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特表2023-5209891型糖尿病の予防および治療に有用なTレジトープ構築物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】1型糖尿病の予防および治療に有用なTレジトープ構築物
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/705 20060101AFI20230516BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230516BHJP
   C07K 14/76 20060101ALN20230516BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230516BHJP
【FI】
C07K14/705
A61P3/10
A61P37/06
A61K47/64
C07K14/76 ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558189
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 US2021024377
(87)【国際公開番号】W WO2021195508
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/000,590
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242133
【氏名又は名称】エピバックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】EPIVAX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】デ・グルート・アンネ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC21
4C076EE59
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA70
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、一般に、新規なTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドに関し、前記改変ペプチドは、血液成分と反応してそのようなTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成することが可能である。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)として機能する血液成分を含み、1または複数の制御性T細胞エピトープ(「Tレジトープ」と呼ばれる)を含む改変ポリペプチドをさらに含み、そのポリペプチドは、血液成分上の反応性官能基と結合(例えば、共有結合)を形成できる反応部位をポリペプチドに結合することによって改変されてきたものである。本開示はまた、1型糖尿病などの自己免疫疾患の治療及び予防において、前記Tレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドを使用する方法に関するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変ポリペプチドに連結された血液成分を含むTレジトープ-血液成分コンジュゲートであって、前記改変ポリペプチドは、それに結合した反応性部位を有し、前記改変ポリペプチドが1または複数の制御性T細胞エピトープを含む、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項2】
前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、のみからなる、請求項1記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項3】
前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、から本質的になる、請求項1に記載のTレジトープ-血液成分のコンジュゲート。
【請求項4】
前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、を含む、請求項1記載のTレジトープ-血液成分のコンジュゲート。
【請求項5】
前記1または複数の制御性T細胞エピトープが配列番号1を含んでなる、請求項1に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項6】
前記1または複数の制御性T細胞エピトープが配列番号28を含んでなる、請求項1に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項7】
前記血液成分がアルブミンである、請求項1~6のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項8】
前記血液成分がヒト血清アルブミンである、請求項1~6のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項9】
前記改変ポリペプチドが、T1Dgenペプチドをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項10】
前記T1Dgenペプチドが、配列番号56~63からなる群から選択される1または複数のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項11】
反応性部位が、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸に結合している、請求項1~10のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項12】
反応性部位が、改変ポリペプチドのカルボキシ末端アミノ酸に結合している、請求項1~10のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項13】
反応性部位が、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸とカルボキシ末端アミノ酸の間に位置するアミノ酸に結合している、請求項1~10のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項14】
反応性部位がスクシンイミジル基またはマレイミド基である、請求項1~13のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項15】
反応性部位が3-マレイミドプロピオン酸部位である、請求項1~14のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項16】
血液成分と改変ポリペプチドとの間のコンジュゲーションが、マレイミド結合である、請求項1~15のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項17】
改変ポリペプチドであって、前記改変ポリペプチドは、それに結合した反応性部位を有し、前記改変ポリペプチドは、1または複数の制御性T細胞エピトープを含む、改変ポリペプチド。
【請求項18】
前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、のみからなる、請求項17に記載の改変ポリペプチド。
【請求項19】
前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、から本質的になる、請求項17記載の改変ポリペプチド。
【請求項20】
前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、を含む、請求項17記載の改変されたポリペプチド。
【請求項21】
前記1または複数の制御性T細胞エピトープが配列番号1を含んでなる、請求項17に記載の改変ポリペプチド。
【請求項22】
前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号28を含んでなる、請求項17に記載の改変ポリペプチド。
【請求項23】
前記改変ポリペプチドが、T1Dgenペプチドをさらに含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の改変ポリペプチド。
【請求項24】
前記T1Dgenペプチドが、配列番号56~63からなる群から選択される1または複数のアミノ配列を含む、請求項23に記載の改変ポリペプチド。
【請求項25】
反応性部位が、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸に結合している、請求項17~24のいずれか一項に記載の改変ポリペプチド。
【請求項26】
反応性部位が、改変ポリペプチドのカルボキシ末端アミノ酸に結合している、請求項17~24のいずれか一項に記載の改変ポリペプチド。
【請求項27】
反応性部位が、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸とカルボキシ末端アミノ酸の間に位置するアミノ酸に結合している、請求項17~24のいずれか一項に記載の改変ポリペプチド。
【請求項28】
反応性部位がスクシンイミジル基またはマレイミド基である、請求項17~27のいずれか一項に記載の改変ポリペプチド。
【請求項29】
反応性部位が3-マレイミドプロピオン酸部位である、請求項17~28のいずれか一項に記載の改変ポリペプチド。
【請求項30】
それを必要とする対象におけるT1Dに特徴的な自己免疫反応を抑制するための方法であって、請求項1~16のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲートを対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項31】
それを必要とする対象におけるT1Dに特徴的な自己免疫応答を抑制するための方法であって、請求項17~29のいずれか一項に記載の改変ポリペプチドを対象に投与する工程を含む方法。
【請求項32】
投与により、1または複数の抗原提示細胞を制御性表現型にシフトさせる、請求項30~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
投与により、1または複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトさせる、請求項30~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
制御表現型が、樹状細胞または他の抗原提示細胞におけるCD11cおよびHLA-DRの発現の減少によって特徴付けられる、請求項30~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数のT細胞を制御性表現型にシフトさせる、請求項30~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
1または複数の制御性T細胞エピトープの投与により、CD4+/CD25+/FoxP3+制御性T細胞を活性化する、請求項30~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
投与により、自然免疫応答、適応免疫応答、エフェクターT細胞応答、メモリーT細胞応答、ヘルパーT細胞応答、B細胞応答、NKT細胞応答、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される免疫応答を抑制する、請求項30~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1~16のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲートと、担体、賦形剤、及び/又はアジュバントとを含む、医薬組成物。
【請求項39】
請求項17~29のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成することができる改変ポリペプチドと、担体、賦形剤、及び/又はアジュバントとを含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2020年3月27日に出願された米国仮出願番号:63/000,590の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年3月24日に作成された前記ASCIIコピーは、EPV0025WO_ST25.txtと命名され、サイズは14KBである。
【技術分野】
【0003】
本開示は、一般に、新規のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドに関し、前記改変ペプチドは、血液成分と反応してかかるTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成することが可能である。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)として機能する血液成分を含み、さらに、1または複数の制御性T細胞エピトープ(「Tレジトープ」と呼ばれる)を含む改変ポリペプチドを含む。前記ポリペプチドは、血液成分上の反応性官能基(reactive functionality)と結合(例えば、共有結合)を形成可能な反応部位( reactive moiety)をポリペプチドに結合する(attach)ことによって改変されている。複数の態様において、改変ポリペプチドは、糖尿病における免疫原性に関連する1または複数の抗原ペプチド(「T1Dgen」ペプチド;例えば、PPI由来ペプチド)をさらに含み、これは、切断部位(例えば、リソソーム切断部位)により1または複数のTレジトープから任意に分離されてもよい。本開示はまた、1型糖尿病などの自己免疫疾患の治療及び予防において、前記Tレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドを使用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0004】
1型糖尿病(T1D)は125万人のアメリカ人に影響を与える自己免疫疾患であり、インスリン産生膵島細胞の破壊によって引き起こされ、世界中で、特に子供の間で年間2~3%で増加している。自己免疫性T1Dは、環境因子によって誘導され、抗原特異的制御性T細胞(TReg)によるT細胞応答の制御の欠陥によって加速されると考えられている。効果的な制御が行われない場合、CD8+およびCD4+自己反応性T細胞は、ヒト白血球抗原(HLA)分子によって提示される膵島細胞抗原を標的とする。T細胞による膵島細胞の漸進的な破壊は、耐糖能異常及びインスリン補充療法への生涯にわたる依存をもたらす。
【0005】
膵島細胞の破壊を軽減し、膵島細胞の機能を維持することは、T1Dの治療法を開発するために決定的に重要であると考えられている。TRegは、Tエフェクター細胞(Teff)による膵島細胞の損傷を保護する。そのため、寛容性を回復するための膵島抗原特異的TRegの保存、拡大、活性化は、T1D研究の重要な領域である。養子TReg療法やTRegの拡大を促すモノクローナル抗体が検討されているが、いずれも抗原特異的でなく、重要な有効性のエンドポイントも満たされていない。我々は、Tレジトープが、選択されたPPIペプチドの抗原特異性にナチュラルTReg誘導を加えることにより、抗原特異的治療の結果を改善することを提案する。そのため、当技術分野では、そのようなTレジトープ及びT1D関連抗原(例えば、ペプチド)を含む組成物、並びにそれらの調製及びT1Dの治療における使用に関連する方法に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0006】
従って、本開示の目的は、新規のTレジトープ-血液成分コンジュゲート、及びTレジトープを含む改変ポリペプチドを提供することであり、前記改変ペプチドは、血液成分と反応してかかるTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成することができるものである。Tレジトープを含むポリペプチドとアルブミンなどの血液成分とのコンジュゲートは、Tレジトープペイロード(payload)のためのキャリアタンパク質として有用であり得る。Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、in vivoにおけるTレジトープを含む改変ポリペプチドの半減期を延長し、Tレジトープを含む改変ポリペプチドを急速なタンパク質分解から保護し、Tレジトープを含む改変ポリペプチドを循環からの急速なクリアランス及び/又は急速な腎排泄から保護し、対象の体全体に及ぶTレジトープ-血液成分コンジュゲートの広い分布を許容することが可能である。適切な免疫細胞(マクロファージ及びAPCなど)へのTレジトープを含む改変ポリペプチドの送達を助け、Tレジトープを含む改変ポリペプチドが特定の免疫細胞(マクロファージ及びAPCなど)のエンドサイトパスウェイによって処理されることを可能にし、前記免疫細胞による抗原としてのTレジトープを含む改変ポリペプチドの提示を補助することである。
【0007】
本明細書に開示するTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドの使用による内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTReg及び/又はアダプティブTRegを含む)の選択的係合及び活性化は、望ましくない免疫反応の存在によって特徴付けられる疾患又は状態、例えば1型糖尿病のような自己免疫疾患に対する治療の手段として治療的に貴重である。このように、本開示はまた、1型糖尿病などの自己免疫疾患の治療および予防において、前記Tレジトープ-血液成分コンジュゲートおよびTレジトープを含む改変ポリペプチドを使用する方法に関するものである。
【0008】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、担体タンパク質(例えば、アルブミン)として作用する血液成分を含み、さらに改変ポリペプチドを含み、前記改変ポリペプチドは1または複数の制御性T細胞エピトープ(「Tレジトープ」と称する)を含む。改変ポリペプチドは、ポリペプチドに結合している反応性部位を含み、反応性部位は、血液成分上の反応性官能基と結合(例えば、共有結合)を形成することが可能である。複数の態様において、改変ポリペプチドは、糖尿病における免疫原性に関連する1または複数の抗原ペプチド(「T1Dgen」ペプチド;例えば、PPI由来ペプチド)をさらに含み、これは任意に、リンカーおよび/または切断部位(例えば、リソソーム切断部位)により1または複数のTレジトープから分離されてもよい。Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているように、Tレジトープを含むポリペプチドを、反応性部位をポリペプチドに結合させて改変ポリペプチドを作製し、次に、改変ポリペプチドの反応性部位と血液成分上の反応性官能基との間に結合を形成する。上記Tレジトープ-血液成分コンジュゲートおよびTレジトープを含む改変ポリペプチドの複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートおよびTレジトープを含む改変ポリペプチドは、分離、合成、または組換えであってもよい。
【0009】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの血液成分は、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、及び米国特許第7,307,148号に開示のように、固定性又は移動性のいずれであってもよい。固定性(fixed)血液成分は、移動しない血液成分であり、組織、膜受容体、間質性タンパク質、フィブリンタンパク質、コラーゲン、血小板、内皮細胞、上皮細胞およびそれに関連する膜および膜受容体、体細胞、骨格筋および平滑筋細胞、ニューロン成分、骨細胞および破骨細胞ならびにすべての体組織、特に循環系およびリンパ系に関連する組織が含まれる。移動性(mobile)血液成分とは、長時間の間(一般に5分以内、より通常は1分以内)、固定された座を持たない血液成分である。これらの血液成分は、膜に結合しておらず、長時間血液中に存在し、少なくとも0.1μg/mlの最小濃度で存在する。移動性血液成分には、血清アルブミン、トランスフェリン、フェリチン、IgMやIgGなどの免疫グロブリンが含まれる。移動性血液成分の半減期は、少なくとも約12時間である。Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの複数の態様において、血液成分は、血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、組換えアルブミン、および組換えヒト血清アルブミンなどのアルブミンである。アルブミンは、Tレジトープ-アルブミンコンジュゲートをマクロファージやAPCなどの適切な細胞に運ぶFc新生児結合ドメインを含むので、好ましい血液成分である。さらに、アルブミンは、アミノ酸34(Cys34)(ヒトセリンアルブミンのアミノ酸配列におけるアミノ酸の位置)にシステインを含み、pKaが約5の遊離チオールを含み、アルブミンの好ましい反応性官能基として機能し得る。アルブミンのCys34は、マレイミドプロピオンアミド(MPA)と安定なチオエステル結合を形成することができ、これは、改変Tレジトープペプチドの好ましい反応性部位である。
【0010】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの血液成分上、または本開示の改変ポリペプチドとコンジュゲートを形成することができる血液成分上の反応性官能基は、改変治療ペプチド上の反応基が反応して共有結合を形成する、移動および固定タンパク質を含む、血液成分上の基である。米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号に開示されているように、このような官能性は通常、エステル反応基と結合するためのヒドロキシル基、マレイミド基、イミデート(imidate)基およびチオエステル基と結合するためのチオール基、反応基の活性化カルボキシル基、リン酸基または他の任意のアシル基と結合するためのアミノ基などを含んでいる。
【0011】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、ポリペプチドに結合している反応性部位を含み、反応性部位は血液成分上の反応性官能基と結合(例えば、共有結合)を形成できるものである。複数の態様において、反応性基は、血液成分上のアミノ基、ヒドロキシル基またはチオール基と反応して、それと共有結合を形成することが可能である。複数の態様において、反応性基は、改変ポリペプチドが血液成分に結合されるとき、改変ペプチドが親化合物の活性の実質的な(substantial)割合を保持するような部位に配置される。複数の態様において、反応性部位は、スクシンイミジル基またはマレイミド基であってよい。複数の態様において、反応性部位は、改変されるべきポリペプチドのアミノ酸の治療的活性が低い領域に位置するアミノ酸に結合していてもよい。複数の態様において、反応性部位は、改変されるポリペプチドのアミノ末端アミノ酸に結合している。複数の態様において、反応性部位は、改変されたポリペプチドのカルボキシ末端アミノ酸に結合される。複数の態様において、反応性部位は、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸とカルボキシ末端アミノ酸の間に位置するアミノ酸に結合している。複数の態様において、反応性基は、連結基を介して、または任意に連結基を使用せずに、(改変されるべき)ポリペプチドに結合されてもよい。さらに、反応性基の結合を促進するために、1または複数の追加のアミノ酸(例えば、1または複数のリジン)がポリペプチドに付加されてもよい。連結基は、血液成分の反応性基を、1または複数のTレジトープを含むポリペプチドに連結または接続する化学的部分である。連結基は、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、またはアルキル基、置換アミノ基、シクロアルキル基、多環式基、アリール基、ポリアリール基、置換アリール基、複素環基、および置換複素環基の1または複数であってもよい。連結基はまた、AEA((2-アミノ)エトキシ酢酸)などのポリエトキシアミノ酸から構成されてもよく、好ましい連結基はAEEA([2-(2-アミノ)エトキシ]エトキシ酢酸であってもよい。複数の態様において、連結基は、ポリエチレングリコールリンカー(例えば、これらに限定されないが、PEG2またはPEG12)から構成されてもよい。
【0012】
理解されるべきこととして、改変ポリペプチドは、血液成分とのコンジュゲートがin vivoで起こるようにin vivoで投与されてもよく、またはそれらはまずin vitroで血液成分にコンジュゲートされ、得られたペプチダーゼ安定化ポリペプチドがin vivoで投与されてもよい。さらに、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号および米国特許第7,307,148号に開示されているように、ペプチダーゼ安定化ポリペプチドは、改変ペプチドの反応基と血液成分の官能基の間に、連結基を用いてまたは用いずに形成される共有結合を介して血液成分に結合させた、改変ポリペプチドである。このような反応は、好ましくは、マレイミドリンク(例えば、GMBS、MPA、または他のマレイミドから調製)で改変したポリペプチドを、血清アルブミンまたはIgGなどの移動血液タンパク質上のチオール基と共有結合させることによって確立される。ペプチダーゼ安定化ポリペプチドは、非安定化ペプチドよりも、in vivo(生体内の)ペプチダーゼの存在下でより安定である。ペプチダーゼ安定化治療用ペプチドは、一般に、同一配列の非安定化ペプチドと比較して、半減期を少なくとも10-50%増加させることができる。ペプチダーゼ安定性は、血清または血液中の非改変治療用ペプチドの半減期と、血清または血液中の対応する(counterpart)改変治療用ペプチドの半減期を比較することにより決定される。半減期は、改変ペプチド及び非改変ペプチドを投与した後に血清又は血液をサンプリングし、ペプチドの活性を測定することにより決定される。活性を決定することに加えて、治療用ペプチドの長さもまた測定され得る。
【0013】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチド、及びTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、1または複数のTレジトープ(本明細書では「TReg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレジトープ」又は「T細胞エピトープポリペプチド」として呼ばれる場合がある)で構成される。複数の態様において、改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、1または複数の配列番号1~55(ならびにその断片および変異体)の配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。「本質的に~からなる」という表現は、本開示による改変ポリペプチドのTレジトープが、Tレジトープとして機能するペプチドの活性を大幅に損ねない限り、配列番号1~55のいずれか(またはその断片もしくは変異体)による配列に加えて、必ずしもMHCリガンドとして機能するペプチドの一部を形成しない、ペプチドのいずれかの末端および/または側鎖に存在し得る追加のアミノ酸または残基を含むことを意味していると意図する。複数の態様において、本開示による改変ポリペプチドのTレジトープは、1または複数の配列番号1および28の配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、本開示による改変ポリペプチドのTレジトープは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、本開示による改変ポリペプチドのTレジトープは、配列番号28のアミノ酸配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、任意に、それらのN末端および/またはC末端に隣接して、切断感受性部位であってもよい1または複数のリンカーを有していてもよい。そのような改変ポリペプチドにおいて、2以上のTレジトープが、それらの間に切断感受性部位を有していてもよい。あるいは、2以上のTレジトープが、互いに直接、または切断感受性部位でないリンカーを介して接続されていてもよい。本開示のポリペプチドは、分離、合成、及び/又は組換えであってよく、グリコシル化、付加された化学基等の転写後修飾を含んでいてもよい。複数の態様において、ペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態のいずれであってもよく、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まなくてもよく、または含んでいてもよい。特定の複数の態様において、Tレジトープは、N末端アセチル基および/またはC末端アミノ基でキャップされ得る。複数の態様において、改変ポリペプチドに含まれる1または複数のTレジトープは、N末端アセチル基および/またはC末端アミノ基でキャップすることができる。
【0014】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、1または複数の配列番号1~55の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で配列番号1~55のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有している。複数の態様において、1または複数のTレジトープは、配列番号1~55のアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコアアミノ酸配列と、任意選択で前記コアアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部とを有しており、これらの隣接アミノ酸(フランクアミノ酸)(flanking amino acids)の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよい(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に付加することもでき、アミノ酸は両方の末端に等しく、または他の任意の割合で、付加することもできる)。複数の態様において、1または複数のTレジトープは、配列番号1~55のアミノ酸配列(および/またはその断片および変異体)を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコア配列と、任意選択で前記コアアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部とを有しており、これらの隣接アミノ酸(フランクアミノ酸)(flanking amino acids)の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよく(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に付加することもでき、アミノ酸は両方の末端に等しく、または他の任意の割合で、付加することもできる)、但し、その隣接アミノ酸を有するTレジトープは依然として、その隣接アミノ酸を有さないTレジトープと同じHLA分子に結合できる(すなわち、MHC結合性を保持する)。複数の態様において、前記隣接アミノ酸を有する前記Tレジトープは、前記隣接アミノ酸を有さない前記Tレジトープコア配列と同じHLA分子に結合する(すなわち、MHC結合性を保持する)ことができ、および/または同じTCR特異性を保持することができる。複数の態様において、前記隣接アミノ酸を有する前記ポリペプチドは、前記隣接アミノ酸を有しない前記ポリペプチドコア配列と同じHLA分子に結合する(すなわち、MHC結合性を保持する)、及び/又は同じTCR特異性を保持する、及び/又はTレジトープ活性を保持できる。複数の態様において、前記隣接アミノ酸配列は、内在性タンパク質、例えばIgG抗体において、そこに含まれるペプチドまたはポリペプチドの隣接部としても存在するものである。複数の態様において、拡張部(複数可)は、ペプチドまたはポリペプチドの生化学的特性(例えば、限定されないが、溶解度または安定性)を改善するため、またはペプチドの効率的なプロテアソーム処理の可能性を改善するために機能し、設計され得る。複数の態様において、本明細書に記載される前記隣接アミノ酸配列は、MHC安定化領域として機能し得る。より長いペプチドの使用は、対象細胞による内因性プロセシングを可能にし、より効果的な抗原提示およびT細胞応答の誘導につながる可能性がある。複数の態様において、改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、1または複数のリンカー(任意に、切断感受性部位であってもよい)を、それらのN末端及び/又はC末端に隣接して有していてもよい。そのような改変ポリペプチドにおいて、2以上のTレジトープが、それらの間に切断感受性部位を有していてもよい。あるいは、2以上のTレジトープが互いに直接、または切断感受性部位でないリンカーを介して接続されてもよい。ポリペプチドは、分離、合成、および/または組換えであってもよい。複数の態様において、1または複数のTレジトープおよび/またはそこに含まれるTレジトープを含む改変ポリペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態であることができ、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まなくてもよく、または含んでいてもよい。特定の複数の態様において、1または複数のTレジトープペプチドまたはポリペプチドを含む改変ポリペプチドは、N末端アセチル基および/またはC末端アミノ基でキャップされ得る。
【0015】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチド、及びTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、1または複数のT1Dgenペプチド(例えば、PPI由来ペプチド)をさらに含んでいる。) 複数の態様において、前記1または複数のT1Dgenペプチドは、切断部位(例えば、リソソーム切断部位)によって1または複数のTレジトープから任意に分離されてもよい。複数の態様において、改変ポリペプチドの前記1または複数のT1Dgenペプチドは、配列番号56~63のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。「本質的に~からなる」という表現は、本開示による改変ポリペプチドのT1Dgenペプチドが、抗原として機能するペプチドの活性を大幅に損ねない限り、配列番号56~63(またはその断片もしくは変異体)のいずれかによる配列に加えて、必ずしもMHCリガンドとして機能するペプチドの一部を形成しない、ペプチドのいずれかの末端および/または側鎖に存在し得る追加のアミノ酸または残基を含むことを意味することが意図される。複数の態様において、1または複数のT1Dgenペプチドは、配列番号63のアミノ酸配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、改変ポリペプチドの1または複数のT1Dgenペプチドは、1または複数のリンカー(任意に、切断感受性部位であってもよい)を、それらのN末端および/またはC末端に隣接して有していてもよい。このような改変ポリペプチドでは、2以上のT1Dgenペプチドが、それらの間に切断感受性部位を有していてもよい。あるいは、2以上のT1Dgenペプチドは、互いに直接、または切断感受性部位でないリンカーを介して接続されていてもよい。さらに、複数の態様において、改変ポリペプチドのT1DgenペプチドおよびTレジトープは、それらの間に切断感受性部位を有していてもよく、または互いに直接または切断感受性部位でないリンカーを介して接続されていてもよい。
【0016】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチド、及びTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドの1または複数のT1Dgenペプチドは、配列番号56~63(及び/又はその断片又は変異体)のアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号56~63のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、前記1または複数のT1Dgenペプチドは、配列番号56~63のアミノ酸配列を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコアアミノ酸配列と、任意選択で前記コアアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部とを有しており、これらの隣接アミノ酸(フランクアミノ酸)(flanking amino acids)の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよい(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に付加することもでき、アミノ酸は両方の末端に等しく、または他の任意の割合で、付加することもできる)。複数の態様において、前記1または複数のT1Dgenペプチドは、配列番号1~55のアミノ酸配列(および/またはその断片および変異体)を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコア配列と、任意選択で前記コアアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部とを有しており、これらの隣接アミノ酸(フランクアミノ酸)(flanking amino acids)の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよく(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に付加することもでき、アミノ酸は両方の末端に等しく、または他の任意の割合で、付加することもできる)、但し、その隣接アミノ酸を有するT1Dgenペプチドは依然として、その隣接アミノ酸を有さないT1Dgenペプチドと同じHLA分子に結合できる(すなわち、MHC結合性を保持する)。複数の態様において、前記隣接アミノ酸を有する前記T1Dgenペプチドは、前記隣接アミノ酸を有さない前記T1Dgenペプチドコア配列と同じHLA分子に依然として結合することができ(すなわち、MHC結合性を保持し)、及び/又は同じTCR特異性を保持する。複数の態様において、前記隣接アミノ酸配列は、内在性タンパク質においてそこに含まれる前記T1Dgenペプチドの隣接部としても存在するものである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドが、配列番号56~63(および/またはその断片および変異体)のアミノ酸配列を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコア配列、ならびに任意選択でそのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部を有する場合、1から12のアミノ酸の拡張部はプレプロインスリンのアミノ酸配列において配列番号56~63のアミノ酸配列に隣接して見出されるものである。複数の態様において、前記拡張部(複数可)は、ペプチドまたはポリペプチドの生化学的特性(例えば、限定されないが、溶解度または安定性)を改善するため、またはペプチドの効率的なプロテアソーム処理のための可能性を改善するために機能し設計され得る。複数の態様において、本明細書に記載される前記隣接アミノ酸配列は、MHC安定化領域として機能し得る。より長いペプチドの使用は、対象細胞による内因性プロセシングを可能にし、より効果的な抗原提示およびT細胞応答の誘導につながる可能性がある。複数の態様において、1または複数のT1Dgenペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態であることができ、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まないかまたは含むことのいずれかであることができる。
【0017】
複数の態様において、本開示は、複数の態様において、分離、合成、または組換えであってよく、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成に用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸(例えばDNAまたはRNA、mRNAを含む)に関する。複数の態様において、本開示は、本明細書に記載の核酸を含む発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、または細胞に関する。複数の態様において、本開示は、記載されるようなベクターを含む細胞またはワクチンに関する。複数の態様において、本開示は、本開示のベクターを含んでなる細胞に関する。
【0018】
複数の態様において、本開示は、本開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドを含む化合物又は組成物を含む医薬組成物又は製剤(並びに、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞)、および薬学的に許容される担体、賦形剤、および/またはアジュバントが挙げられる。
