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特表2023-521162重症急性呼吸器症候群を治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】重症急性呼吸器症候群を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4178 20060101AFI20230516BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61K31/4178
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561996
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 US2021026303
(87)【国際公開番号】W WO2021207444
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/062,623
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/008,529
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518391580
【氏名又は名称】イーグル ファーマスーティカルズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヘプナー、エイドリアン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
(57)【要約】
本開示は、重症急性呼吸器症候群を治療するために、ダントロレン若しくはダントロレンプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩を使用する方法を対象とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における重症急性呼吸器症候群を治療する方法であって、ダントロレン若しくはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含むか、又はダントロレンプロドラッグ若しくはその薬学的に許容される塩を投与することによる、方法。
【請求項2】
ダントロレンを前記対象に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ダントロレンの薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ダントロレンナトリウムを前記対象に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記投与が、ベースラインと比較して、前記対象のWHO順序尺度スコアの少なくとも1点の減少をもたらす、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記投与が、ベースラインと比較して、前記対象の逐次臓器不全評価(Sequential Organ Failure Assessment)の毎日のスコアの改善をもたらす、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記投与が、対照対象における熱の正常化までの時間の量と比較して、前記対象における熱の正常化までの時間の低減をもたらす、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記投与が、対照対象における酸素飽和度の正常化までの時間の量と比較して、前記対象における酸素飽和度の正常化までの時間の低減をもたらす、先行請求項のいずれか一項に記載の方法
【請求項9】
対象におけるSARS-CoVの複製を阻害するための方法であって、ダントロレン若しくはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含むか、又はダントロレンプロドラッグ若しくはその薬学的に許容される塩を投与することによる、方法。
【請求項10】
ダントロレンを前記対象に投与することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ダントロレンの薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ダントロレンナトリウムを前記対象に投与することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
宿主細胞中のSARS-CoVの複製を阻害するための、SARS-CoVの宿主細胞への侵入を阻害するための、宿主細胞中のSARS-CoVビリオン成熟を阻害するための、又は宿主細胞からのSARS-CoVの放出を阻害するための方法であって、ダントロレン若しくはその薬学的に許容される塩を前記宿主細胞に投与することを含むか、又はダントロレンプロドラッグ若しくはその薬学的に許容される塩を投与することによる、方法。
【請求項14】
ダントロレンを前記宿主細胞に投与することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ダントロレンの薬学的に許容される塩を前記宿主細胞に投与することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ダントロレンナトリウムを前記宿主細胞に投与することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ダントロレン若しくはその薬学的に許容される塩を宿主細胞に投与することによって、又はダントロレンプロドラッグ若しくはその薬学的に許容される塩を投与することによって、SARS-CoVの感染性を低減するための、方法。
【請求項18】
ダントロレンを前記宿主細胞に投与することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ダントロレンの薬学的に許容される塩を前記宿主細胞に投与することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ダントロレンナトリウムを前記宿主細胞に投与することを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月10日出願の米国仮特許出願第63/008,529号、及び2020年8月7日出願の米国仮特許出願第63/062,623号の優先権及び利益を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、重症急性呼吸器症候群を治療するために、ダントロレン若しくはダントロレンプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩を使用する方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、SARS関連コロナウイルス(SARS-CoV)、例えば、SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2によって引き起こされるウイルス性呼吸器疾患である。SARS-Covは、世界的な公衆衛生を脅かす。これらのウイルスの治療に有効な治療の開発が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ダントロレン若しくはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含むか、又はダントロレンプロドラッグ若しくはその薬学的に許容される塩を投与することによる、対象における重症急性呼吸器症候群を治療する方法を対象とする。
