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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】障害を処置するためのプリン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 473/06 20060101AFI20230517BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C07D473/06 CSP
A61K31/52
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/00
A61P17/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554855
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 CA2021050313
(87)【国際公開番号】W WO2021179074
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/987,533
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522360046
【氏名又は名称】マーベル・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ウィリアムズ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA75
4C086ZB26
(57)【要約】
式(I)~(III)の置換プリン化合物及びその塩は、がん免疫療法、うつ病、不安、多発性硬化症、NASH、強皮症、ADHD、アルツハイマー5及びパーキンソンのためのアデノシンA2a受容体(A2aR)アンタゴニストとして作用する。そのような化合物を含む医薬組成物、及びうつ病を処置する際におけるそれらの使用方法も教示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】
の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】

【化2】
の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】

【化3】
の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
うつ病を処置するための方法であって、前記方法が、式
【化4】
の化合物並びに薬学的に許容されるその塩の1つ又は複数の投与を含む、方法。
【請求項5】
がんを処置するための方法であって、前記方法が、式
【化5】
の化合物及び薬学的に許容されるその塩の1つ又は複数の投与を含む、方法。
【請求項6】
うつ病、不安、多発性硬化症、NASH、強皮症、ADHD、アルツハイマー及びパーキンソンの1つ又は複数を処置するための方法であって、前記方法が、式
【化6】
の化合物及び薬学的に許容されるその塩の1つ又は複数の投与を含む、方法。
【請求項7】
前記投与が、経口である、請求項4から6に記載の方法。
【請求項8】
前記投与が、注射である、請求項4から6に記載の方法。
【請求項9】
前記投与が、薬学的に許容される添加剤を伴う、請求項4から8に記載の方法。
【請求項10】
うつ病を処置するための医薬組成物であって、前記組成物が、式
【化7】
の化合物及び薬学的に許容されるその塩の1つ又は複数を含む、医薬組成物。
【請求項11】

【化8】
の化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用であって、うつ病、不安、多発性硬化症、NASH、強皮症、ADHD、アルツハイマー又はパーキンソンを処置するための、使用。
【請求項12】
うつ病、不安、多発性硬化症、NASH、強皮症、ADHD、アルツハイマー又はパーキンソンを処置するための医薬組成物であって、前記組成物が、式
【化9】
の化合物及び薬学的に許容されるその塩の1つ又は複数を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、概して、がん、うつ病、不安、多発性硬化症、NASH、強皮症(sclerodermascleroderma)、ADHD、アルツハイマー及びパーキンソンのためのアデノシンA2a受容体(A2aR)アンタゴニストとして作用する置換プリン化合物及びその塩、そのような化合物を含む医薬組成物、並びにがん、うつ病、不安、多発性硬化症、NASH、強皮症、ADHD、アルツハイマー及びパーキンソンを処置する際におけるそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
アデノシンは、Gタンパク質と連結した受容体のスーパーファミリーに属する膜特異的受容体のクラスを介して、その生物学的作用を実現する。アデノシン受容体の少なくとも4つのサブタイプ:A1、A2a、A1b及びA3が同定されている。
【0003】
A2aRは、免疫系において調節的役割を提供することが示されている。1つのA2aRアンタゴニスト、イストラデフィリンは、運動機能障害を低減させ、今度は、神経変性疾患、例えばパーキンソン病及び関連運動障害(例えばハンチントン病)における機能を改善することが示されている。
【0004】
WO2013058681A2は、中枢神経系の疾患、腫瘍性疾患並びにウイルス性及び細菌性疾患を処置するために、A2aRアンタゴニストを使用することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2013058681A2
【特許文献2】米国特許第4,938,949号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Berge, S. M.ら、「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Science、66:1~19、1977
