(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-22
(54)【発明の名称】消費材の冷凍保存方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F25D 9/00 20060101AFI20230515BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
F25D9/00 B
A23L3/36 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562123
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 AU2021050313
(87)【国際公開番号】W WO2021203163
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521225247
【氏名又は名称】ヴィトラフィー ライフ サイエンシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VITRAFY LIFE SCIENCES LIMITED
【住所又は居所原語表記】Level 1,47 Sandy Bay Road,Hobart,Tasmania 7000,AUSTRALIA
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーウェンズ,ブレント
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ブライアン
【テーマコード(参考)】
3L044
4B022
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044BA04
3L044CA04
3L044DB02
3L044HA03
3L044JA02
3L044JA04
3L044KA01
3L044KA04
3L044KA05
4B022LA06
4B022LA08
4B022LB02
4B022LF02
4B022LJ06
4B022LN01
4B022LT06
(57)【要約】
消費材を保存するための装置であって、外側断熱ハウジング内に配置された内側ハウジングを有し、内側ハウジングの壁が消費材を受け入れるための区画を規定し、当該壁は、熱交換流体を区画内に流入させるための入口壁、熱交換流体を区画から流出させるための対向する出口壁、側壁及び基部を含み、側壁およびベースは、入口壁と出口壁に隣接しており、入口壁および出口壁はそれぞれ、動作時に、内側ハウジングの区画に受け入れられた消費材が熱交換流体に浸されて熱交換流体と熱交換するように、装置を通過する連続した熱交換流体の流れを収容する一連の開口部を含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側断熱ハウジング内に配置された内側ハウジングを備える消費材保存用の装置であって、前記内側ハウジングの壁が、消費材を受け入れるための区画を規定し、前記壁は、熱交換流体を前記区画に流入させるための入口壁と、熱交換流体を区画から流出させるための対向する出口壁と、側壁及びベースとを含み、前記側壁および前記ベースは、前記入口壁および前記出口壁に隣接しており、前記入口壁および出口壁はそれぞれ、動作時に、前記内側ハウジングの前記区画に受け入れられた消費材が、前記熱交換流体に浸されて前記熱交換流体と熱交換するように、前記装置を通過する連続した熱交換流体の流れを収容する一連の開口部を含む、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ベースが一連の開口部を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
消費材を保持するために前記区画内に受け入れ可能な構造体を有し、前記構造体は、トレイ、ラック、およびバスケットのうちの1つ以上である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記構造体が前記装置の蓋から吊り下げられている、ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記外側ハウジングが、
前記内側ハウジングの前記入口壁に対応し、入口側面と前記入口壁との間に入口空間を画定する入口側面と、
前記内側ハウジングの前記出口壁に対応し、出口側面と前記出口壁との間に出口空間を画定する出口側面と
を有し、
前記入口側面が、前記外側ハウジングの外側から前記入口空間に連通する少なくとも1つの入口を含み、前記出口側面が、前記出口空間から前記外側ハウジングの外側に連通する少なくとも1つの出口を含み、
前記熱交換流体は、動作時に、前記少なくとも1つの入口を介して前記装置内に導入され、前記少なくとも1つの出口を介して前記装置から除去される、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記入口空間および前記出口空間が流体的に接続されている、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの入口および前記少なくとも1つの出口は直径が80mmである、ことを特徴とする請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
使用時に、前記装置が、外部の冷凍システムに接続され、それによって熱交換流体が冷媒と熱交換する、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
熱交換流体を用いて保存装置内で消費材を保存する方法であって、
a.冷凍される消費材の近似的な形状の総表面積を決定する工程と、
b.前記タンク形状および前記タンク内の食品の所定の配置と、前記熱交換流体の所定の温度上昇の両方による流れの制約に基づいて、前記装置内の前記消費材について数値流体力学解析を実行する工程と、
c.所定の製品表面温度における前記消費材の熱伝達係数を決定する工程と、
