(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】細胞水和を促進するための組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20230515BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20230515BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20230515BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230515BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 F
A23L33/125
A23L33/175
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560958
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2021000374
(87)【国際公開番号】W WO2021205237
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512237257
【氏名又は名称】イーストポンド・ラボラトリーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラヨシュ・センテ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE05
4B018MD01
4B018MD08
4B018MD18
4B018MD26
4B018MD36
4B018ME10
4B018ME14
4B117LC04
4B117LC07
4B117LK01
4B117LK06
4B117LK13
4B117LK14
(57)【要約】
飲料組成物は、多細胞生物によって摂取される際に細胞水和を促進し、シクロデキストリンを含む0.01~5% w/wの濃度の炭水化物クラスレート成分を含む。錯体形成化合物もクラスレート成分未満の濃度で含まれ、静水性液体及び炭酸水性液体等の水性液体成分が存在する。クラスレート成分の少なくとも一部及び錯体形成化合物の少なくとも一部によって包接錯体が形成され、多細胞生物が組成物を摂取する際に組成物は多細胞生物の細胞水和を促進する。多細胞生物の寿命を増加させる飲料組成物、並びに作用機構に従って多細胞生物の細胞水和を促進する方法及び寿命を増加させる方法も存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多細胞生物によって摂取される際に細胞水和を促進する飲料組成物であって、
シクロデキストリンを含む0.01~5% w/wの濃度の炭水化物クラスレート成分;
クラスレート成分未満の濃度の錯体形成化合物;
静水性液体及び炭酸水性液体からなる群から選択される水性液体成分を含み、
クラスレート成分の少なくとも一部及び錯体形成化合物の少なくとも一部によって包接錯体が形成され;
多細胞生物が組成物を摂取する際に組成物が多細胞生物の細胞水和を促進する、飲料組成物。
【請求項2】
クラスレート成分の錯体形成化合物に対する比が約5:1~約15:1の範囲である、請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項3】
錯体形成化合物が、L-アルギニン、シトルリン、クレアチン、タウリンを含むアミノ酸、ニコチン酸、ニコチンアミド、レスベラトロール、クルクミン、チアミン、クルクミン、ポリフェノール、ジヒドロクルクミン、スペルミジン、L-リジン、コエンザイムQ10、δ-トコフェロール、デルフィニジン(delphindin)、カフェイン、及びグアルナからなる群から選択される、請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項4】
錯体形成化合物が任意の電解質からなる群から、具体的にはマグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、リン酸塩、及び炭酸水素塩からなる群から選択される、請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項5】
多細胞生物が組成物を摂取する際に組成物が多細胞生物中で細胞水和を引き起こす、請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項6】
多細胞生物が水を細胞内透過させることができ、多細胞生物による組成物の摂取が細胞内透過を向上させる、請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項7】
多細胞生物がアクアポリンを含み、細胞水和が組成物とアクアポリンとの相互作用によって引き起こされる、請求項6に記載の飲料組成物。
【請求項8】
細胞水和が、ヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞を使用する試験によって実証される、請求項7に記載の飲料組成物。
【請求項9】
試験が、ヒトアクアポリンAGP1水チャネルを発現した単一細胞アフリカツメガエルヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞を使用する、請求項8に記載の飲料組成物。
【請求項10】
組成物が多細胞生物の寿命増加も促進する、請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項11】
寿命増加の促進がC.エレガンス線虫に関する寿命研究によって実証される、請求項10に記載の飲料組成物。
【請求項12】
組成物が多細胞生物の寿命増加を引き起こす、請求項11に記載の飲料組成物。
【請求項13】
寿命増加の原因がC.エレガンス線虫に関する寿命研究によって実証される、請求項10に記載の飲料組成物。
【請求項14】
シクロデキストリンがα-、β-、及びγ-シクロデキストリンからなる群から選択される、請求項1に記載の飲料組成物。
【請求項15】
多細胞生物によって摂取される際に寿命増加を促進する飲料組成物であって、
シクロデキストリンを含む0.01~5% w/wの濃度の炭水化物クラスレート成分;
クラスレート成分未満の濃度の錯体形成化合物;
静水性液体及び炭酸水性液体からなる群から選択される水性液体成分を含み、
クラスレート成分の少なくとも一部及び錯体形成化合物の少なくとも一部によって包接錯体が形成され;
多細胞生物が組成物を摂取する際に組成物が多細胞生物の寿命増加を促進する、飲料組成物。
【請求項16】
寿命増加の促進がC.エレガンス線虫に関する寿命研究によって実証される、請求項15に記載の飲料組成物。
【請求項17】
組成物が多細胞生物の寿命増加を引き起こす、請求項16に記載の飲料組成物。
【請求項18】
寿命増加の原因がC.エレガンス線虫に関する寿命研究によって実証される、請求項17に記載の飲料組成物。
【請求項19】
多細胞生物によって摂取される際に細胞水和を促進する系であって、
シクロデキストリンを含む0.01~5% w/wの濃度の炭水化物クラスレート成分;
クラスレート成分未満の濃度の錯体形成化合物;
静水性液体及び炭酸水性液体からなる群から選択される水性液体成分を含み、
クラスレート成分の少なくとも一部及び錯体形成化合物の少なくとも一部によって包接錯体が形成され;
多細胞生物が組成物を摂取する際に組成物が細胞水和を促進する、系。
【請求項20】
クラスレート成分の錯体形成化合物に対する比が約5:1~約15:1の範囲である、請求項19に記載の系。
【請求項21】
錯体形成化合物が、L-アルギニン、シトルリン、クレアチン、タウリンを含むアミノ酸、ニコチン酸、ニコチンアミド、レスベラトロール、クルクミン、チアミン、クルクミン、ポリフェノール、ジヒドロクルクミン、スペルミジン、L-リジン、レスベラトロール(reservatrol)、コエンザイムQ10、δ-トコフェロール、デルフィニジン(delphindin)、カフェイン、及びグアルナからなる群から選択される、請求項20に記載の系。
【請求項22】
錯体形成化合物が任意の電解質からなる群から、具体的にはマグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、リン酸塩、及び炭酸水素塩からなる群から選択される、請求項20に記載の系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、現在は放棄された2020年12月31日出願の米国特許出願第12/983,234号の継続出願である、現在は米国特許第10,610,524号である2015年11月4日出願の米国特許出願第14/932,929号の部分継続出願である、2020年4月6日出願の米国特許出願第16/841,631号の利益を主張するものであり、その開示は参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は一般に、生物細胞活性、特に水和状態に依存する細胞活性の制御に関する。生物活性成分は、生物細胞系の1つ又は複数の成分の水和を増加させることで該細胞系の活性を増加させるように構築されている。当該の生物活性成分は、水のH結合構造を増加させる一次炭水化物クラスレート小成分を含みうる。より詳細には、本発明は、細胞水和を増加させて、結果的に哺乳動物を含む多細胞生物の生理活性を改変するための、該生物活性成分を含む飲料組成物に関する。更に、本発明は、哺乳動物を含む多細胞生物における細胞水和を増加させるための作用機構に関する。
【背景技術】
【0003】
水分子は主に水素(H)結合を通じて、また双極子モーメントの整列を通じて相互作用する。例えば、隣接する水分子間の結合は、結合軸を近接する水分子に整列させることで補強されるか又は安定化する。液体状態の水では、このような整列が周囲の水性媒体中に伝播して、マイクロメートル未満の規模の分子構造を確立する。
【0004】
医薬化合物の溶解性及び/又はバイオアベイラビリティを改善するように生物活性ゲスト分子を有する包接体を形成するためにシクロデキストリンをクラスレートとして使用する製品及び方法の例は米国特許第7,115,586号及び第7,202,233号並びに米国特許出願公開第2004/0137625号及び第2009/0227690号に記載されており、その開示全体はあらゆる目的で参照によって本明細書に組み入れられる。
【0005】
疎水性生物分子に結合するクラスレートを含む製品及び製品の使用方法の例は米国特許第6,890,549号、第7,105,195号、第7,166,575号、第7,423,027号、及び第7,547,459号;米国特許出願公開第2004/0161526号、第2007/0116837号、第2008/0299166号、及び第2009/0023682号;特開昭60-094912; Suzuki and Sato, "Nutritional significance of cyclodextrins: indigestibility and hypolipemic effect of α-cyclodextrin" J. Nutr. Sci. Vitaminol. (Tokyo 1985; 31:209-223);並びにSzejtli et al., Staerke/Starch, 27(11), 1975, pp. 368-376に記載されており、その開示全体はあらゆる目的で参照によって本明細書に組み入れられる。
【0006】
米国特許出願公開第2009/0110746号では、ヒト体内での溶存酸素分子(O2)の水中拡散性を増加させる特性を有する化学作用剤が記載されており、この化学作用剤では、シクロデキストリンが一次酸素化促進剤の溶解性を改善するための二次「担体」成分として含まれることがあり、シクロデキストリンは水中拡散性、組織酸素化、水構造、又は細胞水和を直接変化させるための作用剤としては想定されていない。
【0007】
また、Park et al. (2013)では、C.エレガンス(C. elegans)の寿命延長に対する水の種類の効果が記載されている。同様に、Gelino et al. (2016)では、食餌制限C.エレガンス(カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)としても知られる)の腸内でのオートファジーの機能、及び水分吸収に関して、C.エレガンスの寿命が記載されている。
【0008】
本発明は、従来の組成物、系、及び方法の欠点を克服するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,115,586号
【特許文献2】米国特許第7,202,233号
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0137625号
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0227690号
【特許文献5】米国特許第6,890,549号
【特許文献6】米国特許第7,105,195号
【特許文献7】米国特許第7,166,575号
【特許文献8】米国特許第7,423,027号
【特許文献9】米国特許第7,547,459号
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0161526号
【特許文献11】米国特許出願公開第2007/0116837号
【特許文献12】米国特許出願公開第2008/0299166号
【特許文献13】米国特許出願公開第2009/0023682号
【特許文献14】特開昭60-094912
【特許文献15】米国特許出願公開第2009/0110746号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Suzuki and Sato, "Nutritional significance of cyclodextrins: indigestibility and hypolipemic effect of α-cyclodextrin" J. Nutr. Sci. Vitaminol. (Tokyo 1985; 31:209-223)
【非特許文献2】Szejtli et al., Staerke/Starch, 27(11), 1975, pp. 368-376
【非特許文献3】Hinrichs, W., et al., "An Amylose Antiparallel Double Helix at Atomic Resolution," Science, (1987), 238(4824): 205-208
【非特許文献4】S. Vom Dahl, et al. Biochem. J. 2001. 354. (1) 31-36
【非特許文献5】Schliess, F. et al. Acta Physiologic 187. 1-2. 2006
