(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】フロースループロセス及び標的分子を精製するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
C07K 1/18 20060101AFI20230516BHJP
C07K 1/36 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C07K1/18
C07K1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562243
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 IB2021052739
(87)【国際公開番号】W WO2021209851
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイル,アンドリュー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】アタン,セムラ シー.
(72)【発明者】
【氏名】ラスムッセン,ジェラルド ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴォロシン,アレクシィ エム.
(72)【発明者】
【氏名】へスター,ジョナサン エフ.
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA74
4H045GA23
(57)【要約】
標的分子(例えば、抗体、酵素、及びホルモン、特にモノクローナル抗体)を、標的分子を含む試料中の生物学的溶液(例えば、中和されたウイルス不活化プール)から精製するためのフロースループロセス、及びそのようなプロセスを実施するためのデバイスである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的分子を、前記標的分子を含む試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスであって、前記プロセスが、
任意に、前記試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、
任意に、前記試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前及び/又は後に、前記試料で緩衝液交換を実施することと、
前記試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、前記試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含み、
前記フロースループロセスが、1つ又は2つの緩衝液交換を含み、前記試料の前記耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素との接触と前記カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素との接触との間には緩衝液交換を含まない、フロースループロセス。
【請求項2】
標的分子を、前記標的分子を含む試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスであって、前記プロセスが、
前記試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、
その後すぐに、前記試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、前記試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含み、
前記フロースループロセスが、緩衝液交換を含まない、フロースループロセス。
【請求項3】
標的分子を、前記標的分子を含む試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスであって、前記プロセスが、
前記試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、
前記試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させた後に、前記試料で緩衝液交換を実施することと、
前記試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、前記試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む、フロースループロセス。
【請求項4】
標的分子を、前記標的分子を含む試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスであって、前記プロセスが、
前記試料で緩衝液交換を実施することと、
前記試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、前記試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む、フロースループロセス。
【請求項5】
前記標的分子が、モノクローナル抗体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のフロースループロセス。
【請求項6】
前記生物学的溶液が、中和されたウイルス不活化プールを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のフロースループロセス。
【請求項7】
前記アニオン交換吸着デプスフィルタが、固定化アニオン交換リガンドを含む多孔質基材を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のフロースループロセス。
【請求項8】
前記アニオン交換吸着デプスフィルタの前記アニオン交換リガンドが、カチオン性窒素含有リガンドを含む、請求項7に記載のフロースループロセス。
【請求項9】
前記アニオン交換吸着デプスフィルタの前記カチオン性窒素含有リガンドが、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載のフロースループロセス。
【請求項10】
前記アニオン交換吸着デプスフィルタの前記カチオン性窒素含有リガンドが、第四級アンモニウム含有リガンド、グアニジニル含有リガンド、又はそれらの組み合わせを含む、請求項9に記載のフロースループロセス。
【請求項11】
前記アニオン交換吸着デプスフィルタが、多孔質基材と、それにグラフト化されたリガンド官能性ポリマーとを含み、前記グラフト化されたリガンド官能性ポリマーが、式:
-(M
PI)
w-(M
b)
x-(M
c)
y-(M
d)
z、
[式中、
-(M
PI)
wは、グラフト化された光開始剤モノマーの残基を表し、wは、0又は少なくとも1であり、
-(M
b)
xは、「x個」の重合されたモノマー単位を有する重合されたリガンドモノマーを表し、xは、少なくとも1であり、前記リガンドモノマーは、式(X):
【化1】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
R
2は、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中R
3は、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
nは、1又は2である]のものであり、
-(M
c)
yは、y個の重合されたモノマー単位を有する重合された架橋モノマーを表し、yは、0又は少なくとも1であってもよく、
-(M
d)
zは、z個の重合されたモノマー単位を有する重合された親水性モノマーを表し、zは、0又は少なくとも1であってもよい]のものである、請求項7に記載のフロースループロセス。
【請求項12】
前記耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、固定化アニオン交換リガンドを含む多孔質膜を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のフロースループロセス。
【請求項13】
前記耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素の前記アニオン交換リガンドが、カチオン性窒素含有リガンドを含む、請求項12に記載のフロースループロセス。
【請求項14】
前記耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素の前記カチオン性窒素含有リガンドが、グアニジニル含有リガンドを含む、請求項13に記載のフロースループロセス。
【請求項15】
前記耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素の前記グラフト化されたコポリマーが、
グアニジニル含有リガンドモノマーと、
アミドモノマーと、
エポキシ官能性モノマー単位、アルキルエーテル官能性モノマー単位、及びそれらの組み合わせの群から選択されるオキシモノマーと、
ポリ(アルキレンオキシド)モノマーと、を含む、相互重合されたモノマー単位を含む、請求項14に記載のフロースループロセス。
【請求項16】
前記耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、非繊維状多孔質フィルタ要素と、それにグラフト化されたリガンド官能性ポリマーとを含み、前記グラフト化されたリガンド官能性ポリマーが、式:
-(M
PI)
w-(M
b)
x-(M
c)
y-(M
d)
z、
[式中、
-(M
PI)
w-は、グラフト化された光開始剤モノマーの残基を表し、wは、0又は少なくとも1であり、
-(M
b)
xは、「x個」の重合されたモノマー単位を有する重合されたリガンドモノマーを表し、xは、少なくとも1であり、前記リガンドモノマーは、式(X):
【化2】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
R
2は、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3は、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
nは、1又は2である]のものであり、
-(M
c)
yは、y個の重合されたモノマー単位を有する重合された架橋モノマーを表し、yは、0又は少なくとも1であってもよく、
-(M
d)
zは、z個の重合されたモノマー単位を有する重合された親水性モノマーを表し、zは、0又は少なくとも1であってもよい]のものである、請求項12に記載のフロースループロセス。
【請求項17】
前記カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、
非繊維状多孔質基材と、
前記多孔質非繊維状膜上に配置された、ポリマーであって、
炭化水素主鎖と、前記炭化水素主鎖に結合された複数のペンダント基とを含むポリマーと、を含み、第1の複数のペンダント基の各々が、
少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
前記少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって前記炭化水素主鎖に直接連結させるスペーサー基と、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のフロースループロセス。
【請求項18】
前記非繊維状多孔質フィルタ要素に共有結合している前記ポリマーが、前記非繊維状多孔質フィルタ要素に共有結合しているコポリマーであり、
少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、
少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって前記少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び前記少なくとも1つの酸性基又はその塩を直接連結させるスペーサー基と、
を含む第1のモノマーと、
少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、
少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって前記少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び前記少なくとも1つの酸性基を直接連結させるスペーサー基と、
を含む第2のモノマーと、
を含むモノマー組成物の反応生成物を含み、
前記第2のモノマーが、前記第1のモノマーとは異なり、
前記第1のモノマーの第2のモノマーに対するモル比が、95:5~5:95の範囲である、請求項17に記載のフロースループロセス。
【請求項19】
耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素とを含むフィルタカートリッジであって、
前記耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、
固定化カチオン性窒素含有リガンドを含む非繊維状多孔質フィルタ要素、又は
非繊維状多孔質フィルタ要素とそれにグラフト化されたリガンド官能性ポリマーを含み、
前記グラフト化されたリガンド官能ポリマーが、式:
-(M
PI)
w-(M
b)
x-(M
c)
y-(M
d)
z、
[式中、
-(M
PI)
w-は、グラフト化された光開始剤モノマーの残基を表し、wは、0又は少なくとも1であり、
-(M
b)
xは、「x個」の重合されたモノマー単位を有する重合されたリガンドモノマーを表し、xは、少なくとも1であり、前記リガンドモノマーは、式(X):
【化3】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
R
2は、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中R
3は、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
nは、1又は2である]のものであり、
-(M
c)
yは、y個の重合されたモノマー単位を有する重合された架橋モノマーを表し、yは、0又は少なくとも1であってもよく、
-(M
d)
zは、z個の重合されたモノマー単位を有する重合された親水性モノマーを表し、zは、0又は少なくとも1であってもよい]のものであり、
前記カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、
非繊維状多孔質フィルタ要素と、
前記非繊維状多孔質フィルタ要素上に配置された、ポリマーであって、
炭化水素主鎖と、前記炭化水素主鎖に結合された複数のペンダント基とを含むポリマーと、を含み、第1の複数のペンダント基の各々が、
少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
前記少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって前記炭化水素主鎖に直接連結させるスペーサー基と、を含む、フィルタカートリッジ。
【請求項20】
前記カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、前記耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素の下流に配置される、請求項19に記載のフィルタカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生物製剤の製造の最も困難な領域のうちの1つは、関節リウマチ、クローン病、高コレステロール血症、及び様々な癌を含む様々な疾患の治療用途に重要なモノクローナル抗体の濾過/精製である。治療用抗体の従来の下流処理は、多くのステップからなる。精製スキームは、フロースルー並びに結合及び溶出クロマトグラフィーを伴う。これらのプロセスの多くは、生成物損失を軽減しようとしながら、DNA、HCP、及び標的タンパク質凝集体(HMW)などの不純物を低減する性能を高める緩衝液交換を必要とする。例えば、イオン交換クロマトグラフィープロセスは、典型的には、結合及び溶出モードで実行され、しばしばpH及び塩の調整などの緩衝液交換を必要とする。緩衝液交換ステップを低減又は排除することによって、これらのクロマトグラフィーステップを多機能イオン交換又はハイブリッドデバイスに簡略化すると、タンパク質精製中の処理時間及び材料が低減される。生物製剤業界は、処理時間及びステップを低減するのを助けるために、連続処理スキーム、特にフロースループロセスの特定で関心が高まっている。
【発明の概要】
【0002】
本開示は、標的分子を、標的分子を含む試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセス、及びそのようなプロセスを実施するためのデバイスを提供する。
【0003】
一実施形態では、標的分子を試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスは、任意に、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタ(すなわち、フィルタ要素)と接触させることと、任意に、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前及び/又は後に、試料で緩衝液交換を実施することと、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(例えば、膜)と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(例えば、膜)と接触させることと、を含み、フロースループロセスは1つ又は2つの緩衝液交換を含み、試料の耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素との接触と、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素との接触の間には緩衝液交換を含まない。
【0004】
別の実施形態では、標的分子を試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスは、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、その後すぐに、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含み、フロースループロセスは緩衝液交換を含まない。
【0005】
更に別の実施形態では、標的分子を試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスは、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させた後に試料で緩衝液交換を実施することと、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む。
【0006】
なお別の実施形態では、標的分子を試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスは、試料で緩衝液交換を実施することと、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む。
【0007】
更なる実施形態では、本開示は、本明細書に記載される耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と、好ましくは、耐塩性フィルタ要素から下流に配置される、本明細書に記載されるカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素とを含むフィルタカートリッジを提供する。