【0019】
複数の態様において、本開示は、それを必要とする対象における、制御性T細胞を刺激、誘導、及び/又は拡大する方法(複数の態様において、内在性TReg、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)を刺激し、および/またはそれを必要とする対象におけるT1Dに関連する自己免疫応答を抑制する方法であって、本開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成に用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)を、治療有効量の化合物または組成物を対象へ投与する工程を備える。
【0020】
複数の態様において、本開示は、それを必要とする対象における病状を治療または予防する方法であって、治療有効量の、本開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成に用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)が挙げられる。複数の態様において、医学的状態は、以下のものからなる群から選択される:アレルギー、自己免疫疾患、移植関連障害、移植片対宿主病、血液凝固障害、酵素またはタンパク質欠損障害、止血障害、癌、不妊;およびウイルス、細菌または寄生虫感染症。別の実施形態では、病状は血友病A、B、またはCである。複数の態様において、本開示は、それを必要としている対象の1型糖尿病を治療または予防する方法に関し、治療有効量の本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成に用いられる改変ポリペプチド、またはそれらを含む医薬組成物もしくは製剤を対象に投与する工程を含む。複数の態様において、対象はヒトである。
【0021】
複数の態様において、本開示は、それを必要とする対象において、自己免疫反応を抑制するために、制御性T細胞(例えば、内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む))を刺激、誘導、及び/又は拡大する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の本開示されるTレジトープ-血液成分のコンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分のコンジュゲートの形成に使用する改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)を投与する工程を含む。複数の態様において、免疫応答は、少なくとも1つの治療用タンパク質による1または複数の治療処置、ワク000チンによる処置、または少なくとも1つの抗原による処置の結果である。複数の態様において、そのような投与は、1または複数の抗原提示細胞を制御性表現型(regulatory phenotype)にシフトさせ、1または複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトさせ、樹状細胞または他の抗原提示細胞におけるCD11cおよびHLA-DR発現を減少させる。
【0022】
複数の態様において、本開示は、制御性T細胞の集団を拡大するための方法であって、以下を含む方法に関し、前記方法は(a)対象から生物学的サンプルを提供する工程;(b)生物学的サンプルから制御性T細胞を分離する工程;(c)制御性T細胞が数を増やし拡大された制御性T細胞組成物を得て、それによって生物学的サンプル中の制御性T細胞を拡大する条件下で、分離された制御性T細胞に対して、有効量の、本開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)を接触させる工程;及び、追加で、(d)前記サンプルを、治療を必要とする対象に戻す工程を含んでいる。
【0023】
複数の態様において、本開示は、生物学的サンプル中の制御性T細胞を刺激するための方法に関し、前記方法は、(a)対象から生物学的サンプルを提供する工程;(b)生物学的サンプルから制御性T細胞を分離する工程;(c)制御性T細胞が刺激されて1または複数の生物機能を変更し、それによって生物学的サンプル中の制御性T細胞を刺激する条件下で、分離された制御性T細胞に対して、有効量の、本開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)を接触させる工程、及び、追加で、(d)前記細胞を、治療を必要とする対象に戻す工程を含んでいる。
【0024】
複数の態様において、本開示は、対象における免疫応答を抑圧/抑制するための方法であって、治療有効量の本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)に投与する工程を含み、ここで投与された組成物は免疫反応を抑圧/抑制する。複数の態様において、投与された組成物は、自然(innate)免疫応答を抑圧する/抑制する。複数の態様において、投与された組成物は、適応(adaptive)免疫応答を抑圧する/抑制する。複数の態様において、投与された組成物は、エフェクターT細胞応答を抑圧する/抑制する。複数の態様において、投与された組成物は、メモリーT細胞応答を抑圧する/抑制する。複数の態様において、投与された組成物は、ヘルパーT細胞応答を抑圧する/抑制する。複数の態様において、投与された組成物は、B細胞応答を抑圧する/抑制する。複数の態様において、投与された組成物は、nkT細胞(ナチュラルキラーT細胞)応答を抑圧する/抑制する。別の態様では、本開示のTレジトープ化合物または組成物の投与は、1または複数の抗原提示細胞を制御性表現型にシフトさせ、1または複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトしさせ、樹状細胞または他の抗原提示細胞におけるCD11cおよびHLA-DR発現を減少させる。
【0025】
複数の態様において、本開示は、免疫応答、特に対象における抗原特異的免疫応答を抑制する方法に関し、前記方法は、治療有効量の本開示されたTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)を投与する工程を含み、ここで、前記投与された組成物は、内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTReg及び/又はアダプティブTReg、並びに複数の態様においてCD4/CD25/FoxP3制御性T細胞を含む)を活性化し、又はCD4T細胞の活性化、CD4および/またはCD8T細胞の増殖を抑制する、及び/又はβ細胞若しくはnkT細胞の活性化若しくは増殖を抑制する、方法である。複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)は、特定の標的抗原と共有結合、非共有結合、又は混和のいずれであってもよい。複数の態様において、特異的標的抗原は、改変ポリペプチドに含まれるT1Dgenである。複数の態様において、投与されたTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/または本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)を、1または複数の特定の標的抗原と共有結合、非共有結合、又は混和させた場合、標的抗原に対する免疫応答の減弱がもたらされる。複数の態様において、1または複数の特異的標的抗原は、本明細書に開示される1または複数の配列番号56~63の配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有する糖尿病における免疫原性に関連する1または複数のペプチド(「T1Dgens」と称する)を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。
【0026】
複数の態様において、標的抗原は、自己のタンパク質またはタンパク質断片であってよい。複数の態様において、標的抗原は、同種異系タンパク質またはタンパク質断片であってもよい。複数の態様において、標的抗原は、生物学的医薬またはその断片であってもよい。複数の態様において、標的抗原は、プレプロインスリンまたはその断片である。複数の態様において、標的抗原は、本明細書に記載の1または複数の配列番号56~63、またはその断片および変異体を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、抑制効果は、ナチュラルTRegによって媒介される。複数の態様において、抑制効果は、アダプティブTRegによって媒介される。複数の態様において、本開示されている改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、自然免疫応答を抑制する。複数の態様において、本開示されている改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、適応免疫応答を抑制する。複数の態様において、本開示されている改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、ヘルパーT細胞応答を抑制する。複数の態様において、本開示されている改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、メモリーT細胞応答を抑制する。複数の態様において、本開示されている改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、B細胞応答を抑制する。複数の態様において、本開示されている改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、nkT細胞応答を抑制する。
【0027】
複数の態様において、本開示は、医学的状態を予防又は治療するためのキット、特に、対象における1型糖尿病に関連する免疫応答の抑制のためのキットに関し、本キットは、本開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成に用いられる1又は複数の本開示の改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)を含む。複数の態様において、キットは、有効量の抗原または治療剤、例えば置換タンパク質またはペプチドをさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示は、以下の図を参照することにより、よりよく理解され得る。特許または出願ファイルは、カラーで実行される少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(1つまたは複数)を有するこの特許または特許出願公開のコピーは、要求および必要な手数料の支払いに応じて、官庁によって提供される。
図1図1は、本開示の例示的なTレジトープ-血液成分コンジュゲートを示している。HSAは、ヒト血清アルブミンを指す。
図2図2は、本開示の例示的なTレジトープ-血液成分コンジュゲートを示す。HSAは、ヒト血清アルブミンを指す。
図3図3は、Tレジトープ-アルブミン送達ビヒクルの有効性を評価するTTBSAアッセイのための実験デザインを示している。
図4A図4Aは、TTBSAアッセイにおけるCD4+T細胞増殖を抑制する可能性に関する、多数の利用可能なTレジトープの各々の個別及び一対の組み合わせの結果を示す。
図4B図4Bは、TTBSAアッセイにおけるCD4+T細胞増殖を抑制する可能性に関する、多数の利用可能なTレジトープの各々の個別及び一対の組み合わせの結果を示す。
図5A図5Aは、TTBSAアッセイにおけるCD4+T細胞増殖を抑制する可能性について、選択したTレジトープをコンジュゲートした結果を示している。
図5B図5Bは、TTBSAアッセイにおけるCD4+T細胞増殖を抑制する可能性について、選択したTレジトープをコンジュゲートした結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(概要)
適応免疫カスケードは、可溶性タンパク質抗原が抗原提示細胞(APC)に取り込まれ、クラスII抗原提示経路を通じて処理されるときに始まる。クラスII抗原提示経路におけるタンパク質抗原は、小胞体に存在する様々なプロテアーゼによって分解される。得られたタンパク質断片の一部は、クラスII MHC分子に結合される。ペプチドを結合したMHC分子は細胞表面に運ばれ、そこでCD4+T細胞によってインテロゲートされる(interrogated)。MHC分子に結合し、APCと循環T細胞間の細胞間相互作用を媒介することができるペプチド断片は、T細胞エピトープと呼ばれる。CD4+T細胞によるこれらのペプチド-MHC複合体の認識は、応答するT細胞の表現型および局所的なサイトカイン/ケモカイン環境に基づいて、免疫活性化または免疫抑制反応のいずれかを引き起こすことができる。一般に、MHC/ペプチド複合体とTエフェクター細胞のT細胞受容体(TCR)との結合は、活性化とそれに続くIL-4、IFNなどの炎症性サイトカインの分泌を引き起こす。一方、ナチュラル型制御性T細胞(TReg)の活性化は、免疫抑制性サイトカインであるIL-10やTGF-βなどの発現を引き起こす(Shevach E, (2002), Nat Rev Immunol, 2(6):389-400)。これらのサイトカインは、近傍のエフェクターT細胞に直接作用し、場合によってはアネルギーやアポトーシスを引き起こす。また、制御性サイトカインやケモカインがエフェクターT細胞をT制御性表現型に変換する場合もある。この過程は、ここでは「誘導性」あるいは「アダプティブ(適応性)」寛容と呼ばれている。MHC分子に結合し、循環する内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)に関与および/または活性化することができるT細胞エピトープは、Tレジトープと称される。複数の態様において、本開示されるTレジトープは、複数のMHCアレルおよび複数のTCRに結合することができるエピトープである、T細胞エピトープクラスターである。
【0030】
最初の自己/非自己の識別は、新生児発生中の胸腺で起こり、皮質及び髄質上皮細胞は、未熟なT細胞に対して特異的な自己タンパク質エピトープを発現する。高親和性の自己抗原を認識するT細胞は削除されるが、中程度の親和性を持つ自己反応性T細胞は削除を免れ、ナチュラル制御性T細胞(TReg)細胞へと変化することができる。これらのナチュラルTReg細胞は末梢に運ばれ、潜在的な自己免疫反応を制御するのに役立つ。ナチュラル制御性T細胞は、免疫調節及び自己寛容の重要な構成要素である。
【0031】
自己寛容は、T細胞、B細胞、サイトカイン及び表面受容体の間の複雑な相互作用によって制御される。T制御性免疫応答は、タンパク質抗原(自己であれ外来であれ)に対するTエフェクター免疫応答と均衡を保つ。自己反応性Tエフェクター細胞の数及び/又は機能の増加、あるいは制御性T細胞の数及び/又は機能の減少のいずれかにより、バランスが自己反応性側に傾くと、自己免疫として現れる。
【0032】
成熟T細胞が、IL-10とTGF-βの存在下でT細胞受容体を介して活性化されると、通常はバイスタンダー制御性T細胞の供給を受けて、「アダプティブ」TReg表現型に変換される場合、第2の寛容が末梢で発現する。これらの「アダプティブ」TReg細胞の役割としては、侵入した病原体をうまく排除した後の免疫反応の弱化、アレルギー反応による過剰な炎症の制御、低レベルあるいは慢性感染による過剰な炎症の制御、あるいは有益な共生細菌やウイルスに対する炎症反応の制御などが考えられている。「アダプティブ」TRegはまた、体細胞超変異を受けたヒト抗体を標的とする免疫反応を抑制する役割を果たす可能性がある(Chaudhry Aら、(2011)、Immunity、34(4):566-78)。
【0033】
TReg細胞はまた、B細胞寛容に役立っている。B細胞は、その細胞表面に単一の低親和性Fc受容体であるFcyRIIBを発現する(Ravetch JVら、(1986)、Science、234(4777):718-25)。このレセプターは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ配列(ITIM)を含んでいる。免疫複合体によるFcyRIIBとB細胞受容体(BCR)の共ライゲーションは、ITIMのチロシンリン酸化を誘発し、イノシトールホスファターゼ、SHIPの動員をもたらす。SHIPはMAPキナーゼの活性化を妨げることによりBCRトリガー増殖を抑制し、バートンチロシンキナーゼ(Btk)の細胞膜からの解離により食作用を阻害して細胞内のカルシウム流入を阻害する。FcyRIIBは、ITIMとは無関係にアポトーシスを誘導することもできる。ICによるFcyRIIBのホモ会合が起こると、Btkの細胞膜への会合が促進され、それによってアポトーシス反応が引き起こされる(Pearse R, et al., (1999), Immunity, 10(6):753-60)。FcyRIIBの発現は非常に多様であり、サイトカインに依存している。活性化されたTh2およびTReg細胞によって発現されるIL-4およびIL-10は、FcyRIIBの発現を高めるために相乗的に作用することが示されており(Joshi Tら、(2006)、Mol Immuno、43(7):839-50)、したがって、液性応答の抑制を補助することができる。
【0034】
望まれない免疫応答を抑制するためにTレジトープ特異的TReg細胞を利用することが可能であり、また、共送されたタンパク質に対するアダプティブTRegを誘導することが可能である。この発見は、移植、タンパク質治療薬、アレルギー、慢性感染症、自己免疫及びワクチン設計のための治療レジメン及び抗原特異的治療法の設計に示唆を与えている。本開示のTレジトープを含む新規Tレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)は、薬物、タンパク質、またはアレルゲンとともに投与することにより、エフェクター免疫応答を抑制することができ、免疫系を寛容性に向けて意図的に操作するために使用することができる。
【0035】
本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドは、制御性T細胞の選択的な関与及び活性化に有用である。特定の内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTReg及び/又はアダプティブTRegを含む)は、全身的及び限定的な疾患特異的状況の両方において、不要な免疫応答の抑制に関与、活性化、並びに適用できることが、本明細書において実証される。例えば、免疫グロブリンのような血中の流れを循環する特定のヒトタンパク質は、内在性の制御性T細胞(ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む複数の態様において)集団に関連するT細胞エピトープを含む。通常の免疫監視の過程で、これらのタンパク質は、樹状細胞やマクロファージのような専門のAPCに取り込まれ、分解される。分解される過程で、これらのタンパク質に含まれるエピトープの一部は、MHC分子に結合し、細胞表面に運ばれ、制御性T細胞に提示される。これらの細胞は、APCによって活性化されると、サイトカインやケモカインを放出し、細胞外タンパク質の機能を阻害する自己免疫反応を抑制するのに役立つ。複数の態様において、本開示のTレジトープ組成物は、T1Dに関連する自己免疫反応を抑制するために、制御性T細胞の既存の集団に関与させ、活性化するために使用することができる。T1Dに関連する自己免疫反応の抑制は、ヒト白血球抗原(HLA)分子によって提示される膵島細胞抗原を標的とするCD8+及び/又はCD4+自己反応性T細胞の抑制、T細胞による膵島細胞の破壊の抑制、膵島細胞抗原特異的TRegの拡大及び/又は活性化、膵島細胞の寛容性の回復、及び/又はプレプロインスリンなどのT1D並びに膵島細胞に関するタンパク質への寛容性誘導が挙げられうる。
【0036】
本開示の新規Tレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)を使用することにより、そのような組成物が、様々な望ましくない免疫応答を抑制するために使用され得ることが本明細書に示されている。最も単純な形態では、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドの全身適用を、例えば自己免疫T1Dなどの重度の自己免疫反応の制御に有用な一般的な免疫抑制剤として使用することが可能である。
【0037】
より制御された用途では、本開示の新規なTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドは、局所的な自己免疫反応を抑制するために使用することができる。特定の他のT細胞エピトープへの本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドの連結又は混和によって達成され得るような、標的用途において、本開示される組成物は、免疫系のバランスをそのままにして、連結又は混和したT細胞エピトープに対する非常に特異な免疫反応を抑制することが可能である。例えば、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又は改変ポリペプチド(双方は、プレプロインスリン又はインスリンのような自己免疫抗原(例えば、1または複数の配列番号56~63を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有する1または複数のT1Dgens)を含む)の送達を通じて、免疫系は、例えば、共同送達抗原を「寛容するように」訓練することができ、この訓練は、例えば、内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)を誘導し、および/または応答エフェクターT細胞の表現型を、プレプロインスリン、インスリン、または膵島細胞および/もしくはT1Dに関連する他のタンパク質を標的とする免疫応答を抑制できるアダプティブ制御性T細胞の表現型に転換させることにより行われる。このような免疫再プログラミングは、免疫系のバランスをそのままに、膵島細胞、インスリン、プレプロインスリン、及びT1Dの自己免疫反応に関連する他の抗原を標的とする免疫反応を低減及び/又は除去し得る。
【0038】
本開示のTレジトープは、循環している細胞外タンパク質に由来するものである。有用であるためには、これらのTレジトープは、真のT細胞エピトープ(すなわち、MHC分子とTCRの両方に結合することができる)であるべきである。複数の態様において、Tレジトープは、治療効果を有するのに十分な大きさの制御性T細胞の既存の集団に関連していることが望ましい。複数のMHCアレル及び複数のTCRに結合することができるエピトープであるT細胞エピトープクラスターは、この後者の資格を満たすための鍵である。
【0039】
その自然な状態において、本開示のTレジトープは、免疫応答を防止又は終了させる内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTReg及び/又はアダプティブTRegを含む)に結合して活性化することが可能である。さらに、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドによる治療は、対応する内在性TReg集団(複数の態様においてナチュラルTReg及び/又はアダプティブTRegを含む)を拡大し、インスリン又はプレプロインスリン由来の同種のペプチドによって活性化できるようにして、インスリン又はプレプロインスリンを標的とするエフェクター応答を抑制し得る。本開示の治療法は、以下の利点を提供する。
1.本開示のTレジトープ組成物による治療は、高度に抗原特異的である(例えば、Tレジトープ組成物による治療は、例えば、高度に抗原特異的な様式で、対応する内在性TReg集団(複数の態様において、ナチュラルTReg及び/又はアダプティブTRegを含む)を拡大及び/又は刺激しうる)。
2.T1Dのための現在の抗原特異的療法と比較した場合、効率的でより安価な治療レジメン;及び
3.対象がグルコースに対する寛容性を維持し、及び/又は寛容性を獲得し、及び/又はインスリン補充療法に依存する必要がないような、T1Dの予防又は治療。
【0040】
複数の態様において、本開示は、新規のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドを提供し、前記改変ペプチドは、血液成分と反応してそのようなTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成することが可能である。Tレジトープを含むポリペプチドとアルブミンなどの血液成分とのコンジュゲートは、Tレジトープペイロードのためのキャリアタンパク質として有用であり得る。Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、in vivoにおけるTレジトープを含む改変ポリペプチドの半減期を延長し、Tレジトープを含む改変ポリペプチドを急速なタンパク質分解から保護し、Tレジトープを含む改変ポリペプチドを循環からの急速なクリアランスおよび/または急速な腎排泄から保護し、対象の体全体に及ぶTレジトープ-血液成分コンジュゲートの広い分布を許容することが可能であり、Tレジトープを含む改変ポリペプチドの適切な免疫細胞(マクロファージおよびAPCなど)への送達を補助し、Tレジトープを含む改変ポリペプチドが特定の免疫細胞(マクロファージおよびAPCなど)のエンドサイトパスウェイによって処理されることを可能にし、および/または前記免疫細胞による抗原としてのTレジトープを含む改変ポリペプチドの提示を補助する。
【0041】
(定義)
本発明の理解をさらに容易にするために、多数の用語及び語句を以下に定義する。特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されるような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそう定義されない限り、理想化または過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことがさらに理解されよう。
【0042】
本明細書で提供される範囲は、範囲内の全ての値の略記であると理解される。例えば、1~25の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、又は小範囲、並びに例えば1などの前述の整数間のすべての介在小数値が含まれると理解される。1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9のような前記整数の間のすべての小数値を含む。サブレンジに関しては、レンジのいずれかの端点から伸びる「囲まれたサブレンジ」が特に企図されている。例えば、1~25の例示的な範囲の囲まれたサブ範囲は、一方向に1~5、1~10、1~15、及び1~20、又は他方向に25~20、25~15、25~10、及び25~5から成ることができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、生物からの組織、細胞、又は分泌物の任意のサンプルを指すものとして、「生物学的サンプル」という用語が使用される。
【0044】
本明細書で使用する場合、「移植(transplantation)」という用語は、ある対象から「移植組織(transplant)」または「移植片(graft)」と呼ばれる細胞、組織、または臓器を取り出し、それをまたはそれらを(通常)異なる対象に入れるプロセスを指す。移植を行う対象を「ドナー」、移植を受ける対象を「レシピエント」と称する。遺伝的に異なる同種の被移植体の間で移植された臓器や移植片は「同種移植片(allograft)」と称する。異なる種の対象の間で移植された移植片は、「異種移植片(xenograft)」と称する。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「医学的状態」は、治療及び/又は予防が望ましい1または複数の身体的及び/又は心理的症状として現れる任意の状態又は疾患を含むが、これに限定されず、以前及び新たに特定された疾患及び他の障害が含まれる。
【0046】
本明細書で使用する場合、「免疫反応」という用語は、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び上記細胞又は肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン及び補体を含む)の協働作用の結果による、人体からの、癌細胞、転移性腫瘍細胞、悪性黒色腫、侵入した病原体、病原体に感染した細胞または組織の選択的な損傷、破壊、または排除、あるいは自己免疫または病的炎症の場合には正常なヒト細胞または組織の選択的な損傷、破壊、または排除を指す。複数の態様において、免疫応答は、測定可能な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答(例えば、免疫原性ポリペプチドを発現するウイルスに対する)または抗体の産生などの測定可能なB細胞応答(例えば、免疫原性ポリペプチドに対する)、を含む。当業者であれば、明細書の実施例に開示するような実験およびアッセイの利用を含めて、ペプチド、ポリペプチド、または関連組成物に対する免疫応答が生じたかどうかを判定するための様々なアッセイが公知である。様々なBリンパ球およびTリンパ球アッセイは、ELISA、EliSpotアッセイ、細胞障害性Tリンパ球CTLアッセイ、例えばクロム放出アッセイ、末梢血リンパ球(PBL)を用いた増殖アッセイ、テトラマーアッセイおよび他のサイトカイン生成アッセイなど、よく知られたものである。参照により本明細書に組み込まれるBenjaminiら(1991)を参照されたい。
【0047】
本明細書で使用される場合、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチド(前記改変ペプチドは血液成分と反応してかかるTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成できる)を含む組成物(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)の「有効量」、「治療上有効量」等の用語は、所望の治療及び/又は予防効果を達成するに十分な量を意味し、例えば、治療されている疾患に関連する症状の予防、または減少をもたらす量である。対象に投与される本開示の組成物の量は、疾患の種類および重症度、ならびに個体の特性、例えば一般的な健康、年齢、性別、体重および薬物に対する耐性に依存するであろう。また、疾患の程度、重症度、および種類に依存するだろう。当業者は、これらおよび他の要因に応じて、適切な投与量を決定することができるであろう。本発明の組成物はまた、互いに組み合わせて、又は1または複数の追加の治療用化合物と組み合わせて投与することができる。
【0048】
本明細書で使用する場合、「制御性T細胞」、「Treg」等の用語は、細胞-細胞接触及び抑制性サイトカイン産生を含む様々な異なる機構を通じて、CD4+及び/又はCD8+エフェクターT細胞(Teff)誘導、増殖、及び/又はサイトカイン産生の抑制又は下方制御を含む免疫エフェクター機能を抑えるT細胞の亜集団のことを意味する。複数の態様において、CD4+TRegは、CD4、CD25、およびFoxP3を含む(これらに限定されない)特定の細胞表面マーカーの存在によって特徴付けられる。複数の態様において、活性化時に、CD4+制御性T細胞は、IL-10及び/又はTGF-βを含む(これらに限定されない)免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。CD4+Tregはまた、グランザイムBおよびパーフォリンを含む(これらに限定されない)エフェクター分子の活性化時の発現によって特徴付けられる、標的細胞の直接殺傷を通じて免疫抑制効果を発揮することができる。複数の態様において、CD8+TRegは、CD8、CD25、および活性化時にFoxP3を含む(これらに限定されない)特定の細胞表面マーカーの存在によって特徴付けられる。複数の態様において、活性化すると、制御性CD8+T細胞は、IFNγ、IL-10、および/またはTGF-βを含む(これらに限定されない)免疫抑制性サイトカインおよびケモカインを分泌する。複数の態様において、CD8+TRegはまた、標的細胞の直接的な殺傷を通じて免疫抑制効果を発揮することができ、グランザイムB及び/又はパーフォリンを含む(これに限定されない)エフェクター分子の活性化時の発現によって特徴付けられる。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「T細胞エピトープ」とは、7~30アミノ酸の長さで、ヒト白血球抗原(HLA)分子に特異的に結合し、特定のT細胞受容体(TCR)と相互作用できるMHCリガンド又はタンパク質決定因子を意味する。本明細書で使用するように、T細胞と係合することが知られているか決定されている(例えば予測されている)T細胞エピトープの状況では、用語「係合」、「係合」などは、MHC分子(例えばヒト白血球抗原(HLA)分子)と結合したとき、T細胞エピトープがT細胞のTCRと相互作用してT細胞を活性化することができることを意味している。一般に、T細胞エピトープは線状であり、特定の三次元的な特性を発現しない。T細胞エピトープは、変性溶媒の存在によって影響を受けることはない。T細胞エピトープと相互作用する能力は、インシリコ法によって予測することができる(De Groot ASら、(1997)、AIDS Res Hum Retroviruses、13(7):539-41;Schafer JRら、(1998), Vaccine, 16(19):1880-4; De Groot ASら, (2001), Vaccine, 19(31):4385-95; De Groot ARら, (2003), Vaccine, 21(27-30):4486-504, これらは全て、その全体が参照によりここに組み込まれている)。
【0050】
本明細書で使用する場合、「T細胞エピトープクラスター」という用語は、約4~約40個のMHC結合モチーフを含むポリペプチドを指す。特定の実施形態では、T細胞エピトープクラスターは、約5~約35個の間のMHC結合モチーフ、約8~約30個の間のMHC結合モチーフ、又は約10~約20個の間のMHC結合モチーフを含む。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「制御性T細胞エピトープ」(「Tレジトープ」)は、寛容性反応を引き起こし(Weber CAら、(2009)、Adv Drug Deliv、61(11):965-76)、MHC分子に結合して、循環する内在性TReg(態様では、ナチュラルTReg及び/又はアダプティブTRegを含む)に関与(即ち、相互作用及び活性化)可能な「T細胞エピトープ」を指す。複数の態様において、活性化すると、CD4+制御性T細胞は、IL-10および/またはTGF-βを含む(これらに限定されない)免疫抑制性サイトカインおよびケモカインを分泌する。CD4+Tregはまた、標的細胞の直接殺傷を通じて免疫抑制効果を発揮することがあり、グランザイムBおよびパーフォリンを含む(これらに限定されない)エフェクター分子の活性化時の発現によって特徴付けられる、IL-10およびTGF-βおよびTNF-αを含む(これらに限定されない)免疫抑制サイトカインの発現につながる。複数の態様において、活性化すると、制御性CD8+T細胞は、IFNγ、IL-10、及び/又はTGF-βを含む(これらに限定されない)、免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。複数の態様において、CD8+TRegはまた、標的細胞の直接殺傷を通じて免疫抑制効果を発揮することができ、グランザイムBおよび/またはパーフォリンを含む(これらに限定されない)エフェクター分子の活性化時の発現によって特徴付けられる。複数の態様において、本開示されるTレジトープは、複数のMHCアレル及び複数のTCRに結合することができるエピトープである、T細胞エピトープクラスターである。
【0052】
本明細書で使用されるように、用語「免疫刺激性T細胞エピトープポリペプチド」は、免疫応答、例えば、体液性、T細胞ベース、又は自然免疫応答を誘導することができる分子を意味する。複数の態様において、免疫刺激性T細胞エピトープポリペプチドは、ヒト凝固第V因子または凝固第VIII因子である。
【0053】
本明細書で使用する場合、「B細胞エピトープ」という用語は、抗体と特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。B細胞エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面グループからなり、通常、特定の三次元構造特性、及び特定の電荷特性を有する。コンフォメーション型エピトープと非コンフォメーション型エピトープは、前者への結合は失われるが、後者への結合は変性溶媒の存在下で失われないという点で区別される。
【0054】
本明細書で使用する「対象」という用語は、免疫応答が誘発される任意の生体を指す。この用語の対象には、ヒト、チンパンジーなどの類人猿及びサル類などの非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマなどの家畜、イヌ及びネコなどの家畜哺乳類、マウス、ラット及びモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物、などがあるが、それらに限定されるわけではない。なお、本用語は、特定の年齢や性別を示すものではない。したがって、雄または雌にかかわらず、成人および新生児、ならびに胎児を対象とすることが意図されている。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「主要組織適合性複合体(MHC)」、「MHC分子」、「MHCタンパク質」又は「HLAタンパク質」は、特に、タンパク質抗原のタンパク質分解切断から生じ、潜在的T細胞エピトープを表すペプチドを結合し、それらを細胞表面に輸送し、そこで特定の細胞、特に細胞障害性Tリンパ球又はTヘルパー細胞に提示できるタンパク質であると理解することができる。ゲノム中の主要組織適合性複合体は、細胞表面で発現する遺伝子産物が内因性抗原および/または外来抗原の結合と提示し、したがって免疫学的プロセスを制御するために重要である遺伝子領域を含む。主要組織適合性複合体は、異なるタンパク質、すなわちMHCクラスIの分子とMHCクラスIIの分子をコードする2つの遺伝子群に分類される。この2つのMHCクラスの分子は、異なる抗原源に特化している。MHCクラスIの分子は、例えばウイルスタンパク質や腫瘍抗原のような内部で合成された抗原を提示する。MHCクラスIIの分子は、外来性のタンパク質抗原、例えばバクテリアの生成物などを提示する。2つのMHCクラスの細胞生物学と発現様式は、これらの異なる役割に適応している。クラスIのMHC分子は重鎖と軽鎖からなり、このペプチドが適当な結合モチーフを持っていれば、約8~11アミノ酸、通常は9~10アミノ酸のペプチドを結合し、細胞傷害性Tリンパ球に提示することができる。クラスIのMHC分子が結合するペプチドは、内因性タンパク質抗原に由来する。クラスIのMHC分子の重鎖は、好ましくはHLA-A、HLA-BまたはHLA-Cの単量体であり、軽鎖はβ-2-ミクログロブリンである。クラスIIのMHC分子は、α鎖とβ鎖からなり、このペプチドが適当な結合モチーフを持っていれば、約12~25アミノ酸のペプチドを結合して、T-ヘルパー細胞に提示することができる。クラスIIのMHC分子が結合するペプチドは、通常、細胞外の外来性タンパク質抗原に由来する。α鎖及びβ鎖は、特にHLA-DR、HLA-DQ及びHLA-DP単量体である。
【0056】
本明細書で使用する場合、「MHC複合体」という用語は、HLAリガンドとして知られるポリペプチドの特定のレパートリーと結合し、前記リガンドを細胞表面に輸送することができるタンパク質複合体を意味する。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「MHCリガンド」は、1または複数の特定のMHCアレルに結合することができるポリペプチドを意味する。用語「HLAリガンド」は、用語「MHCリガンド」と交換可能である。MHC/リガンド複合体をその表面に発現する細胞は、「抗原提示細胞」(APC)と称される。同様に、本明細書で使用する場合、「MHC結合ペプチド」という用語は、MHCクラスI及び/又はMHCクラスII分子に結合するペプチドに関するものである。MHCクラスI/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には8~10アミノ酸長であるが、より長い又はより短いペプチドが有効である場合もある。MHCクラスII/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には10~25アミノ酸長であり、特に13~18アミノ酸長であるが、より長いペプチド及び短いペプチドもまた有効であり得る。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「T細胞受容体」又は「TCR」は、抗原提示細胞(APC)などの細胞の表面上に提示されるMHC/リガンド複合体の特定のレパートリーに係合することができるT細胞によって発現されるタンパク質複合体を指す。
【0059】
本明細書で使用する場合、「MHC結合モチーフ」という用語は、特定のMHCアレルへの結合を予測するタンパク質配列中のアミノ酸のパターンを意味する。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「EpiBar(登録商標)」は、少なくとも4つの異なるHLAアレルに結合することが予測される単一の9量体フレームを指す。10より高いクラスタースコアは、有意であるとみなされる。上位5%のすべてのスコアは、「ヒット」とみなされる。
【0061】
本明細書で使用する場合、「免疫シナプス」という用語は、所定のT細胞エピトープが細胞表面MHC複合体とTCRの両方に同時に係合することによって形成されるタンパク質複合体を意味する。
【0062】