【0005】
本開示はまた、ダントロレン若しくはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含むか、又はダントロレンプロドラッグ若しくはその薬学的に許容される塩を投与することによる、対象におけるSARS-CoVの複製を阻害するための方法を対象とする。
【0006】
本開示はまた、ダントロレン若しくはその薬学的に許容される塩を宿主細胞に投与することを含むか、又はダントロレンプロドラッグ若しくはその薬学的に許容される塩を投与することによる、宿主細胞中のSARS-CoVの複製を阻害する、SARS-CoVの宿主細胞への侵入を阻害する、宿主細胞中のSARS-CoVビリオン成熟を阻害する、又は宿主細胞からのSARS-CoVの放出を阻害するための方法を対象とする。
【0007】
本開示はまた、ダントロレン若しくはその薬学的に許容される塩を宿主細胞に投与することによって、又はダントロレンプロドラッグ若しくはその薬学的に許容される塩を投与することによって、SARS-CoVの感染性を低減するための方法を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、本開示の一部を形成する添付の図面及び実施例に関連して解釈される以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解され得る。本開示が、本明細書に記載され、かつ/又は示される具体的な組成物、デバイス、方法、適用、条件、又はパラメータに限定されないこと、並びに本明細書で使用される用語が、単なる例として特定の実施形態を説明することを目的とし、特許請求された開示を制限することを意図していないことを理解されたい。
【0009】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形を含み、特定の数値への言及は、文脈が別途明確に示さない限り、少なくともその特定の値を含む。
【0010】
値の範囲が表される場合、例示的な実施形態は、1つの特定の値から、かつ/又は他の特定の値までを含む。全ての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能である。更に、範囲に記載された値への言及は、その範囲内のありとあらゆる値を含む。値が近似として表される場合、前置詞「約」の使用によって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。量、持続時間などの測定可能な値に言及する場合に本明細書で使用される「約」という用語は、例えば、指定された値から±10%など、値の妥当な変動を包含することを意図する。例えば、「約50%」という語句は、50%を含み、50の±10%又は45%~55%を含み得る。
【0011】
明確にするために別個の実施形態の文脈で本明細書に記載される本開示のある特定の特徴が、単一の実施形態で組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載される本開示の様々な特徴は、別々に又は任意の部分的組み合わせで提供されてもよい。
【0012】
本明細書で使用される場合、それ自体で、又は別の用語と併せてかどうかにかかわらず、「治療する方法」及び「治療方法」という語句が、特定の疾患「の治療における使用のための」という語句と互換的に使用され得ることを理解されたい。
【0013】
本明細書で使用される場合、それ自体で、又は別の用語と併せてかどうかにかかわらず、「薬学的に許容される」は、例えば、薬学的に許容される賦形剤などの指定された実体が、概して、組成物中の他の成分と化学的かつ/又は物理的に適合性がある、並びに/又は概して、そのレシピエントと生理学的に適合性があることを示す。
【0014】
本明細書で使用される場合、それら自体で、又は別の用語と併せてかどうかにかかわらず、「対象」、「個人」、及び「患者」は、ヒトを含む哺乳動物を指す。ヒトという用語は、ヒトの幼児、青年、又は成人を指し、それらを含む。
【0015】
本明細書で使用される場合、それら自体で、又は別の用語と併せてかどうかにかかわらず、「治療する」、「治療すること」、「治療される」、及び「治療」は、改善的、緩和的、かつ/又は治癒的な使用及び結果、又はそれらの任意の組み合わせを指し、かつそれらを含む。他の実施形態では、本明細書に記載される方法は、予防的に使用され得る。「予防」又は予防的使用若しくは結果は、絶対的又は完全な予防(すなわち、100%の予防的又は保護的な使用又は結果)を指すことも、それらを要求することもない。本明細書で使用される場合、予防又は予防的使用若しくは結果は、化合物又は組成物の投与が本明細書に記載される特定の状態、症状、障害、若しくは疾患の重症度を減少させる若しくは低減するか、本明細書に記載される特定の状態、症状、障害、若しくは疾患を経験する可能性を減少させる若しくは低減するか、又は本明細書に記載される特定の状態、症状、障害、若しくは疾患の発現若しくはぶり返し(再発)を遅らせる、又は前述の任意の組み合わせである、使用及び結果を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、単独で、又は別の用語と併せて使用されるかどうかにかかわらず、「治療的」及び「治療有効量」は、(a)本明細書に記載される特定の状態、症状、障害、又は疾患を治療する、(b)本明細書に記載される特定の状態、障害、又は疾患の1つ以上の症状を軽減、改善、又は除去する、(c)本明細書に記載される特定の状態、症状、障害、又は疾患の発現又はぶり返し(再発)を遅らせる、化合物又は組成物の量を指す。「治療的」及び「治療的に有効な」という用語は、単独で、又は他の(a)~(c)のいずれかと組み合わせて、前述の効果(a)~(c)のいずれか1つを包含する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、例えば、上皮細胞、例えば、肺上皮細胞、例えば、ヒト肺上皮細胞などの哺乳動物肺上皮細胞である。他の宿主細胞には、白血球、例えば、マクロファージ及びT細胞が含まれる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「熱の正常化」は、対象の温度が脇の下で36.6℃未満、経口で37.2℃未満、又は直腸で37.8℃未満まで低減し、少なくとも24時間にわたって維持されることである。
【0019】
本明細書で使用される場合、「酸素飽和度の正常化」は、対象の末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO2)が94%超まで上昇し、少なくとも24時間にわたって維持されることである。
【0020】
本明細書で使用される場合、「SARS-CoVの複製を阻害すること」は、SARS-CoVのウイルス量を減少させることを指す。SARS-CoV複製阻害を決定するための方法は、当業者によって決定され得る。
【0021】
ダントロレンは、高リスク患者における悪性高熱の治療及び悪性高熱の予防に承認されている。悪性高熱は、強力な揮発性麻酔薬(ハロタン、イソフルラン、セボフルラン、デスフルランなど)及び骨格筋弛緩薬スクシニルコリンに曝露すると、感受性の高い個人が生命に関わる有害反応を生じやすくなる状態である。麻酔薬は、リアノジン受容体(RyR)を通した小胞体(ER)からの制御不能なCa2+放出を誘発し、筋形質Ca2+の急速かつ持続的な上昇を引き起こす。ダントロレンの投与は、ER中の放出チャネルを阻害することによって細胞カルシウム恒常性を再確立し、細胞内Ca2+のレベルを低下させる。
【0022】
