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特表2023-520939蛍光D-アミノ酸代謝マーカーに基づいた抗菌薬感受性試験方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】蛍光D-アミノ酸代謝マーカーに基づいた抗菌薬感受性試験方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20230515BHJP
   C12Q 1/18 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12Q1/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562096
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 CN2021083051
(87)【国際公開番号】W WO2021203981
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】202010263592.1
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110295193.8
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522396311
【氏名又は名称】レンジ ホスピタル シャンハイ ジャオ トン ユニヴァーシティー スクール オブ メディシン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チャオヨン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA06
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ05
4B063QQ06
4B063QR49
4B063QR58
4B063QR68
4B063QS02
4B063QS03
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーに基づいた抗菌薬感受性試験方法に関し、この方法は、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーを使用して、抗生物質溶液と混合して培養した後の細菌溶液をマークし、その蛍光シグナル強度に基づいて抗生物質の最小発育阻止濃度を取得する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌代謝活性の評価方法であって、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーを使用して試験対象細菌を代謝してマークし、その蛍光強度又は蛍光強度の変化に基づいて増殖過程における細菌代謝活性を評価し、好ましくは、具体的なステップは、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーを試験対象細菌中に加えて培養することで試験対象細菌をマークするステップを含むことを特徴とする、細菌代謝活性の評価方法。
【請求項2】
前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、蛍光基で共有結合的に修飾されたD-アミノ酸又はその誘導体であり、好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、テトラメチルローダミン(TAMRA)のD-アミノ酸蛍光ブローブ、カルボキシフルオレセイン(FAM)を担持するD-アミノ酸蛍光ブローブ、Cy5を担持するD-アミノ酸蛍光ブローブ、又は以下の化学式で示されるD-アミノ酸蛍光ブローブ
【化1】

又は以下の化学式で示されるD-アミノ酸蛍光ブローブ
【化2】
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の細菌代謝活性の評価方法。
【請求項3】
前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、D-アラニン又はその誘導体に由来するものであり、その構造式は、以下のとおりであり、
【化3】

式中、
1は、
【化4】
から選択され、R2は、蛍光基であり、
好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、D-アラニン蛍光プローブであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の細菌代謝活性の評価方法。
【請求項4】
抗菌薬感受性試験の評価のための蛍光D-アミノ酸代謝マーカーの使用であって、好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、D-アラニン又はその誘導体に由来するものであり、その構造式は、以下のとおりであり、
【化5】

式中、
1は、
【化6】
から選択され、R2は、蛍光基であり、
より好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、D-アラニン蛍光プローブである、前記使用。
【請求項5】
細菌代謝活性を評価することにより抗生物質の抗菌効果及び/又は細菌耐薬性を判断する、抗菌薬感受性試験方法であって、蛍光D-アミノ酸代謝マーカー及び抗生物質溶液を使用して細菌溶液又は検出対象サンプル溶液を共同で培養し、細菌増殖速度及び代謝活性に関連する蛍光マーカーシグナル強度を検出し、及び/又はその蛍光シグナル変化をリアルタイムに検出することにより、細菌増殖過程における細菌代謝活性を評価し、
好ましくは、その蛍光シグナル強度を分析して試験対象抗生物質の最小発育阻止濃度を得て、抗菌効果を得、好ましくは、前記検出対象サンプル溶液は、気管支肺胞洗浄液、血液培養陽性の血液サンプルであることを特徴とする、抗菌薬感受性試験方法。
【請求項6】
一定濃度の細菌溶液又は検出対象サンプル溶液を、抗生物質溶液及び蛍光D-アミノ酸代謝マーカーと混合して共培養し、特定の時間における蛍光マーカーシグナル強度を取得し及び/又はその蛍光シグナル変化をリアルタイムに検出する工程を含むことを特徴とする、請求項5に記載の抗菌薬感受性試験方法。
【請求項7】