d.工程cで決定された最も低い熱伝達係数の10未満を切り捨てて、熱伝達係数を選択する工程と、
e.前記消費材の前記近似的な形状を、予め定められた数の等分体積増分に分割する工程と、
f.前記消費材の熱的特性を推定する工程と、
g.工程dで決定された前記熱伝達係数を用いたエネルギー保存分析に基づいて、所定の熱交換流体温度と前記熱交換流体の所定の流量に対して、各増分が所定の初期温度から所定の最終温度に到達するのに必要な前記時間を計算する工程と、
h.工程fで計算された時間に基づいて、達成可能な冷却の平均速度を決定する工程と、
i.達成可能な冷却の決定された前記平均速度が毎分0.5℃以上である場合、前記所定の熱交換流体温度を選択し、達成可能な冷却の決定された前記平均速度が毎分0.5℃より小さい場合、達成可能な冷却速度が少なくとも毎分0.5℃となるように、前記所定の熱交換流体温度より十分に低い熱交換流体温度を選択する工程と、
j.前記消費材を、保存のために前記装置内に配置する工程と、
k.工程iで決定された温度を使用して、前記消費材を冷却にさらし、前記消費材を少なくとも毎分0.5℃の速度で冷却する工程と
を備える方法。
【請求項10】
前記所定の流量が約4kg/sである、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記所定の最終温度が-10℃である、ことを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の最終温度が-30℃である、ことを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記消費材の前記特性は、比エンタルピーを含む、ことを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記消費材の前記特性は、水分含有量を含む、ことを特徴とする請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記消費材の前記特性が脂肪含有量を含む、ことを特徴とする請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記消費材の前記特性がタンパク質含有量を含む、ことを特徴とする請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記所望の量の時間が30分未満である、ことを特徴とする請求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記熱伝達係数が130W/m
2・Kである、ことを特徴とする請求項9から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記熱伝達係数が100W/m
2・Kである、ことを特徴とする請求項9から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記熱交換流体の入口温度が-50℃であり、前記熱交換流体の出口温度が-47℃である、ことを特徴とする請求項9から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記決定された平均冷却温度速度が毎分0.5℃と毎分1.5℃との間であり、前記製品を毎分0.5℃と毎分1.5℃との間の速度で冷却する工程を備える、請求項9から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記決定された平均冷却温度速度が約毎分1℃であり、前記製品を約毎分1℃の速度で冷却する工程を備える、請求項9から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
味、食感及び栄養の少なくとも1つの品質が保持されるような保存消費材を製造する、ことを特徴とする請求項9から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記装置が、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置である、ことを特徴とする請求項9から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記熱交換流体は、前記装置の外部の冷凍サイクルで、冷媒と熱交換することにより連続的に冷却される、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の装置を用いた消費材の保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費材を冷凍する方法および消費材を保存する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍による食品の保存は、家庭環境および商業環境で広く用いられている。製品の温度は、化学反応および酵素反応、ならびに微生物の繁殖のようなすべての劣化プロセスが遅くなる程度に低下される。典型的には、リパーゼ活性のような酵素反応は、凍結の前に製品を湯通し(ブランチング)することによって停止させることができる。
【0003】
利用可能な家庭用冷凍システムは、運用コストと製品の保存期間を長くする適切な冷凍温度とのバランスをとるように設計されている。このようなシステムの温度範囲は予め決められており、ユーザが容易に変更することはできない。また、家庭用冷凍庫の多くは、直立型のディスプレイを採用しているため、消費者のアクセスは容易であるが、冷却効率が低下する可能性がある。
【0004】
商業的な冷凍システムには、液体窒素個別急速冷凍(IQF)システム、液体窒素浸漬システム、およびエアブラスト冷凍が含まれる。これらの技術の中には、高い熱伝達係数を達成し、微生物を死滅させ、食品と直接接触させることができるものもあるが、いずれも感覚結果(味、食感、外観)が低下し、典型的には低価値の製品にのみ適している。
【0005】
