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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】電気化学ポンプ及び送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
A61M5/145
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022550684
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2021076805
(87)【国際公開番号】W WO2021164721
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/979,772
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522331415
【氏名又は名称】潔▲ウェイ▼生医科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】李柏穎
(72)【発明者】
【氏名】鄭宗杰
(72)【発明者】
【氏名】頼俊如
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD03
4C066FF04
(57)【要約】
電気化学ポンプ及び送達デバイスに関する。電気化学ポンプ(10)は、基板(11)、電極(12a,12b)、堤体(13)及び制御回路(15)を含む。制御回路(15)は、パルス信号によって、電極(12a,12b)の表面に電気化学反応を選択的に惹起する。且つ、パルス信号のイネーブルパルス(P1)は複数のサブイネーブルパルス(P2)を含む。電気化学ポンプ(10)は、更に、電極(12a,12b)の縁を被覆し、電極(12a,12b)の一部を露出させる絶縁層(121)を含む。電気化学ポンプは、複合パルスで電気化学反応を間欠的に惹起し、効果的に節電することで電気化学ポンプの使用時間を延長可能とする。また、絶縁層で電極の縁を被覆して電極と基板の結合強度を強化することで、電極剥離を回避する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極領域を有する基板、
前記基板の前記電極領域に設置される電極、
前記電極領域を包囲するよう設置されて収容空間を規定し、前記収容空間に電気化学液が充填される堤体、及び、
前記電極に電気的に接続されて、パルス信号により前記電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起し、前記パルス信号のイネーブルパルスが複数のサブイネーブルパルスを含む制御回路、を含むことを特徴とする電気化学ポンプ。
【請求項2】
前記イネーブルパルスの幅は、前記電気化学ポンプの出力目標に応じて変調されることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項3】
前記イネーブルパルスの幅は同一であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項4】
前記サブイネーブルパルスの幅は、前記電気化学ポンプの出力目標に応じて変調されることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項5】
前記サブイネーブルパルスの幅は同一であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項6】
前記基板の材料は、ガラス、石英、セラミックス材料、半導体材料又はプラスチックであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項7】
前記基板の材料は、ガラス、石英、酸化アルミニウム、酸化チタン、シリコン又はプラスチックであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項8】
前記電気化学ポンプは、更に、
前記電極の縁を被覆し、前記電極の一部を露出させる絶縁層を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項9】
前記絶縁層の材料は、エポキシ樹脂、フォトパターニング可能なポリマー、フォトパターニング可能なシリコン、ガラス、セラミックス又はプラスチックであることを特徴とする請求項8に記載の電気化学ポンプ。
【請求項10】
