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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】光学装置、方法および使用
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/352 20140101AFI20230515BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20230515BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B23K26/352
B23K26/064 Z
B23K26/067
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560980
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2021059422
(87)【国際公開番号】W WO2021205036
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】102020204656.5
(32)【優先日】2020-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522391615
【氏名又は名称】サーファンクション ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】522391626
【氏名又は名称】ディーリップ ウーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ボグダン,ヴォイシアット
(72)【発明者】
【氏名】ラザーニ,アンドレス ファビアン
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AC03
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA26
4E168DA38
4E168DA45
4E168DA46
4E168DA47
4E168EA05
4E168EA13
4E168EA14
(57)【要約】
本発明は、試料を干渉構造化するための光学装置、その使用、および方法に関する。レーザがレーザビームを放射し、レーザビームはスプリッタにより少なくとも2つの部分ビームに分割される。ビーム路には第1の円柱レンズおよび第2の円柱レンズが、部分ビームを干渉領域に屈折するために配置されている。部分ビームは、試料の構造領域において線状の構造要素を備える構造が形成可能であるように干渉する。第1の円柱レンズの円柱軸は、第2の円柱レンズの円柱軸に対して平行に配向されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(13)を干渉構造化するための光学装置(10)であって、レーザビーム(8)を放射するためのレーザ(12)と、前記レーザビーム(8)を少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)に分割するためのビームスプリッタ(1)と、少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)と、前記少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)を干渉領域(14)の方向に屈折するための少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)と、を備え、前記ビームスプリッタ(1)、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)、および前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)は、前記レーザビーム(8)の前記少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)が前記干渉領域(14)で、前記試料(13)の構造領域(16)において線状の構造要素(15a)を備える構造(9)が形成可能であるよう互いに干渉するよう、前記レーザビーム(8)のビーム路に配置されており、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)は、前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)の円柱軸(ZA)に対して平行に配向されている、光学装置。
【請求項2】
前記ビームスプリッタ(1)は、回折光学素子として、特にグリッドとして構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)と前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)との間隔は、少なくとも、特に実質的に2つの焦点距離の和である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の光学装置。
【請求項4】
少なくとも1つの第3の円柱レンズ(11)が集光レンズとして設けられており、その円柱軸(ZA)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)に対して垂直、かつ光軸(z)に対して垂直に配向されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第3の円柱レンズ(11)は、前記ビームスプリッタ(1)のビーム上流および/またはビーム下流に配置されている、ことを特徴とする請求項4に記載の光学装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第3の円柱レンズ(11)までの前記干渉領域(14)の間隔は、実質的にその焦点距離に相当する、ことを特徴とする請求項4または5に記載の光学装置。
【請求項7】
少なくとも1つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)が拡散レンズとして設けられている、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)の光軸(ZA)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)に対して平行に配置されている、ことを特徴とする請求項7に記載の光学装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)のビーム下流に配置されている、ことを特徴とする請求項7または8に記載の光学装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)は、少なくとも1つの軸(x、y、z)において並進可能および/またはその円柱軸(ZA)を中心に回転可能である、ことを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項11】
各部分ビーム(8.1,8.2)には、ちょうど1つの第4の円柱レンズ(4.1,4.2)が割り当てられている、ことを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項12】
少なくとも2つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)は、互いに独立して可動である、ことを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項13】
少なくとも2つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)は、互いに同期して可動である、ことを特徴とする請求項7から12のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項14】
少なくとも1つの第5の円柱レンズ(5)が集光レンズとして設けられており、その円柱軸(ZA)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)に対して平行に配向されており、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)と共にレンズ系(19)を形成する、ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項15】
少なくとも1つの第6の円柱レンズ(6)が集光レンズとして設けられており、その円柱軸(ZA)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)に対して平行に配向されており、前記少なくとも1つの第6の円柱レンズは、前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)のビーム上流に配置されている、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項16】
少なくとも1つの第7の円柱レンズ(7)が集光レンズとして設けられており、その円柱軸(ZA)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)に対して平行に配向されており、前記少なくとも1つの第7の円柱レンズは、前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)のビーム上流に配置されている、ことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)は、前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)および前記少なくとも1つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)と共に、および/または前記少なくとも1つの第7の円柱レンズ(7)は、前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)および前記少なくとも1つの第6の円柱レンズ(6)と共に、それぞれレンズ系(19)を形成する、ことを特徴とする請求項7から16のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項18】
