(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】同調範囲を改善するRF素子設計
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/34 20060101AFI20230516BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20230516BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20230516BHJP
H01Q 13/10 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01Q3/34
H01Q21/06
H01Q13/08
H01Q13/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560389
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 US2021025515
(87)【国際公開番号】W WO2021202962
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516247177
【氏名又は名称】カイメタ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】リン スティーヴン エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレル カグダス
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA09
5J021AB06
5J021DB04
5J045DA04
5J045DA10
5J045FA02
(57)【要約】
アンテナ及びこれを使用する方法が記載される。一実施形態では、アンテナは、無線周波数(RF)放射アンテナ素子のアレイを備え、各RF放射アンテナ素子は、1又は2以上の金属層を含む第1の導体スタックであって、第1の導体スタックの第1の側部を覆う1又は2以上の導電層の第1のセットを有する、第1の導体スタックと、第1の導体スタックから分離され且つ1又は2以上の導電層を含む第2の導体スタックであって、第2の導体スタックの第2の側面を覆う1又は2以上の導電層の第2のセットを有する、第2の導体スタックと、第1及び第2の導体スタックそれぞれの第1の側面と第2の側面の間の液晶(LC)と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)放射アンテナ素子のアレイを備えるアンテナであって、
前記各RF放射アンテナ素子が、
1又は2以上の金属層を含む第1の導体スタックであって、前記第1の導体スタックの第1の側面を覆う1又は2以上の導電層の第1のセットを有する、第1の導体スタックと、
前記第1の導体スタックから分離され且つ1又は2以上の導電層を含む第2の導体スタックであって、前記第2の導体スタックの第2の側面を覆う1又は2以上の導電層の第2のセットを有する、第2の導体スタックと、
前記第1及び第2の導体スタックそれぞれの前記第1及び第2の側面の間の液晶(LC)と、
を含む、アンテナ。
【請求項2】
前記第1及び第2の導電層は、前記1又は2以上の金属層を前記液晶に起因する劣化から保護する、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記第1及び第2の導電層は、前記液晶に対して不活性である、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記第1及び第2の導電層は、前記液晶に対して非反応性の材料を含む、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記非反応性の材料は、ITO、白金、金、及び導電性有機層のうちの1又は2以上を含む、請求項4に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記1又は2以上の導電層の前記第1のセット及び前記1又は2以上の導電層の前記第2のセットの厚さは、前記第1及び第2の導体スタックそれぞれの金属層に対する前記第1のセット及び前記第2のセットの導電性に基づいており、前記第1及び第2のセットのうちの少なくとも1つのセットにおいて、前記少なくとも1つのセットの導電性がそれぞれの導体スタックの金属層より低い場合よりも、前記少なくとも1つのセットの導電性がそれぞれの導体スタックの金属層より高い場合に前記厚さが大きくなる、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記LCに隣接する前記導電層の前記第1のセットに取り付けられた第1のアライメント層と、前記LCに隣接する前記導電層の第2のセットに取り付けられた第2のアライメント層とを更に備える、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記アンテナ素子の各々は、前記第1及び第2のアライメント層以外の前記第1及び第2の導体スタック間に非同調誘電体を有していない、請求項7に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記第1の導体スタックは、パッチを有するパッチ導体スタックを含み、前記第2の導体スタックは、アイリスを有するアイリス導体スタックを含む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記パッチ導体スタックは、パッチ基板に取り付けられた1又は2以上のパッチ金属層を含み、前記アイリス導体スタックは、アイリス基板に取り付けられた1又は2以上のアイリス金属層を含む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記RF放射アンテナ素子は、表面散乱メタマテリアルアンテナ素子を含む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項12】
高周波(RF)放射アンテナ素子のアレイを備えたアンテナであって、
前記各RF放射アンテナ素子が、
1又は2以上の金属層を含むパッチ導体スタックと、
第1の導体スタックの第1の側面を覆う1又は2以上の導電層の第1のセットと、
前記パッチ導体スタックから分離されたアイリス導体スタックと、
前記アイリス導体スタックの第2の側面を覆う1又は2以上の導電層の第2のセットと、
前記1又は2以上の導電層の前記第1及び第2のセットの間の液晶(LC)と、
前記LCに隣接して前記1又は2以上の導電層の前記第1のセットに取り付けられた第1のアライメント層及び前記LCに隣接して前記1又は2以上の導電層の前記第2のセットに取り付けられた第2のアライメント層と、
を含む、アンテナ。
【請求項13】
前記導電層の第1及び第2のセットは、前記1又は2以上の金属層を前記液晶に起因する劣化から保護する、請求項12に記載のアンテナ。
【請求項14】
前記導電層の第1及び第2のセットは、前記液晶に対して不活性である、請求項13に記載のアンテナ。
【請求項15】
前記導電層の第1及び第2のセットは、前記液晶に対して非反応性の材料を含む、請求項13に記載のアンテナ。
【請求項16】
前記非反応性の材料は、ITO、白金、金、及び導電性有機層のうちの1又は2以上を含む、請求項15に記載のアンテナ。
【請求項17】
前記1又は2以上の導電層の前記第1のセット及び前記1又は2以上の導電層の前記第2のセットの厚さは、前記第1及び第2の導体スタックそれぞれの金属層に対する前記第1のセット及び前記第2のセットの導電性に基づいており、前記第1及び第2のセットのうちの少なくとも1つのセットにおいて、前記少なくとも1つのセットの導電性がそれぞれの導体スタックの金属層より低い場合よりも、前記少なくとも1つのセットの導電性がそれぞれの導体スタックの金属層より高い場合に前記厚さが大きくなる、請求項12に記載のアンテナ。
【請求項18】
前記アンテナ素子の各々は、前記第1及び第2のアライメント層以外の前記第1及び第2の導体スタック間に非同調誘電体を有していない、請求項12に記載のアンテナ。
【請求項19】
前記パッチ導体スタックは、パッチ基板に取り付けられた1又は2以上のパッチ金属層を含み、前記アイリス導体スタックは、アイリス基板に取り付けられた1又は2以上のアイリス金属層を含む、請求項12に記載のアンテナ。
【請求項20】
前記RF放射アンテナ素子は、表面散乱メタマテリアルアンテナ素子を含む、請求項12に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本出願は、2020年4月3日出願の米国仮出願第63/005,070号及び2021年3月31日出願の米国本出願第17/218,781号からの優先権の利益を主張し、これらは、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明の実施形態は、無線通信に関し、より詳細には、本発明の実施形態は、電極上に保護層を使用する液晶(LC)ベースのアンテナ素子を有するアンテナに関する。
【背景技術】
【0003】
