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特表2023-521197ベンズイミダゾール誘導体化合物を含む医薬組成物
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  • 特表-ベンズイミダゾール誘導体化合物を含む医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ベンズイミダゾール誘導体化合物を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4184 20060101AFI20230516BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20230516BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20230516BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61K45/00
A61K31/192
A61K31/196
A61K31/415
A61P1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562260
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 IB2021053034
(87)【国際公開番号】W WO2021209892
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0044864
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514311689
【氏名又は名称】エイチケー イノ.エヌ コーポレーション
【住所又は居所原語表記】239 Osongsaengmyeong 2-ro, Osong-eup, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do, 28158, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソクイ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ウンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボンテ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒヒョン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ミンジャ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,グンソク
(72)【発明者】
【氏名】シン,ナリ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウンジ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ウンビ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB112
4C084ZC202
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086BC39
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA68
4C086ZC20
4C206AA01
4C206DA18
4C206FA31
4C206KA04
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB11
(57)【要約】
本発明は、ベンズイミダゾール誘導体を含む、消化性潰瘍および/またはその再発を防止するための医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬の投与により引き起こされ得る消化性潰瘍および/またはその再発を、副作用なく長期間にわたって効果的に防止することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式1で表される化合物であるテゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、消化性潰瘍(ここで消化性潰瘍は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の投与により引き起こされる)を防止するための医薬組成物:
【化1】
【請求項2】
医薬組成物が、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザンとして25 mg~50 mgの量で含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬組成物が、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザンとして25 mgの量で含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬組成物が、医薬組成物の投与前に消化性潰瘍を経験した対象に投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
対象が、医薬組成物の投与前に消化性潰瘍の治療を受けている者である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
対象が、非ステロイド系抗炎症薬を服用している者である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物が、消化性潰瘍の再発を防止するための、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
医薬組成物が、非ステロイド性抗炎症薬をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬組成物が、非ステロイド系抗炎症薬と併用投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
非ステロイド性抗炎症薬が、非選択的NSAID、およびCOX-2選択的阻害剤からなる群より選択される1つ以上である、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
非ステロイド性抗炎症薬が、サリチル酸塩、プロピオン酸誘導体、酢酸誘導体、エノール酸(オキシカム)誘導体、アントラニル酸誘導体(フェナメート)、選択的Cox-2阻害剤(コキシブ)、スルホンアニリド、およびクロニキシンからなる群より選択される1つ以上である、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
非ステロイド性抗炎症薬が、プロピオン酸誘導体、酢酸誘導体および選択的Cox-2阻害剤(コキシブ)からなる群より選択される1つ以上である、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
非ステロイド性抗炎症薬が、ナプロキセン、アセクロフェナク、およびセレコキシブからなる群より選択される1つ以上である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
医薬組成物が、1日1回投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項15】
医薬組成物が、単位剤形に製剤化される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬組成物および非ステロイド性抗炎症薬が、別々の単位剤形または単一の単位剤形でそれぞれ個別に製剤化される、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項17】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の投与により引き起こされる消化性潰瘍を防止するための方法であって、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む方法。