少なくとも1つの第1のプリズム(20)が設けられており、そのプリズム軸(PA)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)に対して平行に配向されている、ことを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの第1のプリズム(20)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)のビーム下流に配置されている、ことを特徴とする請求項18に記載の光学装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第1のプリズム(20)の表面は、光軸(z)に対して垂直に配向されている、ことを特徴とする請求項18または19に記載の光学装置。
【請求項21】
少なくとも1つの第2のプリズム(23,23.1,23.2)が設けられており、そのプリズム軸(PA,PA21,PA22)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)に対して平行に配向されている、ことを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つの第2のプリズム(23,23.1,23.2)の基面(A,A21,A22)は、前記少なくとも1つの第1のプリズム(20)の基面(A)と共に長方形に相当する、ことを特徴とする請求項21に記載の光学装置。
【請求項23】
少なくとも2つの第2のプリズム(23,23.1,23.2)は、互いに独立して可動である、ことを特徴とする請求項21または22に記載の光学装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つの第1のプリズム(20)および/または前記少なくとも1つの第2のプリズム(23,23.1,23.2)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)と前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)との間に配置されている、ことを特徴とする請求項18から23のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項25】
前記ビームスプリッタ(1)および/または少なくとも1つの円柱レンズ(2,3,11,4,4.1,4.2,5,6,7)および/または少なくとも1つのプリズム(20,23,23.1,23.2)は、光軸(z)に対して平行に並進可能である、ことを特徴とする請求項1から24のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項26】
少なくとも1つのビームエキスパンダ(18)が、前記レーザビーム(8)のビーム断面を変更するために、および/または構造周期(Λ)を変更するために設けられている、ことを特徴とする請求項1から25のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項27】
前記少なくとも1つのビームエキスパンダ(18)は、3つの円柱レンズ(3,6,7)によって、および/または第1のプリズム(20)と少なくとも1つの第2のプリズム(23,23.1,23.2)とを備える円柱レンズ(3)によって形成されている、ことを特徴とする請求項26に記載の光学装置。
【請求項28】
前記干渉領域(14)は、線状の構造要素(15a)を備える干渉パターン(15)を有する、ことを特徴とする請求項1から27のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項29】
前記干渉パターン(15)は、少なくとも1つの方向(x、y)においてユーザ定義された、特に可変の構造周期(Λ)を有する、ことを特徴とする請求項28に記載の光学装置。
【請求項30】
ビーム成形装置(17)が設けられており、前記ビーム成形装置は、前記レーザビーム(8)の断面プロファイルがユーザ定義され可変であるように構成されている、ことを特徴とする請求項1から29のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項31】
前記ビーム成形装置(17)は、前記レーザビーム(8)の楕円または多角形の断面プロファイルを形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項30に記載の光学装置。
【請求項32】
試料(13)を干渉構造化するための方法であって、レーザビーム(8)を放射するためのレーザ(12)を提供するステップと、前記レーザビーム(8)を少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)に分割するステップと、少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)を配置するステップと、少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)を、前記少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)が干渉領域(14)の方向に屈折されるように配置し、前記レーザビーム(8)の前記少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)が前記干渉領域(14)で互いに干渉して、前記試料(13)の構造領域(16)において線状の構造要素(15a)を備える構造(9)が形成可能であるようにするステップと、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)を前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)の円柱軸(ZA)に対して平行に配向するステップと、を備える方法。
【請求項33】
請求項1から31のいずれか一項に記載の光学装置(10)によって実施される、ことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1から31のいずれか一項に記載の光学装置(10)の使用であって、試料(13)、特に構成部材を干渉構造化するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を干渉構造化するための光学装置、方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明では、試料は、例えば複雑な構成要素に組み込まれ、加工中に比較的に大面積の構造が設けられる構成部材である。生産性の観点で、構造化を大面積で、かつ可及的に短時間で形成することが望まれる。
【0003】
この目的のために、試料の構造化を干渉構造化によって行うことが公知であり、ここではレーザビームが2つの部分ビームに分割され、2つの部分ビームはさらなる光学構成要素によって試料の構造領域で互いに干渉し、互いに干渉した部分ビームの空間的干渉エネルギー分布の結果として試料の構造化が形成される。この種の公知の装置は、例えば特許文献1に開示されており、これにより特に、線状の構造要素を備える構造を形成することができる。光学構成要素が多数あるので、公知の装置は高価であり、誤調整に対して脆弱である。したがって個々の部分ビームを成形および偏向する際に、特に大きな労力を費やさなければならず、部分ビームのビーム偏向の際に角度を正確に維持しなければならない。このことは、目的どおりの影響を、個々の構造または構造要素における変化に及ぼすために、加工中にパラメータを変更すべき場合に特に複雑である。その他、部分ビームが進んだ経路長の差が、特に、短いまたはそれどころが超短のパルス持続時間を備えるパルス状のレーザビームの場合には、レーザビームのコヒーレンス長を超えるほど大きくなり、その結果、部分ビームが干渉せず、したがって試料の構造化が行われない。したがって公知の装置は、パルス持続時間がフェムト秒および/またはピコ秒の範囲にある超短のレーザパルスには適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2596899号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の課題は、従来技術の欠点を排除しながら、試料のより効率的な干渉構造化を可能にする改善された装置を提供することであると見なすことができ、この装置は、簡単でコスト的に有利な取り扱いを提供し、特に、短いパルス持続時間での試料の干渉構造化を可能にすることが望まれる。対応することが、方法および使用にも当てはまる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のこの課題は、試料を干渉構造化するための光学装置であって、レーザビームを放射するためのレーザと、レーザビームを少なくとも2つの部分ビームに分割するためのビームスプリッタと、少なくとも1つの第1の円柱レンズと、少なくとも2つの部分ビームを干渉領域の方向に屈折するための少なくとも1つの第2の円柱レンズと、を備え、ビームスプリッタ、少なくとも1つの第1の円柱レンズ、および少なくとも1つの第2の円柱レンズは、レーザビームの少なくとも2つの部分ビームが干渉領域で、試料の構造領域において線状の構造要素を備える構造が形成可能であるよう互いに干渉するよう、レーザビームのビーム路に配置されており、少なくとも1つの第1の円柱レンズの円柱軸は、少なくとも1つの第2の円柱レンズの円柱軸に対して平行に配向されている、光学装置によって解決される。
