(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】難燃性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/26 20060101AFI20230517BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20230517BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C08L23/26
C08K5/3415
C08K3/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556214
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 US2021026775
(87)【国際公開番号】W WO2021211400
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】チャウダリー、バーラト アイ.
(72)【発明者】
【氏名】シャー、アンドリュー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】イム、チョンス
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB042
4J002BB201
4J002DE127
4J002EU026
4J002EZ048
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD208
4J002GQ01
(57)【要約】
ポリマー組成物は、シラン官能化ポリオレフィンと、350℃~500℃の5%質量損失温度及び650℃で2重量%~50重量%の保持質量を有する臭素化難燃剤であって、5%質量損失及び650℃での保持質量が、熱重量分析に従って測定される、臭素化難燃剤と、三酸化アンチモンと、を含み、このポリマー組成物は、0.0超~0.35のアンチモン(Sb)対臭素(Br)モル比(Sb:Brモル比)を有する。被覆導体は、このポリマー組成物を使用して形成され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
シラン官能化ポリオレフィンと、
350℃~500℃の5%質量損失温度及び650℃で2重量%~50重量%の保持質量を有する臭素化難燃剤であって、前記5%質量損失及び650℃での保持質量が、熱重量分析に従って測定される、臭素化難燃剤と、
三酸化アンチモンと、を含み、
前記ポリマー組成物が、0.0超~0.35のアンチモン(Sb)対臭素(Br)モル比(Sb:Brモル比)を有する、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~5.0重量%のシラノール縮合触媒を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%~30重量%の第2のポリオレフィンを更に含み、前記第2のポリオレフィンが、結晶化度試験に従って測定されたときに、23℃で0重量%~80重量%の結晶化度を有する、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記臭素化難燃剤が、エチレンビス-テトラブロモフタルイミドを含む、請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%~45重量%のエチレンビス-テトラブロモフタルイミドを含む、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、1重量%~15重量%の三酸化アンチモンを含む、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記Sb:Brモル比が、0.20~0.30である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
被覆導体であって、
導体と、
前記導体の周りに少なくとも部分的に配設された、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物と、を含む、被覆導体。
【請求項9】
前記被覆導体が、水平燃焼試験に合格する、請求項8に記載の被覆導体。
【請求項10】
前記被覆導体が、VW-1燃焼試験に合格する、請求項8又は9に記載の被覆導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤ及びケーブル用途に適した組成物、特にハロゲン化難燃性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化難燃剤を含むポリマー組成物は、既知である。ハロゲン化難燃剤の例としては、臭素化難燃剤が挙げられる。難燃性を提供するためにハロゲン化難燃剤にのみ依存するポリマー組成物は、典型的には、高配合量の難燃剤を必要とし、多くの場合、最も厳しい燃焼性能要件を満たすことができない。高配合量の難燃剤は、ポリマー組成物の加工性及び機械的性能、例えば、引張伸び及び衝撃強度に悪影響を及ぼす。
【0003】
熱又は火炎への曝露中、ハロゲン化難燃剤は、ハロゲン化気相を形成すると考えられる。ハロゲン化気相は、フリーラジカル火炎被毒機構を通して火炎進行を遅らせると考えられる。フリーラジカル被毒機構では、さもなければ更なる発熱反応を促進し続けるであろう活性フリーラジカルが、ハロゲン化蒸気中のハロゲンと結合し、ハロゲンによって中和される。
【0004】
高いハロゲン化充填剤濃度に関連付けられる加工性及び機械的性能の問題を克服する1つの方法が、難燃性相乗剤を含むことである。難燃性相乗剤の一例が、三酸化アンチモンである。三酸化アンチモンは、温度が上昇するにつれて、臭素化難燃剤と酸化アンチモンとの間の反応から生成されたハロゲン化酸化アンチモン錯体の連続的な変換を通じた、揮発性であるが高密度のハロゲン化アンチモン蒸気の発生によって、ハロゲン化充填剤に相乗効果を提供すると考えられる。アンチモンとハロゲンとのこの結合は、アンチモンを含まないハロゲン化気相よりも高い安定性を有する様々な気相化合物を生成する。ハロゲン化アンチモンのより高い安定性及びより高い密度は、フリーラジカル連鎖反応が起こる燃焼ゾーンに近接したハロゲン化気相の滞留時間を増加させ、その結果、より多くの数のフリーラジカルが被毒して、火炎進行が抵抗される。
【0005】
ハロゲン化充填剤と三酸化アンチモンとの関係の重要性を考慮して、ポリオレフィン組成物中のアンチモンとハロゲンとの比を最適化する試みがなされてきた。例えば、米国特許出願公開第2019/0185654号(「654公開」)は、0.37~1.05のアンチモン対臭素(「Sb:Br」)モル比を達成するために、ハロゲン化難燃剤としてのエチレン-1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)及び三酸化アンチモンの使用を開示している。「654公開は、0.37未満のSb:Brモル比を有し、ワイヤ及びケーブル構造の被覆導体を作製するために使用されるとVW-1燃焼試験に不合格となるいつかの比較例(すなわち、比較例8、9、及び11)を提供している。
【0006】
難燃性相乗剤としての三酸化アンチモンの使用は、様々な制約圧力に直面する。例えば、三酸化アンチモンは、その使用を低減又は放棄する、特定の管轄区域内の規制圧力に直面する。更に、三酸化アンチモンの供給は、自然の堆積物の位置及び地政学的緊張に起因して制約され得る。したがって、三酸化アンチモンの使用を低減することが所望されるが、「654公開は、三酸化アンチモンが少なすぎると、許容できない燃焼試験特性を示す組成物がもたらされ得ることを実証している。更に、ハロゲン化充填剤成分を単に増加させることは、組成物の機械的特性に悪影響を及ぼし得る。
【0007】
前述の観点から、VW-1燃焼試験に合格することを可能にし、かつ0.37未満のSb:Brモル比を有するポリマー組成物を発見することは、驚くべきことであろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、VW-1燃焼試験に合格することを可能にし、かつ0.37未満のSb:Brモル比を有するポリマー組成物を提供する。
【0009】