食品を冷凍することの保存上の利点はよく知られているが、既存の方法では品質が低下することがあり、主な品質低下は食感や味の変化で、多くの場合、製品の外層の脱水が原因である。また、「ドリップロス」という問題もある。これは、製品内で氷の結晶が成長して細胞壁に穴を開け、果汁が流出し、解凍時に製品の質量が減少してしまうものである。その結果、硬さ、栄養、風味が損なわれてしまう。氷晶の成長速度は、ゆっくりとした凍結プロセスや何度も凍結融解を繰り返すと、細胞内部から細胞外への液体の移動により、より深刻になる。急速凍結では、細胞外への水分移行を最小限に抑えることができるため、より小さな細胞内氷の形成が促進され、組織へのダメージやドリップロスが少なく、より均質な構造を作り出すことができる。極低温凍結システムは、バイオメディカル分野において、細胞を保存し、後で使用するために頻繁に使用されている。凍結保存のプロセスは、一般的に大きく2つのステップで構成されている。
1.細胞の制御された冷却と保存
このステップでは、細胞から液体を取り除き、凍結保護剤で置換した後、制御された液体窒素浴に入れ、ガラス化を達成する。
2.液体窒素による長期保存
冷却制御して保存された細胞は、液体窒素の貯蔵タンクに入れられ、数年間または必要な期間、保存される。
【0006】
食品保存のためのIQF技術および液体窒素浸漬システムは、広く第2段階に基づいているが、上述のように、このプロセスは、非効率であるだけでなく、製品に損傷を与える可能性がある。食品はその液体を除去して凍結保護剤に置き換えることができないので、第1段階は食品を保存するための解決策としては一般に使用されない。
【0007】
さらに、食品の相転移は保存食の品質に大きく関係している。ガラスは、非結晶であるため、液体または非晶質状態と同様の無秩序な構造を有している。ガラス状態では、劣化に関与する化合物は分子間距離に対して非常にゆっくりとしか拡散することができない。そのため、ガラス転移温度以下の食品は、数カ月から数年にわたり高い安定性を保つことができる。食品は多成分の混合物から構成されているため、全体的な特性を予測することが難しく、ガラス転移温度は実際の食品ではなく、純粋な成分について報告されるのが一般的である。このことは、一貫した正確なデータが存在せず、不可能ではないにせよ、達成することが困難な食品保存の分野では、継続的な課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この文脈では、a)微生物の減少または除去をもたらす目標温度を達成する必要性、b)氷結晶の形成およびそれによって細胞の損傷を低減するために必要な凍結速度、およびc)経済的実行可能性のバランスをうまくとる凍結による食品保存の信頼できる方法が必要である。
【0009】
食品を冷凍するための浸漬タンクは存在するが、これまでのシステムは、低温での流体の高粘度と、流体を有機汚染物質から隔絶して維持するという問題を有していた。食品を封じ込め、汚染を防止するために包装が使用されている場合、液体窒素プロセスによる凍結を含む急速冷却プロセス中に、包装が破れたり、その他の方法で損傷したりする傾向がある。
【0010】
味や栄養価への悪影響を減らすなど元の食品の完全性を維持し、製品の安全性を高める、費用対効果の高い方法で消費材(例えば、魚、肉、牛乳など)を保存するシステムの改良が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、外側断熱ハウジング内に配置された内側ハウジングを備える消費材保存用の装置が与えられ、当該装置は、内側ハウジングの壁が、消費材を受け入れるための区画を規定し、壁は、熱交換流体を前記区画に流入させるための入口壁と、熱交換流体を区画から流出させるための対向する出口壁と、側壁及びベースとを含み、側壁およびベースは、入口壁および出口壁に隣接しており、入口壁および出口壁はそれぞれ、動作時に、内側ハウジングの区画に受け入れられた消費材が、熱交換流体に浸されて熱交換流体と熱交換するように、装置を通過する連続した熱交換流体の流れを収容する一連の開口部を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、熱交換流体を用いて保存装置内で消費材を保存する方法が提供され、当該方法は、
a.冷凍される消費材の近似的な形状の総表面積を決定する工程と、
b.タンク形状およびタンク内の食品の所定の配置と、熱交換流体の所定の温度上昇の両方による流れの制約に基づいて、装置内の消費材について数値流体力学解析を実行する工程と、
c.所定の製品表面温度における消費材の熱伝達係数を決定する工程と、
d.工程cで決定された最も低い熱伝達係数の10未満を切り捨てて、熱伝達係数を選択する工程と、
e.消費材の近似的な形状を、予め定められた数の等分体積増分に分割する工程と、
f.消費材の熱的特性を推定する工程と、
g.工程dで決定された熱伝達係数を用いたエネルギー保存分析に基づいて、所定の熱交換流体温度と熱交換流体の所定の流量に対して、各増分が所定の初期温度から所定の最終温度に到達するのに必要な時間を計算する工程と、
h.工程fで計算された時間に基づいて、達成可能な冷却の平均速度を決定する工程と、
i.達成可能な冷却の決定された平均速度が毎分0.5℃以上である場合、所定の熱交換流体温度を選択し、達成可能な冷却の決定された平均速度が毎分0.5℃より小さい場合、達成可能な冷却速度が少なくとも毎分0.5℃となるように、所定の熱交換流体温度より十分に低い熱交換流体温度を選択する工程と、
j.消費材を、保存のために装置内に配置する工程と、
k.工程iで決定された温度を使用して、消費材を冷却にさらし、消費材を少なくとも毎分0.5℃の速度で冷却する工程と
を有する。
【0013】
総表面積は、消費材の簡略化された幾何学的推定の総表面積であってもよい。例えば、牛乳瓶は、円筒として近似されてもよく、従って、総表面積は、それらの円筒の総表面積となる。
【0014】
消費材は、例えば、魚や肉、野菜などの食品であってもよい。また、消費可能製品は、牛乳などの飲料や液体成分などの液体製品から構成されてもよい。また、本明細書で使用する消費材は、例えば瓶、プラスチックフィルム等の包装に加えて、消費される製品を指すこともある。
【0015】