無線周波数(RF)放射アンテナ素子を有する電気的に誘導可能なアンテナにおいて、RF素子設計の重要な性能パラメータは、RF素子の共振を同調することができるRF周波数範囲である。一実施形態では、アンテナのメタマテリアルのRF素子の共振周波数の同調は、次式:
に従ってRF素子のキャパシタンスを変化させることによって可能にされる。ここで、fは共振周波数、Lはインピーダンス、CはRF素子のキャパシタンスである。RF素子のキャパシタンスを変化させる1つの方法は、同調可能な誘電率を有する誘電体材料を使用するものである。このような誘電体の1つが液晶である。
【0004】
同調可能なものとして液晶を使用するRF素子の同調範囲は、幾つかの要因によって制御される。液晶(LC)を同調可能な誘電体として使用するために、LCが2つの電極の間に配置されて、電界が印加され、これによりLCの誘電率が変化する。典型的には、電極/LC/電極の同調構造の一部は、同調可能でない誘電体を含む。これらの追加の誘電体は、電極上に堆積され、例えば、LC分子のアライメント特徴を提供する機能を実施し、電極材料とLCが互いに接触するのを防止する。これは、LCとRF素子により必要とされる高導電性金属材料との間に反応性が存在する可能性があるので重要である。
【0005】
電極とLC層との間に非同調誘電体が存在すると有害な作用がある。1つの作用は、駆動電圧の一部が電極とLCの間で降下することで、LCに印加することができる実効電圧が低下することである。別の作用は、電極間の非同調可能な誘電体層の存在によって電極間にある同調可能な誘電体の量が減少することで、同調できる電極間の材料の厚さが減少することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願14/550,178号明細書
【特許文献2】米国特許出願14/610,502号明細書
【特許文献3】米国出願公開第2015/0236412号明細書
【発明の概要】
【0007】
アンテナ及びこれを使用する方法が記載される。一実施形態では、アンテナは、無線周波数(RF)放射アンテナ素子のアレイを備え、各RF放射アンテナ素子は、1又は2以上の金属層を含む第1の導体スタックであって、第1の導体スタックの第1の側面を覆う1又は2以上の導電層の第1のセットを有する、第1の導体スタックと、第1の導体スタックから分離され且つ1又は2以上の導電層を含む第2の導体スタックであって、第2の導体スタックの第2の側面を覆う1又は2以上の導電層の第2のセットを有する、第2の導体スタックと、第1及び第2の導体スタックそれぞれの第1の側面と第2の側面の間の液晶(LC)と、を含む。
【0008】
記載された実施形態及びその利点は、添付図面を参照しながら以下の説明を参照することによって最もよく理解することができる。これらの図面は、記載された実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対して当業者が行い得る形態及び詳細の変更をどのようにも限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】液晶(LC)ベースのメタマテリアルアンテナ素子の構造体を示す図である。
【
図2】非導電層で覆われたパッチ及びアイリス導体スタックを有する液晶(LC)ベースのメタマテリアルアンテナ素子の構造体の1つの実施形態を示す図である。
【
図3】パッチ及びアイリス導体スタックの各々を覆う単一の非導電層を有する液晶(LC)ベースのメタマテリアルアンテナ素子の構造体の一実施形態を示す図である。
【
図4】パッチ及びアイリス導体スタックの各々を覆う2又は3以上の非導電層を有する液晶(LC)ベースのメタマテリアルアンテナ素子の構造体の一実施形態を示す図である。
【
図5】上下導体スタックの各々を覆う1又は2以上の非導電層を有する液晶(LC)ベースのメタマテリアルアンテナ素子の構造体の一実施形態を示す図である。
【
図6】円筒状給電アンテナの入力給電部の周りの同心円リングに配置されたアンテナ素子の1又は2以上のアレイを有するアパーチャを示す図である。
【
図7】グランドプレーン及び再構成可能な共振器層を含むアンテナ素子の1つの行を示す斜視図である。
【
図8A】同調型共振器/スロットの1つの実施形態を示す図である。
【
図8B】物理的アンテナアパーチャの1つの実施形態を示す断面図である。
【
図9A】スロットに対応する位置を有する第1のアイリス基板層の一部分を示す図である。
【
図9B】スロットを包含する第2のアイリス基板層の一部分を示す図である。
【
図9C】第2のアイリス基板層の一部分を覆うパッチを示す図である。
【
図9D】スロット式アレイの一部分を示す上面図である。
【
図10】円筒状給電アンテナ構造の1つの実施形態を示す側面図である。
【
図11】射出波を備えたアンテナシステムの別の実施形態を示す図である。
【
図12】アンテナ素子に対するマトリクス駆動回路の配置の1つの実施形態を示す図である。
【
図13】TFTパッケージの1つの実施形態を示す図である。
【
図14】同時送信及び受信経路を有する通信システムの別の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本発明のより完全な解説を提供するために多数の詳細が示されている。しかしながら、本発明がこれらの特定の詳細なしでも実施できることが当業者に明らかであろう。他の事例では、周知の構造及びデバイスは、本発明を曖昧にしないように、詳細にではなくブロック図の形式で図示されている。
【0011】
各々が改善された同調範囲を有する無線周波数(RF)放射アンテナ素子を有するアンテナ、及びこれを使用する方法が記載される。一実施形態では、RF放射アンテナ素子は、表面散乱メタマテリアルアンテナ素子を含む。このようなアンテナの実施例(例えば、LCベースのメタマテリアルRF放射アンテナ素子等を有する電気的に誘導可能なアンテナ、その他)は、以下でより詳細に説明されるが、本明細書に記載の技術は、このようなアンテナに限定されず、他のアンテナに使用することもできる。
【0012】
一実施形態では、非同調可能な誘電体の幾つかの層がアンテナ素子から排除され、RFアンテナ素子の高導電性電極金属を保護できる非反応性の材料の薄層で置き換えられ、1層が各々電極スタック(例えば、アイリス及びパッチ導体スタック)を覆う。このようにすることで、RF素子の同調性が向上される。
【0013】
図1は、液晶(LC)ベースのメタマテリアルアンテナ素子の構造体を示す図である。
図1を参照すると、構造体は、パッチ導体スタック101と、アイリス導体スタック102と、パッチ導体スタック101とアイリス導体スタック102との間のLC103とを含む。パッチ導体スタック101及びアイリス導体スタック102のLC103に面する側面には、パッシベーション層105が取り付けられる。LC103に隣接するパッシベーション層105には、アンテナ素子のオン相及びオフ相の間にLCのアライメントを行うためのアライメント層104が取り付けられている。
【0014】
一実施形態では、アンテナは、無線周波数(RF)放射アンテナ素子のアレイを備える。各RF放射アンテナ素子は、第1の導体スタックと、第2の導体スタックと、を含み、導体スタック間にLCを有する。
図1の構造体とは対照的に、
図2の構造体における導体スタックの各々は、構造体内のLCに面する導体スタックの側部を覆う1又は2以上の導電層を含む。
【0015】
図2は、非導電層で覆われたパッチ及びアイリス導体スタックを有する液晶(LC)ベースのメタマテリアルアンテナ素子の構造体の一実施形態を示す図である。
図2を参照すると、構造体は、パッチ導体スタック201と、アイリス導体スタック202と、パッチ導体スタック201とアイリス導体スタック202との間のLC203とを含む。一実施形態では、アライメント層204は、パッチ導体スタック201及びアイリス導体スタック202に取り付けられ、LCに開始点及び初期順序を与えるために使用され、この初期順序に従ってLCをアライメントするために使用される(LCは、その後、アンテナ素子のオン相及びオフ相の間に電圧を加えることにより制御される)。一実施形態では、アライメント層204は、パッチ導体スタック201及びアイリス導体スタック202のLC203に接触する側面全体を覆っている。
【0016】
一実施形態では、パッチ導体スタック201は、パッチ基板(例えば、ガラス基板、PCB、その他)に取り付けられた1又は2以上のパッチ金属層を含み、アイリス導体スタック202は、アイリス基板(例えば、ガラス基板、PCB、その他)に取り付けられた1又は2以上のアイリス金属層を含む。一実施形態では、パッチ導体スタック201及びアイリス導体スタック202の一方又は両方は、アンテナ素子を加熱するためのヒーターワイヤを含む。一実施形態では、パッチ導体スタック201及びアイリス導体スタック202の一方又は両方は、ITO又は他の類似の材料を含む。
【0017】
一実施形態において、パッチ導体スタック201及びアイリス導体スタック202の各々は、アライメント層204に隣接し且つ接触する側部を覆う1又は2以上の導電性保護層を含有する。これらの導電層は、パッチ導体スタック201及びアイリス導体スタック202の金属層を保護する。一実施形態では、これらの導電層は、導体スタックの金属層をLCに起因する劣化から保護する。一実施形態では、これらの導電層は、LCに対して不活性である。一実施形態では、これらの導電層は、非反応性の材料を含む。一実施形態では、非反応性の材料は、ITO、白金、金、及び導電性有機層のうちの1又は2以上を含む。一実施形態において、電極の金属のタイプは、非反応性の材料の選択に影響を与える。
