(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】網膜神経障害を予防及び治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230516BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20230516BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20230516BHJP
A61K 31/745 20060101ALI20230516BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20230516BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230516BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230516BHJP
A61K 31/732 20060101ALI20230516BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20230516BHJP
A61K 36/42 20060101ALI20230516BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230516BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P27/06
A61K31/715
A61K31/745
A61K38/02
A61K31/7088
A61K47/26
A61K31/732
A61K36/752
A61K36/42
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022561661
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 US2021026113
(87)【国際公開番号】W WO2021207312
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522394605
【氏名又は名称】ジー3ピー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】G3P, Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】596114853
【氏名又は名称】マサチューセッツ・アイ・アンド・イア・インファーマリー
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】ムンテンダム,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マージェタ,ミリカ エイ
(72)【発明者】
【氏名】ソラ-デル バリェ,デイビッド エイ
(72)【発明者】
【氏名】ブトフスキー,オレグ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA94
4C076BB01
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD67
4C076FF31
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4C086AA01
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4C086MA17
4C086MA52
4C086MA58
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC75
4C088AB19
4C088AB62
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4C088MA52
4C088MA58
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA33
4C088ZC75
(57)【要約】
本発明は、緑内障を患う対象における網膜神経障害を予防及び治療するための、ガレクチン-3阻害剤を使用した方法、組成物、及びキットを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑内障を患う対象における網膜神経障害を治療するための方法であって、前記網膜神経障害を治療するための治療有効量のガレクチン-3阻害剤を必要とする前記対象に前記治療有効量のガレクチン-3阻害剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
網膜神経障害の容積の少なくとも25%の縮小を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
網膜神経障害の容積の少なくとも50%の縮小を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
緑内障を患う対象における網膜神経障害の予防のための方法であって、治療有効量のガレクチン-3阻害剤を必要とする前記対象に前記治療有効量のガレクチン-3阻害剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
緑内障を患う対象における網膜神経障害のリスクを低下させるための方法であって、前記対象における網膜神経障害のリスクを低下させるための有効量のガレクチン-3阻害剤を必要とする前記対象に前記有効量のガレクチン-3阻害剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
前記対象が緑内障を有しているかどうかを確認することを更に含む、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が高い眼内圧による網膜神経障害を有しているかどうかを確認することを更に含む、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が網膜神経障害と診断された場合に、前記ガレクチン-3阻害剤を投与するための対象を選択することを更に含む、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象の眼が高い眼内圧を有しているかどうかを確認することを更に含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記患者がガレクチン-3の高い血漿レベルを有する場合に、前記ガレクチン-3阻害剤を投与するための対象を選択することを更に含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者がガレクチン-3の高い眼内レベルを有する場合に、前記ガレクチン-3阻害剤を投与するための対象を選択することを更に含む、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
治療効果を評価するために前記ガレクチン-3阻害剤に対する対象応答をモニターすることを更に含む、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ガレクチン-3阻害剤が炭水化物を含む、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ガレクチン-3阻害剤がオリゴ糖である、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記オリゴ糖がネオグリカンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記オリゴ糖がN-アセチルラクトサミンである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記オリゴ糖がN-アセチルラクトサミンの誘導体である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記オリゴ糖がN,N-ジアセチルラクトサミンである、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記オリゴ糖がN,N-ジアセチルラクトサミンの誘導体である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記ガレクチン-3阻害剤が、炭水化物、タンパク質、脂質、核酸、または小有機化合物である、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ガレクチン-3阻害剤が多糖である、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ガレクチン-3阻害剤がガラクトースを含む、請求項1から請求項12または請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ガレクチン-3阻害剤がペクチンフラグメントの混合物を含む、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ガレクチン-3阻害剤がペクチン由来部分を含む、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ガレクチン-3阻害剤がペクチンである、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ガレクチン-3阻害剤が修飾柑橘類ペクチンである、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ガレクチン-3阻害剤がカボチャペクチンである、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ガレクチン-3阻害剤が抗体である、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が成人のヒトである、請求項1から請求項28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ガレクチン-3阻害剤が医薬組成物の形態で製剤化される、請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ガレクチン-3阻害剤が栄養治療薬の形態で製剤化される、請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ガレクチン-3阻害剤がサプリメントの形態で製剤化される、請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記ガレクチン-3阻害剤が眼に投与される、請求項1から請求項32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記ガレクチン-3阻害剤が眼に外部投与される、請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記ガレクチン-3阻害剤が眼内投与される、請求項1から請求項32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記ガレクチン-3阻害剤が持続放出性眼球送達デバイスを使用して投与される、請求項1から請求項35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ガレクチン-3阻害剤が点眼剤として投与される、請求項1から請求項35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記ガレクチン-3阻害剤が前記対象に経口投与される、請求項1から請求項32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
抗緑内障薬である追加の治療剤を前記患者に投与することを更に含む、請求項1から請求項38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記網膜神経障害が、視神経の神経終末部への障害を含み、前記神経終末部が網膜内に位置している、請求項1から請求項39のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年4月7日出願の米国仮出願第63/006,176号の利益及び当該仮出願に対する優先権を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、緑内障を患う対象における網膜神経障害を予防及び治療するための、ガレクチン-3阻害剤を使用した方法、組成物、及びキットを提供する。