RYANODEX(ダントロレンナトリウム、250mg/バイアル)は、高リスク患者における悪性高熱の治療及び悪性高熱の予防に承認されている。RYANODEXは、5mLのUSP注射用滅菌水(WFI)(静菌剤を含まない)で再構成すると、ダントロレン50mg/mLを含有する静脈内注射用の水性ナノ懸濁液を形成する。ヒト血漿中のRYANODEX懸濁液の溶解は、極めて迅速であり、1分以内に完全な溶解を達成する。
【0023】
ダントロレンは、SAR-CoV感染症に対する驚くほど有効な治療である。ダントロレンは、複製する、成熟する、ビリオンを作る、細胞から放出する、かつ/又は他の細胞に感染するウイルスの能力を低下させることができる。
【0024】
本開示の方法はまた、ダントロレンプロドラッグ及びその薬学的に許容される塩を使用して達成され得る。例示的なダントロレンプロドラッグは、WO2019/079721に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
好ましいダントロレンプロドラッグは、例えば、式Iの化合物であって、
【化1】
式中、Rは、-P(O)(OH)又は-P(O)(OR)(OR)であり、Rは、H、-C1-26アルキル、アリール、C1-6アルキ(alk)C(O)O-C1-26アルキル、-CアルキOC(O)C1-26アルキル、又はCアルキOC(O)OC1-26アルキルであり、Rは、-C1-26アルキル、アリール、C1-6アルキC(O)O-C1-26アルキル、-CアルキOC(O)C1-26アルキル、又はCアルキOC(O)OC1-26アルキルである、式Iの化合物、及びその薬学的に許容される塩を含む。式Iの特に好ましい化合物は、化合物2及び2aを含む。
【化2】
【0026】
他のダントロレンプロドラッグは、式IIの化合物であって、
【化3】
式中、Rは、H、-C(O)-Z-N(R)(R)、-C(O)Z-C(O)-OH、又は-C(O)-NH-Y-CH-OC(O)-Z-C(O)-OHであり、Zは、C1-6アルキであり、Yは、アリーレン、C1-6アルキルであり、Rは、H若しくはC1-6アルキルであるか、又はR及びRは、それらが付着する窒素と一緒に、ヘテロシクロアルキルを形成する、式IIの化合物、及びその薬学的に許容される塩を含む。
【0027】
本発明の一態様は、対象におけるSARSを治療する方法を対象とする。対象は、SARSと臨床的に診断され得る。対象をSARSと診断するための基準は、既知であり、1つ以上のSARSの症状の提示と組み合わせた、PCRを使用して決定されたSARS-CoV感染症の検査室での確認を含む。SARS-CoV感染症を決定するための他のアッセイも使用され得る。SARSの症状には、発熱、咳、及び息切れの症状を伴う軽症から重症の呼吸器疾患が含まれる。SARS患者の一部は、一方又は両方の肺に肺炎を発症する場合がある。SARS患者の一部は、多臓器不全を発症する場合がある。
【0028】
いくつかの態様では、対象は、例えば、SARSと臨床的に診断されたか、又はSARS-CoV感染症と臨床的に診断された別の人物との濃厚接触を経験したことに基づいて、SARSを有することを疑われ得る。他の対象は、対象の症状の提示に基づいて、SARSを有することを疑われ得る。
【0029】
いくつかの態様では、対象は、ダントロレンを対象に投与することによって、SARSに対して治療される。他の態様では、対象は、ダントロレンの薬学的に許容される塩、例えば、ダントロレンナトリウムを対象に投与することによって、SARSに対して治療される。いくつかの態様では、対象は、ダントロレンプロドラッグ、例えば、化合物2を対象に投与することによって、SARSに対して治療される。いくつかの態様では、対象は、ダントロレンプロドラッグの塩、例えば、化合物2aを対象に投与することによって、SARSに対して治療される。投与は、好ましくは、治療有効量のダントロレン、ダントロレンの薬学的に許容される塩、ダントロレンプロドラッグ、又はダントロレンプロドラッグの塩である。治療有効量は、例えば、約1mg/kg~10mg/kgを毎日、1日以上投与することを含む。特に好ましい量は、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は約10mg/kgを毎日、1回以上の用量で1日以上投与することを含む。
【0030】
いくつかの態様では、投与は、ベースライン時の対象のWHO順序尺度スコアと比較して、対象のWHO順序尺度スコアの少なくとも1点の減少をもたらす。WHO順序尺度スコアを評価する方法は、当該技術分野で既知である。いくつかの態様では、投与は、ベースライン時の対象のWHO順序尺度スコアと比較して、対象のWHO順序尺度スコアの2点の減少をもたらす。いくつかの態様では、投与は、ベースライン時の対象のWHO順序尺度スコアと比較して、対象のWHO順序尺度スコアの3点の減少をもたらす。いくつかの態様では、投与は、ベースライン時の対象のWHO順序尺度スコアと比較して、対象のWHO順序尺度スコアの4点の減少をもたらす。いくつかの態様では、投与は、ベースライン時の対象のWHO順序尺度スコアと比較して、対象のWHO順序尺度スコアの5点の減少をもたらす。
【0031】
いくつかの態様では、投与は、例えば、ベースラインと比較して、対象の逐次臓器不全評価(Sequential Organ Failure Assessment)の毎日のスコアの改善、例えば、増加をもたらす。対象の逐次臓器不全評価の毎日のスコアを評価する方法は、当該技術分野で既知である。
【0032】
いくつかの態様では、投与は、対照対象における熱の正常化までの時間の量と比較して、例えば、標準治療の処置のみを受けた対象と比較して、対象における熱の正常化までの時間の低減をもたらす。いくつかの態様では、投与は、SARSに対して治療された対象における熱の低減をもたらす。他の態様では、投与は、対象における熱の臨床的に顕著な低減をもたらす。いくつかの態様では、投与は、対象における熱の正常化をもたらす。
【0033】
いくつかの態様では、投与は、対照対象における酸素飽和度の正常化までの時間の量と比較して、例えば、標準治療の処置のみを受けた対象と比較して、対象における酸素飽和度の正常化までの時間の低減をもたらす。いくつかの態様では、投与は、対象における酸素飽和度の上昇をもたらす。他の態様では、投与は、対象における酸素飽和度の臨床的に顕著な上昇をもたらす。他の態様では、投与は、対象における酸素飽和度の正常化をもたらす。
【0034】
更に他の態様では、投与は、対象におけるSARSの1つ以上の症状の改善をもたらす。他の態様では、投与は、対象におけるSARSの1つ以上の症状の臨床的に顕著な改善をもたらす。
【0035】
本開示の他の態様は、対象におけるSARS-CoVの複製を阻害する方法を対象とする。対象は、SARS-CoV感染症と臨床的に診断され得る。対象をSARS-CoV感染症と診断するための基準は、既知であり、PCRを使用して決定された検査室での確認を含む。SARS-CoV感染症を決定するための他のアッセイも使用され得る。
【0036】
いくつかの態様では、対象は、例えば、SARSと臨床的に診断されたか、又はSARS-CoV感染症と臨床的に診断された別の人物との濃厚接触を経験したことに基づいて、SARS-CoV感染症を有することを疑われ得る。
【0037】
いくつかの態様では、対象におけるSARS-CoV複製の阻害は、ダントロレンを対象に投与することによって達成される。他の態様では、対象におけるSARS-CoV複製の阻害は、ダントロレンの薬学的に許容される塩、例えば、ダントロレンナトリウムを対象に投与することによって達成される。いくつかの態様では、対象におけるSARS-CoV複製の阻害は、ダントロレンプロドラッグ、例えば、化合物2を対象に投与することによって達成される。いくつかの態様では、対象におけるSARS-CoV複製の阻害は、ダントロレンプロドラッグの塩、例えば、化合物2aを対象に投与することによって達成される。投与は、好ましくは、治療有効量のダントロレン、ダントロレンの薬学的に許容される塩、ダントロレンプロドラッグ、又はダントロレンプロドラッグの塩である。治療有効量は、例えば、約1mg/kg~10mg/kgを毎日、1日以上投与することを含む。特に好ましい量は、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は約10mg/kgを毎日、1回以上の用量で1日以上投与することを含む。