【請求項18】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の投与により引き起こされる消化性潰瘍を防止するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の投与により引き起こされる消化性潰瘍を防止するための医薬の製造における、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンズイミダゾール誘導体化合物を含む、消化性潰瘍の発生および/または再発を抑制するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
消化性潰瘍は、臨床で最も一般的な疾患の1つであり、持続的な痛みを引き起こし、患者の日常生活に支障をきたし、治療しないと出血や穿孔などの重大な合併症を引き起こしたり、頻繁に再発したりする可能性がある。
【0003】
生活水準の向上や健康への関心の高まりに伴い、上部消化管内視鏡検査が広く行われ、内視鏡機器や診断技術の発達により、上部消化管疾患の検出、診断、および治療は飛躍的に進歩してきた。
【0004】
しかし、人口の高齢化に伴う筋骨格系疾患や心血管系疾患の増加により、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用が増加しているため、消化性潰瘍の発生や出血などの合併症は未だ減少していない。特に、たとえ消化性潰瘍の治療を受けていても、非ステロイド性抗炎症薬の使用が増えているため、その再発が多発している。また、以前の消化性潰瘍の治療に使用された胃酸分泌抑制剤を適用しても、再発した消化性潰瘍は十分に治療されない傾向があり、もし再発が繰り返された場合、出血などの合併症がより頻繁に発生する可能性がある。
【0005】
したがって、たとえ消化性潰瘍の治療後に非ステロイド性抗炎症薬を服用しても、副作用なく消化性潰瘍および/またはその再発を安全かつ効果的に防止することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
韓国特許第10-1088247号
【開示】
【0007】
【技術課題】
【0008】
本発明の目的は、下記の式1で表される化合物であるテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物であって、消化性潰瘍および/またはその再発を防止するための医薬組成物を提供することである。
【化1】
【技術的解決】
【0009】
本発明は、下記化学式1で表される化合物であるテゴプラザン、その光学異性体、またはその薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を有効成分として含む医薬組成物(ここで医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬の投与により引き起こされる消化性潰瘍の発生および/またはその再発を防止する)を提供する。
【化1】
【0010】
本発明の医薬組成物は、消化性潰瘍および/またはその再発を効果的に抑制することができる。具体的には、本発明の医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬を服用している対象において、非ステロイド性抗炎症薬の投与により引き起こされる消化性潰瘍および/またはその再発を、副作用なく長期間にわたって安全かつ効果的に防止することができる。
【0011】
非ステロイド性抗炎症薬は長期間投与されるケースが多く、特に、非ステロイド性抗炎症薬の投与期間や頻度は、人口の高齢化により増加し続けている。しかし、非ステロイド性抗炎症薬は消化性潰瘍を引き起こす可能性があり、特に、既に消化性潰瘍を経験したが治療を受けている対象の場合、非ステロイド性抗炎症薬の投与により消化性潰瘍が再発する可能性が高く、その症状は以前に経験したより重篤になる可能性がある。
【0012】
本発明の医薬組成物は、有効成分として、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含むものであり、安全性が高く、副作用なく長期間投与することができ、かつ、非ステロイド性抗炎症薬の投与による消化性潰瘍の発生および/または再発を長期間にわたって有意に効果的に防止することができる。
【0013】
本発明の医薬組成物は、CYP2C19遺伝子多型の影響を受けず、副作用なしに、非ステロイド性抗炎症薬の投与による消化性潰瘍の発生および/または再発を有意に効果的に防止することができる。
【0014】
本発明において、化学式1で表される化合物であるテゴプラザンは、「(S)-4-(5,7-ジフルオロクロマン-4-イルオキシ)-N,N,2-トリメチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキサミド」ともいう。
【0015】
本明細書においてテゴプラザンに言及する場合、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を指すことができる。したがって、本明細書において、テゴプラザンを含む医薬組成物とは、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む組成物を指すことができる。
【0016】
本発明において、消化性潰瘍は消化管粘膜の欠損である。一般に、消化性潰瘍は、組織学的に壊死性粘膜欠損が粘膜筋層を通って粘膜下層または固有筋層まで延びる場合を指す。消化性潰瘍は、胃および/または十二指腸に生じる潰瘍を含むことができる。本発明において、「消化性潰瘍」という用語は、「胃潰瘍」および/または「十二指腸潰瘍」という用語、「胃および/または十二指腸潰瘍」という用語、および「胃/十二指腸潰瘍」という用語と同じ意味に使用することができる。
【0017】
本発明において、「対象」という用語は、ヒトを含む哺乳動物を指すことができ、具体的には、ヒトを指すことができる。本発明において、対象は、非ステロイド性抗炎症薬に関連する消化性潰瘍(胃潰瘍および/または十二指腸潰瘍)を発症するリスクのある者であってもよい。例えば、対象は、非ステロイド性抗炎症薬を継続的に服用する必要がある者であってもよい。
【0018】
本発明の実施例において、対象は、医薬組成物の投与前に少なくとも1回は消化性潰瘍を経験したが治療を受けている者であってもよい。具体的には、対象は、医薬組成物の投与前に少なくとも1回は消化性潰瘍を経験したが治療を受けており、非ステロイド性抗炎症薬に関連する消化性潰瘍を発症するリスクが高い者であってもよい。本発明において、消化性潰瘍の発症または治療は、内視鏡検査により判断することができる。
【0019】
本発明の実施例では、上部消化管(胃または十二指腸など)に潰瘍および/または出血病変の存在が内視鏡検査によって確認された場合に、消化性潰瘍が発生したと判断することができる。例えば、崎田・三輪分類による活動期(A1および/またはA2)または治癒期(H1および/またはH2)を内視鏡検査により診断した場合、消化性潰瘍が発生したと判断することができる。
【0020】
本発明の実施例において、胃腸管(胃または十二指腸など)における潰瘍および/または出血病変の存在が内視鏡検査によって確認されない場合、または潰瘍瘢痕のみが内視鏡検査によって確認された場合、消化性潰瘍は発症しなかったと判断することができる。例えば、崎田・三輪分類法による瘢痕化期(S1、S2)や、内視鏡検査で潰瘍や出血病変の存在が確認されない場合、消化性潰瘍は発症していないと判断することができる。
【0021】
本発明において、「潰瘍瘢痕」という用語は、潰瘍により損傷を受けた粘膜や筋層などの組織が回復し、再生した上皮が赤色のみのまま残り、中央に赤色の瘢痕または小さな退色スポット(faded spot)を示す退色瘢痕を指すことができる。
【0022】
本発明の実施例では、胸やけ、胃酸逆流、および/または上腹部痛または不快感がある場合に、消化性潰瘍が発生していると判断することができる。
【0023】
本発明の実施例では、胸やけ、胃酸逆流、および上腹部痛または不快感の症状が現れない場合、消化性潰瘍が発生していないか、または治療を受けていると判断することができる。
【0024】
本発明において、「消化性潰瘍および/またはその再発を防止する」とは、消化性潰瘍および/またはその再発を防止すること、または消化性潰瘍および/またはその再発を抑制もしくは遅延させることを含むことができる。例えば、「消化性潰瘍を防止する」という表現は、対象における消化性潰瘍の発症を防止、抑制、または遅延させることを含むことができ、「消化性潰瘍の再発を防止する」という表現は、消化性潰瘍を経験したが治療を受けている対象において消化性潰瘍の発症を防止、抑制または遅延させることを含むことができる。対象は、非ステロイド性抗炎症薬に関連する消化性潰瘍を発症するリスクのある者であってもよい。具体的には、対象は、非ステロイド性抗炎症薬を継続的に服用する必要がある者であってもよい。
