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特表2023-521071Trk-Bに基づく治療剤、医薬組成物、及び関連するバイオマーカー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】Trk-Bに基づく治療剤、医薬組成物、及び関連するバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20230516BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230516BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230516BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230516BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230516BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230516BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61K38/46
A61P25/28 ZNA
A61K35/76
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/12
A61P25/00
A61P39/02
A61P25/08
A61P21/04
A61P25/14
A61P25/16
A61P9/10
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
A61P3/10
A61P21/02
A61P25/02
A61P27/02
A61K47/42
C07K14/47
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560514
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 PT2021050011
(87)【国際公開番号】W WO2021201710
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2004832.8
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
3.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】521511793
【氏名又は名称】インスティテュート・デ・メディチーナ・モレキュラ・ジョアオ・ロボ・アントゥネス
(71)【出願人】
【識別番号】507158709
【氏名又は名称】ウニベルシダデ デ コインブラ
(71)【出願人】
【識別番号】522390065
【氏名又は名称】ファカルダーデ・デ・メディチーナ・ダ・ウニベルシダーデ・デ・リスボン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ジョゼ・デ・オリヴェイラ・ディオゲネス・ノゲイラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン・フィリペ・フォンセカ・ゴメス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・ジェロニモ・サントス
(72)【発明者】
【氏名】アナ・マリア・フェレイラ・デ・ソウザ・セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・バンデイラ・ドゥアルテ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045CB07
2G045DA36
2G045FB03
2G045FB07
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC11
4C076CC21
4C076CC27
4C076EE41N
4C076FF34
4C076FF36
4C076FF39
4C076FF63
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA18
4C084DC22
4C084NA11
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA051
4C084ZA052
4C084ZA061
4C084ZA062
4C084ZA121
4C084ZA122
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA181
4C084ZA182
4C084ZA201
4C084ZA202
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA401
4C084ZA402
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZC371
4C084ZC372
4C084ZC521
4C084ZC522
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA11
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA06
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA20
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA40
4C086ZA70
4C086ZA94
4C086ZC37
4C086ZC52
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA11
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZA05
4C087ZA06
4C087ZA12
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZA18
4C087ZA20
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA40
4C087ZA70
4C087ZA94
4C087ZC37
4C087ZC52
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045CA45
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、医薬組成物、治療剤、ペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、細胞、及び医薬の同定、並びに処置の方法におけるそれらの使用に関する。例えば、神経病理学的な状態、特にアルツハイマー病の処置。更に、バイオマーカー、その使用のための方法、診断方法、疾患の進行をモニターする方法、及び医薬の効能、特にアルツハイマー病に関する医薬の効能をモニターするための方法が本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロポミオシン受容体キナーゼB-全長(TrkB-FL)タンパク質の部分を含む医薬組成物であって、前記部分が、TrkB-FLのカルパイン切断部位にまたがるものである、医薬組成物。
【請求項2】
前記部分が由来するTrkB-FLタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号1に従う、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記TrkB-FLの部分が、TrkB-FLカルパイン切断部位のN末端側における残基の1~10個を含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記TrkB-FLの部分が、配列番号5に従うアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記TrkB-FLの部分が、TrkB-FLカルパイン切断部位のC末端側における残基の1~10個を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記TrkB-FLの部分が、配列番号12に従うアミノ酸配列を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記TrkB-FLの部分が、5~20又は8~12残基の長さである、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記TrkB-FLの部分が、10残基の長さである、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記TrkB-FLの部分のアミノ酸配列が、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従う、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記TrkB-FLの部分のアミノ酸配列が、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従い、前記配列内に1つ又は複数の置換、保存的置換、修飾、又は置き換えを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
トロポミオシン受容体キナーゼB-全長細胞内ドメイン(TrkB-ICD)を産生するTrkB-FLのカルパイン切断を防止することができる、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
血液脳関門を通過して神経細胞に入る前記TrkB-FLの部分の送達に好適である、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
細胞透過性ペプチドを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
細胞透過性ペプチドが、トランス活性化している転写活性化因子(TAT)である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
細胞透過性ペプチドのアミノ酸配列が、配列番号21に従う、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、医薬的に許容される安定剤、若しくは医薬的に許容される保存剤の少なくとも1つ、又はそれらのあらゆる組合せを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
単離されたTrkB-FLの部分を含むポリペプチドであって、単離されたTrkB-FLの部分が、TrkB-FLのカルパイン切断部位にまたがるものである、ポリペプチド。
【請求項18】
単離された部分が由来するTrkB-FLタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号1に従う、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項19】
単離されたTrkB-FLの部分が、TrkB-FLカルパイン切断部位のN末端側における残基の1~10個を含む、請求項17又は18に記載のポリペプチド。
【請求項20】
単離されたTrkB-FLの部分が、配列番号5に従うアミノ酸配列を含む、請求項17又は18に記載のポリペプチド。
【請求項21】
単離されたTrkB-FLの部分が、TrkB-FLカルパイン切断部位のC末端側における残基の1~10個を含む、請求項17から20のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
単離されたTrkB-FLの部分が、配列番号12に従うアミノ酸配列を含む、請求項17から20のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項23】
単離されたTrkB-FLの部分が、5~20又は8~12残基の長さである、請求項17から22のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
単離されたTrkB-FLの部分が、10残基の長さである、請求項17から22のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
単離されたTrkB-FLの部分のアミノ酸配列が、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従う、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項26】
単離されたTrkB-FLの部分のアミノ酸配列が、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従い、前記配列内に1つ又は複数の置換、保存的置換、修飾、又は置き換えを含む、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項27】
TrkB-ICDを産生するTrkB-FLのカルパイン切断を防止することができる、請求項17から26のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項28】
血液脳関門を通過して神経細胞に入る単離されたTrkB-FLの部分の送達に好適である、請求項17から27のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項29】
細胞透過性ペプチドを含む、請求項17から28のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項30】
細胞透過性ペプチドが、TATである、請求項29に記載のポリペプチド。
【請求項31】
細胞透過性ペプチドのアミノ酸配列が、配列番号21に従う、請求項30に記載のポリペプチド。
【請求項32】
リンカーを含む、請求項17から31のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項33】
リンカーが、アミノ酸残基KKを含む、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項34】
配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従うアミノ酸配列を含み、配列番号21に従うアミノ酸配列を更に含む、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項35】
配列番号18に従うアミノ酸配列、リンカー、及び配列番号21に従うアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項36】
配列番号18に従うアミノ酸配列、アミノ酸残基KKを含むリンカー、及び配列番号21に従うアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項37】
配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、又は配列番号28に従うアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項38】
列挙されたアミノ酸配列内に、1つ又は複数の置換、保存的置換、修飾、又は置き換えを含む、請求項34から37のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項39】
請求項1から10のいずれか一項に規定のTrkB-FLの部分をコードする核酸。
【請求項40】
請求項17から38のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項41】
請求項39又は請求項40に記載の核酸を含む遺伝子構築物又はベクター。
【請求項42】
請求項1から10のいずれか一項に規定のTrkB-FLの部分、請求項17から38のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項39若しくは40に記載の核酸、又は請求項41に記載の遺伝子構築物若しくはベクターを含む細胞。
【請求項43】
請求項17から42のいずれか一項に記載のポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞を含む医薬組成物。
【請求項44】
医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、医薬的に許容される安定剤、若しくは医薬的に許容される保存剤の少なくとも1つ、又はそれらのあらゆる組合せを含む、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
医薬として使用するための、請求項1から44のいずれか一項に記載の医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞。
【請求項46】
アルツハイマー病(AD)を処置する、ADを防止する、ADを緩和する、ADの進行を遅延させる、又はADの少なくとも1つの症状を低減する方法における使用のための、請求項1から44のいずれか一項に記載の医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞。
【請求項47】
神経病理学的な状態の少なくとも1つの症状を処置する、防止する、緩和する、その進行を遅延させる、又は低減する方法における使用のための、請求項1から44のいずれか一項に記載の医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞。
【請求項48】
興奮毒性を特徴とする病的状態の少なくとも1つの症状を処置する、防止する、緩和する、その進行を遅延させる、又は低減する方法における使用のための、請求項1から44のいずれか一項に記載の医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞。
【請求項49】
病的状態が、てんかん、プリオン様疾患、筋ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、虚血、卒中、又は脳外傷から選択される、請求項48に記載の使用のための医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞。
【請求項50】
TrkB-FL切断に関連する病的状態の少なくとも1つの症状を処置する、防止する、緩和する、その進行を遅延させる、又は低減する方法における使用のための、請求項1から44のいずれか一項に記載の医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞。
【請求項51】
病的状態が、うつ病、不安、双極性障害、統合失調症、肥満症、自閉症、レット症候群、網膜神経節細胞の喪失、加齢、筋萎縮性側索硬化症(ルーゲーリック病)、ダウン症候群の有害な神経学的合併症、糖尿病性末梢性ニューロパチー、又は他のタイプの末梢性ニューロパチーから選択される、請求項50に記載の使用のための医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞。
【請求項52】
ADに冒された対象を処置するための方法であって、処置を必要とする対象への、治療有効量の請求項1から44のいずれか一項に記載の医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞の投与を含む、方法。
【請求項53】
神経病理学的な状態、興奮毒性を特徴とする病的状態、てんかん、プリオン様疾患、筋ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、虚血、卒中、脳外傷、TrkB-FL切断に関連する病的状態、うつ病、不安、双極性障害、統合失調症、肥満症、自閉症、レット症候群、網膜神経節細胞の喪失、加齢、筋萎縮性側索硬化症(ルーゲーリック病)、ダウン症候群の有害な神経学的合併症、糖尿病性末梢性ニューロパチー、又は他のタイプの末梢性ニューロパチーに冒された対象を処置するための方法であって、処置を必要とする対象への、治療有効量の請求項1から44のいずれか一項に記載の医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞の投与を含む、方法。
【請求項54】
処置するための方法が、ADに関連する認知の欠陥の低減又は逆転をもたらす、請求項46に記載の使用のための医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、若しくは細胞、又は請求項52に記載の方法。
【請求項55】
ADのバイオマーカーとしての、TrkB-FL、TrkB-ICD、TrkB-T'、TrkB-T':TrkB-FLの比率、又はTrkB-ICD:TrkB-FLの比率の使用。
【請求項56】
ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、
i)対象から得られた試料で測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を、参照量と比較する工程、並びに
ii)
a)TrkB-FLの前記量が前記参照量より低い場合、及び/若しくはTrkB-ICDの前記量が前記参照量より高い場合、前記対象がADを有することを決定する工程、若しくは前記対象が、参照量によって表されるものより進行したADのステージを有することを決定する工程;又は
b)TrkB-FL及び/若しくはTrkB-ICDの前記量が前記参照量と同じであるか若しくは類似している場合、前記対象が、参照量によって表されたものと同じADのステージ若しくはAD診断を有することを決定する工程;又は
c)TrkB-FLの前記量が前記参照量より高い場合、及び/若しくはTrkB-ICDの前記量が前記参照量より低い場合、前記対象がADを有さないことを決定する工程、若しくは前記対象が、参照量によって表されるものより進行していないADのステージを有することを決定する工程
を含む、方法。
【請求項57】
工程i)の前に、対象から得られた試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程を更に含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、
i)対象から得られた試料で測定されたTrkB-T'の量を、参照量と比較する工程、及び
ii)
a)TrkB-T'の前記量が前記参照量より高い場合、前記対象がADを有することを決定する工程、若しくは前記対象が、参照量によって表されるものより進行したADのステージを有することを決定する工程;又は
b)TrkB-T'の前記量が前記参照量と同じであるか若しくは類似している場合、前記対象が、参照量によって表されたものと同じADのステージ若しくはAD診断を有することを決定する工程;又は
c)TrkB-T'の前記量が前記参照量より低い場合、前記対象がADを有さないことを決定する工程、若しくは前記対象が、参照量によって表されるものより進行していないADのステージを有することを決定する工程
を含む方法。
【請求項59】
工程i)の前に、対象から得られた試料におけるTrkB-T'の量を測定する工程を更に含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
参照量が、疾患発症の前に前記対象から決定された、軽度のADの診断の後に前記対象から決定された、中程度のADとの診断の後に前記対象から決定された、重度のADとの診断の後に前記対象から決定された、又は処置の前に前記対象から決定された、ADを有さない対象、軽度のADを有する対象、中程度のADを有する対象、重度のADを有する対象における、TrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの量を表す、請求項56から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、
i)対象から得られた試料で測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を参照値と比較する工程、及び
ii)
a)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率が前記参照値より高い場合、前記対象がADを有することを決定する工程、若しくは前記対象が、参照値によって表されたものより進行したADのステージを有することを決定する工程;又は
b)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率が前記参照値と同じであるか若しくは類似している場合、前記対象が、参照値によって表されたものと同じADのステージ若しくはAD診断を有することを決定する工程;又は
c)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率が前記参照値より低い場合、前記対象がADを有さないことを決定する工程、若しくは対象が参照値によって表されたものより進行していないADのステージを有することを決定する工程
を含む方法。
【請求項62】
工程i)の前に、対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定し、前記試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程を更に含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、
i)対象から得られた試料で測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率を参照値と比較する工程、及び
ii)
a)前記TrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値より高い場合、前記対象がADを有することを決定する工程、若しくは前記対象が、参照値によって表されたものより進行したADのステージを有することを決定する工程;又は
b)前記TrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値と同じであるか若しくは類似している場合、前記対象が、参照値によって表されたものと同じADのステージ若しくはAD診断を有することを決定する工程;又は
c)前記TrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値より低い場合、前記対象がADを有さないことを決定する工程、若しくは対象が参照値によって表されたものより進行していないADのステージを有することを決定する工程
を含む方法。
【請求項64】
工程i)の前に、対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定し、前記試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程を更に含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
参照値が、疾患発症の前に前記対象から決定された、軽度のADの診断の後に前記対象から決定された、中程度のADとの診断の後に前記対象から決定された、重度のADとの診断の後に前記対象から決定された、又は処置の前に前記対象から決定された、ADを有さない対象、軽度のADを有する対象、中程度のADを有する対象、重度のADを有する対象における、TrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を表す、請求項61から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象を表す参照値と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又は少なくとも300%増加する場合、前記対象がADと診断される、請求項61から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
ADの処置のための方法であって、
i)請求項56から66のいずれか一項に規定のADのステージを決定するための方法;
ii)軽度、中程度、又は重度のADを有するとして対象を同定する工程;及び
iii)前記対象に処置を施す工程
を含む方法。
【請求項68】
処置が、請求項1から44のいずれか一項に記載の医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞の投与を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
処置が、コリンエステラーゼ阻害剤及び/又はNMDAアンタゴニストの投与を含む、請求項67又は68に記載の方法。
【請求項70】
ADを診断するための方法であって、
i)軽度認知機能障害を有する第1の対象から得られた試料において測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を、少なくとも1人のADを有さない対象から得られた参照値と比較する工程、及び
ii)
a)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率が、前記参照値と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、若しくは少なくとも300%増加する場合、第1の対象がADを有することを決定する工程;又は
b)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率若しくはTrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値と比較して増加していない場合、第1の対象がADを有さないことを決定する工程
を含む方法。
【請求項71】
工程i)の前に:
軽度認知機能障害を有する第1の対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定し、TrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程;並びに/又は
軽度認知機能障害を有する第1の対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定し、TrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程
を更に含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、
i)ADを有する対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの量及び第1の試料を得てから経過した時間に基づいて、TrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの予測される量を計算する工程;並びに
ii)対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの量を、TrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの前記予測される量と比較する工程;並びに
iii)
a)第2の試料におけるTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量より高い場合、第2の試料におけるTrkB-ICBの量がTrkB-ICBの予測される量より低い場合、及び/若しくは第2の試料におけるTrkB-T'の量がTrkB-T'の予測される量より低い場合、処置が有効であることを決定する工程;又は
b)第2の試料におけるTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量より低いか若しくはそれと同じである場合、第2の試料におけるTrkB-ICBの量がTrkB-ICBの予測される量より高いか若しくはそれと同じである場合、及び/若しくは第2の試料におけるTrkB-T'の量がTrkB-T'の予測される量より高いか若しくはそれと同じである場合、処置が有効ではないことを決定する工程
を含む方法。
【請求項73】
工程i)の前に、対象から得られた第1の試料におけるTrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程、並びに工程ii)の前に、対象への薬剤の投与の後に前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-T'、TrkB-FL、及びTrkB-ICDの量を測定する工程を更に含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、
i)ADを有する対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率及び第1の試料を得てから経過した時間に基づいて、予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程;並びに
ii)対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を、前記予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率と比較する工程;並びに
iii)
a)第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より低い場合、処置が有効であることを決定する工程、若しくは第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率が予測されるTrkB-T':TrkB-FLの比率より低い場合、処置が有効であることを決定する工程;又は