前記抗生物質溶液は、勾配濃度を使用し、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーの最終濃度は、0.01~5mMであり、好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーの最終濃度は、0.1~1mMであり、好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、蛍光基で共有結合的に修飾されたD-アミノ酸であり、好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、D-アラニン又はその誘導体に由来するものであり、より好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、D-アラニン蛍光プローブであり、好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、テトラメチルローダミン(TAMRA)のD-アミノ酸(DAA)蛍光ブローブ、カルボキシフルオレセイン(FAM)を担持するD-アミノ酸蛍光ブローブ、Cy5を担持するD-アミノ酸(DAA)蛍光ブローブ、又は以下の化学式で示されるD-アミノ酸蛍光ブローブ
【化7】

又は以下の化学式で示されるD-アミノ酸蛍光ブローブ
【化8】
を含み、好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、D-アラニン蛍光プローブであることを特徴とする、請求項5又は6に記載の抗菌薬感受性試験方法。
【請求項8】
前記抗生物質は、ペニシリン系、セファロスポリン系、メルカプトペネム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、アミドアルコール系、マクロライド系、グリコペプチド系、スルホンアミド系、キノロン系、又はニトロイミダゾール系を含むことを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の抗菌薬感受性試験方法。
【請求項9】
蛍光D-アミノ酸代謝マーカー、及び/又は緩衝液、希釈液若しくは担体若しくは培養プレート、培養皿を含む、細菌代謝活性評価用及び/又は抗菌薬感受性試験の検出用のキット。
【請求項10】
前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、蛍光基で共有結合的に修飾されたD-アミノ酸であり、好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、テトラメチルローダミン(TAMRA)のD-アミノ酸蛍光ブローブ、カルボキシフルオレセイン(FAM)を担持するD-アミノ酸蛍光ブローブ、Cy5を担持するD-アミノ酸蛍光ブローブ、又は以下の化学式で示されるD-アミノ酸蛍光ブローブ
【化9】

又は以下の化学式で示されるD-アミノ酸蛍光ブローブ
【化10】
を含み、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、D-アラニン又はその誘導体に由来するものであり、好ましくは、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、D-アラニン蛍光プローブであることを特徴とする、請求項9に記載の細菌代謝活性評価用及び/又は抗菌薬感受性試験の検出用のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌代謝活性の評価方法及び抗菌薬感受性試験方法に関し、特に蛍光D-アミノ酸代謝マーカーに基づいた抗菌薬感受性試験方法に関し、それは、臨床的に分離された細菌株に対する抗菌剤又は抗生物質などの細菌代謝活性の抗菌効果を迅速に評価又は検出し、臨床投薬を導くために使用される。
【背景技術】
【0002】
医療及び養殖業における抗生物質の普及、特に広域抗生物質の広範な使用により、細菌耐薬性の問題がますます顕著になり、ほとんど全ての抗生物質に耐性を持つスーパー細菌さえも次々と出現している。細菌耐薬性の出現と拡散は世界的な注目を集めており、世界保健機関は21世紀最大の公衆衛生上の問題の1つと見なす。この問題を解決する鍵は、抗生物質を誤用及び乱用することなく、適時、合理的に使用することであり、即ち、抗生物質は、患者が感染した病原菌の種類に応じて、目標とする適切な量で使用する必要があり、それによって患者により効果的な治療を提供することもできる。
【0003】
現在、最も一般的で効果的な方法は、抗菌薬感受性試験により、臨床現場での抗菌薬の合理的な使用の基礎を提供することであり、その情報は、細菌が感受性を示す抗生物質はどれか、及び対応する最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration、MIC)を含む。液体希釈法、ペーパーストリップ法、E-est法などの従来の抗菌薬感受性試験技術は、ほとんどが細菌が成長及び増殖するかどうかに基づいて抗生物質の効果を評価し、通常は長期間の培養を必要とし(一般的により、8~16時間を超える)、肉眼で判別できる細菌量(濁度又は抑制地帯)に達しこそ、薬剤の効果を評価でき、その主な欠陥は、時間がかかり過ぎるので、臨床診療における抗生物質の合理的な使用を導くことが遅れることである。自動化装置により、操作フローを簡素化させ、Vitek、BD Phoenix、Microscan Walk Away などの従来の装置は、細菌の濁度を検出指標として使用し、装置によって得られたMICの精度は改善されるが、細菌の分裂と増殖に必要な長い培養時間(一般的に、8~24時間)によって依然として制限される[参考文献1]。また、細胞成長及び増殖に基づいたこれらの検出方法にも問題があり、即ち、得られたMIC濃度での細菌は、増殖しないが代謝的に活性な(NGMA)状態にある可能性があり、それに基づいた投薬は、後の疾患の再発[参考文献2]して投薬を繰り返すことをもたらす。臨床的に、正確な診断と可能な限り短時間での迅速な対症療法は、細菌耐薬性の解消と患者、特に重症患者の両方にとって非常に重要である。
【0004】
