(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】医療製品の表面処理及び/又は製造の方法、並びに医療製品
(51)【国際特許分類】
C25F 3/06 20060101AFI20230515BHJP
C23C 22/50 20060101ALI20230515BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
C25F3/06
C23C22/50
A61B17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560963
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2021058723
(87)【国際公開番号】W WO2021204702
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】102020204431.7
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドリアス ガスナー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ワイドリッヒ
【テーマコード(参考)】
4C160
4K026
【Fターム(参考)】
4C160MM22
4C160MM32
4K026AA04
4K026BA08
4K026BB08
4K026CA13
4K026CA38
4K026DA03
(57)【要約】
本発明は、医療製品の表面処理及び/又は生産の方法に関し、医療製品は、金属又は合金を含むか、又は、金属又は合金で構成されており、方法は、以下のステップ、即ち、a)医療製品を電気化学的にエッチングするステップを含む。さらに、本発明は、金属又は合金を含むか、又は、金属又は合金で構成された医療製品に関し、医療製品は、上記の方法によって生産されるか、又は生産可能であって、及び/又は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する:-100mV~1200mV、特に200mV~800mV、好ましくは400mV~500mVの点腐食ポテンシャル、及び/又は、-90°~140°、特に100°~130°、好ましくは110°~130°の接触角、及び/又は、-医療製品の表面の少なくとも一部をコーティングする、1nm~10nm、特に3nm~10nm、好ましくは5nm~10nmの厚さを有する、特にクロム酸化物の不動態層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術機器の原型又は構成要素の表面処理及び/又は生産の方法であって、前記原型又は構成要素は、金属又は合金を含むか、又は、金属又は合金で構成されており、前記方法は、以下のステップ、即ち、
a)前記原型又は構成要素を電気化学的にエッチングするステップを備え、
ステップa)は、アノードに印加される1.4V~1.7Vの電圧、及び/又は、1.6A/dm
2~2.2A/dm
2の電流密度で行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記手術機器の前記原型又は構成要素の表面上の研削動作、好ましくはスライド仕上げ及び/又はベルト仕上げは、ステップa)の実行に先行することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記手術機器の前記原型又は構成要素の表面は、ブラスト剤で処理されておらず、及び/又は電解研磨されていないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)は、1回よりも多く、特に2回、3回、又は4回行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)は、特に鉱酸又は鉱酸混合物を含む酸性電解質水溶液を使用して実行されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記鉱酸は、リン酸、硫酸、及び、リン酸及び硫酸の混合物で構成されたグループから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)は、6分~14分、特に8分~12分、好ましくは10分の期間行われることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップa)は、前記アノードに印加される1.45V~1.65Vの電圧で行われることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)は、1.8A/dm
2~2.0A/dm
2の電流密度で行われることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)は、20℃~90℃、特に50℃~80℃、好ましくは70℃~80℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記手術機器の前記原型又は構成要素の表面は、特に、ステップa)の実行の後に、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液で処理されないことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記手術機器の前記原型又は構成要素をパッキングするステップb)の実行は、ステップa)の実行に続き、前記手術機器の前記原型又は構成要素を滅菌するステップab)は、ステップa)とステップb)との間で実行されるか、又は、前記手術機器の前記原型又は構成要素を滅菌するステップc)の実行が、ステップb)の実行に続くことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記手術機器の前記原型又は構成要素は、ステンレス鋼、特にクロム含有ステンレス鋼、好ましくはクロム含有腐食耐性ステンレス鋼、特にマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼で構成されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
金属又は合金を含むか、又は、金属又は合金で構成された手術機器の原型又は構成要素であって、前記手術機器の前記原型又は構成要素は、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって生産されるか、又は生産可能であって、以下の特徴、即ち、
-前記手術機器の前記原型又は構成要素の表面の少なくとも一部をコーティングする1nm~10nmの厚さを有する不動態層を有する、手術機器の原型又は構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療製品の表面処理又は加工及び/又は製造の方法、並びに医療製品に関する。
【0002】
医療製品、特に、手術機器などは、一般に、完成の前に表面処理を受ける。この目的のために、製品の表面は、例えば、スライド仕上げ及び/又はベルト仕上げによって加工され得る。これは、母材における欠陥及び/又は鋳造関連の欠陥、例えば脱炭領域、又は表面欠陥、例えば孔、きず、又はひびを除去し得、除去しない場合、それらは、製品の腐食耐性に悪影響を及ぼす。
【0003】
しかしながら、ベルト仕上げは、製品表面上に微細なノッチ又は隆起を生じさせ得る。これらは、後の処理ステップで反転され得るか、又は平らにされ得る。これは、二重の材料を生じさせ得る。さらに、例えば、シリコン酸化物粒子の、研磨ベルトから製品表面への材料移動の別の例があり得る。このような材料移動、及び機械加工に伴う医療製品における応力は、次いで、製品に内在応力を生成し得るか、又は増加させ得る。さらなる問題は、除去されていないか、又は研削動作で生成された製品における表面欠陥を、下流の処理ステップで、限られた程度までしか除去することができないことである。
【0004】
医療製品のつや消しは、球状のブラスト剤、例えばガラスビーズを使用して行われ得る。これは製品表面の塑性変形をもたらし、それによって、製品表面はサイズが増加し、粗くなる。一般に、ガラスビーズは非常に硬く(モース硬度6)、また、もろいため、ブラスト剤のある程度の破損が経時的に生じる。結果として、つや消しステップの間、球状のガラスビーズ及び破損したガラスビーズの両方が製品の表面に当たる。破損したガラスビーズは製品表面上に鋭いノッチを生成するが、破損していないガラスビーズは、製品の表面上に球状のくぼみを残す。破損したガラスビーズ及び破損していないガラスビーズの衝突の結果として、破損したガラスビーズによってノッチされた製品表面と、破損していないガラスビーズによってスムージングされた製品表面との間に相互作用がある。同様に、これは、二重の材料をもたらし得る。塑性変形及び対応する内在応力の生成に加えて、製品表面へのブラスト剤の材料移動が起こり得る。この材料移動は、蓄積されたガラスビーズ材料が残り得るノッチの領域で特に著しい。
【0005】
ガラスビーズの例を使用して上述したブラスト剤処理の代替として、医療製品の表面にブラシをかけることが可能である。この目的のために、製品表面は、例えば、研磨粒子を用いたディスク配置で、ディスク形状の研磨パッド又はナイロン繊維を利用して、ブラシディスクで加工され得る。典型的には、ブラシディスクには、酸化アルミニウム及び/又はシリコン酸化物粒子が塗布されている。ブラシステップは、つや消しされた製品表面と比較して、製品表面の腐食耐性を増加させるが、ブラシをかけられた製品表面は、つや消しされた製品表面よりも強い反射特性を有することが欠点である。
【0006】
二重の材料によって製品表面上に形成されるマイクロ構造又はノッチ、及び任意の対応する製品における内在応力の生成又は増加が、製品の腐食耐性に悪影響を及ぼすことも知られている。例えば、ベルト仕上げ及び/又はつや消しの間の材料移動の場合、さらなる要因は、移動される材料がさらなるマイクロ構造を生成し、不動態化層の弱化をもたらし得ることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(目的及び達成)
