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特表2023-521123吐出速度調節が容易であり、安定したボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形
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  • 特表-吐出速度調節が容易であり、安定したボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】吐出速度調節が容易であり、安定したボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20230516BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20230516BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20230516BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20230516BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61K38/16
A61M5/31 530
A61M5/315
A61L31/02
A61L31/04 110
A61P21/00
A61P25/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561492
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 KR2021003989
(87)【国際公開番号】W WO2021206360
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0042962
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0042966
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0042967
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513243723
【氏名又は名称】メディトックス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, チャンフン
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ジヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ヨンス
【テーマコード(参考)】
4C066
4C081
4C084
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD07
4C066EE14
4C066FF05
4C081AC09
4C081CA021
4C081CA031
4C081CA121
4C081CC01
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084CA04
4C084MA66
4C084NA20
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA941
4C084ZA942
(57)【要約】
吐出速度調節が容易であり、安定したボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器バレル、プランジャロッド及びプランジャストッパを含む注射器、及び
前記注射器内に充填されているボツリヌム毒素液状製剤を含み、
前記ボツリヌム毒素液状製剤が吐出される速度の増大により、前記プランジャロッドの末端に作用する力の増大量が低減するボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形。
【請求項2】
前記注射器バレルの内径に対する長さの比率が、10ないし22である、請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
前記注射器バレルの内径が3.5ないし6.5mmであり、長さが60ないし100mmである、請求項2に記載の剤形。
【請求項4】
前記注射器バレルの材質が、ガラス、COC、またはCOPである、請求項1に記載の剤形。
【請求項5】
前記プランジャストッパの材質が、イソプレンゴム(IS)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の剤形。
【請求項6】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、アルブミンを含まないものである、請求項1に記載の剤形。
【請求項7】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、動物性成分を含まないものである、請求項1に記載の剤形。
【請求項8】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、ボツリヌム毒素、アミノ酸、界面活性剤及び等張化剤を含む、請求項6または7に記載の剤形。
【請求項9】
前記アミノ酸は、メチオニンである、請求項8に記載の剤形。
【請求項10】
前記界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80またはポロキサマーである、請求項8に記載の剤形。
【請求項11】
ボツリヌム毒素液状製剤は、pHを、5.5ないし7.5に維持させる緩衝剤をさらに含む、請求項6または8に記載の剤形。
【請求項12】
前記緩衝剤は、シトレート、ヒスチジン、HEPES、アルギニン、酢酸、リン酸、それらの塩、またはそれらの混合物である、請求項11に記載の剤形。
【請求項13】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、80ないし125%のLD50力価回収率を示す、請求項1ないし8のうち、いずれか1項に記載の剤形。
【請求項14】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、80ないし125%のプロテアーゼ活性回収率を示す、請求項1ないし8のうち、いずれか1項に記載の剤形。
【請求項15】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、±1.0以内のpH変動を有する、請求項1ないし8のうち、いずれか1項に記載の剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出速度調節が容易であり、安定したボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
ボツリヌム毒素(BoNT)は、知られている最も強力な毒素のうち一つであり、末梢コリン性ニューロンからのアセチルコリン放出を遮断することをもって作用する。該ボツリヌム毒素は、非常に少ない用量で個体投与し、過活性化の筋肉及び外分泌腺を低減させるのに使用されている。例えば、該ボツリヌム毒素は、神経・筋疾患及び過活性化外分泌腺疾患の治療だけではなく、美容目的にも使用されている。
【0003】
該ボツリヌム毒素は、本来、不安定であり、特に、アルカリ性pHにおいて、高度に不安定であり、易熱性(heat-labile)であると知られている。それら短所を克服する医学投与形態は、事前充填された注射器方式であり、それは、最近数年間、薬物伝達装置として、だんだんとさらに人気を博することになった。しかしながら、タンパク質が活性成分として使用される場合、タンパク質の制限された安定性は、剤形化科学者が、事前充填された注射器方式を使用することを、特に困難にする作業で作った。特に、それは、非常に薄いボツリヌム毒素水溶液に適用される。
【0004】
薬剤学的ボツリヌム毒素組成物の安定性を増大させるために、ヒト血清アルブミン(HSA)のような安定化タンパク質が折々添加される。また、非タンパク質性安定剤、例えば、界面活性剤、ポリビニルピロリドン(PVP)、二糖類、ポリオールなどを添加することが知られている。
【0005】