【0025】
本発明は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、消化性潰瘍および/またはその再発(ここで消化性潰瘍および/またはその再発は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の投与により引き起こされ得る)を防止するための医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明の実施例において、医薬組成物は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25 mg~50 mgの量で含む医薬組成物を対象に投与することにより、消化性潰瘍および/またはその再発(ここで消化性潰瘍および/またはその再発は、非ステロイド性抗炎症薬の投与により引き起こされ得る)を防止するために使用される。具体的には、医薬組成物は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25 mg~50 mgの量で含むことができる。本発明において、「テゴプラザン(遊離塩基形態)として25 mg~50 mgの量」とは、「テゴプラザン(遊離塩基形態)に対して25 mg~50 mgの量」と同じ意味に使用することができる。
【0027】
本発明の実施例において、対象は、医薬組成物の投与前に少なくとも1回は消化性潰瘍を経験した者であってもよい。具体的には、医薬組成物の投与前に内視鏡検査により胃および/または十二指腸等の消化管に潰瘍を少なくとも1回、2回、または2回以上診断された者であってもよい。より具体的には、対象は、医薬組成物の投与前5年以内に内視鏡検査により少なくとも1回、少なくとも2回、または少なくとも3回、胃および/または十二指腸潰瘍等の消化管潰瘍と診断された者であってもよい。例えば、対象は、医薬組成物の投与前5年以内に内視鏡検査により崎田・三輪分類による活動期(A1および/またはA2)または治癒期(H1および/またはH2)の潰瘍と診断された者、または医薬組成物の投与前5年以内に胸やけ、胃酸逆流、および/または潰瘍による上腹部痛もしくは不快感を経験した者であってもよい。
【0028】
本発明の実施例において、医薬組成物の投与前に対象が経験した消化性潰瘍の程度、発症回数、持続時間および/または原因は多様であってもよい。例えば、医薬組成物の投与前に対象が経験した消化性潰瘍は、非ステロイド性抗炎症薬の投与により引き起こされるか、または投与とは無関係に引き起こされてもよい。
【0029】
本発明の実施例において、対象は、消化性潰瘍の発症後であって医薬組成物の投与前に消化性潰瘍の治療を受けている者であってもよい。具体的には、消化性潰瘍を発症したことがある対象は、胃または十二指腸などの消化管に潰瘍や出血病変が存在しない状態、または潰瘍瘢痕のみが存在する状態であると医薬組成物の投与前に内視鏡検査により判断された者であってもよい。より具体的には、対象は、医薬組成物の投与前の内視鏡検査による判断により、具体的には、消化性潰瘍の診断後、医薬組成物の投与前4週間以内、例えば2週間で、胃および/または十二指腸などの消化管内に潰瘍および出血病変が存在しない状態、または潰瘍瘢痕のみが存在する状態であってもよく、または対象は、医薬組成物の投与前に、胸やけ、胃酸の逆流、上腹部痛または不快感などの症状を示さない者であってもよい。例えば、内視鏡検査により確認した結果、医薬組成物の投与前に、潰瘍や出血病変が存在しない状態や、崎田・三輪分類による瘢痕化期(S1および/またはS2)にある対象であってもよいし、胸やけ、胃酸の逆流、および上腹部の痛みまたは不快感等の症状を示さない者であってもよい。
【0030】
本発明の医薬組成物は、医薬組成物の投与前に対象が経験した消化性潰瘍の程度、持続時間、発症回数、または原因に関係なく、消化性潰瘍の再発を効果的に防止することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の投与前に対象が経験した消化性潰瘍の重症度、期間、発症回数、または原因に関係なく、消化性潰瘍の再発を効果的に防止、遅延、または抑制することができる。
【0031】
本発明の実施例において、対象は、基礎疾患を有する者であってもよい。例えば、対象は、基礎疾患として筋骨格系障害を有する者であってもよい。
【0032】
本発明の実施例において、医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬との併用投与するためのものであってもよい。具体的には、医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬と併用投与することができる。本発明の医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬の投与により消化性潰瘍が発生および/または再発するのを効果的かつ安全に長期間にわたって防止するために、非ステロイド性抗炎症薬と併用投与することができる。また、本発明の医薬組成物は、対象が基礎疾患を有していない場合のみならず、対象が基礎疾患を有する場合においても、副作用なく長期間にわたって消化性潰瘍またはその再発を効果的かつ安全に防止することができる。
【0033】
また、本発明の医薬組成物を非ステロイド性抗炎症薬と併用投与する場合であっても、組成物および非ステロイド性抗炎症薬の各々の薬物動態学的特性は影響を受けない可能性がある。例えば、本発明の医薬組成物を非ステロイド性抗炎症薬と併用投与する場合であっても、医薬組成物の有効成分であるテゴプラザンおよび非ステロイド性抗炎症薬のそれぞれの薬効を損なうことなく、十分な薬理効果を発揮することができる。
【0034】
本発明の実例において、医薬組成物および非ステロイド性抗炎症薬は、それぞれ独立して、別々の単位剤形で製剤化することができ、また併用投与することができる。あるいは、本発明の実施例において、医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬を含む単一の単位剤形で製剤化することもできる。具体的には、医薬組成物と非ステロイド性抗炎症薬とを組み合わせ(複合)製剤で製剤化することができ、また併用投与することができる。
【0035】
本発明の実施例において、単位剤形は、錠剤またはカプセル剤であってもよい。例えば、単位剤形が錠剤である場合、錠剤は、医薬組成物、非ステロイド性抗炎症薬、またはそれらの混合物を含む、混合物または顆粒を打錠することによって調製することができる。例えば、単位剤形がカプセル剤である場合、カプセル剤は、医薬組成物、非ステロイド性抗炎症薬、またはそれらの混合物を含む顆粒、ペレットまたは錠剤で満たされたカプセル剤であってもよく、この場合、錠剤は小型錠剤(mini-tablet)であってもよい。
【0036】
本発明において、「単位剤形」という用語は、「単位製剤」という用語と同じ意味に使用することができる。
【0037】
本発明の実施例において、対象は、非ステロイド性抗炎症薬を4週間以上、または8週間以上、具体的には10週間以上、より具体的には12週間以上、さらにより具体的には24週間以上服用する者であってもよい。
【0038】
本発明の例において、医薬組成物および非ステロイド性抗炎症薬は、対象に同時に、または連続して、または1日未満の時間差で別々に投与することができる。具体的には、非ステロイド系抗炎症薬と同時に投与することができ、または非ステロイド系抗炎症薬の投与前もしくは投与後に連続して投与することができる。
【0039】
本発明の実施例において、医薬組成物を非ステロイド性抗炎症薬と同時に投与する場合、医薬組成物と非ステロイド性抗炎症薬は、別々の単位剤形で製剤化することができ、また同時に投与することもできるし、または医薬組成物と非ステロイド性抗炎症薬とを単一の単位剤形で製剤化することができ、また同時に投与することもできる。
【0040】
本発明の実施例において、医薬組成物と非ステロイド性抗炎症薬は、4週間以上、または8週間以上、具体的には10週間以上、より具体的には12週間以上併用投与することができる。例えば、医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬と12~24週間併用投与することができる。
【0041】
本発明の組成物を非ステロイド性抗炎症薬と併用投与することにより、非ステロイド性抗炎症薬により引き起こされる消化性潰瘍および/またはその再発を効果的に防止することができる。
【0042】