本発明の目的は、医療製品の表面処理又は加工及び/又は製造の方法を提供することであって、それは、少なくとも部分的に、一般的なタイプの方法で生じる欠点を回避し、特に、高い腐食耐性、及び低減された反射特性を有する医療製品につながる。
【0008】
本発明のさらなる目的は、対応する医療製品を提供することである。
【0009】
前述の目的は、独立請求項1の特徴を有する方法によって、及び請求項14で請求されるような医療製品によって、本発明に従って達成される。本方法及び医療製品の好ましい構成は、従属請求項及び明細書の主題である。ここで、すべての請求項の用語は、明示の参照により、明細書に組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、本発明は、医療製品の表面処理又は加工、及び/又は、製造の方法に関し、医療製品は、金属又は合金を含むか、又は、金属又は合金で構成されている。本方法は、以下のステップ、即ち、a)医療製品又は医療製品の表面を電気化学的にエッチングするステップを含む。
【0011】
本発明の文脈内の「医療製品」という表現は、医療最終製品、好ましくは手術機器、又は原型、特に半仕上げ製品、ブランク、又は半製品、医療最終製品、好ましくは手術機器、又は、医療最終製品、好ましくは手術機器の構成要素を意味し得る。
【0012】
本発明の文脈内の「合金」という表現は、少なくとも2つの要素(構成要素)で構成された巨視的に均質な金属材料であり、その少なくとも1つの要素が金属であることを意味すると理解されるべきである。従って、本発明の文脈内の「合金」という表現は、少なくとも2つの異なる金属で構成された巨視的に均質な金属材料を意味し得る。代替的に、本発明の文脈内の「合金」という表現は、少なくとも1つの金属、及び少なくとも1つの非金属、例えば炭素で構成された巨視的に均質な金属材料を意味し得る。
【0013】
驚くべきことに、医療製品の従来の表面処理の文脈内で最初に生じる欠点を、医療製品の電気化学エッチングによって、部分的に回避することができるか、又は完全に回避することさえできることが見出された。例えば、手術機器の例を使用して、電気化学エッチングが、製品表面での光の反射の低減をもたらし、腐食耐性の増加ももたらすことが示された。クロム含有又はクロム合金ステンレス鋼で作られた医療製品の場合、腐食耐性の増加の根拠は、より詳細には、6価クロムイオンが電気化学エッチング動作の結果として溶解状態になることである。結果として、医療製品の表面のクロムリッチ酸化物層が除去され、それにより、医療製品の表面での炭化クロムの周囲の炭化クロム含有領域などの化学的及び物理的不均等性において電気化学エッチング動作のために使用される酸による直接的なアタックが可能になる。これは、特に前の炭化クロム領域の場所で、医療製品の表面上に、特に、好ましくは開放されたエッチングピットを有するか、当該エッチングピットの形態のマイクロ構造を生じさせる。さらに、有利なことに、界面領域、特にラス及びサブブロック境界の分解が可能であり、特に、個々のマルテンサイトラスが突出するという結果をもたらし得る。結果として、医療製品の表面はつや消しされたように見え、それは特に有利なことに、医療製品のユーザの利便性を単純化する。例えば、これは、手術室で外科医の目がくらむことを回避し得る。医療製品の表面でのクロム空乏領域の減少はまた、有利なことに、点腐食の核形成場所の形成のリスクを低下させる。
【0014】
さらなる利点は、電気化学エッチング動作が、不動態層、特に、従来技術と比較して厚い不動態層の形成を促進し得ることである。結果として、さらに、医療製品の腐食耐性を増加させることが可能である。
【0015】
電気化学エッチングのさらなる利点は、特に、医療製品の表面上の圧縮応力及び引張応力、及び/又は二重の材料及び/又は重畳材料が、大部分又は完全に回避され得ることである。これは、さらに、腐食のリスクを低減し得る。
【0016】
さらに、電気化学エッチングは、有利なことに、医療製品の表面上の任意の腐食誘引材料欠陥を減少させ得る。
【0017】
さらに、本発明の本方法は、有利なことに、一般的なタイプの方法と比較して、同等又は優れた清掃性の医療製品の表面、及び/又は医療製品の同等又は優れた引掻き耐性、及び/又は医療製品の同等又は優れた機械的安定性、及び/又は医療製品の同等又は優れた触質性、特に滑らかさにつながる。
【0018】
本発明の一実施例では、医療製品の表面上の研削動作、好ましくはスライド仕上げ及び/又はベルト仕上げは、ステップa)の実行に先行する。
【0019】
スライド仕上げのために、医療製品は、好ましくはスライド仕上げ本体と共に、好ましくはバルク材料の形態で、又はスライド仕上げ本体及び任意選択的に添加剤を含有する水溶液と共に、容器内に導入される。任意選択的に提供される添加剤は、防錆剤、脱脂剤、酸洗剤、分離剤(例えば、直径<1mmを有するポリマービーズ)、及びそれらの混合物で構成されたグループから選択され得る。このような溶液は、有利なことに、スライド仕上げ本体によって形成される研磨材料、及び研磨製品を取り上げて搬送し得る。各々の場合に使用される添加剤に応じて、さらなる効果、例えば、腐食からの保護、脱脂、及び付着予防を達成することが可能である。
【0020】
容器の振動又は回転移動は、医療製品とスライド仕上げ本体との間に相対的な移動を生じさせる。これは、医療製品、特にその縁で材料の研磨をもたらす。医療製品の表面画像、粗さ、材料の研磨、及びバリ取りの実行は、有利なことに、スライド仕上げのために使用される機械、研削本体、及び任意選択的な添加剤によって、制御された方法で影響され得る。
【0021】
スライド仕上げ本体は、セラミック、プラスチック、ウォールナットシェルなどの天然物、鋼、及びそれらの組合せで構成されたグループから選択される材料を含み得るか、又は当該グループから選択される材料で構成され得る。
【0022】
原則的に、スライド仕上げ本体は、規則的な形状及び/又は不規則な形状であり得る。
【0023】
スライド仕上げ本体は、特に、角及び/又は縁がない、例えば、楕円形、環状形、又は球形の形態であり得る。
【0024】
代替的に、又は組合せで、スライド仕上げ本体は、角及び/又は縁を有し得る。特に、スライド仕上げ本体は、多面体、例えば、立方体、立方体状、プリズム形状、ピラミッド、又は平行六面体形状であり得る。さらに、スライド仕上げ本体は、特に、直線プリズム及び/又は斜角プリズムとして構成され得る。
【0025】
代替的に、又は組合せで、スライド仕上げ本体は、円錐形及び/又は円錐台形であり得る。
【0026】
さらに、医療製品のスライド仕上げのために、異なるスライド仕上げ本体の組合せを使用することが可能である。例えば、角及び/又は縁なしのスライド仕上げ本体、並びに多面のスライド仕上げ本体を使用することが可能である。代替的に、又は組合せで、異なる角及び/又は縁なしのスライド仕上げ本体、及び/又は異なる多面のスライド仕上げ本体を使用することが可能である。可能性のある構成及び形状に関して、スライド仕上げ本体についての前述の段落に記載される構成及び形状に対する参照が完全に行われる。
【0027】
スライド仕上げ本体はまた、少なくとも1つの寸法、特に少なくとも1つの平均寸法、例えば直径、特に平均直径、及び/又は高さ、特に平均高さ、及び/又は1mm~80mmの範囲での長さ、特に平均長さを有し得る。ここで、本発明の文脈内の球形のスライド仕上げ本体の直径は、単一の球形のスライド仕上げ本体の半径の2倍を意味することが理解されるべきである。対照的に、本発明の文脈内の非球形のスライド仕上げ本体の直径は、単一の非球形のスライド仕上げ本体の周囲の線に沿って互いに対して採用され得る2つの点の間の可能な最大の距離を意味することが理解されるべきである。この段落で言及される平均寸法は、例えば、バルク密度及び/又は光学測定によって決定され得る。スライド仕上げはまた、バレル仕上げ、振動仕上げ、プランジ仕上げ、ドラッグ仕上げ、遠心仕上げ、又は圧力流ラッピングの形態で行われ得る。
【0028】
医療製品のベルト仕上げは、好ましくは、研磨ベルトを使用して行われる。この目的のために、特に、少なくとも2つのロール上で進む研磨ベルトを使用することが可能である。研磨ベルトは、好ましくは、150~1200の粒径を有する。ここで、粒子の数は、測定単位メッシュ、すなわち、インチ(25.4mm)ごとのグリッド内のメッシュの数によって導かれる。従って、例えば、粒径150の研磨剤は、インチごとに150メッシュを有する篩だけを通過する。
【0029】
本発明によると、例えば、まずスライド仕上げ、次いでベルト仕上げが、ステップa)の実行に先行し得る。ベルト仕上げは、特に、医療製品のいわゆるシャドー領域の処理に関して有利であり得るが、このような領域の外側でも有利であり得る。シャドー領域は、特に、医療製品の幾何形状及び/又は構成が理由で、スライド仕上げ本体が表面上で効果的でないか、又は限られた有効性のみである医療製品の領域を画定する。
【0030】
代替的に、医療製品の表面は、単に、ステップa)の実行の前にスライド仕上げによって仕上げられ得る。これは、ベルト仕上げに起因する製品表面上のノッチ及び/又は隆起の形成を回避し得、従って、医療製品の腐食耐性がさらに改善され得る。
【0031】
代替的に、医療製品の表面は、単に、ステップa)の実行の前にベルト仕上げによって仕上げられ得る。
【0032】
本発明のさらなる実施例では、医療製品の表面は、ブラスト剤で処理されていない。既に言及したように、本発明に従って認識されるエッチングステップは既に、有利なことに、医療製品の表面のつや消しをもたらし、従って、ブラスト剤を用いた処理によるいかなるつや消しも不要である。このように、特に有利なことに、医療製品についての加工/生産時間及び/又はコストを著しく低減することが可能である。さらに、このように、ブラスト剤から医療製品への材料移動のリスクを回避することが可能であり、それは、その腐食耐性をさらに改善し得る。
【0033】