従来の抗菌薬感受性試験方法は時間がかかるという問題を考慮し、マイクロフルイディクスに基づいた細菌顕微鏡イメージング技術、RNA検出法、原子間力顕微鏡のカンチレバー法、及び細菌代謝に基づいたラマンシグナル検出などの新規な迅速な抗菌薬感受性試験技術も出現している。これらの方法の検出メカニズムは異なり、一般的には、細菌の成長及び増殖、形態学的変化、トランスクリプトームの変化、代謝活性の検出などを含み、様々な装置により、抗菌薬感受性試験は、細菌の抗生物質に対する感受性を判断するために2~8時間以内に完了することができ、MICを定量的に与えることさえできる。しかし、これらの方法にはまだ多くの欠点がある。例えば、マイクロフルイディクスに基づいた細菌顕微鏡イメージング技術のほとんどは、抗生物質の作用での細菌の成長、増殖、又は形態学的変化を直接観察することができ、視覚的な検出方法で、より直感的であり、そして、マイクロフルイディクスにより、検出に必要なサンプル及び試薬の量を大幅に低減し、しかし、マイクロフルイディクスはまだ普及しておらず、顕微鏡イメージングによる判断は、技術的敷居が高く、推進が困難で、装置コストが高く、また、細菌の成長、増殖、又は形態学的変化の検出メカニズムに基づいて、増殖しないが代謝的に活性な(NGMA)状態にある細菌を特定できず、誤り判定をもたらしやすい[参考文献3、4、5]。RNA検出法は、抗生物質の作用で細菌の転写産物の変化を検出することにより、細菌の薬物に対する感受性を判断でき、この方法は、初期段階で大量の実験によってデータを蓄積し、データベースを確立する必要があり、時間と労力がかかり、初期費用が高く、この方法では細菌が抗生物質に感受性であるかどうかを判断することしかできず、MICを定量的に取得することはできない。原子間力顕微鏡のカンチレバー法は、顕微鏡で、抗生物質の作用での細菌の動き状況を観察して監視することで細菌の代謝活性を判断するが(細菌の代謝活性を検出することで、増殖しないが代謝的に活性な(NGMA)状態にある細菌を効果的に特定でき、それはより正確である)、しかし、該方法は、検出中に様々な要因(流れる液体、細菌量など)の影響を大きく受け、細菌の活性を正確に反映することができず、装置が非常に複雑であり、操作の技術的要件が特に高く、検出スループットが低いである[参考文献8]。ラマンシグナル検出に基づいた方法はまた、細菌代謝活性を検出することによって抗生物質の効果を判断することであり、この方法は、操作しやすく、測定時間が短いが、ラマンシグナルが弱く、一部の抗生物質のMIC検出が正確ではなく、サンプルの純度などのバックグラウンドからの干渉が大きく、シグナル対雑音比が低く、従来の装置との互換性が低く(マイクロプレートリーダ、フローサイトメータなどほど一般的ではない)、コストが比較的高いという問題がある[参考文献9、10、11]。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーに基づいた細菌代謝活性の評価方法及び抗菌薬感受性試験方法並びにそのキットを提供し、それは、迅速、便利、高感度、正確、直観的などの特徴を有し、そして、従来の装置との互換性が高い。
【0006】
本発明の一態様によって提供された蛍光D-アミノ酸代謝マーカーに基づいた細菌代謝活性の評価方法は、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーを使用して試験対象細菌を代謝してマークし、その蛍光強度又は蛍光強度の変化に基づいて増殖過程における細菌代謝活性を評価し、好ましくは、具体的な工程は、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーを試験対象細菌中に加えて培養することで試験対象細菌をマークする工程を含む。
【0007】
本発明の別の態様によって提供された蛍光D-アミノ酸代謝マーカーに基づいた抗菌薬感受性試験方法は、蛍光D-アミノ酸代謝マーカー及び抗生物質溶液は共に細菌液及び検出対象サンプル溶液を培養し、細菌増殖速度及び代謝活性に関連する蛍光マーカーシグナル強度を検出して取得し及び/又はその蛍光シグナル変化をリアルタイムに検出し、細菌増殖過程における細菌代謝活性を評価し、好ましくは、その蛍光シグナル強度を分析して試験対象抗生物質の最小発育阻止濃度を取得し、抗菌効果を取得する。
【0008】
本発明は、更に細菌代謝活性評価及び/又は抗菌物質感受性試験用のキットに関し、それは、蛍光D-アミノ酸代謝マーカー、及び/又は緩衝液、希釈液又はキャリア又は培養プレート、ペトリ皿を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例における蛍光基を担持するD-アミノ酸蛍光ブローブの構造概略図である。
図2】本発明の実施例における細菌代謝活性とFDAAのマーカー強度との関連性データであり、aは、異なる温度勾配での大腸菌、枯草菌、サルモネラ菌、及びリケニホルミス菌の代謝活性に関連する蛍光マーカー強度データであり、bは、異なる時点でのサルモネラ菌及び大腸菌の代謝活性に関連する蛍光マーカー強度データであり、青い曲線(黒丸)は、細菌増殖速度で、細菌代謝活性を表すことができ、赤い曲線(黒三角)は、マークされた細菌の蛍光強度であり、黒い曲線(横棒)は、細菌の増殖曲線であり、赤い曲線と青い曲線はよく一致しており、マークされた細菌の蛍光強度と細菌の増殖速度は一致しており、FDAAでマークされた細菌の蛍光強度が細菌代謝活性を表すことができることを示す。
図3】FDAA代謝マーカーに基づいた迅速な抗菌薬感受性試験方法の流れ図である。
図4】本願の具体的な実施例では、グラム陽性の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の高レベルOX耐薬性株ST5、低レベルOX耐薬性株ST59、及びOX感受性株ST398に対するオキサシリン(OX)の作用効果である。
図5】本願の具体的な実施例では、グラム陽性の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の高レベルOX耐薬性株ST5、低レベルOX耐薬性株ST59、及びOX感受性株ST398に対するバンコマイシン(VA)の作用効果である。
図6】本願の具体的な実施例では、グラム陽性の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の高レベルOX耐薬性株ST5、低レベルOX耐薬性株ST59、及びOX感受性株ST398に対するエリスロマイシン(E)の作用効果である。
図7】本願の具体的な実施例では、グラム陰性の尿路病原性大腸菌(E.coli)の耐薬性株1113及び感受性株1146に対するセフェピム(FEP)の作用効果である。
