(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】酵素開発のための、超ハイスループットマイクロ流体式酵素スクリーニングプラットフォーム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/25 20060101AFI20230516BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230516BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230516BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230516BHJP
【FI】
C12Q1/25
C12Q1/02
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6869 C
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562285
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 IB2021000255
(87)【国際公開番号】W WO2021209818
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リ・ジー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チアウ-ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,カン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァヒーディー カールフェカンディ,アクバル
(72)【発明者】
【氏名】スン,グオユン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン,ユティン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン,カイヨアン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ21
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR58
4B063QS03
4B063QS10
4B063QS36
4B063QX02
4B063QX05
(57)【要約】
酵素変異体をスクリーニングするためのシステムおよび方法であって、酵素変異体が、補因子依存性であるか、または補因子非依存性である反応を触媒することができる、システムおよび方法について記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素を1つまたは複数の特徴についてスクリーニングする方法であって、
(a)複数の液滴を生成する工程であり、少なくとも1つの液滴が、酵素、反応基質;ならびに1つもしくは複数のレドックス補因子、または1つもしくは複数のレドックス補因子および1つもしくは複数の検出試薬を含み、酵素が反応基質を標的生成物に転換する工程と;
(b)液滴から発せられたシグナルを検出する工程であり、シグナルが、蛍光シグナル、生物発光シグナル、または化学発光シグナルであり、(i)反応基質が酵素により標的生成物に転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかもしくは還元されると、シグナルが発せられるか、または(ii)液滴中の1つもしくは複数の検出試薬により標的生成物が後続生成物にさらに転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかもしくは還元されると、シグナルが発せられる工程と
を含む方法。
【請求項2】
酵素を1つまたは複数の特徴についてスクリーニングする方法であって、
第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバーを含む複数のインキュベーションチャンバーであり、複数の液滴の連続流動を可能とするように構成された、複数のインキュベーションチャンバーを含むインキュベーション領域を含む流体素子内において、
細胞を第1インキュベーションチャンバーから第2インキュベーションチャンバーに流動させながら、液滴内の細胞を培養して、複数の細胞を形成する工程;
インキュベーション領域内の液滴を持続的に流動させる工程であり、液滴が、酵素、反応基質、ならびに1つもしくは複数のレドックス補因子、または1つもしくは複数のレドックス補因子および1つもしくは複数の検出試薬を含み、酵素が、反応基質を、標的生成物に転換する工程;および
液滴から、シグナルを発生させる工程であり、シグナルが、蛍光シグナル、生物発光シグナル、または化学発光シグナルである工程
を実施することを含む方法。
【請求項3】
レドックス補因子を含む、第1液滴を含み、液滴中のレドックス補因子の濃度が、5μM以上である、複数の液滴;
液滴を含有するマイクロ流体チャネル;および
マイクロ流体チャネルと流体連結している液滴分取領域であり、マイクロ流体チャネルと隣接する電極のセットを含む、液滴分取領域
を含む流体システム。
【請求項4】
複数の液滴を含有し、
少なくとも1つの液滴がレドックス補因子および検出試薬を含み;
検出試薬が、レドックス補因子のレドックス対と反応して、発光シグナルをもたらすように構成された、
マイクロ流体チャネル
を含む流体システム。
【請求項5】
第1液体および複数の細胞を含有するように構成され、細胞のうちの少なくとも1つが酵素を含む、第1試薬チャンバー;
反応基質を含有するように構成された第2試薬チャンバー;
第1流体と非混和性である第2液体を含有するように構成され、少なくとも第1試薬チャンバーと流体連結している、分散媒チャンバー;
第1液体と第2液体の融合を可能とするように構成された融合領域;
融合領域と流体連結しているインキュベーション領域であり、
流体連結した、第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバーを含み、第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバーがチャンバー間の液滴の連続流動を可能とするように構成された、複数のインキュベーションチャンバー
を含む、インキュベーション領域;
インキュベーション領域と流体連結している液滴分取領域であり、
検出領域、
検出領域から下流にあり、液滴内の成分の検出に基づき複数の液滴を分取するように構成された、電極のセット、
回収チャネル、
および廃液チャネル
を含む、液滴分取領域;ならびに
インキュベーション領域と液滴分取領域との間に位置するバブルトラップ
を含む流体システム。
【請求項6】
液滴分取領域内に第2分散媒チャンバーをさらに含む、前記請求項に記載の流体システム。
【請求項7】
第1液体および複数の細胞を含有するように構成され、細胞のうちの少なくとも1つが酵素を含む、第1試薬チャンバー;
反応基質を含有するように構成された第2試薬チャンバー;
第1流体と非混和性である第2液体を含有するように構成され、少なくとも第1試薬チャンバーと流体連結している、分散媒チャンバー;
第1液体と第2液体の融合を可能とするように構成された融合領域;
融合領域と流体連結しているインキュベーション領域であり、第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバー含む複数のインキュベーションチャンバーを含む、インキュベーション領域;
第1検出器を含む検出領域であり、第1検出器が、第1波長の第1発光シグナルおよび第2波長の第2発光シグナルを決定するように構成され、第1波長と第2波長とが異なる、検出領域;
インキュベーション領域と流体連結している液滴分取領域;
検出領域から下流にあり、液滴内の1つの成分または複数の成分の検出に基づき複数の液滴を分取するように構成された、電極のセット;
回収チャネル;および
廃液チャネル
を含む流体システム。
【請求項8】
第1検出器の上流に位置する第2検出器をさらに含み、第2検出器が、第1波長の第1発光シグナルおよび第2波長の第2発光シグナルを受信するように構成されてもよく、この場合、第1波長と第2波長とが異なる、前記請求項に記載の流体システム。
【請求項9】
参照シグナルと比較して検出された、発せられたシグナルのレベルに基づき、酵素を1つまたは複数の特徴についてスクリーニングすることをさらに含み、参照シグナルと比較した発光シグナルのレベルの変化が、酵素が、1つまたは複数の特徴を有することを指し示す、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
参照シグナルと比較して検出された、発せられたシグナルのレベルに基づき、液滴を分離することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
参照シグナルと比較して検出された、発せられたシグナルのレベルに基づき、液滴を分取することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
複数の液滴内において細胞を培養することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
培養することが、複数の液滴内において細胞を増殖させることを含む、前記請求項に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数の細胞を溶解させることをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
検出することが、細胞内の酵素、または細胞表面に提示された酵素を検出することを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
検出することが、細胞外酵素を検出することを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
参照シグナルと比較して、弱いシグナルがNADHの非存在下において検出される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
590nmの励起波長および620nmの発光波長を有する蛍光シグナルが、NADHの存在下において発せられる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
酵素がレドックス補因子依存性酵素であり、反応基質が酵素により標的生成物に転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかまたは還元されると、シグナルが発せられる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
酵素がレドックス補因子非依存性酵素であり、標的生成物が1つまたは複数の検出試薬により後続生成物にさらに転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかまたは還元されると、シグナルが発せられる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程a)における複数の液滴の生成が、各液滴内の宿主細胞を液滴内の培養培地と共にインキュベートして、反応基質、検出試薬、1つもしくは複数の検出試薬、溶解緩衝液、レドックス補因子、またはこれらの組合せを添加する前に、宿主細胞の数を増大させることをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
液滴が、蛍光活性化液滴分取(FADS)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、および磁気活性化細胞分取(MACS)、音波制御技術、磁気制御技術、空気圧制御技術、熱制御技術、電気制御技術、ならびにこれらの組合せからなる群より選択される方法を使用することにより分離される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
酵素の、1つまたは複数の特徴が、酵素活性、安定性、特異性、立体選択性、非天然基質を転換する能力、およびこれらの組合せからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
分離液滴内の酵素のアミノ酸配列、ポリヌクレオチド配列、または両方をシーケンシングする工程をさらに含み、シーケンシングされた酵素が、酵素変異体ライブラリーを作成するのに使用されてもよい、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
酵素が宿主細胞内において発現され、複数の液滴が宿主細胞またはその断片をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
分取領域の上流において発光シグナルを検出すること、適宜、第1発光シグナルを液滴から発せられたシグナルと比較することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
第1発光シグナルおよび第2発光シグナルを検出することをさらに含み、第1発光シグナルおよび第2発光シグナル、または第1発光シグナルおよび第2発光シグナルからの導出シグナルを、液滴から発せられたシグナルと比較することを含んでもよい、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
分取領域の上流において発生したシグナルが、分取領域に伝送される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
分取電極のセットに電圧を印加することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
酵素を、その天然基質の転換の増大、その非天然基質の転換の増大、触媒活性の増大、立体選択性の増大、熱安定性の増大、所定のpH範囲内における安定性の増大、またはこれらの組合せについてスクリーニングするための、前記請求項のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項31】
1つまたは複数のレドックス補因子が、NAD
+、NADH、NADP
+、NADPH、NAD
+およびNADP
+、ならびにNADHおよびNADPHからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項32】
複数の液滴のうちの各液滴が、酸化されたまたは還元されたレドックス補因子と反応して、発光シグナルをもたらす1つまたは複数の検出試薬をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項33】
レドックス補因子が、NADHもしくはNADPHまたは両方であり、1つまたは複数の検出試薬が、
i)レサズリンおよびジアフォラーゼ;
ii)プロルシフェリン、ルシフェラーゼ、レダクターゼ、ATP、およびMg
2+;ならびに
iii)量子ドット
からなる群より選択される、請求項32に記載のシステムまたは方法。
【請求項34】
レドックス補因子が、NAD
+もしくはNADP
+または両方であり、1つまたは複数の検出試薬が、
i)量子ドット;および
ii)タンパク質バイオセンサー
からなる群より選択される、請求項32に記載のシステムまたは方法。
【請求項35】
量子ドットが、CdSe/CdS/CdZnS/ZnS量子ドットである、請求項33~34のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項36】
量子ドットが、カルボン酸およびウシ血清アルブミンおよびナイルブルー色素によりコーティングされた、CdSe/CdS/CdZnS/ZnS量子ドットである、請求項33~35のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項37】
量子ドットが、水溶性である、請求項33~36のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項38】
量子ドットが、3-メルカプトプロピオン酸によりコーティングされ、NAD+結合ドメインに連結された、CdSe/CdS/CdZnS/ZnS量子ドットである、請求項33~37のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項39】
NAD
+結合ドメインが、チオール化DBC1タンパク質センサーである、請求項38に記載のシステムまたは方法。
【請求項40】
参照シグナルと比較して、538nmの励起波長および595nmの発光波長を有する弱い蛍光シグナルが、NAD
+の存在下において発せられる、請求項38~39のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項41】
酵素が、レドックス補因子依存性酵素またはレドックス補因子非依存性酵素である、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項42】
宿主細胞が、哺乳動物細胞、植物細胞、細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、原虫細胞、藻類細胞、および古細菌細胞からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項43】
複数の液滴のうちの少なくとも1つまたは複数が、溶解緩衝液をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項44】
複数の液滴が、油中水滴、水中油中水滴、水中油滴、およびハイドロゲル液滴からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項45】
複数の液滴が、約10μm~100μmの間の直径を有する、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項46】
複数の液滴が、約30μmの直径を有する、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項47】
酵素が、細胞内酵素、表面提示酵素、または細胞外酵素からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項48】
酵素が、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)に由来する二級アルコールデヒドロゲナーゼ(CpSADH)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)種HXN-200に由来するエポキシドヒドロラーゼ(SpEH)、スチレンオキシドイソメラーゼ(SOI)、P450モノオキシゲナーゼ(P450pyr)、ロドコッカス属(Rodococcus)に由来するアミンデヒドロゲナーゼ(AmDH)、およびブタンジオールデヒドロゲナーゼ(BDHA)からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項49】
酵素が、単一酵素の酵素変異体ライブラリーより選択される酵素変異体であるか、または酵素が、異なる酵素の群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項50】
補因子が、外因性補因子である、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項51】
内因性補因子濃度を含む少なくとも1つの細胞を各々が含有する1つまたは複数の液滴をさらに含み、外因性補因子濃度が内因性補因子濃度を超える、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項52】
分取領域の上流に位置する検出器をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項53】
バブルトラップをさらに含み、バブルトラップが真空ポートを含んでもよい、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35 U.S.C.§119(e)の下において、それらの各々が、全ての目的のために、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、2020年4月13日に出願され、「Generic Ultra-High-Throughput Microfluidic Enzyme Screening Platform for Enzyme Development」と題された、米国仮出願第63/008,870号、および2021年1月4日に出願され、「Generic Ultra-High-Throughput Microfluidic Enzyme Screening Platform for Enzyme Development」と題された、米国仮出願第63/199,500号に対する優先権を主張する。
【0002】
一般に、酵素をスクリーニングするためのシステムおよび方法について記載される。酵素的活性は、補因子の存在に依存する場合もあり、補因子の存在に依存しない場合もある。
【背景技術】
【0003】
化学反応を加速化させる、酵素または他の生体触媒の使用である、生体触媒作用は、グリーン合成および持続可能合成に有用なツールである。化学的触媒作用と比較して、生体触媒作用は、非毒性、穏和な反応条件、高度な化学選択性、位置選択性、および立体選択性、ならびにカスケード反応を介して、ワンポットマルチステップ合成を実施する能力の利点を有する。したがって、生体触媒作用は、医薬、食品および飲料、化粧品、香料/栄養補助食品業、化学的/生化学的製造業、ならびに合成生物学にとって、鍵となる焦点化領域となっている。
【0004】
多様な業界における、生体触媒作用の適用の成功のために、高度な活性、ならびに標的適用に所望の選択性および安定性を有する酵素を同定することが重要である。機能的ゲノミクスにおける利点は、多様な供給源からの多数の新たな酵素の発見を可能としてきたが、大半の自然発生の酵素は、細胞内環境および業界内状況の間の差違のために、実際の適用に最適化されていない。したがって、ランダム突然変異誘発またはターゲティング突然変異誘発を介する酵素変異体の生成、および後続する酵素変異体のスクリーニングを伴う指向性進化などの手法が、酵素を、実際の適用に向けて微調整するために使用されている。
【0005】
従来のマイクロ滴定プレートベースの酵素スクリーニング法は、ロースループットおよび開発期間の長期化を被っている。マイクロ流体ベースのプラットフォームの使用は、指向性進化を介する酵素開発を加速化するように、ハイスループット酵素スクリーニングを可能としている。しかし、現行の最新型マイクロ流体ベース技術の大部分は、酵素スクリーニング工程において、蛍光シグナルを発生させるために、標識化反応基質、例えば、フルオロフォア標識化基質に依拠する。したがって、システムおよび方法の改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一般に、酵素をスクリーニングするためのシステムおよび方法について記載される。酵素的活性は、補因子の存在に依存する場合もあり、補因子の存在に依存しない場合もある。本開示の対象物は、場合によって、相互関連生成物、特定の問題に対する、代替的解決法、および/または1つもしくは複数のシステムおよび/もしくは品目の、複数の異なる使用を伴う。
【0007】
一態様において、酵素を1つまたは複数の特徴についてスクリーニングする方法であって、(a)複数の液滴を生成する工程であり、少なくとも1つの液滴が、酵素、反応基質;ならびに1つもしくは複数のレドックス補因子、または1つもしくは複数のレドックス補因子および1つもしくは複数の検出試薬を含み、酵素が、反応基質を、標的生成物に転換する工程と;(b)液滴から発せられたシグナルを検出する工程であり、シグナルが、蛍光シグナル、生物発光シグナル、または化学発光シグナルであり、(i)反応基質が酵素により標的生成物に転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかもしくは還元されると、シグナルが発せられるか、または(ii)液滴中の1つもしくは複数の検出試薬により、標的生成物が後続生成物にさらに転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかもしくは還元されると、シグナルが発せられる工程とを含む方法について記載される。
【0008】
別の態様において、酵素を1つまたは複数の特徴についてスクリーニングする方法であって、第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバーを含む複数のインキュベーションチャンバーであり、複数の液滴の連続流動を可能とするように構成された、複数のインキュベーションチャンバーを含むインキュベーション領域を含む流体素子内において、細胞を第1インキュベーションチャンバーから第2インキュベーションチャンバーに流動させながら、液滴内の細胞を培養して、複数の細胞を形成する工程;インキュベーション領域内の液滴を持続的に流動させる工程であり、液滴が、酵素、反応基質、ならびに1つもしくは複数のレドックス補因子、または1つもしくは複数のレドックス補因子および1つもしくは複数の検出試薬を含み、酵素が、反応基質を、標的生成物に転換する工程;および液滴から、シグナルを発生させる工程であり、シグナルが、蛍光シグナル、生物発光シグナル、または化学発光シグナルである工程を実施すること含む方法について記載される。
【0009】
別の態様において、レドックス補因子を含む、第1液滴を含み、液滴中のレドックス補因子の濃度が、5μM以上である、複数の液滴;液滴を含有するマイクロ流体チャネル;およびマイクロ流体チャネルと流体連結している液滴分取領域であり、マイクロ流体チャネルと隣接する電極のセットを含む、液滴分取領域を含む、流体システムについて記載される。
【0010】
別の態様において、複数の液滴を含有し、少なくとも1つの液滴が、レドックス補因子および検出試薬を含み;検出試薬が、レドックス補因子のレドックス対と反応して、発光シグナルをもたらすように構成された、マイクロ流体チャネルを含む、流体システムについて記載される。
【0011】
