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特表2023-521050固体ハイブリッド電解質のための副生成物非生成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】固体ハイブリッド電解質のための副生成物非生成方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230516BHJP
   C08K 3/105 20180101ALI20230516BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20230516BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230516BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20230516BHJP
   H01M 10/056 20100101ALI20230516BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230516BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230516BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/105
C08K3/06
C08K3/36
C08L83/04
H01M10/056
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01B1/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560397
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 US2021025663
(87)【国際公開番号】W WO2021203060
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/005,212
(32)【優先日】2020-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519030084
【氏名又は名称】ブルー カレント、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビラルエンガ、イルネ
(72)【発明者】
【氏名】ブルディンスカ、ジョアンナ
【テーマコード(参考)】
4J002
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BP013
4J002CP032
4J002CP033
4J002DD056
4J002DG026
4J002DJ017
4J002FD012
4J002FD017
4J002FD116
4J002FD143
4J002GQ00
5G301CA05
5G301CA16
5G301CA19
5G301CD01
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM11
5H029DJ09
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA07
5H050AA12
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA13
5H050EA15
5H050EA23
5H050EA25
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本開示は、イオン伝導性無機材料とin situ架橋マトリックスとを備えるハイブリッド電解質組成物に関する。そのような組成物を備える方法および装置もまた本明細書に記載される。前記ハイブリッド電解質組成物は、約60wt%~約95wt%のイオン伝導性無機材料と、約5wt%~約40wt%のin situ架橋マトリックスであって、バインダと複数の架橋剤とを有し、前記架橋剤が前記in situ架橋マトリックス内で熱可逆結合を形成し、前記熱可逆結合が副生成物を生成しない、in situ架橋マトリックスとを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約60wt%~約95wt%のイオン伝導性無機材料と、
約5wt%~約40wt%のin situ架橋マトリックスであって、バインダと複数の架橋剤とを有し、前記架橋剤が前記in situ架橋マトリックス内で熱可逆結合を形成し、前記熱可逆結合が副生成物を生成しない、in situ架橋マトリックスと
を備えるハイブリッド電解質組成物。
【請求項2】
前記熱可逆結合が、ディールス・アルダー環化付加反応、ヒュスゲン環化付加反応、チオール-エン反応、マイケル付加反応、開環反応、またはクリックケミストリー反応によって形成される、請求項1に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項3】
前記イオン伝導性無機材料がリチウムを有する、請求項1または2に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項4】
前記イオン伝導性無機材料が硫化物系材料である、請求項3に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項5】
前記バインダが、ポリマー骨格、コポリマー骨格、またはグラフトコポリマー骨格を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項6】
前記バインダが、パーフルオロエーテル、エポキシ、ポリブタジエン、ポリ(スチレン-b-ブタジエン)、ポリオレフィン、ポリシロキサン、ポリテトラヒドロフラン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)(SBS)、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)(SEBS)、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)(SIS)、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーポリマー、およびそれらのコポリマーを含む、請求項5に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項7】
前記バインダが複数の無機ケージを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項8】
前記複数の無機ケージが、シリカ、シルセスキオキサン、ヒドリドシルセスキオキサン、または部分縮合シルセスキオキサンを含む、請求項7に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項9】
前記複数の無機ケージが(SiO1.5を含み、nが8、10、または12の整数である、請求項7または8に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項10】
前記架橋剤が、(SiO1.5を含む第1の無機ケージにおけるケイ素原子に結合し、(SiO1.5を含む第2の無機ケージにおける別のケイ素原子に結合する、請求項9に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項11】
前記架橋剤が、-L-X-L-、-L-X-L-X-L-、または(-L)(-L1a)X-L-X(L-)(L3a-)の構造を有し、
、L1a、L、L、およびL3aのそれぞれが独立して、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいヘテロアルキレン、または置換されていてもよいアリーレンを含み、
またはXのそれぞれが独立して、ディールス・アルダー環化付加生成物、ヒュスゲン環化付加生成物、チオール-エン反応生成物、マイケル付加生成物、または開環反応生成物を含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項12】
、L1a、L、L、およびL3aのそれぞれが独立して、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいヘテロアルキレン、または置換されていてもよいアリーレンである、
請求項11に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項13】
、L1a、L、L、およびL3aのそれぞれが独立して、-Cy-、-Ak-Cy-、-Het-Cy-、-Cy-Ak-、-Cy-Het-、-Ak-Cy-Ak、-Het-Cy-Het-、-(Ar)-、-(Ak)-(O-Ak)-、または-(Ak-O)-(Ak)-であり、
Cyが複素環または炭素環を含む二価リンカーであり、Akが置換されていてもよいアルキレンであり、Hetが置換されていてもよいヘテロアルキレンであり、Arが置換されていてもよいアリーレンであり、
aが1~10の整数であり、
bが0または1である、
請求項12に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項14】
またはXのそれぞれが独立して、チオまたは複素環もしくは炭素環を含む二価リンカーを含む、
請求項11から13のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項15】
またはXのそれぞれが独立して、
【化1】
からなる群から選択される部分であり、
が-C(R-、-NR-、-O-、または-S-であり、
が=CR-または-N-であり、
が-[C(Rc1-、-NR-、-O-、-S-、または-C(O)-O-であり、
がHまたは置換されていてもよいアルキルであり、
c1が1~3の整数であり、
前記部分が、シアノ、ヒドロキシル、ハロ、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシル、アルコキシ、オキソ、またはアルキルで置換されていてもよい、
請求項14に記載のハイブリッド電解質組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質組成物を備える膜。
【請求項17】
前記膜の弾性率が約0.2GPa~約3GPaである、請求項16に記載の膜。
【請求項18】
ハイブリッド電解質組成物を形成する方法であって、
第1の反応基を含む第1のリンカーに結合しているバインダ成分とイオン伝導性無機材料とを有する混合物を用意する段階と、
前記バインダ成分を連結剤と反応させてin situ架橋マトリックスを形成する段階であって、前記連結剤が、前記第1の反応基と一緒に反応して前記in situ架橋マトリックス内で熱可逆結合を形成するように構成されている第2の反応基を含み、前記熱可逆結合が副生成物を生成しない、段階と
を備える、方法。
【請求項19】
前記第1の反応基と前記第2の反応基とが一緒に反応して、ディールス・アルダー環化付加生成物、ヒュスゲン環化付加生成物、チオール-エン反応生成物、マイケル付加生成物、または開環反応生成物を形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の反応基と前記第2の反応基とが、ジエンとジエノフィルとの組、1,3-双極子と親双極子との組、チオールと置換されていてもよいアルケンとの組、チオールと置換されていてもよいアルキンとの組、求核剤と歪みヘテロシクリル求電子剤との組、求核剤と置換されていてもよいα,β-不飽和カルボニル化合物との組、または求核剤と置換されていてもよい歪み環状化合物との組のうちの1つから選択される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の反応基と前記第2の反応基とが、置換されていてもよい1,3-ブタジエン、置換されていてもよいアルケン、置換されていてもよいアルキン、置換されていてもよいα,β-不飽和アルデヒド、置換されていてもよい不飽和α,β-チオアルデヒド、置換されていてもよいα,β-不飽和ケトン、置換されていてもよいアジ化物、置換されていてもよいチオール、置換されていてもよい不飽和シクロアルキル、置換されていてもよい不飽和ヘテロシクリル、置換されていてもよいα,β-不飽和イミン、置換されていてもよいアルデヒド、置換されていてもよいイミン、置換されていてもよいニトロソ化合物、置換されていてもよいジアゼン、置換されていてもよいチオケトン、置換されていてもよいα,β-不飽和ケトン、置換されていてもよいα,β-不飽和アルデヒド、置換されていてもよいアニオン性求核剤、および置換されていてもよい歪みエポキシからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記バインダ成分が、前記第1の反応基を含む前記第1のリンカーに結合しているモノマーを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記バインダ成分が
-[R-(L-R1*)]
の構造を含み、
が前記モノマーであり、
が二価リンカーであり、
1*が前記第1の反応基であり、
nが1~10である、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記モノマーが、置換されていてもよいスチレンモノマー、置換されていてもよいエチレンモノマー、置換されていてもよいプロピレンモノマー、置換されていてもよいブチレンモノマー、置換されていてもよいブタジエンモノマー、置換されていてもよいパーフルオロアルカンモノマー、置換されていてもよいパーフルオロエーテルモノマー、置換されていてもよいイソプレンモノマー、置換されていてもよいエチリデンノルボルネンモノマー、または置換されていてもよいジエンモノマーを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記バインダ成分が
-[RM1n1-[RM2n2-[RM3-(L-R1*)]n3-[RM4n4
の構造を含み、
M1が第1のモノマーであり、
M2が第2のモノマーであり、
M3が第3のモノマーであり、
M4が第4のモノマーであり、
が二価リンカーであり、
1*が前記第1の反応基であり、
n1、n2、n3、およびn4のそれぞれが独立して0~10であり、n1、n2、n3、およびn4のうちの少なくとも1つが0ではない、
請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のモノマー、前記第2のモノマー、前記第3のモノマー、および前記第4のモノマーが、置換されていてもよいスチレンモノマー、置換されていてもよいエチレンモノマー、置換されていてもよいプロピレンモノマー、置換されていてもよいブチレンモノマー、置換されていてもよいブタジエンモノマー、置換されていてもよいパーフルオロアルカンモノマー、置換されていてもよいパーフルオロエーテルモノマー、置換されていてもよいイソプレンモノマー、置換されていてもよいエチリデンノルボルネンモノマー、または置換されていてもよいジエンモノマーを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記バインダ成分が、前記第1の反応基を含む前記第1のリンカーに結合している無機ケージを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記バインダ成分が
-(L-R1*
の構造を有し、
が前記無機ケージであり、
が二価リンカーであり、
1*が前記第1の反応基であり、
nが8、10、または12である、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
が(SiO1.5である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つのLが独立して、-Cy-、-Ak-Cy-、-Het-Cy-、-Cy-Ak-、-Cy-Het-、-Ak-Cy-Ak、-Het-Cy-Het-、-(Ar)-、-(Ak)-(O-Ak)-、または-(Ak-O)-(Ak)-であり、
Cyが複素環または炭素環を含む二価リンカーであり、Akが置換されていてもよいアルキレンであり、Hetが置換されていてもよいヘテロアルキレンであり、Arが置換されていてもよいアリーレンであり、
aが1~10の整数であり、
bが0または1である、
請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
1*が、置換されていてもよいジエン、置換されていてもよい不飽和ヘテロシクリル、置換されていてもよいα,β-不飽和アルデヒド、置換されていてもよいα,β-不飽和チオアルデヒド、置換されていてもよいα,β-不飽和イミン、置換されていてもよいアジ化物、および置換されていてもよいチオールからなる群から選択される、請求項27から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記連結剤が第3の反応基をさらに含み、前記第1の反応基および前記第2の反応基のうちの少なくとも一方が一緒に反応してマトリックス内で熱可逆結合を形成し、別の第1の反応基と前記第3の反応基とが一緒に反応して別の熱可逆結合を形成する、請求項18から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の反応基と前記第3の反応基とが同じである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記連結剤が
2*-L-R3*
の構造を有し、
2*が前記第2の反応基であり、
が二価リンカーであり、
3*が前記第3の反応基である、
請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
が独立して、-Cy-、-Ak-Cy-、-Het-Cy-、-Cy-Ak-、-Cy-Het-、-Ak-Cy-Ak、-Het-Cy-Het-、-(Ar)-、-(Ak)-(O-Ak)-、または-(Ak-O)-(Ak)-であり、
Cyが複素環または炭素環を含む二価リンカーであり、Akが置換されていてもよいアルキレンであり、Hetが置換されていてもよいヘテロアルキレンであり、Arが置換されていてもよいアリーレンであり、
aが1~10の整数であり、
bが0または1である、
請求項34に記載の方法。
【請求項36】
2*およびR3*のそれぞれが、置換されていてもよいアルケン、置換されていてもよいアルキン、置換されていてもよい不飽和シクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいイミン、置換されていてもよいニトロソ化合物、置換されていてもよいアゾ化合物、置換されていてもよいチオケトン、置換されていてもよいチオリン酸、および置換されていてもよいチオンオキシド化合物からなる群から独立して選択される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記熱可逆結合が、ディールス・アルダー環化付加反応、ヒュスゲン環化付加反応、チオール-エン反応、マイケル付加反応、開環反応、またはクリックケミストリー反応によって形成される、請求項18から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記熱可逆結合が、ディールス・アルダー環化付加生成物、ヒュスゲン環化付加生成物、チオール-エン反応生成物、マイケル付加生成物、または開環反応生成物を含む、請求項18から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記熱可逆結合が、チオ、置換されていてもよいヘテロシクリル、または置換されていてもよいシクロアルキルを含む、請求項18から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記熱可逆結合が、
【化2】
からなる群から選択される部分を含み、