b)第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より高いか若しくはそれと同じである場合、処置が有効ではないことを決定する工程、若しくは第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率が、予測されるTrkB-T':TrkB-FLの比率より高いか若しくはそれと同じである場合、処置が有効ではないことを決定する工程
を含む方法。
【請求項75】
工程i)の前に:
対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定し、第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに工程ii)の前に、対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定し、第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程;又は
対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定し、第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに工程ii)の前に、対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定し、第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程
を更に含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、
i)ADを有する対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、並びに
ii)前記第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに
iii)前記対象に薬剤を投与する工程、並びに
iv)前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、並びに
v)前記第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに
vi)
a)第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より低い場合、処置が有効であることを決定する工程;又は
b)第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より高い場合、処置が有効ではないことを決定する工程
を含む方法。
【請求項77】
薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、
i)ADを有する対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、並びに
ii)前記第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに
iii)前記対象に薬剤を投与する工程、並びに
iv)前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、並びに
v)前記第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに
vi)
a)第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率が第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率より低い場合、処置が有効であることを決定する工程;又は
b)第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率が第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率より高い場合、処置が有効ではないことを決定する工程
を含む方法。
【請求項78】
前記試料が、脳脊髄液(CSF)、血液、血漿、血清、又は唾液である、請求項56から77のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物、治療剤、ペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、細胞、及び医薬の同定、並びに処置の方法におけるそれらの使用に関する。例えば、神経病理学的な状態、特にアルツハイマー病の処置。更に、バイオマーカー、その使用のための方法、診断方法、疾患の進行をモニターする方法、及び医薬の効能、特にアルツハイマー病に関する医薬の効能をモニターするための方法が本明細書で提供される。
【背景技術】
【0002】
脳由来神経栄養因子(BDNF)及びその全長の同種の受容体であるトロポミオシン受容体キナーゼB-全長(TrkB-FL)は、ニューロンの分化、成長、並びにシナプス伝達及び可塑性を調節することが可能である。このシグナル伝達経路は、発達中の、及び成熟した脳において最も重要な神経保護システムの1つを形成する1
【0003】
BDNF機能の調節異常は、アルツハイマー病(AD)等の持続的な神経変性に至る数々の疾患との関与が示されている。ADはすでに、世界的に認知症の最も一般的な形態であり、その罹患率は、更に増加すると予測される。
【0004】
BDNF及びTrkB-FLのレベルは、ADを有するヒト患者の脳で減少していることが示された2~4。本発明者らはこれまでに、アミロイド-β(Aβ)がTrkB-FLの切断を引き起こすメカニズムを説明している。簡単に言えば、Aβペプチドは、シナプス外NMDARを導入して細胞内Ca2+レベルを上方調節することで5、カルパインの過剰活性化及びTrkB-FL切断を引き起こす6。この切断は、2つの生成物:(1)明らかな機能を有さない膜結合型の短縮化された受容体(TrkB-T');及び(2)細胞内断片(TrkB-ICD)を生成する。本発明者らは、この細胞内断片が長時間にわたり細胞核中に累積し、強いチロシンキナーゼ活性を呈示することを示す7
【0005】
Tejedaらは、カルパイン切断部位にまたがるTrkB-FLの部分(TFL518と称される)を含むペプチドの作用を試験し8、このペプチドが神経保護性ではないことを報告した。したがって、Tejedaらは、開示されたペプチドが治療剤ではなく、医薬組成物での使用に好適ではないことを報告した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Guptaら、Int. J. Mol. Sci. 2013、14(5)、10122~1014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
神経病理学的な状態、特にADの処置のための戦略を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様において、トロポミオシン受容体キナーゼB-全長(TrkB-FL)タンパク質の部分を含む医薬組成物であって、前記部分が、TrkB-FLのカルパイン切断部位にまたがるものである、医薬組成物が提供される。
【0009】
一実施形態において、部分の由来となるTrkB-FLタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1によっていてもよい。
【0010】
一部の実施形態において、TrkB-FLの部分は、TrkB-FLカルパイン切断部位のN末端側における残基の1~10個を含んでいてもよい。TrkB-FLの部分は、配列番号5に従うアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0011】
一部の実施形態において、TrkB-FLの部分は、TrkB-FLカルパイン切断部位のC末端側における残基の1~10個を含んでいてもよい。TrkB-FLの部分は、配列番号12に従うアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0012】
一部の実施形態において、TrkB-FLの部分は、5~20又は8~12残基の長さであり得る。TrkB-FLの部分は、10残基の長さであり得る。
【0013】
一部の実施形態において、TrkB-FLの部分のアミノ酸配列は、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従っていてもよい。TrkB-FLの部分のアミノ酸配列は、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従っていてもよく、前記配列内に1つ又は複数の置換、保存的置換、修飾、又は置き換えを含む。
【0014】
医薬組成物は、トロポミオシン受容体キナーゼB-全長細胞内ドメイン(TrkB-ICD)を産生するTrkB-FLのカルパイン切断を防止することができる。
【0015】
一部の実施形態において、医薬組成物は、血液脳関門を通過して神経細胞に入るTrkB-FLの部分の送達に好適であり得る。医薬組成物は、細胞透過性ペプチドを含んでいてもよい。細胞透過性ペプチドは、トランス活性化している転写活性化因子(TAT)であり得る。細胞透過性ペプチドのアミノ酸配列は、配列番号21によっていてもよい。
【0016】
一部の実施形態において、医薬組成物は、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、医薬的に許容される安定剤、若しくは医薬的に許容される保存剤の少なくとも1つ、又はそれらのあらゆる組合せを含んでいてもよい。
【0017】
本発明の別の態様において、単離されたTrkB-FLの部分を含むポリペプチドであって、単離されたTrkB-FLの部分が、TrkB-FLのカルパイン切断部位にまたがるものである、ポリペプチドが提供される。
【0018】
一実施形態において、単離された部分の由来となるTrkB-FLタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に従う。
【0019】
一部の実施形態において、単離されたTrkB-FLの部分は、TrkB-FLカルパイン切断部位のN末端側における残基の1~10個を含んでいてもよい。単離されたTrkB-FLの部分は、配列番号5に従うアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0020】
一部の実施形態において、単離されたTrkB-FLの部分は、TrkB-FLカルパイン切断部位のC末端側における残基の1~10個を含んでいてもよい。単離されたTrkB-FLの部分は、配列番号12に従うアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0021】
一部の実施形態において、単離されたTrkB-FLの部分は、5~20又は8~12残基の長さであり得る。単離されたTrkB-FLの部分は、10残基の長さであり得る。
【0022】
一部の実施形態において、単離されたTrkB-FLの部分のアミノ酸配列は、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従っていてもよい。単離されたTrkB-FLの部分のアミノ酸配列は、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従っていてもよく、前記配列内に1つ又は複数の置換、保存的置換、修飾、又は置き換えを含む。
【0023】
ポリペプチドは、TrkB-ICDを産生するTrkB-FLのカルパイン切断を防止することができる。
【0024】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、血液脳関門を通過して神経細胞に入る単離されたTrkB-FLの部分の送達に好適であり得る。ポリペプチドは、細胞透過性ペプチドを含んでいてもよい。細胞透過性ペプチドは、TATであり得る。細胞透過性ペプチドのアミノ酸配列は、配列番号21によっていてもよい。
【0025】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、リンカーを含んでいてもよい。リンカーは、アミノ酸残基KKを含んでいてもよい。
【0026】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従うアミノ酸配列を含んでいてもよく、配列番号21に従うアミノ酸配列を更に含んでいてもよい。
【0027】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号18に従うアミノ酸配列、リンカー、及び配列番号21に従うアミノ酸配列を含んでいてもよい。ポリペプチドは、配列番号18に従うアミノ酸配列、アミノ酸残基KKを含むリンカー、及び配列番号21に従うアミノ酸配列を含んでいてもよい。ポリペプチドは、配列番号22、配列番号23、又は配列番号24に従うアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0028】
本発明のポリペプチドは、アミノ酸配列内に、1つ又は複数の置換、保存的置換、修飾、又は置き換えを含んでいてもよい。
【0029】
本発明の別の態様において、本明細書で開示されるTrkB-FLのいずれかの部分をコードする核酸が提供される。
【0030】
本発明の別の態様において、本発明のポリペプチドをコードする核酸が提供される。
【0031】
本発明の別の態様において、本発明の核酸を含む遺伝子構築物又はベクターが提供される。
【0032】
本発明の別の態様において、本明細書で開示されるTrkB-FLのいずれかの部分、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、又は本発明による遺伝子構築物又はベクターを含む細胞が提供される。
【0033】
本発明の別の態様において、本発明によるポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞を含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、医薬的に許容される安定剤、若しくは医薬的に許容される保存剤の少なくとも1つ、又はそれらのあらゆる組合せを含んでいてもよい。
【0034】
本発明の別の態様において、医薬として使用するための、本発明による医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞が提供される。
【0035】
一部の実施形態において、本発明による医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞は、アルツハイマー病(AD)を処置する、ADを防止する、ADを緩和する、ADの進行を遅延させる、又はADの少なくとも1つの症状を低減する方法における使用のためであり得る。
【0036】
一部の実施形態において、本発明による医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞は、神経病理学的な状態の少なくとも1つの症状を処置する、防止する、緩和する、その進行を遅延させる、又は低減する方法における使用のためであり得る。
【0037】
一部の実施形態において、本発明による医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞は、興奮毒性を特徴とする病的状態の少なくとも1つの症状を処置する、防止する、緩和する、その進行を遅延させる、又は低減する方法における使用のためであり得る。病的状態は、てんかん、プリオン様疾患、筋ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、虚血、卒中、又は脳外傷から選択され得る。
【0038】
一部の実施形態において、本発明による医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞は、TrkB-FL切断に関連する病的状態の少なくとも1つの症状を処置する、防止する、緩和する、その進行を遅延させる、又は低減する方法における使用のためであり得る。病的状態は、うつ病、不安、双極性障害、統合失調症、肥満症、自閉症、レット症候群、網膜神経節細胞の喪失、加齢、筋萎縮性側索硬化症(ルーゲーリック病)、ダウン症候群の有害な神経学的合併症、糖尿病性末梢性ニューロパチー、又は他のタイプの末梢性ニューロパチーから選択され得る。
【0039】
本発明の別の態様において、ADに冒された対象を処置するための方法であって、処置を必要とする対象への、治療有効量の本発明による医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞の投与を含む、方法が提供される。
【0040】
本発明の別の態様において、神経病理学的な状態、興奮毒性を特徴とする病的状態、てんかん、プリオン様疾患、筋ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、虚血、卒中、脳外傷、TrkB-FL切断に関連する病的状態、うつ病、不安、双極性障害、統合失調症、肥満症、自閉症、レット症候群、網膜神経節細胞の喪失、加齢、筋萎縮性側索硬化症(ルーゲーリック病)、ダウン症候群の有害な神経学的合併症、糖尿病性末梢性ニューロパチー、又は他のタイプの末梢性ニューロパチーに冒された対象を処置するための方法であって、処置を必要とする対象への、治療有効量の本発明による医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞の投与を含む、方法が提供される。
【0041】
一部の実施形態において、本発明の医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞は、ADに関連する認知の欠陥の低減又は逆転をもたらすために使用することができる。
【0042】
本発明の別の態様において、ADのバイオマーカーとしての、TrkB-FL、TrkB-ICD、TrkB-T'、TrkB-T':TrkB-FLの比率、又はTrkB-ICD:TrkB-FLの比率の使用が提供される。
【0043】
本発明の別の態様において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、
i)対象から得られた試料で測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を、参照量と比較する工程、並びに
ii)
a)TrkB-FLの前記量が前記参照量より低い場合、及び/若しくはTrkB-ICDの前記量が前記参照量より高い場合、前記対象がADを有することを決定する工程、若しくは前記対象が、参照量によって表されるものより進行したADのステージを有することを決定する工程;又は
b)TrkB-FL及び/若しくはTrkB-ICDの前記量が前記参照量と同じであるか若しくは類似している場合、前記対象が、参照量によって表されたものと同じADのステージ若しくはAD診断を有することを決定する工程;又は
c)TrkB-FLの前記量が前記参照量より高い場合、及び/若しくはTrkB-ICDの前記量が前記参照量より低い場合、前記対象がADを有さないことを決定する工程、若しくは前記対象が、参照量によって表されるものより進行していないADのステージを有することを決定する工程
を含む、方法が提供される。
【0044】
本方法は、工程i)の前に、対象から得られた試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程を更に含んでいてもよい。
【0045】
本発明の別の態様において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、
i)対象から得られた試料で測定されたTrkB-T'の量を、参照量と比較する工程、及び
ii)
a)TrkB-T'の前記量が前記参照量より高い場合、前記対象がADを有することを決定する工程、若しくは前記対象が、参照量によって表されるものより進行したADのステージを有することを決定する工程;又は
b)TrkB-T'の前記量が前記参照量と同じであるか若しくは類似している場合、前記対象が、参照量によって表されたものと同じADのステージ若しくはAD診断を有することを決定する工程;又は
c)TrkB-T'の前記量が前記参照量より低い場合、前記対象がADを有さないことを決定する工程、若しくは前記対象が、参照量によって表されるものより進行していないADのステージを有することを決定する工程
を含む、方法が提供される。
【0046】
本方法は、工程i)の前に、対象から得られた試料におけるTrkB-T'の量を測定する工程を更に含んでいてもよい。
【0047】
一部の実施形態において、参照量は、疾患発症の前に前記対象から決定された、軽度のADの診断の後に前記対象から決定された、中程度のADとの診断の後に前記対象から決定された、重度のADとの診断の後に前記対象から決定された、又は処置の前に前記対象から決定された、ADを有さない対象、軽度のADを有する対象、中程度のADを有する対象、重度のADを有する対象における、TrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの量を表し得る。
【0048】
本発明の別の態様において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、
i)対象から得られた試料で測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を参照値と比較する工程、及び
ii)
a)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率が前記参照値より高い場合、前記対象がADを有することを決定する工程、若しくは前記対象が、参照値によって表されたものより進行したADのステージを有することを決定する工程;又は
b)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率が前記参照値と同じであるか若しくは類似している場合、前記対象が、参照値によって表されたものと同じADのステージ若しくはAD診断を有することを決定する工程;又は
c)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率が前記参照値より低い場合、前記対象がADを有さないことを決定する工程、若しくは対象が参照値によって表されたものより進行していないADのステージを有することを決定する工程
を含む方法が提供される。
【0049】
本方法は、工程i)の前に、対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、並びに前記試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程を更に含んでいてもよい。
【0050】
本発明の別の態様において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、
i)対象から得られた試料で測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率を参照値と比較する工程、及び
ii)
a)前記TrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値より高い場合、前記対象がADを有することを決定する工程、若しくは前記対象が、参照値によって表されたものより進行したADのステージを有することを決定する工程;又は
b)前記TrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値と同じであるか若しくは類似している場合、前記対象が、参照値によって表されたものと同じADのステージ若しくはAD診断を有することを決定する工程;又は
c)前記TrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値より低い場合、前記対象がADを有さないことを決定する工程、若しくは対象が参照値によって表されたものより進行していないADのステージを有することを決定する工程
を含む方法が提供される。
【0051】
本方法は、工程i)の前に、対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定し、前記試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程を更に含んでいてもよい。
【0052】
一部の実施形態において、参照値は、疾患発症の前に前記対象から決定された、軽度のADの診断の後に前記対象から決定された、中程度のADとの診断の後に前記対象から決定された、重度のADとの診断の後に前記対象から決定された、又は処置の前に前記対象から決定された、ADを有さない対象、軽度のADを有する対象、中程度のADを有する対象、重度のADを有する対象における、TrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を表し得る。
【0053】
一部の実施形態において、対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象を表す参照値と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又は少なくとも300%増加する場合、対象は、ADと診断することができる。
【0054】
本発明の別の態様において、ADを診断するための方法であって、
i)軽度認知機能障害を有する第1の対象から得られた試料において測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を、少なくとも1人のADを有さない対象から得られた参照値と比較する工程、及び
ii)
a)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率が、前記参照値と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、若しくは少なくとも300%増加する場合、第1の対象がADを有することを決定する工程;又は
b)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率若しくはTrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値と比較して増加していない場合、第1の対象がADを有さないことを決定する工程
を含む方法が提供される。
【0055】
本方法は、工程i)の前に:
軽度認知機能障害を有する第1の対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定し、TrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程; 並びに/又は
軽度認知機能障害を有する第1の対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定し、TrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程
を更に含んでいてもよい。
【0056】
本発明の別の態様において、薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、
i)ADを有する対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの量及び第1の試料を得てから経過した時間に基づいて、TrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの予測される量を計算する工程;並びに
ii)対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの量を、TrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの前記予測される量と比較する工程;並びに
iii)
a)第2の試料におけるTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量より高い場合、第2の試料におけるTrkB-ICBの量がTrkB-ICBの予測される量より低い場合、及び/若しくは第2の試料におけるTrkB-T'の量がTrkB-T'の予測される量より低い場合、処置が有効であることを決定する工程;又は
b)第2の試料におけるTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量より低いか若しくはそれと同じである場合、第2の試料におけるTrkB-ICBの量がTrkB-ICBの予測される量より高いか若しくはそれと同じである場合、及び/若しくは第2の試料におけるTrkB-T'の量がTrkB-T'の予測される量より高いか若しくはそれと同じである場合、処置が有効ではないことを決定する工程
を含む方法が提供される。
【0057】
本方法は、工程i)の前に、対象から得られた第1の試料におけるTrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程、並びに工程ii)の前に、対象への薬剤の投与の後に前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-T'、TrkB-FL、及びTrkB-ICDの量を測定する工程を更に含んでいてもよい。
【0058】
本発明の別の態様において、薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、
i)ADを有する対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率及び第1の試料を得てから経過した時間に基づいて、予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程;並びに
ii)対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を、前記予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率と比較する工程;並びに
iii)
a)第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より低い場合、処置が有効であることを決定する工程、若しくは第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率が予測されるTrkB-T':TrkB-FLの比率より低い場合、処置が有効であることを決定する工程;又は
b)第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より高いか若しくはそれと同じである場合、処置が有効ではないことを決定する工程、若しくは第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率が、予測されるTrkB-T':TrkB-FLの比率より高いか若しくはそれと同じである場合、処置が有効ではないことを決定する工程
を含む方法が提供される。
【0059】
本方法は、工程i)の前に:
対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定し、第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに工程ii)の前に、対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定し、第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程;又は
対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定し、第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに工程ii)の前に、対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定し、第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程
を更に含んでいてもよい。
【0060】
本発明の別の態様において、薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、
i)ADを有する対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、並びに
ii)前記第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに
iii)前記対象に薬剤を投与する工程、並びに
iv)前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、並びに
v)前記第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに
vi)
a)第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より低い場合、処置が有効であることを決定する工程;又は
b)第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より高い場合、処置が有効ではないことを決定する工程
を含む方法が提供される。
【0061】
本発明の別の態様において、薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、
i)ADを有する対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、並びに
ii)前記第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに
iii)前記対象に薬剤を投与する工程、並びに
iv)前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、並びに