さらに別の態様において、第1液体および複数の細胞を含有するように構成され、細胞のうちの少なくとも1つが酵素を含む、第1試薬チャンバー;反応基質を含有するように構成された第2試薬チャンバー;第1流体と非混和性である第2液体を含有するように構成され、少なくとも第1試薬チャンバーと流体連結している、分散媒(carrier fluid)チャンバー;第1液体と第2液体の融合を可能とするように構成された融合領域;融合領域と流体連結しているインキュベーション領域であり、流体連結した、第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバーを含み、第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバーがチャンバー間の液滴の連続流動を可能とするように構成された、複数のインキュベーションチャンバーを含む、インキュベーション領域;インキュベーション領域と流体連結している液滴分取領域であり、検出領域、検出領域から下流にあり、液滴内の成分の検出に基づき複数の液滴を分取するように構成された、電極のセット、回収チャネル、および廃液チャネルを含む、液滴分取領域;ならびにインキュベーション領域と液滴分取領域との間に位置するバブルトラップを含む、流体システムについて記載される。一部の実施形態において、液滴分取領域内に、第2分散媒チャンバーをさらに含む、前記請求項の流体システム。
【0012】
さらに別の態様において、第1液体および複数の細胞を含有するように構成され、細胞のうちの少なくとも1つが酵素を含む、第1試薬チャンバー;反応基質を含有するように構成された第2試薬チャンバー;第1流体と非混和性である第2液体を含有するように構成され、少なくとも第1試薬チャンバーと流体連結している、分散チャンバー;第1液体と第2液体の融合を可能とするように構成された融合領域;融合領域と流体連結しているインキュベーション領域であり、第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバーを含む複数のインキュベーションチャンバーを含む、インキュベーション領域;第1検出器を含む検出領域であり、第1検出器が、第1波長での第1発光シグナルおよび第2波長の第2発光シグナルを決定するように構成され、第1波長と第2波長とが異なる、検出領域;インキュベーション領域と流体連結している液滴分取領域;検出領域から下流にあり、液滴内の1つの成分または複数の成分の検出に基づき、複数の液滴を分取するように構成された、電極のセット;回収チャネル;および廃液チャネルを含む、流体システムについて記載される。
【0013】
別の態様において、酵素を1つまたは複数の特徴についてスクリーニングする方法であって、(a)複数の液滴を生成する工程であり、複数の液滴のうちの、少なくとも1つまたは複数が、酵素、反応基質;ならびに1つもしくは複数のレドックス補因子、または1つもしくは複数のレドックス補因子および1つもしくは複数の検出酵素を含み、酵素が反応基質を標的生成物に転換する工程と;(b)各液滴から発せられたシグナルを検出する工程であり、シグナルが、蛍光シグナル、生物発光シグナル、または化学発光シグナルであり、(i)反応基質が酵素により標的生成物に転換される場合に、1つもしくは複数のレドックス補因子が酸化されるかもしくは還元されると、シグナルが発せられるか;または(ii)液滴中の1つもしくは複数の検出試薬により標的生成物が後続生成物にさらに転換される場合に、1つもしくは複数のレドックス補因子が酸化されるかもしくは還元されると、シグナルが発せられる工程と;(c)参照シグナルと比較して検出された、発せられたシグナルのレベルに基づき、酵素を1つまたは複数の特徴についてスクリーニングする工程であり、参照シグナルと比較した発光シグナルのレベルの変化が、酵素が、1つまたは複数の特徴を有することを指し示す工程と;(d)参照シグナルと比較して検出された、発せられたシグナルのレベルに基づき、液滴を分離する工程とを含む方法が提示される。
【0014】
本明細書の別の態様において、酵素を、その天然基質の転換の増大、その非天然基質の転換の増大、触媒活性の増大、立体選択性の増大、熱安定性の増大、所定のpH範囲内における安定性の増大、またはこれらの組合せについてスクリーニングするための、前記請求項のいずれか一項に記載の方法の使用が提示される。
【0015】
本開示の他の利点および新規の特色は、付属の図面と共に検討された場合における、本発明の多様な非限定的実施形態についての、以下の詳細な説明から明らかであろう。本明細書および参照により組み込まれる文献が、齟齬を生じ、かつ/または不整合である開示を含む場合、本明細書に従う。
【0016】
本発明の非限定的実施形態は、概略図であり、縮尺通りではない、付属の図面を参照しながら、例を目的として記載される。図において、例示される、同一な各構成要素またはほぼ同一な構成要素は、典型的に、単一の数により表される。明確さを目的として、当業者が、本発明を理解することを可能とするのに、例示が必要ではない場合、あらゆる図において、あらゆる構成要素が表示されるわけでも、本発明の各実施形態のあらゆる構成要素が示されるわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1A~1Bは、一部の実施形態に従う、標的酵素を含有する細胞を含有する液滴の、試薬との融合についての、概略的側断面図を示す。
図1C~1Eは、一部の実施形態に従う、検出試薬を使用するスクリーニングにおける、発光シグナルの発生を例示する、概略的側断面図を示す。
図1Fは、一部の実施形態に従う、検出試薬を使用しないスクリーニングにおける、発光シグナルの発生を例示する、概略的側断面図を示す。
【
図2】
図2Aは、一部の実施形態に従い、酵素をスクリーニングするための、マイクロ流体素子についての概略的例示を示す。
図2Bは、一部の実施形態に従い、酵素をスクリーニングするための、チップ上のマイクロ流体素子を示す。
【
図3】
図3A~3Bは、一部の実施形態に従う、液滴が分取されないオフ位置、および液滴が分取されるオン位置にある、液滴分取領域の一部についての、概略的側面図を示す。
【
図4】
図4は、レドックス補因子依存性酵素またはレドックス補因子非依存性酵素の指向性進化のための、ウルトラハイスループットマイクロ流体スクリーニングシステムの概略的例示を示す。標的生体内変換から生成される、酸化補因子または還元補因子は、赤色蛍光試薬、生物発光、量子ドット、もしくはバイオセンサーアッセイを使用して、直接検出されるか、または酵素的カスケード反応を介する、標的生体内変換生成物の転換により生成され、検出される。これらのシステムは、一部の実施形態に従う、a)全細胞、および酸化補因子または還元補因子を生成させるカスケード内の別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介する、補因子依存性酵素または補因子非依存性酵素の検出を伴う、細胞内酵素;b)酸化補因子または還元補因子を生成させるカスケード内の別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介する反応の検出を伴う、補因子非依存性表面提示酵素;c)溶解細胞、および酸化補因子または還元補因子を生成させるカスケード内の別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介する反応の検出を伴う、補因子非依存性細胞内酵素;d)酸化補因子または還元補因子の検出を伴う、補因子依存性表面提示酵素;e)溶解細胞、およびNAD(P)HまたはNAD(P)
+の検出を伴う、補因子依存性細胞内酵素を含む。
【
図5】
図5は、活性レベルおよび/または発現レベルが低度である、レドックス補因子依存性酵素またはレドックス補因子非依存性酵素の両方の指向性進化のための、ウルトラハイスループットマイクロ流体スクリーニングシステムの概略的例示を示す。標的生体内変換から生成され、酸化補因子または還元補因子は、赤色蛍光試薬、生物発光、量子ドット、もしくはバイオセンサーアッセイを使用して、直接検出されるか、または酵素的カスケード反応を介する、標的生体内変換生成物の転換により生成され、検出される。これらのシステムは、細胞増殖および液滴融合のさらなる工程を経、一部の実施形態に従う、a)全細胞、および酸化補因子または還元補因子を生成させるカスケード内の別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介する、補因子依存性酵素または補因子非依存性酵素の検出を伴う、細胞内酵素;b)酸化補因子または還元補因子を生成させるカスケード内の別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介する反応の検出を伴う、補因子非依存性細胞外酵素;c)溶解細胞、および酸化補因子または還元補因子を生成させるカスケード内の別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介する反応の検出を伴う、補因子非依存性細胞内酵素;d)酸化補因子または還元補因子の検出を伴う、補因子依存性細胞外酵素;e)溶解細胞、および酸化補因子または還元補因子の検出を伴う、補因子依存性細胞内酵素を含む。
【
図6】
図6は、一部の実施形態に従う、A)マイクロ滴定プレート内、およびB)直径を30μmとするマイクロ流体液滴内のNADH濃度を伴う、450nmにおける直接的NADH蛍光検出シグナルについての検量線;C)マイクロ滴定プレート、およびD)直径を30μmとするマイクロ流体液滴におけるNADH濃度を伴う、590nmにおける、NADHからの、レサズリンベースの蛍光シグナルについての検量線;E)レサズリンによる、NAD(P)Hの蛍光検出のための反応スキームを示す。
【
図7】
図7は、異なるNADH濃度を伴う液滴についての蛍光(450~490nm)画像を示す。検出は、曝露時間を200ミリ秒間とする、相補性金属オキシド半導体(CMOS)カメラにより実施した。液滴は、一部の実施形態に従い、励起波長を350nmとするポリジメチルシロキサン(PDMS)観察チップ内において保持した。
【
図8】
図8は、一部の実施形態に従う、A)NADHの生物発光検出のための反応スキーム;B)マイクロ滴定プレート、およびC)直径を30μmとするマイクロ流体液滴内の、異なるNADH濃度における、生物発光シグナルについての検量線を示す。
【
図9】
図9は、光電子増倍管(PMT)から得られる、リン酸カリウム(KP)緩衝液(pH7.5、50mM)中に、ブタノールデヒドロゲナーゼ(BDHA)、1-フェニル-1,2-エタンジオール(100μM)およびNAD+を含有する液滴の生物発光検出を示す。データは、一部の実施形態に従い、反応混合物および生物発光キット試薬を含有する液滴の流動から得られる、PMTシグナルに基づきプロットする。
【
図10】
図10は、一部の実施形態に従う、A)量子ドットベースのNADHセンサーの構造:CdSe-コアCdS(2Ls)/Cd0.5Zn0.5S(3L)/ZnS(2Ls)マルチシェル量子ドットを合成し、3-メルカプトプロピオン酸により可溶化させ;水溶性の量子ドットを、ウシ血清アルブミン(BSA)およびナイルブルーによりさらに改変した構造;B)NADH量子ドットベースのセンサーの動作原理:センサーが、FRETを介して、ナイルブルーにより効率的に消光させ;ナイルブルー色素が、NAD(P)H補因子の酸化を支援し;NADHの存在下において、色素は、可視光スペクトル内の光子を吸収することが不可能である、異なる形態に還元され、これにより、消光を停止させ、蛍光を回復させる動作原理を示す。
【
図11】
図11は、一部の実施形態に従う、マイクロ流体システム上のNADH検知:PMTシグナルが記録されている;A)消光QD-ナイルブルーのPMTシグナル;B)蛍光QD-BSAのPMTシグナル;C)1000mMのNADHのPMTシグナルを対照として記録した、500mMのNADHにより処理されたQDのPMTシグナルを示す。
【
図12】
図12は、A)NAD
+バイオセンサーの作動原理;B)マイクロ流体システム内のバイオセンサーによる、NAD
+検出の裏付けを示す。
【
図13】
図13は、一部の実施形態に従う、A)NAD
+量子ドットセンサーである、CdSe-コアCdS(2Ls)/Cd
0.5Zn
0.5S(3L)/ZnS(2Ls)マルチシェル量子ドットの合成スキーム;B)NAD+量子ドットベースのセンサーの動作原理を示す。
【
図14】
図14は、一部の実施形態に従う、マイクロ流体内のNAD
+検出量子ドットセンサー;A)光電子増倍管(PMT)により検出される、多様な濃度のNAD
+とのQdセンサー混合物から得られる、液滴シグナル;B)混合液滴の蛍光顕微鏡画像:スケールバー=100μmを示す。
【
図15】
図15は、蛍光液滴のPMTシグナルを示す。一部の実施形態に従い、試料採取速度は、300kHzに到達しうる。
【
図16】
図16は、一部の実施形態に従う、マイクロ流体分取チップのデザインについての概略的表示を示す。
【
図17】
図17は、一部の実施形態に従う、液滴分取チップの分取性能:分取試料は、赤色蛍光を含有する、10%の陽性液滴および90%の空(またはブランク)液滴からなる;A)トリガーパルスが、オフである場合における、廃液チャネルへの液滴の流動;B)トリガーパルスが、オンである場合における、回収チャネルへの液滴の流動;C)分取後に、廃液チャネルから回収された液滴;D)分取後に、回収チャネルから回収された液滴;スケールバーは、50μmである;450nmにおける、その直接的な蛍光検出を使用する、NAD(P)Hの分取後における蛍光画像;E)回収チャネル内の液滴;およびF)廃液チャネル内の液滴を示す。
【
図18】
図18は、一部の実施形態に従う、分取後の回収チャネル内および廃液チャネル内において、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)に由来する二級アルコールデヒドロゲナーゼ(CpSADH)を発現させる大腸菌(E.coli)を含有する、蛍光液滴についての画像を示す。
【
図19】
図19は、A)ピコ注入デバイスの作動についての概略図;B)一部の実施形態に従い、2つの直交的蛍光シグナルにより決定される、液滴融合のためのデバイスの性能を示す。
【
図20】
図20Aは、一部の実施形態に従い、異なる変異体を有する溶解細胞による、ラセミ体2-オクタノール(1mM)の酸化についての時間経過を示す。
図20Bは、精製された野生型CpSADHまたは突然変異体による、(R)-2-オクタノールの酸化の反応経過を示す。反応は、精製されたCpSADHまたは突然変異体(1.5μM)、(R)-2-オクタノール(1mM)、およびNAD
+(2mM)を含有する1mLのリン酸緩衝液(100mM、pH8.0)中、24℃において実施した。NADH濃度は、一部の実施形態に従い、UV分光光度計により、340nmにおいて決定した。
【
図21】
図21は、5mLの反応容量中の、NAD
+再生のためのアセトン(2%v/v)の存在下、24℃において、4時間および24時間にわたる、CpSADHまたは突然変異体CpSADHを発現させる大腸菌細胞[1L当たりの細胞乾燥重量(cdw)5g]による、rac-2-オクタノール(10mM)の、ケトン(2a)への酸化転換を示す。一部の実施形態に従い、2-オクタノールおよび2-オクタノンの濃度は、GC解析により決定した。
【
図22】
図22は、一部の実施形態に従う、カスケード反応を介する、NADHの産生および検出による、補因子非依存性酵素としてのエポキシドヒドロラーゼ(EH)についての活性アッセイの概略的例示を示す。
【
図23】
図23は、一部の実施形態に従う、A)液滴中のシクロヘキサンエポキシドの加水分解および酸化のカスケード;ならびにB)液滴中のスチレンオキシドの加水分解および酸化のカスケードから発生したNADHを示す。
【
図24】
図24は、一部の実施形態に従う、カスケード反応を介する、単一細胞の封入およびNADHの産生による、スチレンオキシドの異性体化のためのスチレンオキシドイソメラーゼ(SOI)についての活性アッセイの概略的例示を示す。
【
図25】
図25は、一部の実施形態に従う、A)単一細胞の封入および表面提示酵素を介する、2-オクタノールの酸化のためのアルコールデヒドロゲナーゼ(CpsADH)についての活性アッセイ;およびB)大腸菌細胞内の、CpsADHの表面提示システムのプラスミド構築についての概略的例示を示す。
【
図26】
図26は、一部の実施形態に従う、細胞増殖戦略を介する酵素のスクリーニング:A)カスケード反応から生成されたNADHを介する、アルカンのP450モノオキシゲナーゼ(P450pyr)触媒ヒドロキシル化および検出についての概略的例示;B)検出可能な反応による転換を達成するのに要求される細胞数を示す。
【
図27】
図27は、一部の実施形態に従う、A)液滴内に封入された大腸菌(P450pyr)細胞の増殖;B)異なる増殖条件における、液滴内の細胞カウントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、酵素をスクリーニングするためのシステムおよび方法について記載される。これらのシステムおよび方法は、各々が、液滴内の細胞内に含有された、複数の酵素変異体をスクリーニングするのに使用されうる。酵素をスクリーニングするために、一部のマイクロ流体システムが存在するが、これらのシステムは、重大な欠陥を被っている。例えば、ある特定の既存のマイクロ流体ベースのスクリーニングプラットフォームは、酵素をスクリーニングするために、標識化基質または比色法による、NADHなどの補因子の検出を使用する。しかし、この手法は、低感度を被り、高濃度のNADHのあらかじめの添加を要求し、陽性酵素変異体の同定における低精度を結果としてもたらす。このような既存のシステムは、酵素が、補因子を伴うことを要求する。加えて、これらの既存のスクリーニング工程のスループットは、ロースループットであり、また、特定の液滴の吸光度にも基づきうる。この手法はまた、比色シグナルをもたらすように、NADHを生成させる酵素も要求するが、NADHを生成させない酵素反応には有効でない。
【0019】
これに対し、本明細書において開示されるシステム(例えば、流体システム、マイクロ流体素子)および方法は、補因子(例えば、NADH)に依存性の酵素反応をスクリーニングすることもでき、補因子(例えば、NADH)に非依存性の酵素反応をスクリーニングすることもできる。補因子非依存性酵素をスクリーニングする場合、検出酵素などの検出試薬は、シグナル(例えば、発光シグナル、蛍光シグナル)をもたらすために、標的生成物(例えば、補因子依存性反応における)と反応するように構成されうる。このような状況において、酵素反応は、補因子に依存しなくてもよく、これを伴わなくてもよいが、検出試薬は、補因子を伴うように構成される。例えば、一部の実施形態において、検出試薬は、標的生成物と反応して、後続生成物をもたらし、また、補因子とも反応または相互作用して(例えば、レドックス反応を介して)、補因子のレドックス対をもたらしうる検出酵素である。後続生成物は、液滴内における標的酵素の酵素反応をスクリーニングする(または他の方式において、発光シグナルを発生させる液滴を検出、分取、および/または分離する)ために、発光シグナルを発生させるように構成されうる。このように、検出酵素は、標的酵素の酵素反応の活性を、検出酵素および後続生成物により発生する発光シグナルと、間接的に連関させる。標的酵素(および検出酵素)を含有する液滴内において発生する、この発光シグナル(または2つまたはこれを超える発光シグナル)は、この目的の液滴を、所望の酵素活性を含有しないか、または標的酵素(または標的酵素の変異体、すなわち、ブランク液滴)を含有しない、所望されない液滴から分取するのに使用されうる。
【0020】
シグナルは、蛍光シグナル、生物発光シグナル、または化学発光シグナルなどの発光シグナルでありうる。スクリーニングまたは検出のための発光シグナルの使用は、低感度など、比色法ベースの検出法または吸光度ベースの検出法の欠陥を回避するので有利である。すなわち、発光ベースの検出およびスクリーニングは、比色法による検出より高感度であることが多いので、本明細書において記載されるシステムおよび方法は、目的の酵素変異体を含有する液滴のスクリーニングまたは検出について、ある特定の既存の酵素スクリーニングシステム/デバイスと比較して、高感度であるか、または高度に選択的でありうる。一部の実施形態において、2つまたはこれを超える、顕著に異なる発光シグナル(例えば、第1発光シグナル、第2発光シグナル)が、同じ(または異なる)液滴内において発生する場合があり、各発光シグナルは、液滴内の細胞の数など、液滴(または流体など、システムの他の成分)についての、顕著に異なる情報、および/または補因子に関する情報(例えば、補因子濃度、酵素活性)をもたらしうる。
【0021】
図1A~1Eは、酵素(例えば、標的酵素、酵素変異体)と、1つまたは複数の検出試薬とによる、発光シグナルの発生を示す、概略的例示を提示する。
図1Aにおいて、液滴110は、単一細胞112を含むマイクロ流体チャネル111内に配置され、単一細胞112は、特定の特性(例えば、本明細書の他の箇所において記載される、1つまたは複数の特徴)についてスクリーニングされる標的酵素114を含む。マイクロ流体チャネル111内にはまた、反応基質116A、補因子120A、および検出試薬122も配置される。これらの試薬は、液滴に融合しうる(例えば、融合領域内において)。例えば、
図1Bにおいて、液滴110は、細胞112と共に、反応基質116A、補因子120A、および検出試薬122を含有する。一部の実施形態において、融合電極のセットは、1つまたは複数の試薬の、液滴への導入および/または融合(図示されない)を容易としうる。
【0022】
発光シグナルの発生を容易とするために、一部の実施形態において、細胞は、細胞の成分(標的酵素を含む)が、液滴に添加された試薬と反応または相互作用しうるように、液滴内において溶解しうる(例えば、溶解緩衝液を使用して)。液滴内における細胞の溶解は、液滴への、さらなる試薬の導入の前または後において生じうるが、また、細胞のインキュベーションの前またはインキュベーションの後においても生じうる。一部の実施形態において、さらなる試薬は、細胞溶解の前および/または後において、液滴に導入される。しかし、細胞の溶解が、常に要求されないように、一部の実施形態において、1つまたは複数の試薬が、細胞に拡散する(その細胞膜を介して)ことが可能であることを理解されたい。加えて、一部の実施形態において、標的酵素は、標的酵素が、試薬またはさらなる試薬と反応または相互作用するために、溶解が要求されないように、細胞の表面において提示されうる。
【0023】
図1Cにおいて、細胞112は、標的酵素114が、反応基質116Aと相互作用しうるように溶解している。標的酵素114は、反応基質116Aの、標的生成物116Bへの転換を触媒するように構成される。液滴内への細胞の封入は、スクリーニングのための酵素を含有する他の細胞からの細胞内容物の、所望されない融合[例えば、細胞の融合(merging)または細胞の融合(fusing)]を防止しうるので有利である。このようにして、各液滴は、個々の標的酵素または酵素変異体が、他の液滴(例えば、他の標的酵素を伴う他の細胞を含有する、他の液滴)内に含有される、他の標的酵素または酵素変異体からの、所望されない影響を受けずに発現されるための環境として作用しうる。しかし、
図1A~1Bが、液滴内の、単一細胞の封入を示すのに対し、複数の細胞も、液滴内に封入されうることに注目されたい(図示されない)。液滴が、複数の細胞を含有する実施形態において、各細胞内の各標的酵素は、発光シグナルを発生させうる(直接的に、または間接的に)。複数の細胞が、液滴内に封入される場合もあり、単一細胞は、液滴内に封入され、各細胞が、標的酵素を含有する、複数の細胞に増殖する(例えば、増える)場合もある。一部のこのような実施形態において、細胞は、溶解する場合があり、このような液滴の発光シグナルは、液滴内に存在した各細胞の、各標的酵素の発光シグナルの平均(例えば、細胞正規化平均)の場合もあり、これらの総計の場合もある(これもまた図示されない)。
【0024】
標的酵素は、補因子非依存性反応において、反応基質を、標的生成物に転換しうる。例えば、
図1Cにおいて、標的酵素114は、反応基質116Aの、標的生成物116Bへの転換を触媒する。一部の実施形態において、標的酵素の酵素反応114は、補因子120Aとの相互作用を伴わないか、またはこれに依存しない。標的生成物116Bが、直接的に発光シグナルを発生させない場合、検出試薬122など、1つまたは複数の検出試薬は、1つまたは複数の反応において、標的生成物116Bを利用して、発光シグナルを発生させるように構成されうる。
【0025】
一部の実施形態において、検出試薬は、標的酵素の標的生成物と反応する(またはこれとの反応を触媒する)ように構成されるが、また、1つまたは複数の補因子と反応または相互作用するようにも構成されうる。すなわち、このような実施形態の一部において、標的酵素が、補因子を直接伴わない反応を触媒しうるのに対し、検出試薬は、補因子と直接反応または相互作用するように構成されうる。このようにして、開示されるシステムおよび方法は、補因子を直接伴わない標的酵素(すなわち、標的酵素は、補因子の存在に依存しない反応を触媒する)をスクリーニングするのに使用されうる。例えば、
図1Dは、検出試薬122(例えば、検出酵素)および補因子120Aによる、標的生成物116Bの、発光シグナル140を発生させる発光生成物116Cへの転換を概略的に示す。補因子120Aは、検出試薬122が、標的生成物116Bと反応すると、レドックス対120Bに、共時的に酸化されるか、または還元される。レドックス対120Bは、両者が、互いのレドックス対である点において、補因子120Aと類縁である(すなわち、1つまたは複数の酸化-還元反応を介して、互いと類縁である)。
【0026】
一部の実施形態において、補因子のレドックス対は、検出試薬と反応または相互作用しうる。例えば、
図1Eは、レドックス対120Bが、検出試薬122と反応して、検出試薬122から、発光シグナル140を発生させる実施形態を概略的に示す。例えば、検出試薬122は、補因子と相互作用して、蛍光シグナルを発生(または消光)させうるリガンドにより機能化した量子ドットでありうる。一部の実施形態において、
図1Eに示されたレドックス対120Bが、検出酵素により生成される(例えば、
図1Dに示される通り)ように、1つを超える検出試薬が、液滴110内に存在しうることを察知されたい。一部の実施形態において、
図1Eに示されたレドックス対120Bは、標的酵素により生成される(例えば、
図1Fに示される通り)。下記において、より詳細に論じられる通り、発光シグナル140は、目的の標的酵素(複数可)を含有する液滴をスクリーニング、検出、および/または分離するのに使用されうる。