が-C(R-、-NR-、-O-、または-S-であり、
が=CR-または-N-であり、
が-[C(Rc1-、-NR-、-O-、-S-、または-C(O)-O-であり、
がHまたは置換されていてもよいアルキルであり、
c1が1~3の整数であり、
前記部分が、シアノ、ヒドロキシル、ハロ、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシル、アルコキシ、オキソ、またはアルキルで置換されていてもよい、
請求項18から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ハイブリッド電解質組成物が請求項1から15のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質組成物である、請求項18から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ハイブリッド電解質組成物を膜として流延する段階と、
任意選択で、約100℃~約190℃の温度に加熱することによって前記膜を修復する段階と
をさらに備える、請求項18から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
請求項1から15のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質組成物または請求項16もしくは17に記載の膜を備える電池。
【請求項44】
請求項1から15のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質組成物または請求項16もしくは17に記載の膜を備える電極。
【請求項45】
バインダと複数の架橋剤とを有するin situ架橋マトリックスであって、前記架橋剤が前記in situ架橋マトリックス内で熱可逆結合を形成し、前記熱可逆結合が副生成物を生成しない、in situ架橋マトリックスと、
電気化学的活物質と、
イオン伝導性粒子と、
任意選択で、炭素添加剤と
を備える電極。
【請求項46】
イオン伝導性無機材料と第1のin situ架橋マトリックスとを有するセパレータと、
第2のin situ架橋マトリックスを有する電極であって、前記第1のin situ架橋マトリックスおよび前記第2のin situ架橋マトリックスがバインダと複数の架橋剤とを含み、前記架橋剤が前記in situ架橋マトリックス間で熱可逆結合を形成し、前記熱可逆結合が副生成物を生成しない、電極と
を備える組成物。
【請求項47】
電極とセパレータ組成物とを用意する段階であって、前記電極と前記セパレータ組成物とがそれぞれ、第1の反応基を含む第1のリンカーに結合しているバインダ成分を有する、段階と、
前記電極および前記セパレータ組成物の前記バインダ成分を連結剤と反応させて、前記電極と前記セパレータ組成物との間でin situ架橋マトリックスを形成する段階であって、前記連結剤が、前記第1の反応基と一緒に反応して前記in situ架橋マトリックス内で熱可逆結合を形成するように構成されている第2の反応基を含み、前記熱可逆結合が副生成物を生成しない、段階と
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(参照による組み込み)
PCT願書は、本出願の一部として本明細書と同時に出願される。同時に出願されるPCT願書において同定される、本出願でその利益または優先権が主張される各出願は、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、イオン伝導性無機材料とin situ架橋マトリックスとを備えるハイブリッド電解質組成物に関する。そのような組成物を備える方法および装置もまた本明細書に記載される。
【背景技術】
【0003】
固体状電解質は、一次および二次電池において液体電解質に勝る様々な利点を呈する。例えば、リチウムイオン二次電池において、無機固体状電解質は従来の液体有機電解質よりも不燃性であり得る。固体状電解質はまた、デンドライト形成を抑制することによってリチウム金属電極の使用を容易にすることができる。固体状電解質はまた、様々な条件にわたって、高エネルギー密度、良好なサイクル安定性、および電気化学的安定性という利点を呈し得る。しかしながら、固体状電解質の大規模な商業化には様々な課題が存在する。1つの課題は、電解質と電極との接触を維持することである。例えば、無機硫化物ガラスおよびセラミックなどの無機材料は、室温で高いイオン伝導性(10-4S/cm超)を有するが、これらは、電池サイクル中において電極への接着性が乏しいために、効率的な電解質として機能しない。別の課題は、ガラスおよびセラミック固体状導体はもろ過ぎて高密度薄膜に大規模に加工することができないというものである。この結果、膜が厚過ぎることに起因する高いバルク電解質抵抗、およびデンドライトの浸透を可能にする空隙の存在に起因するデンドライト形成が生じ得る。比較的延性の高い硫化物ガラスでさえ、その機械的特性はガラスを高密度薄膜に加工するのに十分ではない。固体ポリマーバインダの添加などの接着性を向上させる技法はイオン伝導性を低減する傾向があるため、イオン伝導性を犠牲にすることなくこれらの機械的特性を改善することは特に課題である。わずか1wt%のバインダの導入で導電性の10分の1未満への減少を観察することは珍しいことではない。固体状ポリマー電解質系は、接着および薄膜への形成を容易にする改善された機械的特徴を有し得るが、室温での低いイオン伝導性または不十分な機械的強度を有するおそれがある。
【0004】
室温で高いイオン伝導性を有し、イオン伝導性を犠牲にすることなく薄い高密度の膜に加工できるほど十分に柔軟な材料が、固体状電池の大規模生産および商業化のために必要である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、ハイブリッド電解質組成物に関する。第1の態様において、組成物は、約60wt%~約95wt%のイオン伝導性無機材料と、約5wt%~約40wt%のin situ架橋マトリックスとを備える。
【0006】
一部の実施形態において、前記イオン伝導性無機材料はリチウムを有する。他の実施形態において、前記イオン伝導性無機材料は硫化物系材料である。
【0007】
一部の実施形態において、前記in situ架橋マトリックスはバインダと複数の架橋剤とを有する。非限定的なバインダとしては、ポリマー骨格、コポリマー骨格、またはグラフトコポリマー骨格が挙げられる。他の非限定的なバインダとしては、パーフルオロエーテル、エポキシ、ポリブタジエン、ポリ(スチレン-b-ブタジエン)、ポリオレフィン、ポリシロキサン、ポリテトラヒドロフラン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)(SBS)、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)(SEBS)、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)(SIS)、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーポリマー、およびそれらのコポリマーを挙げることができる。
【0008】
他の実施形態において、前記バインダは複数の無機ケージを含む。非限定的な無機ケージとしては、シリカ、シルセスキオキサン、ヒドリドシルセスキオキサン、または部分縮合シルセスキオキサンを挙げることができる。一部の実施形態において、前記複数の無機ケージは(SiO1.5を含み、nは8、10、または12の整数である。特定の実施形態において、前記架橋剤は、(SiO1.5を含む第1の無機ケージにおけるケイ素原子に結合し、(SiO1.5を含む第2の無機ケージにおける別のケイ素原子に結合する。
【0009】
in situ架橋マトリックスは複数の架橋剤を有することができる。一部の実施形態において、前記架橋剤は前記マトリックス内で熱可逆結合を形成し、前記熱可逆結合は副生成物を生成しない。特定の実施形態において、前記熱可逆結合は、ディールス・アルダー環化付加反応、ヒュスゲン環化付加反応、チオール-エン反応、マイケル付加反応、開環反応、またはクリックケミストリー反応によって形成される。
【0010】
他の実施形態において、前記架橋剤は、-L-X-L-、-L-X-L-X-L-、または(-L)(-L1a)X-L-X(L-)(L3a-)の構造を有し、
、L1a、L、L、およびL3aのそれぞれは独立して、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいヘテロアルキレン、または置換されていてもよいアリーレンを含み、
またはXのそれぞれは独立して、ディールス・アルダー環化付加生成物、ヒュスゲン環化付加生成物、チオール-エン反応生成物、マイケル付加生成物、または開環反応生成物を含む。
【0011】
一部の実施形態において、L、L1a、L、L、およびL3aのそれぞれは独立して、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいヘテロアルキレン、または置換されていてもよいアリーレンである。他の実施形態において、L、L1a、L、L、およびL3aのそれぞれは独立して、-Cy-、-Ak-Cy-、-Het-Cy-、-Cy-Ak-、-Cy-Het-、-Ak-Cy-Ak、-Het-Cy-Het-、-(Ar)-、-(Ak)-(O-Ak)-、または-(Ak-O)-(Ak)-であり、Cyは複素環または炭素環を含む二価リンカーであり、Akは置換されていてもよいアルキレンであり、Hetは置換されていてもよいヘテロアルキレンであり、Arは置換されていてもよいアリーレンであり、aは1~10の整数であり、bは0または1である。
【0012】
他の実施形態において、XまたはXのそれぞれは独立して、チオまたは複素環もしくは炭素環を含む二価リンカーを含む。特定の実施形態において、XまたはXのそれぞれは独立して、
【化1】
からなる群から選択される部分であり、Xは-C(R-、-NR-、-O-、または-S-であり、Xは=CR-または-N-であり、Xは-[C(Rc1-、-NR-、-O-、-S-、または-C(O)-O-であり、RはHまたは置換されていてもよいアルキルであり、c1は1~3の整数であり、前記部分は、シアノ、ヒドロキシル、ハロ、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシル、アルコキシ、オキソ、またはアルキルで置換されていてもよい。
【0013】
第2の態様において、本開示は、ハイブリッド電解質組成物(例えば本明細書に記載されるいずれか)を備える膜に関する。一部の実施形態において、前記膜の弾性率は約0.2GPa~約3GPaである。
【0014】
第3の態様において、本開示は、ハイブリッド電解質組成物(例えば本明細書に記載されるいずれか)を形成する方法であって、第1の反応基を含む第1のリンカーに結合しているバインダ成分とイオン伝導性無機材料とを有する混合物を用意する段階と、前記バインダ成分を連結剤と反応させてin situ架橋マトリックスを形成する段階とを備える、方法に関する。
【0015】
一部の実施形態において、方法は、前記ハイブリッド電解質組成物を膜として流延する段階と、任意選択で、約100℃~約190℃の温度に加熱することによって前記膜を修復する段階とをさらに備える。
【0016】
一部の実施形態において、前記連結剤は、前記第1の反応基と一緒に反応して前記マトリックス内で熱可逆結合を形成するように構成されている第2の反応基を含み、前記熱可逆結合は副生成物を生成しない。特定の実施形態において、前記第1の反応基と前記第2の反応基とは一緒に反応して、ディールス・アルダー環化付加生成物、ヒュスゲン環化付加生成物、チオール-エン反応生成物、マイケル付加生成物、または開環反応生成物を形成する。
【0017】
他の実施形態において、前記第1の反応基と前記第2の反応基とは、ジエンとジエノフィルとの組、1,3-双極子と親双極子との組、チオールと置換されていてもよいアルケンとの組、チオールと置換されていてもよいアルキンとの組、求核剤と歪みヘテロシクリル求電子剤との組、求核剤と置換されていてもよいα,β-不飽和カルボニル化合物との組、または求核剤と置換されていてもよい歪み環状化合物との組のうちの1つから選択される。さらに他の実施形態において、前記第1の反応基と前記第2の反応基とは、置換されていてもよい1,3-ブタジエン、置換されていてもよいアルケン、置換されていてもよいアルキン、置換されていてもよいα,β-不飽和アルデヒド、置換されていてもよい不飽和α,β-チオアルデヒド、置換されていてもよいα,β-不飽和ケトン、置換されていてもよいアジ化物、置換されていてもよいチオール、置換されていてもよい不飽和シクロアルキル、置換されていてもよい不飽和ヘテロシクリル、置換されていてもよいα,β-不飽和イミン、置換されていてもよいアルデヒド、置換されていてもよいイミン、置換されていてもよいニトロソ化合物、置換されていてもよいジアゼン、置換されていてもよいチオケトン、置換されていてもよいα,β-不飽和ケトン、置換されていてもよいα,β-不飽和アルデヒド、置換されていてもよいアニオン性求核剤、および置換されていてもよい歪みエポキシからなる群から選択される。
【0018】
バインダ成分は、任意の有用なバインダを提供することができ、任意の有用なモノマーを含むことができる。一部の実施形態において、前記バインダ成分は、前記第1の反応基を含む前記第1のリンカーに結合しているモノマーを含む。他の実施形態において、前記バインダ成分は-[R-(L-R1*)]-の構造を含み、Rは前記モノマーであり、Lは二価リンカーであり、R1*は前記第1の反応基であり、nは1~10である。
【0019】
他の実施形態において、前記モノマーは、置換されていてもよいスチレンモノマー、置換されていてもよいエチレンモノマー、置換されていてもよいプロピレンモノマー、置換されていてもよいブチレンモノマー、置換されていてもよいブタジエンモノマー、置換されていてもよいパーフルオロアルカンモノマー、置換されていてもよいパーフルオロエーテルモノマー、置換されていてもよいイソプレンモノマー、置換されていてもよいエチリデンノルボルネンモノマー、または置換されていてもよいジエンモノマーを含む。
【0020】
一部の実施形態において、前記バインダ成分は-[RM1n1-[RM2n2-[RM3-(L-R1*)]n3-[RM4n4-の構造を含み、RM1は第1のモノマーであり、RM2は第2のモノマーであり、RM3は第3のモノマーであり、RM4は第4のモノマーであり、Lは二価リンカーであり、R1*は前記第1の反応基であり、n1、n2、n3、およびn4のそれぞれは独立して0~10であり、n1、n2、n3、およびn4のうちの少なくとも1つは0ではない。特定の実施形態において、前記第1のモノマー、前記第2のモノマー、前記第3のモノマー、および前記第4のモノマーは、置換されていてもよいスチレンモノマー、置換されていてもよいエチレンモノマー、置換されていてもよいプロピレンモノマー、置換されていてもよいブチレンモノマー、置換されていてもよいブタジエンモノマー、置換されていてもよいパーフルオロアルカンモノマー、置換されていてもよいパーフルオロエーテルモノマー、置換されていてもよいイソプレンモノマー、置換されていてもよいエチリデンノルボルネンモノマー、または置換されていてもよいジエンモノマーを含む。
【0021】
他の実施形態において、前記バインダ成分は、前記第1の反応基を含む前記第1のリンカーに結合している無機ケージを含む。特定の実施形態において、前記バインダ成分はR-(L-R1*の構造を有し、Rは前記無機ケージであり、Lは二価リンカーであり、R1*は前記第1の反応基であり、nは8、10、または12である。一部の実施形態において、Rは(SiO1.5である。
【0022】
本明細書のいずれかの実施形態において(例えばバインダ成分において)、少なくとも1つのL(二価リンカー)は独立して、-Cy-、-Ak-Cy-、-Het-Cy-、-Cy-Ak-、-Cy-Het-、-Ak-Cy-Ak、-Het-Cy-Het-、-(Ar)-、-(Ak)-(O-Ak)-、または-(Ak-O)-(Ak)-であり、Cyは複素環または炭素環を含む二価リンカーであり、Akは置換されていてもよいアルキレンであり、Hetは置換されていてもよいヘテロアルキレンであり、Arは置換されていてもよいアリーレンであり、aは1~10の整数であり、bは0または1である。
【0023】
本明細書のいずれかの実施形態において、R1*(例えばバインダ成分における第1の反応基)は、置換されていてもよいジエン、置換されていてもよい不飽和ヘテロシクリル、置換されていてもよいα,β-不飽和アルデヒド、置換されていてもよいα,β-不飽和チオアルデヒド、置換されていてもよいα,β-不飽和イミン、置換されていてもよいアジ化物、または置換されていてもよいチオールから選択される。
【0024】
任意の有用な連結剤を、in situ架橋マトリックスを形成するために使用することができる。一部の実施形態において、前記連結剤は第3の反応基をさらに含み、前記第1の反応基および前記第2の反応基のうちの少なくとも一方は一緒に反応してマトリックス内で熱可逆結合を形成し、別の第1の反応基と前記第3の反応基とは一緒に反応して別の熱可逆結合を形成する。特定の実施形態において、前記第2の反応基と前記第3の反応基とは同じである。
【0025】
一部の実施形態において、前記連結剤はR2*-L-R3*の構造を有し、R2*は前記第2の反応基であり、Lは二価リンカーであり、R3*は前記第3の反応基である。特定の実施形態において、R2*およびR3*のそれぞれは、置換されていてもよいアルケン、置換されていてもよいアルキン、置換されていてもよい不飽和シクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいイミン、置換されていてもよいニトロソ化合物、置換されていてもよいアゾ化合物、置換されていてもよいチオケトン、置換されていてもよいチオリン酸、および置換されていてもよいチオンオキシド化合物からなる群から独立して選択される。
【0026】
本明細書のいずれかの実施形態において(例えば連結剤において)、Lは独立して、-Cy-、-Ak-Cy-、-Het-Cy-、-Cy-Ak-、-Cy-Het-、-Ak-Cy-Ak、-Het-Cy-Het-、-(Ar)-、-(Ak)-(O-Ak)-、または-(Ak-O)-(Ak)-であり、Cyは複素環または炭素環を含む二価リンカーであり、Akは置換されていてもよいアルキレンであり、Hetは置換されていてもよいヘテロアルキレンであり、Arは置換されていてもよいアリーレンであり、aは1~10の整数であり、bは0または1である。
【0027】
本明細書のいずれかの実施形態において、前記熱可逆結合は、ディールス・アルダー環化付加反応、ヒュスゲン環化付加反応、チオール-エン反応、マイケル付加反応、開環反応、またはクリックケミストリー反応によって形成される。特定の実施形態において、前記熱可逆結合は、ディールス・アルダー環化付加生成物、ヒュスゲン環化付加生成物、チオール-エン反応生成物、マイケル付加生成物、または開環反応生成物を含む。他の実施形態において、前記熱可逆結合は、チオ、置換されていてもよいヘテロシクリル、または置換されていてもよいシクロアルキルを含む。さらに他の実施形態において、前記熱可逆結合は、
【化2】
からなる群から選択される部分を含み、Xは-C(R-、-NR-、-O-、または-S-であり、Xは=CR-または-N-であり、Xは-[C(Rc1-、-NR-、-O-、-S-、または-C(O)-O-であり、RはHまたは置換されていてもよいアルキルであり、c1は1~3の整数であり、前記部分は、シアノ、ヒドロキシル、ハロ、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシル、アルコキシ、オキソ、またはアルキルで置換されていてもよい。
【0028】
第4の態様において、本開示は、本明細書に記載される任意の組成物または任意の膜を備える電池を含む。
【0029】
第5の態様において、本開示は、本明細書に記載される任意の組成物または任意の膜を備える電極を含む。
【0030】
