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特表2023-520978食品用途に適した微生物バイオマスのパスチャライゼーション
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  • 特表-食品用途に適した微生物バイオマスのパスチャライゼーション 図1A
  • 特表-食品用途に適した微生物バイオマスのパスチャライゼーション 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】食品用途に適した微生物バイオマスのパスチャライゼーション
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20230516BHJP
   A23J 3/00 20060101ALI20230516BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20230516BHJP
   A23L 31/00 20160101ALI20230516BHJP
   A23L 3/22 20060101ALI20230516BHJP
   C12P 1/02 20060101ALN20230516BHJP
   A23J 3/20 20060101ALN20230516BHJP
   C12N 1/14 20060101ALN20230516BHJP
   C12P 21/00 20060101ALN20230516BHJP
【FI】
C12N1/00 K
A23J3/00 502
A23K10/16
A23L31/00
A23L3/22
C12N1/00 M
C12P1/02 Z
A23J3/20
C12N1/14 A
C12P21/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552199
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2021055547
(87)【国際公開番号】W WO2021176032
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】20161554.9
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520384840
【氏名又は名称】ザ プロテイン ブルワリー ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】The Protein Brewery B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】クノーベル, キルステン
(72)【発明者】
【氏名】デ ハーン, アプ
(72)【発明者】
【氏名】デ ラート, ヴィルヘルムス テオドルス アントニウス マリア
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B021
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
2B150AA02
2B150AA03
2B150AA05
2B150AA07
2B150AA08
2B150AB20
2B150AC15
2B150AC19
2B150AC20
2B150AC24
2B150BD01
2B150CE26
4B018MD80
4B018MD81
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4B021LP01
4B021LW10
4B064AG01
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4B065AA57X
4B065BD08
4B065CA24
4B065CA41
4B065CA43
(57)【要約】
本発明は、バイオマス、例えば真菌バイオマスをパスチャライゼーションするための方法であって、特定の時間及び温度パラメーターを用いてバイオマスをパスチャライゼーションしてパスチャライゼーションされたバイオマスを得る方法に関する。パスチャライゼーションされたバイオマスは、食品における単細胞タンパク質源としての使用に適している。また、本発明はパスチャライゼーションされた製品、及びそれを含む食品にも関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスをパスチャライゼーションするための方法であって、
i)バイオマスを提供するステップ;
ii)バイオマスをパスチャライゼーションして、パスチャライゼーションされたバイオマスを得るステップであって、前記バイオマスが少なくとも70℃の温度で最大45分間パスチャライゼーションされる、ステップ、及び
iii)任意で、前記パスチャライゼーションされたバイオマスを回収するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記バイオマスが、発酵ブロスに由来し、好ましくは液中発酵プロセスに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発酵ブロスが、最大6%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大4%のバイオマス乾物含有量を含むか、又は、前記発酵ブロスを、好ましくはふるいベルト、振動ふるい又はスクリーンふるいを使用して、ふるいにかけて前記バイオマスを得る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップii)における前記バイオマスのpHが、最大4.5、好ましくは最大3.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオマスが、少なくとも7%の乾物、好ましくは少なくとも10%の乾物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオマスが、真菌株に由来するバイオマスである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記真菌株が、ラザムソニア属、タラロマイセス属、ペニシリウム属、アクレモニウム属、フミコラ属、パエシロマイセス属、ケトミウム属、リゾムコール属、リゾプス属、サーモマイセス属、ミセリオプトラ属、サーモアスカス属、ティエラビア属、ムコール属、スティベラ属、メラノカルプス属、マルブランキア属、ダクチロマイセス属、カナリオマイセス属、シタリジウム属、ミリオコッカム属、コリナスカス属、及びクーネメリア属からなる群から選択される真菌属の株であり、好ましくは、属は、リゾムコール属であり、好ましくは、株は、リゾムコール・プシラスであり、より好ましくは、リゾムコール・プシラスCBS143028株、又はその単一コロニー分離物若しくは派生物である株である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パスチャライゼーションが、インライン加熱ユニットにおいて行われ、前記インライン加熱ユニットは、好ましくはパイプヒーター、加熱ブロック、又は蒸気注入要素、より好ましくは蒸気注入要素を含み、前記インライン加熱ユニットは、任意で、スタティックミキサーなどの混合要素を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記パスチャライゼーションが、最大で5分間、好ましくは約0.5~約3分間、より好ましくは約1~2分間行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記パスチャライゼーションが、少なくとも74℃、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは少なくとも86℃の温度で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記パスチャライゼーションされたバイオマスの細菌数が、前記提供されたバイオマスと比較して、少なくとも7、好ましくは少なくとも11、より好ましくは少なくとも12のlog10減少を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップi)において、リゾムコール・プシラス株の液中発酵に由来するバイオマスが提供され、ステップii)において、前記バイオマスがインライン加熱ユニットを通って流れ、インライン加熱ユニットで前記バイオマスは、約86℃の温度で約1~2分の滞留時間を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるパスチャライゼーションされたバイオマスであって、好ましくは乾燥重量に基づいて約6%~12%の脂質及び約35%~55%のタンパク質を含む、バイオマス。
【請求項14】
請求項13に記載のパスチャライゼーションされたバイオマスを含む、食品又は飼料製品。
【請求項15】
食品の製造における、又は食品の製造において使用するための繊維若しくはタンパク質の少なくとも1つの供給源としての、請求項13に記載のパスチャライゼーションされたバイオマスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、バイオマス、例えば真菌バイオマスをパスチャライゼーションするための方法であって、特定の時間及び温度パラメーターを用いてバイオマスをパスチャライゼーションしてパスチャライゼーションされたバイオマスを得る方法に関する。パスチャライゼーションされたバイオマスは、食品における単細胞タンパク質源としての使用に適している。また、本発明はパスチャライゼーションされた製品、及びそれを含む食品にも関する。
【0002】
[背景技術]
単細胞タンパク質(SCP)は、肉タンパク質の代替物として、また、朝食用シリアル、パン、パスタ、乳製品、アイスクリーム、チョコレート、スープなどといった他の多くの食品用途におけるタンパク質源として興味深い。真菌のSCPが生産される際、SCPは食肉生産に比べて1ヘクタールあたり何トンも多くのタンパク質を生産し、また、窒素排出量が少ないため、肉タンパク質の生産と比較して、より持続可能な方法で糖分の豊富な作物から生産され得る。タンパク質が豊富な食品又は動物飼料を生産する1つの方法は、発酵によってSCPを生産することである(Sumanら、2015年、Int J.Curr.Microbiol.Appl.Sci.、Vol 4.、No 9、251~262ページ)。この点において発酵は、炭水化物が豊富な原料を、細菌、酵母、又は真菌などの微生物細胞からなるタンパク質が豊富な製品へと、微生物により変換することとして理解される。動物飼料及び食品成分としてのSCPの使用は、微生物細胞は必須アミノ酸の含有量が高いという利点、また、微生物細胞は、例えば穀物ベースの食事を補うために適用した場合、フィターゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼなどの有用な酵素(これらは全て、例えば、抗栄養化合物のフィチン酸塩、難消化性の繊維などの含有量が高い配合飼料の消化性に良い影響を与え得る。)を生成するという利点をさらにもたらす。さらに、特に真菌細胞は、発酵飼料を非常に栄養価の高いものとする微量元素及びビタミンが非常に豊富であり得る。
【0003】
SCPは既にヒトが消費する食品において使用されている。例えば、クォーン(Quorn)(商標)は、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、及びビオチンを含むフザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)によって産生されるマイコプロテインを含んでいる。SCPの生産における1つの問題は、特に細菌又は酵母による液中発酵の場合に、発酵ブロス中で生産されるSCPバイオマスの濃度である。別の問題は、安価な高分子炭素源を単量体発酵性糖に変換するための高価な酵素の必要性である。さらに、SCPの生産のために中温性微生物を使用する際に感染を避けるためには、無菌発酵条件を適用する必要があり、これは高い設備投資とエネルギー需要による法外な運用コストを導く(国際公開第2018/029353号)。これらの問題のいくつかは、好熱性真菌による固体発酵を使用することで対処されてきた(国際公開第2018/029353号)。国際公開第2018/029353号には、真菌由来のSCPが記載されている。SCPは簡単に回収され、ふるい分けプロセスで圧搾される。
【0004】
米国特許第8,481,295号は、エタノール精製所で得られる薄い蒸留廃液においてバッチ発酵を使用した動物飼料成分としての好熱性真菌の生産を開示している。しかしながら、そこで使用される真菌株は、4未満のpH及び45℃を超える温度ではうまく働かないため、このプロセスは細菌及び酵母の汚染に対して敏感なものとなる。
【0005】
Gregory K.Fら(1977年、Anim.Feed Sci.Technol.2:7-19)は、キャッサバの変換に耐熱性真菌を使用する試みを開示しており、その過程で多くの耐熱性真菌が分離された。しかしながら、これらの試みは、彼らの生物には汚染の問題が残っていたり、望ましくないヒトの病原体(例えば、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus))が使用されていたり、その一方で、ラットの研究において彼らのムコール(Mucor)株が消化しにくいことが判明したりしたため、商業製品化には至らなかった。国際公開第2018/029353号に記載されているように、SCPの生産に耐熱性真菌セパロスポリウム・エイコルニア(Cepalosporium eichornia)が関与する研究も複数の情報源から報告されている。
【0006】
保存安定性を向上させるために、SCPは冷却、冷凍、又は乾燥され得る。しかしながら、SCPが食品産業において原料として販売される際、最終的な食品において微生物が増殖を継続又は再開する可能性がある。したがって、食品に使用するSCPは、一般には細菌数を10真菌/gr未満に減らす必要があり、これが典型的な食品の基準である。このような細菌数の減少は、パスチャライゼーションによって都合よく達成される。
【0007】
パスチャライゼーション装置は、周知であり、多くの形状及び形態で市販されている。パスチャライゼーションは熱処理の一種であるため、大量のエネルギーを消費する。例えば、単細胞生物の液中発酵後にパスチャライゼーションを行う場合、例えば、真菌バイオマスは一般に、5%の乾物を超えるバイオマス乾物含有量には達しないので、処理すべき体積はかなり多い。これは、そのような発酵条件の間、ブロスの粘性挙動の結果として酸素移動が一般に限定的となるためである。このため、発酵ブロスは時として、意図的にさらに希釈される。
【0008】
