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特表2023-520933イオン注入器へのアンチモン含有材料の貯蔵及び送達
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】イオン注入器へのアンチモン含有材料の貯蔵及び送達
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/02 20060101AFI20230515BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H01J27/02
H01J37/317 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561494
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 US2021070502
(87)【国際公開番号】W WO2021232036
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】16/871,605
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】392032409
【氏名又は名称】プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライニッカー、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】シンハ、アシュウィニ、ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハイダーマン、ダグラス、シー.
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB05
5C101DD03
5C101DD20
5C101DD31
5C101DD33
5C101FF02
(57)【要約】

アンチモン含有ドーパント材料を使用するための新規の方法、組成物、並びに貯蔵及び送達容器が提供される。組成物は、イオン注入プロセスの一部として、安定した、十分かつ持続的な流量にてアークチャンバ内へと流れるのに十分な蒸気圧で、選択される。アンチモン含有材料は、非炭素含有化学式で表され、それにより、イオンチャンバ内への炭素系堆積物の導入を低減又は排除する。組成物は、微量の水分を含有しない水分なしの環境を含む、安定した条件下で、貯蔵及び送達容器内に貯蔵される。貯蔵及び送達容器は、具体的には、安定した、十分かつ持続的な流量にて、高純度の気相アンチモン含有ドーパント材料の送達を可能にするように、設計されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチモン含有材料の高純度の気相を送達するために構成された、準大気圧式貯蔵及び送達容器であって、
貯蔵及び送達容器を備え、前記貯蔵及び送達容器が、準大気圧条件下にて、前記アンチモン含有材料を液相にて保持するために構成され、それにより、前記液相が、前記アンチモン含有材料の前記高純度の気相と実質的に平衡状態であり、かつ前記アンチモン含有材料の前記高純度の気相が、大気圧未満の蒸気圧を生じ、前記高純度の気相が、前記気相の総容積に基づいて約95容積%以上であり、
前記貯蔵及び送達容器が、前記液相との十分な表面積接触を有する複数の壁を備え、また更に、前記複数の壁が、前記液体への熱伝導を向上させる熱伝導率を示し、
前記貯蔵及び送達容器が、前記高純度の気相アンチモン含有材料の分配中に、外部加熱の不在及びキャリアガスの不在により特徴付けられる、準大気圧式貯蔵及び送達容器。
【請求項2】
前記アンチモン含有材料が非炭素含有化学式により表されて、イオン注入器のアークチャンバ内及びイオン源のその他の領域全体にわたる炭素系堆積物の形成を低減又は排除する、請求項1に記載の準大気圧式貯蔵及び送達容器。
【請求項3】
前記複数の壁の熱伝導率が1~425W/m-Kの範囲であり、前記アンチモン含有材料が非炭素含有化学式により表されて、前記イオン注入器の前記アークチャンバ内及び前記イオン源のその他の領域全体にわたる炭素系堆積物の形成を低減又は排除する、請求項1に記載の準大気圧式貯蔵及び送達容器。
【請求項4】
前記液相が、0~1容積%の不純物の範囲の総液相不純物量を含み、更に、前記液相不純物が、0~0.1容積%のN2、0~0.1容積%のO2、0~0.6容積%のHF、0~0.1容積%のSbF、0~0.1容積%のSbを含み、残余が、前記液相中の前記アンチモン含有材料である、請求項1に記載の準大気圧式貯蔵及び送達容器。
【請求項5】
アンチモン含有材料の高純度の気相を送達するために構成された、準大気圧式貯蔵及び送達容器であって、
貯蔵及び送達容器を備え、前記貯蔵及び送達容器が、準大気圧条件下にて、前記アンチモン含有材料を液相にて保持するために構成され、それにより、前記液相が、前記貯蔵及び送達容器内の、ヘッドスペースの所定の容積を占有する前記アンチモン含有材料の前記高純度の気相と実質的に平衡状態であり、かつ前記アンチモン含有材料の前記高純度の気相が、大気圧未満の蒸気圧を生じ、前記高純度の気相が、前記ヘッドスペースの前記所定の容積に基づいて約95容積%以上であり、
前記ヘッドスペースの前記所定の容積が、十分な量の、前記アンチモン含有材料の前記高純度の気相を受容するような寸法であり、
前記貯蔵及び送達容器が、前記高純度の気相アンチモン含有材料の分配中に、外部加熱の不在及びキャリアガスの不在により特徴付けられる、準大気圧式貯蔵及び送達容器。
【請求項6】
前記高純度の気相に曝露される前記液相の表面積が、少なくとも約50cm2であり、更に、前記ヘッドスペースの前記所定の容積が1リットル以上である、請求項5に記載の準大気圧式貯蔵及び送達容器。
【請求項7】
吸着材を更に含む、請求項5に記載の準大気圧式貯蔵及び送達容器。
【請求項8】
前記ヘッドスペース内の圧力が、1トール以上である、請求項5に記載の準大気圧式貯蔵及び送達容器。
【請求項9】
液相及び気相を含む、貯蔵容器内の高純度アンチモン含有材料であって、前記気相が、0~5容積%の不純物の範囲の総気相不純物量を含み、前記気相不純物が、0~4容積%のN2、0~0.5容積%のO2、0~0.49容積%のHF、0~0.01容積%のHOを含み、残余が、前記気相中の前記アンチモン含有材料である、高純度アンチモン含有材料。
【請求項10】
液相及び気相を含む、貯蔵容器内の高純度アンチモン含有材料であって、前記液相が、0~1容積%の不純物の範囲の総液相不純物量を含み、前記液相不純物が、0~0.1容積%のN2、0~0.1容積%のO2、0~0.6容積%のHF、0~0.1容積%のSbF、0~0.1容積%のSbを含み、残余が、前記液相中の前記アンチモン含有材料である、高純度アンチモン含有材料。
【請求項11】
アンチモン源材料の高純度の気相の、安定した、持続的かつ十分な流れを送達するために構成された、準大気圧式貯蔵及び送達容器を調製する方法であって、
5W/mKの熱伝導率を有する複数の壁を有する容器を提供する工程と、
前記複数の壁にフッ素不動態化を行う工程と、続いて、
不活性ガスの存在下で、前記容器に液相のアンチモン含有材料を導入する工程と、
約1L以上の所定のヘッドスペース容積を生じさせる工程であって、前記所定のヘッドスペース容積が微量の不純物を有する工程と、
十分な量の前記アンチモン含有材料を、前記所定のヘッドスペース容積内の気相に蒸発させる工程であって、蒸発させる前記工程は、外部加熱の非存在下で実施される、工程と、
前記アンチモン含有材料の前記液相を凍結させて、凍結アンチモン含有材料を形成する工程と、
前記アンチモン含有材料の前記気相を、前記所定のヘッドスペース容積から凝結させて、凝結した高純度の気相を形成する工程と、
窒素、水蒸気、不活性ガス、及びいずれかのその他のガス状不純物を、前記所定のヘッドスペース容積から排気する工程と、
前記所定のヘッドスペース容積内で前記高純度の気相を形成させるように、前記凝結した高純度の気相の温度の上昇を可能にする工程と、
前記液相を再形成するように、前記凍結アンチモン含有材料の温度の上昇を可能にする工程と、を含む方法。
【請求項12】
(i)凝結させる工程、(ii)排気する工程、及び(iii)前記液相を再形成し、かつ前記所定のヘッドスペース容積内で前記高純度の気相を再形成するように、前記凝結した高純度の気相及び前記凍結アンチモン含有材料の加温を可能にする工程のそれぞれを実施することを更に含み、前記工程(i)、(ii)、及び(iii)のそれぞれが2回以上実施されて、0~4容積%のN2、0~0.5容積%O2、0~0.49容積%のHF、及び0~0.01容積%のHOを含む、前記ヘッドスペース内の気相不純物を達成し、前記気相不純物の総量が、5容積%以下である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
高純度アンチモン含有材料で充填された準大気圧式貯蔵及び送達容器の使用方法であって、