第6の態様において、本開示は、in situ架橋マトリックスと、電気化学的活物質と、イオン伝導性粒子とを備える電極を含む。ある実施形態において、電極は任意選択で炭素添加剤を備える。特定の実施形態において、炭素添加剤は、電子伝導炭素系添加剤(例えば、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、炭素繊維、カーボンブラック、または本明細書に記載されるいずれか)である。他の実施形態において、電極はアノードまたはカソードである。さらに他の実施形態において、炭素添加剤は、アノード、カソード、またはその両方に提供される。
【0031】
一部の実施形態において、前記in situ架橋マトリックスはバインダと複数の架橋剤とを有し、前記架橋剤は前記マトリックス内で熱可逆結合を形成し、前記熱可逆結合は副生成物を生成しない。
【0032】
第7の態様において、本開示は、イオン伝導性無機材料と第1のin situ架橋マトリックスとを有するセパレータと、電極とを備える組成物を含む。一部の実施形態において、前記電極は第2のin situ架橋マトリックスを有し、前記第1のマトリックスおよび前記第2のマトリックスはバインダと複数の架橋剤とを含み、前記架橋剤は前記マトリックス間で熱可逆結合を形成し、前記熱可逆結合は副生成物を生成しない。
【0033】
第8の態様において、本開示は、電極とセパレータ組成物とを用意する段階と、電極およびセパレータ組成物のバインダ成分を連結剤と反応させて、電極とセパレータ組成物との間でin situ架橋マトリックスを形成する段階とを備える方法を含む。一部の実施形態において、前記電極と前記セパレータ組成物とはそれぞれ、第1の反応基を含む第1のリンカーに結合しているバインダ成分を有する。他の実施形態において、前記連結剤は、前記第1の反応基と一緒に反応して前記マトリックス内で熱可逆結合を形成するように構成されている第2の反応基を含み、前記熱可逆結合は副生成物を生成しない。さらなる詳細は次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】化合物(I-1)~(I-8)を含む架橋剤の非限定的な例を提供する概略図を示す。そのような化合物は、チオール-エン重合に使用されるチオールおよびアルケン/アルキンであり得る。
【0035】
図2A】ディールス・アルダー反応を受けることができる化合物(II-1)~(II-10)を含む全炭素ジエンの非限定的な例を提供する概略図を示す。
図2B】ディールス・アルダー反応を受けることができる化合物(II-11)~(II-14)を含むヘテロ原子ジエンの非限定的な例を提供する概略図を示す。
【0036】
図3A】ディールス・アルダー反応を受けることができる化合物(III-1)~(III-11)を含む全炭素ジエノフィルの非限定的な例を提供する概略図を示す。
図3B】ディールス・アルダー反応を受けることができる化合物(III-12)~(III-19)を含むヘテロ原子ジエノフィルの非限定的な例を提供する概略図を示す。
【0037】
図4A】ジエン/ジエノフィルをポリマー骨格の末端基として有するポリマーの非限定的な例を提供する概略図を示す。
図4B】ジエン/ジエノフィルをポリマー骨格の主鎖に有するポリマーの非限定的な例を提供する概略図を示す。
図4C】ジエン/ジエノフィルをポリマー骨格から延びる鎖グラフトに有し、ジエン/ジエノフィルが重合中に直接組み込まれ得るポリマーの非限定的な例を提供する概略図を示す。
図4D】反応基を修飾するジエン/ジエノフィルを含むように後官能基化(post-functionalize)することができるポリマーの非限定的な例を提供する概略図を示す。
【0038】
図5】化合物(V-1)~(V-7)を含むモノマーおよび架橋剤の非限定的な例を提供する概略図を示す。
【0039】
図6】ポリスチレン-b-ポリ(エチレン-ran-ブチレン)-b-ポリスチレン-g-無水マレイン酸(SEBS-gMA)の熱重量分析(TGA)を示すグラフである。
【0040】
図7】SEBS-gMAおよびフルフリル修飾SEBS(SEBS-gFA)のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)スペクトルを示すグラフである。
【0041】
図8】700MHz装置においてCDCl中で行ったSEBS-gMA(黒色)およびSEBS-gFA(灰色)のプロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトルを示すグラフである。
【0042】
図9】0.05in/分(1.27mm/分)の速度で試験した、SEBS膜(黒色の太線)、SEBS-gMA膜(黒色の細線)、SEBS-gFA膜(破線)、およびSEBS-gFA+0.5BMI膜(灰色の線)の応力-歪み曲線を示すグラフである。
【0043】
図10】0.05in/分(1.27mm/分)の速度で試験した、75:25=LiS:P導体と、20wt%のSEBS(灰色の線)、SEBS-gMA(破線)、SEBS-gFA(黒色の太線)、およびBMI架橋SEBS-gFA(黒色の細線)バインダとを用いて調製した非限定的なハイブリッド電解質組成物の応力-歪み解析を示すグラフである。
【0044】
図11A】本発明のある特定の実施形態に記載の非限定的なセルの概略図を示す。集電体102と電解質/セパレータ106との間に配置されたアノード104を備えるセルが提供される。
図11B】本発明のある特定の実施形態に記載の非限定的なセルの概略図を示す。電解質/セパレータ106に隣接する集電体102を備えるセルが提供される。
図11C】本発明のある特定の実施形態に記載の非限定的なセルの概略図を示す。集電体102と電解質/カソード二重層112との間に配置されたアノード104を備えるセルが提供される。
【0045】
図12】架橋膜1206を提供する架橋成分の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の一態様は、有機材料のマトリックス中にイオン伝導性無機粒子を備えるイオン伝導性固体状組成物に関する。結果として得られる複合材料は、高いイオン伝導性と、処理を容易にする機械的特性とを有する。特定の実施形態において、イオン伝導性固体状組成物は、柔軟であり、膜として流延され得る。
【0047】
本発明の別の態様は、本明細書に記載されるイオン伝導性固体状組成物を備える電池に関する。本発明の一部の実施形態において、イオン伝導性固体状組成物を有する固体状電解質が提供される。本発明の一部の実施形態において、イオン伝導性固体状組成物を有する電極が提供される。
【0048】
本明細書に記載される主題の特定の実施形態は以下の利点を有し得る。一部の実施形態において、イオン伝導性固体状組成物は、容易にスケールアップされる製造技法を用いて、様々な形状に加工され得る。製造される複合材は柔軟であり、電池または他のデバイスの他の構成要素への良好な接着を可能にする。固体状組成物は高いイオン伝導性を有し、組成物を電解質または電極材料として使用することを可能にする。一部の実施形態において、イオン伝導性固体状組成物は、デンドライトを抑制することによってリチウム金属アノードの使用を可能にする。一部の実施形態において、イオン伝導性固体状組成物は、多硫化物を溶解せず、硫黄カソードの使用を可能にする。
【0049】
本発明の実施形態に記載のイオン伝導性固体状組成物、固体状電解質、電極、および電池のさらなる詳細を以下に記載する。
【0050】
イオン伝導性固体状組成物は、本明細書においてハイブリッド組成物と称される場合がある。「ハイブリッド」という用語は、本明細書において、無機相と有機相とを含む複合材料を記述するために使用される。「複合材」という用語は、本明細書において、無機材料と有機材料との複合材を記述するために使用される。
【0051】
一部の実施形態において、複合材料は、無機粒子と混合された後にin situで重合される前駆体から形成される。重合は、粒子間接触を引き起こす加圧下で行われ得る。重合したら、粒子がポリマーマトリックスによって固定されたまま、加圧を除去することができる。一部の実装形態において、有機材料は架橋ポリマーネットワークを含む。このネットワークは、無機粒子を拘束することができ、複合材を組み込む電池または他のデバイスの作動中に無機粒子が移動するのを防止する。
【0052】
一部の実施形態において、重合は、外圧の印加を伴わずに粒子間接触を引き起こし得る。例えば、架橋を含むある特定の重合反応は、粒子間接触と高い導電性とが重合中の加圧を伴わずに達成されるほど十分な収縮を生じ得る。
【0053】
ポリマー前駆体およびポリマーマトリックスは、固体状イオン伝導性粒子と適合性で、不揮発性であり、電極などの電池構成要素に対して非反応性である。ポリマー前駆体およびポリマーマトリックスは、非極性であるかまたは低極性を有することをさらに特徴とし得る。ポリマー前駆体およびポリマーマトリックスは、成分が、少なくとも無機相のバルクの組成に影響を与えることなく均一かつ微視的に十分に混合するように、無機相と相互作用し得る。相互作用には、物理的相互作用または化学的相互作用のうちの一方または両方が含まれ得る。物理的相互作用の例としては、水素結合、ファンデルワールス結合、静電相互作用、およびイオン結合が挙げられる。化学的相互作用は共有結合を指す。無機相に対して全般に非反応性であるポリマーマトリックスは、それにもかかわらず粒子の表面との結合を形成し得るが、無機相のバルク組成を分解することも変化させることもない。一部の実施形態において、ポリマーマトリックスは無機相と機械的に相互作用し得る。
【0054】
固体状組成物の特定の成分(例えば、高分子量ポリマーバインダ)に関連する「数平均分子量」または「M」という用語は、g/molの単位で表される、成分の全ての分子の統計平均分子量を指す。数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(ここで、Mは、屈折率、紫外線、もしくは他の検出器などのオンライン検出システムに基づく公知の基準に基づいて算出することができる)、粘度測定、質量分析、または束一的方法(例えば、蒸気圧浸透圧法、末端基決定、もしくはプロトンNMR)などの当技術分野で公知の技法によって決定され得る。数平均分子量は、式
【数1】
(式中、Mはある分子の分子量であり、Nはその分子量の分子の数である)によって定義される。
【0055】
固体状組成物の特定の成分(例えば、高分子量ポリマーバインダ)に関連する「重量平均分子量」または「M」という用語は、分子量平均への寄与率の決定において各分子の重量を考慮に入れた、g/molの単位で表される、成分の全ての分子の統計平均分子量を指す。所与の分子の分子量が大きいほど、その分子はM値に寄与するようになる。重量平均分子量は、例えば、静的光散乱法、中性子小角散乱法、X線散乱法、および沈降速度法などの、分子サイズに対して高感度の当技術分野で公知の技法によって算出され得る。重量平均分子量は、式
【数2】
(式中、Mはある分子の分子量であり、Nはその分子量の分子の数である)によって定義される。以下の記載において、特定のポリマーの分子量への言及は、数平均分子量を指す。
【0056】
「アルコキシ」とは、-OR(式中、Rは本明細書に記載される置換されていてもよいアルキル基である)を意味する。例示的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、トリフルオロメトキシなどのトリハロアルコキシなどが挙げられる。アルコキシ基は置換または非置換であり得る。例えば、アルコキシ基は、本明細書でアルキルに関連して記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。例示的な非置換アルコキシ基としては、C1~3、C1~6、C1~12、C1~16、C1~18、C1~20、またはC1~24アルコキシ基が挙げられる。
【0057】
「アルキル」という用語は、本明細書で単独でまたは別の基の一部として使用する場合、任意の数の炭素原子を含有し、主鎖に二重結合も三重結合も含まない直鎖または分岐鎖炭化水素を指す。「低級アルキル」とは、本明細書で使用する場合、アルキルのサブセットであり、1~6個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖炭化水素基を指す。「アルキル」および「低級アルキル」という用語には、別段の指示がない限り、置換および非置換の両方のアルキルまたは低級アルキルが含まれる。低級アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチルなどが挙げられる。
【0058】
アルキル基はまた、置換または非置換であり得る。例えば、アルキル基は、(1)C1~6アルコキシ(例えば、-O-Ak(式中、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(2)C1~6アルキルスルフィニル(例えば、-S(O)-Ak(式中、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(3)C1~6アルキルスルホニル(例えば、-SO-Ak(式中、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(4)アミノ(例えば、-NRN1N2(式中、RN1およびRN2のそれぞれは独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであるか、またはRN1およびRN2は、それぞれが結合する窒素原子と一緒になって、ヘテロシクリル基を形成する))、(5)アリール、(6)アリールアルコキシ(例えば、-O-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキルの二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))、(7)アリーロイル(例えば、-C(O)-Ar(式中、Arは置換されていてもよいアリールである))、(8)アジド(例えば、-N)、(9)シアノ(例えば、-CN)、(10)カルボキシアルデヒド(例えば、-C(O)H)、(11)C3~8シクロアルキル(例えば、一価飽和または不飽和非芳香族環状C3~8炭化水素基)、(12)ハロ(例えば、F、Cl、Br、またはI)、(13)ヘテロシクリル(例えば、別段の指定がない限り、1、2、3、または4個の非炭素ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、リン、硫黄、またはハロを含有する5、6、または7員環)、(14)ヘテロシクリルオキシ(例えば、-O-Het(式中、Hetは本明細書に記載されるヘテロシクリルである))、(15)ヘテロシクリルオイル(例えば、-C(O)-Het(式中、Hetは本明細書に記載されるヘテロシクリルである))、(16)ヒドロキシル(例えば、-OH)、(17)N-保護アミノ、(18)ニトロ(例えば、-NO)、(19)オキソ(例えば、=O)、(20)C3~8スピロシクリル(例えば、両末端が親基の同じ炭素原子に結合しているアルキレンまたはヘテロアルキレンジラジカル)、(21)C1~6チオアルコキシ(例えば、-S-Ak(式中、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(22)チオール(例えば、-SH)、(23)-CO(式中、Rは、(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)(C4~18アリール)C1~6アルキル(例えば、-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキル基の二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))からなる群から選択される)、(24)-C(O)NR(式中、RおよびRのそれぞれは、(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)(C4~18アリール)C1~6アルキル(例えば、-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキル基の二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))からなる群から独立して選択される)、(25)-SO(式中、Rは、(a)C1~6アルキル、(b)C4~18アリール、および(c)(C4~18アリール)C1~6アルキル(例えば、-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキル基の二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))からなる群から選択される)、(26)-SONR(式中、RおよびRのそれぞれは、(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)(C4~18アリール)C1~6アルキル(例えば、-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキル基の二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))からなる群から独立して選択される)、ならびに(27)-NR(式中、RおよびRのそれぞれは、(a)水素、(b)N-保護基、(c)C1~6アルキル、(d)C2~6アルケニル(例えば、1つまたは複数の二重結合を有する置換されていてもよいアルキル)、(e)C2~6アルキニル(例えば、1つまたは複数の三重結合を有する置換されていてもよいアルキル)、(f)C4~18アリール、(g)(C4~18アリール)C1~6アルキル(例えば、L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキル基の二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))、(h)C3~8シクロアルキル、および(i)(C3~8シクロアルキル)C1~6アルキル(例えば、-L-Cy(式中、Lは置換されていてもよいアルキル基の二価形態であり、Cyは本明細書に記載される置換されていてもよいシクロアルキルである))からなる群から独立して選択され、一実施形態において、2つの基は、カルボニル基またはスルホニル基を介して窒素原子に結合しない)からなる群から独立して選択される1、2、3つ、または2個以上の炭素のアルキル基の場合は4つの置換基で置換され得る。アルキル基は、1つまたは複数の置換基(例えば、1つまたは複数のハロまたはアルコキシ)で置換されている第一級、第二級、または第三級アルキル基であり得る。一部の実施形態において、非置換アルキル基は、C1~3、C1~6、C1~12、C1~16、C1~18、C1~20、またはC1~24アルキル基である。
【0059】
「アルキレン」とは、本明細書に記載されるアルキル基の多価(例えば二価)形態を意味する。例示的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。一部の実施形態において、アルキレン基は、C1~3、C1~6、C1~12、C1~16、C1~18、C1~20、C1~24、C2~3、C2~6、C2~12、C2~16、C2~18、C2~20、またはC2~24アルキレン基である。アルキレン基は分岐または非分岐であり得る。アルキレン基はまた、置換または非置換であり得る。例えば、アルキレン基は、本明細書でアルキルに関連して記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。
【0060】
