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特表2023-521077より重質なn-パラフィンからのn-パラフィン水素化分解生成物の選択的製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】より重質なn-パラフィンからのn-パラフィン水素化分解生成物の選択的製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 47/18 20060101AFI20230516BHJP
   B01J 29/12 20060101ALI20230516BHJP
   B01J 29/74 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C10G47/18
B01J29/12 M
B01J29/74 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560994
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 IB2021052829
(87)【国際公開番号】W WO2021205328
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/005,938
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガーギス、マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゾーンズ、ステイシー アイ.
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC69A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CC05
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169FB70
4G169ZA01A
4G169ZA04A
4G169ZA05A
4G169ZA05B
4G169ZA08A
4G169ZA09A
4G169ZA12A
4G169ZA12B
4G169ZA16A
4G169ZA19A
4G169ZA22A
4G169ZC04
4G169ZF01B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF07A
4G169ZF09B
4H129AA03
4H129CA13
4H129CA15
4H129CA20
4H129DA21
4H129KA12
4H129KB03
4H129KC06X
4H129KC06Y
4H129KC14X
4H129KC14Y
4H129KC15X
4H129KC15Y
4H129KC16X
4H129KC16Y
4H129KC17X
4H129KC17Y
4H129KC18X
4H129KC18Y
4H129KC19X
4H129KC19Y
4H129KD26X
4H129KD26Y
4H129KD32X
4H129KD32Y
4H129NA24
4H129NA37
4H129NA45
(57)【要約】
重質n-パラフィンを含む炭化水素組成物からの水素化分解n-パラフィンの選択的製造方法が開示される。上記製造方法は、概括的には、未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトを含む水素化分解触媒の使用を含む。本発明は、概括的には、燃料、溶媒、潤滑油、化学品、及びその他の炭化水素系組成物を製造するための炭化水素原料の高品質化を含み、より詳細には、エチレン及び直鎖状アルキルベンゼンの製造のための原料として、ならびにジェット燃料及びディーゼル燃料の配合成分としての、さまざまな用途向けの、より軽質のn-パラフィン製品の製造に有用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重質n-パラフィンからの水素化分解n-パラフィンの選択的製造方法であって、重質n-パラフィンを含む炭化水素原料を、未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトを含む水素化分解触媒に水素化分解条件下で接触させて、水素化分解n-パラフィンを含む炭化水素生成物を生成させることを含む前記製造方法。
【請求項2】
前記ゼオライトがアルミノケイ酸塩である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ゼオライトが、低アルミナ含量及び/または高シリカ/アルミナ比のアルミノケイ酸塩である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