【非特許文献6】Haussinger, D. Lancet 341. 8856. 1330-1332. 1993
【非特許文献7】M.F. Chaplin, Biophysical Chemistry 83 (1999) 211-221
【非特許文献8】Lindner and Saenger, Carbohydr. Res., 99:103, 1982
【非特許文献9】Segtan et al., Anal. Chem. 2001; 73, 3153-3161
【非特許文献10】R. Giangiacomo, Food Chemistry, 2006, 96.3. 371-379
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】7個のα[1-4]結合グルコース単位を有する環状オリゴ糖であるβ-シクロデキストリンの化学結合モデルを示す。
【
図2】全体的な円環状のトポロジーを有するシクロデキストリンの構造モデルを示す。
【
図3】円環状の縁部に沿ったグルコシルヒドロキシル基の配置を含むシクロデキストリン構造モデルを示す。
【
図4】初期接触の1ピコ秒後のβ-シクロデキストリン分子を取り囲む水分子の動的分子分布の計算を示す。
【
図5】より組織化されて開放的な水構造を含む、初期接触の1000ピコ秒後の
図4の水分子の動的分子分布の計算を示す。
【
図7】溶解シクロデキストリンあり及びなしの水試料に関する、特定の波長領域を含むNIR微分スペクトルの比較を示す。
【
図8】溶解シクロデキストリンあり及びなしの水試料に関する、特定の波長領域を含むNIR微分スペクトルの比較を示す。
【
図9】溶解シクロデキストリンあり及びなしの水試料に関する、特定の波長領域を含むNIR微分スペクトルの比較を示す。
【
図10】溶解シクロデキストリンあり及びなしの水試料に関する、特定の波長領域を含むNIR微分スペクトルの比較を示す。
【
図11】シクロデキストリン、アミノ酸、及びシクロデキストリン/アミノ酸包接錯体を変動的に含む水中での種子発芽動態の比較を示す。
【
図12】シクロデキストリン、ビタミン、及びシクロデキストリン/ビタミン包接錯体を変動的に含む水中での種子発芽動態の比較を示す。
【
図13】本開示による水和活性成分を変動的に含む水中での種子発芽率の比較を示す。
【
図14】本開示による水和活性成分としてシクロデキストリンを変動的に含む媒体中での線虫の寿命の比較を示す。
【
図15】本開示による水和活性成分として誘導体化シクロデキストリンを変動的に含む媒体中での線虫の寿命の比較を示す。
【
図16】本開示による水和活性成分としてシクロデキストリン包接錯体を変動的に含む媒体中での線虫の寿命の比較を示す。
【
図17】本開示による水和活性成分として含まれるシクロデキストリン包接錯体あり及びなしの媒体中での線虫の死亡頻度を示す。
【
図18】本開示による水和活性成分としてのシクロデキストリン包接錯体あり及びなしの媒体中で生存する線虫の集団生存曲線を示す。
【
図19】脂質二重層内にリン脂質、膜タンパク、コレステロール、機能性タンパク質等が配置された脂質二重層を示す。
【
図21】0.1% α-シクロデキストリン含有水の効果を対照(添加物なしの淡水)との比較で示す。
【
図22A】C.エレガンスの寿命に対する0.1% α-CD、0.1% α-CD-ニコチン酸錯体、及び0.1% α-CD-アルギニン錯体の効果を示す。
【
図22B】C.エレガンスの寿命に対する0.5% α-シクロデキストリン及び0.05% α-シクロデキストリン含有水の効果を対照(添加物なしの淡水)との比較で示す。
【
図22C】C.エレガンスの寿命に対する0.05% α-シクロデキストリン-ニコチン酸錯体及び0.05% α-シクロデキストリン-L-アルギニン錯体の効果を対照(水中に添加物なし)との比較で示す。
【
図23】本開示によるヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞の浸透的水透過性を示す。較正用卵母細胞を写真右手に示す。
【
図24】本開示によるヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞の浸透的水透過性を示す。対照である未膨張の小さな卵母細胞を各写真の右手に示す。
【
図25A】本開示による2つの時間尺度でのヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞の浸透的水透過性(Pf値)を示す; C1:対照(精製水)、C2~C4: ACD 0.05%、0.1%、0.5%; C5~C7: ACD-ニコチン酸錯体、0.05%、0.1%、0.5%、C8~C10: ACD-L-アルギニン錯体、0.05%、0.1%、0.5%。
【
図25B】本開示による2つの時間尺度でのヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞の浸透的水透過性(Pf値)を示す; C1:対照(精製水)、C2~C4: ACD 0.05%、0.1%、0.5%; C5~C7: ACD-ニコチン酸錯体、0.05%、0.1%、0.5%、C8~C10: ACD-L-アルギニン錯体、0.05%、0.1%、0.5%。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、シクロデキストリン及び錯体形成化合物(作用剤とも呼ぶ)を含む、飲料組成物を提供する。シクロデキストリン及び錯体形成剤は、一般に約1:1のモル比で存在する。しかし、本発明は、1:10~10:1の範囲のモル比、より狭くは1:1~10:1の範囲のモル比の、シクロデキストリン及び錯体形成剤の混合物を含む。本発明では2種類の錯体形成化合物が存在する。第1の種類は単に錯体形成化合物と呼ばれ、いくつかの非限定的な例は以下の詳細な説明の節に示される。第2の種類は「外圏」錯体形成剤であり、これら作用剤の非限定的な例もやはり、以下の電解質の説明に示され、これには以下の当該の節に記載のカチオン及びアニオンの両方が含まれる。アルギニン及びナイアシンのような特定の錯体形成剤では、この比を質量比と記載することもあり、これらの場合では、シクロデキストリンとアルギニン又はナイアシンとの質量比は約10:1である。
【0013】
飲料組成物のシクロデキストリンはα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、若しくはγ-シクロデキストリン、又はそれらの組み合わせである。錯体形成化合物はL-アルギニン、シトルリン、クレアチン、タウリン、ニコチン酸、ニコチンアミド、レスベラトロール、クルクミン、チアミン、ビート根由来のベタレインのような天然着色料、フラボノイド、及び以下に記載の他の化合物から選択される。
【0014】
1つの実施形態では、シクロデキストリン及び錯体形成化合物を含む飲料組成物は、水中0.05% α-シクロデキストリン、水中0.05% α-シクロデキストリン-L-アルギニン包接錯体、水中0.05% α-シクロデキストリン-ニコチンアミド包接錯体、水中0.05% α-シクロデキストリン-ニコチン酸(ナイアシン)錯体を含む。
【0015】
別の実施形態では、シクロデキストリンは0.025%~0.1%の濃度範囲で存在する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、γ-シクロデキストリンベースの飲料組成物を錯体形成化合物と共に含む。
【0017】
なお更なる実施形態では、本発明は、β-シクロデキストリンベースの組成物を錯体形成化合物と共に含む。本組成物は0.01~0.05%のβ-シクロデキストリンを含む。
【0018】
組成物及び系に関して、本発明はまた、多細胞生物による摂取の際に細胞水和を促進するための飲料組成物を提供する。本発明はまた、多細胞生物によって摂取される際に寿命増加を促進する飲料組成物を提供する。本発明はまた、多細胞生物によって摂取される際に細胞水和を促進する系を提供する。
【0019】
方法に関して、本発明は、水を細胞内透過させることができる多細胞生物において細胞水和の増加を促進する方法を提供する。本発明の別の方法は、水溶液中の水の少なくとも一部の密度を減少させることで、水を含む多細胞生物において細胞水和の増加を促進する方法である。
【0020】
これらの目的及び他の目的に従って、本発明は、シクロデキストリンを含む0.01~5% w/wの濃度の炭水化物クラスレート成分;クラスレート成分未満の濃度の錯体形成化合物;静水性液体及び炭酸水性液体からなる群から選択される水性液体成分を含み、クラスレート成分の少なくとも一部及び錯体形成化合物の少なくとも一部によって包接錯体が形成される、飲料組成物を提供する。
【0021】
実施形態のうちの1つでは、クラスレート成分の錯体形成化合物に対する比は約5:1~約15:1の範囲である。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、混合物が摂取される際に、膜脂質、脂質充填及び膜タンパク質、タンパク質構造及びタンパク質機能、並びに栄養素及び水の膜透過を含む多細胞生物において細胞水和を促進するために、細胞系の水和を増加させるための方法であって、ある量の炭水化物クラスレート成分を含む水溶液を多細胞生物に摂取させる段階;並びに(i)膜脂質の一時的分解、(ii)脂質充填及び膜タンパク質の緩和、並びに(iii タンパク質構造及びタンパク質機能の変化をまとめて行って多細胞生物を変化させることで、栄養素及び水の膜透過を向上させる段階を含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
水構造は、その表面がH結合及び/又は双極子配向をめぐって水分子と強く競合することができる1つ又は複数の溶質又は好適な分子凝集体を加えることで意図的に増加又は組織化される。特に、水分子の相互作用を強化し、それにより水構造を増加させる因子及び作用剤は、更なる分子表面の水和及び溶媒和を変化させる。したがって、水構造を増加させる一次溶液添加物は、二次成分のH結合表面特性に応じて、二次溶液成分の分子表面との水和相互作用(例えば結合強度及び結合動態)を増加させるか、又はこの相互作用を減少させることができる。
【0024】
更に、水構造を改変する因子は、通常は水分子間の平均距離を変化させるものであり、それにより水密度を増加又は減少させることができる。例えば、水温度がその凝固点未満に減少するとき、水分子間のH結合が水分子の運動エネルギーを克服することで、凍結水の密度を減少させる水構造が約9%増加する。同様に、液体状態の水では、水のH結合の強度の増加により水分子間の平均距離が増加し、このことは比体積の増加(すなわち密度の減少)として観察される。液体水の密度の減少によって溶解溶質の拡散性が増加しうる。したがって、水密度を減少させる水性添加物成分は、共溶解溶質の拡散性を増加させることができる。
【0025】
本明細書において使用されるカオトロープとは、水溶液中で水素結合網目構造を破壊し、それにより水構造を減少させるように作用する、水性溶質添加物のことである。通常、カオトロープは、水分子よりも極性が低く、H結合ポテンシャルが弱い。カオトロープは、非極性の溶質及び粒子に優先的に結合し、それにより非極性溶質の溶解性を増加させることができる。
【0026】
本明細書において使用されるコスモトロープとは、水溶液中で強力及び広範なH結合網目構造を促進し、それにより水分子相互作用のマイクロメートル未満規模の構造を増加させる及び/又は安定化する、溶質のことである。水よりも大きなH結合化学ポテンシャル、及び/又は水よりも大きな双極子モーメントを有するコスモトロープは、水分子間のH結合網目構造を増加させることができる。更に、水和構造を強化することで、コスモトロープは、分子間の結合部位を含みうる分子表面において水和相互作用を増加させることができる。したがって、コスモトロープは、分子相互作用を安定化するための水溶液添加物として使用可能である。
【0027】
更に、コスモトロープは、溶解共溶質の有効化学活性を増加させることができる。水分子間のH結合相互作用の強度の増加によって、水は、比密度の低下及び比体積の上昇を示す、より開放的な構造を取るようになる。したがって、水溶液へのコスモトロープの添加は、密度の減少を引き起こすことで、1つ又は複数の溶解共溶質の化学種又は化合物の拡散性を増加させることができる。溶質の化学種又は化合物の拡散性を増加させることで、その反応性、化学ポテンシャル、有効濃度、及び利用可能性を増加させることができる。
【0028】
本明細書において説明するように、クラスレート成分は、親水性であって水と強くH結合する外部表面と、親水性がより低い内部表面とを有する、両親媒性炭水化物化合物である。クラスレートの内面は、相対的に非極性であって水よりも親水性が低い分子構造に選択的に結合しうる。
【0029】
本明細書において使用される包接錯体とは、2つ以上の化合物の間で形成される化学錯体であって、第1の化合物(ホストとも呼ばれる)が、部分的に囲まれた空間を画定する構造を有し、第2の化合物(ゲストとも呼ばれる)の分子が、その空間内に嵌合して第1の化合物に結合する、化学錯体を意味する。ホスト分子はクラスレートと呼ばれることがあり、ゲスト分子に可逆的又は不可逆的に結合しうる。
【0030】
本明細書において使用される生物細胞とは、生物の自己複製的機能性代謝単位のことであり、単細胞生物として、又は多細胞生物中の部分単位として生存することができて、タンパク質、核酸、及び糖等の相互作用生物分子の機能性網目構造を含む脂質膜構造を含む。生物細胞としては原核細胞、真核細胞、及び多細胞生物から既に導出された培養細胞を含みうる、多細胞生物から分離された細胞が挙げられる。
【0031】
本明細書において使用される生物細胞系とは、生存細胞、非生存細胞、細胞小器官、及び/又は生物分子を含みうる、生物細胞及び/又は細胞内要素の機能的に相互接続された網目構造のことである。
【0032】
本明細書において使用される生物活性分子とは、生物細胞系において機能活性を示す分子化合物のことである。
【0033】
本明細書において使用される生物分子とは、生物細胞によって合成される分子化合物のことである。生物分子としては、細胞によって通常合成される化合物、及び遺伝子操作細胞によって合成される化合物、及び細胞由来化合物の化学合成コピーが挙げられる。
【0034】
本明細書において使用される生物分子表面とは、生物分子の原子外周のことであり、結合部位等の生化学相互作用表面を含みうる。
【0035】
本明細書において使用される細胞成分とは、生物細胞の機能性要素のことであり、生物分子、生物分子複合体、細胞小器官、高分子構造、膜、及び膜結合構造を含み、機能性経路及び/又は機能性網目構造、例えば一連の分子事象を更に含みうる。
【0036】
物質の密度とは、指定された温度及び圧力の条件下での該物質の単位体積当たりの質量のことである。
【0037】
物質の比体積とは、物質の単位質量当たりの体積のことであり、例えばm3/kgとして表すことができる。物質の比体積は、該物質の密度の逆数と同等である。
