきである。そのような新規なアンタゴニストは、PCが処置に対して漸進的にさらに難治性になるとき、AR軸の抑制を維持するのに十分な効力で、野生型(wt)、点変異体、AR SV、および/またはAR過剰発現病原性状態の活性を理想的には維持する。
【0007】
非LBD部位との結合およびARタンパク質の分解は、CRPCを合理的に標的とする有望な前臨床手法である。ARの分解は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNA干渉、DNA編集などの遺伝子ノックダウン技法により実現することができる。遺伝的手法は、かなりの治療の潜在性を有するにも関わらず、前立腺および転移性腫瘍にオリゴヌクレオチド(ポリアニオン性高分子)を送達する際の技術的な難しさに起因して、臨床的に困難なままである。さらに、腫瘍細胞へのオリゴヌクレオチドの取込みが不十分である。あるいは、ユビキチンプロテアソーム系(UPS)を介してARを分解する、タンパク質ノックダウン技術によるARの標的化破壊は、臨床状況においてまだ決定的に試験がなされていない有望な選択肢のままである。
【0008】
最近の抗腫瘍研究では、腫瘍成長を選択的に阻害しかつこれらの腫瘍内でAR(完全長)およびAR SV(短縮型)を分解するARアンタゴニストの発見および特徴付けが報告されている(Ponnusamy, et al. Cancer Res. 2017, 77, 6282-6298)。一連のアリールインドール-1-イルプロパンアミドおよびアリールインドリン-1-イルプロパンアミドは、選択的アンドロゲン受容体分解剤(SARD)として報告されてきた(Hwang, et al. J. Med. Chem. 2019, 62, 491-511)。これらのSARD活性は、UPS阻害剤研究により決定されたようにUPSを通して媒介された(Ponnusamy, et al. Cancer Res. 2017, 77, 6282-6298; Ponnusamy, et al. Clin. Cancer Res. 2019, 25, 6764-6780)。SARDは、ARを分解し、AR機能を阻害し、かつスクリーニングアッセイ(例えば、LBD結合、転写阻害、AR分解、および抗増殖アッセイ)でのin vitro阻害効力、および承認されたARアンタゴニストよりも大きいin vivo有効性(Hershbergerアッセイおよび様々なAR依存性CPRC異種移植)を示すことが見出されてきた。
本明細書で記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、選択的アンドロゲン受容体分解剤(SARD)でありかつpan-アンタゴニストである。これらの化合物は、有望な分布、代謝、および薬物動態特性を含む強力なARアンタゴニスト活性と、強力なin vivo抗腫瘍活性を含む広域ARアンタゴニスト特性を示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ponnusamy, et al. Cancer Res. 2017, 77, 6282-6298
【非特許文献2】Hwang, et al. J. Med. Chem. 2019, 62, 491-511
【非特許文献3】Ponnusamy, et al. Clin. Cancer Res. 2019, 25, 6764-6780
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
一態様では、本発明は、それを必要とする対象の前立腺がんを処置する方法であって、式I
【化1】
の構造[式中、
TはOHであり、
R
1はCH
3であり、
YはH、CF
3、F、I、Br、Cl、またはCNであり、
ZはH、NO
2、CN、ハロゲン、COOR、COR、NHCOR、またはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5から8員縮合環を形成し、
XおよびDは、それぞれCHまたはNであり、
Bは結合またはCHであり、Bが結合であるとき、D=B-XはD-Xによって表され、
RはH、アルキル、ハロアルキル、アルキル-OH、アリール、F、Cl、Br、I、またはOHであり、
Aは、直鎖状または分岐状アルキル、ハロアルキル、CF
3、アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、OR、ベンジル、アルキニル、SO
2N(R)
2、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、またはCORからそれぞれ独立して選択される、Q
1、Q
2、Q
3、およびQ
4のうちの少なくとも1つで必要に応じて置換された、少なくとも1個の窒素原子および0、1または2個の二重結合を有する5員不飽和環であり、前記アルキル、アルキニル、およびアリールは、ハロゲン、CN、またはOHでそれぞれ必要に応じて置換されている]
もしくはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物、またはそれらの任意の組合せによって表される化合物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、前立腺がんは、進行性前立腺がん、難治性前立腺がん、AR過剰発現前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、去勢感受性前立腺がん、AR-V7発現前立腺がん、またはd567ES発現前立腺がんである。
【0012】
一部の実施形態では、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)は、転移性CRPC(mCRPC)、非転移性CRPC(nmCRPC)、または高リスクnmCRPCである。
【0013】
一部の実施形態では、去勢抵抗性前立腺がんは、AR過剰発現去勢抵抗性前立腺がん、F876L変異発現去勢抵抗性前立腺がん、F876L_T877A二重変異発現去勢抵抗性前立腺がん、AR-V7発現去勢抵抗性前立腺がん、d567ES発現去勢抵抗性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢抵抗性前立腺がんである。
【0014】
一部の実施形態では、去勢感受性前立腺がんは、F876L変異発現去勢感受性前立腺がん、F876L_T877A二重変異去勢感受性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢感受性前立腺がんである。一部の実施形態では、去勢感受性前立腺がんを処置することは、非去勢状況で、または単独治療として、または去勢感受性前立腺がん腫瘍がエンザルタミド、アパルタミド、および/またはアビラテロンに対して抵抗性があるときに実行される。
【0015】
一部の実施形態では、本発明の方法はさらに、アンドロゲン遮断療法(ADT)を施用することを含む。
【0016】
一部の実施形態では、前立腺がんは、アンドロゲン受容体アンタゴニストにより処置に対して抵抗性がある。一部の実施形態では、アンドロゲン受容体アンタゴニストは、ダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、ビカルタミド、アビラテロン、EPI-001、EPI-506、AZD-3514、ガレテロン、ASC-J9、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、またはスピロノラクトンのうちの少なくとも1種である。
【0017】
一部の実施形態では、前立腺がんは、ダロルタミド抵抗性前立腺がん、エンザルタミド抵抗性前立腺がん、アパルタミド抵抗性前立腺がん、またはアビラテロン抵抗性前立腺がんである。一部の実施形態では、前立腺がんは、ダロルタミド抵抗性前立腺がんである。一部の実施形態では、前立腺がんは、エンザルタミド抵抗性前立腺がんである。他の実施形態では、前立腺がんは、アパルタミド抵抗性前立腺がんである。一部の実施形態では、前立腺がんは、アビラテロン抵抗性前立腺がんである。
【0018】
例示を単純および明確にするため、図面中に示されている要素は、必ずしも縮尺通りに図示されていないことが理解されよう。例えば、要素の一部の寸法は、明確にするため、他の要素に比べて、誇大されていることがある。さらに、適切と考えられる場合、参照番号は、対応する要素または類似の要素を表示するよう、図面中に繰り返されていることがある。
【0019】
図面の簡単な説明
本発明と見なされる主題は、本明細書の結論部分において具体的に指摘され、明白に特許請求されている。しかし、本発明は、操作の統合および方法の両方に関して、その目的、特徴および利点と併せて、添付の図面と共に一読した場合、以下の詳細説明を参照することにより、最良に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、F876L-変異体ARトランス活性化の拮抗作用を示す。フェニルアラニン876が、ロイシン(F876L)、GRE-LUC、およびCMV-ウミシイタケLUCに変異したARを、COS細胞にトランスフェクトした。細胞を、トランスフェクションから24時間後に0.1nM R1881(アゴニスト)および用量応答のアンタゴニストで処理した。ルシフェラーゼアッセイを、トランスフェクションから48時間後に行った。各化合物の効果は、アンタゴニストモード(0.1nM R1881の存在下)で実行された。
【0021】
【
図2】
図2は、wtPRトランス活性化の拮抗作用を示す。COS細胞にwtPRをトランスフェクトし、トランス活性化研究を
図1のように行った。
【0022】
【
図3】
図3は、SARDが前立腺がん細胞であるLNCaPにおいてAR機能をアンタゴナイズしたことを示す。LNCaP細胞を、木炭処理済み血清含有培地中で2日間維持した。細胞を、図に示されるように20~24時間、アンタゴニストで処理し、RNAを単離し、AR標的遺伝子であるFKBP5の発現を測定し、リアルタイムPCRを使用してGAPDHに正規化した。
【0023】
【
図4】
図4は、エンザルタミド抵抗性LNCaP(MR49F)細胞抗増殖を示す。エンザルタミド(4)抵抗性(Enz-R)LNCaP(MR49F)細胞を、1%木炭処理済み血清含有培地にプレーティングし、0.1nM R1881で処理し、図に示されるようにアンタゴニストの滴定を行った。細胞を、1回目の処理から3日後に再度処理し、生存可能な細胞の数をCell-Titer Gloアッセイ(Promega、Madison、WI)により測定した。N=3。
【0024】
【
図5】
図5は、SARDが、エンザルタミド抵抗性を与えるエスケープ変異体ARを分解したことを示す。エンザルタミド(4)抵抗性(Enz-R)LNCaP細胞(MR49F)(上部パネル)または22RV1細胞(下部パネル)を、木炭処理済み血清含有培地中で2日間維持し、0.1nM R1881(アゴニスト)で処理し、図に示されるようにSARDまたはエンザルタミドの滴定を行った。処理の24時間後に、細胞を収集し、タンパク質を抽出し、タンパク質をAR-N20抗体でブロットした。ブロットを取り除き、GAPDH抗体で再度プローブした。ARのGAPDHまたは各レーンに対する比を、各ブロットの下に与える。
【0025】
【
図6】
図6は、化合物26aに関して、ラットにおける濃度-時間のプロットを示す。12週齢の雄性Sprague Dawleyラットに、それぞれ5匹の動物(N=5)である5つの群に、図示される用量で投与した。血液試料を図示される時点で採取し、分析物濃度をMS/MSにより決定した。全ての用量群に関する濃度-時間プロットを、1日目(左)および7日目(右)について示す。
【0026】
【
図7】
図7Aおよび7Bは、SARDおよびpan-アンタゴニストがラットのアンドロゲン依存性臓器を阻害したことを示す。
図7Aおよび7Bは、14日間にわたりアンタゴニストまたはビヒクルで毎日20mg/kg(mpk)poでインタクトなラットを処置した後の、VPおよびSV重量の低減を示す(n=5/群)。ラットを、処置期間の終わりに犠牲にし、前立腺およびSVの重量を測定し、体重に対して正規化した。
【0027】
【
図8】
図8Aおよび8Bは、SARDおよびpan-アンタゴニストが、エンザルタミド抵抗性前立腺がんの成長を阻害したことを示す。エンザルタミド抵抗性MDVR細胞(10×10
6細胞/ラット)を、雄性SRG(Sprague Dawley-Rag2:IL2rg KO)ラットにおいて皮下移植した。腫瘍が1000~3000mm
3に達したら、動物を無作為化し、処置した(インタクト)。腫瘍が2000~3000mm
3になったら、動物をビヒクル(DMSO/PEG-300 15:85)または10mg/kg/日の26aで経口的に処置した。腫瘍体積(T.V.)を毎週2回測定し、変化パーセント(
図9A)または犠牲時の体重(
図8B)として表した。
【0028】
【
図9】
図9は、21aに関するラットでのPK結果を示す。Sprague Dawleyラットに30mg/kgの21aを投与し、血液を、投薬後5分、30分、1時間、3時間、360時間、12時間、および24時間で頸静脈から収集した。血清を分離し、LC/MS-MSを使用して、21aの量に関して分析した。
【0029】
【
図10】
図10は、29q以外のピラゾリルプロパンアミド化合物がARアンタゴニストであり、それらは全て、アンドロゲンR1881により誘発されたAR活性を効率的にアンタゴナイズしたことを示す。COS-7細胞を、30,000細胞/ウェルで、DME+5%csFBS w/o中で24ウェルプレートにプレーティングした。細胞に、0.25μg GRE-LUC、10ng CMV-ウミシイタケ-LUC、および25ng ヒトARプラスミドをリポフェクタミントランスフェクション試薬に加えたもので、トランスフェクトした。細胞を、トランスフェクションから24時間後に処理し、ルシフェラーゼアッセイを、処理の24時間後に行った。ホタルルシフェラーゼ値を、ウミシイタケルシフェラーゼに対して正規化した。
【0030】
【
図11】
図11Aおよび11Bは、化合物21cが、ARおよびAR-V7陽性22RV1異種移植片を63%阻害し、一方、エンザルタミドは成長を阻害しなかったことを示す。ビヒクルで処置された動物の腫瘍体積は315から2300mm
3まで増大したが、21cで処置した動物の体積は301から1205mm
3まで増大した。505アームにおける最大TV阻害は63%であった。安楽死基準に達していないビヒクルおよび505で処置した群の動物は、それらが安楽死に到達するまで継続することになる。22RV1細胞(2百万/マウス)を、NSGマウスにおいて皮下移植した。腫瘍が100~400mm
3体積(長さ×幅×幅)まで成長したら、動物を、腫瘍体積に基づいて無作為化し、経口的に処置した。腫瘍体積を、毎週2回測定した。動物を、研究の終わりに犠牲にし、腫瘍を、さらなる分析のために収集した。
【0031】
【
図12】
図12は、Kaplan-Meierグラフが、22RV1腫瘍を保持する動物に関してプロットされたことを示す(
図11Aおよび11Bに示される)。安楽死基準は、腫瘍が>2cmまたは2000mm
3の体積に到達したときである。ビヒクルおよびエンザルタミドで処置された腫瘍保持動物は、21cで処置された動物よりも早く、安楽死基準に到達した。安楽死基準(長さ>2cmまたは体積>2000mm
3)。安楽死基準に関するKaplan-Meierプロットを作成して、生存率の差を示した。
【0032】
【
図13】
図13A~13Cは、化合物21cおよび10がトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者由来異種移植片(PDX)UT-1355の成長を著しく阻害したことを示す。UT-1355は、ARおよびAR-V7の両方を発現する。ビヒクルで処置された腫瘍は237から1355まで成長したが、21cおよび10で処置された腫瘍は227および427から331および1354までそれぞれ増大した。これらの結果は、10および21cがPDXに対して有効であることを示す。患者からのTNBC乳がん検体を、マウスに移植した。腫瘍が成長したら、P-1腫瘍を凍結した。P1腫瘍を、2020年8月に60匹の雌性NSGマウスに移植した。腫瘍が100~400mm
3に成長したら、動物を無作為化し、ビヒクル(n=12)、60mpk 21c(n=11)、10(n=9;60mpk b.i.d)、およびエンザルタミド(n=9;60mpk)の群で処置した。体重を、処置開始日および研究の終わりに測定した。腫瘍体積を、週に2回測定した。特徴付け:PDX試料を、AR発現に関して評価した。110KdaでのARバンドを観察した。しかしながら、約70Kdaの別のバンドも観察された。AR-V7抗体を用いるウェスタンブロットは、70Kdaでバンドを示した。患者および腫瘍の特徴:アフリカ系アメリカ人、65歳、収集日01/02/2020、ki67 45~50%
【0033】
【0034】
【
図15】
図15は、Kaplan-Meierグラフが、UT-1355腫瘍を保持する動物に関してプロットされたことを示す(
図13A~13Cに示される)。安楽死基準は、腫瘍が>2cmまたは2000mm
3の体積に到達したときである。ビヒクルおよびエンザルタミドで処置された腫瘍保持動物は、21cで処置された動物よりも早く安楽死基準に到達した。安楽死基準(長さ>2cmまたは体積>2000mm
3)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の詳細な説明
以下の詳細な説明において、多くの具体的な詳細が、本発明の完全な理解をもたらすよう説明されている。しかし、本発明が、これらの特定の詳細説明なしに実施することができることが、当業者によって理解される。他の例において、周知の方法、手順および構成要素は、本発明を不明瞭にしないよう、詳細に記載されていない。
【0036】
アンドロゲンは、転写因子のステロイド受容体スーパーファミリーのメンバーであるARに結合することによって細胞内で作用する。前立腺がん(PCa)の成長および維持は、循環するアンドロゲンによって主に制御されるので、PCaの処置は、ARを標的とする処置法に大きく依存する。受容体活性化を妨害するための、ダロルタミド、エンザルタミド、アビラテロン(間接的ARアンタゴニスト;他はLBD結合直接的ARアンタゴニスト)、アパルタミド、ビカルタミドまたはヒドロキシフルタミドなどのARアンタゴニストによる処置が、PCaの成長を低下させるために、過去において首尾よく使用されてきた。現在、利用可能なすべての直接的なARアンタゴニストは、ARに競合的に結合し、NCoRおよびSMRTなどのコリプレッサーを動員して、標的遺伝子の転写を抑制する。しかし、変更された細胞内シグナル伝達、AR変異およびコアクチベーターの発現の増加は、アンタゴニストの機能障害を、またはアンタゴニストのアゴニストへの変換さえももたらす。
【0037】
検討により、AR内のW741およびT877の変異が、ビカルタミドおよびヒドロキシフルタミドをそれぞれアゴニストに変換することが実証された。同様に、増加した細胞内サイトカインは、AR応答性プロモーターに対するコリプレッサーの代わりにコアクチベーターを動員し、続いてビカルタミドをアゴニストに変換する。エンザルタミド、アパルタミドおよびアビラテロンの抵抗性にリンクした変異は、F876、H874、T877、および二変異体T877/S888、T877/D890、F876/T877(すなわち、MR49細胞)、およびH874/T877を含む(Genome Biol. (2016) 17:10 (doi: 10.1186/s13059-015-0864-1))。
【0038】
アビラテロン抵抗性変異はL702H変異を含み、L702H変異は、プレドニゾンなどのグルココルチコイドによってARの活性化をもたらし、これは、アビラテロンが、通常、プレドニゾンと組み合わせて処方されるので、アビラテロンへの抵抗性を引き起こす。抵抗性が、エンザルタミドまたはアパルタミドに対して発生する場合には、多くの場合、患者は、アビラテロンに対して不応性となり、その逆も真である。または奏効期間は、非常に短い。
【0039】
ダロルタミドはまた、CRPCでは、有効性および作用期間が限定されている。この状況は、進行前立腺がんにおけるAR再活性化を予防する、決定的なアンドロゲン消失治療法の必要性を強調するものである。Aroraらは、Cell 155, 1309-1322において、前立腺がん細胞系(LNCaP/AR)および臨床試料に由来する薬物抵抗性腫瘍の共通した特徴として、グルココルチコイド受容体(GR)発現が誘発されることを報告している。類似しているが、区別可能な一連の標的遺伝子を活性化するためにGRは、ARの代わりになり、抵抗性表現型の維持にとって必要であった。GRアゴニストであるデキサメタゾンは、エンザルタミド(またはアパルタミド)抵抗性を付与するのに十分である一方、GRアンタゴニストは、感受性を回復させた。急性AR阻害は、GR発現のAR媒介性フィードバック抑制が軽減されるので、前立腺がん細胞のサブセットにおいてGRの上方調節をもたらした。これらの知見により、薬物曝露すると、代替核内受容体を介してAR標的遺伝子を推進するようプライミングされた細胞の増殖によるAR遮断からの逃避機構が確立される。本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、強力なARアンタゴニストであることに加え、強力なGRアンタゴニストでもあり得る。したがって、本発明のSARDにより、GR依存性抗アンドロゲン抵抗性の発生が予防されるか、またはGRに依存性の抗アンドロゲン抵抗性前立腺がんが処置される可能性がある。ダロルタミドに抵抗性を付与する、特異的なAR変異またはARバイパス機構は、未だ報告されていないが、ダロルタミドは、AR上の同じLBD標的に結合し、本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物に対して感受性の抵抗性変異が発生する可能性がある。
【0040】
本発明は、選択的アンドロゲン受容体分解剤(SARD)およびpan-アンタゴニストであるピラゾリルプロパンアミド化合物に関する。本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、前立腺がん、進行性前立腺がん、難治性前立腺がん、AR過剰発現前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、去勢感受性前立腺がん、AR-V7発現前立腺がん、またはd567ES発現前立腺がん、ダロルタミド抵抗性前立腺がん、エンザルタミド抵抗性前立腺がん、アパルタミド抵抗性前立腺がん、またはアビラテロン抵抗性前立腺がんの処置に使用される。
【0041】
本明細書で使用する場合、特に定義しない限り、「選択的アンドロゲン受容体分解剤」(SARD)化合物は、増殖するためにAR完全長(AR-FL)および/またはARスプライスバリアント(AR-SV)に依存する、PCa細胞および腫瘍の成長を阻害することが可能なアンドロゲン受容体アンタゴニストである。本SARD化合物は、リガンド結合ドメイン(LBD)に結合しないことがある。代替的に、「選択的アンドロゲン受容体分解剤」(SARD)化合物は、様々な病原性の変異体バリアントARおよび野性型ARの分解を引き起こすことができるアンドロゲン受容体アンタゴニストであって、したがって、本発明において具現化される疾患状態において見出される幅広い変化した病原性細胞環境において、抗アンドロゲン作用を発揮することができる、アンドロゲン受容体アンタゴニストである。一実施形態では、SARDは、経口活性である。別の実施形態では、SARDは、作用部位に局所適用される。
【0042】
本SARD化合物は、ARのN末端ドメイン(NTD)に;ARの交代結合および分解ドメイン(BDD)に;ARリガンド結合ドメイン(LBD)と交代結合および分解ドメイン(BDD)の両方に、またはARのN末端ドメイン(NTD)とリガンド結合ドメイン(LBD)の両方に結合することができる。一実施形態では、BDDは、NTDに位置し得る。一実施形態では、BDDは、NTDのAF-1領域に位置する。代替的に、本SARD化合物は、N末端ドメイン(NTD)依存性の構成的に活性なAR-SVによって駆動される成長を阻害すること、またはAR LBDとは区別されるドメインに結合することによりARを阻害することが可能となり得る。同様に、本SARD化合物は、強力な(すなわち、非常に効力が高く、非常に効果的である)選択的アンドロゲン受容体アンタゴニストとなり得、これは、他の公知のARアンタゴニスト(例えば、ダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、ビカルタミドおよびアビラテロン)よりも強力にARを拮抗する。
【0043】
本SARD化合物は、従来的なアンタゴニストによって阻害され得ない、ARーSVを標的とする選択的アンドロゲン受容体アンタゴニストとすることができる。本SARD化合物は、以下に限定されないが、AR-SV分解活性;AR-FL分解活性;AR-SV阻害活性(すなわち、AR-SVアンタゴニストである);AR-FL阻害活性(すなわち、AR-FLアンタゴニストである);AR-SVの構成的活性化の阻害、またはAR-FLの構成的活性化の阻害を含めた、いくつかの活性のいずれか1つを示すことができる。代替的に、本SARD化合物は、デュアルAR-SV活性およびAR-SV阻害機能、ならびに/またはデュアルAR-FL分解およびAR-FL阻害機能を有することができるか、または代替として、これらの活性の4つすべてを有することができる。
【0044】
本SARD化合物はまた、AR-FLおよびAR-SVを分解することもできる。本SARD化合物は、AR LBDとは区別されるドメインに結合することによって、ARを分解することができる。本SARD化合物は、デュアル分解およびAR-SV阻害機能を有しており、利用可能ないずれのCRPC治療剤とも異なる。本SARD化合物は、細胞内分泌アンドロゲン合成、リガンド結合ドメイン(LBD)が欠如したAR-SVの発現、およびアンタゴニストに抵抗性する能力を有するAR-LBD変異などの代替機構によるARの再活性化を阻害すること、または変化した病原性細胞環境に存在する再活性化されたアンドロゲン受容体を阻害することができる。
【0045】
AR-スプライスバリアントの例には、以下に限定されないが、AR-V7およびARv567es(別名AR-V12;S. Sun, et al. Castration resistance in human prostate cancer is conferred by a frequently occurring androgen receptor splice variant. J Clin Invest. (2010) 120(8), 2715-2730)が含まれる。抗アンドロゲン抵抗性を付与するAR変異の非限定例は、W741L、T877AおよびF876L(J. D. Joseph et al. A clinically relevant androgen receptor mutation confers resistance to second-generation antiandrogens enzalutamide and ARN-509 [apalutamide]. Cancer Discov. (2013) 3(9), 1020-1029)変異である。LBD抵抗性を付与する他の多数の変異が、当分野で公知であり、引き続き発見されている。AR-V7は、LBDが欠如したARのスプライスバリアントである(A. H. Bryce & E. S. Antonarakis. Androgen receptor splice variant 7 in castration-resistant prostate cancer: Clinical considerations. Int J Urol. (2016 June 3) 23(8), 646-53. doi: 10.1111/iju.13134)。AR-V7は、構成的に活性であり、侵襲性PCaおよび内分泌療法に対する抵抗性を担っていることが実証されている。
【0046】
本明細書で使用される場合、一部の実施形態では、「pan-アンタゴニスト」という用語は、野生型ARおよび試験される全てのAR変異体であって限定するものではないがF876L、T877A、およびW741Lを含むものに対して有効なアンタゴニストを指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「UT-1355」は、本出願の発明者らにより開発された、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者由来の異種移植片(PDX)である。これは腫瘍として動物において成長したTNBC患者検体である。
【0048】
本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、いかなる他のアンタゴニストにより処置することができないCRPCの処置に使用することができるSARDおよび汎アンタゴニストである。本ピラゾリルプロパンアミド化合物により、AR-SVの分解によってCRPCが処置され得る。本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、ARアンタゴニストをアゴニストに通常変換するAR変異体において、それらのアンタゴニスト活性を維持することができる。例えば、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、AR変異体である、W741L、T877AおよびF876Lに対するそのアンタゴニスト活性を維持する(J. D. Joseph et al. A clinically relevant androgen receptor mutation confers resistance to second-generation antiandrogens enzalutamide and ARN-509 [apalutamide]. Cancer Discov. (2013) 3(9), 1020-1029)。代替的に、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、LBDを標的とする薬剤が有効ではない、またはNTD依存性AR活性が構成的に活性な、変化した細胞環境内でアンタゴニスト活性を誘発する。代替的に、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、ARとGRのコアンタゴニストとなり、これによって、GRが過剰発現されている、および/またはGRが、AR軸を活性化している抗アンドロゲン抵抗性CRPCに打ち勝つか、またはこれを阻止することができる。代替的に、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、ARとPRのコアンタゴニストとなり、これによって、PRが過剰発現されている、および/またはPRがAR軸を活性化している抗アンドロゲン抵抗性CRPCに打ち勝つか、またはこれを阻止する。
【0049】
本発明は、それを必要とする対象の前立腺がんを処置する方法であって、式I
【化2】
の構造[式中、
TはOHであり、
R
1はCH
3であり、
YはH、CF
3、F、I、Br、Cl、またはCNであり、
ZはH、NO
2、CN、ハロゲン、COOR、COR、NHCOR、またはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5から8員縮合環を形成し、
XおよびDは、それぞれCHまたはNであり、
Bは結合またはCHであり、Bが結合であるとき、D=B-XはD-Xによって表され、
RはH、アルキル、ハロアルキル、アルキル-OH、アリール、F、Cl、Br、I、またはOHであり、
Aは、直鎖状または分岐状アルキル、ハロアルキル、CF
3、アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、OR、ベンジル、アルキニル、SO
2N(R)
2、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、またはCORからそれぞれ独立して選択される、Q
1、Q
2、Q
3、およびQ
4のうちの少なくとも1つで必要に応じて置換された、少なくとも1個の窒素原子および0、1もしくは2個の二重結合を有する5員不飽和環であり、前記アルキル、アルキニル、およびアリールは、ハロゲン、CN、またはOHでそれぞれ必要に応じて置換されている]
もしくはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物、またはそれらの任意の組合せによって表される化合物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0050】
一部の実施形態では、化合物が、式II
【化3】
の化合物によって表される。
【0051】
一部の実施形態では、化合物は、式IIAまたは式IIB
【化4】
の化合物によって表される。
【0052】
一部の実施形態では、化合物は、式IIIの化合物
【化5】
[式中、
TはOHであり、
R
1はCH
3であり、
YはH、CF
3、F、I、Br、Cl、またはCNであり、
ZはH、NO
2、CN、ハロゲン、COOR、COR、NHCOR、またはCONHRであるか、
あるいはYおよびZは、5から8員縮合環を形成し、
XはCHまたはNであり、
RはH、アルキル、ハロアルキル、アルキル-OH、CF
3、CH
2Cl、CH
2CH
2Cl、アリール、F、Cl、Br、I、またはOHであり、
Aは、直鎖状または分岐状アルキル、ハロアルキル、CF
3、アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、OR、ベンジル、アルキニル、SO
2N(R)
2、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、またはCORからそれぞれ独立して選択される、Q
1、Q
2、Q
3、およびQ
4のうちの少なくとも1つでそれぞれ必要に応じて置換されたピロール、ピラゾール、トリアゾール、またはイミダゾールであり、前記アルキル、アルキニル、およびアリールは、ハロゲン、CN、またはOHでそれぞれ必要に応じて置換されている]
もしくはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物、またはそれらの任意の組合せ
によって表される。
【0053】
一部の実施形態では、化合物は、式IIIAまたは式IIIB
【化6】
の構造によって表される。
【0054】
一部の実施形態では、化合物は、式IV
【化7】
の構造によって表される。
【0055】
一部の実施形態では、化合物は、式IVAまたは式IVB
【化8】
の構造によって表される。
【0056】
一部の実施形態では、化合物は、式V
【化9】
の構造[式中、
Q
2、Q
3、およびQ
4は、それぞれ独立して、直鎖状または分岐状アルキル、ハロアルキル、CF
3、アリール、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、OR、ベンジル、アルキニル、SO
2N(R)
2、NHCOOR、N(R)
2、NHCOR、CONHR、COOR、またはCORから選択され、前記アルキル、アルキニル、およびアリールは、ハロゲン、CN、またはOHでそれぞれ必要に応じて置換されている]
もしくはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物、またはそれらの任意の組合せ
によって表される。
【0057】
一部の実施形態では、化合物は、式VAまたは式VA
【化10】
の構造によって表される。
【0058】
一部の実施形態では、Q1、Q2、Q3、およびQ4は、CN、NO2、CF3、F、Cl、Br、I、アルキニル、SO2N(R)2、NHCOOR、N(R)2、NHCOR、COR、またはフェニルであり、前記フェニルが、ハロゲン、CN、またはOHで必要に応じて置換されている。
【0059】
一部の実施形態では、化合物は、以下の化合物:
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
のいずれか1つによって表される。
【0060】
一部の実施形態では、化合物は、化合物26a
【化15】
によって表される。
【0061】
一部の実施形態では、化合物は、下記の化合物
【化16】
のいずれか1つによって表される。
【0062】
一部の実施形態では、化合物は、化合物21aまたは21cによって表される。
【化17】
【0063】
一部の実施形態では、化合物は、下記の化合物
【化18】
【化19】
のいずれか1つによって表される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖または分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素を指す。アルキル基は、1~12個の炭素、1~7個の炭素、1~6個の炭素、または1~4個の炭素原子を有し得る。一部の実施形態では、アルキル基は、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、CN、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、チオ、またはチオアルキルで置換されてもよい。
【0065】
「アリールアルキル」基は、アリールに結合されたアルキルを指し、ここでアルキルおよびアリールは本明細書で定義された通りである。アリールアルキル基の例はベンジル基である。
【0066】
「アルキニル」基は、1つまたは複数の三重結合を有する不飽和直鎖または分岐鎖炭化水素を指す。アルキニル基は、2~12個の炭素を有していてもよい。一部の実施形態では、アルキニル基は2~6個の炭素または2~4個の炭素を有する。アルキニル基の例には、限定するものではないがエチニル、プロピニル、またはブチニルなどが含まれる。アルキニル基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、チオ、またはチオアルキルで置換されてもよい。
【0067】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、置換されなくても置換されてもよい、少なくとも1個の炭素環式芳香族基を有する芳香族基を指す。置換基には、限定するものではないがハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ、チオ、またはチオアルキルが含まれる。アリール環の非限定的な例は、フェニルおよびナフチルである。アリール基は、6~12員環であり得る。一部の実施形態では、アリール基はフェニル基であり得る。
【0068】