ちなみに、牛乳のパスチャライゼーションの目標は、生存可能な微生物の99.999%(5-log)の減少を達成することである。パスチャライゼーションは一般には、連続加熱処理を使用する高温短時間装置により達成される。牛乳のパスチャライゼーションに一般的な温度と時間の組合せは、牛乳の栄養品質への影響を最小限に抑えつつ、微生物の死滅を最適化するために選択されている。パスチャライズド牛乳(60℃に約20分間加熱)は冷蔵保存する必要があり、保存期間は比較的短い。対照的に、超高温殺菌(ウルトラパスチャライズド、UP)牛乳(125~138℃に2~4秒間加熱)は、冷蔵で最大3か月間保存可能である。超高温(UHT)処理(135~140℃に数秒間加熱)を受けた牛乳は、常温で3~6か月間保存可能である。しかしながら、消費者パネルによる調査は、多くの消費者がパスチャライズド牛乳とUHT牛乳を味で区別できることを明らかにした。消費者は、風味のためにパスチャライズド牛乳を好むことが多く、UHT牛乳が「調理済み」の風味があると説明している(L.Meunier-Goddik、S.Sandra、Encyclopedia of Dairy Sciences、2011年、274~280ページ)。高温処理は、ムコラレス(Mucorales)真菌を含む食品の味に悪影響を与えることも関連している(国際公開第0167886号)。
【0009】
本発明の目的は、単細胞タンパク質バイオマスのパスチャライゼーションを改善することである。本発明の目的は、パスチャライゼーションのエネルギー必要量を減らすことである。本発明の目的は、パスチャライゼーションされたSCPの生産に必要な装置及び発酵設備の複雑さを減らすことである。本発明の目的は、改善された味覚、匂い、及び/又は口当たりなどの改善された官能品質を有する(パスチャライゼーションされた)SCPを製造することである。
【0010】
[発明の概要]
本発明は、バイオマスをパスチャライゼーションするための方法であって、
i)バイオマスを提供するステップ;
ii)バイオマスをパスチャライゼーションして、パスチャライゼーションされたバイオマスを得るステップであって、前記バイオマスが少なくとも70℃の温度で最大45分間パスチャライゼーションされる、ステップ、及び
iii)任意選択で、パスチャライゼーションされたバイオマスを回収するステップ
を含む、方法を提供する。
【0011】
好ましくは、バイオマスは、発酵ブロスに由来し、好ましくは液中発酵プロセスに由来する。この発酵ブロスは、好ましくは最大6%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大4%のバイオマス乾物含有量を含む。好ましくは、バイオマスを得るために、発酵ブロスは、好ましくはふるいベルト、振動ふるい、又はスクリーンふるいを使用して、ふるいにかけられる。好ましくは、提供されるバイオマスは少なくとも7%の乾物、好ましくは少なくとも10%の乾物を含む。好ましくは、バイオマスは、真菌株に由来するバイオマスであり、好ましくは、真菌株は、ラザムソニア属(Rasamsonia)、タラロマイセス属(Talaromyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、アクレモニウム属(Acremonium)、フミコラ属(Humicola)、パエシロマイセス属(Paecilomyces)、ケトミウム属(Chaetomium)、リゾムコール属(Rhizomucor)、リゾプス属(Rhizopus)、サーモマイセス属(Thermomyces)、ミセリオプトラ属(Myceliophthora)、サーモアスカス属(Thermoascus)、ティエラビア属(Thielavia)、ムコール属(Mucor)、スティベラ属(Stibella)、メラノカルプス属(Melanocarpus)、マルブランキア属(Malbranchea)、ダクチロマイセス属(Dactylomyces)、カナリオマイセス属(Canariomyces)、シタリジウム属(Scytalidium)、ミリオコッカム属(Myriococcum)、コリナスカス属(Corynascus)、及びクーネメリア属(Coonemeria)からなる群から選択される真菌属の株であり、好ましくは、属は、リゾムコールであり、好ましくは、株は、リゾムコール・プシラス(Rhizomucor pusillus)であり、より好ましくは、リゾムコール・プシラスCBS143028株、又はその単一コロニー分離物若しくは派生物である株である。
【0012】
好ましい実施形態では、パスチャライゼーションは、インライン加熱ユニットにおいて行われ、インライン加熱ユニットは、好ましくはパイプヒーター、加熱ブロック、又は蒸気注入要素を含み、より好ましくは蒸気注入要素を含み、また、インライン加熱ユニットは、任意で、スタティックミキサーなどの混合要素を含む。好ましくは、パスチャライゼーションは、最大で5分間、好ましくは約0.5~約3分間、より好ましくは約1~2分間行われる。好ましくは、パスチャライゼーションは、少なくとも74℃、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは少なくとも86℃の温度で行われる。好ましくは、パスチャライゼーションされたバイオマスの細菌数は、提供されたバイオマスと比較して、少なくとも7、好ましくは少なくとも11、より好ましくは少なくとも12のlog10減少を有する。
【0013】
好ましい実施形態では、ステップi)において、リゾムコール・プシラス株の液中発酵に由来するバイオマスが提供され、ステップii)において、バイオマスがインライン加熱ユニットを通って流れ、インライン加熱ユニットでバイオマスは、約86℃の温度で約1~2分の滞留時間を有し、ステップii)におけるバイオマスのpHは、好ましくは最大で4.5、より好ましくは最大で3.5である。
【0014】
本発明はまた、上記のような方法によって得られるパスチャライゼーションされたバイオマスであって、好ましくは、乾燥重量に基づいて約6%~12%の脂質及び約35%~55%のタンパク質を含む、パスチャライゼーションされたバイオマスを提供する。このパスチャライゼーションされたバイオマスを含む食品又は飼料製品もまた提供される。また、本発明は、食品の製造における、又は食品の製造に使用するための繊維若しくはタンパク質の少なくとも1つの供給源としてのパスチャライゼーションされたバイオマスの使用も提供する。
【0015】
[実施形態の説明]
本発明者らは、驚くべきことに、少なくとも70℃の温度で最大45分間パスチャライゼーションされた単細胞タンパク質は、細菌数が十分に低く、感覚的により快適であることを見出した。本発明は、方法とそれによって得られる生成物、及びそのような生成物の使用を包含する。従って、本発明は、バイオマスをパスチャライゼーションするための方法であって、
i)バイオマスを提供するステップ;
ii)バイオマスをパスチャライゼーションして、パスチャライゼーションされたバイオマスを得るステップであって、バイオマスが少なくとも70℃の温度で最大45分間パスチャライゼーションされ、これは好ましくは、バイオマスをインライン加熱ユニットに流してパスチャライゼーションされたバイオマスを得ることによって行われ、バイオマスは、最大で45分の加熱ユニットにおける滞留時間を有し、加熱ユニットは、少なくとも70℃の温度を有する、ステップ、及び
iii)任意選択で、パスチャライゼーションされたバイオマスを回収するステップ
を含む、方法を提供する。
【0016】
そのような方法は以下、本発明による方法又はプロセスと呼ばれる。「単細胞タンパク質」という用語は、「SCP」と略され、本明細書では、単細胞細菌、酵母、真菌、若しくは藻類を含み、また、さらに糸状形態(菌糸)で増殖する微生物も包含する単細胞又は単一細胞状態で存在する生物の細胞から本質的に成るバイオマスを指すと理解され、そのバイオマスは、好ましくは乾燥形態であり、ヒトの食品又は動物飼料におけるタンパク質の食事的供給源又はタンパク質サプリメントとして適している。
【0017】
方法ステップi)バイオマスの提供
ステップi)では、バイオマスが提供される。このバイオマスは、好ましくは、単細胞生物又は糸状生物のバイオマスであり、それらのうち、細菌、酵母、真菌、又は藻類が好ましい。いくつかの実施形態では、バイオマスは単細胞バイオマスである。他の実施形態では、バイオマスは、糸状生物のものである。好ましい実施形態では、提供されるバイオマスは、真菌株、好ましくは糸状菌株に由来するバイオマスである。それは、パスチャライゼーションされたバイオマスではなく、熱処理されていない発酵に由来することが好ましい。
【0018】
本発明の方法で使用される真菌、すなわち、本プロセスにおいて増殖される真菌は、好ましくは好熱性真菌である。本発明において使用するための好熱性真菌は、好ましくは少なくとも45、46、47、48、50、51、52、又は55℃、時として56℃よりも高い温度で増殖する真菌である。本発明において使用するための好熱性真菌は、好ましくは、低いpH、すなわち酸性pHで増殖する真菌でもある。好ましい好熱性真菌は、3.8、3.75、3.74、3.73、3.72、3.71、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5以下、より好ましくは3以下のpHで増殖する。好ましくは、真菌はそのpHで増殖される。本発明において使用するための好熱性真菌は、好ましくはセルロース分解菌及び/又はヘミセルロース分解菌である。
【0019】
「真菌」は、本明細書において真核微生物と定義され、ユーミコチナ(Eumycotina)亜種の全ての種を含む(Alexopoulosら、1962年、Introductory Mycology中、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク)。したがって、真菌という用語は、糸状菌と酵母の両方を含む。「糸状菌」は、本明細書では、ユーミコチナ亜種及びオーミコタ(Oomycota)の全ての糸状形態を含む真核微生物として定義される(Ainsworth and Brisby’s Dictionary of the Fungi.第7版、Commonwealth Mycological Institute、Kew、SurreyにおけるHawksworthら、1983年による定義)。糸状菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及びその他の複雑な多糖類で構成される菌糸壁によって特徴付けられる。栄養成長は菌糸伸長によるものであり、炭素異化作用は絶対好気性である。
【0020】
本発明の方法において使用するための好熱性真菌は、好ましくは糸状菌である。本発明における使用に好ましい好熱性真菌は、ラザムソニア、タラロマイセス、ペニシリウム、アクレモニウム、フミコラ、パエシロマイセス、ケトミウム、リゾムコール、リゾプス、サーモマイセス、ミセリオプトラ、サーモアスカス、ティエラビア、ムコール、スティベラ、メラノカルプス、マルブランキア、ダクチロマイセス、カナリオマイセス、シタリジウム、ミリオコッカム、コリナスカス、及びクーネメリアからなる群から選択される真菌属の株である。好ましくは、属はリゾムコールであり、好ましくは、株はリゾムコール・プシラスであり、より好ましくは、リゾムコール・プシラスCBS143028株、又はその単一コロニー分離株若しくは派生株である。より好ましくは、好熱性真菌は、ラサムソニア・コンポスティコラ(Rasamsonia composticola)、タラロマイセス・エメルソニ(Talaromyces emersonii)、ラサムソニア・エメルソニ(Rasamsonia emersonii)、サーモムコール・インディカエ・セウダチカエ(Thermomucor indicae-seudaticae)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)、リゾムコール・プシラス(Rhizomucor pusillus)、ティエラビア・テリコラvar.ミノール(Thielavia terricola var minor)、リゾプス属種(Rhizopus sp.)及びサーモアスカス・サーモフィルス(Thermoascus thermophilus)からなる群から選択される真菌種の株である。これらの好熱性真菌の適切な菌株は、例えば、Dutchコンポストから分離することができ、これらの好熱性真菌が高温及び低pHにおいて複雑な栄養素で良好に増殖することを実証するために、本発明者らによって成功裏に使用された。これに続いて、多くの好熱菌株、例えばティエラビア・テリコラvar.ミノール及びサーモアスカス・サーモフィルスなども本発明での使用に適しており、これらもまた高温及び低pHで良好に増殖する。リゾプス属種は、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾプス・クラミドスポラス(Rhizopus chlamydosporus)、リゾプス・ミクロスポラス(Rhizopus microsporus)、リゾプス・ストロニファー(Rhizopus stolonifer)又はムコール・インディカス(Mucor indicus)のいずれか1つであり得る。或いは、リゾプス属種は、リゾプス属種CBS143160に対応する未確認のリゾプス又はムコールの種であり得る。好ましくは、リゾプス属種は食品における使用に安全であり、より好ましくは、リゾプス属種はテンペ菌である。
【0021】
本発明において使用するための上記の好熱性真菌の好ましい菌株は、ブダペスト条約の規定に基づいて、オランダのユトレヒトにあるウェスターダイク菌類生物多様性研究所(以前はCentraalbureau voor Schimmelcultures、CBSと呼ばれていた)に指し示された日付で寄託され、指し示された受託番号に割り当てられた以下の菌株を含む:ラサムソニア・コンポスティコラCBS141695(2016年7月29日)、サーモムコール・インディカエ・セウダチカエCBS143027(2017年7月21日)、リゾムコール・ミエヘイCBS143029(2017年7月21日)、リゾムコール・プシルスCBS143028(2017年7月21日)、ラサムソニア・エメルソニ株CBS143030(2017年7月30日)及びリゾプス属種CBS143160(2017年8月11日)。本発明において使用するためのさらに好ましい菌株は、サーモムコール・インディカエ・セウダチカエCBS104.75、サーモアスカス・サーモフィルスCBS528.71、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)CBS546.86、タラロマイセス・エメルソニCBS393.64及びサーモテロマイセス・サーモフィラ(Thermothelomyces thermophila)CBS117.65を含む。本発明における使用に特に好ましいのは、ラザムソニア・コンポスティコラ株CBS141695、ラサムソニア・エメルソニCBS143030、サーモムコール・インディカエ・セウダチカエCBS143027、リゾムコール・ミエヘイCBS143029、リゾプス属種CBS143160及びリゾムコール・プシルスCBS143028である。