ゼオライトのシリカ/アルミナ比が、n-パラフィン分解生成物を、好ましくはイソパラフィン生成物よりもn-パラフィン生成物を、選択的に生成させるのに十分な値または範囲のシリカ/アルミナ比である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ゼオライトのシリカ/アルミナ比が、少なくとも約70、または80、または90、または100、または110、または120である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ゼオライトが、ホウ素を含まない、またはホウケイ酸塩もしくはアルミノホウケイ酸塩ではない、またはホウケイ酸塩もしくはアルミノホウケイ酸塩以外のアルミノケイ酸塩である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ゼオライトが、USY、ベータ、ZSM-4、ZSM-12、ZSM-18、ZSM-20、Y、L、またはそれらの組合せから選択されるアルミノケイ酸塩ゼオライト水素化分解触媒である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ゼオライトが、USY及びZSM-12、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記重質n-パラフィンが、C12+n-パラフィンを含むか、または主としてC12+n-パラフィンであるか、あるいはC12+含有量が約50重量%、もしくは60%、もしくは70%、もしくは80%、もしくは90%、もしくは95%、もしくは98%を超えるか、または約100%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記貴金属が白金を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記水素化分解条件が、約270℃~約330℃の温度、約200psig~約2000psigの範囲の圧力、及び約0.4~約2.0 LHSV hr-1の範囲の空間速度を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
水素化分解n-パラフィン生成物の比で表した収率が、ゼオライトのシリカ/アルミナ比が約60以下である点においてのみ異なる水素化分解触媒を使用して得られる、対応する比で表した収率よりも少なくとも約10モル%大きい、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記水素化分解n-パラフィン生成物の比で表した収率が、少なくとも約20、または30、または40、または50、または60、または70、または80、または90、または100モル%大きい、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の製造方法に従って重質n-パラフィンから水素化分解n-パラフィンを選択的に製造するための、未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトの使用。
【請求項15】
前記ゼオライトが、USY、ベータ、ZSM-4、ZSM-12、ZSM-18、ZSM-20、Y、L、またはそれらの組み合わせから選択されるアルミノケイ酸塩ゼオライト水素化分解触媒である、請求項14に記載の未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトの使用。
【請求項16】
前記ゼオライトが、USY及びZSM-12、またはそれらの組み合わせから選択されるアルミノケイ酸塩ゼオライト水素化分解触媒である、請求項14に記載の未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトの使用。
【請求項17】
請求項1に記載の製造方法に従って製造された水素化分解n-パラフィン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月6日出願の、「SELECTIVE PRODUCTION OF N-PARAFFIN HYDROCRACKING PRODUCTS FROM HEAVIER N-PARAFFINS(より重質なn-パラフィンからのn-パラフィン水素化分解生成物の選択的製造方法)」を発明の名称とし、その全体が本明細書に援用される、米国仮出願第63/005,938号に関連し、且つ上記出願の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、重質n-パラフィンを含む炭化水素組成物からの水素化分解n-パラフィンの選択的製造方法、詳細には、未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトを含む水素化分解触媒の使用による上記方法に関する。本発明は、概括的には、燃料、溶媒、潤滑油、化学品、及びその他の炭化水素系組成物を製造するための炭化水素原料の高品質化を含み、より詳細には、エチレン及び直鎖状アルキルベンゼンの製造のための原料として、ならびにジェット燃料及びディーゼル燃料の配合成分としての、さまざまな用途向けの、より軽質のn-パラフィン製品の製造に有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
軽質n-パラフィン製品には、溶媒、エチレン製造用の原料、ジェット燃料及びディーゼル燃料の配合成分、及び直鎖状アルキルベンゼン製造用の原料などのさまざまな用途がある。n-パラフィンの水素化分解では通常、n-パラフィンの収率に匹敵する収率で分岐鎖状パラフィンが生成する。かかる用途向けのn-パラフィン分解生成物の回収は通常、コストのかかる場合がある分離ステップを必要とする。さらに、分岐鎖状パラフィンの形成に起因して、n-パラフィンの収率が低下することにもなる。
【0004】
これまでの研究において、多分岐重質炭化水素を高オクタン価ガソリンへと転化させるために(米国特許第5,364,997号)、及びナフサ範囲の高オクタン価イソパラフィンを製造するための留出油の選択的水素化分解のために(米国特許第5,284,985号)、低酸性度のモレキュラーシーブを使用することと関連する利点が明らかにされてきた。白金担持ホウケイ酸塩またはアルミノホウケイ酸塩ゼオライトも、n-パラフィンに対して高い選択性を与えることが報告されている(米国特許出願公開第2007/0032692A1号)。