【0038】
本開示のいくつかの態様は、宿主細胞中のSARS-CoVの複製を阻害するための方法を対象とする。ウイルス複製の阻害は、当業者によって決定され得る。これらの方法では、複製は、ダントロレンを宿主細胞に投与することによって阻害される。他の態様では、複製は、ダントロレンの薬学的に許容される塩、例えば、ダントロレンナトリウムを宿主細胞に投与することによって阻害される。いくつかの態様では、複製は、ダントロレンプロドラッグ、例えば、化合物2を宿主細胞に投与することによって阻害される。いくつかの態様では、複製は、ダントロレンプロドラッグの塩、例えば、化合物2aを宿主細胞に投与することによって阻害される。
【0039】
本開示のいくつかの態様は、SARS-CoVの宿主細胞への侵入を阻害するための方法を対象とする。宿主細胞へのウイルス侵入の阻害は、当業者によって決定され得る。これらの方法では、ウイルス侵入は、ダントロレンを宿主細胞に投与することによって阻害される。他の態様では、ウイルス侵入は、ダントロレンの薬学的に許容される塩、例えば、ダントロレンナトリウムを宿主細胞に投与することによって阻害される。いくつかの態様では、ウイルス侵入は、ダントロレンプロドラッグ、例えば、化合物2を宿主細胞に投与することによって阻害される。いくつかの態様では、ウイルス侵入は、ダントロレンプロドラッグの塩、例えば、化合物2aを宿主細胞に投与することによって阻害される。
【0040】
本開示のいくつかの態様は、宿主細胞中のSARS-CoVビリオン成熟を阻害するための方法を対象とする。宿主細胞中のビリオン成熟の阻害は、当業者によって決定され得る。これらの方法では、ビリオン成熟は、ダントロレンを宿主細胞に投与することによって阻害される。他の態様では、ビリオン成熟は、ダントロレンの薬学的に許容される塩、例えば、ダントロレンナトリウムを宿主細胞に投与することによって阻害される。いくつかの態様では、ビリオン成熟は、ダントロレンプロドラッグ、例えば、化合物2を宿主細胞に投与することによって阻害される。いくつかの態様では、ビリオン成熟は、ダントロレンプロドラッグの塩、例えば、化合物2aを宿主細胞に投与することによって阻害される。
【0041】
本開示のいくつかの態様は、宿主細胞からのSARS-CoVの放出のための方法を対象とする。宿主細胞からの放出の阻害は、当業者によって決定され得る。これらの方法では、ウイルス放出は、ダントロレンを宿主細胞に投与することによって阻害される。他の態様では、ウイルス放出は、ダントロレンの薬学的に許容される塩、例えば、ダントロレンナトリウムを宿主細胞に投与することによって阻害される。いくつかの態様では、ウイルス放出は、ダントロレンプロドラッグ、例えば、化合物2を宿主細胞に投与することによって阻害される。いくつかの態様では、ウイルス放出は、ダントロレンプロドラッグの塩、例えば、化合物2aを宿主細胞に投与することによって阻害される。
【0042】
本開示のいくつかの方法は、SARS-CoVの感染性を低減するための方法を対象とする。感染性の低減は、当業者によって決定され得る。これらの方法では、感染性は、ダントロレンを宿主細胞に投与することによって低減される。他の態様では、感染性は、ダントロレンの薬学的に許容される塩、例えば、ダントロレンナトリウムを宿主細胞に投与することによって低減される。いくつかの態様では、感染性は、ダントロレンプロドラッグ、例えば、化合物2を宿主細胞に投与することによって低減される。いくつかの態様では、感染性は、ダントロレンプロドラッグの塩、例えば、化合物2aを宿主細胞に投与することによって低減される。
【0043】
以下の実施例は、本開示内に記載される概念の一部を説明するために提供される。各実施例は、開示の特定の個々の実施形態を提供するとみなされるが、いずれの実施例も、本明細書に記載されるより一般的な実施形態を制限するとみなされるべきではない。以下の実施例では、使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にするために努力がなされてきたが、ある程度の実験誤差及び偏差は、考慮されるべきである。
【実施例
【0044】
実施例1
方法
本研究は、静脈内(IV)投与されたCOVID-19のアジュバント治療のためのダントロレンの単一施設、非盲検、2群並行研究である。1つの治療群では、ダントロレンを、COVID-19を有する患者の入院治療のために確立された医療行為及び手順に従って、現在の標準治療と併せて投与することになる。第2の治療群では、対象は、COVID-19を有する患者の入院治療のために確立された医療行為及び手順に従って、現在の標準治療を受けることになる。
【0045】
対象の初期トリアージ及び一次評価の後、対象のベースライン状態を文書化することになる。適格性基準及びベースライン状態が得られると、ダントロレンの投与を開始することになる。
群A:標準治療に加えてダントロレン
群B:標準治療のみ
【0046】
治療投与-群A
群Aに無作為化された適格なCOVID-19対象は、以下のようにダントロレン(RYANODEX、ダントロレンナトリウムとして)を受けることになる。
●1mg/kgの用量を、約12時間毎に2日間連続でIVプッシュとして投与することになる(研究1日目及び2日目)。
●研究の3日目に、1mg/kgの用量に対する十分な忍容性を示す対象は、研究の残りの期間(試験3日目~14日目(それらを含む))、約12時間毎にIVプッシュとして2mg/kgの用量を受けることを開始することになる。十分な忍容性は、COVID-19、任意の他の基礎疾患、又は併用薬に続発しない、対象の全体的な状態に悪影響を与え得る臨床的に顕著な有害反応の欠如として定義される。
●患者が2mg/用量に対して十分な忍容性を示さない場合、対象は、研究を中止することになる。
●研究に参加する各対象は、1mg/kgの用量を最大4回(1~2日目)、及び2mg/kgの用量を最大24回(3~14日目)を投与され、各々は、IVプッシュとして(最大1分)受けることになる。
【0047】
ダントロレンを投与されている対象は、除外基準に含まれる治療を除き、処方された全ての他の治療を受け続けることになる。バイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数、体温)の評価は、各用量の投与前、及び投与後10分以内に明確に記録されなければならない。
【0048】
群B
群Bに無作為化された患者は、許容される医療行為の後に標準治療を受けることになる。
【0049】
研究段階
研究は、2つの段階:スクリーニング及び治療を含むことになる。
【0050】
スクリーニング段階中、適格性及びベースライン評価を実施することになる。インフォームドコンセントは、研究手順の開始前に得られることになる。
【0051】
適格性を判定し、インフォームドコンセントを得た後、適格患者を群A又は群Bに無作為化し、治療段階を開始し、群Aに上記のような治験薬の投与を進めることになる不適格対象は、認められた医療行為の後、担当医によって必要とみなされる医療支援を受けることになる。
【0052】
治験薬の中止
対象がダントロレン毒性の臨床的に顕著な徴候/症状を示す場合、治験薬を中止するべきである。ダントロレン毒性には、筋力低下及び意識状態の変化(例えば、嗜眠、鎮静)、嘔吐、下痢、並びに結晶尿が含まれ得、これらは、COVID-19、他の基礎疾患(例えば、敗血症、低酸素症、制御不能な糖尿病)、及び/又は併用薬(例えば、鎮静剤、抗生物質、解熱剤)などの他の原因に起因しない。治験薬は、いつでも中止され得る。
【0053】