【0018】
一実施形態では、パッチ導体スタック201及びアイリス導体スタック202に追加されたこれらの導電性保護層は、導体スタックのサイズを増加させる。一実施形態では、パッチ導体スタック201上の1又は2以上の導電層の厚さ及びアイリス導体スタック202上の1又は2以上の導電層の厚さは、パッチ及びアイリス導体スタックそれぞれの金属層に対する導電層の導電性に基づいている。一実施形態では、導電性保護層の厚さは、その導電率が保護する導体スタックよりも低い場合よりも、その導電率が保護する導体スタック内の金属よりも高い場合により大きくなる。例えば、一実施形態では、導体スタックの金属層が銅である場合、保護層の導電率が銅の導電率よりも高い場合には、より厚い保護層が用いられ、保護層の導電率が銅の導電率よりも低い場合には、より薄い保護層が用いられる。
【0019】
図2に示すように、
図1の構造体の一部であるパッシベーション層が除去され、もはや必要ではない。従って、一実施形態では、各アンテナ素子の構造体は、アライメント層以外の導体スタック間に非同調誘電体を有していない。
【0020】
図3は、パッチ及びアイリス導体スタックの各々を覆う単一の非導電性保護層を有する液晶(LC)ベースのメタマテリアルアンテナ素子の構造体の一実施形態を示す図である。
図3を参照すると、構造体は、パッチ導体スタック301、アイリス導体スタック302、及びパッチ導体スタック301とアイリス導体スタック302の間のLC303を含む。アンテナ素子のオン相及びオフ相中にLCをアライメントするためのアライメント層304は、LC303に隣接する側面でパッチ導体スタック301及びアイリス導体スタック302に取り付けられている。保護層310及び311は、パッチ導体スタック301及びアイリス導体スタック203それぞれのLC303に接触し且つ隣接する側面に取り付けられる。一実施形態では、導電性保護層310及び311の各々は、単一の導電性保護層を含む。
【0021】
一実施形態において、保護層310及び311は、導体スタック302及び303それぞれの金属層をLC303からの劣化から保護するのに十分な厚さである。一実施形態では、保護層310及び311の厚さはまた、スタック301と302との間のギャップサイズが、LCベースのアンテナ素子の動作を可能にするのに適切なサイズにされるのを確保されるように選択される。また、保護層310及び311は、異なる厚さを有することができる点に留意されたい。
【0022】
図4は、パッチ及びアイリス導体スタックの各々を覆う2又は3以上の非導電性の保護層を有する液晶(LC)ベースのメタマテリアルアンテナ素子の構造体の一実施形態を示す図である。
図4を参照すると、構造体は、パッチ導体スタック401、アイリス導体スタック402、及びパッチ導体スタック401とアイリス導体スタック402との間のLC403を含む。アンテナ素子のオン相とオフ相の間にLCの位置合わせをするためのアライメント層404が、LC403に隣接する側面のパッチ導体スタック401とアイリス導体スタック402に取り付けられている。導電性保護層410及び411は、パッチ導体スタック401及びアイリス導体スタック402それぞれのLC403に接触し隣接する側面に取り付けられる。一実施形態では、導電性保護層410及び411の各々は、2又は3以上の導電性保護層を含む。
【0023】
一実施形態において、導電性保護層410の層は、導体スタック401に追加の保護を提供するために互いに拡散することができる。同様に、導電性保護層411の層は、導体スタック402に追加の保護を提供するために、互いに拡散することができる。一実施形態では、組み合わせたときの保護層410の2又は3以上の相と組み合わせたときの2又は3以上の保護層411は、導体スタック401と402の間のギャップサイズがLCベースのアンテナ素子の動作を可能にするために適切なサイズにされることを保証しながら、LC403からの劣化から導体スタック401及び402それぞれの金属層を保護するのに十分な厚さを有している。一実施形態では、保護層410及び411は、異なる厚さを有する。
【0024】
一実施形態では、保護層の最外層がその対応する導体スタックの残りの部分に十分に又は所望の接着力で接着せず、別の層(すなわち、保護層の最内層)が保護層の最外層(複数可)をその対応する導体スタックの残りの部分に接着できる(又はより良好に接着する)ので、保護層410及び411の一方又は両方に複数の層が使用される。
【0025】
本明細書に記載された技術は、パッチ及びアイリスベースのアンテナ素子に限定されない。これらの技術は、他の電極ベースのアンテナ要素に適用することができる。
図5は、上下の導体スタックの各々を覆う1又は2以上の導電性保護層を有する液晶(LC)ベースのメタマテリアルアンテナ素子の構造体の一実施形態を示す図である。
図5を参照すると、構造体は、上部電極スタック501、下部電極スタック502、及び上部電極スタック501と下部電極スタック502の間のLC503を含む。アンテナ素子のオン相及びオフ相中にLCをアライメントするためのアライメント層504は、LC503に隣接する側面の上部電極スタック501及び下部電極スタック502に取り付けられている。導電性保護層510及び511は、上部電極スタック501及び下部電極スタック502それぞれのLC503に接触し且つ隣接する側面に取り付けられる。一実施形態では、導電性保護層510及び511の各々は、1又は2以上の導電性保護層を備える。
【0026】
アンテナ実施形態の実施例
上述した技術は、平面アンテナに用いることができる。このような平面アンテナの実施形態を開示する。平面アンテナは、アンテナアパーチャ上にアンテナ素子の1又は2以上のアレイを含む。1つの実施形態において、アンテナ素子は、液晶セルを含む。1つの実施形態において、平面アンテナは、行及び列に配置されていないアンテナ素子の各々を一意的にアドレス指定し且つ駆動するためのマトリクス駆動回路を含む円筒状給電アンテナである。1つの実施形態において、素子は、リング状に配置される。
【0027】
1つの実施形態において、アンテナ素子の1又は2以上のアレイを有するアンテナアパーチャは、共に結合された複数のセグメントから構成される。セグメントの組み合わせは、共に結合されたときに、アンテナ素子の閉じた同心円リングを形成する。1つの実施形態において、同心円リングは、アンテナ給電部に対して同心円上にある。
【0028】
アンテナシステムの例
1つの実施形態において、平面アンテナは、メタマテリアルアンテナシステムの一部である。通信衛星地上局のメタマテリアルアンテナシステムの実施形態を説明する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、商用衛星通信用のKa帯域又はKu帯域周波数の何れかを用いて動作するモバイルプラットフォーム(例えば、航空、海上、陸上など)上で動作する衛星地上局(ES)の構成要素又はサブシステムである。アンテナシステムの実施形態はまた、モバイルプラットフォーム上にない地上局(例えば、固定又は可搬型地上局)でも使用できることに留意されたい。
【0029】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、別々のアンテナを介して送信及び受信ビームを形成し誘導するために表面散乱メタマテリアル技術を用いる。
【0030】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、3つの機能的サブシステム、すなわち、(1)円筒波給電アーキテクチャからなる導波路構造、(2)アンテナ素子の一部である波散乱メタマテリアル単位セルのアレイ、(3)ホログラフィ原理を用いてメタマテリアル散乱素子からの調整可能な放射場(ビーム)の形成を命令する制御構造から構成される。
【0031】
アンテナ素子
図6は、円筒状給電ホログラフィック放射アパーチャアンテナの1つの実施形態の略図を示す。
図6に関して、アンテナアパーチャは、円筒状給電アンテナの入力給電部602の周りに同心円リング状に配置されたアンテナ素子603の1又は2以上のアレイ601を有する。1つの実施形態において、アンテナ素子603は、RFエネルギーを放射する無線周波数(RF)共振器である。1つの実施形態において、アンテナ素子(603)は、アンテナアパーチャの表面全体にインターリーブ及び分配されるRx及びTxアイリスの両方を含む。このようなアンテナ素子の例を、以下に詳しく説明する。本明細書におけるRF共振器は、円筒状給電部を含まないアンテナに用いることができる点に留意されたい。
【0032】
1つの実施形態において、アンテナは、入力給電部602を介して円筒波給電部を提供するのに用いられる同軸給電部を含む。1つの実施形態において、円筒波給電アーキテクチャは、給電ポイントから円筒状に外向きに広がる励起によって中心ポイントからアンテナに給電する。すなわち、円筒状給電アンテナは、外向きに進む同心円状給電波を生成する。それでも、円筒状給電部の周りの円筒状給電アンテナの形状は、円形、正方形、又は何らかの形状とすることができる。別の実施形態において、円筒状給電アンテナは、内向きに進む給電波を生成する。このような場合、円形構造から生じる給電波が最も自然である。