本出願の発明者らは、シラン官能化ポリオレフィンと、臭素化難燃剤と、三酸化アンチモンと、を含む、ポリマー組成物が、このポリマー組成物から作製された被覆導体がVW-1燃焼試験に合格することを依然として可能にしながら、0超~0.35のSb:Brモル比を可能にすることを見出した。このポリマー組成物は、0.37未満のSb:Brモル比は、三酸化アンチモンがハロゲン化充填剤と効果的に相互作用するには低すぎて、フリーラジカルの伝播及びVW-1燃焼試験の不合格をもたらすと考えられていたので、驚くべきものである。そのようなポリマー組成物の発見は、ポリマー組成物から作製された被覆導体がVW-1燃焼試験に合格することを可能にし得る組成物、及び組成物中に存在する三酸化アンチモンの相対量も減少させる組成物の両方を提供するのに有利である。
【0010】
シラン官能化ポリオレフィンと、臭素化難燃剤と、三酸化アンチモンと、を含む、本発明のポリマー組成物は、ワイヤ及びケーブルのジャケット又は絶縁体として特に有用である。
【0011】
本開示の第1の特徴によれば、ポリマー組成物は、シラン官能化ポリオレフィンと、350℃~500℃の5%質量損失温度及び650℃で2重量%~50重量%の保持質量を有する臭素化難燃剤であって、5%質量損失及び650℃での保持質量が熱重量分析に従って測定される、臭素化難燃剤と、三酸化アンチモンと、を含み、このポリマー組成物は、0.0超~0.35のアンチモン(Sb)対臭素(Br)モル比(Sb:Brモル比)を有する。
【0012】
本開示の第2の特徴によれば、本ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~5.0重量%のシラノール縮合触媒を含む。
【0013】
本開示の第3の特徴によれば、本ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%~30重量%の第2のポリオレフィンを含み、第2のポリオレフィンは、結晶化度試験に従って測定されたときに、23℃で0重量%~80重量%の結晶化度を有する。
【0014】
本開示の第4の特徴によれば、臭素化難燃剤は、エチレンビス-テトラブロモフタルイミドを含む。
【0015】
本開示の第5の特徴によれば、本ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%~45重量%のエチレンビス-テトラブロモフタルイミドを含む。
【0016】
本開示の第6の特徴によれば、本ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、1重量%~15重量%の三酸化アンチモンを含む。
【0017】
本開示の第7の特徴によれば、Sb:Brモル比は、0.20~0.30である。
【0018】
本開示の第8の特徴によれば、被覆導体は、導体と、導体の周囲に少なくとも部分的に配設された、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物と、を含む。
【0019】
本開示の第9の特徴によれば、被覆導体は、水平燃焼試験に合格する。
【0020】
本開示の第10の特徴によれば、被覆導体は、VW-1燃焼試験に合格する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物はAを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0022】
別途記載のない限り、すべての範囲は、終点を含む。
【0023】
試験方法は、試験方法番号でハイフン付きの2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照され、ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)(旧称、米国材料試験協会、American Society for Testing and Materials)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fuer Normung)を指し、ISOは国際標準化機構(International Organization for Standards)を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分が、ポリマー組成物の総重量に占める重量パーセンテージを示す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「CAS番号」は、Chemical Abstracts Serviceによって割り当てられたケミカルサービス登録番号である。
【0026】
ポリマー組成物
本開示は、ポリマー組成物に関する。本ポリマー組成物は、シラン官能化ポリオレフィンと、臭素化難燃剤と、三酸化アンチモンと、を含む。本ポリマー組成物は、0.0超~0.35のアンチモン(Sb)対臭素(Br)モル比(Sb:Brモル比)を有する。本ポリマー組成物は、任意選択で第2のポリオレフィンを含み得る。
【0027】
シラン官能化ポリオレフィン
本ポリマー組成物は、シラン官能化ポリオレフィンを含む。「シラン官能化ポリオレフィン」は、シランと、シラン官能化ポリオレフィンの総重量に基づいて、50重量%以上、又は過半量の重合α-オレフィンとを含有するポリマーである。「ポリマー」とは、同じ種類又は異なる種類のモノマーを反応(すなわち、重合)させることによって調製される巨大分子化合物を意味する。上述のように、本ポリマー組成物は、シラノン官能化ポリオレフィンを含む。シラン官能化ポリオレフィンは、架橋し、そうすることで、高温でのポリマー組成物の流れに対する抵抗を増加させる。
【0028】
シラン官能化ポリオレフィンは、α-オレフィンとシランとのコポリマー、シラングラフト化ポリオレフィン、及び/又はそれらの組み合わせを含み得る。「α-オレフィンとシランとのコポリマー」(α-オレフィン/シランコポリマー)は、ポリマー組成物にポリマーを組み込む前に、加水分解性シランモノマーが、ポリマー鎖の骨格に組み込まれるように、α-オレフィン(エチレンなど)と、加水分解性シランモノマー(ビニルシランモノマーなど)との共重合から形成される。「シラングラフト化ポリオレフィン」又は「Si-g-PO」は、Sioplasプロセスによって形成されてもよく、ここで加水分解性シランモノマーは、ポリマー組成物にポリマーを組み込む前に、押出などのプロセスによってベースポリオレフィンの骨格にグラフト化される。
【0029】
シラン官能化ポリオレフィンが、α-オレフィンとシランとのコポリマーである例では、シラン官能化ポリオレフィンは、少なくとも1つのα-オレフィンと、加水分解性シランモノマーとの共重合によって調製される。シラン官能化ポリオレフィンが、シラングラフト化ポリオレフィンである例では、シラン官能化ポリオレフィンは、1つ以上の加水分解性シランモノマーを、ポリマーの重合したα-オレフィン骨格にグラフト化することによって調製される。
【0030】
シラン官能化ポリオレフィンは、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)又はフーリエ変換赤外(Fourier-Transform Infrared、FTIR)分光法を使用して測定されたときに、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、又は91重量%以上、又は92重量%以上、又は93重量%以上、又は94重量%以上、又は95量%以上、又は96重量%以上、又は97重量%以上、又は97.5重量%以上、又は98重量%以上、又は99重量%以上、一方で同時に、99.5重量%以下、又は99重量%以下、又は98重量%以下、又は97重量%以下、又は96重量%以下、又は95重量%以下、又は94重量%以下、又は93重量%以下、又は92重量%以下、又は91重量%以下、又は90重量%以下、又は85重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下のα-オレフィンを含み得る。α-オレフィンは、C2、又はC3~C4、又はC6、又はC8、又はC10、又はC12、又はC16、又はC18、又はC20α-オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンを含み得る。シラン官能化ポリオレフィンの他の単位は、不飽和エステルを含む(ただしこれらに限定されない)1つ以上の重合性モノマーから誘導され得る。不飽和エステルは、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、又はカルボン酸ビニルであり得る。アルキル基は、1~8個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を有することができる。カルボキシレート基は、2~8個の炭素原子又は2~5個の炭素原子を有することができる。アクリレート及びメタクリレートの例としては、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、及び2エチルヘキシルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。ビニルカルボキシレートの例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、及びビニルブタノアートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
