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特表2023-521031誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560223
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021025603
(87)【国際公開番号】W WO2021230993
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/003,921
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/003,922
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522386770
【氏名又は名称】エリジウム ロボティクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】リベラ、ロドリゴ、アルバレス-イカラ
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 本明細書では、束状誘電エラストマー・マイクロファイバー間に機械接続および電気接続を形成することにより誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)を作製する方法およびシステムを開示する。この誘電エラストマー・マイクロファイバーは、各マイクロファイバーの面と支持要素との間の直接機械接続と、すべてのマイクロファイバーのコアと導電性接点との間の直接電気接続とを有する。また、内部電極と、中空管と、外部電極とを有する誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーを開示し、前記外径および前記内径のアルファ比は、アクチュエータとしての誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーの電気機械性能を最大化するように選択される。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーであって、
a.前記誘電エラストマー・マイクロファイバーの各々の環状面の断面と端部キャップ部である支持要素との間の直接機械接続と、
b.すべての誘電エラストマー・マイクロファイバーのコアと導電性接点との間の直接電気接続と
を有する、電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバー。
【請求項2】
請求項1記載の電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーにおいて、前記直接機械接続および前記直接電気接続の双方は、導電性接着剤または導電性接合材により達成されるものである、電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバー。
【請求項3】
請求項2記載の電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーにおいて、前記導電性接着剤または前記導電性接合材は、前記支持要素を前記誘電エラストマー・マイクロファイバーの壁材料に物理的に接合するとともに、中空の前記誘電エラストマー・マイクロファイバーのコア内の流動性電極と電気的に連通するものである、電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバー。
【請求項4】
請求項3記載の電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーにおいて、当該誘電エラストマー・マイクロファイバーは、エポキシ樹脂、シアノアクリレート、またはシリコーンにより接合されるものである、電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバー。
【請求項5】
請求項3記載の電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーにおいて、当該誘電エラストマー・マイクロファイバーはシリコーンを有するものである、電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバー。
【請求項6】
請求項3記載の電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーにおいて、前記電気接続は、前記誘電エラストマー・マイクロファイバーのコアと導電性接点との間に形成された流体空洞により達成されるものであり、前記機械接続は、当該束状構造のシール部の周囲部において達成されるものである、電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバー。
【請求項7】
請求項1記載の電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーにおいて、導電性支持部は、当該束状構造の各誘電エラストマー・マイクロファイバーのコアにそれぞれ挿入されたピンまたは接点のアレイを有するものである、電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバー。
【請求項8】
請求項7記載の電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーにおいて、前記機械接続は、接着剤または接合剤により強化されるものである、電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバー。
【請求項9】
請求項1記載の電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーにおいて、前記電気接続は、集積回路に類似するボンディングパッドリングおよびボンディングワイヤーによって達成されるものである、電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバー。
【請求項10】
請求項9記載の電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーにおいて、前記機械接続は、円筒形状の束状構造シール部の環状縁面、または前記シール部の周囲部に提供された接着剤または接合剤により達成されるものである、電気機械的に接続された、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバー。
【請求項11】
誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーであって、
外径と内径とを有することを特徴とする中空ファイバー本体部と、
前記中空ファイバー本体部の内部に配置された内部流動性電極または内部柔軟電極と、
前記中空ファイバー本体部の外部に配置された外部流動性電極または外部柔軟電極と
を有し、
前記中空ファイバー本体部の前記内径に対する前記外径のアルファ比は、アクチュエータとしての前記誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーの電気機械性能を最大化するように選択されるものである、
誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項12】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記アルファ比は、機械エネルギー出力を最大化するように選択されるものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項13】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記アルファ比は、有効仕事密度を最大化するように選択されるものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項14】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記アルファ比は、比エネルギーを最大化するように選択されるものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項15】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記アルファ比は、機械出力密度を最大化するように選択されるものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項16】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記アルファ比は、機械比出力を最大化するように選択されるものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項17】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記アルファ比は、有効歪みを最大化するように選択されるものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項18】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記アルファ比は、有効応力を最大化するように選択されるものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項19】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーの電気時定数は、1000ms未満であり、好ましくは500ms未満であり、好ましくは200ms未満である、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項20】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、標的動作電圧で欠陥率が束状構造内の1000の