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特表2023-521088キシリトールドープシトレート組成物及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】キシリトールドープシトレート組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/06 20060101AFI20230516BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20230516BHJP
   A61L 27/46 20060101ALI20230516BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20230516BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230516BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20230516BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20230516BHJP
   C08G 63/20 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08G63/06
A61L27/18
A61L27/46
A61L27/58
C08G18/42 066
C08K3/01
C08L67/04
C08G63/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561120
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 US2021026177
(87)【国際公開番号】W WO2021207355
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/006,521
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500273296
【氏名又は名称】ザ・ペン・ステート・リサーチ・ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100227008
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト,イーサン
【テーマコード(参考)】
4C081
4J002
4J029
4J034
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081BA12
4C081BA16
4C081BB01
4C081BB08
4C081CA171
4C081CC01
4C081CC04
4C081CF032
4C081DA01
4C081DC13
4C081EA02
4J002CF181
4J002DA076
4J002DE236
4J002DH046
4J002DL006
4J002DM006
4J002FD206
4J002GB01
4J002GB02
4J029AA01
4J029AB01
4J029AB07
4J029AD01
4J029AE06
4J029BA02
4J029EA05
4J029FC01
4J029HA01
4J029HB01
4J029KD02
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC50
4J034DF15
4J034DF24
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034RA02
(57)【要約】
本開示は、組織工学材料として使用され得る組成物、より具体的には、骨移植片として有用であり得るキシリトールドープシトレートポリマー組成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の式(A1)のモノマー、式(B1)及び式(B2)から独立して選択される1つ以上のモノマー、ならびに1つ以上の式(C1)のモノマーから形成されるポリマーまたはオリゴマーを含む組成物:
【化1】

式中、
、X、及びXは、各々独立して、-O-または-NH-であり、
及びXは、独立して、-O-または-NHであり、
、R、及びRは、各々独立して、-H、C-C22アルキル、C-C22アルケニル、またはMであり、
は、HまたはMであり、
は、-H、-NH、-OH、-OCH、-OCHCH、-CH、または-CHCHであり、
は、-H、C-C23アルキル、またはC-C23アルケニルであり、
は、-H、C-C23アルキル、C-C23アルケニル、-CHCHOH、または-CHCHNHであり、
n及びmは、独立して、1~2000の整数であり、
は、カチオンである。
【請求項2】
、X、及びXが、各々-O-である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
が、-Hである、請求項1または2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記1つ以上の式(A1)のモノマーが、クエン酸またはシトレートを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記1つ以上の式(B1)のモノマーが、ポリ(エチレングリコール)及びポリ(プロピレングリコール)から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記1つ以上の式(B2)のモノマーが、1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(B1)及び前記式(B2)から独立して選択される1つ以上のモノマーならびに前記1つ以上の式(C2)のモノマーが、約20:1~約1:20に及ぶモル比で存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、さらに、1つ以上の式(D1)のモノマーから形成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物:
【化2】

式中、
、R10、R11、及びR12は、各々独立して、-H、-OH、-CH(CHNH、-CH(CHR13)NH、-CH(CHOH、-CH(CHR13)OH、及び-CH(CHCOOHから選択され、
13は、-COOHまたは-(CHCOOHであり、
x及びyは、独立して、1~10の整数である。
【請求項9】
前記1つ以上の式(D1)のモノマーが、ドーパミン、L-ドーパ、D-ドーパ、没食子酸、コーヒー酸、3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸、及びタンニン酸から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、さらに、式(E1)、式(E2)、式(E3)、及び式(E4)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物:
【化3】

式中、pは、1~20の整数である。
【請求項11】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、さらに、式(F1)及び式(F2)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物:
【化4】

式中、R14は、-OH、-OCH、-OCHCH、及び-Clから選択される。
【請求項12】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、さらに、式(G1)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物:
【化5】

式中、R15は、アミノ酸側鎖である。
【請求項13】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、さらに、式(H1)、式(H2)、及び式(H3)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物:
【化6】

式中、
は、出現ごとに、-O-または-NH-から独立して選択され、
16は、-CHまたは-CHCHであり、
17及びR18は、各々独立して、-CH、-CH、または-CHCHである。
【請求項14】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、さらに、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)、及び式(I6)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物:
【化7】

式中、
及びYは、独立して、-O-または-NH-であり、
19及びR20は、各々独立して、-CHまたは-CHCHであり、
21は、-OC(O)CCH、-CH、または-CHCHであり、
22は、-CH、-OH、または-NHである。
【請求項15】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが熱架橋される、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、約600~約70,000mol/mに及ぶ架橋密度を有する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
乾燥状態で約1MPa~約120MPaの引張強度を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
乾燥状態で約1MPa~約3.5GPaの引張弾性率を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
発光性である、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
さらに、無機材料を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記無機材料が、微粒子状無機材料である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記無機材料が、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、二相リン酸カルシウム、バイオガラス、セラミック、マグネシウム粉末、真珠粉末、マグネシウム合金、及び脱細胞化骨組織粒子から選択される、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
約250MPa~約350MPaに及ぶ圧縮強度を有する、請求項20~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
約100KPa~約1.8GPaに及ぶ圧縮弾性率を有する、請求項20~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
室温りん光を示す、請求項20~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
さらに、抗酸化剤、医薬活性のある薬剤、生体分子、または細胞を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
4ヶ月未満で分解するように構成される、請求項1~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
骨再生を促進及び/または加速する方法であって、
請求項1~27のいずれか1項に記載の組成物を骨部位に送達することを含む、前記方法。
【請求項29】
前記組成物が、前記骨部位での骨形成の増殖期の前及び/またはその間に送達される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
さらに、幹細胞を前記骨部位に送達することを含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記骨部位が、膜内骨化部位である、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記骨部位が、軟骨内骨化部位である、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
重合性組成物を重合してポリマー組成物を形成することを含む、組成物の調製方法であって、前記重合性組成物が、1つ以上の式(A1)のモノマー、式(B1)及び式(B2)から独立して選択される1つ以上のモノマー、ならびに1つ以上の式(C1)のモノマーを含む、前記方法:
【化8】

式中、
、X、及びXは、各々独立して、-O-または-NH-であり、
及びXは、独立して、-O-または-NHであり、
、R、及びRは、各々独立して、-H、C-C22アルキル、C-C22アルケニル、またはMであり、
は、HまたはMであり、
は、-H、-NH、-OH、-OCH、-OCHCH、-CH、または-CHCHであり、
は、-H、C-C23アルキル、またはC-C23アルケニルであり、
は、-H、C-C23アルキル、C-C23アルケニル、-CHCHOH、または-CHCHNHであり、
n及びmは、独立して、1~2000の整数であり、
は、カチオンである。
【請求項34】
、X、及びXが、各々-O-である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
が、-Hである、請求項33または34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記1つ以上の式(A1)のモノマーが、クエン酸またはシトレートを含む、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記1つ以上の式(B1)のモノマーが、ポリ(エチレングリコール)またはポリ(プロピレングリコール)から選択される、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記1つ以上の式(B2)のモノマーが、1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールから選択される、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記式(B1)及び前記式(B2)から独立して選択される1つ以上のモノマーならびに前記1つ以上の式(C2)のモノマーが、約20:1~約1:20に及ぶモル比で存在する、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記ポリマーまたはオリゴマーが、さらに、1つ以上の式(D1)のモノマーから形成される、請求項33~39のいずれか1項に記載の方法:
【化9】

式中、
、R10、R11、及びR12は、各々独立して、-H、-OH、-CH(CHNH、-CH(CHR13)NH、-CH(CHOH、-CH(CHR13)OH、及び-CH(CHCOOHから選択され、
13は、-COOHまたは-(CHCOOHであり、
x及びyは、独立して、1~10の整数である。
【請求項41】
前記1つ以上の式(D1)のモノマーが、ドーパミン、L-ドーパ、D-ドーパ、没食子酸、コーヒー酸、3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸、及びタンニン酸から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、さらに、式(E1)、式(E2)、式(E3)、及び式(E4)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される、請求項33~41のいずれか1項に記載の方法:
【化10】

式中、pは、1~20の整数である。
【請求項43】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、さらに、式(F1)及び式(F2)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される、請求項33~42のいずれか1項に記載の方法:
【化11】

式中、R14は、-OH、-OCH、-OCHCH、及び-Clから選択される。
【請求項44】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、さらに、式(G1)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される、請求項33~43のいずれか1項に記載の方法:
【化12】

式中、R15は、アミノ酸側鎖である。
【請求項45】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、さらに、式(H1)、式(H2)、及び式(H3)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される、請求項33~44のいずれか1項に記載の方法:
【化13】

式中、
は、出現ごとに、-O-または-NH-から独立して選択され、
16は、-CHまたは-CHCHであり、
17及びR18は、各々独立して、-CH、-CH、または-CHCHである。
【請求項46】
前記ポリマーまたは前記オリゴマーが、さらに、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)、及び式(I6)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される、請求項33~45のいずれか1項に記載の方法:
【化14】

