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  • 特表-塩基性化学療法腫瘍内注射製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】塩基性化学療法腫瘍内注射製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/131 20060101AFI20230516BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230516BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230516BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230516BHJP
【FI】
A61K31/131
A61P35/00
A61P35/04
A61K31/4184
A61K31/475
A61K31/704
A61K31/136
A61K9/08
A61K9/107
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551280
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021025006
(87)【国際公開番号】W WO2021211294
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】63/009,220
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521160801
【氏名又は名称】ユーエス・ナノ・フード・アンド・ドラッグ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】プイ,ヒング・サング
(72)【発明者】
【氏名】プイ,イプ・シュ
(72)【発明者】
【氏名】プイ,イプ・チング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA22
4C076BB11
4C076CC27
4C076DD23
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD43
4C076DD46
4C076EE23
4C076FF67
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086CB21
4C086EA10
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA66
4C086NA06
4C086NA10
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB29
4C206FA01
4C206FA31
4C206KA05
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA42
4C206MA43
4C206MA86
4C206NA06
4C206NA10
4C206ZB26
(57)【要約】
本発明は、腫瘍内注射用製剤、腫瘍内注射用製剤を作製する方法、および注射用製剤を悪性腫瘤に直接投与することによって哺乳動物の悪性腫瘤を処置する方法に関する。注射用腫瘍内製剤は、エマルジョン、溶液または懸濁液であり得、これらはすべて、生体適合性担体に溶解または懸濁された治療有効量の塩基性化学療法薬を含み、塩基性化学療法薬は、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基、エリブリン塩基またはアルキル化剤塩基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基、エリブリン塩基、およびアルキル化剤塩基からなる群から選択される塩基性化学療法薬、ならびにPEG、オレイン酸、アルコール、グリセリン、中鎖トリグリセリド、植物油、およびそれらの混合物からなる群から選択される薬物の注射用の薬学的に許容される生体適合性担体を含む腫瘍内注射用製剤であって、溶液、懸濁液または油中水型エマルジョンである、腫瘍内注射用製剤。
【請求項2】
前記注射用の薬学的に許容される生体適合性担体が、分子量200~400のPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、エタノールおよびベンジルアルコールを含む液体アルコール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される有機液体であり、前記製剤が、溶液または懸濁液である、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項3】
前記塩基性化学療法薬が、化学療法薬の脱塩形態であり、前記生体適合性担体が、分子量200~400のPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、エタノールおよびベンジルアルコールを含む液体アルコール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択され、前記製剤が、前記注射用製剤の総体積の15%未満の量の水、および硫酸塩、塩化物、メシル酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される塩をさらに含み、前記製剤が、油中水型エマルジョンである、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項4】
前記ビンカアルカロイド塩基が、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびそれらの混合物からなる群から選択され;前記アントラサイクリン塩基が、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、アムルビシン、アクラルビシン、バルビシン、およびにそれらの混合物からなる群から選択され;前記アルキル化剤塩基が、ベンダムスチン、メクロレタミン、プロカルバジン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項5】
前記注射用製剤が、前記塩基性化学療法剤、前記生体適合性担体、エタノールまたはベンジルアルコールからなるアルコール、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、有機酸からなる緩衝液を含むエマルジョンであり、前記有機酸が、酢酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記水が、前記注射用製剤の15%未満であり、有機溶媒の量は、前記エマルジョンの体積の85%を超える、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項6】
前記注射用製剤が、ドキソルビシン塩基、エピルビシン塩基、ダウノルビシン塩基、アムルビシン塩基およびミトキサントロン塩基からなる群から選択されるアントラサイクリン塩基、オレイン酸、グリセロール、酢酸、前記エマルジョンの15体積%未満の水、およびアルコールを含む油中水型エマルジョンであり、前記アルコールが、エタノール、ベンジルアルコール、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項7】
ダウノルビシン塩基、オレイン酸、エタノール、酢酸、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、および前記エマルジョンの約4体積%~約10体積%の水を含む油中水型エマルジョンである、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項8】
アムルビシン塩基、オレイン酸、エタノール、酢酸、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、および前記エマルジョンの約4体積%~約10体積%の水を含む油中水型エマルジョンである、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項9】
ミトキサントロン塩基、オレイン酸、グリセロール、エタノール、酢酸、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、および前記エマルジョンの約2体積%~約10体積%の水を含む油中水型エマルジョンである、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項10】
ミトキサントロン塩基、エタノールおよび酢酸を含み、オレイン酸またはグリセロールのいずれかをさらに含み、溶液または懸濁液である、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項11】
ドキソルビシン塩基、オレイン酸、エタノール、酢酸、NACL、および前記エマルジョンの約4体積%~約15体積%の水を含む油中水型エマルジョンである、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項12】
前記製剤が、前記塩基性化学療法剤、オレイン酸、アルコール、酢酸、硫酸塩または塩化物、および前記エマルジョンの約4体積%~約15体積%の水を含む油中水型エマルジョンであり、前記塩基性化学療法剤が、ダウノルビシン塩基、エピルビシン塩基、ドキソルビシン塩基、ミトキサントロン塩基、およびアムルビシン塩基からなる群から選択される、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項13】
前記塩基性化学療法薬が、ビンクリスチン塩基、ビンブラスチン塩基、およびビンデシン塩基からなる群から選択され、前記生体適合性担体が、エタノールまたはベンジルアルコールを含むアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロールまたはオレイン酸との混合物であり、前記製剤が、酢酸、硫酸塩または塩化物塩および少量の水をさらに含み、エマルジョンの約0.5体積%~約5体積%の水を含有する油中水型エマルジョンである、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項14】
前記塩基性化学療法薬が、ベンダムスチン塩基を含み、前記薬学的に許容される生体適合性担体が、酢酸と混合された、約200~400の分子量のPEGまたはオレイン酸と混合されたエタノールからなる群から選択される混合物であり、前記製剤が、溶液または懸濁液である、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項15】
前記塩基性化学療法薬製剤が、ベンダムスチン塩基を含む油中水型エマルジョンであり、前記薬学的に許容される生体適合性担体がオレイン酸とエタノールの混合物であり、前記製剤が、酢酸、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、および前記エマルジョンの約2体積%~約10体積%の水の水相をさらに含む、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項16】
前記塩基性化学療法薬製剤が、ベンダムスチン塩基を含む油中水型エマルジョンであり、前記薬学的に許容される生体適合性担体がグリセロールとエタノールの混合物であり、前記製剤が、酢酸、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、および前記エマルジョンの約2体積%~約10体積%の少量の水の水相をさらに含む、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項17】
前記製剤が、分子量200~400のPEGとエタノールとの混合物に溶解されたベンダムスチン塩基を含む油中水型エマルジョンであり、前記エマルジョンが、酢酸、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、および前記エマルジョンの約2体積%~約10体積%の水の水相をさらに含む、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項18】
前記塩基性化学療法薬が、メクロレタミン塩基を含み、前記薬学的に許容される生体適合性担体が、中鎖トリグリセリドとエタノールの混合物であり、前記製剤が、酢酸、および前記製剤の約1体積%未満の水をさらに含む、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項19】
前記塩基性化学療法薬が、メクロレタミン塩基を含み、前記薬学的に許容される生体適合性担体が、エタノールと中鎖トリグリセリドとの混合物であり、前記製剤が、酢酸、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、および前記製剤の約10体積%未満の水をさらに含み、エマルジョンである、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項20】
前記塩基性化学療法薬が、エリブリン塩基であり、前記生体適合性担体が、エタノールまたはベンジルアルコールを含むアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、分子量200~400のPEGまたはオレイン酸との混合物であり、前記製剤が、酢酸、メシル酸ナトリウムまたはメシル酸カリウム、およびエマルジョンである前記製剤の約0.5体積%~約5体積%の少量の水をさらに含む、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項21】
塩基性化学療法薬を含有する第1のバイアルと、腫瘍への前記薬物の送達のための薬学的に許容される賦形剤を含有する第2のバイアルとを含む、腫瘍内注射用製剤キットであって、前記薬学的に許容される賦形剤が、PEG、オレイン酸、グリセリン、中鎖トリグリセリド、アルコール、薬学的に許容される希釈剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含み、前記PEGが、約PEG200~約PEG400の分子量を有し、前記アルコールが、エタノール、プロピレングリコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記塩基性化学療法薬が、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基、エリブリン塩基およびアルキル化剤塩基からなる群から選択される、キット。
【請求項22】
前記アントラサイクリン塩基が、ドキソルビシン塩基、エピルビシン塩基、アムルビシン塩基、ダウノルビシン塩基、およびミトキサントロン塩基からなる群から選択され、前記薬学的に許容される賦形剤が、エタノールとオレイン酸、PEG、ポリソルベート、中鎖トリグリセリド、またはグリセロールとの混合物を含む、請求項21に記載の腫瘍内注射用製剤キット。
【請求項23】
哺乳動物の悪性腫瘤を処置する方法であって、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤を前記悪性腫瘤に直接投与することを含み、前記悪性腫瘤が、皮膚、目、舌、口、甲状腺、乳房、子宮頸部、子宮、肛門、前立腺、膣、骨、膀胱、尿管、尿道、陰茎、精巣、精巣上体、鼻咽頭、肝臓、腎臓、胆嚢、卵巣、卵管、膵臓、リンパ節の転移、腹腔の腹膜転移、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、盲腸、直腸、肺、気管、喉頭、脳、悪性リンパ腫またはリンパ節転移、転移性乳がん、転移性ウィルムス腫瘍、カポジ肉腫、転移性神経芽細胞腫または転移性軟組織肉腫に位置する原発性または二次性腫瘍である、方法。
【請求項24】
注射用の前記薬学的に許容される生体適合性担体が、エタノール、ベンジルアルコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルコールを含む、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤。
【請求項25】
アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基、エリブリン塩基、またはアルキル化剤塩基からなる群から選択される塩基性化学療法薬を、分子量200~400のPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、液体アルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む有機液体に溶解することを含む、腫瘍内注射用製剤を作製する方法。
【請求項26】
腫瘍内注射用エマルジョン製剤を作製する方法であって、
1)ビンカアルカロイド塩、アルキル化剤塩、エリブリン塩およびアントラサイクリン塩からなる群から選択される化学療法薬の酸性塩と、水性媒体中のモル量がほぼ等しい塩基または塩基性塩とで、塩基性化学療法薬の水懸濁液を形成するステップと;
2)酢酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少量の有機酸を前記懸濁液に加えて緩衝液として作用させるステップと;
3)得られた脱塩塩基性化学療法水混合物を、分子量200~400のPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、エタノール、ベンジルアルコール含む液体アルコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される生体適合性担体と混合するステップと
を含み、前記エマルジョンは、前記注射用製剤の総体積の約0.5%~約15%の量の水を含む、方法。
【請求項27】
前記ビンカアルカロイド塩が、ビンブラスチン硫酸塩、塩化ビンブラスチン、ビンクリスチン硫酸塩、塩化ビンクリスチン、ビンデシン硫酸塩、および塩化ビンデシンからなる群から選択され、前記アントラサイクリン塩が、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン硫酸塩、ドキソルビシンクエン酸塩、エピルビシン塩酸塩、エピルビシン硫酸塩、エピルビシンクエン酸塩、ダウノルビシン塩酸塩、ダウノルビシン硫酸塩、ダウノルビシンクエン酸塩、ミトキサントロン塩酸塩、ミトキサントロン硫酸塩、ミトキサントロンクエン酸塩、アムルビシン塩酸塩、アムルビシン硫酸塩、アムルビシンクエン酸塩、イダルビシン塩、アクラルビシン塩およびバルビシン塩からなる群から選択され、前記アルキル化剤塩が、ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン硫酸塩、メクロレタミン塩酸塩、メクロレタミン硫酸塩、プロカルバジン塩酸塩、およびプロカルバジン硫酸塩からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、がんまたは肉腫疾患に罹患している哺乳動物(例えば、ヒト)における悪性腫瘤への直接注射に使用するための塩基性化学療法注射剤の医薬製剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]がんは、体の他の部分に侵入または拡散する可能性のある異常な細胞増殖を伴う一群の疾患である。
[0003]がんは、局所拡散、局所的なリンパ節へのリンパ液の拡散、または血液を介した遠隔部位への血行性拡散によって、元の部位から拡散する可能性がある。分散した腫瘍は転移性腫瘍と呼ばれ、元の腫瘍は原発性腫瘍と呼ばれる。ほとんどすべてのがんは転移する可能性があり、転移はがんの後期において一般的であり、血液もしくはリンパ系、またはその両方を介して発生する可能性がある。転移における典型的なステップは、局所浸潤、血液またはリンパ液への血管内侵入、体内循環、新しい組織への血管外遊出、増殖および血管新生である。がんが血行性経路により拡散する場合、通常は全身に拡散する。さまざまなタイプのがんが特定の臓器に転移する傾向があるが、全体として、転移が発生する最も一般的な場所は、肺、肝臓、脳、および骨である。転移はがんによる主な死因である。
【0003】
[0004]乳がん、子宮頸がん、口腔がん、および結腸直腸がんなどの最も一般的ながんのタイプのいくつかは、早期に検出され、ベストプラクティスに従って処置されると、高い治癒率を有する。主な目標は、全体的にがんを治癒させるか、寿命を大幅に延ばすことである。患者の生活の質を改善することも重要な目標である。これは、支持療法または緩和ケアおよび心理社会的支援によって達成することができる。
【0004】
[0005]がんは、多くの場合、放射線療法、手術、化学療法、および標的療法(加熱法または冷法)のいくつかの組み合わせで処置される。緩和ケアは、進行疾患を有する人々にとって特に重要である。手術は、腫瘍の全部または一部を体から取り除く従来のアプローチである。手術は一般に、がんの初期段階を処置するためにのみ有効である。50%を超えるがん患者に関し、診断されるときまでに、彼らはもはや有効な外科的処置の候補ではない。外科的選択肢が利用可能な場合でも、外科的処置は手術中の血液循環を介して腫瘍転移を増加させる場合があるため、なおリスクがある。ほとんどのがん患者は、診断または手術時にがんで死亡するのではなく、がんの転移および再発で死亡する。進行がんの場合、新しい製剤および/または新しい処置法がなければ、生存の可能性はわずかである。
【0005】
[0006]化学療法は、急速に増殖して分裂するがん細胞を殺傷する、その増殖を停止させる、または遅らせることによって機能する。疼痛およびその他の問題を引き起こしている腫瘍を縮小するために化学療法を使用することができる。しかし、化学療法は、急速に増殖するがん細胞を殺傷するだけでなく、急速に増殖して分裂する健康な細胞も殺傷するか、またはその増殖を遅らせる。がん細胞は正常細胞と大きな違いがないため、抗がん薬は経口投与でも注射投与でも、がん細胞と正常細胞の両方を殺傷する可能性がある。実際、体内には正常細胞の数がより多いため、化学療法はがん細胞よりも多くの正常細胞を殺傷する可能性がある。例としては、急速に増殖して分裂する細胞があり、これらは、口や腸の内側を覆う細胞および毛髪を成長させる細胞である。健康な細胞への損傷は、口内炎、悪心、および脱毛などの副作用を引き起こす場合がある。このような副作用は、多くの場合、化学療法が完了した後に改善するかまたは消失する。
【0006】
[0007]がんを処置するための他の既知の治療法もまた、多くの場合効果がない。放射線療法は、がんの初期および中期に臨床的に限局性の疾患を呈する個体にのみ有効である。放射線は転移を伴うがんの後期には有効ではない。手術がもはや選択肢ではない進行がんの場合、医師は、がん細胞を根絶するために経口または静脈内注射によって投与される化学療法薬を処方する場合がある。化学療法薬は水溶性薬と水不溶性薬に分けられている。ほとんどすべての水溶性化学療法薬(ほとんどのアントラサイクリンを含む)は、強酸と弱塩基性化学物質によって作製される酸性塩である。例えば、すべてのアントラサイクリン塩基は水に不溶性である。
【0007】
[0008]ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、アムルビシン、ミトキサントロン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、エリブリン、メクロレタミン、およびベンダムスチンなどのほとんどの塩基性化学物質は不安定な化学物質であり、水に不溶性であるが、有機液体にはわずかに可溶性である。したがって、ほとんどの塩基性化学物質は酸と反応して、室温で安定であり、水溶性であり、静脈注射に好適である酸性塩を形成する。市場で入手可能な可溶性塩は、アントラサイクリン系塩酸塩、ビンカアルカロイド系硫酸塩、エリブリンメシル酸塩、およびナイトロジェンマスタード塩酸塩である。
【0008】
[0009]ほとんどの薬物は脂質拡散によって細胞膜を通過して細胞に影響を与える。ほとんどの水溶性薬物は弱酸であるため、薬物は溶液中に非解離型と解離型の形態で存在する。非解離薬物のみが脂質溶解度が高いため、脂質膜に溶解し、生体膜を容易に通過することができる。対照的に、解離薬物は、脂質溶解度が低いために生体膜を容易に通過せず、その結果、それらは膜の片側に限定され、「イオントラッピング」を形成する。したがって、薬物の解離の程度は、薬物の脂質溶解度および拡散に影響を与えるもう1つの重要な要因である。一部の薬物は水溶性であり静脈注射することができるが、薬物はがん細胞の細胞膜を通過することができない。
【0009】
[0010]薬物の脂肪分解および拡散に影響を与える主な要因は次のとおりである、すなわち、
1)膜の面積および膜の両側の濃度差:膜の面積が大きいほど、拡散が速くなる;脂質膜の片側の濃度が高いほど、拡散速度が速くなり、膜の両側の濃度が同じになると、拡散が停止する。
2)薬物の脂質溶解度:一般に、分配係数が大きいほど、薬物が脂質膜に溶解する量が多くなり、拡散が速くなる。しかし、薬物は最初に体液に溶解して細胞膜に到達する必要があるため、注射剤の含水量が少ないことはまた、薬物が細胞膜を通過するのを促進しない。
3)解離型:非解離性薬物のみが、脂質溶解度が高いため脂質膜に溶解し、生体膜を容易に通過することができる。
4)薬物のpKaおよび環境のpHは、最終的に薬物の解離度を決定する。PKAは解離定数(KA)の負の対数であり、Kaは薬物が50%だけ解離した場合の溶液のpHである。各薬物には、薬物自体の属性である独自のpKaがあり、薬物の弱酸や弱塩基とは何の関係もない。
【0010】
[0011]血液に注入される静脈内製剤における水不溶性活性医薬成分(API)の使用を容易にするために、医学研究者はAPIの水溶性形態を選択して静脈内製剤を作製する。市場に出ている化学療法薬のほとんどは水溶性である。
【0011】
[0012]過去において、多くの医師は、悪性腫瘤に直接抗がん薬を投与することを試みてきた。しかし、ほとんどの抗がん薬は静脈内投与用に製剤化されており、水溶性注射剤である。したがって、これらの薬物を悪性腫瘤に注射する場合、細胞膜に浸透するのが困難である。さらに、水溶性抗がん薬は、それらが溶解性であるということは、水溶性抗がん薬が腫瘍の毛細血管によって運び去られることを意味するので、がん細胞の隙間に留まるのが困難である。したがって、水溶性抗がん薬は、がん細胞に対してほとんど効果がなかった。
【0012】