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーに対して1となるように、前記外径(OD)が減少されるものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項21】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記内部電極の抵抗率は、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーが約200ms未満の電気時定数を有するように設計されるものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項22】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記外径(OD)の尺度、アルファ比、および前記内部電極の抵抗率は、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーが、所定の用途の機械時定数に一致する電気時定数を有するように選択されるものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項23】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記中空ファイバー本体部は、シリコーンエラストマー材料を有するものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項24】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記中空ファイバー本体部は、熱硬化性エラストマー材料を有するものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項25】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記中空ファイバー本体部は、熱可塑性エラストマー材料を有するものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項26】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記中空ファイバー本体部は、ウレタンエラストマー材料を有するものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項27】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記中空ファイバー本体部は、ポリエステルエラストマー材料を有するものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項28】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記中空ファイバー本体部は、アクリルエラストマー材料を有するものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項29】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記中空ファイバー本体部は、100kPa~5000kPaの範囲のヤング率を有することを特徴とするエラストマー材料を有するものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項30】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーは、400kPa~800kPaの受動弾性定数(passive elasticity constant)を有することを特徴とする、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項31】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーによって生成された応力は、前記内部および外部電極間の活性化電圧により電気的に活性化されたときにゼロに減少するものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【請求項32】
請求項11記載の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーにおいて、前記内部および外部電極間に活性化電圧が存在しない場合、所望の基準応力を生成するために、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーに予応力が加えられるものである、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月2日付で出願された米国特許仮出願第63/003,921号、および2020年4月2日付で出願された米国特許仮出願第63/003,922号に対して優先権を主張するものであり、当該各米国特許仮出願の開示は、この参照によりその全体がすべての目的において本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利
本発明は、米国内務省および国防高等研究計画局(DOI/DARPA)により授与された契約書第140D0420C0040号に基づき、一部政府支援を受けることによりなされたものである。政府は、本発明における特定の権利を有する。
【0003】
本発明は、人工筋肉およびアクチュエータの分野に関する。また、本発明は、ロボット工学および補綴の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
高性能ロボットアクチュエータの必要性
ロボットシステムは、その有能性、安全性、および費用対効果が高まるにしたがって、必須の社会経済学的課題を解決すると考えられる。このような課題を解決するためには、新世代の、低コストで高度の巧緻性を有する協働ロボット、有効な外骨格、シームレスな補綴が必要とされる。このようなロボットシステムのコンポーネント(センサー、計算、アルゴリズム、または遠隔操作、接続性、および電池)は、アクチュエータという重要な1コンポーネントを除いては、十分に開発が進んでおり、費用対効果が高い。これらの用途では、ロボットは非周期的な任意の運動を実行することが要求されるため、頑丈かつ敏速で、十分に正確かつ制御可能であるとともに、小型で軽量なアクチュエータが必要とされる。非接続型の用途では、効率性が電池のサイズを減少するために必須となる。ヒトと安全に相互作用するために、装置は本質的に適合性を有し、軽量である必要がある。また、補綴および軍事用ロボットの用途では、アクチュエータは無音である必要がある。アクチュエータについては、懸命な努力にもかかわらず、画期的なイノベーションが見られず、電磁モーターの基本原理の域にとどまっている。
【0005】
現在に至るまで、ロボットの用途において入手可能な最良のアクチュエータは、電動モーターおよび油圧駆動装置であるが、これらは、複雑で、重量が重く、非効率的で、ヒトと相互作用する上で安全ではなく、また高価である。電動モーターは、低速で動作する場合、低トルク密度を有するため、非常に非効率的である。この問題は、小型モーターの場合悪化する。油圧アクチュエータは、より高いトルク密度を有するが、弁、ポンプ、および付属部品の質量により、システム全体のトルク密度が制限される。多くの歯車を備えるモーターおよび弁制御による油圧アクチュエータは、高い機械インピーダンスの影響を受ける(すなわち、高出力摩擦、硬直性、および大きな反射慣性(reflected inertia)を有する)。このような性質は一般的に問題となるものである。また、ヒトと相互作用するように設計されたロボットにおいては、四肢の軽量性および受動的な後方駆動性(passive back-drivability)が、力の介在する相互作用のために望ましく、また安全性のために必須であるため、さらに問題となる。少数の歯車を備えるモータ、または閉ループ力フィードバック制御を使用して関節のインピーダンスを低減することが可能であるが、低トルク密度のため、モーターは往々にして重量過多となり、遠位関節に配置することができない。これに対して、四肢の慣性を低減させるために、モーターをロボットの本体部に配置し、変速機を介して遠位関節と接続することが可能であるが、マルチリンク式多関節型ケーブルの駆動装置により設計が複雑化し、費用および重量が増加する。さらに、ボーデンケーブル(例えば、自転車のケーブルブレーキ)は、高静摩擦、摩耗、および非線形挙動の影響を受ける。代替形態としては、低摩擦リニアシリンダまたは可逆回転式流体ポンプを備える、静圧状態の流体アクチュエータの使用がある。しかしながら、このようなアクチュエータは、漏洩への対処、および入出力同期維持のために閉ループ制御を必要とし、また高圧力を必要とするため、小孔から漏洩の危険性がある。全体として、現在の作動技術は、安全で有能、かつ完全に自律したロボットおよび補綴の開発の障害となっている。したがって、電動モーターおよび油圧駆動装置に依存しない、ロボットおよびその他の用途のための作動技術を継続的に改善する必要がある。
【0006】
誘電エラストマー・マイクロファイバー(Dielectric Elastomer microfibers)は、ロボットおよび補綴の用途全般のための低コストかつ高性能のアクチュエータを実現する上で有望な候補である。同軸コンデンサとして実施される場合、当該アクチュエータは、誘電エラストマー材料の卓越した電気機械特性を活用して、天然筋肉の運動に近似する有用かつスケーラブルな(伸縮自在な)運動を生成する。誘電エラストマー・マイクロファイバー製トランスデューサーは、その張力を発生させる能力、および天然筋肉の階層構造を模倣する能力により、ロボットおよび補綴システムのための真の「人工筋肉」の実現を担保する。
【0007】