【背景技術】
【0003】
ガレクチン-3は、β-ガラクトシドを認識する炭水化物結合タンパク質(レクチン)の特定のサブファミリーに属するタンパク質である。ガレクチンは炭水化物認識ドメイン(CRD)を有する。様々なガレクチンのCRDは、保存残基の外側のアミノ酸配列が異なっており、これにより、ガレクチン間における異なるグリカンリガンドに対する特異性がもたらされる。ガレクチン-3は細胞内機能と細胞外機能の両方を有しており、非標準経路を介して細胞外空間及び循環血液へと活発に分泌されている。CRDへの炭水化物の結合により、in-vitro及びin-vivoにおけるガレクチン-3活性の調節がもたらされる。CRDへの炭水化物結合及びその結果としてのガレクチン-3の阻害は、有望な治療モダリティとして認識されている。
【0004】
緑内障は失明の主要な原因であり、多くの場合、眼内圧(IOP)の上昇を引き起こし得る眼内における液体の増加を特徴とする。IOPの上昇によって網膜内の神経が損傷し、細胞死及び視力低下につながる場合がある。健康な眼において、栄養素を含有し眼を浸している眼液は、絶えず排水及び補充されている。しかしながら、緑内障を患う対象においては、眼液は、適切に排水されていないまたは過剰に生成されているのいずれかであり、その結果として、眼内圧の上昇を招いている。
【0005】
緑内障を患う患者における網膜神経障害を予防及び治療するための方法に対する要望が存在している。本発明は、この要望を提起し、その他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、緑内障を患う対象における網膜神経障害を予防及び治療するための、ガレクチン-3阻害剤を使用した方法、組成物、及びキットを提供する。ガレクチン-3阻害剤は、例えば、炭水化物、例えば、ペクチンなどであってもよい。網膜は、視神経の神経終末部を含む神経線維を含有する。特定の理論に束縛されるものではないが、ガレクチン-3阻害剤は、さもなければ、緑内障を患う患者における高い眼内圧によって部分的に引き起こされ得る、網膜内における神経への障害を予防及び/または治療すると考えられている。このように、ガレクチン-3阻害剤は網膜神経障害を予防及び/または治療する。
【0007】
本発明の一態様は、緑内障を患う対象における網膜神経障害を治療するための方法を提供し、方法は、網膜神経障害を治療するための治療有効量のガレクチン-3阻害剤を必要とする対象にそれを投与することを含む。本発明の別の態様は、緑内障を患う対象における網膜神経障害を予防するための方法を提供し、方法は、有効量のガレクチン-3阻害剤を必要とする対象にそれを投与することを含む。本発明の別の態様は、緑内障を患う対象における網膜神経障害のリスクを低下させるための方法を提供し、方法は、対象における網膜神経障害のリスクを低下させるための有効量のガレクチン-3阻害剤を必要とする対象にそれを投与することを含む。方法は、高い眼内圧、ガレクチン-3の高い血漿レベル、及び/またはガレクチン-3の高い眼内レベルを特徴とする対象において、特定の効果を提供し得る。
【0008】
本方法に使用する組成物は、本方法を実施するための原料及び取扱説明書を含有する医療用キットと共に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1でより詳細に記載するとおり、異なるタイプの対象における、マップされたリード100万あたりの転写物のキロベースあたりのフラグメント(FPKM)の量を示すグラフである。
【
図2】実施例1でより詳細に記載するとおり、ミクログリアの免疫組織化学を示す図である。
【
図3】実施例2でより詳細に記載するとおり、ミクログリアの免疫組織化学を示す図である。
【
図4】実施例3でより詳細に記載するとおり、平面固定網膜の画像の図である。
【
図5】実施例3でより詳細に記載するとおり、網膜神経節細胞(RGC)の観測量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、緑内障を患う対象における網膜神経障害、例えば、高い眼内圧による網膜神経障害などを予防及び治療するための、ガレクチン-3阻害剤を使用した方法、組成物、及びキットを提供する。網膜は、視神経の神経終末部を含む神経線維を含有する。特定の理論に束縛されるものではないが、ガレクチン-3阻害剤は、さもなければ、緑内障を患う患者における高い眼内圧によって部分的に引き起こされ得る、網膜内における神経への障害を予防及び/または治療すると考えられている。このように、ガレクチン-3阻害剤は網膜神経障害を予防及び/または治療する。本方法及び組成物は、高い眼内圧、ガレクチン-3の高い血漿レベル、及び/またはガレクチン-3の高い眼内レベルを示す患者に特定の効果を提供する。本発明の様々な態様について以下に記載するが、ある特定のセクションに記載の本発明の態様は、任意の特定のセクションに限定されるものではない。
【0011】
定義
本発明の理解を容易とするために、多くの用語及び語句を以下で定義する。
【0012】
用語「a」、「an」、及び「the」とは、本明細書で使用する場合、「1つまたは複数の」のことを意味し、文脈上不適切でない限り、複数形を含む。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語「対象」とは、本発明の方法によって治療される生物のことを意味する。このような生物としては、好ましくは、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が挙げられるがこれらに限定されず、最も好ましくは、ヒトが挙げられる。
【0014】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」とは、有利または望ましい結果をもたらすのに十分な化合物の量のことを意味する。特に明記しない限り、有効量は、1回または複数回の投与、塗布、または用量で投与することができ、特定の製剤または投与経路に限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、用語「治療すること」は、症状、疾患、もしくは障害の改善、またはその症候の緩和をもたらす任意の効果、例えば、減少させること、低下させること、調節すること、緩和すること、または排除することを含む。本明細書で使用する場合、用語「予防すること」とは、症状、疾患、または障害の発症を遅延または排除することを意味する。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」とは、活性剤を担体(不活性または活性)と組み合わせて、in vivoまたはex vivoにおける治療用途に特に好適な組成物を調製することを意味する。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」としては、標準的な医薬品担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルション(例えば、油/水エマルションまたは水/油エマルションなど)、及び、様々なタイプの湿潤剤などのいずれかのことを意味する。組成物はまた、安定化剤及び防腐剤を含んでいてもよい。担体、安定化剤、及び補助剤の例については、Martin in Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,PA[1975]を参照されたい。
【0017】
更に、組成物及びキットが特定の構成成分を有する、含む(including)、または含む(comprising)ものとして記載される、または、プロセス及び方法が特定の工程を有する、含む(including)、または含む(comprising)ものとして記載される、本明細書の全体にわたり、列挙された構成成分から本質的になる、または列挙された構成成分からなる本発明の組成物及びキットがあるもの、または、列挙されたプロセス工程から本質的になる、または列挙されたプロセス工程からなる本発明によるプロセス及び方法があるものとみなされる。
【0018】
全般的な事項として、パーセンテージを明記した組成物は、特に明記しない限り、重量比である。更に、ある変数が定義を伴わない場合、その変数のこれまでの定義が優先される。本明細書の特定の数値は、「約」という用語によって修飾される。特定の実施形態では、「約」記載値は記載値の±10%以内のことであり、記載値の±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%以内である実施形態についても提供する。
【0019】
I.治療方法
本発明は、緑内障を患う患者における網膜神経障害を治療するための方法、緑内障を患う対象における網膜障害を予防するための方法、及び、緑内障を患う患者における網膜神経障害のリスクを低下させるための方法を提供する。本方法は、例えば、ガレクチン-3阻害剤の同一性、投与レジメン、及び選択した患者集団によって特徴付けられていてもよい。治療方法の種々の態様及び実施形態について以下のセクションに記載する。それらのセクションは便宜上定めてはいるが、あるセクションの情報はそのセクションに限定されるものではなく、その他のセクションの方法に適用されてもよい。
【0020】
A.第1の方法
本発明の一態様は、緑内障を患う対象における網膜神経障害を治療するための方法を提供する。方法は、網膜神経障害を治療するための治療有効量のガレクチン-3阻害剤を必要とする対象にそれを投与することを含む。
【0021】
本方法は、例えば、網膜神経障害の容積の縮小の規模によって特徴付けられていてもよい。特定の実施形態では、本方法は、網膜神経障害の容積の少なくとも25%の縮小を達成する。特定の実施形態では、本方法は、網膜神経障害の容積の少なくとも50%の縮小を達成する。特定の実施形態では、本方法は、緑内障を有しガレクチン-3阻害剤を投与されていない対象における網膜神経障害の平均容積と比較して、網膜神経障害の容積の少なくとも25%の縮小を達成する。特定の実施形態では、本方法は、緑内障を有しガレクチン-3阻害剤を投与されていない対象における網膜神経障害の容積と比較して、網膜神経障害の容積の少なくとも50%の縮小を達成する。特定の実施形態では、本方法は、緑内障を有しガレクチン-3阻害剤を投与されていない対象における網膜神経障害の平均容積と比較して、網膜神経障害の容積の少なくとも90%の縮小を達成する。本方法は更に、以下に記載する更なる例示的な特徴によって特徴付けられていてもよい。
【0022】
B.第2の方法
本発明の別の態様は、緑内障を患う対象における網膜障害を予防するための方法を提供する。方法は、有効量のガレクチン-3阻害剤を必要とする対象にそれを投与することを含む。
【0023】
本方法は、例えば、網膜神経障害の進行の速度の低下の規模によって特徴付けられていてもよい。特定の実施形態では、本方法は、緑内障を有しガレクチン-3阻害剤を投与されていない対象における網膜神経障害の進行の平均速度と比較して、網膜神経障害の進行の速度の少なくとも25%の低下を達成する。特定の実施形態では、本方法は、緑内障を有しガレクチン-3阻害剤を投与されていない対象における網膜神経障害の進行の平均速度と比較して、網膜神経障害の進行の速度の少なくとも50%の低下を達成する。特定の実施形態では、本方法は、緑内障を有しガレクチン-3阻害剤を投与されていない対象における網膜神経障害の進行の平均速度と比較して、網膜神経障害の進行の速度の少なくとも90%の低下を達成する。本方法は更に、以下に記載する更なる例示的な特徴によって特徴付けられていてもよい。
【0024】
C.第3の方法
本発明の別の態様は、緑内障を患う対象における網膜神経障害のリスクを低下させるための方法を提供する。方法は、対象における網膜神経障害のリスクを低下させるための有効量のガレクチン-3阻害剤を必要とする対象にそれを投与することを含む。
【0025】
本方法は更に、例えば、緑内障を患う対象における網膜神経障害のリスクの低下の規模によって特徴付けられていてもよい。特定の実施形態では、本方法は、網膜神経障害のリスクの少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%の低下をもたらす。特定の実施形態では、本方法は、網膜神経障害のリスクの少なくとも25%の低下を達成する。特定の実施形態では、本方法は、網膜神経障害のリスクの少なくとも50%の低下を達成する。特定の実施形態では、本方法は、網膜神経障害のリスクの少なくとも90%の低下を達成する。
【0026】
本方法は更に、以下に記載する更なる例示的な特徴によって特徴付けられていてもよい。