【0005】
特定のパラフィンを生成するのに選択的な水素化処理触媒の調製においてなされた進歩にもかかわらず、n-パラフィン組成物を製造するのに有用な触媒、及び改善且つ単純化されたかかる組成物の製造方法に対するニーズが引き続き存在する。
【発明の概要】
【0006】
発明の要約
本発明は、概括的には、より重質のn-パラフィン原料を水素化分解することによる、望ましい特性及びn-パラフィン含有量を有するn-パラフィン組成物を製造するための新規なアプローチを提供する。より重質のn-パラフィン原料の水素化分解は、より低級なn-パラフィン生成物に対する選択性を向上させる水素化分解触媒を使用して実施される。本製造方法は、重質n-パラフィンを含む炭化水素原料を、未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトを含む水素化分解触媒に水素化分解条件下で接触させて、水素化分解n-パラフィンを含む炭化水素生成物を生成させることを含む、重質n-パラフィンから水素化分解n-パラフィンを選択的に生成させることを広く提供する。一態様において、上記水素化分解触媒は、n-パラフィン分解生成物を、好ましくはイソパラフィン生成物よりもn-パラフィン生成物を、選択的に生成させるのに十分な値または範囲のシリカ/アルミナ比を有するアルミノケイ酸塩であってよい。
【0007】
本発明の目的の1つは、概括的に、他の水素化処理用途の資本コスト及び運転コストをより低くする可能性もある、より低級なn-パラフィン生成物の組成物の収率を向上させることである。特定の用途において、より温和なプロセス条件を利用し、望ましくない副反応を最小限に抑える製造方法を提供することも望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面の簡単な記述
本発明の範囲は、本開示に添付されるいずれかの代表的な図面によって限定されるものではなく、本出願の特許請求の範囲によって規定されるものと理解されるべきである。
【0009】
図1a】実施例に記載のPt/USY、SAR=60の水素化分解触媒を使用した、パラフィン分解生成物の選択性プロファイルを示す図である。
図1b】実施例に記載のPt/USY、SAR=60の水素化分解触媒を使用した、パラフィン分解生成物の選択性プロファイルを示す図である。
図1c】実施例に記載のPt/USY、SAR=60の水素化分解触媒を使用した、パラフィン分解生成物の選択性プロファイルを示す図である。
図1d】実施例に記載のPt/USY、SAR=60の水素化分解触媒を使用した、パラフィン分解生成物の選択性プロファイルを示す図である。
図1e】実施例に記載のPt/USY、SAR=60の水素化分解触媒を使用した、パラフィン分解生成物の選択性プロファイルを示す図である。
【0010】
図2a】実施例に記載のPt/USY、SAR=108の水素化分解触媒を使用した、パラフィン分解生成物の選択性プロファイルを示す図である。
図2b】実施例に記載のPt/USY、SAR=108の水素化分解触媒を使用した、パラフィン分解生成物の選択性プロファイルを示す図である。
図2c】実施例に記載のPt/USY、SAR=108の水素化分解触媒を使用した、パラフィン分解生成物の選択性プロファイルを示す図である。
図2d】実施例に記載のPt/USY、SAR=108の水素化分解触媒を使用した、パラフィン分解生成物の選択性プロファイルを示す図である。
図2e】実施例に記載のPt/USY、SAR=108の水素化分解触媒を使用した、パラフィン分解生成物の選択性プロファイルを示す図である。
【0011】
図3a】実施例に記載の、Pt/USY、SAR=60とPt/USY、SAR=108との間の、C生成物に関する直鎖状と分岐鎖状のパラフィン分解生成物に対する選択性の比較を示す図である。
図3b】実施例に記載の、Pt/USY、SAR=60とPt/USY、SAR=108との間の、C生成物に関する直鎖状と分岐鎖状のパラフィン分解生成物に対する選択性の比較を示す図である。
図3c】実施例に記載の、Pt/USY、SAR=60とPt/USY、SAR=108との間の、C10生成物に関する直鎖状と分岐鎖状のパラフィン分解生成物に対する選択性の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な記述
1つ以上の態様の例示的な実施形態が本明細書に提供されるが、開示される製造方法及び該製造方法から形成される組成物は、任意の数の技法を使用して実施することができる。本開示は、本明細書に図示及び記載された任意の例示的な設計ならびに実施形態を含む、本明細書に図示された例示的なまたは特定の実施形態、図面、及び技法に限定されず、添付の特許請求の範囲内で、該特許請求の範囲の均等物の全範囲と共に改変されてもよい。
【0013】
別段の指示がない限り、以下の用語、専門用語、及び定義がこの開示に適用される。ある用語が本開示で使用されているが、本明細書において具体的に定義されていない場合、IUPAC Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed (1997)の定義を適用することができる。但し、当該の定義が、本明細書に適用されるいずれかの他の開示もしくは定義と矛盾しない、または当該の定義によって、該定義が適用されるいずれかの特許請求の範囲が不明確もしくは無効になることはない場合に限られる。本明細書に援用されるいずれかの文書によって提供される定義または使用法が、本明細書で提供される定義または使用法と矛盾する限りにおいて、本明細書で提供される定義または使用法が適用されると理解されるべきである。