前記容器を下流イオン注入ツールに動作可能に接続することと、
前記容器の所定のヘッドスペース容積を占有する前記アンチモン含有材料の高純度の気相の前記蒸気圧未満である、前記準大気圧式貯蔵及び送達容器の下流圧を設定することと、
弁を開放位置へと作動させることと、
加熱の非存在下で、前記容器の前記所定のヘッドスペース容積から前記アンチモン含有材料を分配することであって、前記アンチモン含有材料が、キャリアガスの非存在下で0.1sccm以上の流量にて、高純度の気相として分配される、ことと、
前記キャリアガスの非存在下にて、前記アンチモン含有材料の前記高純度の気相を、前記イオン注入ツールに向かって0.1sccm以上の流量で流すことと、
0.1sccm以上の流量にて前記ヘッドスペースから前記アンチモン含有材料の前記高純度の気相を供給し続けるために、前記容器内において、加熱の非存在下で対応する液相から追加のアンチモン含有材料を蒸発させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入のための新規アンチモン含有材料の貯蔵及び送達容器、並びにイオン注入プロセスのための材料の貯蔵及び送達に好適な条件に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、半導体/超小型電子製造における重要なプロセスである。イオン注入プロセスは、典型的には、半導体ウエハにドーパント不純物を導入するために、集積回路の製造において使用される。一般的に言えば、半導体用途に関しては、イオン注入は、所望の方法にて、ウエハの物理的、化学的及び/又は電気的特性を変化させるために、通常、ドーパント不純物とも呼ばれるドーパントガスからの、イオンの半導体ウエハへの導入を伴う。所望のドーパント不純物は、ウエハの表面へと、所望の深さにて、ドープ域を形成するために、微量で半導体ウエハへと導入される。ドーパント不純物は、半導体ウエハと結合して電気キャリアを生成し、それにより、半導体ウエハの導電率を変化させるために選択される。ウエハに導入されたドーパント不純物の濃度又は用量は、ドープ域の導電率を決定する。このようにして、半導体デバイスとして集合的に機能するトランジスタ構造体、絶縁構造体、及びその他の電子構造体を形成するために、いくつかの不純物領域が形成される。
【0003】
イオン源は、供給源であるドーパントガスからイオン種のイオンビームを発生させるために使用される。イオン源は、イオン注入システムの重要な構成要素であり、このイオン源は、注入プロセス中に注入される特定のドーパントイオンを生成するためにドーパントガスをイオン化する役割を果たす。イオン源チャンバは、タングステン(W)又はタングステン合金で作製されたフィラメントなどのカソードを含み、これは、その熱電子発電温度まで加熱されて電子を発生させる。電子は、アークチャンバ壁に向かって加速し、アークチャンバ内のドーパント源ガス分子と衝突してプラズマを発生させる。プラズマは、ドーパントガス種の解離イオン、ラジカル、並びに中性原子及び分子を含む。イオン種はアークチャンバから抽出され、次に、質量に基づいてその他のイオン種から分離される。特定の質量電荷比に基づいたビーム内のイオンのみが、フィルタを通過することができる。イオンの選択された質量は、所望のイオン種を含有し、このイオン種は、次に標的基材に向けられて、必要な深さ及び用量にて標的基材へと注入される。
【0004】
現在の半導体デバイス技術は、p型及びn型半導体を製造するために、特定の量にて種々のドーパント種を利用しており、これらの両方は、トランジスタ及びダイオード電子デバイスの製造のための構成要素と見なされる。p型ドーパントとn型ドーパントとの差は、主に、半導体結晶格子へと導入される電荷担持種に関連する。p型ドーパントは、半導体材料中に自由電子を発生させるためにn型ドーパントが使用されている間に、価電子帯における電子欠損を生じさせることにより、半導体材料において電子「孔」を発生させるために使用される。アンチモン(Sb)は、今日の電子デバイスに必要とされる一般的に使用されるドーパント種の一例である。Sbは、半導体産業において関心を集め続けている多くの望ましい用途を伴うn型ドーパントである。例えば、インジウムアンチモンは、赤外線検出器として使用される狭バンドギャップIII-V半導体である。アンチモンはまた、finFETデバイス内に超浅のp-n接合部と、MOSFET内のチャネルの閾値電圧調整と、pMOSデバイスにおけるパンチスルー停止ハロー注入、及びゲルマニウムn-MOSFETにおけるソース・ドレイン領域と、を形成するために使用される。
【0005】
現在では、Sbの固体源は、ドーパント材料として使用されている。元素状Sb金属は、フィラメントにごく接近して位置付けることにより、イオン注入のために使用することができる。イオン注入の間、フィラメントの温度は十分に高く、これにより、放射加熱によりSbが蒸発して電子と衝突し、ドーピングのためのSb含有イオンを生じさせる。しかし、本方法は、Sbをチャンバ壁に、又はフィラメント上に堆積させる場合があり、フィラメントの寿命を短くする。Sbの固体化合物はまた、SbF、SbCl、及びSbなどのドーパント源としても使用されるが、これらの化合物は、イオン注入に必要な十分な量の蒸気を発生させるために、160℃超まで加熱する必要がある。加えて、システム内の全てのフローラインは、典型的には、アークチャンバに到達する前に、Sbの固体源の再凝結を防止するために加熱される。
【0006】
Sb含有イオンを注入するためのSbの固体源の操作的課題を考慮し、Sbのガス源が想到されてきた。特に、SbH及びSbDは、Sbのガス状源として提案されてきたが、これらの化合物は、室温にて不安定かつ分解している。
【0007】
これらの理由から、制御された方法にてイオン注入のためにアンチモン含有ドーパント組成物を送達することができる、アンチモン含有材料のための好適な貯蔵及び送達容器という未だ満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、種々の組み合わせで以下の態様のいずれかを含んでよく、また、書面による説明又は添付図面において以下に記載されるいずれかの他の態様を含んでよい。
【0009】
本発明は、アンチモンドーパント組成物を使用するための、貯蔵及び送達システムに関する。本明細書に開示される貯蔵及び送達システムは、イオン注入プロセスへの送達の容易性を向上させ、かつイオンチャンバ内のSb含有堆積物の蓄積を実質的に低減させる、ということが見出されている。
【0010】
第1の態様では、周囲条件にて、その内部から、アンチモン含有材料の高純度の気相の、安定した、持続的かつ十分な流れを送達するために構成された、準大気圧式貯蔵及び送達容器は、貯蔵及び送達容器を備え、貯蔵及び送達容器は、準大気圧条件下にて、アンチモン含有材料を液相にて保持するために構成され、それにより、液相は、貯蔵及び送達容器内の、ヘッドスペースの所定の容積を占有する高純度の気相と実質的に平衡状態であり、かつ高純度の気相は、大気圧未満の蒸気圧を生じ、高純度の気相は、所定の容積に基づいて約95容積%以上であり、当該貯蔵及び送達容器が、液相との十分な表面積接触を有する複数の壁を備え、また更に、当該複数の壁が、液体への熱伝導を向上させる熱伝導率を示し、当該貯蔵及び送達容器が、高純度の気相アンチモン含有材料の分配中に、外部加熱の不在及びキャリアガスの不在により特徴付けられる、準大気圧式貯蔵及び送達容器。
【0011】
第2の態様では、アンチモン含有材料の高純度の気相を送達するために構成された、準大気圧式貯蔵及び送達容器は、貯蔵及び送達容器を備え、当該貯蔵及び送達容器は、準大気圧条件下にて、当該アンチモン含有材料を液相にて保持するために構成され、それにより、当該液相は、貯蔵及び送達容器内の、ヘッドスペースの所定の容積を占有するアンチモン含有材料の高純度の気相と実質的に平衡状態であり、かつアンチモン含有材料の当該高純度の気相は、大気圧未満の蒸気圧を生じ、当該高純度の気相は、ヘッドスペースの所定の容積に基づいて約95容積%以上であり、当該ヘッドスペースの所定の容積が、十分な量の、アンチモン含有材料の高純度の気相を受容するような寸法であり、当該貯蔵及び送達容器が、高純度の気相アンチモン含有材料の分配中に、外部加熱の不在及びキャリアガスの不在により特徴付けられる、準大気圧式貯蔵及び送達容器。
【0012】
第3の態様では、貯蔵容器内の高純度アンチモン含有材料は液相及び気相を含み、当該気相は、0~5容積%の不純物の範囲の総気相不純物量を含み、気相不純物は、0~4容積%のN2、0~0.5容積%のO2、0~0.49容積%のHF、0~0.01容積%のHOを含み、残余は、気相中のアンチモン含有材料である。
【0013】
第4の態様では、貯蔵容器内の高純度アンチモン含有材料は液相及び気相を含み、当該液相は、0~1容積%の不純物の範囲の総液相不純物量を含み、液相不純物は、0~0.1容積%のN2、0~0.1容積%のO2、0~0.6容積%のHF、0~0.1容積%のSbF、0~0.1容積%のSbを含み、残余は、液相中のアンチモン含有材料である。
【0014】