【非特許文献2】Robert D. Leone、Ying-Chun Lo及びJonathan D. Powell、「A2aR antagonists: Next generation checkpoint blockade for cancer immunotherapy」、Comput Struct Biotechnol J. 2015; 13: 265~272
【非特許文献3】Domenici MRら、「Adenosine A2A receptor as potential therapeutic target in neuropsychiatric disorders」、Pharmacol Res 2019; 147: 104338
【非特許文献4】Cronstein B.「Adenosine receptors and fibrosis: a translational view」、F1000 Biol Rep. 2011; 3: 21
【非特許文献5】The Pharmacological Basis of Therapeutics、Goodman及びGilman編、Macmillan Publishing Co.、New York
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
神経疾患、線維症関連疾患(NASH及び強皮症)及びがんを処置するために好適な、A2aRアンタゴニストが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の概要
本発明者らは、疾患、例えばうつ病を処置するためのA2aRアンタゴニストとして有用な、ある特定のプリン化合物を見出した。
【0009】
一態様では、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩が提供される。
【化1】
8-[(E)-2-[3,4-ビス(ジフルオロメトキシ)フェニル]ビニル]-1,3-ジエチル-7-メチル-プリン-2,6-ジオン;ヒドロフルオリド
【0010】
一態様では、式(II)の化合物又は薬学的に許容されるその塩が提供される。
【化2】
8-[(E)-2-[3,4-ビス(フルオロメトキシ)フェニル]ビニル]-1,3-ジエチル-7-メチル-プリン-2,6-ジオン
【0011】
一態様では、式(III)の化合物又は薬学的に許容されるその塩が提供される。
【化3】
8-[(E)-2-[3,4-ジメトキシフェニル]ビニル]-1,3-ジエチル-7-メチル-6-チオキソ-プリン-2-オン
【0012】
一態様では、イストラデフィリン、
式(IV)のE)-8-(3,4-ジメトキシスチリル)-1,3-ジエチル-7-メチルキサンチン、又は薬学的に許容されるその塩は、がん、うつ病、不安、多発性硬化症、NASH、強皮症、ADHD、アルツハイマー及びパーキンソンを処置するために有用となりうるA2aRアンタゴニストであることが分かる。
【化4】
【0013】
一態様では、SCH 442416、
式(V)の2-(2-フラニル)-7-[3-(4-メトキシフェニル)プロピル]-7H-ピラゾロ[4,3-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-5-アミン、又は薬学的に許容されるその塩は、がん、うつ病、不安、多発性硬化症、NASH、強皮症、ADHD、アルツハイマー及びパーキンソンを処置するために有用となりうるA2aRアンタゴニストであることが分かる。
【化5】
【0014】
本開示は、治療有効量の式I、II及びIIIの化合物及び薬学的に許容されるその塩の1つ又は複数、並びに薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物も含む。
【0015】
本開示は、式I、II及びIIIの化合物及び薬学的に許容されるその塩の1つ又は複数を使用してうつ病を処置するための方法を更に含む。方法は、1つ又は複数の化合物を、そのような処置を必要とする対象に投与し、それにより、うつ病を処置する工程を含む。
【0016】
本開示は、式I、II及びIIIの化合物及び薬学的に許容されるその塩の1つ又は複数を使用して、がん、不安、多発性硬化症、NASH、強皮症、ADHD、アルツハイマー又はパーキンソンを処置するための方法を更に含む。方法は、1つ又は複数の化合物を、そのような処置を必要とする対象に投与し、それにより、うつ病、不安、多発性硬化症、NASH、強皮症、ADHD、アルツハイマー及びパーキンソンを処置する工程を含む。
【0017】
一部の実施形態では、化合物は、静脈内注射によって、組織への注射によって、腹腔内に、経口的に又は鼻内に、投与される。一部の実施形態では、組成物は、液剤、分散体、懸濁剤、散剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、徐放カプセル剤、徐放錠剤又は徐放丸剤の形態を有する。
【0018】
式I、II及びIIIの化合物を合成するための方法が提供される。
【0019】
本開示は、少なくとも1つのそのような化合物を用意する工程と、化合物についてA2aR活性の阻害を測定する工程と、阻害が期待されるレベルを上回るか否かを決定する工程とを含む、方法を包含する。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】式Iの化合物のGPCRスクリーニング結果を示すグラフである。
図2】式IIの化合物のGPCRスクリーニング結果を示すグラフである。
図3】式IIIの化合物、SD-007のGPCRスクリーニング結果を示すグラフである。
図4】式IVの化合物、イストラデフィリン(istradefyline)のGPCRスクリーニング結果を示すグラフである。
図5】5'-N-エチルカルボキサミドアデノシン(NECA)のGPCRスクリーニング結果を示すグラフである。
図6】SCH 442416のGPCRスクリーニング結果を示すグラフである。
図7】式Iの化合物の血漿及び脳濃度を経時的に示すグラフである。