前記絶縁層の材料は、フォトレジスト、フォトパターニング可能なポリイミド、フォトパターニング可能な接着剤であることを特徴とする請求項8に記載の電気化学ポンプ。
【請求項11】
電気化学ポンプを含み、
前記電気化学ポンプは、
電極領域を有する基板、
前記基板の前記電極領域に設置される電極、
前記電極領域を包囲するよう設置されて収容空間を規定し、前記収容空間に電気化学液が充填される堤体、
前記電極に電気的に接続されて、パルス信号により前記電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起し、前記パルス信号のイネーブルパルスが複数のサブイネーブルパルスを含む制御回路、
密封部材及びピストンを含み、前記密閉部材と前記ピストンの間に送達対象の液体が充填され、且つ、前記電気化学ポンプに接続されて、前記ピストンと前記電気化学ポンプの前記収容空間との間に気密空間が規定される容器、及び、
送達コネクタ、を含み、
前記送達コネクタは、
管路、
前記管路の一端に接続される穿刺部材であって、前記容器の前記密封部材を穿刺して、前記穿刺部材を介して前記容器を外部と連通させるための穿刺部材、及び、
前記管路の他端に接続される送達部材であって、個体に設置されて、前記ピストンの押動下で、前記穿刺部材、前記管路及び前記送達部材を経由して前記送達対象の液体を前記個体に送達するための送達部材、を含むことを特徴とする送達デバイス。
【請求項12】
前記送達コネクタは、更に、第1開口及び第2開口を有するハウジングを含み、前記管路、前記穿刺部材及び前記送達部材は前記ハウジングの内部に設置され、前記穿刺部材及び前記送達部材は、それぞれ、前記第1開口及び前記第2開口に対応して設置され、且つ、前記ハウジングの前記内部を滅菌状態に維持するよう、前記第1開口及び前記第2開口はそれぞれ密封フィルムで密封されることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項13】
前記送達コネクタは、更に、前記密封フィルムの外側の表面に設置される保護層を含むことを特徴とする請求項12に記載の送達デバイス。
【請求項14】
前記イネーブルパルスの幅は、前記電気化学ポンプの出力目標に応じて変調されることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項15】
前記イネーブルパルスの幅は同一であることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項16】
前記サブイネーブルパルスの幅は、前記電気化学ポンプの出力目標に応じて変調されることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項17】
前記サブイネーブルパルスの幅は同一であることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項18】
前記基板の材料は、ガラス、石英、セラミックス材料、半導体材料又はプラスチックであることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項19】
前記基板の材料は、ガラス、石英、酸化アルミニウム、酸化チタン、シリコン又はプラスチックであることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項20】
前記電気化学ポンプは、更に、
前記電極の縁を被覆し、前記電極の一部を露出させる絶縁層を含むことを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項21】
前記絶縁層の材料は、エポキシ樹脂、フォトパターニング可能なポリマー、フォトパターニング可能なシリコン、ガラス、セラミックス又はプラスチックであることを特徴とする請求項20に記載の送達デバイス。
【請求項22】
前記絶縁層の材料は、フォトレジスト、フォトパターニング可能なポリイミド、フォトパターニング可能な接着剤であることを特徴とする請求項20に記載の送達デバイス。
【請求項23】
電極領域を有する基板、
前記基板の前記電極領域に設置される電極、
前記電極の縁を被覆し、前記電極の一部を露出させる絶縁層、
前記電極領域を包囲するよう設置されて収容空間を規定し、前記収容空間に電気化学液が充填される堤体、及び、
前記電極に電気的に接続されて、前記電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起する制御回路、を含むことを特徴とする電気化学ポンプ。
【請求項24】
前記基板の材料は、ガラス、石英、セラミックス材料、半導体材料又はプラスチックであることを特徴とする請求項23に記載の電気化学ポンプ。