代替的に、医療製品の表面は、好ましくはステップa)の実行の前に、特に、医療製品の表面の研削、特にスライド仕上げ及び/又はベルト仕上げと、ステップa)の実行との間に、ブラスト剤で処理され得る。使用されるブラスト剤は、特に、延性、即ち、非脆性ブラスト剤であり得る。このようなブラスト剤の使用は、特に有利なことに、医療製品の表面上での、特にマイクロスケールのギャップの形態のノッチ及び/又はマイクロ構造の生成を防止又は少なくとも低減することを可能にする。これは、医療製品内の局部応力ピークの発生を回避し得るか、又は少なくとも低減し得、特に、医療製品の腐食耐性をさらに改善し得る。その上、このようなブラスト剤の使用は、有利なことに、医療製品の引掻き耐性を改善し得る。医療製品の表面の、この段落で言及される研削、特にスライド仕上げ及び/又はベルト仕上げに関して、これまでの説明で与えられた対応する詳細に対する参照が完全に行われる。
【0034】
原則的に、ブラスト剤は、金属、金属酸化物、合金、セラミック、プラスチック、植物材料、砂、及びそれらの組合せで構成されたグループから選択される材料を含み得るか、又は当該グループから選択される材料で構成され得る。
【0035】
金属は、特に、アルミニウムであり得る。
【0036】
金属酸化物は、特に、好ましくはコランダムタイプの酸化アルミニウム(Al2O3)であり得る。
【0037】
プラスチックは、特に、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、又はメラミン樹脂であり得る。
【0038】
セラミックは、特に、ガラス又は混合セラミックであり得る。
【0039】
合金は、例えば、鋼、特にステンレス鋼であり得る。合金は、好ましくは、不錆鋼、特に不錆ステンレス鋼である。好適なステンレス鋼に関して、以下の明細書に対する参照が行われる。
【0040】
砂は、特に、ガーネットサンドであり得る。
【0041】
ブラスト剤は好ましくは金属又は合金を含むか、又は、ブラスト剤は好ましくは金属又は合金で構成される。このようなブラスト剤は破損せず、従って、医療製品の表面のいかなるノッチももたらさないという特定の利点を有する。その上、製品表面への材料移動を低減することができるか、又は完全に回避することさえできる。全体的に、これはさらに、医療製品の腐食耐性を改善し、製品内の好ましくない内在応力の発生を回避し得る。さらに、このようなブラスト剤は、医療製品の引掻き耐性を増加させるのに特に好適である。
【0042】
好ましくは、ブラスト剤は、鋼、特にステンレス鋼を含むか、又は、好ましくは、ブラスト剤は、鋼、特にステンレス鋼で構成されている。このようなブラスト剤は、特に、最後の段落で言及される利点の明確な表明をもたらし得る。
【0043】
原則的に、ブラスト剤は、規則的な形状及び/又は不規則な形状、特に、規則的な形状及び/又は不規則な形状のブラスト剤本体の形態であり得る。
【0044】
さらに、ブラスト剤は角及び/又は縁がない、特に、角及び/又は縁がないブラスト剤本体の形態であることが好ましい。これは、医療製品の表面上のノッチの生成を回避し得、従って、医療製品の腐食耐性をさらに改善し得る。
【0045】
原則的に、ブラスト剤は、楕円形、環状形、球形、又はビーズ形状であり得るか、又は対応して構成されたブラスト剤本体の形態であり得る。
【0046】
ブラスト剤は、好ましくは、球形及び/又はビーズ形状、又は球形及び/又はビーズ形状のブラスト剤本体の形態である。
【0047】
代替的に、又は組合せで、ブラスト剤は、角及び/又は縁を有し得る。特に、ブラスト剤は、多面体、例えば、立方体、立方体状、プリズム形状、ピラミッド、又は平行六面体形状であり得るか、又は対応して構成されたブラスト剤本体の形態を取り得る。ブラスト剤はさらに、直線プリズム又は斜角プリズムの形態を取り得るか、又は対応して構成されたブラスト剤本体の形態を取り得る。
【0048】
代替的に、又は組合せで、ブラスト剤は、円錐形及び/又は円錐台形であり得るか、又は円錐形及び/又は円錐台形のブラスト剤本体の形態を取り得る。
【0049】
代替的に、又は組合せで、ブラスト剤は、球状の形態、例えば丸いワイヤの形態であり得るか、又は対応して構成されたブラスト剤本体の形態であり得る。
【0050】
代替的に、又は組合せで、ブラスト剤は、粉砕された形態、特に、粉砕されたブラスト剤本体の形態であり得る。
【0051】
さらに、ブラスト剤又はブラスト剤本体は、少なくとも1つの寸法、特に少なくとも1つの平均寸法、例えば、直径、特に平均直径、及び/又は高さ、特に平均高さ、及び/又は40μm~2000μmの範囲での長さ、特に平均長さを有し得る。ここで、本発明の文脈内の球形のブラスト剤又は球形のブラスト剤本体の直径は、球形のブラスト剤又は単一の球形のブラスト剤本体の半径の2倍を意味することが理解されるべきである。対照的に、本発明の文脈内の非球形のブラスト剤又は非球形のブラスト剤本体の直径は、非球形のブラスト剤又は単一の非球形のブラスト剤本体の周囲の線に沿って互いに対して採用され得る2つの点の間の可能な最大の距離を意味することが理解されるべきである。この段落で言及される平均寸法は、例えば、レーザ回折又は篩分析によって決定され得る。
【0052】
ブラスト剤又はブラスト剤本体は、例えば、ジェットブラストシステム、噴射ブラストシステム、又はホイールブラストシステムを使用することによって、医療製品の表面上に加速され得る。圧力ジェット又は噴射ジェットシステムが使用される場合、1バール~6バールの圧力を使用することが可能である。
【0053】
本発明のさらなる実施例では、医療製品の表面は電解研磨されていない。
【0054】
代替的に、医療製品の表面は、特にステップa)の実行の前に、特に、医療製品の表面上の研削動作、特にスライド仕上げ及び/又はベルト仕上げと、ステップa)の実行と、の間に、特にブラスト剤での医療製品の表面の処理と、ステップa)の実行と、の間に、及び/又は、ステップa)の実行の後に、特に、ステップa)の実行と、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液での医療製品の表面の処理と、の間に、電解研磨され得る。電解研磨は、一般に、電解質水溶液を使用して実行される。電解質水溶液は、好ましくは鉱酸又は鉱酸混合物、特に、リン酸、硫酸、並びにリン酸及び硫酸の混合物で構成されたグループから選択される鉱酸又は鉱酸混合物を含む。電解質水溶液はまた、電解質水溶液の総重量に基づいて、20重量%~70重量%、特に30重量%~60重量%、好ましくは40重量%~50重量%のリン酸量、及び/又は、電解質水溶液の総重量に基づいて、10重量%~70重量%、特に20重量%~60重量%、好ましくは30重量%~50重量%の硫酸量を有し得る。医療製品の表面が2V~10Vの電圧、特にDC電圧で電解研磨されるとさらに好ましい。ここで、電圧は、電解研磨中に一定に保たれ得るか、又は変えられ得る。医療製品の表面が5A/dm2~50A/dm2の電流密度で電解研磨されるとさらに好ましい。医療製品の表面が50℃~65℃の温度で電解研磨されるとさらに好ましい。医療製品の表面のこの段落で言及される研削、特にスライド仕上げ及び/又はベルト仕上げ、及びブラスト剤での医療製品の表面の処理に関して、これまでの説明で与えられた対応する詳細に対する参照が完全に行われる。この段落で言及された不動態化酸又は不動態化酸含有溶液での医療製品の表面の処理に関して、依然として続く説明で与えられる対応する詳細に対する参照が完全に行われる。
【0055】
典型的には、ステップa)は、電解質溶液内での医療製品の表面のアノード除去によって行われ、これは、医療製品が電気化学セル内のアノードを形成することを意味する。
【0056】
本発明のさらなる実施例では、ステップa)は、1回よりも多く、特に2回、3回、又は4回行われる。
【0057】
これは、特に有利なことに、関するシャドーを生じさせることなく、医療製品の幾何特性、例えば、医療製品の閉鎖の均一な加工をもたらし得る。医療製品の閉鎖は、小さいシャドーのみを生じさせるために2つの位置で加工され得る。代替的に、医療製品は、ステップa)の実行中に徐々に関節でつながれることが好ましい場合がある。
【0058】
代替的に、ステップa)は、1回だけ行われ得る。
【0059】
本発明のさらなる実施例では、ステップa)は、特に鉱酸又は鉱酸混合物を含む酸性電解質水溶液を使用して実行される。
【0060】
本発明のさらなる実施例では、鉱酸は、リン酸、硫酸、及び、リン酸及び硫酸の混合物で構成されたグループから選択される。ここで、リン酸含有及び/又は硫酸含有電解質水溶液は、ステンレス鋼、特に腐食耐性ステンレス鋼で作られた医療製品の表面の電気化学的エッチングに特に有利であることが見出された。
【0061】
酸性電解質水溶液はまた、熟成酸性電解質水溶液であり得る。
【0062】
さらに、酸性電解質水溶液は、酸性電解質水溶液の総重量に基づいて、50重量%~95重量%、特に60重量%~95重量%、好ましくは75重量%~95重量%の鉱酸量を有し得る。特に、酸性電解質水溶液は、各々の場合で酸性電解質水溶液の総重量に基づいて、10重量%~70重量%、特に20重量%~70重量%、特に30重量%~60重量%、好ましくは40重量%~50重量%のリン酸量、及び/又は、10重量%~70重量%、特に20重量%~60重量%、好ましくは30重量%~50重量%の硫酸量を有し得る。
【0063】
酸性電解質水溶液は、さらなる添加剤、例えば表面活性物質もさらに含み得る。
【0064】
酸性電解質水溶液の反応性は、酸性電解質水溶液の水量を介して制御され得ることが有利である。例えば、酸性電解質水溶液は、酸性電解質水溶液の総重量に基づいて、5重量%~25重量%、特に5重量%~15重量%、好ましくは5重量%~10重量%の水量を有し得る。
【0065】
本発明のさらなる実施例では、ステップa)は、6分~14分、特に8分~12分、好ましくは10分の期間行われる。
【0066】