【0027】
D.第1、第2、及び第3の治療方法の別の例示的な特徴
本明細書に記載の第1、第2、及び第3の治療方法は更に、例えば、ガレクチン-3阻害剤の同一性、投与レジメン、選択した患者集団、及び以下本明細書に記載するその他の特徴によって特徴付けられていてもよい。このような特徴のより完全な記載を以下で提供する。本発明は、適切な場合、これらの特徴のあらゆる置換及び組み合わせを包含する。
【0028】
1.ガレクチン-3阻害剤
本方法は、ガレクチン-3阻害剤の同一性によって特徴付けられていてもよい。例えば、特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、炭水化物、タンパク質、脂質、核酸、または小有機化合物である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は炭水化物を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は多糖を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は炭水化物である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は多糖である。
【0029】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はペクチンを含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はペクチンである。ペクチン類は、とりわけ、林檎及び柑橘類果物の植物細胞壁に由来する多糖である。使用するペクチンは、全長ペクチンであってもよく、または、ペクチンフラグメントであってもよい。特定の実施形態では、ペクチンフラグメントは、文献に記載の手順に従って精製されてもよい。ペクチンはその分子量によって特徴付けられていてもよい。特定の実施形態では、ペクチンは、約50kDa~約150kDa、約60kDa~約130kDa、約50kDa~約100kDa、約30kDa~約60kDa、約10kDa~約50kDa、約10kDa~約30kDa、約5kDa~約20kDa、または約1kDa~約10kDaの範囲の分子量を有する。
【0030】
特定の実施形態では、多糖はカボチャペクチンである。特定の実施形態では、多糖は林檎ペクチンである。特定の実施形態では、多糖は柑橘類果物ペクチンである。特定の実施形態では、多糖はテンサイペクチンである。特定の実施形態では、多糖はセイヨウナシペクチンである。特定の実施形態では、多糖はジャガイモペクチンである。特定の実施形態では、多糖は人参ペクチンである。
【0031】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、植物原料から単離された多糖を含む。特定の実施形態では、植物原料はカボチャ属のメンバーである。特定の実施形態では、多糖は、C.moschata、C.argyrosperma、C.fwifolia、C.maxima、またはC.pepoから単離されたものである。
【0032】
特定の実施形態では、多糖はガラクトースを含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はガラクトースである。特定の実施形態では、多糖は、ラムノガラクツロナンI(RG-I)ドメインを含む。特定の実施形態では、RG-Iドメインは、β-D-ガラクタン、a-L-アラビノフラノシル、またはこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、多糖はホモガラクツロナン(HG)ドメインを含む。
【0033】
特定の実施形態では、多糖は、約5kDa~約70kDaの分子量を有する。特定の実施形態では、多糖は、約20kDa~約30kDaの分子量を有する。特定の実施形態では、多糖は、約20kDa~約25kDaの分子量を有する。特定の実施形態では、多糖は、約5kDa~約25kDaの分子量を有する。特定の実施形態では、多糖は、約17kDa~約23kDaの分子量を有する。特定の実施形態では、多糖の分子量は約17.5kDaである。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、PCT出願公開WO2019/143924A1(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)に記載の多糖を含む、または、その多糖である。
【0034】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は修飾柑橘類ペクチン(MCP)を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はMCPである。MCPは、ペクチン分子の分子量を、例えば、約10kDa~約30kDaまたは約5kDa~約20kDaなどに減少させるために有機柑橘類ペクチンから修飾されていることから、その他のペクチンとは異なる。
【0035】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はペクチン化合物である。ペクチン化合物は、ペクチン主鎖のかなりの部分が除去されたペクチンに由来する。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、ペクチンフラグメントの混合物を含む。
【0036】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はペクチン由来部分を含む。
【0037】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は人工多糖を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は人工多糖である。特定の実施形態では、人工多糖は、GR-MD-02及びGM-CT-01(Davanat(商標))から選択される。
【0038】
特定の実施形態では、多糖は1つまたは複数の非天然化合物部分で修飾されている。特定の実施形態では、多糖は、植物原料からの単離と同時またはその後に、1つまたは複数の修飾を実施される。特定の実施形態では、1つまたは複数の修飾としては、アルキル化、アミド化、四級化、チオール化、硫酸化、酸化、分子鎖伸長、例えば、架橋、グラフトなど、化学的、物理的、または生物学的プロセス(酵素的プロセスを含む)による解重合など、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は化学修飾多糖を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は化学修飾多糖である。特定の実施形態では、化学修飾多糖はTD139である。
【0040】
特定の実施形態では、多糖は、ジャガイモガラクタンのガレクチン-3結合親和性より高いガレクチン-3結合親和性を有する。特定の実施形態では、多糖は、2mM未満の多糖の濃度でガレクチン-3活性を阻害する。特定の実施形態では、多糖は、約1.26mMの多糖の濃度でガレクチン-3活性を阻害する。
【0041】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はオリゴ糖を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はオリゴ糖である。特定の実施形態では、オリゴ糖はネオグリカンである。特定の実施形態では、オリゴ糖はN-アセチルラクトサミンである。特定の実施形態では、オリゴ糖はN-アセチルラクトサミンの誘導体である。特定の実施形態では、オリゴ糖はN,N-ジアセチルラクトサミンである。
【0042】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、タンパク質、抗体、ガレクチン結合タンパク質(GBP)相互作用融合タンパク質、ペプチドアプタマー、アビマー、Fab、sFv、アドネクチン、リガンド、核酸、または脂質を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、抗体、ガレクチン結合タンパク質(GBP)相互作用融合タンパク質、ペプチドアプタマー、アビマー、Fab、sFv、アドネクチン、リガンド、または核酸を含む。
【0043】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はタンパク質を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、抗体、ガレクチン結合タンパク質(GBP)相互作用融合タンパク質、ペプチドアプタマー、アビマー、Fab、sFv、アドネクチン、またはリガンドを含む。
【0044】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗体を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、一次抗体、二次抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は一次抗体を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は二次抗体を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はモノクローナル抗体を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はポリクローナル抗体を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はヒト抗体を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はヒト化抗体を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はキメラ抗体を含む。
【0045】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗体87B5を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗体87B5である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗体M3/38を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗体M3/38である。
【0046】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗体フラグメントを含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は一本鎖Fv抗体(sFv)を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗原結合フラグメント(Fab)を含む。
【0047】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はガレクチン結合タンパク質(GBP)相互作用融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はペプチドアプタマーを含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はアビマーを含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はアドネクチンを含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はAFFIBODY(登録商標)リガンドを含む。
【0048】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は核酸を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はDNAを含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はRNAを含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はヌクレオチドアプタマーを含む。
【0049】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は脂質を含む。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は膜脂質を含む。