【0014】
「周期表」とは、IUPAC元素の周期表の2007年6月22日付版を指し、周期表の族の番号付けスキームは、Chemical and Engineering News, 63(5), 27 (1985)に記載のとおりである。
【0015】
「炭化水素系」、「炭化水素」、及び類似の用語は、炭素原子及び水素原子のみを含む化合物を指す。他の識別子を使用して、当該炭化水素中の特定の基(存在する場合)の存在を示すことができる(例えば、ハロゲン化炭化水素は、当該炭化水素中の当量数の水素原子を置換する1つ以上のハロゲン原子の存在を示す)。
【0016】
「水素化処理」または「水素化転化」とは、炭化水素系原料を、望ましくない不純物を除去する、及び/または上記原料を所望の生成物に転化させる目的で、高温高圧で水素及び触媒と接触させるプロセスを指す。かかるプロセスとしては、メタン化、水性ガスシフト反応、水素化、水素化精製、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族化、水素化異性化、水素化脱ろう、及び選択的水素化分解を含む水素化分解が挙げられるが、これらに限定はされない。水素化処理の種類及び反応条件に応じて、水素化処理の生成物は、粘度、粘度指数、飽和分含有量、低温特性、揮発性、及び脱分極の向上などの物理的特性の向上を示すことができる。
【0017】
「水素化分解」とは、水素化及び脱水素が炭化水素の分解/断片化、例えば、より重質の炭化水素のより軽質の炭化水素への転化、または芳香族及び/もしくはシクロパラフィンの非環状パラフィンへの転化を伴うプロセスを指す。
【0018】
用語「結合剤」または、特に用語「触媒担体」で使用される「担体」とは、通常、触媒物質が付加される高表面積の固体である従来の材料を指す。担体材料は、不活性であってもまたは当該触媒反応に関与してもよく、多孔性または非多孔性であってもよい。一般的な触媒担体としては、さまざまな種類の炭素、アルミナ、シリカ、及びシリカ-アルミナ、例えば非晶性シリカアルミン酸塩(silica aluminates)、ゼオライト、アルミナ-ボリア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-アルミナ-チタニア、及びそれらにその他のゼオライトやその他の複合酸化物を添加することによって得られる材料が挙げられる。
【0019】
「モレキュラーシーブ」とは、モレキュラーシーブの種類に応じて、特定の分子のみがモレキュラーシーブの細孔構造にアクセスすることができる一方、他の分子は、例えば分子サイズ及び/または反応性に起因して排除されるような、枠組み構造内に分子の大きさの均一な細孔を有する材料を指す。ゼオライト、結晶性アルミノリン酸塩、及び結晶性シリコアルミノリン酸塩はモレキュラーシーブの代表的な例である。
【0020】
「中間留分」としては、ジェット燃料、ディーゼル燃料、及び灯油が挙げられ、通常は以下に示すカットポイントを有する。
【表1】
【0021】
SiO/Al比(SAR)は、誘導結合プラズマ(ICP)元素分析によって測定される。無限大のSARは、当該ゼオライト中にアルミニウムが存在しないこと、すなわち、シリカとアルミナのモル比が無限大であることを意味する。
【0022】
本開示では、組成物及び方法または製造方法は、多くの場合、さまざまな構成要素またはステップを「含む」という観点で記述されるが、上記組成物及び方法は、別段の明記がない限り、さまざまな構成要素またはステップ「から本質的になる」または「からなる」であってもよい。
【0023】
用語「a」、「an」、及び「the」は、複数の選択肢、例えば、少なくとも1つを含むことを意図する。例えば、「遷移金属(a transition metal)」または「アルカリ金属(an alkali metal)」の開示は、別段の明示がない限り、1種の遷移金属もしくはアルカリ金属、あるいは複数種の遷移金属もしくはアルカリ金属の混合物または組み合わせを包含することを意味する。
【0024】
本明細書の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲内のすべての数値は、「約」または「概略」示される値によって修飾され、当業者によって予想されるであろう実験誤差及び変動を考慮に入れている。
【0025】
本発明の製造方法は、重質n-パラフィンから水素化分解n-パラフィンを、かかるn-パラフィンを生成するのに選択的な水素化分解触媒に重質n-パラフィンを含む炭化水素原料を接触させることによって選択的に生成させる。総じて、上記水素化分解触媒は未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトを含むと同時に、水素化分解条件は、水素化分解n-パラフィンを含む炭化水素生成物を生成させるのに適している。
【0026】
上記ゼオライトは、通常は、酸性度が低く、アルミナ含量が低く、且つ/またはシリカ/アルミナ比が高いアルミノケイ酸塩であってよい。特定の低い値または範囲に特に限定されないが、ゼオライトのシリカ/アルミナ比は、n-パラフィン分解生成物を、好ましくはイソパラフィン生成物よりもn-パラフィン生成物を、選択的に生成させるのに十分な値または範囲のシリカ/アルミナ比である。より詳細な有用な範囲としては、シリカ/アルミナ比が少なくとも約70、または80、または90、または100、または110、または120である低酸性度ゼオライトが挙げられる。上記ゼオライトは、ホウ素を含まない、またはホウケイ酸塩もしくはアルミノホウケイ酸塩ではない、またはホウケイ酸塩もしくはアルミノホウケイ酸塩以外であるアルミノケイ酸塩であってもよい。好適なゼオライトの具体的な例としては、USY、ベータ、ZSM-4、ZSM-12、ZSM-18、ZSM-20、Y、L、またはそれらの組み合わせから選択される水素化分解触媒を挙げることができる。本明細書で言及される有用なゼオライトは、特許文献、例えば、米国特許第5284985号及び第5364997号に詳細に記載されている。