本発明のさらなる実施形態では、ステップa)は、<2V、特に1.2V~1.8V、好ましくは1.4V~1.7V、より好ましくは1.4V~1.5V又は1.45V~1.65Vの、好ましくは(表面処理又は加工され、及び/又は製造される医療製品の)アノードで測定される電圧、特にDC電圧で/を用いて行われる。本発明の本実施形態では、本発明の利点は、特に明確に表明される。電圧は、好ましくは銀-塩化銀電極によって、アノードで(表面処理又は加工され、及び/又は製造される医療製品で)測定される。次いで、確認される電圧は、標準水素電極に変換される。典型的には、電圧は、電圧のどの部分がアノードに印加されているか、及び残留抵抗(例えば、ワイヤ、電解質など)にどのくらいの量が印加されているかを知ることなく、電流源で確立される。本発明では、それは好ましくは、非常に重要なアノードでの正確な電圧である。
【0067】
さらに、ステップa)は、一定の電圧又は変化する電圧、特にDC電圧で/を用いて行われ得る。好適な電圧範囲/値に関して、前述の段落で開示される電圧に対する参照が行われる。
【0068】
本発明のさらなる実施形態では、ステップa)は、1.4A/dm2~2.4A/dm2、特に1.6A/dm2~2.2A/dm2、好ましくは1.8A/dm2~2.0A/dm2の電流密度で/を用いて行われる。この段落で開示される(低)電流密度によって、経時的に医療製品の表面のエッチングを特に効率的に制御することが可能である。
【0069】
本発明のさらなる実施例では、ステップa)は、20℃~90℃、特に50℃~80℃、好ましくは70℃~80℃の温度で行われる。
【0070】
本発明のさらなる実施例では、医療製品の表面は、特に、ステップa)の実行の後に、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液で処理されない。既に言及したように、これは、本発明に従って認識されるエッチングステップ(ステップa))が既に、特に有利なことに、医療製品の表面上の不動態層の形成を促進し得、従って、医療製品の腐食耐性の改善をもたらし得るためである。本発明のこの構成は、医療製品についての加工/製造時間及び/又はコストの明確な低減の利点を(同様に)有する。
【0071】
代替的に、医療製品の表面は、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液、特に不動態化酸含有水溶液で、特にステップa)の実行の後に、特に医療製品の表面の電解研磨の後に処理され得る。この段落で言及された医療製品の表面の電解研磨に関して、これまでの説明で与えられた対応する詳細に対する参照が完全に行われる。
【0072】
このように、医療製品の表面上の不動態層の形成をさらに向上又は促進させ、従って、医療製品の腐食耐性をさらに改善することが可能である。クロム含有又はクロム合金ステンレス鋼で作られた医療製品の場合、例えば、医療製品の表面上に厚いクロム酸化物層を形成することが不動態層によって可能である。
【0073】
使用される不動態化酸は、例えば、クエン酸及び/又は硝酸であり得る。使用される不動態化酸含有溶液は、例えば、クエン酸含有水溶液の総重量に基づいて、特に5重量%~60重量%のクエン酸量を有するクエン酸含有水溶液であり得る。代替的に、使用される不動態化酸含有溶液は、硝酸含有水溶液の総重量に基づいて、特に5重量%~60重量%の硝酸量を有する硝酸含有水溶液であり得る。
【0074】
クエン酸の使用は、健康の観点及び職業安全の観点の両方から、硝酸の使用よりも有利である。その上、クロム含有又はクロム合金ステンレス鋼で作られた医療製品の場合、クエン酸によって、硝酸が使用される場合よりも厚いクロム酸化物層を達成することが可能である。これは、後者が、このようなステンレス鋼の場合に他の合金成分の割合も低減させるためである。
【0075】
不動態化の実行の間、医療製品は、例えば、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液内に浸漬され得る。代替的に、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液は、医療製品の表面上に噴霧され得るか、又は注ぎ込まれ得る。
【0076】
さらに、医療製品の表面は、2分~120分、特に5分~60分、好ましくは10分~30分の期間、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液で処理され得る。
【0077】
さらに、医療製品の表面は、20℃~80℃、特に30℃~65℃、好ましくは50℃~60℃の温度範囲内で、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液で処理され得る。
【0078】
さらに、医療製品の表面上の洗浄及び/又は脱脂動作は、ステップa)と、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液での医療製品の表面の処理と、の間に、特に、医療製品の表面上の電解研磨動作と、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液での医療製品の表面の処理と、の間に実行され得る。この段落で言及された医療製品の表面の電解研磨に関して、これまでの説明で与えられた対応する詳細に対する参照が完全に行われる。
【0079】
本発明のさらなる実施形態では、特に、医療製品の表面の電解研磨の後に、特に、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液での医療製品の表面の処理の後に、医療製品をパッキング及び/又はマーキング、特にラベリングするステップb)は、ステップa)の実行に続く。好ましくは、医療製品を滅菌、特に蒸気滅菌するステップab)は、ステップa)とステップb)との間に、特に、医療製品の表面の電解研磨とステップb)との間に、特に、不動態化酸又は不動態化酸含有溶液での医療製品の表面の処理の間に実行される。代替的に、医療製品を滅菌、特に蒸気滅菌するステップc)の実行がステップb)の実行に続くことが好ましい場合がある。この段落で言及された医療製品の表面の電解研磨、及びこの段落で言及された不動態化酸又は不動態化酸含有溶液での医療製品の表面の処理に関して、これまでの説明で与えられた対応する詳細に対する参照が完全に行われる。
【0080】
本発明のさらなる実施形態では、医療製品は、鋼、好ましくはステンレス鋼を含む、又は、医療製品は、鋼、好ましくはステンレス鋼で構成されている。
【0081】
(EN10020に従う)本発明の文脈内の「ステンレス鋼」という表現は、特定のレベルの純度、例えば硫黄及び/又はリンの質量割合≦0.025%、特に<0.025%を有する合金又は非合金鋼を意味することが理解される。
【0082】
ステンレス鋼は、特に、クロム、ニッケル、モリブデン、チタン、ニオブ、タングステン、バナジウム、コバルト、及びそれらの組合せで構成されたグループから選択される少なくとも1つの合金要素を含み得る。
【0083】
特に、ステンレス鋼は、クロムの質量割合10%~25%を有し得る。
【0084】
さらに好ましくは、ステンレス鋼は、不錆又は腐食耐性ステンレス鋼である。
【0085】
さらに好ましくは、ステンレス鋼は、クロム含有又はクロム合金ステンレス鋼である。好ましくは、ステンレス鋼は、クロム含有腐食耐性ステンレス鋼又はクロム合金腐食耐性ステンレス鋼である。
【0086】
さらに、ステンレス鋼は、特に、マルテンサイト、フェライト、又はオーステナイトステンレス鋼であり得る。
【0087】
好ましくは、ステンレス鋼は、ISO7153-1に従ったマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼、特に、いわゆる炭素マルテンサイト、即ち、主合金成分としてクロム及び炭素を有する腐食耐性ステンレス鋼、又はいわゆるニッケルマルテンサイト、即ち、主合金成分としてニッケルを有する腐食耐性ステンレス鋼である。
【0088】
特に、ステンレス鋼は、クロムの質量割合10.5%~13%及び/又は炭素の質量割合0.2%~1%を有するマルテンサイトステンレス鋼であり得る。
【0089】
代替的に、ステンレス鋼は、特に、クロムの質量割合16%~21%及び/又は炭素の質量割合0.02%~0.12%を有するオーステナイトステンレス鋼であり得る。
【0090】
代替的に、ステンレス鋼は、特に、クロムの質量割合12%~18%及び/又は炭素の質量割合<0.2%を有するフェライトステンレス鋼であり得る。
【0091】
例えば、ステンレス鋼は、短い材料名称X12Cr13(材料番号1.4006)を有するステンレス鋼であり得る。これは、炭素の質量割合0.08%~0.15%、クロムの質量割合11.5%~13.5%、及びニッケルの質量割合≦0.75%を有するマルテンサイトステンレス鋼である。
【0092】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X12CrS13(材料番号1.4005)を有するマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.08%~0.15%、クロムの質量割合12.0%~14.0%、及びモリブデンの質量割合≦0.60%、任意選択的に硫黄の質量割合0.15%~0.35%を有する。
【0093】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X20Cr13(材料番号1.4021)を有するマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.16%~0.25%、及びクロムの質量割合12.0%~14.0%を有する。
【0094】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X15Cr13(材料番号1.4024)を有するマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.12%~0.17%、及びクロムの質量割合12.0%~14.0%を有する。
【0095】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X30Cr13(材料番号1.4028)を有するマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.26%~0.35%、及びクロムの質量割合12.0%~14.0%を有する。