誘電エラストマー(DE)は、その迅速な応答時間(0.1秒未満)、高エネルギー密度、歪み能力、低コスト、無音動作、および長耐用期間のため、2000年初期に、ロボットの作動に関する課題を解決可能な人工筋肉を作製するための有望な材料として特定された。過去20年の間、エラストマー膜からなる誘電エラストマーアクチュエータに焦点を置いた研究が行われてきたが、このエラストマー膜は、平行板コンデンサを形成する2つの柔軟電極の間に挟持され、絶縁体として作用する(対比図面1a)。誘電エラストマー(DE)膜を基礎とするアクチュエータは、100%よりも大きい作動歪みを実現できるが、当該材料は高電場を必要とし、また、超薄膜を作製することは困難であるため、これらのアクチュエータは通常、高駆動電圧(500~10,000V)が必要であり、それによってロボットシステムへの統合が複雑化する。誘電エラストマー(DE)膜は、不純物または欠陥によって破局故障(絶縁破壊)の影響を受けやすくなるため、大型アクチュエータへの統合が容易ではなく、また、積層することが困難である。誘電エラストマー(DE)膜の様々な形態および用途への試みがなされてきたが、誘電エラストマー(DE)膜から実質的な運動を抽出(すなわち、人工筋肉を作製)することは不可能であった。
【0008】
膜を基礎とする誘電エラストマー(DE)アクチュエータの制約を解消する、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs:Dielectric Elastomer microfiber actuators)
誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)について最初に記載している先駆の特許として米国特許第7834527号を参照されたい(当該特許はこの参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。平行板コンデンサを使用する代わりに、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)では、複数のファイバーを有する同軸コンデンサの設計が実装される(図1b)。これらのファイバーは、数マイクロメーターまで縮小することができ、低コストで生産可能である。小径のファイバーを使用することにより、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)は、低電圧(600V未満)で動作することができ、また、天然筋肉の骨上の引っ張りと同様の、ロボット関節を直接駆動するのに使用可能な張力を発生させることができる。数千のファイバーを束ねることにより、信頼性が向上し、また、誘電エラストマー(DE)材料の人口筋肉としての最大限の可能性をついに実現可能な、頑丈でスケーラブルなアクチュエータを製造することが可能となる。
【0009】
誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)は、ロボット用の低コストで高性能のアクチュエータを提供するとともに、完全に新世代のロボットを実現可能とする。当該アクチュエータの筋肉と同様の性能により、ロボットを、ヒトとの相互作用において非常に有用かつ安全であるように設計することが可能となる。このようなロボットは、ついに工場の作業場を離れ、多くの空想科学小説で描かれているような、多様な新規の用途への使用が可能である。すなわち、このような空想科学小説が現在では現実化するものである。トランジスタがIT革命を可能にした基礎的要素であったのと同様に、実用的な誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー製アクチュエータは、ロボット革命を可能とする基礎的要素であり、既知の文明を変えるものである。
【0010】
誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)の顕著な特徴は、多くのファイバーを束ねることができる点にあり、それにより、各ファイバーから発生する力が統合されて非常に頑丈なアクチュエータを生成することができる。このようなアクチュエータを実現するためには、各ファイバーは、作動可能なように電気的に接続されているとともに、力を伝達するように機械接続されている必要がある。しかしながら、電気接続および機械接続を形成する際に、物理的および材料的適合性の問題が生じる。
【0011】
機械的な観点において、先の開示および実施形態では、束状誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の内部で、各ファイバーを束状構造シール部(bundle seal)においてのみ互いに機械的に連結すること、次にこの束状構造シール部をその周囲部においてのみキャップ部に取り付けること、さらに、このキャップ部により、対象システムに負荷を伝達することについて検討している。この構成では、多数の束状ファイバーを有する誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)において深刻なスケーラビリティの問題が生じ、断面積が全体的に増加する。この構成の問題点は、束状構造シール部の中央部のファイバーは隣接したファイバーを介して機械的負荷を束状構造シール部の周囲部に対して横方向に伝達する必要があることである。これにより、縁部に向う力の進行性蓄積が生じ、その結果、束状構造シール部の中央部に著しい変形が生じる。これは、梁の曲げ分析と類似しているが、3Dのたわみ曲面に拡張するものである。適切な類比としては、トランポリンが均一的に雪で荷重された際に生じる変形が考えられる(すなわち、最終的に全応力が周囲部に伝達されると、トランポリンの表面中央部に著しい歪みが生じる)。そして、束状構造シール部の周囲部に向かって次第に剪断応力が集中する。
【0012】
電気的な観点において、先の開示および実施形態では、束状誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の内部で、各ファイバーのコアは、共通の空洞に充填された共通のバルク流体導体を介して電気的に相互接続されることついて検討している。(上記で説明した)機械的負荷による不均一的な変形を考慮すると、この空洞にも必然的に同様の変形が生じると考えられ、それにより縁部に向かってより薄肉の領域が生じることとなり、その結果、導電性が劣化する。概して、機械的変形に起因して好ましくない不均一な導電性が生じると考えられる。したがって、このような技術課題を克服するために、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の設計および当該アクチュエータの材料を引き続き改良する必要がある。
【0013】
本開示の発明は、上記のおよびその他の重要なニーズに関連する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、単一のバルク接点媒体によって誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の束状構造内におけるマイクロファイバーの少なくとも大部分、また、好ましくは当該マイクロファイバーの少なくとも実質的にすべてを電気機械的に接続する二重機能を実現するための導電性接着基板、およびその他の方法を提供するものであり、従来の課題を解決し、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)に数多くのファイバーを提供することを可能とする。また、この二重機能を有する接続用接着剤を実装することにより、導電性コアにおける流動性電極の存在下で当該接着剤によって誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーがキャプ材料に接合されるため、材料適合性の問題が解決される。
【0015】
本発明はまた、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバー間に機械接続および電気接続を形成する方法およびシステムを提供し、この誘電エラストマー・マイクロファイバーは、各マイクロファイバーの面と支持要素との間の直接機械接続と、少なくとも大部分、少なくとも実質的にすべて、またはすべてのマイクロファイバーのコアと金属接点または導電性接点との間の直接電気接続とを有する。これらの接続は、接着特性を有するバルク材料によって確立され、このバルク材料の一方の表面は導電性キャップ部に接合され、もう一方の表面は各マイクロファイバーの環状面に接合される。このような方法により、バルク材料は前記導電性キャップ部と前記ファイバーの縁部との間に接着剤の薄膜を形成する。追加的にこの接着剤は、束状構造シール部と前記導電性接点との間の接合を確立する。それと同時に、この接着剤は、導電特性を有し、前記導電性接点と前記ファイバーの導電性コアとの間に導電路を形成する。
【0016】
本発明はまた、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーを電気機械的に接続する方法およびシステムを提供し、当該誘電エラストマー・マイクロファイバーは、各誘電エラストマー・マイクロファイバーの面(円筒形状の環状縁面)と支持要素(端部キャップ部)との間の直接機械接続と、すべてのマイクロファイバーのコアと金属接点または導電性接点との間の直接電気接続とを有する。
【0017】
本発明はまた、束状構造を成す複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーを電気機械的に接続する方法およびシステムを提供し、当該誘電エラストマー・マイクロファイバーは、複数の誘電エラストマー・マイクロファイバーの面(周縁部)と支持要素(端部キャップ部)との間の直接機械接続と、すべてのマイクロファイバーのコアと金属接点または導電性接点との間の直接電気接続とを有する。
【0018】
本発明はまた、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーを提供し、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーは、外径と内径とを有することを特徴とする中空ファイバー本体部と、前記中空ファイバー本体部の内部に配置された内部柔軟電極と、前記中空ファイバー本体部の外部に配置された外部柔軟電極とを有する。前記中空ファイバー本体部の前記内径に対する前記外径のアルファ比は、アクチュエータとしての前記誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーの電気機械性能を最大化するために選択される重要な設計パラメータである。
【0019】