[0013]アントラサイクリンは、アントラサイクリンを塩酸と反応させることによって水溶性薬物となり、例としてドキソルビシン塩酸塩、エピルビシン塩酸塩、アムルビシン塩酸塩、ミトキサントロン塩酸塩およびダウノルビシン塩酸塩などがある。水溶性アントラサイクリンは、静脈に注射するか、動脈内に注射することができる。水不溶性化学療法薬を塩酸塩にすることができない場合は、代わりにエマルジョンにするか、アルコール、PEG、ポリソルベート、アルブミン、またはそれらの混合物などの賦形剤からなる製剤にする。これらの賦形剤により、薬物は水に可溶性または分散可能になり、例えば、パクリタキセルアルブミンおよびパクリタキセルエマルジョンがある。
【0013】
[0014]市場に出ているほとんどのアントラサイクリン系抗がん薬は、ドキソルビシン塩酸塩注射剤、エピルビシン塩酸塩注射剤、アムルビシン塩酸塩注射剤、ミトキサントロン塩酸塩注射剤、ダウノルビシン塩酸塩注射剤などを含むアントラサイクリン系の塩酸塩である。がん細胞よりも正常細胞が多いため、水溶性であるアントラサイクリン系塩酸塩は、偶然に標的がん細胞に到達するのが困難である。水溶性アントラサイクリン系塩酸塩はまた、がん細胞膜が疎水性であるため、がん細胞の細胞膜を通過するのが困難である。さらに、水溶性アントラサイクリン系塩酸塩は、アントラサイクリン系塩酸塩が腫瘍の毛細血管によって運び去られるため、がん細胞の隙間に留まるのが困難である。
【0014】
[0015]水溶性アントラサイクリン系塩酸塩注射剤の治癒率を上げるために、科学者は、二重脂質層カプセルに含まれる親水性薬物が、がん細胞の細胞膜を容易に通過することができることを期待して、異なる種類のリポソームを開発した。残念ながら、アントラサイクリン系塩酸塩リポソーム注射剤は正常細胞とがん細胞の両方に入る可能性があり、正常細胞とがん細胞の間の類似性のために正常細胞とがん細胞の両方を殺傷する可能性があるので、結果は良好ではなかった。リポソーム注射が市場に登場して以来、特に副作用(例えば、正常細胞の死)により患者は十分な量のアントラサイクリン系塩酸塩療法を受けることができないため、がんの治癒率の改善はほとんど見られなかった。進行がんにおいて、医師が化学療法剤を使用して寿命を延ばす、および/または患者の生活の質を改善する場合、がんの治癒のための新しい製剤および新しい処置法が依然として必要である。
【0015】
[0016]アントラサイクリンは、もともとストレプトマイセス細菌に由来する抗がん薬である。それらの抗腫瘍活性は1960年代に確立された。アントラサイクリンは赤色の芳香族ポリケチドであり、アグリコン塩基分子の構造の違いおよび結合した糖残基の違いにより、さまざまな形態で発生する。これらの薬物は細胞周期に特異的ではない。ダウノルビシンおよびドキソルビシンは、このクラスの初期の化学療法剤であった。腫瘍がこれらの薬物に対する耐性を発達させること、および心毒性などの副作用、患者が扱える用量の制限などを医師が発見したとき、医薬品化学者はこれらの薬物の修飾-より広い活性およびより低い毒性を有する類似体を見出そうとした。より良好なアントラサイクリンを発見するために、2000を超える類似体が何年にもわたって研究されてきた。しかし、エピルビシンおよびイダルビシンのようなごくわずかのアントラサイクリン類似体しか、臨床使用に承認されていない。アントラサイクリンを静脈内投与する場合、心臓毒性は依然として主要な懸念事項である。
【0016】
[0017]ダウノルビシン塩酸塩は、ストレプトマイセス・コエルレオルビダス(Streptomyces coeruleorubidus)の菌株によって産生されたダウノルビシンの塩酸塩である。ダウノルビシン塩酸塩は水溶性である。その分子式は、分子量564のC2729NO10・HClである。それは、吸湿性の結晶性粉末である。5mg/mL水溶液のpHは、3~4である。それは、静脈内投与専用の濃赤色の滅菌液としてバイアルに入れて提供される。各mLには、5.34mgのダウノルビシン塩酸塩、9mgの塩化ナトリウム;水酸化ナトリウムおよび/または塩酸(pHを調整するため)が含まれており、その99%は注射用水である。ダウノルビシン塩酸塩は、急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄性白血病の処置に静脈内投与される。ダウノルビシンリポソーム調製物はクエン酸塩で構成され、後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する進行性カポジ肉腫の処置に静脈内投与される。
【0017】
[0018]ドキソルビシン塩酸塩は、抗腫瘍活性を有するアントラサイクリン抗生物質であるドキソルビシンの塩酸塩である。その分子量は580であり、その分子式はC2729NO11 HClである。それは水溶性である。5mg/mlの水溶液のpHは4.0~5.5である。ドキソルビシン塩酸塩注射液、USPは、10mg/5mL、20mg/10mL、50mg/25mL、150mg/75mL、または200mg/100mLのドキソルビシンHClを含有するバイアルで提供される透明で赤色の減菌等張水溶液である。各ミリリットルの溶液には2mgのドキソルビシンHClが含まれている。不活性成分には塩化ナトリウム0.9%が含まれ、溶液の99%は注射用水である。溶液のpHは塩酸で3.0に調整される。ドキソルビシンHClは、原発性乳がんの切除後の腋窩リンパ節転移のある女性、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、転移性乳がん、転移性ウィルムス腫瘍、カポジ肉腫、転移性神経芽細胞腫、転移性軟組織肉腫、転移性骨肉腫、転移性卵巣癌、転移性移行細胞膀胱癌、転移性甲状腺癌、転移性胃癌、転移性気管支原性癌、の処置のための、静脈注射による多剤アジュバント化学療法の成分として適応されている。
【0018】
[0019]ドキソルビシンは、DNAらせんの塩基対の間にインターカレートし、それによってDNA複製を防ぎ、最終的にタンパク質合成を阻害する。乳がんのアジュバントのためのドキソルビシンHClの推奨用量は、シクロホスファミドと組み合わせて、各21日間の処置サイクルの1日目に静脈内ボーラスとして、60mg/mを合計4サイクル投与される。市場に出ているドキソルビシンの類似体はドキソルビシン塩酸塩である。製剤は、ドキソルビシン塩酸塩注射液、リポソームまたはドキソルビシン塩酸塩注射粉末であり得る。
【0019】
[0020]エピルビシンは、ドキソルビシンのエピマーであり、糖のC-4ヒドロキシル基の配向のみがドキソルビシンと異なる。市場で入手可能なエピルビシン製品はエピルビシン塩酸塩であり、これは胃がんおよび乳がんの処置に使用され、カルチノイド、子宮内膜、肺、卵巣、食道および前立腺のがん、ならびに軟組織肉腫の処置にも適応されている。エピルビシン塩酸塩は、抗腫瘍活性を有するアントラサイクリン系抗生物質であるエピルビシンの塩酸塩である。その分子量は580であり、その分子式はC2730ClNO11である。それは水溶性である。エピルビシン塩酸塩5mg/mlの水溶液のpHは4.0~5.5である。エピルビシン塩酸塩は、静脈内投与を目的としたアントラサイクリン細胞毒性剤である。エピルビシン塩酸塩は、減菌の透明な赤色の溶液として提供され、防腐剤を含まない即時使用溶液として、50および200mgのエピルビシン塩酸塩を含有するポリプロピレンバイアルで入手可能である。各ミリリットルの溶液には2mgのエピルビシン塩酸塩が含まれている。不活性成分には、塩化ナトリウムおよび注射用水が含まれている。
【0020】
[0021]ミトキサントロンは、水素結合を介してDNAにインターカレートするDNA反応剤であり、架橋および鎖切断を引き起こす。ミトキサントロンはまたリボ核酸(RNA)にも干渉し、損傷したDNAの巻き戻しおよび修復に関与する酵素であるトポイソメラーゼIIの強力な阻害剤である。
【0021】
[0022]ミトキサントロン塩酸塩の分子量は517.4g/molで、その分子式はC2230Clである。市場に出ているミトキサントロンの製品はミトキサントロン塩酸塩注射剤であり、フリーフロー静脈内注入でゆっくりと投与する必要がある。皮下、筋肉内、または動脈内に投与してはならない。ミトキサントロンは、ホルモン処置に応答しない進行性前立腺がん、急性骨髄性白血病、乳がん、非ホジキンリンパ腫に使用される。ミトキサントロン注射剤、USP(濃縮物)は、注射前に希釈する必要がある濃縮物として提供される。濃縮物は、2mg/mlのミトキサントロン遊離塩基に相当するミトキサントロン塩酸塩を含有し、以下の不活性成分:塩化ナトリウム(0.800%w/v)、酢酸ナトリウム(0.005%w/v)、酢酸(0.046%w/v)、および注射用水を含む、減菌の非発熱性の紺色の水溶液である。溶液のpHは3.0~4.5である。
【0022】
[0023]アムルビシン塩酸塩は、C2526ClNOの分子式を有し、その分子量は519.94である。アムルビシンは、抗腫瘍活性を有する合成9-アミノ-アントラサイクリンである。アムルビシンはDNAにインターカレートし、トポイソメラーゼIIの活性を阻害し、その結果、DNA複製、RNAおよびタンパク質合成が阻害され、続いて細胞増殖が阻害され、細胞が死滅する。この薬剤は、このクラスの化合物に共通する累積的な心臓毒性の兆候を示すことなく、従来のアントラサイクリン薬よりも高いレベルの抗腫瘍活性を示した。アムルビシンは水溶性ではないが、DMSOには可溶性である。その分子量は483.5g/molであり、分子式はC2525NOである。
【0023】
[0024]アントラサイクリンは、複数の経路を介してがんを阻害する。例えば、アントラサイクリンはDNAの合成を阻害し、一部のアントラサイクリンはトポイソメラーゼII酵素を阻害するようである。アントラサイクリンは非細胞周期特異的薬と考えられており、さまざまながんに使用されている。それらの主な欠点は、心筋への毒性である。アントラサイクリン塩酸塩は水溶性であるが、アントラサイクリン塩基は水溶性ではない。
【0024】
[0025]アントラサイクリンの副作用は、他の従来の化学療法剤と同様に、非悪性の増殖する正常細胞に対するそれらの細胞毒性に関連しており、悪心、嘔吐、および脱毛症を含む。しかし、心毒性(心筋症およびうっ血性心不全など)および骨髄抑制などのアントラサイクリンの主な毒性は、これらの薬物の使用に対する主な制限である。ドキソルビシンなどのアントラサイクリンも、重度の局所組織壊死を引き起こす可能性がある。アントラサイクリン誘発性心毒性は不可逆的であり、したがって、患者の悪性腫瘍の処置におけるこれらの薬物の使用を検討する際に特に重要な考慮事項である。
【0025】
[0026]アントラサイクリンの心毒性効果を制限するための戦略が採用されており、これには、全体的な投与量の制限、リポソームへのカプセル化、併用処置、心臓保護薬の使用、およびより害の少ない修飾アントラサイクリンの合成が含まれる。
【0026】
[0027]抗がん薬の極端な副作用は、そのような薬物の標的特異性が低いことによって引き起こされ、したがって、薬物は、目的の標的腫瘍だけでなく、患者のほとんどの正常な臓器にわたって循環する。副作用を引き起こす標的特異性が低いと、薬物のごく一部しか腫瘍細胞を標的とするように正しく標的化されないため、化学療法の有効性も低下する。化学療法の有効性は、標的腫瘍内での抗がん薬の保持が不十分なためにさらに低下する。
【0027】
[0028]ビンカアルカロイド抗腫瘍薬は、キョウチクトウ科(apocynaceae)アルカロイドのカタランサス・ロセウス(catharanthus roseus)から抽出されたアルカロイドであり、医学的に入手可能であり、クリニックで使用されてきたビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニンおよびビノレルビンが含まれる。ビンカアルカロイドのチューブリンの結合部位への結合は微小管の分離を妨害し、研究によると、ビンカアルカロイドの抗腫瘍薬の細胞毒性はチューブリンとの結合によって達成され、それによってがん細胞の有糸分裂および増殖が停止する。核崩壊および空胞空胞化に加えて、ビンカアルカロイド抗腫瘍薬は細胞膜に作用でき、細胞膜によるアミノ酸の輸送を妨害し、RNA合成酵素の活性を阻害することによってタンパク質合成およびRNA合成を阻害し、多くの方法でがん細胞を殺傷することができる。
【0028】
[0029]医学的に入手可能なビンカアルカロイド抗腫瘍薬は、水性注射剤であるビンカアルカロイド硫酸塩注射剤であり、例としてビンブラスチン硫酸塩注射剤、ビンクリスチン硫酸塩注射剤、ビンデシン硫酸塩注射剤などである。ビンブラスチン硫酸塩注射剤、ビンクリスチン硫酸塩注射剤、およびビンデシン硫酸塩注射剤はすべて水溶性であり、それらの副作用には、血液の問題、神経系の問題、および脱毛が含まれる。
【0029】
[0030]ビンブラスチン硫酸塩は、白色~淡黄色の非晶質粉末または結晶性粉末である。それはエタノールにわずかに可溶性であり、エーテルには実質的に不溶性である。1部は10部の水に可溶性である。ビンブラスチン硫酸塩の分子式はC4658.HSOであり、分子量は909.05である。
【0030】
[0031]ビンブラスチン硫酸塩は、例えば、以下の疾患の緩和処置に適応される:ホジキン病、リンパ球性リンパ腫、組織球性リンパ腫、菌状息肉腫、精巣の進行癌、カポジ肉腫、レテラー・ジーべ病(Letterer-Siwe)(組織球症X(histiocytosis X))、適切な内分泌ホルモン療法および手術療法に反応しない乳癌、および他の化学療法剤に耐性のある絨毛癌。ビンブラスチンの主な副作用は、血液毒性である。
【0031】
[0032]ビンブラスチンは免疫抑制作用を有する。排出の主な経路は、胆道系を介する場合がある。IV投与後、薬物は血液から急速に除去され、体組織に分配される。ビンブラスチン硫酸塩は血液脳関門をほとんど通過せず、治療濃度でCSFに現れない。ビンブラスチンは、主に肝臓でデアセチルビンブラスチンに広範囲に代謝されると報告されており、これは、重量ベースで親化合物よりも活性がある。がん患者の薬物動態研究は、急速な静脈内注射後の三相性血清崩壊パターンを示していた。初期半減期、中間半減期、および終末半減期は、それぞれ3.7分、1.6時間、および24.8時間である。ビンブラスチンの抗腫瘍活性は、主にチューブリンとの相互作用による中期の有糸分裂の阻害に起因すると考えられている。ビンブラスチンは、紡錘体の微小管タンパク質に結合し、微小管の結晶化および有糸分裂の停止または細胞死をもたらす。高濃度では、ビンブラスチンは、核酸およびタンパク質の合成にも複雑な影響を及ぼす。ビンブラスチンはまた、グルタミン酸の細胞利用をブロックすることによってアミノ酸代謝を妨害し、したがってプリン合成、クエン酸回路、および尿素の形成を阻害すると報告されている。現在市場で入手可能なビンブラスチン硫酸塩製品はIV注射専用であり、ビンブラスチン塩基注射剤製品は市場に出ておらず、腫瘍内注射剤製品も市場に出ていない。
【0032】
[0033]ビンクリスチンは、細胞周期のS期において微小管および紡錘体タンパク質に不可逆的に結合し、有糸分裂紡錘体の形成を妨害し、それにより、中期における腫瘍細胞の分裂を阻止する。この薬剤はまた、微小管を解重合し、アミノ酸、c-AMP、グルタチオン代謝、細胞呼吸、核酸および脂質生合成を妨害する場合もある。これは、対応する硫酸塩として、白血病、リンパ腫、骨髄腫、乳がん、頭頸部がんの処置のための静脈内化学療法薬として一般的に使用されている。
【0033】
[0034]ビンクリスチンの分子式はC465610であり、分子量は825である。それは室温で粉末であり、そのマウスにおけるi.p.LD50は、5.2mg/kgである。ビンクリスチンは実質的に水に不溶性であり、水への溶解度は25℃で2.27mg/Lである。ビンクリスチンは、アルコール、アセトン、およびクロロホルムに可溶性である。
【0034】
[0035]ビンクリスチン硫酸塩は、白色~わずかに黄色の非晶質または結晶性粉末であり、水に溶解しやすい。エーテルには実質的に不溶性であり、アルコールにはわずかに可溶性である。ビンクリスチン硫酸塩の分子式はC465610.HSOであり、その分子量は923である。
【0035】
[0036]市場に出ているビンクリスチン硫酸塩の製品は、IV注射用である。ビンクリスチン硫酸塩注射剤は、急性白血病に適応される。ビンクリスチン硫酸塩注射剤は、ホジキン病、非ホジキン悪性リンパ腫、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、およびウィルムス腫瘍において他の腫瘍溶解剤と組み合わせて有用であることが示されている。ビンクリスチンは、神経芽細胞腫の緩和処置のための種々の化学療法レジメンの構成成分として使用される。ビンクリスチン硫酸塩注射剤には、体積で95%を超える水が含まれている。
【0036】
[0037]ビンデシン硫酸塩は、ビンデシンの硫酸塩である。ビンデシンは、チューブリンに結合して安定化し、それによってチューブリンの重合を中断し、有糸分裂紡錘体の形成および細胞分裂を防ぎ;処理された細胞は有糸分裂を起こすことができず、中期で停止する。その分子量は852g/molである。その分子式はC4355.HSOである。ビンカアルカロイドを含む併用療法では、急性の息切れおよび重度の気管支痙攣が頻繁に報告されている;反応は、ビンカアルカロイドが注射されてから数分または数時間以内に起こる場合がある。神経毒性は処置の初期に発生することがあり、神経毒性の可能性を有する他の薬物と併用するとより重症になる場合がある。
【0037】
[0038]市場に出ているビンデシン硫酸塩の製品は、IV注射用である。ビンデシン硫酸塩注射剤は水溶液であり、ビンクリスチンに耐性のある小児急性リンパ性白血病および非燕麦細胞肺がんの処置に適応される。ビンデシンは細胞の中期有糸分裂での停止を引き起こす。
【0038】
[0039]アルキル化剤は、DNA分子のグアニン塩基にアルキル基を付加することによって機能する化合物であり、二重らせんの鎖が結合するのを防ぎ、これにより、DNA鎖が切断され、がん細胞の増殖能力に影響を与える。最終的に、がん細胞は死滅する。既知のナイトロジェンマスタードの特別なアルキル化剤としては、ベンダムスチン、クロラムブシル、イホスファミド、シクロホスファミド、メクロレタミン、メルファランが挙げられる。これらのナイトロジェンマスタードはすべて、腫瘍内注射剤にすることができる。
【0039】
[0040]メクロレタミンはナイトロジェンマスタードである。分子式はC11ClNであり、分子量は156g/molである。メクロレタミンは、抗腫瘍特性および免疫抑制特性を有する硫黄マスタードに関連する合成薬剤である。メクロレタミンは、無色~黄色の液体である。それは水に非常にわずかに可溶性であり;ジメチルホルムアミド、二硫化炭素、四塩化炭素、ならびに多くの有機溶媒および油と混和する。ナイトロジェンマスタードは塩酸と塩を形成し、それは水に溶解しやすく、その毒性作用ははじめのナイトロジェンマスタードと同等である。
【0040】
[0041]メクロレタミン塩酸塩注射剤は、ホジキン病、慢性白血病、肺がんおよび真性多血症を処置するために他の抗腫瘍剤と組み合わせて全身投与され、60年を超えて臨床使用されてきた静脈内使用のための抗腫瘍剤である。しかし、現在、それは、皮膚T細胞リンパ腫および菌状息肉腫の治療のための局所ゲルとして、また、滲出をもたらす転移性癌腫の緩和処置のためにも、主に使用されている。
【0041】
[0042]ベンダムスチン塩酸塩は、C1622Clの分子式を有し、その分子量は394.7g/molである。ベンダムスチン塩酸塩は水溶性である。ベンダムスチンHCL注射剤は、慢性リンパ性白血病および難治性の非ホジキンリンパ腫の処置における静脈内投与用である。ベンダムスチン静脈内治療は、処置中のわずかな一過性の血清酵素の上昇および臨床的に明らかな肝障害のまれな例に関連している。ベンダムスチンはまた強力な免疫抑制活性を有しており、重症で致命的となり得る慢性B型肝炎の再活性化を引き起こす可能性がある。水溶性抗がん薬の副作用は、そのような薬物の標的特異性が低いことによって引き起こされ、したがって、薬物は、目的の標的腫瘍だけでなく、患者のほとんどの正常な臓器にわたって循環する。標的特異性が低いと、薬物のごく一部しかが腫瘍細胞を標的とするように正しく標的化されないため、化学療法の有効性も低下する。化学療法の有効性は、標的腫瘍内での酸性抗がん薬の保持が不十分なためにさらに低下する。
【0042】
[0043]米国での販売が承認されている多くの注射用化学療法製剤があり、例えば、ドキソルビシン塩酸塩注射剤、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤、ダウノルビシン塩酸塩注射剤、エピルビシン塩酸塩注射剤、アムルビシン塩酸塩、ミトキサントロン塩酸塩注射剤、エリブリンメシル酸塩、シスプラチン、オキサリプラチン、フルオロウラシル注射剤、およびダウノルビシンリポソーム注射剤である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
[0044]本発明の目標は、化学療法、特にアントラサイクリンを哺乳動物(例えば、ヒト)の悪性腫瘤に直接投与することができる送達システムおよび方法を提供し、重篤な副作用なしに最大の殺傷効果を提供することである。
【0044】
発明の目的および概要
[0045]本発明の目的は、動物の悪性腫瘤を処置するための製剤および方法を提供することである。
【0045】
[0046]本発明の別の目的は、塩基性化学療法腫瘍内注射剤を製造する方法を提供することである。
[0047]本発明の別の目的は、静脈内注射の投与で現在経験されている有害な副作用を低減する、アントラサイクリン塩基を動物(例えば、ヒト)に投与するための方法を提供することである。
【0046】
[0048]本発明の別の目的は、化学療法の治癒率を増加させる、アントラサイクリン塩基を動物(例えば、ヒト)に投与するための方法を提供することである。
[0049]本発明の別の目的は、静脈内注射の投与で現在経験されている有害な副作用を低減し、抗がん療法の治癒率を高める、ビンカアルカロイド塩基を動物(例えば、ヒト)に投与するための方法を提供することである。
【0047】
[0050]本発明の別の目的は、静脈内注射の投与で現在経験されている有害な副作用を低減し、抗がん療法の治癒率を高める、塩基性アルキル化剤を動物(例えば、ヒト)に投与するための方法を提供することである。
【0048】
[0051]本発明の別の目的は、本発明の方法において有用である、塩基性アントラサイクリン、塩基性エリブリン、塩基性ビンカアルカロイド、または塩基性アルキル化剤の安定な製剤を提供することである。
【0049】
[0052]本発明の別の目的は、高濃度の塩基性化学療法薬、均一に分散された溶液、細菌を含まない溶液、および簡単な製造方法を有する化学療法塩基注射剤を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0050】
[0053]上記の目的および他の目的に従って、本発明は、哺乳動物の悪性腫瘤を処置する方法であって、治療有効量の塩基性化学療法薬からなる薬物を含む注射用製剤を投与することを含み、薬物は、生体適合性担体に溶解、懸濁、または分散して悪性腫瘤に直接入れる、方法に関する。ある特定の好ましい実施形態では、製剤は、安定形態の塩基性アントラサイクリン、塩基性ビンカアルカロイド、塩基性エリブリンまたは塩基性アルキル化剤を含む。
【0051】
[0054]本発明はまた、アントラサイクリン塩基(例えば、ダウノルビシン塩基、ドキソルビシン塩基、エピルビシン塩基、アムルビシン塩基またはミトキサントロン塩基)からなる薬物を含む注射用医薬製剤であって、薬物は、哺乳動物(例えば、ヒト)の悪性腫瘤に直接投与するために、薬学的に許容される担体に溶解または懸濁される、注射用医薬製剤に関する。ある特定の好ましい実施形態では、注射用医薬製剤は安定である。ある特定の実施形態では、製剤は、溶液、懸濁液、または油中水型エマルジョンである。ある特定の実施形態では、アントラサイクリン塩基は、ミクロスフェアとしてオレイン酸およびエタノール混合物に分散した塩化ナトリウムおよび酢酸の少量の水溶液を含む中水型エマルジョン(a water in emulsion)中にあり、酢酸は、緩衝液として作用して、有機溶媒中の塩基性アントラサイクリンの溶解度を高める。ある特定の好ましい実施形態では、塩基性アントラサイクリンは、注射用医薬製剤の油中水型ナノエマルジョンであり、安定である。製剤(例えば、ダウノルビシン製剤)の好ましい実施形態では、ナノエマルジョン中の水の量は、エマルジョン注射剤の体積の4%超であるが15%未満である。
【0052】
[0055]本発明はまた、ビンカアルカロイド塩基(例えば、ビンブラスチン塩基、ビンクリスチン塩基またはビンデシン塩基)からなる薬物を含む注射用医薬製剤であって、薬物は、哺乳動物(例えば、ヒト)の悪性腫瘤に直接投与するために、薬学的に許容される担体に溶解または懸濁される、注射用医薬製剤に関する。ある特定の好ましい実施形態では、注射用製剤は安定である。ある特定の実施形態では、製剤は、溶液、懸濁液、または油中水型エマルジョンである。ある特定の実施形態では、ビンカアルカロイド塩基は、ミクロスフェアとして、エタノールおよびオレイン酸、グリセロールまたは中鎖トリグリセリドの混合物中に分散した硫酸ナトリウムおよび酢酸の少量の水溶液を含む油中水型エマルジョン中にあり、酢酸は、緩衝液として作用して、有機溶媒中の塩基の溶解度を高める。ある特定の好ましい実施形態では、塩基性ビンカアルカロイドは、注射用医薬製剤の油中水型ナノエマルジョンであり、安定である。ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基の油中水型エマルジョン中の水の量は、エマルジョンの体積の約1~約10%である。
【0053】
[0056]本発明はまた、哺乳動物(例えば、ヒト)の悪性腫瘤に直接投与するために、薬学的に許容される担体に溶解または懸濁されたアルキル化塩基性薬物を含む薬物の注射用医薬製剤に関する。ある特定の好ましい実施形態では、注射用製剤は安定である。ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化塩基性薬物は、メクロレタミン塩基である。ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化塩基性薬物は、ベンダムスチン塩基である。そのような製剤は、溶液、懸濁液または油中水型エマルジョンであり得る。ある特定の実施形態では、アルキル化塩基性薬物は、ミクロスフェアとして、エタノールおよびオレイン酸、グリセロールまたは中鎖トリグリセリドの混合物中に分散した塩化ナトリウムおよび酢酸の少量の水溶液を含む油中水型エマルジョン中にあり、酢酸は、緩衝液として作用して、有機溶媒中の塩基の溶解度を高める。ある特定の好ましい実施形態では、注射用医薬製剤の油中水型ナノエマルジョンは、安定である。ある特定の好ましい実施形態では、塩基性アルキル化薬物の油中水型エマルジョン中の水の量は、エマルジョンの体積の約1%~約10%である。