図8】式Iの化合物の1mg/kg静脈内又は3mg//kg経口の投与後の血漿濃度を経時的に示すグラフである。
図9】式IIの化合物の血漿及び脳濃度を経時的に示すグラフである。
図10】式IIの化合物の1mg/kg静脈内又は3mg//kg経口の投与後の血漿濃度を経時的に示すグラフである。
図11】式IIIの化合物、SD-007の血漿及び脳濃度を経時的に示すグラフである。
図12】式IIIの化合物、SD-007の1mg/kg静脈内又は3mg//kg経口の投与後の血漿濃度を経時的に示すグラフである。
図13】イストラデフィリン(Istradefiline) (式IV)の化合物の血漿及び脳濃度を経時的に示すグラフである。
図14】式IVの化合物の1mg/kg静脈内又は3mg//kg経口の投与後の血漿濃度を経時的に示すグラフである。
図15】種々の化合物について潜伏から不動までの時間を比較するグラフである。
図16】種々の化合物について不動時間を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
本開示の実施形態を、以下で詳細に論じる。実施形態を記述する際に、明確にするために、具体的な術語が用いられる。しかしながら、本開示は、そのように選択された具体的な術語に限定されることを意図しない。当業者ならば、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、他の同等品を用いることができ、他の方法を開発することができると認識するであろう。本明細書において引用されているすべての参考文献は、それぞれが個々に組み込まれているかのように、参照により組み込まれる。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0023】
明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明確に別のことを指示するのでない限り、複数の参照物を含む。
【0024】
用語「を含む」は、本明細書において使用される場合、その後に続くリストが網羅的ではなく、任意の他の追加の好適な項目、例えば1つ又は複数の更なる特色、成分及び/又は原料を適宜含んでも含まなくてもよいことを意味すると理解されるであろう。
【0025】
用語「薬学的有効量」、「治療有効量」又は「治療有効用量」、「有効量」は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医が求めている、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発するであろう、対象化合物の量を指す。用語「治療有効量」は、投与された場合に、処置されている状態又は障害の症状の1つ又は複数の発生を予防する又はある程度緩和するために十分である、化合物の量を含む。治療有効量は、化合物、障害又は状態及びその重症度、並びに処置される哺乳動物の年齢、体重等に応じて、変動することになる。
【0026】
本開示における用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書において記述される化合物において見られる特定の置換基に応じて、比較的非毒性の酸又は塩基を用いて調製される本開示の化合物の塩を含む。本開示の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、塩基付加塩は、そのような化合物の中性形態を、十分な量の所望の塩基と、未希釈又は好適な不活性溶媒中のいずれかで接触させることによって取得されうる。例えば、塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等を含む薬学的に許容される無機塩基に由来してよい。例えば、塩は、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミン等、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等を含む第一級、第二級及び第三級アミンの塩を含む薬学的に許容される有機塩基に由来してよい。本開示の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態を、十分な量の所望の酸と、未希釈又は好適な不活性溶媒中のいずれかで接触させることによって取得されうる。薬学的に許容される酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、カルボン酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric)、ヨウ化水素酸又は亜リン酸等のような無機酸に由来するもの、及び、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸等のような比較的非毒性
の有機酸に由来する塩を含む。アミノ酸の塩、例えばアルギン酸塩等、及びグルクロン酸又はガラクツロン(galactunoric)酸等のような有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge, S. M.ら、「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Science、66:1~19、1977を参照)。本開示のある特定の具体的な化合物は、塩基性及び酸性官能基の両方を含有し、化合物が塩基又は酸付加塩のいずれかに変換されることを可能にする。
【0027】
一部の実施形態では、化合物の中性形態は、塩を塩基又は酸と接触させ、親化合物を従来の方式で単離することによって再生される。化合物の親形態は、ある特定の物理的特性、例えば極性溶媒中における溶解度において種々の塩形態と異なるが、塩はそれ以外の点では、本開示の目的のための化合物の親形態と同等である。
【0028】
「対象」は、本明細書において、動物、例えば霊長類(例えば、ヒト)、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス等を含むがこれらに限定されない哺乳動物を含むように定義される。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0029】