【0096】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X46Cr13(材料番号1.4034)を有するマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.43%~0.50%、及びクロムの質量割合12.5%~14.5%を有する。
【0097】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X50CrMoV15(材料番号1.4116)を有するマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.45%~0.55%、クロムの質量割合14.0%~15.0%、モリブデンの質量割合0.50%~0.80%、及びバナジウムの質量割合0.10%~0.20%を有する。
【0098】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X17CrNi16-2(材料番号1.4057)を有するマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.12%~0.22%、クロムの質量割合15.0%~17.0%、及びニッケルの質量割合1.5%~2.5%を有する。
【0099】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X39CrMo17-1(材料番号1.4122)を有するマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.33%~0.45%、クロムの質量割合15.5%~17.5%、モリブデンの質量割合0.8%~1.3%、及びニッケルの質量割合≦1.0%を有する。
【0100】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X14CrMoS17(材料番号1.4104)を有するマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.10%~0.17%、クロムの質量割合15.5%~17.5%、モリブデンの質量割合0.20%~0.60%、及び硫黄の質量割合0.15%~0.35%を有する。
【0101】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X3CrNiMoV13-4(材料番号1.4313)を有するマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.05%、クロムの質量割合12.0%~14.0%、モリブデンの質量割合0.30%~0.70%、及びニッケルの質量割合3.5%~4.5%を有する。
【0102】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X4CrNiMo16-5-1(材料番号1.4418)を有するマルテンサイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.06%、クロムの質量割合15.0%~17.0%、モリブデンの質量割合0.80%~1.50%、及びニッケルの質量割合4.0%~6.0%を有する。
【0103】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X65Cr13を有するマルテンサイトステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.58%~0.70%、クロムの質量割合12.5%~14.5%、マンガンの質量割合≦1.00%、シリコンの質量割合≦1.00%、リンの質量割合0.04%、及び硫黄の質量割合0.015%を有する。
【0104】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X30CrMoN15-1(材料番号:1.4108)を有するマルテンサイトステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.25%~0.35%、クロムの質量割合14.0%~16.0%、モリブデンの質量割合0.85%~1.10%、ニッケルの質量割合0.50%、マンガンの質量割合1.00%、シリコンの質量割合1.00%、及び窒素の質量割合0.03%~0.50%を有する。
【0105】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X70CrMo15(材料番号:1.4109)を有するマルテンサイトステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.60%~0.75%、クロムの質量割合14.0%~16.0%、モリブデンの質量割合0.40%~0.80%、マンガンの質量割合≦1.00%、シリコンの質量割合≦0.70%、リンの質量割合0.04%、及び硫黄の質量割合0.015%を有する。
【0106】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X90CrMoV18(材料番号:1.4112)を有するマルテンサイトステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.90%、クロムの質量割合17%~19%、及びモリブデンの質量割合0.90%を有する。
【0107】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X38CrMoV15(材料番号:1.4117)を有するマルテンサイトステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.38%、クロムの質量割合14%~15%、及びモリブデンの質量割合0.50%を有する。
【0108】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X150CrMo17(材料番号:1.4125)を有するマルテンサイトステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合1.10%、クロムの質量割合17%、及びモリブデンの質量割合0.60%を有する。
【0109】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X22CrMoNiS13-1(材料番号:1.4121)を有するマルテンサイトステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.20%~0.25%、クロムの質量割合12.0%~14.0%、モリブデンの質量割合1.00%~1.50%、ニッケルの質量割合0.80%~1.20%、マンガンの質量割合1.00%~1.50%、シリコンの質量割合≦1.00%、リンの質量割合0.045%、及び硫黄の質量割合0.15%~0.25%を有する。
【0110】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X40CrMoVN16-2(材料番号:1.4123)を有するマルテンサイトステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.35%~0.50%、クロムの質量割合14.0%~16.0%、モリブデンの質量割合1.00%~2.50%、ニッケルの質量割合0.5%、マンガンの質量割合≦1.00%、シリコンの質量割合≦1.00%、リンの質量割合0.04%、及び硫黄の質量割合0.015%を有する。
【0111】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X105CrMo17(材料番号:1.4125)を有するマルテンサイトステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.95%~1.20%、クロムの質量割合16.0%~18.0%、モリブデンの質量割合0.04%~0.80%、マンガンの質量割合1.00%以下、シリコンの質量割合1.00%以下、リンの質量割合0.040%以下、及び硫黄の質量割合0.015%以下を有する。
【0112】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X5CrNiCuNb16-4(材料番号:1.4542)を有する析出硬化腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.07%、クロムの質量割合15.0%~17.0%、モリブデンの質量割合≦0.60%、ニッケルの質量割合3.0%~5.0%、銅の質量割合3.0%~5.0%、及びニオブの質量割合0.45%以下を有する。
【0113】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X7CrNiAl17-7(材料番号:1.4568)を有する析出硬化腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.09%、クロムの質量割合16.0%~18.0%、ニッケルの質量割合6.5%~7.8%、及びアルミニウムの質量割合0.70%~1.50%を有する。
【0114】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X5CrNiMoCuNb14-5(材料番号:1.4594)を有する析出硬化腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.07%、クロムの質量割合13.0%~15.0%、モリブデンの質量割合1.20%~2.00%、ニッケルの質量割合5.0%~6.0%、銅の質量割合1.20%~2.00%、及びニオブの質量割合0.15%~0.60%を有する。