【0008】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、アルカンの基である一価の基を指し、直鎖、分岐鎖、環式、及び二環式のアルキル基並びにこれらの組み合わせである基を含み、これには非置換及び置換の両方のアルキル基が含まれる。別段の指示がない限り、アルキル基は、典型的には、1個~30個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1個~20個の炭素原子、1個~12個の炭素原子、1個~10個の炭素原子、1個~6個の炭素原子、1個~4個の炭素原子、又は1個~3個の炭素原子を含有する。「アルキル」基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソブチル、t-ブチル、イソプロピル、n-オクチル、n-ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0009】
用語「アルキレン」は、アルカンの基である二価の基を指し、直鎖、分岐鎖、環式、二環式、又はこれらの組み合わせである基を含む。別段の指示がない限り、アルキレン基は、典型的には、1個~30個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレン基は、1個~20個の炭素原子、1個~12個の炭素原子、1個~10個の炭素原子、1個~6個の炭素原子、又は1個~4個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、1個~12個の炭素原子を有する直鎖飽和二価炭化水素であり、いくつかの実施形態では、アルキレンは、3個~12個の炭素原子を有する分岐鎖飽和二価炭化水素、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシルジメチレンなどである。
【0010】
用語「アリール」は、芳香族の、及び任意に炭素環である、一価の基を指す。アリールは、少なくとも1つの芳香環を有する。任意の更なる環は、不飽和、部分飽和、飽和、又は芳香族であってもよい。任意に、芳香環は、芳香環に縮合された1つ以上の更なる炭素環を有し得る。別段の指示がない限り、アリール基は、典型的には、6個~30個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アリール基は6個~20個、6個~18個、6個~16個、6個~12個、又は6個~10個の炭素原子を有する。アリール基の例としては、フェニル、トリル、ベンジル、フェネチル、ナフチル、2-ナフチルエチル、ビフェニル、フェナントリル、及びアントラシルが挙げられる。
【0011】
「ヒドロカルビル」は、アリール及びアルキルを含む。「ヒドロカルビレン」は、アリーレン及びアルキレンを含む。
【0012】
「(ヘテロ)ヒドロカルビル」は、ヒドロカルビル(アルキル及びアリール)基、並びにヘテロヒドロカルビル(ヘテロアルキル及びヘテロアリール)基を含む。ヘテロヒドロカルビル基には、1つ以上の懸垂型(鎖中)ヘテロ原子、又は酸素、硫黄、若しくは窒素原子などのヘテロ原子を含む1つ以上の置換基が挙げられる。ヘテロヒドロカルビル基は、任意に、エステル官能基、アミド官能基、尿素官能基、ウレタン官能基、及びカーボネート官能基などの、1つ以上の懸垂型(鎖中)官能基を含有し得る。別段の指示がない限り、非ポリマー(ヘテロ)ヒドロカルビル基は、典型的には、1個~60個の炭素原子、1個~40個の炭素原子、1個~20個の炭素原子、1個~10個の炭素原子、又は1個~6個の炭素原子を含有する。本明細書で使用されるそのようなヘテロヒドロカルビルのいくつかの例としては、メトキシエチル、エトキシプロピル、プロポキシエチル、4-ジフェニルアミノブチル、2-(2’-フェノキシエトキシル)エチル、3,6-ジオキサヘプチル、3,6-ジオキサヘキシル-6-フェニル、2-イミダゾリル、3-フリル、及び3-インドールメチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
「(ヘテロ)ヒドロカルビレン」は、ヒドロカルビレン(アルキレン及びアリーレン)基、並びにヘテロヒドロカルビレン(ヘテロアルキレン及びヘテロアリーレン)基を含む。ヘテロヒドロカルビレン基としては、1つ以上の懸垂型(鎖中)ヘテロ原子、又は酸素、硫黄、若しくは窒素原子などのヘテロ原子を含む1つ以上の置換基を含む。ヘテロヒドロカルビレン基は、任意に、エステル官能基、アミド官能基、尿素官能基、ウレタン官能基、及びカーボネート官能基などの、1つ以上の懸垂型(鎖中)官能基を含有し得る。別段の指示がない限り、非ポリマー(ヘテロ)ヒドロカルビレン基は、典型的には、1個~60個の炭素原子、1個~40個の炭素原子、1個~20個の炭素原子、1個~10個の炭素原子、又は1個~6個の炭素原子を含有する。本明細書で使用されるそのようなヘテロヒドロカルビレンのいくつかの例としては、オキシジエチレン、3-チアブチレン、3-ジフェニルアミノブチレン、2-(2’-フェノキシエチル)エチレン、3,6-ジオキサオクチレン、3,6-ジオキサヘキシル-6-フェニレン、2,5-フリレン、2,6-ピリジレン(2,6-ピリジンジイルとしても知られる)、及び2,5-チオフェンジメチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
「エチレン性不飽和基」という用語は、フリーラジカル重合され得る炭素-炭素二重(又は三重)結合を有し、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリレート、ビニル、及びビニルオキシ基、アリル及びアリルオキシ基、並びにアセチレン基を含む基を指す。
【0015】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」としては、これらに限定されるものではないが、有機ホモポリマー、コポリマー(例えば、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ランダムコポリマー及び交互コポリマー等)、ターポリマー等、並びにこれらのブレンド及び修飾体が挙げられる。更に、別段の特定の限定がない限り、用語「ポリマー」は、材料の全ての可能な幾何学的配置を包含するものとする。これらの配置としては、アイソタクチック対称、シンジオタクチック対称、及びアタクチック対称が挙げられるがこれらに限定されない。
【0016】
本明細書では、用語「を含む」及びその変化形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に記載されている場合、限定的な意味を有するものではない。このような用語は、記述される1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群が含まれることを示唆するが、いかなる他の1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群も除外されないことを示唆すると理解される。「からなる」により、この語句「からなる」の前のあらゆるものを含み、これらに限定することを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる」は、この語句の前に列挙されるあらゆる要素を含み、これらの列挙された要素に関して本開示で特定した作用若しくは機能に干渉又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の作用若しくは機能に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもよい、又は、しなくてもよいことを示す。オープンエンド言語(例えば、「を含む」とその派生語)で本明細書に記載される、要素のいずれか又は要素の組み合わせは、クローズドエンド言語(例えば、「からなる」とその派生語)及び部分的クローズドエンド言語(例えば、「から本質的になる」とその派生語)で更に記載されると考えられる。
【0017】
「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」という言葉は、特定の状況下で特定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。ただし、同一又は他の状況下では、他の請求項もまた好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい請求項についての説明は、他の請求項が有用でないことを意味するのではなく、かつ他の請求項を本開示の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0018】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、全般分類を含み、その具体例を、例示のために使用し得る。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つ」と互換的に用いられる。列挙に後続する「~のうちの少なくとも1つ」及び「~のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「又は」は、内容がそうでない旨を特に明示しない限り、概して「及び/又は」を含む通常の意味で使用される。
【0020】
用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0021】
更に本明細書では、全ての数は用語「約」によって修飾されるものとみなされ、特定の実施形態では、好ましくは、用語「正確に」によって修飾されるものとみなされる。本明細書で使用する場合、測定した量との関連において、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。本明細書では、「最大」数字(例えば、最大50)は、その数(例えば、50)を含む。
【0022】
更に本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「室温」は、20℃~25℃又は22℃~25℃の温度を指す。
【0024】
用語「の範囲(in the range)」又は「の範囲内(within a range)」(及び類似の記載)は、その記載された範囲の端点を含む。
【0025】
本明細書に開示の代替要素又は実施形態の群分けは、限定されるものと解釈するべきではない。各群のメンバーは、個々に、又は、その群の他のメンバー若しくはその群の中に見出される他の要素との任意の組み合わせで、言及及び特許請求することができる。便宜上及び/又は特許性の理由から、群の1つ以上のメンバーが群に含まれ得るか、又は、群から削除され得ることが見込まれる。任意のこのような包含又は削除が生じた場合、本明細書は、本明細書において改変された群を含むものとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で用いられた全てのマーカッシュ群の記載内容を実現する。
【0026】
ある基が本明細書に記載の式中に複数存在する場合、具体的に記載されているか否かにかかわらず、各基は「独立して」選択される。例えば、式中に複数のY基が存在する場合、各Y基は独立に選択される。更に、これらの基内に含有される下位の基も独立に選択される。例えば、各Y基がRを含む場合、各Rもまた、独立に選択される。
【0027】
本明細書を通しての「一実施形態(one embodiment)」、「実施形態(an embodiment)」、「ある特定の実施形態(certain embodiments)」、又は「いくつかの実施形態(some embodiments)」などへの言及は、実施形態に関して記載された特定の特徴、構成、組成、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所にこのような語句が記載されている場合、必ずしも、本発明の同一の実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構成、組成、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせてもよい。
【0028】
本開示の上記の「発明の概要」は、本発明の各開示された実施形態又は全ての実施態様の記載を意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願を通し、数箇所において、例の列挙を通して指針が提供されており、これらの例は、様々な組み合わせで用いることができる。それぞれの事例において、記載された列挙項目は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。したがって、本開示の範囲は、本明細書に記載の特定の例示的な構造に限定されるべきではなく、少なくとも特許請求の範囲の文言によって説明される構造、及びこれらの構造の同等物にまで拡大する。本明細書において選択肢として積極的に記載されている要素はいずれも、所望に応じた任意の組み合わせで、請求項に明示的に含めてもよい、又は請求項から除外してもよい。様々な理論及び可能な機構が本明細書で検討され得るが、いかなる場合であっても、このような検討は、特許請求可能な主題を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本明細書に記載される生物学的溶液から標的分子を精製するための様々なフロースループロセスを表すフロー図である。
【
図2】本明細書に記載される生物学的溶液から標的分子を精製するための様々なフロースループロセスを実行するための代表的なフィルタカートリッジデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、標的分子を、標的分子を含む試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセス、及びそのようなプロセスを実施するためのデバイスを提供する。
【0031】
ある特定の実施形態では、標的分子は、治療薬を含む。ある特定の実施形態では、標的分子は、ウイルスベクター、抗体などのタンパク質、及び酵素、ホルモンを含む。ある特定の実施形態では、標的分子は、モノクローナル抗体を含む。
【0032】
ある特定の実施形態では、生物学的溶液は、中和されたウイルス不活化プールを含む。ウイルス不活化プールは、プロテインAクロマトグラフィー溶出液、又はいくつかのプロテインA溶出液の組み合わせからなる生物学的溶液であり、これは次いで、酸による滴定、続いて適切な保持pH、典型的にはpH≦3.5での保持時間を伴うウイルス不活化プロセスに供される。
【0033】
一実施形態では、本開示は、標的分子を試料中の生物学的溶液から、精製するためのフロースループロセスを提供する。
図1Aに示されるように、プロセスは、任意に、試料(生物学的溶液の)をアニオン交換吸着デプスフィルタ(AEX吸着デプスフィルタ)と接触させることと、任意に、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前及び/又は後に、試料で緩衝液交換を実施することと、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(耐塩性AEX FE)と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(CEX FE)(例えば、膜)と接触させることと、を含み、フロースループロセスは1つ又は2つの緩衝液交換を含み、試料の耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(例えば、膜)との接触と、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素との接触の間には緩衝液交換を含まない。
【0034】
非繊維状多孔質フィルタ要素(例えば、膜)及び繊維状媒体形式は、高い流量及び良好な吸着容量を可能にするが、分解能力が変化する。例えば、非繊維状多孔質フィルタ要素のより小さい細孔径及び細孔径分布のより良好な制御は、不純物、特に生物学的分子の分離におけるより良好な制御を提供する。また、非繊維状多孔質フィルタ要素は、より大きな表面積のためにより高いイオン交換容量を提供することができる。したがって、非繊維状多孔質フィルタ要素は、フロースルー精製プロセスにおける特定の点で繊維状媒体に対して利点を提供し得る。
【0035】
本開示の文脈において、「その後すぐに」は、列挙された2つの媒体間で使用される他の分離ステップ/媒体が存在しないことを意味する。
【0036】
本開示の文脈において、「フロースルー」は、標的分子が全てのフィルタを通過することを意味する。
【0037】
緩衝液交換の使用は、不純物と膜との間の相互作用を有利に最適化し、不純物レベルが低い組成物からより高い目標収率を提供するが、緩衝液交換の回数を減らすことにより、処理のタイミング及びコストを低減することができる。
【0038】
この文脈では、「交換」は、緩衝液を変更する必要はない。緩衝液交換は、既知の方法(例えば、タンジェンシャルフロー濾過又はクロスフロー濾過)による緩衝液の完全な変化(すなわち、1つの緩衝液から別の緩衝液への変化)を含み得るが、「交換」は、例えば、pHを変化させ、導電率を変化させ、及び/又は目的の試料を希釈することによって緩衝液を改質させることも含み得る。またそれは、緩衝液変化又は緩衝液調整と称されてもよい。
【0039】
「緩衝液」は、有機酸-塩基共役成分の作用によるpHの変化に抵抗する緩衝溶液である。
【0040】
一実施形態では、有機酸(緩衝液中)としては、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、グリシン、リン酸、グリシルグリシン、コハク酸、TES(2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸))、及びMES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
一実施形態では、有機塩基(緩衝液中)としては、トリス塩基、アルギニン、ビス-トリス、ビス-トリス-プロパン、ビシン(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、TAPS(3-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸)、及びトリシン(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)からなる群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
一実施形態では、有機酸の共役塩基は、有機酸の共役塩基のナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩である。一実施形態では、有機酸は酢酸であり、酢酸の共役塩基はナトリウム塩である。
【0043】
典型的には、緩衝液には、平衡化緩衝液、充填緩衝液、溶出緩衝液などが含まれる。本明細書における「平衡化緩衝液」は、クロマトグラフィーの固相を調製するために使用されるものである。「充填緩衝液」は、タンパク質と汚染物質との混合物をクロマトグラフィーマトリックスに充填するために使用されるものである。平衡化緩衝液及び充填緩衝液は、同じであり得る。「溶出緩衝液」は、クロマトグラフィーマトリックスからタンパク質を溶出するために使用される。
【0044】
ある特定の実施形態では、フロースループロセスは、試料(生物学的溶液の)をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、任意に、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前及び/又は後に、試料で緩衝液交換を実施することと、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む。
【0045】
ある特定の実施形態では、フロースループロセスは、試料(生物学的溶液の)をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前及び/又は後に、試料で緩衝液交換を実施することと、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む。