【請求項25】
前記基板の材料は、ガラス、石英、酸化アルミニウム、酸化チタン、シリコン又はプラスチックであることを特徴とする請求項23に記載の電気化学ポンプ。
【請求項26】
前記絶縁層の材料は、エポキシ樹脂、フォトパターニング可能なポリマー、フォトパターニング可能なシリコン、ガラス、セラミックス又はプラスチックであることを特徴とする請求項23に記載の電気化学ポンプ。
【請求項27】
前記絶縁層の材料は、フォトレジスト、フォトパターニング可能なポリイミド、フォトパターニング可能な接着剤であることを特徴とする請求項23に記載の電気化学ポンプ。
【請求項28】
前記制御回路は、パルス信号により前記電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起し、前記パルス信号のイネーブルパルスは複数のサブイネーブルパルスを含むことを特徴とする請求項23に記載の電気化学ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ及び送達デバイスに関し、特に、電気化学方式で推進力を発生させる電気化学ポンプ及び送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
注射は、薬物を個体に送達するための一般的な方式であり、例えば、医療従事者によって実行される皮下注射又は静脈注射等がある。また、使用者が自身で薬物を注射できるよう、現在、ペン型注射器や電子制御型注射器(例えば、マイクロニードル式、ウェアラブル式又は植え込み式注射器等)も発展している。従来のペン型注射器は、バネを推進力として薬物を押し出している。そのため、ペン型注射器は少量の薬剤の注射にしか適用できず、大量の薬剤を注射することはできない。
【0003】
従来の電子制御型注射器は、モータで推進力を提供して薬物を押し出しており、モータの回転を制御することで注射の時間及び投与量を制御可能である。しかし、モータを含む電子制御型注射器は体積を小型化できず、長時間装着するには使用者にとって不便である。また、従来の別の電子制御ポンプ式注射器は、インスリンの送達にのみ適している。よって、その他の高分子薬、例えば、標的薬、抗体薬等のバイオシミラー(biosimilar)については、特に、密封要求の高いプレフィルド容器の場合に、従来の電子制御ポンプ式注射器では十分な推進力を提供して薬物を押し出すことができない。そのほか、使用時間を延長するために、電子制御型注射器のパワーマネジメントも重要な課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に鑑みて、上記の課題を解消する電気化学ポンプを提供することが、現在のところ極めて努力すべき目標となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複合パルスで電気化学反応を制御し、効果的に節電することで電気化学ポンプの使用時間を延長する電気化学ポンプ及び送達デバイスを提供する。
【0006】
本発明は、絶縁層で電極の縁を被覆することで電極と基板の結合強度を強化し、ハイパワーの電気化学反応に伴う電極剥離を回避する別の電気化学ポンプ及び送達デバイスを提供する。
【0007】
本発明の一実施例における電気化学ポンプは、基板、電極、堤体及び制御回路を含む。基板は電極領域を有する。電極は基板の電極領域に設置される。堤体は、電極領域を包囲するよう設置されて収容空間を規定し、収容空間に電気化学液が充填される。制御回路は電極に電気的に接続される。また、制御回路は、パルス信号により電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起する。パルス信号のイネーブルパルスは複数のサブイネーブルパルスを含む。
【0008】
本発明の一実施例における送達デバイスは、電気化学ポンプ、容器及び送達コネクタを含む。電気化学ポンプは、基板、電極、堤体及び制御回路を含む。基板は電極領域を有する。電極は基板の電極領域に設置される。堤体は、電極領域を包囲するよう設置されて収容空間を規定し、収容空間に電気化学液が充填される。制御回路は電極に電気的に接続される。また、制御回路は、パルス信号により電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起する。パルス信号のイネーブルパルスは複数のサブイネーブルパルスを含む。容器は、密封部材及びピストンを含み、密閉部材とピストンの間に送達対象の液体が充填される。容器は電気化学ポンプに接続されて、ピストンと電気化学ポンプの収容空間との間に気密空間が規定される。送達コネクタは、管路、穿刺部材及び送達部材を含む。穿刺部材は、管路の一端に接続されており、容器の密封部材を穿刺して、穿刺部材を介して容器を外部と連通させるために用いられる。送達部材は、管路の他端に接続される。送達部材は、個体に設置されて、ピストンの押動下で、穿刺部材、管路及び送達部材を経由して送達対象の液体を個体に送達するために用いられる。
