(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール及び中間体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 231/06 20060101AFI20230516BHJP
C07B 57/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C07D231/06 B
C07B57/00 380
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561173
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 CA2021050459
(87)【国際公開番号】W WO2021203195
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522377114
【氏名又は名称】インバースアゴ・ファーマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・グリーン
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ミックス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント・ブルネット
(72)【発明者】
【氏名】ガレス・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ドラゼン・パヴロヴィク
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC83
4H006AD15
4H006BB14
4H006BB21
(57)【要約】
(S)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール環を含む化合物の製造のための方法が記載される。これらの方法は、選択されたキラル分割剤を用いた中間体のキラル分割工程を含む。例えば、上記キラル分割剤は、(-)-キニーネ、(R)-フェネチルアミン、(S)-フェネチルアミン、(S)-1-ナフチルエチルアミン、(R)-(-)-2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、(-)-シンコニジン、(-)-スパルテイン、(R)-1-ナフチルエチルアミン、D-アルギニン、L-リジン、(S)-(+)-2-ピロリジンメタノール、及び(1R,2S)-(+)-シス-1-アミノ-2-インダノールから選択しうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エナンチオ濃縮された化合物を製造する方法であって、下記の工程:
(a)下記式Iの化合物:
【化1】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、任意選択により置換されていてもよいアルキル、任意選択により置換されていてもよいシクロアルキル、任意選択により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、任意選択により置換されていてもよいアルコキシ、アミノ、任意選択により置換されていてもよいスルホニル、任意選択により置換されていてもよいアリール、任意選択により置換されていてもよいヘテロアリール、任意選択により置換されていてもよいカルボキシル、アシル、任意選択により置換されていてもよいアルケニル、任意選択により置換されていてもよいアルキニル、任意選択により置換されていてもよいホスホニル、任意選択により置換されていてもよいホスフィニル、任意選択により置換されていてもよいボロン酸エステル、任意選択により置換されていてもよいシリル、及びイミノから選択され;
a、b、及びcは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4又は5であり;
前記式Iの化合物は、(
*)の炭素原子(C
*)におけるR異性体及びS異性体の混合物を含み、C
*に結合した第四の原子は、水素又はその同位体(例えば、重水素)である)
の化合物又はその互変異性体を用意する工程;
(b)前記式Iの化合物を溶媒に溶かして、溶液を得る工程;
(c)(-)-キニーネ、(R)-フェネチルアミン、(S)-フェネチルアミン、(S)-1-ナフチルエチルアミン、(R)-(-)-2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、(-)-シンコニジン、(-)-スパルテイン、(R)-1-ナフチルエチルアミン、D-アルギニン、L-リジン、(S)-(+)-2-ピロリジンメタノール、及び(1R,2S)-(+)-シス-1-アミノ-2-インダノールから選択されるキラル分割剤を前記溶液に溶かして、沈殿物及び上澄みを形成させる工程;並びに
(d)前記沈殿物を前記上澄みから分離する工程であって、前記沈殿物又は前記上澄みのうち一つが、前記式Iの化合物のR-エナンチオマーに比べてより高い濃度のS-エナンチオマーを含有する、エナンチオ濃縮された化合物を含有する工程を含み、
工程(b)及び工程(c)を同時に又は順次行う、方法。
【請求項2】
前記溶媒が、非プロトン性有機溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非プロトン性有機溶媒が、アセトニトリルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が、1個~4個の炭素原子を有するアルコール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルコールが、エタノール、イソプロパノール、及びそれらの組み合わせから選択され、好ましくは前記アルコールが、イソプロパノールである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、10%以下、若しくは5%以下の濃度で水を更に含むか、又は前記溶媒が無水である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記式Iの化合物が、工程(b)において、溶媒1リットル当たり約50g~約150gの間、又は約75g~約120gの間、又は約85g~約115gの間の濃度である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)が、前記式Iの化合物に対して約0.5モル当量~約1モル当量の間、又は約0.55モル当量~約0.75モル当量の間、又は約0.6モル当量~約0.7モル当量の間、又は約0.65モル当量の前記キラル分割剤を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記キラル分割剤が、(-)-キニーネ、(R)-フェネチルアミン、(S)-フェネチルアミン、(S)-1-ナフチルエチルアミン、及び(R)-(-)-2-アミノ-3-メチル-1-ブタノールから選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記キラル分割剤が、(-)-キニーネである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記上澄みを処理して、前記式Iの化合物の(S)異性体が濃縮された固形物を得る工程を更に含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記処理する工程が、前記溶媒の少なくとも部分的な蒸発によって前記上澄みを濃縮することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理する工程が、酸性水溶液を前記上澄みに添加することを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記酸性水溶液が、0~1の範囲内に含まれるpH、好ましくは約0のpHを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
溶液の全体積に対する前記酸性水溶液の体積比が、4%~20%の間である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記酸性水溶液が、約0のpHを有し、溶液の全体積に対する前記酸性水溶液の体積比が、10%~16%の間、又は12%~14%の間である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記固形物を前記上澄みから分離する工程を更に含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記キラル分割剤が、(-)-シンコニジン、(-)-スパルテイン、(R)-1-ナフチルエチルアミン、D-アルギニン、L-リジン、(S)-(+)-2-ピロリジンメタノール、及び(1R,2S)-(+)-シス-1-アミノ-2-インダノールから選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記キラル分割剤が(-)-スパルテインである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記沈殿物を再結晶することを更に含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記式Iの化合物の(S)異性体を前記キラル分割剤から分離する工程を更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記分離する工程が、酸(例えば、塩酸)を添加することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記式Iの化合物の(R)異性体を回収し、前記(R)異性体を少なくとも部分的にラセミ化して上記式Iの化合物を得て、前記化合物を工程(a)~(d)によって更に処理することを更に含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
aが0であってR
1が存在せず、R
2及びR
3がそれぞれ独立してハロゲン化アルキル及びハロゲンから選択され、好ましくはb及びcがそれぞれ1である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物が、式I(a)若しくは式I(b):