式中、
及びYは、独立して、-O-または-NH-であり、
19及びR20は、各々独立して、-CHまたは-CHCHであり、
21は、-OC(O)CCH、-CH、または-CHCHであり、
22は、-CH、-OH、または-NHである。
【請求項47】
さらに、前記ポリマー組成物を架橋することを含む、請求項33~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリマー組成物が、約600~約70,000mol/mに及ぶ架橋密度を有するように十分に架橋される、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
さらに、前記ポリマー組成物を、架橋の前に無機材料と混合することを含む、請求項33~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記無機材料が、微粒子状無機材料である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記無機材料が、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、二相リン酸カルシウム、バイオガラス、セラミック、マグネシウム粉末、真珠粉末、マグネシウム合金、及び脱細胞化骨組織粒子から選択される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
請求項1~27のいずれか1項に記載の組成物を含む、骨再生を促進及び/または加速するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月7日に出願された米国仮出願第63/006,521号の優先権の利益を主張する。当該仮出願の開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、組織工学材料として使用され得る組成物、より具体的には、骨移植片として有用であり得るキシリトールドープシトレートポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
天然の骨の機械的及び骨形成性の生物活性を複製する生存能力のある機能的骨移植片の生成は、再建整形外科の分野を改善する顕著な可能性を有する。先天性欠損、がん切除及び外傷関連損傷の修復及び再建にとって重要なのは、粘弾性及び抗疲労特性ならびに生理学的骨組織の生物活性を複製する最大の効率でかかる移植片を設計する能力である。さらに、かかる材料の物理的及び生物活性特性を容易に調整する能力は、非常に需要が高い。特に、成長中の組織に適した分解速度を同時に実現しつつ、天然の骨の機械的特性を複製することは、依然として骨移植片を創出する際の主要な課題である。現在、適切な移植片の生成は、生物由来材料の入手可能性ならびに不十分な機械的及び分解特性、ならびに合成ポリマー材料の限られた生体適合性及び骨形成活性によって制限されている。
【0004】
骨の再建には、多くの場合、損傷した組織を置き換えるための同種移植片または自家移植片の使用が含まれる。これらの技術のかなりの制限は、材料を採取することの難しさ及び置き換えられる元の組織の形状に一致するように3次元の輪郭を描くことの難しさである。さらに、ドナー部位の組織の病的状態または不適合性及び疾患の伝播が、それぞれ、自家移植片及び同種移植片の有効性を制限する。代替的に、脱細胞化された骨基質の使用により、ドナー部位の病的状態が排除され、患者の疾患及び免疫応答に対するリスクが最小限に抑えられる。しかしながら、脱細胞化された骨の使用は、骨の採取及び成形、ならびに天然細胞の標本を完全に露出させる能力に依然として依存している。最後に、ポリマー足場の使用は、有機組織の採取の必要性及びそれに伴う制限を排除する。ポリマーは、調整可能な物理的特性を備えた複雑な形状を設計する能力を示す。残念ながら、多くのポリマーは、不適合な機械的特性、分解速度、内部の多孔性及び形状、ならびにインビボでの有毒な分解産物の放出を含めた問題のため、有用性が限られている。
【0005】
以前の研究では、天然の骨内のアパタイトナノ結晶を安定化するのに役立つ、強く結合したシトレートに富んだ分子の存在が確認されている。これらのシトレート分子によるアパタイト結晶のスタッドは、ナノ結晶のサイズを3ナノメートルの好ましい厚さに調節する重要なメカニズムとして特定されている。アパタイトナノ構造の調節及びアパタイト性リン酸カルシウム結晶の形成は、天然の骨にその機械的特性を与えるとともに、シトレートは現在、骨代謝の重要な成分であると考えられている。シトレート系の生分解性エラストマーはすでに開発されており、優れたインビトロ及びインビボでの生体適合性を示している。しかしながら、これらの材料は、水和状態では機械的特性が不十分であり、急速な分解、及び最小の骨形成能を示す。これらの材料の豊富なカルボン酸基は、カルシウム含有ヒドロキシアパタイトをキレートする能力を示し、天然の相互作用と同様のポリマー/ヒドロキシアパタイト相互作用及び天然の骨におけるシトレート結合アパタイトナノ結晶の形成を促進する。結果として、これらのポリマー/ヒドロキシアパタイト複合体は、改善された機械的特性、分解、及び生物活性を示すが、ヒドロキシアパタイト及びその他の無機充填材料との複合体化では、天然の骨の力学とは十分に適合せず、分解時間が長くなる材料が生じる。
【0006】
従って、生分解性を維持しながら改善された機械的特性、分解速度及び生物活性を示す骨移植片として、または他の組織工学材料として使用され得る材料が明らかに必要とされている。本開示は、その必要性及び他の必要性に対処する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、組織工学材料として有用な組成物を提供する。より具体的には、本開示は、例えば、骨移植片材料として使用され得るキシリトールドープシトレートポリマー組成物を提供する。使用方法及びこれらの材料の作製方法も提供する。
【0008】
1つの態様では、1つ以上の式(A1)のモノマー、式(B1)及び式(B2)から独立して選択される1つ以上のモノマー、ならびに1つ以上の式(C1)のモノマーから形成されるポリマーまたはオリゴマーを含む組成物を提供する。
【化1】

式中、
、X、及びXは、各々独立して、-O-または-NH-であり、
及びXは、独立して、-O-または-NHであり、
、R、及びRは、各々独立して、-H、C-C22アルキル、C-C22アルケニル、またはMであり、
は、HまたはMであり、
は、-H、-NH、-OH、-OCH、-OCHCH、-CH、または-CHCHであり、
は、-H、C-C23アルキル、またはC-C23アルケニルであり、
は、-H、C-C23アルキル、C-C23アルケニル、-CHCHOH、または-CHCHNHであり、
n及びmは、独立して、1~2000の整数であり、
は、カチオンである。
【0009】
いくつかの実施形態では、X、X、及びXは、各々-O-である。いくつかの実施形態では、Rは、-Hである。いくつかの実施形態では、該1つ以上の式(A1)のモノマーは、クエン酸またはシトレートを含む。いくつかの実施形態では、該1つ以上の式(B1)のモノマーは、ポリ(エチレングリコール)及びポリ(プロピレングリコール)から選択される。いくつかの実施形態では、該1つ以上の式(B2)のモノマーは、1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールから選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、該式(B1)及び式(B2)から独立して選択される1つ以上のモノマーならびに該1つ以上の式(C2)のモノマーは、約20:1~約1:20に及ぶモル比で存在する。
【0011】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、1つ以上の式(D1)のモノマーから形成される。
【化2】

式中、
、R10、R11、及びR12は、各々独立して、-H、-OH、-CH(CHNH、-CH(CHR13)NH、-CH(CHOH、-CH(CHR13)OH、及び-CH(CHCOOHから選択され、
13は、-COOHまたは-(CHCOOHであり、
x及びyは、独立して、1~10の整数である。
【0012】
いくつかの実施形態では、該1つ以上の式(D1)のモノマーは、ドーパミン、L-ドーパ、D-ドーパ、没食子酸、コーヒー酸、3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸、及びタンニン酸から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、式(E1)、式(E2)、式(E3)、及び式(E4)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される。
【化3】

式中、pは、1~20の整数である。
【0014】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、式(F1)及び式(F2)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される。
【化4】

式中、R14は、-OH、-OCH、-OCHCH、及び-Clから選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、式(G1)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される。
【化5】

式中、R15は、アミノ酸側鎖である。
【0016】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、式(H1)、式(H2)、及び式(H3)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される。
【化6】

式中、
は、出現ごとに、-O-または-NH-から独立して選択され、
16は、-CHまたは-CHCHであり、
17及びR18は、各々独立して、-CH、-CH、または-CHCHである。
【0017】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)、及び式(I6)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成される。
【化7】

式中、
及びYは、独立して、-O-または-NH-であり、
19及びR20は、各々独立して、-CHまたは-CHCHであり、
21は、-OC(O)CCH、-CH、または-CHCHであり、
22は、-CH、-OH、または-NHである。
【0018】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、熱架橋される。いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、約600~約70,000mol/mに及ぶ架橋密度を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、該組成物は、乾燥状態で約1MPa~約120MPaの引張強度を有する。いくつかの実施形態では、該組成物は、乾燥状態で約1mPA~約3.5GPaの引張弾性率を有する。いくつかの実施形態では、該組成物は、発光性である。
【0020】
いくつかの実施形態では、該組成物はさらに、無機材料を含む。いくつかの実施形態では、該無機材料は微粒子状無機材料である。いくつかの実施形態では、該無機材料は、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、二相リン酸カルシウム、バイオガラス、セラミック、マグネシウム粉末、真珠粉末、マグネシウム合金、及び脱細胞化骨組織粒子から選択される。かかる実施形態では、該組成物は、約250MPa~約350MPaに及ぶ圧縮強度を有する。かかる実施形態では、該組成物は、約100KPa~約1.8GPaに及ぶ圧縮弾性率を有する。かかる実施形態では、該組成物は、室温りん光を示す。
【0021】
いくつかの実施形態では、該組成物はさらに、抗酸化剤、医薬活性のある薬剤、生体分子、または細胞を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、該組成物は、4ヶ月未満で分解するように構成される。
【0023】
別の態様では、本明細書に記載の組成物を骨部位に送達することを含む、骨再生を促進及び/または加速する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該組成物は、該骨部位での骨形成の増殖期の前及び/またはその間に送達される。いくつかの実施形態では、該方法はさらに、幹細胞を該骨部位に送達することを含む。いくつかの実施形態では、該骨部位は、膜内骨化部位である。いくつかの実施形態では、該骨部位は、軟骨内骨化部位である。
【0024】
別の態様では、重合性組成物を重合してポリマー組成物を形成することを含む、組成物の調製方法を提供し、該重合性組成物は、1つ以上の式(A1)のモノマー、式(B1)及び式(B2)から独立して選択される1つ以上のモノマー、ならびに1つ以上の式(C1)のモノマーを含み、
【化8】