【0022】
本発明において使用するための好熱性真菌は、さらに好ましくは、高タンパク質含有量でバイオマスを得ることができる真菌である。好ましくは、バイオマスのタンパク質含有量は、乾物ベースで少なくとも30、35、40、45、50又は55%(w/v)である。高タンパク質株は、例えばトレハロース、グリコーゲン及び/又は脂質などの炭素蓄積及び/又は貯蔵化合物の含有量が低い可能性が最も高い。
【0023】
本発明において使用するための好熱性真菌は、さらに好ましくは、バイオマス中のタンパク質が必須アミノ酸の1つ又は複数を含む真菌である。タンパク質は、そのような必須アミノ酸が豊富であることが好ましい。必須アミノ酸は、本明細書において、リジン、フェニルアラニン、スレオニン、メチオニン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン、イソロイシン、及びロイシンの少なくとも1つ又は複数を含むと理解され、そのうちリジン、スレオニン、メチオニンが最も好ましい。
【0024】
SCP製品は、ヒトが消費する食品又は動物用飼料での使用が意図されるため、適用される好熱性真菌によるオクラトキシンA及びフモニシンなどのマイコトキシンの産生は望ましくない。したがって、本発明における使用のための好熱性真菌は、マイコトキシンを産生しないものを選択することが好ましい。このスクリーニングは、好ましくは、遺伝学的手段、例えばPCR又は全ゲノム配列決定によって、マイコトキシン経路の遺伝子が存在しないことを確認することにより、また、そのような遺伝子が存在する場合には、使用されるプロセス条件下でこれらの遺伝子が発現されないこと、及び/又はこれらの毒性化合物が生成されないことを確認することにより行われる。
【0025】
バイオマスに含まれる微生物は、それ自身の細胞外加水分解酵素を産生することが好ましく、これは、45℃を超える温度と3.8未満のpHでは、他の(微)生物は目的の微生物、好ましくは真菌、より好ましくは好熱性真菌に対して侵害及び/又は競合することができないため、非無菌条件下でプロセスを実行することを可能とする。したがって、好ましくは、スクロース及びグルコース、フルクトースなどの単糖と、デンプン、イヌリン、セルロース、ヘミセルロース、キチン、ペクチンなどの高分子糖の両方、並びに乳酸、酢酸、ギ酸、エタノール、及びメタノールなどの有機酸(これらの代謝産物はしばしば、サイレージプロセス中に形成されるか、又はペクチン及びヘミセルロースからのそれらの分離に由来する)、並びにトリグリセリド若しくはリン脂質の形態で存在する脂質を含む、エネルギーが豊富な炭素主体の供給原料において増殖できる好熱性真菌が使用される。また、ヘミセルロースに存在する糖などの他の糖;ラムノース、フコース、ガラクトース、キシロースアラビノース、マンノース、ガラクツロン酸、グルクロン酸などの変換もまた必要であり、ラフィノース、メリビオース、スタキオースなどが、飼料成分のタンパク質生成物を増強し、廃水処理/バイオガス設備に行かなければならない濾液からの炭素負荷を最小限に抑えるために好ましい。また、真菌によるベタイン、フェルラ酸、及びクマル酸の変換も、収量を最大化するために好ましい。堆肥化のようなプロセスで生じる多くの好熱性真菌の利点は、それらが非常に過酷な条件に耐えることができ、炭水化物などの高分子基質を単糖に分解して変換する酵素を生成できることである。
【0026】
或いは、本発明のプロセスで使用される好熱性真菌は、加水分解酵素、好ましくはインベルターゼ(例えばラザムソニアの場合)、セルロース分解酵素及び/又はリグノセルロース分解酵素を増加した量で生産するように遺伝子改変されており、例えば国際公開第2011/000949号に記載されているものなどが本発明において使用される。増強された酵素生産は、加水分解時間の短縮を導くことができ、そして、より小さなタンクを使用することができ、また、酵素を含む濾液/デカント液が二次製品として商品化され得る。
【0027】
バイオマスは、好ましくは発酵ブロスに由来し、より好ましくは液中発酵プロセスに由来する。バイオマスの提供は、好ましくは、i-a)発酵性の炭素が豊富な供給原料を含む培地中で好熱性真菌を増殖させるステップを含む。好ましくは、ステップi-a)において、真菌は液中培養で増殖される。好ましくは、ステップi-a)において、真菌は非無菌条件下で増殖される。好ましくは、ステップi-a)において、真菌は、46、47、48、49、50、51、52、53、54、又は55℃以上の温度で増殖される。好ましくは、ステップi-a)において、真菌は、3.8、3.75、3.74、3.73、3.72、3.71、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5以下のpHの下で増殖される。本プロセスは、好ましくは、ステップi-a)で増殖させた好熱性真菌の(濃縮された)バイオマスの形態で培地から微生物を回収するステップi-b)をさらに含む。パスチャライゼーションされるバイオマスは、高い細胞密度を有することが好ましい。
【0028】
国際公開第2018/029353号から公知であるように、低pHでのSCPの生産において解決されるべき1つの問題は、炭素が豊富な発酵性供給原料の多くの毒性である。特に加水分解されたバイオマス又はサイレージ生成物は、例えば、酢酸、乳酸、フェルラ酸、クマル酸、ギ酸などの有機酸を含む、ほとんどの微生物にとって有毒な化合物を含んでいる可能性がある。これらの酸は、非解離型の形態をとり、それ自体で細胞壁を容易に通り抜けて細胞の内部を酸性化できる低pHでは、特に有毒である。そのような炭素が豊富な発酵性供給原料を、低いpHで、2、5又は10%よりも高い供給原料乾物濃度(w/v)で発酵に適用した場合には、その毒性が真菌の増殖を阻止するであろう。
【0029】
したがって、好ましくは、本発明のプロセスでは、ステップi-a)における炭素が豊富な供給原料の濃度は、供給原料中の毒性化合物が真菌の増殖速度を低下させないレベルである。より好ましくは、炭素が豊富な供給原料は、供給原料中の毒性化合物が真菌の増殖速度を低下させない速度で培地に供給される。例えば、本発明によるプロセスでは、培地中の炭素が豊富な供給原料は、乾物5、4、3又は2%(w/v)未満の濃度であるか、又は濃度を維持する速度で培地に供給される。供給原料中の乾物は一般には発酵の基質であり、ブロス又はバイオマス中の微生物の量の尺度であるバイオマス乾物とは異なる。供給原料乾物は、好ましくは1~20%又は2~20%、より好ましくは2~15%、さらにより好ましくは2~10%、さらにより好ましくは2~6%の乾物物質(w/v)で存在する。好ましい実施形態において、発酵ブロスは0.5~7%の範囲のバイオマス乾物含有量を含み、好ましくは最大6%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大4%の範囲である。それは、さらにより好ましくは最大3%、さらにより好ましくは最大2%、さらにより好ましくは最大1.5%、最も好ましくは最大1%である。この乾物含有量は、好ましくは少なくとも0.2%、より好ましくは少なくとも0.5%、さらにより好ましくは少なくとも1%、さらにより好ましくは少なくとも2%、さらにより好ましくは少なくとも3%、最も好ましくは少なくとも3.5%である。バイオマス乾物含有量が高いほど、パスチャライゼーションが必要な量が減り、バイオマス乾物含有量が低いほど、通気及び混合などの発酵条件が改善される。
【0030】
供給原料の発酵性は、発酵槽の排気ガスのCO含有量及びO含有量の少なくとも1つを測定することによって、簡便にチェック又は監視され得る。したがって、真菌の増殖速度に悪影響を与えることなく供給原料を使用できる最大濃度は、CO生成速度及び酸素消費速度の少なくとも一方が低下する濃度に達するまで培地中の供給原料の濃度を上げることによって決定され得る。したがって、好ましくは、本発明のプロセスにおいて、供給原料中の毒性化合物が真菌の増殖速度を低下させない濃度は、真菌によるCO生成速度及びO消費速度の少なくとも一方の低下を引き起こさない、炭素が豊富な供給原料の最高濃度として決定及び/又は定義される。良好に発酵する供給原料は、発酵からの発生気体中のCO濃度の増加又は酸素濃度の減少によってそれぞれ決定されるように、CO生成速度又は酸素消費速度の急速な増加を可能とするであろう。COの放出速度が低い場合(及び窒素、炭素、ミネラル、微量元素などの他の因子が制限的でない場合)、増殖は遅く、増殖が軌道に乗り始め、COの生成が加速するまで、水で希釈することで増強され得る。
【0031】
国際公開第2018/029353号は、播種前に加水分解されたバイオマスを乾物2%未満に希釈し、続いてバッチ段階を完了し、有機酸及び糖が消費されたら、グルコース制限条件(例えばグルコース2g/L以下)で低速で加水分解されたバイオマスの供給を開始して、発酵槽に供給された有毒な有機酸を全て真菌に消費させる供給バッチ法を開示している。したがって、本発明の方法において使用するための好ましい提供されるバイオマスは、供給バッチ法、反復フェドバッチ法(発酵ブロスの一部が繰り返し採取される)又は連続法に由来する。好ましくは、そのようなプロセスにおける希釈速度、すなわち供給原料が発酵槽に供給される速度は、可能な限り高くすべきであるが、真菌の洗い流しを防ぐために、真菌の最大比増殖速度よりも高くないことが好ましい。希釈速度は、好ましくは0.05~0.5まで、好ましくは0.4までの範囲、より好ましくは0.2l/時間であり、これは、発酵槽内における5~20時間の発酵槽内滞留時間を指す。したがって、希釈速度は、好ましくは少なくとも0.05又は0.1l/時間であり、好ましくは0.4又は任意選択で0.2l/時間を超えない。
【0032】
さらに好ましいバイオマスは、2つ以上の発酵槽の使用を含むプロセスに由来し、ここで、少なくとも第1の発酵槽は回収及び任意選択で洗浄のために空にされ、その一方で少なくとも第2の発酵槽では真菌の増殖が継続する。空の発酵槽の洗浄は、好ましくは、例えば細菌又は酵母による発酵の感染を制御するために、例えば酸(硫酸又はリン酸など)、アルカリ(NaOH若しくはKOHなど)、殺菌剤(過酸化水素若しくは過酢酸など)又は熱(例えば蒸気)によるリンスによる殺菌を含む。洗浄は、好ましくはCIP設備を使用して実施される。一実施形態では、バイオマスは1、2、3、4、又は5日に1回、又は週に1回、又は月に1回、回収及び任意選択の洗浄のために交互に空にされる少なくとも1対の発酵槽において実施されるプロセスに由来する。この操作は、プロセスの不安定性又は品質若しくはプロセスの安定性における逸脱なしに、非無菌条件の実践を可能とするプロセスの改良版である。本プロセスのさらに好ましい実施形態では、回収及び任意選択の洗浄の後、空の第1の発酵槽が第2の発酵槽の内容物の少なくとも一部で満たされ、第1の発酵槽の回収及び任意選択の洗浄中にも増殖が継続される。バイオマスを提供するためのプロセスの次のラウンドでは、第2の発酵槽が回収され、任意選択で洗浄され、その後、第1の発酵槽の内容物の少なくとも一部が満たされ、第2の発酵槽の回収と任意選択の洗浄の間も増殖が続き、以下同様となる。さらに別の実施形態では、回収された発酵バッチは、さらなる連続発酵段階において収集され、より高い生成物収量及び/又は下流の処理エリアへの安定した供給が可能とされる。
【0033】
本発明のプロセスでは、バイオマスを供給するために(供給原料の)乾物濃度を管理して、酸素消費速度が発酵槽の酸素移動能力を超える(不十分な通気及び不完全な基質消費につながる)ことがないようにするのが好ましい。
【0034】
パスチャライゼーションされるバイオマスは、パスチャライゼーションの前にさらに処理されてもよいことから、発酵混合物と同一である必要はないことに留意されたい。培地中の乾物濃度は、さらに好ましくは、下流の処理が最もコスト効率が良いものとなるように最適化される。ステップii)でパスチャライゼーションされる回収された発酵培地の量を最小限に抑えるために、提供されるバイオマスの乾物濃度は、可能な限り高いことが好ましい。一方、培地中の供給原料の乾物濃度が高すぎると、真菌ブロスの粘度が上昇し、酸素移動が問題となるであろう。本発明者らは、発酵槽中の培地中の供給原料の最適乾物濃度が1~20%、好ましくは2~15%の乾物(w/v)の範囲であることを見出した。原材料、塩ストレス、毒性代謝物、使用する発酵槽の種類に応じて、バリエーションが可能である。バイオマス乾物含有量はまた、少なくとも5%、好ましくは少なくとも6%でもあり得る。好ましい実施形態において、バイオマスは少なくとも7%の乾物、好ましくは少なくとも8%、より好ましくは少なくとも9%、なおより好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも11%、最も好ましくは少なくとも12%の乾物を含む。このバイオマス乾物含有量は、好ましくは、パスチャライゼーション中の含有量に関連する。乾物含有量は、好ましくは最大15%、より好ましくは最大13%、なおより好ましくは最大12%、なおより好ましくは最大11%、なおより好ましくは最大約10%である。好ましい範囲は5~15%、より好ましくは約7~12%、さらにより好ましくは約7~10%である。
【0035】
さらに、ブロスのレオロジーは、真菌の増殖形態によって部分的に決定される。本発明のプロセスにおける真菌の好ましい増殖形態は、ブロスの粘度を低くして酸素移動及び混合を容易にするのに十分に短い菌糸長であるが、低いg値での濾過又はデカンテーションを容易にするのに十分に長い菌糸長である。したがって、好ましくは菌糸長は10~500μm(マイクロメートル)の範囲であり、好ましくは、菌糸は過度に枝分かれしていない。より好ましくは、菌糸長は30~300μmの範囲である。菌糸体は、好ましくは直径0.1、0.5、1又は2mmの細孔を有するふるい又はスクリーン上での保持によって容易に回収できることが好ましい。
【0036】
バイオマスが発酵される際に窒素制限が回避されることがさらに好ましい。したがって、真菌などの微生物は、炭素制限下で増殖させることが好ましい。これにより、生産されるバイオマスのタンパク質含有量を最大化することができ、炭素過剰の結果として生じる例えば、トレハロース、グリコーゲン及び/又は脂質などの炭素蓄積及び/又は貯蔵化合物の蓄積を回避することができる。
【0037】