【0027】
本製造方法を使用して、より重質のn-パラフィンから水素化分解n-パラフィン組成物を製造することができ、ここで、上記重質n-パラフィンは、例えば、C12+n-パラフィンを含むか、または主としてC12+n-パラフィンであるか、あるいはC12+含有量が約50重量%、もしくは60%、もしくは70%、もしくは80%、もしくは90%、もしくは95%、もしくは98%を超えるか、または約100%である。より重質のn-パラフィンを含む好適な原料は必ずしも限定されず、高分子量フィッシャー・トロプシュワックス、水素化分解装置の再循環流、軽油、及びパラフィン系残油などのワックス系原料を挙げることができる。約30重量%まで及びそれを超える直鎖状パラフィンならびに2つ以下のアルキル置換基を有するわずかに分岐したパラフィンを含む原料も使用することができる。
【0028】
上記貴金属は一般に、白金及びパラジウムなどの任意の貴金属を、イリジウム及びロジウムなどの他の第VIIIA族金属と共に含んでいてよい。上記貴金属は、白金を含むか、または白金であることが好ましい。
【0029】
上記貴金属は、ゼオライトへの含浸または交換などの任意且つ適宜の方法によって触媒中に組み込むことができる。上記貴金属は、Pt(NH 2+などのカチオン性、アニオン性、または中性錯体の形態で組み込むことができ、このタイプのカチオン性錯体は、ゼオライト上へ金属を交換するのに簡便であることが理解されよう。貴金属の量は、約0.01~約10重量パーセントが好適であり、通常は約0.1~約2.0重量パーセントである。Pt/ホウ素含有ゼオライトベータを合成する好ましい方法では、上記白金化合物は水酸化テトラアンミン白金である。上記貴金属はpHが中性の溶液を用いて触媒組成物中に導入されることが好ましい。
【0030】
貴金属が高レベルで分散していることが一般に好ましい。例えば、白金の分散は、水素化学吸着法によって測定され、H/Pt比で表される。H/Pt比が高いほど白金が高分散である。得られるゼオライトは約0.8より大きいH/Pt比を有することが好ましい。
【0031】
シリカ、シリカアルミナ、シリカ-ボリア、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア、ならびにシリカ-アルミナ-ボリア、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、またはシリカ-マグネシア-ジルコニアなどの三元系組成物などの結合剤材料もゼオライトと共に使用することができる。使用される場合、ゼオライトに対する結合剤の比率は、通常は約9:1~約1:9、より一般的には約3:1~約1:3(重量で)で変化する。
【0032】
本製造方法は、使用される特定の触媒に適した水素化分解条件下で実施され、かかる条件は、通常、約270℃~約330℃の温度、約200psig~約2000psigの範囲の圧力、及び約0.4~約2.0 LHSV hr-1の範囲の空間速度を含む。
【0033】
本製造方法は、一般的には、硫黄含有量が約500ppm未満且つ窒素含有量が約50ppm未満の低硫黄原料を使用して実施される。本製造方法への原料の硫黄含有量は約50ppm未満であることが好ましい。本発明の未硫化触媒組成物と接触させる前に予備水素化精製を行っていない、硫黄含有量が約500ppm未満の原料が好ましい。
【0034】
従来の水素化精製触媒を使用する水素化精製ステップを実施して、窒素及び硫黄を除去し、且つ実質的に沸点範囲を変化させることなく芳香族をナフテンへと飽和させてもよい。好適な水素化精製触媒は一般に、金属である水素化成分、通常VIA族またはVIIIA族金属を含む。水素化精製によって、通常、触媒の性能が向上し、より低い温度、より高い空間速度、より低い圧力、またはこれらの条件の組み合わせを使用することが可能になる。
【0035】
本発明の製造方法は、低酸性度ゼオライトを利用しない水素化分解触媒と比較して、以下の実施例によって支持される、生成するイソパラフィンに対する水素化分解n-パラフィン生成物の、比で表した収率の向上を含む多くの利点を提供する。例えば、n-パラフィン製造に関する水素化分解の性能を、シリカ/アルミナ比(SAR)の点においてのみ上記低酸性度ゼオライトと異なる類似のゼオライトと比較した場合、生成物であるn-パラフィンの含有量の顕著な向上を実現することができる。比で表した収率のかかる向上は、必ずしもそれに限定されるものではないが、例えば、ゼオライトのシリカ/アルミナ比が約60以下である点においてのみ異なる水素化分解触媒を使用して得られる、対応する比で表した収率よりも少なくとも約10モル%大きくなることができる。いくつかの実施形態において、かかる比で表した収率の向上はさらに大きく、例えば、ゼオライトのシリカ/アルミナ比が約60以下である点においてのみ異なる水素化分解触媒を使用して得られる、対応する比で表した収率よりも、少なくとも約20モル%、または30モル%、または40モル%、または50モル%、または60モル%、または70モル%、または80モル%、または90モル%、または100モル%大きくなることができる。
【0036】
実施例
例1:シリカ対アルミナ比(SAR)=60のPt/USYゼオライトの調製