用語「処置する」、「処置すること」、「処置」及びその文法的変形体は、本開示において使用される場合、障害若しくは状態の1つ若しくは複数の付随する症状の強度、進行若しくは悪化を、部分的に若しくは完全に遅延させること、緩和すること、軽減すること若しくは低減させること、及び/又は障害若しくは状態の1つ若しくは複数の原因を、緩和する、軽減する若しくは妨げることを含む。本開示に従う処置は、予防的に、防御的に、緩和的に(pallatively)又は救済的に適用されてよい。
【0030】
本開示の化合物は、そのような化合物を構成する原子の1個又は複数において、不自然な割合の原子同位体も含有しうる。例えば、化合物は、同位体、例えば重水素(2H)、三重水素(3H)、ヨウ素-125(125I)又は炭素-14(14C)で放射性標識されていてよい。本開示の化合物のすべての同位体変化物は、放射性であるか否かにかかわらず、本開示の範囲内に包含されるように意図されている。
【0031】
本発明者らは、式I及びIIの化合物を開発し、式I及びIIの化合物を調製するための効率的な方法を開発した。
【化6】
【化7】
【0032】
化合物が好適なA2aRアンタゴニストであるか否かを解明するために、式I、II、III及びIVの化合物を、A2aRを標的として使用するGPCRスクリーニングに供した。スクリーニングは、Eurofins Discover X Corporation社によるGPCRスクリーニング及びプロファイリングサービスを使用して行った。比較のために、NECA及びSCH 442416もスクリーニングした。結果を図1図6及び実験に示す。
【0033】
スクリーニング結果は、これらの化合物が実質的なA2aRアンタゴニスト特性を有することを示した。
【0034】
Robert D. Leone、Ying-Chun Lo及びJonathan D. Powell、「A2aR antagonists: Next generation checkpoint blockade for cancer immunotherapy」、Comput Struct Biotechnol J. 2015; 13: 265~272は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、がん免疫療法に有用となりうるある特定のA2aRアンタゴニストを開示している。故に、本明細書において記述される化合物は、がんを処置するために有用である。Domenici MRら、「Adenosine A2A receptor as potential therapeutic target in neuropsychiatric disorders」、Pharmacol Res 2019; 147: 104338」は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、アルツハイマー病、パーキンソン病、注意欠如・多動性障害、脆弱性X症候群、うつ病、不安を処置するために有用となりうるある特定のA2aRアンタゴニストを開示している。故に、本明細書における化合物は、神経疾患を処置するために有用である。Cronstein B.「Adenosine receptors and fibrosis: a translational view」、F1000 Biol Rep. 2011; 3: 21は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、線維症、特に肝線維症(例えばNASH)及び皮膚線維症(例えば強皮症)を処置する際に有用となりうるある特定のA2aRアンタゴニストを開示している。
【0035】
本明細書において記述される化合物の1つ又は複数は、がん、うつ病、不安、多発性硬化症、NASH、強皮症、ADHD、アルツハイマー又はパーキンソンを処置するために有用である。
【0036】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、それらの純粋な形態で有用である。一部の実施形態では、本開示の化合物は、治療有効量の本明細書において定義されている通りの化合物、及び薬学的に許容される添加剤、例えば担体又は賦形剤を用いて調製された医薬組成物として有用である。
【0037】
一部の実施形態では、化合物は、全身に、例えば、薬学的に許容されるビヒクル、例えば不活性賦形剤若しくは吸収可能な可食性担体と組み合わせて経口的に、又は吸入若しくは吹送によって、投与される。それらは、硬若しくは軟殻ゼラチンカプセルに封入されてよく、錠剤に圧縮されてよく、又は患者の食事の食品に直接組み込まれてよい。経口治療投与では、化合物は、1つ又は複数の添加剤と組み合わせられてよく、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤等の形態で使用されてよい。化合物を、微細な不活性粉末担体と組み合わせて、対象によって吸入又は吹送してよい。組成物及び調製物の百分率は、当然ながら、変動しうるものであり、所与の単位剤形の質量の好適な百分率であってよい。そのような治療的に有用な組成物における化合物の量は、有効投薬量レベルが取得されうるようなものである。
【0038】