シラン官能化ポリオレフィンは、ASTM D792により測定されたときに、立方センチメートル当たり0.860グラム(g/cc)以上、又は0.870g/cc以上、又は0.880g/cc以上、又は0.890g/cc以上、又は0.900g/cc以上、又は0.910g/cc以上、又は0.915g/cc以上、又は0.920g/cc以上、又は0.921g/cc以上、又は0.922g/cc以上、又は0.925g/cc以上、又は0.930g/cc以上、又は0.935g/cc以上、一方で同時に、0.970g/cc以下、又は0.960g/cc以下、又は0.950g/cc以下、又は0.940g/cc以下、又は0.935g/cc以下、又は0.930g/cc以下、又は0.925g/cc以下、又は0.920g/cc以下、又は0.915g/cc以下の密度を有する。
【0032】
「加水分解性シランモノマー」は、α-オレフィン(例えば、エチレン)と効果的に共重合してα-オレフィン/シランコポリマー(エチレン/シランコポリマーなど)を形成するか、又はα-オレフィンポリマー(すなわち、ポリオレフィン)にグラフト化してSi-g-ポリオレフィンを形成し、それにより、シラン官能化ポリオレフィンのその後の架橋を可能にする。加水分解性シランモノマーの代表的であるが限定されない例は、構造(I)を有し、
【化1】
式中、R
1は、水素原子又はメチル基であり、xは、0又は1であり、nは、1~4、又は6、又は8、又は10、又は12の整数であり、各R
2は、独立して、加水分解性有機基、例えば、1~12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラロキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、1~12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノ基若しくは置換アミノ基(例えば、アルキルアミノ、アリールアミノ)、又は1~6個の炭素原子を有する低級アルキル基であるが、ただし、3つのR
2基のうちの1つ以下がアルキルであることを条件とする。加水分解性シランモノマーは、高圧プロセスなどの反応器内でα-オレフィン(エチレンなど)と共重合して、α-オレフィン/シランコポリマーを形成し得る。α-オレフィンがエチレンである例では、そのようなコポリマーは、本明細書ではエチレン/シランコポリマーと称される。加水分解性シランモノマーは、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンなどの有機過酸化物を使用することによって、ポリオレフィン(ポリエチレンなど)にグラフト結合されてSi-g-PO又はインサイチュSi-g-POを形成し得る。インサイチュSi-g-POは、MONOSILプロセスなどのプロセスによって形成され、このプロセスでは、加水分解性シランモノマーが、本組成物の押出中にポリオレフィンの骨格上にグラフトされて、例えば、米国特許第4,574,133号に記載されるように、被覆導体を形成する。
【0033】
加水分解性シランモノマーは、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、又はガンマ(メタ)アクリロキシアリル基などのエチレン性不飽和ヒドロカルビル基、及び例えば、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ、又はヒドロカルビルアミノ基などの加水分解性基を含むシランモノマーを含んでもよい。加水分解性基は、メトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロプリオニルオキシ、及びアルキル又はアリールアミノ基を含んでもよい。特定の例では、加水分解性シランモノマーは、不飽和アルコキシシランであり、これは、ポリオレフィン上にグラフト化することができるか、又は反応器内でα-オレフィン(エチレンなど)と共重合することができる。加水分解性シランモノマーの例としては、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、ビニルトリエトキシシラン(VTES)、ビニルトリアセトキシシラン、及びガンマ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。構造(I)に関連して、VTMSについては、x=0、R1=水素、及びR2=メトキシ、VTESについては、x=0、R1=水素、及びR2=エトキシ、並びにビニルトリアセトキシシランについては、x=0、R1=H、及びR2=アセトキシである。
【0034】
適切なエチレン/シランコポリマーの例は、SI-LINK(商標)DFDA-5451 NT及びSI-LINK(商標)AC DFDB-5451 NTとして市販されており、各々は、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。適切なSi-g-POの例は、SACO AEI Polymers(Shebyogan,WI)からPEXIDAN(商標)A-3001、及びPolyOne(Avon Lake,OH)からSYNCURE(商標)S1054Aとして市販されている。
【0035】
本ポリマー組成物は、20重量%~80重量%のシラン官能化ポリオレフィンを含み得る。本ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、20重量%以上、又は22重量%以上、又は24重量%以上、又は26重量%以上、又は28重量%以上、又は30重量%以上、又は32重量%以上、又は34重量%以上、又は36重量%以上、又は38重量%以上、又は40重量%以上、又は42重量%以上、又は44重量%以上、又は46重量%以上、又は48重量%以上、又は50重量%以上、又は52重量%以上、又は54重量%以上、又は56重量%以上、又は58重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、又は70重量%以上、又は75重量%以上、一方で同時に、80重量%以下、又は75重量%以下、又は70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は58重量%以下、又は56重量%以下、又は54重量%以下、又は52重量%以下、又は40重量%以下、又は48重量%以下、又は46重量%以下、又は44重量%以下、又は42重量%以下、又は40重量%以下、又は38重量%以下、又は36重量%以下、又は34重量%以下、又は32重量%以下、又は30重量%以下、又は28重量%以下、又は26重量%以下、又は24重量%以下、又は22重量%以下のシラン官能化ポリオレフィンを含み得る。
【0036】
シラン官能化ポリオレフィンは、190℃/2.16キログラム(kg)重量の条件下でASTM D1238に従って測定されるメルトインデックスを有し、10分当たりに溶出されるグラム数(g/10分)で報告される。シラン官能化ポリオレフィンのメルトインデックスは、0.5g/10分以上、又は1.0g/10分以上、又は1.5g/10分以上、又は2.0g/10分以上、又は2.5g/10分以上、又は3.0g/10分以上、又は3.5g/10分以上、又は4.0g/10分以上、又は4.5g/10分以上、一方で同時に、30.0g/10分以下、又は25.0g/10分以下、又は20.0g/10分以下、又は15.0g/10分以下、又は10.0g/10分以下、又は5.0g/10分以下、又は4.5g/10分以下、又は4.0g/10分以下、又は3.5g/10分以下、又は3.0g/10分以下、又は2.5g/10分以下、又は2.0g/10分以下、又は1.5g/10分以下、又は1.0g/10分以下であり得る。