本明細書に開示される方法及び装置の好適実施形態は、氷晶の形成を最小限に抑え、保存中の細胞損傷を防止することができる。
【0016】
本明細書に開示される方法及び装置の好適実施形態は、いかなる糖類又は合成添加物も使用しない保存を提供する。
【0017】
本明細書に開示される方法の好適実施形態は、消費材の昇華を伴わない保存を提供する。
【0018】
本明細書に開示される方法及び装置の好適実施形態は、従来の冷凍と比較して低減されたドリップロスを提供する。
【0019】
本明細書に開示される方法及び装置の好適実施形態は、新鮮な製品と比較して、栄養価が保持され、製品の安全性が保持又は改善される、消費材の保存を提供するものである。
【0020】
本発明の実施形態は、非限定的な例として添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、消費材保存用タンクの下方斜視図である。
【
図2】
図2は、消費材の保存のためのタンクの上方斜視図である。
【
図3】
図3は、牛乳瓶を収容するタンクの上方斜視図である。
【
図4】
図4は、魚又は肉用のトレイを収容したタンクの上方斜視図である。
【
図5】
図5は、魚又は肉用のトレイを収容したタンクの上方斜視図である。
【
図6】
図6は、哺乳瓶を収容するための空のバスケットを含むタンクの上方斜視図である。
【
図7】
図7は、ボトル用バスケットの上方斜視図である。
【
図8】
図8は、肉または魚のトレイを保持するためのラックの上方斜視図である。
【
図9】
図9は、肉または魚を保持するための個々のトレイである。
【
図10】
図10は、1リットルの牛乳100本を収容したタンク内の温度を数値流体力学的に解析した結果を示す画像である。
【
図11】
図11は、タンク内の流速の数値流体力学的解析を示す画像である。
【
図13】
図13は、タンク内の温度分布を示す瓶の列の間のカットプロットである。
【
図14】
図14は、タンク内の温度分布を示すボトルの列を通るカットプロットである。
【
図15】
図15は、タンク内の速度分布を示すボトルの列を通るカットプロットである。
【
図16】
図16は、全牛乳の比エンタルピーの温度との関係を示すグラフである。
【
図18】
図18は、牛乳を保存する第1の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図19】
図19は、牛乳を保存する第1の事例について、経時的なエネルギーレベルを示すグラフである。
【
図20】
図20は、牛乳を保存する第2の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図21】
図21は、牛乳を保存する第2の事例について、経時的なエネルギーレベルを示すグラフである。
【
図22】
図22は、牛乳を保存する第3の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図23】
図23は、牛乳を保存する第3の事例について、エネルギーレベルの経時変化を示すグラフである。
【
図24】
図24は、牛乳を保存する第4の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図25】
図25は、牛乳を保存する第4の事例について、経時的なエネルギーレベルを示すグラフである。
【
図26】
図26は、魚の比エンタルピーと温度との関係を示すグラフである。
【
図28】
図28は、魚を保存する第1の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図29】
図29は、魚を保存する第1の事例について、経時的なエネルギーレベルを示すグラフである。
【
図30】
図30は、魚を保存する第2の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図31】
図31は、魚を保存する第2の事例について、経時的なエネルギーレベルを示すグラフである。
【
図32】
図32は、食肉を収容するタンク内の温度を数値流体力学的に解析した結果を示す画像である。
【
図33】
図33は、食肉を収容するタンク内の速度の数値流体力学的解析を示す画像である。
【
図34】
図34は、タンク内の温度分布を示す肉のトレイを通るカットプロットである。
【
図35】
図35は、タンク内の速度分布を示す肉のトレイを通るカットプロットである。
【
図36】
図36は、魚を保存する第3の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図37】
図37は、魚を保存する第3の事例について、経時的なエネルギーレベルを示すグラフである。
【
図38】
図38は、魚を保存する第4の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図39】
図39は、魚を保存する第4の事例について、経時的なエネルギーレベルを示すグラフである。
【
図40】
図40は、食肉の比エンタルピーと温度との関係を示すグラフである。
【
図42】
図42は、食肉を保存する第1の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図43】
図43は、食肉を保存する第1の事例について、経時的なエネルギーレベルを示すグラフである。
【
図44】
図44は、食肉を保存する第2の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図45】
図45は、食肉を保存する第2の事例について、経時的なエネルギーレベルを示すグラフである。
【
図46】
図46は、食肉を保存する第3の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図47】
図47は、食肉を保存する第3の事例について、経時的なエネルギーレベルを示すグラフである。
【
図48】
図48は、食肉を保存する第4の事例について、11等分した増分での経時的な温度低下を示すグラフである。
【
図49】