【0027】
一部の実施形態において、酵素(例えば、標的酵素、酵素変異体)のスクリーニング、検出、および/または分離は、検出試薬が、発光シグナルを発生させることを要求しない酵素反応を伴う。すなわち、標的酵素は、補因子の酸化時または還元時に、蛍光シグナルを直接発生させうる。例示を目的として述べると、
図1Fにおいて、標的酵素114は、発光シグナル140を発するように構成された、レドックス対120Bを形成する、補因子120Aの、共時的な酸化または還元と共に、反応基質116Aの、標的生成物116Bへの転換を触媒する。例示的実施形態において、補因子は、NAD+であり、レドックス対は、NAD+から、NADHへの還元時に、発光シグナル(例えば、蛍光シグナル)を発生させうるNADHである。
【0028】
図2は、液滴内に含有された細胞内の酵素(例えば、標的酵素、酵素変異体)をスクリーニングするためのシステムについての概略的例示を示す。マイクロ流体素子200は、第1試薬チャンバー210と、第2試薬チャンバー212とを含む。第1試薬チャンバーは、各細胞が、標的酵素または酵素標的酵素の変異体を含む細胞(例えば、単一細胞)を含みうるか、またはこれを含有するように構成されうる。一部の実施形態において、第1試薬チャンバーはまた、界面活性剤、緩衝液、補因子、および/または細胞を培養し、かつ/もしくは増殖させるための試薬など、他の試薬も含みうる。第2試薬チャンバーは、各標的酵素または各酵素変異体が、反応基質の、標的生成物への酵素反応を触媒するように構成された反応基質を含みうるか、またはこれを含有するように構成されうる。一部の実施形態において、第2試薬チャンバーはまた、界面活性剤、緩衝液、補因子、および/または細胞を培養し、かつ/もしくは増殖させるための試薬など、他の試薬も含みうる。
【0029】
マイクロ流体素子200はまた、分散媒チャンバー214も含みうる。分散媒チャンバーは、油などの分散媒を含みうるか、またはこれを含有するように構成されうる。一部の実施形態において、分散媒は、第1試薬チャンバーおよび/または第2試薬チャンバーの試薬(または試薬を含有する液体)と非混和性であるように選択される。例えば、第1試薬チャンバーまたは第2試薬チャンバーが、水溶液または水性ベースの試薬を含有する場合、分散媒チャンバーは、水と非混和性である油を含有しうる。分散媒の非限定例は、炭水化物油、鉱物油、フッ素化油、および/またはシリコーン油などの油を含む。他の分散媒も可能である。他の実施形態において、分散媒は、本開示がそのように限定される通り、試薬の一部もしくは全部、または試薬の一部もしくは全部を含有する液体と混和性でありうる。
【0030】
上記本明細書の他の箇所において記載される通り、酵素を含有する各細胞は、液滴への封入が可能であり、液滴はまた、反応基質の、標的生成物への転換を容易とする他の試薬(例えば、補因子、培養試薬)、および標的生成物の検出(例えば、1つまたは複数の検出試薬を介する)のための他の試薬(例えば、補因子、培養試薬)も含有しうる。液滴は、融合領域[例えば、第1試薬チャンバーおよび/または第2試薬チャンバーの試薬流体(複数可)が、分散媒と接触している]において、またはこの中において形成されうる。
【0031】
一部の実施形態において、電極のセットは、試薬(例えば、検出試薬)の、液滴への融合を容易とするように、融合領域と隣接して位置する。例えば、
図2Aにおいて、融合電極218は、融合領域216と隣接する。融合電極は、電極により、液滴および/または試薬と比べて印加される電位を制御することにより、液滴内において融合している試薬の容量に対する制御を容易としうる。
【0032】
他の実施形態において、液滴は、オフチップにおける生成が可能であり、次いで、これに続き、システムまたは方法に導入されうる。
【0033】
その少なくとも一部が、標的酵素を伴う細胞を含有する、複数の液滴は、標的酵素が、反応基質の反応を触媒する時間を与える、インキュベーション領域に流動しうる。例えば、
図2Aにおいて、インキュベーション領域220は、第1インキュベーションチャンバー222と、第2インキュベーションチャンバー224とを含む、複数のインキュベーションチャンバーを含む。図に示される通り、インキュベーション領域のチャンバーは、チャネルが、隣接チャンバーのより大きな領域に展開するので、最大横断面寸法が小さなチャネルに続き、最大横断面寸法が大きな隣接チャンバーにより接続されうる。このような構成は、各液滴内において、細胞インキュベーションに与えられる時間を調整するのに使用されうる。ある特定の既存のマイクロ流体システムにおいて、このような構成(例えば、最大横断面寸法が比較的大きなチャネルが、最大横断面寸法が比較的小さなチャネルに直接隣接する)は、気泡の形成を結果としてもたらす場合もあり、流量に負の影響を及ぼす場合もあり、かつ/またはデバイスの目詰まりを結果としてもたらす場合もあると考えられたために回避されてきたが、本開示の文脈において、このような構成は、液滴内において、細胞を、十分にインキュベートし、場合によって、インキュベーション領域内の液滴のインキュベーション時間を微調整するのに使用されうることが認識および察知されている。場合によって、細胞は、インキュベーション領域内において培養され、かつ/または増殖(proliferated)[例えば、増殖(grown)]されうる。一部の実施形態において、細胞は、インキュベーション領域内および/またはインキュベーション素子内における、流体および/または液滴の連続流動時に培養され、かつ/または増殖されうる。本明細書において記載されるインキュベーション領域の構成はまた、液滴のスクリーニングを相対順序においてももたらしうるので有利である。例えば、複数の液滴(それらの少なくとも一部が、標的酵素または酵素変異体を含有する)が、インキュベーション領域内に、特定の順序において入るならば、この順序は、複数の液滴が、インキュベーション領域内に存在する場合にも、少なくとも部分的に保存されうる。インキュベーション領域は、
図2Aにおいて示される、さらなるインキュベーションチャンバー226などの、さらなるインキュベーションチャンバー(例えば、第3インキュベーションチャンバー、第4インキュベーションチャンバー、第5インキュベーションチャンバーなど)をさらに含みうる。本開示の教示に照らして、当業者は、所望のインキュベーション時間および/または培養工程に基づき、インキュベーション領域内のインキュベーションチャンバーの、適切な数および寸法を選び出すことが可能であろう。
【0034】
一部の実施形態において、複数の液滴を含有する流動は、例えば、既存のインキュベーション領域の後においてバブルトラップを通って流過しうる。一部のこのような実施形態において、バブルトラップは、インキュベーション領域(またはインキュベーションチャンバー)内の、細胞の流動またはインキュベーション時に形成された、任意の気泡のサイズを除去および/または低減しうるので有利である。例示を目的として述べると、
図2Aにおいて、バブルトラップ227は、インキュベーション領域に隣接し、かつ、この下流に位置する。このような構成において、バブルトラップ227は、インキュベーション領域220から、液滴分取領域230に流動するときの流れから、気泡を除去しうる。バブルトラップ227は、真空229に接合された真空ポート228を含んでもよい。真空は、バブルトラップを、システム200内の流動または流れからの気体の除去を容易とする減圧下に置くのに使用されうる。一部の実施形態において、バブルトラップは、膜、凹部、凸部、界面活性剤、またはチャネル内の気泡を除去し、かつ/もしくはこれらのサイズ低減しうる、他の任意の適切な特徴物を含む。バブルトラップは、例えば、チャネル内に、チャネル上に、かつ/またはチャネルに隣接して位置しうる。
【0035】
液滴分取領域は、標的酵素を、適正な閾値において、またはこれを上回って含有する液滴(すなわち、1つまたは複数の特徴を有する酵素を含有する液滴である、目的の液滴)を、所望されない液滴、または標的酵素を発現させず、標的酵素を、適正な閾値において発現させず(例えば、1つまたは複数の特徴を有さない酵素)、かつ/もしくは細胞を含有しない(例えば、ブランク液滴)液滴から分離するのに使用されうる。例えば、
図2Aにおいて、液滴分取領域230は、インキュベーション領域220およびバブルトラップ227に隣接し、かつ、この下流にある。インキュベーションの後、各々が、標的酵素を伴う、1つまたは複数の細胞を含有する、1つまたは複数の液滴は、液滴分取領域に入り、相応に、スクリーニングおよび分取されうる。液滴分取領域は、検出領域を通って流過する、複数の液滴のうちの、各液滴内の発光シグナル(例えば、蛍光シグナル)を検出するための、検出領域232を含む。液滴分取領域はまた、標的酵素を含有する液滴により発生する発光シグナル(または発光シグナルの比)決定される通りに、目的の液滴を、回収チャネル250に、誘引または駆動するための、分取電極のセット240も含む。検出領域232液滴を分取する(またはこれを分取しない)ためのシグナルをもたらすように、分取電極のセット240と電子通信されている。検出領域232はまた、上流位または下流位に設置された、制御器(例えば、マイクロコントローラー)および/または1つもしくは複数の検出器とも電子通信されている場合がある。一部の実施形態において、検出領域は、第1検出器および第2検出器を含む2つまたはこれを超える検出器を含む。場合によって、第1検出器は分取電極の上流に位置し、第2検出器は分取電極の下流に位置する。他の実施形態において、いずれの検出器も分取電極の上流に位置する。他の構成も可能である。
【0036】
一部の実施形態において、分取領域230は、スペーシング流体を含むか、またはこれを含有するように構成された、スペーシング流体チャンバーを含んでもよい。スペーシング流体チャンバーは、交差部において、液滴を含有するチャネルと融合しうる。スペーシング流体チャンバーは、流入する液滴のスペーシングまたは分離のためのスペーシング流体を供給または導入し、これにより、発光シグナルの検出または液滴の分取を容易としうるか、または改善しうると有利である。スペーシング流体は、存在する場合、分散媒チャンバー内の分散媒と同じ場合もあり、異なる場合もある。
【0037】
目的の標的酵素(例えば、1つまたは複数の特徴を伴う酵素)を含有しない液滴は、適切な発光シグナルを発生させない場合がある。例えば、
図3Aにおいて、目的の標的酵素を含有しない液滴は、分取電極240への誘引が可能であり、廃液チャネル260に流過する。しかし、場合によって、分取電極240に誘引されない液滴は、さらなるインキュベーションのための上流部分など、システムまたはマイクロ流体素子の異なる部分に流過しうる(図示されない)。液滴分取に関する、さらなる詳細については、本明細書の他の箇所において記載される。
【0038】
本明細書において記載される、多様な領域(region)、領域(area)および/またはチャンバーは、液滴および流体が流動しうる、領域(region)、領域(area)および/またはチャンバー間の、1つまたは複数のチャネル、チャンバー、または導管を介して、互いと接続され、かつ/または流体連結しうることに注目されたい。例えば、第1チャネル(例えば、回収チャネル)は、分取領域との接続および流体連結が可能であり、第2チャネル(例えば、廃液チャネル)もまた、分取領域と接続され、流体連結しうる。しかし、さらなるチャネルまたは導管も存在しうる。例えば、チャネルは、インキュベーション領域を、分取領域と接続することが可能であり、分取領域は、液滴に、インキュベーションのための、より多くの時間を与える、上流位置を接続するチャネルを有することが可能であり、かつ/または導管は、融合領域を、インキュベーション領域に接続しうる。当然ながら、他の接続間に領域(region)、領域(area)および/またはチャンバー(および/またはシステム内の他のチャネル)も可能であり、当業者は、本開示の教示に照らして、本明細書において記載される、多様な領域(region)、領域(area)および/またはチャンバー間における、適切なチャネルまたは導管を選択することが可能であろう。
【0039】
一部の実施形態において、マイクロ流体素子200は、回収チャンバー252と、廃液チャンバー262とをさらに含む。回収チャンバーは、所望の閾値において、またはこれを上回って機能する標的酵素を含有する液滴(例えば、1つまたは複数の特徴を伴う酵素)を貯蔵するように構成されるのに対し、廃液チャンバーは、標的酵素を含有しないか、またはこと1つもしくは複数の特徴を伴う標的酵素を含有しない液滴を貯蔵するように構成される。回収チャンバーは、各標的酵素をシーケンシングするように、さらに構成される(またはこのシーケンシングのための試薬を含む)。これは、使用者が、他の変異体(例えば、十分に大きな反応速度を伴って機能せず、廃液チャンバー内に回収された酵素変異体)より良好に機能した酵素変異体(例えば、大きな反応速度を伴った酵素変異体)をシーケンシングすることを可能としうるので有利である。
【0040】
上記において言及された通り、本明細書において記載されるシステムおよび方法は、ある特定の標的酵素、例えば、これらの標的酵素が、特定の速度において、または特定の活性を伴って機能する場合における標的酵素を含有する液滴(または液滴内に含有された細胞)をスクリーニング、検出、分取、および/または分離するのに使用されうる。例えば、一部の実施形態に従う、開示されるシステムおよび方法は、複数の酵素変異体を含有する、酵素ライブラリーをスクリーニングするのに使用されうる。各酵素変異体は、反応(例えば、反応基質を、標的生成物に転換する)を、異なる速度において触媒することが可能であり、例えば、大きな速度において反応する酵素変異体をスクリーニングおよび/または単離することが、所望でありうる。したがって、酵素変異体の活性に、少なくとも部分的に基づき、発光シグナルを発生(または消光)させる標的酵素を含有する液滴が、スクリーニングおよび/または分取されうるのに対し、所望の酵素活性を有さない(よって、発光シグナルを発生または消光させない)標的酵素を含有する液滴は、回避される場合もあり、棄却される場合もあり、より大きなインキュベーション時間を伴って供給される場合もある。
【0041】
上記において言及された通り、本開示のシステムおよび方法は、酵素を1つまたは複数の特徴についてスクリーニングすることを可能とする。一例において、酵素の、1つまたは複数の特徴は、酵素活性、多様な温度および/またはpHにおける酵素の安定性、酵素の特異性、立体選択性、非天然基質を転換する能力である。酵素の安定性を決定するために、酵素を含む液滴は、多様な温度またはpHにおいてインキュベートされる場合があり、酵素は、活性についてスクリーニングされる。スクリーニングされうる酵素特徴の他の例は、化学選択性、位置選択性、溶媒の存在下における安定性、温度安定性、可溶性、単一の宿主生物における発現レベル、複数の宿主生物における発現レベル、新たな酵素の発見、および公知の酵素の、新たな機能の発見を含むがこれらに限定されない。当然ながら、他の特徴も、可能である。
【0042】
本開示はまた、酵素を、その天然基質の転換の増大、その非天然基質の転換の増大、触媒活性の増大、立体選択性の増大、熱安定性の増大、所定のpH範囲内における安定性の増大、またはこれらの組合せについてスクリーニングするための方法も提示する。本開示はまた、化学選択性の増大、位置選択性の増大、水混和性溶媒などの溶媒の存在下における安定性の増大、可溶性の増大、単一の宿主微生物における発現レベルの上昇、複数の宿主生物における発現レベルの上昇、新たな酵素の発見、公知の酵素の、新たな機能の発見、タンパク質および酵素の操作、酵素進化の方向付け、または合理的デザインによる酵素操作のための方法も提示する。
【0043】
上記において言及された通り、一部の例において、酵素(例えば、標的酵素)は、レドックス補因子依存性酵素である。一部のこのような例において、酵素はレドックス補因子非依存性酵素であり、標的生成物が検出酵素により後続生成物にさらに転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかまたは還元されると、シグナルが発せられる。1つを超える検出酵素は、反応のカスケードなどにおいて使用されうる。当業者により、カスケード反応は、複数の酵素反応過程を伴いうることが、一般に理解されるであろう。検出酵素は、補因子依存性酵素の場合もあり、補因子非依存性酵素の場合もある。1つだけの検出酵素が使用される場合、検出酵素は、一般に、補因子依存性酵素である。1つを超える検出酵素が使用される場合、検出酵素のうちの少なくとも1つは、補因子依存性酵素である。他の例において、酵素は、レドックス補因子非依存性酵素である。
【0044】
検出酵素の例は、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アミンデヒドロゲナーゼを含むがこれらに限定されない。選択される特異的検出酵素は、生成される標的生成物に依存することが、一般に理解されるであろう。1つを超える検出酵素が使用される場合、特異的補因子に依存する、1つまたは複数の検出酵素が選択されうる。
【0045】
一部の例において、酵素は、宿主細胞内において発現され、複数の液滴は、宿主細胞またはその断片をさらに含む。宿主細胞は、真核細胞、原核細胞、古細菌細胞、真菌細胞、原虫細胞、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、または藻類細胞でありうる。一例において、宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)細胞である。宿主細胞の断片は、宿主細胞の溶解により発生しうる。
【0046】
一部の実施形態において、標的生成物は、補因子依存性検出酵素により、後続生成物に転換される。シグナルは、標的生成物が、補因子依存性検出酵素により、後続生成物に転換される場合に、補因子が、酸化されるか、または還元されると発せられる。
【0047】
多様な実施形態において、標的生成物は、第1検出酵素により、第1後続生成物に転換される場合があり、この場合、第1検出酵素は、補因子非依存性酵素であり、第1後続生成物は、第2検出酵素により、第2後続生成物にさらに転換され、この場合、第2検出酵素は、補因子依存性酵素である。シグナルは、第1後続生成物が、第2後続生成物に、さらに転換される場合に、補因子が、酸化されるか、または還元されると発せられる。
【0048】
一部の実施形態において、酵素(例えば、標的酵素)はレドックス補因子依存性酵素であり、反応基質が酵素により標的生成物に転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかまたは還元されると、シグナルが発せられる。
【0049】
一部の実施形態において、酵素(例えば、標的酵素)は、細胞内酵素、表面提示酵素、または細胞外酵素である。当業者に、本開示の方法により、任意の酵素がスクリーニングされうることが理解されるであろう。酵素は、天然酵素の場合もあり、合成酵素の場合もある。一部の例において、酵素は、限定せずに述べると、カンジダ・パラプシローシス(CpSADH)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)種HXN-200に由来するエポキシドヒドロラーゼ(SpEH)、スチレンオキシドイソメラーゼ(SOI)、P450モノオキシゲナーゼ(P450pyr)、ロドコッカス属(Rhodococcus)に由来するアミンデヒドロゲナーゼ(AmDH)、またはブタンジオールデヒドロゲナーゼ(BDHA)である。
【0050】
一部の実施形態において、酵素(例えば、標的酵素)は、酵素変異体ライブラリー、または多様な単一酵素のライブラリーより選択される酵素変異体である。酵素変異体ライブラリーは、既存の酵素変異体ライブラリーの場合もあり、本開示の方法によりスクリーニングされた酵素に基づき作成される、酵素変異体ライブラリーの場合もある。本開示によりスクリーニングされた酵素は、酵素変異体ライブラリーを作成するのに使用される場合があり、この場合、作成されたこのライブラリーによる変異体は、本開示の方法を使用する、別ラウンドのスクリーニングにかけられることが理解されるであろう。複数ラウンドにわたるスクリーニングおよびライブラリーの作成が実施されうる。
【0051】
別の実施形態において、酵素は、異なる酵素の群より選択される酵素である。例えば、異なる酵素の群は、メタゲノミクスライブラリーの場合もあり、データベースに由来する合成配列の場合もある。したがって、本開示の方法は、タンパク質および酵素を操作するか、もしくは酵素進化を方向付けるために、酵素変異体をスクリーニングするか、またはスクリーニング酵素を発見するために、異なる酵素をスクリーニングするのに使用されうる。
【0052】
一部の実施形態において、システムおよび方法は、1つまたは複数のマイクロ流体液滴を含む。本開示の方法において使用される液滴は、油中水滴、水中油中水滴、水中油滴、およびハイドロゲル液滴でありうる。
【0053】
本明細書において記載される液滴は、任意の適切なサイズ(例えば、直径)の液滴でありうる。一部の実施形態において、液滴の直径は、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、または90μm以上、または100μm以上である。一部の実施形態において、液滴の直径は、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、または10μm以下である。上記において言及された範囲の組合せもまた、可能である(例えば、10μm以上であり、かつ、100μm以下である)。他の範囲も、可能である。
【0054】
本明細書において記載される、多様な実施形態は、1つまたは複数の補因子を含みうる。一部の実施形態において、補因子は、補因子のレドックス対を形成するように、1つまたは複数の化学反応(例えば、酸化-還元反応)を経うる。一部の実施形態において、補因子は、発光シグナルを、直接発生させる場合もあり、発光シグナルを発生させる、1つまたは複数の化学反応に、間接的に参与する場合もあり、別の化学分子種に、発光シグナルを発生させる場合もある。一部の実施形態において、補因子は、NAD+、NADH、NADP+、NADPH、NAD+およびNADP+、ならびにNADHおよびNADPHからなる群より選択される。しかし、本開示は、そのように限定されないので、他の補因子も可能である。レドックス補因子が、NAD+もしくはNADP+または両方である場合、NAD+もしくはNADP+または両方が還元されると、シグナルが発せられることが、一般に理解されるであろう。同様に、レドックス補因子が、NADHもしくはNADPHまたは両方である場合、NADHもしくはNADPHまたは両方が酸化されると、シグナルが発せられる。一例において、検出されるシグナルは、NADPHもしくはNADHまたは両方の蛍光である。
【0055】
本明細書の他の箇所において言及される通り、複数の液滴のうちの、各液滴はまた、酸化されたまたは還元されたレドックス補因子と反応して、発光シグナルをもたらす1つまたは複数の検出試薬もさらに含みうる。当業者は、使用される検出試薬が、液滴内のレドックス補因子に依存することを理解するであろう。一部の実施形態において、検出試薬は、発光シグナルを発生させるために、補因子(または補因子のレドックス対)と反応するように構成された蛍光色素である。一部の実施形態において、検出試薬は、標的酵素の標的生成物と反応するように構成された検出酵素である。一部の実施形態において、検出試薬は、発光シグナルを発生させるために、補因子(または補因子のレドックス対)と相互作用しうる分子(例えば、リガンド:L)と共に構成された量子ドットを含む。
【0056】
補因子(または補因子のレドックス対)と相互作用することが可能な、任意の適切な蛍光色素が使用されうる。一例において、レドックス補因子が、NADHもしくはNADPHまたは両方である場合、1つまたは複数の検出試薬は、レサズリンおよびジアフォラーゼである。NADHおよび/またはNADPHは、ジアフォラーゼの存在下において、レサズリンと反応して、レゾルフィンをもたらす。次いで、レゾルフィンにより発せられるシグナルが検出される。しかし、本開示は、そのように限定されないので、他の蛍光色素も可能である。
【0057】
検出酵素は、標的酵素反応の標的生成物と反応するように選択されうる。一例において、レドックス補因子が、NADHもしくはNADPHまたは両方である場合、1つまたは複数の検出試薬は、プロルシフェリン、ルシフェラーゼ、レダクターゼ、ATP、およびMg2+である。プロルシフェリンは、NADHの存在下において、レダクターゼにより、D-ルシフェリンに還元され、かつ/またはNADPHと、D-ルシフェリンとは、Mg2+およびATPの存在下において、オキシルシフェリンに転換される。次いで、オキシルシフェリンにより発せられるシグナルが検出される。しかし、本開示は、そのように限定されないので、他の検出試薬(例えば、検出酵素)も可能である。本開示の教示に照らして、当業者は、1つまたは複数の標的酵素のスクリーニングのための発光シグナルを発生させるために、適切な検出試薬を選択することが可能であろう。
【0058】
一部の実施形態において、検出試薬は、量子ドット(すなわち、ナノ結晶)を含む。量子ドットは、補因子または補因子のレドックス対との反応または相互作用時に、蛍光シグナルを発生または消光させるように構成されるか、または機能化されうる。例えば、一部の実施形態において、レドックス補因子は、NADH、NADPH、NAD+、NADP+、NAD+およびNADP+、またはNADHおよびNADPHであり、1つまたは複数の検出試薬は、量子ドットである。量子ドットの非限定例は、CdS、CdSe、ZnS、ZnSe、および/またはCdZnSを含む。他の量子ドットも、可能である。
【0059】
量子ドットは、補因子と反応(例えば、酸化反応、還元反応)または相互作用して、蛍光シグナルを発生または消光させうる、リガンドLと機能化(例えば、表面機能化)またはコンジュゲートされうる。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まずに述べると、リガンドは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)機構を介して、量子ドットと相互作用しうる。補因子は、リガンドおよび/または量子ドットと近接または接触し、量子ドットと、リガンドとの間のFRETを活性化または脱活性化させることが可能であり、これにより、液滴分取を開始するか、またはこれを停止させるのに、検出器(例えば、検出領域内または分取領域内の検出器、分取領域の上流における検出器)により使用されうるシグナルを発生(または消光)させる。