【0037】
臭素化難燃剤
本ポリマー組成物は、臭素化難燃剤を含む。臭素化難燃剤は、以下に説明される熱重量分析に従って測定されたときに、350℃~500℃の5%質量損失温度を有し得る。5%質量損失温度は、熱重量分析に従って測定されたときに、350℃以上、又は360℃以上、又は370℃以上、又は380℃以上、又は390℃以上、又は400℃以上、又は410℃以上、又は420℃以上、又は430℃以上、又は440℃以上、又は450℃以上、又は460℃以上、又は470℃以上、又は480℃以上、又は490℃以上、一方で同時に、500℃以下、又は490℃以下、又は480℃以下、又は470℃以下、又は460℃以下、又は450℃以下、又は440℃以下、又は430℃以下、又は420℃以下、又は410℃以下、又は400℃以下、又は390℃以下、又は380℃以下、又は370℃以下、又は360℃であり得る。5%質量損失温度は、臭素化難燃剤の脱臭化水素化と相関している。時期尚早の脱臭化水素化は、遅すぎる脱臭化水素化もそうであるように、難燃性に悪影響を及ぼし、したがって、350℃~500℃の5%質量損失温度を有することは、難燃性を高めるのに有利である。
【0038】
臭素化難燃剤は、以下に説明されるように、熱重量分析に従って測定されたときに、650℃で2重量%~50重量%の保持質量を有する。臭素化難燃剤は、2重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は13重量%以上、又は15重量%以上、又は18重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、一方で同時に、50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は18重量%以下、又は15重量%以下、又は13重量%以下、又は10重量%以下、又は5重量%以下の650℃での保持質量を有し得る。650℃での保持質量は、チャーを形成する臭素化難燃剤の唯一の能力の指標であり、チャーは、多くの場合、保護されている材料を絶縁し、熱分解を遅延させ、酸素/空気の拡散、並びに更なるガスの燃料燃焼への放出を妨げるバリアを生成する炭素質材料である。したがって、周知の燃焼の三要素の観点から、チャーの形成は、チャーが、ポリマー組成物との酸素の接触を低減することに加えて、熱伝達も低減するので、有利である。
【0039】
臭素化難燃剤は、エチレンビス-テトラブロモフタルイミドを含み得る。エチレンビス-テトラブロモフタルイミドは、32588-76-4のCAS番号を有し、Albemarle(Charlotte,North Carolina,USA)からSAYTEX(商標)BT-93Wの商品名で市販されている。本ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%以上、10重量%以上、11重量%以上、又は13重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は31重量%以上、又は32重量%以上、又は33重量%以上、又は34重量%以上、又は35重量%以上、又は36重量%以上、又は37重量%以上、又は38重量%以上、又は39重量%以上、又は40重量%以上、又は41重量%以上、又は42重量%以上、又は43重量%以上、又は44重量%以上、一方で同時に、45重量%以下、又は44重量%以下、又は43重量%以下、又は42重量%以下、又は41重量%以下、又は40重量%以下、又は39重量%以下、又は38重量%以下、又は37重量%以下、又は36重量%以下、又は35重量%以下、又は34重量%以下、又は33重量%以下、又は32重量%以下、又は31重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は13重量%以下、又は11重量%以下、又は10重量%以下のエチレンビス-テトラブロモフタルイミドを含み得る。エチレンビス-テトラブロモフタルイミドは、67.2重量%の臭素含有量を有する。
【0040】
三酸化アンチモン
本組成物は、三酸化アンチモンを含む。三酸化アンチモン(Sb
2O
3)は、CAS番号1309-64-4及び以下の構造(II)を有する。
【化2】
【0041】
三酸化アンチモンは、1モル当たり291.518グラム(g/mol)の分子量(Mw)を有する。1グラムの三酸化アンチモン(Sb2O3)は、0.835345774グラムのアンチモン(Sb)を含有する。三酸化アンチモンは、Great Lakes SolutionからMICROFINE(商標)AO9、及びChina Antimony Chemicals Co.,Ltd.からBRIGHTSUN(商標)HBの商品名で市販されている。本ポリマー組成物は、1重量%以上、又は2重量%以上、又は3重量%以上、又は4重量%以上、又は5重量%以上、又は6重量%以上、又は7重量%以上、又は8重量%以上、又は9重量%以上、又は10重量%以上、又は11重量%以上、又は12重量%以上、又は13重量%以上、又は14重量%以上、一方で同時に、15重量%以下、又は14重量%以下、又は13重量%以下、又は12重量%以下、又は11重量%以下、又は10重量%以下、又は9重量%以下、又は8重量%以下、又は7重量%以下、又は6重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下の三酸化アンチモンを含み得る。
【0042】
第2のポリオレフィン
本組成物は、任意選択の第2のポリオレフィンを含み得る。シラン官能化ポリオレフィンと同様に、第2のオレフィンは、重合α-オレフィンと、任意選択で不飽和エステルとを含む。α-オレフィンは、C2、又はC3~C4、又はC6、又はC8、又はC10、又はC12、又はC16、又はC18、又はC20α-オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンを含み得る。不飽和エステルは、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、又はカルボン酸ビニルであり得る。第2のポリオレフィンは、シラン官能化されていなくてもよい。第2のポリオレフィンは、以下に提供される結晶化度試験に従って測定されたときに、23℃で0重量%~80重量%の結晶化度を有し得る。例えば、第2のポリオレフィンの23℃での結晶化度は、結晶化度試験に従って測定されたときに、0重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、又は70重量%以上、又は75重量%以上、一方で同時に、80重量%以下、又は75重量%以下、又は70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下であり得る。
【0043】
第2のポリオレフィンは、超低密度ポリエチレン、又は直鎖状低密度ポリエチレン、又は高密度ポリエチレン、又はエチレンエチルアクリレートコポリマー、又はエチレンビニルアセテートコポリマーであり得る。第2のポリオレフィンの密度は、ASTM D792により測定されたときに、0.860g/cc以上、0.870g/cc以上、又は0.880g/cc以上、又は0.890g/cc以上、又は0.900g/cc以上、又は0.904g/cc以上、又は0.910g/cc以上、又は0.915g/cc以上、又は0.920g/cc以上、又は0.921g/cc以上、又は0.922g/cc以上、又は0.925g/cc~0.930g/cc以上、又は0.935g/cc以上、一方で同時に、0.970g/cc以下、又は0.960g/cc以下、又は0.950g/cc以下、又は0.940g/cc以下、又は0.935g/cc以下、又は0.930g/cc以下、又は0.925g/cc以下、又は0.920g/cc以下、又は0.915g/cc以下、又は0.910g/cc以下、又は0.905g/cc以下、又は0.900g/cc以下であり得る。
【0044】
