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特表2023-520914X線CTビーム硬化補正のためのハイブリッド線形化方式
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】X線CTビーム硬化補正のためのハイブリッド線形化方式
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230515BHJP
【FI】
A61B6/03 350J
A61B6/03 373
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561071
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 US2021025421
(87)【国際公開番号】W WO2021207001
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/006,513
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510246448
【氏名又は名称】リフレクション メディカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ガオ, ヘウェイ
(72)【発明者】
【氏名】スン, ジフイ
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA13
4C093EA07
4C093FC24
4C093FD08
(57)【要約】
本明細書では、2つの異なる有効平均エネルギーで取得されたエアスキャンX線強度データを組み込むハイブリッドスペクトルモデルを含むマッピング演算子を使用して、CT画像化におけるビーム硬化アーチファクトを低減するための方法が開示される。1つの変形形態では、キャリブレーションセッション中に取得されたエアスキャンX線強度データが、各X線検出器の理想的なスペクトルモデルと組み合わされて、ハイブリッドスペクトルモードが導出される。ハイブリッドスペクトルモデルに基づいたマッピング演算子を使用して、取得されたCT投影データのビーム硬化アーチファクトを補正する。いくつかの変形形態では、マッピング演算子は、単色(補正された)投影値のルックアップテーブルであり、取得されたCT投影データを使用して、取得されたCT投影データに対応する補正された投影値を含むルックアップテーブルエントリのインデックスを計算する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CT画像化におけるビーム硬化アーチファクトを低減するための方法であって、前記方法は、
CT画像化システム内の各X線検出器でCT投影データを取得することと、
2つの異なる有効平均エネルギーで取得されたエアスキャンCT投影データを組み込むハイブリッドスペクトルモデルを含むマッピング演算子を使用して、前記取得されたCT投影データの各々について補正された投影値を判定することと、
前記取得されたCT投影データの各々の前記補正された投影値を組み合わせることにより、アーチファクト補正されたCT画像を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ハイブリッドスペクトルモデルは、前記取得されたCT投影データpを、補正された投影値pの関数として表し、かつ取得されたエアスキャンX線強度データに基づいて計算された仮想フィルタを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マッピング演算子は、前記CT画像化システム内の各X線検出器に対するルックアップテーブルLUTを含み、各ルックアップテーブルLUTは、離散化ステップサイズsで分割されているCT投影データ
【数1】

の離散化された値に対応する、k個の補正された投影値pを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
CT投影データの前記離散化された値は、ルックアップテーブルインデックスjに前記離散化ステップサイズsを乗算することによって導出され、補正された投影値pを判定することは、前記取得されたCT投影データpに基づいて前記ルックアップテーブルインデックスjを計算することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ルックアップテーブルインデックスjを計算することは、前記取得されたCT投影データpを、前記離散化ステップサイズsで除算することを含み、前記補正された投影値を判定することは、前記ルックアップテーブルインデックスjに対応する前記補正された投影値pを識別することを含む、請求項4に記載の方法。
【数2】
【請求項6】
前記ルックアップテーブルは、第1のCTスキャンエネルギーレベルのための第1のルックアップテーブルLUT_1であり、前記マッピング演算子は、第2のCTスキャンエネルギーレベルのための第2のルックアップテーブルLUT_2を含み、前記第2のルックアップテーブルLUT_2は、離散化ステップサイズs’で分割されているCT投影データ
【数3】

の離散化された値に対応するk’個の補正された投影値p’を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記取得されたCT投影データpに対する前記補正された投影値pを判定することは、pの異なる値を反復することによって、前記ハイブリッドスペクトルモデルを使用して、前記補正された投影値pを計算して、前記取得されたCT投影データpを近似するCT投影値を達成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ハイブリッドスペクトルモデルを使用して、前記補正された投影値pを計算することは、Newton法を使用してpの異なる値を反復して、前記取得されたCT投影データpを最良に近似する投影値をもたらすpの値を判定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ハイブリッドスペクトルモデルは、第1のCTスキャンエネルギーレベルに対する第1のハイブリッドスペクトルモデルであり、前記マッピング演算子は、第2のCTスキャンエネルギーレベルに対する第2のハイブリッドスペクトルモデルを含み、前記取得されたCT投影データpに対する前記補正された投影値pを判定することは、前記CT投影データが取得された前記CTスキャンエネルギーレベルを識別することと、前記識別されたCTスキャンエネルギーレベルに対応する前記ハイブリッドスペクトルモデルを使用して、前記補正された投影値pを計算することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
エアスキャンX線強度データは、第1の有効平均エネルギー及び第2の有効平均エネルギーで取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のエネルギーは、80kVpであり、前記第2のエネルギーは、140kVpであり、CT投影データ取得は、120kVpのエネルギーレベルにおけるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ビーム硬化アーチファクトを低減するCT画像化システムのファントムなしのキャリブレーションのための方法であって、前記方法は、
第1の有効平均エネルギーでの第1のエアスキャン中に、CT画像化システムの各X線検出器に対してX線強度データの第1のセットを取得することと、
前記第1の有効平均エネルギーよりも高い第2の有効平均エネルギーでの第2のエアスキャン中に、前記CT画像化システムの各X線検出器に対してX線強度データの第2のセットを取得することと、
X線強度データの前記第1及び第2のセットを使用して、前記CT画像化システムの各X線検出器に対して仮想フィルタを計算することであって、各仮想フィルタが、選択された材料で作製され、かつ厚さを有する、計算することと、
前記CT画像化システムの各X線検出器に対してマッピング演算子を計算することであって、前記マッピング演算子が、多色投影値を単色投影値に変換するために前記仮想フィルタを使用するハイブリッドスペクトルモデルを含む、計算することと、を含む、方法。
【請求項13】
各X線検出器に対して前記仮想フィルタを計算することは、前記仮想フィルタの前記厚さを計算することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マッピング演算子を計算することは、前記ハイブリッドスペクトルモデルを使用して各々が離散化ステップサイズsで分割されているk個の多色投影値の離散セット
【数4】

から計算された、k個の単色投影値pを有するルックアップテーブルLUTを生成することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ルックアップテーブルは、第1のCTスキャンエネルギーレベルに対する第1のルックアップテーブルLUT_1であり、前記マッピング演算子は、第2のCTスキャンエネルギーレベルに対する第2のルックアップテーブルLUT_2を更に含み、前記方法は、前記ハイブリッドスペクトルモデルを使用して、各々が離散化ステップサイズs’で分割されている、k’個の多色投影値の第2の離散セット
【数5】

から計算されたk’個の単色投影値p’を計算することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
i個のX線検出器の各々に対して前記仮想フィルタ厚さを計算することは、前記第2のより高い有効平均エネルギーで取得されたX線強度データ
【数6】

に対する、前記第1のより低い有効平均エネルギーで取得された前記X線強度データ
【数7】

の低高比
【数8】

を計算することと、
【数9】

前記i個のX線検出器の各々に対して前記仮想フィルタの前記厚さ
【数10】

を計算することであって、
【数11】

式中、
【数12】

は、前記第1のより低い有効平均エネルギーでの前記CT画像化システムのスペクトルであり、
【数13】

は、前記第2のより高い有効平均エネルギーでの前記CT画像化システムのスペクトルであり、
μvir(E)は、前記選択された材料の仮想フィルタの減衰係数である、計算することと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ハイブリッドスペクトルモデル
【数14】

は、理想的なスペクトルモデル
【数15】

と、前記厚さ
【数16】

を有する前記仮想フィルタと、前記減衰係数μvir(E)との組み合わせであり、
【数17】

式中、αは、倍率である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記マッピング演算子を計算することは、前記ハイブリッドスペクトルモデルに基づいて、多色投影値(p)に対応する単色投影値(p)を繰り返し計算することを含み、
【数18】