v)前記第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、並びに
vi)
a)第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率が第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率より低い場合、処置が有効であることを決定する工程;又は
b)第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率が第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率より高い場合、処置が有効ではないことを決定する工程
を含む方法が提供される。
【0062】
一部の実施形態において、試料は、脳脊髄液(CSF)、血液、血漿、血清、又は唾液であり得る。
【0063】
本明細書に記載される態様及び実施形態のいずれも、本明細書に記載の発明の要約、図面、及び/又は発明の詳細な説明で開示される通り、他のあらゆる態様又は実施形態と組み合わせることができる。
【0064】
別段の指定がない限り、本明細書において使用される全ての専門用語や科学用語は、本出願が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0065】
本明細書に記載されるものと類似した、又はそれと同等の方法及び材料を本適用の実施及び試験において使用できるが、好適な方法及び材料を後述する。本明細書で述べられる全ての公報、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0066】
本明細書において引用される参考文献は、特許請求された出願にとっての先行技術であることを認めるものではない。対立する場合、定義を含め本明細書を優先させる。加えて、材料、方法、及び実施例は単なる例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0067】
本開示の他の特徴及び利点は、実施例と共に、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】TrkB-FL切断はAD進行の間に増加し、TAT-TrkBによって防止されることを示す図である。脳TrkB-FL受容体のレベルは、TrkB-ICDレベルの増加と同時に疾患の後期ステージで減少する。脳脊髄液(CSF)において、アルツハイマー病に起因する軽度認知機能障害(MCI)を有する患者(MCI Aβ+)は、非AD患者(MCI Aβ-)と比較した場合、より有意に高いレベルのTrkB-ICDを有する。a.ブラーク病期分類に従ったADの病的状態の分類(上)。抗Trk C末端及び抗β-アクチン抗体でプロービングしたヒト試料のウェスタンブロット(下)。b.a.に提示されるバンド強度の分析。ブラーク病期0-IIに対して正規化したデータ(p<0.05及びp<0.01、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの事後検定、n=7~11)。c.SV2B転写に正規化したTrkB-FL転写(NTRK2遺伝子)レベルの分析。ブラーク病期0-IIに対して正規化したデータ(一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの事後検定、n=11~27)。d.TAT-TrkBの予測された3D構造の分析;アスタリスクは切断部位を示す。e.ニューロン培養物のウェスタンブロット。TrkB-FLのAβによって促進される切断は、Aβインキュベーションの前に1時間又は4時間インキュベートされたTAT-TrkBペプチド(5及び20μM)によって防止された。f.成体ラット脳皮質のホモジネートのウェスタンブロット。TAT-TrkB(20、50μM)は、TrkB-FLのカルパイン媒介切断を防止した。図6a~bにおける定量化。g.脳内皮関門(BEB)のインビトロにおけるTAT-TrkBの移動動態。補足の表2における完全な統計詳細。h.抗Trk C末端でプロービングした、1人の軽度認知機能障害(MCI)を有する患者(MCI Aβ-)及び1人のADに起因するMCIを有する患者(MCI Aβ+)からのヒトCSF試料の代表的なウェスタンブロット。ポンソーをローディング対照として使用した。i.MCI(Aβ-)及びAD(MCI Aβ+)患者からのCSFにおけるTrkB-ICDの免疫反応の平均バンド強度(値はMCI Aβ-に正規化される)。TrkB-ICDレベルは、MCI Aβ-患者と比較した場合、MCI Aβ+患者のCSFにおいて有意に増加する(*p<0.05、マン-ホイットニーノンパラメトリック検定、n=12~20)。
図2】TAT-TrkBがBDNFシナプス作用の喪失を防止したことを示す図である。a.実験設計。b~e.BDNF(30ng/ml)(b)、Aβ(200nM)オリゴマー(c)、TAT-TrkB(20μM)(d)及びTAT-TrkBとAβオリゴマーの両方(e)の非存在下又は存在下における2回の15mMのK+刺激(5~7分及び29~31分で)によって誘発されたシナプトソームからの[3H]グルタメートフラクション放出の時間経過。f.b~eの実験からのS2/S1の比率を描写するヒストグラム。g~j.BDNF(30ng/ml)の非存在下又は存在下におけるθバーストの送達の後の(0分)、ビヒクル(g)又はAβ(200nM)オリゴマー(h)、TAT-TrkB(20μM)(i)及びTAT-TrkBとAβオリゴマーの両方(j)に曝露された海馬切片に対する興奮性シナプス後場電位(fEPSP)のスロープの時間経過。k.g~jにおける記録からのLTPの規模を描写するヒストグラム。補足の表2における完全な統計の詳細。
図3】TAT-TrkBが海馬LTPの脱飽和を防止したことを示す図である。a.実験設計。b.ビヒクル、Aβ(200nM)オリゴマー又はAβオリゴマーとTAT-TrkBの両方(20μM)に曝露された海馬切片に対する、1時間のインターバルによって区切られた3回のθバーストの後のfEPSPスロープの時間経過。c.b.に示される記録からの、及びTAT-TrkB(20μM)単独に曝露された切片からの第1、第2及び第3のLTPの規模を描写するヒストグラム。d.bにおける記録に関する飽和指数(SI)を描写するヒストグラム。e.BDNFのスカベンジャー(TrkB-Fc、2μg/ml)の灌流有り又は灌流なしのいずれかの、AβオリゴマーとTAT-TrkBの両方(20μM)に曝露された切片へのθバーストの送達の後(0分)のfEPSPスロープの時間経過(図2jと同じデータ)。f.eにおける記録からのLTPの規模を描写するヒストグラム。補足の表2における完全な統計の詳細。
図4】減少したTrkB-FLタンパク質レベル(MSによって検出された)が試料収集における死後遅延による影響を受けないことを示す図である。a.液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)を使用したSV2Bタンパク質に正規化したTrkB-FLタンパク質のプロテオーム分析。様々な程度のAD関連の病的状態を有するヒト側頭皮質試料から得られた試料[n=11(0-II)、n=5(III-IV)及びn=16(V-VI)、平均±s.e.m.、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定]。b.ブラーク病期分類に従ったLC-MS/MS試料の時間区分における死後遅延(PMD)の分布。c.LC-MS/MSを使用してヒト側頭皮質試料において定量化したTrkB-FLタンパク質レベルが、PMD時間区分の関数としてプロットされる。本発明者らのコホートにおいて、TrkB-FLレベルはPMDに従って有意に変化しなかった;したがって、PMDは、TrkB-FLレベルとブラーク病期分類との間で見出された関連の交絡因子ではない[n=7(2~3時間)、n=19(4~5時間)及びn=6(6~7時間)、平均±s.e.m.、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定]。補足の表2における完全な統計の詳細。
図5】TAT-TrkBペプチドの失敗した、及び試験されなかったバージョンを示す図である。a.リンカー配列を有さないTAT-TrkBの予測された2次構造を、様々な構造モデル化ソフトウェア(ConSSert、Scratch及びPEP-FOLD)を使用して得た。ConSSertツール:C-コイル;E-ストランド;H-へリックス。Scratch:C-直鎖状の構造;E-伸長したストランド;H-α-へリックス;T-ターン。b.成体ラット脳皮質のホモジネートのウェスタンブロットであり、外因性m-カルパイン(1又は2酵素単位、EU)及びCaCl2(2mM)の両方を添加した場合の、併存するTrkB-ICD形成と共にTrkB-FLタンパク質レベルの減少を示す。TrkB-FL切断及びTrkB-ICD形成は、aにおけるTAT-TrkBペプチドのバージョン(20μM)によって防止されなかった。β-アクチンをローディング対照として使用した。c.DIV8ニューロン培養物のウェスタンブロットであり、Aβインキュベーションを用いたTrkB-FL切断及びTrkB-ICD形成が(1、5、20及び50μM)でのTAT-TrkBペプチドのバージョン(20μM)防止されなかったことを示す。β-アクチンをローディング対照として使用した。d~f.TAT配列と切断部位にまたがる配列とを接続する3つの異なるリンカー配列を使用したTAT-TrkBペプチドの、PEP-FOLDソフトウェアを使用して予測された3D構造の分析。このオンラインサーバーは、これらの3つのペプチドが、aにおけるTAT-TrkBバージョンより強いα-へリックスの含量を予測したことを示す。この3D分析の後、本発明者らは、α-へリックス構造を損なうことなく切断部位がより露出しているため、リンカーとしてKKを有するペプチドを合成した(図1d)。他のリンカー:PP、2つのプロリン(d)、Q、1つのグルタミン(e)及びE、1つのグルタミン酸(f)を試験した。
図6】TAT-TrkBペプチドは、ニューロン培養物の溶解産物からのカルパインのインビトロのアッセイにおいてTrkB-FL切断を防止することができることを示す図である。a~b.1EU(図6a)又は2EU(図6b)のm-カルパイン活性(EU、酵素単位)を用いてアッセイを実行した場合の、TrkB-FL/TrkB-ICDの比率の免疫反応性の濃度測定による定量化からの図1fに提示されるバンド強度の分析。データは、m-カルパイン(1/2EU)及びCaCl2のコインキュベーションに正規化される。c.DIV8ニューロン培養物の溶解産物のウェスタンブロットであり、外因性m-カルパイン(1又は2EU)及びCaCl2(2mM)の両方を添加した場合の、併存するTrkB-ICD形成と共にTrkB-FLタンパク質レベルの減少を示す。50μMのTAT-TrkBペプチドの存在下でTrkB-FL切断及びTrkB-ICD形成が防止された。GAPDHをローディング対照として使用した。d~e.1EU(図6d)又は2EU(図6e)のm-カルパイン活性を用いてアッセイを実行した場合の、TrkB-FL/TrkB-ICDの比率の免疫反応性の濃度測定による定量化からのc.に提示されるバンド強度の分析。データは、m-カルパイン(1/2EU)及びCaCl2のコインキュベーションに正規化される。
図7】TAT-TrkBペプチドとのインキュベーション後に血液内皮関門(BEB)のインビトロモデルの完全性が維持されることを示す図である。a.BEBのインビトロモデルは、bEnd.3細胞が培養されるインサートを有するトランスウェルシステムを含む。このモデルにおいて、頂上のチャンバーは血液区画の複製であり、一方で側底面のチャンバーは脳区画の複製である。TAT-TrkB-6-FAM及びFD4プローブを頂上側に添加した;試料を両方のチャンバーから収集し、蛍光を測定した。b.各TAT-TrkBペプチド移動アッセイの後(図1g)、FD4蛍光プローブを頂上のチャンバーに添加し、その2時間後に試料を収集した。未処置細胞(陰性対照)及びEGTA処置細胞(陽性対照)も平行して試験した。両方のチャンバーで検出された総蛍光に正規化した側底面のチャンバーで検出された蛍光をy軸に表す。予想通りに、恐らく密着結合の崩壊のために、未処置細胞と比較して、EGTAは膜の透過性を有意に増加させた。一方で、TAT-TrkBペプチドの存在下における頂上のチャンバーからのFD4のクリアランスはごくわずかであったことから、細胞関門に穴がなく傍細胞の漏出がないことが言える(各条件につきn=3、データポイントは3連の平均、平均±s.e.m.、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定)。補足の表2における完全な統計の詳細。
図8】Aβ種の特徴付けを示す図である。a.異なるAβ種(単量体、オリゴマー及びフィブリル)のSDS-PAGE分離。種をAβに対してプロービングした。単量体Aβは、12kDaより低いMWを有する単一のバンドでのみ検出されたことから、Aβ単量体のMWで保持されていたことが示唆される。オリゴマーは、主として38~225kDaのMWに存在していた。フィブリルは、高いMW(>150kDa)に優勢に存在していた。b.Aβ種をDLSのサイズ(流体力学的径)によって分析し、分布は、散乱光強度パーセンテージの関数としてプロットされる(単量体は青色;オリゴマーは赤色;フィブリルは緑色)(n=3つのAβバッチ)。DLSは、単量体Aβと比較して、オリゴマー及び線維性Aβの両方のよりヘテロジニアスな粒度分布を解明し、両方の場合において2500nmを超える流体力学的径を有する粒子が有意に増加した。
図9】Aβオリゴマー及びフィブリルが、ニューロンの死、樹状突起棘の喪失を誘導し、自発的な興奮性伝達を損なうことを示す図である。a.(i)ビヒクル(Veh)、(ii)Aβ(200nM)単量体(AβM)、(iii)Aβオリゴマー(AβO)及び(iv)Aβフィブリル(AβF)との24時間のインキュベーション後の、ヨウ化プロピジウム(PI)及びMAP2(ニューロンマーカー)で標識された一次ニューロン培養物の代表的な画像。スケールバー:200μm(左のパネル)。MAP2及びPIで共染色することによって評価した場合の、一次ニューロン培養物のニューロンの死のパーセンテージを描写するヒストグラム(条件当たりn=5つの独立した細胞培養物からの5つ、平均±s.e.m.、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定)(右のパネル)。b.ビヒクル(Veh)、Aβ(200nM)単量体(AβM)、オリゴマー(AβO)又はフィブリル(AβF)への曝露の24時間後にMTTアッセイによって評価した場合の正規化した細胞生存率のパーセンテージを描写するヒストグラム(条件当たりn=5つの独立した細胞培養からの5つ、平均±s.e.m.、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定)。c.ビヒクル(Veh)、Aβ(200nM)単量体(AβM)、オリゴマー(AβO)又はフィブリル(AβF)への曝露の24時間後における10μm当たりの樹状突起の定量化を描写するヒストグラム(条件当たりn=5つの独立した細胞培養からの5つ、平均±s.e.m.、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定)(左のパネル)。樹状突起棘の代表的な画像は、条件ごとに示される(右のパネル)。d~e.ビヒクル(Veh;n=4つの培養物からの13種の細胞)、Aβ(200nM)単量体(AβM;n=4つの培養物からの10種の細胞)、オリゴマー(AβO;n=4つの培養物からの13種の細胞)又はフィブリル(AβF;n=4つの培養物からの16種の細胞)に24時間曝露された一次ニューロン培養細胞物からの記録されたmEPSC事象の頻度(d)及び振幅(e)の値を描写するヒストグラム(平均±s.e.m.、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定)。f.各条件の代表的なmEPSCトレーシングが示される。補足の表2における完全な統計の詳細。
図10】明らかな細胞死の非存在下でAβオリゴマー及びフィブリルへの短時間の曝露がすでに求心性線維によって誘発された興奮性伝達を損なうことを示す図である。a.(i~iv)ビヒクル(Veh)、(v~viii)Aβ(200nM)単量体、(ix~xii)オリゴマー及び(xiii~xvi)フィブリルとの3時間のインキュベーション後のヘキスト(DNAマーカー)、MAP2(ニューロンマーカー)及びPIで標識された急性海馬切片の代表的な画像。スケールバー:300μm。b~c.ビヒクル(Veh)、Aβ(200nM)単量体(AβM)、オリゴマー(AβO)又はフィブリル(AβF)との3時間のインキュベーション後の海馬切片のCA1及びCA3領域におけるニューロンの死のパーセンテージ(b)及び全体の死亡(c)を描写するヒストグラム(条件当たりn=8つの切片、8匹の動物、平均±s.e.m.、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定)。d.ビヒクル又はAβ(200nM)単量体(AβM)、オリゴマー(AβO)又はフィブリル(AβF)と3時間インキュベートした海馬切片からの入力/出力曲線(条件当たりn=7~8つの切片、7~8匹のラット)であり、fEPSPスロープは、シナプス前線維斉射(PSFV)振幅の関数としてプロットされる。データは、非線形フィッティングを用いた平均±s.e.mである(左のパネル)。各条件±標準誤差につきフィッティングされた曲線の上位パラメーターを描写するヒストグラム(条件当たりn=7~8つの切片、7~8匹のラット、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定)(右のパネル)。e.集団スパイク振幅はfEPSPスロープの関数としてプロットされる;集団スパイクが惹起された全ての場の応答からのデータが組み入れられた。ラインは、リニアフィッティングを表す(条件当たりn=7~8つの切片、7~8匹のラット)(左のパネル)。集団スパイク振幅/fEPSPスロープの比率を描写するヒストグラム(条件当たりn=7~8つの切片、7~8匹のラット、平均±s.e.m.、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定)(右のパネル)。f.ビヒクル又はAβ(200nM)単量体、オリゴマー又はフィブリルとインキュベートした海馬切片からの、異なる刺激間のインターバル(ISI)で(10ms、20ms、50ms、70ms、100ms、150ms)で惹起された平均PPF比率(fEPSPの2つのスロープ/fEPSPの1つのスロープ)(条件当たりn=5つの切片、5匹のラット)。データは平均±s.e.mである。補足の表2における完全な統計の詳細。
図11】Aβ単量体及びフィブリルはグルタメート放出及び海馬LTPへのBDNF作用を損なわなかったことを示す図である。a~b 5~7分及び29~31分での、2分の持続時間の2回の15mMのK+刺激によって誘発された[3H]グルタメートのフラクション放出における平均した正規化された変化の時間経過。9分でBDNF(30ng/ml)を添加し、水平のバーによって示した通り、実験の終わりまで灌流溶液中でそのままにした(黒丸)。同じシナプトソームバッチ(白丸)と平行して、BDNFの非存在下の対照曲線を得た。事前にAβ(200nM)単量体(AβM;a;n=6実験、12匹のラット)又はフィブリル(AβF;b;n=5回の実験、10匹のラット)に曝露された海馬切片からシナプトソームバッチを調製した。データは平均±s.e.mである。c.a~bにおける実験からのS2/S1の比率を描写するヒストグラム(平均±s.e.m.、対応のあるt検定)。d~e.Aβ(200nM)単量体(AβM;d;条件当たりn=5つの切片、5匹のラット)又はフィブリル(AβF;e;n=6つの切片、6匹のラット、BDNFの非存在下;n=7つの切片、7匹のラット、BDNFの存在下)に曝露された海馬切片への、BDNFの非存在下(白丸)又は存在下(30ng/ml、黒丸)における弱いθバーストの送達の後(0分)のfEPSPスロープにおける平均した正規化された変化の時間経過。データは平均±s.e.mである。f.d~eに示される記録からのLTPの規模を描写するヒストグラム(平均±s.e.m.、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定)。補足の表2における完全な統計の詳細。
図12】カルパイン阻害が海馬LTPへのAβオリゴマー及びフィブリルの有害な作用を防止することを示す図である。a.実験設計の図解。b.ビヒクル(n=8つの切片、8匹のラット)又はAβ(200nM)単量体(n=7つの切片、7匹のラット)、オリゴマー(n=8つの切片、8匹のラット)又はフィブリル(n=8つの切片、8匹のラット)に曝露された海馬切片への、1時間のインターバルによって区切られた(0分、60分、120分)3回の弱いθバーストの送達の後のfEPSPスロープにおける平均した正規化された変化の時間経過。データは平均±s.e.mである。c.MDL28170(20μM)と、ビヒクル(n=7匹の異なるラットからの7つの切片)又はAβ(200nM)オリゴマー(n=7つの切片、7匹のラット)又はフィブリル(n=4つの切片、4匹のラット)のいずれかとの両方に曝露された海馬切片への、1時間のインターバルによって区切られた(0分、60分、120分)3回の弱いθバーストの送達の後のfEPSPスロープにおける平均した正規化された変化の時間経過。データは平均±s.e.mである。d.b~cに示される記録からの第1、第2及び第3のLTPの規模を描写するヒストグラム。データは平均±s.e.mである。e.b~cにおける記録に関する飽和指数(SI)を描写するヒストグラム(上記で示されたn、平均±95%CI、一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較検定)。補足の表2における完全な統計の詳細。
図13】切り取り前のゲルの画像及び分子量標準でのウェスタンブロットを示す図である。図1a、1e及び1f並びに図5b、5c及び5cからの代表的なウェスタンブロット画像の切り取り前の画像(赤色で囲んだ部分)。3つの異なる分子量標準:Invitrogen社のSeeBlue Plus2 Pre-stained Standard(図1a)、NZYTech社のProtein Marker II(図1e、1f及び6c)及びBio-Rad社のPrecision Plus Protein(図5b及び5c)を使用した。一部の場合において、再プロービングすることなく2つの異なる染色を同時に可能にするために、抗体染色の前に膜をカットした。「図1a-第2のWB」において「*」で識別された試料は、その低い品質のために定量化されず、場合によっては欠陥のある試料調製物によって立証された。
図14】TrkB-FL及びTrkB-ICDタンパク質レベル、加えてTrkB-ICD/TrkB-FLの比率の可能性のあるバイオマーカー適用に関する予備データを示す図である。a.抗Trk(C-14)抗体でプロービングされた、ADの病態生理学的状態を有する及び有さないと診断されている患者から得られたCSF試料のウェスタンブロット及びローディング対照としてのポンソーでの染色。b.a.に提示された、AD診断を有さないMCI患者に正規化したTrkB-FLタンパク質レベルの定量化。c.a.に提示された、AD診断を有さないMCI患者に正規化したTrkB-ICDタンパク質レベルの定量化。d.a.に提示される、AD診断を有さないMCI患者に正規化したTrkB-ICD/TrkB-FLタンパク質レベルの定量化。
図15】一次皮質ニューロンにおけるTrkB-ICDの過剰発現がトランスクリプトミクスに影響を与え、長期持続記録、加えてアルツハイマー病に関連することを示す図である。B1.一次ニューロンのレンチウイルス形質導入及び結果起こるRNA及びタンパク質抽出の実験タイムライン。B2.TrkB-ICD-を発現するニューロンをeGFPを発現するニューロンと比較した場合の、上方及び下方調節された遺伝子に関連する生物学的プロセスの同定。B3.TrkB-ICDを発現するニューロンをeGFPを発現するニューロンと比較した場合の、上方及び下方調節された遺伝子に関連する細胞区画の同定。B4.TrkB-ICDを発現するニューロンをeGFPを発現するニューロンと比較した場合の、上方及び下方調節された遺伝子に関連する疾患の同定。B5.表意文字-染色体マップ-TrkB-ICD断片により誘導されたトランスクリプトームの変更を表す。
図16】野生型動物の海馬におけるTrkB-ICD過剰発現が行動力や不安の変化を起こすことなく記憶障害を促進する(新規物体認識試験)ことを示す図である。C1.野生型動物の海馬内のレンチウイルス形質導入の実験タイムライン及び結果起こる行動、C2.実行された行動試験、C3.オープンフィールド試験:平均速さ及び移動した距離(行動力を評価する人)及び中央のゾーンで費やした時間(不安を評価する人)の定量化。C4.高架式十字迷路試験:オープンアームへの進入及びそこで費やした時間の定量化(不安を評価する人)。C5.モーリスの水迷路試験:連続する4日間でプラットフォームを発見するための潜時を表す学習曲線。C6.モーリスの水迷路試験:プラットフォームの横断回数の定量化、加えてプラットフォームの四分円で費やした時間のパーセンテージ。C7.新規物体認識試験:訓練日の合計及び物体ごとの調査時間。A及びA'は等しい物体を表す。C8.新規物体認識試験:訓練日の合計及び物体ごとの調査時間。A及びBは異なる物体を表し、Bが新規物体である。
図17】野生型動物の海馬におけるTrkB-ICD過剰発現が、二連発刺激の容易化及び反復刺激後(post-tethanic)パルスを変更することなくシナプス可塑性の増加を促進することを示す図である。D1.対照動物又はTrkB-ICD若しくはGFPを発現すること動物からの海馬切片への、弱いθバーストの送達の後(0分)のfEPSPスロープにおける平均した正規化された変化の時間経過。データは平均±s.e.mである。D2.D1における記録からのLTPの規模を描写するヒストグラム。D3.D1における記録からのPTPの規模を描写するヒストグラム。D4.10、20、50、70、及び100msの刺激間におけるPPFのヒストグラム。縦座標は、対照動物又はTrkB-ICD若しくはGFPを発現する動物からの海馬切片における、第2のfEPSPスロープ応答と第1のfEPSPスロープ応答との比率として測定されたPPFの平均値を指す。データは平均±s.e.mである。
図18】TAT-TrkBの効能を評価するためのインビボのパイロット研究を示す図である。A.実験設計のタイムライン。B.生理食塩水(Veh)又はTAT-TrkB(TAT)のいずれかで処置した野生型(WT、青色-グラフ左側の2つのグループ)及び5xFAD(黄色-グラフ右側の2つのグループ)マウスの海馬の両方におけるTrkB-FLレベルの定量化。C.モーリスの水迷路の空間学習プロトコールにおける生理食塩水(veh)又はTAT-TrkB(TAT)で処置したWT及び5xFADによる性能の比較。未処置の又はTAT-TrkBで処置したWT及び5xFAD動物の獲得訓練の4日間にわたる平均逃避潜時の学習曲線。グラフにおける最上の点線は、5xFAD vehである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
これまでに本発明者らにより示された通り、AD中におけるアミロイドβの蓄積がカルパイン活性化を誘導し、それによりTrkB-FL切断及びBDNFの神経調節性の作用の障害が生じる。本明細書において、本発明者らは、TrkB-FLの切断を防止することが可能な薬剤を提供する。
【0070】
本発明の第1の態様において、TrkB-FLの部分を含む医薬組成物であって、前記部分が、TrkB-FLのカルパイン切断部位にまたがるものである、医薬組成物が提供される。
【0071】
本発明者らは、本明細書において、第1の態様による医薬組成物を、細胞、例えば神経細胞に接触させることが、アミロイドβによって誘導されたTrkB-FLの切断を防止できることを実証する。特定の理論に縛られることはないが、本発明者らは、TrkB-FLの部分が、TrkB-FL切断部位に結合することができ、したがってTrkB-FLをカルパイン切断から保護するという仮説を立てている。更に、本発明者らは、第1の態様による医薬組成物の処置を必要とする対象への投与がBDNF活性の障害を防止すると予想され、TrkB-ICDの蓄積を防止すると予想されることを実証する。したがって、ADに関連する認知の欠陥は、処置される、防止される、緩和される、遅延される、又は低減されるであろう。
【0072】
本発明の前に、TrkB-FLの部分が前述の特性を有することが公知ではなかった。Tejedaらは、TrkB-FLのカルパイン切断部位にまたがるTrkB-FLの部分が神経保護剤として使用するのに好適ではないことを教示している8。本発明者らは、この技術的な先入観を克服した。本発明者らは、本明細書において、前記TrkB-FLの部分がまさに所望の活性を有するが、この活性は、TrkB-FLの部分が特定のコンフォメーションをとることを許容される場合、失われる可能性があることを実証する。したがって、機能的な医薬組成物は、TrkB-FLの部分が、コンフォメーショナルな構造の外側に、例えばアルファヘリックスのコンフォメーションの外側に確実に露出されるようにすることによって生成することができる。
【0073】
TrkB-FLは、ヒトTrkB-FLであり得る。
【0074】
TrkB-FLのアミノ酸配列は、以下の通りであり得る:
【化1】
【0075】
カルパイン切断部位は、配列番号1のAsn520とSer521との間である。
【0076】
TrkB-ICDのアミノ酸配列は、以下の通りであり得る:
【化2】
【0077】
TrkB-T'のアミノ酸配列は、以下の通りであり得る:
【化3】
【0078】
タンパク質の「部分」は、本明細書で使用される場合、親タンパク質の、全てではなく一部に一致する配列を有するペプチド又はポリペプチドである。タンパク質の部分は、前記タンパク質の断片であるとみなすことができる。実施形態において、TrkB-FLの部分は、全長TrkB-FLタンパク質から単離されているが、より大きいポリペプチド又は組成物内であってもよい。例えば、TrkB-FL部分は、TrkB-FL由来ではないポリペプチド配列も含むより大きいポリペプチド内に含まれていてもよい。TrkB-FLの部分は、天然ではそれと関連しないアミノ酸配列と隣り合っていてもよい。
【0079】
一実施形態において、特定された部位「にまたがる」ペプチドは、特定された部位のN末端側に少なくとも1つのアミノ酸残基を含んでいてもよく、特定された部位のC末端側に少なくとも1つのアミノ酸残基を含んでいてもよい。例えば、ペプチドは、TrkB-FLのカルパイン切断部位にまたがるように、少なくともAsn520に対応する残基、及び少なくともSer521に対応する残基を含んでいてもよい。一実施形態において、カルパイン切断部位にまたがるTrkB-FLの部分は、TrkB-FLの部分が、TrkB-ICDを産生するTrkB-FLの切断を防止するように切断部位のいずれかの側に十分な残基を含み得る。この活性を確認するために、部分は、本明細書に記載されるインビトロの実験を使用して試験することができる。
【0080】
TrkB-FLの部分は、天然に存在する修飾、あらゆる公知の翻訳後修飾、グリコシル化、ペグ化、人工修飾、又は組合せなどのペプチドへのさらなる修飾を含み得る。
【0081】
一実施形態において、医薬組成物は、本明細書で開示されるTrkB-FLの1つ又は複数の部分を含み得る。一実施形態において、医薬組成物は、組み合わされた、混合された、共有結合で結合した、非共有結合によって結合した、又は融合された、本明細書で開示されるTrkB-FLの複数の部分を含んでいてもよい。一実施形態において、医薬組成物は、融合タンパク質を含んでいてもよく、この場合、融合タンパク質は、1つ又は複数のTrkB-FLの部分、及び任意選択でTrkB-FL由来ではないポリペプチド配列を含む。
【0082】
特定の実施形態において、医薬組成物は、本発明の第2の態様として以下で定義されるポリペプチドを含んでいてもよい。他の実施形態において、医薬組成物は、対象におけるADによる影響を受けたニューロンへのTrkB-FLの部分の送達に好適なナノ粒子ベースの送達系を含んでいてもよい。他の実施形態において、医薬組成物又はナノ粒子ベースの送達システムは、TrkB-FLの部分が会合する抗体、例えばモノクローナル抗体を含んでいてもよい。例えば、TrkB-FLの部分は、切断可能な部分によって抗体に結合していてもよい。モノクローナル抗体は、医薬組成物を脳又は標的ニューロンに標的化することに好適であり得る。例えば、モノクローナル抗体は、脳に見出される、又は関連ニューロンによって発現される抗原への特異性を有していてもよい。
【0083】
他の実施形態において、医薬組成物は、エキソソーム、小胞、ポリマーベースのベクター、脂質ベースのベクター、又は対象におけるADによる影響を受けた脳又はニューロンへのTrkB-FLの部分の送達に好適な他のあらゆる担体を含んでいてもよい。
【0084】
一部の実施形態において、医薬組成物は、血液脳関門(BBB)の透過性を強化するための、又はBBBを介したTrkB-FLの部分の送達を許容するための薬剤を含んでいてもよい。この薬剤は、TrkB-FLの部分と同じ組成物の一部を構成していてもよいし、又は異なる組成物中に存在しており、別々に投与されてもよい。
【0085】
医薬組成物は、TrkB-FLのペプチド部分を対象の関連する神経細胞に送達することが可能なあらゆる送達系との使用に好適であり得る。
【0086】
本発明の第1の態様の医薬組成物は、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、医薬的に許容される安定剤、又は医薬的に許容される保存剤、又はそれらのあらゆる組合せの少なくとも1つを含み得る。
【0087】