【0054】
[0057]本発明はまた、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基、エリブリン塩基、およびアルキル化剤塩基からなる群から選択される塩基性化学療法薬、ならびにPEG、オレイン酸、アルコール、グリセリン、中鎖トリグリセリド、植物油、およびそれらの混合物からなる群から選択される薬物の注射用薬学的に許容される生体適合性担体を含む腫瘍内注射用製剤であって、溶液、懸濁液または油中水型エマルジョンである、腫瘍内注射用製剤に関する。ある特定の実施形態では、本発明の腫瘍内注射用製剤の塩基性化学療法薬は、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるビンカアルカロイド塩基、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、アムルビシン、アクラルビシンおよびバルビシン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるアントラサイクリン塩基;またはベンダムスチン、メクロレタミン、プロカルバジン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルキル化剤塩基であり得る。ある特定の好ましい実施形態では、塩基性化学療法薬はドキソルビシン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、オレイン酸と、エタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、tert-ブチルアルコール9、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルコールとの混合物である。他の実施形態では、注射用の薬学的に許容される生体適合性担体は、エタノール、ベンジルアルコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルコールを含む。
【0055】
[0058]本発明の実施形態では、腫瘍内注射用製剤は分子量200~400のPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、エタノールおよびベンジルアルコールを含む液体アルコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される有機液体である、薬学的に許容される注射用生体適合性担体を含み、製剤は、溶液または懸濁液である。ある特定の実施形態では、塩基性化学療法薬はビンブラスチン塩基、ビンクリスチン塩基およびビンデシン塩基からなる群から選択され、注射用の薬学的に許容される生体適合性担体は、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、酢酸、ならびにエタノール、ベンジルアルコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルコールを含む有機液体混合物からなる群から選択され、製剤は、溶液または懸濁液である。ある特定の実施形態では、塩基性化学療法薬はビンブラスチン塩基、ビンクリスチン塩基、またはビンデシン塩基から選択され、薬学的に許容される生体適合性担体は、エタノール、中鎖トリグリセリド、グリセロールまたはオレイン酸からなる群から選択される有機液体、および有機酸の混合物であり、製剤は、溶液または懸濁液である。ある特定の好ましい実施形態では、有機酸は酢酸である。他の実施形態では、塩基性化学療法薬は、ベンダムスチン塩基を含み、薬学的に許容される生体適合性担体は、酢酸と混合された、約200~400の分子量のPEGおよびオレイン酸と混合されたエタノールからなる群から選択される混合物であり、製剤は溶液または懸濁液である。
【0056】
[0059]本発明のある特定の実施形態では、塩基性化学療法薬は、化学療法薬の脱塩形態であり、生体適合性担体は、分子量200~400のPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、エタノールおよびベンジルアルコールを含む液体アルコール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択され、製剤は、注射用製剤の総体積の10%未満の量の水、および硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、メシル酸ナトリウム、メシル酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される塩を含み、製剤はエマルジョンである。本発明のある特定の他の実施形態では、塩基性化学療法薬は、化学療法薬の脱塩形態であり、生体適合性担体は、分子量200~400のPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、エタノールおよびベンジルアルコールを含む液体アルコール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択され、製剤は、注射用製剤の総体積の15%未満の量の水、および硫酸塩、塩化物、メシル酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される塩を含み、製剤は油中水型エマルジョンである。ある特定の実施形態では、注射用製剤は、塩基性化学療法剤、生体適合性担体、エタノールまたはベンジルアルコールからなるアルコール、有機酸からなる緩衝液を含むエマルジョンであり、有機酸は、酢酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択され、水は、注射用製剤の15%未満である。他の実施形態では、注射用製剤は、塩基性化学療法剤、生体適合性担体、エタノールまたはベンジルアルコールからなるアルコール、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、有機酸からなる緩衝液を含むエマルジョンであり、前記有機酸は、酢酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択され、水は、前記注射用製剤の15%未満であり、有機溶媒の量は、前記エマルジョンの体積の85%を超える。ある特定の他の実施形態では、注射用製剤は、ドキソルビシン塩基、エピルビシン塩基、ダウノルビシン塩基、アムルビシン塩基およびミトキサントロン塩基からなる群から選択されるアントラサイクリン塩基、オレイン酸、酢酸、エマルジョンの15%体積未満の水、およびアルコールを含む油中水型エマルジョンであり、アルコールは、エタノール、ベンジルアルコール、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある特定の他の実施形態では、製剤は、塩基性化学療法剤、オレイン酸、アルコール、酢酸、塩化ナトリウム、およびエマルジョンの約4体積%~約15体積%の水を含む油中水型エマルジョンであり、塩基性化学療法剤は、ダウノルビシン塩基、エピルビシン塩基、アムルビシン塩基、ドキソルビシン塩基、ミトキサントロン塩基からなる群から選択される。ある特定の好ましい実施形態では、製剤は、塩基性化学療法剤、オレイン酸、アルコール、酢酸、硫酸塩または塩化物、およびエマルジョンの約4体積%~約15体積%の水を含む油中水型エマルジョンであり、塩基性化学療法剤は、ダウノルビシン塩基、エピルビシン塩基、ドキソルビシン塩基、ミトキサントロン塩基、およびアムルビシン塩基からなる群から選択される。ある特定の好ましい実施形態では、アルコールは、エタノール、ベンジルアルコール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、塩基性化学療法薬は、脱塩されたビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩およびビンデシン硫酸塩からなる群から選択され、生体適合性担体は、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、製剤は、酢酸、硫酸ナトリウムおよび少量の水をさらに含み、製剤は、エマルジョンの約10体積%未満の水を含有するエマルジョンである。他の実施形態では、塩基性化学療法薬は、ビンクリスチン塩基、ビンブラスチン塩基、およびビンデシン塩基からなる群から選択され、前記生体適合性担体が、エタノールまたはベンジルアルコールを含むアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロールまたはオレイン酸との混合物であり、製剤は、酢酸、硫酸ナトリウムおよび少量の水をさらに含み、製剤はエマルジョンの約1体積%~約10体積%の水を含む油中水型エマルジョンである。ある特定の好ましい実施形態では、塩基性化学療法薬は、ビンクリスチン塩基、ビンブラスチン塩基、およびビンデシン塩基からなる群から選択され、生体適合性担体は、エタノールまたはベンジルアルコールを含むアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロールまたはオレイン酸との混合物であり、製剤は、酢酸、硫酸塩または塩化物塩および少量の水をさらに含み、製剤は、エマルジョンの約0.5体積%~約5体積%の水を含有する油中水型エマルジョンである。
【0057】
[0060]ある特定の実施形態では、塩基性化学療法薬は、酢酸と混合された、約200~400の分子量のPEG、グリセロールまたはオレイン酸と混合されたエタノールからなる群から選択される混合物に溶解または懸濁されたベンダムスチン塩基を含む。ある特定の好ましい実施形態では、塩基性化学療法薬は、ベンダムスチン塩基を含み、薬学的に許容される生体適合性担体は、酢酸と混合された、約200~400の分子量のPEGまたはオレイン酸と混合されたエタノールからなる群から選択される混合物であり、製剤は溶液または懸濁液である。他の実施形態では、塩基性化学療法薬は、ベンダムスチン塩基を含み、薬学的に許容される生体適合性担体は、オレイン酸、グリセロール、および分子量200~400のPEGおよびエタノールからなる群から選択される混合物であり、製剤は、酢酸、硫酸ナトリウムおよび少量の水をさらに含み、製剤は、エマルジョンの約2体積%~約10体積%の水を有するエマルジョンである。ある特定の好ましい実施形態では、塩基性化学療法薬製剤は、ベンダムスチン塩基を含む油中水型エマルジョンであり、薬学的に許容される生体適合性担体はオレイン酸とエタノールの混合物であり、製剤は、酢酸、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、およびエマルジョンの約2体積%~約10体積%の水の水相をさらに含む。ある特定の好ましい実施形態では、塩基性化学療法薬製剤は、ベンダムスチン塩基を含む油中水型エマルジョンであり、薬学的に許容される生体適合性担体はグリセロールとエタノールの混合物であり、製剤は、酢酸、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、およびエマルジョンの約2体積%~約10体積%の少量の水の水相をさらに含む。ある特定の好ましい実施形態では、製剤は、分子量200~400のPEGとエタノールとの混合物に溶解されたベンダムスチン塩基を含む油中水型エマルジョンであり、エマルジョンは、酢酸、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、およびエマルジョンの約2体積%~約10体積%の水の水相をさらに含む。
【0058】
[0061]他の実施形態では、塩基性化学療法薬は、メクロレタミン塩基を含み、薬学的に許容される生体適合性担体はエタノールと中鎖トリグリセリドまたはグリセロールとの混合物であり、製剤は酢酸をさらに含み、製剤は、溶液または懸濁液である。他の実施形態では、塩基性化学療法薬は、メクロレタミン塩基であり、薬学的に許容される生体適合性担体はグリセロールとエタノールの混合物であり、製剤は、酢酸、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、および製剤の約10体積%未満の水をさらに含み、製剤はエマルジョンである。ある特定の他の実施形態では、塩基性化学療法薬は、メクロレタミン塩基であり、薬学的に許容される生体適合性担体は、中鎖トリグリセリドとエタノールの混合物であり、製剤は、酢酸、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、および製剤の約5体積%未満の水をさらに含み、製剤は、エマルジョンである。ある特定の好ましい実施形態では、塩基性化学療法薬は、メクロレタミン塩基であり、薬学的に許容される生体適合性担体は、中鎖トリグリセリドとエタノールの混合物であり、製剤は、酢酸、および製剤の約1体積%未満の水をさらに含む。ある特定の他の好ましい実施形態では、塩基性化学療法薬は、メクロレタミン塩基を含み、薬学的に許容される生体適合性担体は、エタノールと中鎖トリグリセリドとの混合物であり、製剤は、酢酸、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、および製剤の約10体積%未満の水をさらに含み、製剤は、エマルジョンである。
【0059】
[0062]本発明はまた、哺乳動物(例えば、ヒト)の悪性腫瘤に直接投与するために、薬学的に許容される担体に溶解または懸濁されたアントラサイクリン塩基を含む薬物の注射用医薬製剤に関する。ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はドキソルビシン塩基である。ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はダウノルビシン塩基である。他の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はエピルビシン塩基である。他の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基を含む。他の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はアムルビシン塩基を含む。ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はアクラルビシン塩基を含む。他の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はイダルビシン塩基、ピラルビシン塩基、またはバルルビシン塩基を含む。ある特定の実施形態では、腫瘍内注射用製剤は、溶液または懸濁液であり、塩基性化学療法薬は、注射用の薬学的に許容される生体適合性担体に溶解され、注射用の薬学的に許容される生体適合性担体は、分子量200~400のPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、エタノールおよびベンジルアルコールを含む液体アルコール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される有機液体である。
【0060】
[0063]本発明はまた、哺乳動物(例えば、ヒト)の悪性腫瘤に直接投与するために、薬学的に許容される担体に溶解または懸濁されたビンカアルカロイド塩基を含む薬物の注射用医薬製剤に関する。ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基は、ビンブラスチン塩基である。ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基は、ビンクリスチン塩基である。他の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基はビンデシン塩基である。
【0061】
[0064]ある特定の実施形態では、塩基性化学療法薬は、酢酸と混合された、約200~400の分子量のPEG、グリセロール、中鎖トリグリセリドまたはオレイン酸と混合されたエタノールからなる群から選択される混合物に溶解または懸濁されたエリブリン塩基を含む。他の実施形態では、塩基性化学療法薬は、エリブリン塩基であり、薬学的に許容される生体適合性担体は、オレイン酸、グリセロール、および分子量200~400のPEGならびにエタノールからなる群から選択される混合物であり、製剤は、酢酸、メシル酸ナトリウムおよび少量の水をさらに含み、製剤は、エマルジョンの約1体積%~約5体積%の水を有するエマルジョンである。ある特定の好ましい実施形態では、塩基性化学療法薬は、エリブリン塩基であり、生体適合性担体は、エタノールまたはベンジルアルコールを含むアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、分子量200~400のPEGまたはオレイン酸との混合物であり、製剤は、酢酸、メシル酸ナトリウムまたはメシル酸カリウム、およびエマルジョンである製剤の約0.5体積%~約5体積%の少量の水をさらに含む。
【0062】
[0065]本発明のある特定の実施形態では、薬学的に許容される担体は、PEG、オレイン酸、グリセロール、中鎖トリグリセリド、植物油、界面活性剤、アルコールまたはそれらの組み合わせを含む液体である。ある特定の好ましい実施形態では、PEGは、約PEG200~約PEG400の分子量を有する。ある特定の好ましい実施形態では、アルコールは、エタノール、プロピレン、ベンジルアルコール、tert-ブチルアルコールまたはそれらの混合物である。ある特定の好ましい実施形態では、薬学的に許容される担体はエタノールを含む。ある特定の他の好ましい実施形態では、薬学的に許容される担体は、ベンジルアルコールを含む。
【0063】
[0066]ある特定の実施形態では、悪性腫瘤は、原発的または二次的性質を有する、脳、頭、目、口、舌、首、甲状腺、胃腸系、肝臓、膵臓、胆嚢、肺、呼吸器系、泌尿生殖器系、乳房、リンパ系、心臓血管系、神経系、皮膚、胸部、胸膜、中皮腫、筋肉骨格系、腹部からなる群から選択される哺乳動物内の場所にあり得る。悪性腫瘤は、哺乳動物の別の臓器から転移したものであり得る。ある特定の好ましい実施形態では、薬学的に許容される担体は、ポリエチレングリコール(PEG)、オレイン酸、グリセロール、中鎖トリグリセリド、植物油、界面活性剤、エタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、tert-ブチルアルコール、または上記の任意の組み合わせを含む。
【0064】
[0067]ある特定の好ましい実施形態では、注射用製剤は、ファイバースコープのシリンジまたはニードルを介して投与される。
[0068]ある特定の実施形態では、悪性腫瘤は以下のとおりである:
(i)皮膚、目、舌、口、甲状腺、乳房、子宮頸部、子宮、肛門、前立腺、膣の表在性悪性疾患、骨の肉腫、尿道の癌などであり、塩基性化学療法薬の注射剤(例えば、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基もしくはアルキル化塩基)は、シリンジを使用して悪性腫瘤に直接注射することができる、または
(ii)鼻咽頭のがんであり、塩基性化学療法薬の注射剤は、鼻咽頭鏡を介してシリンジもしくはニードルで悪性腫瘤に注射することができる;または
(iii)肝臓、腎臓、膵臓、および胆嚢のがんであり、塩基性化学療法薬の注射剤は、超音波の補助により、シリンジを使用して皮膚から悪性腫瘤に、または腹腔鏡手術中に開けられた腹壁の孔を介して、悪性腫瘤に注射することができる;または
(iv)卵巣がん、卵管がん、リンパ節転移もしくは腹腔への直接腹膜浸潤であり、塩基性化学療法薬の注射剤は、腹腔鏡手術の孔を介して悪性腫瘤にニードルで注射することができる;または
(v)食道、胃、十二指腸、小腸の癌腫もしくは肉腫であり、塩基性化学療法薬の注射剤は、小腸内視鏡を介してもしくは腹腔鏡手術中に開けられた孔もしくは胸腔鏡手術中に開けられた孔を介して悪性腫瘤にニードルで注射することができる;または
(vi)大腸および直腸の癌腫もしくは肉腫であり、塩基性化学療法薬の注射剤は、結腸内視鏡検査を介してもしくは腹腔鏡手術の腹壁の孔を介して悪性腫瘤にニードルで注射することができる;または
(vii)喉、肺、および気管の癌腫もしくは肉腫であり、塩基性化学療法薬の注射剤は、ファイバー気管支鏡のニードルで悪性腫瘤に注射することができる;または
(viii)肺、気管、もしくは胸部の臓器の癌腫であり、塩基性化学療法薬の注射剤は、超音波、X線、CTスキャン、MRスキャンの補助により、もしくは胸腔鏡手術の孔を介してシリンジで注射することができる;または
(ix)膀胱の癌腫もしくは肉腫であり、塩基性化学療法薬の注射剤は、膀胱鏡を介して、もしくは腹腔鏡手術中に開けられた腹壁の孔を介して悪性腫瘤にニードルで注射することができる;または
(x)子宮の癌腫もしくは肉腫であり、塩基性化学療法薬の注射剤は、子宮鏡のシリンジを使用して;もしくは腹腔鏡手術中に開けられた腹壁の孔を介して、悪性腫瘤に注射することができる;または
(xi)咽頭および喉頭の癌腫もしくは肉腫であり、塩基性化学療法薬の注射剤は、喉頭鏡を介して悪性腫瘤にニードルで注射することができる;または
(xii)脳の癌腫であり、塩基性化学療法薬の注射剤は、X線、CTスキャン、もしくはMRスキャンを活用して、頭蓋骨の対応する骨に穿孔した後、悪性腫瘤にニードルで注射することができる;または
(xiii)睾丸、精巣上体、陰茎、および/または膣の癌腫であり、塩基性化学療法薬の注射剤は、希釈せずに直接悪性腫瘤にニードルで注射することができる。
【0065】
[0069]本発明はさらに、部分的に、治療有効量の塩基性化学療法薬注射剤(例えば、アントラサイクリン塩基、エリブリン塩基、ビンカアルカロイド塩基またはアルキル化塩基)からなる薬物および約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEG、アルコール、グリセロール、中鎖トリグリセリド、植物油、オレイン酸もしくはそれらの混合物を含む注射用の薬学的に許容される担体を含む注射用製剤に関する。ある特定の好ましい実施形態では、アルコールは、エタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、tert-ブチルアルコール、または上記の任意の組み合わせである。ある特定の好ましい実施形態では、アルコールは、エタノール、ベンジルアルコール、またはそれらの組み合わせである。
【0066】
[0070]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基は、ドキソルビシン塩基、ダウノルビシン塩基、エピルビシン塩基、アムルビシン塩基、ピラルビシン塩基、バルルビシン塩基、アクラルビシン塩基、イダルビシン塩基およびミトキサントロン塩基である。
【0067】
[0071]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基は、ビンブラスチン塩基、ビンクリスチン塩基、またはビンデシン塩基である。
[0072]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基は、メクロレタミン塩基またはベンダムスチン塩基である。
【0068】
[0073]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はエピルビシン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEGである。
【0069】
[0074]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はエピルビシン塩基であり、注射用の生体適合性担体はオレイン酸である。
[0075]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、エピルビシン塩基、エタノール、オレイン酸および酢酸を含む溶液または懸濁液である。
【0070】
[0076]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、エピルビシン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および約3~約15%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0071】
[0077]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はダウノルビシン塩基であり、注射用の生体適合性担体はオレイン酸である。
[0078]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はダウノルビシン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、オレイン酸、エタノールおよび酢酸の混合物である。
【0072】
[0079]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はエピルビシン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、エタノールと、約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEGとの混合物である。ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はダウノルビシン塩基であり、注射用の生体適合性担体はエタノールである。
【0073】
[0080]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はダウノルビシン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、約PEG200~約PEG400の分子量のPEGである。
【0074】
[0081]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はダウノルビシン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、オレイン酸とエタノールの混合物である。
[0082]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はダウノルビシン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEGとエタノールとの混合物である。