本発明の実施例において、対象は、医薬組成物の投与前に非ステロイド性抗炎症薬を服用した者であってもよい。具体的には、対象は、医薬組成物の投与の4週間前から非ステロイド性抗炎症薬を服用している者であってもよい。例えば、非ステロイド性抗炎症薬を医薬組成物の投与の4週間前から対象に投与することができ、次いで、医薬組成物と非ステロイド性抗炎症薬とを4~24週間併用投与することができる。
【0043】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬は、対象に経口投与することができる。
【0044】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬を対象に投与する理由は特に限定されず、また非ステロイド性抗炎症薬を投与する理由に関係なく、本発明の組成物は、非ステロイド性抗炎症薬により引き起こされる消化性潰瘍を効果的に防止することができる。例えば、対象は、疼痛制御のために非ステロイド性抗炎症薬が投与される者、具体的には慢性筋骨格系疾患に伴う疼痛を制御するために非ステロイド性抗炎症薬が投与される者、より具体的には変形性関節症または関節リウマチなどの関節炎に伴う疼痛を制御するために非ステロイド性抗炎症薬が投与される者であってもよい。
【0045】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬は、非選択的非ステロイド性抗炎症薬(非選択的NSAID)、選択的または非選択的Cox-2阻害剤(Cox-2阻害剤)、アスピリン、またはこれらの混合物であってもよい。具体的には、非ステロイド性抗炎症薬は、サリチル酸塩、プロピオン酸誘導体、酢酸誘導体、エノール酸(オキシカム)誘導体、アントラニル酸誘導体(フェナメート)、選択的Cox-2阻害剤(コキシブ)、スルホンアニリド、クロニキシン、またはこれらの混合物の中から選択することができる。より具体的には、非ステロイド性抗炎症薬は、プロピオン酸誘導体、酢酸誘導体、および選択的Cox-2阻害剤(コキシブ)からなる群より選択される1種以上を含むことができる。より具体的には、非ステロイド性抗炎症薬は、アセクロフェナク、アセメタシン、アルミノプロフェン、アンフェナク、アパゾン、アスピリン、ブロムフェナク、ブフェキサマク、セレコキシブ、サリチル酸コリン、シノキシカム、クロニキシン、デキシブプロフェン、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エモルファゾン、エトドラク、エトリコキシブ、エテンザミド、フェルビナク、フェノプロフェン、フルフェナム酸、フルルビプロフェン、イブプロフェン、サリチル酸イミダゾール、インドメタシン、イソプロピルアンチピリン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロルノキシカム、ロキソプロフェン、メクロフェナミン酸、メロキシカム、メフェナム酸、モルニフルマート、ナブメトン、ナプロキセン、ネフォパム、ニメスリド、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、ペルビプロフェン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、プラノプロフェン、プログルメタシン、ロフェコキシブ、サルサレート、サリチル酸、スリンダク、タルニフルミン酸、テノキシカム、チアプロフェン酸、トルフェナム酸、トルメチン、バルデコキシブ、ザルトプロフェン、サリチル酸、メロキシカム、イソキシカム、ドロキシカム、フルフェナム酸、トルフェナム酸、ルミラコキシブ、フィロコキシブ、パレコキシブ、それらの薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物から選択されうる。本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬は、限定されるものではないが、ナプロキセン、アセクロフェナク、およびセレコキシブからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0046】
本発明の実施例において、「消化性潰瘍および/またはその再発を防止する」という表現は、潰瘍または出血病変が存在しない状態が、非ステロイド性抗炎症薬の連続投与中または投与終了後に一定期間または連続して維持することを意味する。具体的には、「消化性潰瘍および/またはその再発を防止する」とは、消化管内の潰瘍および出血病変の存在が内視鏡検査により確認されないか、または内視鏡検査により潰瘍瘢痕のみが認められる状態であって、非ステロイド性抗炎症薬の連続投与中または投与終了後も一定期間または連続して維持される状態を意味する。例えば、「消化性潰瘍および/またはその再発を防止する」とは、消化管内の潰瘍および出血病変の存在が内視鏡検査により確認されない状態または崎田・三輪分類による瘢痕化期(S1および/またはS2)に分類される状態のいずれかを、非ステロイド性抗炎症薬の連続投与中または投与終了後に一定期間または連続して維持することを意味する。
【0047】
本発明の実施例において、「消化性潰瘍および/またはその再発を防止する」とは、消化性潰瘍により引き起こされる症状が現れない状態を、非ステロイド性抗炎症薬の連続投与中または投与終了後に一定期間または連続して維持することを意味する。例えば、「消化性潰瘍および/またはその再発を防止する」とは、胸焼け、胃酸の逆流、または消化性潰瘍に起因する上腹部の痛みもしくは不快感が現れない状態を、非ステロイド性抗炎症薬の連続投与中または投与終了後に一定期間または連続して維持することを意味する。
【0048】
本発明は、有効成分として、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、胃潰瘍または消化性潰瘍および/またはその再発(ここで胃潰瘍または十二指腸潰瘍および/または再発は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の投与により引き起こされ得る)を防止するための医薬組成物を提供する。
【0049】
本発明の実施例において、医薬組成物は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25 mg~50 mgの量で含むことができる。具体的には、医薬組成物は、テゴプラザンとして25 mgまたは50 mgの量でテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩を含むことができる。
【0050】
本発明の実施例において、医薬組成物は、1日1回投与することができる。具体的には、テゴプラザンは、4週間~24週間、具体的には1日1回、4週間~12週間投与することができる。具体的には、テゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩をテゴプラザンとして25 mg~50 mgの量で含む医薬組成物は、4週間~24週間、より具体的には1日1回、4週間~12週間投与することができる。
【0051】
本発明の実施例において、医薬組成物は、単位剤形で製剤化することができ、また、錠剤やカプセル剤などの単位剤形で製剤化する場合には、単位剤形は、食事に関係なく1日1回投与することができる。具体的には、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25 mg~50 mgの量で含む医薬組成物を単位剤形に製剤化することができる。
【0052】
本発明の実施例において、医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬とは別の単位剤形で製剤化することができる。この場合、医薬組成物および非ステロイド性抗炎症薬は、同時に、または連続して、または1日未満の時間差で別々に対象に投与することができる。具体的には、医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬と同時に投与することができ、または非ステロイド性抗炎症薬の投与前もしくは投与後に連続して投与することができる。
【0053】
本発明の実施例において、医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬を含む単一の単位剤形で製剤化することができ、また同時に対象に投与することができる。
【0054】
医薬組成物が錠剤やカプセル剤等の単位剤形で製剤化する場合において、単位剤形は、1日1回投与することができ、また食事に関係なく投与することができる。より具体的には、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25 mgまたは50 mgの量で含む医薬組成物を単位剤形で製剤化することができ、また、医薬組成物が錠剤やカプセル剤等の単位剤形で製剤化する場合には、単位剤形は、1日1回投与することができ、また食事に関係なく投与することができる。