式中、
【数19】

は、スキャン対象物の正規化された減衰係数
【数20】

である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
【数21】

は、正規化された水の減衰係数であり、μvir(E)は、アルミニウムの減衰係数であり、前記倍率αは、1である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記CT画像化システムは、回転式ガントリーと、前記ガントリーに取り付けられた画像化X線源と、を備え、前記X線検出器は、前記画像化X線源の反対側の前記ガントリーに取り付けられ、X線強度データの前記第1のセットを取得することは、前記第1のエアスキャン中に前記ガントリーを回転させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
X線強度データの前記第2のセットを取得することは、前記第2のエアスキャン中に前記ガントリーを回転させることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のエネルギーは、80kVpであり、前記第2のエネルギーは、140kVpである、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月7日に出願された米国仮特許出願第63/006,513号に対する優先権を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影(CT)画像化システムは、X線源の向かいに位置するX線検出器のアレイを備え、X線源と検出器との間に位置する対象物の画像を、その対象物を通るX線の減衰に基づいて生成することができる。X線検出器は、対象物に対して様々な角度位置に位置している。CT画像は、対象物の減衰特性を表し、検出器に入射するX線の強度を測定することによって判定することができる。理想的には、X線減衰は線形であり、検出器で測定されたX線強度は対象物の減衰特性に線形に関連する。ただし、CTシステムのX線源は通常、多色放射線源であるため、異なるエネルギーの光子を放出し、異なるエネルギーの光子は、対象物を通過する際に互いに異なる方法で減衰する。多くの材料では、より低エネルギーの光子はより高エネルギーの光子よりも大きく減衰する。より低いエネルギーの光子が対象物の端部よりも中心部分でより減衰されることから、異なる光子エネルギーにわたるこの不均一な減衰により、対象物の端部は、(均一な材料で作製されている場合であっても)対象物の中心部分よりも明るく見え得る。この非線形減衰から生じる画像化アーチファクトは、ビーム硬化アーチファクトと呼ばれる。典型的に、ビーム硬化アーチファクトは、多色投影データを理想的な又は補正された単色投影値にマッピングするマッピング関数を生成するために、異なる厚さの異なる材料で作製されたいくつかのファントムを使用して、キャリブレーションセッション中にX線検出器データを収集することによって補正される。ただし、このタイプのキャリブレーション及びアーチファクト補正方法は、異なる寸法及び/又は材料を有する複数のファントムの複数のCTスキャンを必要とするため、単調で時間がかかる可能性がある。
【0003】
更に、X線源とX線検出器のアレイとが画像取得中に回転する(例えば、X線源及び検出器が回転式ガントリーに取り付けられている)CT画像化システムから再構成された画像は、個々のX線検出器の異なるスペクトル特性又は応答に特に敏感であり得る。
【0004】
そのため、CT画像化システムのキャリブレーション方法を改善して、ビーム硬化アーチファクトに対処し、かつ/又は検出器アレイ内の個々のX線検出器の可変スペクトル応答を補償する助けとなることが望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、2つの異なる有効平均エネルギーで取得されたエアスキャンX線強度データを組み込むハイブリッドスペクトルモデルを含むマッピング演算子を使用して、CT画像化におけるビーム硬化アーチファクトを低減するための方法が開示される。マッピング演算子は、CT画像化システムの各X線検出器に対して計算され得る。マッピング演算子を使用して、取得されたCT投影データ(対応するX線検出器からの出力信号に基づいて計算される)を、補正された投影値に変換し得る。いくつかの変形形態では、マッピング演算子はルックアップテーブル(LUT)を含み得、取得されたCT投影データを使用して、取得されたCT投影データに対応する補正された投影値を識別するために使用され得るルックアップテーブルインデックスを計算する。
【0006】
また、本明細書では、ビーム硬化アーチファクトを低減するためのファントムなしのキャリブレーション方法も開示される。キャリブレーションセッション中に取得されたX線強度データを使用して、計算された単色投影値に多色投影データをマッピングする、ハイブリッドスペクトルモデルを生成し得る。ハイブリッドスペクトルモデルには、2つの異なる有効平均エネルギーで取得されたエアスキャンX線強度データと組み合わせた、理想的なスペクトルモデルが含まれている。ハイブリッドスペクトルモデルを使用して、CTスキャン中に使用され得るマッピング演算子を生成して、取得されたCT投影データを、次いでCT画像再構成に使用され得る補正された投影値に変換する。キャリブレーションセッション中、CT画像化システムは、第1の有効平均エネルギーでの第1のエアスキャン中に、X線強度データの第1のセットを取得し、第1の有効平均エネルギーよりも高い第2の有効平均エネルギーでの第2のエアスキャン中に、X線強度データの第2のセットを取得し得る。第1及び第2のエアスキャンのX線強度データは、各X線検出器に対して取得及び格納され得、回転式CT画像化システムの場合、X線強度データは、CT画像化システムが複数の角度にわたって回転する間に取得され得る。次いで、CT画像化システムコントローラは、X線強度データの第1及び第2のセットを使用して、各X線検出器に対して仮想フィルタを計算し得る。いくつかの変形形態では、仮想フィルタは、選択されたフィルタ材料(例えば、アルミニウム)及びフィルタ厚さによって特徴付けられ得、X線強度データの第1及び第2のセットは、アレイ内の各X線検出器に対する仮想フィルタの厚さを計算するために使用され得る。次いで、CT画像化システムコントローラは、仮想フィルタを理想スペクトルモデルと組み合わせるハイブリッドスペクトルモデルを使用する各X線検出器に対して、マッピング演算子を計算し得る。マッピング演算子は、取得されたX線検出器強度データから導出された多色投影データと補正された投影値との間の関係を表す。補正された投影値は、単色X線源(すなわち、単一エネルギーレベルの光子又は単一波長の光を放出する)の投影値に近似するので、補正された投影値は単色投影値と称されることもあり、ビーム硬化アーチファクトをほとんど又は全く有しない。
【0007】
CT画像化におけるビーム硬化アーチファクトを低減するための方法の1つの変形形態は、CT画像化システム内の各X線検出器でCT投影データを取得することと、2つの異なる有効平均エネルギーで取得されたエアスキャンCT投影データを組み込むハイブリッドスペクトルモデルを含むマッピング演算子を使用して、取得されたCT投影データの各々について補正された投影値を判定することと、取得されたCT投影データの各々の補正された投影値を組み合わせることにより、アーチファクト補正されたCT画像を生成することと、を含み得る。ハイブリッドスペクトルモデルは、取得されたCT投影データpを補正された投影値pの関数として表し、かつ取得されたエアスキャンX線強度データに基づいて計算された仮想フィルタを含み得る。マッピング演算子は、CT画像化システム内の各X線検出器に対するルックアップテーブルLUTを含み、各ルックアップテーブルLUTは、離散化ステップサイズsで分割されているCT投影データ
【数1】

の離散化された値に対応する、k個の補正された投影値pを含み得る。CT投影データの離散化された値は、ルックアップテーブルインデックスjに離散化ステップサイズsを乗算することによって導出され得、補正された投影値pを判定することは、取得されたCT投影データpに基づいてルックアップテーブルインデックスjを計算することを含み得る。いくつかの変形形態では、ルックアップテーブルインデックスjを計算することは、取得されたCT投影データpを離散化ステップサイズsで除算することを含み得、補正された投影値を判定することは、ルックアップテーブルインデックスjに対応する補正された投影値pを識別することを含み得る。
【数2】
【0008】
いくつかの変形形態では、ルックアップテーブルは、第1のCTスキャンエネルギーレベルのための第1のルックアップテーブルLUT_1であり得、マッピング演算子は、第2のCTスキャンエネルギーレベルのための第2のルックアップテーブルLUT_2を含み得、第2のルックアップテーブルLUT_2は、離散化ステップサイズs’で分割されているCT投影データ
【数3】