【0075】
[0083]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、ダウノルビシン塩基を含む溶液または懸濁液であり、注射用の生体適合性担体は、エタノール、オレイン酸および酢酸の混合物である。
【0076】
[0084]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基であり、注射用の生体適合性担体は水性エタノールである。
[0085]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、ダウノルビシン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および約3%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。他の実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、ダウノルビシン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および約1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。他の実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、ダウノルビシン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および約4%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。他の好ましい実施形態では、製剤はダウノルビシン塩基、オレイン酸、エタノール、酢酸、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、およびエマルジョンの約4体積%~約10体積%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0077】
[0086]ある特定の好ましい実施形態では、製剤はアムルビシン塩基、オレイン酸、エタノール、酢酸、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、およびエマルジョンの約4体積%~約10体積%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0078】
[0087]ある特定の好ましい実施形態では、製剤はミトキサントロン塩基、オレイン酸、グリセロール、エタノール、酢酸、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、およびエマルジョンの約2体積%~約10体積%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0079】
[0088]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEGとエタノールとの混合物である。
【0080】
[0089]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEGとマレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、およびそれらの組み合わせを含む有機酸との混合物である。
【0081】
[0090]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、オレイン酸とエタノールの混合物である。
[0091]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、オレイン酸と有機酸との混合物である。
【0082】
[0092]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、オレイン酸、エタノールおよび酢酸の混合物である。
【0083】
[0093]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、ミトキサントロン塩基、エタノール、オレイン酸および酢酸を含む溶液または懸濁液である。
[0094]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、ミトキサントロン塩基、エタノール、グリセロールおよび酢酸を含む溶液または懸濁液である。
【0084】
[0095]ある特定の好ましい実施形態では、製剤は、ミトキサントロン塩基、エタノールおよび酢酸を含み、オレイン酸またはグリセロールのいずれかをさらに含む溶液または懸濁液である。
【0085】
[0096]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、ミトキサントロン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および約3%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0086】
[0097]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、ミトキサントロン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、グリセロール、酢酸、および約3%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0087】
[0098]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基はドキソルビシン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、オレイン酸、エタノールおよび酢酸の混合物である。
【0088】
[0099]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、ドキソルビシン塩基、エタノール、オレイン酸および酢酸を含む溶液または懸濁液である。
[00100]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、ドキソルビシン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および約3%~約15%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0089】
[00101]ある特定の好ましい実施形態では、製剤は、ドキソルビシン塩基、オレイン酸、エタノール、酢酸、NACL、およびエマルジョンの約4体積%~約15体積%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0090】
[00102]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基注射剤は、アムルビシン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および約3%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0091】
[00103]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基はビンブラスチン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、エタノール、中鎖トリグリセリドおよび酢酸の混合物である。
【0092】
[00104]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基はビンブラスチン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、エタノール、オレイン酸および酢酸の混合物である。
【0093】
[00105]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基はビンブラスチン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、エタノール、グリセロール、および酢酸の混合物である。
【0094】
[00106]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンブラスチン、エタノール、オレイン酸および酢酸を含む溶液または懸濁液である。
[00107]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンブラスチン塩基、硫酸ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および約1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0095】
[00108]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンブラスチン塩基、硫酸カリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および約1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0096】
[00109]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基はビンクリスチン塩基であり、注射用の生体適合性担体は植物油である。
[00110]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基はビンクリスチン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、エタノール、中鎖トリグリセリドおよび酢酸の混合物である。
【0097】
[00111]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンクリスチン塩基、硫酸ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および約1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0098】
[00112]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンクリスチン塩基、硫酸ナトリウム、エタノール、グリセロール、酢酸、および約1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0099】
[00113]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンクリスチン塩基、硫酸ナトリウム、エタノール、中鎖トリグリセリド、酢酸、および約1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0100】
[00114]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基はビンデシン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、エタノール、中鎖トリグリセリドおよび酢酸の混合物である。
【0101】
[00115]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基はビンデシン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、グリセロール、エタノール、および酢酸の混合物である。
【0102】
[00116]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基はビンデシン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、エタノールとオレイン酸との混合物である。
[00117]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンデシン塩基、エタノール、オレイン酸および酢酸を含む溶液または懸濁液であり、水を含有しない。
【0103】
[00118]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンデシン塩基、硫酸ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0104】
[00119]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンデシン塩基、硫酸ナトリウム、エタノール、グリセロール、酢酸、および約1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0105】
[00120]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンデシン塩基、硫酸ナトリウム、エタノール、中鎖トリグリセリド、酢酸、および約1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0106】
[00121]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンブラスチン塩基、硫酸ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0107】
[00122]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンブラスチン塩基、硫酸ナトリウム、エタノール、グリセロール、酢酸、および約1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0108】
[00123]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基注射剤は、ビンブラスチン塩基、硫酸ナトリウム、エタノール、中鎖トリグリセリド、酢酸、および約1%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0109】
[00124]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基はメクロレタミン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、酢酸を伴うエタノールと約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEGとの混合物である。
【0110】
[00125]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基はメクロレタミン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、エタノールおよび中鎖トリグリセリドの酢酸との混合物である。
【0111】
[00126]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基はメクロレタミン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、グリセロールとエタノールとの混合物である。
[00127]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基注射剤は、メクロレタミン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、中鎖トリグリセリド、酢酸、および約0.1%~約5%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0112】
[00128]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基注射剤は、メクロレタミン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、200~400の分子量のPEG、酢酸、および約0.1%~約5%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0113】
[00129]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基はベンダムスチン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEGであり、注射剤に含まれるPEGの量は、注射剤の体積の約30%~約80%の範囲である。
【0114】
[00130]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基はベンダムスチン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、エタノールとオレイン酸の混合物である。
[00131]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基はベンダムスチン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、エタノールとグリセロールとの混合物である。
【0115】
[00132]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基注射剤は、ベンダムスチン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、200~400の分子量のPEG、酢酸、および約2%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0116】
[00133]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基注射剤は、ベンダムスチン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、オレイン酸、酢酸、および約2%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0117】
[00134]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基注射剤は、ベンダムスチン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、グリセロール、酢酸、および約2%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0118】
[00135]ある特定の好ましい実施形態では、エリブリン塩基注射剤は、エリブリン塩基、塩化ナトリウム、エタノール、オレイン酸、中鎖トリグリセリド、グリセロール、200~400の分子量のPEG、酢酸、および約2%~約10%の水を含む油中水型エマルジョンである。
【0119】
[00136]本発明は、部分的に、哺乳動物の悪性腫瘤を処置する方法であって、有効量のアントラサイクリン塩基からなる薬物を含む注射用製剤を投与することを含み、薬物は、薬学的に許容される生体適合性担体に溶解または懸濁されて悪性腫瘤に直接入れられる、方法にさらに関する。
【0120】
[00137]本発明は、部分的に、哺乳動物の悪性腫瘤を処置する方法であって、アントラサイクリン塩基、エリブリン塩基、アルキル化剤塩基、またはビンカアルカロイド塩基などの有効量の化学療法塩基からなる薬物を含む注射用製剤を投与することを含み、薬物は、薬学的に許容される生体適合性担体に溶解されて、溶液を形成するか、または油中水型エマルジョンを形成し、製剤は、患者の悪性腫瘤に直接注射される、方法にさらに関する。
【0121】
[00138]本発明のある特定の好ましい実施形態では、注射用製剤は、ファイバースコープのシリンジまたはニードルを介して投与される。
[00139]本発明のある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基は、ドキソルビシン塩基、エピルビシン塩基、ダウノルビシン塩基、アムルビシン塩基またはミトキサントロン塩基からなる群から選択される。
【0122】
[00140]ある特定の実施形態では、悪性腫瘤は、原発的または二次的性質を有する、脳、頭、目、鼻咽頭、口、舌、首、甲状腺、胃腸系、肝臓、膵臓、胆嚢、肺、呼吸器系、泌尿生殖器系、腎臓、膀胱、卵巣、子宮、膣、陰茎、精巣、乳房、リンパ系、皮膚、心臓血管系、神経系、胸部、胸膜、中皮腫、筋肉骨格系、腹部からなる群から選択される哺乳動物内の場所に存在する。ある特定の実施形態では、悪性腫瘤は、哺乳動物において本質的に原発的または二次的である。
【0123】
[00141]ある特定の好ましい実施形態では、生体適合性担体は、PEG、オレイン酸、グリセロール、およびエタノールの組み合わせである。
[00142]ある特定の好ましい実施形態では、生体適合性担体は、PEG、オレイン酸、グリセロール、中鎖トリグリセリド、およびエタノールの組み合わせである。
【0124】
[00143]本発明のある特定の好ましい方法では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基であり、注射用の生体適合性担体はエタノールである。
[00144]本発明のある特定の好ましい方法では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEGである。
【0125】
[00145]本発明のある特定の好ましい方法では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEGとエタノールとの混合物である。
【0126】
[00146]本発明のある特定の好ましい方法では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、オレイン酸と酢酸との混合物である。
[00147]本発明のある特定の好ましい方法では、アントラサイクリン塩基はミトキサントロン塩基であり、注射用の生体適合性担体は、オレイン酸とエタノールとの混合物である。
【0127】
[00148]本発明のある特定の好ましい方法では、悪性腫瘤は以下のとおりである:
(i)皮膚、目、舌、口、甲状腺、乳房、子宮頸部、子宮、肛門、前立腺、膣の表在性悪性疾患、骨の肉腫、尿道、陰茎、精巣および精巣上体の癌であり、アントラサイクリン塩基は、希釈せずにシリンジを使用して悪性腫瘤に直接注射される;または
(ii)鼻咽頭のがんであり、アントラサイクリン塩基は、鼻咽頭鏡を介してシリンジもしくはニードルで悪性腫瘤に注射される;または
(iii)肝臓、腎臓および胆嚢のがんであり、アントラサイクリン塩基は、超音波の補助により、シリンジを使用して皮膚から悪性腫瘤に注射されるか、または腹腔鏡手術中に患者の腹壁に開けられた孔を介して、悪性腫瘤に注射される;または
(iv)卵巣、卵管、膵臓のがん、リンパ節転移または腹腔への直接腹膜浸潤、腹部リンパ腫であり、アントラサイクリン塩基は、腹腔鏡手術中に患者の腹壁に開けられた孔を介して、悪性腫瘤にシリンジで注射される;または
(v)食道、胃、十二指腸、小腸の癌腫もしくは肉腫であり、アントラサイクリン塩基は、小腸内視鏡を介してニードルで、もしくは腹腔鏡手術中に患者の腹壁に開けられた孔を介して長いシリンジにより、悪性腫瘤に注射されるか、もしくは胸腔鏡手術中に患者の胸壁に開けられた孔を介して注射される。
(vi)大腸および直腸の癌腫もしくは肉腫であり、アントラサイクリン塩基は、結腸内視鏡検査を介してニードルで悪性腫瘤に注射されるか、もしくは腹腔鏡手術中に患者の腹壁に開けられた孔を介してシリンジを使用して注射される;または
(vii)肺および気管の癌腫もしくは肉腫であり、アントラサイクリン塩基は、ファイバー気管支鏡のニードルを使用して悪性腫瘤に注射される;または
(viii)肺の癌腫であり、アントラサイクリン塩基は、超音波、X線、CTスキャン、もしくはMRスキャンを使用して胸壁からシリンジで注射されるか、もしくは胸腔鏡手術中に患者の胸壁に開けられた孔を介して注射される;または
(ix)膀胱の癌腫もしくは肉腫であり、アントラサイクリン塩基は、膀胱鏡を介して悪性腫瘤にニードルで注射される、もしくは腹腔鏡手術中に患者の腹壁に開けられた孔を介して注射される;または
(x)子宮の癌腫もしくは肉腫であり、アントラサイクリン塩基は、子宮鏡のシリンジもしくはニードルを使用し悪性腫瘤に注射される;もしくは腹腔鏡手術中に患者の腹壁に開けられた孔を介して注射される;または
(xi)鼻咽頭および喉頭の癌腫もしくは肉腫であり、アントラサイクリン塩基は、喉頭鏡を介して悪性腫瘤にニードルで注射される;または
(xii)脳の癌腫であり、アントラサイクリン塩基は、X線、CTスキャン、もしくはMRスキャンを使用して、頭蓋骨の対応する骨に穿孔した後、悪性腫瘤にシリンジまたはファイバースコープのニードルで注射される;または
(xiii)悪性リンパ腫または転移を伴うリンパ節であり、アントラサイクリン塩基は、患者の皮膚からニードルを使用して悪性腫瘤に注射されるか、もしくは腹腔鏡手術中に患者の腹壁に開けられた孔を介して、もしくは胸腔鏡手術中に患者の胸壁に開けられた孔を介して注射される。
【0128】
[00149]本発明はさらに、粉末または凍結乾燥アントラサイクリン塩基からなる薬物を含有する第1のバイアルと、アントラサイクリン塩基を腫瘍に送達するために必要な薬学的に許容される賦形剤を含有する第2のバイアルとを含むキットであって、薬学的に許容される賦形剤は、約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEG、オレイン酸、グリセロール、エタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、tert-ブチルアルコールから選択されるアルコール、またはそれらの組み合わせを含む、キットに関する。他の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、アルコールとPEGとの組み合わせを含む。ある特定の好ましい実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、PEG、オレイン酸、グリセロールおよびエタノールを含む。
