(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】制御性T細胞エピトープ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20230516BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20230516BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230516BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230516BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230516BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230516BHJP
C07K 14/76 20060101ALI20230516BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230516BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20230516BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230516BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20230516BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230516BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230516BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230516BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230516BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230516BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230516BHJP
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A61P 35/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230516BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230516BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20230516BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230516BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230516BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230516BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C07K7/06 ZNA
C12N15/11 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C07K19/00
C07K14/76
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
A61K35/15
A61P37/06
A61P43/00 121
A61K38/17
A61K35/17
A61P7/04
A61P7/02
A61P3/00
A61P35/00
A61P15/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P33/00
A61P37/08
A61K39/00 A
A61K47/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558198
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 US2021024352
(87)【国際公開番号】W WO2021195492
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242133
【氏名又は名称】エピバックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】EPIVAX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】デ・グルート・アンネ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
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4C076CC07
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4H045AA10
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4H045BA10
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4H045EA20
4H045EA31
4H045FA50
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、制御性T細胞エピトープを含む組成物であって、前記エピトープが、配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の比率で分布する配列番号1~124(ならびにその断片および変種)、ならびに任意で1~12の追加アミノ酸からなるポリペプチド、ならびにその製造方法および使用方法に関する。
【選択図】1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~124、及び/又はその断片及び変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、並びに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸のみからなるポリペプチド。
【請求項2】
配列番号1~124、及び/又はその断片及び変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸から本質的になるポリペプチド。
【請求項3】
配列番号1~124、および/またはその断片および変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むポリペプチド。
【請求項4】
配列番号1~124、及び/又はその断片及び変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、並びに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸のみからなるポリペプチドをコードする核酸。
【請求項5】
配列番号1~124、及び/又はその断片及び変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸から本質的になるポリペプチドをコードする核酸。
【請求項6】
配列番号1~124、および/またはその断片および変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むポリペプチドをコードする核酸。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターを含む細胞。
【請求項9】
それを必要とする対象における免疫反応を抑制するための方法であって、配列番号1~124、及び/又はその断片及び変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、並びに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸で構成される、1または複数の分離された制御性T細胞エピトープを、治療有効量で対象に投与する工程を含む方法。
【請求項10】
免疫応答が、少なくとも1つの治療用タンパク質による少なくとも1または複数の治療処置、ワクチンによる処置、または少なくとも1つの抗原による処置の結果である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記制御性T細胞エピトープが、ex vivoで分離された樹状細胞に投与され、前記樹状細胞が前記対象に再導入される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数の抗原提示細胞を制御性表現型にシフトさせる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトさせる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
制御表現型が、樹状細胞または他の抗原提示細胞におけるCDllcおよびHLA-DRの発現の減少によって特徴付けられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数のT細胞を制御性表現型にシフトさせる、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数のCD4+T細胞を制御性表現型にシフトさせる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数のCD8+T細胞を制御性表現型にシフトさせる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数のB細胞を制御性表現型にシフトさせる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
1または複数の制御性T細胞エピトープの投与により、CD4
+/CD25
+/FoxP3
+制御性T細胞を活性化する、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
1または複数の制御性T細胞エピトープの投与により、CD4
+T細胞の活性化を抑制する、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
1または複数の制御性T細胞エピトープの投与により、CD4
+および/またはCD8
+T細胞の活性化または増殖を抑制する、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
1または複数の制御性T細胞エピトープの投与により、B細胞の活性化又は増殖を抑制する、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
1または複数の制御性T細胞エピトープの投与により、自然免疫応答、適応免疫応答、エフェクターT細胞応答、メモリーT細胞応答、ヘルパーT細胞応答、B細胞応答、nkT細胞応答、又はそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される免疫応答を抑制する、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
有効量の請求項1~3のいずれか1項に記載の1または複数の分離された制御性T細胞エピトープ及び/又はその断片及び変異体と、1または複数の免疫刺激性T細胞エピトープポリペプチドとを含み、前記組成物が、前記免疫刺激性T細胞エピトープポリペプチドによって活性化される免疫応答を抑制する、組成物。
【請求項25】
前記1または複数の免疫刺激性T細胞エピトープポリペプチドが、1または複数の治療用タンパク質、ワクチンによる治療、または少なくとも1つの抗原による治療である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
ヒトにおける免疫応答を抑制するのに有効な1または複数の分離された制御性T細胞エピトープ(Tレジトープ)を含む医薬組成物であって、少なくとも1つの分離された制御性T細胞エピトープは、配列番号1~124、及び/又はその断片及び変異体からなる群より選択されるアミノ酸配列、並びに配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む、医薬組成物。
【請求項27】
少なくとも1つの制御性T細胞エピトープペプチドが配列番号7を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
請求項26に記載のTレジトープ組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項29】
それを必要とする対象において制御性T細胞を刺激する方法であって、請求項26に記載の組成物を治療上有効な量で対象に投与する工程を含む方法。
【請求項30】
それを必要とする対象における免疫反応を抑制するための方法であって、請求項26に記載の組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む方法。
【請求項31】
それを必要とする対象における抗原特異的免疫応答を抑制するための方法であって、請求項26に記載の組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項32】
対象が、アレルギー、自己免疫疾患、移植関連障害、酵素またはタンパク質欠損障害、止血障害、癌、不妊;およびウイルス、細菌または寄生虫感染または血液凝固障害に罹患している、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
免疫応答が、少なくとも1つの治療用タンパク質による治療、ワクチンによる治療、及び少なくとも1つの抗原による治療からなる群より選択される1つ又は複数の治療処置の結果である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
Tレジトープ医薬組成物の投与により、1または複数の抗原提示細胞を制御性表現型にシフトさせる、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
Tレジトープ医薬組成物の投与により、1つ又は複数の樹状細胞が制御性表現型に移行する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
制御表現型が、樹状細胞または他の抗原提示細胞におけるCDllcおよびHLA-DRの発現の減少によって特徴付けられる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
それを必要とする対象における免疫応答を抑制する方法であって、1または複数の分離ポリペプチドを含む治療有効量のTレジトープ組成物を対象に投与する工程を含み、少なくとも1つの分離ポリペプチドが配列番号7のアミノ酸配列のみからなる、方法。
【請求項38】
Tレジトープ組成物の投与により、CD4
+/CD25
+/FoxP3
+制御性T細胞を活性化する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
Tレジトープ組成物の投与により、CD4
+エフェクターT細胞の活性化を抑制する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
Tレジトープ組成物の投与により、CD4
+および/またはCD8
+T細胞の活性化または増殖を抑制する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
Tレジトープ組成物の投与により、B細胞の活性化又は増殖を抑制する、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
対象が、アレルギー、自己免疫疾患、移植関連障害、酵素もしくはタンパク質欠損障害、または血液凝固障害に罹患している、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
免疫応答が、少なくとも1つの治療用タンパク質による治療、ワクチンによる治療、及び少なくとも1つの抗原による治療からなる群から選択される1または複数の治療処置の結果である、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
対象の免疫反応を抑制するためのキットであって、該キットが請求項26に記載の組成物を含むキット。
【請求項45】
有効量の抗原またはアレルゲンをさらに含む、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
対象の制御性T細胞の集団を拡大する方法であって、
(a)対象から得られた生物学的サンプルを提供する工程;
(b)生物学的サンプルから制御性T細胞を分離し;そして、T制御細胞の数を増やして拡大制御性T細胞組成物をもたらす条件下で、分離された制御性T細胞を、有効量の請求項26のTレジトープ組成物と接触させて、それによって生物学的サンプル中の制御性T細胞を増加させる工程;および
(c)前記増加した制御性T細胞を前記対象に戻す工程;
を含む方法。
【請求項47】
生物学的サンプル中の制御性T細胞を刺激する方法であって、
(a)対象から得られた生物学的サンプルを提供する工程;
(b)生物学的サンプルから制御性T細胞を分離し;そして、制御性T細胞が刺激されて1または複数の生物学的機能を変化させる条件下で、分離された制御性T細胞を、有効量の請求項26記載の組成物と接触させて、生物学的サンプル中の制御性T細胞を刺激する工程;
を含む方法。
【請求項48】
制御性T細胞エピトープが、標的抗原に対する免疫応答の減弱に使用するために、特定の標的抗原と共有結合、非共有結合、または混和のいずれかである、請求項26に記載の組成物。
【請求項49】
抑制効果が、ナチュラルTregまたはアダプティブTreg、またはナチュラルTregのウイルス性ホモログによって媒介される、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
エフェクターT細胞、ヘルパーT細胞、またはB細胞のいずれかが、制御性T細胞エピトープの抑制効果の対象となる、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
IgG抗体またはその断片を含むイムノグロブリン-G(IgG)含有分子の免疫原性を増強する方法であって、前記IgG抗体またはその断片から、1または複数の制御性T細胞エピトープを同定して除去する工程を含み、前記1または複数の制御性T細胞エピトープは配列番号1~124の群から選択され、前記制御性T細胞エピトープが、もはやMHCクラス分子及び/又は制御性T細胞に結合しないように改変されている、方法。
【請求項52】
IgG抗体またはその断片を含むイムノグロブリン-G(IgG)含有分子の免疫原性を低減する方法であって、IgG抗体またはその断片に1または複数の制御性T細胞エピトープを挿入する工程を含み、ここで1または複数の制御性T細胞エピトープは、配列番号1~124の群から選択される、方法。
【請求項53】
挿入された制御性T細胞エピトープが、IgG抗体又はその断片内のその自然な位置にない、又はIgG抗体又はその断片が、前記挿入工程の前に、そのようなTレジトープを欠いている、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
異種ポリペプチドに連結された1または複数のT細胞エピトープポリペプチドを含むポリペプチド組成物であって、T細胞エピトープポリペプチドが、配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸のみからなる、ポリペプチド組成物。
【請求項55】
T細胞エピトープポリペプチドが、異種ポリペプチドのN末端に連結されている、請求項54に記載のポリペプチド組成物。
【請求項56】
T細胞エピトープポリペプチドが、異種ポリペプチドのC末端に連結されている、請求項54に記載のポリペプチド組成物。
【請求項57】
異種ポリペプチドが生物学的活性分子を含み、生物学的活性分子が、免疫原性分子、T細胞エピトープ、ウイルスタンパク質、及び細菌タンパク質からなる群から選択される、請求項54に記載のポリペプチド組成物。
【請求項58】
異種ポリペプチドがT細胞エピトープポリペプチドに作動的に連結されている、請求項54に記載のポリペプチド組成物。
【請求項59】
対象において免疫応答を抑制する制御性T細胞を誘導する方法であって、治療有効量のポリペプチド組成物を対象に投与する工程を含み、ここで、ポリペプチド組成物が、異種ポリペプチドに連結した1または複数のT細胞エピトープポリペプチドを含み、前記1または複数のT細胞エピトープポリペプチドは、配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む、方法。
【請求項60】
T細胞エピトープポリペプチドが、異種ポリペプチドのN末端に融合している、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
T細胞エピトープポリペプチドが、異種ポリペプチドのC末端に融合している、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
異種ポリペプチドが生物学的活性分子を含み、生物学的活性分子が免疫原性分子、T細胞エピトープ、ウイルスタンパク質、および細菌タンパク質からなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
ポリペプチド組成物が、有効量の1または複数の抗原及び/又はアレルゲンをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
免疫抑制作用がナチュラル制御性T細胞によって媒介される、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
免疫抑制作用がアダプティブ制御性T細胞によって媒介される、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
T細胞エピトープ組成物が、エフェクターT細胞応答を抑制する、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
T細胞エピトープ組成物が、ヘルパーT細胞応答を抑制する、請求項59に記載の方法。
【請求項68】
T細胞エピトープ組成物が、B細胞応答を抑制する、請求項59に記載の方法。
【請求項69】
T細胞エピトープ組成物が、エフェクターT細胞のサイトカイン分泌を抑制する、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
Tレジトープ-血液成分コンジュゲートであって、改変ポリペプチドに連結された血液成分を含み、前記改変ポリペプチドは血液成分に結合した反応性部位を有し、前記改変ポリペプチドは1または複数の制御性T細胞エピトープを含み、ここで前記1または複数の制御性T細胞エピトープは、配列番号1~124の配列および/またはその断片もしくは変異体からなる群から選択される1または複数のアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸のみからなる、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項71】
1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~124の配列、および/またはその断片もしくは変異体からなる群から選択される1または複数のアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸から本質的になる、請求項70に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項72】
1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~124の配列、および/またはその断片もしくは変異体からなる群から選択される1または複数のアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む、請求項70に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項73】
血液成分がアルブミンである、請求項70~72のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項74】
血液成分がヒト血清アルブミンである、請求項70~73のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項75】
反応性部位が改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸に結合している、請求項70~74のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項76】
反応性部位が改変ポリペプチドのカルボキシ末端アミノ酸に結合している、請求項70~76のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項77】
反応性部位が、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸とカルボキシ末端アミノ酸との間に位置するアミノ酸に結合している、請求項70~76のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項78】
反応性部位がスクシンイミジル基又はマレイミド基である、請求項72~77のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項79】
反応性部位が3-マレイミドプロピオン酸部位である、請求項70~78のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項80】
血液成分と改変ポリペプチドとの間のコンジュゲーションが、マレイミド結合である、請求項70~79のいずれか一項に記載のTレジトープ-血液成分コンジュゲート。
【請求項81】
改変ポリペプチドであって、前記改変ポリペプチドは、それに結合した反応性部位を有し、配列番号1~124、および/またはその断片もしくは変異体からなる群から選択される1または複数のアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸のみからなる、1または複数の制御性T細胞エピトープを含む、改変ポリペプチド。
【請求項82】
1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~124、および/またはその断片もしくは変異体からなる群から選択される1または複数のアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸から本質的になる、請求項81記載の改変ポリペプチド。
【請求項83】
1または複数の制御性T細胞エピトープが、配列番号1~124、および/またはその断片もしくは変異体からなる群から選択される1または複数のアミノ酸配列、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む、請求項82の改変体ポリペプチド。
【請求項84】
反応性部位が、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸に結合している、請求項82~83のいずれか1項に記載の改変ポリペプチド。
【請求項85】
反応性部位が改変ポリペプチドのカルボキシ末端アミノ酸に結合している、請求項82~84のいずれか1項に記載の改変ポリペプチド。
【請求項86】
反応性部位が、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸とカルボキシ末端アミノ酸の間に位置するアミノ酸に結合している、請求項82~85のいずれか一項に記載の改変ポリペプチド。
【請求項87】
反応性部位がスクシンイミジル基またはマレイミド基である、請求項82~86のいずれか1項に記載の改変ポリペプチド。
【請求項88】
反応性部位が3-マレイミドプロピオン酸部位である、請求項82~87のいずれか一項に記載の改変ポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2020年3月27日に出願された米国仮出願番号:63/000,630、及び2020年9月11日に出願された米国仮出願番号:63/077,253の優先権を主張するものであり、それぞれの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年3月24日に作成された前記ASCIIコピーは、EPV0007_ST25.txtと命名されており、サイズは70KBである。
【技術分野】
【0003】
本開示は、一般に、新規クラスの制御性T細胞エピトープ(「Tレジトープ」と称される)に関するものである。本開示は、Tレジトープ化合物および組成物を提供するものであり、Tレジトープ化合物および組成物は、1または複数の:例えば、1または複数の配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有しているポリペプチドを含む本開示されるポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ(Treg activating regulatory T-cell epitope)」、「Tレジトープ(Tregitope)」、「Tレジトープペプチド(Tregitope peptide)」または「T細胞エピトープポリペプチド(T-cell epitope polypeptide)」と称してもよい);本開示のコンカテマーペプチド;本明細書に開示される核酸、キメラまたは融合ポリペプチド組成物;本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組み換えウイルスまたは細胞;および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤;を含み、ならびにそれらの調製のための方法およびそれらの使用を提供する。
【背景技術】
【0004】
自己抗原や外来抗原に対する寛容性を人工的に誘導することは、自己免疫疾患、移植、アレルギーなどの治療の目標である。自己および非自己の治療用タンパク質を標的とする免疫応答は、しばしば臨床効果を制限する。治療用タンパク質組成物に対する寛容性を誘導する免疫調節治療は、抗薬物抗体(ADA)の形成を減少させ、臨床成果を改善する可能性がある。最近まで、治療的寛容の誘導は、広範な免疫細胞枯渇療法に依存していた。これらの広範なアプローチは、一般に免疫系を弱め、多くの対象を日和見感染、自己免疫攻撃、及び癌に対して脆弱なままにしている。当技術分野では、免疫寛容の誘導に対して、より攻撃的でなく、より的を絞ったアプローチに対するニーズが存在する。
【0005】
免疫寛容は、抗原提示細胞(APC)、T細胞、B細胞、サイトカイン、ケモカイン、表面受容体の間の複雑な相互作用によって制御されている。新生児期の胸腺では、髄質上皮細胞が未熟なT細胞に対して特異的な自己タンパク質エピトープを発現し、最初の自己/非自己の識別が行われる。高親和性の自己抗原を認識するT細胞は削除されるが、中程度の親和性を持つ自己反応性T細胞は削除を免れ、「ナチュラル(natural)」制御性T細胞(TReg細胞)に変化することがある。これらのナチュラルTReg細胞は末梢に輸送され、潜在的な自己免疫応答の制御に役立っている。
【0006】
第二の形態の寛容性は末梢で発達する。この場合、活性化T細胞は、IL-10、TGF-β、CCL19などの特定の免疫抑制サイトカインやケモカインの作用によって、「アダプティブ(adaptive)」TReg表現型に変換される。これらの「アダプティブ」TReg細胞の役割としては、侵入した病原体の除去に成功した後の免疫応答の抑制、アレルギー反応による過剰な炎症の抑制、低レベルあるいは慢性感染による過剰な炎症の抑制、あるいは有益な共生細菌を標的とした炎症反応の抑制が考えられる。
【0007】
内在性(naturally occurring)TReg(ナチュラルTRegとアダプティブTRegの両方を含む)は、末梢における免疫調節の重要な構成要素である。例えば、ナチュラルTRegがTCRを介して活性化されると、ナチュラルTRegは免疫調節サイトカインとケモカインを発現する。活性化されたナチュラルTRegは、接触依存的および独立したメカニズムにより、近傍のエフェクターT細胞を抑制する可能性がある。さらに、IL-10やTGF-βなど、これらの細胞から放出されるサイトカインは、抗原特異的なアダプティブTRegを誘導する能力がある。広範囲にわたる努力にもかかわらず、少数の例外を除いて、ナチュラルTReg、さらに言えば臨床的にかなりの量で循環するナチュラルTRegの抗原特異性は未だ不明である。
【0008】
当技術分野では、一般的な自己タンパク質に含まれる制御性T細胞エピトープ(「Tレジトープ」)、そのようなTレジトープを含む組成物を同定する必要性、ならびにそれらの調製に関連する方法及び使用に関する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
従って、本開示は、新規で治療的な制御性T細胞エピトープ化合物及び組成物を提供する。そのような組成物は、1または複数の:例えば、1または複数の配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有しているポリペプチドを含む、本開示されるポリペプチド本明細書で開示されるポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレジトープ」、「Tレジトープペプチド」または「T細胞エピトープポリペプチド」と称してもよい);本開示のコンカテマーペプチド;本明細書に開示される核酸、キメラまたは融合ポリペプチド組成物;本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組み換えウイルスまたは細胞;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組み換えウイルスまたは細胞;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤、ならびにそれらの調製のための方法およびそれらの使用、例えば、体内の免疫応答を抑制するため、またはより具体的には、医学的状態を治療するための治療剤の投与によって引き起こされる体内の免疫応答を抑制するための方法およびそれらの使用を提供する。
【0010】
本明細書に開示されるTレジトープ化合物および組成物ならびにTレジトープ-抗原化合物及び組成物の使用による、内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)の選択的係合(selective engagement)および活性化は、望ましくない免疫応答の存在によって特徴付けられる任意の疾患または状態の治療手段として治療的に価値がある。そのような望ましくない免疫応答の例としては、以下のものが挙げられる:1型糖尿病、MS、ループス、及びRAなどの自己免疫疾患;移植片対宿主病(GVHD)及び宿主対移植片病(HVGD)などの移植関連障害;アレルギー反応;モノクローナル抗体などの生体医薬の免疫拒絶;置換タンパク質を標的とする免疫応答;ボツリヌス毒素などの治療毒物を標的とする免疫応答;並びに急性又は慢性であるかを問わず感染症に対する免疫応答。複数の態様において、本開示は、内在性Treg(複数の態様において、ナチュラルTregおよび/またはアダプティブTregを含む)の機能を利用し、特定の態様において、末梢における外来タンパク質および自己タンパク質に対する免疫応答を既に調節している細胞(既存のまたはナチュラルTReg)を利用する。複数の態様において、本開示のTレジトープ組成物は、特定の標的抗原との共有結合、非共有結合、または混和のいずれであってもよい。
【0011】
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物または組成物は、本明細書に開示される1または複数のペプチドまたはポリペプチドaを含む。複数の態様において、本開示は、1または複数の配列番号1~124の配列、またはその断片および変異体を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドに関する。「本質的に~からなる」という表現は、本開示によるポリペプチドが、配列番号1~124のいずれかによる配列、またはその断片もしくは変異体に加えて、Tレジトープとして機能するペプチドの活性を大幅に損ねない限り、必ずしもMHCリガンドとして機能するペプチドの一部を形成しない、ペプチドのいずれかの末端および/または側鎖に存在し得る追加のアミノ酸または残基を含むことを意味すると意図する。本開示のポリペプチドは、分離、合成、および/または組換えであってもよく、グリコシル化、付加された化学基などの転写後修飾を含んでいてもよい。複数の態様において、ペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態のいずれであってもよく、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まなくてもよく、または含んでいてもよい。特定の複数の態様において、Tレジトープは、N末端アセチル基及び/又はC末端アミノ基でキャップされ得る。
【0012】
複数の態様において、本発明の開示は、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および、任意選択で、配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の比率で分布する1~12の追加アミノ酸、を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる、ペプチドまたはポリペプチドに関する。複数の態様において、本発明の開示は、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および、任意選択で、コアアミノ酸配列のC末端及び/又はN末端に1~12の追加のアミノ酸を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチド、を含み、またはこれらのみからなり、本質的にこれらからなるコアアミノ酸配列を有する、ペプチドまたはポリペプチドに関し、これらの隣接アミノ酸(フランクアミノ酸)(flanking amino acids)の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよい(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に付加することもでき、アミノ酸は両方の末端に等しく、または他の任意の割合で、付加することもできる)。複数の態様において、本発明の開示は、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および、任意選択で、配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の比率で分布する1~12の追加アミノ酸を有する、1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる、コア配列を有するペプチドまたはポリペプチドに関し、ここで、これらの隣接するアミノ酸の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12,3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよい(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に加えられてもよく、またはアミノ酸は、両方の末端に等しくまたは任意の他の比率で加えられてもよい)が、隣接アミノ酸を有するポリペプチドは、依然として、前記隣接アミノ酸を有しない前記ポリペプチドコア配列と同じHLA分子に結合できる(すなわち、MHC結合性を保持する)。複数の態様において、前記隣接アミノ酸を有する前記ポリペプチドは、前記隣接アミノ酸を有さない前記ポリペプチドコア配列と同じHLA分子に結合すること(すなわち、MHC結合性を保持すること)および/または同じTCR特異性を保持することが可能である。複数の態様において、前記隣接アミノ酸を有する前記ポリペプチドは、前記隣接アミノ酸を有さない前記ポリペプチドコア配列と同じHLA分子に結合する(すなわち、MHC結合性を保持する)、及び/又は同じTCR特異性を保持する、及び/又はTレジトープ活性を保持することが依然として可能である。複数の態様において、前記隣接アミノ酸配列は、内在するタンパク質において、そこに含まれるペプチドまたはポリペプチドの態様にも存在するものである。複数の態様において、本明細書に記載される前記隣接アミノ酸配列は、MHC安定化領域として機能し得る。複数の態様において、より長いペプチドの使用は、対象細胞による内因性プロセシングを可能にし、より効果的な抗原提示およびT細胞応答の誘導をもたらす可能性がある。複数の態様において、延長部(複数可)は、ペプチドまたはポリペプチドの生化学的特性(例えば、限定されないが、溶解性または安定性)を改善するために、またはペプチドの効率的なプロテアソーム処理の可能性を改善するために役立ち得る。複数の態様において、本開示のポリペプチドは、分離、合成、および/または組換えであってもよく、グリコシル化、付加化学基などの転写後修飾を含んでいてもよい。複数の態様において、ペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態であり得、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まなくてもよく、または含んでいてもよい。特定の複数の態様において、本開示のペプチドまたはポリペプチドは、n末端アセチル基および/またはc末端アミノ基でキャップすることができる。
【0013】
複数の態様において、本開示は、付加的なペプチドまたはポリペプチドに連結、融合、または結合(例えば、フレーム内で融合、化学的に結合、または他の方法で結合)した、1または複数の本開示のポリペプチドまたはペプチド(以下に限定されないが、例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で、配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の比率で分布する1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド)を含むコンカテマーポリペプチドまたはペプチドに関する。そのような付加的なペプチドまたはポリペプチドは、本開示される1または複数のポリペプチドまたはペプチドであってもよく、あるいは、関心のある追加のペプチドまたはポリペプチドであってもよい。複数の態様において、コンカテマーペプチドは、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上の本開示されるペプチドまたはポリペプチドを含む。他の態様において、コンカテマーペプチド又はポリペプチドは、1000以上、1000以下、900以下、500以下、100以下、75以下、50以下、40以下、30以下、20以下、又は10以下のペプチドエピトープを含む。さらに他の実施形態では、コンカテマーペプチドは、3~100、5~100、10~100、15~100、20~100、25~100、30~100、35~100、40~100、45~100、50~100、55~100、60~100、65~100、70~100、75~100、80~100、90~100、5~50、10~50、15~50,20~50、25~50、30~50、35~50、40~50、45~50、100~150、100~200、100~300、100~400、100~500、50~500、50~800、50~1000、または100~1000の本発明で開示されるペプチドまたはポリペプチドが連結、融合または結合しているものである。コンカテマーポリペプチドの各ペプチドまたはポリペプチドは、任意選択で、切断感受性部位であってもよい1または複数のリンカーを、それらのN末端および/またはC末端に隣接して有していてもよい。このようなコンカテマーペプチドにおいて、2以上のペプチドエピトープは、それらの間に開裂感受性部位を有していてもよい。あるいは、2以上のペプチドエピトープは、互いに直接、または切断感受性部位でないリンカーを介して連結されていてもよい。複数の態様において、本開示のコンカテマーポリペプチドまたはペプチド配は、内在性の配列に対応していない。すなわち、1または複数の本開示のポリペプチドまたはペプチドの各々(例えば、限定されないが、1または複数の配列番号1~124のアミノ配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有しているペプチドまたはポリペプチド)が、連結、融合または結合(例えば、フレーム内で融合、化学的に結合、または他の方法で結合)された、追加のペプチドまたはポリペプチド(本開示の1または複数のペプチドであってもよい)を、全体のコンカテマーポリペプチドが内在性のIgG配列に対応しないような様式で結合する。複数の態様において、本開示のコンカテマーポリペプチドは、分離、合成、および/または組換えであってもよく、グリコシル化、付加化学基などの転写後修飾を含んでいてもよい。複数の態様において、コンカテマーポリペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態であり得、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まなくてもよく、または含んでいてもよい。特定の複数の態様において、本開示のコンカテマーポリペプチドは、n末端アセチル基および/またはc末端アミノ基でキャップすることができる。
【0014】
複数の態様において、本開示の1または複数のペプチドまたはポリペプチドまたはコンカテマーポリペプチド(例えば、限定されないが、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド)は、異種ポリペプチドに接合(joined to)、連結(linked to)(例えば、フレーム内で融合(fused in-frame)、化学的に連結(chemically linked)、または他の方法で結合(otherwise bound))、および/または挿入(inserted)されてもよい。複数の態様において、本開示の1または複数のペプチドまたはポリペプチドまたはコンカテマーポリペプチドは、異種ポリペプチドの隣接アミノ酸と共に、接合、連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に結合、または他の方法で結合)、および/または挿入されたアミノ酸配列から構成され得るが、全体として異種ポリペプチドに接合、連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に結合、または他の方法で結合)、および/または挿入されてもよい。
【0015】
複数の態様において、本開示は、1または複数の配列番号1~124(およびその断片または変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端上に任意の比率で分布する1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有するポリペプチドに関する。ここで、前記1または複数の配列番号1~124の配列は、ポリペプチドに天然に含まれず、および/または前記1または複数の配列番号1~124の配列は、ポリペプチドのその天然位置に配置されていない。複数の態様において、1または複数の配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有している、本開示の1または複数のTレジトープ(これは、分離、合成または組み換えであってもよい)は、抗体またはその断片に、融合または内部挿入(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組換え技術による部位)することもできる。例えば、Tレジトープが抗体またはその断片内のその自然の位置にない場合、または抗体またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体またはその断片が変異または欠損した対応部分を有する場合)には、そのようなTレジトープは、そのような抗体または断片に融合または内部挿入される。複数の態様において、以下にさらに記載される本開示のそのようなポリペプチドは、分離、合成、および/または組換えであってもよく、グリコシル化、付加化学基などの転写後修飾を構成されてもよい。複数の態様において、そのようなポリペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態のいずれかであり得、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まなくてもよく、または含んでいてもよい。ある複数の態様において、そのようなポリペプチドは、n-末端アセチル基および/またはc-末端アミノ基でキャップされ得る。
【0016】
複数の態様において、ポリペプチドは、1または複数の配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124(およびその断片または変異体)、ならびに任意選択で配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有しているが、当該ポリペプチドには抗体重鎖可変領域が含まれない。複数の態様において、ポリペプチドが抗体重鎖可変領域を構成する場合、前記1または複数の配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124(およびその断片または変異体)、ならびに任意選択で配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸は、抗体重鎖可変領域のその自然位置に配置されることはない。複数の態様において、配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124(およびその断片または変異体)、ならびに任意選択で配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を有する1または複数のTレジトープも融合または内部挿入されてよく、(例えば、限定されるものではないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術などの免疫工学技術を使用して)抗体重鎖可変領域またはその断片に融合または挿入されてもよく、例えば、Tレジトープが抗体重鎖可変領域またはその断片内のその自然の位置にない場合、または抗体重鎖可変領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体重鎖可変領域またはその断片が変異または欠損した該当部分を有する場合)が例示される。
【0017】
複数の態様において、ポリペプチドは、前記ポリペプチドが、抗体重鎖定常領域を含んでいない場合、1または複数の配列番号2、9~11、29~41、および75~100の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号2、9~11、29~41、および75~100のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有している。複数の態様において、ポリペプチドが抗体重鎖定常領域を含む場合、1または複数の配列番号2、9~11、29~41、および75~100の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号2、9~11、29~41、および75~100のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸は、抗体重鎖定常領域の自然位置に存在しない。複数の態様において、Tレジトープが抗体重鎖定常領域またはその断片内の自然位置に存在しない場合、または、抗体重鎖定常領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体重鎖定常領域またはその断片が突然変異を有するか対応部分を欠いている場合)において、配列番号2、9~11、29~41、および75~100の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号2、9~11、29~41、および75~100のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有している1または複数のTレジトープは、抗体重鎖定常領域またはその断片内に、(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術などの免疫工学技術を使用して)融合または内部挿入することもできる。
【0018】
複数の態様において、ポリペプチド(分離、合成、または組換え体であってもよい)は、配列番号12(およびその断片または変異体)、および任意選択で本開示の配列番号12のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有し、ここで前記ポリペプチドは抗体軽鎖可変領域を含まない。複数の態様において、ポリペプチドが抗体軽鎖可変領域を含む場合、前記配列番号12(およびその断片または変異体)、および任意選択で本開示の配列番号12のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸は、抗体軽鎖可変領域のその天然の位置に配置されない。複数の態様において、配列番号12(およびその断片または変異体)、および任意選択で配列番号12のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有する1または複数のTレジトープはまた、抗体軽鎖可変領域またはその断片内に(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術などの免疫工学技術を使用して)融合または内部挿入されてもよい。例えば、Tレジトープが抗体軽鎖可変領域またはその断片内のその自然な位置にない場合、または抗体軽鎖可変領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体軽鎖可変領域またはその断片が、変異したまたは欠けた対応部分を有する場合)等、抗体軽鎖可変領域またはその断片に融合またはその内部に挿入されてもよい。
【0019】
