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特表2023-52102940個~160個のエトキシ単位を有し、20個~30個の炭素原子の鎖長を有する第一級アルコールに由来する、アルコールアルコキシレートを含む水溶性着色組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】40個~160個のエトキシ単位を有し、20個~30個の炭素原子の鎖長を有する第一級アルコールに由来する、アルコールアルコキシレートを含む水溶性着色組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 13/00 20060101AFI20230516BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C09D13/00
C09K3/00 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560208
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021025307
(87)【国際公開番号】W WO2021202829
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/004,097
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516380050
【氏名又は名称】サソール(ユーエスエイ)コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビッケル,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】ノルマン,オリー
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039BA16
4J039BA23
4J039BB01
4J039BC12
4J039BE01
4J039BE02
4J039CA09
4J039DA06
4J039EA45
4J039GA32
(57)【要約】
本発明は、40個~160個のエトキシ単位を有し、20個~30個の炭素原子の鎖長を有する第一級アルコールに由来する、アルコールアルコキシレートを含む水溶性マーキング組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 式(I):
R-O-(C2zO)-H (I)
- (式中、Rは、20~30個の炭素原子総数を有する直鎖又は分枝鎖アルキルであり;
- zは、2又は3の値を有し;かつ
- xは、40~160の値を有する)
の少なくとも1種のアルコールアルコキシレートと、
- 少なくとも1種の充填材と、
- 少なくとも1種の着色物質と、を含む水溶性着色組成物。
【請求項2】
Rは、22~30の、より好ましくは23又は24~30の、最も好ましくは24~28の、炭素原子総数を有する直鎖又は分枝鎖アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
zは2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
xは、45~155の値、好ましくは100~150の値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルコールエトキシレートは、85~95重量%の、好ましくは88~95重量%の、平均EO含有量を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルコールエトキシレートは、17~20の、好ましくは17.5~19.5の、HLB値を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルコールエトキシレートは、5~25の、好ましくは8~22の、ヒドロキシル価を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記アルコールエトキシレートは、少なくとも2000g/molの、好ましくは少なくとも5000g/molの、平均分子量を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記アルコールエトキシレートは、60~75℃の、好ましくは65~73℃の、曇り点を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルコールエトキシレートは、50~65℃の、好ましくは54~62℃の、融点(範囲)を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