使用したUSYゼオライトCBV-760はZeolystから入手した。白金の添加は以下のようにして実施した。
【0037】
1グラムのCBV-760(Zeolyst製FAUゼオライト)を5gの0.148M NHOH溶液及び6mLの脱イオン水と共にバイアルに添加した。350mgのPt(NH(NOを5gの0.148M NHOH溶液及び32mlのHOに溶解することにより、白金含有溶液を調製した。後者の白金溶液1mLを、CVB-760、0.148M NHOH溶液、及び水が入った上記バイアルに添加した。
【0038】
この溶液を室温で2~3日間静置し、その後ろ過した。白金含有ゼオライト粉末をオーブン中、90℃で2~4時間乾燥し、次いで薄いガラス皿に微粉末として入れ、20~40ft/分の空気流中、300℃までの温度で焼成した。段階的加熱プログラム:a)1℃/分で120℃まで加熱、b)2時間保持、c)1℃/分で300℃まで加熱、d)3時間保持、e)加熱を停止し、室温まで放冷を使用した。
【0039】
上記触媒をペレットに圧縮成型し、これを粉砕し、ふるいにかけて20~40メッシュサイズの固体を得た。
【0040】
上記低SAR Pt/USY触媒の特性を以下に示す。
Pt含有量、重量%: 0.43
Ptの分散、強い、%: 52.20
Ptの分散、全体、%: 128.20
Al含有量、重量%: 1.22
Si含有量、重量%: 44.5
SiO/Alモル比(SAR): 58.5
【0041】
例2:例1に記載のように調製したPt/USY(SAR=60)を使用した場合の選択性プロファイル
例1に調製法を記載した上記触媒0.7gを不活性アランダムで希釈し、炉内に載置した、外径0.25インチ、肉厚0.035インチの管からなる反応器に充填した。
【0042】
触媒床上に50cm/分のNを250°Fで少なくとも2時間流通させることによって、触媒を乾燥した。この触媒を、大気圧で50cm/分で流通させたH中、600°Fまで加熱し、その温度で少なくとも1時間維持することによって還元した。上記反応器を518°Fの温度に冷却し、水素で1200psigに加圧し、次いで、反応物質であるn-ヘキサデカンをこの反応器に圧送した。
【0043】
特定の一連の条件(温度、圧力、重量時空間速度[WHSV])において定常状態に近づけた後、目的の生成物を得る期間を実施した。WHSVを変えることにより転化率を変化させた。
【0044】
1200psig及び518°Fにおける、転化率の関数としての、イソ及びノルマルのC~C13パラフィン生成物の収率を図1a~1eに示す。
【0045】
図1a~1eに示すように、転化率が60%未満においては、イソ及びノルマルのクラッキング生成物は類似した収率で形成される。それより高い転化率では、イソパラフィン分解生成物の収率が優勢になる。n-ヘキサデカン転化率50%での収率を表Aに示す。炭素数ごとのノルマルパラフィン分解生成物とイソパラフィン分解生成物の収率の比は、概括的には1未満である。かかる触媒は、軽質n-パラフィンの選択的な製造には適さないことになる。
【表A】
【0046】
概括的には、この例の触媒を使用すると、イソパラフィン及びnパラフィン分解生成物の収率は60%未満の転化率では類似しているが、より高い転化率ではイソパラフィン収率が優勢になる。
【0047】
例3:SAR=108のPt/USYゼオライトの調製
3gの高シリカFAUゼオライト(Tosoh 製品385HUA、SAR=100(公称))を、18ccの水及び15gの0.148M NHOHと共にバイアルに加える。次いで、3gのテトラアンミン白金二硝酸塩溶液[0.286gのテトラアンミン白金二硝酸塩(Aesar、Pt 49重量%)を24.5gの水及び4.1gの0.148M NHOH溶液に溶解することによって調製]を添加し、この反応混合物を室温で3日間静置する。
【0048】
次いで固形物を濾過して回収し、50ccの水で3回に分けて洗浄する。真空中で乾燥後に、この固形物をオーブンに移し、90℃で2時間乾燥する。次いで、この固形物をパイレックス皿に薄く広げ、例1に記載のプログラムに従って焼成する。
【0049】
触媒をペレットに圧縮成型し、これを粉砕し、ふるいにかけて20~40メッシュサイズの固体を得た。
【0050】
上記高SAR Pt/USY触媒の特性を以下に示す。
Pt含有量、重量%: 0.472
Ptの分散、強い、%: 70.2
Ptの分散、全体、%: 117.4
Al含有量、重量%: 0.739
Si含有量、重量%: 41.6
SiO/Alモル比(SAR): 108
【0051】
例4:例3に記載のように調製したPt/USY(SAR=108)を使用した場合の選択性プロファイル
例3に調製法を記載した上記触媒0.7gを不活性アランダムで希釈し、炉内に載置した、外径0.25インチ、肉厚0.035インチの管からなる反応器に充填する。この触媒を例1に示したようにして乾燥及び還元する。実験を、1200psigで、WHSVを変えることにより転化率を変化させて実施するが、この触媒の活性がより低いために、例2で示された転化率範囲と類所の転化率範囲を得るためには、より高い温度(518°Fに対して626°F)が必要であった。
【0052】
1200psig及び626°Fにおける、転化率の関数としてのイソ及びノルマルのC~C13パラフィン生成物の収率を図2a~2eに示す。
【0053】
図2a~2eに示すように、n-パラフィンは、すべての転化率において対応するイソパラフィンよりも顕著に高い収率で生成しており、Pt/USY、SAR=60で得られた選択性とは際立って対照的であり、このことは、n-パラフィン分解生成物の選択的な形成を示している。n-ヘキサデカン転化率50%での収率を表Bに示すが、任意の炭素数について、n:i比は1より大きい。したがって、n-パラフィンを選択的に生成するためのPt/USY、SAR=108の利点が示される。