複数の態様において、ポリペプチド(分離、合成、または組換え体であってもよい)は、1または複数の配列番号13および101~110(およびその断片または変異体)、および任意選択で配列番号13および101~110のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有し、ここで前記ポリペプチドは抗体軽鎖定常領域を含まない。複数の態様において、ポリペプチドが抗体軽鎖定常領域を含む場合、1または複数の配列番号13および101~110(およびその断片または変異体)、ならびに任意選択で配列番号13および101~110のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸は、抗体軽鎖定常領域のその天然の位置に配置されない。複数の態様において、1または複数の配列番号13および101~110(およびその断片または変異体)、および任意選択で配列番号13および101~110のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有する1または複数のTレジトープはまた、抗体軽鎖定常領域またはその断片内に(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術などの免疫工学技術を使用して)融合または内部挿入されてもよい。例えば、Tレジトープが抗体軽鎖定常領域またはその断片内のその自然の位置にない場合、または抗体軽鎖定常領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体軽鎖可変領域またはその断片が突然変異を有するか対応部分を欠いている場合)等、抗体軽鎖定常領域またはその断片に融合またはその内部に挿入されてもよい。
【0020】
複数の態様において、本開示は、本開示の1または複数のペプチド、ポリペプチド、またはコンカテマーペプチドを含むキメラまたは融合ポリペプチド化合物または組成物(これは複数の態様において、分離、合成、または組換えであり得る)に関する。複数の態様において、本開示のキメラまたは融合ポリペプチド化合物または組成物は、本開示の1または複数のペプチド、ポリペプチド、またはコンカテマーペプチド(例えば、配列番号1~124(および/またはその断片もしくは変異体)のアミノ酸配列を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチド、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端上に任意の比率で分布する1から12の追加アミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド)が、異種ポリペプチドに接合、連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に連結、または他の方法で結合)、および/または挿入されてもよい。複数の態様において、本開示の1または複数のペプチド、ポリペプチド、および/またはコンカテマーペプチドは、異種ポリペプチドに挿入されてもよく、異種ポリペプチドのC末端に(当技術分野で知られているように、リンカーを使用してまたは使用せずに)付加され、および/またはN末端に(当技術分野で知られているように、リンカーを使用してまたは使用せずに)付加され得る。本開示のキメラまたは融合ポリペプチド組成物の複数の態様において、本開示の1または複数のペプチド、ポリペプチド、および/またはコンカテマーペプチドは、異種ポリペプチドの隣接アミノ酸と共に、接合、連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に結合、または他の方法で結合)、および/または挿入されたアミノ酸配列から構成され得るが、全体として異種ポリペプチドに接合、連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に結合、または他の方法で結合)、および/または挿入されてもよい。複数の態様において、本開示のキメラまたは融合ポリペプチド組成物は、本開示のペプチド、ポリペプチド、および/またはコンカテマーペプチドを含み、前記ペプチド、ポリペプチド、および/またはコンカテマーペプチドが、異種ポリペプチドに天然に含まれない配列および/または異種ポリペプチドのその天然位置に位置しない配列を有するペプチド、ポリペプチドおよび/またはコンカテマーペプチドである、ものを含んでいる。上記キメラまたは融合ポリペプチド組成物の複数の態様において、キメラまたは融合ポリペプチドは、分離、合成、または組換えであってもよい。本開示のキメラまたは融合ポリペプチド組成物の複数の態様において、異種ポリペプチドまたはポリペプチドは、生物学的に活性な分子を含む。複数の態様において、生物学的に活性な分子は、免疫原性分子、T細胞エピトープ、ウイルスタンパク質、および細菌タンパク質からなる群から選択される。複数の態様において、1または複数の本開示のTレジトープは、低分子、薬剤、または薬剤断片に接合または連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に連結、または他の方法で結合)することができる。複数の態様において、キメラまたは融合ポリペプチドは、中性(非荷電)または塩のいずれかの形態であることができ、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まないかまたは含んでいることができる。
【0021】
複数の態様において、本開示は、本明細書に記載の1または複数のペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、および/またはキメラもしくは融合ポリペプチドをコードする核酸(例えば、mRNAを含むDNAまたはRNA)に関する。例えば、複数の態様において、本開示は、配列番号1~124(および/またはその断片もしくは変異体)のアミノ酸配列、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸に関する。複数の態様において、本開示は、本明細書に記載される核酸などを含む、発現ベクターなどのベクターに関する。複数の態様において、本開示は、本明細書に記載されるような核酸を含んでなる発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、または細胞に関する。複数の態様において、本開示は、記載されるようなベクターを含んでなる細胞またはワクチンに関する。複数の態様において、本開示は、本開示のベクターを含む細胞に関する。
【0022】
複数の態様において、本開示は、医薬組成物に関し、その医薬組成物は、本開示のTレジトープ化合物または組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのような本明細書に開示されるペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチドまたは融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸などの核酸、本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞、を含む)、および薬学的に許容される担体、賦形剤、および/またはアジュバントが挙げられる。複数の態様において、前記ペプチドまたはポリペプチドをコードする1または複数の核酸は、DNA、RNA、またはmRNAである。上記の医薬組成物の複数の態様において、組成物は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、または少なくとも1000、およびその間のあらゆる値または範囲を含む、本明細書に開示されたペプチド、ポリペプチド、および/またはコンカテマーペプチドを含む。
【0023】
複数の態様において、本開示は、本開示のTレジトープ化合物または組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、または本明細書に開示される融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸など、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤を含む)の治療有効量を対象に投与することによって、それを必要とする対象における制御性T細胞(複数の態様において、ナチュラルTregおよび/またはアダプティブTregを含む、内在性Treg)を刺激、誘導、拡大する方法、および/またはその対象における免疫応答を抑制する方法に関する。複数の態様において、対象はヒトである。
【0024】
複数の態様において、本開示は、本開示のTレジトープ化合物又は組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチドまたは融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸など、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示されるような医薬組成物または製剤)を投与する工程を含む、それを必要とする対象における病状を治療又は予防する方法に関する。複数の態様において、医学的状態は、アレルギー、自己免疫疾患、移植関連障害、移植片対宿主病、血液凝固障害、酵素またはタンパク質欠損障害、止血障害、癌、不妊症、およびウイルス・細菌・寄生虫感染からなる群から選択される。別の実施形態では、病状は血友病A、B、またはCであり、複数の態様では、対象はヒトである。
【0025】
複数の態様において、本開示は、本開示のTレジトープ化合物または組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチドまたは融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸など、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示されるような医薬組成物または製剤)の治療有効量を対象に投与することによって、それを必要とする対象における免疫応答を抑制するために制御性T細胞(例えば、(ナチュラルTregおよび/またはアダプティブTregを含む)内在性Treg)を刺激、誘導、および/または拡大(expand)する方法に関する。複数の態様において、免疫応答は、少なくとも1または複数の治療用タンパク質による1または複数の治療処置、ワクチンによる処置、または少なくとも1つの抗原による処置の結果である。別の複数の態様では、本開示のTレジトープ化合物または組成物の投与により、1または複数の抗原提示細胞を制御性表現型(regulatory phenotype)にシフトさせ、1または複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトさせ、樹状細胞または他の抗原提示細胞におけるCD11cおよびHLA-DR発現を減少させる。
【0026】
複数の態様において、本開示は、制御性T細胞の集団を拡大する方法であって、(a)対象からの生物学的サンプルを提供する工程;(b)生物学的サンプルから制御性T細胞を分離する工程;(c)制御性T細胞が増殖して拡大した制御性T細胞組成物をもたらす条件下で、分離した制御性T細胞を、有効量の本開示のTレジトープ化合物又は組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、または本明細書に開示される融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸などの本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;及び/又は本明細書に開示される医薬組成物又は製剤)と接触させ、それによって生物学的サンプル中の制御性T細胞を拡大する工程;及び追加で、(d)この生物学的サンプルを、治療を必要としている対象に戻す工程である。
【0027】
複数の態様において、本開示は、生物学的サンプル中の制御性T細胞を刺激する方法であって、(a)対象からの生物学的サンプルを提供する工程;(b)生物学的サンプルから制御性T細胞を分離する工程;(c)制御性T細胞が刺激される条件下で、分離した制御性T細胞を、有効量の本開示のTレジトープ化合物又は組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、または本明細書に開示される融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸などの本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤を含む)と接触させ、1または複数の生体機能を変更し、それによって生物学的サンプル中の制御性T細胞を刺激し;および追加で、(d)治療を必要としている対象に細胞を戻す工程である。
【0028】
複数の態様において、本開示は、対象における免疫応答を抑圧/抑制するための方法であって、治療有効量の本開示のTレジトープ化合物又は組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、または本明細書に開示される融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸など、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤を含む)を投与する工程を含み、ここで、Tレジトープ化合物または組成物は、免疫応答を抑圧/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、自然(innate)免疫応答を抑圧/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、適応(adaptive)免疫応答を抑圧/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、エフェクターT細胞応答を抑圧/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、メモリーT細胞応答を抑圧/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、ヘルパーT細胞応答を抑圧/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、B細胞応答を抑圧/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、NKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)応答を抑圧/抑制する。別の複数の態様では、本開示のTレジトープ化合物または組成物の投与により、1または複数の抗原提示細胞を制御表現型にシフトさせ、1または複数の樹状細胞を制御表現型にシフトさせ、樹状細胞または他の抗原提示細胞におけるCD11cおよびHLA-DR発現を減少させる。
【0029】
複数の態様において、本開示は、治療有効量の本開示のTレジトープ化合物又は組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテミックペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;かかるペプチド、ポリペプチド、コンカテミックペプチド、または本明細書に開示される融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸を含む本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組み換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示されるような医薬組成物または製剤)の投与を通じて、対象における免疫応答、特に抗原特異的免疫応答を抑制する方法に関し、ここで、前記Tレジトープ化合物または組成物は、内在性Treg(複数の態様において、ナチュラルTregおよび/またはアダプティブTreg、ならびに複数の態様においてCD4+/CD25+/FoxP3+制御性T細胞を含む)を活性化するか、CD4+ T細胞の活性化、CD4+および/またはCD8+T細胞の増殖、および/またはB細胞またはNKT細胞の活性化もしくは増殖が抑制される。複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物または組成物は、特定の標的抗原と共有結合、非共有結合、または混和のいずれであってもよい。複数の態様において、特定の標的抗原と共有結合、非共有結合、または混和している、投与された本開示のTレジトープ化合物または組成物は、標的抗原に対する免疫応答の減弱(diminution)をもたらす。
【0030】
複数の態様において、標的抗原は、自己のタンパク質またはタンパク質断片であってよい。複数の態様において、標的抗原は、アレルゲンであってもよい。複数の態様において、標的抗原は、同系統のタンパク質またはタンパク質断片であってもよい。複数の態様において、標的抗原は、生物学的医薬品またはその断片であってもよい。複数の態様において、抑制効果は、ナチュラルTregによって媒介される。複数の態様において、抑制効果は、アダプティブTregによって媒介される。複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物または組成物に含まれる1または複数のTレジトープ(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチドまたは融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸など、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤)は、エフェクターT細胞応答を抑制する。複数の態様において、本明細書に開示されるTレジトープ化合物または組成物の1または複数のTレジトープは、自然免疫応答を抑制する。複数の態様において、本開示されているTレジトープ化合物及び組成物の1または複数のTレジトープは、適応免疫応答を抑制する。複数の態様において、本開示されているTレジトープ化合物および組成物の1または複数のTレジトープは、ヘルパーT細胞応答を抑制する。複数の態様において、本開示されているTレジトープ化合物および組成物の1または複数のTレジトープは、メモリーT細胞応答を抑制する。複数の態様において、本開示されているTレジトープ化合物および組成物の1または複数のTレジトープは、B細胞応答を抑制する。複数の態様において、本開示されているTレジトープ化合物および組成物の1または複数のTレジトープは、NKT細胞応答を抑制する。
【0031】
複数の態様において、本開示は、医学的状態を予防又は治療するためのキット、特に、対象における免疫応答の抑制のためのキットに関し、ここで、キットは、本開示のTレジトープ化合物又は組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、または本明細書に開示される融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸など、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤)を含む。複数の態様において、キットは、有効量の抗原もしくはアレルゲン、または治療剤、例えば置換タンパク質もしくはペプチドをさらに含んでいてもよい。
【0032】
複数の態様において、本開示は、抗体またはその断片などのポリペプチドから、または抗体またはその断片などのポリペプチドへの、本開示の1または複数のTレジトープの除去または挿入を含む、免疫工学の方法に関する。例えば、複数の態様において、本開示は、抗体又はその断片を含む化合物又は組成物の免疫原性を高めるための方法に関し、これは、抗体又はその断片が樹状細胞などの抗原提示細胞への抗原標的化のためのワクチン送達ベクターとして機能する場合に特に有用であろう。複数の態様において、前記方法は、前記抗体またはその断片から、1または複数の制御性T細胞エピトープ(例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドもしくはポリペプチド)の同定と除去を含んでいる。複数の態様において、抗体またはその断片の1または複数の制御性T細胞エピトープは、本明細書(例えば、実施例のセクション(1))において記載されるようなEpiMatrixおよびJanusMatrix解析によって同定される。複数の態様において、抗体(またはその断片)ワクチン送達ベクターの1または複数の制御性T細胞エピトープは、送達された抗原に対する抗原特異的免疫応答を抑制し得、前記1または複数の制御性T細胞エピトープの除去は、免疫寛容原性の低下および送達された抗原に対する強い抗原特異的免疫応答の刺激を可能にする。複数の態様において、ワクチン送達ベクターからの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の全てまたは一部を欠失させることを含む。複数の態様において、ワクチン送達ベクターからの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の一部または全ての欠失と、制御性T細胞エピトープのアミノ酸の欠失の部位での1または複数のアミノ酸の付加とを含む。複数の態様において、ワクチン送達ベクターからの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、1または複数の制御性T細胞エピトープを変異させる(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組み換え技術によって1または複数の点変異を1または複数の制御性T細胞エピトープに導入する)ことである。複数の態様において、ワクチン送達ベクターからの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、1または複数のアミノ酸を1または複数の制御性T細胞エピトープ配列に導入することであり、これは複数の態様において、配列の以前の寛容性が除去されるように、1または複数の制御性T細胞エピトープ配列を破壊することを含む。複数の態様において、除去部位における前記付加された1または複数のアミノ酸の数は、以前に存在した制御性T細胞エピトープアミノ酸から削除されたアミノ酸の数に対応する必要はない。複数の態様において、抗体またはその断片からの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、ワクチン送達ベクターまたはワクチン送達ビヒクルもしくはベクターの標的抗原の免疫原性を高める結果となる。複数の態様において、ワクチン送達ベクターからの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、ワクチン送達ベクターまたはワクチン送達ビヒクルもしくはベクターの標的抗原の抗原特異的免疫応答の増大をもたらす。複数の態様において、ワクチン送達ベクターは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノスペシフィック抗体、バイスペシフィック抗体、グリコシル化抗体、Fc修飾抗体、抗体-薬剤コンジュゲート、異なるクラスのサブクラスの抗体(例えば、IgG(例えば、限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、IgM、IgE、またはIgA)、またはその断片もしくは抗原特異的抗体断片(Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉鎖構造多特異抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディなど)であってもよい。複数の態様において、1または複数の制御性T細胞エピトープは、1または複数の配列番号1~124の配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有する。
【0033】
さらに、本開示は、抗体またはその断片の免疫原性を低下させるおよび/または寛容性を増大させるための方法に関し、これは、抗体またはその断片が治療用タンパク質として機能する場合に特に有用であろう。複数の態様において、前記方法は、1または複数の制御性T細胞エピトープ(例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド)を前記抗体もしくはその断片へ挿入する工程を含む。複数の態様において、前記抗体または断片の1または複数の制御性T細胞エピトープは、前記抗体またはその断片に対する抗原特異的免疫応答を抑制する。複数の態様において、前記1または複数の制御性T細胞エピトープは、Tレジトープが抗体またはその断片内のその自然な位置にない場合、または抗体またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体またはその断片が変異または欠損した対応部分を有する場合)など、抗体またはその断片に融合または内部に挿入(例えば、限定されないが、部位指向性突然変異誘発または他の組み換え技術)され得る。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の全てまたは一部の挿入を含む。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の一部またはすべての挿入と、制御性T細胞エピトープのアミノ酸の挿入部位における1または複数のアミノ酸の除去とを含む。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープを含むように抗体またはその断片の配列を変異させる(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組み換え技術によって抗体またはその断片に1または複数の点変異を導入する)工程を含む。複数の態様において、抗体または断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入では、配列の以前の免疫原性が低下し、新しい配列の免疫寛容原性が向上するように、1または複数の制御性T細胞エピトープ配列を導入する工程になるだろう。複数の態様において、制御性T細胞エピトープアミノ酸の挿入部位における前記付加された1または複数のアミノ酸の数は、抗体またはその断片の配列から削除されたアミノ酸の数に対応する必要はない。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、抗体またはその断片の免疫原性を低下させる結果となる。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、抗体またはその断片の寛容性を増加させるという結果をもたらす。複数の態様において、米国特許第7,442,778号、米国特許第7,645,861号、米国特許第7,655,764号、米国特許第7,655,765号、および/または米国特許第7,750,128号(これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、1または複数のTレジトープがFcドメインに内部配列として組み込まれ得る。このような内部配列は、挿入(すなわち、以前に存在したFcドメインのアミノ酸の間)または以前に存在したFcドメインのアミノ酸の置換(すなわち、以前に存在したFcドメインのアミノ酸を除去してペプチドアミノ酸を加える)によって追加する工程ができる。後者の場合、付加されるペプチドアミノ酸の数は、以前に存在したFcドメインから除去されたアミノ酸の数に対応する必要はない;例えば、複数の態様において、組成物は、ネイティブFcドメインから1~21アミノ酸の配列が除去され、9~15アミノ酸の付加内部配列である場合が構成される。複数の態様において、抗体またはその断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノスペシフィック抗体、バイスペシフィック抗体、グリコシル化抗体、Fc修飾抗体、抗体-薬物複合体、異なるクラスのサブクラスの抗体などを含むことができるが、これに限定されない。IgG(例えば、限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、IgM、IgE、またはIgA)分子、またはその抗原特異的抗体断片(Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉立体構造多特異抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディなど)などが挙げられる。複数の態様において、1または複数の制御性T細胞エピトープは、1または複数の配列番号1~124を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有する。
【0034】
例えば、複数の態様において、1または複数の配列番号1~124(およびその断片または変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有する、本開示の1または複数のTレジトープは、ヒトIgGまたはその断片に、(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組換え技術により)融合またはその内部に挿入されてもよい。例えば、TレジトープがヒトIgGまたはその断片内のその天然の位置に存在しない場合、またはヒトIgGまたはその断片(対象自身のヒトIgGまたはその断片など)がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定のヒトIgGまたはその断片が変異または欠損した対応部分を有する場合)において、本開示の1または複数のTレジトープは、ヒトIgGまたはその断片に、(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組換え技術により)融合またはその内部に挿入されてもよい。前述のように、1または複数の配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124を含むTレジトープは、ポリペプチド(例えば、ヒトIgG重鎖可変領域を構成しないポリペプチド)に融合または内部に挿入されてもよい。複数の態様において、ポリペプチドがヒトIgG重鎖可変領域(ヒトIgG抗体またはその断片など)を含む場合、1または複数の配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124は、ヒトIgG重鎖可変領域またはその断片に、(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組換え技術により)融合または内部に挿入してもよい。そのような場合、例えば、TレジトープがヒトIgG重鎖可変領域またはその断片内のその自然な位置にない場合、またはヒトIgG重鎖可変領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定のヒトIgG重鎖可変領域またはその断片が変異または対応する部分を欠いている場合)であってもよい。複数の態様において、1または複数の配列番号2、9~11、29~41、および75~100を含むTレジトープは、ポリペプチド(例えば、ヒトIgG重鎖定常領域を含まないポリペプチド)に融合されるか、その内部に挿入されてもよい。複数の態様において、ポリペプチドがヒトIgG重鎖定常領域(ヒトIgG抗体またはその断片など)を含む場合、前記1または複数の配列番号2、9~11、29~41、および75~100の配列は、ヒトIgG重鎖定常領域またはその断片に、(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術により)融合されてもよいし、内部に挿入されてもよい。そのような場合、例えば、TレジトープがヒトIgG重鎖定常領域またはその断片内のその自然の位置にない場合、またはヒトIgG重鎖定常領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定のヒトIgG重鎖定常領域またはその断片が突然変異を有するまたは対応部分を欠いている場合)であってもよい。複数の態様において、1または複数の配列番号12を含むTレジトープは、ポリペプチド、例えば、ヒトIgG軽鎖可変領域を含まないポリペプチドに融合またはその内部に挿入することができる。複数の態様において、ポリペプチドがヒトIgG軽鎖可変領域(ヒトIgG抗体またはその断片など)で構成されている場合、前記1または複数の配列番号12の配列は、ヒトIgG軽鎖可変領域またはその断片内に、(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術により)融合させるかまたは内部に挿入してもよい。そのような場合、TレジトープがヒトIgG軽鎖可変領域またはその断片内のその自然の位置にない場合、またはヒトIgG軽鎖可変領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定のヒトIgG軽鎖可変領域またはその断片が変異または欠損した対応部分を有する場合)などであってもよい。複数の態様において、1または複数の配列番号13および101~110を含むTレジトープは、ポリペプチド、例えば、ヒトIgG軽鎖定常領域を構成されないポリペプチドに融合されるか、またはその内部に挿入されることができる。複数の態様において、ポリペプチドがヒトIgG軽鎖定常領域(ヒトIgG抗体またはその断片など)を構成される場合、前記1または複数の配列番号13および101~110の配列は、ヒトIgG軽鎖定常領域またはその断片に(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術により)融合されてもよいし、内部に挿入されてもよい。そのような場合、例えば、TレジトープがヒトIgG軽鎖定常領域またはその断片内のその自然の位置にない場合、またはヒトIgG軽鎖定常領域またはその断片が、このようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定のヒトIgG軽鎖定常領域またはその断片が変異または欠損した該当部分を有する場合)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本開示は、以下の図を参照することにより、よりよく理解され得る。
【
図1A】
図1A~Cは、HLA DRB1競合結合曲線を報告する一連のグラフである。特に、Tレジトープ(配列番号14)についてのHLA結合結果の要約を
図1Aに提示する。
【
図1B】EpiMatrix(商標)予測、計算されたIC50値、および結果の分類を、各HLAアレルについて報告している。
図1B~Cは、選択されたクラスII HLAアレルに対するTレジトープ(配列番号14)の結合曲線を示している。
図1Bは、HLA DRB1 *0801アッセイについての結果を要約し、一方、
図1Cは、HLA DRB1 *1501アッセイについての結果を要約している。
【
図2A】
図2A~Cは、開示された破傷風トキソイド(TT)アッセイにおける高度活性化制御性T細胞及びエフェクターCD4+T細胞に対するゲーティング戦略を示す。
図2Aに示すように、凝集体及び死細胞を除去するために細胞を最初にゲーティングし、CD4+T細胞については生きた細胞をゲーティングし、その後の全ての分析はこの集団に対して行われた。
【
図2B】CD4+T細胞は、上昇したCD25、FoxP3、及び低いCFSE(増殖)に対してゲーティングされる(
図2B)。
図2Bは、0.5μg/ml TTを添加した代表的なアッセイ(右側)の、TTを添加していない代表的なアッセイ(左側)の結果を示している。
【
図2C】
図2Cは、そのようなアッセイの代表的な結果を示し、増殖および活性化CD4+ T細胞集団が高度に相関していることを表している。
【
図3A】
図3A-Bは、破傷風トキソイド(TT)での刺激およびペプチド(配列番号7)による抑制に伴うCD4+ T細胞の増殖(
図3A-培地のみのコントロールを減算した絶対値を示す)および活性化(
図3B-培地のみのコントロールを減算した絶対値を示す)を表している。Tレジトープ(配列番号7)刺激の阻害実験から収集したデータを集約し、いくつかの濃度(0、8、16、24μg/mL)のTレジトープでの処理後に残っているCD4増殖または活性化の%としてプロットした。プロットは絶対値(±標準偏差)である。この解析は、Tレジトープ(配列番号7)刺激による阻害に対する個々のドナーの感受性を表示する。
【
図4A】
図4A~Bは、破傷風トキソイド(TT)での刺激及びペプチド(配列番号7)による抑制時のCD4+T細胞の増殖(
図4A-培地のみのコントロールを減算した正規化値を示す)及び活性化(
図4B-培地のみのコントロールを減算した正規化値を示す)を表す図である。Tレジトープ(配列番号7)刺激に対する阻害実験から収集したデータを集約し、いくつかの濃度(0、8、16、24μg/mL)でのTレジトープでの処理後に残っているCD4増殖または活性化の%としてプロットした。正規化された値が使用されている。プロットは、正規化された値(±標準偏差)で表される。この解析は、Tレジトープ(配列番号7)刺激による阻害に対する個々のドナーの感受性を表示する。
【
図5A】
図5A~Dは、破傷風トキソイド(TT)での刺激及びペプチド(配列番号7)による抑制に伴うCD4+T細胞の増殖(
図5A-培地のみのコントロールを減算していない絶対値を示す)及び活性化(
図5C-培地のみのコントロールを減算していない絶対値を示す)を表すものである。Tレジトープ(配列番号7)刺激に対する阻害実験から収集したデータを集約し、いくつかの濃度(0、8、16、24μg/mL)のTレジトープで処理した後に残るCD4増殖または活性化の%としてプロットした。プロットは絶対値(±標準偏差)である。この解析は、Tレジトープ(配列番号7)刺激による阻害に対する個々のドナーの感受性を表示する。培地は、
図5B及び
図5Dの各ドナーの平均培地バー及び指定培地%によって示されるように、無視できるレベルの増殖及び活性化にのみ寄与する。
【
図6A】
図6A~Dは、破傷風トキソイド(TT)での刺激及びペプチド(配列番号7)による抑制に伴うCD4+T細胞の増殖(
図6A-培地のみのコントロールを減算していない正規化値を示す)及び活性化(
図6C-培地のみのコントロールを減算していない正規化値を示す)を表すものである。Tレジトープ(配列番号7)刺激に対する阻害実験から収集したデータを集約し、いくつかの濃度(0、8、16、24μg/mL)のTレジトープで処理した後に残っているCD4増殖または活性化の%としてプロットした。正規化された値が使用される。上記のプロットは、正規化された値(±標準偏差)で表されている。この解析は、Tレジトープ(配列番号7)刺激による阻害に対する個々のドナーの感受性を表示する。培地は、
図5B及び
図5Dの表における各ドナーの平均培地%及び指定培地%によって示されるように、無視できるレベルの増殖及び活性化にのみ寄与する。
【
図7】
図7は、EpiBar及びプロミスキャスインフルエンザエピトープのEpiMatrix分析を含む免疫原性インフルエンザHAペプチドの例を表している。このインフルエンザHAペプチドは、EpiMatrixの8つのアレルすべてにおいて極めて高いスコアを示し、18のクラスタースコアを有している。クラスタースコアが10であると有意であると考えられる。バンド状のEpiBarパターンは、プロミスキャス・エピトープに特徴的である。結果は、PRYVKQNTL(配列番号125)、RYVKQNTLK(配列番号126)、YVKQNTLKL(配列番号127)、VKQNTLKLA(配列番号128)およびKQNTLKLAT(配列番号129)についてのものである。Zスコアは、9量体フレームが所定のHLAアレルに結合する可能性を示す。上位5%のすべてのスコアは「ヒット」とみなされ、10%以下の非ヒット(*)は、簡略化のため
図7においてマスクされている。
【
図8】
図8は、配列番号7のEpiMatrix分析を表す。結果は、KTLYLQMNS(配列番号16)、TLYLQMNSL(配列番号17)、LYLQMNSLR(配列番号18)、YLQMNSLRA(配列番号19)、LQMNSLRAE(配列番号19)についてのものであり、配列番号20)、QMNSLRAED(配列番号21)、MNSLRAEDT(配列番号22)、NSLRAEDTA(配列番号23)、SLRAEDTAK(配列番号24)およびLRAEDTAKH(配列番号25)である。Zスコアは、9量体フレームが所定のHLAアレルに結合する可能性を示す。上位5%のすべてのスコアは「ヒット」とみなされ、10%以下の非ヒット(*)は、簡略化のために
図8ではマスクされている。
【
図9】
図9は、配列番号14のEpiMatrix分析を表す。結果は、ETLYLQMNS(配列番号111)、TLYLQMNSL(配列番号112)、LYLQMNSLR(配列番号113)、YLQMNSLRA(配列番号114)、LQMNSLRAE(配列番号115)、QMNSLRAED(配列番号116)、MNSLRAEDT(配列番号117)、NSLRAEDTA(配列番号118)、SLRAEDTAV(配列番号119)、LRAEDTAVY(配列番号120)である。Zスコアは、9量体フレームが所定のHLAアレルに結合する可能性を示す。上位5%のすべてのスコアは「ヒット」とみなされ、10%以下の非ヒット(*)は、簡略化のため
図9においてマスクされている。
【
図10】
図10は、Tレジトープ-アルブミン送達ビヒクルの有効性を評価するTTBSAアッセイの実験設計を示す。
【
図11】
図11は、本開示の配列番号1~15のTレジトープを同定したJanusMatrixの結果の概要である。
【
図12】
図12は、配列番号1のTレジトープ、及び配列番号16~28を含む配列番号1内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【
図13】
図13は、配列番号10のTレジトープ、および配列番号87~93を含む配列番号10内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【
図14】
図14は、配列番号11のTレジトープ、および配列番号94-100を含む配列番号11内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【
図15】
図15は、配列番号12のTレジトープに対するJanusMatrixレポートである。
【
図16】
図16は、配列番号13のTレジトープ、および配列番号101~110を含む配列番号13内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【
図17】
図17は、配列番号14のTレジトープ、及び配列番号111~120を含む配列番号14内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【
図18】
図18は、配列番号15のTレジトープおよび配列番号121~124を含む配列番号15内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【
図19】
図19は、配列番号10のTレジトープ、および配列番号29-41を含む配列番号2内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【
図20】
図20は、配列番号3のTレジトープ、および配列番号42~48を含む配列番号3内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【
図21】
図21は、配列番号4のTレジトープ、および配列番号49~50を含む配列番号4内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【
図22】
図22は、配列番号50のTレジトープに対するJanusMatrixレポートである。
【
図23】
図23は、配列番号6、および配列番号51~57を含む配列番号6内に含まれる9量体のTレジトープに関するJanusMatrixレポートである。
【
図24】
図24は、配列番号10のTレジトープ、および配列番号58~67を含む配列番号7内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【
図25】
図25は、配列番号8のTレジトープ、および配列番号68~74を含む配列番号8内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【
図26】
図26は、配列番号9のTレジトープ、および配列番号87~93を含む配列番号9内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(発明の属する技術分野)
適応免疫カスケードは、可溶性タンパク質抗原が抗原提示細胞(APC)に取り込まれ、クラスII抗原提示経路を通じて処理されるときに始まる。クラスII抗原提示経路におけるタンパク質抗原は、小胞体に存在する様々なプロテアーゼによって分解される。得られたタンパク質断片の一部は、クラスII MHC分子に結合される。ペプチドを結合したMHC分子は細胞表面に運ばれ、そこでCD4+T細胞によってインテロゲートされる(interrogated)。MHC分子に結合し、APCと循環T細胞間の細胞間相互作用を媒介することができるペプチド断片は、T細胞エピトープと呼ばれる。CD4+T細胞によるこれらのペプチド-MHC複合体の認識は、応答するT細胞の表現型および局所的なサイトカイン/ケモカイン環境に基づいて、免疫活性化または免疫抑制反応のいずれかを引き起こすことができる。一般に、MHC/ペプチド複合体とTエフェクター細胞のT細胞受容体(TCR)との結合は、活性化とそれに続くIL-4、IFNなどの炎症性サイトカインの分泌を引き起こす。一方、ナチュラル型制御性T細胞(TReg)の活性化は、免疫抑制性サイトカインであるIL-10やTGF-βなどの発現を引き起こす(Shevach E, (2002), Nat Rev Immunol, 2(6):389-400 )。これらのサイトカインは、近傍のエフェクターT細胞に直接作用し、場合によってはアネルギーやアポトーシスを引き起こす。また、制御性サイトカインやケモカインがエフェクターT細胞をT制御性表現型に変換する場合もある。この過程は、ここでは「誘導性」あるいは「アダプティブ(適応性)」寛容と呼ばれている。MHC分子に結合し、循環する内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)に関与および/または活性化することができるT細胞エピトープは、Tレジトープと称される。複数の態様において、本開示されるTレジトープは、複数のMHCアレルおよび複数のTCRに結合することができるエピトープである、T細胞エピトープクラスターである。
【0037】
最初の自己/非自己の識別は、新生児発生中の胸腺で起こり、皮質及び髄質上皮細胞は、未熟なT細胞に対して特異的な自己タンパク質エピトープを発現する。高親和性の自己抗原を認識するT細胞は削除されるが、中程度の親和性を持つ自己反応性T細胞は削除を免れ、ナチュラル制御性T細胞(TReg)細胞へと変化することができる。これらのナチュラルTReg細胞は末梢に運ばれ、潜在的な自己免疫反応を制御するのに役立つ。ナチュラル制御性T細胞は、免疫調節及び自己寛容の重要な構成要素である。
【0038】
自己寛容は、T細胞、B細胞、サイトカイン及び表面受容体の間の複雑な相互作用によって制御される。T制御性免疫応答は、タンパク質抗原(自己であれ外来であれ)に対するTエフェクター免疫応答と均衡を保つ。自己反応性Tエフェクター細胞の数または機能の増加、あるいは制御性T細胞の数または機能の減少のいずれかにより、バランスが自己反応性側に傾くと、自己免疫として現れる。
【0039】
成熟T細胞が、IL-10とTGF-βの存在下でT細胞受容体を介して活性化されると、通常はバイスタンダー制御性T細胞の供給を受けて、「アダプティブ」TReg表現型に変換される場合、第2の寛容が末梢で発現する。これらの「アダプティブ」TReg細胞の役割としては、侵入した病原体をうまく排除した後の免疫反応の弱化、アレルギー反応による過剰な炎症の制御、低レベルあるいは慢性感染による過剰な炎症の制御、あるいは有益な共生細菌やウイルスに対する炎症反応の制御などが考えられている。「アダプティブ」TRegはまた、体細胞超変異を受けたヒト抗体を標的とする免疫反応を抑制する役割を果たす可能性がある(Chaudhry Aら、(2011)、Immunity、34(4):566-78)。
【0040】
TReg細胞はまた、B細胞寛容に役立っている。B細胞は、その細胞表面に単一の低親和性Fc受容体であるFcyRIIBを発現する(Ravetch JVら、(1986)、Science、234(4777):718-25)。このレセプターは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ配列(ITIM)を含んでいる。免疫複合体によるFcyRIIBとB細胞受容体(BCR)の共ライゲーションは、ITIMのチロシンリン酸化を誘発し、イノシトールホスファターゼ、SHIPの動員をもたらす。SHIPはMAPキナーゼの活性化を妨げることによりBCRトリガー増殖を抑制し、バートンチロシンキナーゼ(Btk)の細胞膜からの解離により食作用を阻害して細胞内のカルシウム流入を阻害する。FcyRIIBは、ITIM とは無関係にアポトーシスを誘導することもできる。ICによるFcyRIIBのホモ会合が起こると、Btkの細胞膜への会合が促進され、それによってアポトーシス反応が引き起こされる(Pearse R, et al., (1999), Immunity, 10(6):753-60)。FcyRIIBの発現は非常に多様であり、サイトカインに依存している。活性化されたTh2およびTReg細胞によって発現されるIL-4およびIL-10は、FcyRIIBの発現を高めるために相乗的に作用することが示されており(Joshi Tら、(2006)、Mol Immuno、43(7):839-50)、したがって、液性応答の抑制を補助することができる。
【0041】
望まれない免疫応答を抑制するためにTレジトープ特異的TReg細胞を利用することが可能であり、また、共送されたタンパク質に対するアダプティブTRegを誘導することが可能である。この発見は、移植、タンパク質治療薬、アレルギー、慢性感染症、自己免疫及びワクチン設計のための治療レジメン及び抗原特異的治療法の設計に示唆を与えている。本開示のTレジトープ化合物または組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、または本明細書に開示される融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸など、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;及び/又は本明細書に開示される医薬組成物又は製剤)を含むTレジトープと組み合わせた薬物、タンパク質、またはアレルゲンの投与により、エフェクター免疫応答を抑制することができる。本開示のTレジトープ化合物及び組成物を含むTレジトープは、免疫系を寛容に向けて意図的に操作するために使用することができる。
【0042】
本明細書のTレジトープ化合物及び組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチドまたは融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示する発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;及び/又は本明細書に開示する医薬組成物又は製剤)は、制御性T細胞の選択的係合及び活性化において有用である。特定の内在性Treg(複数の態様において、ナチュラルTreg及び/又はアダプティブTregを含む)は、全身的及び限定された疾患特異的な文脈の両方において、不要な免疫応答の抑制に関与、活性化、及び/又は適用できることが、本明細書において実証される。
【0043】
広範な努力にもかかわらず、少数の例外を除いて、ナチュラルTreg、より重要には臨床的に有意な量で循環しているナチュラルTregの抗原特異性は、不明である。本明細書で提示するのは、ヒト免疫グロブリンが、制御性T細胞(複数の態様において、ナチュラルTreg及び/又はアダプティブTregを含む)の内在性集団に関連するT細胞エピトープを含むという実証である。通常の免疫監視の過程で、これらのタンパク質は、樹状細胞またはマクロファージのような専門のAPCによって取り込まれ、分解される。分解される過程で、これらのタンパク質に含まれるエピトープの一部は、MHC分子に結合し、細胞表面に運ばれ、制御性T細胞に提示される。これらの細胞は、APCによって活性化されると、サイトカインやケモカインを放出し、細胞外タンパク質の機能を阻害する自己免疫反応を抑制するのに役立つ。
【0044】
本開示のTレジトープ化合物及び組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチドまたは融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示されるような医薬組成物または製剤)を使用することにより、内在性Treg(複数の態様において、ナチュラルTregおよび/またはアダプティブTregを含む)を選択的に活性化して、本明細書のTレジトープ組成物が、種々の望ましくない免疫応答の抑制に使用できることが、本明細書において示される。最も単純な形態では、本開示のTレジトープ組成物の全身適用は、例えば、MS再燃(MS flare-ups)、アレルギー反応、移植反応、又は感染に対する制御不能な反応などの重度の自己免疫反応の制御に有用な一般的な免疫抑制剤として使用することができる。
【0045】
より制御された用途、例えば、限定されるものではないが、関節リウマチ(RA)に罹患した関節に局所的に適用する場合、本開示のTレジトープ化合物及び組成物(例えば、ポリペプチド(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチドまたは融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤を含む)を使用して、局所の自己免疫応答を抑制することができる。特定の他のT細胞エピトープに対する本開示のTレジトープ化合物又は組成物の融合、結合又は混和によって達成され得るような標的化された用途では、Tレジトープ化合物及び組成物は、免疫系のバランスをそのままにして、融合、結合又は混和したT細胞エピトープに対する非常に特異的な免疫反応を抑制することが可能である。例えば、インスリンなどの自己免疫抗原、ブラジルナッツ抗原などのアレルゲン、または抗体などの抗原性タンパク質(IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE分子またはその抗原特異的抗体断片(限定されないが、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉鎖構造多特異性抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディなど)など)、または置換酵素に融合した本開示のTレジトープ化合物または組成物の送達を通じて、免疫系は、例えば、内在性Treg(複数の態様において、ナチュラルTregおよび/またはアダプティブTregを含む)を誘導すること、および/または応答エフェクターT細胞の表現型を適応制御性T細胞の表現型に転換させることにより、共配与抗原を、「許容するように」訓練され得る。
【0046】
上記のように、本開示のTレジトープは、循環している細胞外タンパク質、特にヒト免疫グロブリンに由来するものである。有用であるためには、これらのTレジトープは、真のT細胞エピトープ(すなわち、MHC分子とTCRの両方に結合することができる)であるべきである。複数の態様において、Tレジトープは、治療効果を有するのに十分な大きさの制御性T細胞の既存の集団に関連していることが望ましい。複数のMHCアレル及び複数のTCRに結合することができるエピトープであるT細胞エピトープクラスターは、この後者の資格を満たすための鍵である。
【0047】
本開示の治療法は、以下の利点を提供する。
1.本開示のTレジトープ組成物による治療は、高度に抗原特異的である(例えば、Tレジトープ組成物による治療は、例えば、高度に抗原特異的な様式で、対応する内在性TReg集団(複数の態様において、ナチュラルTReg及び/又はアダプティブTRegを含む)を拡大及び/又は刺激しうる)。
2.対象が頻繁な高用量抗原製剤で長期間にわたって治療される現在の抗原特異的治療と比較した場合、効率的で安価な治療レジメン;及び
3.高用量療法による寛容の誘導が、治療された対象において免疫寛容を誘導することに失敗した場合の第二の防御線となる。
【0048】