診断及び主な選択基準
男性又は非妊娠女性の対象は、COVID-19と診断され、スクリーニング時に以下の基準を全て満たす場合、本研究に参加することになる。
●少なくとも18歳。
●研究手順を実施する前に、書面によるインフォームドコンセントを提供する意思があり、かつそれを行うことができるか、又は患者ができない場合、正式代表者が、患者の代わりに同意する意思があり、かつ同意することができる。
●WHO重症度順序尺度に従ったCOVID-19の重症度スコア3~5
●スクリーニング前7日以内のCOVID-19の症状の発現。
●入院患者。
●スクリーニング前48時間以内に、PCR、又は他の商業的若しくは公衆衛生アッセイによって決定された、検査室で確認されたSARS-CoV-2感染症を有する。
●同意の少なくとも48時間以内に脇の下で36.6℃以上、経口で37.2℃以上、又は直腸で37.8℃以上の温度と定義される発熱。
男性又は非妊娠女性の対象は、スクリーニング時に以下の基準のいずれかを満たす場合、本研究への参加から除外されることになる。
●COVID-19の実験的治療の任意の他の治験への参加。
●正常上限(ULN)の5倍超のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)。
●妊娠女性又は授乳中の女性。
●(臨床判断に従った)予後不良を暗示する併存疾患の存在。
●ダントロレンに対するアレルギー。
【0054】
投与量及び投与方法
Ryanodex:(ダントロレンナトリウム)注射用懸濁液。250mg/バイアルを5mLの注射用滅菌水(静菌剤を含まない)で再構成して、50mg/mLの懸濁液を得る。プロトコルに記載されるように、1mg/kg又は2mg/kgの急速IVプッシュとして投与される。
【0055】
有効性を、以下を含む基準で評価することになる:
●世界保健機関(WHO)重症度順序尺度スコア。
●逐次臓器不全評価(SOFA)スコア。
●熱の正常化までの時間の長さ(脇の下で36.6℃未満、経口で37.2℃未満、又は直腸で37.8℃未満の温度が、最低24時間にわたって維持されることによって定義される熱の正常化)。
●酸素飽和度の正常化までの時間の長さ(94%超の末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO2)が、少なくとも24時間持続されることによって定義される酸素の正常化)。ベースラインと比較した、WHO順序尺度(1~8スコア)を使用した14日目の臨床状態の変化。
1: 歩行可能。活動の制限なし
2: 歩行可能。活動の制限
3: 入院、軽症疾患。酸素療法なし
4: 入院、軽症疾患。マスク又は鼻カニューレによる酸素
5: 入院、重症疾患。非侵襲的換気又は高流量酸素
6: 入院、重症疾患。挿管及び機械的換気
7: 入院、重症疾患。換気+追加の臓器補助(昇圧、腎代替療法、体外式膜型人工肺)
8: 死亡
●ベースラインと比較した、WHO順序尺度(1~8スコア)を使用した5日目及び10日目の臨床状態の変化。
●WHO順序尺度スコアの1点減少までの時間。
●ベースラインと比較した、逐次臓器不全評価(SOFA)の毎日のスコアの変化(1~14日目)。
●熱の正常化までの時間の長さ(脇の下で36.6℃未満、経口で37.2℃未満、又は直腸で37.8℃未満の温度が、最低24時間にわたって維持されることによって定義される熱の正常化)。
●酸素飽和度の正常化までの時間の長さ(94%超の末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO2)が、少なくとも24時間持続されることによって定義される酸素の正常化)。
【0056】
安全性が評価され、以下の測定及び観察が含まれることになる(存在する場合)。
●バイタルサイン(心拍数、血圧、呼吸数、体温)
●臨床検査(血液学及び血液化学)
●ECGモニタリング
●酸素飽和度
●身体検査
【0057】
実施例2
ダントロレン濃度を試験した:5、10、20、30、40、50、100μM(RYANODEX、ダントロレンナトリウムとして)。
【0058】
SARS-CoV-2ウイルスに対する試験は、COVID-19の世界規模のパンデミックの病原因子を表す。試験は、SARS-CoV-2を中和する能力を評価した標準ウイルス中和(VN)アッセイを介した。
【0059】
ウイルス中和(VN)アッセイ。VNアッセイを、SARS-CoV-2感染症にかかりやすいVero E6細胞を使用して実施した。細胞を、VNアッセイの1~3日前に96ウェルプレートに播種し、37℃及び5% COでインキュベートした。アッセイの日に、Vero E6細胞の単層は、VNを実行するために少なくとも70%~80%コンフルエントであった。VNのための化合物の調製をアッセイの日に実施した。化合物を、所望の開始濃度(1:10)まで無血清培地で希釈し、次いで、無血清培地で2倍に連続希釈した。
【0060】
ウイルスの標準化は、ウイルスストック1mL当たりの感染性ウイルス粒子の濃度を決定するために、TCID50が以前に実行されていることが必要であった。TCID50力価を使用して、1e2 TCID50/mLを得るためのウイルスストックに添加する無血清培地の量を定義するために、計算を行った。標準化されたウイルスが作製されると、等体積のウイルスを、希釈された化合物試料を含有する深型96ウェルプレートに添加した。インキュベーションを少なくとも1時間維持した。次いで、ウイルス/化合物の混合物を、深型96ウェルラックから適切なVero播種96ウェルプレートに移した。この添加後、プレートを37℃及び5% COインキュベーターに3~5日間から6日間戻した。インキュベーション期間の後、ウェルを位相差逆スコープ下で観察し、細胞中のSARS-CoV-2細胞変性効果(CPE)の存在又は非存在についてスコアリングした。力価は、ウイルス感染を阻害するダントロレン(CPEを示さない細胞)の最終希釈の逆数であり、すなわち、最低有効力価は、全ての時点でウイルス感染を一貫して阻害した(細胞がCPEを示さない)ダントロレンの最終希釈であった。
【0061】
VNアッセイについて、各プレート上にいくつかの対照が存在した。第一に、化合物自体がCPEを引き起こさないことを確実にするために、ウイルスを欠いた化合物対照が存在した。この対照を、一連の化合物の最低希釈(通常1:10)及び試験濃度での追加の連続希釈を使用して実施した。無血清培地がCPEを引き起こさなかったことを検証するために、陰性対照ウェル(化合物又はウイルスを含まない)も存在した。また、ウイルスの陽性CPE対照として作用したウイルスの逆力価(back-titer)を実施し、これは、標準化されたウイルスの力価が許容範囲内であったことを検証する役割を果たした。そのプレート上の試料からの結果は、これらの対照の全てがそれらの許容基準を満たした場合に有効とみなされた。
【0062】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ダントロレンは、以前に報告されていない機序によるものを含み、細胞内Ca2+を調節し、それによって、例えば、細胞に感染するか、複製するか、成熟するか、ビリオンを作るか、又は細胞から放出するSARS-CoV-2ウイルスの能力に影響を及ぼすと考えられる。
【0063】
実施例3
ダントロレン濃度を試験した:5、10、20、30、40、50、100μM(RYANODEX、ダントロレンナトリウムとして)。
【0064】
SARS-CoV-2ウイルスに対する試験は、COVID-19の世界規模のパンデミックの病原因子を表す。試験は、SARS-CoV-2を中和する能力を評価した標準ウイルス中和(VN)アッセイを介した。
【0065】