【0129】
[00150]本発明はさらに、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基、エリブリン塩基またはアルキル化剤塩基を含む粉末または液体化学療法塩基からなる薬物を含有する第1のバイアルと、化学療法塩基を腫瘍に送達するために必要な薬学的に許容される賦形剤を含有する第2のバイアルとを含むキットであって、薬学的に許容される賦形剤は、約PEG200~約PEG400の分子量を有するPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、植物油、エタノール、ベンジルアルコール、から選択されるアルコール、またはそれらの組み合わせを含む、キットに関する。ある特定の好ましい実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、エタノールとPEGまたはオレイン酸、中鎖トリグリセリド、植物油およびグリセロールとの混合物を含む。注射剤の粘度を下げるためにアルコールが使用された。
【0130】
[00151]本発明はさらに、塩基性化学療法薬を含有する第1のバイアルと、腫瘍への薬物の送達のための薬学的に許容される賦形剤を含有する第2のバイアルとを含む、腫瘍内注射可能な製剤キットであって、薬学的に許容される賦形剤は、PEG、オレイン酸、グリセリン、中鎖トリグリセリド、アルコール、薬学的に許容される希釈剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含み、PEGは、約PEG200~約PEG400の分子量を有し、アルコールは、エタノール、プロピレングリコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、塩基性化学療法薬は、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基、エリブリン塩基およびアルキル化剤塩基からなる群から選択される、キットに関する。ある特定の実施形態では、アントラサイクリン塩基は、ドキソルビシン塩基、エピルビシン塩基、ダウノルビシン塩基、アムルビシン塩基およびミトキサントロン塩基からなる群から選択され、薬学的に許容される賦形剤は、エタノール、ベンジルアルコールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルコールを含み、薬学的に許容される賦形剤は、エタノールとオレイン酸、PEG、ポリソルベート、中鎖トリグリセリドまたはグリセロールの混合物を含む。
【0131】
[00152]他の実施形態では、注射用製剤はアルコールを含有する。さらに他の実施形態では、注射用製剤はいかなるアルコールも含有しない。ある特定の好ましい実施形態では、注射用組成物は、局所がん組織への直接注射用であり、静脈注射用を意図しない。他の実施形態では、注射用組成物は、これらに限定されないが、オレイン酸エチル、安息香酸ベンジル、ポリソルベート、PEG、コレステロール、リン脂質、プロピレングリコール、グリセリン、エチルアルコール、ナイアシンアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)などの1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0132】
[00153]ある特定の好ましい実施形態では、アントラサイクリン塩基は、以下の、ドキソルビシン塩基、ダウノルビシン塩基、エピルビシン塩基、ピラルビシン塩基、バルルビシン塩基、アクラルビシン塩基、イダルビシン塩基、アムルビシンおよびミトキサントロン塩基のうちの1つである。
【0133】
[00154]ある特定の好ましい実施形態では、ビンカアルカロイド塩基は、以下の、ビンブラスチン塩基、ビンクリスチン塩基、およびビンデシン塩基のうちの1つである。
[00155]ある特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤塩基は、以下の、メクロレタミン塩基およびベンダムスチン塩基のうちの1つである。
【0134】
[00156]本発明は、哺乳動物の悪性腫瘤を処置する方法であって、請求項1に記載の腫瘍内注射用製剤を悪性腫瘤に直接投与することを含み、悪性腫瘤は、皮膚、目、舌、口、甲状腺、乳房、子宮頸部、子宮、肛門、前立腺、膣、骨の肉腫、膀胱、尿管、尿道、陰茎、精巣、精巣上体、鼻咽頭、肝臓、腎臓、膀胱、卵巣、卵管、膵臓、リンパ節転移、腹腔の腹膜転移、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、盲腸、直腸、肺、気管、喉頭、脳、転移性乳がん、転移性ウィルムス腫瘍、カポジ肉腫、転移性神経芽細胞腫または転移性軟組織肉腫に位置する原発性または二次性腫瘍である、方法にさらに関する。
【0135】
[00157]本発明はまた、アントラサイクリン塩基、エリブリン塩基、ビンカアルカロイド塩基、およびアルキル化剤塩基からなる群から選択される塩基性化学療法薬を、分子量200~400のPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、液体アルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む有機液体に溶解することを含む腫瘍内注射用製剤を作製する方法に関する。ある特定の実施形態では、腫瘍内注射用製剤は、溶液または懸濁液である。他の実施形態では、腫瘍内注射用製剤は、エマルジョンである。
【0136】
[00158]本発明はまた、腫瘍内注射用エマルジョン製剤を作製する方法であって、1)ビンカアルカロイド塩、アルキル化剤塩、エリブリン塩およびアントラサイクリン塩からなる群から選択される化学療法薬の酸性塩と、水性媒体中のモル量がほぼ等しい塩基または塩基性塩とで、塩基性化学療法薬の水懸濁液を形成するステップと;2)酢酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少量の有機酸を前記懸濁液に加えて緩衝液として作用させるステップと;3)得られた脱塩塩基性化学療法水混合物を、分子量200~400のPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、エタノール、ベンジルアルコール含む液体アルコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される生体適合性担体と混合するステップとを含み、エマルジョンは、注射用製剤の総体積の約0.5%~約15%の量の水を含む、方法に関する。ある特定の実施形態では、ビンカアルカロイド塩は、ビンブラスチン硫酸塩、塩化ビンブラスチン、ビンクリスチン硫酸塩、塩化ビンクリスチン、ビンデシン硫酸塩、および塩化ビンデシンからなる群から選択され、前記アントラサイクリン塩が、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン硫酸塩、ドキソルビシンクエン酸塩、エピルビシン塩酸塩、エピルビシン硫酸塩、エピルビシンクエン酸塩、ダウノルビシン塩酸塩、ダウノルビシン硫酸塩、ダウノルビシンクエン酸塩、ミトキサントロン塩酸塩、ミトキサントロン硫酸塩、ミトキサントロンクエン酸塩、アムルビシン塩酸塩、アムルビシン硫酸塩、アムルビシンクエン酸塩、イダルビシン塩、アクラルビシン塩およびバルビシン塩からなる群から選択され、アルキル化剤塩は、ベンダムスチン塩酸塩、ベンダムスチン硫酸塩、メクロレタミン塩酸塩、メクロレタミン硫酸塩、プロカルバジン塩酸塩、およびプロカルバジン硫酸塩からなる群から選択される。
【0137】
[00159]本発明はさらに、腫瘍内注射用油中水型エマルジョンを作製する方法であって、化学療法薬の酸性塩を、注射用エマルジョンの総体積の15%未満の量の水に溶解させるステップと;ビンカアルカロイド塩、アルキル化剤塩、エリブリン塩およびアントラサイクリン塩からなる群から選択される化学療法薬の塩形態を水性媒体中のモル量がほぼ等しい塩基または塩基性塩により脱塩して、塩基性化学療法薬の水懸濁液を形成するステップと;酢酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸を含む少量の有機酸を懸濁液に加えて緩衝液として作用させ、脱塩化学療法薬混合物を形成するステップと;得られた脱塩塩基性化学療法薬混合物を、分子量200~400のPEG、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、グリセロール、エタノール、および/またはベンジルアルコール含む液体アルコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される生体適合性担体と混合するステップ、とを含み、製剤はエマルジョンである、方法に関する。ある特定の実施形態では、ビンカアルカロイド塩は、ビンブラスチン塩(例えば、ビンブラスチン硫酸塩)、ビンクリスチン塩(例えば、ビンクリスチン硫酸塩)、およびビンデシン塩(例えば、ビンデシン硫酸塩)からなる群から選択され;アントラサイクリン塩は、ドキソルビシン塩(例えば、ドキソルビシン塩酸塩)、エピルビシン塩(例えば、エピルビシン塩酸塩)、ダウノルビシン塩(例えば、ダウノルビシン塩酸塩)、ミトキサントロン塩(例えば、ミトキサントロン塩酸塩)、イダルビシン塩(例えば、イダルビシン塩酸塩)、アムルビシン塩およびバルルビシン塩(例えば、バルルビシン塩酸塩)からなる群から選択され;アルキル化剤塩は、ベンダムスチン塩(例えば、ベンダムスチン塩酸塩)、メクロレタミン塩(例えば、メクロレタミン塩酸塩)およびプロカルバジン塩(例えば、プロカルバジン塩酸塩)からなる群から選択される。
【0138】
[00160]本明細書に記載の発明をより完全に理解するために、本開示の目的のために以下の定義が提供される。
[00161]「患者」という用語は、本明細書に開示される製剤および方法によって処置される任意の動物を広く指す。本発明の製剤および方法は、任意の動物、例えば、ヒト(好ましい実施形態)、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシなどを含むがこれらに限定されない任意の脊椎動物に処置を提供することができる。好ましい実施形態では、患者はヒトである。患者(ヒトなど)は、疾患が進行していても、または腫瘍負荷が少ないなど、疾患の程度が小さくてもよい。いくつかの実施形態では、患者は、増殖性疾患(がんなど)の初期段階にある。他の実施形態では、患者は、増殖性疾患(進行がんなど)の進行した段階にある。
【0139】
[00162]本明細書で使用される場合、「単位用量」という用語は、哺乳動物対象の単一用量として好適な物理的に別個の単位を指す。
[00163]「含む(comprising)」という用語は、用語の後に列挙されている要素を含有する、包含する、包摂する、または含むことを意味すると解釈される包括的な用語であるが、他の引用されていない要素を除外しない。
【0140】
[00164]「治療有効量」とは、疾患を処置するために動物に投与されたときに、所望の治療効果を作出するのに十分な量を意味する(例えば、その疾患の処置に影響を与えるために)。
【0141】
[00165]本明細書で使用される場合、疾患を「処置すること」または疾患の「処置」という用語は、疾患の素因があり得るが、まだ疾患の症状を経験していないかまたは示さない動物において疾患が発生するのを防ぐこと(予防的処置)、疾患を阻害すること(その発症を遅らせることまたは阻止すること)、疾患の症状または副作用を軽減させること(緩和処置を含む)、および疾患を軽減させること(病気の退行を引き起こすこと)を含む。
【0142】
[00166]「組成物」および「製剤」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0143】
図1】[00167]強度重み付けNICOMP分布分析のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0144】
[00168]本発明は、種々の特定の好ましい実施形態および技術を参照して説明される。しかし、本発明の精神および範囲を維持しながら、多くの変形および修正を行うことができることを理解されたい。
【0145】
[00169]現在の診療において、最も進行した固形腫瘍の標準的な処置は、外科的除去であり、多くの場合化学療法がこの後に行われる。しかし、(前述のように)この処置は多くの場合不成功となり、化学療法は、多くの場合そのような薬剤によって引き起こされる副作用によって制限される。
【0146】
化学療法剤
[00170]がん患者の静脈または動脈に注射された化学療法剤は、がん細胞に入ることなく腫瘍から運び去られる可能性があり、したがって、有効性(例えば、細胞殺傷効果)は弱い。対照的に、脂質溶解化学療法剤が腫瘍に直接注射される場合、それはより長い期間にわたってその効果を発揮することができ、より容易にがん細胞に入ることができる。
【0147】
[00171]本発明の製剤に有用な化学療法剤の例としては、アントラサイクリン塩基、アルキル化剤塩基、エリブリン塩基またはビンカアルカロイド塩基が挙げられ、これらはすべて水不溶性であり、その塩酸塩、メシル酸塩または硫酸塩とは異なる。そのような化学療法塩基注射剤(例えば、アントラサイクリン塩基注射剤、アルキル化塩基注射剤またはビンカアルカロイド塩基注射剤)は、注射用製剤での使用について、またはより具体的には、腫瘍への企図される局所注射剤についてこれまで考慮されていなかった。
【0148】
[00172]好ましくは、アントラサイクリン塩基は、ドキソルビシン塩基、ダウノルビシン塩基、エピルビシン塩基、ミトキサントロン塩基、アムルビシン塩基、ピラルビシン塩基、バルビシン塩基、イダルビシン塩基およびアクラルビシン塩基を含む。好ましくは、アルキル化剤塩基は、メクロレタミン塩基およびベンダムスチン塩基を含む。
【0149】
[00173]好ましくは、ビンカアルカロイド塩基は、ビンブラスチン塩基、ビンクリスチン塩基、およびビンデシン塩基を含む。
製剤の投与
[00174]本発明の注射用製剤および処置に使用されるアントラサイクリン塩基、エリブリン塩基、ビンカアルカロイド塩基またはアルキル化剤塩基を含む化学療法塩基は、好ましくは、当業者に知られている治療有効量で投与される。ある特定の実施形態では、治療有効量は、最大の治療効果をもたらす量である。他の実施形態では、治療有効量は、最大治療効果よりも低い治療効果をもたらす。例えば、治療有効量は、最大の治療効果をもたらす投与量に関連する1つまたは複数の副作用を回避しながら、治療効果を生み出す量であり得る。臨床および薬理学分野の当業者は、慣例的な実験を通じて、すなわち、薬剤の投与に対する対象の応答を監視し、それに応じて投与量を調整することによって、治療有効量を決定することができるであろう。追加の指針については、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第22版、Pharmaceutical Press、London、2012年、およびGoodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第12版、McGraw-Hill、New York、N.Y.、2011年を参照のこと、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0150】
【表1】
【0151】
[00175]ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤は、白金系化学療法の後に疾患が進行または再発した卵巣がんの患者の処置、以前の全身化学療法の失敗後の、またはそのような治療に不耐性である患者におけるAIDS関連カポジ肉腫の処置、および多発性骨髄腫の処置に承認されている。ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤は、アントラサイクリンの累積投与量が450mg/m~550mg/mの間である場合、心筋症のリスクが11%になる心筋損傷を引き起こす可能性がある。ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤により、深刻な、生命を脅かす致命的な注入関連反応が発生する可能性がある。急性注入関連反応は、固形腫瘍を有する患者の11%で発生した。
【0152】
[00176]上記のように、本発明の製剤の潜在的な用途には、体内の悪性がんまたは肉腫塊への直接投与(例えば、注射)が含まれる。ある特定の実施形態では、潜在的な処置部位としては、以下のがんまたは腫瘍:肝細胞癌、肝臓の転移性がん、進行性肝細胞癌、膵臓がん、腺癌、肥満細胞腫または肥満細胞腫瘍、卵巣がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、黒色腫、網膜芽細胞腫、乳房腫瘍、結腸直腸癌、組織球性肉腫、脳腫瘍、星状細胞腫、膠芽腫、神経腫瘍、神経芽細胞腫、結腸癌、子宮頸癌、任意の臓器の肉腫、前立腺腫瘍、膀胱腫瘍、細網内皮組織の腫瘍、ウィルムス腫瘍、カポシ肉腫、がん、または骨の骨肉腫、腎がん、または頭頸部がん、口腔がん、喉頭がん、または中咽頭がん、乳がん、泌尿生殖器がん、胃腸がん、類表皮がん、黒色腫、および骨への転移が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のより広い意味において、本発明の製剤および処置は、過剰増殖状態、例として過形成、線維症(特に呼吸器だけでなく、腎線維化などの他のタイプの線維症)、血管新生、乾癬、アテローム性動脈硬化症、および血管における平滑筋増殖、例として血管形成術後の狭窄または再狭窄から選択される増殖性疾患を処置するために使用され得る。ある特定の実施形態では、製剤および処置は、膵臓がん以外の胃腸がんに関して使用される。いくつかの実施形態では、増殖性疾患は、がんである。いくつかの実施形態では、増殖性疾患は、非がん性疾患である。いくつかの実施形態では、増殖性疾患は良性または悪性腫瘍であり、元の臓器または組織および/または腫瘍の他の任意の場所での転移を包含する。いくつかの特定の実施形態では、原発性腫瘍を処置する方法が提供される。いくつかの特定の実施形態では、原発性腫瘍から転移したがんを処置する方法が提供される。いくつかの特定の実施形態では、進行した段階でがんを処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、例えば、進行性乳がん、ステージIV乳がん、局所進行性乳がん、および転移性乳がんを含む、乳がん(HER2陽性またはHER2陰性)を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC、例として、進行性NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC、例として進行性SCLC)、および肺における進行性固形悪性腫瘍を含む、肺がんを処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、卵巣がん、頭頸部がん、胃悪性腫瘍、黒色腫(転移性黒色腫を含む)、結腸直腸がん、膵臓がん、および固形腫瘍(進行性固形腫瘍など)のいずれかを処置する方法が提供される。
【0153】
[00177]本発明の方法において、化学療法剤は、好ましくは、(直接)注射を介して、体のがんまたは肉腫の悪性腫瘤に直接投与される。皮膚、目、舌、口、甲状腺、乳房、子宮頸部、子宮、肛門、前立腺、陰茎、膣の表在性悪性疾患、骨の肉腫、尿道の癌などの場合、塩基性化学療法薬、例としてアントラサイクリン塩基、エリブリン塩基、ビンカアルカロイド塩基、またはアルキル化剤塩基は、希釈せずにシリンジを使用して悪性腫瘤に直接注射することができる。
【0154】
[00178]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、シリンジを用いて悪性腫瘤に直接注射される。本実施形態は、例えば、腹腔鏡手術の孔を介し、肝臓、腎臓、胆嚢、卵巣、卵管、膵臓のがん、リンパ節の転移、または腹腔の直接腹膜浸潤に特に有用である。
【0155】
[00179]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、鼻咽頭鏡を介してシリンジまたはニードルを用いて悪性腫瘤に注射される。本実施形態は、例えば、鼻咽頭のがんに対して特に有用である。
【0156】
[00180]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、超音波の補助により、皮膚から悪性腫瘤にシリンジを使用して注射される。本実施形態は、例えば、肝臓、腎臓、および胆嚢のがんに対して特に有用である。
【0157】
[00181]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、腹腔鏡下でニードルを用いて悪性腫瘤に注射される。本実施形態は、例えば、卵巣、卵管、膵臓のがん、リンパ節の転移、または腹腔の直接腹膜浸潤に特に有用である。
【0158】
[00182]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、腸鏡を介して、または腹腔鏡または胸腔鏡手術との併用療法を介して、悪性腫瘤に注射される。本実施形態は、例えば、食道、胃、十二指腸、および/または小腸の癌腫または肉腫に対して特に有用である。
【0159】
[00183]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、結腸内視鏡検査または腹腔鏡手術との併用療法を介して、ニードルを用いて悪性腫瘤に注射される。本実施形態は、例えば、大腸および/または直腸の癌腫または肉腫を処置するのに特に有用である。
【0160】
[00184]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、ファイバー気管支鏡のニードルを用いて悪性腫瘤に注射される。本実施形態は、例えば、喉、肺、および/または気管の癌腫または肉腫を処置するのに特に有用である。
【0161】
[00185]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、超音波、X線、CTスキャン、MRスキャンを活用して、または胸腔鏡手術の胸壁の孔を介して、シリンジを用いて注射される。本実施形態は、例えば、肺および胸部の癌腫、胸部のリンパ腫、または胸部のリンパ節転移を処置するのに特に有用である。
【0162】
[00186]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、膀胱鏡を介して、または腹腔鏡手術中に腹壁に開けられた孔を介して、ニードルで悪性腫瘤に注射される。本実施形態は、例えば、膀胱の癌腫または肉腫を処置するのに特に有用である。
【0163】
[00187]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、子宮鏡を介してシリンジまたはニードルを用いて悪性腫瘤に注射される。本実施形態は、例えば、子宮の癌腫または肉腫、子宮頸部の癌腫、子宮内膜癌を処置するのに特に有用である。
【0164】
[00188]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、喉頭鏡を介してニードルを用いて悪性腫瘤に注射される。本実施形態は、例えば、咽頭および/または喉頭の癌腫または肉腫を処置するのに特に有用である。
【0165】
[00189]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、ファイバースコープ、X線、CTスキャンまたはMRスキャンを活用して頭蓋骨の対応する骨に穿孔した後、悪性腫瘤にニードルで注射される。本実施形態は、例えば、脳の癌腫を処置するのに特に有用である。
【0166】
[00190]当業者は、異なる臓器のがんまたは肉腫に対する用量が、処置される腫瘤のサイズまたは体積に依存することを理解するであろう。
[00191]当業者は、異なる臓器のがんまたは肉腫の2つの局所注射の間の時間間隔が、処置される腫瘍の塊の増殖の倍加時間に依存することを理解するであろう。
【0167】
[00192]ある特定の好ましい実施形態では、製剤は、約20mlの薬学的に許容される担体(例えば、PEG300)中に治療有効用量(例えば、約38mg)のドキソルビシン塩基を含む。一般に、投与量は、腫瘤のサイズまたは体積に応じて、約1~約10mlの溶液または懸濁液である。使用される薬物の体積は、好ましくは、腫瘤の約6%よりも小さくなければならない;そうしないと、液体が注射部位から流出する。ある特定の実施形態では、腫瘍には、週に1回薬物が注射される。注射の回数および注射間の時間は、当業者の知識の範囲内であり、腫瘍のサイズまたは体積に部分的に依存している。ある特定の実施形態では、2回の注射間の時間は約1週間である。
【0168】
[00193]ある特定の好ましい実施形態では、製剤は、mlあたり15mgのダウノルビシン塩基を含み、薬学的に許容される担体は、緩衝液として酢酸および水酸化ナトリウムを含むオレイン酸とエタノールとの混合物である。一般に、投与量は、腫瘤のサイズまたは体積に応じて、約1~約10mlの溶液、懸濁液またはエマルジョンである。使用される薬物の体積は、好ましくは、腫瘤の6%よりも小さくなければならない;そうしないと、液体が注射部位から流出する。ある特定の実施形態では、腫瘍には、週に1回薬物が注射される。別の実施形態では、腫瘍には4日ごとに注射される。注射の回数、注射間の時間、および注射の濃度は、腫瘍のサイズおよび腫瘍のタイプに依存しており、これは当業者の知識の範囲内である。ある特定の実施形態では、2回の注射間の時間は約1週間である。他の実施形態では、2サイクルの処置の2回の注射間の時間は、約4~約10日である。一部のがんは倍加時間が短いため、注射の間隔は4日以下になる場合がある。
【0169】
[00194]ある特定の実施形態では、注射用製剤は、特に注射によって到達するのが困難な場所において、ファイバースコープを使用することによって投与される。ファイバースコープの使用は、低侵襲手術と考えられる。塩基性化学療法剤(例えば、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基またはアルキル化剤塩基)は、ファイバースコープ、腹腔鏡のシリンジ、胸腔鏡または他の医療機器の使用を介して、脳内、胸腔内、または腹腔内の腫瘍に投与することができると考えられる。例えば、原発性腫瘍が転移したある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、原発悪性腫瘤および任意の二次腫瘍の両方に投与される。