【表B】
【0054】
概括的には、この例の触媒、すなわち低酸性度(すなわち高SAR)のUSYゼオライト上にPtを含む触媒を使用すると、n-パラフィン分解生成物が優勢であり、後者の選択的生成に注目することが重要である。
【0055】
直鎖状分解生成物及び分岐鎖状分解生成物に対する選択性は、上記2種の触媒間で、それぞれの触媒由来の直鎖状分解生成物及び分岐鎖状分解生成物のそれぞれの異性体収率を、同一のグラフ上に所与の炭素数に関してプロットすることによって比較することもできる。図3a~3cに示すC、C、及びC10種に関する代表的な結果は、直鎖状パラフィン分解生成物の収率がPt/USY、SAR=108で、所与の転化率で大幅に高いことを示している(より高い選択性を示している)が、分岐鎖状パラフィン分解生成物の収率と選択性は上記2種の触媒に関して類似している。
【0056】
例5:Pt/SiO触媒の調製
1.22gのCabosil M5ヒュームドシリカ(不純物<5ppm)に、1.22gのテトラアンミン白金二硝酸塩溶液を添加する(後者の溶液は、24.5グラムの水及び4.1グラムの0.148M NHOH溶液に0.286グラムのテトラアンミン白金二硝酸塩(Aesar;Pt 49重量%)を添加することによって調製)。さらに4.2グラムの水を添加して(但し、穏やかに混合しながら漸増させる)、初期湿潤を達成した。
【0057】
上記触媒を、他の2種の触媒について記載したように(例1及び3を参照)、直接乾燥及び焼成することができるように、薄いパイレックス皿上で調製した。
【0058】
上記Pt/SiO触媒の特性を以下に示す。
Pt含有量、重量%: 0.480
Ptの分散、強い、%: 37.2
Ptの分散、全体、%: 62.3
【0059】
例6:例5で調製した触媒の存在下でのn-ヘキサデカンの反応性
例5に調製法を記載した上記触媒0.7gを不活性アランダムで希釈し、炉内に載置した、外径0.25インチ、肉厚0.035インチの管からなる反応器に充填した。この触媒を例3に示したようにして乾燥及び還元する。
【0060】
実験を、1200psig、WHSV=0.97、ならびに518°F及び536°Fの2つの温度で実施した。すべての場合において、n-ヘキサデカン転化率は2%未満であり、このことは、Pt/SiO触媒が例3及び4に記載の触媒よりも活性が低いことを示している。
【0061】
その後の実験において、テトラリンを、1200psig、518°F、及びWHSV=10(すなわち、n-ヘキサデカンを使用した実験に使用した条件よりも大幅に穏やかな条件)で上記反応器に供給すると、テトラリンの完全な水素化が起こり、cis-及びtrans-デカリンが得られ、このことは、上記Pt/SiO触媒の高い水素化活性を示している。
【0062】
この例から、Pt/SiOは、例2及び4で使用した条件に匹敵する条件で、n-ヘキサデカン転化に対する活性が非常に低いことが見てとれる。したがって、選択的なn-パラフィン分解生成物の形成には、低酸性度(高SAR)ゼオライト上に担持された白金を必要とする。上記Pt/SiOは、その高い水素化活性にもかかわらず、選択的なn-パラフィン生成を触媒せず、このことは、n-パラフィン分解生成物の選択的な生成を触媒するためには、低酸性度ゼオライト上に担持された白金を含む触媒が必要であることを示している。
【0063】
例7:Pt/ZSM-12触媒の調製
Zeolystから入手可能なZSM-12構造体であるZEO217の2グラムの試料を焼成して有機テンプレートを除去し、12グラムの水及び20グラムの0.148M NHOH溶液が入ったバイアルに加えた。このバイアルにテトラアンミン白金二硝酸塩溶液(2グラム)を添加した。上記テトラアンミン白金二硝酸塩溶液は、緩衝させるために、0.286グラムのテトラアンミン白金二硝酸塩(Aesar;Pt 49重量%)を24.5グラムの水及び4.1グラムの0.148M NHOH溶液に溶解することから調製した。すべてのPtが最終的にゼオライト上に存在する場合、1グラムのこの溶液から、担持量が0.5重量%である触媒が得られた。
【0064】
上記内容物を室温で2日間静置した。次いで固形物を濾過して回収し、50ccの水で3回に分けて洗浄した。次いで真空中での乾燥後に、この固形物を90℃のオーブンに移し、2時間乾燥した。次いで、この固形物をパイレックス皿上に薄く広げ、以下のプログラム、すなわち、陽圧の空気流中、1℃/分で120℃まで昇温;次いでこの温度で2時間保持;次いで同一の速度で300℃まで加熱;3時間保持に従って焼成した。
【0065】
上記Pt/ZSM-12触媒の特性を以下に示す。
Pt含有量、重量%: 0.447
Ptの分散、強い、%: 29.5
Ptの分散、全体、%: 70.0
Al含有量、重量%: 0.701
Si含有量、重量%: 44.8
SiO/Alモル比(SAR): 115
【0066】
例8:例7において調製した触媒の存在下でのn-ヘキサデカンの反応性
例7に調製法を記載した上記触媒0.7gを不活性アランダムで希釈し、炉内に載置した、外径0.25インチ、肉厚0.035インチの管からなる反応器に充填した。この触媒を例3に示したようにして乾燥及び還元した。
【0067】
実験を、1200psig、WHSV=1.0、及び°F518の温度で実施した。n-ヘキサデカンの転化率は76%であり、これは前述のPt/SiO触媒及びPt/USY触媒よりも顕著に高かった。したがって、Pt/ZSM-12触媒は、Pt/SiO触媒及びPt/USY触媒よりも大幅に活性が高く、n-パラフィン分解生成物に対して選択的である。