【0055】
本発明の実施例において、「薬学的に許容される塩」という用語は、対象に重大な刺激を引き起こさず、かつ化合物の生物学的活性および物理的特性を損なわない任意の無機もしくは有機の酸または塩基と形成された塩を指す。塩としては、当技術分野で通常用いられる塩、例えば薬学的に許容される遊離酸により形成される酸付加塩、または遊離塩基により形成される塩基付加塩などを用いることができる。具体的には、薬学的に許容される塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物塩、臭化水素酸塩/臭化物塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、およびキシナホ酸塩からなる群より選択される酸付加塩であってもよい。
【0056】
あるいは、薬学的に許容される塩の具体例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、ジイソプロピルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩などの有機塩基塩などが挙げられる。薬学的に許容される塩としては、具体的にはアルカリ金属塩、より具体的にはナトリウム塩が挙げられる。
【0057】
ただし、薬学的に許容される塩は、上記に挙げたものに限定されるものではなく、テゴプラザンの薬理活性を発揮することができる塩であればいかなる通常の塩でも制限なく使用することができる。具体的には、薬学的に許容される塩は、テゴプラザンピドル酸塩またはテゴプラザンリンゴ酸塩であってもよい。
【0058】
本発明に係るテゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、消化性潰瘍および/またはその再発を防止するための医薬組成物は、さらに、薬学的に許容される添加剤または通常用いられる適当な担体、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤もしくは希釈剤を含むことができる。
【0059】
本明細書で使用される「薬学的に許容される添加剤」という用語は、生物を刺激せず、導入される(injected)化合物の生物学的活性および特性を損なわない、担体、賦形剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤または希釈剤を含むことができる。本発明で用いることができる添加剤の種類は特に限定されず、当技術分野で通常用いられる任意の薬学的に許容される添加剤を使用することができる。添加剤の非限定的な例としては、マンニトール、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、またはそれらの混合物を含むことができる。また、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝剤および/または静菌剤などの他の慣用の添加剤を添加して使用することができる。
【0060】
本発明に係るテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩を含む、消化性潰瘍および/またはその再発を防止するための医薬組成物は、経口投与用に製剤化することができる。具体的には、医薬組成物は、錠剤またはカプセルとして製剤化することができる。錠剤またはカプセルは、矛盾がない限り、上記と同様とすることができる。
【0061】
本発明は、消化性潰瘍の発生および/または再発を防止するための併用投与のための医薬組成物であって、非ステロイド性抗炎症薬;およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物(ここで医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬の投与により引き起こされる消化性潰瘍またはその再発を、副作用なく長期間にわたって効果的かつ安全に防止することができる)を提供する。
【0062】
本発明の実施例において、併用投与のための医薬組成物は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25 mg~50 mgの量で含むことができる。具体的には、併用投与のための医薬組成物は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25 mgまたは50 mgの量で含むことができる。
【0063】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬とテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩とは別々に製剤化することができる。この場合、非ステロイド性抗炎症薬の単位剤形とテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩の単位剤形とを、同時に、連続して、または1日未満の時間差で別々に対象に投与することができる。対象は、消化性潰瘍を経験したが、併用投与のための医薬組成物の投与前に消化性潰瘍の治療を受けている状態にある者であってもよい。本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩は、独立して錠剤またはカプセルに製剤化することができる。錠剤またはカプセルは、矛盾がない限り、上記と同様とすることができる。
【0064】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩は、単一の単位剤形で製剤化することができ、また同時に対象に投与することができる。対象は、消化性潰瘍を経験したが、併用投与のための医薬組成物の投与前に消化性潰瘍の治療を受けている状態である者であってもよい。本発明の実施例において、単位剤形は、錠剤またはカプセルであってもよい。錠剤またはカプセルは、矛盾がない限り、上記と同様とすることができる。
【0065】
本発明は、消化性潰瘍および/またはその再発を防止するための組合せであって、非ステロイド性抗炎症薬;およびテゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む組合せを提供する。
【0066】
この組み合わせは、非ステロイド性抗炎症薬により引き起こされる消化性潰瘍および/またはその再発を効果的かつ安全に長期間にわたって防止することができる。
【0067】
本発明の実施例において、組合せは、非ステロイド性抗炎症薬;およびテゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25 mg~50 mgの量で含むことができる。具体的には、組合せは、非ステロイド性抗炎症薬を含むことができ;テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザンとして25 mgまたは50 mgの量で含むことができる。
【0068】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩は、対象に同時に、連続して、または1日未満の時間差で別々に投与することができる。
【0069】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩は、別々の単位剤形に製剤化することができ、または単一の単位剤形に製剤化することができる。
【0070】
単位剤形、対象物等は、矛盾しない限り、上記と実質的に同じであってもよい。
【0071】
本発明は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、本発明の医薬組成物の薬学的有効量を対象に投与することにより消化性潰瘍を防止する方法を提供する。
【0072】
本発明は、消化性潰瘍を経験したが消化性潰瘍の治療を受けている対象に、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、本発明の医薬組成物の薬学的有効量を投与することにより消化性潰瘍の再発を防止する方法を提供する。
【0073】
上述した方法において、本発明の医薬組成物は、対象、消化性潰瘍等について、矛盾がない限り、上で述べたものと実質的に同じである。
【0074】
本発明の方法によれば、非ステロイド性抗炎症薬を医薬組成物と併用投与しているにもかかわらず、非ステロイド性抗炎症薬の投与により引き起こされる消化性潰瘍および/またはその再発を副作用なく長期間にわたって安全かつ効果的に防止することができる。
【0075】