【化2】
の化合物、又はその互変異性体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
下記式III:
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、a、b、及びcは、請求項1に規定されたとおりであり、
R
4は、H、任意選択により置換されていてもよいアルキル、任意選択により置換されていてもよいシクロアルキル、任意選択により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、任意選択により置換されていてもよいアルコキシ、アミノ、任意選択により置換されていてもよいスルホニル、任意選択により置換されていてもよいアリール、任意選択により置換されていてもよいヘテロアリール、任意選択により置換されていてもよいカルボキシル、アシル、任意選択により置換されていてもよいアルケニル、任意選択により置換されていてもよいアルキニル、任意選択により置換されていてもよいホスホニル、任意選択により置換されていてもよいホスフィニル、任意選択により置換されていてもよいボロン酸エステル、任意選択により置換されていてもよいシリル、及びイミノから選択され;かつ
R
5は、任意選択により置換されていてもよいアルキル、任意選択により置換されていてもよいシクロアルキル、任意選択により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、任意選択により置換されていてもよいアルコキシ、アミノ、任意選択により置換されていてもよいアルキルC(O)NH、任意選択により置換されていてもよいスルホニル、任意選択により置換されていてもよいアリール、任意選択により置換されていてもよいヘテロアリール、任意選択により置換されていてもよいカルボキシル、アシル、任意選択により置換されていてもよいアルケニル、任意選択により置換されていてもよいアルキニル、任意選択により置換されていてもよいホスホニル、任意選択により置換されていてもよいホスフィニル、任意選択により置換されていてもよいボロン酸エステル、任意選択により置換されていてもよいシリル、及びイミノから選択され;
キラル炭素に結合した第四の原子は、水素又はその同位体(例えば、重水素)である)
の化合物、又はその互変異性体を製造する方法であって、
(i)請求項1から23のいずれか一項に規定される方法に従って式II:
【化4】
の化合物を調製する工程;及び
(ii)前記式IIの化合物を前記式IIIの化合物に変換する工程を含む、方法。
【請求項27】
工程(ii)が、以下の工程:
(ii-a)前記式IIの化合物を塩素化剤(例えば、POCl
3)と反応させて、下記式IV:
【化5】
の化合物を製造する工程;及び
(ii-b)前記式IVの化合物を下記式V:
【化6】
の化合物又はその塩と反応させて、前記式IIIの化合物を製造する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記工程(ii-a)が、塩基(例えば、2,6-ルチジン)を更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
工程(ii-b)が、塩基(例えば、DBU、K
2HPO
4)を更に含む、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
aが0であってR
1が存在せず、R
2及びR
3がそれぞれ独立してハロゲン化アルキル及びハロゲンから選択され、好ましくはb及びcがそれぞれ1である、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記式IIIの化合物が、以下の化合物:
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
又はその互変異性体から選択される、請求項26から30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年4月7日に出願された米国仮出願第63/006,311号に対して適用法の下で優先権を主張し、その内容が、実際には全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は一般的に、エナンチオ濃縮された(enantiomerically enriched)置換された4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール類及びその中間体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カンナビノイドCB1受容体の活性化は、食欲を増進させ、脂質の生合成及び貯蔵を促進し、インスリン及びレプチンの作用を阻害し、炎症及び線維症を促進することが一般的に知られている。従って、メタボリック症候群と呼ばれる、それらと関連する肥満及び代謝異常の潜在的な治療として、CB1受容体阻害剤の開発に関する研究が注目された。リモナバン(Rimonabant)は、メタボリック症候群の治療において有効であることが示されたが、神経精神医学的な(即ち、CNSに関連する)副作用を引き起こし、市場から撤退することとなった。
【0004】
末梢組織(例えば、脂肪組織、肝臓、筋肉、肺、腎臓、マクロファージ、膵臓β細胞、及び消化管)において上記CB1受容体を優先的に標的とし、一方、脳細胞においてはCB1受容体に影響せず、それによりCNSに関連する副作用を回避又は低減する化合物がGeorge Kunosらにより米国特許第9,765,031号明細書に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第9,765,031号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/059264号
【特許文献3】国際公開第2014/018695号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S. M. Bergeら、J. Pharmaceutical Sciences, 66: 1-19 (1977)
【非特許文献2】調和国際会議(ICH),産業のための指針,Q3C不純物:残留溶媒(2017)
【非特許文献3】S. Shiomiら, Chem. Sci., 2019, 10, 9433
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
Kunosらの米国特許明細書に記載された化合物は全て、少なくとも1つのキラル中心を有する。最終化合物又は合成中間体のエナンチオマーの分離は、通常、キラルクロマトグラフィー(HPLC又はSFC)により行われる。そのような方法は、大規模な製造には非現実的であるか又は費用がかかりすぎるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の側面によれば、本技術は、エナンチオ濃縮された(enantiomerically enriched)化合物を調製する方法であって、以下の工程:
(a)下記式Iの化合物:
【化1】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、任意選択により置換されていてもよいアルキル、任意選択により置換されていてもよいシクロアルキル、任意選択により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、任意選択により置換されていてもよいアルコキシ、アミノ、任意選択により置換されていてもよいスルホニル、任意選択により置換されていてもよいアリール、任意選択により置換されていてもよいヘテロアリール、任意選択により置換されていてもよいカルボキシル、アシル、任意選択により置換されていてもよいアルケニル、任意選択により置換されていてもよいアルキニル、任意選択により置換されていてもよいホスホニル、任意選択により置換されていてもよいホスフィニル、任意選択により置換されていてもよいボロン酸エステル、任意選択により置換されていてもよいシリル、及びイミノから選択され;
a、b、及びcは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4又は5であり;
前記式Iの化合物は、(
*)を付した炭素原子(C
*)におけるR異性体及びS異性体の混合物を含み、C
*に結合した第四の原子は、水素又はその同位体(例えば、重水素)である)
又はその互変異性体を用意する工程;
(b)上記式Iの化合物を溶媒に溶解させて、溶液を得る工程;
(c)(-)-キニーネ、(R)-フェネチルアミン、(S)-フェネチルアミン、(S)-1-ナフチルエチルアミン、(R)-(-)-2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、(-)-シンコニジン、(-)-スパルテイン、(R)-1-ナフチルエチルアミン、D-アルギニン、L-リジン、(S)-(+)-2-ピロリジンメタノール、及び(1R,2S)-(+)-シス-1-アミノ-2-インダノールから選択されるキラル分割剤(光学分割剤)を上記溶液に溶解させて、沈殿物及び上澄みを形成させる工程;並びに
(d)上記沈殿物を上記上澄みから分離する工程であって、上記沈殿物又は上記上澄みのうち一つが、上記式Iの化合物のR-エナンチオマーに比べてより高い濃度のS-エナンチオマーを含有する、エナンチオ濃縮された化合物を含有する工程を含み、
工程(b)及び工程(c)を同時に又は順次行う、方法に関する。
【0009】
1つの実施形態において、上記溶媒は、非プロトン性有機溶媒、例えば、アセトニトリルである。代替的な実施形態において、上記溶媒は、1個~4個の炭素原子を有するアルコール、又はその組み合わせを含み、例えば、上記アルコールは、エタノール、イソプロパノール、及びそれらの組み合わせ(例えば、イソプロパノール)から選択される。1つの実施形態において、上記溶媒は、10%以下、若しくは5%以下の濃度で水を更に含有するか、又は上記溶媒は、無水である。
【0010】
別の実施形態において、上記式Iの化合物は、工程(b)における溶媒1リットル当たり約50g~約150gの間、又は約75g~約120gの間、又は約85g~約115gの間の濃度である。
【0011】