ウイルス中和(VN)アッセイ。VNアッセイを、SARS-CoV-2感染症にかかりやすいVero E6細胞であるアフリカミドリザル細胞株を使用して実施した。Vero E6細胞を、成長培地(5% FBS(ウシ胎仔血清)、Glutamax、並びにPSN(ペニシリン、ストレプトマイシン、及びネオマイシン)を補充したダルベッコ改変イーグル培地)中で培養した。細胞を、VNアッセイの1日前に深型96ウェルプレートに播種し、37℃及び5% COでインキュベートして、細胞が70%のコンフルエンシーまで成長することを可能にした。試料及び対照の各々を3回実施した。
【0066】
VNのためのRYANODEXの調製をアッセイの日に実施した。RYANODEX処方情報に記載されるように、RYANODEXを5mLの注射用滅菌水で再構成して、50mg/mLのダントロレン濃度を有する初期ストックを調製した。細胞成長培地を使用して、ストックを100μMのダントロレン濃度まで更に希釈し、次いで50、40、30、20、10、及び5μMまで連続希釈した。希釈物を、細胞上で60分間プレインキュベーションした後に、ウイルスを添加した。
【0067】
ウイルスの標準化は、当該技術分野において既知の手順を使用して、ウイルスストック1mL当たりの感染性ウイルス粒子の濃度を決定するために、培地組織培養感染用量(TCID50)が以前に実施されていることが必要であった。例えば、Reed & Muench,(1938)A simple method of estimating fifty percent endpoints,The American Journal of Hygiene.27:493-497、World Health Organization, Laboratory Procedures,Serological detection of avian influenza A(H7N9)infections by microneutralization assay,May 23,2013を参照されたい。TCID50力価を使用して、1e2 TCID50/mLを得るためのウイルスストックに添加する無血清培地の量を定義するために、計算を行った。標準化されたウイルスが作製されると、等体積のウイルスを、希釈された化合物試料を含有する深型96ウェルプレートに添加した。ウイルスを適切なウェルに添加し、細胞及び化合物と2時間インキュベートした。次いで、細胞を新鮮な培地で3回洗浄し、100μL/ウェルの新鮮な培地を全てのウェルに添加し、更に6日間インキュベートした。インキュベーション期間中、ウェルを位相差逆スコープ下で観察し、細胞中のSARS-CoV-2細胞変性効果(CPE)の存在又は非存在についてスコアリングした。力価は、ウイルス感染を阻害するダントロレン(CPEを示さない細胞)の最終希釈の逆数であり、すなわち、最低有効力価は、全ての時点でウイルス感染を一貫して阻害した(細胞がCPEを示さない)ダントロレンの最終希釈であった。
【0068】
VNアッセイについて、各プレート上にいくつかの対照が存在した。第一に、試験された濃度でのダントロレン自体がCPEを引き起こさないことを確実にするために、ウイルスを含まない試験濃度で、RYANODEX単独を含んだダントロレン対照が存在した。無血清培地がCPEを引き起こさなかったことを検証するために、陰性対照ウェル(RYANODEX又はウイルスを含まない)も存在した。また、ウイルスの陽性CPE対照として作用した100 TCID50/ウェルのウイルスを含んだウイルスの逆力価を実施し、これは、標準化されたウイルスの力価が許容範囲内であったことを検証する役割を果たした。そのプレート上の試料からの結果は、これらの対照の全てがそれらの許容基準を満たした場合に有効とみなされた。
【0069】
中和アッセイの分析により、最も高いダントロレン濃度(50及び100μMの希釈)が、予想通り、感染細胞及び非感染対照の両方において2日目及び4日目に細胞変性効果を示したことが明らかになった。50μMの希釈は、感染後6日目にリバウンド細胞成長を有したが、より低い希釈と比較して減少した。非感染対照は、これらのより高いダントロレン濃度で、感染複製と同じ細胞傷害性プロファイルを示した。
【0070】
感染後2日目に、CPEは、RYANODEXを含有するいずれのウェルでも観察されなかった。感染後4日目及び6日目に、CPEは、20~40μMのダントロレンとインキュベートされた細胞中で観察されなかった。CPEは、10μMのダントロレンでの感染後4及び6日目に3つの複製のうちの2つで観察されたが、CPEは、2日目には観察されなかった。5μMの濃度のダントロレンにおいて、CPEは、感染後4及び6日目に3つの複製のうちの1つで観察されたが、CPEは、このダントロレン濃度において2日目には観察されなかった。表を参照されたい。
【表1】
【0071】
全ての非感染対照は、感染後6日間のインキュベーション期間全体を通して、健康なままであり、いかなるCPEも示さなかった。ダントロレンの最小阻害濃度は、20μMであるが、10及び5μMのより低い濃度も、抗ウイルス活性を示したことが結論付けられた。全ての時点において、20及び40μMの濃度のダントロレンでは、細胞変性効果(ウイルス成長がないことを示す)は観察されなかった。細胞傷害性効果は、ウイルスあり又はなしの両方の、2つの最も高いダントロレン濃度(100及び50μM)でのみ観察された。対照的に、より低い希釈(50μM未満のダントロレン)では、非感染Vero E6細胞は、良好な細胞生存を示した。ウイルスに感染したがRYANODEXを含まない対照細胞は全て、CPEを有し、ウイルス成長を証明した。
【0072】
要約すると、VNアッセイは、RYANODEXの推奨用量の投与後に観察されたヒト血漿レベルに適合するダントロレン濃度でのRYANODEXのインビトロ抗ウイルス活性、及び細胞傷害性の欠如を実証した。
【0073】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ダントロレンは、以前に報告されていない機序によるものを含み、細胞内Ca2+を調節し、それによって、例えば、細胞に感染するか、複製するか、成熟するか、ビリオンを作るか、又は細胞から放出するSARS-CoV-2ウイルスの能力に影響を及ぼすと考えられる。
【0074】
実施例4
方法
本研究は、静脈内(IV)投与されたSARSのアジュバント治療のためのダントロレンの単一施設、非盲検、2群試験である。1つの治療群では、ダントロレンを、SARSを有する患者の治療のために確立された医療行為及び手順に従って、現在の標準治療と併せて投与することになる。第2の治療群では、対象は、SARSを有する患者の治療のために確立された医療行為及び手順に従って、現在の標準治療を受けることになる。
【0075】
対象の初期トリアージ及び一次評価の後、対象のベースライン状態を文書化することになる。適格性基準及びベースライン状態が得られると、ダントロレンの投与を開始することになる。
群A:標準治療に加えてダントロレン
群B:標準治療のみ
【0076】
治療投与-群A
群Aに無作為化された適格なSARS対象は、以下のようにダントロレン(RYANODEX、ダントロレンナトリウムとして)を受けることになる。
●1mg/kgのダントロレン用量を、約12時間毎に2日間連続でIVプッシュとして投与することになる(研究1日目及び2日目)。
●研究の3日目に、1mg/kgの用量に対する十分な忍容性を示す対象は、研究の残りの期間(試験3日目~14日目(それらを含む))、約12時間毎にIVプッシュとして2mg/kgを受けることを開始することになる。十分な忍容性は、SARS、任意の他の基礎疾患、又は併用薬に続発しない、対象の全体的な状態に悪影響を与え得る臨床的に顕著な有害反応の欠如として定義される。
●患者が2mg/用量に対して十分な忍容性を示さない場合、対象は、研究を中止することになる。
●研究に参加する各対象は、1mg/kgの用量を最大4回(1~2日目)、及び2mg/kgの用量を最大24回(3~14日目)を投与され、各々は、IVプッシュとして(最大1分)受けることになる。