第5の態様では、アンチモン源材料の高純度の気相の、安定した、持続的かつ十分な流れを送達するために構成された、準大気圧式貯蔵及び送達容器を調製する方法は、5W/mKの熱伝導率を有する複数の壁を有する容器を提供する工程と、複数の壁にフッ素不動態化を行う工程と、続いて、不活性ガスの存在下で、容器に液相のアンチモン含有材料を導入する工程と、約1L以上の所定のヘッドスペース容積を生じさせる工程であって、当該所定のヘッドスペース容積が微量の不純物を有する工程と、十分な量のアンチモン含有材料を、所定のヘッドスペース容積内の気相に蒸発させる工程であって、当該蒸発させる工程は、外部加熱の非存在下で実施される工程と、アンチモン含有材料の液相を凍結させて、凍結アンチモン含有材料を形成する工程と、アンチモン含有材料の気相を、所定のヘッドスペース容積から凝結させて、凝結した高純度の気相を形成する工程と、窒素、水蒸気、不活性ガス、及びいずれかのその他のガス状不純物を、所定のヘッドスペース容積から排気する工程と、所定のヘッドスペース容積内に高純度の気相を形成するように、凝結した気相の温度の上昇を可能にする工程と、液相を再形成するように凍結アンチモン含有材料の温度の上昇を可能にする工程と、を含む。
【0015】
第6の態様では、高純度のアンチモン含有材料で充填された準大気圧式貯蔵及び送達容器の使用方法は、容器を下流イオン注入ツールに動作可能に接続することと、容器の所定のヘッドスペース容積を占有するアンチモン含有材料の高純度の気相の蒸気圧未満である、準大気圧式貯蔵及び送達容器の下流圧を設定することと、弁を開放位置へと作動させることと、加熱の非存在下で、容器の所定のヘッドスペース容積からアンチモン含有材料を分配することであって、当該アンチモン含有材料が、キャリアガスの非存在下における0.1sccm以上の流量にて、高純度の気相として分配される、ことと、キャリアガスの非存在下にて、アンチモン含有材料の高純度の気相を、イオン注入ツールに向かって0.1sccm以上の流量で流すことと、0.1sccm以上の流量にてヘッドスペースからアンチモン含有材料の高純度の気相を供給し続けるために、容器内において、加熱の非存在下で対応する液相から追加のアンチモン含有材料を蒸発させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の目的及び利点は、全体を通して同じ番号が同じ特徴を示す添付図面と関連して、その好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより良く理解される。
図1】本発明の原理を組み込む、ビームラインイオン注入システムを示す。
図2】本発明の原理を組み込む、プラズマ浸漬イオン注入システムを示す。
図3】本発明の原理を組み込む、代表的な貯蔵及び送達容器を示す。及び
図4】本発明の原理を組み込む、代替的な貯蔵及び送達容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の様々な要素の関連性及び機能は、以下の「発明を実施するための形態」によってより良好に理解される。詳細な説明は、本開示の範囲内のものとして様々な置換及び組み合わせの特徴、態様、及び実施形態を想到している。したがって、本開示は、これらの特定の特徴、態様、及び実施形態のそのような組み合わせ及び置換のうちのいずれか、又はそれらのうちの選択された1つ以上を備えるように、それらからなるように、又はそれらから本質的になるように指定され得る。
【0018】
本発明は、種々の組み合わせで以下の実施形態のいずれかを含んでよく、また、書面による説明又は添付図面において以下に記載されるいずれかの他の態様を含んでよい。本明細書で使用される場合、用語「実施形態」とは、例として例示するのに役立つが、限定するものではない実施形態を意味する。
【0019】
本明細書及び全体で使用される場合、用語「Sb含有イオン」又は「Sbイオン」とは、基材へと注入するのに好適な、Sb+又はSb2+などのSbイオン又はSb含有イオン、及びSb2+などだがこれらに限定されないオリゴマーイオンを含む、種々のSbイオン種を意味する。
【0020】
「基材」とは、本明細書及び全体で使用される場合、シリコン、二酸化ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、及びこれらの合金を含む任意の好適な材料から形成され、ドーパントイオンなどの別の材料が注入されるといったような、イオン注入を必要とするウエハ又は他の薄く切られた若しくは薄く切られていない材料、あるいは同様の標的対象を含むがこれらに限定されない、任意の材料を意味する。
【0021】
「Sb」及び「アンチモン」は、本明細書及び全体で交換可能に使用され、同一の意味を有することが意図されると理解すべきである。「Sb含有材料」又は「Sb含有源材料」又は「Sb源材料」に関しては、本発明のアンチモン材料の液相並びに液相が実質的に平衡状態にある対応する気相を意味することを、意図している。「Sb含有液体源材料」は、対応する気相と実質的に平衡状態にある本発明の材料を意味することを意図している。
【0022】
本明細書及び全体で使用される場合、用語「容器(vessel)」及び「容器(container)」は交換可能に使用され、かつ材料の充填、貯蔵、輸送、及び/又は送達に好適な、シリンダ、デュワー、ボトル、タンク、バレル、バルク及びマイクロバルクを含むがこれらに限定されない、任意の種類の貯蔵、充填、輸送及び/又は送達容器を意味することを意図している。そのような使用法と一致し、用語「貯蔵及び送達容器(vessel)」並びに「貯蔵及び送達容器(container)」は、本明細書及び全体で同じ意味で用いられ、かつ容器(vessel)又は容器(container)内の液相である追加のアンチモン含有材料が、分配される気相の流速以上の送達速度にて、所定のヘッドスペース容積へと蒸発し得る方法によりアンチモン含有材料を保持するための好適な供給源である、本発明の具体的に設計された容器(vessel)又は容器(container)を意味することを意図している。
【0023】
「低減する(Reduce)」、「低減された(reduced)」又は「低減(reduction)」とは、本明細書及び全体で使用される場合、イオン注入プロセスに関して行われ、かつ(i)有害事象若しくは有害発生の発現を短縮、抑制、及び/又は遅延させること(例えば、分解反応の低減、イオン短絡の低減)、あるいは(ii)特定の目的が達成不可能な非許容レベルまで、量を低下させること(例えば、プラズマを持続させることができない低減した流れ)、あるいは(iii)特定の目的に悪影響を及ぼさない非実質的な量まで、低下させること(例えば、アークチャンバへの流れを不安定化させない、低減したオリゴマーの量)、あるいは(iv)従来の実施と比較して有意な量だけ低減されるが、意図された機能を変化させないこと(例えば、導管に沿って材料を再凝結させることなく、材料の気相を依然として維持しながら、熱トレースを低減させる)を意味することを、意図している。
【0024】
本明細書及び全体で使用される場合、量又は時間的持続などの測定可能な値を意味する場合、「約」又は「およそ」は、そのような変動が適切である故に、指定された値から±20%、±10%、±5%、±1%及び±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0025】
「高純度」とは、本明細書及び全体で使用される場合、95容積%以上の純度を意味する。
【0026】
「周囲条件」とは、本明細書及び全体で使用される場合、本発明のSb含有材料で充填された貯蔵及び送達容器と直接接触する周囲温度及び周囲気圧を含む環境の条件を意味する。
【0027】
「微量」とは、本明細書及び全体で使用される場合、好ましくは、5容積%以下の凝集体である、水蒸気、窒素、及びいずれかのその他のガス状不純物を含む、不純物の濃度を意味する。
【0028】
本開示全体を通して、本発明の種々の態様を範囲形式にて提示することができる。範囲形式の記載は、単に便宜上及び簡潔さのためのものであり、かつ本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないと理解すべきである。したがって、範囲の記載は、その範囲内の個々の数値の全てだけでなく、全ての可能な部分範囲を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、例えば1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された部分範囲、同様にその範囲内の個々の数、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、6、並びにそれらの間の任意の全体的増分及び部分的増分を有すると見なされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0029】
