(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(54)【発明の名称】改善された性能耐久性を有する超音波歯科用器具、インサートアセンブリ、及びインサート
(51)【国際特許分類】
A61C 17/20 20060101AFI20230516BHJP
A61C 1/07 20060101ALI20230516BHJP
A61C 3/03 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61C17/20
A61C1/07 A
A61C3/03
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505810
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 US2021026640
(87)【国際公開番号】W WO2021207640
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522398359
【氏名又は名称】パスキ・ウルトラソニックス・リミテッド・ライアビリティー・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】PASCHKE ULTRASONIX LLC
【住所又は居所原語表記】4580 Mark Court, Missoula, Montana 59803 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】パスキ・リチャード・エイチ
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA15
4C052BB07
4C052CC13
4C052DD02
(57)【要約】
組み合わせにおいて、組み合わせを駆動するトランスデューサの共振周波数と異なる動作周波数で動作するように構成される音響変成器及びチップを含む超音波歯科用器具、インサート、及びインサートアセンブリが提供される。その結果、超音波歯科用器具、インサート、及びインサートアセンブリは、例えば2mmと3mmとの間の公称摩耗長さにわたって改善された出力ストローク範囲を提供することによって、改善された性能耐久性を提供し、より長い耐用年数にわたってより耐久性のある性能生じる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用超音波インサートアセンブリであって、
共振周波数を規定するトランスデューサと、
音響変成器と、
前記音響変成器の遠位部に結合されたチップであって、前記音響変成器及び前記チップの組み合わせの近心部が前記トランスデューサに結合され、前記組み合わせの動作周波数が前記トランスデューサの前記共振周波数に等しくないチップとを備え、
前記チップの全長Lにおいて、前記トランスデューサ及び前記音響変成器の接合部における力が有限であり、短縮された長さL-X(Xは、前記チップの摩耗量を表す。)において、力が実質的にゼロであり、前記チップの出力ストロークが実質的に最大である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記全長Lにおいて、前記音響変成器及び前記チップの組み合わせの前記動作周波数は、前記トランスデューサの前記共振周波数より小さい、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項3】
請求項1に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記全長Lにおいて、前記音響変成器及び前記チップの組み合わせの前記動作周波数は、前記トランスデューサの前記共振周波数より大きい、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項4】
先行請求項のいずれかに記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記短縮された長さL-Xにおける前記動作周波数は、前記共振周波数と一致する、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項5】
先行請求項のいずれかに記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
Xは、1mmより大きい、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
Xは、0mmより大きく、4mmより小さい、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項7】
先行請求項のいずれかに記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記動作周波数は、18kHzと50kHzとの間である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項8】
先行請求項のいずれかに記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記チップは、前記音響変成器に圧入されるか、又は前記音響変成器の一体化部である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項9】
先行請求項のいずれかに記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記トランスデューサは、圧電素子である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記トランスデューサは、磁歪素子である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項11】
歯科用超音波インサートアセンブリであって、
共振周波数を有し、前記共振周波数の半波長に実質的に等しい長さを規定するトランスデューサと、
音響変成器と、
前記音響変成器から遠位に延びるチップとを備え、
前記音響変成器及び前記チップの組み合わせは、前記共振周波数より低い動作周波数で動作するように構成され、前記組み合わせは、前記トランスデューサの前記周波数の半波長よりも大きい長さを規定し、