図49は、食肉を保存する第4の事例について、経時的なエネルギーレベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
浸漬タンク
図1および
図2は、消費材の保存のための浸漬タンク1を示す。この例では、浸漬タンク1は、瓶を収容した状態で示されており、最大100本の牛乳瓶を収容できる容量を有している。タンク1は、ASTM A240に適合するように鋼鉄で構成されている。タンク1は、2つの熱交換流体入口2と2つの熱交換流体出口3とを有し、入口2は入口壁4に位置し、出口3は出口壁5に位置している。
図2は、タンク1の外壁の内部に位置する内側ハウジング10を示す。内側ハウジング10は、入口壁14、出口壁15およびベース16を有し、それぞれが、内側ハウジング10への熱交換流体の流入および流出を可能にする開口部11を含む。開口部11は、入口壁14および出口壁15に10個ずつ4列、ベース16に10個ずつ10列で設けられている。入口壁14とベース16に設けられた開口部11は直径10mmであり、出口壁15に設けられた開口部11は直径20mmである。入口壁14は、入口2の内側面12から100mm離れた位置にあり、そのため空隙13が設けられている。出口壁15と出口壁5の内壁面との間にも同様の空隙が設けられている。さらに、ベース部には100mmの空隙が設けられている。内側面12は、入口2から50mm離れて配置され、ブラケットで固定された鋼板型枠によって規定され、タンク1の製造中にポリウレタンフォーム断熱材が圧入される空洞を提供する。断熱材は、タンクの頂部からタンクの壁の約595mm下まで、タンクの4つの壁全てに同様の方法で提供される。直径30mmの穴22の列が、各壁の底面に沿って、ベース7とタンクの壁との間に約45°の角度で位置するストリップ23に沿って設けられている。ストリップ23は、タンク構造を支えるために設けられ、また、トレイまたはバスケットが内側ハウジング10の壁またはベースに対して静止するのを防ぐためのガイドとして使用することも可能である。タンク構造を補強し、ガイド機能を果たす他の配置も可能であることが理解されよう。穴22は、ストリップ23の存在によりタンクのこれらの領域に蓄積する可能性のある熱交換流体の停滞を低減するのに役立つ。
【0023】
タンク1のベース7からドレイン6が設けられ、タンク1の出口壁5を越えて熱交換流体出口3の下方に延びるように向けられたエルボ管として形成されている。熱交換流体入口2および熱交換流出口3は、直径80mmを有する。
【0024】
タンク1は、鋼板(図示せず)で形成された蓋をさらに含む。タンク1のベース7は、タンク1の中央重量を支持する4つの中央脚部8と、タンク1の角部に位置し、タンク壁の端部に形成された脚部16とを含む。タンク壁の下端には、タンクのベース7のメンテナンスのためのアクセスを提供するための切り欠き部9が設けられている。タンク1は、約1.105mの高さを有し、1.705mの辺の長さを有する正方形状に構成される。牛乳を冷凍する場合、
図3に示すように、蓋(図示せず)には、ボトルバスケット17からなる構造体が、対向する両端にフックを有するバー18によって吊り下げられ、バー18は、取付部19によって蓋に取付け可能である。
【0025】
図4に示すように、肉や魚を保存するための蓋に、40kgのラックトレイ21からなる構造物を吊り下げることができる。
【0026】
図5は、タンク1内の肉/魚ラックトレイ21を示す上方斜視図である。
図6は、タンク1内のボトルバスケット17を示す図である。ボトルバスケット17は、ボトルの側面を保持するための受け穴20を含む。
【0027】
図7は、ボトルバスケット17を分離して示している。バスケット17は、ベース24と、対向する側面30とを有する。側面30は、取付部19を介して蓋に取り付けられることになるバー18の対向する端部に取り付けられている。ボトルスタビライザー部分20aは、ボトル受け部20を含み、対向する側面30に設けられたスロット31にクリップすることによって、バスケット17に取り付けられる。ボトル受け部20の間にはさらに孔20bが設けられ、バスケット17がボトルで満たされ、熱交換流体中に浸されたときに、ボトル間の流体の流れを容易にする。
【0028】
図8は、肉/魚ラックトレイ21を分離して示している。ラックトレイ21はまた、個々のトレイ28がスロット31でクリップすることができる対向する側面30を含む。個々のトレイ28は、それぞれラッチ25で閉じられている。ラックトレイ21は、バー18の対向する端部から吊り下げられ、取付部19によってタンクの蓋の下側に取り付けられる。ユーザは、ラックトレイ21から個々のトレイ28をスライドさせるためにハンドル29を掴むことができる。
【0029】
図9は、個々のトレイ28を分離して示している。このトレイは、肉又は魚の個々のピースを封入するための形状部分26を有する。トレイ28は、ヒンジ接合部27を中心に閉じられ、ラッチ25によって固定される。
【0030】
タンク1内には、-70℃以上では凍結しない熱交換流体が充填されている。熱交換流体は、熱交換流体入口2を介して空隙13に毎時17立方メートルの体積流量でタンク1内に圧送される。熱交換流体が開口部11の制限された領域を通って押し出されるので、空隙13内に圧力が蓄積され、したがって体積流量は減少するが、内側ハウジング10に入る流体の速度は増加する。また、一部の流体は、内側ハウジング10の下を移動し、出口壁5の対向する空洞に押し上げられ、一部の流体は、内側ハウジング10のベース7に設けられた開口部11を通って上方へも移動する。開口部11は、タンクのすべての部分への冷たい流体の分配を改善し(例えば、タンク全体の温度分布を示す
図10を参照)、さもなければ入口領域から離れた場所で発生しそうなホットスポットの発生を最小限に抑えることができる。熱交換流体がタンク1内を連続的に流れるにつれて、牛乳および牛乳瓶から熱が除去され、タンク1を出る加熱された熱交換流体は、その後、熱交換流体を連続的に冷却する冷凍装置と交換されることになる。熱交換流体自体は、冷凍装置内の冷媒と熱交換を行う。
【0031】
