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特表2023-521091生体合金で編組された自己拡張性の生分解性ステント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】生体合金で編組された自己拡張性の生分解性ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/90 20130101AFI20230516BHJP
【FI】
A61F2/90
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561126
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 US2021026192
(87)【国際公開番号】W WO2021207366
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/006,565
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512330363
【氏名又は名称】ゾリオン メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】パキン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ブロッカー,デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA50
4C267AA53
4C267AA54
4C267BB06
4C267BB15
4C267BB43
4C267CC08
4C267GG04
4C267GG09
4C267GG16
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG24
4C267GG43
4C267HH11
(57)【要約】
一緒に編組された複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤを含むチューブを含んでいる埋込み型デバイス:チューブは拡張状態において、可撓性でコンフォーマルな生分解性のポリマーでコーティングされており、圧縮され圧縮が解除されると、可撓性でコンフォーマルな生分解性のポリマーでコーティングされたチューブは拡張状態へと自己拡張する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込み型デバイスであって:
一緒に編組された複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤを含むチューブを含み、
チューブは拡張状態において、可撓性でコンフォーマルな生分解性のポリマーでコーティングされており、圧縮され圧縮が解除されると、可撓性でコンフォーマルな生分解性のポリマーでコーティングされたチューブは拡張状態へと自己拡張する、埋込み型デバイス。
【請求項2】
チューブはさらに1またはより多くの放射線不透過性ワイヤを含み、チューブに対して放射線不透過性をもたらす、請求項1の埋込み型デバイス。
【請求項3】
1またはより多くの放射線不透過性ワイヤの少なくとも1つはコンポジットワイヤを含む、請求項2の埋込み型デバイス。
【請求項4】
1またはより多くの放射線不透過性ワイヤの少なくとも1つはマグネシウム合金の放射線不透過性コンポジットワイヤを含む、請求項3の埋込み型デバイス。
【請求項5】
マグネシウム合金の放射線不透過性コンポジットワイヤの直径は複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤの各々の直径と実質的に同じである、請求項4の埋込み型デバイス。
【請求項6】
マグネシウム合金の放射線不透過性コンポジットワイヤは放射線不透過化の充填剤を含む、請求項5の埋込み型デバイス。
【請求項7】
放射線不透過化充填剤はバリウム、ビスマス、タンタル、またはタングステンの少なくとも1つを含む、請求項6の埋込み型デバイス。
【請求項8】
マグネシウム合金の放射線不透過性コンポジットワイヤはコアを取り囲むシェルを含み、そして
コアは放射線不透過化性充填剤を含み、シェルよりも高い密度を有する、請求項7の埋込み型デバイス。
【請求項9】
1またはより多くの放射線不透過性コンポジットワイヤは形状記憶合金を含む、請求項3の埋込み型デバイス。
【請求項10】
形状記憶合金はニッケル・チタン合金を含む、請求項9の埋込み型デバイス。
【請求項11】
1またはより多くの放射線不透過性ワイヤは1またはより多くの非分解性の放射線不透過性ワイヤを含む、請求項2の埋込み型デバイス。
【請求項12】
1またはより多くの非分解性の放射線不透過性ワイヤは生体適合性のある放射線不透過性金属を含む、請求項11の埋込み型デバイス。
【請求項13】
1またはより多くの非分解性の放射線不透過性ワイヤの直径は、複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤの各々の直径よりも25%から40%小さい、請求項12の埋込み型デバイス。
【請求項14】
生体適合性の放射線不透過性金属は、金、白金、タンタル、イリジウム、鉄、またはタングステンの1つを少なくとも含む、請求項13の埋込み型デバイス。
【請求項15】
1またはより多くの非分解性の放射線不透過性ワイヤは永続性のポリマーコーティングでコーティングされていてガルバニック腐食を阻止する、請求項14の埋込み型デバイス。
【請求項16】
永続性のポリマーコーティングは誘電性の絶縁材料を含む、請求項15の埋込み型デバイス。
【請求項17】
永続性のポリマーコーティングはポリイミドまたはフッ素ポリマーの少なくとも1つを含む、請求項16の埋込み型デバイス。
【請求項18】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤは非コンポジットマグネシウムワイヤを含む、請求項1の埋込み型デバイス。
【請求項19】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤはコンポジットワイヤを含む、請求項1の埋込み型デバイス。
【請求項20】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤは実質的に希土類元素を含有しない、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項21】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤは少なくとも80%w/wのマグネシウムを含有する、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項22】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤはさらに亜鉛またはジルコニウムの少なくとも1つを含む、請求項21の埋込み型デバイス。
【請求項23】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤはさらに少なくとも1つの希土類元素を含む、請求項22の埋込み型デバイス。
【請求項24】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤは少なくとも90%w/wのマグネシウムと亜鉛、カルシウム、またはマンガンの少なくとも1つを含むマグネシウム合金を含む、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項25】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤはさらにアルカリ金属、遷移金属、または希土類金属の少なくとも1つを含む、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項26】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤは、アルミニウム、カルシウム、銅、ジスプロシウム、リチウム、およびマグネシウム、マンガン、イットリウム、またはジルコニウムの少なくとも1つをさらに含む、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項27】
複数の生体適合性金属のワイヤの第1の部分は時計回り方向に巻回されており、そして複数の生体適合性金属のワイヤの第2の部分は反時計回り方向に巻回されている、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項28】
ワイヤの第1の部分はワイヤの第2の部分と、上に1本、下に1本(1×1)のパターンで編組されている、請求項27の埋込み型デバイス。
【請求項29】
ワイヤの第1の部分はワイヤの第2の部分と、上に2本、下に2本(2×2)のパターンで編組されている、請求項27の埋込み型デバイス。
【請求項30】
複数の生分解性のワイヤの各々の直径は0.01mmから1.0mmの間にある、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項31】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤの各々の直径は0.1mmから0.2mmの間にある、請求項30の埋込み型デバイス。
【請求項32】
チューブ内の複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤおよび1またはより多くの放射線不透過性ワイヤの合計数は4本ワイヤの倍数を含む、請求項2の埋込み型デバイス。
【請求項33】
チューブ内の複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤおよび1またはより多くの放射線不透過性ワイヤの合計数は4本、8本、12本、16本、24本、32本、48本、64本、72本、96本、144本、または288本のワイヤである、請求項32の埋込み型デバイス。
【請求項34】
チューブ内の複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤおよび1またはより多くの放射線不透過性ワイヤの合計数は24本である、請求項33の埋込み型デバイス。
【請求項35】
複数の生分解性のワイヤの各々はチューブの長手方向軸に対して少なくとも30°の角度で巻回されている、請求項33の埋込み型デバイス。
【請求項36】
