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特表2023-521012基材上に画像を形成するためのインクジェット印刷方法、インクジェットインクのインクセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】基材上に画像を形成するためのインクジェット印刷方法、インクジェットインクのインクセット
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/40 20140101AFI20230516BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230516BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230516BHJP
   C09D 11/326 20140101ALI20230516BHJP
【FI】
C09D11/40
B41M5/00 120
B41M5/00 110
B41M5/00 100
B41J2/01 501
C09D11/326
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559986
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2021058744
(87)【国際公開番号】W WO2021198480
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2025262
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506176906
【氏名又は名称】ゼイコン マニュファクチュアリング ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】デプレ, ロデ エリック ドリス
(72)【発明者】
【氏名】オプ デ ベーク, ワーナー ジョセフ ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ゲンズ, ウォウター ジェローム マリア
(72)【発明者】
【氏名】デ モント, ロエル
(72)【発明者】
【氏名】デルーバー, ゲールト ガストン ポール
(72)【発明者】
【氏名】デ ボス, ニルス マルガレータ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウィンズ, ロア
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB58
4J039BA04
4J039BC09
4J039BC10
4J039BC13
4J039BC14
4J039BC15
4J039BC60
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
インクセットの複数のインクジェットインクを基材上に加えることによる、基材上に画像を形成するためのインクジェット印刷方法及びインクセットであって、複数のインクジェットインクが少なくとも第1のインク及び第2のインクを含み、各インクが、顔料と、顔料を分散させるためのブロックコポリマー分散剤とを含み、ブロックコポリマー分散剤は第1のブロック及び第2のブロックを含み、第2のブロックは、少なくとも1種のモノマーMを使用して形成され、モノマーMは、メタクリレート及びアクリレートからなる群から選択され、モノマーMは顔料に固定化するための固定化モノマーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に画像を形成するためのインクジェットインクのインクセットであって、前記インクジェットインクが少なくとも第1のインク及び第2のインクを含み、各インクが
a.顔料、
b.前記顔料を分散させるための、第1のブロック及び第2のブロックを含むブロックコポリマー分散剤であり、前記第2のブロックが少なくとも1種のモノマーMを使用して形成され、モノマーMがメタクリレート及びアクリレートからなる群から選択され、前記モノマーMが前記顔料に固定化するための固定化モノマーである、ブロックコポリマー分散剤、並びに
c.少なくとも1種の水溶性有機溶媒、並びに
d.水
を含み、
前記第1のインクの前記顔料P1が前記第2のインクの前記顔料P2と異なり、前記第1のインクの前記ブロックコポリマー分散剤D1が前記第2のインクの前記ブロックコポリマー分散剤D2と異なり、前記第1のブロックコポリマー分散剤D1の前記第2のブロックがアリール(メタ)アクリレートモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含み、前記第2のブロックコポリマー分散剤D2の前記第2のブロックが、アルキル(メタ)アクリレートモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含む、
インクジェットインクのインクセット。
【請求項2】
前記ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれに関して、前記第1のブロックが前記顔料の水性相安定化のための親水性安定化部分であり、前記第2のブロックが前記顔料に固定化するための固定化部分である、請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
前記ブロックコポリマー分散剤D1、D2の少なくとも一方に関して、前記第1のブロックが、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、クロトン酸、クロトン酸モノエステル、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、t-ブチルアミノエチルアクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される、好ましくは前記顔料の水性相安定化のための親水性モノマーである、少なくとも1種のモノマーMを使用して形成されている、請求項2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれに関して、前記第1のブロックが前記顔料の水性相安定化のための親水性安定化部分であり、前記第1のインクの前記ブロックコポリマー分散剤D1の前記第1のブロックが、前記第2のインクの前記ブロックコポリマー分散剤D2の前記第1のブロックと、
前記ブロックコポリマー分散剤D1の前記第1のブロックの繰り返し単位の数であるnが、前記ブロックコポリマー分散剤D2の前記第1のブロックの繰り返し単位の数、nと異なる;
前記ブロックコポリマー分散剤D1の前記第1のブロックのうちの少なくとも1種の繰り返し単位が、前記ブロックコポリマー分散剤D2の前記第1のブロックの前記繰り返し単位と異なる;及び
前記第1のブロックが少なくとも2種の異なる繰り返し単位を有し、前記ブロックコポリマー分散剤D1のそれぞれの繰り返し単位の間の数の比が、前記ブロックコポリマー分散剤D2のそれぞれの繰り返し単位の間の数の比と異なる
のうちの少なくとも1つで異なる、請求項2又は3に記載のインクセット。
【請求項5】
前記ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれに関して、前記第2のブロックが前記顔料に固定化するための固定化部分であり、前記第1のインクの前記ブロックコポリマー分散剤D1の前記第2のブロックが、前記第2のインクの前記ブロックコポリマー分散剤D2の前記第2のブロックと、
a.前記ブロックコポリマー分散剤D1の前記第2のブロックの繰り返し単位の数であるmが、前記ブロックコポリマー分散剤D2の前記第2のブロックの繰り返し単位の数、mと異なる;
b.前記ブロックコポリマー分散剤D1の前記第2のブロックのうちの少なくとも1種の繰り返し単位が、前記ブロックコポリマー分散剤D2の前記第2のブロックの前記繰り返し単位と異なる;及び
c.前記第2のブロックが、少なくとも2種の異なる繰り返し単位を有し、前記ブロックコポリマー分散剤D1のそれぞれの繰り返し単位の間の数の比が、前記ブロックコポリマー分散剤D2のそれぞれの繰り返し単位の間の数の比と異なる
のうちの少なくとも1つで異なる、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項6】
前記ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれに関して、前記モノマーMが、ベンジルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、グリシジルメタクリレート、p-トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p-トリルアクリレート、ソルビルアクリレート、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAA)、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン(ACMO)、及び2-(2エトキシエトキシ)エチルアクリレート(EOEOEA)、並びにこれらの混合物のうちの少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項7】
前記アリール(メタ)アクリレートモノマーがベンジル基を含み、及び/又は前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーが分岐アルキル基を含み、好ましくはエチルヘキシル(メタ)アクリレートモノマーである、請求項1~6のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項8】
前記第1のブロックの繰り返し単位の数がnと定義され、前記第2のブロックの繰り返し単位の数がmと定義される、請求項1~7のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項9】
前記第1のブロックコポリマー分散剤D1の比n/mが、3.0未満、好ましくは2.0未満、及び特に0.2超である、請求項8に記載のインクセット。
【請求項10】
前記第2のブロックコポリマー分散剤D2が、10~100の範囲の繰り返し単位の数mを有し、好ましくは前記第2のブロックコポリマー分散剤D2の比n/mが、3.0未満、及び特に0.2超であり、より好ましくは、前記第2のブロックコポリマー分散剤D2の繰り返し単位の数nが5~50の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項11】
前記ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれに関して、前記第1のブロックが、メタクリル酸及びアクリル酸から選択されるモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項12】