好ましくは、タンクの浸漬流体として、有利に、極低温でも比較的低い粘度を有する低域熱伝達流体が使用されることで、ひいては、システムのためのポンプ電力要件を減少させることができる。下の表(表1)は、熱伝達流体の熱特性のいくつかを規定する。
【0032】
【0033】
上記の各温度において、熱交換流体は、非常に低くかつ水の密度より小さい密度を有する。タンクの運転中に何らかの破損又はこぼれが生じた場合、破損又はこぼれた物質はタンクの下部に沈む傾向があり、熱交換流体の実質的な損失なしにその物質を容易に排水できるのが好ましい。熱交換流体は、保存に必要な低温で過剰なポンプ出力を必要としない程度の低粘度であれば、任意の適切な熱交換流体を使用できることが理解されよう。また、熱交換流体は、食品として安全なものであることが好ましい。
【0034】
【0035】
上記の表2は、タンク内の流体から20kWの熱が抽出されると仮定して、熱交換流体の様々な流量に対するタンク入口と出口との間の温度差を与える。表2から、約4kg/秒の質量流量を用いて、入口と出口との間に3℃の温度差を達成することができることが分かる。この温度差は、必要な蒸発器デューティと必要な製品の冷却の観点から、許容できる温度上昇であると判断された。許容可能な温度上昇は、システムを商業的に成立させるために一度に処理できる製品の最大数に関連するコストと釣り合わせなければならない。熱交換流体と消費材との間の熱伝達を高めるためには、流量が多い方が望ましいことは理解できよう。しかし、流量が大きいと流動抵抗も大きくなるため、より高いポンプ動力が必要となる。
【0036】
牛乳の数値流体力学解析
熱交換流体がタンク内をどのように流れるかを可視化し、熱交換流体と消費材との間の熱伝達係数を推定し、熱交換流体がタンク内を流れる際の圧力損失を求めるために、タンクに対して数値流体力学的解析を行う。
【0037】
図10は、ボトル表面温度を-30℃と規定した場合のタンク内の熱交換流体の流動解析のシミュレーションを示す側面図である。図では、タンク内の様々な箇所の温度を表すために、黒が最も暖かいゾーン、白が最も寒いゾーンを表すように陰影がつけられている。矢印は、タンク内とボトルの周囲を移動する流体の軌跡を表している。50℃の冷たい流体は,開口部11による分布によってボトルを取り囲むことができる.この図からわかるように、熱交換流体は、この図ではタンクの左側にある入口壁から約-50℃でタンクに入る。熱交換流体が消費製品(この場合、牛乳瓶)から熱を吸収すると、約-47℃のわずかに暖かい熱交換流体が、出口壁から出る前にタンクの上部に蓄積される。熱交換流体の温度が3℃上昇することは許容範囲とされた。
【0038】
図11は、同じ事例のタンク内の熱交換流体の流動解析のシミュレーションの側面図であるが、図は様々な流速を表現するために陰影を付けている。牛乳瓶の周りのタンク内の流速は非常に小さく、すなわち、0.02m/s未満である。しかし、流体が開口部を通過する際の入口壁(画像左側)、底部のさまざまな開口部、および出口壁の開口部(画像右側)では、流速が高くなっていることがわかる。
【0039】
【0040】
他の様々なボトル表面温度で同様のプロセスの分析を行い、牛乳(ボトルを含む)と熱交換流体の間で決定された平均熱伝達係数を示す以下の表(表3)が作成された。
【0041】
【0042】
熱交換流体の流速を非常に低く設定したので、ボトルから熱交換流体への対流熱伝達は、流体の局所加熱とそれに対応する密度差によって生じる流体の自然運動、すなわち浮力駆動流によって大きく駆動されることになる。入口から出口までの圧力損失は、流量4kg/sで約660パスカルであることがわかった。
【0043】
牛乳に関する熱伝達解析
冷凍システムの入力パラメータを変化させた場合の影響を調査することによって、さらなる分析が行われる。これには、製品の幾何学的形状、製品の温度、包装の特性、利用されるラッキングシステムの特性などが含まれる場合がある。この方法では、消費材を幾何学的な単位に分割する(例:瓶の円筒形の殻)。つまり、与えられたタイムステップで、ある量のエネルギーがシェルから除去され、その結果、そのシェルの温度が低下する。除去されるエネルギー量は、隣接するシェルの温度とシェル間の熱流に対する抵抗の関数である。このため、温度による消費材の熱特性を考慮する必要がある。
【0044】
牛乳は、2℃の開始温度、およびASHRAE Engineering Handbook-Refrigeration,Thermal Properties of Foods(タンパク質、脂肪および水の含有量を含む)で与えられる特性を有する固体塊として扱うことができると仮定して分析が行われた。
図16は、ハンドブックから得られた異なる温度における全牛乳の比エンタルピー値をプロットしたものである。
図14は、Kopelman法により測定された全牛乳の伝導率を示すグラフである。
【0045】
牛乳瓶製品の異なる幾何学的形状と熱交換流体の異なる温度を評価するために、多くの事例が調査された。下の表(表4)は、調査された事例の概要を提供する。
【0046】
【0047】
表3に示した数値流体力学解析で得られた結果を考慮して、熱伝達係数を推定すると、シミュレーションされた最も低い熱伝達係数を取り、その10未満を切り捨てて得た130W/m2・Kである。下表(表5)は、上記の調査した事例について、シミュレーションソフトで予測された凍結時間の結果を示している。
【0048】
【0049】
図18は、調査した事例1について、ボトルの表面からコアまでの11個の幾何学的な均等分散増分における温度-時間関係を示すグラフである。
図18から分かるように、ボトルの最外層では最初の5分以内に急激な温度低下が観察されるが、芯部では約41分まで大きな温度低下が観察されない。さらに、中心部の温度が-30℃に達するのは、約43.5分後である。この結果から、氷の結晶の形成を最小限に抑えることができたと推測される。
【0050】