【0046】
ある特定の実施形態では、フロースループロセスは、試料(生物学的溶液の)をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させた後に試料で緩衝液交換を実施することと、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む。
【0047】
ある特定の実施形態では、フロースループロセスは、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前に、試料で緩衝液交換を実施することと、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む。
【0048】
ある特定の実施形態では、フロースループロセスは、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前及び後に、試料で緩衝液交換を実施することと、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む。
【0049】
ある特定の実施形態では、フロースループロセスは、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させた後に、試料で緩衝液交換を実施することを含む。
【0050】
ある特定の実施形態では、
図1Bに示されるように、フロースループロセスは、試料(生物学的溶液の)をアニオン交換吸着デプスフィルタ(AEX吸着デプスフィルタ)と接触させることと、その後すぐに、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(耐塩性AEX FE)と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(CEX FE)と接触させることとを含み、フロースループロセスは、緩衝液交換を含まない。
【0051】
ある特定の実施形態では、
図1Cに示されるように、フロースループロセスは、試料(生物学的溶液の)をアニオン交換吸着デプスフィルタ(AEX吸着デプスフィルタ)と接触させることと、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させた後に、試料で緩衝液交換を実施することと、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(耐塩性AEX FE)と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(CEX FE)と接触させることとを含む。
【0052】
ある特定の実施形態では、
図1Dに示されるように、フロースループロセスは、試料(生物学的溶液の)で緩衝液交換を実施することと、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(耐塩性AEX FE)と接触させることと、その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(CEX FE)と接触させることとを含む。
【0053】
任意のアニオン交換吸着デプスフィルタ要素
デプスフィルタ(すなわち、フィルタ要素)は、例えば、ウイルス不活化プールにあり得る粒子(すなわち、微粒子)が、その中に浸透し、その後閉じ込められることを可能にする多孔質材料である。すなわち、デプスフィルタは、フィルタ基材の上流面と下流面との間の試料内の汚染物質を捕捉する。
【0054】
例示的なデプスフィルタは、多孔質ベース基材及び米国特許第9,821,276号(Berriganら)に開示されている相互重合された(interpolymerized)カチオン性窒素含有リガンドモノマー(すなわち、リガンド)を含むグラフト化されたコポリマー、又は米国特許第8,846,203号(Bothofら)に開示されるグラフト化されたリガンド官能性ポリマーを含む。
【0055】
多孔質ベース基材。デプスフィルタの多孔質基材(すなわち、ベース基材)は、多孔質膜、多孔質不織布ウェブ、又は多孔質繊維状基材であり得る。
【0056】
ある特定の実施形態では、それは多孔質不織布ウェブである。本明細書で使用される場合、用語「不織布ウェブ」又は「不織布基材」は、互換的に使用され、不規則にかつ/又は一方向に、マット状に組み込まれた個々の繊維又はフィラメントの構造を有する布地を指す。
【0057】
繊維不織布ウェブは、カーディング法、エアレイド法、スパンレース法、スパンボンド法、若しくはメルトブロー法、又はこれらの組み合わせによって製造することができる。スパンボンド繊維は、典型的には、溶融した熱可塑性ポリマーを、微細で通常は円形の複数の紡糸口金のキャピラリーからフィラメントとして押し出し、押し出された繊維の直径を急激に縮小させることによって形成される小径繊維である。メルトブローン繊維は、典型的に、溶融した熱可塑性材料を、複数の微細で通常は円形のダイ毛細管を通じて、溶融糸又はフィラメントとして、高速で通常は加熱されたガス(例えば空気)流の中へ押し出すことにより形成され、このガス流により溶融した熱可塑性材料のフィラメントが細くなり、それらの直径が減少する。その後、メルトブロー繊維は高速ガス流によって運搬されて収集面上に堆積され、不規則に分散されたメルトブロー繊維のウェブを形成する。不織布ウェブのいずれかは、1種類の繊維から、又は、熱可塑性ポリマーの種類及び/又は厚さが異なる2種類以上の繊維から製造されてもよい。
【0058】
デプスフィルタに好適な不織布基材は、スパンレイド、水流交絡、又はメルトブローンされ得る。特定の実施形態では、それらは、グラフト化前に少なくとも4.0ニュートンの引張強度、不織布基材の1平方メートル当たり15m2~50m2の表面積、ASTMF 316-03に従う1ミクロン~40ミクロンの平均細孔径、及び20%未満のソリディティを有し得る。
【0059】
多孔質ベース基材は、任意の好適な熱可塑性ポリマー材料から形成することができる。好適なポリマー材料としては、限定されるものではないが、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルアセテートのコポリマー、例えばポリ(エチレン)-コ-ポリ(ビニルアルコール)等、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、及びポリ(カーボネート)が挙げられる。
【0060】
好適なポリオレフィンとしては、限定されるものではないが、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1-ブテン)、エチレンとプロピレンとのコポリマー、αオレフィンコポリマー(例えば、エチレン又はプロピレンの、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセンとのコポリマー等)、ポリ(エチレン-コ-1-ブテン)及びポリ(エチレン-コ-1-ブテン-コ-1-ヘキセン)が挙げられる。
【0061】
好適なフッ素化ポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー(例えばポリ(フッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)等)、及びクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(例えばポリ(エチレン-コ-クロロトリフルオロエチレン)等)が挙げられる。
【0062】
好適なポリアミドとしては、これらに限定されるものではないが、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)、及びポリカプロラクタムが挙げられる。好適なポリイミドとしては、これに限定されるものではないが、ポリ(ピロメリットイミド)が挙げられる。
【0063】
好適なポリ(エーテルスルホン)としては、限定されるものではないが、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)及びポリ(ジフェニルスルホン-コ-ジフェニレンオキシドスルホン)が挙げられる。
【0064】
好適なビニルアセテートのコポリマーとしては、これらに限定されるものではないが、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)と、コポリマー中でアセテート基のうちの少なくともいくつかが加水分解され、各種のポリ(ビニルアルコール)を生成するようなコポリマーと、が挙げられる。
【0065】
いくつかの実施形態では、多孔質ベース基材は、プロピレンホモポリマー又はコポリマー、最も好ましくはプロピレンホモポリマーから形成される。
【0066】
固定化カチオン性窒素含有リガンド。ある特定の実施形態では、デプスフィルタの多孔質基材は、米国特許第9,821,276号(Berriganら)に記載されるように、相互重合されたカチオン性窒素含有リガンドモノマー(すなわち、リガンド)を含むグラフト化されたコポリマーを含む。別の言い方をすれば、デプスフィルタの多孔質基材は、それにグラフト化された(それによってコポリマーグラフト化物品を形成する)コポリマーを含み、グラフト化されたコポリマーは、カチオン性窒素含有リガンドを含む相互重合されたモノマー単位を含む。
【0067】
ある特定の実施形態では、アニオン交換リガンドは、カチオン性窒素含有リガンドを含む。ある特定の実施形態では、カチオン性窒素含有リガンドは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、又はそれらの組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、カチオン性窒素含有リガンドは、第四級アンモニウム含有リガンド、グアニジニル含有リガンド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0068】
ある特定の実施形態では、グラフト化されたコポリマーは、第四級アンモニウム含有リガンドモノマー、グアニジニル含有リガンドモノマー、及びそれらの組み合わせの群から選択されるカチオン性窒素含有リガンドモノマー、アミドモノマー、エポキシ官能性モノマー単位、アルキルエーテル官能性モノマー単位、及びそれらの組み合わせの群から選択されるオキシモノマー、並びにポリ(アルキレンオキシド)モノマーを含む相互重合されたモノマー単位を含む。
【0069】
ある特定の実施形態では、グラフト化されたコポリマーは、10重量部~50重量部のカチオン性窒素含有リガンドモノマー(カチオン性窒素含有リガンドモノマーが、第四級アンモニウム含有リガンドモノマー、グアニジニル含有リガンドモノマー、及びそれらの組み合わせの群から選択される)と、10重量部~80重量部のアミドモノマーと、10重量部~40重量部の、エポキシ官能性モノマー単位、アルキルエーテル官能性モノマー単位、及びそれらの組み合わせの群から選択されるオキシモノマーと、0重量部~30重量部のポリ(アルキレンオキシド)モノマーとを含む相互重合されたモノマー単位を含み、モノマーの合計は100重量部である。
【0070】
ある特定の実施形態では、カチオン性窒素含有リガンドモノマーは、式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-であり、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
5は、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
R
Ligは、第四級アンモニウムリガンド基又はグアニジニル含有リガンド基である]のものである。
【0071】
ある特定の実施形態では、カチオン性窒素含有リガンドモノマーは、式(II):
【化2】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-であり、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
5は、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
各R
4は、独立してアルキル又はアリールである]の第四級アンモニウムモノマー(塩)である。
【0072】
第四級アンモニウム塩の対イオンは、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオンなどを含む。例示的な第四級アンモニウム塩モノマーとしては、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩及び(メタ)アクリルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩が挙げられ、米国特許第9,821,276号(Berriganら)に記載されている。
【0073】
ある特定の実施形態では、カチオン性窒素含有リガンドモノマーは、式(III)又は(IV):
【化3】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
R
2は、(ヘテロ)ヒドロカルビレン(例えば、1個~20個の炭素原子を有する)であり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、R
3は、独立してH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
15は、H又はヒドロカルビル(例えば、C
1~C
4アルキル基、又はアリール基)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
oは、0又は1であり、
nは1又は2である]のグアニジニル含有リガンドモノマーである。
【0074】
カチオン性窒素含有リガンドモノマーの例としては、米国特許第9,821,276号(Berriganら)に記載されているように調製されたアグマチン含有リガンド(例えば、イソシアナトエチルメタクリレート-アグマチン付加物)、グアニジン含有リガンド、ビグアニド含有リガンド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0075】
ある特定の実施形態では、コポリマーグラフト化物品は、式(V)又は(VI):
【化4】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
各R
8は、独立して、水素、アルキル、又はアリールであり、
R
9及びR
10はアルキル基であるか、又は一緒になって5若しくは6員環を形成し得る]の相互重合されたアミドモノマー((メタ)アクリルアミド及びN-ビニルアミド)を含む。
【0076】
そのようなモノマーの例としては、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、アクリルアミド、モノ-又はジ-N-アルキル置換アクリルアミド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
ある特定の実施形態では、コポリマーグラフト化物品は、式(VII):
【化5】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
16はエポキシ官能性又はエーテル官能性ヒドロカルビル基である]の相互重合されたオキシモノマー(エポキシ官能性及びモノエーテル官能性(メタ)アクリレート並びに(メタ)アクリルアミド)を含む。
【0078】
ある特定の実施形態では、コポリマーグラフト化物品は、式(VIII):
【化6】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
7は、(ヘテロ)ヒドロカルビレン(例えば、C
1~C
6アルキレン)である]の相互重合されたオキシモノマー(エポキシモノマー)を含む。
【0079】
そのようなモノマーの例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、チオグリシジル(メタ)アクリレート、3-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル(メタ)アクリレート、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシル)フェニル]-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシ-フェニル)プロパン、4-(2,3-エポキシプロポキシル)シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、並びに米国特許第9,821,276号(Berriganら)に記載されている他のものが挙げられる。
【0080】
米国特許第9,821,276号(Berriganら)に記載されているように、官能化基材は、単一の反応ステップ又は逐次反応ステップで上記のモノマーを使用して調製されて、多孔質ベース基材の表面上にグラフト化されたポリマーを提供し得る。
【0081】
グラフト化されたリガンド官能性ポリマー。ある特定の実施形態では、デプスフィルタの多孔質基材は、米国特許第8,846,203号(Bothofら)に開示されているように、それにグラフト化されたリガンド官能性ポリマーを含む。
【0082】
ある特定の実施形態では、グラフト化されたリガンド官能性ポリマーは、式(IX):
-(MPI)w-(Mb)x-(Mc)y-(Md)z
[式中、
-(MPI)wは、グラフト化された光開始剤モノマーの残基を表し、wは、0又は少なくとも1であり、
-(Mb)xは、「x個」の重合されたモノマー単位を有する重合されたリガンドモノマーを表し、xは、少なくとも1であり、
-(Mc)yは、y個の重合されたモノマー単位を有する重合された架橋モノマーを表し、yは、0又は少なくとも1であってもよく、
-(Md)zは、z個の重合されたモノマー単位を有する重合された親水性モノマーを表し、zは、0又は少なくとも1であってもよい]のものである。
【0083】
ある特定の実施形態では、官能化基材は、a)任意に、少なくとも1つの光開始剤基(又はその反応生成物)と、b)1つ以上のリガンドモノマーと、c)任意に、少なくとも1つのアクリロイル基及び少なくとも1つの追加のフリーラジカル重合性基を有する1つ以上のモノマーと、d)任意に、1つ以上の親水性モノマーと、を含む、ベース基材の表面に結合した、グラフト化された基を有する。
【0084】
ベース基材の表面にグラフト化されるモノマーは、通常、電子ビームによってグラフト化するためのアクリロイル基、及びその上の少なくとも1つの追加の官能基の両方を有する。アクリレート基及びアクリルアミド基を含むアクリロイル基は、電子ビーム照射などの電離放射線への曝露に対するそのようなアクリロイル基の反応性が高いため、モノマーを基材表面に直接グラフト化するのに好ましい。全てのそのようなアクリロイル基は、「直接グラフト化」することができ、すなわち、基材表面と共有結合を形成することができる。一部のものは、遊離したままであり得、その後、UV紫外線への曝露の際にポリマー鎖に組み込むことによって「間接的にグラフト化される」。メタクリルアミド、メタクリレート、ビニル並びにビニルオキシ基、アリル並びにアリルオキシ基、及びアセチレン基などの他のエチレン性不飽和基は、電子ビームグラフト化中に反応性が低く、ベース基材に直接グラフト化される可能性が低い。したがって、そのような非アクリロイル基の一部は、直接グラフト化され得るが、主に未反応のままであり、UV開始重合中にポリマー鎖に組み込むことによって基材に間接的にグラフト化される。
【0085】
光開始剤「a)」モノマーは、多孔質ベース基材の間隙及び外面を含むベース基材の表面上に直接グラフト化されて、グラフト化された光開始剤基をアクリロイル基を介して提供し得る。
【0086】
リガンド「b)」モノマーは、UV開始重合中にポリマー鎖にその後組み込む(間接グラフト化する)ために、直接グラフト化のためのアクリロイル基、又はメタクリレート基などの非アクリロイル基を有し得る。
【0087】