複数の態様において、本開示は、治療用Tレジトープ化合物及び組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチドまたは融合ポリペプチドのキメラ組成物をコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤を含む)を、自己免疫応答を経験している対象に安全に投与することができる。請求されるTレジトープ化合物及び組成物の作用機序は自然であり、その有効性及び安全性を支持する。
【0049】
複数の態様において、本開示は、Tレジトープ化合物及び組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、または本明細書に開示される融合ポリペプチド組成物のキメラをコードする核酸など本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、細胞;および/または本明細書に開示されるような医薬組成物または製剤)であって、1または複数の表1に開示される制御性Tレジトープ、ならびにその断片、その変異体、およびそのような変異体の断片に関しており、ここで、前記断片および/または変異体は、MHC結合性および/またはTCR特異性を保持し、および/または抑制性もしくは制御性T細胞活性を保持するものである。特定の複数の態様において、Tレジトープは、N末端アセチル基及び/又はC末端アミノ基でキャップされ得る。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
(定義)
本発明の理解をさらに容易にするために、多数の用語及び語句を以下に定義する。特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されるような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそう定義されない限り、理想化または過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことがさらに理解されよう。
【0058】
本明細書で提供される範囲は、範囲内の全ての値の略記であると理解される。例えば、1~25の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、又は小範囲、並びに例えば1などの前述の整数間のすべての介在小数値が含まれると理解される。1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9のような前記整数の間のすべての小数値を含む。サブレンジに関しては、レンジのいずれかの端点から伸びる「囲まれたサブレンジ」が特に企図されている。例えば、1~25の例示的な範囲の囲まれたサブ範囲は、一方向に1~5、1~10、1~15、及び1~20、又は他方向に25~20、25~15、25~10、及び25~5から成ることができる。
【0059】
本明細書で使用される場合、生物からの組織、細胞、又は分泌物の任意のサンプルを指すものとして、「生物学的サンプル(biological sample)」という用語が使用される。
【0060】
本明細書で使用する場合、「移植(transplantation)」という用語は、ある対象から「移植組織(transplant)」または「移植片(graft)」と呼ばれる細胞、組織、または臓器を取り出し、それをまたはそれらを(通常)異なる対象に入れるプロセスを指す。移植を行う対象を「ドナー」、移植を受ける対象を「レシピエント」と称する。遺伝的に異なる同種の被移植体の間で移植された臓器や移植片は「同種移植片(allograft)」と称する。異なる種の対象の間で移植された移植片は、「異種移植片(xenograft)」と称する。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「医学的状態(medical condition)」は、治療及び/又は予防が望ましい1または複数の身体的及び/又は心理的症状として現れる任意の状態又は疾患を含むが、これに限定されず、以前及び新たに特定された疾患及び他の障害が含まれる。
【0062】
本明細書で使用する場合、「免疫反応(immune response)」という用語は、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び上記細胞又は肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン及び補体を含む)の協働作用の結果による、人体からの、癌細胞、転移性腫瘍細胞、悪性黒色腫、侵入した病原体(ウィルスを含む)、病原体に感染した細胞または組織の選択的な損傷、破壊、または排除、あるいは自己免疫または病的炎症の場合には正常なヒト細胞または組織の選択的な損傷、破壊、または排除を指す。複数の態様において、免疫応答は、測定可能な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答(例えば、免疫原性ポリペプチドを発現するウイルスに対する)または抗体の産生などの測定可能なB細胞応答(例えば、免疫原性ポリペプチドに対する)、を含む。当業者であれば、明細書の実施例に開示するような実験およびアッセイの利用を含めて、ペプチド、ポリペプチド、または関連組成物に対する免疫応答が生じたかどうかを判定するための様々なアッセイが公知である。様々なBリンパ球およびTリンパ球アッセイは、ELISA、EliSpotアッセイ、細胞障害性Tリンパ球CTLアッセイ、例えばクロム放出アッセイ、末梢血リンパ球(PBL)を用いた増殖アッセイ、テトラマーアッセイおよび他のサイトカイン生成アッセイなど、よく知られたものである。参照により本明細書に組み込まれるBenjaminiら(1991)を参照されたい。
【0063】
本明細書で使用する場合、本開示のTレジトープ組成物を含む組成物(例えば、1または複数の配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有しているポリペプチド(これは、本明細書において「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」「Tレジトープ」「Tレジトープペプチド」「T細胞エピトープポリペプチド」として称呼されてもよい);本明細書に開示されるような核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、または細胞(これらの全ては複数の態様において分離、合成、または組換えであり得る);本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物(これらは複数の態様において分離、合成、または組換えであり得る);および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤)の「有効量」、「治療上有効量」等の用語は、所望の治療及び/又は予防効果を達成するに十分な量を意味し、例えば、治療されている疾患に関連する症状の予防、または減少をもたらす量である。対象に投与される本開示の組成物の量は、疾患の種類および重症度、ならびに個体の特性、例えば一般的な健康、年齢、性別、体重および薬物に対する耐性に依存するであろう。また、疾患の程度、重症度、および種類に依存するだろう。当業者は、これらおよび他の要因に応じて、適切な投与量を決定することができるであろう。本発明の組成物はまた、互いに組み合わせて、または1または複数の追加の治療用化合物と組み合わせて投与することができる。
【0064】
本明細書で使用する場合、「制御性T細胞」、「Treg」等の用語は、細胞-細胞接触及び抑制性サイトカイン産生を含む様々な異なる機構を通じて、CD4+及び/又はCD8+エフェクターT細胞(Teff)誘導、増殖、及び/又はサイトカイン産生の抑制又は下方制御を含む免疫エフェクター機能を抑えるT細胞の亜集団のことを意味する。複数の態様において、CD4+TRegは、CD4、CD25、およびFoxP3を含む(これらに限定されない)特定の細胞表面マーカーの存在によって特徴付けられる。複数の態様において、活性化時に、CD4+制御性T細胞は、IL-10及び/又はTGF-βを含む(これらに限定されない)免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。CD4+Tregはまた、グランザイムBおよびパーフォリンを含む(これらに限定されない)エフェクター分子の活性化時の発現によって特徴付けられる、標的細胞の直接殺傷を通じて免疫抑制効果を発揮することができる。複数の態様において、CD8+TRegは、CD8、CD25、および活性化時にFoxP3を含む(これらに限定されない)特定の細胞表面マーカーの存在によって特徴付けられる。複数の態様において、活性化すると、制御性CD8+ T細胞は、IFNγ、IL-10、および/またはTGF-βを含む(これらに限定されない)免疫抑制性サイトカインおよびケモカインを分泌する。複数の態様において、CD8+TRegはまた、標的細胞の直接的な殺傷を通じて免疫抑制効果を発揮することができ、グランザイムB及び/又はパーフォリンを含む(これに限定されない)エフェクター分子の活性化時の発現によって特徴付けられる。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「T細胞エピトープ」とは、7~30アミノ酸の長さで、ヒト白血球抗原(HLA)分子に特異的に結合し、特定のT細胞受容体(TCR)と相互作用できるMHCリガンド又はタンパク質決定因子を意味する。本明細書で使用するように、T細胞と係合することが知られているか決定されている(例えば予測されている)T細胞エピトープの状況では、用語「係合」、「係合」などは、MHC分子(例えばヒト白血球抗原(HLA)分子)と結合したとき、T細胞エピトープがT細胞のTCRと相互作用してT細胞を活性化することができることを意味している。一般に、T細胞エピトープは線状であり、特定の三次元的な特性を発現しない。T細胞エピトープは、変性溶媒の存在によって影響を受けることはない。T細胞エピトープと相互作用する能力は、インシリコ法によって予測することができる(De Groot ASら、(1997)、AIDS Res Hum Retroviruses、13(7):539-41;Schafer JRら、(1998), Vaccine, 16(19):1880-4; De Groot ASら, (2001), Vaccine, 19(31):4385-95; De Groot ARら, (2003), Vaccine, 21(27-30):4486-504, これらは全て、その全体が参照によりここに組み込まれている)。
【0066】
本明細書で使用する場合、「T細胞エピトープクラスター」という用語は、約4~約40個のMHC結合モチーフを含むポリペプチドを指す。特定の実施形態では、T細胞エピトープクラスターは、約5~約35個の間のMHC結合モチーフ、約8~約30個の間のMHC結合モチーフ;および約10~約20個の間のMHC結合モチーフを含む。
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「制御性T細胞エピトープ」(「Tレジトープ」)は、寛容性反応を引き起こし(Weber CAら、(2009)、Adv Drug Deliv、61(11):965-76)、MHC分子に結合して、循環する内在性TReg(態様では、ナチュラルTReg及び/又はアダプティブTRegを含む)に関与(即ち、相互作用及び活性化)可能な「T細胞エピトープ」を指す。複数の態様において、活性化すると、CD4+制御性T細胞は、IL-10および/またはTGF-βを含む(これらに限定されない)免疫抑制性サイトカインおよびケモカインを分泌する。CD4+Tregはまた、標的細胞の直接殺傷を通じて免疫抑制効果を発揮することがあり、グランザイムBおよびパーフォリンを含む(これらに限定されない)エフェクター分子の活性化時の発現によって特徴付けられる、IL-10およびTGF-βおよびTNF-αを含む(これらに限定されない)免疫抑制サイトカインの発現につながる。複数の態様において、活性化すると、制御性CD8+ T細胞は、IFNγ、IL-10、及び/又はTGF-βを含む(これらに限定されない)、免疫抑制性サイトカイン及びケモカインを分泌する。複数の態様において、CD8+ TRegはまた、標的細胞の直接殺傷を通じて免疫抑制効果を発揮することができ、グランザイムBおよび/またはパーフォリンを含む(これらに限定されない)エフェクター分子の活性化時の発現によって特徴付けられる。複数の態様において、本開示されるTレジトープは、複数のMHCアレル及び複数のTCRに結合することができるエピトープである、T細胞エピトープクラスターである。
【0068】
本明細書で使用されるように、用語「免疫刺激性T細胞エピトープポリペプチド」は、免疫応答、例えば、体液性、T細胞ベース、又は自然免疫応答を誘導することができる分子を意味する。
【0069】
本明細書で使用する場合、「B細胞エピトープ」という用語は、抗体と特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。B細胞エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面グループからなり、通常、特定の三次元構造特性、及び特定の電荷特性を有する。コンフォメーション型エピトープと非コンフォメーション型エピトープは、前者への結合は失われるが、後者への結合は変性溶媒の存在下で失われないという点で区別される。
【0070】
本明細書で使用する「対象」という用語は、免疫応答が誘発される任意の生体を指す。この用語の対象には、ヒト、チンパンジーなどの類人猿及びサル類などの非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマなどの家畜、イヌ及びネコなどの家畜哺乳類、マウス、ラット及びモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物、などがあるが、それらに限定されるわけではない。なお、本用語は、特定の年齢や性別を示すものではない。したがって、雄または雌にかかわらず、成人および新生児、ならびに胎児を対象とすることが意図されている。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語「主要組織適合性複合体(MHC)」、「MHC分子」、「MHCタンパク質」又は「HLAタンパク質」は、特に、タンパク質抗原のタンパク質分解切断から生じ、潜在的T細胞エピトープを表すペプチドを結合し、それらを細胞表面に輸送し、そこで特定の細胞、特に細胞障害性Tリンパ球又はTヘルパー細胞に提示できるタンパク質であると理解することができる。ゲノム中の主要組織適合性複合体は、細胞表面で発現する遺伝子産物が内因性抗原および/または外来抗原の結合と提示し、したがって免疫学的プロセスを制御するために重要である遺伝子領域を含む。主要組織適合性複合体は、異なるタンパク質、すなわちMHCクラスIの分子とMHCクラスIIの分子をコードする2つの遺伝子群に分類される。この2つのMHCクラスの分子は、異なる抗原源に特化している。MHCクラスIの分子は、例えばウイルスタンパク質や腫瘍抗原のような内部で合成された抗原を提示する。MHCクラスIIの分子は、外来性のタンパク質抗原、例えばバクテリアの生成物などを提示する。2つのMHCクラスの細胞生物学と発現様式は、これらの異なる役割に適応している。クラスIのMHC分子は重鎖と軽鎖からなり、このペプチドが適当な結合モチーフを持っていれば、約8~11アミノ酸、通常は9~10アミノ酸のペプチドを結合し、細胞傷害性Tリンパ球に提示することができる。クラスIのMHC分子が結合するペプチドは、内因性タンパク質抗原に由来する。クラスIのMHC分子の重鎖は、好ましくはHLA-A、HLA-BまたはHLA-Cの単量体であり、軽鎖はβ-2-ミクログロブリンである。クラスIIのMHC分子は、α鎖とβ鎖からなり、このペプチドが適当な結合モチーフを持っていれば、約12~25アミノ酸のペプチドを結合して、T-ヘルパー細胞に提示することができる。クラスIIのMHC分子が結合するペプチドは、通常、細胞外の外来性タンパク質抗原に由来する。α鎖及びβ鎖は、特にHLA-DR、HLA-DQ及びHLA-DP単量体である。
【0072】
本明細書で使用する場合、「MHC複合体」という用語は、HLAリガンドとして知られるポリペプチドの特定のレパートリーと結合し、前記リガンドを細胞表面に輸送することができるタンパク質複合体を意味する。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「MHCリガンド」は、1または複数の特定のMHCアレルに結合することができるポリペプチドを意味する。用語「HLAリガンド」は、用語「MHCリガンド」と交換可能である。MHC/リガンド複合体をその表面に発現する細胞は、「抗原提示細胞」(APC)と称される。同様に、本明細書で使用する場合、「MHC結合ペプチド」という用語は、MHCクラスI及び/又はMHCクラスII分子に結合するペプチドに関するものである。MHCクラスI/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には8~10アミノ酸長であるが、より長い又はより短いペプチドが有効である場合もある。MHCクラスII/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には10~25アミノ酸長であり、特に13~18アミノ酸長であるが、より長いペプチド及び短いペプチドもまた有効であり得る。
【0074】
本明細書で使用する場合、用語「T細胞受容体」又は「TCR」は、抗原提示細胞(APC)などの細胞の表面上に提示されるMHC/リガンド複合体の特定のレパートリーに係合することができるT細胞によって発現されるタンパク質複合体を指す。
【0075】
本明細書で使用する場合、「MHC結合モチーフ」という用語は、特定のMHCアレルへの結合を予測するタンパク質配列中のアミノ酸のパターンを意味する。
【0076】
本明細書で使用する場合、「EpiBar(商標)」という用語は、少なくとも4つの異なるHLAアレルに対して反応性であると予測される9量体ペプチドを意味する。EpiBar(商標)を含む免疫原性ペプチドの代表的な例を、
図7に以下に示す。
図7は、プロミスキャスインフルエンザエピトープのEpiBar及びEpiMatrix解析の一例を示す図である。プロミスキャスな免疫原性であることが知られているエピトープであるインフルエンザHAペプチドを考慮する。EpiMatrixでは、8つのアレルすべてにおいて非常に高いスコアを示している。そのクラスタースコアは18である。クラスタースコアが10を超えると、有意であるとみなされる。帯状のEpiBarパターンは、プロミスキャス・エピトープに特徴的である。結果は、PRYVKQNTL(配列番号125)、RYVKQNTLK(配列番号126)、YVKQNTLKL(配列番号127)、VKQNTLKLA(配列番号128)及びKQNTLKLAT(配列番号129)に関して
図7に示されている。Zスコアは、9量体フレームが所定のHLAアレルに結合する可能性を示す。上位5%のすべてのスコアは「ヒット」とみなされ、10%以下の非ヒット(*)は、簡略化のため
図7においてマスクされている。
【0077】
本明細書で使用する場合、「ネイティブFc」という用語は、単量体または多量体の形態にかかわらず、全抗体の消化から生じ、ループ領域への挿入またはループ領域の置換によってペプチド配列が付加されてもよい、非抗原結合断片の配列を含む分子または配列を指す。ネイティブFcの元の免疫グロブリン源は、好ましくはヒト由来であり、IgG1およびIgG2を含むがこれに限定されない免疫グロブリンのいずれかであってもよい。ネイティブFcは、共有結合(すなわち、ジスルフィド結合)および非共有結合によって二量体または多量体に連結され得る単量体ポリペプチドから形成される。ネイティブFc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgA、IgE)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2)に応じて1~4の範囲である。ネイティブFcの一例は、IgGのパパイン消化から生じるジスルフィド結合二量体である(Ellisonら(1982)、Nucleic Acids Res. 10:4071-9を参照されたい)。本明細書で使用される「ネイティブFc」という用語は、単量体、二量体、および多量体の形態に汎用される。
【0078】
本明細書で使用する場合、「免疫シナプス」という用語は、所定のT細胞エピトープが細胞表面MHC複合体とTCRの両方に同時に係合することによって形成されるタンパク質複合体を意味する。
【0079】
用語「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマーを意味し、特定の長さを意味するものではない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。本明細書で使用する場合、ポリペプチドは、組換え細胞および非組換え細胞から分離された場合には細胞性物質を実質的に含まないとき、または化学的に合成された場合には化学前駆体または他の化学物質を含まないときに「分離」または「精製」されていると言われる。但し、ポリペプチド(例えば、1または複数の配列番号1~124またはその変異体および断片を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるポリペプチドであり、複数の態様において、分離、合成、または組み換え体であってもよい)は、別のポリペプチド(例えば、異種ポリペプチド)に結合、連結または挿入してもよく、それが細胞内で通常会合しておらず、依然として「分離」または 「精製」される。本明細書で本開示の1または複数のTレジトープに関して使用する場合、用語「異種ポリペプチド」は、1または複数のTレジトープが異種ポリペプチドに異種であるか、自然に含まれないことを意味することが意図される。例えば、本開示の1または複数のTレジトープ(および/または1または複数の他のTレジトープ、例えば参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,884,184号に開示される追加のIgG由来のTレジトープ)は、異種ポリペプチドに連結(例えば、フレーム内融合、化学結合またはその他の結合)および/または挿入できる(例えば、これらに限定されないが、抗体(複数の態様において、モノクローナル、ポリクローナル、マウス、ヒト、ヒト化、モノスペシフィック、バイセシフィック、グリコシル化(例えば、糖鎖修飾)、Fc修飾、または抗体-薬物コンジュゲート;またはその抗体断片(例えば、、Fab、scFv、ダイアボディ、sdAb、またはタンデムscFv);または異なるクラスまたはサブクラス(例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、IgM、IgE、またはIgA))の抗体が挙げられる。さらに、本開示の1または複数のTレジトープは、本開示の前記1または複数のTレジトープがポリペプチドに自然に含まれていない、および/または本開示の前記1または複数のTレジトープがポリペプチドのその自然の位置に配置されていない別のポリペプチドに接合、連結、または挿入することが可能である。例えば、複数の態様において、1または複数のTレジトープは、米国特許第7,442,778号、米国特許第7,645,861号、米国特許第7,655,764号、米国特許第7,655,765号、および/または米国特許第7,750,128号(これらの各々は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)に開示のようにFcドメイン内のアミノ酸に挿入するか置換することができる。複数の態様において、1または複数のTレジトープは、米国特許第8,008,453号、米国特許第9,114,175号、および/または米国特許第10,188,740号(これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、Fcドメイン内の1または複数の内部共役部位に共有結合されてもよい。ポリペプチドが組換え生産される場合、それはまた、培養液を実質的に含まなくてもよく、例えば、培養液は、ポリペプチド調製物の体積の約20%未満、約10%未満、または約5%未満を占める。
【0080】
本明細書で使用する「コンカテマー」ペプチドまたはポリペプチドは、少なくとも2つのペプチドまたはポリペプチドが連結された一連のものを意味する。このような連結は、ストリング・オブ・ビーズ設計を形成することができる。態様において、コンカテマーポリペプチドのペプチドまたはポリペプチドの各々は、任意選択で、1または複数のリンカーによって間隔を空けられてもよく、さらなる態様において、中性リンカーによって間隔を空けられてもよい。「リンカー」という用語は、エピトープまたはワクチン配列などの2つのペプチドドメインの間に付加され、前記ペプチドドメインを接続するペプチドを指す場合がある。複数の態様において、リンカー配列は、本発明で開示の各1または複数の同定されたペプチド間の立体障害を低減するために用いられ、十分翻訳され、本発明で開示の各1または複数の同定されたポリペプチドの処理を支援または可能にする。複数の態様において、リンカーは、免疫原性配列要素をほとんどまたは全く有さないことが好ましい。複数の態様において、コンカテマーポリペプチドの各ペプチドまたはポリペプチドは、任意選択で、切断感受性部位であってもよい1または複数のリンカーを、それらのNおよび/またはC末端端に隣接して有していてもよい。このようなコンカテマーペプチドにおいて、2以上のペプチドは、それらの間に切断感受性部位を有していてもよい。あるいは、2以上のペプチドは、互いに直接、または切断感受性部位でないリンカーを介して連結されていてもよい。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、連邦政府又は州政府の規制機関によって承認又は承認可能であるか、又はヒトを含む動物での使用について米国薬局方又は他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤」等は、薬剤と共に対象に投与することができ、その薬理活性を破壊せず、薬剤の治療量を送達するのに十分な用量で投与した場合に無毒な賦形剤、担体、又は希釈剤のことを指す。
【0083】
本明細書で使用する場合、「遊離チオール」は、ポリペプチド及び/又はタンパク質中の任意にアミノ酸のチオール側鎖を指し、ここで、チオールはスルフヒドリル基を含有する。例えば、遊離チオールは、分子内または分子間ジスルフィド結合を介して他のアミノ酸の側鎖に結合していない。
【0084】
本明細書で使用する「官能基」とは、移動性タンパク質および固定性タンパク質を含む血液成分上の基であり、改変治療ペプチド上の反応性基が反応して共有結合を形成するものである。官能基には、エステル反応性基と結合するためのヒドロキシル基、マレイミド、イミデート及びチオエステル基と結合するためのチオール基;反応性基上の活性化カルボキシル、リン酸又は他の任意のアシル基と結合するためのアミノ基を含むことができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「血液成分」は、固定性または移動性のいずれであってもよい。固定性血液成分は、非移動性の血液成分であり、組織、膜受容体、間質性タンパク質、フィブリンタンパク質、コラーゲン、血小板、内皮細胞、上皮細胞及びそれに関連する膜及び膜受容体、体細胞、骨格及び平滑筋細胞、ニューロン成分、骨細胞及び破骨細胞並びに全ての体組織特に循環系及びリンパ系に関連するものを含む。移動性血液成分とは、一般に長時間(5分以内、より通常は1分以内)に渡って固定された座を持たない血液成分である。これらの血液成分は、膜に結合しておらず、長時間血液中に存在し、少なくとも0.1μg/mlの最小濃度で存在する。移動性血液成分としては、血清アルブミン、トランスフェリン、フェリチン、IgMやIgGなどの免疫グロブリンが挙げられる。移動性血液成分の半減期は、少なくとも約12時間であってよい。
【0086】
本明細書で使用する場合、「目的別コンピュータプログラム」という用語は、特定の目的;典型的には、特定の生データの組を分析し、特定の科学的疑問に答えるために設計されたコンピュータプログラムを指す。
【0087】
本明細書で使用される場合、「z-スコア」という用語は、ある要素が平均から何標準偏差であるかを示す。z-スコアは、以下の式:z=(X-μ)/σから計算することができ、ここで、zはz-スコア、Xは要素の値、μは母平均、σは標準偏差である。
【0088】
本明細書で使用される場合、単数形、「a」、「an」及び「the」は、内容が明確にそうでないことを示さない限り、「at least one」 を含む複数形を含むことを意図している。「または」は「及び/又は」を意味する。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」及び「1以上」は、関連する列挙された項目の任意の及び全ての組合せを含む。例えば、「本開示の1または複数の配列番号1~124」に関して、用語「1または複数の」は、配列番号1~124の任意の及び全ての組み合わせを含む。また、「又はその組み合わせ」という用語は、前述の要素の少なくとも1つを含む組み合わせを意味する。
【0089】
以下の略語及び/又は頭字語は、本出願を通じて使用される。
APC:抗原提示細胞
CEF:サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス及びインフルエンザウイルス
CFSE:カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル色素
DMSO:ジメチルスルホキシド
DR抗体:抗原D関連抗体
ELISA:酵素結合免疫吸着測定法
FACS:蛍光活性化セルソーティング
Fmoc:9-フルオロニルメトキシカルボニル
FV:ヒト型凝固第V因子
FVIII:ヒト型凝固第VIII因子
HLA:ヒト白血球抗原
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
IVIG:静脈内精製免疫グロブリンG抗体
MFI:平均蛍光指数
MHC:主要組織適合性複合体
PBMC:末梢血単核細胞
PI:増殖指数
RPMI:ロスウェルパーク記念研究所培地
Teff:エフェクターT細胞
Treg:制御性T細胞
TT:破傷風トキソイド
UV:紫外線
【0090】
本明細書で使用されるように、「変異体」ペプチドまたはポリペプチド(変異体Tレジトープを含む)は、1または複数の置換、欠失、挿入、逆位、融合、および切断、またはこれらのいずれかの組み合わせによってアミノ酸配列が異なっていてもよい。複数の態様において、変異体ペプチドまたはポリペプチド(変異体T細胞エピトープを含む)は、前記変異体がMHC結合性および/またはTCR特異性、および/または制御性T細胞刺激または抑制活性を保持するという条件で、1または複数の置換、欠失、挿入、逆位、融合、切断、またはこれらの任意の組み合わせによりアミノ酸配列を異なっていてもよい。
【0091】
本明細書で使用する場合、「抗体」は、1または複数の:をモノクローナルまたはポリクローナル;マウス、ヒト、またはヒト化;モノスペシフィックまたはバイスペシフィック;グリコシル化;Fc-修飾;抗体-薬剤コンジュゲート;異なるクラスまたはサブクラスの抗体、例えばIgG(例えば、。IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、IgM、IgE、またはIgA;および/または抗体断片もしくはその誘導体(例えば、Fab、scFv、ダイアボディ、sdAb、またはタンデムsccFv)を含む様々な形態をとることができるが、これらに限定されない。
【0092】
本開示は、本明細書に記載されるTレジトープのポリペプチド断片も包含する。本開示は、本明細書に記載のTレジトープの変異体の断片も包含し、ただし、前記断片及び/又は変異体は、少なくとも部分的にMHC結合性及び/又はTCR特異性、並びに制御性T細胞刺激又は抑制活性を保持している。
【0093】
本開示はまた、1または複数の本開示のTレジトープがその一部であるキメラまたは融合ポリペプチド(複数の態様において、分離、合成、または組換えであってもよい)を提供する。複数の態様において、キメラまたは融合ポリペプチド組成物は、異種ポリペプチド(例えば、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノ特異的抗体、二重特異的抗体、グリコシル化抗体、Fc修飾抗体、または抗体-薬物複合体;異なるクラスまたはサブクラスの抗体(例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA、IgDまたはIgE分子)またはその抗原特異的抗体断片(Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉立体構造多特異抗体、ジスルフィド結合scFv、ダイアボディ))に連結された、本開示の1または複数のポリペプチド(例えば、Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、Tレジトープペプチド、またはT細胞エピトープポリペプチド)を含んでいてもよい。前述のように、「異種ポリペプチド」という用語は、本開示の1または複数のTレジトープ(例えば、1または複数の配列番号1~124の配列)が異種ポリペプチドに異種であるか、自然に含まれないことを意味することが意図されている。複数の態様において、1または複数のTレジトープは、異種ポリペプチドに挿入されてもよく(例えば、変異誘発または当該技術分野における他の既知の手段によって)、異種ポリペプチドのC末端に(当該技術分野において知られているように、リンカーを使用してまたは使用せずに)付加されてもよく、および/またはN末端に(当該技術分野において知られているように、リンカーを使用してまたは使用せずに)付加されることがある。複数の態様において、1または複数のTレジトープは、米国特許第7,442,778号、米国特許第7,645,861号、米国特許第7,655,764号、米国特許第7,655,765号、および/または米国特許第7,750,128号(これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるようにFcドメイン中のアミノ酸に挿入または置換されてもよい。例えば、変異誘発によるタンパク質工学は、部位特異的変異誘発技術、または当該技術分野で公知の他の変異誘発技術を使用して行うことができる(例えば、James A. Brannigan and Anthony J. Wilkinson., 2002, Protein engineering 20 years on. Nature Reviews Molecular Cell Biology 3, 964-970; Turanli-Yildiz B. et al., 2012, Protein Engineering Methods and Applications, intechopen.com, これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。複数の態様において、キメラまたは融合ポリペプチドは、異種ポリペプチドに作動的に連結された本開示の1または複数のTレジトープを含む。「作動的に連結された」とは、ポリペプチド(例えば、本開示の1または複数のTreg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、Tレジトープペプチド、またはT細胞エピトープポリペプチド)および異種タンパク質がフレーム内融合または化学結合またはその他の結合していることを示す。例えば、複数の態様において、1または複数のTレジトープは、米国特許第8,008,453号、米国特許第9,114,175号、および/または米国特許第10,188,740号(これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、Fcドメイン内の1または複数の内部共役部位に共有結合されてもよい。複数の態様において、分離された、合成された、または組換えキメラもしくは融合ポリペプチド組成物はポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは本開示の1または複数の配列番号1~124を含む配列を有し、ここで前記1または複数の配列番号1~124はポリペプチドに自然に含まれず、および/または1または複数の配列番号1~124はポリペプチド中のその自然位置に位置されない。複数の態様において、本開示の1または複数の配列番号1~124の配列は、ポリペプチドに接合、連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に連結、または他の方法で結合)、および/または挿入され得る。複数の態様において、本開示の1または複数の配列番号1~124の配列は、低分子、薬物、またはドラッグ断片、例えば、限定されないが、定義されたHLAに高親和性で結合する薬物またはドラッグ断片に結合または連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に結合、または他の方法で結合)されてもよい。上記キメラまたは融合ポリペプチド組成物の複数の態様において、本開示の1または複数のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、Tレジトープペプチド、またはT細胞エピトープポリペプチド)は、1または複数の配列番号1~124の配列、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有している。
【0094】
「分離された」ポリペプチド(例えば、分離されたTreg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、Tレジトープペプチド、又はT細胞エピトープポリペプチド)ポリペプチド、コンカテマーペプチド、又はキメラ若しくは融合ポリペプチドは、それを自然に発現する細胞から精製、それを発現するように改変した細胞(組み換え)から精製、又は周知のタンパク質合成法により合成してもよい。一実施形態では、ペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、またはキメラもしくは融合ポリペプチドは、組換えDNAまたはRNA技術によって製造される。例えば、Tレジトープをコードする核酸分子を発現ベクターにクローニングし、発現ベクターを宿主細胞に導入し、ポリペプチドを宿主細胞で発現させる。その後、標準的なタンパク質精製技術を用いた適切な精製スキームによって、Tレジトープを細胞から分離することができる。
【0095】
本開示の目的のために、本開示のペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、又はキメラ若しくは融合ポリペプチドは、例えば、D立体異性体などの天然に存在するアミノ酸の修飾形態、非天然に存在するアミノ酸;アミノ酸類似体;及び模倣物を含むことができる。さらに、複数の態様において、本開示のペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、またはキメラもしくは融合ポリペプチドは、本開示のペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、またはキメラもしくは融合ポリペプチドのレトロインバーソペプチド(retro-inverso)ペプチドを含んでもよく、但し、前記レトロインバーソペプチド、本開示のポリペプチド、コンカテミックペプチド、またはキメラもしくは融合ポリペプチドは、少なくとも部分的に、MHC結合性および/またはTCR特異性、および/または制御性T細胞刺激活性もしくは抑制活性を保持していることを条件とする。
【0096】
本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本開示の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料が説明される。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、本明細書及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形は、文脈上明らかに他に指示されない限り、複数形の参照語を含む。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用したすべての文献は、個々の刊行物、特許、または特許出願が、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
[ポリペプチド、コンカテマーポリペプチド、およびキメラまたは融合ポリペプチド]
複数の態様において、本開示は、本明細書に開示されるようなポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、Tレジトープペプチド、またはT細胞エピトープポリペプチド、複数の態様において分離、合成、または組換えであってもよい)を含む、Tレジトープ化合物と組成物;本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、または細胞(複数の態様において、これらはすべて、分離、合成、または組換えであってもよい);本明細書に開示される分離、合成、または組換えキメラもしくは融合ポリペプチド組成物;および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤を提供する。複数の態様において、Tレジトープ組成物は、1または複数の、表1の制御性Tレジトープ(その断片、その変異体、およびそのような変異体の断片を含み、ただし、前記断片および/または変異体は、MHC結合性および/またはTCR特異性、ならびに制御性T細胞刺激または抑制活性を保持している)を含む。特定の複数の態様において、Tレジトープは、N末端アセチル基及び/又はC末端アミノ基でキャップされ得る。
【0098】
複数の態様において、本開示は、「Tレジトープ」と呼ばれる、新規クラスのT細胞エピトープ(分離、合成、または組換えであってもよい)を提供し、これは、一般的なヒトタンパク質に由来するペプチドまたはポリペプチド鎖を含む。本開示のTレジトープは、そのソースタンパク質の既知の変異体間で高度に保存されている(例えば、既知の変異体の10%超に存在する)。本開示のTレジトープは、EpiMatrix(登録商標)解析によって同定された少なくとも1つの推定T細胞エピトープを含んでいる。EpiMatrix(登録商標)は、EpiVax(プロビデンス、ロードアイランド州)が開発した独自のコンピュータアルゴリズムであり、タンパク質配列をスクリーニングして、推定T細胞エピトープの存在を確認するために使用される。入力配列は、各フレームが最後のフレームと8個のアミノ酸で重複する9量体フレームに解析される。得られた各フレームは、8つの一般的なクラスII-HLAアレル(DRB1*0101、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0701、DRB1*0801、DRB1*1101、DRB1*1301、DRB1*1501)に対する予測結合親和性についてスコアリングされる。生のスコアは、ランダムに生成されたペプチドの大規模なサンプルのスコアに対して正規化される。その結果、「Z」スコアが報告される。複数の態様において、理論的に任意の所与のサンプルの上位5%である1.64を超えるアレル特異的EpiMatrix(登録商標) Zスコアを有する任意の9量体ペプチドは、推定T細胞エピトープとみなされる。
【0099】
推定T細胞エピトープのクラスターを含むペプチドは、in vitro および in vivo のアッセイを検証する際に陽性となる可能性が高くなる。最初のEpiMatrix(登録商標)分析の結果は、Clustimer(登録商標)アルゴリズムとして知られる第二の独自アルゴリズムを使用して、推定 T 細胞エピトープ「クラスター」の存在についてさらにスクリーニングされる。Clustimer(登録商標)アルゴリズムは、任意のアミノ酸配列内において、統計的に異常に多くの推定T細胞エピトープを含むサブ領域を特定する。典型的なT細胞エピトープの「クラスター」は、長さが約9から約30アミノ酸であり、複数のアレルや複数の9量体フレームに対する親和性を考慮すると、約4から約40の推定T細胞エピトープを含むことができる。集計されたEpiMatrix(登録商標)スコアで識別された各エピトープクラスターは、推定T細胞エピトープのスコアを合計し、候補エピトープクラスターの長さと同じ長さのランダムに生成されたクラスターの期待スコアに基づく補正係数を減算して、EpiMatrix(登録商標)スコアの集計が計算される。10を超えるEpiMatrix(登録商標)クラスタースコアは有意であると考えられる。複数の態様において、本開示のTレジトープは、T細胞エピトープクラスターとして知られるパターンを形成する、いくつかの推定T細胞エピトープを含む。
図7~
図9は、例示的なEpiMatrixレポートを示す。
【0100】
最も反応性の高いT細胞エピトープクラスターの多くは、「EpiBar(登録商標)」と呼ばれる特徴を含む。先に述べたように、EpiBar(登録商標)は、少なくとも4つの異なるHLAアレルに対して反応性であると予測される単一の9量体フレームである。複数の態様において、本開示のTレジトープは、1または複数のEpiBar(登録商標)を含み得る。
【0101】
JanusMatrixシステム(EpiVax、プロビデンス、ロードアイランド州)は、宿主プロテオームとの交差保存(cross-conservation)のためにペプチド配列をスクリーニングするのに有用である。JanusMatrixは、ペプチドクラスターと宿主ゲノムまたはプロテオームとの間の交差反応性の可能性を、それらの推定MHCリガンドにおけるTCRに面した残基の保存に基づいて、予測するアルゴリズムである。JanusMatrixアルゴリズムは、まず与えられたタンパク質配列に含まれる予測エピトープをすべて考慮し、各予測エピトープを構成するアグレトープとエピトープに分割する。次に、各配列をホストタンパク質のデータベースに対してスクリーニングする。MHCに面したアグレトープが一致し(すなわち、入力ペプチドとその宿主側のペプチドのアグレトープが同じMHCアレルに結合すると予測される)、全く同じTCRに面したエピトープを持つペプチドが返される。JanusMatrixのホモロジースコアは、免疫寛容に偏っていることを示唆している。治療用タンパク質の場合、自己由来のヒトエピトープと治療用エピトープの交差保存は、そのような候補がヒトの免疫系に許容される可能性を高めてもよい。ワクチンの場合、ヒトのエピトープと抗原性エピトープとの間の交差保存は、そのような候補が免疫カモフラージュを利用し、それによって免疫応答を回避し、効果のないワクチンとなることを示すかもしれない。宿主が例えばヒトの場合、ペプチドクラスターは、推定上のHLAリガンドにおけるTCRに面した残基の保存性に基づいて、ヒトゲノムやプロテオームに対してスクリーニングされる。次に、ペプチドはJanusMatrix ホモロジースコアを用いてスコアリングされる。複数の態様において、3.0を超えるJanusMatrixホモロジースコアを有するペプチドは、高い寛容性の可能性を示し、そのようなものとして、本開示の非常に有用なTレジトープであり得る。
【0102】
図11は、本開示の配列番号1~15のTレジトープを同定したJanusMatrix結果の概要である。
図12は、配列番号1のTレジトープ、及び配列番号16~28を含む配列番号1内に含まれる9量体に関するJanusMatrixレポートである。
図13は、配列番号10のTレジトープおよび配列番号87-93を含む配列番号10内に含まれる9量体に関するJanusMatrixレポートである。
図14は、配列番号11のTレジトープ、および配列番号94-100を含む配列番号11内に含まれる9量体に対するJanusMatrixレポートである。
図15は、配列番号12のTレジトープについてのJanusMatrixレポートである。*は、検索データベースで見つかったヒトJanusMatrixのマッチの数である。
図16は、配列番号13のTレジトープ、および配列番号101~110を含む配列番号13内に含まれる9量体に関するJanusMatrixレポートである。
図17は、配列番号14のTレジトープ、および配列番号111-120を含む配列番号14内に含まれる9量体に関するJanusMatrixレポートである。*は、検索データベースで見つかったヒトJanusMatrixのマッチの数である。
図18は、配列番号15のTレジトープ、および配列番号121~124を含む配列番号15内に含まれる9量体に関するJanusMatrixレポートである。
図19は、配列番号10のTレジトープ、および配列番号29-41を含む配列番号2内に含まれる9量体のJanusMatrixレポートである。*は、検索データベースで見つかったヒトJanusMatrixのマッチの数である。
図20は、配列番号3のTレジトープ、および配列番号42~48を含む配列番号3内に含まれる9量体に関するJanusMatrixレポートである。
図21は、配列番号4のTレジトープ、および配列番号49-50を含む配列番号4内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。*は、検索データベースで見つかったヒトJanusMatrixのマッチの数である。
図22は、配列番号50のTレジトープに対するJanusMatrixレポートである。
図23は、配列番号6のTレジトープ、および配列番号51-57を含む配列番号6内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
図24は、配列番号10のTレジトープ、および配列番号58-67を含む配列番号7内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
図25は、配列番号8のTレジトープ、および配列番号68~74を含む配列番号8内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
図26は、配列番号9のTレジトープ、及び配列番号87~93を含む配列番号9内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
図11~
図26のそれぞれについて、*は、検索データベースで見つかったヒトJanusMatrixのマッチの数である。所与のEpiMatrixヒット(特定のアレルに結合すると予測される入力配列内に含まれる9量体)に関して、Janus Matrixマッチは、EpiMatrixヒットと同じアレルに結合すると予測され、EpiMatrixヒットとTCR対面接触を共有する検索データベース(例えば、ヒトゲノム)から導出された9量体である。さらに、Janusホモロジースコア**は、入力配列の各EpiMatrixヒットに対する検索データベースでの平均カバー深度を表す。例えば、8つのEpiMatrixヒットを有する入力ペプチドは、そのすべてが検索データベースで1つマッチし、Janusホモロジースコアは1である。4つのEpiMatrixヒットを持つ入力ペプチドは、そのすべてが検索データベースで2つマッチし、Janusホモロジースコアは2である。JanusMatrixホモロジースコアはフランクを含む任意のペプチドのすべての構成9量体を考慮している。
【0103】
複数の態様において、本開示のTレジトープは、少なくとも1つ、好ましくは2または2より多い一般的なHLAクラスII分子に少なくとも中程度の親和性で結合する(例えば、複数の態様において、可溶性HLA分子に基づくHLA結合アッセイにおける<1000μM IC50、<500μM IC50、<400μM IC50、<300μM IC50、又は<200μM IC50)。複数の態様において、本開示のTレジトープは、HLAの少なくとも1つ、他の態様では2または2より多いアレルの状況において、APCによって細胞表面に提示されることが可能である。この状況において、TレジトープHLA複合体は、Tレジトープ HLA複合体に特異的なTCRを有し、正常な対象(コントロール)に循環している内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)により認識することが可能である。複数の態様において、Tレジトープ-HLA複合体の認識は、適合する制御性T細胞を活性化させ、制御性サイトカイン及びケモカインを分泌させることができる。
【0104】
複数の態様において、本開示は、1または複数の配列番号1~124(およびその断片および変異体)を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有するポリペプチド(本明細書では「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレジトープ」、「Tレジトープペプチド」または「T細胞エピトープポリペプチド」として称する場合がある)に関する。「本質的に~からなる」という表現は、本開示による改変ポリペプチドのTレジトープが、Tレジトープとして機能するペプチドの活性を大幅に損ねない限り、配列番号1~124のいずれか(または変異体)による配列に加えて、必ずしもMHCリガンドとして機能するペプチドの一部を形成しない、ペプチドのいずれかの末端および/または側鎖に存在し得る追加のアミノ酸または残基を含むことを意味していると意図する。複数の態様において、本開示のペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態のいずれかであり得、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まないかまたは含むかのいずれかであってよい。特定の複数の態様において、そのようなポリペプチドは、N末端アセチル基および/またはC末端アミノ基でキャップされ得る。
【0105】
複数の態様において、本開示は、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端上に任意の比率で分布する1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチドに関する。複数の態様において、本開示は、配列番号1~124のアミノ酸配列を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコアアミノ酸配列と、任意選択で前記コアアミノ酸配列のN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部とを有するペプチドまたはポリペプチドに関しており、これらの隣接アミノ酸(フランクアミノ酸)(flanking amino acids)の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよい(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に付加することもでき、アミノ酸は両方の末端に等しく、または他の任意の割合で、付加することもできる)。複数の態様において、本開示は、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片および変異体)と、任意選択でN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12のアミノ酸の拡張部とを有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるコア配列を有するペプチドまたはポリペプチドに関し、これらの隣接アミノ酸(フランクアミノ酸)(flanking amino acids)の全体の数は、1~12、1~3、2~4、3~6、1~10、1~8、1~6、2~12、2~10、2~8、2~6、3~12、3~10、3~8、3~6、4~12、4~10、4~8、4~6、5~12、5~10、5~8、5~6、6~12、6~10、6~8、7~12、7~10、7~8、8~12、8~10、9~12、9~10または10~12であり、隣接アミノ酸は、C末端およびN末端に対して任意の比率で分配されてもよく(例えば、すべての隣接アミノ酸は、一方の末端に付加することもでき、アミノ酸は両方の末端に等しく、または他の任意の割合で、付加することもできる)、但し、その隣接アミノ酸を有するポリペプチドは依然として、その隣接アミノ酸を有さないポリペプチドと同じHLA分子に結合できる(すなわち、MHC結合性を保持する)。複数の態様において、前記隣接アミノ酸を有する前記ポリペプチドは、前記隣接アミノ酸を有さない前記ポリペプチドコア配列と同じHLA分子に結合する(すなわち、MHC結合性を保持する)、及び/又は同じTCR特異性を保持する、及び/又は制御性T細胞刺激又は抑制活性を保持できる。複数の態様において、前記隣接アミノ酸配列は、内在性タンパク質、例えばIgG抗体において、そこに含まれるペプチドまたはポリペプチドの隣接部としても存在するものである。複数の態様において、拡張部(複数可)は、ペプチドまたはポリペプチドの生化学的特性(例えば、限定されないが、溶解度または安定性)を改善するため、またはペプチドの効率的なプロテアソーム処理の可能性を改善するために機能し、設計され得る。複数の態様において、本明細書に記載される前記隣接アミノ酸配列は、MHC安定化領域として機能し得る。より長いペプチドの使用は、対象細胞による内因性プロセシングを可能にし、より効果的な抗原提示およびT細胞応答の誘導につながる可能性がある。複数の態様において、ペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態であることができ、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まなくてもよく、または含んでいてもよい。特定の複数の態様において、1または複数のTレジトープペプチドまたはポリペプチドを含む改変ポリペプチドは、N末端アセチル基および/またはC末端アミノ基でキャップされ得る。複数の態様において、そのようなポリペプチドは、N末端アセチル基及び/又はC末端アミノ基でキャップされ得る。