本発明はまた、内部電極と、中空管と、外部電極とを有する誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーを提供し、前記中空管の外径および内径のアルファ比は、アクチュエータとしての誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーの電気機械性能を最大化するように選択される。適切なアルファ比の値は、当該マイクロファイバーの機械エネルギー出力を最大化するように選択されることが好ましい。いくつかの実施形態において、前記アルファ比は、有効仕事密度を最大化するように選択される。別の実施形態において、前記アルファ比は、比エネルギーを最大化するように選択される。いくつかの実施形態において、前記アルファ比は、機械出力密度を最大化するように選択される。いくつかの実施形態において、前記アルファ比は、機械比出力を最大化するように選択される。別の実施形態において、前記アルファ比は、有効歪みを最大化するように選択される。別の実施形態において、前記アルファ比は、有効応力を最大化するように選択される。いくつかの実施形態において、前記アルファ比は、約1.1~3の間の値である。
【0020】
特定の好適実施形態において、本発明はまた、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーを提供し、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーは、外径と内径とを有することを特徴とする中空ファイバー本体部と、前記中空ファイバー本体部の内部に配置された内部柔軟電極と、前記中空ファイバー本体部の外部に配置された外部柔軟電極とを有する。前記中空ファイバー本体部の前記外径と前記内径との間のアルファ比は、アクチュエータとしての前記誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーの電気機械性能を最大化するように選択される。
【0021】
本発明はまた、内部電極と、中空管と、外部電極とを有する誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーを提供し、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーを帯電させるのに必要とされる電気RC時定数は、1000ミリ秒(ms)未満であり、好ましくは500ms未満であり、より好ましくは200ms未満である。いくつかの実施形態において、前記外径(OD)は、絶縁破壊を分離する、より高い抵抗率を有するコアを実現するために減少され、またその結果、標的動作電圧での欠陥率が束状構造内の1000の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーに対して1となる。いくつかの実施形態において、前記コアの抵抗率は、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーが200未満の電気時定数を有するように設計される。別の実施形態において、前記外径(OD)の尺度、アルファ比、および前記コアの抵抗率は、前記誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーが、標的システムの機械時定数に一致する電気時定数を有するように選択されるが、この電気時定数は標的システムの機械時定数未満ではない。
【0022】
本発明はまた、内部電極と、中空管と、外部電極とを有する誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーを提供し、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーの中空ファイバー本体部は、シリコーンエラストマー材料、熱硬化性エラストマー材料、熱硬化性エラストマー材料、ウレタンエラストマー材料、ポリエステルエラストマー材料、アクリルエラストマー材料、およびメタクリルエラストマー材料のうちの1若しくはそれ以上のエラストマー材料から成ってもよい。
【0023】
本発明はまた、内部電極と、中空管と、外部電極とを有する誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーを提供し、当該誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーの中空ファイバー本体部は、100kPa~5000kPaの範囲のヤング率を有することを特徴とする材料から作製され、当該ヤング率は、約300kPa~約2,400kPa、または約400kPa~約2,000kPaの範囲であることが好ましく、約500kPa~約1,500kPaであることがさらに好ましく、約600kPa~約1,200kPaであることがさらに好ましい。
【0024】
本明細書全般の記載、および以下の発明の詳細な説明は、例示および説明のみを目的とするものであり、添付の特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。当業者であれば、本明細書で提供する発明の詳細な説明から、本発明のその他の観点が自明であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
発明の概要および以下の詳細な説明は、添付の図面とともに一読することによってより理解される。本発明を説明する目的で、本図面において本発明の例示的な実施形態を示しているが、本発明は、開示する特定の方法、構成、および装置に限定されるものではない。さらに、本図面は、必ずしも原寸に比例して記載されているものではない。
図1図1は、(a)膜ベースの誘電エラストマー(DE)アクチュエータ、および(b)ファイバーベースの誘電エラストマー(DE)アクチュエータの動作原理を示す。
図2図2aは、本発明による誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の1実施形態を示す。図2bは、本発明による誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の1実施形態の部分分解組立図を示す。図2cは、図2bは、本発明による誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の1実施形態の断面図を示す。
図3図3は、本発明による誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)のいくつかの実施形態の写真を示す。
図4図4は、誘電エラストマー・ファイバー製アクチュエータにおけるファイバーの幾何学的特性を示し、主要な特徴および設計寸法に符号を付記している。
図5a-5b】図5は、本発明に従って作製された様々な誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)の歪み-歪みに係る動作特性を示し、以下のデータ曲線を提供する。a)シリコーンエラストマー化合物から作製され、最大有効仕事密度(グレーの網掛け部分)を最大化するように設計されたDEMAのシミュレートされた応力対歪みおよび活性化電圧(V)。b)DEMAファイバーの、歪み対応力に係る動作空間に対するアルファの影響を示す。c)アルファ(アルファ=外径(OD)/内径(ID))の関数としてDEMAが生成可能な有効仕事密度(単位体積当たりの歪みに対する応力)であり、アルファ=1.9の近傍で最適値を示す。d)市販のシリコーンエラストマー材料で製造されたDEMAのデータであり、電気機械応答(歪みおよび活性化電圧を関するとした応力)を示す。
図5c-5d】図5は、本発明に従って作製された様々な誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)の歪み-歪みに係る動作特性を示し、以下のデータ曲線を提供する。a)シリコーンエラストマー化合物から作製され、最大有効仕事密度(グレーの網掛け部分)を最大化するように設計されたDEMAのシミュレートされた応力対歪みおよび活性化電圧(V)。b)DEMAファイバーの、歪み対応力に係る動作空間に対するアルファの影響を示す。c)アルファ(アルファ=外径(OD)/内径(ID))の関数としてDEMAが生成可能な有効仕事密度(単位体積当たりの歪みに対する応力)であり、アルファ=1.9の近傍で最適値を示す。d)市販のシリコーンエラストマー材料で製造されたDEMAのデータであり、電気機械応答(歪みおよび活性化電圧を関するとした応力)を示す。
図6図6は、アクチュエータの性能を制御ための中空シリンダの材料パラメータであるアルファおよびヤング率の変化を示す。
図7図7aおよび図7bはそれぞれ、2つの異なる誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーである、試料Aおよび試料Bの断面図の一連の顕微鏡画像を提供する。図7cおよび図7dはそれぞれ、誘電エラストマー(DE)ファイバーである、試料Aおよび試料Bの断面図の顕微鏡画像について、外径(OD)および内径(ID)を測定した画像分析結果のグラフを提供する。
図8図8は、アルファ=2.05(四角)およびアルファ=2.55(三角)を特徴とする、異なる大きさの誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーから製造された誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)について、歪み(%)対活性化電圧(V)を比較したデータのグラフである。