の離散化された値に対応するk’個の補正された投影値p’を含み得る。取得されたCT投影データpに対する補正された投影値pを判定することは、pの異なる値を反復することによってハイブリッドスペクトルモデルを使用して、補正された投影値pを計算して、取得されたCT投影データpを近似するCT投影値を達成することを含み得る。例えば、ハイブリッドスペクトルモデルを使用して補正された投影値pを計算することは、Newton法を使用してpの異なる値を反復して、取得されたCT投影データpを最良に近似する投影値をもたらすpの値を判定することを含み得る。
【0009】
いくつかの変形形態では、複数のハイブリッドスペクトルモデルは、異なるCTスキャンエネルギーレベルに対して計算され得る。1つの変形形態では、ハイブリッドスペクトルモデルは、第1のCTスキャンエネルギーレベルに対する第1のハイブリッドスペクトルモデルであり得、マッピング演算子は、第2のCTスキャンエネルギーレベルに対する第2のハイブリッドスペクトルモデルを含み得る。取得されたCT投影データpに対する補正された投影値pを判定することは、CT投影データが取得されたCTスキャンエネルギーレベルを識別することと、識別されたCTスキャンエネルギーレベルに対応するハイブリッドスペクトルモデルを使用して、補正された投影値pを計算することと、を含み得る。
【0010】
いくつかの変形形態では、エアスキャンX線強度データは、第1の有効平均エネルギー及び第2の有効平均エネルギーで取得され得る。例えば、第1のエネルギーは、80kVpであり得、第2のエネルギーは、140kVpであり得、CT投影データ取得は、120kVpのエネルギーレベルにおけるものであり得る。
【0011】
ビーム硬化アーチファクトを低減するCT画像化システムのファントムなしのキャリブレーションのための方法の1つの変形形態は、第1の有効平均エネルギーでの第1のエアスキャン中に、CT画像化システムの各X線検出器に対してX線強度データの第1のセットを取得することと、第1の有効平均エネルギーよりも高い第2の有効平均エネルギーでの第2のエアスキャン中に、CT画像化システムの各X線検出器に対してX線強度データの第2のセットを取得することと、X線強度データの第1及び第2のセットを使用して、CT画像化システムの各X線検出器に対して仮想フィルタを計算することと、CT画像化システムの各X線検出器に対してマッピング演算子を計算することであって、マッピング演算子が、多色投影値を単色投影値に変換するために仮想フィルタを使用するハイブリッドスペクトルモデルを含む、計算することと、を含み得る。各仮想フィルタは、選択された材料から作製され、厚さを有し得る。各X線検出器に対して仮想フィルタを計算することは、仮想フィルタの厚さを計算することを含み得る。いくつかの変形形態では、マッピング演算子を計算することは、ハイブリッドスペクトルモデルを使用して各々が離散化ステップサイズsで分割されているk個の多色投影値の離散セット
【数4】

から計算された、k個の単色投影値pを有するルックアップテーブルLUTを生成することを含み得る。任意選択的に、いくつかの変形形態では、ルックアップテーブルは、第1のCTスキャンエネルギーレベルに対する第1のルックアップテーブルLUT_1であり、マッピング演算子は、第2のCTスキャンエネルギーレベルに対する第2のルックアップテーブルLUT_2を更に含み得る。この変形形態では、方法は、ハイブリッドスペクトルモデルを使用して各々が離散化ステップサイズs’で分割されているk’個の多色投影値の第2の離散セット
【数5】

から計算された、k’個の単色投影値p’を計算することを更に含み得る。
【0012】
いくつかの変形形態では、i個のX線検出器の各々に対して仮想フィルタ厚さを計算することは、第2のより高い有効平均エネルギーで取得されたX線強度データ
【数6】

に対する、第1のより低い有効平均エネルギーで取得されたX線強度データ
【数7】

の低高比
【数8】

を計算すること、
【数9】

と、i個のX線検出器の各々に対して仮想フィルタの厚さ
【数10】
を計算することであって、
【数11】

式中、
【数12】

は、第1のより低い有効平均エネルギーでのCT画像化システムのスペクトルであり、
【数13】

は、第2のより高い有効平均エネルギーでのCT画像化システムのスペクトルであり、
μvir(E)は、選択された材料の仮想フィルタの減衰係数である、計算することと、を含み得る。
【0013】
ハイブリッドスペクトルモデル
【数14】

は、理想的なスペクトルモデル
【数15】

と、厚さ
【数16】

を有する仮想フィルタと、減衰係数μvir(E)との組み合わせ、
【数17】

であり得、式中、αは、倍率である。
【0014】
いくつかの変形形態では、マッピング演算子を計算することは、ハイブリッドスペクトルモデルに基づいて、多色投影値(p)に対応する単色投影値(p)を繰り返し計算することを含み得、
【数18】