一実施形態において、TrkB-FLの部分は、TrkB-FLカルパイン切断部位のN末端側における残基の、1~100、1~75、1~50、1~40、1~30、1~25、1~20、1~15、又は1~10個を含んでいてもよい。例えば、一実施形態において、TrkB-FLの部分は、TrkB-FLのカルパイン切断部位にとってN末端である少なくとも1個及び10個以下の連続する残基を含み得る。特定の例において、TrkB-FLの部分は、配列:N、TN、ITN、GITN(配列番号4)、FGITN(配列番号5)、YFGITN(配列番号6)、QYFGITN(配列番号7)、PQYFGITN(配列番号8)、NPQYFGITN(配列番号9)、又はENPQYFGITN(配列番号10)を含み得る。特定の実施形態において、部分は、TrkB-FLカルパイン切断部位にとってN末端である5つの残基、例えばFGITN(配列番号5)を含んでいてもよい。一実施形態において、部分は、TrkB-FLカルパイン切断部位のC末端側における残基の、1~100、1~75、1~50、1~40、1~30、1~25、1~20、1~15、又は1~10個を含んでいてもよい。例えば、一実施形態において、TrkB-FLの部分は、TrkB-FLのカルパイン切断部位にとってC末端である少なくとも1個及び10個以下の連続する残基を含み得る。特定の例において、TrkB-FLの部分は、配列:S、SQ、SQL、SQLK(配列番号11)、SQLKP(配列番号12)、SQLKPD(配列番号13)、SQLKPDT(配列番号14)、SQLKPDTF(配列番号15)、SQLKPDTFV(配列番号16)、又はSQLKPDTFVQ(配列番号17)を含み得る。特定の実施形態において、部分は、TrkB-FLカルパイン切断部位にとってC末端である5つの残基、例えばSQLKP(配列番号12)を含んでいてもよい。一部の実施形態において、カルパイン切断部位のN末端側及びC末端側における前述の配列は、TrkB-FL部分が、5~20残基の長さ、6~15残基の長さ、7~13残基の長さ、8~12残基の長さ、9~11残基の長さであるように、又は特定の実施形態において10残基の長さであるように、組み合わされていてもよい。
【0088】
別の実施形態において、TrkB-FLの部分は、カルパイン切断部位にまたがっており、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、75、又は100残基の長さである。別の実施形態において、TrkB-FLの部分は、カルパイン切断部位にまたがっており、5残基以下、6残基以下、7残基以下、8残基以下、9残基以下、10残基以下、11残基以下、12残基以下、13残基以下、14残基以下、15残基以下、16残基以下、17残基以下、18残基以下、19残基以下、20残基以下、25残基以下、30残基以下、40残基以下、50残基以下、75残基以下、又は100残基以下の長さである。一部の実施形態において、TrkB-FLの部分は、カルパイン切断部位にまたがっており、5~20残基の長さ、6~15残基の長さ、7~13残基の長さ、8~12残基の長さ、又は9~11残基の長さである。特定の実施形態において、TrkB-FLの部分は、カルパイン切断部位にまたがっており、10残基の長さである。
【0089】
特定の実施形態において、TrkB-FLの部分は、アミノ酸配列FGITNSQLKP(配列番号18)に従う。
【0090】
別の実施形態において、TrkB-FLの部分は、アミノ酸配列PQYFGITNSQLKPDTF(配列番号19)に従う。
【0091】
一実施形態において、TrkB-FLの部分は、アミノ酸配列ITNSQLKPDTFVQH(配列番号20)に従っていてもよい。一部の実施形態において、TrkB-FLの部分は、本明細書で開示される通りであってもよく、アミノ酸配列は、配列番号20に従っていない。一部の実施形態において、TrkB-FLの部分は、カルパイン切断部位にまたがっており、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14残基の長さであり、配列番号20に従っていない。別の実施形態において、TrkB-FLの部分は、カルパイン切断部位にまたがっており、14残基以下、15残基以下、16残基以下、17残基以下、18残基以下、19残基以下、20残基以下、25残基以下、30残基以下、40残基以下、50残基以下、75残基以下、又は100残基以下の長さであり、配列番号20に従っていない。
【0092】
一部の実施形態において、TrkB-FLの部分は、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20に従うアミノ酸配列を含んでいてもよく、これらのペプチドは、この配列内に1つ又は複数の置換、修飾、欠失、又は置き換えを含む。代替アミノ酸残基に関して、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20内の残基の例えば1、2、3、4、又は5つの置換。一部の実施形態において、ポリペプチドは、1~3つの置換を含んでいてもよい。特定の実施形態において、1つ又は複数の置換は、保存的置換である。
【0093】
本明細書で開示されるTrkB-FLタンパク質の部分を含むポリペプチドが本明細書で提供される。したがって、本発明の第2の態様において、単離されたTrkB-FLの部分を含むポリペプチドであって、単離されたTrkB-FLの部分が、TrkB-FLのカルパイン切断部位にまたがる、ポリペプチドが提供される。TrkB-FLの部分は、全長TrkB-FLタンパク質から「単離されている」が、より大きいポリペプチド内である。例えば、TrkB-FLの部分は、TrkB-FL由来ではないポリペプチド配列も含むより大きいポリペプチド内に含まれていてもよい。TrkB-FLの部分は、天然ではそれと関連しないアミノ酸配列と隣り合っていてもよい。本発明の第2の態様と関連した用語「単離された」の使用は、TrkB-FLの部分を含むポリペプチドがTrkB-FLそれ自体であり得ないことを強調するためである。
【0094】
TrkB-FLの部分は、本発明の第2の態様のポリペプチドに含まれる場合、本明細書で開示されるTrkB-FLのいずれかの部分であり得る。本発明の第1の態様の医薬組成物は、本発明の第2の態様のポリペプチドを含んでいてもよい。
【0095】
第2の態様のポリペプチドは、細胞透過性ペプチドを含んでいてもよい。第2の態様のポリペプチドは、それゆえに、本明細書で開示される細胞透過性ペプチド及びTrkB-FLの部分を含むポリペプチドであり得る。
【0096】
細胞透過性ペプチドは、ポリペプチドが血液脳関門を通過し神経細胞に入ることを可能にすることができる。細胞透過性ペプチドは、それゆえに、目的の部位への、例えば欠陥のある神経細胞へのTrkB-FLの部分の送達を容易にすることができる。
【0097】
一部の実施形態において、細胞透過性ペプチドは、トランス活性化している転写活性化因子(TAT)である。TATペプチドは、以下の配列:YGRKKRRQRRR(配列番号21)に従っていてもよい。TrkB-FLの部分の送達を可能にする他のペプチド又は薬剤も、本発明との使用のために好適である。
【0098】
第2の態様のポリペプチドは、本明細書で開示されるTrkB-FLの部分、リンカー、及び本明細書で開示される細胞透過性ペプチドを含んでいてもよい。リンカーは、TrkB-FLの部分を細胞透過性ペプチドに接続していてもよい。
【0099】
リンカーは、ペプチドのコンフォメーションが、TrkB-FLの部分及び細胞透過性ペプチドが機能的なままであるようなコンフォメーションであることを確実にするものであり得る。例えば、リンカーは、TrkB-FLの部分がアルファヘリックスのコンフォメーションをとらないことを確実にするものであり得る。リンカーは、TrkB-FLの部分が露出することを確実にするものであり得る。リンカーは、TrkB-FLの部分がTrkB-FLに結合できることを確実にするものであり得る。ペプチドのコンフォメーションは、実施例で論じられるように、構造的な予測技術によって予測することができる。
【0100】
一実施形態において、リンカーは、アミノ酸残基KKを含む。別の実施形態において、リンカーは、アミノ酸残基KKからなる。
【0101】
別の実施形態において、リンカーは、PP、Q、E、KK、及びそれらの組合せから選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、リンカーは、PP、Q、及びEから選択されるアミノ酸配列からなる。
【0102】
一部の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列に従うTrkB-FLの部分;本明細書で開示されるリンカー;及び本明細書で開示される細胞透過性ペプチドを含んでいてもよい。TrkB-FLの部分は、本明細書で論じられる1つ又は複数の置換、修飾、欠失、又は置き換えを含んでいてもよい。
【0103】
一部の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列に従うTrkB-FLの部分;アミノ酸残基KKを含むリンカー;及び配列番号21を含んでいてもよい。TrkB-FLの部分は、本明細書で論じられる1つ又は複数の置換、修飾、欠失、又は置き換えを含んでいてもよい。
【0104】
特定の実施形態において、本発明の第1の態様の医薬組成物又は第2の態様のポリペプチドは、対象、例えばヒトへの投与に好適であり、神経細胞内におけるTrkB-FLのアミロイドβによって誘導されたカルパイン切断を防止することができる。
【0105】
特定の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、YGRKKRRQRRRKKFGITNSQLKP(配列番号22)に従うアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。一部の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、配列番号22に従うアミノ酸配列を有するペプチドであってもよく、このペプチドは、この配列内に1つ又は複数の置換、修飾、欠失、又は置き換えを含む。代替アミノ酸残基に関して、例えば1、2、3、4、5、6、又は7つの置換。一部の実施形態において、ポリペプチドは、1~3つの置換を含んでいてもよい。特定の実施形態において、1つ又は複数の置換は、保存的置換である。ある特定の実施形態において、TrkB-FLの部分に対応するアミノ酸配列は、1つ又は複数の置換、修飾、欠失、又は置き換えを含んでいてもよい。
【0106】
特定の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、YGRKKRRQRRRKKPQYFGITNSQLKPDTF(配列番号23)に従うアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。一部の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、配列番号23に従うアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよく、このペプチドは、この配列内に1つ又は複数の置換、修飾、欠失、又は置き換えを含む。代替アミノ酸残基に関して、例えば1、2、3、4、5、6、又は7つの置換。一部の実施形態において、ポリペプチドは、1~3つの置換を含んでいてもよい。特定の実施形態において、1つ又は複数の置換は、保存的置換である。ある特定の実施形態において、TrkB-FLの部分に対応するアミノ酸配列は、1つ又は複数の置換、修飾、欠失、又は置き換えを含んでいてもよい。
【0107】
特定の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、YGRKKRRQRRRKKITNSQLKPDTFVQH(配列番号24)に従うアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。一部の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、配列番号24に従うアミノ酸配列を有するペプチドであってもよく、このペプチドは、この配列内に1つ又は複数の置換、修飾、欠失、又は置き換えを含む。代替アミノ酸残基に関して、例えば1、2、3、4、5、6、又は7つの置換。一部の実施形態において、ポリペプチドは、1~3つの置換を含んでいてもよい。特定の実施形態において、1つ又は複数の置換は、保存的置換である。ある特定の実施形態において、TrkB-FLの部分に対応するアミノ酸配列は、1つ又は複数の置換、修飾、欠失、又は置き換えを含んでいてもよい。
【0108】
特定の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、YGRKKRRQRRRPPFGITNSQLKP(配列番号26)、YGRKKRRQRRRQFGITNSQLKP(配列番号27)、又はYGRKKRRQRRREFGITNSQLKP(配列番号28)に従うアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。一部の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、配列番号26~28のいずれかに従うアミノ酸配列を有するペプチドであってもよく、このペプチドは、この配列内に1つ又は複数の置換、修飾、欠失、又は置き換えを含む。代替アミノ酸残基に関して、例えば1、2、3、4、5、6、又は7つの置換。一部の実施形態において、ポリペプチドは、1~3つの置換を含んでいてもよい。特定の実施形態において、1つ又は複数の置換は、保存的置換である。ある特定の実施形態において、TrkB-FLの部分に対応するアミノ酸配列は、1つ又は複数の置換、修飾、欠失、又は置き換えを含んでいてもよい。
【0109】
一部の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、より大きいポリペプチドの一部を構成し得る。他の実施形態において、第2の態様のポリペプチドは、明示的に特定された配列以外の追加のアミノ酸配列を含んでいなくてもよい。
【0110】
本発明の第3の態様において、本明細書で開示されるTrkB-FLの部分をコードする核酸が提供される。
【0111】
本発明の第4の態様において、本発明の第2の態様のポリペプチドをコードする核酸が提供される。
【0112】
本発明の第5の態様において、本発明の第3又は第4の態様の核酸を含む遺伝子構築物又はベクターが提供される。
【0113】
一実施形態において、遺伝子構築物又はベクターは、核酸配列の標的細胞への送達に好適であり得る。別の実施形態において、遺伝子構築物又はベクターは、分子生物学的な技術との使用に好適であり得る。
【0114】
特定の実施形態において、核酸は、本明細書で開示されるTrkB-FLの部分、本明細書で開示されるリンカー、及び本明細書で開示される細胞透過性ペプチドをコードしていてもよい。例えば、核酸は、配列番号19~配列番号24のいずれか1つに従うアミノ酸配列を有するペプチドをコードしていてもよい。別の例において、核酸は、配列番号26~配列番号28のいずれか1つに従うアミノ酸配列を有するペプチドをコードしていてもよい。
【0115】
別の実施形態において、ベクターは、TrkB-FLの部分又は第2の態様のポリペプチドの対象の神経細胞への送達に好適な、ウイルスベクター、又は他の組換えベクターであり得る。例えば、ウイルスベクターは、TrkB-FLの部分が、関連する神経細胞への機能的な作用を可能にする方式で産生されるように、TrkB-FLの部分又は第2の態様のポリペプチドをコードする核酸をヒトAD患者に送達するのに好適であり得る。
【0116】
本明細書で開示されるペプチド、核酸、遺伝子構築物、又はベクターを含む、細胞、例えば宿主細胞、細胞株、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、幹細胞、白血球、骨髄性細胞、又はリンパ球が本明細書で提供される。細胞は、本明細書で開示される処置の方法における使用のためであり得る。細胞は、製造方法における使用に、例えば組換えベクター又はウイルスベクターの産生に好適であり得る。
【0117】
本発明の第2の態様のポリペプチド、本発明の第3又は第4の態様の核酸、本発明の第5の態様のベクター又は遺伝子構築物、又は本明細書で開示される細胞を含む医薬組成物が本明細書で提供される。医薬組成物は、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、医薬的に許容される安定剤、若しくは医薬的に許容される保存剤の少なくとも1つ、又はそれらのあらゆる組合せを含み得る。
【0118】
本発明の第1の態様の医薬組成物、本発明の第2の態様のポリペプチド、本発明の第3若しくは第4の態様の核酸、本発明の第5の態様のベクター若しくは遺伝子構築物、本明細書で開示される細胞、又は本明細書で開示される医薬組成物を含むキットが本明細書で提供される。ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、又は細胞は、貯蔵又は運送に好適な様式であってもよいし、キットは、医薬組成物の調製に好適な希釈剤を更に含んでいてもよい。キットは、容器を含んでいてもよい。キットは、使用説明書を含んでいてもよい。
【0119】
本発明の第6の態様において、本明細書で開示される治療剤又は組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、医薬として使用するため、又は処置の方法で使用するためであってもよい。本明細書で開示される治療剤又は組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、神経病理学的な状態の症状の処置、防止、遅延、緩和、又は低減における使用のためであってもよい。特定の実施形態において、本明細書で開示される治療剤又は組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、アルツハイマー病の症状の処置、防止、緩和、遅延、又は低減における使用のためであってもよい。
【0120】
一実施形態において、本明細書で開示される治療剤又は組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、興奮毒性を特徴とするあらゆる病的状態の処置における使用のためであってもよい。例えば、てんかん、プリオン様疾患、筋ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、虚血、卒中、又は脳外傷。
【0121】
一実施形態において、本明細書で開示される治療剤又は組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、TrkB-FL切断に関連するあらゆる病的状態の処置における使用のためであってもよい(参照により本明細書に組み込まれるGuptaら、Int. J. Mol. Sci. 2013、14(5)、10122~1014;及びUS2004/0110711A1を参照)。例えば、うつ病、不安、双極性障害、統合失調症、肥満症、自閉症、レット症候群、網膜神経節細胞の喪失、又は加齢。他の例において、処置は、筋萎縮性側索硬化症(ルーゲーリック病)、ダウン症候群の有害な神経学的合併症、糖尿病性末梢性ニューロパチー、又は他のタイプの末梢性ニューロパチーのためであり得る。
【0122】
一実施形態において、神経病理学的な状態、例えばアルツハイマー病を有する対象を処置するための方法であって、治療有効量の本明細書で開示される治療剤又は組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物の処置を必要とする対象への投与を含む、方法が開示される。
【0123】
一部の実施形態において、軽度アルツハイマー病を処置する方法が提供される。例えば、本明細書で開示される方法は、アルツハイマー病の前駆期又は初期の処置のためであり得る。処置しようとする対象は、軽度認知機能障害を有していてもよい。
【0124】
一部の実施形態において、中程度のアルツハイマー病を処置する方法が提供される。
【0125】
一部の実施形態において、進行中又は重度のアルツハイマー病を処置する方法が提供される。
【0126】
一部の実施形態において、処置は、ADに関連する認知の欠陥の防止、低減、遅延、又は逆転をもたらすことができる。
【0127】
別の実施形態において、興奮毒性を特徴とする病的状態、例えば、てんかん、プリオン様疾患、筋ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、虚血、卒中、又は脳外傷を有する対象を処置するための方法であって、治療有効量の本明細書で開示される治療剤又は組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物の処置を必要とする対象への投与を含む、方法が開示される。
【0128】
別の実施形態において、TrkB-FL切断に関連する病的状態、例えばうつ病、不安、双極性障害、統合失調症、肥満症、自閉症、レット症候群、網膜神経節細胞の喪失、加齢、筋萎縮性側索硬化症(ルーゲーリック病)、ダウン症候群の有害な神経学的合併症、糖尿病性末梢性ニューロパチー、又は他のタイプの末梢性ニューロパチーを有する対象を処置するための方法であって、治療有効量の本明細書で開示される治療剤又は組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物の処置を必要とする対象への投与を含む、方法が開示される。
【0129】
一実施形態において、本明細書で開示される処置の方法における使用のための医薬組成物又はポリペプチドは、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に従うTrkB-FLの部分を含む。
【0130】
一実施形態において、本明細書で開示されるADを処置する方法における使用のための医薬組成物又はポリペプチドは、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に従うTrkB-FLの部分を含む。
【0131】
一実施形態において、本明細書で開示される卒中を処置する方法における使用のための医薬組成物又はポリペプチドは、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に従うTrkB-FLの部分を含む。
【0132】
一実施形態において、本明細書で開示される処置の方法における使用のための医薬組成物又はポリペプチドは、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、又は配列番号28のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に従うペプチドを含む。
【0133】
一実施形態において、本明細書で開示されるADを処置する方法における使用のための医薬組成物又はポリペプチドは、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、又は配列番号28のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に従うペプチドを含む。
【0134】
一実施形態において、本明細書で開示される卒中を処置する方法における使用のための医薬組成物又はポリペプチドは、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、又は配列番号28のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に従うペプチドを含む。
【0135】
一実施形態において、医薬として使用するための本明細書で開示されるTrkB-FLの部分が開示される。一実施形態において、神経病理学的な状態の症状の処置、防止、遅延、緩和、又は低減における使用のための、本明細書で開示されるTrkB-FLの部分が開示される。一実施形態において、アルツハイマー病の症状の処置、防止、遅延、緩和、又は低減における使用のための、本明細書で開示されるTrkB-FLの部分が開示される。
【0136】
一実施形態において、医薬として使用するための、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するTrkB-FLの部分が開示される。一実施形態において、神経病理学的な状態の症状の処置、防止、遅延、緩和、又は低減における使用のための、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するTrkB-FLの部分が開示される。一実施形態において、アルツハイマー病の症状の処置、防止、遅延、緩和、又は低減における使用のための、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するTrkB-FLの部分が開示される。
【0137】
一実施形態において、医薬として使用するための、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、又は配列番号28のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドが開示される。一実施形態において、神経病理学的な状態の症状の処置、防止、遅延、緩和、又は低減における使用のための、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、又は配列番号28のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドが開示される。一実施形態において、アルツハイマー病の症状の処置、防止、遅延、緩和、又は低減における使用のための、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、又は配列番号28のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドが開示される。
【0138】
一態様において、ADの症状、神経病理学的な状態、興奮毒性を特徴とする病的状態、てんかん、プリオン様疾患、筋ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、虚血、卒中、脳外傷、TrkB-FL切断に関連する病的状態、うつ病、不安、双極性障害、統合失調症、肥満症、自閉症、レット症候群、網膜神経節細胞の喪失、加齢、筋萎縮性側索硬化症(ルーゲーリック病)、ダウン症候群の有害な神経学的合併症、糖尿病性末梢性ニューロパチー、又は他のタイプの末梢性ニューロパチーにおける処置、防止、遅延、緩和、又は低減のための医薬の製造における、本明細書で開示される治療剤又は組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物の使用が本明細書で提供される。
【0139】
本明細書で開示される処置の方法は、単独療法であってもよく、その場合、治療剤又は組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、単独で使用される。代替として、本明細書で開示される処置の方法は、別の活性薬剤と組み合わせて使用してもよい。例えば、BBBの透過性を増加させるための1つ若しくは複数の薬剤、ADの処置のための1つ又は複数の薬剤、又は本明細書で開示されるあらゆる徴候の処置のための1つ又は複数の薬剤。したがって、治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、併用療法における使用のためであってもよい。
【0140】
治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、それが使用されることになる方式に応じて当業界において公知の様々な形態をとっていてもよい。例えば、液剤、散剤、懸濁剤、錠剤、カプセル剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、エアロゾル剤、スプレー剤、ミセル溶液、経皮パッチの形態であるか、又は貯蔵、運送、又は投与にとって好適な他のあらゆる形態である。
【0141】
一部の実施形態において、治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、貯蔵又は運送に好適な様式であってもよい。例えば、必要に応じて、安定剤等の凍結乾燥又は貯蔵のための他の成分を含んでいてもよい凍結乾燥組成物の一部として。代替として、治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、希釈剤を含む溶液の形態であってもよいし、貯蔵又は運送に適切な濃度で存在していてもよい。
【0142】
一部の実施形態において、治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、患者への投与に好適な様式であってもよい。例えば、注射に好適な液体の形態であるか、又は準備工程後の投与に好適な濃縮した形態である。治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、投与のための担体を伴っていてもよいし、滅菌されていてもよい。治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、患者への注射に、例えば静脈注射、皮下注射、又は脳への注射に好適な様式であってもよい。
【0143】
一部の実施形態において、治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、遅延放出組成物の形態で存在していてもよい。
【0144】
治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物の必要な量は、その生物学的活性及び生物学的利用率によって決定され、順に生物学的活性及び生物学的利用率は、投与様式、治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物の生理化学特性、及びそれが単独療法として、又は併用療法で使用されているのかどうかに依存することが理解されるであろう。投与頻度はまた、処置しようとする対象内での薬剤の半減期の影響も受けるであろう。投与される最適な投薬量は、当業者によって決定でき、状況に応じて様々であると予想される。追加の因子は、処置されている特定の対象、疾患、障害、又は状態の進行、対象の年齢、対象の体重、対象の性別、対象の食事、及び投与の時間に依存する可能性がある。
【0145】
一部の例において、治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物は、単回用量、年1回の用量、月1回の用量、週1回の用量、又は1日用量として投与されてもよい。用量は、1日2回又はそれより多くの回数投与されてもよい。一例において、用量は、体重1kg当たり0.001μg~10mg、体重1kg当たり0.01μg~1mg、体重1kg当たり0.05μg~100μg、又は体重1kg当たり0.1μg~10μgであってもよい。一例において、用量は、0.07μg~700mg、0.7μg~70mg、3.5μg~7mg、又は7μg~0.7mgであってもよい。一例において、用量は、少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、又は1012個の細胞であってもよい。
【0146】
本発明の医薬組成物は、さらなる態様において、治療有効量の本発明の治療剤又は組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、又は細胞と、医薬的に許容されるビヒクル、医薬的に許容される担体、医薬的に許容される賦形剤、医薬的に許容される安定剤、又は医薬的に許容される保存剤、又はそれらのあらゆる組合せとを接触させることを含むプロセスを使用して製造してもよい。
【0147】
本発明者らはこれまでに、Aβによって誘導されたカルパイン活性化によりTrkB切断及びBDNFの神経調節性の作用の障害が生じることを示した6
【0148】
本明細書において、本発明者らは、TrkB-FLレベルは、軽度、中程度から重度のアルツハイマー病に進行する間に減少し、それに対してTrkB-ICDのレベルは、この同じ進行期間中に増加することを実証する。したがって、TrkB-FL又はTrkB-ICDのレベルは、AD又はADのステージを示すバイオマーカーとして使用することができる。
【0149】
本発明者らは、バイオマーカーとしてのTrkB-T'、TrkB-FL又はTrkB-ICDの定量化の使用を検証するデータを本明細書に提供する。ADに関連しない軽度認知機能障害を有する患者からの試料を、ADに関連する軽度認知機能障害を有する患者からの試料と比較した。本発明者らは、TrkB-T'、TrkB-FL、TrkB-ICD、TrkB-T':TrkB-FLの比率、又はTrkB-ICD:TrkB-FLの比率はいずれも、アルツハイマー病のためのバイオマーカーとして使用するのに好適であることを示す。特に、TrkB-ICD:TrkB-FLの比率の測定は、軽度認知機能障害を有する対象におけるADのロバストな徴候を提供した。
【0150】
とりわけ、本発明者らはまたアルツハイマー病の進行中のカルパイン活性化のレベルも検査した。カルパイン活性化は、TrkB-FLのレベル、TrkB-ICDのレベル、又はTrkB-ICD:TrkB-FLの比率と比較して、バイオマーカーとしてそれほど有用ではないことが見出された。
【0151】
それゆえに、本発明の別の態様において、アルツハイマー病のためのバイオマーカーとしての、TrkB-FL、TrkB-ICD、TrkB-T'、TrkB-T':TrkB-FLの比率、又はTrkB-ICD:TrkB-FLの比率の使用が提供される。
【0152】
一実施形態において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、i)対象から得られた試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程、並びにii)TrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を、参照量と比較する工程を含む方法が開示される。
【0153】
一実施形態において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、対象から得られた試料で測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を、参照量と比較する工程を含むが開示される。
【0154】