【0038】
本明細書において使用される生物活性成分とは、生物細胞系の活性を改変する(増加又は減少させる)分子物質のことである。
【0039】
本明細書において使用される生物活性剤とは、生物細胞系又は細胞成分に加えられる際に当該の系又は当該の成分の生物活性の変化を引き起こす物質のことである。
【0040】
本明細書において使用される水の結合構造とは、液体状態及び固体状態で水分子の配向を保持及び組織化するH結合の網目構造のことである。本明細書において使用される水構造は、所与の温度での水分子間のH結合が強くなる際に増加し、所与の温度での水分子間のH結合が弱くなる際に減少する。
【0041】
本明細書において使用される細胞成分間の相互作用とは、生物分子表面間の化学結合を意味する。この相互作用は2個の生物分子間の、例えばリガンドとその特異的受容体との間の結合を含みうる。或いは、この相互作用は生物分子と細胞小器官、例えば細胞膜との間の結合を含みうる。
【0042】
本明細書において使用される細胞外シグナルとは、細胞の外側に適用される際に細胞の活性を改変する(増加又は減少させる)ことができる生物分子のことである。細胞外シグナルは、細胞の形質膜(外膜)の一成分に結合することができ、或いは、形質膜を通過して細胞内活性を制御することもできる。細胞外シグナルとしては細胞外マトリックス成分;糖タンパク質及び糖脂質等の細胞膜成分;抗原;並びに一酸化窒素等の拡散性生物分子を挙げることができるがそれに限定されない。
【0043】
本明細書において使用される細胞内メッセンジャーとは、活性状態を有していて、細胞外シグナルを細胞内標的に伝達するための中間シグナルとして活性状態において役割を果たす、生物細胞の内部成分のことである。
【0044】
本明細書において使用される作用機構とは、特定の又は所望の結果を実現するために行われる、段階的プロセスでありうるプロセスを意味する。
【0045】
本明細書において使用される多細胞生物とは、2個以上の細胞からなる生物を意味するものであり、動物及びヒトを含む哺乳動物のように複雑な生物から、C.エレガンス及び他の線虫等のそれほど複雑ではない成分、及び植物及び他の植生物まで含む。
【0046】
本明細書において使用される薬理学的作用剤とは、生物分子又は生物分子複合体に結合することでその活性を変化させる、合成化学物質のことである。
【0047】
本発明は、生物細胞系の1つ又は複数の成分の水和を増加させることで該細胞系の活性を増加させるように構成されている、活性組成物を含む。
【0048】
好ましくは、細胞水和を改変するための活性組成物は、水のH結合構造を増加させる一次炭水化物クラスレート成分を含む。いくつかの例では、活性組成物は、水のH結合構造を増加させる一次炭水化物クラスレート成分と、生物活性剤でありうる二次溶質化合物とを含むことが好ましい。いくつかの例では、活性組成物は、クラスレート成分と生物活性剤でありうる錯体形成化合物との間で形成される包接錯体を含むことが好ましい。
【0049】
生物細胞は、化学的に活性な水性小室と、脂質性膜とを含む、多区画構造である。細胞の構造及び活性は、細胞の生物分子成分、例えば脂質、構造タンパク質、酵素タンパク質、炭水化物、塩、ヌクレオチド、並びに他の代謝生物分子及びシグナル伝達生物分子の間の高度に選択的な化学結合状態に由来する。生物分子結合の強度及び特異性は、結合界面における相補的化学トポロジーを反映している。親水表面及び/又は疎水表面は、一般に生物分子の結合界面の化学トポロジーを左右する。水性の系では、疎水性相互作用及び親水性相互作用は、その濃度が50Mを超える水分子との競合的水和相互作用によって実質的に促進される。
【0050】
本明細書において使用される細胞水和とは、細胞系の水分子と生物分子成分との間の相互作用を意味する。水分子と生物分子表面との間のH結合の強度及び/又は動態を変化させることで、細胞水和を改変することができる。
【0051】
水構造を改変する水溶液添加物は、生物分子結合表面の水和を改変することで、細胞成分間の結合の強度、動態、及び/又は特異性を変化させることができる。例えば、水構造を増加させるコスモトロープ水性添加物は、分泌細胞間シグナル伝達因子と該因子の潜在的な標的細胞の形質膜に位置する同族受容体との間の結合の強度、動態、及び/又は特異性を変化させることができ、したがって細胞シグナル伝達網目構造の結果にバイアスをかけることができる。
【0052】
本発明による細胞水和活性成分として好適なクラスレートとしてはアミロース及びシクロデキストリンが挙げられる。アミロースはD-グルコース単位の多糖である。
図1に示すように、シクロデキストリンは、α(1-4)グルコース間結合によって連結されるD-グルコース単位の大環状オリゴ糖である。アミロース及びシクロデキストリンは加水分解デンプンから大量に容易に調製される。シクロデキストリン調製は、バチルス株によって産生される酵素シクロデキストリン-グリコシルトランスフェラーゼを最も一般的に使用する酵素的変換を含む。
【0053】
図2に示すように、シクロデキストリンは、環に含まれるグルコース単位の数によって異なりうる。シクロデキストリン種としてはα-シクロデキストリン(6単位)、β-シクロデキストリン(7単位)、γ-シクロデキストリン(8単位)、及びδ-シクロデキストリン(9単位)が挙げられる。本明細書において使用される親シクロデキストリンは、天然で化学的に誘導体化されていないα-、β-、及びγ-シクロデキストリンであり、18個(α-)、21個(β-)、及び24個(γ)の遊離未修飾ヒドロキシル基をそれぞれ有する。
【0054】
図3に模式的に示すように、シクロデキストリンは、円環状のトポロジー、すなわち円錐台に又は開放型バレルの半分に概ね似ている形状を有する。したがって、シクロデキストリンは、バレルの外面及び縁部を含む化学的外部表面と、内部空洞(バレルの内側)を取り囲む化学的内部表面とを含むものと記述されうる。
【0055】
シクロデキストリン外部表面は、水とH結合する高密度の親水性化学基を含む。特に、親α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリン構造のヒドロキシル基はすべてシクロデキストリンバレルの端部に集中している。より詳細には、シクロデキストリンヒドロキシル(-OH)化学基はバレルの縁部に沿って位置しており、それらの配向は立体的に制限されている。第一級OH基と呼ばれることがあるグルコース位C(6)のヒドロキシル基は、シクロデキストリンバレルの狭い方の開放端に対して反時計回りの方向を向く。第二級ヒドロキシル基と呼ばれることがあるグルコース位C(2)のヒドロキシル基は、シクロデキストリンバレルの広い方の開放端に対して時計回りの方向を向く。
【0056】
シクロデキストリンヒドロキシル基の高い密度及び制約された配向によって、シクロデキストリンバレルの両端において特に強力なH結合表面が作り出される。シクロデキストリンの物理化学分析及び溶媒和モデリングは、シクロデキストリンに隣接する水分子が固定の位置及び低い角度(回転)運動性を有することを示す。有用なことに、バレル直径及びヒドロキシル基の数が異なるシクロデキストリン種は、強く結合した水分子の数及び運動性も異なる。
【0057】
シクロデキストリン化合物のH結合活性は周囲の水性媒体中に伝播しうる。
図4及び
図5に示すように、所定の水分子の集団に標準的な温度及び圧力で導入されたシクロデキストリン分子の動的モデリングによって、全体積にわたるナノ秒での水の再組織化が引き起こされる。
図4は、混合シミュレーションを開始して1ピコ秒(ps)後の集団分布を示し、
図5は、水分子がより開放的な構造を取った、1000ps(1ナノ秒)時点の同じ集団の再分布を示す。
【0058】
いくつかの例では、シクロデキストリンは、水の結合構造を増加させるコスモトロープ活性を通じて細胞水和活性成分として機能することができ、ここで、水分子間のH結合の増加によって、生物分子表面の水和が改変され、それにより細胞成分間の結合の強度、動態、及び/又は特異性が変化する。いくつかの例では、シクロデキストリンは、水の結合構造を増加させるコスモトロープ活性を通じて細胞水和活性成分として機能することができ、ここで、水分子間のH結合の強化によって、比密度が低下した(すなわち比体積が上昇した)開放的な水構造が生じ、また、生物活性分子の拡散率が増加する。これらの例としては可溶性生物活性分子、例えば酵素、酵素基質、栄養素、代謝産物、サイトカイン、神経伝達物質、ホルモン、細胞外シグナル、細胞内メッセンジャー、又は薬理学的作用剤を挙げることができる。
【0059】
水中での拡散率を増加させる細胞水和活性成分は、生物活性成分の濃度の変化率によって制限される多くの生物学的プロセスのうちの1つを制御することができる。例えば、シナプス間隙からの神経伝達物質のクリアランスは一般に拡散律速的であり、これには哺乳動物脳内の興奮性シナプスからのグルタミン酸の受動的分散、及び拡散律速酵素アセチルコリンエステラーゼによる脊椎動物の神経筋シナプスにおけるアセチルコリンの活性異化が含まれる。同様に、筋細胞等の電気興奮性細胞の活性は、細胞内セカンドメッセンジャーシグナルカルシウムの濃度の拡散律速的変化によって一般に調整される。
【0060】
シクロデキストリンの細胞水和活性は、錯体形成化合物と包接錯体を形成することで改変すること、すなわち増加又は減少させることができる。シクロデキストリンの内部表面はヒドロキシル基を欠いており、周囲の水性環境よりも親水性が低く、そのため、低い親水性及びH結合ポテンシャルを有する共溶質分子に優先的に結合する。
【0061】
間質液及び細胞内液の水素結合構造を増加させる炭水化物クラスレート組成物は、動物による摂取時に、細胞膜表面における水和構造を含む細胞水和、及び健康な細胞機能に役立つ生物分子の溶媒和を改善することができる。細胞水和の改善によって、例えば溶質、栄養素、老廃物、サイトカイン、代謝産物、並びに細胞の機能、分化、修復、増殖、及び生存を支援する他の分子作用剤の移入、搬出、及び/又は拡散性を増加させることで、また、筋肉及び神経等の脆弱組織中の細胞膜を安定化することで、健康な細胞機能を支援することができる。
【0062】
いくつかの例では、動物によって摂取される炭水化物包接錯体は、水のH結合構造を増加させて、それにより細胞成分の細胞水和及び/又は拡散性を改善することができる。いくつかの例では、動物によって摂取される炭水化物包接錯体は、分離することで、水の水素結合構造を増加させて、それにより細胞成分の細胞水和及び/又は拡散性を改善する、遊離の(すなわち錯体形成しない)シクロデキストリンクラスレート成分を放出することができる。いくつかの例では、炭水化物包接錯体は、分離なしに水構造を増加させ、細胞水和を改善することができる。いくつかの例では、炭水化物包接錯体は、水構造及び細胞水和を増加させるためのクラスレート成分、並びに、水構造を更に増加させること、及び/又は栄養若しくは風味等の他の有益な特性を与えることができる錯体形成化合物に分離することができる。
【0063】
本発明の炭水化物クラスレート組成物を様々な形態で与えること、例えば固体粉末、錠剤、カプセル、カプレット、顆粒、ペレット、ウェーハ、粉末、インスタント飲料粉末、発泡粉末、又は発泡錠剤に成形することができる。いくつかの炭水化物クラスレート組成物は、水性飲料若しくは他の食料品として形成するか、又はそれに組み込んでもよい。これらの炭水化物クラスレート組成物は、保管中に適度に安定なままである包接錯体であることができ、したがって、クラスレート成分は、錯体形成化合物から分離せず、また、錯体のコスモトロピック活性を減少させて、それにより細胞水和を改善するその能力を減少させる、別の化合物とは更に強力な錯体を形成しない。
【0064】
本開示はまた、ヒト等の動物において細胞水和を改善するための方法を提供する。例えば、いくつかの方法は以下の段階を含みうる。(a)炭水化物クラスレート成分及び水によって、又は、炭水化物クラスレート成分と、生理的条件下で炭水化物クラスレート成分から分離可能な錯体形成化合物とにより形成される包接錯体を溶解させることで、飲料を調製する段階。(b)動物に飲料を経口摂取させる段階。このとき、炭水化物クラスレート成分は、水溶液中であれ、包接錯体中にあって錯体形成化合物から分離する場合であれ、細胞生物分子表面において水素結合水構造の強度、程度、及び動態を改変する。
【0065】
I. 炭水化物クラスレート組成物
炭水化物クラスレート成分は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、メチル化β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン、水溶性β-シクロデキストリンポリマー、部分アセチル化α-、β-、及びγ-シクロデキストリン、エチル化α-、β-、及びβ-シクロデキストリン、カルボキシ-アルキル化β-シクロデキストリン、α-、β-、及びγ-シクロデキストリンの第四級アンモニウム塩、アミロース(例えばアセチル化アミロース)、並びにそれらの混合物を含むがそれに限定されない任意の好適な炭水化物を含みうる。
【0066】
好ましい実施形態では、炭水化物クラスレートは、単独で又は他の溶質との組み合わせで水構造を増加させるコスモトロープ活性に基づいて選択されうる。好ましいシクロデキストリンコスモトロープとしてはα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリン、カルボキシメチル化シクロデキストリン、及び第四級アンモニウムシクロデキストリンを挙げることができる。
【0067】
シクロデキストリン誘導体としてはアルキル化、ヒドロキシアルキル化、アルコキシアルキル化、アセチル化、第四級アンモニウム塩、カルボキシアルキル化、マルトシル化、及びグルコシル化誘導体を挙げることができる。シクロデキストリン誘導体のアルキル基は直鎖状又は分岐状でありうるし、1~3個の炭素の主鎖長を有しうるし、合計1~6個、好ましくは1~3個の炭素原子を有しうる。シクロデキストリン誘導体のいくつかの非限定的な例としては、1つ若しくは複数のシクロデキストリンと共に、又はそれとの組み合わせで、メチル化β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン、水溶性β-シクロデキストリンポリマー、部分アセチル化α-、β、及び/又はγ-シクロデキストリン、エチル化α-、β、及び/又はγ-シクロデキストリン、カルボキシアルキル化β-シクロデキストリン、α-、β、及び/又はγ-シクロデキストリンの第四級アンモニウム塩、並びにこれらの誘導体の任意の組み合わせの混合物を挙げることができる。シクロデキストリンの例示的な混合物としては、それぞれ約1:1:1~2:2:1の範囲の質量比のα-、β、及び/又はγ-シクロデキストリンの組み合わせを挙げることができる。シクロデキストリンは、α-、β、及び/又はγ-シクロデキストリン並びにそれらの混合物の水和形及び/又は非晶形を含むがそれに限定されない水和結晶形及び/又は非晶形でありうる。