更なる実施形態において、工程(c)では、上記式Iの化合物に対して約0.5モル当量~約1モル当量の間、又は約0.55モル当量~約0.75モル当量の間、又は約0.6モル当量~約0.7モル当量の間、又は約0.65モル当量の前記キラル分割剤を含有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記キラル分割剤は、(-)-キニーネ、(R)-フェネチルアミン、(S)-フェネチルアミン、(S)-1-ナフチルエチルアミン、及び(R)-(-)-2-アミノ-3-メチル-1-ブタノールから選択され、好ましくは(-)-キニーネである。これらの実施形態において、上記の方法は、上澄みを処理して、式Iの化合物の(S)異性体が濃縮された(enriched)固形物を得る工程を更に含んでもよい。1つの実施形態において、上記の処理する工程は、溶媒の少なくとも部分的な蒸発によって上澄みを濃縮することを含む。別の実施形態において、上記の処理する工程は、酸性水溶液を上澄みに添加することを含み、例えば、酸性水溶液は、0~1の範囲内に含まれるpH、好ましくは約0のpHを有する。好ましい実施形態において、溶液の全体積に対する酸性水溶液の体積比は、4%~20%の間である。1つの実施形態において、酸性水溶液は、約0のpHを有し、溶液の全体積に対する酸性水溶液の体積比は、10%~16%の間、又は12%~14%の間である。上述した実施形態のいずれにおいても、上記の方法はまた、通常、上記の処理工程の後、固形物を上澄みから分離する工程をさらに含む。
【0013】
他の実施形態において、キラル分割剤は、(-)-シンコニジン、(-)-スパルテイン、(R)-1-ナフチルエチルアミン、D-アルギニン、L-リジン、(S)-(+)-2-ピロリジンメタノール、及び(1R,2S)-(+)-シス-1-アミノ-2-インダノールから選択され、例えば(-)-スパルテインである。これらの実施形態において、上記の方法は、沈殿物を再結晶する工程を更に含んでもよい。
【0014】
更なる実施形態において、上記の方法は、例えば、酸(例えば、塩酸)の添加により、式Iの化合物の(S)異性体をキラル分割剤から分離する工程を更に含む。
【0015】
更に別の実施形態において、上記の方法は、式Iの化合物の(R)異性体を回収し、前記(R)異性体を少なくとも部分的にラセミ化して式Iの化合物を得て、前記化合物を工程(a)~(d)によってさらに処理することを更に含む。
【0016】
本方法の更なる実施形態において、上記化合物は、式Iにおいて、aが0であり、R
1が存在せず、R
2及びR
3がそれぞれ独立してハロゲン化アルキル及びハロゲンから選択され、好ましくはb及びcがそれぞれ1である、式Iの化合物である。1つの実施形態において、上記化合物は、下記式I(a)若しくは式I(b):
【化2】
の化合物であるか、又はその互変異性体である。
【0017】
別の態様によれば、本技術は、下記式III:
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、a、b、及びcは、本明細書において規定されたとおりであり、
R
4は、H、任意選択により置換されていてもよいアルキル、任意選択により置換されていてもよいシクロアルキル、任意選択により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、任意選択により置換されていてもよいアルコキシ、アミノ、任意選択により置換されていてもよいスルホニル、任意選択により置換されていてもよいアリール、任意選択により置換されていてもよいヘテロアリール、任意選択により置換されていてもよいカルボキシル、アシル、任意選択により置換されていてもよいアルケニル、任意選択により置換されていてもよいアルキニル、任意選択により置換されていてもよいホスホニル、任意選択により置換されていてもよいホスフィニル、任意選択により置換されていてもよいボロン酸エステル、任意選択により置換されていてもよいシリル、及びイミノから選択され;かつ、
R
5は、任意選択により置換されていてもよいアルキル、任意選択により置換されていてもよいシクロアルキル、任意選択により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、任意選択により置換されていてもよいアルコキシ、アミノ、任意選択により置換されていてもよいアルキルC(O)NH、任意選択により置換されていてもよいスルホニル、任意選択により置換されていてもよいアリール、任意選択により置換されていてもよいヘテロアリール、任意選択により置換されていてもよいカルボキシル、アシル、任意選択により置換されていてもよいアルケニル、任意選択により置換されていてもよいアルキニル、任意選択により置換されていてもよいホスホニル、任意選択により置換されていてもよいホスフィニル、任意選択により置換されていてもよいボロン酸エステル、任意選択により置換されていてもよいシリル、及びイミノから選択され;
キラル炭素に結合した第四の原子は、水素又はその同位体(例えば、重水素)である)
の化合物、又はその互変異性体を調製する方法に関し、
その方法は、
(i)上で規定される方法に従って下記式II:
【化4】
の化合物を調製する工程;及び
(ii)上記式IIの化合物を上記式IIIの化合物に変換する工程、を含む。
【0018】
1つの実施形態において、工程(ii)は、
(ii-a)上記式IIの化合物を塩素化剤(例えば、POCl
3)と反応させて、下記式IV:
【化5】
の化合物を製造する工程、及び
(ii-b)上記式IVの化合物を下記式V:
【化6】
の化合物又はその塩と反応させて、上記式IIIの化合物を製造する工程を含む。
【0019】
1つの実施形態において、前記工程(ii-a)は、塩基(例えば、2,6-ルチジン)を更に含む。別の実施形態において、工程(ii-b)は、塩基(例えば、DBU、K2HPO4)を更に含む。更なる実施形態においては、aが0であり、且つR1が存在せず、R2及びR3がそれぞれ独立してハロゲン化アルキル及びハロゲンから選択され、好ましくはb及びcがそれぞれ1である。好ましい実施形態において、上記式IIIの化合物は、本明細書において規定される化合物1~26、又はその互変異性体から選択される。
【0020】
本発明の化合物、組成物、方法、及び使用の更なる目的及び特徴は、以下の限定されない例示の実施形態及び実施例の節の記載を読むことでより明らかになるであろうが、これらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
本明細書において用いられる全ての技術的及び科学的な用語及び表現は、本技術が関連する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ定義を有する。それでもなお、用いられるいくつかの用語及び表現の定義を、以下に提供する。参照することにより本明細書に援用される刊行物、特許、及び特許出願における用語の定義が、本明細書において述べられている定義と反する範囲においては、本明細書における定義が規制することになる。本明細書において用いられる節の見出しは、構成目的のものにすぎず、開示される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0022】
本明細書において記載される化学構造は、従来の基準に従って描かれている。また、描かれている原子、例えば炭素原子が、不完全な原子価を含むように見える場合、上記原子価は、それらが必ずしも明確に描かれていなくとも1つ又は複数の水素元素で満たされていると仮定されている。水素原子は、化合物の一部であると推論されるべきである。
【0023】
本明細書において用いられる専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のものにすぎず、限定するものであることを意図されない。注目すべきは、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、単数形(外国語明細書中の「a」、「an」、及び「the」)が複数形も含むことである。従って、例えば、「化合物(a compound)」を含む組成物への言及はまた、2以上の化合物の混合物も意図している。また注目すべきは、用語「又は」は通常、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、「及び/又は」を含むその意味において用いられることである。更に、用語「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「共に(with)」、又はそれらの変形表記が、詳細な説明及び/又は特許請求の範囲のいずれかにおいて用いられる限りにおいて、そのような用語は、用語「含んでいる(comprising)」と同様の様式で包含的であることが意図されている。
【0024】
用語「約」は、当業者により決定された特定の値について受容可能な誤差範囲内を意味し、上記値が測定又は決定される方法、即ち測定系の制約に、ある程度は依存するであろう。例えば、「約」は、当該分野の慣例によって、1標準偏差以内を意味してもよいし、1標準偏差を超えることを意味してもよい。或いは、「約」は、所定の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、より好ましくは更に1%までの範囲を意味してもよい。或いは、特に生物学的な系又は方法に関しては、上記用語は、値の一桁分以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味してもよい。特定の値が本出願及び特許請求の範囲に記載される場合、特に言及しない限り、用語「約」が特定の値について受容可能な誤差範囲内であることを意味していることが推測されるべきである。
【0025】
本明細書において用いられる場合、用語「化合物」、「活性成分」及び同等の表現は、本出願、米国特許第9,765,031号明細書、並びに国際公開第2009/059264号及び国際公開第2014/018695号に記載されている化合物をいい、任意にいずれかの適用可能な実施形態を参照して構造式Iに包含されるものを含み、また、例示の化合物、例えば化合物1~26、並びに適用可能な場合はそれらの薬学的に許容可能な塩、互変異性形態、溶媒和物、エステル、及びプロドラッグも含む。双性イオン形態が可能な場合、上記化合物は、実用的な目的のためにその中性形態として描かれてもよいが、上記化合物は、その双性イオン形態もまた含むものと理解される。本明細書における実施形態はまた、1つ又は複数の上記化合物を取り上げなくてもよい。化合物は、それらの化学構造又はそれらの化学名のいずれかによって特定されうる。上記化学構造及び化学名が矛盾すると思われる場合は、上記化学構造を優先する。