前記ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれに関して、前記ブロックコポリマー分散剤がジブロックコポリマーである、請求項1~11のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項13】
前記インクジェットインクセットが、シアン顔料を含むシアンインク、マゼンタ顔料を含むマゼンタインク、イエロー顔料を含むイエローインク、及びブラック顔料を含むブラックインクを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項14】
前記マゼンタ顔料が、ピグメントレッド122、ピグメントバイオレット19、及びピグメントレッド202から選択されるキナクリドン顔料であるか、若しくは前記マゼンタ顔料がピグメントレッド57:1であり、好ましくはピグメントバイオレット19及びピグメントレッド202から選択され、並びに/又は
前記シアン顔料がピグメントブルー15:3であり、並びに/又は
前記イエロー顔料が、ピグメントイエロー155及びピグメントイエロー74から選択され、並びに/又は
前記ブラック顔料が、カーボンブラック、好ましくはピグメントブラック7である、
請求項13に記載のインクセット。
【請求項15】
前記顔料の量が、前記インクの総重量に対して、少なくとも1.0重量%、好ましくは少なくとも2.0重量%であり、好ましくは各インクが、25℃で最大30mPa.sの粘度を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項16】
前記ブロックコポリマー分散剤が少なくとも部分的に架橋されており、前記ブロックコポリマー分散剤が、前記顔料に付着しているか、又は少なくとも部分的に前記顔料をカプセル化している、請求項1~15のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項17】
前記少なくとも1種の水溶性有機溶媒が、ポリオール化合物及びグリコールエーテル化合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項18】
前記インク中の前記少なくとも1種の水溶性有機溶媒の重量濃度が、前記インクの総重量に基づいて、5重量%~50重量%の範囲、好ましくは7.5重量%~35重量%の範囲である、請求項1~17のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項19】
前記グリコールエーテル化合物がグリコールモノブチルエーテルである、請求項17に記載のインクセット。
【請求項20】
基材上に画像を形成するためのインクジェット印刷方法であって、インクセットの複数のインクジェットインクを前記基材上に加えることによるものであり、前記前記インクセットが請求項1~19のいずれか一項に記載のものである、インクジェット印刷方法。
【請求項21】
各インクジェットインクの液滴を前記基材上に噴射して、カラー画像を前記基材上に形成するステップを含む、請求項20に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項22】
前記液滴がインクジェット印字ヘッドを使用することにより噴射される、請求項21に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項23】
段ボール、波形ライナー、ラベル基材、又は柔軟性がある包装基材上に前記画像を形成するステップを含む、請求項20~22のいずれか一項に記載のインクジェット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明の分野は、複数のインクジェットインクを基材に加えることによる、基材上に画像を形成するためのインクジェット印刷方法に関する。本発明の分野は、本発明に従って基材上に画像を形成するためのインクジェットインクのインクセットにさらに関する。
【0002】
[背景]
基材上に複数のインクジェットインクを加えることによる、基材上に画像を形成するためのインクジェット印刷方法は一般的に公知である。産業用印刷用途のためのインクジェットインクは、主として、着色剤として顔料を使用するが、例外として、織物工業では多くの場合依然として反応性染料系のインクジェットインクを使用している。顔料は、キャリア媒体に実際に溶解している染料とは対照的に、インクジェットインクキャリア中でも固体のままでいる固体材料である。顔料粒子はインクに微細分散し、ナノメートルスケールのサイズである。典型的なインクジェット印刷方法は、3又は4色のインクジェットインクを使用して、多色の画像を作り出す。典型的な色は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)である。CMYカラーインクジェットインクは、典型的には有機顔料でできており、一部は錯体中に金属原子を含む一方で、Kインクは、典型的にはカーボンブラックでできている有機顔料を使用する。顔料粉末は、ナノメートル粒子としては市販されていないが、合成プロセスの間に形成された顔料粒子の集塊及び凝集体として販売されている。顔料の集塊及び凝集体はより小さくされる必要があり、典型的には、粉砕、微粉砕、又は集塊及び凝集体を砕く他の技法によりナノメートルスケールサイズにされるだろう。顔料粉末粒子の粒径減少は、多くの場合、後の段階でインクに使用されるキャリア媒体中で実施される。顔料粒子をより小さくするそのようなプロセスステップは、多くの場合、最終インク中よりも高い顔料濃度で行われ、その結果顔料分散液と称される。
【0003】
先に議論された通り、顔料は、30~300nmのサイズに機械的に砕かれるが、それは、顔料が再集塊するのを物理的及び/又は静電的に防ぐために分散剤(又は界面活性剤)を加えることにより安定化される必要がある。典型的には、顔料表面と、ポリマー性分散剤(例えば、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー)又は界面活性剤であり得る分散剤との間に化学結合がないので、これは物理化学的現象である。
【0004】
場合によっては、共有結合する化学物質も水性インク中の顔料粒子安定化に使用され得るが、これは、大抵は非常に費用のかかる製造方法である。
【0005】
安定な顔料分散液を製造する公知の手法は、ランダム重合された分散剤に基づいている:分散剤は、例えばフレキソ印刷用のアナログインクに使用されるが、インクジェットインクにも使用される。典型的には、ランダムポリマーは2種のモノマーでできており、一方はより顔料親和性であり、他方はよりキャリア液体と相溶性があるか、又はいわばマトリックス親和性がある。これらのモノマーは、ポリマー中にランダムに広がっており、そのためポリマー構造(すなわちモノマー配列)は事前に定義されていない。そのため、いくつかのポリマーは、液体中の顔料粒子を安定化させることが可能な好都合な構造を有するだろうが、安定化にとって「悪い」構造を有する非活性集団も同様にある(例えば、充分でない顔料アンカー、互いの顔料アンカーに充分に近接していない、マトリックス親和性基が少なすぎる)。これらの部分は、多くの場合吸着されないか、又は容易に脱着し、安定でない分散液をもたらす。
【0006】
疎水性及び親水性ブロックを含むブロックコポリマー分散剤は、多くのインクジェットインク特許に開示されてきた。米国特許5859113号(DU PONT)は、ポリマー性Aセグメント及びポリマー性Bセグメントを有するABブロックコポリマー分散剤を開示する。
【0007】
多種多様なポリマー性分散剤が提案されてきたが、特にインクジェットにおける顔料の分散安定性には、依然としてさらなる改善が必要である。一貫した画像品質のために、インクジェットインクは、例えば、顧客へのインクの輸送若しくは貯蔵の間の高温(60℃超)並びに水の蒸発及び水溶性有機溶媒の濃度上昇などの使用中のインクジェットインクの分散媒の変化又は機能性ポリマーの添加による基材上のインクの密着性、乾燥、耐水性若しくは耐引掻性の改善に対処することが可能である分散安定性を必要とする。
【0008】
産業用インクジェットプロセスにおいて、特に、より高い噴射頻度、より小さい液滴形成、より高い噴射温度、及び/又はより困難なシングルパス印刷用途で、インクジェット印刷に使用可能な顔料分散液の安定性の要求も増加しつつある。
【0009】
全てのインク添加剤(界面活性剤、ラテックス、ポリマー、オリゴマー、(水溶性)有機溶媒など)は、分散剤と競合して顔料表面と相互作用し、そのため、顔料分散液安定性に悪影響を与え得る。これらの添加剤は、典型的には、本質的に有機であり(インクマトリックスと非相溶性ですら、ある程度まで)、添加剤は、特に水性インク中で顕著に、顔料の同じ有機表面をめぐって競合するだろう。これが印字ヘッド内部で起こる場合、それは、表面からの分散剤の除去、安定性の低下又は破壊をもたらし、ノズルを不可逆的に詰まらせて、例えば、空白行及び画像品質の深刻な低下、又はヘッドへのインクフローに悪影響を及ぼす、大きすぎる粒子を含むインクをもたらす。
【0010】
要求増加のために、着色顔料の種類に応じた最適化など、インク添加剤をさらに最適化して、一貫した画像品質及び信頼性のあるインクジェットプロセスを得ることが必要である。
【0011】
したがって、そのような安定な顔料インクジェットインクであって、インクジェットインク中の顔料の分散安定性がより多様なインクジェットインクに関して容易に増大され得る顔料インクジェットインクを製造できることが必要である。
【0012】
[概要]
本発明の第1の態様によると、基材上に複数のインクジェットインクを加えることによる、基材上に画像を形成するためのインクジェット印刷方法であって、複数のインクジェットインクが少なくとも第1のインク及び第2のインクを含み、各インクが、
a.顔料、
b.顔料を分散させるためのブロックコポリマー分散剤、
c.少なくとも1種の水溶性有機溶媒、及び
d.水
を含み、
前記第1のインクの前記顔料P1が前記第2のインクの前記顔料P2と異なり、前記第1のインクの前記ブロックコポリマー分散剤D1が前記第2のインクの前記ブロックコポリマー分散剤D2と異なる、
インクジェット印刷方法が提供される。
【0013】
本発明の別の態様によると、基材上に画像を形成するためのインクジェットインクのインクセットであって、インクジェットインクが少なくとも第1のインク及び第2のインクを含み、各インクが、
a.顔料、
b.顔料を分散させるためのブロックコポリマー分散剤、
c.少なくとも1種の水溶性有機溶媒、及び
d.水
を含み、
前記第1のインクの前記顔料P1が前記第2のインクの前記顔料P2と異なり、前記第1のインクの前記ブロックコポリマー分散剤D1が前記第2のインクの前記ブロックコポリマー分散剤D2と異なる、
インクジェットインクのインクセットが提供される。
【0014】