本発明において、「薬学的有効量」という用語は、任意の医療に適用可能な妥当な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を指す。医薬組成物の薬学的有効量レベルは、患者のタイプ、疾患の重症度、薬剤の活性、薬剤に対する感受性、投与期間、投与経路、排泄率、治療期間、組成物と組み合わせて用いられる薬剤などの要因、および医学分野でよく知られている他の要因に応じて決定することができる。本組成物は、上述した全ての要因を考慮して、副作用を生じることなく最大の効果を発揮することができる最小量で投与することが重要であり、この量は当業者であれば容易に決定することができる。
【0076】
本発明に係る防止方法においては、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25~50 mgの量で1日1回、対象に投与することにより、非ステロイド性抗炎症薬の服用による消化性潰瘍の発生または再発を、長期間にわたって、有効かつ安全に防止することが可能である。具体的には、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25または50 mgの量で1日1回被験対象に投与することにより、非ステロイド性抗炎症薬の投与による消化性潰瘍の発生または再発を効果的かつ安全に長期間にわたって防止することができる。
【0077】
本発明は、テゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩と非ステロイド性抗炎症薬とを併用投与することにより消化性潰瘍および/またはその再発を防止する方法を提供する。
【0078】
本発明の方法においては、消化性潰瘍を経験したが、テゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩を投与する前に消化性潰瘍の治療を受けている対象に、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25 mg~50 mg、具体的には25 mgまたは50 mgの量で1日1回、非ステロイド性抗炎症剤と併用投与することができる。
【0079】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩は、対象に同時に、または連続して投与することができ、または1日以内の時間差で別々に投与することができる。
【0080】
本発明の実施態様において、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩は、対象に同時に、連続して、または1日以内の時間差で別々に投与することができる。
【0081】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩は、別々の単位剤形で製剤化することができ、または単一の単位剤形で製剤化することができる。
【0082】
医薬組成物、単位剤形、対象、消化性潰瘍等は、矛盾がない限り、上述したものと実質的に同一であってもよい。
【0083】
本発明は、消化性潰瘍を防止するための本発明の医薬組成物の使用であって、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0084】
本発明は、消化性潰瘍を経験したが治療を受けている対象に投与することにより、消化性潰瘍の再発を防止するための本発明の医薬組成物の使用であって、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0085】
本発明の使用において、医薬組成物は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25~50 mg、具体的にはテゴプラザンとして25 mgまたは50 mgの量で含み、1日1回の投与で、非ステロイド性抗炎症薬の投与による消化性潰瘍の発生または再発を効果的かつ安全に長期間にわたって防止することができる。
【0086】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩は、同時に、連続して、または1日未満の時間差で別々に対象に投与することができる。
【0087】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩は、別々の単位剤形で製剤化することができ、または単一の単位剤形で製剤化することができる。
【0088】
本発明の医薬組成物、単位剤形、対象、消化性潰瘍等は、矛盾がない限り、上述したものと実質的に同一であってもよい。
【0089】
本発明は、消化性潰瘍および/またはその再発を防止するための医薬組成物の使用であって、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0090】
本発明の使用において、医薬組成物は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物をテゴプラザン(遊離塩基形態)として25~50 mg、具体的にはテゴプラザンとして25 mgまたは50 mgの量で含み、1日1回の投与で、非ステロイド性抗炎症薬の投与による消化性潰瘍の発生または再発を有効かつ安全に長期間防止することができる。
【0091】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩は、同時に、連続して、または1日未満の時間差で別々に対象に投与することができる。
【0092】
本発明の実施例において、非ステロイド性抗炎症薬およびテゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩は、別々の単位剤形で製剤化することができ、または単一の単位剤形で製剤化することができる。
【0093】
医薬組成物、単位剤形、対象、消化性潰瘍等は、矛盾がない限り、上述したものと実質的に同一であってもよい。
【0094】
本発明の医薬組成物で述べた特徴は、矛盾がない限り、併用投与用医薬組成物、組み合わせ、防止方法および使用に等しく適用することができる。
【有利な効果】
【0095】
本発明は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、消化性潰瘍および/またはその再発を防止するための医薬組成物に関する。この医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬の投与により引き起こされる消化性潰瘍および/またはその再発を効果的かつ安全に長期間にわたって防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1は、本発明の医薬組成物を用いて行った臨床試験手順を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0098】
調製例1:医薬製剤(1)-テゴプラザン25 mg錠の調製
剤形は、25 mgの(S)-4-[(5,7-ジフルオロ-3,4-ジヒドロ-2H-クロメン-4-イル)オキシ]-N,N,2-トリメチル-1H-ベンズイミダゾール-6-カルボキサミドを有効成分として含むように調製した。この有効成分をマンニトール、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムと混合した。充填剤は、最終剤形の総重量に対して1~99重量%(マンニトール:25 mg、および微結晶セルロース:40 mg)の量で含むようにし、崩壊剤は、最終剤形の総重量に対して1~20重量%(クロスカルメロースナトリウム:5 mg)の量で含むようにした。
【0099】
この混合物に、ヒドロキシプロピルセルロースおよび精製水を含む結合剤溶液を加えて造粒し、結合剤を有効成分の重量に対して4~40重量%(4 mgのヒドロキシプロピルセルロース)の量で使用した。
【0100】
この顆粒を乾燥してから整粒し、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムを顆粒に添加し、一緒に混合した。
【0101】
希釈剤は、最終剤形の全重量に対して1~10重量%(1 mgのコロイド状二酸化ケイ素)の量で使用し、滑沢剤は、最終剤形の全重量に対して1~10重量%(1 mgのステアリン酸マグネシウム)の量で使用した。得られた混合物を圧縮して錠剤とした。
【0102】
この錠剤をフィルムコーティング剤でコーティングした。コーティング剤は、最終剤形の全重量に対して2~6重量%(3 mg)の量で使用した。
【0103】
調製例2:テゴプラザン25 mgに対するプラセボ
有効成分テゴプラザンを使用しない以外は調製例1と同様にして、テゴプラザン25 mgに対するプラセボを調製した。
【0104】