式中、すべての可変要素は、本明細書に定義する通りである。
【0025】
別の態様では、本明細書に記載の組成物を含む、骨再生を促進及び/または加速するためのキット。
【0026】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明に記載する。本開示の他の特長、目的、及び利点は、該説明及び図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】代表的なキシリトールドープポリ(オクタメチレンシトレート)の合成を示す概略図である。
図2】実施例で合成された代表的な本開示のポリマーの密度を示す。データは、ポリマー内のキシリトール含量の増加に伴う密度の増加を示す。
図3】実施例で合成された代表的な本開示のポリマーにおける架橋間で測定された分子量を示す。キシリトールを含むポリマーは、従来のPOCと比較して、高度に架橋された構造を有し、機械的特性が向上することが分かった。
図4】実施例で合成された代表的な本開示のポリマーのフーリエ変換赤外スペクトログラムを示す。キシリトール含量の増加に伴う-OHシグナルの増加が見られ、ポリマーの力学をさらに強化するポリマー鎖間の水素結合の形成が示された。
図5】実施例で合成された代表的な本開示のポリマーのx線回折スペクトルである。このスペクトルは、キシリトール含量の増加によって誘導されるポリマーの結晶化度の不足を示す。
図6A】実施例に記載の代表的な本開示のポリマーから形成されたフィルムに関する引張フィルム力学を示す。これらの測定値は、様々な生体組織、例えば、皮膚、神経、骨等に適合させることが可能な方法でのフィルム力学の調整可能性を示している。
図6B】実施例に記載の代表的な本開示のポリマーから形成されたフィルムに関する引張フィルム力学を示す。これらの測定値は、様々な生体組織、例えば、皮膚、神経、骨等に適合させることが可能な方法でのフィルム力学の調整可能性を示している。
図6C】実施例に記載の代表的な本開示のポリマーから形成されたフィルムに関する引張フィルム力学を示す。これらの測定値は、様々な生体組織、例えば、皮膚、神経、骨等に適合させることが可能な方法でのフィルム力学の調整可能性を示している。
図6D】実施例に記載の代表的な本開示のポリマーから形成されたフィルムに関する引張フィルム力学を示す。これらの測定値は、様々な生体組織、例えば、皮膚、神経、骨等に適合させることが可能な方法でのフィルム力学の調整可能性を示している。
図6E】実施例に記載の代表的な本開示のポリマーから形成されたフィルムに関する引張フィルム力学を示す。これらの測定値は、様々な生体組織、例えば、皮膚、神経、骨等に適合させることが可能な方法でのフィルム力学の調整可能性を示している。
図6F】実施例に記載の代表的な本開示のポリマーから形成されたフィルムに関する引張フィルム力学を示す。これらの測定値は、様々な生体組織、例えば、皮膚、神経、骨等に適合させることが可能な方法でのフィルム力学の調整可能性を示している。
図6G】実施例に記載の代表的な本開示のポリマーから形成されたフィルムに関する引張フィルム力学を示す。これらの測定値は、様々な生体組織、例えば、皮膚、神経、骨等に適合させることが可能な方法でのフィルム力学の調整可能性を示している。
図7】A及びBは、実施例に記載の代表的な本開示のポリマーに関して測定された外部接触角を示す。これらのデータは、代表的な材料の親水性を示している。
図8】キシリトール含量の増加に伴う代表的なポリマーの蛍光の増強を示すデータを示す。
図9A】代表的な本開示のポリマーに関する蛍光発光スペクトルを示す。これらのスペクトルは、本開示の組成物が、インビボで画像化及び光送達が可能であることを示している。
図9B】代表的な本開示のポリマーに関する蛍光発光スペクトルを示す。これらのスペクトルは、本開示の組成物が、インビボで画像化及び光送達が可能であることを示している。
図9C】代表的な本開示のポリマーに関する蛍光発光スペクトルを示す。これらのスペクトルは、本開示の組成物が、インビボで画像化及び光送達が可能であることを示している。
図9D】代表的な本開示のポリマーに関する蛍光発光スペクトルを示す。これらのスペクトルは、本開示の組成物が、インビボで画像化及び光送達が可能であることを示している。
図9E】代表的な本開示のポリマーに関する蛍光発光スペクトルを示す。これらのスペクトルは、本開示の組成物が、インビボで画像化及び光送達が可能であることを示している。
図9F】代表的な本開示のポリマーに関する蛍光発光スペクトルを示す。これらのスペクトルは、本開示の組成物が、インビボで画像化及び光送達が可能であることを示している。
図9G】代表的な本開示のポリマーに関する蛍光発光スペクトルを示す。これらのスペクトルは、本開示の組成物が、インビボで画像化及び光送達が可能であることを示している。
図10】さらに60重量パーセントのヒドロキシアパタイト(HA)を含む代表的な本開示の組成物に関する圧縮応力の測定値を示す。これらのデータは、キシリトール含量に関係なく、組成物にかかる均一な応力を示している
図11】さらに60重量パーセントのヒドロキシアパタイトを含む代表的な本開示の組成物に関する圧縮弾性率の測定値を示す。これらの測定値は、モノマー成分としてキシリトールを欠く複合体と比較して著しく等しい。
図12】さらに60重量パーセントのヒドロキシアパタイト(HA)を含む代表的な組成物に関する圧縮ひずみの測定値を示す。
図13】代表的な本開示の組成物に関する膨潤の重量パーセンテージを示す。これらのデータは、キシリトールを含む複合体が、当該モノマー成分の親水性の増加にもかかわらず、キシリトールを欠く複合体と同じ速度で膨潤することを示している。
図14】代表的な組成物の経時的な分解損失パーセントを示す。分解は、16週間で5%~40%(すなわち、ポリマー成分の完全な分解)に調整可能であることが分かった。代表的なポリマーに関連する機械的データと組み合わせて見ると、これらのデータは、組成物の力学に悪影響を与えることなく、組成物の分解の幅広い調整可能性を示している。
図15】代表的な本開示の組成物に関する時間に対するpHの測定値を示す。これらのデータは、1週間以内にpH約7.4(生理的)に戻ることを示している。従って、本開示の組成物は、骨環境に所望のpHプロファイルを複製することが可能である。
図16】A及びBは、ヒドロキシアパタイトを含む本開示の組成物(POCX6/50HA)に関する蛍光及び室温りん光をそれぞれ示す。これらは、本開示の組成物が、複数の画像診断法で使用され得ることを示している。特に、りん光は、蛍光と対比して、りん光の固有の遅延発光によって生体組織の自己蛍光を回避するために、インビボでの画像化に好ましい場合がある。
図17A】実施例に記載の本開示の組成物に関する分解産物のMG63細胞に対するインビトロでの細胞毒性評価を示す。
図17B】さらにヒドロキシアパタイトを含む実施例に記載の本開示の組成物(CXBE/50HA)に関する溶出性成分のMG63細胞に対するインビトロでの細胞毒性を示す。
図17C】さらにヒドロキシアパタイトを含む実施例に記載の本開示の組成物(CXBE/50HA)に関する分解産物のMG63細胞に対するインビトロでの細胞毒性を示す。
図18】本開示の組成物(POC-X6/50HA)に起因する頭蓋骨再生を示す画像を示しており、臨床的に用いられるPLGA/35HA材料と同様の骨再生が示される。
【0028】
種々の図面における同様の参照記号は、同様の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、以下の詳細な説明、実施例、図面、及び特許請求の範囲、ならびにそれらの前述及び後述の説明を参照することにより、さらに容易に理解され得る。しかしながら、本組成物、システム、及び/または方法を開示及び説明する前に、本発明は、別段の定めのない限り、本開示の特定のまたは例示的な態様の組成物、システム、及び/または方法に限定されず、従って、当然ながら、変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の態様を記載するためのみの目的であり、限定することを意図していないこともまた理解されたい。
【0030】
本発明の以下の説明は、現在知られている最良の態様での本発明の可能な教示として提供される。この目的のため、関連分野の当業者には、本発明の有益な結果を依然として得ながら、本明細書に記載の本発明の様々な態様に多くの変更を加えることができることが認識及び理解されよう。本発明の所望の利益のいくつかは、他の特徴を利用することなく、本発明の特徴のいくつかを選択することにより得ることが可能なことも明らかである。従って、関連分野の当業者には、本発明に対する多くの修正及び適合は、可能であり、ある特定の状況では望ましいことでさえある場合があり、本発明の一部であることが認識されよう。従って、以下の説明は、かさねて、本発明の原理の例示として提供されており、本発明を限定するものではない。
【0031】
本開示は、キシリトールがドープされたシトレートポリマーを含む組成物とともに、組織工学材料としての、例えば、特に骨移植片としてのそれらの使用方法に関する。キシリトールはFDAが承認した糖アルコールであり、現在、代替甘味料及び虫歯予防のデンタルリンスとして使用されている。キシリトールは、クエン酸またはシトレート誘導体のカルボキシル基(またはその誘導体)と反応することが可能な5つのヒドロキシル基を含む。これらのヒドロキシル基の存在は、キシリトールが重合中のエステル化を介してシトレート含有ポリマーに組み込まれるようにするだけでなく、多数の該基により、形成される化学的架橋の数が増加する。これらのさらなる架橋により、ポリマーの機械的強度、特に弾性率が改善される。さらに、キシリトールモノマー内に見られる多数のヒドロキシル基は、ヒドロキシアパタイト内のまたは外部供給源から沈着したカルシウムとイオン結合することが可能である。この結合は、組成物内のヒドロキシアパタイトとポリマーとの間の界面を改善し、複合体表面におけるカルシウム量及びその後の無機質沈着を増加させる。ラットで行われた以前の研究で、キシリトールの経口投与により、カルシウムのバイオアベイラビリティの増加の結果として大腿骨の無機質密度が増加することが示された。さらに、研究により、キシリトールの顕著な抗細菌及び抗酸化活性も示された。シトレート系ポリマーで以前に使用されたポリオールと比較して、キシリトールは生体適合性が高く、親水性が高いため、当該ポリマー及び/または複合体への水の取り込みが増加し、加水分解速度が増加する。本開示の組成物は、天然の骨の機械的特性を超える機械的特性の向上を示しながら、約1年~4ヶ月に調節される分解速度を示す。従って、本開示の組成物は、生分解速度とは無関係に高い機械的強度が維持されるシステムである。
【0032】
定義
本明細書で使用される、「任意の」または「任意に」という用語は、後続して記載される事象または状況が起こり得るかまたは起こり得ないこと、ならびに当該記載が、当該事象または状況が起こる例及びそれが起こらない例を含むことを意味する。
【0033】
明確にするために別々の態様の文脈で記載している本開示のある特定の特徴は、組み合わせて単一の態様としても提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の態様の文脈で記載している本開示の様々な特徴は、別々にまたは任意の適切な小結合としても提供され得る。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈に明確な別段の記載がない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「官能基」への言及は、2つ以上のかかる官能基を含み、「組成物」への言及は、2つ以上のかかる組成物を含む等である。
【0035】
本明細書で使用される用語は、特定の態様を記載するためのみの目的であり、限定することを意図していないこともまた理解されたい。本明細書及び特許請求の範囲で使用される、「含む」という用語は、「~からなる」及び「~から本質的になる」態様を含むことができる。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で、本明細書で定義される複数の用語を参照する。
【0036】
用語「例えば」及び「等の」、ならびにこれらの文法的等価物については、明示的に別段の定めがない限り、「これらに限定されない」という表現が続くものと理解される。
【0037】
本明細書で使用される、「置換される」という用語は、水素原子が除去され、置換基によって置き換えられることを意味する。有機化合物のすべての許容される置換基を含むことが企図される。本明細書で使用される、「任意に置換される」という表現は、非置換であるかまたは置換されていることを意味する。所与の原子での置換は価数によって制限されることを理解されたい。幅広い態様では、該許容される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及びヘテロ環式、ならびに芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば、以下に記載されるものが挙げられる。該許容される置換基は、適切な有機化合物に対して1つ以上であってもよく、同じでも異なっていてもよい。本開示の目的で、窒素等のヘテロ原子は、当該ヘテロ原子の価数を満たす、水素置換基及び/または本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有し得る。本開示は、いかなる方法でも有機化合物の許容される置換基によって限定されることを意図するものではない。また、「置換」または「~で置換される」という用語は、かかる置換が、置換された原子及び置換基の許容される価数に従って行われ、該置換により、安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離等による変化を自発的に起こさない化合物が得られるという暗黙の条件を含む。さらなる態様では、本開示が置換されている基を説明する場合、該基は、下記の通り、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシド、及びチオールから選択される価数で許容される、1つ以上(すなわち1、2、3、4、または5)の基で置換されることを意味すると理解される。
【0038】
本明細書で使用される、「脂肪族」という用語は、非芳香族炭化水素基を指し、分岐及び非分岐、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基を含む。本明細書で使用される、単独でまたは他の用語との組み合わせで用いられる「C-Cアルキル」という用語は、n~m個の炭素を有する直鎖でも分岐状でもよい飽和炭化水素基を指す。アルキル部分の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチル等の化学基、2-メチル-1-ブチル、n-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、1,2,2-トリメチルプロピル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等の高級同族体が挙げられるが、これらに限定されない。該アルキル基はまた、置換されていても非置換であってもよい。本明細書全体を通じて「アルキル」という用語は、一般に、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を指すために用いられるが、本明細書では、置換アルキル基は、当該アルキル基での特定の置換基(複数可)を識別することによって具体的に言及される。該アルキル基は、下記の通り、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、水酸化物、ケトン、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシド、またはチオールが挙げられるがこれらに限定されない1つ以上の基で置換され得る。
【0039】
本明細書で使用される、「C-Cアルケニル」とは、1つ以上の炭素間二重結合を有し、n~m個の炭素を有するアルキル基を指す。アルケニル基の例としては、エテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、セオブテニル(seobutenyl)等が挙げられるが、これらに限定されない。様々な態様では、該アルケニル部分は、2~6、2~4、または2~3個の炭素原子を含む。該アルケニル基は、下記の通り、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、シアノ、シリル、スルホ-オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシド、チオール、またはホスホニルが挙げられるがこれらに限定されない1つ以上の基で置換され得る。
【0040】
本明細書で使用される、「アミン」または「アミノ」という用語は、式-NRで表され、R及びRは、各々、本明細書に記載の置換基、例えば、上記の水素、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニル基であり得る。「アミド」は、-C(O)NRである。
【0041】
本明細書で使用される、「カルボン酸」という用語は、式-C(O)OHによって表される。本明細書で使用される、「カルボキシレート」または「カルボキシル」基は、式-C(O)Oで表される。
【0042】
本明細書で使用される、「エステル」という用語は、式-OC(O)Rまたは-C(O)ORで表され、Rは、上記のアルキル、ハロゲン化アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロシクロアルケニル基であり得る。
【0043】
本明細書で使用される、「R」、「R」、「R」、「R」等(nはなんらかの整数である)は、独立して、1つ以上の上記の基を有し得る。例えば、Rが直鎖アルキル基の場合、該アルキル基の水素原子のうちの1つは、任意に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミン基、アルキル基、ハライド等で置換され得る。選択される基に応じて、第一の基は、第二の基の中に組み込まれる場合もあれば、代替的に、該第一の基は、該第二の基に対してペンダントの(すなわち、結合される)場合もある。例えば、「アミノ基を含むアルキル基」という表現では、該アミノ基は、該アルキル基の骨格内に組み込まれる場合がある。代替的に、該アミノ基は、該アルキル基の骨格に結合される場合もある。選択される基(複数可)の性質によって、該第一の基が該第二の基に埋め込まれるか結合されるかが決定される。
【0044】
本開示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例中に示される数値は可能な限り正確に報告される。どの数値も、しかしながら、それらの各試験計測中に見られる標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含む。さらに、様々な範囲の数値範囲が本明細書に記載されている場合、列挙された値を含むこれらの値の任意の組み合わせが使用され得ることが企図される。さらに、範囲は、本明細書では、「約」ある特定値から及び/または「約」別の特定値までとして表される場合がある。かかる範囲が表現される場合、別の態様は、該ある特定値から及び/または該別の特定値までを含む。
【0045】
同様に、先行する「約」を使用して値が近似値として表される場合、該特定値は、別の態様を形成することが理解されよう。さらに、該範囲の各々の端点は、他方の端点との関連において、及び他方の端点とは独立して、ともに重要であることが理解されよう。特に明記されていない限り、「約」という用語は、「約」という用語で修飾された特定値の5%以内(例えば、2%または1%以内)を意味する。
【0046】
さらに、本明細書に開示するすべての範囲は、その中に組み込まれるありとあらゆる部分範囲を包含するものと理解されたい。例えば、「1.0~10.0」と記載される範囲は、1.0以上の最小値で始まり、10.0以下の最大値で終わるありとあらゆる部分範囲、例えば、1.0~5.3、または4.7~10.0、または3.6~7.9を含むと見なされるべきである。
【0047】
本明細書に開示するすべての範囲はまた、特に明記されていない限り、該範囲の端点を含むと見なされる。例えば、「5と10の間」、「5から10」、または「5~10」の範囲は、一般に、端点5及び10を含むと見なされるべきである。さらに、「最大で」という表現が量(amount)または量(quantity)に関連して使用される場合、該量は、少なくとも検出可能な量(amount)または量(quantity)であることが理解される。例えば、「最大で」指定された量で存在する材料は、検出可能な量から該指定された量を含むそれ以下で存在し得る。
【0048】
本明細書で使用される、「組成物」という用語は、指定された量で指定された成分を含む生成物、及び指定された量の指定された成分の組み合わせから直接または間接的に生じる任意の生成物を包含することを意図している。
【0049】
本明細書及び結びの特許請求の範囲での、組成物中の特定の要素または成分の重量部への言及は、重量部が表現される該組成物または物品中の該要素または成分と、任意の他の要素または成分との間の重量関係を示す。従って、2重量部の成分X及び5重量部の成分Yを含む混合物中には、X及びYは、重量比2:5で存在し、さらなる成分が該混合物に含まれるかどうかに関わらず、かかる比で存在する。
【0050】
成分の重量パーセント(wt.%)は、特に反対であると明記されていない限り、該成分が含まれる配合または組成物の総重量に基づく。
【0051】
ある要素が別の要素に「接続されている」または「結合されている」と言及される場合、それは他の要素に直接接続または結合されている場合もあれば、介在する要素が存在する場合もあることが理解されよう。一方で、ある要素が別の要素に「直接接続されている」または「直接結合されている」と言及される場合は、介在する要素は存在しない。要素間または層間の関係を示すために使用される他の単語も同様に解釈されるべきである(例えば、「~の間に」に対して「直接~の間に」、「隣接した」に対して「直接隣接した」、「~の上に」に対して「直接~の上に」)。本明細書で使用される、「及び/または」という用語は、関連する記載された項目の1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0052】
本明細書で使用される、「有効な」、「有効量」、または「~に有効な条件」という用語または表現は、有効量もしくは有効な条件が表される機能または特性を実行することが可能である量または条件を意味する。以下に指摘するように、正確な必要量または特定の必要条件は、認められる可変要素、例えば、使用される材料及び観察される処理条件に応じて、態様ごとに異なる。従って、正確な「有効量」または「~に有効な条件」を常に特定可能とは限らない。しかしながら、適切な有効量は、当業者には、日常的な実験のみを使用して容易に決定されることを理解されたい。
【0053】
本明細書において、様々な要素、成分、領域、層及び/またはセクションを記載するために、「第一」、「第二」等の用語が使用され得ることが理解されよう。これらの要素、成分、領域、層、及び/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、成分、領域、層、またはセクションを、別の要素、成分、領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用される。従って、後述する第一の要素、成分、領域、層、またはセクションは、例示的態様の教示から逸脱することなく、第二の要素、成分、領域、層、またはセクションと呼ばれることもある。
【0054】
本明細書で使用される、「実質的に」という用語は、その後に記載される事象または状況が完全に発生すること、またはその後に記載される事象または状況が一般的に、通常、またはほぼ発生することを意味する。
【0055】
さらに、「実質的に」という用語は、いくつかの態様では、実質的にが量の特性評価、または定量化に使用される、記載された特性、成分、組成物、または他の条件の少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%を指すことができる。
【0056】
本明細書で使用される、「実質的に同一の参照組成物」という用語は、本発明の成分を除外して、実質的に同一の成分を含む参照組成物を指す。別の例示的な態様では、「実質的に」という用語は、例えば、「実質的に同一の参照組成物」という文脈において、実質的に同一の成分を含むとともに、本発明の成分が当技術分野で一般的な成分で置換されている参照組成物を指す。
【0057】
本発明の態様は、特定の法定分類、例えば、システム法定分類で記載及び請求することができるが、これは単に便宜上のものであり、当業者には、本発明の各態様があらゆる法定分類で記載及び請求され得ることが理解されよう。別段に明示的な定めのない限り、本明細書に記載のいずれの方法または態様も、その工程を特定の順序で行う必要があるものとして解釈するようには意図されていない。従って、方法クレームが、工程を特定の順序に限定すべきことを特許請求の範囲にも明細書にも具体的に述べていない場合、いかなる点においても順序が暗示されることを意図するものではない。これは、工程の配置もしくは操作の流れに関する論理的な問題、文法構成もしくは句読法から派生する明らかな意味、または本明細書に記載の態様の数もしくは種類を含めた、任意のあり得る非明示的な解釈の根拠に対して成り立つ。
【0058】
本発明は、本発明の様々な態様の以下の詳細な説明、及びそこに含まれる例を参照すること、ならびに図面、及びそれらの前述及び後述の説明を参照することで、より容易に理解され得る。
【0059】
組成物
1つの態様では、1つ以上の式(A1)のモノマー、式(B1)及び式(B2)から独立して選択される1つ以上のモノマー、ならびに1つ以上の式(C1)のモノマーから形成されるポリマーまたはオリゴマーを含む組成物を提供する。
【化9】