【0170】
[00195]本発明の方法により、患者への外傷を少なくして、正常細胞に対する害(化学療法剤が全身投与されたときに起こる)を与えることなくがん細胞を殺すことが可能になる。塩基性化学療法剤(例えば、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基またはアルキル化剤塩基)を悪性腫瘍に直接注射することによっても、多くの一般的な副作用が大幅に軽減または排除される。例えば、手術を、悪性腫瘍への例えばダウノルビシン塩基の直接注射に置き換えることにより、舌または口の癌腫を有する患者の顔の変形、乳がんを有する患者における乳房の喪失、骨肉腫を有する患者における脚の切断、および子宮頸がんまたは子宮の初期がんを有する患者の子宮の喪失を防ぐ。アントラサイクリン塩基、エリブリン塩基、ビンカアルカロイド塩基、または塩基性アルキル化剤を悪性腫瘍に直接注射すると、骨髄抑制、神経毒性、肺損傷、肺線維症、急性心毒性、心不全、心臓内伝導障害、不整脈、胃腸反応、および/または脱毛症などの副作用も軽減または排除される。
【0171】
[00196]がんの「種子」は、がん転移の土壌および種子の仮説で仮定されているように、ある特定の選択された部位(「土壌」)でのみ増殖する。転移および悪性腫瘍の原発性腫瘤が小さければ、それは患者の生命を脅かすことはできない。腫瘍が大きい場合は、CTスキャンまたはMRスキャンまたはファイバースコープを活用して簡単に検出することができる。ファイバースコープおよび/または腹腔鏡の補助により、本発明の製剤(例えば、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基または塩基性アルキル化薬を活性成分として含む)を、正常な(周囲)組織に影響を与えることなく、大きな腫瘍に直接注射することができ、これにより、がん細胞の殺傷が可能になり(例えば、腫瘤を小さくするかまたは腫瘍を縮小する)、悪性腫瘤の増殖を遅らせるかはまたは停止させ、進行がんを有する患者が腫瘍と共に生きることが可能になる。アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基、またはアルキル化剤塩基などの塩基性化学療法薬が腫瘍に注射されると、その薬物は血管またはリンパ管に沿って転移に流れ、転移細胞を殺傷する。腫瘍への塩基性化学療法薬の注射は、患者への外傷をほとんどもたらさず、例えば、月に何回も繰り返すことができる。
【0172】
製造
[00197]本発明の注射用製剤は、当業者に知られているさまざまな方法のいずれかで使用するために調製することができる。製剤は、事前に調製し、必要になるまで、有効量の防腐剤を任意に含む滅菌形態で保存することができる。あるいは、塩基性化学療法薬を固体または液体形態で保存し、投与される直前の時点で、すなわち、使用前1時間以内に、または好ましくは使用の約15分前に、製剤を注射用製剤に再構成することが好ましい場合がある。このような場合、アントラサイクリン塩基、エリブリン塩基、ビンカアルカロイド塩基またはアルキル化剤塩基を含む塩基性化学療法薬は、生体適合性担体とは別に保存する。
【0173】
[00198]使用前に、塩基性化学療法剤、例えばアントラサイクリン塩基、エリブリン塩基、ビンカアルカロイド塩基またはアルキル化剤塩基は、薬学的に許容される担体に好ましくは含める。薬学的に許容される担体には、PEG、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、tert-ブチルアルコール、オレイン酸、中鎖トリグリセリド、植物油、ポリソルベートなどの1つまたは複数、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。薬学的に許容される担体は、組成物の成分および(例えば、ヒトの)患者の両方と適合しなければならない。
【0174】
[00199]ある特定の好ましい実施形態では、本発明の製剤は、アントラサイクリン塩基を、PEG、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、tert-ブチルアルコールおよびオレイン酸と共に含む。ある特定の好ましい実施形態では、PEGは、約100~約400、好ましくは約200~約400、または好ましくは約200~約300の分子量を有し、最も好ましくは、PEGは、PEG200、PEG300、PEG400、および前述のいずれかの混合物から選択される。
【0175】
[00200]ある特定の実施形態では、アントラサイクリン塩基は水に不溶性である。ある特定の実施形態では、アントラサイクリン塩基は、ダウノルビシン塩基、ドキソルビシン塩基、エピルビシン塩基、バルルビシン塩基、アムルビシン塩基、ピラルビシン塩基、イダルビシン塩基、ミトキサントロン塩基、および/またはアクラルビシン塩基またはそれらの組み合わせを含む。そのような実施形態では、好ましくは、注射用組成物は、アントラサイクリン塩基を十分に溶解または懸濁して、それを所望の部位、例えば、悪性腫瘤に注射することができる注射用の1つまたは複数の有機賦形剤を含有する。ある特定の実施形態では、注射用組成物は、他の溶媒を含有しない。他の実施形態では、注射用製剤はアルコールを含有する。他の実施形態では、注射用製剤はアルコールを含有しない。他の実施形態では、注射用組成物は、これらに限定されないが、オレイン酸エチル、安息香酸ベンジル、ポリソルベート、PEG、オレイン酸、コレステロール、リン脂質、プロピレングリコール、グリセリン、エチルアルコール、ナイアシンアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ポリソルベート、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)、有機酸などの1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含有する。ある特定の好ましい実施形態では、注射用組成物中の賦形剤は、PEG、オレイン酸、中鎖トリグリセリド、植物油、グリセロールおよびエタノールを含む。ある特定の好ましい実施形態では、注射用組成物は、局所がん組織への直接注射用であり、静脈注射用ではない。ある特定の実施形態では、注射用組成物は、2つ以上のアントラサイクリン塩基を含む。
【0176】
[00201]ある特定の実施形態では、注射用の薬学的に許容される溶媒(担体)中のアントラサイクリン塩基の濃度は、約0.5mg/1ml~約25mg/mlである。ある特定の好ましい実施形態では、注射用の薬学的に許容される溶媒(担体)中のアントラサイクリン塩基の濃度は、約5mg/5ml~約25mg/5mlである。他の好ましい実施形態では、注射用の薬学的に許容される溶媒(担体)中のアントラサイクリン塩基の濃度は、約5mg/ml~約20mg/mlである。
【0177】
[00202]ある特定の実施形態では、注射用製剤は、緩衝液を含み得る。緩衝液は、製剤のpHを注射可能な範囲、例えば、約pH3.5~約pH7、好ましくは約pH4~約pH6.0に調整するために適切な量で使用する。緩衝液は、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アルギニン、トリエタノールアミン、酢酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、およびクエン酸であり得る。注射用製剤は、2つ以上の緩衝液を含有し得る。
【0178】
[00203]ある特定の実施形態では、注射用製剤は、本製剤の浸透圧を注射可能な範囲に調整するための等張剤を含み得る。等張剤は、例えば、塩化ナトリウム、およびD-マンニトールであり得る。好ましくは、等張剤はD-マンニトールである。本発明の他の好ましい実施形態では、等張剤は塩化ナトリウムである。
【0179】
[00204]本発明のある特定の実施形態では、本発明の注射用製剤は、後で使用するために、事前に混合し、薬学的に許容される容器(例えば、バイアル)に保存する。そのような実施形態では、注射用製剤は、例えば、米国食品医薬品局(the United States Food and Drug Administration)(「FDA」)などの政府規制当局によって提供されるガイドラインに従って適切な安定性を提供するものであることが好ましい。他の実施形態では、塩基性化学療法薬(例えば、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基または塩基性アルキル化剤)は、別々に供給し、本明細書に記載されるものなどの不活性な薬学的に許容される成分と一緒に、短時間内、または例えばヒト患者の腫瘍に注射する直前に混合することが企図される。そのような実施形態では、塩基性化学療法薬は1つの容器に保存されてもよく、注射用の薬学的に許容される担体は別の容器に保存されてもよく、薬学的に許容される担体は有機液体である。2つの容器の内容物を混合した後、薬学的に許容される注射用製剤を形成することが好ましく、これは、ある特定の実施形態では、懸濁液であり得、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基またはアルキル化剤塩基の持続放出を提供し得る。本発明の注射用製剤は、以下のステップを介して投与することができる。すなわち、本製剤を充填したバイアルから、内容物をニードルを介して注射シリンジに移し、次に腫瘍に直接投与する。
【0180】
[00205]さらに、ある特定の実施形態では、本製剤は、結晶化または凍結乾燥アントラサイクリン塩基を含有するバイアルなどの1つの容器に含めて、粉末充填製剤を与えてもよい。凍結乾燥製剤または粉末充填製剤は、そのバイアルの内容物を、アントラサイクリン塩基を腫瘍に送達するために必要な薬学的に許容される賦形剤を含有する第2のバイアルと混合することによって投与することができる。例えば、第2のバイアルは、例えば、アントラサイクリン塩基用の注射液を含み得、最終製剤は、使用直前に第1のバイアルのアントラサイクリン塩基を第2のバイアルの注射液と混合することによって調製する。さらに、第2の容器の注射液は、例えば、滅菌し、および/または濾過によって滅菌し、次いでバイアルに充填することができる。アントラサイクリン塩基の粒子をバイアルに充填し、ガンマ線照射によって滅菌することができる。例えば、アントラサイクリン塩基粒子および懸濁液(または溶液)媒体を、即座に混合して、投与前に注射用のビヒクル中に化学療法粒子を懸濁または溶解することができる。
【0181】
[00206]ある特定の実施形態では、塩基化学療法剤は、多くの事前製造された化学療法塩基が安定ではないため、注射用製剤の製造時に化学療法剤の酸性塩の脱塩によって調製される。ある特定の他の実施形態では、例えば、化学療法剤がミトキサントロンまたはメルクロレタミンである場合、塩基性形態は安定であり、注射用製剤の製造前に作製されることが好ましい。
【0182】
[00207]本発明による注射用製剤は、アントラサイクリン塩基、ビンカアルカロイド塩基またはアルキル化剤塩基を、少なくとも1時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも30時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間またはそれ以上の持続放出で投与するのに有用であり得る。
【0183】
[00208]塩基性化学療法剤、特にアントラサイクリンの腫瘍内注射に関する本発明は、アントラサイクリン塩基が水に不溶性であり、注射部位から離れた臓器に運び去ることができないため、静脈内注射の全身性副作用の発生を防ぐことができる。アントラサイクリン塩酸塩注射剤は、静脈注射にのみ有用であり、脂溶性ではなく、がん細胞の細胞膜を通過することができないため、悪性腫瘤での使用には適していない。アントラサイクリン塩基注射剤は、腫瘍内注射専用であり、脂溶性でがん細胞の細胞膜を通過することができるため、悪性腫瘤での使用に適している。アントラサイクリン塩酸塩注射剤は、96体積%超の水を含有し、これは2~80℃で安定であるが、アントラサイクリン塩基注射剤は、溶液の15体積%以下の水を含有し、-5℃未満で保存した場合にのみ安定である。
【0184】
[00209]本発明の油中水型エマルジョンを製造する1つの方法において、化学療法薬の酸性塩を、塩基性化学物質または塩基性塩によって水性媒体中で脱塩して、塩基性化学療法薬、塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム(中性塩)、および水を製造した。次に、脱塩中に形成された塩基性化学療法薬を、エタノールとオレイン酸、MCT、PEG、グリセロール、または植物油との混合物などの有機溶媒の混合物と混合した。弱酸を緩衝剤として混合物に加え、エマルジョン中の塩基性化学療法薬の溶解度を増加させた。次に、混合物を撹拌した後、水溶液を油相に分散させた。有機溶媒がオレイン酸などの弱酸の場合。
【0185】
[00210]ダウノルビシン塩基は、濃褐色の粉末である。ダウノルビシン塩基は、分子量が527.5g/molでより小さいという点で、ダウノルビシン塩酸塩とは異なる。その分子式はC2729NO10である。水1mlあたり10mgの場合、そのpHは9.3である。ダウノルビシン塩基は水に不溶性であるが、オレイン酸、PEG、エタノールなどの有機液体にはわずかに可溶性である。それは、塩基形態では安定ではない。
【0186】
[00211]本発明のダウノルビシン腫瘍内注射用製剤は、溶液、懸濁液、または油中水(W/O)タイプのナノエマルジョンであり得る。ダウノルビシン腫瘍内注射溶液において、ダウノルビシン塩基は、エタノールとオレイン酸、PEG、グリセロールまたは他の有機化学物質との混合物であり得る有機溶媒に完全に可溶性である。ダウノルビシン腫瘍内注射用懸濁液では、ダウノルビシンの濃度が高すぎるため、ダウノルビシン塩基は有機溶媒に不完全に可溶性である。過飽和溶液のダウノルビシン塩基が混合物から沈殿する。
【0187】
[00212]油中水型ナノエマルジョンは、一定量のダウノルビシン塩酸塩(例えば、約0.3%~約2.5%)および同モル重量の水酸化ナトリウムを十分な量の水(例えば、容器内の注射剤の約4~約6%v/v)に溶解することによって製造される。脱塩塩基は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、重炭酸塩などの他のものであり得る。次に、エタノールおよびオレイン酸などの好適な量の有機液体(例えば、約90%~約96%)を容器に加えて、製造された塩基性化学物質、および緩衝液として少量の酢酸を溶解する。次に、本発明の溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に約2.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填する。2mg/mlを製造する濃度は0.2%であり、20mg/mlを製造する濃度は2%である。
【0188】
[00213]ダウノルビシン腫瘍内注射用油中水型ナノエマルジョンは、有機溶媒(例えば、約90%~約96%)に溶解されたダウノルビシン塩基(例えば、約0.2%~約2.5%)、水(例えば、約4%~約6%)、オレイン酸(例えば、約40~約85%)、エタノールまたはベンジルアルコールなどのアルコール(例えば、約60%~約15%)、および緩衝液としての酢酸(例えば、約0.1%~約0.5%)を含む。これは、室温で2か月間保存する場合安定ではないが、-5℃以下で8か月間保存する場合、安定である。
【0189】
[00214]腫瘍内注射剤を製造する別の方法は、ダウノルビシン塩基をアルコールおよびオレイン酸と混合することを含む。しかし、現在、市場で購入できる好適なダウノルビシン塩基はない。製剤製造前に塩基を製造する場合、プロセスが複雑で時間がかかり、製造されて得られる遊離塩基が長期間安定ではなく、関連物質が仕様の要件に適合しない場合があり、商用利用には好適ではない場合がある。したがって、製剤の製造中にアントラサイクリン塩基を製造することが好ましい。
【0190】
[00215]腫瘍内注射用製剤は、ダウノルビシン塩基を含有する1つのボトルと、アルコール、エタノール、ベンジルアルコール、PEG、オレイン酸、中鎖トリグリセリド、ポリソルベートなど、またはそれらの混合物を含む有機液を含有する第2のボトルで構成され得る。このキットは、がんまたは肉腫などの悪性腫瘤に投与する前に混合するように設計されている。キットの2つのボトルを混合した後に形成された製品は直ちに注射されるため、形成された薬物が溶液、懸濁液、乳濁液、またはそれらの混合物であるかどうかは関係ない。
【0191】
[00216]ドキソルビシン塩基の分子式はC2729NO11である。その分子量は543.5g/molである。ドキソルビシン塩基はアルコールにはわずかに可溶性であり;無水メタノールに適度に可溶性である。5mlの水中の10mgのドキソルビシン塩基のpHは7.9である。現在、市場には、ドキソルビシン塩基の製剤は存在しない。
【0192】
[00217]本発明のドキソルビシン腫瘍内注射用製剤は、溶液、油中水型ナノエマルジョン、または懸濁液であり得る。ドキソルビシン塩基注射剤の製造方法は、ダウノルビシン塩基性腫瘍内注射剤と同様の溶液、懸濁液、または油中水型エマルジョンの形態であり得る。ナノエマルジョンは、有機溶媒(例えば、約85体積%~約96体積%)に溶解されたドキソルビシン塩基(例えば、約0.2%~約1.5%)を含む。好ましい実施形態は、約40~約85%のオレイン酸、エタノール、ベンジルアルコール、またはそれらの混合物などの、約60%~約15%のアルコール、約4~約15%の水、および緩衝液として約0.1%~約1%の酢酸を含む。これは、室温で2か月間保存する場合安定ではないが、-5℃未満で2か月間保存する場合、安定である。本発明は、例えば、約0.2%~約1.5%のドキソルビシン塩酸塩および同じモル重量の水酸化ナトリウムを、容器内の注射剤の約5%v/vの注射用水中で反応させることによって製造することができる。ドキソルビシン塩基を形成するために、脱塩塩基は、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸塩、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、酢酸カリウムもしくはリン酸カリウム、またはそれらの混合物であり得る。次に、例えば約85%~約96%の有機液体、例としてエタノールおよび例えば約40%~約85%のオレイン酸を容器に加え、これに、緩衝液として例えば約0.1%~約0.5%の酢酸を加える。
【0193】
[00218]本発明のエピルビシン腫瘍内注射用製剤は、有機溶液、懸濁液、または油中水型ナノエマルジョンである。ナノエマルジョンは、例えば、約85体積%~約96体積%の有機溶媒に溶解された、例えば、約0.2%~約1.5%のエピルビシン塩基を含む。好ましい実施形態は、約30~約85%のオレイン酸、エタノール、ベンジルアルコール、またはそれらの混合物などの、約70~約15%のアルコール、約4%~約15%の水、および緩衝液として約0.1%~約1%の酢酸を含む。製剤は、室温で、例えば2か月間保存する場合安定ではないが、-5℃未満で8か月間保存する場合、安定である。
【0194】
[00219]本発明のエピルビシン塩基製剤の油中水型ナノエマルジョンは、エピルビシン塩酸塩と、同じモル重量の水酸化ナトリウムを、容器内の注射剤の約4%v/v~約15%v/vの注射用水中で反応させることによって製造することができる。脱塩用の塩基は、炭酸ナトリウム、重炭酸塩、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウムなどであり得る。好ましい実施形態では、約0.3%~約1.5%のエピルビシン塩酸塩および同じモル重量の水酸化ナトリウムを、容器内の注射剤の約4%v/v~約10%v/vの水に入れた。次に、例えば約90%~約96%の有機液体、例としてエタノールおよびオレイン酸を容器に加え、これに、緩衝液として約0.1%~約1%の酢酸を加えた。次に、本発明の溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、その後、およそ4.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填する。
【0195】
[00220]エピルビシン塩基は、塩化水素を含まない。本発明のエピルビシン塩基の式はC2729NO11であり、その分子量は543.5g/molである。エピルビシン塩基は、濃褐色の粉末であり、水に不溶性である。エピルビシン塩基の水への溶解度は、mlあたり0.093mgである。水中のエピルビシン塩基のpHは、pH8.0である。現在、市場にはエピルビシ塩基製剤は存在しない。
【0196】
[00221]本発明のエピルビシン腫瘍内注射用溶液または懸濁液は、エピルビシン塩基(例えば、約0.2%~約1.5%)を、有機溶媒、溶液またはそれらの混合物(例えば、約98.5%~約99.8%)と直接混合することによって製造された。有機液体は、エタノールまたはベンジルアルコールなどのアルコール、PEG、オレイン酸、中鎖トリグリセリド、ポリソルベートなど、またはそれらの混合物を含む。
【0197】
[00222]本発明に含まれるミトキサントロンは、塩化水素を有さないミトキサントロン塩基である。ミトキサントロン塩基の式はC2228であり、その分子量は444.5g/molである。ミトキサントロン塩基は水にやや難溶であり;メタノールにわずかに可溶性であり;アセトニトリル、クロロホルム、およびアセトンには実質的に不溶性である。水中のミトキサントロン塩基のpHは、pH9.42である(25mg/10mlの水中で)。
【0198】
[00223]本発明のミトキサントロン腫瘍内注射用製剤は、有機溶液、懸濁液、または油中水型ナノエマルジョンである。ナノエマルジョンは、有機溶媒(例えば、約99.5体積%)に溶解されたミトキサントロン塩基(例えば、約0.05%~約0.2%)を含む。好ましい実施形態は、約30~約85%のオレイン酸、エタノール、ベンジルアルコール、またはそれらの混合物などの、約70%~約15%のアルコール、約1%~約5%の水、および緩衝液として約0.1%~約1%の酢酸を含む。これは、室温で2か月間保存する場合安定ではないが、-5℃未満で例えば3か月間保存する場合、安定である。
【0199】
[00224]本発明のミトキサントロン塩基製剤の油中水型ナノエマルジョンは、ミトキサントロン塩酸塩(例えば、約0.05%~約0.2%)と、同じモル体積の水酸化ナトリウムとを、容器内の注射剤のv/v(例えば約4v/v%~約15v/v%)の注射用水中で反応させることによって製造される。脱塩用の塩基は、炭酸ナトリウム、重炭酸塩、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウムなどであり得る。次に、エタノールおよびオレイン酸などの有機液体(例えば、約90%~約96%)を容器に加え、これに、緩衝液として酢酸(例えば、0.1%~約0.5%)を加える。本発明の溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に約4.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填する。
【0200】
[00225]本発明のミトキサントロン腫瘍内注射用溶液または懸濁液は、ミトキサントロン塩基を好適な量の有機溶媒、溶液または混合物と直接混合することによって製造される。有機液体は、エタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール、PEG、オレイン酸、中鎖トリグリセリド、ポリソルベートなど、またはそれらの混合物を含む。
【0201】
[00226]ビンカアルカロイドの塩基形態は、硫酸塩形態とは異なる。ビンカアルカロイドの塩基形態と硫酸塩形態との比較を表2に示す。
【0202】
【表2】
【0203】
[00227]本発明のビンブラスチン腫瘍内注射剤は、有機溶液、懸濁液、または油中水型ナノエマルジョンであり得る。ビンブラスチン腫瘍内注射溶液は、アルコール、中鎖トリグリセリド、グリセロール、植物油、オレイン酸、PEG、または上記のいずれかの混合物などの有機液体にビンブラスチン塩基を添加することによって製造された。
【0204】
[00228]本発明のビンブラスチン油中水型ナノエマルジョン注射剤は、ビンブラスチン硫酸塩(例えば、0.1%~約1%)と、ほぼ同じモル重量の塩基性溶液、例としてNAOH、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、およびリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、カリウム塩、水酸化カリウム、酢酸カリウムなど、との反応によって製造される。得られたビンブラスチン塩基を、例えば、エタノール(例えば、20%~約70%)と中鎖トリグリセリド、グリセロール、植物油、オレイン酸、PEG、または上記のいずれかの混合物(例えば、30%~約80%)との混合物の約95%~約99%と混合する。次に、少量の酢酸を、緩衝液として加える(例えば、0.1%~約0.5%)。本発明の溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に4.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填する。
【0205】
[00229]ビンブラスチン硫酸塩は水溶性であるが、ビンブラスチン塩基は水溶性ではない。ビンブラスチン塩基の分子式はC4658であり、分子量は811g/molである。それは、淡緑色~白色の粉末である。ビンブラスチンは水に実質的に不溶性であるがアルコール、アセトン、クロロホルム、酢酸エチルに可溶性で、室温では不安定である。
【0206】
[00230]ビンブラスチン硫酸塩注射剤は、95体積%超の水を含有するが、ビンブラスチン塩基注射剤の含水量は、注射剤の10体積%以下を含有する。ビンブラスチン塩基の注射剤の含水量は、注射剤の体積の3%未満と低くてもよい。
【0207】
[00231]ビンクリスチン塩基は水溶性ではない。ビンクリスチン腫瘍内注射剤は、有機溶液、懸濁液、または油中水型ナノエマルジョンであり得る。ビンクリスチン腫瘍内注射剤の製造方法は、ビンブラスチン腫瘍内注射剤の製造方法と類似している。溶液の溶媒は、中鎖トリグリセリド、グリセロール、植物油、オレイン酸、エタノール、または上記のいずれかの混合物などの異なる有機液体を含み得る。ビンクリスチン塩基注射溶液または懸濁液の場合、製剤は、注射液の1体積%以下の水を含有する。本発明のビンクリスチン腫瘍内注射溶液は、約15%~約70%のアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、植物油、オレイン酸、または上記のいずれかの混合物などの、約30%~約85%の有機液体との混合物に、約0.5%~約1%のビンクリスチン塩基を加えることによって製造される。