【0068】
炭水化物クラスレート組成物が固体形態である場合、シクロデキストリン成分は約10~90% w/w、又は約15~70% w/w、又は約15~60% w/wの濃度範囲で存在しうる。好ましくは、シクロデキストリン成分は約10~50% w/w又は約15~40% w/wの濃度範囲で存在しうる。より好ましくは、シクロデキストリン成分は約20~25% w/wの濃度範囲で存在しうる。
【0069】
炭水化物クラスレート組成物が水性飲料の形態である場合、シクロデキストリン成分は約0.01~75% w/w、又は約0.05~50% w/w、又は約0.1~25% w/wの濃度範囲で存在しうる。好ましくは、シクロデキストリン成分は約0.1~10% w/wの濃度範囲で存在しうる。より好ましくは、シクロデキストリン成分は0.1~5% w/wの濃度範囲で存在しうる。
【0070】
炭水化物クラスレート組成物は、種々の錯体形成化合物、例えばアミノ酸、ビタミン、香料、オドラント、着色料等と包接錯体を形成可能なクラスレートを好ましく含みうる。錯体形成化合物に結合することで包接体を形成することが可能な炭水化物クラスレート成分の非排他的な例としてはα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリン、カルボキシメチル化シクロデキストリン、第四級アンモニウムシクロデキストリン、アミロース、アミロース誘導体、又はこれらの任意の所望の混合物を挙げることができる。
【0071】
シクロデキストリンクラスレート成分は、選択される錯体形成化合物との結合に関するその所望の特性に基づいて更に選択されうる。許容されるシクロデキストリンの非限定的な例としては、α-、β-、及びγ-シクロデキストリンの市販の形態及び政府規制当局が承認した形態を挙げることができる。グルコース単位の数は、空洞の内部寸法及びその体積を確定するものであり、ゲスト分子と包接錯体を形成する上での選択性を確定することがある。選択された錯体形成化合物は、ホストシクロデキストリン又は他のホスト炭水化物クラスレートに結合する際に、錯体形成ホストの物理化学特性を改変することでそのコスモトロープ活性を増加させることができる。
【0072】
クラスレート成分がアミロース成分の形態である場合、アミロース単位はDP = 10~900、より好ましくはDP = 20~200、最も好ましくはDP = 30~80の範囲の重合度(DP)として表されるグルコース単位を含みうる。アミロース誘導体としてはアセチル化アミロースを挙げることができるがそれに限定されない。好ましくは、アミロース成分は、疎水性分子に結合するための中心空洞を画定するらせん配置内にα1,4-結合D-グルコピラノースを含む構造を有しうる。例えば、V-アミロースのA-及びB-デンプンらせん構造は、中心空洞を画定する平行左巻き二重らせん構造を含みうる。アミロース包接錯体のらせん構造は、ホスト-ゲスト相互作用、隣接するアミロース中のグルコース間の分子間H結合、及びらせん構造の隣接する回転により形成される分子内H結合によって作り出される、疎水性の力により安定化されうる。例えば、その開示全体があらゆる目的で参照によって本明細書に組み入れられるHinrichs, W., et al., "An Amylose Antiparallel Double Helix at Atomic Resolution," Science, (1987), 238(4824): 205-208を参照。アミロースクラスレート成分を使用することで、低分子量を有する錯体形成化合物、例えば香料、着色料、ビタミン、アミノ酸、及び/又はアミンの非限定的な例と包接錯体を形成することができる。
【0073】
アミロースクラスレート成分を含む組成物が固体形態である場合、好ましくは、アミロース成分は約10~90% w/w、又は約15~70% w/w、又は約15~60% w/wの濃度範囲で存在しうる。より好ましくは、アミロース成分は約10~50% w/w又は約15~40% w/wの濃度範囲で存在しうる。最も好ましくは、アミロース成分は約20~25% w/wの濃度範囲で存在しうる。アミロースクラスレート成分を含む組成物が水性飲料の形態である場合、好ましくは、アミロース成分は約0.1~75% w/w、又は約1~50% w/w、又は約1~25% w/wの濃度範囲で存在しうる。
【0074】
II. 錯体形成化合物
いくつかの例では、本明細書に開示のクラスレート組成物は、錯体形成化合物(作用剤とも呼ばれる)を含んでもよく、錯体形成化合物は1つ又は複数のアミノ酸、ビタミン、香料、オドラント、及び/又は他の栄養成分、並びにこれらの作用剤の組み合わせ又は混合物を含みうる。炭水化物クラスレート組成物は、飲料製品を形成する上での使用のための1つ又は複数の炭酸形成成分を更に含みうる。
【0075】
錯体形成化合物は、コスモトロピック活性を増加させて、それにより細胞水和に影響を与えるように、クラスレート成分と強く錯体形成することができる。或いは、これらの作用剤は、遊離クラスレート成分が水構造を増加させることを可能にするためにクラスレート成分から分離する能力を示すように、クラスレート成分と弱く錯体形成することもできる。
【0076】
本明細書において使用される錯体形成化合物は、どれだけ強く又は弱くそれがクラスレート成分と錯体形成するかにかかわらず、また、クラスレート成分と全く錯体形成しないとしても、以下に記載の飲料組成物中で有用性を示す、任意の化合物であるように意図されている。先に記したように、2つの種類の錯体形成化合物が存在し、第1の種類は単に錯体形成化合物と呼ばれ、第2の種類は「外圏」錯体形成剤である。
【0077】
本開示の炭水化物クラスレート組成物と包接錯体を形成するために好適なアミノ酸の非限定的な例としてはアスパラギン酸、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、プロリン、スレオニン、テアニン、システイン、シスチン、アラニン、バリン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、セリン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、メチオニン、カルニチン、アミノ酪酸(α-、β-、及びγ-異性体)、グルタミン、ヒドロキシプロリン、タウリン、ノルバリン、サルコシン、それらの塩、並びにそれらの混合物を挙げることができる。これらのアミノ酸のN-アルキルC1~C3及びN-アシル化C1~C3誘導体、並びに該アミノ酸又はその誘導体のうちのいずれかの混合物も含まれる。水構造及び細胞水和を増加させるためにシクロデキストリンと共に含まれうる好ましい錯体形成アミノ酸としてはL-アルギニン、L-リジン、N-メチル-リジン、及びL-カルニチンが挙げられる。
【0078】
ビタミンの非限定的な例としてはニコチンアミド(ビタミンB3)、ナイアシンアミド、ナイアシン、塩酸ピリドキサール(ビタミンB6)、アスコルビン酸、食用アスコルビルエステル、リボフラビン、ピリドキシン、チアミン、ビタミンB9、葉酸(folic acid)、葉酸(folate)、プテロイル-L-グルタミン酸(glutamic acid)、プテロイル-L-グルタミン酸(glutamate)、それらの塩、及びそれらの混合物を挙げることができる。水構造及び細胞水和を増加させるためにシクロデキストリンと共に含まれる好ましいビタミンとしてはニコチンアミド及びナイアシンアミドを挙げることができる。
【0079】
香料の非限定的な例としてはリンゴ、アンズ、バナナ、ブドウ、カシス、ラズベリー、モモ、セイヨウナシ、パイナップル、セイヨウスモモ、オレンジ、及びバニラの香料を挙げることができる。香料関連化合物の例としては酢酸ブチル、イソ吉草酸ブチル、酪酸アリル、吉草酸アミル、酢酸エチル、吉草酸エチル、酢酸アミル、マルトール、酢酸イソアミル、エチルマルトール、イソマルトール、ジアセチル、プロピオン酸エチル、アントラニル酸メチル、酪酸メチル、酪酸ペンチル、及びペンタン酸ペンチルが挙げられる。香料は、選択されるシクロデキストリン成分に約10~800M-1、好ましくは30~150M-1、より好ましくは40~100M-1の範囲の結合定数で弱く結合するように選択されうる。
【0080】
他の味覚改善成分の非限定的な例としては、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イノシトール、イソマルト、プロピレングリコール、グリセロール(グリセリン)、スレイトール、ガラクチトール等のポリオール添加物、パラチノース、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元マルトースシロップ、及び還元グルコースシロップを挙げることができる。
【0081】
着色料の非限定的な例としては、水溶性が比較的高く、親油性が比較的低いことが知られている着色料を挙げることができる。当該の特性を有する着色料の例としては、ビート根に由来しうるベタレインがある。ベタレインの例としては、ブルガキサンチン、ミラキサンチン、ポルツラキサンチン(portulaxanthin)、及びインジカキサンチンを含むベタシアニン及びベタキサンチン;オーランチニジン、シアニジン、デルフィニジン、エウロピニジン、ルテオリニジン、ペラルゴニジン、マルビジン、ペオニジン、ペツニジン、及びロシニジン等のアントシアニジン、並びにこれらのアントシアニジンのすべての対応するアントシアニン(又はグルコシド);並びにクルクミン、デメトキシクルクミン、及びビスデメトキシクルクミン等のフェノール性クルクミノイドを含むウコン型着色料が挙げられる。
【0082】
先に記載の例以外に、他の錯体形成化合物の非限定的な例としてクルクミン、ポリフェノール、ジヒドロクルクミン、スペルミジン、L-リジン、レスベラトロール(reservatrol)、コエンザイムQ10、δ-トコフェロール、デルフィニジン(delphindin)、カフェイン、及びグアルナ(guarna)を挙げることができる。
【0083】
外圏型の錯体形成化合物の非限定的な例の別の群は、電解質、具体的にはマグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、リン酸塩、及び炭酸水素塩である。
【0084】
アミノ酸、ビタミン、香料、及び関連化合物のすべての上記の例は適切な塩又は水和物の形態でありうる。
【0085】
錯体形成化合物は、選択されるクラスレート成分と包接錯体を形成するように選択されうる。錯体形成化合物は、クラスレート分子の空洞内のゲスト分子としてクラスレート成分に結合してもよく、且つ/又は、選択される弱く錯体形成する化合物がクラスレートの縁部若しくはその周辺の位置においてクラスレート分子に結合した、いわゆる外圏錯体を形成してもよい。例えば、選択される弱く錯体形成する化合物は、シクロデキストリン円環の縁部の第一級及び/若しくは第二級ヒドロキシル基又はその周辺においてシクロデキストリン分子に結合しうる。選択されるシクロデキストリンと外圏錯体を形成するいくつかの錯体形成化合物は、水中にて2個の隣接するシクロデキストリン分子間で形成される分子間水素結合を遮蔽することで、溶解した水和シクロデキストリン分子の自己凝集を減少させるか又は防止することができる。
【0086】
炭水化物クラスレート組成物が固体形態である場合、錯体形成化合物は約1~50% w/wの濃度範囲で存在しうる。好ましくは、錯体形成化合物は約1~40% w/w又は約1~25% w/wの濃度範囲で存在しうる。より好ましくは、錯体形成化合物は約5~15% w/wの濃度範囲で存在しうる。
【0087】
炭水化物クラスレート組成物が水性飲料の形態である場合、錯体形成化合物は約0.1~25% w/w又は約1~20% w/wの濃度範囲で存在しうる。好ましくは、錯体形成化合物は約1~15% w/w、又は約1~10% w/w、又は約3~8% w/wの濃度範囲で存在しうる。より好ましくは、錯体形成化合物は約5~8% w/wの濃度範囲で存在しうる。
【0088】
III. 包接錯体
先に記したように、包接錯体は、1つ又は複数の錯体形成化合物と錯体形成したクラスレートホスト分子を含みうる。固体粉末又は錠剤等の固体製品の形態では、包接錯体は、本質的に同じ成分を含むが包接錯体の予備的形成を伴わない固体組成物に比べて独特ないくつかの特性を示しうる。包接錯体は、本質的には、クラスレート分子と弱く錯体形成する化合物分子との間に形成される非共有結合性水素結合を有する化学的実体である。包接錯体は、固体形態で、水構造を増加させるためのクラスレート成分と、包接錯体が水性環境に導入される際に、例えば水性飲料に溶解する際に、又は摂取の際に、水構造を更に増加させるか、又は栄養若しくは風味等の他の有益な特性を示すことができる、錯体形成化合物とに分離する能力を有する。
【0089】
固体製品の形態である場合、クラスレート成分及び1つ又は複数の種類の錯体形成化合物は、実質的に先に記載の包接錯体の形態でありうる。好ましくは、包接錯体の形態で、約25%超のクラスレート成分が1つ又は複数の種類の錯体形成化合物と錯体形成している。35%超、45%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超のクラスレート成分が錯体形成していることが、昇順に沿って更に好ましい。
【0090】
IV. 炭酸形成成分
いくつかのクラスレート組成物は、水性環境に溶解する際に炭酸化又は発泡を生じさせる炭酸形成成分を含みうる。有利なことに、炭酸形成成分は、クラスレート成分の自己凝集を阻害し、それにより、水を構築し細胞水和を増加させるためのクラスレート表面積を増加させることができる。炭酸形成成分の非限定的な例としては炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸水素カリウムを挙げることができる。好ましい炭酸形成成分としては炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムを挙げることができる。
【0091】
炭水化物クラスレート組成物が固体形態である場合、炭酸形成成分は約1~60% w/w又は約5~60% w/wの濃度範囲で存在しうる。好ましくは、炭酸形成成分は約5~45% w/w又は10~45% w/wの濃度範囲で存在しうる。より好ましくは、炭酸形成成分は約10~15% w/wの濃度範囲で存在しうる。
【0092】
炭水化物クラスレート組成物が水性飲料の形態である場合、炭酸形成成分は約1~30% w/w又は約1~25% w/wの濃度範囲で存在しうる。好ましくは、炭酸形成成分は約2~15% w/w又は2~10% w/wの濃度範囲で存在しうる。より好ましくは、炭酸形成成分は約2~5% w/wの濃度範囲で存在しうる。
【0093】
V. 他の成分
