(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】SARS-COV-2感染リスク評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230515BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20230515BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230515BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230515BHJP
C07K 16/10 20060101ALN20230515BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/569 Z
C07K14/705
C12N15/13
C07K16/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562103
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2021059107
(87)【国際公開番号】W WO2021204902
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520315176
【氏名又は名称】ヴィロゲーツ エー/エス
【氏名又は名称原語表記】VIROGATES A/S
(71)【出願人】
【識別番号】522396399
【氏名又は名称】コペンハーゲン ユニヴァーシティ ホスピタル アマー アンド ヴィズオウア
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】オイゲン-オルセン,イェスパー
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,オーヴェ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA50
4H045EA54
(57)【要約】
可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(suPAR)のレベルの上昇、特に4.75ng/mlまたは6ng/nl超の血漿レベルは、COVID-19の症状および/またはSARS-CoV-2感染症を有する対象が酸素補給を必要とするかどうかの予測因子であることが見出されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
COVID-19の症状および/またはSARS-CoV-2感染症を有する対象が、酸素補給、特に侵襲的換気(人工呼吸器)を必要とするかどうか、または必要とする可能性が高いかどうかを評価する方法であって、前記対象が、4.75ng/ml超、好ましくは6ng/ml超のsuPAR血漿レベルを有するかどうかを判定することを含む、方法。
【請求項2】
前記COVID-19の症状が、発熱および新たな連続的な咳のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
SARS-CoV-2感染症を、上記の表1に開示されているもののうちのいずれか、好ましくはAltona Diagnostics(Hamburg,Germany)製のRealStar(登録商標)SARS-CoV-2 RT-PCRキットRUOを含む方法によって診断する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記血漿レベルを、血漿サンプルをアッセイすることによって直接的に、または血清もしくは尿レベルをアッセイすることによって間接的に判定する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記suPARレベルを、免疫診断法によって判定する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
COVID-19の症状および/またはSARS-CoV-2感染症を有し、かつ補助呼吸による治療を受けているか、またはそれによる治療が検討されている対象の一定期間内の死亡の可能性を判定する方法であって、前記対象が、4.75ng/ml超、好ましくは6ng/ml超のsuPAR血漿レベルを有するかどうかを判定することを含む、方法。
【請求項7】
前記補助呼吸が、侵襲的換気である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
COVID-19の症状および/またはSARS-CoV-2感染症を有する対象を、退院させてもよいか、または入院させなくてもよいかを評価する方法であって、前記対象のsuPARレベルを判定し、それによって、
(i)4.75ng/ml未満のsuPAR血漿レベルを有する対象を退院させるか、または入院させず、かつ
(ii)6ng/ml以上のsuPAR血漿レベルを有する対象を退院させないか、または入院させることを含む、方法。
【請求項9】