しかしながら、前述の背景技術によっても、保存安定性が増大され、吐出速度調節が容易であり、安定したボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形への要求が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様は、注射器吐出速度調節が容易であり、安定したボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様は、注射器バレル、プランジャロッド及びプランジャストッパを含む注射器、並びに前記注射器内に充填されているボツリヌム毒素液状製剤を含むボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形を提供する。
前記剤形は、ボツリヌム毒素液状製剤が吐出される速度の増大により、前記プランジャロッドの末端に作用する力の増大量が低減するものでもある。
【0008】
本明細書で使用された用語「事前充填された注射器(prefilled syringe)」は、密封されうるか、あるいは密封され、液体剤形を収容、保存及び/または運送するのにも使用される、部分的にまたは完全に閉鎖された空間を有する注射器を示す。前記注射器は、有機重合体のようなプラスチックによって製造されるか、あるいは部分的または主に、プラスチックによって製造された閉鎖されたり密封されたりする容器を示す。
【0009】
前記事前充填された注射器は、内容物の漏出を防止するように密封された2個の開放部を有する。前記事前充填された注射器は、近位端部は、プランジャストッパによって密封され、遠位端部は、キャッピング装置によって密封される。
【0010】
前記バレルは、近位端部及び遠位端部、並びにそれら間で延長され、バレルルーメンを形成する概して円筒状である壁を含むものでもある。前記バレルは、それを通じて延長され、前記バレルルーメンと連通する流体通路を有する遠位に突出するチップを有しうる。前記近位端部及び前記遠位端部は、それぞれ近位端部開放出口及び遠位端部開放出口を有する。前記チップは、バレルの残り部分と同一材質を有するものでもある。//
【0011】
前記バレルは、充填後、注射器の遠位端部を密封式で閉鎖するためのキャッピング装置により(例えば、使用前に除去され、ニードルで代替される「チップキャップ」、または除去可能なまたは永久ニードルを有する事前充填された注射器の場合、ニードルシールドのような密封手段により)、除去可能にキャッピングされ、プランジャにより、あるいはバレルの内壁と流体気密結合された任意の他手段により、近位端部で閉鎖され、流体を収容する。事前充填された注射器を使用するためには、チップキャップ、ニードルシールド、または他類型のキャッピング装置を除去し、選択的に、ニードルを(まだない場合)付着させ、プランジャチップまたはピストンをバレル内で前進させ、バレル内の内容物、すなわち、ボツリヌム毒素製剤を患者に注射する。
【0012】
前記バレルの内部表面は、コーティングされうるか、あるいはコーティングされていないものである。前記バレルの内部表面は、例えば、潤滑目的のためのバリア層(以下において、「潤滑剤層」とも言う)にもコーティングされる。該潤滑剤層は、プランジャがバレルを介して容易にグライディングされるようにする高い潤滑性を提供しなければならないだけではなく、ボツリヌム毒素剤形との適合性(compatible)があり、その保存寿命を保証しなければならない。前記潤滑剤層は、シリコン無含有潤滑剤層またはシリコン潤滑剤層でもある。前記壁の内部表面は、シリコンによってコーティングされてもいる。すなわち、前記バリア層は、シリコン層でもある。
【0013】
前記シリコンコーティングは、シリコンオイル基盤方法(例えば、スプレーオン(spray-on)シリコン化またはベークトオン(baked-on)シリコン化)及び蒸着法(例えば、プラズマ向上化学蒸着(PECVD))のうちから選択されるシリコン化方法によっても製造される。前記シリコンコーティングは、例えば、スプレーオンシリコン化コーティングまたはベークトオンシリコン化コーティングによっても形成される。前記シリコンコーティングは、ポリジメチルシロキサンコーティングでもある。
【0014】
該スプレーオンシリコン化方法においては、例えば、ダイビング(diving)ノズルまたは静的(static)ノズルを使用し、シリコンオイル(例えば、粘度が1,000cStであるダウコーニング(DOW CORNING(R))360)を注射器、すなわち、バレル内に噴霧し、薄シリコンオイル層を生成することができる。該ベークトオンシリコン化方法は、エマルジョン、例えば、ダウコーニング(R)365シリコン化エマルジョンでもって、シリコンオイルをバレルに適用し、次に、特定温度で特定時間の間プラスチック表面上でベーキングすることを含むものでもある。該ベークトオンシリコン化方法は、該スプレーオンシリコン化方法に比べ、肉眼で見えないシリコンオイル粒子、及び肉眼で見えるシリコンオイル粒子をさらに少なくすることができる。
【0015】
前記注射器バレルの材質は、プラスチック材質を含むものでもある。前記材質は、ガラス、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、またはそれらの混合物でもある。前記COPは、その表面にシリコンコーティングされたものでもある。COCは、ノルボルネンのような環形単量体とエタンとの重合によって生成される一方、COPは、環形単量体の開環複分解後の水素化によっても生成される。COC、COP、COPとCOCとの混合物材料は、高い透明性、低い密度、卓越した水分バリア能、並びに水性及び極性の有機媒質に対する抵抗性を含む多数の望ましい特徴を示す。具体的な例には、トパス(Topas(R))COC及びダイキョー・クリスタルゼニス(Daikyo Crystal Zenith(R))が含まれる。
【0016】
前記バレルのチップは、バレルと一体にも形成される。例えば、前記チップは、バレルと一体にも成形される。前記バレルは、一体に形成されたルアーロックチップまたはルアースリップチップを含むものでもある。前記チップは、チップを介して軸方向に延長され、バレルの内容物を分配するために、チャンバと連通する一体型通路を含むものでもある。前記チップは、バレルの遠位出口端部からチップの出口端部に向けて収斂される実質的に截頭円錐形状を有しうる。
【0017】
前記バレルは、例えば、0.5ml、1.0ml、1.5mlまたは2.0mlの充填体積を収容するように調整された内径を有するものでもある。前記バレルは、注射器内の流体の体積を示す目盛り表示を有したものでもある。また、前記バレルは、フランジスタイル界面を含むものでもある。フランジの設計は、例えば、ISO11040と適合性があるものでもある。フランジスタイル界面は、選択的に存在するつまみと適合性があるものでもある。
【0018】
前記注射器バレルの内径に対する長さの比率は、10ないし22、12ないし20、または14ないし16でもある。
【0019】
前記注射器バレルの内径は、3ないし7mm、3.5ないし6.5mm、4ないし6mm、または4.5ないし5.5mmであり、長さは、30ないし130mm、50ないし110mm、60ないし100mm、または70ないし90mmでもある。前記注射器は、バレルの内径が3.5ないし6.5mmであり、長さは、60ないし100mmでもある。また、前記注射器は、バレルの内径が3ないし7mmであり、長さは、30ないし130mmでもある。また、前記注射器は、バレルの内径が4ないし6mmであり、長さは、50ないし110mmでもある。また、前記注射器は、バレルの内径が4.5ないし5.5mmであり、長さは、70ないし90mmでもある。
【0020】
前記プランジャロッドと前記プランジャストッパは、結合し、該プランジャロッドと該プランジャストッパとの組み立て体を形成することができる。前記組み立て体は、前記バレルの近位端部内にも延長される。前記組み立て体は、バレルルーメンの円筒状壁とスライディング流体気密結合された、そのチップにおけるプランジャストッパを有するロッドを含むものでもある。前記組み立て体は、近位密封部、及びボツリヌム毒素液状製剤の押出を可能にする動的密封部を形成する。前記ストッパは、保存及び/または投与の間、ボツリヌム毒素液状製剤と接触する。
【0021】
前記ストッパは、弾性重合体性材料によっても製造される。前記ストッパは、保存及び/または注射の間、ボツリヌム毒素液状製剤と接触するその少なくとも一部分上に、選択的にコーティングを有しうる。