【0068】
この例から、Pt/ZSM-12は、例2及び4で使用した条件に匹敵する条件で、n-ヘキサデカン転化に対して高い活性を有することが見てとれる。したがって、選択的なn-パラフィン分解生成物を形成するには、低酸性度(高SAR)ゼオライト上に担持された白金が必要であると思われる。上記のように、上記Pt/SiO触媒は、その高い水素化活性にもかかわらず、選択的なn-パラフィン生成を触媒せず、このことは、n-パラフィン分解生成物の選択的な生成を触媒するためには、Pt/ZSM-12触媒などの、低酸性度ゼオライト上に担持された白金を含む触媒が必要であることを示している。
【0069】
疑義を避けるために、本出願は、以下の番号を付した条項に記載される主題を対象とする。
1.重質n-パラフィンからの水素化分解n-パラフィンの選択的製造方法であって、重質n-パラフィンを含む炭化水素原料を、未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトを含む水素化分解触媒に水素化分解条件下で接触させて、水素化分解n-パラフィンを含む炭化水素生成物を生成させることを含む上記製造方法。
2.上記ゼオライトがアルミノケイ酸塩である、第1項に記載の製造方法。
3.上記ゼオライトが、低アルミナ含量及び/または高シリカ/アルミナ比のアルミノケイ酸塩である、第1項に記載の製造方法。
4.ゼオライトのシリカ/アルミナ比が、n-パラフィン分解生成物を、好ましくはイソパラフィン生成物よりもn-パラフィン生成物を、選択的に生成させるのに十分な値もしくは範囲のシリカ/アルミナ比である、第2項または第3項に記載の製造方法。
5.上記ゼオライトのシリカ/アルミナ比が、少なくとも約70、もしくは80、もしくは90、もしくは100、もしくは110、もしくは120である、第2項または第3項に記載の製造方法。
6.上記ゼオライトが、ホウ素を含まない、またはホウケイ酸塩もしくはアルミノホウケイ酸塩ではない、またはホウケイ酸塩もしくはアルミノホウケイ酸塩以外のアルミノケイ酸塩である、第1項~第5項に記載の製造方法。
7.上記ゼオライトが、USY、ベータ、ZSM-4、ZSM-12、ZSM-18、ZSM-20、Y、L、またはそれらの組合せから選択されるアルミノケイ酸塩ゼオライト水素化分解触媒である、第1項~第6項に記載の製造方法。
8.上記ゼオライトが、USY及びZSM-12、またはそれらの組み合わせから選択される、第7項に記載の製造方法。
9.上記重質n-パラフィンが、C12+n-パラフィンを含むか、または主としてC12+n-パラフィンであるか、あるいはC12+含有量が約50重量%、もしくは60%、もしくは70%、もしくは80%、もしくは90%、もしくは95%、もしくは98%を超えるか、または約100%である、第1項~第8に記載の製造方法。
10.上記貴金属が白金を含む、第1項~第9項に記載の製造方法。
11.上記水素化分解条件が、約270℃~約330℃の温度、約200psig~約2000psigの範囲の圧力、及び約0.4~約2.0 LHSV hr-1の範囲の空間速度を含む、第1項~第10項に記載の製造方法。
12.水素化分解n-パラフィン生成物の比で表した収率が、ゼオライトのシリカ/アルミナ比が約60以下である点においてのみ異なる水素化分解触媒を使用して得られる、対応する比で表した収率よりも少なくとも約10モル%大きい、第1項~第11項に記載の製造方法。
13.上記水素化分解n-パラフィン生成物の比で表した収率が、少なくとも約20、または30、または40、または50、または60、または70、または80、または90、または100モル%大きい、第12項に記載の製造方法。
14.第1項~第13項に記載の製造方法に従って重質n-パラフィンから水素化分解n-パラフィンを選択的に製造するための、未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトの使用。
15.上記ゼオライトが、USY、ベータ、ZSM-4、ZSM-12、ZSM-18、ZSM-20、Y、L、またはそれらの組み合わせから選択されるアルミノケイ酸塩ゼオライト水素化分解触媒である、第14項に記載の未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトの使用。
16.上記ゼオライトが、USY及びZSM-12、またはそれらの組み合わせから選択されるアルミノケイ酸塩ゼオライト水素化分解触媒である、第14項に記載の未硫化の低酸性度貴金属含有ゼオライトの使用。
17.第1項~第13項に記載の製造方法に従って製造された水素化分解n-パラフィン組成物。
【0070】
本発明及び本開示の範囲に関するさらなる詳細は、添付の特許請求の範囲から判定することができる。
【0071】
本発明の1つ以上の実施形態の前述の説明は主として例示を目的としており、本発明の本質をなおも包含することとなる変化形を使用することもできることが認識される。本発明の範囲の判定においては、以下の特許請求の範囲を参照されたい。
【0072】
米国特許の実務を目的として、及び許可されている他の特許庁において、本発明の前述の説明及び本出願の何れかの他の部分において引用されているすべての特許及び刊行物は、それらに含まれるいずれかの情報が前述の開示と一貫している及び/または前述の開示を補足するものである限り、本明細書に援用される。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
図3c
【国際調査報告】