「アリール」という用語は、本明細書で使用する場合、単環式および二環式芳香族基を含む基を指す。例としては、(例えば、本明細書で定義される)縮合ベンゾC4~8シクロアルキルラジカル、例えば、インダニル、テトラヒドロナフチル、フルオレニルなどを含む、フェニル、ベンジル、アントラセニル、アントリル、ベンゾシクロブテニル、ベンゾシクロオクテニル、ビフェニリル、クリセニル、ジヒドロインデニル、フルオランテニル、インダセニル、インデニル、ナフチル、フェナントリル、フェノキシベンジル、ピセニル、ピレニル、テルフェニルなどが挙げられる。アリールという用語には、少なくとも1個のヘテロ原子が芳香族基の環に組み込まれている芳香族基を含有する基として定義されるヘテロアリールも含まれる。ヘテロ原子の例としては、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられる。同様に、非ヘテロアリールという用語(これもまたアリールという用語に含まれる)は、ヘテロ原子を含有しない芳香族基を含有する基を定義する。アリール基は置換または非置換であり得る。アリール基は、(1)C1~6アルカノイル(例えば、-C(O)-Ak(式中、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(2)C1~6アルキル、(3)C1~6アルコキシ(例えば、-O-Ak(式中、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(4)C1~6アルコキシ-C1~6アルキル(例えば、-L-O-Ak(式中、Lは置換されていてもよいアルキル基の二価形態であり、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(5)C1~6アルキルスルフィニル(例えば、-S(O)-Ak(式中、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(6)C1~6アルキルスルフィニル-C1~6アルキル(例えば、-L-S(O)-Ak(式中、Lは置換されていてもよいアルキル基の二価形態であり、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(7)C1~6アルキルスルホニル(例えば、-SO-Ak(式中、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(8)C1~6アルキルスルホニル-C1~6アルキル(例えば、-L-SO-Ak(式中、Lは置換されていてもよいアルキル基の二価形態であり、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(9)アリール、(10)アミノ(例えば、-NRN1N2(式中、RN1およびRN2のそれぞれは独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであるか、またはRN1およびRN2は、それぞれが結合する窒素原子と一緒になって、ヘテロシクリル基を形成する))、(11)C1~6アミノアルキル(例えば、本明細書に記載される1つまたは複数の-NRN1N2基によって置換される、本明細書で定義されるアルキル基)、(12)ヘテロアリール(例えば、芳香族であるヘテロシクリル基(例えば、別段の指定がない限り、1、2、3、または4個の非炭素ヘテロ原子を含有する5、6、または7員環)のサブセット)、(13)(C4~18アリール)C1~6アルキル(例えば、-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキルの二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))、(14)アリーロイル(例えば、-C(O)-Ar(式中、Arは置換されていてもよいアリールである))、(15)アジド(例えば、Nまたは-N=N-)、(16)シアノ(例えば、-CN)、(17)C1~6アジドアルキル(例えば、本明細書に記載される1つまたは複数のアジド基によって置換される、本明細書で定義されるアルキル基)、(18)カルボキシアルデヒド(例えば、-C(O)H)、(19)カルボキシアルデヒド-C1~6アルキル(例えば、本明細書に記載される1つまたは複数のカルボキシアルデヒド基によって置換される、本明細書で定義されるアルキル基)、(20)C3~8シクロアルキル(例えば、一価飽和または不飽和非芳香族環状C3~8炭化水素基)、(21)(C3~8シクロアルキル)C1~6アルキル(例えば、本明細書に記載される1つまたは複数のシクロアルキル基によって置換される、本明細書で定義されるアルキル基)、(22)ハロ(例えば、F、Cl、Br、またはI)、(23)C1~6ハロアルキル(例えば、本明細書に記載される1つまたは複数のハロ基によって置換される、本明細書で定義されるアルキル基)、(24)ヘテロシクリル(例えば、別段の指定がない限り、1、2、3、または4個の非炭素ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、リン、硫黄、またはハロを含有する5、6、または7員環)、(25)ヘテロシクリルオキシ(例えば、-O-Het(式中、Hetは本明細書に記載されるヘテロシクリルである))、(26)ヘテロシクリルオイル(例えば、-C(O)-Het(式中、Hetは本明細書に記載されるヘテロシクリルである))、(27)ヒドロキシル(例えば、-OH)、(28)C1~6ヒドロキシアルキル(例えば、本明細書に記載される1つまたは複数のヒドロキシルによって置換される、本明細書で定義されるアルキル基)、(29)ニトロ(例えば、-NO)、(30)C1~6ニトロアルキル(例えば、本明細書に記載される1つまたは複数のニトロによって置換される、本明細書で定義されるアルキル基)、(31)N-保護アミノ、(32)N-保護アミノ-C1~6アルキル(例えば、1つまたは複数のN-保護アミノ基によって置換される、本明細書で定義されるアルキル基)、(33)オキソ(例えば、=O)、(34)C1~6チオアルコキシ(例えば、-S-Ak(式中、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(35)チオ-C1~6アルコキシ-C1~6アルキル(例えば、-L-S-Ak(式中、Lは置換されていてもよいアルキルの二価形態であり、Akは置換されていてもよいC1~6アルキルである))、(36)-(CHCO(式中、rは0~4の整数であり、Rは、(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)(C4~18アリール)C1~6アルキル(例えば、-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキルの二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))からなる群から選択される)、(37)-(CHCONR(式中、rは0~4の整数であり、各RおよびRは、(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)(C4~18アリール)C1~6アルキル(例えば、-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキルの二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))からなる群から独立して選択される)、(38)-(CHSO(式中、rは0~4の整数であり、Rは、(a)C1~6アルキル、(b)C4~18アリール、および(c)(C4~18アリール)C1~6アルキル(例えば、-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキルの二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))からなる群から選択される)、(39)-(CHSONR(式中、rは0~4の整数であり、RおよびRのそれぞれは、(a)水素、(b)C1~6アルキル、(c)C4~18アリール、および(d)(C4~18アリール)C1~6アルキル(例えば、-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキルの二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))からなる群から独立して選択される)、(40)-(CHNR(式中、rは0~4の整数であり、RおよびRのそれぞれは、(a)水素、(b)N-保護基、(c)C1~6アルキル、(d)C2~6アルケニル(例えば、1つまたは複数の二重結合を有する置換されていてもよいアルキル)、(e)C2~6アルキニル(例えば、1つまたは複数の三重結合を有する置換されていてもよいアルキル)、(f)C4~18アリール、(g)(C4~18アリール)C1~6アルキル(例えば、-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキルの二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))、(h)C3~8シクロアルキル、および(i)(C3~8シクロアルキル)C1~6アルキル(例えば、-L-Cy(式中、Lは置換されていてもよいアルキルの二価形態であり、Cyは本明細書に記載される置換されていてもよいシクロアルキルである))からなる群から独立して選択され、一実施形態において、2つの基は、カルボニル基またはスルホニル基を介して窒素原子に結合しない)、(41)チオール(例えば、-SH)、(42)パーフルオロアルキル(例えば、各水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル基)、(43)パーフルオロアルコキシ(例えば、-OR(式中、Rは、各水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル基である))、(44)アリールオキシ(例えば、-OAr(式中、Arは置換されていてもよいアリールである))、(45)シクロアルコキシ(例えば、-O-Cy(式中、Cyは本明細書に記載される置換されていてもよいシクロアルキルである))、(46)シクロアルキルアルコキシ(例えば、-O-L-Cy(式中、Lは置換されていてもよいアルキルの二価形態であり、Cyは本明細書に記載される置換されていてもよいシクロアルキルである))、ならびに(47)アリールアルコキシ(例えば、-O-L-Ar(式中、Lは置換されていてもよいアルキルの二価形態であり、Arは置換されていてもよいアリールである))からなる群から独立して選択される1、2、3、4、または5つの置換基で置換され得る。特定の実施形態において、非置換アリール基は、C4~18、C4~14、C4~12、C4~10、C6~18、C6~14、C6~12、またはC6~10アリール基である。
【0061】
「アリーレン」とは、本明細書に記載されるアリール基の多価(例えば二価)形態を意味する。例示的なアリーレン基としては、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、トリフェニレン、ジフェニルエーテル、アセナフテニレン、アントリレン、またはフェナントリレンが挙げられる。一部の実施形態において、アリーレン基は、C4~18、C4~14、C4~12、C4~10、C6~18、C6~14、C6~12、またはC6~10アリーレン基である。アリーレン基は分岐または非分岐であり得る。アリーレン基はまた、置換または非置換であり得る。例えば、アリーレン基は、本明細書でアリールに関連して記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。
【0062】
「炭素環」とは、環員の全てが炭素原子である環状化合物を意味する。炭素環は置換または非置換であり得る。例示的な置換としては、シアノ、ヒドロキシル、ハロ、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシル、アルコキシ、オキソ、またはアルキルが挙げられる。非限定的な炭素環としては、シクロヘキセン、ノルボルネン、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)、ヒドロアントラキノン(例えば、1,4,4a,5,8,8a,9a,10a-オクタヒドロアントラセン-9,10-ジオン)、および架橋多環構造(例えば、テトラシクロ[6.6.1.02,7.09,14]ペンタデカ-4,11-ジエン)が挙げられる。
【0063】
「カルボキシアルデヒド」とは、-C(O)H基を意味する。
【0064】
「カルボキシル」とは、-COH基を意味する。
【0065】
「シアノ」とは、-CN基を意味する。
【0066】
「シクロアルキル」とは、別段の指定がない限り、3~10個の炭素(例えば、C3~8またはC3~10)の一価飽和または不飽和非芳香族環状炭化水素基を意味し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロ[2.2.1.]ヘプチルなどによって例示される。シクロアルキルという用語には、3~10個の炭素原子から構成され、少なくとも1つの二重結合、すなわちC=Cを含有する非芳香族炭素系環として定義される「シクロアルケニル」も含まれる。シクロアルケニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニルなどが挙げられる。シクロアルキル基はまた、置換または非置換であり得る。例えば、シクロアルキル基は、本明細書でアルキルに関連して記載されるものを含む1つまたは複数の基で置換され得る。
【0067】
「ハロ」とは、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0068】
「ヘテロアルキレン」とは、1、2、3、または4個の非炭素ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、硫黄、セレン、またはハロからなる群から独立して選択される)を含有する、本明細書で定義されるアルキレン基の二価形態を意味する。ヘテロアルキレン基は置換または非置換であり得る。例えば、ヘテロアルキレン基は、本明細書でアルキルに関連して記載される1つまたは複数の置換基で置換され得る。
【0069】
「複素環」とは、1つまたは複数のヘテロシクリル部分を有する化合物を意味する。複素環は置換または非置換であり得る。例示的な置換としては、シアノ、ヒドロキシル、ハロ、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシル、アルコキシ、オキソ、またはアルキルが挙げられる。非限定的な複素環としては、テトラヒドロピリジン(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロピリジン、1,2,3,6-テトラヒドロピリジン、もしくは2,3,4,5-テトラヒドロピリジン)、テトラヒドロピラジン(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロピラジン)、テトラヒドロピリミジン(例えば、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン)、ジヒドロピラン(例えば、3,4-ジヒドロ-2H-ピランもしくは3,6-ジヒドロ-2H-ピラン)、ジヒドロチオピラン(例えば、3,4-ジヒドロ-2H-チオピランもしくは3,6-ジヒドロ-2H-チオピラン)、ジヒドロオキサジン(例えば、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジンもしくは3,4-ジヒドロ-2H-1,4-オキサジン)、ジヒドロチアジン(例えば、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジンもしくは5,6-ジヒドロ-4H-1,4-チアジン)、ヘテロビシクロヘプテン(例えば、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン)、架橋イソインドール無水物(例えば、3a,4,7,7a-テトラヒドロ-4,7-エポキシイソインドール-1,3-ジオン)、架橋ベンゾフラン無水物(例えば、3a,4,7,7a-テトラヒドロ-4,7-エポキシイソベンゾフラン-1,3-ジオン)、テトラヒドロ無水フタル酸(例えば、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸)、ヘテロノルボルネン(例えば、7-チアノルボルネンもしくは7-アザノルボルネン)、環状無水物(例えば、別段の指定がない限り、環に-C(O)-O-C(O)-基を有する3、4、5、6、もしくは7員環(例えば、5、6、もしくは7員環))、または環状イミド(例えば、別段の指定がない限り、環に-C(O)-NRN1-C(O)-基(式中、RN1は、H、置換されていてもよいアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールである)を有する3、4、5、6、もしくは7員環(例えば、5、6、もしくは7員環))が挙げられる。例示的な環状無水物基としては、1つまたは複数の水素を除去することによって、無水コハク酸、グルタル酸無水物、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソクロマン-1,3-ジオン、オキセパンジオン、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ピロメリット酸二無水物、ナフタル酸無水物、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物などから形成されるラジカルが挙げられる。他の例示的な環状無水物基としては、ジオキソテトラヒドロフラニル、ジオキソジヒドロイソベンゾフラニルなどが挙げられる。例示的な環状イミド基としては、1つまたは複数の水素を除去することによって、スクシンイミド(succinimide)、グルタルイミド、マレイミド、フタルイミド(phthalimide)、テトラヒドロフタルイミド、ヘキサヒドロフタルイミド、ピロメリット酸ジイミド、ナフタルイミドなどから形成されるラジカルが挙げられる。他の例示的な環状イミド基としては、スクシンイミド(succinimido)、フタルイミド(phthalimido)などが挙げられる。
【0070】
「ヘテロシクリル」とは、別段の指定がない限り、1、2、3、または4個の非炭素ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、硫黄、セレン、またはハロからなる群から独立して選択される)を含有する3、4、5、6、または7員環(例えば、5、6、または7員環)を意味する。3員環は0~1つの二重結合を有し、4および5員環は0~2つの二重結合を有し、6および7員環は0~3つの二重結合を有する。「ヘテロシクリル」という用語には、上記複素環式環のいずれかが1、2、または3つの環に縮合した二環式、三環式、および四環式基も含まれる。
【0071】
「ヒドロキシル」とは、-OHを意味する。
【0072】
「ニトロ」とは、-NO基を意味する。
【0073】
「オキソ」とは、=O基を意味する。
【0074】
「チオ」とは、-S-基を意味する。
(有機相)
【0075】
有機マトリックスは、1つまたは複数の種類のポリマーを含有し、ポリマーマトリックスまたはポリマーバインダと称される場合もある。一部の実施形態において、有機マトリックスは、ポリマー鎖間に意味のある架橋もいかなる架橋も有しない個々のポリマー鎖を含有し得る。一部の実施形態において、有機マトリックスは、ポリマー鎖を接続するノードを特徴とするポリマーネットワークであり得るか、またはそれを含み得る。これらのノードは重合中の架橋によって形成され得る。有機マトリックスは、無機イオン伝導性粒子を有する混合物におけるin situでの前駆体の重合によって形成される。有機マトリックスのポリマーは、骨格と1つまたは複数の官能基とによって特徴付けられ得る。
【0076】
有機マトリックスポリマーは不揮発性のポリマー骨格を有する。ポリマーバインダは、高分子量ポリマーであるか、または異なる高分子量ポリマーの混合物である。高分子量とは、少なくとも30kg/molの分子量を指し、少なくとも50kg/mol、または少なくとも100kg/molであり得る。分子量分布は、単峰性、二峰性、および/または多峰性であり得る。
【0077】