いくつかの組成物は、組成物の味覚及び/又は栄養価に影響する更に他の成分を含みうる。これらの更なる成分としては以下のうち1つ又は複数を挙げることができるがそれに限定されない: 風味添加剤、栄養成分、及び/又は配合物中でクラスレート凝集防止添加剤として作用する様々なヒドロキシル酸。これらの他の成分の非限定的な例としてはクエン酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、クエン酸カリウム、硫酸マグネシウム、ミョウバン、塩化マグネシウム、マルトデキストリン、リン酸の一塩基性、二塩基性、三塩基性ナトリウム塩又はカリウム塩(例えば無機リン酸塩)、塩酸塩(例えば無機塩化物)、硫酸水素ナトリウムを挙げることができる。シクロデキストリン凝集を防止するヒドロキシル酸の非限定的な例としてはイソクエン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、トレオン酸、それらの塩、及びそれらの混合物を挙げることができる。これらのヒドロキシル酸はいくつかの栄養上の利点も示しうる。使用可能な味覚添加剤等の更なる任意的な成分の他の非限定的な例としては、塩化コリン、アルギン酸ナトリウム塩(アルギン酸ナトリウム)、グルコヘプトン酸ナトリウム塩、グルコン酸ナトリウム塩(グルコン酸ナトリウム)、グルコン酸カリウム塩(グルコン酸カリウム)、グアニジンHCl、グルコサミンHCl、アミロライドHCl、グルタミン酸一ナトリウム(MSG)、アデノシン一リン酸塩、グルコン酸マグネシウム、酒石酸カリウム(一水和物)、及び酒石酸ナトリウム(二水和物)等の好適な有機塩が挙げられる。
【0094】
好ましい他の成分としては例えばクエン酸、アスコルビン酸、及びマルトデキストリンを挙げることができる。
【0095】
炭水化物クラスレート組成物が固体形態である場合、1つ又は複数の他の成分はそれぞれ約1~30% w/w又は約1~25% w/wの濃度範囲で存在しうる。好ましくは、1つ又は複数の他の成分はそれぞれ約1~20% w/w又は1~15% w/wの濃度範囲で存在しうる。より好ましくは、1つ又は複数の他の成分はそれぞれ約2~5% w/wの濃度範囲で存在しうる。
【0096】
炭水化物クラスレート組成物が水性飲料の形態である場合、1つ又は複数の他の成分は約1~20% w/w又は約1~15% w/wの濃度範囲で存在しうる。好ましくは、1つ又は複数の他の成分は約1~10% w/w又は1~5% w/wの濃度範囲で存在しうる。より好ましくは、1つ又は複数の他の成分は約1~3% w/wの濃度範囲で存在しうる。
【0097】
VI. 成分比
本明細書に開示の炭水化物クラスレート組成物中で使用可能な様々な成分の種類及び量に関する先の記載に加えて、これらの成分の相対量を同様に記載することができることに更に留意されたい。好ましくは、クラスレート成分の錯体形成化合物に対する質量比は約5:1~1:10の範囲でありうるし、より好ましくは約2:1~1:5の範囲でありうるし、更に好ましくは約2:1~1:2の範囲でありうるし、更に好ましくは約1:1~1:2の範囲でありうる。
【0098】
風味成分、炭酸形成成分、及び先に記載の他の成分等の他のありうる成分に関して、クラスレート成分の他の各成分に対する質量比は別々に約25:1~1:25、又は約10:1~1:10、又は約5:1~1:5、又は場合によっては約2:1~1:2、及び1:1の範囲でありうる。
【0099】
本発明は、飲料組成物、系、及び使用方法、並びに細胞水和を増加させ且つ寿命を増加させるための飲物組成物の作用機構を提供する。
【0100】
1つの実施形態では、本発明は、シクロデキストリンを含む0.01~5% w/wの濃度の炭水化物クラスレート成分;錯体形成化合物;静水性液体及び炭酸水性液体からなる群から選択される水性液体成分を含み、クラスレート成分の少なくとも一部及び錯体形成化合物の少なくとも一部によって包接錯体が形成される、飲料組成物を提供する。
【0101】
更に、クラスレート成分の錯体形成化合物に対する比は、好ましくは約5:1~約15:1の範囲である。
【0102】
別の実施形態では、本発明の飲料組成物はシクロデキストリン又はシクロデキストリン混合物、及び錯体形成化合物を含む。1つの実施形態は、水中0.05% α-シクロデキストリン、水中0.05% α-シクロデキストリン-L-アルギニン包接錯体、水中0.05% α-シクロデキストリン-ニコチンアミド包接錯体、水中0.05% α-シクロデキストリン-ニコチン酸(ナイアシン)錯体;又は上記物質のうちの1つ若しくは複数の混合物を含みうる。
【0103】
別の実施形態では、本発明は、γ-シクロデキストリンベースの飲料組成物及び錯体形成化合物を含む。
【0104】
本発明の作用機構を説明するためには、多細胞生物に存在する特定の組織を最初に説明することで、該作用機構がどのようにして機能するかに関する見通しを示さなければならない。脂質二重層又はリン脂質二重層は、脂質分子の2つの層でできた薄い極性膜である。脂質二重層は、イオン、タンパク質、及び他の分子を、それらが求められている場所に保持して、それらが存在すべきではない区域内に拡散することを防止する、障壁である。通常、生物学的二重層は、親水性リン酸頭部と、2個の脂肪酸鎖からなる疎水性尾部とを有する、両親媒性リン脂質で構成される。二重層は、リン脂質以外に、二重層を強化してその透過性を減少させることに役立つコレステロールを含む。膜内在性タンパク質、及びイオンチャネル、アクアポリン等のような他の機能性タンパク質も含む(
図19に示すように)。
【0105】
アクアポリンが唯一の公知の水チャネルであるが、水は、腸内のナトリウムにより確立される浸透勾配に応じた受動拡散によっても拡散する。水吸収の大部分は経細胞プロセスであり、すなわち、水は、水チャネル(アクアポリン)による受動拡散によって膜二重層を通過するが、一部はタイトジャンクション(傍細胞経路と呼ばれる。
図20に示す)を通じても拡散する。
【0106】
本発明によれば、シクロデキストリンベース飲料は、非共有結合性包接錯体形成により細胞膜脂質充填及び膜流動性を一時的及び可逆的に変化させる機構によって、細胞水和に影響する。作用機構のこの特徴は、膜脂質を可逆的及び一時的に分解するとも呼ばれるが、分解は、破壊を意味するというその通常の意味では使用されない。むしろ、脂質は変化又は移動するが、プロセスは可逆的であり、したがって脂質はかつて存在した場所に戻ることがあり、再び一緒に充填されることもある。本発明のシクロデキストリンベース飲料はα-シクロデキストリン若しくはその誘導体、又はβ-シクロデキストリン若しくはその誘導体を含みうる。
【0107】
α-シクロデキストリン及びその誘導体はリン脂質構成成分、及びこれら構成成分の近傍の膜アンカータンパク質に主に影響する。他方、β-シクロデキストリン及びその誘導体は膜中のコレステロール及びコレステロール-リン脂質複合体を主に標的とする。
【0108】
更に、α-シクロデキストリン及びその誘導体は、好ましくはスフィンゴ糖脂質、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン等の薄い膜脂質成分と相互作用し、ここですべてのこれらのリン脂質は、膜結合機能性タンパク質の大部分が位置する脂質ラフト、例えばイオンチャネル又は水チャネル/アクアポリンの不可欠な構成成分である。
【0109】
シクロデキストリンとリン脂質との間の相互作用は、可逆的な非共有結合性の錯体形成であり、この分子事象の間に、膜アンカータンパク質の脂質環境が変化し、これらの輸送タンパク質の細胞生理学的機能(例えばイオン輸送)が変化することで、水輸送が向上する。
【0110】
脂質-シクロデキストリン相互作用は、完全に可逆的であり、脂質充填をシクロデキストリン濃度依存的に変化させる。水和を向上させるシクロデキストリンの濃度が低いことから、不可逆的な細胞損傷は引き起こされない。
【0111】
高水和形態は溶解α-シクロデキストリンであり、α-CD水溶液中で水構造(単量体及びクラスター)は変化する。炭酸水中では、より重要なことに、溶解α-CDは比較的少ないシクロデキストリン凝集物及び比較的多くの水和単量体を含む。水溶液中の凝集α-CDの数が少なくなるほど、錯体形成に利用可能なシクロデキストリン空洞の数が多くなる。
【0112】
同様に、β-シクロデキストリン及びその誘導体は膜結合タンパク質の周りの膜コレステロールリッチドメインに影響する。α-シクロデキストリン及びβ-シクロデキストリンはいずれも膜輸送プロセスの変化を引き起こし、細胞シグナル伝達を開始し、アクアポリンを横断する水輸送に影響する。
【0113】
細胞水和は様々な細胞機能において役割を果たし、細胞水和の向上は細胞オートファゴソーム形成又はオートファジーに影響がある(参考文献: S. Vom Dahl, et al. Biochem. J. 2001. 354. (1) 31-36及びSchliess, F. et al. Acta Physiologic 187. 1-2. 2006)。更に、細胞水和状態は、健康及び疾患におけるタンパク質異化の重要な決定因子である(Haussinger, D. Lancet 341. 8856. 1330-1332. 1993)。
【0114】
別の実施形態では、本発明は、多細胞生物がそれを摂取する際に多細胞生物中で細胞水和を引き起こす、飲料組成物を含む。多細胞生物は水を細胞内透過させることができ、多細胞生物による組成物の摂取は細胞内透過を向上させる。前記生物はアクアポリンを含み、細胞水和は組成物とアクアポリンとの相互作用によって引き起こされる。
【0115】
本発明はまた、水を細胞内透過させることができる多細胞生物において細胞水和の増加を促進する方法であって、ある量の炭水化物クラスレート成分を含む水溶液を多細胞生物に摂取させる段階;及び細胞内透過を向上させる段階を含む、方法を提供する。多細胞生物はアクアポリンを含み、組成物とアクアポリンとの相互作用を引き起こす。シクロデキストリンの支援による水の細胞内透過の向上を、ヒトアクアポリンAQP-1水チャネルを発現した単一細胞アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞によって評価及び実証した。生物学的試験の結果を実施例7に示す。
【0116】
別の実施形態では、本発明は、水及び炭水化物クラスレート成分を含む多細胞生物において細胞水和の増加を促進する方法を提供するものであり、水溶液中で水の少なくとも一部の密度を減少させるように機能する。水溶液中で水の密度を低下させる本発明のこの態様の物理化学特性を実施例2に示す。
【0117】
更に、(M.F. Chaplin Biophysical Chemistry 83 (1999) 211-221)に記載のように、十二面体水クラスターが疎水性及びタンパク質表面において報告されており、そこでは水素結合が比較的強くエントロピーが比較的低い低密度の水が見られた。同様の空洞が、低密度で非晶質の氷(LDA)に見られ、分子シミュレーション中に水中で比較的容易に形成されることが示された。本明細書に記載のモデルの基礎は、水素結合を破壊することなく低密度形態と高密度形態との間で変換を行うことができる網目構造である。網目構造は六量体部分構造と五量体部分構造との混合物を含み、小さな溶質を封入可能な空洞を含む。
【0118】
本発明の上記実施形態は、この理論を適用するものであり、水の密度を減少させることでその構造を変化させる新規機構を生じさせる。
【0119】
本発明は、混合物が摂取される際に、多細胞生物において細胞水和を促進するために、細胞系の水和を増加させるための別の方法を提供する。多細胞生物は膜脂質、脂質充填及び膜タンパク質、タンパク質構造及びタンパク質機能、並びに栄養素及び水の膜透過を含む。本方法は、ある量の炭水化物クラスレート成分を含む水溶液を多細胞生物に摂取させる段階;並びに(i)膜脂質の一時的分解、(ii)脂質充填及び膜タンパク質の緩和、並びに(iii)タンパク質構造及びタンパク質機能の変化をまとめて行って多細胞生物の脂質二重層構造を変化させることで、栄養素及び水の膜透過を向上させる段階を更に含む。
【0120】
VII. 好ましい実施形態
本明細書に開示の炭水化物クラスレート組成物の好ましい実施形態を例示として示すが、本開示の範囲を限定するようには決して意図されていない。
【実施例1】
【0121】
水構造の分子動力学に対するシクロデキストリンの効果
シミュレート水溶媒和シクロデキストリン分子系を、HyperChem(登録商標)5.11ソフトウェア(フロリダ州GainesvilleのHyperCube社から)をLindner及びSaenger(Carbohydr. Res., 99:103, 1982参照)が報告したシクロヘプタ-アミロース十二水和物クラスレート(又はβ-シクロデキストリン)の単結晶解析から導出された入力パラメータと共に使用して、また、合計984個の水分子を含む水周期溶媒ボックス(3.1x3.1x3.1nm3)を使用して作り出した。分子変換及び原子タイプを、TinkerFFE 4.2(ミズーリ州セントルイス・ワシントン大学Jay William Ponderの分子設計用TINKERソフトウェアツール、バージョン5.0)を使用して、適切なフォーマットに調整した。分子力学及び分子動力学の計算を、Linux x86-64オペレーションシステム(Slamd 64 v12.2)を使用する省略型Newton-Raphson法の予備最適化後にTinker 5.0ソフトウェアによって行った。
【0122】
分子動力学シミュレーションを、MM3 Force Field分子力学ソフトウェアを使用して、一定圧力(298K)で120ピコ秒(psec)間、0.1フェムト秒(fsec)ステップで実行した。100,000ステップ(経過時間10psecと同等)毎に中間構造をダンプすることで記録を生成した。
【0123】
観察結果
各シミュレーションのゼロ時点で、標準的水溶媒ボックスは1個のβ-シクロデキストリンクラスレート分子及び均一に分布した984個の水分子の集団を含んでいた。
図4及び
図5は、1回の代表的シミュレーション中の特定の経過時間における溶媒ボックスの中心部分の表示を示す。水分子の位置及び配向が(曲がった)ロッドとして表される一方で、β-シクロデキストリンがファンデルワールス表面として表されるということが認識されよう。更に、
図4及び
図5が溶媒ボックスの体積を示すものであり、したがって三次元分子分布を二次元に圧縮するものであるということが認識されよう。
図4は、シミュレーションの経過時間1psecにおける溶媒ボックスの中心部分を示す。特に、経過時点1psecの時点で、β-シクロデキストリンに近接した水分子はシクロデキストリンへのH結合を通じて相対的に静的な(安定な)位置を得た。これらの水分子を第1の水和層と呼ぶことがある。しかし、溶媒ボックス中の大部分の水分子の分布は、未構築である出発分布(1psec前)と概して同様なままである。
【0124】
図5は、経過時間1000psec(すなわち1nsec)のシミュレーションを示す。1000psecの時点で、β-シクロデキストリンに近接した水分子は相対的に静的な(安定な)位置を占め続ける。しかし、1psec(
図4)に比べて、第1の水和層を超えた水分子はいっそう開放的なミクロ構造を得た。
【0125】