調製例3:ランソプラゾール15 mg製剤の調製
ランソプラゾール製剤としては、ジェイル(Jeil)製薬株式会社から購入した15mgのランストンカプセル(15 mgのランソプラゾール)を用いた。
【0105】
調製例4:ランソプラゾール15 mgに対するプラセボ
有効成分ランソプラゾールを使用せず、薬学的に許容される賦形剤を添加した以外は、ランストンカプセル調製法と同様にして、ランソプラゾール15mgに対するプラセボを調製した。
【0106】
実施例1
1. 対象の選定
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を継続的に服用する必要がある患者を対象にテゴプラザンの安全性および胃十二指腸潰瘍防止効果を評価するため、無作為化、二重盲検、実薬対照臨床試験を設計した。
【0107】
選択基準
特に断りのない限り、本臨床試験に組み入れる被験対象は、以下の選択基準を満たした。
【0108】
(1) 書面による同意を得た日現在において20歳以上である者;
(2)60歳以上または20歳以上の者で、選考のための来院時に胃十二指腸潰瘍(胃潰瘍および/または十二指腸潰瘍)の既往歴がある者
- 胃十二指腸潰瘍の既往歴とは、選考時に行われた上部消化管内視鏡検査によって瘢痕が確認された場合、または過去の医療記録における内視鏡検査所見によって診断を確認した場合を指す;
(3)筋骨格系疾患(例えば、変形性関節症、関節リウマチ等)により、無作為化後、種類や用量を変えずに24週間以上継続して非ステロイド性抗炎症薬(非選択的NSAIDs、COX-2選択的阻害剤)を服用する必要がある者
- インドメタシン、ナプロキセン、アセクロフェナク、ジクロフェナク、ピロキシカム、メロキシカム、イブプロフェン、ロキソプロフェン、セレコキシブなどを服用する者は組み入れ、アセトアミノフェンおよびアスピリンを服用する者は除く(ただし、低用量のアスピリンを服用する者は除外しない);
(4) 指示を理解し従うことができ、臨床試験の全期間を通じて参加できる者;
(5) 自らの意思で臨床試験への参加を決定し、書面で同意している者;
(6) 医学的に妊娠できない者、または臨床試験期間中に医学的に有効な避妊方法の使用に同意している者。
【0109】
除外基準
以下の基準のいずれかを満たした者は、この臨床試験から除外した。
【0110】
(1)選考時に実施した上部消化管内視鏡検査において、崎田・三輪分類による活動期(A1、A2)および治癒期(H1、H2)に該当する胃十二指腸潰瘍を有することが確認された者;
(2)選考時に実施した上部消化管内視鏡検査において、消化管出血、穿孔、食道狭窄、潰瘍狭窄、幽門狭窄、食道胃静脈瘤、3 cmを超える長節バレット食道(LSBE)、食道におけるすべてのグレードの異形成変化、悪性腫瘍を有することが確認された者;
(3)消化管の悪性疾患を示す「警告症状」である、嚥下痛、疼痛、嚥下障害、出血、体重減少、貧血、血便(痔を除く)等の症状を有する者(ただし、警告症状を示す者の中で、内視鏡検査で腫瘍が陰性と診断された者は、組み入れることができる);
(4)過去に上部消化管切除術、胃酸分泌抑制、胃粘膜切除術など、胃酸分泌に影響を及ぼす可能性のある重篤な手術(単純穿孔手術、中手根切除術、胆嚢摘出術、および腹腔鏡による良性腫瘍切除を除く)を受けた者;
(5)ゾリンジャー・エリソン症候群その他の胃酸分泌障害と診断された者、またはその既往歴を有する者;
(6)重度で制御不能な高血圧症(選考時にsiDBP≧110 mmHgまたはsiSBP≧180 mmHg)を有する患者;
(7)重症心不全、うっ血性心不全(NYHA II~IV)、虚血性心疾患(不安定狭心症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患、脳血管疾患、または冠動脈バイパス術(CABG)治療を受けた患者で、非ステロイド性抗炎症薬を投与できないと判断された患者;
(8)重度の血液異常または血液凝固障害を有する者;
(9)炎症性疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、膵炎など)を有する者;
(10)選考時に実施した検査においてピロリ菌陽性が確認された者;
(11)試験期間中に副腎皮質ステロイド剤、抗血栓剤、抗凝固剤を継続して服用する必要がある者(ただし、臨床試験に参加する前に心血管系疾患を防止する目的で使用されていたアスピリンについては、低用量(1日あたり100mg以下)の服用は許される);
(12)臨床的に有意な肝障害(AST、ALT、ALP、Y-CT、および総ビリルビン値が各検査室の正常範囲の上限の2倍を超える)を有する患者;
(13)臨床的に有意な腎機能障害(血中のクレアチニン濃度が各検査室の正常範囲の上限の2倍を超える)を有する患者;
(14)臨床的に有意な心電図異常を有する者;
(15) 直近5年以内に悪性腫瘍の既往歴がある者
- 腫瘍の完全寛解(CR、pCR)と診断され、診断日から再発せずに5年以上経過した者、および内視鏡的胃粘膜切除(粘膜切除(EMR)、粘膜下剥離(ESD))により腫瘍が完全に除去された後、再発せずに3年以上経過した者は、組み入れることができる;
(16)臨床試験中に併用予定のベンズイミダゾール類または非ステロイド性抗炎症薬成分および臨床試験の医薬品に対する過敏反応および既往歴を有する患者;
(17)喘息、鼻炎、鼻ポリープ、血管浮腫、蕁麻疹、またはアスピリンまたは他の非ステロイド性抗炎症薬(COX-2阻害剤を含む)に対するアレルギー反応の既往歴を有する患者;
(18)HIVプロテアーゼ阻害剤(アタザナビルまたはネルフィナビル) またはリルピビリンを含む薬物を服用している患者;
(19)臨床試験参加中に入院または外科的治療を必要とする手術が予定されている対象;
(20)他の臨床試験に参加し、本臨床試験の薬剤の投与開始日から4週間以内に他の臨床試験の薬剤を投与された者
- 非介入試験(観察試験、アンケート調査等の非介入試験)のうち、臨床試験責任医師が本臨床試験の有効性および安全性評価に影響を与えないと判断した試験に参加した被験対象または参加中の被験対象は、本臨床試験に参加できる
- 他の臨床試験への参加同意書を記載した後、被験薬を投与されることなく選考から脱落した者は、本臨床試験に参加できる;
(21)妊娠中または授乳中の女性;
(22)アルコール乱用歴のある患者;
(23)上記の他、医学的判断の結果、本試験に不適切と判断される臨床的に有意な所見を有する者。
【0111】
2. 臨床試験デザイン
臨床試験は、二重盲検、無作為化、実薬対照、多施設臨床試験法によって実施し、臨床試験手順は図1に模式的に示す。
【0112】
臨床試験のために来院した対象には、来院初日(来院1)に合意した順番で選考番号を割り当て、選考検査(内視鏡検査)を行い、過去の既往歴と胃内視鏡検査により被験対象を選抜した。選ばれた被験対象を無作為に割り付け(来院2)、2群(各群について195人)に分類した。
各群に薬物を24週間投与し、内視鏡検査を行った。
【0113】
3. 投与量および投与方法
表1に示すように、1つの錠剤および1つのカプセルを、2つの分類群に投与した。
【表1】
【0114】
上記の表1に示すように、試験群には、テゴプラザン25 mg錠(調製例1)/ランソプラゾール15 mgプラセボ(調製例4)を経口投与し、対照群には、テゴプラザン25 mgプラセボ(調製例2)/ランソプラゾール15 mgカプセル(調製例3)を経口投与した。
【0115】
各群に無作為に割り付けた対象には、臨床試験期間中に対象ごとに処方された用法・用量に従って非ステロイド性抗炎症薬を投与し、被験対象の日記記録も投与開始日から作成した。各群に無作為に割り付けた対象に、処方後翌日(1日目)から始まる特定の時刻に1日1回処方した被験薬を投与した。被験対象日記は、被験薬の投与を開始した日から作成した。
【0116】
上部消化管内視鏡検査のための来院当日は、非ステロイド性抗炎症薬および被験薬を服用せずに来院する。
【0117】
第4週(来院3)、第12週(来院4)および第24週(来院5)において、各対象は、被験薬を服用せずに空腹時に来院した。来院3および来院4では、予定した検査の後、新たに処方された被験薬および投与済みの(または新たに処方された)非ステロイド性抗炎症薬を投与した。
【0118】
投薬24週目に来院し、上部消化管内視鏡検査での潰瘍発生の有無、副作用、臨床検査(血液学、血液化学、血液凝固、尿検査等)、バイタルテスト(vitality tests)(座位血圧、心拍、体温)、心電図、身体検査、症状評価等を実施した。被験対象は、被験薬服用後、最長24週間の安全性f/u(追跡期間)に入り、最終投与から2週間後に追跡観察(電話または来院)を実施した。
【0119】
4. 有効性評価
A. 一次有効性評価
24週間後に胃潰瘍および/または十二指腸潰瘍を発症した対象の割合(%)