【0050】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、タンパク質、核酸、または脂質である。
【0051】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、タンパク質、抗体、ガレクチン結合タンパク質(GBP)相互作用融合タンパク質、ペプチドアプタマー、アビマー、Fab、sFv、アドネクチン、リガンド、核酸、または脂質である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、抗体、ガレクチン結合タンパク質(GBP)相互作用融合タンパク質、ペプチドアプタマー、アビマー、Fab、sFv、アドネクチン、リガンド、または核酸である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗体である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗体を含む。
【0052】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はタンパク質である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、抗体、ガレクチン結合タンパク質(GBP)相互作用融合タンパク質、ペプチドアプタマー、アビマー、Fab、sFv、アドネクチン、またはリガンドである。
【0053】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗体である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、一次抗体、二次抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は一次抗体である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は二次抗体である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はポリクローナル抗体である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はヒト抗体である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はヒト化抗体である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はキメラ抗体である。
【0054】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗体フラグメントである。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は一本鎖Fv抗体(sFv)である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は抗原結合フラグメント(Fab)である。
【0055】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はガレクチン結合タンパク質(GBP)相互作用融合タンパク質である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はペプチドアプタマーである。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はアビマーである。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はアドネクチンである。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はAFFIBODY(登録商標)リガンドである。
【0056】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は核酸である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はDNAである。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はRNAである。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はヌクレオチドアプタマーである。
【0057】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は脂質である。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は膜脂質である。
【0058】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は小有機分子である。
【0059】
2.投与レジメン
特定の実施形態では、本方法は、投与するガレクチン-3阻害剤の量、及び/または、ガレクチン-3阻害剤を対象に投与する頻度に基づいて特徴付けられていてもよい。ガレクチン-3阻害剤は、例えば、対象の体重に基づいて、または、固定用量として投与されてもよい。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、1日あたり1回、2回、または3回投与される。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤のそれぞれの投与は、約0.1g~約0.5g、約0.5~約1.0、約1.0~約2.0g、または約2~約3gのガレクチン-3阻害剤を提供する。特定の実施形態では、修飾柑橘類ペクチンの用量は、約1g~約10g、約3g~約7g、または約5g~である。
【0060】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、経腸または非経口、例えば、経口、舌下、直腸、静脈内、皮下、局所、経皮、皮膚内、経粘膜、腹腔内、筋肉内、嚢内、眼窩内、心臓内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射、注入など、またはこれらの組み合わせで投与される。
【0061】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は対象に経口投与される。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は栄養治療薬の形態で製剤化される。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤はサプリメントの形態で製剤化される。
【0062】
特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は対象の眼に投与される。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は対象の眼に外部投与される。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は対象に眼内投与される。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は、持続放出性眼球送達デバイスを使用して対象に投与される。特定の実施形態では、ガレクチン-3阻害剤は点眼剤として対象に投与される。
【0063】
3.本治療方法から特定の効果を得ることができる患者集団
本方法は更に、緑内障による網膜神経障害を患う対象によって特徴付けられていてもよい。例えば、特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、対象は成人のヒトである。
【0064】
特定の実施形態では、対象は、健康な対象の同一体液中のガレクチン-3の平均濃度より高い、体液中のガレクチン-3の濃度を有する。特定の実施形態では、体液は血漿である。特定の実施形態では、体液は血清である。特定の実施形態では、体液は眼内液である。特定の実施形態では、対象の体液中のガレクチン-3の濃度は、健康な対象の同一体液中のガレクチン-3の平均濃度より少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%高い。
【0065】
特定の実施形態では、対象は、経時的に高くなる、体液中のガレクチン-3の濃度を特徴とする。例えば、特定の実施形態では、対象は、1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、10日前、12日前、または14日前の対象において観測された同一タイプの体液中のガレクチン-3の濃度より高い、体液中のガレクチン-3の濃度を有する。特定の実施形態では、体液は血漿である。特定の実施形態では、体液は血清である。特定の実施形態では、体液は眼内液である。特定の実施形態では、対象の体液中のガレクチン-3の濃度は、1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、10日前、12日前、または14日前の対象において観測された同一タイプの体液中のガレクチン-3の濃度より少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%高い。
【0066】
特定の実施形態では、対象は高い眼内圧を示す。例えば特定の実施形態では、対象は、健康な対象において観測された眼内圧より高い眼内圧を有する。特定の実施形態では、対象の眼内圧は、健康な対象の平均眼内圧より少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%高い。
【0067】
特定の実施形態では、対象は緑内障を患い、緑内障に特有の1つまたは複数の症候を示す。特定の実施形態では、対象は、眼痛、眼の発赤、悪心、嘔吐、頭痛、霧視、トンネル視、視野のまだら状の盲斑、及び光源の周りに輪が見えることを含むがこれらに限定されない、緑内障の1つまたは複数の症候を示す。
【0068】
特定の実施形態では、対象は網膜神経障害と診断されている。
【0069】
4.治療的改善及びその他の特徴
本方法は更に、対象へのガレクチン-3阻害剤の投与の治療効果によって特徴付けられていてもよい。例えば、特定の実施形態では、本方法は、網膜神経障害の症候の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%の低下をもたらす。特定の実施形態では、本方法は、網膜神経障害の症候の少なくとも25%の低下を達成する。特定の実施形態では、本方法は、網膜神経障害の症候の少なくとも50%の低下を達成する。特定の実施形態では、本方法は、網膜神経障害の症候の少なくとも90%の低下を達成する。特定の実施形態では、網膜神経障害の症候は、線維性網膜神経組織の容積である。
【0070】
特定の実施形態では、本方法は、眼痛、眼の発赤、悪心、嘔吐、頭痛、霧視、トンネル視、視野のまだら状の盲斑、及び光源の周りに輪が見えることを含むがこれらに限定されない、対象における緑内障の1つまたは複数の症候の重症度を低下させる。特定の実施形態では、本方法は、対象における緑内障の1つまたは複数の症候の重症度または頻度の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%の低下をもたらす。
【0071】
特定の実施形態では、本方法は更に、予防及び/または治療する網膜神経障害の性質によって特徴付けられていてもよい。特定の実施形態では、網膜神経障害は、視神経の神経終末部への障害を含み、神経終末部は網膜内に位置している。特定の実施形態では、網膜神経障害は、視神経の神経終末部への障害であり、神経終末部は網膜内に位置している。
【0072】
5.組み合わせ療法
本発明の別の態様は組み合わせ療法を提供する。本明細書に記載のガレクチン-3阻害剤は、緑内障を患う対象における網膜神経障害を治療するために、追加の治療剤と組み合わせて使用してもよい。加えて、本明細書に記載のガレクチン-3阻害剤は、緑内障を患う対象における網膜神経障害を予防するために、追加の治療剤と組み合わせて使用してもよい。
【0073】
一部の実施形態では、本発明は、有効量の本明細書で開示する化合物またはその薬学的に許容される塩を必要とする患者にそれを投与すること、及び、有効量の1つまたは複数の追加の治療剤、例えば、本明細書に記載の治療剤などを同時または連続的に共投与すること、を含む、開示する疾患または症状を治療するための方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、1つの追加の治療剤を共投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、2つの追加の治療剤を共投与することを含む。一部の実施形態では、開示化合物と追加の治療剤または複数の治療剤の組み合わせは、相乗的に作用する。