【0060】
例示的実施形態において、量子ドットのリガンドは、ナイルブルー(すなわち、[9-(ジエチルアミノ)ベンゾ[a]フェノキサジン-5-イリデン]アザニウムスルフェート)またはその類似体を含む。一部の実施形態において、リガンドは、式(I):
【化1】
(I)
[式中、R
1は、アミド、アミノ、およびジアミノを含むか、またはこれらからなる基より選択され;R
2は、アルキル(例えば、メチル、エチル)、カルボキシル(例えば、アセチル)、およびスルホニル(例えば、-CH
2CH
2SO
3H)を含むか、またはこれらからなる基より選択され;R
3は、アルキル、カルボキシル(例えば、アセチル)、およびスルホニル(例えば、-CH
2CH
2SO
3H)を含むか、またはこれらからなる基より選択され;R
4は、水素およびヒドロキシルを含むか、またはこれらからなる基より選択され;R
5は、水素およびスルホニル(例えば、-SO
3H)を含むか、またはこれらからなる基より選択される]を含む。一部の実施形態において、R
1はまた、リガンドの、量子ドットへの結合またはコンジュゲートも可能である。一部の実施形態において、ナイルブルーの類似体は、式(I)を含む。
【0061】
一部の実施形態において、検出試薬は、バイオセンサーについての1つの非限定例としての、タンパク質バイオセンサーなどのバイオセンサーを含む。バイオセンサーは、補因子(または補因子のレドックス対)と反応して、発光シグナルを発生(または消光)させるように構成されうる。発光シグナルの発生(または消光)は、標的酵素を含有する液滴を検出、スクリーニング、および/または単離するのに使用されうる。一例において、タンパク質バイオセンサーは、蛍光コアドメインと、二部NAD+かつ/またはNADP+結合ドメインとを含む。蛍光コアドメインは、488nmにおける励起波長と、520nmにおける発光波長とを有する。NAD+および/またはNADP+の存在下において、コアドメインからの蛍光は、NAD+および/またはNADP+の、二部結合ドメインへの結合により消光される。
【0062】
一部の実施形態において、液滴内の酵素(例えば、標的酵素)活性は、直接的に、または間接的に、発光シグナルの発生を結果としてもたらす。発光シグナルは、蛍光シグナル、生物発光シグナル、または化学発光シグナルでありうる。一部の実施形態において、発光シグナルは、目的の酵素(例えば、標的酵素)を含有する液滴をスクリーニング、単離、および/または検出するのに使用されうる。例えば、標的酵素が、所望の反応を行う、標的酵素を含有する液滴は、発光シグナル発生させることが可能であり、回収チャンバーに分取されうる。場合によって、しかし、参照シグナルと比べた、発光シグナルの非存在が、スクリーニングおよび/または分取を誘発することも可能である。
【0063】
一部の実施形態において、参照シグナルは、参照酵素からのシグナルである。参照酵素は、野生型酵素、突然変異酵素、キメラ酵素、または酵素変異体でありうる。一部の実施形態において、参照シグナルは、強度またはレベルが既知であるシグナル、例えば、フルオロフォアからの、蛍光シグナルまたは生物発光シグナルである。一部の実施形態において、参照シグナルは、参照を超えるか、または参照未満である、所定の強度またはレベルを有するシグナルである。一部の実施形態において、導出シグナル(例えば、第1発光シグナルと、第2発光シグナルとの比)が決定される。一部の実施形態において、導出シグナルは、参照シグナルと比較される。他の実施形態において、参照シグナルは、シグナルの非存在、検出不能シグナル、またはノイズと識別不可能なシグナルでありうる。
【0064】
一部の実施形態において、2つまたはこれを超える、顕著に異なる発光シグナルが、液滴内において(例えば、液滴内の検出試薬から、液滴内の補因子から)発生しうる。すなわち、第1波長の第1発光シグナルおよび第2波長の第2発光シグナルは、液滴内において発生する場合があり、この場合、第1波長と、第2波長とは異なる。2つまたはこれを超える、顕著に異なる発光シグナルの発生が、例えば、発光が、蛍光であり、励起光源が、蛍光シグナルを発生させるのに使用されうる場合、励起光源(例えば、励起光、励起レーザー)により発生するバックグラウンドノイズを低減することにより、標的酵素の検出についての感度を増大させるので有利である。
【0065】
一部の実施形態において、2つ(またはこれを超える)顕著に異なる発光シグナル(例えば、同じ液滴内または異なる液滴内において発生する)は、液滴の、2つ(またはこれを超える)顕著に異なる特徴を決定しうる。例えば、第1発光シグナルは、液滴内の細胞の数を決定することが可能であり、第2発光シグナルは、液滴内における、補因子の存在(例えば、濃度)を指し示しうる。他の特徴もまた、決定されうる。2つまたはこれを超えるシグナルは、本明細書において記載される通り、単一の検出器を使用して検出される場合もあり、2つまたはこれを超える検出器を使用して検出される場合もある。一部の実施形態において、第1発光シグナルおよび/または第2発光シグナル(またはこれらの誘導体)は、液滴の特徴を指し示す場合もあり、かつ/または液滴を伴うシステムもしくは方法の機能を信号化する場合もある。一部の実施形態において、第1発光シグナルと、第2発光シグナルとの比は、どのようにして液滴が分取されるのかなど、液滴の特徴を指し示す場合もあり、かつ/または液滴を伴うシステムもしくは方法の機能を信号化する場合もある。他の機能も、信号化されうる。
【0066】
本明細書の他の箇所において記載される通り、検出器は、発光シグナル(例えば、蛍光シグナル)を検出するのに使用されうる。検出器は、発光シグナルの強度または強度の大きさを測定しうる。検出器は、分取領域のうちの検出領域内に設置されうるが、1つまたは複数の検出器はまた、分取領域の上流位に設置される場合もあり、下流位に設置される場合もある。1つまたは複数の検出器(または検出器(複数可)と作動的に関連づけられた制御器)は、シグナル、例えば、第1発光シグナル、第2発光シグナル、および/または、例えば、本明細書の他の箇所において、より詳細に論じられる通り、液滴の分取についての情報をもたらしうる、第1発光シグナルと、第2発光シグナルとの比をデジタル化するか、または他の方式において電子的に変換しうる。例えば、第1発光シグナル、第2発光シグナル、または第1発光シグナルと、第2発光シグナルと(例えば、単一の液滴に由来する)による導出シグナル(例えば、シグナル比)は、発光シグナル(複数可)を、あらかじめあらかじめプログラムされたシグナルまたは所定のシグナルと比較するように、フィードバック制御またはフィードバック制御器(例えば、マイクロコントローラー)に伝送されうる。一部のこのような実施形態において、比較は、開示される流体システムまたは方法による、液滴分取または他の一部の機能もしくは工程を活性化させる場合もあり、これらを脱活性化させる場合もある。例えば、比較は、目的の液滴(例えば、標的酵素を含有する)の分取(例えば、電気泳動力を介する)を開始するように、分取電極のセットに電圧が印加されるべきであるのかどうかを決定しうる。一部の実施形態において、分取電極のセットに印加される電圧は、目的の液滴が、第1チャネル(例えば、回収チャネル)に分取されるのか、第2チャネル(例えば、廃液チャネル)に分取されるのかを決定する。一部の実施形態において、電圧は、1つまたは複数の試薬(例えば、検出試薬)の、液滴への融合を容易とするように、融合電極のセットに印加される。本開示は、そのように限定されないので、シグナル、例えば、第1発光シグナル、第2発光シグナル、および/または第1発光シグナルと、第2発光シグナルとの比の比較により、他の機能も可能である。
【0067】
例えば、一部の実施形態において、第1発光シグナルおよび/または第2発光シグナル(またはこれらの誘導体)は、液滴の流量(例えば、インキュベーション領域内の)が、モジュレートされるべきであるのかどうかを決定するように、フィードバック制御またはフィードバック制御器(例えば、マイクロコントローラー)に伝送されうる。例えば、インキュベーション時間は、フィードバック制御またはフィードバック制御器が、流動源(例えば、ポンプまたは真空などの圧力源)に電子的に接続された制御機構によりモジュレートされうる。こうして、液滴内において検出されるシグナルは、液滴の流量および/またはインキュベーション時間のフィードバック制御をもたらしうる。
【0068】
上記において言及された通り、本明細書において記載されるシステムおよび方法は、標的酵素を含有しないか、または標的酵素が、1つまたは複数の特徴を有さず、このため、発光シグナルを発生(または消光)させない液滴を棄却しながら、発光シグナルを発生(または消光)させる、液滴内の酵素(例えば、各々が複数の細胞内にある酵素変異体、各々が複数の液滴内にある酵素変異体)をスクリーニングするのに使用されうる。標的酵素を含有する液滴(複数可)を検出するために、検出器は、一部の特定の閾値(例えば、所定の値)において、発光シグナルまたは発光シグナルの変化を感知または検出しうる。この閾値を上回る液滴が回収されうるのに対し、この閾値を下回る液滴は、廃液チャンバーに移送される(またはこの逆である)場合もあり、上流のインキュベーション領域またはインキュベーションチャネルなど、チャネルの上流に還流される場合もある。一部の実施形態において、検出器は、特定の閾値を下回る場合に、「オフ」となり、特定の閾値を上回る場合に、「オン」となりうる、分取電極のセットとカップリングされる。このように、特定の閾値を上回る液滴は、特定の閾値を下回る液滴から分取されうる。
図4Aおよび4Bは、この特色を例示する。
図4Aは、分取領域の一部についての概略図である。
図4Aにおいて、目的の液滴410および所望されない液滴420は、回収チャネル350および廃液チャネル360に流動しているので、これらが分取されないように、分取電極340は、オフとなる。しかし、
図4Bにおいて、電極は、オンに切り替えられる(例えば、検出器から受容されたシグナルにより)と、目的の液滴410が、分取電極340により発生した誘引力を介して、回収チャネル360に流過するのに対し、所望されない液滴は、分取電極340に誘引されず、流動は、この代わりに、廃液チャネル360に流過する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まずに述べると、電極が、特定の閾値を上回る液滴を、回収チャネルまたは回収チャンバーに誘引しうる(例えば、静電力を介して、誘電泳動により)のに対し、特定の閾値を下回る液滴は、回収チャネルにも、回収チャンバーにも分取されない。
【0069】
任意の適切な検出器は、発光シグナルを検出するのに使用されうる。検出器は、発光(luminesce)(例えば、蛍光、生物発光、化学発光)により発生する電磁放射線などの電磁放射線(すなわち、光)を検出するように構成されうる。一部の実施形態において、検出器は、1つを超える波長を検出するように構成される。例示的実施形態において、検出器は、光電子増倍管(PMT)検出器を含む。一部の実施形態において、検出器は、デュアルチャネル蛍光検出器など、2つまたはこれを超える発光シグナルを受容することが可能であり、かつ/またはそのように構成される。しかし、他の検出器も可能である。一部の実施形態において、検出器はまた、例えば、蛍光発光することが可能な分子を励起した後において、続いて蛍光シグナルを発生させるための励起光源も含みうる。検出器は、発光シグナルの強度を収集しうるか、または収集する一助となりうる、レンズまたはカメラ(例えば、モノクロカメラ)をさらに含みうるか、またはこれに接続するように構成されうる。
【0070】
一部の実施形態において、検出器は、同じ(または異なる)液滴から、2つまたはこれを超える、別個のシグナルを受容するように構成されうる。例えば、検出器は、液滴から、少なくとも2つのシグナル(例えば、2つの異なる波長における)を受容するように構成される場合があり、これは、液滴の分取について、より多くの情報をもたらすのに使用されうる。2つまたはこれを超える、別個のシグナルの受信の詳細については、本明細書の下記および他の箇所において、より詳細に論じられる。
【0071】
一部の実施形態において、検出器は、シグナルを変換し(例えば、デジタル化する)て、システムの他の構成要素と電子通信するように構成されうる。一部のこのような実施形態において、検出器は、システムの他の構成要素と、さらに電子通信しうる、1つまたは複数の制御器を含みうるか、またはこれらと電子通信しうる。一部の実施形態において、検出器(または検出器の制御器または検出器と電子通信する制御器)は、分取電極のセットと電子通信し、電極をオンまたはオフにし(すなわち、電圧を印加することにより)て、特定の検出閾値を上回るか、または下回る液滴の分取を開始または停止させるように、さらに構成される。本開示の教示に基づき、当業者は、標的酵素の、所望のスクリーニング、分取、および/または単離のために、特定の検出閾値を選択することが可能であろう。
【0072】
一部の実施形態において、システムおよび方法は、下流位置(例えば、検出領域)など、システム内の1つの位置からのシグナルが、情報をもたらすか、または上流位置など、システム内の別の位置における機能(例えば、インキュベーション、流量)を制御する(少なくとも部分的に)のに使用されうる、フィードバック制御を伴いうる。一部の場合に、システムおよび方法は、上流位置(例えば、第1検出器の上流における、第2検出器)からのシグナルが、情報をもたらすか、または下流位置における機能を制御する(少なくとも部分的に)のに使用されうる、フィードバック制御を伴いうる。例えば、検出器(例えば、第1検出器)は、下流位置からのシグナル(例えば、発光シグナル、蛍光シグナル)を得ることが可能であり、上流位置の機能(例えば、流量、インキュベーション時間)は、下流のシグナルに(少なくとも部分的に)基づき改変されうる。別の例として述べると、上流位置における、第2検出器は、シグナル(例えば、参照シグナル)を受信することが可能であり、検出領域(例えば、検出領域内の、第1検出器)は、第2検出器からのシグナルを受信し、第2検出器から受信されたシグナルに(少なくとも部分的に)基づき、下流の機能(例えば、検出、分取)を改変または制御しうる。当然ながら、他のフィードバック構成も可能である。一部の実施形態において、制御器(例えば、マイクロコントローラー)は、システム内において制御される、1つもしくは複数の検出器、および/または1つもしくは複数の構成要素と電子通信し、シグナルを送信することが可能であり、かつ/または本明細書において記載される実施形態の、1つもしくは複数の機能を制御しうる。
【0073】
一部の実施形態において、フィードバック制御は、システムまたは方法において生じる、1つまたは複数のシグナル(例えば、発光シグナル)、イベント、または工程の検出を伴う。検出は、例えば、流体内の標的酵素、成分の、少なくとも1つの特徴、流体の特徴、システムの領域内の構成要素間の相互作用、および/またはシステムの領域(例えば、分取領域)内の条件(例えば、流量、分取閾値、温度、圧力)の決定を伴いうる。例えば、検出は、限定せずに述べると、液滴の発光シグナル、液滴内の、1つまたは複数の成分の濃度、液滴の内部または外部における、1つまたは複数の流体の容量、1つまたは複数の流体(または流体中の液滴)の流量、および第1発光シグナルの検出と、第2発光シグナルの検出との間の平均時間の検出を伴いうる。一部の実施形態において、1つまたは複数の特徴、状態、またはイベントの検出は、1つまたは複数のシグナルの発生を結果としてもたらすことが可能であり、システムを制御する(例えば、マイクロコントローラーを使用して)ように、さらに処理され、伝送されてもよい。本明細書において、より詳細に記載される通り、1つまたは複数のシグナルは、フィードバック制御にあらかじめプログラムされた、1つまたは複数の他のシグナル、値、または閾値との比較が可能であり、システムまたは方法に、フィードバックをもたらすのに使用されうる。
【0074】
一部の実施形態において、1つまたは複数の検出器からのシグナルの検出は、持続的に実施される。他の実施形態において、1つまたは複数の検出器からのシグナルの検出は、周期的に実施される。一部の実施形態において、検出器は、液滴を、時間の関数としてモニタリングするように、システム内の、複数の領域または多様な領域(例えば、複数のインキュベーションチャンバーに隣接する)に位置する。例えば、時間の関数としての細胞の増殖が決定されうる。場合によって、検出されるシグナルは、システム内に、別の工程のフィードバック制御をもたらす(例えば、インキュベーション時間、流量、および/または分取を制御する)のに使用されうる。
【0075】
様々なシグナルまたはシグナルのパターンは、本明細書において記載されるシステムおよび方法を使用して、発生し、かつ/または決定(例えば、測定)されうる。一部の実施形態において、シグナルは、発光シグナルまたは蛍光シグナルである。実施形態の一セットにおいて、シグナルは、強度成分を含む。強度は、例えば、液滴中の成分濃度、検出される酵素の種類の指標、液滴中の成分量、および液滴の容量のうちの1つまたは複数を指し示しうるか、またはこれらを指し示すのに使用されうる。一部の実施形態において、強度は、液滴内の、1つの標的酵素または検出試薬からのシグナル(例えば、発光シグナル)を含みうる。他の実施形態において、強度は、液滴内の、2つまたはこれを超える標的酵素または検出試薬からのシグナルを含みうる。一部のこのような実施形態において、シグナルの強度は、液滴内の、各個別の発光シグナルの平均でありうる。場合によって、強度は、液滴の発光シグナルによる発光強度である。他の強度の決定も可能である。
【0076】
一部の実施形態において、シグナルの周波数は、1つまたは複数の発光シグナルから生成および/または決定されうる。例えば、検出器により、強度(例えば、閾値強度を上回るか、または下回る)が各別である、一連のシグナルが測定されうる。この数は、フィードバック制御または他のユニット(例えば、マイクロコントローラー)にあらかじめプログラムされた、多数のシグナルまたは値(閾値強度を上回るか、または下回る強度を有する)と比較されうる。少なくとも部分的に、この比較に基づき、フィードバック制御は、システム内または方法における、流体流のモジュレーション、または液滴分取の活性化/脱活性化などの機能を開始させる場合もあり、これらを停止させる場合もあり、これらを変化させる場合もある。
【0077】
一部の実施形態において、シグナル(例えば、発光シグナル)の持続時間が、生成および/または決定されうる。シグナルの持続時間は、例えば、分取、流体の流量、流体中の成分の特徴(例えば、どのくらいの時間にわたり、成分が、化学発光、蛍光など、ある特定の特徴または活性を有するのか)、およびどのくらいの時間にわたり、特定の液滴が、システムまたは方法の特異的領域(例えば、インキュベーション領域)に位置していたのかのうちの1つまたは複数を指し示しうるか、またはこれらを指し示すのに使用されうる。
【0078】
一部の実施形態において、時系列における第2位置と比べた、または別の工程またはイベント(例えば、システムまたは方法において生じた)と比べた、時系列におけるシグナルの位置が、生成および/または決定されうる。例えば、検出器は、ある特定の液滴(例えば、1つまたは複数の特徴を伴う酵素を含有する液滴)が検出器を流過する時点における検出が可能であり、このシグナルの計時は、時系列における第2位置(例えば、検出が開始された時点;工程がなされた後、ある特定の量の時間が経過した時点など)に関しうる。別の例において、検出器は、システムの構成要素(例えば、セット分取電極)が、活性化された後において(またはこの前に)、ある特定の液滴が、検出器を流過する時点において検出しうる。
【0079】
実施形態の別のセットにおいて、シグナルまたはイベントの間の平均時間が、生成および/または決定されうる。例えば、2つのシグナルの間の平均時間は、シグナルの各々が、本明細書において記載される、1つまたは複数の特徴または状態に、非依存的に対応する場合に測定されうる。他の実施形態において、同様のシグナルの最初の連なりと、最後の連なりとの間の平均時間(例えば、検出器を流過する洗浄液の連なりの間の平均時間)が決定される。
【0080】
一部の実施形態において、シグナルのパターンが、生成および/または決定されうる。シグナルのパターンは、例えば、シグナルの強度、シグナルの周波数、シグナルの持続時間、時系列における第2位置と比べた、またはマイクロ流体システムにおいて生じる(または生じた)別の工程またはイベントと比べた、時系列におけるシグナルの位置、および2つまたはこれを超えるシグナルまたはイベントの間の平均時間のうちの、少なくとも2つ(または、他の実施形態において、これらのうちの、少なくとも3つ、もしくは少なくとも4つ)を含みうる。他の実施形態において、シグナルのパターンは、第1シグナルの強度、第1シグナルの持続時間、時系列における第2位置と比べた、時系列における第1シグナルの位置;第2シグナルの強度、第2シグナルの持続時間、時系列における第2位置と比べた、時系列における第2シグナルの位置、および第1シグナルと、第2シグナルとの間の平均時間のうちの、少なくとも2つ(または、他の実施形態において、これらのうちの、少なくとも3つ、もしくは少なくとも4つ)を含む。シグナルのパターンは、一部の実施形態において、特定のイベントまたは工程が、マイクロ流体システム内において、適正に生じつつあるのかどうかを指し示しうる。他の実施形態において、シグナルのパターンは、特定のイベントまたは工程が、マイクロ流体システムにおいて生じたのかどうかを指し示す。さらに他の実施形態において、シグナルのパターンは、イベントの特定の連なりを指し示しうる。
【0081】
上記および本明細書において記載されるシグナルまたはシグナルのパターンなど、様々なシグナルまたはシグナルのパターンは、生成および/または決定が可能であり、システム内の分取のモジュレーションなど、1つまたは複数の工程を制御するためのフィードバックをもたらすように、単独において使用される場合もあり、組合せにおいて使用される場合もある。すなわち、フィードバック制御ユニットまたは他の任意の適切なユニットは、一部の実施形態において、少なくとも部分的に、シグナルのパターンに基づき、システム内の液滴分取を活性化させるべきなのか、脱活性化させるべきなのかを決定しうる。例えば、分取すべきであるのかどうかの決定は、少なくとも部分的に、第1シグナル(例えば、第1発光シグナル)の強度を含む、シグナルのパターンに基づくことが可能であり、時系列における第2位置と比べた、時系列における第1シグナルの位置は、液滴を、回収または廃液に分取するべきであるのかどうかについての決定を下すための、これらの情報の両方の使用を伴いうる。例えば、これらのシグナルは、フィードバック制御に、あらかじめプログラムされるか、またはあらかじめ設定された、1つまたは複数の参照シグナル(例えば、閾値強度または強度範囲、および時系列における第2位置と比べた、時系列における閾値位置、または時系列における位置の範囲)と比較されうる。測定されたシグナルの各々が、それぞれの閾値または閾値範囲内に収まる場合、液滴を分取すべきであるのかどうかについての決定が下されうる。閾値または閾値範囲を満たす、考えられるべき、ただ1つのパラメータ(例えば、第1シグナルの強度だけ、または時系列における第1シグナルの位置だけ)は、本明細書において記載される目的のために、発光シグナル、またはシグナル(複数可)をもたらした成分(複数可)についての十分な情報をもたらさない場合があるため、液滴を分取すべきであるのかどうかについての決定が下すのに、十分な情報でない場合がある。例えば、場合によって、検出される発光シグナルは、シグナルのパターンが検討すべきシグナルのパターンでない限り、本明細書において記載される目的のために、十分には同定されない場合がある。
【0082】
一部の実施形態において、1つまたは複数の測定シグナルは、処理または操作される(例えば、伝送の前もしくは後において、かつ/または参照シグナルもしくは参照値と比較される前に)。したがって、シグナルが、伝送される(例えば、システムを制御するように)か、比較される(例えば、参照シグナルまたは参照値と)か、または他の方式において、フィードバック工程において使用される場合、生シグナルが使用される場合もあり、生シグナルに(少なくとも部分的に)基づく、処理/操作シグナルが使用される場合もあることを察知されたい。例えば、場合によって、測定シグナルの1つまたは複数の微分係数シグナルが計算され(例えば、微分器または他の任意の適切な方法を使用して)、フィードバックをもたらすのに使用される場合もある。他の場合に、シグナルは、正規化される(例えば、測定シグナルを、バックグラウンドシグナルから控除して)。実施形態の一セットにおいて、シグナルは、傾きまたは平均傾き、例えば、時間の関数としての、強度の平均傾きを含む。
【0083】
フィードバック制御は、所望されない液滴を、第2チャネル(例えば、廃液チャネル、流体システムの上流位置へ向かうチャネル)に分取しながら、目的の液滴を、第1チャネル(例えば、回収チャネル)に連続的に分取するのに使用されうる。例えば、分取領域の上流位置に設置された検出器は、液滴内の細胞の存在または数を指し示す、1つまたは複数の液滴の、第1発光シグナルを検出しうる。検出器はまた、補因子の特徴(例えば、補因子濃度)を指し示す、第2発光シグナルも検出しうる。検出器(または検出器と作動的に関連づけられた制御器)は、液滴1滴当たりの平均シグナル強度(すなわち、液滴内の細胞数により除された、液滴の全シグナル強度)を有する導出シグナルを計算してもよい。一部の実施形態において、第1発光シグナルと、第2発光シグナルとの比(またはシグナルの強度)が決定される。次いで、検出器の上流からのシグナル(または導出シグナル)が、下流位置に伝送されうる(例えば、マイクロコントローラーを介して)。一部の実施形態において、第1発光シグナル、第2発光シグナル、および/または導出シグナルは、あらかじめプログラムされるか、またはあらかじめ決定された(例えば、マイクロコントローラーに、あらかじめプログラムされた)シグナルと比較される。次いで、マイクロコントローラーは、少なくとも部分的に、検出器の上流からのシグナルに基づき、電圧を決定する場合もあり、分取を開始するか、または分取を停止させるように、電極のセットをアクチュエートする場合もある。
【0084】