【0022】
前記弾性重合体は、イソプレンゴム(IS)、ブタジエンゴム(ポリブタジエン(BR))、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとの共重合体(IIR))、ハロゲン化ブチルゴム(例えば、クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR))、スチレン・ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとの共重合体(SBR))、またはそれらの混合物でもある。一具体例において、前記ストッパ材質は、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、またはそれらの混合物でもある。一具体例において、前記ストッパ材質は、ブロモブチルゴムまたはクロロブチルゴムでもある。前記弾性重合体は、また不活性鉱物によっても補強される。また、前記弾性重合体は、例えば、有機パーオキシド、フェノール樹脂などによっても硬化される。
【0023】
前記ストッパは、コーティングされるか、あるいはコーティングされないものでもある。前記コーティングは、バレルルーメンに面しており、保存及び/または使用の間、ボツリヌム毒素剤形と接触するプランジャストッパの表面部分を含む、少なくとも密封部表面に通常適用されうる。前記コーティングは、プランジャストッパとボツリヌム毒素液状製剤との相互作用を最小化させながら、良好な潤滑性を提供するものでもある。
【0024】
プランジャストッパの適するコーティングは、一般的に、ボツリヌム毒素剤形を、望ましくないように妨害せず、低レベルの抽出可能物/浸出可能物を示す材料によって製造されたものでもある。前記コーティングは、ポリプロピレン、ポリエチレン、パリレン(例えば、パリレンN、パリレンC及びパリレンHT)、架橋結合されたシリコン、フルオロ重合体、またはそれらの混合物を含むものでもある。架橋結合されたシリコンコーティングの例は、B2-コーティング(大協精工)またはXSiTM(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson))が含まれる。
【0025】
フルオロ重合体コーティングは、フルオロ化されたエチレン・プロピレン共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP))、フルオロ化されたエチレン・エチレン共重合体(例えば、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)(例えば、フルロテック(R))、PVA(テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)との共重合体)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(テフロン(登録商標))、またはそれらの混合物でもある。例えば、前記コーティングは、ETFEによって製造され、特に、フルロテック(R)コーティングである。一具体例において、前記プランジャストッパは、コーティングされていないものでもある。
【0026】
該プランジャストッパの設計は、特別に限定されるものではなく、ネスト型(nested)ストッパまたはバッグ型(bagged)ストッパでもある。また、ロッドに対する界面には、ネジ山が形成され、滅菌後、ロッド設置を可能にする。代案としては、ロッドに対する界面は、スナップオン(snap-on)設計によっても設計される。該プランジャストッパのようなロッドは、大体において、滅菌に耐えるように設計されるが、任意の特定方式によって取り立てて制限されるものではない。該ロッドは、エチレンビニルアセテート(EVA)共重合体またはポリプロピレンのようなプラスチック材料によっても製造される。
【0027】
図1は、ニードルを含む事前充填された注射器の例を示した図面である。事前充填された注射器は、バレル10、プランジャロッド20及びプランジャストッパ30を含むプランジャ80、ニードル50、並びに前記バレル10のルーメンに含まれているボツリヌム毒素液状製剤40を含む。
【0028】
前記事前充填された注射器は、「キャッピング装置」を含むものでもある。前記キャッピング装置は、注射器の遠位開放出口端部を閉鎖及び密封するための任意の手段を広範囲に称する。本発明において、用語「開放出口端部」または「遠位開放出口端部」は、バレルルーメンと流体連通する注射器の任意の遠位開放端部を称する。該キャッピング装置は、大体のところ、注射器の開放出口端部を収容し、効率的に密封し、漏出を防止するための寸法を有する、閉鎖端部及び開放端部を有するチャネルを有しうる。
【0029】
事前装着されたニードルがない事前充填された注射器の場合、該キャッピング装置は、「チップキャップ」と通常公知されたキャッピング手段である。該チップキャップは、注射器のチップと共に、流体気密密封部を形成し、注射器バレルを効率的に閉鎖し、注射器バレルの内容物の漏出を防止する。該チップキャップは、通常、注射器チップまたはルアーカラーに除去可能にカップリングされる。該ルアーカラーは、注射器バレルの上部(例えば、注射器チップ)を取り囲む。該ルアーカラーは、内部ネジ山を有し、該チップキャップは、該チップキャップを注射器バレルにカップリングするため、前記ルアーカラーの前記内部ネジ山に相補的な外部ネジ山を有するものでもある。本発明の事前充填された注射器の場合、該ルアーカラーは、一般的に注射器バレルと一体に形成される。使用前、チップキャップを除去することができ、次に、ニードルカニューレ(ニードル組み立て体)を注射器チップにしっかりとカップリングすることができる。
【0030】
図2は、チップキャップを含む事前充填された注射器の例を示した図面である。事前充填された注射器は、バレル10、プランジャロッド20及びプランジャストッパ30を含むプランジャ80、バレルの末端に形成されたチップ100、前記チップに形成されたスレッド(threads)を有するルアーカラー(luer collar)110、前記ルアーカラーとの結合によってチップに固定されたチップキャップ120、並びに前記バレル10のルーメンに含まれているボツリヌム毒素液状製剤40を含む。
【0031】
事前充填された注射器が、前記注射器からボツリヌム毒素製剤を伝達するために、注射器チップから延長される除去可能であるか、あるいは除去可能ではない(すなわち、永久である)カニューレまたはニードルカニューレ(「ニードル」または「ニードル組み立て体」とも称される)を含む場合、キャッピング装置は、「ニードルシールド」とも称される。前記ニードルシールドは、大体のところ、注射器のチップ上に装着されたカニューレ(ニードル)を収容し、それとカップリングするための寸法を有する、閉鎖端部及び開放端部を有するチャネルを有しうる。典型的には、カニューレの(鋭い)端部は、カニューレの開放端部を密封するように、ニードルシールド内のチャネルの閉鎖端部を貫通することができる。
【0032】
図3は、ニードル組み立て体及びニードルシールドを含む事前充填された注射器の例を示した図面である。事前充填された注射器は、バレル10、プランジャロッド20及びプランジャストッパ30を含むプランジャ80、ニードル50、ニードル組み立て体60、ニードルシールド70、並びに前記バレル10のルーメンに含まれているボツリヌム毒素液状製剤40を含む。
【0033】
キャッピング装置(例えば、チップキャップまたはニードルシールド)は、単一部材でもあり、あるいは通常、可撓性及び弾力性の重合体材料(例えば、弾性重合体)によっても製造されるか、可撓性及び弾力性の内部キャップにカップリングされた剛性プラスチック材料、あるいは、例えば、弾性重合体を含むか、あるいはそれによって製造された材料によって製造された外部キャップを有し、その少なくとも一部分は、注射器の遠位開放部と接触し、それを密封する。一般的に、遠位チップ開放部と接触し、流体気密密封部を形成する少なくとも出口結合部分は、可撓性及び/または弾力性の材料(例えば、弾性重合体)によって製造され、該結合部分は、保存及び/または使用の間、ボツリヌム毒素製剤と接触しるう。前記出口結合部分は、所望しない抽出可能物/浸出可能物の可能性を最小化させる材料によって製造されたものでもある。抽出可能物及び/または浸出可能物の量を追加して低減させ、ボツリヌム毒素製剤との適合性を増大させるために、出口結合部分は、その上にコーティングを有しうる。