【0033】
1つの実施形態において、アンテナ素子603は、アイリスを含み、更に
図6のアパーチャアンテナは、同調型液晶(LC)材料を介してアイリスに放射する円筒状給電波からの励起を用いることによって形成される主ビームを生成するのに用いられる。1つの実施形態において、アンテナを励起して、所望の走査角度で水平又は垂直偏波電界を放射することができる。
【0034】
1つの実施形態において、アンテナ素子は、パッチアンテナのグループを含む。このパッチアンテナのグループは、散乱メタマテリアル素子のアレイを含む。1つの実施形態において、アンテナシステムの各散乱素子は、下部導体、誘電体基板、及び上部導体からなる単位セルの一部であり、上部導体は、上部導体にエッチングされるか又は堆積される相補的電気誘導型容量性共振器(「相補型電気LC」又は「CELC」)を組み込んでいる。当業者によって理解されるように、CELCの関連におけるLCは、液晶とは異なり、インダクタンス・キャパシタンスを意味する。
【0035】
1つの実施形態において、液晶(LC)は、散乱素子の周りのギャップに配置される。このLCは、上述の直接駆動型実施形態によって駆動される。1つの実施形態において、液晶は、各単位セルに封入されて、スロットに関連付けられる下部導体をスロットのパッチに関連付けられる上部導体から分離する。液晶は、液晶を構成する分子の配向の関数である誘電率を有し、分子の配向(従って、誘電率)は、液晶の両端のバイアス電圧を調整することによって制御することができる。1つの実施形態において、液晶は、この特性を利用して、誘導波からCELCへのエネルギー伝達のためのオン/オフスイッチを組み込む。スイッチオンになると、CELCは、電気的に小さなダイポールアンテナのように電磁波を放射する。本明細書における教示は、エネルギー伝達に関して2値的に動作する液晶を有することに限定されない点に留意されたい。
【0036】
1つの実施形態において、このアンテナシステムの給電幾何形状は、アンテナ素子を給電波における波ベクトルに対して45度(45°)の角度に位置決めすることを可能にする。他の位置(例えば、40°)を利用できる点に留意されたい。この素子の位置により、素子が受け取った又は素子から送信/放射される自由空間波の制御が可能となる。1つの実施形態において、アンテナ素子は、アンテナの動作周波数の自由空間波長よりも小さい素子間隔で配列される。例えば、1波長当たりに4つの散乱素子が存在する場合には、30GHzの送信アンテナにおける素子は、約2.5mm(すなわち、30GHzの10mm自由空間波長の1/4)である。
【0037】
1つの実施形態において、素子の2つのセットは、互いに垂直であり、同じ同調状態に制御された場合に等しい振幅の励起を同時に有する。これら素子のセットを給電波励起に対して+/-45度回転させると、両方の所望の特徴を同時に達成する。一方のセットを0度回転させ、他方を90度回転させると、垂直目標は達成されるが、等振幅励起の目標は達成されないことになる。0度及び90度は、単一の構造でのアンテナ素子のアレイが2つの側から給電されるときに、分離を達成するのに使用できることに留意されたい。
【0038】
各単位セルからの放射出力の量は、コントローラを使用してパッチに電圧(LCチャネルの両端の電位)を印加することによって制御される。各パッチへのトレースは、パッチアンテナに電圧を供給するのに使用される。この電圧は、静電容量及びひいては個々の素子の共振周波数を同調又は離調させて、ビーム形成を実現するのに使用される。必要な電圧は、使用される液晶混合物に依存する。液晶混合物の電圧同調特性は、液晶が電圧の影響を受け始める閾値電圧値と、それ以上に電圧を高めても液晶での大きな同調が生じなくなる飽和電圧とによって、主として説明される。これらの2つの特性パラメータは、異なる液晶混合物については変化することができる。
【0039】
1つの実施形態において、上記で論じたように、マトリクス駆動回路は、セルごとに別個の接続(直接駆動)を有することなく各セルを他の全てのセルとは別個に駆動するために、パッチに電圧を印加するのに使用される。素子の密度が高いので、マトリクス駆動回路は、各セルを個別にアドレス指定する効率的な方法である。
【0040】
1つの実施形態において、アンテナシステム用の制御構造は、2つの主要構成要素を含み、アンテナシステム用のアンテナアレイコントローラ(駆動電子機器を含む)は、波散乱構造の下方に存在し、マトリクス駆動スイッチングアレイは、放射を妨害しないように、放射RFアレイ全体にわたって散在する。1つの実施形態において、アンテナシステム用の駆動電子機器は、各散乱素子へのACバイアス信号の振幅又はデューティサイクルを調整することによって、この素子に対するバイアス電圧を調整する、商用テレビジョン機器で使用される商用既製LCD制御装置を含む。
【0041】
1つの実施形態において、アンテナアレイコントローラはまた、ソフトウェアを実行するマイクロプロセッサを含有する。制御構造はまた、プロセッサに位置及び向き情報を提供するセンサ(例えば、GPS受信機、3軸コンパス、3軸加速度計、3軸ジャイロ、3軸磁力計など)を組み込むこともできる。位置及び向き情報は、地上局内の及び/又はアンテナシステムの一部でなくてもよい他のシステムによってプロセッサに提供することができる。
【0042】
より詳細には、アンテナアレイコントローラは、動作周波数においてどの位相レベル及び振幅レベルで、どの素子をオフにしてオンにするかを制御する。これらの素子は、電圧の印加によって周波数動作に対して選択的に離調される。
【0043】
送信については、コントローラが、RFパッチに一連の電圧信号を供給して、変調又は制御パターンを生成する。制御パターンにより、素子が異なる状態に同調するようになる。1つの実施形態において、多状態制御が使用され、この多状態制御では、様々な素子が異なるレベルにオン及びオフされ、矩形波(すなわち、正弦波グレイシェード変調パターン)ではなく、正弦波制御パターンに更に近づく。1つの実施形態において、一部の素子が放射し、一部の素子が放射しないのではなく、一部の素子が他の素子よりも強力に放射する。可変放射は、特定の電圧レベルを印加することによって達成され、これにより液晶誘電率を様々な量に調整し、素子を可変的に離調させて一部の素子に他の素子よりも多く放射させるようにする。
【0044】
メタマテリアル素子アレイによる集束ビームの生成は、増加的干渉及び減殺的干渉の現象によって説明することができる。個々の電磁波は、これらの電磁波が自由空間で交わったときに同相を有する場合には合算(増加的干渉)され、これらの電磁波が自由空間で交わったときに、これらの電磁波が逆位相にある場合には、電磁波は互いに打ち消し合う(減殺的干渉)。スロット式アンテナにおけるスロットが、各連続するスロットが誘導波の励起点から異なる距離に位置するように位置決めされた場合には、この素子からの散乱波は、前のスロットの散乱波と異なる位相を有するようになる。スロットが、誘導波長の4分の1の間隔を置いて配置される場合には、各スロットは、前のスロットから4分の1位相遅延を有して波を散乱させることになる。
【0045】
アレイを使用すると、生成できる増加的干渉及び減殺的干渉のパターン数を増加させることができるので、理論的には、ホログラフィの原理を使用して、アンテナアレイのボアサイトからプラスマイナス90度(90°)のあらゆる方向にビームを向けることができるようになる。従って、どのメタマテリアル単位セルをオンにするか又はオフにするかを制御することによって(すなわち、どのセルをオンにし、どのセルをオフにするかについてのパターンを変更することによって)、異なる増加的干渉及び減殺的干渉パターンを生成でき、アンテナは、メインビームの方向を変えることができる。単位セルをオン及びオフにするのに必要な時間は、ビームが1つの位置から別の位置に切り替わることができる速度を決定付ける。
【0046】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、アップリンクアンテナ用の1つの誘導可能なビームと、ダウンリンクアンテナ用の1つの誘導可能なビームとを生成する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、メタマテリアル技術を用いて、ビームを受信し、衛星からの信号を復号し、及び衛星に向けられる送信ビームを形成する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、デジタル信号処理を利用してビームを電気的に形成し誘導するアンテナシステム(フェーズドアレイアンテナなど)とは対照的に、アナログシステムである。1つの実施形態において、アンテナシステムは、特に、従来のディッシュ型衛星受信機と比較したときに、平面で比較的薄型である「表面」アンテナとみなされる。
【0047】
図7は、グランドプレーン及び再構成可能な共振器層を含むアンテナ素子の1つの行の斜視図を示している。再構成可能共振器層1230は、同調型スロット1210のアレイを含む。同調型スロット1210のアレイは、アンテナを所望の方向に向けるように構成することができる。同調型スロットの各々は、液晶の両端の電圧を変化させることによって同調/調整することができる。
【0048】
制御モジュール1280は、再構成可能共振器層1230に結合され、