イオン注入のためのアンチモン含有材料を利用することが、認識されている。この点に関して、Kasleyらは、シリコン基材へのアンチモン注入のために、SbFの容器を52℃に加熱して、容器内でSbFの十分な蒸気圧を発生させることにより、アンチモン源としてSbFを使用することを開示している。Kasleyらは、小規模実験室設定にてこのようなアプローチの実行可能な使用を開示しているが、本発明は、操作用途のために規模拡大が試みられた場合に、このようなアプローチの欠点を認識している。具体的には、操作設定において、高温(例えば、周囲温度を超える温度)で加熱した際に発生するSbF5蒸気は、典型的にはフローラインが周囲条件にて維持される故に、アンチモン容器とイオン注入ツールとの間に延在するフローラインに沿って下流に凝結する傾向を有する。SbF5蒸気は、イオン注入器に進入することに先立ってフローラインに沿って凝結するため、安定した、十分かつ持続的なSbF5の気相流を達成することができない。
【0030】
このような欠陥を克服するために、本発明は、使用者が、高温にて、アンチモン源容器とイオン注入ツールとの間のフローライン全体を維持する必要があることを認識している。しかし、操作上の観点から、システム設計及び操作は、極めて高い電位(例えば、10kV~100kV)にて加熱装置を維持する必要があるイオン注入システムに関して、ますます複雑になる。このような高電位レベルは、イオン注入システム及び加熱装置にごく近接したフローラインの内部において、有毒性、腐食性、及び/又は可燃性の材料の存在により悪化する安全リスクの元になり得る。
【0031】
イオン注入のためのSb源材料用の、好適な貯蔵及び送達システムの欠如の観点から、本発明が出現している。本発明は、イオン注入用途のためのアンチモン含有材料の貯蔵及び送達のための固有の解決策、並びに下流プロセスへの、蒸気Sb含有材料の、制御されかつ持続的な流れを必要とするその他の用途を提供するための、上記の制限を認識し、かつ考慮する。
【0032】
本発明は、一態様では、n型ドーパントとしてイオン注入に好適な、アンチモン含有材料用の貯蔵及び送達容器に関し、以下の特性を含む。(i)容器のヘッドスペースにおいて、微量の水蒸気、窒素、及びいずれかのその他のガス状不純物の不存在により特徴付けられた、貯蔵条件が不純物を含まない環境である周囲環境において、準大気圧条件下で液相にて貯蔵可能な、ヘッドスペース容積に基づいて約5容積%以下として本明細書で定義されたアンチモン含有材料と、(ii)非炭素含有化学式で表されるアンチモン含有材料と、(iii)液相と平衡状態にあるアンチモン含有材料の気相を含有する、ヘッドスペースの所定の容積を有する貯蔵及び送達容器であって、ヘッドスペースの所定の容積が1リットル超の容積である、貯蔵及び送達容器、及び(iv)5W/m-K超の周囲条件にて熱伝導率を伴う材料から作製された、貯蔵及び送達容器壁、及び(v)アンチモン注入プロセスのためのその使用中に周囲条件にて維持される、貯蔵及び送達システム。準大気圧式貯蔵及び送達容器は、本明細書に記載されるように、95容積%以上の純度にて、また持続的に、十分かつ安定した流量にて、気相アンチモン源材料の持続的かつ十分な流れを提供することができる。より好ましくは、アンチモン源材料の気相の純度は、99%以上である。貯蔵及び送達容器は、対応する気相を分配する間、所定のヘッドスペース容積から対応する気相を回収する速度以上の速度にて、外部加熱の不存在下で、所定のヘッドスペース容積内にて、液相中のアンチモン含有材料の蒸発速度が対応する気相を形成可能となるよう動作するように、構成される。
【0033】
Sb含有源材料は、貯蔵条件下にて、対応する気相と実質的に平衡状態である液相を有する。材料は周囲温度にて安定したままであり、かつイオン注入の使用中に分解する傾向を有さない。液体としてのSb含有材料は適切な蒸気圧を有し、この蒸気圧は、本明細書では、約0.1~100sccm、好ましくは0.3~10sccm、より好ましくは1~10sccm、また最も好ましくは1~5sccmの流量をアークチャンバ内へ持続させることが可能な蒸気量として、定義される。特に、気相中のSb含有材料の流量は、イオン注入器の作動中に安定したプラズマを生成及び維持するのに十分である。安定したプラズマは、約50~150Vのアーク電圧及び引き出し電極に対する約1~300keVの引き出し電圧にて、Sbイオンの注入を実施することを可能にし、それにより、Sb含有イオンのビームが生成される。Sb含有イオンのビーム電流は、約10マイクロアンペア~100mAの範囲であり、約1E11~1E16原子/cm2の、基材内へのSbイオン用量をもたらす。
【0034】
一態様では、本発明のSb含有源材料は、気相と実質的に平衡状態にある液相にて容器内に貯蔵され、それにより、気相は、容器に適用するのに必要な外部加熱を伴わない周囲温度にて、容器から高純度で回収される。出願人らは、外部加熱が容器に適用された場合に問題が生じる場合があることを見出した。特に、外部加熱が容器に適用され、かつライン、弁、及び/又は質量流量制御装置に適用されない場合、次に、Sb含有材料は、容器より低い温度にあるライン、弁、及び/又は質量流量制御装置において凝結し得る。この凝結は、流動不安定性を引き起こし得て、システム構成要素の目詰まりをもたらし、最終的に、Sb含有材料の流れを妨害する。外部加熱が容器に適用される場合、本出願人らは、ライン、弁、及び質量流量制御装置の温度が容器の温度以上であるように、ライン、弁、及び質量流量制御装置を含むSb含有材料に曝露された全ての構成要素に加熱を適用しなければならないことを、発見した。しかし、これは、加熱機器が、安全危険性の元となる極めて高い電位(10kV~100kV)にて維持される必要がある故に、特にイオン注入システムにおいて、システム設計に対する複雑性を加えてしまう。このため、Sb含有材料は、外部加熱を使用することなく、周囲温度にて安定かつ十分な流量の持続が可能であるべきである。一実施例では、周囲温度は、摂氏10度~摂氏35度の範囲であり得る。周囲温度における持続可能な、十分かつ安定した流れの範囲は、0.1~100sccm、好ましくは0.3~10sccm、より好ましくは1~10sccm、また最も好ましくは1~5sccmである。
【0035】
本発明の別の態様では、本発明のSb含有源材料は、その気相と実質的に平衡状態である液相にて容器に貯蔵され、これは、アンチモン含有材料の十分な量の液相が蒸発して対応する気相を形成し得る、所定の容積を有するヘッドスペースを伴う容器の、ヘッドスペースを占有する。Sb含有源材料の気相は、容器から高純度にて蒸気空間内で回収されて、周囲温度条件にてイオン注入器のアークチャンバ内へと導管に沿って送達され得る。好都合なことに、貯蔵容器は、1リットルを超える所定の容積を有する蒸気ヘッドスペースを提供する。貯蔵容器の内壁は、5W/m-Kを超える周囲条件にて熱伝導率を有し、かつ内壁は液体と十分に接触している。このようにして、十分な量のSb含有源材料が周囲温度にて気相へと蒸発して、アークチャンバ内へと流れる約0.1~100sccm、好ましくは0.3~10sccm、より好ましくは1~10sccm、また最も好ましくは1~5sccmの流量を持続する。
【0036】
出願人らは、液体Sb含有源材料の蒸発速度を維持して、少なくとも約0.1sccm以上の気相流量を、導管に沿ってアークチャンバ内へと生成することが必要であることを発見した。Sb含有源液の蒸発速度が特定の閾値未満である又は閾値未満に下がる場合、これにより、気相でのSb含有源材料の得られる流量が約0.1sccm未満である又は0.1sccm未満に下がり、気相でのSb含有材料は、容器内に収容されるSb含有源材料の蒸発速度よりも速い速度にて、導管に沿ってアークチャンバ内へと流れ得る。アークチャンバ内への流れは、持続可能でなくなることがあり、最終的に、許容不可能な低いレベルへと低減される、又は不規則になる傾向を有する。最終的に、最悪の場合のシナリオでは、流れが完全に停止する、又はイオンビームが不安定となりかつ不良となる程度にまで流れが低減する場合があり、これにより、注入プロセス全体の中断が必要となる。
【0037】
代替的な実施形態では、また蒸発速度を加速させるための1つの実現可能な手段として、液体源Sb含有材料は、準大気圧条件下で維持される貯蔵及び送達容器内に貯蔵されて、アークチャンバ内への約0.1~100sccm、好ましくは0.3~10sccm、より好ましくは1~10sccm、また最も好ましくは1~5sccmの必要な流量を発生させる原因となる気相へと必要な量の源材料を形成するのに十分な、比較的速い速度にて、液体源材料が蒸発することを可能にしてよい。したがって、液体源Sb含有材料は、気相内へと十分な速度にて蒸発して、貯蔵及び送達容器のヘッドスペース内に蒸気を補充し、かつ、アークチャンバ内へと延在する導管に沿って蒸気を補充し、これにより、イオン注入のためのイオン注入器の動作中に、約0.1~100sccm、好ましくは0.3~10sccm、より好ましくは1~10sccm、最も好ましくは1~5sccmの間のSb含有源材料の気相流量を発生させて維持する。
【0038】