【0077】
ダントロレンを投与されている対象は、除外基準に含まれる治療を除き、処方された全ての他の治療を受け続けることになる。バイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数、体温)の評価は、各用量の投与前、及び投与後10分以内に明確に記録されなければならない。
【0078】
群B
群Bに無作為化された患者は、許容される医療行為の後に標準治療を受けることになる。
【0079】
研究段階
研究は、2つの段階:スクリーニング及び治療を含むことになる。
【0080】
スクリーニング段階中、適格性及びベースライン評価を実施することになる。インフォームドコンセントは、研究手順の開始前に得られることになる。
【0081】
適格性を判定し、インフォームドコンセントを得た後、適格患者を群A又は群Bに無作為化し、治療段階を開始し、群Aに上記のような治験薬の投与を進めることになる。不適格対象は、認められた医療行為の後、担当医によって必要とみなされる医療支援を受けることになる。
【0082】
治験薬の中止
対象がダントロレン毒性の臨床的に顕著な徴候/症状を示す場合、治験薬を中止するべきである。ダントロレン毒性には、筋力低下及び意識状態の変化(例えば、嗜眠、鎮静)、嘔吐、下痢、並びに結晶尿が含まれ得、これらは、SARS、他の基礎疾患(例えば、敗血症、低酸素症、制御不能な糖尿病)、及び/又は併用薬(例えば、鎮静剤、抗生物質、解熱剤)などの他の原因に起因しない。治験薬は、いつでも中止され得る。
【0083】
診断及び主な選択基準
男性又は非妊娠女性の対象は、SARSと診断され、スクリーニング時に以下の基準を全て満たす場合、本研究に参加することになる。
●少なくとも18歳。
●研究手順を実施する前に、書面によるインフォームドコンセントを提供する意思があり、かつそれを行うことができるか、又は患者ができない場合、正式代表者が、患者の代わりに同意する意思があり、かつ同意することができる。
●WHO重症度順序尺度に従ったSARSの重症度スコア3~5
●スクリーニング前7日以内のSARSの症状の発現。
●スクリーニング前48時間以内に、PCR、又は他の商業的若しくは公衆衛生アッセイによって決定された、検査室で確認されたSARS-CoV感染症を有する。
●同意の少なくとも48時間以内に脇の下で36.6℃以上、経口で37.2℃以上、又は直腸で37.8℃以上の温度と定義される発熱。
【0084】
男性又は非妊娠女性の対象は、スクリーニング時に以下の基準のいずれかを満たす場合、本研究への参加から除外されることになる。
●SARSの実験的治療の任意の他の治験への参加。
●正常上限(ULN)の5倍超のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)。
●妊娠女性又は授乳中の女性。
●(臨床判断に従った)予後不良を暗示する併存疾患の存在。
●ダントロレンに対するアレルギー。
【0085】
投与量及び投与方法
Ryanodex:(ダントロレンナトリウム)注射用懸濁液。250mg/バイアルを5mLの注射用滅菌水(静菌剤を含まない)で再構成して、50mg/mLの懸濁液を得る。プロトコルに記載されるように、1mg/kgの急速IVプッシュとして投与される。
【0086】
有効性を、以下を含む基準で評価することになる:
●世界保健機関(WHO)重症度順序尺度スコア。
●逐次臓器不全評価(SOFA)スコア。
●熱の正常化までの時間の長さ(脇の下で36.6℃未満、経口で37.2℃未満、又は直腸で37.8℃未満の温度が、最低24時間にわたって維持されることによって定義される熱の正常化)。
●酸素飽和度の正常化までの時間の長さ(94%超の末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO2)が、少なくとも24時間持続されることによって定義される酸素の正常化)。
●ベースラインと比較した、WHO順序尺度(1~8スコア)を使用した14日目の臨床状態の変化。
1: 歩行可能。活動の制限なし
2: 歩行可能。活動の制限
3: 入院、軽症疾患。酸素療法なし
4: 入院、軽症疾患。マスク又は鼻カニューレによる酸素
5: 入院、重症疾患。非侵襲的換気又は高流量酸素
6: 入院、重症疾患。挿管及び機械的換気
7: 入院、重症疾患。換気+追加の臓器補助(昇圧、腎代替療法、体外式膜型人工肺)
8: 死亡
●ベースラインと比較した、WHO順序尺度(1~8スコア)を使用した5日目及び10日目の臨床状態の変化。
●WHO順序尺度スコアの1点減少までの時間。
●ベースラインと比較した、逐次臓器不全評価(SOFA)の毎日のスコアの変化(1~14日目)。
●熱の正常化までの時間の長さ(脇の下で36.6℃未満、経口で37.2℃未満、又は直腸で37.8℃未満の温度が、最低24時間にわたって維持されることによって定義される熱の正常化)。
●酸素飽和度の正常化までの時間の長さ(94%超の末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO2)が、少なくとも24時間持続されることによって定義される酸素の正常化)。
【0087】
安全性が評価され、以下の測定及び観察が含まれることになる(存在する場合)。
●バイタルサイン(心拍数、血圧、呼吸数、体温)
●臨床検査(血液学及び血液化学)
●ECGモニタリング
●酸素飽和度
●身体検査
【0088】
実施例5
ダントロレン濃度を試験する:5、10、20、30、40、50、100μM(RYANODEX、ダントロレンナトリウムとして)。
【0089】
試験は、SARS-CoVを中和する能力を評価する標準ウイルス中和(VN)アッセイを介する。
【0090】
ウイルス中和(VN)アッセイ。VNアッセイを、SARS-CoV感染症にかかりやすい細胞を使用して実施する。細胞を、VNアッセイの1~3日前に96ウェルプレートに播種し、37℃及び5% COでインキュベートする。アッセイの日に、細胞の単層は、VNを実行するために少なくとも70%~80%コンフルエントである。VNのための化合物の調製をアッセイの日に実施する。化合物を、所望の開始濃度(1:10)まで無血清培地で希釈し、次いで、無血清培地で2倍に連続希釈する。
【0091】
ウイルスの標準化は、ウイルスストック1mL当たりの感染性ウイルス粒子の濃度を決定するために、TCID50が以前に実行されていることが必要である。TCID50力価を使用して、1e2 TCID50/mLを得るためのウイルスストックに添加する無血清培地の量を定義するために、計算を行う。標準化されたウイルスが作製されると、等体積のウイルスを、希釈された化合物試料を含有する深型96ウェルプレートに添加する。インキュベーションを少なくとも1時間維持する。次いで、ウイルス/化合物の混合物を、深型96ウェルラックから適切な細胞播種96ウェルプレートに移す。この添加後、プレートを37℃及び5% COインキュベーターに3~5日間から6日間戻す。インキュベーション期間の後、ウェルを位相差逆スコープ下で観察し、細胞中のSARS-CoV細胞変性効果(CPE)の存在又は非存在についてスコアリングする。力価は、ウイルス感染を阻害する血清(CPEを示さない細胞)の最終希釈の逆数であり、すなわち、最低有効力価は、全ての時点でウイルス感染を一貫して阻害した(細胞がCPEを示さない)ダントロレンの最終希釈である。
【0092】
VNアッセイについて、各プレート上にいくつかの対照が存在する。第一に、化合物自体がCPEを引き起こさないことを確実にするために、ウイルスを欠く化合物対照が存在する。この対照を、一連の化合物の最低希釈(通常1:10)及び試験濃度での追加の連続希釈を使用して実施する。無血清培地がCPEを引き起こさないことを検証するために、陰性対照ウェル(化合物又はウイルスを含まない)も存在する。また、ウイルスの陽性CPE対照として作用するウイルスの逆力価を実施し、これは、標準化されたウイルスの力価が許容範囲内であることを検証する役割を果たす。そのプレート上の試料からの結果は、これらの対照の全てがそれらの許容基準を満たす場合に有効とみなされる。