図9図9は、図9aは、本発明に従って作製された誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の1実施形態の断面斜視図であり、図9bは、本発明に従って作製された誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の1実施形態の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、本開示の一部を形成する添付の図面および実施例とともに以下の詳細な説明を参照することにより、より良く理解されると考えられる。本発明は、本明細書に記載するおよび/または図示する特定の装置、方法、用途、条件、またはパラメータに限定されるものではなく、また、本明細書で使用する用語は、一例としてのみ示す特定の実施形態を説明するためのものであり、特許請求の範囲に記載の発明を限定することを意図するものではないことを理解されたい。また、添付の特許請求の範囲を含む本明細書で使用する、単数形の「a」「an」、「the」は複数を含み、特定の数値を参照する場合、文脈により異なることが明示されていない限り、少なくともその特定の数値を含む。数値範囲が示されている場合、別の実施形態は、1の特定の値から、および/または別の特定の値を含む。同様に、先行詞「約(about)」を用いて複数の値が近似値で示されている場合、その特定値は別の実施形態を形成することを理解されたい。すべての範囲は包括的であり、また組み合わせ可能である。
【0027】
本明細書において、明確化のため別個の実施形態で記載している本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することも可能である。これに対し、簡略化のため単一の実施形態で記載している本発明の様々な特徴は、別個に、または任意の二次的な組み合わせで提供することも可能である。さらに、数値範囲で示す値は、その数値範囲内の各値および全値を含む。
【0028】
用語
本明細書で使用する「ファイバー」および「マイクロファイバー」という用語は同義語として使用するものとする。
【0029】
本明細書で使用する「誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)」、「ファイバー」および「マイクロファイバー」は同義語として使用するものとする。
【0030】
図1は、先行技術の(a)膜ベースの誘電エラストマー(DE)アクチュエータ、および(b)ファイバーベースの誘電エラストマー(DE)アクチュエータの動作原理を示す。a)は、膜ベースの誘電エラストマー(DE)アクチュエータの動作形態を示し、弾性絶縁膜が2つの柔軟電極の間に挟持されている。この絶縁体には通常、枠を用いることによって事前に歪みが生じている。電圧が印可されると電極は帯電し、クーロン力により絶縁体が押圧されて平坦化し、当該膜は2次元に圧延される。b)は、ファイバーベースの誘電エラストマー(DE)アクチュエータの動作形態を示す。弾性絶縁体である中空ファイバーは、流動性電極(正極)で充填され、また負の電極によって周囲が覆われている。電圧が印可されると電極は帯電し、クーロン力によりファイバーは径方向に押圧されて長さ方向に延長する。電圧が取り除かれると、エラストマーの弾性特性により、膜およびファイバーベースの誘電エラストマー(DE)アクチュエータに外部負荷を移動することを可能とする張力が生じる。別の実施形態において、内側の流動性電極は負極であってもよく、マイクロファイバーは正の電極によって周囲が覆われていてもよい。流動性電極は、それ自体は弾性力がないが、他の柔軟電極を用いることができる点で利点がある。別の実施形態において、内側柔軟電極を当該ファイバーの内面にのみ適用してもよい。
【0031】
図2aを参照すると、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)200は、複数の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー202を有するファイバーアレイ201を有し、このファイバーアレイ201は、各遠位端部に充填材またはポッティング材からなる束状構造シール部206を形成することにより作製される。当該充填材は、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー202を作製するための材料と同一の材料か、若しくは異なる材料であってもよく、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーの内側ファイバーコア203をその外面から分離する。各束状構造シール部206は、周囲部212と、面213とを有することが示されている。束状構造シール部206の面213は、ファイバー202およびファイバーコア203の遠位端部に対応する。束状構造シール部は、全ファイバーを接着し、かつ端部(コア)をシース(中央部)から分離する束状構造部分である。
【0032】
図2bを参照すると、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)200は、ファイバーアレイ201および束状構造シール部203の周囲を覆う封入スリーブ204とともに示されている。(内部のファイバーアレイを図示するために取り外された状態で示された)2つの絶縁キャップ211は、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の各端部に提供され、各絶縁キャップは電気機械接点205を有する。絶縁キャップ211は、電気機械接点205を覆うとともに電気的に絶縁する電気絶縁材料で作製することができる。
【0033】
図2cは、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)200の長手方向の断面図を提供し、本図では、導電性接着剤207と電気的に連通する柔軟導電性電極が充填されたファイバーコア203を明示するために、複数の誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー202の断面を示す。導電性接着剤207は各遠位端部に提供され、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー202および束状構造シール部206を各遠位端部の電気機械接点205に機械的に接合しかつ電気的に接続する。導電性接着剤207は、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー202の遠位端部の面を電気機械接点205に機械的に接着し、ファイバーコア203の内部を電気的に接続する。さらに、導電性流体などの柔軟導電性材料または媒体でできた柔軟接地電極208が示されており、当該柔軟接地電極は、各誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー202の外部を覆っている。誘電エラストマー(DE)マイクロファイバー202は、(充填されていない状態の)中空マイクロファイバーの円筒壁、したがって、導電性接着剤207によって電気機械接点205にシールされたマイクロファイバーの遠位端面を形成するエラストマー材料を有する。電気機械接点205は通常、絶縁キャップ211の一部分であり、導電性であるとともに、束状ファイバーと、ロボットシステムなど、当該電気機械接点が実装されたシステムとの間の機械および電気接続部として機能する。
【0034】
図9aおよび図9bにおいて、本発明の1実施形態によるマイクロファイバー束状構造と束状構造シール部との電気機械的接続設計の1実施形態をさらに示す。図9aは、本発明に従って作製された誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の1実施形態の一部分の断面斜視図を示す。ファイバーアレイ901は、密閉するための側壁を形成する周囲部912を有する束状構造シール部906によって封入された状態で示されている。また、束状構造シール部の面913は、ファイバーアレイ内のファイバーの遠位端部と同一平面上に配置された状態で示されており、このファイバーの遠位端部は、ファイバーコア903の周囲を覆うファイバー端部902の面として示されている。動作時において、ファイバーコア903は、適切な導電性流体等の柔軟電極材で充填されており、また、ファイバーアレイ901も、当該アレイ901の各ファイバーの外側に直接隣接して配置された適切な柔軟電極材を有する。図9bは、本発明に従って作製された誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の1実施形態の断面斜視図を示す。図9bは、本発明に従って作製された誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の1実施形態の一部分の断面斜視図を示す。この誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)は、図9aのものと類似しているが、電気機械接点905を束状構造シール部の面およびファイバーの遠位端部の面に電気機械的に接合するとともに、ファイバーコア内の柔軟電極材との導電性を維持するための導電性接着剤907の層も含む。
【0035】
適切な機械接続および電気接続は、導電性接着剤または化合物を用いて実現できる。例えば、このような接着剤は、流動性電極が存在するマイクロファイバー材料に直接接合することができる導電性接着剤であってもよい。また、電極が流動性ではない実施形態では、このような接着剤をマイクロファイバーのコア電極に接合することができる。ファイバー材料、導電性コア電極、および導電性キャップが存在する場合は、接着剤は、接合を確立するために適切な硬化性および化学反応を有する必要がある。適切は接着剤は、導電処理のために適切なドーパントまたは充填材を含むエポキシ樹脂、シリコーン、およびシアノアクリレートを含む。電気接続は、マイクロファイバーのコアと導電性接点との間に流体用の空洞を形成することにより達成でき、一方機械接続は、束状構造シール部の周囲部で達成することができる。ピンまたは接点のアレイを有する導電性支持部はマイクロファイバーの束状構造のコアと位置合わせされ、ピンがコアの内部に挿入される。いくつかの実施形態では、機械接続は接着剤によって強化される。
【0036】
特定の実施形態では、電気接続は、集積回路と同様に、ボンディングパッドリングとボンディングワイヤーによって達成することができる。
【0037】
特定の実施形態では、機械接続は、束状構造シール部の面または周囲部上の接着材によって達成することができる。
【0038】