インクジェットインク中の一貫したより高レベルの顔料分散液安定性が、前記第2のインクの前記ブロックコポリマー分散剤D2とは異なる、前記第1のインクのブロックコポリマー分散剤D1を選択することにより得られ得ることが、本発明者らにより見出された。それぞれのインクに前記顔料を分散させるための前記ブロックコポリマー分散剤は、顔料分散液の調製の間に顔料(凝集体)粒径の減少を支援し、増大させる。さらに、それぞれのインクにそれぞれの顔料を分散させるための選択されるブロックコポリマー分散剤は、水溶性有機溶媒など、分散剤と競合し得る種々のインク添加剤がインクジェットインクに加えられる場合ですら、生じたインクジェットインク中で顔料が再集塊することを防ぐ。結果として、インクジェットインクが水溶性有機溶媒などのインク添加剤について種々の組成を有し得る、基材上に共同的に画像を形成するためのインクジェットインクのセットが容易に得られ得る。さらに、それぞれのインクに顔料を分散させるためのブロックコポリマー分散剤は、インク耐久性及び一貫した画像品質の要求が高まっている産業用インクジェット印刷における噴射安定性を支援し、増大させる。
【0015】
少なくとも1種の水溶性有機溶媒は、水と共溶媒を形成する任意の水溶性有機溶媒であり得る。水溶性有機溶媒は、水溶性有機溶媒と水の体積比が少なくとも1:9であるような、20℃で水と共溶媒を形成することが可能である(すなわち混合する)と定義される。
【0016】
例示的な実施形態において、インクは水性キャリアを有する水性インクである。水性キャリアは室温で液体である。水及び水溶性有機溶媒は、任意選択で他の共溶媒を含み、顔料及びブロックコポリマー分散剤のための水性キャリアを形成する。
【0017】
本願で定義される顔料分散液安定性は、顔料分散液の顔料粒子粉砕特性を含み得て、高温条件(室温又はインクの通常の操作温度に対して)などの厳しい条件並びに競合性の水溶性有機溶媒をキャリアに加えること及び/又はその量を増やすことによるなどの重大な水性キャリア条件に曝された場合の顔料分散液安定性特性を含み得る。
【0018】
顔料分散液の顔料粒子粉砕特性は、顔料の集塊及び凝集体のサイズを30~300nmなどのナノメートルサイズまで容易に減少させる能力を示し、それは、ブロックコポリマー分散剤を加えて、顔料が再集塊するのを物理的及び/又は静電的に防ぐことにより安定化される。
【0019】
例示的な実施形態において、顔料は、インクの色を調整するために選択される着色顔料である。例示的な実施形態において、顔料は、任意選択で有機顔料の有機成分と錯化している金属原子を含む有機顔料である。
【0020】
ブロックコポリマー分散剤は、ランダムコポリマーとは異なり、化学組成中の調整された分子構造(ポリマー中にブロック的に組み込まれている)、狭い分子量分布、及び/又は異なる構成ブロック若しくはモノマーの定義されたブロック鎖長を有し得る。ブロックコポリマー分散剤は、ポリマー中でブロックに配列された2種以上の異なるモノマーから作られ得る。
【0021】
本発明のブロックコポリマーのブロックは、狭い分子量分布、及び/又は定義されたブロック鎖長を有する。ブロックコポリマーは異なるブロックからなるポリマーにより定義され、各ブロックがサイズ及び組成に関して実質的に等しく、全てのポリマー分子が実質的に同じ組成及び長さを有することを意味する。同じ組成は、ブロックが1種の繰り返し単位を含む場合、繰り返し単位が同じこと、又は、ブロックが2種以上の異なる繰り返し単位を含む場合、それぞれの繰り返し単位の間の数の比が同じであることを意味する。
【0022】
個別のブロック及び完成したポリマーもサイズが等しいという事実は、それぞれ個別のブロック又は完成したポリマーのM/Mとして定義される多分散性Dにより表すことができ、それは、好ましくは1.6未満、より好ましくは1.5未満である。
【0023】
例示的な実施形態において、ブロックコポリマー分散剤は、1.6未満、より好ましくは1.5未満の多分散性Dを有する。特定の実施形態において、ブロックコポリマー分散剤のブロックのそれぞれは、1.6未満、より好ましくは1.5未満の多分散性Dを有する。
【0024】
顔料分散剤として通常使用されるランダムコポリマーと比較すると、ブロックコポリマー分散剤中の顔料親和性モノマーは、1つ又は複数の適切なサイズ及び化学作用のマトリックス親和性モノマー系ブロックの隣にある適切なサイズ及び化学作用のブロックとして作られ得る。これにより、特定の顔料とブロックコポリマー系分散剤との間の相互作用を微調整し、その結果最大化する機会が作られる。最大化された相互作用は、顔料表面との分散剤の強力な物理化学的結合を生み出すだろう。分散剤は顔料の表面に配置されて顔料の再集塊を防ぐので、顔料表面への分散剤のこの強力な固定化は、特に最終インクに使用される場合に、高度に安定な顔料分散液の作製を可能にするだろう。分散剤と顔料の強力な連結は、水性インク中で本質的に(少なくとも部分的に)疎水性である傾向があり、そのため、同様に有機顔料表面に到達したい他のインク添加剤の競合する相互作用にも耐えるだろう。
【0025】
異なる性質を有するブロックコポリマー分散剤を選択することが、分散剤の特化した化学的微調整を可能にし、それが、ポリマー性分散剤の有機顔料表面に対する物理的相互作用を最適化する可能性を作り出すことが見出された。全体として、コポリマー分散剤の設計におけるバランスをとる行動は、顔料親和性/マトリックス親和性バランスにある。水性インクでは、ポリマーの相対的な親水性/疎水性の性質が重要であるようである。このようにして、有機顔料粒子はキャリアと相溶化され得る。
【0026】
第1のブロックコポリマー分散剤D1は、非限定的に、ブロックコポリマー分散剤のブロックの化学的性質の少なくとも1つ、分子量分布、多分散性、異なるブロックの数、ポリマー鎖中の異なるブロックの長さ、ポリマー鎖中の異なるブロックの相対的存在に基づいて、前記第2のブロックコポリマー分散剤D2とは異なり得る。
【0027】
例示的な実施形態において、インクジェットプロセスは、各インクジェットインクの液滴を基材に噴射して、基材上にカラー画像を形成することを含む。特定の例示的な実施形態において、液滴は、インクジェット印字ヘッドを使用することにより噴射される。
【0028】
例示的な実施形態において、インクジェットプロセスは、完成した段ボール、波形ライナー、ラベル基材、又は柔軟性がある包装基材上に画像を形成することを含む。例示的な実施形態において、インクジェットプロセスは、基材への顔料の密着性を改善するために使用される。特に、インクは、基材への密着性、乾燥、基材上のインクの耐水性又は耐引掻性のうちの少なくとも1つを改善する少なくとも1種の機能性ポリマーを含み得る。
【0029】
例示的な実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれに関して、ブロックコポリマー分散剤は、第1のブロックであってその繰り返し単位の数がnと定義される第1のブロック及び第2のブロックであってその繰り返し単位の数がmと定義される第2のブロックを含み、ここで、好ましくは、第1のブロックは顔料の水性相安定化のための親水性安定化部分であり、第2のブロックは顔料に固定化するための固定化部分である。親水性安定化部分は、ブロックコポリマーの固定化部分の水親和性に対して、水への(又は水性キャリアへの)より高い親和性を有するブロックコポリマーの部分と定義される。
【0030】
特定の実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2の少なくとも一方、好ましくはそのそれぞれに関して、ブロックコポリマー分散剤の第1のブロック及び第2のブロックのそれぞれは、1.6未満、より好ましくは1.5未満の多分散性Dを有する。
【0031】
ブロックの多分散性は、ブロックコポリマー分散剤の合成の間に、別のブロックを前記ブロックに付加する前に決定され得る。
【0032】
ブロックコポリマー分散剤のブロックは、開始剤部分、停止部分、末端基、及び/又は連結部分をさらに含み得る。
【0033】
ブロックの繰り返し単位は置換基を含み得る。置換基は、ブロックを重合した後、又はブロックコポリマーを重合した後に、別の置換基に任意選択で転化され得て、それにより、繰り返し単位を修飾し得る。
【0034】
本発明によると、ブロックコポリマー分散剤の第1のブロック及び第2のブロックは、ブロックコポリマー分散剤に沿って任意の順序で配置され得る。そのため、用語「第1のブロック」及び用語「第2のブロック」は、ブロックコポリマー分散剤に沿ったブロックの相対的位置を明示しない。
【0035】
追加的に、ブロックコポリマー分散剤は、別のモノマーから形成された別のブロックをさらに含み得る。そのため、ブロックコポリマー分散剤は、2つのブロックを有するジブロックコポリマーであるか、3つのブロックを有するトリブロックコポリマーであり得て、4以上の任意の他の好適な数のブロックを有し得る。
【0036】
さらに、用語「第1のブロック」及び用語「第2のブロック」は、ブロックコポリマーを合成する際のブロックを形成する順序を明示も限定もしない。
【0037】
特定の例示的な実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2の少なくとも一方、好ましくはそのそれぞれに関して、第1のブロックは、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、クロトン酸、クロトン酸モノエステル、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N.Nジエチルアミノエチルアクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、t-ブチルアミノエチルアクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーM、好ましくは顔料の水性相安定化のための親水性モノマーを使用して形成される。用語親水性モノマーは、顔料に固定化するための固定化モノマーの水親和性に対して、水への(又は水性キャリアへの)より高い親和性を有するモノマーと定義される。
【0038】
酸含有繰り返し単位は、直接製造され得るか、又は重合後に保護基が除去された保護されたモノマーから製造され得る。保護基の除去後にアクリル酸又はメタクリル酸を生成させる保護されたモノマーの例としては、トリメチルシリルメタクリレート(TMS-MAA)、トリメチルシリルアクリレート、1-ブトキシエチルメタクリレート、1-エトキシエチルメタクリレート、1-ブトキシエチルアクリレート、1-エトキシエチルアクリレート、2-テトラヒドロピラニルアクリレート、及び2-テトラヒドロピラニルメタクリレートがある。
【0039】
第1のブロックの繰り返し単位は、モノマーMを使用して形成される。2種の異なるモノマーMが使用されて第1のブロックを形成する場合、第1のブロックは、第1の繰り返し単位及び第2の繰り返し単位を有し、それぞれが、それぞれの異なるモノマーMにより形成される。第1のブロックの第1の繰り返し単位の数及び第2の繰り返し単位の数が合計されて第1のブロックの繰り返し単位の総数nとなる。