【0026】
本発明の化合物はまた、別段の言及がない限り、もしあるのであれば、上記例示された化合物の全ての可能な互変異性形態を包含する。上記用語はまた、1つ又は複数の原子が自然界において最も豊富に存在する原子質量とは異なる原子質量を有する同位体で標識された化合物を含む。本発明の化合物に組み込まれうる同位体としては例えば、これらに限定されないが、2H(D)、3H(T)、11C、13C、14C、15N、18O、17O、硫黄同位体のいずれか1つ等が挙げられる。上記化合物はまた、非溶媒和形態で存在してもよいし、溶媒和形態、例えば水和形態で存在してもよい。上記化合物は、多様な結晶形態で存在してもよいし、非晶質形態で存在してもよい。しかしながら、非晶質又は実質的に非晶質の形態が、本明細書において意図されている処方のためには好ましい。
【0027】
本発明の方法により調製されるキラル化合物及び中間体は、対応するエナンチオマーを実質的に含まず、エナンチオ濃縮されたもの(enantiomerically enriched)でありうる。「エナンチオ濃縮された」とは、上記化合物が、かなり大きな割合の1つのエナンチオマーからなることを意味する。ある特定の実施形態において、上記化合物は、少なくとも約60質量%、又は少なくとも約70質量%、又は少なくとも約80質量%、又は少なくとも約90質量%の好ましいエナンチオマーからなる。他の実施形態において、上記化合物は、少なくとも約95質量%、98質量%、又は99質量%の好ましいエナンチオマーからなる。好ましいエナンチオマーは、例えばキラル支持体上での高速液体クロマトグラフィー(HPLC)並びにキラル塩の形成及び結晶化を含む、当業者に知られているいずれかの方法によりラセミ混合物から単離されてもよいし、不斉合成により調製されてもよい。
【0028】
本明細書において用いられる用語「ee」、「%ee」、及び「エナンチオマー過剰率」とは、キラル物質についての1つのエナンチオマーの過剰率をいう。例えば、ラセミ混合物は0%eeを有し、純粋なエナンチオマーは100%eeを有し、90%のS-異性体と10%のR-異性体とを有する試料は、S-異性体の80%eeを有する。
【0029】
表現「薬学的に許容可能な塩」とは、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等なしにヒト及び下等動物の組織と接触する使用に適切であり、且つ合理的なベネフィット/リスク比にふさわしい本明細書の化合物の塩をいう。薬学的に許容可能な塩は、当該分野において周知である。例えば、S. M. Bergeらは、J. Pharmaceutical Sciences, 66: 1-19 (1977) において詳細に薬学的に許容可能な塩について記載している。上記塩は、本明細書の化合物の最終的な単離及び精製の間にその場で調製されてもよく、上記化合物の遊離の塩基性官能基を適切な有機酸又は無機酸と反応させるか(酸付加塩)又は上記化合物の酸性官能基を適切な有機塩基又は無機塩基と反応させることにより(塩基付加塩)、別途調製してもよい。
【0030】
用語「溶媒和物」とは、本発明の化合物のうちの1つと、1つ又は複数の溶媒分子、例えば水分子及び非水溶媒分子との物理的結合をいう。この物理的結合は、水素結合を含んでもよい。ある特定の例において、溶媒和物は、例えば1つ又は複数の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれる場合、単離することができるであろう。用語「溶媒和物」は、溶液相と単離可能な溶媒和物との両方を包含する。溶媒和物の例としては、これらに限定されないが、水和物、半水化物、アルコラート(例えば、エタノラート、ヘミエタノラート、n-プロパノラート、iso-プロパノラート、1-ブタノラート、2-ブタノラート等)、及び他の生理学的に受容可能な溶媒、例えば、the International Conference on Harmonization (ICH), Guide for Industry, Q3C Impurities: Residual Solvent (2017) に記載されたClass 3の溶媒の溶媒和物が挙げられる。従って、本明細書において記載される化合物はまた、その溶媒和物及びそれらの混合物のそれぞれをも包含する。
【0031】
本明細書において用いられる表現「薬学的に許容可能なプロドラッグ」とは、本明細書の方法により形成される化合物のプロドラッグであって、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等なしにヒト及び下等動物の組織と接触する使用に適切であり、合理的なベネフィット/リスク比にふさわしく、且つそれらの意図された使用について効果的であるものをいう。本明細書において用いられる「プロドラッグ」とは、代謝手段(例えば、加水分解)によってインビボで変換可能であり、本明細書の式により描かれるいずれかの化合物をもたらす化合物を意味する。
【0032】
略語もまた本出願を通して用いられ、特に言及しない限り、そのような略語は、その分野によって通常理解される意味を有することが意図されている。そのような略語の例には、Me(メチル)、Et(エチル)、Pr(プロピル)、i-Pr(イソプロピル)、Bu(ブチル)、t-Bu(tert-ブチル)、i-Bu(iso-ブチル)、s-Bu(sec-ブチル)、c-Bu(シクロブチル)、Ph(フェニル)、Bn(ベンジル)、Bz(ベンゾイル)、CBz又はCbz又はZ(カルボベンジルオキシ)、Boc又はBOC(tert-ブトキシカルボニル)、Su又はSuc(スクシンイミド)、EtOH(エタノール)、iPrOH又はi-PrOH又はIPA(イソプロパノール)、MeCN(アセトニトリル)、EtOAc(酢酸エチル)、DME(ジメトキシエタン)、MTBE(メチルtert-ブチルエーテル)、TFA(トリフルオロ酢酸)、及びDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)が含まれる。
【0033】
炭化水素置換基中の炭素原子の数は、接頭辞「Cx~Cy」又は「Cx~y」により示されうる。ここで、xは置換基における炭素原子の最小数であり、yは最大数である。しかしながら、接頭辞「Cx~Cy」又は「Cx~y」が、規定により1つ又は複数のヘテロ原子を組み込んだ基と関連している場合(例えば、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール等)、x及びyは、炭素原子及びヘテロ原子を含む環中の原子の最小数及び最大数をそれぞれ規定する。
【0034】
本明細書で用いられる用語「アルキル」とは、典型的には1個~20個の炭素原子を含む、飽和の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基をいう。例えば、「C1~C8アルキル」は、1個~8個の炭素原子を含む。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等含まれる。
【0035】
本明細書で用いられる用語「アルケニル」とは、1つ又は複数の二重結合と典型的には2個~20個の炭素原子とを含む、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を意味する。例えば、「C2~8アルケニル」は、2個~8個の炭素原子を含む。アルケニル基には、これらに限定されないが、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、l-メチル-2-ブテン-l-イル、ヘプテニル、オクテニル等が含まれる。
【0036】
本明細書で用いられる用語「アルキニル」とは、1つ又は複数の三重結合と典型的には2個~20個の炭素原子とを含む、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を意味する。例えば、「C2~8アルキニル」は、2個~8個の炭素原子を含む。代表的なアルキニル基には、これらに限定されないが、例えば、エチニル、1-プロピニル、1-ブチニル、ヘプチニル、オクチニル等が含まれる。
【0037】
用語「シクロアルキル」、「脂環式」、「炭素環式」及び同等の表現は、3~15員環の単環系、又はスピロ(1つの原子を共有する)、縮合(少なくとも1つの結合を共有する)、若しくは架橋(2つ以上の結合を共有する)の炭素環系を含む多環系における、飽和の又は部分的に不飽和(非芳香族)の炭素環を含む基をいう。シクロアルキル基の例には、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテン-1-イル、シクロペンテン-2-イル、シクロペンテン-3-イル、シクロヘキシル、シクロヘキセン-1-イル、シクロヘキセン-2-イル、シクロヘキセン-3-イル、シクロヘプチル、ビシクロ[4,3,0]ノナニル、ノルボルニル等が含まれる。用語シクロアルキルは、置換されていないシクロアルキル基と置換されたシクロアルキル基との両方を含む。用語「C3~Cnシクロアルキル」とは、その環構造中に、3個~示された「n」個の炭素原子を有するシクロアルキル基をいう。炭素の数が特に特定されていない限り、本明細書において用いられる「低級シクロアルキル」基は、それらの環構造中に少なくとも3個で8個以下の炭素原子を有する。
【0038】