【0034】
キャッピング装置の、特に、出口結合部分の適する可撓性及び/または弾力性の材料には、水性ボツリヌム毒素製剤を妨害せず、長期間保存を可能にする弾性重合体が含まれうる。特に、ボツリヌム毒素剤形と接触する、または接触するように構成される密封装置の一部、例えば、出口結合部分は、ボツリヌム毒素製剤の長期間保存の間、低い抽出可能物/浸出可能物レベルを示さなければならない。本明細書に使用された用語「弾性重合体」または「弾性重合体性材料」は、プラスチックよりさらに容易に変形可能であるが、薬学等級流体との使用が承認され、容易に浸出またはガス移動されない架橋結合された熱硬化性ゴム質重合体を含むものでもある。
【0035】
前記弾性重合体性材料は、イソプレンゴム(IS)、ブタジエンゴム(ポリブタジエン(BR))、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとの共重合体(IIR))、ハロゲン化ブチルゴム(例えば、クロロブチルゴム(CIIR)及びブロモブチルゴム(BIIR))、スチレン・ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとの共重合体(SBR))、またはそれらの混合物でもある。例えば、該弾性重合体性材料は、ブチルゴムまたはハロゲン化ブチルゴム、特に、ブロモブチルゴムまたはクロロブチルゴム、またはそれらの混合物でもある。該弾性重合体性材料は、また不活性鉱物によっても補強される。また、該弾性重合体性材料は、例えば、有機パーオキシド、フェノール樹脂などによっても硬化される。
【0036】
前述の弾性重合体性材料によって製造された出口結合部分上に、選択的に存在しうる適するコーティングは、一般的に、水性ボツリヌム毒素製剤を望ましくないように妨害せず、低レベルの抽出可能物/浸出可能物を示す材料によっても製造される。本発明に使用するためのコーティングには、ポリプロピレン、ポリエチレン、パリレン(例えば、パリレンN、パリレンC及びパリレンHT)、架橋結合されたシリコン、または、フルオロ重合体コーティングが含まれるものでもある。適する架橋結合されたシリコンコーティングの例には、B2-コーティング(大協精工)またはXSiTM(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson))が含まれる。
【0037】
フルオロ重合体コーティングには、フルオロ化されたエチレン・プロピレン共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP))、フルオロ化されたエチレン・エチレン共重合体(例えば、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、例えば、フルロテック)、PVA(テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)との共重合体)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの混合物が含まれるものでもある。該コーティングは、例えば、ETFEによって製造され、フルロテックコーティングでもある。
【0038】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、水性製剤でもある。前記水性製剤は、水性懸濁液、水性分散液、水性エマルジョンまたは水溶液を含むものでもある。
【0039】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、ボツリヌム毒素の濃度が、例えば、約1ないし約3,000U/mL、約10ないし約1,000U/mL、約10ないし約400U/mL、約10ないし約200U/mL、約10ないし約100U/mL、約10ないし約70U/mL、約20ないし約60U/mL、または約40U/mLでもある。
【0040】
前記ボツリヌム毒素液状製剤の容量は、10ないし80、10ないし50、20ないし80、20ないし60、20ないし50、30ないし80、40ないし80、20ないし40、または25ないし35ユニット/注射器でもある。
【0041】
本明細書に使用された用語「ボツリヌム毒素」は、任意の形態またはタイプのボツリヌム毒素を広範囲に称する。さらに具体的には、該ボツリヌム毒素は、ボツリヌム毒素タイプA,B,C1,C2,D,E,F,G、またはそれらの混合物でもある。例えば、ボツリヌム毒素は、血清型A,BまたはC1でもある。
また、用語「ボツリヌム毒素」は、ボツリヌム毒素複合体(「毒素複合体」)及びボツリヌム毒素または複合体の「神経毒性成分」のいずれも含むように意図される。本明細書において使用された用語「ボツリヌム毒素複合体」は、およそ150kDaの神経毒性成分と、また血球凝集素及び非血球凝集素タンパク質と、を含む、クロストリジウムボツリヌムの非毒性タンパク質を含む高分子量複合体を称する。ボツリヌム毒素血清型A複合体は、例えば、メディトキシン(メディトックス社)でもある。
【0042】
本明細書に使用された、用語「神経毒性成分」は、任意の関連非毒性タンパク質がない、毒素複合体の神経毒性ポリペプチド(「150kDa」ポリペプチド(一般的に、その二本鎖形態)に係わるものである。純粋な神経毒性成分は、例えば、コアトックスinj(メディトックス社)でもある。例えば、用語「ボツリヌム毒素」は、与えられた血清型(例えば、血清型A,BまたはC1、特に、血清型A)のボツリヌム毒素複合体の神経毒性成分を意味する。言い換えれば、事前充填された注射器内に入っているボツリヌム毒素剤形は、前記神経毒性成分のみを含み、クロストリジウムボツリヌム毒素複合体の任意の他タンパク質は、ないものでもある。
【0043】
前記ボツリヌム毒素は、野生型ボツリヌム毒素、例えば、ジェンバンク(GenBank)データベースに、受託番号AAA23262で寄託された野生型ボツリヌム毒素Aまたは血清型A1のボツリヌム毒素の神経毒性成分のアミノ酸配列に対し、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上または90%以上の配列同一性(sequence identity)を示すボツリヌム毒素の作用性(すなわち、生物学的活性)イソ型(isoform)、ホモログ(homolog)、オーソログ(ortholog)、パラログ(paralog)または断片(fragment)を含む。
【0044】
該配列同一性は、信頼し得る結果を算出するのに適する任意のアルゴリズムにより、例えば、FASTAアルゴリズム(文献[WR Pearson & DJ Lipman, PNAS 85: 2444-2448, 1988])を使用しても計算される。該配列同一性は、2個のポリペプチド、あるいはその2個のLCドメインまたは断片のような、2個のドメインを比較することによっても計算される。
【0045】
前記ボツリヌム毒素は、変形ボツリヌム毒素及び組み換えボツリヌム毒素を含む。
前記ボツリヌム毒素液体製剤は、他の薬剤学的に許容可能な物質、例えば、塩(例えば、塩化ナトリウム)、安定化タンパク質(例えば、アルブミン、ゼラチン)、糖(例えば、グルコース、フラクトース、ガラクトース、トレハロース、スクロース及びマルトース)、炭水化物重合体(例えば、ヒアルロン酸及びポリビニルピロリドン(PVP))、ポリオール(例えば、マンニトール、イノシトール、ラクチトール、イソマルト、キシリトール、エリスリトール、ソルビトールのような糖アルコール及びグリセロール)、アミノ酸、ビタミン(例えば、ビタミンC)、亜鉛、マグネシウム、麻酔剤(例えば、リドカインのような局所麻酔剤)、界面活性剤、張性調節剤(tonicity modifier)などを含むものでもある。本明細書に使用された用語「薬剤学的に許容可能」は、哺乳類、特に、ヒト組織と接触するのに適する化合物または物質を称する。