チューブが24本のワイヤを有するとき、角度は60°から65°の間である、請求項33の埋込み型デバイス。
【請求項37】
チューブが少なくとも32本のワイヤを有するとき、角度は少なくとも50°である、請求項33の埋込み型デバイス。
【請求項38】
チューブ内における1またはより多くの放射線不透過性ワイヤと複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤの比率は1:1を超えない、請求項2の埋込み型デバイス。
【請求項39】
チューブが24本のワイヤを有するとき、チューブ内における1またはより多くの放射線不透過性ワイヤと複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤの比率は1:11を超えない、請求項2の埋込み型デバイス。
【請求項40】
チューブが24本のワイヤを有するとき、チューブ内における1またはより多くの放射線不透過性ワイヤと複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤの比率は1:5を超えない、請求項2の埋込み型デバイス。
【請求項41】
チューブが288本のワイヤを有するとき、チューブ内における1またはより多くの放射線不透過性ワイヤと複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤの比率は1:71を超えない、請求項2の埋込み型デバイス。
【請求項42】
チューブは少なくとも2つのセグメントに切断されている、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項43】
チューブの少なくとも2つのセグメントの各々において、ワイヤの各々はチューブの長軸の周囲に少なくとも完全な1回転を完了している、請求項42の埋込み型デバイス。
【請求項44】
少なくとも2つのセグメントの各々の端部の各々は仕上げ切断を受けて実質的な均一な長さのワイヤ端部を生成している、請求項43の埋込み型デバイス。
【請求項45】
圧縮が解除されると、可撓性ポリマーでコーティングされたチューブは拡張状態の少なくとも50%まで自己拡張する、請求項1の埋込み型デバイス。
【請求項46】
チューブを被覆している可撓性ポリマーは生分解性のポリマーを含む、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項47】
可撓性ポリマーはコンフォーマルコーティングを含む、請求項46の埋込み型デバイス。
【請求項48】
可撓性ポリマーは複数のワイヤ交点においてチューブのワイヤを一緒に結合してワイヤ相互の間での滑り運動を阻止する、請求項47の埋込み型デバイス。
【請求項49】
可撓性ポリマーは、噴霧コーティングまたは浸漬コーティングの少なくとも1つによってチューブに適用されて、コンフォーマルコーティングまたはスリーブ状コーティングの少なくとも1つを生成する、請求項48の埋込み型デバイス。
【請求項50】
生分解性のポリマーはさらに少なくとも:ポリ(L-ラクチド)(PLLA);ポリ(DL-ラクチド)(PLA);ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド);ポリグリコリド(PGA);ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド);またはポリ(カプロラクトン)の1つを含む、請求項47の埋込み型デバイス。
【請求項51】
生分解性のポリマーはさらに、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、またはクエン酸トリ(2-エチルヘキシル)を含む少なくとも1つのクエン酸アルキルエステル生体適合性可塑剤を含む、請求項47の埋込み型デバイス。
【請求項52】
生分解性のポリマーは、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)およびアセチルクエン酸トリ-n-ブチル(ATBC)可塑剤を含むコンフォーマルポリマーを含む、請求項47の埋込み型デバイス。
【請求項53】
生分解性のポリマーはさらに、増殖抑制剤または増殖抑制剤含有コーティングを含む、請求項46の埋込み型デバイス。
【請求項54】
ポリマーまたは増殖抑制剤含有コーティングはリムス系薬剤またはタキサン系薬剤を含む、請求項53の埋込み型デバイス。
【請求項55】
可撓性ポリマーは少なくとも5μmの厚さでチューブに適用されている、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項56】
可撓性ポリマーはチューブの端部の各々において5μmを超える厚さでチューブに適用されている、請求項55の埋込み型デバイス。
【請求項57】
可撓性ポリマーはチューブの端部の各々において少なくとも20μmの厚さで適用されている、請求項55の埋込み型デバイス。
【請求項58】
チューブの端部の各々は、チューブの長さの10%から20%を被覆する少なくとも20μmの厚さで適用された可撓性ポリマーを有する、請求項55の埋込み型デバイス。
【請求項59】
チューブの端部の各々における可撓性ポリマーは、チューブのワイヤ端部を包埋する厚くされたバンドを含む、請求項55の埋込み型デバイス。
【請求項60】
ポリマーが重量の2%から12%で含有され、重量のバランスが溶媒である溶液中にステントを浸漬することによってスリーブ状の被覆が生成されている、請求項55の埋込み型デバイス。
【請求項61】
生分解性の生体適合性金属のワイヤの端部は一緒に接合されて端部の閉じたステントが形成されている、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項62】
生分解性の生体適合性金属のワイヤの端部は一緒に接合されておらず開放末端のステントが形成されている、請求項1から19のいずれか1の埋込み型デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
この出願は2020年4月7日に出願された米国特許出願第63/006,565号の優先権を基礎として主張しており、その全開示内容はこの参照によって本願に取り入れられる。
【背景技術】
【0002】
現在の生体吸収性ステントは、典型的には種々の量のバイオプラスチックおよび生体適合性金属で作成されているが、ステントの作成に用いられる生体適合性材料に内在する性質に基づいて、大きな性能上の制約を受けている。
【0003】
バイオプラスチックおよび生体適合性金属は両方とも放射線不透過性ではなく、特に血管の精確なサイズ決定およびインプラントの配置を伴う臨床状況において、デバイスを送達および追跡することは困難である。加えて、バイオプラスチック製の足場(スキャフォールド)は、特に非吸収性材料と比較して、固有の強度および可撓性が不足している。
【0004】
強度不足といった特定の性質を補うために、バイオプラスチックから作られたステントは一般に、より多くの材料を必要とし(すなわち、より大きな質量、支柱のより大きな厚さ)、その結果として、挿入後の吸収時間はより長くなる(すなわち、月単位ではなく年単位となる)。
【0005】
生体適合性金属は、非吸収性金属の機械的性質にかなり類似した機械的性質を有している。しかしながら、そうした性質を埋込み型デバイスにおいて維持するために利用可能な、設計および製造技術の組み合わせは限られており、使用条件(例えば血管の直径)または留置のための送達システム(例えばバルーン拡張可能性)の限られた組み合わせについて、性能が最適ではなくなる結果(例えば、破損および/または早すぎる劣化による高い故障率)をしばしば生ずる。
【発明の概要】
【0006】
そこで本開示は、ステントのような生体吸収性デバイスの改善を指向しており、これは視認性の悪さ、ステントの設計、またはそうした生体吸収性ステントを作成するための生体材料、および/またはそれらの組み合わせのいずれかに起因する、最適でない性能および限定された用途などの、上述した問題点の1つまたはより多くに対処するものであり、また特に、精確な血管の寸法決定および生体吸収性ステントの埋め込み留置を伴う課題に対処するものである。マグネシウム製ステント、より特定的には自己拡張性の編組(ブレード)ワイヤに基づくマグネシウム製ステントは、吸収時間をより迅速にし(例えば、年単位ではなく月単位の期間)、向上された視認性を有するように技術構成されており、上記したような現在の生体吸収性ステント、および従来技術における生体吸収性ステントに関連する1つまたはより多くの制約に対処する。
【0007】
本願に開示されているのは、ハイブリッド自己拡張性生分解性ステント(HSEBS)の種々の実施形態である。本開示の目的に関して、「ハイブリッド」という用語は一般に、埋設についてデバイスの視認性を増大させる(例えば放射線技術または他のイメージングモダリティ(装置)を用いる)、放射線不透過性(RO)金属ワイヤ(例えば単独、複合、および/または複数のワイヤストランド)を取り入れることを指している。「自己拡張性」という用語は一般に、管腔内に送達されたときに製造時直径の大部分を回復することのできる能力を指している。「生分解性ステント」という用語は一般に、デバイスの作成に用いられた生体適合性金属ワイヤ成分(例えば単独、複合、複数ワイヤストランド)の優位性に基づいて、埋設後に安全に吸収されるデバイスの能力を指している。そして「生体適合性金属」および「生体適合性金属の」という用語は、ヒトのような生体内に埋設された場合に生体適合性があり、また生分解性であってよい金属を指している。HSEBSは、永続性コーティングを施されたROワイヤを備えて、または備えずに、マンドレルの周囲に時計回りおよび反時計回りに交絡させた生分解性の生体適合性金属のワイヤを含む、編組チューブから製造されてよい。放射線不透過性ワイヤをHSEBSに追加すると、ステントの全長を端から端まで視覚化し、埋設中および他の手順の間にステントを追跡することが可能になる。
【0008】
種々の実施形態において、生分解性の生体適合性金属のワイヤはマグネシウム合金(MA)から製造されてよく、そこではワイヤの大部分(例えば、少なくとも80%)はマグネシウムであってよい。ある種の実施形態においては、ROワイヤは非分解性の金属から製造されてよい。ある種の実施形態においては、MAは医療用材料から作成されてよく、また希土類元素を含まなくてよい。
【0009】
ある種の実施形態においては、MAは合金化されたマグネシウムであってよく(例えば、90%w/w超のMg)、これは亜鉛、カルシウム、およびマンガンを含んで強く延性のある合金を形成していてよく、そして希土類元素を含まないことにより、合金は動脈および静脈のような血管を含む、種々の構造内に埋設するのに適したものとなる。