本発明のプロセスでパスチャライゼーションされるバイオマスの提供のために使用され得る炭素が豊富な発酵性供給原料は、好熱性真菌の炭素及びエネルギー源として機能できる任意の供給原料であり得る。そのような炭素が豊富な供給原料は、トウモロコシ、サトウダイコン、シンジュース、シックジュース、サトウキビジュースなどの食用糖の一次生産から新たに回収された作物であり得る。しかしながら、特にSCPが動物飼料に適用されることを意図している場合、炭素が豊富な副産物若しくは副生成物又は農業及び/若しくは食品生産からの廃棄物ストリーム、例えば、サトウダイコンパルプ、穀物加工からの液体Cデンプン、皮をむいた野菜若しくはカット野菜の生産からの野菜廃棄物又は不適合な野菜からの野菜廃棄物など、例えばジャガイの皮、及びフライドポテト製造の切り残し、エンドウマメのクリーム、取引を拒否されたジャガイモなどを、また、主にパーム油とパーム油脂肪酸を含むパーム油工場廃液(POME)及び空果房(EFB)若しくはヤシの葉を含むパーム工場残留物も、供給原料として使用することがより論理的であり、好ましい。好ましい供給原料はサイレージに保存できるため、サトウダイコンパルプ又はジャガイモ若しくはサトウダイコンの葉の場合など、1回の活動で供給原料を回収しつつも、一年中SCPに加工することができる。また、例えば、トウモロコシ又はトウモロコシ全体又はそのエンシレージ形態と組み合わせて、飼料ビート全体からのサイレージを使用することもできるが、リグニンが豊富なトウモロコシの茎葉やサトウキビバガスは好ましくない。例えば、リグノセルロース加水分解物からのペントースも使用され得る。これらのシロップは、主にグルコース、キシロース、アラビノース、マンノース及びガラクトースを含んでいる。本発明のプロセスのための発酵可能な炭素が豊富な供給原料としての原料の適切な別の供給源は、都市固形廃棄物(MSW)の有機画分である。
【0038】
本発明による方法は、食品又は飼料製品に使用できるパスチャライゼーションされたSCPの製造に非常に有用である。食品の製造(食用)のためのSCPの生産については、例えば、トウモロコシ、ジャガイモ、コムギ、コメ、キャッサバ、サトウキビ若しくはサトウキビジュース、サトウダイコン若しくはサトウダイコンのジュース若しくはシックジュース、糖蜜、サトウキビ糖蜜、ブドウ糖シロップ、果糖シロップ、及び食品用途に適したその他の野菜製品を含む、食品への適用に適合する、又は食品への適用が許容される植物由来の任意の産物が、パスチャライゼーションのためのバイオマスの提供に使用するための炭素が豊富な供給原料として、本発明に適用され得る。選択された生物は、例えばダイズ油、オリーブ油、コーン油、パーム油、ヤシ油、ナタネ油、又はヒマワリ油等を含むトリグリセリドも消費するため、脂質が豊富な画分、例えば植物油又はそれからの画分もまた、炭素が豊富な供給原料として本発明に適用することが可能である。
【0039】
バイオマスの提供のために使用される培地は、さらに好ましくは、窒素源を含有する、及び/又は供給される。好ましくは、窒素源は、アンモニア、尿素及び硝酸塩(の供給源)のうちの1つ又は複数を含む。より好ましくは、窒素源としては、尿素及びアンモニウムなどの還元体である。NH又はHNOはさらに、発酵槽内のpHを制御するためのものとすることができ、又は尿素をpHに依存しない窒素源の供給として使用することができる。廃棄物ストリームからの窒素源もまた好ましい。これらは、例えば、糖蜜、サトウダイコン若しくはサトウキビのビナスの蒸発、ワイン産業からのビナス、ブドウ残渣、ジャガイモタンパク質リカー(PPL)、コーンスティープリカー(CSL)、動物農場の排ガス洗浄スクラバーからのアンモニア、及び糞尿処理の薄い画分から得られる負担凝縮物中に存在するアミンの1つ又は複数を含んでいる。
【0040】
本発明による方法の好ましい実施形態では、バイオマスは化学的に定義された培地中で増殖又は培養される。「化学的に定義された」という用語は、化学的に定義された構成要素から本質的に構成されている、すなわち、培地において使用されている本質的に全ての化学物質の化学組成が公知である発酵培地について使用されると理解される。化学的に定義された構成要素から本質的に構成される発酵培地は、複雑な炭素及び/又は窒素源を含まない、すなわち、化学的に定義されていない組成を有する複雑な原材料を含まない培地を含む。化学的に定義された培地は、好ましくは、化学的に不明確な酵母、動物、又は植物組織を含まない;それらは、ペプトン、抽出物、又は消化物、又は化学的に定義が不十分なタンパク質及び/又はペプチド及び/又は加水分解物に寄与する可能性のある他の成分を含まない。化学的に定義されていない、又は定義が不十分な化学成分は、化学組成と構造が周知ではないもの、定義が不十分で様々な組成で存在するもの、又は膨大な実験的努力によってのみ定義され得るものである。
【0041】
それにもかかわらず、化学的に定義された構成要素から本質的に構成される発酵培地は、しかしながら、以下に定義される量である本質的に少量の複雑な窒素及び/又は炭素源を含む培地をさらに含んでいてもよいが、その量は、典型的には、微生物の増殖を維持するため、及び/又は十分な量のバイオマスの形成を保証するためには十分でない。その点で、複雑な原材料は、例えば、これらの原材料は多くの異なる化合物を含んでおり(その中には複雑なヘテロポリマー化合物がある)、また、季節変動や地理的起源の違いにより、様々な組成を有するという事実のために、化学的に定義されていない組成を有している。発酵において複雑な炭素及び/又は窒素源として機能する複雑な原材料の典型的な例は、ダイズ粕、綿実粕、コーンスティープリカー、酵母エキス、カゼイン加水分解物、糖蜜などである。
【0042】
本質的に少量の複雑な炭素及び/又は窒素源が、本発明の化学的に定義された培地中に、例えば主発酵のための種菌からの持ち越し汚染として存在しうる。主発酵のための種菌は、化学的に定義された培地での発酵によっては必ずしも得られない。ほとんどの場合、種菌からの持ち越し汚染は、主発酵用の化学的に定義された培地中に少量の複雑な窒素源が存在することで検出可能となる。主発酵のための種菌の発酵プロセスにおいて複雑な炭素及び/又は窒素源を使用することは、例えば、バイオマスの形成を加速する、すなわち微生物の増殖速度を増加させる上で、及び/又は内部のpH制御を容易にする上で有利となり得る。同じ理由で、本質的に少量の複雑な炭素及び/又は窒素源、例えば酵母抽出物を主発酵の初期段階に添加すること、特に発酵プロセスの初期段階でのバイオマス形成をスピードアップすることは有利となりうる。本発明の化学的に定義された培地中に存在しうる本質的に少量の複雑な炭素及び/又は窒素源は、本明細書において、化学的に定義された培地中に存在する炭素及び/又は窒素の総量(ケルダールN)の最大約10%の量、好ましくは炭素及び/又は窒素の総量の最大5、2、1、0.5、0.2又は0.1%(w/v)の量であると定義される。
【0043】
しかしながら、好ましい実施形態では、本発明のプロセスで培養される好熱性真菌などのバイオマス株によって消泡剤が炭素源として使用され得る限りにおける任意選択の消泡剤を除き、本発明の化学的に定義された培地中に複雑な炭素及び/又は窒素源は存在しない。真菌株は、好ましくは(例えば、米国特許出願公開第2014/0342396号に記載されているように)比較的純粋な炭水化物(例えば、グルコース)溶液と無機塩溶液と組み合わせたアンモニアにおいて増殖される。純粋な炭水化物/糖溶液は、低レベルの重金属、除草剤、殺虫剤及び殺真菌剤などの低毒性物質、並びに土壌での増殖中又は保管中及び処理中に成形されうる供給原料由来の低レベルのマイコトキシンでの生産を可能とする。
【0044】
本明細書で使用される用語「化学的に定義された培地」は、発酵プロセスの開始前に全ての必要な成分が培地に添加される培地を含み、さらに、必要な成分の少なくとも一部が開始前に添加され、一部は発酵プロセス中に培地に添加又は供給される培地も含むことが、さらに理解される。
【0045】
本発明のプロセスで使用される化学的に定義された培地は、典型的には、いわゆる構造要素と、いわゆる触媒要素を含む。構造要素は、微生物高分子の構成要素である要素、すなわち、水素、酸素、炭素、窒素、リン、及び硫黄であると理解される。構造要素の水素、酸素、炭素及び窒素は、典型的には、炭素及び窒素源中に含まれている。リン及び硫黄は、典型的には、リン酸イオン及び硫酸イオン及び/又はチオ硫酸イオンとして添加される。化学的に定義された培地で使用される炭素及び窒素源の種類は、炭素及び窒素源が本質的に化学的に定義された特徴を有する限り、本発明にとって重要ではない。
【0046】
好ましい実施形態では、化学的に定義された培地中の炭素源は、例えば炭水化物などの親水性炭素源であるか、又はそれからなる。本発明者らは、真菌のペレット形態に関する問題は、脂質などの疎水性物質を欠く(例えば、炭素源が親水性であるため)化学的に定義された培地中において真菌を低pHで培養する場合に生じ、培地に少量の疎水性物質、すなわち消泡剤を含めることによって、所望の分散形態を誘導できることを見出した。したがって、本プロセスは好ましくは、少なくとも1つの疎水性化合物又は疎水性物質を含む化学的に定義された培地中において5.0未満のpHで、好熱性真菌の株などの微生物を増殖させることを含む。好ましくは、疎水性化合物又は物質は消泡剤である。消泡剤は、一般には、当技術分野で周知である(例えば、en.wikipedia.org/wiki/Defoamerを参照)。消泡剤は、発酵ブロスなどの工業プロセス液中における泡の形成を減らし、妨げる化学添加物である。厳密に言えば、消泡剤は既存の泡を除去し、泡止め剤はさらなる泡の形成を防ぐが、消泡剤、泡止め剤及び脱泡剤という用語は、本明細書では交換可能に使用される。本発明のプロセスにおいて使用するための好ましい消泡剤は、植物油、好ましくは食用植物油を含むか、又はそれからなる。本発明のプロセスにおいて消泡剤として使用するための好ましい(食用の)植物油は、キャノーラ(ナタネ)油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、亜麻仁油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ダイズ油、ヒマワリ油及び高オレイン酸ヒマワリ油からなる群から選択される油である。
【0047】
より詳細には、一実施形態では、好熱性真菌の株は、炭素源、窒素源、及び真菌の増殖に必要なさらなる成分からなる化学的に定義された培地中で培養され、ここで、化学的に定義された培地中の炭素源は、親水性炭素源及び消泡剤の少なくとも1つからなる。親水性炭素源は、好ましくは、炭水化物及び有機酸の少なくとも1つを含むか、又はそれらからなる。好ましくは、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、ラムノース、フコース、ガラクトース及びマンノースの少なくとも1つの供給源を含み、そのうちグルコース及びフルクトースが好ましく、そしてグルコースが最も好ましい。例えばグルコース及び/又はフルクトースの供給源を含む適切な炭水化物炭素源は、例えば、マルトース、イソマルトース、マルトデキストリン、デンプン、グルコースシロップ(例えば、HCFSなどのコーンシロップ)、転化(サトウキビ又はサトウダイコン)スクロース、粗製デンプン、デンプン液化物(例えば、リコザイム(Novozymes)又はベレターゼ(BASF)などのアルファアミラーゼを用いて液化したもの)、イヌリン、ラフィノース、メリビオース及びスタキオースを含む。炭素源に含まれ得る有機酸は、乳酸、酢酸、ガラクツロン酸、グルクロン酸を含む。消泡剤は、例えば、消泡剤が上記の植物油などの真菌株によって炭素源として利用され得る油を含む場合、炭素源(の少なくとも一部)として使用され得る。
【0048】
本発明のプロセスにおいて使用される化学的に定義された培地中の窒素源は、好ましくは、尿素、アンモニア、硝酸塩、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、並びにグルタミン酸及びリジンなどのアミノ酸の少なくとも1つを含むか、又はそれからなる。より好ましくは、窒素源は、アンモニア、硫酸アンモニウム及びリン酸アンモニウムからなる群から選択される。最も好ましくは、窒素源はアンモニアである。窒素源としてのアンモニアの使用は、アンモニアがさらにpH調節剤として機能できるという利点を有する。好ましくは、アンモニアがpHを制御するために使用される場合、その濃度は、10、20、50、100、200、500、750又は1000mg/l以下になるように制御される。硫酸アンモニウム及び/又はリン酸アンモニウムが窒素源として使用される場合、真菌株の硫黄及び/又はリン必要量の一部又は全てが満たされうる。
【0049】
触媒要素は、酵素又は酵素補因子の構成要素である元素である。これらの元素は、例えば、マグネシウム、鉄、銅、カルシウム、マンガン、亜鉛、コバルト、モリブデン、セレン及びボリウムを含む。前述の構造要素及び触媒要素に加えて、カリウム及び/又はナトリウムなどの陽イオンが、対イオンとして機能し、細胞内のpH及び浸透圧を制御するために存在することが好ましい。本発明の化学的に定義された培地に適した無機組成物は、米国特許出願第2014/0342396号に記載されている。
【0050】
化学的に定義された培地に任意選択で含まれうる化合物は、リン酸一カリウム及びリン酸二カリウム、炭酸カルシウムなどの緩衝剤である。緩衝剤は、外部pH制御なしでプロセスを扱う場合にのみ添加されることが好ましい。
【0051】
ビタミンとは、好熱性真菌の正常な代謝に必要な、構造的に無関係な有機化合物の群を指す。真菌は、それらが必要とするビタミンを合成する能力又はその無能性が大きく異なることが知られている。ビタミンは、前記ビタミンを合成できない真菌株の発酵培地に添加するだけでよい。典型的には、ムコラレスなどの下等真菌用の化学的に定義された発酵培地は、1つ又は複数のビタミン(複数可)の補充を必要としうる。高等真菌はしばしばビタミンを必要としない。ビタミンは、チアミン、リボフラビン、ピリドキサール、ニコチン酸又はニコチンアミド、パントテン酸、シアノコバラミン、葉酸、ビオチン、リポ酸、プリン、ピリミジン、イノシトール、コリン及びヘミンの群から選択される。
【0052】
一実施形態では、本発明のプロセスで増殖される好熱性真菌は、化学的に定義された培地中におけるビタミンの存在を必要としない株である。本発明者らは、リゾムコール属の種、例えば、リゾムコール・プシラスCBS143028株、リゾムコール・ミエヘイCBS143029株及びリゾプス属種CBS143160株は、ミネラル培地で増殖させた場合でも、ビタミンを必要としないことを見出した。したがって、好ましい実施形態では、プロセスのステップi)において、バイオマスは、ビタミンを全く必要とせず、ビタミンを添加していない化学的に定義された培地、好ましくは、本明細書において上記で定義された炭素源、本明細書において上記で定義された窒素源、及び例えば米国特許出願第2014/0342396号に記載されているミネラルからなる化学的に定義された培地で増殖される好熱性真菌の株に由来する。化学的に定義された培地のさらなる定義は、欧州特許第20153414号に記載されている。
【0053】
バイオマスはまた、他の手段によっても提供され得る。例えば、適切なバイオマスは商業的供給業者から調達され得る。
【0054】