【0040】
特定の例示的な実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2の少なくとも一方、好ましくはそのそれぞれに関して、第2のブロックは、メタクリレート、アクリレート、及びビニルモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーM、好ましくは顔料に固定化するための固定化モノマーを使用して形成される。
【0041】
特定の例示的な実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれに関して、第2のブロックは顔料に固定化するための固定化部分であり、第1のインクのブロックコポリマー分散剤D1の第2のブロックは、第2のインクのブロックコポリマー分散剤D2の第2のブロックと、
ブロックコポリマー分散剤D1の第2のブロックの繰り返し単位の数であるmは、ブロックコポリマー分散剤D2の第2のブロックの繰り返し単位の数、mと異なる;
ブロックコポリマー分散剤D1の第2のブロックのうちの少なくとも1種の繰り返し単位は、ブロックコポリマー分散剤D2の第2のブロックの繰り返し単位と異なる;及び
第2のブロックは少なくとも2種の異なる繰り返し単位を有し、ブロックコポリマー分散剤D1のそれぞれの繰り返し単位の間の数の比は、ブロックコポリマー分散剤D2のそれぞれの繰り返し単位の間の数の比と異なる
のうちの少なくとも1つで異なる。
【0042】
特定の例において、第2のブロックの少なくとも2種の異なる繰り返し単位は、少なくとも2種の異なる固定化モノマーMを使用することにより形成され得る。
【0043】
好ましくは、第2のブロックが少なくとも2種の異なる繰り返し単位を有する場合、少なくとも1種の繰り返し単位は、エチレングリコールメチルエーテル、2-エトキシエチル、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル、トリ(エチレングリコール)メチルエーテル、2-(2エトキシエトキシ)エチル、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシプロピルから選択される置換基を有し、別の繰り返し単位はアリール置換基及び/又はアルキル置換基を有する。特定の例において、他の繰り返し単位はアリール置換基を有し、ここで、繰り返し単位は、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、p-トリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及びp-トリルアクリレートから選択される。好ましい例において、少なくとも2種の異なる繰り返し単位は、第2のブロック内で実質的にランダムに分布している。グリコール及びヒドロキシル含有繰り返し単位が、分散剤の改善された水溶性を与え、それぞれの顔料への好適な固定化を維持しながら、インクジェットインク組成物における分散剤のより広い有用性を支持することが見出された。
【0044】
特定の例示的な実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2のそれぞれに関して、第1のブロックは顔料の水性相安定化のための親水性安定化部分であり、ここで、第1のインクのブロックコポリマー分散剤D1の第1のブロックは、第2のインクのブロックコポリマー分散剤D2の第1のブロックと、
ブロックコポリマー分散剤D1の第1のブロックの繰り返し単位の数であるnは、ブロックコポリマー分散剤D2の第1のブロックの繰り返し単位の数、nと異なる;
ブロックコポリマー分散剤D1の第1のブロックのうちの少なくとも1種の繰り返し単位は、ブロックコポリマー分散剤D2の第1のブロックの繰り返し単位と異なる;及び
第1のブロックは少なくとも2種の異なる繰り返し単位を有し、ブロックコポリマー分散剤D1のそれぞれの繰り返し単位の間の数の比は、ブロックコポリマー分散剤D2のそれぞれの繰り返し単位の間の数の比と異なる
のうちの少なくとも1つで異なる。
【0045】
例示的な実施形態において、念のため、酸性基を有する酸性繰り返し単位などの繰り返し単位は中和剤により修飾して、繰り返し単位がキャリアと相溶性にすることができる。中和剤の選択、及びそのため対応して使用される繰り返し単位の塩対イオンの選択は、修飾された繰り返し単位を、これが異なる化学構造として考えられなければならないように決定する。そのため、繰り返し単位は、中和剤及び対応する塩対イオンの選択のために、別の繰り返し単位と異なり得る。
【0046】
中和剤及び繰り返し単位の対応する塩対イオンの選択が、顔料粒子粉砕特性及び顔料分散のスピードに対する影響を含む、並びに/又は厳しい条件に曝された場合の顔料分散液安定性特性に対する影響を含む、顔料分散液安定性に対する影響を有し得ることが見出された。中和剤、pH値、及び対応する塩対イオンの選択は、最終インクの挙動、例えば、乾燥速度、オープンタイム、第1の液滴信頼性、及び噴射安定性にも影響し得る。
【0047】
特定の例において、第1のブロックが少なくとも2種の異なる繰り返し単位を有する場合、第1のブロックの少なくとも2種の異なる繰り返し単位は、少なくとも2種の異なるモノマーMを使用することにより形成され得る。
【0048】
特定の例示的な実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2の少なくとも一方、好ましくはそのそれぞれに関して、固定化モノマーMは、ベンジルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、グリシジルメタクリレート、p-トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p-トリルアクリレート、ソルビルアクリレート、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAA)、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン(ACMO)、N-ビニルピロリドン(NVP)、ビニルメチルオキサゾリジノン(VMOX)、及びこれらの混合物のうちの少なくとも1種である。
【0049】
ピグメントレッドPR57.1のような、より極性が高い表面を有する顔料にとって、固定化部分が、モノマーMの総括的でないリストにおいて上述された少なくとも1種の固定化モノマーMに加えて、固定化モノマーMとして使用される少なくとも1種の親水性モノマーを追加的に含むことが有益であり得る。少なくとも1種の親水性モノマーは、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAA)、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン(ACMO)、N-ビニルピロリドン(NVP)、及びビニルメチルオキサゾリジノン(VMOX)、及び2-(2エトキシエトキシ)エチルアクリレート(EOEOEA)のいずれの1種であり得る。
【0050】
特定の例において、ピグメントレッド57:1を使用する場合、親水性固定化モノマーMは、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAA)、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン(ACMO)、N-ビニルピロリドン(NVP)、ビニルメチルオキサゾリジノン(VMOX)、及びこれらの混合物のうちの少なくとも1種である。
【0051】
特定の例示的な実施形態において、第1のブロックコポリマー分散剤D1の第2のブロックは、アリール(メタ)アクリレートモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含み、第2のブロックコポリマー分散剤D2の第2のブロックは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含む。
【0052】
用語(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であると定義される。用語アリール(メタ)アクリレートモノマーは、アリール基を有すると定義される。用語アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、直鎖、分岐鎖、又は脂環式構造を有するアルキル基を有し、2~25の範囲、好ましくは4~20の範囲の数の炭素原子を有すると定義される。好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーはアリール基を含まない。任意選択で、アルキル基は、1つ又は複数のアルコキシ基により置換されているなど、置換されている。
【0053】
別の例において、アルキル基は、ポリマー骨格を形成するのに使用される(メタ)アクリレート基に、連結セグメントにより結合している末端基である。例において、前記連結セグメントは、1つ又は複数のグリコール基を含む。アルキル末端基R及び連結セグメントを有する例示的なアルキル(メタ)アクリレートモノマーは下記の通り定義される:
-X-O-C=O-[CH=CH
(式中、Rはアルキル末端基であり、Xは連結セグメントであり、連結セグメントは、エチレングリコールなどのモノグリコール、並びにジ(エチレングリコール)及びトリ(エチレングリコール)などのポリグリコール基から選択される)。
【0054】
直鎖アルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレートの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレートであり;分岐アルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレートの例は、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートであり;脂環式アルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレートの例は、シクロヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0055】
アルキル末端基及び1つ又は複数のグリコール基を含むアルキル(メタ)アクリレートの例は、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、及びトリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレートである。
【0056】
特定の例示的な実施形態において、アリール(メタ)アクリレートモノマーは、ベンジル部分を含み、及び/又はアルキル(メタ)アクリレートモノマーは分岐アルキル部分を含み、好ましくはエチルヘキシル(メタ)アクリレートモノマーである。