【0009】
本発明の他の実施例における電気化学ポンプは、基板、電極、絶縁層、堤体及び制御回路を含む。基板は電極領域を有する。電極は基板の電極領域に設置される。絶縁層は、電極の縁を被覆し、電極の一部を露出させる。堤体は、電極領域を包囲するよう設置されて収容空間を規定し、収容空間に電気化学液が充填される。制御回路は、電極に電気的に接続されて、電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起する。
【0010】
以下の図面は、本発明を概略的に説明及び解釈するためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1実施例における送達デバイスを示す概略図である。
図2図2は、本発明の第2実施例における送達デバイスの電気化学ポンプを示す概略図である。
図3図3は、本発明の第3実施例における送達デバイスの電気化学ポンプを示す概略図である。
図4図4は、本発明の第4実施例における送達デバイスの基板及び電極を示す概略図である。
図5図5は、本発明の一実施例における送達デバイスの複合パルス信号を示す概略図である。
図6図6は、本発明の第5実施例における送達デバイスを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の各実施例について詳述するとともに、図面を例示として組み合わせる。これらの詳細な説明以外にも、本発明はその他の実施例に幅広く適用可能である。前記実施例における何らかの簡単な置き換え、修正、等価の変形はいずれも本発明の範囲に含まれ、且つ、特許請求の範囲を基準とする。明細書の記載では、読者が本発明を効果的且つ完全に理解し得るよう、特定の詳細事項を多数提示するが、本発明は、特定の詳細事項の一部又は全てを省略しても実施可能である。そのほか、本発明を不要に制約することのないよう、周知の手順又は要素は詳細事項に記載していない。図中の同じ又は類似の要素は、同じ又は類似の符号で示す。特に注意すべき点として、図面は概要を示すものにすぎず、要素の実際のサイズ又は数を表すものではない。図面を簡潔化するために、一部の詳細事項は完全には記載していない場合がある。
【0013】
図1を参照して、本発明の一実施例における送達デバイスは、電気化学ポンプ10、容器20及び送達コネクタ30を含む。容器20は、密封部材21及びピストン22を含む。密封部材21とピストン22の間には、送達対象の液体を充填するための充填空間23が形成されている。一例を挙げると、送達対象の液体は、薬物(例えば、標的薬や抗体薬等のバイオシミラー(biosimilar))とすることができる。ただし、これに限らず、送達対象の液体は低分子薬としてもよい。一実施例において、容器20は、プレフィルドの容器とすることができる。
【0014】
送達コネクタ30は、管路31、穿刺部材32及び送達部材33を含む。穿刺部材32は管路31の一端に接続される。また、穿刺部材32は、容器20の密封部材21に穿刺するために用いられる。これにより、容器20の充填空間23は、穿刺部材32を介して容器20の外部と連通する。送達部材33は管路31の他端に接続される。また、送達部材33は個体に設置するために用いられる。一例を挙げると、送達部材33は、例えば、患者の皮膚、皮下、筋肉内、静脈内、腹膜内又はその他の適切な位置に埋め込み可能であるが、これに限らない。注意すべき点として、図1に示す送達部材33は針タイプであるが、これに限らない。送達部材33を接続ベースとし、その他の注射器具又はその他の送達器具に接続することで、本発明の送達デバイスを薬物の送達位置から離間可能としてもよい。例えば、送達デバイスは、患者の腕、腹部、大腿又は臀部に装着可能であり、注射する位置を上記部位の近隣領域とすればよい。
【0015】
上記の構造に基づき、送達コネクタ30の穿刺部材32を容器20の密封部材21に穿刺したあと、ピストン22を押動すれば、充填空間23内の送達対象の液体(例えば、薬物)を穿刺部材32、管路31及び送達部材33を経由して個体に送達することができる。
【0016】