「c)」モノマーのアクリロイル基は、典型的には、電離放射線、好ましくは電子ビーム又はガンマ線に曝露されたときに、ベース基材の表面にグラフト化(すなわち、共有結合を形成)することができる。アクリロイル基に加えて、モノマー「c)」のフリーラジカル重合性基は、典型的には、メタクリルアミド、メタクリレート、ビニル基、及びグラフト化中に低減された反応性を有するアセチレン基などの他のエチレン性不飽和基であり、したがって、後続のUV開始重合及び架橋に対して遊離及び未反応である。
【0088】
第4のグラフト化親水性モノマー「d)」はまた、アクリロイル基を介してグラフト化され得、親水性基又はイオン基をベース基材の表面に提供し得る。いくつかの実施形態では、イオン基を有する親水性モノマーは、基材表面に直接的又は間接的にグラフト化されて、官能化基材の二次イオン相互作用を提供し得る。
【0089】
グラフト化光開始剤モノマー(MPI)は、アクリロイル基及び光開始剤基を含み、これらは水素引き抜き型又はα切断型光開始剤基であり得る。そのようなグラフト化光開始剤モノマー(MPI)は、米国特許第8,846,203号(Bothofら)に開示されている。
【0090】
特定の実施形態では、リガンドモノマー(M
b)式(X):
【化7】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
R
2は、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、R
3は、独立してH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
nは1又は2である]のものである。
【0091】
ある特定の実施形態では、リガンドモノマー(M
b)は、式(XIV):
【化8】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、R
3は、独立してH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-であり、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
6及びR
7は、各々独立して、(ヘテロ)ヒドロカルビレン(例えば、C
1~C
10アルキレン)であり、
Z
2は、エステル、アミド、尿素、又はウレタン基であり、
nは1又は2である]のものである。
【0092】
そのようなリガンドモノマー(Mb)は、米国特許第8,846,203号(Bothofら)に記載される縮合反応を使用して製造され得る。
【0093】
ある特定の実施形態では、グラフト化されたリガンド官能性ポリマーは、2つ以上のフリーラジカル重合性基を有する、架橋モノマー(M
c)(yは少なくとも1である)を更に含む。ある特定の実施形態では、架橋モノマー(M
c)は、式(XI):
【化9】
[式中、
Z
1は、アクリロイル又は非アクリロイルのエチレン性不飽和重合性基であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-であり、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
Qは、共有結合、-O-、-NR
1-、CO
2-、及び
-C(O)NR
1-(式中、R
1は、H又はCH
3である)から選択される二価連結基であり、
R
11は、原子価a+bのアルキレン基であり、任意に、1つ以上の懸垂型酸素原子及び/又は1つ以上のヒドロキシル基を含有するアルキレン基であり、
a及びbは、各々、少なくとも1である]のものである。
【0094】
ある特定の実施形態では、架橋モノマー(M
c)は、少なくとも1つのアクリロイル基及び少なくとも1つの追加のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有するポリ(アルキレンオキシド)化合物を含む。ある特定の実施形態では、架橋モノマー(M
c)は、式(XII):
【化10】
[式中、
Z
1は、アクリロイル又は非アクリロイルの重合性エチレン性不飽和基であり、
R
1は、H又はCH
3であり、
mは、2~100であり、
Qは、共有結合、-O-、-NR
1-、CO
2-、及び
-C(O)NR
1-(式中、R
1は、H又はCH
3である)から選択される二価連結基である]のものである。
【0095】
好適な架橋(Mc)モノマーの例としては、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー及びポリ(エチレンオキシド-コ-プロピレンオキシド)コポリマーなどのコポリマーのジ(メタ)アクリレート、3-(アクリルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)などの部分的アクリル化ポリオールが挙げられる。
【0096】
ある特定の実施形態では、グラフト化されたリガンド官能性ポリマーは、親水性モノマー(M
d)(zは、少なくとも1である)を更に含み、これはフリーラジカル重合性基及び親水性基を有する。親水性基はまた、正に帯電した、負に帯電した、又は中性であるイオン基を含み得る。ある特定の実施形態では、親水性モノマー(M
d)は式(XIII):
【化11】
[式中、
各R
1は、独立して、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
tは、2~100である]の中性モノマーである。
【0097】
好適な親水性(Md)モノマーの例としては、ポリ(アルキレンオキシド)モノマーが挙げられる。
【0098】
アニオン交換デプスフィルタは、例えば、米国特許第9,821,276号(Berriganら)、及び同第8,846,203号(Bothofら)に記載されているものなどの標準的な技術を使用して作製することができる。
【0099】
耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素
耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素は、好ましくは多孔質膜であるが、それはデプスフィルタではなく、その主要目的は微粒子を除去することではない。例示的な耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素は、非繊維状ベース基材と、米国特許第9,821,276号(Berriganら)に開示されているような相互重合されたカチオン性窒素含有リガンドモノマー(すなわち、リガンド)を含むグラフト化されたコポリマー、又は米国特許第8,846,203号(Bothofら)に開示されているようなグラフト化されたリガンド官能性ポリマーとを含み、上記のデプスフィルタとして使用される。
【0100】
耐塩性窒素含有リガンドは、典型的には、第一級アミン又はグアニジニル基を含み、グアニジニル含有リガンドは、第一級アミンよりも耐塩性が高い。第二級アミン、第三級アミン、及び第四級アンモニウム基は、典型的には、本明細書で定義されるように、耐塩性ではない。ある特定の実施形態では、耐塩性リガンドは、例えば、米国特許第10,239,828号(Rasmussenら)、及び同第8,846,203号(Bothofら)に記載されているように調製された式(XIV)のモノマー(上記)と共に、式(III)及び(IV)のグアニジニル含有リガンドモノマーを含むカチオン性窒素含有リガンドモノマーである。
【0101】
耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素は、高い塩濃度又は高いイオン強度の条件下で有用であり、すなわち、それらは「耐塩性」である。「塩」という用語は、溶液の導電率に寄与する全ての低分子量イオン種を含むことを意味する。耐塩性は少なくとも、生物製剤又は酵素の製造で使用される多くのプロセス溶液が、15mS/cm~30mS/cm(約150~300mMの塩)以上の範囲の導電率を有するため、重要である。耐塩性は、従来の第四級アミン又はクォート(Quat)リガンド(例えば、トリメチルアンモニウムリガンド)のものと比較して測定することができ、その多くの生物学的種との主に静電相互作用は、標的範囲よりも3倍~6倍小さい導電率で急速に劣化する。例えば、従来のクォートリガンドで誘導体化された膜は、0mM~50mMのNaCl(約5mS/cm~6mS/cmの導電率)に進む、6対数減少値(LRV)から(1)LRVまでのφX174ウイルスクリアランスの低下を示す。7に近い等電点を有する(中性又はほぼ中性である)φX174などのウイルスは、プロセス流から除去するのが非常に困難である。プロセス流体から他の生物学的種を除去しようと試みる場合、同様の問題が観察される。例えば、従来のクォートリガンドで官能化された濾過デバイスの使用を通じて宿主細胞タンパク質などの正に帯電したタンパク質を除去しようとする場合、プロセス流体は、導電率を許容範囲に低減するために2倍以上に希釈される必要があり得る。これは高価であり、全体的な処理時間を劇的に増大させる。
【0102】
非繊維状多孔質フィルタ要素は、達成され得るリガンド官能性ポリマーのより大きな膜表面積及びより高いグラフト密度のために、繊維状多孔質基材よりも耐塩性膜にとって有利であり、したがって、不純物を除去するためのより高い容量をもたらす。また、非繊維状多孔質フィルタ要素のより小さい細孔径及び細孔径分布のより良好な制御は、不純物、特に生物学的分子の分離におけるより良好な制御を提供する。したがって、非繊維状多孔質フィルタ要素は、フロースルー精製プロセスにおいて、耐塩性膜中の繊維状媒体よりも利点を提供し得る。
【0103】
非繊維状多孔質フィルタ要素ベース基材は、デプスフィルタについて上述したように、任意の好適な熱可塑性ポリマー材料から形成され得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、多孔質ベース基材は、熱誘起相分離(TIPS)膜などの微多孔質膜である。TIPS膜は、熱可塑性材料とその熱可塑性材料の融点を超える第2の材料との均質な溶液を形成することによって調製されることが多い。冷却すると、熱可塑性材料が晶出し、第2の材料から相分離する。晶出した熱可塑性材料は、多くの場合、延伸される。第2の材料は、延伸の前又は後のいずれかに、任意に除去される。微多孔質膜は、米国特許第4,539,256号(Shipman)、同第4,726,989号(Mrozinski)、同第4,867,881号(Kinzer)、同第5,120,594号(Mrozinski)、同第5,260,360号(Mrozinskiら)、及び同第5,962,544号(Waller)に更に開示されている。更に、微多孔質フィルムは、米国特許第5,962,544号(Waller)に記載されているように、エチレン-ビニルアルコールコポリマーから調製することができる。
【0105】
いくつかの例示的なTIPS膜は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレンホモポリマー若しくはコポリマー又はポリプロピレンホモポリマー若しくはコポリマー、ビニル含有ポリマー若しくはコポリマー、例えば、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、及びブタジエン含有ポリマー若しくはコポリマー、並びにアクリレート含有ポリマー若しくはコポリマーを含む。PVDFを含むTIPS膜は、米国特許第7,338,692号(Smithら)に更に記載されている。
【0106】
別の例示的な実施形態では、多孔質ベース基材は、溶媒誘起相分離(SIPS)膜などの微多孔質膜である。SIPS膜は、多くの場合、熱可塑性材料及び第2の材料(溶媒)の均質な溶液を形成することによって調製され、溶液は、フィルム又は中空繊維形態に鋳造され、次いで非溶媒浴に浸漬される。非溶媒は、熱可塑性材料を固化させるか、又は相分離させ、また溶媒を抽出し、多孔質ポリマー膜を残す。ポリアミドから調製されるSIPS膜の例としては、米国特許第6,056,529号(Meyeringら)、同第6,267,916号(Meyeringら)、同第6,413,070号(Meyeringら)、同第6,776,940号(Meyeringら)、同第3,876,738号(Marinacchioら)、同第3,928,517号(Knightら)、同第4,707,265号(Knightら)、及び同第5,458,782号(Houら)に記載されるものなどの、ナイロン微多孔質フィルム又はシートが挙げられる。他の例としては、ポリスルホン及びポリエーテルスルホンから調製された微多孔質膜が挙げられ、それらの多くは、MicroPES及びDuraPESの商品名で3M Company,St.Paul,MNから市販されている。
【0107】
耐塩性膜フィルタは、例えば、米国特許第9,821,276号(Berriganら)、同第8,846,203号(Bothofら)、及び同第10,239,828号(Rasmussenら)に記載されているものなどの標準的な技術を使用して作製することができる。
【0108】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素について上に開示された非繊維状ベース基材を含む。それは、多峰性又は混合モードであり得る。多峰性又は混合モードは、フィルタ要素がカチオン交換によってその標的種と相互作用し、少なくとも1つの他の相互作用モード(例えば、疎水性相互作用又は水素結合相互作用)と相互作用することを意味する。
【0109】
ある特定の実施形態では、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素は、非繊維状多孔質フィルタ要素と、非繊維状多孔質フィルタ要素上に配置された、炭化水素主鎖及び炭化水素主鎖に結合した複数のペンダント基を含むポリマーとを含み、第1の複数のペンダント基の各々が、少なくとも1つの酸性基又はその塩を含み、少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって炭化水素主鎖に直接連結させるスペーサー基と、を含む。
【0110】
ある特定の実施形態では、スペーサー基は、少なくとも8個の鎖状に連結された原子を有する鎖を含む。ある特定の実施形態では、スペーサー基は、鎖状に連結されたヘテロ原子含有炭化水素基である。ある特定の実施形態では、スペーサー基は少なくとも1つの水素結合部分を含み、これは、少なくとも1つの水素結合供与体及び少なくとも1つの水素結合受容体(両方ともヘテロ原子を含有する)を含む部分として定義したものである。ある特定の実施形態では、スペーサー基は、少なくとも2つの水素結合部分を含む、又は、少なくとも1つの水素結合部分と、この水素結合部分とは別個の(この水素結合部分の一部ではない)少なくとも1つの水素結合受容体と、を含む。ある特定の実施形態では、スペーサー基は、少なくとも2つの水素結合供与体、少なくとも2つの水素結合受容体、又はその両方を含む。
【0111】
ある特定の実施形態では、非繊維状多孔質フィルタ要素上に配置されたポリマーの少なくとも1つの酸性基又はその塩は、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素の少なくとも0.01(又は少なくとも0.02)ミリモル/グラムの密度で存在する。ある特定の実施形態では、非繊維状多孔質フィルタ要素上に配置されたポリマーの少なくとも1つの酸性基又はその塩は、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素の最大0.6ミリモル/グラムの密度で存在する。
【0112】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの酸性基又はその塩は、カルボキシ基、ホスホノ基、ホスファト基、スルホノ基、スルファト基、ボロナト基、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0113】
ある特定の実施形態では、ポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、少なくとも1つの酸性基又はその塩と、少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、少なくとも1つの酸性基又はその塩とを、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって直接連結させるスペーサー基と、を含む、少なくとも1つのモノマーの相互重合された単位を含む。
【0114】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つのエチレン性不飽和基は、エテニル基、1-アルキルエテニル基、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0115】
ある特定の実施形態では、ポリマーは、非繊維状多孔質フィルタ要素に共有結合されている。
【0116】
ある特定の実施形態では、ポリマーはコポリマーである。
【0117】
ある特定の実施形態では、コポリマーは、炭化水素主鎖と炭化水素主鎖に結合された複数のペンダント基とを含み、第1の複数のペンダント基の各々が、少なくとも1つの酸性基又はその塩と、少なくとも1つの酸性基又はその塩とを、炭化水素主鎖に少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって直接連結させるスペーサー基とを含み、第2の複数のペンダント基の各々が、少なくとも1つの酸性基又はその塩と、少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって炭化水素主鎖に直接連結させるスペーサー基とを含み、第1の複数のペンダント基が、第2の複数のペンダント基とは異なり、第1の複数のペンダント基の第2の複数のペンダント基に対するモル比が、95:5~5:95の範囲である。
【0118】
ある特定の実施形態では、非繊維状多孔質フィルタ要素に共有結合されたコポリマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、少なくとも1つの酸性基又はその塩と、少なくとも1つのエチレン性不飽和基と少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって直接連結させるスペーサー基とを含む第1のモノマーと、少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、少なくとも1つの酸性基又はその塩と、少なくとも1つのエチレン性不飽和基と少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって直接連結させるスペーサー基とを含む第2のモノマーとを含むモノマー組成物の反応生成物を含み、第2のモノマーが第1のモノマーとは異なり、第1のモノマーの第2のモノマーに対するモル比が、95:5~5:95の範囲である。
【0119】
ある特定の実施形態では、第1のモノマー及び/又は第2のモノマーの少なくとも1つのエチレン性不飽和基は、エテニル基、1-アルキルエテニル基、及びこれらの組み合わせから選択される。ある特定の実施形態では、第1のモノマーは、以下の一般式(XV):
【化12】
[式中、
R
1はH又はCH
3であり、
各R
2は、独立して、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
Z
3は、少なくとも1つの水素結合供与体、少なくとも1つの水素結合受容体、又はそれらの組み合わせを含むヘテロヒドロカルビレン基であり、
rは、0又は1であり、
Lは、少なくとも1つの酸性基又はその塩を含む官能基である]によって表される部類のうちの1つである。
【0120】
この文脈において、「水素結合受容体」は、孤立電子対を有する酸素、窒素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子を意味し、「水素結合供与体」は、酸素、窒素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子に共有結合された水素原子からなる部分を意味する。水素結合供与体には、例えば、イミノ、チオール、又はヒドロキシなどの供与体が挙げられる。水素結合受容体には、例えば、カルボニル、カルボニルオキシ、又はエーテル酸素の形態の受容体が挙げられる。