図8Aにおける液晶の両端の電圧を変化させることによって同調型スロット1210のアレイを変調する。制御モジュール1280は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、マイクロプロセッサ、コントローラ、システムオンチップ(SoC)、又は他の処理論理回路を含むことができる。1つの実施形態において、制御モジュール1280は、同調型スロット1210のアレイを駆動するための論理回路(例えば、マルチプレクサ)を含む。1つの実施形態において、制御モジュール1280は、同調型スロット1210のアレイ上に駆動されるホログラフィック回折パターンに関する仕様を含むデータを受け取る。ホログラフィック回折パターンは、アンテナと衛星との間の空間関係に応答して生成され、ホログラフィック回折パターンが、ダウンリンクビーム(及びアンテナシステムが送信を行う場合には、アップリンクビーム)を通信に好適な方向に誘導することができる。各図には図示されていいないが、制御モジュール1280と同様の制御モジュールは、本開示の図に記載された同調型スロットの各アレイを駆動することができる。
【0049】
無線周波数(「RF」)ホログラフィもまた、RF基準ビームがRFホログラフィック回折パターンに遭遇したときに、所望のRFビームを生成できる類似の技術を用いて実施可能である。衛星通信の場合には、基準ビームは、給電波1205などの給電波の形態である(幾つかの実施形態において、約20GHz)。給電波を放射ビームに変換するために(送信又は受信の何れかの目的で)、所望のRFビーム(目標ビーム)と給電波(基準ビーム)との間の干渉パターンが計算される。干渉パターンは、給電波が、所望のRFビーム(所望の形状及び方向を有する)に「誘導される」ように、同調型スロット1210のアレイ上に回折パターンとして駆動される。換言すると、ホログラフィック回折パターンに遭遇した給電波は、通信システムの設計要件に従って形成される目標ビームを「再構成」する。ホログラフィック回折パターンは、各素子の励起を包含し、導波路における波動方程式としてのwin及び射出波上の波動方程式としてのwoutを用いて、whologram=win*woutによって計算される。
【0050】
図8Aは、同調型共振器/スロット1210の1つの実施形態を示している。同調型スロット1210は、アイリス/スロット1212、放射パッチ1211、及びアイリス1212とパッチ1211との間に配置された液晶1213を含む。1つの実施形態において、放射パッチ1211は、アイリス1212と同じ場所に配置される。
【0051】
図8Bは、物理的アンテナアパーチャの1つの実施形態の断面図を示している。アンテナアパーチャは、グランドプレーン1245と、再構成可能共振器層1230に含まれるアイリス層1232内の金属層1236とを含む。1つの実施形態において、
図8Bのアンテナアパーチャは、
図8Aの複数の同調型共振器/スロット1210を含む。アイリス/スロット1212は、金属層1236の開口部によって定められる。
図8Aの給電波1205などの給電波は、衛星通信チャネルに適合するマイクロ波周波数を有することができる。給電波は、グランドプレーン1245と共振器層1230との間を伝播する。
【0052】
再構成可能共振器層1230はまた、ガスケット層1233及びパッチ層1231を含む。ガスケット層1233は、パッチ層1231とアイリス層1232の間に配置される。1つの実施形態において、スペーサは、ガスケット層1233と置き換えることができることに留意されたい。1つの実施形態において、アイリス層1232は、金属層1236として銅層を含むプリント回路基板(「PCB」)である。1つの実施形態において、アイリス層1232はガラスである。アイリス層1232は、他のタイプの基板とすることができる。
【0053】
開口部は、銅層内でエッチングされてスロット1212を形成することができる。1つの実施形態において、アイリス層1232は、導電性接合層によって、
図8Bにおける別の構造(例えば、導波路)に導電的に結合される。1つの実施形態において、アイリス層は、導電性接合層によって導電的に結合されるものではなく、その代わりに、非導電性接合層と相互連結することに留意されたい。
【0054】
また、パッチ層1231は、放射パッチ1211として金属を含むPCBとすることができる。1つの実施形態において、ガスケット層1233は、金属層1236とパッチ1211との間の寸法を定める機械的離隔部をもたらすスペーサ1239を含む。1つの実施形態において、スペーサは75ミクロンであるが、他のサイズ(例えば3から200mm)が使用できる。上述したように、1つの実施形態において、
図8Bのアンテナアパーチャは、
図8Aのパッチ1211、液晶1213、及びアイリス1212を含む同調型共振器/スロット1210などの複数の同調型共振器/スロットを含む。液晶1213A用のチャンバは、スペーサ1239、アイリス層1232、及び金属層1236によって定められる。チャンバが、液晶で充填された場合には、パッチ層1231は、スペーサ1239上に積層されて、共振器層1230内に液晶をシールすることができる。
【0055】
パッチ層1231とアイリス層1232との間の電圧は、パッチとスロット(例えば、同調型共振器/スロット1210)との間のギャップ内の液晶を同調するように変調することができる。液晶1213の両端の電圧を調整すると、スロット(例えば、同調型共振器/スロット1210)の静電容量が変化する。従って、スロット(例えば、同調型共振器/スロット1210)のリアクタンスは、静電容量を変化させることによって変えることができる。また、スロット1210の共振周波数は、次式:
【数1】
に従って変化し、ここで、fは、スロット1210の共振周波数であり、L及びCは、それぞれ、スロット1210のインダクタンス及び静電容量である。スロット1210の共振周波数は、導波路を通って伝播する給電波1205から放射されるエネルギーに影響を与える。一例として、給電波1205が20GHzである場合には、スロット1210の共振周波数は、17GHzに調整(静電容量を調整することによって)されて、スロット1210が、給電波1205からのエネルギーを実質的に結合しないようにすることができる。或いは、スロット1210の共振周波数は、20GHzに調整されて、スロット1210が、給電波1205からのエネルギーを結合し、このエネルギーを自由空間に放射するようにすることができる。所与の実施例は、2値的(完全に放射するか、又は全く放射しない)であるが、リアクタンス及び従ってスロット1210の共振周波数の完全なグレイスケール制御は、多値範囲にわたる電圧変化を用いて実施可能である。従って、各スロット1210から放射されるエネルギーを精密に制御して、同調型スロットのアレイによって詳細なホログラフィック回折パターンを形成できるようになる。
【0056】
1つの実施形態において、行における同調型スロットは、互いにλ/5だけ離間している。他の間隔を使用することもできる。1つの実施形態において、行における各同調型スロットは、隣接する行における最も近い同調型スロットからλ/2だけ離間しており、従って、異なる行における共通して配向された同調型スロットは、λ/4だけ離間しているが、他の間隔(例えば、λ/5、λ/6.3)も可能である。別の実施形態において、行における各同調型スロットは、隣接する行における最も近い同調型スロットからλ/3だけ離間している。
【0057】
本発明の実施形態は、2014年11月21日に出願された「誘導可能な円筒状給電ホログラフィックアンテナからの偏波及び結合の動的制御」という名称の米国特許出願14/550,178号明細書、及び2015年1月30日に出願された「再構成可能アンテナのためのリッジ型導波路給電構造」という名称の米国特許出願14/610,502号明細書に記載されているような再構成可能なメタマテリアル技術を用いる。
【0058】
図9A-9Dは、スロット式アレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示している。アンテナアレイは、
図6に示されている例示的なリングのようなリング状に位置決めされたアンテナ素子を含む。この実施例では、アンテナアレイは、2つの異なるタイプの周波数帯域に使用される2つの異なるタイプのアンテナ素子を有することに留意されたい。
【0059】
図9Aは、スロットに対応する位置を有する第1のアイリス基板層の一部を示している。
図9Aを参照すると、円は、アイリス基板の下部側におけるメタライゼーション内の空き領域/スロットであり、給電部(給電波)への素子の結合を制御するためのものである。この層は、任意選択の層であり、全ての設計で使用される訳ではない点に留意されたい。
図9Bは、スロットを含む第2のアイリス基板層の一部を示している。
図9Cは、第2のアイリス基板層の一部を覆うパッチを示している。
図9Dは、スロット式アレイの一部の上面図を示している。
【0060】
図10は、円筒状給電アンテナ構造の1つの実施形態の側面図を示している。アンテナは、二重層給電構造(すなわち、2つの層の給電構造)を使用して内向き進行波を生成する。1つの実施形態において、アンテナは、円形の外形を含むが、このことは必須ではない。すなわち、非円形の内向き進行構造を使用することができる。1つの実施形態において、