前記組み合わせの前記動作周波数は、前記チップの長さが全長から短くなるにつれて、前記共振周波数に近づく、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記動作周波数は、18kHzと50kHzとの間である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記チップは、前記音響変成器に圧入される、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項14】
請求項11又は12に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記チップは、前記音響変成器の一体化部である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記トランスデューサは、圧電素子である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項16】
請求項11~14のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記トランスデューサは、磁歪素子である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項17】
歯科用超音波インサートアセンブリであって、
その共振周波数の半波長に実質的に等しい長さを規定するトランスデューサと、
チップ及び音響変成器の組み合わせであって、前記トランスデューサの周波数の半波長より大きい長さを規定し、前記共振周波数より低い動作周波数で動作するように構成された組み合わせとを備え、
前記組み合わせは、前記チップの長さが短くなるにつれて、極大値を含む非単調なストローク値を有し、
前記チップの長さが短くなるにつれて、前記組み合わせの前記動作周波数は、前記共振周波数に近づく、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項18】
請求項17に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記動作周波数は、18kHzと50kHzとの間である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記トランスデューサは、圧電素子である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項20】
請求項17又は18に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記トランスデューサは、磁歪素子である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項21】
請求項17~20のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブにおいて、
前記チップは、前記音響変成器に圧入される、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項22】
請求項17~20のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブにおいて、
前記チップは、前記音響変成器の一体化部である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項23】
歯科用超音波インサートアセンブリであって、
その共振周波数の半波長に実質的に等しい長さを規定するトランスデューサと、
チップ及び音響変成器の組み合わせであって、前記共振周波数より低い動作周波数で動作するように構成され、前記共振周波数の半波長より大きい長さを規定する組み合わせとを備え、
前記チップは、曲げ半径を有し、前記チップの遠位点から前記曲げ半径の接点までの距離の比が1.25より大きく、
前記チップは、2つの角度を規定し、前記2つの角度のより近位の前記2つの角度のより遠位に対する比が3より大きい、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項24】
請求項23に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記動作周波数は、18kHzと50kHzとの間である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項25】
請求項23又は24に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記トランスデューサは、圧電素子である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項26】
請求項23又は24に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記トランスデューサは、磁歪素子である、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項27】
請求項23~26のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記チップは、前記音響変成器に圧入される、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項28】
請求項23~27のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記距離の前記比は、1.25より大きく、2.25より小さい、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項29】
請求項23~28のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記距離の前記比は、少なくとも3.0mmの前記チップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項30】
請求項23~28のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記より近位の角度の前記より遠位の角度に対する比は、少なくとも2.0mmの前記チップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項31】
請求項23~28のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記より近位の角度の前記より遠位の角度に対する比は、少なくとも3.0mmの前記チップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項32】