前記アルコールエトキシレートは、1200~4000秒の、好ましくは1300~2500秒の、水への溶解時間を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、10~90重量%のアルコールエトキシレート、好ましくは15~50重量%のアルコールエトキシレート、より好ましくは17.5~35重量%のアルコールエトキシレートを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、90~10重量%の前記充填材、好ましくは85~50重量%の前記充填材、より好ましくは82.5~65重量%の前記充填材を含み、前記充填材は、好ましくは、炭酸カルシウム、滑石、ベントナイト粘土、カオリン粘土、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記着色物質は、光の電磁スペクトルの可視光波長域400nm~800nmで、活性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記着色物質は、染料又は顔料である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記着色組成物は、ロッド又はスティック状の形式を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は、水溶性着色クレヨンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、1~5重量%の顔料又は染料、好ましくは1.5~2.5重量%の顔料又は染料を含み、前記顔料又は染料は、好ましくはバイオレット19、グリーンLX-11774、オレンジLX 11360、ウルトラマリンピンク、二酸化チタン、メチレンブルー、紺青、レッドアルミニウムレーキ染料、レッドカルシウムレーキ染料、又はそれらの混合物を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
水溶性着色組成物を製造する方法であって、
- 式(I):
R-O-(C2zO)-H (I)
- (式中、Rは、20~30個の炭素原子総数を有する直鎖又は分枝鎖アルキルであり;
- zは、2又は3の値を有し;かつ
- xは、40~160の値を有する)
のアルコールアルコキシレートを提供するステップと、
- 充填材を提供するステップと、
- 着色物質を提供するステップと;
- アルコールアルコキシレート、充填材、及び着色物質を、撹拌及び加熱しながら溶融混合して、溶融ブレンドを得るステップと;
- 溶融ブレンドを選択された形状に成形するステップと;
- 溶融ブレンドを冷却して固化させるステップと、を含む方法
【請求項20】
前記溶融ブレンドは、ロッド又はスティックの形状に成形される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記溶融混合は、射出成形装置内で実行されて、前記水溶性着色組成物は、射出成形により製造される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記溶融混合は、押出成形装置内で実行されて、前記水溶性着色組成物は、押出成形により製造される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記溶融ブレンドを成形することは、
- 前記溶融ブレンドを加熱した型に静かに流し込む又は注ぎ込むことと;
- 回転するブレードを用いて、前記型野中の前記溶融ブレンドを冷却することと;
- 前記固化した溶融ブレンドを、型成形物として、前記型から取り出すことと、
を含む請求項19に記載の方法。
【請求項24】
式(I):
R-O-(C2zO)-H (I)
- (式中、Rは、20~30個の炭素原子総数を有する直鎖又は分枝鎖アルキルであり;
- zは、2又は3の値を有し;かつ
- xは、40~160の値を有する)
のアルコールアルコキシレートの、水溶性着色組成物における使用法。
【請求項25】
前記アルコールアルコキシレートは、前記着色組成物の機械的安定性と;前記顔料の分散性と;さまざまな異なる表面に適用された時の前記着色組成物の洗浄性及び発色性、並びに/又は前記着色組成物が適用された任意の表面から前記着色組成物を水で取り除くことができる能力と、を改善する、請求項24に記載の使用法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年4月2日に出願された米国特許出願第63/004,097号に基づく優先権を主張する。なお、その開示内容は、あらゆる目的のため、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、40個~160個のエトキシ単位を有し、20個~30個の炭素原子の鎖長を有する第一級アルコールに由来する、アルコールアルコキシレートを含む水溶性着色組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