図10のアンテナ構造は、例えば、2014年11月21日に出願された「誘導可能円筒状給電ホログラフィックアンテナからの偏波及び結合の動的制御」という名称の米国出願公開第2015/0236412号に記載されるような同軸給電部を含む。
【0061】
図10を参照すると、同軸ピン1601は、アンテナの下側レベルで場を励起するのに使用される。1つの実施形態において、同軸ピン1601は、容易に入手できる50Ω同軸ピンである。同軸ピン1601は、導電性グランドプレーン1602であるアンテナ構造の下部に結合(例えば、ボルト締め)される。
【0062】
内部導体である間隙導体1603は、導電性グランドプレーン1602から離隔される。1つの実施形態において、導電性グランドプレーン1602及び間隙導体1603は互いに平行である。1つの実施形態において、グランドプレーン1602と間隙導体1603との間の距離は、0.1インチ~0.15インチである。別の実施形態において、この距離はλ/2とすることができ、ここでλは、動作周波数での進行波の波長である。
【0063】
グランドプレーン1602は、スペーサ1604を介して間隙導体1603から離隔される。1つの実施形態において、スペーサ1604は、発泡体又は空気状スペーサである。1つの実施形態において、スペーサ1604は、プラスチックスペーサを含む。
【0064】
間隙導体1603の上部には、誘電体層1605がある。1つの実施形態において、誘電体層1605はプラスチックである。誘電体層1605の目的は、自由空間速度に対して進行波を減速することである。1つの実施形態において、誘電体層1605は、自由空間に対して30%進行波を減速する。1つの実施形態において、ビーム形成に好適な屈折率の範囲は、1.2~1.8であり、自由空間は、定義上、1に等しい屈折率を有する。例えば、プラスチックなどの他の誘電スペーサ材料を用いて、この効果を達成することができる。所望の波動減速効果を達成する限り、プラスチック以外の材料を使用できる点に留意されたい。或いは、例えば機械加工又はリソグラフィにより定めることができる周期的サブ波長金属構造などの分散構造を有する材料を誘電体層1605として使用することができる。
【0065】
RFアレイ1606は誘電体層1605の上部にある。1つの実施形態において、間隙導体1603とRFアレイ1606との間の距離は、0.1~0.15インチである。別の実施形態において、この距離はλeff/2とすることができ、ここでλeffは設計周波数での媒体中の有効波長である。
【0066】
アンテナは、側面1607及び1608を含む。側面1607及び1608は、同軸ピン1601からの進行波給電が反射によって間隙導体1603の下方の領域(スペーサ層)から間隙導体1603の上方の領域(誘電体層)に伝播するような角度が付けられる。1つの実施形態において、側部1607及び1608の角度は45度の角度である。代替えの実施形態において、側部1607及び1608は、反射を達成するために連続した半径に置き換えることができる。
図10は、45度の角度を有する角度付き側部を示しているが、下部給電レベルから上部給電レベルへの信号伝播を達成する他の角度を使用することができる。すなわち、下部給電の有効波長が、上部給電の有効波長とは一般的に異なることを考慮すると、理想的な45度の角度からの何らかの偏差を使用して、下部給電レベルから上部給電レベルへの伝送を助けることができる。例えば、別の実施形態において、45度の角度は、単一の段部に置き換えらえる。アンテナの一端上の段部は、誘電体層、間隙導体、及びスペーサ層を一周する。同じ2つの段部が、これらの層の他方の端部に存在する。
【0067】
動作中、給電波が同軸ピン1601から供給されると、この給電波は、グランドプレーン1602と間隙導体1603との間の領域で同軸ピン1601から同心円状に外向きに進む。同心円状射出波は、側部1607及び1608により反射され、間隙導体1603とRFアレイ1606との間の領域で内向きに進む。円形外周の縁部(エッジ)からの反射は、この波を同相に留まらせる(すなわち、この反射は、同相反射である)。進行波は、誘電体層1605によって減速する。この時点で、進行波は、RFアレイ1606の素子との相互作用及び励起を開始して、所望の散乱を取得する。
【0068】
進行波を終了させるために、アンテナの幾何学的中心で終端部1609がアンテナに含まれる。1つの実施形態において、終端部1609は、ピン終端(例えば、50Ωピン)を含む。別の実施形態において、終端部1609は、未使用エネルギーを終端させて、アンテナの給電構造を通る当該未使用エネルギーが反射して戻るのを阻止するRF吸収体を含む。これらは、RFアレイ1606の上部で使用することができる。
【0069】
図11は、アンテナシステムの別の実施形態を射出波と共に示している。
図11を参照すると、2つのグランドプレーン1610、1611は、互いに実質的に平行であり、グランドプレーンの間に誘電体層1612(例えば、プラスチック層など)を有している。RF吸収体1619(例えば、抵抗器)は、2つのグランドプレーン1610及び1611を共に結合する。同軸ピン1615(例えば、50Ω)は、アンテナに給電する。RFアレイ1616は、誘電体層1612及びグランドプレーン1610の上部に存在する。
【0070】
動作中、給電波は、同軸ピン1615を介して供給され、同心円状外向きに進んでRFアレイ1616の素子と相互作用をする。
【0071】
図10及び11の両方のアンテナにおける円筒状給電部は、アンテナのサービス角度を改善する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、プラス又はマイナス45度の方位角(±45° Az)、及びプラス又はマイナス25度の仰角(±25° EI)からなるサービス角度の代わりに、全方向でボアサイトから75度(75°)のサービス角度を有する。多数の個々の放射体から構成された何らかのビーム形成アンテナと同様に、全体のアンテナ利得は、それ自体が角度に依存するものである構成素子の利得に依存する。一般的な放射素子が使用される場合には、全体のアンテナ利得は、典型的には、ビームがボアサイトから離れて向けられるにつれて減少する。ボアサイトから75度外れたところでは、約6dBの有意な利得低下が予期される。
【0072】
円筒状給電部を有するアンテナの実施形態は、1又は2以上の問題を解決する。これらは、共通分割器ネットワークを用いて給電されるアンテナと比較して給電構造を飛躍的に簡素化し、及び従って全体で必要とされるアンテナ及びアンテナ給電量を低減するステップと、より粗い制御(全てを単純なバイナリ制御にまで拡張すること)で高ビーム性能を維持することによって製造及び制御誤差に対する感度を低下させるステップと、円筒状に配向された給電波が遠距離場において空間的に多様なサイドローブをもたらすので、直線的給電部と比較してより有利なサイドローブパターンを与えるステップと、偏波器を必要とせずに、左旋円偏波、右旋円偏波及び直線偏波を可能にすることを含めて偏波が動的であることを可能にするステップと、を含む。
【0073】
波散乱素子のアレイ
図10のRFアレイ1606及び
図11のRFアレイ1616は、放射体として動作する1つのグループのパッチアンテナ(すなわち、散乱体)を含む波散乱サブシステムを含む。このパッチアンテナのグループは、散乱メタマテリアル素子のアレイを含む。
【0074】
1つの実施形態において、アンテナシステムにおける各散乱素子は、下部導体と、誘電体基板と、相補的電気誘導容量性共振器(「相補型電気LC」又は「CELC」)を組み込んだ上部導体とからなる単位セルの一部であり、相補的電気誘導型容量性共振器は、上部導体にエッチング又は堆積される。
【0075】
1つの実施形態において、液晶(LC)が散乱素子の周りのギャップに注入される。液晶は、各単位セルに封入され、スロットに関連付けられる下部導体をパッチに関連付けられる上部導体から分離する。液晶は、この液晶を構成する分子の配向の関数である誘電率を有し、分子の配向(従って、誘電率)は、液晶の両端のバイアス電圧を調整することによって制御することができる。この特性を利用して、液晶は、誘導波からCELCへのエネルギー伝達のためのオン/オフスイッチとして動作する。スイッチオンにされたときに、CELCは、電気的に小さなダイポールアンテナのように電磁波を放射する。
【0076】
LCの厚みを制御することにより、ビームスイッチング速度が上がる。下部導体と上部導体との間のギャップ(液晶の厚み)が50パーセント(50%)減少すると、速度が4倍に増大する。別の実施形態において、液晶の厚みは、約14ミリ秒(14ms)のビームスイッチング速度を結果として生じる。1つの実施形態において、LCは、応答性が向上するように当技術分野で周知の方法でドープされ、7ミリ秒(7ms)要件を満足させることができる。
【0077】
CELC素子は、CELC素子の面に平行で且つCELCギャップ補完物に垂直に印加される磁界に応答する。電圧がメタマテリアル散乱単位セルの液晶に印加されたときに、誘導波の磁界成分がCELCの磁気励起を誘導し、その結果、誘導波と同じ周波数の電磁波が生成される。
【0078】
単一のCELCによって生成される電磁波の位相は、誘導波のベクトル上のCELCの位置によって選択することができる。各セルは、CELCと平行な誘導波と同相の波を生成する。CELCは、波長よりも小さいので、出力波は、誘導波がCELCの下を通過するときにこの誘導波の位相と同じ位相を有する。