式中、
、X、及びXは、各々独立して、-O-または-NH-であり、
及びXは、独立して、-O-または-NHであり、
、R、及びRは、各々独立して、-H、C-C22アルキル、C-C22アルケニル、またはMであり、
は、HまたはMであり、
は、-H、-NH、-OH、-OCH、-OCHCH、-CH、または-CHCHであり、
は、-H、C-C23アルキル、またはC-C23アルケニルであり、
は、-H、C-C23アルキル、C-C23アルケニル、-CHCHOH、または-CHCHNHであり、
n及びmは、独立して、1~2000の整数であり、
は、カチオンである。
【0060】
いくつかの実施形態では、Xは、-O-である。いくつかの実施形態では、Xは、-O-である。いくつかの実施形態では、Xは、-O-である。いくつかの実施形態では、X、X、及びXは、各々-O-である。
【0061】
いくつかの実施形態では、Xは、-Oである。いくつかの実施形態では、Xは、-NH-である。いくつかの実施形態では、Xは、-O-である。いくつかの実施形態では、Xは、-NH-である。いくつかの実施形態では、X及びXは、各々-O-である。いくつかの実施形態では、X及びXは、各々-NH-である。いくつかの実施形態では、X及びXのうちの一方は-O-であり、X及びXのうちの他方は-NH-である。
【0062】
いくつかの実施形態では、R、R、及びRは、各々独立して、-H、-CH、または-CHCHである。
【0063】
いくつかの実施形態では、R、R及びRは、各々独立して、-HまたはMである。
【0064】
いくつかの実施形態では、Rは、-Hである。
【0065】
いくつかの実施形態では、Rは、Mである。
【0066】
いくつかの実施形態では、Mは、出現ごとに独立して、NaまたはKである。
【0067】
いくつかの実施形態では、Rは、-OHである。
【0068】
いくつかの実施形態では、Rは、-Hである。いくつかの実施形態では、Rは、-CHである。
【0069】
いくつかの実施形態では、Rは、-Hである。
【0070】
いくつかの実施形態では、n及びmは、独立して、1~2000の整数であることができ、例示的な値である1~100、または1~250、または1~500、または1~750または1~1000、または1~1250、または1~1500、または1~1750を含む。さらに他の態様では、n及びmは、独立して、1~20の整数であることができ、例示的な値である2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、及び19を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、該1つ以上の式A1のモノマーは、アルコキシル化、アルケノキシル化、または非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート、またはクエン酸のエステルもしくはアミドを含むことができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、該1つ以上の式B1のモノマーは、末端ヒドロキシルまたはアミン基を有するポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリ(プロピレングリコール)(PPG)から選択される。本開示の目的と矛盾しない任意のかかるPEGまたはPPGが使用され得る。いくつかの実施形態では、例えば、重量平均分子量約100~約5000または約200~約1000または約200~約100,000を有するPEGまたはPPGが使用され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、該1つ以上の式B2のモノマーは、C-C20、C-C12、またはC-C脂肪族アルカンジオールまたはジアミンを含み得る。例えば、該1つ以上の式B2のモノマーは、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジオール、1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジオール、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,20-イコサンジオール、または1,20-イコサンジアミンを含み得る。代替的な実施形態では、該1つ以上の式B2のモノマーは、分岐アルカンジオール/ジアミン、アルケンジオール/ジアミン、または芳香族ジオール/ジアミンで置き換えられ得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、該ポリマーは、該1つ以上の式(A1)のモノマー対該1つ以上の式(B1)、式B2)、及び式(C1)のモノマーのモル比[A1:(B1+B2+C1)]が、約3:1~約1:3、例えば、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.5:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、または約1:3から形成され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーはさらに、カテコール含有種を含む1つ以上のモノマーから形成され得る。該カテコール含有種は、本開示の目的と矛盾しない任意のカテコール含有種を含み得る。場合によっては、カテコール含有種は、該モノマーを反応させる実施形態でポリマーを形成するために使用される別の化学種とエステルまたはアミド結合を形成し得る少なくとも1つの部分を含む。例えば、いくつかの実施形態では、カテコール含有種は、アルコール部分、アミン部分、カルボン酸部分、またはこれらの組み合わせを含む。さらに、いくつかの実施形態では、カテコール含有種は、カテコール部分の一部ではないヒドロキシル部分を含む。いくつかの実施形態では、カテコール含有種は、ドーパミンを含む。他の実施形態では、カテコール含有種は、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)またはD-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(D-DOPA)を含む。さらに他の実施形態では、カテコール含有種は、没食子酸またはコーヒー酸を含む。いくつかの実施形態では、カテコール含有種は、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸を含む。さらに、カテコール含有種はまた、天然に存在する種またはその誘導体、例えば、タンニン酸またはタンニンを含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、カテコール含有種は、該ポリマーまたはオリゴマーの主鎖にアミド結合を介して結合される。他の実施形態では、カテコール含有種は、該ポリマーまたはオリゴマーの主鎖にエステル結合を介して結合される。カテコール含有種のさらなる例は、米国特許出願公開第2020/0140607号及び国際特許出願公開第WO2018/227151号に見出すことができる。これら公開の内容は、全体として本明細書に組み込まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、1つ以上の式(D1)のモノマーから形成され得る。
【化10】