【0115】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X3CrNiTiMb12-9(材料番号:1.4543)を有する析出硬化腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.03%、クロムの質量割合11.0%~12.5%、モリブデンの質量割合≦0.50%、ニッケルの質量割合3.00%~5.00%、チタンの質量割合≦0.90%~1.40%、銅の質量割合1.50%~2.50%、ニオブの質量割合0.10%~0.50%、マンガンの質量割合0.50%、シリコンの質量割合0.50%、リンの質量割合≦0.02%、及び、硫黄の質量割合≦0.015%を有する。
【0116】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNi12(材料番号:1.4003)を有するフェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.03%、クロムの質量割合10.5%~12.5%、ニッケルの質量割合0.3%~1.00%、及び窒素の割合≦0.03%を有する。
【0117】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNi12(材料番号:1.4512)を有するフェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.03%、クロムの質量割合10.5%~12.5%、及びチタンの質量割合0.65%以下を有する。
【0118】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X6Cr17(材料番号:1.4016)を有するフェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.08%、及びクロムの質量割合16.0%~18.0%を有する。
【0119】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X3CrTi17(材料番号:1.4510)を有するフェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.05%、クロムの質量割合16.0%~18.0%、及びチタンの質量割合0.80%以下を有する。
【0120】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X6CrMoS17(材料番号:1.4105)を有するフェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.08%、クロムの質量割合16.0%~18.0%、モリブデンの質量割合0.20%~0.60%、及び硫黄の質量割合0.15%~0.35%を有する。
【0121】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X3CrNb17(材料番号:1.4511)を有するフェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.05%、クロムの質量割合16.0%~18.0%、及びニオブの質量割合1.00%以下を有する。
【0122】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrTiNb18(材料番号:1.4509)を有するフェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.03%、クロムの質量割合17.5%~18.5%、ニオブの質量割合1.00%以下、及びチタンの質量割合0.10%~0.60%を有する。
【0123】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X6CrMo17-1(材料番号:1.4113)を有するフェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.08%、クロムの質量割合16.0%~18.0%、及びモリブデンの質量割合0.90%~1.40%を有する。
【0124】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrMoTi18-2(材料番号:1.4521)を有するフェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.025%、クロムの質量割合17.0%~20.0%、モリブデンの質量割合1.80%~2.50%、及びチタンの質量割合0.80%以下を有する。
【0125】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNi22-2(材料番号:1.4062)を有するオーステナイト-フェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.03%、クロムの質量割合21.5%~24.0%、モリブデンの質量割合≦0.45%、ニッケルの質量割合1.00%~2.90%、及び窒素の質量割合0.16%~0.28%を有する。
【0126】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrMnNiN21-5-1(材料番号:1.4162)を有するオーステナイト-フェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.04%、クロムの質量割合21.0%~22.0%、モリブデンの質量割合0.10%~0.80%、ニッケルの質量割合1.35%~1.70%、マンガンの質量割合4.0%~6.0%、窒素の質量割合0.20%~0.25%、及び銅の質量割合0.10%~0.80%を有する。
【0127】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNiN23-4(材料番号:1.4362)を有するオーステナイト-フェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.03%、クロムの質量割合22.0%~24.0%、モリブデンの質量割合0.10%~0.60%、ニッケルの質量割合3.5%~5.5%、及び銅の質量割合0.10%~0.60%を有する。
【0128】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNiMoN22-5-3(材料番号:1.4462)を有するオーステナイト-フェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.03%、クロムの質量割合21.0%~23.0%、モリブデンの質量割合2.5%~3.5%、ニッケルの質量割合4.5%~6.5%、及び窒素の質量割合0.10%~0.22%を有する。
【0129】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNiMnMoCuN24-4-3-2(材料番号:1.4662)を有するオーステナイト-フェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.03%、クロムの質量割合23.0%~25.0%、モリブデンの質量割合1.00%~2.00%、ニッケルの質量割合3.0%~4.5%、マンガンの質量割合2.5%~4.0%、及び銅の質量割合0.10%~0.80%を有する。
【0130】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNiMoN25-7-4(材料番号:1.4410)を有するオーステナイト-フェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.03%、クロムの質量割合24.0%~26.0%、モリブデンの質量割合3.0%~4.5%、ニッケルの質量割合6.0%~8.0%、及び窒素の質量割合0.24%~0.35%を有する。
【0131】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNiMoCuWN25-7-4(材料番号:1.4501)を有するオーステナイト-フェライト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.03%、クロムの質量割合24.0%~26.0%、モリブデンの質量割合3.0%~4.0%、ニッケルの質量割合6.0%~8.0%、銅の質量割合0.50%~1.00%、タングステンの質量割合0.50%~1.00%、及び窒素の質量割合0.20%~0.30%を有する。
【0132】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNiMo18-15-3(材料番号:1.4441)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.030%以下、クロムの質量割合17.0%~19.0%、モリブデンの質量割合2.70%~3.0%、ニッケルの質量割合13.0%~15.0%、マンガンの質量割合2.00%以下、銅の質量割合0.50%以下、シリコンの質量割合0.75%以下、リンの質量割合0.025%以下、硫黄の質量割合0.003%以下、及び窒素の質量割合0.10%以下を有する。
【0133】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X5CrNi18-10(材料番号:1.4301)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.07%、クロムの質量割合17.5%~19.5%、ニッケルの質量割合8.0%~10.5%、及び窒素の質量割合≦0.11%を有する。
【0134】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X4CrNi18-12(材料番号:1.4303)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.06%、クロムの質量割合17.0%~19.0%、ニッケルの質量割合11.0%~13.0%、及び窒素の質量割合≦0.11%を有する。