【0121】
ある特定の実施形態では、第2のモノマーは、同様に一般式(XV)によって表される部類のうちの1つである。
【0122】
カチオン交換膜フィルタは、例えば、米国公開出願公開第2019/0194250号(Colak Atanら)、及び国際公開第WO2018/048696号(Vailら)に記載されているものなどの標準的な技術を使用して作製することができる。
【0123】
デバイス
更なる実施形態では、本開示は、本明細書に記載される耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(耐塩性AEX FE)と、好ましくは、
図2Aに示されるように、耐塩性フィルタ要素から下流に配置される、本明細書に記載されるカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素(CEX FE)とを含むフィルタカートリッジを提供する。デバイスはまた、
図2Bに示されるように、好ましくは耐塩性フィルタ要素の上流に配置される、アニオン交換吸着デプスフィルタ(AEX吸着デプスフィルタ)を含み得る。これらのフィルタ要素の相対的な配向は、本明細書に記載されるように、プロセスのためのものであり得る。デバイスは、
図2Cに示されるように、1つ以上の微多孔質膜などの他の従来のフィルタ要素を含んでもよい。
【0124】
例示的な実施形態
実施形態1は、標的分子を、標的分子を含む試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスであって、プロセスが、
任意に、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、
任意に、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前及び/又は後に、試料で緩衝液交換を実施することと、
試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含み、
フロースループロセスが、1つ又は2つの緩衝液交換を含み、試料の耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素との接触と、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素との接触との間には緩衝液交換を含まない、フロースループロセスである。
【0125】
実施形態2は、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、
任意に、試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前及び/又は後に、試料で緩衝液交換を実施することと、
試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む、実施形態1に記載のフロースループロセスである。
【0126】
実施形態3は、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前及び/又は後に、試料で緩衝液交換を実施することと、
試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む、実施形態2に記載のフロースループロセスである。
【0127】
実施形態4は、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させた後に、試料で緩衝液交換を実施することと、
試料を、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む、実施形態3に記載のフロースループロセスである。
【0128】
実施形態5は、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前に、試料で緩衝液交換を実施することと、
試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む、実施形態3に記載のフロースループロセスである。
【0129】
実施形態6は、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させる前及び後に、試料で緩衝液交換を実施することと、
試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む、実施形態3に記載のフロースループロセスである。
【0130】
実施形態7、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させた後に、試料で緩衝液交換を実施することを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0131】
実施形態8は、標的分子を、標的分子を含む試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスであって、プロセスが、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、
その後すぐに、試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含み、
フロースループロセスが、緩衝液交換を含まない、フロースループロセスである。
【0132】
実施形態9は、標的分子を、標的分子を含む試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスであって、プロセスが、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させることと、
試料をアニオン交換吸着デプスフィルタと接触させた後に、試料で緩衝液交換を実施することと、
試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む、フロースループロセスである。
【0133】
実施形態10は、標的分子を、標的分子を含む試料中の生物学的溶液から精製するためのフロースループロセスであって、プロセスが、
試料で緩衝液交換を実施することと、
試料を耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、
その後すぐに、試料をカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素と接触させることと、を含む、フロースループロセスである。
【0134】
実施形態11は、標的分子が、モノクローナル抗体を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0135】
実施形態12は、生物学的溶液が、中和されたウイルス不活化プールを含む、実施形態1~11のいずれかに1つに記載のフロースループロセスである。
【0136】
実施形態13は、アニオン交換吸着デプスフィルタが、固定化アニオン交換リガンドを含む多孔質基材を含む、実施形態2~9及び実施形態2~9のいずれか1つに依存する11~12のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0137】
実施形態14は、アニオン交換吸着デプスフィルタのアニオン交換リガンドが、カチオン性窒素含有リガンドを含む、実施形態13に記載のフロースループロセスである。
【0138】
実施形態15は、アニオン交換吸着デプスフィルタのカチオン性窒素含有リガンドが、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態14に記載のフロースループロセスである。
【0139】
実施形態16は、アニオン交換吸着デプスフィルタのカチオン性窒素含有リガンドが、第四級アンモニウム含有リガンド、グアニジニル含有リガンド、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態15に記載のフロースループロセスである。
【0140】
実施形態17は、アニオン交換吸着デプスフィルタが、多孔質基材とそれにグラフト化されたコポリマーとを含むコポリマーグラフト化物品を含み、グラフト化されたコポリマーが、カチオン性窒素含有リガンドを含む相互重合されたモノマー単位を含む、実施形態14~16のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0141】
実施形態18は、アニオン交換吸着デプスフィルタのグラフト化されたコポリマーが、
第四級アンモニウム含有リガンドモノマー、グアニジニル含有リガンドモノマー、及びそれらの組み合わせの群から選択されるカチオン性窒素含有リガンドモノマーと、
アミドモノマーと、
エポキシ官能性モノマー単位、アルキルエーテル官能性モノマー単位、及びそれらの組み合わせの群から選択されるオキシモノマーと、
ポリ(アルキレンオキシド)モノマーと、を含む、相互重合されたモノマー単位を含む、実施形態17に記載のフロースループロセスである。
【0142】
実施形態19は、アニオン交換吸着デプスフィルタのグラフト化されたコポリマーが、
10重量部~50重量部のカチオン性窒素含有リガンドモノマーであって、カチオン性窒素含有リガンドモノマーが、第四級アンモニウム含有リガンドモノマー、グアニジニル含有リガンドモノマー、及びそれらの組み合わせの群から選択される、カチオン性窒素含有リガンドモノマーと、
10重量部~80重量部のアミドモノマーと、
10重量部~40重量部の、エポキシ官能性モノマー単位、アルキルエーテル官能性モノマー単位、及びそれらの組み合わせの群から選択されるオキシモノマーと、
0重量部~30重量部のポリ(アルキレンオキシド)モノマーとを含む相互重合されたモノマー単位を含み、
モノマーの合計が100重量部である、実施形態18に記載のフロースループロセスである。
【0143】
実施形態20は、アニオン交換吸着デプスフィルタを作製するために使用されるカチオン性窒素含有リガンドモノマーが、式(I):
【化13】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
5は、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
R
Ligは、第四級アンモニウムリガンド基又はグアニジニル含有リガンド基である]のものである、実施形態18又は19に記載のフロースループロセスである。
【0144】
実施形態21は、アニオン交換吸着デプスフィルタを作製するために使用されるカチオン性窒素含有リガンドモノマーが、式(II):
【化14】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
5は、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
各R
4は、独立してアルキル又はアリールである]の第四級アンモニウムモノマーである、実施形態20に記載のフロースループロセスである。
【0145】
実施形態22は、アニオン交換吸着デプスフィルタを作製するために使用されるカチオン性窒素含有リガンドモノマーが、式(III)又は(IV):
【化15】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
R
2は、(ヘテロ)ヒドロカルビレン(例えば、1個~20個の炭素原子を有する)であり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、R
3は、独立してH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
15は、H又はヒドロカルビル(例えば、C
1~C
4アルキル基、又はアリール基)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
oは、0又は1であり、
nは、1又は2である]のグアニジニル含有リガンドモノマーである、実施形態20に記載のフロースループロセスである。
【0146】
実施形態23は、アニオン交換吸着デプスフィルタを作製するために使用されるアミドモノマーが、式(V)又は(VI):
【化16】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
各R
8は、独立して、水素、アルキル、又はアリールであり、
R
9及びR
10はアルキル基であるか、又は一緒になって5若しくは6員環を形成し得る]のものである、実施形態18~22のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0147】
実施形態24は、アニオン交換吸着デプスフィルタを作製するために使用されるオキシモノマーが、式(VII):
【化17】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
16はエポキシ官能性又はエーテル官能性ヒドロカルビル基である]のものである、実施形態18~23のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0148】
実施形態25は、アニオン交換吸着デプスフィルタを作製するために使用されるオキシモノマーが、式(VIII):
【化18】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
7は、(ヘテロ)ヒドロカルビレン(例えば、C
1~C
6アルキレン)である]のものである、実施形態24に記載のフロースループロセスである。
【0149】
実施形態26は、アニオン交換吸着デプスフィルタが、多孔質基材及びそれにグラフト化されたリガンド官能性ポリマーを含み、グラフト化されたリガンド官能性ポリマーが、式:
-(MPI)w-(Mb)x-(Mc)y-(Md)z
[式中、
-(MPI)wは、グラフト化された光開始剤モノマーの残基を表し、wは、0又は少なくとも1であり、
-(Mb)xは、「x個」の重合されたモノマー単位を有する重合されたリガンドモノマーを表し、xは、少なくとも1であり、
-(Mc)yは、y個の重合されたモノマー単位を有する重合された架橋モノマーを表し、yは、0又は少なくとも1であってもよく、
-(Md)zは、z個の重合されたモノマー単位を有する重合された親水性モノマーを表し、zは、0又は少なくとも1であってもよい]のものである、実施形態13に記載のフロースループロセスである。
【0150】
実施形態27は、アニオン交換吸着デプスフィルタを作製するために使用されるリガンドモノマー(M
b)が、式(X):
【化19】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
R
2は、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、各R
3は、独立してH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
nは、1又は2である]のものである、実施形態26に記載のフロースループロセスである。
【0151】
実施形態28は、アニオン交換吸着デプスフィルタを作製するために使用されるリガンドモノマー(M
b)が、式(XIV):
【化20】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、各R
3は、独立してH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
6及びR
7は、各々独立して、(ヘテロ)ヒドロカルビレン(例えば、C
1~C
10アルキレン)であり、
Z
2は、エステル、アミド、尿素、又はウレタン基であり、
nは、1又は2である]のものである、実施形態27に記載のフロースループロセスである。
【0152】
実施形態29は、アニオン交換吸着デプスフィルタのグラフト化されたリガンド官能性ポリマーが、架橋モノマー(Mc)(yが、少なくとも1である)を更に含み、これは2つ以上のフリーラジカル重合性基を有する、実施形態26~28のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0153】
実施形態30は、アニオン交換吸着デプスフィルタを作製するために使用される架橋モノマー(M
c)が、式(XI):
【化21】
[式中、
Z
1は、アクリロイル又は非アクリロイルのエチレン性不飽和重合性基であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
Qは、共有結合、-O-、-NR
1-、CO
2-、及び
-C(O)NR
1-(式中、R
1は、H又はCH
3である)から選択される二価連結基であり、
R
11は、原子価a+bのアルキレン基であり、任意に、1つ以上の懸垂型酸素原子及び/又は1つ以上のヒドロキシル基を含有するアルキレン基であり、
a及びbは、各々、少なくとも1である]のものである、実施形態29に記載のフロースループロセスである。
【0154】
実施形態31は、アニオン交換吸着デプスフィルタを作製するために使用される架橋モノマー(M
c)が、式(XII):
【化22】
[式中、
Z
1は、アクリロイル又は非アクリロイルの重合性エチレン性不飽和基であり、
R
1は、H又はCH
3であり、
mは、2~100であり、
Qは、共有結合、-O-、-NR
1-、CO
2-、及び
-C(O)NR
1-(式中、R
1は、H又はCH
3である)から選択される二価連結基である]のものである、実施形態29に記載のフロースループロセスである。
【0155】
実施形態32は、アニオン交換吸着デプスフィルタのグラフト化されたリガンド官能性ポリマーが、親水性モノマー(Md)(zが、少なくとも1である)を更に含み、これは、フリーラジカル重合性基と親水性基とを有する、実施形態26~31のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0156】
実施形態33は、アニオン交換吸着デプスフィルタを作製するために使用される親水性モノマー(M
d)が、式(XIII):
【化23】
[式中、
各R
1は、独立して、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
tは、2~100である]のものである、実施形態32に記載のフロースループロセスである。
【0157】
実施形態34は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、固定化アニオン交換リガンドを含む非繊維状多孔質フィルタ要素を含む、実施形態1~33のいずれかに1つに記載のフロースループロセスである。
【0158】
実施形態35は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素のアニオン交換リガンドが、カチオン性窒素含有リガンドを含む、実施形態34に記載のフロースループロセスである。
【0159】
実施形態36は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素のカチオン性窒素含有リガンドが、グアニジニル含有リガンドを含む、実施形態35に記載のフロースループロセスである。
【0160】
実施形態37は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、非繊維状多孔質フィルタ要素とそれにグラフト化されたコポリマーとを含むコポリマーグラフト化物品を含み、グラフト化されたコポリマーが、カチオン性窒素含有リガンドを含む相互重合されたモノマー単位を含む、実施形態35又は36に記載のフロースループロセスである。
【0161】
実施形態38は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素のグラフト化されたコポリマーが、
グアニジニル含有リガンドモノマーと、
アミドモノマーと、
エポキシ官能性モノマー単位、アルキルエーテル官能性モノマー単位、及びそれらの組み合わせの群から選択されるオキシモノマーと、
ポリ(アルキレンオキシド)モノマーと、を含む、相互重合されたモノマー単位を含む、実施形態37に記載のフロースループロセスである。
【0162】
実施形態39は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素のグラフト化されたコポリマーが、