ステップi)は、好ましくは、ステップii)のその後のパスチャライゼーションを促進するために、ステップi-a)の発酵ブロスの処理を含むステップi-b)も含む。これは、例えば発酵ブロスの濃縮による、発酵からのバイオマスの回収又は部分的回収によるものであり得る。好ましい実施形態では、パスチャライゼーションのエネルギー要求を低減するために、ステップi-a)のものなどの発酵ブロスが濃縮される。これは好ましくは、ふるい分け、濾過、及びデカンテーションのうちの少なくとも1つを介して達成される。好ましくは、ステップi-a)のバイオマスは、提供されるバイオマスを得るために、ふるいにかけられ、より好ましくは、ふるいベルト、振動ふるい、又はスクリーンふるいなどを介した濾過を使用して、ふるいにかけられる。
【0055】
バイオマスは、回転ドラム濾過、フィルタープレス、ベルトフィルター、デカンター遠心分離機及びふるい分けのうちの少なくとも1つなどによる濾過によって濃縮され得る。好ましくは、バイオマスは0.1、0.5、1又は2mmの孔径を有する、ふるい又はスクリーン上でふるい分けすることによって回収される。より好ましくは、バイオマスは、ふるい又はスクリーン上での少なくとも2回、3回又は4回の連続ラウンドのふるい分けによって回収され、ここで、後続の各ラウンドのふるい分けでは、より小さい直径の細孔が適用される。例えば、2mmの孔径を使用するふるい分けの最初のラウンドの後に、1、0.5及び/又は0.1mmのラウンドが続く。好ましくは、バイオマスは、乾物>10%の圧送可能スラリーなどの圧送可能なスラリーに濃縮される。これは有利なことに、パスチャライゼーションをより小さいプロセス容積で開始することを可能にする。このようなスラリーのパスチャライゼーションは、装置が小さくなるような方法で行うことができるため、方法の操業者が、必要な投資と運用コストを低く抑え、バイオマスのパスチャライゼーションに必要なエネルギーを最小限に抑えることを可能とする。上述のように、好ましくは、ふるいにかけられ、濾過され、又はデカンテーションされたバイオマスの乾物濃度は、パスチャライゼーションに供された場合、少なくとも7%、より好ましくは少なくとも10%となる。好ましい実施形態では、それは約7%~約20%、又は約15%までである。最も好ましくは、それは約9~12%である。したがって、提供されるバイオマスに含まれる好熱性真菌などの微生物は、良好な濾過特性を有することが好ましい。
【0056】
本発明のプロセスの一実施形態では、真菌などの微生物によって生成された水及び酵素を含有する濾液は、リサイクルして、次の発酵ラウンドで使用され得る。好ましくは、プロセス全体における水の利用は最小限に抑えられる。したがって、好ましくは、本プロセスにおいて、バイオマス(ケーキ)をふるいにかけ、濾過し、デカントし、及び/又はさらに圧搾した後に得られる水画分(濾液)は、発酵に戻してリサイクルされ、及び/又はさらなる発酵バッチに(再)利用される。これは、発酵が少ない乾物(例えば、10、5、又は2%未満の乾物)で行われる場合に特に好ましい。好ましくは、回収プロセスからの濾液の少なくとも10、20、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99%、又はそれ以上がリサイクルされる。実質的に全ての濾液がリサイクルされることが好ましい。リサイクルの結果として、塩及び非消費物があまりに高濃度に蓄積した場合には、濾液の一部は、廃水処理に流してもよく、及び/又は肥料の生産に使用してもよい。したがって、好ましくは、本プロセスにおける滴定剤は、適切な肥料組成物、好ましくはN、P、K、S、Mg及びCaの1つ又は複数を含む組成物が濾液から得られるように選択される。水画分のリサイクルは、廃水処理能力及び/又は真水の使用量を削減することにより、プロセスの全体的な経済性を改善するであろう。任意選択で、第1の発酵の濾液は、第1の生物が消費できない炭素源を第2の生物が消費できるようにする第2の発酵において使用され得る。また、1回の発酵で2種類以上の生物を適用することも可能であろう。2種類の好熱性真菌の適用を同時に又は連続して適用して2回以上の発酵を行うことで、収量、アミノ酸プロファイル、味、物理的挙動、及びさらに多くの最適化が可能となるであろう。好ましい実施形態では、好熱性真菌の1つ又は複数の株を用いた第1の発酵から得られた濾液が、好熱性真菌の1つ又は複数の株を用いた第2の発酵に用いられるが、ここで、第2の発酵における少なくとも1つの好熱性真菌株は、第1の発酵に用いられる株とは異なる。好ましくは、第1及び第2の発酵のための株は、それらのバイオマスのアミノ酸プロファイル及び/又は炭素が豊富な供給原料の画分を消費する能力に関して、相補的であるように選択される。好ましくは、第1及び第2の発酵、及び任意選択でさらなる発酵において使用される好熱性真菌の株は、上記の好熱性真菌及び株から選択される。続いて使用され得る2つの相補的好熱性真菌の例は、例えば、サーモムコールの株とラサムソニアの株、又はサーモムコールの株とリゾムコールの株、又はリゾムコールの株とラサムソニアの株である。
【0057】
或いは、酵素は、濾過後に回収し、動物飼料又は洗剤洗浄、工業用洗浄などに使用する酵素調製物として販売することもできる。
【0058】
好熱性真菌の使用の別の利点は、発酵槽を冷却せずに、又は増殖速度及びバイオマス濃度に応じて最小限の冷却で(Sumanら、2015年、前掲)、例えば、エネルギーの投入を必要とする(アクティブな)冷却装置なしで稼働させることができることである。したがって、発酵槽内の内部冷却コイルも、撹拌発酵槽のバッフル内の冷却コイルも、発酵槽壁の冷却コイルも、リーゼル冷却も、冷却塔も必要とされない。熱交換器を使用した外部冷却ループも必要とされない。冷却は、COが換気される発酵槽のガス排気及び/又は発酵槽の環境と受動的に交換される熱を介して発酵槽から出る水の蒸発のみに依存するため、これはプラント又は設備への投資を削減するであろう。
【0059】
好ましくは、発酵は(外来の真菌胞子又は酵母の侵入を防ぐための)無菌空気を導入する手段、及び好ましくは、例えば、NH及び/又はHSO、HNO、又はHPOでpHを制御する手段を有する発酵槽で行われる。いくつかの例では、リン酸塩の必要性が明らかであることもあり、そのような場合、リン酸アンモニウム又は任意選択でHPOの使用が本発明のプロセスにおいて好ましい。当業者に公知であるように、いくつかの例では、他のミネラル及び微量元素も同様に好ましい場合がある。バイオマスの提供に使用される発酵槽は、原則として、当技術分野で公知の任意の種類の発酵槽であり得る。有利には、発酵槽は単純な気泡塔であり、例えば、>100m、>200m、>500m、>1000m、>2000m、又は>3000mなどといった非常に大きな規模で稼働可能であり、これにより、工場あたりの発酵槽の数、総投資額及び運用コストが削減される。
【0060】
方法ステップii)バイオマスのパスチャライゼーション
ステップii)では、バイオマスをパスチャライゼーションして、パスチャライゼーションされたバイオマスを得る。パスチャライゼーションは、当技術分野で周知の技術であり、市販の装置を使用して行うことができる。パスチャライゼーションはバッチプロセスで行うことができ、また、連続プロセスでも行うことができる。連続プロセスパスチャライゼーションは、インラインパスチャライゼーションと呼ぶことができ、それは設備の複雑さを軽減することから、本発明による方法に好ましい。パスチャライゼーションが連続プロセスで行われる場合、その方法は連続法である。そのような場合、ステップi)で提供されるバイオマスは、バイオマスの流れとして説明することができ、パスチャライゼーションされたバイオマスは、パスチャライゼーションされたバイオマスの流れと呼ぶことができる。
【0061】
したがって、好ましい実施形態では、ステップii)において、バイオマスをインライン加熱ユニットに流して、パスチャライゼーションされたバイオマスを得る。インライン加熱ユニットは周知であり、様々な種類が市販されており、そのうちのいくつかはインラインパスチャライゼーションユニット又はフローパスチャライゼーション装置として積極的に販売されている。そのような加熱ユニットは、一般に所定の温度に設定することができ、加熱ユニットを通って流れる液体の滞留時間は、一般に制御可能である。原則として、必要な滞留時間及び温度に達することができる限り、これらのインライン加熱ユニットの任意のものが、本発明を実施するために使用され得る。好ましい実施形態では、パスチャライゼーションの持続時間は、加熱ユニットとの接触の持続時間として表される。好ましい実施形態では、パスチャライゼーションの持続時間は、インライン加熱ユニット内の滞留の持続時間として表される。好ましくは、インライン加熱ユニット内の滞留時間は、バイオマスが指し示されたパスチャライゼーション温度にほぼ等しいかそれを超えている時間量として表される。好ましい実施形態では、パスチャライゼーションの持続時間は、バイオマスが指し示されたパスチャライゼーション温度にほぼ等しいかそれを超えている時間として表される。
【0062】
当技術分野で公知の任意の加熱ユニットが使用され得るが、加熱ユニットは、パイプヒーター又は加熱ブロックなどのインライン加熱ユニットであることが好ましい。そのようなインライン加熱器では、液体、この場合はバイオマスが、チャネルを通って流れ、その中で所望の温度に加熱される。バイオマスは、第1の開口部を通ってインライン加熱器に入り、第1のチャネルの内部で加熱され、第2の開口部を通って第1のチャネルを出る。加熱は、好ましくは、加熱ユニット内、又はそのすぐ下流、好ましくはパスチャライゼーションされたバイオマスを輸送するチャネル内に配置された1つ又は複数の温度センサーによって制御される。好ましくは、2つの温度センサーが要素内に配置される。最も好ましい構成では、1つのセンサーが流入開口部又はその近くに配置され、1つのセンサーが流出開口部又はその近くに配置される。
【0063】
好ましい実施形態では、パスチャライゼーションが、好ましくはパイプヒーター、加熱ブロック、又は蒸気注入要素を含むインライン加熱ユニット、より好ましくは蒸気注入要素において行われ、インライン加熱ユニットは、任意選択で、スタティックミキサーなどの混合要素を含む、本発明による方法が提供される。
【0064】
パイプヒーターの場合、インライン加熱ユニットはパイプ、典型的には、アルミニウム又はステンレス鋼のパイプとして構成され、これには、電熱線が巻き付けられているか、又は温水若しくは蒸気で加熱されるジャケットが取り付けられている。そのような場合、パイプの内部が、バイオマスが輸送されるチャネルとなる。電熱線は、このチャネルと密接に接触している。好ましい加熱ユニットは、酸化マグネシウム粉末などの非導電性媒体で満たされたアルミニウム管の内部に封入された電熱線を含む。加熱ブロックの場合、インライン加熱ユニットはブロック、典型的には、熱伝導ブロックとして構成され、これには、バイオマスチャネルが横切っており、その全体が加熱される。これは、一体化された電熱線、横断的な電熱線、又は当技術分野で公知の他の手段を介し得る。適切なインライン加熱ユニットは、熱伝導性材料から形成されることが好ましい。適切な材料は、セラミクス並びに、ステンレス鋼、鋳鉄、銅、アルミニウム、真鍮、亜鉛、及びそれらの合金などの金属材料である。
【0065】
蒸気注入要素が好ましい。蒸気注入は広く知られている(Encyclopedia of Agricultural,Food,and Biological Engineering、第2版、1581~1586ページ、doi:10.1081/E-EAFE2-120045618)。直接蒸気で加熱する利点は、設計がよりシンプルになること、凝縮物の戻りがないこと、及び壁の汚れが減ることであろう。通常、壁を介して加熱する場合、壁からパイプの中心までの温度勾配が生じるであろう。その結果、バイオマスが壁に焼き付くおそれがある。これは、蒸気注入によって回避される。好ましくは、蒸気注入が使用される場合、それは少なくとも8%、好ましくは少なくとも10%の乾物を含むバイオマスと組み合わせて使用される。蒸気は、好ましくは、本質的に水からなり、さらなる添加物を含まない;例えば、好ましい蒸気は、食品グレードの蒸気又は料理用の蒸気である。
【0066】
当技術分野で公知であるように、インライン加熱ユニットでは、流速、内部チャネル容積、及び加熱の組合せが、加熱される物質の効果的な加熱を決定するであろう。したがって、バイオマスがインライン加熱ユニット内でパスチャライゼーションされる場合にバイオマスが流れるチャネルは、好ましくは、加熱ユニット内で特定の滞留時間を可能とするように構成された直径を有する。好ましくは、直径は最大で30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1cmである。好ましくは、直径は少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10cmである。バイオマスの流速は、好ましくは少なくとも約0.05m/秒、より好ましくは少なくとも0.1m/秒、さらにより好ましくは少なくとも0.25m/秒である。いくつかの実施形態では、流速は最大2m/秒である。
【0067】
加熱は、液体が所与の温度に留まっている時間量として便宜的に表される。好ましくは、指し示された時間は、液体が加熱ユニット内の優勢な温度と平衡する、又はほぼ平衡するために必要な時間を含まない。便宜上、パスチャライゼーション条件でのバイオマスの温度を加熱ユニットの温度と呼ぶ。バッチプロセスの場合、時間は一般には、プロセスの持続時間と同じである。例えば、インライン加熱ユニットを使用する連続プロセスの場合、持続時間は一般には、加熱ユニット内の液体の滞留時間として表される。インライン加熱ユニットがより長い場合、より高い流量で同じ滞留時間が達成され得る。これは、チャネルの壁へのバイオマスの焼き付きを減らす。
【0068】
インライン加熱ユニットは、任意選択で、スタティックミキサーなどの混合要素を含む。そのような手段は、当技術分野で周知であり(Paul,Edward L.(2004年).Handbook of Industrial Mixing-Science and Practice、ニュージャージー州ホーボーケン: John Wiley & Sons.399ページ、セクション7-3.1.4)、より均一な熱の分布を確実にすることから、パイプがより大きな直径を有する場合に有益である。直径が最大で5cmのパイプなどの、より細いパイプの場合、スタティックミキサーは存在しないことが好ましい。好ましいスタティックミキサーは、プレート型スタティックミキサー、ヘリカルスタティックミキサー、及びバッフルである。
【0069】