1実施形態において、導電性の特殊な接着剤または接合材が束状構造シール部の露出面全体を覆う形状に形成された金属接点または導電性接点に適用され、次に束状構造シール部の露出面に接合される。この態様では、接着剤または接合材によって、金属接点または導電性接点と、ファイバーコア、ファイバーの本体部、および束状構造シール部との間に中間層が形成される。この方法により、金属接点または導電性接点は、(導電性接着剤または接合材を介して)すべてのマイクロファイバーのコアに電気的に接続され、これにより、電荷がすべてのファイバーコアの内外に移動することが可能となる。また、この方法により、ファイバーの本体部および束状構造シール部の材料は金属接点に機械的に接続され、これにより、力(および/または応力または張力)が各ファイバーと金属接点との間に伝達されて、外部負荷に対する運動が生成される。
【0039】
導電性接着剤または接合材は、以下の固有の特性を有するように選択されることが好ましい。
【0040】
1.約400Ω・cm(オームセンチメートル)未満の体積抵抗率を有する導電体である。
【0041】
2.約100 kPaよりも大きい引張接着強度を得るように、例えば、シリコーンエラストマー材料などのファイバー材料に直接、若しくはプライマーおよび下処理を介して接合することができる。
【0042】
3.水、導電性油脂、イオン流体、またはその他の物質などの流動性電極の存在下で硬化可能である。
【0043】
別の実施形態では、バルク金属接点を使用する代わりに、シリコーンインターポーザー集積回路、またはパターン化された接続性を有する、微細ピッチのPCBによって接続が形成され、これにより、ファイバーのサブセットはこのパターン化された部分の一部に接続されて他のサブセットから分離される。この実施形態では、接着剤または接合材は、横方向よりも軸方向において遥かに高い接続性を有するという追加の特性を有するか、若しくは、代替的に、接着剤は、ファイバーのサブセットが互いに分離されるようにパターン化することができる。
【0044】
別の実施形態では、接着剤または接合材を使用する代わりに、この接着剤または接合材が占める体積は流体空洞からなり、上記ファイバーのものと同様の電極が充填される。そして、これにより、ファイバーコアは金属接点または導電性接点に電気的に直接接続される。この実施形態では、機械接続は、束状構造シール部の(面ではなく)周囲部に形成されるか、若しくは束状構造シール部の面および周囲部によって画定される縁部に近接して配置される適切な平坦環状体によって形成される。この機械接続は、接着剤、束状構造シール部の材料の直接鋳造、その他の熱または化学的方法、または機械的クリップ若しくは関節によって実現することができる。
【0045】
別の実施形態では、金属接点または導電性接点は、電気接続を確立するために、ファイバーと位置合わせされ、ファイバーコアに挿入された一連のピン(または針)を有する。この実施形態では、機械接続は、ピンをファイバーに挿入することによる単なる摩擦、束状構造シール部の面上の接着剤、束状構造シール部の周囲部における接続、またはこれらの任意の組み合わせによって実現することができる。
【0046】
別の実施形態では、ボンディングワイヤーを取り付け可能な一対の金属接点を束状構造シール部の面(6)の周囲に設け、このボンディングワイヤーをファイバーコア(2)に接続することによって金属的接続を形成される。この実施形態は、周縁部にパッドを有する標準的なICパッケージに類似している。この実施形態では、上述した方法のうち任意の方法によって機械接続を形成することができる。
【0047】
誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)は、以下の実施例において記載する態様で作製される。図3は、いくつかの「乾燥状態の」誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)の写真を提供し、この写真は、ファイバーの周囲またはコアの内部に導電性流体を追加する前の、導電性接着剤が添加されていないアクチュエータを示す。「乾燥状態の」誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)300は、遠位端部が束状構造シール部306によって封入されたファイバーアレイ301を含む状態で示されている。束状構造シール部306は、当該シール部の面313において露出された各ファイバーコア303を提供するためにファイバー302の端部を一体的に保持する。
【0048】
誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)の高性能アクチュエータとしての設計
一般的なロボットシステムの課題を解決するための、機械的および電気的特性の的確な均衡を提供するように誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)を設計することが可能である。特定の誘電エラストマー(DE)材料(または混合物)を選択し、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の幾何学形状および尺度(scale)を制御することにより、アクチュエータにおける、エネルギー密度、有効歪み、遮断、有効応力、剛性、効率、応答時間、およびその他数多くの重要な特性をロボット用途に適合するように設計することができる。本明細書では、いくつかの重要な側面に基づいて作動性能を最大化するように設計された誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)について説明する。
【0049】
本明細書では、変位および力について尺度不変測定法が使用される。所与の誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の長さおよび作動変位要件を記述する代わりに、strain=(length/initial_length)-1として計算される、歪みによって表される相対伸び量が使用される。また、所与の誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)によって生じる力を記述する代わりに、stress=force/cross_section_areaとして定義される応力が考慮される。ここで、
【0050】
【数1】
である。このように、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)によって生じる力は、全ファイバーの全断面積の合計に固有応力を乗じることによって計算することができる。このような尺度不変測定基準により、個別ファイバーの固有性能とともに大型統合アクチュエータを数値化することが可能となる。また、個別ファイバーが統合アクチュエータのマクロスケールの最適化に直接変換される、固有最適化法を記述することができる。
【0051】
誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の電気機械性能は、その材料の電気機械特性および幾何学形状によって決定される。
【0052】
材料の観点からいうと、マイクロファイバー本体を特徴付ける主要材料特性は、弾性率(ヤング率)、誘電率、破壊電圧であり、電極材料の主要特性は体積導電率である。誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)材料の弾性率は、600kPa~1200kPaである場合に最適であることが分かった。その他の特性としては、材料は、最大電荷量を保持することができるように、最大誘電率および最大絶縁破壊電圧を有する必要がある。その他の望ましい特性は、低粘性損失、低誘電損失、低ヒステリシス、低温度依存性、クリープが生じない、および高信頼性である。
【0053】
誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の幾何学形状に関しては、いかなる所与の材料においても、ファイバーの幾何学形状は、性能を決定する上で根本的な役割を果たす。図4を参照すると、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)400は、ファイバー本体部外径401(OD)、ファイバー本体部内径401(ID)、外径対内径率(alpha=OD/ID)、長さ(L)によって特徴付けることができる。予測しなかったことであるが、所与の誘電エラストマー(DE)において、アルファ比は、DEMAの性能測定基準を制御する上で重要な尺度不変設計パラメータであること、また、特定の機械的能力を最大化するために選択可能であることが分かった。予測しなかったことであるが、特定の誘電エラストマー(DE)で作製されたDEMAでは、アルファの選択によって最大エネルギー密度、有効歪み、遮断応力、剛性、および効率が決定されること、および最適アルファは、異なる材料では僅かに異なることが分かった。アルファが選択されると、ファイバーの外径によって画定される当該ファイバーの概ねの尺度によって動作電圧および信頼性が決定される。
【0054】
正確なアルファ値を設計することにより、比エネルギーとしても知られる、単位質量当たりの最大機械仕事(力*変位、または応力*歪み)、若しくは代替的に、エネルギー密度としても知られる、単位体積当たりの最大機械仕事を生成するように設計された誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)を生産することができる。これらの機械仕事は、ロボットシステムにおいて、根本的なアクチュエータ性能測定基準である。さらに、必要であれば、その他の測定基準を制御するようにアルファを設計することができる。
【0055】
図5aは、シミュレートされた誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の電気機械的予測動作を示し、図5dは、初期プロトタイプの測定結果を示す。これらの図を生成するための実施要綱は次の通りである。特性評価のために、単一の誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)を電気機械電気機械試験装置上に設置(図5d)、若しくはシミュレーションシステムを計算する(図5a)。試験装置により、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)を伸長させ、次に初期長に復帰させる。また、この間当該試験装置による張力を記録する。電気機械試験装置により、伸長および弛緩の周期を反復する。また、この間、各周期を通して異なる活性化電圧を印加し、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の電気機械的動作の特性評価を行う。この特性評価は、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の長さおよび活性化電圧に対するDEMAの力の測定値として示す。図5aは、活性化電圧ゼロ(V)および最大活性化電圧(Vmax)に対する誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の反応を示す。図5dは、ゼロ(V)から最大活性化電圧の範囲(漸進的に暗色で示す丸)のいくつかの活性化電圧に対する誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の反応を示す。尺度を不変とするため、長さを歪みに変換し(strain=length/initial_length-1)、また、力を応力に変換した(stress=force/initial_cross-section_area)。