【0057】
特定の例示的な実施形態において、好ましくは、第2のブロックはアリール(メタ)アクリレートモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含み、第1のブロックコポリマー分散剤D1は、3.0未満、好ましくは2.0未満、及び特に0.2超である(第1のブロックの繰り返し単位の数nと第2のブロックの繰り返し単位の数mの間の)比n/mを有する。
【0058】
特定の例示的な実施形態において、好ましくは、第2のブロックはアルキル(メタ)アクリレートモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含み、第2のブロックコポリマー分散剤D2は、10~100の範囲の繰り返し単位の数mを有し、好ましくは、(第1のブロックの繰り返し単位の数nと第2のブロックの繰り返し単位の数mの間の)比n/mは3.0未満、及び特に0.2超であり、より好ましくは、繰り返し単位の数nは5~50の範囲である。
【0059】
特定の例示的な実施形態において、第1のブロックは、メタクリル酸及びアクリル酸から選択されるモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含む。
【0060】
例示的な実施形態において、ブロックコポリマー分散剤D1、D2の少なくとも一方、好ましくはそのそれぞれに関して、ブロックコポリマー分散剤はジブロックコポリマーである。
【0061】
特定の実施形態において、インクは、それぞれ、それぞれの顔料P1、P2を分散させるための第1の又は第2のブロックコポリマー分散剤に加えて、同じそれぞれの顔料P1、P2を分散させるためのさらなるブロックコポリマー分散剤D3、D4を含む。そのため、顔料P1は、ブロックコポリマー分散剤D1及びブロックコポリマー分散剤D3により分散され、顔料P2は、ブロックコポリマー分散剤D2及びブロックコポリマー分散剤D4により分散される。さらなるブロックコポリマー分散剤D3、D4は、例えば、粉砕プロセスを増進させるために顔料の濡れを与え得る一方で、それぞれの顔料P1、P2を分散させるための第1の又は第2のブロックコポリマー分散剤は、例えば、分散された顔料の、顔料分散液中及びインクジェットインク中の安定性を与え得る。
【0062】
例示的な実施形態において、インクセットのインクジェットインクは、シアン顔料を含むシアンインク、マゼンタ顔料を含むマゼンタインク、イエロー顔料を含むイエローインク、及びブラック顔料を含むブラックインクを含む。この実施形態において、インクセットの第1のインクは、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクのうちの1つであり、インクセットの第2のインクは、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクのうちの別の1つである。
【0063】
特定の実施形態において、インクセットの第1のインクは、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクのうちの1つであり、インクセットの第2のインクはブラックインクである。本明細書では、第2の顔料P2はブラック顔料であり、第1のインクの第1の顔料P1は、それぞれ、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料のうちの1つである。
【0064】
例示的な実施形態において、第2の顔料P2はブラック顔料であり、第2のブロックコポリマー分散剤D2は、アルキル(メタ)アクリレートモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含む第2のブロックを有する。さらなる例示的な実施形態において、第1のブロックコポリマー分散剤D1は、アリール(メタ)アクリレートモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含む第2のブロックを有し、第1のブロックコポリマー分散剤D1はシアン顔料を分散させるために使用され、イエロー顔料を分散させるために使用され、任意選択で、マゼンタ顔料を分散させるために使用される。
【0065】
例示的な実施形態において、第1のブロックコポリマー分散剤D1は、アリール(メタ)アクリレートモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含む第2のブロックを有し、第1のブロックコポリマー分散剤D1は、シアン顔料を分散させるために使用され、イエロー顔料を分散させるために使用され、第2のブロックコポリマー分散剤D2は、アルキル(メタ)アクリレートモノマーを使用して形成された繰り返し単位を含む第2のブロックを有し、第2のブロックコポリマー分散剤D2は、ブラック顔料を分散させるために使用され、及び第3のブロックコポリマー分散剤D3はアルキル(メタ)アクリレートモノマーから形成された繰り返し単位を含む第2のブロックを有し、第3のブロックコポリマー分散剤D3は第2のブロックコポリマー分散剤D2とは異なり、第3のブロックコポリマー分散剤D3はマゼンタ顔料を分散させるために使用される。
【0066】
特定の例示的な実施形態において、マゼンタ顔料は、ピグメントレッド122、ピグメントバイオレット19、及びピグメントレッド202から選択されるキナクリドン顔料であるか、又はマゼンタ顔料はピグメントレッド57:1であり、並びに/又はシアン顔料は、ピグメントブルー15:3であり、並びに/又はイエロー顔料は、ピグメントイエロー155及びピグメントイエロー74から選択され、並びに/又はブラック顔料は、カーボンブラック、好ましくはピグメントブラック7である。
【0067】
例示的な実施形態において、各インクの顔料の量は、インクの総重量に対して、少なくとも1.0重量%、好ましくは少なくとも2.0重量%であり、好ましくは、各インクは、25℃で最高20mPa.sの粘度を有する。
【0068】
例示的な実施形態において、ブロックコポリマー分散剤は、少なくとも部分的に架橋されており、ブロックコポリマー分散剤は、顔料に付着しているか、又は少なくとも部分的に顔料をカプセル化している。
【0069】
例示的な実施形態において、水溶性有機溶媒は、ポリオール化合物及び(ポリ)グリコールエーテル又は(ポリ)プロピレングリコールエーテル化合物のうちの少なくとも1種を含む。本願の状況におけるポリオール化合物は多価アルコールと同じであり、すなわち少なくとも2つのアルコール基を有する。特定の例示的な実施形態において、水溶性グリコールエーテル化合物はグリコールモノブチルエーテルである。
【0070】
基材へのインクの浸透性(湿潤性)を改善するための浸透剤である水溶性有機溶媒が選択され得る。浸透剤は、基材上のドット直径を調整するのを支援し、及び/又は顔料の基材への密着性を改善する。特に好適な浸透剤は、表面張力活性を有し、それによりインクの表面張力を低下させる。
【0071】
例示的な浸透剤としては、アルカンジオール及びグリコール/プロピレングリコールエーテルがある。浸透性を有する水溶性有機溶媒が分散剤と競合する傾向があり、それが顔料を安定化させることが本発明者らにより見出された。
【0072】
例示的な浸透剤は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル又はエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールモノブチルエーテルである。ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、1,2-ヘキサンジオールのような数種の浸透剤が表面張力活性を有し、それによりインクの表面張力を低下させることが留意されるべきである。
【0073】
例示的な実施形態において、インク中の少なくとも1種の水溶性有機溶媒の重量濃度は、インクの総重量に基づいて、5重量%~40重量%の範囲、好ましくは7.5重量%~35重量%の範囲である。
【0074】
特定の実施形態において、インク中の少なくとも1種の浸透剤の重量濃度は、インクの総重量に基づいて、1重量%~15重量%の範囲、好ましくは2重量%~10重量%の範囲である。
【0075】
例示的な実施形態において、インクジェットインクの粘度は、25℃で4~30mPa.s、好ましくは25℃で4~20mPa.sである。
【0076】
例示的な実施形態において、インクジェットインクの静的表面張力は17~35mN/mである。
【0077】
[詳細な説明]
本明細書で使用される通り、用語「分散液」は、二相系であって、1相が、バルク物質全体に分布されている微粉砕された粒子(多くの場合コロイド状サイズ範囲である)からなり、粒子が分散相又は内相であり、バルク物質が連続相又は外相である二相系を意味する。
【0078】
本明細書で使用される通り、用語「分散剤」は、懸濁媒に加えられて、極めて微細な固体粒子の均一で最大の分離を促進する界面活性剤を意味する。顔料では、分散剤はポリマー性分散剤であり得て、分散剤及び顔料を含む分散液は、通常、分散装置を使用して調製される。
【0079】
本明細書で使用される通り、用語「水性」は、水又は水と少なくとも1種の水溶性若しくは部分的に水溶性の有機溶媒(共溶媒)の混合物を指す。本明細書で使用される通り、用語「水性インク(water based ink)」は、用語「水性インク(aqueous ink)」と同じ意味を有する。
【0080】
本明細書で使用される通り、用語「実質的に」は、著しい程度、ほとんど全てであることを意味する。
【0081】
本明細書で使用される通り、用語「インクセット」は、本発明に従ってインクジェットインクを基材上に加えることにより基材上に画像を印刷するためのパーツのキットとして使用されるインクジェットインクの組合せを意味する。特に、インクセットは、同じ印刷プロセスに共に使用されてカラー画像を基材上に形成し得るインクジェットインクの組合せである。
【0082】
本明細書の材料、方法、及び例は説明のためのものであり、限定的でないものとする。
【0083】
(水性インク)
水性インクは、大まかに、顔料インクと染料インクに分類することができる。近年、優れた発色並びに耐溶剤性、耐ガス性、及び耐光性(耐紫外線性)などを示す顔料インクの需要が増加した。他方で、顔料水性分散液インクの場合、顔料が水に不溶性であるため、多くの場合、満足できる顔料分散性が達成できない。したがって、水性インク内で好都合な顔料分散性を維持するために、顔料分散樹脂が使用されて水中での顔料のより良好な分散安定性を達成してきた。これらの顔料は、染料と比べて、食品内への移動に対してもより良好に作用するとも考えられている。
【0084】
上述のインク中の着色剤の使用は、水性インクの最も本質的な形態である。しかし、ノズルでのインクの乾燥を防ぐために、インクジェット印刷方法に使用される水性インクは、典型的には、高沸点及び水への好都合な溶解度を有する水溶性有機溶媒も含む。この種類の溶媒は、水性インク中の保水剤とも考えられ得る。