【0074】
1つまたは複数の追加の治療剤は、複数の投与レジメンの一部として、本発明の化合物または組成物とは別に投与されてもよい。代替的に、1つまたは複数の追加の治療剤は、本発明の化合物と共に単一組成物として混合された、単一剤形の一部であってもよい。複数の投与レジメンとして投与する場合、1つまたは複数の追加の治療剤及び本発明の化合物または組成物は、同時、連続的、または互いに期間内、例えば、互いに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、18、20、21、22、23、または24時間以内に、投与されてもよい。一部の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤及び本発明の化合物または組成物は、24時間超の間隔をあけた複数の投与レジメンとして投与される。
【0075】
本明細書で使用する場合、用語「組み合わせ」、「組み合わされた」、及び関連用語とは、本発明に従った治療剤の同時投与または連続投与のことを意味する。例えば、本発明の化合物は、1つまたは複数の追加の治療剤(複数可)と共に、別々の単位投与剤形で、または単一単位投与剤形で共に、同時または連続的に投与することができる。それゆえ、本発明は、本発明の化合物、1つまたは複数の追加の治療剤(複数可)、及び薬学的に許容される担体、補助剤、または溶媒、を含む単一単位投与剤形を提供する。
【0076】
担体物質と混合して単一剤形を調製することができる本発明の化合物及び1つまたは複数の追加の治療剤(複数可)(それらの組成物中に追加の治療剤を含む)の量は、治療する宿主及び個々の投与方法に応じて変化する。好ましくは、本発明の組成物は、0.01~100mg/kg(体重)/日の用量の本発明の化合物が投与可能となるように製剤化される必要がある。
【0077】
1つまたは複数の追加の治療剤(複数可)を含むそれらの組成物では、1つまたは複数の追加の治療剤(複数可)及び本発明の化合物は相乗的に作用することができる。それゆえ、このような組成物中における1つまたは複数の追加の治療剤(複数可)の量は、その治療剤のみを利用した単剤療法に必要な量より少なくてもよい。このような組成物では、0.01~1,000g/kg(体重)/日の用量の1つまたは複数の追加の治療剤(複数可)を投与することができる。
【0078】
本発明の組成物中に含まれる1つまたは複数の追加の治療剤(複数可)の量は、好ましくは、その治療剤を唯一の活性剤として含む組成物で一般的に投与され得る量以下である。好ましくは、本開示組成物中における1つまたは複数の追加の治療剤(複数可)の量は、その薬剤を唯一の治療活性剤として含む組成物中に一般的に含まれる量の約50%~100%の範囲である。一部の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤(複数可)は、その薬剤において一般的に投与される量の約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の用量で投与される。本明細書で使用する場合、語句「一般的に投与される」とは、FDA承認済み治療剤がFDA表示添付文書に従った投与用に承認された量のことを意味する。
【0079】
特定の実施形態では、本方法は、追加の治療剤を投与することを更に含む。
【0080】
特定の実施形態では、追加の治療剤は、眼内圧を低下させる薬剤である。特定の実施形態では、追加の治療剤は抗緑内障薬である。
【0081】
特定の実施形態では、追加の治療剤は、
・プロスタグランジンアナログ、例えば、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、ラタノプロステンブノドなど、またはその薬学的に許容される塩、
・β遮断薬、例えば、チモロールなど、またはその薬学的に許容される塩、
・αアゴニスト、例えば、ブリモニジンなど、またはその薬学的に許容される塩、
・炭酸脱水酵素阻害薬、例えば、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミド、メタゾラミドなど、またはその薬学的に許容される塩、
・コリン作動性アゴニスト、例えば、ピロカルピンなど、またはその薬学的に許容される塩、または、
・Rhoキナーゼ阻害剤、例えば、ネタルスジルなど、またはその薬学的に許容される塩、
である。
【0082】
特定の実施形態では、対象は、眼内圧を低下させるために眼球内にチューブを設置する外科手術を受けている。
【0083】
6.追加の任意選択的な工程
本方法は更に、本方法の一部として実施される1つまたは複数の追加の工程によって特徴付けられていてもよい。例えば、特定の実施形態では、本方法は、対象が緑内障を有しているかどうかを確認することを更に含む。対象における緑内障の診断は、眼内圧の測定(トノメトリー)、拡張眼検査及びイメージング、視野検査、角膜厚の測定(パキメトリー)、ならびに排水隅角の検査(ゴニオスコピー)を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の検査を使用することによって実施することができる。
【0084】
特定の実施形態では、本方法は、対象が高い眼内圧による網膜神経障害を有しているかどうかを確認することを更に含む。
【0085】
特定の実施形態では、本方法は、対象のガレクチン-3の血漿レベルを測定することを更に含む。特定の実施形態では、本方法は、対象のガレクチン-3の眼内レベルを測定することを更に含む。
【0086】
特定の実施形態では、本方法は、治療効果を評価するためにガレクチン-3阻害剤に対する対象応答をモニターすることを更に含む。特定の実施形態では、治療効果の評価は、上記の治療的改善のうちの1つまたは複数の評価を含む。
【0087】
II.医学的使用のための組成物
上記のとおり、本明細書に記載のガレクチン-3阻害剤を使用して、緑内障を患う対象における網膜神経障害を予防及び治療してもよい。使用は本明細書に記載の方法に従っていてもよい。例えば、本発明の一態様は、緑内障を患う対象における網膜神経障害を治療するのに使用するガレクチン-3阻害剤を提供する。本発明の別の態様は、緑内障を患う対象における網膜神経障害の進行を遅延させるのに使用するガレクチン-3阻害剤を提供する。本発明の別の態様は、緑内障を患う患者における網膜神経障害のリスクを低下させるのに使用するガレクチン-3阻害剤を提供する。本発明の別の態様は、緑内障を患う患者における網膜神経障害の発症を予防するのに使用するガレクチン-3阻害剤を提供する。
【0088】
治療方法に関連した本明細書に記載の実施形態は、使用するために、ガレクチン-3阻害剤に関連させて適用してもよい。
【0089】
III.医薬品の調製
上記のとおり、本明細書に記載のガレクチン-3阻害剤を医薬品の調製に使用して、緑内障を患う対象における網膜神経障害を予防及び治療してもよい。例えば、本発明の一態様は、緑内障を患う対象における網膜神経障害を治療するための医薬品の調製における、本明細書に記載のガレクチン-3阻害剤の使用を提供する。本発明の別の態様は、緑内障を患う対象における網膜神経障害の進行を遅延させるための医薬品の調製における、本明細書に記載のガレクチン-3阻害剤の使用を提供する。本発明の別の態様は、緑内障を患う患者における網膜神経障害のリスクを低下させるための医薬品の調製における、本明細書に記載のガレクチン-3阻害剤の使用を提供する。本発明の別の態様は、緑内障による線維性網膜神経組織の発症を予防するための医薬品の調製における、本明細書に記載のガレクチン-3阻害剤の使用を提供する。
【0090】
治療方法に関連した本明細書に記載の実施形態は、医薬品の調製に使用するために、ガレクチン-3阻害剤に関連させて適用してもよい。
【0091】
IV.医薬組成物
上で示したとおり、本発明は医薬組成物を提供し、医薬組成物は、上記の化合物及び薬学的に許容される担体を含む。薬学的に許容される担体は添加剤(複数可)及び/または希釈剤(複数可)を含有していてもよい。医薬組成物は、以下、(1)経口投与、例えば、水剤(水性液剤もしくは非水性液剤または懸濁剤)、錠剤、例えば、頬側、舌下、及び全身吸収用の錠剤、巨丸剤、散剤、顆粒剤、舌に塗布するためのパスタ剤、(2)非経口投与、例えば、滅菌液剤もしくは懸濁剤または持続放出製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または硬膜外注射によるもの、(3)局所投与、例えば、クリーム剤、軟膏剤、もしくは制御放出パッチ剤、または皮膚に施す噴霧剤としてのもの、(4)膣内または直腸内、例えば、腟座薬、クリーム剤、または発泡剤としてのもの、(5)舌下、(6)眼球、(7)経皮、または(8)経鼻に適したものを含む、固体形態または液体形態での投与用に特別に製剤化してもよい。
【0092】
語句「治療有効量」とは、本明細書で使用する場合、化合物、原料、または、任意の医学的治療に応用可能な妥当な利益/リスク比で、動物における少なくとも細胞の亜集団において一定の望ましい治療効果を生むのに有効な本発明の化合物を含む組成物の量のことを意味する。
【0093】
語句「薬学的に許容される」は、適切な医学的良識の範囲内において、過度の毒性、炎症、アレルギー反応、またはその他の問題もしくは合併症を伴わずに、妥当な利益/リスク比に見合った、ヒト及び動物の組織との接触に用いるのに好適な化合物、物質、組成物及び/または剤形のことを意味するために本明細書で使用される。
【0094】
湿潤剤、乳化剤、及び潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなど、ならびに、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び着香剤、防腐剤及び酸化防止剤はまた、組成物中に含まれていてもよい。
【0095】
薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、(1)水溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、(2)油溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロールなど、及び(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0096】
本発明の製剤としては、経口、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸、膣、及び/または非経口投与に好適な製剤が挙げられる。製剤は単位投与剤形で都合よく提供されてもよく、製薬技術分野において周知の任意の方法によって調製されてもよい。単一剤形を調製するために担体物質と配合され得る活性成分の量は、治療する宿主、特定の投与方法に応じて変化する。単一剤形を調製するために担体物質と配合され得る活性成分の量は一般的に、治療効果をもたらす化合物の量である。一般的に、この量は、100パーセントのうちの、約0.1パーセント~約99パーセント、好ましくは、約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは、約10パーセント~約30パーセントの範囲の活性成分である。
【0097】
特定の実施形態では、本発明の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソームからなる群から選択される賦形剤、ミセル形成剤、例えば、胆汁酸、及び高分子担体、例えば、ポリエステル及びポリ無水物、ならびに本発明の化合物、を含む。特定の実施形態では、上記の製剤は、本発明の化合物を経口生物利用可能にする。
【0098】
これらの製剤または組成物を調製するための方法は、本発明の化合物を、担体、及び任意選択的に1種または複数種の補助成分と会合させる工程を含む。一般的に、製剤は、本発明の化合物を、液体担体もしくは微粉化固体担体またはその両方と均一かつ密接に会合させてから、必要に応じ、製品を成形することによって調製される。
【0099】
経口投与に好適な本発明の製剤は、それぞれが、所定量の本発明の化合物を活性成分として含有する、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(フレーバーベースの、一般的には、スクロース及びアラビアゴムまたはトラガカントを使用した)、散剤、顆粒剤、または水性溶液または非水性溶液中の液剤または懸濁剤、または水中油型または油中水型の液体エマルション、またはエリキシル剤またはシロップ剤、またはパステル剤(不活性基剤、例えば、ゼラチン及びグリセリン、またはスクロース及びアラビアゴムなどを使用した)、及び/またはうがい薬などの形態であってもよい。本発明の化合物はまた、巨丸剤、舐剤、またはパスタ剤として投与されてもよい。