図8】本願の具体的な実施例では、グラム陰性の尿路病原性大腸菌(E.coli)の耐薬性株1113及び感受性株1146に対するイミペネム(IPM)の作用効果である。
図9】本願の具体的な実施例では、グラム陰性の尿路病原性大腸菌(E.coli)の耐薬性株1113及び感受性株1146に対するレボフロキサシン(LEV)の作用効果である。
図10】本願の具体的な実施例では、グラム陰性の尿路病原性大腸菌(E.coli)の耐薬性株1113及び感受性株1146に対するチゲサイクリン(TGC)の作用効果である。
図11】本願の具体的な実施例では、気管支肺胞洗浄液に含まれた細菌に対するイミペネムIPM(imipenem)の作用効果である。
図12】本願の具体的な実施例では、気管支肺胞洗浄液に含まれた細菌に対するレボフロキサシンLEV(Levofloxacin)の作用効果である。
図13】本願の具体的な実施例では、気管支肺胞洗浄液に含まれた細菌に対するチゲサイクリンTGC(Tigecyeline)の作用効果である。
図14】本願の具体的な実施例では、DAA-Tetraプローブを利用して大腸菌ECO922に対するイミペネム(Imipenem)の作用を検出することの検出結果である。
図15】本願の具体的な実施例では、DAA-Tetraプローブを利用してクレブシエラ・ニューモニエKPN6に対するアミカシン(Amikacin)の作用を検出することの検出結果である。
図16】本願の具体的な実施例では、DAA-Tetraプローブを利用してシュードモナス・エルジノーサPAE2に対するレボフロキサシン(Levofloxacin)の作用を検出することの検出結果である。
図17】本願の具体的な実施例では、DAA-Tetraプローブを利用して黄色ブドウ球菌SA31に対するリネゾリド(Linezolid)の作用を検出することの検出結果である。
図18】本願の具体的な実施例では、DAA-Tetraプローブを利用してアシネトバクター・バウマニーABAI9に対するレボフロキサシン(Levofloxacin)の作用を検出することの検出結果である。
図19】本願の具体的な実施例では、DAA-Tetraプローブを利用してエンテロコッカス・フェシウムEFM26に対するレボフロキサシン(Levofloxacin)の作用を検出することの検出結果である。
図20】本願の具体的な実施例では、DAA-Cy5-2を利用して大腸菌ECO15に対するイミペネム(Imipenem)の作用を検出することの検出結果である。
図21】本願の具体的な実施例では、DAA-Cy5-2プローブを利用してクレブシエラ・ニューモニエKPN6に対するアミカシン(Amikacin)の作用を検出することの検出結果である。
図22】本願の具体的な実施例では、DAA-Cy5-2プローブを利用してシュードモナス・エルジノーサPAE853に対するレボフロキサシン(Levofloxacin)の作用を検出することの検出結果である。
図23】本願の具体的な実施例では、DAA-Cy5-2プローブを利用して黄色ブドウ球菌SA22に対するリネゾリド(Linezolid)の作用を検出することの検出結果である。
図24】本願の具体的な実施例では、DAA-Cy5-2プローブを利用してアシネトバクター・バウマニーABA16に対するレボフロキサシン(Levofloxacin)の作用を検出することの検出結果である。
図25】本願の具体的な実施例では、DAA-Cy5-2プローブを利用してエンテロコッカス・フェシウムEFM28に対するレボフロキサシン(Levofloxacin)の作用を検出することの検出結果である。
図26】本願の具体的な実施例では、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーの検出方法(FaAST)及びVITEKは、EFM26(エンテロコッカス・フェシウム)、SA22(黄色ブドウ球菌)、ECO11(大腸菌)に対するレボフロキサシン(LEV)、チゲサイクリン(VA)のそれぞれの薬剤感受性試験のために使用されることである。
図27】本願の具体的な実施例では、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーの検出方法(FaAST)及びVITEKは、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)、アシネトバクター・バウマニー(A.baumannii)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)に対するレボフロキサシン、チゲサイクリン、イミペネム、アミカシン、ポリミキシンBのそれぞれの薬剤感受性試験のために使用されることである。
図28】本願の具体的な実施例では、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーの検出方法(FaAST)及びVITEKは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、エンテロコッカス・ファエカリス(E.faecium)に対するレボフロキサシン、バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド、エリスロマイシンのそれぞれの薬剤感受性試験のために使用されることである。
図29】本願の具体的な実施例では、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーの検出方法(FaAST)及びVITEKは、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)、アシネトバクター・バウマニー(A.baumannii)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)に対するセファロスポリン系抗生物質のセフェピム、セフロキシムアキセチル、SCFのそれぞれの薬剤感受性試験のために使用されることである。
図30】本願の具体的な実施例では、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーの検出方法(FaAST)及びVITEKは、黄色ブドウ球菌に対するオキサシリンの薬剤感受性試験のために使用されることである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明及び例示的な実施形態を参照しながら、理解すべきものとして、本願は、明細書及び図面に示す細部又は方法に限定されるものではない。