式中、
、R10、R11、及びR12は、各々独立して、-H、-OH、-CH(CHNH、-CH(CHR13)NH、-CH(CHOH、-CH(CHR13)OH、及び-CH(CHCOOHから選択され、
13は、-COOHまたは-(CHCOOHであり、
x及びyは、独立して、1~10の整数である。
【0077】
いくつかの実施形態では、該1つ以上の式(D1)のモノマーは、ドーパミン、L-ドーパ、D-ドーパ、没食子酸、コーヒー酸、3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸、及びタンニン酸から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーはさらに、ジイソシアネートを含む1つ以上のモノマーから形成され得る。いくつかの実施形態では、イソシアネートは、4~20個の炭素原子を有するアルカンジイソシアネートを含む。本明細書に記載のイソシアネートはまた、モノカルボン酸部分を含み得る。使用され得る様々なイソシアネートのさらなる例は、米国特許出願公開第2020/0140607号及び国際特許出願公開第WO2018/227151号に見出すことができる。これら公開の内容は、全体として本明細書に組み込まれる。
【0079】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、式(E1)、式(E2)、式(E3)、及び式(E4)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成され得る。
【化11】

式中、pは、1~20の整数である。
【0080】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、ポリカルボン酸、例えば、ジカルボン酸、またはポリカルボン酸の機能的等価物、例えば、ポリカルボン酸の環状無水物または酸クロリドを含む1つ以上のモノマーから形成され得る。いくつかの実施形態では、該ポリカルボン酸またはその機能的等価物は、飽和でも不飽和でもよい。いくつかの実施形態では、例えば、該ポリカルボン酸またはその機能的等価物は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、またはフマル酸クロリドを含む。いくつかの実施形態では、ビニル含有ポリカルボン酸またはその機能的等価物、例えば、アリルマロン酸、アリルマロン酸クロリド、イタコン酸、またはイタコン酸クロリドも使用され得る。さらに、いくつかの実施形態では、該ポリカルボン酸またはその機能的等価物は、ポリカルボン酸であってもなくてもよいオレフィン含有モノマーで少なくとも部分的に置き換えることができる。いくつかの実施形態では、例えば、オレフィン含有モノマーは、不飽和ポリオール、例えば、ビニル含有ジオールを含む。さらなる例は、米国特許出願公開第2020/0140607号及び国際特許出願公開第WO2018/227151号に見出すことができる。これら公開の内容は、全体として本明細書に組み込まれる。
【0081】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、式(F1)または式(F2)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成され得る。
【化12】

式中、R14は、-OH、-OCH、-OCHCH、または-Clから選択される。
【0082】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーはさらに、アミノ酸、例えば、アルファ-アミノ酸を含む1つ以上のモノマーから形成され得る。本明細書に記載のポリマーのアルファ-アミノ酸は、いくつかの実施形態では、L-アミノ酸、D-アミノ酸、またはD,L-アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、アルファ-アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン、バリン、またはこれらの組み合わせを含む。さらに、いくつかの実施形態では、アルファ-アミノ酸は、アルキル置換アルファ-アミノ酸、例えば、22個の「標準的な」またはタンパク質を構成するアミノ酸のいずれかに由来するメチル置換アミノ酸、例えば、メチルセリンを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、式(G1)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成され得る。
【化13】

式中、R15は、アミノ酸側鎖である。
【0084】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーはさらに、1つ以上のアルキン部分及び/または1つ以上のアジド部分を含む1つ以上のモノマーから形成され得る。本明細書に記載のポリマーを形成するために使用される1つ以上のアルキン及び/またはアジド部分を含むモノマーは、本開示の目的と矛盾しない任意のアルキン及び/またはアジド含有化学種を含むことができる。アルキン及び/またはアジド部分を含むモノマーのさらなる例は、米国特許出願公開第2020/0140607号及び国際特許出願公開第WO2018/227151号に見出すことができる。これら公開の内容は、全体として本明細書に組み込まれる。
【0085】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、式(H1)、式(H2)、及び式(H3)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成され得る。
【化14】

式中、
は、出現ごとに、-O-または-NH-から独立して選択され、
16は、-CHまたは-CHCHであり、
17及びR18は、各々独立して、-CH、-CH、または-CHCHである。
【0086】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーは、さらに、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)、及び式(I6)から独立して選択される1つ以上のモノマーから形成され得る。
【化15】