水溶性着色組成物は、カラーブラシ用及びローラーボールペン用の水溶性絵の具及びポスターカラー、並びにクレヨン等に使用される。そのような組成物には、顔料、染料、及び/又は他の着色物質が含まれており、それらは、様々に異なる表面に適用することができ、しかも、洗浄するかつ/又は上から水をかけることによって、容易に除去することができる。
【0004】
クレヨン又はワックスパステルは、有色のワックス、チャコール、チョーク、又は、字を書く又は絵を描くために使用される他の材料である。乾燥バインダーを有する顔料から作られたクレヨンがパステルであり、油チョークで作られると、オイルパステルと呼ばれることになる。また、時に水溶性クレヨンと呼ばれることもある、水彩クレヨンというものもある。
【0005】
クレヨンは、ある範囲の価格で入手でき、また、それを用いて作業するのが容易である。クレヨンは、大部分の絵の具やマーカーと比べて、汚れが少なく、鋭利ではなく(鉛筆やペンを使う際に存在する鋭い先端のリスクを取り除いている)、典型的には毒性もなく、かつまた非常に多様な色で入手可能である。これらの特徴により、クレヨンは、学生やプロの芸術家によって広く使われる事に加えて、小さな子供に絵を描くことを教えるための特に良好な道具となる。
【0006】
従来のクレヨンは未だに、パラフィンワックス、顔料、及び充填材料から構成されている。本来紙の上に字を書くように設計されているものの、多くの子供たちはクレヨンを使って、壁やテーブル、更には他の表面上に書いてしまう。ワックスクレヨンは、表面から取り去るのが難しく、掻き取ったり、溶かして取ったりということを必要とする場合も多く、それは下地である表面を損傷する場合もあり得る。
【0007】
1990年、Binney & Smith社(当時、Crayola社の親会社)の化学者であったColin Snedekerは、消費者からの布地や壁に汚れがつくという苦情に応えて、最初の洗浄可能なクレヨンを開発した。関連特許(特許文献1)において、ポリエチレングリコール成分、水溶性界面活性剤、及び顔料を含む、固体のマーキング組成物が開示されている。
【0008】
1990年以降の同様の特許では、特許文献2に、1種以上の水溶性アルコキシル化生成物と、着色剤とを含み、そのアルコキシル化生成物が脂肪族アルコールエトキシレートであり得る水溶性クレヨン組成物が開示されている。
【0009】
1995年以降の特許文献3では、少なくとも1種のエトキシル化アルコールと、エトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル、エステル誘導体、フェノール、エーテル、及びポリマー誘導体からなる群から選択される更なる水溶性材料と、少なくとも顔料又は染料とを含み、ポリエチレングリコールを含まない、改善された水溶性クレヨンが開示されている。エトキシル化アルコールは、第一級直鎖アルコール(例えば、UNITHOX480又は490)に由来するものである。ポリエチレングリコールがないことで、ゴースティング、すなわち、水で洗浄した際に表面上に残る残留物が減少する。同様の、エトキシル化アルコール中の顔料分散系が、特許文献4に提示されている。
【0010】
特許文献5は、ポリエチレングリコールを含まない水溶性クレヨン(例えば、特許文献3及び特許文献2のもの)の既存の問題点(例えば、べたつき、小さい破壊強さ、その結果、手が汚れてしまうこと)を、少なくとも1種のワックスを、エトキシル化脂肪族アルコール、ステアリン、充填材、及び少なくとも1種の顔料と混合することによって克服しようと試みた。
【0011】
本明細書で言及される全ての先行技術参考文献は、参照することにより、あらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【0012】
多くの異なる成分、例えば、パラフィンワックス若しくはステアリン及び/又は界面活性剤、並びに分散剤など含まず、迅速に、機械的アクションなしで洗い流され、組成物の表面に対してウェットブラシを適用することによって水彩絵の具としても用いることができる、水溶性着色組成物が未だに必要とされている。更に、着色組成物は、高い温度下においても損なわれることのない状態で留まり、紙の上で良好な発色を示し、しかも使用中に薄片が剥がれ落ちたり、破壊されたりしない必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際特許出願公開第WO9004621号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0434163号