【0100】
特定の実施形態では、経口投与に好適な本発明の製剤は、栄養治療薬の形態で製剤化される。特定の実施形態では、経口投与に好適な本発明の製剤は、サプリメントの形態で製剤化される。
【0101】
経口投与用の本発明の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤、トローチ剤など)では、活性成分を、1種または複数種の薬学的に許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウム、またはリン酸ニカルシウム、及び/または、以下、(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/またはケイ酸など、(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/またはアラビアゴムなど、(3)保湿剤、例えば、グリセロールなど、(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムなど、(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィンなど、(6)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物など、及び界面活性剤、例えば、ポロキサマー及びラウリル硫酸ナトリウムなど、(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、及び非イオン性界面活性剤など、(8)吸収剤、例えば、カオリンクレイ及びベントナイトクレイなど、(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、及びこれらの混合物など、(10)着色剤、ならびに(11)制御放出剤、例えば、クロスポビドンまたはエチルセルロースなど、のいずれかなどと混合する。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、医薬組成物はまた、緩衝剤を含んでいてもよい。類似したタイプの固体組成物ではまた、ラクトースまたは乳糖に加えて、高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用した、軟質及び硬質外皮ゼラチンカプセル内の充填剤を採用してもよい。
【0102】
錠剤は、任意選択的に1種または複数種の補助成分を用いて、圧縮または成形によって調製してもよい。圧縮錠は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、または分散剤を使用して調製してもよい。湿製錠は、好適な機械を用いて、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末状化合物の混合物を成形することによって調製してもよい。
【0103】
錠剤、ならびに本発明の医薬組成物のその他の固体剤形、例えば、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤などは、任意選択的に、コーティング剤及び外皮、例えば、腸溶性コーティング、及び医薬品製造技術分野において周知のその他のコーティング剤などを用いて取得または調製してもよい。それらはまた、例えば、所望の放出特性をもたらす様々な比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他のポリマーマトリックス、リポソーム、及び/または微小球を使用して、その内部の活性成分の持続放出または制御放出をもたらすように製剤化してもよい。それらは、急速放出用に製剤化してもよく、例えば、凍結乾燥させてもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過により、または、使用直前に滅菌水または一部のその他の滅菌注射用媒体中に溶解させることができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を混合することにより、滅菌してもよい。これらの組成物はまた、任意選択的に乳白剤を含有していてもよく、任意選択的に遅延様式で、胃腸管の特定の部位においてのみまたは優先的に、活性成分(複数可)を放出する組成物であってもよい。使用可能な包埋組成物の例としては、高分子物質及びワックスが挙げられる。活性成分はまた、必要に応じて、上記の賦形剤のうちの1種または複数種を用いた、マイクロ封入形態であってもよい。
【0104】
本発明の化合物の経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルション剤、マイクロエマルション剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水またはその他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油剤(とりわけ、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステルなど、ならびにこれらの混合物などを含有していてもよい。
【0105】
不活性希釈剤の他に、経口組成物はまた、補助剤、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、着香剤、ならびに防腐剤などを含んでいてもよい。
【0106】
懸濁剤は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、及びトラガカント、ならびにこれらの混合物などを含有していてもよい。
【0107】
本発明の化合物の局所投与または経皮投与用の剤形としては、粉末剤、噴霧剤、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤、及び吸入剤が挙げられる。活性化合物を、滅菌条件下、薬学的に許容される担体と混合してもよく、必要となり得る任意の防腐剤、緩衝剤、または噴射剤と混合してもよい。
【0108】
軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、及びゲル剤は、本発明の活性化合物に加えて、賦形剤、例えば、動物性脂肪及び植物性脂肪、油剤、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、及び酸化亜鉛、またはこれらの混合物などを含有していてもよい。
【0109】
粉末剤及び噴霧剤は、本発明の化合物に加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などを含有していてもよい。噴霧剤は更に、通常の噴射剤、例えば、クロロフルオロ炭化水素、及び揮発性非置換炭化水素、例えば、ブタン及びプロパンなどを含有していてもよい。
【0110】
本発明の医薬組成物に採用してもよい好適な水性担体及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの好適な混合物、植物油、例えば、オリーブ油など、ならびに、注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルなどが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティング剤を使用することにより、分散液剤の場合には所定の粒径を維持することにより、また界面活性剤を使用することにより、適度な流動性を維持してもよい。
【0111】
これらの組成物はまた、補助剤、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などを含有していてもよい。様々な抗菌剤及び抗カビ剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含有させることによって、本化合物に対する微生物の作用の予防を確保してもよい。等張化剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に含ませることもまた望ましい場合がある。加えて、注射用医薬品剤形の長期間にわたる吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどを含ませることによってもたらすことができる。
【0112】
一部の例では、薬物の効果を延長させるためには、皮下注射または筋肉注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。このことは、水への溶解度が不十分な結晶質物質または非晶質物質の液体懸濁剤を使用することによって達成することができる。そのため、薬物の吸収速度は、その溶解速度によって決まり、ひいては、結晶のサイズ及び結晶の状態によって決まり得る。代替的に、非経口で投与された薬物剤形の遅延吸収は、薬物を油性媒体中に溶解または懸濁させることによって達成される。
【0113】
注射用デポー剤形は、本化合物のマイクロカプセル化マトリックスをポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に形成することによって調製される。薬物:ポリマーの比率、及び採用する特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。その他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射製剤はまた、体内組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルション内に薬物を封入することによって調製される。
【0114】
本発明の化合物を医薬品としてヒト及び動物に投与する場合、化合物は、それ自体で、または、例えば、薬学的に許容される担体と組み合わせた0.1~99%(より好ましくは、10~30%)の活性成分を含有する医薬組成物として、投与してもよい。
【0115】
本発明の製剤は、経口、非経口、局所、または直腸で投与してもよい。それら製剤は当然、それぞれの投与経路に好適な形態で投与される。例えば、製剤は、錠剤またはカプセル剤の形態、注射、吸入、目薬、軟膏剤、座薬など、注射、注入、または吸入による投与、ローション剤または軟膏剤による局所、及び坐剤による直腸で投与される。経口投与が好ましい。
【0116】
語句「非経口投与」及び「非経口投与する」とは、本明細書で使用する場合、一般的には注射による、経腸投与及び局所投与以外の投与方法のことを意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、硬膜内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮膚内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、及び胸骨内の注射及び注入が挙げられるがこれらに限定されない。
【0117】
語句「全身投与」、「全身投与する」、「末梢投与」、及び「末梢投与する」とは、本明細書で使用する場合、化合物、薬物、またはその他の物質が患者の全身へと入り、その結果、代謝及びその他の類似プロセスを受けることとなるような、中枢神経系へと直接投与する以外の、化合物、薬物、またはその他の物質の投与、例えば、皮下投与のことを意味する。
【0118】
本発明の医薬組成物内における活性成分の実際の用量濃度は、患者に毒性とはならずに、個々の患者、組成物及び投与方法における所望の治療効果を達成可能な活性成分の量を得るために、様々であり得る。
【0119】
選択用量レベルは、使用する個々の本発明の化合物の活性、投与経路、投与期間、使用する個々の化合物の排出速度または代謝速度、吸収の速度及び度合い、治療期間、使用する個々の化合物と組み合わせて使用するその他の薬物、化合物、及び/または物質、治療する患者の年齢、性別、体重、症状、総合的な健康状態、及び既往歴、ならびに医学技術分野において周知の類似の因子を含む様々な因子によって決まる。
【0120】
通常の技能を有する医師または獣医は、必要とされる有効量の医薬組成物を容易に決定し処方することができる。例えば、内科医または獣医は、所望の治療効果を得るために必要なレベル未満のレベルで、医薬組成物に用いられる本発明の化合物の用量を開始して、所望の効果が得られるまで用量を徐々に増加させることができる。
【0121】