対象から得られた試料における、参照量と比較してより低いTrkB-FLの量は、AD又は参照量によって表されるものより進行したステージのADを示し得る。同じ又は類似したTrkB-FLの量は、参照量によって表されたものと同じステージのADを示し得るか、又は参照がADを有さない患者を表す場合、ADではないことを示し得る。参照量と比較してより高いTrkB-FLの量は、ADではないことを示し得るか、又は参照量によって表されるものより進行していないステージのADを示し得る。対象から得られた試料における、参照量と比較してより高いTrkB-ICDの量は、AD又は参照量によって表されるものより進行したステージのADを示し得る。同じ又は類似したTrkB-ICDの量は、参照量によって表されたものと同じステージのADを示し得るか、又は参照がADを有さない患者を表す場合、ADではないことを示し得る。参照量と比較してより低いTrkB-ICDの量は、ADではないことを示し得るか、又は参照量によって表されるものより進行していないステージのADを示し得る。したがって、本方法は、対象がADを有するかどうかの決定、及び/又はADのステージの決定を可能にする。
【0155】
参照量は、ADを有さない対象におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を表し得る。参照量は、軽度のADを有する対象におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を表し得る。参照量は、中程度のADを有する対象におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を表し得る。参照量は、重度のADを有する対象におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を表し得る。参照量は、疾患発症の前に、ADの診断の後に、軽度のADの診断の後に、中程度のADとの診断の後に、又は重度のADとの診断の後に、同じ対象から決定されたものでもよい。参照量は、1つ若しくは複数の対象から得られてもよいし、又は複数の対象から得られてもよい。参照量は、事前に収集されたデータから、又は事前に収集された試料から計算されたものでもよい。一部の実施形態において、参照量は、試験しようとする対象の年齢、性別、体重、民族性、身体運動の量、又は他の関連因子が考慮に入れられるように調整してもよい。参照量は、代表的な集団で見出されるバイオマーカーの天然のバリエーションを表すか又はそれを考慮に入れてもよく、したがって参照値は範囲であってもよい。
【0156】
一実施形態において、参照量は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量は、TrkB-FLの量が参照量より低いか、及び/又はTrkB-ICDの量が参照量より高い場合、より進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量は、TrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量が参照量と同じであるか又は類似している場合、軽度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量は、TrkB-FLの量が参照量より高いか、及び/又はTrkB-ICDの量が参照量より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0157】
一実施形態において、参照量は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量は、TrkB-FLの量が参照量より低いか、及び/又はTrkB-ICDの量が参照量より高い場合、より進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量は、TrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量が参照量と同じであるか又は類似している場合、中程度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量は、TrkB-FLの量が参照量より高いか、及び/又はTrkB-ICDの量が参照量より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0158】
一実施形態において、参照量は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量は、TrkB-FLの量が参照量より低いか、又はTrkB-ICDの量が参照量より高い場合、より一層進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量は、TrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量が参照量と同じであるか又は類似している場合、重度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量は、TrkB-FLの量が参照量より高いか、及び/又はTrkB-ICDの量が参照量より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0159】
一実施形態において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、i)対象から得られた試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を測定する工程、並びにii)TrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を、参照量と比較する工程を含む方法が開示される。
【0160】
一実施形態において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、対象から得られた試料で測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を、参照量と比較する工程を含む方法が開示される。
【0161】
対象から得られた試料における、参照量と比較してより低いTrkB-FLの量は、AD又は参照量によって表されるものより進行したステージのADを示し得る。同じ又は類似したTrkB-FLの量は、参照量によって表されたものと同じステージのADを示し得るか、又は参照がADを有さない患者を表す場合、ADではないことを示し得る。参照量と比較してより高いTrkB-FLの量は、ADではないことを示し得るか、又は参照量によって表されるものより進行していないステージのADを示し得る。対象から得られた試料における、参照量と比較してより高いTrkB-T'の量は、AD又は参照量によって表されるものより進行したステージのADを示し得る。同じ又は類似したTrkB-T'の量は、参照量によって表されたものと同じステージのADを示し得るか、又は参照がADを有さない患者を表す場合、ADではないことを示し得る。参照量と比較してより低いTrkB-T'の量は、ADではないことを示し得るか、又は参照量によって表されるものより進行していないステージのADを示し得る。したがって、本方法は、対象がADを有するかどうかの決定、及び/又はADのステージの決定を可能にする。
【0162】
参照量は、ADを有さない対象におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を表し得る。参照量は、軽度のADを有する対象におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を表し得る。参照量は、中程度のADを有する対象におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を表し得る。参照量は、重度のADを有する対象におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を表し得る。参照量は、疾患発症の前に、ADの診断の後に、軽度のADの診断の後に、中程度のADとの診断の後に、又は重度のADとの診断の後に、同じ対象から決定されたものでもよい。参照量は、1つ若しくは複数の対象から得られてもよいし、又は複数の対象から得られてもよい。参照量は、事前に収集されたデータから、又は事前に収集された試料から計算されたものでもよい。一部の実施形態において、参照量は、試験しようとする対象の年齢、性別、体重、民族性、身体運動の量、又は他の関連因子が考慮に入れられるように調整してもよい。参照量は、代表的な集団で見出されるバイオマーカーの天然のバリエーションを表すか又はそれを考慮に入れてもよく、したがって参照値は範囲であってもよい。
【0163】
一実施形態において、参照量は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量は、TrkB-FLの量が参照量より低いか、及び/又はTrkB-T'の量が参照量より高い場合、より進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量は、TrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量が参照量と同じであるか又は類似している場合、軽度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量は、TrkB-FLの量が参照量より高いか、及び/又はTrkB-T'の量が参照量より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0164】
一実施形態において、参照量は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-TrkB-T'の量は、TrkB-FLの量が参照量より低いか、及び/又はTrkB-T'の量が参照量より高い場合、より進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量は、TrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量が参照量と同じであるか又は類似している場合、中程度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量は、TrkB-FLの量が参照量より高いか、及び/又はTrkB-T'の量が参照量より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0165】
一実施形態において、参照量は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量は、TrkB-FLの量が参照量より低いか、及び/又はTrkB-T'の量が参照量より高い場合、より一層進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量は、TrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量が参照量と同じであるか又は類似している場合、重度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照量は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量は、TrkB-FLの量が参照量より高いか、及び/又はTrkB-T'の量が参照量より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0166】
別の実施形態において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、i)対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、ii)TrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、並びにiii)TrkB-ICD:TrkB-FLの比率を参照値と比較する工程を含む方法が開示される。
【0167】
別の実施形態において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、対象から得られた試料で測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を参照値と比較する工程を含むが開示される。
【0168】
参照値と比較してより高いTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、AD又は参照値によって表されたものよりより進行したステージにあるADを示し得る。参照値と比較して同じ又は類似したTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、参照値によって表されたものと同じステージのADを示し得るか、又は参照がADを有さない患者を表す場合、ADではないことを示し得る。参照値と比較してより低いTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、ADではないことを示し得るか、又は参照値によって表されたものより進行していないステージのADを示し得る。したがって、本方法は、対象がADを有するかどうかの決定、及び/又はADのステージの決定を可能にする。
【0169】
参照値は、ADを有さない対象におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を表し得る。参照値は、軽度のADを有する対象におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を表し得る。参照値は、中程度のADを有する対象におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を表し得る。参照値は、重度のADを有する対象におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を表し得る。参照値は、疾患発症の前に、ADの診断の後に、軽度のADの診断の後に、中程度のADとの診断の後に、又は重度のADとの診断の後に、同じ対象から決定されたものでもよい。参照値は、1つ若しくは複数の対象から得られてもよいし、又は複数の対象から得られてもよい。参照値は、事前に収集されたデータから、又は事前に収集された試料から計算されたものでもよい。一部の実施形態において、参照値は、試験しようとする対象の年齢、性別、体重、民族性、身体運動の量、又は他の関連因子が考慮に入れられるように調整してもよい。参照値は、代表的な集団で見出されるバイオマーカーの天然のバリエーションを表すか又はそれを考慮に入れてもよく、したがって参照値は範囲であってもよい。
【0170】
一部の実施形態において、対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又は少なくとも300%増加する場合、対象は、ADと診断される。例えば、4:1の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を有する対象は、2:1の代表値と比較して100%増加した比率を有することになる。一部の実施形態において、対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して少なくとも200%増加する場合、対象は、ADと診断される。一部の実施形態において、対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して、少なくとも300%増加する場合、対象は、ADと診断される。したがって、本方法は、対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率に基づいて、対象がADを有するかどうかの決定を可能にする。
【0171】
一部の実施形態において、対象がADと診断される閾値は、試験されている試料に依存する。一部の実施形態において、対象のTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、血漿試料において測定され、測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも40%増加する場合、対象は、ADと診断される。特定の実施形態において、測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して、少なくとも20%増加する場合、対象はADと診断される。
【0172】
一部の実施形態において、対象がADと診断される閾値は、試験されている試料に依存する。一部の実施形態において、対象のTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、CSF試料で測定され、測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%増加する場合、対象は、ADと診断される。特定の実施形態において、測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して、少なくとも40%増加する場合、対象は、ADと診断される。
【0173】
一実施形態において、参照値は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が参照値より高い場合、より進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が参照値と同じであるか又は類似している場合、軽度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が参照値より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0174】
一実施形態において、参照値は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が参照値より高い場合、より進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が参照値と同じであるか又は類似している場合、中程度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が参照値より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0175】
一実施形態において、参照値は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が参照値より高い場合、より一層進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が参照値と同じであるか又は類似している場合、重度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が参照値より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0176】
一実施形態において、試験しようとする対象は、軽度認知機能障害を有していてもよい。別の実施形態において、試験しようとする対象は、認知障害を有していてもよい。他の実施形態において、試験しようとする対象は、軽度、中程度、又は重度のADを有していてもよい。
【0177】
別の実施形態において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、i)対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、ii)TrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、並びにiii)TrkB-T':TrkB-FLの比率を参照値と比較する工程を含む方法が開示される。
【0178】
別の実施形態において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、対象から得られた試料で測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率を参照値と比較する工程を含むが開示される。
【0179】
参照値と比較してより高いTrkB-T':TrkB-FLの比率は、AD又は参照値によって表されたものより進行したステージにあるADを示し得る。参照値と比較して同じ又は類似したTrkB-T':TrkB-FLの比率は、参照値によって表されたものと同じステージのADを示し得るか、又は参照がADを有さない患者を表す場合、ADではないことを示し得る。参照値と比較してより低いTrkB-T':TrkB-FLの比率は、ADではないことを示し得るか、又は参照値によって表されたものより進行していないステージのADを示し得る。したがって、本方法は、対象がADを有するかどうかの決定、及び/又はADのステージの決定を可能にする。
【0180】
参照値は、ADを有さない対象におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を表し得る。参照値は、軽度のADを有する対象におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を表し得る。参照値は、中程度のADを有する対象におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を表し得る。参照値は、重度のADを有する対象におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を表し得る。参照値は、疾患発症の前に、ADの診断の後に、軽度のADの診断の後に、中程度のADとの診断の後に、又は重度のADとの診断の後に、同じ対象から決定されたものでもよい。参照値は、1つ若しくは複数の対象から得られてもよいし、又は複数の対象から得られてもよい。参照値は、事前に収集されたデータから、又は事前に収集された試料から計算されたものでもよい。一部の実施形態において、参照値は、試験しようとする対象の年齢、性別、体重、民族性、身体運動の量、又は他の関連因子が考慮に入れられるように調整してもよい。参照値は、代表的な集団で見出されるバイオマーカーの天然のバリエーションを表すか又はそれを考慮に入れてもよく、したがって参照値は範囲であってもよい。
【0181】
一部の実施形態において、対象の測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象で測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又は少なくとも300%増加する場合、対象は、ADと診断される。例えば、4:1の測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率を有する対象は、2:1の代表値と比較して100%増加した比率を有すると予想される。一部の実施形態において、対象の測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象で測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して少なくとも200%増加する場合、対象は、ADと診断される。一部の実施形態において、対象の測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象で測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して少なくとも300%増加する場合、対象は、ADと診断される。したがって、本方法は、対象の測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率に基づいて、対象がADを有するかどうかの決定を可能にする。
【0182】
一部の実施形態において、対象がADと診断される閾値は、試験されている試料に依存する。一部の実施形態において、対象のTrkB-T':TrkB-FLの比率は、血漿試料において測定され、測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象で測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも40%増加する場合、対象は、ADと診断される。特定の実施形態において、測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象で測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して少なくとも20%増加する場合、対象は、ADと診断される。
【0183】
一部の実施形態において、対象がADと診断される閾値は、試験されている試料に依存する。一部の実施形態において、対象のTrkB-T':TrkB-FLの比率は、CSF試料で測定され、測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象で測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%増加する場合、対象は、ADと診断される。特定の実施形態において、測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象で測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率又は代表的な参照値と比較して、少なくとも40%増加する場合、対象は、ADと診断される。
【0184】
一実施形態において、参照値は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が参照値より高い場合、より進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が参照値と同じであるか又は類似している場合、軽度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、軽度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が参照値より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0185】
一実施形態において、参照値は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が参照値より高い場合、より進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が参照値と同じであるか又は類似している場合、中程度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、中程度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が参照値より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0186】
一実施形態において、参照値は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が参照値より高い場合、より一層進行したステージのADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が参照値と同じであるか又は類似している場合、重度のADを有する対象を示す。一実施形態において、参照値は、重度のADを表し得、この場合、対象から得られた試料における計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率は、計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が参照値より低い場合、ADを有さないか又はそれほど進行していないステージのADを有する対象を示す。
【0187】
一実施形態において、試験しようとする対象は、軽度認知機能障害を有していてもよい。別の実施形態において、試験しようとする対象は、認知障害を有していてもよい。他の実施形態において、試験しようとする対象は、軽度、中程度、又は重度のADを有していてもよい。
【0188】
一実施形態において、ADを診断するための方法であって、i)軽度認知機能障害を有する対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、ii)TrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、並びにiii)計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を、アルツハイマー病を有さない少なくとも1つの対象から得られた参照値と比較する工程を含み、計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、参照値と比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又は少なくとも300%増加していることは、ADを示す、方法が開示される。一実施形態において、計算されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が増加していないか又は前記参照値と比較して5%以下、10%以下、又は15%以下増加していることは、対象がADを有さないことを示し得る。したがって、本方法は、軽度認知機能障害を有する対象がADを有するかどうかの決定を可能にする。
【0189】
一実施形態において、ADを診断するための方法であって、i)軽度認知機能障害を有する対象から得られた試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、ii)TrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、並びにiii)計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率を、アルツハイマー病を有さない少なくとも1つの対象から得られた参照値と比較する工程を含み、計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が、参照値と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又は少なくとも300%増加していることは、ADを示す、方法が開示される。一実施形態において、計算されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が増加していないか又は前記参照値と比較して5%以下、10%以下、又は15%以下増加していることは、対象がADを有さないことを示し得る。したがって、本方法は、軽度認知機能障害を有する対象がADを有するかどうかの決定を可能にする。
【0190】
処置の方法であって、i)本明細書で開示されるADのステージを決定するための方法のいずれかにより、患者を、軽度のADを有するとして同定する工程、及びii)前記患者に処置を施す工程を含む方法も開示される。処置は、本発明のあらゆる医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞の投与を含んでいてもよい。処置は、コリンエステラーゼ阻害剤、例えばドネペジル、リバスチグミン、又はガランタミンの投与を含んでいてもよい。処置は、コリンアルホスセラート、イデベノン(Ideben)、ピラセタム、フマル酸クエチアピン(Qutadac)、トリフルペリドール(Triperidol)、及び/又はシチコリンの投与を含んでいてもよい。
【0191】
処置の方法であって、i)本明細書で開示されるADのステージを決定するための方法のいずれかにより、患者を、中程度のADを有するとして同定する工程、及びii)前記患者に処置を施す工程を含む方法が更に開示される。処置は、本発明のあらゆる医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞の投与を含んでいてもよい。処置は、コリンエステラーゼ阻害剤、例えばドネペジル、リバスチグミン、又はガランタミンの投与を含んでいてもよい。処置は、NMDAアンタゴニスト、例えばメマンティンの投与を含んでいてもよい。処置は、コリンエステラーゼ阻害剤とNMDAアンタゴニストの両方の投与を含んでいてもよい。処置は、コリンアルホスセラート、イデベノン(Ideben)、ピラセタム、フマル酸クエチアピン(Qutadac)、トリフルペリドール(Triperidol)、及び/又はシチコリンの投与を含んでいてもよい。
【0192】
処置の方法であって、i)本明細書で開示されるADのステージを決定するための方法のいずれかにより、患者を、重度のADを有するとして同定する工程、及びii)前記患者に処置を施す工程を含む方法が更に開示される。処置は、本発明のあらゆる医薬組成物、ポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、ベクター、又は細胞の投与を含んでいてもよい。処置は、コリンエステラーゼ阻害剤、例えばドネペジルの投与を含んでいてもよい。処置は、NMDAアンタゴニスト、例えばメマンティンの投与を含んでいてもよい。処置は、コリンエステラーゼ阻害剤とNMDAアンタゴニストの両方の投与を含んでいてもよい。処置は、コリンアルホスセラート、イデベノン(Ideben)、ピラセタム、フマル酸クエチアピン(Qutadac)、トリフルペリドール(Triperidol)、及び/又はシチコリンの投与を含んでいてもよい。
【0193】
他の実施形態において、バイオマーカーとしてのTrkB-FL、TrkB-ICD、TrkB-T'、TrkB-T':TrkB-FLの比率、又はTrkB-ICD:TrkB-FLの比率の使用を含む、診断方法及び疾患のステージを決定するための方法は、興奮毒性、てんかん、プリオン様疾患、筋ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、虚血、卒中、脳外傷、TrkB-FL切断に関連するあらゆる病的状態、うつ病、不安、双極性障害、統合失調症、肥満症、自閉症、レット症候群、網膜神経節細胞の喪失、加齢、筋萎縮性側索硬化症(ルーゲーリック病)、ダウン症候群の有害な神経学的合併症、糖尿病性末梢性ニューロパチー、又は他のタイプの末梢性ニューロパチーを特徴とするあらゆる病的状態に適用することができる。