一部の実施形態では、錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤等は、以下も含有する:結合剤、例えばトラガカントガム、アカシア、コーンスターチ又はゼラチン;添加剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、バレイショデンプン、アルギン酸等;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えばスクロース、フルクトース、ラクトース若しくはアスパルテーム又は香味剤、例えばペパーミント、冬緑油若しくはサクランボ香味料が添加されてよい。カプセル剤は、上記の種類の材料に加えて、液体担体、例えば植物油又はポリエチレングリコールを含有してよいことが分かる。種々の他の材料が、コーティングとして又は固体単位剤形の物理的形態を別様に修飾するために存在してよい。例えば、錠剤、丸剤又はカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、シェラック又は糖等でコーティングされていてよい。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてスクロース又はフルクトース、保存剤としてメチル及びプロピルパラベン、染料、並びに香味剤、例えばサクランボ又はオレンジ香味料を含有していてよい。任意の単位剤形を調製する際に使用される任意の材料は、用いられる量で、薬学的に許容され、且つ実質的に非毒性なものであるべきであることが理解される。一部の実施形態では、化合物は、持続放出調製物及びデバイスに組み込まれる。例えば、化合物は、徐放カプセル剤、徐放錠剤及び徐放丸剤に組み込まれてよい。
【0039】
一部の実施形態では、化合物は、注入又は注射によって静脈内に又は腹腔内に投与される。化合物の溶液は、場合により非毒性界面活性剤と混合された水中で調製されてよい。一部の実施形態では、分散体は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン若しくはそれらの混合物中又は油中で調製される。一部の実施形態では、これらの調製物は、通常の貯蔵及び使用条件下で微生物の成長を防止するための保存剤を含有する。
【0040】
一部の実施形態では、注射又は注入のための医薬剤形は、場合によりリポソーム中にカプセル化された、滅菌注射用又は注入用溶液又は分散体の即席調製物に適応している化合物を含む、滅菌水性液剤若しくは分散体又は滅菌散剤である。いずれの場合も、最終的な剤形は、滅菌、流体且つ製造及び貯蔵条件下で安定であるべきである。一部の実施形態では、液体担体又はビヒクルは、溶媒又は液体分散媒であり、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びそれらの好適な混合物を含む。一部の実施形態では、妥当な流動性は、リポソームの形成によって、分散体の場合には必要とされる粒径の維持によって、又は界面活性剤の使用によって、維持される。一部の実施形態では、種々の抗細菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等が、微生物の活動を防止するために使用される。一部の実施形態では、等張剤、例えば、糖、緩衝液又は塩化ナトリウムが含まれる。一部の実施形態では、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンが、注射用組成物の吸収を延長するために使用される。
【0041】
一部の実施形態では、滅菌注射用溶液は、必要とされる量の化合物を、適切な溶媒に、場合により上記で列挙した他の原料の一部とともに組み込み、必要に応じて、続いて濾過滅菌をすることによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌散剤の場合には、組成物は、真空乾燥及び/又はフリーズドライされてよく、これにより、活性原料プラス事前に滅菌濾過した溶液中に存在する任意の追加の所望の原料の粉末を産出する。
【0042】
一部の実施形態では、局所投与のために、化合物は純粋な形態で適用される。一部の実施形態では、化合物は、固体であっても液体であってもよい皮膚科的に許容される担体と組み合わせて、組成物又は製剤として皮膚に投与される。
【0043】
一部の実施形態では、固体担体は、微粉化した固体、例えばタルク、クレイ、微結晶性セルロース、シリカ、アルミナ等を含む。一部の実施形態では、固体担体は、非毒性ポリマー性ナノ粒子又は微粒子を含む。一部の実施形態では、液体担体は、水、アルコール若しくはグリコール又は水/アルコール/グリコールブレンドを含み、その中で、化合物は、有効レベルで、場合により非毒性界面活性剤を活用して、溶解又は分散されうる。一部の実施形態では、アジュバント、例えば香料及び追加の抗菌剤が、所与の使用に合わせて特性を最適化するために添加される。結果として生じた液体組成物は、吸収性パッドから適用されるか、絆創膏及び他の包帯剤に含浸させるために使用されるか、又はポンプ式若しくはエアロゾル噴霧器を使用して患部にスプレーされてよい。
【0044】
一部の実施形態では、増粘剤、例えば合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪アルコール、変性セルロース又は変性鉱物材料が、液体担体とともに用いられて、使用者の皮膚に直接適用するための塗り広げることができるペースト剤、ゲル剤、軟膏剤、石鹸等を形成する。
【0045】
一部の実施形態では、化合物は、非経口投与のための凍結乾燥形態で製剤化される。一部の実施形態では、凍結乾燥製剤は、水又は他の水性媒質の添加によって再構成され、次いで、使用前に好適な賦形剤で更に希釈される。一部の実施形態では、液体製剤は、緩衝等張水溶液である。一部の実施形態では、賦形剤は、等張生理食塩水、水中5%デキストロース及び緩衝酢酸ナトリウム又はアンモニウム溶液である。薬学的に許容される固体又は液体添加剤が、組成物を強化する若しくは安定化するために、又は組成物の調製を容易にするために添加されてよい。
【0046】
一部の実施形態では、医薬組成物は、本明細書において記述される化合物に加えて、1つ又は複数の他の薬理活性剤を追加で含有してよい。
【0047】
一部の実施形態では、化合物の有用な投薬量は、動物モデルにおいてそれらのインビトロ活性及びインビボ活性を比較することによって決定されうる。マウス及び他の動物における有効投薬量の、ヒトへの外挿のための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,938,949号を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