本明細書において用いられる場合、用語「複素環」、「ヘテロシクロアルキル」、「ヘテロシクリル」、「複素環式基」及び「複素環式の環」は互換的に用いられ、飽和の又は部分的に不飽和の化学的に安定な3員環~7員環の単環式又は7員環~10員環の二環式の複素環式部分をいい、炭素原子に加えて1つ又は複数の、好ましくは1個~4個の上に規定されたヘテロ原子を有する。複素環の環原子に関して用いられる場合、用語「窒素」は、置換された窒素を含む。例として、酸素、硫黄、又は窒素から選択される1個~3個のヘテロ原子を有する飽和の又は部分的に不飽和の環において、窒素は、(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルにおけるように)Nであってもよく、(ピロリジニルにおけるように)NHであってもよく、又は(N-置換ピロリジニルにおけるように)NRであってもよい。複素環式の環は、結果として化学的に安定な構造となるいずれかのヘテロ原子又は炭素原子においてそのペンダント基に結合してもよく、環原子のいずれかは、任意選択により置換されていてもよい。ヘテロシクロアルキル基の例には、これらに限定されないが、1,3-ジオキソラニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、4,5-ジヒドロピラゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホルニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロジチエニル、テトラヒドロチエニル、チオモルホリノ、チオキサニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、3-アザビシクロ[3,1,0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4,1,0]へプタニル、キノリジニル、キヌクリジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル等が含まれる。複素環基はまた、複素環式の環が1つ又は複数のアリール、ヘテロアリール、又は脂環式環に縮合した基、例えば、インドリニル、3H-インドリル、クロマニル、クロメニル、フェナントリジニル、2-アザビシクロ[2.2.1]へプタニル、オクタヒドロインドリル、又はテトラヒドロキノリニルも含み、ここで、結合基又は結合点はヘテロシクリル環上にある。ヘテロシクリル基は、単環式であっても二環式であってもよい。用語「ヘテロシクリルアルキル」とは、ヘテロシクリルによって置換されたアルキル基をいい、ここで、アルキル部分及びヘテロシクリル部分は独立に、任意選択により置換されていてもよい。用語「C3~nヘテロシクロアルキル」とは、炭素原子及びヘテロ原子を含む環構造中に、3個~示された「n」個の原子を有するヘテロシクロアルキル基をいう。
【0039】
本明細書において用いられる場合、用語「部分的に不飽和」とは、環原子間に少なくとも1つの二重結合又は三重結合を含むが、芳香族ではない環部分をいう。用語「部分的に不飽和」は、多数の不飽和部位を有する環を包含することが意図されるが、本明細書において規定されるアリール部分又はヘテロアリール部分を含むことは意図されていない。
【0040】
単独でも、「アラルキル」、「アラルコキシ」、「アリールオキシ」、又は「アリールオキシアルキル」におけるようにより大きな部分の一部としても用いられる用語「アリール」とは、単環部分又は全体で6員環~15員環の二環式若しくは三環式の縮合環系における(ここで、上記系における少なくとも1つの環は芳香族であり、上記系におけるそれぞれの環は3員環~7員環である)、4n+2個の共役π(pi)電子を有する(ここで、nは1~3の整数である)芳香族基をいう。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に用いられてもよい。本明細書のある特定の実施形態において、「アリール」とは芳香族環系をいい、これらに限定されないが、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アズレニル、アントラシル等が挙げられ、1つ又は複数の置換基を有していてもよい。用語「アラルキル」又は「アリールアルキル」とは、アリール環に結合したアルキル残基をいう。アラルキルとしては例えば、これらに限定されないが、ベンジル、フェネチル等が挙げられる。また、本明細書において用いられる場合に用語「アリール」の範囲内に含まれるものとして、芳香環が1つ又は複数の非芳香族環に縮合している基、例えばインダニル、インデニル、フタルイミジル、ナフトイミジル、フルオレニル、フェナントリジニル、又はテトラヒドロナフチル等がある。用語「C6~nアリール」とは、環構造中に、6個~示された「n」個の原子を有するアリール基をいう。
【0041】
用語「ヘテロアリール」とは、単独でも、より大きな部分、例えば「ヘテロアラルキル」又は「ヘテロアラルコキシ」の一部としても用いられ、4n+2個の共役π(pi)電子を有し(ここで、nは1~3の整数であり(例えば、5個~18個の環原子、好ましくは5個、6個、又は9個の環原子を有し、環状配置において共有される6個、10個、又は14個のπ電子を有する))、且つ炭素原子に加えて1個~5個のヘテロ原子を有する芳香族基をいう。用語「ヘテロ原子」としては、これらに限定されないが、窒素、酸素、又は硫黄が挙げられ、窒素又は硫黄のいずれの酸化形態、及び塩基性窒素のいずれの四級化形態も含む。ヘテロアリールは、単環であってもよく、2以上の縮合環であってもよい。用語「ヘテロアリール」は、本明細書において用いられる場合、芳香族複素環が、1つ又は複数のアリール、脂環式環、又は複素環に縮合しており、結合基又は結合点が芳香族複素環上にある基もまた含む。ヘテロアリール基の限定されない例としては、チエニル、フラニル(フリル)、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、3H-インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ピロロピリジニル(例えば、ピロロ[3,2-b]ピリジニル又はピロロ[3,2-c]ピリジニル)、ピラゾロピリジニル(例えば、ピラゾロ[1,5-a]ピリジニル)、フロピリジニル、プリニル、イミダゾピラジニル(例えば、イミダゾ[4,5-b]ピラジニル)、キノリル(キノリニル)、イソキノリル(イソキノリニル)、キノロニル、イソキノロニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、ナフチリジニル、及びプテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナントリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、及びピリド[2,3-b]-l,4-オキサジン-3(4H)-オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式であっても二環式であってもよい。ヘテロアリール基は、任意選択により置換されていてもよい環を含む。用語「ヘテロアラルキル」とは、ヘテロアリールにより置換されたアルキル基をいい、ここで、アルキル部分及びヘテロアリール部分は独立して任意選択により置換されていてもよい。例としては、これらに限定されないが、ピリジニルメチル、ピリミジニルエチル等が挙げられる。例えば、用語「C5~nヘテロアリール」とは、炭素原子及びヘテロ原子を含む環構造中に、5個~示された「n」個の原子を有するヘテロアリール基をいう。
【0042】
用語「ハロゲン」とは、ハロゲン原子、即ち、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を指し、好ましくはフッ素又は塩素である。
【0043】
本明細書に記載するように、本明細書の化合物は、「任意選択により置換されていてもよい」部分を含んでいてもよい。通常、用語「置換された」は、用語「任意に」が先行してもしなくても、指定された部分の1つ又は複数の水素が適切な置換基で置き換えられていることを意味する。特に示されない限り、「任意選択により置換されていてもよい」基は、その基のそれぞれの置換可能な位置にて適切な置換基を有してもよく、いずれかの所定の構造において複数の位置が特定の基から選択される複数の置換基で置換されてもよい場合、上記置換基は、それぞれの位置において同じであっても異なっていてもいずれでもよい。本明細書において想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、結果として化学的に安定な又は化学的に実現可能な化合物が形成されるようなものである。本明細書において用いられる用語「化学的に安定な」とは、それらの生成、検出、並びにある特定の実施形態においてはそれらの回収、精製、及び1つ又は複数の本明細書において開示された目的のための使用を可能にさせる条件に供された際に、実質的に変化しない化合物をいう。
【0044】
従って、用語「任意選択により置換されていてもよい」とは、置換基による1つ、2つ、又は3つ以上のその基における水素原子の独立した置き換えによって、置換された又は置換されていない基についていい、その置換基は特に限定されず、例えば、F、CI、Br、I、OH、CO2H、アルコキシ、オキソ、チオオキソ、NO2、CN、CF3、NH2、NHアルキル、NHアルケニル、NHアルキニル、NHシクロアルキル、NHアリール、NHヘテロアリール、NH複素環、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、O-アルキル、O-アルケニル、O-アルキニル、O-シクロアルキル、O-アリール、O-ヘテロアリール、O-ハロアルキル、O-複素環、C(O)アルキル、C(O)アルケニル、C(O)アルキニル、C(O)シクロアルキル、C(O)アリール、C(O)ヘテロアリール、C(O)ヘテロシクロアルキル、CO2アルキル、CO2アルケニル、CO2アルキニル、CO2シクロアルキル、CO2アリール、CO2ヘテロアリール、CO2ヘテロシクロアルキル、OC(O)アルキル、OC(O)アルケニル、OC(O)アルキニル、OC(O)シクロアルキル、OC(O)アリール、OC(O)ヘテロアリール、OC(O)ヘテロシクロアルキル、C(O)NH2、C(O)NHアルキル、C(O)NHアルケニル、C(O)NHアルキニル、C(O)NHシクロアルキル、C(O)NHアリール、C(O)NHヘテロアリール、C(O)NHヘテロシクロアルキル、OCO2アルキル、OCO2アルケニル、OCO2アルキニル、OCO2シクロアルキル、OCO2アリール、OCO2ヘテロアリール、OCO2ヘテロシクロアルキル、OC(O)NH2、OC(O)NHアルキル、OC(O)NHアルケニル、OC(O)NHアルキニル、OC(O)NHシクロアルキル、OC(O)NHアリール、OC(O)NHヘテロアリール、OC(O)NHヘテロシクロアルキル、NHC(O)アルキル、NHC(O)アルケニル、NHC(O)アルキニル、NHC(O)シクロアルキル、NHC(O)アリール、NHC(O)ヘテロアリール、NHC(O)ヘテロシクロアルキル、NHCO2アルキル、NHCO2アルケニル、NHCO2アルキニル、NHCO2シクロアルキル、NHCO2アリール、NHCO2ヘテロアリール、NHCO2ヘテロシクロアルキル、NHC(O)NH2、