請求項23~28のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記距離の前記比との組み合わせにおいて、前記より近位の角度の前記より遠位の角度に対する比は、少なくとも2.0mmの前記チップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【請求項33】
請求項23~28のいずれか1項に記載の歯科用超音波インサートアセンブリにおいて、
前記距離の前記比との組み合わせにおいて、前記より近位の角度の前記より遠位の角度に対する比は、少なくとも3.0mmの前記チップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである、歯科用超音波インサートアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年4月10日に出願された米国仮特許出願第63/008,041号の利益および優先権を主張し、その全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、歯科用システム、及び工具に関する。より具体的には、本開示は、器具、インサートアセンブリ、及びインサートの通常の摩耗寿命にわたって改善された出力ストロークを促進するように設計された、歯科用超音波器具、インサートアセンブリ、及びインサートに関する。
【背景技術】
【0003】
摩耗した超音波歯科用器具の使用は、いくつかの理由から推奨されない。例えば治療中に先端部が歯に対して当てられると、インサートの摩耗した先端部の減少したストロークが原因で、標準的な治療が損なわれる。従来のインサートにおけるストロークは、インサートが摩耗するにつれて、単調に減少する。これを補うため、臨床医は、一般に、超音波システムにおけるパワーダイヤルを大きくする必要があり、しばしば、歯に対してより大きな圧力を加える必要がある。歯に対して強い圧力を加えると、臨床医には、増大した締付け力及び痛みが付与され、手首への負担が大きくなり、手首のニュートラルポジションから逸脱させざるを得ない原因となる。
【0004】
また、先端部の摩耗による出力ストロークの低下は、治療中のバイオフィルム除去の効率にも影響する。J.W. Costerton博士等の研究は、医療及び歯科環境におけるバイオフィルム管理の重要性を強調している。多くの治療方法は、低出力又はストロークレベルで行われるため、摩耗によるこれらのパラメータの低下は、臨床医によるバイオフィルムの除去及び管理をさらに制限する。
【0005】
歯科用器具の物理的耐久性とは、治療中に歯組織に当てられる器具の先端部の摩耗率を指す。一部のメーカーは、TiN(窒化チタン)を使用したナノテクノロジーを採用し、他のメーカーは、合金層の厚みを増大させるため、蒸着又は合金化プロセスを適用している。この手法は、100万回を超えるサイクルでの部品の機械的耐摩耗の上昇を示した。例えば数千回のスケーリング動作で十分な切れ味を維持し得るハンドスケーラーのような一部の器具では、十分な耐久性を達成することができる。しかしながら、1分間に180万回(180万サイクル)を超える30kHzの周波数帯で動作する歯科用超音波スケーラーシステムのような超音波歯科用器具に関して、十分な耐久性を達成することはより困難である。
【0006】
歯科用器具又は部品の性能耐久性は、多くの歯科治療にわたる通常の物理的摩耗に対して、器具又は部品が高いレベルの性能を維持する能力と規定する。製品の寿命にわたって、本来の性能レベルを実質的に維持する器具又は部品の能力は、耐久性の優れた予測因子である。
【0007】
現在、超音波インサートの寿命は、出力ストローク又は洗浄効率の観点において規定される。従来の超音波インサートでは、先端部が1mm摩耗するだけで性能及び/又は効率において約25%以上低下し、2mm摩耗すると性能及び/又は効率において約50%以上低下し得る。この2mmなる摩耗限界は、事実上、業界標準として採用されている。
【0008】
典型的な歯科クリーニング治療又はデブリードメントにおいて、超音波システムは、付属のインサートをその共振周波数で振動させる。これは、治療によって決定されるストローク(振幅の2倍)を変化させ得る機械的振動を生じる。典型的な治療におけるストロークは、0.001~0.003インチ(1~3ミル)の範囲である。
【0009】
例えば治療中に2ミルのストロークを使用する場合、先端部が約1mm摩耗すると、1.5ミル又は25%のストロークが減少する。これを補うため、臨床医は、通常、出力設定を増大する。超音波機器におけるパワースケールは、較正されておらず、ストロークにおける設定も表示されない。その結果、臨床医は、ストロークが増加しているものと仮定して、パワーダイヤルを大きくさせることになる。場合によっては、超音波システムは、効率における低下を補うため、出力ストロークを十分に増加することができない。臨床医が自由に使える唯一の選択肢は、より高い圧力を使用することであり、患者に害及び/又は不快感を与え得る。もちろん、2mmの摩耗の場合、問題はさらに複雑化する。
【0010】
超音波で作動するインサートは、1950年代後半に導入された。これらの設計では、金属製の歯科用ハンド器具からスケーリングチップを取り外し、それらをニッケルスタックにろう付けした。これは、超音波器具の共振周波数に調整された電子システムによって作動されると、機械的運動及びエネルギーを発生する。これらの初期のシステムは、患者の歯から硬い歯石(歯科結石)を除去する迅速かつ効率的な手段を実証した。例えばBalamuthらの米国特許第3,075,288号、Kleesattelらの米国特許第3,076,904号、及びSwattonらの米国特許第10,368,967号は、それらの共振周波数で作動するハーフラムダ磁歪ドライバー、及びハーフラムダ音響変成器の使用を実証する。Bancoの米国特許第3,930,713号(「Banco」)には、超音波歯科用インサートの設計に適用される振幅及び力の関係を含む、共振の物理学及び機械的原理が記載される。
【0011】
最新の超音波歯科用システムは、超音波ツールの作動及び制御について改善されているが、インサートについての設計原理は、実質的に変わりがない。
【0012】