10重量部~50重量部のグアニジニル含有リガンドモノマーと、
10重量部~80重量部のアミドモノマーと、
10重量部~40重量部の、エポキシ官能性モノマー単位、アルキルエーテル官能性モノマー単位、及びそれらの組み合わせの群から選択されるオキシモノマーと、
0重量部~30重量部のポリ(アルキレンオキシド)モノマーとを含む相互重合されたモノマー単位を含み、
モノマーの合計が100重量部である、実施形態38に記載のフロースループロセスである。
【0163】
実施形態40は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を作製するために使用されるカチオン性窒素含有リガンドモノマーが、式(I):
【化24】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
5は、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
R
Ligは、グアニジニル含有リガンド基である]のものである、実施形態38又は39に記載のフロースループロセスである。
【0164】
実施形態41は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を作製するために使用されるカチオン性窒素含有リガンドモノマーが、式(III)又は(IV):
【化25】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
R
2は、(ヘテロ)ヒドロカルビレン(例えば、1個~20個の炭素原子を有する)であり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、各R
3は、独立してH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
15は、H又はヒドロカルビル(例えば、C
1~C
4アルキル基、又はアリール基)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
oは、0又は1であり、
nは、1又は2である]グアニジニル含有リガンドモノマーである、実施形態40に記載のフロースループロセスである。
【0165】
実施形態42は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、非繊維状多孔質フィルタ要素と、それにグラフト化されたリガンド官能性ポリマーとを含み、グラフト化されたリガンド官能性ポリマーが、式:
-(MPI)w-(Mb)x-(Mc)y-(Md)z
[式中、
-(MPI)wは、グラフト化された光開始剤モノマーの残基を表し、wは、0又は少なくとも1であり、
-(Mb)xは、「x個」の重合されたモノマー単位を有する重合されたリガンドモノマーを表し、xは、少なくとも1であり、
-(Mc)yは、y個の重合されたモノマー単位を有する重合された架橋モノマーを表し、yは、0又は少なくとも1であってもよく、
-(Md)zは、z個の重合されたモノマー単位を有する重合された親水性モノマーを表し、zは、0又は少なくとも1であってもよい]のものである、実施形態34に記載のフロースループロセスである。
【0166】
実施形態43は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を作製するために使用されるリガンドモノマー(M
b)が、式(X):
【化26】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
R
2は、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、各R
3は、独立してH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
nが、1又は2である]のものである、実施形態42に記載のフロースループロセスである。
【0167】
実施形態44は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を作製するために使用されるリガンドモノマー(M
b)が、
式(XIV):
【化27】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
各R
3は、独立して、H又は(ヘテロ)ヒドロカルビルであり、
R
14は、H、(ヘテロ)ヒドロカルビル、又は-N(R
3)
2(式中、各R
3は、独立してH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
R
6及びR
7は、各々独立して、(ヘテロ)ヒドロカルビレン(例えば、C
1~C
10アルキレン)であり、
Z
2は、エステル、アミド、尿素、又はウレタン基であり、
nは、1又は2である]のものである、実施形態43に記載のフロースループロセスである。
【0168】
実施形態45は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素のグラフト化されたリガンド官能性ポリマーが、架橋モノマー(Mc)(yが、少なくとも1である)を更に含み、これは2つ以上のフリーラジカル重合性基を有する、実施形態42~44のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0169】
実施形態46は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を作製するために使用される架橋モノマー(M
c)が、式(XI):
【化28】
[式中、
Z
1は、アクリロイル又は非アクリロイルのエチレン性不飽和重合性基であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
Qは、共有結合、-O-、-NR
1-、CO
2-、及び
-C(O)NR
1-(式中、R
1は、H又はCH
3である)から選択される二価連結基であり、
R
11は、原子価a+bのアルキレン基であり、任意に、1つ以上の懸垂型酸素原子及び/又は1つ以上のヒドロキシル基を含有するアルキレン基であり、
a及びbは、各々、少なくとも1である]のものである、実施形態45に記載のフロースループロセスである。
【0170】
実施形態47は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を作製するために使用される架橋モノマー(M
c)が、式(XII):
【化29】
[式中、
Z
1は、アクリロイル又は非アクリロイルの重合性エチレン性不飽和基であり、
R
1は、H又はCH
3であり、
mは、2~100であり、
Qは、共有結合、-O-、-NR
1-、-CO
2-、及び
-C(O)NR
1-(式中、R
1は、H又はCH
3である)から選択される二価連結基である]のものである、実施形態46に記載のフロースループロセスである。
【0171】
実施形態48は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素のグラフト化されたリガンド官能性ポリマーが、親水性モノマー(Md)(zが、少なくとも1である)を更に含み、これがフリーラジカル重合性基と親水性基とを有する、実施形態42~47のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0172】
実施形態49は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を作製するために使用される親水性モノマー(M
d)が、式(XIII):
【化30】
[式中、
各R
1は、独立して、H又はCH
3であり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
tは2~100である]のものである、実施形態48に記載のフロースループロセスである。
【0173】
実施形態50は、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、
非繊維状多孔質フィルタ要素と、
非繊維状多孔質フィルタ要素上に配置された、ポリマーであって、
炭化水素主鎖と炭化水素主鎖に結合された複数のペンダント基とを含むポリマーと、を含み、第1の複数のペンダント基の各々が、
少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって、炭化水素主鎖に直接連結させるスペーサー基と、を含む、実施形態1~49のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0174】
実施形態51は、スペーサー基の鎖が、少なくとも8個の鎖状に連結された原子を有する、実施形態50に記載のフロースループロセスである。
【0175】
実施形態52は、スペーサー基が、鎖状に連結されたヘテロ原子含有炭化水素基である、実施形態50又は51に記載のフロースループロセスである。
【0176】
実施形態53は、スペーサー基が、少なくとも1つの水素結合部分を含む、実施形態50~52のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0177】
実施形態54は、非繊維状多孔質フィルタ要素上に配置されたポリマーの少なくとも1つの酸性基又はその塩が、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素の少なくとも0.01(又は少なくとも0.02)ミリモル/グラムの密度で存在する、実施形態50~53のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0178】
実施形態55、非繊維状多孔質フィルタ要素上に配置されたポリマーの少なくとも1つの酸性基又はその塩が、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素の最大0.6ミリモル/グラムの密度で存在する、実施形態50~54のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0179】
実施形態56は、少なくとも1つの酸性基又はその塩が、カルボキシ基、ホスホノ基、ホスファト基、スルホノ基、スルファト基、ボロナト基、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態50~55のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0180】
実施形態57は、ポリマーが、少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、少なくとも1つの酸性基又はその塩と、少なくとも1つのエチレン性不飽和基と少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって直接連結させるスペーサー基とを含む少なくとも1つのモノマーの相互重合された単位を含む、実施形態50~56のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0181】
実施形態58は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基が、エテニル基、1-アルキルエテニル基、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態57に記載のフロースループロセスである。
【0182】
実施形態59は、ポリマーが非繊維状多孔質フィルタ要素に共有結合している、実施形態50~58のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0183】
実施形態60は、ポリマーがコポリマーである、実施形態50~59のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0184】
実施形態61は、コポリマーが炭化水素主鎖と、炭化水素主鎖に結合した複数のペンダント基とを含み、
第1の複数のペンダント基の各々が、
少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって、炭化水素主鎖に直接連結させるスペーサー基と、を含み、
第2の複数のペンダント基の各々が、
少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって、炭化水素主鎖に直接連結させるスペーサー基と、を含み、
第1の複数のペンダント基が、第2の複数のペンダント基とは異なり、
第1の複数のペンダント基の第2の複数のペンダント基に対するモル比が、95:5~5:95の範囲である、実施形態60に記載のフロースループロセスである。
【0185】
実施形態62は、非繊維状多孔質フィルタ要素に共有結合したコポリマーが、
第1のモノマーであって、
少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、
少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
少なくとも1つのエチレン性不飽和基と少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって、直接連結させるスペーサー基と、を含む、第1のモノマーと、
第2のモノマーであって、
少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、
少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
少なくとも1つのエチレン性不飽和基と少なくとも1つの酸性基を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって、直接連結させるスペーサー基と、を含む、第2のモノマーと、を含むモノマー組成物の反応生成物を含み、
第2のモノマーが、第1のモノマーとは異なり、
第1のモノマーの第2のモノマーに対するモル比が、95:5~5:95の範囲である、実施形態61に記載のフロースループロセスである。
【0186】
実施形態63は、第1のモノマー及び/又は第2のモノマーの少なくとも1つのエチレン性不飽和基が、エテニル基、1-アルキルエテニル基、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態62に記載のフロースループロセスである。
【0187】
実施形態64は、第1のモノマーが、以下の一般式(XV):
【化31】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
各R
2は、独立して、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
Z
3は、少なくとも1つの水素結合供与体、少なくとも1つの水素結合受容体、又はそれらの組み合わせを含む(ヘテロ)ヒドロカルビレン基であり、
rは、0又は1であり、
Lは、少なくとも1つの酸性基又はその塩を含む官能基である]によって表される部類のうちの1つである、実施形態62又は63に記載のフロースループロセスである。
【0188】
実施形態65は、第2のモノマーが、以下の一般式(XV):
【化32】
[式中、
R
1は、H又はCH
3であり、
各R
2は、独立して、(ヘテロ)ヒドロカルビレンであり、
X
1は、-O-又は-NR
3-(式中、R
3はH又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである)であり、
Z
3は、少なくとも1つの水素結合供与体、少なくとも1つの水素結合受容体、又はそれらの組み合わせを含む(ヘテロ)ヒドロカルビレン基であり、
rは、0又は1であり、
Lは、少なくとも1つの酸性基又はその塩を含む官能基である]によって表される部類のうちの1つである、実施形態62~64のいずれか1つに記載のフロースループロセスである。
【0189】
実施形態66は、本明細書に記載の耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素及び本明細書に記載のカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を含む、フィルタカートリッジである。
【0190】
実施形態67は、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素の下流に配置される、実施形態66に記載のフィルタカートリッジである。
【0191】
実施形態68は、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、固定化カチオン性窒素含有リガンドを含む非繊維状多孔質フィルタ要素を含む、実施形態66又は67に記載のフィルタカートリッジである。
【0192】
実施形態69は、耐塩性アニオン交換非繊維膜が、非繊維状多孔質フィルタ要素とそれにグラフト化されたリガンド官能性ポリマーとを含み、グラフト化されたリガンド官能性ポリマーが、式:
-(MPI)w-(Mb)x-(Mc)y-(Md)z、
[式中、
-(MPI)wは、グラフト化された光開始剤モノマーの残基を表し、wは、0又は少なくとも1であり、
-(Mb)xは、「x個」の重合されたモノマー単位を有する重合されたリガンドモノマーを表し、xは、少なくとも1であり、
-(Mc)yは、y個の重合されたモノマー単位を有する重合された架橋モノマーを表し、yは、0又は少なくとも1であってもよく、
-(Md)zは、z個の重合されたモノマー単位を有する重合された親水性モノマーを表し、zは、0又は少なくとも1であってもよい]のものである、実施形態66~68のいずれか1つに記載のフィルタカートリッジである。
【0193】
実施形態70は、カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素が、
非繊維状多孔質フィルタ要素と、
非繊維状多孔質フィルタ要素上に配置された、ポリマーであって、
炭化水素主鎖と、炭化水素主鎖に結合された複数のペンダント基とを含むポリマーと、を含み、第1の複数のペンダント基の各々が、
少なくとも1つの酸性基又はその塩と、
少なくとも1つの酸性基又はその塩を、少なくとも6個の鎖状に連結された原子の鎖によって、炭化水素主鎖に直接連結させるスペーサー基と、を含む、実施形態66~69のいずれか1つに記載のフィルタカートリッジである。
【実施例】
【0194】
これらの実施例は、単に例証を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲を過度に限定することを意図するものではない。本開示の幅広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的な実施例において示される数値は、可能な限り正確に報告している。しかしながら、いずれの数値にも、それぞれの試験測定値において見出される標準偏差から必然的に生じる、特定の誤差が本質的に含まれる。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0195】
別段断りのない限り、実施例及び明細書のその他の部分における、全ての部、百分率、比などは、重量によるものであり、実施例で用いた全ての試薬は、総合的な化学物質供給元、例えば、Sigma-Aldrich Company(Saint Louis,Missouri)などから入手した若しくは入手可能なものであるか、又は従来の方法によって合成することができる。
【0196】
【0197】
モノクローナル抗体含有溶液の緩衝液の変化又は調整
導電率調整を、4モル(4M)NaClを使用して行った。酢酸(200ミリモル(mM)又は500mM)及びトリス塩基(2M)を使用して、pHの調整を達成した。導電率測定を、Accumet Excel XL50導電率メータ(Fisher Scientific,Hampton,NH)を使用して決定した。pH測定を、VWR SYMPHONYベンチトップpHメータ(VWR International,Radnor,PA)を使用して決定した。
【0198】
フィルタ要素のチャレンジプレート