【0010】
特定的な実施形態においては、MAは少なくとも80%w/wのマグネシウムと、亜鉛、ジルコニウム、および希土類元素から化学的に組成されてよく、そこではMAは生体適合性であってよく、また高い引張強度、降伏強度、および伸び率を有していてよい。幾つかの実施形態においては、生分解性の金属はまた、鉄および亜鉛を含んでいてよい。
【0011】
幾つかの実施形態においては、ROワイヤは編組構造において放射線不透過性および機械的役割の両者を果たす大きな弾性歪みに対して、低い弾性率と高い降伏応力を有する金属から作成されていてよい。弾性率は金属の弾力性および金属/合金が圧縮状態から回復する能力の鍵となる要素であり、そして本質的に合金/材料系に固有の、定まった材料特性である。幾つかの合金においては、弾性率は金属/合金をさらに処理することによって僅かに変化および増大させることができる。例えば弾性(最低から最高まで)に関して、マグネシウムは他の編組可能な金属/合金と比較して低い、5メガポンド毎平方インチ(Mpsi)の弾性率を有しており、これに対してニチノールまたはニッケルチタン合金の弾性率(~8-12Mpsi)、チタンの弾性率(10-14Mpsi)、ステンレス、白金、およびタンタルの弾性率(20-25Mspi)、そしてコバルトクロム合金の弾性率(25-30Mpsi)は著しく高い。
【0012】
ROワイヤは、金、白金およびタンタルなどの生体適合性金属から製造されてよいが、その理由はこれらの金属がステントの材料よりも高い密度を有しており、ステントをX線写真上で容易に看取することを可能にするからである。ある種の実施形態においては、ROワイヤの直径はマグネシウム合金ワイヤの直径と比較して25%から40%の間で低減されてよく、このことはROワイヤの機械的性質を補償するのに役立ち、またROワイヤを取り入れるHSEBSを変形させないようにする。
【0013】
特定的な実施形態においては、ROワイヤは複合材料であってよく、これはMAチューブまたはニッケルチタン(またはニチノール)のような形状記憶合金から作成されていてよく、また視認性を向上させるためのコア材料を含んでいてよい。幾つかの実施形態においては、特に後者の形状記憶合金においては、複合ワイヤは編組構造に対して視認性および機械的支持の両者を提供してよい。幾つかの実施形態においては、生分解性のチューブ状MA複合材料は放射線不透過化粉末材料のコアを含んでいてよく、これは典型的には放射線透過性の材料に対して放射線密度をもたらす。
【0014】
他の実施形態においては、放射線不透過性要素はROコアワイヤの周囲に巻かれたワイヤストランドを含んでいてよく、これが編組構造において放射線不透過性および機械的役割の両者を果たしてよい。
【0015】
幾つかの実施形態においては、編組チューブを作り上げる複数のワイヤは、上に1本、下に1本(1×1)のパターンで時計回りおよび反時計回りの態様で単一のマンドレルの周囲に巻回され織成されてよい。他の実施形態においては、ワイヤは2×2(上に2本、下に2本)の編組パターンで巻回され織成されてよい。一般に、ワイヤの編組とはワイヤを時計回りおよび反時計回り方向に走らせて、例えば交差する際に相互に上と下に走らせてチューブ形状に巻きつけ(例えば、マンドレルの周囲に)、一緒に織成することを意味する。
【0016】
ある種の実施形態においては、編組チューブは当初、拡張された形状において形成されてよく、かくして編組チューブは圧縮の後に拡張状態を回復しまたは再拡張されるようになり、そして1つの特定的な実施形態においては、好ましいワイヤの数は24である。種々の実施形態において、編組ワイヤの角度はワイヤの交点においてマンドレルの長手方向軸に対して30°以上である。
【0017】
特定的な実施形態においては、永続的にコーティングされた非分解性金属ワイヤと生分解性の生体適合性金属のワイヤの比率および/または構成は、編組チューブを作成するのに必要とされるワイヤの合計数の1:1以下であってよい。24-ワイヤ編組構成についての実施形態においては、複合ワイヤが使用されない限り編組構成の殆ど(>90%)が吸収性であることから、この比率は1:11以下であってよい。
【0018】
幾つかの実施形態においては、異種の金属同士が接触することを防止するために、ROワイヤは永続性の(すなわち非生分解性の)ポリマーコーティングで被覆されてよく、それによってガルバニック腐食が阻止または防止される。種々の実施形態において、ポリマーは非常に高い温度に耐えることのできる、誘電性の絶縁材料から作成されてよい。
【0019】
特定的な実施形態においては、チューブは種々の長さの、より小さなセグメント(または「編組ステント」)へと切断されてよい。ある種の実施形態においては、編組チューブはワイヤが長軸に沿って(例えばマンドレル上で)少なくとも完全にひと回り(360°)した点において編組ステントへと切断されてよく、ワイヤの端部がほつれる蓋然性が低減される。幾つかの実施形態においては、ハイブリッドチューブの最初の切断を行うときにハイブリッドチューブから短めの編組セグメントが分離されてよく、そして最後の切断ではステントに均一な末端長さがもたらされてワイヤが変形するリスクが低減され、ステントの対称性と均一性が改善される。
【0020】
幾つかの実施形態においては、末端のワイヤは相互に接合してよく、吸収性および非吸収性の両方の要素を含む接合カフを使用して、デバイスの端部が閉じられる。他の実施形態においては、ステントの端部は編組チューブのパターン内に戻るようワイヤをループさせることによって、編組工程の間に閉じられてよい。
【0021】
ある種の実施形態においては、編組ステントは自己拡張性であってよく、そこでは自己拡張性のステントは、圧縮され、拘束され、そしてカテーテルのような送達システムから解放された後、圧縮状態からその作成時の直径(すなわち予備圧縮された形状の直径)の少なくとも50%の直径まで回復してよい。
【0022】
種々の実施形態において、ステントは生分解性のポリマーでコーティングされてよい。幾つかの実施形態においては、コーティングは編組ステント上に層を噴霧することにより、および/または層を浸漬コーティングすることにより適用されてよく、コンフォーマルで可撓性のコーティングが生成され、そこにおいては組織内に埋設された場合のMgベースの基材の生体吸収プロファイルを調節するために、生分解性のポリマーコーティングが用いられてよい。
【0023】
コンフォーマルで可撓性のコーティングは交点においてワイヤを一様に結合して、ステントの表面に付着する一方で、ワイヤが相互に滑ることを防止する。適用されたコーティングはある種の実施形態においては、ワイヤの変形を低減または阻止してよく、また拘束が解かれた場合に編組ステントが一様な拡張を達成することを可能にしてよい。
【0024】
本願において記載する種類のコンフォーマルで可撓性のコーティングはまた、ステントの機械的特性、特にステントが所望の直径および形状に戻るよう回復または再拡張する性能をも改善し、より重要なことには、ステント端部のゆがみを低減または阻止する。これはステントの弾性的特性およびコンフォーマルで可撓性のコーティングの組み合わせによって達成されてよく、後者は生体吸収性プロファイルを制御すると共にステントの回復または再拡張性能を改善するために使用される。特定的な実施形態においては、コンフォーマルで生分解性のポリマーは可塑剤を含んでいてよい。幾つかの実施形態においては、ポリマーのコンフォーマル特性は任意選択的に、種々の生体適合性の可塑剤を使用することによって調節されてよい。幾つかの実施形態においては、可塑剤を含むポリマーは、留置されている間にステントが弾性的に回復するのを助ける。
【0025】
種々の実施形態において、コンフォーマルで可撓性、生分解性のポリマーコーティング(添加された可塑剤を含みまたは含まない)はステント全体に対して均等に適用されてよく、結果的にステント全体を覆う10マイクロメートルのほぼ同じ厚さのコーティングとなる。幾つかの実施形態においては、コーティングの厚さは10マイクロメートル未満および/または10マイクロメートル超であってよく、生分解性の金属の分解を加速し、または機械的特性の寿命を延長させる。
【0026】
特定的な実施形態においては、コーティングはステントに対して層をなして適用されてよく、ステントの中間部分において約10マイクロメートルの厚さの、そしてステントの両端のそれぞれにおいては30マイクロメートル迄であるが好ましくは約20マイクロメートルのより大きな厚さの、各縁部から始まりステントの長さの約5%から50%を覆い、そして好ましくはステントの長さの約10%から20%を包埋するコーティングが達成される。幾つかの実施形態においては、個別のバンドおよび/またはリングが適用されて、編組ステントのワイヤ端部の開放末端が包埋され、および/または懸下されてよい。
【0027】
かくして、1つの実施形態は、一緒に編組された生分解性の生体適合性金属の複数のワイヤを含むチューブを含む埋込み型デバイスを提供し:このチューブは拡張状態において可撓性でコンフォーマルな生分解性ポリマーで被覆(コーティング)されており、かくして圧縮されそして圧縮が解除されると、可撓性でコンフォーマルな生分解性のポリマーでコーティングされたチューブは拡張状態に戻るよう自己拡張する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
ここに開示される主題の種々の課題、特徴、および利点は、開示される主題の以下の詳細な説明を以下の図面に関連して考察し参照した場合に、より完全に理解することができる。図面において、同様の参照番号は同様の構成要素を識別する。
【0029】
図1は、時計回りおよび反時計回りの態様で交絡させた生分解性の生体適合性金属のワイヤ10およびROワイヤ11を含む編組チューブから生成されたHSEBSを示している。
【0030】
図2は、ROワイヤを配置可能な異なる構成を示している。例えば、ステント101(左側のパネル)においては2本のROワイヤがあり、断面で見た場合に相互に反対側に(すなわち180°離れて)配置されている。この特定的な2本ROワイヤ構成では、ROワイヤは編組構造体に対して放射線不透過性をもたらす。ステント102(中央のパネル)においては4本のROワイヤがあり、そのうち2本は時計回り方向に巻かれ、そして他の2本は反時計回り方向に巻かれ、かくしてワイヤの交点は2本ROワイヤ構成におけるように断面で見た場合に相互に反対側に(すなわち180°離れて)配置されるようになっている。この場合、ROワイヤは放射線不透過性の役割を提供し、また機械的な役割を提供してよい。他方、ステント103(右側のパネル)は4本ROワイヤ構成であるがすべてのワイヤが同じ方向に巻かれており、また特に細いワイヤ径の編組ステントについて最適な視認性と付加的な設計安定性を得るために、90°離れて位置決めされている(断面で見た場合に)。