【0208】
[00232]ビンクリスチン腫瘍内注射剤油中水型ナノエマルジョンは、約1%~約10%の水溶液中で、ビンクリスチン硫酸塩(例えば、0.05%~約0.5%)と、ほぼ同じモル重量の塩基との反応によって製造され、その後、約90%~約99%の有機溶媒の混合物を加え、エマルジョンの体積の約15%~約70%のアルコール、中鎖トリグリセリド、グリセロール、オレイン酸、植物油、または上記のいずれかの混合物などの、約30%~約85%の異なる有機液体を含有する有機溶媒を、上記の反応により得られた混合物に加える。アルコールは、例えば、エタノール、ベンジルアルコールを含むことができ、注射剤の粘度を下げるために使用される。ナノエマルジョンは、約1.5~約10体積%の水、緩衝液として約0.1%~約0.5%の酢酸を含む。水の量は多すぎないようにすべきであり、多すぎると、エマルジョンが2つの層に分かれてしまう。エマルジョンのpHは約4~6.05であった。ビンクリスチンの腫瘍内注射剤油中水型ナノエマルジョンは、エタノールおよびオレイン酸を含有し、平均粒径は15.3nmであった。エタノールおよびグリセロールを含有するビンクリスチン腫瘍内注射剤エマルジョンの場合、平均粒径は115.2nmであった。これは、粒子を小さくするために均質化されていない可能性があるグリセロールの高粘度が原因であり得る。
【0209】
[00233]ビンデシン塩基は非晶質固体で、そのmpは>250℃である。ビンデシン塩基の分子式はC4355であり、その分子量は753.93である。それは室温で粉末であり、水には実質的に不溶性である。それは、アルコール、アセトンに可溶性である。市場には、ビンデシン塩基の注射剤は存在しない。
【0210】
[00234]ビンデシン腫瘍内注射剤は、有機溶液、懸濁液、または油中水型ナノエマルジョンであり得る。ビンデシン腫瘍内注射溶液または懸濁液は、アルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、植物油、オレイン酸、または上記のいずれかの混合物などの異なる有機液体との混合物に、ビンデシン塩基を添加することによって製造される。しかし、ビンデシン塩基は安定ではなく、塩基性化学物質を商品化することは容易ではない。
【0211】
[00235]ビンデシン腫瘍内注射ナノW/Oタイプのエマルジョンは、約0.05%~約1%のビンデシン硫酸塩をほぼ同じモル重量の水酸化ナトリウム水溶液で脱塩することによって製造し、次に、約15%~約70%のアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、植物油、オレイン酸、または上記のいずれかの混合物などの、約30%~約70%の量の異なる有機液体との混合物を、脱塩中に製造されたビンデシン塩基混合物に加える。得られたビンデシン塩基注射剤は、注射剤の5体積%以下の水を含有し、それは油性溶液である。ナノエマルジョンは、約1.0~約5体積%の水、緩衝液として約0.1%~約1%の酢酸を含有する。水の量は多すぎないようにすべきであり、多すぎると、エマルジョンが2つの層に分かれてしまう。エマルジョンのpHは約4~6.05であった。
【0212】
[00236]メクロレタミン塩基腫瘍内注射剤は、有機溶液、懸濁液、または油中水型ナノエマルジョンであり得る。メクロレタミン腫瘍内注射溶液は、約15%~約70%のアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、植物油、オレイン酸、または上記のいずれかの混合物などの、異なる有機液体との混合物に、約0.1%~約1%のメクロレタミン塩基を加えることによって製造される。アルコール以外の有機溶媒の割合は、エマルジョンの体積の約30%~85%である。
【0213】
[00237]メクロレタミン塩基は、約0.1%~約1%のメクロレタミン塩酸塩を、大きなビーカー内で等モル重量の水酸化ナトリウム水溶液と反応させることによって製造し、次に、約1~10倍の重量のトリクロロメタンのメクロレタミン塩基をビーカーに加え、その内容物を分液漏斗に移した。メクロレタミントリクロロメタン溶液を回転式蒸発器に移し、次にトリクロロメタンを蒸発器から蒸発させる。残留液体はメクロレタミン塩基である。メクロレタミン塩基は、無色の液体で、非常に刺激性で、危険である。メクロレタミン塩基は、プラスチック手袋と接触すると溶解する。この化学療法塩基の製造、保存、および取り扱いは非常に危険であり、多くの複雑な手順を伴う。したがって、産業事故を防ぐために、腫瘍内注射剤を簡単な方法で製造することが好ましい。ナノエマルジョンでの腫瘍内注射剤の製造は、安全、簡便かつ簡単なプロセスである。
【0214】
[00238]メクロレタミン腫瘍内注射剤油中水型ナノエマルジョンは、約0.1%~約1%のメクロレタミン塩酸塩を、同じモル重量の水酸化ナトリウム水溶液、または、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウムなどの別の化学塩基で脱塩することによって製造される。次に、エマルジョンの体積の約95%~約99%の有機液体の混合物を上記の溶液に加え、約15%~約70%のアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、植物油、オレイン酸、または上記のいずれか混合物などの異なる有機液体とを含有する、有機液体の混合物を、脱塩中に製造されたメクロレタミン塩基混合物に加える。メクロレタミン塩基注射剤は、注射剤の10体積%以下の水を含有し、それは油性溶液である。ナノエマルジョンは、緩衝液として約0.1%~約3%の酢酸を含有する。水の量は多すぎないようにすべきであり、多すぎると、エマルジョンが2つの層に分かれてしまう。エマルジョンのpHは約4~6.05であった。本発明の溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に2.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填する。
【0215】
[00239]ベンダムスチン塩基は、C1621Clの分子式を有し、その分子量は358.3g/molである。ベンダムスチンは、アルキル化および代謝拮抗活性を有する二官能性メクロレタミン誘導体である。腫瘍内注射剤について、市場にはベンダムスチン塩基注射剤は存在しない。
【0216】
[00240]ベンダムスチン塩基腫瘍内注射剤は、有機溶液、懸濁液、または油中水型ナノエマルジョンであり得る。ベンダムスチン腫瘍内注射溶液または懸濁液は、約15%~約65%のアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、オレイン酸、PEGまたは上記のいずれかの混合物などの、約30%~約80%の有機液体との混合物に、約1%~約4%のベンダムスチン塩基を加えることによって製造される。
【0217】
[00241]ベンダムスチン腫瘍内注射剤油中水型ナノエマルジョンは、約1%~約4%のベンダムスチン塩酸塩をほぼ同じモル重量の水酸化ナトリウム水溶液で脱塩することによって製造し、次に、約15%~約65%のアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、植物油、オレイン酸、または上記のいずれかの混合物などの、約30%~約80%の量の異なる有機液体との混合物を、脱塩中に製造されたベンダムスチン塩基混合物に加えた。ベンダムスチン塩基注射剤は、注射剤の10体積%以下の水を含有し、それはナノエマルジョンである。ナノエマルジョンは、緩衝液として約0.5%~約2%の酢酸を含有する。水の量は多すぎないようにすべきであり、多すぎると、エマルジョンが2つの層に分かれてしまう。エマルジョンのpHは約4~6.05であった。本発明の溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に2.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填する。
【0218】
[00242]エリブリン腫瘍内注射剤油中水型ナノエマルジョンは、約0.05%~約1%のエリブリンメシル酸塩をほぼ同じモル重量の水酸化ナトリウム水溶液で脱塩することによって製造し、次に、約15%~約70%のアルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、植物油、オレイン酸、または上記のいずれかの混合物などの、約30%~約70%の量の異なる有機液体との混合物を、脱塩中に製造されたエリブリン塩基混合物に加える。得られたエリブリン塩基注射剤は、注射剤の5体積%以下の水を含有し、それは油性溶液である。ナノエマルジョンは、約1.0~約5体積%の水、緩衝液として約0.1%~約1%の酢酸を含有する。水の量は多すぎないようにすべきであり、多すぎると、エマルジョンが2つの層に分かれてしまう。エマルジョンのpHは約4~6.05であった。
【0219】
[00243]本発明は、水を含まない溶液であり得、有機液体に塩基性化学療法薬、例としてエタノールとオレイン酸の混合物に、ダウノルビシン塩基、エピルビシン塩基、アムルビシン塩基、ドキソルビシン塩基またはミトキサントロン塩基を溶解することによって調製される。本発明の他の実施形態では、溶液は、エタノールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、オレイン酸および/または分子量200~400のPEGとの混合物に溶解されたビンブラスチン塩基、ビンクリスチン塩基、またはビンデシン塩基であり得る。本発明の別の実施形態では、溶液は、エタノールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、オレイン酸および/または分子量200~400のPEGとの混合物に溶解されたメクロレタミン塩基、ベンダムスチン塩基、クロラムブシル、イホスファミド、シクロホスファミド、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ブスルファン、ダカルバジン、テモゾロミド、アルトレタミン、およびチオテパを含むアルキル化塩基であり得る。
【0220】
[00244]有機液体中の化学療法塩基の溶解度が低く、本発明の注射剤がミトキサントロン塩基などのより高濃度の塩基を含む場合、溶液は過飽和になり、注射可能な懸濁液になる。このような場合、ほとんどの化学療法塩基は、最終的な熱滅菌に耐えられないため、滅菌の問題がある。懸濁液は、防腐剤の添加によって製造することができる。しかし、防腐剤を含有する懸濁液の品質は、塩基性薬物活性成分が液体中に均一に分布しておらず、粒径が異なるため、濾過によって作製された溶液の品質よりも劣っている。加えて、本発明は細菌を含有する場合があり、エンドトキシンは含まれる溶液よりも多くなり得る。本発明の塩基性化学療法腫瘍内注射剤を製造する別の方法は、化学療法薬の酸性塩を水酸化ナトリウムなどの塩基性溶液と直接反応させることによって実施された。例えば、ミトキサントロン塩基注射剤を製造する場合、以下の方法が使用された:236mgのミトキサントロン塩酸塩を、ビーカーの6mlの水に加え、次に36.7mgの水酸化ナトリウムを含む1mlの水を上記のミトキサントロンHCLの溶液に加えた。ビーカーに100mlのグリセロール、85mlのエタノールおよび少量の酢酸を加えた。試験したpHは6.48であり、次に0.35mlの酢酸をビーカーに加え、試験したpHは4.57であった。体積が200mlに達するまで、追加量のエタノールをビーカーに加えた。形成された溶液を濾過し、濾過物をバイアルに充填し、栓をした。上記の手順で形成された発明は、6%未満の水、少量の塩化ナトリウム、グリセロール、およびエタノールから構成されていた。塩化ナトリウムの量はミトキサントロンHCLに由来し、酸性塩と同じモル量である。試験された混合物の粒径は約50nmであった。本発明の混合物は、青色の透明な油中水型ナノエマルジョンである。
【0221】
[00245]化学療法剤の塩基形態は、製造が困難であり、不安定である。注射剤の中間体の塩基の貯蔵寿命は短い。これらの問題を克服するために、本発明のある特定の実施形態は、オクタデシルシラン化学結合シリカ(ODS)のカラム中での化学療法薬の酸性塩の脱塩によって作製された本発明の注射製剤中の塩基性化学療法薬を含む。ODSで形成された塩基を、洗浄し、アルコールと、中鎖トリグリセリド、グリセロール、オレイン酸、ポリソルベート、および分子量200~400のPEGなどの好適な有機液体との混合物中に混合する。この塩基性溶液は、水および塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを含まない。塩基性化学療法薬は、有機酸の存在下でも、有機液体への溶解度が低い。本発明の溶液が低濃度の活性塩基性薬物を有する場合、細胞膜を通る薬物の拡散は細胞膜の外側の薬物の濃度に比例するので、それはがん細胞を殺傷する程度に強力ではない。
【実施例
【0222】
好ましい実施形態の詳細な説明
[00246]本発明による以下の抗がん製剤の例は、いかなる方法でも本発明を限定するものとして解釈されるべきではなく、本明細書に記載された種々の製剤の単なる例である。以下に記載される本発明の注射可能な製剤は、患者が処置されるほぼその時間に調製することができることが企図されており、例えば、1つのバイアルは、塩基性化学療法薬、例えば、ドキソルビキシン塩基、ビンカアルカロイド塩基、または塩基性アルキル化剤などのアントラサイクリン塩基を含有してもよく、別のバイアルは、溶媒および注射に好適な他の任意の医薬賦形剤を含有してもよく、次に、これらの材料は、本明細書に記載されるように、患者の腫瘍に直接注射する前に混合してもよい。あるいは、本明細書に記載されている製造方法を使用して、予混合された注射用製剤(好ましくは、本明細書に定義されているように安定な)を調製することができること、および、次に、この注射用製剤は、後で使用するために、許容可能な保存条件下で、薬学的に許容される容器(例えば、バイアル)内に保存されることも企図される。以下に記載する製造方法のスケールアップも企図されている。
【0223】
[00247]ビンカアルカロイド塩基、アルキル化剤塩基、アントラサイクリン塩基またはエリブリン塩基を含む化学療法塩基は、適切な製造業者から購入されるか、またはビンカアルカロイド硫酸塩、エリブリンメシル酸塩、アントラサイクリン塩酸塩またはアルキル化剤(例えば、ベンダムスチン塩酸塩)の脱塩により、実験室で製造することができる。本発明の注射用塩基性化学療法製剤は、化学療法塩基を、適切な有機液体と一緒に加えることによって作製することができる。塩基性化学療法薬の濃度が高すぎる場合、製造された製品は溶液または懸濁液になる。
【0224】
実施例1:エタノールおよびPEG300を含むダウノルビシン塩基製剤
[00248]200mlのPEG300をビーカーに注ぎ、ビーカーを水浴中で40℃に加熱した。次に、2.070グラムのダウノルビシン塩基を撹拌しながらビーカーに加えた(ビーカーの内容物は剪断条件下にあった)。ビーカーの内容物の体積が400mlに達するまで、約200mlの量の無水エタノールをビーカーに加えた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に4.2mlの濾液をバイアルに充填し、栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。溶液は赤色であった。
【0225】
実施例2:PEG300を含むダウノルビシン塩基製剤
[00249]400mlのPEG300をビーカーに注ぎ、ビーカーを41℃の水浴中で加熱した。次に、2.068gのダウノルビシン塩基を混合しながらビーカーに加え、ビーカーの内容物を超音波振動によって1時間振動させた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に5.05mlの濾液をバイアルに充填し、栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。溶液は濃赤色であった。
【0226】
実施例3:70%PEG400および30%エタノールを含むダウノルビシン塩基製剤
[00250]560mlのPEG400をビーカーに注ぎ、ビーカーを30℃の水浴中で加熱した。次に、2.743gのダウノルビシン塩基を混合しながらビーカーに加え、その後、220mlの無水エタノールをビーカーに加えた。ビーカーの内容物を、超音波振動によって5分間振動させた。ビーカーの内容物の体積が800mlの総体積に達するまで、約20mlの追加量の無水エタノールをビーカーに加えた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に5.3mlの濾液をバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。
【0227】
実施例4:70%オレイン酸および30%アルコールを含むダウノルビシン塩基製剤
[00251]350mlのオレイン酸をビーカーに注ぎ、ビーカーを30℃の水浴中で加熱した。次に、1.757gのダウノルビシン塩基を混合しながらビーカーに加え、次に130mlの無水エタノールをビーカーに加えた。ビーカーの内容物を、超音波振動によって10分間振動させた。ビーカーの内容物の体積が500mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーに加えた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に5.3mlの濾液をバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。溶液は濃赤色であった。
【0228】
実施例5:40%オレイン酸およびアルコールを含有するダウノルビシン塩基W/Oエマルジョン
[00252]400mlサイズのビーカー(B)に、5mlの注射水および4534mgのダウノルビシン塩酸塩を加え、ダウノルビシンHCLが溶解するまで内容物を撹拌した。20mlサイズの別のビーカー(A)に、2972mgの水酸化ナトリウムおよび10mlの注射用水を注いだ。ビーカーAの溶液1mlをビーカーBに加え、それを均一に撹拌した。82.8gの無水エタノールをビーカーBに加え、その内容物も撹拌した。少量の酢酸/エタノール(比率1/4)溶液を、溶液が透明になるまでビーカーBに加えた。71.1g(80ml)のオレイン酸をビーカーBに加え、それを撹拌した。ビーカーBの内容物の重量が171グラム(200ml)に達するまで、追加量のエタノールをビーカーに加えた。次に、形成された溶液を、0.22μmサイズのフィルターに通した。2.2mlの濾液をバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、バイアルを窒素下でアルミニウムキャップで密閉した。濾過後の溶液は、赤色で透明かつ明澄であった。
【0229】
[00253]ダウノルビシン溶液の他の複数の製剤を、以下の表のように作製した。関連物質は溶液のpHに関連しており、注射剤のpHの範囲は約4~約6であり、好ましいpHは約4.5~約6であることが見出された。
【0230】
【表3】
【0231】
[00254]オレイン酸の好ましい範囲は約35~約70%であり、エタノールの範囲は約25%~約60%であり、水の量は注射剤の6.5%(v/v)未満である。オレイン酸のLD50は低いので、オレイン酸の50%未満の濃度が好ましい。エタノールの含有量が高すぎる場合、注射剤は0℃未満では固体にならない;注射剤が液体状態である場合、本発明は安定ではない。したがって、エタノールの好ましい含有量は、注射剤の体積の約25%~約60%であった。
【0232】
[00255]上記の発明は、油中水型ナノエマルジョンである。含水量は注射剤の約4%~約7%v/vであり、PPSによって試験されたダウノルビシン塩基注射剤のミクロスフェアの直径は約51~54.3ナノメートルである。ナノエマルジョンは、塩化ナトリウム水溶液を含有する。
[00256]強度重み付けNICOMP分布分析を示す図1は、製剤が、当業者が理解するようなエマルジョンであることを証明しているというのが出願人の見解である。
【0233】
実施例6:オレイン酸およびエタノールを含むミトキサントロン塩基製剤
[00257]250mlのオレイン酸および180mlの無水エタノールをビーカーに注ぎ、それを水浴で30℃に加熱し、次に、507mgのミトキサントロン塩基を、混合しながらビーカーに加えた。ビーカーの内容物を、超音波によって10分間振動させた。溶液は濃青色であった。ビーカーの内容物の体積が500mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーに加えた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に5.2mlの濾液をバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。溶液は青色であった。
【0234】
実施例7:酢酸を伴うオレイン酸を含むミトキサントロン塩基製剤
[00258]490mlのオレイン酸および10mlの酢酸をビーカーに注ぎ、次に508mgのミトキサントロン塩基をビーカーに加え、ビーカーを30℃に加熱した。ビーカーの内容物を、超音波振動によって20分間振動させた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に5.2mlの濾液をバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。得られた溶液は青色であった。
【0235】
実施例8:酢酸を伴うPEGを含むミトキサントロン塩基製剤
[00259]450mlのPEG300をビーカーに注ぎ、次に508mgのミトキサントロン塩基をビーカーに加え、ビーカーを30.9℃に加熱した。ビーカーの内容物を、超音波振動によって20分間振動させた。次に、5mlの酢酸をビーカーに加えた。ビーカーの内容物の体積が500mlに達するまで、追加量のPEG300をビーカーに加えた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に5.2mlの濾液をバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。得られた溶液は青色であった。
【0236】
実施例9:PEGおよびエタノールを含むミトキサントロン塩基製剤
[00260]450mlの無水エタノールおよび500mlのPEG300をビーカーに注ぎ、ビーカーを40℃に加熱し次に、1.004グラムのミトキサントロン塩基を混合しながらビーカーに加えた(ビーカーの内容物は剪断条件下にあった)。ビーカーの内容物の体積が1000mlに達するまで、追加量のエタノールをビーカーに加えた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に5.3mlの濾液をバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。溶液は濃青色であった。
【0237】
実施例10:ミトキサントロンHCLとNAOHとの反応によって作製されたミトキサントロン塩基製剤
[00261]471mgのミトキサントロン塩酸塩および9mの注射用水を400mlビーカー(ビーカーA)に加え、ビーカーの内容物を撹拌した。溶液は紺色である。注射用水10mlおよび水酸化ナトリウム734mgを20mlビーカー(ビーカーB)に加えて撹拌した。ビーカーBからの水酸化ナトリウム溶液1mlおよび無水エタノール5mlをビーカーAに移し、ビーカーAの内容物を撹拌した。
【0238】
[00262]次に、100mlの無水エタノールをビーカーAに加え、これを22℃で撹拌した。少量の酢酸を、溶液が透明になるまでビーカーAに加えた。80mlのオレイン酸をビーカーAに加えた。ビーカーAの内容物の体積が200mlに達するまで、追加量のエタノールをビーカーAに加えた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に5.2mlの濾液をバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルを、窒素下にてアルミニウムキャップで密閉した。溶液は青色であり、試験した塩化物は13.3%であり、試験したpHは3.75であった。試験した粒径:72.5%は2.2nm、27.5%は181.4nmであった。他の不純物の合計は、0.69%であった。
【0239】
実施例11:ミトキサントロンHCLと50%グリセロール/エタノールを含むNAOHとの反応によって作製されたミトキサントロンエマルジョン/1mg/ml
[00263]236mgのミトキサントロン塩酸塩および5.943mlの注射用水を400mlビーカー(ビーカーA)に加え、ビーカーの内容物を撹拌した。溶液は紺色である。10mlの注射用水および367mgの水酸化ナトリウムを20mlビーカー(ビーカーB)に加えて、次に撹拌した。ビーカーBからの1mlの水酸化ナトリウム溶液および5mlの無水エタノールをビーカーAに移し、ビーカーAの内容物を撹拌した。次に、100mlのグリセリンおよび3滴(45mg)の酢酸をビーカーAに加え、内容物を22℃で撹拌した。85mlの無水エタノールを、ビーカーAに加えた。
【0240】
[00264]試験したpHは6.478であり、次に0.35mlの酢酸をビーカーAに加え、測定したpHは4.574であった。ビーカーAの内容物の体積が200mlに達するまで、追加量のエタノールをビーカーAに加えた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に5.2mlの濾液をバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルを、窒素下にてアルミニウムキャップで密閉した。溶液は青色であり、試験した塩化物は12.6.3%であり、試験したpHは4.166であった。試験した粒径:68.7%は39.3nm、31.3%は179.9nmであった。他の不純物の合計は、0.99%であった。
【0241】
実施例12:オレイン酸およびエタノールを含むエピルビシン塩基製剤
[00265]250mlのオレイン酸および230mlの無水エタノールをビーカーに注ぎ、ビーカーを30℃の水浴で加熱した。次に、1200mgのエピルビシン塩基を、撹拌しながらビーカーに加えた。ビーカーの内容物を、超音波振動によって10分間振動させた。ビーカーの内容物の体積が500mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に約5.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。溶液は赤色であった。