【0046】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、動物性成分を含まないものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、アルブミンを含まないものでもある。例えば、前記ボツリヌム毒素液状製剤は、水中において、ボツリヌム毒素、アミノ酸、界面活性剤及び張性調節剤を含むものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、例えば、水中において、10ないし70U/mlのボツリヌム毒素、0.05ないし0.7g/Lアミノ酸、0.10ないし0.5g/Lの界面活性剤、及び0.10ないし1.0g/LのNaClを含むものでもある。前記ボツリヌム毒素は、ボツリヌム毒素タイプA,B,C1,C2,D,E,F,G、またはそれらの混合物でもある。前記アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、その薬剤学的に許容可能な塩、またはそれらの混合物でもある。前記アミノ酸は、例えば、メチオニン、ヒスチジン、アルギニン、その薬剤学的に許容可能な塩、またはそれらの混合物でもある。前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤でもある。前記非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマー、またはそれらの混合物でもある。前記ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、またはその混合物でもある。前記NaClは、生理的に許容可能な濃度、例えば、約0.85ないし0.95g/L、または約0.9g/Lで添加されたものでもある。
【0047】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、pHを、約5.5ないし約7.5に維持させる緩衝剤をさらに含むものでもある。前記緩衝剤は、シトレート、ヒスチジン、HEPES、アルギニン、酢酸、リン酸、それらの塩、またはそれらの混合物でもある。
【0048】
前記ボツリヌム毒素製剤のpHは、保存の間、約5.5ないし約7.5、約6.0ないし約7.5、約6.5ないし約7.5、約6.1ないし約7.3、または約6.2ないし約7.2の範囲に維持されるものでもある。
【0049】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、75ないし125%、75ないし120%、または80ないし125%のLD50力価回収率を示すものでもある。
【0050】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、75ないし125%、75ないし120%、または80ないし125%のプロテアーゼ活性回収率を示すものでもある。
【0051】
前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、±1.5、±1.0または±0.5以内のpH変動を有するものでもある。
【0052】
一具体例は、注射器バレル、プランジャロッド及びプランジャストッパを含む注射器、並びに前記注射器内に充填されているボツリヌム毒素液状製剤を含み、前記ボツリヌム毒素液状製剤が吐出される速度の増大により、前記プランジャロッドの末端に作用する力の増大量が低減するボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形でもある。
【0053】
前記具体例において、前記注射器バレルの内径に対する長さの比率が、10ないし22でもある。前記注射器バレルの内径が3.5ないし6.5mmであり、長さが60ないし100mmでもある。前記注射器バレルの材質が、ガラス、COC、またはシリコンコーティングされたCOPでもある。前記注射器バレルの材質が、COCでもある。前記シリコンコーティングが、スプレーオンシリコンコーティング、ベークトオンシリコンコーティングまたはポリジメチルシロキサンコーティングでもある。前記プランジャストッパの材質が、イソプレンゴム(IS)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、またはそれらの混合物でもある。前記プランジャストッパは、コーティングされていないものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤の容量は、10ないし50ユニット/注射器でもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、アルブミンを含まないものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、動物性成分を含まないものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、ボツリヌム毒素、アミノ酸、界面活性剤及び等張化剤を含むものでもある。前記アミノ酸は、メチオニンでもある。前記界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80またはポロキサマーでもある。該ボツリヌム毒素液状製剤は、pHを、5.5ないし7.5に維持させる緩衝剤をさらに含むものでもある。前記緩衝剤は、シトレート、ヒスチジン、HEPES、アルギニン、酢酸、リン酸、それらの塩、またはそれらの混合物でもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、80ないし125%のLD50力価回収率を示すものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、80ないし125%のプロテアーゼ活性回収率を示すものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、±1.0以内のpH変動を有するものでもある。
【0054】
他の具体例は、注射器バレル、プランジャロッド及びプランジャストッパを含む注射器、並びに前記注射器内に充填されているボツリヌム毒素液状製剤を含み、前記注射器バレルの材質が、ガラス、COC、またはシリコンコーティングされたCOPでもあるボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形でもある。
【0055】
前記具体例において、前記注射器バレルの材質が、COCでもある。前記シリコンコーティングが、スプレーオンシリコンコーティング、ベークトオンシリコンコーティングまたはポリジメチルシロキサンコーティングでもある。前記プランジャストッパの材質が、イソプレンゴム(IS)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、またはそれらの混合物でもある。前記プランジャストッパは、コーティングされていないものでもある。前記ボツリヌムトキシン液状製剤が吐出される速度の増大により、前記プランジャロッドの末端に作用する力の増大量が低減するものでもある。前記注射器バレルの内径に対する長さの比率が、10ないし22でもある。前記注射器バレルの内径が3.5ないし6.5mmであり、長さが60ないし100mmでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤の容量は、10ないし50ユニット/注射器でもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、アルブミンを含まないものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、動物性成分を含まないものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、ボツリヌム毒素、アミノ酸、界面活性剤及び等張化剤を含むものでもある。前記アミノ酸は、メチオニンでもある。前記界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80またはポロキサマーでもある。該ボツリヌム毒素液状製剤は、pHを、5.5ないし7.5に維持させる緩衝剤をさらに含むものでもある。前記緩衝剤は、シトレート、ヒスチジン、HEPES、アルギニン、酢酸、リン酸、それらの塩、またはそれらの混合物でもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、80ないし125%のLD50力価回収率を示すものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、80ないし125%のプロテアーゼ活性回収率を示すものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、±1.0以内のpH変動を有するものでもある。
【0056】