処置において使用するために必要とされる化合物の量は、選択される特定の塩に伴ってだけでなく、投与ルート、処置されている状態の性質並びに患者の年齢及び状態にも伴って変動することになり、最終的には主治医又は臨床医の裁量によるであろうことが分かる。
【0049】
一部の実施形態では、本開示の作用物質の有効投薬量及び投与ルートは慣例的である。化合物の正確な量(有効用量)は、例えば、対象の種、年齢、体重及び全身又は臨床状態、処置されている任意の障害の重症度又は機序、使用されている特定の化合物又はビヒクル、投与の方法及びスケジューリング等に応じて、対象によって変動しうる。一部の実施形態では、治療有効用量は、当業者に公知の従来の手順によって経験的に決定される。例えば、当業者は、The Pharmacological Basis of Therapeutics、Goodman及びGilman編、Macmillan Publishing Co.、New Yorkを参照してよい。一部の実施形態では、有効用量は、細胞培養アッセイにおいて又は好適な動物モデルにおいてのいずれかで最初に推定される。一部の実施形態では、動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与ルートを決定するために使用される。一部の実施形態では、次いで、そのような情報を使用して、ヒトにおける投与のための有用な用量及びルートを決定する。一部の実施形態では、治療用量は、同等の治療剤のための投薬量への類推により選択される。
【0050】
例えば、投薬量は、1日当たり体重1kg当たり約0.001から約100mgまで、例えば約0.01から約100mgまでの範囲内であってよく、例えば、1日当たりレシピエントの体重1キログラム当たり約0.1mgより多く、又は1日当たりレシピエントの体重1キログラム当たり約1から約10mgまでの範囲内であってよい。例えば、好適な用量は、1日当たり体重1kg当たり約0.3mg、0.7mg、1mg、10mg又は50mgであってよい。
【0051】
一部の実施形態では、化合物は、例えば、単位剤形当たり0.05から10000mg、0.5から10000mg、5から1000mg、又は約100mgの活性原料を含有する、単位剤形で投与される。
【0052】
一部の実施形態では、化合物は、例えば、約0.5から約75μM、約1から50μM、約2から約30μM、又は約5から約25μMまでのピーク血漿濃度を達成するために投与される。例示的な望ましい血漿濃度は、少なくとも0.25、0.5、1、5、10、25、50、75、100又は200μM又はそれ以下を含む。例えば、血漿中レベルは、約1から100マイクロモル濃度まで又は約10から約25マイクロモル濃度までであってよい。一部の実施形態では、これは、場合により生理食塩水中の化合物の0.05から5%溶液の静脈内注射によって達成されるか、又は約1~100mgの化合物を含有するボーラスとして経口的に投与される。一部の実施形態では、望ましい血中レベルは、1時間当たり体重1kgにつき約0.00005~5mg、例えば少なくとも0.00005、0.0005、0.005、0.05、0.5又は5mg/kg/時又はそれ以下を提供するための持続注入によって維持される。一部の実施形態では、そのようなレベルは、体重1kgにつき約0.0002~20mg、例えば、体重1kgにつき少なくとも0.0002、0.002、0.02、0.2、2、20又は50mg又はそれ以下の化合物を含有する間欠注入によって取得される。
【0053】
ある実施形態では、使用されるプリン化合物の量は、1日当たり対象1kg当たり0.1から5mgの間である。好ましい実施形態では、使用されるプリン化合物の量は、1日当たり対象1kg当たり0.2から1.3mgの間である。更なる好ましい実施形態では、使用されるプリン化合物の量は、1日当たり対象1kg当たり約0.3mgから0.7である。
【0054】
一部の実施形態では、化合物は、単回用量で又は適切な間隔で投与される分割用量として、例えば、1日当たり2、3、4回又はそれ以上のサブ用量として、提示される。一部の実施形態では、サブ用量自体が、例えば、数回の別々の離れた間隔をとった投与、例えば吹送器からの複数回の吸入に更に分割される。
【0055】
一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、指示されている疾患の処置における医薬組成物の使用を指示する、ラベル若しくは説明書又は両方付きの容器で包装される。
【0056】
本開示の1つ又は複数の化合物は、独立して又はそれらの任意の組合せで使用されてよいことが理解される。
【実施例
【0057】
実施例1
式I、II、III及びIVの化合物を、A2aRを標的として使用して、GPCR活性についてスクリーニングした。比較のために、NECA及びSCH 442416もスクリーニングした。NECAはA2aRアゴニストである。SCH 442416はA2aRアンタゴニストである。
【0058】
アッセイ設計:カルシウム動員
細胞取り扱い
細胞株を、標準的な手順に従って冷凍庫ストックから拡大した。細胞を、20μLの総体積で、黒壁透明底ポリ-D-リジンコーティングした384ウェルマイクロプレートに播種し、37℃で試験前の適切な時間にわたってインキュベートした。
【0059】
染料ローディング
アッセイは、HBSS/20mM Hepes中の1×染料、1×添加物A及び2.5mMプロベネシドからなる1×染料ローディング緩衝液中で実行した。プロベネシド(Probenicid)は新しいものを調製した。試験前に細胞に染料をロードした。培地を細胞から吸引し、20μLの染料ローディング緩衝液で置きかえた。細胞を37℃で30~60分間にわたってインキュベートした。
【0060】
アゴニストフォーマット