【0194】
本明細書で開示される診断方法のいずれか及び疾患のステージを決定するための方法のいずれかのために、バイオマーカーが定量化される試料は、CSF、血液、血漿、血清、又は唾液であってもよい。TrkB-FL、TrkB-T'、及び/又はTrkB-ICDの測定は、インビトロであってもよい。TrkB-FL、TrkB-T'、及び/又はTrkB-ICDは、質量分析、ウェスタンブロッティング、又は特異的なタンパク質又はペプチドの同定及び定量化に好適な他の方法によって測定することができる。
【0195】
一部の実施形態において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための本明細書で開示される方法は、処置の効能をモニターするのに使用することができる。特定の実施形態において、ADを診断するための、又はADのステージを決定するための本明細書で開示される方法は、本明細書で開示される処置の効能をモニターするのに使用することができる。
【0196】
本発明の別の態様において、薬剤での処置の効能をモニターするための、TrkB-FL、TrkB-ICD、TrkB-T'、TrkB-T':TrkB-FLの比率、又はTrkB-ICD:TrkB-FLの比率の使用が提供される。
【0197】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程、ii)前記対象に薬剤を投与する工程、並びにiii)対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程を含む方法が開示される。
【0198】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程、並びにii)対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程を含む方法が開示される。
【0199】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を、対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量と比較する工程を含む方法が開示される。
【0200】
一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-FLの量が第1の試料において測定されたTrkB-FLの量より高い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-FLの量が第1の試料において測定されたTrkB-FLの量と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が疾患の進行を遅延させたことを示し得る。一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-FLの量が第1の試料において測定された1-TrkBの量より低い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にする。
【0201】
一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-FLの量は、TrkB-FLの予測される量と比較してもよい。TrkB-FLの予測される量は、第1の試料において測定されたTrkB-FLの量に基づいていてもよいし、第1の試料を得てから第2の試料を得るまでの期間中に、未処置患者の疾患の進行を予測させることによって調整することができる。このような実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量より高い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。第2の試料において測定されたTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。第2の試料において測定されたTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量より低い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にする。
【0202】
一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-ICDの量が第1の試料において測定されたTrkB-ICDの量より高い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-ICDの量が第1の試料において測定されたTrkB-ICDの量と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が疾患の進行を遅延させたことを示し得る。一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-ICDの量が第1の試料において測定された1-TrkBの量より低い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にする。
【0203】
一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-ICDの量が、TrkB-ICDの予測される量と比較してもよい。TrkB-ICDの予測される量は、第1の試料において測定されたTrkB-ICDの量に基づいていてもよいし、第1の試料を得てから第2の試料を得るまでの期間中に、未処置患者の疾患の進行を予測させることによって調整することができる。このような実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-ICDの量が、TrkB-ICDの予測される量より高い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。第2の試料において測定されたTrkB-ICDの量が、TrkB-ICDの予測される量と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。第2の試料において測定されたTrkB-ICDの量が、TrkB-ICDの予測される量より低い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にする。
【0204】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を測定する工程、ii)前記対象に薬剤を投与する工程、並びにiii)対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を測定する工程を含む方法が開示される。
【0205】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を測定する工程、並びにii)対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を測定する工程を含む方法が開示される。
【0206】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を、対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量と比較する工程を含む方法が開示される。
【0207】
一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-FLの量が第1の試料において測定されたTrkB-FLの量より高い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-FLの量が第1の試料において測定されたTrkB-FLの量と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が疾患の進行を遅延させたことを示し得る。一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-FLの量が第1の試料において測定された1-TrkBの量より低い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にする。
【0208】
一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-FLの量は、TrkB-FLの予測される量と比較してもよい。TrkB-FLの予測される量は、第1の試料において測定されたTrkB-FLの量に基づいていてもよいし、第1の試料を得てから第2の試料を得るまでの期間中に、未処置患者の疾患の進行を予測させることによって調整することができる。このような実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量より高い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。第2の試料において測定されたTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。第2の試料において測定されたTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量より低い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にする。
【0209】
一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-T'の量が第1の試料において測定されたTrkB-T'の量より高い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-T'の量が第1の試料において測定されたTrkB-T'の量と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が疾患の進行を遅延させたことを示し得る。一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-T'の量が第1の試料において測定されたTrkB-T'の量より低い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にする。
【0210】
一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-T'の量は、TrkB-T'の予測される量と比較してもよい。TrkB-T'の予測される量は、第1の試料において測定されたTrkB-T'の量に基づいていてもよいし、第1の試料を得てから第2の試料を得るまでの期間中に、未処置患者の疾患の進行を予測させることによって調整することができる。このような実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-T'の量がTrkB-T'の予測される量より高い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。第2の試料において測定されたTrkB-T'の量が、TrkB-T'の予測される量と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。第2の試料において測定されたTrkB-T'の量が、TrkB-T'の予測される量より低い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にする。
【0211】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、ii)前記第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、iii)前記対象に薬剤を投与する工程、iv)前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、並びにv)前記第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程を含む方法が開示される。
【0212】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、及びii)対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程を含む方法が開示される。
【0213】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を、対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率と比較する工程を含む、方法が開示される。
【0214】
一部の実施形態において、第2の試料における測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が第1の試料における測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より高い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。一部の実施形態において、第2の試料における測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が第1の試料における測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示すことができ、疾患の進行の遅延を有する。一部の実施形態において、第2の試料における測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が第1の試料における測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より低い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にすることができる。
【0215】
一部の実施形態において、第2の試料における測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率と比較してもよい。予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率は、第1の試料における測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率に基づいていてもよいし、第1の試料を得てから第2の試料を得るまでの期間中に、未処置患者の疾患の進行を予測させることによって調整することができる。このような実施形態において、第2の試料における測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より高い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。第2の試料における測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。第2の試料における測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より低い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にすることができる。
【0216】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、ii)前記第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、iii)前記対象に薬剤を投与する工程、iv)前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、並びにv)前記第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程を含む方法が開示される。
【0217】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、及びii)対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程を含む方法が開示される。
【0218】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率を、対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率と比較する工程を含む方法が開示される。
【0219】
一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が第1の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率より高い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が第1の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が疾患の進行を遅延させたことを示し得る。一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が第1の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率より低い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にすることができる。
【0220】
一部の実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率は、予測されるTrkB-T':TrkB-FLの比率と比較してもよい。予測されるTrkB-T':TrkB-FLの比率は、第1の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率に基づいていてもよいし、第1の試料を得てから第2の試料を得るまでの期間中に、未処置患者の疾患の進行を予測させることによって調整することができる。このような実施形態において、第2の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が、予測されるTrkB-T':TrkB-FLの比率より高い場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。第2の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が、予測されるTrkB-T':TrkB-FLの比率と同じであるか又は類似している場合、これは、薬剤での処置が有効ではないことを示し得る。第2の試料において測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率が予測されるTrkB-T':TrkB-FLの比率より低い場合、これは、薬剤での処置が有効であることを示し得る。したがって、本方法は、処置が有効であったかどうかの決定を可能にすることができる。
【0221】
前述の薬剤での処置の効能をモニターするための方法は、ADを処置する方法に関連していてもよく、この場合において、本方法は、ADを有する対象から得られた試料で実行される。別の実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法は、本明細書で開示されるあらゆる処置の方法に関連していてもよい。他の実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法は、興奮毒性を特徴とする病的状態、てんかん、プリオン様疾患、筋ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、虚血、卒中、脳外傷、TrkB-FL切断に関連する病的状態、うつ病、不安、双極性障害、統合失調症、肥満症、自閉症、レット症候群、網膜神経節細胞の喪失、加齢、筋萎縮性側索硬化症(ルーゲーリック病)、ダウン症候群の有害な神経学的合併症、糖尿病性末梢性ニューロパチー、又は他のタイプの末梢性ニューロパチーのためのあらゆる処置の方法に関連していてもよい。これらの実施形態において、本方法は、関連する病的状態を有する対象から得られた試料で実行される。
【0222】
一実施形態において、薬剤は、本明細書で開示される治療剤若しくは組成物、ポリペプチド、核酸、ベクター、遺伝子構築物、細胞、又は医薬組成物である。一実施形態において、薬剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物である。一実施形態において、薬剤は、本発明の第2の態様のポリペプチドである。
【0223】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、ii)前記第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、iii)本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与する工程、iv)前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、並びにv)前記第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程を含む方法が開示される。
【0224】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程、並びにii)本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与した後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程を含む方法が開示される。
【0225】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を、本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与した後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量と比較する工程を含む方法が開示される。
【0226】
一実施形態において、薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、i)ADを有する対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、ii)前記第1の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程、iii)本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与する工程、iv)前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-ICDの量を測定する工程、並びにv)前記第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を計算する工程を含む方法が開示される。
【0227】
一実施形態において、薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、i)ADを有する対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程、並びにii)本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与した後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を測定する工程を含む方法が開示される。
【0228】
一実施形態において、薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、ADを有する対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量を、本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与した後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-ICDの量と比較する工程を含む方法が開示される。
【0229】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、ii)前記第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、iii)本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与する工程、iv)前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、並びにv)前記第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程を含む方法が開示される。
【0230】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、i)対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を測定する工程、並びにii)本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与した後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を測定する工程を含む方法が開示される。
【0231】
一実施形態において、薬剤での処置の効能をモニターするための方法であって、対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を、本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与した後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量と比較する工程を含む方法が開示される。
【0232】
一実施形態において、薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、i)ADを有する対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、ii)前記第1の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程、iii)本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与する工程、iv)前記対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及びTrkB-T'の量を測定する工程、並びにv)前記第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程を含む方法が開示される。
【0233】
一実施形態において、薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、i)ADを有する対象から得られた第1の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を測定する工程、並びにii)本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与した後に対象から得られた第2の試料におけるTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を測定する工程を含む方法が開示される。
【0234】
一実施形態において、薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、ADを有する対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量を、本発明の第1の態様の医薬組成物又は本発明の第2の態様のポリペプチドを前記対象に投与した後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-FL及び/又はTrkB-T'の量と比較する工程を含む方法が開示される。
【0235】
本明細書で開示される処置の効能をモニターするための方法のいずれかのために、バイオマーカーが定量化される試料は、CSF、血液、血漿、血清、又は唾液であってもよい。TrkB-FL、TrkB-T'、及び/又はTrkB-ICDの測定は、インビトロであってもよい。TrkB-FL、TrkB-T'、及び/又はTrkB-ICDは、質量分析、ウェスタンブロッティング、又は特異的なタンパク質又はペプチドの同定及び定量化に好適な他の方法によって測定することができる。
【0236】
「対象」は、本明細書で使用される場合、脊椎動物、哺乳動物、又は飼育動物であってもよい。したがって、本発明による医薬は、あらゆる哺乳動物、例えば家畜(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、又はブタ)、ペット(例えばネコ、イヌ、ウサギ、又はモルモット)、実験動物(例えばマウス又はラット)を処置するのに使用してもよいし、又は他の獣医学的用途で使用してもよい。特定の実施形態において、対象は、ヒトである。診断方法、疾患のステージを決定するための方法、又は処置の効能をモニターするための方法は、あらゆる哺乳動物、例えば家畜(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、又はブタ)、ペット(例えばネコ、イヌ、ウサギ、又はモルモット)、実験動物(例えばマウス又はラット)に適用でき、又は、特定の実施形態において、ヒトに適用できる。
【0237】
「置換」は、本明細書で使用される場合、ペプチド中の所与のアミノ酸の別のアミノ酸での置換である。
【0238】
「保存的置換」又は「保存された置換」は、本明細書で使用される場合、ペプチド中の所与のアミノ酸の、類似の特徴を有する別のアミノ酸での置換である。例えば、アミノ酸は、類似の電荷、疎水性、又はサイズを有していてもよい。アミノ酸は、同じクラス内であってもよく、例えば脂肪族、ヒドロキシル又は硫黄含有、芳香族、塩基性、又は酸性のクラス内であってもよい。保存的置換は、表現型ではサイレントである可能性が高い。保存的置換の例は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンのグループ内;又はセリン、システイン、スレオニン、及びメチオニンのグループ内;又はフェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンのグループ内;又はヒスチジン、リシン、及びアルギニンのグループ内;又はアスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、及びグルタミンのグループ内であってもよい。
【0239】
「置き換え」は、本明細書で使用される場合、ペプチド中の所与のアミノ酸の別の部分での置き換えである。
【0240】
「修飾」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸への翻訳後修飾;天然に存在しないアミノ酸をもたらす人工修飾;天然に存在するアミノ酸に付加された部分;アミノ酸又はペプチドに付加された糖残基若しくは修飾された糖残基;ペプチドの1つ又は複数の末端への追加の残基、部分、若しくはキャップ;又は当業界において公知の他の修飾を指すことがある。修飾は、薬剤の安定性を増加させる、薬剤の生物学的利用率を増加させる、薬剤の電荷を変更する目的のため、又は他の所望の作用を達成するためであり得る。
【0241】
「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、対象に投与される場合、測定可能な作用を達成する、所望の作用を達成する、疾患の症状を低減する、疾患を防止する、又は疾患を処置するのに必要な量であるあらゆる量である。
【0242】
「医薬的に許容される」は、本明細書で使用される場合、医薬組成物又は医薬と共に、又はその一部としての使用に好適であるという特性である。
【0243】
「神経病理学的な状態」は、本明細書で使用される場合、対象の神経系組織、例えば脳の異常な機能の原因となる、それを傷つける、又はそれを引き起こすあらゆる状態であってもよい。
【0244】
本明細書で述べられる全ての公報、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により組み込まれる。本明細書において引用される参考文献は、特許請求された出願にとっての先行技術であることを認めるものではない。対立する場合、定義を含め本明細書を優先させる。
【0245】
加えて、材料、方法、及び実施例は単なる例示にすぎず、限定することを意図しない。本開示の他の特徴及び利点は、実施例と共に、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0246】
本明細書に記載される態様及び実施形態のいずれも、発明の要約、図面、又は本発明の具体的未満の非限定的な実施例/実施形態を含む発明の詳細な説明で開示された通り、他のあらゆる態様又は実施形態と組み合わせることができる。
【実施例
【0247】
アルツハイマー病(AD)の病態生理学において、脳由来神経栄養因子(BDNF)シグナル伝達は、アミロイドβ(Aβ)によって引き起こされるTrkB-FLの切断によって障害を起こし、ニューロンの生存、分化及びシナプス生理学が損なわれる。AD患者の事後のヒト脳試料を使用して、本発明者らは、本明細書において、TrkB-FL切断がAD進行の間に増加することを実証する。本発明者らは、この切断を防止し、シナプス伝達及び可塑性に対するBDNFの生理学的作用を回復させる小さいTAT-TrkBペプチドを設計した。