【0135】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X8CrNiS18-9(材料番号:1.4305)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.10%、クロムの質量割合17.0%~19.0%、ニッケルの質量割合8.0%~10.0%、硫黄の質量割合0.15%~0.35%、及び銅の質量割合≦1.00%を有する。
【0136】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNi19-11(材料番号:1.4306)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.030%、クロムの質量割合18.0%~20.0%、ニッケルの質量割合10.0%~12.0%、及び窒素の質量割合≦0.11%を有する。
【0137】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNi18-9(材料番号:1.4307)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.030%、クロムの質量割合17.5%~19.5%、ニッケルの質量割合8.0%~10.5%、及び窒素の質量割合≦0.11%を有する。
【0138】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNi18-10(材料番号:1.4311)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.030%、クロムの質量割合17.5%~19.5%、ニッケルの質量割合8.5%~11.5%、及び窒素の質量割合0.12%~0.22%を有する。
【0139】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X6CrNiTi18-10(材料番号:1.4541)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.08%、クロムの質量割合17.0%~19.0%、ニッケルの質量割合9.0%~12.0%、及びチタンの質量割合0.70%以下を有する。
【0140】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X6CrNiNb18-10(材料番号:1.4550)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.08%、クロムの質量割合17.0%~19.0%、ニッケルの質量割合9.0%~12.0%、及びニオブの質量割合1.00%以下を有する。
【0141】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X3CrNiCu18-9-4(材料番号:1.4567)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.04%、クロムの質量割合17.0%~19.0%、ニッケルの質量割合8.5%~10.5%、及び銅の質量割合3.0%~4.0%を有する。
【0142】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X10CrNi18-8(材料番号:1.4310)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合0.05%~0.15%、クロムの質量割合16.0%~19.0%、モリブデンの質量割合≦0.80%、及びニッケルの質量割合6.0%~9.5%を有する。
【0143】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X5CrNiMo17-12-2(材料番号:1.4401)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.07%、クロムの質量割合16.5%~18.5%、モリブデンの質量割合2.00%~2.50%、ニッケルの質量割合10.0%~13.0%、及び窒素の質量割合≦0.10%を有する。
【0144】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNiMo17-12-2(材料番号:1.4404)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.030%、クロムの質量割合16.5%~18.5%、モリブデンの質量割合2.00%~2.50%、ニッケルの質量割合10.0%~13.0%、及び窒素の質量割合≦0.10%を有する。
【0145】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X6CrNiMoTi17-12-2(材料番号:1.4571)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.08%、クロムの質量割合16.5%~18.5%、モリブデンの質量割合2.00%~2.50%、ニッケルの質量割合10.5%~13.5%、及びチタンの質量割合0.70%以下を有する。
【0146】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNiMoN17-13-3(材料番号:1.4429)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.030%、クロムの質量割合16.5%~18.5%、モリブデンの質量割合2.5%~3.0%、ニッケルの質量割合11.0%~14.0%、及び窒素の質量割合0.12%~0.22%を有する。
【0147】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNiMo18-14-3(材料番号:1.4435)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.030%、クロムの質量割合17.0%~19.0%、モリブデンの質量割合2.5%~3.0%、ニッケルの質量割合12.5%~15.0%、及び窒素の質量割合≦0.10%を有する。
【0148】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X3CrNiMo17-13-3(材料番号:1.4436)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.05%、クロムの質量割合16.5%~18.5%、モリブデンの質量割合2.5%~3.0%、ニッケルの質量割合10.5%~13.0%、及び窒素の質量割合≦0.10%を有する。
【0149】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNiMoN17-13-5(材料番号:1.4439)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.030%、クロムの質量割合16.5%~18.5%、モリブデンの質量割合4.0%~5.0%、ニッケルの質量割合12.5%~14.5%、及び窒素の質量割合0.12%~0.22%を有する。
【0150】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X1NiCrMoCu25-20-5(材料番号:1.4539)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.020%、クロムの質量割合19.0%~21.0%、モリブデンの質量割合4.0%~5.0%、ニッケルの質量割合24.0%~26.0%、銅の質量割合1.20%~2.00%、及び窒素の質量割合≦0.15%を有する。
【0151】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X2CrNiMnMoNbN25-18-5-4(材料番号:1.4565)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.030%、クロムの質量割合24.0%~26.0%、モリブデンの質量割合4.0%~5.0%、ニッケルの質量割合16.0%~19.0%、マンガンの質量割合5.0%~7.0%、窒素の質量割合0.30%~0.60%、及びニオブの質量割合≦0.15%を有する。
【0152】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X1NiCrMoCuN25-20-7(材料番号:1.4529)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.020%、クロムの質量割合19.0%~21.0%、モリブデンの質量割合6.0%~7.0%、ニッケルの質量割合24.0%~26.0%、銅の質量割合0.50%~1.50%、及び窒素の質量割合0.15%~0.25%を有する。
【0153】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X1CrNiMoCuN20-18-7(材料番号:1.4547)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.020%、クロムの質量割合19.5%~20.5%、モリブデンの質量割合6.0%~7.0%、ニッケルの質量割合17.5%~18.5%、銅の質量割合0.50%~1.00%、及び窒素の質量割合0.18%~0.25%を有する。
【0154】
代替的に、ステンレス鋼は、短い材料名称X1CrNiMoCuN24-22-8(材料番号:1.4652)を有するオーステナイト腐食耐性ステンレス鋼であり得る。このステンレス鋼は、炭素の質量割合≦0.020%、クロムの質量割合23.0%~25.0%、モリブデンの質量割合7.0%~8.0%、ニッケルの質量割合21.0%~23.0%、マンガンの質量割合2.0%~4.0%、及び窒素の質量割合0.45%~0.5を有する。