【0106】
複数の態様において、本開示は、配列番号1~124のいずれか1つ(及び/又はその断片)に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、又は95%の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドに関し、ここで前記ポリペプチドは依然として同じHLA分子に結合でき(すなわち、MHC結合性を保持し)、及び/又は同じTCR特異性を保持し、及び/又は制御性T細胞刺激活性又は抑制活性を保持できる。
【0107】
複数の態様において、本開示は、1または複数の本開示のポリペプチドまたはペプチド(例えば、限定されないが、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有しているペプチドまたはポリペプチド)と、これが連結、融合または結合(例えば、フレーム内融合、化学結合または他の結合)している追加のペプチドまたはポリペプチドとを含むコンカテマーポリペプチドまたはペプチドに関する。そのような追加のペプチドまたはポリペプチドは、1または複数の本開示のポリペプチドまたはペプチドであってもよく、あるいは、関心のある追加のペプチドまたはポリペプチドであってもよい。複数の態様において、コンカテマーペプチドは、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上の本開示のペプチドまたはポリペプチドを含む。他の複数の態様において、コンカテマーペプチドまたはポリペプチドは、1000以上、1000以下、900以下、500以下、100以下、75以下、50以下、40以下、30以下、20以下、または100以下のペプチドエピトープを含む。さらに他の実施形態では、コンカテマーペプチドは、3~100、5~100、10~100、15~100、20~100、25~100、30~100、35~100、40~100、45~100、50~100、55~100、60~100、65~100、70~100、75~100、80~100、90~100、5~50、10~50、15~50、20~50、25~50、30~50、35~50、40~50、45~50、100~150、100~200、100~300、100~400、100~500、50~500、50~800、50~1000、または100~1000の、連結、融合、または結合している本開示されたペプチドまたはポリペプチドを有している。本開示は、このようなコンカテマーペプチドをコードする核酸(例えば、RNA、mRNA、DNA、cDNA)にも関連することが理解されるべきである。コンカテマーペプチドの各ペプチドまたはポリペプチドは、任意に、切断感受性部位であってもよい1または複数のリンカーを、それらのN末端および/またはC末端に隣接して有していてもよい。C末端要素のN末端上に含まれ得るAAY切断モチーフまたはポリGSリンカーを含む、そのような適切なリンカーおよび切断感受性部位は、当技術分野において既知である。このようなコンカテマーペプチドにおいて、ペプチドエピトープの2以上が、それらの間に切断感受性部位を有していてもよい。あるいは、2以上のペプチドエピトープは、互いに直接、または切断感受性部位でないリンカーを介して接続されていてもよい。複数の態様において、そのようなリンカーは抗原的に中性であり、リンカーは、好ましくは、9個のアミノ酸が直線的に配置されたペプチドのバックボーンの長さ未満である。複数の態様において、リンカーの長さは、2個から8個のアミノ酸が直線的に配列されたペプチドのバックボーンの長さである。複数の態様において、スペーサーは、増強ハイブリッドペプチドの他の異なる要素に任意の空間的に異なる複数の態様で水素結合することができない。
【0108】
複数の態様において、そして抗原的に中性なリンカー要素に関して、アミノ酸の代わりに様々な化学基をリンカーとして組み入れることができる。例えば、米国特許第5,910,300号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。複数の態様において、リンカーは、ヘテロ原子によって最適に中断された脂肪族鎖、例えば、C2-C6アルキレン、または=N-(CH2)2-6-N=で構成されてもよい。あるいは、スペーサーは、例えば疎水性、親油性、脂肪族およびアリール-脂肪族配列の交互単位で構成されていてもよく、任意にO、N、またはSなどのヘテロ原子によって中断されている。スペーサーのこのような成分は、好ましくは以下のクラスの化合物から選ばれる:ステロール、アルキルアルコール、アルキル機能が変化したポリグリセリド、アルキルフェノール、アルキルアミン、アミド、疎水性のポリオキシアルキレンなどである。その他の例としては、疎水性のポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシ酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコールポリヒドロキシ酪酸などが挙げられる。リンカーはまた、ポリプロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンタメチレンなどの短い脂肪族鎖を酸素原子で分離して繰り返し含んでいてもよい。
【0109】
可能なリンカーとして使用することができる追加のペプチジル配列は、米国特許第5,856,456号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、リンカーは、開裂を受ける化学基を内部に組み込んでいる。限定されないが、このような化学基は、プロテアーゼによって、化学基によって、または触媒モノクローナル抗体によって触媒される開裂のために設計されてもよい。プロテアーゼ感受性化学基の場合、トリプシン標的(カチオン性側鎖を有する2つのアミノ酸)、キモトリプシン標的(疎水性側鎖を有する)、およびカテプシン感受性(B、DまたはS)が好適に使用される。本明細書において、「トリプシン標的」という用語は、トリプシン及びトリプシン様酵素によって認識されるアミノ酸の配列を表すために使用される。「キモトリプシン標的」という用語は、本明細書では、キモトリプシンおよびキモトリプシン様酵素によって認識されるアミノ酸の配列を記述するために使用される。さらに、触媒モノクローナル抗体の化学的標的、および他の化学的に切断される基は、一般にペプチド合成、酵素触媒、および有機化学の技術分野の当業者にはよく知られており、日常的な実験方法を用いて、ハイブリッド構造に設計し、合成することができる。
【0110】
複数の態様において、本開示のコンカテマーポリペプチドは、EpiAssemblerシステム(EpiVax)を使用して製造される。EpiAssemblerシステムは、重複するエピトープを免疫原性コンセンサス配列(ICS)に組み立てるのに有用である。EpiAssemblerは、病原体と集団カバレッジのバランスを最適化するアルゴリズムである。EpiAssemblerは、Conservatrix及びEpiMatrixによって生成された配列からの情報を使用して、高度に免疫原性のコンセンサス配列を形成する。
【0111】
上記コンカテマーペプチドまたはポリペプチドの複数の態様において、コンカテマーペプチドまたはポリペプチドは、分離、合成、または組換えのいずれであってもよい。複数の態様において、コンカテマーペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)または塩のいずれかの形態であり得、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まないかまたは含むかのいずれかであってもよい。特定の複数の態様において、コンカテマーポリペプチドは、N末端アセチル基及び/又はC末端アミノ基でキャップすることができる。
【0112】
本明細書で使用する場合、2つのポリペプチド(又はポリペプチドの領域)は、アミノ酸配列が少なくとも約45~55%、通常少なくとも約70~75%、より通常少なくとも約80~85%、より通常約90%以上、及びより通常95%以上相同又は同一である場合、実質的に相同又は同一である。2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列のパーセント相同性または同一性を決定するために、配列は最適な比較目的のために整列される(例えば、一方のポリペプチドまたは核酸分子の配列に、他方のポリペプチドまたは核酸分子との最適な整列のためのギャップを導入することが可能である)。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。一方の配列の位置が、他方の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置において相同である。当技術分野で知られているように、2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一位置の数の関数である。ポリペプチドの配列相同性は、通常、配列解析ソフトウェアを用いて測定される。本明細書で使用する場合、アミノ酸または核酸の「相同性」は、アミノ酸または核酸の「同一性」と等価である。複数の態様において、2つの配列間のパーセント相同性は、配列によって共有される同一位置の数の関数である(例えば、パーセント相同性は、同一位置の数/位置の総数×100に等しい)。
【0113】
複数の態様において、本開示はまた、より低い同一性の程度を有するが、本開示のポリペプチドが果たす1または複数の同じ機能を果たすように十分な類似性を有するポリペプチド(例えば、1または複数の配列番号1~124および/またはその断片および変異体、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端上に任意の比率で分布する1~12の追加アミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有するポリペプチド;および本明細書に開示するコンカテマーペプチド)を包含する。類似性は、保存されたアミノ酸置換によって決定される。そのような置換は、ポリペプチド中の所定のアミノ酸を、同様の特性を有する別のアミノ酸で置換するものである。保存的な置換は表現型的に沈黙している可能性が高い。典型的な保存的置換としては、脂肪族アミノ酸のAla、Val、Leu、MetおよびIleの置換、ヒドロキシル基残基SerとThrの交換、酸性残基AspとGluの交換、アミド残基AsnとGlnの交換、塩基残基His、LysとArgの交換、芳香族残基Trp、PheとTyrの交換が挙げられる。どのアミノ酸の変化が表現型的に沈黙している可能性が高いかに関する指導が見られる(Bowie JUら、(1990)、Science、247(4948):130610、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0114】
複数の態様において、変異体ポリペプチドは、1または複数の置換、欠失、挿入、逆位、融合、及び切断、又はこれらのいずれかの組み合わせによってアミノ酸配列が異なる可能性がある。変異体ポリペプチドは、完全に機能的(例えば、MHC結合性及び/又はTCR特異性を保持し、制御性T細胞刺激又は抑制活性を保持する)であっても、1又は複数の活性において機能を欠くことが可能である。完全に機能的な変異体は、典型的には、非重要残基における保存的変異または非重要残基または非重要領域における変異のみを含む;この場合、典型的には、MHC結合が保持されることを提供するMHC接触残基である。機能的変異体はまた、機能に関して変化しない、または重要でない変化をもたらす類似のアミノ酸の置換を含むことができる(例えば、MHC結合性および/またはTCR特異性を保持し、および/または制御性T細胞刺激または抑制活性を保持する)。あるいは、そのような置換は、ある程度まで機能に正または負の影響を及ぼし得る。非機能性変異体は、典型的には、重要な残基または重要な領域の1または複数の非保存的アミノ酸の置換、欠失、挿入、逆位、または切断、あるいは置換、挿入、逆位、または欠失を含み;この場合、典型的にはTCR接触残基における1または複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、または切断、あるいは置換、挿入、逆位、または欠失を含む。複数の態様において、変異体および/または相同ポリペプチドは、本開示の所望の制御性T細胞刺激活性または抑制活性を保持する。あるいは、そのような置換は、ある程度機能に正または負に影響し得る。非機能的変異体は、典型的には、重要な残基または重要な領域の1または複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、または切断、または置換、挿入、逆位、または欠失を含み;この場合、典型的にはTCR接触残基における1または複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、または切断、または置換、挿入、逆位、または欠失を含む。複数の態様において、本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列(またはコア配列)を有するポリペプチドの機能的変異体は、機能するために必須ではないと考えられるアミノ酸残基において1または複数の保存的置換、および複数の態様において1または複数の非保存的置換を含み得る(機能に必須と考えられるアミノ酸残基は、例えば、MHC結合性および/またはTCR特異性を保持し、および/または制御性T細胞刺激または抑制活性を保持する)、本開示のポリペプチドの変異体である。例えば、複数の態様において、本明細書に記載の1または複数の配列番号1~124の配列またはその断片、または本明細書に開示されるコンカテマーペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列(またはコア配列)を有する変異体ポリペプチドは、HLA結合が保持される限り、1または複数のHLA接触残基において1または複数の保存的置換(および複数の態様において非保存的置換)を含むことができる。MHC結合アッセイは、当技術分野でよく知られている。複数の態様において、そのようなアッセイは、当技術分野で知られているような結合アッセイで、in vitro結合アッセイにおけるMHCクラスIおよびクラスIIアレルに関する結合親和性の試験を含み得る。例としては、例えば、米国第7,884,184号またはPCT/US2020/020089号に開示されているような可溶性結合アッセイ(これらの両方は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。さらに、複数の態様において、本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列(またはコア配列)を有する完全機能性変異体ポリペプチドは、TCR接触残基などの1または複数の重要残基または領域に変異が含まれていない。
【0115】
複数の態様において、MHCクラスII分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の9量体断片、本明細書に開示されるコンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のTCR結合エピトープ(TCR結合残基、TCR対面エピトープ、TCR対面残基またはTCR接触と呼ぶことができる)は、同定されたエピトープの2、3、5、7および8位の位置にあり;MHCクラスII分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の9量体断片、本明細書に開示されるコンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のMHC結合アグレトープ(MHC接触、MHC対向残基、MHC結合残基またはMHC結合面と呼ぶことができる)は、1、4、6および9位の位置にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0116】
複数の態様において、MHCクラスI分子に結合する、9量体同定エピトープのTCR結合エピトープは、同定されたエピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)の4、5、6、7および8位の位置にあり;MHCクラスI分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のMHC結合アグレトープは、1、2、3および9位の位置にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0117】
複数の態様において、MHCクラスI分子に結合する、10量体同定エピトープのTCR結合エピトープは、同定されたエピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の10量体断片、コンカテマーペプチドの10量体断片、1または複数の配列番号1~124の9量体断片を含む10量体ペプチドであり得る)の4、5、6、7、8および9位の位置にあり;MHCクラスI分子に結合する、10量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の10量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片、1または複数の配列番号1~124の9量体断片を含む10量体ペプチドであり得る)のMHC結合アグレトープは、1、2、3、9および10位の位置にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0118】
複数の態様において、MHCクラスII分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のTCR結合エピトープは、同定されたエピトープの2、3、5、7、および8位の任意の残基の位置(例えば、これらに限定されないが、3、5、7および8位;2、5、7および8位;2、3、5および7位、など)にあり;MHCクラスI分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のMHC結合アグレトープは、TCR対面残基に対して相補的な面にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0119】
複数の態様において、MHCクラスI分子に結合する、9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のTCR結合エピトープは、同定されたエピトープの4、5、6、7、および8位;1、4、5、6、7および8位;または1、3、4、5、6、7、および8位にあり;9量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の9量体断片、コンカテマーペプチドの9量体断片であり得る)のMHC結合アグレトープは、TCR対面残基に対して相補的な面にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0120】
複数の態様において、MHCクラスI分子に結合する、10量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の10量体断片、コンカテマーペプチドの10量体断片、1または複数の配列番号1~124の9量体断片を含む10量体ペプチドであり得る)のTCR結合エピトープは、同定されたエピトープの1、3、4、5、6、7、8、および9位の任意の組み合わせにあり;10量体同定エピトープ(本明細書に開示される1または複数の配列番号1~124の10量体断片、コンカテマーペプチドの10量体断片、1または複数の配列番号1~124の9量体断片を含む10量体ペプチドであり得る)のMHC結合アグレトープは、TCR対面残基に対して相補的な面にあり;双方は、アミノ末端から数えられる。
【0121】
上記に基づき、1または複数の9量体および/または10量体エピトープがより長いポリペプチド内に含まれ、1または複数のクラスIまたはクラスII MHC分子と結合すると予測され、天然に存在する配列において互いに近接して発生している複数の態様において(例えば、結合9量体および/または10量体の各組の位置1は互いの例えば3アミノ酸内に入る)、かかるエピトープは結合してエピトープクラスターを形成し得ることは理解されるはずである。所定のクラスターにおいて、任意の所定のアミノ酸は、所定の9量体エピトープまたは10量体エピトープに関して、MHCに面しており、別の9量体エピトープに関して、TCRに面していてもよい。
【0122】
複数の態様において、本開示は、本開示のポリペプチド断片及びコンカテマーポリペプチドも含む。複数の態様において、本開示はまた、本明細書に記載されるペプチドおよびコンカテマーポリペプチドの変異体の断片を包含する。複数の態様において、本明細書で使用されるように、断片は、少なくとも約9個の連続したアミノ酸からなる。複数の態様において、本開示はまた、本明細書に記載されるT細胞エピトープの変異体の断片を包含する。有用な断片(および本明細書に記載のポリペプチドおよびコンカテマーポリペプチドの変異体の断片)には、1または複数の生物学的活性、特に、MHC結合性状および/またはTCR特異性、および/または制御性T細胞刺激活性もしくは抑制活性を保持するものが含まれる。生物学的活性を有する断片は、例えば、約9、10、11、12、1、14、15、16、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上のアミノ酸長であり、その間のいかなる値又は範囲も含む。断片は個別(他のアミノ酸またはポリペプチドと融合していない)であってもよいし、より大きなポリペプチド内に存在してもよい。いくつかの断片は、単一の大きなポリペプチド内に含まれることができる。複数の態様において、宿主における発現のために設計された断片は、ポリペプチド断片のアミノ末端に融合した異種のプレおよびプロポリペプチド領域、および断片のカルボキシル末端に融合した追加の領域を有し得る。
【0123】
複数の態様において、本開示のポリペプチドおよびコンカテマーポリペプチドは、そのアレルもしくは配列変異体(「変異体」)又はアナログを含むことができ、又は化学修飾(例えば、ペギル化、グリコシル化)を含むことができる。複数の態様において、変異体は、同じ機能、特にMHC結合性及び/又はTCR特異性を保持し、及び/又は制御性T細胞刺激性又は抑制性活性を保持する。複数の態様において、変異体は、MHC分子への結合の強化を提供することができる。複数の態様において、変異体は、TCRへの結合の強化をもたらすことができる。別の例では、変異体は、MHC分子および/またはTCRへの結合の減少をもたらすことができる。また、結合するが、TCRを介したシグナル伝達を許さない変異体も企図される。
【0124】
本開示のポリペプチドを製造する方法は、分子を構成する様々な要素の性質に依存して、広く変化することになる。例えば、分離されたポリペプチドは、それを天然に発現する細胞から精製するか、それを発現するように改変された細胞(組換え)から精製するか、または既知のタンパク質合成方法を使用して合成することができる。合成手順は、単純であり、高い収率を提供し、高度に精製された安定な生成物を可能にするように選択され得る。例えば、本開示のポリペプチドは、本明細書に開示された核酸から、または組換え技術、突然変異誘発、もしくは当該技術分野において他の既知の手段などの標準分子生物学技術の使用のいずれかによって製造することができる。分離されたポリペプチドは、それを天然に発現する細胞から精製されるか、それを発現するように改変された細胞から精製されるか(組換え)、または既知のタンパク質合成技術を使用して合成され得る。複数の態様において、本開示のポリペプチドは、組換えDNAまたはRNA技術によって製造される。複数の態様において、本開示のポリペプチドは、適切な宿主細胞における本開示の組換え核酸の発現により産生され得る。例えば、ポリペプチドをコードする核酸分子を発現カセットまたは発現ベクターにクローニングし、発現カセットまたは発現ベクターを宿主細胞に導入し、ポリペプチドを宿主細胞で発現させる。その後、標準的なタンパク質精製技術を用いた適切な精製スキームにより、ポリペプチドを細胞から分離することができる。あるいは、ポリペプチドは、プロテアーゼ消化および精製などのex vivo手順の組み合わせによって製造することができる。さらに、本開示のポリペプチドは、部位特異的変異誘発技術、または当技術分野で公知の他の変異誘発技術を使用して製造することができる(例えば、James A. Brannigan and Anthony J. Wilkinson., 2002, Protein engineering 20 years on. Nature Reviews Molecular Cell Biology 3, 964-970; Turanli-Yildiz B. et al., 2012, Protein Engineering Methods and Applications, intechopen.com, これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0125】
複数の態様において、本開示の1または複数のペプチドまたはポリペプチド(例えば、限定されないが、配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド、ならびに本明細書に開示されるコンカテマーポリペプチド)は、異種ポリペプチド(例えば、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノ特異的抗体、二重特異的抗体、グリコシル化抗体、Fc修飾抗体、または抗体-薬物複合体;異なるクラスまたはサブクラスの抗体(例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA、IgDまたはIgE分子)またはその抗原特異的抗体断片(Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉立体構造多特異抗体、ジスルフィド結合scFv、ダイアボディ))に対して、接合されてもよく、連結されてもよい(例えば、フレーム内融合、化学結合、またはその他の結合)、および/または異種ポリペプチドに挿入されてもよい。前述のように、本開示の1または複数のTレジトープに関して、用語「異種ポリペプチド」は、本開示の1または複数のTレジトープが異種ポリペプチドに異種であるか、自然に含まれないことを意味することが意図される。複数の態様において、1または複数のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)は、異種ポリペプチドに挿入されてもよく(例えば、組換え技術、変異誘発または当該技術分野における他の既知の手段によって)、異種ポリペプチドのC末端に(当該技術分野において知られているように、リンカーを使用してまたは使用せずに)付加されてもよく、および/またはN末端に(当該技術分野において知られているように、リンカーを使用してまたは使用せずに)付加されることがある。例えば、変異誘発によるタンパク質工学は、部位特異的変異誘発技術、または当技術分野で公知の他の変異誘発技術を使用して行うことができる(例えば、James A. Brannigan and Anthony J. Wilkinson., 2002, Protein engineering 20 years on. Nature Reviews Molecular Cell Biology 3, 964-970; Turanli-Yildiz B. et al., 2012, Protein Engineering Methods and Applications, intechopen.com, これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。複数の態様において、1または複数のTレジトープは、米国特許第7,442,778号、米国特許第7,645,861号、米国特許第7,655,764号、米国特許第7,655,765号、および/または米国特許第7,750,128号(これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるようにFcドメイン中のアミノ酸に挿入または置換されてもよい。複数の態様において、キメラまたは融合ポリペプチドは、異種ポリペプチドに作動的に連結された本開示の1または複数のポリペプチドを含む。「作動的に連結された」とは、本開示の1または複数のポリペプチドおよび異種タンパク質がフレーム内融合または化学結合またはその他の結合していることを示す。例えば、複数の態様において、本開示の1または複数のポリペプチドは、米国特許第8,008,453号、米国特許第9,114,175号、および/または米国特許第10,188,740号(これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるようにFcドメイン内の1または複数の内部共役部位に共有結合されてもよい。複数の態様において、本開示の1または複数のペプチドまたはポリペプチド(例えば、限定されないが、配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有しているペプチドまたはポリペプチド、ならびに本明細書に開示のコンカテマーポリペプチド)は、異種ポリペプチドの隣接アミノ酸と共に、接合、連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に結合、または他の方法で結合)、および/または挿入されたアミノ酸配列から構成され得るが、全体として異種ポリペプチドに接合、連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に結合、または他の方法で結合)、および/または挿入されてもよい。複数の態様において、本開示の1または複数のペプチドまたはポリペプチドは、低分子(例えば、アルブミンまたは他の既知の担体およびタンパク質)、薬剤、またはドラッグ断片、例えば、限定されないが、定義されたHLAに高い親和性で結合する薬剤またはドラッグ断片に接合または連結(例えば、フレーム内融合、化学的結合、または他の結合)できる。複数の態様において、ペプチドまたはポリペプチドは、中性(非荷電)または塩の形態であってもよく、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まなくてもよいし、含んでもよい。特定の複数の態様において、ペプチドまたはポリペプチドは、n-末端アセチル基および/またはc-末端アミノ基でキャップすることができる。
【0126】
複数の態様において、本開示は、1または複数の配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有しているポリペプチド(分離、合成または組み換えであってもよい)に関し、前記1または複数の配列番号1~124は、ポリペプチドに自然に含まれず、および/または1~124前記1または複数の配列番号1~124は、ポリペプチドのその自然の位置に位置しない。複数の態様において、1または複数の配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有している本開示の1または複数のTレジトープは、抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノスペシフィック抗体、バイスペシフィック抗体、グリコシル化抗体、Fc修飾抗体、異なるクラスまたはサブクラスの抗体(例えば、限定されないが、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4など)、IgM、IgE、またはIgA)、または抗体-薬物複合体)またはその断片(例えば、限定されないが、Fab、scFv、ダイアボディ、sdAb、タンデムscFv)に、(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組換え技術により)融合またはその内部に挿入されてもよい。例えば、Tレジトープが抗体またはその断片内のその天然の位置に存在しない場合、または抗体またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体またはその断片が変異したまたは対応する部分を欠いている場合)において、本開示の1または複数のTレジトープは、抗体またはその断片に、(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組換え技術により)融合またはその内部に挿入されてもよい。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の全てまたは一部の挿入(例えば、Tレジトープまたはその断片の配列全体を挿入すること)で構成される。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の一部または全部の挿入と、制御性T細胞エピトープのアミノ酸の挿入部位の1または複数のアミノ酸の除去である。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープを含むように抗体またはその断片の配列を変異させる(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組み換え技術によって抗体またはその断片に1または複数の点変異を導入する)工程を含む。複数の態様において、抗体または断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、配列の以前の免疫原性が低下し、新しい配列の免疫寛容原性が向上するように、1または複数の制御性T細胞エピトープ配列を導入することになる。複数の態様において、制御性T細胞エピトープアミノ酸の挿入部位における前記付加された1または複数のアミノ酸の数は、抗体またはその断片の配列から削除されたアミノ酸の数に対応する必要はない。1または複数の制御性T細胞エピトープが、Tレジトープが通常見出され得る変異したまたは欠損した対応部分を有する特定の抗体(例えば、ヒトIgGまたはその断片)に挿入または融合される複数の態様において、前記挿入または融合は、Tレジトープが通常存在するであろう抗体内の部位に存在する。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、抗体またはその断片の免疫原性を低下させる結果となる。
【0127】
複数の態様において、本開示のTレジトープ組成物は、米国特許第7,442,778号、米国特許第7,645,861号、米国特許第7,655,764号、米国特許第7,655,765号、及び/又は米国特許第7,750,128号(これらの各々は参照によりその全体が本書に組み込まれる)に開示されるようにFcドメインに内部配列として組み込まれる1または複数のTレジトープを含んでいる。このような内部配列は、挿入(すなわち、以前に存在したFcドメインのアミノ酸の間)または以前に存在したFcドメインのアミノ酸の置換(すなわち、以前に存在したFcドメインのアミノ酸を除去してペプチドアミノ酸を加える)によって追加することができる。後者の場合、付加されるペプチドアミノ酸の数は、以前に存在したFcドメインから除去されたアミノ酸の数に対応する必要はない;例えば、限定するわけではないが、複数の態様において、組成物は、ネイティブFcドメインから1~21アミノ酸の配列を除去した、9~21アミノ酸の付加内部配列を含んでいてもよい。複数の態様において、1または複数のTレジトープは、米国特許第7,442,778号、米国特許第7,645,861号、米国特許第7,655,764号、米国特許第7,655,765号、および/または米国特許第7,750,128号に開示されるように、Fcドメイン内の1または複数の好ましい内部部位に挿入または置換(例えば、完全または部分置換)される。
【0128】
例えば、複数の態様において、ポリペプチドは、1または複数の配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124(およびその断片または変異体)、ならびに任意選択で配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有しているが、当該ポリペプチドには抗体重鎖可変領域が含まれない。複数の態様において、ポリペプチドが抗体重鎖可変領域を構成する場合、前記1または複数の配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124(およびその断片または変異体)、ならびに任意選択で配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸は、抗体重鎖可変領域のその自然位置に配置されることはない。複数の態様において、配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124(およびその断片または変異体)、ならびに任意選択で配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を有する1または複数のTレジトープも融合または内部挿入されてよく、(例えば、限定されるものではないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術などの免疫工学技術を使用して)抗体重鎖可変領域またはその断片に融合または挿入されてもよく、例えば、Tレジトープが抗体重鎖可変領域またはその断片内のその自然の位置にない場合、または抗体重鎖可変領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体重鎖可変領域またはその断片が変異または欠損した該当部分を有する場合)が例示される。
【0129】
複数の態様において、ポリペプチドは、前記ポリペプチドが、抗体重鎖定常領域を含んでいない場合、1または複数の配列番号2、9~11、29~41、および75~100の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号2、9~11、29~41、および75~100のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有している。複数の態様において、ポリペプチドが抗体重鎖定常領域を含む場合、1または複数の配列番号2、9~11、29~41、および75~100の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号2、9~11、29~41、および75~100のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸は、抗体重鎖定常領域の自然位置に存在しない。複数の態様において、Tレジトープが抗体重鎖定常領域またはその断片内の自然位置に存在しない場合、または、抗体重鎖定常領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体重鎖定常領域またはその断片が突然変異を有するか対応部分を欠いている場合)において、配列番号2、9~11、29~41、および75~100の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号2、9~11、29~41、および75~100のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有している1または複数のTレジトープは、抗体重鎖定常領域またはその断片内に、(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術などの免疫工学技術を使用して)融合または内部挿入することもできる。
【0130】
複数の態様において、ポリペプチド(分離、合成、または組換え体であってもよい)は、配列番号12(およびその断片または変異体)、および任意選択で本開示の配列番号12のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有し、ここで前記ポリペプチドは抗体軽鎖可変領域を含まない。複数の態様において、ポリペプチドが抗体軽鎖可変領域を含む場合、前記配列番号12(およびその断片または変異体)、および任意選択で本開示の配列番号12のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸は、抗体軽鎖可変領域のその天然の位置に配置されない。複数の態様において、配列番号12(およびその断片または変異体)、および任意選択で配列番号12のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有する1または複数のTレジトープはまた、抗体軽鎖可変領域またはその断片内に(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術などの免疫工学技術を使用して)融合または内部挿入されてもよい。例えば、Tレジトープが抗体軽鎖可変領域またはその断片内のその自然な位置にない場合、または抗体軽鎖可変領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体軽鎖可変領域またはその断片が、変異したまたは欠けた対応部分を有する場合)等、抗体軽鎖可変領域またはその断片に融合またはその内部に挿入されてもよい。
【0131】
複数の態様において、ポリペプチド(分離、合成、または組換え体であってもよい)は、1または複数の配列番号13および101~110(およびその断片または変異体)、および任意選択で配列番号13および101~110のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有し、ここで前記ポリペプチドは抗体軽鎖定常領域を含まない。複数の態様において、ポリペプチドが抗体軽鎖定常領域を含む場合、1または複数の配列番号13および101~110(およびその断片または変異体)、ならびに任意選択で配列番号13および101~110のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸は、抗体軽鎖定常領域のその天然の位置に配置されない。複数の態様において、1または複数の配列番号13および101~110(およびその断片または変異体)、および任意選択で配列番号13および101~110のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有する1または複数のTレジトープはまた、抗体軽鎖定常領域またはその断片内に(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術などの免疫工学技術を使用して)融合または内部挿入されてもよい。例えば、Tレジトープが抗体軽鎖定常領域またはその断片内のその自然の位置にない場合、または抗体軽鎖定常領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体軽鎖可変領域またはその断片が突然変異を有するか対応部分を欠いている場合)等、抗体軽鎖定常0領域またはその断片に融合またはその内部に挿入されてもよい。
【0132】
上記の例について、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の全てまたは一部の挿入(例えば、Tレジトープの配列全体またはその断片を挿入すること)を含む。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の一部または全部の挿入と、制御性T細胞エピトープのアミノ酸の挿入部位の1または複数のアミノ酸の除去である。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープを含むように抗体またはその断片の配列を変異させる(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組み換え技術によって抗体またはその断片に1または複数の点変異を導入する)工程を含む。複数の態様において、抗体または断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、配列の以前の免疫原性が低下し、新しい配列の免疫寛容原性が向上するように、1または複数の制御性T細胞エピトープ配列を導入することになる。複数の態様において、制御性T細胞エピトープアミノ酸の挿入部位における前記付加された1または複数のアミノ酸の数は、抗体またはその断片の配列から削除されたアミノ酸の数に対応する必要はない。Tレジトープが通常見出され得る変異したまたは欠損した対応部分を有する特定の抗体(例えば、ヒトIgGまたはその断片)に、1または複数の制御性T細胞エピトープが挿入または融合される複数の態様において、前記挿入または融合は、対象の自身の抗体内でTレジトープが通常存在するであろう部位に存在する。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、抗体またはその断片の免疫原性を低下させる結果となる。
【0133】
複数の態様において、本開示のTレジトープ組成物は、本明細書に記載のTレジトープペプチド(例えば、限定されないが、配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるポリペプチド)に反応性部位を結合して作成された改変型Tレジトープペプチドを含み、ここで、改変Tレジトープペプチドの反応性部位は血液成分上の反応性官能基と結合を形成することができ、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号に開示されているように、改変型Tレジトープペプチドの反応性部位と血液成分上の反応性官能基との間に結合を形成させることによって、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート中のTレジトープは、その元の生物学的活性の全てまたは大部分を保持する。複数の態様において、1または複数の改変Tレジトープペプチドの反応性部位と血液成分との間に形成される結合は、共有結合である。複数の態様において、Tレジトープペプチド配列は、配列番号1~124および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸から独立して選択される。
【0134】
本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートは、in vivoにおけるTレジトープを含む改変ポリペプチドの半減期を延長し、Tレジトープを含む改変ポリペプチドを急速なタンパク質分解から保護し、Tレジトープを循環からの急速なクリアランス及び/又は急速な腎排泄から保護し、対象の身体全体にTレジトープ-血液成分コンジュゲートの広い分布を可能にし得る。適切な免疫細胞(マクロファージやAPCなど)へのTレジトープを含む改変ポリペプチドの送達を助け、特定の免疫細胞(マクロファージやAPCなど)のエンドサイトパスウェイによってTレジトープを含む改変ポリペプチドを処理することを可能にし、及び/又は前記免疫細胞によるTレジトープを含む改変ポリペプチドの抗原としての提示を補助する。
【0135】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、担体タンパク質(例えば、アルブミン)として作用する血液成分を含み、さらに、改変ポリペプチドを含み、前記改変ポリペプチドは、1または複数の制御性T細胞エピトープ(「Tレジトープ」と称する)を含んでいる。改変ポリペプチドは、ポリペプチドに結合している反応性部位で構成され、反応性部位は、血液成分上の反応性官能基と結合(例えば、共有結合)を形成することが可能である。Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、Tレジトープペプチドを含むポリペプチドを改変することによって形成されてもよく、改変は、ポリペプチドに反応性部位を付加して改変ポリペプチドを作成し、次いで、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているように、改変Tレジトープペプチドの反応性部位と血液成分上の反応性官能基との間に結合を形成させることによって、行われてもよい。上記Tレジトープ-血液成分コンジュゲートおよびTレジトープを含む改変ポリペプチドの複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートおよびTレジトープを含む改変ポリペプチドは、分離、合成、または組換えであってもよい。
【0136】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの血液成分は、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、及び米国特許第7,307,148号に開示のように、固定性又は移動性のいずれであってもよい。固定性(fixed)血液成分は、移動しない血液成分であり、組織、膜受容体、間質性タンパク質、フィブリンタンパク質、コラーゲン、血小板、内皮細胞、上皮細胞およびそれに関連する膜および膜受容体、体細胞、骨格筋および平滑筋細胞、ニューロン成分、骨細胞および破骨細胞ならびにすべての体組織、特に循環系およびリンパ系に関連する組織が含まれる。移動性(mobile)血液成分とは、長時間の間(一般に5分以内、より通常は1分以内)、固定された座を持たない血液成分である。これらの血液成分は、膜に結合しておらず、長時間血液中に存在し、少なくとも0.1μg/mlの最小濃度で存在する。移動性血液成分には、血清アルブミン、トランスフェリン、フェリチン、IgMやIgGなどの免疫グロブリンが含まれる。移動性血液成分の半減期は、少なくとも約12時間である。Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの複数の態様において、血液成分は、血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、組換えアルブミン、および組換えヒト血清アルブミンなどのアルブミンである。アルブミンは、Tレジトープ-アルブミンコンジュゲートをマクロファージやAPCなどの適切な細胞に運ぶFc新生児結合ドメインを含むので、好ましい血液成分である。さらに、アルブミンは、アミノ酸34(Cys34)(ヒトセリンアルブミンのアミノ酸配列におけるアミノ酸の位置)にシステインを含み、約pKa5の遊離チオールを含み、アルブミンの好ましい反応性官能基として機能し得る。アルブミンのCys34は、マレイミドプロピオンアミド(MPA)と安定なチオエステル結合を形成することができ、これは、改変Tレジトープペプチドの好ましい反応性部位である。
【0137】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの血液成分上、または本開示される改変ポリペプチドとコンジュゲートを形成することができる血液成分上の反応性官能基は、改変治療ペプチド上の反応基が反応して共有結合を形成する、移動および固定タンパク質を含む、血液成分上の基である。米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号に開示されているように、このような官能性は通常、エステル反応基と結合するためのヒドロキシル基、マレイミド、イミデートおよびチオエステル基と結合するためのチオール基、反応基上の活性化カルボキシル、リン酸または他のいかなるアシル基と結合するためのアミノ基がある。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、アミノ基、ヒドロキシル基、またはチオール基である。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、ポリペプチドおよび/またはタンパク質中のアミノ酸の側鎖の成分であり、反応性官能基はポリペプチドおよび/またはタンパク質の表面付近に存在する。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、タンパク質性血液成分の遊離システイン残基のチオール基である。複数の態様において、反応性官能基は、セリンアルブミンのアミノ酸34(Cys34)のシステインの遊離チオール基である。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、血漿などの生理的環境において約5のpKaを有するチオールである。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、血漿などの生理学的環境においてpKa約5.5を有するチオールである。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、血漿のような生理学的環境においてpKa3~7を有するチオールである。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、チオラートアニオンである。複数の態様において、反応性官能基は、セリンアルブミンのアミノ酸34(Cys34)におけるシステインのチオラートアニオンである。