6ng/ml以上のsuPAR血漿レベルを有する対象が、酸素補給、特に侵襲的換気(人工呼吸器)を必要とする可能性が高いとさらにみなされる、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COVID-19の症状を有する対象の検査に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスSARS-CoV-2によって引き起こされたCOVID-19パンデミックは、病院のリソースおよびキャパシティに多大な圧力をかけている。リスクトリアージは、重度の疾患を発症しない患者を迅速に退院させて自宅隔離させ、より重篤な疾患を発症する患者を病棟または集中治療室(ICU)に入院させるのに重要である。
【0003】
デンマークでは、感染率が急速に増加しているが、この特許の提出時点では、病院のリソースおよびキャパシティは、重度の感染の兆候がある者に対応することができた。しかしながら、家に帰された軽度の症状を有する者は、より重度の疾患に進行し、呼吸器補助が必要になり、最悪の場合、自宅で死亡する可能性がある。さらに、イタリアなどの他の国では、病院のリソースに無理がかかっているため、特にICUへの入院を最も必要とする者を改善された精度で特定することは非常に有用であろう。
【0004】
したがって、さらなる進行のリスクが低く、患者を自宅検疫のために安全に解放することができる場合、病気の進行を予測することができるバイオマーカーは、患者の退院に、また中等度の疾患を有する者の退院に有用である。
【0005】
SARS-CoV-2による重篤な疾患の発症および死亡についてのいくつかのリスクマーカー、例えば、年齢および性別は、すでに知られている。合併症および死亡のリスクは、年齢とともに上昇し、特に65歳以上の場合、女性よりも男性の方が高くなる。特定の潜在的な健康状態、特に、がん、重度の肥満、免疫抑制(例えば、抗がん化学療法または低いCD4細胞数に起因するもの)、糖尿病、高血圧、心臓病、肺病(喘息など)、肝臓病、腎臓病、および場合によっては運動ニューロン疾患などの特定の神経学的病態もリスクを高めると知られている。AIに基づく分析では、肝酵素アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの上昇、報告されている筋痛症(深い筋肉痛)、およびヘモグロビンレベルの上昇の組み合わせを有することがリスク因子であることも提示されている。
【0006】
現在、suPARと呼ばれるタンパク質のレベルの上昇が、疾患の重症度および死亡についてのリスク因子であることが見出されている。タンパク質suPAR(NCBIアクセッション番号AAK31795および受容体のアイソフォーム、NP_002650、003405、NP_002650、NP_OO1005376)は、膜結合型uPARのGPIアンカーの切断によって放出されるウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)の可溶性部分である。suPARは、全長suPAR(277アミノ酸(1-277))とsuPARフラグメントD1(1-83)、およびウロキナーゼ切断またはヒト気道トリプシン様プロテアーゼによって生成されたD2D3(84-277)、D1(1-87)とMMP切断によって生成されたD2D3(88-277)、D1(1-89)とウロキナーゼ切断またはヒト気道トリプシン様プロテアーゼによって同様に生成されたD2D3(90-277)、D1(1-91)とプラスミンによる切断によって生成されたD2D3(92-277)からなるグリコシル化タンパク質のファミリーである。タンパク質suPARおよびその切断産物に存在する連続および不連続エピトープを使用して、モノまたはポリクローナル抗体での免疫検出により、体液中のそれらの存在および存在量を監視することができる。suPARおよびその切断産物(例えば、D2D3)に共通のアクセス可能なエピトープに対する抗体を使用して、体液中のsuPARおよびその切断産物の両方を検出することができる。suPARとその切断産物の間には1対1の関係があるため、完全長suPAR、および例えばD2D3切断産物の両方に共通するエピトープに対する抗体は、直接的および間接的に同時にsuPARレベルを測定する。つまり、検出されたタンパク質の一部がD2D3切断産物であったとしても、アッセイで測定された例えば3ng/mlの値は、suPARレベルが3ng/mlであるとみなされる。したがって、アッセイの文脈では、「suPAR」は、完全長のsuPARおよびその切断産物D2D3を指す。用語D2D3は、suPARの84~277領域に対応し、suPARの84~92アミノ酸領域にあるN末端と、suPAR(アミノ酸277)、例えば、84~277、88~277、90~277、および92~277のC末端に対応するC末端と、を有する任意のsuPAR由来断片を示すために使用される。
【0007】