【0031】
図3は、マグネシウムおよびマグネシウム合金によってもたらされる視認性の欠如を例証するための幾つかのイメージを示している。イメージAは狭窄病変(白の矢印)を示している。イメージBは埋設されたマグネシウムステントの支柱部分(緑の矢印)の血管内イメージを提示している。マグネシウムおよびマグネシウム合金のステントは血管内超音波検査のような血管内撮像の場合には視認可能であるが、透視撮像の場合には依然として検出できない(イメージC)。
【0032】
図4は、家畜豚の動脈に埋設された編組ハイブリッド自己拡張性生分解性ステント(HSEBS)の映写的な例を提示している。イメージAは20本のマグネシウム合金(MA)ワイヤと4本のROワイヤを有するステント103を示している。ROワイヤ対MAワイヤの配置は1:5である。イメージBはROワイヤ対MAワイヤ比が1:11のステント101を示しており、そこにおいてワイヤは断面で見た場合に相互に反対側に(すなわち180°離れて)配置されている。
【0033】
図5は、レーザーで切断された非分解性の金属ステントを示しており、ステントの視認性を向上させるためにステントの端部に、特にその先端に(主イメージおよび差し込みイメージ内の矢印参照、そこでは差し込みイメージは主イメージ内の点線囲みに対応している)、個別のマーカーが付加されている。これらのマーカーは、金、白金、またはタンタルから作成されていてよい。これらのマーカーは一般に、ステントの材料よりも高い密度を有し、ステントの端部(または他の突端部分)が血管造影法によって容易に看取されうるようにする。
【0034】
図6は、ROワイヤ対MAワイヤが1:11の構成で配置された24本ワイヤのHSEBSのイメージであり、そこではROワイヤ11は2本のROワイヤ構成中において断面で見た場合に相互に反対側に(すなわち180°離れて)配置されている。ROワイヤ11’はステントの長さにわたるROワイヤを示している。同様に示されているのは角度αであり、ROワイヤおよびMAワイヤはこの角度において編組チューブの長手方向軸に対して巻回されている。
【0035】
図7は、パネルAにあるハイブリッドチューブがどのようにして最初の切断(a)を受けて長いハイブリッドチューブから短めの編組セグメントが生成され、続いて仕上げ切断(b)が行われてステントにほぼ一様な端部長さが生じ、ワイヤが変形するリスクが低減されまたステントの対称性および均一性が改善されること、すなわち相互に実質的に同じ長さを有するワイヤ端部が生成されることを示している。図7のパネルAはまた、ハイブリッド編組チューブがどのようにして最初の粗切断および続いてのワイヤ端部をトリミングする第2の切断という同じ切断工程を経てよいかをも示しており、そこにおいてワイヤはマンドレルの長軸に沿って追加的に4分の1回転を行う(a)。次いで、対をなすワイヤ端部は分けられて相互に平行に整列され、ポリマーカフ20で固定されてよい。ワイヤ端部の対の各々(パネルA)が接続されたならば(例えば、カフを使用して)、カフ固定された端部から突出しているワイヤ末端はトリミングされて、端部の閉じたステントが形成される。代替的には、ワイヤ端部の対はループを形成するように曲げられてよく(図7、パネルB)、そして相互に平行に整列され、ワイヤをカフ内に押し込むことによりポリマーカフ20で固定されてよい。
【0036】
図8は、端部の閉じたステントAを提示しており、そこでは対をなすワイヤ端部が分けられて相互に平行に整列され、ポリマーカフで固定されてよい。このステントは、2×2の編組パターンを使用して生成される。
【0037】
図9は、端部の閉じたステントB(左側のイメージ)を提示しており、そこでは対をなすワイヤ端部が曲げられてループを形成し、ステントの長手方向軸に対してほぼ垂直をなして相互に平行に整列され、ワイヤをカフ内に押し込むことによりポリマーカフで固定されている。ステントはこの場合、亜鉛、カルシウム、およびマンガンを含有するMAワイヤ(ZXM)から生成され、x軸に沿って/長手方向軸に対して65°の編組角度を有する1×1の編組パターンを含んでいる。図9における右側のイメージは、ZXM編組の端部の閉じたステントが、血管内へのステントの留置をシミュレートするために装填直径まで圧縮され7mmのガラスチューブ内に装填された後のイメージである。
【0038】
図10は編組ステントを示しており、両方ともコンフォーマルで生分解性のポリマー(CBP)コーティングを有している。左側のイメージは可塑剤を含まないCBPコーティングで被覆されたステントのイメージであり、右側のイメージは可塑剤を含むCBPコーティングで被覆されたステントのイメージである。可塑剤を含む、または含まないCBPコーティングは、ワイヤを交点において結合して、相互に滑ることを防止するために使用されている。しかしながら、可塑剤を含むCBPコーティングだけが、特にステントのサイクル工程(例えば、圧縮、装填、および拡張)の間にステントのワイヤ端部の変形およびポリマー剥離のリスクが高い開放末端構成のステントにおいて、ワイヤ端部の変形を防止するのを助け、またワイヤが交点から離脱するのを防止するのを助ける。図10における左側のイメージは点線を含んでいるが、これは幾つかの交点において離脱し、その結果として他のワイヤ(矢印によって示している)に対して滑ったワイヤの元の位置を示している。他方、図10における右側のイメージのステントのワイヤは、交点において離脱していない。
【0039】
図11は、開放末端のワイヤ端部を完全に包埋するためのポリマーリングを形成するために、CBPコーティングが各々のステントセグメントの縁部または端部においてより厚い層で適用可能であることを示し、幾つかの例が実線とアスタリスク(*)を用いて示されている。ステントセグメントの端部においてポリマーリングを生成することは、浸漬、噴霧、および/またはポリマー溶液でステントの縁部上にリングを1回またはより多く塗布すること、および/またはより高い濃度のポリマー溶液(例えば、2倍)を用いてステントの縁部にポリマーを適用することなどの、幾つもの手順によって達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
開示されている主題の幾つかの実施形態によれば、改善されたステントのような生体吸収性デバイスのためのメカニズム(装置、システム、方法、および媒体を含むことができる)が、そうしたデバイスを作成する手順および使用する手順と共に提供される。
【0041】
本開示は、新規なハイブリッド自己拡張性且つ生体吸収性の、ワイヤを基材とする編組ステントのための実施形態を提示し、幾つかの課題の中でも特に、永続性のステントおよびステント類似のデバイスに関連する耐久性の問題に対処し、また大部分が金属性生体金属で作成された自己拡張性編組ステントの代替的選択肢を提示することによって、公知の生分解性のバイオプラスチック(ポリマー)ステントに関連する機械的強度の欠如に対処する。
【0042】
この新規なハイブリッド編組ステントは、限定するものではないが動脈、腔、管、道、路、および静脈を含む生物学的管腔に対する一時的な構造的支持をもたらす。
【0043】
マグネシウム(Mg)は、マグネシウムを臨床用途に理想的な材料とするその生体適合性および分解性のゆえに、医学的インプラントデバイスの作成に有用であることが知られている。Mgはまたタンパク質合成を促進し、神経および筋肉の機能や骨の成長に寄与し、血糖を制御するといったことから、人体にとって不可欠の元素である。カルシウム、カリウム、およびナトリウムと同様に、Mgは人体の適切な機能にとって必須である。
【0044】
MgおよびMg合金は、これまでステントおよび他の種類の生体吸収性ステントに使用されてきているが、MgおよびMg合金から作成されたステントを製造するための従来の方法には、放射線密度の欠如、好ましくない機械的特性、および迅速な生体腐食および分解など、幾つかの欠点が存在している。
【0045】
インプラントは血管内撮像(図3B)のような代替的なイメージングモダリティ(装置)を使用すれば視認可能であるとはいえ、視認性(すなわち、放射線密度の欠如)は、多くの生体吸収性/分解性インプラントの主たる欠点の1つである(図3C)。生体吸収性デバイスを透視撮像による案内を行う場合に視認できないことは、例えば、血栓や瘢痕組織形成その他のような重篤な有害事象を導く可能性がある。このことは次いで、血流低下または塞栓を生じさせる可能性があり、例えば心臓動脈において、心筋梗塞(すなわち心臓発作)を生じさせる可能性がある。
【0046】
生体吸収性/分解性ステントを使用することの目標は、生体材料(単数または複数)の完全な分解および人体による最終的な吸収を達成することにあるが、本開示はハイブリッドデバイスの機能性および有用性を記述するものであり、そこにおいては吸収性のMg合金と非吸収性で非分解性の金属の組み合わせが使用されて、放射線不透過性/放射線密度をもたらす自己拡張性のMgを基材とするステントが生成される。
【0047】
上述したように、ステントの視認性は依然として、公知の生体吸収性/分解性ステント/足場の大きな障害になっている。ステントを適切に視覚化できないと、例えば最適ではないまたは不適切な留置に基づき、身体内に埋設したときの構成の不具合を増大させる場合がある。例えば透視撮像による案内を行う場合にステント構造の全体を可視化できないことは、インプラントおよび患者の両方を危険に晒すことになる。
【0048】
前者の状況(すなわち、製品の不具合の危険性)については、ユーザーはインプラントを見ることができないため、インプラントは基本的に盲目下に作動している。後者の状況(すなわち、製品の不具合による患者の危険性)については、患者は潜在的に、上述したような重度の有害事象を生じやすい。生体吸収性/分解性のインプラントを視覚化できる性能は、埋設に際してだけではなく、埋設後に続く期間中においても、デバイスの機能性および性能について最も重要である。
【0049】
Mgを基材とするステントを放射線放出イメージングモダリティ(装置)を用いて可視化することに関連する困難性はステント構成物の不具合の可能性につながり得るとは言え、ステント構成物を作成する材料は重要である。科学文献においてこれまでに認識されているところでは、現状の生体吸収性ステントのプラットホームは、医学的なイメージングの下における最適な埋設のために十分な視認性を欠いている。
【0050】
どのような機能的ステントについても、デバイスを製作するのに使用される製造プロセスは、埋設したデバイスの性能の不具合を回避するために材料に内在する性質が保持されるように、材料と両立性を有しなければならない。
【0051】