蒸発のための必要な貯蔵条件が発生することを可能にするために、貯蔵及び送達容器は、必要な気相がアークチャンバへと延在する導管内へと流れることを可能にするように、Sb含有源の十分な容積の蒸気が存在し得る、十分なヘッドスペース容積を伴うように、構成される。出願人らは、貯蔵及び送達容器が、0.5L以上、好ましくは1L以上、より好ましくは1.5L以上、また最も好ましくは1.8L以上の、所定の容積のヘッドスペースを伴うように準備されかつ構成される、ということを発見した。加えて、貯蔵及び送達容器内の気相に曝露されるSb含有液体の十分な表面積、並びに内壁と液体との十分な接触面積は、Sb含有材料の対応する気相が導管に沿って流れて、それに沿って、またアークチャンバ内へと、高純度にて、Sb含有気相の実質的に安定かつ持続した流れを生じさせる故に、貯蔵及び送達容器のヘッドスペースを補充するために必要な蒸発を可能にするのに好ましい。具体的には、気相に曝露される液体の表面積は、本明細書で記載される液体接触面積と組み合わされて、好ましくは少なくとも約16cm2、より好ましくは約50cm2以上、また最も好ましくは約100cm2超である。本発明の別の実施形態では、貯蔵及び送達容器は、Sb含有液体の十分な表面積が貯蔵及び送達容器の内壁に接触して、Sb含有液体の必要な蒸発を所定の容積のヘッドスペース内へと可能にするように、準備される。イオン注入プロセス中に、Sb含有蒸気がヘッドスペースから出て導管に沿って流れ、実質的に安定した(即ち、安定して持続される)、かつ十分な、アークチャンバ内へのそれに沿ったSb含有蒸気の流れを生じさせる故に、貯蔵及び送達容器のヘッドスペースをSb含有蒸気で補充するように、蒸発が発生する。Sb含有液体に熱エネルギーを加えて、所与の量のSb含有液体を蒸気へと蒸発させなければならない。液体の特定部分の蒸発のためのこのエネルギー移動が生じる場合、貯蔵及び送達容器内の残りのSb含有液体の温度が周囲温度より低い温度へと局所的に低下し得る。しかし、貯蔵及び送達容器の内壁と貯蔵及び送達容器内のSb含有液体との間に十分な接触が存在する場合、熱は、貯蔵及び送達容器の外側の環境に曝露された貯蔵及び送達容器の壁から伝導することで、周囲温度にてSb含有液体へと伝達され得る。結果として、Sb含有液体が、シリンダの外部に存在する温度とほぼ同じ周囲温度に維持され得る。一実施例として、約335mLの液体容積及び約1.865Lのヘッドスペース容積に関して、内壁に曝露される液体の表面積は、少なくとも約110cm2、好ましくは約260cm2以上、またより好ましくは約530cm2以上である。別の実施例として、約112mLの液体容積及び約2.088Lのヘッドスペース容積に関して、内壁に曝露される液体の表面積は、少なくとも約50cm2、好ましくは約140cm2以上、またより好ましくは約300cm2以上である。別の実施例として、約1Lの液体容積及び約1.2Lのヘッドスペース容積に関して、壁に曝露される液体の表面積は、好ましくは少なくとも約300cm2、好ましくは約600cm2以上、より好ましくは約1000cm2以上である。
【0039】
容器の内壁と接触しているアンチモン含有液体の表面積を更に増加させるために、貯蔵及び送達容器の内部に異なるパッキング材料を追加してよい。例として、球体、ブリック、フレーク、シリンダ、サドル、リング、正方形、メッシュ、及び粉末カムを含む種々の形状の金属を利用することができる。パッキング材料は、少なくとも部分的に液相に浸漬されてよい。
【0040】
容器の内壁との適切な液体接触表面積を有することに加えて、貯蔵及び送達容器は、好ましくは、気相への液体の蒸発中及びSb含有材料の流れ中に一定温度に維持される、貯蔵容器及び送達容器内の、Sb含有液体への熱伝導を促進するのに十分な、熱伝導率を伴う材料から作製される。一例として、貯蔵及び送達容器は、炭素鋼(293Kで54W/mK)、ステンレス鋼(293Kで12~45W/mK)、鉄(300Kで80W/mK)、アルミニウム(300Kで273W/mK)、銅(300Kで398W/mK)、金(300Kで315W/mK)、又は銀(300Kで424W/mK)から作製されてよい。炭素及びステンレス鋼の熱伝導率は、Engineering ToolboxのWebサイトから得られ、また熱伝導率に関する要素値は、Perry’Handbook of Chemical Engineeringから入手された。好ましい実施形態では、貯蔵及び送達容器の壁の熱伝導率は、Sb含有材料の熱伝導率以上である。別の実施形態では、貯蔵容器及び送達容器の壁の熱伝導率は、1W/mK以上、好ましくは5W/mK以上、より好ましくは10W/mK以上、また最も好ましくは16W/mK以上である。
【0041】
Sb含有源材料に関するその他の貯蔵条件は、液体源材料の蒸発速度を許容できないほど低くし得る。例えば、Sb含有液体源材料が大気圧以上の圧力にて貯蔵及び送達容器内に貯蔵される場合、次に、充填操作の際に貯蔵及び送達容器のヘッドスペース内へと不注意に導入され得てきた、空気、N、又はいずれかのその他の不活性及び/又は反応性ガス種の結果として、Sb含有液体源材料の気相の分圧が不十分であり得る。加えて、このようなシナリオでは、他の汚染物質による気相中のSb含有材料の汚染は、イオン注入プロセスにおける使用に適していない材料を与えることになり、これは、一般的に、大気汚染物質を含む汚染物質のアークチャンバ内への導入を許容することができない。
【0042】
別の態様では、Sb含有源材料は、微量の水分及びその他の大気不純物を含む、不純物のない環境を有する、貯蔵及び送達容器内に貯蔵される。水分の存在下で、ハロゲン化されたSb含有化合物が反応して、Sb、H、HF、又はHClを形成し得る。微量の不純物を含まないこのような不純物のない環境は、いくつかの技術により貯蔵容器内において達成することができ、そのうちの1つは、所謂「凍結脱気法」のサイクルを実行することを含む。凍結脱気法の1サイクルでは、Sb含有源材料は、Sb含有源材料の気相の全てが気相から凝結してSb含有液体が凍結するように冷却されるが、その一方で、水分及び窒素などのその他の汚染物質は気相中に留まる。Sb含有源材料が凝結するのに十分な時間を与えた後、ポンプを使用して容器のヘッドスペースを排気し、その一方で、実質的に全ての蒸気汚染物質が除去されて、Sb含有材料が容器内に固体、液体、又はこれらの混合物として残るように、容器が冷却され続ける。汚染物質が除去された場合、容器を密閉して、固体、液体、又はこれらの混合物でのSb含有材料を周囲温度まで加熱して、液体及び液体と実質的に平衡状態にある蒸気を再形成する。このようにして、水分及びその他の不純物、特に大気不純物が、貯蔵及び送達容器内へと導入されることを回避する。あるいは、又はそれに加えて、容器の内部表面のフッ素不動態化が挙げられるがこれらに限定されない、Sb含有材料のための水分及びガス状を含まない環境を達成するためのその他の技術を使用してよい。
【0043】
一実施形態では、気相の得られた組成物は、ヘッドスペース内に、5容積%以下である不純物を含む。様々な気相不純物は、0~4容積%のN2と、0~0.5容積%のO2と、0~0.49容積%のHFと、0~0.01容積%のHOと、を含み、気相の残余は、アンチモン含有材料を構成する。高純度のアンチモン含有材料は、1容積%以下の総液相不純物量を含む液相を有し得、液相不純物は、0~0.1容積%のN2と、0~0.1容積%のO2と、0~0.6容積%のHFと、0~0.1容積%のSbFと、0~0.1容積%Sbと、を含み、液相の残余は、アンチモン含有材料を構成する。
【0044】
Sbイオン注入中の炭素系堆積物の有害な影響は、好ましくは本発明により回避される。Sb含有源材料は、アークチャンバ内及びイオン源のその他の領域全体にわたる炭素系堆積物の形成を低減又は排除するための、非炭素含有化学式により表される分子である。炭素系堆積物の例としては、C、CF及びCCl化合物が挙げられるが、これらに限定されない。炭素系堆積物は、抽出プレートを含むイオン注入器の種々の構成要素にそって、ウィスカ又はその他の種々の形状の堆積物を形成することにより、イオン源の寿命を低減させ得、炭素系堆積は、イオンビームの形状の歪みを引き起こし得る。あるいは、又はそれに加えて、炭素系堆積物は、基材上に残留粒子として堆積及び蓄積することが可能である。プラズマ中の炭素の存在はまた、プラズマ希釈に自由に利用可能となる炭素含有イオンの形成故に、Sbのビーム電流をも低下させることが可能である。したがって、本発明は、好ましくは、非炭素含有化学式により表されるSb含有源材料を利用する。このようにして、Sb含有源材料における炭素の回避は、関連する有害な影響と共に、アークチャンバに進入する炭素由来堆積物の導入を低減又は排除する。
【0045】
好ましい実施形態では、五フッ化アンチモン(SbF)は、イオン注入を実施するためのSb含有源材料である。SbFは、比較的強いルイス酸である腐食液であり、かつ水分と激しく反応して、Sb及びHFを生成し得る。そのようなものであるから、SbF5源材料は、5容積%未満の水分及びその他のガス状不純物を含有する環境下で、準大気圧条件下にて、貯蔵及び送達容器内に貯蔵される。SbFは、アークチャンバに操作可能に接続された貯蔵及び送達容器内に、約10トールの蒸気圧で、約摂氏25度にて、液体として維持され得る。
【0046】