式中、
【数19】

は、スキャン対象物の正規化された減衰係数
【数20】

である。いくつかの例では、
【数21】

は、正規化された水の減衰係数であり、μvir(E)は、アルミニウムの減衰係数であり、倍率αは、1である。
【0015】
いくつかの変形形態では、CT画像化システムは、回転式ガントリーと、ガントリーに取り付けられた画像化X線源とを備え得、X線検出器は、画像化X線源の反対側のガントリーに取り付けられ得、X線強度データの第1のセットを取得することは、第1のエアスキャン中にガントリーを回転させることを含む。X線強度データの第2のセットを取得することは、第2のエアスキャン中にガントリーを回転させることを含み得る。いくつかの例では、第1のエネルギーは、80kVpであり得、第2のエネルギーは、140kVpであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】CT画像化システムの、1つの変形形態の模式図。
図2】キャリブレーション方法の、1つの変形形態のフローチャート表現である。
図3】仮想フィルタを計算するための方法の、1つの変形形態のフローチャート表現である。
図4】ハイブリッドスペクトルモデルを使用してマッピング演算子を生成するための方法の、1つの変形形態のフローチャート表現である。
図5A】多色投影値の離散セットから、補正された値又は単色投影値のセットを計算するための方法の、1つの変形形態のフローチャート表現である。
図5B】選択された多色投影値に対応する単色投影値を計算するために、ハイブリッドスペクトルモデルと組み合わせてNewton法を使用する方法の、1つの変形形態のフローチャート表現である。
図6A】CT画像化に対するビーム硬化アーチファクトを補正するための方法の、1つの変形形態のフローチャート表現である。
図6B】ルックアップテーブルを使用して補正された投影値を判定するための方法の、1つの変形形態のフローチャート表現である。
図6C】ルックアップテーブルとともに補正された投影値を判定するための方法の、1つの変形形態のフローチャート表現である。
図7A】ファントムのCT画像である。図7Aは、取得したCT投影データを、ビーム硬化アーチファクトに対して補正しなかった画像を描写する。図7Bは、取得したCT投影データを、仮想フィルタを含まない理想的なスペクトルモデルを使用してビーム硬化アーチファクトに対して補正した画像を描写する。図7Cは、取得したCT投影データを、仮想フィルタを有するハイブリッドスペクトルモデルを使用してビーム硬化アーチファクトに対して補正した画像を描写する。
図7B】ファントムのCT画像である。図7Aは、取得したCT投影データを、ビーム硬化アーチファクトに対して補正しなかった画像を描写する。図7Bは、取得したCT投影データを、仮想フィルタを含まない理想的なスペクトルモデルを使用してビーム硬化アーチファクトに対して補正した画像を描写する。図7Cは、取得したCT投影データを、仮想フィルタを有するハイブリッドスペクトルモデルを使用してビーム硬化アーチファクトに対して補正した画像を描写する。
図7C】ファントムのCT画像である。図7Aは、取得したCT投影データを、ビーム硬化アーチファクトに対して補正しなかった画像を描写する。図7Bは、取得したCT投影データを、仮想フィルタを含まない理想的なスペクトルモデルを使用してビーム硬化アーチファクトに対して補正した画像を描写する。図7Cは、取得したCT投影データを、仮想フィルタを有するハイブリッドスペクトルモデルを使用してビーム硬化アーチファクトに対して補正した画像を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書では、2つの異なる有効平均エネルギーで取得されたエアスキャンX線強度データを組み込むハイブリッドスペクトルモデルを含むマッピング演算子を使用して、CT画像化におけるビーム硬化アーチファクトを低減するための方法が開示される。エアスキャンX線強度データは、キャリブレーションセッション中に取得され、各X線検出器に対する理想的なスペクトルモデルと組み合わされて、ハイブリッドスペクトルモデル(すなわち、「ハイブリッド」又は理想的なスペクトルモデルと経験的データとの組み合わせ)を導出し得る。取得されたエアスキャンX線強度データと理想的なスペクトルモデルとの組み合わせは、X線検出器の各々に固有の変動性をシミュレートし得るため、ハイブリッドスペクトルモデルは、X線検出器からの投影データのより良い近似を提供し得る。ハイブリッドスペクトルモデルを用いて、X線検出器(多色X線源によるビーム硬化アーチファクトの影響を受け得る)からの強度データから計算された投影データを、ビーム硬化アーチファクトがない場合の検出器の応答を表す補正された投影値と関連付ける、マッピング演算子が生成され得る。X線強度データから計算された投影データは、多色投影データと称される場合もある。補正された投影値は、単色X線源(CT投影データにおそらくビーム硬化アーチファクトがない)を有するCTシステムの投影値に近似するため、単色投影値とも称され得る。いくつかの変形形態では、マッピング演算子はルックアップテーブル(LUT)であり得、多色投影データは、ハイブリッドスペクトルモデルを使用して計算された、対応する単色(すなわち補正された)投影値を識別するために使用されるテーブルインデックスを計算するために使用され得る。次いで、CT画像化システムコントローラは、X線検出器のアレイ内の各X線検出器の補正された投影値を組み合わせて、ビーム硬化アーチファクトがほとんど又は全くないCT画像を生成し得。
【0018】
いくつかの変形形態では、各X線検出器について2つの異なる有効平均エネルギーで取得されたエアスキャンX線強度データを使用して、そのX線検出器に対する仮想フィルタを計算し得る。仮想フィルタは、X線検出器の感度におけるそれらのスペクトル変動性を表すか又は近似し、例えば、製造上のばらつき、固有の構造特性に起因して発生し得る、入射光子に応答する。仮想フィルタはまた、X線源に対する場所が異なるため、個々のX線検出器のスペクトル変動を表すか又は近似し得る。CT画像化システムにおいて、X線検出器のアレイは、X線源の向かい側に位置し、X線源の放射線ビームによって提供される予想される視野を横切り得る(例えば、扇形の放射線ビームの場合、X線検出器のアレイは、扇形のビームに対応する弧に沿って配置され得る)。いくつかの変形形態では、X線源の前にボウタイフィルタが位置し得、フィルタの中央部分はフィルタの周辺部分よりも薄いため、放射線ビームの中心部分に位置するX線検出器に入射する放射線のスペクトル特性は、放射線ビームの周囲に位置するX線検出器に入射する放射線のスペクトル特性とは異なる場合がある。例えば、検出器アレイの周囲にあるX線検出器からのX線強度データ(及び対応する投影データ)は、アレイの中央にあるX線検出器からのX線強度データ(及び対応する投影データ)よりも、ボウタイフィルタからのビーム硬化効果の影響をより多く受ける場合がある。キャリブレーションエアスキャンから計算された各X線検出器に対する仮想フィルタは、これらの違いを説明し得、結果として、入射放射線の実際のスペクトル及びX線検出器の出力を、仮想フィルタのないスペクトルモデルよりも良好に近似するハイブリッドスペクトルモデルが得られる。
【0019】
本文書全体で使用される「投影データ」は、材料(例えば、スキャン対象物の材料)を通過するX線が減衰する程度を表す。投影データ値は、材料の減衰強度を示す量、つまり、X線が材料を通過する際にX線のエネルギー及び/又は強度がどれだけ低減されるかということであり得る。CT画像は、検出器アレイ内のX線検出器から収集された投影データの組み合わせ(例えば、再構成)である。投影データは、X線検出器によって取得された強度データから計算され得る。例えば、スキャン対象物の存在下でX線検出器によって取得された強度データ(I)、及びスキャン対象物の不在下でX線検出器によって取得された強度データ(I)を使用して、そのX線検出器のCT投影データ(p)を計算し得る。
【数22】
【0020】
取得されたCT投影データ(又は取得された投影データ)は、X線検出器によって測定された強度データに基づいて計算された投影データを指し得る。この取得された投影データは、X線検出器からの実際の強度測定に基づいて計算されるため、ビーム硬化効果の影響を受ける場合がある。ビーム硬化補正なしの場合、検出器アレイの全てのX線検出器にわたって取得された投影データの組み合わせ(例えば、それらのデータからの再構成)は、ビーム硬化アーチファクトを伴う画像をもたらす場合がある。画像化放射線源が多色X線源であるCT画像化システムでは、取得されたCT投影データは、多色投影データ(p)と称されることもある。
【0021】
補正された投影値は、本明細書に記載のハイブリッドスペクトルモデルに基づいて計算された投影値を指し得、ここでは個々のX線検出器のビーム硬化アーチファクト及び/又はスペクトル変動が低減又は排除される。補正された投影値は、単色X線源を備えるCTシステムの投影値に近似するので、単色投影値(p)と称されることもある。
【0022】
本明細書で開示されるビーム硬化補正及びキャリブレーション方法は、回転式の多色X線源と、X線源と協調して回転するX線検出器のアレイと、を有する、CT画像化システムの文脈で説明されているが、これらの方法が、非回転CT画像化システム、例えば、X線源及び検出器がスキャン対象物に沿って進む直線並進CT画像化システムのみならず、検出器が固定されており(例えば、完全な360°リング、静止したフレーム又はガントリーの円周を囲む複数の円弧)、X線源は回転可能である(例えば、回転式ガントリーに取り付けられている)、CT画像化システムにおいても使用され得ることを理解されたい。本明細書で提供される例示的なシステムは、ファンビーム放射を放出する多色X線源を備えるが、平行ビーム及び/又はコーンビーム多色X線源を備えるシステムでも同じ方法が使用され得る。本明細書に記載のビーム硬化補正方法及びキャリブレーション方法は、スタンドアロンのCT画像化システムと同様に、放射線治療システムの一部であるCT画像化システムでも使用され得る。例えば、これらの方法を使用して、CT画像化システム(例えば、回転式の撮像放射線源及び検出器、並びにCT画像化システムコントローラを有する)、及び患者の周りで可動である治療用放射線源を含む放射線治療システムのCT画像を、キャリブレーション及び生成し得る。治療用放射線源は、回転可能及び/又は拡張可能なCアーム、関節ロボットアーム、及び/又は回転式円形ガントリーに取り付けられ得る。放射線治療システムのいくつかの変形形態は、任意選択的に、治療用放射線源の向かいに別のX線検出器のアレイを備え得る。放射線治療システムの一例は、双方が回転式ガントリーに取り付けられた、CT画像化システム及び治療用放射線源を備え得る。回転式ガントリーは、例えば、約20RPM~約70RPM、例えば、約60RPMで急速に回転するように構成され得る。いくつかの変形形態では、放射線治療システムは、双方が回転式ガントリーに取り付けられた、CT画像化システム及び治療用放射線源、並びに任意選択的に、同じ回転式ガントリーに取り付けられ得るPET検出器の1つ以上のアレイを備え得る。様々な放射線治療システムの更なる詳細は、2017年11月15日に出願された米国特許出願第15/814,222号に見出され得、この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0023】
システム
図1は、CT画像化システム(100)の1つの変形形態の模式図である。CT画像化システム(100)は、X線源(102)、X線検出器のアレイ(104)、並びにX線源(102)及びX線検出器のアレイ(104)と通信するCT画像化システムコントローラ(図示せず)を備え得る。いくつかの変形形態では、X線源(102)は、X線エネルギーのスペクトルにわたってX線を放出するように構成され得る、多色X線源であり得る。アレイ内のX線検出器の各々から出力されるデータは、X線検出器の各々に入射するX線の強度値を表し得る。X線源(102)及びX線検出器のアレイ(104)は、スキャン対象物(106)の周りを回転し、様々な角度からX線強度データを取得するように構成され得る、回転式ガントリーに取り付けられ得る。いくつかの変形形態では、CT画像化システムは、X線源、検出器アレイ、及び回転式ガントリーを取り囲むハウジングを備え得、ハウジングは、スキャンプラットフォームが移動し得るボアを画定するように成形され得る。スキャンプラットフォームは、回転式ガントリーの回転軸でもあり得る、ボアの長手方向中心軸に沿って移動され得る。
【0024】
CT画像化システムはまた、X線源ビーム経路に配設された1つ以上のスペクトル成分を含み得る。1つ以上のスペクトル成分は、患者であり得るスキャン対象物(106)を透過する放射ビーム(101)のスペクトル特性を修正するように構成され得る。例えば、CT画像化システムは、1つ以上のフィルタを備え得、フィルタにはX線源に固有のものもあれば、X線源とは別個の又はX線源の外部にあるものもある。X線検出器上に配設された1つ以上のフィルタ及び/又はコリメータが任意選択的に存在し得、散乱した放射線の除去及び/又は特定のスペクトル特性の選択を助け得る。図1に描写される変形形態では、X線源(102)は、1つ以上の固有フィルタ(108)を有し得る。任意選択的なボウタイフィルタ(110)は、X線源(102)の外部の放射線ビーム経路(101)に配設され得る。いくつかの変形形態では、スキャン対象物106は、CT画像化システムのボア内に位置し得、放射ビーム経路(すなわち、ボウタイフィルタから放射ビームが出射した後に通る)内にボア窓(図示せず)が存在し得る。多色X線源のX線スペクトルは、X線管スペクトルS(E)によって表され得、固有フィルタ(108)の減衰は、exp(-μint(E)Tint)によって表され得、ボウタイフィルタ(110)の減衰は、exp(-μbow(E)Tbow)によって表され得、ボア窓の減衰は、exp(-μbore(E)Tbore)によって表され得る。アレイ内のX線検出器のエネルギー応答は、E(1-exp(-μdet(E)Tdet))によって表され得る。係数μは、その特定のスペクトル成分の減衰係数(スペクトル成分を構成する材料によって、又は検出器の場合は検出器シンチレータによって異なり得る)であり、量Tは、成分の厚さ(又は成分を通って進むX線の経路長)を表す。減衰係数μ及び厚さTは、各成分の材料及び寸法(すなわち、全体的な形状及び配置)を指定するシステム設計の一部として既知であり得る。X線管スペクトルS(E)はまた、シミュレーションを使用して、既知であるか若しくは特徴付けられ得、かつ/又は測定され得る。
【0025】
ボア内にスキャン対象物(106)がない場合のCT画像化システム(100)の有効スペクトルのモデルSeff(E)は、式(1)で表され得る。
eff(E)=S(E)exp(-μint(E)Tint)exp(-μbow(E)Tbow)exp(-μbore(E)Tbore)E(1-exp(-μdet(E)Tdet))
【0026】
前述のように、X線源に対する各X線検出器(すなわち、アレイ内のi番目のX線検出器)の相対的な場所が異なるため、各X線検出器での有効スペクトルは異なる
【数23】