完成したフィルタ要素(FE-A~FE-L)を直径7.5ミリメートル(mm)のディスクにカットした。アニオン交換フィルタ要素(FE-L)については、単一のディスクを96ウェルEMPOREフィルタプレート(モデル6065,3M Corporation,St.Paul,MN)の各ウェルに装填した。カチオン交換フィルタ要素の各タイプについては、同じフィルタ要素の2つのディスクを、96ウェルEMPOREフィルタプレートの各ウェルに装填した。フィルタ要素を、プラスチック製のOリングで、所定の位置に保持した。各ウェルの総有効フィルタ容量(Total working filter volume)は、約8.6マイクロリットルであった。フィルタ要素を装填した各チャレンジプレートを、試料収集のために遠心分離する前に、96ウェルの深型ウェル収集プレート(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)の上に置いた。遠心分離を、Allegra 25R遠心分離機(Beckman Coulter,Brea,CA)を使用して行った。市販のチャレンジプレート(Sartorius SARTOBIND 96ウェルプレート)を製造業者から受け取り、製造業者の指示に従って使用した。
【0199】
標的分子及び不純物分析方法
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞タンパク質(HCP)の濃度を、製造元のプロトコルに従ってCHO HCP ELISA Kit,3G(Cygnus Technologies,Southport,NC)を使用して決定した。
【0200】
mAbのタンパク質濃度を、280ナノメートルでの吸光度及び1.36の消衰係数を使用して、ベールの法則によって決定した。SpectraMax M5分光光度計(Molecular Devices,San Jose,CA)を使用して吸光度を決定した。
【0201】
モノマー収率(「モノマーmAb収率%」)及び濾過溶液の高分子量(HMW)種の組成物を、TOSOH TSKgel G3000SWXLカラム(Tosoh BioScience LLC,Griesheim,Germany)を備えたShimadzu Prominence HPLCシステム(Shimadzu Scientific Instruments,Columbia,MD)を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析した(分析条件:20マイクロリットルの注入量;1mL/分の流量;移動相;100mMのリン酸ナトリウム、300mMのNaCl、pH6.9;280ナノメートルで検出)。出発溶液及び濾過溶液のピーク面積を比較することによって、モノマーの収率及び高分子量(HMW)種の組成物を決定し、結果を2回の反復試験の平均として報告した。
【0202】
mAb溶液中に存在するHMW種のパーセントを、上記のSECクロマトグラフィー法を使用して決定した。試料のHMW種成分のピーク面積(ピークA)を、試料のピーク面積の合計(総ピーク面積)と比較した。「HMW組成物%」を、式1によって算出した。
【0203】
HMW種の除去率を、上記のSECクロマトグラフィー法を用い、凝集成分のピーク面積を、分離プロセスを実施する前(ピークB)及び実施例に記載のデプスフィルタ又はフィルタ要素チャレンジプレートを使用して分離プロセスを実施した後(ピークC)を測定して決定した。「除去されたHMW%」を、式2によって算出した。
【0204】
モノマーモノクローナル抗体(mAb)の収率%を、上記のSECクロマトグラフィー法を使用し、分離プロセスを実行する前にモノマー成分についてピーク面積を測定し(ピークD)、及び実施例に記載のデプスフィルタ又はフィルタ要素チャレンジプレートを使用することによって分離プロセスを実施した後に、モノマー成分についてピーク面積を測定して(ピークE)決定した。「モノマーmAbの収率の%」を、式3によって算出した。
【0205】
HCPの除去率を、上記のHCP定量化方法を使用し、分離プロセスを実行する前([HCP前])及び分離プロセスを実行した後([HCP後])にHCP濃度を測定して決定した。「HCP除去%」を、式4によって算出した。
【数1】
【0206】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素A(FE-A)の調製
コーティング溶液を、4-アミノ酪酸ナトリウム塩/IEMモノマー溶液(IEM-GABA)を混合することによって調製した(国際公開第WO2018/048698号のモノマー実施例Bに記載されるように調製)(Vailら)。(6.73グラム(g)の脱イオン水中の20.8%w/w溶液)と、スルホン化ベンゾフェノン(S-BP)(250マイクロリットルの、脱イオン水中0.1グラム/ミリリットル(g/mL)溶液)。脱イオン水(13.02g)を添加して、モノマー中に約0.25Mの混合物を得た。ナイロン膜基材(18センチメートル(cm)×23cm、ナイロン66膜、単一補強層ナイロン3ゾーン膜、名目上の(nominal)孔径1.8マイクロメートル(μm又はミクロン)、#080ZN、3M Purification,Inc.,Meriden,CTより入手)を、ポリエステルフィルムのシート上に配置し、基材のトップ面上にコーティング溶液をピペットで加えた。コーティング溶液を基材に約1分間浸漬させた後、ポリエステルフィルムの第2のシートを基材の上部上に配置した。2.28キログラム(kg)の円筒状のおもりを、得られた3層のサンドイッチ状試料の上部上で転がし、余分なコーティング溶液を搾り出した。18個のバルブ[Sylvania RG2 40W F40/350BL/ECO、基材の上に10個、下に8個、長さ1.17メートル(46インチ)、中央の間隔5.1cm(2インチ)]を備えたUVスタンド(Classic Manufacturing,Inc.,Oakdale,MN)を用い、15分間の照射時間でサンドイッチ状試料を照射し、紫外線(UV)開始グラフトを実施した。ポリエステルシートを取り外し、得られた官能化基材を1000mLのポリエチレン瓶に入れた。瓶に0.9%(w/w)食塩水を充填し、密封し、ローラー上に30分間配置し、任意の残留モノマー又は未グラフトポリマーを洗い落とした。食塩水を注ぎ、官能化基材を新鮮な食塩水で更に30分間洗浄した後、脱イオン水で30分間洗浄し(2回)、次いで乾燥させた。質量増加によって決定されるように、グラフト密度は、膜の0.266ミリモル/グラム(mmol/g)であった。
【0207】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素B(FE-B)の調製
ナイロン膜(#080ZN)を、米国特許出願第2019/0194250号(Colak Atanら)の実施例30に記載されているように、IEM-グリシンナトリウム塩モノマー溶液(0.25M)でグラフトした。グラフト密度は、膜の0.28mmol/gであった。
【0208】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素C(FE-C)の調製
ナイロン膜(#080ZN)を、米国特許出願第2019/0194250号(Colak Atanら)の実施例30に記載されているように、しかしながら、0.375Mの濃度で、IEM-グリシンナトリウム塩モノマー溶液でグラフトした。グラフト密度は、膜の0.38mmol/gであった。
【0209】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素D(FE-D)の調製
ナイロン膜(#080ZN)を、FE-Aについて記載された手順を使用して、0.25Mの濃度で、2-[[2-メチル-2-(プロパ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]エチルホスフェイト二ナトリウム塩(VDM-O-ホスホリルエタノールアミン二ナトリウム塩)モノマー溶液でグラフトした。グラフト密度は、膜の0.12mmol/gであった。
【0210】
モノマーを以下のように調製した:O-ホスホリルエタノールアミン(21.15g)を500ミリリットル(mL)の丸底(RB)フラスコに量り入れ、次いで、磁気撹拌しながら氷水浴に入れた。NaOH(2N(2当量)、150mL)を添加し、混合物を溶解するまで撹拌した。VDM(10mL)をピペットで添加した。最初に濁った懸濁液を10分間撹拌し、それによって、懸濁液が均質になった。第2の10mLのVDM部分を添加した(合計で20mLを添加)。混合物を更に50分間撹拌した。数滴の濃塩酸を添加することによって反応混合物をpH7に調整し、濾過した。固形分%=25.0%。1H-NMR(D2O):δ1.30(s,6H),3.20(t,2H),3.59(q,2H),5.56(dd,1H),5.99(dd,1H),6.09(dd,1H)。
【0211】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素E(FE-E)の調製
ナイロン膜(#080ZN)を、FE-Aについて記載された手順を使用して、[2-カルボキシ-2-[[2-メチル-2-(プロパ-2-エノイルアミノ)プロパノイル]アミノ]エチル]ホスフェイト二ナトリウム塩(VDM-O-ホスホセリン二ナトリウム塩)モノマー溶液で、0.25Mの濃度でグラフトした。グラフト密度は、膜の0.07mmol/gであった。
【0212】
モノマーを以下のように調製した:L-O-ホスホセリン(18.5グラム)を、磁気撹拌棒を含有する500mLのRBフラスコに添加した。フラスコを氷水浴に入れ、脱イオン水(40mL)及び5N NaOH(60mL)をフラスコに添加した。全ての固形物が溶解するまで、内容物を撹拌した。氷浴で約30分間冷却した後、VDM(5.0mL)をシリンジによって添加した。混合物を10分間撹拌し、次いで、更に8.33mLのVDMを添加した(合計で13.33mLの添加)。撹拌を55分間続けて、反応を完了させた。濃塩酸を6滴添加することにより、混合物をpH7に調整した。反応物を濾過して、生成物を得た。固形分%=28.4%。1H-NMR(D2O):δ1.34(s,3H),1.38(s,3H),3.81(2m,2H),4.07(m,1H),5.56(dd,1H),5.99(dd,1H),6.11(dd,1H)。
【0213】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素F(FE-F)の調製
ナイロン膜(#080ZN)を、国際公開第WO2018/048696号(Vailら)の実施例5に記載されているように、50:50(mol/mol)のVDM-GABAナトリウム塩(VDM-4-アミノ酪酸ナトリウム塩)/VDM-フェニルアラニンナトリウム塩モノマー溶液で、0.25Mの濃度でグラフト化した。グラフト密度は、膜の0.16mmol/gであった。
【0214】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素G(FE-G)の調製
ナイロン膜(#080ZN)を、米国特許出願第2019/0194250号(Colak Atanら)の実施例21に記載されているように、VDM-7-アミノヘプタノン酸ナトリウム塩モノマー溶液で、0.25Mの濃度でグラフト化した。グラフト密度は、膜の0.18mmol/gであった。
【0215】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素H(FE-H)の調製
ナイロン膜(#080ZN)を、国際公開第WO2018/048696号(Vailら)の実施例11に記載されているように、50:50(mol/mol)のIEM-グリシンナトリウム塩/VDM-フェニルアラニンナトリウム塩モノマー溶液で、0.25Mの濃度でグラフト化した。グラフト密度は、膜の0.14mmol/gであった。
【0216】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素I(FE-I)の調製
ナイロン膜(#080ZN)を、国際公開第WO2018/048696号(Vailら)の実施例2に記載されているように、50:50(mol/mol)のVDM-GABAナトリウム塩/VDM-4-アミノメチル-シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム塩モノマー溶液で、0.25Mの濃度でグラフト化した。グラフト密度は、膜の0.19mmol/gであった。
【0217】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素J(FE-J)の調製
ナイロン膜(#080ZN)を、FE-Hについて記載された手順によって、50:50(mol/mol)のIEM-グリシンナトリウム塩/IEM-フェニルアラニンナトリウム塩モノマー溶液で、0.25Mの濃度でグラフト化した。IEM-フェニルアラニンナトリウム塩モノマーは、ラセミフェニルアラニンを使用したことを除いて、国際公開第WO2018/048696号(Vailら)に記載されているように調製した。グラフト密度は、膜の0.42mmol/gであった。
【0218】
カチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素K(FE-K)の調製
ナイロン膜(#080ZN)を、米国特許出願第2019/0194250号(Colak Atanら)の実施例30に記載されているように、IEM-グリシンナトリウム塩モノマー溶液(0.25M)でグラフトした。グラフト密度は、膜の0.26mmol/gであった。
【0219】
耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素L(FE-L)の調製
IEM-アグマチン硫酸ナトリウムを、ナイロン膜(#080ZN)上で放射線グラフト重合して、米国特許第10,471,398号(Bothofら)、実施例28に記載されている手順と同様のグアニジニルリガンド官能化微多孔質膜で、同様のウシ血清アルブミン(BSA)動的結合能力を有するものを作製した。
【0220】
実施例1.アニオン交換吸着デプスフィルタ、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素、及びカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を用いたモノクローナル抗体溶液の逐次的処理を使用するフロースルー精製プロセス。
【0221】
モノクローナル抗体mAbAのウイルス不活化プール(VIP)(IgG1、pI8.0、10.5mg/mL、pH6.27、5.3mS/cm)溶液を、25mmホルダー[10ベッド体積/分(BVM)]で組み立てたEMPHAZE AEXハイブリッド精製機(EMPHAZE AEX HP、3M Corporationから入手)の内部媒体成分から調整したアニオン交換吸着デプスフィルタを通して濾過した。チャレンジロードは、180リットル/平方メートル(L/m2)のスループットで1700グラム/リットル(g/L)であった。チャレンジロードは、所与の体積の濾材当たりのmAbAの量(グラム/リットル、g/L)として決定された。スループットは、所与の表面積の濾材を通過する液体の量(リットル/平方メートル、L/m2)として決定された。デプスフィルタは、VIP溶液の濁度を>60NTU(比濁度濁度単位)から<5NTUまで低下させ、差圧は5psi(ポンド/平方インチ)を越えなかった。表2は、得られたデプスフィルタ処理溶液の特性を示す。
【0222】
FE-Lロードチャレンジプレート(上記)を、3000rcf(相対遠心力)で5分間遠心分離することによって0.9%の塩化ナトリウム(1mL)で洗浄した。洗浄後、デプスフィルタ処理溶液を、300rcfで5分間遠心分離することによって1200g/LのチャレンジロードでFE-Lチャレンジプレートを使用して濾過した。FE-L濾過溶液を、一緒にプールした。異なるチャレンジロードを有するプールされた溶液のアリコート[333マイクロリットル(400g/Lチャレンジロード)又は450マイクロリットル(550g/Lチャレンジロード)]を、一連の第2のチャレンジプレートのウェルに添加するために調製した。各第2のチャレンジプレートは、(上記のように)FE-A~FE-Fから選択される単一タイプのカチオン交換フィルタ要素の2つのディスクを含んでいた。第2のチャレンジプレートを、FE-Lチャレンジプレートについて記載された方法に従って食塩水で予備洗浄した。プレートを各々、300、600、1200、及び3000rcfで5分間連続的に遠心分離した。濾過した試料を生成物及び不純物の分析について分析した。
【0223】
処理前のVIP溶液は、4.2%のHMW組成物%、及び3899ナノグラム/リットル(ng/L)のHCP濃度を有していた。
【0224】
デプス濾過プロセスステップの後に得られた溶液は、4.2%のHMW組成物%、98.4%のモノマーmAb収率%、及び3366ナノグラム/ミリリットル(ng/mL)のHCP濃度を有していた。
【0225】
FE-Lを使用した濾過プロセスステップ後に得られたプールされた溶液は、3.6%のHMW組成物%、100.1%のモノマーmAb収率%、及び1717ng/mLのHCP濃度を有していた。
【0226】
カチオン交換フィルタ要素(FE-A~FE-Fから選択される)を通して溶液を濾過する最終プロセスステップ後に得られたHMW組成物%、モノマーmAb収率、及びHCP濃度値を表3に報告する。結果は、400g/Lのチャレンジロード又は550g/Lのチャレンジロードのいずれかを使用した実験について報告される。
【0227】
【0228】
【0229】
実施例2.アニオン交換吸着デプスフィルタ、緩衝液交換ステップ、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素、及びカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を用いたモノクローナル抗体溶液の逐次的処理を使用するフロースルー精製プロセス。
【0230】
モノクローナル抗体mAbAのVIP(IgG1、pI8.0、7.1mg/mL、pH6.27、4.0mS/cm)溶液を、実施例1に記載のプロセスに従ってデプスフィルタを通して濾過した。デプスフィルタ処理溶液からの個々のアリコートを、5.5、6.25、又は7.0の目標pHと、8、16、又は24mS/cmのいずれかの導電率に調整した。緩衝液調整mAbA溶液の特性を、表4に提供する。平衡化緩衝液を、20mMの酢酸塩緩衝液(pH5.5)から開始して調製し、2Mのトリスで調整した。緩衝液の導電率を、4Mの塩化ナトリウムを使用して調整した。平衡化緩衝液を、緩衝液調整mAb溶液のpH及び導電率特性と一致させた。
【0231】
このプロセスでは、SARTOBIND STICプレート(第一級アミン官能基)をアニオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとして使用し、SARTOBIND Sプレート(スルホン酸官能基)をカチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとして使用した。各プレートを、平衡化緩衝液(上記の平衡化緩衝液から選択)のうちの1つで濾過することによって前処理した。前処理濾過条件は、1,000rcfで2分間遠心分離された500マイクロリットルの緩衝液であった。このプロセスを合計4回繰り返した。平衡化緩衝液処理プレートを、同じ緩衝液組成を使用して調整したmAbA溶液と一致させて使用した。
【0232】
平衡化後、緩衝液交換mAbA溶液の個々のアリコートを、SARTOBIND STICプレートを使用して濾過した。濾過条件は、1,000rcfで2分間遠心分離された500マイクロリットルの溶液であった。このプロセスを、約400g/L(19マイクロリットルのベッド体積の膜)のチャレンジロードに対して合計2回繰り返した。次いで、得られた濾過溶液をSARTOBIND Sプレートを使用して濾過した。濾過条件は、SARTOBIND STICプレートと同じであった。最終濾過溶液を収集し、分析した。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%を決定し、結果を表5~8に報告する。
【0233】
比較例2.