【0085】
インクジェット印刷方法に使用される水性インクは、典型的には、インクの基材への浸透性(湿潤性)を改善する浸透剤である水溶性有機溶媒も含む。浸透剤は、基材上のドット直径を調整するのを支援し、及び/又は顔料の基材への密着性を改善する。特に好適な浸透剤は、表面張力活性を有し、それにより、インクの表面張力を低下させる。さらに、印刷ヘッド中、基材上などの水性インクの最低限の量の濡れ及び広がりを可能にするため、インクジェット印刷方法に使用される水性インクは、典型的には、1種又は複数の界面活性剤も含む。
【0086】
最後に、水性インク組成物は、必要に応じて、消泡剤、増粘剤、結合剤、及び保存剤などの様々な種類の添加剤も含み得る。これらの種類の添加剤を水性インク組成物に加えると、組成物がインクジェットインクとしてより好都合に使用されることが可能になる。
【0087】
(顔料)
顔料は、好ましくは、優れた耐水性、耐光性、耐候性、及び耐ガス性などを与える観点から使用される。本発明に使用され得る顔料の例としては、従来の有機顔料及び無機顔料がある。
【0088】
顔料は、HERBST,Wら、Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.2nd edition.vch,1997により開示されるものから選択され得る。
【0089】
顔料インクジェットインク中の顔料粒子は、インクジェット印刷装置を通る、特に吐出ノズルでのインクの自由流動を可能にするほど充分に小さくなくてはいけない。最大の色の濃さのため、及び沈降を緩徐にするためにも小粒子を使用することが望ましい。
【0090】
顔料インクジェットインク中の顔料の平均粒径は、5nm~1μm、特に好ましくは5nm~500nm、及び最も好ましくは30nm~300nmでなくてはならない。より大きい顔料粒径は、本発明の目的が達成される限り使用され得る。
【0091】
顔料は、顔料インクジェットインク中に、顔料インクジェットインクの総重量に基づいて0.1~20重量%、好ましくは1~10重量%の量で使用される。
【0092】
本発明に使用され得るシアン顔料の例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:6、16、及び22、並びにC.I.バットブルー4及び6がある。これらのシアン顔料は個別に使用され得るか、又は2種以上の顔料の組合せが使用され得る。
【0093】
本発明に使用され得るマゼンタ顔料の例としては、C.1.ピグメントレッド5、7、12、22、23、31、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、112、及び122;キナクリドン固溶体146、147、150、185、238、242、254、255、266、及び269、並びにC.l.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、43、及び50がある。
【0094】
本発明に使用され得るイエロー顔料の例としては、C.I.ピグメントイエロー10、11、12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、166、168、180、185、及び213がある。
【0095】
本発明に使用され得るブラック顔料の例としては、アニリンブラック、ルモゲンブラック、及びアゾメチンブラックなどの有機顔料並びにカーボンブラック及び酸化鉄などの無機顔料がある。さらに、上述のイエロー顔料、マゼンタ顔料、及びシアン顔料などの複数の着色顔料が一緒に混合されて、ブラック顔料として使用され得る。
【0096】
本発明に使用され得る無機顔料に特に制限はない。上述のカーボンブラック及び酸化鉄以外の無機顔料の例としては酸化チタンがある。
【0097】
本発明に使用され得るカーボンブラック顔料の例としては、ファーネス法又はチャンネル法を利用して製造されたカーボンブラックがある。
【0098】
市販製品の例は以下に列記され、これらの製品のいずれも好都合に使用できる。
【0099】
カーボンブラックの具体例としては、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、及びMCF88(全て三菱ケミカル株式会社により製造)、RAVEN 1255(Columbian Chemicals Co.,Inc.により製造)、REGAL 330R、400R、及び660R、並びにMOGUL L(全てCabot Corporationにより製造)、並びにNipex 1601Q、Nipex 1701Q、Nipex 75、Printex 85、Printex 95、Printex 90、Printex 35、及びPrintex U(全てOrion Engineered Carbons LLCにより製造)がある。
【0100】
本発明のこの実施形態において、顔料は、上述の顔料に限定されず、オレンジ顔料及びグリーン顔料などの他の特色も使用できる。さらに、複数の顔料が組み合わされ得る。さらに、別の実施例において、本発明のこの実施形態の水性インク組成物は、顔料を含まないクリアインクと組み合わされて、インクセットとして使用され得る。
【0101】
インクの色を修飾するのに有用であるあらゆる他の顔料及び/又は染料を使用できる。さらに、着色剤は、二酸化チタンなどの白色顔料、又は酸化亜鉛及び酸化鉄などの他の無機顔料を含み得る。
【0102】
(界面活性剤)
本発明によるインクジェットインクは、少なくとも1種の界面活性剤を含み得る。界面活性剤(複数可)は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は双性イオン性であり得て、顔料インクジェットインクの総重量に基づいて6重量%未満の総量で、及び特に顔料インクジェットインクの総重量に基づいて4重量%未満の総量で通常加えられる。
【0103】
本発明によるインクジェットインクのための好適な界面活性剤としては、ケイ素系、アクリル系、及びフッ素系界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホスクシネートエステル塩、及び高級アルコールのリン酸エステル塩、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、並びにアセチレングリコール及びそのエチレンオキシド付加物がある。市販の例としては、Byk-348、Byk-347、Byk 3450、Dynwet 800(Byk Chemie Gmbh);Surfynol 104、Surfynol 465、Metolat 364、Dynol 800、Dynol 960(Evonik Industries)、KF-640、KF-642(信越化学工業株式会社);ID-40、ID-70(三洋化成工業株式会社);など、及びこれらの組合せがある。
【0104】
(水溶性有機溶媒)
水溶性有機溶媒の種類は、本発明の効果が得られ得る限り特に限定されない。有機溶媒が、水に対する相溶性を増加させる観点から水溶性であることが好ましい。水溶性有機溶媒の例としては、アルコール、多価アルコール、アミン、アミド、グリコールエーテル、1,2-アルカンジオールなどがある。1種類のみの有機溶媒が使用され得るか、又はその2種以上が使用され得る。
【0105】
上述の多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、5以上の数のエチレンオキシド基を有するポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、4以上の数のプロピレンオキシド基を有するポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコールなどがある。
【0106】
上述のアミンの例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミンなどがある。
【0107】
上述のアミドの例としては、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ピロリドン、尿素などがある。
【0108】
上述のグリコールエーテルの例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどがある。
【0109】
1,2-アルカンジオールの例としては、1,2-プロパンジオール 1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオールなどがある。
【0110】
これらのうちで、水溶性有機溶媒が多価アルコールである場合、高速で印刷を実施する時点での不鮮明を、好ましくは抑制することができる。多価アルコールの好ましい例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどがある。
【0111】
基材へのインクの浸透性(湿潤性)を改善するための浸透剤である水溶性有機溶媒が選択され得る。浸透剤は、基材上でドット直径を調整するのを支援し、及び/又は基材への顔料の密着性を改善する。特に好適な浸透剤としては、アルカンジオール及びグリコールエーテルがある。
【0112】
例示的な浸透剤は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールモノブチルエーテルである。ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、1,2-ヘキサンジオールのような数種の浸透剤が、表面張力活性も有し、それによりインクの表面張力を低下させることが留意されるべきである。
【0113】
印刷用インク中の少なくとも水溶性有機溶媒の含量は、例えば、5重量%以上で50重量%以下の範囲であり得る。
【0114】
(バインダー樹脂)
一実施形態において、本発明の水性インク組成物は、好ましくは、バインダー樹脂(機能性ポリマー)も含む。水性インク組成物のための公知のバインダー樹脂としては、水溶性樹脂及び樹脂微粒子(エマルション/ラテックス)がある。樹脂微粒子として使用できる樹脂の種類の例としては、アクリル系、スチレン/アクリル系、ウレタン系、スチレン/ブタジエン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系(場合により、部分的に又は完全に加水分解された)、ポリエステル系、及びポリオレフィン系樹脂がある。
【0115】
(殺生物剤)
本発明の顔料インクジェットインクのための好適な殺生物剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、2-フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、2-メチル-1,2-チアゾール-3-オン、及び1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、並びにその塩である。
【0116】