ポリマーまたはポリマーバインダは、官能基化され得る骨格を有する。一部の実施形態において、ポリマー骨格は比較的非極性である。例としては、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴムなどのコポリマー(ブロック、グラジエント、ランダムなど)、ならびにポリブタジエン(PBD)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリスチレン(PS)などのホモポリマーが挙げられる。一部の実施形態において、ポリマーは比較的極性であり、例としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー、酸化ポリエチレンが挙げられる。追加の例としては、PVDF、ポリテトラフルオロエチレン、およびパーフルオロポリエーテル(PFPE)などのフッ素化ポリマー、ならびにポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーンが挙げられる。
【0078】
ポリマーは、任意の有用なモノマーまたはモノマーの組合せから形成することができる。一部の実施形態において、モノマーは、置換されていてもよいスチレンモノマー、置換されていてもよいエチレンモノマー、置換されていてもよいプロピレンモノマー、置換されていてもよいブチレンモノマー、置換されていてもよいブタジエンモノマー、置換されていてもよいパーフルオロアルカンモノマー、置換されていてもよいパーフルオロエーテルモノマー、置換されていてもよいイソプレンモノマー、置換されていてもよいエチリデンノルボルネンモノマー、または置換されていてもよいジエンモノマーであり得る。
【0079】
バインダがコポリマーである実施形態において、構成ポリマーは、バインダがブロックコポリマー、ランダムコポリマー、統計コポリマー、グラフトコポリマーなどとなることができるような任意の適切な方式で分布し得る。ポリマー骨格は線状、または例として分岐、星型、櫛型、およびボトルブラシ型ポリマーが挙げられる非線状であり得る。さらに、コポリマーの構成ポリマー間の移行部は、急激であり得るか、テーパ状であり得るか、またはランダムであり得る。
【0080】
比較的多い量(例えば、固体複合材の2.5~60wt%)の有機マトリックスの存在は、望ましい機械的特性を有する複合材料を実現し得る。様々な実施形態においては、複合材は軟らかく、様々な形状に加工することができる。加えて、有機マトリックスは、複合材の空隙を充填し、高密度な材料をもたらすこともできる。
【0081】
有機マトリックスはまた、以下に記載されるin situ重合反応において重合の形成を可能にする官能基を含有し得る。末端基の例としては、シアノ、チオール、アミド、アミノ、スルホン酸、エポキシ、カルボキシル、またはヒドロキシル基が挙げられる。末端基はまた、無機相の粒子との表面相互作用を有し得る。追加の官能基は以下で議論される。
(ポリマー前駆体およびin situ副生成物非生成重合)
【0082】
様々な実施形態においては、in situ重合は、イオン伝導性粒子と、ポリマー前駆体と、存在する場合は任意の開始剤、触媒、架橋剤、および他の添加剤とを混合し、次いで重合を開始することによって実施する。これは溶液中またはホットプレスにおいて行われ得る。重合は、密接な粒子間接触を確立するために加圧下で開始および実行してもよい。しかしながら、一部のin situ重合プロセスは、起こり得る極性化の増大、したがってセルの性能および寿命の低下を引き起こすおそれがある副生成物を形成する場合がある。
【0083】
ポリマー前駆体は、低分子モノマー、オリゴマー、ポリマー、またはバインダであり得る。重合反応は、ポリマーネットワークを形成するために、前駆体から個々のポリマー鎖を形成し得る(か、もしくは高分子前駆体からより長いポリマー鎖を形成し得る)、および/またはポリマー鎖間に架橋を導入し得る。ポリマー前駆体は、用いられる重合法にその性質が依存する官能基を含み得る。
【0084】
ポリマー前駆体は、上に記載した上記ポリマー骨格のいずれか(例えば、ポリシロキサン、ポリビニル、ポリオレフィン、ポリテトラヒドロフラン、PFPE、環状オレフィンポリマー(COP)、または環状オレフィンコポリマー(COC)、または他の非極性もしくは低極性ポリマー)、あるいはその構成モノマーまたはオリゴマーであり得る。重合法に応じて、ポリマー前駆体は末端および/または骨格官能基化ポリマーであり得る。
【0085】
イオン伝導性無機粒子(および特に硫化物ガラス)の反応性は、in situ重合に関して複数の課題を呈する。重合反応は、硫化物ガラスも他の種類の粒子も分解せず、かつ有機成分の制御されない重合も時期尚早な重合も引き起こさないものであるべきである。特に、ガラス硫化物は極性溶媒および有機分子の影響を受けやすく、これにより分解または結晶化が引き起こされるおそれがあり、後者はイオン伝導性の著しい減少を生じ得る。金属触媒を用いる方法もまた、硫化物系イオン性伝導体と不適合である。高含量の硫黄は、触媒被毒を生じ、重合を妨げるおそれがある。したがって、シリコンゴム形成のために使用される白金媒介ヒドロシリル化などの方法は使用することができない。
【0086】
副生成物非生成反応とは、二次副生成物の形成を伴わずに主生成物を形成する種類のプロセスである。これらは、その経済面および性能面での利益のために、望ましいプロセスである。副生成物の対処を必要としないプロセスは、副生成物除去に関連する精製段階も追加の処理段階も必要とされないため、より費用効率が高い。加えて、徹底した精製の後でさえ、二次生成物は、残存し、不純物として作用し、材料の性能低減または破壊さえ引き起こし得る。
【0087】
副生成物非生成反応は:
A+B→C
の反応スキームによって記載することができる任意のプロセスである。
【0088】
種々のマイケル付加または開環法を含む、副生成物を生成しない多数の化学反応が存在する。エポキシ樹脂、ラジカル、およびポリウレタン合成は、多くの副生成物非生成重合手法のうちのごく一部である。例示的なマイケル付加反応としては、求核剤(例えば、カルバニオンまたは他の求核剤)とα,β-不飽和カルボニル化合物との反応が挙げられ、例示的な開環反応としては、求核剤と歪みヘテロシクリル求電子剤(例えば、環状エーテル、環状カーボネート、環状シクロアルケン、環状トリシロキサン、ラクトン、ラクチドなど)との開環反応が挙げられる。
【0089】
ディールス・アルダーおよび「クリック」ケミストリー手法を含む一部の重合技法は副生成物を生成しない。これらの種類の反応は、低圧力処理手段の使用を依然として可能にする有機またはハイブリッドマトリックスの望ましい機械的特性を生じ、豊富な種類のモノマーおよび組成物をもたらし得る。加えて、これらの手法によって生成される一部の高分子材料は、熱処理下で物理的損傷を自動回復する自己修復特性を呈し、したがって、それらが組み込まれる電池の安全性指数および有効寿命を増加し得る。
【0090】
一部の実施形態において、ポリマー前駆体は、副生成物非生成反応を可能にするために官能基を用いて官能基化される。官能基は、重合段階中に、および/または重合後の官能基化段階において組み込むことができる。ポリマーは、標的となるバインダの特色に応じて、1つまたは複数の種類の官能基を用いて調製することもできる。特性としては、これらに限定されないが、有機溶媒への溶解性、無機粒子への接着性、集電体への接着性、無機物の分散性、機械的性能、イオン伝導性、電気化学的および化学的安定性、ならびに電子伝導性が挙げられる。
【0091】
さらに他のクリックケミストリー反応は、1組の2つの反応基(例えば、2つのクリックケミストリー基)間での反応によって説明することができる。例示的な組としては、トリアゾール含有リンカーを形成するアルキニル基とアジド基とのヒュスゲン1,3-双極子環化付加反応;4π電子系を有するジエン(例えば、置換されていてもよい1,3-不飽和化合物、例えば、置換されていてもよい1,3-ブタジエン、1-メトキシ-3-トリメチルシリルオキシ-1,3-ブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、またはフラン)と、2π電子系を有するジエノフィルまたはヘテロジエノフィル(例えば、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアルキニル基)とのディールス・アルダー反応;求核剤と歪みヘテロシクリル求電子剤との開環反応;チオールおよび置換されていてもよいアルキン;ならびにホスホロチオエート基とヨード基とのスプリントライゲーション反応;求核剤および置換されていてもよいα,β-不飽和カルボニル化合物;求核剤および置換されていてもよい歪み環状化合物;ならびにアルデヒド基とアミノ基との還元アミノ化反応が挙げられる。
【0092】
例示的かつ非限定的な反応基としては、置換されていてもよい1,3-ブタジエン、置換されていてもよいアルケン、置換されていてもよいアルキン、置換されていてもよいα,β-不飽和アルデヒド、置換されていてもよい不飽和α,β-チオアルデヒド、置換されていてもよいα,β-不飽和ケトン、置換されていてもよいアジ化物、置換されていてもよいチオール、置換されていてもよい不飽和シクロアルキル、置換されていてもよい不飽和複素環、置換されていてもよいα,β-不飽和イミン、置換されていてもよいアルデヒド、置換されていてもよいイミン、置換されていてもよいニトロソ化合物、置換されていてもよいジアゼン、置換されていてもよいチオケトン、置換されていてもよいα,β-不飽和ケトン、置換されていてもよいα,β-不飽和アルデヒド、置換されていてもよいアニオン性求核剤、および置換されていてもよい歪みエポキシが挙げられる。任意選択の置換基は、本明細書で(例えばアルキルまたはアリールに関連して)記載されるいずれかであり得る。
(副生成物非生成手法)
(ディールス・アルダー反応)
【0093】
一部の実施形態において、ポリマーマトリックスはディールス・アルダー反応によって形成される。ディールス・アルダー反応は、6員環の調製のための方法である。これは[4+2]環化付加反応としても公知であり得る。このプロセスは、共役ジエンとジエノフィルとして公知のアルケンまたはアルキンとの間で生じる。ディールス・アルダー環化付加は2つの亜群に分類することができる。1つの亜群は、ジエンが電子豊富でありジエノフィルが電子不足である正常電子要請型ディールス・アルダー(DA)(スキーム1A)である。第2の亜群、すなわち逆電子要請型ディールス・アルダー(rDA)(スキーム1B)では、役割が逆転し、ジエンはジエノフィルよりも電子不足である。一部の実施形態において、ポリマー前駆体は、ジエンである少なくとも1つの官能基と、ジエノフィルである少なくとも1つの官能基とを含む。
スキーム1:(A)正常電子要請ディールス・アルダーおよび(B)逆電子要請型ディールス・アルダーを用いるディールス・アルダー[4+2]環化付加反応の概略図
(A)正常電子要請型(DA) (B)逆電子要請型(rDA)
【化3】
【0094】
ジエンおよびジエノフィルの化学構造によって、反応がどれほど容易に生じるかが決定される。例えば、非置換試薬(G=H、G=H、ここでG=ジエン、G=ジエノフィル)であるブタジエンとエチレンとの反応は、シクロヘキセンを形成するために700℃という高温を必要とする。しかしながら、ディールス・アルダー反応は、ジエンまたは/およびジエノフィルの特性/構造を調整することによって制御可能である。正常電子要請型DA反応を伴う一部の実施形態において、電子吸引性(EWD)置換基をジエノフィルに導入することができ(G=EWD)、これにより反応が加速する場合があり、ジエノフィルが電子不足であるほど、反応はより容易に生じる。一例として、1つのニトリル基をエチレンに導入することで、反応温度を700℃から140℃に低減させることができ(スキーム2A)、さらに3つのニトリル官能性を付加する場合、20℃にさらに低下させることができる(スキーム2B)。
スキーム2:ブタジエンと(A)アクリロニトリルまたは(B)テトラシアノエチレンとのDA環化付加反応
【化4】
【0095】
一部の実施形態において、ジエン官能基は、少なくとも1つのEWD置換基、例えば、-SOCF(トリフレート)、-CF、-CCl(トリハロゲン化物)、-CN(ニトリル)、-SOR(例えばRが、本明細書で定義されるように、H、置換されていてもよいアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールであり得るスルホン酸)、-NO(ニトロ)、-NR (例えばRが、本明細書で定義されるように、H、置換されていてもよいアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールであり得るアンモニウム塩)、-CHO(アルデヒド)、-COR(例えばRが、本明細書で定義されるように、置換されていてもよいアルキルもしくは置換されていてもよいアリールであり得るケトン)、-COOH(酸)、-COCl(塩化アシル)、-COOR(例えばRが、本明細書で定義されるように、置換されていてもよいアルキルもしくは置換されていてもよいアリールであり得るエステル)、-CONR(例えばRが、本明細書で定義されるように、H、置換されていてもよいアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールであり得るアミド)、または-X(-Cl、-F、-Br、-Iなどのハロゲン化物)を含み得る。
【0096】
ジエン反応物に位置する電子供与性(EDG)置換基を用いて、正常電子要請型DA反応に関する類似した活性化効果を達成することができる。正常電子要請型DA反応を伴う一部の実施形態において、電子供与性(EDG)置換基をジエンに導入することができ(G=EDG)、これにより反応が加速する場合があり、ジエンが電子豊富であるほど、反応はより容易に生じる。以下の例において、160℃を必要としたブタジエンを用いた反応(スキーム3A)と比較して、より反応性の1-メトキシ-1,3-ブタジエンは、100℃でアクロレインと反応した(スキーム3B)。一部の実施形態において、ジエン官能基は、少なくとも1つのEDG置換基、例えば、電子供与性の強さの降順に、-OAr(例えばArが、本明細書で定義されるように、置換されていてもよいアリールであり得る芳香族オキシド)、-NR(例えば各Rが独立して、本明細書で定義されるように、Hもしくは置換されていてもよいアルキルである第一級、第二級、および第三級アミン)、-OR(例えばRが、本明細書で定義されるように、置換されていてもよいアルキルもしくは置換されていてもよいアリールであるエーテル)、-ArOH(例えばArが、本明細書で定義されるように、置換されていてもよいアリールもしくは置換されていてもよいアリーレンである芳香族アルコール)、-NHCOR(例えばRが、本明細書で定義されるように、置換されていてもよいアルキルもしくは置換されていてもよいアリールであるアミド)、-OCOR(例えばRが、本明細書で定義されるように、置換されていてもよいアルキルもしくは置換されていてもよいアリールであるエステル)、-R(例えばRが、本明細書で定義されるように、置換されていてもよいアルキルであるアルキル)、-Ar(例えばArが、本明細書で定義されるように、置換されていてもよいアリールである芳香族)、または-CH=CH(ビニル)を含み得る。
スキーム3:アクロレインと(A)ブタジエンまたは(B)1-メトキシ-1,3ブタジエンとのDA環化付加反応
【化5】
【0097】
一部の実施形態において、逆電子要請型rDA反応は重合中に生じる。逆電子要請型rDA反応において、1つのプロセスは、電子豊富ジエノフィル(EDG官能性を含有する)と電子不足ジエン(EWD基を含有する)との間での環化付加を伴う。全般に、上に記載したEWDおよびEDG置換基はrDA反応のために使用され得る(G=EWD、G=EDG)。そのような実施形態において、ジエン官能基は少なくとも1つのEDG置換基を含み得る、および/またはジエノフィル官能基は少なくとも1つのEWD置換基を含み得る。この手法は、複素環化合物、例えば、ピラン、ピペリジン、およびそれらの誘導体を合成するのに有用であり得る。
スキーム4:アクロレインとメチルビニルエーテルとのrDA環化付加反応
【化6】
【0098】
一部の実施形態において、正常電子要請型ディールス・アルダーは、ルイス酸、例えば金属塩化物、例えば、塩化スズ、塩化亜鉛、または三フッ化ホウ素によって触媒され得る。触媒とジエノフィルとの結合は、その求電子性、したがって反応性を高め、したがって熱反応要件を緩和する。
【0099】
DA反応の利益の1つは、それが熱可逆的であり得るというものである。レトロDA反応とは、6員環が反応してジエンとジエノフィルとを形成するプロセスであり、典型的には熱的処理によって実現される。一部のレトロDA反応は、化学的活性化、例えばルイス酸または塩基媒介によっても促進され得る。ポリマーの加熱はDA架橋結合を解離し、次いで、DA架橋結合はその後の冷却時に再形成し得るため、一部のDA反応の熱可逆性は自己修復特性を可能にする。一部の実施形態において、ポリマー前駆体は、レトロDA、および正常DAまたは逆転rDAのいずれかを受け得る基を用いて官能基化される。
(1+3-双極子環化付加「クリック」反応)
【0100】
一部の実施形態において、ポリマーマトリックスは、[1+3]双極子環化付加反応によって形成され得る。[1+3]双極子環化付加とは、1,3-双極子と親双極子との反応を介した5員環の調製方法である。一例は、ヒュスゲン環化付加としても公知の、1,2,3-トリアゾールを生成するアジ化物とアルキンとの間での[3+2]環化付加である(スキーム5)。
スキーム5:アジ化物とアルキンとの間でのヒュスゲン環化付加
【化7】
【0101】
一部の実施形態において、1,3-双極子はアリルまたはプロパルギル/アレニル型双性イオン、例えば、アゾメチンイリドおよびイミン、ニトロン、ニトロ化合物、カルボニルオキシドおよびイミド、カルボニルイリドおよびイミン、アジ化物、ジアゾアルカン、チオスルフィンなどである。一部の実施形態において、親双極子は様々なアルケンおよびアルキン、ならびにカルボニルおよびイミンであり得る。一部の実施形態において、銅系触媒などの金属触媒を使用して、反応速度を増加させてもよい。一部の実施形態において、反応速度は、シクロオクチンならびにその類似体および置換誘導体などの歪み親双極子の存在下でも向上し得る。一部の実施形態において、歪み促進環化付加反応は、触媒を伴わずに自発的に生じ得る。
(チオール-エン「クリック」反応)
【0102】
一部の実施形態において、ポリマーマトリックスは、硫化物を形成するチオールとアルケンまたはアルキンとのチオール-エン「クリック」反応によって形成され得る(スキーム6)。そのプロセスは、ラジカル開始剤、UV光もしくは温度、またはマイケル付加によって触媒され、塩基および求核剤によって加速されるフリーラジカル機構を介して生じ得る。チオール-エン「クリック」手法は、高収率で進行する非常に効率的な反応であり、様々な適用のための魅力的な合成手段となり得る。
スキーム6:チオールと(A)アルケンおよび(B)アルキンとの間でのチオール-エン付加
【化8】
【0103】
スキーム7は、様々な実施形態において生じ得る様々なチオール-エン反応の例を示す。チオールは多くのアルケンおよびアルキンと反応性である。例えば、ポリブタジエンは、温度、UV光、またはラジカル開始剤を助触媒として使用して種々のジチオールと「in situ」架橋し、架橋ネットワークを形成することができる(スキーム7A)。このプロセスは、ゴムの加硫に類似しているが、硫黄を用いる従来の方法よりも効率的であり、より温和な条件を必要とする。加えて、反応基の広い利用可能性により、チオール-エンクリック反応の準備におけるポリマー前駆体の後修飾が容易になる。例えば、水添ポリブタジエンにおけるヒドロキシル末端基は、チオール反応性アクリレート基に変換させることができ、これをチオール架橋剤とさらに反応させて、架橋ネットワークを形成することができる(スキーム7B)。さらに、チオール-エン反応は、不飽和ポリマーの官能基化を制御するために使用してもよい。様々なチオール試薬の広い利用可能性および高効率の反応により、「チオール-エン」プロセスは、ポリブタジエン(スキーム7C)またはポリ(スチレン-b-ブタジエン)ゴムなどのポリマーの官能基化の制御に関する優れた選択となる。
スキーム7:(A)ポリブタジエン架橋、(B)チオール反応基を用いる水添ポリブタジエンの末端基のアクリレート修飾、および(C)ポリブタジエンの化学修飾の制御を含むチオール-エン反応の利用の例