実施例2のプロセス中、SARTOBIND STICプレートを通した濾過後であるが、SARTOBIND Sプレートを通した濾過の前に溶液の中間プロセス試料を回収した。中間試料をHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%について分析した。結果を、表5~8に提示する。
【0234】
実施例2a.
FE-L装填プレートをアニオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとして使用し、FE-J装填プレートをカチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとして使用したことを除いて、実施例2に記載されているものと同じプロセスに従った。プロセス条件は、各FE-L及びFE-Jフィルタプレートについて、1,500rcfで5分間遠心分離された1000マイクロリットルの平衡化緩衝液であるように修正された。平衡化後、緩衝液交換されたmAb溶液の個々のアリコート(500マイクロリットル)を、1,500rcfで5分間の遠心分離を使用して、FE-L装填プレート、続いてFE-J装填プレートで逐次的に濾過した。各ウェルについてのチャレンジロードは、約400g/L(9マイクロリットルのベッド体積の膜)であった。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%を決定し、結果を表5~8に報告する。
【0235】
比較例2a.
実施例2aのプロセス中、FE-L装填プレートを通した濾過後であるが、FE-J装填プレートを通した濾過の前に溶液の中間プロセス試料を回収した。中間試料をHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%について分析した。結果を、表5~8に提示する。
【0236】
実施例2b.
FE-K装填プレートを、カチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとしてFE-Jプレートの代わりに使用したことを除いて、実施例2aに記載されているものと同じプロセスに従った。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%を決定し、結果を表5~8に報告する。
【0237】
実施例2c.
FE-L装填プレートをアニオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとして使用し、FE-F装填プレートをカチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとして使用したことを除いて、実施例2に記載されているものと同じプロセスに従った。処理条件は、各FE-L及びFE-Fフィルタプレートについて、1,500rcfで5分間遠心分離された1000マイクロリットルの平衡化緩衝液であるように修正された。平衡化後、緩衝液交換されたmAb溶液の個々のアリコート(500マイクロリットル)を、1,500rcfで5分間の遠心分離を使用して、FE-L装填プレート、続いてFE-F装填プレートで逐次的に濾過した。追加の遠心分離サイクル(3,000rcfで5分間)を、FE-F装填プレートに使用した。各ウェルについてのチャレンジロードは、約400g/L(9マイクロリットルのベッド体積の膜)であった。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%を決定し、結果を表5~8に報告する。
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
実施例3.アニオン交換吸着デプスフィルタ、緩衝液交換ステップ、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素、及びカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を用いたモノクローナル抗体溶液の逐次的処理を使用するフロースルー精製プロセス。
【0244】
モノクローナル抗体mAbAのVIP(IgG1、pI8.0、7.1mg/mL、pH6.27、4.0mS/cm)溶液を、実施例1に記載のプロセスに従ってデプスフィルタを通して濾過した。処理前のVIP溶液は、4.2%のHMW組成物%、及び4098ng/LのHCP濃度を有していた。デプス濾過プロセスステップの後に得られた溶液は、4.2%のHMW組成物%、97.9%のモノマーmAb収率%、及び3546ng/mLのHCP濃度を有していた。
【0245】
緩衝液調整mAbA溶液を調製し、緩衝液調整mAbA溶液の特性を表9に提供する。12個の異なる緩衝液調整mAbA溶液を、500mMの酢酸又は2MのトリスでpHを調整し、4Mの塩化ナトリウムを使用して導電率を調整することによって調製した。溶液は、6.0、6.5、又は7.0のいずれかの目標pH、及び8、14、19、又は24mS/cmの目標導電率を有していた。
【0246】
プロセスでは、FE-L装填プレートを、アニオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとして使用し、FE-C装填プレートをカチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとして使用した。各プレートを、平衡化緩衝液(実施例2で上述した平衡化緩衝液から選択)のうちの1つで濾過することによって前処理した。前処理濾過条件は、3,000rcfで5分間遠心分離された1000マイクロリットルの緩衝液であった。平衡化緩衝液処理プレートを、同じ緩衝液組成物を使用して調整したmAbA溶液と一致させて使用した。平衡化後、緩衝液交換mAbA溶液の個々のアリコートをFE-L装填プレートを使用して濾過した。濾過条件は、300rcfで5分間遠心分離された1000マイクロリットルの溶液であった。チャレンジロードは、約1200g/L(9マイクロリットルのベッド体積の膜)であり、収集された濾液を、個々の条件ごとにプールした。
【0247】
次いで、得られた濾過溶液を、FE-C装填プレートを使用して濾過した。濾過条件は、100、200、300、600、1200、及び3000rcfで5分間遠心分離された、異なるチャレンジロード[333マイクロリットル(400g/Lのチャレンジロード)又は450マイクロリットル(550g/Lのチャレンジロード)]を有するプールされた溶液のアリコートであった。最終濾過溶液を収集し、分析した。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、モノマーmAb収率%、除去されたHMW%、及びHCP除去%を決定し、結果を表11~12に報告する。
【0248】
比較例3.
実施例3のプロセス中、FE-L装填プレートを通した濾過後であるが、FE-C装填プレートを通した濾過の前に溶液の中間プロセス試料を回収した。中間試料をHCP濃度、HMW組成物%、及びモノマーmAb収率%について分析した。結果を表10に報告する。
【0249】
実施例3a.
FE-G装填プレートを、カチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとしてFE-Cプレートの代わりに使用したことを除いて、実施例3に記載されているものと同じプロセスに従った。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、モノマーmAb収率%、除去されたHMW%、及びHCP除去%を決定し、結果を表13~14に報告する。
【0250】
実施例3b.
モノクローナル抗体mAbAのVIP(IgG1、pI8.0、7.1mg/mL、pH6.27、4.0mS/cm)溶液を、実施例1に記載のプロセスに従ってデプスフィルタを通して濾過した。処理前のVIP溶液は、4.2%のHMW組成物%、及び4098ng/LのHCP濃度を有していた。デプス濾過プロセスステップの後に得られた溶液は、4.2%のHMW組成物%、97.9%のモノマーmAb収率%、及び3255ng/mLのHCP濃度を有していた。FE-F装填プレートを、カチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとしてFE-Cプレートの代わりに使用したことを除いて、実施例3に記載されているものと同じプロセスに従った。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、モノマーmAb収率%、除去されたHMW%、及びHCP除去%を決定し、結果を表15~16に報告する。
【0251】
比較例3b.
実施例3bのプロセス中、FE-L装填プレートを通した濾過後であるが、FE-F装填プレートを通した濾過の前に溶液の中間プロセス試料を回収した。中間試料をHCP濃度、HMW組成物%、及びモノマーmAb収率%について分析した。結果を表10に報告する。
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
実施例4.緩衝液交換ステップ、耐塩性アニオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素、及びカチオン交換非繊維状多孔質フィルタ要素を用いたモノクローナル抗体溶液の逐次的処理を使用するフロースルー精製プロセス。
【0261】
プールされたモノクローナル抗体mAb2(IgG1、pI約8)をZetaPlus ZP90デプスフィルタ(3M Corporation)、続いて酢酸溶出を用いたプロテインAクロマトグラフィーステップ(mAbSelect ProA樹脂、GE Healthcare Life Sciences,Pittsburgh,PA)を使用して精製し、ウイルス不活化のためにpH3.5で30分間保持した。ウイルスの不活化に続いて、得られた低pH溶液を、2Mトリスで中和した。中和された溶液は、7.4の初期pH及び10.2の導電率(mS/cm)を有していた。
【0262】
緩衝液調整mAb2溶液を調製し、緩衝液調整mAb2溶液の特性を表17に提供する。9個の異なる緩衝液調整mAb2溶液を、500mMの酢酸でpHを調整し、4Mの塩化ナトリウムを使用して導電率を調整することによって調製した。溶液は、6.0、6.5、又は7.0のいずれかの目標pH、及び12、17、又は22mS/cmの目標導電率を有していた。
【0263】
プロセスでは、FE-L装填プレートを、アニオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとして使用し、FE-C装填プレートをカチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとして使用した。各プレートを、平衡化緩衝液(実施例2で上述した平衡化緩衝液から選択)のうちの1つで濾過することによって前処理した。前処理濾過条件は、3,000rcfで5分間遠心分離された1000マイクロリットルの緩衝液であった。平衡化緩衝液処理プレートを、同じ緩衝液組成物を使用して調整したmAb2溶液と一致させて使用した。平衡化後、緩衝液交換mAb2溶液の個々のアリコートをFE-L装填プレートを使用して濾過した。濾過条件は、300rcfで5分間遠心分離された1000マイクロリットルの溶液であった。チャレンジロードは、約350g/L(9マイクロリットルのベッド体積の膜)であり、収集された濾液を、個々の条件ごとにプールした。
【0264】
次いで、得られた濾過溶液を、FE-C装填プレートを使用して濾過した。濾過条件は、300、600、1200、3000rcfで5分間遠心分離された1000マイクロリットルの溶液であった。最終濾過溶液を収集し、分析した。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%を決定し、結果を表18~21に報告する。
【0265】
比較例4.
実施例4のプロセス中、FE-L装填プレートを通した濾過後であるが、FE-C装填プレートを通した濾過の前に溶液の中間プロセス試料を回収した。中間試料をHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%について分析した。結果を、表18~21に提示する。
【0266】
実施例4a.
FE-F装填プレートを、カチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとしてFE-Cプレートの代わりに使用したことを除いて、実施例4に記載されているものと同じプロセスに従った。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%を決定し、結果を表18~21に報告する。
【0267】
実施例4b.
FE-E装填プレートを、カチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとしてFE-Cプレートの代わりに使用したことを除いて、実施例4に記載されているものと同じプロセスに従った。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%を決定し、結果を表18~21に報告する。
【0268】
実施例4c.
FE-H装填プレートを、カチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとしてFE-Cプレートの代わりに使用したことを除いて、実施例4に記載されているものと同じプロセスに従った。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%を決定し、結果を表18~21に報告する。
【0269】
実施例4d.
FE-I装填プレートを、カチオン交換フィルタ要素チャレンジプレートとしてFE-Cプレートの代わりに使用したことを除いて、実施例4に記載されているものと同じプロセスに従った。最終濾過溶液のHCP濃度、HMW組成物%、除去されたHMW%、及びモノマーmAb収率%を決定し、結果を表18~21に報告する。
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
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【国際調査報告】