【0138】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチドおよびTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチドは、ポリペプチドに結合している反応性部位を含み、反応性部位は、血液成分上の反応性官能基と結合(例えば、共有結合)を形成することが可能である。複数の態様において、反応性基は、血液成分上のアミノ基、ヒドロキシル基またはチオール基と反応して、それと共有結合を形成することが可能である。複数の態様において、反応性基は、改変ポリペプチドが血液成分に結合されるとき、改変ペプチドが、親化合物の活性を実質的な割合で保持するような部位に配置される。複数の態様において、反応性部位は、スクシンイミジル基またはマレイミド基であってよい。複数の態様において、反応性部位は、改変されるべきポリペプチドのアミノ酸の治療的活性が低い領域に位置するアミノ酸に結合していてもよい。複数の態様において、反応性部位は、改変されるポリペプチドのアミノ末端アミノ酸に結合している。複数の態様において、反応性部位は、改変されたポリペプチドのカルボキシ末端アミノ酸に結合される。複数の態様において、反応性部位は、改変ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸とカルボキシ末端アミノ酸の間に位置するアミノ酸に結合している。複数の態様において、反応性基は、連結基を介して、または任意に連結基を使用せずに、(改変されるべき)ポリペプチドに結合されてもよい。さらに、反応性基の結合を促進するために、1または複数の追加のアミノ酸(例えば、1または複数のリジン)がポリペプチドに付加されてもよい。連結基は、血液成分の反応性基を、1または複数のTレジトープを含むポリペプチドに連結または接続する化学的部分である。連結基は、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、またはアルキル基、置換されたアミノ基、シクロアルキル基、多環式基、アリール基、ポリアリール基、置換アリール基、複素環基、および置換複素環基の1または複数からなることができる。連結基はまた、AEA((2-アミノ)エトキシ酢酸)または好ましい連結基AEEA([2-(2-アミノ)エトキシ]エトキシ酢酸)などのポリエトキシアミノ酸から構成されてもよい。複数の態様において、連結基は、ポリエチレングリコールリンカー(例えば、これらに限定されないが、PEG2またはPEG12)から構成されてもよい。
【0139】
理解されるべきこととして、改変ポリペプチドは、血液成分とのコンジュゲートがin vivoで起こるようにin vivoで投与されてもよく、またはそれらはまずin vitroで血液成分にコンジュゲートされ、得られたペプチダーゼ安定化ポリペプチドがin vivoで投与されてもよい。さらに、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号および米国特許第7,307,148号に開示されているように、ペプチダーゼ安定化ポリペプチドは、改変ペプチドの反応基と血液成分の官能基の間に形成される共有結合を介して血液成分にコンジュゲートされた、連結基を伴うまたは伴わない改変ペプチドのことを言う。このような反応は、好ましくは、マレイミド連結(例えば、GMBS、MPAまたは他のマレイミドから調製)で改変したポリペプチドを、血清アルブミンまたはIgGなどの移動血液タンパク質上のチオール基と共有結合させることによって確立される。ペプチダーゼ安定化ポリペプチドは、非安定化ペプチドよりも、生体内のペプチダーゼの存在下でより安定である。ペプチダーゼで安定化された治療用ペプチドは、同一配列の非安定化ペプチドと比較して、一般に半減期が少なくとも10-50%増加する。ペプチダーゼ安定性は、血清または血液中の非改変治療用ペプチドの半減期と、血清または血液中の対応する改変治療用ペプチドの半減期を比較することにより決定される。半減期は、改変ペプチド及び非改変ペプチドを投与した後に血清又は血液をサンプリングし、ペプチドの活性を測定することにより決定される。活性を決定することに加えて、治療用ペプチドの長さもまた測定され得る。
【0140】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの改変ポリペプチド、及びTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、本明細書に開示する1または複数のTレジトープを含む。複数の態様において、改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、本明細書に本質的に開示される、1または複数の配列番号1~124の配列(およびその断片および変異体)を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有している。複数の態様において、改変ポリペプチドの1または複数のTレジトープは、任意に、切断感受性部位であってもよい1または複数のリンカーを、そのN末端および/またはC末端に隣接して有していてもよい。このような改変ポリペプチドにおいて、2以上のTレジトープは、それらの間に切断感受性部位を有していてもよい。あるいは、2以上のTレジトープは、互いに直接、または切断感受性部位でないリンカーを介して接続されてもよい。複数の態様において、1または複数のTレジトープおよび/またはそこに含まれるTレジトープを含む改変ポリペプチドは、中性(非電荷)または塩の形態であることができ、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含まなくてもよく、または含んでいてもよい。特定の複数の態様において、1または複数のTレジトープペプチドまたはポリペプチドを含む改変ポリペプチドは、N末端アセチル基および/またはC末端アミノ基でキャップされ得る。複数の態様において、改変ポリペプチドに含まれる1または複数のTレジトープは、N末端アセチル基および/またはC末端アミノ基でキャップすることができる。
【0141】
複数の態様において、改変Tレジトープを有するTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成する血液成分は、アルブミンである。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、アミノ基、ヒドロキシル基、またはチオール基である。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、ポリペプチドおよび/またはタンパク質中のアミノ酸の側鎖の成分であり、反応性官能基はポリペプチドおよび/またはタンパク質の表面付近に存在する。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、タンパク質性血液成分の遊離システイン残基のチオール基である。複数の態様において、反応性官能基は、セリンアルブミンのアミノ酸34(Cys34)のシステインの遊離チオール基である。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、血漿などの生理的環境において約5のpKaを有するチオールである。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、血漿などの生理学的環境において約5.5のpKaを有するチオールである。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、血漿のような生理学的環境において3~7のpKaを有するチオールである。複数の態様において、血液成分の反応性官能基は、チオラートアニオンである。複数の態様において、反応性官能基は、セリンアルブミンのアミノ酸34(Cys34)におけるシステインのチオラートアニオンである。
【0142】
複数の態様において、改変Tレジトープペプチドの反応性部位は、ソフトな求電子剤である。複数の態様において、改変Tレジトープペプチドの反応性部位は、チオールに対して選択的な求電子剤である。好ましい実施形態において、改変Tレジトープペプチドを生成するためのTレジトープに結合した反応性部位は、マレイミドである。複数の態様において、反応性部位は、マレイミドプロピオン酸である。好ましい実施形態では、改変Tレジトープペプチドの結合した反応性部位はマレイミドであり、血液成分はアルブミンであり、アルブミン上の反応性官能性はアルブミンのCys34の遊離チオール又はチオラートアニオンである。改変Tレジトープペプチドの反応性部位がマレイミドであり、血液成分がアルブミンであり、アルブミンの反応性官能性がアルブミンのCys34の遊離チオールまたはチオラートアニオンである場合、マレイミド基とスルフヒドリルの間に生理条件では切断することができない安定したチオエステル結合が形成される。複数の態様において、改変Tレジトープペプチドはリンカーを含み、反応性部位はリンカーを介してTレジトープペプチドに付着される。複数の態様において、改変Tレジトープペプチドは、1:1のモル比で血液成分に結合する。
【0143】
本開示の改変Tレジトープペプチドを製造する方法は、分子を構成する種々の要素の性質に応じて広く変化することになる。合成手順は、単純であり、高い収率を提供し、高度に精製された安定な生成物を可能にするように選択され得る。通常、反応性部位は最終段階として作成され、例えば、カルボキシル基の場合、活性エステルを形成するためのエステル化は合成の最終段階となるであろう。
【0144】
複数の態様において、本開示は、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号に開示されるような、改変Tレジトープペプチドを合成する方法に関する。複数の態様において、本方法は、以下の工程を含む。第1の工程では、ポリペプチドの1または複数のTレジトープ配列は、本質的に本明細書に開示されるように作ることができる。第2の工程において、ポリペプチドがシステインを含まない場合、ポリペプチドはカルボキシ末端アミノ酸から合成され、反応性部位がカルボキシ末端アミノ酸に付加され得る。あるいは、カルボキシ末端アミノ酸に末端リジン(または1または複数のリジン)を付加し、その末端リジンに反応性部位を付加してもよい。第3の工程において、ポリペプチドが1つのシステインのみを含む場合、ポリペプチドの治療的活性が低い領域のアミノ酸に反応性部位を付加する前に、システインを保護基と反応させる。第4工程において、ポリペプチドがジスルフィド架橋として2つのシステインを含む場合、2つのシステインを酸化し、反応性部位をアミノ末端アミノ酸、カルボキシ末端アミノ酸、またはポリペプチドのカルボキシ末端アミノ酸とアミノ末端アミノ酸の間に位置するアミノ酸に付加させる。第5工程において、ポリペプチドがジスルフィド架橋として2より多いシステインを含む場合、システインはジスルフィド架橋において順次酸化され、ペプチドは、カルボキシ末端アミノ酸に反応性部位を付加する前に、精製される。
【0145】
複数の態様において、本開示は、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートを合成する方法に関している。第1段階において、反応性マレイミドプロピオンアミド(MPA)を、1または複数のTレジトープを含むポリペプチド上のN末端リジンを介して添加し、改変ポリペプチドを作製する。複数の態様において、1または複数のリジンは、ポリペプチドのN末端上に存在し、任意に、本明細書に開示する配列番号1~124の群から選択されるTレジトープ配列のN末端上に存在する。任意選択で、PEG2またはPEG12などのポリエチレングリコールリンカーが、1または複数のリジンとTレジトープ配列の間、またはTレジトープ配列のN末端に存在する。複数の態様において、カテプシンB部位などのリソソーム切断部位(任意にバリンおよびシトルリンからなる(N末端からC末端まで順次))がPEG2部位とTレジトープ配列との間に存在する。リソソーム切断部位(カテプシンB部位など)を組み込んでリソソームプロテアーゼ部位を提供し、Tレジトープをリソソーム区画に放出することができる。複数の態様において、リソソーム切断部位(カテプシンB部位など)は、リソソームプロテアーゼ部位を提供するために存在し、Tレジトープが細胞内、好ましくは初期エンドソーム内に放出されることを可能にする。好ましい実施形態では、リソソーム切断部位(カテプシンB部位など)は、リソソームプロテアーゼ部位を提供するために存在し、Tレジトープを細胞内、例えば、膜で囲まれた小胞(初期エンドソーム、後期エンドソーム、リソソームなど)へ放出できるようにして、Tレジトープが抗原提示用に処理され得ることがあるようにする。複数の態様において、Tレジトープは、マクロファージまたは抗原提示細胞などの免疫細胞によって抗原として提示され、好ましくはMHCクラスII抗原として提示される。複数の態様において、PEG2またはPEG12部分とTレジトープ配列の間、および/または1または複数のTレジトープの間に、カテプシンB部位などのリソソーム切断部位(任意にバリンおよびシトルリンから(N末端からC末端まで順次)なる部位)が存在する。複数の態様において、1または複数のTレジトープが構築物上に存在してもよく、任意でリンカーよりもC末端に近接していてもよい。複数の態様において、1または複数のリソソーム切断部位は、複数のTレジトープ間に存在する(例えば、単一のリソソーム切断部位が2つのTレジトープを分離するように、または1つのリソソーム切断部位が第1および第2のTレジトープ間に存在し、別のリソソーム切断部位が第2および第3のTレジトープ間に存在するように、等)。複数の態様において、ノルロイシン(Nle)残基は、例えば質量分析による評価のために、最終的なTレジトープ-血液成分コンジュゲートに組み込まれたTレジトープペプチドの量を定量化する手段として、C末端に存在する。複数の態様において、ポリペプチドのC末端は、C末端アミノ基でキャップされる。第2の工程において、マレイミドベースの化学を使用して、改変されたポリペプチドを血液成分、好ましくは血清アルブミンに1:1のモル比で共有結合させる。第2の工程は、以下でさらに説明するように、そして本開示の実施例において、in vivo又はex vivoで実施することができる。
【0146】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成は、in vivoで存在する場合、Tレジトープを、ペプチダーゼによる急速な分解、循環からの急速なクリアランス、及び/又は急速な腎臓排泄から保護する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成は、in vivoでのTレジトープの半減期を著しく延長させる。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの形成は、対象の体全体にTレジトープ-血液成分コンジュゲートを広く分布させることができる。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、対象の血漿中に存在する場合、血液脳関門を通過しない。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、マクロファージおよび/または抗原提示細胞(APC)などの適切な免疫細胞へのTレジトープの送達を補助する。複数の態様において、マクロファージおよび/またはAPCなどの適切な免疫細胞へのTレジトープの送達に際して、Tレジトープは膜結合ベシクル、好ましくは初期エンドソーム、後期エンドソーム、またはリソソームなどのエンドサイトパスウェイにおけるベシクルに包含される。複数の態様において、Tレジトープは、マクロファージ及び/又はAPCなどの適切な免疫細胞によって一旦処理されると、MHCクラスII抗原として提示される。
【0147】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート中のTレジトープは、最大12時間のin vivoでの血漿半減期を有する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート中のTレジトープは、最大1日のin vivoでの血漿中半減期を有する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート中のTレジトープは、最大40~48時間のin vivoでの血漿中半減期を有する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート中のTレジトープは、最大60時間のin vivoでの血漿中半減期を有する。複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲート中のTレジトープは、最大15日のin vivoでの血漿中半減期を有する。
【0148】
複数の態様において、1または複数のTレジトープを含む改変ポリペプチドは対象に投与され、投与時に、改変ポリペプチドは循環血液成分の反応性官能基とin vivoで反応する。複数の態様において、ペプチドはヒト対象に投与され、血液成分はヒトアルブミンであり、好ましくはヒト対象の循環アルブミンである。
【0149】
複数の態様において、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために使用される改変ポリペプチドは、血液成分上の反応性官能基とex vivoで結合を形成することができ、改変ポリペプチドの反応性部位と血液成分上の反応性官能基との結合の形成時に、米国に開示されているように、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートが形成される。米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号に開示されているように、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートが形成される。複数の態様において、本明細書に開示される改変ポリペプチドは、体外の血液成分の反応性官能基に共有結合するように構成される。複数の態様において、血液成分はアルブミンである。複数の態様において、血液成分は、組換えアルブミン、ヒト組換えアルブミン、およびゲノムソースからのアルブミンの群から選択される。
【0150】
複数の態様において、本開示は、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、及び米国特許第7,307,148号に開示されているように、改変されたTレジトープペプチド及びTレジトープ-血液成分の結合体を合成するex vivo方法に関する。複数の態様において、本明細書に開示される改変ポリペプチドは、ヒト血清アルブミンを含む血液、血清または生理食塩水に添加され、改変治療ペプチドと血液成分との間の共有結合形成を可能にする。複数の態様において、本明細書に開示される1または複数のTレジトープを含むポリペプチドは、マレイミドで改変され、それは生理食塩水中で血清アルブミンと反応させられる。複数の態様において、改変されたポリペプチドが血液成分と反応し、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成したら、このコンジュゲートを対象に投与してもよい。複数の態様において、改変ポリペプチドが血液成分と反応してコンジュゲートを形成した後、コンジュゲートが対象に投与される前に、コンジュゲートを反応混合物中の非コンジュゲート血液成分から分離してもよい。複数の態様において、荷電していないマトリックスに固定化された疎水性リガンドとの疎水性相互作用の強さの違いに基づいて物質を分離することにより、コンジュゲートを反応混合物中の非コンジュゲート血液成分から分離することができる。複数の態様において、非荷電(uncharged)マトリックスは疎水性固体支持体であってもよく、支持体は、オクチルセファロース、フェニルセファロースおよびブチルセファロースなどの疎水性樹脂を含むカラムを含むが、これらに限定されるものではない。複数の態様において、この技術は、開始緩衝液中の適度に(moderately)高濃度の塩(~1M)を用いて実施することができる(塩の促進吸着)。溶出は、塩濃度の直線的または段階的な減少によって達成される。リガンドの種類、置換度、pH、および吸着段階で使用する塩の種類と濃度は、HICマトリックス(疎水性相互作用クロマトグラフィー・マトリックス)の総合性能(例えば、選択性と容量)に大きな影響を与える。
【0151】
溶媒は、HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)において容量や選択性に影響を与える最も重要なパラメータの1つである。一般に、吸着工程は脱着工程よりも選択性が高い。したがって、pH、溶媒の種類、塩の種類、塩の濃度に関してスタートバッファを最適化することが重要である。サンプルに様々な「塩析」塩を添加すると、HICにおけるリガンドとタンパク質の相互作用が促進される。塩の濃度を上げると、結合するタンパク質の量はタンパク質の沈殿点まで増加する。塩の種類によって、疎水性相互作用を促進する能力は異なる。
【0152】
塩析効果を高めると疎水性相互作用が強くなり、カオトロピック効果を高めると疎水性相互作用が弱くなる。塩析効果の高い塩の例として、塩析効果の大きいものから小さいものの順に、以下のものが挙げられる。PO4
3-、SO4
2-、CH3COO-、Cl-、Br-、NO3
-、ClO4
-、I-、およびSCN-などが挙げられる。カオトロピック効果の高い塩の例としては、カオトロピック効果の大きいものから小さいものへと順に、以下のものが挙げられる。H4
+、Rb+、K+、Na+、Cs+、Li+、Mg2+、およびBa2+などである。HICに最もよく用いられる塩は、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、硫酸ナトリウム((Na)2SO4))、硫酸マグネシウム(MgSO4)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、および酢酸アンモニウム(CH3COONH4)である。
【0153】
HIC吸着剤へのタンパク質の結合は、中程度から高濃度の「塩析」塩によって促進されるが、そのほとんどは、ネイティブな球状タンパク質からの優先的排除、すなわち塩とタンパク質表面との相互作用が熱力学的に不利なためにタンパク質構造に対する安定化の影響も有している。塩の濃度は、リガンドとタンパク質の相互作用を促進するのに十分な高さ(例えば、500~1000mM)でありながら、サンプル中のタンパク質の沈殿を引き起こす濃度以下である必要がある。アルブミンの場合、塩濃度は3M(モル/リットル)以下にする必要がある。塩析の原理は、塩による水の表面張力の増加である(Melander and Horvath, 1977)。したがって、コンパクトな構造は、タンパク質-溶液界面積が小さくなるため、エネルギー的に有利になる。これらの条件下で、例えばSO4
2-、PO4
2-またはCH3COO-と任意の対イオンからなるバッファーは、これらの塩が、非共役アルブミン(すなわちメルカプトアルブミンおよびシステインでキャップしたアルブミン)とは異なる方法で、本質的にすべてのここに記載した共役アルブミンに対して塩析効果を示し、したがって共役アルブミンと非共役アルブミン間の一貫したクロマトグラフィー分離が可能である。したがって、リガンドと共役アルブミンの間の相互作用を促進するために必要な塩の濃度は、リガンドと非共役アルブミンの間よりも低くなる。このクロマトグラフィー分離は、(a)アルブミン(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)の配列(b)アルブミンの供給源(すなわち、血漿由来または組換え)(c)コンジュゲートした改変Tレジトープの分子量、(d)分子の構造内の反応部位の位置、(e)分子のペプチド配列または化学構造、(f)コンジュゲート分子の三次元構造(例えば.線構造vsループ構造)から独立している。
【0154】
複数の態様において、水性緩衝液の塩は、十分な塩析効果を有する。複数の態様において、十分な塩析効果を提供するために、塩は、リン酸塩、硫酸塩、および酢酸塩であってもよい。複数の態様において、バッファーのカチオンの選択は、限定されないが、NH4+、Rb+、K+、Na+、Cs+、Li+、Mg2+およびBa2+からなる群から選択することができる。複数の態様において、水性緩衝液は、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、およびリン酸マグネシウムからなる群から選択されてもよい。複数の態様において、緩衝液のpHは3.0と9.0の間であり;より好ましくは6.0と8.0の間であり、さらに好ましくは、pHは7.0である。複数の態様において、緩衝液および疎水性固体支持体は、室温(約25℃)または4℃またはその間にある。
【0155】
複数の態様において、本開示はまた、キメラまたは融合ポリペプチド組成物を提供する。複数の態様において、本開示は、1または複数の本開示のTレジトープがその一部であるキメラまたは融合ポリペプチド組成物(複数の態様において、分離、合成、または組換えであり得る)を提供する。複数の態様において、キメラまたは融合ポリペプチド組成物は、異種ポリペプチド(例えば、限定されないが、異種抗体(IgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE分子またはその抗原特異的抗体断片(Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉鎖構造多特異抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディなど))に、接合、連結(例えば、フレーム内融合、化学結合、またはその他の結合)、および/または挿入された、1または複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、TレジトープペプチドまたはT細胞エピトープポリペプチド)を含む。前述のように、本開示の1または複数のTレジトープに関して、「異種ポリペプチド」という用語は、本開示の1または複数のTレジトープが異種ポリペプチドに異種であるか、異種ポリペプチドに自然に含まれないことを意味することが意図される。複数の態様において、1または複数の本開示のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、またはT細胞エピトープポリペプチド)を、(例えば、組換え技術、突然変異誘発、または当該技術分野において他の既知の手段によって)異種ポリペプチドに挿入してもよく、異種ポリペプチドのC末端に(当該技術分野において既知のように、リンカーを使用してまたは使用せずに)付加してもよく、および/または異種ポリペプチドのN末端に(当該技術分野において既知のように、リンカーを使用してまたは使用せずに)付加してもよい。例えば、変異誘発によるタンパク質工学は、部位特異的変異誘発技術、または当技術分野で公知の他の変異誘発技術を使用して行うことができる(例えば、James A. Brannigan and Anthony J. Wilkinson., 2002, Protein engineering 20 years on. Nature Reviews Molecular Cell Biology 3, 964-970; Turanli-Yildiz B. et al., 2012, Protein Engineering Methods and Applications, intechopen.com, これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0156】
上記の分離、合成、または組換えキメラもしくは融合ポリペプチド組成物の複数の態様において、本開示の1または複数のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、Tレジトープペプチド、またはT細胞エピトープポリペプチド)は、1または複数の配列番号1~124の配列を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有している。本開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物の複数の態様において、1または複数のポリペプチドは、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる。キメラまたは融合ポリペプチド組成物の複数の態様において、本明細書に開示される1または複数のTレジトープは、異種ポリペプチドの隣接アミノ酸と共に、接合、連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に結合、または他の方法で結合)、および/または挿入されたアミノ酸配列から構成され得るが、全体として異種ポリペプチドに接合、連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に結合、または他の方法で結合)、および/または挿入されてもよい。複数の態様において、キメラまたは融合ポリペプチド組成物は、ポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは、1または複数の配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有しており、本開示の1または複数の配列番号1~124は、ポリペプチドに天然に含まれず、および/または前記配列番号1~124は、ポリペプチド中の天然位置に配置されていない。複数の態様において、本開示の1または複数のTレジトープは、ポリペプチドに接合、連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に連結、または他の方法で結合)、および/または挿入され得る。複数の態様において、キメラまたは融合ポリペプチド組成物は、Tレジトープと実質的に相同でないアミノ酸配列を有する異種ポリペプチドに作動可能に連結された1または複数の本開示のTレジトープを含む。複数の態様において、キメラまたは融合ポリペプチドは、それ自体、Tレジトープの機能に影響を与えない。例えば、融合ポリペプチドは、Tレジトープ配列がGST配列のC末端に融合されたGST-融合ポリペプチドであり得る。他のタイプの融合ポリペプチドには、酵素融合ポリペプチド、例えばβ-ガラクトシダーゼ融合、酵母ツーハイブリッドGAL融合、ポリ-His融合及びIg融合が含まれるが、これらに限定されるものではない。このような融合ポリペプチド、特にポリ-His融合またはアフィニティタグ融合は、組換えポリペプチドの精製を容易にすることができる。特定の宿主細胞(例えば、哺乳類宿主細胞)において、ポリペプチドの発現および/または分泌は、異種シグナル配列を使用することによって増加させることができる。したがって、複数の態様において、キメラまたは融合ポリペプチドは、そのN-末端に異種シグナル配列を含む。上記キメラまたは融合ポリペプチド組成物の複数の態様において、異種ポリペプチドまたはポリペプチドは、生物学的に活性な分子を含む。複数の態様において、生物学的に活性な分子は、免疫原性分子、T細胞エピトープ、ウイルスタンパク質、および細菌タンパク質からなる群から選択される。複数の態様において、1または複数の本開示のTレジトープは、低分子、薬剤、または薬剤断片に接合または連結(例えば、フレーム内で融合、化学的に連結、または他の方法で結合)することができる。例えば、本開示の1または複数の配列番号1~124(および/またはその断片もしくは変異体、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸)は、定義されたHLAに高い親和性で結合する薬剤または薬剤断片に結合または連結(例えば、インフレーム融合、化学的に結合、または別の形で結合)され得る。上記キメラまたは融合ポリペプチド組成物の複数の態様において、キメラまたは融合ポリペプチド組成物は、組換え、分離、および/または合成であってもよい。
【0157】
キメラまたは融合ポリペプチド組成物は、当技術分野で知られているような標準的な組換えDNAまたはRNA技術によって製造することができる。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAまたはRNA断片は、従来の技術に従ってインフレームで一緒にライゲーションされてもよい。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成機を含む従来の技術によって合成されてもよい。あるいは、核酸断片のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅は、キメラ核酸配列を生成するために続いてアニールされ再増幅されてもよい2つの連続する核酸断片の間の相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して実施することができる(Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, (2ND , 1992), FM Asubel et al. (eds), Green Publication Associates, New York, NY (Publ), ISBN: 9780471566355,これ(ら)の参照は、本開示に組み込むことができる)。さらに、本開示の1または複数のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、Tレジトープペプチド、またはT細胞エピトープポリペプチド)(1または複数の配列番号1~124を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有する本開示の1または複数のTレジトープ)は、組換え技術、合成重合技術、突然変異誘発、または当該技術分野で知られている他の標準的技術によって、異種ポリペプチドに挿入するか、またはポリペプチドの非自然発生位置へ挿入する、またはTレジトープを含んでいないポリペプチドに挿入することが可能である。例えば、変異誘発によるタンパク質工学は、部位特異的変異誘発技術、または当技術分野で公知の他の変異誘発技術を用いて行うことができる(例えば、James A. Brannigan and Anthony J. Wilkinson., 2002, Protein engineering 20 years on. Nature Reviews Molecular Cell Biology 3, 964-970; Turanli-Yildiz B. et al., 2012 Protein Engineering Methods and Applications, intechopen.com, これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれている)。先に説明したように、複数の態様において、1または複数のTレジトープは、米国特許第7,442,778号、米国特許第7,645,861号、米国特許第7,655,764号、米国特許第7,655,765号、および/または米国特許第7,750,128号(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるようにFcドメイン内のアミノ酸に挿入または置換されてもよい。
【0158】
複数の態様において、ポリペプチド、コンカテマーポリペプチド、およびキメラまたは融合ポリペプチドは、均質になるまで精製することができ、又は部分的に精製することができる。しかしながら、T細胞エピトープ化合物および組成物が均質になるまで精製されない調製物が有用であることが理解される。重要な特徴は、調製物が、相当量の他の成分の存在下でも、組成物の所望の機能を可能にすることである。したがって、本開示は、様々な程度の純度を包含する。一実施形態では、「細胞性物質を実質的に含まない」という文言は、約30%未満(乾燥重量で)の他のタンパク質(例えば、汚染タンパク質)、約20%未満の他のタンパク質、約10%未満の他のタンパク質、約5%未満の他のタンパク質、約4%未満の他のタンパク質、約3%未満の他のタンパク質、約2%未満の他のタンパク質、約1%未満の他のタンパク質、またはその間の任意の値または範囲を有するポリペプチド、コンカテマーポリペプチド、およびキメラまたは融合ポリペプチドの調製物を含む。
【0159】
複数の態様において、本開示のポリペプチド、コンカテマーポリペプチド、およびキメラまたは融合ポリペプチドが組換えにより得られる場合、組成物は、培養液(培養培地)を実質的に含まないこともでき、例えば、培養液は、ポリペプチド、コンカテマーポリペプチド、およびキメラまたは融合ポリペプチド調製物中の約20体積%未満、約10体積%未満、または約5体積%未満を占める。「化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という表現は、T細胞エピトープの合成に関与する化学前駆体または他の化学物質から分離された、本ポリペプチド、コンカテマーポリペプチド、およびキメラまたは融合型ポリペプチドの調製物を含む。「化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という文言は、例えば、約30%未満(乾燥重量で)の化学前駆体または他の化学物質、約20%未満の化学前駆体または他の化学物質、約10%未満の化学前駆体または他の化学物質、約5%未満の化学前駆体または他の化学物質、約4%未満の化学前駆体または他の化学物質、約3%未満の化学前駆体または他の化学物質、約2%未満の化学前駆体または他の化学物質、または約1%未満の化学前駆体または他の化学物質を有する、本ポリペプチド、コンカテマーポリペプチド、およびキメラまたは融合ポリペプチドの調整物を含み得る。
【0160】
複数の態様において、本開示はまた、制御性T細胞エピトープ化合物および組成物(例えば、本明細書に開示されるペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物(これらは複数の態様において、分離、合成、および/または組み換えであってもよい)の1またはそれ以上を含む)の薬学的に許容される塩を含む。「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容され、親ペプチドまたはポリペプチド(例えば、本明細書に開示されるペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、および/またはキメラまたは融合ポリペプチド)の所望の薬理活性を有する塩を意味する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、本発明で開示されるポリペプチド、コンカテマーポリペプチド、および/またはキメラまたは融合ポリペプチドの誘導体を指し、ここで、その化合物は、その酸または塩基塩を作ることにより修飾される。薬学的に許容される塩の例には、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機酸塩などが含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩としては、例えば、無毒な無機又は有機酸から形成される従来の無毒性塩又は親化合物の第4級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、そのような従来の非毒性塩は、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバム酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモイ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、亜酢酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、および一般的なアミン酸、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンから選択される無機および有機酸から得られるものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0161】
[核酸]
複数の態様において、本開示は、本明細書に記載される、1または複数のペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、および/またはキメラまたは融合ポリペプチドの全体または一部をコードする核酸(限定されないが、例えば、DNA(cDNA)、RNA(限定されないが、mRNAなど))、ベクター、ウイルス、またはそのハイブリッド(これらはすべて分離、合成または組み換えであってもよい)をも提供する。複数の態様において、核酸は、発現カセット、プラスミド、および発現ベクター、または組換えウイルスをさらに含むか、またはその中に含まれており、ここで、任意選択で、核酸、または発現カセット、プラスミド、発現ベクター、または組換えウイルスは、細胞(任意選択でヒト細胞または非ヒト細胞)内に含まれ、任意に、前記細胞は、核酸、または発現カセット、プラスミド、発現ベクター、または組換えウイルスで形質導入される。複数の態様において、細胞は、本明細書に開示される、分離、合成、または組換えされた核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、または組換えウイルス;および/または本明細書に開示される、分離、合成、または組換えキメラまたは融合ポリペプチド組成物を、例えば、1または複数の、本開示のポリペプチドの中に含むように形質転換、トランスフェクト、または他の方法で工学的に構築される。複数の態様において、細胞は、哺乳類細胞、細菌細胞、昆虫細胞、または酵母細胞であり得る。複数の態様において、本開示の核酸分子は、ベクターに挿入され、例えば、発現ベクターまたは遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号)または定位注射(Chen SHら, (1994), Proc Natl Acad Sci USA, 91(8):3054-7、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれている)により対象に送達されうる。同様に、本開示の核酸分子は、プラスミドに挿入することができる。遺伝子治療ベクターの医薬製剤は、許容される希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができ、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれている徐放性マトリックスから構成されることができる。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターが組換え細胞、例えば、レトロウイルスベクターからそのまま生産され得る場合、医薬製剤は、遺伝子送達システムを生産する1または複数の細胞を含むことができる。このような医薬組成物は、投与のための指示書とともに、容器、パック、またはディスペンサーに含まれ得る。本明細書に記載の少なくとも1または複数のペプチドまたはポリペプチド、コンカテマーペプチド、および/またはキメラまたは融合ポリペプチドを全体または部分的にコードする上記核酸(例えば、DNA、RNA、ベクター、ウイルス、またはそのハイブリッド)の複数の態様において、上記核酸は、本開示の1または複数のペプチドまたはポリペプチド(例えば、限定されないが、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有しているペプチドまたはポリペプチド)、ならびに本明細書に記載される任意のコンカテマーペプチド)をコードする。複数の態様において、本開示は、本開示の1または複数のポリペプチドまたは本開示のキメラまたは融合ポリペプチド組成物をコードする本開示の核酸を含むベクターに関する。複数の態様において、本開示は、本開示のベクターを含んでなる細胞に関する。複数の態様において、細胞は、哺乳類細胞、細菌細胞、昆虫細胞、または酵母細胞であり得る。
【0162】
本開示の核酸は、DNA(cDNAを含むがこれに限定されない)またはRNA(mRNAを含むがこれに限定されない)であり、一本鎖または二本鎖であってよい。核酸は、典型的には、DNAまたはRNA(mRNAを含む)である。核酸は、当技術分野で周知の技術、例えば、免疫原性ポリペプチドをコードする配列の合成、またはクローニング、または増幅;細胞膜アドレス配列をコードする配列の合成、またはクローニング、または増幅;適切なベクターおよび細胞における配列のライゲーションおよびそれらのクローニング/増幅によって製造することができる。本明細書に記載される1または複数のペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、および/またはキメラまたは融合ポリペプチドの全部または一部をコードする本明細書に提供される核酸(RNA、DNA、ベクター、ウイルスまたはそれらのハイブリッドであっても)は、種々の供給源から分離し、遺伝子工学的に増幅し、合成的に生成し、および/または組換え発現/生成させることができる。これらの核酸から生成された組換えポリペプチドは、個々に分離またはクローン化され、所望の活性について試験することができる。任意の組換え発現系を使用することができ、例えば、in vitroでの、細菌、真菌、哺乳類、酵母、昆虫または植物細胞発現系が挙げられる。複数の態様において本明細書で提供される核酸は、周知の化学合成技術によってin vitroで合成される(例えば、Adams(1983)J. Am. Chem. Soc. 105:661; Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440-3444; Frenkel (1995) Free Radic.Biol.Med.19:373-380; Blommers (1994) Biochemistry 33: 7886-7896; Narang (1979) Meth.Enzymol.68:90; Brown (1979) Meth. Enzymol.68:109; Beaucage (1981) Tetra. Lett. 22: 1859; 米国特許No.第4,458,066号、これらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。さらに、本明細書で提供される核酸の操作のための技術、例えば、サブクローニング、標識プローブ(例えば、Klenowポリメラーゼを用いたランダムプライマー標識、ニック翻訳、増幅)、配列決定、ハイブリッド化などは、科学文献および特許文献によく記載されている(例えば、Sambrook編, MOLECULAR CLONING: ALABORATORY MANUAL (2ND ED.), Vols.1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989); CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Ausubel, ed., John Wiley & Sons, Inc.JohnWiley & Sons, Inc., New York (1997); LABORATORY TECHNIQUES IN BIOCHEMISTRY ANDMOLECULAR BIOLOGY: HYBRIDIZATION WITH NUCLEIC ACID PROBES, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation, Tijssen, ed., Elsevier, N.Y. (1993)、これ(ら)の全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)
【0163】
本発明のさらなる目的は、本明細書に記載の1または複数のペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、および/またはキメラまたは融合ポリペプチドをコードする核酸分子に関するものである。核酸は、本明細書に記載の1または複数のペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、及び/又はキメラ若しくは融合ポリペプチドをin vitro若しくはin vivoで産生するために、又はポリペプチドをその表面に発現する細胞を産生するために、又は活性成分が核酸若しくは核酸を含むベクターであるワクチンを製造するために使用されてもよい。核酸は、例えば、DNA、cDNA、PNA、CNA、RNA、一本鎖および/または二本鎖のいずれか、または当該技術分野で知られているようなポリヌクレオチドの自然または安定化形態であってもよい。
【0164】
前述したように、本開示による核酸分子は、原核生物由来または真核生物由来のいずれかを問わず、核酸分子それ自体;プラスミド、ベクター;ウイルスまたは宿主細胞などの形態で提供されてもよい。ベクターには、本発明の核酸分子を含有する発現ベクターが含まれる。ポリペプチドを発現させることができる発現ベクターを調製することができる。異なる細胞種のための発現ベクターは、当該技術分野において周知であり、過度の実験をすることなく選択することができる。一般に、(例えば、cDNA、またはmRNAを含むRNA)は、発現のために適切な方向および正しいリーディングフレームで、プラスミドなどの発現ベクターに挿入される。必要に応じて、DNA(例えば、cDNA、またはmRNAを含むRNA)は、所望の宿主(例えば、細菌)によって認識される適切な転写および翻訳制御ヌクレオチド配列に連結されてもよいが、このような制御は、一般に発現ベクター中で利用可能である。次いで、このベクターは、標準的な技術を使用してクローニングするために宿主細菌に導入される。本発明のベクターは、例えば、転写プロモーター、および/または転写ターミネーターを含んでいてもよく、ここで、プロモーターは核酸分子と作動可能に連結されており、そして核酸分子は転写ターミネーターと作動可能に連結されている。本開示の1または複数のペプチドまたはポリペプチドは、1つの発現ベクターによってコードされてもよい。そのような核酸分子は、例えば、DNA/RNAワクチンの形態で、ペプチド/ポリペプチドを、それを必要とする対象にin vivoで送達するためのビヒクルとして機能し得る。
【0165】
複数の態様において、ベクターは、上記で定義されたような核酸を含むウイルスベクターであってよい。ウイルスベクターは、異なるタイプのウイルス、例えば、豚痘, 鶏痘,仮性狂犬病, Aujezkyのウイルス、サルモネラ、ワクシニアウイルス、BHV(牛ヘルペスウィルス)、HVT(トルコヘルペスウィルス)、アデノウイルス、TGEV(伝染性胃腸炎コロナウイルス)、エリスロウイルス、およびSIV(サル免疫不全ウイルス)から由来してもよい。また、酵母細胞内で複製および/または堆積するプラスミドなど、他の発現系やベクターも使用することができる。
【0166】
本開示はまた、本開示のペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、及び/又はキメラ若しくは融合ポリペプチドを調製する方法に関し、この方法は、核酸の発現及びポリペプチドの回収に適した条件下で上記に定義したような核酸又はベクターを含む宿主細胞を培養することを含んでいる。上記に示されるように、タンパク質およびペプチドは、当該技術分野においてそれ自体既知の技術に従って精製されてもよい。
【0167】
[医薬組成物及び製剤]
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物(例えば、1または複数の:本明細書に開示されるポリペプチド;本明細書に開示されるコンカテマーペプチド;本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物;そのようなペプチド、ポリペプチド、コンカテマーペプチド、または本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物をコードする核酸を含む、本明細書に開示される核酸;本明細書に開示される発現カセット、プラスミド、発現ベクター、および組換えウイルス、または細胞;以下、「本開示のT細胞エピトープ化合物および組成物」という)は、医薬組成物又は製剤中に含まれてもよい。複数の態様において、本開示の医薬組成物または製剤は、一般に、本開示のTレジトープ化合物または組成物と、薬学的に許容される担体、賦形剤、および/またはアジュバンドとを含む。複数の態様において、本開示の医薬組成物又は製剤は、投与経路に応じて、希釈剤、アジュバント、凍結乾燥安定剤、湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化又は粘性増強添加剤、及び保存剤を更に含んでもよい。複数の態様において、前記医薬組成物は、投与(administration)に適している。薬学的に許容される担体および/または賦形剤は、部分的には、投与される特定の組成物によって、また、組成物を投与するために使用される特定の方法によって、決定される。したがって、本開示のTレジトープ組成物を投与するための医薬組成物の適切な処方は、多種多様である(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, (18TH Ed, 1990), Mack Publishing Co., Easton, PA Publ参照)。複数の態様において、医薬組成物は、一般に、無菌、実質的に等張、および米国食品医薬品局のすべての適正製造基準(GMP)規制を完全に遵守するように製剤化される。
【0168】
組成物、担体、賦形剤、および試薬を指す「薬学的に許容できる」、「生理学的に許容できる」、およびそれらの文法的変形は、互換的に用いられ、材料が、組成物の投与を禁止する程度の望ましくない生理作用の生成なしに、対象へのまたは対象に投与できることを表わす。例えば、「薬学的に許容される賦形剤」とは、例えば、一般に安全で、無毒で、望ましい医薬組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、ヒトの医薬用途と同様に獣医用途にも許容される賦形剤が含まれる。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、またはエアゾール組成物の場合には気体であり得る。当業者であれば、本開示の特定のTレジトープ化合物および組成物について、適切な投与のタイミング、順序、及び投与量を決定することが可能であろう。本開示の化合物及び組成物の投与量は、治療される動物(例えば、ヒト)の種、品種、年齢、サイズ、治療歴、及び健康状態、並びに投与経路、例えば、皮下、皮内、経口、筋肉内、又は静脈内投与に依存することになるであろう。本開示のTレジトープ化合物および組成物は、単回投与または反復投与で投与され得る。本開示のTレジトープ化合物および組成物は、単独で投与することができ、または他のブタ免疫原性またはワクチン組成物などの1または複数のさらなる組成物と共に同時または順次に投与することができる。組成物が異なる時間に投与される場合、投与は互いに別々であっても、時間的に重なっていてもよい。
【0169】
薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤の例としては、脱塩水または蒸留水;生理食塩水;ピーナッツ油、アラキス油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油またはココナッツ油などの植物ベースの油;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリソルポキサンなどのポリシロキサンを含むシリコーン油;揮発性シリコーン;軽質流動パラフィン油、重質流動パラフィン油などの鉱油;スクワレン;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;エタノールまたはイソプロパノールなどの低級アルカノール類;低級アラルカノール類、低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールまたはグリセリン;脂肪酸エステル、例えばパルミチン酸イソプロピル、ミリステートイソプロピルまたはオレイン酸エチル;ポリビニルピロリドン;寒天;カラギーナン;トラガカントゴムまたはアカシアゴム;およびワセリンなどが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。典型的には、担体(単数または複数)は、ワクチン組成物の10重量%~99.9重量%を形成し、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、それらの混合物などの当技術分野で公知の試薬を用いた従来の方法によって緩衝化されてもよい。
【0170】
複数の態様において、このような担体または希釈剤の好ましい例には、水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、および5%ヒト血清アルブミンが含まれるが、これらに限定されるものではない。リポソームおよび固定油などの非水性ビヒクルもまた使用することができる。薬学的活性物質に対するこのような媒体および化合物の使用は、当技術分野でよく知られている。任意の従来の媒体又は化合物が、本開示のTレジトープ化合物及び組成物を形成するために用いられる改変ポリペプチドと不適合である限り、及び先に述べたように、組成物におけるそれらの使用が企図される。補足的な活性化合物もまた、組成物に組み込むことができる。