第2のポリオレフィンは、190℃/2.16キログラム(kg)重量の条件下でASTM D1238に従って測定されるメルトインデックスを有し、10分当たりに溶出されるグラム数(g/10分)で報告される。シラン官能化ポリオレフィンのメルトインデックスは、0.5g/10分以上、又は1.0g/10分以上、又は1.5g/10分以上、又は2.0g/10分以上、又は2.5g/10分以上、又は3.0g/10分以上、又は3.5g/10分以上、又は4.0g/10分以上、又は4.5g/10分以上、一方で同時に、30.0g/10分以下、又は25.0g/10分以下、又は20.0g/10分以下、又は15.0g/10分以下、又は10.0g/10分以下、又は5.0g/10分以下、又は4.5g/10分以下、又は4.0g/10分以下、又は3.5g/10分以下、又は3.0g/10分以下、又は2.5g/10分以下、又は2.0g/10分以下、又は1.5g/10分以下、又は1.0g/10分以下であり得る。
【0045】
本ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%~30重量%の第2のポリオレフィンを含み得る。本ポリマー組成物は、0重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、一方で同時に、30重量%以下、又は25重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%の第2のポリオレフィンを含み得る。
【0046】
添加剤
本ポリマー組成物は、1つ以上の添加剤を含み得る。適切な添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、着色剤、腐食防止剤、潤滑剤、シラノール縮合触媒、紫外線(ultraviolet、UV)吸収剤又は安定剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、カップリング剤、相溶化剤、可塑剤、充填剤、加工助剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
本ポリマー組成物は、酸化防止剤を含み得る。適切な酸化防止剤の非限定的な例としては、フェノール系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、及びヒドラジン系金属不活性化剤が挙げられる。適切なフェノール系酸化防止剤としては、高分子量ヒンダードフェノール、メチル置換フェノール、一級又は二級カルボニルを有する置換基を有するフェノール、並びに硫黄及びリン含有フェノールなどの多官能フェノールが挙げられる。代表的なヒンダードフェノールとしては、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチルテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-メチレンビス(2,6-tert-ブチル-フェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール)、2,6-ジ-tertブチルフェノール、6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチル-チオ)-1,3,5トリアジン、ジ-n-オクチルチオ)エチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンゾエート、及びソルビトールヘキサ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオネート]が挙げられる。一実施形態では、本組成物は、BASFからIrganox(商標)1010として市販されているペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を含む。適切なメチル置換フェノールの非限定的な例は、イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)である。適切なヒドラジン系金属不活性化剤の非限定的な例は、オキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)である。一実施形態では、本組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.001重量%、又は0.01重量%、又は0.02重量%、又は0.05重量%、又は0.1重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、又は0.4重量%~0.5重量%、又は0.6重量%、又は0.7重量%、又は0.8重量%、又は1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%の酸化防止剤を含有する。
【0048】
本ポリマー組成物は、ルイス酸及びブレンステッド酸並びに塩基などのシラノール縮合触媒を含み得る。「シラノール縮合触媒」は、加水分解反応及び縮合反応を通してシラン官能化ポリオレフィンの架橋を促進する。ルイス酸は、ルイス塩基からの電子対を受け入れることができる化学種である。ルイス塩基は、電子対をルイス酸に供与することができる化学種である。適切なルイス酸の非限定的な例としては、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)、ジメチルヒドロキシスズオレエート、ジオクチルスズマレエート、ジ-n-ブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、酢酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、並びに様々な他の有機金属化合物、例えばナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、及びナフテン酸コバルトが挙げられる。適切なルイス塩基の非限定的な例としては、一級、二級、及び三級アミンが挙げられる。適切なブレンステッド酸の非限定的な例は、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、又はアルキルナフタレンスルホン酸である。シラノール縮合触媒は、ブロックされたスルホン酸を含み得る。ブロックされたスルホン酸は、米国特許出願公開第2016/0251535(A1)号に定義されているとおりであり得、その加熱時に、任意選択で水分又はアルコールの存在下で、インサイチュでスルホン酸を生成する化合物であり得る。ブロックされたスルホン酸の例としては、アミン-スルホン酸塩及びスルホン酸アルキルエステルが挙げられる。ブロックされたスルホン酸は、炭素原子、水素原子、1つの硫黄原子、及び3つの酸素原子、及び任意選択で窒素原子からなり得る。これらの触媒は、典型的には湿気硬化用途に使用される。本ポリマー組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.001重量%、又は0.005重量%、又は0.01重量%、又は0.02重量%、又は0.03重量%~0.05重量%、又は0.1重量%、又は0.2重量%、又は0.5重量%、又は1.0重量%、又は3.0重量%、又は5.0重量%のシラノール縮合触媒を含む。シラノール縮合触媒は、典型的には、シラノール縮合触媒が最終溶融押出プロセス中に存在するように、物品製造押出機に(ケーブル製造中などに)添加される。このように、シラン官能化ポリオレフィンは、シラン官能化ポリオレフィンが押出機を出る前に、いくらかの架橋を経験し得、シラン官能化ポリオレフィンが押出機を出た後、典型的には水分(例えば、サウナ、湯浴、若しくは冷却浴)及び/又はシラン官能化ポリオレフィンが保管、輸送、若しくは使用される環境内に存在する湿気に曝されるときに、架橋が完了する。
【0049】
シラノール縮合触媒は、触媒マスターバッチが本組成物中に含まれた状態で、触媒マスターバッチブレンドに含まれ得る。適切な触媒マスターバッチの非限定的な例としては、SI-LINK(商標)DFDA-5481 Natural及びSI-LINK(商標)AC DFDA-5488 NTを含む、The Dow Chemical CompanyからSI-LINK(商標)の商品名で販売されるものが挙げられる。一実施形態では、本組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.001重量%、又は0.01重量%、又は0.5重量%、又は1.0重量%、又は2.0重量%、又は3.0重量%、又は4.0重量%~5.0重量%、又は6.0重量%、又は7.0重量%、又は8.0重量%、又は9.0重量%、又は10.0重量%、又は15.0重量%、又は20.0重量%の触媒マスターバッチを含有する。