用語「ヘテロアリール」とは、少なくとも1つの複素環式芳香環を有する、芳香族基を指す。一実施形態では、ヘテロアリールは、環の部分として、硫黄、酸素、窒素、ケイ素、リンなどの少なくとも1個のヘテロ原子、またはそれらの任意の組合せを含む。別の実施形態では、ヘテロアリールは、無置換であってもよく、あるいはハロゲン、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシカルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ、チオまたはチオアルキルから選択される、1つまたは複数の基によって置換されていてもよい。ヘテロアリール環の非限定例は、ピラニル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピリジニル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、インドリル、イミダゾリル、イソオキサゾリルなどである。一実施形態では、ヘテロアリール基は、5~12員環である。一実施形態では、ヘテロアリール基は、5員環である。一実施形態では、ヘテロアリール基は、6員環である。別の実施形態では、ヘテロアリール基は、5~8員環である。別の実施形態では、ヘテロアリール基は、1~4つの縮合した環を含む。一実施形態では、ヘテロアリール基は、1,2,3-トリアゾールである。一実施形態では、ヘテロアリールは、ピリジルである。一実施形態では、ヘテロアリールは、ビピリジルである。一実施形態では、ヘテロアリールは、テルピリジルである。
【0069】
本明細書で使用する場合、用語「ハロアルキル」基は、1個または複数のハロゲン原子により、例えばF、Cl、BrまたはIにより置換されているアルキル基を指す。
【0070】
「ヒドロキシル」基は、OH基を指す。
【0071】
用語「ハロゲン」または「ハロ」または「ハライド」は、ハロゲン、例えば、F、Cl、BrまたはIを指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、一部の実施形態では、「ピラゾール化合物」という用語は、「ピラゾリルプロパンアミド化合物」を指してもよい。一部の実施形態では、「ピラゾールプロパンアミド」および「ピラゾリルプロパンアミド」という用語は、同義で使用され得る。
【0073】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、またはその誘導体、光学異性体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬製品、水和物、N-オキシド、プロドラッグ、多形、結晶、またはそれらの組合せの使用を提供する。
【0074】
一実施形態では、本発明の方法は、化合物を酸または塩基と反応させることによって生成することができる、本ピラゾリルプロパンアミド化合物の「薬学的に許容される塩」を使用する。
【0075】
本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、薬学的に許容される塩に変換されてもよい。薬学的に許容される塩は、化合物を酸または塩基と反応させることによって生成することができる。
【0076】
アミンの好適な薬学的に許容される塩は、無機酸または有機酸から調製することができる。アミンの無機塩の例には、以下に限定されないが、硫酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、塩化物、ヘミ硫酸塩、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩(hydrochlorate)、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩(ヒドロキシエタンスルホン酸塩)、ヨウ素酸塩、ヨウ化物、イソチオネート、硝酸塩、過硫酸塩、リン酸塩、硫酸塩、スルファミン酸塩、スルファニル酸塩、スルホン酸(アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、ハロゲン置換アルキルスルホン酸塩、ハロゲン置換アリールスルホン酸塩)、スルホン酸塩、またはチオシアン酸塩が含まれる。
【0077】
アミンの有機塩の例には、有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族(araliphatic)、複素環式、カルボン酸およびスルホン酸のクラスから選択することができ、この例は、酢酸塩、アルギニン、アスパラギン酸塩、アスコルビン酸塩、アジピン酸塩、アントラニル酸塩、アルゲン酸塩(algenate)、アルカンカルボン酸塩、置換アルカンカルボン酸塩、アルギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、カルボン酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、カルシウムエデト酸塩、カンシル酸塩(camsylate)、炭酸塩、クラブラン酸塩、桂皮酸塩、ジカルボン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、二塩酸塩、デカン酸塩、エナント酸塩、エタンスルホン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシル酸塩、フマル酸塩、ギ酸塩、フッ化物、ガラクツロン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルセプト酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、グルタル酸塩、グルタミン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、ヒドロキシカルボン酸、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、フッ化水素酸塩(hydrofluorate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メチレンビス(ベータ-オキシナフトエ酸塩)、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、臭化メチル(methylbromide)、メチル硝酸塩、メチルスルホン酸塩、マレイン酸一カリウム塩、ムチン酸塩、モノカルボン酸塩、硝酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、ナプシル酸塩、N-メチルグルカミン、シュウ酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、パモ酸塩、フェニル酢酸塩、ピクリン酸塩、フェニル安息香酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、フタル酸塩、ペクチン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、ピルビン酸塩、キナ酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、ステアリン酸塩、スルファニル酸塩、塩基性酢酸塩(subacetate)、酒石酸塩、テオフィリン酢酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、トリフルオロ酢酸塩、テレフタル酸塩、タンニン酸塩、テオクル酸塩、トリハロ酢酸塩、トリエチオジド、トリカルボン酸塩、ウンデカン酸塩および吉草酸塩である。カルボン酸またはフェノールの無機塩の例は、アンモニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択されてもよい。アルカリ金属には、以下に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムが含まれる。アルカリ土類金属には、以下に限定されないが、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム;亜鉛、バリウム、コリンまたは第四級アンモニウムが含まれる。カルボン酸またはフェノールの有機塩の例は、アルギニン、脂肪族有機アミン、脂環式有機アミン、芳香族有機アミン、ベンザチン、t-ブチルアミン、ベネタミン(N-ベンジルフェネチルアミン)、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ヒドラバミン、イミダゾール、リジン、メチルアミン、メグラミン、N-メチル-D-グルカミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ニコチンアミド、有機アミン、オルニチン、ピリジン、ピコリン、ピペラジン、プロカイン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トロメタミンおよび尿素を含めた有機アミンから選択することができる。
【0078】
様々な実施形態では、本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物の薬学的に許容される塩には、HCl塩、シュウ酸塩、L-(+)-酒石酸塩、HBr塩およびコハク酸塩が含まれるが、これらに限定されない。それぞれは、本発明の別個の実施形態となる。
【0079】
塩は、従来の手段によって、例えば、塩が不溶性である溶媒もしくは媒体中、もしくは真空で、もしくは凍結乾燥によって除去される水などの溶媒中、生成物の遊離塩基もしくは遊離酸形態を1当量もしくはそれより多い当量の適切な酸もしくは塩基と反応させることによって、または既存の塩のイオンを別のイオンもしくは好適なイオン交換樹脂と交換することによって形成することができる。
【0080】
本発明の方法は、非荷電化合物、または該化合物の薬学的に許容される塩を使用してもよい。特に、本方法は、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物の薬学的に許容される塩を使用する。薬学的に許容される塩は、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物のアミン塩またはフェノールの塩とすることができる。
【0081】
一実施形態では、本発明の方法は、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの遊離塩基、有機酸、非荷電化合物もしくは非錯体化化合物、および/またはその異性体、光学異性体もしくは光学異性体の任意の混合物、医薬製品、水和物、多形、またはそれらの組合せを使用する。
【0082】
一実施形態では、本発明の方法は、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物の光学異性体を使用する。一実施形態では、本発明の方法は、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物の異性体を使用する。一実施形態では、本発明の方法は、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物の医薬製品を使用する。一実施形態では、本発明の方法は、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物の水和物を使用する。一実施形態では、本発明の方法は、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物の多形を使用する。一実施形態では、本発明の方法は、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物の代謝産物を使用する。別の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されている式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、または別の実施形態では、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物の異性体、光学異性体、薬学的に許容される塩、代謝産物、医薬製品、水和物、多形の組合せを含む、組成物を使用する。
【0083】
本明細書で使用する場合、用語「異性体」は、以下に限定されないが、光学異性体、構造異性体または配座異性体を含む。
【0084】
用語「異性体」は、本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物の光学異性体を包含することが意図されている。本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、少なくとも1個のキラル中心を含有することが当業者によって理解される。したがって、本化合物は、光学的に活性な形態((R)異性体または(S)異性体など)またはラセミ形態として存在することができる。光学的に活性な化合物は、鏡像異性体に富む混合物として存在し得る。一部の化合物はまた、多形を示すことがある。本発明は、ラセミ体、光学活性体、多形体もしくは立体異性体、またはそれらの混合物のいずれかを包含することが理解されるべきである。したがって、本発明は、ピラゾリルプロパンアミド化合物を純粋な(R)-異性体として、または純粋な(S)-異性体として使用することができる。光学活性体を調製する方法は、当分野で公知である。例えば、再結晶化技法によるラセミ体の分割による、光学活性な出発原料からの合成による、キラル合成による、またはキラル固定相を使用するクロマトグラフィー分離による。
【0085】
本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、該化合物の水和物であってもよい。本明細書で使用する場合、用語「水和物」には、以下に限定されないが、半水和物、一水和物、二水和物または三水和物が含まれる。本発明はまた、本明細書において記載されている化合物のアミノ置換基のN-オキシドの使用を含む。
【0086】
本発明は、本明細書に記載されているピラゾリルプロパンアミド化合物の代謝産物の使用を使用することができる。一実施形態では、「代謝産物」は、代謝または代謝過程によって別の物質から生成する任意の物質を意味する。
【0087】
一部の実施形態では、本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、当技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。他の実施形態では、本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、実施例1の合成方法に基づいて調製される。
【0088】
本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、好ましいin vitroスクリーニングプロファイル、ラットにおける有利なin vivo PK特性、精嚢(SV)および腹側前立腺(VP)などの二次性徴臓器のin vivo薬力学の改善された効力および有効性、ならびにエンザルタミド抵抗性(MDVRと呼ばれる)VCaP異種移植片などの抗アンドロゲン抵抗性CRPCのin vivoモデルでの改善された効力を、有することが見出される。本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物のin vivo抗アンドロゲン作用性は、広範な前臨床モデルおよび下記における、前の世代のSARDを遥かに超えた効力および有効性を有する。これらのデータは、これらのピラゾリルプロパンアミド化合物がpan-拮抗作用特性を有しかつ高度に強力で有効性のあるin vivo活性であることを示唆する。
【0089】
本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、これまでこのように試験されてきた全ての形のARタンパク質を阻害し分解する点で、直接(フルタミド(1)ビカルタミド (2)、ニルタミド(3)、エンザルタミド(4)、アパルタミド(5)、またはダロルタミド(6))または間接(酢酸アビラテロン(7))的LBD標的ARアンタゴニストに勝る利点を有し、それによって、承認された薬剤と比較して阻害を受け易いCRPCモデルの範囲が拡張される。さらに、本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、in vivoで優れたADMEおよびPK特性を示し、抗アンドロゲン抵抗性のモデルのインタクトな動物において前例のない異種移植の有効性を可能にし、本明細書では類似の分子に関して報告される。前臨床プロファイルは、wtAR、AR点変異、短縮型変異体、AR過剰発現(例えば、AR遺伝子増幅)、およびこれらの組合せを分解(ほとんどの症例で)および阻害する能力、ならびに改善されたin vivo PKおよびPD特性を含む。
【0090】
一態様では、本発明は、それを必要とする対象において前立腺がん(PCa)を処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0091】
本発明は、前立腺がん(PCa)を処置するまたはその進行を阻害する、または前立腺がんに罹患している対象の生存率を上昇させる方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0092】
一部の実施形態では、前立腺がんは、増殖するため、AR-FLおよび/またはAR-SVに依存することがある。前立腺がんは、ダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、ビカルタミド、アビラテロン、EPI-001、EPI-506、AZD-3514、ガレテロン、ASC-J9、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、スピロノラクトンまたはそれらの任意の組合せによる処置に抵抗性であってもよい。
【0093】
本発明の方法は、AR、AR-FL、抗アンドロゲン抵抗性を付与するAR-LBD変異を有するAR-FL、AR-SV、遺伝子増幅されたAR、またはそれらの任意の組合せのレベルを低下させることもできる。
【0094】
本発明の方法の一部の実施形態では、前立腺がんは、ダロルタミド抵抗性前立腺がん、エンザルタミド抵抗性前立腺がん、アパルタミド抵抗性前立腺がん、またはアビラテロン抵抗性前立腺がんである。
【0095】
一実施形態では、本発明は、ダロルタミド抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0096】
本発明は、ダロルタミド抵抗性前立腺がん(PCa)を処置するまたはその進行を阻害する、またはアパルタミド抵抗性前立腺がんに罹患している対象の生存率を上昇させる方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0097】
一実施形態では、本発明は、エンザルタミド抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0098】
本発明は、エンザルタミド抵抗性前立腺がんを処置するまたはその進行を阻害する、またはエンザルタミド抵抗性前立腺がんに罹患している対象の生存率を上昇させる方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0099】
一実施形態では、本発明は、アパルタミド抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0100】
本発明は、アパルタミド抵抗性前立腺がん(PCa)を処置するまたはその進行を阻害する、またはアパルタミド抵抗性前立腺がんに罹患している対象の生存率を上昇させる方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0101】
一実施形態では、本発明は、アビラテロン抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0102】
本発明は、アビラテロン抵抗性前立腺がんを処置するまたはその進行を阻害する、またはアビラテロン抵抗性前立腺がんに罹患している対象の生存率を上昇させる方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0103】
本発明の方法の一部の実施形態では、前立腺がんが、進行性前立腺がん、難治性前立腺がん、または去勢抵抗性前立腺がん、または去勢感受性前立腺がんである。一部の実施形態では、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)が、転移性CRPC(mCRPC)、非転移性CRPC(nmCRPC)、または高リスクnmCRPCである。
【0104】
本発明は、それを必要とする対象において進行性前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0105】
本発明は、進行性前立腺がん(PCa)を処置するまたはその進行を阻害する、または進行性前立腺がんに罹患している対象の生存率を上昇させる方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0106】
本発明は、それを必要とする対象において難治性前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0107】
本発明は、難治性前立腺がん(PCa)を処置するまたはその進行を阻害する、または難治性前立腺がんに罹患している対象の生存率を上昇させる方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0108】
本発明は、それを必要とする対象において去勢抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0109】
本発明の方法の一部の実施形態では、方法はさらに、アンドロゲン遮断療法を対象に施用することを含む。
【0110】
本発明は、去勢抵抗性前立腺がんを処置するまたはその進行を阻害する、または去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に罹患している対象の生存率を上昇させる方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0111】
本発明の方法の一部の実施形態では、方法はさらに、アンドロゲン遮断療法を対象に施用することを含む。
【0112】
一部の実施形態では、本方法は、アンドロゲン遮断療法(ADT)またはLHRHアゴニストまたはアンタゴニストなどの第2の治療をさらに含む。LHRHアゴニストには、以下に限定されないが、リュープロリド酢酸塩が含まれる。
【0113】
本明細書で使用される場合、「生存率の上昇」という用語は、対象の生存率について記述するときの時間の長期化を指す。したがってこの文脈において、本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、進行性前立腺がん、難治性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)、転移性CRPC(mCRPC)、非転移性CRPC(nmCRPC)、高リスクnmCRPC、またはダロルタミド抵抗性前立腺がん、エンザルタミド抵抗性前立腺がん、アパルタミド抵抗性前立腺がん、またはアビラテロン抵抗性前立腺がんの男性の生存率を上昇させるのに使用されてもよい。
【0114】
代替的に、本明細書で使用する場合、用語「増大する」、「増大すること」または「増大した」は、互換的に使用されてもよく、次第に大きくなる実体(サイズ、量、数または強度のような)を指し、この場合、例えば、実体は、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)または前立腺特異的抗原(PSA)である。
【0115】
本明細書に記載される化合物は、非転移性前立腺がんに罹患している対象における、無転移生存(MFS)を増大させるために使用され得る。非転移性前立腺がんは、非転移性進行前立腺がん、非転移性CRPC(nmCRPC)または高リスクnmCRPCとすることができる。
【0116】
本明細書に記載されているピラゾリルプロパンアミド化合物は、デュアル作用を提供するために使用することができる。例えば、本ピラゾリルプロパンアミド化合物により前立腺がんが処置され得、転移が予防され得る。前立腺がんは、不応性前立腺がん、進行前立腺がん;去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)、転移性CRPC(mCRPC)、非転移性CRPC(nmCRPC)、または高リスクnmCRPCとすることができる。
【0117】
去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に進行するリスクが高い、進行前立腺がんを有する男性は、20ng/dLより高い血清中総テストステロン濃度でADTを受けている男性、またはADTの開始時に、(1)Gleasonパターンが4または5の前立腺がんであることが確認された、(2)転移性前立腺がん、(3)<3か月のPSA倍加時間、(4)PSA≧20ng/mL、もしくは(5)根治的局所治療法(根治的前立腺切除または放射線療法)後3年未満でのPSA再発のいずれかを有する男性である。
【0118】
前立腺特異的抗原(PSA)の正常なレベルは、とりわけ、男性対象の年齢、およびその前立腺のサイズなどのいくつかの因子に依存する。2.5~10ng/mLの間の範囲のPSAレベルが、「高境界値」と考えられる一方、10ng/mLより高いPSAレベルは、「高い」と考えられる。0.75/年より大きな変化速度または「PSA速度」が、高速であると考えられる。PSAレベルは、継続中のADTもしくはADT歴、外科的去勢にも関わらず、または抗アンドロゲンおよび/またはLHRHアゴニストによる処置にもかかわらず、増大することがある。
【0119】
高リスク非転移性去勢抵抗性前立腺がん(高リスクnmCRPC)を有する男性は、約18か月またはそれ未満の予測される無憎悪生存を有する、迅速なPSA倍加時間を有する男性を含むことができる(Miller K, Moul JW, Gleave M, et al. 2013. "Phase III, randomized, placebo-controlled study of once-daily oral zibotentan (ZD4054) in patients with non-metastatic castration-resistant prostate cancer," Prostate Canc Prost Dis. Feb; 16:187-192)。このような比較的に迅速なそれらの疾患の進行は、これらの個体に対する新規な治療法の重要性を強調するものである。
【0120】
本発明の方法により、高リスクnmCRPCに罹患している、8ng/mLより高いPSAレベルを有する対象が処置され得る。患者集団は、nmCRPCに罹患している対象であって、PSAが、8か月未満または10か月未満に2倍になる、対象を含む。本方法により、高リスクnmCRPCに罹患している対象における、全血清テストステロンレベルが20ng/mLより高い患者集団も処置され得る。一例では、血清中の遊離テストステロンレベルは、高リスクnmCRPCに罹患している対象において、精巣摘除術を受けた男性において観察されるレベルより高い。
【0121】
前立腺がん、進行性前立腺がん、CRPC、mCRPC、nmCRPCダロルタミド、抵抗性前立腺がん、エンザルタミド抵抗性前立腺がん、アパルタミド抵抗性前立腺がん、および/またはアビラテロン抵抗性前立腺がんの処置は、前立腺がん関連の症状、機能、および/または生存率で、臨床上意味のある改善をもたらし得る。臨床的に有意な改善は、とりわけ、がんが転移性である場合、X線撮影による無増悪生存(rPFS)の増大、またはがんが非転移性である場合、無転移生存(MFS)の増大によって決定することができる。
【0122】
本発明は、前立腺がん、進行性前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)、ダロルタミド抵抗性前立腺がん、エンザルタミド抵抗性前立腺がん、アパルタミド抵抗性前立腺がん、またはアビラテロン抵抗性前立腺がんに罹患している男性対象における血清前立腺特異抗原(PSA)レベルを低下させる方法であって、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの構造によって表される化合物の治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0123】
本発明は、去勢抵抗性前立腺がんに罹患している男性対象における血清中PSAを低下させる治療有効量の式10、16a~16x、21a~21j、26a~26hおよび29a~29rの化合物を投与するステップを含む、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に罹患している男性対象における、血清中PSAを低下させる二次ホルモン治療の方法を包含する。
【0124】
本発明は、それを必要とする対象における腫瘍内の、AR、AR完全長(AR-FL)、抗アンドロゲン抵抗性を付与するAR-LBD変異を有するAR-FL、AR-スプライスバリアント(AR-SV)および/またはAR遺伝子の増幅のレベルを低下させる方法であって、腫瘍内のAR、AR完全長(AR-FL)、抗アンドロゲン抵抗性を付与するAR-LBD変異もしくは他のAR変異を有するAR-FL、AR-スプライスバリアント(AR-SV)および/またはAR遺伝子の増幅のレベルを低下させる、治療有効量の式10、16a~16x、21a~21j、26a~26hおよび29a~29rの化合物を投与するステップを含む、方法を包含する。
【0125】
本方法は、X線撮影による無増悪生存(rPFS)、また無転移生存(MFS)を増大
することができる。
【0126】
対象は、非転移性がんを有すること、アンドロゲン遮断療法(ADT)に成功しなかったこと、精巣摘除術を受けること、または高いもしくは向上している前立腺特異的抗原(PSA)レベルを有することがある。対象は、前立腺がん、進行前立腺がん、不応性前立腺がんを有する患者、CRPC患者、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者または非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)患者、ダロルタミド抵抗性前立腺がん、またはエンザルタミド抵抗性前立腺がん、アパルタミド抵抗性前立腺がん、またはアビラテロン抵抗性前立腺がんとすることができる。これらの対象では、nmCRPCは、高リスクnmCRPCであってもよい。さらに、対象は、全Tの去勢レベルの有無にかかわらず、アンドロゲン遮断療法(ADT)を受けていてもよい。
【0127】
本明細書で使用する場合、語句「去勢抵抗性前立腺がんに罹患している対象」とは、以下:アンドロゲン遮断療法(ADT)により以前に処置されている;ADTに応答し、現在、血清中PSAが、>2ng/mLまたは>2ng/mLを有し、かつADTで達成される底値よりも25%高いことを表す;アンドロゲン遮断療法に維持されているにもかかわらず、血清中PSAが向上していると診断された対象;去勢レベルの血清中の全テストステロン(<50ng/dL)、または去勢レベルの血清中の全テストステロン(<20ng/dL)、のうちの少なくとも1つを有する対象を指す。対象は、少なくとも2週間の間隔で、2回の逐次的な評価に対して、血清中PSAの向上を有すること、ADTにより効果的に処置されていること、またはADTの開始後、血清中のPSA応答歴を有することができる。
【0128】
本明細書で使用する場合、用語「血清中PSAの向上」とは、アンドロゲン遮断療法(ADT)の開始後の、血清中PSAの25%またはそれより大きな上昇、および底値からの2ng/mlまたはそれより大きな絶対的上昇;または血清中PSAが>2ng/mL、または>2ng/mLかつ底値より25%の上昇を指す。用語「底値」とは、患者がADTを受けている間の、最低PSAレベルを指す。
【0129】
用語「血清中PSAの応答」とは、以下:ADTの開始前から血清中PSA値の少なくとも90%の低下、任意の時点における<10ng/mLの検出不可能なレベルの血清中PSA(<0.2ng/mL)、血清中PSAのベースラインからの少なくとも50%の低下、血清中PSAのベースラインからの少なくとも90%の低下、血清中PSAのベースラインからの少なくとも30%の低下、または血清中PSAのベースラインからの少なくとも10%の低下のうちの少なくとも1つを指す。
【0130】
本発明の方法は、ADTの形態と、本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26hおよび29a~29rの化合物との組合せを投与するステップを含む。ADTの形態は、LHRHアゴニストを含む。LHRHアゴニストには、以下に限定されないが、酢酸リュープロリド(Lupron(登録商標))(参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,480,656号;5,575,987号;5,631,020号;5,643,607号;5,716,640号;5,814,342号;および6,036,976号)または酢酸ゴセレリン(Zoladex(登録商標))(参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,118,552号;7,220,247号;および7,500,964号)が含まれる。ADTの形態には、以下に限定されないが、LHRHアンタゴニスト、可逆性抗アンドロゲンまたは両側精巣摘除術が含まれる。LHRHアンタゴニストには、以下に限定されないが、デガレリクスおよびアバレリックスが含まれる。抗アンドロゲンには、以下に限定されないが、ビカルタミド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、フィナステリド、デュタステリド、エンザルタミド、アパルタミド、EPI-001、EPI-506、ダロルタミド、ニルタミド、クロルマジノン、アビラテロンまたはそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、ならびにリアーゼ阻害剤(例えば、アビラテロン)を投与することを包含する。
【0131】
用語「進行前立腺がん」とは、前立腺に起源があり、精嚢、骨盤リンパ節または骨を含めた周囲組織などの前立腺を越えて、または身体の他の部分へと広く転移した転移性がんを指す。前立腺がんの病理は、悪性度の増加する順に1~5のGleason等級付けにより等級付けされる。進行性疾患および/または前立腺がんに起因する死亡の大きなリスクを有する患者は、その定義に含まれるべきであり、IIBという低い疾患期の前立腺カプセルの外側にがんを有するいかなる患者も、明らかに「進行した」疾患を有する。「進行前立腺がん」は、局所的な進行前立腺がんを指すことができる。
【0132】
用語「不応性」とは、処置に応答しないがんを指すことができる。例えば、前立腺がんまたは乳がんは、処置の開始時に抵抗性であってもよく、または処置の間に抵抗性になってもよい。「不応性がん」は、本明細書において、「抵抗性がん」と称されてもよい。
【0133】
用語「去勢抵抗性前立腺がん」(CRPC)は、患者が依然としてテストステロンを低下させるADTもしくは他の治療中である間に、悪化または進行する進行前立腺がん、あるいはホルモン不応性、ホルモンナイーブ、アンドロゲン非依存性、または化学的もしくは外科的去勢抵抗性と考えられる前立腺がんを指す。CRPCは、細胞内分泌アンドロゲン合成によるAR活性化、リガンド結合ドメイン(LBD)を欠くARスプライスバリアント(AR-SV)の発現、アンタゴニストに抵抗する能力を有するAR-LBDまたは他のAR変異の発現の結果とすることができる。去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)は、進行中のADTおよび/または外科的去勢があるにもかかわらず、発症した進行前立腺がんである。去勢抵抗性前立腺がんは、前立腺特異的抗原(PSA)の血清中レベルの上昇もしくはより高い血清中レベル、転移、骨転移、疼痛、リンパ節の関与、腫瘍成長のサイズまたはその血清中マーカーの増大、予後の診断マーカーもしくは患者の状態の悪化によって証明される通り、以前の外科的去勢、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアゴニスト(例えば、リュープロリド)もしくはアンタゴニスト(例えば、デガレリクスまたはアバレリックス)、抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド、フルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、ケトコナゾール、アミノグルテタミド)、化学療法剤(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル、アドリアマイシン、ミトキサントロン、エストラムスチン、シクロホスファミド)、キナーゼ阻害剤(イマチニブ(Gleevec(登録商標))もしくはゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、カボザンチニブ(Cometriq(商標)、XL184としても知られている)、または他の前立腺がん療法(例えば、ワクチン(シプリューセル-T(Provenge(登録商標))、GVAXなど)、草本(herbal)(PC-SPES)およびリアーゼ阻害剤(アビラテロン)での継続処置にもかかわらず、進行もしくは悪化し続けるか、または患者の健康に悪影響を及ぼす前立腺がんとして定義される。
【0134】
去勢抵抗性前立腺がんは、ホルモンにナイーブな前立腺がんとして定義されてもよい。去勢抵抗性前立腺がんを有する男性では、腫瘍細胞は、アンドロゲン(男性の性別の特徴の発生および維持を促進するホルモン)の非存在下で成長する能力を有することができる。
【0135】
多数の早期前立腺がんは、成長のためにアンドロゲンを必要とするが、進行前立腺がんは、アンドロゲン非依存性またはホルモンナイーブである。
【0136】
用語「アンドロゲン遮断療法」(ADT)は、精巣摘除術、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログの投与、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アンタゴニストの投与、5α-レダクターゼ阻害剤の投与、抗アンドロゲンの投与、テストステロン生合成の阻害剤の投与、エストロゲンの投与、または17α-ヒドロキシラーゼ/C17,20リアーゼ(CYP17A1)阻害剤の投与を含むことができる。LHRH薬は、睾丸によって産生されたテストステロンの量を低下させる。米国において利用可能なLHRHアナログの例には、リュープロリド(Lupron(登録商標)、Viadur(登録商標)、Eligard(登録商標))、ゴセレリン(Zoladex(登録商標))、トリプトレリン(Trelstar(登録商標))およびヒストレリン(Vantas(登録商標))が含まれる。抗アンドロゲンは、アンドロゲンのいずれかを身体が使用する能力を遮断する。抗アンドロゲン薬の例には、ダロルタミド(Nubeqa(登録商標))、エンザルタミド(Xtandi(登録商標))、アパルタミド(Erleada(登録商標))、フルタミド(Eulexin(登録商標))、ビカルタミド(Casodex(登録商標))およびニルタミド(Nilandron(登録商標))が含まれる。黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アンタゴニストには、アバレリックス(Plenaxis(登録商標))またはデガレリクス(Firmagon(登録商標))(進行前立腺がんを処置するため、2008年にFDAによって使用が承認された)が含まれる。5α-レダクターゼ阻害剤は、テストステロンを一層活性なアンドロゲン、5α-ジヒドロテストステロン(DHT)に変換する身体の能力を遮断し、フィナステリド(Proscar(登録商標))およびデュタステリド(Avodart(登録商標))などの薬物を含む。テストステロン生合成の阻害剤は、ケトコナゾール(Nizoral(登録商標))などの薬物を含む。エストロゲンは、ジエチルスチルベストロールまたは17β-エストラジオールを含む。17α-ヒドロキシラーゼ/C17,20リアーゼ(CYP17A1)阻害剤は、アビラテロン(Zytiga(登録商標))を含む。