【0248】
AD進行中のバイオマーカーの変化
本発明者らは、疾患の進行の異なるステージのADと診断されたヒト患者からの死後下側頭皮質試料においてTrkB-FL切断を評価した。本発明者らは、ADの進行につれて、TrkB-FLタンパク質レベルの有意な減少及びTrkB-ICD断片のレベルにおける増加を検出した(図1a~b)。この観察は、TrkB-FLの質量分析定量によって確認された(P<0.05;図4a)。TrkB-FL転写レベルは、ADの進行につれて有意に変化せず(P>0.05;図1c)、試料収集までの死後遅延時間は、TrkB-FL切断に影響を与えなかった(P>0.05;図4b~c)。
【0249】
総合すると、これらのデータは、TrkB-FL切断が、(1)正規のBDNFシグナル伝達を損なうこと、及び(2)TrkB-ICD形成のほうを促進することによってAD進行を促進するメカニズムに関与する可能性が潜在的にあり、それによりAβによって引き起こされる毒性を蔓延させる可能性があることを示唆する6、7
【0250】
ADバイオマーカーとしてのTrkB-FL及びTrkB-ICDの使用
本発明者らは、ADと診断されたMCI患者から収集されたCSF試料において、AD診断を有さないMCI患者と比較して、TrkB-FLタンパク質レベルの減少及びTrkB-ICDタンパク質レベルの併存する増加があることを実証した。予備的にすぎないが(図14)、このデータは、これらのタンパク質がバイオマーカー分野で実用的であり得るかどうかを明らかにするための重要な開始点である可能性があった。
【0251】
AD病態生理学における中心的存在としてのTrkB-ICD
本発明者らは、TrkB-ICDが実際に、一次ニューロン及び野生型動物におけるその過剰発現を介して生理学的な環境に影響を及ぼすことを実証した。一次ニューロンのレンチウイルス形質導入を使用して、本発明者らは、TrkB-ICDが、主として細胞区画、シグナル伝達経路及びアルツハイマー病に関連して上方調節される遺伝子であるトランスクリプトームの変更を促進したことを実証した。TrkB-ICDによって誘導されたトランスクリプトームの変更が、21の染色体のうち20に存在することは強調すべきである(図15)。
【0252】
野生型動物におけるレンチウイルスの海馬内注射を介して、本発明者らは、TrkB-ICDを発現する動物が、運動器官及び不安パラメーターを変化させることなく、記憶障害(新規物体認識試験)を呈することを観察した(図16)。行動に関する分析の後、動物を電気生理学的なアッセイによって機能的に評価した。本発明者らは、試験された動物におけるペアパルスの促通及び反復刺激後パルスの変化がなかったことを観察した。しかしながら、長期増強は、シナプス可塑性を測定するために記憶プロセスの神経生理学的な基礎であり、それが、両方の対照グループと比較して、TrkB-ICDを発現する動物において増加した(図17)。
【0253】
簡単に言えば、本発明者らは、TrkB-ICD断片それ自体が、ゲノムの、機能的な、及び行動に関するレベルでの変更によって、正常な生理学において役割を果たすことを観察した。実際には、この断片は単独で、異常なシナプス可塑性及び記憶障害を促進した。
【0254】
治療剤の開発
上述したように、本発明者らは、TrkB-FL切断がAD進行を促進する分子メカニズムに関与する可能性があることを実証した。この発見に照らして、本発明者らは、革新的な薬理学的戦略を考え出した。
【0255】
本発明者らは、TATタンパク質形質導入ドメインに融合した、特徴付けられた切断部位6にまたがるTrkB配列によって構成されるペプチドを設計した(TAT-TrkB;図1d)。この切断部位に結合することによって、本発明者らは、TAT-TrkBがTrkB-FLを切断から保護することを予測した。
【0256】
血液脳関門(BBB)が数々の補足的に投与される薬物に対する障壁となっている。それゆえに、本発明者らは、TAT配列は細胞膜及びBBBを通過して拡散する能力を増加させるため9、10、インビボでの適用に有用であり得る分子を慎重に設計した。
【0257】
検査された第1のTAT-TrkBペプチド(YGRKKRRQRRRPQYFGITNSQLKPDTF;配列番号25)は、他者によって試験された通り8、恐らくそのより弱いα-へリックスコンフォメーションのために11~13、TrkB-FL切断を防止することができなかった(図5a~c)。したがって、後続の設計のために、本発明者らは、TATドメインとTrkB-FL切断部位との間にリンカーを含めた14
【0258】
3D構造予測アルゴリズムを使用して、本発明者らは異なるリンカーを試験し(図1d図5d~f)、次いでより強いα-へリックスコンフォメーション及びより大きいTrkB-FL切断部位の露出を提示するペプチド選択した(図1d)。
【0259】
検査したペプチド配列は、以下の通りであった:i)YGRKKRRQRRRPQYFGITNSQLKPDTF(リンカーなし);ii)YGRKKRRQRRRPPFGITNSQLKP(リンカーとしてPP-配列番号26);iii)YGRKKRRQRRRQFGITNSQLKP(リンカーとしてQ-配列番号27);iv)YGRKKRRQRRREFGITNSQLKP(リンカーとしてE-配列番号28);及びv)YGRKKRRQRRRKKFGITNSQLKP(リンカーとしてKK)。
【0260】
好ましいTAT-TrkBペプチド(図1c)は、転写タンパク質のHIV-1トランス活性化因子由来のTATタンパク質形質導入ドメインモチーフ(YGRKKRRQRRR)と、アミロイドβペプチドによって切断されるTrkB~FL配列(515-524)とを接続することリンカー(KK)を含有する。
【0261】
インビトロのアッセイは、このTAT-TrkBペプチドが、(1)ニューロン培養物におけるAβによって促進されるTrkB切断(図1e)と、(2)(i)ラット脳皮質(図1f図6d~e)及び(ii)ニューロン培養物ホモジネート(図6a~c)におけるカルパイン酵素アッセイにより誘導されたTrkB-FL切断とを防止したことを確認した。更に、十分に確立された血液内皮関門(BEB)のインビトロモデル15を使用して、本発明者らは、TAT-TrkBペプチドが、BEBを、その完全性に影響を及ぼすことなく(図7)経時的に移転させた(図1g)ことを観察した。
【0262】
TAT-TrkBの効能
本発明者らは、シナプス生理学のレベルでTAT-TrkB(20μM)の効能を評価した。機能的な研究のために、種関連の作用を制御するため、及び最もシナプス毒性のAβ種(補足のテキスト、図8~10)に対してTAT-TrkBを刺激するために、それをAβ1-42(200nM)の異なる種から調製した。
【0263】
機能的な読み出しとして、本発明者らは、(1)放射性アッセイにより単離された海馬シナプトソームからのグルタメートのシナプス前部の放出を定量化し、(2)海馬切片エクスビボモデルにおいて長期増強(LTP)を誘導された(図2a);LTPは、一般的に認知の神経生理学的な相関とみなされる可塑性メカニズムである。対照条件において、BDNF(30ng/ml)が、これまでに記載された通り、グルタメート放出(P<0.01;図2b、2f)及びLTP規模(図2g、2k)の両方を押し上げた。加えて、TAT-TrkBそれ自体は、BDNF作用に影響を与えなかった(P<0.01;図2d、2f、2i、2k)。
【0264】
オリゴマー種が濃縮されたAβ1-42への曝露の後、グルタメート放出(P>0.05;図2c、2f)及びLTP(P>0.05;図2h、2k)へのBDNF作用が損なわれた。一方で、単量体又は線維性種が濃縮されたAβ1-42への曝露の後、BDNF作用は保存された(P<0.05;図11)。
【0265】
TAT-TrkBペプチドが、Aβによって促進されるグルタメート放出へのBDNF作用の喪失を防止した(P<0.05;図2e~f)。意外なことに、TAT-TrkBは、外因性BDNFがLTPを更に押し上げなかったとしても、Aβによって促進されるLTPの障害を防止した(P>0.05;図2j~k)。その説明としては、シナプスの相乗作用は、すでにほぼその「天井」で作動している(すなわちLTPは飽和している)ということが予想される。
【0266】
したがって、本発明者らは次に、1時間の間隔を開けた自然を模倣するθバースト刺激の連続した発作を送達することによってLTP飽和を誘導した16(図3a)。オリゴマーが濃縮されているが他の種は濃縮されていないAβ1-42への曝露の後、本発明者らは、有意なLTP脱飽和を観察した(P<0.05;図3b~d;図12)。TAT-TrkB単独は、飽和プロファイルに影響を与えなかった(P>0.05;図3b~d)。Aβ1-42オリゴマー及びTAT-TrkBへの同時曝露の後、脱飽和が防止されたが(P>0.05;図3b~d)、飽和プロファイルは、対照条件と比較して影響を受けなかったことから、LTPへの外因性BDNFの作用の欠如は証明されない。別の説明として、TAT-TrkBは、TrkB-FL切断を防止することによって、すでに内因性BDNFの作用を許容しているということが予想される。生理学的条件において、内因性BDNFは、若い動物において、θバーストによって誘導されたLTPに有意に寄与しない17。しかしながら、老化すると、更に病的状態において、内因性BDNFの補償的な役割は、より顕著になる可能性がある。この仮説と一致して、本発明者らは、BDNFのスカベンジャー(TrkB-Fc)は、LTP再構築へのTAT-TrkB作用を打ち消すことを観察したことから(P<0.05;図3e~f)、Aβ毒性条件において海馬LTPを維持するのに内因性BDNFが重要になることが明らかになる。
【0267】
本発明者らはまた、カルパイン阻害剤であるMDL28170(20μM)が、オリゴマー及びフィブリル濃縮Aβの両方によって引き起こされるLTP障害を防止することも見出した(図12c~e)。それにもかかわらず、カルパインは数々の生理学的プロセスに関与することから18、一般的なカルパイン阻害剤は、ほとんど臨床的な価値を有さないと予想される。
【0268】
この研究において、本発明者らは新しい治療標的を同定し、新しい薬理学的なツールであるTAT-TrkBを設計し、検証した。更に本発明者らは、そのインビトロ及びエクスビボにおける効能を確立する土台を提供した。BDNFシグナル伝達を保存することによって、このペプチドは、AD認知欠陥を防止する及び/又は回復させるための疾患修飾薬の可能性を有する。インビボの追跡動物実験が証明になる。
【0269】
TAT-TrkBの効能を評価するためのインビボのパイロット研究。
図18aは、インビボの研究の実験設計のタイムラインを提供する。野生型(WT)及び5xFAD(アルツハイマー病マウスモデル)動物を、連続10週間にわたるTAT-TrkBの1日1回の腹膜内(5回/週)投与に供した。動物の学習及び記憶へのこのレジメンの作用を、モーリスの水迷路試験を使用して評価した。
【0270】
本発明者らは、TAT-TrkBは、ビヒクル処置した動物と比較した場合、獲得期の最後の2日に弱化する学習を有意に防止できたことを観察したことから、その保護的作用が強調される。本発明者らは、有益な作用が、トランスジェニック動物におけるTrkB-FL切断の防止を介して確立されたことを確認する。それに関して、本発明者らは、海馬組織を使用して、WB分析によりTrkB-FL切断を定量化した。本発明者らは、ビヒクル処置した野生型動物と比較した場合のビヒクル処置したトランスジェニック動物におけるTrkB-FL切断を確認した。重要なことには、本発明者らはまた、トランスジェニック動物におけるTAT-TrkBペプチドでの処置が、TrkB-FLタンパク質レベルを回復させることができたことも観察したことから、これらの結果は明らかに、TAT-TrkBペプチドが、インビボにおけるTrkB-FL切断の防止に関して実際に機能的であることを示し、本明細書でも提供されるインビトロ及びエクスビボの結果が確認される。
【0271】
まとめると、野生型(WT)及び5xFAD(アルツハイマー病マウスモデル)動物への連続10週間にわたるTAT-TrkBの1日1回の腹膜内(5回/週)投与は、モーリスの水迷路試験で評価した5xFAD動物の学習及び記憶を有意に改善し、TrkB-FLレベルを増加させ、これはその切断の低減を示唆する。
【0272】
方法
ヒト脳試料の処理及び分析
ヒト死後脳試料(下側頭皮質からの)を収集し、RNA及びタンパク質をこれまで詳細に記載されたようにして抽出した19。試料を、ブラーク病期分類に従って分類し、3つの区分:ステージ0-II(軽度のAD)、ステージIII-IV(中程度のAD)及びステージV-VI(重度のAD)20にグループ分けした。これらの組織試料の事前の定量化は、β-セクレターゼ活性及び可溶性Aβ42ペプチドレベルがADの病的状態の重症度と相関していたことを示した。更に、同じコホートからの患者の脳脊髄液(CSF)におけるAβ42トータル及びリン酸化タウのレベルの増加が、ブラーク病期分類に従って疾患の重症度に関連することが見出された。したがって、これらのデータは、ADの病的状態の異なる重症度ステージにおけるTrkB-FL切断を評価するために、このコホートを使用することを認めるものである。試料の収集及び使用は、Kuopio University Hospital、University of Eastern Finland、Finnish National Supervisory Authority、及びFinnish Ministry of Social Affairs and Healthの倫理委員会(ライセンス番号362/06.01.03.01/2017)によって承認された。
【0273】
ヒト試料のWB、qPCR及び質量分析
ウェスタンブロット、mRNA及びMS分析を、試料のサブセットで実行した;人口統計は補足の表1に記載される。
【0274】
TAT-TrkBペプチドの設計及び構造的な予測
最終的なTAT-TrkBペプチド(図1d)は、(1)転写(TAT)のHIV-1タンパク質トランス活性化因子由来のTATタンパク質形質導入ドメインモチーフ(YGRKKRRQRRR)と、(2)アミロイドβペプチドによって切断されるTrkB-FL配列(515-524)とを接続するリンカー(KK)を含有する。
【0275】
数々のTAT-TrkBペプチド配列をシミュレートした:最終的なTAT-TrkB-YGRKKRRQRRRKKFGITNSQLKP;リンカーを含まない第1のバージョン:YGRKKRRQRRRPQYFGITNSQLKPDTF;リンカーとしてPPを含む:YGRKKRRQRRRPPFGITNSQLKP;リンカーとしてQを含む:YGRKKRRQRRRQFGITNSQLKP;リンカーとしてEを含む:YGRKKRRQRRREFGITNSQLKP(図5)。BEBアッセイのために、6-FAMフルオロフォアを、TAT-TrkBペプチドの最終的なバージョンのN末端に融合した。ペプチドをGenScript社(Piscataway、NJ、USA)によって合成し、1mMストック溶液として滅菌MiliQ水中で調製した。
【0276】
構造的な予測のために、ConSSertソフトウェア(http://ares.tamu.edu/conSSert/で入手可能)21及びScratchサーバーからのSSPro8ツール(http://scratch.proteomics.ics.uci.edu/入手可能)22を使用した。3D構造予測のために、オンラインサーバーMobyle@RPBS v1.5.1(http://mobyle.rpbs.univ-paris-diderot.fr/)を介したPEP-FOLD3.0ソフトウェア23を使用した。最適な活性のためにペプチド濃度を決定することを目的とした最初の研究の後、全ての残りの実験は、これまでに記載された類似ペプチドの濃度範囲内であるTAT-TrkB 20μMを使用して実行した8、13、24
【0277】
Aβ種の調製
Aβペプチド1-42(1mg/ml)(A-42-T、GenicBio社、Shanghai、China)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.1%アンモニア溶液が補充された)に懸濁し、最終的なpH7.2に調整した。種の分離は、これまでに記載されたようにして、限外濾過プロセスに基づいてなされた25。簡単に言えば、単量体を遠心限外濾過(10kDaのAmicon Ultra、Millipore社)によって迅速に単離し、流出液(単量体)を回収し、分光光度法によりアッセイした(ε280=1490M-1cm-1)。Aβ(220μM)を、600rpm、37℃で16時間(オリゴマー)又は5日(フィブリル)で一定に振盪することによって、オリゴマー化させた。オリゴマー化後、試料を超遠心した(40,000g、30分)。フィブリル分離のために、得られた5日のペレット(フィブリル)をPBSで洗浄し、再び2回超遠心した。総フィブリル量は、開始時のオリゴマー化量と得られた上清量との差によって得られる(ε280=1490M-1cm-1)。オリゴマー分離のために、16時間超遠心した上清を遠心フィルター(30kDaのAmicon Ultra)で更に分離した。保持されたフラクション(オリゴマー>30kDa)の濃度を分光光度法によりアッセイした。
【0278】
Aβ種の特徴付けのための方法
Aβ種(0.5μg)を、(1)4~15%勾配ゲル(Mini-PROTEAN(登録商標)TGX(商標)、Bio-Rad社)でのドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、それに続く標準的手順を使用したウェスタンブロッティング(6E10抗Aβ抗体、#SIG-39300、BioLegend社、CA、USA);及び(2)これまで通りに実行される動的光散乱法(DLS)26によって特徴付けた。簡単に言えば、DLS実験を、He-Neレーザー(λ=632.8nm)を備えた、173°での後方散乱検出を用いたMalvern社のZetasizer Nano ZS(Malvern社、UK)で、丸い開口部を有するガラスキュベットを使用して、25℃で実行した。Aβ種をトリス緩衝液で22μMに希釈した。8回の測定セットのそれぞれの前に、試料を25℃で15分平衡化させた(各セットは、実行1回当たり10秒での平均10回の実行である)。各実験を少なくとも3回繰り返した。データをZetasizer Nano ZSソフトウェア(Malvern、UK)で評価した(図8)。
【0279】
動物
雄ウィスターラットを急性海馬切片調製に使用し、一方で雌の妊娠したスプラーグ-ドーリーラットからの胎芽を一次ニューロン培養物を調製するのに使用した。動物をCharles River(Barcelona、Spain)から購入し、標準化した温度、湿度及び照明条件下で、水と食物は自由摂取で維持した。全ての動物の処置を、ポルトガルの法律及びEuropean Community Guidelines for Animal Care(European Union Council Directive-2010/63/EU)に従って行った。基礎となる実験作業にわたり、殺す動物の数を最小化することに注力した。
【0280】
一次皮質ニューロンの培養
一次ニューロン培養物を実験室で慣例的に調製した6。簡単に言えば、動物を麻酔室においてイソフルラン(Esteve社、Barcelona、Spain)で深く麻酔し、その後、断頭によって致死させた。胎芽(E17~E18)を子宮から迅速に取り出し、脳を解剖し、冷たいCa2+及びMg2+非含有ハンクス平衡生理食塩水(HBSS)(Gibco社、Paisley、UK)中に置いた。大脳皮質を単離し、機械的に断片化し、HBSS中の0.025%(wt/vl)トリプシン溶液(Gibco社、Paisley、UK)で消化した37℃で15分。消化後、細胞を1200rpmでの遠心分離によって沈殿させた。上清を除去し、20%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco社、Paisley、UK)をHBSSに添加した。組織からの細胞を解離するために、遠心分離間にピペット吸引による細胞の再懸濁が必要であった。洗浄プロセスを5回繰り返して、トリプシンを中和した。その後、細胞を、0.5mMのL-グルタミン、25mMのグルタミン酸、2%のB-27及び25U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(全てのGibco社からの、Paisley、UK)が補充された神経細胞培養用培地(Gibco社、Paisley、UK)に再懸濁した。単一細胞を得て、細胞のクラスター又は組織片を回避するために、懸濁液をナイロンフィルター(BD Falcon(商標)セルストレーナー70μM、Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、USA)で濾過し、細胞密度を、血球計数器を使用して0.4%トリパンブルー溶液中で細胞を数えることによって決定した。ウェスタンブロット分析及び臭化3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム(MTT)代謝の評価のためには細胞6×104個/cm2の密度で、免疫細胞化学及びパッチクランプ記録のためには細胞5×104個/cm2の密度で、細胞をカバーガラス上にプレーティングした。培養を、5%/95%CO2/O2の加湿した雰囲気を有するインキュベーター中で、37℃で、培地交換せずに維持した。カバーガラスを前もって紫外線下で滅菌し、10μg/mlのポリ-D-リシン(PDL、Sigma-Aldrich社、St.Louis、MO、USA)で一晩コーティングし、その後、滅菌H2Oで洗浄した。
【0281】
カルパインのインビトロのアッセイ及びラット脳のホモジネート調製
カルパイン酵素アッセイのために、ラット皮質組織又はニューロン培養細胞を、50mMのトリス-HCl[pH=7.5]、150mMのNaCl、5mMのエチレンジアミン四酢酸、0.1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1%[vl/vl]のTriton X-100、プロテアーゼ阻害剤(Roche社、Penzberg、Germany)及びホスファターゼ阻害剤(10mMのNaF及び5mMのNa3VO4)を含有する放射線免疫沈殿アッセイ(Radio Immuno Precipitation Assay;RIPA)緩衝液中でホモジナイズした。組織均質化のために、Vibracell VC250超音波液体プロセッサーを使用した(Sonics & Materials社、CT、USA)。遠心分離(16,000g、4℃、10分)によるホモジネートの透明化の後、Bio-Rad社のDC試薬(Bio-Rad Laboratories社、Berkeley、CA、USA)を使用してタンパク質濃度を測定した。精製したラットm-カルパイン(1又は2酵素単位、EU)(Calbiochem社、San Diego、CA、USA)を、ホモジネートタンパク質(1つのラット脳皮質実験当たり100μg及びニューロン培養細胞物1つ当たり65μg)、2mMのCaCl2及びTAT-TrkBペプチド(5、20又は50μM)を含有する100μLの最終容量の溶解緩衝液中で、25℃で30分インキュベートした。変性性SDS試料緩衝液の存在下で試料を95℃で沸騰させることによって酵素消化を止め、即座にウェスタンブロット分析に進めた。
【0282】
ウェスタンブロット分析
処置の後、図面の説明で示された通り、一次ニューロン培養物(DIV8又はDIV14~16における)及びラット皮質試料を氷冷PBSで洗浄し、上述したように溶解させた。全ての試料を、別段の指定がない限り、同じ量の総タンパク質(40μg)を用いて調製した。ローディング緩衝液(350mMのトリス pH6.8、10%SDS、30%グリセロール、600mMのジチオスレイトール、0.06%ブロモフェノールブルー)を添加し、混合物を95~100℃で10分沸騰させた。次に、全ての試料及び分子量サイズマーカー(NZYTech社、Lisbon、Portugal)をローディングし、標準的な移行緩衝液(25mMのトリス pH8.3、192mMのグリシン、10%SDS)中の10%SDS-PAGE上で、80~120mVの定電圧で分離した。次いで、タンパク質を、湿式の移行条件のために事前に標準緩衝液(25mMのトリス pH=8.3、192mMのグリシン、15%メタノール)中に5分浸漬させたPVDF膜(GE Healthcare社、Buckinghamshire、UK)上に移した。1時間30分移行させた後、膜をポンソーS溶液(#09276-6X1EA-F、Sigma-Aldrich社、St.Louis、MO、USA)で染色して、タンパク質移動の効能を評価した。膜を、トリス緩衝生理食塩水(20mMのトリス塩基、137mMのNaCl及び0.1%Tween-20)中の3%(wt/vl)ウシ血清アルブミンでブロッキングし、その後、一次抗体であるC末端(C-14)に対して生じたTrk-FLウサギポリクローナル抗体(1:1000)(#sc-11、Santa Cruz Biotechnology社、Dallas、TX、USA)と共に一晩、及びヤギ抗ウサギIgG-ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体(1:10000)(#sc-2004、Santa Cruz Biotechnology社、Dallas 、TX、USA)と共にRTで1時間、インキュベートした。最終的に、免疫反応性を、ECLシステム(ECL化学発光検出システム、GE Healthcare社)、ChemiDoc(Bio-Rad社、XRS+)における適切な露出時間を使用して検出し、ImageJ 1.45ソフトウェア(Bethesda、MD、USA)のデジタル濃度測定ツールによって定量化した。GAPDH又はβ-アクチンを、ローディング対照として使用した(マウス抗GAPDH(1:5000)、#AM4300、Thermo Fischer Scientific社、Waltham、MA、USA;マウス抗β-アクチン(1:1000)、#ab8226、Abcam Biochemicals社(Cambridge、MA、USA);ヤギ抗マウスIgG-ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体(1:10000)、#sc-2005、Santa Cruz Biotechnology社、Dallas、TX、USA)。図13は、定量化した全ての試料及び切り取り前のゲル及び分子量標準を含むブロットを示す;2つの試料が、分析に考慮されなかった(一方は低い品質に起因し;他方を、残りの観察の平均+2.5s.d.より大きい定量化値を有する統計上の異常値として判断した)。
【0283】
血液内皮関門(BEB)の移動及び完全性のアッセイ
BEBを移動するTAT-TrkBペプチドの能力を評価するために、本発明者らは、十分に確立されたインビトロモデルを使用した15。これは、インサートを有するトランスウェルシステムを含み、そこでbEnd.3脳内皮腫細胞(ATTCC-CRL-2299、ロット.59618606)が、9日間培養される。このモデルにおいて、頂上のチャンバーは血液区画の複製であり、一方で側底面のチャンバーは脳区画の複製である(図7a)。これらの実験について、蛍光によってペプチドを検出するために6-FAMをTAT-TrkBペプチドのN末端に融合させた。TAT-TrkB-6-FAMペプチド(5μM、フェノールレッド非含有のDMEMで希釈した)を頂上の区画に送達した。異なるインサートにおける1時間、4時間及び24時間のインキュベーションの後、頂上及び側底面の区画からの培地を収集し、Varioskan LUX Multimodeマイクロプレートリーダー(Thermo Scientific社、Rockford、IL、USA ThermoFisher Scientific社)を使用して、495nmの励起及び517nmの発光波長で、蛍光を測定した。両方の区画で検出された蛍光の合計に正規化した側底面の区画で検出された蛍光として、ペプチド移動を定量化した。TAT-TrkB.6-FAM移動アッセイの直後、インビトロでの完全性研究を実行した。これらのために、FD4蛍光プローブ(最終的な吸光度が0.1未満になるまでフェノールレッド非含有のDMEMで希釈した)を、同じインサートの頂上の区画に添加し、2時間インキュベートした。FD4は、蛍光標識されたデキストランであり、4kDaを有し、細胞の完全性が保証されている場合、ごくわずかしか移動しない。平行して、FD4も、インサートの頂上の区画に、未処置細胞(陰性対照)、加えてEGTA(5mM)に曝露した細胞とFD4を一緒にローディングした。EGTAは、密着結合や他の細胞間接着を崩壊させることが分かっているため、陽性対照として役立つ。再び、試料を両方の区画から収集し、蛍光を、Varioskan LUX Multimodeマイクロプレートリーダーを使用して、493nmの励起及び520nmの発光波長で測定した。FD4の基礎の回収を、両方の区画において検出された蛍光の合計に正規化した側底面の区画において検出された蛍光として定量化した。両方のアッセイのために、値を、3連の3つの独立した実験から得た。
【0284】
急性海馬切片の調製
若年成体(7~10週齢)雄ウィスターラットを、深いイソフルラン麻酔下での断頭によって致死させた。脳を迅速に取り出し、半切除し、pH7.4の、事前に95%O2及び5%CO2を通気した、氷冷した人工脳脊髄液(aCSF)(mM:NaCl 124;KCl 3;NaH2PO4 1.25;NaHCO3 26;MgSO4 1;CaCl2 2;及びグルコース 10)内で両方の海馬を切って外した。
【0285】
切片(400μmの厚さ)を、McIlwain組織チョッパーで海馬の長軸に対して垂直にカットし、ガス通気したaCSFで充填された休止チャンバー中で、室温(RT)(22~24℃)で少なくとも60分回復させた。
【0286】
培養及びAβ種との切片のインキュベーション
図9に記載の実験について、一次ニューロン培養物を、補充された神経細胞培養用培地中で、ビヒクル又はDIV14~16でのAβ1-42(200nM)種(単量体、オリゴマー又はフィブリル)のうちの1つのいずれかと共に、37℃で24時間インキュベートした。
【0287】
海馬切片を、ビヒクル又はAβ1-42(200nM)種(単量体、オリゴマー又はフィブリル)と共に、通気したaCSF中で、室温で3時間インキュベートした。本発明者らは、低酸素傷害によるニューロンのダメージを回避するために、室温での切片のインキュベーションを実行することを選択した27
【0288】
このAβ1-42濃度(200nM)を、以前の研究に従って25、28~30、更にAD患者の脳実質において、Aβがナノモル濃度範囲内の濃度で存在するという推測31に基づいて、選択した。
【0289】
MTTアッセイ
ビヒクル又はAβ種と24時間インキュベートした成熟(DIV14~16)一次皮質ニューロン細胞の生存率を、臭化3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム(MTT)(#CT01、Sigma-Aldrich社、MO、USA)の代謝によって評価した。MTTを元の培養培地に添加し、3時間インキュベートした。インキュベーション後、変換されたダイを、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Merck、Kenilworth、NJ、USA)で可溶化した。変換されたダイの吸光度を、マイクロプレートリーダーInfinite M200(Tecan社、Mannedorf、Switzerland)で、650nmでのバックグラウンドを引いて、570nmで測定した。
【0290】
ヨウ化プロピジウム(PI)染色及び免疫細胞化学
処置の直後に、成熟(DIV14-16)一次ニューロン培養物を500nMのPI(#81845、Sigma-Aldrich社、MO、USA)と共にインキュベートし、5%CO2の加湿した雰囲気を有するインキュベーター中で、37℃で30分維持した。次いでニューロン培養物をPBSで洗浄し、PBS(pH=7.4)中の4%パラホルムアルデヒド中で室温で15分固定した。細胞を、0.1%(vl/vl)Triton X-100を含むPBS中のブロッキング溶液(3%[wt/vl]ウシ血清アルブミン、BSA、Sigma-Aldrich社、MO、USA)で1時間処置して、非特異的な結合をブロッキングした。洗浄後、細胞を、マウス微小管関連タンパク質2(MAP2)一次抗体(ブロッキング溶液中、1:200)(#2603311、Millipore社、Billerica、MA、USA)と共に4℃で一晩インキュベートして、ニューロンを特異的に検出した。その後、細胞を洗浄し、ヤギ抗マウスAlexa Fluor蛍光体(登録商標)568二次抗体(ブロッキング溶液中、1:200)(#A10042、Invitrogen社、Carlsbad、CA、USA)と共に、暗所で、室温で1時間インキュベートした。カバーガラスをMowiolマウント溶液中でマウントし、倒立蛍光顕微鏡Axiovert 135 TV(Carl Zeiss Microscopy、Thornwood、NY、USA)を使用して観察した。およそ細胞80個の試料1つ当たり6つの無作為な顕微鏡視野を計数し、平均値をPI陽性ニューロンのパーセンテージとして表した。
【0291】
スパイン密度のカウント
細胞を固定し、上述したようにブロッキング溶液で処置した。次に、細胞を、マウスMAP2一次抗体(ブロッキング溶液中で1:200)と共に、4℃で一晩インキュベートし、その後洗浄し、ヤギ抗マウスAlexa Fluor蛍光体(登録商標)568二次抗体(ブロッキング溶液中で1:200)と共に、暗所で、室温で1時間インキュベートした。次いで、細胞を、繊維状アクチン(F-アクチン)を認識するAlexa Fluor蛍光体(登録商標)488ファロイジン(PBS中で1:40)(#A12379、Invitrogen社、Carlsbad、CA、USA)と共に、30分インキュベートした。F-アクチンは、樹状突起棘の細胞骨格の構造において重要な役割を有する32。洗浄後、上述したようにカバーガラスをマウントし、細胞を画像化した。スパイン密度は、細胞体からの距離が25μmより大きいその親樹状突起からの3μm以下で伸長する小さい突起の数として表され(マッシュルーム形状のスパイン又は糸状仮足のいずれか)、これまで報告されたように10μmの親樹状突起に正規化される33。樹状突起棘を、ImageJ 1.45(Bethesda、MD、USA)を使用してオフラインで計数した。1つの培養物当たり1つの条件当たり6つのニューロンを分析した各ニューロンにつき、3つの異なる樹状突起で突起を計数した。