図19は、製品の平均温度がそれぞれ-10℃および-30℃にあるエネルギーレベルに対して比較した、調査した事例1の時間経過に伴う総エンタルピーを示す。これらの目標温度である-10℃および-30℃は、多くの要因に基づいて関連する目標値として選択された。例えば、微生物の活動は、当該微生物に基づいて異なる温度で死滅または減速され、また、目標温度での冷却速度および時間の長さが異なる。特に、-10℃で数日間食品を保存すると、トキソプラズマ・ゴンディ、エンタメーバ、トリパノソーマなど特定の微生物にとって致命的である。しかし、商業的に成立させるためには、この温度を妥当な時間内に達成する必要があり、さらに、氷晶の形成による細胞の損傷を最小限に抑えるために急速冷凍が必要である。経済性、細胞の損傷(食品の感覚的な劣化をもたらす)、微生物の破壊および/または遅延、これらの要因のバランスを考慮した値が選択される。
【0051】
冷蔵システムは、4℃からスタートした1リットルの牛乳瓶100本を35分以内に最終温度-30℃まで保存する必要があると判断された。
【0052】
牛乳の質量を103.8kgと計算
4℃の牛乳の比エンタルピーは、369kJ/kg
30℃の牛乳の比エンタルピーは、18.5 kJ/kg
牛乳からの必要なエネルギー除去量は、次式で与えられる。
m(hinitial―hfinal) (1)
ここで、
m=牛乳の質量
hinitial=牛乳の初期比エンタルピー(4℃の場合)
hfinal=牛乳の最終比エンタルピー(-30℃の場合)
【0053】
したがって、牛乳から除去される熱量は
103.8(369-18.5)=36382(kJ)となる。
冷凍時間が35分の場合、必要な除熱速度は
36382/(35(mins)×60(secs))=17.3(kW)である。
【0054】
大気から1kWの熱を得ると仮定すると、必要な冷凍システムのデューティは18.3kWである。牛乳の凍結は冷凍システムにとって最も高い負荷となるため、少なくとも1リットルの牛乳100本を35分で保存できる仕様、すなわち18.3kW以上の仕様が必要である。従って、冷凍システムの初期設計条件として、1.7kWの安全マージンを含め、蒸発器デューティを20kWとする。タンクの入口温度は、-50℃でも-70℃でもよい。
【0055】
事例1に戻り、直径85mmのガラス製牛乳瓶は、入口温度-50℃、流量4kg/s、熱伝達係数130W/m2・Kを有する熱交換流体によって冷却されており、ガラス外層の厚さは1mmである。
【0056】
図20は、事例2の等分増分での温度プロファイルを示す図である。この場合、牛乳は、直径85mm、厚さ1mm、容量1リットルのガラス瓶に収容されている。熱交換流体は、入口温度-70℃、質量流量4kg/sで、熱伝達係数は130W/m
2・Kである。
【0057】
図21は、調査した事例2について、製品の平均温度が-10℃と-30℃になるエネルギーレベルに対して、経時的に計算されたエネルギーをそれぞれ比較したものである。
【0058】
図22は、事例3の等分増分での温度プロファイルを示す。この場合、牛乳は直径69mm、厚さ1.5mm、容量500mLのペットボトルに収容されている。熱交換流体は、入口温度-50℃、質量流量4kg/s、熱伝達係数130W/m
2・Kである。
【0059】
図23は、調査した事例3について、製品の平均温度が-10℃と-30℃になるエネルギーレベルに対して、経時的に計算されたエネルギーをそれぞれ比較したものである。
【0060】
図24は、事例4の等分増分での温度プロファイルを示す。この場合、牛乳は、直径69mm、プラスチック1.5mm、容量500mLのプラスチックボトルに収容されている。熱交換流体は、入口温度-70℃、質量流量4kg/s、熱伝達係数130W/m
2・Kである。
【0061】
図25は、調査した事例4について、製品の平均温度が-10℃と-30℃になるエネルギーレベルに対して、経時的に計算されたエネルギーをそれぞれ比較したものである。
【0062】
図18、
図20、
図22、
図24の比較からわかるように、直径85mmのボトルと69mmのボトルとでは、凍結時間に大きな差はないことが確認された。1.5mm厚のプラスチックボトルは、1mm厚のガラスボトルよりも耐熱性が高いことがわかる。500mLボトルの表面積は1000mLボトルより大幅に小さい。
【0063】
魚の熱伝達解析
【0064】
【0065】
魚の開始温度もまた2℃とした。魚の種類はタラとし、その物性はASHRAE Engineering Handbook-Refrigeration,Thermal Properties of Foodsから得たものである。
図26は、得られた魚の比エンタルピー値である。
図24は、魚について得られた伝導率の値を示している。
【0066】
表6に示す数値流体力学解析で得られた結果を考慮して、熱伝達係数を見積もると、シミュレーションした最も低い熱伝達係数の10未満を切り捨てて得た100W/m2・Kである。
【0067】
魚について調査した事例を下表に示す(表7)。
【0068】
【0069】
上記に示すように、熱交換流体の流量、ひいては熱伝達係数(HTC)は、上記の各事例において同じままである。下表(表7)は、上記調査した事例について、シミュレーションソフトにより予測される凍結時間の結果を示すものである。
【0070】
【0071】
上記の各事例について、魚の表面から芯まで等分した11個の増分での時間的な温度変化を計算する。
図28は、事例1の温度プロファイルを示す。この場合、魚の厚さは50mmであり、長さは100mm、幅は50mmである。魚は、0.1mmのプラスチックに収められている。熱交換流体の入口温度は-50℃、質量流量は4kg/s、熱伝達係数は100W/m
2・Kである。
【0072】
図29は、調査した事例1について、製品の平均温度が-10℃と-30℃になるエネルギーレベルに対して、経時的に計算されたエネルギーをそれぞれ比較したものである。
【0073】
図30は、事例2の温度プロファイルを示す。この場合、魚は厚さ50mmで、長さと幅がそれぞれ100mmと50mmである。魚は0.1mmのプラスチック内に収められている。熱交換流体は、入口温度が-70℃、質量流量が4kg/sであり、熱伝達係数は100W/m
2・Kである。
【0074】
図31は、調査した事例2について、製品の平均温度が-10℃と-30℃になるエネルギーレベルに対して、経時的に計算されたエネルギーをそれぞれ比較したものである。