水構造の差は、
図4及び
図5に含まれる遠近法で陰影を付けた詳細の非存在下でいっそう容易に観察することができる。
図6は、
図4(左側、1psecと呼ぶ)及び
図5(右側、1000psecと呼ぶ)に示す水分子分布の代替図を示す。これらの代替図は以下の方法によって生成された。256のグレーレベル(8ビット)を有する
図4及び
図5の画像ファイルをPhotoshop 9.0(Adobe社)で開き、300dpiに調整し、グレーレベル207で閾値処理した。画像を円形選択ツールを使用して同一の外環径に切り抜き、外隅角部を黒色(グレーレベル0)で満たした後、更に切り抜いてシクロデキストリン分子をほとんど含まない内環部を黒色にした。比較される画像に外環及び内環の寸法を等しく適用する。得られた閾値処理済みの表示は、中心の(閉塞した)シクロデキストリン分子を取り囲む水分子が1000psec(例えば
図6の右側パネル)において更に開放的及び調和的な構造を有することを定性的に示す。
【0126】
図4~
図6に表される水の微細構造の変化を定量的に評価するために、図示される体積を通じて開放経路を測定することで分子密度を概算した。この方法は、規定される体積の分子物質中の平均自由行程を分子の密度と逆相関させるという平均自由行程分析と同様の方法である。特に、水分子間の開放経路を白色画素素子で示し、体積中の開放経路の数をPhotoshop 9.0のヒストグラムツールを使用して容易に定量化することで白色画素素子の数をカウントする。
図6のパネルに適用することで、経過時点1000psec時点での開放経路が経過時点1psec時点での開放経路に比べて2%増加するという測定値が計算された。比較すると、純水の凍結により密度が9%が減少する。経路長が分子密度と逆比例することから、この分析は、溶解シクロデキストリンが水分子の組織化を増加させることで水溶液の密度を減少させることを示している。
【0127】
要約すると、結果は、β-シクロデキストリンの外部表面ヒドロキシルと水分子との間で急速(psec)なH結合接着が生じた後、溶媒ボックス全体を通じて水分子の再配向がよりゆっくりと(ナノ秒)伝播することで、より開放的な水構造が生じることを示している。更に、測定結果は、シクロデキストリンが周囲の水体積中で水分子間のH結合を十分に増加させることで、水の密度を減少させることができることを示している。
【実施例2】
【0128】
物理化学特性(密度測定値)
本研究は、密度測定値をシクロデキストリン濃度依存的に更に示す。使用材料を以下のように規定した: α-シクロデキストリン(Wacker社-食品グレード、内部ID: B002/18); 3つの弱く錯体形成する添加物(α-シクロデキストリン錯体中、1:1mol/mol)はL-アルギニン(Sigma-Aldrich社カタログ番号A5006)、ニコチン酸(Sigma-Aldrich社カタログ番号72309)、ニコチンアミド(Sigma-Aldrichr社カタログ番号72340)、γ-シクロデキストリン(Wacker社-食品グレード、内部ID: B064/18)。
【0129】
使用した水試料はボトルウォーター及び水道水とした。水道水は以下の不純物及び特性を有する: 遊離活性塩素(0.18mg/l)、塩化物(24mg/l)、鉄(6μg/l)、マンガン(2μg/l)、硝酸塩(9mg/l)、亜硝酸塩(0.03mg/l未満)、アンモニウム(0.04mg/l未満)、水の硬度(122mg/l CaO)、導電率(442μS/cm)、及びpH 8。Cyclolab社においてMerck/Millipore社Synergy(登録商標)水精製システムによって溶存イオンを除去することで、精製水を生成した。水品質は予め処理した水から1型の水(25℃で18.2MΩ・cm、超純水)を生じさせた。
【0130】
1:1mol/mol化学量論錯体を実験のために調製した。ニコチン酸11.22g及びα-CD 98.63g(乾量基準で89.66g)を精製水700mlに溶解させることでニコチン酸/α-CD錯体を調製した。ニコチンアミド5.57g及びα-CD 49.3g(乾量基準で44.4g)を精製水350mlに溶解させることでニコチンアミド/α-CD錯体を調製し、L-アルギニン15.18g及びα-CD 94.26g(乾量基準で85.69g)を精製水700mlに溶解させることでL-アルギニン/α-CD錯体を調製した。更に、3つすべての錯体について、液体をドライアイス浴中で凍結させ、凍結乾燥させた。凍結乾燥物を粉砕し、篩にかけた。
【0131】
透明度、pH、導電率、密度、粘度、濁度、表面張力、及びオスモル濃度を、精製水によって調製された溶液中で確定した。錯体溶液について記された濃度は実際のα-シクロデキストリン含有量を示している。α-及びγ-シクロデキストリン混合物はこれら2つの構成成分の50-50質量%混合物であり、パーセントは総シクロデキストリン含有量を示す。Tables 1-3(表1~表3)は物理化学試験の結果の概要を示す。
【0132】
【0133】
【0134】
Table 2(表2)では、2番目~5番目の列はα-シクロデキストリンとL-アルギニン錯体及びACD/ニコチンアミドとの混合物に対応しており、6番目~9番目の列はγ-シクロデキストリン混合物に対応している。
【0135】
【0136】
Tables 1-3(表1~表3)は物理化学試験の結果を報告するものであり、特筆すべき効果は密度測定値において明らかになっている。低濃度(0.05%)での溶解シクロデキストリンの存在は精製水の密度を減少させる効果があり、この現象は低(0.05%)濃度でのL-アルギニン錯体及びニコチン酸錯体のいずれの場合においても生じる。しかし、より高い濃度(0.5及び1.0%溶液)では、液体の密度を明らかに増加させる固形分が多くなることから、この効果は現れない。
【0137】
水道水を使用して密度測定を繰り返したところ、おそらくは水道水中のイオンの存在による妨害が理由で、上記の現象が生じないということがわかった。しかし、どのイオン種(Mg2+、Ca2+、Na+)がこの妨害を引き起こすかを正確に確定することはできない。結果をTable 4(表4)に示す。
【0138】
【実施例3】
【0139】
IR分光測定により検出された水結合に対するシクロデキストリン添加物の効果
例えばSegtanら(Anal. Chem. 2001; 73, 3153-3161参照)及びR. Giangiacomo(Food Chemistry, 2006, 96.3. 371-379参照)が報告したように、水、水-糖相互作用、並びに水構造を増加及び減少させることに対する糖の効果の検出に関する物理的微細構造研究では、赤外(IR)分光測定、特に近赤外(NIR)分光測定が優先的に使用された。
【0140】
純水中の、及びシクロデキストリン化合物を含む同じ水の溶液中の水和結合エネルギーを、IR分光測定を使用して、近赤外及び中間赤外範囲でアッセイした。波長範囲全体を通じて線形シグナルを記録するために、水吸光度の減衰を短光路長キュベットによって最小化した。
【0141】
NIR範囲スペクトルをFOSS NIR Systems社6500分光計及びSample Transport Module(STM)上で1mmサイズのキュベットを使用して記録した。透過スペクトルを1100~2498nmから硫化鉛(PbS)検出器及びVision 2.51ソフトウェア(2001; FOSS NIR Systems社)を使用して収集した。
【0142】
Perkin-Elmer社Spectrum 400 FT-NIR/FT-IR分光計及びUATR (Universal Attenuated Total Reflectance; ZnSe-ダイヤモンド結晶、1×平坦な上部プレート)試料取り扱い装置を使用して2500~15385nmにわたるスペクトルを得た(4000~650cm-1として報告)。測定を24℃で硫酸トリグリシン(TGS)検出器及びSpectrum ES 6.3.2ソフトウェア(PerkinElmer社、2008)を使用して行った。
【0143】
本研究では3つの水試料を使用した。第1の水試料を逆浸透、炭素濾過、紫外光露出、0.2ミクロンアブソリュートへの膜濾過、及びオゾン処理によって精製した。第2及び第3の水試料は精製しなかった。キャピラリー電気泳動は、同様のイオン成分を、但し3つの水試料間の異なる濃度で明らかにした。
【0144】
以下のシクロデキストリンを上記水試料に0.1%~5% w/wの濃度範囲で加えた。
α-シクロデキストリン(αCD; ACDとも記す)、ロット番号CYL-2322
β-シクロデキストリン(βCD; BCDとも記す)、ロット番号CYL-2518/2
γ-シクロデキストリン(γCD; GCDとも記す)、ロット番号CYL-2323
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD、HPBCD)、DS* = 3.5、ロット番号CYL-2232
2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(HPCD、HPGCD)、DS* = 4.8、ロット番号CYL-2258
カルボキシメチル-β-シクロデキストリン(CMBCD)、ロット番号CYL-2576
第四級アンモニウム-β-シクロデキストリン(QABCD)
【0145】
いくつかの例では、様々な包接錯体をシクロデキストリンとアミノ酸であるL-アルギニン及びL-カルニチン並びにビタミンであるナイアシンアミド(ニコチンアミドとしても知られる)を含む錯体形成生物活性剤との間で形成した。すべての試薬は分析的純度を有していた。いくつかの例では、L-アルギニン及びニコチンアミドを遊離形態で、或いはシクロデキストリンと錯体形成された(分子封入された)形態で加えることで、シクロデキストリン及び生物活性剤の独立的及び共依存的な活性を評価した。遊離形態での、及びシクロデキストリン包接錯体形態としての、上記添加物の濃度は0.1%~5.0% w/wの範囲とした。
【0146】
観察結果
図7は、波長領域900~1200nmの二次微分NIRスペクトルを示す。結果は、水-結合相互作用がQABCDの添加によって有意に改変され、CMBCD及びHPBCDの添加によって更に有意に改変されることを示している。
【0147】
図8は、1200~1500nmについて示される二次微分NIRスペクトルを示す。結果は、水-結合相互作用が、QABCD及びHPBCDの添加によって有意に改変され、CMBCDの添加によって更に有意に改変されることを示している。
【0148】
図9は、1620~1710nmについて示される二次微分NIRスペクトルを示す。結果は、水-結合相互作用がCMBCD、QABCD、及びHPBCDの添加によって有意に改変されることを示している。
【0149】
図10は、2170~2370nmについて示される二次微分NIRスペクトルを示す。結果は、水-結合相互作用が、CMBCD及びHPBCDの添加によって有意に改変され、QABCDの添加によって更に有意に改変されることを示している。
【0150】
図7~
図10に示すように、シクロデキストリンの添加により水性媒体の分子結合相互作用が変化する。特に
図9に関して、波長範囲1620~1770nmの精密NIR微分スペクトルは、炭素水素結合に関連する変化にシクロデキストリン添加物のCH3-基、CH2-基、及びCH-基が関与することを示している。各シクロデキストリン処理水試料中で生じた有意なスペクトル変化は、水素結合の改変微細構造がバルク水中のクラスター系を制御したことを示している。例えば
図9及び
図10に示すように、この効果は荷電第四級アンモニウム-β-シクロデキストリン(QABCD)で処理された水試料中で最大であった。
【実施例4】
【0151】
植物胚発芽の促進
小麦種子(コムギ(Triticum aestivum))を、実施例2について記載のUSA I水、USA II水、及びBP I水を使用して発芽させた。未補充の(対照)水を使用する発芽率を、細胞水和活性成分としてのシクロデキストリン成分及び/又は生物活性剤によって様々に補充した同じ水による発芽率と比較した。各条件では、25℃で12時間明暗サイクルに保持されたペトリ皿において10個の種子を持続的に水と接触させた。播種後1日目~6日目に測光画像を記録した。発芽した種子のパーセントを計算し、時間と適用された添加物濃度との関数として比較した。
【0152】
種子発芽用の水試料を、添加物なしで単独で、或いはシクロデキストリンを含むものとして、或いはシクロデキストリンとL-アルギニン若しくはニコチンアミド(いずれもミズーリ州セントルイスSigma Chemical社から得た)又はL-カルニチン(スイスLonza社から)とのクラスレート包接錯体を含むものとして使用した。添加物を0.1及び5. %(w/w)で含めた。発芽開始日に添加物溶液を新たに調製した。
【0153】
親シクロデキストリンであるα-シクロデキストリン(ACD)、β-シクロデキストリン(BCD)、及びγ-シクロデキストリン(GCD)をWacker Chemie社(ドイツ・ミュンヘン)から得た。以下の誘導体化シクロデキストリンをCyclolab社(ハンガリー・ブダペスト)から得た: ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン(DS約3)(HPBCD)、カルボキシメチル化β-シクロデキストリン(DS約3.5)(CMBCD)、2-ヒドロキシ-3-N,N,N-トリメチルアミノ)プロピル-β-シクロデキストリンクロリド(DS約3.6)(QABCD)。
【0154】
観察結果
同一条件下での対照水及び添加物改質水中の発芽動態を、新芽を有する種子のパーセントとして定量化した。各定量化は各パラメータについて100個の種子からなっていた。結果を下記Table 5(表5)及び
図11~
図13に示す。
【0155】
A)シクロデキストリン/L-Arg包接錯体は種子発芽を増加させる。
【0156】
【0157】
Table 5(表5)は、それぞれUSA I水に溶解した0.5% w/w α-CD、0.5% w/w L-アルギニン(L-Arg)、及び0.5% w/w α-CD/L-アルギニン包接錯体の、小麦種子の発芽に対する効果の比較を示す。上記表の結果は、小麦種子の発芽率が、α-シクロデキストリンとL-アルギニンとの間の0.5%(w/w)包接錯体(αCD/L-Arg包接錯体)を含む水中で、添加物を欠く純水(対照)に比べてはるかに大きいことを示している。更に、Table 5(表5)の結果は、小麦種子の発芽率が、α-シクロデキストリンとL-アルギニンとの間の包接錯体(αCD/L-Arg包接錯体)を含む水中で、0.5%(w/w)α-シクロデキストリン(αCD)のみを添加物として含む水に比べて、また、0.5%(w/w)L-アルギニン(L-Arg)のみを添加物として含む水に比べて、はるかに大きいことを示している。したがって、結果は、α-シクロデキストリンとL-アルギニンとの錯体が、該錯体のいずれかの個々の成分が単一の添加物として使用される場合には示されない、種子発芽率に対する相乗効果を示すということを示している。Table 5(表5)の結果を