【0050】
本ポリマー組成物は、紫外線(UV)吸収剤又は安定剤を含み得る。適切なUV安定剤の非限定的な例は、ヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizer、HALS)である。適切なHALSの非限定的な例は、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N、N-1,2-エタンジイルビス-N-3-4,6-ビスブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノプロピル-N,N-ジブチル-N,N-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-1,5,8,12-テトラキス[4,6-ビス(n-ブチル-n-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカンである(これは、SABO S.p.A(Levate,Italy)からSABO(商標)STAB UV-119として市販されている)。一実施形態では、本組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.001重量%、又は0.002重量%、又は0.005重量%、又は0.006重量%~0.007重量%、又は0.008重量%、又は0.009重量%、又は0.01重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、又は0.4重量%、又は0.5重量%、1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%のUV吸収剤又は安定剤を含有する。
【0051】
一実施形態では、本ポリマー組成物は、充填剤を含む。適切な充填剤の非限定的な例としては、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、硫化亜鉛、カーボンブラック、有機粘土、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ヒドロマグネサイト、ハンタイト、ハイドロタルサイト、ベーマイト、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、シリコーンガム、タルク、及びそれらの組み合わせが挙げられる。充填剤は、難燃特性を有していても、又は有していなくてもよい。一実施形態では、充填剤は、さもなければ充填剤がシラン硬化反応を妨害しなければならない可能性がある任意の傾向を防止又は遅延させる材料で被覆される。ステアリン酸は、そのような充填剤被覆の例示である。一実施形態では、本組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.01重量%、又は0.02重量%、又は0.05重量%、又は0.07重量%、又は0.1重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、又は0.4重量%~0.5重量%、又は0.6重量%、又は0.7重量%、又は0.8重量%、又は1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%、又は5.0重量%、又は8.0重量%、又は10.0重量%、又は20重量%の充填剤を含有する。
【0052】
一実施形態では、本組成物は、加工助剤を含む。適切な加工助剤の非限定的な例としては、油、ポリジメチルシロキサン、有機酸(ステアリン酸など)、及び有機酸の金属塩(ステアリン酸亜鉛など)が挙げられる。一実施形態では、本組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.01重量%、又は0.02重量%、又は0.05重量%、又は0.07重量%、又は0.1重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、0.4重量%~0.5重量%、又は0.6重量%、又は0.7重量%、又は0.8重量%、又は1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%、又は5.0重量%、又は10.0重量%の加工助剤を含有する。
【0053】
一実施形態では、本組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0重量%超、又は0.001重量%、又は0.002重量%、又は0.005重量%、又は0.006重量%~0.007重量%、又は0.008重量%、又は0.009重量%、又は0.01重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、又は0.4重量%、又は0.5重量%、1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%、又は4.0重量%、又は5.0重量%~6.0重量%、又は7.0重量%、又は8.0重量%、又は9.0重量%、又は10.0重量%、又は15.0重量%、又は20.0重量%、又は30重量%、又は40重量%、又は50重量%の添加剤を含有する。
【0054】
臭素化難燃剤、三酸化アンチモン、及び添加剤のうちの1つ以上は、予備混合マスターバッチとして組み合わされ得る。そのようなマスターバッチは、一般的に、臭素化難燃剤、三酸化アンチモン、及び/又は添加剤を不活性プラスチック樹脂、例えば、低密度ポリエチレン中に分散させることによって形成される。マスターバッチは、溶融化合法により好都合に形成される。
【0055】
成分、例えば充填剤中に存在するか、又は充填剤に関連付けられる水分によって引き起こされ得る焦げの可能性を低減又は排除するために、成分又はマスターバッチのうちの1つ以上が、配合又は押出前に乾燥されてもよいか、又は成分又はマスターバッチの混合物が、配合又は押出後に乾燥される。本組成物は、長い貯蔵寿命のために、シラノール縮合触媒の非存在下で調製され得、シラノール縮合触媒は、押出プロセスによるケーブル構造の調製における最終ステップとして添加され得る。
【0056】
Sb:Brモル比
本ポリマー組成物は、三酸化アンチモン及び臭素化難燃剤を、アンチモン(Sb)及び臭素(Br)が、0.0超~0.35のモル比(Sb:Brモル比)である相対量で含有する。例えば、本ポリマー組成物は、0.0超、又は0.02以上、又は0.04以上、又は0.06以上、又は0.08以上、又は0.10以上、又は0.12以上、又は0.14以上、又は0.16以上、又は0.18以上、又は0.20以上、又は0.22以上、又は0.24以上、又は0.26以上、又は0.28以上、又は0.30以上、又は0.32以上、又は0.34以上、一方で同時に、0.36以下、又は0.34以下、又は0.32以下、又は0.30以下、又は0.28以下、又は0.26以下、又は0.24以下、又は0.22以下、又は0.20以下、又は0.18以下、又は0.16以下、又は0.14以下、又は0.12以下、又は0.10以下、又は0.08以下、又は0.06以下、又は0.04以下、又は0.02以下のSb:Brモル比を有する。Sb:Brモル比は、下式(1)に従って計算される。
【数1】
【0057】
三酸化アンチモン(Sb
2O
3)からの、ポリマー組成物中のアンチモン(Sb)のモル数は、下式(1A)に従って計算される。
【数2】
【0058】
臭素化難燃剤からの、ポリマー組成物中の臭素のモル数は、下式(1B)に従って計算される。
【数3】
【0059】
被覆導体
本開示はまた、被覆導体を提供する。被覆導体は、導体と、導体上の被覆とを含み、被覆は、本ポリマー組成物を含む。本ポリマー組成物は、導体の周囲に少なくとも部分的に配設されて、被覆導体を生成する。
【0060】
被覆導体を製造するためのプロセスは、押出機内でポリマー組成物を混合し、かつシラン官能化ポリオレフィンの少なくとも溶融温度に加熱することと、次いでポリマー溶融ブレンドを導体上に被覆することと、を含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触又は間接接触を含む。ポリマー溶融ブレンドは、押出可能な状態にある。
【0061】