であり得る。とりわけ、CTシステム全体(式1)及び各個々のX線検出器
【数24】

での有効スペクトルのモデルは、光子を電気信号に変換する個々のX線検出器の様々な非効率性など、製造上のばらつき及び/又はランダムなシステムのばらつきによって生じ得るばらつきを説明していない。
【0027】
方法
ビーム硬化アーチファクトを補正するための方法は、X線検出器の変動性を説明する各X線検出器に対するハイブリッドスペクトルモデルを生成することを含み得る。いくつかの変形形態では、個々のX線検出器の変動性は仮想フィルタによって表され得、この仮想フィルタは、選択された材料で作製され、仮想フィルタを通るX線の減衰がそのX線検出器のスペクトル応答の変動性に近似するような厚さを有している。フィルタの材料及び/又はその厚さなどの仮想フィルタのパラメータのうちの1つ以上は、キャリブレーションセッション中に取得されたX線強度データを使用して判定され得る。キャリブレーションセッション中に取得された経験的データは、検出器アレイ内の個々のX線検出器の実際のスペクトル応答を反映し得、理想的なスペクトルモデルと組み合わせて、個々のX線検出器の実際の応答をより良好に近似するハイブリッドスペクトルモデルを生成し得る。
【0028】
キャリブレーション方法の1つの変形形態には、画像化X線源の2つの異なる有効平均エネルギーで検出器アレイ内のX線検出器を使用して、X線強度データを取得することが含まれ得る。いくつかの変形形態では、X線源及びX線検出器のアレイは、システムのボアの周りを回転し、ボアの周りの複数の角度でX線強度データを取得し得る。例えば、X線強度データは、各X線検出器に対して、スキャン領域の周りの最大約1200箇所、例えば、約4箇所(0°、90°、180°、270°)~約360箇所、約370箇所~約700箇所、約800箇所~約1000箇所、約720箇所、960箇所などで、スキャン領域の周りを1回転以上(例えば、スキャン領域の周りを1回転~約200回転)する間に取得され得る。X線強度データは、スキャン領域に対象物がない、すなわちエアスキャンで取得され得る。
【0029】
次いで、キャリブレーションセッション中に取得されたX線強度データを使用して、X線検出器の変動性をモデル化する個々のX線検出器の仮想フィルタを計算し得る。仮想フィルタは、個々のX線検出器に対する理想的なスペクトルモデルと組み合わせて、そのX線検出器に対するハイブリッドスペクトルモデルを生成し得る。次いで、ハイブリッドスペクトルモデルを使用して、多色投影データ(すなわち、ビーム硬化アーチファクト及び個々のX線検出器のばらつきを含み得る取得されたCT投影データ)と、対応する単色投影値(すなわち、ビーム硬化アーチファクト及び/又はX線検出器のばらつきを低減又は排除した補正された投影値)との間の関係を表す個々のX線検出器のマッピング演算子を計算し得る。マッピング演算子を、患者の画像化セッション中に個々のX線検出器によって得られたCT投影データに適用して、対応する補正された投影値を判定し得る。次いで、補正された投影値を使用して、ビーム硬化アーチファクトが低減又は除去されたCT画像を再構成し得る。
【0030】
ビーム硬化アーチファクトの補正(例えば、低減)のために使用され得るハイブリッドスペクトルモデルに組み込まれ得る、X線強度データを取得するためのキャリブレーション方法の1つの変形形態を図2に示す。キャリブレーション方法(200)は、第1の有効平均エネルギーでのエアスキャン中に、画像化システム内の各X線検出器に対してX線強度データの第1のセットを取得すること(202)と、第2の有効平均エネルギーでのエアスキャン中に、画像化システム内の各X線検出器に対してX線強度データの第2のセットを取得すること(204)と、X線強度データの第1及び第2のセットを使用して、画像化システム内の各X線検出器に対して仮想フィルタを計算すること(206)と、画像化システム内の各X線検出器に対してマッピング演算子を計算すること(210)と、を含み得、マッピング演算子には、仮想フィルタを使用して多色投影値を単色投影値に変換するハイブリッドスペクトルモデルが含まれる。X線強度データ(202、204)の取得は、エアスキャンとして、すなわちスキャン領域にファントムがない状態で行われ得るが、他の変形形態では、X線強度データは、スキャン領域にファントムがある状態で2つの異なる有効平均エネルギーで取得され得る。X線強度データの第1及び第2のセットは、スキャン領域の周りの複数の角度から取得されたX線強度データを含み得る。例えば、X線源及び/又はX線検出器が可動(例えば、回転式の)ガントリーに取り付けられているCT画像化システムの場合、個々の検出器に対するX線強度データは、複数の角度から取得され得、任意選択的に、スキャン領域の周りを複数回回転する間に取得され得る。例えば、X線強度データの取得(202、204)は、X線源及び/又はX線検出器がスキャン領域の周りを少なくとも1回転する間に発生し得、いくつかの変形形態では、X線強度データは、X線源及び/又はX線検出器がスキャン領域の周りを2回以上回転する間に取得され得る。各X線検出器に対してマッピング演算子を計算すること(208)は、画像化セッション中に使用され得る各CTスキャンエネルギーレベルに対して異なるマッピング演算子を計算することを含み得る。例えば、CT画像化システムをキャリブレーションして、ユーザが第1のスキャンエネルギーレベル(例えば、80kVp)で画像化スキャンを行い、かつ第2のスキャンエネルギーレベル(例えば、120kVp)で画像化スキャンを行うのを可能にすることが望まれる場合、マッピング演算子を計算すること(208)は、第1のスキャンエネルギーレベルに対して第1のマッピング演算子を計算すること、及び第2のスキャンエネルギーレベルに対して第2のマッピング演算子を計算することを含み得る。各X線検出器に対する第1及び第2のマッピング演算子は、CT画像化システムコントローラのメモリに格納され得る。画像化セッション中に、ユーザが所望のスキャンエネルギーレベルを選択する際に、CT画像化システムコントローラは、取得されたCT投影データを補正された投影値に変換するために、2つのマッピング演算子から選択する(すなわち、そのスキャンエネルギーレベルに対して計算されたマッピング演算子を選択する)ように構成され得る。
【0031】
方法(200)は、画像化システム内の各X線検出器に対してk個の補正された投影値(p)を有するルックアップテーブルを生成すること(210)を任意選択的に更に含み得、このk個の補正された投影値の各々は、マッピング演算子を使用して、各々が離散化ステップサイズ(s)で分割されたk個の多色投影値の離散セット
【数25】