NHC(O)NHアルキル、NHC(O)NHアルケニル、NHC(O)NHアルケニル、NHC(O)NHシクロアルキル、NHC(O)NHアリール、NHC(O)NHヘテロアリール、NHC(O)NHヘテロシクロアルキル、NHC(S)NH2、NHC(S)NHアルキル、NHC(S)NHアルケニル、NHC(S)NHアルキニル、NHC(S)NHシクロアルキル、NHC(S)NHアリール、NHC(S)NHヘテロアリール、NHC(S)NHヘテロシクロアルキル、NHC(NH)NH2、NHC(NH)NHアルキル、NHC(NH)NHアルケニル、NHC(NH)NHアルケニル、NHC(NH)NHシクロアルキル、NHC(NH)NHアリール、NHC(NH)NHヘテロアリール、NHC(NH)NHヘテロシクロアルキル、NHC(NH)アルキル、NHC(NH)アルケニル、NHC(NH)アルケニル、NHC(NH)シクロアルキル、NHC(NH)アリール、NHC(NH)ヘテロアリール、NHC(NH)ヘテロシクロアルキル、C(NH)NHアルキル、C(NH)NHアルケニル、C(NH)NHアルキニル、C(NH)NHシクロアルキル、C(NH)NHアリール、C(NH)NHヘテロアリール、C(NH)NHヘテロシクロアルキル、S(O)アルキル、S(O)アルケニル、S(O)アルキニル、S(O)シクロアルキル、S(O)アリール、S(O)2アルキル、S(O)2アルケニル、S(O)2アルキニル、S(O)2シクロアルキル、S(O)2アリール、S(O)ヘテロアリール、S(O)ヘテロシクロアルキル、SO2NH2、SO2NHアルキル、SO2NHアルケニル、SO2NHアルキニル、SO2NHシクロアルキル、SO2NHアリール、SO2NHヘテロアリール、SO2NHヘテロシクロアルキル、NHSO2アルキル、NHSO2アルケニル、NHSO2アルキニル、NHSO2シクロアルキル、NHSO2アリール、NHSO2ヘテロアリール、NHSO2ヘテロシクロアルキル、CH2NH2、CH2SO2CH3、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、炭素環、複素環、ポリアルコキシアルキル、ポリアルコキシ、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、SH、S-アルキル、S-アルケニル、S-アルキニル、S-シクロアルキル、S-アリール、S-ヘテロアリール、S-ヘテロシクロアルキル、又はメチルチオメチルが挙げられる。
【0045】
本発明の化合物は、末梢制限CB1アンタゴニストの合成における中間体である。これらの化合物は、ジヒドロピラゾール環上にキラル中心を含む。S異性体は、R対応体に比べてほとんどの場合より強力であることが特定されてきた。従って、最終生成物又はその中間体のいずれかの異性体を分離する実施規模変更可能な方法の特定に努力が向けられてきた。しかしながら、上記最終生成物、例えば下記の化合物1のジアステレオマー塩の結晶化によるエナンチオマー分割の試みは、失敗に終わっていた。
【0046】
本発明の方法を用いて製造できると思われる最終化合物の例は、米国特許第9,765,031号明細書、並びに国際公開第2009/059264号及び国際公開第2014/018695号に規定されるとおりであり、これらは全て、実際上、その全体が参照により本明細書に援用され、以下の段落で本明細書において規定されるものを含む。化学的部分について言及する場合、変化可能なものの定義における化学基の列挙の記述は、いずれかの単一の基又は列挙された基の組み合わせとして、その変化可能なものの定義を含む。同様に、本明細書における実施形態の記述は、単一の実施形態としての又はいずれかの他の実施形態若しくはその一部との組み合わせでのその実施形態を含む。従って、以下の実施形態は、単独で、又は適用可能な場合は組み合わせで存在する。
【0047】
より具体的には、本明細書は、ジヒドロピラゾール環を含むエナンチオ濃縮された化合物を調製する方法に関する。例えば、その方法は以下の工程:
(a)下記式I:
【化7】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、任意選択により置換されていてもよいアルキル、任意選択により置換されていてもよいシクロアルキル、任意選択により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、任意選択により置換されていてもよいアルコキシ、アミノ、任意選択により置換されていてもよいスルホニル、任意選択により置換されていてもよいアリール、任意選択により置換されていてもよいヘテロアリール、任意選択により置換されていてもよいカルボキシル、アシル、任意選択により置換されていてもよいアルケニル、任意選択により置換されていてもよいアルキニル、任意選択により置換されていてもよいホスホニル、任意選択により置換されていてもよいホスフィニル、任意選択により置換されていてもよいボロン酸エステル、任意選択により置換されていてもよいシリル、及びイミノから選択され;かつ
a、b、及びcは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4又は5であり;
前記式Iの化合物は、(
*)の炭素原子(C
*)におけるR異性体及びS異性体の混合物を含有し、C
*に結合した第四の原子は、水素又はその同位体(例えば、重水素)である)
の化合物又はその互変異性体を用意する工程;
(b)上記式Iの化合物を溶媒に溶解させて、溶液を得る工程;
(c)(-)-キニーネ、(R)-フェネチルアミン、(S)-フェネチルアミン、(S)-1-ナフチルエチルアミン、(R)-(-)-2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、(-)-シンコニジン、(-)-スパルテイン、(R)-1-ナフチルエチルアミン、D-アルギニン、L-リジン、(S)-(+)-2-ピロリジンメタノール、及び(1R,2S)-(+)-シス-1-アミノ-2-インダノールから選択されるキラル分割剤を上記溶液に溶解させて、沈殿物及び上澄みを形成させる工程;並びに
(d)上記の沈殿物を上澄みから分離する工程であって、上記の沈殿物又は上澄みのうち一つが、R-エナンチオマーと比べてより高い濃度でS-エナンチオマーを含むエナンチオ濃縮された式Iの化合物を含有する工程、を含み、
工程(b)及び工程(c)を同時に又は順次行う。
【0048】
用いられる溶媒は、プロトン性であっても非プロトン性であってもよく、水を更に含んでいてもよい有機溶媒である。溶媒は、好ましくは、例えば1個~4個の炭素原子を有するアルコールから選択される、少なくとも1つの低級アルコール(例えば、エタノール及びイソプロパノール)、又はそれらの組み合わせを含む。他の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えばアセトニトリルが挙げられる。溶媒はまた更に、水(例えば、10%v/v未満、又は5%v/v以下)を含有してもよく、あるいは、水を添加することなく使用してもよい。
【0049】
用いるキラル分割剤に応じて、S-エナンチオマーが濃縮された化合物は、上澄み中に存在してもよい。そのようなキラル分割剤の例には、(-)-キニーネ、(R)-フェネチルアミン、(S)-フェネチルアミン、(S)-1-ナフチルエチルアミン、及び(R)-(-)-2-アミノ-3-メチル-1-ブタノールが含まれ、好ましくは(-)-キニーネである。これらのうち1つが用いられる場合、上澄みは更に処理されて、式Iの化合物の(S)異性体が濃縮された固形物が得られ、その固形物は上澄みから更に分離される。そのような処理は、上記の溶媒の少なくとも部分的な蒸発によって(例えば、加熱及び/又は真空によって)、例えば0~1の範囲内に含まれるpH、好ましくは約0のpHを有する酸性水溶液を上澄みに添加することによって、又は部分的な蒸発と酸性処理との組み合わせによって、上澄みを濃縮することを含んでもよい。
【0050】
酸性処理が用いられる場合、溶液の全体積に対する酸性水溶液の体積比は、4%~20%の間である。例えば、酸性水溶液は、約0のpHを有し、溶液の全体積に対する酸性水溶液の体積比は、10%~16%の間、又は12%~14%の間である。
【0051】
他の場合、S-エナンチオマーが濃縮された化合物は、工程(c)の沈殿物中に存在してもよい。そのようなキラル分割剤の例には、例えば、(-)-シンコニジン、(-)-スパルテイン、(R)-1-ナフチルエチルアミン、D-アルギニン、L-リジン、(S)-(+)-2-ピロリジンメタノール、及び(1R,2S)-(+)-シス-1-アミノ-2-インダノールが含まれ、好ましくは(-)-スパルテインである。次いで、沈殿物は、例えば再結晶によって、単離後に更に処理されて、そのS-エナンチオマー含有量を上昇させてもよい。
【0052】
上記方法はまた、上記エナンチオ濃縮された式Iの化合物を、分割に用いられたキラル分割剤から分離する工程を更に含んでもよい。そのような分離には、酸性化が通常用いられる。例えば、酸、例えば塩酸を用いて、キラル分割剤との塩を形成することができ、その塩は好ましくは溶液中に残り、その一方、遊離のエナンチオ濃縮された化合物は沈殿する。
【0053】
得られたエナンチオ濃縮された化合物は、少なくとも約60質量%、又は少なくとも約70質量%、又は少なくとも約80質量%、又は少なくとも約90質量%のS-エナンチオマーからなる。好ましくは、上記化合物は、少なくとも約95質量%、98質量%、又は99質量%のS-エナンチオマーからなる。
【0054】
上記方法はまた更に、式Iの化合物の(R)異性体を回収し、その(R)異性体を少なくとも部分的にラセミ化して式Iの化合物を得て、その化合物を上記の工程(a)~(d)によって更に処理して、式Iの化合物の更なる異性体(S)を得ることを含んでもよい。例えば、そのようなラセミ化は有機塩基、例えばDBUの存在下で行うことができる。
【0055】
式Iの化合物のS-エナンチオマーが、式II:
【化8】
の化合物、又はその互変異性体であることが理解される。
【0056】
式I又は式IIのいくつかの例においては、aが0であってR1が存在せず、即ち、アリール基の5つ全ての結合していない炭素原子が水素原子に結合している。好ましくは、bが1であり、かつR2がハロゲンであり、及び/又はcが1であり、かつR3がハロゲン(例えば、塩素)若しくはハロゲン化C1~6アルキル、例えばトリフルオロメチルである。例えば、aが0であってR1が存在せず、R2及びR3がそれぞれ独立してハロゲン化アルキル及びハロゲンから選択され、好ましくはb及びcがそれぞれ1である。