【0007】
本発明の課題は、その他に、以下のステップを備える、試料を干渉構造化するための方法によって解決される。この方法は、レーザビームを放射するためのレーザを提供するステップと、レーザビームを少なくとも2つの部分ビームに分割するステップと、少なくとも1つの第1の円柱レンズを配置するステップと、少なくとも1つの第2の円柱レンズを、少なくとも2つの部分ビームが干渉領域の方向に屈折されるように配置し、レーザビームの少なくとも2つの部分ビームが干渉領域で互いに干渉して、試料の構造領域において線状の構造要素を備える構造が形成可能であるようにするステップと、少なくとも1つの第1の円柱レンズの円柱軸を少なくとも1つの第2の円柱レンズの円柱軸に対して平行に配向するステップと、を備える。
【0008】
さらに本発明の課題は、試料、特に構成部材を干渉構造化するための本発明の装置の使用によって解決される。
【0009】
本発明は、少なくとも1つの第1および少なくとも1つの第2の円柱レンズの円柱軸を本発明に従って配向することによって、部分ビームも含めたレーザビームの操作が、光軸を含みかつ少なくとも1つの第1の円柱レンズの円柱軸に対して垂直に配置された第1の平面において目的どおりに可能であり、第1の平面に対して垂直に配置された第2の平面においてレーザビームのビーム路が影響を受けることがない、という基本思想に基づくものである。これにより、試料の干渉構造化に、特に簡単かつ効率的に影響を及ぼすことができる。本発明の装置の取り扱いは、これによって公知の装置より格段に簡素化される。対応することが、本発明の方法および本発明の使用にも当てはまる。本発明の装置のさらなる利点は、部分ビームの経路差が比較的小さく、従ってレーザビームのコヒーレンス長を超えず、その結果、特に、短いおよび/または超短のレーザパルスを備えるレーザビームにおいても部分ビームの干渉が行われ、ひいては試料の干渉構造化が可能である、という事実から得られる。したがって本発明の装置は、パルス持続時間の短いレーザビームに特に適する。
【0010】
本発明において干渉構造化とは、少なくとも2つのビームの干渉による試料の構造化である。部分ビームの干渉によって形成される空間的エネルギー分布は、試料の構造化が干渉構造のエネルギー分布に対応して行われるように試料材料と相互作用する。特にこれにより、試料の構造化を、構造周期に配置された線状の構造要素により行うことができる。その点で干渉構造化は、例えば除去による試料の材料切削と、例えば光重合による試料材料の目的どおりの改変とを含む。さらに干渉構造化によって、化学的組成の目的どおりの精錬および/または目的どおりの改変、および/または試料材料の(結晶)構造の改変を行うことができる。試料の構造化は、本発明では例えば試料表面および/または試料容積部内で行われ、特に試料を、干渉構造化によってリソグラフィックに加工することができ、このことは干渉リソグラフィーとも称される。試料の構造化は、試料に技術的機能、美的印象および/またはラベルを付するために用いられる。ビーム上流は、本発明ではレーザビームの伝搬方向とは反対の方向を表し、したがってこの方向はレーザに向いている。対応してビーム下流は、レーザから離れる方向を表す。
【0011】
レーザは、ダイオード励起固体レーザとして構成することができ、特にパルス状のレーザビームを放射することができ、レーザパルスは、フェムト秒、ピコ秒、および/またはナノ秒の範囲のパルス持続時間、およびUV、VIS、および/またはIR範囲の波長を有することができる。周知のようにフェムト秒および/またはピコ秒の範囲のパルス持続時間を有するレーザパルスは、超短パルスと称される。好適にはレーザパルスのパルス持続時間は、10fs~10msの間である。レーザは、好適には視準化されたレーザビームを放射し、このレーザビームは光軸に対して特に平行に配向されている。
【0012】
ビームスプリッタは、好適には回折光学素子であり、特にグリッドとして構成されている。択一的にビームスプリッタは、プリズムとして、または例えば半透明ミラーとして構成することができる。好適にはミラーは、部分反射性ミラーとして構成されている。少なくとも2つの部分ビームは、特に共通の平面に配置されており、この平面は光軸を含み、少なくとも1つの第1の円柱レンズの円柱軸に対して垂直に配置されている。本装置の簡単な構成のために、少なくとも2つの部分ビームは、それぞれ光軸に対して同じ角度で配置されたそれぞれの伝搬方向を有する。本発明のさらなる形態では、少なくとも2つの部分ビームは、強度的に同じに構成されており、したがって例えば、第1の部分ビームの強度は、第2の部分ビームの強度と実質的に同じである。
【0013】
本発明において干渉角とは、部分ビームが、少なくとも1つの第2の円柱レンズの後方で光軸に対して干渉領域に向かって屈折される角度である。干渉角は、部分ビームが第1および第2の平面において本発明により互いに独立して操作できるので、第1の平面、例えばyz面、および/または第2の平面、例えばxz面に関連することができる。干渉角は、干渉パターンの構造周期を変更するために可変とすることができる。この目的で、好適にはビームスプリッタは、光軸に対して平行に並進移動することができる。
【0014】
少なくとも1つの第1の円柱レンズは、少なくとも1つの凸表面を備える集光レンズとして構成することができ、および/またはビームスプリッタのビーム上流またはビーム下流に配置することができる。その他、少なくとも1つの第1の円柱レンズは、光軸に対して平行に並進移動することができる。
【0015】
少なくとも1つの第2の円柱レンズは、好適には、部分ビームが互いに干渉する干渉領域に向かって屈折されるように配置されており、好適には少なくとも1つの凸表面を備える集光レンズとして構成されている。少なくとも1つの第2の円柱レンズの焦点距離は、好適には少なくとも1つの第1の円柱レンズの焦点距離よりも小さく、したがって可及的に大きな干渉角が調整可能である。本発明の装置の調節を改善するために、少なくとも1つの第2の円柱レンズは、好適には光軸に対して平行に並進移動することができる。
【0016】
少なくとも1つの第1の円柱レンズと少なくとも1つの第2の円柱レンズとの間隔は、好適には少なくとも、または最大でも、特に実質的に2つの焦点距離の和である。これにより、部分ビームをそれぞれ、実際に第2の円柱レンズの前方にある、または仮想的にその後方にある焦点に集束することができる。部分ビームの経路差は、部分ビームの干渉が体積的に行われるように小さく、したがって干渉領域は3次元であり、すなわち特に光軸の方向に広がりを有する。これにより、特に超短のパルス長を使用する場合、試料の体積的な構造化を行うことができる。好適には全ての部分ビームの焦点は、光軸に対して垂直に配向することのできる共通の焦点平面にある。本発明のさらなる一形態では、第1および第2の円柱レンズの凸表面は互いに向き合っており、および/または第1と第2の円柱レンズの平表面は互いに背を向けている。
【0017】
好適には少なくとも1つの第3の円柱レンズが集光レンズとして設けられており、その円柱軸は、少なくとも1つの第1の円柱レンズの円柱軸に対して垂直に、特に光軸に対して垂直に配向されており、したがって少なくとも1つの第3の円柱レンズにより、第1の平面とは独立して第2の平面のビーム路に影響を及ぼすことができる。本発明の特に簡単な発展形態では、少なくとも1つの第3の円柱レンズは、ビームスプリッタのビーム上流および/またはビーム下流に配置されている。好適には、少なくとも1つの第3の円柱レンズからの干渉領域の間隔は、その焦点距離に相当し、したがってレーザビームは、その部分ビームも含めて、第2の平面で干渉領域に集束される。択一的に、少なくとも1つの第3の円柱レンズからの干渉領域の間隔は、その焦点距離よりも大きいかまたは小さい。少なくとも1つの第3の円柱レンズが、光軸に対して平行に並進移動することにより、少なくとも1つの第3の円柱レンズの円柱軸に対して直角に干渉パターンの広がりが可変である。
【0018】
本発明の有利な形態では、少なくともが1つの第4の円柱レンズが凹レンズとして設けられており、その円柱軸は、少なくとも1つの第1の円柱レンズの円柱軸に対して特に平行に配置されている。少なくとも1つの第4の円柱レンズは、ビームスプリッタおよび/または少なくとも1つの第1の円柱レンズのビーム下流に配置することができ、しかし好適には部分ビームの全ての焦点のビーム上流に配置することができる。少なくとも1つの第4の円柱レンズは、光軸に対して特に平行に並進移動することができる。その他、少なくとも1つの第4の円柱レンズは、その円柱軸を中心に回転移動することができる。本発明の特に有利な態様では、各部分ビームにちょうど1つの第4の円柱レンズが割り当てられており、第4の円柱レンズは、それぞれその円柱軸を中心に回転移動することができる。各部分ビームを個別に調節するために、特に少なくとも2つの第4の円柱レンズが互いに独立して可動であり、択一的にまたは付加的に、簡単な調節のために少なくとも2つの第4の円柱レンズは、互いに同期して可動である。少なくとも1つの第4の円柱レンズは、少なくとも1つの部分ビームが第4の円柱レンズの後方で視準化されるように配置することができる。好適には少なくとも1つの第4の円柱レンズは、少なくとも1つの第1の円柱レンズおよび少なくとも1つの第2の円柱レンズと共にレンズ系を構成し、このレンズ系は全体として光軸に対して平行に可動であり、レンズ系の構成要素の相対位置は、光軸に沿って互いに一定に保つことができる。
【0019】
本発明のさらなる有利な形態では、少なくとも1つの第5の円柱レンズが集光レンズとして設けられており、その円柱軸は、少なくとも1つの第1の円柱レンズの円柱軸に対して平行に配向されており、特に少なくとも1つの第1の円柱レンズと共にレンズ系を構成し、したがって第1の円柱レンズの光学的誤差を第5の円柱レンズによって補正することができる。そのために第5の円柱レンズは、好適には少なくとも1つの第1の円柱レンズに直接隣接して配置されている。
【0020】