【0171】
アジュバントの例としては、水中油型エマルジョン、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、免疫刺激複合体、非イオン性ブロックポリマーまたはコポリマー、サイトカイン(IL-1、IL-2、IL-7、IFN-α、IFN-β、IFN-γなど)、サポニン、モノリン酸脂質A(MLA)、ムラミルジペプチド(MDP)など(ただしこれだけに限られない)がある。他の適切なアジュバントとしては、例えば、硫酸アルミニウムカリウム、大腸菌から分離された熱安定性又は熱安定性エンテロトキシン(複数可)、コレラ毒素又はそのBサブユニット、ジフテリア毒素、破傷風毒素、百日咳毒素、フロイントの不完全又は完全アジュバント等が挙げられる。ジフテリア毒素、破傷風毒素、百日咳毒素などの毒素系アジュバントは、使用前に、例えばホルムアルデヒドで処理することにより不活化することができる。さらなるアジュバントとしては、ポリICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS 15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、イミュファクトIMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRTX、Juvlmmune、リポバック、MF59、モノフォスフォリルリピドA、モンタナイドIMS 1312、モンタナイドISA 206、モンタナイドISA 50V、モンタナイドISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PEPTEL、ベクターシステム、PLGA微粒子、レジキモド、SRL172、バイロゾームおよび他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、ベータグルカン、Pam3Cysおよびアクイラ社QS21 stimulonなどがあるが、これらだけに限られる訳ではない。本明細書に開示される医薬組成物またはワクチンの態様において、アジュバントはポリICLCを含む。TLR9アゴニストCpGおよび合成二本鎖RNA(dsRNA)TLR3リガンドのポリICLCは、現在臨床開発中の最も有望なワクチンアジュバントのうちの2つである。前臨床試験では、LPSやCpGと比較して、ポリICLCが最も強力なTLRアジュバントであるように思われる。これは、炎症性サイトカインを誘導し、IL-10を刺激しないことと、DCの共刺激分子を高レベルで維持することに起因するようである。ポリICLCは、平均約5000ヌクレオチドの長さのポリI鎖とポリC鎖からなる、合成された二本鎖RNAであり、ポリリジンとカルボキシメチルセルロースの添加により、熱変性や血清ヌクレアーゼによる加水分解に対して安定化させたものである。この化合物は、PAMPファミリーのメンバーであるTLR3およびMDA5のRNAヘリカーゼドメインを活性化し、DCおよびナチュラルキラー(NK)細胞の活性化、タイプIインターフェロン、サイトカイン、ケモカインの混合産生をもたらす。
【0172】
凍結乾燥安定剤の例は、例えばソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、デキストラン又はグルコースのような炭水化物、アルブミン又はカゼインのようなタンパク質、及びそれらの誘導体であってよい。
【0173】
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、その意図する投与経路に適合するように製剤化される。本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸、頭蓋内、髄腔内、腹膜内、鼻内;経膣;筋内経路、又は吸入剤として投与することが可能である。複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、堆積物が蓄積した特定の組織に直接注入することができ、例えば、頭蓋内注入が可能である。他の態様では、筋肉内注射又は静脈内注入を、Tレジトープ化合物及び組成物の投与に使用することができる。いくつかの方法では、T細胞エピトープ化合物および組成物は、Medipad(登録商標)デバイスなど(これらに限らない)の徐放性組成物又はデバイスとして投与される。複数の態様において、T細胞エピトープ化合物および組成物は、例えば、本開示のワクチンは、皮内投与され、例えば、当技術分野で知られているようにマイクロ針パッチを使用することによって、またはパルスニードルフリー技術(Pulse 50(商標)Micro Dose Injection System, パルスニードルフリー Systems; Lenexa, KS, USA)などの市販のニードルフリー高圧デバイスを使用することによって、投与される。複数の態様において、前記市販のニードルフリー高圧デバイス(例えば、パルスニードルフリー技術)は、以下の1または複数の利点を与える:非侵襲性、組織外傷の低減、痛みの低減、対象に組成物を蓄積するために真皮層に小さな開口を必要とする(例えば、マイクロ皮膚開口を必要とするだけ)、組成物の即時分散、組成物のより良い吸収、組成物の真皮曝露量の増加、及び/又は鋭利物による損傷の危険の減少。
【0174】
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、任意選択で、本明細書に記載されるような様々な医学的状態の治療に少なくとも部分的に有効である他の薬剤と組み合わせて投与することができる。例えば、対象の中枢神経系への投与の場合、本開示のTレジトープ組成物は、血液脳関門を横切る本発明の薬剤の通過を増加させる他の薬剤と組み合わせて投与することも可能である。
【0175】
複数の態様において、非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができるが、これらに限定されるものではない。注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌化合物;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化合物;アセテート、クエン酸またはリン酸などの緩衝剤および塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの緊張度調節用化合物。pHは、塩酸や水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。賦形剤の例としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、水、エタノール、DMSO、グリコール、プロピレン、乾燥スキムミルクなどを挙げることができる。また、本組成物は、pH緩衝試薬、及び湿潤剤又は乳化剤を含有することができる。
【0176】
複数の態様において、非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与バイアルに封入することができる。
【0177】
複数の態様において、注射可能な使用に適した医薬組成物または製剤は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌注射可能溶液または分散液の即席の調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与のために、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。いずれの場合も、組成物は無菌であり、容易なシリンジ性が存在する程度に流動的であるべきである。それは、製造および貯蔵の条件下で安定であり、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保存される。複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物を含む製剤は、凝集体、断片、分解物および翻訳後改変を含んでもよく、これらの不純物がHLAと結合し、同族T細胞に同じTCR面を提示する程度に、それらは純粋なTレジトープと同様の方法で機能すると期待される。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒体とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合には必要な粒子径の維持、界面活性剤の使用などによって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌・抗カビ化合物、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張化合物、例えば、糖類、マニトールのような多価アルコール、ソルビトール、および塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の長時間の吸収は、吸収を遅延させる化合物、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされてもよい。
【0178】
複数の態様において、無菌注射液は、本開示のTレジトープ化合物及び組成物を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせで適切な溶媒中に必要量取り込み、次いで濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、結合剤を、塩基性分散媒体および上記に列挙したものから必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法は、活性成分に加えて、そのあらかじめ無菌濾過した溶液から任意の追加の所望の成分の粉末をもたらす真空乾燥および凍結乾燥である。さらに、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、活性成分の持続的または脈動的な放出を可能にするような方法で調合することができるデポ注射剤またはインプラント製剤の形態で投与することが可能である。
【0179】
複数の態様において、経口組成物は一般に不活性希釈剤または食用担体を含み、ゼラチンカプセルに封入されるか、または錠剤に圧縮されることができる。複数の態様において、経口治療投与の目的のために、結合剤は賦形剤と共に組み込まれ、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物はまた、洗口剤として使用するための液体担体を用いて調製することができ、液体担体中の化合物は、経口的に適用され、スワッシュして去痰するかまたは飲み込まれる。薬学的に適合する結合化合物、および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。複数の態様において、錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分のいずれか、または類似の性質の化合物を含むことができる。微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたは乳糖などの賦形剤、アルギン酸、Primogelまたはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesなどの潤滑剤;コロイド性二酸化ケイ素などの滑剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味化合物;またはペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料などの香味剤化合物など。
【0180】
吸入による投与のために、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、適切な推進剤、例えば二酸化炭素のようなガス、又はネブライザーを含む加圧容器又はディスペンサーからエアゾールスプレーの形態で送達することができる。
【0181】
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物の全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によることができる。経粘膜または経皮投与のために、浸透させるべき障壁に適切な浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は、一般に当該技術分野において知られており、例えば、経粘膜投与の場合、洗浄剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔用スプレーまたは坐薬の使用により達成することができる。経皮投与の場合、Tレジトープ化合物及び組成物は軟膏、軟膏、ゲル、またはクリームに配合され、当該技術分野で一般に知られているように、局所的にまたは経皮パッチ技術を通じて適用されてもよい。
【0182】
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物はまた、直腸送達のための坐剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いて)または保持浣腸の形態で調製することができる。
【0183】
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出型製剤など、体内からの急速な排除に対してTレジトープ化合物及び組成物を保護する担体とともに調製される。生分解性、生体適合性ポリマーは、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸のようなものを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。材料はまた、商業的に、例えば、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals、Inc.から入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞に標的化されたリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法に従って調製することができる(米国特許第4,522,811号、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、所望の部位へのTレジトープ化合物及び組成物の徐放を可能にするバイオポリマー固体支持体内へ移植されてもよいか、またはそれに連結されてもよい。
【0184】
複数の態様において、投与の容易さおよび投与量の均一性のために、経口または非経口組成物を投与単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される用量単位形態は、治療される対象に対する単位用量として適した物理的に離散した単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の結合剤を含有する。本発明で開示の投薬単位形態の仕様は、結合剤および達成されるべき特定の治療効果の固有の特性、ならびに対象の治療のためにそのようなTレジトープ組成物を配合する技術に固有の制限によって規定され、かつそれに直接依存するものである。
【0185】
複数の態様において、本明細書に開示される1または複数のTレジトープ化合物および組成物は、分離樹状細胞(DC)をTレジトープでex vivoパルスし、続いてパルスした細胞を対象に再注入することによっても対象に投与することが可能である。これらは、当業者に公知の方法(Butterfield, (2013), Front Immunol, 4:454 and Dissanayake et al., (2014), PLoS One, 9(3)1-10)に従って調製することができる。これらの再注入は、上記の方法及び組成物によって投与することができる。
【0186】
本明細書に記載の医薬組成物の複数の態様において、組成物は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20の本開示のペプチドもしくはポリペプチド(コンカテマーポリペプチドを含む)、またはかかるペプチドもしくはポリペプチド(コンカテマーポリペプチドを含む)をコードする核酸を含んでいてもよい。例えば、複数の態様において、医薬組成物は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19.を構成することができる。または少なくとも20の(40までのペプチドまたはポリペプチドを含み、その間の任意の値または範囲を含む)、1または複数の配列番号1~124、および/またはその断片もしくは変異体、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるアミノ酸配列を有している1または複数のペプチドまたはポリペプチド;本明細書に開示するコンカテマーペプチド;ならびに本明細書に記載されるようなペプチド、ポリペプチド、またはコンカテマーペプチド、および/またはその断片および変異体をコードする核酸(例えば、RNA mRNA、DNA、cDNA)などを含んでいてもよい。
【0187】
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物および組成物(例えば、1または複数の:配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有しているポリペプチド(これは、本明細書において「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレジトープ」または「T細胞エピトープポリペプチド」として称呼されてもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、または細胞(これらの全ては複数の態様において分離、合成、または組換えであり得る);本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物(これらは複数の態様において分離、合成、または組換えであり得る);および/または本明細書に開示される医薬組成物または製剤)は、抗原、アレルゲンまたは治療用タンパク質と混和して組み合わされる。このような組成物は、それを必要とする対象において抗原、アレルゲンまたは治療用タンパク質に対する寛容性を誘導する方法に有用であり、抗原、アレルゲンまたは治療用タンパク質との混和物の局所送達は、対象における抗原に対する寛容性の増加をもたらし、適切な賦形剤とともに送達されることにより、抗原、アレルゲンまたは治療用タンパク質に対する寛容性が誘導される。この組み合わせは、共有結合又は非共有結合のいずれかで結合された本開示のTレジトープ化合物及び組成物とともに、投与されてもよいし、それらが混和物として、又は分岐又は化学結合した調剤として投与されてもよい。このような組成物は、抗原、アレルゲン、または治療用タンパク質に対する寛容性を誘導する方法において有用である。例えば、そのような組成物は、それを必要とする対象において有用な組成物であり、抗原もしくはアレルゲンまたは治療用タンパク質との混和物の局所送達により、対象における抗原もしくはアレルゲンまたは治療用タンパク質に対する寛容性の増加をもたらし、適切な賦形剤とともに送達されることにより、抗原もしくはアレルゲンまたは治療用タンパク質に対する寛容性の誘導をもたらす。
【0188】
[使用方法]
本開示のTレジトープ化合物及び組成物(1または複数の:配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有しているポリペプチド(本明細書において「Treg活性化制御性T細胞エピトープ」、「Tレジトープ」または「T細胞エピトープポリペプチド」として称されてもよい);本明細書に開示される核酸、発現カセット、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、または細胞(これらの全ては複数の態様において分離、合成、または組換えであり得る);本明細書に開示されるキメラまたは融合ポリペプチド組成物(これらは複数の態様において、分離、合成、または組換えのいずれでもあり得る);および/または本明細書に開示されるような医薬組成物または製剤;を含む)で制御性T細胞を刺激すると、対応する内在性TReg集団(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)を刺激、誘導、および/または拡大し、複数の態様において、結果的に、1または複数の以下のサイトカインおよびケモカイン(IL-10、IL-35、TGF-β、TNF αおよびMCP1)の分泌を増大してもよい。この制御性サイトカインおよびケモカインの分泌の増加が、制御性T細胞の特徴である。複数の態様において、刺激は、対応する内在性TReg集団(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)によるIL-2Rαの発現の増加、およびエフェクターT細胞へのIL-2の奪取をもたらすことが可能である。さらなる複数の態様において、刺激は、対応する内在性TReg集団(複数の態様においてナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)によるパーフォリン・グランザイムの増加をもたらし得、このようなTReg集団がTエフェクター細胞および他の免疫刺激細胞を殺すことが可能となる。さらなる複数の態様において、かかる刺激は、対応する内在性TReg集団(複数の態様においてナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)による免疫抑制性アデノシンの生成をもたらすことができる。他の態様では、そのような刺激は、対応する内在性TReg集団(ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む複数の態様において)が樹状細胞上のコスティミュレーション分子に結合して除去し、結果として樹状細胞機能の抑制をもたらすことができる。さらに、複数の態様において、そのような刺激は、対応する内在性TReg集団(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む)によって、樹状細胞および他の細胞集団(例えば、内皮細胞に限定されない)上のチェックポイント分子のTReg誘導アップレギュレーションをもたらすことができる。追加の態様では、そのような刺激は、制御性B細胞のTReg刺激をもたらすことができる。制御性B細胞(「B-Reg」)は、CD1d、CD5、およびIL-10の分泌の発現によって特徴付けられる抗炎症作用に関与する細胞である。また、B-RegはTim-1の発現によって識別され、Tim-1のライゲーションによって寛容性を促進することができる。B-Regの能力は、toll様受容体やCD40-リガンドなど、多くの刺激因子によって駆動されることが示されたが、B-Regの完全な特性解明は現在進行中である。B-Regはまた、CD25、CD86、TGF-βを高濃度に発現している。制御性T細胞によるこのような制御性サイトカインおよびケモカインの分泌の増加、ならびに上述の他の活性は、制御性T細胞の特徴である。複数の態様において、本開示のTレジトープ組成物によって活性化された制御性T細胞は、CD4+CD25+FOXP3表現型を発現していてもよい。複数の態様において、本開示のTレジトープ組成物によって活性化された制御性T細胞は、CD4+CD25+FOXp3+表現型を発現していてもよい。本開示のTレジトープ化合物及び組成物によって活性化された制御性T細胞は、抗原特異的Th1-又はTh2-関連サイトカインレベル、主にINFγ、IL-4、及びIL-5の減少によって、並びにCFSE希釈及び/又は細胞溶解活性によって測定される抗原特異的Tエフェクター細胞の増殖及び/又はエフェクター機能の減少によって測定されるように、ex vivoのTエフェクター免疫反応を直接抑制する。複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドによって活性化された制御性T細胞は、抗原特異的Th1-又はTh2-関連サイトカインレベル(Elisaアッセイによって測定)の低下、抗原特異的Tエフェクター細胞レベル(Eliaspotアッセイによって測定)、細胞溶解活性の低下、及び/又はタンパク質抗原の抗体力価の減少によって測定されるようにin vivoのTエフェクターの免疫反応を直接的に抑制する。
【0189】
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物によって活性化された天然制御性T細胞は、アダプティブTReg細胞の発達を刺激する。複数の態様において、抗原の存在下で、末梢T細胞を、本開示のTレジトープ化合物及び組成物と共インキュベートすると、抗原特異的CD4+/CD25+T細胞の拡大が生じ、それらの細胞におけるFoxp3遺伝子又はFoxp3タンパク質の発現をアップレギュレートし、in vitroで抗原特異的Tエフェクター細胞の活性化を抑制する。複数の態様において、本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲート及び/又はTレジトープ-血液成分コンジュゲートを形成するために用いられる改変ポリペプチドは、制御性のT1型(Tr1)細胞の活性化及び/又は拡張をもたらす可能性がある。Tr1細胞は、いくつかの免疫介在性疾患において強い免疫抑制能を有する(Roncarolo and Battaglia, 2007, Nat Rev Immunol 7, 585-598; Roncarolo et al., 2011, Immunol Rev 241, 145-163; Pot et al., 2011, Semin Immunol 23, 202-208 )。高レベルのIL-10の分泌、およびグランザイムBを介した骨髄性抗原提示細胞(APC)の殺傷が、Tr1を介した抑制の主なメカニズムである(Grouxら、1997、Nature 389、737-742;Magnaniら、2011 Eur J Immunol 41、1652-1662)。Tr1細胞は、そのユニークなサイトカインプロフィールと制御機能によって、Tヘルパー(TH)1、TH2、TH17細胞と区別される。Tr1細胞は、TH2細胞やTH17細胞の特徴的なサイトカインである、IL-4やIL-17よりも高いレベルのIL-10を分泌することが示されている。Tr1細胞はまた、低レベルのIL-2を分泌し、局所的なサイトカイン環境に応じて、可変レベルのIFN-γを産生することができ、合わせてTH1主要サイトカインとなる(Roncaroloら、2011、Immunol Rev 241, 145-163)。FOXP3は、その発現が低く、活性化時に一過性であるため、Tr1細胞のバイオマーカーにはならない。IL-10産生Tr1細胞は、ICOS(Haringer et al., 2009, J Exp Med 206, 1009-1017) およびPD-1(Akdis et al., 2004, J Exp Med 199, 1567-1575)を発現するが、これらのマーカーは特異的ではない(Maynard et al., 2007, Nat Immunol 8, 931-941)。超低活性化抗原(VLA)-2のα2インテグリンサブユニットであるCD49bは、IL-10産生T細胞のマーカーとして提案されている(Charbonnierら、2006、J Immunol 177、3806-3813);しかしそれはヒトTH17細胞によっても発現されている(Boisvertら、2010、Eur J Immunol 40、2710-2719)。さらに、マウスCD49b+T細胞は、IL-10(Charbonnierら、2006、J Immunol 177、3806-3813)を分泌するが、炎症性サイトカインも分泌する(Kassiotisら、2006、J Immunol 177、968-975)。MHCクラスII分子に高親和性で結合するCD4ホモログであるリンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)は、マウスIL-10産生CD4+T細胞(Okamuraら、2009、Proc Natl Acad Sci USA 106、13974~13979)により発現するが、活性化エフェクターT細胞(WorkmanおよびVignali、2005、J Immunol 174、688~695;Bettiniら、2011、J Immunol 187, 3493-3498; Bruniquelら, 1998, Immunogenetics 48, 116-124; Leeら, 2012, Nat Immunol 13, 991-999)によっても発現し、FOXP3+制御性T細胞(Treg)(Camisaschiら, 2010, J Immunol 184, 6545-6551)によっても発現する。最近、ヒトTr1細胞がCD226(DNAM-1)を発現し、骨髄系APCの特異的殺傷に関与していることが示された(Magnaniら、2011 Eur J Immunol 41、1652-1662)。さらなる複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、TGF-β分泌Th3細胞、制御性NKT細胞、制御性CD8+T細胞、ダブルネガティブ制御性T細胞の活性化及び/又は拡大をもたらす可能性がある。「Th3細胞」とは、以下の表現型CD4+FoxP3+を有し、活性化時に高レベルのTGF-β、所定量のIL-4及びIL-10を分泌し、IFN-γ又はIL-2を分泌しないことができる細胞をいう。これらの細胞は、TGF-β由来である。「制御性NKT細胞」とは、休止状態で以下の表現型CD161+CD56+CD16+及びVα24/Vβ11 TCRを有する細胞をいう。「制御性CD8+T細胞」とは、休止状態で以下の表現型CD8+CD122+を有し、活性化により高レベルのIL-10を分泌することが可能な細胞をいう。「二重陰性制御性T細胞」とは、休止状態で以下の表現型TCRαβ+CD4-CD8-を有する細胞を指す。
【0190】
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、モノクローナル抗体、タンパク質治療薬、自己免疫反応を促進する自己抗原、アレルゲン、移植組織に対する免疫反応を調節するのに有用であり、寛容性が望ましい他の適用において有用である。
【0191】
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、MHCクラスII分子に結合し、MHCクラスII分子の状況でTCRと関わり、内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTReg及び/又はアダプティブTRegを含む)を活性化しうる。
【0192】
[それを必要とする対象における免疫応答の抑制]
複数の態様において、本開示は、治療有効量の配列番号1~124のアミノ酸配列またはその断片もしくは変異体を、直接またはそれをコードする核酸の導入およびその転写および翻訳の提供または許容を通じて投与または導入もしくは接触させることにより、対象において制御性T細胞(複数の態様において、ナチュラルTReg、および/またはアダプティブTRegを含む内在性TReg)を刺激、誘導、および/または拡大する方法に関する。
【0193】
複数の態様において、本開示は、治療有効量の本開示のTレジトープ化合物または組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象における免疫反応を抑制するために、制御性T細胞(例えば、内在性TReg(複数の態様において、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含む))を刺激、誘導、および/または拡大する方法に関する。複数の態様において、免疫応答は、少なくとも1つの治療用タンパク質による1または複数の治療処置、ワクチンによる処置(特に、ワクチン接種から有害事象が生じる状況において)、または少なくとも1つの抗原による処置の結果である。別の態様では、本開示のTレジトープ化合物または組成物の投与は、1または複数の抗原提示細胞を制御性表現型にシフトさせ、1または複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトさせ、樹状細胞及び/又は他の抗原提示細胞におけるCD11c及びHLA-DRの発現を低下させる。
【0194】
複数の態様において、本開示は、対象における免疫応答を抑制/抑止するための方法であって、治療有効量の本開示のTレジトープ化合物または組成物を投与する工程を含み、ここで本開示のTレジトープ化合物または組成物が免疫応答を抑制/抑止する、方法に関する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、自然免疫応答を抑止/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、適応免疫応答を抑止/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、エフェクターT細胞応答を抑止/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、メモリーT細胞応答を抑止/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、ヘルパーT細胞応答を抑止および/または抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、B細胞応答を抑止/抑制する。複数の態様において、Tレジトープ化合物または組成物は、nkT細胞応答を抑止/抑制する。
【0195】
複数の態様において、本開示は、治療有効量の本開示のTレジトープ化合物又は組成物の投与を通じて、対象における免疫応答、具体的には抗原特異的免疫応答を抑制する方法に関する。ここで、前記Tレジトープ化合物または組成物は、内在性Treg(複数の態様では、ナチュラルTregおよび/またはアダプティブTreg、ならびに複数の態様ではCD4+/CD25+/FoxP3+制御性T細胞を含む)を活性化するか、CD4+ T細胞の活性化、CD4+/CD8+T細胞の増殖を抑制し、および/またはβ細胞もしくはNKT細胞の活性化もしくは増殖を抑制する。複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物または組成物は、特定の標的抗原との共有結合、非共有結合、または混和のいずれであってもよい。特定の複数の態様において、1または複数の:例えば、本開示のTレジトープ化合物または組成物のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、Tレジトープペプチド、またはT細胞エピトープポリペプチド、複数の態様において分離、合成、または組み換えであってもよい)、ならびにキメラまたは融合ポリペプチド組成物は、特定の標的抗原と共有結合、非共有結合、または混和のいずれかであってもよい。複数の態様において、特定の標的抗原と共有結合、非共有結合、または特混和している本開示のTレジトープ化合物または組成物の投与により、標的抗原に対する免疫応答が減弱する。
【0196】
複数の態様において、標的抗原は、自己のタンパク質またはタンパク質断片であってよい。複数の態様において、標的抗原は、アレルゲンであってもよい。複数の態様において、標的抗原は、同系統タンパク質またはタンパク質断片であってもよい。複数の態様において、標的抗原は、生物学的医薬品またはその断片であってもよい。複数の態様において、抑制効果は、ナチュラルTregによって媒介される。複数の態様において、抑制効果は、アダプティブTregによって媒介される。複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物または組成物に含まれる1または複数のTレジトープは、エフェクターT細胞応答を抑制する。複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物または組成物に含まれる1または複数のTレジトープは、自然免疫応答を抑制する。複数の態様において、本開示されているTレジトープ化合物または組成物の1または複数のTレジトープは、適応免疫応答を抑制する。複数の態様において、本開示されているTレジトープ化合物または組成物の1または複数のTレジトープは、ヘルパーT細胞応答を抑制する。複数の態様において、本開示されているTレジトープ化合物または組成物の1または複数のTレジトープは、メモリーT細胞応答を抑制する。複数の態様において、本開示されているTレジトープ化合物または組成物の1または複数のTレジトープは、β細胞応答を抑制する。複数の態様において、本開示されているTレジトープ化合物または組成物の1または複数のTレジトープは、NKT細胞応答を抑制する。
【0197】
[低分子治療薬の設計]
一態様において、本開示は、低分子治療薬を設計する目的で本開示のTレジトープ化合物又は組成物を使用する方法を提供する。一態様において、Tレジトープ特異的T細胞は、濃度1μg/mLの小分子混合物のプール及び自己樹状細胞(DC)で、2週間間隔で3回刺激し、その後、異種DC及び抗原で刺激する。丸底96ウェルプレートに、T細胞(1.25×105)とDC(0.25×105)を1ウェルあたり添加する。T細胞培地は、500mlのRPMI培地1640に50mlのFCS(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、UT)、ペニシリン、ストレプトマイシン(GIBCO Laboratories、Gaithersburg、MD)、20mM Hepes(GIBCO)および4mLの1N NaOH溶液を添加して作った。IL-2濃度は、最初は0.1nMであり、その後の刺激のラウンドの間に徐々に1nMに増加させる。T細胞クローンは、0.6×105Epstein-Barrウイルス形質転換B細胞(100Gray)および1.3×105異種末梢血単核細胞(33Gray)をフィーダー細胞として、2nMIL2を含む培地で1μg/mL Difco(商標)ファイトヘマグルチニン(BacteriusLtd、Houston、TX)を用いて限界希釈することで誘導する。その後、Tレジトープ特異的T細胞を刺激する小分子プールを、個々の分子として試験する。
【0198】
[T細胞レセプターのクローニング]
複数の態様において、本開示は、T細胞受容体のクローニングを目的として本開示のTレジトープ組成物を使用する方法を提供する。Tレジトープ特異的T細胞のクローニングは、当業者に公知の技術によって実施することができる。例えば、分離PBMCは、20%HSAを含む10μg/mLのRPMI培地で、Tレジトープで刺激される。IL-2は、5日目から1日おきに添加される(10U/mL最終濃度)。T細胞は、11日目または12日目にテトラマープールで染色される。各プールについて、2-3×105の細胞を、50mlの培養液中0.5mgのPE標識テトラマー(10mg/mL)とともに37℃で1-2時間インキュベートし、抗CD4-FITC(BD PharMingen(商標)、サンディエゴ、CA)で、室温で15分間染色した。細胞を洗浄し、Becton Dickinson FACSCalibur(商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson、San Jose、CA)で解析する。陽性染色を示したプールに対して、対応する単一ペプチドを搭載した4量体を生成し、14日目または15日目に分析を行う。特定のテトラマーに陽性であった細胞は、同日または翌日にBecton Dickinson FACSVantage(商標)(San Jose、CA)を用いて96ウェルUボトムプレートにシングルセルソーティングされる。ソートされた細胞は、1.53×105マッチされていない照射済み(5000rad)PBMCをフィーダーとして、24時間後に2.5mg/mLPHAと10U/mLIL-2を加えて増殖させる。クローン化したT細胞の特異性は、テトラマー(同族ペプチドまたはコントロールペプチド、HA307-319を負荷したもの)による染色と10mg/mLの特異ペプチドによるT細胞増殖アッセイで確認する(Novak EJら 、J Immunol、166(11):6665-70)複数の態様では、上記のように生成したTレジトープ特異的T細胞株からRNeasyミニキット(Qiagene、Hilden、DE)を用いて全RNAを抽出する。1マイクログラムの全RNAを用い、aGeneRacer(R)キット(Invitrogen、カールズバッド、CA)を用いたRACE(rapid amplification of cDNA end)法によりTCR cDNAのクローニングを行う。一本鎖cDNAを合成する前に、5’RACE GeneRacer(登録商標)キットの取扱説明書に従って、RNAを脱リン酸化、脱キャップし、RNAオリゴヌクレオチドとライゲーションさせる。SuperScript II RT(登録商標)(Life Technologies Corp、カールズバッド、CA)とGeneRacer(登録商標)OligodTを使用して、RNAオリゴライゲーションしたmRNAを一本鎖のcDNAに逆転写する。5’RACEは、5’プライマーとしてGeneRacer(登録商標)5’(GeneRacer(登録商標)キット)、遺伝子特異的プライマーTCRCAR(配列番号130:5’-GTT AAC TAG TTC AGC TGG ACC ACA GCC GCA GC-3’)またはTCRCB1R(配列番号131:5’- CGG GTT AAC TAG TTC AGA AAT CCT TTC TCT TGA CCA TGG C -3’)、またはTCRCBR2(配列番号132:5’-CTA GCC TCT GGA ATC CTT TCT CTT G-3’)を、それぞれTCRα、β1、またはβ2鎖の3’プライマーとして使用することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物をpCR2.1 TOPOベクター(Invitrogen、カールズバッド、CA)にクローニングし、One Shot TOP10 コンピテント大腸菌(Invitrogen、カールズバッド、CA)にトランスフォームさせる。プラスミドDNAは、TCRα,β1、およびβ2鎖の各構築物から96の個別クローンを調製したものである。全てのプラスミドの全長インサートは、vα/vβ使用法を決定するために配列決定される(ZhaoYら , (2006), J Immunother, 29(4):398-406、ここにその全体が参照により組み込まれる)。
【0199】
[医学的状態を予防又は治療する方法]
本開示は、例えば、本開示のTレジトープ化合物または組成物を投与することを含む、対象における1つ以上の医学的状態を予防または治療する方法、および投与する前記工程によって対象における医学的状態を予防または治療する方法に関する。病状は、例えば、原発性免疫不全症、免疫介在性血小板減少症、川崎病、20歳以上の対象における造血幹細胞移植、慢性B細胞リンパ球性白血病、及び小児HIV1型感染症であり得る。具体的な例としては、以下:(血液学)再生不良性貧血、純赤血球無形成症、ダイヤモンド・ブラックファン貧血、自己免疫性溶血性貧血、新生児溶血性疾患、後天性第VIII因子インヒビター、後天性フォンウィルブランド病免疫介在性好中球減少症、血小板輸血不応症、新生児自己免疫性血小板減少症、輸血後紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病/溶血性尿毒症症候群。感染症、固形臓器移植、外科、外傷、熱傷、HIV感染症。(神経)てんかん・小児難治性ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、重症筋無力症、ランバート・イートン筋無力症候群、多巣性運動神経障害、多発性硬化症、(産科)再発性妊娠性潰瘍。(呼吸器)喘息、慢性胸部症状、リウマチ、関節リウマチ(成人および若年性)、全身性エリテマトーデス、全身性血管炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、ウェゲナー肉芽腫症;(その他)アドレノリューコジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、ベーチェット症候群、急性心筋症、慢性疲労症候群、コンジェンシャル心ブロック、嚢胞性線維症、自己免疫性水泡性皮膚炎、糖尿病、急性特発性自律神経失調症急性散在性脳脊髄炎、エンドトキシン血症、溶血性輸血反応、血球貪食症候群、急性リンパ性白血病、下部運動ニューロン症候群、多発性骨髄腫、ヒト T細胞リンパ性ウイルス-1-関連脊髄症、ネフリック症候群、膜性腎症、ネフローゼ症候群、甲状腺眼症、オプソクローヌス-ミオクローヌス、中耳炎再発、腫瘍随伴性小脳変性症、パラプロテイン血症、パルボウイルス感染症(一般)、ポリニュー ロパシー、内臓肥大、内分泌異常、Mタンパク質。および皮膚変化(POEMS)症候群、進行性腰仙神経叢炎、ライム神経根症、ラスムッセン(Rasmussen)症候群、ロイター(Reiter)症候群、急性腎不全、血小板減少(非免疫)、連鎖球菌毒性ショック症候群、ぶどう膜炎およびVogt-小柳・原田症候群などが挙げられる。
【0200】
特定の態様において、本発明は、例えば、アレルギー、自己免疫疾患、移植片対宿主病などの移植関連障害、酵素又はタンパク質欠損障害、止血障害(例えば、血友病A、B又はC)癌(特に腫瘍関連自己免疫)、不妊、又は感染(ウイルス、細菌又は寄生虫)の治療方法に関する。本開示のTレジトープ化合物または組成物は、有害事象を低減するため、または共投与化合物の有効性を高めるために、病状を有する対象を治療するために用いられる他のタンパク質または化合物と併用することができる。
【0201】
[アレルギーへの応用]
アレルゲン特異的制御性T細胞は、アレルギーや喘息の発症を制御する上で重要な役割を担っている。内在性TReg(態様では、ナチュラルTRegおよび/またはアダプティブTRegを含み、態様ではCD4+/CD25+/FoxP3+制御性T細胞)は、アレルギー疾患に関与する不適切な免疫応答を抑制することが示されている。最近の多くの研究から、制御性T細胞は、動物モデルだけでなく、ヒトにおいても、感受性の高い個体におけるヘルパーT細胞2型偏った免疫応答の過剰な発達を制御する上で重要な役割を担っていることが示されている。最近の研究では、Treg、TGF-β、IL-10の分泌によりT細胞の共刺激も抑制することが示され、アレルギー性疾患の制御におけるTregの重要な役割が示唆されている。ナチュラルあるいはアダプティブ制御性T細胞の増殖障害はアレルギーの発症につながり、アレルゲン特異的Tregを誘導する治療は、アレルギーや喘息の根治療法になると思われる。喘息の予防と治療の両方のための1つの戦略は、Tregの誘導である。動物は、Th1またはTreg応答につながる免疫刺激によって、喘息の発症から保護されることができる。したがって、本開示のTレジトープ化合物又は組成物は、アレルギー及び/又は喘息の予防又は治療のための方法において有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象におけるアレルギー及び/又は喘息を予防又は治療する方法であって、本開示のTレジトープ化合物又は組成物の治療有効量を投与し、投与する前記工程によって対象におけるアレルギー及び/又は喘息を予防又は治療することを含む、方法に関する。
【0202】
[移植への応用]
本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、ドナー細胞に対する免疫応答を特異的にダウン制御する細胞の発生を促進することにより、移植プロセス中に寛容を誘導するのに有用である。臓器特異的自己免疫を治療するためのAg特異的TReg細胞の誘導は、全般的な免疫抑制を回避する、重要な治療開発である。骨髄移植のマウスモデルにおいて、TReg、ドナー骨髄の生着を促進し、移植片対腫瘍の免疫学的効果を損なうことなく、移植片対宿主病の発生率と重症度を減少させる。これらの発見は、マウスとヒトのTRegが表現型および機能的特徴を共有しているという観察結果と相まって、ヒト造血細胞移植に伴う合併症を減少させるためにこれらの細胞を使用することを積極的に検討することにつながった。TRegとエフェクターT細胞のアンバランスは移植片対宿主病の発症に寄与するが、免疫調節のメカニズム、特にTRegのアロレコグニション特性、他の免疫細胞への影響と相互作用、抑制活性の部位はよく理解されていない。
【0203】
ヒトと実験動物モデルの両方から蓄積された証拠により、移植片対宿主病(GVHD)の発症にTRegが関与していることが示唆されている。TRegがGVHDと移植片対腫瘍(GVT)活性を分けることができるという実証は、GVT効果に有害な影響を与えることなく GVHDを減らすために、その免疫抑制能を操作できる可能性を示唆している。抑制能を持つ様々なTリンパ球が報告されているが、最も特徴的な2つのサブセットは、天然に発生する副腎皮質内生成TReg(ナチュラルTReg)と末梢で発生する誘導性(inducible)TRegである。したがって、本開示のTレジトープ組成物は、移植プロセス中に寛容を誘導するための方法において有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象における移植プロセス中の寛容を誘導する方法であって、Tレジトープ化合物または組成物の治療上有効な量を投与し、投与する前記工程によって対象における移植プロセス中の寛容を誘導することを含む、方法に関する。
【0204】
[寛容化剤としての応用、および自己免疫への応用]
複数の態様において、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、免疫原性化合物(タンパク質治療薬)(Weber CAら, (2009), Adv Drug Deliv, 61(11):965-76)に対する寛容化剤として使用することが可能である。この発見は、タンパク質治療薬の設計に示唆を与えるものである。したがって、本明細書に開示される本開示のTレジトープ組成物と組み合わせた免疫原性化合物(例えば、モノクローナル抗体、自己サイトカイン、または外来タンパク質などのタンパク質治療薬)の投与は、有害なTエフェクター免疫応答を抑制する。生体内では、TRegが樹状細胞を通じて作用し、自己反応性T細胞の活性化を制限することにより、T細胞の分化とエフェクター機能の獲得が阻害される。活性化した病原性細胞の供給を制限することにより、TReg、自己免疫疾患の進行を防ぐ、あるいは遅らせることができる。しかし、この防御機構は、自己免疫疾患対象では不十分であるように思われる。これは、おそらく、TReg細胞の不足、および/または、長い疾患経過の間にTReg-抵抗性の病原性T細胞が発達し蓄積することが原因であろう。したがって、これらの対象における自己寛容の回復には、進行中の組織傷害を制御する能力を高めたTRegを注入するとともに、病原性T細胞をパージすることが必要かもしれない。甲状腺炎およびインスリン依存性糖尿病などの臓器特異的自己免疫状態は、この寛容機構の破壊に起因している(Mudd PAら, (2006), Scand J Immunol, 64(3):211-8)。したがって、本開示のTレジトープ化合物及び組成物は、自己免疫の予防又は治療のための方法において有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象における自己免疫を予防または治療する方法であって、本開示のTレジトープ化合物及び組成物の治療有効量を投与し、投与する前記工程によって対象における自己免疫を予防および/または治療することを含む、方法に関する。
【0205】
[糖尿病への適用]
1型(若年性)糖尿病は、インスリン産生膵臓β細胞の破壊に起因する器官特異的自己免疫疾患である。非糖尿病対象では、膵島細胞抗原特異的T細胞は、胸腺発生において削除されるか、または膵島細胞抗原に対するエフェクター応答を積極的に抑制する制御性T細胞に変換されるかのいずれかである。若年性糖尿病対象や若年性糖尿病モデルNODマウスでは、これらの寛容性機構が欠落している。寛容性機構の不存在下では、膵島細胞抗原は、ヒト白血球抗原(HLA)クラスIおよびII分子によって提示され、CD8(+)およびCD4(+)自己反応性T細胞によって認識される。これらの自己反応性細胞による膵島細胞の破壊は、最終的に耐糖能異常を引き起こす。Tレジトープと膵島抗原を併用すると、内在性の制御性T細胞が活性化され、既存の抗原特異的エフェクターT細胞が制御性表現型に変換される。このようにして、自己免疫反応の方向転換を図り、抗原特異的な適応寛容を誘導する。抗原特異的寛容の誘導により、自己由来のエピトープに対する自己免疫反応を調節することで、進行中のβ細胞破壊を防ぐことができる。したがって、本開示のTレジトープ化合物または組成物は、糖尿病の予防または治療のための方法において有用である。そのため、複数の態様において、本開示は、対象における糖尿病を予防または治療する方法に関しており、その方法は、治療上有効な量の本開示のTレジトープ化合物または組成物を形成するのに用いられる改変ポリペプチド(および本開示の関連化合物)を投与する工程と、この投与工程により対象における糖尿病を予防または治療する工程を含んでいる。
【0206】
[B型肝炎(HBV)感染症への応用]
慢性HBVは通常、後天性(母体胎児感染による)か、成人における急性HBV感染のまれな結果である可能性がある。B型慢性肝炎(CH-B)の急性増悪は、B型肝炎コア抗原およびe抗原(HBcAg/HBeAg)に対する細胞障害性T細胞応答の増加を伴う。最近の研究では、SYFPEITHI T細胞エピトープマッピングシステムを使用して、HBcAgとHbeAgからMHCクラスII制限エピトープペプチドを予測した(Feng ICら, (2007), J Biomed Sci, 14(1):43-57)。高得点ペプチドを用いたMHCクラスII4量体(テトラマー)を構築し、TRegとCTL頻度の測定に使用した。その結果、HBcAgに特異的なTReg細胞は増悪期に減少し、HBcAgペプチド特異的細胞傷害性T細胞が増加することが示された。寛容期には、FOXp3発現TReg細胞クローンが確認された。これらのデータは、HbcAgTRegT細胞の減少が、慢性B型肝炎ウイルス感染の自然経過における自然増悪の原因であることを示唆している。したがって、本開示のTレジトープ化合物または組成物は、慢性B型肝炎ウイルス感染の予防又は治療のための方法において有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象におけるウイルス感染(例えば、HBV感染)を予防または治療する方法であって、本開示のTレジトープ化合物または組成物の治療有効量を投与し、投与する前記工程によって対象における前記ウイルス感染を予防および/または治療することを含む、方法に関する。
【0207】
[SLEへの適用]
全身性エリテマトーデス(SLE)又はシェーグレン症候群において役割を果たすTRegエピトープが規定されている。このペプチドは、スプライソソームタンパク質の残基131~151(RIHMVYSKRSGKPRGYAFIEY;配列番号133)を包含する。可溶性HLAクラスII分子との結合アッセイと分子モデリング実験から、このエピトープはプロミスキャス・エピトープとしてふるまい、多くのヒトDR分子に結合することが示された。正常なT細胞や自己免疫疾患でない対象のT細胞とは対照的に、無作為に選んだ40%のループス対象のPBMCは、ペプチド131-151に反応して増殖するT細胞を含んでいた。リガンドを変更するとT細胞応答が変化することから、このペプチドに応答するT細胞集団がいくつか存在し、その中にTRreg細胞が含まれている可能性が示唆された。シェーグレン症候群では、制御性Tエピトープも定義されている。したがって、配列番号133と組み合わせて投与される本開示のTレジトープ化合物または組成物は、SLEの予防または治療のための方法において有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象におけるSLEを予防または治療する方法に関しており、この方法は、治療上有効な量の本開示のTレジトープ化合物または組成物を配列番号133と組み合わせて投与する工程と、この投与工程により対象におけるSLEを予防および/または治療する工程を含んでいる。