用語「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマーを意味し、特定の長さを意味するものではない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。本明細書で使用する場合、ポリペプチドは、組換え細胞および非組換え細胞から分離された場合には細胞性物質を実質的に含まないとき、または化学的に合成された場合には化学前駆体または他の化学物質を含まないときに「分離」または「精製」されていると言われる。但し、ポリペプチド(例えば、1または複数の配列番号1~55(および本明細書に開示されるその変異体および断片)を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるポリペプチド)、1または複数の配列番号56~63(および本明細書に開示されるその変異体および断片)を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有し、糖尿病における免疫原性に関連する1または複数のペプチド(「T1Dgens」と称する)は、別のポリペプチド(例えば、異種ペプチド)に結合、連結、または挿入することができ、それは細胞内で通常会合しておらず、依然として「分離」または 「精製」される。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、連邦政府又は州政府の規制機関によって承認又は承認可能であるか、又はヒトを含む動物での使用について米国薬局方又は他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤」等は、薬剤と共に対象に投与することができ、その薬理活性を破壊せず、薬剤の治療量を送達するのに十分な用量で投与した場合に無毒な賦形剤、担体、又は希釈剤のことを指す。
【0065】
本明細書で使用する場合、「遊離チオール」は、ポリペプチド及び/又はタンパク質中の任意にアミノ酸のチオール側鎖を指し、ここで、チオールはスルフヒドリル基を含有する。例えば、遊離チオールは、分子内または分子間ジスルフィド結合を介して他のアミノ酸の側鎖に結合していない。
【0066】
本明細書で使用する「官能基」とは、移動性タンパク質および固定性タンパク質を含む血液成分上の基であり、改変治療ペプチド上の反応性基が反応して共有結合を形成するものである。官能基には、エステル反応性基と結合するためのヒドロキシル基、マレイミド、イミデート及びチオエステル基と結合するためのチオール基;反応性基上の活性化カルボキシル、リン酸又は他の任意のアシル基と結合するためのアミノ基を含むことができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「血液成分」は、固定性または移動性のいずれであってもよい。固定性血液成分は、非移動性の血液成分であり、組織、膜受容体、間質性タンパク質、フィブリンタンパク質、コラーゲン、血小板、内皮細胞、上皮細胞及びそれに関連する膜及び膜受容体、体細胞、骨格及び平滑筋細胞、ニューロン成分、骨細胞及び破骨細胞並びに全ての体組織特に循環系及びリンパ系に関連するものを含む。移動性血液成分とは、一般に長時間(5分以内、より通常は1分以内)に渡って固定された座を持たない血液成分である。これらの血液成分は、膜に結合しておらず、長時間血液中に存在し、少なくとも0.1μg/mlの最小濃度で存在する。移動性血液成分としては、血清アルブミン、トランスフェリン、フェリチン、IgMやIgGなどの免疫グロブリンが挙げられる。移動性血液成分の半減期は、少なくとも約12時間であってよい。
【0068】
本明細書で使用する場合、「目的別コンピュータプログラム」という用語は、特定の目的;典型的には、特定の生データの組を分析し、特定の科学的疑問に答えるために設計されたコンピュータプログラムを指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「z-スコア」という用語は、ある要素が平均から何標準偏差であるかを示す。z-スコアは、以下の式:z=(X-μ)/σから計算することができ、ここで、zはz-スコア、Xは要素の値、μは母平均、σは標準偏差である。
【0070】
本明細書で使用される場合、単数形、「a」、「an」及び「the」は、内容が明確にそうでないことを示さない限り、「at least one」 を含む複数形を含むことを意図している。「または」は「及び/又は」を意味する。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」及び「1つ以上」は、関連する列挙された項目の任意の及び全ての組合せを含む。例えば、「本開示の1または複数の配列番号1~55」に関して、用語「1または複数の」は、配列番号1~55の任意の及び全ての組み合わせを含む。また、「又はその組み合わせ」という用語は、前述の要素の少なくとも1つを含む組み合わせを意味する。
【0071】
以下の略語及び/又は頭字語は、本出願を通じて使用される。
APC:抗原提示細胞
CEF:サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス及びインフルエンザウイルス
CFSE:カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル色素
DMSO:ジメチルスルホキシド
DR抗体:抗原D関連抗体
ELISA:酵素結合免疫吸着測定法
FACS:蛍光活性化セルソーティング
Fmoc:9-フルオロニルメトキシカルボニル
FV:ヒト型凝固第V因子
FVIII:ヒト型凝固第VIII因子
HLA:ヒト白血球抗原
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
IVIG:静脈内精製免疫グロブリンG抗体
MFI:平均蛍光指数
MHC:主要組織適合性複合
PBMC:末梢血単核細胞
PI:増殖指数
RPMI:ロスウェルパーク記念研究所培地
Teff:エフェクターT細胞
Treg:制御性T細胞
TT:破傷風トキソイド
UV:紫外線
【0072】
本明細書で使用する場合、「変異体」ペプチドまたはポリペプチド(変異体Tレジトープを含む)は、1または複数の置換、欠失、挿入、逆位、融合、および切断、またはこれらのいずれかの組み合わせによってアミノ酸配列が異なっていてもよい。複数の態様において、変異体ポリペプチドは、1または複数の置換、欠失、挿入、逆位、融合、および切断、またはこれらのいずれかの組み合わせによってアミノ酸配列が異なり得るが、前記変異体がMHC結合性および/またはTCR特異性を保持することを条件とし、ペプチドまたはポリペプチドが、Tレジトープを含んでいる場合の複数の態様において、および/または制御性T細胞刺激または抑制活性を保持することを条件とする。
【0073】
本開示は、本明細書に記載されるTレジトープ及び他のペプチド又はポリペプチドのポリペプチド断片も含む。本発明はまた、本明細書に記載のTレジトープ及び他のペプチド又はポリペプチドの変異体の断片を包含するが、前記断片及び/又は変異体がMHC結合性及び/又はTCR特異性を保持すること、およびペプチド又はポリペプチドがTレジトープを含んでいる場合の複数の態様において、及び/又は制御性T細胞刺激又は抑制活性を保持することを条件とする。
【0074】
「分離された」ペプチド又はポリペプチド(例えば、分離されたTReg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ又はT細胞エピトープポリペプチド)は、それを自然に発現する細胞から精製するか、それを発現するように改変された細胞から精製するか(組換え)、公知のタンパク質合成法により合成され得る。一実施形態では、Tレジトープは、組換えDNA又はRNA技術によって製造される。例えば、Tレジトープをコードする核酸分子を発現ベクターにクローニングし、発現ベクターを宿主細胞に導入し、ポリペプチドを宿主細胞で発現させる。その後、標準的なタンパク質精製技術を用いた適切な精製スキームによって、Tレジトープを細胞から分離することができる。
【0075】
本開示の目的のために、Tレジトープ及び本開示の他のペプチド又はポリペプチドは、例えば、D立体異性体などの天然に存在するアミノ酸の修飾形態、非天然に存在するアミノ酸;アミノ酸類似体;及び模倣物を含むことができる。さらに、複数の態様において、Tレジトープおよび本開示の他のペプチドまたはポリペプチドは、レトロインバーソ(retro-inverso)ペプチドを含んでもよく、但し、レトロインバーソペプチドまたは本開示のポリペプチドは、少なくとも部分的にMHC結合性および/またはTCR特異性を保持しており、ペプチドまたはポリペプチドがTレジトープを含む複数の態様において、制御性T細胞刺激または抑制活性を有している。
【0076】
本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本開示の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料が説明される。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、本明細書及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形は、文脈上明らかに他に指示されない限り、複数形の参照語を含む。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用したすべての文献は、個々の刊行物、特許、または特許出願が、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
[Tレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチド]
本開示の目的は、新規なTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドを提供することであり、前記改変ペプチドは、血液成分と反応してそのようなTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成することが可能である。Tレジトープを含むポリペプチドとアルブミンなどの血液成分とのコンジュゲートは、Tレジトープペイロードのためのキャリアタンパク質として有用であり得る。Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、in vivoにおけるTレジトープを含む改変ポリペプチドの半減期を延長し、Tレジトープを含む改変ポリペプチドを急速なタンパク質分解から保護し、Tレジトープを含む改変ポリペプチドを循環からの急速なクリアランスおよび/または急速な腎排泄から保護し、対象の体全体に及ぶTレジトープ-血液成分コンジュゲートの広い分布を許容することが可能である。適切な免疫細胞(マクロファージ及びAPCなど)へのTレジトープを含む改変ポリペプチドの送達を助け、Tレジトープを含む改変ポリペプチドが特定の免疫細胞(マクロファージ及びAPCなど)のエンドサイトパスウェイによって処理されることを可能にし、及び/又は前記免疫細胞による抗原としてTレジトープを含む改変ポリペプチドの提示を補助することである。
【0078】
本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドの使用による内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTReg及び/又はアダプティブTRegを含む)の選択的係合及び活性化は、望ましくない免疫反応の存在によって特徴付けられる疾患又は状態、例えば1型糖尿病のような自己免疫疾患に対する治療の手段として治療的に貴重である。このように、本開示はまた、1型糖尿病などの自己免疫疾患の治療および予防において、前記Tレジトープ-血液成分コンジュゲートおよびTレジトープを含む改変ポリペプチドの使用方法に関するものである。
【0079】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、担体タンパク質(例えば、アルブミン)として作用する血液成分を含み、さらに改変ポリペプチドを含み、前記改変ポリペプチドは1または複数の制御性T細胞エピトープ(「Tレジトープ」と称する)を含んでいる。改変ポリペプチドは、ポリペプチドに結合している反応性部位を含み、反応性部位は、血液成分上の反応性官能基と結合(例えば、共有結合)を形成することが可能である。複数の態様において、改変ポリペプチドは、糖尿病における免疫原性に関連する1または複数の抗原ペプチド(「T1Dgen」ペプチド;例えば、PPI由来ペプチド)をさらに含み、これは任意に、リンカーおよび/または切断部位(例えば、リソソーム切断部位)により1または複数のTレジトープから分離されてもよい。Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、Tレジトープを含むポリペプチドを改変することにより形成してもよく、このペプチドに反応性部位を結合させて改変ポリペプチドを作製し、次に、血液成分上の反応性官能性と改変ポリペプチドの反応性部位間の結合を形成することができ、これらは、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。本開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドの複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドは、分離、合成、又は組換えであってよい。
【0080】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの血液成分は、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、及び米国特許第7,307,148号に開示されるように、固定性又は移動性のいずれであってもよい。固定性血液成分は、移動しない血液成分であり、組織、膜受容体、間質性タンパク質、フィブリンタンパク質、コラーゲン、血小板、内皮細胞、上皮細胞およびそれに関連する膜および膜受容体、体細胞、骨格筋および平滑筋細胞、ニューロン成分、骨細胞および破骨細胞ならびにすべての体組織、特に循環系およびリンパ系に関連する組織が含まれる。移動性血液成分とは、一般に長時間(5分以内、より通常は1分以内)の間、固定された座を持たない血液成分である。これらの血液成分は、膜に結合しておらず、長時間血液中に存在し、少なくとも0.1μg/mlの最小濃度で存在する。移動性血液成分には、血清アルブミン、トランスフェリン、フェリチン、IgMやIgGなどの免疫グロブリンが含まれる。移動性血液成分の半減期は、少なくとも約12時間である。Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの複数の態様において、血液成分は、血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、組換えアルブミン、および組換えヒト血清アルブミンなどのアルブミンである。アルブミンは、Tレジトープ-アルブミンコンジュゲートをマクロファージやAPCなどの適切な細胞に運ぶFc新生児結合ドメインを含むので、好ましい血液成分である。さらに、アルブミンは、アミノ酸34(Cys34)(ヒトセリンアルブミンのアミノ酸配列におけるアミノ酸の位置)にシステインを含み、pKaが約5の遊離チオールを含み、これはアルブミンの好ましい反応性官能基として機能し得る。アルブミンのCys34は、マレイミドプロピオンアミド(MPA)と安定なチオエステル結合を形成することができ、これは、改変Tレジトープペプチドの好ましい反応性部位である。
【0081】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの血液成分上、または本開示される改変ポリペプチドとコンジュゲートを形成することができる血液成分上の反応性官能基は、改変治療ペプチド上の反応基が反応して共有結合を形成する、移動および固定タンパク質を含む、血液成分上の基である。米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号に開示されているように、このような官能性は通常、エステル反応基と結合するためのヒドロキシル基、マレイミド、イミデートおよびチオエステル基と結合するためのチオール基、反応基上の活性化カルボキシル、リン酸または他のいかなるアシル基と結合するためのアミノ基がある。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、アミノ基、ヒドロキシル基、またはチオール基である。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、ポリペプチドおよび/またはタンパク質中のアミノ酸の側鎖の成分であり、反応性官能基はポリペプチドおよび/またはタンパク質の表面付近に存在する。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、タンパク質性血液成分の遊離システイン残基のチオール基である。複数の態様において、反応性官能基は、セリンアルブミンのアミノ酸34(Cys34)のシステインの遊離チオール基である。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、血漿などの生理的環境において約5のpKaを有するチオールである。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、血漿などの生理学的環境においてpKa約5.5を有するチオールである。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、血漿のような生理学的環境においてpKa3~7を有するチオールである。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、チオラートアニオンである。複数の態様において、反応性官能基は、セリンアルブミンのアミノ酸34(Cys34)におけるシステインのチオラートアニオンである。
【0082】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチドは、ポリペプチドに結合している反応性部位を含み、反応性部位は、血液成分上の反応性官能基と結合(例えば、共有結合)を形成することが可能である。複数の態様において、反応性基は、血液成分上のアミノ基、ヒドロキシル基またはチオール基と反応して、それと共有結合を形成することが可能である。複数の態様において、反応性基は、改変ポリペプチドが血液成分に結合されるとき、改変ペプチドが、親化合物の活性を実質的な割合で保持するような部位に配置される。複数の態様において、反応性部位は、スクシンイミジル基またはマレイミド基であってよい。複数の態様において、反応性部位は、改変されるべきポリペプチドのアミノ酸の治療的活性が低い領域に位置するアミノ酸に結合していてもよい。複数の態様において、反応性部位は、改変されるポリペプチドのアミノ末端アミノ酸に結合している。複数の態様において、反応性部位は、改変されたポリペプチドのカルボキシ末端アミノ酸に結合される。複数の態様において、反応性部位は、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸とカルボキシ末端アミノ酸の間に位置するアミノ酸に結合している。複数の態様において、反応性基は、連結基を介して、または任意に連結基を使用せずに、(改変されるべき)ポリペプチドに結合されてもよい。さらに、反応性基の結合を促進するために、1または複数の追加のアミノ酸(例えば、1または複数のリジン)がポリペプチドに付加されてもよい。連結基は、血液成分の反応性基を、1または複数のTレジトープを含むポリペプチドに連結または接続する化学的部分である。連結基は、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、またはアルキル基、置換されたアミノ基、シクロアルキル基、多環式基、アリール基、ポリアリール基、置換アリール基、複素環基、および置換複素環基の1または複数からなることができる。連結基はまた、AEA((2-アミノ)エトキシ酢酸)または好ましい連結基AEEA([2-(2-アミノ)エトキシ]エトキシ酢酸)などのポリエトキシアミノ酸から構成されてもよい。複数の態様において、連結基は、ポリエチレングリコールリンカー(例えば、これらに限定されないが、PEG2またはPEG12)から構成されてもよい。
【0083】
理解されるべきこととして、改変ポリペプチドは、血液成分とのコンジュゲートがin vivoで起こるようにin vivoで投与されてもよく、またはそれらはまずin vitroで血液成分にコンジュゲートされ、得られたペプチダーゼ安定化ポリペプチドがin vivoで投与されてもよい。さらに、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号および米国特許第7,307,148号に開示されているように、ペプチダーゼ安定化ポリペプチドは、改変ペプチドの反応基と血液成分の官能基の間に形成される共有結合を介して血液成分にコンジュゲートされた、連結基を伴うまたは伴わない改変ペプチドのことを言う。このような反応は、好ましくは、マレイミド連結(例えば、GMBS、MPAまたは他のマレイミドから調製)で改変したポリペプチドを、血清アルブミンまたはIgGなどの移動血液タンパク質上のチオール基と共有結合させることによって確立される。ペプチダーゼ安定化ポリペプチドは、非安定化ペプチドよりも、生体内のペプチダーゼの存在下でより安定である。ペプチダーゼで安定化された治療用ペプチドは、同一配列の非安定化ペプチドと比較して、一般に半減期が少なくとも10-50%増加する。ペプチダーゼ安定性は、血清または血液中の非改変治療用ペプチドの半減期と、血清または血液中の対応する改変治療用ペプチドの半減期を比較することにより決定される。半減期は、改変ペプチド及び非改変ペプチドを投与した後に血清又は血液をサンプリングし、ペプチドの活性を測定することにより決定される。活性を決定することに加えて、治療用ペプチドの長さもまた測定され得る。
【0084】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチド、及びTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、共通のヒトタンパク質由来のペプチド又はポリペプチド鎖からなる1または複数のTレジトープ(これは、本明細書において「Treg活性化T細胞エピトープ」、「Tレジトープ」又は「T細胞エピトープポリペプチド」として称する場合がある)である。本開示のTレジトープは、そのソースタンパク質の既知の変異体間で高度に保存されている(例えば、既知の変異体の10%超に存在する)。本開示のTレジトープは、EpiMatrix(登録商標)解析によって同定された少なくとも1つの推定T細胞エピトープを含んでいる。EpiMatrix(登録商標)は、EpiVax(プロビデンス、ロードアイランド州)が開発した独自のコンピュータアルゴリズムであり、タンパク質配列をスクリーニングして、推定T細胞エピトープの存在を確認するために使用される。入力配列は、各フレームが最後のフレームと8個のアミノ酸で重複する9量体フレームに解析される。得られた各フレームは、8つの一般的なクラスII-HLAアレル(DRB1*0101、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0701、DRB1*0801、DRB1*1101、DRB1*1301、DRB1*1501)に対する予測結合親和性についてスコアリングされる。生のスコアは、ランダムに生成されたペプチドの大規模なサンプルのスコアに対して正規化される。その結果、「Z」スコアが報告される。複数の態様において、理論的に任意の所与のサンプルの上位5%である1.64を超えるアレル特異的EpiMatrix(登録商標) Zスコアを有する任意の9量体ペプチドは、推定T細胞エピトープとみなされる。
【0085】
推定T細胞エピトープのクラスターを含むペプチドは、in vitroおよびin vivoのアッセイを検証する際に陽性となる可能性が高くなる。最初のEpiMatrix(登録商標)分析の結果は、Clustimer(登録商標)アルゴリズムとして知られる第二の独自アルゴリズムを使用して、推定 T 細胞エピトープ「クラスター」の存在についてさらにスクリーニングされる。Clustimer(登録商標)アルゴリズムは、任意のアミノ酸配列内において、統計的に異常に多くの推定T細胞エピトープを含むサブ領域を特定する。典型的なT細胞エピトープの「クラスター」は、長さが約9から約30アミノ酸であり、複数のアレルや複数の9量体フレームに対する親和性を考慮すると、約4から約40の推定T細胞エピトープを含むことができる。集計されたEpiMatrix(登録商標)スコアで識別された各エピトープクラスターは、推定T細胞エピトープのスコアを合計し、候補エピトープクラスターの長さと同じ長さのランダムに生成されたクラスターの期待スコアに基づく補正係数を減算して、EpiMatrix(登録商標)スコアの集計が計算される。10を超えるEpiMatrix(登録商標)クラスタースコアは有意であると考えられる。複数の態様において、本開示のTレジトープは、T細胞エピトープクラスターとして知られるパターンを形成する、いくつかの推定T細胞エピトープを含む。
【0086】
最も反応性の高いT細胞エピトープクラスターの多くは、「EpiBar(登録商標)」と呼ばれる特徴を含む。先に述べたように、EpiBar(登録商標)は、少なくとも4つの異なるHLAアレルに対して反応性であると予測される単一の9量体フレームである。複数の態様において、本開示のTレジトープは、1または複数のEpiBar(登録商標)を含み得る。
【0087】
JanusMatrixシステム(EpiVax、プロビデンス、ロードアイランド州)は、宿主プロテオームとの交差保存(cross-conservation)のためにペプチド配列をスクリーニングするのに有用である。JanusMatrixは、ペプチドクラスターと宿主ゲノムまたはプロテオームとの間の交差反応性の可能性を、それらの推定MHCリガンドにおけるTCRに面した残基の保存に基づいて、予測するアルゴリズムである。JanusMatrixアルゴリズムは、まず与えられたタンパク質配列に含まれる予測エピトープをすべて考慮し、各予測エピトープを構成するアグレトープとエピトープに分割する。次に、各配列をホストタンパク質のデータベースに対してスクリーニングする。MHCに面したアグレトープが一致し(すなわち、入力ペプチドとその宿主側のペプチドのアグレトープが同じMHCアレルに結合すると予測される)、全く同じTCRに面したエピトープを持つペプチドが返される。JanusMatrixのホモロジースコアは、免疫寛容に偏っていることを示唆している。治療用タンパク質の場合、自己由来のヒトエピトープと治療用エピトープの交差保存は、そのような候補がヒトの免疫系に許容される可能性を高めてもよい。ワクチンの場合、ヒトのエピトープと抗原性エピトープとの間の交差保存は、そのような候補が免疫カモフラージュを利用し、それによって免疫応答を回避し、効果のないワクチンとなることを示すかもしれない。宿主が例えばヒトの場合、ペプチドクラスターは、推定上のHLAリガンドにおけるTCRに面した残基の保存性に基づいて、ヒトゲノムやプロテオームに対してスクリーニングされる。次に、ペプチドはJanusMatrixホモロジースコアを用いてスコアリングされる。複数の態様において、3.0を超えるJanusMatrixホモロジースコアを有するペプチドは、高い寛容性の可能性を示し、そのようなものとして、本開示の非常に有用なTレジトープであり得る。
【0088】
複数の態様において、本開示のTレジトープは、少なくとも1つ、好ましくは2以上の一般的なHLAクラスII分子に少なくとも中程度の親和性で結合する(例えば、複数の態様において、可溶性HLA分子に基づくHLA結合アッセイにおける<1000μM IC50、<500μM IC50、<400μM IC50、<300μM IC50、又は<200μM IC50)。複数の態様において、本開示のTレジトープは、HLAの少なくとも1つ、他の態様では2以上のアレルの状況において、APCによって細胞表面に提示されることが可能である。この状況において、Tレジトープ HLA複合体は、TレジトープHLA複合体に特異的なTCRを有し、正常な対象(コントロール)に循環している内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)により認識することが可能である。複数の態様において、Tレジトープ-HLA複合体の認識は、適合する制御性T細胞を活性化させ、制御性サイトカイン及びケモカインを分泌させることができる。
【0089】
複数の態様において、改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、1または複数の配列番号1~55(並びにその断片及び変異体)を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有する。「本質的に~からなる」という表現は、本開示による改変ポリペプチドのTレジトープが、Tレジトープとして機能するペプチドの活性を大幅に損ねない限り、配列番号1~55のいずれか(またはその断片もしくは変異体)による配列に加えて、必ずしもMHCリガンドとして機能するペプチドの一部を形成しない、ペプチドのいずれかの末端および/または側鎖に存在し得る追加のアミノ酸または残基を含むことを意味していると意図する。複数の態様において、本開示のペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態のいずれであってもよく、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まないかまたは含むかのいずれであってもよい。特定の複数の態様において、そのようなポリペプチドは、N末端アセチル基および/またはC末端アミノ基でキャップされ得る。複数の態様において、本開示による改変ポリペプチドのTレジトープは、1または複数の配列番号1および28の配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、本開示による改変ポリペプチドのTレジトープは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、本開示による改変ポリペプチドのTレジトープは、配列番号28のアミノ酸配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、任意に、それらのN末端および/またはC末端に隣接して、1または複数のリンカー(切断感受性部位であってもよい)を有していてもよい。そのような改変ポリペプチドにおいて、2以上のTレジトープが、それらの間に切断感受性部位を有していてもよい。あるいは、2以上のTレジトープは、互いに直接、または切断感受性部位でないリンカーを介して接続されてもよい。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチド、およびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、以下の1または複数の制御性Tレジトープ(ならびに、その断片、その変異体、および当該変異体の断片、ただし当該断片および/または変異体がMHC結合性およびTCR特異性を保持している)の1つまたはそれ以上を含む。
【0090】
配列番号1: EEQYNSTYRVVSVLTVLHQDW
配列番号2: PAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQ
配列番号3: PGLVRPSQTLSLTCT
配列番号4: GGLVQPGGSLRLSCAASGFTF
配列番号5: GGLVQPGRSLRLSCAASGFTF
配列番号6: GASVKVSCKASGYTF
配列番号7: WSWVRQPPGRGLEWI
配列番号8: WSWIRQPPGKGLEWI
配列番号9: MHWVRQAPGKGLEWV
配列番号10: MHWVRQAPGQGLEWM
配列番号11: VDTSKNQFSLRLSSVTAADTA
配列番号12: NTLYLQMNSLRAEDTAVYYCA
配列番号13: FQHWGQGTLVTVSS
配列番号14: FDLWGRGTLVTVSS
配列番号15: FDIWGQGTMVTVSS
配列番号16: FDYWGQGTLVTVSS
配列番号17: FDPWGQGTLVTVSS
配列番号18: MDVWGQGTLVTVSS
配列番号19: MDVWGQGTTVTVSS
配列番号20: LNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNS
配列番号21: KVYACEVTHQGLSS
配列番号22: DIQMTQSPSSLSA
配列番号23: EIVLTQSFGTLSL
配列番号24: GDRVTITCRASQGIS
配列番号25: LAWYQQKPGKAPKL
配列番号26: LAWYQQKPGQAPRL
配列番号27: LLIYGASSRATGIPD
配列番号28: GTDFTLTISSLQPED
配列番号29: SYELTQPPSVSVS
配列番号30: GQSITISCTGTSSDV
配列番号31: VSWYQQHPGKAPKL
配列番号32: VHWYQQKPGQAPVL
配列番号33: VSWYQQLPGTAPKL
配列番号34: LMIYEVSNRPSGVPD
配列番号35: LKKYLYEIARRHPYFYAPE
配列番号36: APELLFFAKRYKAAFTECCQAA
配列番号37: HPDYSVVLLLRLAKTYETTLE
配列番号38: HPDYSVYLLLRLAKT
配列番号39: LLLRLAKTYETTLE
配列番号40: LGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPT
配列番号41: PADVAIQLTFLRLMSTEASQNI
配列番号42: TGNLKKALLLQGSNEIEIR
配列番号43: DGDFYRADQPRSAPSL
配列番号44: SKEMATQLAFMRLLANYASQNITYH
配列番号45: VQHIQLLQKNVRAQLVDMK
配列番号46: GEFWLGNDYLHLLTQRQSVLRVE
配列番号47: QSGLYFIKPLKANQQFLVYCE
配列番号48: TEFWLGNEKIHLISTQSAIPY
配列番号49: NANFKFTDHLKYVMLPVADQDQCIR
配列番号50: GSEVVKRPRRYLYQWLGAPVPYPDPL
配列番号51: PCQWWRPTTTSTRCCT
配列番号52: PGEDFRMATLYSRTQTPRAELK
配列番号53: DGSLWRYRAGLAASLAGP
配列番号54: VTGVVLFRQLAPRAKLDAFFA
配列番号55: KASYLDCIRAIAANEADAV
【0091】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、1または複数の配列番号1~55の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で配列番号1~55のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有している。複数の態様において、1または複数のTレジトープは、配列番号1~55のアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコアアミノ酸配列と、任意選択で前記コアアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部とを有しており、これらの隣接アミノ酸(フランクアミノ酸)(flanking amino acids)の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよい(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に付加することもでき、アミノ酸は両方の末端に等しく、または他の任意の割合で、付加することもできる)。複数の態様において、1または複数のTレジトープは、配列番号1~55のアミノ酸配列(および/またはその断片および変異体)を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコア配列と、任意選択で前記コアアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部とを有しており、これらの隣接アミノ酸(フランクアミノ酸)(flanking amino acids)の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよく(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に付加することもでき、アミノ酸は両方の末端に等しく、または他の任意の割合で、付加することもできる)、但し、その隣接アミノ酸を有するTレジトープは依然として、その隣接アミノ酸を有さないTレジトープと同じHLA分子に結合できる(すなわち、MHC結合性を保持する)。複数の態様において、前記隣接アミノ酸を有する前記Tレジトープは、前記隣接アミノ酸を有さない前記Tレジトープコア配列と同じHLA分子に結合する(すなわち、MHC結合性を保持する)、及び/又は同じTCR特異性を保持する、及び/又は制御性T細胞刺激又は抑制活性を保持できる。複数の態様において、前記隣接アミノ酸配列は、内在性タンパク質、例えばIgG抗体において、そこに含まれるTレジトープの隣接部としても存在するものである。複数の態様において、拡張部(複数可)は、ペプチドまたはポリペプチドの生化学的特性(例えば、限定されないが、溶解度または安定性)を改善するため、またはペプチドの効率的なプロテアソーム処理の可能性を改善するために機能し、設計され得る。複数の態様において、本明細書に記載される前記隣接アミノ酸配列は、MHC安定化領域として機能し得る。より長いペプチドの使用は、対象細胞による内因性プロセシングを可能にし、より効果的な抗原提示およびT細胞応答の誘導につながる可能性がある。複数の態様において、改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、1または複数のリンカー(任意に、切断感受性部位であってもよい)を、それらのN末端及び/又はC末端に隣接して有していてもよい。そのような改変ポリペプチドにおいて、2以上のTレジトープが、それらの間に切断感受性部位を有していてもよい。あるいは、2以上のTレジトープが互いに直接、または切断感受性部位でないリンカーを介して接続されてもよい。さらなるリンカーは以下で説明される。複数の態様において、1または複数のTレジトープおよび/またはそこに含まれるTレジトープを含む改変ポリペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態であることができ、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まなくてもよく、または含んでいてもよい。特定の複数の態様において、1または複数のTレジトープペプチドまたはポリペプチドを含む改変ポリペプチドは、N末端アセチル基および/またはC末端アミノ基でキャップされ得る。複数の態様において、改変ポリペプチドに含まれる1または複数のTレジトープは、N末端アセチル基及び/又はC末端アミノ基でキャップされ得る。
【0092】
複数の態様において、本開示は、配列番号1~55のいずれか1つ(及び/又はその断片)に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、又は95%の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドに関し、ここで前記ポリペプチドは依然として同じHLA分子に結合でき(すなわち、MHC結合性を保持し)、及び/又は同じTCR特異性を保持し、及び/又は制御性T細胞刺激活性又は抑制活性を保持できる。
【0093】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチド、及びTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、1または複数のT1Dgenペプチド(例えば、PPI由来ペプチド)を更に含む。複数の態様において、前記1または複数のT1Dgenペプチドは、切断部位(例えば、リソソーム切断部位)によって1または複数のTレジトープから任意に分離されてもよい。複数の態様において、改変ポリペプチドの前記1または複数のT1Dgenペプチドは、配列番号56~63のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。「本質的に~からなる」という表現は、本開示による改変ポリペプチドのT1Dgenペプチドが、配列番号56~63(またはその断片もしくは変異体)のいずれかによる配列に加えて、抗原として機能するペプチドの活性を大幅に損ねない限り、必ずしもMHCリガンドとして機能するペプチドの一部を形成しない、ペプチドのいずれかの末端および/または側鎖に存在し得る追加のアミノ酸または残基を含むことが意図される。複数の態様において、1または複数のT1Dgenペプチドは、配列番号63のアミノ酸配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、改変ポリペプチドの1または複数のT1Dgenペプチドは、1または複数のリンカー(任意に、切断感受性部位であってもよい)を、それらのN末端および/またはC末端に隣接して有していてもよい。このような改変ポリペプチドでは、2以上のT1Dgenペプチドが、それらの間に切断感受性部位を有していてもよい。あるいは、2以上のT1Dgenペプチドは、互いに直接、または切断感受性部位でないリンカーを介して接続されていてもよい。さらに、複数の態様において、改変ポリペプチドのT1DgenペプチドおよびTレジトープは、それらの間に切断感受性部位を有していてもよく、または互いに直接または切断感受性部位でないリンカーを介して接続されていてもよい。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチド、及びTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、1または複数の、以下のT1Dgen、その断片、その変異体、及びかかる変異体の断片を含む。