本ポリマー組成物は、導体の上及び/又は周りに配設されて、被覆を形成する。被覆は、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。被覆は、導体を全体的に又は部分的に覆うか、又はそうでなければ囲むか、若しくは包み得る。被覆は、導体を取り囲む唯一の構成要素であり得る。代替的に、被覆は、金属導体を包む多層ジャケット又はシースのうちの1層であり得る。被覆は、導体と直接接触し得る。被覆は、導体を取り囲む絶縁層に直接接触し得る。
【0062】
得られた被覆導体(ケーブル)は、被覆が所望の程度の架橋に達するように、十分な長さの時間、湿潤条件で硬化される。硬化中の温度は、一般に0℃超である。一実施形態では、ケーブルは、90℃の水浴中で少なくとも4時間硬化(エージング)される。一実施形態では、ケーブルは、空気雰囲気、雰囲気温度(例えば、20℃~40℃)、及び雰囲気相対湿度(例えば、10~96パーセントの相対湿度(percent relative humidity、%RH))を含む周囲条件で、最大30日間硬化(エージング)される。
【0063】
被覆導体は、水平燃焼試験に合格し得る。水平燃焼試験に合格するには、被覆導体は、100mm未満の合計チャーを有しなければならず、かつその下に配置された綿が発火してはならない。80秒未満の自己消火までの時間が、望ましい。被覆導体は、水平燃焼試験中、0mm、又は5mm、又は10mm~50mm、又は55mm、又は60mm、又は70mm、又は75mm、又は80mm、又は90mm、又は100mm未満の合計チャーを有し得る。被覆導体は、水平燃焼試験中、0秒、又は5秒、又は10秒~30秒、又は35秒、又は40秒、又は50秒、又は60秒、又は70秒、又は80秒未満の自己消火するまでの時間を有し得る。
【0064】
被覆導体は、VW-1試験に合格し得る。VW-1試験に合格し、したがってVW-1定格を有するには、被覆導体は、5つの15秒熱衝撃サイクルの各々について、バーナーの取り外しの60秒以内(≦60秒)に自己消火し、25%以下のフラグ燃焼を示し、かつ綿燃焼がないことを示さなければならない。VW-1試験は、水平燃焼試験よりも厳格である。一実施形態では、被覆導体は、5つの個別サイクルの各々の間、0秒~20秒、又は30秒、又は40秒、又は50秒、又は60秒、又は60秒未満の、VW-1試験中に自己消火するまでの時間を有する。一実施形態では、被覆導体は、VW-1試験中、20mm、又は40mm、又は50mm、又は75mm~100mm、又は110mm、又は120mm、又は130mm、又は140mm、又は150mm、又は160mm、又は180mm、又は200mm、又は250mm、又は300mm、又は350mm、又は400mm、又は500mm、又は508mmのフラグまでの無炭化長を有する。
【0065】
被覆導体は、以下の特性、(i)水平燃焼試験中、0mm~100mm未満の合計チャー、(ii)水平燃焼試験中、0秒~80秒未満の自己消火までの時間、(iii)5つの個別サイクルの各々の間、0秒~60秒未満の、VW-1試験中に自己消火するまでの時間、のうちの1つ、いくつか、又はすべてを有する。被覆導体は、水平燃焼試験及び/又はVW-1燃焼試験に合格し得る。
【実施例】
【0066】
試験方法
密度:密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定される。結果は、立方センチメートル当たりのグラム数(g)(g/cc)で記録される。
【0067】
メルトインデックス:メルトインデックス(Melt index、MI)は、ASTM D1238、条件190℃/2.16キログラム(kg)重量に従って測定され、10分当たりに溶出されるグラム数(g/10分)で報告される。
【0068】
熱重量分析:熱重量分析試験は、TA INSTRUMENTS(商標)のQ5000熱重量分析器を使用して実行される。100cm3/分の流量の窒素下で、材料の試料を熱重量分析器内の白金パン上に置き、40℃で平衡化した後、試料の質量を測定しながら、20℃/分の速度で温度を40℃から650℃に上昇させることによって、熱重量分析試験を実施する。温度を、残存する質量の%と関連付けて生成されたデータの曲線から、試料の質量の5%が失われた温度を決定して、5%質量損失温度を得る。温度を、残存する質量の%と関連付けて生成されたデータの曲線から、熱重量分析が650℃に達したときに残っている試料の質量%を決定して、650℃での保持質量を得る。
【0069】
結晶化度試験:示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC)機器DSC Q1000(TA Instruments)を使用して、23℃におけるエチレン系ポリマーの溶融ピーク並びにパーセント(%)又は重量パーセント(重量%)結晶化度を決定する。(A)ベースライン較正DSC機器。ソフトウェア較正ウィザードを使用する。アルミニウムDSCパン中に試料を全く含まずにセルを-80℃~280℃に加熱することによってベースラインを得る。次いで、較正ウィザードの指示に従ってサファイア標準を使用する。標準試料を180℃に加熱し、10℃/分の冷却速度で120℃まで冷却し、次いで120℃で1分間、標準試料を等温的に保持し、その後標準試料を10℃/分の加熱速度で120℃から180℃に加熱することによって、1~2ミリグラム(mg)の新鮮なインジウム試料を分析する。インジウム標準試料が、1グラム当たり融解熱=28.71±0.50ジュール(J/g)、及び溶融開始=156.6°±0.5℃を有することを決定し、(B)ベースライン較正したDSC機器を使用して、試験試料に対してDSC測定を実行する。半結晶性エチレン系ポリマーの試験試料を160℃の温度で薄膜にプレスする。アルミニウムDSCパン内に5~8mgの試験試料フィルムを秤量する。パンに蓋を圧着してパンを密封し、密閉雰囲気を確保する。蓋で密封されたパンをDSCセル内に配置し、30℃でセルを平衡させ、約100℃/分の速度で190℃まで加熱し、試料を190℃に3分間維持し、試料を10℃/分の速度で-60℃まで冷却して、冷却曲線融解熱(Hf)を得、-60℃で3分間等温的に保持する。次いで、試料を再度10℃/分の速度で190℃に加熱して、第2の加熱曲線融解熱(ΔHf)を得る。第2の加熱曲線を使用して、-20℃(エチレンホモポリマー、エチレンと加水分解性シランモノマーとのコポリマー、及び0.90g/cm3以上の密度のエチレンアルファオレフィンコポリマーの場合)、又は-40℃(エチレンと不飽和エステルとのコポリマー、及び0.90g/cm3未満の密度のエチレンアルファオレフィンコポリマーの場合)から溶融終了までを積分することによって、「全」融解熱(J/g)を計算する。第2の加熱曲線を使用して、23℃で垂直に降下することによって、23℃(室温)から溶融終了までの「室温」融解熱(J/g)を計算する。「全結晶化度」(「全」融解熱から計算される)、並びに「室温での結晶化度」(23℃の融解熱から計算される)を測定及び報告する。結晶化度は、試験試料の第2の加熱曲線融解熱(ΔHf)及び100%結晶性ポリエチレンの融解熱に対するその正規化から、ポリマーのパーセント(%)又は重量パーセント(重量%)結晶化度として、測定及び報告され、%結晶化度又は重量%結晶化度=(ΔHf
*100%)/292J/gであり、式中、ΔHfは、上記で定義されたとおりであり、*は、数学的乗算を示し、/は、数学的除算を示し、292J/gは、100%結晶性ポリエチレンの融解熱(ΔHf)の文献値である。
【0070】
VW-1燃焼試験:VW-1燃焼試験は、特定の被覆導体の3つ又は5つの試料をUL 2556セクション9.4のプロトコルに従わせることによって、実施される。これは、長さ610mm(24インチ)の垂直方向の試験片に20°の角度で125mmの炎を15秒間5回当てることを伴う。12.5±1mm(0.5±0.1インチ)のクラフト紙のストリップを、炎の衝突点より254±2mm(10±0.1インチ)上の試験片に付着させる。綿の連続した水平層を、試験チャンバの床に配置し、試験片の垂直軸を中心とし、綿の上面は、炎の青い内側の円錐の先端部が試験片に衝突する点よりも235±6mm(9.25±0.25インチ)下にある。試験不合格は、クラフト紙テープフラグの25%を燃焼させること、精製綿の点火、又は5回の炎適用のうちのいずれかで試験片が60秒を超えて燃焼した場合のいずれかの基準に基づく。燃焼性能の追加の尺度として、試験終了時に、未炭化絶縁体の長さ(「フラグまでの無炭化長」)が、測定される。3~5個の試験片及び5サイクルの自己消火時間が平均されて、表2に提供される「VW-1自己消火までの平均時間」を決定する。VW-1綿発火は、落下した材料が、綿床を発火させたかどうかを示す。