一部の実施形態において、検出器は、システムと別個の(または「オフチップ」の)解析器の一部であり、システムは、解析器に挿入されるように構成される場合もあり、他の方式において、解析器により解析されるように構成される場合もある。解析器は、解析器内に組み入れられたシステムを処理および解析するように、様々な方式において使用されうる。一部の実施形態において、システムとインターフェースをなすように構成された機械部品が、解析器内に、適正に装填されたら、解析器は、システム(例えば、発光シグナル)についての情報をもたらし、同定する。解析器は、情報を、保管されたデータ(例えば、マイクロコントローラー内に保管されたデータ、フィードバック制御システム内に保管されたデータ)と比較するように構成されうる。一部の実施形態において、解析器は、検出器を含む。例示を目的とし、限定を目的とせずに述べると、分取(分取領域内の)が活性化されるか、またはシステムにより、長いインキュベーション時間が要求される場合、解析器は、発光シグナルからの情報を受信し、これを決定する(単独において、またはマイクロコントローラーもしくはフィードバック制御など、システムの他の部分を、部分的に伴って)。
【0085】
分取電極は、目的の液滴(例えば、特定の特徴を有する標的酵素を含有する液滴)を、第1チャネル(例えば、回収チャネル)に誘引または駆動する電圧を印加しうる。一部の実施形態において、分取電極により、1V以上、10V以上、25V以上、50V以上、100V以上、250V以上、500V以上、750V以上、または1kV以上の電圧が印加される。一部の実施形態において、1kV以下、750V以下、500V以下、250V以下、100V以下、50V以下、25V以下、10V以下、または1V以下の電圧。上記において言及された範囲の組合せもまた、可能である(例えば、1V以上であり、かつ、1kV以下である)。他の範囲も、可能である。
【0086】
液滴の分取は、目的の液滴(例えば、1つまたは複数の特徴を伴う標的酵素を含有する液滴)を、所望されない液滴から差別化することための、任意の適切な速度において行われうる。一部の実施形態において、液滴分取速度は、1秒間当たりの液滴10滴以上、1秒間当たりの液滴20滴以上、1秒間当たりの液滴50滴以上、1秒間当たりの液滴100滴以上、1秒間当たりの液滴250滴、1秒間当たりの液滴250滴以上、1秒間当たりの液滴500滴以上、1秒間当たりの液滴750滴以上、1秒間当たりの液滴1,000滴以上、1秒間当たりの液滴2,500滴以上、1秒間当たりの液滴5,000滴以上、1秒間当たりの液滴10,000滴以上、1秒間当たりの液滴50,000滴以上、または1秒間当たりの液滴100,000滴以上である。一部の実施形態において、液滴分取速度は、1秒間当たりの液滴100,000滴以下、1秒間当たりの液滴50,000滴、1秒間当たりの液滴10,000滴、1秒間当たりの液滴5,00滴、1秒間当たりの液滴1,000滴、1秒間当たりの液滴750滴以下、1秒間当たりの液滴500滴以下、1秒間当たりの液滴250滴以下、1秒間当たりの液滴100滴以下、1秒間当たりの液滴50滴以下、1秒間当たりの液滴20滴以下、または1秒間当たりの液滴10滴以下である。上記において言及された範囲の組合せもまた、可能である(例えば、1秒間当たりの液滴10滴以上であり、かつ、1秒間当たりの液滴100,000滴以下である)。他の範囲も、可能である。
【0087】
液滴は、当技術分野において公知の多様な方法により分離されうる。一部の例において、液滴は、蛍光活性化液滴分取(FADS)、蛍光活性化細胞分取(FACS)または磁気活性化細胞分取(MACS)を使用して分離される。他の例において、液滴は、音波制御技術、磁気制御技術、空気圧制御技術、熱制御技術、電気制御技術、およびこれらの組合せを使用して分離される。
【0088】
一部の実施形態において、補因子(例えば、NAD+、NADH)の検出は、1μM以上、10μM以上、100μM以上、1000μM以上、10mM以上、または100mM以上の濃度において生じうる。一部の実施形態において、補因子の検出は、100mM以下、10mM以下、1000μM以下、100μM以下、10μM以下、または1以下μMの濃度において生じうる。上記において言及された範囲の組合せもまた、可能である(例えば、1μM以上であり、かつ、100mM以下である)。他の範囲も、可能である。
【0089】
例として述べると、NAD+、NADP+、NADH、またはNADPHは、1~10μM、1~100μM、1~1000μM、1μM~10mM、100~1000μMを含むがこれらに限定されない濃度において検出されうる。当業者により、本開示において、NAD+、NADH、NADP+、NADPH、NAD+およびNADP+、ならびにNADHおよびNADPH以外の補因子も使用されうることが、一般に理解されるであろう。検出法は、使用される補因子に従い変動し、補因子または検出剤のスペクトル特性に基づきうる。
【0090】
細胞は、流体システム(例えば、マイクロ流体素子)内において、直接インキュベートされる場合もあり、流体システムとは別個にインキュベートされる場合もある。一部の実施形態において、細胞は、細胞の増殖(growth)および/または増殖(proliferation)(例えば、液滴内の)を容易とするように培養されうる。一例において、本開示の本方法において、複数の液滴を生成するか、または用意する工程は、各液滴内の宿主細胞を、各液滴内の培養培地と共にインキュベートして、反応基質、検出酵素、1つもしくは複数の検出試薬、溶解緩衝液、レドックス補因子、またはこれらの組合せを添加する前に、宿主細胞の数を増大させる工程をさらに含む。培養培地、温度、酸素の濃度、培養の持続時間を含む培養条件の選択は、宿主細胞に依存し、宿主細胞の増殖に適すると理解されるであろう。一部の実施形態において、この細胞の増殖(growth)および/または増殖(proliferation)は、インキュベーション領域内の、液滴または流体の連続流動時に生じる。例えば、細胞を含有する液滴は、システムの流動を停止させることを必要とせずに、1つのインキュベーションチャンバーから、次のインキュベーションチャンバーに、持続的に流動しうる。
【0091】
一部の実施形態において、細胞を含有する液滴は、1分間以上、3分間以上、5分間以上、10分間以上、15分間以上、20分間以上、30分間以上、45分間以上、60分間以上、90分間以上、または120分間以上にわたりインキュベートされうる。一部の実施形態において、細胞を含有する液滴は、120分間以下、90分間以下、60分間以下、45分間以下、30分間以下、20分間以下、15分間以下、10分間以下、5分間以下、3分間以下、または1分間以下にわたりインキュベートされうる。上記において言及された範囲の組合せもまた、可能である(例えば、1分間以上であり、かつ、120分間以下である)。他の範囲も、可能である。一部の実施形態において、インキュベーション領域(例えば、インキュベーション領域内のインキュベーションチャンバーおよび/またはチャネル)の構成および/または配置は、細胞のインキュベーション時間を決定しうる。
【0092】
一部の実施形態において、細胞は、インキュベーション領域内のインキュベーション時に増殖(growまたはproliferate)しうる。一部の実施形態において、1つまたは複数の細胞は、液滴内において増殖しうる(例えば、繁殖しうる、増えうる)。例えば、まず、1個の細胞を、液滴内に封入することが可能であり、この1個の細胞は、2個またはこれを超える細胞に増殖しうる。当然ながら、各娘細胞もまた、2個またはこれを超える細胞に増殖しうる。一部の実施形態において、1個の細胞は、少なくとも2個の細胞、少なくとも3個の細胞、少なくとも5個の細胞、少なくとも10個の細胞、少なくとも20個の細胞、少なくとも50個の細胞、少なくとも100個の細胞、少なくとも200個の細胞、少なくとも300個の細胞、または少なくとも500個の細胞に増殖しうる。一部の実施形態において、500個を超えない細胞、300個を超えない細胞、200個を超えない細胞、100個を超えない細胞、50個を超えない細胞、20個を超えない細胞、10個を超えない細胞、3個を超えない細胞、または2個を超えない細胞は、液滴内において増殖される。上記において言及された範囲の組合せもまた、可能である(例えば、少なくとも50個の細胞が、液滴内において増殖し、かつ、500個を超えない細胞が、液滴内において増殖する)。他の範囲も、可能である。一部の実施形態において、液滴内の試薬は、液滴内の細胞の増殖を決定するのに使用されうる。
【0093】
インキュベーション領域内の、複数のインキュベーションチャンバーは、任意の適切な寸法を有しうる。複数のチャンバー内の各チャンバーの、横断面の最大寸法は、同じ場合もあり、異なる場合もある。一部の実施形態において、複数のチャンバー内のチャンバーの、横断面の最大寸法は、10μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、750μm以上、800μm以上、900μm以上、または1000μm以上である。一部の実施形態において、複数のチャンバー内のチャンバーの、横断面の最大寸法は、1000μm以下、900μm以下、800μm以下、750μm以下、500μm以下、400μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、または10μm以下である。前出の範囲の組合せもまた、可能である(例えば、10μm以上であり、かつ、1000μm以下である)。他の範囲も、可能である。2つまたはこれを超えるインキュベーションチャンバーを接続するチャネルもまた、前出の範囲以内の寸法を有しうる。
【0094】
一部の実施形態において、2つの隣接するインキュベーションチャンバーを接続するチャネルは、インキュベーションチャンバーと比べて、特定の比を有する。これらの比は、インキュベーション領域を通って移動するときの、細胞のインキュベーション時間を制御するために調整されうるが、また、検出領域から出る液滴の、検出領域に入ったときのそれらの順序と比べた、相対的序列を制御するのにも使用されうる。一部の実施形態において、インキュベーションチャンバー(例えば、第1インキュベーションチャンバーおよび/または第2インキュベーションチャンバー)の最大断面寸法の、チャネルの最大断面寸法に対する比は、2:1、3:1、5:1、10:1、13:1、または15:1以上である。一部の実施形態において、インキュベーションチャンバーの最大断面寸法の、チャネルの最大断面寸法に対する比は、15:1、13:1、10:1、5:1、3:1、または2:1以下である。前出の範囲の組合せ(例えば、2:1以上であり、かつ、15:1以下である)もまた想定される。本開示がそのように限定されていない、他の範囲も可能である。
【0095】
インキュベーション領域は、任意の適切な数のインキュベーションチャンバーを含みうる。一部の実施形態において、インキュベーション領域は、2つ以上のインキュベーションチャンバー、3つ以上のインキュベーションチャンバー、5つ以上のインキュベーションチャンバー、10以上のインキュベーションチャンバー、15以上のインキュベーションチャンバー、20以上のインキュベーションチャンバー、25以上のインキュベーションチャンバー、30以上のインキュベーションチャンバー、40以上のインキュベーションチャンバー、または50以上のインキュベーションチャンバーを含む。一部の実施形態において、インキュベーションチャンバーは、50以下のインキュベーションチャンバー、40以下のインキュベーションチャンバー、30以下のインキュベーションチャンバー、20以下のインキュベーションチャンバー、15以下のインキュベーションチャンバー、10以下のインキュベーションチャンバー、5つ以下のインキュベーションチャンバー、3つ以下のインキュベーションチャンバー、または2つ以下のインキュベーションチャンバーを含む。上記において言及された範囲の組合せもまた、可能である(例えば、2以上のインキュベーションチャンバーであり、かつ、50以下インキュベーションチャンバーである)。他の範囲も、可能である。インキュベーションチャンバーは、直列において接続される場合もあり、並列において接続される場合もある。
【0096】
一部の実施形態において、バブルトラップが、インキュベーション領域の下流に位置して、システム内またはマイクロ流体素子内に組み入れられうる。バブルトラップは、例えば、複数のインキュベーションチャネル内の、細胞のインキュベーション時に形成される気泡を除去するのに使用されうる。よって、バブルトラップは、インキュベーション領域の下流に位置し、かつ/またはインキュベーション領域の下流のチャンバーまたはチャネルと接合されるが、当然ながら、チャネルおよび/またはチャンバーからの、気泡の除去を容易とするように、流体システムの任意の位置の範囲内に位置しうる。一部の実施形態において、バブルトラップは、バブルトラップを介して、液体の流動を防止しながら、気体(例えば、空気)の拡散を許容しうる膜(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)膜)を含む。バブルトラップは、バブルトラップに、減圧をかけることにより、気体の除去を容易とする、真空ポート(例えば、吸気口および/または排気口)をさらに含んでもよい。
【0097】
一部の実施形態において、複数の液滴のうちの、少なくとも1つまたは複数は、溶解緩衝液をさらに含む。溶解緩衝液は、反応基質を、標的生成物に転換する細胞内酵素を放出するように、宿主細胞を溶解させる。溶解緩衝液の例は、プロテイナーゼK、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、Triton X-100、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジンジグルコン酸塩、リゾチーム-ポリミキシンB、およびフェノールを含むがこれらに限定されない。
【0098】
次いで、分離液滴は、さらなるアッセイまたは解析にかけられうる。例えば、分離液滴内のDNAまたは細胞は、さらなる解析のために、さらに回収されうる。一例において、回収細胞は、宿主細胞の増殖を可能とするように培養され、大スケール、例えば、マイクロリットル~リットルスケールにおける酵素の特徴が調べられうる。別の例において、アミノ酸配列、ポリヌクレオチド配列、または両方を得るように、分離液滴内のDNAまたは酵素がシーケンシングされる。
【0099】
一例において、シーケンシングされた酵素は、新たな酵素変異体ライブラリーを作成するのに使用される。当業者には、酵素変異体ライブラリーを作成する方法が理解されるであろう。例えば、酵素ライブラリーは、ランダム突然変異誘発またはターゲティング突然変異誘発により発生しうる。酵素ライブラリー内の各変異体は、1つまたは複数のアミノ酸における、参照タンパク質または参照酵素と比較した突然変異を含む。突然変異はまた、コドン最適化のための、サイレント突然変異でもありうる。突然変異はまた、その後除去されるシグナルペプチドの発現を改善するようにも施されうる。
【0100】
本明細書において使用される、「酵素」という用語は、化学反応または生化学反応を触媒することが可能である、タンパク質またはタンパク質ベースの分子を指す。酵素は、1つまたは複数のポリペプチドにより、完全に、または部分的に構成されるが、また、核酸も含みうる。酵素の触媒機能は、その「活性」または「酵素活性」を構成する。酵素の特異性は、主に、基質が、生成物に変換される前に、酵素が、基質に結合する領域である、活性部位の特徴に依存する。酵素は、それが果たす触媒機能の種類に従い分類されうる。例えば、酵素は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、イソメラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、およびリガーゼを含むがこれらに限定されない。酵素はまた、オキシゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、およびリパーゼも含みうる。酵素はまた、宿主におけるその発現系の種類に従っても分類されうる。例えば、酵素は、細胞内酵素、表面提示酵素、および細胞外酵素を含みうる。酵素は、補因子依存性または補因子非依存性でありうる。補因子依存性酵素が、反応を触媒するために、補因子の存在を要求するのに対し、補因子非依存性酵素は、補因子の存在を要求しない。
【0101】
本明細書において使用される、「基質」という用語は、酵素の活性部位と結合または相互作用することが可能な物質を指す。酵素は、その触媒活性を基質に及ぼして、生成物をもたらす。
【0102】
本明細書において使用される、「補因子」という用語は、酵素が、その酵素活性をもたらすために要求される、基質(複数可)以外の任意の分子を指す。補因子は、無機イオン、補酵素、または酵素の活性に必要な他の因子を含むがこれらに限定されない。レドックス補因子は、酵素反応を触媒する、オキシドレダクターゼにより要求される補因子である。レドックス補因子の例は、NADP+(ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸)、NADPH(すなわち、NADP+の還元形態)、NAD+(ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド)、およびNADH(すなわち、NAD+の還元形態)を含む。他のレドックス補因子は、フラビンアデニンジヌクレオチド(FADandFADH2)、フラビンモノヌクレオチド(FMNおよびFMNH2)、ビタミンB12、および補酵素Qのほか、合成生体模倣補因子を含むがこれらに限定されない。レドックス補因子である、NAD+およびNADP+を指す限りにおいて、一般に、「NAD(P)+」とは、「NAD+」および/または「NADP+」を指すことが理解されるであろう。同様に、レドックス補因子である、NADHおよびNADPHを指す限りにおいて、「NAD(P)H」とは、「NADH」および/または「NADPH」を指すように理解されるであろう。
【0103】
本明細書の、酵素または酵素変異体の文脈において使用される、「スクリーニング」という用語は、酵素を1つまたは複数の特徴について解析または試験することを指す。スクリーニングは、異なる酵素または酵素変異体など、群の各試料を特異的特徴について調べる工程を伴う。
【0104】
本明細書の、ポリヌクレオチドの文脈において使用される、「突然変異」という用語は、ポリヌクレオチド配列の、参照ポリヌクレオチド配列と比較した変化を結果としてもたらす、ポリヌクレオチド配列への修飾を指す。ポリヌクレオチド配列への突然変異は、コードされるアミノ酸配列に対する変化を結果としてもたらす場合もあり、これを結果としてもたらさない場合もある。例えば、アミノ酸配列を変更しない突然変異は、発現を目的とするコドン最適化のために使用されうる。突然変異は、ランダム突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、オリゴヌクレオチド指向突然変異誘発、遺伝子シャフリング、指向性進化法、コンビナトリアル突然変異誘発、および部位飽和突然変異誘発を含むがこれらに限定されない方法を介して、ポリヌクレオチドに導入されうる。「突然変異」という用語は、タンパク質の文脈において、アミノ酸配列の、参照アミノ酸配列と比較した変化を結果としてもたらす、アミノ酸配列への修飾を指す。突然変異は、1つまたは複数のアミノ酸残基を伴右ことが可能であり、置換、挿入、欠失、切断、およびこれらの組合せからなる群より選択されうる。アミノ酸残基は、天然の場合もあり、非天然の場合もある。本明細書において使用される、「変異体」または「突然変異体」とは、1つまたは複数のアミノ酸配列の、参照タンパク質と比較した変化を含む、タンパク質または酵素である。「変異体」はまた、参照タンパク質と比較した、さらなるアミノ酸の伸長部も含みうる。伸長部は、シグナルペプチド、タンパク質タグ、および蛍光タグを含みうる。タンパク質タグの例は、Hisタグ、FLAGタグ、およびMycタグを含む。
【0105】
本出願の文脈において、「マイクロ流体法」という用語は、マイクロリットル、ナノリットル、またはピコリットルのオーダーでありうる小容量の流体を取り扱う、デバイスおよび工程をデザイン、製造、定式化する技術を指す。マイクロ流体素子またはマイクロ流体システムは、マイクロメートルスケールのチャネルを含み、高レベルの自動化、処理時間の低減、ならびに試料および試薬の消費量の低下が可能である。
【0106】
本明細書において使用される、「蛍光」という用語は、原子または分子が、高度の電子状態から、低度の電子状態への量子遷移時に、測定可能な放射線を発する場合の発光の種類を指す。フルオロフォアは、光による励起時に、光を再放射しうる蛍光化合物である。具体的に述べると、フルオロフォアは、特異的波長の光エネルギーを吸収する結果として、フルオロフォアの電子の励起をもたらし、その後、フルオロフォアは、電子が、それらの基底状態に戻るときに、吸収された光エネルギーを、長波長において再放射する。
【0107】
本明細書において使用される、「化学発光」という用語は、化学反応の結果による、光の生成および放射を指す。化学発光の例は、生物発光である。
【0108】
本明細書において使用される、「生物発光」という用語は、酵素、タンパク質、タンパク質複合体、または他の生体分子により触媒される化学反応を介する、光の生成および放射を指す。生物発光において、発光化合物は、生物において見出される発光化合物である。生物発光化合物の例は、細菌ルシフェラーゼおよびホタルルシフェラーゼを含む。
【0109】
本明細書において使用される、「蛍光共鳴エネルギー移動」(FRET)という用語は、これらの分子が近接する場合に、発色団およびフルオロフォアなど、2つの感光性分子の間においてエネルギーが移送される過程を指す。まず、その電子励起状態にある、ドナーフルオロフォアは、非放射性双極子間カップリングを介して、エネルギーを、アクセプターフルオロフォアに移送しうる。次いで、アクセプターフルオロフォアは、異なる波長において、光を発する。この蛍光発光波長は、2つのフルオロフォアの距離および状態に応じて異なりうる。
【0110】
本出願の文脈において、「量子ドット」という用語は、半導体のナノ結晶を指す。量子ドットは、それらの組成および構造に基づき分類される場合があり、コア量子ドット、コアシェル量子ドット、および合金量子ドットを含むがこれらに限定されない。量子ドットはまた、水溶性の場合もあり、不溶性の場合もあり、第II~VI群の半導体材料、第III~V群の半導体材料、第IV群の半導体材料、またはこれらの組合せのうちの少なくとも1つによるコアを含みうる。量子ドット(QD)の例は、CdSe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb、AlS、AlP、AlAs、AlSb、PbS、PbSe、Ge、およびSi、ならびにこれらの三成分混合物および四成分混合物によるナノ結晶を含む。量子ドットは、その物理的サイズと、直接相関する、個別の量子化エネルギー発光スペクトルを有する。量子ドットは、FRETドナーとして作用する場合もあり、FRETアクセプターとして作用する場合もある。
【0111】
本明細書において使用される、「バイオセンサー」という用語は、核酸、タンパク質、炭水化物、または脂質などの生体分子を使用して、標的の生体物質、生物学的状態、もしくは生体反応、または化学物質、化学的状態、もしくは化学反応を検出し、生体物質、生物学的状態、もしくは生体反応、または化学物質、化学的状態、もしくは化学反応についての情報を、シグナルとして伝送するデバイスを指す。生体分子は、直接的化学結合または間接的結合により、バイオセンサーの表面上に固定化されうる。結合は、バイオセンサーの表面に貼付されたポリマー薄膜を介する結合であることが多い。一部の実施形態において、生体分子は、生体分子を、表面に貼付されたポリマー薄膜に、直接組み込むことにより、バイオセンサーの表面に固定化されうる。
【0112】
本明細書において、例示的に記載される本開示は、本明細書において、具体的に開示されていない、1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定の非存在下において、適切に実施されうる。したがって、例えば、「~を含むこと(comprising)」、「~を含むこと(including)」、「~を含有すること」などの用語は、拡張的に、かつ非限定的に読まれるモノとする。加えて、本明細書において援用される用語および表現は、限定する用語ではなく、記載する用語として使用されており、このような用語および表現の使用において、示され、記載された特色を有する同等物、またはこれらの部分を除外する意図は存在せず、特許請求される開示の範囲内において、多様な改変が可能であることが認識される。したがって、本開示は、好ましい実施形態および適宜の特色により具体的に開示されるが、本明細書において開示される、その中において実施された、本開示の改変および変動も、当業者により用いられる場合があり、このような改変および変動も、本開示の範囲内にあると考えられることを理解されたい。
【0113】
本明細書において、本開示について、広くかつ一般的に記載された。属開示の範囲内に収まる、より狭義の種および亜属の群分けの各々もまた、本開示の一部をなす。これは、削除される材料が、本明細書において具体的に列挙されているのかどうかに関わらず、任意の対象物を属から除外する条件または否定的限定を伴う本開示の属記載を含む。
【0114】
一部の実施形態において、酵素を1つまたは複数の特徴についてスクリーニングする方法について記載される。一部の実施形態において、方法は、複数の液滴を生成する工程であり、少なくとも1つの液滴が、酵素、反応基質;ならびに1つもしくは複数のレドックス補因子、または1つもしくは複数のレドックス補因子および1つもしくは複数の検出試薬を含み、酵素が、反応基質を、標的生成物に転換する工程を含む。方法はまた、液滴から発せられたシグナルを検出する工程であり、シグナルが、蛍光シグナル、生物発光シグナル、または化学発光シグナルであり、反応基質が酵素により標的生成物に転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかもしくは還元されると、シグナルが発せられるか、または液滴中の1つもしくは複数の検出試薬により標的生成物が後続生成物にさらに転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかもしくは還元されると、シグナルが発せられる工程も含みうる。
【0115】