【0094】
配列番号56: LQPLALEGSLQKRGI
配列番号57: SHLVEALYLVCGERG
配列番号58: SHLVEALYLVCG
配列番号59: LCGSHLVEALYLVCG
配列番号60: AAAFVNQHLCGSHLV
配列番号61: GAGSLQPLALEGSLQKRGIV
配列番号62: GSLQPLALEGSLQKRGIV
配列番号63: RGFFYTPKTRREAEDLQV
【0095】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチド、及びTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドの1または複数のT1Dgenペプチドは、配列番号56~63(及び/又はその断片又は変異体)のアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号56~63のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、前記1または複数のT1Dgenペプチドは、配列番号56~63のアミノ酸配列を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコアアミノ酸配列と、任意選択で前記コアアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部とを有しており、これらの隣接アミノ酸(フランクアミノ酸)(flanking amino acids)の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよい(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に付加することもでき、アミノ酸は両方の末端に等しく、または他の任意の割合で、付加することもできる)。複数の態様において、前記1または複数のT1Dgenペプチドは、配列番号1~55のアミノ酸配列(および/またはその断片および変異体)を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコア配列と、任意選択で前記コアアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部とを有しており、これらの隣接アミノ酸(フランクアミノ酸)(flanking amino acids)の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよく(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に付加することもでき、アミノ酸は両方の末端に等しく、または他の任意の割合で、付加することもできる)、但し、その隣接アミノ酸を有するT1Dgenペプチドは依然として、その隣接アミノ酸を有さないT1Dgenペプチドと同じHLA分子に結合できる(すなわち、MHC結合性を保持する)。複数の態様において、前記隣接アミノ酸を有する前記T1Dgenペプチドは、前記隣接アミノ酸を有さない前記T1Dgenペプチドコア配列と同じHLA分子に依然として結合することができ(すなわち、MHC結合性を保持し)、及び/又は同じTCR特異性を保持する。複数の態様において、前記隣接アミノ酸配列は、内在性タンパク質においてそこに含まれる前記T1Dgenペプチドの隣接部としても存在するものである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドが、配列番号56~63(および/またはその断片および変異体)のアミノ酸配列を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコア配列、ならびに任意選択でそのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部を有する場合、1から12のアミノ酸の拡張部はプレプロインスリンのアミノ酸配列において配列番号56~63のアミノ酸配列に隣接して見出されるものである。複数の態様において、前記拡張部(複数可)は、ペプチドまたはポリペプチドの生化学的特性(例えば、限定されないが、溶解度または安定性)を改善するため、またはペプチドの効率的なプロテアソーム処理のための可能性を改善するために機能し設計され得る。複数の態様において、本明細書に記載される前記隣接アミノ酸配列は、MHC安定化領域として機能し得る。より長いペプチドの使用は、対象細胞による内因性プロセシングを可能にし、より効果的な抗原提示およびT細胞応答の誘導につながる可能性がある。複数の態様において、1または複数のT1Dgenペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態であることができ、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まないかまたは含むことのいずれかであることができる。
【0096】
本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチド及びTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドの製造方法は、分子を構成する種々の要素の性質に応じて広く変化することになる。合成手順は、単純であり、高い収率を提供し、高度に精製された安定な生成物を可能にするように選択され得る。通常、反応性部位は最終段階として作成され、例えば、カルボキシル基の場合、活性エステルを形成するためのエステル化は合成の最終段階となるであろう。
【0097】
複数の態様において、本開示は、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号に開示されるような、Tレジトープ-血液成分のコンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分のコンジュゲートの形成に用いる改変ポリペプチドを合成する方法に関する。複数の態様において、本方法は、以下のステップを含む。第1のステップでは、ポリペプチドの1または複数のTレジトープ配列は、本質的に本明細書に開示されるように合成することができ;任意に、ポリペプチド配列は、本明細書に開示されるように1または複数のT1Dgen配列を追加的に含む。第2の工程において、ポリペプチドがシステインを含まない場合、ポリペプチドはカルボキシ末端アミノ酸から合成され、反応性部位がカルボキシ末端アミノ酸に付加され得る。あるいは、カルボキシ末端アミノ酸に末端リジン(または1または複数のリジン)を付加し、その末端リジンに反応性部位を付加してもよい。第3の工程において、ポリペプチドが1つのシステインのみを含む場合、ポリペプチドの治療的活性が低い領域のアミノ酸に反応性部位を付加する前に、システインを保護基と反応させる。第4工程において、ポリペプチドがジスルフィド架橋として2つのシステインを含む場合、2つのシステインを酸化し、反応性部位をアミノ末端アミノ酸、カルボキシ末端アミノ酸、またはポリペプチドのカルボキシ末端アミノ酸とアミノ末端アミノ酸の間に位置するアミノ酸に付加させる。第5工程において、ポリペプチドがジスルフィド架橋として2より多いシステインを含む場合、システインはジスルフィド架橋において順次酸化され、ペプチドは、カルボキシ末端アミノ酸に反応性部位を付加する前に、精製される。
【0098】
複数の態様において、本開示は、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートを合成する方法に関している。第1段階において、反応性マレイミドプロピオンアミド(MPA)を、1または複数のTレジトープを含むポリペプチド上のN末端リジンを介して添加し、改変ポリペプチドを作製する。複数の態様において、1または複数のリジンは、ポリペプチドのN末端上に存在し、任意に、本明細書に開示する配列番号1~55の群から選択されるTレジトープ配列のN末端上に存在する。任意選択で、PEG2またはPEG12などのポリエチレングリコールリンカーが、1または複数のリジンとTレジトープ配列の間、またはTレジトープ配列のN末端に存在する。複数の態様において、カテプシンB部位などのリソソーム切断部位(任意にバリンおよびシトルリンからなる(N末端からC末端まで順次))がPEG2またはPEG12部位とTレジトープ配列との間に存在する。リソソーム切断部位(カテプシンB部位など)を組み込んでリソソームプロテアーゼ部位を提供し、Tレジトープをリソソーム区画に放出することができる。複数の態様において、リソソーム切断部位(カテプシンB部位など)は、リソソームプロテアーゼ部位を提供するために存在し、Tレジトープが細胞内、好ましくは初期エンドソーム内に放出されることを可能にする。好ましい実施形態では、リソソーム切断部位(カテプシンB部位など)は、リソソームプロテアーゼ部位を提供するために存在し、Tレジトープを細胞内、例えば、膜で囲まれた小胞(初期エンドソーム、後期エンドソーム、リソソームなど)へ放出できるようにして、Tレジトープが抗原提示用に処理され得ることがあるようにする。複数の態様において、Tレジトープは、マクロファージまたは抗原提示細胞などの免疫細胞によって抗原として提示され、好ましくはMHCクラスII抗原として提示される。複数の態様において、PEG2またはPEG12部分とTレジトープ配列の間、および/または1または複数のTレジトープの間に、カテプシンB部位などのリソソーム切断部位(任意にバリンおよびシトルリンから(N末端からC末端まで順次)なる部位)が存在する。複数の態様において、1または複数のTレジトープが構築物上に存在してもよく、任意でリンカーよりもC末端に近接していてもよい。複数の態様において、1または複数のリソソーム切断部位は、複数のTレジトープ間に存在する(例えば、単一のリソソーム切断部位が2つのTレジトープを分離するように、または1つのリソソーム切断部位が第1および第2のTレジトープ間に存在し、別のリソソーム切断部位が第2および第3のTレジトープ間に存在するように、等)。複数の態様において、本明細書に開示される1または複数のT1Dgenペプチド(例えば、PPI由来ペプチド)は、構築物上に存在してもよく、任意に、リソソーム切断部位によって1または複数のTレジトープから分離されていてもよい。複数の態様において、1または複数のリソソーム切断部位は、複数のT1Dgenペプチド間に存在する(例えば、単一のリソソーム切断部位が2つのT1Dgenペプチドを分離するように、または1つのリソソーム切断部位が第1および第2のT1Dgenペプチド間に存在し、別のリソソーム切断部位が第2および第3のT1Dgenペプチド間に存在するように、など)。複数の態様において、ノルロイシン(Nle)残基は、例えば質量分析による評価のために、最終的なTレジトープ-血液成分コンジュゲートに組み込まれたTレジトープペプチドの量を定量化する手段として、C末端に存在する。複数の態様において、ポリペプチドのC末端は、C末端アミノ基でキャップされる。第2の工程において、マレイミドベースの化学を使用して、改変されたポリペプチドを血液成分、好ましくは血清アルブミンに1:1のモル比で共有結合させる。第2の工程は、以下でさらに説明するように、そして本開示の実施例において、in vivo又はex vivoで実施することができる。
【0099】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成は、in vivoで存在する場合、Tレジトープを、ペプチダーゼによる急速な分解、循環からの急速なクリアランス、及び/又は急速な腎臓排泄から保護する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成は、in vivoでのTレジトープの半減期を著しく延長させる。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成は、対象の体全体にTレジトープ-血液成分コンジュゲートを広く分布させることができる。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、対象の血漿中に存在する場合、血液脳関門を通過しない。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、マクロファージおよび/または抗原提示細胞(APC)などの適切な免疫細胞へのTレジトープの送達を補助する。複数の態様において、マクロファージおよび/またはAPCなどの適切な免疫細胞へのTレジトープの送達に際して、Tレジトープは膜結合ベシクル、好ましくは初期エンドソーム、後期エンドソーム、またはリソソームなどのエンドサイトパスウェイにおけるベシクルに包含される。複数の態様において、Tレジトープは、マクロファージ及び/又はAPCなどの適切な免疫細胞によって一旦処理されると、MHCクラスII抗原として提示される。
【0100】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート中のTレジトープは、最大12時間のin vivoでの血漿半減期を有する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート中のTレジトープは、最大1日のin vivoでの血漿中半減期を有する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート中のTレジトープは、最大40~48時間のin vivoでの血漿中半減期を有する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート中のTレジトープは、最大60時間のin vivoでの血漿中半減期を有する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート中のTレジトープは、最大15日のin vivoでの血漿中半減期を有する。
【0101】
複数の態様において、1または複数のTレジトープを含む改変ポリペプチドは対象に投与され、投与時に、改変ポリペプチドは循環血液成分の反応性官能基とin vivoで反応する。複数の態様において、ペプチドはヒト対象に投与され、血液成分はヒトアルブミンであり、好ましくはヒト対象の循環アルブミンである。
【0102】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチドは、血液成分上の反応性官能基とex vivoで結合を形成することができ、改変ポリペプチドの反応性部位と血液成分上の反応性官能基との結合の形成時に、米国に開示されているように、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートが形成される。米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号に開示されているように、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートが形成される。複数の態様において、本明細書に開示される改変ポリペプチドは、体外の血液成分の反応性官能基に共有結合するように構成される。複数の態様において、血液成分はアルブミンである。複数の態様において、血液成分は、組換えアルブミン、ヒト組換えアルブミン、およびゲノムソースからのアルブミンの群から選択される。
【0103】
複数の態様において、本開示は、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、及び米国特許第7,307,148号に開示されているように、改変されたTレジトープペプチド及びTレジトープ-血液成分の結合体を合成するex vivo方法に関する。複数の態様において、本明細書に開示される改変ポリペプチドは、ヒト血清アルブミンを含む血液、血清または生理食塩水に添加され、改変治療ペプチドと血液成分との間の共有結合形成を可能にする。複数の態様において、本明細書に開示される1または複数のTレジトープを含むポリペプチドは、マレイミドで改変され、それは生理食塩水中で血清アルブミンと反応させられる。複数の態様において、改変されたポリペプチドが血液成分と反応し、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成したら、このコンジュゲートを対象に投与してもよい。複数の態様において、改変ポリペプチドが血液成分と反応してコンジュゲートを形成した後、コンジュゲートが対象に投与される前に、コンジュゲートを反応混合物中の非コンジュゲート血液成分から分離してもよい。複数の態様において、荷電していないマトリックスに固定化された疎水性リガンドとの疎水性相互作用の強さの違いに基づいて物質を分離することにより、コンジュゲートを反応混合物中の非コンジュゲート血液成分から分離することができる。複数の態様において、非荷電(uncharged)マトリックスは疎水性固体支持体であってもよく、支持体は、オクチルセファロース、フェニルセファロースおよびブチルセファロースなどの疎水性樹脂を含むカラムを含むが、これらに限定されるものではない。複数の態様において、この技術は、開始緩衝液中の適度に(moderately)高濃度の塩(~1M)を用いて実施することができる(塩の促進吸着)。溶出は、塩濃度の直線的または段階的な減少によって達成される。リガンドの種類、置換度、pH、および吸着段階で使用する塩の種類と濃度は、HICマトリックス(疎水性相互作用クロマトグラフィー・マトリックス)の総合性能(例えば、選択性と容量)に大きな影響を与える。
【0104】
溶媒は、HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)において容量や選択性に影響を与える最も重要なパラメータの1つである。一般に、吸着工程は脱着工程よりも選択性が高い。したがって、pH、溶媒の種類、塩の種類、塩の濃度に関してスタートバッファを最適化することが重要である。サンプルに様々な「塩析」塩を添加すると、HICにおけるリガンドとタンパク質の相互作用が促進される。塩の濃度を上げると、結合するタンパク質の量はタンパク質の沈殿点まで増加する。塩の種類によって、疎水性相互作用を促進する能力は異なる。
【0105】
塩析効果を高めると疎水性相互作用が強くなり、カオトロピック効果を高めると疎水性相互作用が弱くなる。塩析効果の高い塩の例として、塩析効果の大きいものから小さいものの順に、以下のものが挙げられる。PO 3-、SO 2-、CHCOO、Cl、Br、NO 、ClO 、I、およびSCNなどが挙げられる。カオトロピック効果の高い塩の例としては、カオトロピック効果の大きいものから小さいものへと順に、以下のものが挙げられる。H 、Rb、K、Na、Cs、Li、Mg2+、およびBa2+などである。HICに最もよく用いられる塩は、硫酸アンモニウム((NHSO)、硫酸ナトリウム((Na)SO))、硫酸マグネシウム(MgSO)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、および酢酸アンモニウム(CHCOONH)である。
【0106】
HIC吸着剤へのタンパク質の結合は、中程度から高濃度の「塩析」塩によって促進されるが、そのほとんどは、ネイティブな球状タンパク質からの優先的排除、すなわち塩とタンパク質表面との相互作用が熱力学的に不利なためにタンパク質構造に対する安定化の影響も有している。塩の濃度は、リガンドとタンパク質の相互作用を促進するのに十分な高さ(例えば、500-1000mM)でありながら、サンプル中のタンパク質の沈殿を引き起こす濃度以下である必要がある。アルブミンの場合、塩濃度は3M(モル/リットル)以下にする必要がある。塩析の原理は、塩による水の表面張力の増加である(Melander and Horvath, 1977)。したがって、コンパクトな構造は、タンパク質-溶液界面積が小さくなるため、エネルギー的に有利になる。これらの条件下で、例えばSO 2-、PO 2-またはCHCOOと任意の対イオンからなるバッファーは、これらの塩が、非共役アルブミン(すなわちメルカプトアルブミンおよびシステインでキャップしたアルブミン)とは異なる方法で、本質的にすべてのここに記載した共役アルブミンに対して塩析効果を示し、したがって共役アルブミンと非共役アルブミン間の一貫したクロマトグラフィー分離が可能である。したがって、リガンドと共役アルブミンの間の相互作用を促進するために必要な塩の濃度は、リガンドと非共役アルブミンの間よりも低くなる。このクロマトグラフィー分離は、(a)アルブミン(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)の配列(b)アルブミンの供給源(すなわち、血漿由来または組換え)(c)コンジュゲートした改変Tレジトープの分子量、(d)分子の構造内の反応部位の位置、(e)分子のペプチド配列または化学構造、(f)コンジュゲート分子の三次元構造(例えば.線構造vsループ構造)から独立している。
【0107】
複数の態様において、水性緩衝液の塩は、十分な塩析効果を有する。複数の態様において、十分な塩析効果を提供するために、塩は、リン酸塩、硫酸塩、および酢酸塩であってもよい。複数の態様において、バッファーのカチオンの選択は、限定されないが、NH 、Rb、K、Na、Cs、Li、Mg2+およびBa2+からなる群から選択することができる。複数の態様において、水性緩衝液は、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、およびリン酸マグネシウムからなる群から選択されてもよい。複数の態様において、緩衝液のpHは3.0と9.0の間であり;より好ましくは6.0と8.0の間であり、さらに好ましくは、pHは7.0である。複数の態様において、緩衝液および疎水性固体支持体は、室温(約25℃)または4℃またはその間にある。
【0108】
複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドであって、前記改変ペプチドが血液成分と反応してかかるTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成できるものは、均質になるまで精製することができ、又は部分精製することができる。しかしながら、そのような組成物が均質になるまで精製されない調製物が有用であることが理解される。重要な特徴は、相当量の他の成分の存在下でも、調製物がTレジトープ及び任意選択のT1Dgenの所望の機能を可能にすることである。したがって、本開示は、様々な程度の純度を包含する。一実施形態では、「細胞性物質を実質的に含まない」という表現は、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート及びTレジトープを含む改変ポリペプチドの調製物が、約30%未満(乾燥重量で)の他のタンパク質(例えば、汚染タンパク質;「他のタンパク質」は、T1Dgenペプチド又はアルブミン等のキャリアタンパク質を含まない)、約20%未満の他のタンパク質、約10%未満の他のタンパク質、約5%未満の他のタンパク質、約4%未満の他のタンパク質、約3%未満の他のタンパク質、約2%未満の他のタンパク質、約1%未満の他のタンパク質、又はその間の任意の値若しくは範囲で他のタンパク質を含む状態を含む。
【0109】
複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート又はTレジトープを含む改変ポリペプチドが組換え生産される場合、前記Tレジトープ組成物は、培養液を実質的に含まなくてもよく、例えば、培養液は、Tレジトープ、T1Dgen、キャリアタンパク質、核酸又はキメラ若しくは融合ポリペプチド製剤の調製物の体積の約20%未満、約10%未満又は約5%未満に相当する。「化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない」という表現は、Tレジトープ組成物の合成に関与する化学前駆体又は他の化学物質から分離された、ポリペプチド、核酸、又はキメラ若しくは融合ポリペプチドの調製物を含む。「化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない」という文言は、例えば、約30%未満(乾燥重量で)の化学前駆体又は他の化学物質を有するTレジトープ、T1Dgen、キャリアタンパク質、核酸又はキメラポリペプチドの調製物が、約20%未満の化学前駆体又は他の化学物質を含むことができる。約10%未満の化学前駆体または他の化学物質、約5%未満の化学前駆体または他の化学物質、約4%未満の化学前駆体または他の化学物質、約3%未満の化学前駆体または他の化学物質、約2%未満の化学前駆体または他の化学物質、または約1%未満の化学前駆体または他の化学物質を有する状態を含む。
【0110】
本明細書で使用する場合、2つのポリペプチド(又はポリペプチドの領域)は、アミノ酸配列が少なくとも約45~55%、通常少なくとも約70~75%、より通常少なくとも約80~85%、より通常約90%以上、及びより通常95%以上相同又は同一である場合、実質的に相同又は同一である。2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列のパーセント相同性または同一性を決定するために、配列は最適な比較目的のために整列される(例えば、一方のポリペプチドまたは核酸分子の配列に、他方のポリペプチドまたは核酸分子との最適な整列のためのギャップを導入することが可能である)。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。一方の配列の位置が、他方の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置において相同である。当技術分野で知られているように、2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一位置の数の関数である。ポリペプチドの配列相同性は、通常、配列解析ソフトウェアを用いて測定される。本明細書で使用する場合、アミノ酸または核酸の「相同性」は、アミノ酸または核酸の「同一性」と等価である。複数の態様において、2つの配列間のパーセント相同性は、配列によって共有される同一位置の数の関数である(例えば、パーセント相同性は、同一位置の数/位置の総数×100に等しい)。
【0111】
複数の態様において、本開示は、より低い同一性の程度を有するが、本開示のポリペプチドによって行われる1または複数の同じ機能を実行するように十分な類似性を有するポリペプチド(例えば、本明細書に開示するTレジトープ及びT1Dgen)、特に任意のかかる変異体がMHC結合性及び/又はTCR特異性を保持しているものも包含する。類似性は、保存されたアミノ酸置換によって決定される。そのような置換は、ポリペプチド中の所定のアミノ酸を、同様の特性を有する別のアミノ酸で置換するものである。保存的な置換は表現型的に沈黙している可能性が高い。典型的な保存的置換としては、脂肪族アミノ酸のAla、Val、Leu、Ileの置換、ヒドロキシル基残基SerとThrの交換、酸性残基AspとGluの交換、アミド残基AsnとGlnの交換、塩基残基LysとArgの交換、芳香族残基PheとTyrの交換が挙げられる。どのアミノ酸の変化が表現型的に沈黙している可能性が高いかに関する指導が見られる(Bowie JUら、(1990)、Science、247(4948):130610、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0112】
複数の態様において、変異体ポリペプチド(例えば、変異体Tレジトープ又はT1Dgen)は、1または複数の置換、欠失、挿入、逆位、融合、及び切断、又はこれらのいずれかの組み合わせによってアミノ酸配列が異なる可能性がある。変異体ポリペプチドは、完全に機能的(例えば、MHC結合性及び/又はTCR特異性を保持し、変異体ポリペプチドがTレジトープである態様では、制御性T細胞刺激又は抑制活性を保持する)であっても、1又は複数の活性において機能を欠くことが可能である。完全に機能的な変異体は、典型的には、非重要残基における保存的変異または非重要残基または非重要領域における変異のみを含む;この場合、典型的には、MHC結合が保持されることを提供するMHC接触残基である。機能的変異体はまた、機能に関して変化しない、または重要でない変化をもたらす類似のアミノ酸の置換を含むことができる(例えば、MHC結合性および/またはTCR特異性を保持し、変異体ポリペプチドがTレジトープである複数の態様において、および/または制御性T細胞刺激または抑制活性を保持する)。あるいは、そのような置換は、ある程度まで機能に正または負の影響を及ぼし得る。非機能性変異体は、典型的には、重要な残基または重要な領域の1または複数の非保存的アミノ酸の置換、欠失、挿入、逆位、または切断、あるいは置換、挿入、逆位、または欠失を含み;この場合、典型的にはTCR接触残基における1または複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、または切断、あるいは置換、挿入、逆位、または欠失を含む。複数の態様において、変異体および/または相同Tレジトープポリペプチドは、本開示の所望の制御性T細胞刺激活性または抑制活性を保持する。あるいは、そのような置換は、ある程度機能に正または負に影響し得る。非機能的変異体は、典型的には、重要な残基または重要な領域の1または複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、または切断、または置換、挿入、逆位、または欠失を含み;この場合、典型的にはTCR接触残基における1または複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、または切断、または置換、挿入、逆位、または欠失を含む。複数の態様において、本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列(またはコア配列)を有するポリペプチドの機能的変異体は、機能するために必須ではないと考えられるアミノ酸残基において1または複数の保存的置換、および複数の態様において1または複数の非保存的置換を含み得る(機能に必須と考えられるアミノ酸残基は、例えば、MHC結合性および/またはTCR特異性を保持し、および/または制御性T細胞刺激または抑制活性を保持する)、本開示のポリペプチドの変異体である。例えば、複数の態様において、1または複数の配列番号1~55の配列、または本明細書に開示されるその断片を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列(またはコア配列)を有する変異体ポリペプチドは、HLA結合が保持される限り、1または複数のHLA接触残基において1または複数の保存的置換(および複数の態様において非保存的置換)を含むことができる。MHC結合アッセイは、当技術分野でよく知られている。複数の態様において、そのようなアッセイは、当技術分野で知られているような結合アッセイで、in vitro結合アッセイにおけるMHCクラスIおよびクラスIIアレルに関する結合親和性の試験を含み得る。例としては、例えば、米国第7,884,184号またはPCT/US2020/020089号に開示されているような可溶性結合アッセイ(これらの両方は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。さらに、複数の態様において、本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列(またはコア配列)を有する完全機能性変異体ポリペプチドは、TCR接触残基などの1または複数の重要残基または領域に変異が含まれていない。
【0113】
複数の態様において、MHCクラスII分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の9量体断片、本明細書に開示されるコンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のTCR結合エピトープ(TCR結合残基、TCR対面エピトープ、TCR対面残基またはTCR接触と呼ぶことができる)は、同定されたエピトープの2、3、5、7および8位の位置にあり;MHCクラスII分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の9量体断片、本明細書に開示されるコンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のMHC結合アグレトープ(MHC接触、MHC対向残基、MHC結合残基またはMHC結合面と呼ぶことができる)は、1、4、6および9位の位置にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0114】
複数の態様において、MHCクラスI分子に結合する、9量体同定エピトープのTCR結合エピトープは、同定されたエピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)の4、5、6、7および8位の位置にあり;MHCクラスI分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のMHC結合アグレトープは、1、2、3および9位の位置にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0115】
複数の態様において、MHCクラスI分子に結合する、10量体同定エピトープのTCR結合エピトープは、同定されたエピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の10量体断片、コンカテマーペプチドの10量体断片、1または複数の配列番号1~55の9量体断片を含む10量体ペプチドであり得る)の4、5、6、7、8および9位の位置にあり;MHCクラスI分子に結合する、10量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の10量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片、1または複数の配列番号1~55の9量体断片を含む10量体ペプチドであり得る)のMHC結合アグレトープは、1、2、3、9および10位の位置にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0116】
複数の態様において、MHCクラスII分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のTCR結合エピトープは、同定されたエピトープの2、3、5、7、および8位の任意の残基の位置(例えば、これらに限定されないが、3、5、7および8位;2、5、7および8位;2、3、5および7位など)にあり;MHCクラスI分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のMHC結合アグレトープは、TCR対面残基に対して相補的な面にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0117】
複数の態様において、MHCクラスI分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のTCR結合エピトープは、同定されたエピトープの4、5、6、7、および8位;1、4、5、6、7および8位;または1、3、4、5、6、7、および8位にあり;9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のMHC結合アグレトープは、TCR対面残基に対して相補的な面にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0118】
複数の態様において、MHCクラスI分子に結合する、10量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の10量体断片、コンカテマーペプチドの10量体断片、1または複数の配列番号1~55の9量体断片を含む10量体ペプチドであり得る)のTCR結合エピトープは、同定されたエピトープの1、3、4、5、6、7、8、および9位の任意の組み合わせにあり;10量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~55の10量体断片、コンカテマーペプチドの10量体断片、1または複数の配列番号1~55の9量体断片を含む10量体ペプチドであり得る)のMHC結合アグレトープは、TCR対面残基に対して相補的な面にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0119】
上記に基づき、1または複数の9量体および/または10量体エピトープがより長いポリペプチド内に含まれ、1または複数のクラスIまたはクラスII MHC分子と結合すると予測され、天然に存在する配列において互いに近接して発生している複数の態様において(例えば、結合9量体および/または10量体の各組の位置1は互いの例えば3アミノ酸内に入る)、かかるエピトープは結合してエピトープクラスターを形成し得ることは理解されるはずである。所定のクラスターにおいて、任意の所定のアミノ酸は、所定の9量体エピトープまたは10量体エピトープに関して、MHCに面しており、別の9量体エピトープに関して、TCRに面していてもよい。
【0120】
複数の態様において、本開示は、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート及び本開示のポリペプチド断片及びT1Dgensを含むTレジトープを含む改変ポリペプチドも含む。複数の態様において、本開示はまた、本明細書に記載されるTレジトープおよびT1Dgensの変異体の断片を包含する。複数の態様において、本明細書で使用されるように、断片は、少なくとも約9個の連続したアミノ酸からなる。有用な断片(および本明細書に記載のポリペプチドおよびコンカテマーポリペプチドの変異体の断片)には、1または複数の生物学的活性、特に MHC結合性状および/またはTCR特異性、および/または制御性T細胞刺激活性もしくは抑制活性を保持するものが含まれる。生物学的活性を有する断片は、例えば、約9、10、11、12、1、14、15、16、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上のアミノ酸長であり、その間のいかなる値又は範囲も含む。断片は個別(他のアミノ酸またはポリペプチドと融合していない)であってもよいし、より大きなポリペプチド内に存在してもよい。いくつかの断片は、単一の大きなポリペプチド内に含まれることができる。複数の態様において、宿主における発現のために設計された断片は、ポリペプチド断片のアミノ末端に融合した異種のプレおよびプロポリペプチド領域、および断片のカルボキシル末端に融合した追加の領域を有し得る。
【0121】
複数の態様において、本開示のTレジトープ及び/又はT1Dgenは、そのアレルもしくは配列変異体(「変異体」)又はアナログを含むことができ、又は化学修飾(例えば、ペギル化、グリコシル化)を含むことができる。複数の態様において、変異体は、本開示の核酸分子によってコードされるポリペプチドが果たす同じ機能、特にMHC結合性及び/又はTCR特異性を保持し、変異体ポリペプチドがTレジトープである複数の態様において、及び/又は制御性T細胞刺激性又は抑制性活性を保持する。複数の態様において、変異体は、MHC分子への結合の強化を提供することができる。複数の態様において、変異体は、TCRへの結合の強化をもたらすことができる。別の例では、変異体は、MHC分子および/またはTCRへの結合の減少をもたらすことができる。また、結合するが、TCRを介したシグナル伝達を許さない変異体も企図される。
【0122】
本開示のポリペプチドを製造する方法は、分子を構成する様々な要素の性質に依存して、広く変化することになる。例えば、分離されたポリペプチドは、それを天然に発現する細胞から精製するか、それを発現するように改変された細胞(組換え)から精製するか、または既知のタンパク質合成方法を使用して合成することができる。合成手順は、単純であり、高い収率を提供し、高度に精製された安定な生成物を可能にするように選択され得る。例えば、本開示のポリペプチドは、本明細書に開示された核酸から、または組換え技術、突然変異誘発、もしくは当該技術分野において他の既知の手段などの標準分子生物学技術の使用のいずれかによって製造することができる。分離されたポリペプチドは、それを天然に発現する細胞から精製されるか、それを発現するように改変された細胞から精製されるか(組換え)、または既知のタンパク質合成技術を使用して合成され得る。複数の態様において、本開示のポリペプチドは、組換えDNAまたはRNA技術によって製造される。複数の態様において、本開示のポリペプチドは、適切な宿主細胞における本開示の組換え核酸の発現により産生され得る。例えば、ポリペプチドをコードする核酸分子を発現カセットまたは発現ベクターにクローニングし、発現カセットまたは発現ベクターを宿主細胞に導入し、ポリペプチドを宿主細胞で発現させる。その後、標準的なタンパク質精製技術を用いた適切な精製スキームにより、ポリペプチドを細胞から分離することができる。あるいは、ポリペプチドは、プロテアーゼ消化および精製などのex vivo手順の組み合わせによって製造することができる。さらに、本開示のポリペプチドは、部位特異的変異誘発技術、または当技術分野で公知の他の変異誘発技術を使用して製造することができる(例えば、James A. Brannigan and Anthony J. Wilkinson., 2002, Protein engineering 20 years on. Nature Reviews Molecular Cell Biology 3, 964-970; Turanli-Yildiz B. et al., 2012, Protein Engineering Methods and Applications, intechopen.com, これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0123】