から計算される。上述のように、CT画像化スキャンが2つの異なるスキャンエネルギーレベルで行われ得る変形形態では、2つの異なるマッピング演算子及び2つの異なるルックアップテーブルが生成され、CT画像化システムコントローラのメモリに格納される。画像化セッション中に、ユーザが所望のスキャンエネルギーレベルを選択する際に、CT画像化システムコントローラは、取得されたCT投影データを補正された投影値に変換するために、選択されたスキャンエネルギーレベルに対応するルックアップテーブルを選択するように構成され得る。
【0032】
前述のように、仮想フィルタは、選択されたフィルタ材料(例えば、アルミニウム、グラファイト)及びフィルタ厚さによって特徴付けられ得る。フィルタ材料の減衰特性、及びX線ビームに沿ったフィルタの厚さ(例えば、ビーム経路長)は、X線検出器のスペクトル応答の変動性、例えば、それらX線検出器における感度のばらつきを近似又は表し得、例えば、製造上のばらつき、及び/又はCT画像化システムのX線源に対する個々のX線検出器の場所に起因して発生し得る、入射光子に対して応答する。図3には、仮想フィルタを計算するための方法の1つの変形形態が描写されている。方法(300)は、(例えば、上述のようにステップ202及び204に関し、図2で描写されるように)X線強度データが取得された後、CT画像化システムコントローラによって実施され得る。方法(300)は、画像化システムの(i個の)X線検出器の各々について、第2のより高い有効平均エネルギーで測定されたX線強度データ
【数26】

に対する、第1のより低い有効平均エネルギーで測定されたX線強度データ
【数27】

の低高比(LHR)を計算すること(302)を含み得る。
【数28】
【0033】
次いで、方法(300)は、(i個の)X線検出器の各々について測定されたLHRに、第1及び第2の有効平均エネルギーの各々におけるX線強度のスペクトルモデルを設定すること(304)を含み得る。個々のX線検出器で測定されたX線強度データは、選択された仮想フィルタ材料の減衰特性によって判定される減衰係数μvir(E)を有する仮想フィルタによって調整される、理想的な有効スペクトル
【数29】

(式1を参照)と、個々のX線検出器間で異なり得る、仮想フィルタ厚さ
【数30】

との積分であり得る。すなわち、以下となる。
【数31】
【0034】
第1及び第2の有効平均エネルギーの各々におけるX線強度データのスペクトルモデルを、個々のX線検出器の測定されたLHRに設定すること(304)は、以下のとおりであり得る。
【数32】

式中、
【数33】

は、第1の有効平均エネルギーにおけるi番目のX線検出器での画像化システムのスペクトルであり、
【数34】

は、第2の有効エネルギーにおけるi番目のX線検出器での画像化システムのスペクトルであり、この例では、第1の有効平均エネルギーよりも高い。
【0035】
次に、方法(300)は、検出器アレイ内の個々のX線検出器に対する厚さ
【数35】

を計算すること(306)を含み得る。数量
【数36】

及びμvir(E)は、測定されるか又は材料特性に基づいて既知であり得、これらの量に基づいて、
【数37】

が見出され得る。1つの変形形態では、仮想フィルタ厚さを計算すること(306)は、
【数38】

以下のように、一次Taylor展開を使用し得る。
【数39】
【0036】
個々のX線検出器に対して仮想フィルタ厚さが計算された後、そのX線検出器に対するハイブリッドスペクトルモデル
【数40】

は、式(2)で表され得る。
【数41】

式中、αは、任意選択的な倍率である。この変形形態では、α倍率は、1であり得る。ハイブリッドスペクトルモデルを使用して、ビーム硬化アーチファクトを含み得る取得されたCT投影データを、補正された投影値に変換するためのマッピング演算子を計算し得る。
【0037】
異なるハイブリッドスペクトルモデルは、異なるCTスキャンエネルギーレベルの個々のX線検出器に対して生成され得る。第1のハイブリッドスペクトルモデルは、第1のCTスキャンエネルギーレベルに対する第1の理想的な有効スペクトル
【数42】

を使用して計算され得、第2のハイブリッドスペクトルモデルは、第2のCTスキャンエネルギーレベルに対する第2の理想的な有効スペクトル
【数43】

を使用して計算され得る。第1及び第2のハイブリッドスペクトルモデルの各々を使用して、個々のX線検出器に対する第1及び第2のマッピング演算子を計算し得(以下で更に記載するように)、これらはCT画像化システムコントローラのメモリに格納され、画像化セッション中に取り出され得る。
【0038】
マッピング演算子を生成するための方法
図4は、ハイブリッドスペクトルモデルを使用してマッピング演算子を生成するための方法の、1つの変形形態を描写する。方法(400)は、各X線検出器に対して、上の式(2)で表されるような、各X線検出器の変動性を表す仮想フィルタを用いて、理想的なスペクトルモデル
【数44】

を修正することによってハイブリッドスペクトルモデル
【数45】

を計算すること(402)と、各X線検出器に対して、多色投影値(p)に対応する単色投影値(p)を、以下のスペクトルモデル式(3)に基づいて繰り返し計算すること(404)と、を含み得る。
【数46】

式中、pは、所与の平均エネルギー
【数47】

での単色投影である
【数48】

であり、
【数49】

は、各CTスキャンエネルギー成分での減衰係数と平均CTスキャンエネルギーでの減衰係数の比率をとることによって計算された、正規化された減衰係数である
【数50】

である。
【0039】
式(3)は、単色投影値pが、多色投影値p(すなわち、個々のX線検出器で測定されたX線強度データから導出される取得されたCT投影データ)の観点で表されるように書き直され得る。
【0040】
代替的又は追加的に、方法(400)は、最大k個の単色投影値pをk個の多色投影値
【数51】

にマッピングするマッピング演算子を、各X線検出器に対して生成すること(406)を含み得る。いくつかの変形形態では、マッピング演算子は、ルックアップテーブル(LUT)であり得る。
=LUT(j)
【0041】
いくつかの変形形態では、k個の単色投影値pは、各々が離散化ステップサイズsによって分割されているk個の多色投影値の離散セット
【数52】

から計算され得る。ルックアップテーブルインデックスは、多色データ(すなわち、取得されたCT投影データ)を除算することによって計算され得る。
【数53】
【0042】
いくつかの変形形態では、マッピング演算子(例えば、ルックアップテーブル)は、それらのCTスキャンエネルギーレベルの各々に対する異なるハイブリッドスペクトルモデルに基づいて、所望の各CTスキャンエネルギーレベルに対して計算され得る。とりわけ、異なるCTスキャンエネルギーレベルでのX線源のスペクトルが特徴付けられているか(例えば、X線源の製造元によって提供された技術仕様又はシミュレーションから)又は既知である限り、異なるCTスキャンエネルギーレベルのハイブリッドスペクトルモデルを計算するために、キャリブレーションセッション中に追加のX線強度データが収集される必要はなく、所望の数のCTスキャンエネルギーレベルに対するマッピング演算子を計算するための任意の数のハイブリッドスペクトルモデルを生成するために、2つの異なる有効平均エネルギーで2回のエアスキャン中に取得されたX線強度データで十分である。異なるCTスキャンエネルギーレベルに対するマッピング演算子の各々は、CT画像化システムコントローラのメモリに格納され得、画像化セッションのために選択されたスキャンエネルギーレベルに基づいて、画像化セッション中にビーム硬化アーチファクトを補正するために取り出され得る。
【0043】
ビーム硬化補正ルックアップテーブルを生成するための方法
上述のように、X線検出器用のルックアップテーブルなどのマッピング演算子は、多色投影値のセットに対応する単色投影値のセットを含み得る。多色投影値のセットは、そのX線検出器で取得され得るCT投影データの範囲を近似し得る。画像化セッション中、取得されたCT投影データpを使用してルックアップテーブルインデックスを生成し、取得されたCT投影データpに対応するルックアップテーブル内の単色投影値を識別し得る。各X線検出器に対して、複数のルックアップテーブルが生成され得、各ルックアップテーブルは、画像化セッション中に使用され得る各CTスキャンエネルギーレベルに対応する。
【0044】
図5A~5Bに、ビーム硬化補正ルックアップテーブルのための方法の1つの変形形態が表される。図5Aは、多色投影値の離散セット
【数54】