一部の実施形態において、酵素を1つまたは複数の特徴についてスクリーニングする方法は、第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバーを含む複数のインキュベーションチャンバーであり、複数の液滴の連続流動を可能とするように構成された、複数のインキュベーションチャンバーを含むインキュベーション領域を含む流体素子内において、細胞を第1インキュベーションチャンバーから第2インキュベーションチャンバーに流動させながら、液滴内の細胞を培養して、複数の細胞を形成する工程;インキュベーション領域内の液滴を持続的に流動させる工程であり、液滴が、酵素、反応基質、ならびに1つもしくは複数のレドックス補因子、または1つもしくは複数のレドックス補因子および1つもしくは複数の検出試薬を含み、酵素が、反応基質を、標的生成物に転換する工程;および液滴から、シグナルを発生させる工程であり、シグナルが、蛍光シグナル、生物発光シグナル、または化学発光シグナルである工程の実施を含む。
【0116】
一部の実施形態において、レドックス補因子を含む、第1液滴を含み、液滴中のレドックス補因子の濃度が、5μM以上である、複数の液滴;液滴を含有するマイクロ流体チャネル;およびマイクロ流体チャネルと流体連結している液滴分取領域であり、マイクロ流体チャネルと隣接する電極のセットを含む、液滴分取領域を含む、流体システムについて記載される。
【0117】
一部の実施形態において、流体システムは、複数の液滴を含有し、少なくとも1つの液滴がレドックス補因子および検出試薬を含む、マイクロ流体チャネルを含む。一部の実施形態において、検出試薬は、レドックス補因子のレドックス対と反応して、発光シグナルをもたらすように構成される。
【0118】
一部の実施形態において、流体システムは、第1液体および複数の細胞を含有するように構成され、細胞のうちの少なくとも1つが酵素を含む、第1試薬チャンバーを含む。一部の実施形態において、流体システムは、反応基質を含有するように構成された第2試薬チャンバー;第1流体と非混和性である第2液体を含有するように構成され、少なくとも第1試薬チャンバーと流体連結している、分散チャンバー;第1液体と第2液体の融合を可能とするように構成された融合領域を含む。一部の実施形態において、流体システムは、融合領域と流体連結しているインキュベーション領域であり、流体連結した、第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバーを含み、第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバーがチャンバー間の液滴の連続流動を可能とするように構成された、複数のインキュベーションチャンバーを含む、インキュベーション領域を含む。一部の実施形態において、流体システムは、インキュベーション領域と流体連結している液滴分取領域を含む。一部の実施形態において、液滴分取領域は、検出領域、検出領域から下流にあり、液滴内の成分の検出に基づき複数の液滴を分取するように構成された、電極のセットを含む。一部の実施形態において、流体システムは、回収チャネルおよび廃液チャネルを含む。一部の実施形態において、流体システムは、インキュベーション領域と液滴分取領域との間に位置するバブルトラップを含む。一部の実施形態において、流体システムは、液滴分取領域内に第2分散媒チャンバーをさらに含む。
【0119】
一部の実施形態において、流体システムは、第1液体および複数の細胞を含有するように構成され、細胞のうちの少なくとも1つが酵素を含む、第1試薬チャンバー;反応基質を含有するように構成された第2試薬チャンバー;第1流体と非混和性である第2液体を含有するように構成され、少なくとも第1試薬チャンバーと流体連結している、分散チャンバー;第1液体と第2液体の融合を可能とするように構成された融合領域;融合領域と流体連結しているインキュベーション領域であり、第1インキュベーションチャンバーおよび第2インキュベーションチャンバーを含む複数のインキュベーションチャンバーを含む、インキュベーション領域;第1検出器を含む検出領域であり、第1検出器が、第1波長の第1発光シグナルおよび第2波長の第2発光シグナルを決定するように構成され、第1波長と第2波長とが異なる、検出領域;インキュベーション領域と流体連結している液滴分取領域;検出領域から下流にあり、液滴内の1つの成分または複数の成分の検出に基づき複数の液滴を分取するように構成された、電極のセット;回収チャネル;および廃液チャネルを含む。
【0120】
一部の実施形態において、方法は、参照シグナルと比較して検出された、発せられたシグナルのレベルに基づき、酵素を1つまたは複数の特徴についてスクリーニングする工程をさらに含み、この場合、参照シグナルと比較した発光シグナルのレベルの変化は、酵素が、1つまたは複数の特徴を有することを指し示す。
【0121】
一部の実施形態において、方法は、参照シグナルと比較して検出された、発せられたシグナルのレベルに基づき、液滴を分離する工程をさらに含む。
【0122】
一部の実施形態において、方法は、参照シグナルと比較して検出された、発せられたシグナルのレベルに基づき、液滴を分取する工程をさらに含む。
【0123】
一部の実施形態において、方法は、複数の液滴内において細胞を培養する工程をさらに含む。
【0124】
一部の実施形態において、培養する工程は、複数の液滴内において細胞を増殖させることを含む。
【0125】
一部の実施形態において、方法は、1つまたは複数の細胞を溶解させる工程をさらに含む。
【0126】
方法についての一部の実施形態において、検出する工程は、細胞内の酵素、または細胞表面に提示された酵素を検出することを含む。
【0127】
一部の実施形態において、検出する工程は、細胞外酵素を検出することを含む。
【0128】
一部の実施形態において、参照シグナルと比較して、弱いシグナルは、方法の、NADHの非存在下において検出される。
【0129】
一部の実施形態において、590nmの励起波長および620nmの発光波長を有する蛍光シグナルは、NADHの存在下において発せられる。
【0130】
一部の実施形態において、酵素はレドックス補因子依存性酵素であり、方法において、反応基質が酵素により標的生成物に転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかまたは還元されると、シグナルが発せられる。
【0131】
一部の実施形態において、酵素はレドックス補因子非依存性酵素であり、方法において、標的生成物が1つまたは複数の検出試薬により後続生成物にさらに転換される場合に、レドックス補因子が酸化されるかまたは還元されると、シグナルが発せられる。
【0132】
一部の実施形態において、工程a)における複数の液滴の生成は、方法において、各液滴内の宿主細胞を液滴内の培養培地と共にインキュベートして、反応基質、検出試薬、1つもしくは複数の検出試薬、溶解緩衝液、レドックス補因子、またはこれらの組合せを添加する前に、宿主細胞の数を増大させる工程をさらに含む。
【0133】
一部の実施形態において、液滴は、蛍光活性化液滴分取(FADS)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、および磁気活性化細胞分取(MACS)、音波制御技術、磁気制御技術、空気圧制御技術、熱制御技術、電気制御技術、ならびにこれらの組合せからなる群より選択される方法を使用することにより、分離される。
【0134】
一部のシステムおよび方法において、酵素の、1つまたは複数の特徴は、酵素活性、安定性、特異性、立体選択性、非天然基質を転換する能力、およびこれらの組合せからなる群より選択される。
【0135】
一部の実施形態において、方法は、分離液滴内の酵素のアミノ酸配列、ポリヌクレオチド配列、または両方をシーケンシングする工程をさらに含み、シーケンシングされた酵素が、酵素変異体ライブラリーを作成するのに使用されてもよい。
【0136】
方法についての一部の実施形態において、酵素は宿主細胞内において発現され、複数の液滴は宿主細胞またはその断片をさらに含む。
【0137】
一部の実施形態において、方法は、分取領域の上流において発光シグナルを検出すること、適宜、第1発光シグナルを液滴から発せられたシグナルと比較することをさらに含む。
【0138】
一部の実施形態において、方法は、第1発光シグナルおよび第2発光シグナルを検出する工程をさらに含み、第1発光シグナルおよび第2発光シグナル、または第1発光シグナルおよび第2発光シグナルからの導出シグナルを液滴から発せられたシグナルと比較する工程を含んでもよい。
【0139】
方法についての一部の実施形態において、分取領域の上流において発生したシグナルは、分取領域に伝送される。
【0140】
一部の実施形態において、方法は、分取電極のセットに電圧を印加する工程をさらに含む。
【0141】
一部の実施形態において、方法は、酵素を、その天然基質の転換の増大、その非天然基質の転換の増大、触媒活性の増大、立体選択性の増大、熱安定性の増大、所定のpH範囲内における安定性の増大、またはこれらの組合せについてスクリーニングする工程をさらに含む。
【0142】
一部の実施形態において、1つまたは複数のレドックス補因子が、NAD+、NADH、NADP+、NADPH、NAD+およびNADP+、ならびにNADHおよびNADPHからなる群より選択される、システムまたは方法について記載される。
【0143】
一部の実施形態において、複数の液滴のうちの各液滴が、酸化されたまたは還元されたレドックス補因子と反応して、発光シグナルをもたらす1つまたは複数の検出試薬をさらに含む、システムまたは方法について記載される。
【0144】
一部の実施形態において、レドックス補因子が、NADHもしくはNADPHまたは両方であり、1つまたは複数の検出試薬は、レサズリンおよびジアフォラーゼ;プロルシフェリン、ルシフェラーゼ、レダクターゼ、ATP、およびMg2+;ならびに量子ドットからなる群より選択される、システムまたは方法について記載される。
【0145】
一部の実施形態において、レドックス補因子が、NAD+もしくはNADP+または両方であり、1つまたは複数の検出試薬が、量子ドット;およびタンパク質バイオセンサーからなる群より選択される、システムまたは方法について記載される。
【0146】
一部の実施形態において、量子ドットが、CdSe/CdS/CdZnS/ZnS量子ドットである、システムまたは方法について記載される。
【0147】
一部の実施形態において、量子ドットが、カルボン酸およびウシ血清アルブミンおよびナイルブルー色素によりコーティングされた、CdSe/CdS/CdZnS/ZnS量子ドットである、システムまたは方法について記載される。
【0148】
一部の実施形態において、量子ドットが、水溶性である、システムまたは方法について記載される。
【0149】
一部の実施形態において、量子ドットが、3-メルカプトプロピオン酸によりコーティングされ、NAD+結合ドメインに連結された、CdSe/CdS/CdZnS/ZnS量子ドットである、システムまたは方法について記載される。
【0150】
一部の実施形態において、NAD+結合ドメインが、チオール化DBC1タンパク質センサーである、システムまたは方法について記載される。
【0151】
一部の実施形態において、参照シグナルと比較して、538nmの励起波長および595nmの発光波長を有する弱いシグナルが、NAD+の存在下において発せられる、システムまたは方法について記載される。
【0152】
一部の実施形態において、酵素が、レドックス補因子依存性酵素またはレドックス補因子非依存性酵素である、システムまたは方法について記載される。
【0153】
一部の実施形態において、宿主細胞が、哺乳動物細胞、植物細胞、細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、原虫細胞、藻類細胞、および古細菌細胞からなる群より選択される、システムまたは方法について記載される。
【0154】
一部の実施形態において、複数の液滴のうちの少なくとも1つまたは複数が、溶解緩衝液をさらに含む、システムまたは方法について記載される。
【0155】
一部の実施形態において、システムまたは方法が記載される。
【0156】
複数の液滴が、油中水滴、水中油中水滴、水中油滴、およびハイドロゲル液滴からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【0157】
一部の実施形態において、複数の液滴が、約10μm~100μmの間の直径を有する、システムまたは方法について記載される。
【0158】
一部の実施形態において、複数の液滴が、約30μmの直径を有する、システムまたは方法について記載される。
【0159】
一部の実施形態において、酵素が、細胞内酵素、表面提示酵素、または細胞外酵素からなる群より選択される、システムまたは方法について記載される。
【0160】
一部の実施形態において、酵素が、カンジダ・パラプシローシスに由来する二級アルコールデヒドロゲナーゼ(CpSADH)、スフィンゴモナス属種HXN-200に由来するエポキシドヒドロラーゼ(SpEH)、スチレンオキシドイソメラーゼ(SOI)、P450モノオキシゲナーゼ(P450pyr)、ロドコッカス属(Rodococcus)に由来するアミンデヒドロゲナーゼ(AmDH)、およびブタンジオールデヒドロゲナーゼ(BDHA)からなる群より選択される、システムまたは方法について記載される。
【0161】
一部の実施形態において、酵素が、単一酵素の酵素変異体ライブラリーより選択される酵素変異体であるか、または酵素が、異なる酵素の群より選択される、システムまたは方法について記載される。
【0162】
一部の実施形態において、補因子が、外因性補因子である、システムまたは方法について記載される。
【0163】
一部の実施形態において、内因性補因子濃度を含む少なくとも1つの細胞を各々が含有する1つまたは複数の液滴をさらに含み、外因性補因子濃度が内因性補因子濃度を超える、システムまたは方法について記載される。
【0164】
一部の実施形態において、分取領域の上流に位置する検出器をさらに含む、システムまたは方法について記載される。
【0165】
一部の実施形態において、バブルトラップをさらに含み、バブルトラップが真空ポートを含んでもよい、システムまたは方法について記載される。
【0166】
他の実施形態は、以下の請求項および非限定的実施例に示される。加えて、本開示の特色または態様が、マーカッシュ群との関連において記載される場合、当業者は、したがって、本発明はまた、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの亜群との関連においても記載されることを認識するであろう。
【実施例】
【0167】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を例示するように意図されており、本発明の全範囲を例示するものではない。
【0168】
[実施例1]
以下の実施例は、酵素のスクリーニングおよび分取のための、一部の、一般的材料および一般的方法について記載する。
【0169】
材料および方法
突然変異体ライブラリーの構築
突然変異体ライブラリーは、3つ~4つの、選択されたアミノ酸部位における、部位飽和突然変異誘発により構築した。PCRは、所望の部位において、縮重NDTまたはNNKコドン(または組合せ)を含有する、対応するプライマーにより実施した。PCR産物を、対応する制限酵素により消化し、発現ベクターにクローニングし、大腸菌(BL21、DE3)コンピテント細胞において形質転換した。各ライブラリーのプラスミドを抽出し、対応する標的部位における縮重コドンの導入の成功を確認するようにシーケンシングした。
【0170】
細胞の培養
所望の酵素を発現させる大腸菌を、5mLのLB培地中、12℃および250rpmにおいて、22時間にわたり培養した。2時間後に、IPTG(最終濃度0.5mM)を添加して、酵素の発現を誘導した。4,000gにおいて、2分間にわたりにおいて遠心分離することにより、細胞を採取し、リン酸緩衝液(50mM、pH7.4)により、2回にわたり洗浄し、リン酸緩衝液(50mM、pH7.4)中において、1mL当たりの細胞2×107個(OD600=0.015)の最終密度に再懸濁させた。
【0171】
細胞の封入
3チャネルフローフォーカシング型マイクロ流体チップを使用して、直径30μmの液滴を、少なくとも1秒間当たりの液滴1000滴の速度において作製した。作動時に、2つの水性試料を、1:1の比および1μL/分の流量において混合し、フッ素化油であるHFE-7500(界面活性剤を含有する)を、3μL/分の流量において供給した。
【0172】
液滴分取のために使用されたパラメータ
液滴を、分取チップに、100~1秒間当たりの液滴1000滴の速度において、回収および導入した。液滴は、単一の縦列をなして流過したが、スペーシング油を、5μL/分において供給することにより、各液滴間の間隔を拡大した。各液滴の蛍光シグナルは、光電子増倍管(PMT)検出器を伴う顕微鏡の200μmの視野を流過するときに登録した。PMTの電圧出力は、DAQデータ収集ユニット(National Instrument、USA)により処理し、MATLABソフトウェアにより記録した。これと並行して、同じPMT出力を、Arduino Dueマイクロコントローラーにより、500kHzの試料速度においてデジタル化した。シグナルが、あらかじめ設定された分取閾値と比較して、所望の範囲内に達したら、分取パルスを、下流の電子回路に送信し、増幅し、分取電極に送信して、液滴分取を誘発した。液流は、高精度シリンジポンプ(Pump11 Pico Plus Elite、Harvard Apparatus)により、ガラス製シリンジ(Hamilton)またはプラスチック製シリンジ(Terumo)およびPTFE製チューブを通して送液した。
【0173】
液滴融合のためのプロトコール
溶液を含有するチューブを、チップ上の対応する注入口に接続した後において、流量を、以下の通りに:2μL/分のスペーシング油、0.7μL/分の液滴、および0.2μL/分の融合溶液と設定した。
【0174】
次いで、関数発生器を、20kHzの周波数および1Vの振幅において使用し、増幅器に接続して、100Vのパルスを発生させた。増幅器からの接地端子および高電圧端子を、チップ上の、対応する電極に接続した。チャネル内の定常流に到達した後において、増幅器をオンに切り替え、融合を実施した。
【0175】
[実施例2]
以下の例は、ナイルブルーにより機能化された、NADH/NAD+検知量子ドットの合成について記載する。
【0176】
NADH検知QDの合成
(1)CdSeコアナノ結晶の合成:高蛍光発光CdSeナノ結晶は、既に報告されている手順から改変された手順により作った。典型的反応のために、25mLの3つ口フラスコ内の、0.2ミリモルのCdO、0.8ミリモルのステアリン酸、および2gのODEの混合物を、約200℃まで加熱して、無色透明の溶液を得た。この溶液を、室温に冷却した後において、ODA(1.5g)およびTOPO(0.5g)を、フラスコに添加した。窒素流下において、この系を、280℃に再加熱した。この温度において、2ミリモルのSeを、1.37gのODE中に溶解させることにより作られたセレニウム溶液を、速やかに注入した。次いで、増殖温度を、260℃に低下させた。メタノール中に沈殿させることにより、ナノ結晶を精製した。決定された反応時間後において、この系は、サイズを、約3.2nmとし、第1吸収ピークを、約580nmとするCdSeナノ結晶を発生させる。
【0177】
2)CdSe/CdS/CdZnS/ZnSの合成:クロロホルム中に溶解したCdSeナノ結晶(直径を3.2nmとする、1.07×107モルの粒子)を、25mLの3つ口フラスコ内の、1.5gのODAおよび3.5gのODEと混合した。フラスコを、180℃まで、1時間にわたり加熱して、系から、クロロホルムおよび残気を除去した。その後、系を、窒素流に切り替え、連続注入のために、反応混合物を、240℃にさらに加熱した。初回の注入は、0.38mLのCd注入用溶液(0.01M)であり、後続の注入溶液の量は、報告されている方法を使用して計算した。反応は、反応混合物を冷却させることにより終結させた。最終生成物は、クロロホルムにより希釈し、アセトンを、クロロホルム溶液に添加することにより沈殿させた。決定された反応時間後において、この反応は、第1吸収ピークを、約590nmとし、発光ピークを、616~620nmとする、CdSe/CdS/CdZnS/ZnS量子ドットをもたらす。
【0178】
(3)量子ドットの水溶化:3-メルカプトプロピオン酸(MPA)(400μL、4.59ミリモル)を、クロロホルム中の光学濃度を1.5とする量子ドットに添加し、溶液を振とうした。クロロホルム溶液は、不透明化した。次いで、量子ドットを、水中に溶解させた。
【0179】
(4)BSAコーティング量子ドットの調製:MPAキャッピング量子ドットを、10mMのHEPES緩衝液(pH7.4)10mMの1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(carodiimide)塩酸塩(EDC)を含有する、1000倍過剰量のウシ血清アルブミン(BSA)と混合し、混合物を、4℃において、24時間にわたり振とうした。限外濾過により、BSAコーティング量子ドットを得た。
【0180】
(5)ナイルブルーキャッピング量子ドットの調製:量子ドット粒子溶液に、BS3(ビス[スルホスクシンイミジル]スベリン酸エステル)原液(50mL;10mMのHEPES緩衝液、pH8中に1mg/mL)を添加し、混合物を、15分間にわたり振とうした。結果として得られた量子ドットを、50倍過剰量の原液ナイルブルー(3:2のエタノール/水中に1mg/mL)と混合し、混合物を、16時間にわたり振とうした。過剰量のナイルブルーを、10mMのHEPES緩衝液pH8に対する透析(分子量カットオフ:10k)により除去した。
【0181】
NAD+検知量子ドットの合成
量子ドットベースのNAD+バイオセンサーの合成についての詳細な手順は、下記に記載される。
【0182】
1)セレン化カドミウム(CdSe)コアナノ結晶の合成:高蛍光発光CdSeナノ結晶は、既に報告されている手順から改変された手順により作った。典型的反応のために、25mLの3つ口フラスコ内の、0.2ミリモルの酸化カドミウム(CdO)、0.8ミリモルのステアリン酸、および2gのオクタデカン(ODE)の混合物を、約200℃まで加熱して、無色透明の溶液を得た。この溶液を、室温に冷却した後において、オクタデシルアミン(ODA)(1.5g)およびトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)(0.5g)を、フラスコに添加した。窒素流下において、この系を、280℃に再加熱した。この温度において、2ミリモルのSeを、1.37gのODE中に溶解させることにより作られたセレニウム溶液を、速やかに注入した。次いで、増殖温度を、260℃に低下させた。メタノール中に沈殿させることにより、ナノ結晶を精製した。決定された反応時間後において、この系は、サイズを、約2.3nmとし、第1吸収ピークを、約528nmとするCdSeナノ結晶を発生させる。
【0183】
(2)CdSeの合成:コアCdS(2Ls)/Cd0.5Zn0.5S(3L)/ZnS(2Ls)マルチシェル量子ドット(QD)を合成した。クロロホルム中に溶解したCdSeナノ結晶(直径を2.3nmとする、1.02×107モルの粒子)を、25mLの3つ口フラスコ内の、1.5gのODAおよび3.5gのODEと混合した。フラスコを、180℃まで、1時間にわたり加熱して、系から、クロロホルムおよび残気を除去した。その後、系を、窒素流に切り替え、連続注入のために、反応混合物を、240℃にさらに加熱した。初回の注入は、0.38mLのCd注入用溶液(0.01M)であり、後続の注入溶液の量は、報告されている方法を使用して計算した。反応は、反応混合物を冷却させることにより終結させた。最終生成物は、クロロホルムにより希釈し、アセトンを、クロロホルム溶液に添加することにより沈殿させた。決定された反応時間後において、この反応は、第1吸収ピークを、約538nmとし、発光ピークを、595nmとする、CdSe/CdS/CdZnS/ZnS量子ドットをもたらす。
【0184】
(3)MPAキャッピングQDの調製:上記のQDを、4mLのメタノールの、クロロホルム中に1mLのQDへの添加に続く、8000rpmにおいて、10分間にわたる遠心分離により、クロロホルム溶液から沈殿させた。結果として得られる沈殿物を、1mLのクロロホルム中に再溶解させ、これに、200μLの3-メルカプトプロピオン酸(MPA)を添加した。1mMのNAOH溶液4mLを添加した後において、粒子を、水相に移した。水相を、1分間にわたる遠心分離により回収した。飽和NaClおよびメタノールに続く、遠心分離を使用する、2つの連続QD沈殿工程により、過剰量のMPAを除去した。結果として得られるMPAキャッピングQDを、1mLの10mMのHEPES緩衝液(pH7.4)中に再溶解させた。
【0185】
(4)チオール化DBC1(deleted in breast cancer 1)タンパク質の調製:DBC1タンパク質は、2-イミノチオランにより、タンパク質を処理して、約20のスルフヒドリル(sulfydril):タンパク質比において、スルフヒドリル残基を導入することにより調製した。1mLのPBS(pH7.4)中に溶解した、5mgのDBC1を、2mgの2-イミノチオラン(iminothilane)HClと反応させ、ボルテクシングしながら、4℃において、2時間にわたり保持した。結果として得られる溶液を、サイズ-除外遠心分離フィルターデバイス(Micron YM-30、Millipore)を介して濾過した。
【0186】
(5)DBC1タンパク質コーティングQDの調製:MPAキャッピングQDを、HEPES緩衝液(pH7.4)中のチオール化DBC1タンパク質と共に、4℃において、5日間にわたりインキュベートした。
【0187】
[実施例3]
以下の実施例は、標的酵素を含有する細胞のハイスループットスクリーニング/分取のための流体システムについて記載する。
【0188】
細胞内酵素または表面提示酵素のハイスループットスクリーニングのためのマイクロ流体システム
このシステムは、酵素のスクリーニングのための多様な構成要素を組み込み、
図5に示される通り、細胞内酵素または表面提示酵素による、補因子依存性反応および補因子非依存性反応のいずれのためにも使用することができた。標的酵素(変異体10
4~10
7個)の突然変異体ライブラリーを調製し、各細胞が、単一の酵素変異体だけを発現させる宿主微生物(細胞)に導入した。ライブラリーの細胞は、反応基質、NAD
+またはNADH、ならびに、要求される場合、検出酵素および/または溶解緩衝液を含有するマイクロ油中水滴(10~100μm)内の細胞を1個として封入した。このシステムは、全細胞または溶解細胞による細胞内酵素のほか、全細胞による表面提示酵素の全ての形態に適用することができた。
【0189】