ステップii)において、バイオマスは、少なくとも70℃の温度で最大45分の加熱ユニット内における滞留時間を有する。好ましくは、温度が少なくとも所与の温度であると指し示される場合、パスチャライゼーションが行われる温度は、その所与の温度に近く、好ましくは指し示された温度より上の20℃以内、より好ましくは10℃以内、さらにより好ましくは5℃以内である。これは、エネルギー必要量の削減に役立つ。加熱が多くとも所与の時間であることが指し示されている場合、それは好ましくは、指し示された時間量で行われる。これは、プロセスの均一性に寄与する。指し示された時間量を超えるパスチャライゼーションは、エネルギー消費の増加につながり、バイオマスの異風味の発生に寄与し得る。指し示された時間量より実質的に短いパスチャライゼーションは、細菌数の不十分な減少につながり得る。本発明者らは、これらのパラメーターがバイオマス中の細菌数の適切な減少につながることを見出した。好ましい実施形態において、パスチャライゼーションは74℃で37分間行われ、これは、胞子細菌数の12log10減少を導くことが見出された。
【0070】
本出願の文脈において、パスチャライゼーションの主な目標の1つは、バイオマス中における細菌数の減少である。細菌数は、菌糸体数に基づき得る。細菌数は、胞子数に基づいていてもよい。好ましくは、本出願の文脈において、減少は、菌糸体数に加えて、胞子数を包含する。細菌数の減少は、log10減少として便宜的に表され、ここで、2log10減少は、100個の微生物のうち約1個だけが処理後に生き残ることを意味し、7log10減少は、10000000個の微生物のうち約1個だけが生き残ることを意味する。これは、そのようなデータを報告するための一般的な形式である。log10減少値は、例えば、メチレンブルー又はレサズリンを用いた染料減少試験など、当技術分野で公知の任意の方法を使用して評価され得る(例えば、Bapatら、J Microbiol Methods.2006年4月;65(1):107-16、DOI: 10.1016/j.mimet.2005.06.010を参照)。より好ましくは、希釈系列をプレーティングし、コロニー形成単位をカウントする。熱不活性化動態は、Casolari(2018年、Microbial death, Physiological Models in Microbiology: 第II巻)によって記述されているようにして決定されることが好ましい。パスチャライゼーションされたバイオマスの細菌数は、提供されたバイオマスと比較して、少なくとも7log10減少することが好ましいが、これは、パスチャライゼーションされたバイオマスの貯蔵寿命を実質的に延長するからである。真菌の典型的な食品基準は、細菌数が食品1グラムあたり10真菌未満であるべきというものである。もちろん、これは食品中に存在する単細胞タンパク質の量と、食品中に存在し得る他の成分の細菌数に依存する。
【0071】
好ましい実施形態では、パスチャライゼーションされたバイオマスの細菌数が、提供されたバイオマスと比較して、少なくとも7、好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも9、なおより好ましくは少なくとも10、さらにより好ましくは少なくとも11、最も好ましくは少なくとも12log10減少する、本発明による方法が提供される。したがって、ステップii)は、好ましくは、このlog10減少を達成するように、そのような温度で、又はそのような期間にわたって実施される。本明細書で提供される実施例及び教示に基づき、当業者は、これらのパラメーターを調整して、この減少を達成することができる。
【0072】
パスチャライゼーションのもう1つの目標は、バイオマスの酵素活性を低下させることである。酵素は細胞成分の分解に寄与することができ、分解生成物はSCPの異風味の発生に寄与し得る。好ましくは、本発明による方法は、(ポリ)ペプチド及び脂質の少なくとも1つの酸化及び/又は分解を触媒又は促進する1つ又は複数の酵素、より好ましくはリパーゼ、リポキシダーゼ、ペプチダーゼ、プロテアーゼ、及びアミノペプチダーゼの少なくとも1つの酵素の活性を低下させる。これらの酵素は広く知られている。ペプチダーゼの例は、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼである。より好ましくは、これらの酵素のそれぞれの2つ、最も好ましくはそれぞれの活性が低下する。パスチャライゼーションされたバイオマスにおける活性の低下は、パスチャライゼーションされていないバイオマスにおける活性と比較されるべきである。アッセイされる酵素の総活性の低下は、好ましくは、少なくとも1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、98、99、又は100%であり、これは、残存する活性が検出されないことを意味し得る。低下は、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも80%である。当業者は、酵素活性の低下を評価する方法を知っており、記載された酵素の種類のいずれかについて適切なアッセイを選択することができる。
【0073】
パスチャライゼーション又は熱への暴露又は加熱ユニット内での滞留のより短い持続時間は、より短い時間量でより多くの量のバイオマスを処理することを可能とするため、効率の改善につながり得る。バッチプロセスの場合、それは所与の時間枠内において行われる、より多くのプロセスを可能とするであろう。また、短い加熱は一般にエネルギー消費を減らす。好ましい実施形態では、パスチャライゼーションは最大で40、35、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1分間行われる。より好ましくは、それは最大30分間実施される。さらにより好ましくは最大25分間である。さらにより好ましくは最大20分間である。さらにより好ましくは最大15分間である。さらにより好ましくは最大10分間である。さらにより好ましくは最大5分間である。さらにより好ましくは最大3分間である。さらにより好ましくは最大2分間である。最も好ましくは最大1分間である。好ましい実施形態において、パスチャライゼーションは、最大で5分間、好ましくは約0.5~約3分間、より好ましくは約1~2分間行われる。
【0074】
パスチャライゼーションの最小限の持続期間は、適切な細菌数の減少を確実にするのに役立ち得る。好ましい実施形態では、パスチャライゼーションは少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9又は10分間行われる。より好ましくは、それは少なくとも1分間行われる。他の好ましい実施形態では、それは少なくとも2分間行われる。他の好ましい実施形態では、それは少なくとも3分間行われる。他の好ましい実施形態では、それは少なくとも4分間行われる。他の好ましい実施形態では、それは少なくとも5分間行われる。他の好ましい実施形態では、それは少なくとも6分間行われる。
【0075】
より高い温度でのパスチャライゼーションは、より短いパスチャライゼーションの持続時間で同じ細菌数の減少を達成するのに役立ち得る。好ましい実施形態では、パスチャライゼーションは、少なくとも74℃、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは少なくとも86℃の温度で行われる。他の好ましい実施形態では、パスチャライゼーションは少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、又は92℃の温度で行われる。より好ましくは、それは少なくとも75℃、さらにより好ましくは少なくとも77℃、さらにより好ましくは少なくとも79℃、さらにより好ましくは少なくとも81℃、さらにより好ましくは少なくとも82℃、さらにより好ましくは少なくとも83℃、さらにより好ましくは少なくとも84℃で行われるが、85℃がさらにより好ましく、そして86℃がさらにより好ましい。87℃でのパスチャライゼーションは、30秒未満で7log10減少でさえ可能にする。88℃でのパスチャライゼーションは、約30秒で12log10減少でさえ可能にする。
【0076】
いくつかの実施形態では、ステップii)におけるパスチャライゼーションは2回行われる。好ましい実施形態では、それは1回行われる。
【0077】
パスチャライゼーションは、好ましくは5未満のpH、より好ましくは4.5未満、さらにより好ましくは4、4.9、4.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、又は3未満、最も好ましくは約3.5のpHで行われる。パスチャライゼーションは、好ましくは少なくとも1、より好ましくは少なくとも2、さらにより好ましくは少なくとも2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3、最も好ましくは少なくとも約3.5のpHで行われる。パスチャライゼーションされるバイオマスのpHは、一般に提供されるバイオマスのpHであるため、ステップi)について記載したようにして制御することができる。好ましくは、pHはステップi)とステップii)との間で調整されない。好ましくは、pHはステップii)の一部として調整されない。パスチャライゼーション中のpHは、好ましくは、ステップi)の一部として発酵が行われる際に発酵が行われるpH、又はステップi)でバイオマスが由来する発酵が行われたpHと実質的に同様である。
【0078】
パスチャライゼーションを最大45分間行う場合、それは少なくとも72℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大40分間行う場合、それは少なくとも73℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大35分間行う場合、それは少なくとも73℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大30分間行う場合、それは少なくとも75℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大25分間行う場合、それは少なくとも74℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大20分間行う場合、それは少なくとも75℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大15分間行う場合、それは少なくとも77℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大10分間行う場合、それは8log10減少の場合は少なくとも77℃、又は78℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大9分間行う場合、それは少なくとも77℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大8分間行う場合、それは少なくとも78℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大7分間行う場合、それは少なくとも79℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大6分間行う場合、それは少なくとも80℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大5分間行う場合、それは少なくとも79℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大4分間行う場合、それは少なくとも81℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大3分間行う場合、それは7log10減少の場合は少なくとも81℃、12log10減少の場合は83℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大2分間行う場合、それは7log10減少の場合は少なくとも82℃、12log10減少の場合は84℃で行うことが好ましい。パスチャライゼーションを最大1分間行う場合、7log10減少の場合は少なくとも84℃、12log10減少の場合は86℃で行うことが好ましい。
【0079】
パスチャライゼーションを少なくとも72℃で行う場合、それは最大45分間行うことが好ましい。パスチャライゼーションを少なくとも74℃で行う場合、それは最大40分間行うことが好ましい。パスチャライゼーションを少なくとも76℃で行う場合、それは最大12分間(7log10減少)又は最大20分間(12log10減少)行うことが好ましい。パスチャライゼーションを少なくとも78℃で行う場合、最大7分間(7log10減少)又は最大11分間(12log10減少)行うことが好ましい。パスチャライゼーションを少なくとも79℃で行う場合、最大5分間(7log10減少)、又は最大8分間(12log10減少)行うことが好ましい。パスチャライゼーションを少なくとも80℃で行う場合、最大4分間(7log10減少)、又は最大6分間(12log10減少)行うことが好ましい。パスチャライゼーションを少なくとも81℃で行う場合、最大2.5分間(7log10減少)、又は最大4.5分間(12log10減少)行うことが好ましい。パスチャライゼーションを少なくとも82℃で行う場合、最大2分間(7log10減少)、又は最大3.5分間(12log10減少)行うことが好ましい。パスチャライゼーションを少なくとも83℃で行う場合、最大1.5分間(7log10減少)、又は最大2.5分間(12log10減少)行うことが好ましい。パスチャライゼーションを少なくとも84℃で行う場合、最大1分間(7log10減少)、又は最大2分間(12log10減少)行うことが好ましい。パスチャライゼーションを少なくとも85℃で行う場合、最大1.5分間行うことが好ましい(12log10減少)。パスチャライゼーションを少なくとも86℃で行う場合、それは最大1分間行うことが好ましい(12log10減少)。
【0080】
少なくとも78℃でのパスチャライゼーションは、改善された官能品質と関連していることが見出された。この文脈では、80℃の温度が好ましく、84℃ではわずか1分間で7log10減少が可能となる。86℃で優れた結果が得られており、最大12分間(7log10減少)又は最大20分間(12log10減少)行うことが好ましい。
【0081】
最大12分間のパスチャライゼーションは、改善された官能品質と関連していることが見出された。この文脈では、最大で6分の持続時間が好ましく、最大4.5分間では81℃で12log10減少が可能となる。最大約3分のパスチャライゼーションで優れた結果が得られた。この文脈では、最大2分又は1分間行うことが好ましい。
【0082】
方法ステップiii)パスチャライゼーションされたバイオマスの回収
ステップiii)は任意選択のステップであり、パスチャライゼーションされたバイオマスの回収のためのものである。これは一般には、さらなる用途、好ましくは食品又は飼料製品において使用され得る単離されたSCPをもたらす。本発明による方法の好ましい実施形態では、ステップiii)は任意選択ではない。