式中、
及びYは、独立して、-O-または-NH-であり、
19及びR20は、各々独立して、-CHまたは-CHCHであり、
21は、-OC(O)CCH、-CH、または-CHCHであり、
22は、-CH、-OH、または-NHである。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のモノマーは、生物活性種で官能化され得る。さらに、該モノマーは、1つ以上のアルキン及び/またはアジド部分を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマーまたはオリゴマーは、ペプチド、ポリペプチド、核酸、または多糖を含む1つ以上のモノマーから形成され、該ペプチド、ポリペプチド、核酸、または多糖は、1つ以上のアルキン及び/またはアジド部分で官能化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の生物活性種は、成長因子またはシグナル伝達分子である。さらに、該ペプチドは、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、またはより長いペプチドを含み得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーを形成するために使用されるモノマー内のカルボン酸基またはその誘導体とヒドロキシル基の化学量論比は、約1:1である。いくつかの実施形態では、該ポリマーまたはオリゴマーを形成するために使用されるモノマー内のカルボン酸基またはその誘導体とヒドロキシル基の化学量論比は、約1:1未満である。該化学量論比が約1:1未満の場合、該ポリマーまたはオリゴマーは、特定の水素結合の領域を示し得る。
【0089】
本明細書に記載の組成物は、場合によっては、該特定の種の縮重合反応生成物である。従って、いくつかの実施形態では、該特定の種のうちの少なくとも2つは、コポリマーの形成のためのコモノマーである。いくつかのかかる実施形態では、該反応生成物は、該コモノマーの交互コポリマーまたはランダムコポリマーを形成する。加えて、本明細書でさらに記載するように、本明細書に記載の種はまた、コポリマーのペンダント基または側鎖を形成し得る。
【0090】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマーを含む組成物は、さらに架橋剤を含むことができる。本開示の目的と矛盾しない任意の架橋剤が使用され得る。場合によっては、例えば、架橋剤は、エチレン性不飽和部分を含むポリマーを架橋するために使用され得る1つ以上のオレフィンまたはオレフィン性部分を含む。いくつかの実施形態では、架橋剤は、アクリレートまたはジアクリレート等のポリアクリレートを含む。他の実施形態では、架橋剤は、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、グリセロール1,3-ジグリエロレート(1,3-diglyerolate)ジアクリレート、d(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、及びプロピレングリコールグリセロレートジアクリレートのうちの1つ以上を含む。さらに他の実施形態では、架橋剤は、DNAまたはRNAを含めた核酸を含む。さらに他の例では、架橋剤は、「クリックケミストリー」試薬、例えば、アジドまたはアルキンを含む。いくつかの実施形態では、架橋剤は、イオン性架橋剤を含む。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマーは、多価金属イオン、例えば、遷移金属イオンで架橋される。いくつかの実施形態では、該ポリマーの架橋剤として使用される多価金属イオンは、+2または+3状態等のFe、Ni、Cu、Zn、またはAlのうちの1つ以上を含む。
【0091】
さらに、本明細書に記載の架橋剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で組成物中に存在し得る。例えば、いくつかの実施形態では、架橋剤は、組成物中に、該組成物の総重量に基づいて、約5重量パーセント~約50重量パーセント、約5重量パーセント~約40重量パーセント、約5重量パーセント~約30重量パーセント、約10重量パーセント~約40重量パーセント、約10重量パーセント~約30重量パーセント、または約20重量パーセント~約40重量パーセントの量で存在する。
【0092】
従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載のポリマーを含み、該ポリマーは、架橋されてポリマーネットワークを形成する。いくつかの実施形態では、該ポリマーネットワークは、ヒドロゲルを含む。ヒドロゲルは、場合によっては、水性連続相及びポリマー分散相または不連続相を含む。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の架橋ポリマーネットワークは、水溶性ではない。
【0093】
かかるポリマーネットワークは、高い架橋密度を有し得る。参照する目的で、本明細書では、「架橋密度」は、ポリマーの主鎖間の架橋の数を指す場合もあれば、架橋部位間の分子量を指す場合もある。架橋としては、例えば、隣接するポリマー主鎖の1つ以上のペンダントカルボキシルまたはカルボン酸基と1つ以上のペンダントヒドロキシル基のエステル化または反応によって形成されるエステル結合が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマーネットワークは、少なくとも約500、少なくとも約1000、少なくとも約5000、少なくとも約7000、少なくとも約10,000、少なくとも約20,000、または少なくとも約30,000mol/mの架橋密度を有する。いくつかの実施形態では、該架橋密度は、約600~約70,000、または約10,000~約70,000mol/mである。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、式(C1)のモノマーから形成されていない実質的に同一の参照組成物と比較して、分子量の低下及び架橋密度の増加を示す。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、式(C1)のモノマーから形成されていない実質的に同一の参照組成物と比較して、親水性の増加を示す。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、式(C1)のモノマーから形成されていない実質的に同一の参照組成物と比較して、蛍光の増加を示す。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、ASTM規格D412Aに準拠して乾燥状態で測定して、引張強度約1MPa~約120MPa、例えば、約2MPa、10MPa、20MPa、30MPa、40MPa、50MPa、60MPa、70MPa、80MPa、90MPa、または100MPaを示し得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、ASTM規格D412Aに準拠して乾燥状態で測定して、引張弾性率約1MPa~約3.5GPa、例えば、約1MPa、約10MPa、約50MPa、約100MPa、約250MPa、約500MPa、約750MPa、約1GPa、約1.5GPa、約2GPa、約2.5GPa、約3GPa、または約3.5GPaを示し得る。
【0099】
本明細書に記載の組成物は、本明細書にさらに記載するように、骨成長、骨治癒、及び/または骨修復を含めた、骨再生を促進及び/または加速するために有用であり得る。1つ以上の本明細書に記載の組成物は、骨成長、骨治癒、及び/または骨修復を含めた、1つ以上の本明細書に記載の骨再生を促進及び/または加速する方法に使用され得ることを理解されたい。
【0100】
いくつかの実施形態では、骨成長を促進するために有用な本明細書に記載の組成物は、移植片または足場を構成し得る。参照する目的で、本明細書では、「移植片」または「足場」は、不足している骨の置換のため、または新たな骨の成長促進のためのプラットフォームまたはインプラントとして使用可能な任意の構造を指すことができる。さらに、本明細書で使用される、「移植片」または「足場」は同義であり得る。例えば、本明細書に記載の移植片または足場組成物は、骨欠損の修復、不足しているもしくは除去された骨の置換、または新たな骨の成長の促進用に、骨の癒着手術の場合と同じように使用され得る。さらに、本明細書に記載の組成物及び方法と一致する移植片または足場は、本開示の目的と矛盾しない任意の構造を有し得るか、または任意の形状、構成、もしくは配向で形成され得ることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、移植片または足場は、修復される欠損または骨成長部位に対応するように成形、構成、または配向され得る。例えば、いくつかの実施形態では、骨欠損、例えば、顆欠損の頭蓋欠損の修復に使用される移植片または足場は、該欠損に対応するサイズ及び/または形状に形成、成形、またはサイズ変更され得る。ある特定の他の場合、例えば、骨の癒着手術では、本明細書に記載の組成物及び方法における移植片または足場は、癒着される骨の間隙を横切るように、及び/または骨成長部位を補強するように適合された形状、構成、配向、または寸法を有し得る。このように、本明細書に記載の移植片または足場の特定の形状、サイズ、配向、及び/または構成は、骨成長部位上、骨成長部位内、または骨成長部位に隣接する特定のセットまたはサブセットの様式に限定されることを意図しない。本明細書で言及される、「骨部位」とは、骨再生、骨形成、骨成長、または骨修復が求められ得る任意の領域であり得る。ある特定の非限定的な例では、骨部位は、脊椎または他の骨の癒着の場合と同じように、骨欠損、骨が除去または分解された部位、及び/または所望の新たな骨の成長または再生の部位を構成し得るまたは含み得る。
【0101】
骨再生を促進するために使用される移植片または足場の一部または全部を形成し得る組成物の様々な成分が本明細書に記載されている。本開示の組成物は、本開示の目的と矛盾しない成分及び特徴の任意の組み合わせを含むことができることを理解されたい。例えば、場合によっては、本明細書に記載の組成物で使用される移植片または足場の一部または全部を形成する組成物は、本明細書に記載のポリマーの組み合わせ、混合物、またはブレンドを含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の骨促進特性、生分解性、機械的特性、及び/または化学官能性を有する移植片または足場を提供するために、かかる組み合わせ、混合物、またはブレンドを選択することができる。
【0102】
さらに、本明細書に記載の1つ以上のポリマーは、本開示の目的と矛盾しない任意の量で、使用される移植片または足場の一部または全部を形成する組成物中に存在することができる。いくつかの実施形態では、移植片または足場は、本明細書に記載の1つ以上のポリマーからなるか、または本質的になる。他の例では、移植片または足場は、該移植片または足場の総重量に基づいて、最大で約95重量パーセント、最大で約90重量パーセント、最大で約80重量パーセント、最大で約70重量パーセント、最大で約60重量パーセント、最大で約50重量パーセント、最大で約40重量パーセント、または最大で約30重量パーセントのポリマーを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の移植片または足場の残部は、水、水溶液、及び/または以下にさらに記載する無機材料であり得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、該組成物はさらに、無機材料を含み得る。いくつかの実施形態では、該無機材料は、微粒子状無機材料を含む。本開示の目的と矛盾しない任意の微粒子状無機材料が使用され得る。場合によっては、該微粒子状無機材料は、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム(アルファ-及びベータ-リン酸三カルシウムを含む)、二相リン酸カルシウム、バイオガラス、セラミック、マグネシウム粉末、真珠粉末、マグネシウム合金、及び脱細胞化骨組織粒子のうちの1つ以上を含む。他の特定の材料も使用され得る。
【0104】
さらに、本明細書に記載の特定の無機材料は、本開示の目的と矛盾しない任意の粒子径及び/または粒子形状を有し得る。いくつかの実施形態では、例えば、微粒子状材料は、少なくとも1次元において、平均粒子径約1000μm未満、約800μm未満、約500μm未満、約300μm未満、約100μm未満、約50μm未満、約30μm未満、または約10μm未満を有する。場合によっては、特定の材料は、少なくとも1次元において、平均粒子径約1μm未満、約500nm未満、約300nm未満、約100nm未満、約50nm未満、または約30nm未満を有する。場合によっては、微粒子状材料は、本明細書に列挙する平均粒子径を2次元または3次元において有する。さらに、微粒子状材料は、実質的に球状の粒子、板状粒子、針状粒子、またはそれらの組み合わせから形成され得る。他の形状を有する微粒子状材料も使用され得る。
【0105】
特定の無機材料は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で、本明細書に記載の組成物(移植片または足場等)に存在し得る。例えば、場合によっては、本明細書に記載の移植片または足場として使用される組成物は、該組成物の総重量に基づいて、最大で約30重量パーセント、最大で約40重量パーセント、最大で約50重量パーセント、最大で約60重量パーセント、または最大で約70重量パーセントの特定の材料を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、該組成物の総重量に基づいて、約1~約70重量パーセント、約10~約70重量パーセント、約15~約60重量パーセント、約25~約65重量パーセント、約26~約50重量パーセント、約30~約70重量パーセント、または約50~約70重量パーセントの微粒子状材料を含む。例えば、本明細書に記載の組成物は、最大で約65重量パーセントのヒドロキシアパタイトを含み得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、さらに無機材料を含む該組成物は、天然の骨を超える圧縮強度を有し得る。いくつかの実施形態では、かかる組成物は、ASTM規格D695-15によって測定して、圧縮強度約250MPa~約350MPa、例えば、約275MPa、300MPa、または325MPaを有し得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、さらに無機材料を含む本明細書に記載の組成物は、ASTM規格D695-15によって測定して、圧縮弾性率約100KPa~約1.8GPa、例えば、約100KPa、約10MPa、約50MPa、約100MPa、約250MPa、約500MPa、約750MPa、約1.0GPa、約1.2GPa、約1.4GPa、約1.6GPa、または約1.8GPaを有し得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、さらに無機材料を含む本明細書に記載の組成物は、室温りん光を示し得る。
【0109】
別の態様では、本明細書に記載の組成物に式(C1)のモノマーを組み込むことで、複合材料の膨潤は実質的に増加しない。
【0110】
いくつかの実施形態では、該移植片または足場はそれ自体が微粒子状であり得る。該微粒子状移植片または足場は、液体を含む(include)または含む(contain)場合もあり、実質的に「乾燥」しているまたは液体を含まない場合もある。さらに、かかる特定の移植片または足場に含まれる(または主にそれから排除される)かかる液体は、本開示の目的と矛盾しない任意の液体であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、該液体は、水、または水溶液もしくは混合物、例えば、生理食塩水である。さらに、いくつかの実施形態では、該液体は、微粒子状移植片または足場に他の種を導入するための担体液体であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、該液体は、以下にさらに記載する1つ以上の生体分子、生物活性材料、または他の生体材料を含む。いくつかの実施形態では、該液体は、ヒアルロネートまたはヒアルロン酸を含む。他の実施形態では、該液体は、血液または血漿を含む。
【0111】
さらに、該微粒子状移植片または足場は、いくつかの実施形態では、ペーストである。より具体的には、かかるペーストは、微粒子状移植片または足場及び液体を含み得る(「乾燥」材料であるのとは対照的に)。かかる「ペースト」は、粘性材料の場合もあれば形状安定性のある材料の場合もあり(標準温度及び圧力条件で)、取り扱いまたは操作、例えば、マイクロスパチュラですくい上げるのに適した粘度を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、該ペーストは、少なくとも1.0x10センチポイズ(cP)、少なくとも5.0x10、または少なくとも1.0x10の動的粘度を有する。他の実施形態では、該ペーストは、粘度約1.0x10cP~1.0x10cP、約1.0x10cP~1.0x10cP、または約1.0x10cP~1.0x10cPを有する。該ペーストの液体成分は、いくつかの実施形態では、等張液であり、該ペーストは、生物学的に滅菌したペーストである。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のペーストは、塩溶液、例えば、生理食塩水、または他の生物活性のある溶液、例えば、ヒアルロン酸ナトリウムもしくは血液から形成され得る。いくつかの実施形態では、該生物活性のある溶液は、骨の再生を促進及び/または加速するために適したさらなる生体分子または生物学的因子を含み得る。例えば、該溶液は、成長因子またはシグナル伝達分子、例えば、骨形成因子を含み得る。本明細書に記載のいくつかの実施形態で使用され得る生物学的因子の非限定的な例としては、オステオポンチン(OPN)、オステオカルシン(OCN)、骨形態形成タンパク質-2(BMP-2)、形質転換成長因子β3(TGFβ3)、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF-1α)、エリスロポエチン(Epo)、血管内皮成長因子(VEGF)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(BGF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、及びグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)が挙げられる。他の治療用タンパク質及び化学種も使用され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の移植片または足場は、ポリマーネットワークである。該ポリマーネットワークは、上記のポリマー及び/またはコポリマーの任意の組み合わせを含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、該ポリマーネットワークは、無機材料(微粒子状無機材料等)を含む。例えば、上記のポリマーは、該無機材料をカプセル化またはこれに結合するために架橋され得る。架橋は、例えば、該ポリマーを熱及び/またはUV光に暴露することによって行われ得る。
【0113】
他の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の方法での使用に適したさらなる望ましい特性を有し得る。いくつかの実施形態では、該組成物は、発光性である。場合によっては、かかる発光は、光ルミネセンスであり、該組成物を適切な波長の光、例えば、ピークまたは平均波長400nm~600nmを有する光に暴露することによって観察することができる。さらに、いくつかの実施形態では、任意の単位または相対単位で測定される、該組成物の発光強度は、該足場の経時的な分解の尺度として使用することができるため、生分解性または骨部位等の部位からのクリアランスを示す。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、該組成物の分解時にシトレート及びキシリトールが放出されるため、作用部位(骨部位等)にそれらを送達する。いくつかの実施形態では、キシリトール及びシトレートの放出により、骨形成分化及び組織再生が増強され得る。いくつかの実施形態では、キシリトールの放出により、カルシウムのバイオアベイラビリティを増強することによって骨形成組織の再生が増加し得る。いくつかの実施形態では、キシリトールの放出により、周囲の細胞及び/または組織に対して抗酸化及び抗炎症作用が発揮される。いくつかの実施形態では、キシリトール及びシトレートの放出により、抗菌効果が発揮される場合があり、局部的感染またはインプラント関連の感染が防止される。
【0115】
調製方法
さらに提供するのは、上記の組成物を調製する方法である。1つの態様では、本明細書に記載の組成物を調製するための方法を提供し、該方法は、1つ以上の式(A1)のモノマー:
【化16】