図4A~4Cにおいて、補因子非依存性酵素反応の検出は、このような補因子およびその標的反応の高感度かつ正確な検出のために、酸化補因子または還元補因子を生成させるように、別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介して達成した。
図4A~4Eにおいて、標的反応の高感度かつ正確な検出は、補因子依存性酵素による、標的酵素反応から生成された、還元補因子または酸化補因子の、生物発光または蛍光を介する検出により達成した。
【0190】
図4Aのシステムは、全細胞内の、補因子依存性細胞内酵素または補因子非依存性細胞内酵素のスクリーニングを示す。単一の酵素変異体を発現させる単一細胞の封入の後において、反応基質、検出酵素(酵素2)、および酸化補因子または還元補因子を、たやすく含有する液滴をインキュベートした。細胞内に拡散した基質は、細胞内酵素変異体により、生成物に転換された。結果として得られ、細胞外に拡散した生成物は、検出酵素(酵素2)によりさらに転換されて、定量的に検出されうる、還元補因子または酸化補因子をもたらした。所望のシグナルレベルを伴う液滴の分取は、所望の触媒性能を伴う変異体を指し示した。
【0191】
図4Bにおけるシステムは、表面提示/補因子非依存性酵素のスクリーニングを示す。単一の酵素変異体を発現させる単一細胞の封入の後において、反応基質、検出酵素(酵素2)、および酸化補因子または還元補因子を、たやすく含有する液滴をインキュベートした。生体内変換生体内変換は、表面提示酵素により、細胞外において行われ、これに続き、還元補因子または酸化補因子を生成させるように、別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介する、高感度かつ正確な検出、およびこれらの液滴の分取を行った。
【0192】
図4Cにおけるシステムは、溶解細胞による、NAD(P)
+非依存性細胞内酵素またはNAD(P)H非依存性細胞内酵素のスクリーニングを示す。単一の酵素変異体を発現させる単一細胞の封入の後において、反応基質、溶解緩衝液、検出酵素(酵素2)、および酸化補因子または還元補因子を、たやすく含有する液滴をインキュベートした。標的生体内変換は、溶解細胞から、液滴に放出された細胞内酵素により行われた。これに続き、還元補因子または酸化補因子を生成させるように、別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介する、高感度かつ正確な検出、およびこれらの液滴の分取を行った。
【0193】
図4Dにおけるシステムは、表面提示/補因子依存性酵素のスクリーニングを示す。単一の酵素変異体を発現させる単一細胞の封入の後において、反応基質および酸化補因子または還元補因子を、たやすく含有する液滴をインキュベートした。生体内変換は、表面提示酵素により、細胞外において行われた。これに続き、還元補因子または酸化補因子の、高感度かつ正確な検出、およびこれらの液滴の分取を行った。
【0194】
図4Eにおけるシステムは、溶解細胞による、補因子依存性細胞内酵素のスクリーニングを例示する。単一の酵素変異体を発現させる単一細胞の封入の後において、反応基質、溶解緩衝液、および適切な補因子を、たやすく含有する液滴のインキュベーションを行った。細胞内酵素は、溶解細胞から、液滴に放出された。標的生体内変換は、酵素により実施され、これに続き、酸化補因子または還元補因子の高感度かつ正確な検出、およびこれらの液滴の分取を行った。
【0195】
活性レベルまたは発現レベルが低度である、細胞外酵素のほか、細胞内酵素および表面提示酵素のハイスループットスクリーニングのためのマイクロ流体システム
このシステムは、
図5において例示される通りに、活性レベルまたは発現レベルが低度である、補因子依存性細胞外酵素または補因子非依存性細胞外酵素、ならびに補因子依存性細胞内酵素または補因子非依存性細胞内酵素、および補因子依存性表面提示酵素または補因子非依存性表面提示酵素の両方をスクリーニングするための、液滴内の細胞の増殖および液滴融合を伴う、多様な構成要素を組み込んだ。このシステムにおいて、まず、単一の大腸菌細胞を、液滴内部の培養培地と共に封入した。20~40℃におけるインキュベーション、および最適の振とう条件により、液滴内部の単一細胞を繁殖させた。次いで、液滴融合を介して、反応基質、適切な補因子、ならびに、要求される場合、検出酵素および/または溶解緩衝液を、液滴に導入した。このシステムは、全細胞または溶解細胞を伴い、活性レベルまたは発現レベルが低度である、全ての細胞内酵素のほか、細胞外酵素に適用することができた。
【0196】
図5A~5Cにおいて、補因子非依存性酵素反応の検出は、高感度かつ正確な検出のために、酸化補因子または還元補因子を生成させるように、別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介して達成した。
図5D~5Eにおいて、標的反応の高感度かつ正確な検出は、補因子依存性酵素による、標的酵素反応から生成された、NAD(P)HまたはNAD(P)
+の、生物発光または蛍光を介する検出により達成した。
【0197】
図5Aのシステムは、全細胞内における活性レベルまたは発現レベルが低度である、補因子依存性細胞内酵素または非依存性細胞内酵素のスクリーニングを示す。培養培地中の、単一の酵素変異体を発現させる単一細胞の封入の後において、液滴内において、細胞を増殖させ、これに続き、液滴融合を介して、反応基質、検出酵素(酵素2)、および適切な補因子の、液滴への添加を行った。細胞内に拡散した基質は、細胞内酵素変異体により、生成物に転換された。結果として得られ、細胞外に拡散した生成物は、検出酵素(酵素2)によりさらに転換されて、高感度かつ正確な検出のための酸化補因子または還元補因子をもたらした。高シグナルを伴う液滴の分取は、所望の触媒性能を伴う変異体を指し示した。
【0198】
図5Bにおけるシステムは、補因子非依存性細胞外酵素のスクリーニングを示す。培養培地中の、単一の酵素変異体を発現させる単一細胞の封入の後において、液滴内において、細胞を増殖させ、これに続き、液滴融合を介して、反応基質、検出酵素(酵素2)、および適切な補因子の、液滴への添加を行った。次いで、液滴をインキュベートし、生体内変換は、細胞外酵素により、細胞外において行われた。これに続き、酸化補因子または還元補因子を生成させるように、別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介する、高感度かつ正確な検出、およびこれらの液滴の分取を行った。
【0199】
図5Cにおけるシステムは、溶解細胞を使用する、活性レベルまたは発現レベルが低度である、細胞内補因子非依存性酵素のスクリーニングを示す。培養培地中の、単一の酵素変異体を伴う単一細胞の封入の後において、液滴内において、細胞を増殖させ、これに続き、液滴融合を介して、反応基質、検出酵素(酵素2)、溶解緩衝液、および適切な補因子の、液滴への添加を行った。次いで、液滴をインキュベートした。標的生体内変換は、溶解細胞から、液滴に放出された細胞内酵素により実施された。これに続き、酸化補因子または還元補因子を生成させるように、別の酵素反応による、標的生体内変換生成物の転換を介する、高感度かつ正確な検出、およびこれらの液滴の分取を行った。
【0200】
図5Dにおけるシステムは、細胞外補因子依存性酵素のスクリーニングを示す。培養培地中の、単一の酵素変異体を伴う単一細胞の封入の後において、液滴内において、細胞を増殖させ、これに続き、液滴融合を介して、反応基質および適切な補因子の、液滴への添加を行った。これらの次いで、液滴をインキュベートした。生体内変換は、細胞外酵素により、細胞外において行われた。これに続き、酸化補因子または還元補因子の高感度かつ正確な検出、およびこれらの液滴の分取を行った。
【0201】
図5Eにおけるシステムは、溶解細胞を使用する、活性レベルまたは発現レベルが低度である、補因子依存性酵素のスクリーニングを示す。培養培地中の、単一の酵素変異体を伴う単一細胞の封入の後において、液滴内において、細胞を増殖させ、これに続き、反応基質、溶解緩衝液、および適切な補因子の、液滴への添加を行った。これらの次いで、液滴をインキュベートした。標的生体内変換は、溶解細胞から、液滴に放出された細胞内酵素により実施された。これに続き、酸化補因子または還元補因子の高感度かつ正確な検出、およびこれらの液滴の分取を行った。
【0202】
マイクロ流体法による、NAD(P)
+およびNAD(P)Hの高感度かつ正確な検出のための、一般アッセイ
マイクロ液滴内の酵素反応から生成される、NAD(P)
+またはNAD(P)Hを検出するのに、マイクロ流体法のための、高感度かつ異なる適用を伴う、多様なハイスループットアッセイを開発した。アッセイを、表1にまとめる。
【表1】
【0203】
NAD(P)Hの直接的蛍光検出
NADHは、量子効率を0.1とする蛍光分子である。340nmにおいて励起されると、NADHは、450nmにおける、その固有の内因性蛍光もまた伴って検出される場合がある。これと比較して、NAD
+は、顕著に異なるスペクトル特色を有し、同じ条件下において検出可能ではない。マイクロ滴定プレート内の、NADH蛍光(340nmの励起波長および450nmの発光波長を有する)の、直接的検出結果を、
図6Aに示す。蛍光シグナルの強度は、40~300μMの範囲のNADH濃度と、極めて良好な直線関係を示した。
【0204】
検出は、直径を30μmとするマイクロ流体液滴内、および多様なNADH濃度(50、100、200、400、および800μM)においてさらに検証した。液滴内のNADHからの蛍光シグナルは、CMOSカメラにより捕捉することができ、平均値蛍光強度は、ImageJソフトウェアによる画像解析を介して計算した(
図6B)。蛍光強度は、シグナル対ノイズ比(S/N)を8.1±1.1として、NADH濃度と、直線的に相関した。これと比較して、PMTによる検出は、0.5±0.2という、はるかに低値のS/Nもたらしたので、直接的な蛍光検出を使用して、CMOSカメラを使用することを要求する、画像ベースの分取システムを開発した(
図7)。
【0205】
レゾルフィンの形成による、NAD(P)Hの蛍光検出
より高感度のアッセイを開発するために、赤色蛍光分子の形成をもたらすカスケード反応を組み込んだ。
図6Eに示される通り、NAD(P)Hは、ジアフォラーゼの存在下において、弱いフルオロフォアであるレサズリンと、急速に反応して、励起波長を540nmとして、590nmにおいて検出されうる、強い赤色蛍光生成物である、レゾルフィンをもたらす。この酵素反応のカップリングは、高度に蛍光発光性であるレゾルフィンの形成を、目的の酵素の触媒活性と連結した。マイクロ滴定プレート試験において、レゾルフィンの蛍光シグナルは、10~500μMの範囲のNAD(P)H濃度と、極めて良好な直線関係を示し、検出限界は、10μM(
図6C)である。レサズリンベースのNAD(P)Hの検出は、マイクロ流体法によりさらに検証した(
図6D)。NAD(P)H濃度が異なる液滴のレサズリンからの蛍光シグナルは、光電子増倍管(PMT)検出器により決定した。結果は、蛍光強度と、100~400μMのNAD(P)H濃度との直線関係を示した。100μMのNAD(P)Hの存在下において、シグナル対バックグラウンドノイズ比は、2.5±0.7である。この方法は、NAD(P)Hに、高度に特異的であり、NAD(P)
+の存在は、蛍光シグナルに影響を及ぼさなかった。
【0206】
生物発光による、NADHの検出
NADHを検出するための、生物発光ベースのバイオセンサーの使用は、より高感度の検出をもたらした。本実施例において、NADHの検出は、ルシフェラーゼ(組換え甲虫ルシフェラーゼ)、ATP、およびルシフェラーゼ活性のためのMg2
+、ならびにNADHの存在下において、レダクターゼにより、D-ルシフェリンに還元され、これにより、発光シグナルを発生させうるプロルシフェリンを含有する、市販の生物発光型NADH検出キット(NADH-Glo、Promega)により実施した(
図8A)。
【0207】
マイクロ滴定プレートにおいて方法を精査したところ、蛍光ベースの方法と比較して、はるかに低値の検出限界(0.1μM)を示した。直線的検出範囲は、0.1μM~25μMである(
図8B)。生物発光アッセイにより、マイクロ流体液滴内のNADHを検出するために、PMT検出器を使用して、NADHの存在下において、生物発光を捕捉した。結果は、5μMのNADHという低値の検出限界を示し、5~50μMの範囲にわたり、ほぼ直線的に応答した(
図8C)。方法は、NAD
+の存在に応答しなかった。
【0208】
マイクロ流体システムにおいて、生物発光アッセイを使用して、1-フェニル-1,2-エタンジオール(PED)のBDHA触媒反応から生成される、NADHの検出についてもまた精査した。KP緩衝液(pH7.5、50mM)中において、BDHAにより触媒されるPEDの反応は、マイクロ液滴内において行った。液滴内の試薬の最終濃度は、100μMのPED、0.8mg/mLのBDHA、および0.5mMのNAD
+であった。溶液を含有すること酵素および基質のほか、NAD
+を、1:1のv/v比において含有する、生物発光アッセイ試薬溶液を、2つの個別の注入口から注入し、液滴が形成されたら、混合した。液滴は、室温において、2時間にわたるインキュベーションの後に、PMT検出器により解析した(
図9)。
【0209】
本発明者による検量線を使用する、いくつかの液滴ピークについての解析から得られる、NADH濃度の定量は、21±4μMの濃度をもたらした。この結果は、2時間後における、96ウェルプレート実験からの結果(23.5μM)と符合した。
【0210】
FRET効果を介する、量子ドットによる、NADHの検出
いかなる特定の理論にも束縛されることを望まずに述べると、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)とは、発色団およびフルオロフォアなど、2つの感光性分子の間においてエネルギーが移送される過程であると考えられる。まず、その電子励起状態にある、ドナーフルオロフォアは、非放射性双極子間カップリングを介して、エネルギーを、アクセプターフルオロフォアに移送することが可能であり、次いで、FRETシステムの蛍光発光は、2つのフルオロフォアの距離および状態に応じて異なりうる。
【0211】
FRET効果による、量子ドットベースのNADHセンサーを開発した(
図10)。高度に蛍光発光性であるCdSe量子ドットを、CdSe/CdS/CdZnナノ結晶、カルボン酸、およびウシ血清アルブミンによりコーティングして、励起波長を590nmとし、蛍光発光波長を、616~620nmとする、量子ドットコアをもたらした。NADHの検出のために、FRET効果を介する蛍光を減衰させるナイルブルーを、量子ドットの表面とコンジュゲートさせた。NADHの存在下において、ナイルブルーは、還元され、量子ドットの蛍光は、回復した。蛍光強度は、NADHの濃度と、緊密に関連するため、定量的検出を可能とした。量子ドットによるNADHの検出を、マイクロ流体システムにおいて調べた(
図11)。NADHは、シグナル対ノイズ比を3として、>500μMのNADH濃度において、たやすく検出することができた。
【0212】
マイクロ流体法による、NAD
+の、高感度かつ正確な検出のための、一般アッセイ
タンパク質バイオセンサーによる、NAD
+の検出
NAD
+の定量的検出のために、蛍光タンパク質ベースのNAD
+バイオセンサーを開発した。バイオセンサーは、蛍光コアドメイン(励起波長を488nmとし、発光波長を520nmとする)と、二部NAD
+結合ドメインとからなった。この設定において、コアドメインからの蛍光は、結合したNAD
+の濃度に対応する、NAD
+の結合により消光した(
図12A)。バイオセンサーの蛍光強度と、NAD
+の濃度とは、1~1000μMのNAD
+の範囲において、負に相関した。タンパク質バイオセンサーによるNAD
+の検出は、多様なマイクロ流体液滴中NAD
+濃度において精査した。50μM~1000μMのNAD
+の範囲において、バイオセンサーの蛍光強度と、NAD
+濃度との、ほぼ直線的な相関が示された。マイクロ液滴内において、バイオセンサーを使用する、NAD
+の検出は、1mMのNAD
+により裏付けられた。NAD
+を含有する液滴は、消光機構のために、21%という低度の蛍光シグナルを示した(
図12B)。
【0213】
FRET効果を介する、量子ドットによるNAD
+の検出
FRET効果を介する、量子ドット蛍光センサーにより、NAD
+検知のための別の例を開発した(
図13A)。高度に蛍光発光性であるCdSe量子ドットコアを、3-メルカプトプロピオン酸によりコーティングし、NAD
+結合ドメイン(チオール化DBC1タンパク質センサー)と連結した。タンパク質センサーは、NAD
+に特異的に結合することが報告された。このような結合が生じると、量子ドットの蛍光は、効果的に消光した(
図13B)。結果として、量子ドットセンサーの蛍光シグナルは、NAD
+濃度と負に相関した。これは、蛍光シグナルの変化に基づく、NAD
+の正確な決定を可能とした。
【0214】
量子ドットNAD+センサーの性能を探索した。励起波長を、538nmとし、蛍光発光の検出波長を、595nmとして、定量的なNAD+の消光を、さらに精査および検証した。極めて低値のNAD+濃度においても、NAD+の濃度が増大するにつれ、センサーの蛍光は消光された。センサーは、検出限界を、30μMとし、センサー濃度を、1.5μMとし、固定インキュベーション時間を、20分間とする、NAD+の検出を可能とした。NAD+濃度が、250μM以上に到達すると、90%を超える蛍光シグナルが消光する。量子ドットセンサーは、NAD+に、高度に特異的であった。NAD(P)Hの存在は、蛍光シグナルに影響を及ぼさなかった。
【0215】
マイクロ流体法によるNAD
+の検出のために、1.5μMのセンサーの蛍光を、異なる濃度のNAD
+により精査した。200μMのNAD
+と共にインキュベートされると、センサーの蛍光シグナルは、約25%低減され、250μMのNAD
+の存在下において45%低減された(
図14A)。これは、液滴の蛍光強度が、NAD
+濃度と、負に相関することを示す、蛍光顕微鏡解析により、さらに確認された(
図14B)。
【0216】
マイクロ流体素子のデザインおよび開発
シグナルによる液滴の検出
NAD(P)H含有液滴の蛍光シグナルまたは生物発光シグナルは、電圧類似シグナルを出力する、PMT検出器により、信頼できる形において検出された。Arduinoマイクロコントローラー(Due)を、シグナルの収集、A/D転換、および処理のために使用した。マイクロコントローラーを、8ビットウィンドウ移動平均フィルターにより、300~500kHzの試料速度を可能とする、フリーモードにおいて作動するように設定した(
図15)。これは、シグナルの変化の、極めて正確な検出を可能とした。A/D転換は、蛍光シグナルを、0.1%の差違により差別化することが可能である、10ビットの分解能により実施した。
【0217】
次いで、処理シグナルを、あらかじめ設定された分取閾値に対してマッチさせた。シグナルレベルが、この閾値から所望の範囲に到達したら、マイクロコントローラーは、デジタル式分取パルスをアウトプットし、これは、増幅後における分取行為を可能とした。
【0218】
液滴分取のためのマイクロ流体素子
液滴分取デバイスを、
図16に例示する。目的の試料を含有する液滴を、デバイスに、連続注入し、高容量のスペーシング油を注入することにより、液滴間空間を拡大した。次いで、各液滴からの蛍光シグナルまたは生物発光シグナルを検出した。分取行為を行わない場合、全ての液滴は、廃液チャネルに流過した(
図17A)。シグナルが、所望のレベルを上回るレベルに到達したら、分取パルスにトリガーをかけた。パルスを増幅して、分取電極間に、200~1000Vの電解を発生させ、これにより、陽性液滴を、流路から、廃液チャネルに引き込んだ(
図17B)。
【0219】
上記において言及されたシグナル検出ハードウェアとカップリングさせて、蛍光ベースの、10%の陽性蛍光液滴の、90%の空(またはブランク)液滴からの分取を介して、分取デバイスを検証した。分取の2時間後、回収チャネル内の液滴は、陽性液滴のうちの92%を含有した(
図17D)ことから、試料の9倍のエンリッチメントを表した。廃液チャネル内に残存した陽性液滴は、0.5%だけであったので、95%の効率が観察された(
図17C)。
【0220】
同様に、NADHを含有する液滴の、15%のNADH液滴と、85%の空(またはブランク)液滴との混合物からの分取も、裏付けられた(
図17E~17F)。NADH濃度は、10mMであり、分取は、450nmにおけるNADH蛍光に基づいた。分取の2時間後、回収チャネルは、NADH含有液滴のうちの60%を含有したことから、4倍のエンリッチメントを示した。
【0221】
2-オクタノールの、野生型CpSADHとの反応から形成される、液滴ベースのNADHのエンリッチメント
マイクロ流体分取デバイスを、NADHの生成反応を触媒する単一の大腸菌(CpSADH)細胞を含有する、10%の陽性液滴と、90%の空(またはブランク)液滴との分取について検証した。陽性液滴内において、NAD
+による2-ブタノールの酸化を触媒する、CpSADHを放出して、化学量論量のNADHを生成させるように、単一細胞を溶解させた。液滴内の試薬は、NADHと反応して、強い赤色蛍光をもたらした。他方、空(またはブランク)液滴は、NADHを生成させず、このため、低度のバックグラウンド蛍光だけを示した。高度の蛍光を伴う液滴を分取し、回収チャネル内に回収した(
図18)。分取された画分は、70%の陽性液滴を含有したことから、7倍のエンリッチメントを示す。
【0222】
上記の実施例において、液滴分取速度は、1秒間当たりの液滴2000滴に到達することができた。この高速分取は、本発明のプラットフォームの高感度により達成することができた。
【0223】
液滴融合デバイス
液滴融合とは、任意の試薬を、形成された液滴に再導入し、精緻なマルチステップスクリーニングを可能とする技法である。
図19Aにおいて例示される液滴融合を達成するように、融合デバイスを開発した。液滴を、デバイスにロードし、スペーシング油を水平チャネルに通してフラッシングした。新たな試薬を注入して、液滴を、融合デバイスを通して流過させるように、チャネルの中間部に、垂直方向のチャネルを取り付けた。注入容量および注入時間は、電極により正確に制御した。
【0224】
流量を、1秒間当たりの液滴10滴とする、90%の空(またはブランク)液滴と、10%のブルー蛍光液滴との混合物により、融合デバイスを作製し、調べた。赤色蛍光色素を、液滴に対する容量比を30%とする融合を介して、液滴混合物に導入した。
図19Bに示される通り、融合工程は、大きな一貫性を示し、変動はわずかに5%であり.青色液滴の直後に後続する空(またはブランク)液滴内の青色蛍光色素の精査は、試料キャリーオーバー(液滴間交差夾雑)が、7%未満であったことを示す。
【0225】
マイクロ流体スクリーニングプラットフォームを使用する、酵素の指向性進化
CpSADHを進化させて、マイクロ流体ベースのハイスループット酵素スクリーニング、および産業的に有用な酵素による進化を裏付けた。変異体20,000個を伴うCpSADHのターゲティングライブラリーを構築し、各細胞が、単一の酵素変異体だけを発現させる大腸菌に導入した。変異体を含有する大腸菌細胞を、適切な抗生剤を含有する、1mLのLB培地中、37℃において増殖させた。その後、OD600≒0.6の細胞、IPTG(0.5mM)を添加して、酵素の発現を誘導した。22℃において、12時間にわたり、細胞を、持続的に増殖させ、酵素を発現させた。遠心分離(4000g、10分間)により、これらを採取し、2回にわたり洗浄し、適切な緩衝液中に再懸濁させた。3注入口型マイクロ流体チップを使用して、マイクロ水滴内に、細胞を封入した。シリンジポンプを使用して、ライブラリー細胞(OD600≒0.02)、基質としてのラセミ体2-オクタノール、および検出酵素を含有する溶液を、1つの注入口から注入し、赤色蛍光試薬、溶解緩衝液、およびNAD+を含有する、他の溶液を、別の注入口から注入し、第3注入口を、油のために使用した。次いで、細胞を、反応基質、検出酵素、およびNAD+補因子を含有するマイクロ油中水滴内の細胞を1個として封入した。液滴は、生成されたNADHから得られる、それらの赤色蛍光シグナルレベルに従い分取した。分取された液滴は、DNA回収、ならびにそれらの活性情報および配列情報についてのさらなる解析にかけた。突然変異体である、CpSADH-L55Y/F285I/W286Cは、R光学異性体について、活性を、野生型(WT)と比較して、175倍に増大させることが同定された。また、突然変異体が、ラセミ混合物についても、87.4%の転換を達成したのに対し、WTは、62%に到達するにとどまった。この新たな酵素は、WTと異なり、廉価において利用可能なラセミ体2-オクタノールの、高度に所望される、対応するケトンへの転換において、R光学異性体の空費を回避するように、両方の光学異性体を利用することができた。
【0226】
[実施例4]
実施例4:溶解細胞、およびNADHの検出を使用する、NAD
+依存性細胞内酵素としてのカンジダ・パラプシローシスに由来する二級アルコールデヒドロゲナーゼ(CpSADH)に対する、指向性進化およびマイクロ流体ハイスループットスクリーニング
アルコールデヒドロゲナーゼ(CpSADH)の、非エナンチオ選択性アルコールの酸化に向けた、指向性進化を実施した。本実施例は、生成されたNADHの検出により、液滴を分取するための、
図4Eにおけるシステムについて、例を裏付けた。マイクロ流体システムを使用することにより、CpSADHの突然変異体20,000個を上回るライブラリーを、スクリーニングした。二級アルコールデヒドロゲナーゼであるCpSADHは、酵素の中鎖デヒドロゲナーゼ/レダクターゼ(MDR)ファミリーのメンバーである。CpSADHは、広範な基質範囲にわたり、アルコール~対応するケトン間における、可逆性レドックス反応を触媒する。その高度な立体選択性のために、理論的転換率は、ラセミ体アルコールの酸化について、わずか50%である。CpSADHを、アルコールの酸化のための、Rエナンチオ選択性なおまたは非エナンチオ選択性の増強を示す操作について選択した(R)-2-オクタノールを、CpSADHの活性ポケットにドッキングさせ、4つのアミノ酸残基(Leu55、Leu119、Phe285、およびTrp286)を、同時的な飽和突然変異誘発について選択した。NDT縮重コドンを、部位を置換するのに選んだ。次いで、重複伸長PCR法を介して、突然変異誘発ライブラリーを創出した。ライブラリーの遺伝子断片は、突然変異誘発プライマーおよびフランキングプライマーにより生成した。コンビナトリアル突然変異体ライブラリーは、変異体20,736個を含有する。変異体を含有する大腸菌細胞を、適切な抗生剤を含有する、1mLのLB培地中、37℃において増殖させた。その後、OD600≒0.6の細胞、IPTG(0.5mM)を添加して、酵素の発現を誘導した。22℃において、12時間にわたり、細胞を、持続的に増殖させ、酵素を発現させた。遠心分離(4000g、10分間)により、これらを採取し、2回にわたり洗浄し、適切な緩衝液中に再懸濁させた。3注入口型マイクロ流体チップを使用して、マイクロ水滴内に、細胞を封入した。シリンジポンプを使用して、ライブラリー細胞(OD600≒0.02)および基質としてのアルコールを含有する溶液を、1つの注入口から注入し、赤色蛍光試薬、溶解緩衝液、およびNAD