【化9】
【0104】
図1は、チオール-エンに基づく重合/架橋に有用であり得る市販のチオールおよびアルケン/アルキン架橋剤の代表例を示す。一部の実施形態において、少なくとも一部のポリマー前駆体は、少なくとも1つのチオール基および/もしくは少なくとも1つのアルケン/アルキンを含み得るか、またはそれを用いて官能基化され得る。非限定的な化合物としては、図1における化合物(I-1)~(I-8)を挙げることができ、ここで、化合物(I-4)におけるエチレンオキシド基は任意の有用な数n(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも大きい)であることができ、化合物(I-8)におけるメチレン基は任意の有用な数n(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも大きい)であることができる。
(ハイブリッド電解質におけるディールス・アルダー手法)
【0105】
ディールス・アルダー官能性は、ポリマー前駆体のバインダまたは低分子添加剤のいずれかに位置し得る。2の官能性(f)は線状ポリマーを生じ、f≧3は架橋ポリマーを可能にする。一部の実施形態において、少なくとも1つのポリマー前駆体はジエン基を保有し、少なくとも1つのポリマー前駆体はジエノフィル基を保有する。全般に、ポリマー前駆体は、分子1個当たり少なくとも1種類のジエノフィルもしくはジエン基、または両方の官能性を担持し得る。
【0106】
一部の実施形態において、ジエン基はシス配置の任意の共役ジエンを含み得る。ジエンは、全炭素(図2A)およびヘテロ原子系(図2B)の2つの主要な群に分けることができる。全炭素ジエンは、直鎖状および環状ジエンを含む、炭素原子のみで構成される不飽和共役鎖、例えば、ブタジエン、シクロペンタジエン、アントラセン、α-テルピネン、フラン、チオフランなどを含有する。さらに他の例としては、図2Aにおける化合物(II-1)~(II-10)が挙げられ、ここで、Rは、本明細書に記載されるように、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり得る。
【0107】
ヘテロ原子系ジエンは、O、N、Sなどの少なくとも1個のヘテロ原子を共役ジエン構造に含み得る。ヘテロ原子ジエンの例としては、α,β-不飽和アルデヒドおよびケトンおよびイミン、例えば、アクロレインおよびチオアクロレインが挙げられる。さらに他の例としては、図2Bにおける化合物(II-11)~(II-14)が挙げられ、ここで、Rは、本明細書に記載されるように、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり得る。
【0108】
ジエンと同様に、ジエノフィル基も全炭素(図3A)およびヘテロ原子系(図3B)ジエノフィルに分類することができる。全炭素ジエノフィルとしては、種々のアルケンおよびアルキン系化合物、例えば、アクロレイン、アクリロニトリル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、無水マレイン酸、およびイミドが挙げられる。さらに他の例としては、図3Aにおける化合物(III-1)~(III-11)が挙げられ、ここで、Rは、本明細書に記載されるように、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり得る。
【0109】
反応基にヘテロ原子を有するジエノフィルとしては、アルデヒド、イミン、ニトロソ化合物、ジアゼン、およびチオケトンが挙げられる。さらに他の例としては、図3Bにおける化合物(III-12)~(III-19)が挙げられ、ここで、Rは、本明細書に記載されるように、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり得る。
【0110】
一部の実施形態において、DA反応性ポリマーは、種々の濃度の官能基、例えばジエンまたはジエノフィルを用いて、直接または間接プロセスのいずれかを使用して修飾される。図4Aから図4Dは様々な官能基化ポリマーの例を提供する。DA不活性モノマーとDA反応性モノマーまたはマクロモノマーとの共重合は、それぞれ、官能基化コポリマー(図4B)およびグラフトコポリマー(図4C)を生じ得る。間接手法を使用する実施形態において、ポリマーは、特定の基、例えば末端基(図4A)または機能性モノマー(図4D)の修飾を伴い得る後官能基化処理において、DA基を用いて官能基化することができる。
【0111】
スキーム8は、一部の実施形態におけるフルフリル基を用いた種々のポリマーの後官能基化に用いることができる反応の一部の例を示す。例えば、ポリブタジエンのヒドロキシル末端基は、イソシアネートの反応を介して修飾して、ウレタン結合を形成することができ(スキーム8A)、エチレンと共重合した無水マレイン酸は、アミンと反応して環状アミドを形成することができ(スキーム8B)、ポリブタジエンにおける不飽和結合は、チオール-エン反応においてメルカプタンと反応することができる(スキーム8C)。
スキーム8:フルフリル基を用いた(A)水添ポリブタジエン末端基、(B)無水マレイン酸-エチレンコポリマー、および(C)ポリブタジエンの後官能基化
【化10】
【0112】
一部の実施形態において、機能性ポリマーに加えて、有機マトリックスは、低分子モノマーおよび架橋剤を含有し得る。図5は、低分子ジエンおよびジエノフィルモノマーならびに架橋剤の一部の例を示す。一部の実施形態において、有機マトリックスは、化合物(V-1)~(V-7)などの図5に示す高分子架橋剤およびモノマーも含有することができ、ここで、化合物(V-6)におけるエチレンオキシド基またはプロピレンオキシド基は任意の有用な数n(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも大きい)であることができる。
(実施例)
(実施例1:ディールス・アルダー架橋SEBS膜)
【0113】
SEBS、SBS、またはSISなどの熱可塑性エラストマーは、全固体状薄膜電解質の生成のためのバインダとして使用され得る。そのようなバインダの低極性および疎水性特徴は、リチウムリン硫化物(LPS)ガラスなどの純粋無機導体の初期導電性の高度な保持を可能にし、そのブロック系構造は、プロセスにおいて生成されるハイブリッド電解質に良好な機械的特性をもたらす。しかしながら、そのようなバインダは熱可塑系であり、これは、それらが非共有結合性相互作用によって結合する物理架橋ネットワークを形成することを意味する。
【0114】
フルフリル基を用いて固体バインダを修飾して、低分子ビスマレイミドの存在下でのDA架橋を可能にした。SEBSのDA架橋は、バインダによって形成された物理架橋ネットワークに共有結合架橋を組み込むことを可能にし、したがってその機械的強度を向上させ、それを良好な溶媒への溶解に対して耐性にした。
【0115】
SEBSにソフトブロック中2wt%の無水マレイン酸をドープし(SEBS-gMA)、フルフリルアミンと反応させた。スキーム9.1に示すように、SEBS-gMAを過剰なフルフリルアミンと反応させることによって、SEBS-gFAを合成した。
スキーム9.1:SEBS-gFAを形成するフラン基を用いたSEBS-gMAの修飾
【化11】
【0116】
窒素下で操作されるグローブボックスにおいて、30.0g(6.1mmolの無水マレイン酸)のポリスチレン-b-ポリ(エチレン-ran-ブチレン)-b-ポリスチレン-g-無水マレイン酸(SEBS-gMA、Sigma-Aldrich)と250gの無水トルエンとを、予め145℃で乾燥させた500ml圧力容器に入れた。容器を密閉し、混合物を、ポリマーが完全に溶解するまで60℃のホットプレート上で撹拌した。次に、容器をグローブボックスに戻し、室温に冷却した後、2.4g(24.7mmol)のフルフリルアミンを混合物に添加した。次いで、反応を60℃で18時間(hr)さらに撹拌した。その後、反応混合物をメタノールに沈殿させ、固体をジクロロメタンに再溶解し、次いで再びメタノールに沈殿させた。このプロセスをさらに2回繰り返して、フルフリル修飾SEBS(SEBS-gFA)を白色固体として得た。次いで、SEBS-gFAを真空下、100℃で16hr乾燥させた。
【0117】
熱重量分析を使用してSEBS-gMAの熱安定性および純度を試験した。SEBS-gMAを窒素下で500℃に加熱したところ、約370℃まで重量減少を事実上示さず、ポリマーの高い熱安定性と、有意な揮発性不純物も含水量もないこととを証明した(図6を参照のこと)。
【0118】
SEBS-gMAおよびSEBS-gFAのFTIRスペクトルを図7に示す。SEBS骨格に関連する高濃度の重複シグナルのため、スペクトルは類似する。スペクトル間の大きな差異は、SEBS-gMAにおける無水マレイン酸環に関連する、約1790cm-1のカルボニル(-C=O)ストレッチの消失である。SEBS-gFAにおける視認可能な-C=Oストレッチの欠如は、無水物と比較して弱い、マレイミド環におけるカルボニルシグナルの強度に関連すると考えられ、これは、そのような低濃度で見出すことが困難であると考えられる。
【0119】
図8に示すように、出発物質であるSEBS-gMA、および生成物であるSEBS-gFAのプロトン核磁気共鳴(H NMR)分析を、700MHz装置を使用して行った。SEBS-gMA(2wt%)およびSEBS-gFA(3.5wt%)における低濃度の官能基のため、スペクトルの定量分析は不可能であった。しかしながら、生成物および出発物質における官能基に対応するシグナルの定性分析は、ピークのシフトとそれらの強度の変化とを示した。図8は、無水マレイン酸およびマレイミドの環式環に対応する特徴的なピークを有する領域におけるSEBS-gMA(黒色)およびSEBS-gFA(灰色)スペクトルの重ね合わせを示す。
【0120】
次に、SEBS-gFAを、1,1'-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド(BMI)を用いたディールス・アルダー架橋プロセスにおいて試験した。SEBS-gFAのトルエン中溶液を、フルフリル基対マレイミド基を2:1の比としてBMIと混合した。撹拌子を備える20mLバイアルに1.50g(0.037mmolのフルフリル基)のSEBS-gFA、27.0mg(0.075mmol)のBMI、および3.0gの1,2,4-トリメチルベンゼンを入れた。混合物を、全ての成分の溶解まで40℃で撹拌し、次いで室温に冷却した。次に、ドクターブレードを使用して溶液をMylar上に流延し、薄膜を風乾した後、真空オーブンに移し、100℃で12時間加熱した。膜を3つの片に切断し、そのうちの1つを120℃で5時間さらに加熱した。膜を室温まで冷却した後、基板から剥離した(スキーム9.2)。
スキーム9.2:ディールス・アルダープロセスにおけるBMIを用いたSEBS-gFAの架橋
【化12】
【0121】
架橋膜の引張試験を実施して、弾性率、引張強度、および破断伸びを決定した。SEBS-gFA+0.5BMI膜の特性を、同じ条件下で処理した純粋SEBS(官能基化していない)、SEBS-gMA、およびSEBS-gFA膜の特性と比較検討した。全ての膜を8mm×50mmのストリップに切断し、膜1つ当たり少なくとも3回の測定を、小型引張試験機を使用して実施した。機器の短いグリップ間距離のために、材料の破壊が生じる前に機器の限界に達したため、引張強度と破断伸びとは測定することができなかった。ポリマー膜のそれぞれは非常に弾性であり、800%超の伸長に達した。図9は、0.05in/分(1.27mm/分)の速度で試験した、SEBS(黒色の太線)、SEBS-gMA(黒色の細線)、SEBS-gFA(破線)、およびSEBS-gFA+0.5BMI(灰色の線)膜の応力-歪み試験において得られた代表的な曲線を示す。表1は、SEBS、SEBS-gMA、SEBS-gFA、およびディールス・アルダー架橋SEBS-gFA+0.5BMI膜の応力-歪み曲線からの弾性率を要約する。
表1:種々のポリマー膜の弾性率
【表1】
【0122】
SEBS、SEBS-gMA、SEBS-gFA、および架橋SEBS-gFA+0.5BMIにおいて測定した弾性率は、互いに有意に異なり、官能基の全体的な組成および種類が重要であるという証拠を提供する。2wt%の極性無水マレイン酸グラフトをSEBS組成物に付加することで、バインダの弾性係数が劇的に向上し、SEBSハイブリッドよりも70%超高い値(20.82MPa)を示した。フルフリル基を用いたSEBS-gMAのさらなる修飾は、より一層極性のSEBS-gFAバインダ、および26.82MPaというより一層高い弾性係数をもたらした。最後に、SEBS-gFAをBMIと架橋した場合、膜は28.54MPaの弾性係数を示し、ディールス・アルダー反応が生じたこと、およびそのプロセスにおいて形成された追加の共有結合架橋がポリマー膜の全体的な靱性を高めたことを証明した。
(実施例2:ディールス・アルダー架橋を用いたハイブリッド電解質)
【0123】
純粋SEBS、SEBS-gMA、SEBS-gFA、およびBMI架橋SEBS-gFA膜の機械的特性を試験した後、ポリマーを複合材電解質に組み込んだ。各ポリマーを、80wt%の75:25=LiS:P硫化物ガラスを用いて調製したハイブリッドにおけるバインダとして試験した。複合材をスラリー流延によって薄膜として調製し、乾燥させ、160℃でホットプレスした。(A)SEBS、(B)SEBS-gMA、(C)SEBS-gFA、および(D)BMI架橋SEBS-gFAのバインダ構造を以下に提供する。
【化13】
【0124】
複合材の導電性を測定して、純粋75:25=LiS:P硫化物ガラスの導電性保持に対するバインダの効果を評価した。SEBSなどの非極性バインダへの極性基の組み込みは、測定した膜の導電性に対して劇的な効果を有した。SEBSをバインダとして使用した場合、導電性は約0.18mS/cmであり、元々の無機材料(約0.55mS/cm)の33%の導電性保持率であった(表2)。ガラス粒子の表面と強力に結合することができる少量の極性官能性を用いてSEBSを修飾した場合、導電性はほぼ10分の1に低下した。SEBS-gMAハイブリッドの場合、導電性は約8分の1に低下し、BMI架橋SEBS-gFAの場合は約6分の1に低下した(表2)。
【0125】
純粋SEBS-gFAを有機マトリックスとして使用した場合、導電性は2.3分の1に低下するに過ぎなかった。このことは、BMIの系への添加が有機マトリックス、したがって、結果として得られたハイブリッドの導電性に大きな影響を及ぼしたことを示唆する。SEBS-gFAを含有するハイブリッドとBMI架橋剤を有するSEBS-gFAを含有するハイブリッドとの間のこの差異は、両方の複合材における有機マトリックスの粘度の差異に関連し得る。有機マトリックスのより高い粘度は、ホットプレス中の粒子の流動の抑制を生じ、したがって、電解質複合材の良好な導電性能をもたらし得る良好な粒子間接触を妨げ得る。SEBS-gFAとBMIとを含有するハイブリッドの流延中、スラリーの粘度が異常に高くなり、ハイブリッド膜を流延するためにはるかに高い希釈率を必要としたことが認められた。粘度の増加は、スラリーにおいて生じるフルフリル基とマレイミド基との間のディールス・アルダープロセスが原因であった。これにより、出発SEBS-gFAよりもはるかに高分子量のポリマーの形成、したがって、より高い粘度およびホットプレス処理中の粒子運動の妨害が引き起こされた。
表2:80wt%75:25=LiS:Pガラスと種々のポリマーバインダとを含有するハイブリッドにおいて測定した導電性および機械的特性
【表2】
【0126】
次に、全てのハイブリッドの機械試験を行って、弾性率、引張強度、および破断伸びを得た。機械試験は、純粋ポリマー膜の場合と同じ条件下で実施した。各ハイブリッドの代表的な応力-歪み曲線を図10に示し、導出した弾性係数、引張強度、および破断伸びの値を表2に要約する。
【0127】
種々のバインダを含有するハイブリッドにおいて得られた応力-歪み曲線の目視比較は、それらの全ての機械的特性における明確な差異を示す。極性がより高いバインダを用いて調製したハイブリッドの引張強度および破断伸びは増加する傾向がある。SEBSハイブリッドの場合、サンプルはわずか2.2%の伸長で破断する(表2)。わずか2wt%のマレイン酸グラフトをSEBSに組み込む場合(SEBS-gMA)、値は倍になり、4.7%に達する。フルフリル基を用いたさらなる修飾(SEBS-gFA)は、極性基のwt%を3.5wt%まで高めた。その修飾は破断伸びを17.0%まで劇的に増加させ、これは、SEBSおよびSEBS-gMAのそれぞれ8.5および4倍である。同じ傾向が膜の引張強度において観察され、SEBS、SEBS-gMA、およびSEBS-gFAバインダそれぞれにおいて4.2、5.6、および8.3MPaの値を示し、より極性のバインダを有機マトリックスに組み込む場合における膜の破断に対する抵抗性の向上を証明した(表2)。
【0128】
BMI架橋SEBS-gFAハイブリッドの特性は、SEBS-gMAハイブリッドの特性とSEBS-gFAハイブリッドの特性との間であり(表2)、純粋SEBS-gFAとの比較において、架橋がハイブリッドの性能の低下を引き起こしたことを示した。高い充填率の無機粒子は、フルフリル基とマレイミド基との間の架橋の効率を低下し、機械的特性に影響を及ぼし得ると推測される。加えて、ディールス・アルダー反応の非効率性は、より部分的に反応するBMI基を生じ得る。したがって、そのような基は、架橋結合を形成する代わりに、無機粒子の表面との調和がより非効率となり得る嵩高い剛直な官能性として作用し得る。これは、有機マトリックスの機械的特性に影響を及ぼし得るだけでなく、バインダの無機粒子に対する接着性を変化させ、したがって、ハイブリッド膜の機械的性能にも影響を及ぼし得る。
(実施例3:POSSナノ複合材に基づくハイブリッド電解質の合成)
【0129】
無機-有機ハイブリッドマトリックスは、実験式R(SiO1.5(n=8、10、または12)の有機-無機ハイブリッドであり、ポリマーセグメントまたはコイルと同等の寸法を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)化合物をベースとしてもよい。剛直な立方体ケージは、生じ得る最小のシリカ粒子と見なすことができる。各ケージケイ素原子は、反応性もしくは非反応性有機基(例えば、グリシジル、フェニル、シクロヘキシル)であり得る単一のR置換基、または有機-無機ハイブリッド(例えば-OSiMeOPh)に結合する。反応性有機基は、無機POSSコアがマトリックスに分子状に分散している複合材料の調製を可能にする。高分子材料と比較して、POSSナノ複合材は、より高い使用温度、耐酸化性、および改善した機械的特性を含む優れた特性、ならびにより低い誘電率、可燃性、および発熱を有し得る。
【0130】
グリシジル(G)POSSをフルフリルアミン(F)と反応させることによってFG-POSSを合成した。12.1gのG-POSS(9.0mmol、72.0mmolエポキシ基)をアルゴン下でジメチルホルムアミド60mlに溶解した。8.7gのフルフリルアミン(89.7mmolのアミド基)を溶液に滴加する。60℃での1日間の反応後、遠心分離機(4500rpm、-4℃)を使用して未反応フルフリルアミンと余分な溶媒とを除去し、粘性の透明な液体を得た。ハイブリッドPOSSマトリックスは、5gのFG-POSSを40mlの無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、続いて化学量論量の1,1'-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド(BMI)を添加することによって得られる。室温で3時間撹拌した後、THFを遠心分離によって徐々に除去した。結果として生じた粘性の液体(wt%で15、25、30、および35)をジクロロベンゼン中で無機導体(例えば、リチウムイオン伝導性アルジロダイト)と混合した。8つの直径=10mmジルコニアボールを混合メディアとしてカップに入れた。カップを閉じ、絶縁テープを用いてしっかりと密閉した。スラリーをチューブローラにおいて80rpmの速度で16時間混合した。ドクターブレード技法を使用して、薄膜をニッケル箔上に流延した。流延は、真空チャックを備えるコータにおいて行った。膜を周囲圧力下、室温および45℃で5時間乾燥させ、次いでアンテチャンバに移し、真空下で一晩さらに乾燥させた。乾燥薄膜を50mm×70mmの長方形試験片に切断した。単一の膜片をFEPシートで挟み、サンプルを100℃で加熱しながら、垂直プレス機において15MPaで18時間押圧した。サンプルを40℃に冷却した後、圧力を解放し、サンプルを抽出した。