【0011】
本発明に関連する細菌代謝活性の評価方法は、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーに基づいて菌体をマークすることである。ここで、D-アミノ酸(D-amino acid、DAA)、特にD-アラニンは、細菌ペプチドグリカン中のペンタペプチド構造末端に存在する特殊アミノ酸であり、ペプチドグリカンの合成及び代謝過程において、細菌は、この位置でペニシリン結合蛋白質(penicillin binding proteins、PBPs)などの酵素類中のペプチド転移酵素ドメインによって隣接するペプチドと架橋、加水分解(最末端のD-アラニン)、置換(周囲環境中の他のD-アミノ酸(DAA))などの修飾を行う[参考文献12]。いくつかのペニシリン結合蛋白質は、D-アラニン側鎖における修飾基に対して高い許容度を有し、この特性を利用し、側鎖において各種の蛍光基が担持されたDAAプローブを代謝マーカーの手段によって細菌ペプチドグリカン構造に結合することができる[参考文献13]。ペプチドグリカン構造は、各種の細菌に広く見られるため、全ての種類の通常の細菌をマークでき、同時に、ペプチドグリカンの代謝回転速度のため、DAAプローブは、マーク速度が高く、その強度も高い。本発明では、細菌が結合するFDAAが多いほど、蛍光シグナルが強くなり、細菌代謝活性が強いことを示し、従って、その蛍光強度又は蛍光強度の変化に基づいて、増殖過程における細菌代謝活性を評価することができる。蛍光強度の変化は、培養時間の長さ、温度の大きさ、培地、細菌増殖促進剤又は細菌発育阻止剤(例えば、抗生物質)が存在するかどうかなどの細菌代謝活性の影響要素によってもたらされる。
【0012】
蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、蛍光基で共有結合的に修飾されたD-アミノ酸又はその誘導体であり、本願の具体的な実施形態では、前記蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、D-アラニン又はその誘導体からであり、その構造式は以下のとおりであり(図1に示される)、
【化1】
【0013】
ここで、R1は、
【化2】
から選択され、R2は、蛍光基であり、例えば、本発明の具体的な実施例においてD-アラニン蛍光プローブである。例えば、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーは、テトラメチルローダミン(TAMRA)のD-アミノ酸蛍光ブローブ、カルボキシフルオレセイン(FAM)を担持するD-アミノ酸蛍光ブローブ、Cy5を担持するD-アミノ酸蛍光ブローブ、又は以下の化学式に示されたD-アミノ酸蛍光ブローブ(以下、DAA-Cy5-2プローブと呼ばれる)、
【化3】
又は以下の化学式に示されたD-アミノ酸蛍光ブローブ(以下、DAA-Tetraと呼ばれる)
【化4】
である。
【0014】
本発明の具体的な実施形態では、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーを試験対象細菌中に加えて培養して試験対象細菌をマークし、それらは、例えば、大腸菌、枯草菌、サルモネラ菌、リケニホルミス菌、緑膿菌(P.aeruginosa)、アシネトバクター・バウマニー(A.baumannii)、及び肺炎桿菌(K.pneumoniae)である。図2-aに示すように、異なる温度で、大腸菌、枯草菌、サルモネラ菌、及びリケニホルミス菌は、異なる代謝活性を有し、33℃、29℃及び25℃に比べて、37℃でより高い代謝活性を有し、その蛍光マーカー強度は対応して他の温度より高く、また、その蛍光マーカー強度は、温度による代謝活性と正相関である。図2-bに示すように、細菌の蛍光マーカー強度は、細菌の増殖速度と正相関であり、即ち、細菌の成長、増殖速度の変化につれて、蛍光マーカー強度も変化し、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーが細菌の成長代謝過程において細菌の細胞にマークされ得ることを反映し、蛍光D-アミノ酸プローブを利用して細菌代謝活性をマークすることは、利用可能性を持つことを示し、それも高い正確性及び感度を有する。
【0015】
ある菌株が抗生物質に感受性である場合、その代謝活性は対応して阻害され、その増殖速度も阻害され、抗生物質を含まない細菌に比べて、そのFDAAマーカー強度は対応して低下する。ある菌株が抗生物質に耐薬性がある場合、代謝活性を阻害する抗生物質の能力が低下し、抗生物質を加えない細菌に比べて、FDAAのマーカー強度は影響を受けない。本発明に関するD-アミノ酸代謝マーカーの抗菌物質感受性試験方法は、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーを利用して細菌活性を評価することによって抗生物質の抗菌効果及び/又は細菌耐薬性を判断し、それは、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーを利用して細菌をマークし、この細菌は、抗生物質溶液と混合して培養した後、その蛍光強度を検出し、蛍光シグナル強度に基づいて抗生物質の最小発育阻止濃度を取得するものである。本発明の具体的な実施形態では、フローサイトメトリーなどの既存の蛍光シグナル検出機器又は装置を使用して蛍光シグナルを検出することができ、前記フローサイトメトリー(Flow Cytometry、FCM)は、フローサイトメータを利用して高速に流れる状態にある細胞又は生体粒子に対して迅速、高感度、精確なマルチパラメトリック定量的分析及び選別を行う成熟した技術である。細胞又は細胞における蛍光染料は、レーザで励起された後、蛍光を射出し、蛍光シグナルは、検出装置で検出され、光電変換により、コンピュータが識別可能なデジタルシグナルに変更する。蛍光シグナルの強度は、細菌の細胞マーカーにおける蛍光染料の量を表す。
【0016】