次に、電気化学ポンプ10の詳細な構造について説明する。電気化学ポンプ10は、基板11、電極12a、電極12b、堤体13及び制御回路15を含む。基板11は電極領域111を有し、電極12a、電極12bが基板11の電極領域111内に設置される。一実施例において、基板11の材料は、ガラス、石英、セラミックス材料、半導体材料又はプラスチックとすることができる。例えば、セラミックス材料は、酸化アルミニウム、酸化チタン等とすることができ、半導体材料はシリコンとすることができる。堤体13は、基板11の電極領域111を包囲するよう設置されて、電気化学液14を充填するための収容空間を規定する。制御回路15は、電極12a、電極12bに電気的に接続される。例えば、基板11は複数の導電接点12cを含み、制御回路15は導電接点151を含む。リード線又はその他の適切な方式で基板11の複数の導電接点12cと制御回路15の導電接点151を電気的に接続することで、制御回路15と電極12a、電極12bを電気的に接続可能である。制御回路15は、必要な電子部品152(例えば、マイクロコントローラや受動素子等)及び導電接点153を含み、電源16(例えば、バッテリ)に電気的に接続される。制御回路15の詳細な構造、及び電源16との接続方式等は、本発明の主たる技術的特徴ではないため、ここではこれ以上詳述しない。
【0017】
容器20が電気化学ポンプ10に接続されると、容器20のピストン22と堤体13に形成される収容空間の間に気密空間24が規定される。例えば、堤体13は、容器20に対応する接続構造を形成可能である。これにより、容器20を堤体13の接続構造に装入すると、容器20及び堤体13によって、ピストン22と電気化学液14の間に気密空間24が規定される。制御回路15は、選択的に通電することで、電極12a、電極12bの表面に電気化学反応を選択的に惹起してガスを発生させる。増加したガスは、気密空間24内の圧力を増大させて、ピストン22を押動する。
【0018】
図1に示す実施例において、堤体13は、容器20の外壁と接触して気密空間24を形成しているが、これに限らない。例えば、図2を参照して、一実施例において、堤体13は容器20の内壁と接触して気密空間24を形成してもよい。気密空間24と堤体13に形成される収容空間は、流路131を介して連通している。従って、電気化学反応で発生したガスは、流路131を経由して気密空間24に進入し、気密空間24内の圧力を増大させることができる。
【0019】
理解し得るように、流路131を介して気密空間24と堤体13に形成される収容空間を連通させることで、容器20及び基板11の相対位置を異なる設計とすることができる。例えば、図1及び図2の実施例において、容器20は基板11と垂直に配置されている。ただし、これに限らず、一実施例において、図3に示すように、容器20は基板11と平行に配置してもよい。説明すべき点として、容器20と電気化学ポンプ10の接続方式は、容器20と堤体13の直接的な接続に限らない。各種の異なる配置又は容器に適用し得るよう、適切な中継部材を設置して容器20と堤体13を接続してもよい。
【0020】
合わせて、図4を参照する。一実施例において、本発明の電気化学ポンプ10は、電極12a、電極12bの縁を被覆し、電極12a、電極12bの一部を露出させる絶縁層121を更に含む。この構造によれば、絶縁層121が、電極12a、電極12bと基板11の結合強度を強化可能とし、且つ、電極12a、電極12bと基板11の間へのガスの進入機会を低下させるため、ハイパワーの電気化学反応時に電極剥離が発生するとの事態が回避される。一実施例において、絶縁層121の材料は、エポキシ樹脂(例えば、ソルダーレジスト、SU-8)、フォトパターニング可能なポリマー(photo patternable polymer)、フォトパターニング可能なシリコン(photo patternable silicone)、ガラス、セラミックス又はプラスチックとすることができる。例えば、フォトパターニング可能なポリマーは、フォトレジスト(photo resist)、フォトパターニング可能なポリイミド(polyimide)、又は、フォトパターニング可能な接着剤とすることができる。一実施例において、絶縁層121は、スクリーン印刷、半導体製造プロセス又は焼結等の方式で形成可能である。
【0021】