音響変成器は、磁歪又は圧電トランスデューサによって生成された機械的振動を結合及び増幅する機能を果たす。それらは、共振周波数、力-応力分布曲線、インピーダンス、及び振幅分布曲線、よって拡大率及びノードの位置を含む、いくつかの数学的手法によって完全に解析することができる。Bancoに開示されるように、その共振周波数で作動する音響変成器のハーフラムダ(λ/2)区間における力、振幅、及びインピーダンスの関係は、両端での力がゼロであり、両端での振幅最大値によって特徴付けられる。音響変成器の任意の区間における力及び速度は、以下の式で表すことができる。
【数1】
及び
【数2】
ここで、α
i=2πL
i/λ、V
i=ωA
i、Z
i=(ρC
L)
iS
i、A=振幅、S=CS面積、及びC
L=材料の長手方向の音速である。
【0013】
上記概念は、2つの半波長(λ/2)区間を含むように拡張することができる。例えば磁歪システムを使用して、第1の区間は、磁歪積層体のスタックを含み、第2の区間は、音響変成器を含む。共振時には、双方の自由端及びλ/2区間の接合部での力はゼロとなり、振幅は自由端で最大となる。
【0014】
従来技術の歯科用インサートについての設計基準は、Bancoに記載された物理的原理を使用する。歯科用インサートチップの長さがλ/4より小さい場合、共振音響変成器の遠位端部の長さの一部は、チップによって表される等価質量と置き換えられ得る。
【0015】
共振時には、任意の点「x」で切断した音響変成器の左右区間のインピーダンスの合計は、0に等しい。これは、数学的には、式Z
L+Z
R=0で表すことができる。これは、共振の条件であり、左区間のインピーダンスが右区間のインピーダンスの負の値に等しい。2分の1波長の円筒形共振器の場合、例えば左端から測定されたx=λ/8区間を切断すると、2つのインピーダンス項は、次のように表される。
【数3】
及び
【数4】
同じ計算原理を適用して、力及び速度の特性又はパターンは、共振から見出され得る。
【0016】
Gigaultの仏国特許第3018041B1号は、先端摩耗時の出力ストロークを制御することを意図して、先端部が摩耗しても先端部の面積を一定に保つため、直線状工具に深さが変化する遠位溝を使用する概念を導入した。しかしながら、この設計手法についての物理的及び機械的要件は、インサートの先端部又はその近傍における過剰な曲げモード、及びスロットによる付加的な応力上昇の可能性のため、小さい断面積を有する非直線設計への適用を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本開示は、従来技術の限界を克服し、改善された性能耐久性を有する超音波歯科用インサートを提供する。改善された耐久性は、本開示の超音波歯科用インサートが、その公称摩耗長にわたって改善された出力ストローク範囲を提供することを可能し、その結果、より耐久性の高い性能及びより長い耐用年数が得られる。より具体的には、非限定的な例が提供され、設計パラメータは、先端部の摩耗の最初の1mmにわたって、出力振幅において制御された増加を生じた後、先端部が摩耗し続けるにつれて、例えば2mm以上まで減少するように選択される。本明細書に記載された態様及び特徴は、公称2mm以上の摩耗にわたって、インサートの性能を改善する。
【0018】
本開示は、態様において、初期動作オフレゾナンスによって先端部が摩耗するのに伴ってインピーダンス変化による出力ストロークの減少の影響、及びインサートの動作寿命にわたって先端部が摩耗するのに伴って増加する先端-音響変成器利得を生じる音響設計の選択を考慮に入れる。
【0019】
また、本開示は、先端部が初期耐用年数にわたって摩耗するにつれて、出力ストロークが増加する特徴を含む、これまで予想できなかった利益を臨床医に提供する。
【0020】
態様において、接続体チップアセンブリ(CBTA)と呼ばれるチップを含む音響変成器は、CBTAに機械的に結合された磁歪スタックの共振周波数より実質的に低い周波数で動作するように構成される。チップは、種々の手段、例えば圧入、螺合、ろう付け、一体加工、又は他の任意の適切な方法で音響変成器に接続されてもよい。
【0021】
本開示に従って提供される音響利得は、FEA解析において示されるように、周波数パラメータによって変化し、部分的には強化された性能特性を提供する。
【0022】
更なる態様において、遠位曲げ角度、先端部の末端部の長さ、及び曲げ半径と組み合わせたCBTAの先端部の逆曲げ(contra bend)は、歯科用器具の動作範囲にわたって出力ストロークの範囲を制御するように構成される。
【0023】
より具体的には、本開示は、態様において、トランスデューサの共振周波数を規定するトランスデューサと、音響変成器と、音響変成器の遠位部に結合されたチップとを含む歯科用超音波インサートアセンブリを提供する。音響変成器とチップとの組み合わせの近心部がトランスデューサに結合され、その組み合わせの動作周波数は、トランスデューサの共振周波数と等しくない(例えばそれより大きいか又はより小さい)。チップの全長Lにおいて、トランスデューサと音響変成器との接合部における力は有限である。短縮された長さL-X(Xは、チップの摩耗量を表す。)において、トランスデューサと音響変成器との接合部における力は、実質的にゼロであり、チップの出力ストロークは、実質的に最大となる。
【0024】
本開示の態様において、短縮された長さL-Xにおける動作周波数は、共振周波数と一致する。
【0025】
本開示の態様において、Xは、1mmより大きい。態様において、Xは、0mmより大きく、4mmより小さい。
【0026】
本開示の態様において、動作周波数は、18kHzと50kHzとの間である。
【0027】
本開示の態様において、チップは、音響変成器に圧入されるか、又は音響変成器の一体化部である。態様において、チップは、音響変成器から、ねじ係合を介して取り外し可能である。
【0028】
本開示の態様において、トランスデューサは、圧電素子又は磁歪素子である。
【0029】
本開示に従って提供される他の歯科用超音波インサートアセンブリは、共振周波数を有し、共振周波数の半波長に実質的に等しい長さを規定するトランスデューサと、音響変成器と、音響変成器から遠位に延びるチップとを含む。音響変成器とチップとの組み合わせは、共振周波数より低い動作周波数で動作するように構成され、この組み合わせは、トランスデューサの周波数の半波長より大きい長さを規定し、組み合わせの動作周波数は、チップの長さが全長から減少するにつれて共振周波数に接近する。歯科用超音波インサートアセンブリは、更に上記又は本明細書において別途詳述される態様のいずれかと同様に構成されてもよい。
【0030】