複数の態様において、ポリペプチドは、均質になるように精製することができ、または部分的に精製することができる。しかしながら、ポリペプチドが均質になるまで精製されない調製物が有用であることが理解される。重要な特徴は、調製物が、相当量の他の成分の存在下でも、組成物の所望の機能を可能にすることである。したがって、本開示は、様々な純度の度合いを包含する。一実施形態では、「細胞性物質を実質的に含まない」という表現は、ポリペプチド、コンカテマーポリペプチド、キメラポリペプチドまたは融合ポリペプチドの調製物が、約30%未満(乾燥重量で)の他のタンパク質(例えば、汚染タンパク質)、約20%未満の他のタンパク質、約10%未満の他のタンパク質、約5%未満の他のタンパク質、約4%未満の他のタンパク質、約3%未満の他のタンパク質、約2%未満の他のタンパク質、約1%未満の他のタンパク質、またはその間の任意の値または範囲で他のタンパク質を含む状態を含む。
【0124】
複数の態様において、本開示のポリペプチドが組換え生産される場合、組成物はまた、培養液を実質的に含まなくてもよく、例えば、培養液は、ポリペプチド調製物の体積の約20%未満、約10%未満、または約5%未満を占める。「化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない」という文言は、ポリペプチドの合成に関与する化学前駆体又は他の化学物質から分離されているポリペプチドの調製物を含む。化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という表現は、例えば、約30%未満(乾燥重量で)の化学前駆体または他の化学物質、約20%未満の化学前駆体または他の化学物質、約10%未満の化学前駆体または他の化学物質、約5%未満の化学前駆体または他の化学物質、約4%未満の化学前駆体または他の化学物質、約3%未満の化学前駆体または他の化学物質、約2%未満の化学前駆体または他の化学物質、約1%未満の化学前駆体または他の化学物質を有する本ポリペプチドの調製物を含んでもよい。
【0125】
複数の態様において、本開示はまた、本明細書に開示されるポリペプチドの薬学的に許容される塩を含む。「薬学的に許容される塩 」とは、薬学的に許容され、親ペプチドまたはポリペプチドの所望の薬理活性を保有する塩を意味する。本明細書において、「薬学的に許容される塩」とは、本開示のポリペプチドの誘導体を指し、そのような化合物は、その酸塩または塩基塩を作ることにより修飾される。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機酸塩などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。薬学的に許容される塩としては、例えば、無毒な無機又は有機酸から形成される従来の無毒な塩又は親化合物の第4級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、そのような従来の非毒性塩は、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバム酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモイ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、亜酢酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、および一般的なアミン酸、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンから選択される無機および有機酸から得られるものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0126】
複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、抗原及び/又は治療用タンパク質と混和して組み合わされる。このような組成物は、それを必要とする対象において抗原又は治療用タンパク質に対する寛容性を誘導する方法に有用であり、抗原又は治療用タンパク質との混和物の局所送達は、対象における抗原に対する寛容性の増加をもたらし、適切な賦形剤とともに送達されることにより、抗原又は治療用タンパク質に対する寛容性が誘導される。この組み合わせは、共有結合又は非共有結合のいずれかで結合された本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドとともに、投与されてもよいし、それらが混和物として、又は分岐又は化学結合した調剤として投与されてもよい。このような組成物は、抗原、アレルゲン、および/または治療用タンパク質(例えば、インスリンおよび/またはプレプロインスリンに限定されない)に対する寛容性を誘導する方法において有用である。例えば、そのような組成物は、それを必要とする対象において有用な組成物であり、抗原および/または治療用タンパク質との混和物の局所送達により、対象における抗原または治療用タンパク質に対する寛容性の増加をもたらし、適切な賦形剤とともに送達されることにより、抗原または治療用タンパク質に対する寛容性の誘導をもたらす。この組み合わせは、本開示のTレジトープ組成物を共有結合または非共有結合のいずれかで結合させて投与してもよく、または混和物として投与してもよい。
【0127】
[核酸]
複数の態様において、本開示は、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドの全部又は一部をコードする核酸(例えば、DNA(cDNA、RNA(mRNAなど、ただしこれに限らない)、ベクター、ウイルス又はそのハイブリッド、これらは全て分離、合成又は組換えのものでもよい)に関するものである。複数の態様において、核酸は、発現カセット、プラスミド、および発現ベクター、または組換えウイルスをさらに含むか、またはその中に含まれており、ここで、任意選択で、核酸、または発現カセット、プラスミド、発現ベクター、または組換えウイルスは、細胞(任意選択でヒト細胞または非ヒト細胞)内に含まれ、任意に、前記細胞は、核酸、または発現カセット、プラスミド、発現ベクター、または組換えウイルスで形質導入される。複数の態様において、細胞は、本明細書に開示される、分離、合成、または組換えされた核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、または組換えウイルス;および/または本明細書に開示される、分離、合成、または組換えキメラまたは融合ポリペプチド組成物を、例えば、1または複数の、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを中に含むように形質転換、トランスフェクト、または他の方法で工学的に構築される。複数の態様において、細胞は、哺乳類細胞、細菌細胞、昆虫細胞、または酵母細胞であり得る。複数の態様において、本開示の核酸分子は、ベクターに挿入され、例えば、発現ベクターまたは遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号)または定位注射(Chen SHら, (1994), Proc Natl Acad Sci USA, 91(8):3054-7、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)により対象に送達されうる。同様に、本開示の核酸分子は、プラスミドに挿入することができる。遺伝子治療ベクターの医薬製剤は、許容される希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができ、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれている徐放性マトリックスから構成されることができる。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターが組換え細胞、例えば、レトロウイルスベクターからそのまま生産され得る場合、医薬製剤は、遺伝子送達システムを生産する1または複数の細胞を含むことができる。このような医薬組成物は、投与のための指示書とともに、容器、パック、またはディスペンサーに含まれ得る。複数の態様において、本開示は、本開示の1または複数のポリペプチドまたは本開示のキメラまたは融合ポリペプチド組成物をコードする本開示の核酸を含むベクターに関する。複数の態様において、本開示は、本開示のベクターを含んでなる細胞に関する。複数の態様において、細胞は、哺乳類細胞、細菌細胞、昆虫細胞、または酵母細胞であり得る。
【0128】
本開示の核酸は、一本鎖または二本鎖のDNA(cDNAを含むがこれに限らない)またはRNA(mRNAを含むがこれに限らない)であってもよい。核酸は、例えば、DNA、cDNA、PNA、CNA、RNA、一本鎖および/または二本鎖のいずれか、または当該技術分野で知られているようなポリヌクレオチドのネイティブまたは安定化形態であってもよい。核酸は、典型的には、DNAまたはRNA(mRNAを含む)である。核酸は、当技術分野で周知の技術、例えば、免疫原性ポリペプチドをコードする配列の合成、またはクローニング、または増幅;細胞膜アドレス配列をコードする配列の合成、またはクローニング、または増幅;適切なベクターおよび細胞における配列のライゲーションおよびそれらのクローニング/増幅によって製造することができる。本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/または本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドの全体または一部をコードする本明細書に提供される核酸(RNA、DNA、ベクター、ウイルスまたはそれらのハイブリッドのいずれでも)は、種々の供給源から分離され、遺伝子工学的に構築され、増幅され、合成的に生産され、および/または組み換え的に発現/生成させることができる。これらの核酸から生成された組換えポリペプチドは、個々に分離またはクローン化され、所望の活性について試験することができる。任意の組換え発現系を使用することができ、例えば、in vitro、細菌、真菌、哺乳類、酵母、昆虫または植物細胞発現系が挙げられる。複数の態様において本明細書で提供される核酸は、周知の化学合成技術によってin vitroで合成される(例えば、Adams(1983)J. Am. Chem. Soc. 105:661; Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440-3444; Frenkel (1995) Free Radic. Biol. Med. 19:373-380; Blommers (1994) Biochemistry 33:7886-7896; Narang (1979) Meth. Enzymol. 68:90;Brown(1979)Meth.Enzymol.68:109; Beaucage (1981) Tetra. Lett.22:1859;米国特許No. 第4,458,066号、これらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。さらに、本明細書で提供される核酸の操作のための技術、例えば、サブクローニング、標識プローブ(例えば、Klenowポリメラーゼを用いたランダムプライマー標識、ニック翻訳、増幅)、配列決定、ハイブリダイゼーションなどは、科学および特許文献に十分に記載されている(例えば、Sambrook, ed,Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2ND Ed.), Vols. 1~3、Cold Spring Harbor Laboratory、(1989);Current Protocols In Molecular Biology、Ausubel、ed. John Wiley & Sons, Inc., New York (1997); Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation, Tijssen, ed., Elsevier, N.Y. (1993)、これらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0129】
前述のように、本開示による核酸分子は、原核生物由来または真核生物由来のいずれかにおいて、裸の核酸分子;プラスミド、ベクター;ウイルスまたは宿主細胞などの核酸分子それ自体の形態で提供され得る。ベクターには、本発明の核酸分子を含有する発現ベクターが含まれる。ポリペプチドを発現させることができる発現ベクターを調製することができる。異なる細胞種のための発現ベクターは、当該技術分野において周知であり、過度の実験をすることなく選択することができる。一般に、(例えば、cDNA、またはmRNAを含むRNA)は、発現のために適切な方向および正しいリーディングフレームで、プラスミドなどの発現ベクターに挿入される。必要に応じて、DNA(例えば、cDNA、またはmRNAを含むRNA)は、所望の宿主(例えば、細菌)によって認識される適切な転写および翻訳制御ヌクレオチド配列に連結されてもよいが、このような制御は、一般に発現ベクター中で利用可能である。次いで、このベクターは、標準的な技術を使用してクローニングするために宿主細菌に導入される。本発明のベクターは、例えば、転写プロモーター、および/または転写ターミネーターを含んでいてもよく、ここで、プロモーターは核酸分子と作動可能に連結されており、そして核酸分子は転写ターミネーターと作動可能に連結されている。本開示の1または複数のペプチドまたはポリペプチドは、1つの発現ベクターによってコードされてもよい。そのような核酸分子は、例えば、DNA/RNAワクチンの形態で、ペプチド/ポリペプチドを、それを必要とする対象にin vivoで送達するためのビヒクルとして機能してもよい。
【0130】
複数の態様において、ベクターは、上記で定義したような核酸を含むウイルスベクターであってもよい。ウイルスベクターは、異なるタイプのウイルス、例えば、豚痘、鶏痘、仮性狂犬病、Aujezkyのウイルス、サルモネラ、ワクシニアウイルス、BHV(牛ヘルペスウィルス)、HVT(トルコヘルペスウィルス)、アデノウイルス、TGEV(伝染性胃腸炎コロナウイルス)、エリスロウイルス、およびSIV(サル免疫不全ウイルス)から由来してもよい。また、酵母細胞内で複製および/または堆積するプラスミドなど、他の発現系やベクターも使用することができる。
【0131】
本開示はまた、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又は本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドを調製する方法に関し、前記方法は、核酸の発現に適した条件下で、上記に定義された核酸又はベクターを含む宿主細胞を培養する工程と、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドを回収する工程を含む。上記に示したように、タンパク質及びペプチドは、当該技術分野においてそれ自体既知の技術に従って精製することができる。
【0132】
[医薬組成物及び製剤]
複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(並びに、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、および/または本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞)は、医薬組成物又は製剤中に含まれてもよい。複数の態様において、医薬組成物または製剤は、一般に、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドと、薬学的に許容される担体、賦形剤、および/またはアジュバンドとを含む。複数の態様において、本開示の医薬組成物又は製剤は、投与経路に応じて、希釈剤、アジュバント、凍結乾燥安定剤、湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化又は粘性増強添加剤、及び保存剤を更に含んでもよい。複数の態様において、前記医薬組成物は、投与(administration)に適している。薬学的に許容される担体および/または賦形剤は、部分的には、投与される特定の組成物によって、また、組成物を投与するために使用される特定の方法によって、決定される。したがって、本開示のTレジトープ組成物を投与するための医薬組成物の適切な処方は、多種多様である(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, (18TH Ed, 1990), Mack Publishing Co., Easton, PA Publ参照、これは参照によりその全体が本書に組み込まれる)。複数の態様において、医薬組成物は、一般に、無菌、実質的に等張、および米国食品医薬品局のすべての適正製造基準(GMP)規制を完全に遵守するように製剤化される。
【0133】
組成物、担体、賦形剤、および試薬を指す「薬学的に許容できる」、「生理学的に許容できる」、およびそれらの文法的変形は、互換的に用いられ、材料が、組成物の投与を禁止する程度の望ましくない生理作用の生成なしに、対象へのまたは対象に投与できることを表わす。例えば、「薬学的に許容される賦形剤」とは、例えば、一般に安全で、無毒で、望ましい医薬組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、ヒトの医薬用途と同様に獣医用途にも許容される賦形剤が含まれる。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、またはエアゾール組成物の場合には気体であり得る。当業者であれば、本開示の特定のTレジトープ組成物について、適切な投与のタイミング、順序、及び投与量を決定することが可能であろう。本開示の化合物及び組成物の投与量は、治療される動物(例えば、ヒト)の種、品種、年齢、サイズ、治療歴、及び健康状態、並びに投与経路、例えば、皮下、皮内、経口、筋肉内、又は静脈内投与に依存することになるであろう。本開示の化合物および組成物は、単回投与または反復投与で投与され得る。本開示の化合物および組成物は、単独で投与することができ、または他のブタ免疫原性またはワクチン組成物などの1または複数のさらなる組成物と共に同時または順次に投与することができる。組成物が異なる時間に投与される場合、投与は互いに別々であっても、時間的に重なっていてもよい。
【0134】
薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤の例としては、脱塩水または蒸留水;生理食塩水;ピーナッツ油、アラキス油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油またはココナッツ油などの植物ベースの油;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリソルポキサンなどのポリシロキサンを含むシリコーン油;揮発性シリコーン;軽質流動パラフィン油、重質流動パラフィン油などの鉱油;スクワレン;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;エタノールまたはイソプロパノールなどの低級アルカノール類;低級アラルカノール類、低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールまたはグリセリン;脂肪酸エステル、例えばパルミチン酸イソプロピル、ミリステートイソプロピルまたはオレイン酸エチル;ポリビニルピロリドン;寒天;カラギーナン;トラガカントゴムまたはアカシアゴム;およびワセリンなどが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。典型的には、担体(単数または複数)は、ワクチン組成物の10重量%~99.9重量%を形成し、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、それらの混合物などの当技術分野で公知の試薬を用いた従来の方法によって緩衝化されてもよい。
【0135】
複数の態様において、このような担体または希釈剤の好ましい例には、水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、および5%ヒト血清アルブミンが含まれるが、これらに限定されるものではない。リポソームおよび固定油などの非水性ビヒクルもまた使用することができる。薬学的活性物質に対するこのような媒体および化合物の使用は、当技術分野でよく知られている。任意の従来の媒体又は化合物が、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドと不適合である限り、及び先に述べたように、組成物におけるそれらの使用が企図される。補足的な活性化合物もまた、組成物に組み込むことができる。
【0136】
アジュバントの例としては、水中油型エマルジョン、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、免疫刺激複合体、非イオン性ブロックポリマーまたはコポリマー、サイトカイン(IL-1、IL-2、IL-7、IFN-α、IFN-β、IFN-γなど)、サポニン、モノリン酸脂質A(MLA)、ムラミルジペプチド(MDP)など(ただしこれだけに限られない)がある。他の適切なアジュバントとしては、例えば、硫酸アルミニウムカリウム、大腸菌から分離された熱安定性又は熱安定性エンテロトキシン(複数可)、コレラ毒素又はそのBサブユニット、ジフテリア毒素、破傷風毒素、百日咳毒素、フロイントの不完全又は完全アジュバント等が挙げられる。ジフテリア毒素、破傷風毒素、百日咳毒素などの毒素系アジュバントは、使用前に、例えばホルムアルデヒドで処理することにより不活化することができる。さらなるアジュバントとしては、ポリICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS 15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、イミュファクトIMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRTX、Juvlmmune、リポバック、MF59、モノフォスフォリルリピドA、モンタナイドIMS 1312、モンタナイドISA 206、モンタナイドISA 50V、モンタナイドISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PEPTEL、ベクターシステム、PLGA微粒子、レジキモド、SRL172、バイロゾームおよび他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、ベータグルカン、Pam3Cysおよびアクイラ社QS21 stimulonなどがあるが、これらだけに限られる訳ではない。本明細書に開示される医薬組成物またはワクチンの態様において、アジュバントはポリICLCを含む。TLR9アゴニストCpGおよび合成二本鎖RNA(dsRNA)TLR3リガンドのポリICLCは、現在臨床開発中の最も有望なワクチンアジュバントのうちの2つである。前臨床試験では、LPSやCpGと比較して、ポリICLCが最も強力なTLRアジュバントであるように思われる。これは、炎症性サイトカインを誘導し、IL-10を刺激しないことと、DCの共刺激分子を高レベルで維持することに起因するようである。ポリICLCは、平均約5000ヌクレオチドの長さのポリI鎖とポリC鎖からなる、合成された二本鎖RNAであり、ポリリジンとカルボキシメチルセルロースの添加により、熱変性や血清ヌクレアーゼによる加水分解に対して安定化させたものである。この化合物は、PAMPファミリーのメンバーであるTLR3およびMDA5のRNAヘリカーゼドメインを活性化し、DCおよびナチュラルキラー(NK)細胞の活性化、タイプIインターフェロン、サイトカイン、ケモカインの混合産生をもたらす。
【0137】
凍結乾燥安定剤の例は、例えばソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、デキストラン又はグルコースのような炭水化物、アルブミン又はカゼインのようなタンパク質、及びそれらの誘導体であってよい。
【0138】
複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤0)は、その意図する投与経路に適合するように製剤化される。本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸、頭蓋内、髄腔内、腹膜内、鼻内;経膣;筋内経路、又は吸入剤として投与することが可能である。複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、堆積物が蓄積した特定の組織に直接注入することができ、例えば、頭蓋内注入が可能である。他の態様では、筋肉内注射又は静脈内注入を、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又は本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドの投与に使用することができる。いくつかの方法では、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、頭蓋内に直接注入される。いくつかの方法では、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチドは、Medipad(登録商標)デバイスなど(これらに限らない)の徐放性組成物又はデバイスとして投与される。複数の態様において、本開示の化合物及び組成物は、例えば、本開示のワクチンは、皮内投与され、例えば、当技術分野で知られているようにマイクロ針パッチを使用することによって、またはパルスニードルフリー技術(Pulse 50(商標)Micro Dose Injection System, パルスニードルフリー Systems; Lenexa, KS, USA)などの市販のニードルフリー高圧デバイスを使用することによって、投与される。複数の態様において、前記市販のニードルフリー高圧デバイス(例えば、パルスニードルフリー技術)は、以下の1または複数の利点を与える:非侵襲性、組織外傷の低減、痛みの低減、対象に組成物を蓄積するために真皮層に小さな開口を必要とする(例えば、マイクロ皮膚開口を必要とするだけ)、組成物の即時分散、組成物のより良い吸収、組成物の真皮曝露量の増加、及び/又は鋭利物による損傷の危険の減少。
【0139】
複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)は、任意に、本明細書に記載される様々な医学的状態の治療に少なくとも一部有効である他の薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、対象におけるT1Dの治療および/または予防の場合、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチドは、インスリンなどのT1Dの一時的緩和をもたらす他の薬剤と組み合わせて投与することも可能である。
【0140】
複数の態様において、非経口、皮内、又は皮下適用に使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分を含むことができるが、これらに限定されることはない。注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌化合物;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化合物;アセテート、クエン酸またはリン酸などの緩衝剤および塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの緊張度調整のための化合物を含むことができる。pHは、塩酸や水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。賦形剤の例としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、水、エタノール、DMSO、グリコール、プロピレン、乾燥スキムミルクなどを挙げることができる。組成物はまた、pH緩衝化試薬、及び湿潤剤又は乳化剤を含むことができる。
【0141】
複数の態様において、非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製の、アンプル、使い捨て注射器または複数回投与バイアルに封入することができる。
【0142】
複数の態様において、注射可能な使用に適した医薬組成物または製剤は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌注射可能溶液または分散液の即席の調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与のために、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。いずれの場合も、組成物は無菌であり、容易なシリンジ性が存在する程度に流動的であるべきである。それは、製造および貯蔵の条件下で安定であり、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保存される。Tレジトープ製剤を含む態様では、凝集体、断片、分解物および翻訳後改変を含むことができるが、これらの不純物がHLAと結合し、相同T細胞に同じTCR面を呈する程度に、それらは純Tレジトープと同様の様式で機能すると期待される。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合には必要な粒子径の維持、界面活性剤の使用などによって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌・抗カビ化合物、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張化合物、例えば、糖類、マニトール、ソルビトールのような多価アルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の長時間の吸収は、組成物中に吸収を遅延させる化合物、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによってもたらされてもよい。
【0143】
複数の態様において、無菌注射液は、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせで適切な溶媒中に必要量入れ、濾過滅菌を行ったものである。一般に、分散液は、結合剤を、基本的な分散媒体および上記に列挙したものから必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法は、あらかじめ無菌濾過したその溶液から活性成分+任意の追加所望成分の粉末をもたらす真空乾燥および凍結乾燥である。さらに、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、活性成分の持続的又は脈動的放出を可能にするように処方できるデポ注射又は移植調製の形態で投与されうる。
【0144】
複数の態様において、経口組成物は一般に不活性希釈剤または食用担体を含み、ゼラチンカプセルに封入されるか、または錠剤に圧縮されることができる。複数の態様において、経口治療投与の目的のために、結合剤は賦形剤と共に組み込まれ、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物はまた、洗口剤として使用するための液体担体を用いて調製することができ、液体担体中の化合物は、経口的に適用され、スイッシュして去痰するかまたは飲み込まれる。薬学的に適合する結合化合物、および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。複数の態様において、錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分:微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたは乳糖などの賦形剤、アルギン酸、Primogelまたはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes)などの潤滑剤;コロイド性二酸化ケイ素などの滑剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味化合物;またはペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料などの香味剤化合物などのいずれか、または類似の性質の化合物を含むことができる。
【0145】
吸入による投与のために、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、適切な推進剤、例えば二酸化炭素のようなガス、又はネブライザーを含む、圧力がかかった容器又はディスペンサーからエアゾールスプレーの形態で送達することが可能である。
【0146】
複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドの全身投与(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)は経粘膜又は経皮的手段によっても可能である。経粘膜または経皮投与の場合、浸透させるべき障壁に適切な浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は、当技術分野において一般に知られており、例えば、経粘膜投与の場合、洗浄剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐薬の使用により達成することができる。経皮投与の場合、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、クリーム状軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル又はクリームに配合し、当該分野で一般に知られているように、局所的又は経皮パッチ技術を通じて適用することができる。
【0147】
複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチドは、直腸送達のために坐剤(例えば、ココアバター及び他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いて)又は保持浣腸の形態で調製することも可能である。
【0148】
複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、体からの急速な排除に対してTレジトープ組成物を保護する担体と共に調製される。生分解性、生体適合性ポリマーは、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のようなものを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。材料はまた、商業的に、例えば、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞に標的化されたリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法に従って調製することができる(U.S. Pat. 第4,522,811号、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、所望の部位へのTレジトープ組成物の徐放を可能にするバイオポリマー固体支持体内に移植又はそれに連結することが可能である。
【0149】
複数の態様において、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、経口又は非経口組成物を投与単位形態で処方することが特に有利である。本明細書で使用される投薬単位形態は、治療される対象に対する単位投薬量として適した物理的に離散した単位を指し;各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の結合剤を含有する。本開示の投薬単位形態の仕様は、結合剤の固有の特性及び達成すべき特定の治療効果、並びに対象の治療のために本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドの配合の技術に固有の制限によって規定され、それに直接依存するものである。
【0150】
[使用方法]
本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドで制御性T細胞を刺激する(ならびにTレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤:本項において「本開示の関連化合物」と称する)は、対応する内在性TReg集団(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)を刺激、誘導、および/または拡大し、複数の態様において、結果的に、1または複数の以下のサイトカインおよびケモカイン(IL-10、IL-35、TGF-β、TNF αおよびMCP1)の分泌を増大してもよい。複数の態様において、刺激は、対応する内在性TReg集団(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)によるIL-2Rαの発現の増加、およびエフェクターT細胞へのIL-2の奪取をもたらすことが可能である。さらなる複数の態様において、刺激は、対応する内在性TReg集団(複数の態様においてナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)によるパーフォリン・グランザイムの増加をもたらし得、このようなTReg集団がTエフェクター細胞および他の免疫刺激細胞を殺すことが可能となる。さらなる複数の態様において、かかる刺激は、対応する内在性TReg集団(複数の態様においてナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)による免疫抑制性アデノシンの生成をもたらすことができる。他の態様では、そのような刺激は、対応する内在性TReg集団(ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む複数の態様において)が樹状細胞上のコスティミュレーション分子に結合して除去し、結果として樹状細胞機能の抑制をもたらすことができる。さらに、複数の態様において、そのような刺激は、対応する内在性TReg集団(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)によって、樹状細胞および他の細胞集団(例えば、内皮細胞に限定されない)上のチェックポイント分子のTReg誘導アップレギュレーションをもたらすことができる。追加の態様では、そのような刺激は、制御性B細胞のTReg刺激をもたらすことができる。制御性B細胞(「B-Reg」)は、CD1d、CD5、およびIL-10の分泌の発現によって特徴付けられる抗炎症作用に関与する細胞である。また、B-RegはTim-1の発現によって識別され、Tim-1のライゲーションによって寛容性を促進することができる。B-Regの能力は、toll様受容体やCD40-リガンドなど、多くの刺激因子によって駆動されることが示されたが、B-Regの完全な特性解明は現在進行中である。B-Regはまた、CD25、CD86、TGF-βを高濃度に発現している。制御性T細胞によるこのような制御性サイトカインおよびケモカインの分泌の増加、ならびに上述の他の活性は、制御性T細胞の特徴である。複数の態様において、本開示のTレジトープ組成物によって活性化された制御性T細胞は、CD4+CD25+FOXP3表現型を発現し得る。本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドによって活性化された制御性T細胞は、抗原特異的Th1-又はTh2-関連サイトカインレベル、主にINF-γ、IL-4、及びIL-5の減少によって、並びにCFSE希釈及び/又は細胞溶解活性によって測定される抗原特異的Tエフェクター細胞の増殖及び/又はエフェクター機能の減少によって測定されるように、ex vivoのTエフェクター免疫反応を直接抑制する。複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドによって活性化された制御性T細胞は、抗原特異的Th1-又はTh2-関連サイトカインレベル(Elisaアッセイによって測定)の低下、抗原特異的Tエフェクター細胞レベル(Eliaspotアッセイによって測定)、細胞溶解活性の低下、及び/又はタンパク質抗原の抗体力価の減少によって測定されるようにin vivoのTエフェクターの免疫反応を直接的に抑制する。