【特許文献3】米国特許第5380357号
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0195784号
【特許文献5】米国特許出願公開第2019/0048220号
【発明を実施するための形態】
【0014】
驚くべきことに、
- 式(I):
- R-O-(C2zO)-H (I)
- (式中、Rは、20~30個の炭素原子総数を有する直鎖又は分枝鎖アルキルであり;
- zは、2又は3の値を有し;かつ
- xは、40~160の値を有する)の少なくとも1種のアルコールアルコキシレートと、
- 少なくとも1種の充填材と、
- 少なくとも1種の着色物質と、を含む水溶性着色組成物が、
優れた安定性、洗浄性、及び顔料分散性を示すということが判明している。
【0015】
好ましくは、Rは、22~30個の炭素原子総数を有する直鎖又は分枝鎖アルキルである。Rは、より好ましくは23又は24~30の、最も好ましくは24~28の炭素原子総数を有する直鎖又は分枝鎖アルキルである。アルキル部分「R」は、本質的に20~3
0個からなる個別の炭素総数/分子を有する上記のようなアルキルエンティティの混合物であってもよく、混合物の数平均炭素総数1分子あたり20~30、好ましくは1分子あたり22~30、及びより好ましくは1分子あたり22~28である。
【0016】
好ましくは、zは2であり、その場合、式(I)のアルコールアルコキシレートは、アルコールエトキシレートである。
【0017】
好ましくは、xは、45~155の値を有する。 より好ましくは、xは、100~150の値を有する。
【0018】
アルコールエトキシレートは、対応するアルコールの、好適なエトキシル化触媒を介したエチレンオキシド(EO)との反応によって生成され得る。好適な触媒は、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムを含むIA属及びIIA属金属由来の触媒であり、典型的には、その金属は、塩基塩、とりわけ水酸化物として存在する。ある一部の触媒種は、狭い範囲のエトキシル化アルコールを生成するその能力により認識される。IIA属金属、特にカルシウム又はマグネシウム由来の触媒は、典型的には、狭い範囲のエトキシル化触媒として認識される。 対照的に、IA属金属、例えば水酸化カリウム由来の触媒は、一般的に、広い範囲のエトキシル化アルコールをもたらすものとして認識されている。
【0019】
本開示の発明の場合、好ましくは、アルコールエトキシレートは、狭い範囲のエトキシル化触媒、より好ましくは、狭い範囲のエトキシル化アルコールを提供するカルシウム含有エトキシル化触媒を介した反応により生成される。そのような触媒及び、エトキシル化アルコールを生成するためのその使用は、当業者には既知のものであり、例えば米国特許第4,754,075号の教示がその例となっている。好適なカルシウム含有エトキシル化触媒の例は、Sasol(USA)Corporationが開発し、特許権を有する触媒系であり、米国特許第4,775,653号、同第4,835,321号、同第5,220,077号、同第5,626,121号、同第8,329,609号、同第9,802,879号に開示されているものがある。なお、これらの文献すべての開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
式(I)のアルコールアルコキシレートは、追加的に、ただし互いに独立に、以下の特性の1つ以上を有する:
- 85~95重量%、好ましくは88~95重量%の平均EO含有量;
- 17~20、好ましくは17.5~19.5の親水性親油性バランス(HLB)値;
- 5~25、好ましくは8~22のヒドロキシル価;
- 少なくとも2000g/mol、好ましくは少なくとも3000g/mol、より好ましくは少なくとも5000 g/molの平均分子量;
- 60~75℃、好ましくは65~73℃の曇り点;
- 50~65℃、好ましくは、54~62℃の融点(範囲);
- 1200~4000秒、好ましくは1300~3000秒、より好ましくは最大でも2500秒の、水への溶解時間。
【0021】
エトキシ単位の数と含有量とは、選択されたアルコールのガスクロマトグラフィー分析によって得られる分子量、及びエトキシル化アルコールの核磁気共鳴スペクトル分析から得られるアルコール基とエトキシ基との比率に基づいて計算される。
【0022】
アルコールの分子量=ガスクロマトグラフィー分析から得られる平均分子量
平均EO含有量=NMRスペクトルにおける、アルコール鎖対エトキシ基の信号比から
計算された量。
【0023】