【0083】
パスチャライゼーションされたバイオマスの回収のための方法は、懸濁液からバイオマスを回収する公知の方法と同じであり得る。例えば、パスチャライゼーションされたバイオマスは、ステップi-b)に記載のようにさらに濃縮され得るが、例えば、パスチャライゼーションされたバイオマスのケーキを形成するためにさらに濃縮され得る。好ましくは、ふるいにかけられ、濾過され、又はデカントされたバイオマス(ケーキ)の乾物濃度は、少なくとも12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、52%、53%、54%又は55%(w/v)である。任意選択で、ふるいにかけられ、濾過され、又はデカントされたバイオマス(ケーキ)の乾物濃度は、水のさらなる除去、すなわち乾燥によってさらに増加する。
【0084】
使用する微生物が良好な濾過特性を有している場合(上記を参照)、回転ドラム濾過、スクリーンストラップ、フィルタープレス、ベルトフィルターなど、又は低いg力で稼働されるデカンター遠心分離機(Sumanら、2015年、上掲)、ふるい、DSMスクリーン、ベルトふるい、ベルトプレス、スクリュープレスなどといった、シンプルな濾過によってタンパク質が豊富な動物飼料又は食物ケーキを得ることができる。
【0085】
回収された生成物は、湿っている場合がある。回収された生成物は、微生物の劣化を防ぐために、ギ酸、酢酸、安息香酸、リン酸、又は硫酸などの有機酸を任意選択で組み合わせて添加することにより、pHを4.5以下、好ましくは3.5以下に保つことによって、安定化され得る。ステップi)で提供されるバイオマスのpHが4.5未満など十分に低い場合には、例えば、回収されたバイオマスの希釈又は洗浄の強度を下げることによって、その範囲に維持することができる。一般には、液体飼料及び食品の製造コストのほうが低くなるものの、輸送、物流、及び/又は貯蔵安定性が乾燥を要求する場合には、例えば、流動床乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥、ベルト乾燥、又は任意の他の乾燥手段を用いて、動物飼料ケーキなどの飼料又は食品を任意選択で乾燥させることも考慮され得る。特に好ましいプロセスでは、バイオマスの濃縮は、複数のステップ及び組合せで、例えば、続いて、2mm、1mm、0.1mm、及び50μmのうちの少なくとも2つから選択される細孔サイズのふるいにかけ;次に、スクリーンストラップ、スクリュープレス、油圧プレス、及び空気圧プレスを使用した圧搾の少なくとも1つによって濃縮することによって、行われる。バイオマスを濃縮するための最も好ましい方法は単純に、DSMスクリーン(最適化された直径のスクリーンを有する)、スクリーンストラップ及びベルトプレスの組合せであり得る。水と真菌によって産生された酵素を含有する濾液は、ステップi-b)について記載されているように、リサイクルして次の発酵ラウンドにおいて使用され得る。
【0086】
回収されたパスチャライゼーションされたバイオマスは、例えば、ニューマプレスを用いた圧縮空気を使用して、及び/又は機械的な圧搾、例えば、ベルトプレス又はスクリュープレスを使用して、例えば、残留した水を(より多く)圧搾することによって、さらに乾燥させることができる。温暖な気候では、バイオマス(ケーキ)は単純に(太陽の下で)風乾させることができる。バイオマスをケーキにプレスした後、任意選択で例えば乾燥、好ましくは空気乾燥を可能にするために、ケーキを粉砕又は押し出すことができる。好ましくは、プレスされた菌糸体バイオマスケーキの粒子サイズは、プレスされたケーキの(より効率的な)乾燥を可能にするために、物理的な手段によって減少される。これは任意選択で、当技術分野で公知の押出機を用いて、直径0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8又は2mmの穴を通して菌糸体ケーキを押し出すことによって行われ得る。しかしながら、プレス後のプレスされたケーキの乾物濃度が非常に高く、プレスされたケーキの押出しがもはや不可能な場合(例えば、ケーキが固すぎて押出しができない場合)、粉砕とふるい分けを組み合わせることで、ケーキの粒子サイズを小さくすることができる。粉砕ステップとして、例えばナイフミル又はハンマーミルなど、当技術分野で公知の任意の種類の粉砕機それ自体が使用され得る。粉砕されたプレスされたケーキの均質な粒子サイズを得るために、粉砕後にまだ存在する大きな粒子を、乾燥前に、ふるいの孔径サイズが0.5、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.5又は3mmのふるいにかけることよって除去することができる。結果として得られる粉砕されたケーキは、好ましくは、乾燥前に1~3mmの粒子サイズを有するであろう。粒子サイズを小さくすることにより、プレスされたケーキからの水の蒸発が、より効率的及び迅速となる。
【0087】
好ましくは、ケーキの乾燥は、例えば、ガスの凝縮後に温水が得られるプラントからの廃熱(例えば、エタノール蒸留、ジャガイモ調理、ジャガイモの蒸気剥皮など)を利用して行われる。乾燥した空気を熱源からの温水で加熱するために、熱交換器を使用して空気を加熱することができる。
【0088】
押出し又は粉砕されたケーキの乾燥は、30~70℃の温度で行うことが好ましい。熱い空気はその後、ベルト乾燥機又は流動床乾燥機において、穏やかで費用対効果の高い方法で、ケーキを乾燥させることができる。高温での蒸気乾燥(例えば、>80℃)は、メイラード反応によるアミノ酸の変性及びベーキング、さらには化学分解によって、タンパク質の消化性に悪影響を及ぼし得るため、避けることが好ましい。真空下でのフラッシュ乾燥は、別の好ましい方法である。
【0089】
好ましくは、ステップiii)が存在する場合、それはまた、熱回収技術も包含する。パスチャライゼーションによって生成され、パスチャライゼーションされたバイオマスに残る熱は、提供されたまだパスチャライゼーションされていないバイオマスを予熱するため、又は発酵槽でバイオマスを加熱するために、都合よく使用され得る。例えば、インライン加熱ユニットの出口チャネル及び入口チャネルは、2つのチャネル間の熱交換を可能にするように構成され得る。これは、アルミニウムブロックなどの熱伝導媒体を通してチャネルを導くことによって行うことができる。或いは、チャンネルを絡み合わせるか、又は一方を他方の周りにらせん状に配置することができる。当業者は、熱交換を可能とするために、どのようにチャネルを構成するかを知っている。或いは、出口チャネルは、出口チャネルと発酵槽、好ましくはステップi)でバイオマスを発酵させる発酵槽との間の熱交換を可能にするように構成される。これは、パスチャライゼーションされたバイオマスに残存する熱が、所望の発酵温度の維持に寄与することを可能とする。パスチャライゼーションされたバイオマスから熱を回収することの便利な副作用は、それがパスチャライゼーションされたバイオマスを冷却するのに役立ち得ることである。
【0090】
したがって、好ましい実施形態では、本発明の方法は、パスチャライゼーションされたバイオマスを回収し、パスチャライゼーションされたバイオマスとパスチャライゼーションされていないバイオマスとの間、例えば、パスチャライゼーションされたバイオマスの流れとステップi)において提供されるバイオマスの流れとの間で熱交換させることを含むステップiii)を有している。或いは、パスチャライゼーションされたバイオマスと、ステップi)で提供されるバイオマスが由来する発酵槽との間で、熱を交換することができる。
【0091】
本方法のさらなる定義
好ましい実施形態では、ステップi)において、真菌、好ましくは好熱性真菌の発酵、好ましくは液中発酵に由来し、好ましくは2~5%の乾物を有するバイオマスが提供され、これは次いで、好ましくはステップi-b)において、ベルト又は振動ふるい又はDSMスクリーン上でふるいにかけられて、約10%の乾物などの7~15%の乾物含有量が達成され、そして好ましくはステップii)において、パスチャライゼーションが、好ましくは蒸気注入器を含むインライン加熱ユニットを用いて行われる。
【0092】
好ましい実施形態では、ステップi)において、真菌、好ましくは好熱性真菌の発酵、好ましくは液中発酵に由来し、好ましくは2~5%の乾物を有するバイオマスが提供され、これは次いで、好ましくはステップi-b)において、ベルト又は振動ふるい又はDSMスクリーン上でふるいにかけられて、約10%の乾物などの7~15%の乾物含有量が達成され、そしてステップii)において、バイオマスが、好ましくは蒸気注入器を含むインライン加熱ユニットを通して流れ、そこでそれは、少なくとも76℃、好ましくは少なくとも77℃の温度で最大10分の滞留時間を有する。
【0093】
好ましい実施形態では、ステップi)において、リゾムコール属、好ましくはリゾムコール・プシラス株の発酵、好ましくは液中発酵に由来し、好ましくは2~5%の乾物を有するバイオマスが提供され、これは次いで、好ましくはステップi-b)において、ベルト又は振動ふるい又はDSMスクリーン上でふるいにかけられて、約10%の乾物などの7~15%の乾物含有量が達成され、そしてステップii)において、バイオマスが、好ましくは蒸気注入器を含むインライン加熱ユニットを通って流れ、そこでそれは、少なくとも77℃、好ましくは少なくとも80℃、最も好ましくは約86℃の温度で、最大10分、好ましくは約1~2分の滞留時間を有する。
【0094】
好ましい実施形態では、ステップi)において、リゾムコール・プシラス株の液中発酵に由来する2~5%の乾物のバイオマスが提供され、これは次いで、好ましくはステップi-b)において、ベルト又は振動ふるい又はDSMスクリーン上でふるいにかけられて、約10%の乾物などの7~15%の乾物含有量が達成され、そしてステップii)において、バイオマスが、好ましくは蒸気注入器を含むインライン加熱ユニットを通って流れ、そこでそれは、約86℃の温度で約1~2分の滞留時間を有する。
【0095】
本方法で得られる生成物
本発明は、本発明による方法によって得ることができるパスチャライゼーションされたバイオマスを提供する。それは好ましくは、乾燥重量に基づいて、約6%~12%の脂質及び約35%~55%のタンパク質を含む。
【0096】
パスチャライゼーションされたバイオマスの脂質含有量は、好ましくは少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15%である。それは、より好ましくは少なくとも6%、さらにより好ましくは少なくとも8%、さらにより好ましくは少なくとも約10%である。パスチャライゼーションされたバイオマスの脂質含有量は、好ましくは最大で30、28、26、24、22、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10%である。それは、より好ましくは最大25%、さらにより好ましくは最大20%、より好ましくはなお最大15%、さらにより好ましくは最大12%である。
【0097】
パスチャライゼーションされたバイオマスのタンパク質含有量は、好ましくは少なくとも20、25、30、35、40、又は45%である。それは、より好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも35%、さらにより好ましくは少なくとも約40%である。パスチャライゼーションされたバイオマスのタンパク質含有量は、好ましくは最大で70、65、60、55、50、45、又は40%である。それは、より好ましくは最大65%、さらにより好ましくは最大60%、より好ましくはなお最大55%、さらにより好ましくは最大50%である。
【0098】
パスチャライゼーションされたバイオマスが、真菌バイオマスに基づくものであり、約35%~55%、好ましくは40~50wt-%のタンパク質、例えば45%のタンパク質に加えて、8%~12%(w/w、例えば約10wt-%)の脂質を含むことが非常に好ましい。
【0099】
パスチャライゼーションされたバイオマス中の脂質及びタンパク質は、内在性のリパーゼ及び/又はプロテアーゼを使用した分解などの酵素的手段によって分解される可能性があり、これは、例えば異臭による消費時の不快な感覚体験の発生に寄与し得る。成分の完全性は、例えば酸化防止剤を使用することで、さらに改善され得る。
【0100】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法によってパスチャライゼーションされたバイオマスが優れた感覚体験を提供することを見出した。例えば、実施例2に示されているように、パスチャライゼーションされたバイオマスは、パスチャライゼーションステップ以外は同じ方法で製造されたパスチャライゼーションされていないバイオマスと同じ嗅覚体験を提供することが見出された。対照的に、75℃未満の温度でパスチャライゼーションされたバイオマスは、試食パネルによって金属臭、鉄臭、又は酸化臭があると説明された。したがって、好ましいバイオマスは少なくとも75℃、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは少なくとも81℃、より好ましくは少なくとも82℃、なおより好ましくは少なくとも83℃、さらにより好ましくは少なくとも84℃、より好ましくはなお少なくとも85℃、最も好ましくは約86℃の温度でパスチャライゼーションされている。
【0101】
実施例2では、35分を超えてパスチャライゼーションされたバイオマスは、試食パネルによって、金属臭、鉄臭、又は酸化臭があると説明された。したがって、好ましいバイオマスは、最大で35分間、好ましくは30分間、より好ましくは25分間、さらにより好ましくは20、15、10分間、パスチャライゼーションされている。非常に好ましい実施形態では、パスチャライゼーションは最大で10分、好ましくは9分、より好ましくは8分、より好ましくは7分、より好ましくは6分、より好ましくは5分、より好ましくは4分、なおより好ましくは3分、さらにより好ましくは2分、最も好ましくは約1分間行われている。
【0102】
優れた香りのためには、バイオマスを少なくとも78℃で最大11分間、少なくとも79℃で最大8分間、少なくとも℃で最大6分間、少なくとも80℃で最大5分間、少なくとも81℃で最大4分間、少なくとも82℃で最大3分間、少なくとも83℃若しくは84℃で最大2分間、86℃などの85℃以上で最大1分間、パスチャライゼーションすると優れた結果を得ることができる。
【0103】
実施例3では、凍結乾燥バイオマスを異なる条件下でパスチャライゼーションし、官能試験にかけた。パスチャライゼーションされたものは全て、パスチャライゼーションされていない対応物よりも匂いが良好であった。一実施形態では、凍結乾燥バイオマスは、バッチ式で、又はインライン蒸気注入器を使用してパスチャライゼーションされる。好ましくは、凍結乾燥バイオマスは、86℃以上の温度で、好ましくは45~75秒間、より好ましくは約1分間、パスチャライゼーションされる。