【0137】
本発明は、抗アンドロゲン抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。一部の実施形態では、抗アンドロゲンは、以下に限定されないが、ビカルタミド、ヒドロキシフルタミド、フルタミド、ダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミドおよび/またはアビラテロンを含むことができる。
【0138】
本発明は、それを必要とする対象における、前立腺がんを処置する方法であって、前記対象が、再配列したAR、ARを過剰発現する前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、去勢感受性前立腺がん、AR-V7を発現する前立腺がんまたはd567ESを発現する前立腺がんを有しており、前記方法が、対象に、治療有効量の本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物、またはそれらの任意の組合せを投与するステップを含む、方法を包含する。一部の実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c. 26a、26c、26e、26f、または26gである。別の実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0139】
一実施形態では、去勢抵抗性前立腺がんは、再配列したAR、ARを過剰発現する去勢抵抗性前立腺がん、F876L変異を発現する去勢抵抗性前立腺がん、F876L_T877A二重変異を発現する去勢抵抗性前立腺がん、AR-V7を発現する去勢抵抗性前立腺がん、d567ESを発現する去勢抵抗性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢抵抗性前立腺がんである。
【0140】
一実施形態では、去勢感受性前立腺がんは、F876L変異を発現する去勢感受性前立腺がん、F876L_T877A二重変異去勢感受性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢感受性前立腺がんである。
【0141】
一実施形態では、去勢感受性前立腺がんの処置は、非去勢背景において、または単剤療法として、または去勢感受性前立腺がんの腫瘍が、ダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミドおよび/またはアビラテロンに抵抗性である場合に行われる。
【0142】
本発明は、それを必要とする対象においてAR過剰発現前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0143】
本発明は、それを必要とする対象において去勢抵抗性前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
一実施形態では、去勢抵抗性前立腺がんは、再配列したAR、ARを過剰発現する去勢抵抗性前立腺がん、F876L変異を発現する去勢抵抗性前立腺がん、F876L_T877A二重変異を発現する去勢抵抗性前立腺がん、AR-V7を発現する去勢抵抗性前立腺がん、d567ESを発現する去勢抵抗性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢抵抗性前立腺がんである。
【0144】
本発明は、それを必要とする対象において去勢感受性前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。一実施形態では、去勢感受性前立腺がんは、F876L変異を発現する去勢感受性前立腺がん、F876L_T877A二重変異去勢感受性前立腺がん、および/または腫瘍内アンドロゲン合成を特徴とする去勢感受性前立腺がんである。一実施形態では、去勢感受性前立腺がんの処置は、非去勢背景において、または単剤療法として、または去勢感受性前立腺がんの腫瘍が、ダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミドおよび/またはアビラテロンに抵抗性である場合に行われる。
【0145】
本発明は、それを必要とする対象においてAR-V7発現前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0146】
本発明は、それを必要とする対象においてd567ES発現前立腺がんを処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0147】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象においてアンドロゲン受容体依存性疾患もしくは状態またはアンドロゲン依存性疾患もしくは状態を処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0148】
本明細書で使用する場合、用語「アンドロゲン受容体関連状態」または「アンドロゲン感受性疾患または障害」または「アンドロゲン依存性疾患または障害」とは、アンドロゲン受容体によってモジュレートされる、またはその病因が、アンドロゲン受容体の活性に依存する状態、疾患または障害のことである。アンドロゲン受容体は、身体の大部分の組織において発現されるが、とりわけ前立腺および皮膚において過剰発現される。ADTは、長年にわたり、前立腺がん処置の主軸であり、本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、様々な前立腺がん、良性前立腺肥大、前立腺腫大(prostamegaly)、および前立腺の他の病気の処置にも有用となり得る。一実施形態では、「アンドロゲン受容体依存性疾患または状態」とは、一部または全体が、アンドロゲン活性または身体におけるAR軸の活性化の存在に依存する、またはその存在に感受性が高い医学的状態のことである。一実施形態では、アンドロゲン依存性疾患または状態は、アンドロゲン受容体依存性疾患または状態と互換的に使用される。
【0149】
本発明は、良性前立腺肥大を処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0150】
本発明は、前立腺腫大を処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0151】
本発明は、過剰増殖性前立腺障害および疾患を処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0152】
用語「病因を低減する」は、特定の疾患、障害または状態と関連する組織損傷または臓器損傷の低減を包含することが理解されるべきである。この用語は、問題の疾患、障害もしくは状態を含めた、関連する疾患、障害もしくは状態の出現率または重症度を低減すること、または示されている症状またはそれに関連する症状を含めた、関連する疾患、障害もしくは状態の数の低減を含むことができる。
【0153】
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびHER2受容体キナーゼの発現に欠ける乳がんのタイプである。TNBCは、他のタイプの原発性乳がんを処置するのに使用されるホルモンおよびキナーゼ治療標的に欠ける。化学療法はしばしば、TNBCの最初の薬物治療である。ARはしばしば、TNBCにおいて依然として発現し、化学療法に代わるホルモン標的治療を提供し得る。ER陽性乳がんでは、ARの活性化が乳組織および腫瘍でERの作用を制限しおよび/または対抗すると考えられるので、ARが陽性予後指標である。ERが存在しない状態では、ARが乳がん腫瘍の成長を実際に支持する可能性がある。ARの役割は、TNBCでは完全に理解されていないが、ある特定のTNBCは、LBDに欠けるAR-SVのアンドロゲン非依存性活性化またはAR完全長のアンドロゲン依存性活性化により支持され得る。ダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、およびその他のLBD指向型伝統的ARアンタゴニストは、これらのTNBCにおいてAR-SVをアンタゴナイズできないと考えられる。本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、ARのNTDにおける結合部位を通してAR-SVを破壊することが可能なものであるが、TNBC患者由来の異種移植片で観察されるAR-SVを含むARをアンタゴナイズし、抗腫瘍効果を発揮できると考えられる。
【0154】
一実施形態では、本発明は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を処置する方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0155】
本発明は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を処置するまたはその進行を阻害する、またはトリプルネガティブ乳がんに罹患している対象の生存率を上昇させる方法であって、対象に本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物あるいはその任意の組合せの治療有効量を投与することを含む方法を包含する。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、式10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物によって表される。一部の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物16b、16c、16g、16i、16j、21a、21c、26a、26c、26e、26fまたは26gである。他の実施形態では、本ピラゾリルプロパンアミド化合物は、化合物26aである。
【0156】
本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、医薬組成物に使用されてもよい。本明細書で使用する場合、「医薬組成物」は、薬学的に許容される担体または希釈剤と一緒になった、本化合物または活性成分の薬学的に許容される塩のいずれかを意味する。「治療有効量」とは、本明細書で使用する場合、所与の適応症および投与レジメンに対して治療作用を提供する量を指す。
【0157】
本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物を含有する医薬組成物は、さらに、少なくとも1種のLHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、抗アンドロゲン、抗プログラム死受容体1(抗-PD-1)薬または抗-PD-L1薬を含んでいてもよい。LHRHアゴニストには、限定するものではないが酢酸リュープロリド(Lupron(登録商標))(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,480,656号;第5,575,987号;第5,631,020号;第5,643,607号;第5,716,640号;第5,814,342号;および第6,036,976号)または酢酸ゴセレリン(Zoladex(登録商標))(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,118,552号;第7,220,247号;および第7,500,964号)が含まれる。LHRHアンタゴニストには、限定するものではないがデガレリクスまたはアバレリクスが含まれる。抗アンドロゲンには、限定するものではないがビカルタミド、フルタミド、フィナステリド、デュタステリド、ダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、ニルタミド、クロルマジノン、アビラテロン、またはこれらの任意の組合せが含まれる。抗-PD-1薬には、限定するものではないがAMP-224、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、およびAMP-554が含まれる。抗-PD-L1薬には、限定するものではないがBMS-936559、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、およびMPDL3280Aが含まれる。抗-CTLA-4薬には、限定するものではないがイピリムマブおよびトレメリムマブが含まれる。
【0158】
本明細書で使用する場合、用語「投与する」とは、本発明の化合物に対象を接触させることを指す。本明細書で使用する場合、投与は、in vitroで、すなわち試験管中で、またはin vivoで、すなわち生存生物、例えばヒトの細胞または組織中で行うことができる。対象は、男性または女性の対象であってもよく、または両方であってもよい。
【0159】
本発明の化合物の投与に好適な、様々な組成物または製剤を調製するための手順を記載する、多数の標準参考文献が入手可能である。製剤および調製物を作製する方法の例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association (現行版); Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (Lieberman, Lachman and Schwartz, editors)現行版、Marcel Dekker, Inc.による出版、およびRemington's Pharmaceutical Sciences (Arthur Osol, editor), 1553-1593 (現行版)に見出すことができる。
【0160】
投与様式および剤形は、所与の処置適用にとって望ましくかつ有効な、治療量の化合物または組成物に密接に関連する。
【0161】
本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物の医薬組成物は、当業者に公知の任意の方法によって対象に投与することができる。これらの方法は、以下に限定されないが、経口、非経口、脈管内、がん周辺(paracancerally)、経粘膜、経皮、筋肉内、鼻内、静脈内、皮内、皮下、舌下、腹腔内、脳室内、頭蓋内、膣内、吸入により、直腸または腫瘍内を含む。これらの方法は、組成物を組織に送達することができる任意の手段(例えば、ニードルまたはカテーテル)を含む。代替的に、局所投与は、皮膚、眼または粘膜表面への適用に望ましいものとなり得る。投与の別の方法は、吸引またはエアロゾル製剤による。本医薬組成物は、身体表面に局所投与されてもよく、したがって、局所投与に好適な形態で製剤化される。好適な局所用製剤は、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、点滴剤などを含む。局所投与の場合、本組成物は、薬学的担体と共に、またはこれを使用しないで、生理的に許容される希釈剤中の液剤、懸濁剤またはエマルション剤として調製されて適用される。
【0162】
好適な剤形には、以下に限定されないが、経口、直腸、舌下、粘膜、鼻、眼、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、脊髄、髄腔内、関節内、動脈内、くも膜下、気管支、リンパ系および子宮内投与、および活性成分の全身性送達のための他の剤形が含まれる。適応症に応じて、経口または局所投与に好適な製剤が好ましい。
【0163】
局所投与:本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物は、局所投与されてもよい。本明細書で使用する場合、「局所投与」とは、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29r(および必要に応じた担体)の化合物の、皮膚および/または毛髪への直接適用を指す。本局所用組成物は、液剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、軟膏剤、リポソーム剤、スプレー剤、ゲル剤、フォーム剤、ローラー状スティック剤、および皮膚科学において常套的に使用される任意の他の製剤の形態にあることができる。
【0164】
局所投与は、男性型多毛症、脱毛症、ざ瘡および過剰皮脂などの皮膚表面に見出される適応症に使用される。用量は様々となるが、一般的なガイドラインとして、本化合物は、約0.01~50w/w%、およびさらに典型的には、約0.1~10w/w%の量で、皮膚科学的に許容される担体に存在する。通常、皮膚科学的調製物は、毎日、1~4回、罹患領域に適用される。「皮膚科学的に許容される」とは、皮膚または毛髪に適用することができる担体であって、薬物を作用部位に拡散させる担体を指す。より詳細には、「作用部位」は、アンドロゲン受容体の阻害またはアンドロゲン受容体の分解が望ましい、部位を指す。
【0165】
本発明の組成物はまた、クレンジング用石鹸または棒などの、固形調製物を含んでもよい。これらの組成物は、当分野において公知の方法に準拠して調製される。
【0166】
製剤、例えば、水性液剤、アルコール性液剤もしくは水性アルコール液剤、またはクリーム剤、ゲル剤、エマルション剤もしくはムース剤あるいは噴霧体を含むエアロゾル組成物を使用して、毛髪が存在する場所に発生する適応症を処置することができる。したがって、本組成物は、ヘアケア組成物とすることもできる。このようなヘアケア組成物には、以下に限定されないが、シャンプー、ヘアセットローション、トリートメントローション、スタイリングクリームまたはゲル、染料組成物、または脱毛を予防するローションもしくはゲルが含まれる。皮膚科学的組成物中の様々な構成要素の量は、考えられる分野において慣用的に使用される量である。
【0167】
本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物を含有する医療剤および化粧剤(cosmetic agent)は、小売りで流通させるために、通常、包装される(すなわち、製造物品)。このような物品は、患者が本製品を使用する方法を指示するようラベルが貼られて、包装される。このような指示は、処置される状態、処置期間、投与スケジュールなどを含む。
【0168】
このような医薬剤形を調製するために、活性成分を、従来の薬学的配合技法に準拠して、薬学的担体と混合することができる。担体は、投与に望ましい調製物の形態に応じて、幅広い形態をとることができる。
【0169】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体または希釈剤」は、当業者に周知である。担体または希釈剤は、固形製剤のための固体担体もしくは希釈剤、液体製剤のための液体担体もしくは希釈剤、またはそれらの混合物であり得る。
【0170】
固体担体/希釈剤には、以下に限定されないが、ガム、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース物質(例えば微結晶性セルロース)、アクリレート(例えば、ポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルクまたはそれらの混合物が含まれる。
【0171】
経口および非経口投与:経口剤形の組成物を調製する際に、通常の薬学的媒体のいずれかが使用されてもよい。したがって、懸濁剤、エリキシル剤および液剤などの液状経口調製物の場合、好適な担体および添加物には、水、グリコール、油、アルコール、矯味矯臭剤、保存剤、着色剤などが含まれる。散剤、カプセル剤および錠剤などの固形経口調製物の場合、好適な担体および添加物には、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが含まれる。投与を容易にするため、錠剤およびカプセル剤は、最も有利な経口投与単位形態とする。所望の場合、錠剤は、標準技法によって、糖コーティングされていてもよく、または腸溶コーティングされていてもよい。
【0172】
非経口製剤の場合、担体は、通常、滅菌水を含むが、溶解性を補助するため、または保存するための成分などの他の成分が含まれてもよい。注射液剤もまた調製されてもよく、この場合、適切な安定化剤が使用されてもよい。
【0173】
一部の適用では、リポソームもしくは他の封入媒体中の活性剤のカプセル封入、または、例えば、タンパク質、リポタンパク質、グリコタンパク質および多糖から選択されるものなどの好適な生体分子への共有結合、キレート形成もしくは会合性配位による活性剤の固定化などによって、「ベクトル化(vectorized)」形態の活性剤を利用することが有利となり得る。
【0174】
経口投与に好適な製剤を使用する処置の方法は、カプセル剤、カシェ剤、錠剤またはロゼンジ剤などの別個の単位として提示されてもよく、各々が、所定量の活性成分を含有する。必要に応じて、シロップ剤、エリキシル剤、エマルション剤または一回分量(draught)などの水性アルコールまたは非水性液体中の懸濁剤が使用されてもよい。
【0175】
錠剤は、必要に応じて1種または複数の副成分と共に、圧縮もしくは成形、または湿式造粒によって作製され得る。圧縮錠剤は、好適な機械において、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、不活性希釈剤、表面活性剤または放出剤(discharging agent)と必要に応じて混合された、粉末または顆粒などの自由流動形態にある活性化合物と共に圧縮することによって調製することができる。粉末状活性化合物と好適な担体との混合物からなる成形錠剤は、好適な機械で成形することによって作製することができる。
【0176】
シロップ剤は、活性化合物を、糖、例えばスクロースの濃縮水溶液に添加することによって作製することができ、これに任意の副成分が添加されてもよい。このような副成分には、矯味矯臭剤、好適な保存剤、糖の結晶化を遅延させる作用物質、およびポリヒドロキシアルコールなどの任意の他の成分の溶解度を高めるための作用物質、例えばグリセロールまたはソルビトールが含まれ得る。
【0177】
非経口投与に好適な製剤は、レシピエントの血液と好ましくは等張性である、活性化合物の滅菌水性調製物(例えば、生理食塩溶液)を含んでもよい。このような製剤には、化合物が血液構成成分または1つもしくは複数の臓器を標的とするように設計されている懸濁化剤、および増粘剤、およびリポソーム、または他のマイクロ微粒子系が含まれ得る。これらの製剤は、単位用量形態または多回用量形態で提示され得る。
【0178】
非経口投与は、全身送達の任意の好適な形態を含むことができる。投与は、例えば、静脈内、動脈内、髄腔内、筋肉内、皮下、筋肉内、腹部内(例えば、腹腔内)などとすることができ、注入ポンプ(外部型または埋込型)または望ましい投与モダリティに適切な任意の他の好適な手段によって行うことができる。
【0179】
鼻および他の粘膜スプレー製剤(例えば、吸入可能な形態)は、活性化合物の精製水溶液を、保存剤および等張剤と共に含むことができる。このような製剤は、好ましくは、鼻または他の粘膜と適合するpHおよび等張性状態に調整される。代替的に、それらは、ガス担体中に懸濁された微細に分割された固形散剤の形態であり得る。このような製剤は、任意の好適な手段または方法によって、例えば、ネブライザー、噴霧器、定量吸入器などによって送達することができる。
【0180】
直腸投与のための製剤は、カカオ脂、水素添加脂肪または水素添加脂肪カルボン酸などの好適な担体と共に坐薬として提示され得る。
【0181】
経皮製剤は、活性剤を、セルロース媒体、例えばメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどのチキソトロピックな担体またはゼラチン様担体に組み込むことによって調製することができ、得られた製剤は、次に、着用者の皮膚と皮膚接触して固定されるように適合された経皮デバイス内に充填される。
【0182】
上記の成分に加えて、本発明の製剤は、希釈剤、緩衝液、矯味矯臭剤、結合剤、崩壊剤、表面活性剤、増粘剤、滑沢剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などから選択される1種または複数の成分をさらに含んでもよい。
【0183】
本製剤は、即時放出、持続放出、遅延発生放出、または当業者に公知の任意の他の放出プロファイルとなり得る。
【0184】
哺乳動物、特にヒトへの投与の場合、医師が、個体にとって最も好適となり、かつ特定の個体の年齢、体重、遺伝的特質および/または応答に応じて変わり得る、実際の投与量および処置期間を決定することが予期される。
【0185】
本発明の方法は、治療有効量での化合物の投与を含む。治療有効量は、様々な投与量を含んでもよい。
【0186】
一実施形態では、本明細書に記載されるピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば、式I、II、IIA、IIB、III、IIIA、IIIB、IV、IVA、IVB、V、VA、VB、10、16a~16x、21a~21j、26a~26h、および29a~29rの化合物は、1日あたり1~3000mgの投与量で投与される。追加的な実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり1~10mg、1日あたり3~26mg、1日あたり3~60mg、1日あたり3~16mg、1日あたり3~30mg、1日あたり10~26mg、15~60mg、1日あたり50~100mg、1日あたり50~200mg、1日あたり100~250mg、1日あたり125~300mg、1日あたり20~50mg、1日あたり5~50mg、1日あたり200~500mg、1日あたり125~500mg、1日あたり500~1000mg、1日あたり200~1000mg、1日あたり1000~2000mg、1日あたり1000~3000mg、1日あたり125~3000mg、1日あたり2000~3000mg、1日あたり300~1500mg、または1日あたり100~1000mgの用量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり25mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり40mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり50mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり67.5mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり75mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり80mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり100mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり125mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり250mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり300mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり500mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり600mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり1000mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり1500mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり2000mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり2500mgの投与量で投与される。一実施形態では、ピラゾリルプロパンアミド化合物は、1日あたり3000mgの投与量で投与される。
【0187】
本方法は、様々な投与量で化合物を投与するステップを含むことができる。例えば、本化合物は、3mg、10mg、30mg、40mg、50mg、80mg、100mg、120mg、125mg、200mg、250mg、300mg、450mg、500mg、600mg、900mg、1000mg、1500mg、2000mg、2500mgまたは3000mgの投与量で投与されてもよい。
【0188】
代替的に、本化合物は、0.1mg/kg/日の投与量で投与されてもよい。本化合物は、0.2~30mg/kg/日、または0.2mg/kg/日、0.3mg/kg/日、1mg/kg/日、3mg/kg/日、5mg/kg/日、10mg/kg/日、20mg/kg/日、30mg/kg/日、50mg/kg/日または100mg/kg/日の間の投与量で投与されてもよい。
【0189】
本医薬組成物は、固形剤形、液剤または経皮パッチ剤であってもよい。固形剤形には、以下に限定されないが、錠剤およびカプセル剤が含まれる。
【0190】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を一層完全に例示するために提示されている。しかし、以下の実施例は、本発明の幅広い範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0191】
一般手順、材料、および情報。
全ての溶媒および化学物質を、さらに精製することなく、購入したままの状態で使用した。全ての反応の進行を、シリカゲル60 F254プレート(Merck)上での薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によってモニターした。カラムクロマトグラフィーを、シリカゲルカラム[(Merck Kieselgel 60、70~230メッシュ、Merck)で行った。
【0192】
一般方法:全ての非水性反応を、乾燥窒素の不活性雰囲気下、オーブンで乾燥したガラス器具内で行った。全ての試薬および溶媒を、Aldrich(St.Louis、MO)、Alfa-Aesar(Ward Hill、MA)、Combi-Blocks(San Diego、CA)、Ark Pharm(Libertyville、IL)から購入し、さらに精製することなく使用した。分析薄層クロマトグラフィーを、シリカゲルGHLF 10×20cm Analtech TLC Uniplates(Analtech、Newark、DE)で行い、UV光の下で蛍光消光により視覚化した。Biotage SP1フラッシュクロマトグラフィー精製システム(Charlotte、NC)(Biotage SNAPカートリッジ、シリカ、50gおよび100g)を使用して、化合物を精製した。1H NMRおよび13C NMRスペクトルを、Bruker Ascend 400(400MHz)(Billerica、MA)分光光度計で記録した。1H NMRに関する化学シフトを、重水素化溶媒中、内部標準としてのテトラメチルシランから低磁場側への百万分率(ppm)(δ)で報告し、結合定数(J)はヘルツ(Hz)を単位とする。下記の略称を、スピン多重度に関して使用する:s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、quin=五重線、dd=二重線の二重線、dt=三重線の二重線、qd=二重線の四重線、dquin=五重線の二重線、m=多重線、およびbr s=ブロード一重線。低分解能質量スペクトル(MS)は、ポジティブおよびネガティブモードでBrucker ESQUIREエレクトロスプレー/イオントラップ機器を使用して取得された。高分解能質量分光光度計(HRMS)データは、Acquity I-クラス UPLCシステムを備えたWaters Xevo G2-S QTOF(Milford、MA)システムで取得された。
(実施例1)
ピラゾリルプロパンアミド化合物の合成
【0193】
表1に示されるような、ピラゾールB環の様々な一置換基(シリーズI)、芳香族A環の変形例(シリーズII)、ピラゾールB環の様々な二置換基(シリーズIII)、または連結部分の修飾(シリーズIV)を持つ一連のピラゾール-1-イル-プロパンアミド化合物を合成した。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
スキーム1.ピラゾール-1-イル-プロパンアミド16a~16xの合成
【化20】
試薬および条件:(a)1.THF中SOCl
2、-10℃から0℃。2.THF中Et
3N、-10℃から0℃、次いで50℃まで、2~3時間;(b)2-ブタノン、K
2CO
3、還流;(c)THF中NaH、0℃から室温。
化合物13の合成
【0194】
(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸11(5.00g、27mmol)を、EasyMax 100mL反応器内で、THF(27mL、5.4体積)に溶解した。撹拌を400rpmに設定し、溶液を2.5℃に冷却した。塩化チオニル(2.39mL、1.20当量、0.48体積)を、反応温度を12℃よりも低く維持しながら、30分にわたり反応混合物にゆっくりと添加した。反応混合物を1.5時間撹拌した。反応物を-5℃に冷却した。トリエチルアミン(5.0mL、1.30当量、1体積)を、温度を12℃よりも低く維持しながら、反応混合物にゆっくりと添加した。次いで4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル12(4.85g、0.95当量、0.97重量)およびTHF(3.37mL、0.67体積)をバッチに投入した。次いでバッチを50±5℃に加熱し、2時間撹拌した。次いでバッチを20±5℃に冷却し、その後、水(14.7mL、2.9体積)およびトルエン(20.2mL、4.0体積)を添加した。短時間撹拌した後、層が分離した。次いで有機層を水(14.7mL、2.9体積)で洗浄した。次いでバッチを、バッチ温度を50℃よりも低く維持しながら5±0.5体積(4±0.5重量)に濃縮し、その後、トルエン(30mL、6体積)を添加した。次いでバッチを5±0.5体積(4±0.5重量)まで蒸留し、バッチ温度を2.5±2.5℃まで低減させた。次いでバッチを濾過し、フィルターケーキをトルエンで2回(それぞれ8.5mL、それぞれ1.7体積)洗浄した。次いでバッチを、25~30インチの真空下で乾燥して、(R)-3-ブロモ-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド13を得た。
化合物14の合成
【0195】
(R)-3-ブロモ-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド13(5.00g、0.018504mol)の、25mLの2-ブタノン中の溶液に、炭酸カリウム(3.836g、0.027756mol)を添加した。得られた反応混合物を、アルゴン雰囲気下で2時間、加熱還流した。反応の完了がTLCにより確認された後、反応物を室温(rt)まで冷却し、セライトのパッドに通して濾過し、セライトのパッドを15mLの2-ブタノンで濯いだ。濾液を真空下で濃縮し、25~30インチの真空下で乾燥して、(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-メチルオキシラン-2-カルボキサミド14を得た。
一般手順A
例として10(UT-34)を使用した、16(a~y)、21(a~k)、26(a~h)、ならびに29(a~p)の合成
【0196】
アルゴン雰囲気下で氷水浴で冷却した、4-フルオロ-ピラゾール(0.10g、0.00116mol)または一般にピラゾール15の無水THF(10mL)中の溶液に、水素化ナトリウム(油中60%分散液、0.12g、0.00291mol)を添加した。添加後、得られた混合物を3時間撹拌した。(R)-3-ブロモ-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド13(0.41g、0.00116mol)または(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-メチルオキシラン-2-カルボキサミド14(0.313g、0.00116mol)を上記溶液に添加し、得られた反応混合物を、アルゴン下で一晩、室温で撹拌した。反応を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。生成物を、溶出液として酢酸エチルおよびヘキサン(1:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.13gの10を白色固体として得た。
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(1H-ピラゾール-1-イル)プロパンアミド(16a)
【0197】
化合物16aを、一般手順Aに従い調製した。粗生成物を、溶出剤として酢酸エチルおよびヘキサン(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.52gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=52%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.39 (s, 1H, NH), 8.48 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.22 (dd, J = 8.2 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.08 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.66-7.65 (m, 1H, ピラゾール-H), 7.39-7.38 (m, 1H, ピラゾール-H), 6.28 (s, 1H, OH), 6.25-6.23 (m, 1H, ピラゾール-H), 4.50 (d, J = 13.6 Hz, 1H, CH), 4.29 (d, J = 13.6 Hz, 1H, CH), 1.35 (s, 3H, CH3). HRMS [C15H14F3N4O2
+]: 計算値339.1099、実測値339.1105 [M+H]+.