【0057】
1つの例によれば、上記式Iの化合物は、式I(a)若しくは式I(b)の化合物、又はそれらの互変異性体である。
【化9】
【0058】
別の例によれば、上記式IIの化合物は、式II(a)若しくは式II(b)の化合物、又はそれらの互変異性体である。
【化10】
【0059】
本明細書は式Iの化合物の(S)-エナンチオマーの単離について記載しているが、(R)-エナンチオマーは、本明細書に記載された手順を用い、開示されたものとは逆のキラリティを有するキラル分割剤によって単離されることになることと理解される。逆のキラリティのキラル分割剤の例には、例えば、(+)-キニーネ、(R)-1-ナフチルエチルアミン、(R)-フェネチルアミン、(S)-フェネチルアミン、(S)-(-)-2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、(+)-シンコニジン、(+)-スパルテイン、(S)-1-ナフチルエチルアミン、L-アルギニン、D-リジン、(R)-(-)-2-ピロリジンメタノール、及び(1S,2R)-(-)-シス-1-アミノ-2-インダノール等が含まれる。例えば、(+)-キニーネの合成がこれまでに記載されている(例えば、S Shiomiら, Chem. Sci., 2019, 10, 9433を参照されたい)。
【0060】
上記式Iの化合物は通常、塩基性条件下で、(R
3)
cArSO
2NH
2化合物(A)とClC(O)OMeとの反応により、(R
3)
cArSO
2NHC(O)OMe中間体(B)が得られ、これが次いで下記式:
【化11】
の遊離アミン(C)と結合することによって調製することができる。
【0061】
本技術はまた、S-ジヒドロピラゾール環を含む化合物、例えば上で規定するCB1受容体阻害剤、例えば化合物(S)-イビピナバント(Ibipinabant)又は下記の式IIIの化合物の製造のための方法にさらに関する。
【0062】
例えば、上記の方法は、(i)上記の方法に従って式IIの化合物を調製する工程、及び(ii)上記式IIの化合物を下記式IIIの化合物、又はその互変異性体に変換する工程を含む。
【0063】
【化12】
(式中、R
1、R
2、R
3、a、b、及びcは、上で規定したとおりであり、
R
4は、H、任意選択により置換されていてもよいアルキル、任意選択により置換されていてもよいシクロアルキル、任意選択により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、任意選択により置換されていてもよいアルコキシ、アミノ、任意選択により置換されていてもよいスルホニル、任意選択により置換されていてもよいアリール、任意選択により置換されていてもよいヘテロアリール、任意選択により置換されていてもよいカルボキシル、アシル、任意選択により置換されていてもよいアルケニル、任意選択により置換されていてもよいアルキニル、任意選択により置換されていてもよいホスホニル、任意選択により置換されていてもよいホスフィニル、任意選択により置換されていてもよいボロン酸エステル、任意選択により置換されていてもよいシリル、及びイミノから選択され;かつ
R
5は、任意選択により置換されていてもよいアルキル、任意選択により置換されていてもよいシクロアルキル、任意選択により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、任意選択により置換されていてもよいアルコキシ、アミノ、任意選択により置換されていてもよいアルキルC(O)NH、任意選択により置換されていてもよいスルホニル、任意選択により置換されていてもよいアリール、任意選択により置換されていてもよいヘテロアリール、任意選択により置換されていてもよいカルボキシル、アシル、任意選択により置換されていてもよいアルケニル、任意選択により置換されていてもよいアルキニル、任意選択により置換されていてもよいホスホニル、任意選択により置換されていてもよいホスフィニル、任意選択により置換されていてもよいボロン酸エステル、任意選択により置換されていてもよいシリル、及びイミノから選択される。)
【0064】
工程(ii)は、以下の工程:
(ii-a)上記式IIの化合物を塩素化剤と反応させて、下記式IV:
【化13】
の化合物を製造する工程、及び
(ii-b)上記式IVの化合物を下記式V:
【化14】
の化合物又はその塩と反応させて、上記式IIIの化合物を製造する工程を含んでもよい。
【0065】
塩素化剤の例はPOCl3であり、工程(ii-a)は、好ましくは、2,6-ルチジンのような有機塩基を更に含む。工程(ii-b)もまた、好ましくは、塩基、例えば1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)のような有機塩基、又はK2HPO4のような無機塩基を更に含む。
【0066】
いくつかの例において、R4はHである。他の例において、R5はC1~6アルキル(例えば、メチル)又はC1~6アルキルC(O)NH(例えば、CH3C(O)NH)である。
【0067】
或いは、上記式IVの化合物は、式R4NH2のアミンと反応させられて、国際公開第2009/059264号又は国際公開第2014/018695号に規定される化合物が製造される。
【0068】
式IIIの化合物の限定されない例には、以下の化合物1~26が含まれる。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
本明細書における変わりうる部分の実施形態の記述は、いずれかの単一の実施形態又はいずれかの他の実施形態若しくはその一部との組み合わせとしてのその実施形態を含む。本明細書における実施形態の記述は、いずれかの単一の実施形態又はいずれかの他の実施形態若しくはその一部との組み合わせとしてのその実施形態を含む。
【実施例】
【0079】
以下の限定されない実施例は、説明のための実施形態であり、本発明の範囲を更に限定するものとして解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図面を参照することでより良く理解されるであろう。
【0080】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる成分の量、反応条件、濃度、特性、安定性等を表す全ての数は、用語「約」により全ての場合において修飾されるものとして理解されるべきである。少なくとも、それぞれの数値パラメーターは、報告された有効数字の数を踏まえ、通常の丸め手法を適用することにより少なくとも解釈すべきである。従って、それとは反対の指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲において示される数値パラメーターは、得ようとされる特性に応じて変わりうる近似値である。広範な範囲の実施形態を示す数値範囲及びパラメーターは近似値であるが、特定の実施例において示される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、実験、試験測定、統計分析等における変動に由来するある程度の誤差を本質的に含む。
【0081】
実施例1-種々のキラル分割剤によるエナンチオマー分割(式I(a))
式I(a):
【化24】
の化合物のラセミ混合物又は実質的なラセミ混合物を、3つの異なる溶媒(イソプロパノール、イソプロパノール:水 95:5v/v、及びエタノール:水 95:5v/v)中に、分割剤としてのキラル塩基化合物とともに溶かした。分割剤は市販されており、一方、式I(a)の化合物は周知の方法により調製した。
【0082】
スクリーニング試験を、等モル量の式I(a)の化合物(0.5mmol,1当量)及び分割剤(0.5mmol,1当量)を添加することによって4mLガラスバイアル中にてマイクロスケールで行った。次いで、計算された量の溶媒をそれぞれのバイアルに添加し、形成されたジアステレオ異性体塩の理論質量に基づいて23%w/wの溶液とし、得られた懸濁液を、透明な溶液又はある程度透明な混合物が得られるまで加熱した。次いで、バイアルを室温においてオービタルシェーカー中で95rpmにて2日以上振とうし、結晶化を起こさせた。
【0083】
30個近い異なる分割剤を試験した。結晶形成が観察されなかった実験においては、(必要であれば)4つまでの異なる処理(即ち、-20℃までの冷却、室温での超音波処理、室温での溶媒のゆっくりとした蒸発、減圧下で50℃での溶媒の蒸発)を適用して、結晶形成を誘発させた。固形物の存在及び(固形物又は上澄み中の)S-エナンチオマーの濃縮を示す分割剤について、結果を表1に示す。
【0084】
【0085】
試験したもののなかで、(-)-キニーネ及び(-)-スパルテインは、試験した3つの異なる溶媒中で分割剤(液組成は50:50ではない)としてのかなりの可能性を示した。3つ全ての溶媒中で、(-)-キニーネは、液中でS-エナンチオマーの適度~高度なエナンチオ濃縮を示し、その一方、R-エナンチオマーは固形物中に存在した。IPA、及びIPA/水 95:5v/v中の(-)-スパルテインは、結晶中のS-エナンチオマーの低度~適度なエナンチオ濃縮を示した。いくつかの他のキラル分割剤もまた、結晶又は母液中で望ましいS異性体の濃縮を示した。
【0086】
実施例2-イソプロパノール中での光学分割(式I(a))
追加の試験を(-)-キニーネを用いて行い、分割において用いられるべき溶媒の最適量及びスケール条件を決定した。
【0087】
IPA中で式I(a)の化合物及び(-)-キニーネを用いたスクリーニング試験を、17.7mmolスケール(9.0gの式I(a))で繰り返した。結晶化を行うために、反応混合物を数回の40~70℃の範囲の加熱冷却サイクルに供し、最終サイクル後、撹拌下で、R-エナンチオマーについて85%eeのジアステレオマー塩結晶を用いてシーディング(seeding)しながら室温まで徐々に冷却した。反応混合物を約18時間、室温で撹拌した。
【0088】