図11及び
図13にも示す。
【0158】
B)シクロデキストリン/ニコチンアミド包接錯体は種子発芽を増加させる。
【0159】
【0160】
Table 6(表6)は、それぞれUSA I水に溶解した0.5% w/w α-シクロデキストリン、0.5% w/wニコチンアミド、及び0.5% w/w α-シクロデキストリン/ニコチンアミド包接錯体(αCD/ニコチンアミド包接錯体)の、小麦種子の発芽に対する効果の比較を示す。上記表の結果は、小麦種子の発芽率が、α-シクロデキストリンとニコチンアミドとの間の包接錯体を含む水中で、添加物を欠く純水(対照)に比べてはるかに大きいことを示している。更に、Table 6(表6)の結果は、小麦種子の発芽率が、α-シクロデキストリンとニコチンアミドとの間の包接錯体(αCD/ニコチンアミド包接錯体)を含む水中で、α-シクロデキストリン(αCD)のみを添加物として含む水に比べて、また、ニコチンアミドのみを添加物として含む水に比べて、はるかに大きいことを示している。したがって、結果は、α-シクロデキストリン及びニコチンアミドが、包接錯体として使用される際に、種子発芽率を有意に増加させる相乗的生物活性を示すことを示している。この生物活性は、錯体のいずれかの個々の成分が単一の添加物として使用される場合には示されなかった。Table 6(表6)の結果を
図12及び
図13にも示す。
【0161】
C) Tables 5 and 6(表5及び表6)並びに
図11~
図13に報告された結果と定性的に同様の結果が、USA II水及びBP I水を発芽に使用することで得られた。したがって、特に、L-アルギニンを含むか又はニコチンアミドを含むシクロデキストリン包接錯体は、USA II水又はBP I水に溶解する際に、USA I水を使用して上記に示したように、それぞれ小麦種子の発芽率を有意に増加させた。
【0162】
D)新芽の長さ(発芽中の新芽成長率)は統計的に有意な信頼区間(P<0.05)内で条件間で異ならなかった。この結果は、シクロデキストリン、特にシクロデキストリン包接錯体を、新芽成長率に必ずしも影響を与えずに種子発芽率を高めるための細胞水和活性成分として使用することができるということを示している。
【実施例5】
【0163】
水和が改変された水中でのC.エレガンスの寿命延長
C.エレガンス線虫を、更なる添加物成分を欠くUSA I水(実施例2に記載)(対照)で調製されたか、或いは細胞水和活性成分としての親α-、β-、若しくはγ-シクロデキストリン及び/又は生物活性剤が補充された同じ水で調製された、通常の栄養素液体培地を収容する、ペトリ皿中で増殖させた。50±3匹の虫を各皿に移した。各条件を三つ組で繰り返した。実験を実施例2に記載のUSA II水及びBP I水について繰り返した。
【0164】
水添加物
A. 親α-、β-、及びγ-シクロデキストリンの添加
B. L-アルギニン及びニコチンアミドの添加
C. シクロデキストリンとL-アルギニン及びニコチンアミドとの包接錯体の添加
【0165】
観察結果
記録された結果を下記Tables 7-9(表7~表9)に示し、
図14~
図18に更に示す。
【0166】
【0167】
Table 7(表7)では、親α-、β-、及びγ-シクロデキストリンを細胞水和活性成分として様々に含む培地中で中齢(10日)、高齢(15日)、及び老齢(18日)まで生存した動物のパーセントが報告される。本実施例では、USA I水に溶解した栄養培地に親シクロデキストリンを濃度0.1% w/wで加えた。
【0168】
以前のすべての研究と一致して、本実施例における通常のC.エレガンス動物は通常の培地中で2週間生存した。親シクロデキストリンはそれぞれ寿命高齢(10~15日目)でC.エレガンスの生存率(生存パーセント)を有意に増加させた。更に、α-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンは老齢まで、すなわち15日目の後に生存した動物の数を有意に増加させた。結果は
図14にも図示する。図では、それぞれの親シクロデキストリン添加物を含む培地中で15日及び18日まで生存した動物の累積パーセントが比較される。結果は、親シクロデキストリン、特にα-及びβ-シクロデキストリンを細胞水和活性成分として使用することで、生動物において生物学的機能を改善することができるということを示している。高齢化を支える生物学的機構としては、老化中の広範な細胞活性の改善、又は老化を遅らせる細胞活性経路の選択的活性化を挙げることができる。水構造、細胞成分の水和、並びに細胞間シグナル及び細胞内シグナルを含む生物活性細胞成分の拡散性がクラスレートにより増加することは、すべて生物の生存に対するシクロデキストリンの全体的効果に寄与しうる。
【0169】
【0170】
Table 8(表8)では、細胞水和活性成分としての誘導体化α-、β-、及びγ-シクロデキストリンを様々に含む培地中で中齢(10日)、高齢(15日)、及び老齢(18日)まで生存した動物のパーセントが報告される。本実施例では、USA I水に溶解した栄養培地に誘導体化シクロデキストリンを0.1% w/wで加えた。
【0171】
Table 8(表8)に列挙したように、β-シクロデキストリンのHP誘導体、カルボキシメチル誘導体、及び第四級アンモニウム誘導体は、C.エレガンスの10日までの初期生存率にわずかな効果しか示さなかった。対照的に、生存率の有意な増加が高齢(15日)で観察されたが、老齢(18日)では観察されなかった。結果は
図15にも図示する。図では、それぞれの誘導体化シクロデキストリン添加物を含む培地中で15日及び18日まで生存した動物の累積パーセントが比較される。結果は、誘導体化シクロデキストリンを細胞水和活性成分として使用することで、生動物において生物学的機能を改善することができるということを示している。
【0172】
【0173】
Table 9(表9)では、細胞水和活性成分としての0.1% w/wのシクロデキストリン包接錯体が様々に補充された、USA I水に溶解した栄養培地中で中齢(10日)、高齢(14日)、及び老齢(18日)まで生存した動物のパーセントが報告される。本実施例では、包接錯体はα-シクロデキストリン及び生物活性剤、特にL-アルギニン、L-カルニチン、又はナイアシンアミドを含んだ。
【0174】
先の実施例と同様に、未補充培地中のC.エレガンス動物は2週間生存した。α-シクロデキストリンとL-アルギニン及びナイアシンアミドとの錯体は、高齢(14日目)でのC.エレガンスの生存率を2倍超にし、更に、少ないが有意な数の動物が、栄養培地のみの中では動物が生存しなかった老齢まで生存することを可能にした。対照的に、α-シクロデキストリンとL-カルニチンとの錯体はC.エレガンスの生存率に対してほとんど効果を示さなかったか又は有意な効果を示さなかった。同様に、培地にα-シクロデキストリンなしで単独で加えられたL-アルギニン及びニコチンアミドもC.エレガンスの生存率に対してほとんど効果を示さなかった。結果は
図16にも図示する。図では、各シクロデキストリン包接錯体を添加物として含む培地中で14日及び18日まで生存した動物の累積パーセントが比較される。結果は、α-シクロデキストリン包接錯体、特にL-アルギニン及びニコチンアミドとの錯体を細胞水和活性成分として使用することで、生動物において生物学的機能を改善することができるということを示している。
【0175】
図17に更に示すように、α-シクロデキストリンとL-アルギニンとの包接錯体(データ系列A; 1:1錯体、USA I水で作製された培地に0.1% w/wで溶解)及びα-シクロデキストリンとナイアシンアミドとの包接錯体(データ系列B; 1:1錯体、USA I水で作製された培地に0.1% w/wで溶解)はC.エレガンス虫の死亡率を減少させることができる。
図17は、各培地条件における毎日の死亡動物の数を示し、ここで対照データ系列は、USA I水で作製されて更なる添加物又は補助物を欠く培地とする。結果は、α-シクロデキストリンの錯体形態を細胞水和活性成分として使用することで、生動物の死亡を遅らせることができるということを示している。
【0176】
図18は、USA I水を使用する通常の培地(対照)中で、又はα-シクロデキストリンとL-アルギニンとの1:1包接錯体を補充した培地(試料1)中で、又はシクロデキストリンとナイアシンアミドとの1:1包接錯体を補充した培地(試料2)中で増殖した動物に関する生存率曲線として、
図17のデータを代替的に表す。したがって、
図17に示される死亡の遅延により、生存齢の高齢化が生じる。すなわち、平均生存齢(生存率50%)が、通常培地中での約13日から、シクロデキストリン包接錯体を細胞水和活性成分として含む培地中での約14日に増加した。これは寿命が8%増加したことを表す。
【実施例6】
【0177】
水和が改変された水中でのC.エレガンスの寿命延長
本発明について行ったC.エレガンス研究は、先に行った観察(ここでは試験Aと呼ぶ)の追跡及び繰り返しである。本C.エレガンス研究(試験B)の結果を、試験A(処置群当たり虫50匹)に比べて多い数の動物(群当たり虫130匹)によって記録した。線虫を線虫増殖培地(NGM)収容プレート上で維持して増殖させ、大腸菌(Escherichia coli)OP50菌を与えた。本研究において使用したC.エレガンス株は野生型としてのブリストル(N2)である。
【0178】
観察結果
記録された結果を下記Table 10(表10)に示し、
図21及び
図22に更に示す。
【0179】
【0180】
本研究(試験B)は、対照動物及び「水のみで処置した」動物の15日目の生存率が10%であったことを示した。したがって、2つの研究は互いに一致した結果を示す。更に、0.1% α-シクロデキストリン処置C.エレガンスの寿命に関するかなりの再現性が見られた。2009年の実験15日目(ヒト60歳に相当)に、α-CD及びα-CD錯体で処置された虫の約20~25%が生存していたことがわかり、一方、本研究では、同じ処理によって約20%~23%の割合のC.エレガンスが生存していた。
【0181】
C.エレガンス多細胞試験(Eotvos Lorand大学Vellai Lab.のInstitute of Geneticsにおいて行った)は、CDが利用可能な水道水で処置されたC.エレガンスの寿命全体が対照群の寿命全体に比べて統計的に有意に向上したことを実証した。更に、α-シクロデキストリン処置C.エレガンスが生命の初期~中期(8~13日)の間でより活発で活気があるようであったことは留意に値する。結果は
図21~
図22にも図示する。
【0182】
図21は、対照虫及びα-シクロデキストリン処置虫の寿命を示す。対照C.エレガンスは、水道水で作製された培地上で生存していた。処置虫を、0.1% α-シクロデキストリン、0.1% α-CD/ニコチン酸、及び0.1% α-CD/アルギニン錯体を含む水道水で作製された培地上に維持した。寿命曲線を
図21及び
図22aに示す。
【0183】
α-CD及びその錯体を含む水試料は、寿命の初期及び中期の間(寿命の8~13日の間)にC.エレガンスに対して高い陽性効果を示した。対照動物の平均寿命は12.33日であり、一方、α-CD処置動物では13.25日であった。線虫の約1日の生存はヒト生命における4年又は5年に相当する。
【0184】
試験をより低濃度及び高濃度(0.05%及び0.5%)のα-CD、並びに濃度0.05%の錯体溶液によって繰り返した。寿命曲線を
図22b及び
図22cにそれぞれ示す。シクロデキストリン及びその錯体の寿命延長効果の用量依存性が非線形であることは注目すべきである。濃度0.05%の有効性は試験されたより高濃度の試料の有効性を上回る。にもかかわらず、α-シクロデキストリンの効果は3つすべての研究濃度で有意であった。
【0185】
CDが利用可能な水道水で処置されたC.エレガンスの寿命全体が対照群の寿命全体に比べて統計的に有意に向上したことを実証した。α-シクロデキストリン処置C.エレガンスが生命の初期~中期(8~13日)の間でより活発で活気があるようであったことが観察された。この効果は、α-シクロデキストリン錯体(L-アルギニン又はニコチン酸で調製)が適用された際に同様に有益であった。
【実施例7】
【0186】
アフリカツメガエル卵母細胞を使用する細胞水和に対するシクロデキストリンの効果
アフリカツメガエル卵母細胞試験のために、アフリカツメガエルを水中で0.15% MS-222によって15分間麻酔することで、卵母細胞を収集した。次に卵母細胞を氷上に更に15分間保持した後、卵巣摘出を行った。卵巣をコラゲナーゼ(Worthington Type II、10mg/ml)入りのカルシウム不含Barth液(CFBS、NaCl 88mM、KCl 1mM、MgSO4 0.8mM、TRIS-HCl 5mM、NaHCO3 2.4mM)中でインキュベートした。濾胞除去後、卵母細胞を通常のBarth液(MBS、NaCl 88mM、KCl 1mM、CaCl2 0.4mM、Ca(NO3)2 0.33mM、MgSO4 0.8mM、TRIS-HCl 5mM、NaHCO3 2.4mM)中ですすぎ、続いて96ウェルプレートに移した。異なるDNAを卵母細胞に核注入するために、また、ヒトアクアポリン-1チャネルをコードするmRNAを細胞質注入するために、Roboocyte自動注入及び記録システムを使用した。(発現ベクターpGEM-T中にクローニングされたヒトアクアポリン1 cDNAをSino Biological社から購入した。AQP1 mRNAへの転写をEcocyte社の協力パートナー研究室が行った。)mRNA注入量をmRNA濃度100ng/μlで20~50nlの範囲とした。ゲンタマイシンを補充したBarth液中で2~3日インキュベートした後、AQP1チャネルを通じたアフリカツメガエル卵母細胞の水取り込みを、ビデオ顕微鏡観察を使用する膨張アッセイにおいて試験した。
【0187】
すべての試験化合物混合物(α-シクロデキストリン(ACD)0.05%、0.1%、0.5%; ACD-ニコチン酸錯体0.05%、0.1%、0.5%、ACD-アルギニン錯体0.05%、0.1%、0.5%)を精製水中で調製し、Cyclolabが500ml量で且つ500ml精製水試料としてサポートした。通常のカエルリンガー液(NFR、NaCl 90mM、KCl 2mM、CaCl2 2mM、MgCl2 1mM、HEPES 5mM、オスモル濃度200mOsm/l)を対照溶液として使用し、実験日に新たに調製した。すべての溶液を二重盲検実験において取り扱った。化合物混合物及び水対照をC1~C10と呼んだ。次に膨張アッセイ/ビデオ顕微鏡観察及びデータ解析を行った。
【0188】
水は細胞の主成分であり、その質量の70~95%を占める。水は単純な拡散によってすべての生物膜の脂質二重層を横切ることができ、アクアポリンと呼ばれる細胞中でノーベル賞受賞者Peter Agreが水チャネルを発見したことで、細胞膜の脂質二重層を横切って水が急速及び制御的に輸送されることが分子的に説明される。
【0189】