から、補正された値又は単色投影値pのセットを計算するための方法の、1つの変形形態を示す。方法(500)は、ルックアップテーブルのエントリ数(すなわち、サイズk)を定義すること(502)と、ルックアップテーブルによってカバーされ得る多色投影データの範囲を定義すること(504)と、を含み得る。多色投影データの範囲は、個々のX線検出器で予想される、取得されたCT投影データの範囲に近似するか又は対応し得る。いくつかの変形形態では、多色投影データの範囲は、離散多色投影値のセットを含み得、各多色投影値は、離散化ステップサイズsによって分割されている。最大多色投影値は、離散化ステップサイズにルックアップテーブルエントリの数を乗算したもの、すなわちs×kであり得る。離散化ステップサイズs及び/又はルックアップテーブルサイズkは各々、所望の精度(例えば、ステップサイズが小さいほど、ステップサイズがより大きい場合よりも正確であり得る)、及び/又は個々のX線検出器で測定された多色投影値の予測される範囲の推定値(例えば、同じ離散化ステップサイズでは、より大きなテーブルはより小さなテーブルよりも広い範囲の投影値を包含し得る)に基づいて選択される。方法(500)は、多色投影データの定義された範囲内の第1の所定の多色投影値を選択すること(506)と、初期単色投影値を、第1の所定の多色投影値に設定すること(508)と、ハイブリッドスペクトルモデルと組み合わせてNewton法を使用して(509)、初期(中間)単色投影値を更新すること(510)と、更新された単色投影値が、式(3)によって計算された多色投影値を所定の多色投影値に収束させるかどうかを判定すること(512)と、を含み得る。方法(500)は、中間単色投影値が、式(3)によって計算された多色投影値を所定の許容可能な公差内の所定の多色値に収束させるまで、中間単色投影値に対して反復すること(510~512)を含み得る。いくつかの変形形態では、前述のように、ハイブリッドスペクトルモデルは式(2)によって表され得、式(3)によって表されるスペクトルモデルに含まれ得る。最終単色値(514)は、所定の多色投影値にリンクした又は関連付けられたエントリとしてルックアップテーブルに含まれ得る。方法(500)は、多色投影値の定義された範囲(504)内の離散多色投影値の各々について、これらの計算を繰り返すこと(506~514)を含み得る。前述のように、各X線検出器に対して複数のルックアップテーブルが生成され得、各ルックアップテーブルは、画像化セッション中に使用され得る異なるCTスキャンエネルギーレベルに対応する。方法(500)を使用して、ルックアップテーブルの各々(例えば、CTスキャンエネルギーレベル1に対するLUT_1、CTスキャンエネルギーレベル2に対するLUT_2、CTスキャンエネルギーレベル3に対するLUT_3など)を個々のX線検出器に対して生成し得、その後、CT画像化システムコントローラのメモリに格納され得る。複数のルックアップテーブルの各々は、同じ数又は異なる数のエントリを有し得る。離散多色投影値の離散化ステップは、全てのルックアップテーブルにわたり異なるか又は同じであり得る。
【0045】
図5Bは、選択された多色投影値、例えば、ある範囲の多色投影データ(例えば、取得されたCT投影データ)に対応する離散多色投影値のセット内の離散多色投影値
【数55】

に対応する単色投影値を計算するために、ハイブリッドスペクトルモデル(例えば、本明細書に記載のハイブリッドスペクトルモデル)と併せてNewton法を使用する方法の、1つの変形形態を描写する。いくつかの変形形態では、多色投影データの範囲は、離散多色投影値のセットを含み得、各多色投影値は、離散化ステップサイズsによって分割されており、計算された単色投影値は、k個のエントリを持つルックアップテーブルに格納され得る。方法(520)は、多色投影値pを選択すること(522)と、初期(中間)単色投影値を、選択された多色投影値
【数56】

に設定すること(524)と、ハイブリッドスペクトルモデルとともにNewton法を使用して初期(中間)単色投影値を更新すること(526)と、更新された単色投影値が定義された基準を満たすかどうかを判定すること(528)と、を含み得る。中間単色投影値を更新すること(526)は、ハイブリッドスペクトルモデル(例えば、式(2)及び(3)によって表される)に基づいて目的関数(objection function)を定義すること(527a)と、目的関数の導関数を計算し、中間単色投影値と、目的関数対その導関数の比率との差分を計算すること(527b)と、を含み得る。
【0046】
いくつかの変形形態では、目的関数は、式(4)で定義され得る。
【数57】
【0047】
よって上の目的関数の一次導関数は、次のようになる。
【数58】
【0048】
単色値を更新することには、以下の計算が含まれ得る。
【数59】
【0049】
中間単色値が、選択された多色投影値と十分に対応するかどうかを判定する(528)ために使用される基準は、更新された中間単色投影値を使用して式(4)によって定義される目的関数の値を計算することを含み得る。例えば、CT画像化システムコントローラは、
【数60】

が、指定された基準(例えば、ゼロに近い選択された閾値)未満かどうかを評価し得る。方法(500)は、その計算された値が、選択された多色投影値の所望の許容差内にあるかどうかを判定することを含み得る。許容差内にない場合、方法(520)は、更新された中間単色投影値が所望の基準を満たす(すなわち、選択された多色投影値の所望の許容差内にある)まで反復すること(526~528)を含み得る。最終単色値(530)は、選択された多色投影値(522)にリンクした又は関連付けられたエントリとしてルックアップテーブルに含まれ得る。方法(520)は、多色投影値の所望の範囲内の離散多色投影値の各々についてこれらの計算(522~530)を繰り返すこと、及び/又はルックアップテーブルにk個のエントリを投入することを含み得る。前述のように、各X線検出器に対して複数のルックアップテーブルが生成され得、各ルックアップテーブルは、画像化セッション中に使用され得る異なるCTスキャンエネルギーレベルに対応する。方法(500)を使用して、ルックアップテーブルの各々(例えば、CTスキャンエネルギーレベル1に対するLUT_1、CTスキャンエネルギーレベル2に対するLUT_2、CTスキャンエネルギーレベル3に対するLUT_3など)を個々のX線検出器に対して生成し得、これは、その後、CT画像化システムコントローラのメモリに格納され得る。複数のルックアップテーブルの各々は、同じ数又は異なる数のエントリを有し得る。離散多色投影値の離散化ステップは、全てのルックアップテーブルにわたり異なるか又は同じであり得る。
【0050】
画像再構成のための、ビーム硬化を補正するための方法
上述のようにキャリブレーションセッション中に生成されたマッピング演算子(例えば、ルックアップテーブル)は、画像化セッション中に、ビーム硬化効果及び/又はX線検出器の変動性から生じ得る取得されたCT投影データからのアーチファクトを補正するために使用され得る。画像化セッション中、ユーザは、画像化X線源によってスキャン対象物に放出される光子エネルギーを定義し得る、CTスキャンエネルギーレベルを選択し得る。この選択はまた、各X線検出器に対するマッピング演算子(例えば、ルックアップテーブル)を選択するために、CT画像化コントローラシステムによって使用され得る。画像化セッションは、各個々のX線データに対してX線強度データを取得することと、取得されたX線強度データに基づいてCT投影データ(すなわち、多色投影データ)を計算することと、個々のX線検出器に対して選択されたマッピング演算子を使用して、補正された投影値(すなわち、単色投影データ)を判定することと、を含み得る。アレイ内のX線検出器にわたって補正された投影値を組み合わせて、ビーム硬化アーチファクトが低減された(又は更には排除された)画像を生成(例えば、再構成するために使用される)し得る。いくつかの変形形態では、各個々のX線検出器に対するマッピング演算子はルックアップテーブルであり得、取得されたCT投影データを使用して、対応する単色投影値を含むルックアップテーブル内のエントリを識別し得る。代替的又は追加的に、各個々のX線検出器に対するマッピング演算子は、本明細書に記載のハイブリッドスペクトルモデル(例えば、式(2)~(4))を含む1つ以上のマッピング関数であり得る。
【0051】
図6Aは、CT画像化に対するビーム硬化アーチファクトを補正するための方法の、1つの変形形態を示す。方法(600)は、画像化システム内の各個々のX線検出器でCT投影データ(すなわち、多色投影データp)を取得すること(602)と、画像化システム内の各X線検出器について取得されたCT投影データに対する補正された投影値(すなわち、単色投影データp)を、マッピング演算子を使用して判定すること(604)と、画像化システム内の各X線検出器の補正された投影値を使用して画像を生成すること(606)と、を含み得る。CT投影データを取得することは、個々のX線検出器でX線強度データを取得又は測定すること、及び前述のように、測定されたX線強度データから取得されたCT投影データを計算すること、例えば、
【数61】