WO2008/077958(Hvidovre Hospital)は、軽度の炎症(LGI)、LGIに関連する疾患、およびメタボリックシンドロームについてのバイオマーカーとしてのsuPARの使用を開示する。また、疾患(心血管疾患など)を発症するリスク、および10年以内の全体的な死亡リスクを評価する手段として、主にそれらのリスクを低減するために生活習慣を変えることができるように、見かけ上は健康な対象のsuPARレベルの測定についても開示する。見かけ上は健康な対象において、疾患を発症するリスク(疾患を有することとは対照的に)、および10年以内の死亡リスクを判定することは、EDで必要とされる種類の評価とは関係がない。
【0008】
suPARは、急性期医療患者の再入院および死亡率のバイオマーカーであることもすでに示されている(WO2019/162334)。しかしながら、suPARは、COVID-19の症状がある、またはそれと確認された患者で調査されたことも、呼吸器補助(例えば、非侵襲的換気(NIV)または持続気道陽圧(CPAP)または人工呼吸器)を必要とするエンドポイントで調査されたこともない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、医療関係者が、(任意選択的に他の臨床観察および病歴などと併せて)対象の状態、特に非侵襲的換気(NIV)または持続気道陽圧(CPAP)または人工呼吸器を必要とする対象のリスクを評価することができる新規の手段を提供することを目的とする。これにより、対象を入院させるべきか、または退院させるべきかどうかについての、より正確な評価を行うことができる。
【0010】
特に、この検査は、患者が酸素補給を必要とするかどうかを判定する目的での、体液、特に血液サンプル中の(suPAR)と呼ばれるタンパク質の測定に関する。
【0011】
対象の体温が37℃超の場合(例えば、口腔、直腸もしくは脇の下の体温計によって、または例えば額もしくは耳の内部に向けられる非接触体温計によって評価される場合)、または対象の額もしくは背中が熱く感じられる場合、対象は、熱があるとみなされる。
【0012】
新たな連続的な咳とは、1時間超にわたる咳、または24時間で3回以上の咳の発作を伴うものである。
【0013】
我々は、以下のことを見出した:
1.増加したsuPAR(4.75ng/ml超、特に6ng/ml超)を有するCOVID-19患者の症状を示す患者が、それぞれ4.75ng/mlまたは6ng/ml未満のsuPARを有するCOVID-19患者と比較して、近い将来(14日以内)に呼吸器補助が必要になるリスクが大幅に高くなること。
2.持続気道陽圧が必要な患者(持続気道陽圧(CPAP)を受けている患者または人工呼吸器で侵襲的換気を受けている患者(侵襲的換気とは、気管内または気管切開チューブを介して適用される陽圧換気である)では、suPAR動態を使用して、患者が生存するかどうかを判断することができる。
【0014】
したがって、本発明はまた、COVID-19の症状および/またはSARS-CoV-2感染症を有し、かつ補助呼吸による治療を受けているか、またはそれによる治療が検討されている対象の一定期間内の死亡の可能性を判定する方法であって、対象が、4.75ng/ml超、特に6ng/ml超のsuPAR血中レベルを有するかどうかを判定することを含む、方法を提供する。リソースが不十分な病院では、これにより、医療スタッフが、補助換気の恩恵を受ける可能性が最も高いのは誰なのかを判定することができるようになる。
【0015】
6ng/mlの値は、1つの有効数字で表されているため、5.5ng/mlからの値を含む場合がある。あるいは、「6ng/ml」は、6.0ng/mlを意味する。
【0016】
一定期間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日であり得る。
【0017】
補助換気は、非侵襲的換気(NIV)、持続気道陽圧(CPAP)、または侵襲的機械換気を含み得る。
【0018】
対象のsuPARレベルが20ng/ml超である場合、緊急の補助換気が必要であり、すなわち、次の30分、1時間、2時間、3時間、または4時間以内に必要である。
【0019】
非侵襲的換気は、例えば、気道陽圧の一種である持続気道陽圧(CPAP)であり得、その場合、自発呼吸をしている者において、空気流を気道に導入して連続的圧力を維持して、気道を常にステントで空けておく。呼気終末陽圧(PEEP)とは、呼気終末時における大気圧超の肺胞内の圧力である。CPAPは、PEEPを送達する手法であるが、吸気および呼気の両方の呼吸サイクル全体にわたって設定圧力を維持する。これは、水圧のセンチメートル(cmH2O)で測定される。あるいは、非侵襲的換気は、バイレベル気道陽圧(BiPAP)であってもよく、その場合、送達される圧力は、患者が吸気しているか呼気しているかによって異なる。これらの圧力は、吸気気道陽圧(IPAP)および呼気気道陽圧(EPAP)として知られている。CPAPでは、設定レベル超の追加の圧力は提供されず、患者は、呼吸すべてを開始する必要がある。
【0020】
侵襲的機械換気は、呼吸器および呼吸の困難のある患者の命を救う介入になり得る。「侵襲的」という用語は、これが、人工気道としての役割を果たす、口(気管内チューブなど)、鼻、または皮膚(ストーマ、気管に外科的に作製された穴を通る気管切開チューブなど)を貫通する器具を伴う場合に、使用される。