【0155】
本発明のさらなる実施形態では、医療製品は、医療機器、好ましくは手術機器である。本機器は、再使用可能な機器又は使い捨ての機器であり得る。
【0156】
さらに、本機器は、最小限の侵襲機器、即ち、最小限の侵襲手術で使用可能な機器であり得る。
【0157】
手術機器は、特に、拡張機器、把持機器、クランプ機器、切断機器、縫合デバイス、内視鏡、及び複合機器で構成されたグループから選択され得る。
【0158】
拡張機器は、例えば、サージカルフック、レトラクタ、創傷スプレッダ、胸骨スプレッダ、創傷クローサ、スペキュラム、又はトロカールスリーブであり得る。
【0159】
把持機器は、例えば、一組のピンセット、クランプ、ニードルホルダ、又は一組の把持鉗子であり得る。
【0160】
クランプ機器は、例えば、特に腸及び微細な管の一時遮断用のソフトクランプ、又は事前クランプであり得る。
【0161】
切断機器は、例えば、外科用メス、ナイフ、一組のはさみ、一組の分岐鉗子、一組の骨破片鉗子、一組のリング鉗子、電気メス、甲介ばさみ、焼灼器、又は超音波ナイフであり得る。
【0162】
縫合デバイスは、特に、ステープラ又はステープルリムーバであり得る。
【0163】
複合機器は、例えば、中空臓器をクランプし、且つ同時に正確に切断するエンドステープラ又はステープラであり得る。さらに、複合機器は、ユニバーサル縫合デバイスとして、把持及び切断の両方が可能な複合ニードルホルダであり得る。
【0164】
さらに、手術機器は、ハンマーであり得る。
【0165】
さらに、手術機器は、チゼル、特にフラットチゼル又はボーンガウジなどのガウジ、又はキュレット、特にボーンキュレットであり得る。
【0166】
さらに、手術機器は、プローブであり得る。
【0167】
さらに、手術機器は、ボーンパンチであり得る。
【0168】
さらに、手術機器は、レバー又はエレベータ、又はラスパトリであり得る。
【0169】
第2の態様では、本発明は、金属又は合金を含むか、又は金属又は合金で構成された医療製品に関し、医療製品は、本発明の第1の態様による方法によって生産されるか、又は生産可能であって、及び/又は以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する:-(標準水素電極に対して測定される)100mV~1200mV、特に200mV~800mV、好ましくは400mV~500mVの点腐食ポテンシャル、及び/又は、-90°~140°、特に100°~130°、好ましくは110°~130°の接触角、及び/又は、-医療製品の表面の少なくとも一部、特に、一部のみ又は完全にコーティングする、1nm~10nm、特に3nm~10nm、好ましくは5nm~10nmの厚さを有する、特にクロム酸化物の不動態層。
【0170】
前述の点腐食ポテンシャル及び接触角は、医療製品の腐食耐性に関して特に有利である。
【0171】
本発明の文脈内の「点腐食ポテンシャル」という表現は、3電極配置を使用する電気化学セルを用いて決定され得る電気化学ポテンシャルを意味することが理解される。点腐食ポテンシャルは、電流の急上昇を特徴とし、ここで点腐食の始まりでの不動態層の崩壊を表す。点腐食ポテンシャルの増加は、点腐食の傾向の低減を介して腐食耐性の改善をもたらす。
【0172】
点腐食ポテンシャルは、ASTM G5-13-1又はDIN EN ISO10993-15に従って測定され得る。
【0173】
本発明の文脈内の「接触角」という表現は、医療製品の表面に対して医療製品の表面上に液滴によって形成される角度を意味することが理解されるべきである。低減された接触角は、医療製品の表面上の液滴の低減された接触に対応付けられる。接触角の低減は、特に有利なことに、医療製品の腐食耐性及び清掃性の改善をもたらす。
【0174】
接触角は、ASTM D7334-08に従って測定され得る。代替的に、接触角の測定は、dataPhysics(Contact Angle System OCA15 Plus)の接触角測定機器によって、1μlの液滴体積を有する0.9%の塩化ナトリウム溶液(B.Braun)を使用して行われ得る。接触角の測定のために、この場合のサンプルは、通常の製造プロセスで洗われて、測定の前に5分間超音波バス内において脱イオン水で洗浄され得、測定の直前に脱イオン水でサンプルをリンスしてオイルフリー圧縮空気でブロー乾燥させる。
【0175】
医療製品は、好ましくは医療機器、好ましくは手術機器である。
【0176】
医療製品のさらなる特徴及び利点に関して、繰り返しを避けるために、本発明の第1の態様の文脈で与えられる詳細に対する参照が完全に行われる。本方法及び医療製品に関してそこで記載される特徴及び利点はまた、本発明の第2の態様による医療製品に準用して適用可能である。
【0177】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の実施例を参照して、特許請求の範囲及び好ましい実施形態の説明から明らかであろう。ここで、本発明の特徴を各々、それら自体で、又は互いに組み合わせて実施することが可能である。以下に記載される実施形態は、本発明をさらに明らかにするのに役立ち、本発明がそれに制限されることはない。
【発明を実施するための形態】
【0178】
実施例セクション
本発明の方法による手術機器又はその代表的な試料の表面処理
【0179】
使用される試料、そして手術機器も、同一のマルテンサイト不錆鋼(X20Cr13)、及び同一の製造ステップ及びパラメータで生産された。
【0180】
SEM/EDX分析(異質材料及び二重の材料)が機器及びサンプル小板上で行われた。
【0181】
動電位試験(点腐食ポテンシャル)が同様に機器及びサンプル小板上で行われた。
【0182】
接触角測定(接触角)が、サンプル小板(シャドーなしの平坦な表面)上で行われた。
【0183】
光沢測定(光沢)が、サンプル小板(シャドーなしの平坦な表面)上で行われた。
【0184】
3Dレーザ共焦点顕微鏡法(粗さ深さ)が、サンプル小板(シャドーなしの平坦な表面)上で行われた。
【0185】
表面処理の前に、手術機器の現在の生産チェーンに従った手術機器、腐食試料、及びサンプル小板が成形及び熱処理された。
【0186】
後の表面処理のために、手術機器(BH110Rクランプ)、腐食試料、及びサンプル小板は、4時間の期間、酸性溶液内でスライド仕上げによって処理され、次いで、1時間の期間、水溶液内でスライド仕上げによって磨かれた。
【0187】
その後、手術機器、腐食試料、及びサンプル小板は、電気化学的にエッチングされた。この目的のために、当該部分が、11重量%のリン酸、及び40℃の温度の61重量%の硫酸の鉱酸量を有する酸性電解質水溶液内に浸漬され、DC電圧が、アノードで1.5Vの電圧をもたらすように10分間印加された。ここで、2.0A/dm2の電流密度が確立された。
【0188】
最後に、手術機器、腐食試料、及びサンプル小板が不動態化された。この目的のために、当該部分は、10分間、60℃の温度で10重量%のクエン酸溶液内に浸漬された。その後、当該部分は、エタノールに浸けられて洗浄された。
【0189】
生産後、機器及びサンプル小板の表面の形成は、エネルギー分散型X線分光ユニットで走査型電子顕微鏡を介して検査された。SEM調査は、エッチングトレンチが、粒界で、わずかに局所的に、表面上で実質的にランダムに分配されたことを示した。これらは、約5μmの大きさの範囲のオーダーであった。化学組成は均質であり、出発材料と比較して約0.1重量%少ないクロムレベルを有していた。これは、表面の外側に浸出した炭化クロムが理由である。
【0190】
さらに、機器及びサンプル小板の表面のトポグラフィーは、3Dレーザ共焦点顕微鏡法及び金属組織セクションによって評価された。3Dレーザ共焦点測定によって、0.5μmの平均粗さ深さを求めることができた。これは、金属組織調査によると、1~3μmの範囲内であったエッチングトレンチの深さに起因していた。
【0191】
反射特性の変化は、試験小板上で光沢測定によって検査された。3.7光沢単位(20°)及び21.6光沢単位(60°)の値で、光沢の明確な低減が見出された。従って、反射特性が強烈にマットであることを求めることができた。
【0192】
液体によるぬれの分析は、試験小板上で接触角測定によって行われた。ここで、116.3°の平均接触角が求められた。
【0193】
最後に、形成された表面の電気化学/腐食特性が、腐食試料上で動電位分極測定によって検査され、点腐食ポテンシャルが確認された。試験試料上で測定された測定値が機器に関するものかどうかについての比較のために、点腐食ポテンシャルが実験室機器上で測定された。ここで、試験試料についての結果が確認された。ここで、475mVの点腐食ポテンシャルを記録することができた。
【0194】
2.一般的なタイプの方法による手術機器の表面処理
【0195】
手術機器(BH110Rクランプ)、腐食試料、及びサンプル小板はまず、4時間の期間、スライド仕上げによって処理された。その後、手術機器及び試料は、1時間の期間、磨かれた。
【0196】
その後、手術機器及び試料はブラストによって処理された。この目的のために、40μm~70μmの平均直径を有するガラスビーズが使用された。ブラストは、4バールの圧力下で、噴霧ブラストシステムで行われた。
【0197】
続いて、手術機器及び試料は不動態化された。この目的のために、10%のクエン酸溶液が使用された。不動態化は10分の期間、55℃の温度で行われた。
【0198】
手術機器及び試料の表面処理の結果、多くの例の二重の材料又は重畳材料が検出可能であった。さらに、1.4%の異質材料移動が検出された。粗さ深さは、0.151μmの領域であった。さらに、サンプル小板は、66.0°の接触角を有していた。光沢は、41.9光沢単位(20°)及び159.8光沢単位(60°)であることが見出され、従って、わずかにマットであると記載することができた。腐食試料の点腐食ポテンシャルは、386mVであった。
【0199】
3.結論
本発明の方法及び一般的なタイプの方法の上述の比較は、本発明の本方法が、非常に低い反射率(光沢)を有する、腐食耐性がより優れた製品につながることを示す。
【国際調査報告】