+を含有する、他の溶液を、別の注入口から注入し、第3注入口を、油のために使用した。ライブラリーの細胞は、反応基質、溶解緩衝液、およびNAD
+補因子を含有するマイクロ油中水滴内の細胞を1個として封入した。インキュベーションの後、液滴をスクリーニングし、蛍光強度が、指定された閾値より高度である液滴を、可能なヒットとして同定し、これにより、分取した。回収された液滴を、分取後解析にかけて、酵素配列を得た。(R)-2-ブタノールに対して、野生型より高度の活性を示す、4つ変異体である、突然変異体1~突然変異体4(それぞれ、CpSADH-L55V/L262F/W286G、CpSADH-L55Y/F285I/W286C、CpSADH-L55V/W286C、およびCpSADH-F285I/W286G、)を含む、酵素突然変異体の群を同定した(表2)。突然変異体2のkcat/Kmは、R光学異性体について、WTと比較して、175倍の増大を示した。(表3)。突然変異体のさらなる特徴付けが、NADH再生システムを使用して、ラセミ体2-オクタノールの、2-オクタノンへの全転換を示したのに対し、WTは、同じ反応条件において、49%の転換が可能であった(
図21)。
表2:マイクロ流体ベースのスクリーニングから得られるラセミ体2-オクタノールの酸化について最高性能である、突然変異体CpSADH
表3:S-2-オクタノール/R-2-オクタノールの光学異性体に対する、CpSADHの野生型(WT)および突然変異体の、触媒反応速度定数
【表2】
【0227】
[実施例5]
実施例5:全細胞および標的生成物のさらなる酵素反応を介するNADH検出を使用する、補因子非依存性細胞内酵素としてのスフィンゴモナス属種HXN-200に由来するエポキシドヒドロラーゼ(SpEH)に対する、指向性進化およびマイクロ流体ハイスループットスクリーニング
本実施例は、
図4Aに記載される手順による、エポキシドヒドロラーゼ(EH)のスクリーニングおよび進化を裏付けた。変異体10
4~10
7個を伴う、スフィンゴモナス属種HXN-200に由来するエポキシドヒドロラーゼ(SpEH)の突然変異体ライブラリーを調製し、各細胞が、単一の酵素変異体だけを発現させる、宿主微生物(大腸菌)に導入した。変異体を含有する大腸菌細胞を、適切な抗生剤を含有する、1mLのLB培地中、37℃において増殖させた。その後、OD600≒0.6の細胞、IPTG(0.5mM)を添加して、酵素の発現を誘導した。22℃において、12時間にわたり、細胞を、持続的に増殖させ、酵素を発現させた。遠心分離(4000g、10分間)により、これらを採取し、2回にわたり洗浄し、適切な緩衝液中に再懸濁させた。3注入口型マイクロ流体チップを使用して、マイクロ水滴内に、細胞を封入した。シリンジポンプを使用して、ライブラリー細胞(OD600≒0.02)、基質としてのエポキシド、および検出酵素(ADH)を含有する溶液を、1つの注入口から注入し、赤色蛍光試薬およびNAD
+を含有する、他の溶液を、別の注入口から注入し、第3注入口を、油のために使用した。次いで、細胞を、エポキシド、検出酵素、およびNAD
+補因子を含有するマイクロ油中水滴内の細胞を1個として封入した。液滴は、ジオールからケトアルコールへのカスケード反応を介してもたらされる、NADHから得られる赤色蛍光シグナルに従い分取した。分取された細胞を、さらなる解析にかけるのに、適切な抗生剤を含有するLB寒天プレートに播種して、それらの活性について解析し、それらの配列情報を得た。
【0228】
[実施例6]
実施例7:全細胞および標的生成物のさらなる酵素反応を介するNADH検出を使用する、補因子非依存性細胞内酵素としてのスチレンオキシドイソメラーゼ(SOI)に対する、指向性進化のためのマイクロ流体ハイスループットスクリーニング
本実施例は、
図4Aに記載される手順による、スチレンオキシドイソメラーゼ(SOI)のスクリーニングおよび進化を裏付けた。SOI(変異体10
4~10
7個)の突然変異体ライブラリーを調製し、各細胞が、単一の酵素変異体だけを発現させる、宿主微生物(大腸菌)に導入した。変異体を含有する大腸菌細胞を、適切な抗生剤を含有する、1mLのLB培地中、37℃において増殖させた。その後、OD600≒0.6の細胞、IPTG(0.5mM)を添加して、酵素の発現を誘導した。22℃において、12時間にわたり、細胞を、持続的に増殖させ、酵素を発現させた。遠心分離(4000g、10分間)により、これらを採取し、2回にわたり洗浄し、適切な緩衝液中に再懸濁させた。3注入口型マイクロ流体チップを使用して、マイクロ水滴内に、細胞を封入した。シリンジポンプを使用して、ライブラリー細胞(OD600≒0.02)、基質としてのスチレンオキシド、および検出酵素を含有する溶液を、1つの注入口から注入し、赤色蛍光試薬およびNAD
+を含有する、他の溶液を、別の注入口から注入し、第3注入口を、油のために使用した。次いで、細胞を、反応基質、検出酵素、およびNAD
+補因子を含有するマイクロ油中水滴内の細胞を1個として封入した。液滴は、フェニルアセトアルデヒドからフェニル酢酸へのカスケード反応を介してもたらされる、NADHから得られる赤色蛍光シグナルに従い分取した。分取された細胞を、さらなる解析にかけるのに、適切な抗生剤を含有するLB寒天プレートに播種して、それらの活性について解析し、それらの配列情報を得た。
【0229】
[実施例7]
実施例7:NADHの検出を使用する、NAD
+依存性表面提示酵素としてのカンジダ・パラプシローシスに由来する二級アルコールデヒドロゲナーゼ(CpSADH)に対する、指向性進化のためのマイクロ流体ハイスループットスクリーニング
本実施例は、大腸菌により表面提示されたNADH依存性酵素としての、アルコールデヒドロゲナーゼ(CpSADH)のスクリーニングおよび進化を裏付けた。プラスミドは、
図26において例示される通りに構築される。スクリーニング手順は、
図4Dに記載される通りとした。CpSADH(変異体10
4~10
7個)の突然変異体ライブラリーを調製し、各細胞が、単一の酵素変異体だけを発現させる、宿主微生物(大腸菌)に導入した。変異体を含有する大腸菌細胞を、適切な抗生剤を含有する、1mLのLB培地中、37℃において増殖させた。その後、OD600≒0.6の細胞、IPTG(0.5mM)を添加して、酵素の発現を誘導した。22℃において、12時間にわたり、細胞を、持続的に増殖させ、酵素を発現させた。遠心分離(4000g、10分間)により、これらを採取し、2回にわたり洗浄し、適切な緩衝液中に再懸濁させた。3注入口型マイクロ流体チップを使用して、マイクロ水滴内に、細胞を封入した。シリンジポンプを使用して、ライブラリー細胞(OD600≒0.02)および基質としての2-オクタノールを含有する溶液を、1つの注入口から注入し、赤色蛍光試薬およびNAD
+を含有する、他の溶液を、別の注入口から注入し、第3注入口を、油のために使用した。ライブラリーの細胞は、反応基質、赤色蛍光試薬、およびNAD
+補因子を含有するマイクロ油中水滴内の細胞を1個として封入する。2-オクタノール基質は、ケトンに転換され反応は、生成されたNADHの検知を介して検出した。液滴は、もたらされるNADHから得られる赤色蛍光シグナルに従い分取した。分取された細胞を、さらなる解析にかけるのに、適切な抗生剤を含有するLB寒天プレートに播種して、それらの活性について解析し、それらの配列情報を得た。
【0230】
[実施例8]
実施例8:溶解細胞、および標的生成物のさらなる酵素反応を介するNADH検出による、補因子非依存性細胞内酵素としてのスフィンゴモナス属種HXN-200に由来するエポキシドヒドロラーゼ(SpEH)に対する、指向性進化のためのマイクロ流体ハイスループットスクリーニング
この類別についての例を裏付けるために、補因子非依存性酵素としてのSpEHを使用し、手順は、
図4Cに記載される通りとした。SpEH(変異体10
4~10
7個)の突然変異体ライブラリーを調製し、各細胞が、単一の酵素変異体だけを発現させる、宿主微生物(大腸菌)に導入した。変異体を含有する大腸菌細胞を、適切な抗生剤を含有する、1mLのLB培地中、37℃において増殖させた。その後、OD600≒0.6の細胞、IPTG(0.5mM)を添加して、酵素の発現を誘導した。22℃において、12時間にわたり、細胞を、持続的に増殖させ、酵素を発現させた。遠心分離(4000g、10分間)により、これらを採取し、2回にわたり洗浄し、適切な緩衝液中に再懸濁させた。3注入口型マイクロ流体チップを使用して、マイクロ水滴内に、細胞を封入した。シリンジポンプを使用して、ライブラリー細胞(OD600≒0.02)および基質としてのエポキシドを含有する溶液を、1つの注入口から注入し、赤色蛍光試薬、溶解緩衝液、およびNAD
+を含有する、他の溶液を、別の注入口から注入し、第3注入口を、油のために使用した。ライブラリーの細胞は、反応基質、検出酵素、溶解緩衝液、およびNAD
+補因子を含有するマイクロ油中水滴内の細胞を1個として封入した。液滴は、ジアフォラーゼ酵素およびレサズリンを使用してもたらされる、NADHから得られる蛍光シグナルに従い分取する。液滴は、ジオールからケトアルコールへのカスケード反応を介してもたらされる、NADHから得られる赤色蛍光シグナルに従い分取した。分取された液滴を、さらなる解析にかけて、液滴から、DNAを回収した。次いで、得られたDNAにより、エレクトロコンピテント大腸菌細胞(Lucigen社製)を形質転換して、それらの活性および配列情報について解析した。
【0231】
[実施例9]
実施例9:全細胞を、標的生成物のさらなる酵素反応を介するNADH検出と共に使用する、細胞増殖および液滴融合を介する、補因子依存性細胞内酵素としてのP450モノオキシゲナーゼ(P450pyr)に対する、指向性進化のためのマイクロ流体ハイスループットスクリーニング
本実施例は、
図5Aに記載される手順による、P450pyrのスクリーニングおよび進化を裏付けた。P450pyr(変異体10
4~10
7個)の突然変異体ライブラリーを調製し、各細胞が、単一の酵素変異体だけを発現させる、宿主微生物(大腸菌)に導入した。変異体を発現させる細胞を、適切な抗生剤を含有する、1mLのLB培地中、37℃において増殖させた。遠心分離(4000g、10分間)により、これらを採取し、2回にわたり洗浄し、培養培地中に再懸濁させた。2注入口型マイクロ流体チップを使用して、マイクロ液滴内に、細胞を封入した。シリンジポンプを使用して、ライブラリー細胞(OD600≒0.02)および適切な培地を含有する溶液を、1つの注入口から注入し、油を、別の注入口から注入して、単一細胞の封入を達成した。次いで、30~37℃および振とう条件におけるインキュベーションを介して、細胞を増殖させた。液滴内部の単一細胞は、繁殖して、細胞の数を増大させることができた(
図27)。融合システムを使用して、誘導剤、基質としてのオクタン、検出酵素(ADH)、赤色蛍光試薬、およびNAD
+を、液滴に添加した。オクタンは、オクタノールに転換され、これは、検出酵素(ADH)を使用するカスケードを介して、ケトンに、さらに転換された。カスケード反応を介して生成されたNADHは、赤色蛍光試薬により検出し、液滴を分取した。分取された細胞を、さらなる解析にかけるのに、適切な抗生剤を含有するLB寒天プレートに播種して、それらの活性について解析し、それらの配列情報を得た。
【0232】
[実施例10]
実施例10:溶解細胞を、NADH検出と共に使用する、細胞増殖および液滴融合を介する、NAD
+依存性細胞内酵素としてのロドコックス属に由来するアミンデヒドロゲナーゼ(AmDH)に対する、指向性進化のためのマイクロ流体ハイスループットスクリーニング
アミンデヒドロゲナーゼ(AmDH)は、エナンチオ選択性(enantionioselective)のアミン化について有用な酵素である。三重突然変異体AmDHは、低度の触媒活性を示した。AmDHは、補因子依存性酵素であるので、脱アミン化反応においてもたらされるNADHも、検出されるであろう。細胞を直接溶解させ(lye)、単一細胞による反応を実施する、初期の取組みは、低度の分取エンリッチメントを示した。このため、マイクロ流体システム内で、AmDH変異体を検出および分取するために、細胞は、液滴内の増殖と、次いで、これに続き、反応試薬および溶解緩衝液を、液滴に添加するように、液滴融合とを必要とした。手順は、
図5Eに記載される通りとした。AmDH(変異体10
4~10
7個)の突然変異体ライブラリーを調製し、各細胞が、単一の酵素変異体だけを発現させる、宿主微生物(大腸菌)に導入した。変異体を含有する細胞を、適切な抗生剤を含有する、1mLのLB培地中、37℃において増殖させた。遠心分離(4000g、10分間)により、これらを採取し、2回にわたり洗浄し、培養培地中に再懸濁させた。2注入口型マイクロ流体チップを使用して、マイクロ液滴内に、細胞を封入した。シリンジポンプを使用して、ライブラリー細胞(OD600≒0.02)および適切な培地を含有する溶液を、1つの注入口から注入し、油を、別の注入口から注入して、単一細胞の封入を達成した。次いで、30~37℃および振とう条件におけるインキュベーションを介して、細胞を増殖させた。液滴内部の単一細胞は、繁殖して、細胞の数を増大させることができた(
図27)。融合システムを使用して、誘導剤、溶解緩衝液、基質としてのアミン、赤色蛍光試薬、およびNAD
+を、液滴に添加した。アミンは、ケトンに転換され、生成されたNADHは、赤色蛍光試薬を使用して検出した。液滴は、蛍光シグナルに従い分取した。分取された液滴を、さらなる解析にかけて、液滴から、DNAを回収した。次いで、得られたDNAにより、エレクトロコンピテント大腸菌細胞(Lucigen社製)を形質転換して、それらの活性および配列情報について解析した。
【0233】
[実施例11]
実施例11:バイオセンサーまたは量子ドットを使用する、NAD
+の検出を伴う、細胞増殖および液滴融合を介する、NADH依存性細胞内酵素としてのカンジダ・パラプシローシスに由来する二級アルコールデヒドロゲナーゼ(CpSADH)に対する、指向性進化のためのマイクロ流体ハイスループットスクリーニング
本実施例は、
図5Dに記載される手順による、CpSADHのスクリーニングおよび進化を裏付けた。バイオセンサーを使用する、NAD
+補因子の検出を裏付けた。CpsADH(変異体10
4~10
7個)の突然変異体ライブラリーを調製し、細胞外発現のために、各細胞が、単一の酵素変異体だけを発現させる宿主微生物(大腸菌)に導入する。変異体を含有する細胞を、適切な抗生剤を含有する、1mLのLB培地中、37℃において増殖させた。遠心分離(4000g、10分間)により、これらを採取し、2回にわたり洗浄し、培養培地中に再懸濁させた。2注入口型マイクロ流体チップを使用して、マイクロ液滴内に、細胞を封入した。シリンジポンプを使用して、ライブラリー細胞(OD600≒0.02)および適切な培地を含有する溶液を、1つの注入口から注入し、油を、別の注入口から注入して、単一細胞の封入を達成した。次いで、30~37℃および振とう条件におけるインキュベーションを介して、細胞を増殖させた。液滴内部の単一細胞は、繁殖して、細胞の数を増大させることができた。融合システムを使用して、誘導剤、非天然基質としてのブタノン、NAD
+バイオセンサー、または量子ドット、およびNADHを、液滴に添加した。新規に発現された細胞外酵素は、ブタノンの、ブタノールへの転換を果たした。生成されたNAD
+は、バイオセンサーとのその相互作用を介して検出し、得られたシグナルは、液滴分取のために使用した。分取された細胞を、さらなる解析にかけるのに、適切な抗生剤を含有するLB寒天プレートに播種して、それらの活性について解析し、それらの配列情報を得た。
【0234】
[実施例12]
実施例12:溶解細胞、および標的生成物のさらなる酵素反応を介するNADH検出を使用する、細胞増殖および液滴融合を介する、補因子非依存性細胞内酵素としてスチレンオキシドイソメラーゼ(SOI)に対する、指向性進化のためのマイクロ流体ハイスループットスクリーニング
本実施例は、
図5Cに記載される手順による、スチレンオキシドイソメラーゼ(SOI)のスクリーニングおよび進化を裏付けた。本実施例において、脂肪族の非天然基質としてのエポキシドを受容するように、NADH補因子非依存性酵素としてのSOIを進化させた。SOI(変異体10
4~10
7個)の突然変異体ライブラリーを調製し、各細胞が、単一の酵素変異体だけを発現させる、宿主微生物(大腸菌)に導入した。変異体を含有する大腸菌細胞を、適切な抗生剤を含有する、1mLのLB培地中、37℃において増殖させた。その後、OD600≒0.6の細胞、IPTG(0.5mM)を添加して、酵素の発現を誘導した。22℃において、12時間にわたり、細胞を、持続的に増殖させ、酵素を発現させた。遠心分離(4000g、10分間)により、これらを採取し、2回にわたり洗浄し、適切な緩衝液中に再懸濁させた。2注入口型マイクロ流体チップを使用して、マイクロ液滴内に、細胞を封入した。シリンジポンプを使用して、ライブラリー細胞(OD600≒0.02)および適切な培地を含有する溶液を、1つの注入口から注入し、油を、別の注入口から注入して、単一細胞の封入を達成した。次いで、30~37℃および振とう条件におけるインキュベーションを介して、細胞を増殖させた。液滴内部の単一細胞は、繁殖して、細胞の数を増大させることができた。融合システムを使用して、誘導剤、非天然基質としてのブタノン、検出酵素、およびNAD
+を、液滴に添加した。次いで、細胞を、反応基質、溶解緩衝液、検出酵素、およびNAD
+補因子を含有するマイクロ油中水滴内の細胞を1個として封入した。細胞を溶解させ、次いで、脂肪族であるエポキシドを、対応するアルデヒドに転換した。液滴は、アルデヒドから酢酸へのカスケード反応を介してもたらされる、NADHから得られる赤色蛍光シグナルに従い分取した。分取された液滴を、さらなる解析にかけて、液滴から、DNAを回収した。次いで、得られたDNAにより、エレクトロコンピテント大腸菌細胞(Lucigen社製)を形質転換して、それらの活性および配列情報について解析した。
【0235】
本明細書において、本開示のいくつかの実施形態が、記載および例示されたが、当業者は、機能を実施し、かつ/または本明細書において記載される結果および/もしくは利点のうちの1つもしくは複数を得るための、他の様々な手段および/または構造を、たやすく想定し、このような変動および/または改変の各々は、本明細書において記載される、本発明の実施形態の範囲内にあるものとみなされる。より一般に、当業者は、本明細書において記載される、全てのパラメータ、寸法、材料、および構成は、例示的であることを意図するものであり、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、具体的な適用、または本発明の教示が使用される適用に依存することをたやすく察知するであろう。当業者は、規定を超えない実験を使用して、本明細書において記載される、本発明の特異的実施形態の、多くの同等物を認識または確認することが可能であろう。したがって、前出の実施形態は、例だけを目的として提示されるものであり、付属の特許請求、およびこれらの同等物の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に記載され、特許請求されるのと別の形でも実施されうることを理解されたい。本開示における、本発明の実施形態は、本明細書において記載される、各個別の特色、システム、品目、材料、キット、および/または方法を対象とする。加えて、2つまたはこれを超える、このような特色、システム、品目、材料、キット、および/または方法の、任意の組合せも、このような特色、システム、品目、材料、キット、および/または方法が、相互に矛盾しない限りにおいて、本開示における、本発明の範囲内に含まれる。
【0236】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞である、「ある(a)」および「ある(an)」は、逆のことが指し示されない限りにおいて、「少なくとも1つの」を意味するように理解されるものとする。
【0237】
本明細書および特許請求の範囲において使用される、「および/または」という語句は、このように接続された要素の「一方または両方」、すなわち、ある場合には、連言的に存在し、他の場合には、選言的に存在する要素を意味するように理解されるものとする。「および/または」を伴って列挙される複数の要素は、同じ形において、すなわち、このように接続された要素のうちの「1つまたは複数」であると理解されるものとする。「および/または」節により、具体的に同定された要素以外に、具体的に同定された要素と関連する場合であれ、関連しない場合であれ、他の要素が存在してもよい。したがって、非限定例として述べると、「~を含むこと」などのオープンエンドの表現と共に使用される場合の、「Aおよび/またはB」に対する言及は、一実施形態においては、Aだけを指す場合もあり(B以外の要素を含んでもよい);別の実施形態においては、Bだけを指す場合もあり(A以外の要素を含んでもよい);さらに別の実施形態においては、AおよびBの両方を指す場合もある(他の要素を含んでもよい)などである。
【0238】
本明細書および特許請求の範囲において使用される、「または」とは、上記において規定された「および/または」と同じ意味を有するように理解されるものとする。例えば、リスト内の項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包含的である、すなわち、要素の数またはリストのうちの、少なくとも1つの包含であるが、また、1つを超える数またはリストも含み、列挙されていない、さらなる項目を含んでもよいと解釈されるものとする。「~のうちの1つだけ」もしくは「~のうちの正確に1つ」、または、特許請求の範囲において使用される場合の、「~からなること」など、逆のことが明確に指し示された用語だけが、要素の数またはリストのうちの、正確に1つの要素を指すことになる。一般に、本明細書において使用される「または」という用語は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つだけ」、または「~のうちの正確に1つ」など、排他性の用語により先立たれている場合に限り、排他的代替物(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)を指し示すと解釈されるものとする。特許請求の範囲で使用される場合の、「~から本質的になること」は、特許法の分野で使用される場合の、その通常の意味を有するものとする。
【0239】
1つまたは複数の要素を有するリストに言及して、本明細書および特許請求の範囲において使用される、「少なくとも1つの」という語句は、要素のリスト内の要素のうちの、任意の1つまたは複数より選択されるが、要素のリスト内において、具体的に列挙される、各要素およびあらゆる要素のうちの少なくとも1つを、必ずしも含まず、要素のリスト内の要素の任意の組合せを除外しない、少なくとも1つの要素を意味するように理解されるものとする。この定義はまた、要素が、具体的に同定される要素に関連する場合であれ、関連しない場合であれ、「少なくとも1つの」という語句が指す要素のリスト内において、具体的に同定される要素以外に存在してもよいことを可能とする。したがって、非限定例として述べると、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または、これと同義に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または、これと同義に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)とは、一実施形態において、1つを超えるAを含んでもよいが、Bは存在しない、少なくとも1つのAを指す場合もあり(かつ、B以外の要素を含んでもよい);別の実施形態において、1つを超えるBを含んでもよいが、Aは存在しない、少なくとも1つのBを指す場合もあり(かつ、A以外の要素を含んでもよい);さらに別の実施形態において、1つを超えるAを含んでもよい、少なくとも1つのA、および1つを超えるBを含んでもよい、少なくとも1つのBを指す場合もある(かつ、他の要素を含んでもよい)などである。
【0240】
一部の実施形態は、その多様な例が記載された方法として実施されうる。方法の一部として実施される行為は、任意の適切な方式において順序づけられる。したがって、行為が、例示された順序と異なる順序であって、記載された行為と異なる行為(例えば、より多数の行為またはより少数の行為)を含む場合もあり、かつ/または上記において具体的に記載された実施形態において、行為は、逐次的に実施されるものとして示されるが、一部の行為を、同時に実施することを伴う場合もある順序において実施される実施形態も構築されうる。
【0241】
請求項内における、請求項要素を修飾する、「第1」、「第2」、「第3」など、序数辞の使用は、それ自体、1つの請求項要素の、別の請求項要素に対する、いかなる優先権、先行性、もしくは順序または方法の行為が実施される時間的順序も含意せず、ある特定の名称を有する、1つ請求項要素を、同じ名称(序数辞の使用がなされない場合に)を有する、別のエレメントと識別すること請求項要素を識別する標識としてだけ使用される。
【0242】
特許請求の範囲、ならびに上記の明細書において、「~を含むこと(comprising)」、「~を含むこと(including)」、「~を保有すること」、「~を有すること」、「~を含有すること」、「~を伴うこと」、「~を保持すること」、「~から構成されること」など、全ての移行句は、オープンエンドである、すなわち、「~を含むがこれらに限定されないこと」を意味するように理解されるものとする。United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures, Section 2111.03において明示されている通り、「~からなること」および「~から本質的になる」という移行句だけが、それぞれ、クローズドまたはセミクローズドの移行句であるものとする。
【国際調査報告】