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(10(UT-34))。
【0198】
化合物10を、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。粗生成物を、溶出剤として酢酸エチルおよびヘキサン(1:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.13gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=32%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.39 (s, 1H, NH), 8.47 (d, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 8.24 (dd, J = 8.4 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.10 (d, J = 8.4 Hz, 1H, ArH), 7.73 (d, J = 4.4 Hz, , 1H, ピラゾール-H), 7.41 (d, J = 4.4Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.31 (s, 1H, OH), 4.38 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.21 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.34 (s, 3H, CH3). HRMS [C15H13F4N4O2
+]: 計算値357.0975、実測値357.0966[M+H]+.
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(3-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(16b)
【0199】
化合物16bを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。粗生成物を、溶出剤として酢酸エチルおよびヘキサン(2:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.36gの表題の化合物を白色の針として得た。収率=44%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.39 (s, 1H, NH), 8.47 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.24 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.11 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.55 (t, J = 3.0 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.29 (s, 1H, OH), 5.93-5.91 (m, 1H, ピラゾール-H), 4.34 (d, J = 13.6 Hz, 1H, CH), 4.15 (d, J = 13.6 Hz, 1H, CH), 1.36 (s, 3H, CH3). HRMS [C15H13F4N4O2
+]: 計算値357.0975、実測値357.0985[M+H]+.
(S)-3-(4-クロロ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(16c)
【0200】
化合物16cを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。粗生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.30gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=55%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.38 (s, 1H, NH), 8.46 (s, 1H, ArH), 8.23 (d, J = 8.6 Hz, J = 1.2 Hz, 1H, ArH), 8.10 (d, J = 8.6 Hz, 1H, ArH), 7.83 (s, 1H, ピラゾール-H), 7.47 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.34 (s, 1H, OH), 4.45 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.27 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.36 (s, 3H, CH3). HRMS [C15H13ClF3N4O2
+]: 計算値373.0679、実測値373.0678[M+H]+.純度:97.69% (HPLC).
(S)-3-(4-ブロモ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(16d)
【0201】
化合物16dは、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。粗生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.47gの表題の化合物を白色形態として得た。収率=79.6%。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.08 (s, 1H, NH), 8.00 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.87 (dd, J = 8.4 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.79 (d, J = 8.4 Hz, 1H, ArH), 7.49 (s, 1H, ピラゾール-H), 7.47 (s, 1H, ピラゾール-H), 5.92 (s, 1H, OH), 4.64 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.24 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.47 (s, 3H, CH3). HRMS [C15H13BrF3N4O2
+]: 計算値417.0174、実測値417.0167[M+H]+.純度:99.53% (HPLC).
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(4-ヨード-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルプロパンアミド(16e)
【0202】
化合物16eを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。粗生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.25gの表題の化合物をオフホワイトの固体として得た。収率=52%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.36 (s, 1H, NH), 8.45 (s, 1H, ArH), 8.23 (d, J = 8.8 Hz, J = 1.2 Hz, 1H, ArH), 8.10 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.78 (s, 1H, ピラゾール-H), 7.46 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.31 (s, 1H, OH), 4.48 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.31 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.35 (s, 3H, CH3). HRMS [C15H13F3IN4O2
+]: 計算値465.0035、実測値465.0045[M+H]+.
(S)-3-(4-アセチル-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(16f)
【0203】
化合物16fを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。
【0204】
生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、70mgの表題の化合物を黄色がかった固体として得た。収率=20%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.37 (s, 1H, NH), 8.45 (d, J = 1.2 Hz, 1H, ArH), 8.25 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.23 (d, J = 8.2 Hz, J = 1.2 Hz, 1H, ArH), 8.10 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.86 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.37 (s, 1H, OH), 4.50 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.33 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 2.34 (s, 3H, CH3), 1.39 (s, 3H, CH3). HRMS [C17H16F3N4O3
+]: 計算値381.1175、実測値381.1178[M+H]+.純度:95.66% (HPLC).
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(4-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンアミド(16g)
【0205】
化合物16gを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.30gの表題の化合物を白色フォームとして得た。収率=50%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.38 (s, 1H, NH), 8.45 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.25-8.22 (m, 2H, ArH & ピラゾール-H), 8.11 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.82 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.39 (s, 1H, OH), 4.55 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.37 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.40 (s, 3H, CH3). HRMS [C16H13F6N4O2] +: 計算値407.0943、実測値407.0945 [M+H]+.
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンアミド(16h)
【0206】
化合物16hを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤として酢酸エチルおよびヘキサン(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.31gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=50%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.31 (s, 1H, NH), 8.42 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.18 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.09 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.84-7.83 (m, 1H, ピラゾール-H), 6.67 (d, J = 2.4 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.41 (s, 1H, OH), 4.56 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.38 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.40 (s, 3H, CH3). HRMS [C16H13F6N4O2
+]: 計算値407.0943、実測値407.0945 [M+H]+.
(S)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(16i)
【0207】
化合物16iを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出液としてヘキサンおよび酢酸エチル(1:1から1:2)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.18gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=46%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.35 (s, 1H, NH), 8.45 (d, J = 1.2 Hz, 1H, ArH), 8.43 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.22 (d, J = 8.8 Hz, J = 1.2 Hz, 1H, ArH), 8.10 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.98 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.41 (s, 1H, OH), 4.45 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.36 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.38 (s, 3H, CH3). HRMS [C16H13F3N5O2
+]: 計算値364.1021、実測値364.1016[M+H]+.純度:98.48% (HPLC).
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(4-ニトロ-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンアミド(16j)
【0208】
化合物16jを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(1:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.15gの表題の化合物をオフホワイトの固体として得た。収率=44%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.36 (s, 1H, NH), 8.69 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.45 (d, J = 1.2 Hz, 1H, ArH), 8.23 (d, J = 8.8 Hz, J = 1.2 Hz, 1H, ArH), 8.19 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.11 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 6.47 (s, 1H, OH), 4.56 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.38 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.41 (s, 3H, CH3). HRMS [C15H13F3N5O4
+]: 計算値384.0920、実測値384.0932[M+H]+.純度:99.58% (HPLC).
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(4-メトキシ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルプロパンアミド(16k)
【0209】
化合物16kを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(9:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.30gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=60%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.38 (s, 1H, NH), 8.46 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.24 (dd, J = 8.2 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.10 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.35 (d, J = 0.8 Hz, 1H, ピラゾール-H), 7.15 (d, J = 0.8 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.25 (s, 1H, OH), 4.35 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.18 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 3.61 (s, 3H, CH3), 1.36 (s, 3H, CH3). HRMS [C16H16F3N4O3
+]: 計算値369.1175、実測値369.1182[M+H]+.純度:99.28% (HPLC).
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(4-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンアミド(16l)
【0210】
化合物16lを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.28gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=66%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.38 (s, 1H, NH), 8.46 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.23 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.10 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.41 (s, 1H, ピラゾール-H), 7.17 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.24 (s, 1H, OH), 4.40 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.22 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.97 (s, 3H, CH3), 1.36 (s, 3H, CH3). HRMS [C16H16F3N4O2
+]: 計算値353.1225、実測値353.1232[M+H]+.純度:99.75% (HPLC).
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(4-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンアミド(16m)
【0211】
化合物16mを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤として酢酸エチルおよびヘキサン(1:2)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.90gの表題の化合物を白色の針として得た。収率=68.5%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.40 (s, 1H, NH), 8.46 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.24 (dd, J = 8.4 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.09 (d, J = 8.4 Hz, 1H, ArH), 8.05 (s, 1H, ピラゾール-H), 7.82 (s, 1H, ピラゾール-H), 7.52-7.45 (m, 2H, ArH), 7.35-7.31 (m, 2H, ArH), 7.20-7.16 (m, 1H, ArH), 6.33 (s, 1H, OH), 4.50 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.30 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.40 (s, 3H, CH3). HRMS [C21H18F3N4O2]+: 計算値415.1382、実測値415.1391[M+H]+.
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンアミド(16n)
【0212】
化合物16nを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤として酢酸エチルおよびヘキサン(1:3から1:2)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.60gの表題の化合物を白色の針として得た。収率=41.7%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.33 (s, 1H, NH), 8.48 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.22 (dd, J = 8.2 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.05 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.69 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.60-7.57 (m, 2H, ArH), 7.28-7.21 (m, 3H, ArH), 6.66 (d, J = 3.0 Hz, 1H, ArH), 6.31 (s, 1H, OH), 4.52 (d, J = 14.6 Hz, 1H, CH), 4.32 (d, J = 14.6 Hz, 1H, CH), 1.43 (s, 3H, CH3). 質量(ESI、陽): [C21H18F3N4O2
+]: 計算値415.1382、実測値514.1423 [M+H]+.
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(16o)
【0213】
化合物16oを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.33gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=62%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.29 (s, 1H, NH), 8.41 (s, 1H, ArH), 8.21 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 8.05 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.68 (s, 1H, ピラゾール-H), 7.61 (t, J = 6.4 Hz, 2H, ArH), 7.08 (t, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 6.65 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.30 (s, 1H, OH), 4.51 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.31 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.42 (s, 3H, CH3). HRMS [C21H17F4N4O2
+]: 計算値433.1288、実測値433.1291[M+H]+.純度:96.01% (HPLC).
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(3-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(16p)
【0214】
化合物16pを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.27gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=43%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.29 (s, 1H, NH), 8.41 (s, 1H, ArH), 8.21 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 8.05 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.69 (s, 1H, ピラゾール-H), 7.61 (t, J = 6.4 Hz, 2H, ArH), 7.08 (t, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 6.65 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.30 (s, 1H, OH), 4.51 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.31 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.42 (s, 3H, CH3). 質量(ESI、陰): 431.12 [M-H]-. HRMS [C21H17F4N4O2
+]: 計算値433.1288、実測値433.1290[M+H]+.
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-エチニル-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(16q)
【0215】
化合物16qを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(95:5)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.37gの表題の化合物を白色フォームとして得た。収率=62.7%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.40 (s, 1H, NH), 8.47 (s, 1H, ArH), 8.24 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 8.11 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.91 (s 1H, ピラゾール-H), 7.57 (s 1H, ピラゾール-H), 6.35 (s, 1H, OH), 4.46 (d, J = 14.4 Hz, 1H, CH), 4.29 (d, J = 14.4 Hz, 1H, CH), 4.00 (s, 1H, CH), 1.35 (s, 3H, CH3). HRMS [C17H14F3N4O2
+]: 計算値363.1069、実測値 [M+H]+.純度:99.55% (HPLC).
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-3-(4-(4-ヒドロキシブタ-1-イン-1-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルプロパンアミド(16r)
【0216】
化合物16rを、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてDCMおよびメタノール(95:5)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.477gの表題の化合物を黄色がかった固体として得た。収率=20%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.99 (brs, 1H), 10.47 (s, 1H, NH), 8.55 (s, 1H, ArH), 8.29 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 8.08 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.87 (s 1H, ピラゾール-H), 7.49 (s 1H, ピラゾール-H), 6.00 (s, 1H, OH), 3.64 (d, J = 8.2 Hz, 1H, CH), 4.50 (d, J = 9.6 Hz, 1H, CH), 3.60-3.56 (m, 2H, CH2), 2.59-2.55 (m, 2H, CH2), 1.31 (s, 3H, CH3). HRMS [C19H18F3N4O3
+]: 計算値407.1331、実測値407.1267 [M+H]+; HRMS [C19H17F3N4NaO3
+]: 計算値429.1150、実測値429.1099 [M+Na]+.純度:% (HPLC).
(S)-1-(3-((4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(16s)
【0217】
化合物16sを、2ステップで調製した。第1のステップでは、(S)-tert-ブチル(1-(3-((4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)-1H-ピラゾール-4-イル)カルバメート16u(16sに関する中間化合物)を、以下に詳述されるようにスキーム1による一般手順Aに従って合成した。化合物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、化合物を白色固体として得た。収率=69%。1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 9.13 (bs, 1H, NH), 8.18 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 8.02 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.89 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.66 (bs, C(O)NHC(O)), 5.79 (bs, 1H, OH), 4.70 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 4.32 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 1.52 (s, 3H), 1.50 (s, 9H). 19F NMR (CDCl3, 400 MHz) δ -62.20. MS (ESI) m/z 480.23 [M - H]-; HRMS (ESI) m/z C21H22F3N5O5 382.1127 [(M - t-Boc) + H]+の計算値、実測値382.1129 [[(M - t-Boc) + H]+.
【0218】
第2のステップ:16u(0.721g、2.05mmol)のEtOH(10mL)中の溶液に、塩化アセチル(3mL)を0℃で滴下により添加し、さらに室温で3時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、混合物を酢酸エチルおよびヘキサン(2:1)で処理して、所望の化合物を黄色がかった固体として得た。収率=95%。UV max 194.45、270.45。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.39 (bs, 1H, NHC(O)), 8.46 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.20 (dd, J = 8.6, 1.6 Hz, 1H), 8.08 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.05 (s, 1H), 7.75 (s, 1H), 7.55 (bs, 2H, C(O)NH2), 6.99 (bs, 1H, OH), 4.45 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 4.28 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 1.34 (s, 3H). 19F NMR (DMSO-d6, デカップル) δ -61.13. MS (ESI) m/z 380.19 [M - H] -; HRMS (ESI) m/z C16H14F3N5O3 382.1127 [M + H]+の計算値、実測値382.1282 [M + H]+. HPLC純度:98.75%.
(S)-3-(4-アミノ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(16t)
【0219】
16u(下記参照)(0.815g、0.0018mol)の無水EtOH(10mL)中の溶液に、塩化アセチル(0.4mL、5.4mmol)を0℃で添加し、さらに室温で3時間撹拌した。真空下で溶媒を除去した後、得られた混合物を、ヘキサンおよび酢酸エチル(1:1、v/v)を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、設計された化合物を褐色の固体として得た。収率=91%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.31 (bs, 1H, NH), 10.21 (bs, 2H, NH2), 8.20 (s, 1H), 7.98 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.77-7.73 (m, 2H), 7.62 (bs, 1H), 7.21 (bs, 1H), 6.28 (bs, 1H, OH), 4.23 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 4.04 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 1.04 (s, 3H); 19F NMR (アセトン-d6, デカップル) δ 114.77. MS (ESI) m/z 354.08 [M + H] +; 351.98 [M - H] -.
(S)-tert-ブチル(1-(3-((4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)-1H-ピラゾール-4-イル)カルバメート(16u)
【0220】
化合物16uは、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、設計された化合物を褐色の固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.12 (bs, 1H, NH), 8.01 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.85 (dd, J = 8.4, 1.6 Hz, 1H), 7.76 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.63 (bs, 1H), 7.43 (bs, 1H), 6.21 (bs, 1H, HN), 6.17 (bs, 1H, OH), 4.54 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 4.17 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 1.47 (s, 9H), 1.45 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3, デカップル)δ -62.21. MS (ESI) m/z 452.11 [M - H] -; 454.11 [M + H] +; 476.12 [M + Na]+.
(S)-3-(4-アセトアミド-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(16v)
【0221】
アルゴン雰囲気下、16t(0.17g、0.48mmol)およびトリエチルアミン(0.16mL、1.15mmol)の、10mLの無水DCM中の溶液に、塩化アセチル(0.04mL、0.58mmol)を、氷水浴で添加した。30分間撹拌した後、温度を室温まで上昇させ、混合物を2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で凝縮し、次いで10mLの酢酸エチル中に分散させ、水で洗浄し、蒸発させ、無水MgSO4で乾燥し、蒸発乾固した。混合物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2/1、v/v)を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、設計された化合物を黄色の固体として生成した。収率=92%。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.08 (bs, 1H, NH), 7.92 (bs, 1H, NH), 7.82-7.80 (m, 2H), 7.69 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.44 (bs, 1H), 7.15 (bs, 1H), 6.10 (bs, 1H, OH), 4.50 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 4.13 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 2.04 (s, 3H), 1.39 (s, 3H). 19F NMR (CDCl3, デカップル) δ -62.20. MS (ESI) m/z 356.11 [M + H] +; 354.06 [M - H] -.
(S)-3-(4-(2-クロロアセトアミド)-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(16w)
【0222】
アルゴン雰囲気下、16t(0.17g、0.48mmol)およびトリエチルアミン(0.16mL、1.15mmol)の、10mLの無水DCM中の溶液に、塩化2-クロロアセチル(0.04mL、0.58mmol)を氷水浴内で添加した。30分間撹拌した後、温度を室温まで上昇させ、混合物を2時間撹拌した。反応混合物を真空下で凝縮し、次いで10mLの酢酸エチル中に分散させ、水で洗浄し、蒸発させ、無水MgSO4で乾燥し、蒸発乾固した。混合物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2/1、v/v)を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、表題の化合物を黄色の固体として生成した。収率=68%。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.12 (bs, 1H, NH), 8.12 (bs, 1H, NH), 7.99 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.92 (bs, 1H), 7.88 (dd, J = 8.6, 1.6 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.61 (bs, 1H), 6.11 (bs, 1H, OH), 4.60 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 4.23 (d, J = 13.8 Hz, 1H), 4.17 (s, 2H), 1.47(s, 3H); 19F NMR (CDCl3, デカップル) δ -62.19. MS (ESI) m/z 452.01 [M + Na] +; 428.00 [M - H] -.
(S)-メチル(1-(3-((4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)-1H-ピラゾール-4-イル)カルバメート(16x)
【0223】
アルゴン雰囲気下、16t(0.17g、0.48mmol)およびトリエチルアミン(0.16mL、1.15mmol)の、10mLの無水DCM中の溶液に、カルボノクロリド酸メチル(0.04mL、0.58mmol)を氷水浴内で添加した。30分間撹拌した後、温度を室温まで上昇させ、混合物を2時間撹拌した。反応混合物を真空下で凝縮し、次いで10mLの酢酸エチル中に分散させ、水で洗浄し、蒸発させ、無水MgSO
4で乾燥し、蒸発乾固した。混合物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2/1、v/v)を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、表題の化合物を白色固体として生成した。収率=71%。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 9.07 (bs, 1H,C(O)NH), 7.91 (s, 1H, ArH), 7.79 (d, J = 7.2 Hz, 1H, ArH), 7.69 (d, J = 7.2 Hz, 1H, ArH), 7.57 (s, 1H, ArH), 7.40 (s, 1H, ArH), 6.33 (bs, 1H, NH), 6.08 (bs, 1H, OH), 4.50 (d, J = 13.6 Hz, 1H, CH
2), 4.12 (d, J = 13.6 Hz, 1H, CH
2), 3.67 (s, 3H, NH(CO)OCH
3), 1.39 (s, 3H, CH
3);
19F NMR (CDCl
3, デカップル) δ -62.21. MS (ESI) m/z 410.30 [M - H]
-; 413.21 [M + H]
+.
スキーム2.ピラゾール-1-イル-プロパンアミド21a~21jの合成
【化21】
試薬および条件:(a)1.THF中SOCl
2、-10℃から0℃。2.THF中Et
3N、-10℃から0℃、次いで50℃に加熱、2~3時間;(b)2-ブタノン、K
2CO
3、還流;(c)THF中NaH、0℃から室温。
(S)-N-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(21a)
【0224】
化合物21aを、17が5-アミノ-3-(トリフルオロメチル)ピコリノニトリルである、スキーム2による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(1:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して0.50gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=60.2%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.64 (s, 1H, NH), 9.32 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.82 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.75 (d, J = 4.8 Hz, 1H, ピラゾール-H), 7.40 (d, J = 4.0 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.41 (s, 1H, OH), 4.39 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.22 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.36 (s, 3H, CH3). HRMS [C14H12F4N5O2
+]: 計算値358.0927、実測値358.0932.
(S)-N-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(4-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンアミド(21b)
【0225】
化合物21bを、17が5-アミノ-3-(トリフルオロメチル)ピコリノニトリルである、スキーム2による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.18gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=60%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.63 (s, 1H, NH), 9.31 (s, 1H, ArH), 8.80 (s, 1H, ArH), 8.32 (s, 1H, ピラゾール-H), 7.81 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.48 (s, 1H, OH), 4.55 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.37 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.42 (s, 3H, CH3). HRMS [C15H12F6N5O2
+]: 計算値408.0892、実測値408.0890[M+H]+.純度:96.81% (HPLC).
(S)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(21c)
【0226】
化合物21cを、17が5-アミノ-3-(トリフルオロメチル)ピコリノニトリルである、スキーム2による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、表題の化合物をオフホワイトの固体として得た。収率=52%。MP 169.7~169.9℃;UV max 195.45、274.45;1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.17 (bs, 1H, NH), 8.83 (s, 1H), 8.67 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.92 (s, 1H), 7.85 (s, 1H), 5.58 (s, OH), 4.73 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 4.34 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 1.53 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3, デカップル) δ-62.11. MS (ESI) m/z 363.1 [M - H] -; 365.0 [M + H] +; HRMS (ESI) m/z C15H11F3N6O2 365.0974 [M + H]+の計算値、実測値365.0931 [M+ H]+; 387.0754 [M + Na]+.
(S)-tert-ブチル(1-(3-((6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)アミノ)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)-1H-ピラゾール-4-イル)カルバメート(21d)
【0227】
化合物21dを、17が5-アミノ-3-(トリフルオロメチル)ピコリノニトリルである、スキーム2による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、設計された化合物の褐色固体を得た。収率=60%。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.28 (bs, 1H, NH), 8.80 (s, 1H), 7.63 (bs, 1H), 7.43 (bs, 1H), 6.29 (bs, 1H, NH), 6.21 (bs, 1H, OH), 4.55 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 4.17 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 1.47 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3, デカップル) δ-62.11. MS (ESI) m/z 453.16 [M - H] -; 477.16 [M + Na] +.
(S)-N-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(21e)
【0228】
化合物21eを、17が4-アミノ-2-クロロベンゾニトリルである、スキーム2による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、設計された化合物を白色固体として得た。収率=71%。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.97 (bs, 1H, NH), 7.87 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.45 (dd, J = 8.4, 2.0 Hz, 1H), 7.36 (dd, J = 8.8, J = 4.0 Hz, 1H), 5.86 (bs, 1H, OH), 4.55 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 4.16 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 1.46 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3, デカップル) δ -176.47. HRMS (ESI) m/z C14H12FN4O2 323.0711 [M + H]+の計算値、実測値323.0710 [M + H]+.
(S)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-N-(4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)プロパンアミド(21f)
【0229】
化合物21fを、17が4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル)アニリンである、スキーム2による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、設計された化合物を黄色がかった固体として得た。収率=67%。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.14 (bs, 1H, NH), 8.01 (s, 1H), 7.97-7.91 (m, 2H), 7.38 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 5.95 (s, 1H, OH), 4.56 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 4.17 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 1.48 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3, デカップル) δ -60.13, -176.47. MS (ESI) m/z 375.08 [M - H]-; 377.22 [M + H] +; 399.04 [M + Na]+.
(S)-5-(3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド)ピコリンアミド(21g)
【0230】
化合物21gを、ステップaの17が5-シアノ-6-(トリフルオロメチル)ピコリンアミドである、スキーム2による一般手順Aに従い調製した。ステップcでは、アルゴン雰囲気下で氷水浴で冷却した、4-フルオロ-ピラゾール(20;0.20g、0.0023237mol)の無水THF(5mL)中の溶液に、水素化ナトリウム(油中60%分散液、0.28g、0.0069711mol)を添加した。添加後、得られた混合物を3時間撹拌した。(R)-3-ブロモ-N-(6-シアノピリジン-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド18(0.66g、0.0023237mol)を上記溶液に添加し、得られた反応混合物を一晩、室温で、アルゴン下で撹拌した。反応を水によってクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。生成物を、溶出剤としてDCMおよびメタノール(9:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.10gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=14.1%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.08 (s, 1H, NH), 8.89 (d, J = 2.4 Hz, 1H, ArH), 8.30 (dd, J = 8.2 Hz, J = 2.4 Hz, 1H, ArH), 8.01 (s, 1H, NH), 7.98 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.73 (d, J = 4.4 Hz, 1H, ピラゾール-H), 7.51 (s, 1H, NH), 7.42 (d, J = 4.0 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.24 (s, 1H, OH), 4.38 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.42 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.34 (s, 3H, CH3). HRMS [C13H15FN5O3
+]: 計算値308.1159、実測値308.1177 [M+H]+; HRMS [C13H14FN5NaO3
+] 計算値330.0978、実測値330.0987 [M+Na]+.