:被験薬の投与24週間後に上部消化管内視鏡検査の結果、胃潰瘍および/または十二指腸潰瘍を発症した対象の割合(%)
=(被験薬投与24週間後に胃潰瘍および/または十二指腸潰瘍を発症した対象数/被験薬投与24週間後に上部消化管内視鏡検査を受けた対象数)×100
内視鏡検査の結果、崎田・三輪分類による活動期(A1,A2)および治癒期(H1,H2)に相当する胃潰瘍および/または十二指腸潰瘍と診断された場合、胃潰瘍および/または十二指腸潰瘍の発症とみなした。
【0120】
【表2】
【0121】
B. 二次有効性評価変数
4、12、および24週間後のNSAIDsの投与に伴う消化器症状のない対象の割合(%)
(1)胸やけのない対象の割合(%)
(2)胃酸逆流のない対象の割合(%)
(3)上腹部痛・不快感のない対象の割合(%)
【0122】
5. その他の評価変数
ベースラインと比較した4、12、および24週間後の血中ヘモグロビン(Hb)濃度の変化
ベースラインおよび平均、標準偏差、中央値、血中ヘモグロビン(Hb)濃度の最小値と最大値を、被験薬の投与後4週間後、12週間後、および24週間後に確認した。
【0123】
6. サブグループの分析と評価
A.胃十二指腸潰瘍の既往歴による胃十二指腸潰瘍の発生率(%)
胃十二指腸潰瘍の既往歴に応じた胃十二指腸潰瘍の発生率は、被験薬の投与24週間後に確認した。
B.非選択的NSAIDsおよびCOX-2選択的阻害剤による胃十二指腸潰瘍の発生率(%)
非選択的NSAIDsおよびCOX-2選択的阻害剤の投与による胃十二指腸潰瘍の発生率は、被験薬の投与24週間後に確認した。
C.低用量アスピリンの併用投与による胃十二指腸潰瘍の発生率(%)
低用量アスピリンの併用投与による胃十二指腸潰瘍の発生率は、被験薬の投与24週間後に確認した。
【0124】
7. 安全性評価
副作用、臨床検査(血液検査、血液化学検査、血液凝固検査、および尿検査)、バイタルサイン(座位血圧、心拍数、および体温)、心電図、および身体検査
A. 副作用
副作用、薬の副作用、重篤な副作用、および重篤な薬の副作用を発現した被験対象数、ならびに、副作用、薬の副作用、重篤な副作用、および重篤な薬の副作用の発生率を確認した。
【0125】
B. 臨床検査
血液学、血液化学、血液凝固および尿検査の項目に関する連続データについては、被験薬の投与前および投与期間中の最後の来院時における平均、標準偏差、最大値と最小値を確認した。カテゴリーデータ(categorical data)については、シフトテーブル(shift table)を頻度とパーセンテージによって確認した。
【0126】
C. バイタルサイン
バイタルサイン(座位収縮期血圧、座位拡張期血圧、心拍数、および体温)については、被験薬の投与前および投与期間中の最後の来院時における平均値、標準偏差、最小値と最大値を確認した。
【0127】
D. 心電図
心電図については、被験薬の投与前および投与期間中の最後の来院時の心電図検査の結果をシフトテーブル上に頻度およびパーセンテージで表し、確認した。
【0128】
E. 身体検査
身体検査については、被験薬の投与前および投与期間中の最後の来院時の身体検査の各項目の結果をシフトテーブル上に頻度および比率で表し、確認した。
【0129】
実施例2
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による消化性潰瘍に対するテゴプラザンの効果を確認するために、非ステロイド性抗炎症薬であるナプロキセンによる急性消化性潰瘍の動物モデルにおけるテゴプラザンの抗潰瘍活性を評価し、またテゴプラザンの抗潰瘍効果をエソメプラゾールの抗潰瘍効果と比較した。
【0130】
具体的には、72時間絶食したSDラットにテゴプラザン(0.1~10 mg/kg)とエソメプラゾール(0.3~30 mg/kg)をそれぞれ経口投与した。30分後、ナプロキセン(30 mg/kg)を各ラットに2時間間隔で3回経口投与した。ナプロキセンの最後の投与の4時間後に、各ラットの胃を採取した。
【0131】
その結果、テゴプラザンはナプロキセン誘発消化性潰瘍モデルにおいて優れた抗潰瘍活性を示し、テゴプラザン(ED50, 0.123 mg/kg)の薬効はエソメプラゾール(ED50, 4.116 mg/kg)より優れていたことが確認できる。
【0132】
このことから、テゴプラザンが非ステロイド性抗炎症薬により引き起こされる消化性潰瘍を防止できることが確認できる。
【0133】
実施例3
テゴプラザンと非ステロイド性抗炎症薬の間の薬物動態学的相互作用を評価するために、テゴプラザンが非ステロイド性抗炎症薬のナプロキセン、アセクロフェナク、セレコキシブと繰り返し併用投与された場合について、薬物動態パラメータを、無作為化、オープン、反復投与、6群、および第3相クロスオーバー試験で評価した。
【0134】
[コホート(Cohort)1]
テゴプラザンとナプロキセンを単独または組み合わせて投与した場合の薬物動態学的相互作用を健康な成人男性で評価した。
【0135】
[コホート2]
テゴプラザンとアセクロフェナクを単独または組み合わせて投与した場合の薬物動態学的相互作用を健康な成人男性で評価した。
【0136】
[コホート3]
テゴプラザンとセレコキシブを単独または組み合わせて投与した場合の薬物動態学的相互作用を健康な成人男性で評価した。
評価の結果を下記の表3~表8に示す。
【0137】
以下の表3~表8において、治療Aは、テゴプラザン50 mgを単独で1日1回、7日間投与した群;治療Bは、ナプロキセン500 mgを単独で1日2回、7日間投与した群;治療Cは、テゴプラザン50 mg(1日1回)をナプロキセン500 mg(1日2回)と7日間併用投与した群;治療Dは、アセクロフェナク100 mgを単独で1日2回、7日間投与した群;治療Eは、テゴプラザン50 mg(1日1回)をアセクロフェナク100 mg(1日2回)と7日間併用投与した群;治療Fは、セレコキシブ200 mgを単独で1日2回、7日間投与した群;および治療Gは、テゴプラザン50 mg(1日1回)をセレコキシブ200 mg(1日2回)と7日間併用投与した群を表す。
【0138】
(1)テゴプラザンとナプロキセン
以下の表3および表4は、テゴプラザンおよびナプロキセンのそれぞれを投与した場合、またはテゴプラザンおよびナプロキセンを併用投与した場合に得られた薬物動態パラメータを示す。
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
【0141】
表3および表4を参照すると、テゴプラザンとナプロキセンの併用投与をその単独投与と比較した結果、併用投与がテゴプラザンおよびナプロキセンの薬物動態特性に影響を及ぼさないことが確認できる。
【0142】
(2) テゴプラザンとアセクロフェナク
以下の表5および6は、テゴプラザンおよびアセクロフェナクのそれぞれを投与した場合、またはテゴプラザンおよびアセクロフェナクを併用投与した場合に得られた薬物動態パラメータを示す。
【0143】
【表5】
【0144】
【表6】
【0145】
表5および表6を参照すると、テゴプラザンとアセクロフェナクの併用投与をそれらの単独投与と比較した結果、併用投与がテゴプラザンおよびアセクロフェナクの薬物動態特性に影響を及ぼさないことが確認できる。
【0146】
また、アセクロフェナクに関しては、体内に吸収されて全身循環に達する薬物の総量(程度)を反映したAUCの結果は、併用投与と単回投与との間で同様であり、したがって臨床的に有意な変化を有するとは予測されない。
【0147】
このように、テゴプラザンとアセクロフェナクとの併用投与をそれらの単独投与と比較した結果、併用投与がテゴプラザンおよびアセクロフェナクの薬物動態特性に影響を及ぼさないことが確認できる。
【0148】
(3)テゴプラザンとセレコキシブ
以下の表7および表8は、テゴプラザンおよびセレコキシブのそれぞれを投与した場合、またはテゴプラザンおよびセレコキシブを併用投与した場合に得られた薬物動態パラメータを示す。
【0149】
【表7】
【0150】
【表8】
【0151】
表7および表8を参照すると、テゴプラザンとセレコキシブの併用投与をそれらの単独投与と比較した結果、併用投与がテゴプラザンおよびセレコキシブの薬物動態特性に影響を及ぼさないことが確認できる。
【0152】
また、セレコキシブに関しては、体内に吸収されて全身循環に達する薬物の総量(程度)を反映したAUCの結果は、併用投与と単回投与との間で同様であり、したがって臨床的に有意な変化を有するとは予測されない。
【0153】
このように、テゴプラザンとセレコキシブとの併用投与をそれらの単独投与と比較した結果、併用投与がテゴプラザンおよびセレコキシブの薬物動態特性に影響を及ぼさないことが確認できる。
図1
【国際調査報告】