他の具体例は、注射器バレル、プランジャロッド及びプランジャストッパを含む注射器、並びに前記注射器内に充填されているボツリヌム毒素液状製剤を含み、前記ボツリヌム毒素液状製剤は、アルブミンを含まないものであるボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形でもある。
【0057】
前記具体例において、注射器バレル、プランジャロッド及びプランジャストッパを含む注射器、並びに前記注射器内に充填されているボツリヌム毒素液状製剤を含み、前記ボツリヌム毒素液状製剤は、動物性成分を含まないものであるボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形でもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、ボツリヌム毒素、アミノ酸、界面活性剤及び等張化剤を含むものでもある。前記アミノ酸は、メチオニンでもある。前記界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80またはポロキサマーでもある。ボツリヌム毒素液状製剤は、pHを、5.5ないし7.5に維持させる緩衝剤をさらに含むものでもある。前記緩衝剤は、シトレート、ヒスチジン、HEPES、アルギニン、酢酸、リン酸、それらの塩、またはそれらの混合物でもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤の容量は、10ないし50ユニット/注射器でもある。前記注射器バレルの材質が、ガラス、COC、またはシリコンコーティングされたCOPでもある。前記注射器バレルの材質が、COCでもある。前記シリコンコーティングが、スプレーオンシリコンコーティング、ベークトオンシリコンコーティングまたはポリジメチルシロキサンコーティングでもある。前記プランジャストッパの材質が、イソプレンゴム(IS)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、またはそれらの混合物でもある。前記プランジャストッパは、コーティングされていないものでもある。前記ボツリヌムトキシン事前充填された注射器剤形は、ボツリヌムトキシン液状製剤が吐出される速度の増大により、前記プランジャロッドの末端に作用する力の増大量が低減するものでもある。前記注射器バレルの内径に対する長さの比率が、10ないし22でもある。前記注射器バレルの内径が3.5ないし6.5mmであり、長さが60ないし100mmでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、80ないし125%のLD50力価回収率を示すものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、80ないし125%のプロテアーゼ活性回収率を示すものでもある。前記ボツリヌム毒素液状製剤は、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、±1.0以内のpH変動を有するものでもある。
【発明の効果】
【0058】
一態様によるボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形によれば、加速試験条件である25℃において、2,4または6ヵ月間保管したとき、初期値対比で、LD50力価、ボツリヌム毒素エンドペプチダーゼ力価及びpHが安定するようにも維持される。また、前記ボツリヌム毒素事前充填の注射器剤形によれば、吐出速度調節が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】ニードルを含む事前充填された注射器の例を示した図である。
図2】チップキャップを含む事前充填された注射器の例を示した図である。
図3】ニードル組み立て体及びニードルシールドを含む事前充填された注射器の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0061】
実施例1:ボツリヌム毒素事前充填された液状注射器剤形の安定性:COC材質またはCOP材質によってなるバレルを有する注射器
1.ボツリヌム毒素事前充填された液体製剤の製造
本実施例においては、高度に粘性がある薬物(HVD:highly viscous drug)に使用するための注射器(以下、「HVD注射器」とも言う)に、液体ボツリヌム毒素製剤を充填し、保管期間による安定性を測定した。前記HVD注射器は、内径が5.00mmであり、外径が9.40mmであり、バレル長が80.0mmであり、液体製剤が充填される体積が0.8mLであった。参考までに従来知られた注射器の一例として、SCHOTT社のTopPacTM注射器は、内径が6.50mmであり、外径が9.40mmであり、バレル長が64.5mmであり、液体製剤が充填される体積が1mLである。すなわち、前記HVD注射器は、TopPacTM注射器に比べ、内径が小さな一方、長さが長い。TopPacTM注射器は、バレル、プランジャ、プランジャロッド及びチップキャップを含み、前記バレルは、COC材質によってなり、ルアーロック(luer lock)が形成されている。バレル内部表面は、反応性シリコン混合物によってシリコン化された後、キュアリングによって架橋されている。前記チップキャップは、ゴム(Datwyler社)によってなっている。該HVD注射器は、TOPAS 6015材質によってなるCOC材質を含み、耐熱性が向上されているものである。
【0062】
また、前記HVD注射器において、バレルの材質、プランジャストッパの材質、及びそのコーティングに使用される材質、並びに前記バレルに充填される水性液体ボツリヌム毒素製剤の組成による安定性を測定した。ここで、前記注射器は、プラスチック注射器バレル、キャッピング装置及びプランジャロッド組み立て体を含む。前記バレルは、近位端部及び遠位端部、並びにそれら間で延長され、バレルルーメンを形成する、概して円筒状である壁を含む。前記バレルは、それを介して延長され、前記バレルルーメンと連通する流体通路を有する、遠位に突出するチップを有し、前記概して円筒状である壁は、バリア層によって選択的にコーティングされた内部表面を有する。本実施例において、前記壁の内部表面は、シリコンによってコーティングされたもの、すなわち、前記バリア層は、シリコン層である。また、本実施例において前記バレルは、COC材質またはCOP材質を有する。
【0063】
前記キャッピング装置は、前記バレルの遠位端部の開放出口と密封式で結合し、それを閉鎖する出口結合部分を有する。バレルの遠位端部に対する前記キャッピング装置は、キャップとゴムチップキャップとによって構成されており、該キャップは、ポリカーボネート材質であり、該ゴムチップキャップは、プランジャと同一材質によって構成されている。ここで、前記ゴムチップキャップは、前記出口結合部分に該当する。前記出口結合部分は、表面上に選択的にコーティングを有する弾性重合体性材料によって製造される。前記出口結合部分とキャッピング装置は、ルアーロック形態に結合される。
【0064】
前記プランジャロッド組み立て体は、前記バレルの近位端部内に延長され、前記バレルルーメンの前記円筒状壁とスライディング流体気密結合されたプランジャストッパを含み、前記ストッパは、弾性重合体性材料によって製造され、保存及び/または注射の間、水性液体ボツリヌム毒素製剤と接触する前記ストッパの少なくとも一部分上に、選択的にコーティングを有する。本実施例において、前記ストッパの材質は、ブロモブチルゴム(BIIR)またはクロロブチルゴム(CIIR)であり、それらは、選択的にテフロン(登録商標)によってコーティングされている。
【0065】
表1は、本実施例に使用された、水中に液体ボツリヌム毒素製剤が事前充填されたボツリヌム毒素事前充填された注射器製剤を示したものである。
【表1】
【0066】
表1において、COCは、環状オレフィンコポリマー(cyclic olefin copolymer)を示し、COPは、環状オレフィンポリマー(cyclic olefin polymer)を示す。BIIR及びCIIRは、それぞれブロモクロロブチルゴム(IIR)及びクロロブチルゴム(IIR)を示す。プランジャストッパの材質は、ゴム部分の材質を示す。ここで、ブチルゴム(IRR)は、イソブチレンとイソプレンとの共重合体である。テフロン(登録商標)コーティングは、FluroTec(R)フィルムでもって、BIIR表面またはCIIR表面をコーティングしたものを示す。L-Met、T20、NaCl及びトキシンは、水、すなわち、注射用水内に溶けているL-メチオニン、ポリソルベート20、NaCl及びボツリヌム毒素タイプA成分の量を示す。