上述したように、制御回路15は、選択的に通電することで、電極12a、電極12bの表面に電気化学反応を選択的に惹起してガスを発生させる。一実施例において、合わせて、図5を参照する。制御回路15は、図5に示すパルス信号によって、電極12a、電極12bの表面に電気化学反応を選択的に惹起可能である。図5に示すパルス信号には2つのイネーブルパルスP1が含まれている。理解し得るように、イネーブルパルスP1の幅W1は、電気化学ポンプ10の出力目標に応じて変調可能である。例えば、イネーブルパルスP1の幅W1が広い場合には、電気化学反応の惹起時間が長くなり、多くのガス量を発生可能となる。反対に、イネーブルパルスP1の幅W1が狭い場合には、電気化学反応の惹起時間が短くなり、少ないガス量を発生可能となる。理解し得るように、電気信号の変化よりも電気化学反応の反応時間は遅いため、イネーブルパルスP1間にもガスは発生する。この特性を利用して、イネーブルパルスP1の幅W1を適切に変調することで、所望のガス量を発生させつつエネルギーを節約可能となる。一実施例において、本発明における上記のパルス信号は、パルス幅変調(Pulse Width Modulation,PWM)技術で実現可能である。理解し得るように、イネーブルパルスP1の幅W1を同一に設定しても、予め設定したガス量を発生させられる。
【0022】
特に、イネーブルパルスP1は複数のサブイネーブルパルスP2を更に含む。即ち、イネーブルパルスP1が電気化学反応を惹起する期間は、連続的に惹起するのではなく、間歇的に電気化学反応を惹起する。上述したように、サブイネーブルパルスP2間にもガスは発生し続けるため、イネーブルパルスP1を複数のサブイネーブルパルスP2で構成することで更にエネルギーを節約可能となる。一実施例において、サブイネーブルパルスP2の幅W2は同一としてもよい。理解し得るように、サブイネーブルパルスP2の幅W2は、電気化学ポンプ10の出力目標を調整すべく変調可能としてもよい。
【0023】
上述したように、本発明における送達デバイスの用途の一つは、薬物を個体に送達することである。そのため、容器20から個体までの薬物送達経路を滅菌状態に保つことが重要な課題となる。上記の課題を解決するために、図6を参照して、一実施例において、送達コネクタ30は更にハウジング34を含み、且つ、管路31、穿刺部材32及び送達部材33がハウジング34の内部に設置される。ハウジング34は、第1開口341及び第2開口342を含む。穿刺部材32は第1開口341に対応し、送達部材33は第2開口342に対応する。第1開口341及び第2開口342は、それぞれ密封フィルム343で密封されている。上記構造の送達コネクタ30を滅菌処理することで、ハウジング34の内部を滅菌状態に維持可能となる。即ち、管路31、穿刺部材32及び送達部材33がいずれも滅菌状態となる。使用時には、電気化学ポンプ10及び容器20を内蔵するハウジング17に送達コネクタ30を対応させて組み合わせることで、穿刺部材32が第1開口341上の密封フィルム343及び容器20の密封部材21を穿刺可能となる。同様に、送達部材33も、第2開口342側の密封フィルムを穿刺して個体の適切な位置に埋め込み可能となる。これにより、容器20から個体までの薬物送達経路を滅菌状態に維持可能となる。
【0024】
説明すべき点として、上記の構造によれば、送達コネクタ30、容器20及び電気化学ポンプ10をそれぞれ異なるメーカーで生産し、各コンポーネントを組み合わせて製品にすることが可能である。こうすることで、送達コネクタ30を滅菌するための高温が容器20内の薬物の安定性に影響を及ぼすとの事態を回避可能となる。また、各コンポーネントを組み合わせて製品にする際の環境清浄度要求も比較的低くなる。
【0025】
理解し得るように、滅菌処理後に、密封フィルム343の外側の表面は外部との接触により汚染される。よって、使用前に、まずアルコールで拭き取る等の消毒方式で処理することで、薬物送達経路の汚染リスクを低下可能とする。操作を簡略化するために、再び図6を参照して、一実施例では、送達コネクタ30が、更に、密封フィルム343の外側の表面に設置される保護層344を含む。この構造によれば、使用前に保護層344を取り除くだけで密封フィルム343の表面の滅菌状態を保証することができ、操作者の利便性も高まる。
【0026】
総括すると、本発明における電気化学ポンプ及び送達デバイスは、複合パルスで電気化学反応を制御し、効果的に節電することで電気化学ポンプの使用時間を延長する。一実施例において、本発明の電気化学ポンプ及び送達デバイスは、絶縁層で電極の縁を被覆することで、電極と基板の結合強度を強化するとともに、電極と基板の間へのガスの進入機会を低下させて、電極剥離を回避する。
【0027】
上記で記載した実施例は、本発明の技術思想及び特性を説明するためのものにすぎず、当業者に本発明の内容を理解させ、実施可能とすることを目的としている。よって、本発明の権利範囲を限定するものとみなしてはならない。即ち、本発明で開示した精神に基づき行われる均等な変形又は補足は、依然として本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0028】