アルコールエトキシレートの分子量=アルコールの分子量/(1-平均EO含有量)
EO単位の数(式(I)のアルコールアルコキシレート中のx=(アルコールエトキシレートの分子量-アルコールの分子量)/44g/mol
【0024】
HLB値は、グリフィン法に従って、以下のように計算される:
HLB=20/M
=分子の親水部分の分子量
M=分子全体の分子量
【0025】
ヒドロキシル価は、欧州標準法DIN EN 13926に従って決定され、曇り点は、ASTM D2024に従って決定される。融点/範囲は、標準の方法であるASTM
D-127に従って決定される。
【0026】
可溶性(溶解までにかかる時間)は、規定量(1g)のアルコールエトキシレートを、周囲温度(20℃)の99mLの水とともにビーカーに入れ、時期撹拌機を用いて、300rpmで、アルコールエトキシレートが完全に溶解するまで撹拌する。
【0027】
更なる好ましい実施形態では、水溶性着色組成物は、
- 10~90重量%のアルコールエトキシレート、好ましくは15~50重量%のアルコールエトキシレート、より好ましくは17.5~35重量%のアルコールエトキシレートと;
- 90~10重量%の充填材、好ましくは85~50重量%の充填材、より好ましくは82.5~65重量%の充填材であって、好ましくは炭酸カルシウム、滑石、ベントナイト粘土、カオリン粘土、又はそれらの混合物である充填材と;
- 1~5重量%の顔料又は染料の形態の着色物質、好ましくは1.5~2.5重量%の顔料又は染料であって、好ましくはバイオレット19、グリーンLX-11774、オレンジLX 11360、ウルトラマリンピンク、二酸化チタン、メチレンブルー、紺青、レッドアルミニウムレーキ染料、レッドカルシウムレーキ染料、又はそれらの混合物を含む顔料又は染料と、を含む。
【0028】
好ましい実施形態では、着色物質は、光の電磁スペクトルの可視光波長域400nm~800nmで、活性である。
【0029】
本発明の別の一実施形態では、水溶性着色組成物は、
- 15~60重量%のアルコールエトキシレート、好ましくは20~40重量%のアルコールエトキシレートと;
- 85~40重量%の充填材、好ましくは80~60重量%の充填材であって、好ましくは炭酸カルシウム、滑石、ベントナイト粘土、カオリン粘土、又はそれらの混合物を含む充填材と;
- 1~5重量%の顔料又は染料の形態の着色物質、好ましくは1.5~2.5重量%の顔料又は染料であって、好ましくはバイオレット19、グリーンLX-11774、オレンジLX 11360、ウルトラマリンピンク、二酸化チタン、メチレンブルー、紺青、レッドアルミニウムレーキ染料、レッドカルシウムレーキ染料、又はそれらの混合物を含む顔料又は染料と、を含む。
【0030】
本発明はまた、水溶性着色組成物を製造する方法をも含み、その方法は、
- 式(I):
R-O-(C2zO)-H (I)
- (式中、Rは、20~30個の炭素原子総数を有する直鎖又は分枝鎖アルキルであり;
- zは、2又は3の値を有し;かつ
- xは、40~160の値を有する)のアルコールアルコキシレートを提供するステップと;
- 充填材を提供するステップと;
- 着色物質を提供するステップと;
- アルコールアルコキシレート、充填材、及び着色物質を、撹拌及び加熱しながら溶融混合して、溶融ブレンドを得るステップと;
- 溶融ブレンドを選択された形状に成形するステップと;
- 溶融ブレンドを冷却して固化させるステップと、を含む。
【0031】
好ましい一実施形態では、溶融ブレンドは、ロッド又はスティックの形状に成形される。
【0032】
更に、溶融混合は、好ましくは射出成形装置内で実行されて、水溶性着色組成物が射出成形により製造されるか、又は押出成形装置内で実行されて、水溶性着色組成物が押出成形により製造される。
【0033】
別の代替的方法は、
- 溶融ブレンドを加熱した型に静かに流し込む又は注ぎ込むことと;
- 回転するブレードを用いて、型の中の溶融ブレンドを冷却し、固化させることと、
- 固化した溶融ブレンドを、型成形物として、型から取り出すこととを含む、溶融ブレンドの成形法である。
【0034】
本発明はまた、式(I):
R-O-(C2zO)-H (I)
- (式中、Rは、20~30個の炭素原子総数を有する直鎖又は分枝鎖アルキルであり;
- zは、2又は3の値を有し;かつ
- xは、40~160の値を有する)のアルコールアルコキシレートの、水溶性着色組成物における使用法を含む。
【0035】
この用法は、好ましくは、着色組成物の機械的安定性と;顔料の分散性と;さまざまな異なる表面に適用された時の着色組成物の洗浄性及び発色性、並びに/又は着色組成物が適用された任意の表面から着色組成物を水で取り除くことができる能力と、を改善するものである。
【0036】
実施例