【実施例】
【0021】
実施例1-発熱の判定
発熱は、口腔、直腸もしくは脇の下の体温計もしくは非接触額体温計によって評価して37℃超の温度として、または対象の額もしくは背中が熱く感じられる場合に、判定され得る。
【0022】
実施例2-咳の測定
新たな連続的な咳とは、1時間超にわたって持続する咳、または24時間で3回より多く咳の発作と定義される。
【0023】
実施例3-SARS-CoV-2感染の診断
SARS-CoV-2感染の診断は、例えば、以下の表にあるような任意の試験によって達成することができる(2020年4月8日の米国FDAに見られるもの)。
【表1-1】
【表1-2】
【0024】
実施例4-suPARレベルの測定
suPARレベルは、その目的のために本明細書に組み込まれるWO2008/077958に教示されている方法により、体液において測定され得る。
【0025】
より具体的には、suPARレベルは、ELISAアッセイによって以下のとおりに判定され得る:Nunc Maxisorp ELISAプレート(Nunc、Roskilde,Denmark)を、4℃で一晩、モノクローナルラット抗suPAR抗体(VG-1、ViroGates A/S、Copenhagen,Denmark、3μg/ml、100μI/ウェル)でコーティングする。プレートを、PBS緩衝液+1%のBSAおよび0.1%のTween20で室温にて1時間ブロックし、0.1%のTween20を含有するPBS緩衝液で3回洗浄した。1.5μg/mlのHRP標識されたマウス抗suPAR抗体(VG-2-HRP、ViroGates)および15μlの血漿(または血清もしくは尿)サンプルを含有する85μlの希釈緩衝液(100mmのリン酸、97.5mmのNaCl、10gL-1のウシ血清アルブミン(BSA、画分V、Roche Diagnostics GmbH Penzberg,Germany)、50UmL-1のヘパリンナトリウム塩(Sigma Chemical Co.、St. Louis,MO)、0.1%(v/v)のTween20、pH7.4)を、ELISAプレートに2つ組で添加する。37℃で1時間インキュベートした後、プレートを、PBS緩衝液+0.1%のTween20で10回洗浄し、100μI/ウェルのHRP基質を添加する(Substrate Reagent Pack、R&D Systems Minneapolis,Minnesota)。呈色反応を、ウェルあたり50μlの1MのH2SO4を使用して30分後に停止し、450nmで測定する。
【0026】
さらに、製造者の指示に従って、suPARnostic(登録商標)製品ラインなどの市販のCE/IVD承認アッセイを使用して、体液中のsuPARを測定することができる。TRIAGE III試験では、suPARnostic Quick Triageラテラルフローアッセイを使用して、suPARが定量化された。
【0027】
suPARレベルは、例えば、ViroGates A/S、Banevaenget 13、DK-3460
【数1】
,Denmarkによって販売されているsuPARnostic(登録商標)Autoflex ELISA試験を使用してアッセイされ得る。あるいは、suPARレベルは、ウエスタンブロット、Luminex、MALDI-TOF、HPLC、もしくはGenspeedデバイスなどのプロテオミクス手法、ならびにBayer Centaur、Abbott Architect、Abbott AxSym、Roche COBAS、およびAxis Shield Afinionなどの自動免疫分析プラットフォームによって、またはRocheのCobas c111、Cobas c501/2+c701/2もしくはSiemensのADVIA XPTもしくはCentaurもしくはAbbott ArchitectにおいてsuPARnostic(登録商標)Turbilatexなどの比濁アッセイを使用することによって測定することができる。
【0028】
本発明の方法で使用される該受容体または受容体ペプチドに対するモノクローナル抗体は、培養中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術を使用して調製され得る。これらは、限定されないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBV-ハイブリドーマ技術を含む。例えば、Kohler,et al,1975,Nature 256:495-497、Kozbor,et al,1985,J.lmmunol.Methods 81:31-42、Cote,et al,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA80:2026-2030、Cole,et al,1984,Mol.Cell Biol.62:109-120を参照されたい。具体的には、この方法は、以下のステップを含む:(a)免疫原性受容体ペプチドで動物を免疫化する、(b)動物から抗体産生細胞を単離する、(c)抗体産生細胞を培養中の不死化細胞と融合させて、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞を形成する、(d)ハイブリドーマ細胞を培養する、および(e)該ポリペプチドに結合するモノクローナル抗体を培養物から単離する。