(無機相)
【0131】
本明細書に記載される複合材料の無機相はアルカリイオンを伝導する。一部の実施形態において、これは複合材料の全てのイオン伝導性を担い、複合材料を介したイオン伝導性経路を提供する。
【0132】
無機相は、アルカリイオンを伝導する微粒子固体状材料である。以下に示される例では、リチウムイオン伝導性材料を主に記載するが、ナトリウムイオン伝導性または他のアルカリイオン伝導性材料が用いられてもよい。様々な実施形態においては、材料は、ガラス粒子、セラミック粒子、またはガラスセラミック粒子であり得る。本方法は、ガラスまたはガラスセラミック粒子を有する複合材に特に有用である。特に、上に記載したように、本方法は、粒子の結晶化(またはさらなる結晶化)を誘発せずにガラスまたはガラスセラミック粒子と極性ポリマーとを有する複合材を提供するために使用され得る。
【0133】
本明細書に記載される固体状組成物は、特定の種類の化合物に限定されず、以下にその例が示される任意の固体状無機イオン伝導性微粒子材料を用いることができる。
【0134】
一部の実施形態において、無機材料は、1に近い輸率を有する単一イオン伝導体である。電解質におけるイオンの輸率は、そのイオンの、電解質を流れる全電流のうちの割合である。単一イオン伝導体は1に近い輸率を有する。様々な実施形態においては、固体電解質の無機相の輸率は少なくとも0.9(例えば0.99)である。
【0135】
無機相は、酸化物系組成物、硫化物系組成物、またはリン酸塩系組成物であり得、結晶性、部分結晶性、または非晶質であり得る。上に記載したように、方法のある特定の実施形態は、極性ポリマーの存在下で分解し得る硫化物系組成物に特に有用である。
【0136】
ある特定の実施形態において、無機相は導電性を高めるためにドープされ得る。固体リチウムイオン伝導性材料の例としては、ペロブスカイト(例えば、Li3xLa(2/3)-xTiO、0≦x≦.67)、リチウム超イオン伝導体(LISICON)化合物(例えば、Li2+2xZn1-xGeO、0≦x≦1;Li14ZnGe16)、チオLISICON化合物(例えば、Li4-x1-y、AはSi、Ge、またはSnであり、BはP、Al、Zn、Gaである;Li10SnP12)、ガーネット(例えば、LiLaZr12、LiLa12、MはTaまたはNbである);NASICON型Liイオン伝導体(例えば、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO)、酸化物ガラスまたはガラスセラミック(例えば、LiBO-LiSO、LiO-P、LiO-SiO)、アルジロダイト(例えば、LiPSX(式中、X=Cl、Br、I))、硫化物ガラスまたはガラスセラミック(例えば、75LiS-25P、LiS-SiS、LiI-LiS-B)、およびリン酸塩(例えば、Li1-xAlGe2-x(PO(LAGP)、Li1+xTi2-xAl(PO))が挙げられる。さらなる例としては、リチウムリッチ抗ペロブスカイト(LiRAP)粒子が挙げられる。参照によって本明細書に組み込まれるZhao and Daemen,J.Am.Chem.Soc.,2012,Vol.134(36),pp.15042-15047に記載されているように、これらのLiRAP粒子は、室温で10-3S/cm超のイオン伝導性を有する。
【0137】
固体リチウムイオン伝導性材料の例としては、ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)化合物(例えば、Na1+xZrSi3-x12、0<x<3)が挙げられる。固体リチウムイオン伝導性材料のさらなる例は、Cao et al.,Front.Energy Res.,2014,Vol.2,Article 25(10pp.)、およびKnauth,Solid State Ionics,2009,Vol.180(14-16),pp.911-916に見出すことができ、これらはいずれも参照によって本明細書に組み込まれる。
【0138】
イオン伝導性ガラスのさらなる例は、Ribes et al.,J.Non-Cryst.Solids,1980,Vol.38-39(Pt.1),pp.271-276、およびMinami,J.Non-Cryst.Solids,1987,Vol.95-96,pp.107-118に開示されており、これらは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0139】
様々な実施形態においては、無機相は1つまたは複数の種類の無機イオン伝導性粒子を含み得る。無機相の粒径は、特定の適用に応じて変動させることができ、組成物の粒子の平均直径は、大半の適用において、0.1μm~500μmである。一部の実施形態において、平均直径は0.1μm~100μmである。一部の実施形態において、多峰性サイズ分布が、粒子充填を最適化するために使用され得る。例えば、二峰性分布が使用され得る。一部の実施形態において、複合材における最も近い粒子間の平均距離が1μm以下となるように、1μmまたはそれ未満のサイズを有する粒子が使用される。これは、デンドライトの成長を防止するのに役立ち得る。一部の実施形態において、平均粒径は10μm未満または7μm未満である。一部の実施形態において、7μm未満の平均サイズを有する第1のサイズ分布と、10μm超の第2のサイズとを有する多峰性サイズ分布が使用され得る。より大きい粒子は、より堅牢な機械的特性とより良好な導電性とを有するメンブレンを生じ、より小さい粒子は、より小さい多孔性とより良好な密度とを有するより緻密な均一膜をもたらす。
【0140】
無機相は任意の適切な方法によって製造することができる。例えば、結晶性材料は、溶液法、ゾルゲル法、および固相反応法などの種々の合成方法を使用して得ることができる。ガラス電解質は、参照によって本明細書に組み込まれるTatsumisago et al.,J.Power Sources,2014,Vol.270,pp.603-607に記載されているように、急冷溶融法、溶液合成法、または機械的粉砕法によって得ることができる。
【0141】
本明細書で使用する場合、非晶質ガラス材料という用語は、狭い結晶性の領域を有してもよいが、少なくとも半分が非晶質である材料を指す。例えば、非晶質ガラス粒子は完全に非晶質(100%非晶質)、少なくとも95%(vol.)非晶質、少なくとも80%(vol.)非晶質、または少なくとも75%(vol.)非晶質であり得る。これらの非晶質粒子は、1つまたは複数の狭い結晶性の領域を有してもよいが、粒子を介するイオン伝導は、ほとんどまたは完全に等方性の導電経路を通って行われる。
【0142】
イオン伝導性ガラスセラミック粒子は、非晶質領域を有するが、少なくとも半分は結晶性であり、例えば少なくとも75%(vol.)の結晶性を有する。ガラスセラミック粒子は、本明細書に記載される複合材に使用することができ、ガラスセラミック粒子は、ある特定の実施形態においてそれらの等方性の導電経路に有用な比較的多い量の非晶質特徴(例えば、少なくとも40%(vol.)非晶質)を有する。一部の実施形態において、イオン伝導性セラミック粒子が使用され得る。イオン伝導性セラミック粒子とは、狭い非晶質領域を有してもよいが、ほとんどが結晶性の材料を指す。例えば、セラミック粒子は完全に結晶性(100%vol.結晶性)、または少なくとも95%(vol.)結晶性であり得る。
【0143】
一部の実施形態において、無機相はアルジロダイトを含む。アルジロダイトは、一般式:
7-xPS6-xHal
(式中、Aはアルカリ金属であり、Halは、塩素(Cl)、臭素(Br)、およびヨウ素(I)から選択される)を有し得る。特定の実施形態において、xは0よりも大きい。他の実施形態において、xは3またはそれ未満である。さらに他の実施形態において、0<x≦2である。
一部の実施形態において、アルジロダイトは上に示した一般式を有し、さらにドープされ得る。一例は、チオフィリック金属をドープしたアルジロダイト:
7-x-(z*m) PS6-xHal
(式中、Aはアルカリ金属であり、Mは、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、および水銀(Hg)から選択される金属であり、Halは、塩素(Cl)、臭素(Br)、およびヨウ素(I)から選択され、zは金属の酸化状態であり、0≦x≦2であり、0≦m<(7-x)/zである)である。一部の実施形態において、Aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、またはカリウム(K)である。一部の実施形態において、AはLiである。金属ドープアルジロダイトはさらに、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許公開第2021-0047195号として公開されている米国特許出願第16/829,962号に記載されている。一部の実施形態において、複合材は、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許公開第2020-0087155号として公開されている米国特許出願第16/576,570号に記載されているオキシドアルジロダイトを含み得る。アルカリ金属アルジロダイトとしては、上に示した式のアルジロダイト、ならびにLi7-x+yPS6-xClx+y(式中、xおよびyは、式0.05≦y≦0.9および-3.0x+1.8≦y≦-3.0x+5を満たす)を含む米国特許公開第2017-0352916号に記載されているアルジロダイト、またはA7-x+yPS6-xHalx+yの式を有する他のアルジロダイトが挙げられる。そのようなアルジロダイトにも上に記載した金属をドープすることができ、そのようなものとしてA7-x+y-(z*m) PS6-xHalx+yが挙げられる。
【0144】
AgGeSの鉱物であるアルジロダイトは、AgGeSと2当量のAgSとの共結晶と考えることができる。カチオンの置換とアニオンの置換との両方は、この結晶において、様々なイオンの同じ全体的な空間的配置をそれまで通り保持したまま行うことができる。LiPSでは、PS 3-イオンが、本来の鉱物においてGeS 4-が占有していた結晶学的位置に存在する一方で、S2-イオンはその本来の位置を保持し、Liイオンは本来のAgイオンの位置を占める。LiPSにおけるカチオンは本来のAgGeSと比較して少ないため、一部のカチオンサイトは空孔である。本来のアルジロダイト鉱物のこれらの構造類似体もまたアルジロダイトと称される。
【0145】
AgGeSとLiPSとの両方は、室温では直方晶であるが、昇温では立方空間群への相転移が生じる。1つのLiSの1当量のLiClへのさらなる置換を行うことで材料LiPSClが得られ、これは、アルジロダイト構造を依然として保持するが、室温未満で直方から立方への相転移を受け、著しく高くなったリチウムイオン伝導性を有する。この材料においても、カチオンおよびアニオンの全体的配置は同じままであるため、これもまた一般的にアルジロダイトと称される。したがって、この全体的構造を同様に保持するさらなる置換体もまたアルジロダイトと称され得る。アルカリ金属アルジロダイトは、より一般的には、アルカリ金属が本来のアルジロダイト構造におけるAgサイトを占有しており、本来の鉱物に見出されるアニオンの空間的配置を保持する導電性結晶のクラスのいずれかである。
【0146】
この鉱物種のリチウム含有例である一例、すなわちLiPSでは、PS 3-イオンが、本来の鉱物においてGeS 4-が占有していた結晶学的位置に存在する一方で、S2-イオンはその本来の位置を保持し、Liイオンは本来のAgイオンの位置を占める。LiPSにおけるカチオンは本来のAgGeSと比較して少ないため、一部のカチオンサイトは空孔である。上に示したように、1つのLiSの1当量のLiClへのさらなる置換を行うことで材料LiPSClが得られ、これは、アルジロダイト構造を依然として保持する。立方アルジロダイトLiPSClの一例において、Liはアルジロダイト鉱物におけるAgサイトを占有し、PS 3-は本来の鉱物におけるGeS 4-サイトを占有し、1対1の比のS2-とClとが2つの本来のS2-サイトを占有する。
【0147】
全体的なアルジロダイト構造を保持する置換を行うことができる様々な方式が存在する。例えば、本来の鉱物は、O2-、Se2-、およびTe2-などのカルコゲンイオンで置換することができる2当量のS2-を有する。有意な割合のS2-をハロゲンで置換することができる。例えば、正確な量は系における他のイオンに依存するが、2当量のS2-のうち最大約1.6はCl、Br、およびIで置換することができる。ClはサイズがS2-と同様であるが、2ではなく1の電荷を帯び、実質的に異なる結合および反応特性を有する。他の置換を行ってもよく、例えば、場合によっては、一部のS2-をハロゲン(例えば、Cl)で置換し、残りをSe2-で置き換えることができる。同様に、様々な置換をGeS 3-サイトに対して行うことができる。PS 3-、さらにはPO 3-、PSe 3-、SiS 3-などでGeS 3-を置き換えることができる。これらは全て、4個のカルコゲン原子を有する四面体イオンであり、全体的にS2-よりも大きく、3または4価である。
【0148】
上に記載したLiPSClアルジロダイト構造と比較され得る他の例において、LiPSBrおよびLiPSIは、塩化物に代えてより大きなハロゲン化物(例えば、LiPOClおよびLiPOBr、Kong et al.,Z.anorg.allg.Chem.[J.Inorg.Gen.Chem.],2010,Vol.636,pp.1920-1924を参照のこと)を置換する。ある特定のアルジロダイトを記載することを目的として参照によって本明細書に組み込まれるこれらの化合物は、記載されているハロゲン化物置換体を含有し、S2-イオンとPS 3-イオンとの両方における構造中の全ての硫黄原子を酸素と交換している。リチウム含有アルジロダイトの大半の例に見出されるPS 3-イオンにおけるリン原子もまた一部または全部を置換することができ、例えば、一連のLi7+x1-x(M=Si、Ge)は、広範囲のxにわたってアルジロダイト構造を形成する。ある特定のアルジロダイトを記載することを目的として参照によって本明細書に組み込まれるZhang et al.,J.Mater.Chem.A,2019,Vol.7,pp.2717-2722を参照のこと。Pの置換もまた、ハロゲンを組み込むのと同時に行うことができる。例えば、Li6+xSi1-xBrはx=0~約0.5で安定である。ある特定のアルジロダイトを記載することを目的として参照によって本明細書に組み込まれるMinafra et al.,J.Mater.Chem.A,2018,Vol.6,pp.645-651を参照のこと。SbS 3-とMS 4-との混合物がPS 3-の代わりに置換されており、IがClの代わりに使用されている一連のLi7+xSb1-x(M=Si、Ge、Sn)における化合物は、調製され、アルジロダイト構造を形成することが見出されている。ある特定のアルジロダイトを記載することを目的として参照によって本明細書に組み込まれるZhou et al.,J.Am.Chem.Soc.,2019,Vol.141,pp.19002-19013を参照のこと。リチウム(または銀)に加えて他のカチオンもまた、カチオンサイトに置換することができる。CuPSCl、CuPSBr、CuPSI、CuAsSBr、CuAsSI、Cu7.82SiS5.82Br0.18、CuSiSI、Cu7.49SiS5.490.51、Cu7.44SiSe5.440.56、Cu7.75GeS5.75Br0.25、CuGeSI、およびCu7.52GeSe5.520.48は、全て合成されており、アルジロダイト結晶構造を有する。ある特定のアルジロダイトを記載することを目的として参照によって本明細書に組み込まれるNilges and Pfitzner,Z.Kristallogr.,2005,Vol.220,pp.281-294を参照のこと。複数の例のリストから、アルジロダイト構造の様々な部分のいずれかにおける単一元素を置換することができるだけでなく、置換の組合せもまた多くの場合アルジロダイト構造を生じることが分かる。これらには、Li7-x+yPS6-xClx+y(式中、xおよびyは式0.05≦y≦0.9および-3.0x+1.8≦y≦-3.0x+5.7を満たす)を含む米国特許公開第2017/0352916号に記載されているアルジロダイトが含まれる。
【0149】
本明細書に記載される組成物に使用されるアルジロダイトは、相当量(少なくとも20%、多くの場合少なくとも50%)のアニオンが硫黄含有アニオン(例えば、S2-およびPS 3-)である硫化物系イオン伝導体を含む。硫化物系リチウムアルジロダイト材料は、高いLi移動度を示し、リチウム電池の観点から興味深い。上に示したように、この族の材料の一例はLiPSClであり、これは、LiPSと、LiSと、LiClとの三元共晶である。本明細書に記載されるアルジロダイトの様々な実施形態は、アルジロダイト結晶構造におけるリチウムカチオンサイトを占有し得るチオフィリック金属を有する。例えば、各カチオンは、PS 3-アニオンの要素である2つの硫黄、1つのS2-硫黄アニオン、および2つの塩化物アニオンに配位し得る。一部の実施形態において、チオフィリック金属は、これらのリチウムカチオンサイトのうち、ある割合を占有して、硫化水素生成を抑制する。チオフィリック金属は、他のアルカリ金属アルジロダイトに同様にドープするために使用してもよい。
(複合材)
【0150】
有機相と非イオン伝導性粒子とを含む複合材が本明細書で提供される。一部の実施形態において、有機相はイオン伝導性を実質的に有せず、「非イオン伝導性」と称される。本明細書に記載される非イオン伝導性ポリマーは、0.0001S/cm未満のイオン伝導性を有する。一部の実施形態において、有機相は、LiIなどの塩の存在下でイオン伝導性のポリマーを含み得る。塩の存在下でイオン伝導性であるポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などのイオン伝導性ポリマーは、LiIなどの塩を溶解または解離する。非イオン伝導性ポリマーは、塩を溶解も解離もせず、塩の存在下でさえイオン伝導性ではない。これは、塩を溶解しない場合、伝導する可動イオンが存在しないためである。
【0151】
固相複合材におけるポリマー充填率は一部の実施形態において比較的高くてもよく、例えば少なくとも2.5%~30重量%であってもよい。様々な実施形態においては、それは0.5wt%~60wt%のポリマー、1wt%~40wt%のポリマー、または5wt%~30wt%であり得る。固相複合材は連続膜を形成する。
【0152】
上に示したように、複合材は官能基化ポリマー骨格バインダを含有する。バインダは、官能基化ポリマーバインダと非官能基化ポリマーバインダとの混合物であってもよい。例えば、一部の実施形態において、バインダは、非極性ポリマー(例えば、SEBS)と官能基化型のポリマーとの混合物であってもよく、官能基化型のポリマーは、本明細書に記載されるように架橋し得る(例えば、SEBS-gFA、SEBS-gFA-0.5BMI)。混合物は、様々な実施形態においては、1:9~9:1wt%のポリマー:官能基化ポリマー、例えば、1:5~5:1または1:4~4:1wt%のポリマー:官能基化ポリマーであり得る。
【0153】
様々な実施形態においては、ポリマーバインダは複合材の有機相の本質的に全てであり得るか、または複合材の少なくとも95wt%、90wt%、少なくとも80wt%、少なくとも70wt%、少なくとも60wt%、もしくは少なくとも50wt%であり得る。
【0154】
一部の実施形態において、複合材は、イオン伝導無機粒子と有機相とから本質的になる。しかしながら、代替的な実施形態において、1つまたは複数の追加の成分が固体複合材に添加されてもよい。
【0155】