【0075】
図36は、事例3の温度プロファイルを示す。この場合、魚は厚さ25mmで、長さ100mm、幅100mmである。魚は0.1mmのプラスチック内に収められている。熱交換流体は、入口温度が-50℃、質量流量が4kg/sであり、熱伝達係数は100W/m
2・Kである。
【0076】
図37は、調査した事例3について、製品の平均温度が-10℃と-30℃になるエネルギーレベルに対して、経時的に計算されたエネルギーをそれぞれ比較したものである。
【0077】
図38は、事例4の温度プロファイルを示す。この場合、魚は厚さ25mmで、長さ100mm、幅100mmである。魚は0.1mmのプラスチック内に収められている。熱交換流体は、入口温度-70℃、質量流量4kg/s、熱伝達係数100W/m
2・Kである。
【0078】
図39は、調査した事例4について、製品の平均温度が-10℃と-30℃になるエネルギーレベルに対して、経時的に計算されたエネルギーをそれぞれ比較したものである。
【0079】
以上の結果からわかるように、厚みのある魚片よりも薄い魚片の方が早く冷凍できることがわかる。
【0080】
食肉に関する熱伝達解析
肉の開始温度も2℃に仮定した。肉の種類は赤身のサーロインとし、その物性はASHRAE Engineering Handbook-Refrigeration,Thermal Properties of Foodsから得たものである。
図40に、得られた魚の比エンタルピー値を示す。
図41は、魚について得られた伝導率の値を示している。
【0081】
食肉について調査した事例を下表に示す(表9)。
【0082】
【0083】
上記に示すように、熱交換流体の流量、ひいては熱伝達係数(HTC)は、上記の各事例において同じままである。下表(表10)は、上記調査した事例について、シミュレーションソフトにより予測される凍結時間の結果を示すものである。
【0084】
【0085】
上記の各事例について、肉の表面から芯まで等分した11個の増分の経時的な温度変化を計算する。
図42は、事例1の温度プロファイルを示す。この場合、肉は厚さ50mmで、長さが100mm、幅が50mmである。肉は0.1mmのプラスチックに収められている。熱交換流体の入口温度は-50℃、質量流量は4kg/s、熱伝達係数は100W/m
2・Kである。
【0086】
図43は、調査した事例1について、製品の平均温度が-10℃と-30℃になるエネルギーレベルに対して、経時的に計算されたエネルギーをそれぞれ比較したものである。
【0087】
図44は、事例2の温度プロファイルを示す。この場合、肉は厚さ50mmで、長さと幅がそれぞれ100mmと50mmである。肉は0.1mmのプラスチック内に収容されている。熱交換流体は、入口温度が-70℃、質量流量が4kg/sであり、熱伝達係数は100W/m
2・Kである。
【0088】
図45は、調査した事例2について、製品の平均温度が-10℃および-30℃となるエネルギーレベルに対して、経時的に計算されたエネルギーをそれぞれ比較したものである。
【0089】
図46は、事例3の温度プロファイルを示す。この場合、肉は厚さ25mmで、長さ100mm、幅100mmである。肉は0.1mmのプラスチック内に収容されている。熱交換流体は、入口温度が-50℃、質量流量が4kg/sであり、熱伝達係数は100W/m
2・Kである。
【0090】
図47は、調査した事例3について、製品の平均温度が-10℃と-30℃になるエネルギーレベルに対して、経時的に計算されたエネルギーをそれぞれ比較したものである。
【0091】
図48は、事例4の温度プロファイルを示す。この場合、肉は厚さ25mmで、長さ100mm、幅100mmである。肉は0.1mmのプラスチック内に収容されている。熱交換流体は、入口温度が-70℃、質量流量が4kg/sであり、熱伝達係数は100W/m
2・Kである。
【0092】
図49は、調査した事例4について、製品の平均温度が-10℃と-30℃になるエネルギーレベルに対して、経時的に計算されたエネルギーをそれぞれ比較したものである。
【0093】
以上の結果からわかるように、厚みのある肉片よりも薄い肉片の方が早く冷凍できることがわかる。
【0094】
本発明の好適実施形態において、消費材は、包装内に収容されるか、または、タンクへの浸漬に使用されるバスケットまたはトレイ構造内に収容される。有利には、これにより、割れの問題により包装を使用しない既存の浸漬保存方法の問題である、保存プロセス中の製品の昇華が防止される。
【0095】
有利には、上記の分析を用いて、所望の流量(例えば4kg/秒)で所望の時間(例えば30分)内に食品の温度を目標温度(例えば-50℃)まで下げるために、本装置を使用することができる。装置の入力パラメータは、分析結果に基づいて設定される。これにより、本装置を使用する際、ユーザーは製品(例えば、魚の切り身)を選択するだけでよい。真空パックや熱収縮包装など、空隙の少ない薄型の包装を使用することが好ましい。
【0096】
毎分10℃又は毎分100℃の理論的な凍結速度は、消費材中の微生物レベルについてさらに大きな除去結果をもたらし、かつ細胞損傷が少なくなる可能性があるが、そのような速度は、商業的凍結システムには実行不可能である。さらに、驚くべきことに、より遅い冷却速度、例えば毎分約1℃の速度で、高度な感覚品質を保持し、包装への損傷を防止しながら、著しいレベルの微生物減少を達成できることが見出されている。
【0097】
上述の実施例における熱伝達分析は、各消耗性食品の11個の体積増分について実施されたが、この数は変更可能であることが理解されよう。
【0098】
下表は、-50℃の熱交換流体中に浸漬された-30℃の温度まで45分間の冷却期間にわたって保存された牛乳についての結果を示している。この結果は、低温殺菌処理と同様であると記載されている。
【0099】
【0100】
冷凍システム
図50は、熱交換流体を連続的に冷却する冷凍システムの配管図および計装図である。
【0101】
冷凍システムは、熱伝達流体と、R404Aであってよい冷媒との間で熱交換を行うための熱交換器を含む。
【国際調査報告】