【0151】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又は本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドによって活性化されたナチュラル制御性T細胞は、アダプティブTReg細胞の発達を刺激する。複数の態様において、抗原の存在下で、末梢T細胞を本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドと共インキュベートすると、抗原特異的CD4+/CD25+T細胞の拡大が生じ、それらの細胞におけるFoxp3遺伝子又はFoxp3タンパク質の発現をアップレギュレートし、in vitroで抗原特異的Tエフェクター細胞の活性化を抑制する。複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、制御性のT1型(Tr1)細胞の活性化及び/又は拡張をもたらす可能性がある。Tr1細胞は、いくつかの免疫介在性疾患において強い免疫抑制能を有する(Roncarolo and Battaglia, 2007, Nat Rev Immunol 7, 585-598; Roncarolo et al., 2011, Immunol Rev 241, 145-163; Pot et al., 2011, Semin Immunol 23, 202-208 )。高レベルのIL-10の分泌、およびグランザイムBを介した骨髄性抗原提示細胞(APC)の殺傷が、Tr1を介した抑制の主なメカニズムである(Grouxら、1997、Nature 389、737-742;Magnaniら、2011 Eur J Immunol 41、1652-1662)。Tr1細胞は、そのユニークなサイトカインプロフィールと制御機能によって、Tヘルパー(T)1、T2、T17細胞と区別される。Tr1細胞は、T2細胞やT17細胞の特徴的なサイトカインである、IL-4やIL-17よりも高いレベルのIL-10を分泌することが示されている。Tr1細胞はまた、低レベルのIL-2を分泌し、局所的なサイトカイン環境に応じて、可変レベルのIFN-γを産生することができ、合わせてT1主要サイトカインとなる(Roncaroloら、2011、Immunol Rev 241, 145-163)。FOXP3は、その発現が低く、活性化時に一過性であるため、Tr1細胞のバイオマーカーにはならない。IL-10産生Tr1細胞は、ICOS(Haringer et al., 2009, J Exp Med 206, 1009-1017) およびPD-1 (Akdis et al., 2004, J Exp Med 199, 1567-1575) を発現するが、これらのマーカーは特異的ではない(Maynard et al., 2007, Nat Immunol 8, 931-941)。超低活性化抗原(VLA)-2のα2インテグリンサブユニットであるCD49bは、IL-10産生T細胞のマーカーとして提案されている(Charbonnierら、2006、J Immunol 177、3806-3813);しかしそれはヒトT17細胞によっても発現されている(Boisvertら、2010、Eur J Immunol 40、2710-2719)。さらに、マウスCD49b+T細胞は、IL-10(Charbonnierら、2006、J Immunol 177、3806-3813)を分泌するが、炎症性サイトカインも分泌する(Kassiotisら、2006、J Immunol 177、968-975)。MHCクラスII分子に高親和性で結合するCD4ホモログであるリンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)は、マウスIL-10産生CD4T細胞(Okamuraら、2009、Proc Natl Acad Sci USA 106、13974-13979)により発現するが、活性化エフェクターT細胞(WorkmanおよびVignali、2005、J Immunol 174、688~695;Bettiniら、2011、J Immunol 187, 3493-3498; Bruniquelら, 1998, Immunogenetics 48, 116-124; Leeら, 2012, Nat Immunol 13, 991-999)によっても発現し、FOXP3+制御性T細胞(Treg)(Camisaschiら, 2010, J Immunol 184, 6545-6551)によっても発現する。最近、ヒトTr1細胞がCD226(DNAM-1)を発現し、骨髄系APCの特異的殺傷に関与していることが示された(Magnaniら、2011 Eur J Immunol 41、1652-1662)。さらなる複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(及び本開示の関連化合物)は、TGF-β分泌Th3細胞、制御性NKT細胞、制御性CD8+T細胞、ダブルネガティブ制御性T細胞の活性化及び/又は拡大をもたらす可能性がある。「Th3細胞」とは、以下の表現型CD4FoxP3を有し、活性化時に高レベルのTGF-β、所定量のIL-4及びIL-10を分泌し、IFN-γ又はIL-2を分泌しないことができる細胞をいう。これらの細胞は、TGF-β由来である。「制御性NKT細胞」とは、休止状態で以下の表現型CD161CD56CD16及びVα24/Vβ11 TCRを有する細胞をいう。「制御性CD8+T細胞」とは、休止状態で以下の表現型CD8CD122を有し、活性化により高レベルのIL-10を分泌することが可能な細胞をいう。「二重陰性制御性T細胞」とは、休止状態で以下の表現型TCRαβCD4CD8を有する細胞を指す。
【0152】
複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチド(及び本開示の関連化合物)は、モノクローナル抗体、タンパク質治療薬、自己免疫反応を促進する自己抗原、アレルゲン、移植組織に対する免疫反応を調節するのに有用であり、寛容性が望ましい他の適用において有用である。
【0153】
複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートのTレジトープ及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、MHCクラスII分子に結合し、MHCクラスII分子の状況でTCRと関わり、内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTReg及び/又はアダプティブTRegを含む)を活性化しうる。
【0154】
[それを必要とする対象における免疫応答の抑制]
複数の態様において、本開示は、治療有効量のTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート(および本開示の関連化合物)を形成するために用いられる改変ポリペプチドを、それを必要とする対象に投与することによって、対象において制御性T細胞(複数の態様において、ナチュラルTReg、および/またはアダプティブTRegを含む内在性TReg)を刺激、誘導、および/または拡大する方法、ならびにそれを必要としている対象において免疫反応を抑制する方法に関する。
【0155】
複数の態様において、本開示は、治療有効量のTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート(および本開示の関連化合物)を形成するために用いられる改変ポリペプチドを対象に投与することによって、それを必要とする対象における免疫反応を抑制するために、制御性T細胞(例えば、内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む))を刺激および/または誘導する方法に関する。複数の態様において、免疫応答は、少なくとも1つの治療用タンパク質による1または複数の治療処置、ワクチンによる処置(特に、ワクチン接種から有害事象が生じる状況において)、または少なくとも1つの抗原による処置の結果である。別の態様では、本開示のTレジトープ組成物の投与は、1または複数の抗原提示細胞を制御性表現型にシフトさせ、1または複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトさせ、樹状細胞及び/又は他の抗原提示細胞におけるCD11c及びHLA-DRの発現を低下させる
【0156】
複数の態様において、本開示は、対象における免疫応答を抑制及び/又は抑止するための方法であって、治療有効量のTレジトープ-血液成分コンジュゲート又は本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート(及び本開示の関連化合物)を形成するために使用する改変ポリペプチドを投与する工程を含み、ここでTレジトープ-血液成分コンジュゲート又は改変ポリペプチドが免疫応答を抑制/抑止する、方法に関する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは改変ポリペプチドは、自然免疫応答を抑止および/または抑制する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは改変ポリペプチドは、適応免疫応答を抑止および/または抑制する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは改変ポリペプチドは、エフェクターT細胞応答を抑止および/または抑制する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは改変ポリペプチドは、メモリーT細胞応答を抑止および/または抑制する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは改変ポリペプチドは、ヘルパーT細胞応答を抑止および/または抑制する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは改変ポリペプチドは、B細胞応答を抑止および/または抑制する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート又は改変ポリペプチドは、nkT細胞応答を抑止および/または抑制する。
【0157】
複数の態様において、本発明は、治療有効量のTレジトープ-血液成分コンジュゲート又は改変ポリペプチド(及び本開示の関連化合物)の投与を通じて、対象における免疫応答、特に抗原特異的免疫応答を抑制する方法に関し、ここで、前記Tレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは改変ポリペプチドは、内在性TReg(複数の態様では、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含み、複数の態様ではCD4+/CD25+/FoxP3+制御性T細胞)を活性化する、またはCD4+T細胞の活性化を抑制し、CD4+および/またはCD8+T細胞の増殖を抑制し、および/またはβ細胞もしくはnkT細胞の活性化もしくは増殖を抑制する、ことを示す。複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)は、特定の標的抗原と、共有結合、非共有結合、または混和のいずれであってもよい。複数の態様において、特定の標的抗原と、共有結合しているか、非共有結合しているか、または混和している、投与されたTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは本開示の改変ポリペプチドは、標的抗原に対する免疫応答の減弱をもたらす。
【0158】
複数の態様において、標的抗原は、自己のタンパク質またはタンパク質断片であってよい。複数の態様において、標的抗原は、同系統のタンパク質またはタンパク質断片であってもよい。複数の態様において、標的抗原は、生物学的医薬またはその断片であってもよい。複数の態様において、標的抗原は、プレプロインスリンまたはその断片である。複数の態様において、標的抗原は、1または複数の配列番号56~63を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。複数の態様において、抑制効果は、ナチュラルTRegによって媒介される。複数の態様において、抑制効果は、アダプティブTRegによって媒介される。
【0159】
[医学的状態を予防または治療する方法]
本発明は、例えば、対象における1又は複数の医学的状態を予防又は治療する方法に関し、この方法は、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(及び本開示の関連化合物)を投与する工程と、この投与する工程により対象における医学的状態を予防又は治療する工程を含む。好ましい実施形態では、医学的状態は、1型糖尿病である。
【0160】
医学的状態は、例えば、病状は、例えば、原発性免疫不全症、免疫介在性血小板減少症、川崎病、20歳以上の対象における造血幹細胞移植、慢性B細胞リンパ球性白血病、及び小児HIV1型感染症であり得る。具体的な例としては、以下:(血液学)再生不良性貧血、純赤血球無形成症、ダイヤモンド・ブラックファン貧血、自己免疫性溶血性貧血、新生児溶血性疾患、後天性第VIII因子インヒビター、後天性フォンウィルブランド病免疫介在性好中球減少症、血小板輸血不応症、新生児自己免疫性血小板減少症、輸血後紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病/溶血性尿毒症症候群。感染症、固形臓器移植、外科、外傷、熱傷、HIV感染症。(神経)てんかん・小児難治性ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、重症筋無力症、ランバート・イートン筋無力症候群、多巣性運動神経障害、多発性硬化症、(産科)再発性妊娠性潰瘍。(呼吸器)喘息、慢性胸部症状、リウマチ、関節リウマチ(成人および若年性)、全身性エリテマトーデス、全身性血管炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、ウェゲナー肉芽腫症;(その他)アドレノリューコジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、ベーチェット症候群、急性心筋症、慢性疲労症候群、コンジェンシャル心ブロック、嚢胞性線維症、自己免疫性水泡性皮膚炎、糖尿病、急性特発性自律神経失調症急性散在性脳脊髄炎、エンドトキシン血症、溶血性輸血反応、血球貪食症候群、急性リンパ性白血病、下部運動ニューロン症候群、多発性骨髄腫、ヒト T細胞リンパ性ウイルス-1-関連脊髄症、ネフリック症候群、膜性腎症、ネフローゼ症候群、甲状腺眼症、オプソクローヌス-ミオクローヌス、中耳炎再発、腫瘍随伴性小脳変性症、パラプロテイン血症、パルボウイルス感染症(一般)、ポリニュー ロパシー、内臓肥大、内分泌異常、Mタンパク質。および皮膚変化(POEMS)症候群、進行性腰仙神経叢炎、ライム神経根症、ラスムッセン(Rasmussen)症候群、ロイター(Reiter)症候群、急性腎不全、血小板減少(非免疫)、連鎖球菌毒性ショック症候群、ぶどう膜炎およびVogt-小柳・原田症候群などが挙げられる。
【0161】
特定の態様において、本発明は、例えば、アレルギー、自己免疫疾患、移植片対宿主病などの移植関連障害、酵素又はタンパク質欠損障害、止血障害(例えば、血友病A、B又はC)、癌(特に腫瘍関連自己免疫)、不妊、又は感染(ウイルス、細菌又は寄生虫)の治療方法に関する。本開示のTレジトープ化合物又は組成物は、有害事象を低減するため、または共投与化合物の有効性を高めるために、病状を有する対象を治療するために用いられる他のタンパク質または化合物と併用することができる。
【0162】
特定の実施形態において、本開示は、例えば、T1Dなどの自己免疫疾患を治療する方法に関する。本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(及び本開示の関連化合物)は、有害事象を低減するため又は共投与化合物の有効性を高めるために、病状を有する対象の治療に用いられる他のタンパク質又は化合物と組み合わせて使用することが可能である。
【0163】
[アレルギーへの応用]
アレルゲン特異的制御性T細胞は、アレルギーや喘息の発症を制御する上で重要な役割を担っている。内在性TReg(態様では、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含み、態様ではCD4/CD25/FoxP3制御性T細胞)は、アレルギー疾患に関与する不適切な免疫応答を抑制することが示されている。最近の多くの研究から、制御性T細胞は、動物モデルだけでなく、ヒトにおいても、感受性の高い個体におけるヘルパーT細胞2型偏った免疫応答の過剰な発達を制御する上で重要な役割を担っていることが示されている。最近の研究では、Treg、TGF-β、IL-10の分泌によりT細胞の共刺激も抑制することが示され、アレルギー性疾患の制御におけるTregの重要な役割が示唆されている。ナチュラルあるいはアダプティブ制御性T細胞の増殖障害はアレルギーの発症につながり、アレルゲン特異的Tregを誘導する治療は、アレルギーや喘息の根治療法になると思われる。喘息の予防と治療の両方のための1つの戦略は、Tregの誘導である。動物は、Th1またはTreg応答につながる免疫刺激によって、喘息の発症から保護されることができる。したがって、本開示のTレジトープ化合物または組成物は、アレルギー及び/又は喘息の予防又は治療のための方法において有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象におけるアレルギー及び/又は喘息を予防又は治療する方法であって、治療有効量の本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/または本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成に用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)を投与し、投与する前記工程によって対象におけるアレルギー及び/又は喘息を予防又は治療することを含む、方法に関する。
【0164】
[移植への応用]
本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(及び本開示の関連化合物)は、ドナー細胞に対する免疫応答を特異的にダウン制御する細胞の発生を促進することにより、移植プロセス中に寛容を誘導するのに有用である。臓器特異的自己免疫を治療するためのAg特異的TReg細胞の誘導は、全般的な免疫抑制を回避する、重要な治療開発である。骨髄移植のマウスモデルにおいて、TReg、ドナー骨髄の生着を促進し、移植片対腫瘍の免疫学的効果を損なうことなく、移植片対宿主病の発生率と重症度を減少させる。これらの発見は、マウスとヒトのTRegが表現型および機能的特徴を共有しているという観察結果と相まって、ヒト造血細胞移植に伴う合併症を減少させるためにこれらの細胞を使用することを積極的に検討することにつながった。TRegとエフェクターT細胞のアンバランスは移植片対宿主病の発症に寄与するが、免疫調節のメカニズム、特にTRegのアロレコグニション特性、他の免疫細胞への影響と相互作用、抑制活性の部位はよく理解されていない。
【0165】
ヒトと実験動物モデルの両方から蓄積された証拠により、移植片対宿主病(GVHD)の発症にTRegが関与していることが示唆されている。TRegがGVHDと移植片対腫瘍(GVT)活性を分けることができるという実証は、GVT効果に有害な影響を与えることなく GVHDを減らすために、その免疫抑制能を操作できる可能性を示唆している。抑制能を持つ様々なTリンパ球が報告されているが、最も特徴的な2つのサブセットは、天然に発生する副腎皮質内生成TReg(ナチュラルTReg)と末梢で発生する誘導性(inducible)TRegである。したがって、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)は、移植プロセス中に寛容を誘導するための方法において有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象における移植プロセス中の寛容を誘導する方法であって、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)の治療上有効な量を投与し、投与する前記工程によって対象における移植プロセス中の寛容を誘導することを含む、方法に関する。
【0166】
[寛容化剤としての応用、および自己免疫への応用]
複数の態様において、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチド(及び本開示の関連化合物)は、免疫原性化合物(タンパク質治療薬)(Weber CAら, (2009), Adv Drug Deliv, 61(11):965-76)に対する寛容化剤として使用することが可能である。この発見は、タンパク質治療薬の設計に示唆を与えるものである。したがって、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチド(及び本開示の関連化合物)と組み合わせた免疫原性化合物(例えば、モノクローナル抗体、自己サイトカイン、または外来タンパク質などのタンパク質治療薬)の投与は、有害なTエフェクター免疫応答を抑制する。生体内では、TRegが樹状細胞を通じて作用し、自己反応性T細胞の活性化を制限することにより、T細胞の分化とエフェクター機能の獲得が阻害される。活性化した病原性細胞の供給を制限することにより、TReg、自己免疫疾患の進行を防ぐ、あるいは遅らせることができる。しかし、この防御機構は、自己免疫疾患対象では不十分であるように思われる。これは、おそらく、TReg細胞の不足、および/または、長い疾患経過の間にTReg-抵抗性の病原性T細胞が発達し蓄積することが原因であろう。したがって、これらの対象における自己寛容の回復には、進行中の組織傷害を制御する能力を高めたTRegを注入するとともに、病原性T細胞をパージすることが必要かもしれない。甲状腺炎およびインスリン依存性糖尿病などの臓器特異的自己免疫状態は、この寛容機構の破壊に起因している(Mudd PAら, (2006), Scand J Immunol, 64(3):211-8)。したがって、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチド(及び本開示の関連化合物)は、自己免疫の予防又は治療のための方法において有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象における自己免疫を予防または治療する方法であって、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチド(及び本開示の関連化合物)の治療有効量を投与し、投与する前記工程によって対象における自己免疫を予防および/または治療することを含む、方法に関する。
【0167】
[糖尿病への適用]
1型(若年性)糖尿病は、インスリン産生膵臓β細胞の破壊に起因する器官特異的自己免疫疾患である。非糖尿病対象では、膵島細胞抗原特異的T細胞は、胸腺発生において削除されるか、または膵島細胞抗原に対するエフェクター応答を積極的に抑制する制御性T細胞に変換されるかのいずれかである。若年性糖尿病対象や若年性糖尿病モデルNODマウスでは、これらの寛容性機構が欠落している。寛容性機構の不存在下では、膵島細胞抗原は、ヒト白血球抗原(HLA)クラスIおよびII分子によって提示され、CD8(+)およびCD4(+)自己反応性T細胞によって認識される。これらの自己反応性細胞による膵島細胞の破壊は、最終的に耐糖能異常を引き起こす。Tレジトープと膵島抗原を併用すると、内在性の制御性T細胞が活性化され、既存の抗原特異的エフェクターT細胞が制御性表現型に変換される。このようにして、自己免疫反応の方向転換を図り、抗原特異的な適応寛容を誘導する。抗原特異的寛容の誘導により、自己由来のエピトープに対する自己免疫反応を調節することで、進行中のβ細胞破壊を防ぐことができる。したがって、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートおよび/またはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)は、糖尿病の予防または治療のための方法において有用である。そのため、複数の態様において、本開示は、対象における糖尿病を予防または治療する方法に関しており、その方法は、治療上有効な量の本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するのに用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)を投与する工程と、この投与工程により対象における糖尿病を予防または治療する工程を含んでいる。
【0168】
[B型肝炎(HBV)感染症への応用]
慢性HBVは通常、後天性(母体胎児感染による)か、成人における急性HBV感染のまれな結果である可能性がある。B型慢性肝炎(CH-B)の急性増悪は、B型肝炎コア抗原およびe抗原(HBcAg/HBeAg)に対する細胞障害性T細胞応答の増加を伴う。最近の研究では、SYFPEITHI T細胞エピトープマッピングシステムを使用して、HBcAgとHbeAgからMHCクラスII制限エピトープペプチドを予測した(Feng ICら, (2007), J Biomed Sci, 14(1):43-57)。高得点ペプチドを用いたMHCクラスII4量体(テトラマー)を構築し、TRegとCTL頻度の測定に使用した。その結果、HBcAgに特異的なTReg細胞は増悪期に減少し、HBcAgペプチド特異的細胞傷害性T細胞が増加することが示された。寛容期には、FOXp3発現TReg細胞クローンが確認された。これらのデータは、HbcAgTRegT細胞の減少が、慢性B型肝炎ウイルス感染の自然経過における自然増悪の原因であることを示唆している。したがって、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)は、慢性B型肝炎ウイルス感染の予防又は治療のための方法において有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象におけるウイルス感染(例えば、HBV感染)を予防または治療する方法であって、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)の治療有効量を投与し、投与する前記工程によって対象における前記ウイルス感染を予防および/または治療することを含む、方法に関する。
【0169】
[SLEへの適用]
全身性エリテマトーデス(SLE)又はシェーグレン症候群において役割を果たすTRegエピトープが規定されている。可溶性HLAクラスII分子との結合アッセイと分子モデリング実験から、このエピトープはプロミスキャス・エピトープとしてふるまい、多くのヒトDR分子に結合することが示された。正常なT細胞や自己免疫疾患でない対象のT細胞とは対照的に、無作為に選んだ40%のループス対象のPBMCは、ペプチド131-151に反応して増殖するT細胞を含んでいた。リガンドを変更するとT細胞応答が変化することから、このペプチドに応答するT細胞集団がいくつか存在し、その中にTreg細胞が含まれている可能性が示唆された。シェーグレン症候群では、制御性Tエピトープも定義されている。したがって、特定のSLEエピトープと組み合わせて投与されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するのに用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)は、SLEの予防または治療のための方法において有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象におけるSLEを予防または治療する方法に関しており、この方法は、治療上有効な量のTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたは本明細書に開示されているTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するのに用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)をSLEエピトープと組み合わせて投与する工程と、この投与工程により対象におけるSLEを予防および/または治療する工程を含んでいる。
【0170】
[自己免疫性甲状腺炎への適用]
自己免疫性甲状腺炎は、自己の甲状腺ペルオキシダーゼ及び/又はサイログロブリンに対して抗体が生じ、甲状腺の濾胞が徐々に破壊されることによって生じる状態である。HLA DR5は、この疾患と密接に関連している。したがって、甲状腺ペルオキシダーゼおよび/またはサイログロブリンTSHRまたはその一部と組み合わせて投与される、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するのに用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)は、自己免疫甲状腺炎の予防または処置のための方法に有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象における自己免疫性甲状腺炎を予防または治療する方法に関し、前記方法は、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたはTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)の治療有効量を、甲状腺ペルオキシダーゼおよび/またはサイログロブリンTSHRまたはその一部と組み合わせて投与する工程と、この投与工程により対象における自己免疫甲状腺炎を防止および/または治療する工程を含んでいる。さらなる複数の態様において、TSHRまたは他のバセドウ病抗原もしくはその一部と組み合わせて投与される本開示のTレジトープ組成物は、バセドウ病の予防または治療のための方法において有用である。バセドウ病は、自己甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)に対する抗体によって、甲状腺機能亢進症、または甲状腺からのホルモンの異常な強い放出につながることを特徴とする自己免疫疾患である。バセドウ病の発症には、いくつかの遺伝的要因が影響する。女性は男性よりこの病気と関連性がより高く、白人とアジア人は黒人よりリスクが高く、HLA DRB1 0301はこの病気と密接に関連している。このように、複数の態様において、本開示は、対象におけるグレーヴ病を予防または治療する方法に関しており、この方法は、治療上有効な量の本明細書に開示するTレジトープ-血液成分コンジュゲートまたはTレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成に用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)をTSHRまたは他のグレーヴ病抗原またはその一部と組み合わせて投与する工程と、この投与工程によって対象におけるグレーヴ病を予防および/または治療する工程、を含む。
【0171】
[キット]
本明細書に記載の方法は、例えば、本明細書に開示されるTレジトープ-血液成分コンジュゲート又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチド(及び本開示の関連化合物)を含む予めパッケージされたキットを利用して実施でき、例えば、臨床環境において、本明細書に記載の病状の症状又は家族歴を示している対象を治療するのに都合良く使用することができる。一実施形態では、キットは、本明細書に記載の医学的状態の症状又は家族歴を示す対象を治療するために、本明細書に開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用する改変ポリペプチド(及び本開示の関連する化合物)の使用説明書をさらに含む。
【0172】
[態様]
【0173】
第1の態様は、改変ポリペプチドに連結された血液成分を含むTレジトープ-血液成分コンジュゲートであって、前記改変ポリペプチドは、それに結合した反応性部位を有し、前記改変ポリペプチドが1または複数の制御性T細胞エピトープを含む、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0174】
第2の態様は、前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、のみからなる、態様1に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0175】
第3の態様は、前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、から本質的になる、態様1に記載のTレジトープ-血液成分のコンジュゲートに関する。
【0176】
第4の態様は、前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、を含む、態様1に記載のTレジトープ-血液成分のコンジュゲートに関する。
【0177】
第5の態様は、前記1または複数の制御性T細胞エピトープが配列番号1を含んでなる、態様1のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0178】
第6の態様は、前記1または複数の制御性T細胞エピトープが配列番号28を含んでなる、態様1のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0179】
第7の態様は、前記血液成分がアルブミンである、態様1~6のいずれか一態様のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0180】
第8の態様は、前記血液成分がヒト血清アルブミンである、態様1~6のいずれか一態様の態様のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0181】
第9の態様は、前記改変ポリペプチドがT1Dgenペプチドをさらに含む、態様1~8のいずれか一態様のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0182】
第10の態様は、T1Dgenペプチドが、配列番号56~63からなる群から選択される1または複数のアミノ配列を含む、態様9に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0183】
第11の態様は、反応性部位が改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸に結合している、態様1~10のいずれか一態様に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関したものである。
【0184】
第12の態様は、反応性部位が改変ポリペプチドのカルボキシ末端アミノ酸に結合している、態様1~10のいずれか一態様のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0185】
第13の態様は、反応性部位が、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸とカルボキシ末端アミノ酸との間に位置するアミノ酸に結合している、態様1~10のいずれか一態様のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0186】
第14の態様は、反応性部位がスクシンイミジル基又はマレイミド基である、態様1~13のいずれか一態様のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0187】
第15の態様は、反応性部位が3-マレイミドプロピオン酸部位である、態様1~14のいずれか一態様のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0188】
第16の態様は、血液成分と改変ポリペプチドとの間のコンジュゲーションがマレイミド結合である、態様1~15のいずれか一態様のTレジトープ-血液成分コンジュゲートに関する。
【0189】
第17の態様は、改変ポリペプチドに関し、前記改変ポリペプチドは、それに結合した反応性部位を有し、前記改変ポリペプチドは、1または複数の制御性T細胞エピトープを含む。
【0190】
第18の態様は、態様17の改変ポリペプチドに関し、前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、のみからなる。
【0191】
第19の態様は、態様17の改変ポリペプチドに関し、前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、から本質的になる。
【0192】
第20の態様は、態様17の改変ポリペプチドに関し、前記1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~55からなる群から選択された1または複数のアミノ酸配列、及び/又はその断片及び変異体、および、任意選択で、配列番号1~55のポリペプチドのN末端及び/又はC末端上に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸、を含む。
【0193】
第21の態様は、態様17の改変ポリペプチドに関し、前記1または複数の制御性T細胞エピトープが配列番号1を含んでなる。
【0194】
第22の態様は、態様17の改変ポリペプチドに関し、前記1または複数の制御性T細胞エピトープが配列番号28を含んでなる。
【0195】
第23の態様は、前記改変ポリペプチドがT1Dgenペプチドをさらに含む、態様17~22のいずれか一態様に記載の改変ポリペプチドに関する。
【0196】
第24の態様は、前記T1Dgenペプチドが、配列番号56~63からなる群から選択される1または複数のアミノ配列を含む、態様23の改変ポリペプチドに関する。
【0197】
第25の態様は、反応性部位が改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸に結合している、態様17~24のいずれか一態様の改変ポリペプチドに関する。
【0198】
第26の態様は、反応性部位が改変ポリペプチドのカルボキシ末端アミノ酸に結合している、態様17~24のいずれか一態様の改変ポリペプチドに関する。
【0199】
第27の態様は、反応性部位が、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸とカルボキシ末端アミノ酸の間に位置するアミノ酸に結合している、態様17~24のいずれか一態様の改変ポリペプチドに関する。
【0200】
第28の態様は、反応性部位がスクシンイミジル基またはマレイミド基である、態様17~27のいずれか一態様の改変ポリペプチドに関する。
【0201】
第29の態様は、反応性部位が3-マレイミドプロピオン酸部分である、態様17~28のいずれか一態様の改変ポリペプチドに関する。
【0202】
第30の態様は、それを必要とする対象においてT1Dに特徴的な自己免疫反応を抑制する方法に関しており、該方法は、対象に対して、態様1~16のいずれか一態様のTレジトープ-血液成分コンジュゲートを投与する工程を含んでいる。
【0203】
第31の態様は、それを必要とする対象においてT1Dに特徴的な自己免疫反応を抑制する方法に関しており、態様17~29のいずれか一態様の改変ポリペプチドを対象に投与する工程を含む方法を含む。
【0204】
第32の態様は、投与により1または複数の抗原提示細胞を制御性表現型にシフトさせる、態様30~31のいずれか一態様による方法に関する。
【0205】
第33の態様は、投与により、1または複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトさせる、態様30~31のいずれか一態様による方法に関する。
【0206】
第34の態様は、制御性表現型が、樹状細胞又は他の抗原提示細胞におけるCD11c及びHLA-DR発現の減少によって特徴付けられる、態様30~31のいずれかによる方法に関する。
【0207】
第35の態様は、制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数のT細胞を制御性表現型にシフトさせる、態様30~31のいずれかに記載の方法に関する。
【0208】
第36の態様は、1または複数の制御性T細胞エピトープの投与により、CD4/CD25/FoxP3制御性T細胞を活性化する、態様30~31のいずれかによる方法に関する。
【0209】
第37の態様は、投与により、自然免疫応答、適応免疫応答、エフェクターT細胞応答、メモリーT細胞応答、ヘルパーT細胞応答、B細胞応答、NKT細胞応答、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される免疫応答を抑制する、態様30~31のいずれかによる方法に関する。
【0210】
第38の態様は、態様1~16のいずれか一態様によるTレジトープ-血液成分コンジュゲートと、担体、賦形剤、及び/又はアジュバントとを含む医薬組成物に関する。
【0211】
第39の態様は、態様17~29のいずれか一態様によるTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成することができる改変ポリペプチドと、担体、賦形剤、及び/又はアジュバントとを含む医薬組成物に関する。
【実施例
【0212】
以下に続く実施例は、いかなる方法においても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示に照らして、特許請求の範囲内の多数の実施形態が、当業者には明らかであろう。
【0213】
(1)Tレジトープ組成物のインシリコによる同定
【0214】
T細胞は、抗原提示細胞(APC)から提示されたエピトープを、MHC(主要組織適合性複合体)クラスII分子との関連で特異的に認識する。これらのヘルパーT細胞エピトープは、MHCクラスII結合溝に適合する7~30の連続したアミノ酸からなる線形配列として表現することができる。様々な起源のタンパク質分子内のクラスIIエピトープを検出するために、多くのコンピュータアルゴリズムが開発され、使用されてきた(DeGroot AS et al,(1997), AIDS Res Hum Retroviruses,13(7):539-41; Schafer JRら, (1998), Vaccine,16(19):1880-4; De Groot ASら, (2001), Vaccine, 19(31):4385-95; DeGroot ASら, (2003), Vaccine, 21(27-30):4486-504)。ヘルパーT細胞エピトープのこれらの「インシリコ」予測は、ワクチンの設計および治療用タンパク質、すなわち、抗体ベースの薬剤、Fc融合タンパク質、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、人工タンパク質スキャフォールド、酵素、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキンおよび血栓溶解剤の脱免疫にうまく適用されている(Dimitrov DS, (2012), Methods MolBiol, 899:1-26)。
【0215】
EpiMatrix(商標)システム(EpiVax、プロビデンス、ロードアイランド州)は、クラスIおよびクラスII HLAリガンドとT細胞エピトープの予測に有用なコンピュータプログラムにコード化された一連の予測アルゴリズムである。EpiMatrix(商標)システムは、特定のアミノ酸(20)とHLA分子内の結合位置(9)の間の相互作用をモデル化するために、20x9の係数マトリックスを使用する。任意の入力タンパク質に存在する推定T細胞エピトープを特定するため、EpiMatrix(商標)システムではまず、入力タンパク質を解析して、各フレームが最後のフレームと8アミノ酸だけ重なる9量体フレームを作成する。次に、各フレームは、ヒトHLA分子、典型的には、DRB1*0101、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0701、DRB1*0801、DRB1*1101、DRB1*1301、およびDRB1*1501(Mackら, (2013), Tiss Antig, 81(4):194-203)の1または複数の共通アレルに対する予測される親和性についてスコア化される。