本開示に従って提供される更に他の歯科用超音波インサートアセンブリは、その共振周波数の半波長に実質的に等しい長さを規定するトランスデューサと、チップ及び音響変成器との組合せとを含む。この組み合わせは、トランスデューサの周波数の半波長より大きい長さを規定し、共振周波数より低い動作周波数で動作するように構成される。組み合わせは、チップの長さが減少するにつれて、最大値を含む非単調なストローク値を有し、組み合わせの動作周波数は、チップの長さが減少するにつれて、共振周波数に接近する。歯科用超音波インサートアセンブリは、更に上記又は本明細書において別途詳述される態様のいずれかと同様に構成されてもよい。
【0031】
本開示に従って提供される更に他の歯科用超音波インサートアセンブリは、その共振周波数の半波長に実質的に等しい長さを規定するトランスデューサと、チップ及び音響変成器との組合せとを含む。この組み合わせは、共振周波数より低い動作周波数で動作するように構成され、共振周波数の半波長より大きい長さを規定する。チップは、曲げ半径を有し、チップの遠位点から曲げ半径の接点までの距離の比が1.25より大きい。チップは、更に2つの角度を規定し、2つの角度のより近位の角度の2つの角度のより遠位の角度に対する比が3より大きい。歯科用超音波インサートアセンブリは、更に上記又は本明細書において別途詳述される態様のいずれかと同様に構成されてもよい。
【0032】
本開示の態様において、距離の比は、1.25より大きく、2.25より小さい。
【0033】
態様において、距離の比は、少なくとも2.0mm、又は態様において少なくとも3.0mmのチップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである。
【0034】
態様において、より近位の角度のより遠位の角度に対する比は、少なくとも2.0mm、又は態様において少なくとも3.0mmのチップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである。
【0035】
態様において、距離の比と組み合わせた、より近位の角度のより遠位の角度に対する比は、少なくとも2.0mm、又は態様において少なくとも3.0mmのチップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである。
【0036】
本開示の追加の態様及び特徴は、明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。矛盾しない範囲で、本明細書に詳述された態様及び特徴のいずれかは、本明細書に詳述された他の態様及び特徴のいずれか又は全てと共に使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本開示に係る磁歪超音波インサートアセンブリの分解透視図である。
【0038】
【
図2】
図2は、共振周波数におけるスタックの長さに沿った速度と力との間の関係を示す曲線を含む磁歪スタックの側面図である。
【0039】
【
図3A】
図3Aは、動作周波数が共振周波数より小さい場合に、その長さに沿った速度と力との間の関係を示す曲線を含むテーパ音響変成器の側面図である。
【0040】
【
図3B】
図3Bは、動作周波数が共振周波数より大きい場合に、その長さに沿った速度と力との間の関係を示す曲線を含む他のテーパ音響変成器の側面図である。
【0041】
【
図4】
図4は、添付の曲線によって示されるように、共振スタックの半波長よりも大きい接続体チップアセンブリ(CBTA)に結合された半波長磁歪スタックの側面図である。
【0042】
【
図5】
図5は、音響変成器がチップに結合されたCBTAの側面図である。
【0043】
【
図6A】
図6Aは、従来技術の工具と本開示に係る耐久性能インサートとの間の関係を、本開示の耐久性能インサートの有限要素解析と比較して示すチャートである。
【0044】
【
図6B】
図6Bは、従来技術の工具及び本開示に係る耐久性能インサートについて、チップストローク対チップ摩耗の変化率を示すグラフである。
【0045】
【
図7A】
図7Aは、本開示に係る種々の耐久性能インサートについて、耐久性と先端角パラメータとの間の関係を示すチャートである。
【0046】
【
図7B】
図7Bは、種々の耐久性能インサートについて、チップストローク対チップ角度における変化率を示すグラフである。
【0047】
【
図8】
図8は、曲げ角度、曲げ半径、及び長さパラメータを示すインサートチップの側面図である。
【0048】
【
図9】
図9は、チップの摩耗に伴った特徴的な出力ストローク値を表すための正規曲線を使用して、従来技術のインサートと本開示の耐久性能インサートとの動作ストロークパラメータを比較する簡略化されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示の態様及び特徴は、添付図面を参照して本明細書において説明される。以下の説明において、不必要な詳細で本開示を不明瞭にするのを避けるため、周知の機能又は構造は、要約して説明されるか、又は完全に省略される。インサート、インサートチップ、及びチップなる用語は、本明細書において交換可能に使用され、先端部なる用語は、インサート、インサートチップ、又はチップの遠位端部を意味する。さらに、インサートアセンブリ、チップアセンブリ、又はインサートチップアセンブリなる用語は、交換可能に使用され、インサート、インサートチップ、又はチップに加えて、1つ以上の追加の構成要素(モノリシックに形成されているか、又はインサート、インサートチップ、又はチップと直接的又は間接的に結合されているか)を含み、アセンブリを形成する。アセンブリは、それ自体が工具又は器具に接続可能であってもよく、これらの用語も交換可能に使用される。更に、本開示の態様及び特徴は、本明細書において、一例として、磁歪システムに関して記載されるが、本開示の態様及び特徴は、圧電システムにも同様に適用されることが理解される。
【0050】
図1を参照すると、歯科用超音波インサート1は、患者の歯の治療を容易にするため、インサートチップ3の自由端部(例えば先端部)を超音波周波数で駆動する磁歪トランスデューサ2に接続するように構成されている。トランスデューサ2は、例えば18kHzから50kHzの周波数範囲で動作してもよい。歯科用装置で使用されるトランスデューサ2のような磁歪スタックアセンブリ(トランスデューサ)は、片側荷重であるため、トランスデューサの質量は、音響出力の伝達にとって重要である。圧電システムにおける等価物は、結晶を圧縮するために使用される負荷質量と呼ばれるであろう(図示せず)。トランスデューサ2によるこの非対称動作は、初期駆動と呼ばれる。
【0051】
引き続き