様々な実施形態においては、固体組成物は添加塩を含んでも含まなくてもよい。リチウム塩(例えば、LiPF、LiTFSI)、カリウム塩、ナトリウム塩などは、PEOなどのイオン伝導性ポリマーを含む実施形態において、イオン伝導性を向上させるために添加することができる。一部の実施形態において、固体状組成物は、添加塩を実質的に含まない。「添加塩を実質的に含まない」とは、塩を微量にしか含まないことを意味する。一部の実施形態において、複合材のイオン伝導性は、無機粒子によって実質的に提供される。イオン伝導性ポリマーが使用される場合でさえ、それは複合材のイオン伝導性に0.01mS/cm、0.05mS/cm、または0.1mS/cmを超えては寄与しないことがある。他の実施形態において、それはより寄与し得る。
【0156】
一部の実施形態において、固体状組成物は、1つまたは複数の導電助剤を含み得る。一部の実施形態において、電解質は、Alなどのセラミック充填材を含む1つまたは複数の充填材材料を含み得る。使用される場合、充填材は特定の実施形態に応じてイオン伝導体であってもそうでなくてもよい。一部の実施形態において、複合材は、1つまたは複数の分散剤を含み得る。さらに、一部の実施形態において、固体状組成物の有機相は、特定の適用のために所望される機械的特性を有する電解質の製造を容易にする1つまたは複数の追加の有機成分を含み得る。
【0157】
以下でさらに議論される一部の実施形態において、複合材は、電極に組み込まれているかまたは即座に組み込むことができ、電気化学的活物質と、任意選択で、電子伝導添加剤とを含む。電極の構成成分および組成物の例は以下に提供される。
【0158】
一部の実施形態において、電解質は、電極の表面にパッシベーション層を形成するために使用することができる電極安定剤を含み得る。電極安定剤の例は米国特許第9,093,722号に記載されている。一部の実施形態において、電解質は、上に記載したように、導電助剤、充填材、または有機成分を含み得る。
【0159】
複合材は、自立膜、離型膜上に提供される自立膜、電池または電極もしくはセパレータなどの他のデバイスの構成要素上に積層された膜、あるいは電極、セパレータ、または他の構成要素上に流延された膜として提供され得る。
【0160】
複合材膜は、特定の電池または他のデバイス設計に応じた任意の好適な厚さであり得る。多くの適用において、厚さは1ミクロン~250ミクロン、例えば30ミクロンであり得る。一部の実施形態において、電解質は著しく厚い、例えばおよそ数ミリメートルであってもよい。
【0161】
一部の実施形態において、複合材はスラリーまたはペーストとして提供される。そのような場合、組成物は、後に蒸発される溶媒を含む。加えて、組成物は、保存安定性のための1つまたは複数の成分を含んでもよい。そのような化合物としてはアクリル樹脂を挙げることができる。処理の準備が整ったら、スラリーまたはペーストは基板上に適宜流延または塗布し、乾燥させることができる。
【0162】
一部の実施形態において、複合材は、押出成形可能な固体混合物として提供される。
(デバイス)
【0163】
本明細書に記載される複合材は、電池および燃料電池を含むがこれらに限定されないイオン性伝導体を使用する任意のデバイスに組み込まれ得る。例えば、電池において、複合材は電解質セパレータとして使用され得る。
【0164】
電極組成物は、電極活物質、および任意選択で、導電性添加剤をさらに含む。カソードおよびアノード組成物の例を以下に示す。
【0165】
カソード組成物について、以下の表3は組成の例を示す。
表3
【表3】
【0166】
様々な実施形態においては、カソード活物質は遷移金属酸化物であり、一例としてはリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNiMnCoO、またはNMC)である。様々な形態のNMC、例えばLiNi0.6Mn0.2Co0.2(NMC-622)、LiNi0.4Mn0.3Co0.3(NMC-4330)などが使用され得る。wt%範囲の下限はエネルギー密度によって定められ、65wt%未満の活物質を有する組成物は低いエネルギー密度を有し、有用ではない場合がある。
【0167】
上で無機導体の説明において記載した任意の適切な無機導体が使用され得る。Li5.6PS4.6Cl1.4は、高い導電性を有するアルジロダイトの一例である。Li5.4Cu0.1PS4.6Cl1.4は、高いイオン伝導性を保持し、硫化水素を抑制するアルジロダイトの一例である。10wt%未満のアルジロダイトを有する組成物は、低いLi伝導性を有する。硫化物ガラスおよびガラスセラミックもまた使用され得る。
【0168】
電子伝導性添加剤は、NMCのように低い電子伝導性を有する活物質に有用である。カーボンブラックはそのような添加剤の1つの例であるが、他のカーボンブラック、活性炭、炭素繊維、グラファイト、グラフェン、およびカーボンナノチューブ(CNT)を含む他の炭素系添加剤が使用されてもよい。1wt%未満は電子伝導性を向上させるのに十分でない場合がある一方、5%超はエネルギー密度の低下および活物質-アルジロダイト接触の妨害を引き起こす。
【0169】
任意の適切な有機相が上に記載したように使用され得る。1wt%未満は所望の機械的特性を達成するのに十分でない場合がある一方、5%超はエネルギー密度の低下および活物質-無機導体-炭素接触の妨害を引き起こすおそれがある。一部の実施形態において、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、非極性ポリマー(例えばポリスチレンもしくはPS)と共に、またはそれを伴わずに使用される。
【0170】
アノード組成物について、以下の表4は組成の例を示す。
表4
【表4】
【0171】
グラファイトは、Siアノードの初期クーロン効率(ICE)を向上させるための二次活物質として使用することができる。Siは、NMCおよび他のカソードのICEよりも低い低ICE(例えば、場合によっては80%未満)という欠点を有し、初回サイクルにおける不可逆的な容量低下を引き起こす。グラファイトは、完全な容量利用を可能にする高ICE(例えば、90%超)を有する。Siとグラファイトとの両方を活物質として利用するハイブリッドアノードは、グラファイト含量を増加するにつれて高くなるICEをもたらし、これは、Si/グラファイト比を調整することによってアノードのICEがカソードのICEに匹敵し、したがって初回サイクルにおける不可逆的な容量低下を防止できることを意味する。ICEは処理により変動させることができ、特定のアノードとその処理とに応じて比較的広範囲のグラファイト含量を可能にする。加えて、グラファイトは電子伝導性を向上し、アノードの高密度化に役立ち得る。
【0172】
カソードとの関連で上に記載した任意の適切な無機導体が使用され得る。
【0173】
高表面積電子伝導性添加剤(例えば、カーボンブラック)が一部の実施形態において使用され得る。Siは低い電子伝導性を有し、そのような添加剤はグラファイト(優れた電子伝導体であるが、低表面積を有する)に加えて有益となり得る。しかしながら、ケイ素-炭素複合材料およびケイ素含有合金の電子伝導性は適度に高く、一部の実施形態において添加剤の活用が不要となり得る。他の高表面積炭素(カーボンブラック、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブ)もまたSuper Cの代わりに使用することができる。
【0174】
任意の適切な有機相が使用され得る。一部の実施形態において、PVDFが使用される。
【0175】
アノードと、カソードと、アノードおよびカソードと動作可能に結合する上に記載した柔軟な固体電解質組成物とを備えるアルカリ金属電池およびアルカリ金属イオン電池が本明細書で提供される。電池は、アノードとカソードとを物理的に隔離するセパレータを備えてもよく、これは固体電解質組成物であってもよい。
【0176】
好適なアノードの例としては、これらに限定されないが、リチウム金属、リチウム合金、ナトリウム金属、ナトリウム合金、グラファイトなどの炭素質材料、およびそれらの組合せで形成されるアノードが挙げられる。好適なカソードの例としては、これらに限定されないが、遷移金属酸化物、ドープ遷移金属酸化物、金属リン酸塩、金属硫化物、リン酸鉄リチウム、硫黄、およびそれらの組合せで形成されるカソードが挙げられる。一部の実施形態において、カソードは硫黄カソードであり得る。
【0177】
リチウム-空気電池、ナトリウム-空気電池、またはカリウム-空気電池などのアルカリ金属-空気電池において、カソードは酸素透過性(例えば、メソポーラスカーボン、多孔質アルミニウムなど)であり得、任意選択で、カソードは、カソードにおいてリチウムイオンと酸素とで生じる還元反応を促進するために組み込まれる金属触媒(例えば、マンガン、コバルト、ルテニウム、白金、もしくは銀触媒、またはそれらの組合せ)を含有し得る。
【0178】
一部の実施形態において、リチウム金属アノードと硫黄含有カソードと備えるリチウム-硫黄セルが提供される。一部の実施形態において、本明細書に記載される固体状複合材電解質は、デンドライト形成を防止することによってリチウム金属アノードを使用可能にし、かつ、放電中にカソードで形成される多硫化物中間体を溶解しないことによって硫黄カソードを使用可能にするという点で、独特である。
【0179】
また、アノードとカソードとが互いに電気的に直接接触することを防ぐために、イオン流透過性の任意の好適な材料から形成されるセパレータを備えてもよい。しかしながら、本明細書に記載される電解質組成物が固体組成物である場合、特に膜の形態である場合には、それらがセパレータとして機能し得る。
【0180】
一部の実施形態において、固体電解質組成物は、サイクル中のアルカリイオンのインターカレーションに依存するアルカリイオン電池において、アノードとカソードとの間の電解質として機能する。
【0181】
上に記載したように、一部の実施形態において、固体複合材組成物は、電池のアノードおよびカソードのうちの一方または両方に組み込まれ得る。電解質は、上に記載したような柔軟な固体電解質であっても、液体電解質を含む任意の他の適切な電解質であってもよい。
【0182】
一部の実施形態において、電池は電極/電解質二重層を備え、各層は本明細書に記載されるイオン伝導性固体状複合材料を組み込む。
【0183】
図11Aは、本発明のある特定の実施形態に記載のセルの概略図の一例を示す。セルは、負極集電体102と、アノード104と、電解質/セパレータ106と、カソード108と、正極集電体110とを備える。負極集電体102および正極集電体110は、銅、鋼、金、白金、アルミニウム、およびニッケルなどの任意の適切な電子伝導材料であり得る。一部の実施形態において、負極集電体102は銅であり、正極集電体110はアルミニウムである。集電体は、シート、箔、メッシュ、または発泡体などの任意の適切な形態であり得る。様々な実施形態においては、アノード104、カソード108、および電解質/セパレータ106のうちの1つまたは複数は、上に記載した有機相と無機相とを有する固体状複合材である。一部の実施形態において、アノード104、カソード108、および電解質106のうちの2つ以上は、上に記載した有機相と無機相とを有する固体状複合材である。
【0184】
一部の実施形態において、集電体は対応する電極に埋め込むことができる多孔体である。例えば、それはメッシュであり得る。疎水性ポリマーを有する電極は、箔の形態の場合、集電体に良好には接着しない場合があるが、メッシュは良好な機械的接触を実現する。一部の実施形態において、本明細書に記載される2つの複合材膜をメッシュ集電体に押圧して、電極に埋め込まれた集電体を形成することができる。一部の実施形態において、良好な接着を実現する親水性ポリマーが使用される。
【0185】
図11Bは、本発明のある特定の実施形態に記載の組み立てた状態のリチウム金属セルの概略図の一例を示す。組み立てた状態のセルは、負極集電体102と、電解質/セパレータ106と、カソード108と、正極集電体110とを備える。リチウム金属は、初回充電時に生成され、負極集電体102に膜を形成して、アノードを形成する。電解質106およびカソード108のうちの一方または両方は上に記載した複合材料であり得る。一部の実施形態において、カソード108と電解質106とは、一緒に電極/電解質二重層を形成する。図11Cは、本発明のある特定の実施形態に記載のセルの概略図の一例を示す。セルは、負極集電体102と、アノード104と、カソード/電解質二重層112と、正極集電体110とを備える。二重層における各層は、硫化物導体を有し得る。そのような二重層は、例えば、電解質スラリーを調製し、それを電極層に堆積させることによって調製され得る。
【0186】
電池の全ての構成要素は、公知の技法に従って、アノードおよびカソードとの電気的接続を確立するための外部のリード線または接点を有する好適な剛性または可撓性の容器に含めるかまたは入れることができる。
【0187】
一部の実施形態において、複合材セパレータは、本明細書に記載されるin situ副生成物非生成重合を受ける有機相を有する。一部の実施形態において、電池の一方または両方の電極は、in situ副生成物非生成重合を受け得る有機相を有し得る。一部の実施形態において、複合材セパレータと2つの電極とのそれぞれは別々に形成され、組み立てられる。
【0188】
一部の実装形態において、複合材セパレータと一方または両方の電極とは、本明細書に記載される副生成物非生成反応を介して架橋される。そのような実施形態において、複合材セパレータと一方または両方の電極とは、ポリマーと、副生成物非生成反応基、例えばディールス・アルダー反応基により官能基化される低分子とを含む有機相を有する。一部の実施形態において、ディールス・アルダー反応基により官能基化される分子は、セパレータおよび/または一方もしくは両方の電極の一部であり得る。そのような実施形態において、重合段階中、反応基は複合材セパレータと一方または両方の電極とを架橋し得る。したがって、複合材セパレータと一方または両方の電極とは、副生成物を実質的に含まない架橋ポリマーマトリックスを有する。この技法は、副生成物を形成することなく、より高い機械的特性を有する層内セパレータを備えるフルセルを生じ得る。
(処理)
【0189】
固体状組成物は、任意の適切な方法によって調製することができる。
様々な実施形態においては、in situ重合は、イオン伝導性粒子と、ポリマー前駆体と、存在する場合は任意のバインダ、開始剤、触媒、架橋剤、および他の添加剤とを混合し、次いで重合を開始することによって実施する。これは、以下に記載するように、溶液中または乾式プレスにおいて行われ得る。重合は、密接な粒子間接触を確立するために加圧下で開始および実行してもよい。
【0190】
均一膜は、溶液処理法によって調製することができる。方法の一例では、全ての成分を、超音波破砕機、ホモジナイザ、高速ミキサ、ロータリーミル、竪型ミル、および遊星ボールミルなどの実験室および/または工業機器を使用することによって一緒に混合する。混合メディアを追加して、混合を改善し、凝集体および集合体を砕くことによって均質化を補助し、それによってピンホールおよび高表面粗度などの膜の欠陥を除去することができる。結果として得られる混合物は、ハイブリッド組成物および溶媒含量に基づいて粘度が変動する均一に混合されたスラリーの形態である。流延のための基板は、種々の厚さおよび組成を有することができる。例としては、アルミニウム、銅、およびmylarが挙げられる。無機粒子は、架橋剤の添加の前または同時にスラリーに添加され得るが、全般に架橋後には添加されない。
【0191】
選択された基板上へのスラリーの流延は、種々の工業的方法によって達成することができる。一部の実施形態において、ローラ間でのカレンダ処理、垂直平坦プレス、または静水圧プレスなどの方法によって膜を機械的に高密度化することで(結果として、例えば、最大約50%の厚さ変化を生じる)、多孔性を低減することができる。高密度化プロセスに伴う圧力により、粒子は粒子間の密着を維持することになる。例えば、およそ1MPa~600MPaまたは1MPa~100MPaの外圧が印加される。一部の実施形態において、カレンダロールによって加えられる圧力が使用される。圧力は、未硬化ポリマーがプレス機から押し出されることを回避できるほど十分に低く保たれるが、粒子間接触を実現するのには十分である。架橋を含み得る重合が圧力下で生じ、マトリックスを形成し得る。一部の実装形態において、熱エネルギーの印加または紫外光の照射を使用して重合を開始する熱開始または光開始重合技法が使用される。イオン伝導性無機粒子は、マトリックスに捕捉され、外圧から解放されても密着したままである。上記の方法によって調製される複合材は、例えばペレットであっても薄膜であってもよく、十分に確立されている方法によって実際の固体状リチウム電池に組み込まれる。
【0192】
一部の実施形態において、固体状複合材セパレータは、フルセルの製造プロセス中に副生成物を形成することなく、層内熱硬化性ポリマーによって作製される。例えば、ポリマーと、ディールス・アルダー反応基により官能基化される低分子とは、フルセルのカレンダ段階中に所与の温度および圧力(例えば、60℃~140℃の温度、および0.2ton/cm(200kg/cm)~3ton/cm(3000kg/cm)の圧力)で反応し得る。ポリマーは、セパレータおよび/または電極の一部であり得、ディールス・アルダー反応基により官能基化されている分子は、セパレータおよび/または電極の一部であり得る。(制御された温度および圧力下での)フルセルのカレンダ中の重合は、副生成物を形成することなく、より高い機械的特性を有する層内セパレータを備えるフルセルを生じることができる。
【0193】
一部の実施形態において、膜は溶液中で処理されず、乾式処理される。例えば、膜は押出成形され得る。押出成形または他の乾式処理は、特により高い充填率の有機相において(例えば、有機相が少なくとも30wt%である実施形態において)、溶液処理の代替手段となり得る。
【0194】
図12は、例えば燃料電池のカレンダ中にポリマー鎖を架橋するためのin situ重合を受けるポリマーマトリックス中にイオン伝導性無機粒子を含む複数の流延膜の概略図の一例を提供する。図12の例において、3つの膜、すなわち、第1の電極1201、セパレータ1203、および第2の電極1204はそれぞれ、ポリマーマトリックス中に様々な粒子を含む。各ポリマーマトリックスは、副生成物を形成しない反応基、例えばディールス・アルダー反応基により官能基化され得る。第1の電極、セパレータ、および第2の電極の粒子および他の成分は本明細書の他の箇所で議論される。一部の実施形態において、膜は、膜を高密度化し、イオン伝導性粒子を密着させる加圧を受け得る。外的刺激を加えて重合を開始し、これにより、図12の例では、各膜のポリマーマトリックス1206のポリマー鎖が架橋される。具体的には、第1の電極1201、セパレータ1203、および/または第2の電極1204のポリマーマトリックスは、重合後に別々の膜のポリマーマトリックスと架橋し得る。膜に圧力を印加する実施形態において、圧力は、架橋膜が高密度のままであり、イオン伝導性粒子が密着している場合に解放される。一部の実施形態において、ただ1つの電極膜とセパレータとが存在し、ここで、同じプロセスを使用して、電極とセパレータとが架橋されたポリマーマトリックスを生じ得る。
(結論)
【0195】
前述の実施形態は、理解を明確にすることを目的として、ある程度詳細に記載されたが、ある特定の変更および修正を添付の特許請求の範囲の範囲内で行ってもよいことは明らかだろう。本明細書に開示した実施形態は、これらの具体的な詳細の一部または全てを伴わずに行ってもよい。他の場合では、周知のプロセス工程は、本開示の実施形態を不必要に曖昧なものとしないために、詳細には記載していない。さらに、本開示の実施形態は具体的な実施形態と共に記載されるが、その具体的な実施形態は本開示の実施形態を限定することを意図するものではないことが理解されるだろう。本実施形態のプロセス、システム、および装置を実装する多くの代替的な手段が存在することに留意すべきである。したがって、本実施形態は、例示的であり制限的ではないと見なされるべきであり、実施形態は本明細書に示された詳細に限定されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
【国際調査報告】