式(B1)及び式(B2)から独立して選択される1つ以上のモノマー:
【化17】

ならびに
1つ以上の式(C1)のモノマー:
【化18】

を含む重合性組成物を重合してポリマーを形成することを含み、
式中、
、X、及びXは、各々独立して、-O-または-NH-であり、
及びXは、独立して、-O-または-NHであり、
、R、及びRは、各々独立して、-H、C-C22アルキル、C-C22アルケニル、またはMであり、
は、HまたはMであり、
は、-H、-NH、-OH、-OCH、-OCHCH、-CH、または-CHCHであり、
は、-H、C-C23アルキル、またはC-C23アルケニルであり、
は、-H、C-C23アルキル、C-C23アルケニル、-CHCHOH、または-CHCHNHであり、
n及びmは、独立して、1~2000の整数であり、
は、カチオンである。
【0116】
いくつかの実施形態では、Xは、-O-である。いくつかの実施形態では、Xは、-O-である。いくつかの実施形態では、Xは、-O-である。いくつかの実施形態では、X、X、及びXは、各々-O-である。
【0117】
いくつかの実施形態では、Xは、-Oである。いくつかの実施形態では、Xは、-NH-である。いくつかの実施形態では、Xは、-O-である。いくつかの実施形態では、Xは、-NH-である。いくつかの実施形態では、X及びXは、各々-O-である。いくつかの実施形態では、X及びXは、各々-NH-である。いくつかの実施形態では、X及びXのうちの一方は-O-であり、X及びXのうちの他方は-NH-である。
【0118】
いくつかの実施形態では、R、R、及びRは、各々独立して、-H、-CH、または-CHCHである。
【0119】
いくつかの実施形態では、R、R及びRは、各々独立して、-HまたはMである。
【0120】
いくつかの実施形態では、Rは、-Hである。
【0121】
いくつかの実施形態では、Rは、Mである。
【0122】
いくつかの実施形態では、Mは、出現ごとに独立して、NaまたはKである。
【0123】
いくつかの実施形態では、Rは、-OHである。
【0124】
いくつかの実施形態では、Rは、-Hである。いくつかの実施形態では、Rは、-CHである。
【0125】
いくつかの実施形態では、Rは、-Hである。
【0126】
いくつかの実施形態では、n及びmは、独立して、1~2000の整数であることができ、例示的な値である1~100、または1~250、または1~500、または1~750または1~1000、または1~1250、または1~1500、または1~1750を含む。さらに他の態様では、n及びmは、独立して、1~20の整数であることができ、例示的な値である2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、及び19を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、該1つ以上の式A1のモノマーは、アルコキシル化、アルケノキシル化、または非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート、またはクエン酸のエステルもしくはアミドを含むことができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、該1つ以上の式B1のモノマーは、末端ヒドロキシルまたはアミン基を有するポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリ(プロピレングリコール)(PPG)から選択される。本開示の目的と矛盾しない任意のかかるPEGまたはPPGが使用され得る。いくつかの実施形態では、例えば、重量平均分子量約100~約5000または約200~約1000または200~約100,000を有するPEGまたはPPGが使用され得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、該1つ以上の式B2のモノマーは、C-C20、C-C12、またはC-C脂肪族アルカンジオールまたはジアミンを含み得る。例えば、該1つ以上の式B2のモノマーは、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジオール、1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジオール、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,20-イコサンジオール、または1,20-イコサンジアミンを含み得る。代替的な実施形態では、該1つ以上の式B2のモノマーは、分岐アルカンジオール/ジアミン、アルケンジオール/ジアミン、または芳香族ジオール/ジアミンで置き換えられ得る。
【0130】
別の態様では、該方法はさらに、ポリマーを架橋して、架橋ポリマーを提供することを含み得る。該ポリマーは、本明細書に記載の架橋のために適切な、かつ当業者には容易に分かる方法のいずれかを使用して架橋され得る。いくつかの実施形態では、該ポリマーは、架橋剤を使用して架橋される。いくつかの実施形態では、該ポリマーの架橋は、該ポリマーを熱架橋することを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、該ポリマーは、架橋(熱架橋等)の前にフィルムを形成するために溶液流延される。他の実施形態では、該ポリマーは、架橋(熱架橋等)の前に、本明細書に記載の均質混合物を形成するための無機材料と混合される。いくつかの実施形態では、該均質混合物は、架橋(熱架橋等)の前に成型される。
【0132】
いくつかの実施形態では、該方法はさらに、形成された組成物に少なくとも1つの生物活性剤を加えることを含む。
【0133】
骨再生を促進及び/または加速する方法
別の態様では、骨再生を促進及び/または加速する方法を本明細書に記載する。本明細書に記載の方法は、1つ以上の本明細書に記載の組成物を使用し得る。例えば、いくつかの実施形態では、骨再生を促進及び/または加速する方法は、組成物を骨部位に送達することを含む。該組成物は、場合によっては、生分解性の足場を含む。さらに、場合によっては、本明細書に記載の方法はさらに、幹細胞を骨部位に送達することを含む。該骨部位は、いくつかの実施形態では、膜内骨化部位である。他の実施形態では、該骨部位は、軟骨内骨化部位である。
【0134】
本明細書に記載の骨再生を促進及び/または加速する方法は、いくつかの実施形態では、さらに、幹細胞を骨部位に送達することを含み得る。例えば、本明細書に記載の方法と一致する骨部位に送達される移植片または足場は、いくつかの実施形態では、生物学的因子またはシード細胞が播種されたまたはそれを含む骨部位に送達され得る。いくつかの実施形態では、移植片または足場は、生物学的因子または細胞、例えば、間葉系幹細胞(MSC)とともに播種され得る。ある特定の他の実施形態では、移植片または足場は、自家骨移植片に加えて、またはそれと組み合わせて、骨部位に送達され得る。本明細書に記載の移植片または足場と組み合わせて使用される生物学的因子または細胞は、任意の宿主から、または本開示の目的と矛盾しない任意の手段によって単離または供給され得る。例えば、いくつかの実施形態では、該生物学的因子または細胞は、該移植片または足場を受ける個体から採取または単離され得る。ある特定の他の実施形態では、該生物学的因子または細胞は、異なる個体、例えば、適合するドナーから採取または単離され得る。いくつかの他の場合では、該生物学的因子または細胞は、任意の個体、例えば、該移植片もしくは足場のレシピエントまたは別の適合する個体から成長させることまたは培養することもできる。ある特定の他の場合では、該移植片または足場は、骨部位内、骨部位上、または骨部位付近での配置に際して生物学的因子または細胞とともに播種されない。本明細書のいくつかの実施形態で使用され得るシード細胞の非限定的な例としては、間葉系幹細胞(MSC)、骨髄間質細胞(BMSC)、誘導多能性幹(iPS)細胞、内皮前駆細胞、及び造血幹細胞(HSC)が挙げられる。他の細胞も使用され得る。本明細書に記載のいくつかの実施形態で使用され得る生物学的因子の非限定的な例としては、骨形態形成タンパク質-2(BMP-2)、形質転換成長因子β3(TGFβ3)、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF-1α)、エリスロポエチン(Epo)、血管内皮成長因子(VEGF)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(BGF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、及びグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)が挙げられる。他の治療用タンパク質及び化学種も使用され得る。
【0135】
骨再生を促進及び/または加速する方法はまた、いくつかの実施形態では、さらなる工程を含む(comprise)または含む(include)ことができる。個々の工程は、本開示の目的と矛盾しない任意の順序または任意の方法で実行され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法はさらに、当該骨部位及び/または当該骨部位に隣接する生物学的領域への血液供給を回復させることを含む。ある特定の場合では、血液供給の回復は、当該骨部位に隣接する生物組織をシールすることまたは縫合することを含む(comprise)または含む(include)ことができる。さらに、場合によっては、血流がクランプまたは吸引等によって骨部位または骨部位に隣接して人工的に制限されている場合、血液供給の回復は、該人工的な制限を開放または除去することを含む(comprise)または含む(include)ことができる。さらに、場合によっては、骨再生を促進及び/または加速する方法は、当該骨部位及び/または当該骨部位に隣接する生物学的領域内の骨再生、骨誘導、骨形成、及び血管新生のうちの1つ以上を増加させることを含む(comprise)または含む(include)ことができる。さらに、場合によっては、方法はさらに、骨及び/または当該骨部位に近接する軟組織の再生を刺激することを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、該骨部位は、膜内骨化部位である。例えば、上記の方法に示される常在間葉系幹細胞及び/またはMSCの動員が、当該骨部位で骨芽細胞に転換または分化し得る。膜内骨化部位は、骨再生を必要とする任意の発達したまたは発達中の膜内骨組織であり得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、該骨部位は、軟骨内骨化部位である。例えば、上記の方法に示される常在軟骨細胞及び/または分化したMSCの動員及び/または増殖がさらに、当該骨部位での骨再生を促進及び/または加速し得る。軟骨内骨化部位は、骨再生を必要とする任意の発達したまたは発達中の軟骨性骨組織であり得る。
【0138】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の骨再生を促進及び/または加速する方法は、当該骨部位での骨形成分化の初期状態の前及び/または間に、上記の移植片または足場を送達することを含み得る。例えば、該足場は、場合によっては、骨形成分化の開始後かつ骨成熟の前の骨再生の初期段階に生じる、例えば、増殖期及び/または基質成熟期に送達される。
【0139】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の骨再生を促進及び/または加速する方法は、当該骨成長部位に該移植片または足場を配置した後、一定期間、該骨部位に該移植片または足場を維持することを含み得る。本開示の目的と矛盾しない任意の期間が使用され得る。例えば、場合によっては、該移植片または足場は、少なくとも1ヶ月間、例えば、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、または少なくとも12ヶ月間維持され得る。ある特定の実施形態では、移植片または足場は、当該骨部位内で分解または生分解し得る。かかる実施形態では、該移植片または足場の維持は、該移植片または足場の所望の部分が分解または生分解するまで、該移植片または足場を維持することを含む(comprise)または含む(include)ことができる。例えば、方法は、当該骨部位に該移植片または足場を、該移植片または足場の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%が分解または生分解するまで維持することを含み得る。ある特定の実施形態では、方法は、当該骨部位に該移植片または足場を、該移植片または足場のすべてまたは実質的にすべてが分解または生分解するまで維持することを含み得る。いくつかの実施形態では、該移植片または足場の生分解は、送達時での蛍光強度を測定し、その後の時点でのさらなる蛍光強度測定値を該送達時の測定値と比較することによって測定され得る。
【0140】
別の態様では、本開示は、キシリトールドープポリ(オクタメチレンシトレート)(POC)ポリエステル及びフィルム、多孔質足場ならびにそれらの複合体を作製するための方法を記載する。キシリトールは、エステル化を介して該ポリマーに組み込まれる。キシリトールドープポリマーは、溶液流延とそれに続く熱エステル化によるさらなる架橋を介してフィルムに形成される可能性、ポリマー溶液を塩化ナトリウムまたは他のポロゲンと物理的に混合した後の熱架橋及びポロゲン溶出によって多孔質足場に形成される可能性、及びポリマーをヒドロキシアパタイトまたは他の充填剤と物理的に混合し、成型に続いて熱架橋によって複合体に形成される可能性がある。
【0141】
別の態様では、本開示の組成物及び方法は、化学反応を介してキシリトールをPOCに均一に組み込む。
【0142】
別の態様では、本開示の組成物は、キシリトールのドープを介して乾燥状態及び水和状態でのPOCフィルムの機械的強度及び分解速度を増加させる。さらに、本開示の本組成物及び方法は、キシリトールのドープを介して該材料の分解速度を機械的特性とは独立して調整する。
【0143】
別の態様では、本開示の組成物及び方法は、キシリトールドープPOCを使用して、均質な物理的特性及び改善された機械的強度を有する多孔質足場及び複合体を製造する。
【0144】
別の態様では、本開示の組成物及び方法は、キシリトールドープPOCを使用して、ヒト間葉系幹細胞の骨形成分化を促進することが可能な材料を製造する。
【0145】
別の態様では、本開示の組成物及び方法は、キシリトールドープPOCを使用して、抗細菌能力を有する材料を製造する。
【0146】
別の態様では、本開示の組成物及び方法は、シトレート系材料のキシリトールドープを介して、抗酸化及び免疫調節能力を有する材料を製造する。
【0147】
別の態様では、本開示の組成物及び方法は、ポリ(オクタメチレンシトレート)(POC)、生分解性光ルミネセンスポリマー(BPLP)、及び注射可能なシトレート系ムラサキイガイ模倣生体接着剤(iCMBA)が挙げられるがこれらに限定されない様々なシトレート系材料にキシリトールドープを組み込む。
【0148】
別の態様では、本開示の組成物及び方法は、キシリトールドープを使用して、刺激応答性の自己治癒シトレート系材料を製造する。
【0149】
別の態様では、本開示の組成物及び方法は、シトレート系材料のキシリトールドープを介して、光ルミネセンス材料を創出する。
【0150】
別の態様では、本開示の組成物及び方法は、シトレート系材料のキシリトールドープを介して、相乗的生物活性のための生物活性因子(シトレート及びキシリトール)の放出が制御されかつ調整可能な材料を創出する。
【0151】
本明細書に記載の組成物のさらなる用途としては、危機的なサイズの部分欠損の修復及び固定ならびに脊椎固定のための複合体及び多孔質足場ならびに骨膜修復及びバリア機能のためのフィルムを含めた整形外科的組織工学材料、創傷被覆用途の多孔質足場、抗細菌材料、抗酸化材料、骨粗しょう症の治療用の再吸収阻害材料、自己治癒材料、ならびに空隙充填及び骨折固定用の注射材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
いくつかの本開示の実施形態を説明してきた。それにもかかわらず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正がなされ得ることが理解されよう。従って、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
【0153】
非限定的な例示として、本開示のある特定の実施形態の例を以下に示す。
【実施例
【0154】
以下の実施例は、当業者に対して、本明細書に特許請求される化合物、組成物、物品、装置、及び/または方法がどのように作製及び評価されるかの完全な開示及び説明を提供するために提示されるものであり、純粋に例示であることが意図され、本開示を限定することを意図していない。数字(例えば、量、温度等)については、精度を確保するように努めているが、ある程度の誤差及び偏差は考慮されたい。
【0155】
本明細書でさらに説明される結果は、POC/HA組成物内のキシリトールの比を変化させることにより、生分解速度を著しく調節しながら、機械的特性の均一な増加(天然の骨組織のそれを超える)を提供することを実証する。従って、キシリトールをシトレート系材料に組み込むことで、組織工学材料として有用な改善された組成物が、物理的及び生物学的特性の向上を介して得られる。例えば、本明細書に開示する方法は、キシリトールドープを介したPOCへのキシリトールの均一な組み込みを提供する。該POCへのキシリトールの均一な組み込みにより、従来のPOC組成物と比較して、機械的強度が増加し、生分解速度が改善された(より速く及びより制御可能な)組成物を提供する。該機械的強度の増加及び生分解の改善は、乾燥状態と水和状態の両方で示される。さらに、該複合材料の生分解速度は調整可能である。該生分解速度の調整可能性は機械的特性とは独立していること、すなわち、該生分解速度は、機械的特性をほとんどまたは全く変化させずに調整されうることに留意することが重要である。
【0156】
本明細書に開示する方法の実施例は、キシリトールドープPOC材料(例えば、ポリマー、フィルム、足場、及び組成物等)を製造することを含む。POC以外のポリマー、例えば、生分解性光ルミネセンスポリマー(BPLP)、注射可能なシトレート系ムラサキイガイ模倣生体接着剤(iCMBA)等を使用することができる。キシリトールは、エステル化を介して該ポリマーに組み込まれうる。1つの代表的な実施例では、モル比1:1のクエン酸及びオクタンジオール/キシリトールを160℃にて攪拌下、10分間溶融させることができる。その反応温度をその後140℃に下げることができ、この反応を、このプレポリマーが粘性のために攪拌することができなくなるまで続行し、その時点で、この反応をジオキサンでクエンチしてもよい。重合に続いて、そのプレポリマーを脱イオン水中で沈殿させることによって精製し、凍結乾燥し、有機溶媒に溶解して、プレポリマー溶液を形成することができる。
【0157】
キシリトールドープシトレート系ポリエステルは、様々なジオールを使用して、上記の一般的な手順によって合成してもよい。適切なジオールは、低分子ジオール、例えば、1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールまたはマクロジオール、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)またはそれらの組み合わせであり得る。キシリトールドープポリマーは、シトレート:ジオール+キシリトールの比が1.5:1~1:1.5で合成され得る。キシリトールドープポリマーは、ジオール置換が0を超え100%未満の様々なキシリトール含量で合成され得る。
【0158】
キシリトールドープポリマーを、溶液流延とそれに続く熱エステル化によるさらなる架橋を介してフィルムに形成することができる。例えば、キシリトールドープPOCフィルムは、プレポリマー溶液をテフロン(登録商標)皿に流延した後、溶媒を蒸発させ、熱架橋することで調製することができる。
【0159】
キシリトールドープポリマーは、ポリマー溶液を塩化ナトリウムまたは他のポロゲンと物理的に混合し、その後の熱架橋及びポロゲン溶出により、多孔質足場に形成することができる。例えば、キシリトールドープPOC多孔質足場は、プレポリマー溶液をポロゲンとペーストが形成されるまで混合することによって調製することができ、これをその後テフロン(登録商標)皿に詰め、熱架橋することができる。塩は、DI水に浸した後、凍結乾燥することで溶出させることができる。
【0160】
キシリトールドープポリマーは、ポリマーとヒドロキシアパタイトまたは他の充填剤との物理的混合、成形、及びその後の熱架橋によって複合体に形成することができる。例えば、キシリトールドープPOC組成物は、粘土様粘度が達成されるまでプレポリマーを充填材料と混合し、その後、所望の形状に成型し、熱架橋することによって形成することができる。充填材料の例としては、ヒドロキシアパタイト、B-リン酸三カルシウム、真珠粉末、リン酸八カルシウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
ここで表1及び2を参照すると、キシリトールドープ組成物は、モノマー間の-COOH及び-OH官能基の化学量論的平衡で及び不均衡な比(キシリトール含量が増加した過剰の-OH基が好ましい)の両方で調製された。過剰の-OH基は、水素結合相互作用の増加をもたらした。これらの合成されたポリマーの場合、過剰なキシリトール系の-OHクラスターが、架橋を進行させながら水素結合の領域をもたらした。化学量論的平衡の配合は、感知できるほどの結果を達成するまでに非常に長い架橋時間を要するポリマーをもたらした。架橋が良好であったいくつかの場合(NX1及びNX3)では、対応する不均衡の配合と比較して力学が劣っていた。
【表1】