一般的に、本発明の化合物の好適な1日量は、治療効果をもたらすことが可能な最も少ない用量である化合物の量である。このような有効用量は一般的に、上記の因子によって決まる。好ましくは、本化合物は、約0.01mg/kg~約200mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kg~約100mg/kg、更により好ましくは約0.5mg/kg~約50mg/kgで投与される。本明細書に記載の化合物を別の薬剤(例えば、増感剤として)と共投与する場合、有効量は、その薬剤を単独で使用する場合より少なくてもよい。
【0122】
必要に応じ、活性化合物の有効1日用量を、任意選択的に単位投与剤形で、1日を通して適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6回、またはそれ以上の回数の分割用量で投与してもよい。好ましい投与は1日あたり1回の投与である。
【0123】
本発明は更に、本明細書に記載の医学的障害を治療するための治療有効量で本明細書に記載の化合物を含む単位投与剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤など)を提供する。
【0124】
V.キット
本発明の別の態様は、例えば、(i)ガレクチン-3阻害剤、及び(ii)本明細書に記載の方法に従った使用(例えば、本明細書に記載の方法に従い、緑内障を患う患者における網膜神経障害を治療すること)のための取扱説明書、を含む医療用キットを提供する。
【実施例】
【0125】
これから本発明を概略的に説明していくが、本発明は、単に本発明の特定の態様及び実施形態を例示する目的のために含まれ本発明を限定することを意図しない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【0126】
実施例1-緑内障を有するマウスのミクログリアにおけるガレクチン-3レベルの解析
緑内障を患うマウスのミクログリアにおけるガレクチン-3レベルを解析した。実験手順及び結果を以下に記載する。
【0127】
パートI-実験手順
マウス:C57BL/6J(野生型)マウス及びB6.129P2-ApoetmlUnc/J(Apoe-/-)マウスをJAXから購入した。マウスは両方の性別のミックスであり、実験の開始時において6~12週齢であった。マウスを特定の病原体フリー条件下で収容し、食餌及び水については自由にさせた。マウスは所定の使用の前において処置を何ら受けなかった。CO2吸入によってマウスを安楽死させた。The Institutional Animal Care and Use Committee at Harvard Medical School、Brigham and Women’s Hospital、及びMEEI Schepens Eye Research Instituteは、動物を含む全ての実験手順を承認した。
【0128】
磁性マイクロビーズ注射:Sappington RM,et al.in Invest Ophthalmol Vis Sci(2010)51(1):207-216;Chen H,et al.in Invest Ophthalmol Vis Sci(2011)vol.52(1):36-44;及びIto YA,et al.in J Vis Exp(2016)vol.109:e53731の手順に基づいて、マイクロビーズ注射を実施した。簡潔に説明すると、ケタミン(100mg kg-1)及びキシラジン(10mg kg-1)の混合液のi.p.注射によりマウスに麻酔を行い、1%トロピカミドを用いて瞳孔を散大させた。30ゲージ針を使用して角膜に小さな穴をあけた。眼球に1.5μLの磁性マイクロビーズ溶液(2.4×106ビーズ)または擬似注射用のPBSを注射した。全ての注射は左眼に行った。小さなマグネットを使用してビーズを前眼房へと引き寄せその周囲に均一に分布させ、感染症のリスクを低下させるために抗生物質点眼薬で眼を処置した。以下に記載するとおり眼内圧をモニターした。
【0129】
IOP測定:マイクロビーズ注射の24時間後、その後、週に2回、トノメータ(TonoLab;Icare,Finland)を使用して、IOPを測定した。イソフルラン吸入(2%~4%流量)によりマウスに麻酔を行った。朝の一定時間に測定を実施し、マイクロビーズ注射後1ヶ月間にわたり実施した。外れ値の除外後にトノメータで6回の測定値を記録し、平均値を表示させる。トノラボで生成した平均値については1つの値として考慮し、本発明者らは眼球あたり5つの値を記録した。これら5つの値の平均値をIOP計測値に決定した。
【0130】
マウスミクログリアの単離及び分離:Butovsky O,etal.in Nat Neurosci(2014)vol.17(1):131-143及びKrasemann S,et al.in Immunity(2017)vol.47(3):566-581 e569のプロトコルに従いミクログリアの単離を実施した。簡潔に説明すると、CO2を使用してマウスを安楽死させてから眼球を取り出し、網膜を切り出した。単一細胞懸濁液を調製し、37%/70%不連続パーコール勾配で遠心分離にかけ(GE Healthcare)、境界面から単核球を単離した。常在性ミクログリアを動員骨髄細胞と区別するために、本発明者らは、Feris(ミクログリア上には発現しているが浸潤性骨髄細胞上には発現していない)を認識するモノクローナル抗体を使用した。Butovsky O,et al.Nat Neurosci(2014)vol.17(1):131-143を参照されたい。単離細胞を抗Fcrls[クローン4G11、3μgml-1、Butovsky lab、Butovsky O,et al.Nat Neurosci(2014)vol.17(1):131-143及びButovsky O,et al.Ann Neurol(2015)vol.77(1):75-99を参照することにより有効]、CD11b-PeCy7[クローンM1/70、BD Biosciences,2μgml-1]、及びLy6c-PerCP/Cy5.5[クローンHK1.4、BioLegend、2μgml-1]抗体で染色し、常在性ミクログリアをCD11b+、Ly6c-、及びFcrls+細胞として明確に分離した。100~600細胞をそれぞれの網膜から採取し、5μlのTCLバッファーあたり100細胞に標準化し、RNAseqにまわした。
【0131】
一次ニューロン培養液の調製及びアポトーシスの誘導:一次ニューロンの単離、アポトーシスの誘導、及びニューロンの標識の詳細な記述については、Krasemann S,etal.Immunity(2017)vol.47(3):566-581 e569を参照されたい。簡潔に説明すると、胎齢E18.5のマウス胚からニューロンを単離して培養した。培養の7~10日後、ニューロンを培養プレートから剥離し、6×15Wの強度、15分間のUV照射によりアポトーシスを誘導した。次に、ニューロンを蛍光色素(Alexa488 5-SDP EsterまたはAlexa405 NHS Ester,Life Technologies/Thermo Fisher Scientific)で標識してから、トリパンブルー染色を使用して総アポトーシス細胞数を測定した。1μlあたり約25,000細胞の密度でニューロンを再懸濁させた。
【0132】
アポトーシスニューロンの眼球への注射及び非食細胞ミクログリアに対する食細胞ミクログリアの単離:上記のとおりにアポトーシスニューロンを調製した。ケタミン(100mg kg-1)及びキシラジン(10mg kg-1)のi.p.注射によりレシピエントマウスに麻酔を行い、1%トロピカミドを用いて瞳孔を散大させた。レンズの損傷を避けるために注意を払いながら、30ゲージ針を使用して角膜縁のすぐ後方に最初の穴をあけた。2μlの標識アポトーシスニューロンを10μl Nanofilマイクロシリンジに充填し、硝子体内注射した。注射の16~24時間後、CO2吸入によりマウスを屠殺した。Butovsky O,etal.NatNeurosci(2014)vol.17(1):131-143)のプロトコルに従いミクログリアの単離を実施した。簡潔に説明すると、マウスから眼球を取り出し、網膜を切り出し、上記のとおりにFACSソーティングを使用してミクログリアを単離した。食細胞ミクログリアの生成を増加させるために、5~6の網膜をプールしてそれぞれの試料を調製した(試料あたり100~500食細胞)。ミクログリアをCD11b+、Ly6c-、及びFcrls+細胞として単離してから、非食細胞ミクログリアに対する食細胞ミクログリアを更に、Alexa488またはAlexa405蛍光の検出により、Fcrls+CD11b+集団から分離した。
【0133】
RNAシークエンシング:Smart-Seq2プロトコルに従い試料を処理してから、Illuminaシークエンサー上でシークエンスを行った。Ensemblカタログに対してSalmonを使用して、FASTQのリードを転写レベルで定量し、tximportを使用して遺伝子レベルに集約させた。0.05の設定でt検定(2つの実験群を有するデータセット用)またはテューキー事後検定を伴う1-way ANOVA(複数の実験群を有するデータセット用)を使用して、データの解析を行った。
【0134】
免疫組織化学:安楽死させた後に眼球を摘出し、4%PFA中、24時間、4℃で固定した。Ibal/Gal-3染色用に、摘出眼球から網膜を切り出し、すぐに氷冷メタノールへと移し、氷上のメタノール中に20分間置いた。次に、網膜をPBS 0.3%トリトンで洗浄し、PBS 0.3%トリトン中、-80℃で15分間凍結させることによって透過処理を行い、もう一度PBS 0.3%トリトンで洗浄した。ブロッキングバッファー(1×PBS中の5%NHS、0.2%BSA、0.3%Triton-X100)中、室温で1時間、網膜をブロッキングした。ブロッキング後、抗Gal-3抗体(モノクローナル、クローンB2C10、#556904、BD Pharmingen、0.5μg ml-1;1:200)及び抗Ibal抗体(ポリクローナル、#019-19741、WAKO Chemicals、1μg ml-1;1:200)と共に、4℃で一晩、網膜を培養した。一次抗体培養後、網膜をPBS 0.3%トリトンで洗浄し、ブロッキングバッファー中、AlexaFluor594ヤギ抗マウス(ポリクローナル、#A11005、Invitrogen;1:400)及びAlexaFluor488ニワトリ抗ウサギ(交差吸着済み、#A21441、Invitrogen;1:400)二次抗体と共に、室温で2時間培養した。その後、網膜を1×PBSで洗浄し、DAPIで染色してから、DAPI封入剤を含むVectaSheldを使用して、顕微鏡用スライドガラス上に硝子体側を上にして固定した。
【0135】
パートII-結果
実験の結果は、緑内障を患うマウスにおいてガレクチン-3がmRNAレベルで上方制御されたが、対照マウス(すなわち、緑内障を患っていないマウス)においてガレクチン-3がmRNAレベルで上方制御されなかったことを示した。更に、ガレクチン-3は、アポトーシスニューロンに応答して網膜ミクログリアにおいて上方制御された。この上方制御はAPOEノックアウトマウスでは弱まっており、ガレクチン-3がAPOEの下流エフェクターであることを示した。APOEは、緑内障における網膜神経節細胞変性を悪化させる神経変性関連ミクログリア表現型の周知の制御因子である。結果をグラフを用いて
図1に示す。
【0136】
加えて、実験の結果は、緑内障を患うマウスのミクログリアにおいてガレクチン-3がタンパク質レベルで上方制御されたことを示した。結果を視覚的に
図2に示す。
【0137】
実施例2-緑内障を患うAPOEノックアウトマウスのミクログリアにおけるガレクチン-3レベルの解析
緑内障を患う野生型及びAPOEノックアウトマウスのミクログリアにおけるガレクチン-3レベルを解析した。実験手順及び結果を以下に記載する。
【0138】
パートI-実験手順
磁性マイクロビーズ注射:Sappington RM,et al.in Invest Ophthalmol Vis Sci(2010)51(1):207-216;Chen H,et al.in Invest Ophthalmol Vis Sci(2011)vol.52(1):36-44;及びIto YA,et al.in J Vis Exp(2016)vol.109:e53731の手順に基づいて、マイクロビーズ注射を実施した。簡潔に説明すると、ケタミン(100mg kg-1)及びキシラジン(10mg kg-1)の混合液のi.p.注射によりマウスに麻酔を行い、1%トロピカミドを用いて瞳孔を散大させた。30ゲージ針を使用して角膜に小さな穴をあけた。眼球に1.5μLの磁性マイクロビーズ溶液(2.4×106ビーズ)または擬似注射用のPBSを注射した。全ての注射は左眼に行った。小さなマグネットを使用してビーズを前眼房へと引き寄せその周囲に均一に分布させ、感染症のリスクを低下させるために抗生物質点眼薬で眼を処置した。以下に記載するとおり眼内圧をモニターした。