【0067】
前記製剤は、前記バレルのルーメン内に、前記プランジャロッド組み立て体を結合させ、プランジャのストッパが、前記液体製剤と接触しながら、前記液体製剤を密封するようにした。また、前記バレルの遠位端部の出口結合部分は、前記キャッピング装置と密封式で結合し、開放出口を閉鎖した。注射器とキャッピング装置は、一体型になっており、該キャッピング装置は、使用直前に除去される。このとき、液体は、該キャッピング装置内部にあるゴムチップキャップと接触することになる。
すなわち、事前充填された注射器ボツリヌム液体製剤は、注射器に注射針が結合されておらず、キャップピング装置と結合されている状態である。
その結果、注射器バレルの材質は、COC及びCOPによって選択され、プランジャのストッパは、ブロモブチルゴム及びクロロブチルゴム、並びにそのテフロン(登録商標)コーティングによって選択される4種の注射器に、メチオニンとポリソルベート20との濃度を両者において異にし、総8種の事前充填された注射器ボツリヌム液体製剤を準備した。
【0068】
2.事前充填された注射器剤形の長期安定性試験
(1)力価試験
準備された8個剤形、すなわち、A剤形ないしH剤形を、安定性検体保管室に4℃に保管し、0,3,6,9,12,18及び24ヵ月時点のマウス半数致死量(LD50)を測定した。
【0069】
8個剤形の液体試料を、それぞれ段階希釈させた後、体重が17ないし22gである4週齢メスICRマウスの腹腔に投与した。投与後、3日間、各希釈試料に対する致死率を観察し、統計プログラムPROBITを利用し、半数致死量を求めた。0ヵ月時点の半数致死量を100%に設定し、各時点において得られた半数致死量が変化する傾向性を%で示した。表2は、剤形A,B,C,D,E,F,G及びHの保管期間による半数致死量を示した表である。
【表2】
【0070】
表2に示されているように、24ヵ月目において、剤形AないしFの回収致死量値は、73%以上と測定されたが、剤形G及びHは、9ヵ月目から回収致死量値が測定されていない。それは、プランジャストッパ材質が、BIIRまたはCIIRであるかということ、またはプランジャストッパの表面がテフロン(登録商標)コーティングされているか否かということにかかわらず、バレルがCOC材質によってなっており、シリコンコーティングされている場合、ボツリヌム毒素は、24ヵ月間安定しているということを示す。一方、バレル材質がCOPである場合、該注射器内において、9ヵ月目から回収力価が測定されていない。
【0071】
(2)ボツリヌム毒素エンドペプチダーゼ力価分析
前述の8個事前充填された注射器剤形AないしHを、安定性チャンバに保管し、0,3,6,9,12,18及び24ヵ月時点のBoNTA/LCの活性を測定した。
96ウェルプレートの各ウェルに、70個あまりのアミノ酸配列によってなるSNAP25(自体製作)断片100μlを入れ、2ないし8℃で16時間インキュベーションした。前記SNAP25断片は、197番と198番とのアミノ酸間の切断部位を含む10個以上の連続アミノ酸配列を含む。
【0072】
BoNTA標準品(イノトックス(メディトックス社))を利用して定量曲線を求めることができる標準試料であるBONTA試料を調製し、剤形AないしH試料の結果値が、定量曲線範囲に含まれるように、HEPES溶液(シグマ社)内にBONTAを希釈させ、試験試料を製造した。標準試料と試験試料AないしHとのそれぞれを、SNAP25が含まれているウェルに入れ、常温で1時間反応させた。次に、各ウェルに、抗SNAP25多クローン抗体(自体製作)を添加し、常温で1時間反応させた。HRPが結合された二次抗体を常温で1時間反応させた後、発色試薬3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB:3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine)を添加し、インキュベーションし、発色反応を行わせた。
【0073】
プレート読取り機(microplate reader(TECAN社))でもって450nmにおける吸光度を測定し、BoNT/LCの活性による発色程度を数値化させ、標準試料の吸光値を利用し、定量曲線を求めた。試料AないしHの吸光度値を定量曲線に代入し、各試料が有しているBoNT/LCの活性を計算した。0ヵ月時点のBoNT/LCの活性を100%に設定し、各時点において得られたBoNT/LCの活性が変化する傾向性を%で示した。表3は、保管期間による剤形A内ないしH内に含まれているBoNTAのエンドペプチダーゼ活性を示した表である。
【表3】
【0074】
表3に示されているように、24ヵ月目において、剤形AないしFの回収力価は、初期対比で、111ないし141%に維持されたが、剤形G及びHは、9ヵ月目から回収力価が測定されていない。
【0075】
(3)pH安定性
8個事前充填された注射器剤形AないしHの0,3,6,9,12,18及び24ヵ月時点において、各試料を15mL一回使用チューブに、3mL以上になるように入れ、pHメーター(メトラー・トレド社)でもって、各試料のpHを測定した。表4は、保管期間による剤形AないしHのpH変化を示した表である。
【表4】
【0076】
表4に示されているように、剤形AないしFのpHは、24ヵ月目において、6.8ないし7.4に維持されたが、剤形G及びHは、活性が測定された6ヵ月目において、pH5.3ないし5.9に維持された。
【0077】
実施例2:ボツリヌム毒素事前充填された液状注射器剤形の安定性:ガラスまたはCOP材質によってなるバレルを有する注射器
1.ボツリヌム毒素事前充填された液体製剤の製造
下記表5のボツリヌム毒素事前充填された液体製剤を製造した。このとき、注射器は、表1に記載されたHVD注射器であり、内径が5.00mmであり、外径が9.40mmであり、バレル長が80.0mmであり、液体製剤が充填される体積が0.8mLでもある。
【表5】
【0078】
表5において、剤形I及びJのバレルは、POONGLIM Pharmatech Inc.(カタログ番号:Art.69、韓国)の製品であり、剤形K及びLのバレルは、SiO Medical Products Inc.(カタログ番号:850009-100-04、米国)の製品であり、剤形M及びNのバレルは、テルモ社(カタログ番号:PJ-B1L9BFTF1、日本)の製品である。ボツリヌム毒素は、メディトックス社のBTX1301(API配置番号)であり、BoNTAである。表5において、COCは、環状オレフィンコポリマーを示し、COPは、環状オレフィンポリマーを示す。BIIR及びCIIRは、それぞれブロモブチルゴム(IIR)及びクロロブチルゴム(IIR)を示す。ここで、ブチルゴム(IRR)は、イソブチレンとイソプレンとの共重合体である。L-Met、T20、NaCl、及びトキシンは、水中に溶けているL-メチオニン、ポリソルベート20、NaCl及びボツリヌム毒素タイプA成分の量を示す。それら成分を含む液体は、pHが6.0ないし7.0であった。
【0079】
前記製剤は、前記バレルのルーメン内に、前記プランジャロッド組み立て体を結合させ、プランジャのストッパが前記液体製剤と接触しながら、前記液体製剤を密封するようにした。また、前記バレルの遠位端部の出口結合部分は、前記キャッピング装置と密封式で結合し、開放出口を閉鎖した。すなわち、事前充填された注射器ボツリヌム液体製剤は、注射器は、注射針が結合されておらず、キャップピング装置と結合されている状態である。
【0080】
その結果、注射器バレルの材質は、ガラス及びCOPのうちから選択され、プランジャストッパは、ブロモブチルゴム及びi-コーティングのうちから選択される3種の注射器に、メチオニンとポリソルベート20との濃度を両者において異にさせ、総6種の事前充填された注射器ボツリヌム液体製剤IないしNを準備した。
【0081】
2.事前充填された注射器剤形IないしNの安定性試験
(1)力価試験
準備された6個剤形、すなわち、IないしN剤形試料を、加速試験条件における実験のために、恒温恒湿器(Binder社)において25℃で保管した。長期保管試験のために、前記試料を安定性検体保管室において4℃で保管した。保管後、0,2,3,4、及び6ヵ月時点のマウス半数致死量(LD50)を測定した。
【0082】