アゴニスト決定のために、細胞を試料とともにインキュベートして、応答を誘導した。染料ローディング後、細胞をインキュベーターから除去し、10μLのHBSS/20mM Hepesを添加した。その後のアンタゴニストアッセイのためのEC80を定義するためにアゴニスト用量曲線を実行する場合、3×ビヒクルが緩衝液に含まれていた。細胞を暗所にて室温で30分間にわたってインキュベートして、プレート温度を平衡化した。試料ストックの中間希釈を実行して、アッセイ緩衝液中で4×試料を生成した。化合物アゴニスト活性をFLIPRテトラ(MDS)で測定した。カルシウム動員を2分間にわたってモニターし、10μLのHBSS/20mM Hepes中4×試料を、アッセイ開始から5秒で細胞に添加した。
【0061】
アロステリック変調フォーマット
アロステリック決定のために、細胞を試料とともにプレインキュベートし、続いて、EC20濃度でアゴニスト誘導した。試料ストックの中間希釈を実行して、アッセイ緩衝液中で3×試料を生成した。染料ローディング後、細胞をインキュベーターから除去し、10μLの3×試料を添加した。細胞を暗所にて室温で30分間にわたってインキュベートして、プレート温度を平衡化した。ビヒクル濃度は1%であった。化合物アロステリック活性をFLIPRテトラ(MDS)で測定した。カルシウム動員を2分間にわたってモニターし、10μLのHBSS/20mM Hepes中4×EC20アゴニストを、アッセイ開始から5秒で細胞に添加した。
【0062】
アンタゴニストフォーマット
アンタゴニスト決定のために、細胞を試料とともにプレインキュベートし、続いて、EC80濃度でアゴニスト負荷した。試料ストックの中間希釈を実行して、アッセイ緩衝液中で3×試料を生成した。染料ローディング後、細胞をインキュベーターから除去し、10μLの3×試料を添加した。細胞を暗所にて室温で30分間にわたってインキュベートして、プレート温度を平衡化した。ビヒクル濃度は1%であった。化合物アンタゴニスト活性をFLIPRテトラ(MDS)で測定した。カルシウム動員を2分間にわたってモニターし、10μLのHBSS/20mM Hepes中EC80アゴニストを、アッセイ開始から5秒で細胞に添加した。
【0063】
データ分析
化合物活性は、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation社、CA)を使用して分析した。アゴニストモードアッセイのために、活性百分率を、以下の式を使用して計算する:
活性%=100%×(試験試料の平均RFU-ビヒクル対照の平均RFU)/(平均MAX RFU対照リガンド-ビヒクル対照の平均RFU)。
【0064】
陽性アロステリックモードアッセイのために、変調百分率を、以下の式を使用して計算する:
変調%=100%×((試験試料の平均RFU-EC20対照の平均RFU)/(MAX対照リガンドの平均RFU-EC20対照の平均RFU))。
【0065】
アンタゴニスト及び陰性アロステリック変調モードアッセイのために、阻害百分率を、以下の式を使用して計算する:
阻害%=100%×(1-(試験試料の平均RFU-ビヒクル対照の平均RFU)/(EC80対照の平均RFU-ビヒクル対照の平均RFU))。
【0066】
図1から図6は、Eurofins Discover X Corporation社のGPCRスクリーニング及びプロファイリングサービスによる、A2aRを標的として使用するGタンパク質連結型受容体(GPCR)スクリーニングの結果を提示する。
【0067】
スクリーニングにおいて、A2aRの活性化はカルシウム動員をもたらし、これを、カルシウム感受性染料を使用してモニターした。カルシウムが放出されると、染料の蛍光が増大し、増大をリアルタイムで測定した。
【0068】
図1から図6は、反応したパーセント(Y)対濃度をμM(X)で示す。化合物を、要求されるGPCRバイオセンサーアッセイを用い、アンタゴニストモードで試験した。アンタゴニストアッセイのために、データを、EC80リガンド及びビヒクルの存在下で観察された最大及び最小応答に対して正規化した。以下のEC80濃度を使用した:ADORA2Aカルシウム流:0.021μM NECA。
【0069】
図1は、式Iの化合物についての結果を示す。半最大阻害濃度(IC50)は0.08851μMであった。
【0070】
図2は、式Iの化合物についての結果を示す。IC50は0.07545μMであった。
【0071】
図3は、式IIIの化合物についての結果を示す。IC50は0.1438μMであった。
【0072】
図4は、式IVの化合物、イストラデフィリンについての結果を示す。IC50は0.0667μMであった。
【0073】
図5は、NECAについての結果を示す。半数効果濃度(EC50)は0.007637μMであった。
【0074】
図6は、SCH 442416についての結果を示す。IC50は0.0113μMであった。
【0075】
結果の概要
【表1】
【0076】
実施例2
式I、II、III及びIVの化合物についての薬物動態データ。
【0077】
雄CD-Iマウスに、指示されている化合物のボーラス1mg/kg静脈内又は3mg/kg経口のいずれかを与え、血漿又は脳濃度を測定した。
【0078】
式Iの化合物の1mg/kgボーラス静脈内投与後の血漿濃度。
【表2】
【0079】
式Iの化合物の1mg/kgボーラス静脈内投与後の脳濃度。
【表3】
【0080】
1aの1mg/kgボーラス静脈内投与後の脳/血漿濃度比。
【表4】
【0081】
図7は、式Iの化合物の血漿及び脳濃度を経時的に示すグラフである。
【0082】
式Iの化合物の3mg/kg経口投与後の血漿濃度。
【表5】
【0083】
図8は、式Iの化合物の1mg/kg静脈内又は3mg//kg経口の投与後の血漿濃度を経時的に示すグラフである。
【0084】
式Iの化合物についての血漿PKパラメーターの概要。
【表6】
【0085】
式Iの化合物についての脳PKパラメーターの概要。
【表7】
【0086】
式Iの化合物では、測定された投薬溶液濃度は、静脈内及び経口製剤についてそれぞれ0.203mg/ml及び0.296であった。
【0087】
ここで、
C0 静脈内用量後に時間ゼロへ外挿される濃度
tmax 最大濃度が観察される時間
Cmax 最大観察濃度
見かけのt1/2 見かけの終末半減期
AUC0~tlast 時間0から最後の測定可能な濃度の時間までの濃度対時間曲線下面積
AUC0~inf 時間0から無限までの濃度対時間曲線下面積