殺生物剤は、好ましくは、それぞれ顔料インクジェットインクの総重量に基づいて、0.001~3重量%、より好ましくは0.01~1.00重量%の量で加えられる。
【0117】
(他の成分)
インクジェット印刷インクにおいて、種々の公知の添加剤、例えば、多糖、粘度調整剤、被覆形成剤、pH調整剤などが好適に選択されて、必要に応じて、全ての性能を改善する目的に従って上述の成分の他に使用され得る。
【0118】
(顔料インクジェットインクの調製)
本発明による顔料インクジェットインクは、最初に顔料分散液を調製し、その後に顔料分散液を所望の顔料濃度に希釈し、他の全てのインク成分を加えることにより調製され得る。顔料分散液は、顔料を、分散剤の存在下で、分散媒中で微粉砕することにより調製される。
【0119】
顔料分散液調製の第1のステップで、成分は一緒に混合されて、予備分散液が形成される。混合装置は、加圧型ニーダー、オープンニーダー、プラネタリー型ミキサー、溶解機、及びDalton Universal Mixerを含み得る。好適な微粉砕及び分散装置は、ボールミル、パールミル、コロイドミル、高速分散機、ダブルローラー、ビーズミル、ペイントコンディショナー、及びトリプルローラーである。分散液は、超音波エネルギーを使用しても調製され得る。
【0120】
微粉砕が完了すると、微粉砕媒は、微粉砕された粒子から、濾過、メッシュスクリーンに通すふるい分けなどの従来の分離技法を使用して分離される。多くの場合、ふるいは、例えば、ビーズミル用の微粉砕機内に組み込まれている。
【0121】
一般に、カラーインクを、濃縮された微粉砕物(mill grind)の形態で製造することが望ましく、それが、その後に、インクジェット印刷システムに使用するための適切な濃度に希釈される。この技法により、より多量の顔料インクを装置から調製することが可能になる。希釈により、インクは、特定の用途のための所望の粘度、色、色相、飽和密度、及び印刷領域画線比率(print area coverage)に調整される。
【0122】
インクジェットインクは、通常の混合装置を使用して成分を分散液と混合することにより調製される。撹拌及び混合の方法は特に制限されず、必要に応じて適切に選択することができ、例えば、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、超音波分散機、通常の撹拌羽根を使用する撹拌機、マグネティックスターラー、及び高速分散機を使用する。インクは最終的に使用前に濾過される。多くの場合20pl未満の液滴サイズ及び30ミクロンより小さい印刷ヘッドノズルで、1~5μmの範囲の濾過ステップが実施される。一回の不具合が相当なコストでの印刷ヘッド全体の交換につながり得るので、粒状物が確実にノズルに到達しないようにすることが極めて重要である。
【0123】
顔料インクでは、多段濾過が、典型的には、分散液の作製後、並びに添加剤の添加及び希釈後に再び使用される。ここで、主な目的は、大きすぎるか又は集塊した顔料の分散液からの除去、並びに大きすぎる粒子及び他のプロセスからの混入物質の除去である。
【0124】
利用可能なフィルター技術は、様々な用途、利点、及び欠点を有する。フィルターの例は、メンブレン、デプス及びハイブリッドフィルタータイプである。インクジェットインク用のフィルターの一般的な供給業者は、Pall、Porvair、Membrane Solutionsである。
【0125】
[実験]
(原料)
異なる分散液に使用される顔料:
C:ClariantのPB15:3:PV Fast Blue BG
M1:ClariantのPR122:Ink Jet Magenta E02
M2:BASF:Cinquasia Magenta D4550J
M3:Sun ChemicalのPV19/PR202:Quindo Magenta
Y:ClariantのPY155:Ink Jet Yellow 4GC
Y74:ClariantのPY74:Ink Jet Yellow 5GX-W
K:OrionのPBl7:Printex 3
【0126】
(製造方法)
(ブロックコポリマー合成)
ブロックコポリマーは、数多くの異なるいわゆるリビング重合方法を使用して調製できる。方法の基礎は、使用される合成方法で不変である:
特定の生長速度で全てのポリマー鎖の同時の成長を確実にする、瞬間的な開始
リビング重合は、停止又はラジカルの再結合を避けるために、非常に低濃度の活性(生長している)鎖を所与の時間に溶液に加えることにより確実にされる。
継続した生長は厳しく制御され、それにより、ポリマーの低い多分散性及びそのため明確に定義されたポリマー組成が得られる。
【0127】
さらなる重合はいくつかの方法で達成できるが、アニオン重合及びグループ移動重合(例えば、原子移動ラジカル重合[ATRP]、NMP、…)は2つの最も通常の合成方法である。これらの方法には特有の要求事項があるので(酸素がないこと、水がないこと、…)、多くの(工業規模)体積のポリマーを製造する場合現実的でなく費用がかかる。その2つの例は、重合を開始させるための極低温でのアルキルリチウム成分又はナフタネリド(naphthanelide)の使用である。
【0128】
[実施例]
以下の手順は、30モノマーAAをそのブロック長さに有し、10モノマーBnAをそのブロック長さに有するAA-BnA 30-10と特性化されるブロック分散剤を製造する潜在的な合成方法を説明する。それは2つのブロックで構成されているブロックコポリマー分散剤であり、第1のブロックはモノマーアクリル酸(AA)を反応させることにより形成され、約30繰り返し単位の長さを有し、第2のブロックはモノマーベンジルアクリレート(BnA)を反応させることにより形成され、約10繰り返し単位の長さを有する。他のブロック分散剤構造は、当業者により、出発物質の量及び種類並びに反応時間を調整することにより同じ方法で製造され得て、ブロック分散剤の調製の順序は交換でき、すなわち、最初にBnAブロックを製造し、その後にAAブロックを製造する。本明細書での「部」は特記されない限り質量に基づいている。
【0129】
温度計、逆流コンデンサー、及び窒素バルーンを備えた250ミリリットル三口フラスコに、0.43部のCu(I)Br、38.5部のtert-ブチルアクリレート、41.2部のアニソール、内部標準、及び0.69部のトリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(MeTREN)を入れた。混合物を、3回真空下で脱気して窒素で満たし、60℃に加熱した。その後に、1.67部のメチル2-ブロモプロピオネート(MBP)を加えて、重合反応を開始させ、それを0.5時間実施した。
【0130】
別なフラスコ中で、16.2部のベンジルアクリレートと0.87部のN,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)を混合し、3回真空下で脱気して窒素で満たした。この溶液を、tert-ブチルアクリレートポリマー溶液に、0.72部のCuBr及び0.19部のCu(0)と共に加えた。触媒を空気に曝すことにより、重合を6時間後に停止させた(Mn=5406及びMw/Mn=1.37、転化率=96.4%)。銅触媒をカラムクロマトグラフィーにより除去し、その後に過剰の溶媒を蒸発により除去した。
【0131】
その後に、ブロックコポリマーのtert-ブチルアクリレート基を加水分解した。精製されたブロックコポリマーを2体積部の還流しているジオキサンに溶解させ、その後に、ポリマーのtert-ブチルアクリレート繰り返し単位の量に対して0.5当量の硫酸を溶液に加えた。2時間後、等モル量の塩基を加えて、反応を停止させた。反応溶液をセライト(Celite)(登録商標)で濾過して、形成された塩を除去した。ジオキサンをロータリーエバポレーションにより除去すると、アクリル酸/ベンジルアクリレートブロックコポリマーが生じた。
【0132】
1ブロック内に様々な種類の繰り返し単位を有するブロックコポリマーを製造するためには、前記ブロックの対応する異なるモノマーを事前にフラスコ内で混合し(ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)などの最適なリガンド及びCu含有化合物などの金属含有化合物とも共に)、3回真空下で脱気して窒素で満たす以外、手順はほとんど上述の通りのままである。当業者には公知である通り、モノマー選択によっては、リガンド及び金属の量/種類を変更する必要があり得る。これにより、ブロックの多分散性の低い程度及び高い転化率が確実になるだろう。好ましくは、様々な種類の繰り返し単位は、ブロックを得るためのプロセス条件に基づいて、前記ブロック内で実質的にランダムに分布している。
【0133】
現在の合成方法は、「通常の」反応器系合成を説明している。別法としては、フローケミストリープロセスを利用して、言及されたブロック分散剤を合成できる。本発明者らは「Flow Chemistry:Integrated Approaches for Practical Applications」、Santiago V Luis,Eduardo Garcia-Verdugo(編)、2019、(ISBN:978-1-78801-498-4/978-1-78801-609-4)に参照する。ブロック分散剤を、フローリアクターを使用し、「通常の反応器」と同じ出発物質を使用して合成したが、EBiBを開始剤として使用し、365nm UV LED光を光子源として使用し、反応をCu(II)BrのCu(0)への還元により開始させ、使用した溶媒がアセトニトリル:エタノール1:1であることが異なっていた。フローリアクターをPFA管(1/16インチOD、0.75mmID)により組みたてた。流れは、それぞれ、インラインチェックバルブ、Tピース、及びスタティックミキサーを経て接続されてからフォトリアクターに入って、均質性を確保した。16個のLED(365nm)を八角形のリアクター(3Dプリンターを使用してPLAフィラメントにより社内で製造)に取り付けた。第2のポリマーブロックは、第1のブロックに、その後のリアクターモジュール内で付加できる。最後に、加水分解及び濾過ステップは、上述のバッチプロセスに類似して実施することも、フローリアクター配置内に一体化することもできる。
【0134】
分散剤をキャリアと相溶性にするため、親水性モノマーを中和して、それによりブロックポリマーの塩形成基をイオン化する必要がある。中和剤として、例えばDMAEMAなどの塩基性又は(メタ)アクリル酸などの酸性など、塩形成基の種類によって、酸又は塩基を使用できる。塩基性モノマーのための中和剤としては、例えば、塩化水素酸及び硫酸などの無機酸;並びに酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、及びグリコール酸などの有機酸がある。さらに、酸性モノマーのための中和剤としては、例えば、トリメチルアミン及びトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの三級アミン、アンモニア、2-ジメチルアミノエタノール、2アンミノ(anmino)-2メチル1プロパノール、2(2アミノ-エチルアミノ)エタノール、2アミノ-2メチル1プロパノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどがある。本発明は、これらの例示されたものに限定されない。