好適には、少なくとも1つの第6の円柱レンズが集光レンズとして設けられており、その円柱軸は、少なくとも1つの第1の円柱レンズの円柱軸に対して平行に配向されており、少なくとも1つの第2の円柱レンズのビーム上流に配置することができる。少なくとも1つの第6の円柱レンズの凸表面は、少なくとも1つの第1の円柱レンズに向くことができる。その他に、少なくとも1つの第7の円柱レンズを凹レンズとして設けることができ、その円柱軸は、少なくとも1つの第1の円柱レンズの円柱軸に対して平行に配向されており、少なくとも1つの第2の円柱レンズのビーム上流に配置することができる。少なくとも1つの第7の円柱レンズは、好適には少なくとも1つの第6の円柱レンズおよび少なくとも1つの第2の円柱レンズと共に、光学的誤差を補正するためのレンズ系を構成する。そのために、特に少なくとも1つの第6の円柱レンズおよび/または少なくとも1つの第7の円柱レンズおよび/または少なくとも1つの第2の円柱レンズは、互いに独立して光軸に対して平行に並進移動することができる。
【0021】
本発明のさらなる形態では、第1のプリズムが設けられており、基面に対して垂直に配置されたそのプリズム軸は、少なくとも1つの第1の円柱レンズの円柱軸に対して平行に配向されている。第1のプリズムは、特にレーザビームに対して、その部分ビームも含めて、集束性の光学作用を有する。特に第1のプリズムは、多角形の基面を有し、この基面は、例えば好適には等脚三角形の形状である。択一的に、少なくとも1つのプリズムの基面は、丸く、特に楕円形にすることができる。少なくとも1つの第1のプリズムの少なくとも1つの表面は、光軸に対して垂直に配向することができる。少なくとも1つの第1のプリズムは、好適には、光軸に平行に並進移動することができ、および/または少なくとも1つの第1の円柱レンズの下流に配置されている。
【0022】
好適には、少なくとも1つの第2のプリズムが設けられており、そのプリズム軸は、少なくとも1つの第1の円柱レンズの円柱軸に対して平行に配向されている。例えば、少なくとも1つの第2のプリズムは、レーザビームに対して、その部分ビームも含めて、拡散性の光学作用を有する。その他に、少なくとも1つの第2のプリズムは、組み立てられた2つの直角三角形に対応する基面を有することができる。第2のプリズムは、光軸に対して平行に並進移動することができる。本発明の有利な形態では、第1のプリズムおよび少なくとも1つの第2のプリズムの基面は共に長方形に対応する。特に好ましい形態では、各部分ビームにちょうど1つの第2のプリズムが割り当てられており、特に第2のプリズムの基面は直角三角形に対応する。少なくとも2つの第2のプリズムは互いに独立して可動であり、および/または少なくとも2つの第2のプリズムは互いに同期して可動である。少なくとも1つの第1のプリズムおよび/または少なくとも1つの第2のプリズムは、少なくとも1つの第1の円柱レンズと少なくとも1つの第2の円柱レンズとの間に配置することができる。
【0023】
ビームスプリッタおよび/または少なくとも1つの円柱レンズおよび/または少なくとも1つのプリズムは、好適には、干渉構造のパラメータを変更し、および/または光学的誤差を補正するために、光軸に対して平行に並進移動することができる。
【0024】
さらに好適には、レーザビームの、その部分ビームも含めたビーム断面を変更するために、および/または構造周期を変更するために、少なくとも1つのビームエキスパンダが設けられている。ビームエキスパンダは、例えば部分ビームの干渉角を変更するように構成することができ、それにより、干渉パターンの構造周期を変更することができる。例えば、少なくとも1つのビームエキスパンダは、3つの円柱レンズによって、および/または第1のプリズムおよび少なくとも1つの第2のプリズムを備える円柱レンズによって形成されている。その構成要素の少なくとも1つが可動であるので、ビームエキスパンダは好適には可変ビームエキスパンダとして構成されている。したがって機能的にビームエキスパンダは特にレーザビームの光学的拡大装置に対応し、倍率値が1より大きい場合はレーザビームの断面を拡大し、倍率値が0から1の間の場合はレーザビームの断面を縮小する。
【0025】
干渉パターンは、好適には線状構造要素を有し、その伸張方向は、第1の円柱レンズの円柱軸に対してそれぞれ平行に配置されている。その他に干渉パターンは、少なくとも1つの方向において、ユーザ定義された、特に可変の構造周期を有することができ、この構造周期は、隣接する2つの構造要素間の間隔に対応する。干渉パターンは、好適には長方形または楕円形であり、干渉パターンは、第1の円柱レンズの円柱軸に対して平行に配向された第1の軸において、第1の円柱レンズの円柱軸に対して垂直に配置された第2の軸におけるものとは異なる広がりを有することができる。干渉パターンの広がりおよびその構造周期は、特に、本発明による装置の光学構成要素を変更することによって、好適には位置および/または光学特性を変更することによって可変である。その他に、干渉パターンの空間的位置は、特に少なくとも1つの第4の円柱レンズの移動によって可変である。
【0026】
特定の方向における干渉パターンの広がりは、特に、円柱軸がこの方向に対して垂直に配置された円柱レンズの少なくとも1つを変更することによって可変であり、変更は、この意味において、焦点距離の変更および/または位置の変更を含む。例えば、y方向における干渉パターンの広がりは、円柱軸がx方向に対して平行に配置された円柱レンズの少なくとも1つの焦点距離を変更することによって可能であり、その逆も当てはまる。
【0027】
好適にはビーム成形装置が設けられており、このビーム成形装置は、干渉構造の形状に影響を与えるために、レーザビームの断面プロファイルがユーザ定義されたように可変であるよう構成されており、断面プロファイルは、特に回折作用によって可変である。特に好適には、ビーム成形装置は、特に断面プロファイルのガウス空間強度分布から、レーザビームの楕円形または多角形、特に長方形の断面プロファイルを形成するように構成されており、後者は「シルクハット」あるいは「フラットトップ」プロファイルと称される。レーザビームの断面プロファイルを変更することによって干渉パターンの形状を変更することができ、例えば、すでに述べたビーム成形装置により得ることができる長方形の断面プロファイルは、干渉パターンの長方形の形状を生じさせる。ビーム成形装置は、ビームスプリッタと一体的に構成することができる。
【0028】
特に好ましい形態では、単一の円柱レンズによって全ての部分ビームに影響を与えるために、単一の第1の円柱レンズおよび/または単一の第2の円柱レンズが設けられている。その他に、光学的誤差を補正するために、各円柱レンズをレンズ系により置き換えることが可能である。レーザビームは、部分ビームも含めて、少なくとも部分的に少なくとも1つの第1の円柱レンズと少なくとも1つの第2の円柱レンズとの間で光軸に対して平行に、特に視準化されるように配向することができ、または拡散を有することができる。拡散によって干渉領域における部分ビーム断面の大きさに、ひいては干渉パターンの大きさに影響を与えることができる。
【0029】
本発明による方法は、好適には、本発明による光学装置を用いて実施される。
【0030】
本発明のさらなる利点および特徴は、特許請求の範囲、および本発明の実施例が図面を参照して詳細に説明された以下の記載から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】yz面における本発明の光学装置の一実施例を示す。
図2】xz面における、図1の実施例を示す。
図3図1の実施例により得られた干渉パターンを示す。
図4】本発明の装置のさらなる一実施例を示す。
図5a】本発明の装置のさらなる一実施例を示す。
図5b】ビームスプリッタが移動された図5aの実施例を示す。
図6】第2の円柱レンズの焦点距離が変更された図5の実施例を示す。
図7】第3の円柱レンズを備える本発明の光学装置のさらなる実施例を示す。
図8図7の実施例により得られた干渉パターンを示す。
図9】第3の円柱レンズの位置が変更された図7の実施例を示す。
図10】本発明の装置のさらなる一実施例を示す。
図11a】第4の円柱レンズを備える本発明の光学装置のさらなる実施例を示す。
図11b】構成要素が移動された図11aの実施例を示す。
図12】2つの第4の円柱レンズおよび第5の円柱レンズを備える本発明の光学装置のさらなる実施例を示す。
図13】第4の円柱レンズが移動された図12の実施例を示す。
図14a】第6および第7の円柱レンズを備える本発明の光学装置のさらなる実施例を示す。
図14b】構成要素が移動された図14aの実施例を示す。
図15a】第5および第6の円柱レンズを備える本発明の光学装置のさらなる実施例を示す。
図15b】構成要素が移動された図15aの実施例を示す。
図16a】第1のプリズムを備える本発明の光学装置のさらなる実施例を示す。
図16b】第1のプリズムが移動された図16aの実施例を示す。
図17】第2のプリズムを備える本発明の光学装置のさらなる実施例を示す。
図18a】2つの第2のプリズムを備える本発明の光学装置のさらなる実施例を示す。
図18b】プリズムが移動された図18aの実施例を示す。
図19a】2つの第4の円柱レンズおよびプリズムを備える本発明の光学装置のさらなる実施例を示す。
図19b】プリズムが移動された図19aの実施例を示す。
図20】レーザおよび試料を備える図1の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の光学装置10の一実施例をデカルト座標系でyz面に概略的に示し、本発明ではz軸が光軸zに対応し、x軸とy軸は、それぞれz軸に対して垂直であり、かつ互いに垂直に配置されている。
【0033】