その他の源材料が想到される。例えば、本発明の別の実施形態では、SbClは、イオン注入に好適なアンチモン含有源材料であるSbClは、アークチャンバに操作可能に接続された貯蔵送達容器内に、1.7トールの蒸気圧で、約摂氏30度にて、液体として維持され得る。本発明の適用可能な基準によるその他の源材料もまた、本明細書に記載されるように使用されてよい。
【0047】
SbFの安定性及びSbイオン注入のための液体系材料の使用のプロセス効果にもかかわらず、本発明者らは、SbF及びその他のフッ素含有Sb化合物を利用する設計課題のうちの1つは、化合物中のフッ素の存在が、プラズマ中の過剰なフッ素イオンをもたらし得ることであると認識した。フッ素イオンは、所謂「ハロゲンサイクル」を伝搬することができ、ここで、過剰なハロゲンイオンは、一般に、WFxにより表されるタングステンフッ化物種を生成する、カソード上へのタングステンチャンバ壁の腐食を引き起こし得、これは、タングステンを堆積させ得る熱いイオン源フィラメント上へと移動し得る。タングステンの堆積はイオン源の動作電圧を増加させる傾向を有し、ひいてはイオン源が最終的に劣化し得るまで、イオン源フィラメント上へのWの堆積を増加させる。このハロゲンサイクルは、イオン源の寿命を低減させる傾向を有する。
【0048】
ハロゲンサイクルの効果を軽減させるために、本発明により想到されるSbF又はその他のSb含有源材料、特にフッ素原子又はその他のハロゲンを含有するようなもののいずれかの使用中に、水素含有化合物を組み込むことができる。水素含有化合物は、本発明のSbF又はその他のSb含有源材料を用いて、水素含有化合物を順次流動又は共流動させることを含む、任意の可能な方法にて、アークチャンバ内へと導入することができる。あるいは、水素含有化合物は、本発明により想到されるSbF又はその他のSb含有源材料との混合物として貯蔵することができる。好適な水素含有化合物としては、H、CHF、CH、Si、PH、AsH、SiH、GeH、B、CH、NH、又はHS、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
ハロゲンサイクルを低減させるためにアークチャンバ内へと導入される水素含有化合物の量は、本発明のSb含有源材料に含有され得るフッ素又はその他のハロゲンの有害な影響を中和又は除去することが可能な有効量であるべきである。SbFを利用する場合、水素含有化合物の有効量は、好ましくは、ハロゲンサイクルの有害な影響を軽減するために十分な量の水素原子を提供するために、SbFと水素含有化合物との組成物全体の少なくとも約20容積%である。用語「有効量」とは、本明細書及び全体で使用される場合、Sbイオン種のイオン注入の具体的な配合中に、ハロゲンサイクル、ないしは別の方法の結果として存在し得る、フッ素又はその他のハロゲンイオンの有害な影響の中和又は除去などの所定の目標を達成するための、水素含有化合物などの特定の材料の必要量を意味する。一実施例では、ハロゲンサイクルを軽減させるために必要な水素含有化合物の容積%は、アークチャンバ内に形成された、SbFと水素含有化合物との得られた組成混合物の約50容積%であり得る。有効量の水素含有化合物が、SbFと水素含有化合物との総組成物の約50容積%超であり得る、と理解すべきである。
【0050】
本明細書で定義される適用可能な基準を満たす、本発明の想到された液体源材料を使用することによる、本発明における固体Sb含有源の回避は、いくつかのプロセス効果を含む。例えば、本発明のSb含有源材料を使用する場合、固体Sb含有源を適切に揮発させて、導管に沿ったその凝結及び堆積を防止し、かつイオン注入システムのラインを流すために典型的に必要とされる過剰な加熱を低減させる、又は全体的に回避する。少なくとも、従来のSb含有固体源は、貯蔵及び送達容器とアークチャンバとの間に延在する導管を加熱し、蒸発しているがイオン注入中に凝結の影響を受けやすいSb含有固体源の凝結を防止することが、必要となる。これに対して、本発明は、導管を熱トレースする必要性の量を低減する、又は導管を熱トレースする必要性を排除する。本発明はまた、本発明のSb含有材料が、チャンバ壁及び/又はイオン源フィラメント上に堆積及び蓄積する危険性を低減又は排除する。このような温度上昇過大の回避はまた、Sbイオン注入プロセスの制御を困難にし得る、分解及び副反応の傾向を低減又は排除する。
【0051】
更に、本発明は、キャリアガス又は反応性ガスの必要性を排除する。これに対して、以前は、例として、固体Sb含有源がアークチャンバにごく近接した表面上にメッキされ、それにより、固体Sb含有源を蒸発させるために表面を昇温して加熱する必要がある場合に、キャリアガス又は反応性ガスが供給されてきた。キャリアガス又は反応性ガスは、次に、蒸発したSb含有源をアークチャンバ内へと方向付ける。本発明によるキャリアガスの排除は、アンチモン含有蒸気の安定した、十分かつ持続的な流れを発生させる能力の結果として、可能である。加えて、キャリアガスを排除することにより、高純度でのアンチモン含有蒸気の送達が可能となる。アンチモン流のためのキャリアガスを必要とする従来のプロセスは、本発明の高純度をもたらし得ない。
【0052】
図1を参照すると、本発明の原理による代表的なビームラインイオン注入機器が示されている。ビームラインイオン注入システムは、イオン注入プロセスを実施するために使用される。ビームラインイオン注入システムの構成要素が、図1に示されている。Sb含有液体源材料101は、適切な蒸気圧を有するように、本発明の原理によって選択される。Sb含有源材料101は、図1にて示すように、ガスボックス100内に配置される貯蔵及び送達容器内に貯蔵される。Sb含有液体源材料101は、微量の不純物のみを有する環境にて貯蔵される。Sb含有液体源材料101は、非炭素含有式により、更に表される。好ましい実施形態では、Sb含有液体源材料101はSbF5である。あるいは、Sb含有液体源材料101はSbCl5である。1つ以上の水素含有化合物は、所望により、ガスボックス100内に含まれてよく、かつハロゲン(例えば、SbF5又はSbCl5)を含むSb含有材料が利用される場合に、ハロゲンサイクルの効果を軽減させるために、有効量にてアークチャンバ103内へと流れてよい。
【0053】
Sb含有液体源料材料101は、貯蔵及び送達容器のヘッドスペースを占有する対応する気相と実質的に平衡状態にある液相にて、貯蔵される。Sb含有源材料101の蒸気圧は、ガスボックス100とイオン源チャンバ103との間のラインの加熱量を低減又は排除するのに十分であり、それにより、上記のプロセスの制御安定性を可能にする。Sb含有液体材料101の気相は、ガスボックス100の下流の減圧条件に応じて、気相内で、実質的に連続的かつ適切な流量にて流れるように、構成される。蒸気は、貯蔵及び送達容器のヘッドスペースから出て、導管内へと流れ、次に、それに沿ってイオン源チャンバ103に向かって流れる。ガスボックス100における貯蔵及び送達容器内のSb含有源材料の蒸気圧は、導管に沿った、アークチャンバ103内へのSb含有源材料の気相の安定した流れを可能にするのに十分である。Sb含有液体材料101の気相は、イオン源チャンバ103内へと導入され、材料101のイオン化が発生する。エネルギーをチャンバ103内へと導入して、Sb含有蒸気をイオン化する。1つ以上の質量流量制御装置及び対応する弁を含み得る流量制御装置102を使用して、所定値にて気相の流量を制御する。従来の固体含有Sb源で典型的に必要とされるような過剰な温度は、イオン注入器の安定かつ制御された操作を可能にするために、本明細書で言及される所望の流量にて蒸気流を制御するよう、図1のプロセスにて回避される。Sb含有材料のイオン化は、種々のアンチモンイオンを生じさせ得る。イオンビーム抽出システム104を使用して、イオン源チャンバ103から、所望のエネルギーのイオンビームの形態にて、アンチモンイオンを抽出する。抽出は、引き出し電極全体にわたって高電圧を印加することによって実行することができる。質量分析器/フィルタ105を介してビームを運搬し、注入されるSbイオン種を選択する。イオンビームは、次に、加速/減速106して、ワークピース108内へとイオンを注入するための、終了ステーション107に位置付けられた標的ワークピース108(即ち、基材)の表面へと運搬され得る。ワークピースは、例えば、イオン注入を必要とする半導体ウエハ又は類似する標的物体とすることができる。ビームのSbイオンは、ワークピースの表面に衝突して特定の深さで貫通し、所望の電気的及び物理的特性を伴うドープ域を形成する。
【0054】
本発明の新規Sb含有材料は、その他のイオン注入システムと共に利用することができる、と理解すべきである。例えば、図2にて示すように、プラズマ浸漬イオン注入(PIII)システムもまた、Sbイオンを注入するために利用されてよい。このようなシステムは、ビームラインイオン注入機器100と同様の構成であるガスボックス200を含む。PIIIシステムの操作は、図1のビームラインイオン注入システムの操作と類似している。図2を参照すると、本発明のSb含有液体源材料の気相は、流量制御装置202により、供給源201からプラズマチャンバ203内へと導入される。供給源201は、貯蔵及び送達容器のヘッドスペースを占有する、対応する気相と実質的に平衡状態でのSb含有材料の液相を貯蔵するように構成された、貯蔵及び送達容器を表す。Sb含有液体源材料201は、微量の不純物のみを伴う環境にて貯蔵される。Sb含有液体源材料101は、非炭素含有式により、更に表される。好ましい実施形態では、Sb含有源材料101はSbF5である。あるいは、Sb含有源材料101はSbCl5である。