【0029】
血液中のsuPARレベルは、血液サンプル中、または血清、血漿もしくは尿中で直接測定することができる。抗凝固血漿、例えばEDTAまたはクエン酸血漿が好ましい。4.75ng/ml超(特に、6ng/ml超)の血漿レベルは、対象が特に侵襲的換気による酸素補給を必要とすること、または必要とする可能性が高いことを示すとみなされる。
【0030】
生体サンプルが尿である場合、測定値は、この値が同じ対象由来の血漿サンプル中のsuPARの濃度と高い相関があることが知られているため、対象からの尿のsuPAR/クレアチニン値に基づく場合がある。したがって、尿サンプルはまた、測定された尿中のレベルが、タンパク質含有量に対して正規化される(例えば、クレアチニンを使用して)場合、suPARの測定に用いられてもよい。これらの正規化された値は、本発明の目的のためのマーカーとして用いることができる。WO2019/162334の例2および
図1を参照されたい。
【0031】
実施例5-臨床結果
方法:
患者におけるsuPARの測定は、Danish Health and Medicines Authority(参照3-3013-1061/2)およびDanish Data Protection Agency(参照HVH-2014-018、02767)によって承認された。
【0032】
この前向き研究は、Copenhagen University Hospital(Hvidovre,Denmark)で実施された。COVID-19が疑われる患者が含まれていた。
【0033】
C反応性タンパク質(CRP)は、COBAS 6000分析装置(Roche Diagnostics、Mannheim,Germanyを使用して測定された。
【0034】
suPAR測定:COVIDが疑われる患者の到着時に血液(EDTA、4ml)を採取し、2分間遠心分離し、suPARを、ポイントオブケア試験(suPARnostic Quick Triage、ViroGates、
【数2】
,Denmark)を使用して血漿において測定した。試験は、20分で結果を提供し、suPARは、週7日、1日24時間、リアルタイムで測定した。最初の患者は2020年3月19日に、最後は4月3日に含めた。
【0035】
COVID-19を呈している442人の患者を研究に含めた。これらのうち、179人は男性、250人は女性であり、3人は性別に関する情報がなかった。
【0036】
suPARは、急性期医療部門での最初の受診時に測定し、患者を最大18日間追跡した。追跡調査中に、14人の患者が、非侵襲的換気(NIV)、例えばCPAP、または人工呼吸器ケアのために、ICUに入院した。平均suPARレベルは、最終的にICUに入った患者では、そうならなかった患者と比較して、有意に高かった(それぞれ、平均8.7ng/ml対4.6ng/ml、p<0.001)。この違いは、suPARの中央値の違いにも反映された(それぞれ、7.85ng/ml対4.0ng/ml、p<0.001)。
【0037】
ICU内の患者のモニタリング:ICU内の患者を、3月19日から4月3日までの期間で、それらのsuPARレベルについて毎日測定した。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図10】個々の患者におけるsuPAR濃度である。
【
図11】個々の患者におけるsuPAR濃度である。
【
図12】個々の患者におけるsuPAR濃度である。
【
図13】個々の患者におけるsuPAR濃度である。
【
図14】個々の患者におけるsuPAR濃度である。
【
図15】個々の患者におけるsuPAR濃度である。
【0039】
図において、Y軸は、ng/mlでのsuPAR濃度を示す。異なる軸の値に留意されたい。
【0040】
X軸は、最初の測定からの日数を示し、数字は、測定後の日数を指す。いくつかの場合では、suPARは、1日2回(朝および夕方)に測定したため、同じ日に2つのデータ測定が示されている。患者ごとに性別および生年月日が示されており、例えば、「M1991」は、1991年生まれの男性を表す。EDは、COVID救急部門を指す。ICUは、集中治療室を指す。
【0041】
ベースラインでの併存症の以下の一覧に注目した:なし(71、17.3%)、COPD(75、18.2%)、喘息(64、15.6%)、糖尿病-1型(5、1.2%)、糖尿病-2型(73、17.8%)、高血圧(163、39.7%)、心不全(52、12.7%)、診断された冠動脈疾患(36、8.8%)、がん-活性(28、6.8%)、がん-不活性(32、7.8%)、慢性腎不全(21、5.1%)、慢性肝疾患(5、1.2%)、他の肺疾患(21、5.1%)、他の心臓病(60、14.6%)、他の慢性感染症(5、1.2%)、他の炎症性疾患(17、4.1%)、アルコール乱用(19、4.6%)。併存症の中央値を以下の表2に示す。
【表2】
【0042】