【0079】
1つの実施形態において、このアンテナシステムの円筒状給電幾何形状は、CELC素子を、給電波における波のベクトルに対して45度(45°)の角度で位置決めされるようにできる。この素子の位置により、素子から生成されるか又は素子によって受け取られる自由空間波の偏波の制御が可能になる。1つの実施形態において、CELCは、アンテナの動作周波数の自由空間波長よりも小さい素子間隔で配列される。例えば、1波長当たりに4つの散乱素子が存在する場合、30GHzの送信アンテナの素子は、約2.5mm(すなわち、30GHzの10mm自由空間波長の1/4)となる。
【0080】
1つの実施形態において、CELCは、スロットを覆って同一場所に位置付けられたパッチとスロットとパッチの間に液晶を含むパッチアンテナによって実施される。これに関して、メタマテリアルアンテナは、スロット(散乱)導波路のように動作する。スロット導波路に関しては、出力波の位相は、誘導波に対するスロットの位置に依存する。
【0081】
セルの配置
1つの実施形態において、アンテナ素子は、系統的マトリクス駆動回路を可能にする方法で円筒状給電アンテナのアパーチャ上に配置される。セルの配置は、マトリクス駆動用のトランジスタの配置を含む。
図12は、アンテナ素子に対するマトリクス駆動回路の配置の1つの実施形態を示している。
図12を参照すると、行コントローラ1701は、行選択信号Row1(行1)及びRow2(行2)それぞれを介してトランジスタ1711、1712に結合され、列コントローラ1702は、列選択信号Column1(列1)を介してトランジスタ1711及び1712に結合される。また、トランジスタ1711は、パッチへの接続1731を介してアンテナ素子1721に結合され、トランジスタ1712は、パッチへの接続1732を介してアンテナ素子1722に結合される。
【0082】
単位セルが非正規グリッド内に配置された円筒状給電アンテナ上でマトリクス駆動回路を実現する最初の手法では、2つのステップが実行される。第1のステップでは、セルが同心リング上に配置され、セルの各々は、セルの傍らに配置されたトランジスタに接続され、このトランジスタが、各セルを別々に駆動するスイッチとして動作する。第2のステップでは、マトリクス駆動回路は、このマトリクス駆動手法が必要とするときにあらゆるトランジスタを一意のアドレスで接続するように構築される。マトリクス駆動回路は、行と列のトレースによって構築される(LCDと同様)が、セルはリング状に配置されるので、各トランジスタに一意のアドレスを割り当てる系統的方法は存在しない。このマッピング問題は、全てのトランジスタをカバーするために極めて複雑な回路を生じさせ、ルーティングを達成する物理的トレースの数を著しく増加させることになる。セルが高密度であるので、これらのトレースは、カップリング効果に起因してアンテナのRF性能を妨げる。また、トレースが複雑であり実装密度が高いことに起因して、トレースのルーティングは、商業的に入手可能なレイアウトツールによって行うことができない。
【0083】
1つの実施形態において、マトリクス駆動回路は、セル及びトランジスタが配置される前に事前に定められる。これは、各々が一意のアドレスを有する全てのセルを駆動するのに必要な最小数のトレースが確保される。この方式は、駆動回路の複雑性を軽減してルーティングを簡素化し、これによってアンテナのRF性能が向上する。
【0084】
より詳細には、1つの方式では、第1のステップにおいて、セルは、各セルの一意のアドレスを表す行及び列から構成された正方形グリッド上に配置される。第2のステップにおいて、セルは、セルのアドレス、及び第1のステップで定められた行及び列への接続を維持すると同時に、グループ化され且つ同心円に変換される。この変換の目的は、セルをリング上に配置するだけでなく、アパーチャ全体にわたってセル間の距離及びリング間の距離を一定に保つことである。この目的を達成するために、セルをグループ化する幾つかの方法が存在する。
【0085】
1つの実施形態において、TFTパッケージは、マトリクス駆動回路における配置及び一意のアドレス指定を可能にするのに用いられる。
図13は、TFTパッケージの1つの実施形態を示している。
図13を参照すると、入力及び出力ポートを備えたTFT及び保持キャパシタ1803が示されている。トレース1801に接続された2つの入力ポートと、トレース1802に接続された2つの出力ポートとがあり、行及び列を用いてTFTを共に接続する。1つの実施形態において、行のトレース及び列のトレースは、90°の角度で交差して、行のトレースと列のトレースとの間の結合が低減され、場合によっては最小となることができる。1つの実施形態において、行のトレース及び列のトレースは、様々な層上に存在する。
【0086】
全二重通信システムの例
別の実施形態において、複合アンテナアパーチャは、全二重通信システムで用いられる。
図14は、同時送信及び受信経路を有する通信システムの別の実施形態のブロック図である。1つの送信経路及び1つの受信経路のみが示されているが、通信システムは、2以上の送信経路及び/又は2以上の受信経路を含むことができる。
【0087】
図14を参照すると、アンテナ1401は、上述のように異なる周波数で同時に送信及び受信するように独立して動作可能な2つの空間的に交互配置されたアンテナアレイを含む。1つの実施形態において、アンテナ1401は、ダイプレクサ1445に結合される。この結合は、1又は2以上の給電ネットワークによるものとすることができる。1つの実施形態において、放射状給電アンテナの場合、ダイプレクサ1445は、2つの信号を組み合わせるものであり、アンテナ1401とダイプレクサ1445の間の接続は、両方の周波数を搬送できる単一の広帯域給電ネットワークである。
【0088】
ダイプレクサ1445は、低ノイズブロックダウンコンバータ(LNB)1427に結合され、このLNBは、当技術分野において周知の方法でノイズフィルタリング機能、ダウンコンバート機能、及び増幅機能を実行する。1つの実施形態において、LNB1427は、室外ユニット(ODU)に存在する。別の実施形態において、LNB1427は、アンテナ装置に組み込まれる。LNB1427は、コンピューティングシステム1440(例えば、コンピュータシステム、モデムなど)に結合されたモデム1460に結合される。
【0089】
モデム1460は、アナログ‐デジタルコンバータ(ADC)1422を含み、このADCは、LNB1427に結合されて、ダイプレクサ1445から出力された受信信号をデジタル形式に変換する。デジタル形式に変換された状態で、信号は、復調器1423によって復調され、更に復号器1424によって復号され、受信波上の符号化されたデータが得られる。次に、復号されたデータは、コントローラ1425に送られ、このコントローラが、このデータをコンピューティングシステム1440に送る。
【0090】
モデム1460はまた、コンピューティングシステム1440から送信されるデータを符号化する符号器1430を含む。符号化されたデータは、変調器1431によって変調され、次にデジタル‐アナログコンバータ(DAC)1432によってアナログに変換される。次に、アナログ信号は、BUC(アップコンバート及び高域増幅器)1433によってフィルタリングされ、ダイプレクサ1445の1つのポートに供給される。1つの実施形態において、BUC1433は、室外ユニット(ODU)に存在する。
【0091】
当技術分野において周知の方法で動作するダイプレクサ1445は、伝送のため送信信号をアンテナ1401に供給する。
【0092】
コントローラ1450は、単一の複合物理的アパーチャ上のアンテナ素子の2つのアレイを含むアンテナ1401を制御する。
【0093】
通信システムは、上述のコンバイナ/アービターを含むよう修正されるであろう。このような場合、コンバイナ/アービターはモデムの後であるがBUC及びLNBの前にある。
【0094】
図14に示された全二重通信システムは、限定ではないが、インターネット通信、車両通信(ソフトウェア更新を含む)などを含む幾つかの用途があることに留意されたい。
【0095】
本明細書に記載されている例示的な実施形態が複数ある。
【0096】
実施例1は、アンテナが、無線周波数(RF)放射アンテナ素子のアレイを備え、各RF放射アンテナ素子は、1又は2以上の金属層を含む第1の導体スタックであって、第1の導体スタックの第1の側部を覆う1又は2以上の導電層の第1のセットを有する、第1の導体スタックと、第1の導体スタックから分離され且つ1又は2以上の導電層を含む第2の導体スタックであって、第2の導体スタックの第2の側面を覆う1又は2以上の導電層の第2のセットを有する、第2の導体スタックと、第1及び第2の導体スタックそれぞれの第1の側面と第2の側面の間の液晶(LC)と、を含む、アンテナである。
【0097】
実施例2は、第1及び第2の導電層が、1又は2以上の金属層を液晶に起因する劣化から保護する、ことを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0098】
実施例3は、第1及び第2の導電層が、液晶に対して不活性である、ことを任意選択的に含むことができる実施例2のアンテナである。
【0099】