【0055】
Sb含有源材料201の蒸気圧は、ガスボックス200とプラズマチャンバ203との間のラインの加熱量を低減又は排除するのに十分であり、それにより、上記のプロセスの制御安定性を可能にする。Sb含有液体源材料201の気相は、ガスボックス200の下流の減圧条件に応じて、気相で、実質的に連続的かつ適切な流量にて流れるように、構成される。気相は、貯蔵及び送達容器のヘッドスペースから出て、導管内へと流れ、次に、それに沿ってプラズマチャンバ203に向かって流れる。ガスボックス200における貯蔵及び送達容器内のSb含有源材料の蒸気圧は、導管に沿った、アークチャンバ203内へのSb含有源材料の気相の安定した流れを可能にするのに十分である。Sb含有液体材料の気相がイオン源チャンバ203内へと導入される際、エネルギーがその後に提供されて、Sb含有蒸気をイオン化し、かつSbイオンを生成する。プラズマ中に存在するSbイオンは、標的ワークピース204に向かって加速される。1つ以上の水素含有化合物は、所望により、ガスボックス200内に含まれてよく、かつハロゲン(例えば、SbF5又はSbCl5)を含むSb含有材料が利用される場合に、ハロゲンサイクルの効果を軽減させるために、有効量にてプラズマチャンバ203内へと流れてよいと理解すべきである。
【0056】
本発明の別の態様では、本明細書に開示されるSb含有源材料のための貯蔵及び送達容器が、図3に示されるように提供される。この貯蔵及び送達容器は、本発明のSb含有源材料の安全なパッケージング及び送達を可能にする。本発明のSb含有源材料は、容器300内に収容される。容器300は入口ポート310を備え、所望のSb含有源材料で容器300を充填することを可能にする。このポートはまた、所望のSbドーパント材料を充填する前に、容器300の内部を不活性ガスにてパージし、かつ容器300を排気するために使用することもできる。一実施例では、凍結脱気法のサイクルは、ヘッドスペースの総容量に基づいて5容積%未満の不純物をヘッドスペース内に伴う環境を発生させるために、容器300を利用して実施することができる。貯蔵及び送達容器300(事例I)は所定の容積のヘッドスペース335を収容し、貯蔵及び送達容器300(事例II)は所定の容積のヘッドスペース336を収容し、容器300(事例I及びII)は本発明の原理により構成され、かつ準備される。
【0057】
出口ポート320は、容器300のヘッドスペースからSb含有材料の気相を回収するために提供される。真空作動逆止め弁330は、シリンダ300の下流に生じる準大気圧条件に応答して、Sb含有材料の制御された流量を分配する出口ポートの上流に設けられている。本真空作動逆止め弁330は、本発明の種々のSb含有材料を取り扱う間の安全性を強化する。弁321が大気圧に開放されている場合、逆止め弁330は、容器300内の任意の空気又はその他の汚染物質の導入を防止し、したがって、容器300のヘッドスペースを占有する気相のSb含有材料の、汚染リスク及び分圧の低減の両方を軽減する。このようにして、その貯蔵、送達、及び使用の間、安全な方法で、Sb含有材料の高純度レベルを維持することができ、それにより、イオン注入の間、Sb含有源材料の回収された気相が適切な蒸気圧を維持して、必要な流量を発生させることができる。逆止め弁330は、容器300の外側に位置し得る(事例I)。あるいは、逆止め弁330は、容器300の内側に位置し得る(事例II)。容器300は、排出流路と流体連通しており、逆止め弁330は、排出流路に沿って達成された準大気圧条件に応答して、容器300の内部容積からの、Sb含有源材料の制御された流れを可能にするように、作動する。
【0058】
貯蔵及び送達容器300は、準大気圧条件下で、Sb含有材料を少なくとも部分的気相にて保持するためのシリンダであってよい。Sb含有材料は、その内部の準大気圧条件にて貯蔵される。Sb含有材料は、化学的に安定したままであり、かつシリンダ300の内部内で分解を受けない。Sb含有材料は、好ましくは、周囲温度(10~35℃)にて、液体として貯蔵される。一実施形態では、蒸気圧は約1トール超である。別の実施形態では、蒸気圧は、約3トール超、またより好ましくは約5トール超である。
【0059】
シリンダ300は、好ましくは、シリンダ300と機械的に連通する二重ポート弁アセンブリを含む。二重ポート弁は図4に示され、かつ注入ポート弁及び排出ポート弁を備え、注入ポート弁は、その内部にSb含有ドーパント材料を導入するために、シリンダの内部と流体連通している。排出ポート弁は、シリンダの内部からの外部へと延在する流れ排出経路と流体連通して、そこからアンチモン含有ドーパント材料を排出する。逆止め弁330は、流れ排出経路に沿って配置され、逆止め弁は、シリンダの外部の準大気圧条件に応答して閉鎖位置から開放位置へと移動するように構成される。ヘッドスペース401は、本発明の原理により所定の容積を有する。
【0060】
その他の貯蔵容器が想到される。例えば、代替的な実施形態では、アンチモン含有ドーパント材料は、吸着材系の送達システムから貯蔵及び分配されてよい。炭素系吸収材又は金属有機フレームワークを含むがこれらに限定されない、種々の好適な吸着材が想到される。
【0061】
図3及び図4のシリンダに対するいくつかの変更は、本発明の範囲から逸脱することなく想到される。例えば、図3及び図4の二重ポート弁が、逆止め弁を使用せずに利用され得る、と理解すべきである。更に、本発明の原理が、逆止め弁を使用せずに充填及び分配するための単一ポートを有する貯蔵及び送達容器と共に利用することができる、と理解すべきである。
【0062】
更に別の実施形態では、Praxair(Danbury,CT)により市販されており、米国特許第5,937,895号、同第6,045,115号、同第6,007,609号、同第7,708,028号、及び同第7,905,247号、並びに米国特許公開第2016/0258537号(それら全てが、全体として本明細書に参考として組み込まれる)に開示されている、UpTime(登録商標)送達装置が本明細書にて用い、Sbイオン注入のための、容器300からイオン機器への、Sb含有源材料の気相の制御された流量を、安全に送達してよい。UpTime(登録商標)送達装置の真空作動式逆止め弁は、周囲環境にて存在し得る大気圧における空気及びその他のガスの汚染が、容器内に浸潤し、Sb含有前駆体材料を汚染し、その部分圧を低下させることから防止する役割を果たす。
【0063】
その他の好適な準大気圧式送達装置としては、種々の配置にて、圧力調整器、逆止め弁、過流防止弁、及び流れ制限オリフィスを含んでよい。例えば、2つの圧力調整器をシリンダ内に直列に配置して、容器内の気相中のSb含有源材料のシリンダ圧を、流体排出ラインに沿って収容された下流質量流量制御装置に許容可能な所定の圧力まで下方調整してよい。
【0064】
容器又はシリンダ300は、その想到される変形形態と共に、ビームラインイオン注入システム(図1)と組み合わせて構成されてよく、それにより、容器又はシリンダ300は、その間に延在するフローライン又は導管のネットワークにより、当該システムに操作可能に接続される。有利には、導管は、好ましくは、従来のSb含有源と比較して、排除又は低減された量の熱トレースにより特徴付けられる。
【0065】
あるいは容器又はシリンダ300は、その想到される変形形態と共に、プラズマ浸漬注入システム(図2)と組み合わせて構成されてよく、それにより、容器又はシリンダ300は、その間に延在するフローライン又は導管のネットワークにより、当該プラズマ浸漬システムに操作可能に接続される。有利には、導管は、好ましくは、従来のSb含有源と比較して、排除又は低減された量の熱トレースにより特徴付けられる。
【0066】