表1に記載のアルコールエトキシレートを、表2及び表3に従って水溶性クレヨン組成物を調整するために使用した。MAGNATHOXブランドのアルコールエトキシレートは、Sasol社から入手可能な新製品であり、以前はクレヨン組成物用には利用可能でなかった製品である。UNITHOXという商標の下で販売されているアルコールエトキシレートは、Baker-Hughes社から入手可能であり、ALFONICという商標の下で販売されているアルコールエトキシレートは、Sasol社から入手可能である。
【0037】
【表1】
【0038】
エトキシ単位の数と含有量とは、ガスクロマトグラフィー分析から得られる、使用されたアルコールの分子量、及びアルコールエトキシレートの核磁気共鳴スペクトル分析から得られるアルコール基とエトキシ基との比率に基づいて計算される。
【0039】
平均EO含有量=NMRスペクトルにおける、アルコール鎖対エトキシ基の信号比から計算された量
EO単位の数(アルコールエトキシレートの分子量-アルコールの分子量)/44g/mol
アルコールの分子量=ガスクロマトグラフィー分析から得られる平均分子量
HLB値は、グリフィン法に従って、以下のように計算される:
HLB=20/M
=分子の親水部分の分子量
M=分子全体の分子量
アルコールエトキシレートの分子量=アルコールの分子量/(1-平均EO含有量)
可溶性(溶解までにかかる時間)は、規定量(1g)のアルコールエトキシレートを、周囲温度(20℃)の99mLの水とともにビーカーに入れ、時期撹拌機を用いて、300rpmで、エトキシル化アルコールが完全に溶解するまで撹拌する。
【0040】
表1内の値からは、本発明のアルコールエトキシレートは、より長い第一級アルコール由来の比較例の先行技術の製品と比べてより迅速に溶解し、より短い第一級アルコール由来の比較例の先行技術の製品と比べて、よりゆっくりと溶解するということがわかる。しかしながら、本発明のエトキシレートは、より短い第一級アルコール由来のエトキシレートよりも、より高い融点範囲を有し、それは高温下でより安定的であるということを示すため、本発明のエトキシレートは、より短い第一級アルコール由来のエトキシレートよりも好ましい。
【0041】
【表2】
【0042】
クレヨン組成物1~10で、リノリウムタイル上に図を描き、シンクから水を、一定の力と圧力で、15秒間にわたり、タイルの各セクションにまんべんなくかけた。配合物1~6と、配合物9とは、完全に洗い流されたが、配合物10は、まったく取り去られることがなく、配合物7及び8は、部分的にのみ取り去ることができた。
【0043】
更に、クレヨンをリノリウムタイルから取り去ることに対して、機械的力がどのような影響を及ぼすかを調べるために、スクラビングテストが実施された。このテストのために、ASTM D-4828(有機塗料の実用的な洗浄性)による方法に手を加えたものを用いた。Gardner Abrasion Tester II Scrubberを、毎分37ストロークのスクラビング速度で使用した。汚したタイルを、水道水に浸したスポンジで、50ストロークスクラビングした。各クレヨン配合物を1g、融解させて、個々のタイルに適用してから、固化させた。スクラビングテストの前と、テストの後、タイル上の水が乾いた時点で、タイルと配合物との重量を測定した。
【0044】
スクラビングテストの結果は、表3に記載されており、本発明のクレヨン組成物は、先行技術のクレヨン組成物よりも容易に取り去ることができるということを明らかに示している。
【0045】
有利なことには、本発明の組成物は、より多くの量の充填材を含むことができ、そのことは、先行技術の組成物と比べてより優れた除去特性を提供しながら、クレヨン組成物のコストを低減するという点では、有益である。
【0046】
【表3】
【0047】
本発明の組成物は、水彩絵の具としても使用することが可能であった。
【0048】
さまざまな試料とともに作業をしたが、シンプルなスナップ破壊テストでは、本発明の材料は破壊されて、鋭利なエッジ又は薄片を、もし仮に提示したとしてもほとんど提示しないということが観察された。対照的に、同様のテストにおいて、比較例の材料は、望ましくない鋭利なエッジと薄片を残した。理論に縛られずに言えば、本発明の組成物は、比較例の材料と比べて、狭い範囲のエトキシル化アルコールでありかつ規定のEO含有量のエトキシル化アルコールであることから、異なる固化速度及び結晶化速度を示し、冷却した生成物において応力線がより少なくなるということが考えられる。応力線の存在は、スナップ破壊テストで、鋭利なエッジと薄片とを形成するのを促すものと考えられる。
【0049】
要約すると、本発明のアルコールエトキシレートは、先行技術の問題点を明らかに克服しており、優れた水溶性着色組成物を提供するものである。
【国際調査報告】