喫煙に関する情報は、405人の患者で得られ、分布は、以下のとおりであった:現喫煙者(86、21.2%)、元喫煙者(150、37.0%)、喫煙経験なし(169、41.7%)
過去14日間の旅行について、404人がインタビューを受け、4.2%が「はい」と報告し、95.8%は旅行していなかった。10.4%は、別のCOVID-19患者との接触を知っていたが、残りの362人はどのように感染したかを知らなかった。
【0043】
患者の受診では、以下の症状が報告された:喉の痛み(85、19.9%)、咳-喀痰あり(102、23.8%)、咳-喀痰なし(174、40.7%)、体の痛み(117、27.3%)、疲れ(67、15.7%)、頭痛(56、13.1%)、めまい(36、8.4%)、吐き気/嘔吐(53、12.4%)、発熱(217、50.7%)、腹痛(18、4.2%)、便秘(0、0.0%)、下痢(40、9.3%)、排尿障害(6、1.4%)、呼吸困難(266、62.1%)、胸痛(55、12.9%)、関節痛(8、1.9%)、けいれん(0、0.0%)、悪寒(21、4.9%)、喀血(2、0.5%)、および他(26、6.1%)。症状の持続時間:0~1日(79、19.5%)、2~3日(86、21.2%)、4~5日(51、12.6%)、6~7日(56、13.8%)、8~10日(32、7.9%)、11~13日(16、4.0%)、14~15日(39、9.6%)、15日以上(46、11.4%)。SARS-CoV試験に関しては、喀痰、鼻咽頭吸引、気管分泌物、BAL、または咽頭からの移植片から得られた材料を、Rocheのフローシステムに適合したAltona Diagnostics(Hamburg,Germany)のRealStar(登録商標)SARS-CoV-2 RT-PCRキットRUOを使用して増幅させた。検出限界は、RNAのコピー50個であった。患者のうちの24人は、病院に到着する前に診断された。
【0044】
suPAR試験.suPARnostic QT試験(ViroGates,Denmark)を使用してsuPARを試験した。ほとんどの試験は入院初日に行ったが、一部は、24時間後(0~24時間(355、93.4%)、24~48時間(3、0.8%)、2~4日(5、1.3%)、4日以上(17、4.5%))に行われた。
【0045】
結果
suPARレベルは、以下の表3に示すとおりであった。
【0046】
【0047】
14日間の追跡調査後に、以下のことが見出された:依然として入院中(42、10.1%)、退院して生存(331、79.8%)、退院して自宅で死亡(9、2.2%)、病院で死亡(33、8.0%)、臓器障害に関して、これは、392人の患者について報告され、以下のことが観察された:臓器機能障害なし(337、86.0%)、腎臓(14、3.6%)、肝臓(9、2.3%)、肺(49、12.5%)、心臓(10、2.6%)。臓器不全を発症しなかった患者と臓器不全を発症した患者とを比較すると、臓器不全を発症した患者のベースラインsuPARレベルが有意に高いことが明らかになった(p<0.001)。
【0048】
入院時のsuPARレベルによって、患者が挿管および機械換気(人工呼吸器)を使用することになるかどうかを予測できるかを判断することを目的とした。ベースラインにおいて、追跡調査中に必要に応じて患者が挿管に適しているかどうかを評価するように医師に指示した。適応外の患者は、挿管および機械換気に耐えられないほど弱いと考えられた患者、例えば、非常に高齢の患者またはSARS-CoV-2感染前に進行がんもしくは慢性閉塞性肺疾患を有していた患者であった。適応外の患者のうちの32人は緩和ケアを受けた。316人の患者は、集中治療を受けることが可能であるとみなされ、76人は、そうとはみなされなかった。追跡調査中に、適切な患者のうちの26人の患者が人工呼吸器を必要とすることになった。
【0049】
14日間の追跡調査中の適切な患者における人工呼吸器の必要性の予測因子としての、ベースラインにおけるsuPAR
追跡調査中に人工呼吸器に至る結果に対するベースラインsuPARのROC曲線は、図の一部を形成するROC曲線に示されている。曲線下面積は、0.895(p<0.001)であった。
【0050】
Youdenインデックスは、suPARのものであった(最適な感度および特異度は4.75ng/mlであった。これにより、0.995という非常に高い負の予測値が得られた。
【0051】
表4は、感度、特異度、陽性適中率(ppv)、および陰性適中率(npv)を示す
【表4】
表5は、4.75ng/ml未満のsuPARを有する1/205の患者が人工呼吸器に至り、それを上回るsuPARを有する25/111が人工呼吸器に至ったことを示す。この差は、非常に有意である(p<0.001)。
【表5】
6ng/mlのカットオフで、以下の結果が得られる。
【表6】
したがって、ベースラインにおける6ng/ml未満のsuPARを有する患者は、人工呼吸器に至る可能性が2.5%であり、6ng/ml超のsuPARを有する患者は、人工呼吸器に至る可能性が27%である。この差は、非常に有意である(p<0.001)。
【表7】
結論として、ベースラインsuPARレベルは、挿管および機械換気(人工呼吸器)が必要となるリスクを予測するものであることが分かる。
【国際調査報告】