図1に図示されていないレーザ12がレーザビーム8を放射し、このレーザビームは、視準化されてビームスプリッタ1に当たり、2つの部分ビーム8.1,8.2に分割され、両者は最終的に、それぞれ光軸zに対して同じ角度で、すなわちこれに対して軸対称に偏向され、それぞれ相変わらず視準化されている。ビームスプリッタ1は、例えば回折光学素子としてグリッドの形で構成されており、したがってレーザビーム8の分割は回折効果に起因する。択一的にビームスプリッタ1は、部分反射性ミラーとして構成することができる。この点で部分ビーム8.1,8.2は、y方向にだけ偏向され、部分ビーム8.1,8.2はx方向にはオフセットされない。部分ビーム8.1,8.2は、ビームスプリッタ1の下流で、円柱軸ZAがx軸に対して平行に配向された第1の円柱レンズ2に当たる。第1の円柱レンズ2のビームスプリッタ1に向いた表面は、図1のyz面で凸状に構成されており、一方、ビームスプリッタ1の反対側の表面は平坦であり、したがって第1の円柱レンズ2は、凸平集光レンズの形状を有する。第1の円柱レンズ2により、それぞれ視準化されてこれに当たる両方の部分ビーム8.1,8.2は、それぞれ焦点に集束され、ここで2つの焦点はそれぞれ第1の円柱レンズ2に対して同じ距離にある。それぞれの焦点を通過後、部分ビーム8.1,8.2は拡散し、第2の、ここでは、ビームスプリッタ1に向いたその表面は平坦に、ビームスプリッタ1とは反対側の表面は凸状に構成されている平凸円柱レンズ3に当たる。第2の円柱レンズ3の円柱軸ZAはx軸に対して平行に配向されており、したがって第1の円柱レンズ2の円柱軸ZAと第2の円柱レンズ3の円柱軸ZAとは、互いに平行に配向されている。
【0034】
2つの部分ビーム8.1,8.2は、第2の円柱レンズ3によってそれぞれ視準化され、最終的な干渉角θの下で光軸zに対して、図1に図示しない加工すべき試料13の方向に互いに偏向され、これにより部分ビーム8.1,8.2は干渉領域14で互いに干渉し、干渉パターン15を形成し、ここで試料13は干渉領域14に配置されている。図20を参照。干渉パターン15の空間的エネルギー分布およびレーザビームと試料材料との相互作用によって、構造領域16における試料13の構造化が、図3の干渉パターン15に基づき示されるように行われる。試料13の構造9は、線形の構造要素15aを備える干渉パターン15および予め定義された構造周期Λによって形成される。構造周期については後でさらに立ち入る。
【0035】
図1から、部分ビーム8.1,8.2は光軸zに対して対称であることが理解される。第2の円柱レンズ3からの第1の円柱レンズ2の間隔dは、2つの円柱レンズ2,3の焦点距離の和に相当する。第1と第2の円柱レンズ2,3の円柱軸ZA,ZAが互いに平行に配向されているので、レーザビーム8は、その部分ビーム8.1,8.2も含めて、yz面において、xz面から独立して操作することができる。これにより、試料13上で得られた構造9の幾何形状をy軸において、x軸から独立して操作することができ、このことは、以下の本発明の実施例によっても示される。図1に示された干渉角θは、そこに示されたyz面に関連するものであり、このyz面ではすでに述べたように部分ビーム8.1,8.2の分割が行われる。部分ビーム8.1,8.2は第1の円柱レンズ2と第2の円柱レンズ3との間で集束されるので、部分ビーム8.1,8.2の経路差、すなわち部分ビーム8.1,8.2がそれぞれ進んだ経路の差は、空間的に可及的に大きな干渉領域14を得るために可及的に小さく維持される。
【0036】
図2は、図1のyz面に対して垂直に配置されたxz面において、図1の装置10を示す。ビームスプリッタ1の性質に基づき、レーザビーム8の部分ビーム8.1,8.2は、すでに述べたようにyz面でだけ偏向され、したがって部分ビーム8.1,8.2はxz面においては重なり、そこでは別個に見ることができない。第1の円柱レンズ2と第2の円柱レンズ3の円柱軸ZA,ZAは、両方ともそれぞれx軸に対して平行に配向されているから、部分ビーム8.1,8.2はxz面においては、第1の円柱レンズ2によっても第2の円柱レンズ3によっても屈折されない。レーザビーム8、特にその部分ビーム8.1,8.2は、xz面において視準化され、干渉領域14に向けられる。
【0037】
図3は、図1および2の光学装置10により得られる干渉パターン15、および線形の構造要素15aを備える、試料13の構造領域16における構造9も示し、線形の構造要素は、予め定義された、ここでは固定の構造周期Λに並んで配置されており、線形の構造要素15aは、y軸に対して平行に配向されており、x軸に沿って互いに隣接して配置されている。本発明では、構造周期Λは、互いに隣接する2つの構造要素15a間の間隔を表す。図3の左に配置された干渉パターン15は楕円形であり、x方向の半軸は、y方向の半軸よりも大きい。試料13の構造9の形成は、すでに述べたように部分ビーム8.1,8.2の干渉によって行われる。適用事例に応じて、ビームスプリッタ1に向いた試料表面または試料13内部の試料容積部が加工される。レーザビームと試料材料との相互作用により、試料13は、例えば切除プロセスに基づく材料切削によって、および/または例えば重合による試料材料の改質によって加工される。
【0038】
楕円形の干渉パターン15の他に、図3の右に示した長方形の干渉パターン15、およびビームスプリッタ1と一体的に構成された例えばビーム成形装置17を使用することにより試料13の相応に成形された構造9を得ることができる。ビーム成形装置は、当たったレーザビーム8の円形断面を、通常のガウス強度分布に従い長方形の断面に変換し、これは、「シルクハット」あるいは「フラットトップ」プロファイルとも称される。レーザビームの改変された、長方形の断面によって、干渉領域14には長方形の干渉パターン15が生じ、これは、述べたように試料13の相応の構造化を引き起こす。干渉パターン15aの拡大された領域が、図3の中央に示されており、ここから、構造周期Λが隣接する2つの構造要素15a間の間隔に相当することが分かる。
【0039】
図4の実際例は、実質的に図1および2の実施例に対応し、ここでは第1の円柱レンズ2の焦点距離は、部分ビーム8.1,8.2の焦点が第1の円柱レンズ2を通過した後、それぞれ仮想的に第2の円柱レンズ3の後方に配置されるように変更されている。特にfsパルスを使用する場合、部分ビームの経路差を最小にすることができ、このことは空間的により大きく引き伸ばされた干渉パターンを引き起こす。同じ効果が、第1の円柱レンズ2からの第2の円柱レンズ3の間隔dを縮小することによっても引き起こされるであろう。部分ビーム8.1,8.2は、第2の円柱レンズ3の後方ではそれぞれもはや視準化されず、第2の円柱レンズ3と干渉領域14との間に等間隔で配置された焦点に集束される。焦点の後方で部分ビーム8.1,8.2はそれぞれ拡散し、すでに述べたように干渉領域14で干渉する。
【0040】
図5aの実施例では、図1の実施例と比較してビームスプリッタ1と第1の円柱レンズ2とが、レーザビーム8がまず第1の円柱レンズ2に当たり、その後、集光レンズとしての第1の円柱レンズ1の光学作用に基づき集束されて、ビームスプリッタ1に当たるように交換されている。第1の円柱レンズ2と第2の円柱レンズ3との間の間隔dは、2つの円柱レンズ2,3の焦点距離の和に相当し、したがって部分ビーム8.1,8.2はそれぞれ、ビームスプリッタ1の後方で、第2の円柱レンズ3の前方の焦点に集束される。第2の円柱レンズ3の後方で部分ビーム8.1,8.2は、図1と同じようにそれぞれ視準化され、干渉領域14に向かって屈折される。ビームスプリッタ1は、図5aの実施例では、光軸に沿って、すなわちz方向に並進可能であり、したがってビームスプリッタ1の移動により、部分ビーム8.1,8.2がそれぞれ第2の円柱レンズ3に当たる位置が可変であり、これは図5bに示されている。
【0041】
これにより、部分ビーム8.1,8.2が光軸zに対して干渉領域14に屈折される干渉角θも可変であり、これは構造要素15aの構造周期Λを引き起こす。図3に示した干渉パターン15と比較して、図5aの右に示した干渉パターン15は、より大きな構造周期Λを有する。これは構造要素15aが互いにさらに離れて配置されているからである。ビームスプリッタ1の可動性は、二重矢印により示されている。
【0042】
図5bでは、ビームスプリッタ1が、図5aと比較して光軸zに対して平行に、第2の円柱レンズ3により接近するよう移動されている。これによって部分ビーム8.1,8.2はそれぞれ、光軸zに対して半径方向でより小さな間隔で第2の円柱レンズ3に当たる。さらに、部分ビーム8.1,8.2は、第2の円柱レンズにより、図5aと比較して小さな干渉角θで干渉領域14に屈折される。対応して、図5bの干渉パターン15の構造要素15aは、図5aと比較してより大きな間隔で存在しており、したがって図5bの構造周期Λは、図5aのそれよりも大きい。
【0043】
図6の実施例は、図5aの実施例に基づくものであり、ここでは第2の円柱レンズ3が、第1の円柱レンズ2からより大きな間隔dで存在している。このために、第1の円柱レンズ2および/または第2の円柱レンズ3は、光軸zに沿って並進可能である。第1の円柱レンズ2と第2の円柱レンズ3との間隔dを拡大することにより、2つの部分ビーム8.1,8.2は、第2の円柱レンズ3の後方で、図5の実施例のようにはもはやそれぞれ視準化されず、今度はそれぞれ集束されるよう干渉領域14に屈折される。これは、すでに図4の実施例で述べたのと同様である。これにより得られる、図6の右に概略的に示された干渉パターン15は、図5aの干渉パターン15と比較して、y方向により小さな広がりを有する。これは、円柱レンズ2,3の配置が変更されているため、部分ビーム8.1,8.2がy方向により強く集束されるが、x方向には集束されないためである。図6の干渉パターン15の構造周期Λは、図5aのものより大きいが、図5bのものよりは小さい。
【0044】
図7の実施例は、図1の実施例に対応し、ここではビームスプリッタ1の前方に付加的に第3の円柱レンズ11が配置されており、その円柱軸ZAはy軸に対して平行であり、したがって第1と第2の円柱レンズ2,3の円柱軸ZA,ZAに対して垂直に配向されている。その点で、第3の円柱レンズ11は、図7の上部に示したyz面においてビーム路に実質的な影響を及ぼさない。それに対して第3の円柱レンズ11は、図7の下部に示されたxy面においてレーザビーム8を、部分ビーム8.1,8.2も含めて集束し、第3の円柱レンズ11の焦点距離は、干渉領域14までの第3の円柱レンズ11の間隔dに相当する。レーザビーム8がxz面で集束されるので、この実施例により得られる、図8に示した干渉パターン15は、それぞれx方向において図3の干渉パターンと比較してより小さな広がりを有し、y方向における広がりは不変であり、構造周期Λは、第3の円柱レンズ11によって影響を受けない。