図1を参照すると、トランスデューサ2と、音響変成器4(本明細書では接続体チップアセンブリ(CBTA)4とも呼ばれる。)及びチップ3の組み合わせとの全体での質量は、支持スリーブ7に取り込まれたノーダルピン6によってノーダル領域5で支持される。グリップ8は、弾性部材9、例えばOリングを介して、支持スリーブ7に結合される。インサートアセンブリ1の組み立ては、ノーズコーン10の取り付けで完了する。弾性部材11、例えばOリングは、ノーズコーン10の出口ポート12の周囲における流体流出を防止する。インサートアセンブリ1の歯科用ハンドピース(図示せず)への組み立ては、歯科用ハンドピースへの支持スリーブ7の挿入を介して行われる。支持スリーブ7の周りに取り付けられた弾性部材13、例えばOリングは、取り付けられたインサートアセンブリ1の360度の回転を許容しつつ、インサートアセンブリ1と歯科用ハンドピースとの間に流体シールを提供する。
【0052】
図2を参照すると、トランスデューサ2は、複数のパーマニッケル積層体からなるスタックアセンブリとして示されている。トランスデューサ2は、その長さ(LS)によって決定される共振周波数で作動される。この条件下では、力15は、両端16及び17でゼロに等しい。速度14は、ノードNでゼロであり、両端16及び17で最大値を有する。
【0053】
図3Aを参照すると、態様において、力22が有限であり、例えば音響変成器18の近心端20でゼロより大きく、遠位端19でゼロ値を有するテーパ音響変成器18が提供される。速度21は、音響変成器18の遠位端19において相対的な最大値であり、音響変成器18の長さがその半波長値に近づくにつれて最大値となる(
図5B参照、以下で説明する)。このような態様において、拡大率およびノード点は、本明細書で説明される種々の構成によって決定され、例えば共振部の値とは異なる。
【0054】
図3Bを参照すると、
図3Aの変成器18と同様の他のテーパ音響変成器23が示されている。音響変成器23の力26は、近心端25において有限であり、例えばゼロより小さく、速度27は、遠位端24において相対的な最大値である。
【0055】
図4を参照すると、接続体チップアセンブリ(CBTA)4及びトランスデューサ2(スタックアセンブリ2とも称される。)は、組み合わせの近心接合部28で取り付けられて示されている。力22は、チップ3の遠位端29で実質的にゼロであり、トランスデューサ2の遠位端で実質的にゼロであり、トランスデューサ2及びCBTA4の接合部28で、例えばゼロよりも大きな有限値を有する。速度値は、CBTA4上のノード領域5及びトランスデューサ2上のノード領域N(
図2参照)においてゼロを横切る。
【0056】
引き続き
図4を参照すると、構成の近心接合部28における力22の有限値は、接続体チップアセンブリ4の周波数がトランスデューサ2の共振周波数よりも小さいことを示す。この構成において、速度21は、トランスデューサ2の遠位端17とチップ3の遠位端29とで相対的な最大値を有する。これらの速度は、臨床使用中にチップ又はチップ3の遠位部が(遠位端29から)摩耗するにつれて、その極大値に近づき、トランスデューサ2と接続体チップアセンブリ4との組み合わせの周波数が共振に近づく。
【0057】
いくつかの態様において、本インサートアセンブリは、共振周波数を規定するトランスデューサと、音響変成器と、音響変成器の遠位部に結合されたチップとを含む。音響変成器とチップとの組み合わせの近心部がトランスデューサに結合され、この組み合わせの動作周波数がトランスデューサの共振周波数に等しくない。例えばチップの全長において、トランスデューサと音響変成器との接合部における力が有限であり、チップの摩耗量による短縮された長さにおいて、力が実質的にゼロであり、チップの出力ストロークが実質的に最大である。
【0058】
いくつかの態様において、例えば短縮された長さにおける動作周波数は、共振周波数と一致する。追加的又は代替的な態様において、摩耗は、1mmより大きく、及び/又は0mmより大きく、4mmより小さい。態様において、全長における音響変成器及びチップの組み合わせの動作周波数は、トランスデューサの共振周波数より小さい。態様において、チップは、音響変成器に圧入されるか、ねじ係合によって接続されるか、又は音響変成器の一体化部である。態様において、全長における音響変成器及びチップの組み合わせの動作周波数は、トランスデューサの共振周波数より大きい。
【0059】
図5を参照すると、インサートチップ3が示される。インサートチップ3の質量は、それを長くすることによって増大される(例えば音響変成器4の長さと組み合わせて、
図4に示されるインサートチップ3の長さよりも大きい長さL2を規定する)。
図4に関して、上述した構成で動作する場合、動作周波数が低下し、近心端28における力が有限である。態様において、動作周波数は、共振周波数よりも高くてもよい。接続体チップアセンブリ4は、上記に詳述したように、ノード領域L3内に位置するノードポート5'を通じてノードピン6(
図1)を介して、インサートアセンブリ1(
図1)を形成するように取り付けるように構成されてもよい。また、他の適切なインサートアセンブリを形成するための取り付けも企図される。いくつかの実施形態において、L2は、共振時にnλ/4より大きく、ここで、nは、1又は2とすることができる。
【0060】
図6Aを参照すると、本開示に従って構成された超音波歯科用インサートの出力先端ストロークの応答、及び従来技術のインサートの応答が示される。本開示に係るインサート及びインサートアセンブリは、先端摩耗29の第1の部分(例えば0.0mmから約3.0mmまで)にわたって最初に増加した後、先端摩耗29の第2の部分(例えば3.0mmより大きい先端摩耗)にわたって初期レベルに向かって減少する実際のストローク31の変化率を提供する。応答が単調である従来技術のインサート32についての先端ストローク対先端摩耗における変化率は、非単調である
図1に示す本開示のインサートの有限要素解析(FEA)30及び実際の結果31と対比される。
【0061】
図6Bを参照すると、
図6Aのデータのグラフ表現34が示される。音響変成器の周波数がトランスデューサの周波数よりも小さいFEA46についてのストロークの変化率のプロットは、0摩耗と1.5mm摩耗との間の本質的に非単調なストローク変化、例えば10%以下の変化を示す。ストロークの変化は、1.5mm摩耗と3.0mm摩耗との間で増加し、3.0mm摩耗の後に減少する。例えば顕微鏡で記録された実際のデータに基づく、本開示の耐久性能チップについてのストロークの変化は、同様の応答47を示す。
【0062】
更に