6個剤形の液体試料を、それぞれ段階希釈させたた後、体重が17ないし22gである4週齢メスICRマウスの腹腔に投与した。投与後、3日間、各希釈試料に対する致死率を観察し、統計プログラムPROBITを利用し、半数致死量を求めた。0ヵ月時点の半数致死量を100%に設定し、各時点において得られた半数致死量が変化する傾向性を%で示した。表6は、剤形I,J,K,L,M及びNの保管期間による半数致死量を示した表である。
【表6】
【0083】
表6に示されているように、6ヵ月目において、6種の事前充填された注射器剤形IないしNは、力価は、初期力価対比で、86ないし108%範囲に維持された。
【0084】
(2)ボツリヌム毒素エンドペプチダーゼ力価分析
前記6個事前充填された注射器剤形IないしNを安定性チャンバに保管し、0,2,3,4及び6ヵ月時点のBoNTA/LCの活性を測定した。
【0085】
96ウェルプレートの各ウェルに、70個あまりのアミノ酸配列によってなるSNAP25(自体製作)断片100μlを入れ、2ないし8℃で16時間インキュベーションした。前記SNAP25断片は、197番と198番とのアミノ酸間の切断部位を含む10個以上の連続アミノ酸配列を含む。
【0086】
BoNTA標準品(イノトックス(メディトックス社))を利用し、定量曲線を求めることができる標準試料であるBONTA試料を調製し、剤形AないしH試料の結果値が定量曲線範囲に含まれるように、HEPES溶液(シグマ社)内にBONTAを希釈させ、試験試料を製造した。標準試料と試験試料AないしHとのそれぞれを、SNAP25が含まれているウェルに入れ、常温で1時間反応させた。次に、各ウェルに、抗SNAP25多クローン抗体(自体製作)を添加し、常温で1時間反応させた。HRPが結合された二次抗体を常温で1時間反応させた後、発色試薬3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を添加し、インキュベーションし、発色反応を行わせた。
【0087】
プレート読取り機(TECAN社)でもって、450nmにおいて吸光度を測定し、BoNT/LCの活性による発色の程度を数値化させ、標準試料の吸光値を利用し、定量曲線を求めた。試料IないしNの吸光度値を定量曲線に代入し、各試料が有しているBoNT/LCの活性を計算した。0ヵ月時点のBoNT/LCの活性を100%に設定し、各時点において得られたBoNT/LCの活性が変化する傾向性を%で示した。表7は、保管期間による剤形IないしN内に含まれているBoNTAのエンドペプチダーゼ活性を示した表である。
【表7】
表7に示されているように、6ヵ月目において、剤形IないしNの回収力価は、初期対比で、53ないし94%に維持された。
【0088】
(3)pH安定性
6個事前充填された注射器剤形IないしNの一定時点において、各試料を15mL一回使用チューブに3mL以上になるように入れ、pHメーター(メトラー・トレド社)でもって、各試料のpHを測定した。表8は、保管期間による剤形IないしNのpH変化を示した表である。前記時点は、加速条件実験は、0,2,4及び6ヵ月であり、長期保存実験は、0,3及び6ヵ月である。
【表8】
表8に示されているように、6ヵ月目まで、剤形IないしNのpHは、7.1ないし7.9に維持された。
【0089】
実施例3:ボツリヌム毒素事前充填された液状注射器剤形の安定性:アルブミンの影響
1.ボツリヌム毒素事前充填された液体製剤の製造
下記表9に示されているように、ヒト血清アルブミンを含み、L-Metとポリソルベート20とを含んでいない剤形Oと、ヒト血清アルブミンを含んでいない代わりに、L-Metとポリソルベート20とを含む剤形Pを製造した。表9において、溶媒は、水であり、Toxinは、BoNTAタイプであり、メディトックス社製品を使用した。
前述のO及びP剤形は、前記HVD注射器に充填した。ここで、前記HVD注射器は、表1のB注射器であり、バレルは、COC材質によってなり、プランジャ材質は、シリコン化されたBIIRによってなる。
【表9】
【0090】
2.力価試験:LD 50 (加速試験)
準備された2種、すなわち、O及びP剤形試料がそれぞれの注射器に事前充填された注射器剤形を安定性チャンバに保管し、0,2,3,7,14,28及び56日時点のマウス半数致死量(LD50)を測定した。
【0091】
試料1及び2を、水でそれぞれ段階希釈させた後、体重が17ないし22gである4週齢メスICRマウスの腹腔に投与した。投与後、3日間、各希釈試料に対する致死率を観察し、統計プログラムPROBITを利用し、半数致死量を求めた。0ヵ月時点の半数致死量を100%に設定し、各時点において得られた半数致死量が変化する傾向性を%で示した。有効期間(shelf life)は、反応速度定数と温度との関係を示すアレニウス式(https://met.uk.com/medical-device-packaging-testing/4a-medical-accelerated-ageing)を利用して計算した。
【0092】
表10は、アルブミン含有剤形Oと、アルブミン非含有剤形Pとの保存安定性を、LD50値で示した表である。
【表10】
【0093】
表10において、STDは、標準試料であり、メディトキシンinj(メディトックス社)であり、正規化(normalization)は、0日において、データ値を100にしたとき、相対的力価を示し、N/Aは、その前周期において、試験結果LD50値が20%台と非常に低く、試験を進めることが意味がなく、進めていない。準備された3個剤形、すなわち、標準試料(STD)、O及びP剤形は、56日、すなわち、約2ヵ月の加速条件において、アルブミン剤形Oは、試験28日目において、回収力価が消失されたが、非アルブミン剤形Pは、28日目において、86%、56日目において、52%の回収力価が維持された。前記加速条件は、試料を40℃で保管し、0,2,5,7,14,28及び56日時点において試料を回収して実験した。
【0094】
3.注入力テスト
表9に記載されたアルブミン剤形O及びアルブミン無含有剤形Pを、実施例1の第1節に記載されたSHOTT TopPac注射器1ml、及びHVD注射器(すなわち、表1のB注射器)にそれぞれ充填し、総4種の事前充填された注射器ボツリヌム液体製剤Q,R,S及びT、すなわち、4種剤形を準備した。
【0095】
前記4種剤形につき、MultiTest 2.5(Mecmesin、英国)引っ張り圧縮機器を使用し、注射器のプランジャ移動速度によるプランジャ注入力を測定した。前記注入力は、平均注入力(average injection force)である。
【0096】
具体的には、まず、4種剤形をそれぞれ含む注射器に、30G針を結合させた。次に、注射器を、引っ張り圧縮器機のジグに固定し、プランジャロッドが、前記装置のロッド細胞(load cell)の中央に来るように調整した。前記ジグは、前記装置の注射器固定部分である。
【0097】
各注射器の長さを考慮し、測定距離を設定した後、前記機器に内蔵されているプログラムでもって速度値を入力し、開始ボタンを押し、前記機器を可動させ、試験を実施した。前記測定距離は、HVD注射器の場合、内径が小さく、長さが長いために、1mL充填時、内容物が約40mm高さに充填され、TopPac注射器は、1mL充填時、約30mm高さに充填され、注入力測定時、安全のために5mmの余裕を置き、HVD注射器は、0ないし35mm、TopPac注射器は、0ないし25mmまでプランジャを押すように、測定距離を設定した。測定が完了した検体は、ジグから除去し、検体当たり3回反復して測定し、注入力結果を確保した。表11は、プランジャ移動速度による注入力を示した表である。
【表11】
【0098】
表11に示されているように、HVD注射器を含む剤形R及びTは、10及び50mm/分の低いプランジャ移動速度において、注入力が、TopPac注射器を含む剤形Q及びSに比べ、同一であるか、あるいは強かったが、100及び200mm/分の高いプランジャ移動速度において、注入力がTopPac注射器を含む剤形Q及びSに比べて弱かった。それは、HVD注射器を含む剤形R及びTは、TopPac注射器を含む剤形Q及びSに比べ、遅いプランジャ移動速度においては、プランジャ圧縮力が強く、速いプランジャ移動速度においては、プランジャ圧縮力が弱いということを示す。従って、HVD注射器を含む剤形は、低速においては、微細な操作が可能であり、高速においては、さらに容易に注射を行うことができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】