【0056】
誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)によって生成可能な機械仕事は、図5aおよび図5dのデータを解析することよって計算することができる。誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)によって生成可能な最大機械仕事は、活性化電圧ゼロ曲線および最大活性化電圧曲線内の動作領域によって決定することができる。これらは、動作領域を定義するいくつかの方法であり、これらの方法のすべてが本発明において考慮される。例示的に、図5aは、effective_stress(有効_応力)値を、動作領域を定義するための標的パラメータとして選択する1の方法を示す。このeffective_stressにより、アクチュエータが標的動作により生成可能な保証応力(または力)が定義される。また、このeffective_stressに基づき、活性化がゼロの場合において保証応力を生成するのに必要な最小予歪みが選択される。最大歪み値は、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)が最大活性化電圧で有効応力を生成する際の歪み値として選択される。当該定義によると、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)が生成することができる最大機械仕事は、最小応力と最大応力との間、および最小歪みと最大歪みとの間によって定義される領域となる。
【0057】
図5bは、異なるアルファ比でのシミュレートされた誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の電気機械的動作を示す。図から分かるように、アルファ比が低い場合、DEMAの断面はエラストマーを殆ど含まないため、応力・歪み反応は低勾配となる。代替的に、アルファ比が高い場合、断面はエラストマーを多く含むため、応力・歪み反応は急勾配となる。図5bは、アルファ値が低い若しくは高い場合、(任意のeffective_stress(有効_応力)における)動作領域が非常に狭くなり、これにより、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)が生成することができる機械仕事が減少することを示す。しかしながら、動作領域が最大となる最適値がある。
【0058】
所与のアクチュエータによって生成可能な機械仕事を計算(または測定)後、異なる材料でできた誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)の比較を容易にするため、アクチュエータの機械仕事を(work_density:仕事_密度を得るように)その体積で、または(specific_energy:比_エネルギーを得るように)その質量で除算すると有用である。図5cは、所与の材料について、アルファによって変化する仕事密度の度合い、および誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)の性能を最大化する最適アルファ値の存在を示す。さらに、図5cは、アルファ値=2の周辺に狭いピークが存在すること、このピークから急降下することを示す。したがって、当該範囲内においてアルファを特定および選択する工程は、本発明の基本構成である。
【0059】
特定の材料についてアルファ値を入念に選択することにより、最適性能で動作する誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)を設計することができる。例えば、図5cは、アルファ比の選択がDEMAの有効仕事密度にどのような影響を与えるかを示す。本図によれば、好適なDEMAは、約1.2~約4のアルファ値を有し、当該アルファ値は、約1.3~約3であることが好ましく、約1.5~約2.5であることがさらに好ましく、約1.7~約2.2であることがさらに好ましく、約1.8~約2.1であることが最も好ましい。
【0060】
そして、外径(OD)を入念に選択することにより、可能な限り低い動作電圧を有するが、印加電圧に対して正確な反応時間を有するファイバーを設計することができる。最後に、ファイバーの長さ(6)によって影響を受ける主要なパラメータは、ファイバーのRC時定数であり、このRC時定数はまた、外径(OD)(1)の尺度に依存する。
【0061】
図5a~bは、第1原理に基づいてシミュレートした、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の動作空間を示す。図5aを参照すると、破線(V)は、DEMAが0~140%まで歪んだときの受動動作を表す。DEMAが伸長されるにつれて、ファイバー材料(4)の弾性力により、ファイバーは、弾性要素と同様の応力を発生させる。コア(3)とファイバー(5)の外径に電圧が印可されると、ファイバー(3、4、5)により形成された同軸コンデンサ上に蓄積した電荷によって、当該ファイバーを径方向に圧搾し、ファイバーの張力を低下させる静電応力(またはマクスウェル応力)が生じる。V線と平行する黒線はこの静電応力を示す。点線(Vmax)は、材料が絶縁破壊に達する前の(所定の安全率を有する)最大動作電圧でのファイバーの応力・歪み挙動を示す。概していうと、任意の歪みで特定の電圧を誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)に印加することにより、ロボットシステムの設計者は、DEMAが動作範囲内で任意の応力を発生せるように操作することが可能である。DEMAによって任意の初期応力を発生させるためには、DEMAに予歪みを与える必要があること、また、DEMAが活性化されてゼロ応力を発生させる領域があることは注目すべき点である。ロボットの設計者は、用途に適合するように動作空間を活用することを学んでいく。
【0062】
誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)を特定の用途のために設計する際に、外径(OD)(1)を減少させることで動作電圧が低下するため、これは非常に望ましい最適化である。また、所与のアルファ値について外径(OD)(1)を減少させることで、(以下説明するように)各ファイバーがより良好な自己隔離特性を示すため、束状ファイバーの信頼性が高まる。いかなる動作理論によって限定されるものではないが、任意長のファイバーの外径(OD)を減少させた場合、抵抗が増加するため、電気RC時定数(electrical RC time constant)が大きくなるという欠点がある。したがって、所与の用途について、外径(OD)を減少させる程度には制限がある。アクチュエータにおいてファイバーの長さが既知である場合、電気RC時定数は、ファイバーの長さ、アルファ値、およびファイバーの外径(OD)によって定義される。したがって、アクチュエータについて必要な長さが設定されると、DEMAにおける電気RC時定数が用途に必要とされる速さよりも確実に速くなるように、通常外径(OD)によって規定されるファイバーの尺度を設定することができる。
【0063】
図5bは、アルファの選択が誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMA)の動作空間に及ぼす影響を示す。任意の誘電エラストマー(DE)において、アルファ値が低い場合(例えば、約1.1)、非常に肉薄の壁を有するマイクロファイバーとなり、当該マイクロファイバーは、エラストマー材料が少量であるため、有効弾性率が非常に低く、作動若しくは歪みが与えられたときに、通常、感知可能な応力を発生させることができない。これとは対照的に、非常に高いアルファ値(例えば、約6)を有する誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)の場合、非常に肉厚の壁を有するマイクロファイバーとなり、当該マイクロファイバーは、エラストマー材料を大量に含むため、高有効弾性率を有する。肉厚壁のマイクロファイバーは、非常に大きな応力を発生させることができるが、過度に剛性であることによって電気活性反応が低下して動作空間が減少し、結果的に発生させることができる機械エネルギー出力が減少する。図5bに示す材料については、アルファの最適値は約1.6であり、この値では、エラストマー材料の剛性との均衡が保たれており、動作空間が最大となって最大の機械エネルギー出力が生成される。
【0064】
誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)は、信頼性という点で、膜を基礎とする誘電エラストマーアクチュエータと比べ、特に利点がある。この利点は、所定のアルファ値を有するDEMAにおいて、外径(OD)、およびこれに応じて内径(ID)をより小さな値(例えば、200μm未満)に低減した場合、内部電極の面積が減少し、当該導電体の抵抗が増加するという事実に起因する。このように抵抗が増加すると、絶縁破壊が原因でファイバーの長さに沿って障害が発生した場合、コアの高抵抗性により当該障害点または短絡が他のファイバーおよび電力供給装置から自然に隔離されるため、有利である。ある意味では、DEMAの小型コアにより、障害点を残りの各ファイバーおよびDEMAにおいて束状に形成された他のファイバーからかなりの程度隔離するソフト短絡状態が生じる。DEMAのコアの抵抗の増加は、電気RC時定数に影響を与えるが、電気効率には影響がないため、所定の用途における電気RC時定数を満たす最大値に抵抗を増加させることが望ましい。内部(コア)電極の抵抗は、DEMAの外径(OD)の尺度を選択すること、および所望の体積抵抗率を有する電極材料を選択することにより制御することができる。