図6Bを参照すると、本開示のインサートのストローク応答と従来技術の超音波ツール48についての実際のストローク応答との間の対比が示されている。従来技術のツール応答48は、チップ摩耗の全範囲でストロークにおいて実質的に単調減少(例えば約1mmの摩耗で-20%のストロークのパーセント変化)する。
【0063】
態様において、インサートアセンブリは、共振周波数を有し、共振周波数に実質的に等しい長さを規定するトランスデューサ(ここで、長さは、n=1又は2であるnλ/4セクションによって規定される。)と、音響変成器と、音響変成器から遠位に延びるチップとを含む。音響変成器とチップとの組み合わせは、共振周波数より低い動作周波数で動作するように構成されている。組み合わせは、n=1又は2であるトランスデューサの振動数のnλ/4より大きい長さを規定する。例えば組み合わせの動作周波数は、チップの長さが全長から減少するにつれて、共振周波数に近づく。
【0064】
態様において、例えば動作周波数は、18kHzと50kHzとの間である。
【0065】
態様において、トランスデューサ、音響変成器及びチップの組み合わせは、共振周波数より低い動作周波数で動作するように構成される。例えばその組み合わせは、チップの長さが減少するにつれて、最大値を含む非単調なストローク値を有する。組み合わせの動作周波数は、チップの長さが減少するにつれて、共振周波数に近づく。例えば動作周波数は、18kHzと50kHzとの間であり、トランスデューサは、圧電素子又は磁歪素子である。
【0066】
図7Aは、本開示のインサートの更なる態様の結果のチャート35を示す。ここで、非単調な出力ストローク(
図7B参照)を生成するため、音響変成器の近心端における有限力の存在下における末端角度の末端チップ長さに対する比と同様に、逆曲げ角度と末端曲げ角度との組み合わせが制御される。より具体的には、先端摩耗は、列36に提供され、末端角度が65°で逆角度(contra angle)が10°である結果を提供する第1の列37、末端角度が60°で逆角度が15°である結果を提供する第2の列38、末端角度が70°で逆角度が10°である結果を提供する第3の列39、及び末端角度が70°で逆角度が15°である結果を提供する第4の列40のそれぞれに示される。
【0067】
図7Bを参照すると、末端曲げ角度同士の間の関係を表現するグラフが示される。先端摩耗は、0~4.0mmの範囲にわたって示される。ここで、パーセント変化グラフ42、43、44及び45は、先端摩耗に対してプロットされる。パーセントストローク変化グラフ42、43、44及び45は、それぞれ列39、37、40及び38に関して上で詳述した構成に対応する。図示のように、例えばグラフ42と44及び/又は列39と40の比較によって示されるように、一定の末端角度に対する逆角度の変化は、先端摩耗に対するストローク範囲における適度な増加を提供する。例えばグラフ43と45及び/又は列37と37の比較によって示されるように、末端角度における同様の変化は、ストローク範囲よりもストロークレベルに対してより大きな影響を有する。
【0068】
図8を参照すると、逆曲げ部α2、末端曲げ部α1、及びチップ3の遠位部に位置する直線部LL1を含む幾何学形状を規定するチップ3が示される。チップ3の点は、中心線CLから距離LL2、及びチップ3の近位端から距離LL3に位置する。チップ3の内縁は、半径R1で規定される。α1及びα2の組み合わせの変動の分析は、
図7A及び
図7Bを参照して本明細書において詳述される。
【0069】
態様において、インサートアセンブリは、n=1又はn=2である共振周波数において実質的にnλ/4に等しい長さを規定するトランスデューサと、チップ及び音響変成器の組み合わせとを含む。その組み合わせは、共振周波数より低い動作周波数で動作するように構成される。例えばチップは、曲げ半径を有し、チップの遠位点から曲げ半径の接点までの距離の比が1.25より大きい。チップは、2つの角度を規定し、2つの角度のより近位の2つの角度のより遠位に対する比が3より大きい。
【0070】
態様において、距離の比は、1.25より大きく、2.25より小さい。
【0071】
態様において、より近位の角度のより遠位の角度に対する比は、少なくとも2.0mmのチップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである。
【0072】
態様において、距離の比は、少なくとも3.0mmのチップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである。
【0073】
態様において、より近位の角度のより遠位の角度に対する比は、少なくとも2.0mmのチップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである。
【0074】
態様において、より近位の角度のより遠位の角度に対する比は、少なくとも3.0mmのチップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである。
【0075】
態様において、距離の比を組み合わせたより近位の角度のより遠位の角度に対する比は、少なくとも2.0mmのチップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである。
【0076】
態様において、距離LL1の比を組み合わせたより近位の角度のより遠位の角度に対する比は、少なくとも3.0mmのチップの長さにおける減少にわたって、出力ストロークが初期出力ストロークの25%以内に留まるようなものである。
【0077】
図9を参照すると、2つの正規曲線56及び57が示され、一方は、従来技術のチップについて、他方は、本開示に係るチップについてである。従来技術の曲線56は、1mmの摩耗を表す長さLLL3の水平線49と、2mmの摩耗を表すLLL4の第2の水平線52とを有する。垂直線54は、曲線56を2等分し、線54の右側に実線区間50を示す。実線区間50と線49との交点は、出力ストロークにおいて約25%減少する点を表す。線区間50の破線の連続部は、線分52と交差し、従来技術のインサートについての出力ストロークにおける約50%の減少を表す。ストローク対摩耗は、例えば従来技術のインサートのストローク最大値で始まり、全体が線54の右側に位置し、チップが摩耗するにつれて、出力ストロークが単調に減少する。このグラフ表示は、従来技術が約1mmの摩耗にわたって、現在の標準的な問題を提供することを示す。
【0078】
図9を引き続き参照すると、正規曲線57は、例えば