CL 全身クリアランス
MRT0~inf 時間ゼロから無限までの平均滞留時間
Vss 定常状態分布容積
F 経口バイオアベイラビリティ=(用量iv×AUCpo)/(用量po×AUCiv)×100
【0088】
式IIの化合物の1mg/kgボーラス静脈内投与後の血漿濃度。
【表8】
【0089】
式IIの化合物の1mg/kgボーラス静脈内投与後の脳濃度。
【表9】
【0090】
式IIの化合物の1mg/kgボーラス静脈内投与後の脳/血漿濃度比。
【表10】
【0091】
図9は、式IIの化合物の血漿及び脳濃度を経時的に示すグラフである。
【0092】
式IIの化合物の3mg/kg経口投与後の血漿濃度。
【表11】
【0093】
図10は、式IIの化合物の1mg/kg静脈内又は3mg//kg経口の投与後の血漿濃度を経時的に示すグラフである。
【0094】
式IIの化合物についての血漿PKパラメーターの概要。
【表12】
【0095】
式IIの化合物についての脳PKパラメーターの概要。
【表13】
【0096】
式IIの化合物では、測定された投薬溶液濃度は、静脈内及び経口製剤についてそれぞれ0.193mg/ml及び0.299であった。
【0097】
式III(SD-007)の1mg/kgボーラス静脈内投与後の血漿濃度。
【表14】
【0098】
式IIIの化合物の1mg/kgボーラス静脈内投与後の脳濃度。
【表15】
【0099】
式IIIの化合物の1mg/kgボーラス静脈内投与後の脳/血漿濃度比。
【表16】
【0100】
図11は、式IIIの化合物の血漿及び脳濃度を経時的に示すグラフである。
【0101】
式IIIの化合物の3mg/kg経口投与後の血漿濃度。
【表17】
【0102】
図12は、式IIIの化合物の1mg/kg静脈内又は3mg//kg経口の投与後の血漿濃度を経時的に示すグラフである。
【0103】
式IIIの化合物についての血漿PKパラメーターの概要。
【表18】
【0104】
式IIIの化合物についての脳PKパラメーターの概要。
【表19】
【0105】
式IIIの化合物では、測定された投薬溶液濃度は、静脈内及び経口製剤についてそれぞれ0.196mg/ml及び0.282であった。
【0106】
イストラデフィリンの1mg/kgボーラス静脈内投与後の血漿濃度。
【表20】
【0107】
イストラデフィリンの1mg/kgボーラス静脈内投与後の脳濃度。
【表21】
【0108】
イストラデフィリンの1mg/kgボーラス静脈内投与後の脳/血漿濃度比。
【表22】
【0109】
図13は、式IVの化合物の血漿及び脳濃度を経時的に示すグラフである。
【0110】
イストラデフィリンの3mg/kg経口投与後の血漿濃度。
【表23】
【0111】
斜体の値は、定量下限(BLQ、0.5ng/mL)未満であるが計算に含まれ、BLQは、定量下限(0.5ng/mL)未満を表示し、n/aは、適用不可能を表示する。
【0112】
図14は、式IVの化合物、イストラデフィリンの1mg/kg静脈内又は3mg//kg経口の投与後の血漿濃度を経時的に示すグラフである。
【0113】
イストラデフィリンについての血漿PKパラメーターの概要。
【表24】
【0114】
イストラデフィリンについての脳PKパラメーターの概要。
【表25】
【0115】
式IVの化合物では、測定された投薬溶液濃度は、静脈内及び経口製剤についてそれぞれ0.221mg/ml及び0.325であった。
【0116】
実施例3
式I、II、III及びIVの化合物を、マウス及び強制水泳試験を使用するうつ病の研究において試験した。結果を図15及び図16に示す。
【0117】
強制水泳試験は、行動絶望試験としても公知であり、うつ病様行動を試験するために使用される。試験は、水を充填したシリンダー内にラット又はマウスを入れることを含む。「浮遊行動」(動物がほぼ不動のままであり、頭部を水上に保っている場合)をパラメーターとして使用して、「絶望感」及び故にうつ病様行動を分析する。抗うつ薬を与えられたげっ歯類は対照よりも長く泳ぐ。不動時間は種々の抗うつ薬によって減少する。
【0118】
40匹の雄CD-Iマウス(N=1群当たり8匹)を、ビヒクル(0.3%ツイーン80)又は式I(標的1a)、II(標的1b)、III(SD-007)若しくはIV(イストラデフィリン、KW-6002)の試験物品(1mg/kg)のいずれかで、試験の1時間前に経口的に処置した。t=0で、水を充填したガラスシリンダー内にマウスを入れた。精力的な活動の期間後、マウスは、容易に採点される特徴的な不動の姿勢を採用するであろう。6分間の試験セッションにわたって、最初の不動までの潜伏を記録する(秒単位で)。試験の最後の4分の間の不動の持続期間(秒単位で)も測定する。
【0119】
式IIは、不動になるまでの時間を統計的に有意に遅延させた(ダネットの多重比較検定を用いる一元ANOVA)。式II及びIVの同様の効果は不動時間(2~6分)において見られた。故に、うつ病様行動を低減させるこれらの化合物の効能が実証された。
【0120】
上述した本開示の実施形態は、例であることのみを意図されている。本開示は、他の具体的な形態で具現化されてよい。本開示への改変、修正及び変形は、本開示の意図されている範囲から逸脱することなく為されうる。本明細書において開示され示されるシステム、デバイス及びプロセスは、具体的な数の要素/成分を含みうるが、システム、デバイス及びアセンブリは、追加の又はより少ないそのような要素/成分を含むように修正されうる。例えば、開示される要素/成分のいずれかは単数であるとして参照されうるが、本明細書において開示される実施形態は、複数のそのような要素/成分を含むように修正されうる。上述した実施形態の1つ又は複数から選択される特色を組み合わせて、明白に記述されていない代替的な実施形態を作成してよい。開示される範囲内のすべての値及びサブ範囲も開示される。本明細書において記述される主題は、技術におけるすべての好適な変更を網羅し内包することを意図している。言及されるすべての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】