簡単に説明すると、任意の9量体ペプチドについて、特定のアミノ酸コード(20の内在するアミノ酸のそれぞれについて1つ)および相対的結合位置(1-9)を使用して、予測マトリックスから係数を選択する。個々の係数は、Sturniolo(SturnioloTら, 1999,NatBiotechnol, 17(6):555-61)により最初に開発されたポケットプロファイル法と類似するが同一ではない独自の方法を使用して導き出される。次に、個々の係数が合計され、生のスコアが生成される。EpiMatrix(商標)の生のスコアは、次に、ランダムに生成された非常に大規模なペプチド配列のセットから得られたスコア分布に関して正規化される。結果として得られる「Z」スコアは正規分布であり、アレル間で直接比較することができる。
【0216】
[EpiMatrix(商標)ペプチドスコアリング]
EpiMatrix(商標)「Z」スケールで1.64以上のスコア(任意のペプチドセットの上位約5%)のペプチドは、それが予測されたMHC分子に結合する可能性がかなり高いと判断された。スケールで2.32以上のスコア(上位1%)のペプチドは、結合する可能性が極めて高く、発表されているほとんどのT細胞エピトープは、このスコアの範囲に入る。過去の研究では、EpiMatrix(商標)が公表されているMHCリガンドとT細胞エピトープを正確に予測することも実証されている。(De Groot AS, Martin W. Reducing risk, improving outcomes: bioengineering less immunogenic protein therapeutics. Clin Immunol. 2009 May;131(2):189-201.doi: 10.1016/j.clim.2009.01.009. Epub 2009 Mar 6.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0217】
[プロミスキャスT細胞エピトープクラスターの同定]
潜在的なT細胞エピトープは、タンパク質配列中にランダムに分布しているわけではなく、「クラスター化」する傾向がある。T細胞エピトープ「クラスター」の長さは9から約30アミノ酸であり、複数のアレルや複数のフレームに対する親和性を考慮すると、4から40の結合モチーフを含むことになる。エピトープマッピングの後、EpiMatrix(商標)アルゴリズムによって生成された結果セットは、Clustimer(商標)として知られる独自のアルゴリズムを用いて、T細胞エピトープクラスターおよびEpiBars(商標)の存在についてスクリーニングされる。簡単に説明すると、分析された各9量体ペプチドのEpiMatrix(商標)スコアが集約され、統計的に導き出された閾値と照合される。次に、スコアの高い9量体を一度に1アミノ酸ずつ拡張する。伸長された配列のスコアは再度集計され、修正された閾値と比較される。このプロセスは、提案された拡張がクラスターの全体的なスコアを向上させなくなるまで繰り返される。複数の態様において、Tレジトープ(複数可)は、Clustimer(商標)アルゴリズムにより、T細胞エピトープクラスターとして同定されてもよい。複数の態様において、T細胞エピトープクラスターは、MHC結合とT細胞応答性の高い可能性を示す、相当数の推定T細胞エピトープとEpiBars(商標)を含んでいてもよい。
【0218】
[宿主との交差反応性のテスト]
JanusMatrixシステム(EpiVax、プロビデンス、ロードアイランド州)は、宿主プロテオームとの交差保存性についてペプチド配列をスクリーニングするために有用である。JanusMatrixは、ペプチドクラスターと宿主ゲノムまたはプロテオームとの間の交差反応性の可能性を、それらの推定MHCリガンドにおけるTCRに面した残基の保存に基づいて予測するアルゴリズムである。JanusMatrixアルゴリズムは、まず、与えられたタンパク質配列に含まれる予測エピトープをすべて考慮し、各予測エピトープを構成するアグレトープとエピトープに分割する。次に、各配列をホストタンパク質のデータベースに対してスクリーニングする。MHCに面したアグレトープが一致し(すなわち、入力ペプチドとその宿主側のペプチドのアグレトープが同じMHCアレルに結合すると予測される)、全く同じTCRに面したエピトープを持つペプチドが返される。JanusMatrixホモロジースコアは、免疫寛容に偏っていることを示唆している。治療用タンパク質の場合、自己由来のヒトエピトープと治療薬のエピトープとの間の交差保存は、そのような候補がヒトの免疫系に許容される可能性を高めるかもしれない。ワクチンの場合、ヒトのエピトープと抗原性エピトープとの間の交差保存は、そのような候補が免疫カモフラージュを利用し、それによって免疫応答を回避し、効果のないワクチンとなることを示すかもしれない。宿主が例えばヒトの場合、ペプチドクラスターはヒトゲノムやプロテオームに対してスクリーニングされ、推定上のHLAリガンドにおけるTCRに面した残基の保存性に基づいている。次に、ペプチドはJanusMatrixホモロジースコアを用いてスコアリングされる。複数の態様において、3.0を超えるJanusMatrix相同性スコアを有するペプチドは、高い寛容性の可能性を示し、そのようなものとして、本開示の非常に有用なTレジトープ組成物である可能性がある。複数の態様において、2.0未満、2.5未満、または3.0未満のJanusMatrixホモロジースコアを有するペプチドは、低い寛容性の可能性を示し、本開示のTレジトープ組成物から排除されてもよい。
【0219】
[可溶性MHCへのTレジトープの結合の評価方法]
【0220】
(ペプチドの合成)
本開示のTレジトープは、直接化学合成により、または組換え法により製造される(J Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (2ED, 1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Springs Harbor, NY (Publ)、ここにその全体が参照により組み込まれる)。サンプルTレジトープは、21st Century Biochemicals(マールボロ、マサチューセッツ州)における本発明の発明者の指導および指示の下、Fmoc-化学基(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基合成)を用いて調製される。特定の複数の態様において、Tレジトープは、N末端アセチル基及びC末端アミノ基でキャップされる。選択されたTレジトープのHPLC、質量分析及びUVスキャン(それぞれ純度、質量及びスペクトルを確保する)分析は、典型的には80%超の純度を示す。
【0221】
アミノ酸分析は、予測された組成を確認するために、第三者契約者(New England Peptide,Inc,ガードナー、マサチューセッツ州)によって行われる。
【0222】
マススペクトル及び分析用HPLC分析は、第2の独立した請負業者(21St Century Biochemicals, Inc.、マールボロ、マサチューセッツ州)により行われ、Tレジトープの組成をさらに確認する。
【0223】
[HLA結合アッセイ]
結合活性は、EpiVax(プロビデンス、ロードアイランド州)で分析される。使用される結合アッセイ(Steere ACら, (2006), J Exp Med, 2003(4):961-71)は、ペプチド-MHC親和性の間接的な尺度をもたらす。可溶性HLA分子は、非標識実験Tレジトープおよび標識コントロールペプチドとともに96ウェルプレートにロードされる。結合混合物が定常平衡に達すると(24時間後)、HLA-Tレジトープ複合体を抗ヒトDR抗体でコートしたELISAプレート上に捕捉し、ユーロピウム結合プローブ(PerkinElmer、Waltham、MA)で検出する。結合した標識コントロールペプチドの時間分解蛍光は、SpectraMax(登録商標)M5ユニット(Spectramax、Radnor、PA)で評価する。実験的Tレジトープの結合は、標識コントロールペプチドの阻害率(実験的蛍光/対照蛍光を100倍した値)として表される。各実験用Tレジトープの阻害パーセント値(モル濃度範囲にわたって)は、それが標識対照Tレジトープの特異的結合の50%を阻害する濃度、すなわちTレジトープのIC50を計算するために使用される。TレジトープはDMSOに溶解される。希釈したTレジトープを水性緩衝液中で結合試薬と混合し、100,000nMから100nMまでの最終濃度を得ることができる。選択されたTレジトープは、5つの一般的なクラスII HLAアレル:HLA-DRB1*0101、HLA-DRB1*0301、HLA-DRB1*0701、HLA-DRB1*1101、およびHLA-DRB1*1501のパネルに対してアッセイされる。各濃度における標識コントロールペプチドの阻害率から、線形回帰分析を用いて各Tレジトープ/アレル組合せのIC50値を導出する。
【0224】
このアッセイでは、実験用Tレジトープは、100nM以下の濃度でコントロールペプチド結合の50%を阻害する場合、非常に高い親和性で結合すると考えられ、100nMと1,000nMの間の濃度でコントロールペプチド結合の50%を阻害する場合は高い親和性と考えられ、1,000nMと1万nMの間の濃度でコントロールペプチド結合の50%を阻害する場合は中程度の親和性と見なされる。低親和性ペプチドは、10,000nMから100,000nMの間の濃度でコントロールペプチド結合の50%を阻害する。100,000 nM以下のいかなる濃度でもコントロールペプチド結合の50%以上を阻害できず、用量反応を示さないペプチドを非結合体(NB)とする。
【0225】
このアッセイにおいて、Tレジトープは、100nM以下の濃度でコントロールペプチド結合の50%を阻害する場合、非常に高い親和性で結合すると考えられ、100nMと1,000nMの間の濃度でコントロールペプチド結合の50%を阻害する場合、高い親和性で結合し、1,000nMと10,000nMの間の濃度でコントロールペプチド結合の50%を阻害する場合、中程度の親和性であると考えられている。低親和性ペプチドは、10,000nMから100,000nMの間の濃度でコントロールペプチド結合の50%を阻害する。100,000nM以下の任意の濃度でコントロールペプチド結合の少なくとも50%を阻害せず、用量反応を示さないペプチドは、非結合体(NB)とみなされる。
【0226】
[実施例1.HLAクラスII分子への結合によるペプチドの特徴]
【0227】
可溶性MHC結合アッセイは、先に記載した方法に従って、本開示のTレジトープに対して行われる。IC50値(nM)は、6点阻害曲線から導かれる。
【0228】
EpiMatrix(商標)予測、算出されたIC50値、結果の分類は、各TレジトープおよびHLAアレルについて報告される。宿主プロテオーム間で交差反応性であると予測されるTレジトープ-アレルの組み合わせは、特に注目される。これらのTレジトープ-アレル間の相互作用のうち、90%はHLAと結合し、これらのTレジトープがヒトPBMCアッセイにおいて測定可能な反応を引き起こすことを示している。これらの知見に基づいて、Tレジトープはさらなる試験のために選択される。
【0229】
[ペプチド曝露されたAPCの表現型を評価するための方法]
【0230】
抗原提示細胞(APC)によるクラスIIHLA(HLA-DR)およびCD86の表面発現は、APCがT細胞応答を調節する一つの方法である。クラスIIHLA表面マーカーの発現は、Tレジトープ、特に対照Tレジトープ167(21stCenturyBiochemicals、マールボロ、MA)に応答して低下することが以前に証明されている。さらに、表面マーカーCD86の発現の減少は、Treg機能の向上と正の相関がある(ZhengYら、JImmunol、2004、172(5):2778-84)。このアッセイでは、選択されたTレジトープを含む候補Tレジトープが、プロAPC、特に樹状細胞の表面上のクラスIIHLAおよび共刺激分子CD86の発現をダウンレギュレートする能力について試験される。
【0231】
Tレジトープが、EpiVax(EpiVax、プロビデンス、ロードアイランド州)で以前に開発した独自のAPC表現型分析法を使用して調節可能性について個別にテストされる。以前に採取され凍結されたPBMCは、通常の方法で解凍され、chRPMIに懸濁される。EpiVaxからの発明者の指示および指導の下、HLAタイピングは、ハートフォード病院(コネチカット州ハートフォード)により、EpiVaxから提供された細胞材料の少量の抽出サンプルに対して実施される。アッセイ0日目に、0.5x10の細胞を抽出し、表面マーカーCD11c(樹状細胞に特有のマーカー)の存在についてスクリーニングし、表面マーカーHLA-DRおよびCD86の存在についてフローサイトメトリーで分析されるであろう。残りの細胞は、プレーティング(chRPMI+800ul培地中の4.0x10細胞/mL)し、選択した4つのペプチドの1つ、または緩衝液のみを含むポジティブおよびネガティブコントロールで刺激する(50μg/mL)(ネガティブコントロール)。Tレジトープ 167(ポジティブコントロール)(21st Century Biochemicals、マールボロ、MA)、Flu-HA306-318(ネガティブコントロール)(21ST Century Biochemicals、マールボロ、MA)及びOva323-339(ネガティブコントロール)(21st Century Biochemicals、マールボロ、MA)などを含む、選択されたペプチド又はポジティブコントロール及びネガティブコントロールのうちの1つで刺激する。プレーティングされた細胞は、37℃で7日間インキュベートされる。アッセイ7日目に、インキュベートされた細胞は、表面マーカーCD11cの存在についてフローサイトメトリーによりスクリーニングされる。CD11c陽性細胞は、次に表面マーカーHLA-DRおよびCD86の存在について分析される。実験ペプチドは、5人の異なるヒトドナーから採取されたサンプルでテストされる。
【0232】
実験に使用する全血サンプルは、全て、IRB 07115プロトコル(Clinical Partners、Johnston、ロードアイランド州)の下で健康なドナーから供給され、従来のFicoll(登録商標)(GE Healthcare)分離勾配を用いて白血球を分離するか(Noble PB and Cutts JH, Can Vet J, 1967, 8(5):110-11) 、または健康なドナーから得た全血から白血球をろ過するためにロードアイランド血液センター(プロビデンス、ロードアイランド州)から白血球減少フィルターが入手されている。全血をフィルターに通した後、フィルターを逆方向に流し、回収された白血球をフィルターから押し出す。その後、通常のフィコール分離勾配を用いて白血球を分離する。回収された白血球は、その後、将来の使用のために冷凍保存される。アッセイに使用するために必要な場合、凍結した白血球は、従来の方法で解凍される。
【0233】
樹状細胞の表現型に対する推定Tレジトープへの曝露は、複数の手段で測定される。まず、各実験条件について、CD11cとHLA-DRの表面発現を対比させたドットプロットを作成する。すべてのコントロールペプチドと実験ペプチドに暴露した細胞のドットプロットは、培養液のみに暴露したコントロール細胞のドットプロットに重ね合わせる。この重ね合わせは、Tレジトープで刺激した細胞と刺激していないCD11c-high細胞の間のHLA-DR分布のシフトを視覚的に観察する有効な方法となる。観察されたHLA-DRの分布のシフトは、定性的な指標として報告される。次に、各ドットプロットのCD11c-ハイセグメントについて、HLA-DR発現強度の変化を計算する。HLA-DR発現強度の変化率は、ペプチド曝露細胞のHLA-DR発現の平均蛍光指数(MFI)から培地暴露細胞のHLA-DR発現のMFIを引いたものを、培地暴露細胞のHLA-DR発現のMFIで割って100倍したもの
HLA-DRMFIpeptide-HLA-DRMFImediaHLA-DRMFImedia*100)
または(HLA-DRMFIペプチドHLA-DRMFI培地HLA-DRMFI培地×100)
に等しくなる。それぞれのペプチド刺激剤に対する変化率を比較する。次に、CD11c高発現集団の中に存在するHLA-DR低発現細胞の割合の、培地コントロールに対する変化率を、各ペプチドについて計算する。HLA-DR-low細胞の割合の変化率は、ペプチド曝露細胞のHLA-DR-lowの割合から培地曝露細胞のHLA-DR-lowの割合を引いたものを、培地曝露細胞のHLA-DR-lowの割合で割って100倍したもの
HLA-DR-lowpeptide-HLA-DR-lowmediaHLA-DR-lowmedia*100)
または(HLA-DR-低ペプチドHLA-DR-低培地HLA-DR-低培地×100)
となるように、計算される。このアッセイでは、観察されたHLA-DRMFIの負の変化と、CD11c-高発現集団に存在するHLA-DR-low細胞の割合の正の変化は、HLAの発現低下と制御性APC表現型へのシフトを示唆する。データは、ビヒクルが媒体であるHLA+およびHLA-各ペプチド刺激物の%を比較するために使用される。
【0234】
同様の方法で、T細胞の活性化を促進することが知られているコスティミュレーション分子であるCD86の表面発現に対するTレジトープ曝露の影響も評価する。まず、各実験条件について、CD11cとCD86の表面発現を対比するドットプロットを作成する。すべてのコントロールおよび実験用Tレジトープに暴露した細胞のドットプロットを、培養液のみに暴露したコントロール細胞のドットプロットに重ね合わせる。この重ね合わせは、Tレジトープで刺激された細胞と刺激されていないCD11c-高発現細胞の間のCD86分布のシフトを視覚的に観察する効果的な方法となる。観察されたCD86の分布のシフトは、定性的な指標として報告される。次に、各ドットプロットのCD11c-ハイセグメントについて、CD86-高発現の強度の変化を計算する。CD86-高発現の強度の変化率は、ペプチド曝露細胞に対するCD86発現の平均蛍光指数(MFI)から培地暴露細胞に対するCD86-高発現のMFIを引いたものを、培地暴露細胞に対するCD86発現のMFIで除して100倍したもの
CD86-highMFIpeptide-CD86-highMFImediaCD86-highMFImedia*100)
または(CD86-高MFIペプチドCD86-高MFI培地CD86-高MFI培地×100)
に等しくなる。次に、CD11c高発現集団の中に存在するCD86低発現細胞の割合の変化率を算出する。CD86-high細胞の割合の変化パーセントは、ペプチド曝露細胞に対するCD86-highの割合から、培地暴露細胞に対するCD86-highの割合を引いたものを、培地暴露細胞に対するCD86-highの割合で割ったものを100倍したもの
CD86-low%Ipeptide-CD86-lowmediaCD86-lowmedia*100)
または(CD86-低ペプチドCD86-低培地CD86-低培地×100)
に等しくなる。このアッセイでは、観察されたCD86MFIの負の変化と、CD11c-高発現集団に存在するCD86-low細胞の割合の正の変化は、CD86の発現が減少し、制御性APC表現型へのシフトがあることを意味する。
【0235】
[実施例2.ペプチド露出型APCの特性評価]
【0236】
樹状細胞表現型決定アッセイは、先に述べた方法に従って、選択したTレジトープに対して行うことができる。5人のヒトドナーの各々で試験した各実験条件に対応するドットプロットを作成する。
【0237】
一連のドットプロットが生成され、ドットプロットは、様々なペプチド刺激剤の存在下で、5人のドナーについてアッセイ7日目に分析されたCD11対HLA-DRの表面発現を表す。CD11c+/HLADR+集団の下方への移動が、培地対照と比較して、強力なTレジトープで処理したサンプルで明らかになり、獲得した制御表現型が示される。Tレジトープ167(ポジティブコントロール)及び他のペプチドのいくつかは同様に反応するが、観察されたシフトは、他のより強力なTレジトープでより顕著である。
【0238】
一連のドットプロットが生成され、様々なペプチド刺激剤の存在下で5人のドナーについてアッセイ7日目に分析されたCD11c対CD86の表面発現を表している。CD86-低細胞の増加は、媒体対照と比較した場合、強力なTレジトープで処理したサンプルに表われ、獲得された制御表現型へのシフトを示す。樹状細胞表現型アッセイは、強力なTレジトープへの曝露が、試験した5人の対象すべてにおいてHLA-DRの発現を減少させることを実証している。さらに、5人のうち4人の対象において、強力なTレジトープへの曝露は、CD11c-highコホート中のCD86-lowの存在比率を増加させることがわかった。両方の傾向は、獲得した制御表現型へのシフトを示す。
【0239】
[制御性T細胞の増殖に対するペプチドの効果の評価方法]
【0240】
EpiVax(プロビデンス、ロードアイランド州)が行った以前の研究では、ポジティブコントロールTレジトープ167(21st Century Biochemicals, Marlboro, MA)を含む既知のTレジトープへの曝露後、制御性T細胞の増殖が増加することが実証された。このアッセイでは、本開示のTレジトープを含むTレジトープは、CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞の間の増殖を誘導する能力について試験される。過去に採取し凍結したPBMCを解凍し、従来の方法で調整したchRPMI(3.3x10細胞/mL)中に懸濁させる。細胞はCFSE(Cat#:65-0850-84、Affymetrix、サンタクララ、CA)で染色し、1ウェルあたり30万の細胞でプレーティングする。プレートは一晩インキュベートする(37℃、5%CO)。アッセイ1日目に、Tレジトープおよびコントロールペプチドを滅菌DMSOで再構成し、最終ストック濃度20mg/mLとする。EpiVax(エピバックス、ロードアイランド州プロビデンス)で行われた以前の滴定実験により、0.5μg/mLの破傷風トキソイド(TT)(Astarte Biologics、ワシントン州ボセル)で刺激すると、健康対照ドナー(ロードアイランド血液センター、ロードアイランド州プロビデンス)から採取したPBMCにおいて、測定可能なCD4+エフェクター記憶T細胞応答を誘発することが立証されている。 破傷風トキソイドストック(100μg/mL)(Astarte Biologics、ボセル、WA)は、1μg/mLの作業濃度(2x濃度)をもたらす調整済みchRPMIで希釈される。プレーティングした細胞(100μLの培地中)を、100μLの調整済みchRPMI(ネガティブコントロール)、100μLの破傷風トキソイド溶液(2x溶液、ポジティブコントロール)(AstarteBiologics、ボセル、WA)、100μLの2991μL破傷風トキソイド溶液の希釈液+9μLTレジトープ溶液、100μLの2997μL破傷風トキソイド溶液の希釈液+3μLTレジトープ溶液、または100μLの6998.2μL破傷風トキソイド溶液の希釈液+1.8μLTレジトープ溶液のいずれかで刺激する。並行して、同数の同じ細胞を含むコントロールウェルは、Tレジトープ溶液の場合と同様に調製したコントロールペプチド溶液でインキュベートする。その後、全てのプレートをさらに6日間インキュベートする。アッセイ5日目に、各ウェルから100μLの上清を除去し、新たに調整したchRPMIに交換される。
【0241】
FoxP3、CD25、グランザイムBおよび増殖の上昇レベルを示す高度に活性化された制御性T細胞が選択される。高度に活性化された制御性T細胞のためのゲーティング戦略は、CD4+T細胞が、上昇したCD25、グランザイムB、FoxP3、および低いCFSE(増殖)に対してゲーティングされることを含む。TTを添加しない代表的なアッセイの結果を、0.5μg/mlのTTを添加した代表的なアッセイの結果と比較する。
【0242】
[実施例3.Tレジトープは、高度に増殖性で活性化された制御性T細胞の集団を強く誘導する]
【0243】
制御性T細胞増殖アッセイを、先に記載した方法に従って、本開示のTレジトープに対して実施する。高度に活性化されたグランザイムB陽性CD4+T細胞(CD25+グランザイムB+)に対するゲーティングは、それらのサブセットが高度に増殖性の制御性T細胞(CFSE低FoxP3+)で構成されていることを示す。強力なTレジトープがこの集団の相対的割合を増加させる一方、コントロールペプチドは有意な効果を示さない。この高度に活性化されたGranzyme B陽性の制御性T細胞集団の増加は、複数のドナーの異なるTレジトープが示すエフェクターT細胞の阻害の程度と密接に相関しており、TレジトープがエフェクターCD4+細胞に対して阻害効果を持つ場合にのみ相対数が顕著に増加する。これは、強力なTレジトープの阻害メカニズムに、細胞傷害性制御性T細胞が関与していることを示唆している。全体として、このデータは、強力なTレジトープが、グランザイムBに富む高増殖性活性化制御性T細胞の集団を強く誘導することを実証している。
【0244】
[CD4+エフェクターT細胞の増殖に対するペプチド効果の評価方法]
【0245】
PBMC細胞集団内に含まれるCD4+エフェクターメモリーT細胞は、既知のT細胞エピトープによる刺激に応答して増殖するように誘導される。Tレジトープは、複数のHLA分子に結合し、曝露されたAPC(Clinical Partners、Johnston、ロードアイランド州)において制御表現型を誘導することができる。競合阻害HLA結合アッセイの結果は、ペプチド-MHC親和性の間接的な測定値を提供する(Steere ACら、J Exp Med、(2006)、203(4):961-71、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。実験Tレジトープの結合は、標識コントロールペプチドの阻害パーセント(実験蛍光/対照蛍光に100を乗じた値)として表される。各実験用Tレジトープの阻害パーセント値(モル濃度の範囲にわたって)は、それが標識コントロールペプチドの特異的結合の50%を阻害する濃度を算出するために使用される。この値はIC50と呼ばれる。5つのHLA-DR1タイプにわたるTレジトープのHLA結合結果およびIC50は、複数のHLAクラスIIタイプにわたるTレジトープの結合の高い親和性を示している。
【0246】
この実験の目的は、直接(TRegの係合及び活性化)又は間接(APC表現型の調節)手段のいずれかによって、抗原刺激CD4+エフェクターメモリーT細胞の増殖を抑制するTレジトープの能力を確立することである。最初の研究では、コントロールペプチドがネガティブコントロールとして使用される。その後の研究では、Tレジトープの性能は、Tレジトープが由来する同種のペプチドと比較される。
【0247】
過去に採取し凍結したPBMCを解凍し、従来の方法で調整したchRPMI(3.3x10細胞/mL)中に懸濁させる。細胞はCFSE(Cat#:65-0850-84、Affymetrix、サンタクララ、CA)で染色し、1ウェルあたり30万の細胞でプレーティングする。プレートは一晩インキュベートする(37℃、5%CO)。アッセイ1日目に、Tレジトープペプチドおよびコントロールペプチドを滅菌DMSOで再構成し、最終ストック濃度20mg/mLとする。EpiVax(エピバックス、ロードアイランド州プロビデンス)で行われた以前の滴定実験により、0.5μg/mLの破傷風トキソイド(TT)(Astarte Biologics、ワシントン州ボセル)で刺激すると、健康対照ドナー(ロードアイランド血液センター、ロードアイランド州プロビデンス)から採取したPBMCにおいて、測定可能なCD4+エフェクター記憶T細胞応答を誘発することが立証されている。 破傷風トキソイドストック(100μg/mL)(Astarte Biologics、ボセル、WA)は、1μg/mLの作業濃度(2x濃度)をもたらす調整済みchRPMIで希釈される。プレーティングした細胞(100μLの培地中)を、100μLの調整済みchRPMI(ネガティブコントロール)、100μLの破傷風トキソイド溶液(2x溶液、ポジティブコントロール)(AstarteBiologics、ボセル、WA)、100μLの2991μL破傷風トキソイド溶液の希釈液+9μLTレジトープ溶液、100μLの2997μL破傷風トキソイド溶液の希釈液+3μLTレジトープ溶液、または100μLの6998.2μL破傷風トキソイド溶液の希釈液+1.8μLTレジトープ溶液のいずれかで刺激する。並行して、同数の同じ細胞を含むコントロールウェルは、Tレジトープ溶液の場合と同様に調製したコントロールペプチド溶液でインキュベートする。その後、全てのプレートをさらに6日間インキュベートする。アッセイ5日目に、各ウェルから100μLの上清を除去し、新たに調整したchRPMIに交換される。
【0248】
アッセイ7日目に、細胞をインキュベーションから除去する。細胞は、生死識別のため、表面マーカーCD127、CCR7、CD4、CD45RA、及びCD25のため、並びに細胞内FoxP3のために標識される。染色された細胞は、さらに通常の方法でFACS解析のために準備される。細胞はまず、凝集塊と死細胞を除去するためにゲーティングされる。生細胞はCD4 T細胞のためにゲーティングされ、その後のすべての解析はこの集団に対して行われる。活性化されたTエフェクター集団は、CD4+/CD25-高/FoxP3-中(CD4+/CD25-high/FoxP3-intermediate)(CD4+/CD25hi/FoxP3int)として同定される。この同定されたTエフェクター細胞集団の並行分析では、この主要な集団の増殖は、CD45RA-低かつCCR7-低(CD45RA-low and CCR7-low)エフェクターメモリーT細胞に対応することが示される。主要な増殖集団は、Tエフェクターメモリー表現型(CD45RA-低/CCR7-低)(CD45RA-low/CCR7-low)に対応する。
【0249】
CD4+/CD25-high(CD4+/CD25hi)T細胞の増殖は、CFSE染色(Cat#:65-0850-84、Affymetrix、サンタクララ、カリフォルニア)の希釈から推定し、増殖%はCFSE-low(CFSElo)集団により決定される。
【0250】
[実施例4A.Tレジトープペプチドは、CD4+エフェクターT細胞の増殖及び活性化を抑制する]
【0251】
増殖刺激剤(破傷風トキソイド)がTレジトープと共送達されたときのCD4+エフェクター細胞の活性化及び増殖の変化を測定し、主にTエフェクター記憶細胞からなるCD4+T細胞の増殖応答を特徴付けることができる。
【0252】
T細胞増殖アッセイは、先に記載した方法に従って、本開示のTレジトープに対して実施される。活性化及び増殖について試験された各実験条件に対応するドットプロットが生成される。活性化について試験した実験条件のドットプロットは、Tレジトープペプチドが、破傷風トキソイドに反応する活性化エフェクターCD4+ T細胞(CD4+/CD25-高/FoxP3-中間、 CD4+/CD25hi/FoxP3int として表示)の集団を用量依存的に強く抑制し、コントロールペプチドは評価できる効果を持たないことを示している。同じ実験で、Tレジトープによって活性化されたCD4+ T細胞(CFSE low細胞)の増殖は、Tレジトープペプチドによって用量依存的に強く抑制されるが、コントロールペプチドはほとんど影響を及ぼさない。破傷風トキソイドは活性化した(CD25 high)CD4 T細胞の集団を刺激して増殖させ(CFSE low)、その約90 %は活性化した細胞も増殖させる。この高活性化細胞集団は、Tレジトープペプチドによって用量依存的に活発に抑制されるが、コントロールペプチドには活性化CD4細胞に対する有意な抑制作用はない。
【0253】
さらに、CD4+及びCD4-生細胞に対するゲーティングは、細胞増殖に対するTレジトープの抑制効果が、CD4-集団よりもCD4+集団に対してより顕著であることを実証している。Tレジトープは、CD4-T細胞の増殖を用量依存的に抑制する。ネガティブコントロールペプチドは、CD4-集団に対してほとんど抑制効果を示さない。
【0254】
[実施例4B.Tレジトープペプチド及びその相同ペプチドは、CD4+エフェクターT細胞の増殖を抑制する]
【0255】
さらに、正常なドナーのPBMCにおけるTTへのCD4+T細胞エフェクターメモリー応答に対する、Tレジトープの由来である相同ペプチドを有するTレジトープの抑制効果が、比較、分析、評価される。
【0256】
2人の正常なドナーに由来するPBMCのTTに対する想起応答に対するTレジトープペプチド及び相同ペプチドの効果を評価するために設計された研究が実施される。使用されるプロトコルは、以前に記載されている。Tレジトープ濃度は、5、10、15、および20μg/mlの範囲である。Tレジトープは、濃度依存的にTTに反応するCD4+T細胞の活性化およびTeffの増殖を阻害する。CD4+T細胞の活性化は、20μg/ml(11mM)で80-90%減少する。相同ペプチドをTTと一緒に添加すると、CD4+T細胞のメモリー応答(CD4+T細胞の活性化およびTeffの増殖)の両方を濃度依存的に阻害する。CD4+T細胞の活性化は、20μg/ml(11mM)で50-70%減少する。T細胞集団は、テストした濃度範囲にわたって、Tレジトープペプチドまたは相同ペプチドのいずれかの所定のペプチド濃度について、5~20%より強い阻害効果(CD4+増殖およびTeff活性化の両方について)で応答する。Tレジトープとそのホモログとの間のペプチド配列の類似性は、それらの並列T細胞阻害機能とともに、Tレジトープが由来するタンパク質に対する抗原特異的寛容性が、ホモログの置換タンパク質に対する寛容性を刺激する有用な方法であることの証拠である。このアッセイでは、Tレジトープペプチドと相同ペプチドとの両方が、CD4+T細胞の増殖を抑制し、TエフェクターT細胞を用量依存的に活性化させる。
【0257】
[CD8+エフェクターT細胞に対するTレジトープペプチドの効果を評価するための方法]
【0258】
PBMC細胞集団内に含まれるCD8+エフェクターメモリーT細胞は、既知のクラスI T細胞エピトープによる刺激に応答して増殖が誘導される。Tレジトープは、複数のHLAアレルと結合し、露出したAPC(Clinical Partners、Johnston、ロードアイランド州)において制御表現型を誘導する(採用したゲーティング戦略により、全血ドナーから収集したPBMC中のAPC画分を同定することが可能である)。このアッセイの結果は、Tレジトープが、直接(TRegの係合および活性化)または間接(APC表現型の調節)のいずれかの手段によって抗原刺激CD8+TエフェクターメモリーT細胞の増殖を抑制する能力を立証する。
【0259】
T細胞増殖アッセイは、本開示のTレジトープを、先に述べた方法に従い、行われる。2人の健康なドナーからのPBMCを解凍し、通常の方法で調整したchRPMI(3.3x10細胞/mL)に懸濁する。細胞はCFSE(Cat#: 65-0850-84、Affymetrix、サンタクララ、CA)で染色し、1ウェルあたり30万の細胞でプレーティングする。プレートは一晩インキュベートする(37℃、5%CO)。アッセイ1日目に、Tレジトープを滅菌DMSOで再構成し、最終ストック濃度20mg/mLとする。chRPMI中最終濃度が2倍のTレジトープの中間溶液を、前述のように調製する。Tレジトープの最終濃度は、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL及び20μg/mLで試験される。CD8+刺激抗原として、ヒトサイトメガロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、及びインフルエンザウイルスに由来する23種のMHCクラスI制限ウイルスエピトープからなるCEFペプチドプールを使用する。CEFペプチドをウェルに添加し(2μg/mLのデータを示す)、前記ウェルには、細胞を含む培地(コントロール)、又は、細胞と0μg/mL、1μg/mL、2μg/mL又は4μg/mLの本開示のTレジトープを有する培地を使用する。全てのプレートを、さらに6日間インキュベートする。アッセイ5日目に、100μLの上清を各ウェルから除去し、新たに調整したchRPMIに置き換える。
【0260】
従来の方法で、生死マーカー、細胞外マーカーCD4、CD8およびCD25、CD127、CD45RAおよびCCR7、ならびに細胞内マーカーFoxP3について、細胞を染色する。FACS解析後、細胞をゲーティングし、凝集塊や死細胞を除去する。生細胞集団上で、CD8およびCD4細胞を別々にゲートし、各集団を、先に説明したように、増殖(CFSE低集団)または活性化(CD25-高/FoxP3低/中間)に関して分析する。従来の方法で、生死判定マーカー、細胞外マーカーCD4、CD8α、CD25、CD127、CD45RA、CCR7、細胞内マーカーFoxP3について染色する。FACS分析後、細胞をゲーティングし、凝集塊や死細胞を除去する。生細胞集団について、CD8αおよびCD4細胞を別々にゲーティングし、それぞれの集団について、先に説明したように増殖(CFSElow集団)または活性化(CD25-高/FoxP3低/中:CD25-high/FoxP3 low/intermediate)を分析する。
【0261】
[実施例5.Tレジトープペプチドは、CD8+エフェクターT細胞の増殖を抑制する]
【0262】
健康なドナーからのPBMCをCEFペプチド混合物で刺激したときのTレジトープペプチドによるCD8+T細胞応答の潜在的阻害が試験される。Tレジトープは、CD8+細胞の活性化と同様に、CEFペプチドに対するCD8+T細胞増殖応答を強く阻害する。増殖性CD8+T細胞の割合(CFSE low)および活性化CD8+Tエフェクター細胞の割合(CD25hi FoxP3int/lo)は、Tレジトープの濃度の増加とともに減少し、TレジトープはCD8+T細胞集団に対して抑制効果を有することも実証する。いずれの場合も、Tレジトープは用量依存的に反応を強く抑制する。
【0263】
(7)Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの作製
【0264】
Tレジトープと血液成分(アルブミンなど)との連結(linkage)は、Tレジトープペイロードのためのキャリアタンパク質として有用である。本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートは、in vivoにおけるTレジトープの半減期を延長し、Tレジトープを急速なタンパク質分解から保護し、Tレジトープを循環からの急速なクリアランス及び/又は急速な腎排泄から保護し、対象の身体全体にTレジトープ-血液成分コンジュゲートの広い分布を可能にし得る。適切な免疫細胞(マクロファージやAPCなど)へのTレジトープの送達を助け、特定の免疫細胞(マクロファージやAPCなど)のエンドサイトパスウェイによってTレジトープを処理することを可能にし、及び/又は前記免疫細胞によるTレジトープの抗原としての提示を補助する。
【0265】
Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、本発明で開示のTレジトープペプチドを改変することによって形成され、Tレジトープペプチドに反応性部位を付加して改変型Tレジトープペプチドを作成し、次いで、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号に開示されているように、このポリペプチドに反応性部位を付加して改変型Tレジトープペプチドを形成し、改変Tレジトープペプチドの反応性部位と血液成分上の反応性官能基との間に結合を形成させる。アルブミンは、Tレジトープ-アルブミンコンジュゲートをマクロファージおよびAPCなどの適切な細胞に運ぶFc新生児結合ドメインを含むので、好ましい血液成分である。さらに、アルブミンは、アミノ酸34(Cys34)(ヒトセリンアルブミンのアミノ酸配列におけるアミノ酸の位置)にシステインを含み、pKaが約5の遊離チオールを含み、アルブミンの好ましい反応性官能基として機能し得る。アルブミンのCys34は、改変Tレジトープペプチドの好ましい反応性部位であるマレイミドプロピオンアミド(MPA)と安定なチオエステル結合を形成することができる。アルブミンとMPAで改変されたTレジトープペプチドとの間の安定なチオエステル結合は、生理的条件下で切断されることはない。
【0266】
Tレジトープペプチドは、好ましくは、配列番号: 1~55 から選択される。1または複数のリジンがTレジトープペプチドのN末端上に存在してもよく、例えば配列番号:1~55から選択されるペプチドのN末端上に付加されてもよい。ポリエチレングリコールリンカー(例えば、PEG2またはPEG12)などのリンカーは、1または複数のリジンとTレジトープ配列の間、またはTレジトープ配列のN末端に存在する。複数の態様において、カテプシンB部位などのリソソーム切断部位(任意にバリンおよびシトルリンからなる(N末端からC末端まで順次)切断部位)は、PEG2部分とTレジトープ配列の間、および/または1または複数のTレジトープ間に存在する。複数の態様において、1または複数のTレジトープが構築物上に存在してもよく、任意でリンカーよりもC末端に近接していてもよい。複数の態様において、1または複数のリソソーム切断部位は、複数のTレジトープ間に存在する(例えば、単一のリソソーム切断部位が2つのTレジトープを分離するように、または1つのリソソーム切断部位が第1および第2のTレジトープ間に存在し、別のリソソーム切断部位が第2および第3のTレジトープ間に存在するように、等)。複数の態様において、糖尿病における免疫原性に関連する1または複数の抗原ペプチド(「T1Dgen」ペプチド;例えば、PPI由来ペプチド)が、構築物上に存在してもよく、任意にリソソーム切断部位によって1または複数のTレジトープから分離される。複数の態様において、1または複数のリソソーム切断部位は、複数のT1Dgenペプチド間に存在する(例えば、単一のリソソーム切断部位が2つのT1Dgenペプチドを分離するように、または1つのリソソーム切断部位が第1および第2のT1Dgenペプチド間に存在し、別のリソソーム切断部位が第2および第3のT1Dgenペプチド間に存在するように、等)。マレイミドベースの化学を使用して、改変Tレジトープペプチドを血液成分、好ましくは血清アルブミンに、1:1のモル比で共有結合させてもよい。改変Tレジトープペプチドを血液成分に連結することは、in vivoまたはex vivoで実施することができる。