本願の具体的な実施形態では、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーに基づいた抗菌薬感受性試験方法は、一定濃度の細菌溶液、抗生物質溶液及び蛍光D-アミノ酸代謝マーカーを加えて混合して培養し、(一定の時間後)サンプルの蛍光強度を検出し及び/又はその蛍光シグナルをリアルタイムに検出する工程を含み、本願のある具体的な実施形態では、細菌溶液及び抗生物質溶液を混合して培養し、細菌は、(対数)増殖期に入る。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、ブイヨン培地を使用して均一な細菌溶液を調製し、例えば、陽イオン調整ブイヨン培地を使用し、細菌溶液の濃度は、選択可能では、OD600=0.2である。いくつかの具体的な実施形態では、抗生物質溶液は、異なる濃度を使用し、例えば、勾配濃度を設定し、例えば、0μg/mL、16μg/mL、32μg/mL、64μg/mL、128μg/mL、256μg/mL、512μg/mL、1024μg/mL、また、0μg/mL、2μg/mL、4μg/mL、8μg/mL、16μg/mL、32μg/mL、64μg/mL及び/又は28μg/mL、また、0μg/mL、0.0625μg/mL、0.125μg/mL、0.25ug/mL、0.5μg/mL、1μg/mL、2μg/mL、4μg/mL及び/又は8μg/mLを使用する。いくつかの具体的な実施形態では、培養時間は、細菌が増殖期に入るためのものであり、それは、例えば1~3時間、より好ましくは2時間である。本願のいくつかの具体的な実施形態では、蛍光D-アミノ酸プローブは、Cy5-DAAプローブであり、使用した濃度は、細菌をマークすることができ、例えば、プローブの最終濃度は、0.01-5mM、又は0.1-lmM、又は0.5mMである。
【0017】
本発明の具体的な実施形態では、蛍光D-アミノ酸代謝マーカーに基づいた抗菌薬感受性試験方法は、グラム陽性菌、グラム陰性菌のために使用され得、例えば、グラム陰性菌は、クレブシエラ・ニューモニエ、シュードモナス・エルジノーサ、アシネトバクター・バウマニー、インフルエンザ菌、クレブシエラ・アエロゲネス、セラチア・マルセッセンス、クレブシエラ・オキシトカ、尿路病原性大腸菌(E.coli)を含むが、それらに限定されず、グラム陽性菌は、黄色ブドウ球菌、肺炎レンサ球菌、エンテロコッカス・ファエカリス、表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・カピティス、ストレプトコッカス・アンギノサスを含むが、それらに限定されず、例えば、黄色ブドウ球菌として、高レベルのOX耐性薬株ST5、低レベルOX耐薬性株ST59、及びOX感受性株ST398、尿路病原性大腸菌として、耐薬性株1113、感受性株1146が挙げられるが、それらに限定されない。本発明が対象とし得る抗生物質は、例えば、ペニシリン系、セファロスポリン系、メルカプトペネム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、アミドアルコール系、マクロライド系、グリコペプチド系、スルファニルアミド系、キノロン系、及びニトロイミダゾール系を含むが、それらに限定されない。本願に関する蛍光D-アミノ酸代謝マーカーに基づいた抗菌薬感受性試験方法は、最小発育阻止濃度以下で異なるメカニズムを持つ抗生物質に対する異なる細菌代謝活性の検出、低濃度抗生物質処理下での細菌代謝活性の検出、抗生物質に対する異なる増殖段階での細菌代謝活性の検出、及び低濃度の抗生物質が長時間作用した後の、対応する抗生物質に対する細菌のMICの変化の検出のために使用される。
【0018】
本発明は、細菌代謝活性及び/又は抗菌薬感受性試験の評価に対する蛍光D-アミノ酸代謝マーカーの用途に関する。図26に示すように、以下の実施例の具体的な操作工程に基づいて、レボフロキサシン(LEV)、チゲサイクリン(VA)は、EFM26(エンテロコッカス・フェシウム)、SA22(黄色ブドウ球菌)、ECO11(大腸菌)をそれぞれ処理し、VITEK及び蛍光D-アミノ酸代謝マーカーの抗菌薬感受性試験(FaASTと呼ばれる)方法を利用し、抗生物質MIC(最小発育阻止濃度)を計算し、図26に示すように、FaASTは、従来のVITEK方法で得られた結果とよく一致するFaAST方法は、グラム陰性菌の試験のために使用され、図27は、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)、アシネトバクター・バウマニー(A.baumannii)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)に対するレボフロキサシン、チゲサイクリン、イミペネム、アミカシン、ポリミキシンBの薬剤感受性試験であり、大腸菌(E.coli)の関連菌株は、Ec11、Ec13、Ec ATCC25922であり、緑膿菌(P.aeruginosa)の関連菌株は、Pa2、Pa3、Pa ATCC27853であり、アシネトバクター・バウマニー(A.baumannii)の関連菌株は、Abl6、Ab19であり、肺炎桿菌(K.pneumoniae)の関連菌株は、Kp6及びKp9である。図28は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、エンテロコッカス・ファエカリス(E.faecium)に対するレボフロキサシン、バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド、エリスロマイシンのグラム陽性菌の薬剤感受性試験であり、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の関連菌株は、Sa22、Sa23、Sa ATCC29213であり、エンテロコッカス・ファエカリス(E.faecium)の関連菌株は、Ef26、E28、EfATCC29212であり、図27及び図28に示すように、耐薬性株の検出結果について、FaAST方法は、従来のVITEK方法とよく一致しており、それらは、例えば、レボフロキサシンがEcl3に対する、イミペネムがEcl3に対する、ポリミキシンBがEcl3に対する、イミペネムがPa3に対する、レボフロキサシンがAb16に対する、イミペネムがAb16に対する、アミカシンがAb16に対する、レボフロキサシンがKp9に対する、イミペネムがKp9に対する、アミカシンがKp9に対するなど、また、レボフロキサシンがSa22に対する、レボフロキサシンがEf26、Ef28に対する、リネゾリドがSa23に対する、エリスロマイシンがEf28に対するものである。