10 電気化学ポンプ
11 基板
111 電極領域
12a、12b 電極
12c 導電接点
121 絶縁層
13 堤体
131 流路
14 電気化学液
15 制御回路
151 導電接点
152 電子部品
153 導電接点
16 電源
17 ハウジング
20 容器
21 密封部材
22 ピストン
23 充填空間
24 気密空間
30 送達コネクタ
31 管路
32 穿刺部材
33 送達部材
34 ハウジング
341 第1開口
342 第2開口
343 密封フィルム
344 保護層
P1 イネーブルパルス
P2 サブイネーブルパルス
W1 イネーブルパルスの幅
W2 サブイネーブルパルスの幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の他の実施例における電気化学ポンプは、基板、電極、絶縁層、堤体及び制御回路を含む。基板は電極領域を有する。電極は基板の電極領域に設置される。絶縁層は、電極の縁を被覆し、基板まで延伸し、且つ、電極の一部を露出させることで、電極と基板の結合強度を強化する。堤体は、電極領域を包囲するよう設置されて収容空間を規定し、収容空間に電気化学液が充填される。制御回路は、電極に電気的に接続されて、電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極領域を有する基板、
前記基板の前記電極領域に設置される電極、
前記電極領域を包囲するよう設置されて収容空間を規定し、前記収容空間に電気化学液が充填される堤体、及び、
前記電極に電気的に接続されて、パルス信号により前記電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起し、前記パルス信号のイネーブルパルスが複数のサブイネーブルパルスを含む制御回路、を含むことを特徴とする電気化学ポンプ。
【請求項2】
前記イネーブルパルスの幅は、前記電気化学ポンプの出力目標に応じて変調されることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項3】
前記イネーブルパルスの幅は同一であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項4】
前記サブイネーブルパルスの幅は、前記電気化学ポンプの出力目標に応じて変調されることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項5】
前記サブイネーブルパルスの幅は同一であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項6】
前記基板の材料は、ガラス、石英、セラミックス材料、半導体材料又はプラスチックであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項7】
前記基板の材料は、ガラス、石英、酸化アルミニウム、酸化チタン、シリコン又はプラスチックであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項8】
前記電気化学ポンプは、更に、
前記電極の縁を被覆し、前記電極の一部を露出させる絶縁層を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学ポンプ。
【請求項9】
前記絶縁層の材料は、エポキシ樹脂、フォトパターニング可能なポリマー、フォトパターニング可能なシリコン、ガラス、セラミックス又はプラスチックであることを特徴とする請求項8に記載の電気化学ポンプ。
【請求項10】
前記絶縁層の材料は、フォトレジスト、フォトパターニング可能なポリイミド、フォトパターニング可能な接着剤であることを特徴とする請求項8に記載の電気化学ポンプ。
【請求項11】
電気化学ポンプを含み、
前記電気化学ポンプは、
電極領域を有する基板、
前記基板の前記電極領域に設置される電極、
前記電極領域を包囲するよう設置されて収容空間を規定し、前記収容空間に電気化学液が充填される堤体、
前記電極に電気的に接続されて、パルス信号により前記電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起し、前記パルス信号のイネーブルパルスが複数のサブイネーブルパルスを含む制御回路、
密封部材及びピストンを含み、前記密閉部材と前記ピストンの間に送達対象の液体が充填され、且つ、前記電気化学ポンプに接続されて、前記ピストンと前記電気化学ポンプの前記収容空間との間に気密空間が規定される容器、及び、
送達コネクタ、を含み、
前記送達コネクタは、
管路、