(S)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-N-(キナゾリン-6-イル)プロパンアミド(21h)
【0231】
化合物21hを、ステップaの17がキナゾリン-6-アミンである、スキーム2による一般手順Aに従い調製した。ステップcでは、アルゴン雰囲気下で氷水浴で冷却した、4-フルオロ-ピラゾール(20;0.20g、0.0023237mol)の無水THF(5mL)中の溶液に、水素化ナトリウム(油中60%分散液、0.28g、0.0069711mol)を添加した。添加後、得られた混合物を3時間撹拌した。(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチル-N-(キナゾリン-6-イル)プロパンアミド(18;0.72g、0.0023237mol)を上記溶液に添加し、得られた反応混合物をアルゴン下で室温で、一晩撹拌した。反応を水によりクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。生成物を、溶出剤としてDCMおよびメタノール(19:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、50mgの表題の化合物を黄色の固体として得た。収率=13.7%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.10 (s, 1H, NH), 9.54 (s, 1H, ArH), 9.21 (s, 1H, ArH), 8.64 (d, J = 2.4 Hz, 1H, ArH), 8.22 (dd, J = 8.6 Hz, J = 2.4 Hz, 1H, ArH), 7.97 (d, J = 8.6 Hz, 1H, ArH), 7.75 (d, J = 4.8 Hz, 1H, ピラゾール-H), 7.43 (d, J = 4.0 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.26 (s, 1H, OH), 4.42 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.25 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.36 (s, 3H, CH3). 質量(ESI、陰): 314.05[M-H]-.
(S)-N-(2-クロロピリジン-4-イル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(21i)
【0232】
化合物21iを、2ステップで調製した。第1のステップでは、中間化合物としての(R)-3-ブロモ-N-(2-クロロピリジン-4-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミドを、17が2-クロロピリジン-4-アミンであるスキーム2に従い合成した。塩化チオニル(11.2mL、0.154mol)を、アルゴン雰囲気下、11(18.3g、0.100mol)の、100mLのTHF中の冷却溶液(4℃未満)に、滴下により添加した。得られた混合物を、同じ条件下で3時間撹拌した。ここにEt3N(25.7mL、0.185mol)を添加し、20分間、同じ条件下で撹拌した。20分後、2-クロロピリジン-4-アミン(17;9.89g、0.077mol)、100mLのTHFを添加し、次いで混合物を一晩、室温で撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、固体を得、これを100mLのH2Oで処理し、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を、飽和NaHCO3溶液(2×100mL)およびブライン(100mL)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮して固体を得、これを、酢酸エチルおよびDCM(80:20)を使用するカラムクロマトグラフィーから精製して、固体を得た。この固体を、DCMおよびヘキサンから再結晶して、12.6gの中間化合物を薄黄色の固体として得た。収率=43%。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.06 (bs, 1H, NH), 8.31 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 0.8 Hz, 1H), 7.45 (dd, J = 5.6, 0.8 Hz, 1H), 4.81 (bs, 1H, OH), 3.97 (d, J = 10.6 Hz, 1H), 3.60 (d, J = 10.6 Hz, 1H), 1.64 (s, 3H). MS (ESI) m/z 295.28 [M + H]+.
【0233】
第2のステップ:21iを、18が(R)-3-ブロモ-N-(2-クロロピリジン-4-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミドである、スキーム2による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、所望の化合物を白色固体として得た。収率=55%。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.90 (bs, 1H, NH), 8.26 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.63 (s, 1H), 7.75 (d, J = 4.2 Hz, 1H), 7.33 (d, J = 4.2 Hz, 1H), 7.31 (dd, J = 5.6, 1.2 Hz, 1H), 5.88 (s, 1H, OH), 4.53 (d, J = 13.6 Hz, 1H), 4.14 (d, J = 13.6 Hz, 1H), 1.45 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3, デカップル) δ -176.47. MS (ESI) m/z 298.98 [M + H] +; 296.96 [M - H]-.
(S)-N-(4-シアノ-2-ヨード-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(21j)
【0234】
化合物21jを、ステップaの17が4-シアノ-2-ヨードアニリンである、スキーム2による一般手順Aに従い調製した。ステップcでは、20が4-フルオロ-1H-ピラゾール(0.09g、0.001048mol)であった。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1から1:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.32gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=64%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.60 (s, 1H, NH), 8.76 (s, 1H, ArH), 8.69 (s, 1H, ArH), 7.76 (d, J = 4.8 Hz, 1H, ピラゾール-H), 7.36 (d, J = 4.4 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.85 (s, 1H, OH), 4.39 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.20 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.41 (s, 3H, CH
3). 質量(ESI、陰): 481.00 [M-H]
-.
スキーム3.ピラゾール-1-イル-プロパンアミド26a~26hの合成
【化22】
試薬および条件:(a)1.THF中SOCl
2、-10℃から0℃。2.THF中Et
3N、-10℃から0℃、次いで50℃に加熱、2~3時間;(b)2-ブタノン、K
2CO
3、還流;(c)THF中NaH、0℃から室温。
(S)-3-(4-ブロモ-3-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(26a)
【0235】
化合物26aを、スキーム3による一般手順Aに従い調製した。アルゴン雰囲気下で氷水浴で冷却した、4-ブロモ-3-フルオロ-ピラゾール(25;0.30g、0.001819mol)の無水THF(10mL)中の溶液に、水素化ナトリウム(油中60%分散液、0.26g、0.006365mol)を添加した。添加後、得られた混合物を3時間撹拌した。23(XはCHである;0.64g、0.001819mol)を上記溶液に添加し、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩撹拌した。反応を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。生成物を、溶出剤として酢酸エチルおよびヘキサン(2:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.34gの表題の化合物をピンクがかった固体として得た。収率=34%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.38 (s, 1H, NH), 8.45 (d, J = 2.0-1.6 Hz, 1H, ArH), 8.23 (dd, J = 8.2 Hz, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.11 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.82 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.35 (s, 1H, OH), 4.35 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.04 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.37 (s, 3H, CH3). m.p 110-112℃. HRMS [C15H12BrF4N4O2
+]: 計算値435.0080、実測値435.0080[M+H]+.純度:96.98% (HPLC).
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(3-フルオロ-4-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(26b)
【0236】
化合物26bを、Suzuki反応により、26a(0.20g、0.4596mmol)、4-フルオロボロン酸(77mg、0.5515mmol)、Pd(II)(OAc)2(2~3mg、0.009192mmol)、PPh3(7~8mg、0.02758mmol)、およびK2CO3(0.13g、0.965mmol)をACN(4~5mL)およびH2O(2~3mL)に混合することによって調製した。混合物を脱気してアルゴンを補充することを3回行った。得られた反応混合物を、アルゴン下で3時間、加熱還流した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1から1:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、51mgの表題の化合物を黄色がかった固体として得た。収率=25%。1H NMR (400 MHz, CDCl6) δ 9.12 (s, 1H, NH), 8.06 (d, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 7.85 (dd, J = 8.2 Hz, J = 1.6 Hz, 1H, ArH), 7.77 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.51 (d, J = 3.0 Hz, 1H, ピラゾール-H), 7.43-7.40 (m, 2H, ArH), 7.08-7.04 (m, 2H, ArH), 4.57 (d, J = 10.5 Hz, 1H, CH), 4.17 (d, J = 10.5 Hz, 1H, CH), 1.26 (s, 3H, CH3). HRMS [C21H16F5N4O2
+]: 計算値451.1193、実測値451.1196[M+H]+.純度:% (HPLC).
(S)-3-(3-ブロモ-4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(26c)
【0237】
化合物26cを、22(ステップa)のXがCHでありかつステップcの25が3-ブロモ-4-シアノ-ピラゾールである、スキーム3による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤として酢酸エチルおよびヘキサン(2:1)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.10gの表題の化合物をオフホワイトの固体として得た。収率=20%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.32 (s, 1H, NH), 8.50 (s 1H, ピラゾール-H), 8.41 (s, 1H, ArH), 8.20 (d, J = 8.4 Hz, 1H, ArH), 8.11 (d, J = 8.4 Hz, 1H, ArH), 6.47 (s, 1H, OH), 4.52 (d, J = 13.6 Hz, 1H, CH), 4.33 (d, J = 13.6 Hz, 1H, CH), 1.41 (s, 3H, CH3). HRMS [C16H12BrF3N5O2
+]: 計算値442.0126、実測値442.0109[M+H]+.純度:98.84% (HPLC).
(S)-3-(3-クロロ-4-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(26d)
【0238】
化合物26dを、22(ステップa)のXがCHでありかつステップcの25が3-クロロ-4-メチル-ピラゾールである、スキーム3による一般手順Aに従って調製した。生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(98:2から95:5)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.27gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=54%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.33 (s, 1H, NH), 8.42 (d, J = 0.8 Hz, 1H, ArH), 8.21 (dd, J = 8.4 Hz, J = 0.8 Hz, 1H, ArH), 8.10 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.50 (s 1H, ピラゾール-H), 6.29 (s, 1H, OH), 4.36 (d, J = 14.4 Hz, 1H, CH), 4.18 (d, J = 14.4 Hz, 1H, CH), 1.91 (s, 3H, CH3), 1.35 (s, 3H, CH3). HRMS [C16H15ClF3N4O2
+]: 計算値387.0836、実測値387.0839[M+H]+.純度:97.07% (HPLC).
(S)-3-(3-ブロモ-4-クロロ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(26e)
【0239】
化合物26eを、22(ステップa)のXがCHでありかつステップcの25が3-ブロモ-4-クロロ-ピラゾールである、スキーム3による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてDCMおよび酢酸エチル(95:5)を使用するシリカゲルカラムによって精製して、0.25gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=50%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.34 (s, 1H, NH), 8.41 (s, 1H, ArH), 8.20 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 8.11 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.93 (s 1H, ピラゾール-H), 6.39 (s, 1H, OH), 4.43 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.25 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.38 (s, 3H, CH3). HRMS [C15H12BrClF3N4O2
+]: 計算値450.9784、実測値450.9807 [M+H]+.純度:96.55% (HPLC).
(S)-3-(4-ブロモ-3-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(26f)
【0240】
化合物26fを、22(ステップa)のXがNでありかつステップcの25が4-ブロモ-3-フルオロ-ピラゾールである、スキーム3による概略手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1から1:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.28gの表題の化合物を白色固体として得た。収率=54%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.67 (s, 1H, NH), 9.32 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 8.82 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.85 (d, J = 2.0 Hz 1H, ピラゾール-H), 6.47 (s, 1H, OH), 4.35 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 4.17 (d, J = 14.0 Hz, 1H, CH), 1.39 (s, 3H, CH3). HRMS [C15H12BrClF3N4O2
+]: 計算値434.9954、実測値435.9997 [M+H]+.純度:93.41% (HPLC).
(S)-3-(3-ブロモ-4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(26g)
【0241】
化合物26gを、22(ステップa)のXがNでありかつステップcの25が3-ブロモ-4-シアノ-ピラゾールである、スキーム3による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、表題の化合物を白色固体として得た。収率=81%。MP 172.5~173.6℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.60 (bs, 1H, NH), 9.29 (s, 1H), 8.79 (s, 1H), 8.53 (s, 1H), 6.59 (s, OH), 4.50 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 4.32 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 1.43 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3, デカップル) δ -61.25. MS (ESI) m/z 442.1 [M - H]-; HRMS (ESI) m/z C15H10BrF3N6O2 443.0079 [M + H]+の計算値、実測値443.0083 [M+ H]+; 464.9903 [M + Na] +.
(S)-3-(4-シアノ-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(26h)
【0242】
還流冷却器、セプタム入口、および磁気撹拌棒を備えたフラスコに、26g(0.053g、0.23mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(9mg、0.07mmol)、およびフェニルボロン酸(35mg、0.28mmol)をTHF/MeOH(5mL/1mL)に加え、そこに脱酸素水(1mL)中の炭酸ナトリウム(50mg、0.48mmol)と共に投入し、撹拌し、出発材料がTLCで検出できなくなるまで2時間にわたり加熱還流した。混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧中で除去し、次いで酢酸エチル(10mL)中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和NH
4Cl、水で洗浄し、MgSO
4で乾燥した。溶媒を減圧中で除去し、次いで溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(1:1)を使用するシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、36mgの標的化合物を黄色がかった固体として得た。収率=69%。MP 112.3~124.4℃;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 9.17 (bs, 1H, NH), 8.76 (s, 1H), 8.60 (s, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.57-7.52 (m, 3H), 7.18 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.32 (s, OH), 4.60 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 4.23 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 1.47 (s, 3H).
19F NMR (CDCl
3, デカップル) δ -62.09. MS (ESI) m/z 439.2 [M - H]
-; HRMS (ESI) m/z C
21H
15F
3N
6O
2 441.1287 [M + H]
+の計算値、実測値441.1291 [M+ H]
+; 463.1111 [M + Na]
+.
スキーム4.ピラゾール-1-イル-プロパンアミド29a~29fの合成
【化23】
試薬および条件:(a)1.THF中SOCl
2、-10℃から0℃。2.THF中Et
3N、-10℃から0℃、次いで50℃に加熱、2~3時間;(b)THF中NaH、0℃から室温。
(R)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(29a)
【0243】
化合物29aを、11の代わりに逆の異性体を使用したこと以外[(S)-11、すなわち(S)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸]、10に関して上記にて例示されたように、スキーム1による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(1:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、表題の化合物を黄色がかった固体として得た。収率=64%。[α]D
24+126.7°(c=1.0、MeOH);1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.07 (bs, 1H, NH), 8.01 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.95 (dd, J = 8.4, J = 2.0 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 5.92 (s, OH), 4.54 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 4.16 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 1.47 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3, デカップル) δ -62.23, -176.47. HRMS (ESI) m/z C15H12F4N4O2: 357.0975 [M + H]+の計算値. 実測値357.0984 [M + H] +.
N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルプロパンアミド(29b)
【0244】
化合物29bを、27のYが全ての先の化合物のように第四級[C(OH)(CH3)]の代わりに第三級炭素[CH(CH3)]である、スキーム4による一般手順Aに従い調製した。アルゴン雰囲気下で氷水浴で冷却した、4-フルオロ-ピラゾール(20;0.20g、0.0023237mol)の無水THF(5mL)中の溶液に、水素化ナトリウム(油中60%分散液、0.28g、0.0069711mol)を添加した。添加後、得られた混合物を3時間撹拌した。3-ブロモ-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-メチルプロパンアミド(28;0.78g、0.0023237mol)を上記溶液に添加し、得られた反応混合物を、アルゴン下で一晩、室温で撹拌した。反応を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(1:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.050gの表題の化合物を黄色がかった固体として得た。収率=6.3%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.77 (s, 1H, NH), 8.25 (s, 1H, ArH), 8.10 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.96 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.85 (d, J = 4.4 Hz, 1H, ピラゾール-H), 7.47 (d, J = 4.4 Hz, 1H, ピラゾール-H), 4.35-4.30 (m, 1H, CH), 4.12-4.07 (m, 1H, CH), 3.12-3.10 (m, 1H, CH), 1.22 (d, J = 6.8 Hz, 3H, CH3). 質量(ESI、陽): 341.14 [M+H]+.
N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)プロパンアミド(29c)
【0245】
化合物29cを、27のYが第四級[C(OH)(CH3)]の代わりに第二級炭素[CH2]]である、スキーム4による一般手順Aに従い調製した。アルゴン雰囲気下、氷水浴で冷却した、4-フルオロ-ピラゾール(20;0.20g、0.0023237mol)の無水THF(5mL)中の溶液に、水素化ナトリウム(油中60%分散液、0.28g、0.0069711mol)を添加した。添加後、得られた混合物を3時間撹拌した。3-ブロモ-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)プロパンアミド(28;0.75g、0.0023237mol)を上記溶液に添加し、得られた混合物を、アルゴン下で一晩、室温で撹拌した。反応を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。生成物を、溶出剤としてDCMおよびメタノール(19:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.75mgの表題の化合物を白色固体として得た。収率=10%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.81 (s, 1H, NH), 8.25 (d, J = 2.4 Hz, 1H, ArH), 8.10 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.4 Hz, 1H, ArH), 7.95 (d, J = 8.8 Hz, 1H, ArH), 7.88 (s, 1H, ピラゾール-H), 7.46 (s, 1H, ピラゾール-H), 4.35 (t, J = 6.0 Hz, 2H, CH2), 2.79 (t, J = 6.0 Hz, 2H, CH2). 質量(ESI、陰): 325.03 [M-H]-; (ESI、陽): [M+H]+.
(S)-4-(5-((4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)メチル)-5-メチル-2,4-ジオキソオキサゾリジン-3-イル)-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(29d)
【0246】
10の2-メチル-2-ヒドロキシ-プロパンアミドリンカーの環化によって進行した29dの調製は、オキサゾリジンジオン環系を形成する。10(0.234g、0.0006568mol)の無水ピリジン(8mL)中の溶液に、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)(0.16g、0.0009825mol)を添加した。添加後、得られた混合物を、アルゴン下で一晩、室温で撹拌した。反応を水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。生成物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、0.134gの表題の化合物を白色フォームとして得た。収率=42%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.41 (d, J = 8.0 Hz, 1H, ArH), 7.98 (s, 1H, ArH), 7.94 (d, J = 4.0 Hz, 1H, ピラゾール-H), 7.85 (d, J = 8.2 Hz, 1H, ArH), 7.58 (d, J = 4.4 Hz, 1H, ピラゾール-H), 4.78 (d, J = 14.8 Hz, 1H, CH), 4.69 (d, J = 14.8 Hz, 1H, CH), 1.71 (s, 3H, CH3). HRMS [C16H11F4N4O3
+]: 計算値383.0767、実測値383.0726 [M+H]+.純度:97.64% (HPLC).
(S)-3-(4-アミノ-1H-ピラゾール-1-イル)-1-((4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-メチル-1-オキソプロパン-2-イル2-クロロアセテート(29e)
【0247】
アルゴン雰囲気下、16t(0.17g、0.48mmol)およびトリエチルアミン(0.16mL、1.15mmol)の、10mLの無水DCM中の溶液に、塩化2-クロロアセチル(0.04mL、0.58mmol)を氷水浴内で添加した。30分間撹拌後、温度を室温まで上昇させ、混合物を2時間撹拌した。反応混合物を真空下で凝縮し、次いで10mLのEtOAcに分散させ、水で洗浄し、蒸発させ、無水MgSO4で乾燥し、蒸発乾固した。混合物を、溶出剤としてヘキサンおよび酢酸エチル(2/1、v/v)を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、表題の化合物を黄色の固体として得た。収率=19%。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.22 (bs, 1H, NH), 8.10 (bs, 2H, NH2), 7.93 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.89-7.86 (m, 2H), 7.78 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.53 (bs, 1H), 5.16 (d, J = 14.8 Hz, 1H), 4.61 (d, J = 14.8 Hz, 1H), 4.15 (s, 2H), 1.78 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3, デカップル) δ -62.19. MS (ESI) m/z 452.01 [M + Na] +; 428.03 [M - H] -.
(S)-N-(3-((4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(29f)
【0248】
化合物29fを、スキーム4による一般手順Aに従い調製した。生成物を、溶出剤としてDCMおよびメタノール(19:1)を使用するシリカゲルカラムにより精製して、表題の化合物を褐色の固体として得た。収率=43%。
1H NMR (400 MHz, アセトン-d
6) δ 9.92 (bs, 1H, NHCO), 8.44 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 8.24 (dd, J = 8.8, J = 1.8 Hz, 1H), 8.12 (s, 1H), 8.03 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.84 (s, 1H), 7.11 (bs, 1H, NHCO), 6.38 (bs, 1H, NH), 5.74 (s, OH), 4.67 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 4.39 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 1.50 (s, 3H).
19F NMR (アセトン-d
6, デカップル) δ 114.69. MS (ESI) m/z 380.1 [M - H]
-; 382.1 [M + H]
+. HRMS (ESI) m/z C
16H
14F
3N
5O
3 382.1127 [M + H]
+の計算値、実測値382.1051 [M + H]
+; 404.0882 [M + Na]
+.
化合物29gの合成
【化24】
(R)-3-ブロモ-N-(2-シアノピリミジン-5-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
9H
9BrN
4O
2)
【化25】
【0249】
(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸(3.00g、0.0163934mol)を塩化チオニル(2.34g、0.01967211mol)、トリメチルアミン(2.16g、0.0213115mol)および5-アミノピリミジン-2-カルボニトリル(1.97g、0.0163934mol)と反応させて、表題化合物を得た。溶離液としてヘキサンおよび酢酸エチル(1:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、3.44g(73.3%)の表題化合物が黄色固体として得られた。
【0250】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.71 (s, 1H, NH), 9.40-9.37 (m, 2H, ArH), 6.51 (s, 1H, OH), 3.84 (d, J=10.4 Hz, 1H, CH), 3.59 (d, J=10.4 Hz, 1H, CH), 1.50 (s, 3H, CH3).
【0251】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0252】
HRMS[C
9H
10BrN
4O
2
+]:計算値284.9987、実測値284.9985[M+H]
+。純度:97.09%(HPLC)。
(S)-N-(2-シアノピリミジン-5-イル)-2-メチルオキシラン-2-カルボキサミド(C
9H
8N
4O
2)
【化26】
【0253】
(R)-3-ブロモ-N-(2-シアノピリミジン-5-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(5.00g、0.01754mol)の25mLの2-ブタノン溶液に、炭酸カリウム(6.06g、0.04384mol)を加えた。得られた反応混合物を、アルゴン雰囲気下、還流で2時間、加熱した。この反応の終了をTLCによって確立した後、この反応物を室温(rt)まで冷却し、セライトのパッドに通してろ過し、このセライトパッドを15mLの2-ブタノンにより洗浄した。ろ液を真空下で濃縮し、25~30インチの真空下で乾燥し、(S)-N-(2-シアノピリミジン-5-イル)-2-メチルオキシラン-2-カルボキサミドを得た。
【0254】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.38 (s, 1H, NH), 9.27 (br. s, 2H, ArH), 3.11 (d, J=5.2 Hz, 1H, CH), 3.07 (d, J=8.8 Hz, 1H, CH), 1.56 (s, 3H, CH3).
【0255】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0256】
HRMS[C
9H
9N
4O
2
+]:計算値205.0726、実測値205.0721[M+H]
+。純度:98.93%(HPLC)。
(S)-N-(2-シアノピリミジン-5-イル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
12H
11FN
6O
2)(29g)
【化27】
【0257】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-フルオロ-1H-ピラゾール(0.121g、0.001403mol)の無水THF(10mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散物、0.20g、0.0049101mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に、(R)-3-ブロモ-N-(2-シアノピリミジン-5-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(0.40g、0.001403mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応物を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてヘキサンおよび酢酸エチル(1:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.12g(33.0%)の表題化合物がオフホワイト色の固体として得られた。
【0258】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.53 (s, 1H, NH), 9.30 (br s, 2H, ArH), 7.75 (d, J=4.4 Hz, 1H, ピラゾール-H), 7.42 (d, J=4.0 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.41 (s, 1H, OH), 4.38 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 4.19 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 1.35 (s, 3H, CH3).
【0259】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0260】
HRMS[C12H12FN6O2
+]:計算値291.1006、実測値291.1003[M+H]+。純度:98.66%(HPLC)。
【0261】
(S)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(2-シアノピリミジン-5-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
13H
11N
7O
2)(29h)
【化28】
【0262】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-シアノ-1H-ピラゾール(0.131g、0.001403mol)の無水THF(10mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散物、0.20g、0.0049101mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に、(R)-3-ブロモ-N-(2-シアノピリミジン-5-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(0.40g、0.001403mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応物を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよびメタノール(9:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.115g(27.6%)の表題化合物が黄色固体として得られた。
【0263】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.50 (s, 1H, NH), 9.29 (br s, 2H, ArH), 8.46 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.00 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.52 (s, 1H, OH), 4.55 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 4.37 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 1.48 (s, 3H, CH3).
【0264】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0265】
HRMS[C
13H
12N
7O
2
+]:計算値298.1052、実測値298.1055[M+H]
+。純度:99.26%(HPLC)。
化合物29iの合成
【化29】
(R)-3-ブロモ-N-(2-クロロ-4-シアノフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
11H
10BrClN
2O
2)
【化30】
【0266】
(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸(3.33g、0.018182mol)を塩化チオニル(2.60g、0.02182mol)、トリメチルアミン(2.16g、0.0213115mol)および5-アミノピリミジン-2-カルボニトリル(2.39g、0.023638mol)と反応させて、表題化合物を得た。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、4.02g(69.5%)の表題化合物が黄色固体として得られた。
【0267】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.78 (s, 1H, NH), 8.49 (dd, J=8.8 Hz, J=4.4 Hz, 1H, ArH), 8.19 (d, J=1.6 Hz, 1H, ArH), 7.88 (dd, J=8.8 Hz, J=2.0 Hz, 1H, ArH), 6.84 (s, 1H, OH), 3.84 (d, J=10.4 Hz, 1H, CH), 3.59 (d, J=10.4 Hz, 1H, CH), 1.56 (s, 3H, CH3).
【0268】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0269】
HRMS[C
11H
11BrClN
2O
2
+]:計算値316.9690、実測値316.9684[M+H]
+。純度:98.38%(HPLC)。
(S)-N-(2-クロロ-4-シアノフェニル)-2-メチルオキシラン-2-カルボキサミド(C
11H
9ClN
2O
2)
【化31】
【0270】
(R)-3-ブロモ-N-(2-クロロ-4-シアノフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(5.00g、0.01575mol)の25mLの2-ブタノン溶液に、炭酸カリウム(3.26g、0.02362mol)を加えた。得られた反応混合物を、アルゴン雰囲気下、還流で2時間、加熱した。この反応の終了をTLCによって確立した後、この反応物を室温(rt)まで冷却し、セライトのパッドに通してろ過し、このセライトパッドを15mLの2-ブタノンにより洗浄した。ろ液を真空下で濃縮し、25~30インチの真空下で乾燥し、(S)-N-(2-クロロ-4-シアノフェニル)-2-メチルオキシラン-2-カルボキサミドを得た。
【0271】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.17 (s, 1H, NH), 8.19-8.15 (m, 2H, ArH), 7.87-7.84 (m, 1H, ArH), 3.17 (d, J=5.2 Hz, 1H, CH), 3.08 (d, J=5.2 Hz, 1H, CH), 1.56 (s, 3H, CH3).
【0272】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0273】
HRMS[C11H8ClN2O2
-]:計算値235.0274、実測値235.0265[M+H]+。純度:67.48%(HPLC)。
【0274】
(S)-N-(2-クロロ-4-シアノフェニル)-3-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
14H
12ClFN
4O
2)(29i)
【化32】
【0275】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-フルオロ-1H-ピラゾール(0.108g、0.0012595mol)の無水THF(10mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散物、0.176g、0.0044082mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に、(R)-3-ブロモ-N-(2-クロロ-4-シアノフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(0.40g、0.0012595mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応物を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよびメタノール(19:1~9:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.15g(31.6%)の表題化合物がオフホワイト色の固体として得られた。
【0276】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.50 (br s, 1H, NH), 8.44 (d, J=8.8 Hz, 1H, ArH), 8.15 (d, J=1.6 Hz, 1H, ArH), 7.86 (dd, J= 8.8 Hz, J=2.0 Hz, 1H, ArH), 7.75 (d, J=4.8Hz, 1H, ピラゾール- H), 7.38 (d, J=4.2 Hz, 1H, ピラゾール-H), 6.76 (br s, 1H, OH), 4.39 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 4.12 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 1.39 (s, 3H, CH3).