【0104】
インライン蒸気注入器での凍結乾燥バイオマスのインラインパスチャライゼーションは、バッチ式パスチャライゼーションと比較して、より優れた官能結果を達成した。したがって、一実施形態では、凍結乾燥バイオマスは、インライン蒸気注入器を使用してパスチャライゼーションされる。好ましくは、凍結乾燥バイオマスは、インライン蒸気注入器において、少なくとも86、90、92、94、96、98、100、102又は105℃の温度で、好ましくは最大60、50、40、30、20、10、5、4、3、2、1又は0.5秒間、パスチャライゼーションされる。
【0105】
一実施形態では、凍結乾燥バイオマスは、約105℃の温度で0.2~1.0秒間、より好ましくは約0.3秒間、インライン蒸気注入器を使用してパスチャライゼーションされる。好ましい実施形態では、凍結乾燥バイオマスは、約96℃の温度で1~5秒間、より好ましくは2~4秒間、最も好ましくは約3秒間、インライン蒸気注入器を使用してパスチャライゼーションされる。
【0106】
本発明はまた、本発明によるパスチャライゼーションされたバイオマスを含む食品又は飼料製品を提供する。パスチャライゼーションされたバイオマスは、任意選択で現地の規制により要求される検査又は認証を受けた後、それ自体が製品となり得る。パスチャライゼーションされたバイオマスは、食品又は飼料製品の成分としても使用され得る。成分として使用される場合、パスチャライゼーションされたバイオマスは、繊維又はタンパク質の少なくとも1つの供給源であることが好ましい。好ましい実施形態では、食品、好ましくはヒトが消費するための食品が提供される。好ましい食品の例は、肉代替物、朝食用シリアル、パン、パスタ、乳製品又は乳製品代替物、アイスクリーム、チョコレート、及びスープである。より好ましいものは、肉代替物及び乳製品代替物である。他の好ましい実施形態では、好ましくは家畜又は魚、より好ましくは家畜に給餌するための飼料製品が提供される。
【0107】
本発明によるプロセスで得られるパスチャライゼーションされたバイオマスは、ブタ、家禽、反芻家畜、並びに水生魚及び甲殻類種を含む、様々な異なる種類の家畜動物の飼料を補うために使用され得る。SCPを魚飼料として適用するために、飼料は、魚油などのオメガ脂肪酸源、又はクリプトコディニウム・コーニー(Cryptocodinium cohnii)若しくはトラウストキトリウム・アウレウム(Traustochytrium aureum)などの脂質が豊富な藻類で強化されることが好ましい。本発明によるプロセスで得られるパスチャライゼーションされたバイオマスのさらなる利点は、他のプロセスにおいて生成されたパスチャライゼーションされたバイオマス中に死んでいるか生きているかに関係なく存在しうる大腸菌(E.coli)、サルモネラ菌(Salmonella)、セレウス菌(Bacillus cereus)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、リステリア菌(Listeria)などの問題のある菌によるSCPの汚染をSCPが製造される酸性pHが防止することである。
【0108】
例えば、ダイズのリジン含有量は総アミノ酸の約6%であるのに対し、既存の真菌SCPの総アミノ酸中のリジン含有量は、フザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)バイオマス(クォーン(商標))が8.3%、ペキロ(Pekilo)タンパク質(ペシロマイセス・バリオティ(Paecilomyces varioti))が5.6%である。好ましくは、総必須アミノ酸の合計は、ダイズタンパク質のものよりも16%ポイント高く(例えば、ラサムソニア・コンポスティコラ(Rasamsonia composticola)が使用される場合)、又はダイズタンパク質よりも25%ポイントまでも高い(例えば、サーモムコール・インディカエ・セウダチカエが使用される場合)。サーモムコール・インディカエ・セウダチカエ(例えば株CBS143027)由来のSCPは、総アミノ酸の8.5%以上、さらには10%以上のリジン含有量と、総アミノ酸の少なくとも10%のフェニルアラニン含有量を有する。したがって、サーモムコール株由来のSCPは、高いタンパク質含有量を有するだけでなく、リジンとフェニルアラニンの含有量も高くなっている。このように、サーモムコールSCPは、驚くほど高い栄養価を有している。食品の場合、好ましくは、好熱性真菌株は、ラザムソニア・コンポスティコラ株CBS141695、ラサムソニア・エメルソニCBS143030、サーモムコール・インディカエ・セウダチカエCBS143027、リゾムコール・ミエヘイCBS143029、リゾプス属種CBS143160及びリゾムコール・プシルスCBS143028からなる群から選択される。
【0109】
さらなる側面において、本発明は、本明細書において上述したプロセスで取得可能又は生成されたバイオマスからのタンパク質を含むパスチャライゼーションされたSCP製品に関する。好ましくは、パスチャライゼーションされたSCP製品は少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、52%、53%54%又は55%(w/v)の乾物濃度を有する乾燥バイオマスを含むか、又はそれからなり、これは、好ましくは1~3mmの範囲の平均粒子径に粉砕又は押出しされる。これにより、製品を梱包するための搬送、又は次の加工ステップへの搬送が可能となる。その後、タンパク質が豊富な製品は、乾燥され得る。
【0110】
好ましくは、本発明によるパスチャライゼーションされたSCP製品は、ラサムソニア・コンポスティコラCBS141695株、ラサムソニア・エメルソニCBS143030、サーモムコール・インディカエ・セウダチカエCBS143027及びCBS104.75、リゾムコール・ミエヘイCBS143029、リゾムコール・プシラスCBS143028、サーモアスカス・サーモフィラスCBS528.71、チエラビア・テレストリスCBS546.86、タラロマイセス・エメルソニCBS393.64、サーモテロマイセス・サーモフィラCBS117.65及びリゾプス属CBS143160からなる群から選択される少なくとも1つの好熱性真菌株のバイオマスからのタンパク質を含み、そのうち、CBS141695、CBS143030、CBS143027、CBS143029、CBS143160及びCBS143028株が好ましい。したがって、パスチャライゼーションされたSCP製品は、本明細書において上述されているようにして回収、圧搾、乾燥、製粉、及び/又は押出しされたバイオマス又はバイオマスケーキであり得る。好ましくは、パスチャライゼーションされたSCP製品(又はバイオマス中のタンパク質)は、ダイズタンパク質中の総必須アミノ酸の合計よりも少なくとも10%高い総必須アミノ酸の合計を有する。より好ましくは、パスチャライゼーションされたSCP製品(又はバイオマス中のタンパク質)は、総アミノ酸の少なくとも8.5%のリジン含有量及び総アミノ酸の少なくとも10%のフェニルアラニン含有量のうちの少なくとも1つを有する。
【0111】
さらなる側面において、本発明は、ラザムソニア・コンポスティコラ株CBS141695、ラサムソニア・エメルソニCBS143030、サーモムコール・インディカエ・セウダチカエCBS143027及びCBS104.75、リゾムコール・ミエヘイCBS143029、リゾムコール・プシラスCBS143028、サーモアスカス・サーモフィルスCBS528.71、チエラビア・テレストリスCBS546.86、タラロマイセス・エメルソニCBS393.64、リゾプス属種CBS143160及びサーモテロマイセス・サーモフィラCBS117.65からなる群から選択される少なくとも1つの好熱性真菌株のバイオマスからのタンパク質を含む、パスチャライゼーションされた食品又は飼料製品に関し、そのうち、CBS141695、CBS143030、CBS143027、CBS143029、CBS143160及びCBS143028株が好ましい。
【0112】
また、本発明は、食品の製造における、又は繊維若しくはタンパク質の少なくとも1つの供給源としての、上記のパスチャライゼーションされたバイオマスの使用も包含する。用途は、食品の製造に使用するのに適した供給源として、である。特徴及び定義は、他の箇所に記載されているとおりである。
【0113】
一般的な定義
本文書及びその請求項において、「含む」という動詞及びその活用形は、その語に続く項目が含まれることを意味する非限定的な意味で使用されるが、特に言及されない項目は除外されない。加えて、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」による要素への言及は、要素が1つしかないことを文脈が明確に要求しない限り、1つより多い要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は通常、「少なくとも1つの」を意味する。「約」又は「およそ」という語は、数値(例えば、約10)に関連して使用される場合、その値が好ましくは、その値の前後5%の所与の値でありうることを意味する。本明細書で使用される場合、「対象」は、任意の動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを意味する。好ましい実施形態において、対象は非ヒトである。
【0114】
本発明の文脈において、評価されるパラメーターの減少又は増加は、そのパラメーターに対応する値の少なくとも5%の変化を意味する。より好ましくは、値の減少又は増加は少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、又は100%の変化を意味する。後者の場合、そのパラメーターに関連する検出可能な値が存在しなくなることもある。
【0115】
本文書全体を通して、混合物中の物質の量を表すためにパーセンテージが使用される場合は、別段の記載がない限り、又は文脈から明白でない限り、重量パーセンテージが意図されている。
【0116】
本発明は、いくつかの例示的な実施形態を参照して、上記のとおり説明されている。いくつかの部分又は要素の修正及び代替的な実施が可能であり、可能な場合には、実施形態の特徴を組み合わせることができる。文献及び特許文献の全ての引用が、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
図1A】10%の乾物を含む真菌バイオマスのパスチャライゼーションに関する7D死滅曲線。
図1B】10%の乾物を含む真菌バイオマスのパスチャライゼーションに関する12D死滅曲線。
【0118】
[実施例]
実施例1-パスチャライゼーションされた単細胞タンパク質の生成
国際公開第2018/029353号に記載されているようにして、リゾムコール・プシラスCBS143028株を発酵させた。或いは、リゾムコール・プシラスCBS143028株を、KCl 0.5gr/L;KHPO 4、NaHPO 1.1、クエン酸 1.5gr/L、MgSO.7aq 2gr/L、FeSO.7aq 0.1gr/L、CaCl.2aq 0.1gr/L、ZnSO.7aq 0.125gr/L、MnCl.4aq 0.012、CuSO.5aq 0.0016gr/L、CoCl.6aq 0.0015gr/L、Na2B.10aq 0.009gr/L、KI 0.0009gr/L、NaMoO.2aq 0.0015gr/L;C源として1リットルあたり11gのデキストロース;N源として1リットルあたり4gの(NHSO;及び1リットルあたり7.5gの酒石酸を含む定義されたミネラル組成を含むpH5.5の前培養培地200mlに播種する。培養物は、200rpmのオービタルシェーカーで、バッフル付きの空気透過性ストップを備えた1Lのエルレンマイヤーフラスコ中、46℃で24時間インキュベートする。次に、前培養物を用いて、C源として1l当たり77gのデキストロース;N源として1l当たり1.4gの(NHSOを含み、滴定剤としてNH3を補充した上記のように定義したミネラル培地を含有するpH3.5の培地に播種する。オリーブオイルは継続的に供給される。より多くの定義は、欧州特許第20153414号に記載されている。
【0119】
2~5重量パーセントの範囲の乾物含有量に達した発酵ブロスを、振動ふるいを用いて濃縮し、少なくとも10%(重量)の乾物を達成した。次いで、バイオマスは、蒸気注入器を備えたパイプを含むインライン加熱ユニットを通してポンプで送られる。ポンピング速度、パイプの直径、及び温度は、異なる温度で異なる滞留時間が達成されるように構成した。パラメーターの体系的なスクリーニングは、様々な程度のlog10減少、特に7log10減少(図1Aを参照)、及び12log10減少(図1Bを参照)に対する死滅曲線の生成を可能とした。データを下の表に示す。パスチャライゼーションされたサンプルは、流動床乾燥機で簡便に乾燥させた(70℃で10分間)。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例2-パスチャライゼーションされた単細胞タンパク質の官能品質
上記のようにして得られたパスチャライゼーションされたバイオマスを試験パネルによる分析にかけた。サンプル1は74℃で37分間、パスチャライゼーションした。サンプル2は86℃で1分間、パスチャライゼーションした。サンプル3はパスチャライゼーションしなかった。
【0122】
12人の試験パネルが、サンプル1について次のような香りの感覚を報告した:金属、鉄、酸化、フライドポテト、ひまわり油、生卵。サンプル2と3は一般に無臭であると説明された。香りに対して与えられた平均点は、サンプル1が51%、サンプル2と3が86%であった。
【0123】
実施例3-パスチャライゼーションされた単細胞タンパク質の官能品質
バイオマスは実施例1に記載のようにして生成したが、最終的に、バッチ方式(サンプル1)又はインライン蒸気注入器(サンプル2、3及び4)のいずれかで、凍結乾燥バイオマスをパスチャライゼーションした。サンプル5及び6はパスチャライゼーションしなかったが、後者は抗酸化剤が混合されていない唯一のサンプルであった。サンプル(1~5)には、ケミン(Kemin)(www.kemin.com)の抗酸化剤ナチュフォート(NaturFORT)(商標)15Lを2000ppm含有させた。パスチャライゼーション中の温度/滞留時間は、サンプル1及び2では86℃で1分、サンプル3では96℃で3秒、サンプル4では105℃で0.5秒であった。8人からなる試験パネルは、パスチャライゼーションされていないサンプルが匂いに基づいて最も不快であると同定した。バッチ式でパスチャライゼーションされたサンプルは、パスチャライゼーションされたサンプルの中で最悪にランク付けされた。表2に示されているように、96℃のインライン蒸気注入器でパスチャライゼーションされたサンプルが最高にランク付けされ、次に86℃のサンプルが続き、105℃のサンプルが3番目にランク付けされた。
【0124】
【表2】
図1A
図1B
【国際調査報告】