生体適合性金属材料から作成された生体吸収性ステントについては、溶接やレーザー切断のような限局性の熱エネルギー、またはワイヤの屈曲のような極度の機械的応力を随伴する製造プロセスは、生体適合性金属材料に内在する性質を変化させ、ステントの破断または不均一な生分解を生じさせやすくする。生体適合性金属材料についての編組による製造プロセスは、これらの欠点の多くを回避する。
【0052】
したがって本願に開示されているのは生体吸収性ステントであり、これは半径方向強度、破断に対してより抵抗力のある大きな拡張性、および/または向上された蛍光透視撮像視認性をもたらす、新規な構造的特徴の組み合わせに基づいて、既存の生体吸収性編組ワイヤステントと比べて改良されている。
【0053】
例えば、本願に開示されているようなワイヤを基材とするステントは、MgまたはMg合金の微細構造および性質を変化させる可能性のある、レーザーによる熱影響部によって影響されない。またワイヤの処理および強度に対する制御は、押出しチューブの場合よりも大きい:押出しチューブは一般に、降伏強度/跳ね返りを低減させると共に伸度を最大化すべく十分にアニーリングされるが、より不具合を生じやすくなる。本願で開示しているようなハイブリッド自己拡張性生体吸収性ステント(HSEBS)は、生分解性の金属性ワイヤと、分解性マグネシウム合金の放射線不透過性コンポジット(複合材料)または放射線不透過化材料から作成された非分解性の放射線不透過性金属性ワイヤのいずれかを含んでいる。
【0054】
開示された実施形態の自己拡張性という特徴は、HSEBSのワイヤの半分またはそれ以上を一緒に作成している生体吸収性(例えばMgまたはMg合金)ワイヤの性質と、そして幾つかの場合においては、特にワイヤが一緒に編組され、コンフォーマルな可撓性ポリマーで被覆されている場合に、非分解性のROワイヤの性質との組み合わせからもたらされる。
【0055】
この組み合わせは、対象者(例えば患者)への送達に先立って圧縮可能であり、そして圧縮が解かれた場合に、HSEBSの作成時(圧縮前)の直径の50%またはそれ以上であってよい拡張位置へと自己拡張可能なステントをもたらすが、こうした自己拡張は、ワイヤの弾性および可撓性ポリマーコーティングの組み合わせ、並びにワイヤの編組およびコーティングの付着などのこれらの構成部材の間での相互作用、およびコーティングがワイヤと交点の間での相互接続を維持するという事実の結果として生ずるものである。
【0056】
好ましくは、HSEBSの開示された実施形態のワイヤは拡張された形状で作成され、そしてその後に圧縮され、送達システム内に拘束される。送達システムから解放されると、ワイヤは「跳ね戻る」、すなわち自己拡張して、所定の直径となる。ワイヤが作成時の直径の幾らかまたは全部を回復する(例えば作成時直径の少なくとも50%を回復する)この性能は、少なくとも部分的に、金属(単数または複数)の弾性的性質に基づいている。種々の実施形態において、ワイヤは比較的低い弾性率(例えば5Mpsi/35GPa程度の低さ)および高い降伏応力を有して、大きな弾性歪みをもたらしてよい。
【0057】
他の実施形態においては、編組チューブが拡張状態にある間にチューブに対してコンフォーマルな可撓性ポリマーを適用することで、チューブに対して弾力性(復元性)がもたらされ、かくしてチューブに対する圧縮力が解放された場合に、チューブはその当初の圧縮前の直径の幾らかまたは全部まで再拡張される。
【0058】
種々の実施形態において、HSEBSはMgを基材とするワイヤから製造されてよく、これは希土類の合金鉱物を含有するか、または他の実施形態においては、希土類の合金鉱物を実質的に含まない。
【0059】
前者(すなわち、希土類元素を含有する)は、付加的な強度、一定の負荷または応力に伴う経時的で永続的な変形に対する抵抗(すなわち、金属クリープ)、および増大した耐食性を有する合金をもたらす。同時に、後者(すなわち、希土類元素を含まない)は、臨床的および組織学的に誘発される副作用の可能性を排除する。
【0060】
一般に、希土類鉱物および腐食生成物を含まない合金(Mg合金を含む)は、系統的または局所的な細胞毒性的影響を殆どまたは全く生じさせないと予想される。かくして、生体適合性金属の選択は、HSEBSの用途および/または意図する使用に依存している。
【0061】
他の実施形態においては、HSEBSはまた、アルミニウム、カルシウム、銅、ジスプロシウム、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、イットリウム、ジルコニウム、および亜鉛といった、アルカリ金属並びに選択された遷移金属および希土類元素を含む、さまざまな割合の合金形成性金属と合金化された、他の生分解性の金属から作成されてよい。
【0062】
異なる生体適合性金属および生体適合性金属合金の組み合わせを使用することで、得られるHSEBSの分解挙動および機械的挙動に影響を及ぼすことができるが、これはその処方に応じて、種々の用途に使用されてよい。
【0063】
1つの特定的な実施形態においては、Mgは亜鉛、カルシウム、およびマンガンと合金化(390%Mg)されてよく、強く延性があり、希土類元素を含まないワイヤが生成されるが、この合金は動脈や静脈のような血管の内側に埋設するのに適している。1つの例においては、希土類元素を含まないMAは1%の亜鉛、0.3%のカルシウム、および0.15%のマンガンを含み、マグネシウムの含有量は98%を超える。
【0064】
別の実施形態においては、Mg合金(MA)ワイヤが提供されてよく、これは亜鉛、ジルコニウム、および希土類元素を含み、そして少なくとも80%のマグネシウムを有する。この特定的なMAワイヤは生体適合性であり、高い引張強度、降伏強度、および伸び率を有し、10%のジスプロシウム、1%のネオジム、1%の亜鉛、および0.2%のジルコニウムから構成され、バランスの87%はマグネシウムである。
【0065】
上述したように、X線写真的に案内される手順の間にデバイスが視覚化されることを可能にするため、ステントの放射線不透過性は重要である。金属の放射線不透過性に寄与する2つの主な要因は、金属の密度および原子番号である。Mgは放射線がより自由に通過することを許容し、それ自体およびその合金を放射線透過性とするが、これは316Lステンレス鋼(@7.99g/cm)と比較して密度が低い(@1.74g/cm)からである。
【0066】
316Lステンレスは主として鉄(Fe)から作成されており、7.8g/cmの密度を有し、そして原子番号26を有するが、これはMgの2g/cm未満の密度および原子番号12と対比される。電磁放射線の通過をより良好に阻止するFeのような材料は、X線不透過性または放射線不透過性材料と称される。
【0067】
非分解性の血管用金属ステント、例えば316Lステンレス鋼から作成されたステントの視認性を向上させるため、幾つかの場合には個別のマーカー(図5)がステントに付加(例えば端部に)されてよく、ステントの視認性が特にその先端部分において向上される。こうしたマーカーは金、白金、またはタンタルから作成されてよい。これらのマーカーは一般にステントの材料よりも高い密度を有し、ステントの端部(または他の突端部分)が血管造影法によって容易に看取されるようにする。
【0068】
しかしながら、316Lステンレス鋼と比較して著しく低いMgの密度は、Mgを基材とするHSEBSを蛍光透視法の下において本質的に不可視のものとする。かくして、個別のマーカーは恐らくそれだけでは、他の部分ではほぼ放射線透過性であるステントをX線造影法により可視化するためには十分でない。
【0069】
したがって、個別のマーカーを使用するのに代えて、本願で開示するHSEBSデバイスの実施形態は、マグネシウム合金の放射線不透過性コンポジット、または先端部分だけ(図5)ではなくHSEBSの全長にわたるタンタルワイヤのような非分解性の放射線不透過性金属性ワイヤ(図1図4および図6)を含んでいてよく、それによってステントに対して、端から端までの連続的な視認性が与えられる。種々の実施形態において、非分解性の放射線不透過性ワイヤは、金、白金、イリジウム、鉄、またはタングステンといった他の生体適合性材料を、単独でまたは合金の一部として含んでいてよい。X線不透過性ワイヤを付加することはかくして、ステントがX線写真上で視覚化されることを可能にし、他の場合には透過性の生体適合性金属ワイヤステントが透視撮像法による案内の下に視認されることを可能にする(図4)。
【0070】
さまざまな数の放射線不透過性ワイヤが使用されてよい。開示されたHSEBSデバイスのある種の実施形態は少なくとも2本の放射線不透過性(RO)ワイヤを含んでいてよく、これに対して他の実施形態においては、4本を超えないROワイヤがHSEBSの構造内に編み込まれてよい(図2および図4)。ある種の実施形態においてはROワイヤは編組構造の全長に沿って延びる(図6)。2本および4本のROワイヤ構成(101および102)において断面で見た場合に、ROワイヤは相互に反対側に(または180°離れて)配置されていてよいが、これに対して4本ワイヤの構成について、最適な視認性および付加的な設計安定性を得るために、ワイヤは90°離れて位置決めされてよい(103)。より一般的には、種々の実施形態においてROワイヤは断面で見たときに相互にほぼ等しく離れるよう位置決めされてよいが、他の分散の仕方もまた可能である。
【0071】
幾つかの実施形態においては、ROワイヤ吸収性であってよく、放射線不透過性材料を例えばコアとして含んでいてよい。特定的な実施形態においては、放射線不透過性のコアを有するマグネシウムコンポジットワイヤが使用されてよい。例えば、引抜充填チューブ(DFT登録商標)ワイヤ(フォートウェインメタルズ社、インディアナ州)は1つの元素または合金の押し出されたシェル材料(例えばMgまたはニチノール)と別の金属/非金属材料を含むコアとを有し、医療用デバイスの製造に用いる確立された材料であり、ROワイヤとして使用されてよい。
【0072】
ある種の実施形態においては、MAチューブ(例えば、引抜充填Mgチューブ)が用いられてよく、これは生分解性のシェルを有するROコンポジットワイヤを製造すべく粉末状の放射線不透過性材料で充填され、このワイヤは非吸収性金属の機械的特性により類似した機械的特性をもたらし、MAチューブを含むステントまたは他のデバイスを分解性且つ放射線不透過性とすることができる。放射線不透過化性の粉末は、バリウム、ビスマス、タンタル、およびタングステンなどの1つまたはより多くの公知の放射線不透過剤を含んでいてよく、マグネシウム合金コンポジットワイヤ内でコア材料の領域の40%までを構成していてよい。
【0073】