【0277】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0278】
HRMS[C
14H
13ClFN
4O
2
+]:計算値323.0711、実測値323.0723[M+H]
+。純度:98.81%(HPLC)。
(S)-N-(2-クロロ-4-シアノフェニル)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
15H
12ClN
5O
2)(29j)
【化33】
【0279】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-シアノ-1H-ピラゾール(0.117g、0.0012595mol)の無水THF(10mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散物、0.176g、0.0044082mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に、(R)-3-ブロモ-N-(2-クロロ-4-シアノフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(0.40g、0.0012595mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応物を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよびメタノール(19:1~9:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.15g(31.6%)の表題化合物がオフホワイト色の固体として得られた。
【0280】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.47 (br s, 1H, NH), 8.46 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.42 (d, J=8.2 Hz, 1H, ArH), 8.15 (d, J=2.0 Hz, 1H, ArH), 7.97 (s, 1H, ピラゾール-H), 7.88 (dd, J= 8.2 Hz, J=2.0 Hz, 1H, ArH), 6.88 (br s, 1H, OH), 4.56 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 4.36(d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 1.43 (s, 3H, CH3).
【0281】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0282】
HRMS[C
15H
13ClN
5O
2
+]:計算値330.0758、実測値330.0753[M+H]
+。純度:95.75%(HPLC)。
化合物29kの合成
【化34】
(R)-3-ブロモ-N-(3-クロロ-4-シアノ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
12H
12BrClN
2O
2)
【化35】
【0283】
(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸(1.21g、0.006602mol)を塩化チオニル(0.86g、0.007202mol)、トリメチルアミン(0.79g、0.007802mol)および4-アミノ-2-クロロ-3-メチルベンゾニトリル(1.00g、0.006002mol)と反応させて、表題化合物を得た。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、1.60g(80.4%)の表題化合物が黄色固体として得られた。
【0284】
1HNMR (400MHz, DMSO-d6) δ 9.70 (s, 1H, NH), 7.84 (d, J=8.4 Hz, 1H, ArH), 7.76 (d, J=8.4 Hz, 1H, ArH), 6.50(s, 1H, OH), 3.84 (d, J=9.2 Hz, 1H, CH), 3.59(d, J=9.2 Hz, 1H, CH), 2.32 (s, 3H, CH3), 1.50 (s, 3H, CH3).
【0285】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0286】
HRMS[C
12H
13BrClN
2O
2
+]:計算値330.9849、実測値330.9843[M+H]
+。純度:98.80%(HPLC)。
(S)-N-(3-クロロ-4-シアノ-2-メチルフェニル)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
16H
14ClN
5O
2)(29k)
【化36】
【0287】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-シアノ-1H-ピラゾール(0.112g、0.0012063mol)の無水THF(10mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散物、0.169g、0.0042217mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に、(R)-3-ブロモ-N-(3-クロロ-4-シアノ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(0.40g、0.0012063mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応物を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよびメタノール(9:1~5:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.31g(74.7%)の表題化合物がオフホワイト色の固体として得られた。
【0288】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.52 (br s, 1H, NH), 8.46 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.04(s, 1H, ピラゾール-H), 7.83 (d, J=8.8 Hz, 1H, ArH), 7.78 (d, J=8.8 Hz, 1H, ArH), 6.51 (br s, 1H, OH), 4.56(d, J=14.4 Hz, 1H, CH), 4.34 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 2.18(s, 3H, CH3), 1.40 (s, 3H, CH3).
【0289】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0290】
HRMS[C
16H
15ClN
5O
2
+]:計算値344.0914、実測値344.0910[M+H]
+。純度:99.59%(HPLC)。
化合物29Iおよび29mの合成
【化37】
(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチル-N-(4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)プロパンアミド(C
11H
10BrF
3N
2O
4)
【化38】
【0291】
(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸(1.95g、0.0106734mol)を塩化チオニル(0.385g、0.0116437mol)、トリメチルアミン(1.276g、0.012614mol)および4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル)アニリン(2.00g、0.0097031mol)と反応させて、表題化合物を得た。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、2.70g(75.0%)の表題化合物が黄色固体として得られた。
【0292】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.61(s, 1 H, NH), 8.58(d, J=2.0 Hz, 1H, ArH), 8.38 (dd, J=8.8 Hz, J=2.0 Hz, 1H, ArH), 8.22 (d, J=8.8 Hz, 1H, ArH), 6.45 (br s, 1H, OH), 3.85 (d, J=10.4 Hz, 1H, CH), 3.61 (d, J=10.4 Hz, 1H, CH), 1.50 (s, 3H, CH3).
【0293】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0294】
HRMS[C
11H
11BrF3N
2O
4
+]:計算値370.9854、実測値370.9854[M+H]
+。純度:95.23%(HPLC)。
(S)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-N-(4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)プロパンアミド(C
15H
12F
3N
5O
4)(29I)
【化39】
【0295】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-シアノ-1H-ピラゾール(0.376g、0.0040419mol)の無水THF(20mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散物、0.566g、0.0141466mol)を加えた。添加後、得られた混合物を3時間、撹拌した。上記の溶液に、(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチル-N-(4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)プロパンアミド(1.50g、0.0040419mol)を加え、得られた反応混合物をアルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応物を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよびメタノール(9:1~5:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.52g(33.5%)の表題化合物が黄色固体として得られた。
【0296】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.42 (br s, 1H, NH), 8.47(d, J=2.0 Hz, 1H, ArH), 8.46 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.30 (dd, J=8.8 Hz, J=2.0 Hz, 1H, ArH), 8.20 (d, J=8.8 Hz, 1H, ArH), 8.00 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.44 (br s, 1H, OH), 4.55 (d, J=14.4 Hz, 1H, CH), 4.36 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 1.39 (s, 3H, CH3).
【0297】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0298】
HRMS[C
15H
13F
3N
5O
4
+]:計算値384.0920、実測値384.0914[M+H]
+。純度:100.00%(HPLC)。
(S)-N-(4-アミノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
15H
14F
3N
5O
2)
【化40】
【0299】
(S)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-N-(4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)プロパンアミド(0.30g、0.0007827mol)を、10%のパラジウム活性炭上で、25psiで2~3時間、室温で水素化した。反応の終わりがTLCによって確認された後、反応混合物をセライトに通して濾過し、真空下で濃縮し、乾燥し、次のステップにさらなる精製なしに進んだ。
【0300】
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ
【0301】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0302】
HRMS[C
15H
13F
3N
5O
2
-]:計算値352.1021、実測値352.1030[M+H]
+。純度:%(HPLC)。
(S)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-N-(4-イソチオシアナト-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-メチルプロパンアミド(C
16H
12F
3N
5O
2S)(29m)
【化41】
【0303】
氷水浴中で冷却した(S)-N-(4-アミノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(0.135g、0.0003821mol)の5mLの無水THF溶液に、アルゴン下、チオホスゲン(88mg、0.0007642mol)およびトリエチルアミン(0.193g、0.0019105mol)を加えた。得られた反応混合物をアルゴン下、室温で4~5時間おいた。この反応物を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよびメタノール(9:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、20mg(13.3%)の表題化合物が明褐色固体として得られた(非常に安定しているわけではなかった)。
【0304】
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 10.13 (s, 1H, NH), 8.30 (d, J=2.0Hz, 1H, ArH), 8.13 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.04 (d, J=8.2 Hz, 1H, ArH), 7.64 (dd, J=8.2 Hz, J=2.0 Hz, 1H, ArH), 7.45 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.19 (s, 1H, OH), 4.39 (m, 1H, CH), 4.21 (m, 1H, CH), 1.32 (s, 3H, CH3).
【0305】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0306】
HRMS[C
16H
11F
3N
5O
2S
-]:計算値394.0586、実測値396.0613[M+H]
+。純度:%(HPLC)。
化合物29qの合成
【化42】
1-アミノ-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(C
5H
3F
3N
4)
【化43】
【0307】
3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(0.5g、0.0031041mol)の10mLの水溶液に、砕いたNaOH(0.5g、0.012416mol)を加えた。この溶液を55~60℃で、20分間、撹拌した。上記の溶液に、ヒドロキシアミン-O-スルホン酸(1.05g、0.009312mol)を少量ずつ注意深く加えた。得られた反応混合物を65℃で2時間、加熱し、室温で2時間、撹拌した。反応物をDCMにより3回、抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空で濃縮して乾燥し、さらに精製することなく、次の工程に進んだ。
【0308】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ
【0309】
HRMS [C
5H
2F
3N
4-]: 計算値175.0232, 実測値175.0317 [M-H]-.純度:%(HPLC)。(R)-3-ブロモ-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
9H
8BrF
3N
4O
2)
【化44】
【0310】
(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸(0.864g、0.0047223mol)を塩化チオニル(0.613g、0.0051516mol)、トリメチルアミン(0.565g、0.0055809mol)および1-アミノ-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(0.756g、0.004293mol)と反応させて、表題化合物を得た。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(9:1~4:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.46g(31.5%)の表題化合物が黄色固体として得られた。
(S)-3-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
13H
10F
3N
7O
2)(29q)
【化45】
【0311】
アルゴン雰囲気下、氷水浴中で冷却した、4-シアノ-1H-ピラゾール(0.15g、0.0016183mol)の無水THF(10mL)溶液に、水素化ナトリウム(油中の60%分散物、0.19g、0.0047201mol)を加えた。添加後、得られた混合物を2時間、撹拌した。上記の溶液に、(R)-3-ブロモ-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(0.46g、0.0013486mol)を加え、得られた反応混合物を、アルゴン下、室温で一晩、撹拌した。この反応物を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で濃縮した。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(4:1~2:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.115g(50.4%)の表題化合物が黄色固体として得られた。
【0312】
1 NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.27 (s, 1H, NH), 8.83 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.46(s, 1H, ピラゾール-H), 8.15 (s, 1H, ピラゾール-H), 6.49 (s, 1H, OH), 4.51 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 4.35(d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 1.40 (s, 3H, CH3).
【0313】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0314】
HRMS[C
13H
9F
3N
7O
2
-]:計算値352.0770、実測値352.0761[M-H]
-。純度:99.00%(HPLC)。
化合物29oの合成
【化46】
(S)-3-アジド-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
12H
10F
3N
5O
2)
【化47】
【0315】
(R)-3-ブロモ-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(2.00g、0.005696mol)の無水DMF(10mL)溶液に、アジ化ナトリウム(0.74g、0.011392mol)を加えた。反応混合物を80℃で3~4時間、加熱した。反応の終了をTLCによって確立した後、反応物を水によってクエンチし、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で体積を減少させた。溶離液としてDCMおよび酢酸エチル(9:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.93g(52.4%)の表題化合物が黄色固体として得られた。
【0316】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.58 (s, 1H, NH), 8.54 (s, 1H, ArH), 8.31 (d, J=8.2 Hz, 1H, ArH), 8.11 (d, J=8.2 Hz, 1H, ArH), 6.43 (s, 1H, OH), 4.02 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 3.39 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 1.37 (s, 3H, CH3).
【0317】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0318】
HRMS[C
12H
11F
3N
5O
2
+]:計算値314.0865、実測値314.0865[M+H]
+。純度:99.00%(HPLC)。
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-3-(4-(4-シアノフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(C
21H
15F
3N
6O
2)(29o)
【化48】
【0319】
CANと水(8mL+2mL)との混合物中の(S)-3-アジド-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(0.50g、0.0015692mol)の溶液に、4-エチニルベンゾニトリル(0.30g、0.0023943mol)、および触媒としてCuI(30mg、0.0001596mol)を加えた。得られた混合物を室温で3日間、撹拌した(アジド-アルキンのHuisgen付加環化、クリック反応とも呼ばれる)。この反応物を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で体積を減少させた。溶離液としてDCMおよびメタノール(19:1)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.22g(31%)の表題化合物が白色固体として得られた。
【0320】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.44 (s, 1H, NH), 8.63 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.42 (s, 1H, ArH), 8.23 (d, J=8.2 Hz, 1H, ArH), 8.09 (d, J=8.2 Hz, 1H, ArH), 8.03(d, J=8.0 Hz, 2H, ArH), 7.91 (d, J=8.0 Hz, 2H, ArH), 6.56 (s, 1H, OH), 4.79 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 4.61 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 1.43 (s, 3H, CH3).
【0321】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0322】
HRMS[C
21H
16F
3N
6O
2
+]:計算値441.1287 実測値441.1287[M+H]
+。純度:%(HPLC)。
化合物29pの合成
【化49】
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(4-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)プロペンアミド(C
21H
15F
6N
5O
2)(29p)
【化50】
【0323】
CANと水(8mL+2mL)との混合物中の(S)-3-アジド-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(0.50g、0.0015692mol)の溶液に、1-エチニル-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(0.41g、0.0023943mol)、および触媒としてCuI(30mg、0.0001596mol)を加えた。得られた混合物を室温で3日間、撹拌した(アジド-アルキンのHuisgen付加環化、クリック反応とも呼ばれる)。この反応物を水によりクエンチして、酢酸エチルにより抽出した。有機層をブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥してろ過し、真空下で体積を減少させた。溶離液としてヘキサンおよび酢酸エチル(1:1~1:1.5)を使用するシリカゲルカラムによって生成物を精製し、0.538g(70%)の表題化合物が白色固体として得られた。
【0324】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.45 (s, 1H, NH), 8.59 (s, 1H, ピラゾール-H), 8.42 (s, 1H, ArH), 8.24 (d, J=8.2 Hz, 1H, ArH), 8.10 (d, J=8.2 Hz, 1H, ArH), 8.05 (d, J=8.0 Hz, 2H, ArH), 7.80 (d, J=8.0 Hz, 2H, ArH), 6.56 (s, 1H, OH), 4.80 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 4.61 (d, J=14.0 Hz, 1H, CH), 1.44 (s, 3H, CH3).
【0325】
質量(ESI、ポジティブ):[M+H]+。
【0326】
HRMS[C
21H
16F
3N
6O
2
+]:計算値441.1287、実測値441.1287[M+H]
+。純度:%(HPLC)。
(S)-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-(4-スルファモイル-1H-ピラゾール-1-イル)プロペンアミド(29n)
【化51】
【0327】
アルゴン雰囲気下、滴下漏斗を備えた、乾燥した窒素パージ済みの100mLの丸底フラスコに、鉱油中60%の水素化ナトリウム(NaH)分散液(240mg、6mmol)を、氷水浴でそのフラスコ内の無水THF溶媒10mLに添加し、1H-ピラゾール-4-スルホンアミド(295mg、2mmol)の、5mlの無水THF中の溶液を、氷水浴で30分間撹拌しながら添加した。このフラスコに、5mLの無水THF中の(R)-3-ブロモ-N-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド(702mg、2mmol)を、氷水浴で、アルゴン雰囲気下、滴下漏斗を通して添加し、室温で一晩撹拌した。1mLのH2Oを添加した後、反応混合物を減圧下で濃縮し、次いで50mLのEtOAcに分散させ、50mL(×2)の水で洗浄し、蒸発させ、無水MgSO4で乾燥させ、蒸発乾固した。混合物を、アセトン/ヘキサンで結晶化して、目標の化合物を白色固体として生成した。
【0328】
収率:48%;純度:98.18%; UV max: 270.45; MS (ESI) m/z 416.20 [M - H] -; LCMS (ESI) m/z C15H14F3N5O4S 416.0640 [M - H]-の計算値、実測値416.0679 [M - H]- 418.0789 [M + H] +, 440.0613 [M + Na] +;
【0329】
1HNMR (アセトン-d6, 400 MHz) δ 9.76 (bs, 1H, NH), 8.32 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.11 (dd, J = 8.4, 1.6 Hz, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.88 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.39 (bs, 2H, SO2NH2), 5.53 (bs, OH), 4.54 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 4.30 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 1.38 (s, 3H);
【0330】
19FNMR (CDCl3, 400 MHz) δ -62.80.
(実施例2)
SARDのアンドロゲン受容体への結合、トランス活性化、分解および代謝
リガンド結合アッセイ(Ki値):
【0331】
hAR-LBD(633-919)をpGex4t.1にクローニングした。GSTをタグ付けしたAR-LBDを大スケールで調製し、GSTカラムを使用して精製した。組換えAR-LBDを、緩衝液A(10mM Tris、pH7.4、1.5mM EDTA二ナトリウム、0.25Mスクロース、10mM モリブデン酸ナトリウム、1mM PMSF)中で、[3H]ミボレロン(PerkinElmer、Waltham、MA)と合わせ、[3H]ミボレロンの平衡解離定数(Kd)を決定した。全結合および非特異的結合を決定するため、高濃度の非標識ミボレロンと共に、およびこれを使用しないで、[3H]ミボレロンの濃度を漸増させて、タンパク質を4℃で18時間、インキュベートした。次に、非特異的結合を全結合から減算して、特異的結合、および1部位飽和を伴うリガンド結合曲線の非線形回帰を求めて、ミボレロンのKdを決定した。
【0332】
上記の条件を使用し、漸増濃度のSARDまたはDHT(範囲:10-12~10-2M)を[3H]ミボレロンおよびAR LBDと共にインキュベートした。インキュベート後、リガンドが結合したAR-LBD複合体を、Bio Gel HT(登録商標)ヒドロキシアパタイトを使用して単離し、洗浄してシンチレーションカクテルを加えた後にシンチレーションカウンターで計数した。値は、Kiとして表す。
【0333】
wt ARによるトランス活性化アッセイ(IC50値)
フェノールレッドを含まないDME+5%csFBS中で、HEK-293細胞を24ウェルプレートのウェルあたり125,000個の細胞でプレーティングした。Lipofectamineトランスフェクション試薬を使用し、optiMEM培地中で、細胞に0.25ugのGRE-LUC、10ngのCMV-ウミシイタケLUCおよび50ngのCMV-hAR(wt)をトランスフェクトした。トランスフェクトして24時間後に、フェノールレッドを含まないDME+5%csFBSに培地を交換し、用量応答の様々な薬物(1pM~10μM)で処理した。SARDおよびアンタゴニストは、0.1nM R1881と組み合わせて処理した。Biotek synergy4プレートリーダーで、処置の24時間後に、ルシフェラーゼアッセイを行った。ホタルルシフェラーゼ値を、ウミシイタケルシフェラーゼ値に正規化した。
【0334】
プラスミド構築物および一過性トランスフェクション
CMVベクターバックボーンにクローニングしたヒトARをトランス活性化研究に使用した。DME+5%csFBS中、HEK-293細胞を24ウェルプレートのウェルあたり120,000個の細胞でプレーティングした。Lipofectamine(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用し、この細胞に0.25μg GRE-LUC、0.01μg CMV-LUC(ウミシイタケルシフェラーゼ)および25ngのARをトランスフェクトした。図に示されている通り、トランスフェクトして24時間後に細胞を処理し、トランスフェクションの48時間の後にルシフェラーゼアッセイを行った。データは、4パラメータのロジスティクス曲線から得たIC50として表す。
【0335】
LNCaP遺伝子発現アッセイ
フェノールレッドを含まないRPMI+1%csFBS中で、LNCaP細胞を96ウェルプレートのウェルあたり15,000個の細胞でプレーティングした。プレーティングして48時間後、細胞を用量応答のSARDで処理した。処理の24時間後に、cells-to-ct試薬を使用してRNAを単離し、cDNAを合成して、taqmanプライマーおよびプローブを使用して、リアルタイムrtPCR(ABI7900)によって様々な遺伝子の発現を測定した。遺伝子発現結果をGAPDHに正規化した。
【0336】
LNCaP成長アッセイ
フェノールレッドを含まないRPMI+1%csFBS中で、LNCaP細胞を96ウェルプレートのウェルあたり10,000個の細胞でプレーティングした。細胞を用量応答のSARDで処理した。処理の3日後、細胞を再度、処理した。処理の6日後に細胞を固定し、SRBアッセイによって細胞生存度を測定した。
【0337】
LNCaPまたはAD1分解(AR FL)