本発明の多数の利点が、想到される。例えば、Sbイオン注入を目的とした、Sb含有気相の送達用の、本発明の液体系Sb含有前駆体の利用、続いて、異なるガス状ドーパント源への切り替えは、一般に、Sbイオン注入のための固体系Sb含有前駆体を利用する場合と比較して、必要とされる時間がより少ない。具体的には、固体Sb含有源と比較して、Sb含有気相の送達のための本発明の液体系Sb含有前駆体の利用は、イオン注入のための異なるドーパント種に切り替えるために必要とされる始動時間を短縮し、それにより、注入器にとってより大きいウエハスループットをもたらす。一実施例として、それぞれのイオン種を注入するための源材料として固体ヒ素(As)又は固体リン(P)を流す注入器は、イオンビームを調整するために約30分を必要とすると予測され得るが、一方で、ガス状のAsH又はガス状のPH源材料の使用は、一般に、そのイオンビームを調整するために約4分のみを必要とすることが予測され得る。本明細書及び全体で使用される場合、用語「調整する」又は「調整」は、特定のビーム電流及びサイズを有する標的イオン種のみのビームを生成するプロセスを意味する。比較すると、固体Sb含有源材料に関して、アークチャンバ内への質量流量は、昇華に必要な蒸発器温度により制御され、Sb含有源は、アークチャンバへの送達に先立って、固体源が気相へと十分に加熱されることを確実にするために貯蔵される。固体Sb含有源材料をその気相へと加熱する時間、ビームを調整する時間、続いてイオン注入プロセスの完了時に固体Sb含有源を冷却する時間を考慮すると、別のドーパント種へと切り替えるために約30~90分の合計時間が発生し得る一方で、Sb含有液体前駆体から誘導されるガス状ドーパント源の送達は、約5~10分の持続時間を必要とし得る。正味の結果は、本発明によるスループットの有意な増加であり得る。
【0067】
追加で、本発明の液体系Sb含有前駆体は、追加の加熱を必要とせずに、その他のドーパント源と同じガスボックス内に(例えば、図1及び図2に示すように)配置させることができる。対照的に、Sb含有固体源は、Sb含有蒸気が再凝結しないことを確実にする目的のために、アークチャンバへと延在する導管に沿って位置付けられた別個の蒸発器を必要とし、これは、利用可能であり得るよりもより大きい空間を必要とし、また更に、イオン注入プロセスに複雑さ及び費用を追加する。
【0068】
実験説明
25℃で10トールの蒸気圧を伴う室温にて液体として存在する、五フッ化アンチモン、SbFの流動能力を試験するための流動試験システムを構築した。各実験に関して、流動システムは、シリンダのヘッドスペース内のSbF5の蒸気により生じる圧力を読み取る、マニホールドに接続された圧力変換器を有するマニホールド、蒸気の流れを測定及び制御する、マニホールドにおける質量流量制御装置、並びに質量流量制御装置の下流で1e~2トール未満の減圧を維持する粗引き真空ポンプから、構成される。各実験で使用されたシリンダは炭素鋼製であり、また注入ポート及び使用ポートから構成された二重ポート弁を装備した。シリンダをマニホールドに接続した。
【0069】
一般的に言えば、流動試験される液体SbF5で充填された各シリンダの調製は、以下のように行われた。各シリンダに液体SbFをN雰囲気中で充填して、液体SbFが大気中の水蒸気と反応しないようにした。液体SbF5の純度レベルは、99容積%であった。シリンダのヘッドスペースからN、水蒸気、及びその他のガス状不純物を除去してごく微量にするために、本明細書に前述したように、2サイクルの凍結脱気法を各シリンダ上で実施した。凍結脱気法の1サイクルでは、シリンダを氷浴中に20分間にわたって配置して、気相からSbF蒸気を液体へと凝結させ、SbF液体を凍結させた一方、N、水蒸気及びいずれかのその他のガス状不純物は、シリンダのヘッドスペース内の気相中に留まった。次に、シリンダを開け、1分を超える間真空ポンプを用いて排気し、ヘッドスペースから、N2、水蒸気及びいずれかのその他のガス状不純物を除去して微量にした。その後、シリンダを閉じて、ポンプから分離した。シリンダを分離した後、氷浴を取り除いて、シリンダを周囲温度まで加温することを可能にし、それにより、液体SbF5及び対応する蒸気SbF5の再形成を可能にした。
【0070】
各実験の開始前に、SbF5蒸気が使用ポートを介してヘッドスペースから出て、質量流量制御装置までマニホールドの部分に進入し、かつ充填されるように、シリンダ弁を開けた。SbF5蒸気がマニホールドを占有することにより、圧力変換器が、その内部の圧力を読み取ることができたが、これは、シリンダ内のSbF5の蒸気圧を表していた。
【0071】
次に、流動試験を実施して、各試験の重要な詳細及び以下に記載されるような対応する結果を伴って、シリンダからのSbF5蒸気の安定した、持続しかつ十分な流れが達成され得たかどうかを判定した。
【0072】
比較実施例1
420mLの炭素鋼シリンダに、300g(即ち、100mL)の液体SbFを充填した。シリンダ内のヘッドスペースの容積は、320mLであった。シリンダ及び流動マニホールドを摂氏25度の周囲温度に維持し、これにより、圧力変換器によって読み取られるように、10トールのSbF5蒸気圧が得られた。外部加熱は利用しなかった。キャリアガスは利用しなかった。シリンダを、その持続的な流動特性について試験した。シリンダは、0.3sccm超のSbFの持続的な流れを、維持することができなかった。
【0073】
比較実施例2
2.2Lの炭素鋼シリンダに、1kg、即ち335mL(即ち、液体SbF)を充填した。シリンダ内のヘッドスペースの容積は1.865Lであった。シリンダ及び弁を摂氏40度に加熱して蒸気圧を上昇させ、これにより、圧力変換器によって読み取られるように、15トールのSbF5蒸気圧が得られた。キャリアガスは利用しなかった。マニホールド及び質量流量制御装置は加熱されず、かつ摂氏22度の周囲温度に維持された。シリンダを、その持続的な流動特性について試験した。シリンダは、SbF蒸気の凝結によるフローライン内に閉塞を形成した結果として、0.3sccm超のSbFの持続的な流れを維持することができなかった。
【実施例1】
【0074】
2.2Lの炭素鋼シリンダに、1kg(即ち、335mL)の液体SbFを充填した。シリンダのヘッドスペースの容積は1.865Lであった。シリンダ及び流動マニホールドを摂氏25度の周囲温度に維持し、これにより、圧力変換器によって読み取られるように、10トールのSbF5蒸気圧が得られた。外部加熱は利用しなかった。キャリアガスは利用しなかった。シリンダを、その持続的な流動特性について試験した。シリンダは、2sccmのSbFの持続的な流れを維持することができた。
【実施例2】
【0075】
2.2Lの炭素鋼シリンダに、1kg(即ち、335mL)の液体SbFを充填した。シリンダのヘッドスペースの容積は1.865Lであった。シリンダ及び流動マニホールドを摂氏22度の周囲温度に維持し、これにより、圧力変換器によって読み取られるように、7トールのSbF5蒸気圧が得られた。外部加熱は利用しなかった。キャリアガスは利用しなかった。シリンダを、その持続的な流動特性について試験した。シリンダは、2sccmのSbFの持続的な流れを維持することができた。
【実施例3】
【0076】
2.2Lの炭素鋼シリンダに、335g(即ち、112mL)の液体SbFを充填した。シリンダのヘッドスペースの容積は2.088Lであった。シリンダ及び流動マニホールドを摂氏22度の周囲温度に維持し、これにより、圧力変換器によって読み取られるように、7トールのSbF5蒸気圧が得られた。外部加熱は利用しなかった。キャリアガスは利用しなかった。シリンダを、その持続的な流動特性について試験した。シリンダは、2sccmのSbFの持続的な流れを維持することができた。
【実施例4】
【0077】
2.2Lの炭素鋼シリンダに、335g(即ち、112mL)の液体SbFを充填した。シリンダのヘッドスペースの容積は2.088Lであった。シリンダ及び流動マニホールドを摂氏25度の周囲温度に維持し、これにより、圧力変換器によって読み取られるように、10トールのSbF5蒸気圧が得られた。外部加熱は利用しなかった。キャリアガスは利用しなかった。シリンダを、その持続的な流動特性について試験した。シリンダは、2sccmのSbFの持続的な流れを維持することができた。
【実施例5】
【0078】
2.2Lの炭素鋼シリンダに、1kg(即ち、335mL)の液体SbFを充填した。シリンダのヘッドスペースの容積は2.088Lであった。シリンダ及び流動マニホールドを摂氏18度の周囲温度に維持し、これにより、圧力変換器によって読み取られるように、5トールのSbF5蒸気圧が得られた。外部加熱は利用しなかった。キャリアガスは利用しなかった。シリンダを、その持続的な流動特性について試験した。シリンダは、2.5sccmのSbFの持続的な流れを維持することができた。
【0079】
見てとれるように、一態様では、本発明は、それらの低い蒸気圧及び限られた熱安定性故に、アークチャンバ内へと一貫して送達することが困難であるSb含有固体源を含む、イオン注入のための、Sb含有源のための、実現可能な解決策を提供する。
【0080】
本発明の原理は、気相中のアンチモン含有材料の、十分な、持続的かつ安定的な流れの必要性を有するイオン注入以外の、その他のプロセスに適用することができる、と理解すべきである。
【0081】
本発明の特定の実施形態と見なされるものを示し、説明してきたが、当然ながら、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態又は詳細の様々な修正及び変更を容易に行うことができることが理解されるであろう。したがって、本発明は、本明細書において示され、説明される正確な形態及び詳細に限定されず、本明細書において開示され、以下に特許請求される本発明の全範囲に満たないいかなるものにも限定されないことを意図する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】