【0139】
IOP測定:マイクロビーズ注射の24時間後、その後、週に2回、トノメータ(TonoLab;Icare,Finland)を使用して、IOPを測定した。イソフルラン吸入(2%~4%流量)によりマウスに麻酔を行った。朝の一定時間に測定を実施し、マイクロビーズ注射後1ヶ月間にわたり実施した。外れ値の除外後にトノメータで6回の測定値を記録し、平均値を表示させる。トノラボで生成した平均値については1つの値として考慮し、本発明者らは眼球あたり5つの値を記録した。これら5つの値の平均値をIOP計測値に決定した。
【0140】
免疫組織化学:安楽死させた後に眼球を摘出し、4%PFA中、24時間、4℃で固定した。P2ry12/Gal-3染色用に、摘出眼球から網膜を切り出し、すぐに氷冷メタノールへと移し、氷上のメタノール中に20分間置いた。次に、網膜をPBS 0.3%トリトンで洗浄し、PBS 0.3%トリトン中、-80℃で15分間凍結させることによって透過処理を行い、もう一度PBS 0.3%トリトンで洗浄した。ブロッキングバッファー(1×PBS中の5%NHS、0.2%BSA、0.3%Triton-X100)中、室温で1時間、網膜をブロッキングした。ブロッキング後、抗Gal-3抗体(モノクローナル、クローンB2C10、#556904、BD Pharmingen、0.5μg ml-1;1:200)または抗P2ry12[ポリクローナル、0.4μg ml-1、Butovsky lab、Butovsky O,et al.in Nat Neurosci(2014)vol.17(1):131-143及びButovsky O,et al.in Ann Neurol(2015)vol.77(1):75-99;1:200を参照することにより有効]のいずれかと共に、4℃で一晩、網膜を培養した。一次抗体培養後、網膜をPBS 0.3%トリトンで洗浄し、ブロッキングバッファー中、AlexaFluor594ヤギ抗マウス(ポリクローナル、#A11005、Invitrogen;1:400)及びAlexaFluor488ニワトリ抗ウサギ(交差吸着済み、#A21441、Invitrogen,1:400)二次抗体と共に、室温で2時間培養した。その後、網膜を1×PBSで洗浄し、DAPIで染色してから、DAPI封入剤を含むVectaSheldを使用して、顕微鏡用スライドガラス上に硝子体側を上にして固定した。
【0141】
パートII-結果
実験の結果は、緑内障を患う野生型マウスにおけるガレクチン-3発現と比較して、緑内障を患うAPOEノックアウトマウスのミクログリアにおいてガレクチン-3発現が弱まったことを示した。APOEは、緑内障における網膜神経節細胞変性を悪化させる神経変性関連ミクログリア表現型の周知の制御因子である。この結果は、ガレクチン-3がミクログリアにおけるAPOEの下流エフェクターであることを示す。結果を視覚的に
図3に示す。
【0142】
実施例3-緑内障を有するガレクチン-3ノックアウトマウスにおける網膜神経節細胞の生存率の解析
緑内障を有する野生型動物及び緑内障を有さない対照と比較した、緑内障を患うガレクチン-3ノックアウトマウスにおける生存網膜神経節細胞の数を解析した。実験手順及び結果を以下に記載する。
【0143】
パートI-実験手順
マウス:C57BL/6J(野生型)マウス及び6.Cg-Lgals3 tm1Poi/J(Lgals3-/-)マウスをJAXから購入した。マウスは両方の性別のミックスであり、実験の開始時において6~12週齢であった。マウスを特定の病原体フリー条件下で収容し、食餌及び水については自由にさせた。マウスは所定の使用の前において処置を何ら受けなかった。CO2吸入によってマウスを安楽死させた。The Institutional Animal Care and Use Committee at Harvard Medical School、Brigham and Women’s Hospital、及びMEEI Schepens Eye Research Instituteは、動物を含む全ての実験手順を承認した。
【0144】
磁性マイクロビーズ注射:Sappington RM,et al.in Invest Ophthalmol Vis Sci(2010)51(1):207-216;Chen H,et al.in Invest Ophthalmol Vis Sci(2011)vol.52(1):36-44;及びIto YA,et al.in J Vis Exp(2016)vol.109:e53731の手順に基づいて、マイクロビーズ注射を実施した。簡潔に説明すると、ケタミン(100mg kg-1)及びキシラジン(10mg kg-1)の混合液のi.p.注射によりマウスに麻酔を行い、1%トロピカミドを用いて瞳孔を散大させた。30ゲージ針を使用して角膜に小さな穴をあけた。眼球に1.5μLの磁性マイクロビーズ溶液(2.4×106ビーズ)または擬似注射用のPBSを注射した。全ての注射は左眼に行った。小さなマグネットを使用してビーズを前眼房へと引き寄せその周囲に均一に分布させ、感染症のリスクを低下させるために抗生物質点眼薬で眼を処置した。以下に記載するとおり眼内圧をモニターした。
【0145】
IOP測定:マイクロビーズ注射の24時間後、その後、週に2回、トノメータ(TonoLab;Icare,Finland)を使用して、IOPを測定した。イソフルラン吸入(2%~4%流量)によりマウスに麻酔を行った。朝の一定時間に測定を実施し、マイクロビーズ注射後1ヶ月間にわたり実施した。外れ値の除外後にトノメータで6回の測定値を記録し、平均値を表示させる。トノラボで生成した平均値については1つの値として考慮し、本発明者らは眼球あたり5つの値を記録した。これら5つの値の平均値をIOP計測値に決定した。
【0146】
免疫組織化学:安楽死させた後に眼球を摘出し、4%PFA中、24時間、4℃で固定した。RGC定量に用いるBrn3a染色用に、網膜を切り出し、PBS 0.3%トリトン中、-80℃で15分間凍結させることによって透過処理を行った。次に、網膜をPBSですすぎ、ブロッキングバッファー中、室温で1時間ブロッキングし、1×PBSですすぎ、ブロッキングバッファー中、抗Bm3a(モノクローナル、#MAB1585、Millipore;1:200)と共に、4℃で4~6日間培養した。網膜を室温の1×PBSで洗浄し、ブロッキングバッファー中、AlexaFluor594ヤギ抗マウス二次抗体(ポリクローナル、#A11005、Invitrogen;1:400)と共に、4℃で2日間培養した。二次培養の後、網膜を1×PBSで洗浄して、スライドを調製した。
【0147】
網膜神経節細胞の定量:Zeiss LSM 710共焦点顕微鏡を使用して、平面固定網膜のイメージングを行った。油浸対物レンズを使用して63×の画像を取得し、試料あたり12の画像(網膜中間周辺部の象限あたり3つの画像)を収集した。ImageJを使用して、Brn3a+DAPI+二重陽性細胞を手動でカウントした。12の画像にわたって試料あたりのRGCカウントを平均し、細胞/mm2へと変換した。
【0148】
パートII-結果
実験の結果は、野生型動物では、対照と比較して、緑内障を有する動物において網膜神経節細胞数が減少したことを示した。それに対し、ガレクチン-3ノックアウトマウスでは、網膜神経節細胞は高い眼内圧にもかかわらず生存した。それゆえ、ガレクチン-3の遺伝子標的化は緑内障のマウスモデルにおいてニューロン保護的である。結果を
図4において視覚的に、
図5においてグラフを用いて示す。
【0149】
実施例4-緑内障を患うマウスにおけるガレクチン-3阻害剤の網膜神経節細胞減少に対する保護能の解析
緑内障を患うマウスにおけるガレクチン-3阻害剤の網膜神経節細胞減少に対する保護能は、以下で提供する実験手順に従って評価することができる。
【0150】
パートI-実験手順
磁性マイクロビーズ注射:Sappington RM,et al.in Invest Ophthalmol Vis Sci(2010)51(1):207-216;Chen H,et al.in Invest Ophthalmol Vis Sci(2011)vol.52(1):36-44;及びIto YA,et al.in J Vis Exp(2016)vol.109:e53731の手順に基づいて、マイクロビーズ注射を実施してもよい。簡潔に説明すると、ケタミン(100mg kg-1)及びキシラジン(10mg kg-1)の混合液のi.p.注射によりマウスに麻酔を行い、1%トロピカミドを用いて瞳孔を散大させる。30ゲージ針を使用して角膜に小さな穴をあける。眼球に1.5μLの磁性マイクロビーズ溶液(2.4×106ビーズ)または擬似注射用のPBSを注射する。全ての注射は左眼に行う。小さなマグネットを使用してビーズを前眼房へと引き寄せその周囲に均一に分布させ、感染症のリスクを低下させるために抗生物質点眼薬で眼を処置する。以下に記載するとおり眼内圧をモニターしてもよい。
【0151】
IOP測定:マイクロビーズ注射の24時間後、その後、週に2回、トノメータ(TonoLab;Icare,Finland)を使用して、IOPを測定する。イソフルラン吸入(2%~4%流量)によりマウスに麻酔を行う。朝の一定時間に測定を実施し、マイクロビーズ注射後1ヶ月間にわたり実施する。外れ値の除外後にトノメータで6回の測定値を記録し、平均値を表示させる。トノラボで生成した平均値については1つの値として考慮し、眼球あたり5つの値を記録してもよい。これら5つの値の平均値をIOP計測値に決定する。
【0152】
緑内障眼球へのガレクチン-3阻害剤の注射:固体化合物を1000ng μl-1となるようにDMSO中に溶解させることによって、ガレクチン-3阻害剤(例えば、TD139、#28400、CAS #1450824-22-2、Cayman Chemicals;C28H30F2N6O8Sなど)を調製し、その後、更に、このストックを5%DMSO/PBS中の50ng μl-1の終濃度となるように1×PBS中に希釈する。2つの時点(マイクロビーズ注射の2週間後及び3週間後)において、上記のとおりに野生型マウスに麻酔をかけ、1μlのガレクチン-3阻害剤または5%DMSO/PBS溶媒を硝子体内注射によりマイクロビーズ注射眼球に投与する。擬似注射眼球は、溶媒を用いた硝子体内処理を行う。マイクロビーズ注射の4週間後、CO2吸入によりマウスを屠殺してから、免疫組織化学及びRGC定量用に眼球を採取する。実験に先立って毒性を評価し、網膜神経節細胞密度が制御条件下におけるガレクチン-3阻害剤処理の影響を受けていないことを確認する。
【0153】
免疫組織化学:安楽死させた後に眼球を摘出し、4%PFA中、24時間、4℃で固定する。RGC定量に用いるBm3a染色用に、網膜を切り出し、PBS 0.3%トリトン中、-80℃で15分間凍結させることによって透過処理を行う。次に、網膜をPBSですすぎ、ブロッキングバッファー中、室温で1時間ブロッキングし、1×PBSですすぎ、ブロッキングバッファー中、抗Bm3a(モノクローナル、#MAB1585、Millipore;1:200)と共に、4℃で4~6日間培養する。網膜を室温の1×PBSで洗浄し、ブロッキングバッファー中、AlexaFluor594ヤギ抗マウス二次抗体(ポリクローナル、#A11005、Invitrogen;1:400)と共に、4℃で2日間培養する。二次培養の後、網膜を1×PBSで洗浄して、スライドを調製する。
【0154】
網膜神経節細胞(RGC)の定量:Zeiss LSM 710共焦点顕微鏡を使用して、平面固定網膜のイメージングを行ってもよい。油浸対物レンズを使用して63×の画像を取得し、試料あたり12の画像(網膜中間周辺部の象限あたり3つの画像)を収集する。ImageJを使用して、Brn3a+DAPI+二重陽性細胞を手動でカウントしてもよい。12の画像にわたって試料あたりのRGCカウントを平均し、細胞/mm2へと変換してもよい。
【0155】
参照による組み込み
本明細書で参照した特許文献及び科学論文のそれぞれにおける開示内容全体は、あらゆる目的において参照により組み込まれる。
【0156】
等価物
本発明は、その趣旨または本質的な特徴を逸脱することなく、その他の特定の形態で実施することができる。それゆえ、上記の実施形態は、あらゆる点において、本明細書に記載する本発明を限定するものではなく例示と捉えられるものである。それゆえ、本発明の範囲は、上記の記述によってではなく添付の特許請求の範囲によって示されるものであり、請求の範囲の趣旨及び等価範囲内に収まるあらゆる変更は、そのクレーム中に包含されることを意味する。
【国際調査報告】