本発明の別の実施例では、図29に示すセファロスポリン系抗生物質の試験は、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)、アシネトバクター・バウマニー(A.baumannii)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)に対するセファロスポリン系抗生物質のセフェピム、セフロキシムアキセチル、SCFのそれぞれの薬剤感受性試験であり、大腸菌(E.coli)の関連菌株は、Ec11、Ec13、Ec ATCC25922であり、緑膿菌(P.aeruginosa)の関連菌株は、Pa2、Pa3、Pa ATCC27853であり、アシネトバクター・バウマニー(A.baumannii)の関連菌株は、Ab16、Ab19であり、肺炎桿菌(K.pneumoniae)の関連菌株は、Kp6及びKp9であり、耐薬性株の検出結果について、本発明のFaASTは、VITEK方法とよく一致する。本願の他の一実施例では、黄色ブドウ球菌に対するオキサシリンの薬剤感受性試験であり、図30に示すように、黄色ブドウ球菌の関連菌株は、Sa22、Sa23、Sa24、Sa25、Sa31、Sa5、Sa59、Sa398、Sa ATCC43380、Sa ATCC29213などであり、FaASTの結果は、BMD方法で得られた結果とよく一致する。
【0019】
本願のFaAST方法の正確性の分析結果について、30個の標準菌株及び臨床的に分離された菌株を利用し、10種の代表的な抗生物質をそれぞれ試験し、分類の偏差及び正確率の面では、本願のFaAST結果の正確性は、FDAで規定された正確性の標準よりはるか低く、その構造は、以下の表に示され、
【表1】
【0020】
本発明の具体的な実施形態では、細菌代謝活性評価及び/又は抗菌物質感受性試験用のキットは、蛍光D-アミノ酸代謝マーカー、及び/又は緩衝液、希釈液又はキャリア又は培養プレート、ペトリ皿を含む。
【0021】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明の技術的解決手段を更に説明する。
(実施例1)
【0022】
FDAA代謝マーカー方法を利用し、グラム陽性の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の高レベルOX耐薬性株ST5、低レベルOX耐薬性株ST59、及びOX感受性株ST398に対するオキサシリン(OX)、バンコマイシン(VA)、エリスロマイシン(E)の作用効果を検出する。
【0023】
図3のFDAA代謝マーカーに基づいた迅速な抗菌薬感受性試験方法の流れ図に示すように、具体的な実験手順は以下のとおりである。
【0024】
1.プレートで一晩培養した試験対象細菌コロニーを取り、生理的食塩水内に十分に均一に混合し、均一な細菌溶液を調製し、陽イオン調整ブイヨン培地内に希釈し、濃度がOD600=0.05の細菌溶液を得る。
【0025】
2.96ウェルプレートに濃度が異なる試験対象抗生物質溶液45μl(抗生物質の濃度勾配の設定は表1に示される)をそれぞれ加える。
【0026】
3.96ウェルプレートには、工程1において得られた細菌溶液50μlを加え、均一に混合する。
【0027】
4.各ウェル内に10mMのCy5-DAAプローブ5μl(最終濃度0.15mM、その構造は図1に示される)を加え、均一に混合した後、2時間暗黒培養する。
【0028】
5.PBS溶液200μlを加えて希釈した後、フローサイトメータを使用して各サンプルの蛍光強度を検出する。フローサイトメータの検出結果は、図4~5に示され、抗生物質の濃度勾配と蛍光強度との変化曲線を示し、この曲線を参照すると、MIC(最小発育阻止濃度)を得る。
【表2】
【0029】
以下の表2から分かるように、本発明(FDAA代謝マーカーに基づいた迅速な抗菌薬感受性試験方法)によって得られたグラム陽性菌の薬剤感受性試験の結果は、一般的に使用される臨床薬剤感受性試験装置Vitek2によって得られた結果とよく一致する。
【表3】
備考:S:感受性がある、R:耐薬性がある
(実施例2)
【0030】
FDAA代謝マーカー方法及びBMDを利用し、グラム陽性の黄色ブドウ球菌(S.aureus)、エンテロコッカス・フェシウム(E.faecium)、エンテロコッカス・ファエカリス(E.faecalis)に対するレボフロキサシン(Levofloxacin)、バンコマイシン(Vancomycin)、テイコプラニン(Teicoplanin)、リネゾリド(Linezolid)、エリスロマイシン(Erythromycin)及びペニシリンPenicillin G)の作用効果を検出する(他の工程は、実施例1と同じである)。抗生物質耐性を有する菌株は、以下の表に太字で示される。
【表4】
(実施例3)
【0031】
FDAA代謝マーカー方法を利用し、グラム陰性の尿路病原性大腸菌の耐薬性株1113、感受性株1146に対するセフェピム(FEP)、イミペネム(IPM)、レボフロキサシン(LEV)、チゲサイクリン(TGC)の作用効果を検出する。
【0032】
具体的な実験手順は以下のとおりである。
【0033】
1.プレートで一晩培養した試験対象細菌コロニーを取り、生理的食塩水内に十分に均一に混合し、均一な細菌溶液を調製し、陽イオン調整ブイヨン培地内に希釈し、濃度がOD600=0.05の細菌溶液を得る。
【0034】
2.96ウェルプレートに濃度が異なる試験対象抗生物質溶液45l(抗生物質の濃度勾配の設定は表1に示される)をそれぞれ加える。
【0035】
3.96ウェルプレートには、工程1において得られた細菌溶液50μlを加え、均一に混合する。
【0036】
4.各ウェル内に10mMのCy5-DAAプローブ5μl(最終濃度0.15mM、その構造は図1に示される)を加え、均一に混合した後、2時間暗黒培養する。
【0037】
5.PBS溶液200μlを加えて希釈した後、フローサイトメータを使用して各サンプルの蛍光強度を検出する。フローサイトメータの検出結果は、図4~5に示され、抗生物質の濃度勾配と蛍光強度との変化曲線を示し、この曲線を参照すると、MIC(最小発育阻止濃度)を得る。
【表5】
空白対照*:抗生物質及びプローブを加えない。
【0038】
以下の表4に示すように、本発明(FDAA代謝マーカーに基づいた迅速な抗菌薬感受性試験方法)によって得られたグラム陰性菌の薬剤感受性試験の結果は、一般的に使用される臨床薬剤感受性試験装置Vitek2によって得られた結果とよく一致する。
【表6】
備考:S:感受性がある、R:耐薬性がある
(実施例4)
【0039】