特定的な実施形態においては、MAチューブを充填する粉末状の放射線不透過性材料は好ましくは、三酸化ビスマス(Bi)のような医療用途においてしばしば使用されている非金属の放射線不透過性材料であってよい。他の充填剤(または放射線不透過剤)は典型的には、バリウム化合物(例えば硫酸バリウム(BaSO)、酸化タンタル(Ta)、または炭化タングステン(WC))などの高密度粉末からなり、そしてx線ビームが材料を通過するに際しビームのエネルギーを減衰させるについて十分な効果を有してよく、ビームの全部または一部を吸収または偏向させることによってビームの強度を低減させる。
【0074】
中空のMA合金チューブは、現代の加工硬化(冷間加工)法を使用して製造してよい。ステントの製造に使用するためには、中空MAチューブの外径は0.1mmから1mmの範囲にあってよく、これに対してRO材料は内側のコア材料の領域の10%から40%の間を構成していてよい。
【0075】
ある種の用途、例えば人体内に何も残存させないことがその利点となる血管ステント設置術のような用途、特に血管が細く再閉塞を起こしやすい脳血管および冠状動脈へのステント設置術、並びに尿管ステント設置術および胆管ステント設置術のような、ステントを可視化するために透視撮像による案内が必要であってよく、またステントが経時的に分解または消失する幾つかの非血管/静脈用途において、コンポジットROワイヤは非分解性のROワイヤの代替物である。これは特に、ステントの除去が示される(例えば尿管ステント設置術)場合に有用である。
【0076】
他の実施形態においては、非分解性のROワイヤは、低い弾性率と大きな弾性歪みに対する高い降伏応力を備えた弾性特性を有する金属から作成されてよく、かくしてコバルト合金およびニチノールのようにステントの再吸収性骨格として作用することができる(図2;102)。したがって、開示された種々の実施形態において、非分解性のROワイヤは編組構造体において、例えば非分解性のROワイヤが「十字交差」仕様で配置された場合に、放射線不透過性の役割を提供すると共に所定の機械的特性を提供してよい。
【0077】
種々の実施形態において、非分解性のROワイヤはまた、ニッケル-チタン(NiTiまたはニチノール)のような形状記憶合金から作成されてよい。この場合、この合金の大きな弾性に基づいて、および/または材料の熱記憶を活用することにより、より大きな変形、歪みを達成可能であってよい。ニチノールワイヤは、編組構造体に対して付加的な機械的支持をもたらすために使用されてよい。
【0078】
ある種の実施形態においては、ニチノールワイヤはまた、ニチノールコンポジットを生成することによって視認性を向上させるために、コアワイヤを含んでいてよい。1つの特定的な実施形態においては、NiTiDFT登録商標ワイヤ(フォートウェインメタルズ社、インディアナ州)が使用されてよく、これは限定するものではないが、金、白金、タンタルのような最も一般的に使用されているROマーカー材料、および前述した放射線不透過性粉末/不透過剤などの放射線不透過性材料を組み入れており、その結果として他のRO材料はコア材料の10%から40%を構成してよい。この場合、ニチノールコンポジットは編組構造体に対して視認性と機械的支持の両者をもたらし、かくしてHSEBSが自己拡張をもたらすのを助けてよい。
【0079】
HSEBSの種々の実施形態の構造体を構成してよい非分解性の金属性材料は化学的に相互に非類似であり、生体適合性金属の腐食またはガルバニック腐食が導かれる場合がある。ガルバニック腐食は電解質の存在下に2つの異なる金属が接触する場合に生ずる。電解質は、血液を含めてすべての体液中において見出され、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、およびマグネシウム塩を含んでいてよい。ガルバニック腐食が生ずると、2つの金属が接触する点およびその付近において腐食が生ずる。HSEBSはこうした接触点を複数有している。
【0080】
したがって、HSEBS構造体を構成することのできる異種金属のガルバニック効果を低減または排除するために、ポリイミド(PI)のような絶縁を行う誘電性の永続的な(すなわち非生分解性の)ポリマーコーティングが、ROワイヤに適用されてよい。PI、イミドモノマーは、非分解性の金属性ワイヤを絶縁するために適用してよい。
【0081】
種々の実施形態において、ポリマーは非常に高い温度に耐えることのできる、ポリイミドおよびフッ素ポリマー(例えば、MoldflonのPTFEおよびPFA)を含む、誘電性の絶縁材料から作成してよい。これらのポリマーは、使用されている金属、デバイスが使用される用途および箇所、並びに材料が最終的にどのように処理されるか、例えば編組され、アニーリングされ、および/または熱処理されるなどに基づいて選択することができる。
【0082】
生体適合性金属製の、Mgベースの基材の早期の分解を防止するために、生分解性のポリマーが使用されてよい。所定の生分解性のポリマーコーティングを使用してMgを基材とするステントの分解を調節および遅速させることは当業者に公知であり、また科学文献に報告されている。
【0083】
種々の実施形態において、コンフォーマルな生分解性のポリマー(CBP)がHSEBSに対して適用されてよく、ワイヤを交点において結合してワイヤの滑りが防止される。CBPコーティングはステントの表面に付着する。CBPコーティングはまたワイヤ末端が変形するのを防止してよく、また編組ステントの拘束が解かれた場合に均一な拡張が達成されるのを可能にしてよい(図10)。可塑剤を含有しないCBPでコーティングされたステントを示している、図10の左側のイメージには点線が入っているが、これは幾つかの交点において離脱し、その結果として他のワイヤに対して滑ったワイヤの元の位置を示している(変位が矢印によって示されている)。他方、図10の右側のイメージにおけるステントのワイヤは、可塑剤を含有するCBPでコーティングされており、交点において離脱していない。かくして、特に図10に示されたような開放末端構成のステントにおいて、可塑剤はワイヤの変形を阻止するのを助け、またワイヤが交点において離脱するのを阻止するのを助ける。
【0084】
幾つかの実施形態においては、こうした用途に適したコンフォーマルで生分解性のポリマーには、限定するものではないが:ポリ(L-ラクチド)またはPLLA;ポリ(DL-ラクチド)またはPLA;ポリ(L-ラクチド-コ-D、L-ラクチド);またはポリグリコリドまたはPGA;ポリ(カプロラクトン)並びにポリ(ラクチド-コ-グリコリド)のようなこれらのコポリマーが含まれる。種々の実施形態において、生分解性のポリマーはまた、ここで参照することによりその全体を本願に取り入れる米国特許第9849008号に開示されたような、薬剤溶出成分を含んでいてよい。幾つかの実施形態においては、生分解性のポリマーは増殖抑制剤含有コーティングを含有していてよく、またはそれでコーティングされていてよいが、それはリムス系(すなわちラパマイシンまたはその誘導体)薬剤またはタキサン系薬剤を含んでいてよい。
【0085】
ある種の実施形態においては、ポリマーのコンフォーマル特性は任意選択的に、生体適合性の可塑剤を使用することで変性してよい。適切な可塑剤には、限定するものではないが:クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、またはクエン酸トリ(2-エチルヘキシル)のようなクエン酸アルキルエステルが含まれる。
【0086】
特定的な実施形態においては、コンフォーマルな生分解性のポリマーは、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)およびアセチルクエン酸トリ-n-ブチル(ATBC)可塑剤を含んでいてよい。幾つかの実施形態においては、可塑剤を含むポリマーは、留置の間にステントが弾性的に回復するのを助けてよい。可塑剤を生分解性のポリマーに添加することは、コンフォーマルコーティングにより多くの弾性を与え、ステント/PPSの使用サイクルの間にコーティングが剥離および断裂するリスクを低減する。さらにまた、生分解性ポリマー可塑剤は、ステントが拘束された状態から回復された状態へと弾性的に復元するのを助ける。
【0087】
本開示は、埋設可能な医療用デバイスの技術分野の当業者が、例えば商業的に入手可能なプログラム可能な編組機(ブレイダー)を使用して、所望とされるワイヤの数、編組パターン、および角度でもって、開示されたデバイス(HSEBS)の1つまたはより多くの実施形態を生成することを可能にするために十分な詳細を提供している。
【0088】
1つの実施形態においては、HSEBSは、マグネシウム合金の放射線不透過性コンポジットワイヤのような生分解性の金属性ワイヤ、またはTaのような遷移金属から作成された非分解性のROワイヤを含んでいてよく、これらはPIによるなどして永続性のコーティングで誘電的に被覆され、向上した視認性を有するデバイスが提供され、またこれはPLGAのようなコンフォーマルな生分解性のポリマーコーティングによって被覆される。
【0089】
好ましい実施形態においては、プログラム可能なピック数、編組長さ、および編組速度を有する自動化された編組システムが使用されてよく、例えば、より大きな可撓性、剛性、キンク(ねじれ)抵抗、良好なトルク応答、および半径方向/フープ強度を有する編組構造を製造することを可能にする。
【0090】
好ましい編組構造体は、水平方向に置かれたボビンからワイヤを巻き出すように構成されたキャリアを用いており、最も張力の影響を受けやすい材料であっても回転したりねじれたりすることなく編組されることを可能にする。しかしながら、所望とする編組チューブ構造体を達成するためには、他の編組/織成方法も使用可能である。
【0091】
好ましくは、HSEBSは上に1本、下に1本(1×1)のパターンで交絡され、単一のマンドレルの周囲に時計回りおよび反時計回りの態様において生分解性で且つ非分解性の複数のワイヤを巻回することによって、編組チューブが生成される。とはいえ、種々の実施形態においては、編組チューブのために他のパターンも使用されてよい。
【0092】
マンドレルのサイズ、編組チューブ構造体あたりのワイヤ数、ワイヤの直径および性質、および編組角度はまた、弾性回復、フープ強度、および/または半径方向強度のような編組挙動に影響を与える要因であり、好ましい編組チューブ構造体が単一のマンドレル上で1×1のパターンでもって連続的な長さで生成される。
【0093】
好ましい実施形態においては、編組チューブ構造体は24本のワイヤで作成されてよい。24本ワイヤの管状構造体は、好ましいワイヤおよび編組マンドレルのサイズ並びに目標とする編組角度について、構造的な安定性を維持する。24本ワイヤの編組チューブ構造体は好ましいHSEBS実施形態について、Mgワイヤの交点における変形を最小限にする。
【0094】