研究では、Peter Agreが使用したものと同じ生物系を使用した。母カエルが水中で卵を産むことから、カエル卵母細胞(卵)は水透過に抵抗性がある。Peter Agreは、これらの卵母細胞にリボ核酸を注入することで遺伝子材料を使用することによって、膜結合型水チャネルタンパク質の発現を引き起こした。こうして、卵母細胞は水透過性を示すようになった。卵母細胞水チャネル試験法を、ヒトアクアポリン1(AQP1)を通じた細胞の水取り込みに対するシクロデキストリンの効果の記述に使用した。卵母細胞の浸透的水透過性の結果を
図24~
図25に示す。
【0190】
アフリカツメガエル卵母細胞試験の結果は、最高の水透過性が0.05% α-シクロデキストリン及び0.05% α-シクロデキストリン/アルギニン錯体を含む水溶液で記録されたことを示す。驚くべきことに、より高い(0.1~0.5%)シクロデキストリン含有量を有する試験溶液は、対照水道水に比べて減少した水透過性を示した。更に、単一細胞での卵母細胞試験も、細胞の水取り込みに対する同じ低濃度(0.05%)のシクロデキストリンの陽性効果を示している。
【実施例8】
【0191】
Orbeezビーズを使用する水吸収に対するシクロデキストリン及び錯体形成剤の効果
異なる濃度のシクロデキストリン配合物、錯体形成剤(アルギニン及びナイアシン)、並びに対照を使用する一組の観察実験を行った。これらの実験は本質的に目視による。超吸収性ポリマーでできたOrbeezビーズ、及び、やはり水を吸収するカラーコンタクトレンズを、本実験のために選択した。
【0192】
等量のOrbeez及びコンタクトレンズを取り、較正済みの科学的スケールを使用して配置/秤量した。1%及び2%濃度のシクロデキストリン + アルギニン及びナイアシン(本発明者らの錯体形成剤)の500ml溶液を混ぜ合わせた。異なる溶液と試験製品とをペトリ皿中で組み合わせ、標準的時間間隔30分、1時間、3時間の時点で観察/写真撮影した。水道水をOrbeezビーズ用の対照溶液として使用し、コンタクトレンズ用の対照溶液は生理食塩水とした。コンタクトレンズ試験用にCD+Arg+ナイアシンの1%及び2%配合物を生理食塩水中で可溶化した。試験製品を水から取り除き、3時間の間隔後に秤量した。試験製品を3時間の間隔後に並列比較で写真撮影した。
【0193】
観察結果
【0194】
【0195】
この実験は、シクロデキストリン錯体がOrbeez試験での標準水及びコンタクトレンズ試験での生理食塩水に比べて示す水吸収効果の向上を例示したものである。更に、本発明者らは、これらの結果を消費用飲料、及び生物細胞を透過するその能力に外挿することで、ヒト身体の水和、並びに液体及び栄養素を吸収するその能力を改善することができると考える。
【0196】
本発明を以下の番号付き段落によって記載することもできる。
【0197】
1.多細胞生物によって摂取される際に細胞水和を促進する飲料組成物であって、
シクロデキストリンを含む0.01~5% w/wの濃度の炭水化物クラスレート成分;
クラスレート成分未満の濃度の錯体形成化合物;
静水性液体及び炭酸水性液体からなる群から選択される水性液体成分を含み、
クラスレート成分の少なくとも一部及び錯体形成化合物の少なくとも一部によって包接錯体が形成され;
多細胞生物が組成物を摂取する際に組成物が多細胞生物の細胞水和を促進する、飲料組成物。
【0198】
2.クラスレート成分の錯体形成化合物に対する比が約5:1~約15:1の範囲である、段落1に記載の飲料組成物。
【0199】
3.錯体形成化合物が、L-アルギニン、シトルリン、クレアチン、タウリンを含むアミノ酸、ニコチン酸、ニコチンアミド、レスベラトロール、クルクミン、チアミン、クルクミン、ポリフェノール、ジヒドロクルクミン、スペルミジン、L-リジン、コエンザイムQ10、δ-トコフェロール、デルフィニジン(delphindin)、カフェイン、及びグアルナからなる群から選択される、段落1に記載の飲料組成物。
【0200】
4.錯体形成化合物が任意の電解質からなる群から、具体的にはマグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、リン酸塩、及び炭酸水素塩からなる群から選択される、段落1に記載の飲料組成物。
【0201】
5.多細胞生物が組成物を摂取する際に組成物が多細胞生物中で細胞水和を引き起こす、段落1に記載の飲料組成物。
【0202】
6.多細胞生物が水を細胞内透過させることができ、多細胞生物による組成物の摂取が細胞内透過を向上させる、段落1に記載の飲料組成物。
【0203】
7.多細胞生物がアクアポリンを含み、細胞水和が組成物とアクアポリンとの相互作用によって引き起こされる、段落6に記載の飲料組成物。
【0204】
8.細胞水和が、ヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞を使用する試験によって実証される、段落7に記載の飲料組成物。
【0205】
9.試験が、ヒトアクアポリンAGP1水チャネルを発現した単一細胞アフリカツメガエルヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞を使用する、段落8に記載の飲料組成物。
【0206】
10.組成物が多細胞生物の寿命増加も促進する、段落1に記載の飲料組成物。
【0207】
11.寿命増加の促進がC.エレガンス線虫に関する寿命研究によって実証される、段落10に記載の飲料組成物。
【0208】
12.組成物が多細胞生物の寿命増加を引き起こす、段落11に記載の飲料組成物。
【0209】
13.寿命増加の原因がC.エレガンス線虫に関する寿命研究によって実証される、段落10に記載の飲料組成物。
【0210】
14.シクロデキストリンがα-、β-、及びγ-シクロデキストリンからなる群から選択される、段落1に記載の飲料組成物。
【0211】
15.多細胞生物によって摂取される際に寿命増加を促進する飲料組成物であって、
シクロデキストリンを含む0.01~5% w/wの濃度の炭水化物クラスレート成分;
クラスレート成分未満の濃度の錯体形成化合物;
静水性液体及び炭酸水性液体からなる群から選択される水性液体成分を含み、
クラスレート成分の少なくとも一部及び錯体形成化合物の少なくとも一部によって包接錯体が形成され;
多細胞生物が組成物を摂取する際に組成物が多細胞生物の寿命増加を促進する、飲料組成物。
【0212】
16.寿命増加の促進がC.エレガンス線虫に関する寿命研究によって実証される、段落15に記載の飲料組成物。
【0213】
17.組成物が多細胞生物の寿命増加を引き起こす、段落16に記載の飲料組成物。
【0214】
18.寿命増加の原因がC.エレガンス線虫に関する寿命研究によって実証される、段落17に記載の飲料組成物。
【0215】
19.多細胞生物によって摂取される際に細胞水和を促進する系であって、
シクロデキストリンを含む0.01~5% w/wの濃度の炭水化物クラスレート成分;
クラスレート成分未満の濃度の錯体形成化合物;
静水性液体及び炭酸水性液体からなる群から選択される水性液体成分を含み、
クラスレート成分の少なくとも一部及び錯体形成化合物の少なくとも一部によって包接錯体が形成され;
多細胞生物が組成物を摂取する際に組成物が細胞水和を促進する、系。
【0216】
20.クラスレート成分の錯体形成化合物に対する比が約5:1~約15:1の範囲である、段落19に記載の系。
【0217】
21.錯体形成化合物が、L-アルギニン、シトルリン、クレアチン、タウリンを含むアミノ酸、ニコチン酸、ニコチンアミド、レスベラトロール、クルクミン、チアミン、クルクミン、ポリフェノール、ジヒドロクルクミン、スペルミジン、L-リジン、レスベラトロール(reservatrol)、コエンザイムQ10、δ-トコフェロール、デルフィニジン(delphindin)、カフェイン、及びグアルナからなる群から選択される、段落20に記載の系。
【0218】
22.錯体形成化合物が任意の電解質からなる群から、具体的にはマグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、リン酸塩、及び炭酸水素塩からなる群から選択される、段落20に記載の系。
【0219】
23.水を細胞内透過させることができる多細胞生物において細胞水和の増加を促進する方法であって、
ある量の炭水化物クラスレート成分を含む水溶液を多細胞生物に摂取させる段階;及び
細胞内透過を向上させる段階を含む、方法。
【0220】
24.多細胞生物がアクアポリンを含み、摂取させる段階が組成物とアクアポリンとの相互作用を包含する、段落23に記載の方法。
【0221】
25.細胞水和が、ヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞を使用する試験によって実証される、段落24に記載の方法。
【0222】
26.試験が、ヒトアクアポリンAGP1水チャネルを発現した単一細胞アフリカツメガエルヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞を使用する、段落25に記載の方法。
【0223】
27.多細胞生物が脂質二重層構成成分を有し、クラスレート成分と脂質二重層構成成分との間で非共有結合性包接錯体を形成する段階を更に含む、段落23に記載の方法。
【0224】
28.多細胞生物が、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択されるリン脂質も有する、段落23に記載の方法。
【0225】
29.リン脂質が直鎖状である、段落23に記載の方法。
【0226】
30.多細胞生物が膜脂質及び膜タンパク質も含み、摂取させる段階によって膜脂質及び膜タンパク質が一時的に分解される、段落23に記載の方法。
【0227】
31.多細胞生物が脂質充填を含み、摂取させる段階によって脂質充填が緩和される、段落23に記載の方法。
【0228】
32.多細胞生物が膜タンパク質を含み、摂取させる段階によって、膜タンパク質を含む区域内で膜タンパク質が解かれる、段落23に記載の方法。
【0229】
33.多細胞生物がタンパク質構造及びタンパク質機能を含み、摂取させる段階によってタンパク質構造及びタンパク質機能が変化する、段落23に記載の方法。
【0230】
34.多細胞生物が膜脂質、脂質充填、膜タンパク質、タンパク質構造、及びタンパク質機能を含み、摂取させる段階によって膜脂質が一時的に分解され、脂質充填が緩和され、膜タンパク質が解かれ、タンパク質構造及びタンパク質機能が変化する、段落23に記載の方法。
【0231】
35.多細胞生物が細胞層を含み、膜脂質及び膜タンパク質の一時的分解によって細胞層中への栄養素及び水の膜透過が向上する、段落27に記載の方法。
【0232】
36.多細胞生物がコレステロールを含み、クラスレート成分がβ-シクロデキストリンを含み、摂取させる段階によってコレステロールに結合する、段落23に記載の方法。
【0233】
37.水を含む多細胞生物において細胞水和の増加を促進する方法であって、
ある量の炭水化物クラスレート成分を含む水溶液を多細胞生物に摂取させる段階;及び
水溶液中の水の少なくとも一部の密度を減少させる段階を含む、方法。
【0234】
38.多細胞生物がアクアポリンも含み、摂取させる段階が組成物とアクアポリンとの相互作用を包含する、段落37に記載の方法。
【0235】
39.細胞水和が、ヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞を使用する試験によって実証される、段落38に記載の方法。
【0236】
40.試験が、ヒトアクアポリンAGP1水チャネルを発現した単一細胞アフリカツメガエルヒトアクアポリン発現カエル卵母細胞を使用する、段落39に記載の方法。
【0237】
41.多細胞生物が脂質二重層構成成分を有し、クラスレート成分と脂質二重層構成成分との間で非共有結合性包接錯体を形成する段階を更に含む、段落37に記載の方法。
【0238】
42.多細胞生物が、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択されるリン脂質も有する、段落37に記載の方法。
【0239】
43.リン脂質が直鎖状である、段落37に記載の方法。
【0240】
44.多細胞生物が膜脂質及び膜タンパク質も含み、摂取させる段階によって膜脂質及び膜タンパク質が一時的に分解される、段落37に記載の方法。
【0241】
45.多細胞生物が脂質充填を含み、摂取させる段階によって脂質充填が緩和される、段落37に記載の方法。
【0242】
46.多細胞生物が膜タンパク質を含み、摂取させる段階によって膜タンパク質が解かれる、段落37に記載の方法。
【0243】
47.多細胞生物がタンパク質構造及びタンパク質機能を含み、摂取させる段階によってタンパク質構造及びタンパク質機能が変化する、段落37に記載の方法。
【0244】
48.多細胞生物が膜脂質、脂質充填、膜タンパク質、タンパク質構造、及びタンパク質機能を含み、摂取させる段階によって膜脂質が一時的に分解され、脂質充填が緩和され、膜タンパク質が解かれ、タンパク質構造及びタンパク質機能が変化する、段落37に記載の方法。
【0245】
49.多細胞生物が細胞層を含み、膜脂質及び膜タンパク質の一時的分解によって細胞層中への栄養素及び水の膜透過が向上する、段落44に記載の方法。
【0246】
50.多細胞生物がコレステロールを含み、クラスレート成分がβ-シクロデキストリンを含み、摂取させる段階によってコレステロールに結合する、段落37に記載の方法。
【0247】
51.混合物が摂取される際に、膜脂質、脂質充填及び膜タンパク質、タンパク質構造及びタンパク質機能、並びに栄養素及び水の膜透過を含む多細胞生物において細胞水和を促進するために、細胞系の水和を増加させるための方法であって、
ある量の炭水化物クラスレート成分を含む水溶液を多細胞生物に摂取させる段階;並びに
(i)膜脂質の一時的分解、(ii)脂質充填及び膜タンパク質の緩和、並びに(iii)タンパク質構造及びタンパク質機能の変化をまとめて行って多細胞生物を変化させることで、栄養素及び水の膜透過を向上させる段階を含む、方法。
【0248】
52.クラスレートがα-シクロデキストリンであり、ヒト体内でα-シクロデキストリンを直鎖状リン脂質に結合させる段階を更に含み、リン脂質がスフィンゴ糖脂質、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される、段落51に記載の方法。
【0249】
53.クラスレートがβ-シクロデキストリンであり、コレステロールに結合させる段階を更に含む、段落51に記載の方法。
【0250】
本発明を上記の運用原理及び好ましい実施形態を参照して示し、説明してきたが、当業者には、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更を行うことができることは明らかであろう。本発明は、添付の特許請求の範囲内にあるすべてのこれらの代替形態、修正形態、及び変形形態を包含するように意図されている。
【国際調査報告】