【0065】
適切な電極材料は、柔軟性または流体性、もしくはその両方によって特徴付けることができる。流体材料は、通常大きな張力がかかると容器の形状となるか、若しくは薄膜となって表面に付着する。適切な電極材料の様々な例が米国特許第7834527号においてて提供されており、柔軟電極に関する関連個所は、この参照により本明細書に組み込まれる。誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーの内部(コア)に使用される適切な電極材料は通常、流体である。適切な電極材料は、本質的に水性または非水性であってもよい。水性流動性電極材料は、体積抵抗率を約5~5000Ω・cmの範囲に増加させるために、溶解イオンおよび/または電解質を含有する水を含む。また、導電性油脂などの適切な非水性導電性流体も考えられ、この導電性油脂は通常、粘性流体マトリックス中に濃厚分散された、金属薄片、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの導電性粒子からなる。市販の導電性油脂には、マサチューセッツ州、フェアヘブン、Nye Lubricants社のNyogel(登録商標)756Gがあり、当該導電性油脂は、30Ω・cm(0.3Ω・m)の体積抵抗率を有すると報告されている。適切な導電性流体はまた、導電性インクを含む。
【0066】
例示を目的として、市販のDOW Corning Sylgard(登録商標)製シリコーンエラストマー化合物からできた誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)について説明する。当該材料で製造されたDEMAに関して、外径(OD)=~133μm、およびアルファ約2のファイバーでは、4.9%の歪みを発生させることができる最大動作電圧は864kVであることを実験的に観察した。図5dは、上記のDEMAについて記録したデータを示す。外径(OD)を50μmに減少するシミュレーションプロジェクトでは、動作電圧は約300Vに低下する。単位体積または単位質量当たりの有効歪み、有効応力、機械エネルギー出力は、このスケーリングによって変化しない。
【0067】
本発明で使用される中空ファイバーを作製するために適切な市販のエラストマー材料およびエラストマー材料を作製するための前駆物質は以下を含む。Dow Chemical社から入手可能なSylgard(登録商標)族またはSilastic LC族、Gelest社から入手可能なDMS-V31シリーズ、Kuraray社から入手可能なSepton2063などの熱可塑性エラストマー、Wacker Chemie社から入手可能なElastosilシリーズの液体ゴムの化合物、Momentive社から入手可能なSilopren UV Electroシリーズ、3M社が4905 VHBテープシリーズに使用しているアクリルポリマー、BJB Enterprises社から入手可能なTC-5000シリーズ、およびNusi社から入手可能なCF19シリーズ。
【0068】
所与の長さおよび変位要件に関連して好適な実施形態を実現するために、誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)においては、材料選択、外径(OD)の選択、およびアルファ値の選択の3点が考慮される。いくつかの好適な実施形態では、中空ファイバー材料は、アクチュエータに張力を提供する適切なヤング率と、高誘電率と、高絶縁破壊電圧とを有することを特徴とする。適切な中空ファイバーの適切なヤング率の値は、約100kPa~約5,000kPaの範囲内であってよく、約300kPa~約2,400kPa、約400kPa~約2,000kPaの範囲であることが好ましく、約500kPa~約1,500kPaであることがさらに好ましく、約600kPa~約1,200kPaであることがさらに好ましい。これについては図6においてさらに示す。好適な外径(OD)は、ファイバーの電気RC時定数が必要な機械的応答時間よりも小さくなる最小外径(OD)である。次にアルファ値は、電気機械性能における「最適値」を定義することができ、この性能は、有効仕事密度、有効比エネルギー、有効応力、または電気機械的効率を調整することにより最大化することができる。
【0069】
ヒトまたは動物と同様の尺度で動作するように意図されたロボットシステムにおいては、100~200ミリ秒(ms)の時定数が適切である。いくつかの用途では、50msまで小さい時定数を使用可能であるため、50~200msの範囲も有用である。また、40ms、30ms、20ms、または10msなど、必要とされる時定数が50msよりもさらに小さい専用マイクロスケールアクチュエータが考えられ、このようなアクチュエータは、高速攣縮反応またはマイクロロボットの動作を提供する。別の実施形態では、時定数は、75ms~150msの範囲であってもよい。ドアの閉鎖、または壁および仕切り壁の移動など、規模が遥かに大きいその他の構造的用途では、(例えば、約1000msより大きい、または最大約10,000msなどの)遥かに低速の時定数が必要とされる。一方、光偏向器またはスピーカーなどの特殊な運動用途では、必要とされる時定数は、10msより小さく(すなわち、10msより高速)てもよく、または1ms、さらに0.1msであってもよい。
【0070】
導電性材料に関連して本明細書で使用する用語「流動性(fluidic)」は、例えば、誘電エラストマー(DE)マイクロファイバーの内部コアに流入する、流動可能な材料を指す。いくつかの実施形態において、流動性導電性材料は、中空ファイバー本体部の内部コアを実質的に完全に充填する液体として作用すると考えられる。これらの実施形態では、内部コア内の流動性導電体は、動作状態では実質的に非圧縮性である。別の実施形態において、流動性導電体は、中空ファイバー本体部の内部コアの内壁上に液膜を形成し、この液膜は、泡状物質または粉末などの圧縮性固体、若しくは空気、窒素、アルゴン等、内部コアの残余空間を充填する気体などの圧縮性流体を含む別の種類の物質を伴う。このような実施形態では、動作状態において内部コアは柔軟性を有する(例えば、圧縮性を有する、および/または少なくとも部分的に変形可能である等)。内部流動性電極における重要な留意事項は、マイクロファイバーの伸長時においてその体積は実質的に一定である点であり、それによりマイクロファイバーの変形が抑制されるため、マクスウェル応力によってマイクロファイバーの壁が圧縮されるにつれて、一定体積を保つために当該ファイバーは長さ方向に伸長し、径方向において収縮する。
【実施例1】
【0071】
米国特許第7834527号に記載の工程と同様の工程を利用して、DOW Corning社により市販されているシリコーン樹脂を用いて合成した誘電エラストマー(DE)から誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)を製造した。本開示のために、2セットのファイバー試料を断面方向に切断し、較正済み検査顕微鏡により撮像した。また、図7に示すように画像解析を利用してファイバー試料の外径および内径を測定し、表1にまとめた。図7aおよび図7dは、2つの異なる誘電エラストマー(DE)ファイバーの試料A、試料Bそれぞれの断面図の一連のマイクロ画像を示す。図7cおよび図7dは、誘電エラストマー(DE)ファイバーの試料A、試料Bに関する各断面図のマイクロ画像について、外径(OD)および内径(ID)を測定することにより取得した画像解析結果を提供する。表1は、試料A、試料Bの外径、内径、およびアルファ比の平均と、試料Aに対する試料Bの外径(OD)の比率が1.57である場合をまとめたものである。
【0072】
【表1】
【0073】
図7の断面図において撮像された誘電エラストマー・マイクロファイバー製アクチュエータ(DEMAs)について、等張試験により電気機械的に試験を行った。この等張試験では、一定質量の物質をDEMAの切片から吊し、次にこの切片を1Hzの正弦波電圧により異なる振幅で電気的に活性化させた。試験の結果生じた変位を測定し、歪みに変換した。加えられた力を断面積で除算し、応力に変換した。その結果得た印加電圧に対する歪みを図8にグラフで示し、また比較を容易にするために、データに当てはまる係数を表2において一覧にした。試料Bの外径は試料Aの外径の1.57倍であるため、試料Aでは、1.57倍低い電圧で同じ歪みが生じると考えられる。しかしながら、予測しなかったことであるが、観察された電気活性係数(表2におけるX)は、試料Aには試料Bと同じ歪みが生じるが、1.96倍低い電圧で生じることを示している。この24%追加の電気活性化は、試料Aのアルファ値が2.06であるのに対して試料Bのアルファ値は2.53であるという事実によって十分に説明されている。
【0074】
【表2】
【0075】
本明細書において、分子量などの物理的特性、または化学式などの化学的特性についての範囲を用いる場合、それらの特定の実施形態に関する範囲の組み合わせおよび副組み合わせのすべてを含むことを意図する。
【0076】
本明細書において引用または記載した特許、特許出願、および公報の開示は、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0077】
当業者であれば、本発明の好適実施形態に対して様々な変更および修正が可能であること、また、そのような変更および修正は、本発明の要旨を逸脱することなく行うことができることを理解すると考えられる。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真正な要旨および範囲の範囲内にあるそのような均等変更実施形態のすべてを含むことを意図する。
【0078】
参考文献
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図1
図2
図3
図4
図5a-5b】
図5c-5d】
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】