【0267】
カテプシンBは、リソゾームのシステインプロテアーゼファミリーの中で最初に報告されたメンバーである。カテプシンBはエンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼの両方の活性を持ち、後者の場合はペプチジルジペプチダーゼとして作用する。カテプシンBは、Tレジトープが抗原提示細胞内のリソゾームコンパートメントに存在するときに、アルブミンからのTレジトープの適切な切断を促進するためにTレジトープペプチド設計に組み込まれてもよい。バリン-シトルリンはカテプシンBの切断部位であり、以前から抗体薬物複合体(例えば、ブレンツキシマブ・ベドチンのモノメチルアウリスタチンE(MMAE)複合体)において良好に使用されてFDAに承認されている。この部位を組み込むこと意義は、APCに入った後、効率的なMHCクラスII提示のために、ヒト血清アルブミンからTレジトープを適切に開裂させる開裂部位を提供することである。
【0268】
[実施例6.Ex vivoコンジュゲーションによるTレジトープ-アルブミンコンジュゲートの作製]
【0269】
ペプチド合成には、標準的なFmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基)固相ペプチド化合物を使用する。合成はIntavis(商標) MultiPep(商標)自動ペプチド合成機で行われる。アミノ酸は、不溶性ポリスチレン樹脂に結合した状態で、成長するペプチド鎖に段階的に添加される(C末端からN末端へ、右から左へ)。アミノ末端をFmoc基で保護したアミノ酸ビルディングブロックは、カルボン酸末端の活性化の後、1または複数の縮合試薬(例えば、ヘキサフルオロリン酸アザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HATU)、O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸(HCTU))で成長している鎖にカップリングされる。各添加時の反応副生成物は、溶媒洗浄(6X、ジメチルホルムアミド(DMF))により除去する。各カップリングおよびキャッピング工程の後、ペプチド樹脂のピペリジン脱保護によりFmocを除去し(2倍実施;Asp脱水を抑制するため、DMF中20% 体積/体積 0.1M HOBt)、樹脂をDMF 6xで洗浄し、次のアミノ酸を添加する。Tレジトープ配列のN末端にはカテプシンB切断部位が組み込まれている。
【0270】
PEG2構築物(「PEG2」または「P2」)の場合、所望のTレジトープペプチドが完成した後、PEG2部位がN末端に付加され、その後4のリジンがN末端に付加される。さらに、PEG2とリジン(リジン側鎖の一級アミンを介して)は、最終構築物の溶解度を増加させると予測される。PEG2構築物の組成は表1(下)に示されている。
【0271】
【表1】
【0272】
PEG12構築物(「PEG12」または「P12」)の場合、Tレジトープペプチド合成後にPEG6が2つ追加される。この場合、リジンは付加されない。PEG長を長くすることで、カテプシンBのドッキング領域を確保し、Tレジトープの溶解性を向上させる。PEG2構築物の組成を表2(下)に示す。
【0273】
【表2】
【0274】
その後、少量のペプチド構築物を樹脂から除去し、TIS(トリイソプロピルシラン、5%)および水(2.5%)の存在下、トリフルオロ酢酸(TFA、92.5% v/v)で処理し、側鎖保護基を消去してペプチドサンプルを切断および脱保護化する。各粗直鎖状ペプチド(約3~5mg)を、20mmx50mm、5μm、ハイドロスフェアカラム(YMC C18)を用いた分取逆相HPLC(Gilson)で精製する。ペプチドは、90%以上の純度まで精製し(分析用HPLCで決定)、カテプシンBの評価の前に、ABI-SCIEX QSTAR XL Pro Qo-TOF マススペクトロメーターを使用して質量を確認した。残りのペプチド(PEG2-TレジトープおよびPEG12-Tレジトープ)は、後日3-マレイミドプロピオン酸(MPA)を添加するために樹脂上に残される。
【0275】
組換え体ヒトカテプシンB(R&D Systems(商標)のカタログ953-CY)は、Tレジトープペプチドに組み込まれたVal-Cit部位の切断を評価するために使用される。活性測定プロトコルはR&D Systems(商標)の推奨に従い、0.01μgのrhカテプシンBと10uMのペプチド基質の最終測定条件で使用される。カテプシンBと精製ペプチドをインキュベートした後(RTで15分間)、Qstar XL Pro(商標)を用いたマススペックでペプチドを評価する。PEG2ペプチドの切断は成功せず、カテプシンBのプロトコルをさらに変更しても切断は成功しなかったと判断される。PEG12製剤については、切断が成功することが実証される。
【0276】
カテプシンBによるVal-Cit部位の切断を評価した後、3-マレイミドプロピオン酸(MPA)の反応性部位をPEG2およびPEG12ペプチドのN末端に付加する。アミノ酸ビルディングブロックと同様に、MPAはFmoc基で保護され、カルボン酸末端の活性化後に成長する鎖に結合される。最終的なMPA-Tレジトープ構築物は、樹脂から除去され、ペプチドサンプルは、TIS(トリイソプロピルシラン、5%)および水(2.5%)の存在下、トリフルオロ酢酸(TFA、92.5% v/v)で処理して切断および脱保護化される。各粗直鎖状ペプチド(約20mg)を、20mmx50mm、5μm、ハイドロスフェアカラム(YMC C18)を用いた分取逆相HPLC(Gilson)で精製する。MPAペプチドは、90%以上の純度で精製し(分析用HPLCで決定)、質量はABI-SCIEX QSTAR XL Pro(商標)Qo-TOF質量分析計で確認される(データは示していない)。MPA-P2およびMPA-P12Tレジトープの合計15mgは、rHSA(Albucult-Novozyme(商標))へのコンジュゲーションに使用され、最終的にHSA-Tレジトープコンジュゲートが形成される。
【0277】
エルマン試薬(5,5’-ジチオ-ビス-[2-ニトロ安息香酸])は、システインなどのスルフヒドリル基含有化合物の標準曲線と比較することにより、サンプル中のスルフヒドリル基を推定するために使用される。エルマンテストは、分析の精度を確保するために、複数の濃度のrHSA(Sigma(商標)、Albucult(R))で実施される。エルマン試薬(Sigma(商標))、Sigma(商標)ロットRF-009のrHSAは、マレイミドとのコンジュゲーションに利用できるであろう遊離システインについて評価される。表3(下)に示すように、rHSAの78%に遊離システインが存在すると推定される。
【0278】
【表3】
【0279】
ペプチドはdH20に可溶化し、rHSAを加え(15mg/mL)、100mMリン酸バッファーを加えて最終pHを8にする。ペプチド/HSAは、室温で2時間、その後4℃で約24-30時間インキュベートされる。
【0280】
コンジュゲーション工程の後、HSA-コンジュゲートをまずPBS(pH7.0)に室温で2時間透析し、次に新鮮なPBSに4℃で18~24時間、2回入れ替える。このプロセスにより、HSAおよびHSA-Tレジトープコンジュゲート調製物から過剰なペプチドが除去される。
【0281】
各コンジュゲートについてエルマンテストを実施し、rHSA遊離システインを介したペプチドのコンジュゲーションを実証し、反応におけるコンジュゲーションの効率を決定する。HSA-コンジュゲーション調製物は、既存の調製物に内在する還元型HSA(メルカプタブミン)を除去しない(コンジュゲーション前のHASの約22%)。残りの未反応HSAは、HSA-MPA_P2-Tレジトープ構築物について14%と決定され、これはマレイミド-Tレジトープとのコンジュゲーション後に14%遊離のシステインが残っていることを意味する。したがって、全rHSA調製物の~64%が、MPA_P2-Tレジトープペプチドと反応させられる。
【0282】
追加のTレジトープ-アルブミン結合体には、図1及び図2のものが含まれる。
【0283】
(8)Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの免疫細胞への影響評価法
【0284】
マレイミド系化合物が、Tレジトープペイロードを1:1の化学量論で組換えHSA(rHSA)に対して共有結合させるために使用されてもよい。マレイミドプロピオンアミド(MPA)は、HSAの遊離Cys34と安定なチオールエステル結合を形成する。HSAは新生児受容体(FcRn)のリサイクル経路を活用し、結合したペイロードの半減期を増加させ、反復投与の必要性を減少させる可能性がある。また、rHSAはコンジュゲートされたペイロードをリンパ節に送達し、FcRnを発現する樹状細胞や他の抗原提示細胞によってエンドサイトーシスされることが知られている。
【0285】
EpiVaxは、Tレジトープ間に切断部位を含むrHSA-Tレジトープコンジュゲートを設計した。この切断部位は初期エンドソームプロテアーゼに特異的であり、これによりTレジトープがrHSA分子から遊離し、細胞表面でのMHCクラスII提示の効率が高まる。このFDA認可のrHSAコンジュゲーションケミストリーの長い歴史と実証された手法、およびその成功した製造実績は、我々のT1Dペイロードの送達のための選択を支持している。
【0286】
Tレジトープ-血液成分コンジュゲートが形成されると、例えば、実施例6および実施例の(7)、並びに詳細な説明に記載したように、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートと、Tレジトープペプチド単独と比較して、例えば、エフェクターT細胞の抑制及び制御性T細胞の活性化とそれらの増殖における有効性について評価することができる。さらに、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、特定の抗原に対する免疫寛容を誘導する能力について評価されてもよい。
【0287】
[実施例7.Tレジトープ-アルブミン送達ビヒクルの抑制効果の評価]
【0288】
Tレジトープ送達ビヒクルの抑制効果を調べるために、健康なドナーPBMCを破傷風トキソイドバイスタンダー抑制試験(TTBSA)に使用し、CD4T細胞の増殖、T細胞の活性化、Tエフェクターと制御性T細胞の頻度について分析を行い、図3に示すようにTreg/Teffの比率を決定する。
【0289】
そこで、臨床応用に向けた最適なTレジトープの組み合わせを検討するため、in vitroにおけるエフェクターT細胞応答を相乗的に抑制するTレジトープの組み合わせの効果を分析した。これらの比較を容易にするために、ヒトドナー末梢血単核細胞(PBMC)を用いたハイスループットin vitroアッセイを開発した。このアッセイは、破傷風トキソイドバイスタンダー抑制試験(TTBSA)と呼ばれ、破傷風トキソイド(TT)ワクチン接種歴のある人に誘発される破傷風に特異的なTメモリー細胞を抑制するTregの能力を利用するものである。
【0290】
0日目にPBMCをインキュベートしカルボキシフルオレセインサクシンイミドエスエル(CFSE)色素で染色した。1日目に、培地、破傷風トキソイド、および8μg/mL、6μg/mL、24μg/mLのTレジトープ、または10μg/mL、40μg/mL、100μg/mLのTレジトープ-アルブミンコンジュゲートを添加し、細胞を刺激する。破傷風トキソイドは0.5μg/mLの最終濃度で使用し、Tレジトープの阻害能力を測定するために、濃度を方法的に滴定し、最適化される。培地のみを含むネガティブコントロールも含まれる。7日目に、L/D細胞集団マーカー、細胞外染色剤、細胞内染色剤を添加する。8日目に、読み出しが行われる。活性化マーカー(例:CFSE、CD25)および細胞集団マーカー(例:L/D、CD2c、CD4、FoxP3)の解析のためのセルソーティングアッセイが実施される。
【0291】
ドナーPBMCとTTのインキュベーションは、Tエフェクター細胞の膨張を刺激する。TレジトープをTTと共にin vitroでPBMCに添加し、CD25高FoxP3高制御性T細胞を活性化し、TT特異的なTエフェクター細胞の増殖を抑制する。Tレジトープは、CD4+Tエフェクター細胞の増殖(CFSE希釈により測定)と活性化(CD25発現により測定)を用量依存的に著しく阻害し、またTreg(CD25+/FoxP3+/CD127低)をわずかに増殖するが、これはTreg/Teff細胞の比率が上昇することにより示唆されている。エフェクターT細胞増殖の減少は、例えばin vivoでのTregの誘導によって支持されるように、制御性T細胞の活性化及び/又はTT特異的TエフェクターのTregへの転換の直接的な結果である。
【0292】
TTBSAを用い、多数の利用可能なTレジトープのそれぞれを個別に、あるいはペアワイズの組み合わせで、CD4+T細胞増殖を抑制する可能性について検討する。最も有望なIgG-Tレジトープペプチドは、さらなる試験のために選択される。ある特定のTレジトープ、Tレジトープ 289(配列番号1)は、他の単一のTレジトープと比較して、TTBSAにおいて最も抑制的な活性を有する単一のTレジトープである。Tレジトープ289およびTレジトープ084(配列番号28)を組み合わせることで、さらに大きなTT特異的T細胞増殖抑制作用が観察される(図4A及びB参照)。Tレジトープ289およびTレジトープ 084をrHSAに結合させると、in vitroでの効果が向上する(図5A及びB参照)。
【0293】
このように、TTBSAを用いることで、本開示のHSA-Tレジトープコンジュゲートは、CD4T細胞の増殖と活性化を抑制し、Teff細胞に対するTreg細胞の比率を増加させることが示されている。
【0294】
[実施例8.予め形成された共役HSA-Tレジトープ治療薬及びマレイミド-Tレジト
ープペプチド治療薬の有効性の評価]
【0295】
前もって形成されたコンジュゲートHSA-Tレジトープコンジュゲートと遊離マレイミド-TレジトープペプチドのOVA免疫応答への影響を評価する。後者の遊離マレイミドペプチドは、注射後、反応性マレイミド基を介して、対象の内在性HSAの遊離Cys34と生体内でコンジュゲーションを形成している。MPA-P2およびMPA-P12の5mgを遊離-MPA-Tレジトープとして使用し、サンプル中の未抱合HSAは、抱合HSAと未抱合HSAのモル比を計算することで説明する。
【0296】
マウス(雌のC57BL/6)が50mgのオバルブミン(OVA)(皮下注射)で0日目(CFA)および14日目(IFA)に免疫化される。あらかじめ形成されたHSA結合処理物は、0日目のCFAでOVAと一緒に投与される。試験群には、OVA/HSA-P2-highとOCA/HSA-P2-lowがある。1回の注射で、OVAは50μg、HSAは800μg、HSA-P2H(high)コンジュゲートは825μg(~20μg Tレジトープ)である。HSA-P2L(low)コンジュゲートは100μg(~3.7μg Tレジトープ)である。4つの対照群には、PBSのみ、PBS/OVA、HSA/OVA、およびTレジトープ/OVAが含まれる。最後の群は、遊離マレイミドTレジトープペプチドの有用性を評価するために含まれており、尾静脈に静脈内投与される。1群あたり5匹のマウスを使用する。
【0297】
マウスは17日目に屠殺する。屠殺時点で、各動物について心臓から出血と脾臓が採取される。OVAで刺激した脾臓細胞について、IFNγ/IL2フルオロスポットアッセイ、IFNγ/IL17フルオロスポットアッセイ、CD4 T細胞増殖、およびT細胞特性評価を実施する。PHAは脾臓細胞アッセイのポジティブコントロール刺激として使用される。PHA刺激では、すべてのウェルがコンフルエントである。刺激後のSFC(スポット形成細胞)がネガティブコントロール(培地ウェル)に対して50スポット/10より大きくなければならず、また2より大きい刺激指数を持たなければならないという許容基準が用いられる。IFNγ/IL2 fluorospotおよびIFNγ/IL17 fluorospotアッセイの双方において、処理によってIFNγ産生が阻害され、HSAのみの対照群は処理群と比較して阻害が少ない。
【0298】
T細胞増殖および特性評価アッセイのために、脾臓細胞サンプルは、TCR Tg細胞におけるFoxP3発現の誘導と、CFSE希釈によるOVA特異的T細胞増殖の抑制(in vitroにおけるOVAペプチドへの反応)について評価される。FoxP3+ Tregを検出するために、排出リンパ節の単細胞懸濁液を2.4G2 mAb(anti-CD16/32、ATCC)で15分間インキュベートしてFcRをブロックした後、抗CD3、CD4、CD25、抗クロノタイプKJ1-26で4℃、40分間染色した。KJ1-26はDO11.10トランスジェニックマウスで発現するクロノタイピングTCRに特異的である。その後、細胞を透過処理し、FoxP3核発現を染色し、Thermo Attune NxT Autosampler(商標)でFACS分析を行う。CD4+ CD25+ FoxP3+ KJ1-26+ 生細胞ゲート集団(gate population)を確立し、PBSまたはHSA単独と比較したOVA-特異的制御性T細胞の数および割合を決定する。
【0299】
抗原特異的T細胞増殖は、CFSE希釈により評価する。排出リンパ節を採取し、細胞増殖色素CFSEで染色し、単細胞懸濁液を2x10細胞/mLで調製する。細胞は、10μg/mL濃度のOVA323-339(New England Peptide、ガードナー、MA、USA)の存在下で、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加される。細胞は72時間刺激し、CD3α、CD4、CD8、CD54RA、CCR7、CD25、CD127、IFNγ、HLA-II、CD69、CD154、IL-17、IL-21で4℃、40分間染色するために採取される。細胞を固定し、透過処理し、FoxP3発現を染色し、フローサイトメトリーで解析する。OVA特異的なKJ1-26+ CD4+ CD25+ FoxP3+アダプティブ(変換型)制御性T細胞は、rHSAで処理したマウスと比較して、遊離マレイミド-レジトープおよびHSA-レジトープコンジュゲートで処理したマウスで増加する。遊離マレイミド-TレジトープおよびHSA-Tレジトープコンジュゲートは、rHSA単独と比較して、KJ1-26+ CD4+Tエフェクター細胞のOVA特異的増殖をより効果的に減少させる。
【0300】
17日目に採取した出血からの血清中の抗OVA抗体を、連続希釈プロットおよび抗体濃度を決定するための標準ELISAを含むELISAによって評価する。HSA-結合体および遊離マレイミドで処理したマウスは、異なる希釈における吸光度、ならびに標準曲線上の吸光度の比較によって示されるように、無処理と比較して低い血清抗体価を有する。
【0301】
(9)1型糖尿病の予防及び治療におけるTレジトープ-血液成分コンジュゲートの有効性を評価する方法
【0302】
Tレジトープが膵島抗原に対する抗原特異的寛容を誘導することの実証は、糖尿病治療の分野に根本的な影響を与え、T1Dにおけるインスリン治療の必要性を廃する可能性がある;HT-T1Dの追加の応用は、膵島移植後の機能保存を含む可能性がある。
【0303】
IgGの可変ドメインのFc及びフレームワークに見出されるTレジトープは、複数のMHCクラスII分子に結合し、in vitro及びin vivoで共投与抗原(Ag)に対する炎症反応を抑制する6つのナチュラルTRegエピトープの集合である。Tレジトープと標的抗原(Agの共送達は、Ag特異性の鍵である。高用量IgG静注療法(IVIG)に含まれるTレジトープは、ヒトやマウスで見られるように、CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞を活性化する可能性がある。自己免疫疾患の治療に広く用いられているIVIGの効果をTレジトープが(部分的に)説明する可能性がある。Tレジトープの作用機構は、8つの独立した研究室および広範囲のモデル(Scottら(AI疾患モデル)、Najafianら(移植)、KhouryおよびElyaman(多発性硬化症)、MingozziおよびHui、UniQure(炎症性腸疾患)、Moingeonら(アレルギー))で検証された。
【0304】
Tレジトープに関するEpiVaxによる初期の研究は、共投与された抗原に対する抗原特異的寛容の誘導を指摘した。公開された研究は、Tレジトープ特異的ナチュラルTReg(nTReg)が、自己反応性エフェクターの活性を阻害することによって、及び/又はTeffの表現型をaTRegに変えることによって、Tエフェクター応答を調節するようであることを示している。このデータに基づいて、本発明者らは、Tレジトープが同じAPCによって標的Agと共同処理され、共同提示される場合、循環するnTRegのサブセットを活性化してaTRegを誘導するとの仮説を立てた。最近、アレルギーモデルにおけるTRegトランスファー実験により、Tレジトープ治療の抗原特異性と有効性が再確認された。
【0305】
Tレジトープは、マウス研究におけるバラバラのIVIG効果に対する統一的なメカニズムを提供する可能性がある。IVIGの抗炎症活性は、Fc-γ受容体、新生児Fc受容体(FcRn)の遮断、または新規細胞表面受容体DC-SIGNおよびDCIRとの相互作用に起因するとされてきた。しかし、Tレジトープによる制御性T細胞の誘導は、皮膚移植やEAEにおけるIVIG治療後のIgGによるT細胞表現型の変化やaTRegの増加をよりよく説明するものである。また、Tレジトープは、ヒトの自己免疫疾患におけるIVIGの新しい作用機序を提供する。IVIGにおけるTレジトープによるTRegの関与は、IVIGがin vivoでTRegの拡大を誘導し、IgG由来ペプチド(Tレジトープと類似)が免疫抑制効果を有するという報告を解明する可能性がある。
【0306】
Tレジトープはまた、モノクローナル抗体(mAb)開発の分野を著しく変化させた。mAbにおけるTレジトープの存在は、臨床における免疫原性の低下と関連している。TレジトープはmAbでパルスされたAg提示細胞から溶出されている。EpiVaxは、Tレジトープ調整されたスコアに基づいてmAbの臨床免疫原性を予測するリスク評価ツールを開発した。
【0307】
HSA-Tレジトープ(HT)は、多数の自己免疫疾患の治療を変革する可能性がある。組換えrHSA-Tレジトープ医薬品は、味の素社(カリフォルニア州サンディエゴ)においてGMP下で大規模に生産することができる。
【0308】
本発明者らは、T1D標的抗原(HT-T1D)を有する組換えアルブミン送達ビヒクルに2つの非常に有効なTレジトープを結合させることにより、PPI抗原単独よりも有効なT1D抗原特異的寛容性を誘導し、T1Dのマウスモデルにおいて膵島細胞抗原特異的寛容性を誘導して膵島細胞の破壊を停止する可能性を有していると仮定している。
【0309】
以下の実施例9に記載のHT-T1D療法では、Tレジトープ 配列番号1及び配列番号28(本開示の例示的Tレジトープとして)をプレプロインスリンペプチド(PPI)配列番号56でrHSAに化学結合させる。Tレジトープ含有療法は、用量範囲研究のために糖尿病の発症前に投与され、POCのために糖尿病の発症後に投与される。経験豊富な免疫学者や医薬品開発の専門家の指導の下、GLP条件下でin vivoのネズミモデルのHT-T1D治療の効果を検証し、生産をスケールアップし、医薬品の安全性と毒性を評価するために確立された方法を適用し、ヒトへの治療および予防へのシフトを支援する。
【0310】
[実施例9.in vivoでのrHSA-Tレジトープコンジュゲートタンパク質との共呈示による抗原特異的寛容性]
【0311】
簡単に述べると、2つのTレジトープを含む組換えrHSA-Tレジトープコンジュゲートタンパク質を、糖尿病の発症中にPPIペプチドと併用してNODマウスに投与し、糖尿病の進行に対する併用療法の影響をテストする。糖尿病動物は、血糖値200~350mg/dlの確認が得られた後に治療する。2つのTレジトープ+PPIを有するrHSAで治療したマウスは、未治療またはrHSA治療した対照群と比較して、経時的に血糖を有意にコントロールできることが期待される。31日目から49日目までの平均血糖値は、rHSA単独群と比較して、2つのTレジトープ+PPIを含むrHSA群で有意に低くなると予想される。重度の糖尿病(BG>600)または死亡は、Tレジトープ-コンジュゲート-PPI薬物治療併用群ペプチドにおいて、より低い頻度または有意な遅延で発生すると予想される。群間のBG絶対値の統計的差異は、p値0.05未満と予想される。この研究は、rHSAがTレジトープの有効な送達ビヒクルであり、PPIペプチドと共投与すると、HT-T1Dの組み合わせがNODにおいて>7週間まで血糖を低下させることを実証している。
【0312】
[実施例10.T1Dのin vivoモデルにおけるHT+T1D標的抗原(PPI)を試験するための最適な用量及び治療レジメンの同定]
【0313】
NODマウスによって許容されるHT-T1D(rHSAを含む)の用量が決定される。さらに、自然発症の自己免疫性糖尿病のよく特徴付けられたNODマウスモデルにおいて、どの用量が2回投与レジメンで糖尿病の発症を防ぐことができるかの決定がなされる。NODマウスはヒトアルブミンに不寛容性であるが、以前の研究でTレジトープをrHSAと融合させたところ、以前の研究では耐容性があり、T1Dの予防および治療研究において糖尿病の発症を有意に防止することができることがわかった。
【0314】
まず、NODにおける4群のパイロット予防研究において、HT及びHT-T1Dコンジュゲートの寛容性及び初期効果について、約20~30週間続く試験が行われる。8週目に、NODマウス(雌;8匹/群)を4つの治療群に分け、各群は、0/1日及び14/15日に対照rHSA、HT(Tレジトープ 配列番号1及び28を含む)及びHT-T1D(PPIペプチド配列番号56を含む)の2回の日割注射(two split day injections)を受ける。Tレジトープは、HTおよびHT-T1Dの両方について、それぞれ100μg(Tレジトープ合計200μg)投与される。rHSAは、rHSA対照群について同量で投与される。マウスは30週まで追跡し、糖尿病の発症を確認する。ケージサイドの観察は毎日行い、非空腹時血糖値、臨床状態、体重は週2回評価する。BGが常に600以上の状態が続く場合(BG≧600を5回)、過度(初期体重の20%以上)の体重減少、または病的な様子が見られた場合、マウスは安楽死させる。治療群には無治療とrHSA対照がある。HT及びHT-T1Dの反復注射は、TRegエピトープの存在により、有意な副作用なく耐えられると考えられ、両製剤とも30週終了時のBG値が250mg/dL以下となるマウス数で判断して、糖尿病の発症を抑制することが期待される。
【0315】
次に、NODマウスの同じよく確立された予防的T1Dモデルにおいて、HT及びHT-T1Dの低用量(25μg/Tレジトープ;合計50μg)及び高用量(100μg/Tレジトープ;合計200μg)の複数の処理についての試験が行われる。ただし、本試験のパラメータは、寛容性および初期有効性試験の結果に従って変更されている(例えば、追加用量の追加や、rHSAに対する反応性が知られているNODでは高用量の寛容性が十分でない可能性があるなど)。8週齢から、NODマウス(雌;16匹/群)を8つの治療群に分け、各群は0/1日、14/15日、28/29日、42/43日に4回の日割り注射を受ける。各群は以下に示すように処理され、20週間にわたり糖尿病の発症を追跡する(またはそれ以上)。Tレジトープを含むコンジュゲートは、最低用量が各Tレジトープペプチドを少なくとも25μg含むように投与され、rHSAはネガティブコントロール処置として与えられる。血糖値(BG)は週2回、最長20週間まで測定・記録し、2回連続でBG値が250mg/dL以上であれば糖尿病とみなす。rHSA-PPI A23-C2はHT-T1Dと比較する。予防試験では、無治療の場合、20週までにNODマウスの少なくとも50%、最大で80%が糖尿病を発症する。1群16匹でHT-T1Dを投与した場合、NOD T1D予防モデルにおいて50%の差(60%から30%の浸透率)を観察する統計的検出力が80%になると予想される。HT(rHSA-Tレジトープ)投与は、PBSまたはrHSA対照投与マウスと比較して、NODマウスの糖尿病発症を抑制することが期待される。T1D疾患抗原PPIペプチドをrHSA-Tレジトープコンジュゲートに結合させる(HT-T1D)ことにより、BGレベルおよび膵島炎(insulitis)の発生を制御し、糖尿病の進行を著しく防止することが期待される。
【0316】
全体として、PPIペプチド配列番号56を有するrHSAコンジュゲート-Tレジトープ(HT-T1D)は、NODマウスにおける予防研究において、拡張可能な用量及びレジメンで糖尿病の発症を有意に予防すると予想される。
【0317】
[実施例11.HT-T1Dコンジュゲートのスケールアップ及び治療研究のための特性評価]
【0318】
研究用グレードのHT-T1Dの大規模な製造及び特性評価を行う。コンジュゲートの特性評価には、HPLC精製、コンジュゲーションパーセントの評価、HPLCによるin vitroペプチド切断の検証を含み得る。D011.10マウスにおける適応寛容の誘導とNODマウスモデルにおけるT1D予防の両方において、HT-T1Dの有効性を実証する予定である。GMPグレードのHT-T1Dを50g製造することに成功する。GMPグレードのHT-T1Dの50gの製造が生じる。
【0319】
[実施例12.ヒトT1Dの治療モデルにおけるHT-T1Dコンジュゲートの効果の実証]
【0320】
HT-T1Dは、糖尿病性NODマウスにおける治療用in vivo試験で評価される。上記のようなHT-T1Dの特徴は、NODマウスの治療的T1Dモデルで試験される。NODマウスは、ヒトの臨床疾患の多くの特徴を再現し、HT-T1Dをin vivoで試験する可能性を提供するため、T1Dを自発的に発症する系統が選択される。糖尿病が発症すると、NODマウスはHT-T1D群または複数の対照群に割り当てられる。T1Dの進行を示す臨床パラメータ(血糖値、体重減少、死亡率)は、治療の有効性の指標として経時的にモニターされる。
【0321】
9週齢から、合計246匹のNOD/ShiltJ雌マウスを、HT-T1D治療研究への登録のためにモニターする。血糖値を週2回測定し、血糖値(BG)レベルが200~350mg/dLであるマウスは、翌日に再検査を受ける。2日連続でこの範囲のBG値が確認された場合、マウスは直ちに試験に登録され、各グループに14匹のマウスが入るまでローリング方式で試験グループに割り当てられる。試験に使用しないマウスは安楽死させる。試験に登録されたマウスは、0/1、14/15、28/29、42/43日目に皮下注射で被験物質の分割投与(投与量は上記のように決定される)を受ける。8つの処置群には、未処置(PBS);rHSA;Tレジトープペプチド(配列番号1および28);rHSA-Tレジトープ(「HT」;Tレジトープペプチド配列番号1および28);rHSA-PPI(Tレジトープペプチド配列番号1および28;PPIペプチド配列番号56);rHSA-スクランブルTレジトープ-PPI(配列番号1および28からスクランブルしたTレジトープペプチド;PPIペプチド配列番号56);およびrHSA-Tレジトープ-PPI(「HT-T1D」;Tレジトープペプチド配列番号1および28;PPIペプチド配列番号56)であった。
【0322】
臨床的観察及び体重測定は、週単位で行う。研究開始0日目以降に行われる注射については、治療による毒性の兆候を確認するために、注射後1、2、4時間でケージサイドの観察を行う。血糖値および体重は週2回測定する。猫背、毛羽立ち、体重減少が20%以上のマウスは、安楽死させる。安楽死させた動物について、心臓穿刺により血液を採取し、PBMCを分離する。細胞は、SOPに従って表現型および活性化状態マーカー(CD3、CD4、CD8、CD62L、CD45RA、CD25、CD127、FoxP3、IFNγ、CD69、IL-17およびIL-21)に対する抗体で標識し、固定化してフローサイトメーターで分析し、CD8およびCD4メモリー、エフェクターおよび制御性T細胞の状態を判断する。血清中のペプチドCの濃度はELISA法により測定する。膵臓は、リンパ球浸潤とTRegの存在を後で組織学的に調べるために採取し、固定する。試験は投与開始後60日間継続する。試験の終了時に、残りの動物を犠牲にし、組織サンプルを病理学のために収集する。
【0323】
治療試験において、治療を行わない場合、登録されたNODマウスの100%が糖尿病を発症する。HT-T1Dで1群14匹のマウスで治療すると、態様では、治療研究のNODマウスモデルで50%の差(60%から30%の浸透度まで)を観察する統計的検出力76.5%があると期待される。時系列解析のために、利用可能なすべてのマウスのBG測定値が集計される。BGで定義されない試験エンドポイントに到達したマウス(moribund)には、最大BGレベル(600)を割り当てる。各時点での群間差およびBG測定値の時間的変化の差は、(i)t検定、(ii)Mann-Whitney U検定、(iii)1000回の並べ替えを用いたノンパラメトリック差検定を用いて評価する。各時点における2群間のBG絶対値の比較は、p値<0.05で統計的に有意であるとみなされる。HT-T1Dによる処置は、PBS-またはrHSA-処置した対照マウスと比較して、NODマウスにおける糖尿病の発症を遅延させるかまたは逆転させることが期待される。
【0324】
[実施例13.HT-T1Dの生体内分布、薬物動態、及び免疫毒性の評価]
【0325】
HT-T1Dの抗原特異性及び標的免疫調節効果を確認するために免疫毒性試験を行う。hFCRn/alb-/-/scidトランスジェニックマウスを使用してHT-T1Dの薬物動態(PK)を評価する。
【0326】
C57BL/6マウスへの異なる経路(皮下(SQ)、静脈内(IV)、腹腔内(IP)、または筋肉内(IM))による投与後のIRまたはNIR色素で標識したrHSA -T1Dの生体内分布を評価する。マウスは、注射後の異なる時点でLiCor Odyssey CLx赤外線イメージングシステムで撮像される。異なる注入経路について、1グループあたり6匹のマウスが存在する。標識されたHT-T1D薬剤は、SC、IP、IV、IMによってマウスに注入され、0、0.5h、1h、3h、8h、24h、48hの時間における分布が解析される。HT-T1Dは皮下投与では主にリンパ節に分布し、IP、IV、IM投与では肝臓に分布することがわかった。SC投与が最適である。
【0327】
ヒトでの試験を行うことを見越して、ヒトFcRn結合のHT-T1D血漿レベルへの影響を定義するために、ヒトトランスジェニックマウスを用いた薬物動態(PK)試験が実施される。hFCRn/alb-/scid (JAX cat. No. 031644)は、FcRnα鎖のノックアウトアレルを持ち、ヒトFcRnプロモーターの制御下でヒトFcRnα鎖トランスジーンを発現し、アルブミンが欠損し、免疫不全にあるマウスである。これらのマウスは、内因性マウス血清アルブミンとの競合なしにHT-T1DコンジュゲートのFcRnへの結合を試験するのに適したモデルである。免疫不全は、これらのマウスがマウス及びヒト血清アルブミンに対して寛容性がないため、マウスがいかなる抗薬物抗体も産生することを阻害する。
【0328】
8-10週齢のマウスを、15匹の雄マウスと15匹の雌マウスの2つのグループに割り当てる。各群は、PBS中のHT-T1D SCの低用量(25μg)または高用量(100μg)のいずれかを鼠径部のひだで受け得る。1、4、10、14、21日目の各日に、1群あたり雄3匹、雌3匹から0.4mLの全血をEDTAに、0.4mLの全血をクエン酸抗凝固剤に採取する(心臓穿刺による全血は合計0.8mL)。採取した血液は遠心分離し、血漿を採取して-70℃で保存し、HT-T1D濃度の推移を測定する。このELISAは、rHSAに対して上昇させた抗体を用いて行われる。HT-T1Dは、SQ注射後に測定したhFCRn/alb-/-/scidマウスの血清中で半減期が延長することが予想される。これらのマウスは、ヒトにおけるrHSAの半減期の最良のモデルである。
【0329】
他の抗原に対する全身性免疫応答に対するTレジトープ誘導型適応寛容の潜在的な劇症的免疫調節効果(免疫毒性)は、インフルエンザワクチン接種に対するT細胞及び抗体応答に対するHTの効果を測定することによって評価される。in vivoマウスモデルにおいて、共投与抗原に対するHTの効果を示すために、C57BL/6マウスにおいて、OVA抗原の免疫に対する反応がHTとの共投与によりダウンモジュレートされるOVA免疫原性アッセイを開発されている。HT-T1D免疫療法が他の無関係な抗原に対する免疫応答を低下させるかどうかに対処するため、3アーム試験でC57BL/6雌マウスのFluzoneインフルエンザワクチンに対するよく特徴付けられたマウスメモリーTおよびB細胞応答に対するその効果について試験が行われる。アームA:アジュバント(モンタニド);アームB:アジュバント中のTFP(21日目から);アームC:アジュバント中のOVA(21日目から);アームD:OVA+TFPアジュバント中(21日目開始);アームE:アジュバント中のフルゾン(1日目及び14日目免疫);アームF:アジュバント中のフルゾン+TFP(1日目及び14日目免疫);アームG:アジュバント中のフルゾン(1日目及び14日目免疫)、アジュバント中のTFP(21日目免疫、反対側のフランク(opposite flank);アームH:アジュバント中のフルゾン+TFP(21日目免疫)。アジュバント中のフルゾン+(免疫化1日目及び14日目)、アジュバント中のOVA(免疫化21日目、反対側のフランク);アームI:アジュバント中のフルゾン(免疫化1日目及び14日目)、アジュバント中のOVA+TFP(免疫化21日目、反対側のフランク)。
【0330】
フルゾン(小児用5μg)を、第1日目および第14日目に鼠径部の折り目にアジュバントとともに皮下注射する(インフルエンザワクチン接種)。日目に、アジュバント中のOVA(50μg)を、対応するアームにおいてHTとともに又はHTなしで注射する。28日目に動物を犠牲にし、脾臓と血清を採取する。OVA及びインフルエンザ(フルゾン)に対する抗体をELISAにより測定し、OVA及びインフルエンザHAに対するT細胞応答を、実施例8と同様に評価する。OVAと共投与されたHT-T1Dは、フルゾンに対する記憶免疫応答に影響を及ぼさない一方で、このAgに対する応答を特異的にダウンモディレートすることが期待される。さらに、HT-T1Dコンジュゲートは、抗原と共投与された場合、HTコンジュゲートの改善された安定性、延長された半減期、及び改善された免疫特異性を示すことが期待される。
【0331】
[実施例14.標準的な毒性及び安全性試験におけるHT-T1Dコンジュゲートの評価]
【0332】
遺伝毒性試験、単回投与及び反復投与毒性試験並びに標準的な安全性試験を含む、標準的な毒性及び安全性試験を実施する。これらの試験は、ヒトでの第I相臨床試験に向けた前臨床評価の追加情報を提供するために、HT-T1D製剤を用いて実施される。
【0333】
パイロット試験では、hFCRn/alb-/-/scid マウスを雄2匹、雌2匹の5群に分けた。投与はHT-T1D(皮下注射)の単回投与によって行い、各群は1時間の観察後に前の群の反応に基づいて増量された投与を受ける。投与後、5日間観察する。
【0334】
急性毒性試験のために、hFCRn/alb-/-/scidマウスを雄6匹と雌6匹の5群(対照2匹+処理3匹)に割り当てる。投与はPBS中単回皮下注射投与とし、その後14日間観察する。臨床症状は毎日、体重は毎週モニターする。血液学的検査、凝固検査、血液化学的検査は、犠牲となったすべての動物に対して実施される。試験終了時、または予期せぬ死亡や異常があった場合に、各動物について全組織を採取し、凍結保存する。
【0335】
規制毒性試験のために、hFCRn/alb-/-/scidマウスを雄6匹と雌6匹の5群に分けた(対照2匹+処理3匹)。処置は、2週間連続して週1回、PBS中皮下注射投与による(第1日目および第8日目)。臨床症状は毎日モニターされる。体重は、無作為化時、治療前、終了時に評価される。すべてのマウスのマクロスコピック検査は15日目に行う。安楽死後、選択された臓器重量(膵臓、肝臓、肺、心臓、腎臓)を全マウスについて記録する。
【0336】
28日間の毒性試験のために、hFCRn/alb-/-/scidマウスを雄9匹及び雌9匹の4群に割り当て、4週間(第1、8、15及び21日目)毎週1回PBS中皮下注射投与によりHT-T1Dで処理する。)本試験動物(各群雄6匹、雌6匹)は、さらに7日間、28日間観察される。回復期の動物(1群雄3匹、雌3匹)は、49日目まで生存すると予想される。臨床症状は毎日評価される。体重は投与前に測定し、投与中および投与終了時に毎週測定する。食餌量は毎週測定する。血液サンプルを遠心分離し、血漿/血清を採取して-70℃で保存する。トキシコキネシス動物については、最後の出血後、さらなる調査を行うことなく安楽死させる。すべての主要および回復期マウスの血液学的検査、凝固検査、血液化学的検査、尿検査を終了時に実施する。すべての主試験マウス(対照および高用量)の骨髄、膵臓、肝臓、肺、心臓および腎臓を採取し、重量を測定し、組織学的検査のために固定剤で保存する。
【0337】
治療的T1DのPOC試験において、糖尿病を有意に予防する最高用量において、HT-T1Dの毒性は最小限または全くないことが期待される。Tレジトープ及びPPIは、内因性タンパク質に存在するペプチド配列であるため、マウスにおいてもヒトにおいても毒性はないと予想される。HT-T1D治療薬の安全性と急性毒性または持続的毒性がないことが実証されるであろう。
【0338】
[均等物]
【0339】
本発明は、その特定の実施形態に関連して説明されてきたが、さらなる改変が可能であることが理解されるであろう。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野において公知又は慣用の範囲内にあり、添付の請求項の範囲内に入るような本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用又は適応を対象とすることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
【配列表】
2023520989000001.app
【国際調査報告】