【0242】
実施例13:PEGおよびエタノールを含むエピルビシン塩基製剤
[00266]560mlのPEG300をビーカーに注ぎ、ビーカーを30℃の水浴中で加熱して、次に、1999mgのエピルビシン塩基を、撹拌しながらビーカーに加えた。230mlの無水エタノールを、ビーカーに加え、ビーカーの内容物を、超音波振動によって10分間振動させた。ビーカーの内容物の体積が800mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に約5.3mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。溶液は赤色であった。
【0243】
実施例14:40%オレイン酸/エタノールを含むエピルビシン塩基製剤4mg/ml
[00267]447mgのエピルビシン塩酸塩および4.5mlの注射用水を200mlビーカー(ビーカーA)に加え、ビーカーの内容物を撹拌した。次に、ビーカーAを氷水浴内に置いた。5mlの注射用水および617mgの酢酸ナトリウムを、20mlビーカー(ビーカーB)に加えて撹拌した。ビーカーBからの0.5mlの酢酸ナトリウム溶液および10mlの無水エタノールをビーカーAに移し、次に撹拌した。40mlの無水エタノールおよび40mlのオレイン酸を、ビーカーAに加えた。試験したpHは4.74であった。ビーカーBの内容物の体積が100mlに達するまで、追加量のエタノールをビーカーAに加えた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に2.2mlの濾液をバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、バイアルを窒素下でアルミニウムキャップで密閉した。アッセイは97、pHは5.07、水分含有量は5.65%、および関連物質の合計は2.47%であった。粒径は37.4nmであった。
【0244】
実施例15:PEGおよびエタノールを含むドキソルビシン塩基製剤
[00268]280mlのPEG300をビーカーに注ぎ、ビーカーを30℃の水浴中で加熱して、次に、1001mgのドキソルビシン塩基を、撹拌しながらビーカーに加えた。100mlの無水エタノールを、ビーカーに加え、ビーカーの内容物を、10分間超音波振動下に置いた。ビーカーBの内容物の体積が400mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に約5.3mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。溶液は赤色であった。
【0245】
実施例16:オレイン酸およびエタノールを含むドキソルビシン塩基製剤
[00269]250mlのオレイン酸および230mlの無水エタノールをビーカーに注ぎ、ビーカーを30℃の水浴で加熱して、次に、1201mgのドキソルビシン塩基を、撹拌しながらビーカーに加えた。ビーカーの内容物を、超音波振動によって10分間振動させた。ビーカーの内容物の体積が500mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に約5.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。溶液は赤色であった。
【0246】
実施例17:40%オレイン酸およびエタノールを含むドキソルビシン塩基製剤
[00270]18.2gのオクタデシルシラン化学結合シリカ(ODS)をビーカーに入れた。54mlの無水エタノールをビーカーに加え、ビーカーの内容物を十分に混合した後、ODS溶液をガラス製クロマトグラフィーカラム(15mm*400mm)に充填した。767mgのドキソルビシン塩酸塩および115mlの注射用水をビーカーに加え、45分間撹拌してドキソルビシン塩酸塩を溶解させた。
【0247】
[00271]ドキソルビシン塩酸塩溶液をゆっくりとガラス製クロマトグラフィーカラムに注いだ。78mgの水酸化ナトリウムを300mlの水と混合した後、それも、クロマトグラフィーカラムに注いだ。
【0248】
[00272]66mlの無水エタノール、60ml(53.08g)のオレイン酸、および0.2mlの酢酸をビーカーに加え、その内容物を十分に混合した。ビーカー内の混合物をクロマトグラフィーカラムに注ぎ、5分後、ピストンを開き、溶液を注ぎ出し、次に20mlの無水エタノールをカラムに加えた。カラムの溶液をビーカー(ビーカーA)で収集した。試験したpHは4.65であった。ビーカーAの内容物の体積が150mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーAに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に4.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。溶液は赤色で透明であった。
【0249】
実施例18:中鎖トリグリセリドおよびエタノールを含むビンブラスチン塩基製剤
[00273]504mgの水酸化ナトリウムおよび50mlの注射用水を100mlビーカー(ビーカーA)に入れ、内容物を撹拌した。56mgのビンブラスチン硫酸塩を、40mlビーカー(ビーカーB)に入れた。ビーカーAからの5mlの溶液をビーカーBに移し、その内容物を撹拌して反応を完了させた。
【0250】
[00274]86.728g(110ml)の無水エタノールおよび80mlの中鎖油をビーカーBに加え、内容物を撹拌した。内容物のpHは7.11であった。
[00275]0.5mlの酢酸をビーカーBに加え、pHは3.6であった。次に、少量の水酸化ナトリウムをビーカーBに加え、最終pHは4.45であった。ビーカーBの内容物の体積が200mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーBに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に2.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。注射剤の溶液は、無色、明澄、および透明であった。含水量は2.5%であった。ビンブラスチンの異なる製剤の2つの実験の結果は、以下のとおりであった:
【0251】
【表4】
【0252】
実施例19:グリセロールおよびエタノールを含むビンブラスチン塩基製剤
[00276]453mgの水酸化ナトリウムおよび30.0mlの注射用水を100mlビーカー(ビーカーA)に入れ、内容物を撹拌した。540mgのビンブラスチン硫酸塩を、400mlビーカー(ビーカーB)に入れた。ビーカーAの溶液3mlおよび5mlの無水エタノールをビーカーBに移し、ビーカーBの内容物を撹拌して反応を完了させた。90mlの無水エタノールおよび100mlのグリセロールをビーカーBに加え、内容物を撹拌した。溶液は透明であった。ビーカーBの内容物のpHは7.47であった。少量の酢酸(およそ6滴)をビーカーBに加えた。ビーカーBの内容物の体積が200mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーBに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に2.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。注射溶液は、無色、明澄かつ透明であった。pHは5.17、含水量は1.48%であった。粒径は39.9nmであった。
【0253】
実施例20:オレイン酸およびエタノールを含むビンブラスチン塩基製剤
[00277]452mgの水酸化ナトリウムおよび30.0mlの注射用水を100mlビーカー(ビーカーA)に入れ、内容物を撹拌した。540mgのビンブラスチン硫酸塩を、400mlビーカー(ビーカーB)に入れた。ビーカーAの溶液3mlおよび5mlの無水エタノールをビーカーBに移し、内容物を撹拌して反応を完了させた。100mlの無水エタノールおよび80mlのオレイン酸をビーカーBに加え、内容物を再び撹拌した。ビーカーBの内容物の体積が200mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーBに加えた。ビーカーBの溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に2.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。注射剤の溶液は、無色、明澄、および透明であった。内容物のpHは4.95であった。粒径は89.6nmであった。
【0254】
実施例21:40%オレイン酸およびエタノールを含むビンクリスチン塩基製剤
[00278]193mgの水酸化ナトリウムおよび20.0gの注射用水を100mlのビーカー(ビーカーA)に加え、内容物を撹拌した。246mgのビンクリスチン硫酸塩を400mlビーカー(ビーカーB)に加えた。ビーカーAからの2mlのNaOH溶液および3mlの無水エタノールをビーカーBに加え、ビーカーBの内容物を撹拌した。得られた溶液は濁乳白色である。3mlの無水エタノールを、ビーカーBに加えた。溶液の外観に変化はなかった。オレイン酸71.1g(80ml)および無水エタノール39.4g(50ml)をビーカーBに加え、その後、溶液は透明で淡黄色になった。混合物のpHは4.26であった。ビーカーBの内容物の重量が166.453g(200ml)になるまで、少量の無水エタノールをビーカーBに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に4.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。油中水型エマルションの粒径は15.3nmであった。
【0255】
実施例22:エタノールを伴う50%グリセロールを含むビンクリスチン塩基製剤(1mg/ml)
[00279]205mgの水酸化ナトリウムおよび20gの注射用水をビーカー(ビーカーA)に加えた。内容物を撹拌してNAOHを溶解させた。ビンクリスチン硫酸塩249mgおよびビーカーAからのNaOH溶液2mlをビーカー(ビーカーB)に加え、次に無水エタノール3mlをビーカーBに加え、内容物を5分間撹拌して反応を完了させた。溶液は白色で濁っていた。74.9g(約95ml)の無水エタノールをビーカーBに加え、溶液に明らかな変化はなかった。溶液をおよそ25℃に加熱した後、次に、126.3g(100ml)のグリセリンをビーカーBに加え、その後、溶液は透明、無色および明澄になった。溶液のpHは7.26であった。pHがおよそ5.99になるまでビーカーBに少量の酢酸を加えた。ビーカーBの内容物の体積が200mlに達するまで、少量のエタノールをビーカーBに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に4.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。油中水型エマルションの平均粒径は115.2nmであった。
【0256】
実施例23:80%PEGおよび20%のエタノールを含むベンダムスチン塩基製剤
[00280]2000mgのベンダムスチン塩基を200mlサイズのビーカーに加え、80mlのPEG300および20mlの無水エタノールを撹拌しながらビーカーに注いだ。実験は25.0℃の水浴で行った。ビーカーの内容物を、超音波振動によって10分間振動させた。検出したpHは5.56であった。ビーカーの内容物の体積が100mlに達するまで、追加量のエタノールをビーカーに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に5.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。関連物質の合計は2.89%(限度3.5%未満)であった。
【0257】
実施例24:ベンダムスチン塩酸塩から作製された40%PEG300およびエタノールを含むベンダムスチン塩基製剤(5mg/ml)
[00281]1216mgの水酸化ナトリウムを50mlサイズのビーカー(ビーカーA)に加え、次に5mlの注射用水および5mlの無水エタノールを、ビーカーAに加えた。1054mgのベンダムスチン塩酸塩を100mlビーカー(ビーカーB)に入れ、3.5mlの注射用水を加え、その後、内容物を撹拌した。得られたものは乳白色で、底に溶解していない粒子があった。80mlのPEG300をビーカーBに加え、その後内容物を撹拌した。ビーカーBの溶液は淡黄色の液体に変わった。ビーカーAからの1mlの水酸化ナトリウム溶液をビーカーBに加え、試験したpHは5.96であった。118mlの無水エタノールをビーカーBに注ぎ、その内容物を均一に撹拌した。得られた溶液は透明かつ明澄であった。体積が200mlに達するまで、少量の無水エタノールをビーカーBに加え、試験した溶液のpH値は6.05であった。次に溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に5.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。油中水型エマルションの平均粒径は7.3nmであった。関連物質の合計は1.57%(限度3.5%未満)であった。
【0258】
実施例25:30%PEG300およびエタノールを含むベンダムスチン塩基製剤(15mg/ml)
[00282]1553mgの水酸化ナトリウムおよび20gの注射用水を100mlビーカー(ビーカーA)に加え、その内容物をNaOHが完全に溶解するまで撹拌した。1582mgのベンズダムスチン塩酸塩を200mlビーカー(ビーカーB)に加えた。ビーカーAからの2mlのNaOH溶液および3mlの無水エタノールをビーカーBに加え、ビーカーBの内容物を撹拌した。さらに48mlの無水エタノールをビーカーBに加えた。溶液は乳白色で濁っていた。30mlのPEG300をビーカーBに注ぎ、1.5分間均一に撹拌した。溶液の外観に明確な変化はなかった。0.5mlの水酸化ナトリウム溶液をビーカーBに加えた。この場合も、溶液の外観に明らかな変化は見られなかった。
【0259】
[00283]1.035gの酢酸をビーカーBに加えた。そのときの溶液のpHは4.85であった。さらに1mlの水酸化ナトリウム溶液をビーカーBに加えた。検出したpHは6.35であった。
【0260】
[00284]次に、溶液を30℃の水浴に3分間入れた。溶液は、透明かつ明澄になった。pHは6.09であった。ビーカーBの内容物の体積が100mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーBに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に2.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。関連物質の合計は1%(限度3.5%未満)であった。油中水型エマルションの平均粒径は10.7nmであった。
【0261】
実施例26:オレイン酸およびエタノールを含むベンダムスチン塩基製剤(15mg/ml)
[00285]1551mgの水酸化ナトリウムおよび20gの注射用水を50mlビーカー(ビーカーA)に加え、撹拌して水酸化ナトリウム溶液を形成した。1583mgのベンズダムスチン塩酸塩を100mlビーカー(ビーカーB)に入れた。ビーカーAからの2mlの水酸化ナトリウム溶液をビーカーBに移し、次に10mlの無水エタノールをビーカーBに加え、その後、内容物を撹拌して反応を完了させた。
【0262】
[00286]さらに45mlの無水エタノールをビーカーBに加え、ビーカーBの内容物を均一に撹拌した。40mlのオレイン酸をビーカーBに加え、内容物を再び撹拌した。試験したpHは5.0であった。ビーカーBの内容物の体積が100mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーBに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に2.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。検出された水は3.77%、pHは5.125であった。総不純物は、0.355%であった。油中水型エマルションの平均粒径は13.6nmであった。
【0263】
実施例27:グリセロールおよびエタノールを含むベンダムスチン塩基製剤(15mg/ml)
[00287]3255mgの重炭酸ナトリウムおよび35mlの注射用水を50mlビーカー(ビーカーA)に加え、内容物を撹拌して溶液を形成した。1584mgのベンダムスチン塩酸塩を第2のビーカー(ビーカーB)に入れた。
【0264】
[00288]ビーカーAからの3.5mlの重炭酸ナトリウム溶液をビーカーBに移し、次に10mlの無水エタノールをビーカーBに加え、その後、内容物を約3~4分間撹拌して反応を完了させた。さらに35mlの無水エタノールをビーカーBに加え、内容物を均一に撹拌した。50mlのグリセロールをビーカーBに加え、内容物を再び撹拌した。0.4gの酢酸および2mlの水をビーカーBに加えた。試験したpHは4.3であった。ビーカーBの内容物の体積が100mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーBに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に2.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。検出された水は5.74%であった。溶液のpHは4.347%で、総不純物は0.826%であった。油中水型エマルションの平均粒径は11.7nmであった。
【0265】
実施例28:中鎖トリグリセリドおよびエタノールを含むメクロレタミン塩基製剤
[00289]608mgのメクロレタミン塩酸塩および0.75mlの注射用水を400mlビーカー(ビーカーA)に加え、内容物を撹拌した。2.6mlの水、1.98mlの無水エタノールおよび1.26gの水酸化ナトリウムを50mlのビーカー(ビーカーB)に加え、その内容物を撹拌してNaOHを完全に溶解させた。次に、ビーカーBからの水酸化ナトリウム溶液0.5mlをビーカーAに加えた。ビーカーAの内容物を撹拌して反応を完了させた。
【0266】
[00290]100mlの中鎖油をビーカーAにゆっくりと加えた。次に、50mlの無水エタノールをビーカーAに加え、ビーカーAの内容物を均一に撹拌した。ビーカーAの内容物の体積が200mlに達するまで、無水エタノールの量をビーカーAに加えた。次に溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、その後、4.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに入れ、その後、バイアルをアルミニウムキャップで密閉した。含水量は0.69%、pHは7.18、溶液の粒径は2.1nmであった。溶液の総不純物は1.91%であった。
【0267】
実施例29:PEG300およびエタノールを含むメクロレタミン塩基製剤
[00291]609mgのメクロレタミン塩酸塩および0.75mlの注射用水を400mlビーカー(ビーカーA)に加え、次に内容物を撹拌した。2.5mlの水および1306mgの水酸化ナトリウムを50mlビーカー(ビーカーB)に加え、内容物を撹拌してNaOHを完全に溶解させた。次に、ビーカーBからの0.25mlの水酸化ナトリウム溶液および5mlのエタノールをビーカーAに加えた。ビーカーAの内容物を撹拌して反応を完了させた。100mlの無水エタノールおよび80mlのPEG300をビーカーAにゆっくりと加えた。試験したpHは5.5であった。ビーカーAの内容物の体積が200mlに達するまで、追加量の無水エタノールをビーカーAに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に4.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。含水量は0.6%、pHは5.74、溶液の粒径は2.2nmであった。
【0268】
実施例30:エタノールを伴う50%グリセロールを含むビンデシン塩基製剤(0.5mg/ml)
[00292]96mgの水酸化ナトリウムおよび9.99gの注射用水を、20mlサイズのビーカー(ビーカーA)に加えた。内容物を撹拌してNAOHを溶解させた。102mgのビンデシン硫酸塩およびビーカーAからの1mlのNaOH溶液を400mlビーカー(ビーカーB)に加え、次に3mlの無水エタノールをビーカーBに加え、その後ビーカーBの内容物を5分間撹拌して反応を完了させた。得られた溶液は白色で濁っていた。95mlの無水エタノールを、ビーカーBに加えた。
【0269】
[00293]100mlのグリセリンをビーカーBに加え、溶液を撹拌した。その後、溶液は撹拌後に透明、無色、および明澄になった。ビーカーの温度は22℃に保たれた。試験した溶液のpHは6.59であった。次に、ビーカーBに少量の酢酸を加えた。試験したpHは5.22であった。ビーカーBの内容物の体積が200mlに達するまで、少量のエタノールをビーカーBに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に4.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。含水量は0.6%、pHは5.99、および溶液の粒径は21.4nmであった。総不純物は1.53%であった。
【0270】
実施例31:エタノールを含む中鎖トリグリセリドを含むビンデシン塩基製剤
[00294]96mgの水酸化ナトリウムおよび9.987gの注射用水を、20mlサイズのビーカー(ビーカーA)に加えた。内容物を撹拌してNAOHを溶解させた。
【0271】
[00295]103mgのビンデシン硫酸塩およびビーカーAからの1mlのNaOH溶液を400mlビーカー(B)に加え、次に3mlの無水エタノールをビーカーBに加え、ビーカーBの内容物を5分間撹拌して反応を完了させた。得られた溶液は白色で濁っていた。
【0272】
[00296]100mlの無水エタノールを、ビーカーBに加えた。80mlの中鎖トリグリセリドをビーカーBに加え、溶液を撹拌した。撹拌後、溶液は透明、淡黄色、および明澄になった。ビーカーの温度は30℃に保たれた。
【0273】
[00297]試験した溶液のpHは6.55であった。ビーカーBの内容物の体積が200mlに達するまで、少量のエタノールをビーカーBに加えた。溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に4.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。油中水型エマルションの平均粒径は11.7NMであった。含水率は0.69%であった。総不純物は1.55%であった。
【0274】
実施例32:エタノールを伴うオレイン酸を含むビンデシン塩基製剤(0.5mg/ml)
[00298]96mgの水酸化ナトリウムおよび10.018gの注射用水を、20mlサイズのビーカー(ビーカーA)に加えた。内容物を撹拌してNAOHを溶解させた。102mgのビンデシン硫酸塩およびビーカーAからの1mlのNaOH溶液を400mlビーカー(ビーカーB)に加え、次に3mlの無水エタノールをビーカーBに加え、その後内容物を5分間撹拌して反応を完了させた。得られた溶液は白色で濁っていた。100mlの無水エタノールを、ビーカーBに加えた。
【0275】
[00299]次に、80mlのオレイン酸をビーカーBに加え、溶液を撹拌した。撹拌後、得られた溶液は透明、淡黄色、および明澄になった。ビーカーの温度は30℃に保たれた。試験した溶液のpHは4.66であった。ビーカーBの内容物の体積が200mlに達するまで、少量のエタノールをビーカーBに加えた。次に溶液を0.22ミクロンのフィルターに通し、次に4.2mlの濾液を窒素下でバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、次にバイアルをアルミニウムキャップで密閉した。油中水型エマルションの平均粒径は20.6nmであった。含水率は0.67%であり、pHは5.029であった。総不純物は1.55%であった。
【0276】
実施例33:40%オレイン酸/エタノールを含むドキソルビシン塩基製剤(5mg/ml)
[00300]514mgのドキソルビシン塩酸塩および4.5mlの注射用水を300mlビーカー(ビーカーA)に加え、次に内容物を撹拌した。5.01mlの注射用水および726mgの酢酸ナトリウムを、20mlビーカー(ビーカーB)に加えて撹拌した。ビーカーBからの0.5mlの酢酸ナトリウム溶液および10mlの無水エタノールをビーカーAに移し、次に撹拌した。40mlの無水エタノールおよび40mlのオレイン酸を、ビーカーAに加えた。試験したpHは4.74であった。ビーカーBからの4.5mlの酢酸ナトリウム溶液をビーカーAに加えた。ビーカーAの内容物の体積が100mlに達するまで、追加量のエタノールをビーカーAに加えた。得られた溶液を、窒素を適用しながら0.22ミクロンのフィルターに通し、次に2.2mlの濾液をバイアルに充填した。栓をバイアルに挿入し、バイアルを窒素下でアルミニウムキャップで密閉した。アッセイは97%、pHは5.07、含水量は9.5%、および関連物質の合計は2.47%であった。粒径は37.4nmであった。
【0277】
結論
[00301]前述の明細書では、本発明は、特定の例示的な実施形態およびその例を参照して説明されてきた。しかし、以下の特許請求の範囲に記載されているように、本発明のより広い精神および範囲から逸脱することなく、種々の修正および変更を行うことができることは明らかであろう。本発明の局所用抗がん製剤は、本明細書において具体的には言及されていない多くの追加の術前状態において、手術時および術後処置の間に、追加の方法において変更され得るかまたは使用され得ることも当業者には明らかであろう。さらに、そのような製剤は、本明細書で具体的に言及されていない追加の部位で(局所的に含む)利用され得ることが企図される。そのような明らかな修正は、添付の特許請求の範囲内であると考えられる。したがって、明細書は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で考えられるべきである。
図1
【国際調査報告】