【0071】
水平燃焼試験:水平燃焼試験は、UL-2556に従って実施される。試験は、被覆導体を水平位置に置くことによって実行する。綿を、被覆導体の下に置く。バーナーを、水平試料(被覆壁の厚さが30ミルの14 AWG銅ワイヤ)に対して20°の角度に設定する。1回限りの炎を、試料の中央に30秒間適用する。(i)綿が発火した場合、及び/又は(ii)試料が100mmを超えて炭化する場合、試料は破棄する。炭化長は、UL-1581、1100.4に従って測定する。試験は、3回繰り返される。
【0072】
材料
実施例で使用された材料が、以下に提供される。
【0073】
シラン官能化ポリオレフィン1は、0.922g/ccの密度、23℃で46.9重量%の結晶化度、及び1.5g/10分(190℃/2.16kg)のメルトインデックスを有し、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)からSI-LINK(商標)DFDA-5451 NTとして市販されているエチレン/シランコポリマーである。シラン官能化ポリオレフィン1は、熱重量分析(臭素化FRで20℃/分の速度ではなく、10℃/分の速度が使用されることを除く)に従って測定されたときに、425℃の5%質量損失温度を有する。シラン官能化プポリオレフィン(ppolyolefin)1は、熱重量分析(臭素化FRで20℃/分の速度ではなく、10℃/分の速度が使用されることを除く)に従って測定されたときに、650℃で0重量%の保持質量を有する。
【0074】
シラン官能化ポリオレフィン2は、0.922g/ccの密度、23℃で46.2重量%の結晶化度、及び1.5g/10分(190℃/2.16kg)のメルトインデックスを有し、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)からSI-LINK(商標)AC DFDB-5451 NTとして市販されているエチレン/シランコポリマーである。
【0075】
ULDPEは、0.904g/ccの密度、23℃で37重量%の結晶化度、及び4g/10分(190℃/2.16kg)のメルトインデックスを有し、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)からATTANE(商標)4404Gとして市販されているポリエチレン樹脂である。
【0076】
LLDPEは、0.920g/ccの密度、23℃で49重量%の結晶化度、及び3.5g/10分(190℃/2.16kg)のメルトインデックスを有し、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)からDOW(商標)LLDPE 1648として市販されている直鎖状低密度ポリエチレン樹脂である。
【0077】
臭素化FRは、エチレンビス-テトラブロモフタルイミドであり、Albemarle(Charlotte,North Carolina)からSAYTEX(商標)BT-93Wとして市販されている。臭素化FRは、熱重量分析に従って測定されたときに、442℃の5%質量損失温度を有する。臭素化FRは、熱重量分析に従って測定されたときに、650℃で10重量%~20重量%の保持質量を有する。
【0078】
三酸化アンチモン1は、China Antimony Chemicals Co.Ltd(Beijing,China)からBRIGHTSUN(商標)HB500として市販されているSb2O3である。
【0079】
三酸化アンチモン2は、Chemtura(West Lafayette,Indiana)からMICROFINE(商標)AO9として市販されているSb2O3である。
【0080】
AOは、BASF(Ludwigshafen,Germany)からIRGANOX(商標)1010として市販されている、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)という化学名を有する立体ヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
【0081】
HALSは、CAS番号106990-43-6によって表され、BASF(Ludwigshafen,Germany)からCHIMASSORB(商標)119として市販されているヒンダードアミン光安定剤である。
【0082】
触媒マスターバッチ1は、ポリオレフィン、フェノール化合物、及びシラノール縮合触媒としての1.7重量%のジブチルスズジラウレートのブレンドである。
【0083】
触媒マスターバッチ2は、ポリオレフィン、フェノール化合物、及びシラノール縮合触媒としての2.6重量%のジブチルスズジラウレートのブレンドである。
【0084】
試料調製
IE1及びIE3:触媒マスターバッチを除く、表1の材料をBRABENDER(商標)ミキサーで、140℃~195℃の温度で3分間、70回転/分で溶融ブレンドすることによって、試料を調製する。溶融ブレンドされた試料をプラークに圧入試、プラークをペレットに切断する。ペレットを真空オーブン内で、70℃で16時間乾燥させる。ペレットを指定された触媒マスターバッチのペレットと固体ブレンドする。3/4インチのBRABENDER(商標)押出機及び標準のポリエチレンスクリューを使用して、150℃/180℃/180℃/180℃の温度プロファイルで、組み合わされたペレットを溶融混合する。材料を14米国ワイヤゲージ規格固体銅線上に押出して、厚さ0.762mmのポリマーシースを有するケーブルを形成する。ケーブルを90℃の水浴中で16時間硬化させる。
【0085】
IE2及びIE4:難燃性マスターバッチは、シラン官能化ポリオレフィン2及び触媒マスターバッチ2を除く表1のすべての成分を混合することによって調製された。成分はすべて予備秤量され、フェーズ1で手動で供給され、150hp可変速駆動装置を有するサイズDのFarrel BANBURY(商標)ミキサーによって混合された。個々のバッチサイズは、6~7分のバッチ混合時間及び145℃~150℃の落下温度で、40ポンドであった。混合後、材料が、150馬力の可変速駆動装置及び14/1の公称長/直径を有するFarrel 8インチ×45インチの溶融供給単軸スクリュー押出機に供給された。押出機の出力は、表示溶融温度146℃~155.5℃を伴う23回転/分で252ポンド/時であり、押出整形物は、水中カッターによってペレット化された。
【0086】
Conairドライヤー60℃で24時間超にわたって乾燥された後、難燃性マスターバッチのペレットが、シラン官能化ポリオレフィン2及び触媒マスターバッチ2のペレットと乾式ブレンドされた。続いて、乾燥ブレンドされた化合物が、3:1の圧縮比及び20/40/60/20メッシュのスクリーンパックを有するポリエチレン型Maddockミキシングヘッドスクリューを備えた2.5インチDavis Standardワイヤ及びケーブル押出機を使用して、14米国ワイヤゲージ規格固体銅線上に溶融押出されて、32ミル厚のポリマーシースを有するケーブルを形成した。この押出機からの吐出物が、Guill型の9/32×5/8インチの調整可能な中央クロスヘッドを通って、及び特定のチューブ先端部及び被覆ダイを通って流れた。押出機上の設定温度プロファイルは、130/135/143/149/152/166/166/166℃であり、測定された溶融温度は、176~183℃の範囲であった。ライン速度は300フィート/分であり、毎分押出回転数は43~44.5であり、圧力は12.5~19.3メガパスカルであった。続いて、ケーブルが、90℃の水浴中で16時間硬化された。
【0087】
表1は、本発明の実施例(Inventive Example、IE”)1~4を形成するために使用された材料を提供する。使用された各材料の量は、それぞれの発明実施例の総重量に基づいた重量パーセントで与えられている。
【0088】
【0089】
結果
表2は、本発明の実施例1~4の試験の結果を提供する。
【0090】
【0091】
表2から分かるように、IE1~IE4はすべて、VW-1又は水平燃焼試験のいずれかに合格し得る。そのような結果は、本出願の背景技術セクションで強調されているように、先行技術における理解が、VW-1燃焼試験又は水平燃焼試験に合格するための下限を0.37のSb:Brモル比に明示的に設定していたという点で、驚くべきことである。IE1~IE4は各々、0超かつ0.37未満のSb:Brモル比を有したにもかかわらず、VW-1燃焼試験又は水平燃焼試験に合格することに成功した。
【国際調査報告】