【表2】
【0162】
表3ならびに図2及び3を参照すると、高強度で急速に分解可能なポリマーを、キシリトールの組み込みを介して架橋密度及び親水性を同時に増加させることによって設計することができる。増加する量のキシリトールの組み込みにより、分子量が低下し、ポリマーの密度が増加し、架橋間の分子量が非常に減少した。全体として、結果は、キシリトールの親水性に起因する分解性を維持しながら、力学の向上につながる高度に分岐した及び高度に架橋されたポリマーネットワークの形成を示している。
【表3】
【0163】
図4を参照すると、上記の組成物のフーリエ変換赤外スペクトルが得られた。-OHシグナルの増加がポリマー内のキシリトール含量のレベルの増加に伴って認められ、ポリマー鎖間の水素結合の形成が示された。これはさらに、3300~3400のブロードな傾きの-OHシグナルによって実証される。かかる水素結合は、ポリマーの力学を強化する。
【0164】
図5を参照すると、上記の組成物のx線回折スペクトルが得られた。このスペクトルは、キシリトール含量の増加に伴うポリマーの結晶化度の不足を示している。
【0165】
図6A~6Gを参照すると、引張フィルム力学を分析するために上記の組成物からポリマーフィルムが調製された。特に、NX3を超える配合は、使用された条件下では架橋することができなかった。得られた測定値は、様々な生体組織(例えば、皮膚、神経、骨等)に適合させることが可能な方法でのフィルム力学の調整可能性を示している。
【0166】
図7A及び7Bを参照すると、上記の組成物の外部接触角が測定された。観察された接触角は、代表的な材料の親水性を示している。
【0167】
図8を参照すると、調製されたフィルムの蛍光が分析された。キシリトール含量の増加に伴い、蛍光の増強が観察された。キシリトール含量の増加に伴う分岐及び架橋密度の増加は、-OH基と-C=O基間の水素結合相互作用(π-π及びn-シグマ相互作用)の増加、ひいては蛍光の増加につながる。
【0168】
図9A~9Gを参照すると、上記で調製された組成物の蛍光発光スペクトルが得られた。これらのスペクトルは、本開示の組成物が、インビボでの画像化及び光送達に有用であり得ることを示している。
【0169】
ここで図10を参照すると、上記の組成物と60重量パーセントのヒドロキシアパタイト(HA)との複合体が調製され、これら組成物の圧縮機械的特性が分析された。得られたデータは、キシリトール含量に関係なく、複合体にかかる均一な応力を示している。さらに、キシリトールの組み込みでは、おそらくはキシリトールがイオンをキレートする能力のために、HAを組み込む能力が低下しなかった。
【0170】
ここで図11を参照すると、調製された複合体の圧縮弾性率が分析された。得られた値は、キシリトールを欠く複合体と比較して大幅に向上した。圧縮ひずみの測定値も得られた(図12参照)。
【0171】
ここで図13を参照すると、調製された複合体の膨潤のパーセンテージが分析された。キシリトールを含む複合体が、モノマー成分としてのキシリトールの親水性の増加にもかかわらず、キシリトールを欠く複合体と同じ速度で膨潤することが分かった。
【0172】
ここで図14を参照すると、本開示の組成物の分解(損失パーセント)が経時的に分析された。これらの組成物は、16週間で5%~40%の調整可能な分解速度を有することが分かった。より多量のキシリトールを組み込むと、4ヶ月でポリマー重量が完全に失われた(約40%)。重要なことには、分解速度は、組成物の初期力学に悪影響を与えることもこれを大幅に変更することもなく調整することができる。
【0173】
ここで図15を参照すると、複合体の経時的なpHが分析された。生理的pH(約7.4)への復帰が1週間以内に観察された。重要なことには、pHの急激な低下は正常な骨の治癒に関連する一方、長期にわたる酸性環境は、病態または骨治癒異常を示す。キシリトール含有複合体は、骨環境にとって望ましいpHプロファイルを再現することが可能である。
【0174】
図16A及び16Bを参照すると、上記の複合体について、蛍光及び室温りん光スペクトルが得られた。室温りん光の存在は、これらの複合体が複数の画像診断法で使用され得ることを示している。特に、りん光は、蛍光と対比して、りん光の固有の遅延発光によって生体組織の自己蛍光を回避するために、インビボで優先的に使用され得る。
【0175】
図17A~17Cを参照すると、フィルムの分解産物ならびに複合体の溶出物及び分解産物の両方のインビトロ細胞毒性がMG63細胞に対して評価された。
【0176】
図18を参照すると、本開示の複合体(POC-X6/HA)は、クリニックで使用されるPLGA/HA材料で見られるものと同様の頭蓋骨再生を示した。
【0177】
添付の特許請求の範囲の組成物及び方法は、特許請求の範囲のいくつかの態様の例示であることが意図される本明細書に記載の特定の組成物及び方法によって範囲を限定されず、機能的に等価である任意の組成物及び方法は、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。本明細書に示され記載されたものに加えて、該組成物及び方法の様々な修正は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。さらに、本明細書に開示するある特定の代表的な組成物及び方法工程のみが具体的に説明されているが、該組成物及び方法工程の他の組み合わせもまた、具体的に列挙されていない場合であっても、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。従って、工程、要素、成分、または構成要素の組み合わせは、本明細書で明示的に言及される場合があるが、工程、要素、成分、または構成要素の他の組み合わせは、明示的に述べられていない場合であっても含まれる。
【0178】
本明細書で使用される、「含む(comprising)」という用語及びその変形は、「含む(including)」という用語及びその変形と同義で用いられ、オープンな非限定的用語である。「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、様々な実施形態を記載するために本明細書で使用されているが、「~から本質的になる」及び「~からなる」という用語が、本発明のより具体的な実施形態を示すために、「含む(comprising)」及び「含む(including)」の代わりに使用される場合があり、開示もされている。実施例以外で、または特に指定のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される構成要素、反応条件等の量を表すすべての数値は、最低限理解されるべきであり、また、特許請求の範囲に均等論の適用を限定しようとするものではなく、有効桁数及び通常の丸め法に照らして解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7
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図9A
図9B
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図17C
図18
【国際調査報告】