【0045】
図9の実施例では、図7の実施例から出発して、第3の円柱レンズ11が、光軸zに対して平行にビームスプリッタ1により接近するよう移動されている。これによって、部分ビーム8.1,8.2は、xz面においては、図7の実施例のように干渉領域14には集束されず、より大きな空間的広がりを有する。このことは、x方向において相応に拡大された干渉領域14に現れている。yz面におけるビーム路の挙動は、第3の円柱レンズ11の移動によっては実質的に影響を受けず、特に干渉角θは、図7の実施例のそれに相当する。
【0046】
図7の実施例から出発して、ビームスプリッタ1と第1の円柱レンズ2との位置を交換することができ、これは図10の実施例に示されている。そこではレーザビーム8は、前と同じようにまず第3の円柱レンズ11に当たり、しかしその後に第1の円柱レンズ2に、そして引き続き、すでに述べたたように構造要素の構造周期Λを変更するために、光軸zに沿って可動のビームスプリッタ1に当たる。図8の干渉パターン15と比較して、図10の干渉パターン15はより大きな構造周期Λを有する。
【0047】
図7の実施例から出発して図11aの実施例では、付加的に第4の円柱レンズ4が第1の円柱レンズ2と第2の円柱レンズ3との間に配置されている。第4の円柱レンズ4の円柱軸ZAは、x軸に対して平行であり、したがって第1の円柱レンズ2の円柱軸ZAに対して平行に配向されている。図11aの上部に示されたyz面において第4の円柱レンズ4は、ビームスプリッタ1に向いた凹状の表面を有し、一方、ビームスプリッタ1とは反対側の表面は平坦に構成されている。したがって第4の円柱レンズ4は、凹平拡散レンズとして構成されている。第4の円柱レンズ4の後方で2つの部分ビーム8.1,8.2は、それぞれ光軸zから離れるように屈折され、2つの部分ビーム8.1,8.2は、その後、干渉領域14の方向に屈折されるために第2の円柱レンズ3に当たる。第1の円柱レンズ2、第4の円柱レンズ4、および第2の円柱レンズ3の組み合わせは、機能的にビームエキスパンダ18に相当し、第1の円柱レンズ2、第4の円柱レンズ4、および第2の円柱レンズ3は、それぞれ互いに独立して光軸zに沿って並進可能であり、これにより、部分ビーム8.1,8.2の光学的特性の他に、特に干渉角θ、およびひいては図11aの右に示した干渉パターン15の構造周期Λにも影響を与える。図11aの下部に示したxz面において、この実施例のビーム路は、実質的に図7のそれに相当する。なぜなら、第4の円柱レンズ4は、xz面においては双平坦構成であるため、ビーム路に光学的に実質的に影響しないからである。
【0048】
図11bでは図11aから出発して、ビームスプリッタ18の構成要素の位置が変更されている。第1の円柱レンズ2は、ビームスプリッタ1の方向に、第4の円柱レンズ4および第2の円柱レンズ2は、ビームスプリッタ1から離れるように移動されており、移動はそれぞれ互いに同期して行われた。これによって、図11bの干渉角θは、図11aのそれと比較して縮小されており、このことは、図11bの右に示された干渉パターン15のより大きな構造周期Λに現れている。
【0049】
図12の実施例では図1の実施例から出発して、第1の円柱レンズ2のビーム上流に直接隣接して、第5の円柱レンズ5が集光レンズとして配置されており、その凸状の表面は第1の円柱レンズ2を指しており、その円柱軸ZAは、第1の円柱レンズ2の円柱軸ZAに対して平行に配向されている。第5の円柱レンズ5は、第1の円柱レンズ2と共にレンズ系19を構成し、第5の円柱レンズ5は、特に第1の円柱レンズ2の光学的誤差を補正する。図1の実施例と比較して、第1の円柱レンズ2と第2の円柱レンズ3との間には付加的に、2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2が、それぞれ拡散レンズとしてビーム路に設けられており、それらの円柱軸ZAは、それぞれx軸に対して平行であり、したがって第1の円柱レンズ2の円柱軸ZAに対して平行に配向されている。2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2は、それぞれyz面において凹平に構成されており、y方向に互いにずらして配置されており、第1の円柱レンズ2および第2の円柱レンズ3に対してそれぞれ同じ間隔で存在する。2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2を使用することにより、部分ビーム8.1,8.2を、すでに述べたように第2の円柱レンズ3が2つの部分ビーム8.1,8.2を干渉領域14に向けて屈折する前に、互いに独立して調整することができる。図12の実施例では、第1の第4の円柱レンズ4.1が第1の部分ビーム8.1に、第2の第4の円柱レンズ4.2が第2の部分ビーム8.2に割り当てられている。図12の下部に示したxz面において2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2は、上下に配置されており、この点でそれらは双平坦であるのでレーザビーム8には実質的に影響しない。
【0050】
2つの部分ビーム8.1,8.2を互いに独立して調整するために、2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2は、x軸に対してそれぞれ平行に、それらの円柱軸ZAを中心に特に同期して回転させることができる。図13は、図12の実施例を、その点で第4の円柱レンズ4.1,4.2を回転して示す。その他、2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2は、それぞれ互いに独立してx、y、および/またはz方向に並進可能である。第4の円柱レンズ4.1,4.2が移動するので、第2の円柱レンズ3により試料13に集束された部分ビーム8.1,8.2を、互いに独立して調整することができことができる。それによって誤調整を補償することができ、特に試料13上での干渉パターン15の位置、並びにxおよびy方向でのその広がりに影響を与えることができる。特に図12図13の実施例により、y方向における干渉パターン15の特に小さな広がり、および特に小さな構造周期Λを得ることができる。ここでは、部分ビーム8.1,8.2が第2の円柱レンズ3の後方で、それぞれ可及的に大きな干渉角θで干渉領域14に向かって屈折されることが重要である。この目的で、図12と13の実施例では、ビームスプリッタ1が光軸zに沿って並進可能である。
【0051】
図14aの実施例では、図12の実施例と比較して、2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2と第2の円柱レンズ3との間に、集光レンズとして第6の円柱レンズ6および拡散レンズとしての第7の円柱レンズ7が配置されており、それら2つの円柱軸ZA,ZAは、x軸に対してそれぞれ平行に配向されている。第6の円柱レンズ6は、yz面において凸平に、第7の円柱レンズ7は凹平に構成されており、2つの平坦な表面は、それぞれ第2の円柱レンズ3に向いている。2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2を通過した後、2つの部分ビーム8.1,8.2はそれぞれ視準化され、光軸zに対して平行に配向されて第6の円柱レンズ6に当たり、この円柱レンズにより部分ビーム8.1,8.2は、光軸zの方向に集束され、焦点は、第7の円柱レンズ7の後方にそれぞれ仮想的に配置されている。部分ビーム8.1,8.2は、第7の円柱レンズ7が凹平構成であるので、それぞれ拡散されて、第3の円柱レンズ3に向かって屈折され、この円柱レンズにより部分ビーム8.1,8.2は、すでに述べたように干渉角θの下で干渉領域14に集束される。第6の円柱レンズ6、第7の円柱レンズ7、および第3の円柱レンズ3は、それぞれ光軸zに沿って並進的にスライド可能であり、機能的には可変のビームエキスパンダ18に相当する。ここで光軸zに沿った円柱レンズ6,7,3の移動によって、干渉パターン15の構造周期Λを変更することができ、構成要素の可動性はそれぞれ二重矢印により示されている。図14aの実施例では、ビームスプリッタ1は、レーザビーム8をy方向にだけ分割する。円柱レンズ2,3,4.1,4.2,5,6,7の全ての円柱軸ZA~ZAは、x軸に対して平行に配向されているから、図14の下部領域に示されたxz面においてビーム路はほとんど影響を受けず、一方、yz面においては比較的強い集束が行われる。対応して、図14の右に示した干渉パターン15は、y軸において非常に細く、一方、x方向においてはほとんど影響を受けない。
【0052】
図14bでは、第6の円柱レンズ6、第7の円柱レンズ7、および第2の円柱レンズ3の位置は、部分ビーム8.1,8.2が、図14aと比較して小さな干渉角θの下で干渉領域に屈折されるよう変更されている。このことは、図14aと比較して拡大された、干渉パターン15の構造周期Λに現れており、その位置および形状はほとんど変更されていない。
【0053】