図1~5及び8に示すように、及び/又は本明細書に記載するように、本開示に係る耐久性超音波インサートについての出力ストローク対摩耗特性を示す。水平線53は、2つの正規曲線56及び57を関連付け、その最大値の約90%で曲線56と交差する非限定的な例を示す。垂直線55は、本開示の耐久性超音波インサートの例示的な初期ストローク値の点で線53と交差する。長さLLL5は、線53及び55の交点から曲線57についての最大値までの距離を表す。実線区間51は、出力ストローク対チップ摩耗を表し、長さLLL6は、出力ストロークが初期値にほぼ等しいチップ長さの損失を表す。グラフ57は、グラフ56に示される従来技術のインサートの本質的に異なる特性を指摘し、本開示の耐久性能インサートについての実線区間51は、チップが摩耗するにつれて、非単調なストロークを示す最大値の両側に実質的に位置する。また、グラフ57は、部分的に、LLL6:LLL3の比に基づく耐久性能インサートの耐用年数の増加の利点も示す。いくつかの実施形態において、LLL6:LLL3の比は、約1より大きく、例えば約1.5より大きい、約2より大きい、約3より大きい、又は約4よりさらに大きい。
【0079】
図9をさらに参照すると、グラフ56と比較してグラフ57の増加した幅は、本明細書で詳細に説明されるように、本開示のインサート及びインサートアセンブリ1(
図1)の物理的特性、例えば
図1~5及び8に示すように、及び/又は本明細書に記載するように、トランスデューサ2、音響変成器4及びチップ3(
図4及び8参照)の組み合わせの利得の結果である。
【0080】
本明細書で開示される種々態様は、説明及び添付図面に具体的に示された組み合わせと異なる組み合わせで組み合わせてもよいことを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用超音波チップであって、
所定の初期長さを規定し、チップ及び音響変成器の組み合わせを駆動するためのトランスデューサに接続された前記音響変成器に離脱可能に取り付けるように構成されたチップであって、前記組み合わせがトランスデューサの共振周波数より実質的に小さい初期共振周波数を規定し、前記チップが前記所定の初期長さから前記所定の初期長さより小さい所定の摩耗長さに摩耗するにつれて、前記組み合わせが前記トランスデューサの共振周波数に実質的に等しい摩耗共振周波数を規定するチップを備え、
前記チップは、中心線を規定する近位部と、直線構成を規定する遠位部と、前記近位及び遠位部の間に配置され、曲げ半径を有する中間部とを含み、
前記チップの長さの前記遠位部の遠位点から曲げ半径の接点までの距離に対する比は、1.25より大きく、2.25より小さい、歯科用超音波チップ。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科用超音波チップにおいて、
前記トランスデューサは、圧電素子又は磁歪素子である、歯科用超音波チップ。
【請求項3】
請求項1に記載の歯科用超音波チップにおいて、
前記トランスデューサは、前記組み合わせを、18kHzと50kHzとの間の動作周波数で駆動するように構成される、歯科用超音波チップ。
【請求項4】
請求項1に記載の歯科用超音波チップにおいて、
前記チップは、前記音響変成器の前記遠位部に螺合によって着脱自在に取り付けられるように構成される、歯科用超音波チップ。
【請求項5】
請求項1に記載の歯科用超音波チップにおいて、
前記比は、前記チップの前記遠位部の前記遠位端から少なくとも2mmの長さにおける減少にわたって、前記チップの出力ストロークにおける減少が最小になるように選択される、歯科用超音波チップ。
【請求項6】
歯科用超音波チップであって、
所定の初期長を規定し、近位部と、遠位部と、前記近位部と前記遠位部との間に配置された湾曲した中間部とを含むチップであって、前記チップを駆動するように構成されたトランスデューサに離脱自在且つ動作可能に結合するように構成されたチップを備え、
前記所定の初期長さから約2mmから約3mmを含む間の長さにおける減少をもたらす前記チップの摩耗の後、前記チップは、次の長さを規定し、前記チップは、
前記所定の初期長さにおいて、前記トランスデューサが周波数及び電力で前記チップを駆動するのに応答して、前記チップが歪みの初期範囲を規定し、
前記次の長さにおいて、前記トランスデューサが周波数及び電力で前記チップを駆動するのに応答して、前記チップは、前記歪みの初期範囲の20%以内である歪みの次の範囲を規定するように構成される、歯科用超音波チップ。
【請求項7】
請求項6に記載の歯科用超音波チップにおいて、
前記歪みの次の範囲は、前記歪みの初期範囲の10%以内である、歯科用超音波チップ。
【請求項8】
請求項6に記載の歯科用超音波チップにおいて、
前記チップは、音響変成器を介して前記トランスデューサに動作可能に結合するように構成される、歯科用超音波チップ。
【請求項9】
請求項8に記載の歯科用超音波チップにおいて、
前記チップは、螺合によって前記音響変成器に着脱自在に取り付けられるように構成される、歯科用超音波チップ。
【請求項10】
請求項9に記載の歯科用超音波チップにおいて、
前記トランスデューサは、圧電素子又は磁歪素子である、歯科用超音波チップ。
【請求項11】
歯科用超音波チップであって、
近心部と遠位部とを規定するチップであって、前記チップの前記近心部は、前記チップ及び音響変成器の組み合わせを駆動するため、それに接合されたトランスデューサを有する前記音響変成器に着脱自在に取り付けるように構成され、前記トランスデューサは、前記トランスデューサの共振周波数の1/4波長の整数倍nに実質的に等しい長さを規定し、
前記チップは、所定の初期長さを規定し、使用後、前記所定の初期長さから長さにおいて、所定の減少をもたらし、前記チップは、前記所定の初期長さより小さい所定の次の長さを規定し、
前記所定の初期長さにおいて、前記チップ及び前記取り付けられた音響変成器の組み合わせは、トランスデューサの共振周波数と実質的に異なる初期共振周波数を規定し、
前記所定の次の長さにおいて、前記チップ及び前記と前記取り付けられた音響変成器の組み合わせは、前記トランスデューサの共振周波数に実質的に等しい次の共振周波数を規定する、歯科用超音波チップ。
【請求項12】
請求項11に記載の歯科用超音波チップにおいて、
前記所定の減少は、約2mmから約3mmを含む間である、歯科用超音波チップ。
【請求項13】
請求項12に記載の歯科用超音波チップにおいて、
前記所定の減少は、2mm又は3mmである、歯科用超音波チップ。
【請求項14】
請求項11に記載の歯科用超音波チップにおいて、
整数nは、1に等しい、歯科用超音波チップ。
【請求項15】
請求項11に記載の歯科用超音波チップにおいて、
整数nは、2に等しい、歯科用超音波チップ。
【国際調査報告】