【0292】
mEPSCの記録
単離された一次ニューロンの微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)を、処置の直後に、全細胞パッチクランプによって実験室で慣例的に評価した34。簡単に言えば、細胞を、微分干渉コントラスト光学機器を備えた正立顕微鏡(Axioskop 2FS、Carl Zeiss Microscopy社、Thornwood、NY、USA)で、Zeiss社のAxioCam MRmカメラ及びX40 IR-Achroplan対物レンズを使用して可視化した。全細胞の配置を確立したらすぐに静止膜電位を測定した。mEPSC記録を、Axopatch 200B増幅器(MolecularDevices社、CA、USA)を使用して、室温で、電圧固定モード(Vh=-60mV)で実行した。細胞外の培地は、テトロドトキシン(TTX、500nM)、ナトリウムチャンネルブロッカー、及びガバジン(GBZ、50μM)、GABAA受容体アンタゴニストが補充された通気されたaCSFであった。パッチピペット(4-~7-MΩ抵抗)を、280~290mOsmの、1MのKOHでpH7.3に調整された、(mM単位で):K-グルコン酸塩 125、KCl 11、CaCl2 0.1、MgCl2 2、EGTA 1、HEPES 10、MgATP 2、NaGTP 0.3、ホスホクレアチン 1を含有する内部溶液で充填した。獲得したシグナルを、内蔵型の、2kHzの三極ベッセルフィルターを使用してフィルタリングし、データを、pCLAMP 10(Molecular Devices社、CA、USA)ソフトウェアプログラムの制御下で、5又は10kHzでデジタル化した。接合部電位は補われず、ギガシール形成の前にオフセット電位はゼロになった。小さい電圧工程(-5mV、50ms)を使用して、実験にわたりアクセス抵抗をモニターした。保持電流も絶えずモニターし、これらのパラメーターのいずれかが20%より大きく変化する実験を除外した。Mini Analysisソフトウェア(Synaptosoft Inc.社、NJ、USA)を使用して微小事象の分析を実行し、事象検出の閾値を、3倍の二乗平均(RMS)ベースライン(ノイズ)に設定した。細胞当たり5~10分の記録期間を分析することによって、mEPSC頻度、平均振幅、上昇及び減衰時間を確立した。
【0293】
PI及び免疫組織化学
処置後、海馬切片を、通気したaCSF中で、500nMのPIと共に室温で30分インキュベートし、次いでPBS(pH=7.4)中の4%パラホルムアルデヒド中で、室温で15分固定した。次に、切片を、10%、20%及び30%スクロースの一連の溶液で脱水し、Tissue-Tek O.C.T.に包埋し(Sakura Finetek社、Torrence、CA、USA)、-80℃で貯蔵した。連続する20μm厚さの海馬の薄片をクライオスタット(Leica Biosystems社、Wetzlar、Germany)でカットし、SuperFrost-Plusスライドガラス(Thermo Scientific社、Rockford、IL、USA)にマウントした。次いで海馬切片を再水和し、pH6の10mMのクエン酸緩衝液中で3回沸騰させた。次に、切片を、0.1%(vl/vl)Triton X-100を含むPBS中のブロッキング溶液(3%[wt/vl]BSA)で1時間処置した。洗浄後、切片を、マウスMAP2一次抗体(ブロッキング溶液中で1:200)と共に、4℃で一晩インキュベートした。その後、切片を洗浄し、暗所で、ヤギ抗マウスAlexa Fluor蛍光体(登録商標)568二次抗体(ブロッキング溶液中で1:200)と共に、室温で1時間インキュベートした。5μg/mLヘキスト色素(#33258、Sigma-Aldrich社、St.Louis、MO、USA)との5分間のインキュベーション後、切片を洗浄し、Mowiolマウント溶液中でマウントし、倒立蛍光顕微鏡Axiovert 135 TV(Carl Zeiss Microscopy社、Thornwood、NY、USA)で薄片を画像化した。CA1及びCA3領域を分析した。平均値は、PI陽性細胞のパーセンテージ及びPI陽性ニューロンのパーセンテージとして表される。
【0294】
細胞外のエクスビボの記録
切片を浸漬チャンバー(1ml)に移し、通気したaCSFで、32℃、3ml/分の速度で、連続的に灌流した。実験の前に、パーフュージョンチューブを0.1mg/mlのBSAでコーティングして、チューブへのBDNFの吸着を回避した35。誘起された興奮性シナプス後場電位(fEPSP)を、以前に記載されたようにして34、35、CA1領域の放線状層中に設置された4MのNaClで充填された微小電極(2~8MΩの抵抗)を介して細胞外で記録した。シェファー側枝/交連線維の1つの経路を、CA1領域における放線状層中のシェファー線維上に設置した二極同軸ワイヤー電極によって、15秒毎に(I/O曲線の、基底のシナプス伝達及びペアパルスの促通(PPF)の記録ために)、又は20秒毎に(LTP記録のために)、刺激した(0.1msの持続時間の矩形パルス)。刺激の初期強度を調整して、最大を超える刺激で得られたfEPSPスロープの5分の1に近い、最小の集合スパイク汚染で最大より低いfEPSPスロープを得た。平均8つの連続するfEPSPを得て、電位の初期相のスロープを定量化した。記録をAxoclamp 2B増幅器(Axon Instruments社、Foster City、CA)を用いて得て、デジタル化し、LTPプログラムを用いてパーソナルコンピューターに連続的に貯蔵した36。以下に詳述される全てのプロトコールは、少なくとも20分の安定なベースラインの後に開始した。
【0295】
入力/出力曲線。切片に送達された刺激を、fEPSPが誘起されなくなるまで減少させ、その後20μAの工程を増加させた。各刺激強度につき3つの連続する平均したfEPSPからのデータを収集した。切片に送達された入力の範囲は、典型的には80μAから320μAの最大を超える刺激であった。I/O曲線の非線形フィッティングでの外挿によって最大スロープ値を得た。集合スパイク(fEPSPに続く脱分極)を惹起するほど十分に刺激が強烈なときはいつも、その振幅を測定した。各集合スパイク振幅の複製を、関連するfEPSPのスロープの関数及びこれらの値の商として計算された集合スパイク/fEPSPの比率としてプロットした34
【0296】
長期増強の誘導及び飽和。200msによって区切られた、100Hzの4つのトレイン、4つの刺激からなる弱いLTPを誘導するθバーストプロトコールを使用した(4×4)34、37。刺激の強度は決して変えなかった。LTP誘導前の10分間に測定されたfEPSPの平均スロープに対してLTP誘導後に50から60分までに採取したfEPSPの平均スロープにおける正規化した変化として、LTP規模を定量化した。
【0297】
図2に記載の実験について、脳由来神経栄養因子(BDNF、30ng/ml)を、LTPの誘導前の20分に灌流溶液に添加した。これらの実験のための対照を、同じ日に、異なる切片で、BDNF灌流を行うことなく実行した。一般的に、シナプス可塑性へのBDNF作用を試験する場合、同じ海馬切片の2つの独立した経路が使用され、一方は試験として役立ち、他方は内部対照として役立つ35、38。しかしながら、切片を本発明の実験設計下で事前にビヒクル/Aβに3時間曝露させたため、本発明者らは、同じラットからの異なる切片でBDNF作用を試験することを選択した。そうでなければ、ビヒクル/Aβ処置の最後からLTP誘導までの時間は、BDNFを試験しようとする場合、一貫してより長くなるであろう(BDNFは、第1の経路でLTPが誘導された後にしか灌流溶液に添加できないため)。
【0298】
図3a~dに記載の実験について、LTP飽和を試験するために、本発明者らは、1時間の間隔を開けた同じ経路での3つの連続するθバースト(4×4)パラダイムを誘導した。本発明者らは、LTPが、その前に新しいLTPを効果的に誘導できない60分の不応期を有することを示す以前の結果に基づき16、本発明者らの実験設計の基礎を形成した。本発明者らは、飽和指数(SI)を、第1のLTPの規模で割った合計3つのLTPの規模の商として[(LTP1+LTP2+LTP3)/LTP1)計算した(したがって、SI≒3の場合、LTPは完全に飽和しており;SI>3の場合、LTPは飽和しておらず;SIが高ければ高いほど、LTPはより低く飽和している)。
【0299】
図3e~fに記載の実験のために、BDNFのスカベンジャーであるTrkB-Fc(2μg/ml)を、LTPの誘導の30分前に灌流溶液に添加し、実験が終わるまで槽中でそのままにした。
【0300】
ペアパルスの促通(PPF)の記録。PPFを、異なる刺激間のインターバル(10~150ms)での第2対第1のfEPSPスロープ(fEPSP2/fEPSP1)応答の比率として定量化した34
【0301】
[3H]グルタメート放出アッセイ
シナプトソームの単離。ラット海馬からのシナプトソーム分画を実験室で慣例的に調製した39。上述したように、海馬切片(雄ウィスターラット、7~10週齢)を調製し、ビヒクル又はAβ1-42で処置した。次いで切片を、5mlの氷冷した等張スクロース溶液(0.32M、1mMのEDTA、1mg/mlのBSA、10mMのHEPES、pH7.4を含有する)に添加し、テフロンのピストン(4つの上下ストローク)を備えたPotter-Elvehjemホモジナイザーでホモジナイズし、スクロース溶液で体積を10mlにした。3,000gで10分の第1の遠心分離(Heraeus社の3746ローターを有するsepatech-Biofuge 28RS遠心分離機)の後、上清を収集し、14,000gで12分遠心分離した。手順全体を4℃で実行した。ペレットを、(mM単位で)NaCl 140、EDTA 1、HEPES 10、KCl 5、及びグルコース 5からなるKHR溶液中の1mlの45%Percoll中に再懸濁し、16,000gで2分遠心分離した。シナプトソーム分画は、トップの浮いた層に相当し、これをチューブから収集した。それぞれ16,000gで2分遠心分離された1mlのKHR溶液での2回の洗浄によってPercollを除去した。次いでシナプトソームを氷上で維持し、3時間以内に使用した。シナプトソームタンパク質濃度を、Bio-Rad社のDC(商標)タンパク質アッセイ及び標準としてBSAを使用してアッセイした。
【0302】
海馬のシナプトソームからの[3H]グルタメート放出。海馬のシナプトソームからの[3H]グルタメート放出を実験室で慣例的に実行した39。シナプトソーム(タンパク質濃度1~2mg/ml)を、酸素添加したクレブス培地(mM単位で:NaCl 125、KCl 3、NaH2PO4 1、グルコース 10、NaHCO3 25、CaCl2 1.5及びMgSO4 1.2)に再懸濁し、そのまま37℃で5分平衡化した。これ以降、シナプトソームに適用した全ての溶液を37℃で維持し、O2/CO2(95%/5%)で連続的に通気した。次いで、シナプトソームを、0.2μM[3H]グルタメート(30~60Ci/mmolの特異的な活性)と共に5分にわたりローディングし、8つのチャンバーの灌流装置(流速、0.6ml/分;チャンバー体積、90μl)上のワットマンGF/Cフィルター(Milipore社、MA、USA)上に等しく層化した。一定及び迅速な流速が内因的に関連する物質を洗い落とすことから、薬物作用の特異性が確実になる40。20分の洗い落とし期間の後、排水を、2分のインターバルで40分にわたり収集した。シナプトソームからのグルタメート放出は、試料収集開始後の5分目[第1の刺激期間(S1)]及び29分目[第2の刺激期間(S2)]に、高K+溶液(15mM、パーフュージョン緩衝液中のNa+のK+での等モルの代用)で、2分の間に惹起された。BDNF(30ng/ml)を、9分目に、したがってS2の前に灌流媒体に添加し、実験が終わるまで槽中でそのままにした(図2b~e及び図11a.bにおいて水平のバーによって示した通り)。対照曲線は、BDNFの非存在下で、同じシナプトソームバッチを用いて平行して実行した。
【0303】
グルタメート放出に対する薬物作用の計算。各実験の最後に、各試料のアリコート(500μl)、加えて各灌流チャンバーからのフィルターを、液体シンチレーション計数によって分析した。フラクション放出を、各タイムポイントにおけるシナプトソームに存在する総放射活性のパーセンテージとして表した。によって放出された放射活性の量K+の各パルス(S1及びS2)を、推測される基底のトリチウム放出を引いたピーク面積の積分によって計算した。各条件を2連で試験した。したがって、各実験において、2つのシナプトソームをローディングしたチャンバーを対照チャンバーとして使用し、その他を試験チャンバーとして使用した。チャンバーのそれぞれ1つを、対照として、又は異なる日における試験条件の1つとして使用した。
【0304】
薬物及び試薬
25-35をBachem社(Bubendorf、Switzerland)から購入し、滅菌MiliQ水中の1mg/mlストック溶液の形態に調製した。Aβ1-42(1mg/ml)(A-42-T、GenicBio社、Shanghai、China)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.1%アンモニア溶液が補充された)に懸濁し、最終的なpH7.2に調整した。BDNFは、寛大にも、Regeneron Pharmaceuticals社(Tarrytown、NY)によって150mMのNaCl、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液、及び0.004%のTween 20中の1.0mg/mlストック溶液の形態で供給された。組換えヒトTrkB/FcキメラであるTrkB-Fcは、R&D systems社(Minneapolis、MN)から購入し、0.1%BSAを含むPBS中の50μg/mlストック溶液で構成されていた。TTX及びガバジンをAbcam Biochemicals社(Cambridge、MA、USA)から購入し、それぞれ1及び10mMのストック溶液として蒸留水で調製した。MDL28170を、Tocris(Ballwin社、MO、USA)から買い、DMSO中の20mMのストック溶液の形態に調製した。[3H]グルタメート(L-[G-3H]グルタミン酸、45Ci/mmolの特異的な活性)を、PerkinElmer Life Sciences社(Waltham、MA、USA)から購入した。Percoll、EDTA、KCl、MgSO4・7H2O、NaCl、及びNaH2PO4・H2Oを、Sigma-Aldrich社(St.Louis、MO、USA)から買った;グルコース、スクロース、HEPES、NaH2PO4・H2O、NaOH、及びHClを、Merck社(Kenilworth、NJ、USA)から買った。この作業に必要な他の試薬、薬物及び抗体を、上記のそれぞれのセクション薄片に記載されたようにして購入し、調製した。
【0305】
統計的分析
試料サイズを、事前に行われた予備的な結果又は類似の実験に基づいて決定した。値は、散乱したドットブロットの形態で個々に提示され、バーは、示された通り、平均±s.e.m又は平均±95%CIを示すために上に記載される。双曲線回帰(図1g及び図10d)及び線形回帰(図10e)を、最小二乗法を使用してフィッティングした。正規分布及びグループ間の類似の分散の仮定のもとに統計分析を設計した。推論分析のために、対応のあるt検定、対応のないt検定又は一元配置ANOVA、それに続くボンフェローニの多重比較事後検定を、図面の凡例で特定し、補足の表2で詳述したように使用した。P<0.05を統計学的に有意とみなした。全ての統計的分析を、Prism 8(バージョン8.1.2、GraphPad Software Inc.社)で実行した。
【0306】
1-42種の分子的な特徴付け
調製されたAβ種を、最初にSDS-PAGE、それに続いて免疫ブロッティングによって特徴付けた(図8a)。変性条件の使用を介して、安定なオリゴマーのみがより高いMWで保持され、不安定なAβは単量体に解離した。12kDaより低いMWを有する単一のバンドで単量体Aβのみが検出されたことから、それがAβ単量体のMWで保持されたことを示唆する。オリゴマーは、主として38~225kDaのMWで存在していた。フィブリルは、主として高いMW(>150kDa)で存在していた。その後、種をDLSによって分析して、粒度分布のプロファイルを決定することを可能にした。以前の分析と一致して、DLSは、単量体と比較してよりヘテロジニアスなオリゴマーAβの粒度分布、及び単量体及びオリゴマーAβの両方と比較してよりヘテロジニアスなAβフィブリルの粒度分布を解明し、2500nmを超える流体力学的径を有する粒子の有意な増加がみられた(図8b)。
【0307】
1-42種の生物学的作用
本発明者らは最初に、24時間曝露後の一次ニューロン培養物で、これらの種の生物学的作用を調べた。本発明者らは、オリゴマー及び線維性の、ただし単量体ではない種が、(1)細胞生存率における小さいが一貫した減少、(2)樹状突起棘密度における減少;及び(3)微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)の全細胞電圧クランプ記録によって評価したところ、興奮性の自発的なシナプス伝達における障害(図9)を誘導したことを観察した。その後、本発明者らは、ラット海馬切片のエクスビボの調製物において、3時間曝露後の種を評価した。本発明者らは、Aβ1-42種により誘導された短期の細胞死を観察しなかった(図10a~c)。しかしながら、オリゴマー及び線維性の濃縮されたAβ1-42への短い(3時間)曝露の後でさえも、本発明者らは、シナプス前線維斉射振幅(presynaptic fiber volley amplitude;PSFA)に応じて調整された場の応答の脱分極スロープにおける減少を検出することができた(図10d)。本発明者らはまた、刺激強度がそれを惹起するのに十分であればいつでも(典型的には、220μAを超える刺激強度)集合スパイク(population spike、popspike)の振幅も測定し、それを対応するfEPSPスロープに対してプロットした(図10e)。集合スパイク振幅は、CA1錐体細胞出力の尺度であり、一方でfEPSPスロープは、電気刺激により誘導されたシェファー側枝線維脱分極に対する応答を評価する。それゆえに、これらの2つの変数を相関させることによって、求心性刺激の海馬回路の計算結果を評価することが可能である。これらの値の線形フィッティングは、Aβ種のいずれによっても肉眼的変化が誘導されなかったことを示す(図10e)。最終的に、Aβ種はいずれも、短期可塑性のシナプス前メカニズムであるペアパルスの促通(PPF)を有意に損なわなかった(図10f)。
【0308】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、上記の添付の説明に記載される。本明細書に記載されたものに類似した、又は同等なあらゆる方法及び材料が本発明の実施又は試験で使用できるが、例示的な方法及び材料を記載する。
【0309】
(参考文献)
【0310】
本発明はまた、以下の項目を参照することによっても定義することができる。
【0311】
1.トロポミオシン受容体キナーゼB-全長(TrkB-FL)タンパク質の部分を含む医薬組成物であって、前記部分が、TrkB-FLのカルパイン切断部位にまたがるものである、医薬組成物。
【0312】
2.単離されたTrkB-FLの部分を含むポリペプチドであって、単離されたTrkB-FLの部分が、TrkB-FLのカルパイン切断部位にまたがるものである、ポリペプチド。
【0313】
3.部分の由来となるTrkB-FLタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号1に従う、項目1又は2に記載の医薬組成物又はポリペプチド。
【0314】
4.TrkB-FLの部分が:
(i)TrkB-FLカルパイン切断部位のN末端側における残基の1~10個、及び/又はTrkB-FLカルパイン切断部位のC末端側における残基の1~10個を含むか;又は
(ii)配列番号5及び/又は配列番号12に従うアミノ酸配列を含むか;又は
(iii)5~20、8~12、又は10残基の長さである、項目1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物又はポリペプチド。
【0315】
5.TrkB-FLの部分のアミノ酸配列が、配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従う、項目1又は2に記載の医薬組成物又はポリペプチド。
【0316】
6.トロポミオシン受容体キナーゼB-全長細胞内ドメイン(TrkB-ICD)を産生するTrkB-FLのカルパイン切断を防止することができる、前記項目のいずれか一項に記載の医薬組成物又はポリペプチド。
【0317】
7.血液脳関門を通過して神経細胞に入るTrkB-FLの部分の送達に好適である、前記項目のいずれか一項に記載の医薬組成物又はポリペプチド。
【0318】
8.細胞透過性ペプチドを含む、前記項目のいずれか一項に記載の医薬組成物又はポリペプチド。
【0319】
9.細胞透過性ペプチドが、トランス活性化している転写活性化因子(TAT)であり;任意選択で細胞透過性ペプチドのアミノ酸配列が、配列番号21に従う、項目8に記載の医薬組成物又はポリペプチド。
【0320】
10.ポリペプチドが、リンカーを含み、任意選択でリンカーは、アミノ酸残基KKを含む、項目2から9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0321】
11.(i)配列番号18、配列番号19、又は配列番号20のいずれか1つに従うアミノ酸配列を含み、配列番号21に従うアミノ酸配列を更に含むか;又は(ii)配列番号18に従うアミノ酸配列、リンカー、及び配列番号21に従うアミノ酸配列;若しくは(iii)配列番号18に従うアミノ酸配列、アミノ酸残基KKを含むリンカー、及び配列番号21に従うアミノ酸配列を含む、項目2に記載のポリペプチド。
【0322】
12.配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、又は配列番号28に従うアミノ酸配列を含む、項目2に記載のポリペプチド。
【0323】
13.列挙されたアミノ酸配列内に、1つ又は複数の置換、保存的置換、修飾、又は置き換えを含む、項目4から12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0324】
14.医薬として使用するための、項目1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物又はポリペプチド。
【0325】
15.アルツハイマー病(AD)を処置する、ADを防止する、ADを緩和する、ADの進行を遅延させる、又はADの少なくとも1つの症状を低減する方法における使用のための、項目1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物又はポリペプチド。
【0326】
16.(i)神経病理学的な状態;又は
(ii)興奮毒性を特徴とする病的状態であって、任意選択で、てんかん、プリオン様疾患、筋ジストロフィー、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、虚血、卒中、又は脳外傷から選択される、病的状態;又は
(iii)TrkB-FL切断に関連する病的状態であって、任意選択で、うつ病、不安、双極性障害、統合失調症、肥満症、自閉症、レット症候群、網膜神経節細胞の喪失、加齢、筋萎縮性側索硬化症(ルーゲーリック病)、ダウン症候群の有害な神経学的合併症、糖尿病性末梢性ニューロパチー、又は他のタイプの末梢性ニューロパチーから選択される、病的状態
の少なくとも1つの症状を処置する、防止する、緩和する、その進行を遅延させる、又は低減する方法における使用のための、項目1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物又はポリペプチド。
【0327】
17.ADのバイオマーカーとしての、TrkB-FL、TrkB-ICD、TrkB-T'、TrkB-T':TrkB-FLの比率、又はTrkB-ICD:TrkB-FLの比率の使用。
【0328】
18.ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、
i)対象から得られた試料で測定されたTrkB-FL、TrkB-T'、及び/又はTrkB-ICDの量を、参照量と比較する工程、並びに
ii)
a)TrkB-FLの前記量が前記参照量より低い場合、TrkB-ICDの前記量が前記参照量より高い場合、及び/若しくはTrkB-T'の前記量が前記参照量より高い場合、前記対象がADを有することを決定する工程、若しくは前記対象が、参照量によって表されるものより進行したADのステージを有することを決定する工程;又は
b)TrkB-FL、TrkB-T'、及び/又はTrkB-ICDの前記量が前記参照量と同じであるか若しくは類似している場合、前記対象が、参照量によって表されたものと同じADのステージ若しくはAD診断を有することを決定する工程;又は
c)TrkB-FLの前記量が前記参照量より高い場合、TrkB-ICDの前記量が前記参照量より低い場合、及び/若しくはTrkB-T'の前記量が前記参照量より低い場合、前記対象がADを有さないことを決定する工程、若しくは前記対象が、参照量によって表されるものより進行していないADのステージを有することを決定する工程
を含み、任意選択で、
参照量は、疾患発症の前に前記対象から決定された、軽度のADの診断の後に前記対象から決定された、中程度のADとの診断の後に前記対象から決定された、重度のADとの診断の後に前記対象から決定された、又は処置の前に前記対象から決定された、ADを有さない対象、軽度のADを有する対象、中程度のADを有する対象、重度のADを有する対象における、TrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの量を表す、方法。
【0329】
19.ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、
i)対象から得られた試料で測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率を参照値と比較する工程、及び
ii)
a)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率が前記参照値より高い場合、前記対象がADを有することを決定する工程、若しくは前記対象が、参照値によって表されたものより進行したADのステージを有することを決定する工程;又は
b)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率が前記参照値と同じであるか若しくは類似している場合、前記対象が、参照値によって表されたものと同じADのステージ若しくはAD診断を有することを決定する工程;又は
c)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率が前記参照値より低い場合、前記対象がADを有さないことを決定する工程、若しくは対象が参照値によって表されたものより進行していないADのステージを有することを決定する工程
を含む方法。
【0330】
20.ADを診断するための、又はADのステージを決定するための方法であって、
i)対象から得られた試料で測定されたTrkB-T':TrkB-FLの比率を参照値と比較する工程、及び
ii)
a)前記TrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値より高い場合、前記対象がADを有することを決定する工程、若しくは前記対象が、参照値によって表されたものより進行したADのステージを有することを決定する工程;又は
b)前記TrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値と同じであるか若しくは類似している場合、前記対象が、参照値によって表されたものと同じADのステージ若しくはAD診断を有することを決定する工程;又は
c)前記TrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値より低い場合、前記対象がADを有さないことを決定する工程、若しくは対象が参照値によって表されたものより進行していないADのステージを有することを決定する工程
を含む方法。
【0331】
21.参照値が、疾患発症の前に前記対象から決定された、軽度のADの診断の後に前記対象から決定された、中程度のADとの診断の後に前記対象から決定された、重度のADとの診断の後に前記対象から決定された、又は処置の前に前記対象から決定された、ADを有さない対象、軽度のADを有する対象、中程度のADを有する対象、重度のADを有する対象における、TrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を表す、項目19又は20に記載の方法。
【0332】
22.対象の測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率が、ADを有さない対象を表す参照値と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又は少なくとも300%増加する場合、前記対象がADと診断される、項目19から21のいずれか一項に記載の方法。
【0333】
23.ADを診断するための方法であって、
i)軽度認知機能障害を有する第1の対象から得られた試料において測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を、少なくとも1人のADを有さない対象から得られた参照値と比較する工程、及び
ii)
a)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率が、前記参照値と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、若しくは少なくとも300%増加する場合、第1の対象がADを有することを決定する工程;又は
b)前記TrkB-ICD:TrkB-FLの比率若しくはTrkB-T':TrkB-FLの比率が前記参照値と比較して増加していない場合、第1の対象がADを有さないことを決定する工程
を含む方法。
【0334】
24.薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、
i)ADを有する対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの量及び第1の試料を得てから経過した時間に基づいて、TrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの予測される量を計算する工程;並びに
ii)対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの量を、TrkB-T'、TrkB-FL、及び/又はTrkB-ICDの前記予測される量と比較する工程;並びに
iii)
a)第2の試料におけるTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量より高い場合、第2の試料におけるTrkB-ICBの量がTrkB-ICBの予測される量より低い場合、及び/若しくは第2の試料におけるTrkB-T'の量がTrkB-T'の予測される量より低い場合、処置が有効であることを決定する工程;又は
b)第2の試料におけるTrkB-FLの量がTrkB-FLの予測される量より低いか若しくはそれと同じである場合、第2の試料におけるTrkB-ICBの量がTrkB-ICBの予測される量より高いか若しくはそれと同じである場合、及び/若しくは第2の試料におけるTrkB-T'の量がTrkB-T'の予測される量より高いか若しくはそれと同じである場合、処置が有効ではないことを決定する工程
を含む方法。
【0335】
25.薬剤でのAD処置の効能をモニターするための方法であって、
i)ADを有する対象から得られた第1の試料において測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率及び第1の試料を得てから経過した時間に基づいて、予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を計算する工程;並びに
ii)対象への薬剤の投与の後に対象から得られた第2の試料において測定されたTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率を、前記予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率又はTrkB-T':TrkB-FLの比率と比較する工程;並びに
iii)
a)第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より低い場合、処置が有効であることを決定する工程、若しくは第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率が予測されるTrkB-T':TrkB-FLの比率より低い場合、処置が有効であることを決定する工程;又は
b)第2の試料におけるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率が、予測されるTrkB-ICD:TrkB-FLの比率より高いか若しくはそれと同じである場合、処置が有効ではないことを決定する工程、若しくは第2の試料におけるTrkB-T':TrkB-FLの比率が、予測されるTrkB-T':TrkB-FLの比率より高いか若しくはそれと同じである場合、処置が有効ではないことを決定する工程
を含む方法。
【0336】
【表1】
【0337】
【表2A】
【0338】
【表2B】
【0339】
【表2C】
【0340】
【表2D】
【0341】
【表2E】
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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【国際調査報告】