図15aは、ビーム路の方向でビームスプリッタ1の前方に配置された、集光レンズとしての第5の円柱レンズ5を備える実施例を示し、この円柱レンズは、図15aの上部領域に示されたyz面において凸平に構成されている。第5の円柱レンズ5の円柱軸ZAは、x軸に対して平行であり、したがって第1の円柱レンズ2の円柱軸ZAに対して平行に配向されている。第5の円柱レンズ5があるので、yz面において視準化されてこれに当たるレーザビーム8は、集束されてビームスプリッタ1に偏向され、これによってレーザビーム8は、すでに述べたように2つの部分ビーム8.1,8.2に分割される。第5の円柱レンズ5により集束されるので、2つの部分ビーム8.1,8.2は、光軸zに対して対称に配置された焦点にそれぞれ集束される。焦点を通過した後、2つの部分ビーム8.1,8.2は、集光レンズとしての第6の円柱レンズ6にそれぞれ当たり、その円柱軸ZAは第1の円柱レンズ2の円柱軸ZAに対して平行に配向されており、これはyz面において平凸に構成されている。第6の円柱レンズ6までの第5の円柱レンズ5の間隔dは、2つの焦点距離の和に相当し、したがって部分ビーム8.1,8.2は、第6の円柱レンズ6を通過した後、それぞれ視準化される。部分ビーム8.1,8.2は第6の円柱レンズ6の表面に斜めに当たるので、これら部分ビームは、第6の円柱レンズ6を通過した後、光軸zに対して有限の角度で互いに屈折され、したがって部分ビーム8.1,8.2は、それぞれ視準化されて交差し、引き続き第1の円柱レンズ2に当たる。
【0054】
2つの部分ビーム8.1,8.2が交差することにより、図15aでは第6の円柱レンズ6の後方で、第1の部分ビーム8.1は下方に、第2の部分ビーム8.2は上方に配置されている。第1の円柱レンズ2を通過した後、2つの部分ビーム8.1,8.2の重心は、それぞれ光軸zに対して平行に配向される。図12の実施例と同様に、第1の円柱レンズ2の後方には2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2が設けられており、ここで第1の第4の円柱レンズ4.1は上方の第2の部分ビーム8.2に割り当てられ、第2の第4の円柱レンズ4.2は下方の第1の部分ビーム8.1に割り当てられている。2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2を通過した後、2つの部分ビーム8.1,8.2はそれぞれ視準化され、光軸zに対して平行に配向されて、第2の円柱レンズ3に当たり、この円柱レンズによって2つの部分ビーム8.1,8.2は、既知のように干渉領域14に向かって屈折される。
【0055】
図15aでは、第1の円柱レンズ2、2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2、および第2の円柱レンズ3が共に、光軸zに沿ってスライド可能なレンズ系19を形成し、レンズ系19の構成要素の相対位置は光軸zに沿って変化せず、したがってレンズ系19の構成要素は同期して可動である。その他、レンズ系19の移動と共に特に構造周期Λに影響を与えるために、ビームスプリッタ1は光軸zに沿って並進可能である。ビームスプリッタ1は、図15bでは図15aと比較して、第6の円柱レンズ6により接近して配置されている。その他、2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2は、特にy軸に沿って並進可能であり、これは、干渉領域14における部分ビーム8.1,8.2の位置を補正し、調整誤差を、特に、部分ビーム8.1,8.2が第4の円柱レンズ4.1,4.2の後方でそれぞれ常に視準化されように補償するためである。図15bでは、2つの第4の円柱レンズ4.1,4.2が、それぞれy軸に沿って光軸zに向かって、すなわち互いに接近するよう移動されている。構成要素の並進的な可動性は、それぞれ二重矢印により示されている。構成要素の前記の移動によって図15bの干渉角θは、図15aよりも小さく、このことは、対応して拡大された、干渉パターン15の構造周期Λに現れている。図15aの実施例では、円柱レンズ2,3,4.1,4.2,5,6の全ての円柱軸ZA~ZAが互いに平行に配向されているから、レーザビーム8は、その部分ビーム8.1,8.2も含めて、図15aの下部に示されたxz面において光学的にほとんど影響を受けず、このことは、図15bで明白な構成要素の移動でも当てはまる。
【0056】
図16aの実施例は、図7に示した実施例の発展形態であり、付加的に第1のプリズム20が第1の円柱レンズ2と第2の円柱レンズ3との間に配置されている。第1のプリズム20は、等脚三角形を基面Aとして有し、2つの脚21,22はビームスプリッタ1に向いている。基面Aに対して垂直に配置された第1のプリズム20のプリズム軸PAは、x軸に対して平行に配向されている。第1のプリズム20は、第1の円柱レンズ2に対して第2の円柱レンズ3に対するよりも接近して配置されており、したがって部分ビーム8.1,8.2の焦点は、それぞれ第1のプリズム20と第2の円柱レンズ3との間に存在する。第1のプリズム20は、その脚21,22の表面が部分ビーム8.1,8.2に対して傾斜しているから、yz面において部分ビームの集束を引き起こし、したがってすでに述べたように部分ビーム8.1,8.2の経路差が可及的に小さく維持される。さらに、第1のプリズム20は、光軸zに沿って並進可能であり、したがって干渉パターン15の構造周期Λは変更可能である。図16bでは第1のプリズム20が、図16aと比較して第2の円柱レンズ3の方向に移動されており、このことは、干渉角θの縮小、およびひいては干渉パターン15の構造周期Λの拡大を引き起こす。さらに、第1のプリズム20を、x軸を中心に180°回転させることができ、その結果、第1のプリズム20の脚21,22が第2の円柱レンズ3に向けられる。配置によって第1のプリズム20は、実質的に図7に示したビーム路に対応するxz面でのビーム路にはほとんど影響を与えない。
【0057】
図16aおよび16bの実施例から出発して、図17に示した実施例では、第2のプリズム23がビーム路中に、第1のプリズム20と第2の円柱レンズ3との間で、特に部分ビーム8.1,8.2の焦点の後方に配置されている。第2のプリズム23の基面Aは、2つの直角三角形をそれぞれつなぎ合わせたものに相当し、互いに平行に配置され、互いに接続されたその斜辺は、それぞれy軸に対して平行に配置されている。第2のプリズム23のプリズム軸PAは、x軸に対して平行に配置されている。第2のプリズム23は、その配置および構成に基づき、これを通過する部分ビーム8.1,8.2の拡散を引き起こす。第1のプリズム20および第2のプリズム23は、それぞれ光軸zに沿って並進可能であり、第3の円柱レンズ3と共にこの実施例では可変のビームエキスパンダ18であり、これにより、特に干渉角θを変更することによって干渉パターン15の構造周期Λが可変である。第2のプリズム23だけが光軸zに対して並進的に移動されると、干渉角θおよびひいては構造周期Λが変化されるが、しかし干渉領域14の空間的位置は変化しない。
【0058】
第2のプリズム23は、2つの別個の第2のプリズム23.1,23.1により置換することができ、これらはそれぞれ光軸zに対して平行に並進可能であり、これは図18aの実施例に示されている。2つの第2のプリズム23.1,23.2は、光軸zに対して対称に構成され配置されている。2つの第2のプリズム23.1,23.2は、それぞれ直角三角形を基面A21,A22として有し、2つのプリズム23.1,23.2のプリズム軸PA21,PA22は、それぞれx軸に対して平行に配置されている。択一的に、2つのプリズム23.1,23.2の代わりに2つのエッジプレートを、対応の構成で設けることができる。第1の第2のプリズム23.1は第1の部分ビーム8.1に、第2の第2のプリズム23.2は第2の部分ビーム8.2に割り当てられている。図18bでは図18aから出発して、第1のプリズム20が光軸zに沿って第1の円柱レンズ2に向かって、そして2つの第2のプリズム23.1,23.2が第2の円柱レンズ3に向かって移動されており、したがって図18bの干渉角θは図18aのそれよりも縮小されている。
【0059】
図19aの実施例では図14bの実施例から出発して、第6の円柱レンズ6が第1のプリズム20により、そして第7の円柱レンズ7が2つの第2のプリズム23.1,23.2により置換されており、第1のプリズム20および2つの第2のプリズム23.1,23.2は、相変わらず光軸zに沿って並進可能であり、第3の円柱レンズ3と共に、すでに述べたように可変のビームエキスパンダ18を形成する。第1のプリズム20は、その幾何形状に基づき、第6の円柱レンズ6と同じ光学作用を有し、対応することが第7の円柱レンズ7に関連する2つの第2のプリズム23.1,23.2にも当てはまる。したがって図19aのビーム路は図14bのそれに対応し、これによりそれぞれ得られる干渉パターン15は同一である。
【0060】
図19bでは図19aから出発して、第1のプリズム20および2つの第2のプリズム23.1,23.2が、光軸zに沿って互いに接近するように移動しており、このことは、干渉角θの増大およびひいては干渉パターン15の構造周期の縮小も引き起こす。
【0061】
図20は、ビーム源としてのレーザ12を備える図1の実施例を示し、このレーザは、ダイオード励起固体レーザとして、図1に示した視準化されたパルス状のレーザビームを、fs範囲のパルス持続時間で放射する。図20の右側には、部分ビーム8.1,8.2のすでに述べた干渉領域14に試料13が、その表面に図3に示した干渉構造15による構造化9が設けられるように配置されている。本発明の光学装置の光学構成要素を前記のように配置することにより、本発明の方法を実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14a
図14b
図15a
図15b
図16a
図16b
図17
図18a
図18b
図19a
図19b
図20
【手続補正書】