を含み得る。任意選択的に、方法(600)は、画像化セッション中に使用される、又は使用されたCTスキャンエネルギーレベルに基づいて、マッピング演算子を選択すること(603)を含み得る。各X線検出器は、1つ以上のCTスキャンエネルギーレベルに対応するCT画像化システムコントローラメモリに格納された、1つ以上のマッピング演算子(例えば、1つ以上のルックアップテーブル)を有し得る。例えば、1つ以上のCTスキャンエネルギーレベルに対応する各X線検出器に対して1つ以上のルックアップテーブルを生成され、コントローラメモリに格納され得る。いくつかの変形形態では、マッピング演算子の選択は、X線強度データが取得される前に行われ得るか、又はX線強度データが取得された後に(例えば、取得された強度データの後処理の一部として)行われ得る。
【0052】
いくつかの変形形態では、補正された投影値を判定することは、ルックアップテーブルなどのマッピング演算子を使用し得る。図6Bは、ルックアップテーブルを使用して補正された投影値を判定するための方法の、1つの変形形態を示す。方法(610)は、画像化システム内の各X線検出器について取得されたCT投影データに基づいて、インデックス値を計算すること(612)と、インデックス値を使用して、ハイブリッドスペクトルモデル、例えば本明細書に記載のいずれかの(例えば、2つのエアスキャンデータセットに基づいて多色投影値を単色投影値にマッピングする)ハイブリッドスペクトルモデルを使用して計算された、複数の単色投影値を含むルックアップテーブル内の補正された投影値を識別すること(614)と、を含み得る。ルックアップテーブルは、上述の方法のうちの1つ以上を使用して生成され得る。
【0053】
いくつかの変形形態では、補正された投影値を判定することは、取得されたCT投影データ(すなわち、多色投影データ)からルックアップテーブルインデックスjを計算することを含み得る。図6Cは、ルックアップテーブルとともに補正された投影値を判定し、取得されたCT投影データを使用してインデックス値を計算して、対応する補正された投影値を有するテーブルエントリを識別するための方法の1つの変形形態を示す。方法(620)は、画像化システム内の各X線検出器の取得されたCT投影データ(p)を離散化ステップサイズ(s)で除算することによってインデックス値(j)を計算すること(622)、すなわち
【数62】

と、ハイブリッドスペクトルモデル、例えば本明細書に記載のいずれかの(例えば、2つのエアスキャンデータセットに基づいて多色投影値を単色投影値にマッピングする)ハイブリッドスペクトルモデルを使用して各々が離散化ステップサイズ(s)によって分割されているk個の多色投影値の離散セットから計算された、最大k個の補正された投影値を含むルックアップテーブル内のj番目のエントリを識別することによって、補正された投影値(p)を判定すること(624)と、を含み得る。
【0054】
実験結果
本明細書に記載のキャリブレーション方法及びハイブリッドスペクトルモデルを使用して実験を行った。この実験の結果を、図7A~7Cに描写する。実験は、ファンビーム画像化X線源と、X線検出器のアレイ(各々が1.024mm(幅)×2.213mm(高さ)の寸法を有し、線源~検出器の距離は1133.4mm、線源~アイソセンターまでの距離は643mmである、とを備える、CT画像化システムを使用して行った。線源及び検出器アレイは、互いに反対側の回転式ガントリーに位置している。回転式ガントリーは、最大60RPMで回転するように構成されている。また、CT画像化システムは、画像化ビーム経路内にボウタイフィルタも有する。この実験のCT画像化システムは、画像化と放射線治療とを組み合わせたシステムの一部であるが、同様の実験は、このCT画像化システムと同じコンポーネントを有するスタンドアロンの画像化システムで行われ得る。
【0055】
キャリブレーションセッション中に、上述したCT画像化システムを使用して80kVp及び140kVpでのエアスキャンを行った。本明細書に記載の方法によるエアスキャンデータを使用して、仮想フィルタを有するハイブリッドスペクトルモデルを生成した。すなわち、仮想フィルタを、式(2)及び(3)によって表されるハイブリッドスペクトルモデルを生成する方法(300)に従ってLHRを計算することによって計算した。この実験では、図5A~5Bに描写した方法(500)及び(520)に従って、各X線検出器に対してルックアップテーブルマッピング演算子を生成した。
【0056】
画像化セッション中、CT画像化システムを30RPMで回転させながら、CATPHAN(登録商標)600均一性ファントムモジュールを120kVp、150mA管電流でスキャンした。取得したX線強度データからCT投影データを計算した。図7A~7CのCT画像は、3D逆投影を伴うFDKを使用して再構成した。図7Aは、取得したCT投影データを、ビーム硬化アーチファクトに対して補正しなかった画像を描写し、図7Bは、取得したCT投影データを、仮想フィルタを含まない理想的なスペクトルモデル(例えば、式(1))を使用してビーム硬化アーチファクトに対して補正した画像を描写し、図7Cは、取得したCT投影データを、仮想フィルタを有するハイブリッドスペクトルモデル(例えば、式(2)及び(3))を使用してビーム硬化アーチファクトに対して補正した画像を示す。加えて、全ての画像の同じ場所における内側の円で囲まれた領域及び外側の円で囲まれた領域の平均CT値を、図7A~7Cの各々に示す。図7Aの画像は、明確なリングアーチファクト(ラベル付けした矢印で示す)、ボウタイフィルタアーチファクトの結果である薄い影付きの円形バンド又はハロ、及びリングアーチファクトを囲む暗い円盤状のものとして現れる顕著なカッピングアーチファクトを有する。内側の円で囲まれた領域の平均CT値(62HU)は、外側の円で囲まれた領域の平均CT値(26HU)と大きく異なり、約36HUの差がある。図7Bの画像もまた同様のリングアーチファクトを有するが、ボウタイフィルタアーチファクトが低減され、カッピングアーチファクトもまた低減されている。内側の円で囲まれた領域の平均CT値(27HU)と外側の円で囲まれた領域の平均CT値(16HU)との間の差は9HUであり、これは、図7Aの画像と比較して低減している。図7Aに存在するカッピングアーチファクト、ボウタイフィルタアーチファクト、及びリングアーチファクトは、図7Bではいくらか低減したが、これらのアーチファクトは、本明細書に記載のビーム硬化補正方法を使用すると、図7Cで更にもっと低減した。図7Cの画像に見られるように、リングアーチファクトは大幅に低減又は排除され、目に見えるボウタイフィルタ及びカッピングアーチファクトはあったとしてもほとんどない。内側の円で囲まれた領域の平均CT値(20HU)と外側の円で囲まれた領域の平均CT値(19HU)との間の差は1HUであり、これは図7Bの画像と比較して更にもっと低減している。更に、CT画像の均一性は、図7Aと比較して図7Cで改善された。ビーム硬化補正なしの場合、図7Aの全体画像は36HUのCT値の均一性を有していたが、本明細書に記載の方法によるビーム硬化補正ありの場合、図7Cの全体画像は1HUのCT値の均一性を有していた。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
【国際調査報告】