前記管路の一端に接続される穿刺部材であって、前記容器の前記密封部材を穿刺して、前記穿刺部材を介して前記容器を外部と連通させるための穿刺部材、及び、
前記管路の他端に接続される送達部材であって、個体に設置されて、前記ピストンの押動下で、前記穿刺部材、前記管路及び前記送達部材を経由して前記送達対象の液体を前記個体に送達するための送達部材、を含むことを特徴とする送達デバイス。
【請求項12】
前記送達コネクタは、更に、第1開口及び第2開口を有するハウジングを含み、前記管路、前記穿刺部材及び前記送達部材は前記ハウジングの内部に設置され、前記穿刺部材及び前記送達部材は、それぞれ、前記第1開口及び前記第2開口に対応して設置され、且つ、前記ハウジングの前記内部を滅菌状態に維持するよう、前記第1開口及び前記第2開口はそれぞれ密封フィルムで密封されることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項13】
前記送達コネクタは、更に、前記密封フィルムの外側の表面に設置される保護層を含むことを特徴とする請求項12に記載の送達デバイス。
【請求項14】
前記イネーブルパルスの幅は、前記電気化学ポンプの出力目標に応じて変調されることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項15】
前記イネーブルパルスの幅は同一であることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項16】
前記サブイネーブルパルスの幅は、前記電気化学ポンプの出力目標に応じて変調されることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項17】
前記サブイネーブルパルスの幅は同一であることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項18】
前記基板の材料は、ガラス、石英、セラミックス材料、半導体材料又はプラスチックであることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項19】
前記基板の材料は、ガラス、石英、酸化アルミニウム、酸化チタン、シリコン又はプラスチックであることを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項20】
前記電気化学ポンプは、更に、
前記電極の縁を被覆し、前記電極の一部を露出させる絶縁層を含むことを特徴とする請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項21】
前記絶縁層の材料は、エポキシ樹脂、フォトパターニング可能なポリマー、フォトパターニング可能なシリコン、ガラス、セラミックス又はプラスチックであることを特徴とする請求項20に記載の送達デバイス。
【請求項22】
前記絶縁層の材料は、フォトレジスト、フォトパターニング可能なポリイミド、フォトパターニング可能な接着剤であることを特徴とする請求項20に記載の送達デバイス。
【請求項23】
電極領域を有する基板、
前記基板の前記電極領域に設置される電極、
前記電極の縁を被覆し、基板まで延伸し、且つ、電極の一部を露出させることで、電極と基板の結合強度を強化する絶縁層、
前記電極領域を包囲するよう設置されて収容空間を規定し、前記収容空間に電気化学液が充填される堤体、及び、
前記電極に電気的に接続されて、前記電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起する制御回路、を含むことを特徴とする電気化学ポンプ。
【請求項24】
前記基板の材料は、ガラス、石英、セラミックス材料、半導体材料又はプラスチックであることを特徴とする請求項23に記載の電気化学ポンプ。
【請求項25】
前記基板の材料は、ガラス、石英、酸化アルミニウム、酸化チタン、シリコン又はプラスチックであることを特徴とする請求項23に記載の電気化学ポンプ。
【請求項26】
前記絶縁層の材料は、エポキシ樹脂、フォトパターニング可能なポリマー、フォトパターニング可能なシリコン、ガラス、セラミックス又はプラスチックであることを特徴とする請求項23に記載の電気化学ポンプ。
【請求項27】
前記絶縁層の材料は、フォトレジスト、フォトパターニング可能なポリイミド、フォトパターニング可能な接着剤であることを特徴とする請求項23に記載の電気化学ポンプ。
【請求項28】
前記制御回路は、パルス信号により前記電極の表面に電気化学反応を選択的に惹起し、前記パルス信号のイネーブルパルスは複数のサブイネーブルパルスを含むことを特徴とする請求項23に記載の電気化学ポンプ。
【国際調査報告】