次いで、試料を反応混合物から取り出し、母液及び固形物の組成をキラルHPLC(Phenomenex Lux(商標) i-amylose-1カラム、40℃、IPA/ヘキサン/TFA 99:1:0.1 v/v/vによるイソクラティック溶離)により決定した。母液中の%eeは(S)について34.4%eeを示した。計算された共晶77.5%ee(S)は液中で達成されなかったため(キラルHPLCにより34.4%eeが決定された)、スラリーを真空ろ過して2.17gのジアステレオ異性体塩(87.4%ee固形物;キラルHPLCにより決定)を得た。母液を蒸発させて初期体積(54gのIPA溶液)の1/3とし、その後、40℃でR-ジアステレオ異性体塩(R-エナンチオマーについて85%ee)でシーディング(seeding)した。室温で一晩撹拌して反応させた。14時間の撹拌後、試料を反応混合物から取り出し、母液及び固形物の組成をキラルHPLCにより決定した(母液中、Sについて42.2%ee)。反応混合物を再度真空ろ過し、得られた母液を初期体積(34g)の約60%に濃縮し、その後、40℃でR-ジアステレオ異性体塩(R-エナンチオマーについて85%ee)でシーディングした。室温で週末にわたり(76時間)撹拌して反応させた。母液及び固形物の組成をキラルHPLCにより決定した(母液中、45.7%ee)。
【0089】
4gスケールで反応を繰り返し、室温で夜通し撹拌後、母液中49.3%eeのS-エナンチオマーを得た。反応混合物の真空ろ過後、母液を蒸発させて初期体積(39.9gのIPA溶液)の半分とし、得られた混合物を40℃でR-ジアステレオ異性体塩(R-エナンチオマーについて85%ee)でシーディングした。室温で76時間撹拌して反応させた。母液及び固形物の組成をキラルHPLCにより決定した(母液中、61.5%ee)。
【0090】
続いての反応を、2gスケールで反応条件をわずかに変更して行った。初期段階の反応を、透明な溶液が観察されるまで(約10分)70℃で行った。次いで、溶液を室温まで冷却し(沈殿物が生じ始めた)、更に1時間20分撹拌した。反応物を20mLのIPAで希釈し、10分間70℃で還流させた後、更なるIPA(20mL)を添加した。懸濁液を再度室温まで冷却した後、20mLのIPAを添加した。懸濁液を15分間撹拌し、次いで、S3焼結漏斗を通してろ過した。IPA洗浄後、HPLC分析は、結晶が85.3%ee(R)を有することを示し、一方、液%のeeは72.4(S)であった。2gスケールでの反応を上記手順に従って繰り返し、懸濁液を夜通し(18時間)撹拌した。HPLC分析により結晶が64.8%ee(R)であることが明らかになり、液は85.6%ee(S)であった。ジアステレオ異性体塩(85.6%ee)を、2M HCl水溶液の添加によって分解し、次に、得られた沈殿物を焼結漏斗(多孔率3)上でろ過することによって、S-エナンチオマー(99.4%ee)を得た。
【0091】
実施例3-アセトニトリル中での光学分割及び更なる濃縮(式I(a))
(a)キラル分割
50gスケールの反応を、反応器中で、式I(a)の化合物及び(-)-キニーネを用いて行った。より具体的には、50gの式I(a)の化合物、20.76gの(-)-キニーネ(0.65当量)及び443gのHPLCグレードのアセトニトリル(MeCN、約564mL)を反応器中で混合し、30分間、温度を65℃に上げた。次いで、混合物を4.5時間にわたって20℃に冷却し、15℃で一晩(約18時間)保持した。次いで、スラリーをろ過した。結晶は95.8%(ee)のR-異性体を含み、一方、母液は77.2%(ee)のS-異性体をもたらした。
【0092】
(b)S-異性体の濃縮
S-異性体が濃縮された溶液を含む工程(a)からの母液を更に処理して、S-異性体のエナンチオマー過剰率(ee)を向上させた。母液の体積を400mL(69.25g/Lの式I(a))に調節し、溶液の半分をee改善アッセイに用いた。20mLの10個の画分を集め、そのそれぞれが1.38gのピラゾリンを含んでいた。それぞれの20mLのアリコートを、種々の体積のpH1又はpH0の酸性水で処理した(表2を参照されたい)。MeCN/水中で夜通し撹拌した後、固形物をろ過して、HPLC及びNMRにより分析した。
【0093】
【0094】
表2に示すように、水の増加及びpHの低下はいずれも、望ましい化合物の溶解性を低下させた。S-異性体について77.24%eeを有する出発物質では、3mLのpH0溶液を用いる条件が最も良い結果を示した。実際に、完璧に近い76.58%収率が、>99%eeとともに得られた。より低い温度(10~20℃)における酸性化が好ましいことが発見され、なぜなら、それが、より温かい(40~55℃)酸性化と比べてより少ない副反応へと導いて、収率を向上させたからである。残りの母液(200mL)に適用されたこれらの条件(69~70g/Lの化合物の溶液への約15%のpH0の水の添加)は、13.8gスケールで良好なリターンを与えるのに十分しっかりしている(robust)ことを証明した。実際、ろ過及び更なる乾燥(ロータリーエバポレーター5~10mbar、45℃、4時間)の後、8.87gのS-異性体を>99%eeで得た。1H-NMRは0.52当量の水の存在を示した。
【0095】
工程(a)において500gのラセミ出発物質、208gの(-)-キニーネ(0.65当量)、及び3.48kgのMeCN(約4.43L)を用いて工程(a)及び工程(b)を、繰り返した。270gのS-異性体が濃縮された化合物(ee:76.24%)、MeCN(全体積3.9L)、及び1N HCl(pH0、592mL)を用いて、上記のように工程(b)を実施し、205gのS-異性体(式II(a))を99.5ee%で得た。その化合物は、式IIIの化合物、例えば、化合物1、7、9、11、13、15、17、19、21、23、及び25の調製に用いることができる。
【0096】
実施例4-R-異性体の単離及びラセミ化(式I(a))
例えば実施例3の工程(a)から単離された、R-異性体の(-)-キニーネ塩を含むR-異性体が豊富な結晶を、分割法において再利用するために、最初に、形成された塩を壊し、次に、単離されたR-異性体をラセミ化させることによってリサイクルした。2つの代替可能な方法を以下に例示する。
【0097】
方法1:
塩(約230g(R)、140gキニーネ)を2.3LのHPLCグレードのジクロロメタン中で混合し、1.15Lの1N HCl溶液を撹拌しながら添加することにより、第1の工程を行った。その混合物を20℃において1.5時間混合した。有機相を分離し、0.6Lの水で洗浄し、MgSO4の上で乾燥させた。ろ過及び減圧下での蒸発により、R-異性体が豊富な化合物(211g、92%収率)を得た。
【0098】
次いで、得られた固形物を無水DME(1L)に溶かし、DBU(93.5mL、1.5当量)と混合した。その溶液を70~80℃において6時間撹拌した。その混合物を10~20℃まで冷却し、水を添加した。HClの添加によってpHを4~5に調節した。酢酸エチルにより水性相を抽出し、合わせた有機相をブラインで洗浄し、MgSO4により乾燥させた。全ての揮発性物質を減圧下で除去し、残渣をMTBE/EtOAc(8/1)と共にすり潰した。そのスラリーをろ過し、冷たいMTBEで洗浄した。固形物を減圧下で更に乾燥させて、式I(a)のラセミ化合物(175g、82%収率)を得た。このラセミ化合物を次に実施例3の方法において更に用いて、S-異性体を生成させる。
【0099】
方法2:
R-異性体のキニーネ塩(79kg、1.0当量)を反応容器に導入した。1N塩酸溶液(3体積)、続いて2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)(2体積)を容器に添加し、混合物をそれが透明になるまで撹拌した。混合物を分離し、有機相を水(1体積)で洗浄し、濃縮して乾燥させた。DME(3体積)を添加し、その混合物を再度濃縮して乾燥させた。
【0100】
得られた固形物を次に無水DME(3体積)に溶かし、DBU(1.5当量)と混合した。その溶液を70~80℃で、(キラルクロマトグラフィーによりモニタリングして)完全なラセミ化が達成されるまで撹拌した。混合物を10~20℃まで冷却し、水(3.5体積)を滴下により添加した。1N HCl溶液をゆっくりと滴下により添加することでpHを2~3に調節した。混合物をろ過し、ケーキを水(2体積)で洗浄した。ケーキを50~60℃で乾燥させ、式I(a)のラセミ化合物(42g、95%収率)を得た。このラセミ化合物を、次に実施例3の方法において更に用いて、S-異性体を製造する。
【0101】
実施例5-式I(b)の化合物の光学分割
MeCN(960mL)中の式I(b)の化合物(96.0g、1.00当量)の混合物に、(-)-キニーネ(50.0g、0.76当量)を15~20℃において添加し、次に、その混合物を60~70℃において1.5時間撹拌した。次いで、混合物を20~30℃まで冷却し、16時間撹拌した。混合物をろ過し、ケーキを乾燥させて白色固形物(96.0g)とし、これをSFC及びHPLCによって検査した。母液をSFC及びHPLCにより検査した。母液を40~45℃に温め、その溶液にHCl(1M、61.7mL)及びH2O(150mL)を添加した。その混合物を15~20℃において4時間撹拌した。次に、その混合物をろ過し、固形物を得た。その固形物をMeCN/H2O(150mL/15mL)と共にすりつぶした。式II(b)のS-異性体(25.0g、99.5%純度)を淡黄色固形物として得て、それは1H NMR、LCMS、HPLC及びSFCにより確認した。このS-異性体は、式IIIの化合物の調製、例えば、化合物2、8、10、12、14、16、18、20、22、24、及び26の調製、又は(S)-イビピナバントなどの他の化合物及び米国特許第9,765,031号、並びに国際公開第2009/059264号及び国際公開第2014/018695号に記載された他の化合物の調製に更に用いることができる。
【0102】
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 11.60 (s, 1H), 7.93-8.10 (m, 2H), 7.80 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.67-7.76 (m, 2H), 7.37-7.52 (m, 2H), 7.26-7.36 (m, 2H), 7.12-7.26 (m, 3H), 4.98 (dd, J = 11.6, 4.8 Hz, 1H), 4.27 (t, J = 11.6 Hz, 1H), 3.67 (dd, J = 11.2, 4.8 Hz, 1H)。
LCMS: RT = 1.063分, m/z = 474 (M+H)+。
【0103】
数多くの改変が、本発明の範囲から逸脱せずに、上述した実施形態のいずれにもなし得ると思われる。本明細書において言及されるいずれの参考文献、特許文献、又は科学文献文書も、事実上、それらの全部を参照により本明細書に援用する。
【国際調査報告】