【0093】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ダントロレンは、以前に報告されていない機序によるものを含み、細胞内Ca2+を調節し、それによって、例えば、細胞に感染するか、複製するか、成熟するか、ビリオンを作るか、又は細胞から放出するSARS-CoVの能力に影響を及ぼすと考えられる。
【0094】
実施例6
ダントロレン濃度を試験する:5、10、20、30、40、50、100μM(RYANODEX、ダントロレンナトリウムとして)。
【0095】
試験は、SARS-CoVを中和する能力を評価する、当該技術分野で既知の標準ウイルス中和(VN)アッセイを介する。VNアッセイを、細胞に感染する、複製する、成熟する、ビリオンを作る、及び細胞から活性ウイルスを放出する能力を測定するために、当該技術分野で既知の方法を使用して実施する。
【0096】
典型的には、VNアッセイは、ウイルス感染症にかかりやすい適合する宿主細胞を必要とする。好適な細胞株としては、Vero E6、HeLa、293T、L929、線維芽細胞、CHO、B95-8、MRC-5、HEp-2、SPF CE、MDCK、COS-7、及びLLC-MK2誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。他の例では、動物から単離された初代細胞をアッセイに使用することができる。VNアッセイに使用される細胞は、野生型細胞であってもよいか、又はそれらは、当該技術分野で既知の技術を使用して遺伝子改変された細胞であってもよい。細胞株を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI、イーグル最小必須培地(EMEM)、ライボビッツL-15培地、及びVeroPlus SFMが挙げられるが、これらに限定されない適切な成長培地中で培養する。かかる成長培地は、細胞の成長を維持するために必要な補充物を含有する。例示的な補充物としては、ウシ胎仔血清、グルタマックス、ペニシリン、ストレプトマイシン、及びネオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。他の例では、特定の遺伝子改変を有する細胞を選択するために、補充物を添加することができる。
【0097】
細胞を、VNアッセイの前に深型96ウェルプレートに播種し、37℃及び5% COでインキュベートして、細胞が適切なコンフルエンシーまで成長することを可能にする。試料及び対照の各々を3回実施する。
【0098】
VNのためのRYANODEXの調製をアッセイの日に実施する。RYANODEX処方情報に記載されるように、RYANODEXを5mLの注射用滅菌水で再構成して、50mg/mLのダントロレン濃度を有する初期ストックを調製する。細胞成長培地を使用して、ストックを100μMのダントロレン濃度まで更に希釈し、次いで50、40、30、20、10、及び5μMまで連続希釈する。希釈物を、細胞上で60分間プレインキュベーションした後に、ウイルスを添加する。
【0099】
ウイルスの標準化は、当該技術分野において既知の手順を使用して、ウイルスストック1mL当たりの感染性ウイルス粒子の濃度を決定するために、培地組織培養感染用量(TCID50)が以前に実施されていることが必要である。例えば、Reed & Muench,(1938)A simple method of estimating fifty percent endpoints,The American Journal of Hygiene.27:493-497、World Health Organization, Laboratory Procedures,Serological detection of avian influenza A(H7N9)infections by microneutralization assay,May 23,2013を参照されたい。TCID50力価を使用して、1e2 TCID50/mLを得るためのウイルスストックに添加する無血清培地の量を定義するために、計算を行う。標準化されたウイルスが作製されると、等体積のウイルスを、希釈された化合物試料を含有する深型96ウェルプレートに添加する。ウイルスを適切なウェルに添加し、TCID50アッセイからの観察結果と一致する適切な時間、細胞及び化合物とインキュベートする。いくつかの場合では、この期間は、2時間である。他の場合では、期間は、30分~1時間である。他の例では、期間は、4~8時間である。更に他の例では、ウイルスは、細胞と24~48時間インキュベートされてもよい。また他の例では、細胞は、アッセイの期間にわたってウイルスとインキュベートされ続けてもよい。更に、感染は、スピン感染などの当該技術分野で既知の他の方法によって促進され得る。
【0100】
抗ウイルス効果のスコアリングの前にウイルスを細胞から除去する場合、次いで、細胞を新鮮な培地で3回洗浄し、100μL/ウェルの新鮮な培地を全てのウェルに添加し、VNアッセイが用いられることに応じて、適切な長さの時間、更にインキュベートする。
【0101】
適切な時点で、細胞を、当該技術分野で既知の方法を使用して、ウイルス感染及び複製の表れについて分析する。単なる例として、異なる条件下で処置された細胞のウイルス量は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は当該技術分野で既知の他の方法を使用して測定され得る。別の例として、プラーク形成などの細胞形態の変化が分析され得る。更に別の例として、ウイルスを含有するウェルを、光学顕微鏡検査若しくはアネキシンV、FITC、ヨウ化プロピジウム(PI)、又はヘモトキシリン(haemotoxylin)及びエオシン(H&E)染色などの当該技術分野で既知の方法を使用して、細胞中のウイルス細胞変性効果(VPE)の存在又は非存在についてスコアリングする。更に別の例として、ニワトリ赤血球懸濁液を、連続希釈ウイルスとインキュベートし、赤血球凝集アッセイにおいて赤血球格子の形成をモニタリングする。別の例として、ウイルスに感染した細胞単層の表面への赤血球の懸濁液の付着を、赤血球吸着アッセイでモニタリングする。
【0102】
力価は、ウイルス感染を阻害するダントロレンの最終希釈の逆数であり、すなわち、最低有効力価は、全ての時点でウイルス感染を一貫して阻害するダントロレンの最終希釈である。
【0103】
VNアッセイについて、各プレート上にいくつかの対照が存在する。第一に、ウイルス感染のアッセイを使用して、試験された濃度でのダントロレン自体が陽性シグナルを引き起こさないことを確実にするために、ウイルスを含まない試験濃度で、RYANODEX単独を含むダントロレン対照が存在する。ウイルス感染のアッセイを使用して、無血清培地が陽性シグナルを引き起こさないことを検証するための、陰性対照ウェル(RYANODEX又はウイルスを含まない)も存在する。また、ウイルスの陽性VPE又はウイルス感染対照として作用する100 TCID50/ウェルのウイルスを含むウイルスの逆力価を実施し、これは、標準化されたウイルスの力価が許容範囲内であることを検証する役割を果たす。そのプレート上の試料からの結果は、これらの対照の全てがそれらの許容基準を満たす場合に有効とみなされる。
【0104】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ダントロレンは、以前に報告されていない機序によるものを含み、細胞内Ca2+を調節し、それによって、例えば、細胞に感染するか、複製するか、成熟するか、ビリオンを作るか、又は細胞から放出するSARS-CoVの能力に影響を及ぼすと考えられる。
【国際調査報告】