完全長ARを発現するLNCaPまたはAD1細胞を、増殖培地(RPMI+10%FBS)中の6ウェルプレートのウェルあたり750,000~1,000,000個の細胞でプレーティングした。プレーティングの24時間後、培地を、フェノールレッドを含まないRPMI+1%csFBSに変更し、この培地中で2日間、維持した。フェノールレッドを含まないRPMI+1%csFBSに培地を再度、変更し、0.1nMのR1881と組み合わせたSARD(1nM~10μM)で細胞を処理した。処理の24時間後に、細胞を冷PBSで洗浄して回収した。塩を含有する溶解緩衝液を使用し、3回の凍結-融解(free-thaw)サイクルでタンパク質を抽出した。タンパク質濃度を推定し、総タンパク質5マイクログラムをSDS-PAGEにロードし、分画して、PVDF膜に移した。この膜をSantaCruz製のAR N-20抗体およびSigma製のアクチン抗体でプローブした。
【0338】
22RV1およびD567es分解(AR SV)
増殖培地(RPMI+10%FBS)中、ARスプライスバリアントを発現する22RV1およびD567es細胞を6ウェルプレートのウェルあたり750,000~1,000,000個の細胞でプレーティングした。プレーティングして24時間後に、培地を変更して処理した。処理の24~30時間後に、細胞を冷PBSで洗浄して回収した。塩を含有する溶解緩衝液を使用し、3回の凍結-融解サイクルでタンパク質を抽出した。タンパク質濃度を推定し、総タンパク質5マイクログラムをSDS-PAGEにロードし、分画して、PVDF膜に移した。この膜をSantaCruz製のAR N-20抗体およびSigma製のアクチン抗体でプローブした。
【0339】
22RV1の成長および遺伝子発現
SRBアッセイによって、先に記載した通り細胞成長を評価した。96ウェルプレートにおいて、全血清中で細胞をプレーティングし、3日目の後に培地を交換して6日間、処理した。遺伝子発現研究は、96ウェルプレートにおいて、RPMI+10%FBS中、10,000個の細胞/ウェルでプレーティングした22RV1細胞で行った。プレーティングして24時間後、細胞を3日間、処理し、遺伝子発現研究を先に記載した通りに行った。
【0340】
トランス活性化(IC50)
表Aに示された化合物のin vitroでのAR拮抗作用。optiMEM培地中、lipofectamineを使用し、COS7細胞に0.25ugのGRE-LUC、0.01ugのCMV-ウミシイタケLUCおよび25ngのCMV-hARをトランスフェクトした。0.1nMのR1881の存在下でトランスフェクトして24時間後に細胞を処理し、ルシフェラーゼアッセイをトランスフェクションの48時間後に行った。ホタルルシフェラーゼ値を、ウミシイタケルシフェラーゼ値に正規化した。
【0341】
分解
表Aは、示された化合物に関する、FLおよびSV AR分解活性を表す。各列の下の数は、ビヒクルからの変化%を表す。バンドは、画像ソフトウエアを使用して定量した。各値に関して、ARのバンドをGAPDHのバンドにより除算し、ビヒクルからの差異%を算出して表示した。示されている数は、0(分解がない)、またはGAPDHレベルに対して正規化したARレベルの低下として表されている。FL AR分解に関すると、LNCaP細胞を、チャコールストリップFBS含有培地中に2日間、維持した。0.1nMのR1881の存在下、この培地中で細胞を処理した。処理して24時間後に細胞を回収して、タンパク質を抽出し、ARおよびGAPDHに関するウェスタンブロットを行った。SV AR分解に関すると、LNCaPの場合に表示されている通りに22RV1細胞を処理した。
【0342】
試験化合物の代謝安定性(in vitro CLint)の決定
第I相代謝
このアッセイは、二連(n=2)で、最終体積0.5ml中で行った。試験化合物(1μM)を、0.5mg/mlの肝臓ミクロソームタンパク質を含有する100mM Tris-HCl(pH7.5)中、37℃で10分間、事前インキュベートした。事前インキュベート後、1mM NADPH(37℃で事前インキュベートした)を添加することによって反応を開始した。インキュベーションは三連で、および様々な時点(0、5、10、15、30および60分間)で行った。100μLのアリコートを取り出し、内部標準を含有する100μLのアセトニトリルでクエンチした。試料をボルテックス混合し、4000rpmで10分間、遠心分離した。上清を96ウェルプレートに移し、LC-MS/MS分析に供した。対照として、NADPHの非存在下で行った試料インキュベーションを含ませた。%PCR(残留親化合物%)から、化合物の消失速度を求め(傾き)、in vitroでのCLint(μL/分/mgのタンパク質)を計算した。
【0343】
第I相および第II相の経路における代謝安定性
このアッセイでは、試験化合物を肝臓ミクロソームと共にインキュベートし、薬物の消失をディスカバリーグレード(discovery grade)LC-MS/MSを使用して決定した。第II相の代謝経路(グルクロン酸化)を刺激するため、UDPGAおよびアラメチシンをアッセイに含ませた。
【0344】
LC-MS/MS分析
研究下にある化合物の分析は、MDS/Sciex 4000 Q-Trap(商標)質量分析計を備えたAgilent1100 HPLCからなる、LC-MS/MSシステムを使用して行った。分離はC18ガードカートリッジシステム(4.6mm IDのカラム用のSecurityGuard(商標)ULTRAカートリッジUHPLC、Phenomenex)によって保護したC18分析用カラム(Alltima(商標)、2.1×100mm、3μm)を使用して達成した。移動相は、チャネルA(95%アセトニトリル+5%水+0.1%ギ酸)およびチャネルC(95%水+5%アセトニトリル+0.1%ギ酸)からなり、0.4mL/分の流量で送達した。アセトニトリルと水との体積比は、検体の各々に最適化した。多重反応モニタリング(MRM)スキャンは、各化合物に対して最適化した、カーテンガス、衝突ガス、ネブライザーガスおよび補助ガス、ならびに550℃のソース温度で行った。-4200V(ネガティブモード)のイオンスプレー電圧を使用して、分子イオンを形成させた。デクラスタリング電位、入口電位、衝突エネルギー、生成物イオン質量およびセル出口電位を各化合物に対して最適化した。
【0345】
ラット血清濃度を決定するためのLC-MS/MS分析
最後の用量の24~30時間後に血清を採取した。100μLの血清を200μLのアセトニトリル/内部標準と混合した。100μLのラット血清を用いて、標準の段階希釈(nM)(濃度は、1000、500、250、125、62.5、31.2、15.6、7.8、3.9、1.9、0.97および0とした)によって標準曲線を調製した。標準を200μLのアセトニトリル/内部標準を用いて抽出した。これらの実験の内部標準は、(S)-3-(4-シアノフェノキシ)-N-(3-(クロロ)-4-シアノフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミドとした。
【0346】
検体であるSARDの機器分析は、MDS/Sciex4000 Q-Trap(商標)質量分析計を備えたAgilent1100 HPLCからなる、LC-MS/MSシステムを使用して行った。この分離は、C18ガードカラム(Phenomenex(商標)、ホルダーを備える4.6mm IDカートリッジ)によって保護したC18分析用カラム(Alltima(商標)、2.1×100mm、3μm)を使用して達成した。移動相は、チャネルA(95%アセトニトリル+5%水+0.1%ギ酸)およびチャネルC(95%水+5%アセトニトリル+0.1%ギ酸)からなり、A70%およびB30%で0.4mL/分の流量の定組成で送達した。検体であるSARDに関する全稼働時間を最適化したが、一般に、2~4分間であり、注入体積は10μLとした。多重反応モニタリング(MRM)スキャンは、カーテンガス10、中程度の衝突ガス、ネブライザーガス60.0および補助ガス60.0、およびソース温度550℃で行った。4200(ネガティブモード)のイオンスプレー電圧(IS)を使用して、分子イオンを形成させた。デクラスタリング電位(DP)、入口電位(EP)、衝突エネルギー(CE)、生成物イオン質量およびセル出口電位(CXP)は、観察された質量ペアに関する検体であるSARDの各々に対して最適化した。
【0347】
LogP:オクタノール-水分配係数(LogP)
LogPは、特定の分子が生物膜を通過する可能性があるかどうかのおおまかな推定値として、創薬の取り組みにおいて、早期に一般に使用される、オクタノール-水の分配係数のLogである。LogPは、ChemDraw Ultraバージョン12.0.2.1016(Perkin-Elmer、Waltham、Massachusetts 02451)を使用して計算した。計算したLogP値は、表A中の「LogP(-0.4~+5.6)」と記された列に報告されている。Lipinskiの5つの法則は、経口生体利用率を予測することを目的とする一連の基準である。経口生体利用率に関するこれらの基準の1つは、LogPが、列の見出し(-0.4(相対的に親水性)~+5.6(相対的に親油性)の範囲)に示されている値の間、またはさらに一般には、<5と明記されるものである。SARD設計の目的の1つは、水溶解度を改善することであった。ピラゾール、ピロールなどの本発明の単環式テンプレートは、以前のアナログよりも水溶性が高かった。
【表A-1】
【表A-2】
(実施例3)
ピラゾール部分(B環、シリーズI)の一置換
生物学的方法
競合リガンド結合アッセイ
【0348】
ARリガンド結合アッセイを、ラット前立腺からクローニングした精製済みAR-LBDを使用して、前述のように行った(Cancer Res 2017, 77, 6282-6298; J Med Chem 2019, 62, 491-511)。
ARトランス活性化アッセイ
【0349】
70,000細胞/ウェルで24ウェルプレートにプレーティングしたHEK-293細胞を、リポフェクタミントランスフェクション試薬(Life Technologies、Carlsbad、CA)を使用してトランスフェクトした。細胞に、0.25μg GRE-LUC、25ng CMV-hAR、および10ng CMV-LUCをトランスフェクトした。細胞を、トランスフェクションの24時間後に処理し、ルシフェラーゼアッセイをトランスフェクションの48時間後に行った。ホタルルシフェラーゼアッセイ値を、ウミシイタケルシフェラーゼアッセイの数値に対して正規化した。
変異体AR(F876L)およびwtPRトランス活性化アッセイ
【0350】
COS細胞を、フェノールレッドなしで、5%のcsFBSを加えたDME中、24ウェルプレートに70,000細胞/ウェルでプレーティングした。細胞に、0.25μg GRE-LUC、10ng CMV-ウミシイタケLUC、および50ng pCR3.1-hPR(wt)またはF876L ARを、optiMEM培地にリポフェクタミントランスフェクション試薬を加えたものを使用してトランスフェクトした。培地を、トランスフェクションから24時間後に、フェノールレッドなしのDME+5%csFBSに交換し、用量応答性の様々な薬物(1pMから10μM)で、0.1nMのプロゲステロン(PR)またはR1881(F876L AR)の存在下または非存在下で処理した。ルシフェラーゼアッセイを、Biotekシナジー4プレートリーダーで、処理から24時間後に行った。ホタルルシフェラーゼ値を、ウミシイタケルシフェラーゼ値に対して正規化した。
LNCaP細胞におけるアンドロゲン受容体依存性遺伝子発現(
図3)
【0351】
LNCaP細胞を、フェノールレッドなしで、1% csFBSを加えたRPMI中、96ウェルプレートにプレーティングした。細胞を、この培地中で2日間維持し、0.1nM R1881の存在下で処理した。処理から24時間後、細胞を収集し、RNAを単離し、cDNAを、cells-to-ctキット(Life Technologies)を使用して調製した。遺伝子の発現を、TaqManプライマーおよびプローブ(Life Technologies)を使用するリアルタイムPCRを使用して測定した。
MR49F LNCaP細胞における細胞増殖アッセイ(
図4)
【0352】
MR49F細胞を、フェノールレッドなしで、1% csFBSを加えたRPMI中、96ウェルプレートにプレーティングした。細胞を、6日間にわたり、0.1nM R1881の存在下、この培地中で処理し、培地は、3日後に交換しかつ再処理した。生存可能細胞の数を、cell-titer-glo(Promega)を使用して測定した。
ウェスタンブロット
【0353】
指示された細胞系を、24時間処理した。細胞を収集し、タンパク質を抽出し、AR、AR-SV、およびGAPDHに関するウェスタンブロットを、ARのN末端に結合するAR PG-21ウサギポリクローナル抗体を使用して行った。1,12
in vitro代謝アッセイ
【0354】
DMPKアッセイを、前述のように行った。1,12代謝アッセイを、前述のようにマウス、ラット、およびヒトの肝臓ミクロソームで行った。
ラットにおけるin vivo薬物動態
【0355】
PK研究を、以下に簡単に論じるように、標準的な方法を使用してCovanceで実行した。
畜産および実験設計
【0356】
Envigo RMS,Inc.からの雄性Sprague Dawleyラットを、最初の用量投与前の5日間、研究条件に順応させた。最初の投薬時、動物は12週齢であった。動物を、硬材チップを敷いたポリカーボネートのケージに群収容した(最大で3動物/ケージ/群)。認証済みげっ歯類食餌#2016C(Envigo RMS,Inc.)を適宜提供した。水を、適宜、毎日新たに提供した。動物室の環境制御は、温度20から26℃、相対湿度50±20%、および12時間の明/12時間の暗サイクルを維持するように設定された。必要に応じて、12時間の暗サイクルを中断して、研究手順に順応するようにした。試験物品は、Covanceにより15%ジメチルスルホキシド(DMSO)/85%ポリエチレングリコール(PEG)300中に調製した。個々の用量は、用量投与の1日目および7日目に記録された体重に基づき計算した。単一経口日用量を、7日間連続して経管栄養針を介して投与し、血液を、以下に記述されるように試料採取した。単一静脈内用量を、尾部静脈を介して投与し、1日目に血液を採取した。
【0357】
群、群当たりの動物の数、用量(1日当たり経口5、10、20、および30mg/kg、7日間にわたる;iv 10mg/kg、1日目)、および経路を含む、26aの実験に関する追加の詳細な情報は、以下の実験設計表Bに示される。動物を、死亡率ならびに疼痛および苦痛の徴候に関して毎日2回(a.m.およびp.m.)観察し、全身の健康および外観に関するケージ外からの(cage side)観察を毎日1回行った。動物を、動物選択時ならびに用量投与の1日目および7日目に計量した。
【表B】
試料収集
【0358】
血液(約0.5mL)を、注射器および針を介して頸静脈を介して収集し、K3EDTAを含有するチューブに、3動物/群から、投与前(7日目のみ)1日目および7日目に、投与から約0.083、0.25、0.5、1、3、6、12、および24時間後に移した。i.v.群では、血液(約0.5mL)を頸静脈を介して、投与後約0.083、0.25、0.5、1、3、6、12、および24時間で収集した。血液を、血漿を得るための遠心分離の前に、冷えたクライオラック内で維持した。遠心分離を、収集から1時間以内に開始した。血漿を、バーコードラベルの付いた96ウェルチューブに入れた。血漿を、約-70℃で保存する前にドライアイス上で維持した。薬物濃度を、確立されたクロマトグラフィー/質量分光測定(LC-MS/MS)法により測定した。
Hershbergerアッセイ
【0359】
雄性ラット(6~8週齢)を、体重に基づいて群に無作為化した。動物を、14日間、図に示されるように経口投与により薬物で処置した。動物を犠牲にし、前立腺および精嚢を計量し、臓器重量を体重に対して正規化した。雄性ラット(n=5/群)を、13日間にわたりインタクトなままにした。インタクトなラットを、指示された化合物で、13日間にわたり毎日、口により指示された用量で処置した。ラットを、処置の14日目に犠牲にし、前立腺および精嚢臓器を取り出し、計量した。臓器の重量を体重に対して正規化した。この20mg/kgの固定用量スクリーニングHershbergerを、10、21a、16i(毒性、したがってデータなし)、および26aに関して行った。実験の目標は、10よりも高いin vivo抗アンドロゲン有効性を持つ化合物を見出すことであった。
異種移植研究
【0360】
異種移植研究を、Hera Biolabs(Lexington、KY)で行った。エンザルタミド抵抗性VCaP(MDVR VCaP;Dr.Donald McDonnell、Duke University、Durham、NCからライセンス供与された)細胞を、SRGラット(n=5~7/群)(Hera Biolabs)に皮下移植した。腫瘍が1000~2000mm3に成長したら、動物を無作為化し、指示された薬物で処置した。腫瘍体積を、毎週3回測定した。処置から30日後、動物を犠牲にし、腫瘍を計量し、さらなる研究のために保存した。
【0361】
16a~16xの合成を、スキーム1に従い行った。市販の(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸(11)をSOCl2で処理して、酸11を酸塩化物(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイルクロリド(図示せず)に変換し、これをアニリン(12)と反応させて、臭化物化合物(13)を得た。塩基性条件下(例えば、K2CO3)で、13を、重要なオキシラン中間体(14)に変換した。14とのそれらの反応による市販のピラゾール(15)のアルキル化は、ピラゾール-1-イル-プロパンアミド16a~16xを提供した。シリーズIおよび本明細書で試験された全てのその他の化合物を、AR LBD結合(Ki)、トランス活性化の阻害(IC50)、前立腺がん細胞系における完全長(LNCaP細胞内のAR FL)およびスプライス変異体(22RV1細胞におけるAR SV)アンドロゲン受容体のAR分解(分解%)、ならびにLNCaP細胞における分解効力(DC50値)に関して、in vitroでスクリーニングした(表2)。最適なSARDおよびpan-アンタゴニストは、ARトランス活性化(IC50)を強力に阻害しかつAR FLまたはAR SVを必要に応じて分解する化合物であり、10よりも大きい効力の、抗アンドロゲン抵抗性CRPCのモデルでのin vivo有効性を有する。
【0362】
ピラゾール環上に置換がない化合物16aは、IC50値が1.442μMである弱いAR阻害活性を有した。in vitroでのAR阻害は、ルシフェラーゼアッセイにより測定されたとき、R1881誘発性wtAR転写活性を阻害する能力と定義され[表2のトランス活性化(IC50)欄の値を参照]、本明細書ではin vitro AR阻害と呼ばれる。ピラゾール上へのハロゲンの導入は、4-ヨード化合物16e以外、AR阻害活性を著しく増大させた。ハロゲン置換によるAR阻害効力の順序は:16c(4-Cl、0.136μM)>10(4-F、0.199μM)>16b(3-F、0.220μM)>16d(4-Br、0.427μM)>16a(4-H、1.442μM)>16e(4-I、2.038μM)であった。4-置換を持つ化合物は、それらの3-置換対応物の場合よりも、例えば10(4-F)を16b(3-F)と、16g(4-CF3)を16h(3-CF3)と、16m(4-フェニル)を16n(3-フェニル)と、および16o[4-(4-フルオロフェニル)]を16p[3-(4-フルオロフェニル)]とそれぞれ比較して、より強力なAR阻害活性を示した。
【0363】
より強力な電子求引基(EWG)がピラゾール環上にあるほど、AR阻害活性はより強力になり、その効力の順序は、16j(4-NO2、0.036μM)>16i(4-CN、0.045μM)>16g(4-CF3、0.071μM)>16h(3-CF3、0.205μM)>16q(4-エチニル、0.276μM)>16f(4-COCH3、0.758μM)である。ピラゾール環上に電子供与基を保持する化合物は、低効力のAR阻害活性(16l、16u、および16x)、AR阻害活性なし(16k、16s、16v、および16w)、またはARアゴニスト活性でもある(4-NH2である16t)状態を示した。例えば、ピラゾール環上に[4-(4-OH-ブタ-1-イン-1-イル)]を保持する16rは、AR阻害活性を示さずに、51%のAR完全長タンパク質分解活性を示した。
【0364】
SARD活性に関し、ピラゾール環の置換は、必要であるように見えるが(16a;分解%で0%/0%)、一部の電子供与基、例えば16kの4-OCH3、ならびに16mおよび16nの4-フェニルまたは3-フェニルは不活性である。AR阻害効力のように、電子求引基(EWG)および4置換の強度は、10(4-F;AR FLおよびAR SV有効性に関して100%/100%)、16g(4-CF3;80%/100%有効性)、16i(4-CN;90%/100%有効性)に見られるように有利に寄与するように見え、それに対して3置換EWGは、16b(3-F;82%/73%有効性)および16h(3-CF3;67%/54%有効性)に見ることができるように、わずかに低いSARD活性を有した。しかしながら、16p(3-(4-フルオロフェニル))は、その4位異性体16o(4-(4-フルオロフェニル))よりも優れており、分解有効性は54%/81%対72%/0%である。
【0365】
阻害効力(IC50)は、分解%に常に相関するわけではない。例えば、最も強力な阻害剤16j(4-NO2;0.036μM)は、不十分な分解剤であり、最も強力なシリーズIのハロゲン16c(4-Cl;0.136μM)は、中程度のSARD活性(71%/34%)を実証しただけであった。さらに、LBD結合(Ki)は、AR阻害効力(IC50)にもSARD活性にも相関しない。例えば、非結合剤10および16c(Ki値>10μM)は阻害しかつ分解し、それに対して非結合剤16rは分解したが阻害剤ではなかった。
【0366】
SARD活性の有効性%の構造活性関係(SAR)(半定量値としてのそれらの制限に起因して、凝集体でのAR FL SARDおよびAR SV SARD活性を考慮する)は、いくらかの程度までAR阻害効力と相関するように、および[かなり]低い程度までLBD K
iと相関するように見える。スクリーニングプロファイルは、抗アンドロゲン抵抗性CRPCのモデルの試験に関して最大限の強度および広範なアンタゴニストを提供するように、FLおよびSV SARD有効性およびAR阻害効力を最大限にすることが意図される。ある場合には、16g、16i、および26aなど、高い有効性のSARD(AR FLおよびAR SVの両方に関して>70%)が強力なAR阻害剤であり(<0.100μM IC
50);16b、16c、16h、および26cなどの中程度の有効性のSARDは、中程度の効力の阻害剤であった。しかしながら、SARD有効性%は、in vitro阻害効力またはLBD結合と常に十分相関するわけではない。例えば16jは、わずか20%のAR FL有効性(SVに関してN.A.)を有する不十分な分解剤であったが、LBD結合(2.225μM)と比較して非常に強力な阻害(0.036μM)を有し、26fは、1および10μMでわずか8%、15%のAR FL有効性を有したが、極めて強力な阻害(0.035μM)を有し、これはLBD結合(0.567μM)よりも>10倍強力である。このように、今日まで試験された全てのAR形態を阻害し、ほとんどの場合分解するその能力に主に重点を置く代わりにAR分解剤(即ち、SARD)としてこれらの分子に主に重点を置くことが考慮された。観察されたAR拮抗作用へのAR SARD活性の寄与を決定しようとして、LNCaP細胞における分解効力値(DC
50値)は、初めて本明細書で提供された。これらの値は、IC
50値よりも約4から10倍大きく(表2~5)、SARD活性のみでこれらの化合物の強力なAR pan-拮抗作用を説明できないことを示唆している。したがって、これらの広範で強力な非正規ARアンタゴニストは、SARDおよびpan-アンタゴニストと本明細書では注記される。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
a AR結合は、1nM[
3H]MIBと野生型AR(wtAR)の組換えLBDとの競合結合によって決定された。DHTは、標準剤として各実験で使用され、値は、DHTのIC
50を1nMとして、DHTに対して正規化される。
b トランス活性化の阻害は、HEK-293細胞に完全長wtAR、GRE-LUC、およびCMV-ウミシイタケルシフェラーゼをトランスフェクション対照としてトランスフェクトすることによって決定した。細胞を、トランスフェクションの24時間後に用量応答性の化合物(1pMから10μM)で、0.1nM R1881(アンタゴニストモード)の存在下でまたはR1881(アゴニストモード)の非存在下で処理した。ルシフェラーゼアッセイは、二重ルシフェラーゼ(ホタルおよびウミシイタケ)アッセイキット(Promega,Madison,WI)を使用して、処理から24時間後に行った。
c SARD活性は、それぞれFL AR(アンタゴニスト1μMで)またはSV AR(アンタゴニスト10μMで)タンパク質レベルを決定するためにLNCaP細胞または22RV1細胞を処理することによりアッセイした。細胞を、木炭処理済み血清含有培地中に48時間維持し、指示される用量のアンタゴニストで24時間、0.1nM R1881(アゴニスト)の存在下で処理した。細胞を収集し、ARに関するウェスタンブロットを、ARのNTDおよびアクチン(タンパク質付加の内部対照)に向けて方向付けるAR-N20またはPG-21抗体を使用して行った。AR FLおよびAR SVバンドを定量し、アクチンバンドに対して正規化し、ビヒクル処理した細胞からの阻害パーセントとして表した。
d 結果は、本明細書に記述されるものと同じアッセイで、文献に報告された。
e N.A.は、データが得られたかったことを意味する。
f 2つの値は、1および10□Mのアンタゴニストで実行されたSARDアッセイを示す。
g 転写活性化は、アンタゴニストモードでの同じアッセイで行われ、IC
50値が報告される。
h トランス活性化の結合親和性およびwtAR阻害は、ダロルタミドのジアステレオマーの混合物に関する文献で報告された。
(実施例4)
芳香族A環の修飾(シリーズII)
【0367】
化合物21a~21jを、スキーム2に示される経路により調製した。SOCl2による酸11の処理は、酸塩化物(R)-3-ブロモ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイルクロリド(図示せず)を提供し、これを塩基性Et3N条件下で様々なアミン(17)と反応させて、種々のA環を持つブロモアミド18を得た。塩基性条件(例えば、K2CO3)は、ブロモアミド18をオキシラン中間体19に変換し、その後、水素化ナトリウムの塩基性条件下で様々なピラゾール20とカップリングさせて、目標化合物21a~21jを生成した。化合物を、AR活性に関してin vitroで試験した(表3)。
【0368】
4-Fピラゾールに関し、A環の3’位で炭素(CH)を窒素(N)で置き換え、即ち10の3’-ピリジノ誘導体は、その対応物10(IC
50=0.199μM)と比較して、AR阻害IC
50値が0.062μMである、より強力な化合物(21a)を誘導した。しかしながら、他の場合には、3’-ピリジノ誘導体が、そのフェニルA環類似体に等しい強度またはそれよりも低い強度であった。3’-ピリジノ21c(4-CN;0.059μM)は、そのA環フェニル類似体16i(IC
50=0.045μM)と比較して、ほとんど等しい強度のAR阻害活性を示した。しかしながら、3’-ピリジノ化合物21b(4-CF
3)および21d(4-NHCOOtBu)は、それらのフェニルA環対応物16gおよび16uよりも低い活性(IC
50値がそれぞれ0.208μMおよび6.108μM)を示した。10の他のA環の修飾は、3’-CF
3を3’-Clで置き換えること(21e;0.427μM;42%/0%分解)、4’-CNを4’-NO
2で置き換えること(21f;部分アゴニスト;N.A.分解%)、および21g~21kのようなその他の修飾も含め、10(0.199μM;100%/100%)と比較したときにAR阻害活性および分解%を減少させた。低いまたは全くないAR LBD結合親和性(K
i)を示す、他のピラゾールプロパンアミドとは異なって、ピラゾールにおける4-CN置換基と3’-ピリジノA環との組合せは、21c(K
i=0.089μM)で見られる緊密なLBD結合を促進するが、SARD活性が比較的不十分(15%/N.A.)であることが見出された。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
aAR結合、トランス活性化、および分解アッセイを行い、値は、表2に記述されるように報告した。
bN.A.は、データが得られたかったことを意味する。
(実施例5)
ピラゾールB環の二置換(シリーズIII)
【0369】
化合物26a~26hを、スキーム1および2に類似の合成方法を利用して、スキーム3に示されるように合成し、AR活性に関して試験をした(表4)。
【0370】
化合物26aは、2個の電子求引基(3-Fおよび4-Br)をピラゾール環上に有し、強力な阻害活性(IC50は0.084μM)および中程度から高度な有効性のAR FLおよびAR SV分解(70~80%の分解)を示した。化合物26aは、AR阻害効力を3-F(16b;0.220μM;82%/73%)および4-Br(16d;0.427μM;42%/0%)一置換類似体の3~4倍改善し、分解特性を保持しまたは改善し、二置換のさらなる調査を支援した。26aのA環の炭素(CH)の、窒素(N)による置換えは、3’-ピリジノ26fを誘導し、これはIC50値が0.035μMの非常に強力なAR阻害剤であったが、SARD活性は不十分であった(8%、FL/SVに関し15%/N.A.)(表4)。ピラゾール上に二置換基を持つ化合物26b~26eは、10(0.199μM)と同等の阻害活性を示し、AR阻害IC50値の順序は26e(3-Br,4-Cl;0.138μM)>26c(3-Br,4-CN;0.202μM)>26b(3-Br,4-(4-フルオロフェニル);0.285μM)>26d(3-Cl,4-メチル);0.332μM)であった。
【0371】
化合物26e(0.138μM)および26c(0.202μM)は、それらの一置換類似体16c(4-Cl;0.136μM)および16i(4-CN;0.045μM)を改善しなかった。4-EDGピラゾールへのハロゲンの付加は、例えば26b(3-Br,4-(4-フルオロフェニル);0.285μM)および16o(4-(4-フルオロフェニル);0.969μM)および26d(3-Cl,4-メチル);0.332μM)および16l(4-メチル;8.087μM)と比較して、少なくとも部分的に活性を取り戻した。この場合も、これらの結果は、ピラゾール置換基のEWG強度が、阻害活性に有利に寄与することを示唆する。26cの3’-ピリジノA環バージョンは、AR FLの80%SARD有効性にも関わらず(しかしAR SVでは有効性がない)、AR阻害IC
50値が5.481μMである、10分の1未満の強度の阻害剤26gを提供した。ピラゾールの3位での余分なブロモ(26g)またはフェニル(26h)基の導入は、21c(4-CN;0.059μM)と比較して、それぞれ5.481または0.579μMに阻害活性を大幅に減少させた。ピラゾール上の3-Brおよび4-CN置換基は、26cに関してより緊密なLBD結合(K
i=0.202μM)を促進し、ピラゾール(26a)上の3-F,4-Br置換基は、AR FLおよびAR SV(70%/80%)のSARD活性を保持しながら、強力な阻害剤(IC
50=0.084μM)を誘導することが見出された。
【表4】
a AR結合、トランス活性化、および分解アッセイを行い、値を表2に記述されるように報告した。
b 2つの値は、1および10μMのアンタゴニストで実行されたSARDアッセイを示す。
c N.A.は、データが得られたかったことを意味する。
(実施例6)
連結部分の修飾(シリーズIV)
【0372】
化合物29a~29fを、スキーム4に示されるように、スキーム1~3の場合に類似した合成方法を利用して合成し、29a~29fを、それらのAR活性に関して試験した(表5および表1)。
【0373】
10(S異性体)のキラリティーの切換えは、AR阻害IC50値が0.192μMであるほとんど同じ強度の29a(R異性体)を提供し、10(100%)と比較して84%の分解までわずかに減少した。10の2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミドリンカーからの2-ヒドロキシル部分の除去は、AR阻害活性が低減し(0.462μM)かつ10(0.199μM;100%/100%)と比較して60%/70%のFL/SV SARD活性である、26bを生成した。10の連結から2-メチルおよび2-ヒドロキシ部分を除去して直鎖状プロパンアミド29cを生成することにより、AR阻害性およびSARD活性がさらに減少した。
【0374】
10のオキサゾリジン-2,4-ジオンリンカー変異体として、化合物29dは、リンカーのアミドおよびヒドロキシル基に類似した基を(カルバメート中の酸素として)有する。29dは、依然として活性を示したが、そのAR阻害性(1.131μM)およびSARD(18%、50%/N.A.)活性は、10(0.199μM;100%/100%)と比較して著しく減少した。2-ヒドロキシARアゴニスト16t(4-NH
2)のアシル化は29eを生成し、これはいくらかのアンタゴニスト活性を回復してAR阻害IC
50値は0.901μMであり、それに対して29fにおけるような第2のアミドのリンカーへの導入およびピラゾール結合位置の変更は、アゴニストを生成した。リンカー要素はシリーズIVのこの初期SARで最適化されなかったが、キラル中心の反転に対する許容性が再び観察され、阻害性およびSARD活性に関して2-ヒドロキシ-2-メチルプロパミドリンカーに関する絶対的要件がないことが確認された。
【表5】
a AR結合、トランス活性化、および分解アッセイを行い、値を表2に記述されるように報告した。
b N.A.は、データが得られたかったことを意味する。
c 2つの値は、1および10μMのアンタゴニストで実行されたSARDアッセイを示す。
【0375】