好ましい実施形態において、生体吸収性マグネシウム(Mg)ワイヤは希土類元素を含む、または含まない材料と合金化され、0.1mmから0.2mmの範囲にある外径を有する。
【0095】
例えば、希土類元素を含有するMgワイヤは重量濃度(%w/w)で80から90%のマグネシウムを含んでいてよく、また10%w/wを超えるジスプロシウムのような希土類材料と合金化されていてよく、Mgワイヤにより高い強度を与え、またネオジム、亜鉛、およびジルコニウムのような他の合金化元素を0.1-5%の範囲にある配合%w/wで含んでいてよい。別の例は希土類材料を含まず95%を超えるマグネシウムを含有するMgワイヤであり、また亜鉛、マンガン、およびジルコニウムのような他の合金化元素が0.1%から5%の重量濃度範囲で含まれる。
【0096】
編組チューブ構造体はワイヤが交差する点においてマンドレル/ステントの長手方向軸に沿って少なくとも50°の編組角度を有し、すなわち編組角度とは交差するワイヤとチューブの長軸に平行な線との間の角度である(図6の角度α参照)。ある種の好ましい実施形態において、編組角度は60°と65°の間にある。
【0097】
編組構造体の生分解性のワイヤは生分解性マグネシウム合金の放射線不透過性コンポジットワイヤを含んでいてよく、これは非コンポジットマグネシウムワイヤの外径に類似した外径を有し(例えば、0.1mmから0.2mmの範囲にある)、ここでマグネシウム合金の放射線不透過性コンポジットワイヤのROコアは、ワイヤの直径の10から40%を構成する。
【0098】
これと対比して、非分解性のROワイヤの直径は、編組チューブに含まれている場合一般に、生分解性のワイヤの直径よりも小さい。
【0099】
種々の実施形態において、非分解性のROワイヤの直径は、マグネシウム合金ワイヤの直径よりも25%から40%小さくてよいが、これは1つには非分解性のROワイヤの機械的特性を補償するためであり、また1つには編組チューブのねじれを避けるためである。
【0100】
幾つかの実施形態においては、HSEBSの視認性または放射線不透過性を増大させるために、非分解性のROワイヤとしてタンタル(Ta)ワイヤが使用されてよく、一般には放射線透過性の生体適合性金属の編組ステントが、透視撮像による案内の下で視認可能とされる。しかしながら、金、イリジウム、鉄合金、白金、白金族の元素、銀、チタン、タンタル、タングステンなどの、生体適合性であり且つ放射線不透過性であると考えられる他の材料も使用することができる。
【0101】
Taワイヤは一般に、HSEBSの好ましい実施形態の編組チューブ構造体を製造するのに使用される生分解性のMgワイヤよりも強度がある(Mg合金の生分解性ワイヤについてUTSは~60ksiであるのに対し、Taワイヤについては~250ksiである)。弾性率はTaの方が高く(~21Mpsiに対して~5Mpsi)、所与の直径において(例えば、Taについて100μm、Mgについて150μm)、曲げ剛性はほぼ等しい。
【0102】
好ましい実施形態についてROワイヤと生分解性のワイヤの比は24本ワイヤ構成において1:11を超えるべきではないが、その理由はコンポジットの非分解性ワイヤが使用されるのでなければ、これが編組チューブの殆ど(>90%)が生体吸収性であることを意味するからであり、コンポジットの非分解性ワイヤが使用される場合には24本ワイヤの編組構造体について、1:5のワイヤ比が使用されてよい。
【0103】
好ましい実施形態において、HSEBSの非分解性ROワイヤ成分はポリイミド(PI)のような誘電性の絶縁永続性ポリマーコーティングでコーティングされて、非分解性の金属性ワイヤが絶縁され、それによって編組ステントを構成する異種金属の間におけるガルバニック腐食が防止される。
【0104】
好ましい実施形態においてはPIが使用されるが、その理由はPIモノマーが優れた誘電的絶縁性および機械的特性並びに化学的不活性さを提供するからである。他のフッ素ポリマーなどと比較して、PIは複数の薄層で適用して基材の接合性を改善することができる。PIはまた、揮発性物質の生成を最小限としつつ、最大240℃(464°F)での連続使用および400℃(752°F)までの短時間暴露抵抗といった、非常に高い温度に耐えることができる。
【0105】
ハイブリッド編組チューブ構造体は、短いセグメントへと切断して、HSEBSを製造してよい。安定性を得るために、編組チューブは一般に、ワイヤがマンドレル上で長軸に沿って少なくとも完全に1回転(360°)を終えた箇所においてステントへと切断され、ワイヤ端部がほつれる可能性が低減される。
【0106】
好ましくは、ハイブリッドチューブは最初の切断を受けて長いハイブリッドチューブから短めの編組セグメントが生成され、続いて仕上げ切断が行われてステントにほぼ一様な端部長さが生じ、ワイヤが変形するリスクが低減されまたステントの対称性および均一性が改善される。
【0107】
好ましい実施形態においては、生分解性のポリマーはポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)およびアセチルクエン酸トリ-n-ブチル(ATBC)可塑剤を含む。前述したように、CBPコーティングはワイヤの変形および移動を防止し、また編組ステントが非拘束状態になったときに均一な拡張を達成することを可能にする復元力を提供する。それはまたステントの留置の間にステントが弾性的に復元するのを助ける。
【0108】
好ましいポリマーは、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)Resomer登録商標RG858S(メルク社、ダルムシュタット、ドイツ)であり、これは軟質のアモルファス材料であって、比較的速い分解速度を有する(例えば<9ヶ月)。ATBC可塑剤は低揮発性の化合物であって、良好な可塑化効果を有する。これは安全な可塑剤であって、医療用製品の製造を含む多くの産業において用いられている。
【0109】
種々の実施形態において、可塑剤を含む、または含まないCBPコーティングは、ステントの幾つかまたは全部に対して均等に適用されてよく、その結果としてステントを被覆する少なくとも5マイクロメートルのほぼ均一な厚さを有するコーティングが得られる。しかしながら種々の実施形態において、生分解性金属の分解を促進するため、または逆に機械的特性の寿命を延長するために、CBPコーティングの厚さは10マイクロメートルに満たないおよび/または超える厚さで適用されてよい。CBPコーティングは、層を噴霧することにより、および/または編組ステントを浸漬コーティングすることにより適用可能であり、コンフォーマルなコーティングが生成される。
【0110】
加えて、CBPコーティングは各ステントセグメントの縁部または端部において、個別のポリマーリング(図11)を形成してワイヤ端部の開放末端を完全に包埋するために、可塑剤を含んでまたは含まずに、より厚い層で適用することができる。ポリマーリングをステントセグメントの端部において形成することは、浸漬、噴霧、および/またはポリマー溶液でステントの縁部上にリングを1回またはより多く塗布すること、および/またはより高い濃度のポリマー溶液(例えば、2倍)を用いてステントの縁部にポリマーを適用することなどの、幾つもの手順によって達成することができる。
【0111】
ポリマーリングはステントを保護し、そして特に編組ステントのワイヤ端部を包埋することによって、ステントの装填および留置の間にワイヤ端部が変形しないようにステントの端部を保護する。ステントのHSEBSの両端(または両縁部)においては、より厚い層を適用してよく、それは種々の実施形態において、縁部の各々でステントの全長の5%から40%、そして好ましくは縁部の各々でステントの全長の10から20%を被覆してよい。他の実施形態においては、個別のポリマーリング-ステントの50%まで-を適用して編組ハイブリッドステントのワイヤ端部を固定/懸下し、ワイヤ端部の屈曲および歪みを防止してよい(図11)。
【0112】
さらに他の実施形態においては、開示された生分解性ステントは生分解性のワイヤのみを使用して(すなわち、ROワイヤをステントに編組せずに)作成してよく、その場合には非分解性の金属性バンド(図8および図9)を使用して対をなすワイヤ端部を接合して閉じた端部を生成してよいが、これはステントに対して構造的安定性をもたらすと共に、放射線不透過性をも提供する。対をなすワイヤ端部を接合するための方法は、当業者には公知である。1つの実施形態においては、例えば番号の参照によって全体を本願に取り入れるWO2018/145029A1に記載されているように、ワイヤの対は例えば放射線不透過性のカフによって接合してよい。
【0113】
他の実施形態においては、HSEBSは粘度の高いCBPコーティングで全体を被覆/コーティングして、ステント全体を取り囲む移植片状の被覆を生成してよい。この場合に「粘度の高い」コーティングという用語は、編組チューブの全体および交点におけるワイヤの間の領域/小室を覆ってスリーブ状または移植片状の被覆を生成する、比較的低いヤング率を有する弾性特性を備えたコーティングを意味している(図11)。
【0114】
これらのスリーブ状のコーティングは、少なくとも1つの生分解性のポリマーまたは生分解性のコポリマーまたはこれらの混合物からなっている。好ましい実施形態において、生分解性のポリマーは、0.5から2.5dl/gの間の、そして好ましくは1から2dl/gの間の比較的高い固有粘度を有する、ポリ乳酸-グリコール酸のコポリマー(PLGA)である。
【0115】
コーティングは任意選択的に、コーティングの弾性特性を向上させるために使用される少なくとも1つの添加剤を含有することができ、この添加剤はコーティングの重量の1%から50%、そして好ましくはコーティングの重量の5%から15%の質量比を有する。
【0116】
幾つかの実施形態においては、添加剤はバイオベースの可塑剤であってよいが、これは生分解性の可塑剤および/または人体の細胞によって代謝可能な可塑剤を意味している。さらに他の実施形態においては、添加剤はクエン酸アルキルエステル類から選択され、これには限定するものではないが、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリ(2-エチルヘキシル)、アセチルクエン酸トリオクチル、クエン酸トリヘキシルが含まれる。
【0117】
この種のコーティングは種々の方法によって適用することができ、それには浸漬、噴霧、および刷毛塗りが含まれる。好ましくは、スリーブ状のコーティングはステントに対し、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシドのような適切な溶媒中におけるコーティング材料の濃縮溶液を使用する、自動化された浸漬方法で適用される。スリーブ状のコーティングは、ポリマーが2から12重量%の間(すなわち高い粘度)、好ましくは4から6重量%の間で含有され、重量のバランスが溶媒である溶液を使用する浸漬方法によって達成可能である。