【0208】
[自己免疫性甲状腺炎への適用]
自己免疫性甲状腺炎は、自己の甲状腺ペルオキシダーゼ及び/又はサイログロブリンに対して抗体が生じ、甲状腺の濾胞が徐々に破壊されることによって生じる状態である。HLA DR5は、この疾患と密接に関連している。したがって、甲状腺ペルオキシダーゼおよび/またはサイログロブリンTSHRまたはその一部と組み合わせて投与される、本開示のTレジトープ化合物または組成物は、自己免疫甲状腺炎の予防または処置のための方法に有用である。このように、複数の態様において、本開示は、対象における自己免疫性甲状腺炎を予防または治療する方法に関し、前記方法は、本開示のTレジトープ化合物または組成物の治療有効量を、甲状腺ペルオキシダーゼおよび/またはサイログロブリンTSHRまたはその一部と組み合わせて投与する工程と、この投与工程により対象における自己免疫甲状腺炎を防止および/または治療する工程を含んでいる。さらなる複数の態様において、TSHRまたは他のバセドウ病抗原もしくはその一部と組み合わせて投与される本開示のTレジトープ組成物は、バセドウ病の予防または治療のための方法において有用である。バセドウ病は、自己甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)に対する抗体によって、甲状腺機能亢進症、または甲状腺からのホルモンの異常な強い放出につながることを特徴とする自己免疫疾患である。バセドウ病の発症には、いくつかの遺伝的要因が影響する。女性は男性よりこの病気と関連性がより高く、白人とアジア人は黒人よりリスクが高く、HLA DRB1-0301はこの病気と密接に関連している。このように、複数の態様において、本開示は、対象におけるグレーヴ病を予防または治療する方法に関しており、この方法は、治療上有効な量の本開示のTレジトープ化合物または組成物をTSHRまたは他のグレーヴ病抗原またはその一部と組み合わせて投与する工程と、この投与工程によって対象におけるグレーヴ病を予防および/または治療する工程、を含む。
【0209】
[Tレジトープ組成物を用いた制御性T細胞のex vivoでの増殖及び/又は刺激]
複数の態様において、本開示は、制御性T細胞を増殖するためのex vivo方法を提供する。一実施形態では、本発明は、生体サンプル中の制御性T細胞を増殖する方法を提供し、この方法は、(a)対象から生体サンプルを提供する工程;(b)生体サンプルから制御性T細胞を分離する工程;および制御性T細胞の数を増やして増殖した制御性T細胞をもたらす条件下で、分離した制御性T細胞を有効量の本開示のTレジトープ化合物または組成物と接触させて、生体サンプル中の制御性T細胞を増殖する工程;を含む。複数の態様において、本方法は、増殖された制御性T細胞を対象に投与する工程をさらに含む。複数の態様において、増殖した制御性T細胞を投与された対象は、例えば、増殖したTレジトープの自家移植(autologous transplantation)によって、元の生物学的サンプルが得られたのと同じ個体である(Ruitenberg JJら, (2006), BMC Immunol, 7:11)。
【0210】
複数の態様において、本開示は、生体サンプル中の制御性T細胞を刺激するためのex vivo方法を提供し、この方法は、(a)対象から生体サンプルを提供する工程;及び(b)生体サンプルから制御性T細胞を分離する工程;並びに分離した制御性T細胞を、制御性T細胞が刺激されて1または複数の生体機能を変更する条件下で本開示のTレジトープ化合物または組成物の有効量と接触させて、それによって生体サンプル中の制御性T細胞を刺激する工程を包含する。複数の態様において、本方法は、刺激された制御性T細胞を対象に投与する工程をさらに含む。複数の態様において、刺激された制御性T細胞が投与される対象は、元の生物学的サンプルが、例えば、増殖したTレジトープの自己移植によって得られたものと同じ対象である。
【0211】
[Tレジトープ組成物を用いた抗原提示細胞のex vivoパルシング]
複数の態様において、本開示は、生体サンプル中の抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージなど)のex vivo方法を提供し、この方法は、(a)対象から生体サンプルを提供し;および(b)生体サンプルから抗原提示細胞を分離し;および分離した抗原提示細胞を有効量の本開示のTレジトープ化合物または組成物と以下の条件下で接触させて、抗原提示細胞が刺激されて1または複数の生体機能を変える(例えば、Tレジトープを提示し、及び/又は抗原提示細胞を寛容であるように歪め(複数の態様において、このような寛容状態を誘導するための抗原提示細胞のサイトカイン処理をさらに含むことができる)、それによって生体サンプル中の抗原提示細胞を刺激する。複数の態様において、本方法は、刺激された抗原提示細胞を対象に投与する工程をさらに含む。複数の態様において、刺激された抗原提示細胞が投与される対象は、例えば、刺激された抗原提示細胞の自家移植によって、元の生物学的サンプルが得られたのと同じ対象である。
【0212】
[Tレジトープ組成物のin vitroでの使用]
複数の態様において、本開示は、in vitro研究及び実験モデルにおける制御性T細胞機能の研究における試薬としての本開示のTレジトープ化合物又は組成物の使用を提供する。
【0213】
[免疫工学の方法]
複数の態様において、本開示は、抗体またはその断片などのポリペプチドから、または抗体またはその断片などのポリペプチドへの、本開示の1または複数のTレジトープの除去または挿入を含む、免疫工学の方法に関する。
【0214】
例えば、複数の態様において、本開示は、抗体又はその断片を含む化合物又は組成物の免疫原性を高めるための方法に関し、抗体又はその断片が樹状細胞などの抗原提示細胞への抗原標的化のためのワクチン送達ベクターとして機能する場合、前記方法は、特に有用であってもよい。複数の態様において、前記方法は、前記抗体またはその断片から、1または複数の制御性T細胞エピトープ(例えば、配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド)を同定し除去する工程を含む。複数の態様において、抗体またはその断片の1または複数の制御性T細胞エピトープは、本明細書(例えば、実施例のセクション(1))において記載されるようなEpiMatrixおよびJanusMatrix解析によって同定される。複数の態様において、抗体(またはその断片)ワクチン送達ベクター(DEC-205など)の1または複数の制御性T細胞エピトープは、送達された抗原に対する抗原特異的免疫応答を抑制することができ、そして、前記1または複数の制御性T細胞エピトープの除去は、免疫寛容原性の低下および送達された抗原に対する強い抗原特異的免疫応答の刺激を可能にする。複数の態様において、前記除去は、それらのTレジトープを改変する工程を含み、そのような改変により、これらのTレジトープはもはやMHC分子に結合しないか、またはもはやMHC結合性を保持しないように、同じTCR特異性を保持しないように、および/またはもはやTレジトープもしくは抑制活性を保持しないようになる。複数の態様において、ワクチン送達ベクターからの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の全てまたは一部を欠失させる工程を含む。複数の態様において、ワクチン送達ベクターからの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の一部または全ての欠失と、前記制御性T細胞エピトープのアミノ酸の欠失の部位における1または複数のアミノ酸の付加とを含む。複数の態様において、ワクチン送達ベクターからの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、1または複数の制御性T細胞エピトープを変異させる(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組み換え技術によって1または複数の点変異を1または複数の制御性T細胞エピトープに導入する)ことである。複数の態様において、ワクチン送達ベクターからの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、1または複数のアミノ酸を1または複数の制御性T細胞エピトープ配列に導入することであり、これは複数の態様において、配列の以前の免疫寛容原性が除去されるように、1または複数の制御性T細胞エピトープ配列を破壊することになる。複数の態様において、除去部位における前記付加された1または複数のアミノ酸の数は、以前に存在した制御性T細胞エピトープアミノ酸から欠失したアミノ酸の数に対応する必要はない。複数の態様において、抗体またはその断片からの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、ワクチン送達ベクター、またはワクチン送達ビヒクルもしくはベクターの標的抗原の免疫原性を高める結果となる。複数の態様において、ワクチン送達ベクターからの1または複数の制御性T細胞エピトープの前記除去は、ワクチン送達ベクターまたはワクチン送達ビヒクルもしくはベクターの標的抗原に対する抗原特異的免疫応答の増大をもたらす。複数の態様において、ワクチン送達ベクターは、抗体を含むことができ、そのような抗体としては、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノスペシフィック抗体、バイスペシフィック抗体、グリコシル化抗体、Fc修飾抗体、抗体-薬剤コンジュゲート、異なるクラスのサブクラスの抗体(例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、IgM、IgE、またはIgA)、またはその断片もしくは抗原特異的抗体断片(限定されないが、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉鎖構造多特異抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディなど)を含んでいてもよい。複数の態様において、1または複数の制御性T細胞エピトープは、1または複数の配列番号1~124を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有する。
【0215】
さらに、本開示は、抗体またはその断片の免疫原性を低下させるおよび/または寛容性を増大させるための方法に関し、これは、抗体またはその断片が治療用タンパク質として機能する場合に特に有用であろう。複数の態様において、前記方法は、1または複数の制御性T細胞エピトープ(例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を有する1または複数のペプチドまたはポリペプチドを含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド)を前記抗体もしくはその断片へ挿入する工程を含む。複数の態様において、前記抗体または断片の1または複数の制御性T細胞エピトープは、前記抗体またはその断片に対する抗原特異的免疫応答を抑制する。複数の態様において、前記1または複数の制御性T細胞エピトープは、Tレジトープが抗体またはその断片内のその自然な位置にない場合、または抗体またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定の抗体またはその断片が変異または欠損した対応部分を有する場合)など、(例えば、限定されないが、部位指向性突然変異誘発または他の組み換え技術により)抗体またはその断片に融合または内部に挿入され得る。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の全てまたは一部の挿入を含む。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープのアミノ酸の一部またはすべての挿入と、制御性T細胞エピトープのアミノ酸の挿入部位における1または複数のアミノ酸の除去とを含む。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、1または複数の制御性T細胞エピトープを含むように抗体またはその断片の配列を変異させる(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組み換え技術によって抗体またはその断片に1または複数の点変異を導入する)工程を含む。複数の態様において、抗体または断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入では、配列の以前の免疫原性が低下し、新しい配列の免疫寛容原性が向上するように、1または複数の制御性T細胞エピトープ配列を導入する工程になるだろう。複数の態様において、制御性T細胞エピトープアミノ酸の挿入部位における前記付加された1または複数のアミノ酸の数は、抗体またはその断片の配列から削除されたアミノ酸の数に対応する必要はない。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、抗体またはその断片の免疫原性を低下させる結果となる。複数の態様において、抗体またはその断片への1または複数の制御性T細胞エピトープの前記挿入は、抗体またはその断片の寛容性を増加させるという結果をもたらす。複数の態様において、米国特許第7,442,778号、米国特許第7,645,861号、米国特許第7,655,764号、米国特許第7,655,765号、および/または米国特許第7,750,128号(これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、1または複数のTレジトープがFcドメインに内部配列として組み込まれ得る。このような内部配列は、挿入(すなわち、以前に存在したFcドメインのアミノ酸の間)または以前に存在したFcドメインのアミノ酸の置換(すなわち、以前に存在したFcドメインのアミノ酸を除去してペプチドアミノ酸を加える)によって追加する工程ができる。後者の場合、付加されるペプチドアミノ酸の数は、以前に存在したFcドメインから除去されたアミノ酸の数に対応する必要はない;例えば、複数の態様において、組成物は、ネイティブFcドメインから1~21アミノ酸の配列が除去され、9~15アミノ酸の付加内部配列である場合が構成される。複数の態様において、抗体またはその断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノスペシフィック抗体、バイスペシフィック抗体、グリコシル化抗体、Fc修飾抗体、抗体-薬物複合体、異なるクラスのサブクラスの抗体などを含むことができるが、これに限定されない。IgG(例えば、限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、IgM、IgE、またはIgA)分子、またはその抗原特異的抗体断片(Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉立体構造多特異抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディなど)などが挙げられる。複数の態様において、1または複数の制御性T細胞エピトープは、1または複数の配列番号1~124を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有する。
【0216】
例えば、複数の態様において、1または複数の配列番号1~124(およびその断片または変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含む配列を有する、本開示の1または複数のTレジトープは、ヒトIgGまたはその断片に、(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組換え技術により)融合またはその内部に挿入されてもよい。例えば、TレジトープがヒトIgGまたはその断片内のその天然の位置に存在しない場合、またはヒトIgGまたはその断片(対象自身のヒトIgGまたはその断片など)がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定のヒトIgGまたはその断片が変異または欠損した対応部分を有する場合)において、本開示の1または複数のTレジトープは、ヒトIgGまたはその断片に、(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組換え技術により)融合またはその内部に挿入されてもよい。前述のように、1または複数の配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124を含むTレジトープは、ポリペプチド(例えば、ヒトIgG重鎖可変領域を構成しないポリペプチド)に融合または内部に挿入されてもよい。複数の態様において、ポリペプチドがヒトIgG重鎖可変領域(ヒトIgG抗体またはその断片など)を含む場合、1または複数の配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124は、ヒトIgG重鎖可変領域またはその断片に、(例えば、限定されないが、部位特異的変異誘発または他の組換え技術により)融合または内部に挿入してもよい。そのような場合、例えば、TレジトープがヒトIgG重鎖可変領域またはその断片内のその自然な位置にない場合、またはヒトIgG重鎖可変領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定のヒトIgG重鎖可変領域またはその断片が変異または対応する部分を欠いている場合)であってもよい。複数の態様において、1または複数の配列番号2、9~11、29~41、および75~100を含むTレジトープは、ポリペプチド(例えば、ヒトIgG重鎖定常領域を含まないポリペプチド)に融合されるか、その内部に挿入されてもよい。複数の態様において、ポリペプチドがヒトIgG重鎖定常領域(ヒトIgG抗体またはその断片など)を含む場合、前記1または複数の配列番号2、9~11、29~41、および75~100の配列は、ヒトIgG重鎖定常領域またはその断片に、(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術により)融合されてもよいし、内部に挿入されてもよい。そのような場合、例えば、TレジトープがヒトIgG重鎖定常領域またはその断片内のその自然の位置にない場合、またはヒトIgG重鎖定常領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定のヒトIgG重鎖定常領域またはその断片が突然変異を有するまたは対応部分を欠いている場合)であってもよい。複数の態様において、1または複数の配列番号12を含むTレジトープは、ポリペプチド、例えば、ヒトIgG軽鎖可変領域を含まないポリペプチドに融合またはその内部に挿入することができる。複数の態様において、ポリペプチドがヒトIgG軽鎖可変領域(ヒトIgG抗体またはその断片など)で構成されている場合、前記1または複数の配列番号12の配列は、ヒトIgG軽鎖可変領域またはその断片内に、(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術により)融合させるかまたは内部に挿入してもよい。そのような場合、TレジトープがヒトIgG軽鎖可変領域またはその断片内のその自然の位置にない場合、またはヒトIgG軽鎖可変領域またはその断片がそのようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定のヒトIgG軽鎖可変領域またはその断片が変異または欠損した対応部分を有する場合)などであってもよい。複数の態様において、1または複数の配列番号13および101~110を含むTレジトープは、ポリペプチド、例えば、ヒトIgG軽鎖定常領域を構成されないポリペプチドに融合されるか、またはその内部に挿入されることができる。複数の態様において、ポリペプチドがヒトIgG軽鎖定常領域(ヒトIgG抗体またはその断片など)を構成される場合、前記1または複数の配列番号13および101~110の配列は、ヒトIgG軽鎖定常領域またはその断片に(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発または他の組換え技術により)融合されてもよいし、内部に挿入されてもよい。そのような場合、例えば、TレジトープがヒトIgG軽鎖定常領域またはその断片内のその自然の位置にない場合、またはヒトIgG軽鎖定常領域またはその断片が、このようなTレジトープを欠いている場合(例えば、特定のヒトIgG軽鎖定常領域またはその断片が変異または欠損した該当部分を有する場合)であってもよい。
【0217】
[キット]
本明細書に記載の方法は、例えば、本開示の少なくとも1つのTレジトープ化合物又は組成物を含む予めパッケージされたキットを利用することにより、実施することができ、本明細書に記載の医学的状態の症状又は家族歴を示す対象を治療するために臨床環境において便利に使用できる。一実施形態では、キットは、本明細書に記載の医学的状態の症状または家族歴を示す対象を治療するための、本開示の少なくとも1つのTレジトープ化合物または組成物の使用説明書をさらに含む。
【0218】
[態様]
第1の態様は、配列番号1~124、及び/又はその断片及び変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、並びに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸のみからなるポリペプチドに関する。
【0219】
第2の態様は、配列番号1~124、及び/又はその断片及び変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸から本質的になるポリペプチドに関する。
【0220】
第3の態様は、配列番号1~124、および/またはその断片および変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むポリペプチドに関する。
【0221】
第4の態様は、配列番号1~124からなる群から選択されるアミノ酸配列の前記変異体または断片が、MHC結合性およびTCR特異性を保持し、および/または制御性T細胞刺激または抑制活性を保持する、態様1~3のいずれか一態様に記載のポリペプチドに関する。
【0222】
第5の態様は、配列番号1~124のいずれか1つと少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の相同性を有するアミノ酸配列のみからなるポリペプチド、およびその断片であって、当該ポリペプチドがMHC結合性および同じTCR特異性を保持し、および/または制御性T細胞刺激活性または抑制活性を保持するポリペプチドに関する。
【0223】
第6の態様は、配列番号1~124のいずれか1つ、およびその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の相同性を有するアミノ酸配列から本質的になるポリペプチドであって、前記ポリペプチドがMHC結合性と同じTCR特異性を保持し、および/または制御性T細胞刺激活性もしくは抑制活性を保持するポリペプチドに関する。
【0224】
第7の態様は、配列番号1~124のいずれか1つ、およびその断片と少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチドがMHC結合性および同じTCR特異性を保持し、および/または制御性T細胞刺激活性もしくは抑制活性を保持するポリペプチドに関する。
【0225】
第8の態様は、前記ポリペプチドが、前記ポリペプチドと比較して1または複数の保存的置換を有する、態様1~7のいずれか一態様に記載のポリペプチドに関する。
【0226】
第9の態様は、前記ポリペプチドが、MHC結合性及びTCR特異性を保持し、及び/又は制御性T細胞刺激又は抑制活性を保持する、態様8に記載のポリペプチドに関する。
【0227】
第10の態様は、異種ポリペプチドに連結された1または複数のT細胞エピトープポリペプチドを含むポリペプチド組成物であって、T細胞エピトープポリペプチドが態様1~9のいずれか一態様に記載のポリペプチドである、ポリペプチド組成物に関する。
【0228】
第11の態様は、T細胞エピトープポリペプチドが異種ポリペプチドのN末端に連結されている、態様10に記載のポリペプチド組成物に関する。
【0229】
第12の態様は、T細胞エピトープポリペプチドが異種ポリペプチドのC末端に連結されている、態様10~11のいずれかに記載のポリペプチド組成物に関する。
【0230】
第13の態様は、異種ポリペプチドが生物学的活性分子で構成され、生物学的活性分子が免疫原性分子、T細胞エピトープ、ウイルスタンパク質、および細菌タンパク質からなる群から選択される、態様10~12のいずれか一態様に記載のポリペプチド組成物に関する。
【0231】
第14の態様は、異種ポリペプチドがT細胞エピトープポリペプチドに作動可能に連結されている、態様10~13のいずれか一態様に記載のポリペプチド組成物に関する。
【0232】
第15の態様は、配列番号1~124、及び/又はその断片及び変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、並びに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸のみからなるポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0233】
第16の態様は、配列番号1~124、及び/又はその断片及び変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸から本質的になるポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0234】
第17の態様は、配列番号1~124、および/またはその断片および変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含むポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0235】
第18の態様は、配列番号1~124からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸の前記断片または変異体が、制御性T細胞刺激または抑制活性を保持するポリペプチドをコードする、態様8~10のいずれか一態様に記載の核酸に関する。
【0236】
第19の態様は、態様15~18のいずれか一態様に記載の核酸を含むプラスミドに関する。
【0237】
第20の態様は、態様15~18のいずれか一態様に記載の核酸を含むベクターに関する。
【0238】
第21の態様は、態様1~14のいずれか一態様に記載のポリペプチドと、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0239】
第22の態様は、態様15~18のいずれか一態様に記載の核酸と、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0240】
第23の態様は、態様19に記載のプラスミドと、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0241】
第24の態様は、態様20によるベクターと、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0242】
第25の態様は、それを必要とする対象における免疫反応を抑制するための方法であって、治療有効量の、1または複数の、態様1~14のいずれか一態様によるポリペプチド、態様15~18のいずれか一態様による核酸、態様19によるプラスミド、態様20によるベクター、または態様21~24のいずれか一態様による医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法に関するものである。
【0243】
第26の態様は、対象において免疫応答を抑制する制御性T細胞を誘導する方法であって、治療有効量の、1または複数の、態様1~14のいずれか一態様に記載のポリペプチド、態様15~18のいずれか一態様に記載の核酸、態様19に記載のプラスミド、態様20に記載のベクター、または態様21~24のいずれか一態様に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法に関するものである。
【0244】
第27の態様は、それを必要とする対象において制御性T細胞を刺激するための方法であって、治療有効量の、1または複数の、態様1~14のいずれか一態様に記載のポリペプチド、態様15~18のいずれか一態様に記載の核酸、態様19に記載のプラスミド、態様20に記載のベクター、または態様21~24のいずれか一態様に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0245】
第28の態様は、それを必要とする対象における抗原特異的免疫応答を抑制する方法であって、治療有効量の、1または複数の、態様1~14のいずれか一態様に記載のポリペプチド、態様15~18のいずれか一態様に記載の核酸、態様19に記載のプラスミド、態様20に記載のベクター、または態様21~24のいずれか一態様に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0246】
第29の態様は、Tレジトープ組成物の投与により、CD4+/CD25+/FoxP3+制御性T細胞を活性化する、態様25~28のいずれか一態様に記載の方法に関する。
【0247】
第30の態様は、Tレジトープ組成物の投与により、CD4+T細胞の活性化を抑制する、態様25~28のいずれか一態様に記載の方法に関する。
【0248】
第31の態様は、Tレジトープ組成物の投与により、CD4+エフェクターT細胞及び/又はCD8+エフェクターT細胞の活性化又は増殖を抑制する、態様25~28のいずれか一態様に記載の方法に関する。
【0249】
第32の態様は、Tレジトープ組成物の投与により、B細胞の活性化又は増殖を抑制する、態様25~28のいずれか一態様の態様に記載の方法に関する。
【0250】
第33態様は、対象が、アレルギー、自己免疫疾患、移植関連障害、酵素もしくはタンパク質欠損障害、または血液凝固障害を患っている、態様25~28のいずれか一態様に記載の方法に関する。
【0251】
第34態様は、免疫応答が、少なくとも1つの治療用タンパク質による治療、ワクチンによる治療、および少なくとも1つの抗原による治療からなる群から選択される1または複数の治療処置の結果である、態様25~28のいずれか一態様に記載の方法に関する。
【0252】
第35の態様は、Tレジトープ医薬組成物の投与により、1または複数の抗原提示細胞を制御性表現型にシフトさせる、態様25~28のいずれか一態様の態様に記載の方法に関する。
【0253】
第36の態様は、制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトさせる、態様25~28のいずれか一態様に記載の方法に関する。
【0254】
第37の態様は、Tレジトープ医薬組成物の投与により、1または複数の樹状細胞を制御性表現型にシフトさせる、態様25~28のいずれか一態様に記載の方法に関する。
【0255】
第38の態様は、樹状細胞又は他の抗原提示細胞におけるCD11c及びHLA-DR発現の減少によって制御性表現型が特徴付けられる、態様25~28のいずれか一態様の態様に記載の方法に関する。
【0256】
第39の態様は、制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数のT細胞を制御性表現型にシフトさせる、態様25~28のいずれか一態様に記載の方法に関する。
【0257】
第40の態様は、制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数のCD4+T細胞を制御性表現型にシフトさせる、態様25~28のいずれか一態様に記載の方法に関する。
【0258】
第41の態様は、制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数のCD8+T細胞を制御性表現型にシフトさせる、態様25~28のいずれか一態様に記載の方法に関する。
【0259】
第42の態様は、制御性T細胞エピトープの投与により、1または複数のB細胞を制御性表現型にシフトさせる、態様25~28のいずれか一態様に記載の方法に関する。
【0260】
第43の態様は、対象の制御性T細胞の集団を拡大するための方法であって、
(a)対象から得られた生物学的サンプルを提供する工程;及び
(b)生物学的サンプルから制御性T細胞を分離し;そして、T制御細胞の数を増やして拡大制御性T細胞組成物をもたらす条件下で、分離された制御性T細胞を、有効量の、1または複数の:態様1~14のいずれか一態様に記載のポリペプチド、態様15~18のいずれか一態様に記載の核酸、態様19に記載のプラスミド、態様20に記載のベクター、または態様21~24のいずれか一態様に記載の医薬組成物と接触させて、それによって生物学的サンプル中の制御性T細胞を増加させる工程;及び
(c)前記増加した制御性T細胞を前記対象に戻す工程;
を含む方法に関する。
【0261】
第44の態様は、生物学的サンプル中の制御性T細胞を刺激する方法であって、
(a)対象から得られた生物学的サンプルを提供する工程;
(b)生物学的サンプルから制御性T細胞を分離し;そして、制御性T細胞が刺激されて1または複数の生物学的機能を変化させる条件下で、分離された制御性T細胞を、有効量の、1または複数の:態様1~14のいずれか一態様に記載のポリペプチド、態様15~18のいずれか一態様に記載の核酸、態様19に記載のプラスミド、態様20に記載のベクター、または態様21~24のいずれか一態様に記載の医薬組成物に接触させて、生物学的サンプル中の制御性T細胞を刺激する工程;
を含む方法に関する。
【実施例】
【0262】
以下の実施例は、いかなる方法でも本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示に照らして、特許請求の範囲の範囲内の多数の実施形態が、当業者には明らかになるであろう。
【0263】
(1)Tレジトープ化合物又は組成物のインシリコによる同定
T細胞は、抗原提示細胞(APC)から提示されたエピトープを、MHC(主要組織適合性複合体)クラスII分子との関連で特異的に認識する。これらのヘルパーT細胞エピトープは、MHCクラスII結合溝に適合する7~30の連続したアミノ酸からなる線形配列として表現することができる。様々な起源のタンパク質分子内のクラスIIエピトープを検出するために、多くのコンピュータアルゴリズムが開発され、使用されてきた(DeGroot AS et al,(1997), AIDS Res Hum Retroviruses,13(7):539-41; Schafer JRら, (1998), Vaccine,16(19):1880-4; De Groot ASら, (2001), Vaccine, 19(31):4385-95; DeGroot ASら, (2003), Vaccine, 21(27-30):4486-504)。ヘルパーT細胞エピトープのこれらの「インシリコ」予測は、ワクチンの設計および治療用タンパク質、すなわち、抗体ベースの薬剤、Fc融合タンパク質、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、人工タンパク質スキャフォールド、酵素、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキンおよび血栓溶解剤の脱免疫にうまく適用されている(Dimitrov DS, (2012), Methods MolBiol, 899:1-26)。
【0264】
EpiMatrix(商標)システム(EpiVax、プロビデンス、ロードアイランド州)は、クラスIおよびクラスII HLAリガンドとT細胞エピトープの予測に有用なコンピュータプログラムにコード化された一連の予測アルゴリズムである。EpiMatrix(商標)システムは、特定のアミノ酸(20)とHLA分子内の結合位置(9)の間の相互作用をモデル化するために、20x9の係数マトリックスを使用する。任意の入力タンパク質に存在する推定T細胞エピトープを特定するため、EpiMatrix(商標)システムではまず、入力タンパク質を解析して、各フレームが最後のフレームと8アミノ酸だけ重なる9量体フレームを作成する。次に、各フレームは、ヒトHLA分子、典型的には、DRB1*0101、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0701、DRB1*0801、DRB1*1101、DRB1*1301、およびDRB1*1501(Mackら, (2013), Tiss Antig, 81(4):194-203)の1または複数の共通アレルに対する予測される親和性についてスコア化される。簡単に説明すると、任意の9量体ペプチドについて、特定のアミノ酸コード(20の内在するアミノ酸のそれぞれについて1つ)および相対的結合位置(1-9)を使用して、予測マトリックスから係数を選択する。個々の係数は、Sturniolo(SturnioloTら, 1999,NatBiotechnol, 17(6):555-61)により最初に開発されたポケットプロファイル法と類似するが同一ではない独自の方法を使用して導き出される。次に、個々の係数が合計され、生のスコアが生成される。EpiMatrix(商標)の生のスコアは、次に、ランダムに生成された非常に大規模なペプチド配列のセットから得られたスコア分布に関して正規化される。結果として得られる「Z」スコアは正規分布であり、アレル間で直接比較することができる。
【0265】
[EpiMatrix(商標)ペプチドスコアリング]
EpiMatrix(商標)「Z」スケールで1.64以上のスコア(任意のペプチドセットの上位約5%)のペプチドは、それが予測されたMHC分子に結合する可能性がかなり高いと判断された。スケールで2.32以上のスコア(上位1%)のペプチドは、結合する可能性が極めて高く、発表されているほとんどのT細胞エピトープは、このスコアの範囲に入る。過去の研究では、EpiMatrix(商標)が公表されているMHCリガンドとT細胞エピトープを正確に予測することも実証されている。
【0266】
[プロミスキャスT細胞エピトープクラスターの同定]
潜在的なT細胞エピトープは、タンパク質配列中にランダムに分布しているわけではなく、「クラスター化」する傾向がある。T細胞エピトープ「クラスター」の長さは9から約30アミノ酸であり、複数のアレルや複数のフレームに対する親和性を考慮すると、4から40の結合モチーフを含むことになる。エピトープマッピングの後、EpiMatrix(商標)アルゴリズムによって生成された結果セットは、Clustimer(商標)として知られる独自のアルゴリズムを用いて、T細胞エピトープクラスターおよびEpiBars(商標)の存在についてスクリーニングされる。簡単に説明すると、分析された各9量体ペプチドのEpiMatrix(商標)スコアが集約され、統計的に導き出された閾値と照合される。次に、スコアの高い9量体を一度に1アミノ酸ずつ拡張する。伸長された配列のスコアは再度集計され、修正された閾値と比較される。このプロセスは、提案された拡張がクラスターの全体的なスコアを向上させなくなるまで繰り返される。本研究で同定されたTレジトープ(複数可)は、Clustimer(商標)アルゴリズムにより、T細胞エピトープクラスターとして同定されてもよい。これらは、MHC結合とT細胞応答性の高い可能性を示す、相当数の推定T細胞エピトープとEpiBars(商標)を含んでいてもよい。
【0267】
[免疫寛容原性を有するT細胞エピトープクラスターの同定]
JanusMatrixシステム(EpiVax、プロビデンス、ロードアイランド州)は、宿主プロテオームとの交差保存性についてペプチド配列をスクリーニングするために有用である。JanusMatrixは、ペプチドクラスターと宿主ゲノムまたはプロテオームとの間の交差反応性の可能性を、それらの推定MHCリガンドにおけるTCRに面した残基の保存に基づいて予測するアルゴリズムである。JanusMatrixアルゴリズムは、まず、与えられたタンパク質配列に含まれる予測エピトープをすべて考慮し、各予測エピトープを構成するアグレトープとエピトープに分割する。次に、各配列をホストタンパク質のデータベースに対してスクリーニングする。MHCに面したアグレトープが一致し(すなわち、入力ペプチドとその宿主側のペプチドのアグレトープが同じMHCアレルに結合すると予測される)、全く同じTCRに面したエピトープを持つペプチドが返される。JanusMatrixホモロジースコアは、免疫寛容に偏っていることを示唆している。治療用タンパク質の場合、自己由来のヒトエピトープと治療薬のエピトープとの間の交差保存は、そのような候補がヒトの免疫系に許容される可能性を高めるかもしれない。ワクチンの場合、ヒトのエピトープと抗原性エピトープとの間の交差保存は、そのような候補が免疫カモフラージュを利用し、それによって免疫応答を回避し、効果のないワクチンとなることを示すかもしれない。宿主が例えばヒトの場合、ペプチドクラスターはヒトゲノムやプロテオームに対してスクリーニングされ、推定上のHLAリガンドにおけるTCRに面した残基の保存性に基づいている。次に、ペプチドはJanusMatrixホモロジースコアを用いてスコアリングされる。複数の態様において、3.0を超えるJanusMatrix相同性スコアを有するペプチドは、高い免疫寛容原性の可能性を示し、そのようなものとして、本開示の非常に有用なTレジトープである可能性がある。
【0268】
[実施例1.Tレジトープ組成物の同定]
先に記載したような方法を用いたインシリコ分析の結果を、配列番号7及び14についてそれぞれ
図8~9に示し、及び
図11~26に示す。
【0269】
図8は、配列番号7のEpiMatrix分析を示す図である。KTLYLQMNS(配列番号16)、TLYLQMNSL(配列番号17)、LYLQMNSLR(配列番号18)、YLQMNSLRA(配列番号19)、LQMNSLRAE(配列番号20)、QMNSLRAED(配列番号21)、MNSLRAEDT(配列番号22)、NSLRAEDTA(配列番号23)、SLRAEDTAK(配列番号24)およびLRAEDTAKH(配列番号25)について結果が示されている。Zスコアは、9量体フレームが所定のHLAアレルに結合する可能性を示す。上位5%のすべてのスコアは「ヒット」とみなされ、10%以下の非ヒット(*)は、簡略化のために
図8ではマスクされている。
【0270】
図9は、配列番号14のEpiMatrix分析を表している。ETLYLQMNS(配列番号111)、TLYLQMNSL(配列番号112)、LYLQMNSLR(配列番号113)、YLQMNSLRA(配列番号114)、LQMNSLRAE(配列番号115)、QMNSLRAED(配列番号116)、MNSLRAEDT(配列番号117)、NSLRAEDTA(配列番号118)、SLRAEDTAV(配列番号119)、LRAEDTAVY(配列番号120)について結果が示されている。Zスコアは、9量体フレームが所定のHLAアレルに結合する可能性を示す。上位5%のすべてのスコアは「ヒット」とみなされ、10%以下の非ヒット(*)は、簡略化のために
図9においてマスクされている。
【0271】
図11は、本開示の配列番号1~15のTレジトープを同定したJanusMatrixの結果の概要である。
図12は、配列番号1のTレジトープ、及び配列番号16~28を含む配列番号1内に含まれる9量体に関するJanusMatrixレポートである。
図13は、配列番号10のTレジトープ、および配列番号87~93を含む配列番号10内に含まれる9量体に関するJanusMatrixレポートである。
図14は、配列番号11のTレジトープ、および配列番号94~100を含む配列番号11内に含まれる9量体に関するJanusMatrixレポートである。
図15は、配列番号12のTレジトープに対するJanusMatrixレポートである。
図16は、配列番号13のTレジトープ、および配列番号101~110を含む配列番号13内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
図17は、配列番号14のTレジトープ、および配列番号111~120を含む配列番号14内に含まれる9量体に対するJanusMatrixレポートである。
図18は、配列番号15のTレジトープ、および配列番号121~124を含む配列番号15内に含まれる9量体に関するJanusMatrixレポートである。
図19は、配列番号10のTレジトープ、および配列番号29~41を含む配列番号2内に含まれる9量体に対するJanusMatrixレポートである。
図20は、配列番号3のTレジトープ、および配列番号42~48を含む配列番号3内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
図21は、配列番号4のTレジトープ、および配列番号49-50を含む配列番号4内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。*は検索データベースで見つかったヒトJanusMatrixのマッチの数である。
図22は、配列番号50のTレジトープに対するJanusMatrixレポートである。
図23は、配列番号6のTレジトープ、および配列番号51-57を含む配列番号6内に含まれる9量体に対するJanusMatrixレポートである。
図24は、配列番号10のTレジトープおよび配列番号58-67を含む配列番号7内に含まれる9量体についてのJanusMatrixレポートである。
図25は、配列番号8のTレジトープ、および配列番号68~74を含む配列番号8内に含まれる9量体に対するJanusMatrixレポートである。
図26は、配列番号9のTレジトープ、及び配列番号87~93を含む配列番号9内に含まれる9量体に関するJanusMatrixレポートである。
図11~
図26のそれぞれについて、*は、検索データベースで見つかったヒトJanusMatrixの一致のカウントである。所与のEpiMatrixヒット(特定のアレルに結合すると予測される入力配列内に含まれる9量体)に関して、Janus Matrixマッチは、EpiMatrixヒットと同じアレルに結合すると予測され、EpiMatrixヒットとTCR対面接触を共有する検索データベース(例えば、ヒトゲノム)から導出された9量体である。さらに、Janusホモロジースコア**は、入力配列の各EpiMatrixヒットに対する検索データベースでの平均カバー深度を表す。例えば、EpiMatrixヒットが8である入力ペプチドは、そのすべてが検索データベースで1つマッチし、Janusホモロジースコアは1であり、EpiMatrixヒットが4である入力ペプチドは、そのすべてが検索データベースで2つマッチし、Janusホモロジースコアは2である。JanusMatrixホモロジースコアは、フランクを含む任意のペプチドのすべての構成9量体を考慮している。
【0272】
[可溶性MHCに対するTレジトープ結合の評価法]
【0273】
(ペプチドの合成)
本開示のTレジトープ(限定されないが、例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で配列番号1~55のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド)が、直接化学合成または組み換え法によって製造できる(J Sambrookら, J Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, (2ED, 1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Springs Harbor, NY (Publ))。すべてのペプチドは、純度、質量、および正しい配列を決定するために、放出前に厳格な品質管理の特性評価を受ける。ペプチドは、逆相高圧液体クロマトグラフィー(RPHPLC)により純度を評価される。ペプチドの純度は90%以上であり、各製剤はアミノ酸分析を行い、異なるロットのペプチド間で一貫性と再現性のために同等のモル量がアッセイに使用され、またペプチドの有効性間の信頼性の高い比較試験を可能にする。ペプチドはまた、タンデム質量分析およびMSCheckT分析を用いて、質量および正しい配列について評価される。特定の態様において、Tレジトープは、n-末端アセチル基および/またはc-末端アミノ基でキャップされてもよい。選択されたTレジトープのHPLC、質量分析およびUVスキャン(それぞれ、純度、質量およびスペクトルを確保する)分析は、80%超の純度を示した。
【0274】
[HLA結合アッセイ]
結合活性は、EpiVax(プロビデンス、ロードアイランド州)で分析された。そして、結合活性は、本明細書に開示される任意のTレジトープ(例えば、これらに限定されないが、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末および/またはC末に任意の比率で分布する1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド)について行われる。使用される結合アッセイ(Steere ACら, (2006), J Exp Med, 2003(4):961-71)は、ペプチド-MHC親和性の間接的な尺度をもたらす。可溶性HLA分子は、非標識実験Tレジトープおよび標識対照ペプチドとともに96ウェルプレートにロードされる。結合混合物が定常平衡に達すると(24時間後)、HLA-Tレジトープ複合体を抗ヒトDR抗体でコートしたELISAプレート上に捕捉し、ユーロピウム結合プローブ(PerkinElmer、Waltham、MA)で検出する。結合した標識コントロールペプチドの時間分解蛍光は、SpectraMax(登録商標)M5ユニット(Spectramax、Radnor、PA)で評価する。実験的Tレジトープの結合は、標識対照ペプチドの阻害率(実験的蛍光/対照蛍光を100倍した値)として表される。各実験用Tレジトープの阻害パーセント値(モル濃度範囲にわたって)は、それが標識対照Tレジトープの特異的結合の50%を阻害する濃度、すなわちTレジトープのIC50を計算するために使用される。
【0275】
選択した実験用のTレジトープ(例えば、配列番号14)をDMSOに溶解させた。希釈したTレジトープ(配列番号14)を水性緩衝液中で結合試薬と混合し、100,000nMから100nMまでの最終濃度を得た。Tレジトープ(配列番号14)は、8つの一般的なクラスII HLAアレルDRB1*0101、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0701、DRB1*0801、DRB1*1101、DRB1*1301、およびDRB1*1501のパネルに対してアッセイされた。各濃度における標識対照ペプチドの阻害率から、線形回帰分析を用いて各Tレジトープ(配列番号14)/アレル組合せのIC50値を導出した。
【0276】
このアッセイでは、実験用Tレジトープは、100nM以下の濃度で対照ペプチド結合の50%を阻害する場合、非常に高い親和性で結合すると考えられ、100nMと1,000nMの間の濃度で対照ペプチド結合の50%を阻害する場合は高い親和性と考えられ、1,000nMと10000nMの間の濃度で対照ペプチド結合の50%を阻害する場合は中程度の親和性と見なされる。低親和性ペプチドは、10,000nMから100,000nMの間の濃度で対照ペプチド結合の50%を阻害する。100,000nM以下のいかなる濃度でもコントロールペプチド結合の50%以上を阻害できず、用量反応を示さないペプチドを非結合体(NB)とする。
【0277】
[実施例2.HLAクラスII分子との結合によるペプチドの特性評価]
【0278】
可溶性MHC結合アッセイは、本開示されるTレジトープのいずれか(これらに限定されないが、例えば、配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチド又はポリペプチド)に対して行う。可溶性MHC結合アッセイは、先に記載した方法に従って、本発明で開示の選択されたTレジトープ(例えばTレジトープ(配列番号14))に対して実施された。IC50値(nM)は、6点阻害曲線から導出される。Tレジトープ(配列番号14)のHLA結合結果の概要を
図1Aに提示する。EpiMatrix(商標)予測、算出されたIC50値、結果の分類は、各TレジトープおよびHLAアレルについて報告される。
図1B~Cは、選択されたクラスII HLAアレルに対する特定のTレジトープの結合曲線を示す。
図1Bは、HLA DRB1 *0801アッセイの結果を要約し、一方、
図1Cは、HLA DRB1 *1501アッセイの結果を要約している。本開示の他のTレジトープ(例えば、配列番号1~13及び15~124)が同様の結果を示すことが予想される。
【0279】
[ペプチドに曝露されたAPCの表現型を評価するための方法]
【0280】
プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)によるクラスIIHLA(HLA-DR)およびCD86の表面発現は、APCがT細胞応答を調節する一つの方法である。クラスIIHLA表面マーカーの発現は、Tレジトープ、特に対照Tレジトープ167(21stCenturyBiochemicals、マールボロ、MA)に応答して低下することが以前に証明されている。さらに、表面マーカーCD86の発現の減少は、TReg機能の向上と正の相関がある(ZhengYら、JImmunol、2004、172(5):2778-84)。このアッセイでは、選択されたTレジトープを含む候補Tレジトープが、プロAPC、特に樹状細胞の表面上のクラスIIHLAおよび共刺激分子CD86の発現をダウンレギュレートする能力について試験される。
【0281】
本開示のTレジトープ(以下に限定されないが、例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で、配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の比率で分布する1~12の追加のアミノ酸を含む、またはこれらのみからなる、または本質的にこれらからなるペプチドまたはポリペプチドが、EpiVax(EpiVax、プロビデンス、ロードアイランド州)で以前に開発した独自のAPC表現型分析法を使用して調節可能性について個別にテストされる。以前に採取され凍結されたPBMCは、通常の方法で解凍され、chRPMIに懸濁される。EpiVaxからの発明者の指示および指導の下、HLAタイピングは、ハートフォード病院(コネチカット州ハートフォード)により、EpiVaxから提供された細胞材料の少量の抽出サンプルに対して実施される予定である。アッセイ0日目に、0.5x106の細胞を抽出し、表面マーカーCD11c(樹状細胞に特有のマーカー)の存在についてスクリーニングし、表面マーカーHLA-DRおよびCD86の存在についてフローサイトメトリーで分析されるであろう。残りの細胞は、プレーティング(chRPMI+800ul培地中の4.0x106細胞/mL)し、選択したペプチドの1つ、または緩衝液のみを含むポジティブおよびネガティブコントロールで刺激する(50μg/mL)(ネガティブコントロール)。Tレジトープ 167(ポジティブコントロール)(21st Century Biochemicals、マールボロ、MA)、Flu-HA306-318(ネガティブコントロール)(21ST Century Biochemicals、マールボロ、MA)及びOva323-339(ネガティブコントロール)(21st Century Biochemicals、マールボロ、MA)などを含む、選択されたペプチド又はポジティブコントロール及びネガティブコントロールのうちの1つで刺激する。プレーティングされた細胞は、37℃で7日間インキュベートされる。アッセイ7日目に、インキュベートされた細胞は、表面マーカーCD11cの存在についてフローサイトメトリーによりスクリーニングされる。CD11c陽性細胞は、次に表面マーカーHLA-DRおよびCD86の存在について分析される。実験ペプチドは、5人の異なるヒトドナーから採取されたサンプルでテストされる。