FDAA代謝マーカー方法及びBMDを利用し、グラム陰性の尿路病原性大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)、アシネトバクター・バウマニー(A.baumannii)、及び肺炎桿菌(K.pneumoniae)に対するレボフロキサシン(Levofloxacin)、チゲサイクリン(Tigecycline)、イミペネム(Imipenem)、アミカシン(Amikacin)、ポリミキシンB(Polymyxin B)、セフェピム(Cefepime)、セフロキシムアキセチル(Cefuroxime)、SCFの作用効果を検出する(他の工程は、実施例3と同じである)。抗生物質耐性を有する菌株は、以下の表に太字で示される。
【表7】

(実施例5)
【0040】
図3のFDAA代謝マーカーに基づいた迅速な抗菌薬感受性試験方法の流れ図に示すように、FDAAは、気管支肺胞洗浄液の抗菌薬感受性試験のために使用され、具体的な実験手順は以下のとおりである。
【0041】
1.院内肺炎患者の気管支肺胞洗浄液(BALF、10ミリリットル)と2倍の濃度の陽イオン調整ブイヨン培地(CAMHB、10ミリリットル)を混合し、細菌溶液を調製する。
【0042】
2.96ウェルプレートに濃度が異なる試験対象抗生物質溶液45μl(抗生物質の濃度勾配の設定は表1に示される)をそれぞれ加える。
【0043】
3.96ウェルプレートには、工程1において得られた細菌溶液50μlを加え、均一に混合する。
【0044】
4.各ウェル内に10mMのCy5-DAAプローブ5μl(最終濃度0.15mM、その構造は図1に示される)を加え、均一に混合した後、2時間暗黒培養する。
【0045】
5.PBS溶液200μlを加えて希釈した後、フローサイトメータを使用して各サンプルの蛍光強度を検出する。フローサイトメータの検出結果は、図11~13に示される(imipenemはイミペネムIPM、LevofloxacinはレボフロキサシンLEV、TigeeyelineはチゲサイクリンTGCである)。
【0046】
表5は、FDAA代謝マーカー方法と一般的に使用される臨床薬剤感受性試験装置Vitek2の検出結果との比較、本発明(FDAA代謝マーカーに基づいた迅速な抗菌薬感受性試験方法)によって得られた気管支肺胞洗浄液の薬剤感受性試験の結果は、一般的に使用される臨床薬剤感受性試験装置Vitek2によって得られた結果とよく一致する。
【表8】
【0047】
FDAA及びBMDを使用する場合、7名患者の気管支肺胞洗浄液の抗菌薬感受性試験の検出結果は、以下の表に示され、耐薬性を有する細菌は、太字で示される。
【表9】
(実施例6)
【0048】
DAA-Tetraプローブを利用し、細菌に対するイミペネム(大腸菌 ECO922)、アミカシン(クレブシエラ・ニューモニエKPN6)、レボフロキサシン(シュードモナス・エルジノーサPAE2、アシネトバクター・バウマニーABAI9、エンテロコッカス・フェシウムEFM26)及びリネゾリド(黄色ブドウ球菌SA31)などの数種の抗生物質の作用効果を検出する。ここで、DAA-Tetraプローブの構造は以下のとおりである。
【化5】
【0049】
励起波長は365nm、射出波長は490nmである。
【0050】
具体的な実験手順は以下のとおりである。
【0051】
1.プレートで一晩培養した試験対象細菌コロニーを取り、2X陽イオン調整ブイヨン培地(2XCAMHB)内に十分に均一に混合し、濁度がOD600=0.1の細菌懸濁液を得る。
【0052】
2.96ウェルプレートに濃度が異なる試験対象抗生物質溶液45μl(最終濃度勾配は0μg/mL、0.25μg/mL、0.5μg/mL、1μg/mL、2μg/mL、4μg/mL、8μg/mL、16μg/mL、32μg/mL、64μg/mL、128μg/mL、256μg/mLのように設定される)をそれぞれ加える。
【0053】
3.96ウェルプレート内には、工程1において得られた細菌溶液50μl(細菌溶液の最終濃度OD600=0.05)を加え、同時に3mMのDAA-Tetraプローブ5μl(最終濃度0.15mM)を加え、均一に混合した後、37°Cで、120rpmで2時間暗黒培養する。
【0054】
4.培養が完了した後、PBS溶液で混合細菌溶液を10倍希釈し、フローサイトメータを使用して各サンプルの蛍光強度を検出する。フローサイトメータの検出結果は、図14~15に示され、矢印はMIC値を示す。フローサイトメータで検出した蛍光シグナル強度に基づいて抗生物質の最小発育阻止濃度を取得し、統計結果は、表6に示される。
【表10】
(実施例7)
【0055】
DAA-Cy5-2プローブを利用し、細菌に対するイミペネム(大腸菌ECO15)、アミカシン(クレブシエラ・ニューモニエKPN9)、レボフロキサシン(シュードモナス・エルジノーサPAE853、アシネトバクター・バウマニーABA16、リネゾリド(黄色ブドウ球菌SA22)、エリスロマイシン(エンテロコッカス・フェシウムEFM28)などの数種の抗生物質の作用効果を検出する。ここで、DAA-Cy5-2の構造は、以下のように示され、
【化6】
【0056】
励起波長は650nm、射出波長は670nmである。
【0057】
具体的な工程は、実施例5と同じである。フローサイトメータによって得られた検出結果は、図20~25に示され、矢印はMIC値を示す。フローサイトメータで検出した蛍光シグナル強度に基づいて抗生物質の最小発育阻止濃度を取得し、統計結果は、表7に示される。
【表11】
【0058】
本発明の技術的解決手段は、細菌特異的標識蛍光シグナルを短時間で実現することができ、現在、実験室、医療機関で広く使用されるフローサイトメータによって細菌の蛍光シグナル強度を検出し、従って、異なる抗生物質の種類、異なる抗生物質の濃度での細菌の薬剤感受性を定量的に評価し、それは、迅速(3~4時間、改良後、1.5~2.5時間でMIC結果を提供することを実現できる)、便利(操作しやすく、工程が少なく、特別な装置を必要としない)、高感度(蛍光マーカー方法は、安定し、シグナルが強く、シグナル対雑音比が高い)、正確(細菌代謝活性の検出によって増殖しないが代謝的に活性な(NGMA)状態にある細菌を効果的に特定できる)、直観的(よく可視化する)、従来の装置との互換性が高く(使用する装置が少なく、装置のコストが適切で、通常である)、普及しやすい迅速な抗菌薬感受性試験方法である。
【0059】
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【国際調査報告】