【0118】
種々の実施形態において、編組パターンは2×2(上に2本、下に2本)であってよく(図8)、そして種々の他の実施形態においては、他の適切な編組パターンが使用されてよい。さらにまた、ある種の実施形態においては、編組チューブは水平編組機または垂直編機のいずれかを使用して、任意の標準的な編組機上で作成してよい。
【0119】
編組構造体はまた一般に、4本のワイヤの任意の倍数を使用して製造することができ、最も一般的な構成は、種々の商業的に入手可能な編組機を使用して8本、12本、16本、24本、32本、48本、64本、72本、96本、144本、そして288本までのワイヤである。一般的に、ワイヤの全数の半分が1つの方向に巻回され、残りの半分が反対方向に巻回されて、交差する編組パターンが生成される。1つの特定的な実施形態においては、好ましいワイヤの数は24であり、ここで24本のワイヤの管状構成は、好ましいワイヤおよび編組マンドレルの大きさ並びに目標とする編組角度に関してHSEBSの安定性を維持し、そして交点におけるワイヤの変形を最小限にする。
【0120】
他の用途および/または実施形態について、ワイヤの外径は0.1mmから0.2mmの範囲にあってよい;しかしながら種々の実施形態において、生分解性金属の種類、目標とする編組角度、および編組チューブを生成するのに必要なワイヤの数に応じて、外径は0.01mmから1.0mmの範囲にあってよい。さらにまた、ステントまたは他の埋込み型デバイスのサイズおよびその意図する目標(例えば大きな血管またはより小さな動脈)といった他の要因もまた、使用されるワイヤの直径を決定するのに役立ち、大きな埋設型構造は直径の大きなワイヤを使用し、より小さな構造体は直径のより小さなワイヤを使用する。
【0121】
種々の実施形態において、ワイヤおよびマンドレルのサイズ/直径、並びに編組チューブあたりのワイヤの数は、編組角度に影響を及ぼしてよいが、しかし一般的に、角度は30°以上であるべきである。幾つかの実施形態においては、編組角度は24本のワイヤを有する編組構造体について、60°から65°の間であってよい。特定的な実施形態においては、32本以上のワイヤを有する編組構造体についての編組角度は少なくとも50°であってよい。
【0122】
種々の実施形態において、ROワイヤはHSEBSの視認性を向上させるために使用されてよく、大部分が透明な生体適合性金属の編組ステントが透視撮像による案内の下に見えるようになることを可能にする。説明してきたように、他の生体適合性材料および放射線不透過化粉末を使用して、マグネシウム合金放射線不透過性コンポジットまたは非分解性の放射線不透過性ワイヤのいずれかを生成してよい。
【0123】
特定的な実施形態においては、永続的にコーティングされた非分解性の金属性ワイヤと生分解性の生体適合性金属のワイヤの比率および/または配置は、編組チューブを生成するのに必要なワイヤの合計数の1:1を超えなくてよい。ある種の実施形態においては、非分解性ワイヤと分解性のワイヤの比率は低くて1:1であることができ、または高くて1:5、1:11、1:71または他の中間的な比率であることができる。24本ワイヤの編組構造体についての1つの特定的な実施形態において、この比率は1:11を超えなくてよいが、これはコンポジットワイヤが使用されない限り、編組構造体の殆ど(>90%)が吸収可能だからである。他の実施形態においては、コンポジットワイヤと生分解性の金属性ワイヤの比率は24本ワイヤの編組構造体において1:5であってよく、また288本ワイヤの編組体について1:71以上であってよい。
【0124】
他の実施形態においては、ハイブリッド編組チューブは、説明したような好ましい実施形態と同様の切断工程を経てよい(すなわち、最初の粗切断および続いてのワイヤ端部をトリミングする第2の切断)。
【0125】
ハイブリッドチューブはまた、ハイブリッドチューブの短めのセグメントを切り離す最初の切断、およびワイヤがマンドレルの長軸に沿って追加的に4分の1回転を完了した時点での第2の切断を受けてよい(図7Aおよび図7Bにおける要素(a))。次いで、対をなすワイヤ端部が分けられて相互に平行に整列され、ポリマーカフで固定されてよい(図7Aおよび図8)。端部ワイヤの対のそれぞれがカフ20で接続されたならば、カフ固定された端部から突出しているワイヤ端部はトリミングして(図7A)、端部が閉じたステントが形成されてよい。
【0126】
代替的には、ハイブリッドチューブはまたハイブリッドチューブの短めのセグメントを切り離す最初の切断、およびワイヤがマンドレルの長軸に沿って追加的に4分の1回転を完了した時点での第2の切断を受けてよい(図7Aおよび図7Bにおける要素(a))。次いで、対をなすワイヤ端部はループを形成するようにステントの長手方向軸に対してほぼ垂直に相互に平行に整列され、ポリマーカフ20で固定される(図7B及び図9)。
【0127】
かくして、上記においては本発明を特に好ましい実施形態および例に関連して説明してきたが、本発明は必ずしもそのように限定されるものではなく、数多くの他の実施形態、例、使用、修正、およびこうした実施形態、例および使用の派生物が、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。


図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込み型デバイスであって:
一緒に編組された複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤを含むチューブを含み、
チューブは拡張状態において、可撓性でコンフォーマルな生分解性のポリマーでコーティングされており、圧縮され圧縮が解除されると、可撓性でコンフォーマルな生分解性のポリマーでコーティングされたチューブは拡張状態へと自己拡張し、
チューブはさらに1またはより多くの放射線不透過性ワイヤを含み、チューブに対して放射線不透過性をもたらす、埋込み型デバイス。
【請求項2】
1またはより多くの放射線不透過性ワイヤの少なくとも1つはコンポジットワイヤを含む、請求項の埋込み型デバイス。
【請求項3】
1またはより多くの放射線不透過性ワイヤの少なくとも1つはマグネシウム合金の放射線不透過性コンポジットワイヤを含む、請求項の埋込み型デバイス。
【請求項4】
1またはより多くの放射線不透過性ワイヤは1またはより多くの非分解性の放射線不透過性ワイヤを含む、請求項の埋込み型デバイス。
【請求項5】
1またはより多くの非分解性の放射線不透過性ワイヤは生体適合性のある放射線不透過性金属を含む、請求項の埋込み型デバイス。
【請求項6】
1またはより多くの非分解性の放射線不透過性ワイヤの直径は、複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤの各々の直径よりも25%から40%小さい、請求項の埋込み型デバイス。
【請求項7】
生体適合性の放射線不透過性金属は、金、白金、タンタル、イリジウム、鉄、またはタングステンの1つを少なくとも含む、請求項の埋込み型デバイス。
【請求項8】
1またはより多くの非分解性の放射線不透過性ワイヤは永続性のポリマーコーティングでコーティングされていてガルバニック腐食を阻止する、請求項の埋込み型デバイス。
【請求項9】
永続性のポリマーコーティングは誘電性の絶縁材料を含む、請求項の埋込み型デバイス。
【請求項10】
永続性のポリマーコーティングはポリイミドまたはフッ素ポリマーの少なくとも1つを含む、請求項の埋込み型デバイス。
【請求項11】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤは少なくとも80%w/wのマグネシウムを含有する、請求項1から10のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項12】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤは少なくとも90%w/wのマグネシウムと亜鉛、カルシウム、またはマンガンの少なくとも1つを含むマグネシウム合金を含む、請求項1から10のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項13】
複数の生分解性の生体適合性金属のワイヤはさらにアルカリ金属、遷移金属、または希土類金属の少なくとも1つを含む、請求項1から10のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項14】
チューブは少なくとも2つのセグメントに切断されており、チューブの少なくとも2つのセグメントの各々において、ワイヤの各々はチューブの長軸の周囲に少なくとも完全な1回転を完了している、請求項1から10のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項15】
可撓性で生分解性のポリマーはコンフォーマルコーティングを含む、請求項1から10のいずれか1の埋込み型デバイス。
【請求項16】
可撓性で生分解性のポリマーは複数のワイヤ交点においてチューブのワイヤを一緒に結合してワイヤ相互の間での滑り運動を阻止する、請求項15の埋込み型デバイス。
【請求項17】
可撓性で生分解性のポリマーはさらに少なくとも:ポリ(L-ラクチド)(PLLA);ポリ(DL-ラクチド)(PLA);ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド);ポリグリコリド(PGA);ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド);またはポリ(カプロラクトン)の1つを含む、請求項15の埋込み型デバイス。
【請求項18】
可撓性で生分解性のポリマーはさらに、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、またはクエン酸トリ(2-エチルヘキシル)を含む少なくとも1つのクエン酸アルキルエステル生体適合性可塑剤を含む、請求項15の埋込み型デバイス。
【請求項19】
可撓性で生分解性のポリマーは、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)およびアセチルクエン酸トリ-n-ブチル(ATBC)可塑剤を含むコンフォーマルポリマーを含む、請求項15の埋込み型デバイス。
【請求項20】
可撓性で生分解性のポリマーはさらに、増殖抑制剤または増殖抑制剤含有コーティングを含む、請求項15の埋込み型デバイス。
【国際調査報告】