【0282】
健康なドナーから得た全血から白血球をろ過するために、ロードアイランド血液センター(プロビデンス、ロードアイランド州)から白血球除去フィルターを入手する。全血をフィルターに通した後、フィルターを逆方向に流し、回収した白血球をフィルターから押し出す。その後、通常のFicoll(商標)分離勾配(GEヘルスケア社製)を用いて白血球を分離する。回収された白血球は、その後、将来の使用のために冷凍保存される。アッセイに使用するために必要な場合、凍結した白血球は通常の方法で解凍される。後述のGvHD研究のために、PBMCを入手し(例えば、HemaCare、Van Nuys、CAから)、実験を実施する。
【0283】
樹状細胞の表現型に対する推定Tレジトープへの曝露は、複数の手段で測定される。まず、各実験条件について、CD11cとHLA-DRの表面発現を対比させたドットプロットを作成する。すべてのコントロールペプチドと実験ペプチドに暴露した細胞のドットプロットは、培養液のみに暴露したコントロール細胞のドットプロットに重ね合わせる。この重ね合わせは、Tレジトープで刺激した細胞と刺激していないCD11c-high細胞の間のHLA-DR分布のシフトを視覚的に観察する有効な方法となる(データは示されていない)。観察されたHLA-DRの分布のシフトは、定性的な指標として報告される。次に、各ドットプロットのCD11c-ハイセグメントについて、HLA-DR発現強度の変化を計算する。HLA-DR発現強度の変化率は、ペプチド曝露細胞のHLA-DR発現の平均蛍光指数(MFI)から培地暴露細胞のHLA-DR発現のMFIを引いたものを、培地暴露細胞のHLA-DR発現のMFIで割って100倍したもの
(HLA-DRMFIpeptide-HLA-DRMFImedia/HLA-DRMFImedia*100)
または(HLA-DRMFIペプチド-HLA-DRMFI培地/HLA-DRMFI培地×100)
に等しくなる。次に、CD11c高発現集団の中に存在するHLA-DR低発現細胞の割合の、培地コントロールに対する変化率を、各ペプチドについて計算する。HLA-DR-low細胞の割合の変化率は、ペプチド曝露細胞のHLA-DR-lowの割合から培地曝露細胞のHLA-DR-lowの割合を引いたものを、培地曝露細胞のHLA-DR-lowの割合で割って100倍したもの
(HLA-DR-low%peptide-HLA-DR-low%media/HLA-DR-low%media*100)
または(HLA-DR-低%ペプチド-HLA-DR-低%培地/HLA-DR-低%培地×100)
となるように、計算される。このアッセイでは、観察されたHLA-DRMFIの負の変化と、CD11c-高発現集団に存在するHLA-DR-low細胞の割合の正の変化は、HLAの発現低下と制御性APC表現型へのシフトを示唆する。
【0284】
同様の方法で、T細胞の活性化を促進することが知られているコスティミュレーション分子であるCD86の表面発現に対するTレジトープ曝露の影響も評価する。まず、各実験条件について、CD11cとCD86の表面発現を対比するドットプロットを作成する。すべてのコントロールおよび実験用Tレジトープに暴露した細胞のドットプロットを、培養液のみに暴露したコントロール細胞のドットプロットに重ね合わせる。この重ね合わせは、Tレジトープで刺激された細胞と刺激されていないCD11c-高発現細胞の間のCD86分布のシフトを視覚的に観察する効果的な方法となる。観察されたCD86の分布のシフトは、定性的な指標として報告される。次に、各ドットプロットのCD11c-ハイセグメントについて、CD86-高発現の強度の変化を計算する。CD86-高発現の強度の変化率は、ペプチド曝露細胞に対するCD86発現の平均蛍光指数(MFI)から培地暴露細胞に対するCD86-高発現のMFIを引いたものを、培地暴露細胞に対するCD86発現のMFIで除して100倍したもの
(CD86-highMFIpeptide-CD86-highMFImedia/CD86-highMFImedia*100)
または(CD86-高MFIペプチド-CD86-高MFI培地/CD86-高MFI培地×100)
に等しくなる。次に、CD11c高発現集団の中に存在するCD86低発現細胞の割合の変化率を算出する。CD86-high細胞の割合の変化パーセントは、ペプチド曝露細胞に対するCD86-highの割合から、培地暴露細胞に対するCD86-highの割合を引いたものを、培地暴露細胞に対するCD86-highの割合で割ったものを100倍したもの
(CD86-low%Ipeptide-CD86-low%media/CD86-low%media*100)
または(CD86-低%ペプチド-CD86-低%培地/CD86-低%培地×100)
に等しくなる。このアッセイでは、観察されたCD86MFIの負の変化と、CD11c-高発現集団に存在するCD86-low細胞の割合の正の変化は、CD86の発現が減少し、制御性APC表現型へのシフトがあることを示す。
【0285】
[実施例3.ペプチド露出型APCの特性評価]
【0286】
樹状細胞表現型決定アッセイは、本開示のTレジトープ(これらに限定されないが、例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で、配列番号1~124のポリペプチドN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド)で実施される。
【0287】
CD11対HLA-DRの表面発現を表すドットプロットは、様々なペプチド刺激剤の存在下で、5人のドナーについてアッセイ7日目に分析される。CD11c+/HLADR+集団の下方への移動が、培地対照と比較して、本開示のTレジトープで処理したサンプルで明らかになることが予想され、獲得した制御表現型が示される。
【0288】
CD11c対CD86の表面発現を表すドットプロットは、様々なペプチド刺激剤の存在下で5人のドナーについてアッセイ7日目に分析されるであろう。培地対照と比較して、本開示のTレジトープで処理したサンプルに存在するCD86-低発現細胞の増加が予想され、これは、獲得した調節表現型へのシフトを示す。請求されるTレジトープへの曝露により、試験される全ての対象においてHLA-DRの発現が低下することがさらに予想される。
【0289】
[制御性T細胞の増殖に対するペプチドの効果の評価方法]
【0290】
EpiVax(プロビデンス、ロードアイランド州)が行った以前の研究では、ポジティブコントロールTレジトープ167(配列番号134、PAVLQSSGLYSLSSVTVPSSSLGTQ、21st Century Biochemicals、マールボロ、マサチューセッツ州)を含む既知のTレジトープへの曝露後、制御性T細胞の増殖が増加することが実証された。本開示のTレジトープ(以下に限定されないが、例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、及び任意選択で、配列番号1~124のポリペプチドのN末端及び/又はC末端に任意の比率で分布する1~12の追加のアミノ酸を含む、またはこれらのみからなる、または本質的にこれらからなるペプチドまたはポリペプチド)、CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞の間の増殖を誘導する能力について試験される。このアッセイでは、本発明で開示のTレジトープ(例えば、配列番号7)を含む候補Tレジトープは、CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞の間で増殖を誘導する能力について試験される。過去に採取し凍結したPBMCを解凍し、従来の方法で調整したchRPMI(3.3x106細胞/mL)中に懸濁させる。評価対象となるドナーは、HLADRB1スーパータイプの多様性を代表すものである。細胞はCFSE(Cat#:65-0850-84、Affymetrix、サンタクララ、CA)で染色し、1ウェルあたり30万個の細胞でプレーティングする。プレートは一晩インキュベートする(37℃、5%CO2)。各ウェルには200μLの培地が含まれている。模範的な実験では、アッセイ1日目に、配列番号7を滅菌DMSOで再構成し、最終ストック濃度10mg/mLとする。EpiVax(エピバックス、ロードアイランド州プロビデンス)で行われた以前の滴定実験により、0.5μg/mLの破傷風トキソイド(TT)(Astarte Biologics、ワシントン州ボセル)で刺激すると、健康対照ドナー(ロードアイランド血液センター、ロードアイランド州プロビデンス)から採取したPBMCにおいて、測定可能なCD4+エフェクター記憶T細胞応答を誘発することが立証されている。破傷風トキソイドストック(100μg/mL)(Astarte Biologics、ボセル、WA)は、1μg/mLの作業濃度(2x濃度)をもたらす調整済みchRPMIで希釈される。次に、プレーティングした細胞(100μLの培地中)を、100μLの調整済みchRPMI(ネガティブコントロール)、100μLの破傷風トキソイド溶液(2x溶液、ポジティブコントロール)(AstarteBiologics、ボセル、WA)、100μLの2991μL破傷風トキソイド溶液の希釈液+9μLの配列番号7溶液、100μLの2997μL破傷風トキソイド溶液の希釈液+3μLの配列番号7溶液、または100μLの6998.2μL破傷風トキソイド溶液の希釈液+1.8μLの配列番号7溶液のいずれかで刺激する。その後、全てのプレートをさらに6日間インキュベートする。アッセイ5日目に、各ウェルから100μLの上清を除去し、新たに調整したchRPMI(TTなしコントロールウェル用)、または2X TT(1mg/mL)を含む100μLの培地(TT単独またはTT+Tレジトープでインキュベートしたウェル用)に交換される。さらなるTレジトープは追加されない。
【0291】
【0292】
FoxP3、CD25、グランザイムBおよび増殖の上昇レベルを示す高度に活性化された制御性T細胞が選択される。高度に活性化された制御性T細胞とCD4+エフェクターT細胞のゲーティング戦略を、
図2A~C(代表的な結果を表している)に示す。
図2Aに示すように、細胞はまず凝集物と死細胞を除去するためにゲーティングされ、生細胞はCD4+T細胞のためにゲーティングされ、その後のすべての分析はこの集団で行われる。CD4+T細胞は、CD25、FoxP3および低CFSE(増殖)上昇のためにゲーティングされる(
図2B)。
図2Bは、0.5μg/ml TTを添加した代表的なアッセイ(右側)の結果、およびTTを添加しない代表的なアッセイの結果(左側)を示す。
図2Cは、そのようなアッセイの代表的な結果を示し、増殖および活性化CD4+T細胞集団が高度に相関していることを表している。
【0293】
[実施例4.Tレジトープは、高増殖性、活性化された制御性T細胞の集団を誘導する]
【0294】
制御性T細胞増殖アッセイは、本開示のTレジトープ(これらに限定されないが、例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(及び/又はその断片若しくは変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチド又はポリペプチド)を、先に述べた方法に従って解析することができる。このようなデータは、本開示のTレジトープが、高増殖性、活性化制御性T細胞の集団を強く誘導することを実証することが期待される。
【0295】
[CD4+エフェクターT細胞の増殖に対するペプチドの効果を評価する方法]
【0296】
PBMC細胞集団に含まれるCD4+エフェクターメモリーT細胞は、既知のT細胞エピトープによる刺激に応答して増殖を誘導することができる。
【0297】
この実験の目的は、本発明で開示のTレジトープが、直接(TRegの係合および活性化)または間接(APC表現型の調節)手段のいずれかによって抗原刺激CD4+エフェクターメモリーT細胞の増殖を抑制する能力を確立することであり、本発明で開示のTレジトープは、以下に限定されないが、例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で、配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチドが挙げられる。最初の例示的な研究のために、配列番号7を試験した。(
図3~6)。
【0298】
EpiVax(プロビデンス、ロードアイランド州)が行った以前の研究では、ポジティブコントロールTレジトープ167 (配列番号134、21st Century Biochemicals、マールボロ、マサチューセッツ州)を含む既知のTレジトープへの曝露後に、制御性T細胞の増殖が増加することが実証された。このアッセイでは、本開示のTレジトープ(例えば、配列番号7)を含む候補Tレジトープは、CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞の間の増殖を誘導する能力について試験される。過去に採取し凍結したPBMCを解凍し、従来の方法で調整したchRPMI(3.3x106細胞/mL)中に懸濁させる。表2は、評価対象となるドナーが、HLA DRB1 スーパータイプの多様性を表すことを示している。細胞はCFSE(Cat#: 65-0850-84、Affymetrix、サンタクララ、CA)で染色し、1ウェルあたり30万の細胞でプレーティングされる。プレートは一晩インキュベートされる(37℃、5%CO2)。各ウェルには200μLの培地が含まれている。アッセイ1日目に、配列番号7を滅菌DMSOで再構成し、最終ストック濃度10mg/mLとする。EpiVax(EpiVax、プロビデンス、ロードアイランド州)で行われた以前の滴定実験により、0.5μg/mLの破傷風トキソイド(TT)(Astarte Biologics、ワシントン州ボセル)で刺激すると、健康対照ドナー(ロードアイランド血液センター、プロビデンス、ロードアイランド州)から採取したPBMCにおいて、測定可能なCD4+エフェクター記憶T細胞応答を誘発することが立証されている。破傷風トキソイドストック(100μg/mL)(Astarte Biologics、ボセル、WA)は、1μg/mL(2x濃度)の作業濃度となるように、調整済みchRPMIで希釈される。プレーティングした細胞(100μLの培地中)を、100μLの調整済みchRPMI(ネガティブコントロール)、100μLの破傷風トキソイド溶液(2x溶液、ポジティブコントロール)(AstarteBiologics、ボセル、WA)、100μLの2991μL破傷風トキソイド溶液+9μL配列番号7溶液、100μLの2997μL破傷風トキソイド溶液+3μL配列番号7溶液、または100μLの6998.2μL破傷風トキソイド溶液の希釈液+1.8μL配列番号7溶液のいずれかで刺激する。その後、全てのプレートをさらに6日間インキュベートする。アッセイ5日目に、各ウェルから100μLの上清を除去し、新たに調整したchRPMI(TTなしコントロールウェル用)、または2X TT(1mg/mL)を含む100μLの培地(TT単独またはTT+Tレジトープでインキュベートしたウェル用)に交換する。さらなるTレジトープは追加されない。
【0299】
アッセイ7日目に、細胞はインキュベーションから除去される。
図2Aに示すように、細胞は、まず凝集体と死細胞を除去するためにゲーティングされ、生細胞はCD4+T細胞についてゲーティングされ、その後のすべての分析はこの集団で行われる。CD4+T細胞は、CD25、FoxP3、および低CFSE(増殖)の上昇についてゲーティングされる。活性化されたテフェクター集団は、CD4+/CD25-高/FoxP3-中(CD4
+/CD25
hi/FoxP3
int)として同定される(
図2B)。CD4+/Foxp3-低/CD25-高(CD4
+/Foxp3
lo/CD25
hi)T細胞の増殖は、CFSE染色(Cat#:65-0850-84、Affymetrix、サンタクララ、CA)の希釈から推定され、%増殖はCFSE-低(CFSE
lo)集団から決定される(
図2C)。
【0300】
[実施例5.ペプチド配列番号7は、CD4+エフェクターT細胞の増殖および活性化を抑制した]
【0301】
増殖刺激剤(破傷風トキソイド)が配列番号7と共送されたときのCD4+エフェクター細胞の活性化(
図3、右パネル:培地のみのコントロールを引いた絶対値;
図4、右パネル:培地のみのコントロールを引いた正規化値;
図5、右パネル:培地のみのコントロールを引かない絶対値;および
図6、右パネル:培地のみのコントロールを引かない正規化値によって実証される)および増殖(
図3、左パネル:培地のみのコントロールを引いた絶対値;
図4、左パネル:培地のみのコントロールを引いた正規化値;
図5、左パネル:培地のみのコントロールを引かない絶対値;および
図6、左パネル:培地のみのコントロールを引かない正規化値によって実証される)の変化が測定され、主にTエフェクター記憶細胞からなるCD4+T細胞の増殖応答が特徴づけられる。
【0302】
T細胞増殖アッセイは、先に記載した方法に従って、本開示のTレジトープで実施される。
図3~6は、表2に開示された様々なドナーにおいて、ペプチド(配列番号7)が、様々なドナーにおいて、破傷風トキソイドに反応する活性化エフェクターCD4+T細胞(CD4+/CD25-高/FoxP3-中、CD4
+/CD25
hi/FoxP3
intとして示される)の集団を用量依存的に強く抑制することを示している。
【0303】
[CD8+エフェクターT細胞に対するペプチドの効果を評価する方法]
【0304】
PBMC細胞集団内に含まれるCD8+エフェクターメモリーT細胞は、既知のクラスI T細胞エピトープによる刺激に応答して増殖が誘導されることが既に示されている。このアッセイの結果は、本発明で開示されるTレジトープ(これらに限定されないが、例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)および任意選択で、配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチドが挙げられる。)が、直接(TRegの係合および活性化)または間接(APC表現型の調節)のいずれかの手段によって抗原刺激CD8+TエフェクターメモリーT細胞の増殖を抑制する能力を立証する。
【0305】
T細胞増殖アッセイは、本開示のTレジトープ(これらに限定されないが、例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(及び/又はその断片若しくは変異体)および任意選択で、配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の比率で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチド又はポリペプチドが挙げられる。)を、先に述べた方法に従い、投与する。2人の健康なドナーからのPBMCを解凍し、通常の方法で調整したchRPMI(3.3x106細胞/mL)に懸濁する。細胞はCFSE(Cat#: 65-0850-84、Affymetrix、サンタクララ、CA)で染色し、1ウェルあたり30万の細胞でプレーティングする。プレートは一晩インキュベートする(37℃、5%CO2)。アッセイ1日目に、本開示のTレジトープを滅菌DMSOで再構成し、最終ストック濃度20mg/mLとする。chRPMI中最終濃度が2倍の本開示のTレジトープの中間溶液を、前述のように調製する。本開示のTレジトープの最終濃度は、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL及び20μg/mLで試験される。CD8+刺激抗原として、ヒトサイトメガロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、及びインフルエンザウイルスに由来する23種のMHCクラスI制限ウイルスエピトープからなるCEFペプチドプールを使用する。CEFペプチドをウェルに添加し(2μg/mLのデータを示す)、ウェルには細胞を含む培地(コントロール)、又は、細胞と0μg/mL、1μg/mL、2μg/mL又は4μg/mLの本開示のTレジトープを有する培地を使用する。全てのプレートを、さらに6日間インキュベートする。アッセイ5日目に、100μLの上清を各ウェルから除去し、新たに調整したchRPMIに置き換える。
【0306】
従来の方法で、生死判定マーカー、細胞外マーカーCD4、CD8α、CD25、CD127、CD45RA、CCR7、細胞内マーカーFoxP3について染色する。FACS分析後、細胞をゲーティングし、凝集塊や死細胞を除去する。生細胞集団について、CD8αおよびCD4細胞を別々にゲーティングし、それぞれの集団について、先に説明したように増殖(CFSElow集団)または活性化(CD25-高/FoxP3低/中:FoxP3int_lo CD25hi)を分析する。
【0307】
[実施例6.本開示のTレジトープは、CD8+エフェクターT細胞の増殖を抑制する]
【0308】
健常ドナーからのPBMCがCEFペプチド混合物で刺激された場合における、本開示のTレジトープ(これらに限定されないが、例えば、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で、配列番号1~124のポリペプチドのN末端及び/又はC末端に任意の割合で分布する1~12の追加のアミノ酸を含む、またはこれらのみからなる、または本質的にこれらからなるペプチドまたはポリペプチドが挙げられる。)によるCD8+T細胞応答の潜在的な阻害を試験することができる。本発明で開示のTレジトープは、CEFペプチドに対するCD8+T細胞の増殖反応、及び活性化を、用量依存的に強く阻害することが予想される。
【0309】
(7)免疫応答(GvHD)に対するペプチドの効果の評価方法)
【0310】
骨髄移植は、不健康な骨髄を、提供された健康な骨髄と置き換える処置である。骨髄移植は、白血病(Vincente Dら、(2007)、Bone Marrow Transplant、40(4):349-54)のような生命を脅かす血液癌、再生不良性貧血(Champlin REら、(2007)、Blood、109(10):4582-5)のように骨髄不全となる疾患、その他の免疫系疾患や遺伝性疾患 (Chinen J and Bucley RH, (2010), J Allergy Clin Immunol, 125(2 Suppl 2):S324-35)の患者を治療するために使用され得る。移植片対宿主病(GvHD)は、骨髄移植における主要な合併症として知られており、発症後すぐに高い死亡率を示すことが特徴である(Lee SJら、(2003)、Biol Blood Marrow Transplant、9(4):215~33)。GvHDでは、移植されたドナー組織からHLA不一致のレシピエント組織へ、ドナーリンパ球が向かう際に、ドナーリンパ球によって、深刻な組織損傷が引き起こされる。症状としては、レシピエントにおける輸液によって引き起こされる皮膚、肺、肝臓、腸などの様々な器官における重度の損傷が挙げられる(Goker H et al., (2001), Exp Hematol, 29(3):259-77 )。
【0311】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)(leukopaks(Hemacare,Van Nuys,CA)から得られた)を免疫不全マウスに移植すると、20~50日までに死亡するGvHD様症候群を引き起こすことがEpiVax(プロビデンス、ロードアイランド州)により、過去に観察されている。このモデルでは、移植されたPBMCに含まれるT細胞が宿主マウスの皮膚、肝臓、腸、肺、腎臓に浸潤し、重度の障害を引き起こし、最終的に死に至る。免疫不全マウス系統NOD-scid IL-2Rγnull(NSG-Jax株#005557)(The Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)マウス及びヒトPBMCの移植を使用して、GvHDの進行に対する本開示のTレジトープの影響を評価する。アッセイ1日目において、マウスを体重によってマッチした治療群及び対照群にグループ分けし、次にX線照射器源(Lifespan Hospital、プロビデンス、ロードアイランド州)から100cGyで照射する。照射6時間後、対象マウスは尾静脈から1000万個のhPBMCsを静脈内投与される。一部のマウスは照射を受けたが、PBMCは受けなかった(表3のグループ8)。アッセイ0日目からアッセイ25日目まで、対象マウスは表2に概説したスケジュールに従って投薬される。
【0312】
体重減少、姿勢、活動、及び毛並みと皮膚の外観を含む臨床的観察を、1週間当たり3回行う。対象マウスは、開始日から20%以上の体重減少を示した場合、または以下の臨床的徴候の組み合わせを示した場合に安楽死させる:(i)開始日から10~20%の体重減少、(ii)触ると冷たい、(iii)背中を丸めた姿勢とみすぼらしい毛並みを伴う無気力。
【0313】
【0314】
[実施例7.本開示のTレジトープは、異種間のGvHDモデルにおいてGvHDの発生を抑制する]
【0315】
免疫不全マウスへのヒトリンパ球の移植と、その後の本開示のTレジトープによる処置(例えば、限定されないが、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド)により、このin vivoモデルにおいて、免疫機能に対する本開示を受けたTレジトープの評価を行うことを可能にする。本開示のTレジトープは、T細胞の活性化を抑制し、その結果、疾患の進行を遅らせることが期待される。評価するための主な評価基準は、対象の生存である。Kaplan-Meiers Survival Curveによって示唆されるように、本開示のTレジトープで治療したグループのGvHDの発症の遅延が観察されると予想される。本開示のTレジトープによる処置は、ネガティブコントロール及びポジティブコントロールのIVIGと比較して、生存期間の延長をもたらすと予想される。
【0316】
[実施例8.FVIII-Tレジトープ構築物の作製]
【0317】
Tレジトープと免疫原性タンパク質との融合は、免疫原性タンパク質の末梢寛容の誘導につながる可能性がある。凝固第VIII因子は、重度の血友病Aの人々において免疫原性である。このような構築物を製造する1つの例示的な方法において、第VIII因子およびTレジトープのコード配列を含むキメラ構築物を製造する(Sambrookら、Molecular Cloning,1.A Laboratory Manual, 2 ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989))。簡単に言えば、カルボキシ末端および/またはアミノ末端でTレジトープと融合したFactor VIIIコード領域は、重複するオリゴをアニーリングすることによって生成され、発現プラスミドにサブクローニングされる。Tレジトープは、例えば、突然変異誘発(すなわち、部位特異的突然変異誘発)により、第VIII因子に挿入されることもできる。プラスミドは、DG44 CHO細胞にトランスフェクトされ、安定なトランスフェクタントが選択される。キメラタンパク質は、イムノアフィニティーカラム上で精製され、免疫寛容原性を評価する。表3および4は、そのようなタンパク質(例えば、キメラタンパク質)の例示的な実施形態を示している。表4および5は、配列番号1と融合した第VIII因子を表しているが、そのような構築物は、本開示の、1または複数の配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有している、1または複数のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、Tレジトープペプチド、またはT細胞エピトープポリペプチド)を含みうることが理解されるべきである。
【0318】
【0319】
【0320】
【0321】
【0322】
【0323】
【0324】
[実施例9.強化されたワクチン送達ビヒクルの生成]
【0325】
Fc受容体へのFc結合は、T及びBリンパ球への抗原提示細胞の提示における取り込みを強化する。配列番号1~124のTレジトープは、IgG分子内に位置し、抑制的なシグナルを送達するように作用する。より詳細には、配列番号1、3~8、14~15、16~28、42~74、および111~124はヒトIgG重鎖可変領域内に位置し、配列番号2、9~11、29~41、および75~100はヒトIgG重鎖定常領域内に位置し、配列番号12はヒトIgG軽鎖可変領域内に位置し、配列番号13および101~110はヒトIgG軽鎖定常領域内に位置する。IgG(またはその抗原特異的抗体断片(Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉鎖構造多特異性抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディを含むが、これらに限定されない))の改変により、その中に含まれる1または複数の配列番号1~124の配列が、もはやMHC分子および/または制御性T細胞に結合しないので、抑制効果を回避しながらワクチン候補の効率的な標的化を可能にする。TレジトープのMHC分子への結合を減少させる改変は有用である。表6は、そのような改変を例示している。関心のある様々なタンパク質またはエピトープ擬似タンパク質とTレジトープ修飾lgG Fcを含むキメラ構築物が設計される(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2 ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989))。簡単に言えば、目的のタンパク質またはエピトープ擬似タンパク質は、オーバーラップオリゴをアニーリングすることによって生成され、Tレジトープ改変Fc融合発現プラスミドにサブクローニングされる。このプラスミドをDG44 CHO細胞にトランスフェクションし、安定なトランスフェクタントが選択される。キメラタンパク質ホモダイマーは、プロテインAカラム上で精製し、免疫原性を評価する。表6は、キメラタンパクの例示的一実施態様を例証しており、関心のある疑似タンパク質が、改変Fcタンパク質に融合している免疫原性T細胞エピトープ(この例では、エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)由来)の列(string)であり、ここでは、TレジトープがもはやMHCクラスII分子と結合せず、ナチュラル制御性T細胞を刺激できないように改変されている。表6におけるEBV-Tレジトープ改変Fc配列(Kbシグナル配列)は、下線テキストで表される。Tレジトープは、太字で表される。Tレジトープ改変アミノ酸は、影付きテキストで表される。ヒトFc領域は、イタリック体で表される。表4および5は、配列番号1と融合した第VIII因子を表しているが、このような構築物は、本開示の、1または複数の配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有している、1または複数のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、Tレジトープペプチド、またはT細胞エピトープポリペプチド)を含みうることが理解されるべきである。
【0326】
【0327】
[実施例10.FcへのTレジトープの挿入]
【0328】
1または複数の、配列番号1~124のTレジトープの挿入または融合による、IgG(またはその抗原特異的抗体断片(限定されないが、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、閉鎖構造多特異抗体、ジスルフィド結合scfv、ダイアボディ)を含む)の改変は、それによって、改変IgGまたはその断片のMHC分子および制御性T細胞への結合を増強し、免疫賦活作用を抑制することができる。配列番号1~124(およびその断片または変異体)の1または複数のTレジトープの挿入または融合による、IgG分子またはその断片などの抗体例えば、特定の抗体またはその断片が変異または欠損した対応部分を有する場合)の改変は有用である。表7は、ヒトIgG1 Fcタンパク質に挿入または融合されたTレジトープ(配列番号29)の1つの例示的な実施形態を示す。Tレジトープは、太字で表される。ヒトFc領域は、イタリック体テキストで表される。表7は配列番号29の挿入を表しているが、このような構築物は、本開示の、1または複数の配列番号1~124の配列(および/またはその断片もしくは変異体)、ならびに任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有している、1または複数のポリペプチド(Treg活性化制御性T細胞エピトープ、Tレジトープ、Tレジトープペプチド、またはT細胞エピトープポリペプチド)の挿入を含みうることが理解されるべきである。
【0329】
【0330】
(8)Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの作製
【0331】
Tレジトープと血液成分(アルブミンなど)との融合は、Tレジトープペイロードのためのキャリアタンパク質として有用である。本開示のTレジトープ-血液成分コンジュゲートは、in vivoにおけるTレジトープの半減期を延長し、Tレジトープを急速なタンパク質分解から保護し、Tレジトープを循環からの急速なクリアランス及び/又は急速な腎排泄から保護し、対象の身体全体にTレジトープ-血液成分コンジュゲートの広い分布を可能にし得る。適切な免疫細胞(マクロファージやAPCなど)へのTレジトープの送達を助け、特定の免疫細胞(マクロファージやAPCなど)のエンドサイトパスウェイによってTレジトープを処理することを可能にし、及び/又は前記免疫細胞によるTレジトープの抗原としての提示を補助する。
【0332】
Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、本発明で開示のTレジトープペプチド(例えば、これらに限定されないが、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で本開示の配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸を含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなる配列を有しているペプチドもしくはポリペプチド)を改変することによって形成され、Tレジトープペプチドに反応性部位を付加して改変型Tレジトープペプチドを作成し、次いで、米国特許第6,849,714号、米国特許第6,887,470号、米国特許第7,256,253号、および米国特許第7,307,148号に開示されているように、このポリペプチドに反応性部位を付加して改変型Tレジトープペプチドを形成し、改変Tレジトープペプチドの反応性部位と血液成分上の反応性官能基との間に結合を形成させる。アルブミンは、Tレジトープ-アルブミンコンジュゲートをマクロファージおよびAPCなどの適切な細胞に運ぶFc新生児結合ドメインを含むので、好ましい血液成分である。さらに、アルブミンは、アミノ酸34(Cys34)(ヒトセリンアルブミンのアミノ酸配列におけるアミノ酸の位置)にシステインを含み、pKaが約5の遊離チオールを含み、アルブミンの好ましい反応性官能基として機能し得る。アルブミンのCys34は、改変Tレジトープペプチドの好ましい反応性部位であるマレイミドプロピオンアミド(MPA)と安定なチオエステル結合を形成することができる。アルブミンとMPAで改変されたTレジトープペプチドとの間の安定なチオエステル結合は、生理的条件下で切断されることはない。
【0333】
Tレジトープペプチドは、本明細書に開示されているものであってもよく、ある複数の態様では、好ましくは配列番号1~124、または配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸からなるペプチドもしくはポリペプチドから選択することが好ましい。1または複数のリジンがTレジトープペプチドのN末端上に存在してもよく、例えば配列番号1~124から選択されるペプチドのN末端上に付加されるが、これらに限定されるものではない。ポリエチレングリコールリンカー(例えば、PEG2またはPEG12)などのリンカーは、1または複数のリジンとTレジトープ配列の間、またはTレジトープ配列のN末端に存在する。複数の態様において、カテプシンB部位などのリソソーム切断部位(任意にバリンおよびシトルリンからなる(N末端からC末端まで順次)切断部位)は、PEG2部分とTレジトープ配列の間に存在する。マレイミドベースの化学を使用して、改変Tレジトープペプチドを血液成分、好ましくは血清アルブミンに、1:1のモル比で共有結合させてもよい。改変Tレジトープペプチドを血液成分に連結することは、in vivoまたはex vivoで実施することができる。
【0334】
カテプシンBは、リソゾームのシステインプロテアーゼファミリーの中で最初に報告されたメンバーである。カテプシンBはエンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼの両方の活性を持ち、後者の場合はペプチジルジペプチダーゼとして作用する。カテプシンBは、Tレジトープが抗原提示細胞内のリソゾームコンパートメントに存在するときに、アルブミンからのTレジトープの適切な切断を促進するためにTレジトープペプチド設計に組み込まれた。バリン-シトルリンはカテプシンBの切断部位であり、以前から抗体薬物複合体(例えば、ブレンツキシマブ・ベドチンのモノメチルアウリスタチンE(MMAE)複合体)において良好に使用されてFDAに承認されている。この部位を組み込むこと意義は、APCに入った後、効率的なMHCクラスII提示のために、ヒト血清アルブミンからTレジトープを適切に開裂させる開裂部位を提供することである。EpiVaxは、カテプシンB部位の組み込みがTレジトープ組成物の設計に不可欠であるかどうかを決定することを求めた。
【0335】
[実施例11.Ex vivoコンジュゲーションによるTレジトープ-アルブミンコンジュゲートの作製]
【0336】
ペプチド合成には、標準的なFmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基)固相ペプチド化合物を使用した。合成はIntavis(商標) MultiPep(商標)自動ペプチド合成機で行った。アミノ酸は、不溶性ポリスチレン樹脂に結合した状態で、成長するペプチド鎖に段階的に添加される(C末端からN末端へ、右から左へ)。アミノ末端をFmoc基で保護したアミノ酸ビルディングブロックは、カルボン酸末端の活性化の後、1つ以上の縮合試薬(例えば、ヘキサフルオロリン酸アザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HATU)、O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸(HCTU))で成長している鎖にカップリングされた。各添加時の反応副生成物は、溶媒洗浄(6X、ジメチルホルムアミド(DMF))により除去した。各カップリングおよびキャッピング工程の後、ペプチド樹脂のピペリジン脱保護によりFmocを除去し(2回実施;Asp脱水を抑制するため、DMF中20%、体積/体積 0.1M HOBt)、樹脂をDMF 6xで洗浄し、次のアミノ酸を添加した。Tレジトープ配列のN末端にはカテプシンB切断部位が組み込まれた。
【0337】
PEG2構築物(「PEG2」または「P2」)の場合、所望のTレジトープペプチドが完成した後、PEG2部位がN末端に付加され、その後4のリジンがN末端に付加された。さらに、PEG2とリジン(リジン側鎖の一級アミンを介して)は、最終構築物の溶解度を増加させる。PEG2構築物の組成は表8(下)に示されている。
【0338】
【0339】
PEG12構築物(「PEG12」または「P12」)の場合、Tレジトープペプチド合成後にPEG6が2つ追加された。この場合、リジンは付加されなかった。PEG長を長くすることで、カテプシンBのドッキング領域を確保し、Tレジトープの溶解性を向上させた。PEG2構築物の組成を表9(下)に示す。
【0340】
【0341】
その後、少量のペプチド構築物を樹脂から除去し、TIS(トリイソプロピルシラン、5%)および水(2.5%)の存在下、トリフルオロ酢酸(TFA、92.5% v/v)で処理し、側鎖保護基を消去してペプチドサンプルを切断および脱保護化した。各粗直鎖状ペプチド(約3~5mg)を、20mmx50mm、5μm、ハイドロスフェアカラム(YMC C18)を用いた分取逆相HPLC(Gilson)で精製した。ペプチドは、90%以上の純度まで精製し(分析用HPLCで決定)、カテプシンBの評価の前に、ABI-SCIEX QSTAR XL Pro Qo-TOF マススペクトロメーターを使用して質量を確認した。残りのペプチド(PEG2-TレジトープおよびPEG12-Tレジトープ)は、後日3-マレイミドプロピオン酸(MPA)を添加するために樹脂上に残した。
【0342】
組換え体ヒトカテプシンB(R&D Systems(商標)のカタログ953-CY)は、Tレジトープペプチドに組み込まれたVal-Cit部位の切断を評価するために使用した。活性測定プロトコルはR&D Systems(商標)の推奨に従い、0.01μgのrhカテプシンBと10uMのペプチド基質の最終測定条件で使用した。カテプシンBと精製ペプチドをインキュベートした後(RTで15分間)、Qstar XL Pro(商標)を用いたマススペックでペプチドを評価した。PEG2ペプチドの切断は成功せず、カテプシンBのプロトコルをさらに変更しても切断は成功しないことが判明した。PEG12製剤については、切断が成功したことが示された。
【0343】
カテプシンBによるVal-Cit部位の切断を評価した後、3-マレイミドプロピオン酸(MPA)の反応性部位をPEG2およびPEG12ペプチドのN末端に付加した。アミノ酸ビルディングブロックと同様に、MPAはFmoc基で保護され、カルボン酸末端の活性化後に成長する鎖に結合される。最終的なMPA-Tレジトープ構築物は、樹脂から除去され、ペプチドサンプルは、TIS(トリイソプロピルシラン、5%)および水(2.5%)の存在下、トリフルオロ酢酸(TFA、92.5% v/v)で処理して切断および脱保護化した。各粗直鎖状ペプチド(約20mg)を、20mmx50mm、5μm、ハイドロスフェアカラム(YMC C18)を用いた分取逆相HPLC(Gilson)で精製した。MPAペプチドは、90%以上の純度で精製し(分析用HPLCで決定)、
図10~13に示すように、質量はABI-SCIEX QSTAR XL Pro(商標)Qo-TOF質量分析計で確認される(データは示していない)。MPA-P2およびMPA-P12Tレジトープの合計15mgは、rHSA(Albucult-Novozyme(商標))へのコンジュゲーションに使用され、最終的にHSA-Tレジトープコンジュゲートを構築することができるようにした。
【0344】
エルマン試薬(5,5’-ジチオ-ビス-[2-ニトロ安息香酸])は、システインなどのスルフヒドリル基含有化合物の標準曲線と比較することにより、サンプル中のスルフヒドリル基を推定するために使用した。エルマンテストは、分析の精度を確保するために、複数の濃度のrHSA(Sigma(商標)、Albucult(R))で実施した。エルマン試薬(Sigma(商標))、Sigma(商標)ロットRF-009のrHSAは、マレイミドとのコンジュゲーションに利用できるであろう遊離システインについて評価した。表10(下)に示すように、rHSAの78%に遊離システインが存在すると推定された。
【0345】
【0346】
ペプチドはdH20に可溶化し、rHSAを加え(15mg/mL)、100mMリン酸バッファーを加えて最終pHを8とした。ペプチド/HSAは、室温で2時間、その後4℃で約24~30時間インキュベートした。
【0347】
コンジュゲーション工程の後、HSA-コンジュゲートをまずPBS(pH7.0)に室温で2時間透析し、次に新鮮なPBSに4℃で18~24時間、2回入れ替えた。このプロセスにより、HSAおよびHSA-Tレジトープコンジュゲート調製物から過剰なペプチドが除去された。
【0348】
各コンジュゲートについてエルマンテストを実施し、rHSA遊離システインを介したペプチドのコンジュゲーションを実証し、反応におけるコンジュゲーションの効率を決定した。HSA-コンジュゲーション調製物は、既存の調製物に内在する還元型HSA(メルカプタブミン)を除去しなかった(コンジュゲーション前のHASの約22%)。残りの未反応HSAは、HSA-MPA_P2-Tレジトープ構築物について14%と決定され、これはマレイミド-Tレジトープとのコンジュゲーション後に14%遊離のシステインが残っていることを意味する。したがって、全rHSA調製物の~64%が、MPA_P2-Tレジトープペプチドと反応した。
【0349】
(9)Tレジトープ-血液成分コンジュゲートの免疫細胞への影響評価方法
【0350】
マレイミド系化合物が、Tレジトープ(例えば、これらに限定されないが、配列番号1~124のアミノ酸配列(および/またはその断片もしくは変異体)、および任意選択で配列番号1~124のポリペプチドのN末端および/またはC末端に任意の割合で分布している1~12の追加のアミノ酸含み、またはこれ(ら)のみからなり、または本質的にこれ(ら)からなるペプチドまたはポリペプチド)ペイロードを1:1の化学量論で組換えHSA(rHSA)に対して共有結合させるために使用されてもよい。マレイミドプロピオンアミド(MPA)は、HSAの遊離Cys34と安定なチオールエステル結合を形成する。HSAは新生児受容体(FcRn)のリサイクル経路を活用し、結合したペイロードの半減期を増加させ、反復投与の必要性を減少させる可能性がある。また、rHSAはコンジュゲートされたペイロードをリンパ節に送達し、FcRnを発現する樹状細胞や他の抗原提示細胞によってエンドサイトーシスされることが知られている。
【0351】
EpiVaxは、Tレジトープ間に切断部位を含むrHSA-Tレジトープコンジュゲートを設計した。この切断部位は初期エンドソームプロテアーゼに特異的であり、これによりTレジトープがrHSA分子から遊離し、細胞表面でのMHCクラスII提示の効率が高まる。このFDAに認可されたrHSAコンジュゲーション化学アプロ―チの長く実証された歴史、およびその成功した製造実績は、我々のT1Dペイロードの送達のための選択を支持している。
【0352】
Tレジトープ-血液成分コンジュゲートが形成されると、例えば本明細書に記載のように、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートと、Tレジトープペプチド単独と比較して、例えば、エフェクターT細胞の抑制及び制御性T細胞の活性化とそれらの増殖における有効性について評価することができる。さらに、Tレジトープ-血液成分コンジュゲートは、特定の抗原に対する免疫寛容を誘導する能力について評価されてもよい。
【0353】
[実施例12.Tレジトープ-アルブミン送達ビヒクルの抑制効果の評価]
【0354】
Tレジトープ送達ビヒクルの抑制効果を調べるために、健康なドナーPBMCを破傷風トキソイドバイスタンダー抑制試験(TTBSA)に使用し、CD4 T細胞の増殖、T細胞の活性化、Tエフェクターと制御性T細胞の頻度について分析を行い、
図10に示すようにTreg/Teffの比率を決定する。
【0355】
そこで、臨床応用に向けた最適なTレジトープの組み合わせを検討するため、in vitroにおけるエフェクターT細胞応答を相乗的に抑制するTレジトープの組み合わせの効果を分析する。これらの比較を容易にするために、ヒトドナー末梢血単核細胞(PBMC)を用いたハイスループットin vitroアッセイを開発する。このアッセイは、破傷風トキソイドバイスタンダー抑制試験(TTBSA)と呼ばれ、破傷風トキソイド(TT)ワクチン接種歴のある人に誘発される破傷風に特異的なTメモリー細胞を抑制するTregの能力を利用するものである。
【0356】
0日目にPBMCをインキュベートし、カルボキシフルオレセインサクシンイミドエスエル(CFSE)色素で染色した。1日目に、培地、破傷風トキソイド、および8μg/mL、6μg/mL、24μg/mLのTレジトープ、または10μg/mL、40μg/mL、100μg/mLのTレジトープ-アルブミンコンジュゲートを添加し、細胞を刺激する。破傷風トキソイドは0.5μg/mLの最終濃度で使用し、Tレジトープの阻害能力を測定するために、濃度を方法的に滴定し、最適化される。培地のみを含むネガティブコントロールも含まれる。7日目に、L/D細胞集団マーカー、細胞外染色剤、細胞内染色剤を添加する。8日目に、読み出しが行われる。活性化マーカー(例:CFSE、CD25)および細胞集団マーカー(例:L/D、CD2c、CD4、FoxP3)の解析のためのセルソーティングアッセイが実施される。
【0357】
ドナーPBMCとTTのインキュベーションは、Tエフェクター細胞の膨張を刺激する。TレジトープをTTと共にin vitroでPBMCに添加し、CD25高FoxP3高制御性T細胞を活性化し、TT特異的なTエフェクター細胞の増殖を抑制する。Tレジトープは、CD4+Tエフェクター細胞の増殖(CFSE希釈により測定)と活性化(CD25発現により測定)を用量依存的に著しく阻害し、またTreg(CD25+/FoxP3+/CD127低)をわずかに増殖するが、これはTreg/Teff細胞の比率が上昇することにより示唆されている。エフェクターT細胞増殖の減少は、例えばin vivoでのTregの誘導によって支持されるように、制御性T細胞の活性化及び/又はTT特異的TエフェクターのTregへの転換の直接的な結果である。
【0358】
TTBSAを用い、多数の利用可能なTレジトープのそれぞれを個別に、あるいはペアワイズの組み合わせで、CD4+T細胞増殖を抑制する可能性について検討する。最も有望なIgG-Tレジトープペプチドは、さらなる試験のために選択される。ある特定のTレジトープ、TレジトープAは、他の単一のTレジトープと比較して、TTBSAにおいて最も抑制的な活性を有する単一のTレジトープである。TレジトープAおよびTレジトープCを組み合わせることで、さらに大きなTT特異的T細胞増殖抑制作用が観察される。TレジトープAおよびTレジトープCをrHSAに結合させると、in vitroでの効果が向上する。
【0359】
このように、TTBSAを用いることで、HSA-Tレジトープコンジュゲートは、CD4+T細胞の増殖と活性化を抑制し、Teff細胞に対するTreg細胞の比率を増加させることが示されている。
【0360】
[実施例13.予め形成された共役HSA-Tレジトープ治療薬及びマレイミド-Tレジト
ープペプチド治療薬の有効性の評価]
【0361】
前もって形成されたコンジュゲートHSA-Tレジトープコンジュゲートと遊離マレイミド-TレジトープペプチドのOVA免疫応答への影響を評価する。後者の遊離マレイミドペプチドは、注射後、反応性マレイミド基を介して、対象の内在性HSAの遊離Cys34とin vivoでコンジュゲーションを形成している。MPA-P2およびMPA-P12の5mgを遊離-MPA-Tレジトープとして使用し、サンプル中の未抱合HSAは、抱合HSAと未抱合HSAのモル比を計算することで説明する。
【0362】
マウス(雌のC57BL/6)が50mgのオバルブミン(OVA)(皮下注射)で0日目(CFA)および14日目(IFA)に免疫化される。あらかじめ形成されたHSA結合処理物は、0日目のCFAでOVAと一緒に投与される。試験群には、OVA/HSA-P2-highとOCA/HSA-P2-lowがある。1回の注射で、OVAは50μg、HSAは800μg、HSA-P2H(high)コンジュゲートは825μg(~20μg Tレジトープ)である。HSA-P2L(low)コンジュゲートは100μg(~3.7μg Tレジトープ)である。4つの対照群には、PBSのみ、PBS/OVA、HSA/OVA、およびTレジトープ/OVAが含まれる。最後の群は、遊離マレイミドTレジトープペプチドの有用性を評価するために含まれており、尾静脈に静脈内投与される。1群あたり5匹のマウスを使用する。
【0363】
マウスは17日目に屠殺する。屠殺時点で、各動物について心臓から出血と脾臓が採取される。OVAで刺激した脾臓細胞について、IFNγ/IL2フルオロスポットアッセイ、IFNγ/IL17フルオロスポットアッセイ、CD4 T細胞増殖、およびT細胞特性評価を実施する。PHAは脾臓細胞アッセイのポジティブコントロール刺激として使用される。PHA刺激では、すべてのウェルがコンフルエントである。刺激後のSFC(スポット形成細胞)がネガティブコントロール(培地ウェル)に対して50スポット/106より大きくなければならず、また2より大きい刺激指数を持たなければならないという許容基準が用いられる。IFNγ/IL2 fluorospotおよびIFNγ/IL17 fluorospotアッセイの双方において、処理によってIFNγ産生が阻害され、HSAのみの対照群は処理群と比較して阻害が少ない。
【0364】
T細胞増殖および特性評価アッセイのために、脾臓細胞サンプルは、TCR Tg細胞におけるFoxP3発現の誘導と、CFSE希釈によるOVA特異的T細胞増殖の抑制(in vitroにおけるOVAペプチドへの反応)について評価される。FoxP3+Tregを検出するために、排出リンパ節の単細胞懸濁液を2.4G2 mAb(anti-CD16/32、ATCC)で15分間インキュベートしてFcRをブロックした後、抗CD3、CD4、CD25、抗クロノタイプKJ1-26で4℃、40分間染色した。KJ1-26はDO11.10トランスジェニックマウスで発現するクロノタイピングTCRに特異的である。その後、細胞を透過処理し、FoxP3核発現を染色し、Thermo Attune NxT Autosampler(商標)でFACS分析を行う。CD4+ CD25+ FoxP3+ KJ1-26+ 生細胞ゲート集団(gate population)を確立し、PBSまたはHSA単独と比較したOVA-特異的制御性T細胞の数および割合を決定する。
【0365】
抗原特異的T細胞増殖は、CFSE希釈により評価する。排出リンパ節を採取し、細胞増殖色素CFSEで染色し、単細胞懸濁液を2x106細胞/mLで調製する。細胞は、10μg/mL濃度のOVA323-339(New England Peptide、ガードナー、MA、USA)の存在下で、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加される。細胞は72時間刺激し、CD3α、CD4、CD8、CD54RA、CCR7、CD25、CD127、IFNγ、HLA-II、CD69、CD154、IL-17、IL-21で4℃、40分間染色するために採取される。細胞を固定し、透過処理し、FoxP3発現を染色し、フローサイトメトリーで解析する。OVA特異的なKJ1-26+ CD4+ CD25+ FoxP3+アダプティブ(変換型)制御性T細胞は、rHSAで処理したマウスと比較して、遊離マレイミド-レジトープおよびHSA-レジトープコンジュゲートで処理したマウスで増加する。遊離マレイミド-TレジトープおよびHSA-Tレジトープコンジュゲートは、rHSA単独と比較して、KJ1-26+ CD4+Tエフェクター細胞のOVA特異的増殖をより効果的に減少させる。
【0366】
17日目に採取した出血からの血清中の抗OVA抗体を、連続希釈プロットおよび抗体濃度を決定するための標準ELISAを含むELISAによって評価する。HSA-結合体および遊離マレイミドで処理したマウスは、異なる希釈における吸光度、ならびに標準曲線上の吸光度の比較によって示されるように、無処理と比較して低い血清抗体価を有する。
【0367】
(均等物)
本開示は、その特定の実施形態に関連して記載されてきたが、さらなる改変が可能であることが理解されよう。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野において既知または慣用の範囲内にあり、添付の請求項の範囲内に入るような本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、または適応を対象とすることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】