シリーズI~IIIの、AR LBD親和性(一部の化合物に関し)およびin vitroアンタゴニスト特性は、PCの処置のために現在臨床的に用いられている公知の標準ARアンタゴニストに対して同等から好ましいレベルにまで及んだ。例えば、2、4、5、および6は、>10μMの結合および0.199μMの拮抗作用である10と比較して、0.509、3.641、1.452、および0.011μMのLBD結合親和性(3~5の値は内部で決定され、それに対して6は文献からである)、ならびに0.248、0.216、0.160、および0.065μMのin vitro阻害(3~5の値は内部で決定され、それに対して6は文献からである)を有していた。シリーズIからの化合物16b、16c、16g、16h、16i、および16m、シリーズIIからの21a、およびシリーズIIIからの26aおよび26c、およびシリーズIVからの29aは、0.041から0.220μMに及ぶ比較的強力なAR阻害IC50値を示すが、2および4~6とは異なって、SARDは100%から45%の範囲の分解活性値を持つことが見出された。16m以外のこれらの化合物は、公知のLBD標的抗アンドロゲンに対して改善された阻害剤と同等であったが、新規なpan-拮抗作用およびSARD活性を有した。
(実施例7)
マウス、ラット、およびヒト肝臓ミクロソームでのin vitro代謝研究
【0376】
各シリーズの強力な阻害活性を持つ化合物を、第I相および第II相の両方の代謝の酵素の補因子を含むマウス肝臓ミクロソーム(MLM)におけるin vitro代謝安定性をさらに評価するために選択した。半減期(T
1/2)および固有クリアランス(CL
int)値を、これらの化合物の分布、代謝、および薬物動態(DMPK)特性の予測因子として計算した(表6)。これらの化合物のCL
intは、前世代のSARDよりも遅く、これらのピラゾール-1-イルプロパンアミド(16b、16g、16h、16i、16m、21a、26a、および29a)に関して48.45分から>360分に及ぶ比較的安定なT
1/2値を生成し、9種の試験をしたピラゾールのうち6種は、MLMにおいて>360分にわたり安定であった。これは、第三級アミン8に関する1.15分、インドール9に関する12.11分(Ponnusamy, et al. Cancer Res. 2017, 77, 6282-6298)、および同じin vitroアッセイで既に公開された様々なインドールおよびインドリンB環化合物に関する9~36分(Dellis, et al. Expet. Opin. Invest. Drugs 2018, 27, 553-559)などの以前のSARDテンプレートと比較した場合、大きな改善であり、10(T
1/2が77.96分)に勝る改善である。
【化52】
【表6】
a 化合物を、実験セクションで記述されるように、第I相および第II相に関する補因子が提供されたマウス肝臓ミクロソーム(MLM)と一緒にインキュベートした。
b 実験セクションの場合と同じ方法の使用において既に報告された。
c 参考文献
58で既に報告されたように、ヒトにおける経口投与後のT
1/2(時)。
d 既に報告されたヒトでの経口投与後のCL(mL/時/kg)。58
【0377】
インドールおよびインドリンなどのアリール二環における同様の代謝傾向は、B環のアリールヒドロキシル化であってもよい。A環およびプロパンアミド部分は、2(N-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-3-(4-フルオロフェニル)スルホニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド)およびエノボサーム((2S)-3-(4-シアノフェノキシ)-N-[4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド)など、多くの生物利用可能化合物に組み込まれており、B環は同様の代謝的に不安定な部位として残される。ピラゾールにより改善されたPK特性に関する可能性ある根拠は、B環上の可能性あるアリールヒドロキシル化部位の一部の排除である。ピラゾールの2位窒素原子上の増大した正電荷は、化合物を、代謝酵素に関して不十分な基質にし、かつ/または生物学的分割を改善する可能性もある。
【0378】
4種のさらなる化合物は、これらの読取りが、ラットHershbergerアッセイおよびSRGラット(下記参照)での異種移植などのPDモデルにおけるin vivo試験、ならびに最終的には診療所での、化合物の安定性を示唆するのに妥当なので、ラット肝臓ミクロソーム(RLM)およびヒト肝臓ミクロソーム(HLM)においても特徴付けた(表7)。シリーズIの化合物16cおよび16gはRLM中で安定(T1/2が>120分)であったが、16cはHLMにおいてそれほど安定ではなかった(T1/2が102分)。21a(3-ピリジノ,4-F)および26a(3-F,4-Br)は、RLMおよびHLMの両方で安定であり(T1/2が>120分)、これはRLM(181分)およびHLM(274分)において10に関して既に公開されたデータに類似していた(Ponnusamy, et al. Clin. Cancer Res. 2019, 25, 6764-6780)。RLMおよびHLM中での安定性は、10で既に見られたように、これらピラゾールの経口バイオアベイラビリティの可能性と矛盾がない。しかしながら、21aおよび26aは、16cおよび10に対して改善されたin vitro有効性を有する。
【0379】
これに対応して、21aおよび26aの十分に高い血中レベルが実現されかつ化合物が作用部位に、即ち全身の腫瘍(複数可)に分布した場合、10と比較して抗アンドロゲン抵抗性CRPCを処置する有効性を改善することが可能と考えられる。その結果、様々な活性プロファイルを持つピラゾール化合物(16i、21a、および26a)は、4(F876L AR点変異体を有するMR49F細胞)および1(T877Aを有するLNCaP細胞)に対する抵抗性を含む、CRPCのモデルでの試験に進んだ。
【表7】
a 化合物を、実験セクションで記述されるように、第I相および第II相に関する補因子が提供されたRLMと一緒にインキュベートした。
b 化合物を、実験セクションに記述されるように、第I相および第II相に関する補因子が提供されたHLMと一緒にインキュベートした。
(実施例8)
去勢抵抗性前立腺がんのモデルにおけるin vitro薬力学
【0380】
化合物を、競合LBD結合アッセイ(Ki)、阻害ARトランス活性化アッセイ(IC50)、ならびにAR FL(LNCaP細胞中)およびAR SV(22RV1細胞中)分解アッセイ(分解%)において、in vitroでスクリーニングした(上記表2~5)。強力なin vitroスクリーニングプロファイルが単一分子(複数可)に関して実現したら、in vitro代謝安定性基準も、さらにin vitroで試験されることになる化合物の選択において考慮された(上記表6および7)。in vivo試験での有効性を改善するために、10と比較して優れたin vitroスクリーニングプロファイルを持つ化合物を探索し、ARとPRとの間のトランス活性化選択性、LNCaP細胞におけるAR標的遺伝子発現、およびEnz-R PC細胞(MR49F LNCaP細胞)における増殖研究に関してさらに試験した。
変異体ARおよびwtPRアンタゴニスト効果
【0381】
選択された化合物16i(4-CN)、21a(3-ピリジノ,4-F)、26a(3-F,4-Br)、および10(4-F)を、エンザルタミド(4)抵抗性(Enz-R)表現型をPC細胞に提供する、LBD点変異体ARをアンタゴナイズするそれらの能力に関して試験した。このF876L変異体ARまたは野生型PR(wtPR)を、非PC細胞系であるCOS細胞にトランスフェクトし、ルシフェラーゼアッセイにより定量した(
図1)。化合物16i、21a、26a、および10は、F876L変異体ARを強固に阻害し、そのIC
50値は0.043、0.063、0.084、および0.219μMであり(
図1)、wtAR IC
50値である0.045、0.062、0.084、および0.199μMと同等である(表2~4)。等しい強度でF876LおよびwtARを阻害する能力は、これらのSARDがpan-拮抗作用をEnz-Rのモデルで示すことを、示す。さらに、このpan-拮抗作用は、16i、21a、26a、および10に関する1.499、>10、0.607、および>10μMのAR LBD K
i値によって説明することができない。さらに、wtAR阻害効力において10に対して増大した16i、21a、および26aの効力は、Enz-Rのこのモデルにおいても認められた。
【0382】
これらの分子はwtPR活性も阻害し、IC
50値は、16i、21a、26a、および10に関して3.540、0.235、1.101、および0.403μMであり(
図2)、それに対してwtAR阻害は0.045、0.062、0.084、および0.199μMであった(表2~5)。wtPR阻害は保存されたが、選択比([PR IC
50]/[AR IC
50])は変化し、その値は、試験用に選択された化合物に関して79倍、3.8倍、13.1倍、および2.0倍であり、AR選択性もさらなる試験で最適化できることを示唆している。重要なのは、これらの分子が、GR、MR、またはERトランス活性化に対していかなる影響も及ぼさないことであった(データは図示せず)。
CRPC細胞におけるAR標的遺伝子発現。
【0383】
AR標的遺伝子阻害実験を行って、LNCaP細胞におけるR1881誘発性AR標的遺伝子発現に対するリードピラゾール26aの作用を決定した(
図3)。LNCaP細胞系は、1に対する抵抗性を与える、ARのT877A点変異を発現する、CRPCの非常に十分に特徴付けられたモデルである。化合物26aは、10に対して代謝を遮断する(MLM中でT
1/2>360分対77.96分(表6))3,4-二置換によって、高い効力の阻害(0.084μM)と高い有効性の分解(AR FLおよびAR SVの両方に関して70~80%)とのバランスを有し、そして26aはRLMおよびHLM中で安定でもある(>120分)ので、26aはリードピラゾールとして選択された。wtAR(0.084μM;表4)およびF876L AR(0.084μM;
図1)のトランス活性化のnM阻害に一致して、LNCaP細胞におけるFKBP5遺伝子発現は、0.1μM程度に低い濃度で26aにより強固に阻害され、抗アンドロゲン抵抗性CRPCの別のモデルでは効力を失うことなく抗アンドロゲン効果が内因性遺伝子発現の阻害を含むことを示した(
図3)。予測されるように、抗アンドロゲン4は、FKBP5の発現も阻害したが、わずかに低い効力であった。同じ結果が、PSAおよびTMPRSS2などの他のAR標的遺伝子で観察された(データは図示せず)。累積的に、上述の上記データは、26aが少なくともwtAR(表4)、F876L(
図1)、T877A(
図3)、およびAR SV(表4)でpan-アンタゴニスト効果を有することを裏付ける。
エンザルタミド抵抗性LNCaP細胞における増殖研究。
【0384】
増殖研究を26aで実行して、T877A抗アンドロゲン抵抗性変異を有するCRPCのモデル(即ち、LNCaP細胞)におけるAR依存性遺伝子発現の強力な阻害が、さらにより難治性のCRPCモデルにおいて、即ちARのF876LおよびT877A点変異を有するMR49F LNCaP細胞において、抗増殖に変換されることを確認した。上述のように、F876L変異は、エンザルタミド(4)抵抗性(Enz-R)をMR49F細胞に与え;しかしながらMR49F細胞は、成長に関してARに依存したままである。MR49F細胞を、
図4に示されるように26aまたは4の滴定用量の存在下で試験した。化合物26aは、0.1μM程度に低い用量で、強力であるが部分的な有効性を示す(ビヒクルから約50~60%低減)、用量応答性抗増殖を実証した。MR49FモデルのEnz-Rは、4の抗増殖が約100分の1の強度であると実証された。例えば、10μMの4は、0.1μMの26aと同等の効果を発揮し、これは約20%の有効性で弱く、ビヒクルと著しく異ならなかった。26aは腫瘍に到達できると仮定すると、この強力な抗増殖は、26aがEnz-R CRPCのin vivoモデルで十分機能し得ることを示唆する。
CRPCのモデルにおけるAR FL(F876L)およびAR SV(AR-V7)分解
【0385】
MR49F細胞におけるFL AR分解研究は、16i(AR FLおよびAR SV分解アッセイ、wtAR阻害において0.045μM、90%、100%)および26a(0.084μM、70%、80%)の強固なin vitro AR拮抗作用プロファイルが、高難治性CRPCのこのモデルでのSARD活性を予測することを確認するために行った。化合物26aは、LNCaP細胞におけるAR依存性遺伝子発現を抑制する能力を有し、MR49F細胞における増殖を上述のように抑制し、Enz-R CRPCの状況においてFL ARを分解することもできた(
図5の上部パネル)。ウェスタンブロットは、定量的方法ではなく、相対的バンド密度に基づいて化合物同士でARレベルを比較することが難しくなる可能性がある。したがってGAPDHもまた、各レーンにおいてタンパク質ローディング対照として含まれた。ARのレベルは、そのレーンにおけるGADPHのレベルに対して正規化される。ウェスタンブロットは、濃度測定により定量され、AR/GADPH値は倍率変化として(
図5のブロットの下)またはビヒクル処理された細胞からの変化パーセントとして(表2~5)表される。
【0386】
高い有効性のSARD活性は、3μMで26aにより観察され、10μMで分解が完了し(
図5、上部パネル)、MR49F LNCaP細胞にEnz-Rを与えるこの変異体AR FLは、26aによる破壊を受けることを示している。16iもSARD活性を実証したが、完全な有効性ではなく、それに対して4は、MR49F細胞においてAR分解をもたらさなかった。下部パネルは、SARD活性が、LBDでの点変異を持つT877A(LNCaP;表2~5)およびF876L/T877A(MR49F LNCaP細胞;
図5、上部パネル)AR FLで存在するだけではなく、LBDの発現に欠けるAR-V7などのAR SVを分解もできることも実証する(22RV1細胞;
図5の下部パネル)。表4および2に示されるように(AR SV分解欄参照)、26aおよび16iは、10μMで22RV1細胞でのAR-V7レベルを低減させることができた。
図5は、3および10μMでのAR-V7 SARD活性を確認し、しかし分解%は、この特定の実験におけるいずれのSARDに関しても完全ではなかった。AR FLよりも低い、AR SVに関する分解%は、最初の報告および表2~5と一致しており、AR SV分解を完了することができるが、一般にAR FL(1μMでスクリーニング)の場合よりも高い処置濃度(10μMでスクリーニングした)において分解が完了することを明らかにした。AR SVを発現するPCは、伝統的な(または正規の)抗アンドロゲンがARに結合する結合部位を有さず、不十分な予後に関連付けられ、1~7を含む承認された治療に対して汎抵抗性であることが考えられる。
66 したがって、これらのピラゾールSARDおよびpan-アンタゴニスト、例えば低用量で経口投与と同等のPK特性を有する10、21a、および26aは、非常に広範なARアンタゴニスト能力を、少なくとも:
1) wtAR(表2~5中のIC
50値)、
2) T877A(表2~5におけるLNCaP AR FL分解、および
図3におけるAR依存性遺伝子発現の阻害)
3) F876L(
図1におけるCOS細胞での阻害)、
4) F876L/T877A共変異体(
図4におけるMR49F細胞での増殖)、
5) AR-V7(表2~5および
図5における、22RV1細胞でのAR SVの分解)、および
6) AR増幅/過剰発現(以下に報告するVCaPデータを参照)
に提供する。
【0387】
様々な抵抗性を与えるAR変異体全体にわたる広範なAR拮抗作用は、これらのおよび/またはその他のAR変異を含有するように進化している処置済みの腫瘍が、本明細書に記述されるSARDおよびpan-アンタゴニストに対して感受性なままになることを確実にするのを助ける。さらに、これらのSARDおよびpan-アンタゴニストは、VCaP細胞に存在するような、AR過剰発現および/またはAR遺伝子組換えのモデルにおいて十分機能しており、これらのPCはこの処置にも耐えることができないはずであることを示唆している。SARD活性が必ずしもこれらの活性に必要ではないかもしれないという事実に鑑み、これらの化合物はAR pan-アンタゴニストとして作用する。化合物26aを、リードSARDおよびpan-アンタゴニストの1つとしてin vitroで試験し、一連のin vivo試験に供して、健康なラットおよびラットにおける抗アンドロゲン抵抗性PCのモデルにおけるその薬物動態および薬力学的プロファイルについて記述した。
(実施例9)
in vivoラット薬物動態
【0388】
ラットPK研究を実行して、ピラゾール26aが、前の世代のSARDと比較して改善されたPK特性を有することを確認した。ピラゾールテンプレート内で最適化されたPK特性は、進行性PCのin vivoモデルにおけるそれら独自のAR作用機序を持つ分子に関して最適化されたin vivo PDプロファイルを明らかにする最良の機会を提供する。
【0389】
雄性Sprague Dawleyラットに、単回経口(po)日用量を7日間連続してまたは1日目に単回静脈内(iv)用量を与え、血液を、投与から0.083、0.25、0.5、1、3、6、12、および24時間後に周期的に試料採取した。5、10、20、および30mg/kg po(群1~4)ならびに10mg/kg iv(群5)の用量を、一連のパイロット実験で見られるin vivo有効性に基づいて選択し、これはこのセクションで詳細に論じたHershberger研究と同様であった。濃度-時間曲線を、26aに関してこのデータからプロットし(
図6)、PKパラメーターを、このデータから26aに関して計算した(表8)。
【表8】
【0390】
10のように、化合物26aは、毎日の経口投薬と矛盾することのない、マイクロモル濃度の血中レベルおよび終末相消失半減期(t1/2)(表8)を特徴とするラットにおいて、強固なPKプロファイルを実証した。10に勝る26aの利点は、その比較的長いt1/2であり、これは2.6時間に対して24時間過剰である(10に関してPonnusamy論文で報告された、7日目のラットPKデータに基づき計算された)(Ponnusamy, et al. Clin. Cancer Res. 2019, 25, 6764-6780)。26aの正確なt1/2値は、t1/2が24時間投薬間隔よりも長いので、計算することができなかった(
図6)。26a用量を増加させた場合の群1~4に関する、0から24時間までの濃度-時間曲線下の用量正規化面積(DN AUC0-24)の値の減少、および最大濃度の時間(T
max)値の増大によって明らかにされたように、26aは、より高い用量で、減少する経口バイオアベイラビリティを有していた(表8)。26aの5、10、20、および30mg/kg用量に関する計算された経口バイオアベイラビリティは、1.18、0.982、0.705、および0.524であった。10に対して26aのより長いt1/2は、少なくとも部分的に、減少する経口バイオアベイラビリティを高用量でオフセットし、26aは、10と比較してわずかに増加した絶対曝露を実現した。例えば、30mg/kg po 26aおよび10に関するAUC
0-24値は、それぞれ71,500および62,000時・ng/mLであった。後者の値はやはり、Ponnusamyの論文で提示された7日間ラットPKデータから計算される(Ponnusamy, et al. Clin. Cancer Res. 2019, 25, 6764-6780)。
【0391】
化合物26aは、ラットにおける経口的な毎日の投薬を介して、in vivoで高い血中レベルを維持するのに十分に強固なPKプロファイルを示した。30mg po 21aに関する予備的ラットPKデータも示した(
図9)。濃度対時間のプロットは、大部分の21aが24時間までに排除されたことにより、低減したin vivo安定性を実証し、このことは、24時間での血中レベルがそのC
maxからほとんど低減しない30mg poの26aとは明らかに対照的である(
図6)。30mg poでの化合物21aは、ラットにおけるそのPD特性の観察を可能にするのに十分低いCLを実証した。活性の強力なin vitroパネルにも関わらず、16iは、in vivoで5mg/kgで致死的であることを実証した。化合物21aおよび26aを、ラットHershbergerアッセイで研究し、26aは、異種移植研究のためのリードの1つとして選択された。
【0392】
26aに関して観察されたマイクロモル濃度のC
max血中レベルおよび長いt1/2は、実施例2~8のデータから得られるin vivoでの26aのいかなる高い有効性のAR拮抗作用も明らかにすることに一致したラットのPK特性を示唆した。これらの例は、26aが、抗アンドロゲン抵抗性CRPCのモデルにおけるものも含めて、10と比較して、高い効力により広域にわたる抗アンドロゲン活性をin vitroで阻害することを実証した。26aによる、ラットにおける経口的な毎日の投薬は、AR依存性異種移植においてAR軸を抑制するために必要と考えられるので、AR拮抗作用のIC50値よりも高い血中レベル(表4)、ならびにAR依存性転写(
図3)および増殖(
図4)に対する阻害効果を維持できるべきである。さらに、21a(
図9)、26a(
図6および表8)、および102で見られる低マイクロモル濃度の薬物レベルは、21a(880nM)、26a(860nM)、および10(740nM)に関してDC
50値が過剰であり(表2~4参照)、腫瘍内分解が観察される10で既に見られるように、SARD活性がin vivo AR拮抗作用に寄与し得ることを示唆している。
(実施例10)
in vivoアンドロゲン受容体アンタゴニスト活性
【0393】
Hershbergerアッセイ。強固なPK特性を持つこれらのピラゾリルプロパンアミド化合物が、臨床的に意味のあるSARDおよびpan-アンタゴニスト活性をin vivoで有するか否かを見出すために、ラットにおける経口バイオアベイラビリティが実証された21aおよび26aに関してHershbergerアッセイをインタクトなラットで行った(
図9および7)。Hershbergerアッセイは、何十年にもわたり、アンドロゲンの同化選択性を実証するのに使用されてきた。ラットの腹側前立腺(VP)、精嚢(SV)、および肛門挙筋(LA)は、AR依存性組織であり、そのサイズ(それらの重量により反映される)は去勢に即座に応答する。
【0394】
去勢後、約85%(VP)、90%(SV)、および50%(LA)である臓器重量に至る3~7日以内でのこれらの臓器萎縮は、それらのインタクトな臓器重量と比較して低減した。伝統的にアゴニストは、増加したアンドロゲン性組織(SVまたはVP)重量を元のインタクトなレベルに戻すことなく、インタクトなレベルまたはそれよりも高いレベルまで同化組織重量[LAまたはその他の骨格筋および骨(後者は、萎縮および回復までに、何日ではなく何カ月かを要する)]を予防(それによってアゴニストは、去勢後に与えられる)または回復(アゴニストは、組織萎縮後に与えられる)させるために投薬される。本明細書で用いられるように、即ちアンタゴニストモードで、若いインタクトな動物が使用され、
図7Aおよび7Bのビヒクル欄に関する0%の変化により反映されるように、この内因性アンドロゲン環境がAR媒介性担体をVP、SV、およびLA重量に提供した。
【0395】
外因性アンタゴニスト21aおよび26aは、強力なin vitro阻害[0.062および0.084μM(表3および4)]を持つものであり、それらのin vivoでのAR拮抗作用を観察するために投薬された。in vivo AR拮抗作用の改善された効力は、10に対する(1)21aにおけるような3’-ピリジノNの付加、または(2)26aにおける3-Fもしくは4-Brなどのピラゾール上の追加のハロゲンによる、10の誘導体で見られた。21aおよび26aが20mg/kgで、即ち上述の10の用量の3分の1でVP重量は約35および30%低減し(
図7A)、21aおよび26aに固有のin vivo PD特性が、10に対してさらに低い用量で観察可能であることを実証している。この用量のSVでは、約45~50%の低減が、21aおよび26aにより提供された。実施例9と矛盾することなく、これらの結果は、経口投与された26aが吸収されかつAR標的臓器の作用部位に分布したことを確認し、これらの化合物は異種移植モデルの腫瘍にも分布するはずでありかつ感受性あるモデルで抗腫瘍効果を発揮するはずであることを示唆している。
【0396】
ラットにおけるEnz-R(MDVR)VCaP異種移植。VCaP細胞系は、ホルモン抵抗性PCの患者の椎骨転移から誘導される(https://atcc.org/Products/all/CRL-2876.aspx;2020年1月20日にアクセス)。55 VCaPは、CRPCのモデルとして一般に使用され、AR SV(AR-V7)およびAR FLの過剰発現(TMPRSS2-ERG遺伝子融合)の両方を表す。下記の実験で使用されるMDVR VCaPの親細胞系であるVCaPは、高度に進化したPCのモデルであり、ホルモン抵抗性の多数のメカニズムが、単一AR軸推進型細胞系におけるアンドロゲン除去に応答して出現した。親VCaP細胞は、それにも関わらず、エンザルタミド(4)に対して感受性があり;しかしながらMDVR VCaP細胞は、親細胞系での抵抗メカニズムに加えて獲得されたEnz-Rを有する。既に、VCaPは、4に対して部分的に感受性があり、それに対してMDVR VCaPは感受性がないことが観察された(Ponnusamy, et al. Clin. Cancer Res. 2019, 25, 6764-6780)。
【0397】
in vitroスクリーニングパネルの10よりも優れた26aによる実証の後、MR49F(Enz-R LNCaP細胞系)でのin vitro活性およびHershbergerアッセイでのin vivo拮抗作用で、26aの活性をEnz-R MDVR VCaP異種移植で示した。26aと10との直接比較を可能にするため、MDVR VCaP異種移植を、10に関して公開されたように行った(Ponnusamy, et al. Clin. Cancer Res. 2019, 25, 6764-6780)。10では、このモデルでの有効性を示すのに、去勢が必ずしも必要ではなく(本発明者らの知る限り全ての以前のARアンタゴニストとは異なって);しかしながら10は、マウスにおいて安定ではなく;したがってインタクトなSRGラットを、MDVR VCaP異種移植実験用の宿主として使用した。
【0398】
毎日、10mg/kg poの26aでインタクトなSRGラットを処置(HERA Biolabs,Lexington KYで行われた研究)することにより、最大83%TGIの同等の有効性がもたらされ(
図8A)、それに対して10は、類似の結果を実現するのに20~30mg/kgを必要とし、一方、4は、いずれの効果も永続的に発揮することができなかった(図示せず;既に公開された)(
図5)(Ponnusamy, et al. Clin. Cancer Res. 2019, 25, 6764-6780)。研究の終わりに測定された腫瘍重量は、著しい阻害も実証した(
図8)。示された高い効力の抗腫瘍活性と矛盾することなく、26aは、wtARまたはF876LにおけるそのIC50値(共に84nM)よりも10倍高い881nMの腫瘍内の平均濃度で、この研究で観察された。さらに腫瘍内レベルは、これら動物の血液中の26aの1319nMの平均濃度からわずかに低減されただけであった(表9)。このことは、VPおよびSVに加え、腫瘍内への26aの効率的な分布を裏付け、進行性PCでのその使用を裏付ける。
【表9】
a 最後の用量(28日目)の20から24時間後、動物を犠牲にし、血液および腫瘍をさらなる分析のために収集した。血清を血液から分離し、血清および腫瘍内の薬物濃度を、LC-MS/MS法(n=4)を使用して測定した。
【0399】
表3および4で報告した21a(880nM)および26a(860nM)に関するLNCaP細胞におけるin vitro DC50値(分解効力の第50百分位数の濃度)は、MDVR VCaP異種移植で得られた腫瘍内レベルと同等であった。in vitro研究とin vivo研究との間での異なる細胞型にも関わらず、データは、この実験の腫瘍における完全有効性SARD活性に関して準最適な曝露の可能性を示唆する。この推定される半有効性腫瘍内SARD活性が、TGIに寄与し得る。上昇した腫瘍内レベルで、即ち増大した用量の26aで、または改善された分解効力類似体で、抗腫瘍活性を改善することが可能となり得る。
【0400】
結果は、26aがラットで安定でありかつEnz-R CRPCのこのAR過剰発現およびAR-V7発現モデルで非常に強力で高い有効性があったことを明らかに示す。結果はさらに、26aの改善されたPKおよびPDが、10と比較してさらに強力なin vivo有効性に変換されること、まだ観察されていないものに関して毒性が用量を制限する場合、用量節約SARDおよびpan-アンタゴニストが提供されることを示唆する。さらに、改善されたPKは、がん患者全体にわたり改善された浸透に変換される可能性があり、離れた転移性成長のより良好な抑制が可能になる。上記全ては、広域にわたるCRPC抵抗性メカニズムを発現するヒト集団で試みた場合(表7のHLM研究)、疾病負荷の臨床上有意な低減を観察する機会を増大させる。この集団は、AR SVを発現する場合であっても(AR-V7のように)、ARを過剰発現するAR遺伝子増幅(TMPRSS2-ERGのように)またはLBD指向型抗アンドロゲン抵抗性(MR49FまたはMDV VCaP細胞で観察されるEnz-Rおよび/またはダロルタミド抵抗性のように)、またはMDVR VCaPにおけるようなこれらの組合せに依然として感受性があると考えられる。
【0401】
これらの結果は、26aに関し、in vitroスクリーニングパラダイムが、CRPCのin vivoモデルにおける非常に有効性のある改善されたリード化合物を、SARDおよびpan-アンタゴニストから特定するのに成功したことを確認する。10に関して公開されたような完全有効性in vitro SARD活性は独自のものでありかつAR依存性疾患で有益であるべきだが、診療所での有効性に関しては必ずしも必要ではない。このことは、10とは異なって(100%/100%;表2)in vitroで完全有効性SARDではない(70%/80%;表4)、26aに関するin vivoでのより強力で同等の有効性の抗腫瘍活性によって裏付けられる。26aの高い有効性の正確で疑う余地のない機械的な説明は可能ではないが、その強力なin vivo有効性も疑う余地がない。ピラゾールテンプレートは、今日まで提示されてきた最適なB環テンプレートを表し、26aは、このテンプレートから最適化されたリードの1つである。10または26aは、診療所で存在するCPRCの多数のメカニズムを克服するために、かなりの潜在性を保持することが考えられる。
【0402】
シリーズIからの化合物16c、16g、16i、および16j;シリーズIIからの21aおよび21c;ならびにシリーズIIIからの26a、26c、26e、および26fは、in vitroで強力な阻害活性を示し、一方、シリーズIからの化合物16b、16c、16g、および16i;シリーズIIからの21a;ならびにシリーズIIIからの26aおよび26gは、強力なSARD活性をin vitroで有した(表2~4)。第三級アミン8に関する1.15分およびリードインドール9に関する12.11分などの、以前のSARDテンプレート(Ponnusamy, et al. Cancer Res. 2017, 77, 6282-6298)と比較すると、これらのピラゾリルプロパンアミド化合物、例えば16g、16i、21a、および26aは、MLMにおけるin vitroでのそれらの安定性を著しく改善し(表6)、21aおよび26aは、RLMおよびHLMで安定であった(表7)。化合物16i、21a、および26aは、F876L変異体ARを強固に阻害して、そのIC50値が0.043、0.063、および0.084μMであり(
図1)、それと共にwtPR活性を阻害し、そのIC50値が3.540、0.235、および1.101μMであった(
図2)。化合物26aは、0.1μM程度の低い濃度で、LNCaP細胞におけるFKBP5の発現を効果的に阻害し、抗アンドロゲン効果には内因性遺伝子発現の阻害(
図3)が含まれることを示しており、それと共に0.1μM程度に低い用量での用量応答性抗増殖を実証した(
図4)。化合物26aは、10および21aと比較して優れたin vivoラットPKおよびPD特性ももたらし、その比較的長いt1/2は24時間を十分に超えており(
図6)、ラットHershbergerアッセイにおけるAR拮抗作用は、21aと同等のそのインタクトな臓器重量と比較して約30%(VP)および50%(SV)低減した(
図7)。
【0403】
インタクトなラットモデルにおける26aの毎日の10mg/kg poによるEnz-R(MDVR)VCaP異種移植実験は、腫瘍内の高い薬物レベル(881nM)を実証し、83%TGIの有効性をもたらし(
図8A)、これは20~30mg/kg poの10と同等であった。結果は明らかに、26aが、Enz-R CRPCのこのAR過剰発現およびAR-V7発現モデルで非常に強力で高度に有効性があり、Enz-R前立腺がんに関する次世代ARアンダゴニストに向けた全ての基準をまとめて満たすことを示す。
【0404】
本明細書に記述されるピラゾリルプロパンアミド化合物は、選択的アンドロゲン受容体(AR)分解剤(SARD)であり、かつ広範なAR拮抗作用をもたらすpan-アンタゴニストである。薬理学的評価は、これらの小分子が独自のSARD活性およびpan-アンタゴニスト活性を示すことを実証した。これらの化合物は、強力なin vivo活性を含みかつ分布、代謝、および薬物動態(DMPK)特性を約束する、強力で広域にわたるARアンタゴニスト活性を示した。
【0405】
本発明のある種の特徴が本明細書に例示および記載されているが、多数の改変、置き換え、変更および均等物を、当業者は思いつくであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に収まるすべてのこのような改変および変更に及ぶことが意図されていることを理解されたい。
【国際調査報告】