実施例4は、第1及び第2の導電層が、液晶に対して非反応性の材料を含む、ことを任意選択的に含むことができる実施例2のアンテナである。
【0100】
実施例5は、非反応性の材料が、ITO、白金、金、及び導電性有機層のうちの1又は2以上を含む、ことを任意選択的に含むことができる実施例4のアンテナである。
【0101】
実施例6は、1又は2以上の導電層の第1のセット及び1又は2以上の導電層の第2のセットの厚さが、第1及び第2の導体スタックそれぞれの金属層に対する第1のセット及び第2のセットの導電性に基づいており、第1及び第2のセットのうちの少なくとも1つのセットにおいて、少なくとも1つのセットの導電性がそれぞれの導体スタックの金属層より低い場合よりも、少なくとも1つのセットの導電性がそれぞれの導体スタックの金属層より高い場合に厚さが大きくなる、ことを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0102】
実施例7は、LCに隣接する導電層の第1のセットに取り付けられた第1のアライメント層と、LCに隣接する導電層の第2のセットに取り付けられた第2のアライメント層とを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0103】
実施例8は、アンテナ素子の各々が、第1及び第2のアライメント層以外の第1及び第2の導体スタック間に非同調誘電体を有していない、ことを任意選択的に含むことができる実施例7のアンテナである。
【0104】
実施例9は、第1の導体スタックがパッチを有するパッチ導体スタックを含み、第2の導体スタックがアイリスを有するアイリス導体スタックを含む、ことを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0105】
実施例10は、パッチ導体スタックが、パッチ基板に取り付けられた1又は2以上のパッチ金属層を含み、アイリス導体スタックが、アイリス基板に取り付けられた1又は2以上のアイリス金属層を含む、ことを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0106】
実施例11は、RF放射アンテナ素子が、表面散乱メタマテリアルアンテナ素子を含む、ことを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0107】
実施例12は、高周波(RF)放射アンテナ素子のアレイを備えたアンテナであって、各RF放射アンテナ素子が、
1又は2以上の金属層を含むパッチ導体スタックと、
第1の導体スタックの第1の側面を覆う1又は2以上の導電層の第1のセットと、
パッチ導体スタックから分離されたアイリス導体スタックと、
アイリス導体スタックの第2の側面を覆う1又は2以上の導電層の第2のセットと、
1又は2以上の導電層の第1及び第2のセットの間の液晶(LC)と、
LCに隣接して1又は2以上の導電層の第1のセットに取り付けられた第1のアライメント層及びLCに隣接して1又は2以上の導電層の第2のセットに取り付けられた第2のアライメント層と、
を含む、アンテナである。
【0108】
実施例13は、導電層の第1及び第2のセットが、1又は2以上の金属層を液晶に起因する劣化から保護する、ことを任意選択的に含むことができる実施例12のアンテナである。
【0109】
実施例14は、導電層の第1及び第2のセットが、液晶に対して不活性である、ことを任意選択的に含むことができる実施例13のアンテナである。
【0110】
実施例15は、導電層の第1及び第2のセットが、液晶に対して非反応性の材料を含む、ことを任意選択的に含むことができる実施例13のアンテナである。
【0111】
実施例16は、非反応性の材料が、ITO、白金、金、及び導電性有機層のうちの1又は2以上を含む、ことを任意選択的に含むことができる実施例15のアンテナである。
【0112】
実施例17は、1又は2以上の導電層の第1のセット及び1又は2以上の導電層の第2のセットの厚さが、第1及び第2の導体スタックそれぞれの金属層に対する第1のセット及び第2のセットの導電性に基づいており、第1及び第2のセットのうちの少なくとも1つのセットにおいて、少なくとも1つのセットの導電性がそれぞれの導体スタックの金属層より低い場合よりも、少なくとも1つのセットの導電性がそれぞれの導体スタックの金属層より高い場合に厚さが大きくなる、ことを任意選択的に含むことができる実施例12のアンテナである。
【0113】
実施例18は、アンテナ素子の各々が、第1及び第2のアライメント層以外の第1及び第2の導体スタック間に非同調誘電体を有していない、ことを任意選択的に含むことができる実施例12のアンテナである。
【0114】
実施例19は、パッチ導体スタックが、パッチ基板に取り付けられた1又は2以上のパッチ金属層を含み、アイリス導体スタックが、アイリス基板に取り付けられた1又は2以上のアイリス金属層を含む、ことを任意選択的に含むことができる実施例12のアンテナである。
【0115】
実施例20は、RF放射アンテナ素子が、表面散乱メタマテリアルアンテナ素子を含む、ことを任意選択的に含むことができる実施例12のアンテナである。
【0116】
上記の詳細な説明の幾つかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する演算のアルゴリズム及び記号表現の観点で提示されている。これらのアルゴリズム的記述及び表現は、データ処理技術分野の当業者により、自らの作業の内容を他の当業者に最も効果的に伝えるために使用される手段である。アルゴリズムは、ここでは一般的に、望ましい結果に至る自己矛盾のない一連のステップであると考えられる。これらのステップは、物理量の物理的操作を必要とするものである。必須ではないが、通常は、これらの量は、格納、転送、結合、比較、及び他の操作が可能な電気信号又は磁気信号の形式を取る。これらの信号をビット、値、要素、記号、符号、用語、又は数字などとして示すことは、主として共通使用という理由でときに好都合であることが判明している。
【0117】
しかしながら、これらの及び類似の用語は、全て適切な物理量に関連付けられるものとし、且つこれらの量に付与される有利なラベルに過ぎないことを念頭に置くべきである。以下の説明から明らかなように他に具体的に明記されない限り、説明全体を通して、「処理する」又は「コンピュータ計算する」又は「計算する」又は「決定する」又は「表示する」などのような用語を利用する説明は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理的な(電子的な)量として表されるデータをそのコンピュータシステムのメモリ又はレジスタ又は他のそのような情報ストレージ、送信又は表示デバイス内の物理量として同様に表される別のデータに操作及び変換するコンピュータシステム又は類似の電子コンピュータデバイスのアクション及びプロセスを指すことを理解すべきである。
【0118】
本発明はまた、本明細書の動作を実行するための装置に関する。この装置は、必要とされる目的のために特別に構成することができ、又はコンピュータに格納されたコンピュータプログラムによって選択的に起動又は再構成される汎用コンピュータを含むことができる。このようなコンピュータプログラムは、限定ではないが、フロッピーディスク、光学ディスク、CD-ROM、及び磁気光学ディスクを含むあらゆるタイプのディスク、読取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気又は光カード、又は電子命令の格納に適するあらゆるタイプの媒体のようなコンピュータ可読ストレージ媒体に格納することができ、各々がコンピュータシステムバスに結合される。
【0119】
本明細書に提示したアルゴリズム及び表示は、何れの特定のコンピュータ又は他の装置にも本質的に関係付けられるものではない。様々な汎用システムを本明細書の教示によるプログラムと共に使用することができるか、又は必要とされる方法ステップを実行するより特殊化された装置を構成することが便利であることが証明されている場合がある。多種多様なこれらのシステムに必要とされる構造は、以下の説明から明らかであろう。これに加えて、本発明は、何れの特定のプログラミング言語に関連しても説明されていない。多種多様なプログラミング言語を使用して、本明細書に説明した本発明の教示を実施することができることが理解されるであろう。
【0120】
機械可読媒体は、機械(例えば、コンピュータ)によって可読の形態の情報を格納又は送信するための何れかの機構を含む。例えば、機械可読媒体は、読取り専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、磁気ディスクストレージ媒体、光学ストレージ媒体、フラッシュメモリデバイスなどを含む。
【0121】
本発明の多くの改変及び修正が前述の説明を読んだ後で疑いなく当業者に明らかになるであろうが、例証によって図示及び説明された何れの特定の実施形態も限定として捉えられるものではない点を理解されたい。従って、様々な実施形態の詳細事項への言及は、本発明にとって基本的なものとしてみなされる特徴のみを記載する請求項の範囲を制限するものではない。
【符号の説明】
【0122】
101 パッチ導体スタック
102 アイリス導体スタック
103 LC(液晶)
104 アライメント層
105 パッシベーション層
【国際調査報告】