【0135】
以下の実施例に言及される合計の分散剤重量が中和剤の質量を含んでいることに留意されたい。
【0136】
(カプセル化)
分散剤を表面で共に化学結合させることにより、架橋を微粉砕プロセスの直後に実施する。これを達成するための非常に一般的な方法により、分散剤骨格中に存在する(メタ)アクリル酸モノマーの特定の部分を結合するために(好ましくは顔料粒子の表面に)、エポキシ化合物(大部分ジ-又はトリ-エポキシド)が分散液に加えられる。全ての分散剤が顔料表面に密着するわけでない場合、これらの遊離ポリマーは、例えば、ポリマー粒子の間に組み込まれて、そのため分散液の一部を凝集させることにより架橋プロセスを妨げ、したがってその後除去されなければならない。これらの生じたカプセル化された顔料粒子は、共溶媒及び界面活性剤の添加によって乱され得ない、粒子の表面にわたる分散剤の「ネット」又は「カプセル」の形成のため、高い安定性を有するだろう。
【0137】
(顔料分散液製造)
表1による組成を有する顔料分散液を、30グラムの原料を、ボールジャー内で、顔料濃度15%で微粉砕することにより調製する。
【0138】
ボールジャー微粉砕を、直径が45mmの125mlのPPボトル内で実施する。ボトルに、200グラムの東ソー株式会社の0.3mm YTZセラミックビーズを満たす。微粉砕を、36m/分の回転速度で7日間実施する。
【0139】
【表1】
【0140】
(分析方法)
(分光分離係数を使用する分散安定性)
分散液インクの分光分離係数(SSF)を、最大吸光度Amaxと基準波長での吸光度Arefの比として計算する。この基準波長の選択は、使用する顔料(複数可)に依存する:カラー分散液が400~500nmで最大吸光度Amaxを有する場合(典型的にはイエロー顔料)、吸光度Arefは600nmの基準波長で測定しなければならない。カラーインクが500~600nmで最大吸光度Amaxを有する場合(典型的にはマゼンタ顔料)、吸光度Arefは650nmの基準波長で測定しなければならない。カラーインクが600~700nmで最大吸光度Amaxを有する場合(典型的にはシアン顔料)、吸光度Arefは、830nmの基準波長で測定しなければならない。
【0141】
吸光度スペクトルを、Thermoscientificaから利用可能なUV vis Spectrometer Genesys 180により測定する。
【0142】
【数1】
【0143】
(粒径分析)
顔料の粒径を、Nicomp 3.80粒度分析計(Particle sizing systems、Santa Barbara California USA)で測定する。最適な測定性能に達するように、分散液を10~100ppmに希釈する(すなわち、分散液を、10×10倍~100×10倍希釈する)。希釈した試料を23Cで、HeNeレーザーにより測定し、dv50を、散乱光強度プロファイルのガウシアン分析から得る。
【0144】
(表面張力)
表面張力は、23.0℃~26.0℃で、気泡圧力法により、表面張力計SITA Pro Line T15(SITA Messtechnik Co、Dresden GE.)を使用して測定した値である。使用した気泡寿命は10秒であり、これは、最大気泡圧に達するまで、新たな気液界面(インク液体に浸したキャピラリーの先端で)の生成の間の時間である。測定した最大圧力を、蒸留水中での装置の較正の後に、液体の表面張力値(mN/mで表す)に自動的に再計算する。
【0145】
(粘度)
粘度(分散液及び上清液体の)を、0.1~3000 1/秒のせん断速度掃引で運転しているHaake Rheostress RS6000により25℃で測定し、mPa.sで表す。装置は、コーン/プレートジオメトリタイプC60/1°を備えており、ギャップは0.052mmに設定されている。報告される粘度は3000 1/秒の周波数で測定する。
【0146】
(評価方法)
(分散液の安定性)
顔料分散液の分散安定性を、非常に過酷な条件で試験した。顔料分散液安定性を乱すためにジエチレングリコールモノビツルエーテル(diethyleneglycolmonobytulether)(DEGMBE)を有機溶媒として加えた後に、分散液を80℃の高温で7日間保存した。
【0147】
5gの分散液、1.5gのDEGMBE、及び8.5グラムの水を含む閉じたガラスバイアルを使用した。顔料分散液は、顔料分散液の総重量に対して15重量%顔料を有する。試験における顔料の量は、組成物の総重量に対して15重量%×5[g]/15[g]=5重量%である。DEGMBEの量は、組成物の総重量に対して1.5/15=10重量%である。粒径及び分光分離係数SSFを、熱処理の前及び後で測定する。上述の分析方法に従って測定した分光分離係数SSF>30及び粒径≦150nmである場合に、DEGMBEを加えた試料に関して安定性が良好であると考える。
【0148】
ブラック及びPY74系分散液では、粒径分析のみを使用した(パンクロマチック挙動のためブラックのSSFを測定することが可能でなく、PY74は80℃でいくらかの不安定性を有する)。
【0149】
(分散剤の粉砕性能)
分散剤の粉砕性能を、粉砕の後に得ることができる粒径及び分光分離係数SSFにより決定する。分光分離係数SSF>30及び粒径≦150nmである場合に、良好な粉砕性能に達する。粉砕性能が仕様内でない場合、安定性試験を実施しなかった。
【0150】
(結果)
表2A~2D:異なるブロックコポリマー性分散液を使用して調製した粉砕結果及びDEGMBEと1週間80℃で接触した場合の顔料分散液(重量比1:9を有するDEGMBE/水混合物を加えた)の安定性結果。
【0151】
【表2】

【0152】
顔料分散液は、dv50が最大150nmでありSSFが30超である場合、良好(V)であると考えた。
【0153】
ブラック顔料(K)に関しては、SSFを測定することが可能でなく、PSDのみを基準として使用する。
【0154】
PY74に関しても、顔料が80℃で安定でないためPSDのみを使用する。
【0155】
【表3】
【0156】
【表4】
【0157】
【表5】
【0158】
混合ブロックBnA/EOEOEAを有する分散剤が、表2A、2B、及び2Cに言及された分散剤と比べて、種々のインクジェットインク組成物において改善された有用性を示し得ることが見出された。そのブロック内のランダムに分布したEOEOEA繰り返し単位が、インク組成物の水性キャリアへの分散剤のより良好な溶解度を支持すると考えられる。
【0159】
表2A~2Dの実施例から、極めて安定な顔料分散液を、以下のインクセット組合せで得られ得ると結論付けることができる:
【0160】
顔料C、M2、Y、Kの組合せでは、2種の分散剤を使用することによる:
15モノマーのAAをそのブロック長さで及び30モノマーのBnAをそのブロック長さで有する第1の分散剤AA-BnA 15-30。分散剤をC、M2、及びYに使用する;
並びに、30モノマーのAAをそのブロック長さで及び40モノマーのEHAをそのブロック長さで有する第2の分散剤AA-EHA 30-40。分散剤をKに使用する。
【0161】
顔料C、M1、Y、Kの組合せでは、3種の分散剤を使用することによる:
15モノマーのAAをそのブロック長さで及び30モノマーのBnAをそのブロック長さで有する第1の分散剤AA-BnA 15-30。分散剤をC及びYに使用する;
30モノマーのAAをそのブロック長さで及び40モノマーのEHAをそのブロック長さで有する第2の分散剤AA-EHA 30-40。分散剤をKに使用する;
並びに、25モノマーのAAをそのブロック長さで及び30モノマーのEHAをそのブロック長さで有する第3の分散剤AA-EHA 25-30。分散剤をM1に使用する。
【0162】
顔料C、M1、Y74、Kの組合せでは、3種の分散剤を使用することによる:
15モノマーのAAをそのブロック長さで及び30モノマーのBnAをそのブロック長さで有する第1の分散剤AA-BnA 15-30。分散剤をC及びY74に使用する;
30モノマーのAAをそのブロック長さで及び40モノマーのEHAをそのブロック長さで有する第2の分散剤AA-EHA 30-40。分散剤をKに使用する;
並びに、25モノマーのAAをそのブロック長さで及び30モノマーのEHAをそのブロック長さで有する第3の分散剤AA-EHA 25-30。分散剤をM1に使用する。
【0163】
顔料C、M2、Y74、Kの組合せでは、3種の分散剤を使用することによる:
ブロック内にランダムに分布した20単位のBnA及び20単位のEOEOAを有する40モノマーをそのブロック長さで、並びに25モノマーのAAをそのブロック長さで有する第1の分散剤BnA/EOEOEA-AA 20/20-25。分散剤をC及びY74に使用する;
ブロック内にランダムに分布した30単位のBnA及び10単位のEOEOAを有する40モノマーをそのブロック長さで、並びに25モノマーのAAをそのブロック長さで有する第2の分散剤BnA/EOEOEA-AA 30/10-25。分散剤をKに使用する;
並びに、ブロック内にランダムに分布した30単位のBnA及び10単位のEOEOAを有する40モノマーをそのブロック長さで、並びに15モノマーのAAをそのブロック長さで有する第3の分散剤BnA/EOEOEA-AA 30/10-15。分散剤をM2に使用する。
【0164】
少なくとも2種の異なるブロックポリマー性分散剤が、フルカラー画像を基材上に形成するための安定なインクジェットインクセットの製造を可能にするために非常に安定な分散液セットを作製するには必要である。
【0165】
上述の組合せは例示的なものにすぎない。
【0166】
インクジェットインクは、表3による顔料分散液を希釈することにより調製する。
【0167】
【表6】
【0168】
これらのインクは全て高い分散安定性を示す。
【0169】
シアンインクは、Clariantのシアン顔料PV Fast Blue BG及びブロックコポリマー分散剤AA-BnA 15-20を含むシアン顔料分散液を含む。
【0170】
マゼンタインクは、マゼンタ顔料M1 Ink Jet Magenta E02及びブロックコポリマー分散剤AA-EHA 25-30を含むマゼンタ顔料分散液を含む。
【0171】
イエローY47インクは、顔料及びブロックコポリマー分散剤AA-BnA 15-30を含むイエロー顔料分散液を含む。
【0172】
イエローPY155インクは、顔料Ink Jet Yellow 4GC及びブロックコポリマー分散剤AA-BnA 15-20を含むイエロー顔料分散液を含む。
【0173】
ブラックインクは、Orionの顔料PBl7及びブロックコポリマー分散剤AA-EHA 30-40を含むブラック顔料分散液を含む。
【0174】
最終インクジェットインクの粘度は、典型的には25℃で4~10mPa.sであり、静的表面張力は17~35mN/mである。
【国際調査報告】