【提出日】2022-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(13)を干渉構造化するための光学装置(10)であって、レーザビーム(8)を放射するためのレーザ(12)と、前記レーザビーム(8)を少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)に分割するためのビームスプリッタ(1)と、少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)と、前記少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)を干渉領域(14)の方向に屈折するための少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)と、を備え、前記ビームスプリッタ(1)、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)、および前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)は、前記レーザビーム(8)の前記少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)が前記干渉領域(14)で、前記試料(13)の構造領域(16)において線状の構造要素(15a)を備える構造(9)が形成可能であるよう互いに干渉するよう、前記レーザビーム(8)のビーム路に配置されており、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)は、前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)の円柱軸(ZA)に対して平行に配向されている、光学装置であって、
少なくとも1つの第3の円柱レンズ(11)が集光レンズとして設けられており、その円柱軸(ZA )は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA )に対して垂直、かつ光軸に対して垂直に配向されている、ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第3の円柱レンズ(11)は、前記ビームスプリッタ(1)のビーム上流および/またはビーム下流に配置されている、および/または、前記少なくとも1つの第3の円柱レンズ(11)までの前記干渉領域(14)の間隔は、実質的にその焦点距離に相当する、ことを特徴とする請求項に記載の光学装置。
【請求項3】
少なくとも1つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)が拡散レンズとして設けられており、
前記少なくとも1つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)の円柱軸(ZA )は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA )に対して平行に配置されている、および/または、
前記少なくとも1つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)のビーム下流に配置されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)は、少なくとも1つの軸(x、y、z)において並進可能および/またはその円柱軸(ZA)を中心に回転可能である、および/または、
各部分ビーム(8.1,8.2)には、ちょうど1つの第4の円柱レンズ(4.1,4.2)が割り当てられている、および/または、
少なくとも2つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)は、互いに独立して、および/または互いに同期して可動である、ことを特徴とする請求項に記載の光学装置。
【請求項5】
少なくとも1つの第5の円柱レンズ(5)が集光レンズとして設けられており、その円柱軸(ZA)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)に対して平行に配向されており、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)と共にレンズ系(19)を形成する、および/または
少なくとも1つの第6の円柱レンズ(6)が集光レンズとして設けられており、その円柱軸(ZA )は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA )に対して平行に配向されており、前記少なくとも1つの第6の円柱レンズは、前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)のビーム上流に配置されている、および/または、
少なくとも1つの第7の円柱レンズ(7)が集光レンズとして設けられており、その円柱軸(ZA )は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA )に対して平行に配向されており、前記少なくとも1つの第7の円柱レンズは、前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)のビーム上流に配置されており、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)は、前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)および前記少なくとも1つの第4の円柱レンズ(4,4.1,4.2)と共に、および/または、前記少なくとも1つの第7の円柱レンズ(7)は、前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)および前記少なくとも1つの第6の円柱レンズ(6)と共に、それぞれレンズ系(19)を形成する、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
少なくとも1つの第1のプリズム(20)が設けられており、そのプリズム軸(PA)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)に対して平行に配向されており、
前記少なくとも1つの第1のプリズム(20)の表面は、光軸(z)に対して垂直に配向されている、および/または、
少なくとも1つの第2のプリズム(23,23.1,23.2)が設けられており、そのプリズム軸(PA ,PA 21 ,PA 22 )は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA )に対して平行に配向されており、前記少なくとも1つの第2のプリズム(23,23.1,23.2)の基面(A ,A 21 ,A 22 )は、前記少なくとも1つの第1のプリズム(20)の基面(A )と共に長方形に相当する、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項7】
少なくとも2つの第2のプリズム(23,23.1,23.2)は、互いに独立して可動である、および/または、
前記少なくとも1つの第1のプリズム(20)および/または前記少なくとも1つの第2のプリズム(23,23.1,23.2)は、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)と前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)との間に配置されている、ことを特徴とする請求項に記載の光学装置。
【請求項8】
前記ビームスプリッタ(1)および/または少なくとも1つの円柱レンズ(2,3,11,4,4.1,4.2,5,6,7)および/または少なくとも1つのプリズム(20,23,23.1,23.2)は、光軸(z)に対して平行に並進可能である、および/または、
少なくとも1つのビームエキスパンダ(18)が、前記レーザビーム(8)のビーム断面を変更するために、および/または構造周期(Λ)を変更するために設けられており、前記少なくとも1つのビームエキスパンダ(18)は、3つの円柱レンズ(3,6,7)によって、および/または第1のプリズム(20)と少なくとも1つの第2のプリズム(23,23.1,23.2)とを備える円柱レンズ(3)によって形成されている、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記干渉領域(14)は、線状の構造要素(15a)を備える干渉パターン(15)を有し、前記干渉パターン(15)は、少なくとも1つの方向(x、y)においてユーザ定義された、可変の構造周期(Λ)を有する、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項10】
ビーム成形装置(17)が設けられており、前記ビーム成形装置は、前記レーザビーム(8)の断面プロファイルがユーザ定義され可変であるように構成されており、前記ビーム成形装置(17)は、前記レーザビーム(8)の楕円または多角形の断面プロファイルを形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項11】
試料(13)を干渉構造化するための方法であって、レーザビーム(8)を放射するためのレーザ(12)を提供するステップと、前記レーザビーム(8)を少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)に分割するステップと、少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)を配置するステップと、少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)を、前記少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)が干渉領域(14)の方向に屈折されるように配置し、前記レーザビーム(8)の前記少なくとも2つの部分ビーム(8.1,8.2)が前記干渉領域(14)で互いに干渉して、前記試料(13)の構造領域(16)において線状の構造要素(15a)を備える構造(9)が形成可能であるようにするステップと、前記少なくとも1つの第1の円柱レンズ(2)の円柱軸(ZA)を前記少なくとも1つの第2の円柱レンズ(3)の円柱軸(ZA)に対して平行に配向するステップと、を備える方法であって、請求項1から10のいずれか一項に記載の光学装置(10)によって実施される、方法。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の光学装置(10)の使用であって、試料(13)、特に構成部材を干渉構造化するための使用。
【国際調査報告】